世界のチェス雑誌から(164)

世界のチェス雑誌から(164)

「Europe Echecs」2012年1月号(2/2)

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世界少年少女チェス選手権戦(続き)

中心となる新兵

 というしだいでビレルだけが入賞さらには優勝の可能性を維持していた。彼の実力は比較的高いほうだが参加部門の最上位者たちとは似たり寄ったりだった。しかしアルザス出身の少年は最後の2回戦で優勢な局面を得ながら崩れてしまった(0/2)。彼の世界チャンピオンになるという夢は消えてしまった。ビレルの潜在力は私の考えでは果てしない。勝負所で自分を制御できるようになればきっと表彰台の中央が彼に約束されるだろう。こういうわけで「小さな新兵たち」は獲物なしで帰ってくる。しかし皆それほど落ち込んでいなかった。アリエル・ル・バーユとロクサナ・ユグはレイティングをたくさんフランスに持ち帰った。

2011年の総決算はメダルゼロ

 フランスチェス連盟は今から既に具体的な準備と選抜選手の個人ごとの追跡を計画すると発表した。その目的は2012年のプラハでの次回ヨーロッパ選手権戦とマリボルでの次回世界選手権戦までに年少の代表選手たちが上達できるようにすることである。


14歳以下の部門で16位だったビレル・ベラセーヌ(左)


日本の国旗を掲げて


試合会場の小さなチャンピオンたち


ブラジルの国旗をつけて

名前              国         レイティング
S.アフラロ          フランス     2090
B.ベラセーヌ        フランス     2311
B.ド・タランス        フランス     2003
L.ディ・ニコラントニオ   フランス     2321
A.ゴリャチキナ       ロシア      2313
C.オセルノ          フランス     2100
R.ユグ            フランス     1510
S.ハデマルシャリエ    イラン      2215
A.ル・バーユ        フランス     1847
C.メニエ           フランス     1874
A.トマシ           フランス     1626
M.L.サリンベン      アルゼンチン  1732

解説 セシール・オセルノ(女流FIDEマスター)

C.オセルノ – M.L.サリンベン
フランス防御 [C11]
14歳以下女子
カルダス・ノバス、2011年、第1回戦

 これは第1回戦の試合である。相手は国際大会に出るのが初めてだった。だから彼女の試合の情報はほとんどなかった。

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5

 戦型はシュタイニッツ防御になった。

4…Nfd7 5.f4 c5 6.Nf3 Nc6 7.Be3 a6 8.Qd2 b5 9.dxc5 Bxc5 10.Bxc5 Nxc5 11.Qf2 Qb6 12.Bd3

12…h6

 相手がごく最近指した1試合は知っていて、…h6 と突かずにキング翼にキャッスリングしていた。その対戦相手はビショップをh7で切ってすべての駒で黒キングを攻撃した。だからきっと同じ目に遭うことを恐れてこの無駄手を指したのだろう。定跡は 12…b4 13.Ne2 a5 14.O-O Ba6 15.f5 である。

13.O-O O-O 14.Ne2 Bb7 15.Ned4 Nd7

 15…Ne4 16.Qe3 は形勢互角である。

16.Kh1

 この手は釘づけをはずしいずれ Nxc6 でナイト同士を交換する際に …Qxf2+ という手を与えないようにするためである。白はキングがh1にいるので …Qxf2 がチェックにならず Rxf2 でクイーンを取る前に Ne7+ と指すことができ駒得になる。すぐに 16.Nxc6 と取ってもよく 16…Bxc6 17.Qxb6 Nxb6 18.Nd4 となる。

16…Nxd4 17.Nxd4 Qc7 18.Rae1

 e5のポーンを守っておけば安心して f5 と突くことができる。

18…Rac8 19.Qg3 Qc5

 19…Qb6 の方が良かった。

20.c3

20…b4?!

 黒は白の f5 突きからの攻撃を緩和するためにクイーンをキング翼に転回させるべきだった。20…Qe7 21.f5 Qg5 22.Qh3 Nc5 23.fxe6 Nxd3 24.Qxd3 fxe6 25.Nxe6 Rxf1+ 26.Rxf1 Qe7 27.Qg6

で白が優勢だが仕方ない。

21.f5 Rfe8

 21…bxc3 なら白はポーンを取り返す必要はない。代わりに 22.fxe6 Qxd4 23.exd7 Rcd8 24.e6 fxe6 25.bxc3 Rxf1+ 26.Rxf1 Qb6(26…Qxc3 は 27.Bh7+ でクイーンを素抜かれる)27.Qg6

で Qh7# がある。

22.f6

 二人とも残り時間はほとんど同じくらいでそれぞれ1時間ほどだった。ここでは 22.fxe6 fxe6 23.Qg6 Nf8 24.Rxf8+ Qxf8 25.Qh7+ Kf7 26.Rf1+ Ke7 27.Rxf8

と指してもよかった。

22…Qf8

 22…g5 は 23.h4 Qf8 24.hxg5 で負ける。また 22…g6 は 23.Bxg6 fxg6 24.Qxg6+ Kh8 25.Qg7# で負ける。

23.Rf4 Kh8 24.fxg7+ Qxg7 25.Rg4 Qf8 26.cxb4

26…Re7

 26…Qxb4 なら 27.Rh4 Qd2 28.Nf3 で黒クイーンがもうh6のポーンを守れない。

27.Qf4 f6

 27…f5 は 28.Rg6 Rce8 29.Rxh6+ Rh7 30.Rxe6 Rxe6 31.Nxe6

で負ける。

28.Rg6 fxe5 29.Rxh6+ Kg8 30.Qg4+ Rg7

 30…Qg7 は 31.Rg6 Nf8 32.Nxe6 Nxe6 33.Rxg7+

で白が勝つ。

31.Bh7+ Kh8 32.Bf5+ 1-0

 これで即詰みになる。初戦を飾れて非常にうれしかった。

フランスの成績

 フランスの9選手は誰もそれぞれの部門で10位以内に入れなかった。セシール・オセルノは開始順位3位、アルベール・トマシは開始順位9位、そしてビレル・ベラセーヌは開始順位11位だった。18歳以下の部門で開始順位50位だったアリエル・ル・バーユは最後は27位だった。開始順位56位のロクサナ・ユグは55位に終わったにもかかわらずレイティングが約31点上がった。

8歳以下男子/女子
アルベール・トマシ      26位 5.5点/9回戦
ベレニス・ド・タランス     28位 4.5点
12歳以下男子/女子
クレマン・メニエ        39位 5.5点
ロクサナ・ユグ         55位 4点
14歳以下男子/女子
ビレル・ベラセーヌ      16位 6点
セシール・オセルノ      18位 5.5点
16歳以下女子
ソフィー・アフラロ       30位 5点
18歳以下男子/女子
リュカ・ディ・ニコラントニオ 31位 5.5点
アリエル・ル・バーユ     27位 5点

メダル一覧と入賞国

 国別順位の第1基準は優勝者すなわち金メダルの総数で、メダルの総数ではない。だからインドでなくカザフスタンが2位になる。9カ国が少なくとも1個の金メダルを獲得した。ロシア3個、カザフスタン2個、インド1個、ペルー1個、米国1個、中国1個、グルジア1個、アルメニア1個、ベラルーシ1個。フランスと同様に西欧のどの国も1個の金メダルも獲得できなかった。

1位 ロシア      金3個、銀4個
2位 カザフスタン  金2個、銅1個
3位 インド      金1個、銀1個、銅3個

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(この号終わり)

2012年03月07日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

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