チェス布局の指し方[5]

チェス布局の指し方[5]

第1章 展開と戦術(続き)

1.5 ナイトの展開

 ナイトの伝統的な地点はf3/f6とc3/c6である。例えばf3の地点からナイトは中原の2地点のd4とe5に利いていて、いつかg5に跳ねて敵のf7とh7に対する攻撃に加わるかもしれない。ナイトをf3に展開する時、覚えておいて必要ならば防護しなければならない重要な反撃がある。それはeポーンが動くと …Bg4 による釘付けが敵からの強力な一撃になることがあるということである。ジュオッコ・ピアノの次の戦型を考えてみよう。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.Nc3 Nf6 5.d3 d6

 図5(白番)

 対称な局面は手番の方が有利であることは前に述べた。そしてこの局面も例外でない。6.Bg5 のあと白の主導権は実質的に何らかの優勢をもたらす。しかし代わりに白が 6.O-O と指せば今度は黒が 6…Bg4! で主導権を奪い取り、白のナイトが自分のクイーンに対して釘付けにされる。釘付けを緩和するために 7.h3 Bh5 8.g4 と指すのは悪手になる。8…Nxg4 9.hxg4 Bxg4

 図6(白番)

となって黒は白のキング翼を乱し、駒1個の代わりにポーン2個を得、…Nd4 と …Qf6 の狙いが残っている。

 だから白の 7.h3 は何の役にも立たなかった。自分のキングの周りを弱めたので白の不利を招いただけである。白がクイーンをビショップの利き筋(つまりd1-h4の斜筋)からそらすのは黒に …Bxf3 で白キングの囲いを破らせてしまう。このような弱体化は通常は何としても避けるべきものである。

 Bg5/…Bg4 による釘付けに対するよくある対処法は次の二つである。
 (1)h3/…h6 として釘付けを避ける。
 (2)Be2/…Be7 とすれば釘付けの効果を大きく減らすことができる。

 Bb5 による釘付けは通常は対応するキング翼の釘付けよりも危険でない。それはキング翼キャッスリングの方がクイーン翼キャッスリングよりもはるかに普通で、Bxc6 の交換でcポーンを二重ポーンにするのは通常は狙いにならないからである。…Bb4 による釘付けはニムゾインディアン防御の章(第10章)で詳しく説明する。

 ナイトはe2やd2に行くこともある。キング翼ナイトは通常はf3に展開する。中原に影響を及ぼし Ng5 の可能性を保つだけでなく、キング翼キャッスリングのあと弱点になることが多いh2の地点も守っているからである。だから Nbd2 は Nge2 よりももっと多く指される。2段目のこれらの地点からナイトは中原の4地点のうち1地点(e4またはd4)にしか利いていない。しかしこのことは中原の支配の観点から見て必ずしも劣っているとは言えない。例えば Nbd2 ならcポーンが自由に進める。c3 ならd4の地点に守りが加わり、c4 ならd5の地点に利きが及ぶ。c3 と連係して Nbd2 が指されている例は閉鎖ルイロペス(第5章)に現れる。

 ナイトを2段目に展開するもっと積極的な目的はさらにf4またはc4に展開するかもしれないからである。そこからは影響が6段目にまで及ぶ。布局の段階(中盤の初期)で Nf4(または Nc4)は通常は相手がeポーン(またはdポーン)を自陣からの5段目に進めた後か盤上から消えた後でのみ指される。明らかに相手のポーンがまだd7またはd6にあれば、こちらが Nc4 と指した時相手のdポーンが動けない(こちらのdポーンによってせき止められている)場合を除きいつでも …d5 と突いてナイトが追い払われる。しかしf4またはc4のナイトが恐れなければならないのは中央列のポーンからの攻撃だけではない。…b5 と突いて敵駒を追い払うと同時にクイーン翼の自陣を広げるのはごく普通のことである。例えばキング翼インディアン防御の次の戦型を考えよう。1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nbd7 8.d5 Nc5

 図7(白番)

 白のeポーンが当たりになっているので黒のc5のナイトを 9.b4 によってすぐに追い払うことはできない。そこで白は 9.Qc2 と指してeポーンを守る。すると今度は 10.b4! を防ぐために黒がすぐに対処しなければならない。黒の常套手段は 9…a5 である。これですぐに 10.b4 とやってくるのを防いでいる。白は a3 と Rb1 でこのポーン突きの準備をしようとすれば黒は a3 に対して …a5 から …a4 で応じることができる。それでも b4 と突いてくれば …axb3e.p. と取れる。

 この例で黒は …a5 の前に …Nc5 と指すことができた。それはeポーンを守るために白が手をかけなければならなかったためである。しかしこの種の多くの局面で …Nc5 は直接の狙いを持たないために黒は …Nc5 の前に …a5 と指さなければならない。この題材はキング翼インディアン防御でよく見受けられる。

 ナイトの展開についての最後の注意書きである。ナイトを盤の端に置くのはめったに良い考えとはならない。ナイトをh3またはa3に展開するのは中原に何も利いていないので通常は長期的に損な投資である。時には Nh3/Na3 が f4/c4 への捌きの一部として指されることはある。レーティ・ギャンビットはその例である。1.Nf3 d5 2.c4 dxc4 ここで白はよく 3.Na3 から Nxc4 と指す。これは上記の「原則」に対する比較的数少ない例外の一つである。

(この章続く)

2010年03月29日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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