チェス布局の指し方[86]

チェス布局の指し方[86]

dポーン布局と側面布局

第14章 側面布局 1.b3、1.Nf3、1.c4(続き)

カタロニア布局

1.Nf3 d5(図137)

 図137(白番)

 白の初手のあと黒がポーンで中原を占拠するのは自然な応手である。1…e5 は 2.Nxe5 で駄目なので 1…d5 が次の最善手になる。

2.c4

 この手は黒のdポーンを当たりにして、中央の位置からそらすことに期待をかけている。2…dxc4 3.e3 のあと白は(Bxc4 から d4 で)クイーン翼ギャンビット受諾の有利な型に移行できる。

2…e6

 黒は中央で地歩を譲ることを断固拒否した。

3.g3

 白はもう2、3手後に d4 と突いて一種のクイーン翼ギャンビット拒否オーソドックス防御にするつもりである。ただしキング翼ビショップはg2に展開させる。白の期待はg2のビショップが黒のdポーンに対する圧力を増すのに役立つことである。

3…Nf6

 3…dxc4 なら 4.Qa4+ から Qxc4 で白クイーンが素通しc列の好所に位置することになる。黒は自陣の要衝であるdポーンの防御に集中する方を選んだ。これで黒の駒はすべてこの地点と何らかの接点を持つように展開される。布局はこの地点の支配をめぐる熾烈な戦いになってきた。

4.Bg2 Be7

 ここでのよくある間違いは 4…Bc5 である。ここはビショップにとって好所に見えるが、実際は次の二つの理由により大きな誤りである。

 (a)このビショップはここにいると、前進して自陣を解放すべきcポーンの邪魔になる。

 (b)白はすぐに d4 と突いてビショップを当たりにして先手で展開できる。

5.O-O O-O 6.d4

 これでクイーン翼ギャンビットの局面になった。もし黒が方針を曲げて 6…dxc4 で中原の支配を放棄すれば、白は 7.Ne5 か 7.Qc2 でポーンを取り返す。あとの 7.Qc2 の場合 7…b5 は 8.a4 c6 9.axb5 cxb5 10.Ng5! でルークが落ちるので無理である。この罠にはまらないように注意しなければならない。

6…Nbd7 7.Qc2 b6

 黒のクイーン翼ビショップが通常の道筋で展開できないので、黒はb7の地点に出そうとしている。b7のビショップは黒のd5の地点にも利いている。

8.cxd5

 白クイーンのためにc列を素通しにした。

8…Nxd5!

 8…exd5 には欠点がいくつかある。

 (a)黒ビショップのa8-h1の斜筋を恒久的に閉ざす。

 (b)9.Bf4 でも 9.Ne5 でも白が主導権を握る。

 (c)最悪なのは 8…exd5 のあと白が 9.Qc6! でc6の空所につけ込んで例えば 9…Rb8 10.Bf4! で黒を困らせることができることである。本譜の 8…Nxd5 のあとの 9.Qc6 Rb8 10.Bf4 はもう狙いになっていないので黒は …Nb4 または …Bb7 で白クイーンを追い払う余裕がある。本譜の手のあと白は中央のポーンの数で優っているが、黒はよく展開ができていて互角の形勢になる可能性がある。

9.Nc3 Bb7

 もちろん 9…Nxc3 は 10.bxc3 で白の中央を強化させるので駄目である。

10.Nxd5

 これは黒のクイーン翼ビショップを当たりにすることにより中央でのポーン突きが先手になるようにするためである。なぜなら黒が 10…exd5 と取るのはやはりクイーン翼ビショップの斜筋をふさぐからである。

10…Bxd5 11.e4 Bb7 12.Bf4(図138)

 図138(黒番)

 白はcポーンを当たりにすることにより先手で駒を展開した。布局の段階が終了し白がやや有利である。本譜の手順は1971年マドリードでの西ヨーロッパ団体戦イングランド対オーストリア戦での主将戦のキーン対ロバーチュ戦をなぞっている。

12…c5

 黒は白がルークを中央列のd1とe1に配置する前に白の中原に挑む必要がある。

13.d5 exd5 14.exd5 Bf6

 黒は 14…Bxd5 とは取れない。なぜなら 15.Rad1 Nf6 16.Ng5 で Rxd5 の狙いがあり、16…g6 と守ると 17.Be5 で白の戦力得になるからである。途中 15…Bc6 は 16.Ng5 Bxg5 17.Bxc6 でやはり白が優勢になる。これらのことにより白が中原で強力なポーンを維持することができる。

15.h4

 白は Ng5 による黒キングへの攻撃を支援した。この手に対して 15…Bxd5 は 16.Rad1 でやはり白が良い。

15…Re8 16.Ng5 Nf8 17.Rad1 Bd4

 黒はパスポーンへの白の支援を断ち切った。

18.Be3! h6

 18…Bxe3 は 19.fxe3 でf7の地点に白ルークの利きが通る。

19.Ne4

 ナイトが中央の好所に陣取った。

19…Bxe3 20.fxe3 Ng6

 黒のナイトもe5の地点を目指している。そこからは決してどかされることがない。そうなれば白の強力なパスdポーンの十分な代償になる。しかしそうなることはない。まず 20…Qe7 と指すことが肝要だった。ここで白には一撃の機会がある。それは黒が既に 18…h6 突きで弱体化させた黒キングの囲いを破壊するものである。

21.Rxf7!! Kxf7 22.Rf1+ Ke7

 22…Kg8 なら 23.Nf6+! gxf6 24.Qxg6+ Kh8 25.Qxh6+ Kg8 26.Rxf6 で白の勝ちになる。

23.d6+

 パスポーンが存在感を発揮し始めた。

23…Kd7 24.Rf7+ Ne7

 24…Kc8 なら 25.Rc7+ Kb8 26.Rxb7+ Kxb7 27.Nxc5+ で白が勝つ。

25.Qa4+ Kc8

 25…Bc6 は 26.Bh3# の一手詰みである。

26.d7+!

 パスポーンが最後の一撃を見舞った。

26…Qxd7 27.Bh3 1-0

 27…Qxh3 と取っても 28.Qxe8+ ですぐに詰む。

(この章続く)

2011年11月07日 コメント(3)

カテゴリ: チェス布局の指し方

コメント


コメント

  1. sego より:

    はじめまして、チェス初心者です。良書を翻訳されていて大変感謝しております。勝手ながらいつもコメントもせずに勉強させて頂いております。
    ところで、今回の布局は『レティ・オープニング』、ですよね?カタロニア布局(Catalan Opening)は、1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.g3 …となっていますが・・・。

  2. Yamagishi より:

     カタロニア布局(Catalan Opening)の正式な手順はそのとおりです。この試合の場合 6.d4 の時点でカタロニア布局と同じ形になったのでカタロニア布局に分類されます。『レティ・オープニング』は「途中で/いつのまにか」他のオープニングに移行してしまうことが多いです。
     http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1071316 にこの試合の棋譜が掲載されていますが Catalan Opening: Closed Variation となっています。
     ただし出だしの3手目までの手順がこの本のとは異なっています。この本で著者がなぜ手順を作り変えたのかは分かりませんが、入門書としては読者を不必要に惑わせる良くないやり方だと思います。

  3. sego より:

    なるほどなるほど勉強になります。これがtranspose(transpositionかな?勉強不足ですみません)というものですね。それとも一手一手の駆け引きによる手順変更なんでしょうかね。
    それから、ご回答ありがとうございました。今後もご迷惑でしょうがド素人質問をさせて頂きます。



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