チェス布局の指し方[76]

チェス布局の指し方[76]

dポーン布局と側面布局

第12章 オランダ防御(続き)

石垣戦法

1.d4 f5 2.Nf3(図119)

 図119(黒番)

 この手によって永続的な陣形上の主導権が約束され、それゆえに 2.e4 よりも信頼できる。

2…Nf6 3.g3

 この手は白のキング翼ビショップを展開する最良の方法である。キング翼方面への黒の予想される攻撃に対する予防措置として白キングの囲いを強化するだけでなく、キング翼ビショップを好所につけて後日の e4 突きの支援にもなる。

3…e6

 別の展開の 3…g6 は後の節で解説する。

4.Bg2 Be7 5.O-O

 この手を遅らせても意味がない。白はクイーン翼にキャッスリングする態勢にない。

5…O-O 6.c4

 白はキングが安全なので中央でさらに陣地を広げた。

6…d5

 この手が石垣という名前の由来である。黒は中央一帯をd5/e6/f5というポーンの三角形(石垣)でせき止め、白のe4の地点を支配している。黒の論理は中央を固定しているので安心して白キングに対して側面での行動を開始することができるというものである。しかしこの黒の論理には以下のように不合理なところがある。

 (a)中央は完全に落ち着いているわけでもなければ、黒が本当に白のe4の地点を支配しているわけでもない。白が適当な時機に f3 突きから e4 突きを行なうことができれば、黒は退却を強いられe6の出遅れポーンも大きな弱点になるかもしれない。

 (b)白がクイーン翼ビショップを黒のキング翼ビショップと交換することができれば、黒は黒枡が悲惨なほど弱くなり、白駒はこれらの黒枡を利用して黒陣にやすやすと侵入できる。たとえこの交換がなくても黒は黒枡が非常に弱い。特にe5とf4の地点がそうで、白駒の安住の地となりかねない。

 (c)黒のポーンは白枡を支配しているように見えるが、自分のクイーン翼ビショップの利きをひどく妨げてもいる。もし収局になればこれは大きな問題になるかもしれない(次の節では 6…d6 を詳しく調べる)。

7.b3

 7.Nbd2 のあと Ne5-d3 および N2f3 と指すのも非常に良い作戦である。白はそのようにしてもうポーンによって守ることのできない黒のe5の地点を支配する。

7…c6

 白枡の石垣陣が完成した。

8.Nc3 Qe8

 黒は白キングの攻撃のために自軍を増強する用意をした。…Qe8-h5 はこの攻撃の鎖におけるよくあるつなぎ手である。

9.Ne5 Nbd7 10.Nd3!(図120)

 図120(黒番)

 これは妙手とも言うべき手である。黒駒は展開に支障をきたしているので、白はどんな駒の交換も避けている(例えば 10.Nxd7? Bxd7)。駒を交換すると黒の窮屈な陣形が楽になるかもしれない。さらにこのナイトは中央のd3の絶好点ですべての重要な黒枡(c5/e5/f4)に目を光らせている。

 もう白の優勢は明らかであると言ってもさしつかえない。そして1970年ソンボルでのヒューブナー対マリオッティ戦では白がこの上ない正確さで優勢を生かしていった。

10…Ne4

 これが黒の作戦である。

11.Bb2 Bd6 12.e3 g5

 黒の「攻撃」が続いている。実際はこの擬似攻勢の手は黒枡における黒の麻痺を悪化させている。

13.f3

 黒が白のe4の地点を支配しているのが幻想だったことを如実に示した。

13…Nxc3 14.Bxc3 Nf6 15.Qe2 Qh5

 黒はできる限りの攻撃をしている。

16.Bb4!

 きわめて重要な黒枡ビショップ同士の交換が達成できた。これで黒は陣形的に負けた!

16…Bxb4 17.Nxb4 a5 18.Nd3 b6 19.Ne5

 ナイトが黒枡に侵入した。

19…Qe8 20.Qd2 h6 21.e4!

 この遅れたポーン突きはその分威力を増している。白は簡単にポーンを取り戻せる。

21…fxe4 22.fxe4 dxe4 23.Qe2 Bb7 24.Bxe4 Rd8 25.Bg2 Rd6 26.Rf2 Qd8 27.Qd3

 黒陣は弱点だらけのがたがたにされた。ここで 27…Rxd4 ならば 28.Qg6+ が必殺の手になる。もし黒が 27…Qe8 で白クイーンの侵入を防げば 28.Raf1 Kg7(28…Nd7 なら 29.Rf7!)29.Ng4 Nd7 30.Rxf8 Nxf8 31.Qe3(e5での決め手のチェックを狙う)31…Ng6 32.Nf6 Qe7 33.Nh5+ Kh7 34.Be4 で、黒は収拾がつかない。実際黒は形勢を悲観して白の27手目のあと戦うことなく勝負をあきらめた。

 米国の偉大なマスターのピルズベリーは19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて活躍したが、あるとき熱狂的なチェス好きの医者と話に及んだ。医者はピルズベリーがポーン構造の長所と短所を見分ける速さにびっくりしていた。

 そこでピルズベリーは医者にポーン構造はすべての陣形の骨格であると言った。そしてちょうど医者が一目で病気の骨格の欠陥を認識することができるように、チェスマスターは弱点まみれの黒陣を見ればすぐに負けであると片付けるものだと説明した。ここでの状況は次のように細かく分析することができる

 (a)黒のgポーン突きは白に攻撃目標を提供する(例えば h4 突きによって)。さらに黒のgポーンの背後の枡(f6/g6)はすべてポーンで守られず、白駒が吸い寄せられる真空地帯になる。既に白のクイーンとナイトは黒のg6の地点をにらんでいる。

 (b)黒の出遅れ孤立eポーンの前にしっかりと根を下ろした白のナイトの不可侵性をよく見ることである。白の唯一の弱点は素通し列上のdポーンだが、黒は自分の弱点の守りに汲々としているので白の弱点につけ入っている暇がない。もし黒のgポーンがg7に、そしてhポーンがh7にあったら、黒の唯一の陣形の欠陥はeポーンで、引き分けにできる可能性があるだろう。

(この章続く)

2011年08月29日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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