チェス布局の指し方[75]

チェス布局の指し方[75]

dポーン布局と側面布局

第12章 オランダ防御(続き)

スタントンギャンビット

1.d4 f5 2.e4(図117)

 図117(黒番)

 スタントンギャンビットは19世紀中頃に活躍したイギリスの偉大なマスターのハワード・スタントンにちなんで名づけられた。これはオランダ防御に対する最も攻撃的な応手である。黒の初手は展開に何も寄与していないので、白は自分の展開の効率を最高にするためにポーンを犠牲にしてもかまわないと考えている。しかしこのギャンビットはせいぜい互角の形勢しかもたらさない。2.Nf3 の方が良い手で、以降の3節で考察する。

2…fxe4

 黒は受諾することによってのみ白のギャンビットを検証することができる。(黒の4手目の解説も参照)

3.Nc3

 この手は展開しながら黒の前の方のeポーンを当たりにしている。

3…Nf6

 同様に黒も展開しながら得したポーンを守った。

4.f3

 これで本当のギャンビットになる。白はポーンを取り返す望みをすべて放棄し、迅速に展開して黒キングを素早く攻撃することにかけた。4.Bg5 と指すこともでき、4…Nc6 5.d5 Ne5 6.Qd4 Nf7 が最善の応接である。

4…exf3

 黒は 4…e3 か 4…Nc6 で自発的にポーンを返すこともできた。しかしそのような手は白のギャンビットの正しさを検証することにはならない。

5.Nxf3

 5.Qxf3 も可能だが自分のキング翼ナイトからf3の地点を奪ってしまう。f3の地点はこのナイトの最も自然な展開先である。

5…g6

 この手はキングの囲いを強化している。そして …Bg7 からすぐに …O-O でキングを隅にしまい込む準備にもなっている。そうなれば素通しのe列とf列での白の圧力からずっと遠ざかることになる。

6.Bf4

 この展開は良い手で、Qd2 から O-O-O の準備にもなっている。

6…Bg7 7.Qd2 O-O

 両者とも作戦どおりに指し進めている。

8.O-O-O

 反対翼キャッスリングはいつでも非常に激しい戦いになる。白は Bh6 から h4-h5 のように指し、たぶんもっとポーンを犠牲にして黒キングに肉薄する。一方黒は …d5、…c5 そして …Qa5 と指すことにより自分の可能性を温存し、g7のビショップで白キングの砦に圧力をかけつつルークのためにc列を素通しにすることに努める。

 この局面での間違った作戦はすぐに 8.Bh6 と指すことで、1953/54年ヘースティングズでのブロンシュテイン対アレグザンダー戦では 8…d5 9.Bxg7 Kxg7 10.O-O-O Bf5 11.Bd3 Bxd3 12.Qxd3 Nc6 と進んだ。白は戦力損なのに多くの駒を交換しすぎる誤りを犯した。12…Nc6 のあと黒はポーン得で陣形もしっかりしていて、試合に勝ちを収めた。本譜の 8.O-O-O は駒の早すぎる交換を避けているのでもっと強手になっている。

8…d5

 黒は中原に足場を築いた。これは絶対必要だが自分のe5の地点を弱めていて、白は次の手ですぐにそこを占拠した。

9.Ne5 Nbd7(図118)

 図118(白番)

 黒はe5の拠点にいる白ナイトに挑んだ。この局面では白は陣地が広く駒の働きも活発である。おまけに Bd3 から h4 突きで攻撃することもできる。しかし代わりに黒は中央にポーンが1個多くあるので展望はほぼ互角である。だがこのことは試合が引き分けに終わりそうであることを意味していない。意味しているのは局面が非常に不均衡なのでどちらにも同等の勝つ機会があるということである。9手目までの局面はブロンシュテイン対アレグザンダー戦を改良しようというロシアの研究手順である。

 スタントンギャンビットは黒が間違えれば白が攻撃で圧倒することができるが、黒が正確に受ければ白にはあまり優勢が約束されないと結論づけなければならないだろう。しかしこのあと分析する大局観に基づいた指し方よりも、心理面で大きな有利さがある。オランダ防御を指す者は白キングを攻撃したがっている。犠牲にしたポーンの代償として相手が攻撃側になれて、自分が難しい受けに回らなければならないならば、明らかに心理的に面白くないだろう。だからこちらを攻撃したがっている誰かを動揺させるためにはスタントンギャンビットを試してみるとよい。

(この章続く)

2011年08月22日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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