チェス布局の指し方[73]

チェス布局の指し方[73]

dポーン布局と側面布局

第11章 キング翼インディアン防御(続き)

ゼーミッシュ戦法

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3(図114)

 図114(黒番)

 これがゼーミッシュ戦法の骨子となる手で、1920年代にドイツのマスターのフリッツ・ゼーミッシュによって作り上げられた。5.f3 は白の展開のために何もしていないしキング翼ナイトからf3の地点を奪っているので非常におかしな手に思えるかもしれない。しかし 5.f3 には多くの利点があり、6人の世界チャンピオン-アリョーヒン、ボトビニク、ペトロシアン、タリ、スパスキー、カルポフ-によって愛用された。この手は白の中原を強化し、Be3 から Qd2 のような手を準備している。白の作戦はクイーン翼にキャッスリングして黒キングの方面をキング翼のポーンの進攻と Bh6 の加勢の可能性とで襲撃することである。5.f3 は自分のeポーンを反撃に対して強化するだけでなく、g4 突きの準備にもなっている。このgポーン突きはhポーンをh5に突くのを助ける。白がh列を素通しにし黒のキング翼ビショップを交換でなくすことに成功すれば、黒キングに対する攻撃が決定的なものになるのはほとんど確実である。白がこの厳しい戦略をみごとに成功させた多くの例は本譜の解説中に見られる。

5…O-O

 黒キングをキング翼にキャッスリングするのを遅らせる利点はほとんどない。黒がクイーン翼にキャッスリングする手はずを整えることは非常に難しい。

6.Be3

 ここはビショップの最適の展開場所である。白は Qd2 から O-O-O の用意をしている。f3のポーンは黒が …Ng4 でe3のビショップをいじめるのを防いでいることに注意されたい。このクイーン翼ビショップがg5に行けば黒から …h6 突きで追われるし、6手目でf4の地点に出れば黒に …Nc6 で …Nxd4 から …e5 突きの両当たりを狙われる。

6…e5

 これはキング翼インディアン防御において黒が中原で行動を起こす際の常用の手段であるが、代わりに 6…Nc6 も非常に良い手である。例えば1992年ベオグラードでのスパスキー対フィッシャー戦では 7.Nge2 a6 8.h4 h5! 9.Nc1 Nd7! 10.Nb3!? a5! 11.a4 Nb4 12.Be2 b6 から …c5 突きを狙う進行になった。

7.d5

 この手は中原で陣地をいくらか広げるだけでなく、中原を閉鎖して意図する黒キングへの側面攻撃に対する黒の反撃を最小限に抑える。側面攻撃を予定している時は中原を閉鎖するのはいつでも良い考えとなる。

7…Nh5

 黒は …f5-f4 から …g5 突きによる典型的なキング翼のポーンの暴風を準備している。しかしカスパロフは自分の試合で 7…c6 から …cxd5 としてから初めて …Nh5 とする手順をとっている。これはc列を素通しにして白がクイーン翼にキャッスリングするのを思いとどまらせるためである。

8.Qd2 f5 9.O-O-O

 白は作戦の前半を実行した。

9…Nd7 10.Bd3

 ビショップが中央の好所に出て戦いに加わり、黒キングの方面もにらんでいる。

10…Ndf6

 黒の作戦は白のeポーンに圧力をかけることで、白が exf5 で中原を放棄し黒に可動多数派ポーンを形成させてくれるかもしれないことを期待している。しかしこれは黒にとってかなり危険な作戦である。なぜなら多数派ポーンはgポーンの支援がなく、特に白枡にかなりすきが出ることもあるからである。キング翼インディアン防御では黒は常に白による白枡への侵入に非常に注意していなければならない。黒の最も用心深いやり方は 10…f4 と突いてキング翼の封鎖に努め、そちらでの白の攻撃の可能性を最小限にすることだった。しかしキング翼が完全に封鎖されれば、白はキングをb1に寄せ Rc1 から c5 と突くことによりクイーン翼での進攻を図ることができただろう。

11.exf5 gxf5

 もちろん黒が駒でf5を取り返すのは大きな戦略上の誤りである。例えば 11…Bxf5? なら白は 12.Nge2 と応じ、いつかはe4の地点に駒を据え、それで黒のキング翼ビショップの利きが永久に無効になる。白がe4の地点に駒を据えればその駒は黒のfポーンによってどかすことができず黒のeポーンをせき止めることにもなる。そして黒のキング翼ビショップが閉じ込められて、通常白が陣形の上で戦略的に勝ったとみなされる。

12.Nh3!(図115)

 図115(黒番)

 ここで白には前述した黒陣の白枡の弱点につけ込む Ng5-e6 という強力な狙いがある。さらにはルークをg列に回して g4 とポーンを突いて黒キングに通じる列を素通しにする可能性もある。これらの可能性を考慮すると白がかなり優勢であると結論づけなければならない。1970年ジーゲンでの世界チーム選手権戦のポルティッシュ対グリゴリッチ戦はこの局面から次のように進んだ。

12…c6

 黒は 12…f4 13.Bf2 Bxh3 で白に孤立二重ポーンを作らせることもできた。しかし 14.gxh3 のあと黒には白のキング翼ビショップに立ち向かえる白枡ビショップがなく、白が例えば Bf5-e6+ によって白枡を完全に支配することになる。さらに白にはg列でも危険な狙いができる可能性がある。

13.Rhg1 cxd5 14.cxd5 Kh8 15.Kb1 Bd7 16.Ng5 Qe7 17.Bb5 Bc8

 もちろん黒は白枡ビショップを交換させるわけにはいかない。なぜなら白のナイトが自由にe6の地点に行けるようになるからである。6段目に居座った無敵のナイトは勝利を保障したも同然であることがよく知られている。

18.Bc4

 どのみち白のキング翼ナイトはe6の地点にやって来て、黒はそれと自分のビショップを交換しなければならず、そこに白の危険なパスポーンができる。白は陣形の上で既に戦略的に勝利を収めている。

(この章終わり)

2011年08月08日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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