王印防御の完全理解(131)

王印防御の完全理解(131)

第4章 アベルバッハ中原(続き)

4.3 実戦例

第7局
アルバート対カスパロフ
ルツェルンオリンピアード、1982年
アベルバッハ戦法

1.c4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3 Nf6 4.e4 d6 5.Be2

 本局で4ポーン攻撃とアベルバッハ戦法の概要を説明する。その他の布局の戦法は以降の試合で扱う。

 解説に入る前にアベルバッハ中原を作り出す決断は基本的に黒の側にあることを指摘しておく。というのは白は4ポーン攻撃を指すことにより(多かれ少なかれ)強制することしかできないからである。実際 5.f4 O-O 6.Nf3 のあと黒は 6…c5 と指すくらいしか選択肢がない。なぜなら 6…e5? はうまくいかず 7.dxe5 dxe5 8.Qxd8 Rxd8 9.Nxe5 Re8 10.Bd3 Nxe4 11.Bxe4! f6 12.Bd5+ Kh8 13.Bf7 Rf8 14.Nxg6+ hxg6 15.Bxg6 となって白が断然優勢になるからである。

 4ポーン攻撃を含めこの型の中原になるすべての戦法でそうであるように、黒には(5.f4 O-O 6.Nf3)6…c5 7.d5 で中原が封鎖されたあと二つの進め方がある。(1)7…b5 8.cxb5 a6 9.a4(9.bxa6 は 9…Qa5 10.Bd2 Bxa6 11.Bxa6 Nxa6 12.O-O c4 となって黒にポーンの代償がある)9…Qa5(9…e6 は 10.dxe6 Bxe6 11.Be2 axb5 12.Bxb5 Na6 13.O-O Nb4 14.Kh1 Qb6 でやはり黒にポーンの代償がある)10.Bd2 Qb4 11.Qc2 c4 12.Nd1 Qc5 13.Be3 Qb4+ 14.Bd2 Qc5 互角の戦いである。(2)7…e6 8.dxe6(8.Be2 は 8…exd5 9.exd5-9.e5 は非常に難解な乱戦になる-9…Re8 10.O-O Ng4 のあと …Ne3 が狙いとなる)8…fxe6(8…Bxe6 は 9.Bd3 Nc6 10.f5 Bd7 11.O-O Ng4 で難しい局面になる)9.Bd3 Nc6 10.O-O Nd4 中盤がまだまだ続くがたぶん白の方が少し有望である。

5…O-O 6.Bg5

 アベルバッハ戦法に特有なこの手は黒がすぐに …e7-e5 と突くのを防いでいる(第6局の白の6手目の解説を参照)。

6…Nbd7

 黒がこの手を指すときは通常は次に …e7-e5 と突く意図である。もっとも本局で見られるように状況はかなり違った方向に進むこともあり得る。

 アベルバッハ中原は通常はここで黒が 6…c5 と突き白が 7.d5 と応じて出現する。それ以降の展開は黒が …h6 と突いても突かなくても反撃を …b5 突きと …e6 突きのどちらに基づかせるかにかかっている。例えば(1)7…b5 8.cxb5 a6 9.a4 Qa5(9…h6 は 10.Bd2 e6 11.dxe6 Bxe6 12.Nf3 axb5 13.Bxb5 Na6 14.O-O Nc7 15.Re1 Nxb5 16.Nxb5 d5 で黒にポーンの代償が十分にある)10.Bd2 axb5(10…Qb4 はもっと危なっかしい。例えば 11.Qc2 axb5 12.Bxb5 Ba6 13.f3 となってここで 13…c4 も 13…Nfd7?! もあるが、後者は 14.Nd1 Qd4 15.Bc3 Bxb5 16.Bxd4 cxd4 17.Ra3!? というクイーンの犠牲を伴って白が優勢である。また 10…Qb4 のあと白は 11.f3 Nfd7 12.Qc1 c4 13.Nd1 Qc5 14.Qxc4 axb5 15.Qxb5 Ba6 16.Qxc5 Nxc5 17.Ra3! と指すことができ、黒に2ポーンの代償が十分にあるかどうかはっきりしない)11.Bxb5(11.Nxb5 は 11…Qb6 12.Qb1 e6 13.dxe6 fxe6 14.Nf3 d5 で混戦になる)11…Na6 12.Nge2 Nb4 13.O-O Ba6 黒にポーンの代償が十分にある。(2)7…e6 8.Qd2 exd5 9.exd5 Qb6 10.Nf3 Bf5 11.O-O(11.Nh4 の成行きについては図162の解説を参照)11…Ne4 12.Nxe4 Bxe4 13.Rae1 Qxb2 14.Qf4 これは白が有望である。(3)7…h6 8.Bf4(8.Be3 は 8…e6-もちろん 8…b5 と突くこともできる-9.h3 exd5 10.exd5 Re8 11.Bd3 b5 12.cxb5 Nbd7 となって黒にポーンの代償がある。もちろん白は途中 9.dxe6 と取ることもできる)8…e6 9.dxe6 Bxe6 10.Bxd6(白は 10.Qd2 で黒ポーンのただ取りを拒否することもでき、10…Qb6 11.Bxh6 Bxh6 12.Qxh6 Qxb2 13.Rc1 Nc6 14.h4 で乱戦になる。黒は …e6 突きを遅らせることによりこの手順を避けることができる。例えば 8…Qb6 9.Qd2 Kh7 10.h4 e6 11.dxe6 Bxe6 となって、ここで白は 12.h5 g5 13.Bxd6 Rd8 14.Qc2 で難解な局面にしたこともあるし、12.Nf3 で Ng5+ による攻撃続行を意図したこともある)10…Re8 11.Nf3 Nc6(11…Qb6 12.Bxb8 Raxb8 も指されている)12.O-O Nd4(12…Qa5?! は 13.Nd2! Red8 14.Bf4 Ne8 15.Nd5 で白優勢のようである)13.e5 Nd7 14.Nxd4 cxd4 15.Qxd4 Nxe5 16.Bxe5 Qxd4 17.Bxd4 Bxd4 18.Rac1 Rad8 19.b3 これはポーンの犠牲を伴う手順で、実戦にしばしば現れている。

 これらの手順はすべて本質的に代表例であり、どちらにも改良手が見つかるかもしれないことは覚えておかなければならない。

7.Qc1!?

 ここでの普通の手は 7.Qd2 で、そのあと 7…e5 8.d5 Nc5 となれば白は 9.f3 と突いてeポーンを守らなければならない(第6局の9手目の解説を参照)。7.Qd2 の場合と同様に実戦の手の最も明白な意図は …h7-h6 突きを防ぐことである。もっと深い意味は 7…e5 8.d5 Nc5? 9.b4! という変化にあり、白クイーンの位置のおかげで黒はe4で取ることができずナイトを引かなければならない。これでカスパロフが実戦の …c7-c5 突きを選んだ理由が分かる。

7…c5 8.d5(図184)

 図184 黒の手番 

(この章続く)

2011年07月12日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: 王印防御の完全理解

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