チェス布局の指し方[62]

チェス布局の指し方[62]

dポーン布局と側面布局

第9章 クイーン翼ギャンビット(続き)

タラシュ防御

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3

 この展開の手は黒のdポーンに圧力をかけているので最善である。

3…c5(図94)

 図94(白番)

 これがタラシュ防御の眼目の手である。黒はどんな犠牲を払っても中央で駒を活躍させようとしている。20世紀初頭にはドイツの偉大なマスターのジークベルト・タラシュ博士の影響を受けて、これがクイーン翼ギャンビットに対する唯一の「正しい」防御であるとみなされていた。しかしチェスの定跡が進歩するにつれてタラシュ防御は評判が悪くなっていった。タラシュ防御では黒はほとんど常に孤立dポーンを背負わされる(早い活動に対して払わなければならない代価)。そして1920年代からはマスターたちは黒陣のこの弱点を大きすぎる負債とみなしてきた。それでも世界チャンピオンのカスパロフとスパスキーによって時々用いられた。

4.cxd5

 黒のdポーンに対する攻撃はこの布局を通しての主題である。だからこの手も最善である。4.Nf3 による単純な展開はここではぴったりせず不十分である。一方 4.dxc5? とこちらを取るのは黒に中原での重要なポーン突きを許すことになる。即ち 4…d4 突きで白の展開したばかりのナイトが追い払われる。4.Na4 と逃げると黒は 5…Bxc5 6.Nxc5 Qa5+ 7.Bd2 Qxc5 というちょっとした仕掛けでポーンを簡単に取り返すことができる。黒は中原の支配(前進したdポーン)により相応の展望がある。黒のクイーン出がかなり早いことは認めなければならないが、白がこれにつけ込むには展開が不十分である。実際c5にいる黒のクイーンは白のcポーンに当たっていて、白はこのポーンを守るために1手費やさなければならない。

4…exd5 5.Nf3

 5.dxc5 d4 6.Na4 で中原のd4の地点を明け渡すのはやはり薦められない。白が今いる黒のdポーンを攻撃したいのなら、d4の地点をしっかり支配して黒のdポーンが前進できないようにしなければならない。白の作戦は黒がすぐに …d4 と突き返せない時に dxc5 と取ることである。それから白はdポーンをせき止め(普通はナイトをd4の地点に据えることにより)、自分の駒でよってたかって黒のdポーンを攻撃することにする。

 弱いポーンを攻撃したい状況のためにニムゾビッチによって作られた役に立つ原則は、まず弱いポーンを制止し、次にそれをせき止め(無事に前進できることのないように)、それから撃滅することである。

5…Nc6

 5…cxd4? 6.Nxd4 は白のキング翼ナイトをただでd4の地点に来させて白を利することになる。

6.g3!

 これにより白のキング翼ビショップが非常に効果的な地点に展開できる。g2の地点から黒のdポーンに対して最も効果的な方法で狙いをつけることができる。

6…Nf6

 タラシュ防御における黒の布局の指し方は、駒を適切かつ迅速に最も効果的な中央の地点に動員することがそのほとんどである。即ちビショップを側面のg2の地点におく白の「現代的」展開に対する「古典的」展開である。

7.Bg2 Be7 8.O-O O-O 9.Be3(図95)

 図95(黒番)

 白は9手目でいくつかの代わりの手がある。9.dxc5 はまだ時期尚早である。9…d4! 10.Na4 で黒のdポーンがせき止めをまぬがれ、白のクイーン翼ナイトがまたも盤端に追いやられる。白は得したcポーンを保持する可能性がいくらかあるけれでも、白を持つほとんどのマスターの選手はこの戦型を避ける。理由は黒駒の働きが増しdポーンも強力だからである。このdポーンは白陣に近づくほど威力が強くなる。黒は 10…Bf5 で …d3 突きを狙って恐るべき主導権を維持する。

 9.Bg5 は1969年世界選手権戦のスパスキー戦でペトロシアンの指した手だった。しかし 9…Be6 10.dxc5 Bxc5 11.Bxf6 Qxf6 12.Nxd5 Qxb2 となって黒が形勢を互角にできた。

 本譜の手(9.Be3)は1970年世界チーム選手権戦のソ連対カナダ戦で第1席のスパスキーが指した。黒はヤノフスキーだった。

 白は 9.Be3 で黒のcポーンを攻撃する駒を二つにすると共に、d4の地点の支配も強めた。この試合の以降の進行により孤立dポーンの潜在的な弱さが驚くべき方法で明らかになる。

9…cxd4

 これは白の作戦にはまってしまう。黒の最善手はたぶん1987年ブリュッセルでのラルセン対カスパロフ戦のように 9…c4 10.Ne5 h6! で、ほぼ互角の形勢である。

10.Nxd4

 これは急所のd4の地点でせき止めを行なうので非常に重要である。これで戦闘の半分は白の勝利に帰した。

10…h6

 黒は孤立dポーンを支えているキング翼ナイトを Bg5 で攻撃されるのを恐れた。

11.Rc1 Na5 12.b3!

 黒のc4とe4の地点に対する支配は、孤立dポーンに対する代償の主要な表れの一つである。白は 12.b3! で黒が占拠を狙っていた地点の一つを使えなくした。

12…Nc6 13.Qd3

 白は Rfd1 でナイトの背後から陣形を強化する意図である。

13…Ne5 14.Qc2

 白は素通し列に集中している。

14…Qa5 15.Ncb5 Bd7 16.Qc7!

 7段目をクイーンまたはルークで占拠するのはほとんどいつも有利である。

16…Qxc7 17.Nxc7 Rad8 18.Nxd5 Nxd5 19.Bxd5 Bh3 20.Bg2

 白は黒の孤立dポーンをそのまま取った。黒には代償がまったくなく(20…Bxg2 21.Kxg2 Ng4 22.Nf5! Nxe3+ 23.Nxe3 Rd2 24.Rc2!)42手目で負けた。

(この章続く)

2011年05月23日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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