チェス布局の指し方[58]

チェス布局の指し方[58]

dポーン布局と側面布局

初めに

 白は初手に 1.e4 と指すことによって中原に領有権を主張するだけでなく(これは普通は従うべき有利な原則である)、クイーンとキング翼ビショップのために斜筋を開けることにより迅速な展開を準備する。1.e4 のあと白は素早い展開の可能性に基づいた攻撃を始められることがよくある。黒が 1…e5 で断固対抗すれば白は黒のeポーンが守られていないことを利用して(ルイロペスのように絶えずeポーンを狙って)自駒を迅速に展開することができる。

 1.d4 は見た目は 1.e4 に似ているがまったく異なった構想の布局の指し方になる。もちろん白はやはり中原に領有権を主張するが、1.d4 は白が 1.e4 の場合ほど迅速に駒を展開できない。さらに、もし黒が 1…d5 と応じればこのdポーンは黒のクイーンによって自動的に守られているので、単純に 2.Nc3 と展開しても何も成さず白のcポーンの邪魔になるばかりである。クイーン翼の布局ではcポーンは通常相手のdポーンを攻撃する主要なてことして必要なのでこういうやり方は良くない。

 1.d4 のあと白の主要な目的は駒を迅速に展開することではなく、中原にポーンの厚みを築くように努めることである。白はその厚みの内側で黒陣に対する襲撃を準備することができる。この白の戦略に対する黒の3種類の応手を分析すると次のようになる。

 (1)黒が自分もポーンで中原を占拠することにより白のポーン中原の形成と戦う(クイーン翼ギャンビット)。

 (2)黒が駒で中原の要所を支配することにより白のポーン中原の形成と戦う(ニムゾインディアン防御)。

 (3)最も現代的なやり方は、黒が白のポーン中原の形成を積極的に助長し、そのような構造が延びすぎとなり弱点を抱えやすくなることを期待する(キング翼インディアン防御と、現代防御の1戦型)。

 具体的な戦法の検討に移る前に、まず 1.d4 で始まる試合を1局見てみよう。白が理想的な戦略を実行するこの試合は、次のような段階に分けることができる。

 (1)白が強力なポーン中原を築く。

 (2)白がポーンの内側で攻撃準備のために駒を集結させる。

 (3)白がポーンをぶつけて集結した駒のために攻撃の筋を開ける。

 (4)白の解放された駒が黒キングの周りに集まり詰みに討ち取る。

 注意してほしいのは本局で中原を支配した白がどのように攻撃目標を選ぶことができたのかということである。黒の駒は盤の端の方に追いやられ、効果的な抵抗ができなかった。

 この番勝負の試合は1962年に有名なソ連のグランドマスターのケレス(白番)とゲレル(黒番)との間で戦われた。

 第1段階:1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 Nc6 7.Bc4 Nxc3? この手は薦められない。黒に何の反撃や切り崩しの手段も与えることなく側面ポーンで中央に向かって取り返し(bxc3)白の中原を強化させてしまう。

 第2段階:8.bxc3 Be7 9.O-O O-O 10.e4 b6 11.Bb2 Bb7 12.Qe2 Na5 13.Bd3 Rc8 14.Rad1(図88)

 図88(黒番)

 第3段階:14…cxd4 15.cxd4 Bb4 16.d5! 急に白の駒のすべてが黒の不幸なキングを狙い始めた。16…exd5 17.exd5 Qe7(17…Qxd5? は 18.Bxh7+ でクイーンを取られる。一方 17…Bxd5 も 18.Qe5 f6 19.Qh5 でキングに対する狙いをかわすことができず黒が破滅する。例えば 19…g6 20.Bxg6 hxg6 21.Qxg6+ Kh8 22.Ng5 Qd7 23.Rxd5! となる)18.Ne5 f6 19.Qh5

 第4段階:19…g6 20.Nxg6 これはキングを守るポーンの柵を破壊する非常にありふれた種類の捨て駒である。17手目の解説でこれに似たものを既に見ている。20…hxg6 21.Bxg6 Qg7

 ケレス自身はこの局面について次のように書いている。「黒の受けは極度に難しい。白は既に捨てた駒の代わりに2ポーンを得ていて、さらにほとんどすべての駒が弱体化した敵のキングを攻撃する用意を整えている。一般的に言っても黒は絶望的な局面から無事に抜け出すとはほとんど期待できそうにない。」22.Rd3 Bd6 23.f4 Qh8 24.Qg4 Bc5+ 25.Kh1 Rc7 26.Bh7+ Kf7(26…Kxh7 27.Rh3#)27.Qe6+ Kg7 28.Rg3+ 28…Kxh7 29.Qh3#

 圧倒的な攻撃に結びついた中原の支配の見事な例のあとは、クイーン翼ギャンビットの具体的な分析に入っていく。

(この章終わり)

2011年04月25日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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