「ヒカルのチェス」(213)

「ヒカルのチェス」(213)

「Chess」2011年1月号(4/4)

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ロンドン・チェスクラシック(続き)

第6回戦(12月14日)
マクシェーン ½ – ½ ナカムラ

 ルーク・マクシェーンはヒカル・ナカムラと激闘を演じた。マクシェーンは第4回戦で試した 1.g3 をまた用いた。そのあとイギリス4ナイト戦法に移行した。マクシェーンは18手目あたりで Qa4 と指せばもっと良くなっていたかもしれない。40手の制限時間に近づく頃には局面は非常に複雑になり両者とも時間に追われた。

 ナカムラはたぶんもっとうまく指して勝ちに近づくことができたかもしれない。しかしマクシェーンは黒キングの近くにクイーンを寄せることができ、永久チェックの可能性をこしらえた。ヒカルは駒得する手段を見つけたが、マクシェーンのクイーンは単独で引き分けをもぎ取った。

第6回戦
L・マクシェーン-H・ナカムラ
イギリス布局

1.g3 e5 2.c4 Nf6 3.Bg2 d5 4.cxd5 Nxd5 5.Nc3 Nb6 6.Nf3 Nc6 7.O-O Be7 8.a3 O-O 9.b4 Re8 10.d3 Bf8 11.Bb2 a5 12.b5 Nd4 13.Nd2 c6 14.bxc6 Nxc6

15.Nc4!?

 ここでは 15.Nb5、15.Rb1 や他の手もいくつか指されているが、これは新手である。

15…Be6

 15…Nxc4 16.dxc4 で白はcポーンが孤立ポーンになるが、代償としてd5の地点がしっかり支配できる。

16.Nxb6 Qxb6 17.Rb1 Qa6 18.Bc1 Rac8

19.Re1?

 19.Qa4 と出て黒のbポーン突きを防ぎ、そのポーンを列と対角斜筋上とで標的のままにしておいた方が良かった。実戦の手のあと優勢は黒に移った。

19…b6 20.Bd2

 ここで 20.Qa4 と出ると黒は単に 20…Nd4 と応じて楽である。

20…Red8

 20…Bxa3?? は 21.Bxc6 Rxc6 22.Qa4 で両当たりになる。

21.a4 Nd4 22.Nb5

22…Bc5

 22…Bb4!? という手もあり、23.Bxb4 axb4 となれば 24.Rxb4? には 24…Nc2 でルークの両取りがかかるので非常に有望である。

23.Nxd4 Bxd4 24.Be3

24…Rc5

 24…Bxe3 25.fxe3 Rc5 は黒がほんの少ししか優勢にならない。

25.Bxd4 exd4 26.Rc1 Qc8 27.Rxc5 Qxc5 28.Qa1 Rc8 29.h4 Qc3 30.Bb7 Rc7 31.Be4 f5 32.Bf3 Bb3 33.Kf1

33…Kf8

 a4のポーンは取られそうだが、33…Qb4 には 34.Rb1 で黒がa4のポーンを取れば白は代わりにb6のポーンが取れる。

34.e3?!

 お互い時間が少ない状況で非常に危険を伴う手である。

34.Qxd3+

 34…dxe3 と取った方が良かった。35.Qa3+ Qb4 36.Qxb4+ axb4 37.Rxe3 Rc1+ 38.Re1 Rxe1+ 39.Kxe1 Bxa4

で黒がはっきりポーン得になる。もっとも白はまだまだ指す余地がある。

35.Kg2 Qc3 36.Qa3+

36…Ke8

 36…Qb4 37.Qxb4 axb4 38.Rb1 Rc3 39.exd4 Ke7 は指してみても良かったかもしれない。もっとも黒がどのように駒を解きほぐして進展を図るかははっきりしない。

37.Qd6

 この時点で白はあと4手に1分ほど、黒は3分ほど残っていた。37.exd4+!? Qxe1 38.Qxb3 も相当良さそうである。白キングは安全だが黒キングはチェックの砲火を逃げ切れそうにない。

37…Rd7 38.Qe5+ Re7 39.Qb5+ Kf8 40.Qxf5+ Rf7

41.Qe5

 Qd8 の1手詰み狙いの 41.Qg5?! に食指が動くが、黒は実戦と同じように応じて勝てるかもしれない。いくつかの分析エンジンは 41.Qb1 を強力に推すが、人間選手には 41…Rxf3 42.Kxf3 Bd5+ 43.Kf4 d3 が心配である。露出している白キングに対するいろいろな狙いを簡単に見落とすことがある。

41…Rxf3

 すぐに 41…Qxe1 と取るのは盤上に白ビショップが「生きて」いるのであまりに危険である。例えば 42.Qb8+ Ke7 43.Qc7+ Kf6 44.Qd6+ Be6 45.Bd5 Re7 46.Qf4+ Bf5 47.g4

となる。

42.Kxf3 Qxe1 43.Qb8+ Ke7 44.Qc7+ Kf6

45.Qd8+

 45.Qxb6+?! は 45…Be6 46.Qxd4+ Kf7 となって、黒が勝つ可能性がわずかながらある。

45…Kf7 46.Qd7+ Kf8 47.Qd8+ Kf7 48.Qc7+ Kf6 49.Qd8+ Kf7 50.Qc7+ ½ – ½

第7回戦(12月15日)
ナカムラ ½ – ½ アダムズ

 ヒカル・ナカムラとミッキー・アダムズとの試合はすぐさまキングを巻き込む戦いになった。これは戦う大会の締めくくりに非常にふさわしかった。ミッキーは得意のマーシャル攻撃を用い、ヒカルは 17.a4 と指して「定跡書」からはずれた。ヒカルは21手目でクイーンに直射攻撃を受ける手を指したが、実際はもっと良い手があった。クイーン同士が盤上から消え、アダムズは犠牲にしたポーンの代わりに双ビショップとナカムラの浮きポーンに対する圧力という形で代償を保持した。最終的には戦力を互角にすることができて引き分けになった。

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(この号終わり)

2011年04月22日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: ヒカルのチェス2

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