チェス布局の指し方[57]

チェス布局の指し方[57]

eポーン布局

第8章 カロカン防御(続き)

突き越し戦法

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5(図86)

 図86(黒番)

 突き越し戦法は英国最強のグランドマスターで世界選手権挑戦者のナイジェル・ショートが非常に得意にしている戦法である。彼はリュボエビッチ、セイラワン、ティマンそれにカルポフのような一流の相手に対してこの戦法を用いてきた。

 読者はこの局面をフランス防御の突き越し戦法(1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5)の局面と比較してみるとよい。そこには大きな違いが二つある。

 (a)フランス防御では黒は通常cポーンをc5に突いて白の連鎖ポーンの根元を攻撃する。カロカン防御ではこのポーン突きはcポーンを既にc6に突いているので1手損することになる。

 (b)フランス防御では黒のクイーン翼ビショップはe6ポーンの内側に閉じ込められていて、局面が閉鎖的なためにかなりの間働かないままであることが普通である。対照的にカロカン防御での 3.e5 突きは黒が自由に攻撃的な地点のf5にこの駒を展開できる。チェスの理論によれば白の観点からは(a)の長所より(b)の短所の方が優っていると考えられている。そのためこの戦型はあまり高く評価されていない。

3…Bf5

 黒は早く …e6 と突いて白のポーンを固定し自分の中原を強化したいので、このビショップをすぐに出すのが最善である。

4.c4!?

 これは積極性のある面白い手で、独特の戦法になっている。一見したところ黒が 4…dxc4 と取ってから …e6 と突き、白にはっきりとした代償のない弱い出遅れポーンを作らせることができそうである。しかしそれが話のすべてというわけではない。白の突き越しeポーンは白陣に広さをもたらし続け、さらに重要なことはもし黒のポーンがd5からいなくなれば白はe4の地点を使えるようになりナイトの絶好の拠点として用いることができる。ナイジェル・ショート自身は単に 4.Nf3 と展開しそのあと Be2 から O-O と指している。本譜の手はもっと激しい手である。

4…dxc4

 黒は挑戦を受けて立った。

5.Bxc4 e6

 恒久的に d5 突きを防ぐことにより白のdポーンを動けなくした。

6.Nc3 Nd7 7.Nge2

 この手は 7.Nf3 よりもはるかに理にかなっている。というのはこの戦法では白のキング翼ナイトはg3にいるべきもので、そこならe4の地点を監視できたぶんfポーン突き(白の長期的な大局的狙いの一つは f4-f5 の仕掛けである)も支援できるからである。

7…Ne7

 キング翼ビショップを 7…Bb4 と展開するのはあまり意味がない。なぜなら黒は本気でこのビショップを白のナイトと交換しようと狙っているわけではまったくないからである。もし黒が …Bxc3 と指せば白は bxc3 と応じ、結果として白の弱いdポーンが強化され、黒のd6の地点に空所ができそこを白の残りのナイトが占拠することになる。だから 7…Bb4 のあと白は単にポーンを突いてこのビショップを追い払うことができ、クイーン翼の陣地も広がる。

8.O-O Nb6

 白の駒がe4の地点を支配しようと奮闘している間に、黒のナイトの一方がd5の地点の占拠を目指している。

9.Bb3 Qd7

 この手はクイーン翼キャッスリングの準備である。そうなれば白の出遅れポーンに対するd列での圧力が増すことになる。

10.a4!

 この手は 10…O-O-O を思いとどまらせるためである。例えば 11.a5 Nbd5 12.Na4 となってクイーン翼に圧力がかかる。

10…a5

 面倒なことになる白のaポーン突きを止めた。もちろんここで …O-O-O とキャッスリングするのは黒のクイーン翼のポーンの形が崩されるので大変危険である。しかし本譜の手の代償として黒はb4の地点がナイトのもう一つの拠点として使えるようになった。

11.Ng3 Bg6

 黒は双ビショップの優位を手放したくない。このビショップ引きのあとでも 12…Nf5 でdポーンに対する圧力を増すことを狙っている。

12.Bc2!

 …Nf5 を防ぎ白枡ビショップの交換を迫った。交換になれば白は文句なくe4の地点を支配することになる。もちろんこの手にはポーンの犠牲の可能性があり、次の解説でさらに説明する。

12…Bxc2 13.Qxc2 Ned5

 13…Qxd4?! とポーンの犠牲を受け入れるのは非常に危険である。例えば 14.Be3 Qb4(14…Qd8 なら 15.Qb3)15.Ra3(ナイトを取りに行く狙い)15…Ned5 16.Rb3 Nxe3 17.fxe3 Qc5 18.Qf2 となれば黒はナイトとf7の弱点を同時に守ることができない。

14.Nce4 Nb4 15.Qe2 N6d5(図87)

 図87(白番)

 15…Qxd4?! は 16.Be3 Qd8 17.Qg4 で 18.Nh5 を狙われるのでまだ危ない。しかし本譜の手のあと黒はナイトがよく働いていて、それほど不利とは感じられない。ここまでの手順は1958年ミュンヘンオリンピアードのタリ対ゴロンベク戦である。

(この章終わり)

2011年04月18日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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