チェス布局の指し方[52]

チェス布局の指し方[52]

eポーン布局

第7章 フランス防御(続き)

突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5(図77)

 図77(黒番)

 この強制されない白の二度目のeポーン突きは「突き越し」戦法と名づけられている。3手目でもう白の戦略の全貌が明らかになりつつある。白は先着の優位を広さの優位に変えることを選び、より長続きすることを期待している。この作戦自体は理にかなっているが、手数をかけたため主導権が黒の手に渡り相当続く。そのためこの戦型は棋理に合っていると考えられているが、布局の指し方に機動性をより好む現代のマスターたちからはあまり高く評価されていない。

3…c5

 これは自然な(かつ最善の)応手である。黒はクイーン翼で陣地を広げ、白の連鎖ポーンの根元にすぐに突っ掛けた。

4.c3

 いつかは黒が白の中原を …cxd4 で侵食しようとするので、白はこの手に対しポーンで取り返し進攻した連鎖ポーンを確実に維持できるように方策を講じた。

4…Nc6

 黒の迎撃戦略は全力を挙げて白のdポーンを攻撃することである。このポーンが本当に取れるとは予想していないが、白駒のほとんどをその守りに縛り付けることは期待している。

5.Nf3

 白は駒を展開しd4のポーンの守りにまた護衛を付けた。

5…Qb6

 これはクイーンを試合の早い段階で動かすなという原則への重要な例外である。黒のクイーンはb6なら攻撃を受けることがなく、好所でもある。なぜなら白のdポーンへの攻撃に加わり、白のクイーン翼ビショップが動けばbポーンが取れるのでその動きを制限しているからである。

6.Be2

 このビショップをe2とd3のどちらに進めるかの選択は、白がこの布局でしなければならないもっとも重要な決断の一つである。最初にこの戦法の定跡を発展させたニムゾビッチは Bd3 より Be2 の方がd4のポーンを完全に「守っている」との立場をとった。彼の意味するところは Be2 なら白クイーンのdポーンを守る働きを阻害しないということである。6.Bd3 のあと黒は 6…cxd4 7.cxd4 Nxd4? 8.Nxd4 Qxd4?? でポーンを取ることができない。それは 9.Bb5+ でクイーンを取られてしまうからだが、7…Bd7 と指すことによりdポーンに対する狙いを新たにすることができる。

6…cxd4

 この交換は黒の作戦の自然な一部である。黒が少しでも遅らせれば白の方が dxc5 と取ろうとするかもしれない。

7.cxd4 Nge7

 黒はキング翼ナイトをf5の地点に捌いて白のdポーンに対する圧力を強めるつもりである。

8.Na3

 白は包囲されたかわいそうなポーンに急いでさらに守り駒を駆けつけさせた。このナイトはc2の地点を目指している。

8…Nf5 9.Nc2 Bb4+

 これは面白い着想である。白の駒はd4とb2の地点を守らなければならないので過負荷になっている。そのためここではキングを動かしてキャッスリングの権利を失わなければならない。

10.Kf1

 白は 10.Nxb4 でも 10.Bd2 でも弱いポーンを守ることができなくなる。だからこのキングは歩いて難を避けなければならない。しかし本譜の手のあと白の方にも狙いがある。機会があれば a3 から b4 と突いて広さの優位を拡大し、ポーンの弱点の一つを解消する。

10…Be7

 11.a3 突きに 11…a5 と応じられるようにビショップをどけた。

11.g3

 白はキングのために少し空間を作り、キング翼ルークが隅から出て働けるようにした。

11…Bd7

 黒はまだクイーン翼ビショップをどのように働かせるかという問題を解決していない。これはいつもフランス防御の悩みの種である。当面はd7に置いてルークのためにc8の地点を空けてこの列が素通しになれば好所になるようにした。

12.Kg2(図78)

 図78(黒番)

 この局面はマスターの実戦に何回か現れた。黒のあらゆる努力にもかかわらず広さの優位を維持してきた白がたぶん少し優勢だろう。しかし黒は悲観することはない。すこし窮屈なことを除いて黒陣には弱点がない。黒は白の駒をいくらか守勢の立場に追いやり、将来は …f6 突きを準備して白の中原ポーンに眼目の襲撃を続けることができる。

(この章終わり)

2011年02月21日 コメントは受け付けていません。

カテゴリ: チェス布局の指し方

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