チェス布局の指し方[39]

チェス布局の指し方[39]

eポーン布局

第5章 ルイロペス(スペイン布局)(続き)

閉鎖防御

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5(図53)

 図53(黒番)

 この陣形では白の3手目の中で最も理にかなった手である。白は素早くキング翼を展開し、黒のeポーンを守っているナイトを攻撃してこのポーンに間接的に圧力をかけた。

3…a6!

 モーフィーの時代からこれが黒の最善の応手であることが知られている。この手が正当な理由は黒がdポーンを突くことになれば(eポーンを守りクイーン翼ビショップの展開のためにいずれそうしなければならない)、黒のクイーン翼ナイトが釘付けの形になるからである。3…a6 はこの釘付けの効果を前もって緩和させる。

4.Ba4

 交換戦法(4.Bxc6)は別の節で詳しく説明する。しかし 4.Bxc6 で白がポーン得しないことは指摘しておく。なぜなら 4…dxc6 5.Nxe5 のあと 5…Qd4 で黒が楽にポーンを取り返すからである。

4…Nf6

 これは逆に白のeポーンを標的にして駒を展開するそつのない手である。黒のこれからの作戦は …b5 と突いて白のビショップを追い払いクイーン翼で陣形を広げるつもりである。しかしすぐに 4…b5 と突くのは誤りである。なぜなら白から例えばすぐに a4 突きでクイーン翼のポーンに攻撃されると展開の立ち遅れが明らかだからである。

5.O-O

 白はキングを安全地帯に移し中央にポーンを突けるようにした。eポーンを捨てるのは開放防御の節で見られるように見かけだけにすぎない。

5…Be7

 5…Nxe4 から始まる開放防御は別の節で解説する。黒は 5…Be7 でもっと人気のある閉鎖防御を選択した。この戦法では黒はe5のポーンを維持することに努め、白の中原が強大化しすぎないようにする。この目標を念頭におけば黒のキング翼ビショップは(例えば)c5よりもe7にいる方がよい。というのはc5では白が適当な準備のあと d4 と突くとこのビショップが当たりになるからである。

6.Re1

 白の作戦は有利な状況で d4 と突くことである。できることならば白は完全なポーン中原(e4とd4にポーンが並んだ形)を作りたい。だから d4 と突くための自然な手順は Re1 と寄せ(eポーンの守り)c3 と突く(d4 突きに …exd4 と取られた時にポーンで取り返すため)ことである。

6…b5

 黒はキング翼を展開したので今度は白のキング翼ビショップを追い払う番である。黒がこれを遅らせて最初に 6…d6 と突くと、白は 7.c3 と突いて 7…b5 に 8.Bc2 と応じることができ手を節約できる。

7.Bb3 d6

 黒はクイーン翼ビショップの筋を開けeポーンを支えた。代わりに 7…O-O 8.c3 d5 は人気のあるマーシャル攻撃で、一流グランドマスターたちによって深く研究されている。

8.c3 O-O

 8…Bg4 は正確さで劣る。なぜなら白には釘付けをはずし自分の陣形の優位を増す効果的な手段があるからである。即ち 9.d3 のあと Nbd2-f1-e3 と指す手順である。このナイトはe3に到達すると黒の弱点のd5とf5の地点を攻撃することになるので好位置になる。白がdポーンを既にd4まで突いている場合はこの捌きは無理である。というのはe3のナイトが、黒に狙われているeポーンを守っている白のキング翼ルークの利きをさえぎってしまうからである。だから黒の最良の方針は白が d4 と指すまでクイーン翼ビショップの展開を遅らせることである。

9.h3

 読者は上述の解説から気づいただろうが、この手の代わりに 9.d4 と突くと 9…Bg4! と指されて白のキング翼ナイトに強力な釘付けをかけられる。本譜の手はこの手を防ぐ目的である。しかし 9.h3 は本質的に展開と関係のない先受けの手なので、黒はクイーン翼で行動を開始する余裕を与えられたことになる。

9…Na5

 黒の希望は …c5 と突いてクイーン翼で勢力を拡張することである。だから黒はまずcポーンの進む道をふさいでいるナイトを動かさなければならない。a5の地点を選んだのは白の大切なキング翼ビショップとの交換を狙える位置だからである。しかし 9…Nb8(…Nbd7 の意図)、9…Bb7、9…h6 および 9…Nd7 も同様に良い手である。

10.Bc2

 もちろん白は双ビショップの優位をむざむざ手放したくはない。一見すると白は Bc2 でまたビショップに手を費やしたように見える。しかしこの場合はそうではない。というのは白のビショップが当たりから逃れれば、黒のナイトは盤の端の働きのない位置にいることになるからである。黒は早急に1手かけてこのナイトを盤の中央に戻さなければならない。

10…c5 11.d4

 長いこと待ち望んだ中原へのポーン突きが実現した。これで白は黒のeポーンを脅かしている。

11…Qc7(図54)

 図54(白番)

 黒はeポーンを守り、ルークがあとで来れるようにd8の地点を空けた。

 この局面はマスターたちの実戦に何千局も現われた。そしてこの戦型を白番でも黒番でも指すグランドマスターたちもいる。ここからの中盤戦は優れた大局観や巧妙な戦術の戦いとなることがよくある。黒はまだ完全な互角は達成していないが、序盤の形勢の差を広げられてもいない。白は中原ですこし優勢だが黒がポーンをe5に維持する限り白がこの方面で突破口を開くのは難しい。白の展望は明らかにキング翼で有望で、注意深く指せば強力な攻撃を仕掛けることができるだろう。白はこの攻撃を支援するためにクイーン翼ナイトをd2からf1を経てe3かg3に展開させるべきである。

 対照的に黒はクイーン翼で有望である。しかし性急な攻撃はしないように注意しなければならない。なぜならそれは恐らく自分の突き進めたポーンを弱めることにしかならないからである(a4への反撃はルイロペスにおける白の主眼点の一つである)。

 1959年マルデルプラタでのフィッシャー対ショクロン戦は以下のように続いた。

12.Nbd2 Bd7 13.Nf1 Rfe8

 黒は好機を待ちながら陣形を強化している。そして白の作戦が分かるまで積極的に動かないようにしている。

14.Ne3 g6

 黒は白のナイトがf5の地点から侵入してくるのを防いだ。また局面の進行によってはビショップをf8からh6またはg7に展開し直す用意もしている。

15.dxe5

 白は黒陣の「空所」にあたるd5の地点に対する圧力を増すために中原の争点を解消した。

15…dxe5 16.Nh2

 これは重要な防御用の駒である黒のキング翼ナイトと交換するための準備である。

16…Rad8 17.Qf3

 17…Bxh3 でクイーン当たりとなる黒の攻撃をかわした。

17…Be6

 17…h5 は 18.Nd5! Nxd5 19.exd5 で黒のキング翼がだいぶ弱体化する。

18.Nhg4 Nxg4 19.hxg4

 白はh列を開け後でこの列を攻撃に用いることに期待した。

19…Qc6 20.g5!?

 ナイトのためにg4の地点を空けた。

20…Nc4

 黒はナイトを中央に近い所に戻した。もっと手ごわい手は 20…Bxg5 だが 21.Nd5 Bxc1(21…Bxd5? は 22.Bxg5 で黒が戦力損する)22.Nf6+ で乱戦になり白が優勢かもしれない。

21.Ng4 Bxg4

 Nf6+ は許せないのでこの一手である。

22.Qxg4 Nb6

 23.a4 を防いだ。

23.g3

 キングを動かしてルークをh列に回す準備である。

23…c4!

 黒はクイーン翼ナイトをキング翼の守りに回したいのだが、まずこの手でg8-a2の斜筋をふさがなければならない。すぐに 23…Nd7? と指すのは 24.a4 b4 25.cxb4 cxb4 26.Bb3 で白のキング翼ビショップの位置が絶好である。

24.Kg2 Nd7 25.Rh1 Nf8 26.b4

 攻撃の鉾先をクイーン翼に向けた。

26…Qe6

 黒はクイーン交換を期待している。

27.Qe2 a5 28.bxa5 Qa6 29.Be3 Qxa5 30.a4 Ra8

 実戦の手よりも 30…Qxc3 31.axb5 の方が黒にとって良いかもしれない。

31.axb5 Qxb5 32.Rhb1 Qc6 33.Rb6!

 黒のクイーンが追い回されて白がa列を制圧する。

33…Qc7 34.Rba6 Rxa6 35.Rxa6 Rc8

 白に狙いの 36.Ra7 を指されると黒のクイーンはビショップとcポーンを両方守ることができない。

36.Qg4

 狙いは 37.Ra7 のあと 38.Rxe7 から 39.Qxc8 である。

36…Ne6 37.Ba4 Rb8 38.Rc6 Qd8?

 これは悪手だった。38…Qd7 なら勝負はまだ分からなかった。

39.Rxe6! Qc8

 39…fxe6 なら 40.Qxe6+ Kf8 41.Qxe5 で白が勝つ。

40.Bd7! 1-0

 40…Qxd7 と取ると 41.Rxg6+ でクイーンを取られるので黒は投了した。

(この章続く)

2010年11月22日 コメントは受け付けていません。

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