チェス布局の指し方[9]

チェス布局の指し方[9]

第1章 展開と戦術(続き)

1.9 キングの安全

 キングは盤上で最も重要な駒であり、いつも細心の注意を持って扱わなければならない。試合の始まりではキングは自陣の中央に位置していてかなり不安定である。戦いが激しくなり戦術がたけなわになってくればキングを中央に置いておくのは非常に不利である。なぜなら戦闘に巻き込まれかねず悲惨な結果を招くかもしれないからである。

 幸いにもチェスの規則にはキングを中央から遠ざける手段、即ちキャッスリングがある。通常は試合の早い段階でキャッスリングするのが賢明である。キャッスリングは普通は布局戦略の一環として行なわれる。中盤までキャッスリングを持ち越すのはたまにしかないが状況によっては、特にクイーンが交換された場合には、キャッスリングを全然しないことが可能なことがある。そもそもキャッスリングというものはキングを安全な所に置くのが重要な務めである。クイーンが交換されてしまえばキングに対する攻撃の危険性は大きく減少する。だから布局で互角になれば満足の黒は時にはキャッスリングの権利を放棄してもクイーンを交換することがある。次の戦法はその一例である。1.d4 Nf6 2.c4 d6(古インディアン防御)3.Nc3 e5

ここで白は黒からキャッスリングの権利を奪う選択肢がある。4.dxe5 dxe5 5.Qxd8+ Kxd8+
 図15(白番)
 黒はすぐに …c6 と突いてキングの避難所を作る。そうすればキングはc7に安全に落ち着くことができ収局に備えることができる。クイーンの交換によって白の布局の優位は最小限になっていて、注意深く指せば黒は引き分けにできる。

 ほとんどの布局では白も黒もキャッスリングするのが普通である。だから読者はキャッスリングしたキングの陣形に存在するいろいろな種類の弱点を注意深く研究するのがよい。そうすれば自分のキングの陣形にそのような弱点を作ることを避ける方法を学んだり、敵陣のそのような弱点につけ込むいろいろな攻撃の仕方の作戦を検討したりできる。

 キャッスリングしたキングの安全の要はキングを保護するポーンの形である。安全かつ柔軟性のあるポーン構造はh2、g2およびf2のポーンから成る基本的な配置である(白キングがキング翼にキャッスリングしたものとする)。h2のポーンは通常はg1のキングだけでなくf3のナイトによって守られている。もしh2-b8の斜筋に沿ってh2の地点に対する攻撃が強ければ、g3と突いてこの攻撃を鈍らせることができる。もしhポーンがh2でなくh3にあれば敵はそれを目標に …g5-g4 突きによって、またはビショップかナイトをh3で切ってキング翼攻撃を加速させることができる。

 h3、g2およびf2のポーン構造に付きまとう弱点のためにh3突きは軽い気持ちで行なってはならない。h3突きの別の不利益な点はナイトの展開の節でも見られた。このポーン突きは確かに何らかの弱点を作るが必要かつ利益となることもよくある。h3と突くべきか突くべきでないかを判断できるようになるためにはチェスの他の要素の判断と同様に経験によるしかない。

 既にビショップの展開の節でフィアンケットを見てきた。キャッスリングしたキングは普通はフィアンケットビショップの背後でうまく隠されている。キングの周辺に侵入するためには敵は侵入口を見つけなければならない。そのような陣形を攻撃する通常の方法は h4-h5 と突き hxg6 でh列をこじ開けることである。そうなれば以前に述べた捌きでフィアンケットビショップを交換すればh列に沿って詰みを目指す攻撃が可能となってくる。

 ずっと先に進んだgポーンの背後でキャッスリングする(またはキャッスリングしたキングの前のgポーンをずっと突き進めて行く)のは非常に攻撃的な戦術だがはねっ返りもよく起こる。攻撃がうまくいかなければ攻撃側のキングは守りが手薄になり相手の猛烈な反撃にさらされる。

 hポーンやgポーンを突くのはしばしばキャッスリングしたキングを弱めるが、fポーン突きは通常はそれほど危険な被害をもたらさない。このポーン突きはキング翼攻撃の役に立つことがよくあり、e5突きによる中央突破の支援に役立つこともある。fポーン突きによりできる一つの弱点はg1-a7の斜筋である。

(この章終わり)

2010年04月26日 コメントは受け付けていません。

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