2017年12月の記事一覧

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2017年12月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 未分類

布局の探究(292)

「Chess Life」2002年5月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ベンコー・ギャンビット主手順(続き)

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6(再掲)

2)白がポーンを返す

5.b6

 何も欠陥がなく黒の反撃の可能性も最小限で形の良い指しやすい局面が好きな人は本譜の手に満足するだろう。黒はa列を素通しにすることができず、白はd5が橋頭保になっているので陣地が広い。黒には本筋の戦型が三つある。

2a)5…g6

カチェイシビリ対フェルガ―(ウベダ、2001年)

 黒はキング翼の展開の完了にとりかかり、ポーンは都合の良い時に取り返す。

6.Nc3 d6 7.e4 Nbd7 8.Nf3 Bg7 9.a4 a5 10.Bb5 O-O 11.O-O Nxb6 12.Re1 Ne8 13.Bf4 f6 14.Bc6!

 それまで指されていた 14.Nd2 に対しこの新手は強力だった。白は黒のクイーン翼に侵入する用意をした。

14…Rb8 15.Nb5 Nc7

 GMカチェイシビリはこの手に対して実戦の 16.Qd2 よりも 16.Bd2! Nc4 17.Bc3 Na6 18.Qe2 の方が良く白がだいぶ優勢だったとしている。詳しい解説は『チェス新報』第81巻第45局を参照して欲しい。白が68手で勝った。

2b)5…Qxb6

ロウレイロ対ニードルマン(リオデジャネイロ、2001年)

 こう単純に取り返してもよい。しかしこのクイーンは自分ではb列であまりすることがない。

6.Nc3 g6 7.e4 d6 8.a4 Qb4 9.Bd3 Bg7 10.Nge2 e6 11.O-O exd5

 黒は危険な手順に踏み込み、白は受けて立った。

12.Nb5! axb5 13.Bd2 Qxb2 14.Bc3 Qxa1 15.Qxa1 d4 16.Nxd4! cxd4 17.Bxd4

17…Ke7?

 『チェス新報』第82巻第63局で本局を解説したダ・コスタ・ジュニアは 17…Nbd7 18.Bxb5 O-O 19.Bxd7 Bxd7 20.Bxf6 Rxa4 21.Qb2 Bxf6 22.Qxf6 Rxe4 23.Qxd6 と指すことが必要だと指摘し、白がわずかに優勢としている。大量の駒交換で白の勝つ見通しは大きく減少している。それに反してキングを中央列に置いた実戦は破滅的で、白が次のように勝った。

18.e5 dxe5 19.Qa3+ Ke6 20.Bxe5!

2c)5…e6

ジョババ対トレグボフ(オフリド、2001年)

 この意欲的な手は指せる手だが、黒の大局的な弱点のために白の通常の優勢が続く。

6.Nc3 Nxd5 7.Nxd5 exd5 8.Qxd5 Nc6 9.Nf3 Rb8 10.e4 Be7 11.Bc4 O-O 12.O-O Rxb6 13.b3 d6 14.Bf4 Be6 15.Qd3 Bxc4

 以前は 15…Nb4 や 15…Bf6 が指されていた。本譜の手のあとでもa、cそれにd列でのポーンの弱さは明白である。

16.Qxc4 Bf6 17.Rad1 Nd4 18.Nd2! Bg5 19.Bxg5 Qxg5 20.Rfe1 h6 21.Qd5!

 白には相変わらずわずかだが指しやすい有利さがある。

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GMエドマー・メドニスは2002年2月13日に肺炎で亡くなり、今回が最後になりました。

布局の探究(291)

「Chess Life」2002年5月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ベンコー・ギャンビット主手順(続き)

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6 5.bxa6 Bxa6 6.Nc3 g6 7.g3 Bg7 8.Bg2 d6 9.Nf3 Nbd7 10.Rb1!?(再掲)

1b)10…O-O

マラハトコ対ラフマングロフ(アルシタ、2001年)

 この手の方が黒のルークを効率的に展開できるので良い手順のはずである。

11.O-O Qa5 12.Bd2 Rfb8!

 12…Nb6 は 13.b3! Qa3 14.Ne1 Bb7 15.Nc2 Qa6 16.e4(クルッパ対クリボシェイ、キエフ、2001年)で黒のクイーン翼の駒がごちゃごちゃしているので本譜の手の方が優っている。

13.Qc2

13…Qd8!

 クイーンがa列とb列でほかの駒の邪魔にならないように引っ込んだのはまったく当を得ている。13…Nb6?1 は劣っていて、14.b3 Qa3 15.Bc1 Qa5 16.Rd1 Ne8 17.Bb2 Nc7 18.e4 Bc8 19.h3 Bd7 20.Qc1! Qa6 21.Ra1 Qc8 22.Kh2 で白駒の配置のために黒が何かをするのが難しかった(クルッパ対マラハトコ、キエフ、2001年)。

14.Rfd1

 新手。しかし先受けの 14.b3 で急所のc4の地点を支配する方が的確だったようだ。

14…Nb6 15.e4

 これよりほかにdポーンを守る適当な手段がない。しかしこれでクイーン翼の黒駒が非常に活動的になった。

15…Nc4 16.Bc1 Qa5 17.b3 Ng4! 18.Na4 Bb5! 19.Bf1

 このビショップは黒の白枡ビショップと相殺にするために必要である。しかし白のキング翼が弱体化した。

19…Nce5! 20.Nxe5 Nxe5 21.Bxb5 Qxb5 22.Bb2 Nf3+ 23.Kg2 Bxb2 24.Kxf3

 黒のビショップに中央の斜筋を支配させるのは黒の利益だが、黒のナイトをd4の地点に来させない方が重要である。

24…Bf6 25.Kg2 Qa6!

 黒にはポーンの代償が完全にあり、いい勝負になっている。このあとは 26…Rb4 でクイーン翼での圧力が白の戦力得にものを言わせる望みを打ち砕くことになる。本局はベンコー・ギャンビットの威力の完璧な実戦例となった。

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2017年12月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

布局の探究(290)

「Chess Life」2002年5月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ベンコー・ギャンビット主手順(続き)

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6 5.bxa6 Bxa6 6.Nc3 g6 7.g3 Bg7 8.Bg2 d6 9.Nf3 Nbd7 10.Rb1!?(再掲)

1a)10…Nb6

エピシン対コピロフ(ベールター、2001年)

11.b3 O-O 12.Bb2 Ra7 13.O-O

 白は直前の3手で黒の「フィアンケット」から毒牙を抜き、この手で展開を完了した。黒はポーンの代償を明らかにしなければならない。

13…Qa8 14.Nh4 Rb8 15.Re1!

 これは重要な新手だった。白は都合の良い時に e2-e4 と突く用意ができた。それまで指されていた 15.Ba1?! Nbd7! 16.Qc2 Rab7 17.Nf3 Rb4 はツェバロ対セルメク戦(セント・ビンセント、2001年)では黒の圧力が効果的だった。

15…Bc8 16.h3

 この手でも良いが、GMウラジーミル・エピシンによればすぐに 16.e4! と突く方が強力だった。

16…g5?!

 これはベンコー・ギャンビットでは異筋の手である。ベンコー・ギャンビットの重要な長所の一つは欠陥のないこじんまりしたポーン陣形で、もっともな理由がなければ損なうべきでない。エピシンは 16…Ne8! 17.Qd2 Bxc3 18.Qxc3 f6 19.e4 Rxa2 20.Ra1 Nd7 21.f4 を指摘し、陣地の広さと双ビショップで白が少し優勢としている。

17.Nf3 Nbxd5 18.Nxg5 Nxc3 19.Bxc3 Bb7 20.Bxb7 Rbxb7

 a2の地点に圧力をかけるにはこう取り返すしかない。しかし今や黒のキング翼が根本的に弱体化したのは明白である。

21.Qd3! h6 22.Bxf6 hxg5 23.Bxg5 Rxa2 24.h4

 黒の問題は明らかである。まだギャンビットしたポーン損のままで、キング翼は隙だらけである。エピシンは力強くていねいに締めくくった。

24…Qc8 25.Qf3 Raa7 26.Rbd1!

 このルークはd3に上がれば働きが増し、bポーン、中央、それにキング翼を見張ることになる。より詳しい解説は『チェス新報』第81巻第46局のIMコピロフの解説を読んで欲しい。終局までの手順は次のとおりである。

26…Rb4 27.Rd3 Qb7 28.e4! Qd7 29.e5! Qe6 30.Bd2 Rd4 31.Rxd4 cxd4 32.exd6 Qxd6 33.h5 Ra2 34.Qd3 e5 35.b4 Qc6 36.h6! e4 37.Qxe4 Qxe4 38.Rxe4 Rxd2 39.Rg4 d3 40.Kg2 Rd1 41.Rxg7+ Kf8 42.Rg5 d2 43.h7 Rg1+ 44.Kxg1 d1=Q+ 45.Kg2 黒投了

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2017年12月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

布局の探究(289)

「Chess Life」2002年5月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ベンコー・ギャンビット主手順(続き)

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6(再掲)

1)白は欲張りだが注意深い

5.bxa6

 白はこの手でポーンが欲しいことを明かにした。重要な疑問は「黒は代わりに何を得るのか」ということである。その答えは簡単で、「a列とb列で白のクイーン翼に圧力をかけることができるようになる」である。しかし予想される指し方はおのずから分かるというものではなく、黒は大量の知識が必要である。

5…Bxa6

 この当たり前の取り返しが歴史的に見ると最もよく指されてきた。しかし最近 5…g6 が同等の地歩を占めるようになってきた。それは取り返しを急ぐ必要はないのだから「フィアンケット」を始める方が黒に取って融通性があるということである。

6.Nc3 g6 7.g3

 この本手の「フィアンケット」で白は黒に即席の反撃の可能性を与えることなくキング翼の展開を完了する準備に取り掛かる。7.e4 Bxf1 8.Kxf1 の方がかなり野心的で、諸刃の剣の状況になる。白は中央が強化されるが、黒は白枡ビショップの交換でa列での展開が促進される。「布局大成A」はこれを最も重要な戦型と考えていてA59を付与している。

7…Bg7 8.Bg2 d6

 黒の直前の3手はどの順序で指しても良い。

9.Nf3

 9.Nh3 も理にかなった手で、「フィアンケット」されたビショップの白枡対角斜筋を通したままナイトがf4に跳べるようにする。しかし白は安全で本筋の展開をするつもりなので、最善はこのナイトを通常の中央の地点に置くことであることが分かっている。

9…Nbd7 10.Rb1!?

 本譜の手は比較的新しい着想である。黒は直前の手で …Nb6-c4 でb列に圧力をかける用意をしたことを告げた。そこで白はb2の地点を過剰に守った。ほとんどの場合この手と 10.O-O は同じことになる。

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2017年12月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

布局の探究(288)

「Chess Life」2002年5月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ベンコー・ギャンビット主手順

 閉鎖布局の中で戦略上の最も重要な発見/新手はベンコー・ギャンビットである。

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5

 生みの親は要求される戦略的な深みを与えたハンガリー系米国人のGMパル・ベンコーがふさわしいと考えられる。一見何もないように見える閉鎖局面の初めで黒がポーンをまるごと犠牲にできるのは極めてまれである。それでも時の試練に耐えてきたし、これからもそうであると思われる。それと同時に、ベンコー・ギャンビットをうまく指しこなすことは大変難しいと読者に警告しておいた方が良いだろう。これは駒がすぐに直接的に動くのではなく、戦略的な機微に基礎を置いているからである。ベンコー・ギャンビットは人気があるゆえに戦型が豊富である。最も重要なのをあげると 4.Nd2、4.a4、4.Qc2、4.Nf3、それに 4.cxb5 a6 5.bxa6、5.Nc3、5.f3、5.b6、5.e3 である。そのうちもっとも本筋と思われる2戦型を考察する。

4.cxb5 a6

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2017年12月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

布局の探究(287)

「Chess Life」2002年1月号(3/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ビショップ布局(続き)

3)1.e4 e5 2.Bc4 Nf6! 3.d3 c6 4.Nf3 Be7

フョードロフ対クラムニク
ベイクアーンゼー、2001年

 この手からの作戦は現在黒の最も適切な方針とみなされている。白陣からはまだ脅威を受けていないので、黒は自身の落ち着いた展開を推し進める。黒が避けたいのは潜在的に攻撃の対象となるポーンの弱点である。(もちろん 5.Nxe5?? は 5…Qa5+ で白の負けになる。)

5.O-O d6

 これはe5の地点を守る最も手っ取り早い方法である。しかしマインカ対ミハルチシン戦(ドルトムントⅡ、1998年)のように 5…Qc7 6.Bb3 O-O 7.Re1 d6 8.c3 Nbd7 9.d4 b5 10.Nbd2 a5 11.Nf1 a4 12.Bc2 Re8 13.Ng3 Nb6 14.h3 g6 も理にかなっている。この局面は閉鎖ルイロペス定跡の主流手順によく似ていて、白が少し有利のはずである。

6.Bb3 Nbd7

 ここからしばらくの間クラムニクは戦力を注意深く捌くことに満足している。ゲリファント対ユスーポフ戦(ミュンヘン、1994年)ではもっと攻撃的な展開だった。6…O-O 7.c3 Bg4 8.Nbd2 Nbd7 9.h3 Bh5 10.Re1 Nc5 11.Bc2 Ne6 12.Nf1 Nd7! 13.Ng3 Bxf3 14.Qxf3 g6 全体的には黒はよくやっている。しかしこの閉鎖ルイロペス型の局面ではそれでもどうしたら完全に互角になるかを示さなければならない。

7.c3 Nf8 8.Re1 Ng6 9.Nbd2 O-O 10.d4

 黒はどんな攻撃を受けるか分からないキング翼を要塞化した。白は本譜の手で黒の中央に圧力をかけ始めた。盤上の局面はやはり閉鎖ルイロペスの様相を呈している。黒はいくらか展開で先行しているが、駒は白の方が活動的である。いずれは白のわずかな優勢が続くことになるはずである。

10…h6!?

 フョードロフによればこれは通常の 10…Qc7 に代わる新手である。その意図は白の Ng5 に煩わされないで …Re8 と指すことである。

11.Nf1 Re8 12.Ng3 Bf8 13.h3 Qc7 14.Be3

 白が滞りなく小駒の展開を完了したのに対し、黒はまだクイーン翼ビショップの処置を決めなければならない。普通に 14…Be6 15.Bxe6 Rxe6 と指すのは重要なf5の地点を白に明け渡す。だからクラムニクは短斜筋に目を向けた。

14…b6 15.Bc2

 ここは面白い瞬間である。白は黒の …Bb7 または …Ba6 に Nf5 と指せるようにe4の地点を過剰に守った。あとでフョードロフは 15.c4!? か 15.Qc2!? の方が有効だったように感じた。

15…Ba6?!

 クイーン翼ビショップは確かにここからの斜筋が素晴らしい。しかし「遊び駒」である。戦略的には 15…Bb7 の方が役に立つ。クラムニクは17手目にこのビショップをb7に戻した。

16.b3 Rad8 17.Qb1 Bb7! 18.a4

 白のクイーン翼ルークがa1に閉じ込められているので本譜の手は 19.a5 でa列を素通しにすることを期待している。しかし黒は中央で戦う用意をしている。フョードロフによれば白は 18.c4 で通常の有利を保持できた。

18…d5! 19.exd5 exd4 20.Bxd4 Rxe1+ 21.Nxe1 Nxd5 22.Bxg6 fxg6 23.Qxg6

 先の解説から局面は激変した。黒はポーンを犠牲にし、代償として戦力の連係に優っている。フョードロフは 23…Nf4! で黒に十分な代償があると考えている。例えば 24.Qg4 c5 25.Be3 Nd5 26.Rd1 Nxc3 27.Rxd8 Qxd8 28.Bxh6 Qd1! となる。

23…c5?! 24.Qe6+ Qf7 25.Qxf7+ Kxf7 26.Be5 Ne7 27.c4 Nc6 28.Bc3 Bc8

 クラムニクは白がポーン得にもかかわらず進展を図るのが困難な陣形を構築した。白はここで 29.Kf1 から 30.Nf3 で駒の動きを良くするよう努めるべきだった。代わりに白は当初の作戦を急いで黒に思う存分反撃された。

29.a5?! bxa5! 30.Bxa5 Rd7 31.Bc3 Rb7

 ここでの問題は明らかで、b3の地点が慢性的な弱点になっていて黒の双ビショップは重要な斜筋に利いている。いい勝負である。

32.Rb1 Be6 33.Rb2 Nd4

 33…a5 も良い手だが、黒は双ビショップの動ける余地を最大限広げる方を選択した。

34.Bxd4 cxd4 35.Nf3 Ba3 36.Ra2 Rxb3 37.Nxd4 Rd3 38.Nxe6 Kxe6 39.Ne4 a5 40.f3 Bb4 41.Kf2 引き分け

 aポーン、働きの良いビショップ・ルーク・キングの威力が白のポーン得を完全に相殺している。

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カテゴリ: 布局の探求3