2017年05月の記事一覧

布局の探究(243)

「Chess Life」1999年6月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

カパブランカの布局戦略

 チェスの古典と見なされている本の一つはJ.R.カパブランカの『チェスの基本(Chess Fundamentals)』である。布局、中盤それに收局への貴重な洞察が豊富なのでまさしくそのとおりである。1921年に初版が出版され、1934年の再版ではカパブランカの序文が新しくなった(私の持っているのは1976年版である)。

 まぎれもなく名著である。カパブランカも気に入っていた。新しい序文では「・・・『チェスの基本』は今も13年前と同じく通用する。今から100年後も通用するだろう。・・・」と書かれていた。しかしチェスがいろいろある特徴の中でなかんずく科学であることを考慮すると、そのような主張はとても真実たり得ない。実際科学的な部分はこの13年間で既に大きく進歩していた。

 カパブランカの布局段階の扱いの中で二つの側面である基本原則と具体的な戦法を見てみることにする。

基本原則

 カパブランカは五つの原則について説明している。それらを書き連ねながら現代の知識に基づいて解説する。

 1.最も重要なことは駒を迅速に展開することである。

 これはかなり限られる。なぜなら白も黒も攻撃の速さが目標の布局定跡を選ばなければならないことを仮定しているからである。実際は布局の段階の全般的な目標は中盤戦のための用意をすることである。例えば閉鎖的な布局では駒の働きとポーンの配置が速度よりもはるかに重要である。

 2.戦力得するか動きの自由さを確保することが必須でなければ、展開が完了する前にどの駒も二度以上動かすべきでない。

 前半の部分は役に立つ原則である。問題は後半で、何が「必須」かは判断するのが難しい。このあと分かるようにカパブランカはこの原則を破ることをためらわなかった。

 3.1.e4 と 1.d4 以外の初手は大したことは達成しないので理論的にはこの2手のうち一つが最善のはずである。

 これはそのとおりではない。既に1934年までにレーティ布局(1.Nf3)が高級な初手としてしっかり確立していた。拙著の『良い布局の指し方(How to Play Good Opening Moves)』で論じたように、白の完璧な初手は 1.e4、1.d4、1.c4、1.Nf3 および 1.g3 の5手である。

 4.中央の支配は何よりも重要である。

 まったくもって正しい。

 5.ビショップより先にナイトを出せ。

 単純で役に立つ原則で、当てはまることは意外なほど多い。迷ったら従うことである。

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2017年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(476)

「British Chess Magazine」2017年3月号(2/2)

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シャールジャFIDEグランプリ(続き)

ディン・リーレン – ヒカル・ナカムラ
シャールジャ・グランプリ、2017年、アラブ首長国連邦

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 Be7 5.Bf4

 后翼ギャンビットで問題を引き起こすことを試みるならこれが白にとって一番である。

 5.Bg5 h6 6.Bh4 O-O 7.e3 だと黒にはタルタコーベル戦法の 7…b6 をはじめ楽しい選択肢がある(7…Ne4 ならラスカー戦法で、クラムニクは最古の 7…Nbd7 を最近採用した)。

5…O-O 6.e3

6…c5

 ナカムラはこれまでは 6…Nbd7 と指していた。しかしたぶん 7.c5 のあとの局面がまったく気にいってなかったのだろう。だから以前の主手順の 6…c5 を研究して後ろは振り返らなかった。

7.dxc5 Bxc5 8.a3 Nc6 9.Qc2 Qa5 10.Rd1

10…Re8

 旧手順の 6…c5 の復活に結びついたのがカルポフのこの着想である。

11.Nd2 e5 12.Bg5 Nd4 13.Qb1 Bf5 14.Bd3 Bxd3!

 カルポフは 14…e4? と指したが白は 15.Bf1! と指せばほとんど勝勢だった。

15.Qxd3 Ne4

 この手は良さそうである。黒はポーンを犠牲に代償を得ることになる。

16.Ncxe4 dxe4 17.Qxe4 Qb6

18.Rb1

 18.b4 なら 18…Bf8 と引いておけばよい。18.O-O なら 18…Ne2+ 19.Kh1 Qxb2 でナイトはc3を経由して逃げる。

18…h6!

 これはナカムラの新手だった。前例は 18…f6 で、黒は問題なかった。しかしナカムラの手は問題をもっと簡単に解決する。

19.Bh4 g5 20.b4

 20.Bg3 なら 20…Rad8! で …f5 突きを狙う。白クイーンはd5でチェックできず、空きチェックがあるのでd3へ下がれない。

20…Bf8 21.Bg3 Rad8

 やはり …f5 と突く狙いがある。

22.exd4 exd4 23.Be5 Bg7

 これで黒は犠牲にしたポーンを取り戻して互角になる。

24.O-O

 24.Nf3 Bxe5 25.Nxe5 Qc7 26.O-O Rxe5

24…Rxe5 25.Qd3 Qg6 26.Rb3 g4 27.c5 b6 28.cxb6 ½ – ½

 ナカムラの研究が素晴らしかった。

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(この号終わり)

2017年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(242)

「Chess Life」1999年4月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称形布局 4ナイト試合[C49](続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 Bb4 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5 Bxc3 8.bxc3(再掲)

スミスロフ対シー・ユン(コペンハーゲン、1997年)
8…Qe7

 これは黒の断トツの手で、まずナイトで白の黒枡ビショップを追い払うための中間駅としてd8を空け、そのあとはf8のルークの好所として用いる。

9.Re1 Nd8 10.d4 Ne6 11.Bc1 c5 12.a4 Rd8

 すぐに 12…Nc7 13.Bf1 Bg4 と指してもよいが、14.h3 には本筋でない 14…Bxf3?(スパスキー対シー・ユン、コペンハーゲン、1997年)でなく 14…Bd7 と指すべきところで、白がわずかに優勢だった。

13.Bf1 Nc7 14.h3 Bd7 15.g3 b5 16.Nh4! bxa4 17.Nf5 Bxf5 18.exf5 Ncd5 19.Ra3 Qc7 20.dxe5 dxe5 21.Qe2 Rab8 22.Bg5 h6 23.Bxf6 Nxf6

 23…gxf6? は 24.Qh5 で危険すぎる。しかし本譜の手のあと白のルークは非常に強力になる。

24.Qxe5 Qxe5 25.Rxe5 Rd2 26.Rxa4 Rxc2 27.Rxc5

 ここは勝負所である。黒は 27…Rb1! 28.Kg2 Rbb2 と指してf2の地点でチェックする手を狙わなければならず(スミスロフ)、十分引き分けにできる可能性があった。実戦は白が詰み狙いの攻撃にでることができる。

27…Rbb2? 28.Rc8+ Kh7 29.Rxa7 Rxf2 30.Rxf7 h5 31.Rff8 Kh6 32.h4 Rxf5 33.Bd3 黒投了

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2017年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(475)

「British Chess Magazine」2017年3月号(1/2)

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シャールジャFIDEグランプリ

GMアレクサンダル・チョロビッチ

ヒカル・ナカムラ – アレクサンドル・グリシュク
シャールジャ・グランプリ、2017年、アラブ首長国連邦

1.Nf3 c5 2.e4

 ルイロペスのベルリン防御を避けるための工夫した手順。

2…d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6

 不滅のシチリア防御ナイドルフ戦法。今日では 1.e4 に対する黒の防御の二大支柱一つ(もう一つは言わずと知れたベルリン防御)。

6.Be3 Ng4

 これは依然として黒の有効な選択肢である。もっとも近年では 6…e5 の方がよく指されている。

7.Bg5 h6 8.Bh4 g5 9.Bg3 Bg7 10.h3

 10.Be2 と 10.Qd2 も重要な変化である。

10…Ne5

11.Nf5

 グリシュクは最近の対局で 11.h4 と指されたが 11…Nbc6 12.Nb3 g4 13.h5 Rb8 14.Be2 b5 とうまく応接し34手で勝った(M.バシエ=ラグラーブ(2804)対A.グリシュク(2737)、ドーハ、カタール、2016年)。11.Nf5 のあと白の手段が尽きてからは 11.f3 が主流手順になった。

11…Bxf5 12.exf5 Nbc6 13.Nd5 e6 14.fxe6 fxe6 15.Ne3

15…Qa5+

 この手は勝負手である。研究手順にとらわれずに迷宮に飛び込むグリシュクの勇気と自信には感服せざるをえない。変化としてはもっと穏やかな 15…O-O がある。

16.c3 Nf3+ 17.Qxf3 Bxc3+ 18.Kd1 Qa4+ 19.Nc2

 19.Kc1 は引き分けになるがその手順は長い。19…Bxb2+ 20.Kxb2 Qb4+ 21.Kc1 Nd4 22.Qh5+ Ke7 23.Bc4 Qc3+ 24.Kb1 Rhc8 25.Qxh6(25.Qd1 Rxc4 26.Nxc4 Qxc4 27.a3 Qb5+ 28.Ka2 Qc4+ 29.Kb2 Rc8 30.Ra2 Qb5+ 31.Ka1 Nb3+ 32.Kb2 Nd4+ 千日手)25…Rxc4 26.Qh7+ Kd8 27.Bxd6 Rb4+ 28.Bxb4 Qxb4+ これで千日手。

19…Bxb2 20.Rc1 Rc8 21.Bd3 Rf8 22.Qh5+

22…Ke7

 22…Kd7 と逃げる変化もある。

23.Qxh6 Bxc1 24.Re1

 この手は引き分けになるはずなので勝とうとした手とは言いにくい。しかしグリシュクが研究手順を思い出せないでいるのでどうでもいい。 24.Kxc1 なら 24…Nb4 25.Qxg5+ Rf6 26.Qg7+ Ke8 27.Qg8+ Kd7 28.Qg7+ Ke8 で引き分けになる。

24…Ne5 25.Rxe5

 25.Bxe5? はf2の地点が守られていないので良くない。25…dxe5 26.Kxc1 Qa3+ 27.Kd2 Rxf2+ 28.Re2 Qc3+ 29.Ke3 Rf5 で黒が勝つ。

25…dxe5 26.Kxc1 Qa3+

 26…Kd6 と 26…Rc5 も指されたことがありどちらも引き分けになるはずである。

27.Kd2 Rxc2+ 28.Bxc2

 興味深いことに通信戦ではここで合意の引き分けになった。彼らにとってはたやすいことで、チェスエンジンとデータベースに相談できるしエンジンが0.00を示すことがすぐに分かる。しかしグリシュクはすでに累加時間で指しており、一方ナカムラはここまで彼本来の速さで指していたのでほぼ100分(!)も多く時間が残っていた。グリシュクのブリッツでの手腕は伝説的だが、彼でさえ本局に見られるようにプレッシャーでつぶれることがある。黒の問題は白が千日手を避けてそれ以上のものを目指して指そうとすることができることにある。なにしろ白はキングがより安全だし、望めばほとんどいつでも強制的に千日手にできるので何も危険を冒さないで済む。

28…Qb4+ 29.Ke2 Qb5+ 30.Ke1 Qb4+ 31.Kf1

 これが要点で、白はキングを安全にするためにc2のビショップを犠牲にしてキング翼での進攻を開始する。

31…Qc4+ 32.Kg1 Qxc2 33.Qxg5+ Kf7 34.Qxe5

 一本道の手順がやっと終わった。そしてたとえチェスエンジンが0.00を表示しても、黒はまだその道筋を見つける必要がある。白のキング翼ポーンの進攻という単刀直入の作戦に対して時間に追われている中では容易なことではない。

34…Qd1+

 黒はポーンを取ることができた。34…Qxa2 35.Qh5+ Ke7 36.Qh7+ Rf7 37.Bd6+(37.Bh4+ は 37…Ke8 38.Qg8+ Rf8 39.Qg6+ Rf7 で千日手になる)37…Kxd6 38.Qxf7 Qb1+ 39.Kh2 Qe4! クイーンを中央に据えれば引き分けが確実なはずである。

35.Kh2 Qd5

 チェスエンジンは実戦の 36.Qc7+ を防ぐ 35…Qd7 の方が好みである。

36.Qc7+! Kg8 37.Be5 Rf7 38.Qc3

 39.Qg3+ を狙っている。

38…Kf8?!

 チェスエンジンにとってはわずかに不正確な手だが、人間にとっては大分不正確である。

 38…Rd7 の方が黒駒の連係がとれていて良かった。39.Qg3+ Kf8 40.Qg5 Qxa2! やはり白には千日手しかない。しかし黒がクイーンを中央の自キングの近くに置いたままにしたかったのは理解できる。

39.Qc8+ Ke7 40.f4

 黒は駒の連係の悪さで苦労している。f7のルークとe7のキングが邪魔し合っている。

40…Qc6 41.Qg8 Qe8?!

 41…Qd5 何もしないことがチェスエンジンのしたいことで、喜んで0.00と表示する。実戦の手の問題は黒駒の連係をさらに悪くすることである。

42.Qg3

 42.Qg5+! Kd7 43.h4 なら白が大いに優勢である。黒駒はまだぎこちなく白はgポーンとhポーンを突いていくだけである。

42…Kd8?!

 明らかに 42…Qd8 43.h4 b5 なら0.00だった。これを指摘するのはただ単に黒がコンピュータなら決して負けないのに人間ならほとんど確実に負けるということを示すためである。駒の連係の悪さと明快な作戦のないことが人間の指し方に深刻な影響を与え誤りなく指すのを不可能にさせる。

43.h4

 ポーンが進攻を開始した。

43…Rh7

 ルークは一度もキング翼の束縛から逃れることができなかった。今は白ポーンがh5に進むのを止めているが、それも長くは続かない。

44.Qg5+ Kd7 45.g4 Qc8

46.Qg6?

 勝利までもう一歩というところでナカムラは彼らしくもなくつまづいた。対局後に認めたところによると 46.h5 だと黒が千日手にできると読み違いをしていた。

 46.h5! Qc2+ 47.Kg3 Qd3+ 48.Kh4 Qf1 46.Qg6 でg5が空いて白の勝ちになる。

46…Rxh4+ 47.Kg3 Rh1!

 これでグリシュクは時間切迫でも引き分けを見つけることができる。

48.f5 Rg1+ 49.Kh2 Qc2+! 50.Kxg1 Qc5+ 51.Kg2 Qxe5 52.Qf7+ Kd6

53.Qf8+

 53.Qxe6+ Qxe6 54.fxe6 Kxe6 は引き分けのポーン收局である。

53…Kd5 54.f6 Qe4+

 白キングは周りが殺風景すぎて千日手が避けられない。

55.Kh2 Qxg4 56.Qg7 Qf4+ 57.Kh3 Qf5+ 58.Kh4 Kd6 59.Qg3+

 59.f7 は 59…Qf4+ 60.Kh5 Qf3+ で白キングが逃げきることができない。

59…Kd7 60.Qg7+ Kd6 61.Qg3+ Kd7 62.Qg7+ ½ – ½

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(この号続く)

2017年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(241)

「Chess Life」1999年4月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称形布局 4ナイト試合[C49](続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 Bb4 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5 Bxc3 8.bxc3(再掲)

ヤルタルソン対ラウシス(アイスランド、1996年)
8…Ne7

 クイーン翼ナイトは 9…Ng6 から 10…h6 で釘付けをはずすためにキング翼に向かう。白の応手はこれを妨げる。

D)9.Nh4! Ng6 10.Nxg6 fxg6 11.Bc4+ Kh8 12.f3!

 これは新構想である。白はeポーンとキング翼とを安全にしてから中央とクイーン翼で動くつもりである。もっと分かりやすい 12.f4 もいい手である。アダムズ対コルチノイ戦(マドリード、1996年)では 12…Qe8 13.fxe5 でわずかな優勢を保持した。

12…Qe7 13.Rb1 b6 14.d4 Be6 15.Qd3 h6 16.Bd2 c5?!

 この手はちょっとした不注意で、黒はb6の地点を永久に弱めた。白はすぐにこの機会に飛びついた。ヤルタルソンはキング翼をふさいで事の成り行きを見守る 16…g5 を勧めている。

17.Bxe6 Qxe6 18.a4! Rac8 19.d5! Qe8 20.Qa6 Rc7 21.a5

21…Qa4?

 この手が敗着になった。白に決定的なクイーン交換を許してしまう。21…Nd7! 22.c4 g5 23.g4! と慎重に守っておくところだった(ヤルタルソン)。

22.Qb5!

 22…Qxc2?? は 23.Rb2 で負けてしまうので黒は交換に応じなければならない。

22…Qxa5 23.Qxa5 bxa5 24.Rb5 Nd7 25.c4! a4 26.Ba5 Nb6 27.Ra1 Rb7 28.Rxa4 Rfb8 29.Bxb6 axb6

 本譜の手のあと黒は完全に動きを封じられて、白キングがb5に来るやいなや絶望の形勢になる。代わりに 29…Rxb6 ならヤルタルソンは 30.Rxa7 Rxb5 31.cxb5 Rxb5 32.Ra6 Rb2 33.Rxd6 Rxc2 34.Re6 c4 35.Rxe5 c3 36.Re8+ Kh7 37.Rc8 という確実な手順で白の勝勢になるとしている。詳しい変化は『チェス新報』第68巻第287局のヤルタルソンの解説を参照されたい。終局までの手順を以下に示す。

30.Kf2 g5 31.Ra6 Kg8 32.Ke3 Kf7 33.Kd2 Ke7 34.Kc3 Kd7 35.Kb3 Kc7 36.Ka4! Rf8 37.Rb3 g4 38.Kb5 h5 39.Rba3! h4 40.Ra8 Rf7 41.fxg4 Rf1 42.Rg8 Rb1+ 43.Ka6! Rb8 44.Rxg7+ Kd8 45.Ka7 Rc8 46.Kb7 b5 47.Rb3 黒投了

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2017年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(474)

「Chess Life」2017年3月号(1/1)

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マン島 次の一手

第4問
GMヒカル・ナカムラ
GMサビーノ・ブルネッロ

 白の手番

解答 51.Kd6 Nxd8 52.Kxd7 Ne6 53.Bb3 または 51…Ndc5 52.Bxb6! axb6 53.a7

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(この号終わり)

2017年05月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(240)

「Chess Life」1999年4月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称形布局 4ナイト試合[C49](続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 Bb4 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5(再掲)

C)7…Be6

 この手は凡手ではないが、白のc3のナイトは黒のb4のビショップより価値があることを学んだところである。

8.Ne2! Ne7 9.c3 Ba5 10.Ng3 c6 11.Ba4 Ne8 12.d4

 白は中央で少し優位に立っているのと小駒の働きに優るので、通常の布局どおりの優勢である(ドゥラス対クプチク、ニューヨーク、1913年)。

D)7…Ne7

 d5の地点を過剰に守りナイトをキング翼に近づけることにより黒は 8.Nd5 の狙いから毒気を抜いた。この手は 7…Bxc3 8.bxc3 の交換と共に指されるのがほとんどである。バッハマン対マロン戦(ストックホルム、1930年)は別個の一例である。

8.Nh4 c6 9.Bc4 Ng6 10.Nxg6 hxg6 11.f4 Bc5+ 12.Kh1 Be3 13.Qf3 Bxf4 14.Bxf4 exf4 15.Qxf4 Qe7 16.Qg3

 中盤戦の始まりで白は中央での優位、半素通しf列での展望、それに黒の二重gポーンにより典型的な布局の優勢を得ている。

E)7…Bxc3 bxc3

 現代ではc3のナイトを取る手がほかのすべての手に取って替わった。黒の「不作為」黒枡ビショップを白の危険性のあるc3のナイトと交換するのは大いに意味があることが分かっている。同時に黒はただで何かを得ているわけではないことを理解していなければならない。白は局面が開ければ双ビショップの潜在力で優勢になれるし、bポーンがc3に移って中央が少し強化されたし、半素通しb列での展望もある。だから黒は用心しなければならない。最近の大会から2局を取り上げて主要な作戦を例示する助けとしたい。

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2017年05月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(473)

「British Chess Magazine」2017年2月号(1/1)

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2017年トレードワイズ・ジブラルタル・チェス祭り

GMアレクサンダル・チョロビッチ

ヒカル・ナカムラ – ダビド・アントン・ギハロ
ジブラルタル・マスターズ、2017年2月2日

 黒陣は非常に堅固で、白が進展を図るには b4 と突くしかない。

23…Rb7

 黒は強いられてもいない時に後退を始めた。このような手の唯一の説明は恐怖心である。23…Rab8 なら b4 突きを防ぎ白をb3ポーンの守りに縛りつける。

24.Rb1 Be8

 この手は白に進攻させる。単純で直接的な最初の機会(23…Rab8)を逃したあと、ここではもっと複雑な先受けが必要だった。それは 24…Qe8! でa8のルークを守っておくことである。25.b4 axb4 26.axb4 Na6! という手順でそれが分かり、白には実戦の類似の手順中の 27.Ra3 がない。

25.b4 axb4 26.axb4 Nd7

 26…Na6 27.Ra3!

27.Nc4

 白はたった4手で着実に前進した。ここから白のやりたいことは Na5 でクイーン翼を固めたあとキング翼で f5、g4 などで前進を図ることである。

27…Nf8?!

 黒はまだ同じ調子で指し続け、事態の切迫を感じていない。27…exf4! が白のキングを少し弱め、白が f5 と突くとe5の地点を明け渡すことになるのでそれを防ぐ手段になる。黒はg列を心配したのかもしれないが、方策は十分にある。例えばコンピュータは白の手段は 28.gxf4 Nf8 29.Na5 Rba7 30.f5 しかないと言ってきかない。人間なら決して軽々しく指さない手である。その意図はf8のナイトに対する押さえ込みで、動ける枡がなくなっている。30…Qe5 31.Kh1 Kh8 32.Rg3 ナイトを出すためには黒は 32…g6 と突かなければならないが 33.fxg6 Nxg6 34.Rg1 となってナイトにはまだ圧力がかかっている(彼我のルーク同士を比べてみるだけでよい)。しかしそうではあってもこの方が黒にとっては実戦よりも良い。

28.Na5

 もう黒に …exf4 の機会を与えない意味で 28.f5 の方が正確だった。

28…Rba7

 28…exf4! と取れば 27…exf4 と取ったのと同じことになり、黒が局面の様相を変える二度目の機会だった。

29.f5

 白が押さえ込みにかかっている。

29…g6

 黒はようやく目が覚め、かく乱を図って絞殺を避けようとした。しかしすでに手遅れで、小さな疑問手を積み重ねてきた結果局面は非勢になっていた。

30.g4 h5

31.Bf3!?

 この手は黒にキング翼を閉鎖させる。しかしそれは実際は巧妙に隠されたわなだった。代わりに 31.gxh5 なら 31…g5 で、たぶんナカムラはそれを避けたかったのだろう。というのは 32.Rg3 Kh8 33.Qc1 Nh7 となると黒は当面は持ちこたえているからである。少なくともh7のナイトにはやることがある。それでも白は h4 突きとクイーン翼での作戦とを絡ませれば最終的には勝つはずである。

31…Qh7

 31…h4 32.Qf2 g5 は 33.Nc6! Bxc6 34.dxc6 で黒ナイトが永久に動けなくなるということがなければ黒が良い。実際は白が例えばビショップをd5に捌いたあとクイーン翼で進攻を始めれば黒が負ける。

32.Kh1 Qh6 33.Rc3

33…Nh7?!

 ナイトをh7に置くと白にキング翼を大きく破られる。代わりに 33…hxg4 34.Bxg4 Nh7 の方が弾力があり、35.Qf2 Ng5 36.Re3 Rb8 で黒はまだまだ戦い続けられた。

34.fxg6! Bxg6 35.gxh5 Bxh5 36.Qf2

 36.Bxh5 Qxh5 37.Rg1+ Kh8 38.Qf2 の方が黒にビショップ同士の交換を避ける機会を与えないので正確だった。しかし快速戦ではそのような細かい差異まで見通すのは困難である。

36…Bxf3+

 36…Bg6 が黒の最後のチャンスだった。もっともこれでさえ 37.Bg2 Ng5 38.Re1 Kg7 から …Rh8 の狙いに 39.Kg1! で白が大きく優勢で、a7のルークが浮くために黒はa8のルークを動かすことができず、例えば 39…Be8 には 40.h4± と突く。

37.Rxf3

 これで黒のキング翼は無防備である。ナイトとポーンが黒の両ルークをいかに麻痺させているかには驚くしかない。

37…Kh8 38.Rg1 Ra6

 白クイーンの利きからはずれた。しかし…

39.Qf1!

 それもつかの間だった。白クイーンはここからh3の地点もにらんでいる。

39…R6a7 40.Rh3 Qf4

41.Qe2

 41.Qg2! Qg5 42.Rg3 ならもっと速く勝っていた。

41…Rg8

 これは鮮やかな手筋を招いた。コンピュータによれば 41…f5 が絶対手で、42.exf5 c5 43.dxc6e.p. Qxb4 44.Nb7 という手順で白が勝つというが、人間には読めないし指せない。

42.Rxh7+! Kxh7 43.Qh5+ Qh6 44.Qxh6+ Kxh6 45.Rxg8

 あとは指さずもがなだった。

45…Ra6 46.Kg2 Rb6 47.Nc6 Ra6 48.Ne7 Ra4 49.Nf5+ Kh5 50.h4 Rxb4 51.Kh3 Rc4 52.Rh8+ Kg6 53.h5+ Kg5 54.Ng3 Rc3 55.Rg8+ 1-0

 自信のある方が勝った試合だった。これはナカムラの4度目の優勝で3連覇となった。この安定性は彼の棋風が同じ米国の超一流よりもオープン大会に向いていることの表れである。

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(この号終わり)

2017年05月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(239)

「Chess Life」1999年4月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称形布局 4ナイト試合[C49](続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5(再掲)

 4ナイト試合は1990年頃まで定跡としてほとんど忘れられたままだった。それからジョン・ナンに率いられたイギリスのGMたちの情熱と創造性のおかげで、グランドマスターの関心がよみがえり現在まで続いている。4…Nd4 は 5.Ba4 でも 5.Bc4 でもそのあとの乱戦が黒にとって容易に危険なものとなることがあるので、特効薬とはなり得ないことが分かっている。だから80年以上前のように黒の主手順はやはり次の手だと考えられている。

4…Bb4

 この手は白の手とちょうど同じように申し分のない手である。黒枡ビショップがすばやく展開して最下段が空いたのでキャッスリングが可能になり、このビショップはeポーンへの攻撃に間接的に関与している。

5.O-O O-O 6.d3

 6.Bxc6 dxc6! 7.Nxe5 に飛びつくのは何にもならない。7…Bxc3 8.dxc3 Qxd1 9.Rxd1 Nxe4 10.Bf4 Bf5 11.Nc4 Rfc8 12.Ne3 Be6 13.f3 Nf6 14.c4 Nh5 15.Be5 f6 16.Bc3 Nf4 17.Re1 Re8! で互角である(マイルズ対ユスーポフ、フローニンゲン、1992年)。

6…d6 7.Bg5

 白が次に 8.Nd5 と指せばf6のナイトが釘づけにされる。黒はこの狙いにどう対処するか決めなければならない。最悪から最善の順に5種類の黒の手を考えてみよう。

A)7…h6?

 最悪の手。黒はわざわざ1手かけて自分のキング翼を破壊させる。

8.Bxf6 gxf6

 8…Qxf6? は 9.Nd5 Qd8 10.Bxc6 bxc6 11.Nxb4 a5 12.Nxc6 Qe8 13.Nxa5 または 13.Ncxe5 で少なくとも黒の2ポーン損になる。

9.Nd5 Bc5 10.Nh4! Nd4 11.Bc4 Be6 12.c3 Nc6 13.Qf3

 黒のキング翼ががたがたで白がだいぶ優勢である。

B)7…Bg4?!

 黒は対称形を続けている。この手はたぶん見かけほど悪くはないけれども、それを信用して実際に指すGMはこれまでいない。

8.Nd5

 シュレヒター対レオンハルト戦(ハンブルク、1910年)では 8.Bxf6 gxf6 9.Nd5 Bc5 10.Qd2 で白がうまくいった。

8…Nd4 9.Nxb4 Nxb5 10.Nd5 Nd4 11.Bxf6 gxf6

 しかしここで 11…Bxf3? と対称形を続けるのは 12.Qd2! gxf6 13.Qh6 Ne2+ 14.Kh1 Bxg2+ 15.Kxg2 Nf4+ 16.Nxf4 exf4 17.Kh1! Kh8 18.Rg1 Rg8 19.Rxg8+ Qxg8 20.Rg1 で黒の負けとなる。同じ狙い筋は黒の13手目の解説にも出てくる。

12.Qd2 Nxf3+ 13.gxf3 Bxf3

 『チェス新報』第58巻第348局のダニルクの解説によると 13…Be6? は 14.Qh6 Bxd5 15.Kh1! Kh8 16.Rg1 Rg8 17.Rxg8+ Qxg8 18.Rg1 で黒が負ける。

14.Qe3

 ダニルクは 14.h3!? のあと 15.Kh2 から 16.Rg1 と指す方が良いと指摘している。

14…c6 15.Qxf3 cxd5

 ここまではダニルク対リビン戦(ロシア、1993年)で、ここで単に 16.exd5 と指しておけば白が少し優勢(ダニルク)だった。

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2017年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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