2017年01月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(459)

「British Chess Magazine」2016年9月号(1/2)

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バクー・オリンピアード

セオ・スレード

ヒカル・ナカムラ 2789
ジョン・ショー 2454

第2回戦、米国対スコットランド

 ナカムラは既に優勢だったが、相手の 20…Qd6?? のおかげで 21.Bd5! でたちまち勝ちになった。

 黒が4駒で当たりになっているビショップを 21…Bd7 と引いてe8のルークにも十分な守りを利かせれば、白はもちろん 22.Bxf7+ と指す。だから黒はe6のビショップをこれ以上守れないので投了した。GMを21手で負かすとは大したものである。

1-0


ナカムラは相手のひどいポカに乗じて短手数で2局勝った

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(この号続く)

2017年01月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(225)

「Chess Life」1998年10月号(2/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

リガ戦法は見かけより優秀(続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 exd4 7.Re1 d5

Ⅰ)8.Ne5

 白はc6のナイトに脅威を与え、e4のナイトを攻撃するためにfポーンを自由にした。だが黒にはこれぞという戦術の一発がある。

8…Bd6!

 ぴったりの受けである。8…Qf6? は 9.Nxc6 Qxf2+ 10.Kh1 Bd7 11.Nd2! bxc6 12.Nxe4 dxe4 13.Rxe4+ Kd8 14.Rxd4 Bd6 15.Bf4 c5 16.Rxd6! で黒の負けになる。

9.Nxc6

 白はチェックの千日手にしぶしぶ同意するしかない。9.Qxd4?! と取るのは 9…O-O 10.Nxc6 bxc6 11.Bxc6 Bc5 で黒が優勢になる。

9…Bxh2+! 10.Kxh2

 8.Nxd4 の場合と異なり(後述)d列がふさがったままなので 10.Kh1? は負けになる。

10…Qh4+ 11.Kg1 Qxf2+ 引き分け

Ⅱ)8.c4

 この手はe4のナイトの守りをたたくことによりそのナイトを切り崩す理にかなった着想である。『MCO(Modern Chess Openings)第12版』(1982年発行)では主手順とされていたが、ほとんど探求されていないままである。

8…dxc3e.p.

 ここからはヤネーチェク対シェフラー戦(ウィーン、1961年)の手順を追う。『ECO(Encyclopaedia of Chess Openings)』(第3版)は 8…Bb4 を改良手の候補として指摘し、9.cxd5 Bxe1 10.Qxe1 O-O 11.dxc6 Nc5 12.Qb4 という手順を示して「白が少し優勢」としている。私にはかなり形勢不明の局面に見える。

9.Nxc3 Be6 10.Nd4 Qd7 11.Nxc6 Nxc3

 11…bxc6? は 12.Nxe4 dxe4 13.Qc2 Bd5 14.Rxe4+! で白の攻撃が本当に必殺になりそうである。

12.bxc3 bxc6 13.c4

 MCO第12版はここで終わっていて「白の攻撃が強烈」としている。一方ECOのC巻(第2版)は「白に犠牲にした戦力の代償と主導権がある」としている。どちらも正しいが、13…Kd8 で究極の形勢判断はそれほど明白でない。

Ⅲ)8.Bg5

 白は黒クイーンを当たりにすることにより別の駒を先手で攻撃に繰り出した。この手はヨハン・ベルガーがリガ戦法を咎める手の追究で1909年に初めて指摘した。

8…Be7

 理にかなっているのはこの手だけである。黒は展開を進め、攻撃駒との交換は歓迎する。ほかの手はかなり劣る。

A)8…f6? は 9.Nxd4! Bc5 10.Nxc6 Bxf2+ 11.Kf1 Qd7 12.Nc3! O-O 13.Nxd5 bxc6 14.Bxc6 fxg5 15.Bxd7 となって白が大きな戦力得で決定的な形勢である(ECO C巻[第2版])。

B)8…Qd6?! は 9.c4! dxc3e.p.(9…Be6 は 10.cxd5 Bxd5 11.Nxd4 f6 12.Nxc6 bxc6 13.Nc3 O-O-O 14.Nxe4 Bxe4 15.Qg4+ f5 16.Qe2 Bd3 17.Qe3 で黒陣は滅茶苦茶である)10.Nxc3 Be6 11.Nxe4 dxe4 12.Nd4! Qd5(12…b5 なら 13.Rxe4! bxa4 14.Qxa4 Qd5 15.Re5!、12…Be7 なら 13.Bxe7 Kxe7 14.Bxc6 bxc6 15.Rxe4 でどちらもはっきり白が優勢)13.Qc2 Bd6 14.Bh4! b5 15.Nxe6 fxe6 16.Bb3 Qc5 17.Qxc5 Bxc5 18.Rac1 となって白が勝勢の收局に近い。以上の変化はどれもJ.ベルガーによる。

9.Bxe7 Kxe7

 こう取る必要があるがそんなに悪くない。c6のナイトは釘付けからはずれ、キャッスリングしないキングには適度に安全な居場所が見つかる。「自然」な 9…Qxe7?! は 10.Nxd4 O-O 11.Bxc6 bxc6 12.f3 c5 13.Nc6(13.Nb3 c4 14.Nd4 c5)13…Qd6 14.Qxd5! Nf6! 15.Qxd6 cxd6 16.Rd1! で不利な收局になる。

10.c4

 10.Bxc6 bxc6 11.Nxd4 Kf8! 12.f3 Nf6 13.Nxc6 Qd6 の局面は1921年のクラウセの分析によるとほぼ互角のいい勝負となっている。これは正しそうである。

 本譜の手で白はまた主眼のd5とe4の切り崩しを目指している。ここからはGMビクトル・コルチノイの分析手順を追う。

10…dxc3e.p. 11.Nxc3 Be6 12.Bxc6 bxc6 13.Nd4 Nxc3 14.bxc3 Qd7 15.Qg4 c5 16.Nf5+ Kd8 17.Qxg7 Re8 18.Qxh7

 コルチノイはこの局面を白が少し優勢と判断している。戦術の要点は 18…Bxf5 に 19.Rxe8+ の切り返しがあることである。

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2017年01月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(458)

「Chess」2016年9月号(1/1)

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ビルバオ・マスターズ
ビルバオでヒカル・ナカムラがついにマグヌス・カールセンから初勝利

M.カールセン – H.ナカムラ
第1回戦、シチリア防御ドラゴン戦法

1.e4 c5 2.Ne2 d6 3.Nbc3 a6 4.g3 g6 5.Bg2 Bg7 6.d4

 閉鎖シチリアからフィアンケット・ドラゴンまでカールセンは本当にほとんどどんな種類の局面でも指しこなす。

6…cxd4 7.Nxd4 Nf6 8.O-O O-O 9.b3

9…Nc6

 9…Bg4!? の方がもう少し厳しい感じがする。その意図は …Qc8 から …Bh3 で、10.f3 Bd7 11.Bb2 Nc6 となれば白は有利なようにc6での陣形を変えることができない。

10.Nxc6!

 普通はこのような交換は良くないとされる。しかしここでは黒が …a6 に1手かけていて、白には Bb2、Na4 そして c4 で締めつける単純で効果的な作戦がある。

10…bxc6 11.Bb2 Qa5 12.Na4 Bg4 13.Qe1!

 これに対して 13…Qxe1 なら 14.Raxe1 Nd7(e4-e5 突きが当たりにならないようにする)15.f4 Bxb2 16.Nxb2 f6 17.c4 で白が優勢になる。しかしナカムラはすぐに次の果敢な手を悔やむことになる。

13…Qh5?! 14.f3 Bh3 15.g4!? Qh6 16.Rd1 g5

 愚形になるが黒はキング翼で動く余地がなくなりかけていた。

17.Bc1 Bxg2 18.Kxg2 Qg6

19.h4?!

 カールセンにしては珍しく頭にかっと血がのぼった。彼は大会の出だしは必ずしも良くない。19.c4 なら本筋だったし、19.Nb6 から Nc4 なら局面を支配している。

19…gxh4! 20.Qxh4 d5!

 ナカムラは好機をとらえた。黒はこれで持ち直したが、カールセンはまだ現実に気づいていなかったようである。

21.g5? dxe4! 22.f4 e6!

 これで簡単に受かっている。白は世界チャンピオンかもしれないが、指し過ぎでポーン損になる。

23.c4 Rfd8 24.Rde1 Ne8 25.Nc5 Nd6 26.Qf2

 カールセンはまだ盤上の一部を抑えているが、ナカムラはゆっくりと白の切り札をそいでいくことに満足する。

26…f5 27.Bb2 Nf7 28.Bxg7 Kxg7 29.Qg3 Rd6 30.Rd1 Rad8 31.Rxd6 Rxd6 32.Qc3+ Kg8 33.Rf2 Qh5!

 白のナイトはc5の好所に居座り続けているが、キングの守りからは離れている。

34.Qh3 Qd1 35.Qe3 e5!

 必殺の反撃第二波の始まり。

36.Qg3 Rg6 37.Kh2 exf4 38.Qxf4 Qh5+ 39.Kg1 Qd1+ 40.Kh2 Qh5+ 41.Kg1 Nxg5 42.Qb8+ Kg7 43.Qe5+ Kh6 44.Qf4 Qd1+ 45.Kh2 Qd4 46.b4 Kg7 47.Qc7+ Kh8 48.Qc8+ Rg8 49.Qxf5 Nf3+ 50.Kh3 Qd6 0-1


ナカムラは黒でカールセンに勝ったあと何も危険を冒さないようになった。

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(この号終わり)

2017年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(224)

「Chess Life」1998年10月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

リガ戦法は見かけより優秀

 以前の本稿である局面をより深く理解することがどのように白にとっても黒にとっても布局戦法の復活につながってきたかを話題にした。今回は戦術と洗練された戦略の機会を与えてくれる戦法を取り上げる。この戦法は現代のチェスの舞台ではほぼ完全に忘れ去られている。

 私の考えではこの戦法は「見かけより優秀」で、言い換えれば定跡での評判より優秀である。以下の事実は人気のなさを示している。『チェス新報C巻』の初版(1974年)では2行と8脚注が割り当てられていた。第2版(1981年)ではまだ同じ2行と8脚注だった。それが第3版(1997年)ではたった1行だけになった。

 これ以上気をもたせないように言ってしまうと、それはルイロペスのリガ戦法(C80)である。この名前は1906~1907年(資料によっては1907年だったり1908~1909年だったりする)に行われたベルリン対リガの通信戦からきている。通常の手順は次のとおりである。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 exd4 7.Re1 d5

 この局面は黒にとってこの上なく危険そうに見え、実際そのとおりである。黒は展開が遅れ、キングが元の位置で動かないままで、両方のナイトとも釘付けにされている。(実際同時指導対局で何回かこのような局面から簡単に勝ったことがある。)しかしリガの選手たちは黒の創造的な戦術の可能性を発見し、そのことでこの戦法が(定跡で)生き延びることになった。

 白の順当な手はⅠ)8.Ne5、Ⅱ)8.c4、Ⅲ)8.Bg5、Ⅳ)8.Nxd4 の4とおりある。最後の2手がより重要で、それらに重点をおき、残りの2手は簡単に手順を示すだけにする。

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2017年01月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(457)

「Chess Life」2016年8月号(1/1)

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お楽しみチェス
究極のブリッツ決戦大会 次の一手

第2問
GMウェズリー・ソー
GMヒカル・ナカムラ

 黒の手番

第4問
GMファビアノ・カルアナ
GMヒカル・ナカムラ

 黒の手番

第5問
GMファビアノ・カルアナ
GMヒカル・ナカムラ

 白の手番

解答

第2問 39…Bd4! のあと 40…a2 で黒にクイーンができる(すぐに 39…a2?? は 40.Be5)。

第4問 60…h5?? は 61.Kc5! から 62.a5! で駄目である。実戦は 60…Ke5! 61.Bh1(61.Bxh7 なら 61…g3!)61…Kd6! 62.a5 Kc7! 63.Kc5 g3 で黒が勝った。

第5問 白は 34.Nxg5 Qxd3 35.Nxd3 で勝った。しかし 34.Nh4! Qxd3 35.Ng6+! の方がはるかに速い(35…Kh7 なら 36.Nxf8+、35…Kg8 なら 36.Nxe7+)。

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(この号終わり)

2017年01月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(223)

「Chess Life」1998年9月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ドラゴンの毒牙を抜く(続き)

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 O-O 8.Qd2 Nc6
Ⅱ.9.Bc4 Bd7 10.O-O-O

B.10…Qa5 [B79]
ナン対ウォード(ヘイスティングズ、1997~98年)

11.h4 Rfc8 12.Bb3 Ne5

 『チェス新報 』の初版が出版された1975年でも黒はこう指すのが良いと考えられていた。しかし一番の否定面はc列での黒の反撃開始が1手遅いということである。二番目は黒のキング翼ルークがキング翼からいなくなっているということである。

13.h5! Nxh5 14.Nd5!

 黒にとって意外で不快な事態の変転である。クイーン無し中盤戦を強いられ、白にだけ攻撃の可能性があり、白は好きな時に犠牲にしたポーンを取り返すことができる。

 白のもっと野心的な作戦は黒にとって楽である。つまり 14.Bh6? Bxh6(14…Nd3+! も良い手である)15.Qxh6 Rxc3! 16.bxc3 Nf6! は黒が好条件で主眼の …Rxc3 の交換損をやってのける(既に黒が少し優勢)。代わりに 14.g4 Nf6 15.Bh6 は 15…Rxc3! 16.bxc3 Bxh6 17.Rxh6 Rc8 でほぼ互角だが、黒の選手が望んでやまないたぐいの動的な局面である。

14…Qxd2+ 15.Rxd2 Kf8 16.g4 Nf6 17.Rdh2!

 白はキング翼での圧力を強め、これからの難儀を最小限にする最良の方策について黒を五里霧中にさせた。

17…Nxd5 18.Bxd5 Nc6

 18…Rc7 に対してナンは 19.Rxh7 Rac8 20.c3 を示している。白の攻撃は危険を「伴わない」し、戦力も互角である。本譜の手は駒交換によって白の攻撃力をそぐ理にかなった目的だが、黒の攻撃の可能性を完全に殺す欠点もある。

19.Nxc6 bxc6 20.Bc4 h6

 この手は黒枡ビショップ同士の交換を実現させるが、局面を白ルークのためにさらに開放することになる。しかし 20…Be6 21.Bxe6 fxe6 では 22.Bh6 で白の優勢は変わらない(ナン)。

21.Bxh6 Bxh6+ 22.Rxh6 e6

 22…e5 は 23.Rh7 Be8 24.g5 Rd8 25.Rh8+ Ke7 26.R1h7 で良くない。そして 26…d5?! と突くと 27.exd5 cxd5 28.Rxe8+! Rxe8(28…Kxe8 でも 29.Bxd5!)29.Bxd5 で白がはっきり優勢になる(ナン)。

23.f4! Ke7 24.e5

 24.f5 も良い手である。本譜の手で白は攻撃を継続する前にさらに締めつけようとしている。

24…dxe5?!

 黒は 24…d5 で局面を閉鎖的に保った方がもっと抵抗の見込みがあったと思う。

25.fxe5 a5?!

 この手と次の手を指している余裕はない。ナンは守勢の防御の 25…Rg8 26.Rh7 Be8 27.Rf1 Rb8 の方が黒が持ちこたえる可能性があったと指摘している。しかし 28.b3 から白キングが出てくるので黒にとって嫌な局面である。

26.Rh7 a4?! 27.Rf1 Be8 28.Rf6! Ra5

 これではなすところなく負ける。しかし意図していた 28…Kd8 と逃げる手は 29.Bxe6! fxe6 30.Rxe6 Rcb8 31.Rd6+ Kc8 32.Re7 でひどいことになる。

29.Rxe6+ Kd8 30.Rd6+ Ke7 31.Re6+ Kd8 32.Rf6! Rxe5 33.Bxf7 Ke7

 33…Rc7 には最も単純な 34.Bxg6 で良い。

34.g5! Rxg5 35.Re6+ Kf8 36.Bxe8 黒投了

 最後に以下のコメントを付け加えたい。GMジョン・ナンはここ20年間で最も偉大な攻撃的選手の一人である。彼は複雑さを避けることもなければ捨て駒を避けることもしない。それでも最大の得点をあげる重要なやり方は、何の危険もなく危険な攻撃ができるならばどうして紛糾させるのか、ということである。

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2017年01月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(456)

「Chess」2016年8月号(4/4)

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2016年グランドチェスツアー第1・2戦(続き)

H.ナカムラ – M.カールセン
ルーベン大会、快速戦、2016年
ラゴージン防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 Bb4 5.Qa4+ Nc6 6.e3 O-O 7.Qc2 Re8 8.Bd2

8…e5

 黒の前手の意志をついだと思われる手だが、先回りして 8…Bf8 と受けた方が良かったかもしれない。

9.dxe5 Nxe5 10.cxd5 Nxf3+ 11.gxf3

 ここで黒が 11…Bxc3 と取れば 12.Bxc3 Qxd5 13.Rg1!? Qxf3 14.Rg3 Qc6 15.O-O-O で白がポーンの代償に主導権を握る。しかしカールセンの指した手よりははるかに良い。カールセンの指したポカが分かるかな?

11…Nxd5?? 12.Nxd5 Qxd5

 これではb4のビショップをただ取られるが、12…Bxd2+ でも 13.Qxd2 で白の駒得である。

13.Bxb4 Qxf3 14.Rg1 Bf5 15.Qe2 Qe4 16.Bc3 Bg6 17.Qc4 1-0

(クリックすると全体が表示されます)


チェスがルーペンの15世紀の市庁舎のような立派な舞台でもっと行えたらいいのだが。ここはカールセンでさえ当初その荘厳さに圧倒されているようだった。

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(この号終わり)

2017年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス7

布局の探究(222)

「Chess Life」1998年9月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ドラゴンの毒牙を抜く(続き)

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 O-O 8.Qd2 Nc6
Ⅱ.9.Bc4

 白は 9.O-O-O の戦型で 9…d5!? のために多大の困難を抱えていたので、本譜の手が 9…d5 を防ぎf7の地点をにらむ「一石二鳥」の手として1956年に登場した。黒は白枡ビショップを展開してからc列での反撃のためにルークをc8に回すのが良い。c4のビショップが浮いているので黒は貴重な先手がとれる。

9…Bd7 10.O-O-O

A.10…Rc8 [B78]
アーナンド対カスパロフ(1995年GMA(グランドマスター協会)世界選手権戦第11局)

11.Bb3 Ne5 12.h4 h5

 ドラゴン通は1手をかけキング翼を弱めてでも白のhポーン突きを防がなければならないと断定してきた。代わりに 12…Nc4 は 13.Bxc4 Rxc4 14.h5! Nxh5 15.g4 となって攻撃の可能性があるのは白の方だけで、典型的なドラゴン選手にとっては絶対面白くない状況である。

13.Kb1!?

 カスパロフが公式戦でドラゴンを採用したのはこの試合が初めてだったので、アーナンドは当然のことながらとてつもなく複雑な戦型の 13.Bg5 Rc5 に進むのを警戒した。

 いずれにしても私の考えでは「気持ちよく」攻撃する局面にしたい者にとって本譜の手と15手目に関連した構想は大いに有効である。黒は1手損をし自分のキング翼を 12…h5 で恒久的に弱めた。一方白はキングを安全にする余裕が少しあったし攻撃も続けている。

13…Nc4 14.Bxc4 Rxc4 15.Nde2!

 この退却には目的がいくつもある。白は黒からの早い …Rxc3 の交換損を防ぎ、16.Bh6 で黒枡ビショップ同士の交換を狙っている(すぐの 15.Bh6? には 15…Rxd4! があるので駄目である)。

15…b5 16.Bh6 Qa5 17.Bxg7 Kxg7 18.Nf4

 過激な 18.g4!? は 18…hxg4 19.h5 gxf3 20.hxg6 fxg6 で形勢不明である。本譜の手は少し危険があっても主導権を発揮するという白のこれまでの指し方の精神により合致している。

18…Rfc8 19.Ncd5! Qxd2

 カスパロフはここで引き分けを提案した。アーナンドは4分考えて受諾しなかった。カスパロフは勝てそうにはとても思えずこれからの收局にいくらか不安を感じていたと言って間違いない。実際そのとおりである。e4のポーンのおかげで白は中央が広く、e7のポーンにはいくらか圧力がかかっていて、白にはあとでクイーン翼の多数派ポーンを発展させる見通しがある。

 あとでカスパロフは次のような鋭い変化を指摘した。19…b4!? 20.Nxe7 Rxc2 21.Qxd6 b3! 22.axb3 Rxb2+ 23.Kxb2 Qc3+ 24.Ka2 Rc5 25.Qxc5 Qxc5 26.Ned5 そしてこの局面を「形勢不明」と判断した。しかし実戦で彼がこの危険を冒したくなかったのは注目に値する。

20.Rxd2 Nxd5 21.Nxd5 Kf8 22.Re1 Rb8

 黒は反撃を探し続けて何も見つけられないでいる。

23.b3 Rc5 24.Nf4 Rbc8 25.Kb2 a5 26.a3 Kg7?!

 黒キングは中央に近い所にいるべきだった。26…Ke8 なら筋が通っている。もっとも 27.Re3 に黒は b3-b4 の可能性に用心しなければならず、何も見落としをしないよう注意しなければならない。

27.Nd5 Be6?

 カスパロフは反撃のきかない守勢の局面が嫌いである。これが異筋の本譜の手に打って出た説明になる。黒は控え目で注意深い 27…Kf8 と指す必要があった。

28.b4?

 ここからアーナンドの自滅が始まった。明らかに 28.Nxe7 が強手で、カスパロフの読み筋の 28…Re8 29.Nd5 Bxd5 30.b4 axb4 31.axb4 Rc4 32.Rxd5 Rxb4+ には 33.Kc3!! Rc4+ 34.Kb3 Rec8 35.Re2 Rc3+ 36.Kb2 で 37.Rxb5 または 37.Rxd6 で重要なポーンが取れる。

28…axb4 29.axb4? Rc4 30.Nb6?? Rxb4+ 31.Ka3 Rxc2!! 白投了

 32.Rxc2 Rb3+ 33.Ka2 Re3+ で黒がルークを取り返し完全に2ポーン得になる。

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2017年01月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3