2016年11月の記事一覧

布局の探究(217)

「Chess Life」1998年7月号(4/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ホッジソン攻撃 1.d4 d5 2.Bg5(続き)

 3)2…g6 GMイゴール・ミラディノビッチ対GMスピリドン・スケンブリス(アノ・リオシア、1997年)

 この手は正当な作戦に見える。白が黒の黒枡ビショップの正常な展開を邪魔しているので、黒はそのビショップをフィアンケットする。しかし本局は私がこれまで見たことのある唯一の重要な試合で、確かな評価は不可能である。ここから至ることのできる既知の戦型は黒のフィアンケットに対するトーレ攻撃で、1.d4 Nf6 2.Nf3 g6 3.Bg5 Bg7 4.Nbd2 d5 5.e3 となる。しかし本局はまったく違った方向へ進む。

3.e3 Bg7 4.c3

 代わりに 4.Nf3 ならトーレの局面になるだろう。積極的な 4.c4 には黒は 4…c5 と反撃するとスケンブリスが指摘している。

4…Nd7 5.Bd3 Ngf6 6.Nd2 c5 7.f4?!

 本譜の手は積極的すぎて展開で手損をし中央の白枡を弱めているとのスケンブリスの説に同感である。7.Ngf3 なら通常の手である。

7…Qb6! 8.Rb1 Qe6! 9.Qf3 cxd4 10.cxd4 h6 11.f5

 この手で局面がかなり急迫した。11.Bxf6 Nxf6 12.Bb5+ なら普通である。

11…gxf5 12.Bxf5 Qa6 13.Bh4 Nb6 14.Ne2 Bxf5 15.Qxf5 Rc8 16.Nc3 O-O

 局面は混戦模様である。実戦でミラディノビッチは 17.Bxf6 と指したが、あまりうまくいかなかった。代わりにスケンブリスは 17.Rf1!? や 17.Qf1!? の方が優るかもしれないと指摘している。この局面が再び出現する可能性はほとんどないので、ここで止めておく。この熱戦は60手で引き分けに終わった。『チェス新報』第68巻第327局でスケンブリスが詳細に解説している。

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2016年11月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求3

「ヒカルのチェス」(450)

「Chess Life」2016年6月号(2/3)

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世界選手権挑戦者決定大会(続き)

GMアレハンドロ・ラミレス

ナカムラの悲劇
GMレボン・アロニアン(FIDE2786、アルメニア)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2790、米国)
FIDE挑戦者決定大会第6回戦、モスクワ、2016年3月17日

 74.Rd7

 黒は1ポーン損だがかつてある達人はルーク收局はすべて引き分けであると喝破した。マキシム・バシエ=ラグラーブが「chess.com」で徹底した詳細な分析をとおして証明したようにこの局面も例外でない。その詳細で読者をうんざりさせることはしないで何が起こったかだけを書く。ナカムラはルークを動かせば受かっていた。e2でもa5でも良さそうで、たぶんa6でも大丈夫だろう。キングを動かすのは致命傷になる。時間に追われたナカムラは明らかに動かすつもりでキングをつまんだ。「ジャドゥーブ(直します)」と言おうとしたが、アロニアンに審判を呼ばれてしまった。審判はナカムラにキングを動かさせた。そして絶望的な局面になった。

74…Kf8 75.Kf6 Ra6+ 76.Rd6 Ra8 77.h5 Kg8 78.f5 Rb8 79.Rd7 Rb6+

80.Ke7

 ここは 80.e6 fxe6 81.Rd8+ Kh7 82.fxe6 でも構わない。

80…Rb5 81.Rd8+ Kh7 82.Kf6 Rb6+ 83.Rd6

 83.Kxf7 Rf6+! 84.Ke7! Rxf5 でも白の勝ちだがそんなことをする必要はない。

83…Rb7 黒投了

 ナカムラにとっては悲劇と言うしかない。大会前半でナカムラの精神力はなえた。

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(この号続く)

2016年11月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(216)

「Chess Life」1998年7月号(3/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ホッジソン攻撃 1.d4 d5 2.Bg5(続き)

 2)2…c5 GMジュリアン・ホッジソン対GMイワン・ソコロフ(フローニンゲン、1996年)

 黒のこの手も威勢がいい。もっとも少なくともキングからは遠い所でやっている。それでも黒がこんなことをやる余裕があるのかは疑問に思う。

3.dxc5! f6 4.Bh4 e5 5.e4! Be6

 これがホッジソン対ファン・ベリー戦(ホルゲンB組、1995年)の 5…dxe4 を改良しようとしたソコロフの手だった。その試合は 6.Qxd8+ Kxd8 7.Nc3 Bxc5 8.O-O-O+ Nd7 9.Nxe4 Be7 10.f4! exf4 11.Nf3 Kc7 12.Nc3! Nb6 13.a4 Bb4 14.a5! Bxa5 15.Nb5+ Kb8 16.Rd4! と進んで白が展開で大差をつけ勝勢になった。『チェス新報』第65巻第350局のホッジソンの解説をぜひ読んで欲しい(79手で白の勝ち)。

6.exd5 Qxd5 7.Qxd5 Bxd5 8.Nc3 Be6 9.Nb5!

 白は駒の働きに優り、黒の陣形上の弱点と相まって、クイーンが交換されたことにより明らかな優勢が保証されている。

9…Na6 10.f4!

 白のこの手は力強い。10…exf4 なら 11.Ne2! で白の両方のナイトが重要なd4の地点に行ける。それほど厳しくない者なら 10.Nd6+ で満足するだろう。

10…Bxc5 11.fxe5 fxe5 12.O-O-O Nf6 13.Nf3 O-O 14.Nxe5 Ne4 15.Nd4! Bxa2 16.Bxa6 bxa6 17.Rhe1!

 白はポーンの形が良く(cポーンはパスポーン!)、5個の駒は黒の散らばった駒と弱点につけ込むようによく協調している。読者は『チェス新報』第68巻第325局のホッジソンの解説を読んでみて欲しい。白は次のように勝ちを決めた。

17…Nf6 18.Bxf6! Rxf6 19.Nd7 Bxd4 20.Rxd4 Rc6 21.Ne5 Rc5 22.b4 Rc7 23.Kb2 Be6 24.c4! Rf8 25.Kc3 Bc8 26.Red1! Re7 27.Nc6 Rc7 28.Na5! Rf2 29.R1d2 Rf1 30.c5 h6 31.c6 Kf7 32.Kb2 Ke7 33.Re2+ Kf7 34.Nc4! Bf5 35.Ne3 Re7 36.Rdd2! Rb1+ 37.Ka2 Bg6 38.Rd7! Rxd7 39.cxd7 黒投了

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2016年11月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(449)

「Chess Life」2016年6月号(1/3)

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世界選手権挑戦者決定大会

GMアレハンドロ・ラミレス

ナカムラの見損じ?
GMセルゲイ・カリャーキン(FIDE2760、ロシア)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2790、米国)
FIDE挑戦者決定大会第2回戦、モスクワ、2016年3月12日

 29.h4

 局面は黒の非勢である。白はd4でのせき止めがうまくいっていて、d5にもいくらか圧力をかけている。黒がd4の地点で局面を単純化すれば、b7に働きの悪いビショップが残される。そして白がナイトをc5に据えることにでもなれば、白に大局上の大きな優位を与えずに黒がそのナイトを取り除くのは不可能になる。例えば 29…Nxd4 30.Bxd4 Bxd4 31.exd4 Qf6 32.Qb2 h6 33.Nc5 となれば、黒陣は私がこれまで出会った中で一番かっこいいというものではないが、持ちこたえる可能性はある。しかしナカムラの選んだ手は…

29…Nxg3??

 この手は即負けになる。ナカムラはカリャーキンがこの手を見逃したと思ったのだろうか。ナカムラが見損じたのだろうか。真相はまったく闇の中である。

30.fxg3 Nxd4 31.Bxd4 Bxd4 32.exd4 Qe3+

 黒がこの一発に期待していたのは明らかだった。キングとナイトの両当たりになっていて、白がナイトをf2に引けばc1のルークが落ちる。しかし事はそれほど簡単でない。

33.Qf2! Qxd3 34.Rc7

 突然終わってしまった。手順の終わりで両当たりをかけているのは白の方である。そしてただで駒得になる。勝負がついた。

34…f5 35.Rxb7 h6 36.Bxd5+ Kh7 37.Bg2 Re2 38.Bf1 黒投了

(クリックすると全体が表示されます)

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(この号続く)

2016年11月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(215)

「Chess Life」1998年7月号(2/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ホッジソン攻撃 1.d4 d5 2.Bg5(続き)

 1)2…f6 GMドラガン・コシッチ対GMムラーデン・パラツ(アンツィオ、1994年)

 このビショップを追い払う欠点のない方法があるので、キング翼を弱めg8のナイトから自然なf6の地点を取り上げることはまったく必要ない。私はこの手を信用していない。

3.Bh4

 このビショップをh4-d8の斜筋に置いておくのは一貫性のある指し方だと思う。ホッジソン対ラリッチ戦(ガーンジー、1994年)では白は 3.Bf4 と指した。そして 3…Nc6 4.Nf3 Bf5 5.e3 Qd7?! 6.a3 g5 7.Bg3 h5 8.h3 e6 9.c4 Nge7 10.Nc3 Bg6 11.Bh2! Bh7 と進んだとき、白は手損の 12.Nb5?! の代わりに 12.Rc1 と指していたら明白な優勢を保持していただろう(GMボグダン・ラリッチ)。

3…Nh6 4.e3 c5

 黒はポーンを手当たり次第に突けると思っている。3手目と関連した継続手は 4…Nf5 である。もっとも 5.Bd3! Nxh4 6.Qh5+ g6 7.Qxh4 となるとキング翼の弱点の代償がどこにあるのか私には分からない。

5.dxc5 e5?!

 どうして普通に 5…e6 と突いてdポーンを安全にしないのだろうか。

6.Nc3 Be6 7.Bb5+ Kf7?!

 普通の 7…Nc6 でも 8.Qd3 から 9.O-O-O または 8.Nf3 Nf5 9.Nxe5!?(コシッチ)で白の主導権が強力になる。

8.Nf3 Be7 9.Ba4! Qa5?

 白は 10.Bb3 でdポーンを取る手を狙っていた。黒は 10.Bb3 に 10…Rd8 でクイーン翼ナイトを釘付けにすることにより対処できると期待していた。しかし入り乱れた局面ではしばしば戦術に最終決定権がある。黒は 9…Nc6 と指す必要があったが、10.Bb3 でポーン損の見返りがないままである。

10.Nxe5+! fxe5 11.Qh5+ g6

 11…Kf8 は 12.Qe8# で詰みになる。

12.Qxh6 Bxh4 13.Qxh4 Qxc5 14.O-O-O Nc6 15.Nxd5! Bxd5 16.Rxd5 黒投了

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「ヒカルのチェス」(448)

「Chess」2016年6月号(5/5)

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戦略の一口講座 双ビショップ

GMダニー・ゴーマリー

M.カールセン – H.ナカムラ
ロンドン・チェスクラシック、2015年

24…Nc3

 ナイトはここでは根なし草で簡単に追い払われる。黒は自陣に重大な弱点がないけれども、じっくり圧力を強めるという白の作戦に積極的に対抗していく作戦がない。

 24…Rfe8!? と指すことはできる。その意図は …Nc5 のあと …Nd4 から …b6 で黒枡「封鎖」のようなものをこしらえることだろう。しかし問題はひどく遅くて、双ビショップの機動性のためにそんなぜいたくな手を指せないことが多いことである。25.Be3! が典型的な応手で、c6のナイトを取ってa7のポーンを取るのが狙いで(25.Rxd8 Rxd8 26.Rb1 Rd7 27.Be3 も白がわずかに優勢)、25…Nc3 26.Rxd8 Rxd8 27.a3 で実戦とほとんど同じく白がわずかな有利を維持している。

 注意すべきは 24…Nc5? で、25.Bd6 のためにポカになる。

25.Rd2! Rxd2 26.Bxd2 Ne2+

 双ビショップの強さと支配の広さの好例は、26…Nxa2?? 27.Bxc6! bxc6 28.Ra1 でa2のナイトが捕まる手順で確認できる。

27.Kh2 Rd8 28.Be3 Nc3 29.a3 Rd3 30.Rc1 Nd1 31.Be4! Rd7

32.Bc5!

 なんとしても双ビショップは維持しなければならない。32.Bxc6 bxc6 33.Bxa7 Rxa7 34.Rxd1 Rxa3 は互角にしかならない。

32…Nb2 33.Rc2 Na4 34.Be3 Nb6 35.c5 Nd5 36.Rd2 Nf6 37.Rxd7 Nxd7

 これで純粋な2ビショップ対2ナイトの局面になった。局面が開放的であることを考えれば明らかに白の方が有利である。しかしこのような局面では少しずつゆっくりと圧力を強めていく忍耐力と能力とが要求される。カールセンはそのような資質を豊富に持っている。

38.Kg3 Kf8 39.f4 Nf6 40.Bf3 Ke7 41.f5!

 この手には目的が二つある。一つは黒の …Ke6 と指す可能性を防ぐことで、そのあと …Nd5 とやってくれば白にとって厄介なことになるかもしれない。そしてもう一つはg7ポーンを「凍結」することである。もっともこのポーンはずっと後で標的になる。

41…gxf5 42.gxf5 Kd7 43.Kf4 Ne8 44.Kg5

44…Ke7

 すでに防御は極度に難しくなっていて、どの手も精密機械のように予測通りでやる気満々のカールセンと対する心理的圧迫は神経をすり減らす。

 代わりに 44…f6+ なら 45.Kf4 Nc7 46.a4 で、白が敵陣突破できるかは明白でないけれどもカールセンは弱点を探していろいろ策をめぐらしただろう。

45.Bf4 a6 46.h4 Kf8 47.Bg3 Nf6 48.Bd6+ Ke8 49.Kf4 Nd7 50.Bg2 Kd8 51.Kg5 Ke8 52.h5 Nf6 53.h6! Nh7+ 54.Kh5 Nf6+ 55.Kg5 Nh7+ 56.Kh4! gxh6 57.Kh5 Nf6+ 58.Kxh6 Ng4+ 59.Kg7 Nd4 60.Be4 Nf2 61.Bb1 Ng4 62.Bf4

62…f6?

 62…Ne2 の方が見込みがあった。もっともここでも互角への「明快な」手段はない。人間選手がこのような局面を守るのは非常に難しい。防御の観点から目指すべきものがないということが分かっているので抵抗する力が必然的に萎えるからである。これに対し攻撃側の選手はずっと探索し続けることができる。62…Ne2 なら

 a)63.Bd2 Ng3! 64.Bc2 Nh5+ 65.Kh8!(キングが隅に行くのはおかしく見えるが、圧力は強まり続ける)65…Ngf6 66.Ba4+ Nd7 67.c6 bxc6 68.Bxc6 白は新たに黒のaポーンという標的を得た。その一方でこの変化では戦力がさらに減っていて、理論的には黒の引き分けの可能性が増すはずである。一つの可能性は2ビショップ対1ナイトの收局で、理論的には勝ちだが実際に勝つのは不可能に近い。

 b)63.Bc7 Nc3 64.Bc2 Ne3 65.Bd3 Ncd5 66.Be5 やはり黒は当面持ちこたえているが、盤上の防御は極度に難しいままである。

63.Be4!

 これで黒は支えきれない。

63…Nf2 64.Bb1 Ng4 65.Be4 Nf2 66.Bxb7! Nd3 67.Kxf6 Nxf4 68.Ke5 Nfe2 69.f6 a5 70.a4 Kf7 71.Bd5+ Kf8 72.Ke4 Nc2 73.c6 Nc3+ 74.Ke5 Nxa4 75.Bb3 Nb6 76.Bxc2 a4 77.c7 Kf7 78.Bxa4 1-0

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(この号終わり)

2016年11月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(214)

「Chess Life」1998年7月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ホッジソン攻撃 1.d4 d5 2.Bg5

 チェスの世界は科学と創造の時代に入っている。布局では新しい道が探検され、以前から知られていた道は疑問に付されたり拡張されたりしている。熱心な探検者の中には強くて創造的で恐れを知らぬイギリスのグランドマスターのジュリアン・ホッジソンがいる。彼は1980年代後半に白が黒枡ビショップを早々とg5に展開するのを大前提とする得意戦法を作り上げ始めた。具体的には 1.d4 d5 2.Bg5 と 1.d4 Nf6 2.Bg5 がその布局である。

 1989/90年のスタバンゲル(ノルウェー)国際大会で彼と黒で対戦することになった時、初手にどう応じるか決めるために自分の研究ノートに当たってみた。1.d4 d5 2.Bg5 について得られた情報はほんのわずかで、自信が持てなかったので 1…Nf6 と指すことにした。

 今ではかなりの信頼できるデータがあり、白と黒の着想を簡潔に紹介することは読者の興味を引くはずだと判断した。探検の確固とした主導者は戦法にその名前を付けられてしかるべきである。それがこのホッジソン攻撃という名前である。布局コードはD00である。

 出発点となる局面は 1.d4 d5 2.Bg5 から始まる。

 歴史的に白の2手目の出撃が無害で素人っぽいとみなされてきたことはほとんど驚くにあたらない。その理由は次のとおりである。

1.白は手番を利用してd5に圧力をかけることをしていない。

2.白は「ビショップより先にナイトを展開すべし」という経験則に違反している。

3.このビショップは何も狙っていないし弱点となる可能性のある個所を攻撃してもいない。

4.このビショップは黒陣側にいていくらか不安定で、簡単に押し戻される。

 それでも多くの強豪GMたちは今ではホッジソン攻撃を用いている。どうしてだろうか?それには二つの大きな理由があると考えられる。

1.このビショップは黒のeポーンを釘付けにして黒の黒枡ビショップが自然な斜筋につくのを妨害しているので目障りである。

2.黒はこのビショップを追い返すのにやりすぎて、自陣をひどく弱めるかもしれない。

 現在のところ黒のよく指す手は5手あり、個人的な好みと評価に基づいて「最悪から最善」の順で考察していく。

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2016年11月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(447)

「Chess」2016年6月号(4/5)

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次の一手 上級向け

第18問 H.ナカムラ – V.トパロフ
モスクワ、2016年
 白の手番

第19問 P.スビドレル – H.ナカムラ
モスクワ、2016年
 黒の手番で引き分け

解答

第18問 1.Qxb8!(白は差し出された駒を取ってさらに絶対手を2回見つけなければならない。さもないと戦力損するだけである。つまり 1.Qc2? は 1…Rxd1! で 2.Rxb8 なら 2…Qh3+! で詰まされてしまう)1…Rxd1 2.Rb1!(h列での詰みを防ぐ)2…Qd7 3.Rg5(そしてこの手でg4での決定的なチェックに対処する。黒は成すすべがない)3…Ne4 4.Rxd1 Qxd1 5.Qf4 1-0

第19問 1…Rae8(絶対手。黒は全ての駒を助けることはできず、永久チェックの態勢を作らなければならない)2.Qxb6(2.Bc3 なら試合はまだまだ続くことになるが、2…axb4 3.axb4[3.Bxb4 は 3…R8e6 で白にとって黒のキング翼の態勢が危険である。続いて 4.Qd5 なら 4…h5]3…R8e6 4.Qd5 Kh7!? 5.Rad1 f5 で黒の反撃はばかにできない。実際エンジンはお好みの「0.00」を表示する)2…Rh4! 3.gxh4(e列が黒の支配下なので白は引き分けを甘受しなければならない)3…Qg4+ 4.Kh1 Qf3+ 5.Kg1 Qg4+ 6.Kh1 Qf3+ 7.Kg1 Qg4+ ½-½

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(この号続く)

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布局の探究(213)

「Chess Life」1998年4月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

時の試練-ボビー・フィッシャーの布局(続き)

閉鎖布局でのフィッシャーの黒番(続き)

クイーン翼ギャンビット拒否準タラッシュ防御 [D41]
白 GMボリス・スパスキー
黒 GMボビー・フィッシャー
世界選手権戦第9局、レイキャビク、1972年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 c5 5.cxd5 Nxd5

 代わりに 5…exd5 はタラッシュ防御になり、黒は中央の影響力が増すが孤立dポーンという代価を払う。本譜の手でフィッシャーは陣形にどんな根本的な弱点ができるのも避けるというこの番勝負における主眼の方針を継続している。準タラッシュ防御では黒陣は健全だが、白の中央での優位は通常より大きくなる。

6.e4

 スパスキーは自分に忠実に「大中央」を作り上げる。もっと控えめな 6.e3 が主手順とみなされている。

6…Nxc3 7.bxc3 cxd4 8.cxd4 Nc6

 フィッシャーは新手を胸に秘めていた。従来の手順は 8…Bb4+ 9.Bd2 Bxd2+ 10.Qxd2 O-O 11.Bc4 Nc6 12.O-O b6 13.Rad1 で、中央の優位のために白が通常の布局の優勢を得ている。

9.Bc4 b5!?

 これがその新手である。明らかにこのポーンは毒入りだが、まったくの1手得というわけではない。黒は多数派ポーンの動員を開始しているけれども、その影響は当分クイーン翼の弱体化となって現れる。白が狙い筋の d5 突きで中央を開放することによりこれにつけ込むことができる危険性が相当にある。ここでの白の大問題はビショップをどこに引くかである。

10.Bd3

 この手は見かけほど良くない。このビショップはe4を守りキング翼攻撃のためにh7方面をにらんでいるが、欠点の方が多い。d4のポーンは守りにくく、d5 突きはもっと困難である。以後の大会での数多くの経験により 10.Be2! なら白が本譜よりももう少し優勢を保持できることが明らかになった。一例は 10…Bb4+ 11.Bd2 Qa5 12.d5! exd5 13.exd5 Ne7 14.O-O Bxd2 15.Nxd2 O-O 16.Nb3 Qd8 17.Bf3 Nf5 18.Rc1 Nd6 19.Qd4(ユスーポフ対リブリ、モンペリエ挑戦者決定大会、1985年)である。

10…Bb4+ 11.Bd2 Bxd2+

 交換を急がずにまず 11…a6 でクイーン翼を安定させる方がわずかに良いかもしれない。

12.Qxd2 a6 13.a4

 指し過ぎの本譜の手のあと黒には十分動的な反撃がある。13.O-O ならどんな可能性にせよ白がわずかに優勢である。以下の手順には記号を少し付けておく。

13…O-O! 14.Qc3 Bb7! 15.axb5 axb5 16.O-O Qb6 17.Rab1 b4 18.Qd2 Nxd4 19.Nxd4 Qxd4 20.Rxb4 Qd7 21.Qe3 Rfd8 22.Rfb1 Qxd3 23.Qxd3 Rxd3 24.Rxb7 g5 25.Rb8+ Rxb8 26.Rxb8+ Kg7 27.f3 Rd2 28.h4 h6 29.hxg5 hxg5 引き分け

結論 準タラッシュ防御は健在である。フィッシャーの 8…Nc6 から 9…b5 は意表を突く武器として使える。

不使用 この番勝負以前のフィッシャーの主力武器はキング翼インディアン防御で、二次武器はグリューンフェルト防御だった。どちらも現れなかった。キング翼インディアン防御が現れなかった理由は三つあったと思う。(1)スパスキーは十分研究していたはずだった。(2)スパスキーはがっぷり組み合ったゼーミッシュ戦法の使い方が非常にうまかった。(3)キング翼インディアン防御には広さとクイーン翼のポーン陣形に根本的な問題がある。フィッシャーはキング翼インディアン防御を使わなくて正解だった。このことは1992年の番勝負でフィッシャーの7局のキング翼インディアン防御のうち5局が不満足な局面だったことから確認できる。

 フィッシャーはそれまでスパスキーとの2局のグリューンフェルト防御で負けており(1966年と1970年)、また白の優勢な中央と対したくなかった。1992年ではグリューンフェルト防御は現れなかった。

結論 フィッシャーの布局の基本的な選択は時の試練に耐えた。いくつかにおいて少し改良があっただけだった。

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2016年11月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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