2016年07月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(433)

「Chess」2016年5月号(2/5)

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世界選手権挑戦者決定大会(続き)

H.ナカムラ – P.スビドレル
第3回戦、スラブ防御

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4 5.a4 e6 6.e3 c5 7.Bxc4 Nc6 8.O-O cxd4 9.exd4 Be7 10.Qe2 O-O 11.Rd1 Nb4 12.Bg5 h6 13.Bxf6 Bxf6 14.Ne4 b6 15.Ne5 Bh4 16.g3 Be7 17.Nc3 Bf6 18.d5 Qc7 19.d6 Qc5 20.Ng4 Bxc3 21.bxc3 Nc6 22.Rab1 a6 23.d7 Bb7 24.Bd3 Rfd8 25.Qe4 Kf8

 この局面はかなり滅茶苦茶のように見える。しかしびっくり仰天したことはスビドレルがここまでほとんど時間を使わず、明らかにまだ研究手順の範囲内だったことである。前世代のほとんどのGMは途方もないd7ポーンと風通しのよい黒キングとを考慮して、黒陣に一瞥もしなかっただろう。しかしコンピュータ時代ではすべてが具体的で、シリコン獣はここで黒に何の問題もないことを示していた。

26.Qh7?! h5 27.Ne3 Ne5!

 突然白はかなりの困難に陥った。クイーンがそっぽに行っていてキングは熱にさらされている。進退窮まり「-2」に陥る見通しが目前に迫ってナカムラは獅子奮迅の奮闘を始めた。それでも…

28.Be4 Bxe4 29.Qxe4 Ra7 30.Nd5 Ng4 31.Ne3 Nf6 32.Qb4 Qxb4 33.Rxb4 Nxd7 34.Rxb6 Nxb6 35.Rxd8+ Ke7 36.Rd4 a5 37.Nc4 Nd5 38.Rd3 Rc7 39.Nxa5 Nxc3 40.Kg2 Nxa4

 收局に到達したが、筆者を含めたほとんどの観戦者は黒が勝つはずと考えていた。この局面でナカムラが 41.h4 と突かなかったとき私はさらに確信を強めた。なぜなら白がこの手を指せればポーンが4対3の純粋なルーク收局は通常は引き分けに終わることが知られているからである(もっとも純粋なナイト收局は多かれ少なかれ勝ちになると考えられている)。しかし実戦は次のように進んだ。

41.Ra3 Nc3 42.Nb3 g5!

 ルーク同士かナイト同士の交換で勝ちの知られている局面になるので、この局面は黒の勝ちになるのは確かだと私は思った。しかしナカムラは戦い続ける面白い手段を見つけた。

43.Nd2 f5 44.h3 Kf6 45.g4!?

 これは面白い決断だった。f4の地点を弱めh3に弱いポーンを残すのはかなりの危険を伴う。しかしその一方でたぶんナカムラは普通に指したのではどのみち負けてしまうので、ポーンを少し捨てるのはやってみる価値があると感じていたのだろう。最善手を指せば引き分けるとは信じにくいが、スビドレルは進展を図る手段が分からなかった。

45…Nd5 46.gxf5 Kxf5 47.Nf1 Nf4+ 48.Kg3 Rc1 49.Ne3+ Kg6 50.Kh2 Rb1 51.Ng2 Rb2?!

 この手は勝つ可能性をほとんどなくしてしまう。黒はナイトを残しておかなければならなかったが、本当に勝てるかどうかははっきりしない。

52.Nxf4+ gxf4 53.Kg1 e5 54.Ra5 Re2 55.h4 f3 56.Kh2 Rxf2 57.Kg3 Re2 58.Kxf3 Re1 59.Ra8 Rh1 60.Ke4 Rxh4+ 61.Kxe5 Rb4 62.Rg8+ Kh7 63.Rg1 Kh6 64.Kf5 ½-½

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(この号続く)

2016年07月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(199)

「Chess Life」1997年12月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒に二重ポーンができた!

 前回(1997年11月号)では布局での二重ポーンに関連する問題について論じ、白に二重ポーンができる例を紹介した。今回は黒の二重ポーンを主題として取り上げて本稿を終わることにする。

 覚えておくべき主要な考え方は二重ポーンの代償を得なければならないということである。さもないと「ただで」弱点を抱え込むことになる。代償の最も普通の形は中央の強化と展開の手得である。いつものことながら黒はどんなに劣ったことを受け入れることにも強情でなければならない。なぜなら黒だからであり、いつも相手より1手遅れている時には早々と何かを達成するのは難しいからである。だから自分の代償についてあまりに楽観的になってはいけない。一般に期待できることは、二重ポーンがない場合よりもあることによってこれまでより悪い態勢にならないことだけである。

 次の実戦例を参考にどのような時に黒に代償があり、代償が不十分な時にはなぜなのかを説明する。

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2016年07月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(432)

「Chess」2016年5月号(1/5)

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世界選手権挑戦者決定大会

S.カリャーキン – H.ナカムラ
第2回戦、クイーン翼インディアン防御

1.d4

 カリャーキンは昔からの 1.e4 派だが、「自分はベルリン市民だ」と主張できるのがJFKだけではない今日では、もっぱらその初手だけに頼ることのできる一流選手はいない。

1…Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Ba6 5.b3 Bb4+ 6.Bd2 Be7 7.Bg2

7…d5

 主流手順は 7…c6 で、私の知る限り手堅くて立派な手であるが、本譜の手も最近人気が出ているようである。

8.cxd5 exd5 9.O-O O-O 10.Nc3 Nbd7 11.Qc2 Re8 12.Rfd1 Nf8 13.Ne5 Bb7 14.Bc1 Ne6 15.Bb2 Bd6 16.e3 a6 17.Ne2 c5?!

 これは確かに黒がずっと指したくてたまらなかった手だが、ここではうまくいかない。

18.dxc5 Nxc5

 18…bxc5 は 19.Nc4 で、このような局面での典型的なはまり手である。

19.Nd3 Nce4 20.Rac1 Rc8 21.Qb1

 黒駒は表向きはよく働いているように見える。しかしそれは当てにならない。白は長い目で見れば孤立dポーンにつけ込むのにうってつけの態勢で、ここでは大局的に黒は非勢である。

21…Qe7 22.Bd4 Rxc1 23.Rxc1 b5 24.b4 Nd7 25.a3 Nf8 26.Ba1 Ne6 27.Qa2 Bc7 28.Nd4 Bb6 29.h4

 ここは勝負所である。黒は苦戦していて局面の流れを変える手段を見つけようと懸命だった。ここでナカムラはその手段を見つけたと思った。棋力を向上させたい読者はこの局面を読みの力のテストとして用いるのが良いかもしれない。ここで黒はg3のポーンを取ることができるだろうか?本誌の常連の寄稿家がよく言うように、答えは次の行にある。

29…Nxg3??

 この手はポカだが、それが分かるには少し先まで読まなければならない。

30.fxg3 Nxd4 31.Bxd4 Bxd4 32.exd4 Qe3+ 33.Qf2 Qxd3

 ここまでは黒の読み筋だった。駒を取り返しポーンも得した。残念ながらここで典型的なしっぺ返しがくる。

34.Rc7

 痛っ!b7とf7が両当たりで、黒は駒損になる。

34…f5 35.Rxb7 h6 36.Bxd5+ Kh7 37.Bg2 Re2 38.Bf1 1-0

(クリックすると全体が表示されます)

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(この号続く)

2016年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(198)

「Chess Life」1997年11月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

二重ポーンは弱いか?(続き)

カロカン防御パノーフ攻撃(B13)
1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 Nc6

 これは次の 6…Bg4 と相まって非常に激しい戦型になる。黒は 5…e6 でd5を堅実に守る代わりに白のdポーンに目をつけた。

6.Nf3 Bg4 7.cxd5 Nxd5 8.Qb3!

 白はどんな優勢でも望むなら黒ビショップがクイーン翼から不在になっていることにつけ込まなくてはならない。ほかの手はすべて無害である。

8…Bxf3 9.gxf3

 白は積極的な展開を生かすために二重fポーンを受け入れた。クイーンがd5とb7に当たりになっていて、両方のビショップは既に斜筋が開けている。ここでも黒には中盤戦に行くか收局を急ぐかの選択肢がある。私としては黒が中盤戦に行くのは自信が持てない。9…Nb6 10.Be3 e6 11.O-O-O で白の主導権は非常に危険である。黒がキング翼にキャッスリングすれば素通しg列は攻撃にうってつけになる。

 だから黒は收局を目指すべきだと思う。その場合以下の手順が今ではほぼ必然だと考えられている。

9…e6 10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ Nxb5 12.Qc6+! Ke7 13.Qxb5 Qd7! 14.Nxd5+ Qxd5! 15.Qxd5 exd5

 すごい不均衡な局面である。白には醜い二重fポーンがあるが、代償としてクイーン翼の多数派ポーンとルークの早い展開に期待している。黒は白の展開の優位を無効にし、孤立dポーンを保護し、白の弱いキング翼ポーンにつけ込むことに期待をかける。そして定跡の研究に優っている方が実戦では優勢になる。両者が最善の手を指せば動的に互角になる可能性が最も高い。しかし私の考えでは白の陣形の問題の方が重大なので完璧に指すのがもっと難しい。多くの強豪GMが白側をもって負けた。上図の局面でうまく指すには白はとりわけよく研究しておかなければならないことを強調してもしすぎることはない。

 白にはキングをクイーン翼、中央、それにキング翼のどこに置くかの選択肢がある。それらのどれもが大いに注目された。現在のところGMの大部分はキャッスリングしてキングがポーンの助けになれるようにするのを好んでいる。

 実戦例としてA.イワノフ対セイラワン戦(米国選手権戦、1992年)を取り上げる。GMイワノフは『チェス新報』第57巻第145局で詳しく解説している。重要な手についてだけ記号を付けておく。

16.O-O Ke6 17.Re1+ Kf5! 18.Be3 Be7 19.Rad1 Rhd8 20.Rd4 g5! 21.Red1 Ke6 22.Re1 Kf5 23.Red1 Ke6 24.Re1 Bc5!? 25.Bxg5+ Kf5 26.Bxd8 Bxd4 27.Rd1! Rxd8 28.Rxd4 Ke5 29.Ra4! d4 30.Kf1 Rd7 31.Ke2 Kf4 32.Kd3! Kxf3 33.Rxd4 Re7 34.Rd5 Kxf2 35.Rh5 f6 36.b4! Kg2? 37.a4 f5 38.Rxf5 Kxh2 39.a5 Kg3 40.a6! Kg4 41.Rf8! h5 42.Rb8 Re6 43.b5 Rd6+ 44.Ke4 Re6+ 45.Kd4 Rd6+ 46.Ke5 Rg6 47.b6 Kh3 48.bxa7 黒投了

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2016年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(431)

「British Chess Magazine」2016年3月号(3/3)

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次の一手

8)H.ナカムラ – M.ムジチュク
トレードワイズ・ジブラルタル・オープン

 白の手番

解答
白はまだポーンが全部残っている。黒はナイト得だがポーンが3個少ない。1.d6! Bxd6 2.Qxg6+! 2.cxd6 は 2…Qxc4 で黒の勝勢になる。2…Kh8 3.Qxh6+ Nh7 3…Kg8 は 4.g5 Bg3(4…Nh7 5.g6 Ndf6 6.gxh7+ Kh8 7.Qg7#)5.gxf6 Nxf6 6.Qg6+ Kh8 7.Qxf6+ で白が勝つ。4.Ng5 Ndf6 5.Rdf1 1-0

 黒は大きな戦力損でしか詰みを防げない。

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(この号終わり)

2016年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(197)

「Chess Life」1997年11月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

二重ポーンは弱いか?(続き)

ピルツ防御オーストリア攻撃(B09)
1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.f4 Bg7 5.Nf3 O-O 6.Bd3 Nc6

 この戦型はオーストリア攻撃(4.f4)に対する黒の最も堅実な手法である。黒にはもっと激しいやり方が二つもある。一つはすぐに 5…c5 と突く手で、本誌の1996年7月号で取り上げた。もう一つは 6…Na6 である。本譜の手はd4の地点に対する主眼の反撃をもくろんでいる。

7.O-O Bg4 8.e5 dxe5 9.dxe5 Nd5

 黒の小駒は十分に展開していて、白のcポーンを二重にする 10…Nxc3 とf3のナイトに圧力をかける 10…Nd4 を狙っている。定跡では白にはこれらの狙いを防ぐと共に布局の有利を保つ満足な手段はないことが明らかになっている。ありきたりの作戦は二つあるが(1)10.Bd2 Nd4! 11.Be4 c6! は動的に互角で、(2)10.Nxd5 Qxd5 11.h3 Be6 12.Qe2 Rfd8 13.Be4 Nd4! は引き分けになりそうでマークランド対ポルティッシュ戦(ヘースティングズ、1970-71年)で指された。

 白は自陣の広さの優位(e5のポーン!)を生かし黒の現在働いていないビショップにつけ込む手段を見つけなければならない。逆説的になるがこれは白に孤立二重ポーンを作らせることを黒に「強いる」ことを意味している。

10.h3! Nxc3 11.bxc3

 フェルナンデス対メドニス戦(バルセロナ、1980年)ではスペインのGMはここで引き分けを提案したが、それは私には渡りに船だった。さもないと黒の互角への道は容易でない。二重ポーンの代償として白はf3での釘付けをなくしd4の地点の支配を確実にした。さらには黒はビショップの好所がなく(11…Be6 なら 12.Be3! のあと 13.Nd4 が来るし、11…Bxf3?! なら 12.Qxf3 で白が双ビショップになるだけでなく陣地が広くなる)、あとで自身も二重ポーンを受け入れなくてはならない。

11…Bf5 12.Bxf5 gxf5 13.Qe2 Qd5 14.Rd1 Qc5+ 15.Qe3

 白は通常の布局の優勢のまま中盤戦か收局に行き着く。(1)15…Qa5 16.Bd2 Rad8 17.c4 Qa6 18.Qc3 e6?! 19.Be1(トラプル対バダース、トルナバ、1979年)(2)15…Qxe3+ 16.Bxe3 Rad8 17.Nd4! Nxd4 18.cxd4 e6 19.Rab1 b6 20.Rd3(マルヤノビッチ対フランコ、ブルニャチカ・バーニャ、1983年)

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2016年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(430)

「British Chess Magazine」2016年3月号(2/3)

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ジブラルタル・マスターズ

ヒカル・ナカムラ – アブヒジェート・グプタ
第9回戦

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.f3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nb6 6.Be3 Bg7 7.Nc3 O-O 8.Qd2 e5 9.d5 c6 10.h4 cxd5 11.exd5 N8d7 12.h5 Nf6 13.hxg6 fxg6 14.O-O-O Qd6

 この局面では 13…Bd7 が通常主手順とされている。

15.Kb1 Bf5+ 16.Ka1

16…Rac8

 この手で前例を離れた。黒は2015年ハイデラバードでのサシキラン対ウェイ・イー戦でのように白の g2-g4 突きを止めるために1手をかけたくなかった。

17.g4 Rxc3

 これは黒の研究手だと言っても差支えないだろう。黒の構想は最終的に黒枡ビショップの斜筋上の邪魔ものをすべて取り除き、いつかa1の敵キングまで利きが届くようにすることである。

18.Qxc3

 交換損に応じるのは最も自然な応手に見える。結果論になるが、客観的には白は 18.gxf5 と取った方が良かったのかもしれないが、もちろんこんな重大な試合でひるむようなヒカルではなく、挑戦を敢然と受けて立った。18.gxf5 に対して想定される手順は 18…Rc7(実戦的には私なら 18…Rxe3!? 19.Qxe3 gxf5 と指したい。そうすればg7の強力なビショップには対抗する相手がなく、敵のキング翼に長期的に攻撃の可能性が見込める)19.fxg6(19.Bd3 も可能)19…hxg6 20.Bh6 Nh5(私の考えでは黒は 20…Nfxd5 21.Bxg7 Rxg7 22.Nh3 と局面を開放すべきでなく、代わりにただ白のdポーンを盤上に残しておくべきである)21.Bxg7 Kxg7 で、黒はうまくやっているかもしれないが押し気味なのはまだ白の方である。

18…Rc8 19.Qe1

 19.Qa5 Bc2 20.Rc1 Nfxd5 21.Bh6 Bxh6 22.Rxh6 Nb4 は白が大変危険そうである。19.Qd2 も実戦の 19…Bc2 でなく 19…Rc2 20.Qe1 Bd7 21.Bd3 Rxb2 22.Kxb2 Ba4 で駄目そうである。

19…Bc2 20.Rc1

20…e4?

 この手はd4への利きをなくし、もっと重要なことはa1-h8の斜筋への利きをなくす。実際この斜筋の支配がこの局面の急所で、黒が戦力を犠牲にした後では特にそうである。代わりに 20…Nfxd5! なら黒はどの変化でも反撃できそうで、試合は難解な戦いが続き三通りの結果のどれになっても不思議でない。以下に少し変化をあげるが、もちろんこれですべてというわけではない。

a)21.Bh6
 a1)21…Bh8!? 22.Rh2(22.Qd2 Qc5 23.Rh2 Nb4 24.a3 N6d5 は黒が良い)22…Nb4 23.a3 e4
 a2)21…Bxh6!? 22.Rxh6 Nb4 は白キングがちょっと不安になり始める。例えば 23.a3 a5! 24.Rh2 Qd5 25.axb4 axb4 はきれいな詰みになる。

b)21.Qd2 e4!

c)21.Rh2 Nb4 22.a3 e4! 23.Qxb4 Qxh2 は黒が好調である。

21.Bd4!

 白は急所の斜筋を支配し、黒が抱いたかもしれない攻撃の可能性に終止符を打った。そして戦力得を勝ちに結び付けた。

21…Qxd5 22.Bc3

22…Bd3

 22…exf3 なら 23.Nxf3 Be4(23…Qxf3 24.Rxc2)24.Rd1 Qc6 25.Nd4 で受かり白が戦力得を維持している。

23.Nh3 Na4 24.Nf4 Qd6 25.Nxd3 exd3 26.Bxd3 Qb6 27.Bc2 1-0

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(196)

「Chess Life」1997年11月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

二重ポーンは弱いか?(続き)

スラブ防御交換戦法(D13)
1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.cxd5 cxd5 5.Nc3 Nc6 6.Bf4 e6 7.e3 Bd6

 黒は 6…e6 で自らビショップを閉じ込めることにより比較的守勢の戦型を採用しているが、黒枡ビショップを効率的に交換することによりその埋め合わせになることを期待している。ここで白の本筋の手は 8.Bxd6、8.Bg3 そして 8.Bd3 の三つである。

(1)8.Bxd6

 この「反射的な」手は無害である。黒クイーンはd6に出てきて、そこからいつか …e5 と突いて仕掛けるのを支援することができ、その間に白は盤上のどの個所でも主導権を発揮する手段がない。典型的な例はパッハマン対ぺトロシアン戦(テルアビブ・オリンピアード、1964年)である。8…Qxd6 9.Bd3 O-O 10.O-O Bd7! 11.Rc1 Rac8 12.Qe2 e5(まず 12…a6 と突いてから 13…e5 と突く方が簡明である)13.Nb5 Qe7 14.Nxe5 Nxe5 15.dxe5 Qxe5 16.Nd4 g6 17.Rfd1 Bg4 黒の孤立ポーンは安泰で駒は好位置にいて完全に互角になっている。

 互角より上を目指すためには白は二重ポーンの危険を冒さなければならない。

(2)8.Bg3 O-O

 8…Bxg3?! は 9.hxg3 と取られるので劣る。こうなると白はh列での攻撃の可能性が開けてくる。だから黒は白がキング翼にキャッスリングしたのを見届けるまでこの交換を保留したい。

9.Bd3 b6! 10.Rc1 Bb7 11.O-O

 白に有効な展開の手が残っていないのに対し、黒はまだ有効な手の …Rc8 を指すことができる。

11…Bxg3! 12.hxg3 Qe7 13.Bb5 Rfc8! 14.Qa4 a6 15.Bxc6 Bxc6 16.Qb3 Qb7 17.Ne5 Rc7 18.Rc2

 局面は全くの互角で、ポルティッシュ対ウールマン戦(ハレ、1967年)では両対局者が引き分けに合意した。

(3)8.Bd3! ボトビニク対コトナウワー(モスクワ、1947年)

 これはGMボトビニクの素晴らしい戦略構想である。白は展開を続け、f4で駒を交換してみろと黒に挑んでいる。8…Bxf4 9.exf4 のあと白には孤立dポーンとかなり静的な二重fポーンが残される。白は気が狂ったのか?白の見込んでいる代償は何なのか?その答えはこうである。白は重要なe5の地点を完全に支配して …e5 の解放の考えを防ぎ、黒に残りのビショップを遊ばせることをずっと余儀なくさせる。白の代償が二重ポーンをはるかに上回ると認識したIMコトナウワーはビショップを取るのを12手目まで遅らせたが、何の好結果ももたらさなかった。

 ここで読者に注意しておきたいが、生じる局面のプラス面を活用するにはレイティング2000以上の棋力が必要である。さもないと弱そうに見える二重ポーンが本当に弱くなってしまう。

8…O-O 9.O-O b6 10.Rc1 Bb7 11.a3 Rc8 12.Qe2 Bxf4 13.exf4 Na5 14.Rc2 Nc4 15.Rfc1 a6 16.Nb1! b5 17.b3 Nd6 18.Rxc8 Bxc8 19.Ne5

 白は黒枡の支配を続け60手で勝った。

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カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(429)

「British Chess Magazine」2016年3月号(1/3)

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ジブラルタル・マスターズ

ヒカル・ナカムラ – ロベルト・べリン
第1回戦

 黒がちょうど目の上のたん瘤のc5ポーンを取ったところだが、次の手が待っていた。

26.e6! Nxe6 27.Bxg7+! Kxg7 28.Qb2+ Kg8 29.Rxc5 Nxc5 30.Qb6 Bh5 31.Rd4 Nd7 32.Qxb7 Ne5

33.Rb4 Nf3+ 34.Kh1 Ne1 35.Qxc6 Bf3+ 36.Kg1 Be4 37.Be2 Nf3+ 38.Bxf3 Bxf3 39.Rb7 1-0

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス6