2016年04月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(420)

「Chess」2016年2月号(2/2)

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第7回ロンドン・チェスクラシック

M.カールセン – H.ナカムラ
第7回戦

 ナカムラは最初のうちは劣勢の收局をよくしのいでいたが、不運なf6ポーン突きにカールセンがとびかかった。

66.Bxb7! Nd3

 66…Nxf5+? は 67.Kxf6 Nd4 68.c6 で一巻の終わりになる。しかし本譜の手なら黒が持ちこたえているように見える。67.Bd6 なら 67…Nxf5+ 68.Kxf6 Nxd6 69.Bc6+ Kd8 70.cxd6 Nb2 で持ちこたえる可能性が確実にある。しかしカールセンは強手を見つけた。

67.Kxf6!! Nxf4 68.Ke5 Nfe2

69.f6?

 黒は駒得だがナイトのもつれがひどい。ここで 69.c6! と突けばカールセンは妙手の掉尾を飾っていただろう。69…Nf3+ なら 70.Ke4 Ng5+ 71.Ke3 Nc3 72.c7 だし 69…Nxf5 なら 70.Kxf5 Nd4+ 71.Ke5 で決定的な両当たりになっている。

69…a5! 70.a4 Kf7 71.Bd5+

71…Kf8?

 なんと 71…Kg6! なら引き分けだったようだ。対局後カールセンが指摘したように 72.Be4+ Kf7 73.c6 Nxc6+ 74.Bxc6 Kf8 で白はこれ以上どうしようもない。

72.Ke4! Nc2 73.c6 Nc3+ 74.Ke5 Nxa4 75.Bb3 Nb6 76.Bxc2 a4 77.c7 Kf7 78.Bxa4 1-0

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(この号終わり)

2016年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(186)

「Chess Life」1997年7月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

1.e4 に対する黒の防御

 黒番で何を指したら良いだろうか。それは条件による。好き嫌い(棋風)、どのくらい布局に時間をかけられるか、そして布局に要求するのは何かという具合である。世界的地位への過程でボビー・フィッシャーの主要な武器はシチリア防御とキング翼インディアン防御だった。彼の考え方は明快で、できるだけ早く相手に戦いを挑むことが理にかなっているというものだった。さらには当時布局定跡の先導的研究者だったので、研究の第一人者であることに自信を持っていた。

 今日では彼の例にならう者には事欠かない。世界チャンピオンのガリー・カスパロフはシチリア防御とキング翼インディアン防御の研究では並ぶ者がいない。それでもGMたちの大部分は黒番のとき布局段階にフィッシャーやカスパロフたちほど多くを要求しない。彼等は中盤戦の始まりで指しやすい局面になれば満足する。本稿の目的はそのような選手たちのための布局を推奨することである。それを黒の堅実な布局と呼ぶ。

 堅実な布局には中央での影響の強さ、小駒の自由な展開、安全なキング、それに陣形の弱点はあっても最小限という特徴がなければならない。しかし今日では30年前には可能だった堅実な布局は望むべくもない。というのはその布局がどんなに堅実であっても白番では最も攻撃的な手段を追求する選手が多いからである。それでも布局が堅実であればあるほど、自陣が露骨な選手によって壊滅させられる危険性は少なくなるからである。

 今回は 1.e4 に対する二つの堅実な防御について論じる。次回は 1.d4、1.c4 および 1.Nf3 に対する防御について論じる。

 1950年に大会で指すようになった時、黒での最も堅実な布局はカロカン防御とぺトロフ防御というのがごく普通の知識だった。今日でもそれは当てはまる。

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2016年04月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(419)

「Chess」2016年2月号(1/2)

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チェス評論

編集長 IMマルコム・ペイン

A.グリシュク – H.ナカムラ
ロンドン・チェスクラシック第1回戦、ルイロペス

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.dxe5 Nf5 8.Qxd8+ Kxd8 9.h3 Ke8 10.Nc3

 この局面は今月号の27ページと36ページにも出現しているのでぜひ見られたい。

10…Be6 11.g4 Ne7 12.Nd4 Bd7 13.Kh2 c5 14.Ndb5 Kd8 15.Be3 a6 16.Na3 b6 17.Ne4 h5 18.Kg3 hxg4 19.hxg4 Bc6 20.Ng5 Ke8 21.f4 f5 22.Rad1 g6 23.Ne6 fxg4!!

24.Nxc7+ Kf7 25.e6+

 25.Nxa8? と取ると 25…Nf5+ 26.Kxg4 Rh4+ 27.Kg5 Bh6# というきれいな詰みがある。白の手は黒駒を先手で最下段から離れさせただけだった。

25…Kg8 26.Kxg4 Ra7 27.Rd7!

 戦い続けるにはこう指すしかない。グリシュクはここまででいつものようにひどい時間切迫に陥っていた。

27…Nf5!

 27…Bxd7 は 28.exd7 Nc6 29.Nd5 でd7ポーンが生きているので白がうまくやっている。

28.Bf2

 絶対手。

28…Nh6+ 29.Kg3 Nf5+ 30.Kg4 Be7 31.Rfd1 Nh6+ 32.Kg3 Nf5+ 33.Kg4

33…Nh6+

 ここでは 33…Rh5!! という手があった。狙いは 34.Nc4 Nh6+ 35.Kg3 Bh4+ 36.Kh3 Bxf2# である。白は 34.Rxe7 Nxe7 35.Rd8+ Kh7 と指さなければならないだろうが、36.Rd7 Bxd7 37.exd7 Nc6 38.Ne6 Rd5 で黒が交換損を返して勝ちになる。途中 36.Ne8 は 36…Ng8!! が見落としやすい手で、唯一の勝つ手段である。

34.Kg3 Rh7 35.Nc4 Nf5+

 35…Bxd7 36.Rxd7 は白が少し良さそうである。

36.Kg4 Nh6+ 37.Kg3 Nf5+ 38.Kg4 Nh6+ ½-½

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(この号続く)

2016年04月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(185)

「Chess Life」1997年6月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の少数派攻撃(続き)

(4)ピルツ防御 B08

ピルツ防御 [B08]
白 GMイゴール・プラトーノフ
黒 GMティグラン・ぺトロシアン
ソ連、1970年

1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3 d6 4.Bc4 c6 5.Nf3 Nf6 6.O-O?!

 白は黒から有利な条件下で …d5 と突かれないよう気をつけなければならない。適切な手は 6.e5 dxe5 7.Nxe5 または 6…d5 に 7.e5 と突けるよう 6.Bb3 と引いておく手である。

6…d5! 7.exd5 cxd5 8.Be2?!

 この手は消極的すぎる。白は 8.Bd3 で黒のクイーン翼ビショップから好所を奪い 8…Nc6 には 9.h3 と突いておくべきである。

8…O-O 9.Re1 Bf5 10.Ne5 Nbd7! 11.Bf4 Rc8 12.Bd3 Bxd3 13.Qxd3 e6

 黒が 11…Rc8 からクイーン翼で動き始め、13…e6 で冒頭の図に示された主眼のポーン陣形になった。白は何も有利なところがなく、黒の少数派攻撃の可能性の毒牙を抜くことができるように駒の連係を図る最適な手段を探すべきである。第一弾として c2-c3 でc列を締め切ることができる 14.Ne2 が適切に思える。

14.Rad1?! Qb6 15.Nxd7 Nxd7 16.Bc1 Qc6! 17.Qh3?

 黒は少数派攻撃の用意ができていて、白は 17.Re2 a6 18.a4 で受けに回る必要がある。白の期待するキング翼攻撃は夢想に基づいていて、現実のものではない。

17…b5 18.a3 a5 19.Rd2?!

 ぎこちない手。正着は 19.Re2 だった。それにしてもGMぺトロシアンがなんと迅速に「無」からクイーン翼での凶暴な強襲を繰り出したものか、感服する。そう、これこそ戦略的少数派攻撃の威力である!

19…b4 20.axb4?!

 どうして黒のルークのために列を素通しにしてやるのか。20.Nb1 が絶対である。

20…axb4 21.Nd1 Ra8!

 終わりが始まった。クイーン翼ルークはa列から侵入し、必要とあればキング翼ルークはc列で働く。

22.Ne3 Nf6 23.Rd3 Ne4 24.Red1 Ra1 25.Qh4 Qb6 26.Ng4 h5 白投了

 27.Ne3 は 27…Bxd4! 28.Rxd4 Rxc1 で負けになり、27.Ne5 は 27…Bf6 28.Qh3(28.Qf4 Bg5)28…Bxe5 29.dxe5 Nxf2 と応じられる。

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2016年04月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(418)

「British Chess Magazine」2016年1月号(2/2)

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第7回ロンドン・チェスクラシック(続き)

解説 GMペンタラ・ハリクリシュナ

アニシュ・ギリ – ヒカル・ナカムラ
ロンドン・チェスクラシック、2015年、第8回戦

1.Nf3

 ギリはよくこの手で指し始めるが、それは必ずしもレーティ布局を指したいからではなく、1…d5 に 2.d4 と応じてカタロニア布局に入り、1…c5 には 2.e4 で喜んでeポーン布局に転じるためである。さらに本局に勝ちにいくために素直に 1.e4 と突きたくなかったのはこのロンドン大会でベルリン防御が風土病になっていたからだった。

1…d5 2.g3 Nf6 3.Bg2 e6 4.O-O Be7

5.d3

 しかしカタロニア布局で最近新構想を見つけたにもかかわらず本局ではその主流手順を指す気がなかった。新構想の中には昨年バクーでのワールドカップで周到な研究で名高いペーター・レーコーをさえ驚かせたものがあった。ナカムラがその手順に新手を用意していることを彼が恐れたことは想像にかたくなく、ナカムラが最近エリャーノフ戦で負けた試合を見ればなおさらである。2015年バクーでのエリャーノフ対ナカムラ戦は 5.d4 O-O 6.c4 dxc4 7.Qc2 a6 8.a4 Bd7 9.Qxc4 Bc6 10.Bg5 Bd5 11.Qc2 Be4 12.Qc1(ギリ対レーコー戦では 12.Qd1 c5 13.dxc5 Bxc5 14.Nbd2 Bc6 15.Ne5 Bxg2 16.Kxg2 Be7 17.Rc1 Nbd7 18.Nxd7 Qxd7 19.Nf3 Qxd1 20.Rfxd1 と進み白が46手で勝った)12…h6 13.Bxf6 Bxf6 14.Rd1 a5 15.Nbd2 Bh7 16.Nb3 c6 17.Qc3 Be7 18.Nc5 Qc7 19.Ne5 Na6 20.Nxb7 Qxb7 21.Bxc6 Qc7 22.Bxa8 Qxc3 23.bxc3 Rxa8 24.Nc6 Bd8 25.Nxd8 Rxd8 26.f3 Rc8 27.Ra3 と進み、最終的には白が勝った。

5…O-O 6.Nbd2 c5

 6…Nc6!? は一見奇異に思えるけれども、アロニアンと協力者のサルギシアンは何回か指したことがある。実際よく読んでみるととても面白い手で、長い定跡の戦いを避ける立派な手段であることが分かった。それでも白はわずかだが永続する圧力を維持すべきだと思う。2015年スコピエでのギリ対アロニアン戦は 7.e4 dxe4 8.dxe4 e5 9.Nc4 Qxd1 10.Rxd1 Nxe4 11.Nfxe5 Nxe5 12.Nxe5 Nf6 13.Nc4 c6 と進み40手で引き分けた。

7.e4 Nc6

8.Re1

 これは紛らわしい手順である。白が先に e4-e5 と突いたら黒は …Qc7 と指さなかっただろう。多くの試合は 8.e5 Nd7 9.Re1 b5 10.Nf1 b4 と指されていて、なじみのチェス用語の「形勢不明」と言い表すことができる。

8…Qc7

 私は 8…b5!? が正しい手順だと思う。子供の時白がビショップをf4に出していずれ Nd5 と指すのが普通だからクイーンをc7に展開しないようにと教わった。想定される手順は 9.exd5(9.a4 b4 10.exd5 Nxd5 11.Nc4 Bb7 ∞)9…Nxd5(9…exd5 10.a4 bxa4 11.Rxa4 +/= 途中 10…b4 なら白には 11.d4!? という手があって好形になる)10.Ne4 Bb7 11.c3 a6 12.a4 b4 2015年バクーでのスビドレル対カリャーキン戦では黒が負けたけれども、ここでは黒も指せる形で、負けたのは布局のせいではない。

9.Qe2 b5 10.a4

 クイーンがc7とe2にいて 10.e5 と突く手が面白い。ギリがそう指さなかったわけはのっぴきならない戦いに誘い込まれるかもしれないからとしか思えない。例えば 10…Nd7 11.Nf1 a5 12.h4 b4 13.Bf4 a4 14.a3 Ba6 15.Ne3 である。ギリは優勢になるだけでなく盤上をしっかり支配し続けるのが好きなのである。

10…b4 11.exd5 exd5 12.Nb3 Re8 13.Bf4

13…Qb6

 私ならクイーンが当たりにならないので 13…Qd8 と指したい。14.Qd2(14.Ne5 Nxe5 15.Bxe5 Bg4 16.Qd2 Be6 17.d4 Ne4 18.Qd1 c4 19.Bxe4 dxe4 20.Nc5 Bd5 =/+)14…Bf5 ∞

14.a5 Qb5 15.Qd2 Be6

 15…a6?! 16.Re2 Bd7 17.Rae1 Bf8 18.Ne5 Be6 =

16.a6!

 ナカムラはこの手に意表を突かれたに違いない。

16…Bf8

 どうしてa6のポーンを取りにいかなかったのか。16…Bc8?! と引くと 17.Rxe7! という派手な手があって白にチャンスが生まれる(穏やかな 17.Bg5! Bxa6 18.Nh4! でもそうである)。このあとは例えば 17…Rxe7 18.Bd6 Re8(18…Re6 19.Bxc5 Bxa6 20.Nbd4 Nxd4 21.Nxd4 Qxc5 22.Nxe6 +/=)19.Bxc5 Bxa6 20.Nfd4 Nxd4 21.Bxd4 Bc8 +/=

17.Ne5 Nxe5 18.Bxe5 Nd7 19.Bf4 Qb6

 19…Rac8!? なら 20.c4 dxc4 21.Rxe6 fxe6 22.dxc4 Qxc4 23.Na5 Qd4 24.Qe2 Qf6 ∞ で形勢不明の局面になる。

20.c3

 代わりに 20.c4 なら黒はc3で取らざるを得なかった。20…dxc4 と取ると 21.Bxa8 c3 22.bxc3 Rxa8 23.c4 で白が有利だからである。だからそもそもなぜ白は 20.c3 と突いたのだろうか。

20…Rac8 21.Qc2

21…d4

 黒はあとで …h6 と突かなければならない。だからすぐに突いてもかまわなかったかもしれない。

22.Nd2 h6 23.h4 dxc3 24.bxc3 bxc3?!

 最善手は 24…Nf6! 25.Bb7(25.Nc4 Bxc4 26.Rxe8 b3!![26…Nxe8 27.dxc4 b3 28.Qb2 +/=]27.Qb2 Rxe8 28.dxc4 Nh5 =/+)25…b3 26.Qb1 b2 27.Ra3 Nh5

25.Qxc3 Nf6 26.Nc4

26…Qd8

 26…Qb4 は 27.Qc2 Bxc4 28.Rxe8 Rxe8 29.Qxc4 Re1+ 30.Rxe1 Qxe1+ 31.Bf1 Ng4 32.Qa2 h5 となって、機械は互角の形勢だと言っているが、私には白が少し良さそうに思える。

27.Bb7 Nd5 28.Qd2 Nxf4 29.Qxf4 Qxd3 30.Ne5 Qd6 31.Rad1 Qc7 32.Nc6

 これがナカムラの見落とした手だと思う。この手がなければ黒には受け切る可能性が相当あったことだろう。

32…Qxc6 33.Bxc6 Rxc6 34.Qa4 Rec8 35.Rd8 c4 36.Rxc8 Rxc8 37.Rxe6!

 黒は駒の連係が悪いので完全に敗勢である。

37…fxe6 38.Qd7 Rc5 39.Qxe6+ Kh7 40.Qf7 Bd6 41.h5 Rg5 42.Kg2 c3 43.f4 1-0

 ギリの好局だった。白はゆっくり圧力を強めビショップを効果的に使った。ほとんどの間エンジンは黒がうまくやっていると判断していた。しかし盤上では現れる局面のほとんどが黒にとって指しにくいものだった。


ナカムラは正規チェスでまだカールセンに勝ったことがない

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(この号終わり)

2016年04月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(184)

「Chess Life」1997年6月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の少数派攻撃(続き)

(3)dポーン試合 A49

dポーン試合 [A49]
白 GMボリス・イフコフ
黒 GMボビー・フィッシャー
サンタモニカ、1966年

1.d4 Nf6 2.Nf3 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 O-O 5.O-O d6 6.Nc3 d5

 これは1960年代中ごろにGMフィッシャーが得意としていた手で、いくらか野放図である。これでも十分指せそうだが、ほとんどのキング翼インディアン防御の心酔者はもっと型通りに 6…Nbd7 から …e5 突きの方がなじみがあるだろう。

7.Ne5 c6 8.e4 Be6

 GMイフコフはすぐれた大会記録本(GMカシュダン編集で1968年出版の第2回ピアティゴルスキー杯の33ページ)と『チェス新報』第2巻第53局の解説で 8…dxe4 9.Nxe4 Nxe4 10.Bxe4 Bh3 を互角への簡明な手段として推奨している。GMフィッシャーは布局でそれ以上を目指しそれ以下に終わる。

9.exd5 cxd5 10.Ne2 Nc6 11.Nf4 Bf5 12.c3 Be4?

 冒頭の図に示された主眼のポーン陣形になった。黒は少し劣勢で、12…Rc8 や 12…Qd6 のような普通の手を選ぶべきである。代わりにクイーン翼ビショップを的外れの地点に置いた。

13.Bh3? Qc7 14.Nfd3?!

 これで黒は白のナイトと交換することにより危ないビショップの顔を立てることができる。GMイフコフは 14.f3 Bf5 15.g4 Bc8 16.g5 でも 14.Nxc6 Qxc6 15.f3 Bf5 16.Bxf5 gxf5 17.Nd3 でも明らかに優勢となることを示した。本譜の手のあと黒はほぼ互角になった。

14…Bxd3! 15.Nxd3 e6 16.Bf4 Qd8 17.Re1 Re8 18.Bg2 Nd7 19.h4 h5

 黒はここで 20…b5 で少数派攻撃を開始する用意ができている。だから白は 20.a4! でそれを邪魔するのがよい。どういうわけかユーゴスラビアの著名なGMはここからの何手かの間白に突きつけられる少数派攻撃の危険性に気づかないかのようだった。

20.Bf3 b5! 21.a3 a5 22.Qe2 Rc8! 23.Bd6?

 GMパッハマンが指摘したようにここは来るべき少数派攻撃を 23.b4! で止める最後の機会で、ほぼ互角の封鎖された局面になるところだった。

23…Qb6 24.Be5?! Ndxe5 25.Nxe5 Nxe5 26.dxe5 b4 27.axb4 axb4 28.Qe3 Qxe3 29.Rxe3 bxc3 30.bxc3 Rc5

 少数派攻撃の実行が成功して所望の結果が得られた。つまりc3が根本的な弱点になった。白陣は敗けたも同然である。時間切迫も加わって抵抗らしい抵抗もしなかった。

31.Be2 Rec8 32.Ra3 Bf8 33.Rb3 Be7 34.Kg2 Bd8! 35.Ba6?! Ra8 36.Rf3? Bc7 37.Rb5 Rc4! 38.Bb7 Ra3 39.Re3 Kg7 40.Bc8 Raxc3 41.Re1 Rc2 白投了

 試合はここで指し掛けになった。白は 42.Bd7 を封じ手にしたが、再開することなく投了した。

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2016年04月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(417)

「British Chess Magazine」2016年1月号(1/2)

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第7回ロンドン・チェスクラシック

解説 GMルーク・マクシェーン

マグヌス・カールセン – ヒカル・ナカムラ
ロンドン・チェスクラシック、2015年、第7回戦

 カモのナカムラに対してさんざん苦労したあげくカールセンにやっと突破口が開けた。白がもう一組のポーンを交換する代価を払ってついにキングをg7に侵入させた局面から始める。このような開けた局面の收局では双ビショップが有利であることは周知のことである。しかし不安定なナイトでさえ厄介な駒で、両選手の頭はきっと変化を読むことでくらくらしていたことと思う。

62…f6 63.Be4 Nf2 64.Bb1

 圧力を一段と強めるだけでも手を繰り返すのはカールセンにとって楽しい。

64…Ng4 65.Be4 Nf2 66.Bxb7 Nd3

67.Kxf6!

 67.Bd6 なら黒の受けは容易である。67…Nxf5+ 68.Kxf6 Nxd6 69.Bc6+ Kd8 70.cxd6 Nb2! で引き分けになりそうである。一例をあげると 71.Ke6 Nc4 72.a4 a5 73.Kd5 Ne3+ 74.Kc5 Nf5 75.Bb5 Nh6 76.Kb6 Nf7 77.d7 Ne5。

67…Nxf4 68.Ke5

68…Nfe2!

 簡単に終わらせなかったところはさすがナカムラである。どうしても 68…Nxf5 69.Kxf5 Nd3 と指したいところだが、白は巧みな駒捌きで勝ちになる。70.c6 Kd8 71.Bxa6 Nc5 72.Bb5 Kc7 73.Ke5 Nb3 74.Kd5 Na5 と進んだとき白はキングに手損をさせなければならない。75.Kc5 Nb3+ 76.Kc4 Na5+ 77.Kd5 Nb3 78.Ba4! aポーンをもっと早く進ませなかったところが急所である。78…Nd2 79.Bc2 ですぐにaポーンが進撃できる。

69.f6?

 この手は悪手ではないかと思う。しかし理解はできる。ポーンを進めてナイトから遠ざけ、ポーンの前はビショップが利いているから、悪い考えではないように思われる。しかしすぐに 69.c6 と突く方が強力だった。これに対して 69…Kd8 なら 70.f6 で勝つし、69…Nb5 なら 70.Bxa6 Ned4 71.Bxb5 Nxb5 72.a4 となって、ポーンが多すぎてナイト1個では対処しきれない。だから 69…Nxc6+ 70.Bxc6+ となるだろうが、マグヌスは勝ちの局面かどうか判断できなかったのではないかと思う。確かに簡単でない。エンジンに分析させても最終的にナイトに何も邪魔されずに白キングがクイーン翼に行けることが分かるのにしばらく時間がかかった。

69…a5 70.a4

 黒ポーンがa5にあるので 70.c6 には70…Nb5 で黒には何の問題もない。

70…Kf7 71.Bd5+

71…Kf8?

 敗着。71…Kg6! が思いもよらない手だった。しかしfポーンのそばに居続けることにより白キングにナイトに近づくことができなくさせている。72.c6 Nxc6+ 73.Bxc6 Kf7! 74.Bd5+ Kf8 で、69.c6! の局面と微妙に違う收局になる。この局面は本質的に引き分けである。Kc5-b6 に対して黒は Nc3xa4 と切って Kf8-f7xf6 と応じるからである。

72.Ke4! Nc2

 白駒が中央のすべての白枡に利いているのでこの手しかない。72…Ke8 とやり過ごすのは 73.Ke3 で両方のナイトが動けなくなり Bc4 ですぐにどちらかのナイトが取られる。

73.c6 Nc3+ 74.Ke5

74…Nxa4

 74…Nxd5 と取るのは 75.Kxd5 Nb4+ 76.Kd6 Nxc6 77.Kxc6 でこのポーン收局は黒が1手間に合わなくて負けになる。

75.Bb3!

 ついに不運な馬のどちらかが取られる。

75…Nb6 76.Bxc2 a4 77.c7 Kf7 78.Bxa4 1-0

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(183)

「Chess Life」1997年6月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の少数派攻撃(続き)

(2)カロカン防御交換戦法 B13

カロカン防御交換戦法 [B13]
白 GMミゲル・イリェスカス
黒 GMビスワーナターン・アーナンド
リナレス、1994年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.Bd3 Nc6 5.c3 Qc7!?

 世界の一流GMたちはお互い何度も対局するので、布局で優位に立つ可能性を高めるためには優れた「意表手」が必要である。本譜の手はそのような1手である。

 黒は白がクイーン翼ビショップをよく利くf4の地点に出すのをより難しくさせた。

6.Bg5

 白は3手かけてこのビショップをh2-b8の斜筋に置くのをいとわない。しかし私は手数がかかりすぎると思う。もっと効率的なのは 6.Ne2 Bg4(6…e6 7.Bf4 Bd6 8.Bxd6 Qxd6 も黒に働きの劣るクイーン翼ビショップが残される)7.f3 Bd7 8.Na3 a6 9.Nc2 e6 10.Bf4 Bd6 11.Bxd6 Qxd6 12.O-O と進んだレイン対ホフマン戦(米国、1980年)で、白がわずかに優勢だった。

6…Nf6 7.Nd2 Bg4 8.Ngf3 e6 9.Bh4 Bd6 10.Bg3 Bh5 11.Bxd6 Qxd6 12.O-O O-O

 この局面を前局でやはり黒が12手目を指した直後の局面と比較すると基本的な違いが二つしか見られない。

 (a)白のクイーンはb3でなくd1にいる。これはクイーン翼ルークが攻撃の目的のためにe1へ行けないことを意味している。

 (b)黒のクイーン翼ビショップはf3で交換されていなくてh5にいる。だから黒はこのビショップをg6に引くことができるのでキング翼の防御にもっと融通性がある。

 全体として黒は前局よりわずかに有利で楽に互角になっている。

13.Re1 Rab8 14.a4 Qc7!

 ここは勝負所である。白は黒の少数派攻撃の開始を一時的に防いでいた。14…a6 なら 15.a5! と応じて黒のクイーン翼が麻痺するからである。

15.Qb1 a6 16.Ne5 Rfe8

 ここで 16…b5 は食指が動かない。17.axb5 axb5 18.b4! となれば少数派攻撃は止められ、黒のbポーンは白のcポーンより弱くなる。だから黒はキング翼ルークをe列に回して白の f2-f4-f5 突きに対して予防措置をとった。17.Nxc6?! は 17…bxc6! 18.Bxa6 Qb6 でポーンを取り返して有利になるので恐れる必要がない。

17.h3 Bg6 18.Bxg6

 18.Nxg6?! は 18…hxg6 19.Nf3 e5! で駒の働きが良く黒が少し優勢になる(アーナンド)。

18…hxg6 19.Qd3 Nxe5 20.dxe5?

 白は局面の判断を大きく誤った。白はキング翼を攻撃することを夢見ている。しかしそのための前提条件となるものは何もない。否定的な面としてはc5への利きをなくすので黒がクイーン翼で効果的な作戦を始めることができる。さらにはe5のポーンは強さよりも弱点になる。

 正着はポーン陣形を安定なままにしておく 20.Rxe5 だった。それならGMアーナンドは 20…Rec8! のあと 21…Ne8 から 22…Nd6 と指し、いい勝負だと言っている。その場合少数派攻撃はもっと後の段階で見られたかもしれない。

 実戦の手のあと黒はすぐに有利な收局に持ち込み、そのあと白がさらにポーン陣形を弱めたことにつけ込んで危なげなく勝った。このあとの指し手は本稿の主題外なので、記号を少し付けるにとどめる。完全な分析は『チェス新報』第60巻第129局のGMアーナンドの解説を参照されたい。

20…Nd7 21.Qd4 Rec8 22.Re3 Qb6! 23.Qxb6 Nxb6 24.h4 Kf8 25.g3 Ke7 26.b3? Rc7 27.a5?! Nd7 28.c4 Rbc8! 29.Kg2 Nb8! 30.Ra4 Rd8! 31.f4 Nc6 32.Rd3 Rcd7 33.c5 f6! 34.Nf3 d4 35.exf6+ gxf6 36.Nd2 e5 37.Ne4 Rd5 38.fxe5 Rxe5 39.Nd6 Rxc5 40.Nxb7? Rc2+ 黒投了

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2016年04月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(416)

「Chess Life」2016年1月号(4/4)

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第2回大富豪チェス大会(続き)

 月曜の最後の席への最終局はナカムラ対ソー戦になった。二人は快速戦で30局以上対局しているのでなじみの対局になった。2局引き分けのあと最終局の色は硬貨投げによって決められることになった。ナカムラは裏を選び、幸運はまたも彼の上に微笑むことになった。彼は白を選びソーを「今大会最高の試合」で破った。

イギリス布局フロール=ミケナス・システム [A18]
GMヒカル・ナカムラ(2884)
GMウェズリー・ソー(2829)
第2回大富豪チェスオープン(準決勝進出決定第8局)、ネバダ州ラスベガス
2015年10月12日

1.c4 Nf6 2.Nc3 e6 3.e4 d5 4.cxd5 exd5 5.e5 Ne4 6.d4 Nc6 7.Bb5

 ソーは布局を手早く指してきたが、ここで手順を考えているかのように熟考した。

7…Be7 8.Nge2 O-O 9.O-O Bf5 10.Be3

10…Na5

 代わりに白の弱い白枡と変な所にいる白枡ビショップにつけ込む 10…Nb4 なら狙いがもっと多かった。

11.Nxe4 Bxe4 12.Ng3 a6 13.Bd3 Bxd3 14.Qxd3 Nc4 15.Bc1 f6 16.b3 Nb6 17.e6

 白は勝ちにいった。g3のナイトは働く余地が大いにあり、f5の拠点を目指す。

17…Qd6

 この手は白にe6のポーンを支えさせるだけで、Nf5 を誘っているに等しい。

18.Re1 g6 19.Bh6 Rfe8 20.f4

 黒の一連の手は支離滅裂で、駒が麻痺状態に陥った。

20…Kh8 21.f5 g5 22.Nh5 Rg8 23.h4

 白は容赦なく攻めたてる。

23…g4 24.Rf1 Qd8 25.Qe2 Qe8 26.Nf4 Bd6 27.Rae1 c6 28.e7 Nc8 29.Qe6 Bxe7 30.h5 b5

 黒は重圧につぶされた。白はここから果断な手でh列をこじ開けることができた。

31.Ng6+ hxg6 32.hxg6 Ra7 33.Kf2 g3+ 34.Kf3 Rxg6 35.fxg6 Qxg6 36.Qxc8+ Kh7 37.Rh1 黒投了

(クリックすると全体が表示されます)

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(この号終わり)

2016年04月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6