2016年02月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(411)

「Chess Life」2015年12月号(3/3)

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2015年の15大局面

GMイアン・ロジャーズ

第14局 ナカムラのハンマーパンチが炸裂
GMウエズリー・ソー(FIDE2779、米国)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2814、米国)
2015年シンクフィールド杯第6回戦、ミズーリ州セントルイス
2015年8月29日

 黒の手番

 2015年シンクフィールド杯からの最も華々しい手。ナカムラは既に2ポーンを犠牲にしていて、ここで火に油を注ぐ。

26…Nxe4!! 27.Rd1?!

 ここから後はハンマーパンチの連続だった。しかし後日の分析によるとましな 27.Rxd7 でも 27…Rxf3! で黒が優勢になるし、27.fxe4 は 27…Rf1+ 28.Kg2 Be3! で …h3+ から …Qh6+ を狙われて白の負けになることが明らかになった。

27…Rxf3! 28.Rxd7 Rf1+ 29.Kg2 Be3! 30.Bg3 hxg3! 31.Rxf1 Nh4+ 32.Kh3 Qh6!

33.g5 Nxg5+ 34.Kg4 Nhf3! 35.Nf2 Qh4+ 36.Kf5 Rf8+ 37.Kg6 Rf6+! 38.Kxf6 Ne4+ 39.Kg6 Qg5#

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(この号終わり)

2016年02月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(177)

「Chess Life」1997年3月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

少数派攻撃(続き)

戦場はすべてクイーン翼

クイーン翼ギャンビット拒否 [D36]
白 GMバジム・ルバン
黒 GMアレクサンドル・パンチェンコ
ロシア選手権戦、1994年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 c6 5.Bg5 Nbd7 6.cxd5 exd5 7.e3 Be7 8.Bd3 O-O 9.Qc2 Re8 10.O-O Nf8 11.h3

 白の当面の有利な点は白枡ビショップの働きが優っていることである。本譜の手で黒のビショップが 11…Bg4 とかかって働いてくるのを防いでいる。黒は代わりにf5の地点でビショップ同士を交換する周知の手法を選んだ(バクロ対イフコフ戦も参照せよ)。その欠点は手数がかかることで、それにより白は半素通し列に黒の出遅れcポーンを残させる少数派攻撃の戦略目標を達成することができる。

11…g6 12.Rab1 Ne6 13.Bh6 Ng7 14.b4 a6

 黒にとって一つの「永遠」の問題はaポーンの交換を目指す(または許す)べきかということである。本局ではそうするが、次局では避ける。大部分の状況では(aポーンを)交換した方が黒のためになるように思われる。白の主導権はクイーン翼にあるので、ポーン交換は黒がaポーンを守ることを気にする必要がなくなることを意味する。

15.a4 Bf5 16.Bxg7 Bxd3 17.Qxd3 Kxg7 18.b5 axb5 19.axb5 Ra3 20.bxc6! bxc6

 黒は 20…Qa5 21.Rfc1 Bb4? で戦術に訴える状況にない。22.cxb7 Rb8 23.Ne5 で白の勝ちになる。

21.Qc2 Qa5 22.Rfc1 Bb4 23.Rb3 Rc8 24.Rxa3 Qxa3 25.Nb1!

 黒はキング翼での作戦さえ目指さなかったので、白の唯一の気がかりは適時の …c5 突きで黒がc6の弱点を清算しないようにすることである。この図の局面で 25…Qa5 なら白は 26.Nbd2! で優勢を維持する(26…c5? は 27.Nb3 で黒の負けになる)。

25…Qa6 26.Ne5! Bd6

 ここで 26…c5? は 27.Nd3 で黒が負ける。

27.Nd3 Nd7 28.Nc3 Nf6 29.Na4 h5?

 小駒をすべて交換することは白がcポーンを取ることを非常に難しくさせることに気づかないことにより、黒は戦略的に大きな間違いを犯した。GMルバンは 29…Ne4! 30.Nac5 Nxc5 31.Nxc5 Bxc5 32.Qxc5 を推奨し、白の優勢はわずかだが危険性はない。

30.Nac5 Bxc5 31.Nxc5 Qa7 32.Qd1! Qe7?

 黒はa列とc列の両方を白の大駒に明け渡す余裕はない。32…Nd7 33.Ra1 Qc7 34.Nd3! が必然で、白ははっきり優勢だが一本道の勝ちはない。

33.Qa4! Ne4 34.Qa6 Nd6 35.Nd3! Qb7 36.Qxb7 Nxb7 37.Nb4

 38.Nxd5 と 38.Rxc6 の両狙いに受けはない。このあとの「ナイトと4ポーン」対「ナイトと3ポーン」の收局は理論的に勝ちとして知られている。完全な解説は私の著書の『Practical Knight Endings』(チェス・エンタープライズ社、1993年)の63~68ページを見て欲しい。GMルバンの完全な解説は『チェス新報』第61巻第437局に載っている。

37…c5 38.dxc5 Rxc5 39.Rxc5 Nxc5 40.Nxd5 h4?! 41.f4 Ne4 42.Kf1 f5 43.Ke2 g5 44.fxg5 Kg6 45.Nf4+ Kxg5 46.Ne6+ Kf6 47.Nd4! Nc3+ 48.Kd3 Nd5 49.Nf3 f4 50.e4 Nb4+ 51.Kc3 Nc6 52.Kc4 Ke6 53.Nd4+ Ke5 54.Nxc6+ Kxe4 55.Nd4 Ke3 56.Nf3 Kf2 57.Nxh4 Kg3 58.Kd4 Kxh4 59.Ke4 黒投了

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2016年02月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(410)

「Chess Life」2015年12月号(2/3)

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ワールドカップ(続き)

 米国勢の挑戦は大会前の優勝候補で第2シードのヒカル・ナカムラが今大会絶好調のGMパブロ・エリャーノフとの対戦で精彩を欠いて負け準々決勝(第5回戦)での最初の敗退者になったときに終わった。

ナカムラの進撃終わる
GMパブロ・エリャーノフ(FIDE2717、ウクライナ)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2814、米国)
ワールドカップ第5回戦、バクー、アゼルバイジャン
2015年9月23日

 黒の手番

 黒陣は守勢ではあっても堅固である。そして 19…Rd8 20.Rac1 Bxc5 21.dxc5(21.Qxc5 でも黒の応手は同じ)21…Na6 と指せば白の優勢は最小限だった。

 ナカムラは双ビショップを残す方にこだわったが

19…Na6?!

のあと撃破された。

20.Nxb7! Qxb7 21.Bxc6 Qc7

 黒は 21…Qa7 でクイーン交換を避ければa5のポーンを取られる(もっともその方が実戦的には良かったかもしれない)。

22.Bxa8 Qxc3 23.bxc3 Rxa8 24.Nc6 Bd8 25.Nxd8 Rxd8 26.f3

 戦力的には黒は全然悪くない。多くの局面でビショップとナイトはルークと2ポーンに対して対抗できる。

 しかしここでは黒の小駒は働きのない地点にいて、エリャーノフは白が勝勢に近いと判断していた。

26…Rc8 27.Ra3 Bg6 28.Kf2 Rb8 29.Rd2 f6

 この手は引き分け提案と共に指された。エリャーノフにとってはきっと驚きだっただろう。

30.Raa2 Rb3 31.Rab2! Rxc3 32.Rb5 Bc2 33.Rxa5 Nc7 34.Ra7 f5 35.a5

 ナカムラは白の多くの狙いに対して受けようがなく、23手後に投了した。

 ナカムラは次の対局で全然勝てるような感じがなく、すぐにバクーを後にした。

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(この号続く)

2016年02月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(176)

「Chess Life」1997年3月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

少数派攻撃

 「数の優る」方面で戦えが世間一般の通念である。つまり働ける駒が多い、動けるポーンが多い、または両方とも多い所である。しかしチェスでは数だけが問題なのではない。質も問題であることが非常によくある。

 それが今回の標題である「少数派攻撃」である。「少数派攻撃」とはポーンが少数である側でポーンを突いていくことである。少数派攻撃の目的は相手のポーン陣形に弱点を生じさせることである。それにより相手の強み(例えばクイーン翼の多数派ポーン)は長期的な負債になる。少数派攻撃は長期的な戦略目標を促進させるだけなので、この用語は一般にキングのいない側でのポーン突きにのみ適用される。例えば両者がキング翼にキャッスリングしたら、クイーン翼でのポーン突きだけが少数派攻撃と言われる。

 「百聞は一見に如かず」なので図を見てみよう。

 このポーン構造は古典dポーン布局でよく見られる。もっともよくできるのはクイーン翼ギャンビット拒否のオーソドックス戦法の交換戦法からである。白には中盤戦での作戦で同等の戦略構想が二つある。

 1.優勢側での作戦 f3 から e4 と突いて中央で優勢を築く。白の作戦は通常中央とキング翼で行われる。

 2.少数派攻撃 b2-b4 から b5 と突いていく。白はクイーン翼に専念し、c列が作戦の主戦場となる。

 クイーン翼ギャンビット拒否の交換戦法はの少数派攻撃の最も重要な例で、実戦例もすべてそれから取った。読者は本誌の昨年9月号の本稿で取り上げたバクロ対イフコフ戦(1996年、カンヌ)も読み返してみるとよい。

 今回は交換戦法の最も重要な主眼の局面を四つ考察する。次回は黒の用いる少数派攻撃の最も重要な例を取り上げる。

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2016年02月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(409)

「Chess Life」2015年12月号(1/3)

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ワールドカップ

 第3回戦が終わったところで勝ち残っている選手は16人に絞られ、著名選手も何人か消えていた。その中には8人のシード選手中たった二人のロシア人のウラジーミル・クラムニクとアレクサンドル・グリシュクが含まれていた。

 米国の3人の選手はみな4回戦に進んだが、ナカムラのヤン・ネポムニシーとの試合は名局で、両選手とも1局目に負けながら次の試合を勝って互角にした。

名局
GMヤン・ネポムニシー(FIDE2705、ロシア)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2814、米国)
ワールドカップ第3回戦、バクー、アゼルバイジャン
2015年9月19日

 黒の手番

 ネポムニシーは生き残るためにはこの試合に勝たなければならなかった。ナカムラが 40…N8b6! と指していたら第4回戦進出にたいして手数はかからなかっただろう。

 代わりにナカムラの指した手は…

40…e4? Rd2!!

 黒はd列を開放して損害を招いた。

 試合は次のように続いた。

41…Rxd1 42.Rxd1 Nxe3+ 43.Kb1!

 しかしここで黒にとって致命的なのは素通しc列であることが明らかになった。ナカムラは投了を余儀なくされた。

43…Qd6 44.Rdc1 Nd5 45.Rc6 Qh2 46.R6c2 Qf4 47.dxe4 Qxe4 48.Ka1 Nce7 49.Qb7 Re3 50.b6 Re1 51.bxc7 Rxc1+ 52.Rxc1 Nc8 53.Rd1 黒投了

 次にブリッツ2局が指され、ナカムラは1局目を負けたがやり返して1-1に持ち込んだ。それで勝負はハルマゲドンに持ち越された。

 決定戦のハルマゲドンでナカムラは黒で、楽に勝った。しかし対局後解説者のセルゲイ・シポフがナカムラが両方の手でキャッスリングしたという目撃情報をネポムニアシチに伝えて議論が持ち上がった。

 敗退を避けるのに必死なネポムニシーは公式に抗議を提出してナカムラの反則行為を罰するよう求めた。駒を動かす時はすべて片手で行わなければならない。実はこれは初めてではなくナカムラはこの番勝負で「両手で」キャッスリングしていた。

 さらにあとで裁定委員会で明らかになったことだが、対局の様子をスローモーションで再生したところ、ナカムラはハルマゲドンの試合でもルークを先に動かしていた。これもFIDEの規則では不正になる。この違反行為はささいなことだったので普通のスピードではほとんど見分けがつかなかった。だからネポムニシーや審判たちを見抜けなかったと責めたり、ナカムラを「不正行為」で責めたりするのはばかげている。付記すると、ナカムラが慣れ親しんできた米国チェス連盟規約では「キャッスリングする時キングとルークのどちらを先につかんでもよい」と規定している。

 ネポムニシーはナカムラが最初につかんだ駒と違う駒を動かしたとも訴えたが、これは勘違いで、ナカムラは駒を動かしたあと通常は時計を押す前だがときには押した後に駒の位置を直す(良くない作法である)迷惑な癖を持っていた。

 ネポムニシーの訴えはその時に申し立てなかったということで却下されたが、4人(!)の審判が見守っていてそのうちの一人でも気づき時計を止め罰を与えるべきだったと指摘したのはもっともだった。

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(この号続く)

2016年02月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(175)

「Chess Life」1997年1月号(6/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の交換損(続き)

 (3c)キング翼インディアン防御正規戦法、E92

キング翼インディアン防御 [E92]
白 GMアナトリー・カルポフ
黒 GMガリー・カスパロフ
世界選手権戦第11局、1990年

 次の手順から生じる局面は周知の定跡形である。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.Be3 exd4 8.Nxd4 Re8 9.f3 c6 10.Qd2 d5 11.exd5 cxd5 12.O-O Nc6 13.c5

 白は孤立dポーンに対する攻撃の可能性と自分のcポーンによる締めつけ効果とにより有利と考えられてきた。しかし世界チャンピオンは大胆な手で対戦相手とチェス界とに衝撃を与えた。

13…Rxe3!! 14.Qxe3 Qf8!

 黒はここまで5分しか使っていなかった。明らかにこの交換損は「研究」で周到に用意されていた。しかしGMのゲレルとレインは著書の『カスパロフ対カルポフ、1990年』の中で「変化を具体的に読んだ結果ではなかった。この交換損は明らかに大局観に基づいている」と言及している。

 第一級の代償はキング翼ビショップによる黒枡の支配である。二番目はcポーンのぜい弱さと、中央に唯一ポーンがあることにより中央での影響力が上回ることである。目前には 15…Ng4! の狙いもある。

 もちろん交換損の正当性はとても明らかとは言えない。さもなければもっと早く見つけられていた。しかしGMカスパロフは指し口と分析に見られるように並はずれた洞察力で、非実利主義の優れた戦略家は自信をもって交換損を用いることができるということを見せつけた。

15.Nxc6

 この手は22分の考慮時間の後に指された。白は一組のナイトを交換しcポーンを守った。もっともdポーンを強化させ黒ルークのためにb列を素通しにするという代価を払っている。

 約16ヶ月後のゲルファンド対カスパロフ戦(リナレス、1992年)で白は明らかに研究してきた 15.Ncb5 Qxc5 16.Rac1 Qb6 17.Qf2 を指した。しかしGMカスパロフは 17…Bd7! 18.Rfd1 Re8! 19.Bf1 Bh6 20.Rc3 Nb4! で動的にまったくの互角であることを見せつけた。そしてみごとな指し方で61手で勝った。注意すべきは上図の局面で黒は交換損の代わりに1ポーンを得、戦力的には半ポーン損にすぎないことである。本誌の1993年3月号(10~11ページ)のGMカスパロフの素晴らしい記事と、『チェス新報』第54巻第596局の彼の分析とを読んで欲しい。

15…bxc6 16.Kh1

 あとで推奨された 16.Nd1 はオブホフ対セルゲーエフ戦(ソ連、1991年)で指されたが、黒が 16…Rb8 17.Kh1 Be6 18.Qa3 Qe7 19.Rc1 d4! 20.Qa4 Bh6 21.f4 Bd5 22.Bd3 Ng4 23.Qxd4 Bg7! 24.Qg1 Rb4 という具合に猛攻に発展した。完全な棋譜と解説は『チェス新報』第53巻第610局を参照されたい。

16…Rb8 17.Na4 Rb4 18.b3 Be6

 攻撃に出る前にまず展開を完了させた。本譜の手により黒はクイーンをb8に行かせることもできるし …Rh4 でh2の地点を脅かすこともできる。

19.Nb2 Nh5 20.Nd3 Rh4 21.Qf2 Qe7 22.g4 Bd4! 23.Qxd4 Rxh2+!

 黒はチェックの千日手にすることができる。『チェス新報』第50巻第639局にはGMカスパロフの協力者の一人であるGMアズマイパラシビリの分析が載っている。

24.Kxh2 Qh4+ 引き分け

 現執筆時点でのこの交換損の定跡における状況はどうなっているだろうか。白はこの手順を指させないということである。黒が 7…exd4 という手順を用いる時、白は 10.Qd2 を避けて注意深く 10.Bf2 と指している。『チェス新報』第66巻第518局のシポフ対アタリク戦(ギリシャ、1996年)、同第65巻第561局のゲルファンド対ファン・ベリー戦(ベイクアーンゼー、1996年)を参照されたい。黒が最初から 7…c6 と突くなら(上記ゲルファンド対カスパロフ戦[リナレス、1992年]のように)、白もこの機に乗じて 8.d5 と突いて中央を閉鎖する。例えばGMトパロフの分析による『チェス新報』第66巻第520局のサン・セグンド対トパロフ戦(マドリード、1996年)を参照せよ。

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2016年02月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(408)

「Chess」2015年12月号(2/2)

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海外ニュース

H.ナカムラ – レ・クワン・リエム
大富豪チェス大会決勝戦第1局(快速)、2015年
クイーン翼ギャンビット拒否

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Bg5 h6 5.Bxf6 Qxf6 6.Qb3

 ナカムラは持ち時間の短い試合では自分がはるかに強いことを信じて主流手順をはずした。そしてここから黒はたちまちクイーンで手損を重ねる。

6…c6 7.e3 Qe7?! 8.Nbd2 Qb4 9.Qc2 Nd7 10.a3 Qa5 11.Be2 dxc4 12.O-O Be7 13.Nxc4 Qc7 14.b4

 白は黒を締め上げ押し込めている。無理なく優勢で、ここから局面を支配しながらしだいに圧力を強めていく。

14…O-O 15.Rac1 Rd8 16.Qb3 a6 17.Bd3 Nf6 18.Bb1 Bd7 19.e4 Be8 20.e5! Nh7 21.Qe3 b6 22.Rfd1 a5?

 反撃の手がかりを得ようとするのは理解できるが、白は一挙に攻めかかる。

23.d5! Rxd5

 23…exd5 は 24.Nxb6 Rab8 25.Nxd5 と、c列での釘付けを単刀直入に利用される。しかし黒は 23…cxd5!? 24.Nxb6 Qb7 25.Nxa8 Rxa8 26.bxa5 Rxa5 で白の読み筋を少し技術的に妨害した方が良かったかもしれない。

24.Rxd5 exd5 25.Nxb6 Rd8

 最初はこれで黒がそれほど悪くないように見える。しかし白は単にa5のポーンを取るよりもはるかにすごいことができる。

26.Nxd5!

26…Qb7

 これで白は2ポーン得になる。しかし 26…Rxd5 では 27.Qe4 で詰みとd5のルーク取りの両狙いがある。

27.Nxe7+ Qxe7 28.bxa5 Ra8 29.a6!

 このポーンは上述の狙い筋のために取られない。そしてナカムラはここから手早く締めくくった。

29…Nf8 30.Bd3 Ne6 31.Nd4 Nxd4 32.Qxd4 Rd8 33.Qc3 c5 34.Bf1 Rd5 35.Qa5 Bc6 36.a7 Ba8 37.Rb1 Kh7 38.Rb8 c4 39.Qa6 Rd2 40.Rxa8 Qc5 41.Rh8+ Kxh8 42.a8=Q+ 1-0


ヒカル・ナカムラは鋼鉄の意志が報われてラスベガスで優勝した。

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(この号終わり)

2016年02月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(174)

「Chess Life」1997年1月号(5/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の交換損(続き)

 (3b)シチリア防御ドラゴン戦法ユーゴスラビア攻撃、B76

 ユーゴスラビア攻撃の初期に発展し国際大会でまだよく見られる主流手順は次の手順から生じる。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 Nc6 8.Qd2 O-O 9.O-O-O d5 10.exd5 Nxd5 11.Nxc6 bxc6 12.Bd4 e5 13.Bc5 Be6

 ここで白には黒ルークを取る手順がいくつもある。本譜としてI.ポルガー対P.デリ戦(ケチケメート、1972年)を取り上げる。

14.Nxd5

 ルークをすぐに取る 14.Bxf8 Qxf8 でも黒に代償がある。ドラゴンビショップはクイーンそれにルークと共同してb列で白キングに強い圧力をかける。白は黒枡ビショップがないので黒のキング翼ビショップを無力にするのが非常に困難である。

14…cxd5 15.Bb5

 ここでも 15.Bxf8 はトカレフ対グフェルト戦(ソ連、1957年)で 15…Qxf8 16.Qa5 Qe7! 17.Rd3 e4 18.Rb3 d4 19.Rb5 d3! と進んで黒の方が有望だった。

15…d4 16.Bxf8 Qxf8 17.Kb1 Rb8 18.Ba4 d3! 19.cxd3?

 筋はできるだけ閉鎖しておかなければならない。19.Bb3! だけが受かる可能性がある。

19…e4 20.d4 exf3 21.gxf3?! Qa3 22.Bb3 Rxb3! 白投了

 23.axb3 のあと 23…Bf5+ が必殺の手となる。

 要するに、20年ほどの間「誰も」危険を覚悟で強欲な 14/15/16.Bxf8?! を指さなかったということだ。現代の手法は 14.Ne4 で、動的で面白い試合になる。

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2016年02月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2