2016年01月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(407)

「Chess」2015年12月号(1/2)

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棋力診断

GMダニエル・キング

Y.ペルティエ – H.ナカムラ
ヨーロッパクラブ杯、スコピエ、2015年
キング翼インディアン防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.b4 a5 10.Ba3 b6

 ここから開始

11.bxa5

 3点。クイーン翼をできるだけ速く開けるのが最良の方針である。うまくゆけば黒がキング翼で攻撃する機会を得る前に、黒をクイーン翼での防御に専念させることができる。

 11.Nd2 も立派な手で、ナイトをb3に回してクイーン翼での活動を助ける用意をするだけでなく、黒がナイトをh5で使うのを防ぐ。しかし残念ながら大きな欠陥がある。それは 11…axb4 12.Bxb4 c5! 13.dxc6e.p. Nxc6 で、ビショップが下がれない。これが突然成立するのはd2のナイトが白クイーンの利きをさえぎっていて Bxd6 と指せなくなっているからである。勿論白は 14.a3 でこのビショップを助けることができるが、黒はいつでも重要な黒枡ビショップを取ることができるので楽である。

11…Nh5

 これは策のある手である。黒はa5でどのように取り返すかについて白を疑心暗鬼にさせておく。

12.Nd2

 3点。これはいくつかある候補手の一つである。11…Nh5 の局面は公式戦でゆうに100局以上指されていて、大部分は 12.Re1(3点)だった。このルークはビショップがナイトで当たりにされた場合のためにビショップがf1に下がれる余地を作っている。じかし実際は黒は通常 12…f5 と突き戦いが続いていく。

 12.Bb4(2点)は黒にクイーン翼で決断をさせる。12…bxa5 13.Ba3 となるが 13…Nf4 のあと白ビショップを取って黒が十分反撃できる。

 12.Nb5(1点)もa3のビショップが守られているので黒に決断させる。12…Rxa5 13.Bb4 Ra6 となるが、白のクイーン翼の展開はあまり速く進まない。

 12.g3(2点)はナイトをf4に来させないようにする。

12…Nf4

13.axb6

 6点。ポーンは釘付けにされていたんじゃないのか?そのとおり、しかし…

 ペルティエが指すのを10年間待っていた手はこれだった。待つだけの価値はあった。

 13.Nb3(1点)は少し指されているが、原則として黒が白枡ビショップを取ったならあまり多くの問題を抱えるとは思わない。

 同じことは 13.Nb5(1点)にも当てはまる。クイーン翼でうまくいくまでには手数がかかりすぎる。

13…Rxa3

14.Nb5

 2点。これが最善手で、代わりに 14.bxc7 は 14…Qxc7 15.Nb5 Qc5 16.Nxa3 Qxa3 で黒が自由になり白が苦戦する。

14…Ra5

 よくあることだが新手のショックが悪手を誘う。両選手は対局後 14…Ra8 と指す方が良かったと一致した。しかし黒はその局面でも危機を脱していないことは確かである。

15.bxc7

 1点

15…Qd7

16.a4

 4点。白は捨て駒の代わりに十分な代償があることを証明したいのなら、クイーン翼のポーンの前進をすぐに始めることが絶対必要である。

 その点で 16.Nb3 は遅すぎる。16…Rxb5 17.cxb5 Qxc7 18.a4 f5 となって黒の反撃が強力である。

16…Ba6

 黒が上述と同じように 16…Rxb5 17.cxb5 Qxc7 18.a5 ですぐにcポーンを消去しようとすれば、白がポーンの前進で1手得していることが大きな違いになることは明らかである。

17.Nb3

 3点。黒が一段落の機会を得る前にたたき続けることが重要である。

 c4の地点を空ける 17.c5 も面白そうだがそんなことをするまでもない。17…dxc5 と取られるとポーンを突き進めるのがより難しくなる。

17…Bxb5

 ここは白にとって勝負所である。取り方が3とおりあるがどれが最善だろうか。

18.cxb5

 3点。この手が最善手である。ルーク取りは魅力的かもしれないが、実戦の手が断然最強でポーンが進むのを助ける。

 代わりに 18.Nxa5 は 18…Ba6 から …Qxc7 でクイーン翼のポーンが動けない。

 18.axb5 はもっと悪い。18…Rxa1 19.Nxa1 Qxc7 となって黒の駒得がすぐにものを言う。

18…Qxc7

19.Nxa5

 2点。状況によってはルークを取る前にルークにもっと圧力をかける方が面白いかもしれない。しかしクイーンがe2の地点の守りに縛りつけられているので単に取るのが最善である。

19…Qxa5

 ここ数手のたたき合いのあと局面は再び一段落した。在庫調査をして局面に何が残っているかを見てみよう。白は少なくとも帳簿上はルークと2ポーン対小駒2個の戦力得になっている。当面これらのポーンは役に立っていない。だから白は黒のルークはもちろん小駒がクイーン翼での防御に加わる前にポーンを動かさなければならない。

20.g3

 3点。ペルティエは簡明化を追求している。f4のナイトは目障りな駒なので追い払ってしまおう。

 私はナイトから逃げる 20.Bc4(2点)はどうだろうかと考えていた。実戦よりは複雑だがそれでも効果的である。もし 20…Ra8 なら 21.g3 Nh5 22.Qe1 Nc8 23.Qxa5 Rxa5 24.Rfc1 で、ルークがc6に行けばせき止めがすぐに壊れる。また、20…f5 なら 21.Qe1 Qc7 22.Qb4 で、ポーンが前進する用意ができる。

20…Nxe2+

 客観的には 20…Nh3+ 21.Kg2 Ng5 の方が優ることはないが、もっと複雑で、ペルティエはこの交換で安堵したのではないかと思う。局面から霧が晴れつつある。

21.Qxe2

 1点。ナイトがいなくなっただけでなく 20.g3 でキングの逃げ道もできた。非常に順調である。

21…Bh6

22.Rfb1

 3点。最も単刀直入で、かつ最善手である。

 直前の黒の手は白が Qe1 と指すのを防いでいた(…Bd2 があるため)。だから 22.Ra2(1点)にも一理ある。しかし 22…f5 で黒の反撃が嫌味である。

22…Rb8

23.b6

 6点。妙手。もし黒がどちらかの小駒で、しかし特にビショップで、クイーン翼を封鎖できれば、形勢は逆転する。ペルティエの機敏な指し回しで黒は堅固な防御態勢を構築する望みがない。

 黒ルークがf列を離れたので、この局面では 23.Ra2(2点)と指す動機づけが強まる。それでもやはり相手に動く余地を与えておくことはない。

23…Rxb6

24.Rxb6

 1点

24…Qxb6

25.a5

 2点。白は1ポーンの犠牲でルーク同士を交換することに成功し(小駒はルーク無しでは効果的に働かない)、主導権を取り戻した。

25…Qc5

26.Ra4

 1点。これは注意深い手で、たぶんクイーンをc5から追い払う用意をしている(黒が 26…Nc8 と指せば 27.Rc4)。

 26.a6(1点)と突いて何も悪いことはない。それでも 26…Nc8 のあと封鎖は破らなければならない(ルークをb7まで捌きクイーンと一緒にf7の地点をにらめばうまくいくはず)。

26…Kg7

27.a6

 1点

27…Nc8

 白はまだ封鎖を破らなければならない。そして小さな落とし穴に気をつけなければならない。

28.Rc4

 1点

 28.Qc4 と答えたら得点を半減せよ。28…Be3 で黒がすっかり回復する。29.fxe3 とビショップを取ると 29…Qxe3+ で千日手になる。だから白は 29.Qxc5 Bxc5 として收局で勝つようにしないといけないが、容易でないことは確かである。

28…Qb5

 26…Kg7 と指したのはこのためである。ナカムラは策略でねばっている。

29.Qa2

 1点。ナイトが当たりのままなので主導権を保持している。

 29.Rc2(1点)も良い手である。

29…Nb6

 29…Na7 ならどうなるか。3手ほど前に書いた方針がとても役に立つ。30.Rc7 Qb6 31.Rb7 Qd4 32.Qe2 から Qf3 が決め手になる。黒は盤の両側を同時に守ることができない。

30.Rc6

 4点。この局面で勝つ手段はいくつもあるが、この手が最も簡明である。

 30.a7(1点)でも勝つが、それでも手の込んだ手順を少し見つけなければならない。30…Nxc4 31.a8=Q Nd2 ここで 32.Q8a6 を見つけることが必要で、黒は 32…Qb4 で踏ん張る。途中 30…Bd2!? も対処に迷う手である。難解な戦いの終わりでこんな騒動を引き起こす必要はない。

30…Na4

31.a7

 2点。これもまた最も簡明な手である。

 31.Rxd6 は 31…Nc3 32.Qc2 Ne2+ 33.Kg2 Nd4 で紛糾すること確実である。この局面を2、3手後の実戦と比べてみよ。

31…Qa5

32.Kg2

 3点。これが私の最初に思いつく手である。黒のやれる唯一の不意打ちは最下段でのチェックである。だからその問題を取り除こうということである。

 32.Rc4(1点)でも勝つが、32…Qe1+ 33.Kg2 Nb6 34.a8=Q Nxa8 35.Qxa8 Be3 で紛れる余地がある。白は 36.Qa2 と守るがビショップがc5に据えられればその局面を勝つのは容易でない。

 32.Rc7(1点)もちょっと集中力が必要だが勝つだろう。

32…Qxa7

33.Rc4

 1点。何のごたごたもなくナイトを取り上げる。

33…Bg5

34.Qxa4

 1点。34.Rxa4 も同じ。

34…Qb7

35.Rb4

 2点。黒クイーンが白陣の背後で反撃策を見つけるのを防いだ。

 35.Qb4 は1点。黒は 35…Qa6 でまだのたくる。35.Qc6 Qb2 も同じ。

35…Qc7

36.Qc6

 1点。終わりが見えてきた。ナカムラは交換を断らなければならないが、クイーンが盤端に追いやられる。

36…Qa7

37.Qxd6

 1点。代わりに 37.Rb7 は 37…Qd4 で少し長引く。

37…Be7

38.Qxe5+ 1-0

 1点。そしてここでナカムラは 38…f6 39.Qb8 で戦力損が縮まらないので投了することにした。

判定
 0-16点 不運
17-33点 クラブの平均的な選手
34-43点 クラブの強豪選手
44-51点 FIDEマスター
52-57点 国際マスター
58-63点 グランドマスター


対局後のナカムラのツイッター「短期間に対局過多になると悪いことが起こりがちだ」

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(この号続く)

2016年01月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(173)

「Chess Life」1997年1月号(4/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の交換損(続き)

 後半は黒が布局で交換損を無難にやってのけるのに必要な条件について集中的に検討していく。

 (3a)2ナイト防御、C58

 今よりも「ロマンチック」な時代の流行定跡がこれだった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Qf3

 控え目な(そして私が正着はこれだけと考える)8.Be2 の代わりに、白は強引な強襲を続けている。白の3個の駒が散らばって展開しているだけなのに(クイーン、b5のビショップ、g5のナイト)、黒は交換損をすることができないのだろうか。

8…cxb5

 この手のあと主手順は次のように進む。

9.Qxa8 Qd7 10.Qf3 Bb7 11.Qe2 Be7

 代わりに 11…Bxg2 には将来性がない。ザイツェフ対ホフロフキン戦(ソ連、1954年)では 12.Rg1 Bc6 13.d3 Qf5 14.Bd2 Nb7 15.Nc3 Be7 16.O-O-O と進んで、白が展開で先行し、キングが安全で、完全に交換得になっていた。

12.d3 Nc6 13.c3 O-O 14.O-O Nd5 15.Nh3! Re8 16.Nd2 f5 17.Nb3

 GMヤーコフ・エストリンの分析はここで「白がはっきり優勢」という評価で終わっている。私も同じ意見で、交換損に1ポーン損は黒が引き換えに得たわずかな展開の優位のためには犠牲が大きすぎる。上図に戻れば黒の展開は白の展開よりもそれほど上回っていないので(f6のナイトが好所に展開しているだけで、a5のナイトは盤端で遊んでいる)、完全な交換損をするわけにいかないことが分かる。

 しかし 8.Qf3?! は本当は疑問手である。黒は傲慢に 8…cxb5? と指すべきでない。代わりに度を越さない 8…Rb8! なら黒が優勢になる。例えばジベルル対クルジスニク戦(ユーゴスラビア、1956年)では 9.Bxc6+ Nxc6 10.Qxc6+ Nd7! 11.d3 Be7 12.Nf3 O-O 13.Qe4 Rb4 14.Qe2 e4! 15.dxe4 Nc5 16.Nc3 Ba6 17.Qd1 Qa5 18.Nd2 Nxe4 と進んで黒が勝った。

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2016年01月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(406)

「British Chess Magazine」2015年11月号(1/1)

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アマ向きの布局

ピート・タンバッロ

 セントルイスでの今年の米国選手権戦は期待以上の面白い試合が多かった。ナカムラ対オニシュク戦で2ナイト防御が指されるのを見るのはまったく予期していなくて、ルイロペスやシチリアから離れたのは良かった。定跡が興味深かったが、最後に思いがけずしくじったオニシュクにはほとんど慰めにならない。

□H.ナカムラ
■A.オニシュク

2015年米国選手権戦、2ナイト防御 [C44]

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Bc4 Nf6 5.e5 d5 6.Bb5 Ne4 7.Nxd4

 この手に対して堅実な選手は決まって 7…Bd7 と指すが、それならそもそもなぜ2ナイト防御を指すのだろうか。ジンジハシビリはこのことを 7…Bd7 8.Bxc6 bxc6 9.O-O Bc5 10.f3 Ng5 11.f4 Ne4 12.Be3 Qb8 13.Nc3 Qxb2 14.Nxe4 dxe4 15.Qd2 という手順で強調し、理由を示すことなく白が優勢とした。しかし 15…Rd8 または 15…Qb4、あるいは 15…Qa3 という手でさえ黒が問題なく指せるように思われる。もっとも f5 のあと f6 または d6 を絶えず狙われて黒は神経を使わされる。

7…Bc5!? 8.Be3 O-O 9.Nxc6 bxc6 10.Bxc5 Nxc5 11.Bxc6 Rb8 12.O-O Rxb2 13.Qxd5

 『チェスライフ』誌の記事の内外でこの局面についての騒ぎがやかましかった。『Chess Openings for White, Explained』の書評で、私は白が優勢というジンジの分析は少し楽観的であると指摘しておいた。第2版では分析が一部改訂されたが、局面の評価には何も変更がなかった。アレクサンドル・オニシュクは独自の道を行くがそれも問題ない。他には 13…Qe7 14.Nc3 Rxc2 15.Qd4 Ne6 16.Qd3 Rb2 17.Nd5 Qc5 18.Rac1 Qd4 19.Qf5 Kh8 20.Rcd1 Qh4 と 13…Rxc2 14.Na3 Qxd5 15.Bxd5 Re2 も互角になる。

13…Qxd5 14.Bxd5 Rxc2 15.Na3 Re2

16.Rac1

 16.f4 Be6 17.Bf3 Rb2 =(17…Rxa2 18.Rxa2 Bxa2 19.Ra1 Be6 20.Nb5 Nd3 21.g3 c5 22.Rxa7 Rd8 23.Nd6 Rb8 24.Be4 ±)18.g3(18.Rfc1 Nd3 19.Rxc7 Nxf4 黒が少し優勢)18…Rd8 19.Rfc1 Rd3 互角の形勢。

16…Nd3

 16…Ne6 =。

17.Rxc7 Be6 18.Bb3

 18.Bxe6 なら 18…fxe6 19.Nb5 Rxa2 20.Nd4 Rf7 =。

18…a5!?

 たぶん勝とうと頑張った。変化はあるがどれも引き分け気味は明らか。18…Bxb3 19.axb3 Nxe5 20.Rxa7 Rb8 21.Rb1 g6 22.Kf1 Ra2 23.Nb5 Rxa7 24.Nxa7 Kg7 白はbポーンがパスポーンになっているが、黒に完全に見張られ拘留される。

 18…Nxe5 19.Rxa7 Nc6 20.Ra4 Bxb3 21.axb3 Rb8 22.Rb1 g6 23.b4 Rxb4 = 黒はここで最下段での詰みの狙いを利用している。

19.Ra7

 19.f4 は 19…a4 20.Bxa4 Bd5 21.Rc2 Re4 22.Bc6 Bxc6 23.Rxc6 Nxf4 で黒に問題がない。

19…Bxb3 20.axb3

20…Rxe5?!

 もっと楽な手が二つあった。20…Nxe5 21.Rxa5 g6 = または 20…Rb8 21.Nc4 Nxe5 22.Nxa5 g6 =。

21.Nc4! Rb5 22.Rb1 Nc5

 両者ともgポーンを1枡突いてそれからもう少し指し始めるべきだった。黒の …Nc5 は見かけは魅力的だけれども、黒が引き分けを達成するのをより難しくさせる。

23.Nxa5! Re8

 ここで両者はようやく一時停止して逃げ道を作った。

24.g3 g6

 これで問題は白がポーンをb8まで送り届けることができるかということである。18手目の解説と対照的にここでは黒がより守勢に立たされているので守るのがもっと難しくなっている。

25.b4 Nd3 26.Nc6 Re2 27.Rd7

27…Nxf2??

 ポカ。ナイトが戻ってきて2ルークを両当たりにする危険性が見えていなかった。イタタタタ!

 代わりに黒は 27…Rb6 28.Rxd3 Rxc6 29.b5 Rb6 30.Ra3 Re5 31.Ra5 と指すことができた。白ポーンは進攻し守られているが、どうということもない。黒は白キングを遮断できそうなので、白キングは何の助けにもならない。

28.Nd4! Nh3+ 29.Kh1

 逆に行くのは致命傷になる。29.Kf1 Rf2+ 30.Ke1 Re5+ 31.Kd1 Re8 32.b5 Rxh2 33.b6 Nf2+ 34.Kc2(34.Kc1 Nd3+ 35.Kd1 Re1#)34.Ne4+ 35.Kc1 Nc3 36.Nf3 Rh1+ 37.Kc2 Nxb1

29…Nf2+ 30.Kg2 Nd1+ 31.Nxe2 1-0

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(この号終わり)

2016年01月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(172)

「Chess Life」1997年1月号(3/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の交換損(続き)

 (3)決断には戦略の深い理解が必要である

二ムゾインディアン防御 [E58]
白 GMサミー・レシェフスキー
黒 GMティグラン・ぺトロシアン
チューリヒ挑戦者決定大会、1953年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Bd3 d5 6.Nf3 c5 7.O-O Nc6 8.a3 Bxc3 9.bxc3 b6 10.cxd5 exd5 11.Bb2 c4 12.Bc2 Bg4 13.Qe1 Ne4 14.Nd2 Nxd2 15.Qxd2 Bh5 16.f3 Bg6 17.e4 Qd7 18.Rae1 dxe4 19.fxe4 Rfe8 20.Qf4 b5 21.Bd1 Re7 22.Bg4 Qe8 23.e5 a5 24.Re3 Rd8 25.Rfe1

 この局面とその後の指し手についてはGMティグラン・ぺトロシアンが、遺作の『Petrosian’s Legacy』(ぺトロシアンの遺産)の68~69ページで詳しく解説している。白は中央で優勢で、双ビショップを所有し、26.Bf3 から 27.d5 で戦略的に黒を圧倒することを狙っている。黒はこの作戦に対抗するためにはナイトをd5に据える必要がある。しかしどのようにして達成するのだろうか。ルークがc7、b7、a7など横に動けば 26.e6 という強手を招く。GMぺトロシアンはこの局面を次のように回想している。「この局面では長考していた。そして正着を見つけたとき愉快な気持がした。その手は非常に単純だったので、正しいことに疑いがなかった。」そしてその正解の手とは・・・

25…Re6!!

 この手は「一流の必要な犠牲」と呼ぶことができる。白はまずクイーン翼で出撃しようとする。しかし黒が食いついてこないと、白は犠牲を受諾するよりなかった。

26.a4 Ne7! 27.Bxe6 fxe6

 結果として白の中央での動きが止まり、ルークはe列で無用になり、黒のナイトは絶好のd5の地点に行くことになり、クイーン翼では黒にパスポーンの可能性ができた。

28.Qf1 Nd5 29.Rf3 Bd3 30.Rxd3

 30.Qf2 は 30…b4 で黒にだけ何かをする機会がある。この手と32手目でレシェフスキーはしっかりした引き分けに同意した。

30…cxd3 31.Qxd3 b4 32.cxb4 axb4 33.a5 Ra8 34.Ra1 Qc6 35.Bc1 Qc7 36.a6 Qb6 37.Bd2 b3 38.Qc4 h6 39.h3 b2 40.Rb1 Kh8 41.Be1 引き分け

 d4にある白の得しているポーンは勝つ目的には何も関係しない。

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2016年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(405)

「Chess Life」2015年11月号(3/3)

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收局 ルーク・ビショップ・gh対ルーク・fgh

解説 GMジム・タルジャン

 下図は2014年トロムセ・オリンピアードでのGMシャフリヤル・マメジャロフ対GMヒカル・ナカムラ戦の33手後である。最終戦の主将戦は最終順位にきわめて重大だった。

 トロムセで米国チームの監督を務めたIMジョン・ドナルドソンは帰国後まもなく、マメジャロフ対ナカムラ戦で両者が見落とした黒の引き分ける妙手を私に見せてくれた。この実戦例を検討するのは、以前にマスターの試合に現れているしこれからも現れるはずなので、読者の興味を引くことと思う。この收局の構成は一方がルーク、ビショップ、それにg・hポーン、他方(防御側)がルーク、それにf・g・hポーンからなっている。もちろん対称形でポーンがクイーン翼にある可能性もある。しかしほとんどの場合キング翼で起こる。キング翼にキャッスリングすることが多いことと、キャッスリングしたキングを守るキング翼ポーンが收局まで生き残れることが多いこととを考えれば、驚くには当たらない。

 上図の收局になる数手前から始めよう。

 マメジャロフは序盤から優勢だった。そしてここでは 29.Rb7 か単に 29.exd4 かというように非常にうれしい選択がある。彼は本稿での收局になる手を選んだ。

29.Rxa7 dxe3

 29…Nc5 は 30.Bd5! d3 31.Bxf7+ Kf8 32.Bh5 と来られて食指が動かない。

30.Rxd7! Rxd7 31.a7 exf2+ 32.Kxf2 Rxa7 33.Rxa7

 そしてこの局面である。白はここから一見難なく短手数で勝った。しかしこのあと分かるようにこの局面はまだ指す余地がある。

 黒は陣形の弱体化をできるだけ避けながら最下段での詰みを防がなければならない。白はf7のポーンをルークとビショップとで攻撃するが、黒はちょうどルークをf6に回してf7の標的をすぐ守ることができる。そこで少し手を進めてみよう。

33…g6 34.Ke3 Rb6 35.Bd5 Rf6

 そしてここから白はどのようにして勝つのか。実戦の手を追う前に私の考える要点を概説しよう。

 ルークがないとすると、黒は白のgポーンを交換でなくし白にhポーンと誤ビショップだけを残させるのでなければ、一般に見込みがない。だから白はルーク同士の交換を迫って黒ルークを追い回すことができる。

 黒は一般にポーン突き、特にgポーンやhポーン突きを避けるべきである。ここでは黒は隅に要塞をこしらえている。黒のポーンが動くと、白は侵入とルークの強制交換がより容易になり簡単に勝つはずである。(これはキャッスリングしたキングの囲いを弱めるなという基本に合致している。)

 白がルークを7段目に置いてf7のポーンを攻撃すれば、ここでのように黒はルークをf列に置いて守らなければならない。白がルークをf列に転じてf7のポーンを攻撃すれば、黒はできるならルークを7段目に引き戻すか、fポーン突きに従わなければならない。白ビショップは中央のd5に居るのが望ましく、g2のポーンを守り、f7のポーンを攻撃し、b7またはa2などほかの地点への移動をにらむ。白キングはビショップおよびルークと協力する。手詰まりも視野にある。白がルーク、ビショップ、それにキングをうまく切り回せば、黒ルークはすぐにどこにでも駆けつけるというわけにはいかず、いずれは圧倒され、最小限でも黒はfポーン突きに応じなければならない。

 以下がこの局面で白が勝つためのゆっくりだが組織的な手段の概要である。g2のポーンはd5のビショップによって守られるようにそこに置いておく。hポーンをh3に突くのは構わない。白ポーンは必要最小限の戦力によって守られるようにする。(白ポーンを原位置に近い所に置いておくのも、黒がポーン交換を考えることさえ難しくさせる。白の両方のポーンを交換でなくしルーク対ビショップとルークの收局を守るのが黒の一番の希望である。黒のほかの希望は白のビショップと誤色hポーンの收局に持ち込むことである。)ビショップとルークの利きをf7に集中させ、たぶんキングもe7またはe8に置く。ルーク交換を狙うことにより黒ルークを圧倒し、いつかは黒がfポーンを突かなければならないようにする。そのあと局面は新たな段階に入るが、fポーン突きにより弱体化した地点に侵入して白にとってはうれしいことにそれまでよりも容易なものとなる。

 しかし白には別の勝ち方があり、それはうまくゆけば手数と労力が少なくて済む。つまり次のポーン收局が白の勝ちであることを利用するものである。

 白先なら次のように指す。

1.Kd5!

 1.Ke5? では駄目で、1…Ke7 で黒キングが見合いを取り白キングを寄せつけず引き分けになる。

 しかし 1.Kd5! なら黒キングはいずれ自分のポーンから引き離されg8に行くことになる。面白いことに防御側が昇格枡を支配しているほかのほとんどの1ポーン局面と違って、黒はここでは引き分けにすることができない。本当か?ポーンを1段ずつ下げて白ポーンをg4、黒ポーンをg5に置くと、黒はポーンを失ってもまだ引き分けにできる。ポーンを1段ずつ上げて白ポーンをg6、黒ポーンをg7に置いても、黒キングが隅で手止まりになってやはり引き分けになる。(gポーンやhポーンの場合の話で、それより中央のポーンには当てはまらない。)引き分け(ポーンがa列またはh列の場合だけ黒が引き分けにできる)でなく負けになるのはこのポーン配置(白ポーンが5段目で黒ポーンが6段目)に限った唯一の(私に言わせれば驚くべき)特異性である。これはもっと複雑な收局の一つの可能性として常に出てくるので、絶対知っておかなければならない。

 白はこの二つの手法を組み合わせることができる。黒がfポーンを突くことに応じないならば、適切なときにキングとポーンの勝ちの收局に移行するぞと脅す。しかしこれから見られるように、すべて正確に時機を見計らなければならない。もし白がgポーンを突き進めて時機を早まれば、黒はポーンをすべて交換して理論的に引き分けのルークとビショップ対ルークの收局に逃げることができるかもしれない。

 マメジャロフは単刀直入に手を進めた。ポーンをg5まで進め、ルークをf7で切ってキングとポーンの勝ちの收局に持ち込んだ。しかし複雑な所はほとんどない。hポーンはまだ交換されていない。

36.g4 h6

 代わりに 36…Kg7 と指すこともでき、37.g5 とさえ突かせることになる。

37.Ke4 Kg7 38.h4 Rf1 39.Rb7

 どういうわけか白は決定的な g4-g5 突きを指す前に1手待った。(あるいは規定手数の1手前でタイミングを見計らって40手目を指すつもりだったのか)ここから試合は急転直下終わった。

39…Rf2 40.g5 hxg5 41.hxg5 Re2+

 投了前の気休めのチェック。

42.Kd4 黒投了

 42…Rd2+ 43.Kc5 Rc2+ 44.Kd6 Rf2 45.Rxf7+ で上図白勝ちのキングとポーンの收局になるので黒は投了した。

 しかし終わりの方の手でたぶん時間切迫でどんな見落としがあったか分かるか?白のこのやり方はhポーンがこの状態ではこんなにうまくいくはずもない。黒の40手目に戻ろう。

40…Rf5!

 ジョン・ドナルドソンが私に指摘したように、ナカムラはここで絶好の機会を逃した。41.Rxf7+ は勝ちにならない。

41.Rxf7+ Rxf7 42.Bxf7 Kxf7 43.Kd5(43.Ke5 でも 43…hxg5 44.hxg5 Ke7 で引き分け)43…Ke7! 44.Ke5

 44.gxh6 なら白はポーンがh列にしか残らないので、黒はキングをh8に行かせて引き分けにできる。g6のポーンを取られることさえ気にする必要がない。

44…h5!

 単純でしてやったり、と思わないか?hポーンがくっついていることは白キングがどのように近づくかにかかわらず、見合いを取るのに必要な間合いを黒に与えてくれる。引き分けである。

 だから 40…Rf5 のあと白は 41.Rxf7+ の手段が勝ちにならないことに気づいたとき、ほかの手段を見つけなければならない。しかしもうポーンを突いてしまっているので手遅れで、ポーンが全部交換でなくなってルークとビショップ対ルークの收局になってしまう。ドナルドソンは 41.Be6 Rf1 42.Kd5 Rd1+ 43.Kc5 hxg5 44.hxg5 Rg1 45.Rxf7+ Kh8 という変化をあげている。黒は白の最後のポーンを消去しキングがこんなにひどい地点に行っても、ルークとビショップ対ルークの收局を守り切るはずである。

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(この号終わり)

2016年01月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(171)

「Chess Life」1997年1月号(2/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の交換損(続き)

 (2)決断は必要である

アリョーヒン防御 [B04]
白 GMパトリック・ウォルフ
黒 GMニック・ド・ファーミアン
学校にチェスを・国際大会、1996年

1.e4 Nf6 2.e5 Nd5 3.d4 d6 4.Nf3 dxe5 5.Nxe5 g6 6.g3 Nd7 7.Bg2 Nxe5 8.dxe5 c6 9.O-O Bg7 10.Qe2 Be6 11.b3 Qc8 12.Bb2 Bh3 13.Nd2 Bxg2 14.Kxg2 O-O 15.c4 Nc7 16.Ne4 Qf5 17.f4 Ne6 18.Qf3 h5 19.h3 Bh6 20.Rae1 Rad8 21.Rf2 h4 22.g4 Nxf4+ 23.Kh2 Qe6 24.Nc5 Qc8 25.Bc1 b6 26.Ne4 Rd3 27.Re3

 黒はポーンを得したが、代価としてナイトとビショップの配置がひどいことになっている。その日私はこの大会を見に行っていて、公開の大盤でこの局面を見た。黒陣は危なそうに見えた。例えば「普通の」27…Rxe3 は 28.Bxe3 g5 29.Nxg5 Nd3 30.Qe4 Bxg5 31.Qxd3 Bxe3 32.Qxe3 となって黒のキング翼のポーンの弱点が防御不可能になる。GMド・ファーミアンも自陣に自信が持てず、紛れを求めて疑問の 27…Nxh3? に打って出て結局負けた。しかしGMウォルフが『フロリダ・チェス』の1996年6月号で書いているように、GMイリヤ・グレビッチによって正解が示された。

27…Ne6!! 28.Rxd3 Bxc1

 黒はポーン得だったので、犠牲にしたのはポーン半個だけである。その上代償は素晴らしい。つまり黒枡の支配(特にf4の地点)、好所のナイト、白の孤立eポーンに対する攻撃の可能性である。それでも決断をする上での重要な要因は、ほかのすべてが明らかに悪すぎるのでそうすることが必要だったということである。GMのウォルフとグレビッチはこの局面を黒の方が良いと判断している。そうなのかもしれないが、私には 29.Nd2 でそれほどはっきりしないように思われる。しかし重要なことは 27…Ne6!! が黒にとって不満がないだけでなく絶対必要であるということである。

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2016年01月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(404)

「Chess Life」2015年11月号(2/3)

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2015年シンクフィールド杯

解説 GMロバート・ヘス

キング翼インディアン防御 [E99]
GMウェズリー・ソー(FIDE2779、米国)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2814、米国)
第3回シンクフィールド杯第6回戦、2015年8月29日

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.Ne1 Nd7 10.f3 f5 11.Be3 f4 12.Bf2 g5

 両者は序盤の手をブリッツ戦みたいに飛ばしてきた。明らかにまだ研究の範囲内である。ナカムラはおそらく世界で最もよくキング翼インディアン防御(王印防御)を理解している選手である。だからウェズリーは自分のしていることがどういうことか分かっていた。マクシム・バシエ=ラグラーブは第4回戦でナカムラの王印防御を避けたが、それは賢明な方針だった。

13.Nd3 Ng6 14.c5 Nf6 15.Rc1 Rf7 16.Kh1 h5

17.cxd6

 17.Nb5 の方が正確である。重要な相違点は 17…a6 18.Na3 のあとに現れる。つまり黒は本譜と違い …b7-b5 と突くわけにいかない。

17…cxd6 18.Nb5

 ここらあたりでナカムラは初めて熟考した。黒はすぐに …g4 と突くことができるが、a7のポーンを取らせることになる。ナカムラは妥協して白のクイーン翼での動きを遅らせるために自分のクイーン翼のポーン陣形を弱体化させることにした。

18…a6

 18…g4 は 19.Nxa7 Bd7(19…g3 20.Rxc8 Rxc8 21.Nxc8 gxf2 22.Na7 Qa5 23.Nb5 Qxb5 24.Nxe5 は白が非常に良さそうである)20.Qb3 Ne8 21.Nb5 Qg5 となって、本譜と比べて白が1ポーン得していてクイーン翼を突破できる可能性がより高い。

19.Na3 b5

 黒は白ナイトをb6に侵入させるわけにはいかなかった。

20.Rc6

 20.Nb4 も魅力的だったに違いないが、c6のナイトが白にとって実際にどれだけ役に立つかあまり判然としなかった。

20…g4 21.Qc2

21…Qf8

 これは大変賢い手である。黒はビショップをc8-h3の斜筋に置いておく必要があり、…Bc8-Bd7 と指す唯一の手段はd6の地点を守っておくことである。クイーンは近い将来もうg5の地点に行くことができないけれども、f列には駒が集積している。実戦の進行から分かるように、クイーンとルークのバッテリーは多大な危害を与えることができる。これに反して 21…Bb7 22.Bb6 Qf8 23.Rc7 という手順では白は少なくとも黒の攻撃駒のいくつかと交換することができる。

22.Rc1 Bd7 23.Rc7?

 この手は話にならない悪手ということではない。それよりもむしろソーはクイーン翼に圧力をかけ続ける必要があった。c7のルークは具体的な狙いが何もない。だから白は局面を支配するために交換損をするのがごく当たり前のことである。例えば 23.Nb4 Bxc6 24.dxc6 なら代償が本当にある。黒は白枡ビショップがなくなれば攻撃に迫力がなくなり、白は陣地が広がる。24…Qc8 25.c7 Ne7 26.Bh4 ともなれば白に交換損の代償が明らかにある。23.Rb6 も考えられる手で、d6とa6のポーンに圧力をかけ続ける。

23…Bh6 24.Be1 h4

25.fxg4

 白は餌に飛びついた。しかしこれはまさに自ら災いを招くことになる。白はナイトを戦いに引き戻す頃合いだった。というのは攻撃の結果から判断すると、ここでの 25.fxg4 は良くなかったことが明らかだからである。最善の受けは 25.Nb1 で、25…Bg5(いつものことながら 25…h3 は考えておかなければならない)26.Nd2(26.fxg4 に 26…f3? は駄目で[26…Nxe4 が良く、27.Bf3{27.Kg1 Nf6 28.Nd2 e4 29.Nf2 f3 30.Bxf3 exf3 31.Qxg6+ Rg7 32.Qd3 fxg2}27…Ng3+ 28.hxg3 hxg3 29.Nd2 e4{29…Qh6+ 30.Kg1 Qh2+ 31.Kf1 Nh4 32.Bf2 gxf2 33.Nxf2 b4 34.Rc6 Re8 白のもろい陣形はいつか崩壊するかもしれない。しかし当座は戦力が互角で、黒の攻撃はあまり強力に見えない。白は白枡でせき止めを構築することを模索することができる}30.Nxe4 Qh6+ 31.Kg1 Re8 32.Ndf2 gxf2+ 33.Nxf2 Ne5 黒が押し気味である]27.gxf3 Nxe4 28.Rxd7 Rxd7[28…Rxf3 なら 29.Nd2 で、進路変更のナイトが救援に来る!]29.fxe4 Bxc1 30.Qxc1 小駒3個がルーク2個をまもなく席巻する)26…h3 27.gxh3 g3 28.Bf1 Qh6 29.Rxd7 Rxd7 30.Qc6 Rdd8 31.Qb7 となれば白は少なくともまだ大丈夫である。

25…f3 26.gxf3 Nxe4

27.Rd1

 形勢は既に白にとってかなり絶望的なので、この手には悪手の記号を付ける気にさえなれない。白にはほかの手もあったがそれらのどれでも結果を変えるには至らない。27.Rxd7 Rxf3 28.Bxf3 Qxf3+ 29.Qg2 Qxd3 30.Rd1 は形勢を紛れさせるいい試みだが、黒には 30…Bd2!! という冷静沈着な妙手があり、31.Bxd2 Nf4 32.Be1 Nf2+! 33.Qxf2 Qe4+ 34.Kg1 Nh3+ 35.Kf1 Nxf2 36.Bxf2 Qxg4 となって白のルークが取られる。すごい手順があったものだ。

27…Rxf3 28.Rxd7 Rf1+ 29.Kg2

29…Be3

 変化の 29…h3+ 30.Kxh3 Rf2!!

も信じられないような手順である。黒は詰みのためならすべてをなげうつ(30…Rg1 31.Bh4 Qf2 は私が解説中に見つけた自慢の変化だが、ほかの手順ほどすごくはない)。31.Bxf2 Qxf2 32.Nxf2 Nf4+ 33.Kh4 Bg5#

30.Bg3 hxg3 31.Rxf1

 これで白は完全にルークの丸得である。白にとって残念なことにそれを生かすことができないうちに詰まされる。

31…Nh4+ 32.Kh3 Qh6 33.g5 Nxg5+ 34.Kg4 Nhf3 35.Nf2 Qh4+ 36.Kf5 Rf8+ 37.Kg6

37…Rf6+

 私としては 37…Nf7 38.Kf5 Nd4+ 39.Kg6 Nh8# という終局を見たかった。

38.Kxf6 Ne4+ 39.Kg6 Qg5#

(クリックすると全体が表示されます)


セントルイスでは世界最強選手たちの激闘にもかかわらず仲間意識ともいうものができていた

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(この号続く)

2016年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス6

布局の探究(170)

「Chess Life」1997年1月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の交換損

 前回は交換損にかかわる基本的な要素について論じ、白の主眼となる可能性を示した。今回は黒側について論じる。交換損の可能性を論じる際に重要な考慮点は次のとおりである。

 (1)正確な戦力比はルーク=小駒+1½ポーン

 (2)交換損が正当となる理由には以下がある。

 (a)攻撃するに際し急所の守り駒を取り除く

 (b)攻撃されるに際し急所の攻め駒を取り除く

 (c)小駒がルークよりも働く可能性のある局面を作り出す

 早い段階での交換損を評価する際には黒の方が白よりも手堅くなければならないということをいつも覚えておかなければならない。これは白は通常展開で1手先行しているからである。

 主眼の布局が中盤戦初期に至った時には、交換損を決断するのはどのくらい容易だろうか。これから参考になる状況を三つ考察してみる。

 (1)決断は簡単である

シチリア防御 [B85]
白 GMロベルト・ヒューブナー
黒 GMビスワーナターン・アーナンド
ドルトムント、1996年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be2 e6 7.O-O Be7 8.f4 O-O 9.Be3 Nc6 10.Qe1 Nxd4 11.Bxd4 b5 12.a3 Bb7 13.Bd3 Nd7 14.Rd1 Qc7 15.Kh1 e5 16.Be3 Rac8 17.Qg3 Bf6 18.f5 Kh8 19.Rf2 Be7 20.Rfd2 Qa5 21.Qe1 h6 22.h3 Nf6 23.Bf2

 白はキング翼で何も成果がなかったのに対し、黒は主眼の戦場であるクイーン翼で陣地の広さ、それにクイーンとルークの働きとで有利になっている。GMアーナンドは白のクイーン翼を次のように破壊した。

23…Rxc3! 24.bxc3 Qxa3

 黒は交換損の代わりに2個のポーン得と好形になるのが確実である。だから黒は何かを犠牲にした代わりに実際は半ポーンに等しい戦力を得たと結論づけることができる。白はこの状況を受け入れて 25.Re2 のように何か理にかなったことをする代わりに、中央の形を自分で乱してあっさりと負けた。

25.c4? bxc4 26.Bxc4 Nxe4 27.Rd3 Qa4 28.Rb3 Qxc4 29.Rxb7 Qxc2 30.Bg1 Bg5 31.Rdb1 Bf4! 32.R1b3 d5 33.Rf3 Rc8 34.Rxf7 Ng5 35.Rxf4 exf4 36.Re7 f3! 白投了

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2016年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

「ヒカルのチェス」(403)

「Chess Life」2015年11月号(1/3)

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お楽しみチェス

GMアンディー・ソルティス

なぜチェスが好きか

準スラブ防御ボトビニクシステム [D44]
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2800、米国)
GMアニシュ・ギリ(FIDE2674、オランダ)
2014年ロンドン・チェスクラシック、スーパー快速オープン、ロンドン

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 e6 5.Bg5 dxc4 6.e4 b5 7.e5 h6 8.Bh4 g5 9.Nxg5 hxg5 10.Bxg5 Nbd7 11.g3 Bb7 12.Bg2 Qb6 13.exf6 c5 14.d5 O-O-O 15.O-O b4 16.Rb1!

16…Qa6 17.dxe6 Bxg2 18.e7 Bxf1! 19.Qd5!

 ここで 19…Bh6! 20.Bxh6 Bd3! なら受かっていたかもしれない。

19…Bxe7?! 20.fxe7 Rdg8 21.Ne4! Bd3 22.Nd6+ Kc7 23.Bf4 Kb6 24.Re1! Qxa2 25.Nxf7 Qa4

26.b3! Qxb3 27.Qxd7 Qc3 28.Bc7+ Kb7 29.Nd6+ 黒投了

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス6