2015年11月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(398)

「Chess Life」2015年9月号(1/1)

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ノルウェー・チェス

GMイアン・ロジャーズ

手段はあるもの
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2802、米国)
GMヨン・ルードビグ・ハムメル(FIDE2677、ノルウェー)
2015年ノルウェー・チェス第1回戦、スタバンゲル、ノルウェー
2015年6月16日

 白の手番

 ナカムラのe6のポーンは大きな資産だが、せき止めているe7のビショップをどけるのは至難のように思われる。しかしナカムラはある手段を見つけた。

41.Be3! axb4 42.Bc5!

 42.axb4 では 42…Rc8 43.Bc5 Rc7 で黒が踏ん張れる。

42…Rd2 43.Rfe1!

 これが最後の要点で、黒は当たりになっている駒が多すぎる。43.Rf2? では 43…Bxc5 44.Rxc5 Rd1+ 45.Rf1 Rxf1+ 46.Kxf1 b3!

で形勢が逆転する。47.e7 はf7のビショップがチェックで取られる。

43…Bxc5+ 44.Rxc5 Rg2+ 45.Kf1 b3 46.Rxe4 b2 47.Re1 Rxh2 48.Rce5 Rh1+ 49.Kg2 b1=Q

 ハムメルは詰まされるまで指した。テレビ観戦者を楽しませようとしたのだろう。

50.Rxb1 Rxb1 51.e7 Ra8 52.e8=R+ Rxe8 53.Rxe8#

(クリックすると全体が表示されます)


GMナカムラはわずか半点差で同点2位の好成績の遠征だった。「嬉しくないわけがない。生活のためにチェスを指している。たいていの人はこんなに幸せでない!」

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(この号終わり)

2015年11月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

布局の探究(164)

「Chess Life」1996年9月号(6/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手順の妙(続き)

 イギリス布局(A30)からシチリア防御(B44)へ

 1.c4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 は「万人」の布局参考書ではイギリス布局の1戦型とみなされている。4…e6 と突くならそのはずである。しかしイェルモリンスキー対ド・ファーミアン戦(米国選手権戦、1995年)の進行を見てみるがよい。5.Nb5! d6 6.e4!

 第6図

 白は黒をシチリア防御タイマノフ戦法の主手順の一つに誘導した。「通常」の手順は 1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 e6 5.Nb5 d6 6.c4 である。白は陣地の広さではっきり有利で、黒は眼目の …b5 突き及び/または …d5 突きによる打開策を知らないと指し方に苦しむことになる。実戦で両者は事の成り行きにいくらか戸惑ったようで、早々と引き分けに合意した。

6…a6 7.N5c3 Nf6 8.Be2 Be7 9.O-O b6 10.Be3 Bb7 11.Qb3 Nd7 12.Rd1 Rb8 13.Na3 O-O 14.f3 Re8 15.Qc2 Rc8 16.Rac1 Bf8 17.Qd2 Ba8 18.Bf2 Ncb8 19.Bf1 Qc7 20.Nc2 Ne5 21.Ne3 Nbd7 22.Ne2 引き分け

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2015年11月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(242)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

(再掲)

 これで簡単になった。黒は王翼の列と斜筋とを閉鎖しておかなければならなかった。

16.exf6e.p. Bxf6 17.Nxe4!

 黒がe4のポーンを守るのを待つよりもすぐにb2-g7の斜筋を通す方が良い。この手に対して 17…Bxb2 と取ってくれば 18.Ng5 h6 19.Nxh6+ gxh6 20.Qg6+! から 21.Qh7# までとなる。

17…Nd4! 18.Ngxf6+ Rxf6

 18…gxf6 と取れば 19.Rg1+ Kh8 20.exd4 のあと白キングが后翼にキャッスリングする。g列での狙い(Qg4)により白がすぐに勝つ。

19.Nxf6+ Qxf6 20.Bxd4 cxd4 21.Rf1 Qe7 22.O-O-O a5 23.Qb5 dxe3 24.dxe3 Qxe3+ 25.Kb1 h6 26.Qc4+ Kh7 27.Rde1 Qh3 28.Rg1 Rc8 29.Rxg7+! Kxg7 30.Re7+ Kf6 31.Qf7#

(完)

2015年11月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(397)

「Chess Life」2015年8月号(2/2)

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お楽しみチェス(続き)

GMアンディー・ソルティス

2015年米国選手権戦からの次の一手

第4問
GMダニエル・ナローディツキー
GMヒカル・ナカムラ

 黒の手番

第6問
GMケイデン・トロフ
GMヒカル・ナカムラ

 黒の手番

解答

第4問
33…Nxf6 は 34.Nxe7 で駄目だが、33…Bd3! が良い手で、34…Rxc2+ 35.Kd1 Nf2# または 35.Kb1 Nd2+ 36.Ka1 Nb3+ からの詰みを狙っている。実戦は 34.c3 Rc5! 35.Nxe7 Rb5! と進んで、白は …Rb1# を待つことなく投了した。

第6問
28…Rxe4! 狙いは 29…Re5 から 30…Rf5+ と 29…Ng4+ 30.Kf3 Bxg2+ 31.Qxg2 Ne5+ 32.Kf2 Re2+! 29.Nxe4 Nxe4+ 30.Ke3 Bxg2 31.Qf4 Nxc3 32.Qg5+ Kf8 33.bxc3 Re8+ 34.Kf2 Bh1+ 白投了

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(この号終わり)

2015年11月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(241)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

(再掲)

11.Qh5!

 白はもう勝ちにいっている。Rg1-g3-h3 から Qxh7# で勝てる。黒がgまたはhポーンを突いて守ろうとすればもっと早く終わるだけである。

11…Nc6

 一番見込みがあるのは 11…Nd7 で、f6の地点を守りf8に行けばh7の地点を守ることができる。しかしそれでも白は 12.Ng4! で攻撃して勝つことができる。狙いは Rg1-g3-h3 だけでなく Rg1 から Nh6+ がある。gxh6+ の空きチェックのあとすぐに詰みになるので黒はh6のナイトが取れない。そして 11…Nd7 12.Ng4 f5 のあと白は 13.g6! hxg6 14.Qxg6 から Qxg7# または Qxe6+ または Nh6+ と指す。

12.Ng4! e5

 これはもうどうにでもしてくれという手である。白は単に 13.Nxe5! と取るべきで、ポーン得になっていた。

13.fxe5 Bxg5 14.h4

 白は攻撃の展望を維持するためにこのように指した。しかしこれで黒はもっと頑強になった。

14…Be7 15.Nc3

 15.Nf6+ のあと白が期待していた詰みはなかった。15…gxf6 16.Qh6 Nxe5 17.Bxe5 Kh8! で黒は大丈夫である[訳注 16.Rg1+ Kh8 17.Rg7 Kxg7 18.exf6+ Bxf6 19.Qg5+ で白の勝ちです]。Nf6+ の狙い筋が夢物語で Rg3-h3 ももう無意味になっている中、白はb2-g7の斜筋で再び最初から勝ちにいかなければならない。

15…f5?

(この章続く)

2015年11月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(240)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

(再掲)

6…O-O 7.Bd3!?

 白はぎょっとするほど露骨に敵キングの方面に狙いをつけた。たぶんここで黒のキング翼を守る最善の手段は 7…Nfd7 から 8…f5 で、そのあと …Qc7 と …Nc6 でe5の地点を攻撃することだろう。それでも白は g2-g4 でg列を素通しにすることができる。

 別の手段は 7…Ne4 である。しかしそれなら白は 8.Bxe4! と取ってe4の弱いポーンにつけ込むことができる。例えば 8…dxe4 9.Nc3 f6 10.Nc4 となれば黒は …f7-f5 と突かなければならない。そのあと白はクイーン翼にキャッスリングし g2-g4 で素通し列を作るか、小駒と a2-a4-a5 でクイーン翼で作戦を行うかを選択することができる。黒のc5とb7のポーンは標的になることがある。

7…b6

 のんびりした手である。白の指し方が通常と違っていたので黒は穏健戦型を穏健に指せると思ってしまった。

8.g4!

 1世紀以上前のチェスはこんな指し方だった。白は作戦を隠さない。g4-g5 でナイトを追い払い Qh5 から Qxh7# で仕留めるつもりである。もし黒が …g7-g6 と突いてh7の地点を守れば、b2からの斜筋に問題を抱えることになる。

 まだ 8…Ne4 と跳ねることができるが、9.g5! で …f7-f6 突きの出鼻をくじかれる。例えば 9…f6 10.Bxe4 dxe4 11.gxf6 という具合である(10…fxe5?? は 11.Bxh7+! Kxh7 12.Qh5+ から 13.g6 ですぐに詰まされる)。

8…Bb7

 黒は当然王翼ナイトを王翼から動かしたがらない。たぶん黒は …d5-d4 と突いて白のh1のルークを脅かすことができれば、白枡の対角斜筋(后印防御ビショップ!?)が役立ってくれると考えているのだろう。しかしその余裕はない。

9.g5 Ne4 10.Bxe4! dxe4

(この章続く)

2015年11月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(163)

「Chess Life」1996年9月号(5/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手順の妙(続き)

 クイーン翼ギャンビット拒否・交換戦法(続き)
B.1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Be7!

 ティグラン・ぺトロシアンが当時世界チャンピオンだったミハイル・ボトビニクとの1963年世界選手権戦に備えて研究していたとき、自他ともに達人と認めるボトビニクの交換戦法の威力を骨抜きにする手段を見つける必要に迫られた。それ以来黒がオーソドックス戦法を目指すとき 3.Nc3 に対処する「現代」の手法は本譜の手になった。その意味は後知恵だがいたって単純である。白の Bg5 が1手遅れるので、黒はd5の地点を守ることができるし、ビショップを不満なく展開できるということである。ここで白が交換戦法に行くには1)4.Nf3 と2)4.cxd5 の2手段がある。

1)4.Nf3 Nf6 5.cxd5 exd5 6.Bg5 c6 7.Qc2 g6

 第5図

 黒の予定する 8…Bf5 に対して白はそうさせることもできるし、強引に防ぐこともできる。

a.8.e3 Bf5 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 Nbd7! 黒は最も働いていない小駒を効率よく交換し、残るはわずかな不利だけである。

b.8.e4!? dxe4 9.Bxf6 Bxf6 10.Qxe4+ これは世界チャンピオンのガリー・カスパロフの攻撃的な着想である。完全に不満のない受けが最終的には見つかった。それが 10…Kf8! で、ハンセン対スマギン戦(コペンハーゲン、1990年)では 11.Bc4 Kg7 12.O-O Re8 13.Qf4 Be6! 14.Bxe6 Rxe6 15.Rfe1 Qd6! 16.Qxd6 Rxd6 と進んで互角の收局になった。

2)4.cxd5 exd5 5.Bf4 c6 6.e3

 ボトビニクは1)の手順がほとんど意味のある優位の見通しをもたらさないと認識したので、この手順をぺトロシアンとの番勝負で交換戦法に対処する手段にした。ここからは二通りのやり方がある。

(a)6…Bf5 が通常の手である。主眼の手順は 7.g4!? Be6 8.h3 Nf6 で、白は Bf5 を追い払ったがキング翼を弱めた代償を払っている。これで黒は互角への可能性が高くなるはずである。例えば 9.Bd3 c5! 10.Nf3 Nc6 11.Kf1 O-O 12.Kg2 Rc8 13.Rc1 と進んだのはコルチノイ対カルポフ戦(メラン、1981年)で、ここで 13…a6 と指せば互角だった(コルチノイ)。

(b)6…f5 はブルドノ氏の提案で、良好なオランダ石垣への適切な機会である。早い cxd5 は結局白の中央での優位を放棄し、黒のビショップの利きを広げている。この局面の適切な評価を得るためにはいくつかの実戦で試すことが必要である。私の感じでは 7.Bd3 から 8.Qc2 のあと黒のキング翼の弱点と黒枡の危なさのために、白が優勢を保持することができるはずである。これの意味するところは白は攻撃の可能性を用いるためにクイーン翼にキャッスリングする必要があるということである。

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2015年11月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(239)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例
白 J.カプラン
黒 C.プリチェット
スコピエ・オリンピアード、1972年

1.Nf3 c5

 黒はこの初手で「反后印」ポーン陣形を構築する構えをみせている。つまりポーンをc5、d6そしてe5に突いて白のフィアンケット后翼ビショップの影響力を鈍らせるのである。その主要な欠点はd5の地点への利きをなくすことで、白はそこを Nc3-d5 で占拠し e2-e3 から Ne2-c3 で強化することができる。

2.b3 d5 3.e3 Nf6 4.Bb2 e6 5.Ne5 Be7

 黒の指し手はことのほか従順である。最小限の努力でe5の地点を争っている。

6.f4

 白陣の一つの大きな問題は后翼ナイトの好所がなかなか見つからないことである。しかし敵の王翼に対する攻撃が非常にうまくいくので、后翼のナイトとルークがなくても中盤戦の初めをうまくやっていくことができる。その間に黒は自身の后翼を展開する問題を抱えている。6…Nc6? は白に代償無しで二重ポーンを作ることを許すか(7.Nxc6)、e5の地点の占拠を確実にさせる(7.Bb5)。また、 6…Nbd7 から …Nxe5 は、白がfポーンで取り返せば黒にあまり動き回る余地ができない。注意すべき点はビショップがe7にいるので黒は …Nxe5 と取っても fxe5 で駒損しないことである。しかし …Bd6 と指していたら …Nxe5 は fxe5 と取られて駒損になる。

(この章続く)

2015年11月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(238)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 こう指せば第2章で分析した立派なフィアンケットシステムに向かうはずである。しかし白は次のように指せば類似の局面を回避することができる。

5.c4!

 黒は中央の要所に十分な利きがないので、ここで指したい手(5…d4)を指すことができない。もし黒がもう1手指していれば、すなわち白でこの局面を指していれば、既にビショップがg7にいるので 5…d4 6.exd4 Nh5 から 7…cxd4 と指せるところである。しかしここではビショップがまだf8にいるので、あわてて形勢悪化を避けなければならない(5…Bg7 6.cxd5 Nxd5?? 7.Bxg7 または 6…Qxd5 7.Nc3 Qd8 8.Ne4)。

 黒にとって后印攻撃に対する最善の手段はたぶん互角より多くを望めないということを認めることである。結局のところ黒駒を持って指しているのだから1手遅れている。黒は第7章で分析した控え目なシステムの一つを採用することができる。それらの局面ではたとえ1手得しても損しても優勢が一方から他方へ急激に揺れ動くことはほとんどあり得ない。

 あるいはたぶん 1…d5 を避けるか、どんな …d7-d5 突きも完全に避けるべきである。覚えておくことはそう突く手は急所のe5の地点の支配を放棄するということである。后印攻撃における白の2手目(2.b3)はe5の地点を支配する意図を宣言しているので、黒を持って指す選手は 2.b3 に対しもっと目的のある陣形で立ち向かうように、1.Nf31…Nf6 と指した方が良いかもしれない。例えば 2…g6 3.Bb2 Bg7 とフィアンケットして 4…O-O と指すことができる。もし白が d2-d4 と突かなければ、黒は …e7-e5 と突いて中央に駒を健全に進めることができる。白が d2-d4 と突くならば、黒は安全に突けるようになるまでeポーンを突く準備をすることができる。あるいは …c7-c5 と突いて側面から中央を攻撃することができる。これらの局面では黒は黒枡ビショップが白のb2のビショップと交換されても、王翼の周りの弱点を気にしなくてよい。というのは白も交換の結果として特にa3とc3の地点に弱点を抱えるからである。

 要するに后印攻撃では中盤戦を堅実に進めていく手段が得られ、后印防御に慣れた人ならば誰にでも気に入られる魅力もある。最大の欠点はちょっとおとなしい傾向があることで、これは后印防御とちょうど同じである。

(この章続く)

2015年11月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(237)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 黒はe5の地点の支配をめぐる戦いの戦略に従っている。これは第5章のe4の地点をめぐる戦いとまったく同じ戦略と手順である。しかし白の1手先行がすぐに焦点になる。ここでの「正」着は第5章での分析によれば 8…Nc6 である。しかしその手を指した後では黒は投了してもおかしくない。

8…Nc6? 9.Nxc6! bxc6 10.Bxh7+!

 王翼攻撃はいつも穏健戦型の水面下に潜んでいる可能性である。ここではそれが表面化する。

10…Kxh7 11.Qh5+ Kg8 12.Bxg7!

 黒がこのビショップを取ると 13.Qg4+ から Rf3-h3+ で詰まされる。取らなければ Rf3-g3 とされるか Qh8# である。

 結論はとても出せないが白の1手先行がいかにものを言うことがあるかの劇的な例である。(穏健戦型の別の例は章末の実戦例にある)

 白は1手先行を用いて黒がd4の地点の支配が不足していることにつけ込むこともできる。例えば

1.Nf3 d5 2.b3 Nf6 3.Bb2 c5 4.e3 g6

(この章続く)

2015年11月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(236)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)8.d3 の局面

 黒はe5の地点に何も利いていないが、白はナイトでそこを占拠する。8…Bd6 でさえ 9.Nbd2 から 10.Qe2 のあと e3-e4-e5! と突いてこられるので黒が危険である。

 8…Be7 ならもっと控えめな指し方だが、白は 9.Ne5! Rc8(Nxc6 で二重ポーンにされるのを防ぐため)10.Nd2 O-O 11.f4! で両翼と中央で断然優位に立つ。白はこのあと e3-e4 と突いていくことができるし、g7を標的に Rf3-g3 から Ng4 と指すこともできる。

 以上の示唆するところは黒は …Nc6 と指さずに第5章で論じた穏健戦型を指すべきだということである(もちろん白黒逆で)。しかし白が1手先行していることはまったく新しい戦略を生むことにつながる。例えば

1.Nf3 d5 2.b3 c5 3.e3 Nf6 4.Bb2 e6

 ここで第5章の類似の局面のように 5.c4 と突くのは大変良い手である。しかし 5.Ne5 の方がはるかに良いかもしれない。黒が「定跡」どおりに指したらどうなるかを考えよう。

5.Ne5 Bd6 6.f4 O-O

 黒はここで 6…Nfd7 と引くことができない。白に 7.Nxd7 から 8.Bxg7 とポーンを取られるからである[訳注 7…Nxd7 8.Bxg7 Rg8 9.Bb2 Qh4+ 10.g3 Rxg3 11.hxg3 Qxg3+ 12.Ke2 Qg4+ 13.Ke1 Qg3+ で引き分けのようです]。

7.Bd3!? Nfd7 8.O-O

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(235)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 黒はまるで白駒を持って初手に 1.d4 と突いたかのような指し方をしている。この意欲的な戦略は報われることがある。例えば 3.Bb2? には 3…f6! と応じて 4…e5! をもくろむことができ、中央が堅固なので黒が有利になる。

 しかし白が慎重に 3.e3! と突けば、3…f6 には 4.d4 と応じることができる。代わりに黒が 3…Nc6 で中央での有利さを得ようとするのは疑問となる。というのは白は 4.Bb5! で后印防御のような有利な局面に移行させるからである。例えば 4…Bg4 5.h3! Bh5 6.g4 Bg6 7.Ne5 または 5…Bxf3 6.Bxc6+! bxc6 7.Qxf3 で2ナイト戦法の有利な型になるが、1手先行しているので白がずっと優勢である。

 あるいは 3.e3 Nc6 4.Bb5 のあと黒が何の優位もないことを認めて穏やかに指すことにしたと仮定する。4…Bd7 は対応する后印防御(1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Nc3 Bb4 5.Bd2?!)で白が指す気のしない手だが、5.Bb2 Nf6 6.O-O e6 7.Bxc6! Bxc6 8.d3 で白が王翼で非常に気分の良い攻撃態勢になる。

 8.d3 の局面

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(396)

「Chess Life」2015年8月号(1/2)

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お楽しみチェス

GMアンディー・ソルティス

コミュニケーション不能

あいまいな構想
GMコンラッド・ホールト
GMヒカル・ナカムラ
米国選手権戦第1回戦、ミズーリ州セントルイス、2015年4月1日

 黒の手番

 黒は当然の 14…gxf5 を拒否して 14…Nf6 15.fxg6 Qxg6 と指した。コンピュータはせせら笑った。

 手が 16.Nf3 Nb4 17.Nh4 Qh7 と進んだときコンピュータは白が +1.00 から +1.50 ほど優勢だと言った。そのあとは 18.Kf1 Bf5 19.Kg1 Bc2 20.Qd2 Ne4 21.Nxe4 Qxe4 と進んだ。

 人間のマスターは黒の方が指しやすいので形勢も良いと思う傾向がある。しかし「指しやすさ」をプログラムに組み込むのは困難である。

 マスターは黒に代償があるとも言うだろう。その意味するところは「白は1ポーン得している。黒には潜在的な狙いがある。そして20手先までは読めないのでどちらの方が価値があるのか分からない」ということである。

 そして黒には主導権がある。マスターたちは圧力を長く維持すれば勝ちになるので、主導権は非常に重要だと言う。ガリー・カスパロフが言ったように「相手の駒を10回連続で攻撃すれば、相手は11手目で何かポカを指すだろう。」

 しかし「主導権」、「代償」それに「圧力」は機械にはあまり役立たない言葉である。なぜなら機械は11手目で決してポカを指さないからである。代わりに 22.Ng2、22.Rh3、22.Bh5 そして 22.Rh2 のような人間の見ない手を冷静に推奨してくる。(白は 22.Bf1? Bd3 23.Bh3 Nc2 24.Be6+ Rf7 25.Nf5?? Ne1! と指し負けた。)

 というわけでコミュニケーションができていない。人間は思考の多くをコンピュータ語、つまり二進数に変換できない。そして機械は変化手順を「人間語」に変換できない。

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(この号続く)

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后印防御の指し方(234)

第8章 后印攻撃 アンディー・ソルティス

 后印防御の逆形、すなわち白が黒の通常指す手を指し黒が白の通常指す手を指すのは、1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 に通常 3…b6 と指す選手たちによってさえ無視されるのが通例だった。そこに潜む疑念は、后印は防御としては良いけれども、たとえ白が1手早く黒の手を指しても良い攻撃となるほど積極性がないのではないかということである。

 后印攻撃の構想は白が黒で黒が白であるということを除いてすでに分析してきたものと似ている。しかし初手の有利さは微妙な違いとなって現れる。白がより穏やかな戦型で通常得るよりももっとはっきりした優勢を得ようとする激しい戦型は、色が反対ではそれほど良くない。以下がその例である。

1.Nf3 d5 2.b3 c5

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(233)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 ここで黒はキングを引かなければならない。20…gxf5 と取るのは 21.Qxf5 で白の狙いが多すぎるからである。その中でも中心的なのは 22.Qxh7+! と 22.Rxe7+ Rxe7 23.Qxf6+ である。

20…Kf8!

 5手目にして初めて白はチェックも取りも痛烈な狙いもなくなった。クイーンを引かなければならないが、幸いにもh6への侵入のために態勢を立て直すことができる。

21.Qe3 gxf5

 実戦には現れなかったがh6の地点を守る 21…Ng8 に対しても 22.Bg7+ Kf7 23.Qe6+!! Nxe6 24.dxe6# という鮮やかな手順がある。

22.Qh6+ Kf7

 黒キングはg8に行くこともできるがそれなら Bxf5 はより一層強力になる。例えば 22…Kg8 23.Bxf5 Rc7 24.Bxh7+! Nxh7 25.Qg7# となる。

23.Bxf5

 この比較的穏やかな手は最近の狙いのいくつかを保持し(例えば Rxe7+ から Qxf6+)、新しい狙いも少しつけ加えている(例えば Be6+ と Bxh7 から Bg6+)。例えば 23…Bd8 なら白は 24.Bxh7 と指し、駒損が大きいけれども攻めて勝ちになる。

23…Bxd5

 黒はここまでの7手の間クイーンも后翼ビショップも働かせなかった。しかしここで自由を求めたのは手遅れだった。

24.Rxe7+! Rxe7

 キングで取ると 25.Qxf6# までとなる。

25.Qxf6+ Ke8 26.Qh8+ Kf7 27.Bxc8 黒投了

 戦力得している方が詰まされそうでも投了しないことがある。黒はここで急に2ポーン損であることに気づき、それまでと同じくらい多くの狙いに直面した(28.cxd5、28.Qxh7+、28.Bf6)。

(この章終わり)

2015年11月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(162)

「Chess Life」1996年9月号(4/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手順の妙(続き)

 クイーン翼ギャンビット拒否交換戦法
A.1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6

 白が交換戦法の使い手と分かっているなら、本譜の見えすいた手は遅らせた方が良い。理由はすぐに分かる。

4.cxd5! exd5 5.Bg5 c6

 d5の地点に早速圧力がかかっているので、5…Bf5? は 6.Qb3! で咎められる。このあとはバクロ対イフコフ戦(カンヌ、1996年)を追う。

6.e3 Be7

 ここでも 6…Bf5 は 7.Qf3! があるので疑問である。黒は愚形の二重fポーンにさせられてしまう。

7.Qc2 Nbd7 8.Bd3 Nf8

 交換戦法では黒の白枡ビショップは白の白枡ビショップより劣る。本譜の手は手数のかかる周知の捌きの始まりで、白枡ビショップを展開し白の白枡ビショップと交換しようとする。しかし代償は手損である。白は手得を生かしてクイーン翼で強い主導権を得ようとする。

9.Nf3 Ne6 10.Bh4 g6 11.O-O O-O 12.Rab1 a5 13.a3 Ng7 14.b4 axb4 15.axb4 Bf5 16.b5! Bxd3 17.Qxd3

 第4図

 白の少数派攻撃で黒には何の代償もない弱い出遅れcポーンが残される。若いIMバクロはここで黒の最善手は 17…Nf5 または 17…Nd7 ではないかと言っている。もっともどちらの場合でも黒は引き分けに持ち込むために血のにじむような努力が必要である。代わりにGMイフコフは反撃に期待したが、一組のルークの交換は黒を攻防ともにもっと困難にさせただけだった。13歳の天才児は交換戦法の背後にある可能性を白日の下に見せつけた。

17…Ra3?! 18.bxc6 bxc6 19.Ra1! Rxa1 20.Rxa1 Nf5 21.Bg5 Nd7 22.Bxe7 Qxe7 23.Ra7 Rb8 24.Qc2 Qe6 25.h3! Nd6 26.Nd2 Nb6 27.Na4 Nxa4?! 28.Rxa4 Nf5 29.Ra6 Nxe3?!

 著名なグランドマスターは 29…Rc8 30.Nb3 で守勢に陥りたくなくて反撃に走った。しかしバクロはそれでも無益であることを完膚なきまでに示した。

30.fxe3 Qxe3+ 31.Kh1 Qxd4 32.Nf3! Qe4 33.Rxc6 Rb1+ 34.Ng1 Qe1 35.Qc5! h5 36.Rc8+ Kh7 37.Qd4 f6 38.Rc7+ Kh6 39.Qf4+ 黒投了

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后印防御の指し方(232)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 この手の威力は実戦には出てこないが起こるかもしれない変化で明かされる。黒による最も厳しい手は 16.Ng5 を咎める手はずの 16…Bxg2 である。しかしそれなら白は 17.d5! で黒の后翼ビショップの斜筋を閉じ自分の后翼ビショップの斜筋を通す。黒ビショップは退路がないので戦術的に守らなければならない。それが 17…exd5 で、18.Kxg2 dxc4+ を期待しビショップの代わりにポーンを少し得る。しかし白駒は(18.Kxg2 でなく)18.Nf5! で活気づき、e7のビショップを狙う。ビショップが 18…Bf8 と下がれば白には 19.Qh5!! という妙手がある。黒がこのクイーンを取れば白は 20.Nh6+! から即詰みに討ち取る。黒は 19…g6 と守る方が良いが、それでも 20.Nh6+ Bxh6 21.Qxh6 のあと Nxh7! があり前途多難である。

16…g6

 この受けの手には二通りの働きがある。つまり白ナイトをf5に寄せつけず、d3の白ビショップの斜筋を縮めている。e6のポーンが既にf5の地点に利いているのは確かだが、そのポーンはすぐに白がe6かf7で駒を切ることにより除去される。例えば 16…d5 17.Nxf7! Kxf7 18.Qxe6+ から 19.Nf5 という具合である[訳注 19…Bb4 で黒の勝ちになるので 17.Nxf7 は無理です]。本譜の手はそのような捨て駒の毒牙を抜こうとする手だが、黒はそのような捨て駒を不可能にしようとすべきで、16…Bf8 または 16…Nf8 の方がはるかに安全だった。

17.Nxf7! Kxf7 18.Qxe6+ Kg7

 黒は白の后翼ビショップと同じ斜筋にキングを置くことについて慎重でなければならない。たとえその斜筋がポーンと駒により一時的に遮断されているにしてもである。しかし唯一ほかの手は 18…Kf8 で、白は 19.Rad1 から Bc1-h6# を狙うことができる[訳注 19…d5 20.Bc1 Kg7 で黒の優勢のようです]。

19.d5!

 白のb2からg7への対角斜筋はこれで開通したが、黒のb7からg2への対角斜筋は不通になった。白の早速の狙いはd7のナイトを取ることで、これは黒キングが移動したことにより守られていなくなったためである。

 黒はここで 19…Ne5 と指して危険な斜筋を閉鎖しようとすることができるが、白は 20.Rxe5! dxe5 21.Bxe5 ですぐに再開通させるはずである。そうすれば Ne4 から d6-d7 と突く狙いで勝勢になる[訳注 21…Bxd5 で黒の勝勢になるので 21.Qxe5 が正着です]。

19…Nc5

 こちらの方が巧妙な受けである。白は …Nxe6 と …Nxd3 の狙いに積極的な応手を見つけなければならない。クイーン切りの 20.Qxe7+ Rxe7 21.Rxe7+ Kf8 は決まらない。

20.Nf5+!

(この章続く)

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后印防御の指し方(231)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 この局面は毎日のようにグランドマスターの試合に生じる類似の局面と比較してみる価値がある。それらはシチリア防御(そして他の布局)で黒がcポーンを白のdポーンと交換するときにできる。そのあと可能ならば白は c2-c4 と突いて「マローツィ縛り」の形にするかもしれない。これは白ポーンがe4とc4、黒ポーンがe6とd6にある型の陣形で好成績をあげた有名な選手の名前にちなんだ特に堅固なポーンの配置である。見れば分かるようにここでの唯一の違いは白ポーンがe4でなくd4にあることである。しかしこの違いは重大である。というのはシチリア防御では白の有利さはほんのわずかなものにすぎないのに対し、この局面でははるかに明らかだからである。例えばここでは白にはe列での圧力に基づいた狙いがある。つまり Ng5 からf7またはe6で切って、この駒の代わりに2ポーンと強い攻撃を得ることで、良い投資になることが多い。さらには黒の小駒、特にナイトは要所のeとc5が邪魔されて使えなくなっている。対照的にシチリア防御の局面ではそれらの地点で効果的に働ける。黒は …d7-d5 と突く動的で爆発的な威力も欠けている。それでもポーンをd5に突き、あとでたぶんc4の白ポーンを攻撃することによりいくらか局所的な圧力をかけることはできる。しかし似たようなシチリア防御の局面では …d7-d5 突きは少なくとも中央の一つの列を素通しにし、黒の后翼のビショップとナイトのために盤上を開けた状態にする。だから劇的な衝撃を与える手である。現在の局面ではその手はまだ有効だろうが、同じ効果を発揮することはできない。

15.Ng3 Qa8

 黒のクイーンと后翼ビショップの連係は黒陣に関しては最高である。そしてe8のルークは王翼ビショップを守るという重要な役割を果たしている。さもないと白は 16.Nf5(16…exf5 17.Qxe7)または 16.d5 とやっていくことができる。しかしe8のルークはf7などの少しの地点の守りを放棄してもいる。

16.Ng5!

(この章続く)

2015年11月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(230)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 黒は白が中央の優位により自然に成し遂げる結果に何か対抗するもの、つまり反撃が必要である。好機の 8…d5 の方が良いのはこのためである。黒はいざという時 …dxc4 と取ることができ(もちろん白が c2-c4 と突いた後で)、例えばc4の地点を弱めるという願ってもない結果をもたらす。実戦は黒が自陣からの3段目より先に何もしっかり支配している地点のない局面に陥っていくのに対し、白は4段目と5段目で意のままに舞うことができる。

9.Bb2 Nbd7 10.c4

 これで黒はルークもクイーンもc列で展望がほとんどなくなった。c4の地点は黒駒により厳重に守られている。黒が后翼で何かする唯一の手段は恥を忍んで …d6-d5!? と突くことであり、それもすぐにである。

10…O-O 11.Rc1 Re8 12.Re1 Qc7 13.Qe2 Rac8 14.Nf1 Qb8

(この章続く)

2015年11月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(229)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

6.O-O Be7

 カパブランカの指した 6…Nc6第1章を参照)の方が好所に跳べるので正確である。例えばこの実戦どおりの 7.b3 は 6…Nc6 のあとでは良くない。その違いは 7…cxd4! 8.exd4 Nb4(d3の働きの良いビショップに当たっている)9.Be2 Nbd5! のあと 10…Nc3 または 10…Nf4 という手順にある。このような捌きは黒が甘受できるよりも多くの手損をこうむることが多いが、この場合は当てはまらない。というのはナイトで良いビショップを取る黒の狙いは、白にその交換を避けるために手をかけさせる(Bd3-e2)ほど重大だからである。

7.b3!

 この手が目指すのは第5章の穏健戦型に似た局面だが、白ナイトはc3でなくd2にいる。黒はまだdポーンをどうするか決めていないので、まったく新規の局面に行くことも可能である。黒には …d7-d5 突きによってもたらされる反撃が必要である。しかし本局では …d7-d6 としか突かなかった。

7…cxd4

 この手を急ぐ必要はなかった。白が dxc5 と取ってくれば黒はbポーンで取り返して優勢になるところである。

8.exd4 d6?

(この章続く)

2015年11月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(228)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2
白 E.コーレ
黒 E.グリューンフェルト
ベルリン、1926年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6

 これまで 2…b6 のあと用いることのできるある着想については特に触れてこなかった。それは 3.Nc3 を Bg5 と組合わせるもので、マスターの実戦でもっと注目されてしかるべきものである。白の意図は他の戦型のようにe4の地点の支配を目指すがd5の地点の支配は譲らないことである。この手順により白はトーレ・システムのいつもの解毒剤である早い …c7-c5 突きに d4-d5! 突きで応じることができる。

 この戦型は大きな大会でほとんど指されてこなかったので、マスターの実戦を元に適切な評価を下すことは困難である。2…b6 3.Nc3 と進んだほとんどの試合は 3…Bb7 4.Bg5 d5 5.Ne5! のあと e2-e3 から Bd3 で白の優勢になった。黒は王翼にキャッスリングするのが普通で、そのあと白は Qf3-h3 で王翼攻撃に期待することができた。

 このことは …d7-d5 突きが時機尚早であることを示唆している。より正確な手順は 4…e6 かもしれない。白は 5.e4 h6 にビショップを切るかeポーンを取らせなければならない(6.Bh4? g5!)。しかし 6.Bxf6 Qxf6 ならトーレ・システムの局面になり、白の后翼ナイトがc3でなくd2にいたときでさえ白がいくらか優勢とみなされた。これは最新の布局定跡に通じていないなら后印防御に対する立派な「定跡外れ」になるかもしれない。

3.e3 b6

 これで后印防御に戻り、第1章のコーレ対カパブランカ戦に似た局面になる。白は今回はカパブランカ戦(3年後!)でのかなり強引で見当違いの王翼攻撃よりも少しだけ巧妙に指す。そして黒はカパブランカとは対照的にここではかなり当てもなく指す。

4.Bd3 Bb7 5.Nbd2 c5!

 この手に対して白が直前の3手で準備してきたと思われる 6.e4 なら黒に面白いひねった手が生じる。黒は 6…cxd4 と取って、シチリア防御の開放戦型(1.e4 c5 2.Nf3 任意 3.d4 cxd4)と似たポーン陣形にすることができる。しかし黒には別に 6…c4!? という奇手がある。白がc4でどう取ろうと(または引こうと)黒はeポーンを取る。側面ポーンを中央ポーンと交換するのは(この場合は黒のcポーンと白のeポーン)黒にとって一般に利益がある。7.Bxc4 Nxe4 8.O-O Nxd2 9.Bxd2 と進めば黒は展開で大きく遅れているが中央の多数派ポーンがいくらか陣形上の保険になる。

(この章続く)

2015年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(395)

「Chess」2015年8月号(1/1)

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第3回ノルウェー・チェス

H.ナカムラ – F.カルアナ
第3回戦

38…b5?

 ロンドン・チェスクラシックを観戦した人は目の当たりにしたかもしれないが、カルアナはブリッツが格別うまいというわけではない(通常の持ち時間の対局と比べての話)。しかし持ち時間の少ないこの局面でさえ、自陣を弱めるよりキングを中央に集結させるものと思われた。

39.axb5+ Kxb5 40.b3 g5?

 そしてこれには仰天するばかりである。黒は普通なら例えば 40…Rd8 と手待ちするところで、引き分けの可能性がかなり高い。しかしカルアナはそう指さずに白ルークのためにh列を素通しにしてやった。

41.hxg5 hxg5 42.Rh1

42…Ra7

 42…f4 でも 43.gxf4 gxf4 44.e4 で同じことになり、44…Rd4 なら 45.Rh4 である。いずれにしても黒はもう負けかもしれない。両者の陣形とルークを比べれば驚くには当たらない。カパブランカとルビンステインは墓の下で嘆いていたにちがいない。

43.Rh7

 黒ルークを縛りつけ、背後から攻撃する用意をしている。要するに黒はもう負けである。

43…f4 44.gxf4 gxf4 45.e4!

 白はf4ポーンを巻き上げるつもりである。ナカムラはここからまったく間違えなかった。

45…a4 46.bxa4+ Rxa4 47.Rxf7 Ra3+ 48.Kd2 Ra2+ 49.Ke1 Ra3 50.Ke2 Ra2+ 51.Kf3 Rd2 52.Rd7 Kc6 53.Rd5 Kb6 54.e5 Kc6 55.Rd8 Kc7 56.Rd6 1-0

 黒は手詰まりで、56…Ra2 なら 57.d4 で完全に見込みがない。57…cxd4(57…c4 58.d5 は連結2パスポーンが強力すぎる)58.Rxd4 でもう1個のポーンがまもなく落ちる。


最近ひげを生やしたヒカル・ナカムラは今や同国人になったファビアノ・カルアナとの対戦で早くも決然たる表情である。驚きの結果はカルアナの調子を狂わせ、ナカムラはレイティングを2800超にのせた。

(クリックすると全体が表示されます)

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(227)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 この手にも 21.Rd7 や 21.Bh5! という狙いがある。

20…Be7 21.Bh5!

 この手は 21.Rd7 より良い。 21.Rd7 は黒にクイーンと引き換えにルークとビショップを取らせて希望を持たせる。黒はそんなわずかな希望にも値しない。

 f7への当たりは 21…g6 突きでは解消できない。なぜなら 22.Bg4! のあと白に 23.Nで何かを取り 24.Bxh8 の狙いと、23.Nxf7! Kxf7 24.Bxe6+ Kxe6 25.Qb3# の狙いがあるからである。

21…Rf8

 あまり気の利かない手である。黒はたぶんもう負けを覚悟しているのだろうが、白が狙いを実現する効果的な手段を見つけられないことを期待している。

22.Qb3!

 23.Qxe6 だけでなく 23.Nxf7 や 23.Bxf7 も狙っている。

22…g6 23.Bg4 Qc8

 黒はここで一連の釘付けに入ったがいつは外さなければならない。代わりに 23…Nc5 なら白は駒を転回させて 24.Qh3! h5 25.Bd7+! と攻撃地点を変えることができ、例えば 25…Nxd7 26.Rxd7 Qc8 27.Ra7! から 28.Rxa8(27…Bb7 でも 28.Ra8!!)となる。

24.Nxf7! Kxf7 25.Qf3+ Ke8

 黒キングがg8に行けば白は 26.Qh3! で勝ちになる(26…Ng5 なら 27.Qb3+)。

26.Qh3 Nf4 27.Bd7+! 黒投了

 黒がどう指してもチェックがかかる(27..,Kf7 28.Qxh7+)。黒はウソ手の布局からすればうまくやっていたが、結局は白のより自由な局面と相手の反撃に対する用心が勝ちにつながる狙いにつながった。

(この章続く)

2015年11月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(226)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

15.Qc2!

 白は黒がe4ポーンをどの駒で取ってもe列で面倒が起こることを見通している。例えば 15…Nxe4 なら 16.Rfe1! で 17.Bd3 があるので黒が戦力損しなければならない。一方 15…Qxe4 なら妙手順の 16.Bd3! Qxd3(16…Nxd3 17.Rfe1!)17.Rfe1+ Be7 18.Qxc5 で白の勝勢になる。

15…Ne6

 これは少し前の手から方針に誤りがあったことを認めて譲歩した手である。黒は白がさせてくれなければキャッスリングできない。ここで白が勝つのに必要なのは一つか二つの素通し列である。白駒は侵入したがっている。

16.a4! a6 17.axb5 axb5

 この手の真価は黒が指したかったに違いない 17…cxb5 で明らかになる。この応手の問題は 18.Rxa6!! で、例えば 18…Rxa6(18…Bxa6 なら 19.Qc6+ から Qxa8)19.Bxb5+ Kd8 20.Bxa6 から 21.Rd1+ で圧倒的な攻撃態勢になる。

18.Rxa8+ Bxa8 19.Rd1!

 この手は 20.Bxb5 を狙っている(20…cxb5 21.Qc8+)。黒が 19…Qc5 で后翼を封鎖しようとすれば 20.Qd3! だし、19…Qc7 なら 20.Ne5 がある。

19…Qb7 20.Ne5

(この章続く)

2015年11月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(161)

「Chess Life」1996年9月号(3/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手順の妙(続き)

B.1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 e6 4.e3 f5

 既にここまでで手順の妙が発生している。3手目と4手目で白は私が「反スラブ」手順と呼ぶのを採用した。つまり黒がスラブ防御の核心である主眼のクイーン翼ビショップの展開で満足すべき戦型に入るのを防いでいるからである。黒の 3…e6 は白にポーンを犠牲にする 4.e4!? dxe4 5.Nxe4 Bb4+ 6.Bd2!? を指させるもので、4.Nf3 にはたぶん 4…dxc4 と指すつもりだった。白は 4.e3 でそれらを避け、4…Nf6 には 5.Nf3 でメラン戦法に入ることを期待した。それにもかかわらず黒は石垣戦法で相手の意表をついた。白はここで 5.g3、6.Bg2 から 7.Nge2 でコルチノイの陣形に移行できる。あるいはeポーンが既に突いてあるのでビショップを次のように「自然に」展開することができる。

5.Bd3 Bd6

 黒は白が 6.Nge2 と指した場合に備えてd8-h4の斜筋を開けたままにしておこうとしている。しかし 5…Nf6 の方が堅実で、その時の白の最善手はe5の地点に利かせる 6.Nf3 である。ここからはドレエフ対シェルバコフ戦(ロシア選手権戦、1995年)を追う。

6.g4!? Nf6 7.gxf5 exf5 8.cxd5! cxd5 9.Qb3 Nc6 10.Bd2

 白は一貫して黒のポーン陣形の弱点、特に孤立dポーンを標的にしている。黒はそれを 10…Bc7 で守ることができたが、白の薄くなったキング翼の側面と展開の遅れとにつけ込む方を好んだ。

10…O-O!? 11.Nxd5 Nxd5 12.Qxd5+ Kh8 13.a3! Ne7 14.Qg2 Be6 15.Nf3 Rf6 16.h4! Qb6 17.Bc3 Nd5 18.Rb1 Re8 19.h5

 第3図

 形勢判断の難しい局面だが、ドレエフは 19…Qc6 20.Rg1 で「形勢不明」としている。代わりに黒は魅力的な作戦を選択したが、白に意表の手順を許し白キングは十分安全になった。『チェス新報』第65巻第73局にドレエフの詳細な解説が載っている。

19…Nxc3? 20.bxc3 Qc7 21.c4! Bxc4 22.Bxc4 Qxc4 23.Rxb7 Qc1+ 24.Ke2 Qc4+ 25.Kd1! Rf7 26.Nd2 Qa4+ 27.Ke1 Rxb7 28.Qxb7 Qxd4 29.h6! Qf6 30.Qd7 Rg8 31.Ke2 gxh6 32.Nc4 Bb8? 33.f4! Rg7 34.Qb5 Rg8 35.Rd1 h5 36.Rd7 Qa1 37.Qb7! Rf8 38.Rxh7+ Kg8 39.Rxh5 Qa2+ 40.Kf3 黒投了

 ここでも洗練された質問は「黒がスラブの手順を用いるなら、白は黒にとって比較的有利になるオランダ石垣への移行を防ぐことができるか」である。答えは「できる」だが、それなら白はスラブを防ぐことができない。反石垣の手順はやはり 3.Nf3! から始まり、3…e6 には 4.Qc2! と応じる。さらに 4…Nf6 には 5.g3 で閉鎖型カタロニアに入る。黒が代わりに 4…f5 を選ぶなら、白はまた 5.g3 で第1図の陣形を目指す。白クイーンが早くc2に展開するのは何の問題にもならない。というのはそこはオランダ石垣において一般に最良の位置だからである。閉鎖型の布局での捌きで通常重要なのは、適正に連係のとれた駒配置である。正確にいつそれぞれの駒を最良に配置するかは、それほど重要でない。

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2015年11月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(225)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

6.e4?!

 この手は一貫性があるが正確ではない。白は黒が白の中央に対してすぐに攻撃を始められることに気づいていなかった。黒の …e7-e5 突きを止めd4の地点を強化する正確な 6.Nf3 のあと白は e2-e4 突きで大きく優勢になる。実戦は黒の中央での可能性によりここから混戦になる。

6…Nxc3 7.bxc3 e5!

 黒は相手がポーンの見事な横隊を維持するのを許しておくことができなかった。eポーンをくれてやるのは 8.dxe5 Qh4 9.Bd3 Nd7 10.Nf3 Qg4! のあと …O-O-O から …Nc5 という変化に基づいていて、そうなれば戦力の回復と白の王翼のかく乱の見込みが大きい。

8.Nf3 exd4

 ここで白はどうすべきか。9.Nxd4 はとてもじゃないが指す気にならない。なぜなら白に弱いc3ポーンが残り、d4とe4の立派な中央を保持する希望がまったくなくなるからである。9.cxd4 は指したい手だが、9…Bb4+ でうまくいかない。白は 10.Bd2 Bxd2+ のあと 11.Nxd2 Qxd4 かひどい形の 11.Kxd2 を選ばなければならない。

9.Bb5+!

 白は19世紀ばりのギャンビットを繰り出した。目的は黒の后翼ビショップを封鎖することである。

9…c6 10.Bc4 b5

 この手は印象が良くない。黒が 10…dxc3 と取れないのは 11.Ng5 または 11.Ne5 で白駒の働きの優位を生かしてくるからである。黒は白がd列をふさぐか(11.Bd3)、后翼に落ち着く(11.Bb3)ことを期待している。ビショップがそこに下がると …c6-c5-c4! とやってこられる危険がある。

11.Be2 dxc3 12.Qxc3 Nd7

 白はこのあとの中盤戦でビショップの利きがよく通り大駒に格好の素通し列ができる。Bb2 も想定でき、たぶんそのあと Rfd1 と Rac1 となる。さらには素通し列を作る a2-a4 突きもある。

13.O-O Qe7?!

 黒は王翼ビショップを出すのに苦労している。13…Be7 14.Qxg714…Bf6 で勝つので恐れていない。しかし単純な 14.Bb2 が嫌である。例えば 14…Bf6 には 15.e5 と突かれる。

14.Bb2 Nc5

 黒はeポーンを当たりにし 15…Na4 で白の恐ろしいビショップの片方をなくせることを狙っている。中央のポーンがないのとかなり開けた局面のため白の両ビショップは黒にとって大きな危険となることがある。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(224)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1
白 R.シュピールマン
黒 V.チェホベル
モスクワ、1935年

1.d4 Nf6 2.c4 b6?!

 これは少し時期尚早である。2.Nf3 と比較すると白は楽に Nc3 と f2-f3 突きを指すことができるので e2-e4 突きの支援がもっとやりやすくなっている。事実ここでの 3.f3 は注目に値する。というのは 3…e6 4.e4 で黒が作戦齟齬をきたしていて、4…d5 5.cxd5 exd5 6.e5! のあと f3-f4 から Nf3 となれば一層悪くなるからである。

3.Nc3 Bb7 4.Qc2!

 これで e2-e4 突きが防げない。大ざっぱな指針を言っておくと、一般に白が布局で e2-e4と 突くときは既に指しやすくなっている。

4…d5

 4…e6 はもう手遅れである。黒は e2-e4 突きを防ぐために必要な手(…Bb4)を指す機会がない。5.e4 d5 6.cxd5 exd5 7.e5! となって白がまったく好調である。

 4…d5 と突いたにもかかわらず黒には e2-e4 突きを止められないことが分かっている。そのことよりもむしろdポーンを交換してd列の自陣側が素通しになることを期待している。そのあとは …c7-c5 または …e7-e5 と突いて白のd4ポーンを攻撃できるかもしれない。

5.cxd5 Nxd5

(この章続く)

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后印防御の指し方(223)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

9.b3

 代わりに 9.Qd3 だと黒には打って出る余裕がちょうどあり 9…Nc6 10.b3 Qb7 11.f3 d5! 12.Nxc6 dxc4! 13.Qxc4 Rc8 で駒を取り返す。守勢の局面と活動的な局面の差は、11…d5! のような中央でのポーン突きの正確な時機に基づいていることがよくある。

9…Bg7 10.Nc3 Qb7+ 11.f3 d5!

 12.cxd5 Nxd5 のあとの局面は白がほんのわずか良い。両者ともルークでd列とc列を占拠でき、一連の駒交換に結びつきそうである。しかし白は例えば 13.Nxd5 Qxd5 14.Be3 で展開の優位を保持することになる。

(この章続く)

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后印防御の指し方(222)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 この手は后印防御にとって珍しい状況になる。つまり白は中央にポーンがない。白は駒で取り返さなければならないけれども、二通りあるどちらの取り返し方でもあまり芳しくない。白クイーンはd4にいると …Nc6 またはg7にフィアンケットされた黒ビショップによって攻撃にさらされる。ナイトで取り返せば白枡ビショップ同士の交換になり黒を利するだけである。

6.Nxd4

 白は 6.Qxd4 Nc6 7.Qh4 から Bg5 で問題ないように思えるが、それだけのことである。いずれ c2-c4 から Nc3 と指すことになり、d列特にd5へ圧力をかけることをもくろむ。しかし黒はc列が半素通しになっているので、c4の白ポーンは …Na5 から …Rc8 で攻撃目標となる公算が大である。

 そして黒にはビショップの展開に関して …e7-e6 から …Be7 と …g7-g6 から …Bg7 の二通りの選択肢がある。どちらでも黒が好調である。c列での黒の活動はd列での白の可能性と釣り合うはずである。

6…Bxg2 7.Kxg2 g6!

 局面は落ち着いているが、黒は大それた考えに夢中にならないように注意しなければならない。例えば中央に白ポーンがないことと白枡ビショップ同士の交換で黒は 7…d5 で中央を占拠することにより主導権を握る好機だと確信するかもしれない。しかしそのあと手番の白は敵ポーンに襲撃を加える。8.c4! で白が優勢である。例えば 8…dxc4 9.Qa4+ Qd7 10.Qxc4 のあと Rd1、Nc3、Bf4 そして Rac1 により白が展開で先行している。同様に 8…e6 9.Qa4+ Qd7 10.Nb5! も黒が問題を抱える。黒が中央で急ぎすぎたせいである。

 黒が非常に慎重を期したいなら、7…Qc8 と指すことができる。この手は白が c2-c4 と突くのを止め、ビショップの交換により「非武装化」されたばかりの斜筋を支配する用意もしている。黒は …Qb7+ から …Nc6 のあと王翼ビショップの展開の仕方について決めることができる。

8.c4

 当然ながら白はcポーンかeポーンを4段目に突かなければならない。ここでは黒の展開の遅れにつけ込むことを期待して 8.e4 とポーンを犠牲にするギャンビットがある。しかし 8…Nxe4! 9.Re1 Nc5 で黒陣は堅固なままである[訳注 10.b4 で良くないかもしれません]。

 だから白は 8.Nc3 で 9.e4 と突こうとするかもしれない。しかしそれなら黒は中央を占拠するのが前よりも安全になるかもしれない。8…d5 で 9.e4 を止め c2-c4 突きを気にする必要がない[訳注 9.Bg5 Bg7 10.Bxf6 Bxf6 11.Qd3 から 12.e4 と突けるようです]。白がナイトで自分のcポーンをふさいでいるからである。

8…Qc8!

 今が時機である。8…Bg7 では白が 9.Nc3 O-O 10.e4! のあとビショップをe3かf4に展開し大駒を中央列に配置して(Qd2、Rac1、Rfd1)十分すぎる。

 黒はたとえ e2-e4 突きを止めるのに間に合ったとしても、困った状況になるかもしれない。8…Bg7 9.Nc3 Qc8 10.Qd3! のあと白は非常に良い態勢である。例えば 10…Nc6 11.b3 のあと 11…d5? なら 12.Nxc6 で黒が困るし、11…Qb7 なら(空きチェックの狙い)12.f3 と応じられる。白のc4、e4そしてf3というポーンの形は非常に堅固で、黒が …d7-d5 突きで打って出るのを防いでいる。

(この章続く)

2015年11月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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