2015年10月の記事一覧

后印防御の指し方(221)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 本書の初めの方の個所で分析した局面を思い出すことにより、この局面と以降の局面がそれらといかに異なるかを認識すべきである。この局面で黒は効果的な …Bb4(+) とできなくなっている。それは白が c2-c3 と応じて黒ビショップを追い払うことができるからである。さらに白はcポーンを突いていないのでここで(例えば …Ba6 のあと)c4ポーンを守る心配をする必要もない。

 しかし同時に白はフィアンケット戦型の強さの主要な源の一つである d4-d5 突きの可能性をなくしている。

3…Bb7 4.Bg2 c5!

 ここはこう突く好機である。ほかの手はどれも無駄手になるか形の決めすぎになる。例えば 4…e6 から 5…c5 はたぶん妥当だが、黒にとって重要な選択肢である王翼ビショップのフィアンケットをできなくしている。主手順でこの可能性が見られる。

 ここで 4…c5 5.dxc5 bxc5 のあとどうなるか考えてみよう。たぶん白は黒のcポーンがc5で弱点になると考える。しかし実際は弱くなることのあるのは白の后翼、特にb2の地点である。6.c4 に黒はb列とg7からの斜筋の交差するb2の地点に襲いかかるために 6…g6! と突く。マスターの試合のルビンスタイン対ニムゾビッチ戦(マリエンバード、1925年)で黒は 7.b3 Bg7 8.Bb2 O-O 9.O-O Nc6 10.Nc3 a5! 11.Qd2 d6 12.Ne1 Qd7 のあと 13…Nb4 と指して優勢になった。

5.O-O

 代わりに白が 5.e3 または 5.c3 で中央を強化することを考えてみる。eポーンはe3に行くと白の后翼ビショップを閉じ込めるので不適当である。cポーンの方が良いが、それなら黒は王翼フィアンケットの可能性を放棄して 6…e6! と突く。白がd4のポーンを堅固にしたら黒の王翼ビショップはe7にいる方が良い。

5…cxd4

(この章続く)

2015年10月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(394)

「Chess Life」2015年7月号(2/2)

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実戦の收局

GMダニエル・ナローディツキー

次の一手

第1問 レイティング1500相当
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2775)
GMマイケル・アダムズ(FIDE2745)

ロンドン・クラシック、2014年12月13日
 白の手番

解答

 黒はh5のポーンを取れば引き分けの可能性がかなり高くなる。しかしナカムラにはそれを上回る読みがあった。38.Rg6+! Kf7 39.Rg5! Kf6 40.f4! 黒投了 ナカムラが力でねじ伏せた。41.Kg3 のあと黒ルークが取られる。

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(この号終わり)

2015年10月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(220)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

 c:c2-c4 不突きフィアンケット

1.d4 Nf6 2.Nf3 b6 3.g3

(この章続く)

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后印防御の指し方(219)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 黒は中央付近で反撃する。ここで 10.Ne4 は Nxd6+ の狙いがあるので、黒がg3のビショップを取るいい機会である。10…Nxg3 11.hxg3 のあと黒は 11…h6 よりも 11…g6 でh7の地点を守った方が良い。なぜなら 11…h6 では白がまだ g3-g4-g5! で素通し列を作ることができるのに対し、11…g6 なら白ビショップが花崗岩のように固いポーンに頭をぶつけることになるからである。そのあと黒の王翼は …Kf8-g7! で最も安全に守ることができる(キャッスリングの代わりに)。そうすればg7のキングとh8のルークが王翼の要所に向けられた策略をすべて止めてくれるからである。

 上図の局面は黒にとって少なくとも互角である。将来は双ビショップを持つ方の選手にある。

(この章続く)

2015年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(160)

「Chess Life」1996年9月号(2/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手順の妙(続き)

A.1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 f5

 黒の出だしはクイーン翼ギャンビット拒否のオーソドックス戦法(2…e6)だったが、白ナイトがc3に来るやすぐにオランダ石垣に転じた。白はどう応じたらよいだろうか。実は白は理にかなったいろいろなことができる。4.Bf4、4.g3 のあと 5.Bg2 から 6.Nf3、4.g3 のあと 5.Bg2 から 6.Nh3 などなど。白ができないことは第1図の陣形に到達することである!

 実戦例としてコルチノイ対スパスキー戦(挑戦者決定最終戦、ベオグラード、1977~78年、第13局)を選んだ。この試合でコルチノイは一貫して黒枡を標的とすることに努めた。

4.g3 Nf6 5.Bg2 Be7 6.e3 O-O 7.Nge2 c6

 念のため手順について触れておくと正確には 1.c4 e6 2.Nc3 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 Be7 5.e3 O-O 6.Nge2 c6 7.d4 d5 だった。大事なことはもちろんこの局面でコルチノイがどう指したかである。

8.b3 Bd7 9.Bb2 Be8 10.Nf4 Bf7 11.Nd3! Nbd7 12.Qc2 Rc8 13.c5 b6 14.b4 g5?! 15.Ne2!

 白の黒枡戦略が続いている。注意することは白が黒のキング翼でのポーン暴風の危険を未然に防いでキング翼キャッスリングを控えていることである。

15…Bg6 16.h4 h6 17.hxg5 hxg5 18.Ne5! Bh7 19.f3 bxc5 20.dxc5 Nxe5 21.Bxe5 Nd7 22.Bb2 Bf6 23.Nd4 Qe7 24.f4! Rf7 25.O-O-O! a5 26.a3 axb4 27.axb4 g4 28.Bf1

 第2図

 次に 29.Bd3 とされると黒は両翼で完全に麻痺してしまう。だから黒は中央で反撃しようとするが黒枡はより一層弱くなる。

28…Bxd4!? 29.Bxd4?!

 イギリスのGMマイケル・スティーンは正しい取り返し方は 29.Rxd4 であると指摘した。なぜならあとで Qc3 と指せば白のクイーンとビショップのバッテリーが黒のキング翼を機銃掃射する形になるからである。試合はすぐに悲劇的な終わり方をした。時間に追われたコルチノイが黒ビショップがh7の地点にいることを「忘れた」からである。

29…e5 30.fxe5 Nxe5 31.Bd3 Nf3 32.Bxf5?? Rxf5 33.Qxf5?? Bxf5 白投了

 白は3手目でもっと良い手を指すことができるのだろか。ほとんどの場合その答えは「できる」である。その理由はクイーン翼ギャンビット拒否の 3.Nc3 から始まる手順が、白の常用定跡が 3…Nf6 のあと交換戦法を必要とする場合にだけ重要だからである(以降のクイーン翼ギャンビット交換戦法でさらに説明する)。そうでなければ 3.Nf3 の方が欠点がなくてもっと融通性がある。そう指せば 3…f5 と来られても 4.g3 で第1図の陣形にすることができる。

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2015年10月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(218)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 コーレの試合で黒が白の e2-e4 と突く必然性につけ込んだことを覚えているだろう。黒は白がeポーンを突くまで待ち、それから …cxd4 で要所を支配した。分析したばかりのトーレ・システムでは黒は適時の …Nd5 で白の后翼ビショップの位置につけ込んだ。ロンドン・システムにもアキレス腱がある。それは意外でも何でもなく、f4のビショップである。

3…Bb7

 両者の駒とポーンがぶつかっていないし直接の狙いもないのでまだ戦闘状態でない。だから駒を展開する順序は正確である必要がない。例えば黒はここで 3…e6 と指すことができる。

4.e3

 白はこの手を遅らせて 4.Nbd2 と指すこともできる。しかしいずれは e2-e3 と突いて王翼ビショップを使えるようにしなければならない。

4…e6 5.Nbd2 Nh5!

 白はビショップを黒枡ポーンの壁の外に出したので、当たりにされてもポーンの壁の内側に引き戻すことができない。黒の意図はこのあと 6…Nxf4 から 7…c5! と指すことで、白のdポーンをひどく弱らせることになる。(これを第6章でマイルズの指した 4.Bf4 と比較してみよ。あの場合は白は c2-c4 と突いていて、Nc3 でd5の地点を支配することができた)

 棋理としては白は 6.Bg5 で黒枡ビショップ同士の交換を狙うべきかもしれない。なぜなら黒枡ビショップがなくなれば黒よりも多くの黒枡を支配することになるからである(中央ポーンのために)。6…f6 はあまりにも弱体化するし 6…Qc8 はあまりにも意気地がないので黒はこの交換を避けないだろう。しかし単純に 6…Be7 7.Bxe7 Qxe7 で指せるはずである。あとで …f7-f5 から Nf6-e4 で王翼攻撃さえ考えることができる。(しかし第6章のマイルズの戦型では白は中央で d4-d5! と反発することができた)

6.Bg3 d6

 黒がg3のビショップを取るのを急がないのは、白がhポーンで取り返して Bd3 でh7の地点を攻撃してくるからである。黒はg3での交換がこれ以上延ばせばまずくなるまで延期することができる。その間にg3のビショップは何の障害にもならないことは確かである。

7.Bd3 Nd7 8.Qe2 Be7 9.c3 c5!

(この章続く)

2015年10月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(217)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

 B:ロンドン・システム

1.d4 Nf6 2.Nf3 b6 3.Bf4

 この展開はトーレの場合よりもずっと控えめである。1922年のロンドン大会で登場したが、マスターの間ではあまり支持されることがなかった。白はコーレがカパブランカに対して構築したような陣形に似ている(第1章の実戦例2を参照)。しかし后翼ビショップが、すぐにc3、d4それにe3に配置されるポーンの壁の外にいる。

(この章続く)

2015年10月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(216)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

4.Nbd2

 4.Bxf6 なら黒はeポーンで取り返して、…g7-g6、…f7-f5 、…Bg7 そしてたぶんあとで …Nd7-f6-e4 と指して中央で好形を築くことができる。

4…c5!

 …c7-c5 に対して白が d4-d5 と応じられない時は、このポーン突きは黒にとってほとんどいつも良い着想である。黒はd4のポーンとの交換の選択肢を残しておく。そしてそれが白に急いで e2-e4 またはあとで c2-c4 と突くのを思いとどまらせることになる。というのはそれらのポーンはdポーンを支えるのに必要だからである。

5.e3 e6 6.c3 Be7

 これで黒はほとんど心配がない。釘付けをなくしたので将来いつか …Nd5! で自陣にかけられている圧力を弱めることができる。そのあと白は黒枡ビショップ同士の交換をさせられる。その交換が行われれば白はナイトを好所から追い払うために e3-e4 または c3-c4 とは突く気がしない。なぜならもうビショップによって支配することのできない重要な黒枡の支配を弱めることになるからである。以下の典型的な手順がこの考え方をよく表している。

7.Bd3 O-O 8.O-O cxd4!

 ここで白には取り返し方が二とおりある。

 a)9.exd4 なら 9…Nd5! 10.Bxe7 Qxe7 のあと黒には …Nf4 の狙いが残る。明らかに黒の方が悪くない。

 b)9.cxd4 なら 9…Nd5 10.Bxe7 Qxe7 のあと黒は …Nc6 から …f7-f5 と指して中央の枡をさらに支配する。白は駒を交換すること以外に何かすることが難しくなる。

 ということで c2-c4 と突いていないことに的確につけ込むことによりトーレ・システムを骨抜きにすることができる。

(この章続く)

2015年10月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(215)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 1920年代のきわめて短い期間、つまりたったの2年間、メキシコのマスターのカルロス・トーレはこのシステムで世界のチェス界を震撼させた。彼は黒のほとんどどんな展開に対してもこれを用い、見事な勝利をいくつも飾り、元世界チャンピオンのエマーヌエル・ラスカーにさえ勝った。そのあと健康を害したためチェス界から姿を消し、二度と大きな大会に出なかった。

 彼のシステムの戦略的な基盤は黒ナイトに対する釘付けである。黒が …e7-e6 と突いていないので黒ナイトがまだ釘付けになっていないことは承知の上である。しかしいつかは王翼ビショップを出すためにeポーンを突くことになり、そうなればこのナイトはクイーンを危険にさらさずに動くことはできなくなる。結果として黒のe4の地点の支配は根底からくつがえされる。例えば 3…e6 4.Nbd2 Bb7 は黒にとってまったく自然な指し方だが、ここで 5.e4! で白が好調になる。5…h6 でビショップをナイトと交換させられるけれども(6.Bh4? は 6…g5! でeポーンが取られる)、6.Bxf6 Qxf6 7.e5 または 7.Bd3 のあと Qe2 から O-O、そしてたぶん Ne1、f2-f4! から Nef3 ともなれば白は中央で絶好の態勢になる。

3…Bb7!

 当たり前の手だが、それでも非常に良い手である。3…e6 が不快な釘付けになることはもう分かっている。本譜の手はそれを避けるだけでなく、危なっかしい 3…Ne4 のもたらすことがある一切の面倒も避けている。白は仕向けられない限り Bxf6 とは取らない。白の着想は駒を交換することでなく圧力をかけることなので、ナイトはf6にいても特に危険はない。3…Ne4 の面倒は二通りある。第一にこのナイトはいつまでもe4に置いておけるものではなく、いつはか交換されるものである。というのはもし黒がポーンでこのナイトを補強しようとすれば、ポーンがナイトの代わりにe4に行ったとき取られてしまうかもしれないからである。第二に、ナイトが動いてもh4-d8の斜筋での白の釘付けをなくすことにはならないのである。例えば 4.Bh4! Bb7 5.Nbd2 のあと黒は王翼ビショップをいったいどのように展開するか当惑するかもしれない。5…e6?? 6.Bxd8 は明らかに論外である。5…g6 でビショップをフィアンケットすることはできるが、6.e3 から 7.Bd3 または 7.Bc4 で白の方が黒よりはるかに指しやすい。

(この章続く)

2015年10月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(214)

第7章 白の控え目な中央 アンディー・ソルティス

 これまで分析してきた戦型は議論の余地があるだけでなく定跡的であると考えることができる。議論の余地があるというのは、一流の選手たちでさえ白が最善に指して優勢になれるか、あるいは黒が形勢のつり合いを保たせることができるかについて意見が一致しないかもしれないからである。だからそのような戦型は新しい戦略構想の影響を受けやすく、特定の戦型がはやったりすたれたりするかもしれない。そして定跡的であるというのは、その布局の生涯のほとんどの間たいていの分析家と強豪マスターたちの注目を引きつけてきたからである。

 しかし戦型の中には比較的簡明なのに、白にこれまで見てきたどれとも同じくらいの優勢を約束するものもある。ここで「簡明」というのは中盤戦を非常に複雑にすることが多い中央でのポーンの衝突を減らすか避けることを意味する。本章では白が d2-d4 と突くがc4へは突かない控えめな中央を構築する局面を分析する。

 最初のシステムでは白が e2-e3 それに c2-c3 と突いてd4のポーンを支える形を考察する。ナイトはf3とd2に行き、王翼ビショップはd3に行く。トーレ・システムをロンドン・システムとコーレ・システムとから異ならせているのは、白の后翼ビショップの位置である。トーレ・システムではg5に行き、ロンドン・システムではf4に行き、コーレ・システムでは元々のc1にいるかb2でフィアンケットされる。どの場合でも白は完全に展開し中央のポーンをクイーンとビショップで支援できる時に限り、中央での膨張を行なうつもりである。

 以降のCで考察する別の控えめな中央の展開は本書の最初の方の章にあるフィアンケット戦法に似ている。しかしここでは白が c2-c4 突きを遅らせるか避ける。

 A:トーレ・システム

1.d4 Nf6 2.Nf3 b6

 2.c4 よりも 2.Nf3 に対してすぐにフィアンケットで展開する方が効果的である。何が違うのかというと、2.Nf3 は本章で分析されるほかの戦型のようには白がe4の地点をめぐって争うのにほとんど用意をしていないということである。しかし 2.c4 なら白はe4の地点をめぐって争う用意ができている。例えば 2…b6?! 3.Nc3 Bb7 4.Qc2! または 4.f3 で、白が e2-e4 と突く用意ができているのに対し、黒はそれを防ぐのにまだ2手かかる(…e7-e6 と …Bb4)。もっと詳しい分析は実戦例1で行なう。

3.Bg5

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(393)

「Chess Life」2015年7月号(1/2)

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お楽しみチェス

米国流の詰ませ方

GMアンディー・ソルティス

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B97]
IMヒカル・ナカムラ
GMセルゲイ・カリャーキン
パンプローナ、2003年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Qb6 8.Qd2 Nc6

9.O-O-O!?

 1世紀前ヨーロッパ人はアメリカ人を攻撃一辺倒だと切り捨てていた。ゲオルグ・マルコとカール・シュレヒターの二人のヨーロッパの教養人は1907年のカールスバート大会記録本で「アメリカ人のモーフィー、ピルズベリーそしてマーシャルはチェスでは性格的にハンニバルとナポレオンに当たる。彼等は戦力をものすごい速度で動員し移動させて華々しい勝利を達成した」と書いた。

 時代は変わった。ここでの攻撃のための手は交換を避ける 9.Nb3 である。実戦では白はせいぜい互角と考えられる收局に喜んで突き進んだ。

9…Qxd4 10.Qxd4 Nxd4 11.Rxd4 h6 12.Bh4 Be7 13.Be2 b5 14.Bf3 Rb8 15.Bg3 Nd7 16.Rhd1 O-O 17.Kb1 Re8 18.a4 b4 19.Na2 a5 20.Nc1 Nb6 21.b3 Bb7 22.Ne2

22…Rbc8

 黒はこの手の代わりに 22…f5、または実戦の手なら 23…Nd7 から 24…Nf6 と指した方が有望だっただろう。

23.R4d2 d5 24.e5 Bc5 25.Nd4 Ba6 26.Bf2 Nd7 27.Re1 Rc7 28.Kb2 g6 29.h4!

 白は必要ならどんな手段でも用いて当時世界最年少グランドマスターの相手を圧倒し始める。このやり方はかつては変わっていると考えられていた。そして奇妙なことにアメリカ流だと考えられていた。

 アーロン・ニムゾビッチは広く読まれている著書の『Chess Praxis』(チェス読本)で15手で不利になった試合を振り返っている。彼の改善策は「アメリカ人のモットー」と呼ばれるものを思い出すことだった。

 彼は「『悪いながらも最善を尽くせ。』あきらめるな。最悪の状況でも比較的一番良い可能性を見つけろ。相手の勝ちをできるだけ難しくしろ」と書いた。「アメリカ人はそう考える。そしてこのような考え方には一理ある!」

29…Bf8?! 30.h5! Nc5 31.hxg6 fxg6 32.g3! h5 33.Be3 Rh7 34.Rh1! Ne4

 白はここで 35.Bxe4 dxe4 36.Nc6 から Nxa5 とポーンを落とし始めることができた。実戦は代わりに黒に少しイモ手を指す機会を与えた。

35.Rg2 Bc5 36.Re1 Bxd4+? 37.Bxd4 Rc8? 38.Bxe4! dxe4 39.Bb6! Rb7 40.Bxa5 Rbb8 41.Rd2 Rc3 42.Rd6 Ra8 43.Rg1 Bd3 44.cxd3 Rxa5 45.dxe4 Rac5 46.Rg2 Re3 47.Rd4 Rcc3 48.Rxb4 Rxg3 49.Rxg3 Rxg3 50.a5 Kg7 51.Ka3 Rg1 52.Ka4 黒投了

 52…h4 53.Rc4 h3 54.Rc2 Rg2 55.Rc1 h2 56.Rh1 のあと白はキングにクイーン翼のポーンを護衛させて勝つことができる。

 ベンジャミン・フランクリンのパリ人の相手の一人が自分のキングをチェックされたままにして以来アメリカ人は独自のやり方をしてきた。フランクリンはそのキングを取った。

 「こちらではキングを取ったりしない」と米国外交官は言われた。

 「アメリカでは取る」とフランクリンは答えた。

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(この号続く)

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后印防御の指し方(213)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 白はクイーンでチェックされたら Bf5! と応じる。本譜の手で白はf列とb1-h7の斜筋を思い通りにすることができる。黒のルークはeポーンによって働かなくなっている。

38.Rf1 Bc8+ 39.Kg3 Qc6 40.Be4 Qe6 41.Bf5!

 黒としてはクイーン交換を許すわけにはいかない(41…Qxf5 42.Qxf5 Bxf5 43.Rxf5)。そうなると收局でたぶんc4とb3のポーンを取られるか、白のe6とd5のポーンに前進されてしまうからである。白にとってはどちらの作戦でも勝ちになる。

41…Qh6 42.Bxc8 Rxc8 43.Qf6

 これで勝ちの收局に持ち込む。例えば 43…Qxf6 なら 44.Rxf6 Rf7 45.Ref2 Rxf6 46.Rxf6 Bd8 47.Ra6 から d4-d5 または Kg4-f5 である。

43…Qxh5? 44.Qxe7 黒投了

 44…Qxe2 なら 45.Qe6+ でチェックでルークを取られるて詰みになる。

(この章終わり)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(212)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

32…Bc7 33.Rfe1 Qd6

 これが黒への最も危険な駒配置である。白はここで e3-e4 について熟考しなければならない。g3またはh2で詰まされる可能性があるのでクイーンを戦術的によそへ行かせるわけにはいかない。

34.e4! dxe4 35.fxe4

 これで白はゆっくり 36.e5 または 36.d5 と突く用意ができた。ここで黒は華々しそうな一発にすべてを賭けた。

35…f5!?

 第一点は 36.exf5?? が負けになることで、黒がe2で2回取ると白クイーンがg3の守りのために取り返すことができない。

 第二点は 36.gxf5 g4+! で、白キングの周りのいくつかの筋が素通しになって極めて危険になる。このgポーンを取ると黒ルークがすぐ参戦するので(…Rg7+ – g3+)白は取れない。想定される手順は 37.Kg2! Qh2+ 38.Kf1 Qh1+ で永久チェックになる。

36.e5!

 白が引き分けより上を目指したのは正しかった。中央のd4とe5の2ポーンは盾として働くのでキングはg4でも安全である。

36…fxg4+ 37.Kxg4 Qd5

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(159)

「Chess Life」1996年9月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手順の妙

 本講座の初回では「布局定跡の手順 現代のマスターの常套手段」を取り上げた。それは非常に重要な科学の発達の基礎への紹介だった。現代の選手なら手順の科学的知識を用いて、指したい戦型に到達しながら相手がこちらの好まない戦型に引きずり込むのは防ぐようにするのを確実にしたいだろう。本稿では参考になる手順の妙の実戦例をいくつか分析する。その中のいくつかはマサチューセッツのスティーブン・ブルドノ氏からもらった手紙に触発されたものである。

 オランダ防御石垣戦法

 過去10年の間の主流手順は次の局面に行き着いた。

1.d4 f5 2.Nf3 Nf6 3.g3 e6 4.Bg2 d5 5.O-O c6 6.c4 Bd6 7.b3 Qe7

 第1図

 もちろん多くの異なった手順がこれと同じ局面に至る。白の初期の全般的な戦略目標は、重要な黒枡、特にe5とf4の地点を支配することである。そしてそのためには時の試練を経た二つの手法がある。

 1.8.a4 O-O 9.Ba3 Bxa3 10.Nxa3 もし望ましければa3のナイトは Nc2、Nce1、Nd3 と好所に再配置することができる。

 2.8.Bb2 O-O 9.Nbd2 このあと Ne5、Ndf3 そして適切なら Nd3。

 白の戦略の注目すべき唯一最大の要素はb1のナイトで、最も効果的な位置が明らかになるまで展開が遅らせられる。上述の変化のどちらでも白の連係の良い主眼の駒配置のために、黒はキング翼の反撃を策するのも白の圧力に対処するのも非常に困難になる。もちろん 1.d4 に対するあなたの防御がオランダ石垣しかないなら、出来るだけのことをするしかない。しかしほかの選択肢があるなら、手順の科学的知識を用いて上図よりも戦略的にもっと有望な局面にしようとするだろう。そのような可能性を二つ紹介する。

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2015年10月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(211)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

23.g4! b4 24.axb4 axb4 25.h5

 ピルズベリーはほかがすべて対等ならキングがいるのは通常は王翼だから、王翼攻撃の方が后翼攻撃に勝つことを示した。ここでは黒の方にいくつもの有利な点が見てとれる。中央に有利に展開した駒、特にルーク。好形のポーン。攻撃目標の多さ(e3もそうなりそう)。しかし白には最大の攻撃目標の敵キングがある。

25…g5 26.Bg3 b3?

 白が急いでc3でせき止めるのでこの手は …c4-c3 の可能性をつぶした。后翼が固定されたので局面を開放することのできる手段は白の e3-e4 か f3-f4 または黒の …f6-f5 だけになった。最も強力で実現しやすいポーン突きはeポーンである。形勢は変わりかけている。

27.Be1! Bd6 28.Bc3! Re7 29.Qe1 Rde8 30.Qf2 Qc7

 局面の次の段階は e3-e4 突きをめぐって進行する。白が無事にやり遂げることができれば優勢になるのは、そのあと e4-e5 から f3-f4-f5 と突いていって白ポーンが途中のすべてを押しのけるからである。

31.Kg2 Qb6 32.Kh3!

 白はキングの最良の地点を見つけた。g3の地点に利かしておく必要があり、e3-e4 のあとh1-a8の斜筋が素通しになるかもしれないのでその斜筋からはずしておきたいからである。

(この章続く)

2015年10月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(210)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 この奇妙な手は h4-h5 突きから Rh2 を伴うかもしれないキング翼での非常に変わった攻撃の始まりである。本譜の手はビショップをポーン構造の外側に固定するので「悪形」の手である。黒は 19…f6 20.Bf4 g5 で白ビショップを捕まえることさえできる。しかしそのあと白は 21.Rxc4!! でたとえば 21…dxc4 22.Qc2 から Qxh7+ とキング翼を急襲する機会が得られる。

 ここは 19…Bc8! と指す好機だった。黒の「后印ビショップ」はb7でやるべきことを全部やった。今度はh3かf5に行って白の攻撃を無力にするのに用いることができる。

19…Bf8?! 20.h4! Qb6

 この手は 21…Rxe5 22.dxe5 Qxe3+ から 23…Qxe5 で交換損の代わりに大切な2ポーンを得る狙いである。そのあとは黒のポーンが進撃してくる(…d5-d4)。しかし黒はもっと単純な手段で敵の攻撃を封じることを考えるべきである。すなわちここか次の手で …Bd6 と指してe3のポーンが標的になるようにするのが良い。本譜の手のあと黒にはこれといった反撃がない。后翼のポーンはたいしたことがなくなる。

21.Bf4 f6 22.Re2 Rad8

(この章続く)

2015年10月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(209)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

14.O-O b5! 15.Ne5 Nxe5

 これで白にはe5にビショップの好所ができる。しかし黒は 15…Nf6 の方が良いわけではない。白は f2-f3! でe4の地点を確保でき、そのあと g2-g4! から Rc2-g2 で王翼で行動を起こし始めることができる。そうなれば白の王翼攻撃は現実のものと化す。

16.Bxe5 g6!?

 白ビショップがe5にいる時に、この手は指しにくい。しかし露骨に 17.Bxh7+ Kxh7 18.Qh5+ とやってこられる可能性があった。そのあと白は例えば e3-e4 と突いてルークを3段目で使うか、最初に Bxg7!? と切る。

17.f3 Re8 18.Rc2 a5

 黒の作戦は単純である。つまりbポーンをb4に突くことである。そうなればaポーン同士が交換されて黒の后翼ルークのためにa列が素通しになる。そのあとは …c4-c3 や …b4-b3 の可能性もあり、白の攻撃をしのぐ反撃が期待できる。

19.g3!

(この章続く)

2015年10月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(208)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 向かっているのは四分の三世紀以上に渡って議論の的になっている局面の一つである。ピルズベリー以前の1890年代には黒が …c7-c5-c4 から …b6-b5 でクイーン翼のポーンの多数派を形成できれば優位に立つことが当然視されていた。これは第2章の実戦例3で黒が実際にやったことで、もう少しで勝つところだった。

 しかしピルズベリーは白の王翼攻撃は敵ポーンのスチームローラーの危険さに匹敵するはずだと主張した。彼は1895年にヨーロパに行ったとき、Bg5、Qc2、Bd3 そして Ne5 という攻撃態勢で好局を何局かものにした。彼を批評した者たちはそれは運が良かったのであり、正しくない戦略を戦術の巧みさで補ったのだと言った。それ以来理論家たちの議論が続いている。

9.Bd3 Ne4!

 ピルズベリーが成功を収めたのは実際は后翼ギャンビット拒否で、その頃は后印防御は指されてもいなかった。しかし局面はよく似ていて、場合によってはまったく同じになる。ここでの黒の単純化の方法は「ピルズベリー流」から毒牙のほとんどを取り去る。

10.Bf4!?

 白がピルズベリーのことを忘れて王翼の代わりに后翼と中央とに集中してもよいならば、10.Bxe7 から 11.Rc1 で指しやすい局面になる。…c7-c5 は dxc5! で黒ポーンに圧力がかかるので、黒がそう突くのを思いとどまらせることになる。

10…c5 11.Rc1?

 これはピルズベリーが多用した手段だが不正確だった。白はここでポーンを交換しておくべきで、黒があとで …c5-c4 と突いてくればd4の地点を白駒に明け渡すことになるようにすべきだった。

 白が 11.dxc5 と取らなかったのは、たぶん 11…Nxc3 12.bx3 bxc5 の局面が気に入らなかったからである。cポーンが孤立していて非常に弱くなるかもしれない。しかしこの考えは戦術上の理由により誤っている。つまり 13.Qb1! でb7のビショップとh7のポーンが当たりになっている(または 13.Bxh7+ Kxh7 14.Qb1+ でも良い)。

11…Nxc3! 12.Rxc3 c4! 13.Bb1 Nd7

 白がdポーンを黒のbポーンと交換していたら(dxc5 と …bxc5)、ここで Nd4 と指して素晴らしい試合になるところだった。現状は黒の后翼ポーンの心配をしなければならない。それらは堅固で、小駒が交換され收局が近づけば大きな優位になる。

(この章続く)

2015年10月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(207)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

参考棋譜

解説 アンディー・ソルティス

白 R.バガニアン
黒 M.ダムヤノビッチ
ブルニャチカ・バーニャ、1970年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.a3 Bb7 5.Nc3 d5

 ここでの 5…c5 は4手目で突くよりも衝撃度が劣る。それは白が d4-d5! と突く態勢ができているからである。しかしほかの手も考えられる。

 ボリス・スパスキーは世界選手権戦で 5…Bxf3?! と指したことがあったが、立派なビショップをナイトと交換した代償がほとんどなかった。白のナイトがなくなったことにより黒が白の王翼の弱点につけ込むか白のd4とe5の支配の喪失を利用することができれば、この交換にも価値がある。しかし 6.gxf3! Be7 7.f4! から Bg2 で白が好調になる。

 5…Be7 はおとなしすぎて、中央での戦いに何も寄与しない。白に 6.d5! と突かれると、ここでの …Ba6(4…c5 5.d5 Ba6 の戦型では効果的である)は一度動いているだけに遅すぎる。6…d6 7.e4 と進むと白陣の方が黒陣よりはるかに広い。

 しかし 5…Ne4 は試してみる余地があり改良になるかもしれない。フィアンケット戦型の主手順(第2章)の類似局面では白が d4-d5 から e2-e4 と突く用意をする。ここでは 6.Qc2 Nxc3 7.Qxc3 Be7 のあと …f7-f5 から …Bf6 で黒が大丈夫のはずである。

6.Bg5 Be7 7.e3 O-O 8.cxd5 exd5

(この章続く)

2015年10月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(392)

「Chess」2015年7月号(2/2)

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FIDEグランプリ(続き)


ジョババとの乱戦で何かひらめいたのか天を仰ぐナカムラ。その試合は最後には勝った。

B.ジョババ-H.ナカムラ
第8回戦

 ナカムラは終始ジョージア選手を圧倒していた。そしてここでは3ポーンも得している。もっともキングの位置が潜在的に危険なので技術的な困難が少し生じているのは当然である。試合は次のように続いた。

52.Rd8 Ne7 53.Rd7 Rc2+ 54.Kg3

 ここで最も簡明は選択肢は 54…Nc6 とナイトを動かす手で、黒が勝勢である。ナカムラは代わりにポーンを犠牲にした。

54…f4+!?

 この手は実際には何もだいなしにしないが、米国選手にとってもう少しで災いになる手始めだった。

55.Kxf4 Nf5 56.Rd8 Rf2+ 57.Ke4 Ng3+ 58.Kd3 h4??

 この手はhポーンを失うポカだった。

59.Rd4 Nf5

 59…Rh2 なら 60.Nf3。

60.Rd8

 61.Nf7 を狙っているので黒はナイトをf5からどかさなければならない。

60…Ng3 61.Rd4

 黒は千日手にしないでh4ポーンを守ることができない。

61…Rf5 62.Rxh4+ Nh5 63.Ke4 Rxg5

 黒はまだ2ポーン得だが、客観的には引き分けのはずである。オランダのGMロビン・ファン・カンペンはこれまでの経過に「びっくリ仰天」したとツイートしたが、黒は「まだ二重gポーンでいつまでも頑張ることができる」とも正しく指摘した。実際そうなったのだろうが、現実はジョババが早々とつぶれた。

64.Kd5 Rg1 65.Ke6 Rf1 66.Rh2 Rf6+ 67.Ke7 Kg8 68.Nxg6??

 「ルークとポーン」対「ルーク」の負けの收局に単純化された。白は代わりにじっと待つべきだった。

68…Rxg6 69.Rxh5 Ra6

 マルク・ドボレツキーがよく指摘するように、敵キングを段で遮断する方が列で遮断するよりもしばしばはるかに効果的である。ここがその場面で、白は黒キングによって支援されたgポーンのゆっくりした前進に対して何も受けがない。

70.Rf5 g6 71.Rf6 Ra7+ 72.Ke6 Kg7 73.Rf3 Ra5

 また黒キングを段で遮断した。

74.Rf7+ Kh6 75.Rf1 g5 76.Kf6 Ra4 77.Rh1+ Rh4 78.Rg1 Rf4+ 79.Ke5 Kg6 80.Rh1 Ra4 0-1


ヒカル・ナカムラとファビアノ・カルアナがアーナンド(去年の世界選手権戦の敗者として)と共に、来年3月に予定されている8選手による2回戦総当たりの挑戦者決定大会に進出した。近く開催されるワールドカップ(2015年9月)からもう2人が進出する。レイティングに基づいてさらに2人が進出し、最後の椅子は主催者の委員会によって選出されるワイルドカードによって占められる。

(クリックすると全体が表示されます)

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(この号終わり)

2015年10月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(206)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 白にとって見通しは暗そうである。黒ビショップは盤上を席巻し、黒の后翼の多数派ポーンはいつでもパスポーンを作り出すことを狙っているし、白の乱れた王翼は白キングが住むのにはみじめである。

 残りの手順は何も解説を必要としない。黒はまず多くの弱点を守らせることにより相手を無力な状態に追い込み、そのあと決定的な侵入を果たした。

24.Rd1 Qh4 25.Bg2 Rd8 26.Nc3 Rxd1+ 27.Nxd1 Qh5! 28.Qe2 Be5 29.h3 Bf6 30.e4 Bc8 31.Ne3 Qe5 32.Nd1 Be6 33.Qd2 g5! 34.Kf1 Kg7 35.Ke2 h6 36.Bf1 Qd4 37.Qe3 Be5 38.h4 Kg6 39.hxg5 hxg5 40.Ke1 Qd6 41.Be2 Qd4 42.Nc3 Qd6 43.Nd1 Qd8 44.Qc1 Qh8 45.Kd2 Qh2 46.Qc2 Bf4+ 47.Ke1 Qh1+ 48.Bf1 Bh3 49.Qe2 Bg2 50.Ne3 Bxf3 51.Qd2 Qh8 52.Qc2 Qd4 白投了

(この章続く)

2015年10月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(205)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

17…Nxe5!

 進んでルークを取らせてビショップとポーンを取るこの手は局面により完全に正当なものである。黒は強力な両ビショップとd3にナイトのための強固な拠点とを得ていて、白の王翼ビショップは働いていない。白は黒ナイトがd3にやってくれば逆に交換損をして地歩を維持することができるかもしれないので、17…Re8 も考える価値がある。というのは 18.e6 Nc5 19.exf7+ Kxf7 20.f4 Bf6 となれば、黒のこの上なく活発で連係のよくとれた駒がキングを容易に守ることができるからである。

18.Bxf8 Bxf8 19.Rcd1 Bg7 20.Rd2?

 白は事態の急転に心理的に適応できずに安易な手を指しすぐに望みのない局面に陥った。本気で抵抗するなら 20.Ne2! が唯一の可能性で、21.Nd4 のあと g2-g3 から Bg2 を策することになる。

20…d4!

 この手に対して 21.exd4 は 21…Nf3+! 22.Kh1(22.gxf3 Qg5+)22…Nxd2 23.Qxd2 Qxd4 となって、黒のポーン得と局面の支配とで形勢が容易に決定的になる。また、2段目を守ろうとする 21.f4 は 21…d3 で身の毛もよだつパスポーンが黒にできる。

21.Rxd4 Nf3+! 22.gxf3 Bxd4 23.Ne4

 白はg5からチェックされるかもしれないのでそれに注意しなければならない。

23…Bg7

(この章続く)

2015年10月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(158)

「Chess Life」1996年7月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(下)(続き)

5.ピルツ防御オーストリア攻撃 B09

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.f4

 この手は本格派の選手に最も適した手法である。この陣形は一見キング翼インディアン防御に対する4ポーン攻撃(1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f4)に似ているように見えるかもしれないが、指し方の特徴はかなり違うことがある。4ポーン攻撃では白は中央で大模様を張っていて(特にd4の地点が弱い)展開に遅れている。だから黒の危険な反撃手段の可能性は見通しが明るい。

 しかしこれと比較して本譜の局面では白は展開で1手先行していて、黒が標的とする中央は少し小さくなっている。それにもかかわらず白には4段目に3ポーンがあり、黒は白の e5 突きで恒久的な被害を受けないよう見張っていなければならない。

4…Bg7 5.Nf3 c5!?

 これが黒の断然積極的な指し方で、白が中央を固める機会を得る前に白の中央に襲いかかる。GMヤセル・セイラワンはこれの世界第一級の大家である。型にはまった 5…O-O は白に 6.Bd3 と指す余裕を与え、黒が積極的な反撃を達成するのがより困難になる。例えば 6…Na6 7.O-O c5 8.d5 または 6…Nc6 7.O-O Bg4 8.e5 となる。

6.Bb5+

 この方が 6.dxc5 Qa5 7.Bd3 Qxc5 8.Qe2 Bg4 よりも黒にとって厄介だと思う。黒の指し方はキング翼インディアン防御の4ポーン攻撃の満足できる変化に似ている。

 本譜の手のあと 6…Nbd7? は 7.e5! で黒がすぐに苦戦に陥る(7…Ng4 8.e6! fxe6 9.Ng5)。6…Nfd7?! も 7.Be3 で白が中央でしっかり優位を保持するので十分でない。

6…Bd7 7.e5 Ng4 8.Bxd7+

 この手の方が簡明である。以前は 8.e6 fxe6 9.Ng5 Bxb5 10.Nxe6 で咎められるとされていたが、サクス対セイラワン戦(ブリュッセル、1988年)で無害になった。10…Bxd4!! 11.Nxd8 Bf2+ 12.Kd2 Be3+ でチェックの千日手により引き分けになる。

8…Qxd7 9.d5! dxe5 10.h3 e4! 11.Nxe4 Nf6 12.Nxf6+ Bxf6 13.O-O O-O

 今のところ白の方が中央が広く、黒のクイーン、ビショップそれにナイトは連係がとれていない。14.c4 と 14.Ne5 が白の通常の指し方になっている。黒は正確に指せば互角にたどり着けている。しかし1994年にGMアルトゥール・ユスーポフは非常に動的な作戦を披露し、迅速な展開で現在の局面を利用しようとした。

14.Be3! Na6

 ここからはユスーポフ対アダムズ戦(ドルトムント、1994年)の手順を追う。危険を伴う 14…Bxb2 については『チェス新報』第62巻第115局、常識的な 14…Rd8 については第62巻第115局の参考局を参照されたい。

15.Ne5 Qd6 16.Ng4! Bxb2 17.Rb1 Bg7 18.f5! Nc7

 これは以前のユスーポフ対ホルト戦(ドイツ、1994年)を改良しようという手で、その試合では 18…Nb4 19.c4 Nxa2 20.Rxb7 Nc3 と進み白の攻撃が強力だった(ただし83手で引き分け)。GMユスーポフが『チェス新報』第60巻第118局でこの試合を詳しく解説している。

19.Rxb7! Nxd5 20.f6! exf6 21.c4 h5 22.Nh6+ Kh7 23.Nf5!

 GMユスーポフはこの試合も『チェス新報』第61巻第118局で詳しく解説している。ここでも白は大きな主導権を握り、次のように勝ちきった。

23…gxf5 24.cxd5 Kg8 25.Rxf5 Qa6 26.Qb1 Rfe8 27.Bf2 Re5 28.Rb8+ Rxb8 29.Qxb8+ Kh7 30.Qb1 Kg8 31.Qb8+ Kh7 32.Qb1 Kg8 33.Rxe5 fxe5 34.Qb8+ Kh7 35.Qc7! Qxa2 36.Qxf7 Qb1+ 37.Kh2 Qg6 38.Qxa7 c4 39.Qc7 Qd3?(敗着。正着は 39…Qf5)40.d6 c3 41.d7 c2 42.Be3! Qxe3 43.Qxc2+ e4 44.Qc7! 黒投了

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2015年10月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(204)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

12.Qc2

 12.Ne5 から 13.f4、14.Qf3 のあと Qh3 で王翼での圧力を増すのはもっと直接的な指し方である。

12…c4 13.Bf5 g6 14.Bh3 b5 15.Ne5

 これで白のこれまでの手が意味を成す。h3の王翼ビショップはもう黒の王翼を脅かしてはいないけれども、通常なら黒がルークをc8に回して后翼での進攻を支援する好態勢にするのが難しくなっている。白は f2-f4-f5 と突いていって黒の王翼の砦を引き裂くことも狙っている。…Qb6 のあと通常は …a6-a5 から …b5-b4 と指す主眼の作戦もd7のナイトが当たりになっているので不可能になっている。

15…Nxe5 16.dxe5 Nd7 17.Bh6

 白は小駒を少し保持することにより活気ある試合に保つことを期待している。というのは 17.Bxe7 は 17…Qxe7 18.Bxd7 Qxd7 19.Rcd1 Qe7! 20.Nxd5(20.f4 は 20…Rad8 から素早く …f7-f6 と突かれて、白はe列、黒はd列にある出遅れポーンで両者とも苦労する)20…Qxe5 21.f4 Qd6 22.e4 Bxd5 23.Rxd5 Qb6+ 24.Kh1 Rad8 となってまったく互角の局面になるからである。

(この章続く)

2015年10月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(203)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 黒は白が王翼ビショップをフィアンケットする戦型での着想を借りて 4…Ba6 と指すこともできる。活気ある試合になりそうな手順をあげる。5.e3 d5 6.Nc3(有力な変化が二つあり、6.Nbd2 は后翼での盛り上がりを意図して b2-b4 で后翼ビショップをフィアンケットし、もう一つはもっと控えめな 6.b3 である)6…dxc4 7.Ne5(白の期待は黒がc4の戦利品の確保に手数をかけている隙を利用して急所を占有することである)7…b5 8.Qf3 Nbd7(8…Nd5?? は 9.Qxf7# で頓死を食らい、「紛らわしい」8…c6? 9.Nxc6 Bb7 は 10.Nxd8 Bxf3 11.gxf3 Kxd8 12.Nxb5 から白が2ポーン得になり黒が負ける)9.a4 b4 10.Nxd7(10.Nb5 もあるが 10…Nxe5 11.dxe5 Nd5 12.Bxc4 c6! 13.Nxd6+ Bxd6 14.Bxa6 Bxe5 15.Bb7 Rb8 16.Bxc6+ Ke7 となって、白はポーンを取り返したが展開に劣るのと黒の中央の態勢のために黒キングの不自由さにつけ込むことができない)10…Kxd7! 白の展開の遅れのためにまたしても黒キングが大胆になりすぐにc8に安息の地を見出す。これに反して 10…Nxd7 は 11.Nb5(Nxc7+ から Qxa8 の狙い)11…Nb6 12.Qc6+ で黒がしてやられる。

5.Nc3 d5 6.cxd5 exd5 7.Bg5 Be7 8.e3 Nbd7 9.Rc1 O-O 10.Bd3 a6

 黒はすぐに 10…c5 と突くこともできる。本譜の 10…a6 は …c7-c5 に 白が dxc5 と交換しないことを見越して、…c5-c4 から …b6-b5 で后翼のポーンを動員しそちらの方面で反撃を整える予定である。

11.O-O c5

 白が中盤戦に向けての意図を明らかにする時が来た。もっとも既にある程度はそうしている。白には良い作戦が二つある。一つは 12.dxc5 bxc5(駒で取り返すのは重要なd4の地点が白の手中に落ち黒の后翼ビショップが単なる傍観者になるので黒が劣勢になる。それに黒のdポーンが病弱である)10.Bb1 で、dポーンに対し Ba2、Qe2、Rfd1 などで襲撃する用意をする。しかし黒はこの戦型で動的に反撃することができ、中央のポーンを首尾よく守り後でそれらを突き進めて効果をあげることができる。

 白のもう一つの作戦は本譜の試合に出てくる。

(この章続く)

2015年10月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(202)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例2
白 P.ぺエフ
黒 H.リーバート
スターリ・スモコベク、1974年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.a3 Bb7

(この章続く)

2015年10月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(201)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 代わりに 27…Rxc7 28.Rxc7 Ra8 なら白は 28.Nc6 で 29.Ne5 Nd6 30.Rd7 を狙う。

27.Rxd7 Rxd7 28.Kf3 Nd6 29.Rc6 Nb5 30.Nxb5 axb5 31.Rxb6 Ra7 32.Rxb5 Rxa3 33.h4 黒投了

 白はいずれ黒の王翼ポーンの形に弱点を生じさせてから自分のbポーンを突き進めて勝ちになる。黒がそのポーンを取ってルーク同士を交換すれば、白キングが王翼ポーンのご馳走にありつき自分のポーンの一つを楽に8段目まで護衛する。それにしても黒の投了はちょっと早すぎる。

(この章続く)

2015年10月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(200)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

15…Nd7?

 15…Nc6 でも黒の問題は解消されない。なぜなら 16.Ke2!(ただし 16.b4 Be7 17.Nxb6? は 17…axb6 18.Rxc6 Rxa3 となって 19.Rxb6? が 19…Ra1+ のためにルークを取られる)16…Rfd8? が 17.b4 Be7 18.Nxb6 のためにうまくいかないからである。しかし 15…f6! は白の后翼ビショップを 16…e5 によって閉じ込める意図があり、16.Ke2 でも 16.Bxb8 でも黒が好調である。しかし 16.Bd6? は 16…Bxd6 17.Nxd6 Rd8 18.Rc8 Rxc8 19.Nxc8 Nc6 20.Nd6 Rd8 のために不可である。

16.Ke2 Nf6 17.Bd6 Bxd6

 17…Rfc8 でも 18.b4 でしょせん交換が不可避である。

18.Nxd6 Rfd8

 代わりに 18…Ne8 なら 19.Rhd1 Nxd6 20.Rxd6 Rac8 21.Rxc8 Rxc8 22.Rd7 で白が重要な7段目を支配する。このあと 22…Rc2+? 23.Kd3 Rxb2?? なら 24.Rd8# で頓死になる。

19.Rc6 Kf8 20.Rhc1 Rd7 21.Nb5 Rad8 22.R1c2 Ne4 23.f4

 局面がかなり単純化されたにもかかわらず黒は后翼ポーンに迫る危険のために困難な防御に直面している。

23…Ke7 24.Rc7

 黒ポーンが取られるのが必然なので、白に正確な技術があれば勝ちは間違いない。

24…a6 25.Nd4

 26.Nc6+ を狙っている。

25…Kf6 26.b4 h6

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(391)

「Chess」2015年7月号(1/2)

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FIDEグランプリ

H.ナカムラ-M.バシエ=ラグラーブ
第7回戦、変則dポーン

1.d4 Nf6 2.Bf4

 時に応じた変化球。ナカムラは定跡を避けてただの「チェスを指す」つもりである。

2…b6 3.c4 Bb7 4.Nc3

 4.Nf3 e6 5.e3 ならトニー・マイルズの得意だった戦型に移行する。彼はこれで多くの相手を負かし、その中にはスパスキーほどの者が2名もいる。ナカムラは代わりにマイルズとぺトロシアンのシステムの奇妙な混合形にした。

4…e6 5.a3 d5 6.e3 Bd6 7.Bg5 h6

 実戦で起こることを考えればたぶん 7…O-O の方が良い。

8.Bxf6 Qxf6 9.cxd5 exd5 10.Qa4+!

 このような局面によくあるようにこのチェックは非常に受けづらい。どの合い駒も黒にとって何らかの支障がある。

10…Kf8!?

 10…c6?? は 11.Nxd5 でポーンをかすめ取られるし、10…Nd7 は 11.Bb5 でやはり面白くない。10…Bc6 はたぶん 11.Bb5 Bxb5 12.Nxb5 が気に入らなかったのだろうが、12…O-O でそれほど悪いのか明らかでない。

11.g3 c6 12.Bg2 g6 13.Nge2 Kg7 14.O-O

14…Qd8

 黒はほぼ順調に形を整えた。もっとも 14…Nd7? 15.Nxd5 のためにクイーン翼ナイトの展開はまだできない。本譜の手のあとなら 15…Nd7 と指せるので、白は中央で仕掛けて展開のわずかな優位を生かさなければならない。

15.e4 dxe4 16.Nxe4 Re8 17.Rad1 Na6 18.N2c3 Nc7 19.Nc5!

 黒は問題を解決するのに絶えず1手遅れている。そしてこのうまい一撃で白の主導権がもっと具体的なものに変わる。

19…bxc5 20.dxc5 Nd5 21.cxd6 Qxd6 22.Ne4

 黒は黒枡が全般的に弱い。そしてc6は長期的な攻撃目標にされている。防御する側にとって困難で不快な局面だが、バシエ=ラグラーブほどの世界級の選手があと5手で負けになるとは誰も予想していなかった。

22…Qe5 23.Rc1 Nb6

 23…Re7 の方がもっと頑強だった。

24.Qb4 Rad8 25.Nc5

25…Rd4??

 本大会でここまで3連敗の心理的な痛手は大きく、フランス選手は1手で試合を失った。25…Ba8 26.Rfe1 Qg5 ならまだ苦しいが少なくとも試合は続いた。

26.Qc3 Bc8 27.Rce1 1-0

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(この号続く)

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后印防御の指し方(199)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

11.Rc1

 白はルークを半素通しのc列に回すことにより活用する。黒はc7のポーンが二重に当たりになっているので可能な応手は限られている。

11…c5

 このcポーンは中央をめぐる戦いに重要な貢献をする。

12.dxc5

 白は 12…cxd4 13.exd4 とさせるわけにはいかない。そうなると孤立dポーンが …Nc6、…Bf6 そしてd列での正面攻撃により強い圧力にさらされるからである。

12…Bxc5

 12…bxc5? は黒のcポーンが負債になり、黒ポーンによってもう挑むことのできないc4の地点が白駒のための跳躍地点になる。

13.Bc4

 相手の働いている駒と交換することは一般に理にかなった戦略とずっと前から認められてきた。さらに白はd6の地点の潜在的な弱点に目をつけ、d5の障害物を除去することによりそこに的をしぼる。

13…Bxc4

 13…Bxg2? は 14.Rg1 Bb7 15.Bh6 でポーン得になっても交換損になる。しかし 13…Bb7! なら白ナイトを黒の唯一真の弱点(d6)に寄せつけずいい勝負になる。黒が本譜の 13…Bxc4 で展開に優ることを期待していることは確実である。というのは 14.Nxc4 Qxd1+ のとき白がキングで取り返すと(ルークで取り返すのは王翼ルークの一番の好所を奪うことになる)、いずれまたキングを動かさなければならず手損になることを見越しているからである。

14.Nxc4

 火中へ・・・

14…Qxd1+ 15.Kxd1

(この章続く)

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后印防御の指し方(198)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

5…Bb4+

 黒がもっと早く …c7-c5 や …Ne4 と指すつもりならば、まず 5…Be7 と指す方が理にかなっている。というのはたぶん白に 6.h3 と受けさせることになり[訳注 6…Nh5 があるから]、それから 6…c5 または 6…Ne4 と指すことになるからである。想定される手順は 6…c5 7.dxc5(白は黒のいずれ浮きポーンになるc5とd5のポーンにつけ込もうとする)7…bxc5 8.Nc3 O-O 9.Be2 Nc6 10.O-O d5(黒は挑戦を受けて立つ。代わりに 10…d6 と突くこともでき、捌き合いになっていい勝負である。白は Rc1、Qc2 そして Rdf1 で大駒を戦いに投入するのが良く、黒は …Rac8、…Qb6 そして …Rfd8 と対抗することになるだろう)11.cxd5 exd5 12.Rc1 d4 13.Na4 Qd5 である。黒は中央での地歩を固めることができれば優勢になる。白は 14.Qb3 で戦術的に解決しようとするかもしれない。

6.Nfd2 d5 7.a3 Be7 8.Nc3 O-O 9.cxd5 Nxd5 10.Nxd5 Bxd5

 手順が少し違うだけで重要な局面に達した。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(157)

「Chess Life」1996年7月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(下)(続き)

4.ルイロペス反マーシャルギャンビット戦法 C88(続き)

(C)8…Bb7 トパロフ対シー・ユン戦(キャップ・ダグド、1994年)

 この欠点のない応手で黒は小駒の展開を完了し、b5とc4への利きを維持し、a列で張り合う用意をしている。

9.d3 d6 10.c3 Na5

 チゴーリン戦法の主手順のようにこのナイトはこの地点から戦いに復帰するのが難しい。クイーン翼ナイトの再配置のためにブレイェルの手法を用いる最近の興味深い試みがゼブアゼ対ホルモフ戦(ポリチカ、1995年)に現れた。10…Nb8!? 11.Na3! Nbd7 12.Bg5 Nc5 13.Bc2 Nxa4 14.Bxa4 bxa4 15.Nc4 Bc6 16.d4 そして白が犠牲にしたポーンの代わりに強い主導権を握った。

11.Ba2 c5 12.Na3

 このような局面は正確な形勢判断が難しい。黒の方がクイーン翼で陣地が広く主導権があるのでいくらか優勢のように思われる。しかし真実は逆である。黒はクイーン翼で伸びすぎになっていて、クイーン翼ナイトは遊んでいる。これに対して白駒はクイーン翼、中央そしてキング翼での可能性のためによく連係がとれている。だから白が通常の布局の優勢を保持している。

12…Qb6?

 黒は指し過ぎである。クイーンがキング翼にいなくて困ることがすぐに明らかになる。同じく勧められないのは 12…b4 で、13.cxb4 cxb4 14.Nc4! となって白陣の方が広く見るからに優勢である。黒の最善の作戦はヒューブナー対カームスキー戦(フローニンゲン、1993年)のように 12…Qd7 から始まると思う。

13.Nh4! Bc8 14.Qf3 Be6 15.Nf5 Qb7

 黒は白の攻撃にブレーキをかけるためにポーンを犠牲にすることにした。代わりに 15…Bd8 はGMトパロフの指摘する猛攻を受ける。16.Qg3! Bxf5 17.exf5 Kh8 18.Qf3! Be7 19.g4! から 20.g5

16.axb5 axb5 17.Bxe6 fxe6 18.Nxe7+ Qxe7 19.Nxb5

 黒にはポーンの代償が何もない。その一方で連鎖ポーンの不均衡のために白の勝ちが容易どころではなくなっている。実際両者とも指し手に正確さを欠いた。以降の手順は本稿の範囲外なので、『チェス新報』第62巻第383局のGMトパロフの主要な記号を付するにとどめる。

19…Qd7 20.c4 d5 21.Qe2 h6 22.h3 Nc6 23.Rxa8 Rxa8 24.Be3 Nd4 25.Nxd4? cxd4! 26.Bd2 dxc4 27.dxc4 Ra2 28.Bb4 d3! 29.Qe3 Qa4? 30.Bc3 Qxc4 31.f3 Nd7 32.Rd1 Nc5 33.Bxe5 Qc2 34.Rd2 Qc1+ 35.Kh2 Ra1 36.Bc3 Na4 37.Rxd3 Qh1+ 38.Kg3 Rc1 39.Bd4 Qf1 40.Rd2 e5 41.Bxe5 Rc5 42.f4 黒投了

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2015年10月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(197)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

実戦例1
白 A.マイルズ
黒 H.リヒテリンク
アムステルダム・ゾーナル大会、1978年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Bf4 Bb7 5.e3

(この章続く)

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后印防御の指し方(196)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 白はキャッスリングのあとナイトをe5の拠点に据えようとする。クイーンとたぶん王翼ルークとによって支援されたよく働くビショップで強力な王翼攻撃を築き上げることができる。黒は …c7-c5 で后翼での活発な作戦を始め、c列での戦いを求めるか …c5-c4、…a7-a6、…b6-b5 などでポーンによる襲撃を作り上げる。実戦例2を参照。

(この章続く)

2015年10月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(195)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 積極策が好きな選手は間違いなく 6…Nxd5 で后翼ビショップの斜筋を通しておく方を好むだろう。そして 7.e3 Be7 8.Bb5+ c6(8…Nd7? 9.Ne5)9.Bd3 O-O 10.e4 Nxc3 11.bxc3 c5 12.O-O Nd7 13.Qe2 Qc7 と進めば、白が中央をポーンで強奪しているが黒駒はすぐに中央に圧力をかける(…Rac8、…Rfd8 など)。

7.Bg5

 7.Bf47…Nbd7 8.e3 Bd6!? 9.Bxd6 cxd6 10.e3 O-O 11.Bd3 で静止したような重々しい捌き合いの試合になってくる[訳注 e3 が2回出てきて明らかに手順がおかしい。正しくは 7…d6 8.Bxd6 cxd6 9.e3 O-O 10.Bd3 かもしれない]。黒駒は利きに乏しいが、二重dポーンは潜在的な弱点を抱えながらも白駒を寄せつけない。多くの交換が起こり白はさらに弱点を誘って收局で勝とうとする。

 7.g3 でフィアンケットして展開するのは、以前の章で取り上げたd5での交換の局面に似てくる。違いはあちらでは一組のナイトが交換されていて黒の捌きがもっと容易になっているということである。

7…Be7 8.e3 O-O 9.Rc1 Nbd7

(この章続く)

2015年10月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(194)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 元世界チャンピオンのティグラン・ぺトロシアンは先受け(相手の狙いが実現可能になる前にくじく技法)の創始者であるニムゾビッチの偉大な信奉者で、この極端に控えめな手の潜在力を初めて認めた。彼は創案者ではなかったけれども、それを用いて好成績をあげた。グランドマスターの間では現在この手が后印防御における最も人気のある戦型になっている。

 この手の根底を成す構想は単純である。それはe4の地点を支配する戦いから黒の王翼ビショップを排除することである。このようなポーン突きは布局早々ではまれだけれども、局面の閉鎖性のために黒が白の手損につけ込むのは無理である。

4…Bb7

 白は激しい 4…c5 突きには自重して 5.e3 と応じるのが最善である。形を決めて 5.d5 と突くのは 5…Ba6! 6.Qc2(6.e3? は 6…exd5 7.cxd5 Bxf1 で白が少なくとも王翼へのキャッスリングの権利を失う)6…Qe7! (もちろん 6…exd5 7.cxd5 Nxd5? は 8.Qa4+ で白が駒得する)で、7.e4? で中央のくさびを支えることができない。そう突くと 7…exd5 8.cxd5 Nxd5 でeポーンの釘付けのためにポーン損するからである[訳注 9.Bxa6 Nxa6 10.O-O で白が優勢になるので、正着は 8…Qxe4+ です]。

 5.e3 のあとは 5…Bb7 6.Nc3 Ne4(黒は 7.d5 と突かれるのを恐れていて、6…d5 も 7.cxd5 から 8.Bb5+ でa4-e8の斜筋で白が強力な戦術的圧力をかけることができるので嫌である)7.Nxe4(何の理由もなく二重ポーンにされるのはばかげている)7…Bxe4 と進むかもしれない。ここでは 8.d5 はもう黒ビショップを閉じ込めないので、8.Bd3 Bxd3 9.Qxd3 cxd4 10.Nxd4 d6 11.O-O Be7 と指すのが最善である。白はd6のポーンに対し圧力を強めようとし、黒は …a7-a6 から …b6-b5 で后翼での反撃に努めることになる。

5.Nc3 d5 6.cxd5

 ここで 6.e3 と突いても以前の章で論じた定型的な局面になるだけだが、白が不要な a2-a3 突きに手をかけたという違いがある。

6…exd5

(この章続く)

2015年10月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(193)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 黒は …c7-c5 と突けば中央で互角になり、次の課題は …Nd7、…Rc8 などで動員を完了することになる。白が …c7-c5 に dxc5 と応じれば、ポーン陣形が対称になり穏やかな試合になる。このあとの手順については実戦例1を参照。

 C:4.a3

(この章続く)

2015年10月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(390)

「Chess Life」2015年6月号(3/3)

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2015年米国選手権戦(続き)


当たり前となったかのように豪華なセントルイス・チェスクラブ教育センターには多くのファンが詰めかけインターネット・ストリーミングでその模様が生で伝えられた。

黒で危ない橋を渡る
GMケイデン・トロフ(2634)
GMヒカル・ナカムラ(2881)
米国選手権戦第9回戦、ミズーリ州セントルイス、2015年4月9日

解説 GMベンジャミン・ファインゴールド

14…g5

 新手。2014年にオランダのスーパーIMのベンヤミン・ボクは 14…Nf6 と指して引き分けた。ナカムラの手は局面を活気づけ、白が簡単に f4 と突けなくしている。

15.h3

 最も厳しい手は 15.f4 である。多分トロフはナカムラの研究済みと思われる乱戦に踏み込みたくなかったのだろう。15…gxf4 16.gxf4 Ng6 17.Nc4 Bd4+ 18.Kh1 Nf6 はその面白い変化の一つで、動的に均衡がとれている。

15…Qf6 16.Qh5?! Bh6!?

 意表の1手。…Qg7 から …Nf6 で白クイーンを追い払ってから …g5-g4 と突く意図で、黒に主導権がある。

17.Nd1!?

 私はトロフが指す前に解説室でこの手を指摘した。このナイトをf5、g4またはc4に行かせようとしているのだが、少し遅すぎる。

17…g4! 18.Ne3 Bxe3 19.Rxe3 Qg7 20.hxg4

20…Nxg4?

 20…Nf6! の方がはるかに強い手だった。21.Qh1 Nfxg4 22.Re2 f5 で黒に主導権がある。

21.Rc3?!

 ナカムラは 21.Re2 が最善手で白が優勢のはずだと考えていた。c3のルークは働きがない。

21…Ndf6 22.Qh1 Re5

23.Qf3?!

 23.Nc4 の方が良く、23…Nxe4!(23…Rxe4 は 24.f3! Rxc4 25.Bxc4 で白が良い)24.Nxe5 Qxe5 25.Bf4 Qd4 26.Be3 Qxd5 27.Bg2

で、エンジンの評価の0.00など関係なくいい勝負である。

23…Bd7

 ナカムラは対局後のメディアとのインタビューでこの手を厳しく批判し、「24.Rb3 で白の勝勢」と言っている。エンジンはこの評価に同意しないかもしれないが(再び0.00)、ナカムラがこの試合での指し方に満足していなかったことは理解できる。しかし結果はそうでないことを物語っている。

24.Qd3?

 この手が敗着となった。白は駒をすべてキングから遠ざける余裕はない。

24…Qh6 25.Bg2

 紆余曲折のベノニがようやくナカムラの有利に傾いた。そして彼はトロフを一撃のもとにぶっ飛ばす。

25…Qh2+ 26.Kf1

26…Nxf2!

 ナカムラの読みは非常に正確だった。

27.Kxf2 Bh3 28.Qf1

 28.Qf3 でも 28…Ng4+ 29.Kf1 Qh1+ 30.Ke2 Qxg2+ 31.Qxg2 Bxg2 で良くない。

28…Rxe4!!

 ナカムラはこれがナイト切りの核心だと言った。白キングが露出しているのと白駒がクイーン翼で働いていないので黒が勝勢である。

29.Nxe4

 29.Qh1 でも 29…Ng4+! 30.Kf3(30.Kf1? Qxh1#)30…Bxg2+ 31.Qxg2 Ne5+ 32.Kf2 Re2+! で黒の勝ちとなる。

29…Nxe4+ 30.Ke3 Bxg2 31.Qf4 Nxc3 32.Qg5+ Kf8 33.bxc3 Re8+

34.Kf2

 ほかの手はきれいに詰まされる。34.Kd3 なら 34…Bf1#、34.Kf4 なら 34…Re4+ 35.Kf5 Qh3+ 36.g4 Re5+ 37.Kf6 Re6+ 38.dxe6 Qxc3+ 39.Kf5 Qe5#。

34…Bh1+ 白投了

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(この号終わり)

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后印防御の指し方(192)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

8…d5

 8…c5?! には戦術上の重大な欠陥がある。9.d5! のあと白は e3-e4 からいずれ e4-e5 と d5-d6 と突いていって黒陣にくさびを打ち込むことを狙っている。黒はこのdポーンを取りたいのだが、9…exd5 10.cxd5 Bxd5 (10…Nxd5? は 11.Qf3 で白の交換得になる)11.Nxd5 Nxd5 12.Qf3 Nc7(ルークを守るためには仕方がない。13.Bxc7 Qxc7 14.Qxa8 Nc6 となって黒が2ルークの代わりにクイーンとポーンを取り、白のルークは戦いに加わるにはまだまだである)13.Qb7! d6 14.Nc4 となると、白がd6のポーンを取り返し(O-O-O としてから)、明らかな優勢を保持する。

9.cxd5 Nxd5

 9…exd5 10.Bd3 c5 11.O-O Nc6 12.Qf3 の局面はこのあとのC:4.a3で分析する局面に似ている。このちょっとしたポーン突きはいくつかの点で役に立ち、この戦型の …Bb4+ に誤りの烙印を押すことになる。

10.Nxd5 Bxd5

(この章続く)

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后印防御の指し方(191)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 これがマイルズが最初にこの戦型を復活させた時の斬新な着想だった。しかし 4.Bg5 の戦型で同様の手の関連で見たように、白は現実的にはこのような「意気地のない」退却で布局の優位を望むべくもない。

 先に 4.Bf4 には本来戦術的な欠陥があると指摘した。自然な手の 6.Nc3 をちょっと見ると(および第4章で取り上げた類似の着想と比較すると)、焦点がはっきりしてくる。6…Ne4 7.Qc2 d6 8.Bd3 f5 9.O-O Bxc3 10.bxc3 O-O というようにほぼ一本道の手順のあと、白はいずれ自分の后翼ビショップを閉じ込める …e6-e5 突きまたは …g7-g5 から …f5-f4 という不快な狙いに直面することになる。

 代わりに 6.Nbd2 には面白い可能性がたくさんある。6…Ne4(6…c5 および 6…O-O もある)7.a3 Bxd2+(別の道は 7…Nxd2 8.Nxd2 Be7 で、途中黒は 8.axb4 を恐れることはない。8…Nxf1 9.Kxf1 d5 となったあと、白の働きに優る駒と展開の優位は、白の二重ポーンと閉じ込められた王翼ルークとによって相殺されているからである)8.Nxd2 Nxd2(白が Nxe4 のあと先手で f2-f3 と突いて e3-e4 と突いてくるのを避けた)9.Qxd2 d6 となれば中盤戦はいい勝負である。白は f2-f3 から e3-e4 と突いて中央での影響力を増そうとし、黒も …e6-e5 から …f7-f5 で同じことをする。

 白は 7.a3 の代わりに 7.Bd3 で単刀直入に展開することを望むかもしれない。というのは 7…Nxd2(落ち着いて 7…O-O と指しても一向に構わない)8.Nxd2 Bxd2+(gポーンをかすめ取るのは白がg7のポーンを取り返すので意味がないし、8…g5 は 9.Be5 f6 10.Qh5+ Ke7 11.Bg3 Bxg2 12.Rg1 Bb7 13.h4 と逆ねじを食わされて、黒の根無し草にされたキングとがたがたの王翼に対し白から猛攻を受ける)9.Qxd2(9.Kxd2!? で白クイーンをd1-h5の斜筋にとどまらせるのはチャンバラになること請け合いである。閉鎖的な中央が白キングを遮蔽し、よく利いている双ビショップが Qg4、h2-h4 および Rh3 のような手と相まって攻撃の得意な選手に受けるはずである)9…g5 10.Be5 f6 11.Bg3 Bxg2 12.Rg1 Bf3!(O-O-O を指させないため)13.h4 となる乱戦は1ポーンの僅かな犠牲で白が主導権を握る。

6…O-O 7.a3

 7.Bd3 Bxg2 は黒がぎょっとするような(もっとも明らかに決定的というわけではない)攻撃の 8.Rg1 Bb7 9.Bh6 Ne8 10.Qh5 f5 に直面する。しかしgポーンを取る代わりに単純に 7…d5 8.O-O c5 9.a3 Bxd2 10.Nxd2 cxd4 11.exd4 Nc6 から …dxc4 と指すことができ、白のdポーンに対して積極的に指すことになる。

7…Be7 8.Nc3

(この章続く)

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