2015年09月の記事一覧

布局の探究(156)

「Chess Life」1996年7月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(下)(続き)

4.ルイロペス反マーシャルギャンビット戦法 C88(続き)

(B)8…b4 ショート対ソコロフ戦(リナレス、1995年)

 GMショートは1993年カスパロフとの番勝負第1局でこの手を指した。b5への圧力を解消し白ナイトにc3の地点を使わせないので良さそうに見える。しかし負の側面も明らかである。というのもこのポーンは白陣側にありあとで弱体化するかもしれないし(…a5 と突いて守るのは白がナイトをb3またはc4に持ってくればそのaポーンが弱点になることがあり得る)、c4の要所が白の手中に落ちるからである。全体として私は 8…b4 を信頼していない。

9.d3

 これが通常の手で、カスパロフも前述の試合でこの手を指した。しかしトパロフ対ソコロフ戦(リナレス、1995年)で指された野心的な 9.c3!? は非常に面白い手である。そして 9…d5 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 c6 13.d4 Bd6 14.Re1 Qh4 15.g3 Qh3 のあと白は守備目的のためにキング翼ビショップを 16.Bc4! から 17.Bf1 と引き戻すべきだった。そうなれば明らかに優勢になる(GMソコロフ)。

9…d6 10.a5

 b4ポーンを孤立させるとともに、a6ポーンを白のキング翼ビショップによる攻撃にもろくさせた。

10…Be6 11.Nbd2 Bxb3

 この早速の交換は白のクイーン翼ナイトを守勢のb3の地点に置かせるのに役立つが、黒も白枡が恒久的に弱くなるという犠牲を払っている。GMショートはカスパロフ戦の黒で 11…Rb8 と指したが、二度と指すことはなかった。

12.Nxb3 Re8

 スピールマン対スミスロフ戦(ビール・インターゾーナル、1993年)で黒は 12…d5 と指し最終的に互角にした。しかしGMたちは白枡がひどく弱いのに局面を開放することを信頼していなかったので追随者は現れていない。

13.d4! Nxd4 14.Nfxd4 exd4 15.Nxd4 Bf8 16.f3 c5 17.Nf5 Re6 18.Bg5 h6 19.Bh4 g6 20.Ne3 Bg7

 白の優勢は否定できない。活動的な駒が多く、中央で優勢で、白枡を支配し、d6の地点に圧力をかけている。狙い筋は 21.Nc4! に続いて 22.Qd3 から 23.Rad1 である。それなのに白はb列とc3に深刻な弱点を作って反撃を許した。

21.c3?! Rb8 22.Qd3 Qc8 23.Nc4 Qc6 24.Bg3 Ne8 25.Red1?!

 25.Nb6 か 25.Rab1 ならいくらかの優勢を保持しただろう。

25…bxc3! 26.bxc3 Rb3 27.Rac1 Qa4! 28.Ra1 Qb5 29.Rac1 Qa4 30.Ra1 Qb5 引き分け

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2015年09月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(190)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 白の小駒はどれも働きの良い地点に置かれているのに対し、黒の后翼ビショップはd5のポーンによって利きを妨げられている。これにより白はこれからの中盤戦で少し良い見通しが保証されている。ルークを素通し列に回すことにより展開を完了し、クイーンはf3に動員するかもしれない。クイーンはそこから中央と王翼を監視する。

6.Nfd2

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(189)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 4.Bf4 は1978年にイギリスの若きグランドマスターのトーニー・マイルズがよみがえらせるまで何十年も布局の手引書の脚注深く埋もれていた。この手は黒になじみのない問題を突きつけて、裁判なしに有罪にされた恨みの深いゾンビーのようにへぼにもグランドマスターにも害を及ぼした。しかし最後には自分を造り出した者を抹殺したフランケンシュタインのような想像上の怪物と異なり、この手は新しい息吹を吹き込んで世界の最強選手たちから素晴らしい勝利の数々をあげた勤勉で意欲ある先駆者に感謝して報いた。マイルズの最も著名な対戦相手の元世界チャンピオンのボリス・スパスキーは何か月もしないうちに二度被害者になり、彼自身も1979年モントリオールでの大きな大会でカルポフ相手に 4.Bf4 を用いた。

 なぜ 4.Bf4 は墓碑銘なしに葬られていたのだろうか。それは根底を成す構想があまりに原始的で布局での優位を得る潜在的な可能性がないと思われたからである。后翼ビショップを拘禁する囲いの外に出しe5の地点の支配を強化するのは棋理に合った構想なのだが、ピリッとしたものが欠けている。黒に何も圧力をかけていない。白の e2-e4 または d4-d5 と突いていく大作戦に何も寄与していない。(実は后翼ビショップのフィアンケットにも同じ欠点があるのだが、b2のビショップは攻撃に絶好の斜筋を席巻することによりいずれは埋め合わせができるかもしれない。)さらにf4のビショップはいくつかの戦術の危害、特に …g7-g5 突きにさらされている。

 しかしこれらすべてを補って余りあるのは、マイルズの文句のない好結果の事実である。そしてマイルズが超能力を持っているということを信じないなら、彼が並はずれた陣形の洞察力を持っていることを信じなければならない。

 それではこの長く忘れられていた戦型の秘密をさらに追究することにより、我々もこの洞察力を少し得ることにしよう。

4…Bb7 5.e3

 これらの手の理屈については本章の初めのところで説明した。

5…Bb4+

 単純に 5…Be7 と展開するのはいずれ白が少し優勢になる。想定される手順は 6.h3!(黒は 6…Nh5! で双ビショップにより有利になることを狙っていた。前の手で 5…Nh5 と指すのは 6.Bg5 で無意味である)6…O-O 7.Nc3 d5(7…Ne4 は互角が有望かもしれないが、7…c5 は 8.d5! のあと e3-e4 で黒の后翼ビショップがポーンの壁に閉じ込められ白が優勢である)8.cxd5 exd5(8…Nxd5 は本章末のマイルズ対リヒテリンク戦に似た戦いになる)9.Bd3 c5 10.Ne5 cxd4 11.exd4 Nc6 12.Nxc6 Bxc6 13.O-O

 13.O-O の局面

(この章続く)

2015年09月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(188)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 図の局面を一目見ると二つの手順の唯一の違いは、本譜の局面では白のaポーンがa2でなくa3にあること、つまりかなり疑問の行為であることが分かる。白はこの愚行のもたらす結果から逃れることができるであろうか。時には緩手や手損を指しても差支えないことがあり、閉鎖的な局面では特にそうである。しかし図の局面をちょっと分析すると、黒は相手がこの戦型にあえて乗り出して来れば嬉しがるべきであることが分かってくる。

 このあとの手順を 10.dxc5 bxc5 11.Qc2(11.e4? はd4の地点を放棄してしまう)11…d5 12.Rd1 Nbd7 13.Nb3 と想定しよう。これは『Encyclopedia of Chess Openings』で推奨されていて、いい勝負となっている。ここで黒が 13…Bc6! と指すと白は 14…Qb6 から 15…Rab8 の狙いをともかくも迎え撃たなければならない。見て分かるように a2-a3 突きの『余分な』手は白のb列を弱めていて大きなハンディキャップになっている。

 9…c5 のあと白にとって一番有望なのは 10.Nf3 と悔い改めることである。それに対してこのような局面につきものの反撃の 10…Ne4 なら白は 11.Bxe7 Qxe7 12.Nxe4 Bxe4 13.Be2 で何とかうまく切り抜ける。また、10…Bxf3!? なら 11.Qxf3 Nc6 12.Rd1 cxd4 13.exd4 d5 14.cxd5! Nxd5 15.Bxe7 Ncxe7 16.Nxd5 Qxd5 17.Qxd5 Nxd5 となって、白は孤立dポーンがせき止められているせいで受け身に回らざるを得ないが、たぶん收局では持ちこたえられるだろう。先手番の白にとってはなんともでかしていない。

 B:4.Bf4

(この章続く)

2015年09月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(187)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

7.Nfd2

 7.Nc3 については第4章を参照。軽率な 7.Nbd2? は戦術の大悪手で、グランドマスターの有名な愚局がこれまでに少なくとも2局残されている。ウールマン対キンマルク戦(ハレ、1963年)では 7…g5 8.Bg3 g4 9.Ne5(1920年ヨーテボリでのタラシュ対ボゴリュボフ戦では 9.a3 gxf3 10.axb4 fxg2 でやはり白が致命的な戦力損になった)9…Ne4 10.Qxg4(后翼ナイトを守る適当な手段がないので白は固定されていないものは何でも取る)10…Bxd2+ 11.Ke2 Bb4 12.Bh4 Be7 13.Qg7 Rf8 と一本道で進み黒が戦力得で勝勢になった[訳注 14.Ng6 fxg6 15.Qxg6+ Rf7 16.Qg8+ Rf8 17.Qg6+ で千日手のようです]。

7…O-O

 黒は王翼ビショップを保持したいので 7…c5 8.a3 を避け、7…d5? 8.Qa4+ にはぎこちない 8…Nc6 を指すことを強いられる。だからこの機会にキングをより安全な界隈に移送した。

8.a3

 この控えめなポーン突きが白の戦略の要である。黒の王翼ビショップが引っ込めば、白の后翼ナイトはc3にいてもいじめられる心配がなくなる。そして 8…Bxd2+ 9.Nxd2(9.Qxd2? は白のh4のビショップが浮いているので黒が 9…Ne4! で釘付けをはずすことができる。10.Bxd8 Nxd2 11.Bxc7 Nb3 12.Ra2 Nc1 13.Ra1 Nb3 となって奇妙な引き分けに終わる[訳注 11.Nxd2 または 11.Kxd2 で白が少し優勢のようです])で、…g7-g5 でひどくキングを危険にする犠牲を払ってしかはずせない厄介な釘付けでまた黒を拘束する。

8…Be7 9.Nc3

 黒はビショップをe7に展開するのに通常の1手でなく2手かかったことになる。しかし白は相手の手損から得をしていない。8.a3 は自分の展開に何も寄与していないし、中央をめぐって活発に戦ってもいない。そして 7.Nfd2 は展開した駒を中央の監視から移動させてしまった。

9…c5

 布局の手順が 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Bg5 Bb7 5.e3 h6 6.Bh4 Be7 7.Nc3 O-O 8.Nd2? c5 だったら(すなわち白の a2-a3 突きと黒の …Bb4+ から …Be7 を省くと)、白は8手目に馬の鞭で打たれることになる。この手は手損したのと王翼ナイトをつまらない地点に置いたのに加えて、d4の地点を弱め黒に 9…cxd4 10.exd4 d5 の狙いを与えている。この狙いはすぐに白に弱い孤立dポーンを負担させ、それ以降面倒をみなければならなくなる。8.Nd2? は王翼ビショップがgポーンを守る必要があるのでほとんどf1に縛りつけられ白の王翼の展開が停滞する。

(この章続く)

2015年09月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(389)

「Chess Life」2015年6月号(2/3)

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2015年米国選手権戦(続き)


4回目の米国選手権戦優勝を飾ったヒカル・ナカムラ


セントルイス・チェスクラブ教育センター創立者のレックス・シンクフィールドと握手するナカムラ

主導権を奪取
GMダニエル・ナローディツキー(2730)
GMヒカル・ナカムラ(2881)
米国選手権戦第5回戦、ミズーリ州セントルイス、2015年4月5日

解説 GMベンジャミン・ファインゴールド

18…Kf8

 ナカムラは自分から交換損をしたが、それはドラゴンでよくある着想である。ここでは白の方が良いはずだが、ナローディツキーは本大会では調子がよくなかった。

19.Ne2?!

 このナイトはd4にいた方が良かった。

19…Bb5 20.Nd4?!

 ひょっとして白は千日手を期待していたか?ナカムラに対しては無駄だ!

20…Ba6 21.Rhe1 Nfd7 22.f4?

 これでたぶん黒の方が良くなった。最善手は 22.a4 Nc4+ 23.Ka2 で形勢は拮抗していた。

22…Nc4+ 23.Bxc4 Bxc4 24.f5 Nc5 25.Re3 Ke8 26.Bf4?

 白に疑問手・悪手が相次いで形勢は黒がはっきり優勢になった。

26…Na4+ 27.Kc1 Ba6 28.e5?

 これはポカだった。ナローディツキーは 29.Bxe5 が 29…Bh6 のために指せないことを見落としたのだろうか。

28…dxe5

 ナカムラはきれいに勝負を決めた。

29.Rxe5 Bxe5 30.Bxe5 Nxc3 31.Re1 gxf5

32.Bf6?

 しょせん負けではあるけれども白は少なくとも 32.Nxf5 と取るべきだった。そして 32…Ne2+ 33.Kd2 Rc5 34.Ng7+ Kf8 35.Ba1 Ng3 でナカムラが勝つだろう。

32…Ne4 33.Nxf5 Bd3!

 白は至るところ駒が当たりになっている。

34.c3 Rc5! 35.Nxe7 Rb5! 白投了

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(この号続く)

2015年09月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(186)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ(続き)

(再掲)

 g5のビショップは中央の地点を直接にらんではいないけれども敵クイーンをひそかに狙っているので、重要な地点のe4とd5の地点を争っている黒の釘づけにされた王翼ナイトは動きがひどく制限されている。

4…Bb7

 黒は行くべき地点に行くべき駒をまず展開することにより最大限の融通性を確保した。この手はもちろんすぐ e2-e4 と突く手も防いでいる。

5.e3

 白は王翼ビショップの通り道を開けた。このビショップはd3に行ってeポーンがさらに進むのを助け、黒キングがキャッスリングすればそこを見張ることになる(后印防御で黒が后翼にキャッスリングすることはまれである)。代わりに 5.Nc3 なら第4章で分析した局面になる。

 5.Nbd2 なら白は 5.Nc3 から生じるかもしれない二重ポーンを避けることができ、たった1手で e2-e4 と突くことさえできるかもしれない。しかしこの曲の裏面はびっこのナイトの悲しい物語になる。d2ではc3よりも中央への影響力がはるかに弱く、黒が容易に互角にできる。

 例えば 5.Nbd2 のあと黒は 5…h6 と突くかもしれない。一般にビショップはナイトよりわずかに優れているので、黒はf6での交換を恐れる理由はない。白が釘付けを維持したければ 6.Bh4 とビショップを引いてc1-h6の斜筋を放棄しなければならない。それなら黒はいつでも …g7-g5 と突くことにより強引に釘付けを解消できる。そして黒は(王翼に)キャッスリングしてしまえば、白が最下段での詰みを狙ったとしてもh7にキングのお誂えの逃げ道ができている。6.Bh4 のあと黒は 6…Be7 と指すのが良い(もっと攻撃的な 6…Bb4 はc3に白ナイトがいないので通常の迫力に欠け、7.a3 Bxd2+ 8.Qxd2 と軽くあしらわれる)。そのあと黒は有害な釘付けにもがくのを放っておく。7.e3 O-O(7…Ne4 8.Bxe7 Qxe7 9.Nxe4 については第4章を参照)8.Bd3 d5 のあと黒は大いに有望である。小駒は好所にいるし、すぐに …c7-c5 と突いてさらに白の中央に挑むことになる。

5…h6 6.Bh4 Bb4+

 白が e2-e3 と突いているのでもっと控え目な 6…Be7 はあまりに白を自由にさせる。7.Bd3 Ne4(黒は白が Nc3 でe4の地点を独占する前にこの手を指さなければならない)8.Bxe7 Qxe7 9.O-O O-O 10.Nfd2 のあと、白は中央の戦いに勝利した。なぜなら黒は陣形で大きく譲歩することを覚悟しないならば e3-e4 突きはもう防げないからである。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(185)

第6章 白の4手目の変化 ジョン・グリーフ

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6

 本章では白が重要な中央の地点の支配を向上させようとするそれほど一般的でない3手から派生する戦型を取り上げる。それらの3手とはA:4.Bg5、B:4.Bf4そしてC:4.a3 である。

 これらの戦型に共通して同系のものとしている着想は、白が后翼ナイトを最良の地点のc3に展開するのを延期して、黒が王翼ビショップをb4に派遣して急所のe4の白の支配に効果的に挑むのを防ぐようにすることである。

 A:4.Bg5

(この章続く)

2015年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(155)

「Chess Life」1996年7月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(下)(続き)

4.ルイロペス反マーシャルギャンビット戦法 C88(続き)

(A)8…Rb8 ツェシュコフスキー対ザイツェフ戦(ソ連選手権戦、1969年)

 これは素通しa列を白に明け渡す代わりに何も得られないので最も弱い手である。

9.axb5 axb5 10.c3 d5

 白がa列を支配しているのでこのギャンビットは劣っている。とはいえいつもの 10…d6 ではすぐに 11.d4 と突かれてしまう。11…Bg4?? とかかると 12.d5 でc6のナイトが取られるからである。

11.exd5 Nxd5 12.Nxe5 Nxe5 13.Rxe5 Nf6

 GMマーシャルの指した手もここへ戻る手だった。現代の手法の 13…c6 も不十分である。14.d4 Bd6 15.Re1 Rb7 16.Nd2 となって黒の代償は十分でない(GMマタノビッチ)。白のクイーン翼ルークが展開されていない現在の主流手順と比較すると、ここではそのルークが素通しa列で好所についている。

 正確な棋譜について言っておくと、実戦の手順は 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.a4!? Rb8? 11.axb5 axb5 12.Nxe5 Nxe5 13.Rxe5 だった。

14.d4 Bd6 15.Re2 b4

 代わりに 15…Ng4 なら 16.h3 Qh4 17.Nd2 Bb7 18.Nf1 で白陣がまとまる。

16.Nd2 Rb5 17.Nf1 bxc3 18.bxc3 Nd5 19.Bxd5! Rxd5 20.Ba3

 素通しa列は陣形を整えるのにも役に立つ。黒は要するにポーンの代償が何もない。そしてこの運命に甘んじるよりも戦術に訴えたがやぶへびになった。

20…c5 21.Rd2 Ba6?! 22.Ne3! Bxh2+ 23.Kxh2 Qh4+ 24.Kg1 Rh5 25.Qxh5 Qxh5 26.Bxc5 Rb8

 しょせん見込みがないが、26…Ra8 は 27.Rda2 でやはり釘付けから無事に逃れられない。

27.Rxa6 Rb1+ 28.Nf1 h6 29.Ra8+ Kh7 30.Re8 f5 31.Re5 Rc1 32.Bb4 Qg6 33.Rde2 f4 34.Re1 Rc2 35.Nh2 Qd3 36.Nf3 g5 37.Re7+ Kg8 38.Re8+ Kg7 39.R1e7+ 黒投了

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(184)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例5(続き)

(再掲)

 もちろん 21…Kxh7?? は 22.Qf1! から 23.Qh3+ があるので駄目である。

22.Qb2 Rxh7

 黒は控え目に指した。22…Qe7! なら 23.Be4 Rd8 のあと 24…Na6 から 25…Nc5 でもっと優勢だった。

23.Qxb4+ Qc5 24.Qd2 Rc8 25.Rd1 Qe7! 26.Rd4 Rh5 27.h4?

 白は時間に追われて王翼に破滅を招く弱点を作り出した。理にかなった 27.Rd7 Qc5 28.Rxa7 なら白の不利はわずかだった。

27…f5 28.Kg2 Rxh4

 黒はポーン得し優勢も維持した。あとはカルポフにとって朝飯前である。

29.Rxh4 Qxh4 30.Rh1 Qf6! 31.Qd6+ Kg7 32.Qh2 Rd8 33.Rg1 Kf8 34.Qc7 Rd4 35.Qb8+ Qd8 36.Qg3 f4 37.Qh2 Qf6 38.Rc1 Rd2 39.Kg1 Rxa2 白投了

 白は実際には 40.Qh5 と指したが 40…Qg7+! 41.Kf1 Qb2 に気づいて投了した。

(この章終わり)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(183)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例5(続き)

(再掲)

 ビショップによって黒のクイーンを攻撃にさらす正しい手段はこれに限る。15.Nd5? では 15…Qc5 で黒クイーンが働いたままで、白は 16.Bxf6 gxf6! のあと何もない。

15…Qd8 16.Rd1 Qc7

 16…Nd7? は 17.a3 Nc6 18.Qd3 Ncb8 19.Qd4 となって、黒は恒久的に締めつけられる(19…f6 には 20.Ng5! がある)。

17.Nxf6+ Bxf6

 17…gxf6? では白の后翼ビショップが働いたままで、18.Kh1! と準備してからg列で白の攻撃が決定的になる。

18.Bxf6?

 白は考え方は正しかったが手順を間違えた。正着はすぐに 18.Bxh7+! と切る手だった。18…Kxh7? は 19.Qe4+ Kg8 20.Bxf6 gxf6 21.Qg4+ Kh8 22.Kg1 のあとg列とh列で必殺のチェックがあり一本道で白の勝ちになる。だから 18…Kh8 と寄るしかなく、19.Be4! Bxb2 20.Qxb2 Nc6 21.Qb5 となって、22.Qh5+ の狙いがあるので黒は交換損をするしかないが(22…Ne5 なら 23.f4!)、十分な代償が得られない。

18…gxf6 19.Bxh7+ Kg7!!

 この地点が使えるので黒は白の攻撃をはね返すことができ、ポーンの形に優り有望である。

20.Rd4 Rh8! 21.Rg4+ Kf8

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(182)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例5(続き)

(再掲)

 黒は白の陣形そのものに疑問を呈して、白の守られていないdポーンだけでなく后翼の白駒の一時的にぎこちない状態につけ込もうとしている。

14.gxf3!

 白は王翼の形を乱したくないのだが、クイーンは后翼ビショップを守るために今の位置にとどまらなければならない。14.Qxf3? と取ると黒は無事に 14…Qxd4! と取ることができる。そのあとは 15.a3 Na6 16.Rd1(16.Qb7 Bd6! 17.Qxa6 は黒に 17…Bxh2+! 18.Kxh2 Qh4+ 19.Kg1 Ng4 という決め手がある)16…Qh4 17.Qb7 と進み、黒にだけ 17…Bc5 18.Qxa6 Ng4 という攻撃手段がある。

14…Qxd4?!

 黒は全力で白の指し方を咎めようとしている。しかし対局後かなり検討したところ白の反撃の可能性は軽視できないということが分かった。だから黒の最善手は 14…Nh5! で、不均衡な戦いに突入する。黒は白陣のいろいろな弱点めがけて指すことになる。白の代償は自分の中央ポーンと、黒の王翼に対する双ビショップの潜在力とにある。

15.Ne4!

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(181)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例5(続き)

(再掲)

 これは定跡の観点から穏健戦型の重要な基本的局面である。両者とも最も活動的な陣形を目指している。どちらの方が効果的な陣形だろうか。

11…Nb4!

 これは攻撃的ながらも堅実な手法である。11…dxc4 と中央を放棄するのは 12.bxc4 で大変危険である。dポーンには毒が含まれていて 12…Nxd4? と取ると 13.Nxd4 Qxd4 14.Nd5 Qc5 15.Bxf6! gxf6(15…Bxf6 は 16.Qe4! で負けになる)16.Qg4+! Kh8 17.Qh4! で白の勝ちになる。だから 12…Rc8 が本手で、13.Rac1 Re8 14.Rfd1 のあと、黒は白の予定の d4-d5 突きにどう対処するかという問題を解決しなければならない。14…Qc7?! は不十分で、15.d5! exd5 16,Nxd5 Qd8 17.Qd2 となって中央での白の圧力が強い(バルツァ対ゴロンベック、ストックホルム、1952年)。そして 14…Qd6?! も 15.Bb1 Qf4 16.d5! exd5 17.cxd5(17.Nxd5 でもよい)17…Nb8 18.Rd4! Qd6 19.Rcd1 となって白のdポーンが強大である(ケレス対タイマノフ、ソ連選手権戦、1951年)。マルツ対メドニス戦(ノーリスタウン、1973年)では黒は d4-d5 突きを間接的に防ぐ、または少なくとも遅らせようとして 14…Bf8! と指した。そして 15.Bb1(15.d5? は 15…exd5 で白クイーンが当たりになる)15…g6 16.Qf1 Na5 となって黒が順調だった(もっと危険の多い 16…Bh6 でも指せる)。

 とはいえ 11…dxc4 12.bxc4 となると白の中央ポーンは脅威を感じさせる。白の13手目から16手目に改良の余地が大いにある。

12.Bb1!

 このビショップは残しておかなければならない。12.Rad1? は 12…Nxd3 13.Rxd3 Rc8 となって黒の態勢が申し分ない。何の危険もなくc4の地点を攻撃できる。

12…dxc4!

 この手と次の手を指さなければ 11…Nb4 は何のために指したのか分からない。

13.bxc4 Bxf3!

(この章続く)

2015年09月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(180)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例5
白 グリゴリアン
黒 A.カルポフ
ソ連選手権戦、1976年

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Be7 4.Nf3 Nf6 5.e3 O-O 6.b3 b6 7.Bb2 Bb7 8.Bd3 c5 9.O-O cxd4 10.exd4

 10.Nxd4 には 10…Nc6 でも 10…dxc4 11.Bxc4 a6 から 12…b5 でも互角にするのに十分である。

10…Nc6! 11.Qe2

(この章続く)

2015年09月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(388)

「Chess Life」2015年6月号(1/3)

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2015年米国選手権戦

FMマイク・クライン

(クリックすると全体が表示されます)

二重の弱点
GMコンラッド・ホールト(2626)
GMヒカル・ナカムラ(2881)
米国選手権戦第1回戦、ミズーリ州セントルイス、2015年4月1日

解説 GMベンジャミン・ファインゴールド

21…Qxe4

 ホールトはここまでうまく指してきた。この局面では順調に優勢を確保する手段が二つあり、22.Bh5 でも 22.Ng2 でも白が好調である。

22.Bf1?

 この手はあまりに守勢である。これでナカムラは犠牲にしたポーンの代償が完全に得られる。

22…Bd3! 23.Bh3 Nc2!

 Be6+ を指させるには強い意志が必要である。しかしこの手は必然で、ナカムラはいつも自分の読みを信じている。

24.Be6+ 25.Rf7 25.Nf5??

 妥当な手ならほぼどの手でも良く、形勢は五分五分だった。しかしここでホールトは本譜の手でf2とg2の地点の守りをなくし、試合は急に終わることになる。ホールトは黒がいつか …Nxa1 と取ると思っていたのだろうが、ナカムラの読みはそれを上回っていた。

25…Ne1!!

 これですべて終わっている。白が 26.Nh4 で Qg2 による詰みを防げば、それでも 26…Qg2+ があり、続いて 27…Nf3# で詰みになる。

26.Ne7+ Kf8 27.Ng6+ Ke8 白投了

 白は …Qg2 による詰みと …Nf3+ によるクイーン取りに対処のしようがない。

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(この号続く)

2015年09月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(179)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例4(続き)

(再掲)

 黒は王翼の防御が手薄なので白からの来るべき襲撃を迎え撃つ用意ができていない。例えば 21…g6 なら電撃的な 22.Qh5! で負けてしまうし(22…gxh5 23.Rg3+)、21…Nxc4 と取る余裕は 22.Bxg7!! のためにない(22…Kxg7 23.Qg4+ Kh8 24.Qh5[訳注 24…Bh4 25.Rxh4 f5 で受かるので正着は 23.Qh5 です])。

21…f6 22.Bd3 g6 23.Rxh7! Be4

 必然を先延ばしにした。23…Kxh7 と取ると 24.Qh5+ ですぐに詰みになる。

24.Rxe4 Kxh7 25.Rd4! Qe8 26.Qh5+ 黒投了

 26…Kg7 27.Rg4 で決まる。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(178)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例4(続き)

(再掲)

 黒の中央での理にかなった戦略が勝利した。白の王翼ビショップがもうb1-h7の斜筋上にいないので、重要なe4の地点は今や黒の手中にある。このあとのナイトの交換は白が広く中央を支配している重要性を低めて黒が楽に互角にできるようになる。

14.a3 Nxc3 15.Rxc3 Nc6 16.cxd5!?

 白は 16.Ne5 Nxe5 17.Rxe5 Bf6 18.Rh5 と王翼攻撃にはやるよりも、当を得た d4-d5 突き(本譜の手はこれの準備である)に努める方が有望である。前者はケレス対スミスロフ戦(チューリヒ挑戦者決定大会、1953年)で示されたように、18…g6! 19.Rch3 dxc4! で黒の防御が万全で白は引き分けしか期待できない。

16…Qxd5 17.Bc4 Qd6

 クイーンはここでは落ち着けない。17…Qh5! なら考慮する価値がある。

18.d5! Na5 19.Nd4! Bxd5?

 黒は毒入りポーンをかすめ取ったが、指すべき手は 19…Bf6! で、形勢不明の乱戦になる。

20.Nb5! Qd7 21.Rh3!

(この章続く)

2015年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(154)

「Chess Life」1996年7月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(下)

 前回は本格派の 1.e4 選手のためにシチリア防御とアリョーヒン防御での黒の戦法に対処する方策を紹介した。今回は 1…e5 とピルツ防御を取り上げて終わりとする。

4.ルイロペス反マーシャルギャンビット戦法 C88

1.e4 e5 2.Nf3

 本格派の選手にはまったく申し分のない手である。もしあなたがボビー・フィッシャーならキング翼ギャンビット(2.f4)を指せばよい。フィッシャーはそれを指して3戦3勝である。他の者にとっては弱体化したキング翼の不利がどんな有利さをも上回るかもしれない。ウィーン試合(2.Nc3)とビショップ布局(2.Bc4)では何らかの有利さを望むなら非常に洗練された戦略の理解が必要である。

2…Nc6 3.Bb5

 この手はどの点からも完璧である。白はe5のポーンに圧力を加え、キャッスリングによりキング翼の展開を完了する用意をしている。もっと積極的に見える 3.Bc4 はf7への一次元的な攻撃が容易に撃退されるので優勢になる可能性が劣る。スコットランド試合(3.d4)は世界チャンピオンのガリー・カスパロフが1990年にアナトリー・カルポフとの番勝負で用いて生き返った。彼はそれが完全に指せる戦法であることを証明したが、白がすぐにeポーンに対する圧力を取り去るので並の人間では同じようにうまくはいかないと思う。

3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O

 これは 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 でマーシャルギャンビットに来いという誘いである。過去30年間このギャンビットの定跡における評価は、黒に完全に代償がある黒には完全な代償がないとの間を揺れ動いてきた。今の時点での評価は後者である(この講座が読まれる時には変わっているかもしれない!)。

 1ポーンのために長く難しい防御を苦にしないし、記憶力に優れ、世界中での定跡の進歩を追うための時間と興味があり、独自に研究もするならば、このギャンビットを受諾するとよい。その他のみんなには次の手を推奨する。

8.a4!

 これがGMカスパロフが1993年にナイジェル・ショートとの世界選手権番勝負の第1、3、7局で採用した手である。白は黒に危険な反撃を与えるよりも、黒の弱体化したクイーン翼を攻撃することにより主導権を保持することを望んでいる。8…bxa4?! は黒に孤立aポーンの代償がないので、黒の選択肢は 8…Rb8、8…b4 そして 8…Bb7 である。それぞれをグランドマスターの実戦を用いて解説する。

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2015年09月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(177)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例4(続き)

(再掲)

 これはこの局面での二つの理にかなった手の一つで、もう一つの 10.Qe2 は実戦例5で取り上げる。白は本譜の手でcポーンを支援してc列での活動の可能性に期待し、黒が …Nb4 とやってきた場合に后翼ルークを閉じ込めることなくビショップをb1に速やかに退避させる場所を提供している。

10…cxd4!

 白のcポーンとdポーンに対する反撃は 9…Nc6 システムの心髄である。

11.exd4 Rc8!

 この手には …Nb4 または …Na5 でcポーンに対する攻撃を露わにすることにより后翼ナイトを活用する意図がある。

12.Re1

 白はf1の地点をビショップ引きのために空けることによりc4の支配を続けることができる。代わりに 12.Qe2 なら黒は 12…dxc4 13.bxc4 Nb4! 14.Bb1 Ba6! でc4に対し強い圧力をかけ、15.Ne5 には 15…Nd7 で互角になる。もっとおとなしい指し方も可能で、12…Re8 13.Rfd1 Bd6 でf4の地点に狙いをつけることになる。

12…Nb4!

 黒の戦力展開のそもそもの意図は白陣に積極的に圧力をかけることなので、本譜の手は断然理にかなった手である。消極的な 12…Re8 では 13.Ne5! で白に少し主導権がある。というのは 13…dxc4 14.Nxc6! Bxc6 15.bxc4 で、攻撃してくる可能性のある黒の后翼ナイトが交換されたので白の中央がより安定するからである。

13.Bf1 Ne4!

(この章続く)

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后印防御の指し方(176)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例4
白 V.ジトコフ
黒 B.グリコ
ソ連、1971年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.e3 Bb7 5.Bd3 Be7 6.O-O O-O 7.b3 d5 8.Bb2 c5 9.Nc3 Nc6 10.Rc1

(この章続く)

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后印防御の指し方(175)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

23…Qh5?

 この手は白ナイトのf6でのチェックの狙いへの対処としては何もしていない。23…Bd8? も 24.f5! gxf5 25.Nh6+ Kg7 26.Nxf5+ という手があるために駄目である。唯一の受けは 23…h5! 24.Bxe7 hxg4 でナイトを取る手である。黒の王翼の黒枡が目立って弱いので白はまだ優勢であるが、黒は正確に注意深く守れば受かるはずである。

24.h3 Bh4 25.Re2! f5

 白は決め手となる 26.d5! の仕掛けを狙っていた。実戦の手は黒の王翼をさらに弱めている。

26.Ne5 Rc3?!

 この交換の手筋は白に迅速にc列から侵入させるだけである。控えめな 26…Bf6 なら防御の見通しがもっと良かった。

27.Qxc3 Qxe2 28.Rc1! Rd8 29.Qc7! Qf2+ 30.Kh1 Qxf4 31.Qf7+ Kh8 32.Nf3! 黒投了

 白の狙いが多すぎる。33.Rc7、33.d5 から Bb2+、それに 33.Nxh4 Qxh4 34.Be7 もある。

(この章続く)

2015年09月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(174)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 白は中央ポーンとe5の橋頭保を十分に活用してしっかり主導権を握っている。

13…g6 14.f4 Rc8 15.Rf2 Nb8

 道筋の誤りに気づいてこのナイトは白の中央に圧力をかけるためにc6の地点を目指す。

16.Qe3 Nc6 17.Be2 Bb4 18.Bf3 Na5 19.cxd5 Nxd5

 19…Bxc3? でd5の地点を有利な条件で支配しようとするのは、「中間手」の 20.dxe6! で exf7+ を狙われて咎められる。

20.Nxd5 Bxd5 21.Bxd5 Qxd5 22.Ng4!

 狭い戦略的見方からすれば黒はd5の地点をふさぐことに成功した。しかしその代償は高くついている。クイーンはせき止め役としては間違いなく不適で、后翼ナイトと王翼ビショップは遊び駒となっている。このことは白の22手目と23手目とによってすぐに強調される。

22…Be7 23.Ba3!

(この章続く)

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后印防御の指し方(173)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 白はルークの融通性を最大限に保持しながらクイーンをまず最も役に立つ地点に展開した。ここでは小駒のうち2個、つまり后翼ナイトと王翼ビショップが黒より働いているので白の方が優勢である。黒は陣形が堅固であるけれども本質的に守勢のために良い作戦を立てるのが難しくなっている。

10…cxd4

 これはこの戦型における中央でのよくある交換である。それでもたぶん黒はいくらか守勢の …Nbd7 の唯一良い側面、すなわちc5とd5のポーンが支障なく守られているということを活用するのが良い。中央での現状を維持し 10…Rc8!? 11.Rfd1 Bd6!? と指せば黒の究極の互角への見通しはより明るくなる。例えば 12.cxd5 exd5 13.Rac1 Qe7 14.dxc5 bxc5 15.Ba6 Bxa6 16.Qxa6 Nb6 と進めば実戦よりも互角に近い。

11.exd4 Re8 12.Rad1!

 黒は后翼ナイトが守勢のため白の中央のポーンに何も圧力をかけられない。だから白はルークをより積極的な形で配置できる。つまり后翼ルークはd1に行き、王翼ルークは王翼にいるままで攻撃に用いることができる。

12…Bf8 13.Ne5

(この章続く)

2015年09月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(387)

「Chess」2015年6月号(4/4)

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次の一手

上級向け

第16問 C.ホールト対H.ナカムラ
米国選手権戦、セントルイス、2015年
 黒の手番

解答
1…Ne1! 2.Ne7+(2.Nh4 ならg2の地点に利いているが 2…Qg2+! 3.Nxg2 Nf3# で黒の読み筋にはまる)2…Kf8 3.Ng6+ Ke8 0-1 やはり 4.Bxf7+ Kxf7 5.Nh4 も 5…Qg2+! 6.Nxg2 Nf3# の犠牲になる。

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(この号終わり)

2015年09月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(172)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例3
白 B.スパスキー
黒 G.シグリョンソン
ミュンヘン、1979年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.e3 Bb7 5.Bd3 Be7 6.O-O O-O 7.b3 d5 8.Bb2 Nbd7 9.Nc3 c5 10.Qe2

(この章続く)

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后印防御の指し方(171)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 これで戦力得になる。32.Kg2?? なら 32…Ne1+ がひどい。

32.Kf2 Nxh2 33.Kg2 Ng4 34.Nxg4 hxg4 35.Qg5 Qxc4 36.Rd8 Qe2+! 37.Kh1 Qf1+ 38.Kh2 Qh3+ 39.Kg1 Qxg3+ 40.Kh1 Qf3+ 41.Kg1 Qe3+ 白投了

 42.Kh1 Qh3+ 43.Kg1 Rxd8! 44.Qxd8+ Kh7 45.Qf6 g3! 46.Qxf7+ Kh6 47.Qf8+ Kh5 のあと黒はチェックによる千日手の狙いを逃れている。

(この章続く)

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布局の探究(153)

「Chess Life」1996年6月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(上)(続き)

3.アリョーヒン防御 B04

1.e4 Nf6 2.e5 Nd5 3.d4 d6 4.Nf3

 これが現代のグランドマスターの大部分に選ばれている積極的で妥当な戦法である。以前は過激な 4.c4 Nb6 5.f4 が主流手順だった。積極性が足りないのは交換戦法(4.c4 Nb6 5.exd6)で、性急すぎるのは 3.c4 Nb6 4.c5 である。本譜の手のあと黒の最も堅実な手は 4…Bg4 で、白は 5.Be2 で楽にわずかな有利さを保持している。

4…dxe5!?

 これは次の手と連携してGMベント・ラルセン創案の非常に意欲的な作戦となっている。

5.Nxe5 Nd7!? 6.Nf3!

 これは積極的で妥当な手である。黒は白に 6.Nxf7!? Kxf7 7.Qh5+ Ke6 8.c4 N5f6 9.d5+ Kd6 10.Qf7 とやってこいと誘っていて、訳の分からない乱戦になる。最近の実戦例はグラシス対スタブリノフス戦(リガ、1994年)で、『チェス新報』第60巻第103号に載っている。白は本譜の手で少し有利で安定した中央を保持していて、そのため通常の布局での優勢を保っている。ここからはプサーヒス対コマロフ戦(ベナスク、1995年)を追う。見られるとおりGMコマロフはたえず互角を求めて戦わなければならず、決してそこに到達することもなかった。

6…e6 7.g3! b6 8.c4 N5f6 9.Bg2 Bb7 10.O-O Be7 11.Nc3 O-O 12.Bf4 Bd6 13.Ne5 Bxg2 14.Kxg2

 白の陣地の広さの優位が続いているのに対し、黒には積極的な反撃策がない。例えば 14…c5? は 15.Nxf7 で咎められる。残りの手順は解説なしで示す。GMプサーヒスの解説は『チェス新報』第64巻第94局に載っている。

14…Qc8 15.Qf3! Re8 16.Rfd1 Nf8 17.Qc6 Ng6 18.Nxg6 hxg6 19.Be5 Ng4 20.Re1 Rb8?! 21.Nb5 a6 22.Na7! Qb7 23.Qxb7 Rxb7 24.Nc6 b5 25.c5 Nxe5 26.dxe5!! Bxc5 27.Rac1 Bf8 28.b4 f6 29.f4 g5 30.fxg5 fxe5 31.g6 Bd6 32.Rf1 Rb6 33.Rf7 e4 34.h4 e3 35.Kf3! Rf8 36.Rxf8+ Kxf8 37.h5 e2 38.Kxe2 Bxg3 39.Rf1+ Ke8 40.h6 Rxc6 41.hxg7 黒投了

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(170)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 黒は両方のビショップがよく利いているので優勢である。

18.Rc3 Nc5 19.Qg4 h5! 20.Qg3 Rc7! 21.Bc1 Bxc1 22.R3xc1 Rd7 23.Qf4 Rd4

 d列の支配は黒にとってとっておきの切り札になる。しかしこのように急ぐ必要はなく、より単純な 23…Kg7! で白クイーンの侵入を防げていた。

24.Qh6! Be4! 25.Bxe4 Nxe4 26.Ne3 Qh4! 27.g3 Qe7 28.Rcd1 Rxd1 29.Rxd1 Ng5!

 この手は黒の26手目によって引き起こされた白枡の弱点につけ込んでいる。

30.f4 Qc5 31.Rd3 Nf3+

(この章続く)

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后印防御の指し方(169)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

12…Re8! 13.Re1 Rc8 14.Nf1 g6!

 黒は実戦例1と同じ基本的な構想を遂行する用意ができた。つまり …Bf8 と引いてから …Bg7 と指すことになる。これは自分の王翼を強化するのに役立つだけでなく、白のdポーンに圧力をかけるのにも役立つ。

15.Ne5?!

 黒の応手はこの手に時期尚早の烙印を押す。正着は中央集結の 15.Ne3 で、動的に互角だった。

15…Nxe5!

 黒はこう単純に取って白陣のいろいろな弱点を狙って好調である。しかし 15…Nxd4?! は不十分で、16.Nxf7! Kxf7 17.Bxd4 のあとの乱戦は白が悪くない(17…Qxd4?? は 18.Bxg6+ で負けてしまう)。

16.dxe5 Nd7 17.Bb1 Bg5!

(この章続く)

2015年09月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(168)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2
白 J.ティズダル
黒 F.ゲオルギウ
オレンセ、1977年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.e3 Bb7 5.Bd3 Be7 6.O-O O-O 7.b3 c5 8.Bb2 cxd4 9.exd4

 やはりこの取り返しが互角以上を求める唯一の手段である。もちろん白で引き分けにしたいなら 9.Nxd4 d5 で大いに満足できる。

9…d5 10.Nbd2 Nc6 11.Rc1 dxc4!? 12.bxc4

 黒の11手目は非常に興味深い戦略構想に基づいている。黒は中央のポーンを交換することにより白に悪名の高い浮きポーンを生じさせ、その弱点のためにこの布局で通常得られるよりも高い勝機が得られることを期待している。白の中央の支配は顕著に増大しているのでもちろんこの戦略には功罪両面がある。しかし白が守勢の Nbd2 を選択したことによりその危険性は減少している。Nbd2 は黒が白の危険な d4-d5 突きを恐れる必要がないことを意味している。

(この章続く)

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后印防御の指し方(167)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 白が自分の16手目に対して高い代償を払わされているのは確かだった。もちろん 35.fxe3 と取ると 35…Qg3# までとなる。

35.f3 Rxf3 36.Bg2 Rh3+! 37.Kg1 Rg3 白投了

(この章続く)

2015年09月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(166)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 白はうまく守ってきた。そして黒は 29…dxc4! 30.bxc4 Be4! 31.Rc3 b5! で得られるわずかな優勢に満足すべきであった。しかしもっと決定的な行動の好機だと感じていた。

29…e5?! 30.Nd3?

 そしてこの悪手で黒の判断が正当化された。正着は 30.dxe5! fxe5 31.cxd5 Nxd5 32.Qg3 で、両者 の王翼が弱体化していい勝負だった。

30…dxc4 31.bxc4 exd4! 32.Nxf4

 32.Qxd4 は 33…Be4! 34.Rd2 Rcd8 で負けになる。

32…gxf4 33.Qxd4 Qxg4+ 34.Kh2 Re3!

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(386)

「Chess」2015年6月号(3/4)

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ナカムラが4度目の米国選手権(続き)

(クリックすると全体が表示されます)

K.トロフ対H.ナカムラ
第8回戦

 局面は混沌としている。黒は花形のベノニ・ビショップを放棄したが、明らかに攻撃態勢にある。ここで 24.Rb3 Qh6 25.Qg2 なら賢明だった。しかしトロフは危険性をかなり過小評価していた。

24.Qd3? Qh6 25.Bg2

 白はキングを守るフィアンケット・ビショップを信頼している。しかしこのビショップは両方の色の枡を守ることはできない。代わりに 25.Nf3!? Qh5 26.Bg2 Rxe4 27.Bf4 で1ポーンを捨てて駒を出すのが良かったのかもしれない。

25…Qh2+ 26.Kf1 Nxf2!

 もちろんナカムラは決してこのような一発を見逃すようなことはしない。

27.Kxf2 Bh3

28.Qf1

 この手はあまり助けにならない。しかし 28.Qf3 でも 28…Ng4+ 29.Kf1 Qh1+ 30.Ke2 Qxg2+ 31.Qxg2 Bxg2 で黒が1ポーンを得し強力な主導権を維持しただろう。

28…Rxe4!

 これがナカムラの手筋の核心である。白は手足を縛られているので、黒は単純に安全な 29…Rae8 の準備をした。先頭のルークが取られるならもっけの幸いと分かっている。

29.Nxe4

 どう指しても同じようなものである。代わりに 29.Qh1 なら 29…Ng4+ 30.Kf3 Bxg2+ 31.Qxg2 Ne5+ 32.Kf2 Re2+! で白クイーンが取られる。

29…Nxe4+ 30.Ke3

 黒はこの手のあと戦力を取り返しさらにもっと得る。しかし 30.Kf3 では 30…Qxg3+ 31.Kxe4 Re8# で詰まされてしまう。

30…Bxg2 31.Qf4 Nxc3 32.Qg5+ Kf8 33.bxc3 Re8+ 34.Kf2 Bh1+ 0-1

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(165)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 この手は上述の二つの狙いを防いでいるが、王翼の弱体化という大きな代償を払っている。控えめな 16.Nf1 が必要で、動的に互角である。

16…Ng7 17.Nf1 f6 18.Ng3 Qd7 19.Qf4 Bd6 20.Qe3 Qf7 21.Bf1 Ne7! 22.Bg2 g5!

 白の16手目のおかげで弱体化したf4の地点にさっそくつけ込む。

23.Ne2 Ng6 24.Rc2 Bf4 25.Nxf4!

 25.Qd3? には強手の 25…e5! があるので、これが唯一の受けである。

25…Nxf4 26.Bf1 h5 27.Ne1! Qg6 28.Rdc1 hxg4 29.hxg4

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(164)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 クイーンはここが居心地が良く、d1の地点も白の王翼ルークのために解放された。これが白の最も柔軟性がありよく指される駒組みである。白のほかの手に対して黒の最善の作戦は本譜と同じである。

 11.Re1 cxd4 12.exd4 Re8 13.a3 Bf8 このあと …g7-g6

 11.Bb1 cxd4 12.exd4 Re8 ここで 13.Re1 は 13…Bb4!?(14.a3 Bxd2 15.Qxd2 Na5)で黒が魅力的な乱戦に持ち込む機会が得られる。また、13.Ne5 なら 13…dxc4! で完全な互角になる。

 上図の局面の具体的な特徴は黒クイーンが白クイーンよりも快適さで劣るということである。つまり 12.Rfd1 のあと白が中央を有利に開放してルークで黒クイーンに対する攻撃をむき出しにすることができるという危険性がある。だから黒は白のdポーンを動けないようにするために次の交換を始めなければならない。

11…cxd4 12.exd4

 これが中央での優位を保証する唯一の手段である。ほかの取り方ではそれがまったく消え失せてしまう。

12…Re8

 これは 13…Bf8 から …g7-g6 で王翼を防護する準備である。

13.Rfd1 Bf8 14.h3

 白はクイーンをe3に置いてクイーンの働きを増したいので黒が …Ng4 と指せなくした。ほかには2手段がある。

 14.Nf1 g6 15.Ne3 Nh5 16.g3 Nf6!? これで黒陣が堅固である。白の g2-g3 突きが黒の后翼ビショップの斜筋を延ばす可能性を与えたので黒はいつかそれにつけ込むことを期待している。

 14.Ne5 dxc4! 15.Ndxc4 Nb4 16.Bb1 Nbd5 黒のd5の支配がしっかりしているので互角の形勢である。

14…g6 15.Qe3 Nh5!

 この手には 15…Qf6 から 16…Nf4 と 15…Ng7 から 16…Nf5 という二つの作戦が念頭にある。

16.g4?!

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(152)

「Chess Life」1996年6月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(上)(続き)

2.シチリア防御スベシュニコフ戦法 B33(続き)

 ここからはカスパロフ対シロフ戦(ホルゲン、1994年)の手順を追う。

11.c3 Bb7

 この手と次の手で黒はクイーン翼の小駒の位置の改善を図る。ありきたりの 11…O-O 12.Nc2 Rb8 なら白に二通りの異なった指し方がある。

 (1)GMカスパロフの指し方 13.h4 Ne7 14.Nxf6+ gxf6 15.Bd3 d5 16.exd5 Qxd5 17.Ne3 Qe6 18.Qh5 e4?! 19.Bc2 b4 20.c4 Kh8 21.O-O-O これはカスパロフ対ローチェ戦(モスクワ・オリンピアード、1994年)で、キング翼への決定的な攻撃が視野に入っている。『チェス新報』第62巻第171局にカスパロフの解説がある。

 (2)GMカルポフの指し方 13.a3 Ne7 14.Ncb4 Bb7 15.Be2 Ng6 16.g3 a5 17.Nc2 Bxd5 18.Qxd5 Ne7 19.Qd3 d5 20.Rd1! これはカルポフ対ローチェ戦(番勝負第6局、1994年)で、白枡での眼目の支配で白が明らかに優勢である(52手で引き分け)。『チェス新報』第62巻第169局にカルポフの解説がある。

12.Nc2 Nb8 13.a4 bxa4 14.Rxa4 Nd7 15.Rb4 Nc5?!

 黒が白の応手を見落としたのは無理もない。GMカスパロフは 15…Rb8!? を指摘しているが、白は通常の布局の有利さを保持している。

16.Rxb7!! Nxb7 17.b4!

 交換損とそれに続くこの手には、白枡の支配と黒ナイトを働かせないという二つの戦略構想が含まれている。

17…Bg5 18.Na3! O-O 19.Nc4 a5 20.Bd3 axb4 21.cxb4

 白のbポーンは役に立つパスポーンであるのに対し黒のdポーンは無力なままなので、白は交換損で1ポーン得ているのも同然である。

21…Qb8 22.h4! Bh6 23.Ncb6 Ra2 24.O-O!

 白は小駒を最高度に配置し終えたので、ここで初めてキャッスリングした。

24…Rd2 25.Qf3 Qa7 26.Nd7

 カスパロフによれば(いつも変わらぬ聡明、客観的そして徹底的な解説が『チェス新報』第61巻第178局に載っているので読んで欲しい)両者の最善の手順は 26.Bb5! Nd8 27.Nd7 Ne6 28.Ne7+ Kh8 29.Nxf8 Qxe7 30.Nxe6 Qxe6! 31.Bc6 で、働きに優るビショップとパスbポーンのために白が少し優勢である。

26…Nd8?

 この手は消極的すぎた。唯一の受けは 26…Ra8! で、上記の手順に入る白の最善手は 27.N7b6! Rf8! 28.Bb5! である。

27.Nxf8 Kxf8 28.b5!

 白陣は勝ちの態勢である。それでも世界チャンピオンの積極性と正確さは実際よりもそれを容易に見せている。

28…Qa3 29.Qf5! Ke8 30.Bc4 Rc2 31.Qxh7! Rxc4 32.Qg8+ Kd7 33.Nb6+ Ke7 34.Nxc4 Qc5 35.Ra1! Qd4 36.Ra3! Bc1 37.Ne3! 黒投了

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(163)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ナイトを最も活動的な地点に展開するのは 9.Nbd2 に対する黒の最良の方針である。代わりに 9…Nbd7 と展開するのは堅実ではあるけれどもこのナイトを防御の役割だけに限定することになり、白は 10.Qe2 で少しの優勢を期待できる。例えば 10…cxd4 11.exd4 Nh5 12.Qe3 g6 13.Ne5 となれば白にいくらか主導権がある。

 しかしすぐに 9…cxd4 10.exd4 Nc6 と指すのは良い手で、異なった手順でいずれ同じ局面になる。

10.Rc1

 小駒が展開されたので次にやるべき手順は重砲を取り出すことである。中央に四とおりの争点があるので明らかに何かを投入しなければならない。だから一般的にはルークとクイーンを中央列の方に展開するのが良い。白の最も効果的な大駒の配置は、后翼ルークをc1、王翼ルークをe1かd1、(王翼ルークがd1に行くものとすれば)クイーンをe2となる。

10…Rc8

 ここが后翼ルークにとって断然最良の地点である。白のルークと相対し、c列での自身の活躍を見据えている。

11.Qe2

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(162)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1
白 K.コモンズ
黒 R.バーン
米国選手権戦、1978年

1.c4 e6 2.Nf3 Nf6 3.d4 b6 4.e3 Bb7 5.Bd3 Be7 6.O-O O-O 7.b3 d5 8.Bb2 c5 9.Nbd2 Nc6!

(この章続く)

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