2015年08月の記事一覧

后印防御の指し方(161)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 黒には積極的な 9…Nc6 と控えめな 9…Nbd7 の選択肢がある。マスターの実戦では両方とも一般的だが、私には 9…Nbd7 の方が指し方が難しいように思える。この重要な戦型は実戦例3で分析する。

 上図の局面は一点を除いてどの点でも対称である。その一点とは白の王翼ビショップが黒のe7にいる王翼ビショップよりも活動的だということである。純粋に数学的な観点からは白がわずかに優勢になる可能性がある。少なくとも同じくらい重要なことは白の手番だということである。それでも黒陣はどの点からも申し分なく、黒はいつか互角になることが望める。中央で何らかの交換が行われることが予想され、局面の不均衡につながる。この局面から生じる重要な可能性については実戦例の第4局と第5局で取り上げる。

(この章続く)

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后印防御の指し方(160)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 黒はこれによって中央ポーンの形を白と同じにした。この手にもそれと関連した作戦にも何の不利もない。だからこの手を避けたり延期したりする理由は何もない。もし黒が …c7-c5 と突かない作戦を選択すれば、中央が少し不利なままで、互角への道ははるかに困難になるだろう。例えば 8…Nbd7 と指すと 9.Nc3 Ne4 10.Qe2 Nxc3 11.Bxc3 Nf6 12.Rfd1 Ne4 13.Bb2 Bd6 14.Rac1 となる。白は中央が広く展開も調和よく完了していて、穏健戦型の目標そのものである。これで黒は何をするのも難しくなっている。例えばここで …c7-c5 と突けば白の両ルークが中央での戦いのために理想的に配置されているので黒は中央のポーンに困難な問題を抱えることになる。

9.Nc3

 白は中央でポーンを交換しても黒がポーンで取り返して中央でもっと影響を強めるだけなので何も得られない。だから白は小駒の展開を完了するのが正しい。このナイトには理にかなった地点が二か所あり、それらはc3とd2である。9.Nbd2 は后翼ビショップの斜筋を通したままにしておくのでdポーンが楽に守れるという利点がある。9.Nbd2 の不利な点はナイトが働かない地点にいるということである。この非常に重要な戦型は本章末の最初の実戦例2局でさらに分析する。

 中央に働きのある手はもちろん 9.Nc3 で、d5の地点に圧力をかけている。しかしこの手にはd4の地点の守りが不安定になるという欠点があり、重要な戦型の中には混戦気味となって黒に反撃の可能性が高まるものがある。

9…Nc6

(この章続く)

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后印防御の指し方(159)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 本筋の手順は 12.b3 Nbd7(后翼ビショップがdポーンを守り続けられるようにしている。12…Nc6 ではそうならない)13.Bb2 Rfe8 14.Rac1 Bc6 となるだろう。指し手が進むにつれて黒は中央のポーンを用いていつかそこで事を起こしたくなる。一方白は浮きポーンの根源的な弱点を露呈させようとする。

6…O-O 7.b3

 白の后翼ビショップは明らかに元々の斜筋では何の展望もない。その一方でフィアンケットすれば中央の斜筋に沿って明るい見通しが保証できる。ここでも 7.Nc3 は正確な 7…d5! でも不正確な 7…c5?! 8.d5! でも別の戦型に移行する。

7…d5

 白は7手目のあと4段目にポーンが2個あり黒は全然ないので明らかに中央で優位に立っていた。黒は王翼の展開が完了したので白の中央に挑み始めなければならない。それにはcポーンとdポーンとを自陣の4段目に突く必要があることを意味している。突く順序は大して問題でない。

8.Bb2 c5!

(この章続く)

2015年08月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(385)

「Chess」2015年6月号(2/4)

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ナカムラが4度目の米国選手権(続き)


優勝者への巨大小切手に比べるとヒカル・ナカムラはかなり小さく見える。レックス・シンクフィールドとジェニファー・シャヘードが新チャンピオンのためにそれを持ってあげていて、審判長のトニー・リッチが満足げに眺めている。

D.ナローディツキー対H.ナカムラ
第5回戦、シチリア防御ドラゴン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 Nc6 8.Bc4 O-O 9.Bb3 Bd7 10.h4 h5 11.Qd2

11…Qa5?!

 恐らくナカムラはナローディツキーを定跡からはずすために指したのであろうが、…Qa5 を …h5 と組み合わせるのは長い間少し疑問と考えられてきた。代わりに 11…Rc8 12.O-O-O Ne5 なら有名なソルティス戦法の主手順に至る。これはガーウェイン・ジョーンズが Quality Chess 社から出すことになっているドラゴン戦法で取り上げられる。

12.O-O-O Rfc8 13.Kb1 Ne5 14.Bg5!

 純正ソルティスからの類推で指された。白はこれでfポーンを突いていく用意ができたので、ナカムラは交換損をして局面の流れを変えることにする。

14…Rxc3!? 15.Qxc3

 15.bxc3?! Rc8 16.Rhe1 b5 で黒に確かな攻撃の可能性を与えるよりは、クイーンをなくす方が正しいはずである。

15…Qxc3 16.bxc3 a5!?

 ナカムラは白に問題を課し続けるが、それでも客観的には交換損の代償が十分でない。白がgポーンかhポーンのどちらかを失っていれば、黒は立派な代償を得ていることになるが、そうではないので白がいつかは余分のルークにものを言わせることができるはずと考えていいかもしれない。

17.a3

 代わりに 17.a4!? なら実戦で起こるように黒がc4の地点で抑え込むのを防いでいた。そして 17…Rc8 18.Kb2 Nc4+ 19.Bxc4 Rxc4 20.Ra1 となれば白乗りだが局面はまだかなり難解である。

17…Rc8 18.Kb2 Kf8

 役に立ちそうな手待ち。事実上白に作戦を見つけるよう促している。

19.Ne2?!

 これが最初のつまづきだった。セントルイスでの一般向けの優れた解説で指摘されたように、19.Rhe1 の方が自然な手で、f3-f4 から e4-e5 で列をこじ開け素通しにする。

19…Bb5

20.Nd4

 自分の間違いを認め黒も付き合ってくれることを期待した。ナローディツキーは 20.Nf4 と指すつもりだったが、20…Nh7?! で自分のクイーン翼が実際はそれほど堅固でないと気づいたのかもしれない。「ChessPublishing」のウェブサイトでドラゴン戦法の権威のクリス・ウォードが指摘したように 21.Nd5 Nxg5 22.hxg5 a4 23.Ba2 e6 24.Nb4 Rxc3! 25.Kxc3? Nxf3+

というきれいな手順がある。

20…Ba6

 もちろんナカムラは取り合わない。

21.Rhe1

 勝負手は 21.Bxf6!? Bxf6 22.a4 だった。しかしジョシュ・フリーデルのこのような決断を行うにはかなりの考慮時間が必要である。確かに白は大切な黒枡ビショップを手放したが、黒は交換損の代わりにポーンを得ていないのでナカムラがここからどのように勝ちを目指すのかはまったく不透明である。

21…Nfd7!

 ドラゴンビショップの筋を通し、さらに駒をクイーン翼に持って行く。

22.f4!?

 これは積極的な受けだが 22.a4 という堅実な選択肢もあった。黒はやはり交換損の十分な代償があるに違いないが、それ以上はなさそうである。

22…Nc4+ 23.Bxc4 Bxc4

24.f5

 黒がf列で困ることになるとは到底思われない。しかし 24.e5?! ではもちろん 24…f6 で白の残りのビショップの行き場がなくなってしまう。

24…Nc5 25.Re3 Ke8!

 ナカムラは相変わらず相手を追い立てながら、クイーン翼の好所の駒をどのように活用するのが一番良いのか決める前にさらに自陣を強化している。ナローディツキーはこの時点までに心理的に圧力を受けていたことは間違いなく、すぐにつぶれた。

26.Bf4 Na4+ 27.Kc1 Ba6

28.e5?

 白は一番の有利さである交換得を失った。ここでは 28.Rde1! Nxc3 29.e5 と指さなければならず、29…Nd5 30.exd6! Nxe3(30…Bxd4 なら 31.Rxe7+ Nxe7 32.Rxe7+ Kf8 33.fxg6 fxg6 34.Bh6+ Kg8 35.d7)31.Rxe3!(フリーデル)

となってまだまだ指す余地があっただろう。31…Bxd4?(31…Bf6 が正着)なら 32.Rxe7+ Kd8 33.Rxf7 となって白には駒損の代わりに豊富な攻めがある。

28…dxe5 29.Rxe5

 こう取らなければならない。29.Bxe5? は 29…Bh6! 30.Rde1 Rxc3 31.Kd2 Rxe3 32.Rxe3 Nb6 で困る。

29…Bxe5 30.Bxe5 Nxc3 31.Re1 gxf5

 何という突然の様変わりだろう。急に黒は2ポーン得になり白は敗北の瀬戸際である。

32.Bf6?!

 これはきれいな戦術にはまる。しかし 32.Nxf5 でも 32…Ne2+ 33.Kd2 Rc5 となってナカムラは絶対勝ちにいっただろう。

32…Ne4! 33.Nxf5 Bd3

 e列での狙いを防いでいるだけでなく、逆に白キングに対して逆襲している。

34.c3 Rc5! 35.Nxe7 Rb5 0-1

 白が詰みから逃れるには交換損するしかない。

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(この号続く)

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后印防御の指し方(158)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 穏健戦型の背後にある基本的な考えは円滑で迅速で融通性のある展開なので、この手と次の2手は最も一貫性のある指し方である。

 もちろん 6.Nc3 にも何の異論もあろうはずはなく、同様に良い手である。そのあと 6…c5 7.O-O cxd4! 8.exd4 d5! でまたしても主手順に移行する。黒が …c7-c5 を延期して 6…d5 と突き白がこれにつけ込もうとすれば別個の戦型になる。7.O-O O-O のあと白には主手順と決別する手段が二つある。

 A:白がすぐに中央で 8.cxd5 exd5(ほかの取り返し方は中央で白に過大な支配を与える)と交換して黒のdポーンを動けないようにする。中央が固定されたので白は 9.Ne5 c5! 10.Qf3 Nc6 11.Qh3 で王翼に攻撃をしかけることができるが、黒は陣形が堅固で例えば 11…Re8 で特に心配する所もない。いい勝負である。

 B:白が 8.Qe2 c5 9.dxc5 で中央での動きを加速させる。黒はここで 9…dxc4?! 10.Bxc4 Bxc5 で対称形を保とうとすべきでない。なぜなら白が先着の利を生かして 11.e4! Nbd7 12.e5! で中央で強力に進攻することができるからである。ぺトロシアン対カルポフ戦(ソ連選手権戦、1973年)では白は 12…Bxf3 13.gxf3 Nh5 14.Rd1 Qe7 15.f4 g6 16.f5! で大きな主導権を手に入れ65手で勝った。黒の正しい方針は 9…bxc5! 10.Rd1 Qb6 11.cxd5 exd5! で中央で最大限の影響力を目指すことである。黒はここでいわゆる浮きポーンになっていて、得失両面がある。その有利な点は中央の多くの地点に利いていることで、不利な点はポーンによる支援がないので攻撃に弱くついには取られてしまうかもしれないことである。ここの場合に限ってはポーンが安定しているので黒にとって動的にいい勝負である。

(この章続く)

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后印防御の指し方(157)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 5…c5 の局面

 中央での主眼の仕掛けのために中央のポーンを使う代わりに、黒はすぐ隣のポーンを用いた。本譜の手はもちろん重要なd4の地点を攻撃していて、5…d5 の戦型と異なり后翼ビショップの斜筋は完全に通ったままである。やはり主手順への移行はよく起こる。しかしこの場合黒が変化しようとするのはうまくいかない。6.O-O Be7 7.Nc3 のあと黒には次のような手がある。

 a)7…cxd4! 8.exd4 d5! で主手順に移行する。これが黒の唯一正しい作戦である。

 b)7…d5?! 8.cxd5! exd5 9.Bb5+! 黒には完全に満足できる応手がない。

 9…Nbd7 10.dxc5! bxc5 11.Ne5

 9…Bc6 10.Qa4! Bxb5 11.Qxb5+ Qd7 12.Ne5! Qxb5 13.Nxb5 Na6 14.Rd1

 9…Kf8 10.b3 a6 11.Be2 Nc6 12.Bb2 Rc8 13.Ne5!

 これらのどの場合でも黒には自陣のいろいろな欠陥に対する代償が何もない。

 c)7…O-O?! 8.d5! exd5 9.cxd5 黒がdポーンを取っても取らなくてもはっきり白が優勢である。

 9…Nxd5 10.Nxd5 Bxd5 11.Bxh7+ Kxh7 12.Qxd5 Nc6 13.Rd1 黒はキングが不安定でdポーンも弱い。

 9…d6 10.e4 Nbd7 11.Nd2! Ne5 12.Be2 Re8 13.f4 Ng6 14.Bd3 Bf8 15.Qf3 白は中央で圧倒的に優勢で陣形も明らかに活発に動きやすい態勢である。

6.O-O

(この章続く)

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布局の探究(151)

「Chess Life」1996年6月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(上)(続き)

2.シチリア防御スベシュニコフ戦法 B33

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5

 1960年代終わりまたは1970年代初めまでの約100年あまりの間、この手は布局の悪手としか考えられていなかった。黒はd5の地点を恒久的に弱め、キング翼ビショップを閉じ込めなければならない。そしてどこに代償があるのか。何千時間もの研究のすえ黒に動的な反撃の可能性があることを示すことができたのは、シベリア出身のグランドマスターのエブゲニー・スベシュニコフだった。それ以来20年以上の間主流戦法になっている。

6.Ndb5

 積極的な指し方だけが成功につながる。ほかの変化はどれもみな物足りない。(1)6.Nxc6?! bxc6 は黒の中央を強化する。(2)6.Nf5?! は 6…d5! で足場を崩される。(3)6.Nb36.Nf3 は 6…Bb4 でさっそく釘づけにされる。(4)6.Nde2 は 6…Bc5 で積極的に展開される。本譜の手で白は気持ちの良い 7.Nd6+ を狙っている。

6…d6 7.Bg5

 やはり積極的な展開が求められる。ほかに考えられる 7.a4、7.Nd5 それに 7.Be3 は優勢につながらない。7.Bg5 の局面は 2…e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Ndb5 d6 7.Bf4 e5 8.Bg5 という手順からも生じることがあり実際よくできる。しかしここでは整合性のために本譜の手順を用いることにする。

7…a6 8.Na3

 白は 8.Bxf6 gxf6 9.Na3 f5 10.Qh5 b5 11.Naxb5 で乱戦に持ち込むことができる。しかし 11…axb5 12.Bxb5 Bb7 となって捨て駒の代償が十分かどうかは判然としない。

8…b5

 意味のある継続手はこれしかない。黒は Na3 の愚形を際立たせる。

9.Nd5

 これがこの局面での棋理に合った手段である。白はd5の地点の支配を確かなものにし、a3のナイトが c3 から Nc2 で戦いに復帰できるようにし、その間黒に早い反撃の機会を与えない。はっきり異なった棋風のガリー・カスパロフとアナトリー・カルポフが採用した手もこれである。

 最も激しくいくなら 9.Bxf6 gxf6! 10.Nd5 だが、10…f5 で白ナイトがa3で遊んでいるうちに黒が中央で積極的に反撃を開始することになる。

9…Be7

 黒は急いで釘付けを解消しなければならない。そうしないと白が 10.c4 と仕掛けることができ、さらには 10.Bxf6 と取られると黒が …f5 と突くのに1手遅れることにもなりかねない。

10.Bxf6 Bxf6

 ここでは 10…gxf6?! と取る必要もなければ意味もない。つまりキング翼ビショップが働かない位置にいるので白に 11.Ne3! でd5とf5の地点を締め付けられるからである。

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(156)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 5…d5 の局面

 黒は特にe4の地点の関連ですぐに中央に強力なポーンを打ち立てた。わずかな欠点はビショップの斜筋が一部ふさがっていることである。以降の指し方で主手順に戻ることができることがよくあるが、途中で理にかなった変化が少しある。6.O-O Bd6(黒はこのビショップのためにe7よりももっと活動的な地点が欲しいところだが、d6では白からの Nb5 または e3-e4-e5 突きにさらされる可能性がある)7.Nc3 O-O 8.b3 Nbd7 9.Bb2 両者とも適切に小駒の展開を完了した。黒の次の課題は中盤戦で具体的にどんな作戦をとるかである。理にかなった作戦が二つある。

 9…Ne4 はe4の地点の支配が目的である。ここで白は 10.cxd5! exd5 で黒の后翼ビショップの斜筋を恒久的にふさがせてから 11.Qc2! でe4の地点に挑み半素通しc列で圧力をかけ始めるのが良い。想定される手順は 11…Nxc3 12.Bxc3 Nf6 13.Rfd1 Qe7 14.b4! Ne4 15.Be1 c6 16.Qb2 a6 17.Rac1 である。黒の后翼ポーンが少し弱いのに対し、白陣には基本的に何の弱点もないので、形勢は白がわずかに有利である。

 9…c5 は中央への総攻撃である。10.cxd5 exd5 11.Rc1 Qe7 12.Qe2 Rad8 13.Rfd1 のあと局面は判断が難しい。黒はポーンが白ポーンよりも中央の重要な地点に利いているけれども、中央が少し伸びすぎになりがちで、后翼ビショップはずっとふさがったままになる。白は自陣に何も弱点がないけれども、具体的で積極的な作戦を見つけるのは容易でない。実戦的観点からは互角のいい勝負だろう。

 D:5…c5 はすぐに中央に影響を与える。

 5…c5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(155)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 5…Bb4+ の局面

 このチェックには多くの利点がある。狙いを持って展開することにより(チェックもキングを取る狙いと考えられなくもない)、黒は先手で迅速にキャッスリングし、e4の支配も間接的に強化している。白には妥当な応手が3手あるが、そのうちの2手は黒に特に問題がない。

 a)6.Nc3 は二印防御に移行する(1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 b6 5.Bd3 Bb7 6.Nf3 が普通の手順である)。黒は 6…O-O または 6…Be4 と指せば「通常の」手順になる。

 b)6.Bd2 Bxd2+ はビショップ同士の等価の交換になり、7.Nbxd2(または 7.Qxd2 d6 8.Nc3 Nbd7 9.Qc2 O-O 10.O-O Qe7)7…d6 8.O-O c5 9.Qe2 Nc6 10.Rfd1 O-O でほぼ互角になる。黒の展開は棋理に合っていて中央に十分影響力がある。

 c)6.Nbd2 が黒に何らかの問題を与える方法である。ナイトを黒の王翼ビショップと交換するのは黒陣の黒枡を弱めることになる。そして白はまだ黒枡ビショップを持っているので、それにつけ込むことができるかもしれない。これに反して黒がビショップを引けば手損するだけである。それぞれの場合の主眼の指し方は次のようになる。

 6…Ne4 7.O-O f5 8.Qc2! Bxd2 9.Nxd2! Qh4 10.f3! Nxd2 11.Bxd2 Nc6 12.b4 O-O 白は中央と后翼で陣地が広いだけでなく、2個のビショップが活動的になる可能性がある。

 6…c5 7.O-O O-O 8.dxc5 Bxc5(8…bxc5 は 9.b3 d5 10.Bb2 でb4のビショップが一人ぼっちの見物人になる)9.a3 a5 10.b3 Nc6 11.Bb2 d5 12.Qe2 白はビショップがよく働いているので少し優勢である。

 C:5…d5 はすぐに中央に影響を与える。

 5…d5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(154)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 10.e4 の局面

 これで黒のe4の支配が雲散霧消し、この地点は今や白の手中に落ちた。これは二重ポーンよりもはるかに重要な要因で、それゆえ白は好調である。この局面からは指し手が三通りある。

 10…fxe4 11.Nxe4 から 12.Qh5 を見越す。

 10…Nc6 11.Qe2 Qe8 12.f4 で中央の優位が大きい。

 10…c5 11.exf5 exf5 12.d5 d6 13.Qc2 Bc8 14.Nf3 Na6 15.Re1 で陣地がかなり広くて優勢である。

 B:5…Bb4+ は一見手得しながら王翼ビショップを展開している。

 5…Bb4+ の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(153)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 5…Ne4 の局面

 后印防御における黒の第一の目的はe4の地点を支配することなのだから、すぐにそこを占拠したら良いではないか。これはもっともな良い質問だが、その答えには黒のe4の占拠の永続性を考慮に入れなければならない。その地点を支配し続けられるならば素晴らしい。そうでないのなら押し返され大きな手損の代価を払うことになる。一般に展開が完了する前の黒の早い動きは永続的な達成に結びつかない。

 ここからの白の最善の手順は次のようになる。6.O-O(黒ナイトに対し白が効果のある行動をするにはキングがキャッスリングしてある方がはるかに良い。すぐに 6.Nc3 と指すと黒は 6…Bb4 で二印防御に移行したり 6…f5 7.Bxe4!? fxe4 8.Nd2 Qg5 で乱戦に持ち込んだりできる)6…f5(黒がe4の地点を保持したいならばこの手が必要である)7.Nfd2!(戦いはe4の地点をめぐるものであることを忘れないこと。この手は白の次の手と合わせて黒のe4の支配の挑戦に成功する唯一の手である。型にはまった 7.Nbd2 は 7…Bd6! のために何も仕出かさない。そのあと例えば 8.Qc2 Nxd2 9.Nxd2 なら黒は 9…Bxh2+! 10.Kxh2 Qh4+ 11.Kg1 Bxg2! 12.Kxg2 Qg4+ という手筋で永久チェックにより引き分けにできる)7…Be7(白クイーンがまだ王翼の地点を守っているので 7…Qh4 8.Nc3! Bd6 で攻撃しようとしても 9.f4 Nxc3 10.bxc3 O-O 11.Qe2 で簡単に撃退される。それでも黒が納得しないで 11…Nc6 12.Rb1 Rf6 と攻撃すれば白は 13.c5! Bf8 14.e4! でかなり優勢になる)8.Nc3! Nxc3 9.bxc3 O-O 10.e4!

 10.e4 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(152)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 これは控え目だが健全なシステムである。白は Bd3 と O-O で王翼の展開を完了してから后翼を展開する。后翼ビショップのフィアンケットを予定しているので本譜の手は見かけのようにそれを閉じ込めることにはならない。そして展開が完了すれば中央での少しの優位が中盤戦での主導権に結びつくことを期待している。一般に白は王翼で戦いを起こし、黒は后翼で反撃を策する。

 黒のすぐの目標はビショップを展開し、キャッスリングしてキングを安全な所に移し、中央でポーンの存在を確立することである。后翼ナイトは当面はあまり見通しが立たないのでたぶん最後に展開されることになる。

4…Bb7

 これが 3…b6 と突いた最大の理由なので、延期する必要も理屈もない。それでも黒はほかの手順を採用することができる。例えば 4…Be7 から 5…Bb7 でも何も問題ないし、すぐに 4…Bb4+ もそうである(黒の5手目である程度取り上げる)。

5.Bd3!

 ここが王翼ビショップの最も働く位置であることは確実である。5.Be2 は不必要に守勢である。

5…Be7

 この手が最も融通性がある。黒はキャッスリングしてからcまたはdポーンを突くつもりである。

 変化は4手あり、どれも真剣に考える価値がある。そのうちの二つ(5…c5 と 5…d5)は主手順に移行できる。ほかの二つは必ず独立した戦型になる。定跡の重要性の順に考察する。

 A:5…Ne4 はすぐにe4の地点を占拠する。

 5…Ne4 の局面

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(384)

「Chess」2015年6月号(1/4)

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ナカムラが4度目の米国選手権

G.カームスキー対H.ナカムラ
第3回戦

 白は窮地に立たされていて、ポーンを2個損しキングの薄みが目立つ。55.Nxc4 は 55…Qxd8 56.Nxb2 Bf3 でほとんど絶望なので、カームスキーは一発にかけた。

55.Nf7!? Rxc2?

 考えすぎ。ナカムラは白枡の支配を頼みにしているが、実は手段があった。55…Qc5 で白のあらゆる手段を封じた方が良かったかもしれない。56.Kxh1(56.Nxh6+ Kg7 57.Qd1 Bc6 も白に何もさせない)56…Kxf7 57.Qe2 なら黒は 57…Ke7 で陣形をまとめてあまり苦労なく勝てるはずである。

 さらには黒がすこし派手にやりたいなら 55…Kxf7!? 56.Rxd5 Bxd5 もあるかもしれない。双ビショップとパスcポーンは白クイーンの手に負えないはずである。

56.Rxd5 Bxd5 57.Qb1!

 試合開始後6時間目も終わり近くになって我々が皆見落とすような手も彼等には当然の手である。

57…Kxf7

 要塞を作ることにしたのは賢明だった。代わりに 57…Be4 は 58.Nd6 Bxd6 59.exd6 Kf7 となってパスdポーンが少し厄介そうに見えるが、陰険なコンピュータチェスはあくまで好みの「0.00」を表示する。

58.Qxc2 Kg7 59.Qd2 Bb4 60.Qd4 c3 ½ – ½

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(151)

第5章 穏健戦型 エドマー・メドニス

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.e3

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(150)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

44.f6! gxf6

 ここで 36…Rb7 の意味が分かる。黒ルークがh7の地点を守っている!

45.gxh5

 これで 45…Rg7 に白は 46.Rg4 と指すことができるが(46…Rxg4 47.Qh7#)、46…f5 で紛れる。45…Rg7 に対するもっと簡明な仕上げは 46.h6 Rb7 47.Rg4+ から 48.Rg7 である。

45…Re7 46.Rg4+ 黒投了

 46…Kh8 のあと白は 47.Qe3 からh6でチェックする。

(この章終わり)

2015年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(150)

「Chess Life」1996年6月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(上)(続き)

1.シチリア防御ナイドルフ戦法 B97(続き)

 このあとはエピシン対ポルティッシュ戦(レッジョ・エミーリア、1991年)の手順を追う。

12.Bxf6 Bxf6 13.e5!?

 白はほかに指しようがない。

13…dxe5 14.Ne4 exf4 15.Nxf6+ gxf6 16.Qg7 Rf8 17.Nd4

 ナイトを戦いに復帰させた。GMミハルチシンは 17.Bd3!? から 18.Rhe1 で 19.Rxe6+! fxe6 20.Bg6+ Kd8 21.Qxf8# を狙う別の作戦もあるのではないかと言っている。

17…Nb6

 クイーン翼の展開を完了させようとして戦力の一部を自ら返上する。エピシン対ぺトロシアン戦(ダウガフピルス、1989年)では黒が 17…Qa5 と指し白が 18.Bd3! で強力な主導権を保持した(38手で白の勝ち)。18…Qg5? は 19.Nxe6! で咎められる(19…fxe6? 20.Bg6+ Kd8 21.Qxf8+)。

18.Be2 Bd7 19.Qxf6 Rc8 20.Bf3 Nc4 21.Kb1 e5 22.Rhe1 Ne3 23.c3!

 23…exd4 と取ってくれば白は 24.Rxd4 Be6 25.Rxf4 と強襲する。

23…Rd8 24.Nc2!

 24.Bh5 でも 24…Bc8 25.Ne6 Bxe6 26.Rxd8+ Qxd8 27.Qxe6+ Qe7 で黒が受かっている。白は 28.Qc8+ Qd8 29.Qe6+ で千日手にするしかない。中盤戦の戦術の完全な分析については『チェス新報』第51巻第255局を参照して欲しい。

24…Nxd1 25.Bh5!? Ne3 26.Nxe3 fxe3 27.Rxe3 Bf5+ 28.Qxf5 Rd6 29.Qxe5+ Kd8 30.Qg7 Re8 31.Rxe8+ Kxe8 32.Qg8+ Kd7 33.Qxf7+ Kc6 34.Bf3+ Kb6 35.Qxc7+ Kxc7 36.Kc2 引き分け

 白がどちらの翼でも二つの連結パスポーンを作れないのでこの收局は互角である。

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2015年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(149)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 代わりに 37.g5 なら黒は 37…hxg5 38.fxg5 Qe5! で e4-e5 突きを止めて、最も危険なg列を閉鎖したままにしておくことができる。

37…fxe5 38.Qd3

 これが12手もの間白が準備を重ねてきたもので、25…exd4? が直接もたらしたものである。以前に言ったことを繰り返すと、ポーンはビショップのような駒の動きを制限することができるが、それと同時に他の駒をずいぶん助けることもできる。

38…e4

 白から 39.Qh7+ Kf7 40.Bg6+ でクイーン取りを狙われていた。代わりに 38…Qd8 は 39.Qh7+ Kf7 40.Bg6+ または 40.fxe5 からf列でのチェックで黒はおしまいになる。

39.Rxe4 Qg6

 これは気の利いた受けだった。白はルークを動かせない。動かすとクイーン同士の交換になる。

40.f5 Qf6

 黒はついに黒枡で十分強力な壁を築いたのだろうか。

41.Rhe1!

 そんなことはない。白は 42.Rf4 から 43.Re6!! でfポーンのせき止めをぶち破る。そして黒がe6のルークを取れば、白はfポーンで取り返して同時に黒クイーンに当たりになり斜筋が素通しになって、黒キングが詰みの狙いにさらされる。

 もちろん黒がe6のルークを取らなければ、白はfポーンをf6に突き進めて Qh7+ と指すまでである。

41…h5

 黒は 41…g5 と突いて運を天に任せるしかなかった。

42.Rf4! Be8

 これが黒の読み筋で、42…hxg4 と取ると 43.Re6 でたちまち負けになる。例えば 43…Bxe6 44.fxe6 Qh6 45.Qh7+! でルークとポーンの收局になり白が勝つ。黒はdポーンを取られ、白の2個の中央ポーンの前進を止めることができない。

43.Re6 Qd8

(この章続く)

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后印防御の指し方(148)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 ここから小さな「陽動とかわし」の二重奏が始まる。白は Qd3 から e4-e5! でクイーンをh7に侵入させることを狙っている。黒は最善の防御は自分のクイーンを白のクイーンに対抗させることであると見抜いている。白のeポーン突きを機械的に止められないのは、…Qe5 にいつでも f3-f4 と突かれるからであるが、g6に行かせれば白の e4-e5 突きはクイーン交換にしかならない。

31…Qf7 32.Qd3 Qg6

 この手は今すぐ必要というわけではなかった。というのは 32…Re7 33.e5 dxe5 34.Qh7+ のあと白には1、2回しかチェックがないからである。しかし白には Rh4 のあと f3-f4 から e4-5 または g4-g5 でf列を素通しにする組織的な狙いがある。

33.Qd1!

 この手はg4のポーンを守って f3-f4 突きの準備に Rh4 が必要ないようにしている。白クイーンがb1-h7の斜筋にいなくなったので黒クイーンもその危険な斜筋からそれて e4-e5 の狙いを避けなければならない。

33…Qf7 34.f4! Rf8

 黒が 34…Qg6 でg4への攻撃を新たにすれば、白の 35.f5?? は開放すべき側を閉鎖してしまって自分の勝つ可能性を消してしまい、ポーンによる待望の仕掛けをなくしてしまう。しかし 34…Qg6 のあと白にははるかに良い手、実際は勝着になる 35.e5! がある。35…Qxg4 36.Qd3 のあと要点は狙いの Qh7+、e5-e6、exd6 または exf6 でなく、黒クイーンを捕獲する 37.Rh4! である。

35.Rhf1

 これはマスターたちがいつも指すような魅力的な手である。ルークを敵クイーンに対抗させている。もちろん途中にはポーンがあるが、36.e5 fxe5 37.fxe5 と進めばなくなる。それでも白にはもっと良い手があった(次の解説を参照)。

35…Qe8 36.Rh1

 これは黒が 36…Qf7 で手を繰り返すことを期待している。それなら白は g4-g5 または e4-e5 と仕掛けることを考える。実際 36…Qf7 には 37.e5! で(35手目でそうであったように)本譜の変化と同様に勝ちになるはずである。

36…Rb7 37.e5!

(この章続く)

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后印防御の指し方(147)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

24.Nd2

 黒がクイーンでd4を攻撃する選択肢を自分で奪ったので、白はこのナイトをもっと働きのある地点に移動させることができる。黒は 22…f6 と突いていなかったら、ここで圧力を 24…Bc8(bポーンを守るため)と 25…Qf6 で新たにすることができた。そもそも白が dxe5? と取れば、黒はdポーンで取り返してd列から攻め込む。

24…Ba6

 黒は自陣からポーンで仕掛けることができないので苦戦している。つまりポーンを交換することにより局面を開放する効果的な手段がないということである。a6のビショップは …b6-b5 の準備のようにも見られるが、黒はその着想を推し進める十分な筋力がまったくない。

25.Nf1 exd4?

 このポーン取りは悪手である。黒は自分のポーンをe5からなくすことにより、白に e4-e5 という勝ちにつながる作戦を作らせてやっている。それに黒駒のためには何にもなっていない。しかし黒は白の Ne3-f5! という狙いを心配し始めていた。

26.cxd4 c5 27.d5!

 白はここで e4-e5 と突く作戦を見越していて、不良ビショップのことは気にしない。そのビショップはc2に下がりクイーンがd3に行って先頭を務めるときに勝ちをもたらしてくれる。そして e4-e5 突きでほとんど一本道の詰みになる。

27…Nd4 28.Ne3 Bc8 29.Nc2!

 白ナイトはf5に行くという狙いによりなにがしかを達成した。そして白の作戦を進めるにはこれ以上必要ない。しかし黒の唯一働いている駒であるd4のナイトをなくすには必要である。

29…Nxc2 30.Bxc2 Bd7

 たぶん黒はa4のポーンに圧力をかけることにより敵の注意をそらすことができるだろう。クイーンをe8、ルークをe7に配置できればだが。

31.Qb3

(この章続く)

2015年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(146)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

18.Kf1!?

 この「不可解な」手には局面に対する白の絶対的な自信が表れている。白の作戦はキング翼で徐々に攻撃することである。このためにはポーンをg4とg3に突いた後キングを安全なg2に移す必要がある。そうすれば Rh5 と Rah1 のような手のあと g4-g5! 突きで王翼を開放する用意が整う。f1にキングが寄った手はこの局面では 18.O-O よりもずっと良い。なぜなら白はキャッスリングのあとルークをもう一度h列に回さなければならなくなるからである。

 白の自信は閉鎖的な中央がそのままの状態を保ちそうだと信じていることに基づいている。もし黒がe列とd列のポーンをなくすことができるなら、白キングはf1の不安定な地点にいることになるのだが。

18…Rfe8 19.g4! Nf8 20.g3 Ne6 21.Kg2 c6?!

 この手はb6の地点を弱めているので、あとで黒に問題を引き起こすことがある。…a7-a5 から …c7-c6 と突く前は、白のb列(白の側からは素通し)での支配力は大したことがなかった。しかし今は王翼での主導権がうまくいかなければ、b列が代わりの良い作戦になる。

22.Rae1 f6?

 この手(または直前の手)で黒は黒枡を攻めるという戦略を …Qf6 で継続すべきだった。好機に …exd4 から …c6-c5 と指してナイトとクイーンのために空きを作ることさえあるかもしれない。

 22…f6 という手は受け身の黒枡戦略の一部である。黒はポーン(そのうちの7個までも!)を黒枡に置き、g4-g5 のような手すべてを未然に防ぐ。この構想の破たんは、敵の狙いを予期すること以外に黒が何もすることがないことである。白は邪魔されることがないのでルークを活躍させるために落ち着いて仕掛けを画策することができ、その間黒は自陣側で火消しに走り回ることしかできない。

23.Qb2 Rab8

(この章続く)

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后印防御の指し方(145)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

11.Nd2 Nxg3

 この手はとても自然な手なので何か批判しようとするのは難しい。しかし事実は、次の段階で黒が中央で動きを封じられるということである。たぶん 11…Nxd2!? で黒がe4の地点の支配を維持できるようにする方が良いだろう。例えば 12.Qxd2 f5 のあと …Nd7-f6 から Qe7 と指せば申し分のない陣形になり中央で積極的な戦略が立てられる(…e5!)。

12.hxg3 Nd7 13.e4!

 もっと独善的な選手なら f2-f3 から Bd3-e4 で白の不良ビショップを除去する方を選んだかもしれない。ビショップは自分のいる枡と同じ色の枡のポーン(c4とg2のポーンのように)によって動きをふさがれているとき不良ビショップになる。e3-e4 と突くとまた別のポーンがビショップの邪魔になり、…e6-e5! と突かれてそのままの状態になる。

 しかし白の中盤戦の見通しはもっと明快になっている。この手は …f7-f5 と突かせない。これで黒は中央または側面でポーンで行動を起こすのに苦労する。つまり駒を用いないでやらなければならなくなる。しかしこの戦略が不適当であることが、局面の進行と共に分かる。

13…e5 14.Bd3 Qf6

 黒の期待は白のdポーンを脅かすことによりそのポーンを進ませることである。それがd5に進めば、黒はナイトをc5の好所に据えることができるようになり、白ビショップは動きをひどく制限される。

15.Nb3 a5 16.a4

 注目すべきは黒枡を攻撃する黒の戦略により白が白ビショップのいる枡の色と同じ白枡にますます多くのポーンを置かせられることである。黒の狙いは 16…a4! でナイトを引かせたあとdポーンを取ることだった。

16…Qe7

 黒の狙いは 17…f5! で局面を開放することで、例えば 18.exf5 なら 18…exd4+ と取る。

17.f3! O-O

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(383)

「Chess」2015年5月号(2/2)

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基本の復習(続き)

 最終局面をもっと詳しく見てみよう。

 ナカムラがとことんまで指すことにしたらどうなっていただろうか。黒には勝とうとする試みが二つある。それらがどのようにくじかれるのか見てみよう。

7.Ka2 Ke4 8.Kb2 Kf4 9.Rc3 Kg4

 これがどんな教科書にも見られる典型的なバンキューラの局面である。黒はここで …Rf1 でクイーンに昇格する枡を空け、キングを横からのチェックから保護することを狙っている。

10.Rc4+!

 これが眼目の手である。白には黒キングを追い払うためのチェックの距離がある。

10…Kf5 11.Rc3

 ポーンを見張っている。

11…h2

 これが勝とうとする二番目の試みである。

12.Rh3!

 12.Rc2? では 12…Rb1+ で負けになる。クイーン対ルークの收局は公園での散歩とは違うが、本稿の範囲外である。

12…Kg4 13.Rh8 Kg3 14.Rg8+ Kf4 15.Rh8

 引き分けが確定した。重要な主眼点が出てきた。攻撃側がしたいことはクイーンへの昇格枡をふさいでいるルークの位置を改善することである。防御側は急所の場面でチェックして敵キングを追い払うことによりそれを防ぐ。

 最近の本稿は「基本の復習」への助言で締めくくるのが恒例になっていて今回もそうする。私が最初にルークとポーンの收局に興味を持ったのは、ハウエル対ナカムラ戦の終局のような局面を研究している時だった。

 白キングは隅に押し込められている。どこに前進してもチェックされるし、1.Kc2 は 1…Ra1 で素抜きのえじきになる。子どもの頃私が魅了されたのはこの素抜きだった。興味があるのは戦術だけで、大局観のあやには興味がなかった(今でも変わっていないと言われるかもしれない)。ルーク收局の良い所は戦術が決して表面のずっと下に隠れていないことである。

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(この号終わり)

2015年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(144)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜

解説 アンディー・ソルティス

白 V.コルチノイ
黒 A.マタノビッチ
ベオグラード、1964年

 これは見かけほど悪くない不良ビショップの物語である。白の王翼ビショップは中央を e2-e4 突きで独占しようとした当然の帰結として、味方のポーンによってひどい形で閉じ込められた。しかしこのビショップがポーンによって動きを制限されている間に、白ルークはまさにそれらのポーンのおかげで重要な地点と列の占拠を図った。中盤戦の流れと舞台を決めるのは白であり、いつ解決するかをきめるのも最終的には白である。白のポーンは王翼ビショップの動きを阻害しているけれども、他の駒には役立っていてついにはそのビショップが日の目を見る。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Nc3 Bb7 5.Bg5 Be7 6.e3 h6 7.Bh4 Ne4 8.Bg3!?

 もし白が危険を冒そうとするなら、ここがその出発点である。つまり盤の両側で二重ポーンを甘受するつもりである。

8…Bb4! 9.Qc2 Bxc3+

 白はいつかは Nd2 か Bd3 で小駒同士を交換させただろう。

10.bxc3 d6

 黒は黒枡のポーンによって動きを制限されるビショップがなくなったので、そのポーンで壁(d6、c5そしてたぶんe5)を作る用意をしている。

(この章続く)

2015年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(143)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 実戦的にはこの局面は互角の形勢と判定できる。黒の展開は完了し、白は黒のわずかな唯一の弱点であるdポーンに迫る手段が何もない。だから白は素通しd列を支配することによりなにがしかの有利を得ようとする。

16.dxc5 dxc5 17.Qd6 Rad8 18.Rfd1 Qb8!

 この手は白に Rd2 と Rad1 でd列で大駒を三重に重ねさせない。19.Rd2 には 19…Qxd6 がある。

19.b3 Qxd6! 20.Rxd6 Nb8!

 黒は釘付けを放置しておくことはできない。このナイトはb8に退いて、白がc6の地点から侵入するのを防いでいる。

21.Rad1 Rxd6 22.Rxd6 Rc8! 23.Kf1 Kf8 24.Ke2 Ke7 25.Rd1 Nc6 引き分け

(この章続く)

2015年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(149)

「Chess Life」1996年6月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

本格派のための 1.e4 の指し方(上)

 1990年8月号では「何はともあれ 得意定跡の選び方」として一般論を説明した。そこでは布局定跡の選び方はチェスの興味、棋風そして勉強法に合わせなければならないことを強調した。もっと簡単に言えば好きな定跡、得意な定跡、そして十分に研究する時間のある定跡を指しなさいということである。はっきり言わせてもらえば米国チェス連盟の会員の大多数は積極的で「本格的な」システムを選ぶべきである。つまり目標を無理なく理解し目指すことのできるシステムである。直接的で積極的に指すためには 1.e4 が断然最適な手である。今回と次回の2回に分けて本格派の 1.e4 選手のためにいくつかの助言をする。

1.シチリア防御ナイドルフ戦法 B97
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Qb6

 白の6手目と7手目はもう40年ほどの間ナイドルフ戦法での主流手順をなしてきた。白はこのあと 8.Qf3 から 9.O-O-O と指すつもりで、中央で e5 突きから突破を図ったりキング翼で g4 突きから攻撃することを見据えている。例えばb5やe6での捨て駒を伴う戦術の機会はいくらでもある。誤解して欲しくないが白の作戦とその実行は簡単であると言っているのではない。しかしそれらは積極性があり棋理に合っている。歴史的に見ると黒の主流手順は 7…Be7 だった。7…Nbd7 や 7…Qc7 と指す戦略もあるが白も予定の陣形を構築することができる。

 それでもずっと玉にきずとなってきたのはボビー・フィッシャーの大胆な 7…Qb6!? だった(上図参照)。弱いb2の地点をすぐに攻撃することにより黒は白がクイーン翼キャッスリングに1手遅れていることにつけ込んでいる。ゆうに30年以上の間白は 8.Qd2 と迎え撃ち 8…Qxb2 に 8.Rb1 または 8.Nb3 と応じることにより 7…Qb6 を咎めようとしてきた。膨大な量の定跡体系が築かれ細かい部分は20年近いか既に20年を越している。白にポーンの代償があることは確かだが、局面はまったくの大乱戦である。訳の分からない激しい戦術が好きで抜群の記憶力を持ち布局の勉強にあり余る時間があり難解な研究が楽しいなら 8.Qd2 と指すのが良い。そうでない人には次の手を推奨する。

8.Nb3

 ナイトは脇へ寄らされたが一方的に損したわけではない。b6は黒クイーンにとって良くない地点である。というのは味方のbポーンを動けなくし、e5の地点に利いていないのですぐに1手損してc7に下がらなければならないからである。本譜の白の手にすぐにつけ込む手段はない。(1)8…Qe3+ 9.Qe2 Qxe2+ 10.Bxe2 Nc6 11.Bf3 Bd7 12.O-O-O Be7 13.Na4! O-O-O 14.Bxf6 gxf6 15.Nb6+ Kb8 16.Nxd7+ Rxd7 17.Bh5 Bd8 18.Rhf1 Rg8 19.g3 はシュテイン対グリゴリッチ戦(ストックホルム・インターゾーナル、1962年)で、白が收局で明らかに優勢だった。(2)8…h6 9.Bxf6 Qe3+(9…gxf6 10.Qd2 または 10.Qf3 は白の有利な中盤戦になる)10.Qe2 Qxe2+ 11.Bxe2 gxf6 12.Bh5! Be7 13.O-O-O Bd8 14.Rhe1 Nc6 15.Kb1 Rg8 16.Re2 Bc7 17.Rd3 はユダシン対ドロシュケビッチ戦(ソ連、1981年)でやはり白の優勢な收局になった。

8…Be7

 この融通性のある手は現在は最も人気のある応手である。もっと攻撃的な手は 8…Nbd7 9.Qf3 Qc7 10.O-O-O b5 11.Bd3 Bb7 12.a3 Be7 13.Rhe1 h6 で、ここでカームスキー対リュボエビッチ戦(ブエノスアイレス、1994年)の 14.Qh3(『チェス新報』第62巻第399局)の代わりに 14.Bh4 g5 15.Bg3!? の方が良いだろう。

9.Qf3

 9.Qe2 と 9.Be2 もかなりの量の定跡が形成されている。しかし本譜の手には積極的で棋理に合った指し方が主手順の 7…Be7 に通ずるという有利さがある。

9…Nbd7

 ここで 9…h6?! 突きを入れるのは白がすんなりと主眼の e5 突きを指すことができるのでうまくない。カルポフ対キンテロス戦(レニングラード・インターゾーナル、1973年)では 10.Bh4 Nbd7 11.O-O-O Qc7 12.Bg3! b5 13.e5 Bb7 14.Qe2 dxe5?1 15.fxe5 Nh7(15…Nd5? は 16.Nxd5 Bxd5 17.Rxd5! で黒が負ける)16.Ne4! Bg5+ 17.Kb1 O-O 18.h4 Be7 19.Nd6! と進んで白がはっきり優勢になり37手で勝った。

10.O-O-O Qc7 11.Qg3

 主眼の 11.Bd3 と 11.g4 も良い手で、『チェス新報』第57巻第265局を参照されたい。

11…h6

 11…b5 の詳細については本誌1994年4月号に私の解説がある。そこで取り上げたカームスキー対グレビッチ戦(米国選手権戦、1991年)は 12.Bxf6 Nxf6 13.e5! dxe5 14.fxe5 Nd7 15.Bxb5!? axb5 16.Nxb5 Qb6 17.Qxg7 Rf8 18.Nd6+ Bxd6 19.exd6 と進んだ。GMグレビッチはここで 19…Qe3+ と指し動的な均衡に望みをつないだ(しかし51手で黒が負けた)。その後シャバロフ対マゲラーモフ戦(米国選手権戦、1991年)では黒が 19…Nc5 と手を変えた。20.Nxc5 Qxc5 21.Qf6 Ra7 22.Rhe1 Rd7 23.Qf4 Bb7 で形勢不明だが多分動的にいい勝負だろう。白が駒の代わりにいいポーンを3個持っているのに対し、黒のビショップはよく利いている。

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后印防御の指し方(142)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

10…O-O!

 王翼の展開を完了することは最も本筋の進路である。代わりに 10…Qb4+ は白に強く 11.Nd2!? と応じられると危険である。
11…Bxg2 12.Rg1 Bb7 13.Rxg7 Nc6 14.c5! bxc5 15.a3 と進めば白には立派にポーンの代償がある(スパスキー対ケレス、挑戦者決定準々決勝番勝負、リガ、1965年)。

11.O-O d6 12.Nd2 Bb7!

 もちろんこのビショップはg6に行くよりも第一級の斜筋にとどまるべきである。単純にb7に戻る方が中途半端に 12…Bc6?! と戻るよりも良い。なぜなら 13.Bf3 と応じられると黒はナイトを展開することもcポーンを用いて中央に影響を与えることもできないからである。

13.Bf3 c5!

 黒はこれで中央での影響力がほとんど白と互角になり、続いて 14…Nc6 と指す用意ができている。だから白はナイトを働きのある地点に引き戻す。

14.Bxb7 Qxb7 15.Nf3 Nd7

(この章続く)

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后印防御の指し方(141)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2
白 B.スパスキー
黒 M.タリ
挑戦者決定戦最終番勝負、ティフリス[訳注 現在のトビリシ]、1965年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Nc3 Bb7 5.Bg5 h6 6.Bh4 Be7 7.e3 Ne4 8.Bxe7 Qxe7 9.Nxe4 Bxe4 10.Be2

 白は中央でのわずかな優位に何かを積み重ねるためには、盤上に十分な数の駒を残さなければならない。だから 10.Bd3 Qb4+ 11.Qd2 Qxd2+ 12.Kxd2 Bxd3 13.Kxd3 は完全に互角になるし、10.a3 は手損する。

(この章続く)

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后印防御の指し方(140)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

31…Nxf3!!

 この手に対して 32.gxf3 と取ると 32…Qe1+ からすぐにチェックの千日手になり、32.Bxf3 と取ると 32…Bxf3 33.Rh2 Be4!! 34.Qxe4 Qe1+ に続いてチェックの千日手になる[訳注 33.Rh2 に対して黒ビショップをc6、b7、a8のどこに引いても黒の勝ちです]。

32.Qd3 Ng1! 33.Kh2

 33.Qxe2?! と取ると 33…Nxe2+ での有利な收局になる。

33…Nf3+ 34.Kg3 Ng1 引き分け

(この章続く)

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后印防御の指し方(139)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 これで黒のhポーンが現状に固定され攻撃を受けやすくなったので白はすべての道の支配者である。黒はナイトに対する釘付けが特に不快で、最も見込みがあるのは 20…Qf7 で持ちこたえるよりも交換損を甘受して圧力を緩和することであると判断した。

20…Qe7 21.Nc6 Qg7

 21…Bxc6? は 22.Qxc6 で白枡の破滅につながる。

22.Nxd8 Rxd8 23.Qd4 Qf8 24.Rh3! Kb8 25.Rah1 Qf7 26.a4 Ne5 27.Rxh6 Qa2+

 白は主眼の指し方のおかげでhポーンも取り理論的に勝ちの局面になった。しかし黒は少し反撃を得て戦いはまだまだ続く。チェスでは終局するまで何が起こるか分からない。

28.Kg3 Qe2! 29.Rh8?!

 黒の守りに編したルークと交換する理由はほとんどない。29.Qd1! Qxe3 30.Qc1! で黒クイーンを追い払う方がずっと理にかなっていた。30…Qc5 と逃げるなら単に 31.Qxg5 と取るまでである。

29…Rxh8 30.Rxh8+ Ka7 31.Be4?

 これには驚きのしのぎがあった。31.e4 なら白の勝つ可能性が非常に高かった。

(この章続く)

2015年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(138)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

17…O-O-O

 白の次の手で分かるように黒キングは中央よりも后翼の方が安全というわけではない。白枡の弱点と半素通しb列のために黒の防御はほとんど不可能である。

18.Qa4 a5

 この手は必然である。黒キングが動くとナイトが取られる。

19.Kf2

 白は決定的な行動に乗り出す前に、キングを最も安全な地点に置きルークを連結させた。すぐに 19.g4 と突くのも良い手でだった。

19…Bb7?!

 黒はこれで反撃が何もできなくなる。どんなことがあろうと 19…h5 と突かなければならなかった。もっともケレス対タイマノフ戦(ソ連選手権戦、1955年、)で白は 20.Rab1 h4 21.e4 Bb7 22.gxh4 gxh4 23.Ne6 で強力な攻撃態勢を構築した。

20.g4!

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(382)

「Chess」2015年5月号(1/2)

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基本の復習

 ニック・アイベルが立ち返るのはバンチューラの局面の重要な着想

 記憶力の良い読者は本誌の2012年10月号で取り上げたバンチューラの局面を思い出すかもしれない。この巧妙な收局がまた話題になったのは嬉しい。ソファーでくつろぎながら最近のジブラルタル大会の実況の指し手を見ていると次の心躍る局面が現れた。

D.ハウエル - H.ナカムラ
ジブラルタル、2015年

 ハウエルは首位を突っ走るナカムラを相手に獅子奮迅の防御をしてきた。しかし引き分けが見えてきたここでためになる間違いをおかした。

1.Kb2?

 考え方は正しかったが、やり方が間違っていた。引き分ける手段は 1.Rd3+! Ke4(1…Ke2 は 2.Rd2+ で意味がない)2.Rc3! h4 3.Kb2 h3 でバンチューラの局面になる。これは理論的に引き分けで、あとでもっと詳しく説明する。この手順で重要なのは黒がルークの位置を改善できないということである。3…Rf1 には素抜き(4.Rc4+)があるし、3…Rd1 なら単純に 4.Rh3 でポーンを取られる。黒は 2…Ra1 で働かせようとすることもできるが、それなら白は 3.Kd2 でポーンに近づくことができ簡単な引き分けが見えてくる。防御側のキングがクイーンへの昇格枡に近づくことができると引き分けが明々白々になる。

1…h4

 自然な良い手である。

2.Rd4

 ポーンを見張った。この型の局面では背後からチェックするのは良くない。なぜならチェックされたキングが容易にh2に隠れることができるからである。横からのチェックだけが白を救うことができる。

2…Ke3?

 この手は不可解で、ナカムラがジブラルタルで指した数少ない悪手の一つである。戦いのプレッシャー、そしてたぶん疲労が影響したことは容易に想像がつく。時間が大きな要因だったとは思えない。というのはナカムラが「持ち時間の増分で指して」いたのを思い出せないからである。

 2…Kg3! でルークを …Rf1 から働かせることを狙えば黒が勝っていた。要点は防御側のルークがチェックし続けるのに必要な間隔を保っていないということである。これはルークとキングの間が2枡離れていれば十分という通常の規則に対する例外である。だから 3.Rd3+ Kf2 4.Rd2+(または 4.Rd4 h3 5.Rd3 h2 6.Rd2+ Ke3 7.Rg2 Rb1+)4…Ke3 で黒がルークを働かせることができ决まる。

 5.Rd8 は 5…Rg1 6.Rh8 Rg4 で黒がキングをg2に持ってきてポーンを突き進めることができる。5.Rc2 なら 5…Rf1 6.Rh2 Rf4 で黒の勝ちになる[訳注 6…Rf2+]。黒ポーンが横から守られるようになれば白は困難に陥る。

3.Rc4!

 黒はもう二度とルークを働かせる機会が得られない。白の危機は去った。

3…h3

 これよりましな手はない。黒ルークはポーンの守りに縛りつけられている。

4.Rc3+ Kd4 5.Rg3

 このルークは3段目にいることが大事である。これで黒は進展を図ることができない。

5…Rh2+ 6.Ka1 Rh1+ ½ – ½

 ナカムラは泣く泣く引き分けに同意するしかなかった。この收局での彼の指し手はへぼかった。マグヌス・カールセンに挑もうと真剣に考えているなら收局についてもっと勉強する必要があるだろう。私の見方ではカールセンは收局の最高の選手である。

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(この号続く)

2015年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(137)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

12.d5!

 白は決然と黒の中央の粉砕に動かなければ何をしているのか分からない。グリゴリッチ対タイマノフ戦(挑戦者決定大会、チューリヒ、1953年)での控えめな 12.O-O は 12…Nd7 13.Nd2 N7f6! 14.Nxe4 Bxe4! 15.Bxe4 Nxe4 16.f3 Nxg3 17.hxg3 Qd7 で互角の形勢にしかならなかった。

12…exd5?!

 定跡の部で論じたように(黒の6手目での解説)、黒の唯一満足な手は 12…Nd7! である。それにもかかわらず本譜の手は実戦では非常によく指される。それは白の中央があまりに良く見えて破壊してやりたい考えに逆らえないからである。

13.cxd5 Bxd5 14.Nd4!

 黒のfポーンは非常に弱いので、白が一時的に犠牲にしたポーンを取り返すのは確実である。そしてそのあとは黒陣のさまざまな弱点に対してつけ込むことができる。

14…Qf6 15.f3!

 派手な 15.Nxf5!(15…Qxf5 なら 16.f3)にはうまい 15…Nc5! 引きがあって、互角の形勢になる。

15…Nxg3

 しかしここでの 15…Nc5 は効果がない。16.Bxf5! と取られて、f5の白ビショップが素晴らしく、白のナイトはf5にいるよりもd4の方がはるかに多くの役に立つ地点を支配しているからである。

16.hxg3 Nd7 17.Bxf5

 黒陣はすきだらけなので黒キングにはどこにも安全な場所がない。中住まいを決め込んで 17…Nc5 と指せば 18.Nb5! Qg7 19.Bg6+ Kd7 のあと白は 20.Bf5+ Be6 21.Bxe6+ Nxe6 22.Nd4 Nc5 23.Qf5+ で攻撃にはずみがつく(タリ対デュクシュタイン、チューリヒ、1959年)。

(この章続く)

2015年08月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(136)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 これまで論じてきたのとは異なった手順ではあるけれども(このような転移はマスターのチェスではよく起こる)、6…Bb4 から始まる戦型の主要な局面に達した。本譜の手は展開、e4の地点に対する圧力、それにc3のナイトの守りを兼ねているので明らかに最善手である。

 未踏の手順にひかれる者は判然としないポーンの犠牲の 9.Nd2!? Nxc3 10.bxc3 Bxc3 11.Rc1 を試してみればよい。ビショップの正しい引き場所は 11…Bb4 で、12.h4!? gxh4 13.Bxh4 Be7 14.Bg3 d6 15.Be2 Nd7! と進むと白にポーンの代償があるのかはっきりしない。確かに黒の王翼は弱体化したが、白の方だってそうである!

 変化は 9.Rc1?! だが、9…h5! で白の后翼ビショップが危機に陥るので明らかに劣る。10.h3 Nxg3 11.fxg3 Bd6 でも 10.d5 Nxc3! 11.bxc3 Ba3 でも白は食指が動かない。

9…Bxc3+

 関心の的はe4の地点なので、この手が本筋である。9…Nxg3?! 10.hxg3 Qf6 11.O-O-O! と 9…d6 10.Bd3 Nxg3?! 11.hxg3 は一貫性がない。9…O-O?! は王翼が弱体化しているので危険すぎる。9…h5?! は実際のところ 9.Rc1?! h5! の手順の1手遅れで、10.Bd3! f5 11.d5! となって、生じる素通し列のほとんどを白が支配しているので優勢になる。例えば 11…exd5 12.cxd5 Bxd5 13.O-O-O! Bxc3 14.Bxe4! Bxe4 15.Qxc3 Rh6 16.Nd4 で、黒の弱い王翼に対する白の攻撃が非常に強力である。

10.bxc3 d6

 黒がe4の地点の支配に関心があることをまた思い出せば、10…Nxg3?! 11.hxg3 g4 のような作戦がいかに一貫性を欠くかが分かる。12.Ne5 Qg5 13.Rh4 f5 14.c5! Nc6 15.Nd3 のあと白は広さの優位と攻撃の可能性のために優勢になる。

11.Bd3!

 展開しながらの攻撃が正しいやり方でなければならない。非展開の 11.Nd2 は本筋でない。なぜならその合間を利用して黒が 11…Nxg3 12.hxg3 Nd7 13.f3 Qe7 14.Bd3 O-O-O で白の展開に追いついて安全で整然とした局面にすることができるからである。11.Nd2 の詳細については次局を参照。

11…f5

 これは二通りの指し方のうちの激しい方である。もう一つの 11…Nxg3 12.hxg3 Nd7 は参考棋譜のところで解説する。

(この章続く)

2015年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(148)

「Chess Life」1996年3月号(6/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

クイーン対小駒(続き)

 次にクジミン対ピケット戦(オーステンデ、1991年)では次のように進んだ。

12.Ke2 Nxc4 13.Rc1! Bd7!?

 黒の選んだ作戦はさらに戦力損をこうむってもクイーン翼ですぐに反撃を策するという非常に動的なものだった。普通の 13…Na6 14.Nd1 Nb6 15.Ne3 Bd7 についてはカスパロフ対セイラワン戦(バルセロナ、1989年)を参照されたい(29手目で引き分け)。『Inside Chess』誌の1989年第10号12ページにGMセイラワンの詳細で非常に参考になる解説が載っている。(『チェス新報』第47号の第719局にも解説がある)

14.Nd1 Nb6! 15.Ne3

 GMクジミンは形勢不明だが重要な変化の 15.Rxc7 Na6 16.Rc3!? を避けた。

15…c6!?

 15…Na6 なら上記のカスパロフ対セイラワン戦と同じになっていた。

16.Nh3 cxd5 17.exd5 Na6?

 これで白のキング翼ナイトが活躍できるようになった。正着は 17…f6! 18.Nf2 f5! でクジミンによれば「代償がある。」

18.Ng5 h6 19.Ne4 Nb4 20.Nc3?

 積極的に 20.Rhd1! Nxa2 21.Rc7 と指せば明らかに白が優勢だった。

20…e4!! 21.fxe4 Rae8

 GMクズミンによれば黒にはいい勝負に向けて十分反撃が効く。この面白い試合は次のように続いた。

22.a3 Na6 23.b4 Nc7 24.Kd2 Re5 25.Ng4 Bxg4 26.Qxg4 Nc4+ 27.Kd3 Rg5 28.Qe2 Nxa3 29.Qa2 Nab5 30.Nxb5 Nxb5 31.Rhf1 a6 32.Rf2 Rh5 33.Rf3 f5 34.exf5 Nd4 35.Rcf1 Nxf3 36.Rxf3 Rhxf5 37.Rxf5 Rxf5 38.Qc4 Kh7 39.Qe4 Be5 40.Qh4 Rf3+ 41.Ke2 Rf7 42.h3 h5 43.Qd8 b5 44.Ke3 g5 45.Qc8 Rf4 46.Qd7+ Kh6 47.Qe6+ Rf6 48.Qc8 g4 49.hxg4 hxg4 50.Qxg4 Rf4 51.Qc8 Rxb4 52.Qxa6 Kg5 53.Qb7 Kg4 54.Qc8+ Kg3 55.Qe8 Rb3+ 56.Ke4 Kf2 57.Qf7+ Ke1 58.Qh5 b4 59.Qh1+ Kd2 60.Qg2+ Kc3 61.Qf3+ Kb2 62.Qe2+ Ka1 63.Qf1+ Ka2 64.Qc4 Ka3 65.Qa6+ Kb2 66.Qe2+ 引き分け

 GMクジミンの完全な解説は『チェス新報』第53巻の第397局を見られたい。

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2015年08月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(135)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1
白 M.タリ
黒 R.バガニアン
ソ連選手権戦、1974年

1.Nf3 Nf6 2.c4 b6 3.d4 e6 4.Nc3 Bb7 5.Bg5 Bb4 6.e3 h6 7.Bh4 g5 8.Bg3 Ne4 9.Qc2

(この章続く)

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后印防御の指し方(134)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 黒は二組の小駒を交換するという当面の戦略目標を達成し、それにより完全な静的互角に近づいた。強調しておくが、この特定の戦型における黒の究極の目標は単なる引き分けである。それへの理論上の可能性は大変高い。90%以上は確実だろう。

 このあと白は中央でのわずかな優位を積み重ねて主導権を握ろうとする。黒は白の計画する狙いをどれも無効にしながら、展開を完了し中央で十分な存在を図って確かな互角を維持しようとする。実戦例2では典型的な指し方の詳細が見られる。

(この章続く)

2015年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(133)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

8…Qxe7 9.Nxe4

 交換するか交換させるか、それが問題である。本譜の手の背後にある論理は、黒ビショップのe4の位置が不安定であるということである、つまり白がそれを当たりにすることにより手得をするか、黒がそれを引くことにより手損をすることになる。

 白は代わりに 9.Qc2 と展開を続けることを選ぶことができ、9…Nxc3 には 10.Qxc3 と取る(この場合は 10.bxc3?! と取るのは劣る。なぜなら盤上の駒が減っているので白は二重ポーンの代償が不十分だからである)。黒は展開を完了し中央にかなりの影響力を確保することによりほぼ互角を達成することができる。主眼の手順はフロール対ケレス戦(AVRO、1938年)での 10…O-O 11.Be2 d6 12.O-O Nd7 13.Rfd1 Nf6 14.Nd2 c5 である。

9…Bxe4

(この章続く)

2015年08月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(132)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 この解放と交換のための常用の捌きは 6…Be7 の論理的な後続手である。黒は一組または二組の小駒を交換することにより白の中央での強力な影響力の危険性がかなり減少することを期待している。強力な中央の大きな価値の一つは相手の駒の動きを制限することなので、それぞれの交換は中央の効果を減少させる。

 e4の地点を確保したままd4に圧力をかけ始める 7…c5 も成立する。8.Be2 O-O 9.O-O のあと黒には妥当な針路が二つある。9…Ne4 で王翼の小駒の交換を始めることができるし、9…cxd4 10.Nxd4(10.exd4 なら 10…d5! でやはり黒の方が良い)10…Nc6 で后翼の展開を完了することもできる。どちらにしても黒はやがては完全な互角が期待できる。

8.Bxe7

 単刀直入の手だが、満足できる手はこの手だけというわけではない。ほかには 8.Nxe4 と 8.Bg3 の2手がある。

 8.Nxe4 には陣形に関する巧妙な落とし穴が絡んでいる。8…Bxh4?! と取るのは一見強い手のようだが、実際は劣った手である。というのは 9.Bd3! Be7 10.O-O O-O 11.Bc2 d6 12.Ng3 のあと白がe4の地点の支配と中央での全般的な優位のために優勢になるからである。Qd3 と指す用意ができていて、12…Nd7 なら 13.d5 で中央での優位を増すことができる。だから黒は 8…Bxe4 と取るだけで満足しなければならない。そのあと 9.Bxe7 なら主手順に移行するし、9.Bg3 なら黒は 9…O-O 10.Bd3 Bxd3 11.Qxd3 d6 12.O-O Nd7 と展開を完了するのが良い。二組の小駒が盤上から消えたので、白の中央でのわずかな優位は大したことがなく、黒はすぐに互角になることが期待できる。

 白の最も動的な手は 8.Bg3!? である。その戦略構想は(1)8…Nxg3 9.hxg3 O-O 10.Bd3 のあと白は黒がe4の地点を支配しようとするのを無効にすることができ、一組の小駒だけが交換されているので白の中央での全般的な優位はまだかなり大きい。(2)8…Nxc3 9.bxc3 d6 10.Bd3 のあと白のd4の地点の支配は強化されていて、e4を強化する見通しは明るく、二重cポーンをしのぐ要素となる。8.Bg3!? に対する正しい応手は 8…Bb4! で、以前に分析した 6…Bb4 の戦型と対をなし危険がない。すなわち黒はe4の地点を支配し続け、白が自らビショップをg3に引いたので …g7-g5 突きで王翼を弱めることなく王翼ナイトの釘付けをはずしている。9.Qc2 Bxc3+ 10.bxc3 O-O 11.Bd3 f5 となれば黒キングは楽にかつ安全にキャッスリングしていて、e4の地点の支配により完全な互角に必要な中央での影響力が得られている。

(この章続く)

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后印防御の指し方(131)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 11.Bd3 Nxg3 12.hxg3 Nd7 13.a4 a5

 14.Be4 Bxe4! 15.Qxe4 Ke7
 14.e4 Qe7 15.Rb1 e5
 14.Rb1 Kf8!? 15.Be4 Bxe4 16.Qxe4 Kg7
 これらのどの変化でも黒は完全な互角になる寸前である。両陣営の弱点はほぼ同じで、多かれ少なかれ相殺しあっている。実戦ではもちろんうまく指した方が勝つ。

 それでは主手順の 6…Be7 に戻る。

7.e3

 白は后翼の駒を展開したので今度は王翼の駒の展開を完了すべきである。本譜の控えめな手はその手始めとして最善の手段である。

 e4の地点を争う見かけは魅力的な 7.Qc2 はd4とd列の支配を減少させ、そのような場合につきもののように黒が 7…c5! ですぐに中央で反撃できる。8.e3?! は 8…Bxf3 9.gxf3 cxd4 10.exd4 Nc6 で白の王翼が破壊されるので、白は 8.e4 と一貫性のある手を指すよりない。ここで黒は白のd4の地点の支配がかなり減少したことにつけ込んで 8…cxd4! 9.Nxd4 Nc6! で完全に互角にすることができる。例えば 10.Rd1 Nxd4! 11.Rxd4 Qc7 12.Be2 Qe5! となれば黒はd4とe4に適度な圧力をかけている。

7…Ne4

(この章続く)

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