2015年07月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(381)

「Chess Life」2015年5月号(3/3)

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2015年チューリヒ・チェスチャレンジ(続き)

名ばかりの要塞
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2844、米国)
GMビスワーナターン・アーナンド(FIDE2808、インド)

2015年チューリヒ・チェスチャレンジ快速第4回戦、2015年2月19日

 アーナンドはナイトをc5とf8に行ったり来たりさせていた。ここでも 47…Nc5 と指していたらナカムラは敵陣を突破するのにまだまだ苦労していただろう。しかしアーナンドの指した手は不注意だった。

47…Nb6?!

 に対して

48.f5!

 で白駒の働きが非常に良くなり始めた。

48…exf5

 すぐに 48…Nxa4 と取る抵抗の方が手ごわいが、49.fxe6 fxe6 50.Qg6 Nc5 51.Nd4 Re7 52.Nc6!

で黒が困っている。

49.Qxf5 Nxa4 50.Rd7! Rxd7 51.Qxd7 Nb6 52.Qb7 Bc5

 一見したところでは黒がすべてうまく治めている。しかしここで白ナイトが参戦し決定的な戦果をあげる。

53.e6! fxe6 54.Ne5 Rf8 55.Qc6 Bd4 56.Qxe6+ Kh7 57.Qd6! 黒投了

 黒は 57…Bxe5 58.Qxf8 Bf6 で新たな要塞を築こうとしても駄目である。59.Qc5! のあとチェックでナイトが取られる。

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(この号終わり)

2015年07月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(130)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 11.Bd3 の局面

 11…f5 はe4の地点を固守する手である。白は黒陣を切り崩そうとするなら 12.d5! と突かなければならない。さもないと黒が 12…Nd7 から 13…Ndf6 でe4の支配を強めてくる。12.d5 のあと黒はすぐ目に映る 12…exd5?! 13.cxd5 Bxd5 を指す余裕はない。なぜなら白が 14.Nd4 Qf6 15.f3! Nxg3 16.hxg3 Nd7 17.Bxf5 でポーンを取り返し、黒キングが安全な所を見つけにくいので優勢になるからである。例えば 17…O-O-O 18.Qa4 a5 19.Kf2 h5 20.Rab1 と進めば白の攻撃が非常に強力になる(実戦例1を参照)。

 だから黒は 12.d5! に対して 12…Nd7! で展開を完了して、13…Ndc5 または 13…Ndf6 でe4の地点を強化する用意をするのが良い。それなら白はすぐに 13.Bxe4 fxe4 14.Qxe4 と指すよりほかに良い手がない。しかし黒は 14…Qf6! 15.O-O O-O-O! で十分反撃できる。白は 16.Qxe6 Qxe6 17.dxe6 Nc5 18.Nd4 で收局にすることができ、たぶんわずかに優勢だろう。それでも黒は 18…Rde8 19.f3 Ba6 で白の孤立二重cポーンを目標に強く戦うことができ、完全な互角に向けて見通しが非常に明るい。

 11…Nxg3 12.hxg3 Nd7! は穏やかに展開を完了することで満足する。黒の王翼は白の王翼ルークがうまい具合にh列にいるので少し不安定に見える。しかし多くの実戦例により黒は注意を払えば互角にできることが明らかになっている。13.Be4 Bxe4! 14.Qxe4 Ke7! のあと黒は 15…Nf6 で白クイーンを追い払い、白キングもいくらか不安定なので形勢は悪くない。

 13.a4 a5! という応酬を入れても状況は大して変わらない。

 11.Bd3 Nxg3 12.hxg3 Nd7 13.a4 a5

(この章続く)

后印防御の指し方(129)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 6…Bb4 7.e3 g5 8.Bg3 Ne4

 次の2、3手は想定しやすい。9.Qc2(展開しながらc3を守りe4の地点に利かせている)9…Bxc3+(遅かれ早かれ取らなければならない。すぐに取る方があとで黒に融通性がある)10.bxc3 d6!(e5に利かせ后翼ナイトをd7から円滑に展開できるようにした。これで白の后翼ビショップがg3から動けないので急いで …Nxg3 と取る必要はない。そう取るとh列での白の可能性を促進させることになるかもしれない)11.Bd3!(単純だが良い手である。白はビショップを先手で積極的に展開した。11.Nd2 は本筋より劣る。なぜなら 11…Nxg3 12.hxg3 Nd7 のあと白は 13.f3 でgポーンを守ってからでないとビショップを展開できないからである)

 黒はナイト、そしてe4の地点が当たりにさらされているので、その地点の支配をめぐる戦いを続けるか作戦を変更するかを決断しなければならない。どちらのやり方でも面白いチェスになる。

 11.Bd3 の局面

(この章続く)

2015年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(147)

「Chess Life」1996年3月号(5/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

クイーン対小駒(続き)

 次の手順はスパスキー対ブロンシュテイン戦(挑戦者決定アムステルダム大会、1956年)である。

12.Kf2?!

 黒の主眼の反撃は …f5 にからんでいるので白キングはここでは具合が悪い。12.Ke2 が正着だった。

12…Nxc4 13.b3 Nb6 14.Nge2 Na6 15.Rhg1 f5

 正確にはGMブロンシュテインは 7…Na6 と指してここで初めてキャッスリングした。

16.Kg2 Bd7 17.a4 Bf6 18.Qg3 Nb4 19.a5 Nc8

 定跡ではこの局面は黒の方が少し良いとされている。白がキングの動きとaポーン突きで手損したことを考えればこれは意外でない。それでも何と速く窮鼠猫を噛むことになるか注意されたい。

20.exf5 Bxf5?

 このごく普通の手が早くも問題の手だった。なぜなら黒は主導権を強めることができず、白は自分の有利に局面の開放を始めるからである。対局後GMブロンシュテインは正しい作戦は 20…Ne7! だと言った。21.fxg6? と取ってくれば 21…Nf5! 22.gxh7+ Kh8 23.Qe1 Nd3 24.Qd2 Nh4+ で黒の攻撃が決まる。

21.Ra4! Nd3 22.Rc4 Nc5 23.Ne4! Na6 24.Nxf6+ Rxf6 25.f4! e4 26.Nc3 Ne7 27.Re1 Raf8 28.b4 c6 29.Nxe4 Bxe4+ 30.Rcxe4 Nxd5 31.Re8! Nac7 32.Rxf8+ Kxf8 33.Kh1 Rf5 34.Qh4 Nf6 35.Qf2! Nb5 36.Qe2! Nd5 37.a6! bxa6 38.Qe8+ Kg7 39.Qxc6 Kh6 40.Qxa6 Nxb4 41.Qb7 Nd3 42.Re7! Nxf4 43.Rxh7+ Kg5 44.Qe7+ Kg4 45.Qe3 Kg5 46.h4+ Kg4 47.Kh2 Nh5 48.Rh6 黒投了

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(128)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 6…Bb4 7.e3 Bxc3 8.bxc3

 黒は中央で張り合わなければならない。理にかなった選択肢は …c7-c5 または …e6-e5 である。

 8…c5 9.Bd3 d6 10.O-O Nbd7 e4の地点をめぐる戦いは終わっているので、白の一番の主眼の作戦は 11.Nd2! Qc7 12.Qc2 で、有望である。12…O-O なら 13.f4! と突いて中央で優位に立ち陣形でも活発さで優る。12…g5 13.Bg3 h5 なら 14.Be4! ですぐにe4の支配を利用することができ、黒陣の色々な弱点のため明らかに優勢になる。

 8…d6 9.Nd2! e5 白はここで 10.f3! Qe7 11.e4 Nbd7 12.Bd3 でe4の支配を確立することにより優勢になることができる。中央では明らかに広さで優り、黒にはこれを埋め合わせるものが何もない。黒が 12…Nf8 で穏やかに捌きを図れば、白は 13.Nf1! Ng6 14.Bf2 Nf4 15.Ne3 で優勢を保持する。黒が 12…g5 13.Bf2 Nh5 14.Nf1! exd4 15.cxd4 f5 と攻撃してくれば、白はタリ対ムナチャカニャン戦(ソ連選手権戦、1962年)のように 16.Ne3! fxe4 17.Nf5 Qf7 18.fxe4 Nf4 19.O-O! とお返しをして優勢になることができる。

 b)7…g5!? 8.Bg3 Ne4 は黒の最も激しく一貫性のある作戦である。

 黒は王翼の弱体化を犠牲に、e4の地点の支配と白の后翼ナイトの釘付けという自陣の強みを生かそうとしている。そのあとの変化は非常に難解で、判断ができない。しかしたぶん初手による通常の有利を越える優勢にはならないだろう。

 6…Bb4 7.e3 g5 8.Bg3 Ne4

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(127)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 6…Bb4 7.e3 c5

 白は 8.Bd3! と積極的な展開を続けるのが良い。ここで唯一別個に取り上げる意味のある手順は 8…cxd4!? 9.exd4 Bxf3!? 10.Qxf3 Nc6!? である(ほかはすべて一貫性がないかほかの手順に移行する。8…Bxc3! は 7…Bxc3+ で考察する。8…cxd4!? 9.exd4 O-O?! 10.O-O Be7 11.Qe2 という手順は、黒にこれといった代償がなく白が中央で明らかに優位に立つ)。11.Qe3 Be7 12.Bg3! d5 のあとはこの変化の重要な局面になる。13.O-O?! には 13…Nb4! で黒が互角にできる。しかしすぐに 13.cxd5 なら白の優勢が保持されるはずである。13…Nxd5 14.Nxd5 Qxd5?! は 15.O-O! と 16.Be4 という強力な狙いのために疑問である(15…Qxd4? は 16.Be4 で黒がc6のナイトを取られる)。

 c)7…Bxc3+ 8.bxc3 は二重cポーンのために白のポーン陣形が弱体化し、白の后翼ナイトが交換で消えたため黒のe4の支配が強まる。その一方で白のd4の支配はc3のポーンのために強まり、黒の王翼ビショップは受けに用いることができなくなる。

 6…Bb4 7.e3 Bxc3 8.bxc3

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(126)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 6…Bb4 の局面

 黒は后翼ナイトを釘付けにすることにより、后印防御で常に関心事となる中央のe4の地点の支配を強調している。適時にc3のナイトを取ることにより白にc列で二重ポーンを作らせることができるけれども、その交換により黒はビショップの一つを失う。双ビショップがなければ黒は王翼ナイトに対する面倒な釘付けを前述の戦型Aのように …g7-g5 と突くことによりはずすことが難しくなる。なぜなら双ビショップは弱体化した王翼の代償だったからである。さらにはポーンで取り返すことにより白の中央は強化される。

 全般的なことをいうとこれからの戦略の指し方は難しくて複雑である。黒はe4の支配を強化したいし、白のいずれ二重になるcポーンにつけ込むことに期待している。白は黒のナイトに対する釘付け(または …g7-g5 の場合は黒の弱体化した王翼)を利用しようとし、中央で d4-d5 から仕掛けることを目指す。次のような手順が想定される。

 7.e3! 白は中央を強化し王翼ビショップの展開を準備するよりほかに良い手がない。二重ポーンを防ごうとする 7.Qb3、7.Qc2、7.Rc1 はどれも 7…c5! で黒の中央での反撃が好調になる。

 7.e3 のあと黒には理にかなっていそうな手が4手もあるように見えるが、それらのすべてが実際に理にかなっているというわけではない。

 a)7…O-O?! この手は黒の助けにならないだけでなく、自分の展開を複雑にさせる。王翼にキャッスリングすれば …g7-g5 と突く着想はあまりに弱体化するので排斥しなければならないし、黒ナイトへの非常に厄介な釘付けはそのままである。白は次の単刀直入な指し方で明らかな優勢を確立することができる。8.Bd3 d6 9.Qb3 Bxc3+ 10.Qxc3 Nbd7 11.Qc2!(e4の支配!)11…Re8 12.O-O Qe7 13.Nd2!(e4の支配!)13…Qf8 14.f4 黒は釘付けから逃れることができたが、陣形は守勢一方である。これに対して白は陣地がかなり広くて明らかに動きやすい。

 b)7…c5 は白の中央に手始めに挑むには陣形的に危険が多い。なぜなら白の弱い方のe4でなく拠点のd4に挑んでいるからである。

 6…Bb4 7.e3 c5

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(125)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 6…g5 7.Bg3 Nh5

 白は黒の作戦を妨げることができない。過激な手は 8.Be5?! だが 8…f6 9.Qd3?! fxe5! 10.Qg6+ Ke7 11.Qxh5 exd4 12.Nxd4(12.Nxg5? は 12…Qe8! 13.Qh4 hxg5 14.Qxh8 dxc3 で黒が戦力でも陣形でも優勢になる)12…Bg7 13.O-O-O Qf8! で黒のフィアンケット・ビショップに願ってもない斜筋ができ、黒に中盤戦の有利な可能性が約束される。

 だから白は控えめな 8.e3 Nxg3 9.hxg3 Bg7 10.Bd3 で満足しなければならない。白は黒の薄くなった王翼につけ込み(白自身の王翼は二重ポーンにもかかわらずよく守られていて、ルークは素通しh列でごたごたを起こすことができる)、中央での少し優る支配を活用しようとする。黒は自分の双ビショップをその利きをさらに増すことにより活躍させようとする。黒陣が本質的に極めて堅固なので、中盤戦の見通しは白より劣るわけではない。

 黒はここでナイトを 10…Nc6 と展開して后翼にキャッスリングする用意をするのが良い。白は再び控えめが標語となるはずである。そして 11.Qe2 Qe7 12.O-O-O O-O-O と進んでいい勝負になる。代わりに 11.g4?! で黒のhポーンを固定しようとすると(h列でそのポーンを攻撃できるように)、レシェフスキー対グリーフ戦(米国選手権戦、1977年)のように自分にはね返ってくる。11…Qe7 12.a3 O-O-O 13.Qc2 h5!! 14.gxh5 g4 15.Nd2 f5 16.Ne2 Qg5 となり黒がポーンを取り戻し王翼で主導権を握った。ここで 17.Nf4? は 17…Nxd4! で咎められ、17.Ng3?! は 17…f4! 18.Nge4 Qh6 19.Nf1 g3! というように非常に危険な攻撃を受ける。

 B:6…Bb4

 この手は中央での反撃をもくろんでいる。

 6…Bb4 の局面

(この章続く)

2015年07月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(124)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲) 10…Qd8 の局面

 黒陣は非常に堅く、白の中央の強みはほとんどなくなり、黒の双ビショップは中盤戦で貴重な資産になる。ゲレル対ボレスラフスキー戦(挑戦者決定チューリヒ大会、1953年)の参考になる手順は 11.Nbxd4 O-O 12.Qe2 Nc6 13.Rad1 Nxd4 14.Nxd4 Bc5 15.Bc2 Rc8 16.e5 Qg5 と進みいい勝負だった。注目すべきは黒がどのように8手目から白の中央を削り取り自駒の視野を広げ続けたかということである。

6…Be7

 これは黒の断然堅固な手である。ナイトに対する釘付けが解消してe4をめぐる戦いに参加できるようになり、…Ne4 で少なくとも一組の小駒を交換する意図がある。本譜の手のあと黒が完全な互角を達成する可能性は極めて高い。しかし勝つ可能性はほんのわずかである。勝つ可能性を高めるためには黒は以下の均衡を乱す変化のどれかを選択することができる。

 A:6…g5 7.Bg3 Nh5

 この手の意図は自陣の中央を乱さずに白の后翼ビショップと交換することである。

 6…g5 7.Bg3 Nh5

(この章続く)

2015年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(380)

「Chess Life」2015年5月号(2/3)

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2015年チューリヒ・チェスチャレンジ(続き)

クイーン翼ギャンビット拒否 (D37)
GMビスワーナターン・アーナンド(FIDE2797、インド)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2776、米国)

2015年チューリヒ・チェスチャレンジ第4回戦、2015年2月17日

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Be7 4.Nf3 Nf6 5.Bf4 O-O 6.e3 Nbd7 7.c5!?

7…Nh5

 アーナンドは2014年世界選手権戦でカールセンから 7…c6 8.Bd3 の戦型で1勝をあげた。

8.Bd3 Nxf4 9.exf4 b6 10.b4 a5 11.a3 c6 12.O-O Qc7 13.g3 Ba6

14.Re1

 バシエ・ラグラーブは少し前の週のベイクアーンゼーでのラジャーボフ戦でもっと果敢に 14.Bxa6 Rxa6 15.Qe2 Rfa8 16.b5 と指したが、何も成果があげられなかった。

14…Bf6 15.Kg2 Bxd3 16.Qxd3 Rfb8 17.h4 Qa7

18.Ne2!?

 ナカムラは「白が先に 18.Rab1 と指せばこちらは 18…axb4 19.axb4 Qa3 と指す」と解説した。アーナンドは 20.Qc2 を示したが、そのあと 20…bxc5 21.bxc5 Rxb1 22.Nxb1(22.Rxb1? Nxc5!)22…Qb4 となって「黒が全然悪くないはずだ」とナカムラが応じた。

18…g6?!

 アーナンド「相手に 18…axb4 19.axb4 Qxa1 20.Rxa1 Rxa1 と指すようお願いしているようなものだった。しかしこれは 21.b5 cxb5 22.Qxb5 Ra7 23.c6 Nf8 で白の方が良いかもしれない。あまり気にしていなかったというわけじゃない。(白に)何か手があるんじゃないかと思っていた。」ナカムラ「18…g6 と指したとたんポカだと思ってしまい、そのあと立ち直れなかった。a1での交換を選ばなかったあとは気が狂ったような感じだった。」

19.Rab1 axb4 20.axb4 Qa2 21.Rec1 bxc5 22.bxc5 h5?!

 ナカムラ「ポカだった。これでキング翼が固定されたが、あとで …f6 と打って出るのがより難しくなった。」

23.Ne5

23…Nxe5

 ナカムラ「このような收局ではナイトは全然欲しくない。いつもビショップが欲しい。」アーナンド「そう、18…g6 のあとそちらのナイトは行き場所がない。…Nf8-g6-e7 と行けなくなった。例えば 23…Bxe5 24.fxe5 Rxb1 25.Rxb1 Rb8 26.Rxb8+ Nxb8 は黒にとって何よりもやってみる価値がある。しかし 27.Nf4 Kg7 28.g4! hxg4 29.h5! で白はe6で取ることを狙ってうまくいく。」

24.fxe5 Bg7?

 アーナンド「黒は単に 24…Bd8! と引けなかったのか? 25.Nf4 Kg7 のあと 26.g4? とは突けない。26…Bxh4! と取られてf2が当たりになるからだ。」ナカムラ「そう、(キング翼を守る)余裕があるなら黒が良い。」

25.Rb6!

 アーナンド「ここでは胸が高鳴り始めた。大きな1手だと思った。」

25…Rc8

 ナカムラ「b6で取れると思っていた。しかし 25…Rxb6 26.cxb6 Qa4 のあと 27.Rb1! で白の勝ちになることに気づいた。例えば 27…Rb8 には 28.Qb3! から Nf4-d3 がある。」

26.Nc3 Qa7 27.Rcb1

 アーナンド「これで基本的に黒の負けが決まった。もっとも黒はあとでキング翼で反撃できるかもしれない。」

27…Qd7 28.R1b4 Bh6 29.Na4 Qd8 30.Ra6 Kg7 31.Rb7 Rxa6 32.Qxa6 g5 33.Qe2 g4 34.Qa6 Qg8 35.Nb6 Rf8 36.Nd7

36…Qh7

 アーナンド「36…Ra8 を予想していた。37.Qxc6 には 37…Ra2! 38.Nf6 Be3! があっておかしくしてしまうからだ。だから予定は 37.Ra7! Rxa7 38.Qxa7 Qh7(38…Kg6 39.Nf6 Qc8 40.Qa2! も黒が絶望)39.Nf6 で、黒はe4でチェックがなく、39…Qd3 40.Qb8! でちょうど白の勝ちになる。」

37.Nxf8 Qe4+ 38.Kh2 Kxf8 39.Rb8+ Kg7 40.Qc8 Kg6 41.Qh8 黒投了

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(123)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 この積極的なビショップ出は 4.Nc3 に独自の意義を与え、2ナイト戦法(古典戦法と呼ばれることもある)になる。白は中央の要所、特にe4の地点をめぐって激しく不均衡な戦いを繰り広げるために、后翼の非常に迅速な展開を目指している。これに対して黒には基本的に三つの対処法があり、5手目の「中間手」のあと黒の6手目に関連させて個別に分析する。

 白にはここで良い手がほかに2手あるが、ほかの既存の変化になるだけである。5.a3 は 4.a3 Bb7 5.Nc3 と同じ局面になり本書の第6章で考察する。5.e3 は黒が 5…Bb4 と指せば再び二印防御になるし、ほかの普通の手を指せば第5章で取り上げる穏健戦型(4.e3)から生じることがある局面になる。

 黒が 5.Qc2 を何も恐れないのは二つの良い応手があるからである。一つは 5…Bb4 で二印防御の無害な戦型(通常の手順は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Nf3 b6 5.Qc2)に移行できるからであり、もう一つはd列での白クイーンの不在につけ込んで 5..c5! と突けるからで白は 6.d5? と指せない。

5…h6

 白は通常はこの手に対してf6で駒を交換しないので、黒は事実上ただで何かを得ている。つまりg5の地点への利きがいくらか価値があるだけでなく、5…h6 6.Bh4 をさしはさんだ後では都合のよい時に …g7-g5 と突くこともできる。

 5…h6 には基本的に何も悪い所がない。黒が何としても組の小駒を交換するつもりならば、5…Be7 6.e3 Ne4 は完全に問題ない。実戦の観点からは二組の小駒の交換で黒がほとんど互角になる。しかし局面は非常に単純化されるので、勝つ可能性は無いに等しい。黒で勝ちたいならばこれは望ましいやり方ではない。

6.Bh4

 白の基本戦略の作戦には黒の王翼ナイトを釘付けにすることが含まれる。本譜の手はその作戦に沿った唯一の手である。

 もちろん白は同じ構想で 6.Bxf6 Qxf6 7.e4 と指すことができる。展開の完了が間に合えば強力な中央のために優勢になる。しかし黒はすぐに白の中央に打って出ることができ、次のような積極的な指し方で完全に満足できる局面にできる。7…Bb4! 8.Bd3(8.e5!? は 8…Qf4! で白陣を弱めるだけ)8…c5! 9.O-O cxd4 10.Nb5 Qd8!

 10…Qd8 の局面

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(122)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス(続き)

(再掲)

 見たところでは白の4手目は何の説明も要らないように思われる。后翼ナイトは最も活動的な地点に早く展開され、后印防御における黒の中央での最重要な目的であるe4の地点をめぐる戦いが強化されている。だから 4.Nc3 こそ最も理にかなった手であると言えるのではないか。

 もっと深く考えてみるとわずかな不利もあることが分かってくる。明らかに黒はここで …Bb4 で后翼ナイトを釘付けにすることができる。白が 3.Nc3 の代わりに 3.Nf3 と指したのは、実戦的および心理的理由で二印防御の 3…Bb4 を避けたかったからだった。どうして3手目で避けたものを1手後にやらせるのか?それにc3にナイトがいると、黒に少なくとも一組のナイトを交換する目的で …Ne4 と指す機会を与えることがしばしばある。駒の交換は防御側を楽にするのが普通だからである。そしてe4の支配をめぐる戦いについては、c3のナイトの不安定さ(…Bb4、…Ne4)の方が 4.g3 から 5.Bg2 よりも長期的には効果の点で劣る。

 要するに 4.Nc3 はまったく適切な手ではあるけれども、他の良い作戦より優るということはない。

4…Bb7

 これは 3…b6 の基本的な構想なので、非常に特殊な状況を除いてはごく普通の手である。4…Bb4 もまったく文句のない手で、白が通常の 5.e3 で応じれば二印防御のルビンステイン戦法に移行する(通常の手順は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 b6 5.Nf3)。しかしどうして白は3手目で二印防御を避けた後で4手目でそれを許すのか?その理由は特定の変化への好みであることが多い。例えば二印防御のルビンステイン戦法(4.e3)で、白は 4…c5 または 4…O-O に立ち向かいたくないが、黒が 4…b6 と指すのは構わないのかもしれない。白は 4.Nc3 と指すことにより黒を「だまして」その変化にさせようとしている。あるいは白は 4…Bb4 のあと 5.Bg5 と指して、本譜で黒の6手目のあと分析する変化に行くかもしれない。

 黒のほかの4手目は明らかに劣る。4…c5?! は 5.d5! と突かれる。4…Be7?! は 5.e4 で白に中央を与えることになる。4…d5?! は后印防御と后翼ギャンビット拒否の不満足な混合で、白は 5.cxd5! exd5 6.Bg5! とつけ込んで …b6 が無意味な型の局面に持って行くことができる。

5.Bg5

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(146)

「Chess Life」1996年3月号(4/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

クイーン対小駒(続き)

 とは言ってもこれまで述べてきたことにもかかわらず、クイーンの強力さはずば抜けている。だからクイーンとポーンとにかかわる戦力バランスを計算するときには、次の原則をいつも心に留めておかなければならない。

 3.クイーンには絶大な威力があるので、相手がポーンも得ている戦力バランスの計算では、ポーンの価値はそれぞれ1「点」より小さい。

 クイーンを8点と評価して(小駒3個(9)-ポーン1個(1)=8)計算すると、クイーンは小駒2個とポーン2個とに等しいことになる。圧倒的多数の場合クイーンはあまりに強力なのでこのようなことは成り立たない。

 しかしこのバランスが成り立たなくても、非常に面白くて重要な定跡の戦型が一つ存在する。それはキング翼インディアン防御のゼーミッシュ戦法(E87)で生じ、最も独創的なGMダビド・ブロンシュテインによって生み出された。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3 O-O 6.Be3 e5 7.d5 Nh5 8.Qd2 Qh4+ 9.g3 Nxg3 10.Qf2 Nxf1 11.Qxh4 Nxe3

 黒はこの時点でクイーンの代わりに小駒2個とポーン1個とを得ている。黒には 12…Ng2+、12…Nc2+ それに 12…Nxc4 の狙いがあるのでcポーンを取ることができ、戦力の代償にビショップ2個とポーン2個とが得られることになる。黒が本質的に不十分な戦力の代償として期待している要素は何だろうか。それらは

 ● 黒陣は8個のポーンでまとまっていて、白クイーンが黒の戦力にかみつくのは困難である。

 ● 局面はかなり閉鎖的で、やはり白クイーンがその力を見せつけるのには不利な条件になっている。

 ● 白は黒枡に根本的な問題を抱えている。特に黒はd4の地点をしっかり支配できる。

 上記局面の定跡の評価は、「白が少し優勢(+/=)」と「黒に戦力損の代償がある」との中間あたりである。しかし実戦では黒の方が指しにくいことが証明されている。黒は何か作戦を立てる時には、これに関連した微妙な差異をすべて完全に評価しなければならない。さもないと白クイーンが恐怖の的と化す。

 その一方で白は誤った指し方をしても、クイーンに将来の活躍を期待することができる。これらの要素を例示するために、まず最初の試合、次に現在の主流手順の例をお目にかけよう。すべての場合において黒の反撃の見通しは適時の …f5(場合によっては …c6)突きにかかっている。

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2015年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(121)

第4章 2ナイト戦法 エドマー・メドニス

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Nc3

(この章続く)

2015年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(120)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 このようなことになりがちである。この手が成立するのは 32…Nxd5 に 33.Rd1! が用意されているからで、d5に対する先ほどからの一連の釘付けにまた釘付けが加わる。ほかにも 33.Rb8+ Kh7 34.Be4+ g6 35.Bxd5 Rxd5 36.Qf8! という勝ち方さえある。

32…Kh7 33.Rb7! Qxb7 34.Qxd6

 これで最後の有効なせき止め駒が取り除かれた。ナイトはd6に来るのが間に合わない。

34…Qb1+ 35.Kh2 Ng6 36.Qc7 Qf5 37.Qxa7 Ne5 38.Qd4 黒投了

(この章終わり)

2015年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(119)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 というわけで白がポーン得になり、もうすぐ勝負がつく。どうして勝利がそんなに確実なのだろうか?理由は白がポーンでd5のビショップを取り返し、そのポーンが取りも直さず強力なパスポーンになるからである。dポーンを守るために配置されていた黒のほかの駒は今や場違いになっている。それらはパスポーンの前進を防ぐために迅速に働かせなければならない。例えば 22…Qd6 23.exd5 Re8 なら一時的にポーンをせき止める。しかし白は 24.Qc6! Rd8 25.Qxd6 Rxd6 26.Rc1 のあと Rc6 または Rc7 でせき止めを破ることができる。

22…Re6 23.exd5 Rd6

 ルークはクイーンよりはいくらかましなせき止め役である。ここで白は敵駒をいじめることに注意を向ける。

24.Qc4 Ng6 25.h4 Ne7 26.b4!

 白は a2-a4-a5 突きで新たな標的を作るか新しい素通し列を作ることを目指す。

26…h6 27.a4 Rd7 28.Qb5! Rd6 29.a5 bxa5 30.bxa5 h5

 黒は指をくわえて見ていることしかできない。

31.Qc5 Qd7 32.Rb1!

(この章続く)

2015年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(118)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 この強手には大きな任務が二つある。すなわち黒のf6のナイトを脅かして再び黒のdポーンをねらうことと、Ne3! でd5への直接攻撃を狙うことである。

15…Ne4

 これは受けの手のように見える。しかしそれは一時的にすぎない。このあと中央の解体が起こる。

16.cxd5 Nxc3 17.Qxc3 exd5 18.Ne3! Rc8 19.Qd2 Rxc1 20.Qxc1

 黒はdポーンを単純に守る手段が尽きた。前々からの釘付けのために突くこともできない(20…d4 21.Bxb7)。だから 20…Re5 のような手を指させられるが、ここはルークにとって攻撃されやすいのでひどい場所である。しかしそれでも白はdポーンが取れる。

20…Re5 21.Nxd5!

 これは単純だがすっきりしている。戦術はどれも白の有利になる。つまり 21…Rxe2 なら 22.Nf4、21…Rxd5 なら 22.Bxd5 Bxd5 23.Qd2 という具合である。

21…Bxd5 22.e4

(この章続く)

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后印防御の指し方(117)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

 黒はナイトをc6に跳ねる用意が万端整っていたが、黒の中央に起こり得る典型的な手段でポーン損になる。その変化は 11…Nc6 12.Nxc6 Bxc6 13.dxc5 bxc5 14.Rfd1! で、黒ポーンがもろすぎる。一例は 14…Qe7 15.cxd5 exd5 16.Nxd5 Bxd5 17.Bxd5 Nxd5 18.Qxd5 Qxe2 19.Qxc5 である。「たかが」ポーンだが、そのようなポーンで勝負がつく。

 すぐに …Nc6 と指す代わりに黒が別の手順を用いて白のポーン得をくじこうとするならば 11…cxd4 12.Qxd4 Nc6 13.Nxc6 Bxc6 が考えられる。交換の長い手順の終わりで取られるべきポーンがc5にない。しかしこの新たな状況では白はクイーンの有利な位置を利用して 14.Rfd1 Qe7 15.Qe5! と指すことができる。黒のeポーンが釘付けにされていて、白のd1のルークがdポーンへの攻撃に参加している。だからここでさえ黒はeポーンを取られてしまう。つまり 15…Qb7 16.cxd5 exd5 17.Nxd5 Nxd5 18.Bxd5 Rfe8 19.Bxc6! Qxc6 20.Qb2!(これも b2-b3! 突きの利得)となる。

12.Rfd1 Re8

 この手の目的はe2の地点を標的にすることである。途中に多くの戦力があるのでこの手は奇異に思えるかもしれない。しかし白がポーン得しようとすれば(上記の変化のように)、ナイト同士を交換し黒にeポーンでd5での取り返しを許さなければならなくなる。

13.Rac1

 白はかなり見え透いた手を指し、中央のポーンを取ることを考えられるようになっている。…Nxe5 をまったく気にする必要がないのは、dポーンで取り返したとき黒ナイトがdポーンの守りを放棄させられるからである。白がこれまでポーンを取ることにより中央の解体を慎重に控えてきたことには注意を要する。白はポーンの内側で戦力を整え中央で仕掛ける正しい時機を待つ方が良い。

13…cxd4

 もっと良い手を示唆するのは難しい。黒クイーンがd8の地点を去れば、すぐにdポーンを取られる危険にさらされる。一例は 13…Qb8 14.Nxd7 Nxd7 15.dxc5 Nxc5 16.cxd5 である。黒クイーンはe7またはc7の地点にいてd7で取り返しができるようにすることによりdポーンを守る方が良い。しかしそれに対する Nb5! がすこぶる嫌である。

14.Qxd4 Nf8

 黒は白からのd5への圧力を増す自然な手段の e2-e4! への解答を用意した。ここで 15.e4 なら黒は単にdポーンでそれを取ることができる。

15.Ng4!

(この章続く)

2015年07月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(379)

「Chess Life」2015年5月号(1/3)

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2015年チューリヒ・チェスチャレンジ


ナカムラはチューリヒでの優勝できっちり世界の5強に復帰し、わずかな期間だが3強にも入った。

解説 GMイアン・ロジャーズ

対称イギリス布局 (A33)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2776、米国)
GMセルゲイ・カリャーキン(FIDE2760、ロシア)

2015年チューリヒ・チェスチャレンジ第3回戦、2015年2月16日

1.Nf3 Nf6 2.c4 c5 3.Nc3 Nc6 4.d4 cxd4 5.Nxd4 e6 6.g3 Qb6 7.Ndb5

 この手はほとんど 7.Nb3 に取って代わった。GMビクトル・コルチノイは1970年代にこの手で好成績をあげた。

7…Ne5 8.Bf4 Nfg4 9.Qa4!?

 アロニアンの衝撃的な着想。2008年が初めてだったが、今では研究が進んでいる。

9…g5!

 すぐ目につく 9…Qxf2+ は大乱戦になるが、白が優勢になると見られる。10.Kd2! Qb6(10…Qc5 は 11.Ne4 Qb6 12.Bh3 Nf6 13.Nec3 で黒がまずい)11.h3 g5 12.Bxg5 で白キングが意外なほど安全で、黒はナイトに問題を抱えている。

10.Bxe5 Qxf2+! 11.Kd1 Nxe5 12.Nc7+ Kd8 13.Nxa8 Qd4+ 14.Kc2 Nxc4

15.e4!

 ナカムラは「昔ならこれがいかにすごい研究手順かの話をとくとくとすることができた。しかしコンピュータのある今ではこの手順は明日からは使えないと知っている」と認めた。カールセンは2009年の試合で 15.Kb3 Nd2+ 16.Kc2 Nc4 とためらい、引き分けに甘んじた。

15…Ne3+?

 カリャーキンはこの手順を何か月も前から研究していたが、黒の防御手順の一つだけは思い出すことができなかった。15…Qd2+ 16.Kb3 Qxb2+ 17.Kxc4 Bg7(ナカムラ「黒が人間らしい手の 17…d5+ を指すことを期待していた。それなら 18.Kd3 Bg7 19.Ne2 で白の方がはるかに優勢だと思う」)18.Qa5+(ナカムラは「カリャーキンは 18.Qb3 を心配していたと言ったが、18…Qxa1 19.Bg2 Qxc3+ 20.Qxc3 b5+! 21.Kb3 Bxc3 22.Kxc3 Bb7 でたぶん黒が勝つとも指摘していた」と話した。)18…b6 19.Qxg5+ f6! 20.Qb5

20…Ba6!! 21.Qxa6 f5! これで白は引き分けが避けられない。ナカムラは「これは対局前に知っていた」と言った。「コンピュータはどの変化でも0.00と評価していた。しかし彼が研究していなければ、引き分けの一本道の手順を見つけ出すのはとてもあり得ないと考えていた。」

16.Kb3 Qd2 17.a3!

 ナカムラは「彼が 17.a3 を見落としたのかと思っていた」と言った。「というのはここで彼が長考し始めたからだ。」

17…Qc2+ 18.Ka2 Qxa4 19.Nxa4 Nxf1 20.Rhxf1 b5

 黒は戦力損の一部を取り返すが、ナカムラは積極的な指し方で優勢を維持する。

21.N4b6! axb6 22.Nxb6 Bb7 23.Rxf7 Bc6 24.Rd1

24…Be7

 「24…Ke8 には 25.Rfxd7! Bxd7 26.Rxd7 と指すつもりだった」とナカムラは言った。「なぜなら黒はルークを使うことさえできないからだ。」

25.Rf3!

 ナカムラは「当初は 25.Nc8 と指すつもりだった。しかしそのあと 25…Bc5 26.b4 Kxc8 27.bxc5 g4! で白が勝つのはそう容易でないと思った」ことを認めた。

25…Kc7

 ナカムラは「25…Rf8 なら 26.Rc3! Ke8 27.Nxd7! Bxd7 28.Rc7 で白が勝つ」と読み筋を披露した。

26.Nxd7! Rd8

 26…Bxd7 は 27.Rc3+ で負ける。

27.Rc3! 黒投了

 27…Rxd7 と取っても 28.Rdc1 Rd6 29.e5 で取り返されるので黒は投了した。

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(この号続く)

2015年07月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(116)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

10.Ne5!

 この手は終局まで …dxc4 を止め、黒がナイトをc6に展開するのを少なくとも当面は不可能にした。この中盤戦の第一の要因はg2からb7への斜筋での釘付けである。

10…Bb7

 黒は対角斜筋を無効にすることを急いだ。これに対して 11.Rd1 でd5への圧力を増してくれば、黒は 11…Nbd7 と指すことができる。12.Nxd7 Qxd7 13.dxc5 で白がポーン得するように見えるが、13…d4! という好手がある。そうなればg2の白ビショップは浮いていて、白はポーンを取る暇がない(14.Bxb7? Qxb7 15.Qxd4? Qxh1+ または 14.Qxd4? Qxd4 15.Rxd4 Bxg2)。

11.O-O Nbd7

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(115)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜(続き)

(再掲)

7.b3

 ほかには2手考えられる。7.Qc2 は e2-e4 突きを助けるいつもの作戦で、7.Na3!? はこの局面に特有の手である。

 クイーンを動かす 7.Qc2 には明らかな欠陥がある。それは 7…c5! 8.Bg2 Nc6 で、白のdポーンが Rd1 で支えられる前に、そして d4-d5 と突ける前に(9.e3 は守勢で白枡を弱める)、攻撃にさらされることである。9.dxc5 bxc5 となった局面はルークでd列を占拠する白の作戦に正しく対処する応手を見つけることができれば黒にとって十分安全である。適時に …d7-d5 と突くだけでよい。

 ナイトを動かす方は d2-d4 突きを支援できるd2にクイーンを置いたままにするのが目的である。それにc列に駒を置かないままにして、c1のルークが中盤戦で素通しになりそうな列に邪魔されない利きを持つようにする意図もある。7.Na3 O-O 8.Bg2 c6 9.O-O d5 で黒のいくらか守勢の陣形になったあと、白はルークをc1とd1に配置しナイトをc2からb4に捌いて指しやすくなる。

7…O-O

 ここでは 7…c5 も考えらえる。しかしクイーンがc2でなくd2にあることが …c7-c5 突きの効果を減少させている。そして 8.Bg2 Nc6 9.O-O O-O のあと白は 10.d5! と突いて中央で好調になる。例えば 10…exd5 なら 11.cxd5 Nd4 12.Nxd4 cxd4 13.Qxd4 Bxe2 14.Re1 でよい。

8.Bg2 d5 9.Nc3 c5?!

 黒は堅実な 9…c6! の代わりに新しい戦略を追い求めた。いつかはポーンをc5に突くことにより駒を解放できることを知っていたが、どうして今突いてはいけないのか。

 この手の結果黒がこうむる問題は、なぜ自駒をゆっくりと組織的に解放する方が、急いでそうすることよりほとんど常に優るのかということをよく表している。まず后翼ナイトをb7に置き、クイーンを展開し、ルークをc8とd8に持って来たあと、…c7-c5 突きの用意がすべて整っている。黒が手を節約しようとすることは次々と戦術上の困難に追い込まれる。

(この章続く)

2015年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(145)

「Chess Life」1996年3月号(3/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

クイーン対小駒(続き)

 それでは小駒3個とクイーンとの戦力的に正しい関係式は何だろうか。数学的に計算する必要性からはクイーン+ポーン=小駒3個である。コンピュータチェスのプログラムにはこのような式が必要である。しかし実際のチェスでは状況は次の原則によって複雑化している。

 2.ほかの状態が変わりないなら盤上により多くの駒を持っている側が、存在する戦力が数学的に同じ価値でもたいていの場合有望である。

 GMたちは直感的にこの原則を認識している。好例は『Inside Chess』誌1995年第22号8ページのGMミハイル・グレビッチの解説に見てとれる。M.グレビッチ対ケンギス戦(バート・ゴーデスベルク、1995年)は次のように進んだ。1.c4 b6 2.d4 Bb7 3.Nc3 e6 4.a3 f5 5.Nf3 Nf6 6.g3 Ne4 7.Bd2 Be7 8.Bg2 Bf6 9.Rc1 ここで 9…Bxd4 と取ってくればGMグレビッチはクイーン捨てを用意していた。10.Nxd4 Nxc3 11.Bxb7 Nxd1 12.Rxd1

 GMグレビッチは自戦解説で 12…c6、12…Nc6 それに 12…e5 を分析し、どの場合も白が指しやすい局面になると結論づけている。12…Na6 は一顧だにしていない。なぜなら 13.Bxa6 で白がクイーンとポーンの代わりに3個の良好な小駒を得て「明らかに」優勢になるからである。しかしそれほど明らかなのだろうか。たぶん違うかもしれないが、それでもGMたちは経験から白の見通しの方が優っていることを学んだ。その理由は単純で、この局面は通常の局面なので原則2が当てはまるからである。

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2015年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(114)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

参考棋譜
白 R.バガニアン
黒 Y.バラショフ
ソ連選手権戦、1974年

解説 アンディー・ソルティス

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.c4 b6 4.g3 Bb4+ 5.Bd2! Bxd2+ 6.Qxd2 Ba6

 もちろんこのビショップはすぐにb7に行くことができるし、白にとって役に立つ b2-b3 突きも誘発しない。6…Bb7 の局面は第2章の局面と似ているが黒枡ビショップがない。例えば 7.Nc3 O-O 8.Bg2 のあと黒は第2章でのいつもの解放捌きの 8…Ne4 が解放にならないことに気づく。9.Qc2! のあと黒は 9…Nxc3 と指せない。なぜなら毎度おなじみの返し技の 10.Ng5! があるからである(10…Qxg5 11.Bxb7 または 10…Ne4 11.Bxe4 Bxe4 12.Qxe4 Qxg5 13.Qxa8 でどちらも白が交換得になる)。

 そして黒は 8…Ne4 と指してしまうと引き返せない。9.Qc2 f5 には 10.Ne5! とされ対角斜筋に問題が生じる。白にe4でポーン得する狙いがあるので黒は …d7-d5 と突かなければならず白ナイトがe5に居座る。10…Nd6 なら 11.Bxb7 Nxb7 12.e4! で白が大いに優勢である。

 黒は 8…Ne4 の代わりに 8…d6 9.Qc2! Qe7 のようにもっと慎重に …c7-c5 突きを準備しなければならない。このポーン突きはここでは戦術的理由で効果的になる。例えば 10.e4 c5! のあと 11.d5 と突くのはうまくいかない。なぜなら白はまだキャッスリングしていなくて 11…exd5 12.cxd5 Nxd5 13.Nxd5 Bxd5 のあとeポーンが釘付けになっているからである。また、e2-e4 突きを準備する 10.O-O のあと黒は 11.d5 exd5 12.Nh4 を恐れることなく 10…c5 と突くことができる。12.Nh4 は第2章の主手順の …c7-c5 での常套手だが、黒クイーンがb7のビショップを守っているからである(12…d4 13.Nf5 Qd7 または 12…dxc4)。

(この章続く)

2015年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(113)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 32…gxf5 には 33.Qg7# があるので黒には 33.Qxh5+ に何も満足な受けがない。黒はクイーンを犠牲にすることにより終わりを遅らせることを選んだが、このため戦力の不利は絶望的な状態になった。

32…Qxd2 33.Nxd2 Re5 34.Qxh5+ Kg8 35.Qh6 Nxf6 36.Bxg6 Ncd5 37.Bc2 Re2 38.Qg5+ Kf8 39.Kf1 黒投了

(この章続く)

2015年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(112)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

27.f6!

 白は黒の王翼にくさびを打ち込んだ。黒はこのfポーンを取るわけにいかない。取れば王翼があまりにさらけ出される。

27…Nbxd5

 黒はついに劣った自陣の代償をいくらか得た。しかし白の攻撃はこの時点では進みすぎていてつまらないポーン1個では引き合わない。

28.Qg4 g6 29.Qh4 h5 30.Qg5 Kh7

 白は 31.Qh6 から 32.Qg7# を狙っていた。

31.Bh3 Re8 32.Bf5!

(この章続く)

2015年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(111)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

9.d5! exd5

 黒がこのポーンを取らなければ白は 10.e4 と突いていく。

10.Nh4!

 黒のdポーンは釘付けにされている。だから白は圧倒的な態勢でポーンを取り返すことができる。

10…O-O 11.cxd5 d6 12.O-O Re8 13.Nf5

 白は王翼攻撃の開始の意図を知らせた。黒は盤上の別の所で適切な反撃を見つけることができない。

13…Bf8 14.e4 b5 15.Qc2

 15.Nxb5? は 15…Nxe4! で黒の苦境が緩和される[訳注 16.Qg4 で白の勝勢のようです]。

15…Qb6 16.Rfe1 Na6 17.Rad1 Bc8 18.Bg5 Bxf5 19.exf5 Be7?

 黒は 19…Rxe1+ 20.Rxe1 Re8 と指した方が良かった。防御側は通常は相手の攻撃力を鈍らせるために駒を交換するのが良い考え方である。

20.Re3 h6 21.Bh4 Bd8 22.Rxe8+ Nxe8 23.Bxd8 Rxd8 24.Ne4 Nb4 25.Qe2 Qa5 26.Rd2 Nc7

(この章続く)

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后印防御の指し方(110)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例3
白 ポポフ
黒 オルンステイン
アルベナ、1978年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Ba6 5.b3 Bb4+ 6.Bd2 Be7 7.Nc3 Bb7?

 正着は 7…c6 である。(098)を参照。

8.Bg2 c5?

 ここでは 8…O-O の方が良かった。

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(378)

「Chess Life」2015年4月号(1/1)

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2015年トレードワイズ・ジブラルタル・チェス祭り

 GMヒカル・ナカムラはトレードワイズ・ジブラルタル・マスターズで二度目の優勝を飾った。前回の優勝は2008年で、1月25日のツィッターでは参加の喜びを「あれから何年もたったがジブラルタルに戻ってきてとても良かった」と書いていた。

 ナカムラはクイーン翼ギャンビットに対して急戦型を指した。この戦型では黒は戦力損の代価としてギャンビット・ポーンにしがみつく。ナカムラはすぐに主導権を握り、布局を過ぎたばかりでモンスターのような進攻したパスポーン対を作り出したが、相手に立ち直らせてしまった。彼はこの大会での優勝で世界第7位に急上昇した。(ジョン・ソーンダーズ)


GMヒカル・ナカムラはジブラルタルでの優勝を足場にチューリヒに行き、即時のレイティングで2800の壁を突破して世界第3位に躍り出た。詳報は5月号で。

解説 GMイアン・ロジャーズ

クイーン翼ギャンビット受諾 (D20)
GMバスカラン・アドヒバン(FIDE2630、インド)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2776、米国)

ジブラルタル・マスターズ第5回戦、2015年1月31日

1.d4 d5 2.c4 dxc4 3.e4 b5!?

 ナカムラは「珍しい手。今年までは」と言った。「今日の定跡の進展は、誰かがある布局でうまくいくと皆が取り組むようだ。」

4.a4 c6 5.Nc3 a6!

 かつては 5…b4 が必須だと考えられていた。最近はそのあと 6.Nce2!? が黒にとって問題になってきた。

6.axb5 cxb5! 7.Nxb5 axb5 8.Rxa8 Bb7

 ナカムラは「スラブ防御にこの交換損の戦型がある」と言って有名なアロニアン対マクシェーン戦に触れた。「相手はまったく予期していなくて驚いたと思う。もっともこちらはドバイでの世界快速ブリッツ選手権戦で指したことがあった。」

9.Ra1 e6 10.Ne2!?

 ナカムラは「10.f3、10.Be2 それに 10.Nf3 は読んでいた。でも相手はほとんど即座にこの手を指した」と言った。

10…Bxe4 11.b3

 ナカムラは「白はここで間違えた。もっとも 11.Nc3 Bb4 12.Be2 Nf6 でも黒は好調だと思う」と解説した。

11…Nc6

12.Nc3?

 「これでは白は敗勢に近いと思う」とナカムラは言った。「12.bxc4! Nb4 13.Nc3 Nc2+ 14.Ke2 Nxd4+ 15.Ke3 だったらわけが分からなかった。」

「黒の勝ちか白の勝ちのどちらかだ。しかしこちらはこういくしかなかった。」ナカムラは 15…Bc5 を考えていたが 16.Nxe4! が強力な応手となることを軽視していた。「15.Ke3 のあとばからしい千日手のせいでコンピュータは形勢が 0.00 だと言いそうで嫌な予感がしていた。」とナカムラはつけ加えたが、彼の言うことはまったく正しかった。コンピュータの分析によると 15.Ke3 のあと 15…Nf6!? 16.Qxd4 Ng4+ 17.Kxe4 f5+ 18.Kd3 Nxf2+ 19.Ke3 Ng4+ で本当に引き分けになる。ナカムラが恐れていたとおりのばからしい千日手である。

12…Bb4 13.Bd2 Bxc3 14.Bxc3 b4 15.d5

 「変化の余地はない」とナカムラは言った。15.Bd2 は 15…c3 16.Be3 Nge7 となってc3のポーンの存在がとてつもなく大きい。

15…bxc3 16.dxc6 Qxd1+ 17.Kxd1 cxb3 18.c7

18…Kd7

 「とんでもないポカ」とナカムラはかなり辛辣に言った。「18…Kd7 のあとでもまだ勝ちだが、18…Ne7! なら 19.Bb5+ Kf8 20.Ke2 b2 21.Rad1 g5

となって実戦よりはるかに簡単だった。二人とも 22.Rd8+(22.Bd3 には 22…Bb7 のあと …Kg7、…Nd5 から …Rc8 があり白はc3のポーンを攻撃するのが間に合わない)22…Kg7 23.Bd3 で白がいいと考えていた。しかし共に 23…c2! を見落としていて黒が完全に勝勢だった。」

19.Ra3!

 「これで面倒なことになった」とナカムラは言った。

19…b2 20.c8=Q+ Kxc8 21.Rxc3+ Kd7 22.Bd3 b1=Q+ 23.Bxb1 Bxb1 24.Rb3 Be4 25.Rb8

25…g5?!

 「客観的にはこれで引き分けになった」とナカムラは言った。「25…Bc6 と指すべきだった。26.Ke2 Ke7 27.Rc1 Be8 28.Rc7+ Kf8 で勝つはずだ。」

26.Ke2 Ke7

27.h4?

 ナカムラは「これが敗着だ」と言った。「27.Rc1 なら 27…Kf6 28.Rcc8 Kg7 29.f3 Bf5 30.g4 Bg6 31.Re8

となってこちらは絶対駒をほぐせない。」黒にとっての問題は 31…h5 に 32.h4! hxg4 33.hxg5 という応手があって黒ナイトが自陣から出られないことである。

27…gxh4 28.Rxh4 Bc6 29.Rc4 Be8 30.Rc7+ Kd6 31.Ra7

31…Ne7!

 ナカムラは「当初の予定は 31…Nf6 32.Rxf7 Rg8 だった。しかし 33.Rxf6! Bh5+ 34.g4! Bxg4+ 35.f3 Bxf3+ 36.Kxf3 Rxb8 37.Rh6

となるとややこしいが引き分けにしかならないルーク收局だと思う」と言った。

32.Rd8+ Ke5 33.Rb7 Kf6 34.Rdb8

 ナカムラは「34.Rbb8 なら 34…Bb5+! でd8のルークが当たりになっている」と解説した。

34…Ng6 35.Rb6 h5 36.f3 Ba4

 「あとはかなり楽だった」とナカムラは言った。

37.Rxh8 Nxh8

38.Ke3 Ng6 39.Ra6 Bb3 40.Ra5 Bd5 41.Ra7 e5 42.Ra5 Be6 43.Rb5 h4 44.Rb1 Kg5 45.Rb5 f6 46.Rb7 Nf4 47.Kf2 Nh5 48.Rb6 Bf5 49.Rb8 Bg6 50.Rb4 Nf4 51.Ra4 Bf7 52.Ra7 Kg6 53.Ra1 Bd5 54.Rd1 Kg5 55.Rd2 f5 白投了

 ナカムラは「完璧とはほど遠いがうまく指せた」と語った。


GMバスカラン・アドヒバンと対局中のナカムラ

(クリックすると全体が表示されます)

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(この号終わり)

2015年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(109)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 この黒ナイトの突入には抵抗できない。16.Qxc2 と取ると 16…Bxf2+!! 17.Kxf2 Ng4+ 18.Kf3(18.Kg1 は 18…Qe3+ 19.Kh1 Nf2+ 20.Kg1 Nh3+ 21.Kh1 Qg1+! 22.Rxg1 Nf2# までの窒息詰めとなる)18…Qf6+! 19.Kxg4 Rc4+! 20.bxc4 Bc8+ 21.Kh5 Qh6# までとなる。この華麗な手筋の連続で黒は自軍のほとんどを犠牲にして無力な白キングを死ぬ運命におびき出している。

16.Rf1 Nxa1 17.Qxa1 Rfd8 18.Bf3 Ba3 白投了

 白は交換損で何の代償もない。グランドマスターのチェスでは決定的な不利である。

 4…Ba6 戦型が流行する前に指された本局は評価に違わぬものだった。

(この章続く)

2015年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(108)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

13…Nd4!

 このナイトの中央志向は強力である。黒はこの戦型でよく攻撃目標になる白のeポーンを狙っている。

14.Nc3

 14.Bxd4 なら 14…Bxd4 15.Rb1 b5 16.Nb2 Qa5 で白陣がひどく圧迫される。14.Re1? はもっと悪くて、14…Nc2! で白ルークが両当たりを食らう(15.Qxc2? Bxf2+! 16.Kxf2 Rxc2)。

14…Qe7 15.Re1 Nc2!

(この章続く)

2015年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(144)

「Chess Life」1996年3月号(2/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

クイーン対小駒(続き)

 ここからはドノバン対メドニス戦(マーシャルチェスクラブ選手権戦、ニューヨーク、1956年)の手順を追う。

15.f5

 白は黒のクイーン翼ビショップを捕まえることを夢見ている。しかし黒は陣形に傷がなく小駒には好所があるので、白の夢が現実化する条件は存在しない。

15…Ne5?!

 ナイトをすぐに絶好の地点に持って来ることは間違っていないように思われた。しかしこのナイトは今の地点で申し分なく、本譜の手の問題は白クイーンを好所に行かせることだった。だからクイーン翼ビショップの安全を確保することがすぐに必要だった。これは二通りの方法で行うことができる。

 (1)15…gxf5!? この手は局面をすぐに開放して、普通に(良く)位置している駒により黒が有利になることを期待している。黒駒は見かけによらず連係が十分なので、白はg列の素通しにつけ込むことができない。1939年アムステルダムでのファン・デン・ボス対ランダウ戦は次のように続いた。16.exf5 Ne5 17.Qg3 Kh8 18.Qh4 Bd8! 19.Rae1 e6 20.f6 Bf5! 黒はキング翼が安全なだけでなく、g列を用いて白を攻撃することも期待できる(これは実戦例で見ることができる)。

 (2)15…Bh5 これは融通性のある手で、ビショップをh5-e8の斜筋で引き戻す用意をし、白がh3でこのビショップを当たりにして先手を取ることのないようにしている。16.Rae1 Ne5(GMファインは『Practical Chess Openings』の中ですぐに 16…f6 と突いて互角であると書いている)17.Qh3 f6(アフーエス対リヒター戦[ベルリン、1930年]では 17…Rac8 で黒が良かった)18.Qh4 Bg4!(19.h3 に 19…g5 と突く意図)これはホロウィッツ対レシェフスキー戦(ニューヨーク、1951年)で、黒は優勢をしっかり保持した。

16.Qd2! Bh5 17.b3?

 白は戦場を読み違えた。勝負にかかわる手は 17.h3! だった。黒は 17…Nc4 より良い手がなく、白は 18.Qd3 Ne5 で千日手にするか 18.Qc3 Ne3 19.g4 Rac8 で優劣不明の局面にするかを選択することができる。

17…Kh8! 18.Qd5

 ここで 18.h3 に 18…gxf5 と応じられるのは 19.Qg5 がチェックにならないからである。

18…Rab8 19.c4 f6! 20.h3 gxf5 21.exf5 Be8 22.Rae1 Rg8 23.Re2 Bc6

 黒の小駒は白キングに殺到している。白負けたり。

24.Qd2 Rg5 25.Kh2 Rbg8 26.g4 h5 27.gxh5 Rxh5 28.Qc3 Ng4+ 29.Kg3 Ne3+ 白投了

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后印防御の指し方(107)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例2
白 W.ウールマン
黒 V.スミスロフ
モスクワ、1956年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Ba6 5.b3 d5 6.Bg2 Bb4+ 7.Nfd2?

 チェックに対処する正しい手段は 7.Bd2 である。(096)(097)を参照。

7…c5

 黒は白駒のかなり守勢の状況をさらけ出させるためにすぐに局面を開放する策に打って出た。

8.dxc5 Bxc5 9.Bb2 O-O 10.O-O Nc6 11.Nc3 Rc8 12.cxd5?

 このように局面をさらに開放するのは黒を助ける。正着は 12.Na4 だった。

12…exd5 13.Na4

(この章続く)

2015年07月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(106)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 局面が一段落した。黒のポーン得になっていて、あとは黒がパスポーンを8段目まで無事に送り届けるのを見るばかりである。

28…a5 29.Rc5 Rb8 30.d5 exd5 31.Bxd5 Nxd5 32.Rxd5 Ra8 33.Rc4 a4 34.Rh5 h6 35.Rg4 Ra6 36.Rxg7 Rb3 37.Rh7 a3 38.R5xh6 Ra7 39.Rxf7 Rbb7 40.Rh8+ Kc7 41.Rf3

 白は黒の応手を待たずに投了した。41…a2 のあと白は少しチェックが続くが、それが尽きれば黒がaポーンを昇格させることになる。

(この章続く)

2015年07月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(105)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

20…Nxc3

 というわけで黒は先ほどからの精力的な指し方の成果が出始めた。そして取られるのを待っているだけの白ポーンはまだまだある。

21.Bxc3 Rxc3 22.Rbc1

 代わりにaポーンを守る 22.Ra1 なら、黒ルークが 22…Rb2 から …Rcc2 で7段目に意気揚々と侵入する。そうなれば白はaポーンの代わりにeポーンを失い、fポーンとhポーンも取られる危険にさらされる。

22…Rxa3 23.Rc7 Bb5 24.Rdc1 Kf8 25.Nc4 Bxc4 26.R7xc4 Ke8 27.R1c2 Kd8 28.Kg2

(この章続く)

2015年07月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(104)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

12…Rfc8

 12…Nxd4? は 13.Nxd4 Qxd4 14.Bxa8 で白の交換得になる。

13.a3 Bxc3 14.bxc3 Nd5

 この手は 15…Nxd4! 16.Nxd4 Qxd4! 17.cxd4 Rxc2 を狙っている。しかしすぐに 14…Nxd4 はうまくいかない。というのは一連の交換の最後に白が Bxa8 と指すことができるからである。d5のナイトは白のキング翼ビショップの斜筋を止めている。

15.Rd1 Nce7 16.Bb2 Rab8 17.Rab1 Qb3!

 黒はますます圧力を強めている。白は11手目の強欲を悔やんだに違いない。

18.Qxb3 Rxb3 19.Nd2 Rb6

 白のcポーンとeポーンは共に当たりになっていて、両方守るということはできない。

20.Bf3

(この章続く)

2015年07月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(103)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 この局面については「8…Qb6 の局面」で解説した。

9.Nc3

 白は 9.e3 と突いてb5のナイトをキング翼ビショップで守った方が良いかもしれない。しかし Bg2 と指すつもりで 4.g3 と突いてしまっているので、白はキング翼ビショップをf1-a6の斜筋に縛りつけるのをしぶったのだろう。

9…Bb4 10.Bg2 O-O 11.Qc2?

 白は強欲に戦利品にしがみつこうとした。しかしここでは 11.O-O Bxc3 12.bxc3 Bxe2 13.Re1 でそれを返して、自駒を調和よく展開するのを完了する手数を稼ぐべきだった。

11…Nc6 12.O-O

(この章続く)

2015年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(377)

「Chess」2015年4月号(4/4)

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あなたの棋力検定

GMダニエル・キング

 2013年の終わり頃のインタビューでヒカル・ナカムラはマグヌス・カールセンの一番の強敵であることを宣言した。彼にとっては残念なことに、2014年のこもごもの成績と、彼以外の特にファビアノ・カルアナとアレクサンドル・グリシュクの大活躍が彼の豪語を曇らせた。それに世界チャンピオンに対する悲惨な対戦成績も忘れるべきでない。正規の27試合でカールセンが11勝をあげ、ナカムラはただの1局も勝っていない。

 国内でも追い上げられている。ウェズリー・ソーは2014年にチェス国籍をフィリビンから米国チェス連盟に変えた。そしてその年大活躍し世界の10傑に仲間入りした。この21歳はナカムラの存在を脅かしている。

 しかし反撃が始まった。2014年12月のロンドン・チェスクラシックでナカムラは正規の試合では平凡な50%の勝率だったが、超強力な快速戦では他を圧倒した。そのあと1月にはジブラルタル・オープンで危なげなく優勝し、本号で報じられているようにそのあとすぐチューリヒ・チェスチャレンジに参加した。そこでの正規、快速そしてブリッツの組合わせは彼にうってつけだった。ブリッツでの一発勝負でアーナンドを破って優勝した。この三月初めの執筆時点では最新レイティングで世界第3位に復帰した。もっともマグヌス・カールセンにはまだ大差をつけられている。

 今回取り上げるのはジブラルタルでのナカムラの試合の1局である。大会の初戦は緊張するものである。選手の中には穏やかな布局で勝負の衝撃を和らげることを望む者がいる。そうでない者もいる・・・

 カードや紙でページをおおって一度に1行が見えるように少しずつ下げていくこと。テストは最初の図の直後から始まる。白の手のあと、次の行にある黒の手を推測する。実戦のようにできるだけ多くの手を読むこと。そうすればボーナス点が稼げるかもしれない。本稿は読者の普段の指し方をテストするものだが、単に好局として楽しむのもよい。

J.ボイノビッチ – H.ナカムラ
2015年ジブラルタル・オープン、オランダ防御

1.d4 f5 2.Bg5 c6 3.e3 Qb6 4.Nd2 Qxb2 5.Rb1

5…Qc3

 2点。悪名高いb2の毒入りポーンを取ったのは自信と野心の表れである。ナカムラはレイティングが相手より400点以上上回っていて、最初から活気のある試合にしたかった。それでオランダ防御の採用となった。ボイノビッチの選択は 2.Bg5 で迎え撃つことで-これ自体ややこしい手だが-黒のキング翼の円滑な展開を乱すことを目指した。

 ナカムラはすぐにこのビショップの早い展開の欠点につけ込み、弱体化したb2のポーンを攻撃した。もちろんこのポーンは4手目で 4.b3 または 4.Qc1 で守ることができた。しかしどちらの手も陣形を乱す。その上ポーンを犠牲にしてどうしていけないのか。私が白ならこの機会に飛びつくだろう。安っぽいポーンの代価として白は展開で大差をつけそれゆえに主導権を握る。いい取引だ!

 上図の局面でほとんどの選手は 5…Qc3 と指してきた。しかしある点では 5…Qa3(2点)の方が、白の 6.Ne2 が先手にならないので道理にかなっている。

 黒はもう注意しなければならない。5…Qxa2 は空威張りになるかもしれない。ボーナス点がもらえるから白の勝ち方を考えよ。答えは以下の行にある。

 白が 6.Bc4 や 6.Ra1 と応じれば黒はクイーンを引いて戦利品を食い逃げする。

 しかし 6.Nc4 なら勝着になる。白が Ra1 を狙っているので黒は 6…Qa4 と指さなければならない。そしてここで白には二通りの手がある。まずは 7.Qc1 で、7…d5 8.Ra1 Qb4+ 9.c3 Qb3 10.Ra3 で、ルークと小駒の代わりにクイーンが取れる。もう一つの 7.e4! の方がはるかに良い手で、ビショップをd2に引き戻す用意をしている。そのあとは 7…e6(7…fxe4 なら 8.Ra1 Qb4+ 9.Bd2 Qb5 10.Ra5)8.Bd2 b5 9.Ra1 となる。

 6.Nc4 を読んだら2点追加、7.e4 または 7.Qc1 も読んだらさらに2点追加。

6.g4

 白はなんとかしてキング翼に素通し列を作ろうとしている。そして黒は既にh5-e8の斜筋が弱体化しているのでこの手は確かに黒にとって油断のならない手である。

 6.Ne2 Qa5 7.Nf4 または 6.Bd3 g6 7.Ngf3 と指す方が好きな者もいるだろう。どちらの場合も白はキャッスリングしてから攻撃を始めるので、白キングは必ず黒キングより安全である。

6…Qa5

 1点。この手は重圧の下では一流の選手といえどもひるむことがあることを示していると思う。

 6…fxg4!(3点)が最善手である。7.Qxg4 と取ってくれば 7…Qxc2 が強欲だが良い手である。このクイーンは白駒を縛りつけているが、防御のためにするりと戻ってくることもできる。白は 7.Rb3 と指すこともできるが、7…Qa5 8.Qxg4 Nf6 で黒は展開できていて実戦の進行よりはるかに良い。

7.gxf5

7…Qxf5

 1点

8.h4

 この手は危険だった。8.Ngf3 から Bd3 というように駒を戦いに投入する方が利点が多かった。

8…Qa5

 1点。ごたごたになるのを避け、再びナイトを釘付けにする位置に戻った。8…Nf6(1点)も理にかなった手である。

9.Nh3

9…g6

 1点。これは挑発的な手で、白のhポーンに目標を与えている。もっともこのあと分かるようにナカムラにはうまい考えがあった。

 ナカムラが駒を動かそうとしないのはまったく異例である。私なら 9…Nf6 または 9…Na6 と指したかもしれないし、9…b6 から …Ba6 とさえ指したかもしれない。これらのどの手でも1点である。どの場合でも黒は猛攻をしのぐ覚悟をしなければならない。

10.Bd3

 黒は 10.h5 には 10…h6 11.Bf4 g5 でキング翼を閉鎖しておく用意ができている。

10…d6

 3点。テスト開始以来私が本当にいいと思った黒の手はこれが初めてである。b7のポーンが当たりになっているので黒はまだc8のビショップを展開することができない。しかしこのビショップは少なくとも斜筋の重要な地点に利いている。

 代わりに 10…Bg7 なら 11.h5 で問題が発生する。

 10…Nf6(1点)は 11.Nf4 d6 12.Rg1 で h4-h5 を狙われるかもしれない。

11.Qf3

 白は黒キングの周囲の危険地帯に戦力を集結させている。

11…Nd7

 3点。やっと駒が戦いに加わった。たぶん一番活動的な地点ではないが、始まりではある。

 11…Bg7 はやはりうまくない。このビショップはここでは 12.h5 でいくらか攻撃にさらされる。

12.h5

 かみつきが始まった。

12…Ndf6

 5点。この時点までにはこれがキングの安全を保証する唯一の手段になっていた。変化を少し考えてみよう。

 a)12…gxh5 13.Qxh5+ Kd8 14.Bxe7+ は黒クイーンが取られる。

 b)12…Bg7 13.hxg6 hxg6 14.Bxg6+ Kd8 15.Qf7 は黒への圧力が強すぎる。

 c)12…Ngf6 13.hxg6 hxg6 14.Bxg6+ Kd8 15.Nf4 Rxh1+ 16.Qxh1 はh列とe6に白の狙いが残る。黒はすべてを守りきることはできない。

13.hxg6

13…hxg6

 1点

14.Bxg6+

14…Kd8

 1点

15.Bf4

15…Kc7

 4点。黒はキングの小行進を完了し盤面を眺めまわしてみる頃合いである。ナカムラはキング翼を支えようとする代わりにあっさりそこを放棄して退避した。特筆すべきはナカムラが明らかに何手か前からこの着想を描き、黒がこの捌きを必要とするだけでなく実行するのが望ましいとさえ認識していたことである。控え目に配置されたクイーン翼のポーンはキングの絶好の囲いになる。黒のナイトは不如意に見えるが、実際はキング翼をまとめている。そしてポーン交換は魔法のようにh8のルークを戦いに参加させた。

16.Ng5

16…Rxh1+

 1点。良い手だが、16…Bg4(2点)の方がずっと良かった。17.Qg2 Rxh1+ 18.Qxh1 には 18…Nxd5 が読み筋で、19.Bg3 なら 19…Nc3! でg5のナイトとb1のルークが当たりになり、19.Qh8 なら 19…Ngf6 で全部守っている(ビショップはルークがf8のビショップに利くようにc8から動かなければならなかった)。

17.Qxh1

17…Bh6

 1点。白クイーンが入ってこないようにするとともに、ナイトに脅威を与えている。

18.Qh4

18…Bd7

 1点。どちらのキングの方が安全なのだろうか。

19.Bd3

 白駒のほとんどはキング翼に向けられているが、黒はある意味でその方面を見捨てたので、それらの駒はほとんど目的を見失っている。

19…Nd5

 3点。形勢が一変した。20.Bg3 は 20…Nc3 で負けるので白が困っている。

20.Ne6+

20…Bxe6

 1点

21.Bxh6

21…Nc3

 2点。ルークを僻地に追いやる。

22.Ra1

22…Qb4

 2点。これは良い作戦だが、22…Nf6(4点)の方が痛烈だっただろう。黒の狙いは …Rg8 による白キングへの決定的な攻撃である。黒がキング翼で、正確には以前に蹂躙された方面で、主導権を奪い取るのは何か詩的なものがある。

23.Kf1

23…Nxa2

 1点

 23…Nxh6(3点)の方が強手で、24.Qxh6 Qb2 25.Re1 Qxa2 となれば明らかに優勢である。c3のナイトはモンスターで、黒クイーンは白クイーンをはねつけるためにキング翼に取って返すことができる。

24.Rd1

 白は黒をもう少し閉じ込めておく機会を逃した。その手は 24.Ne4 で、24…Qb2 なら 25.Re1 Nb4 26.Bg5 と進み、黒の方が優勢なのは確かだがg8のナイトが戦いに参加していないのが気にかかる。

24…Nc3

 2点。ナイトが絶好の地点に先手で戻った。

25.Re1

25…Nxh6

 1点。この手は良い手で、単純で、実戦的である。しかし最善手ではない。ナカムラがきちんと読んでいたら、aポーンの進軍に応手がないことが見えただろう。25…a5(3点)26.Bg5 a4 27.Bxe7 a3 で、黒キングは安泰である。

26.Qxh6

26…Bd7

 1点。鉄壁の固さである。白は黒キングに迫るすべがない。

27.f3

27…a5

 3点。これは最も単刀直入な作戦である。黒は 27…Rg8(1点)と指すこともできたが、この時点では不必要に手間がかかる感じである。

28.Kf2

28…a4

 1点

29.Qg5

29…Rh8

 3点。白に自分のキングが危ういことを思い出させた。30.Qxe7 なら 30…Nd5 でd2のナイトが落ちる。

 ここでは黒に多くの選択肢があった。盤の両側を支配しているのでほとんど驚くに当たらない。どうして 29…a3(2点)で少し前からの作戦を続けないのだろうか。悪くはないのだが、白が 30.Nb3 と指すとどのようにして防御を打ち破るのかすぐには判然としない。

 私は 29…Nd5(3点)という手が大好きである。ナイトが当たりになっているので 30.Ne4 だが、それなら 30…a3 でこのポーンを止めるのが難しい。

 29…Qa5 と 29…Ra5(共に1点)も良い。もっともどちらの場合も白クイーンがh4に下がるので黒はまた考えなければならない。

30.Qg3

30…Nd5

 1点。この手は前手のときだけでなくここでも成立する。

 30…Rh3(1点)も私の好きな手で、白クイーンをずっと不利な地点に押し込める。

 30…a3(1点)でも良さそうで、31.Nb3 なら 31…Be6 がぴったりの応手となる。

31.Rd1

31…c5

 2点。白駒が受けに縛りつけられている間に、ナカムラは敵陣の急所を突く新たな手段を見つけた。

 30…a3(2点)はまだ良い手である。

32.Bc4

 代わりに 32.dxc5 は 32…Qxc5 でe3の地点が弱点になる。

32…Nc3

 1点。簡明に指した。

 32…cxd4(1点)でも勝ちだった。33.Bxd5 なら 33…dxe3+ で(まず手始めに)駒を取り返すし、33.exd4 なら黒はc4のビショップを戻すだけで良く 33…Bb5 で目的を達する。

33.Re1

33…b5 0-1

 2点。この手が最善手である。34.Bd3 なら 34…cxd4 で黒は2ポーン得で陣形もまとまっていてaポーンはいつでも前進でき、白キングは弱い。白は投げ時である。

 私にはナカムラが本気になって指していない印象を受けた。この試合は第一回戦で彼は格下と当たり、試合のほとんどの間不当に気を抜いてはいなかった。b2のポーンに食いつくときには少し面倒なことになるかもしれないことをよくわきまえていたし、その瞬間は早くやって来た。その時に少なくとも少しの手の間彼の脳は最高潮に活動し、キング翼を放棄しキングを危険から抜け出させる作戦は予期しないものだったが賢明だった。

 白はもっとうまく指せたのだろうか。そうかもしれない。ナカムラが10手目を指した局面に戻ってみよう。11.Qf3 の代わりにボイノビッチは 11.h5 と突くことができた。

 私は両者が実際にはこのhポーンを突くことができることを読めなかったのではないかと思っている。実のところ私もコンピュータ画面の片隅でチェスソフトを走らせていなかったら 11…Bxh3 12.Rxh3 Qxg5 から先を読まなかった。黒は駒得だが、13.Rxb7 のあとジレンマに陥る。白は Qb1 で駒得(…Nd7 には Rxd7 から Qb7+ がある)とh列での釘付けを利用して hxg6 と取る手を狙っている。黒は白枡ビショップをなくしているので陣形が急に危うそうに見える。

 黒はビショップを取る代わりに 11…Nd7 と指すことができる。やはり 12.hxg6 hxg6 13.Bxg6+ Kd8 は黒が良い。しかしなかなか気づきにくいのは 12.Rg1 である。この手はビショップを守り、そのことによりナイトを自由にして、黒を困らせるのに絶好のf4に行けるようにしている。ビショップがg6に行くよりナイトがg6に行く方が黒にとって危険である。

 それではナカムラは幸運だったのだろうか。いや、そうではない。彼はこのような大会に長けていて、格下の選手に対してはいつどのように勝負にでたら良いかよくわきまえている。しかし2700の相手にはこのような指し方をしただろうか。そうは思われない。

それでは点数を合計しなさい。
0~16点 ツキがなかった
17~33点 クラブの平均的な選手
34~43点 クラブの強豪選手
44~51点 FIDEマスター
52~58点 国際マスター
59~65点 グランドマスター

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(102)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

実戦例1
白 V.トゥクマコフ
黒 B.グリコ
ソ連選手権戦、1977年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Ba6 5.Qa4 c6 6.Nc3 b5 7.cxb5 cxb5 8.Nxb5 Qb6

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(101)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲)

 この局面もいい勝負である。予想手順は 10.Nbd2(10.Ne5 は前述の変化Cに移行する)10…Nbd7 11.Re1 c5 12.e4 dxe4 13.Nxe4 Nxe4 14.Rxe4 Bb7 15.Re2 である。この局面は以前の「14.Re2 の局面」によく似ている。唯一の違いはここでは黒枡ビショップ同士が交換されていないことである。「14.Re2 の局面」に関連した解説、つまり白はクイーン翼の多数派ポーンの可能性のためにほんのわずか優勢である、はここでも当てはまる。そしてここでも黒はその長期的な狙いを無効にできるはずである。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(143)

「Chess Life」1996年3月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

クイーン対小駒

 クイーンが非常に強力であることは誰でも知っている。しかし小駒と比べて正確にはどのくらい強力なのだろうか。これを知る必要があるのは、クイーンを小駒と交換する(犠牲にする)手順(戦術)を正確に読めるようにするためである。

 クイーン対小駒の価値については誤った多くの情報がいつもあった。初心者向けのいろいろな本や小冊子が主犯である。例えばドーバー出版(株)から出版され版権が1958年と1972年になっているフレッド・ラインフェルド(全盛期には米国の最強選手の一人だった)著『How Do You Play Chess』では、ビショップとナイトの価値はそれぞれ3、クイーンの価値は9と書かれている。これは小駒3個はクイーンと同価値ということを意味している。これはそのとおりではない。

 もっと悪いのはプレスマン・トイ(株)の最近(日付不明)の小冊子の誤った情報で、それはクイーンを10点、小駒をそれぞれ3点と評価し、クイーンが小駒3個よりも価値があるとしている。これはまったくの間違いである。

 本稿ではクイーン対小駒という重要な主題についての現在の知識を伝授する。もちろんこれらの原則は通常の状況に当てはまるものである。

 1.小駒3個はクイーンよりも価値がある

 小駒3個は適度にお互い良く連係を取れる限り、クイーンより強力である。これはそのとおりである。どのようにしてそれを知っているのか。経験からである。だからクイーンを捨てて小駒3個を取ることができるなら、局面に特別な問題がない限り進んでそうすべきである。反対に小駒3個を捨てて敵クイーンを取ろうとしてはいけない。そんなことをすれば戦力損になるからである。この知識によりシチリア防御ドラゴン戦法(B73)に対する以前は重要だった白の戦法が、白が数多く負ける前に見捨てられることになった。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be2 Bg7 7.Be3 Nc6 8.O-O O-O 9.f4

 戦略的観点からは理にかなった手である(陣地の拡張、キング翼攻撃の準備)。しかし黒には互角にする戦術が十分にある。

9…Qb6! 10.Qd3 Ng4! 11.Nd5 Bxd4!

 ここでの白の最善手は 12.Bxg4! Bxe3+ 13.Qxe3 Qxe3+ 14.Nxe3 Bxg4 15.Nxg4 で、互角の收局である。もちろん白は 9.f4 と指した時にはこれをほとんど想定していなかった。だから実戦の大部分は次のように進んだ。

12.Nxb6? Bxe3+ 13.Kh1

 この手でデ・ヨング対ログマン戦(オランダ、1933年)は 13.Qxe3 Nxe3 14.Nxa8 Nxf1 15.Bxf1(または 15.Rxf1 f5)15…f5! と進んだが、白が不利な收局に逃げ道を求めるのはほとんど間尺に合わない。

13…Bxb6 14.Bxg4 Bxg4

 黒はクイーンと引き換えに明らかに大変良い小駒3個を得ている。どうして多くの選手が白で自らこの局面に入るのだろうか。私の考えでは二つの理由がある。(1)チェスの理論は小駒3個がクイーンよりも価値があるということを十分に認識していなかった。(2)白が黒のクイーン翼ビショップの位置につけ込めるという非現実的な期待があった。いずれにしてもここでまったくばかげているのはポウルセン対バイル戦(ミュンヘン、1936年)の 15.c3?! Be6 16.f5?! Ne5 17.Qg3 Bc4 で、白は何の目的もなく陣地を明け渡した。

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(100)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 12…Rc8 の局面

 ほぼ互角のいい勝負である。1971年世界選手権挑戦者決定番勝負のコルチノイ対ぺトロシアン戦では両選手はこのあとたった4手指しただけで引き分けに合意した。二人の達人は不倶戴天の敵同士になっていたので、たぶん必要以上に長く相手と向き合っていることに耐えられなかったのがその理由であろう。

9…O-O

(この章続く)

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