2015年05月の記事一覧

后印防御の指し方(069)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

35…Bf6 36.Bb6 Ra8 37.Ra4 Bc3 38.Bd4! Bb4 39.a3 Bd6 40.b4! Bc7 41.Bc3 Kf8 42.b5

 白は 42.bxa5! と取っていればもっと速く勝っていただろう。しかしかかっているものが非常に大きかったので(この試合に勝てばぺトロシアンはほとんど番勝負をものにし世界選手権を獲得することになる)、黒のaポーンを標的にし自分のbポーンをパスポーンにする同じくらい魅力的な手を指すことにした。

42…Ke8 43.Rc4 Kd8

 黒は白がルークを后翼の7段目に持ってくるのを止め、bポーンを突いてくるのを予期して、キングを盤のこちら側に駆けつけさせなければならなかった。これで白は別の勝ちの作戦に転じることができる。すなわちナイトを中央に持ってきてからルークで王翼を襲撃する。

44.a4 Rc8 45.Nd2 Nd6 46.Rd4 Ke7 47.Rd3 Nb7 48.Ne4!

 これで白はビショップかナイトをf6に潜り込ませることを狙っている。白は非常に慎重に指しているが、黒はいずれはもっと弱点をさらけ出さなければならない。

48…e5

(この章続く)

2015年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(068)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

29.Qb7

 この手は非常に理にかなっていて一貫性があるので批判しにくい。しかし 29.Qh4! と指していればほとんどすぐに勝ちになっていただろう。Ng5 があるので黒のビショップは良い引き場所がない(29…Bf8 30.Ng5 Qg7 31.Bxf8)。29…Qg7 と受けるのは 30.Rd8! で黒の負けになる。白が 29.Qh4 と指さなかったのは 29…Kg7 に対する正しい応手を見落としていたためだった。白の見落とした強烈な手とは 30.Rd1! から 31.Rh1 で、白のもう一つ有利な半素通しh列を利用することだった。

29…Bg7 30.c5!

 ここでは黒のポーンがばらばらのせいでほとんどどんな型の收局も白が有利なので、陣形的に勝負がついている。白が 30.c5 と指す前に読まなければならなかった変化は 30…Bf8 31.cxb6! で、31…Bxa3 なら 32.bxc7 で簡単に勝ちになる。だから黒はb6で取り返さなければならないが、それに対して白はクイーンもビショップも交換し Rd6! で捕虜を集め始める。

30…bxc5 31.Bxc5 Nd7

 これで黒はクイーン同士を交換することによりしばらくの間戦い続けることができる。そうしないと白が攻撃するやいなやaポーンを、そしてたぶんcポーンも取られていただろう。

32.Qxc7 Nxe5 33.Qxf7+ Nxf7

 33…Kxf7 は 34.Nxe5+ Bxe5 35.Rd7+ から Ra7 ではるかに悪い收局になっていた。收局ではポーンを堅く引き締め、別れた集団の数を少なくすべきである。ここでは白にポーンの「島」が二つあり、黒には三つある。白が駒の働きで優ることもあり形勢は決定的である。

34.Ra4 Bc3 35.Rc4

 もっと速い手段は 35.Bd4 だった。黒はビショップ同士の交換を避けることができなくて(35…Bb4 36.a3)、このあとaポーンが守れない。

(この章続く)

2015年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(372)

「Chess」2015年3月号(3/3)

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ジブラルタル・オープン(続き)

棋譜解説 マルコム・ペイン

H.ナカムラ – V.トパロフ
第6回戦、シチリア防御モスクワ戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Bb5+ Nd7 4.a4 Ngf6 5.Nc3 e6 6.d4 cxd4 7.Qxd4 a6 8.Be2 b6 9.O-O Bb7 10.Rd1 Qc7 11.Bg5 Be7 12.Nd2 h6 13.Bh4 Ne5 14.Nf1 Rd8 15.Bg3 O-O 16.Ne3 Rc8 17.Kh1 Rfd8 18.f3 Nh5! 19.Bf2 Nf4 20.Bf1 Nfg6

 黒駒は好所に配置されていて、ポーンによるハリネズミ陣は難攻不落のように見える。

21.Qd2 Bg5 22.Qe1 Nf4 23.Bg3 Nh5

 黒は 23…Nfg6 で千日手を打診することができた。24.Ra3 と手を変えてくれば 24…h5!? 25.Rb3 h4 26.Bf2 h3! がある。

24.Bf2 Qe7

 この手は一番弱いb6の地点を弱めた。ナカムラは抜け目がなかった。

25.Ra3! Nf4 26.Rb3 Rc6 27.Ne2 Nxe2 28.Bxe2 Rdc8 29.c3 Nd7 30.Nc2!

30…d5

 30…Nc5 でも 31.Ra3 R6c7 32.Bg3 e5 33.b4 で進展が図れる。

31.Nb4!

 31.exd5 は 31…exd5 32.Rxd5 Re6 で 33.Rxd7 Qxd7 が必然である。

31…Rc5

 31…Rd6 は 32.Bg3 Nc5 33.Bxd6 Qxd6 34.Ra3 a5 35.Nc2 となって黒の代償が不十分である。

32.exd5

32…Ra5

 黒は白にいいように指し回されていて、32…exd5 と取っても 33.Bxa6 Qxe1+ 34.Rxe1 Bxa6 35.Nxa6 Ra5 36.Nb4 Nc5 37.Ra3 Nxa4 38.Bxb6! で困る。

33.Nc6

 33.dxe6?! を避けたのは賢明である。そう取ると 33…Qxe6 と取り返されて 34.Ra3? には 34…Re5! がある。

33…Bxc6 34.dxc6 Rxc6 35.Rb4

 黒はa6とb6が弱いので、両方のルークでそれらを守る必要がある。

35…Bf6 36.Qf1!

36…Rd6

 36…Nc5? は 37.Rc4 Qc7 38.b4 で白の勝ちになる。

37.Rxd6 Qxd6 38.Bxa6 Nc5 39.Bb5 Qd2 40.Bg1 Ra8 41.Bc6 Rc8 42.Rxb6 Bd8 43.Rb5 Rxc6 44.Bxc5 Bc7 45.a5 Qc2 46.f4 f6 47.h3 Kh7 48.f5 exf5 49.Bg1 Be5 50.a6 1-0

 50…Rxa6 なら 51.Rxe5!、50…Qa4 なら 51.Qxf5+ がある。

上位成績
1 ヒカル・ナカムラ(米国)8½/10
2 デイビド・ハウエル(イングランド)8
3-11 ホウ・イーファン、ウェイ・イー(共に中国)、ニキータ・ビチュゴフ、マクシム・マトラコフ(共にロシア)、べセリン・トパロフ(ブルガリア)、デニス・ワーグナー(ドイツ)、バスカラン・アドヒバン、ペンタラ・ハリクリシュナ(共にインド)、アクセル・バッハマン(パラグアイ)7½


ヒカル・ナカムラは大会に優勝して2万ポンドの賞金を獲得し、閉会式では喜色満面だった。恋人のマリア・デ・ロサも嬉しそうである。ナカムラは次の大会のチューリヒ・チェスチャレンジに飛ぶ前にナポリで休養してジブラルタルでの奮闘の骨休みをした。チューリヒでは出だしで首位に立っている。

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(この号終わり)

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后印防御の指し方(067)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

24.Rd4!

 敵クイーンがへんぴなh5にいて白は自分のクイーンかルークがd列に侵入できることを見越している。ここではルークをd列で重ねることを狙っている。

24…Nb8 25.Rfd1 Rxd4

 d8で二組のルーク同士の交換を期待して 25…Nc6 なら白は 26.Rd7! と応じる。

26.Rxd4 fxg3

 白はいつかはf4のポーンを取っただろう。g3でのポーン交換は二、三の点で白の助けになる。すなわちh列が白のものになり(白の29手目の解説を参照)、マイルズ対コルチノイ戦(実戦例1)でのようにあとで …f4-f3 と突かれる危険性がなくなる。ゆっくりだが確実に白は前進している。

27.hxg3 Qf7 28.Qe4 g6?

 黒には良い手がない(28…Nd7 29.Qb7)。だからこの手で負けになるのは驚くに当たらない。このあと5手あるいは25手でなく40手で勝負がつくのは、白が雑に指したせいである。しかしそれはこの種の優勢を生かす方法が多くあることを示してもいる。

 さらには、本局でのように黒が中央での対処を間違えたときには、それは后印防御に共通するたぐいの優勢である。白は白枡ビショップ同士を交換して、ここでは一番最初から争ってきた地点を占拠している。中央ポーンでの優位は e4-e5 突きのおかげで盤上唯一の素通し列(d列)の支配に転化している。そして大駒の威力により小駒は黒の小駒よりも多くの陣地を支配している。

(この章続く)

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后印防御の指し方(066)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

17…Qe7?

 黒は少なくとも 17…Qg5 とやってみるべきだった。そのあとは 18.e5 dxe5 19.dxe5 Nxe5 20.Qe4 Ng4 または 20…Nf7、あるいは d1のルークを狙う 20…Qh5 が最善で、かなり黒がしてやっている。

18.e5! dxe5 19.dxe5

 白は陣形的に Qe4-c6 という強力な狙いがあり、黒が露出させた地点に強引に侵入する。本譜の手に対し 19…Nc5 なら白は b3-b4 でこのナイトを追い払うことができるが、もっと黒を困らせるのは Ba3 で、黒がクイーンを釘付けからはずしたとたん Bxc5 と取る意図である。

19…Rad8

 対局後に指摘された防御態勢は 19…Rf7 のあと …Raf8 から …Nb8 または …Nf8-g6 だった。もしこれが黒の最善ならば形勢は悪いことになる。

20.Qe2

 これで白はナイトをc2に、そしてそこからd4に据えることができる。しかし白はそれよりも …fxg3 でf列で攻撃にさらされることを気にする必要なく Nf3 と指したがっている。参考までに、20.Qe4 は黒の 20…Nc5 で当たりのルークを守るためにe2に引かされる。

20…Qg5

 どうなろうとここがナイトを例えば 20…Nc5 と動かす時機だった。本譜は黒クイーンが場違いになる。

21.Kg2! a5 22.Nf3 Qh5

 白がキングを動かしたわけがここで分かる。f3のナイトを守りクイーンが自由に動けるようにするためだった。

23.Ba3 Rfe8

 黒は 23…Nc5 24.Bxc5 でポーンの形をがたがたにしたくなかった。23…Rf7 はd列で白からの釘付けにかかるし、23…c5 は 24.Rd6! で白にd列を占拠させてしまう。当たりを避ける4手のうちもっともましなのはf列での活動を完全にあきらめる本譜の手である。

(この章続く)

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布局の探究(138)

「Chess Life」1996年1月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

1…b6 はいかが?

 『「機械的な」手の 1…g6』と題した回で私はその手を高く評価し、布局定跡の現代における理解に基づけば「完璧な」手と呼んだ。キング翼ビショップをすぐにフィアンケットする手が黒にとって良い手ならば、クイーン翼ビショップをすぐにフィアンケットする手はどうなのだろうか。これは急速に実戦の重要な問題になってきていて、さらには定跡の情報量も急速度で増えている。最新の様相すらある。

 しかし 1…g6 には 1…b6 より明らかに優る点が二つあることは認めなければならない。

 1.キング翼にキャッスリングすることにより黒はそちらの方面にキャッスリングしてすぐにキングを安全にする態勢になる。1…b6 ではクイーン翼へのキャッスリングは一般に不適切で、キング翼へのキャッスリングは明らかに遅れる。だから黒はキングの安全度で劣る危険を冒す。

 2.黒が 1.d4 布局で白の特定の積極的な展開を嫌うならば、一般にキング翼インディアン防御に移行することができる。1.e4 布局で白のあるシステムに対するのが好きでないなら、ピルツ防御に行くことができる。1…b6 で始める戦士にとってそのような主流布局に切り換える機会はない。

 約20年前まで 1…b6 はマスター界で満足のいく布局の手としてまったく受け入れられなかった。古典派にはまだ受け入れらていないが、若手選手と危険をいとわない選手には愛好者が出て来ている。私の個人的な状況は次のとおりである。1…g6 は指したことがあり(黒番でキング翼インディアン防御とピルツ防御を指すので)、違和感は何もない。大会ではあえて 1…b6 を指すつもりはない。

 1…b6 を良しとする最大の正当な点は次の二つである。

 1.チェス的理由 クイーン翼ビショップに第一級の中央への斜筋ができ、e4のポーンにあたることによりしばしば先手になる。(1…g6 布局ではd4のポーンはすでにクイーンによって守られている)

 1.実戦的理由 1…b6 は白が主要な定跡よりも研究していない可能性が大いにある。これにより独創的で才能のある黒が相手を不案内な領域に連れ込む機会が高まる。

 この短い紹介講座では最も普通の初手である 1.e4、1.d4、1.c4 そして 1.Nf3 から重要な例を取り上げる。

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(065)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 これはまた別の着想で、黒は Nf4 には …Bxf4、e2-e4 には …f5-f4 と応じるつもりである。しかし黒は中央で起こっていることを無視して大丈夫なのだろうか。相手にルークによって支援された広大なポーンの要塞を構築させても良いのだろうか。そうではないようだ。

15.Qc2

 白は 16.f4! から 17.e4 と突く用意をした。そこで黒の指した手は・・・

15…Bh6 16.e4!

 もし 16.f4 なら黒はナイトをf6に持ってくることによって e2-e4 をきっぱりと押さえ込む。そのあと黒はナイトをe4に据えて …g7-g5 で王翼を開放できるので、たぶん優位に立つ。一方白は急に働かなくなったビショップを何とかすることに努めることになる。

16…f4

 前局で見たようにこのポーンは適切な配役に支援されれば王翼を滅茶苦茶にすることができる。しかし両局の違いは黒はこのポーンを支援できないことにある。黒のクイーンと后翼ルークはつまるところ働いていないし、ナイトは白の中央ポーンによって役に立たなくされている。

17.Ne1

 これは …f4-f3 の厳しさを和らげ、白が王翼を無視しても大丈夫なようにしている。もし黒がg3のポーンを取ってくれば、白はhポーンで取り返してf列を半素通しのままにしておける。

 本譜の手で白は明らかに優位に立つ中央を開放する用意ができている。基本的な三通りの「仕掛け」、つまりポーン交換をさせる手段は c4-c5、d4-d5 および e4-e5 である。それぞれには異なる典型的な后印防御の異なる得失がある。例えばこの局面では d4-d5 は …e6-e5 と応じられ、中央は閉鎖されたままで …Qg5-Qh5-h3 から …Nf6-g4 でクイーンを活動させるのに必要な余裕を黒に与えることになる。また、c4-c5 はc5の地点が黒ナイトにより十分に守られているのでもっと支援が必要である。

 しかし適時の e4-e5 には黒は何もできない。もし黒が e4-e5 への応手としてdポーンを突けば、c列を素通しにされることになる。もしe5でポーン交換をすればd列が素通しになる。そしてもし e5xd6 と交換させれば、半素通し列にeポーンが残り、Qe4 によって襲われる対象になる。最後に、 e4-e5 を 17…e5 で止めることができないのは、18.dxe5 dxe5 19.Bxe5! があるからである(19…Nxe5?? 20.Rxd8)。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(064)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 こんな遅い時機でも 11…Qc8 については語ることはできる。そのあとクイーンを不安な斜筋からはずす 12.Qd2 なら、12…d6 13.Ne1 Bxg2 で本局に移行できる。しかし黒には白がg2で取り返したあと …Qb7 と指す選択肢もある。b7からg2への白枡の対角斜筋は争う価値がある。

12.Rad1 Nd7

 黒はクイーンがc8にいるなら白がここで 13.Ng5!? で始めることのできるのと同じようなちょっとした手筋にも大丈夫である。実際はこの戦術の策略は中盤戦を面白くさせるのに必要なほとんどすべてをすぐに交換することにつながり、局面は 13.Ng5 Bxg2! 14.Nxe6 Qe7 15.Nxf8 Bxf1 16.Nxd7 Bxe2 で引き分けになるだろう。

 もし黒が本譜のようにナイトを安全にd7に持ってくることができれば、それを遅らせる理由はない。そのナイトはf6を通ってe4に向かうか、…e6-e5 突きを支援する。…a7-a5 または …Na6 から最終的に …Nc5 のようなほかの着想もあるが、駒を中央またはその近くに展開させるのが間違っていることはほとんどない。

13.Ne1!

 このナイトは絶好のf4の地点に向かうが、遠回りの Ne1-g2-f4 という経路を通ってしか行けない。

13…Bxg2 14.Nxg2

 白には好形になるきざしがあるが、それを見抜くには宝石職人の目がいる。二組の小駒同士の交換は残りのビショップとナイトの働きが明らかに優るので実際には白の方に役立っている。例えばここで 14…Qe7 はルークを結合させ何とか展開を完了しているので黒の最も自然な手のように見える。しかし白は 15.Qc2! で e2-e4 を意図するので黒の問題は終わっていない。黒はそれに対し 15…d5 と突くと 16.cxd5 から 17.Qxc7 と取られるのでそう突けない。それにもし 15…Rae8 と指せば、16.e4 fxe4 17.Qxe4 で白の優勢は明らかとなる。この変化の 15.Qc2 よりもはるかに良い手は 15.Qf3! で、同じ e2-e4 の着想だけでなくb7で后翼を荒らしまわる考え方もある。

 戦いは e2-e4 をめぐって巻き起こりつつあるので、黒は直接それを防ぐようにするか白の注意をそこからそらすようにしなければならない。

 中央の全般的な弱さだけでなく、限られた小駒の数のせいで黒は反撃策を見つけるのに支障をきたしている。例えば 14…e5 は白を作戦からそらすのに十分積極的なように見える。しかし白には 15.Qf3! という手があり、例えば 15…g6 16.Qd5+ から dxe5 で白が確実に少し優勢になる。

 黒は 14…Qe8 15.Qc2 g5!? で e2-e4 を遅らせるようにすることができる。この手は 16.e4 f4! のあと王翼を攻撃する黒の意図を表している(この進攻したポーンは 17.gxf4 gxf4 18.Nxf4 Bxd4! のために安全である)。その主要な着想は e2-e4 突きから生じるe4またはf4での交換を避けることである。もし交換になれば中央列を白のルークが使えるようになって白を助けることになる。同時に黒は自分の駒のために王翼の列を素通しにしようとする。しかし 15…g5 に対して白は 16.f4! Qg6 17.Rfe1 と指すことができ、e2-e4 突きが妨げられないので白の優勢な局面である。黒はe列に問題を抱えることになる。

14…Bg5

(この章続く)

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后印防御の指し方(063)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

7…Ne4 8.Qc2 Nxc3 9.Qxc3

 白は 9.Ng5 と指したいところである。この手は1手でh7とb7とを当たりにして今ではもうおなじみの一撃だが(9…Bxg5 10.Bxb7)、ここでは 9…Nxe2+! のためにうまくいかない(10.Qxe2 Bxg2 または 10.Kh1 Bxg2+)。

9…f5

 この手に代わる面白い着想は 9…Qc8 で、避けられないビショップ同士の交換のあと …Qb7 と指す。c8のクイーンはe6の地点も見張っていて、黒は恐れることなく …d7-d6 と …f7-f5 を指すことができる。白は冷静に展開を続けて 10.Bf4 または 10.b3 と応じるのが良い。例えば 10.Bf4 d6 11.Rfe1! f5(さもないと e2-e4 と突かれる)12.Rad1 で中央に駒を集中させる。その意図は例えば 12…a5 13. a3 a4? 14.c5! で一気に黒を吹き飛ばすことができるようにすることである(14…dxc5 15.dxc5 Bxc5 16.Be5! Rf7 17.Ng5)。

 典型的な后印防御の手順は特にフィアンケット戦型では穏やかで控えめなように思われることがよくある。しかしその手順は非常に精密で、上の手順のように一つの失着で急に一方的な局面になってしまうことがよくある。

10.b3 Bf6 11.Bb2 d6

(この章続く)

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后印防御の指し方(062)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲) (7.Nc3 の代わりに)7.b3 の局面

 白は Nc3 より前に Bb2 から Qc2 と指すことができれば、…Ne4xc3 の交換をさせて黒を助けることなく、いずれ到達する11手目の局面に似た局面を達成する。白にとっては残念ながら自分のやりたいことをすべてできるわけではない。黒はこの布局の非常に早い段階では普通は自分にとって危険すぎる中央で動く手の一つをここで指すことができる。

 例えば 7…c5! は、白が d4-d5 突きを十分に支援できず黒に好手も用意されているのでここでは良い手となる。その好手とは 8.d5? exd5 9.Nh4(ここまでは以前に見たことのあるほかのいくつかの局面のとおりである)9…Ne4 から …Bxh4 だけでなく …Bf6! の狙いのことで、白は b2-b3 と突いているせいで戦力損になる危険にさらされている。7…c5 と積極的に突くのは適切で、8.dxc5 bxc5! のあと …d7-d5 と …Nc6 で、または 8.Bb2 cxd4 9.Nxd4 Bxg2 から 10…d5 で、黒が好調になる。

 黒は 7…d5 でもc3に白ナイトがいないので白が中央での黒の手に効果的に反撃できなくて指しやすい。白は黒のdポーンに対して通常はできるような圧力をかけることができず、そのため黒は 8.cxd5 exd5 9.Bb2 Nbd7 のあと …Re8 から …Bf8 でも、8.Bb2 dxc4! 9.bxc4 c5! でも有望である。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(061)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2
白 T.ぺトロシアン
黒 M.ボトビニク
世界選手権戦24番勝負第19局、モスクワ、1963年

1.c4 Nf6 2.Nc3

 白は早く c2-c4 と突くのを避けあとで初めて正規の后印防御の陣形にすることがある。ここでは d2-d4 突きを避けている。このような出だしにはいくつか利点がある。…c7-c5 によってdポーンを早速攻撃される煩わしさを避けているし、もっと楽に e2-e4 と突ける。それに …Bb4 を気にする必要がないのは、dポーンを突いていないのでこのビショップがc3のナイトを釘付けにすることにならないからである。しかし実戦は7手目までには正規の后印防御に移行した。

2…e6 3.Nf3 b6 4.g3 Bb7 5.Bg2 Be7 6.O-O O-O 7.d4

 白の手順の一つの不利は后翼ナイトをc3に跳ねない選択肢を放棄していることである。以前に触れたように白は后翼ナイトを展開しないでおくことにより黒の解放の捌きの …Ne4xc3 を防ぐことができる。ほかの手段の一つは 7.b3 から始まる(正規の手順を仮定している)。

 (7.Nc3 の代わりに)7.b3 の局面

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

「ヒカルのチェス」(371)

「Chess」2015年3月号(2/3)

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ジブラルタル・オープン

マシュー・ラン

B.アドヒバン – H.ナカムラ
第5回戦

 ナカムラは布局を彼らしく戦闘的に指してきて、アドヒバンは既に指しにくくしていた。

15.d5?

 これは大ポカで、ナカムラに6段目の連結パスポーンを贈呈した。代わりに 15.Bd2 ならまだ十分戦えた。15…cxb3(15…Nxd4 なら 16.Bxc4 Bxg2 17.Rg1 で白キングはそれほど危険でない。黒は 17…Nf3+ 18.Ke2 Nd4+ 19.Ke1 Nf3+ で引き分けにするしかない)16.Qxb3 Nxd4 17,Qc4 となれば形勢不明のようである。このあと …Nc2+ で交換損を取り戻すのは白に双ビショップと働きに優る駒という代償を与える。

15…bxc3 16.dxc6 Qxd1+ 17.Kxd1 cxb3 18.c7 Kd7 19.Ra3 b2 20.c8=Q+

 これで先手でc3のポーンを取ることができるが、ナカムラはそれでも戦力得で收局みたいな局面に持ち込む。

20…Kxc8 21.Rxc3+ Kd7

22.Bd3

 22.Rd3+ の方が受け切れそうだが、黒のbポーンをからめ取るには貴重な手数をかけなければならない。22…Bxd3(22…Ke7 には 23.Kc2 がある)23.Bxd3 Nf6 24.Kc2 Rb8 25.Rb1 Ng4 でf2のポーンが落ちる。

22…b1=Q+ 23.Bxb1 Bxb1 24.Rb3 Be4

 そして黒は大して苦労せずに勝ちにつなげた。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(060)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒はここで自分の攻撃部隊に立ちはだかっている最後の白ポーンを取り除く 29…Rxh4+ に誘われるかもしれない。しかし白のクイーンはまだ防御の役に立ち、29…Rxh4+ 30.Nxh4 Qxh4+ 31.Qh3! とキングを助けるためにすぐに駆けつける。黒は別の着想が必要である。

29…Ng5!

 もちろん読者は白が 30.Rg1 で勝つことを狙っていたことは分かっていただろう。この黒の手は 30…Qh3+ の狙いによってそれを止めつつg列をふさいでいる。29…Ng5 の主眼は2手後に明らかになる。

30.Nxg5 f3!

 これでナイトがfポーンを取れば、上図と同じでも黒のナイトとfポーンがない局面になる。この違いにより黒は 31.Nxf3 Rxf3! から 32…Rxh4+ と指すことができる。

31.Qxf3

 クイーンを捨てても白は助からないが、黒はもう2、3手先まで読んでおかなければならなかった。

31…Rxh4+ 32.Qh3

 32…Rxh3+ と取ってくれるなら白は 33.Nxh3 でまだ指す余地がある。黒の攻撃を乗り切り2ルークで抵抗することができる。しかしその機会は得られない。

32…Qxg5!

 これが最後の要点である。黒は白のクイーンおよびナイトを得る。白は 33.Rg1 でクイーンを取り返そうとしても 33…Rxf2+ があるのでできない。白には選択肢が一つしか残されていなかった。

白投了

(この章続く)

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后印防御の指し方(059)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ここでの狙いは 26…Qh3+ 27.Kg1 g4 28.Nh4 Rxh4! から …f4-f3 である。黒の攻撃は複数の地点に狙いをつけているので成功している。ある場合は狙いはh2であり、別の場合はg2であり、手順によってはh3かf2で詰めることができf1の場合さえある。実際白がh列の弱点を 26.Rh1 で守れば、黒は 26…Qh3+ 27.Kg1 fxg3(27…g4 は 28.Ne1! fxg3 に 29.Qxg3! があるので良くない)28.fxg3 g4 でf列から侵入する(29.Nh4 Rhf6)。

26.h4

 この手はうまくいかない。黒は少し読んでみるだけでこのキング翼の明らかな弱体化にどのようにつけ込んだら良いかが分かってくる。

26…gxh4

 これに対し白がナイトで取り返せば、黒にはキング翼をふさぐ主題を用いた妙手筋がある。27.Nxh4 f3+! 28.exf3 Nf4+! 29.gxf4 Rg8+ から詰みになる。

27.Qc3+ Kg8 28.gxh4

 白クイーンがd3を離れたので、白は上記の手順を考えてみることができる。28.Nxh4 f3+ 29.exf3 Nf4+ のあと白のキングとクイーンが両当たりにならないので 30.Kh2 と指すことができそうである。しかし 30…Qf5!(白の27手目のためにこの手が可能になっている)で 31…Qh3+ を狙われるので見込みがない。

 ほかの受けは 28.Rh1 でh4のポーンを釘付けにする手しかない。しかし 28…h3+ で黒の勝ちになる。

28…Qg4+ 29.Kh2

(この章続く)

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布局の探究(137)

「Chess Life」1995年11月号(6/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

石垣か牢獄か(続き)

 B.1.d4 Nf6 2.e3

 (2)2…g6

 キング翼ビショップのフィアンケットはどんなキング翼インディアン防御の愛好者の心も愉快にさせるものだ。白の危険なキング翼攻撃の可能性は低く、中央で黒が「自分の本領」を発揮する見通しはことのほか良い。

3.f4 Bg7 4.Nf3 c5

 真のキング翼インディアン防御派は次にどう指そうか考える前にとりあえず 4…d6 から 5…O-O と指す方を好むと思う。本譜の手順を採用したのはこの手順の好局が2局あるからである。

5.c3 d6 6.Bd3

 6.dxc5 dxc5 7.Qxd8+ Kxd8 8.Ne5 Be6 は黒の中央のキングにつけ込めないので大したことがない。6.Bc4 も無害で、例えばハンホルム対アブロシン戦(郵便対局、1958-60年)では 6…O-O 7.O-O Qc7! 8.Qe2 Nbd7 9.Nbd2 e5 10.fxe5 dxe5 11.d5 e4 12.Ng5 Qe5 13.Ne6 fxe6 14.dxe6 Kh8 15.exd7 Bxd7 となって黒がやや優勢だった(白の展開されていないクイーン翼ビショップのせいで)。主手順としてヘンニネン対ラルセン戦(バーヘニンゲン・ゾーナル、1957年)の手順を追う。

6…O-O 7.Nbd2 Nd5

 GMラルセンは白の処罰に着手するのを待つことができなかった。本手の布局原則の精神にのっとっているのは 7…Nc6 あるいは 7…b6 のあと 8…Ba6 または 8…Bb7 である。

8.Ne4 cxd4 9.exd4 Bf5 10.O-O b5 11.Ng3 Bxd3 12.Qxd3 Qb6 13.f5 Nd7 14.Kh1 Rac8

 GMホルトはこの局面をいい勝負と判定している。そうは思うが、それでも白のクイーン翼ビショップの斜筋が素通しなので白が 7.Nbd2 のあとの局面にしてはうまくやっているという感じを隠せない。

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后印防御の指し方(058)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 これは 18.Rd2 が無意味だったことを認めた手である。

22…Kh8 23.Nh4

 この手は何手か前なら黒からのキング翼に対する圧力をいくらか弱めたのだが、ここではその攻撃を速めさせるだけである。白は黒が攻撃の決め手を見つけることができるかどうか見極めるためにもう少し様子を見た方が良かったかもしれない。23.Rd2 または何かほかの「パス」する手のあと黒は 23…Rh6 と指すことができるが、24.h3 のあとまだかなり手数がかかる。

 このあとのビショップ同士の交換は、h3の最後の守り駒が取り除かれるので黒にとって非常に役立つ。これは白が …Qxh2# に対する受けとして h2-h3 と突けなくなることを意味する。

23…Bxg2 24.Kxg2

 そのためキングがh3の地点を見張る。白がナイトを中央の戦いに復帰させるのに通常頼りにする 24.Nxg2 の捌きのあと、黒は前述の …f4-f3 突きを用いることができる。例えば 24.Nxg2 f3! 25.exf3 Qh3!! となれば 26…Rh6 から …Qxh2+ に受けがない。24…f3 の意味は 24…Qh3? 25.gxf4! で白クイーンが黒クイーンに当たりになるので、それを防ぐためである。

 これが前に黒が …fxg3 を指さなかった理由の説明である。その取りを無くすことのできる白の唯一の手段が gxf4 だが白自身のキング翼を乱すことになるのを黒は知っていて、できるだけ長く保留していた。

24…g5

 これで白ナイトが引き下がらなければならない。しかし少なくとも白キングは黒クイーンをh3から1手か2手の間遠ざけておくことができる。

25.Nf3 Rh6

(この章続く)

2015年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(057)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒はここでは確固とした優勢を築いている。もっともマスターでさえ判断を誤ってもおかしくはないかもしれない。黒は中盤戦の主要な選択肢をすべて持っている。王翼では …Rf6-h6 から …Qh5 で攻撃することができ、中央では …Rae8 から …Ng5 で攻撃でき、后翼では …a7-a5 で攻撃できる(b4-b5? はc5の地点を黒ナイトに明け渡すので)。白は c4-c5 と突く準備ができていなくて、e2-e3 で中央を開放しようとするわけにもいかない。これは現状のポーン陣形またはの望むどんなポーン陣形の変更とも付き合っていかなければならないことを意味している。

 f4の黒ポーンが強力なのにはいくつか理由がある。もちろん黒は …fxg3 と取ることができるが、ある時点で …f4-f3! と突いて白が防御地点に来るのを防ぐこともできる(これについてはあとでもっと触れる)。また、このポーンは白が e2-e3 から Ne1-d3 で王翼を固めるのをやめさせている。

18.Rd2

 この手はほとんど何もしていない。白はナイトを動かすことにより小駒を交換する方が良いだろう。18.Ne1 Bxg2 から 19…Rf6 で黒はまだ優勢である。または白が 18.Nd4 で二組の小駒を交換しようとすれば、18…Bxg2 から 19…Ng5! でやはり優勢である。しかし交換により少なくとも圧力は緩和される。本譜の手は黒を少し自由にさせた。

18…Rf6 19.Qc3 Raf8 20.a3 Qe8!

 黒の作戦はきわめて明快である。それはルークをh6にクイーンをh5に持ってくることである。そしてそのあとの狙いは …Bxf3 から …Qxh2 の詰みである。白はhポーンを突くことによってしかh2の地点を守れないが、h3に突けば …Ng5 にもろくなり、h4に突けば …g7-g5 または同様の攻撃にはまる。

21.Qd3 Qh5 22.Rdd1

(この章続く)

2015年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(056)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 この局面の判断材料は二つある。

 1)中央が閉鎖されたままならばb7の黒ビショップはどうなるのだろうか。中盤戦に向けて両者にはそれぞれ小駒が2個ずつしか残っていない。そして黒の小駒の一つはd5の敵ポーンよって窒息させられている。しかしもし …e6-e5 と突くことができれば、黒はすぐに …Bc8-d7 と …Nf7 で両方の小駒を働かせることができる。そのあとは …f5-f4 または …e5-e4 から …Ne5 で中央でポーンを進攻させる用意ができる。

 2)白がe6でポーン交換をすればどうなるのだろうか。黒にはもうポーンによって守られない地点、具体的にはe6とd6ができ、d5はeポーンによる大切な支えを失う。しかし 15…d6 で黒は駒中心の戦いに卓越する。c5にナイトを据えてまたe4の地点に集中できる。結局白はビショップ同士を交換しなければならず、王翼が弱体化する。最後に、dxe6 による中央のポーンの交換で黒は、少なくとも白が半素通しd列から得るのと同じくらい半素通しe列で活動性が得られる。

 だから黒は …e6-e5 と指すことになろうとなるまいとまったく安泰のように思われる。たぶんここでの白の最善手は 16.e3で(16…f4 を防ぐため)、16…e5 のあと融通性のある作戦は 17.Nd2 から 18.f4! である。

16.dxe6 Nxe6

 これでこのナイトはc5やg5に跳ぶことができるので、f7よりもe6の方がはるかに良い地点である。

17.b4?

 この手は少なくとも黒のナイトをc5に来させない。それにどうせ白が指すべきはずの手のように見える。d列だけでは何も攻撃するものがなくd6は頑丈なのでたいしたことがないので、白は自分の駒のためにもっと素通し列が必要である。もしかして白が c4-c5 と突くことができれば・・・

17…f4!

(この章続く)

2015年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(055)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

13…Nd8!

 ここまで来れば黒の構想を理解することができる。黒のナイトはc6にとどまるつもりはなく、はるばるキング翼に、具体的にはf7の地点を目指していた。そこなら中央でのポーン突き(…e6-e5)や敵キングに対するポーンの侵攻(…g7-g5-g4 から …Ng5)を支援することができる。その一方でd8ならb7のビショップを守って、白にこのビショップに向けた戦術の計略を何もやらせない。

 白はここで白枡ビショップ同士を交換しなければならないことを受け入れるべきである。だから最善の選択は 14.Ne1 である。

14.d5?

 この手はほかの多くの局面では好手となるだけに、ここではさっぱり迫力がないのは意外である。もし黒が取ってくれば、白はポーンで取り返して素通しになったばかりのc列でc7に対して大きな圧力をかける。そのあとはナイトをd4に据えて最も重要な地点のいくつか、特にc6、f5そしてe6を監視する。

 しかし黒は正しく対応すればこのもくろみを覆すことができる。

14…Bxb2 15.Qxb2 d6!

(この章続く)

2015年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(054)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ナイトはこの地点では具合が悪そうに思われる。クイーン翼布局には「ナイトでcポーンをふさぐな」という大まかな指針がある。ここではナイトが白の中央に対し実際には圧力を加えていないし、常に d4-d5! で追い払われる危険性があるので、この指針は当てはまっていそうである。本局で起こることを(11…Nc6 の代わりに)11…Qe7 12.Qd2! から 12…Nc6?! のあと起こるかもしれないことと比べてみるとよい。白は既に中央で進攻する用意ができていて、13.d5! から 14.Nd4! でe6とf5に大きな圧力をかけることができ、そのあと e2-e4 突きがたちまちやってくる。

12.Rad1

 これは良い手待ちである。黒は白がdポーンを突いて素通し列を作るのを防げない。しかし白はクイーンが対角斜筋を離れるまで d4-d5 と突くことができないので(12.d5??? Bxc3)、12.Qd2 は考える価値がある。12.Qc2 もそうで、Ne1 のあと e2-e4 突きを助ける意図である。

12…Qe7

 クイーンが動いて最下段が空き …Rae8 と指せるようになり、黒ナイトが下がらなければならない時d8に格好の地点ができた。

13.Qd2

 すべて作戦どおりである。白の希望は次の手で d4-d5 と突き、そのあと Nd4 から e2-e4 と指すことである。中央の列の素通しはほとんど確実に展開に優る側に有利になる。白の作戦は棋理に合っているが、この具体的な中盤戦ではあまり優勢にならない。

 白は直接 e2-e4 と突くのを目指す方が良い。例えば 13.Qc2! が優秀な変化のようである。もし黒が実戦のように 13…Nd8 と指せば、白は 14.Ne1 でe4にさらに圧力をかけることができる。そして白枡ビショップ同士の交換のあと、白は e2-e4 からe列を素通しにしてクイーンと王翼ルークが使えるようにする。だから白は d4-d5 を保留しあとで c4-c5 突きでc列を素通しにする選択肢も残している。

 注意してほしいのは 13.Ne5 にかかわる戦術の策略である。この手も白枡ビショップ同士の交換になるが、白にとって有利にならない。黒は 13…Nxd4! と取って、e2での敵キングとクイーンの両当たりを狙うことができる。14.Qxd4 Bxg2 15.Kxg2 d6 のあと黒は相手の圧力を無効にしている(16.Nc6 Qe8)。

(この章続く)

2015年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(370)

「Chess」2015年3月号(1/3)

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チェス時評

編集長 IMマルコム・ペイン

締め切り間際に・・・

 ヒカル・ナカムラはジブラルタルからの好調を維持して、チューリヒ・チェスチャレンジで早くも首位に立った。米国ナンバーワンはセルゲイ・カリャーキンとの記憶に残る試合を制して 2½/3 と突っ走っている。

H.ナカムラ – S.カリャーキン
チューリヒ、2015年
イギリス布局

1.Nf3 Nf6 2.c4 c5 3.Nc3 Nc6 4.d4 cxd4 5.Nxd4 e6 6.g3 Qb6 7.Ndb5

 この手は Nd6+ で黒の黒枡ビショップを取り除くことを意図している。

7…Ne5 8.Bf4 Nfg4

9.Qa4

 白は黒からの狙いをずうずうしく無視した。9.e3 と受けると 9…Qc6 10.h3! a6 11.hxg4 axb5 12.Rh5 Nf3+ 13.Ke2 Ng1+ となって白は引き分けにしてもよいしキングを堂々と行進させることもできる。

9…g5

 9…Qxf2+ なら 10.Kd2 Qc5 11.Ne4 で白が好調で、このあとは 11…Qc6 なら 12.Bg2 、11…Qb4+ なら 12.Qxb4 Bxb4+ 13.Kc2 で二通りの狙いがある。

10.Bxe5 Qxf2+ 11.Kd1 Nxe5 12.Nc7+ Kd8 13.Nxa8 Qd4+ 14.Kc2 Nxc4

15.e4!

 白はルーク得になっていて、15.Kb3 Nd2+ 16.Kc2 Nc4 で引き分けにすることができる。しかし当然ながら黒にやらせてみることにした。

15…Ne3+?

 カリャーキンは研究手順を思い出すことができなかったか苦境を脱する手を読んで見つけることができなかった。引き分けに至る道は長く難解である。15…Qd2+ 16.Kb3 Qxb2+ 17.Kxc4 Bg7 18.Qa5+(18.Ne2? は 18…b5+! 19.Qxb5 d5+ 20.exd5 Qc2+! 21.Kb4 Bf8+ 22.Ka5 Qd2+ 23.Ka4 Bd7

で黒の勝ちになる)18…b6 19.Qxg5+ f6

ここで 20.Qxg7 と取ると 20…Ba6+ 21.Nb5 Bxb5# までとなるので白は 20.Qb5 と指すが 20…Ba6! 21.Qxa6 f5! がしのぎの筋となる。白はルーク、ビショップそれにナイトを得しているが勝てない。このあとは 22.Rb1 Qxc3+ 23.Kb5 Qc5+ 24.Ka4 Qc2+ 25.Rb3 Qxa2+ 26.Kb4 Bf8+ 27.Kc3 Bg7+ 28.Kb4 Bf8+

が想定される。

16.Kb3 Qd2 17.a3! Qc2+ 18.Ka2 Qxa4 19.Nxa4 Nxf1 20.Rhxf1 b5

 もちろん黒は残りのすべての駒が最下段にいるのでなければうまくいっているところである。

21.N4b6! axb6 22.Nxb6 Bb7 23.Rxf7 Bc6 24.Rd1 Be7

 29…Ke8 なら 30.Rdxd7 Bxd7 31.Rxd7 で白の勝ちになる。

25.Rf3 Kc7

 ここでナカムラはあっさり終わらせる手を見つけた。

26.Nxd7! Rd8

 26…Bxd7 なら 27.Rc3+ Bc6 28.Rdc1 で勝つ。

27.Rc3 1-0

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(053)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

7…Ne4

 しかしここでの 7…Nc6 は 8.e4! の待ち構えるところで、白が絶好の態勢になる。7…d6 も 8.Qc2! から 9.e4 で白が同様の局面になる。白はポーンをe4に進めることになれば、e4-e5 から Ne4 で黒駒を押し込めることを狙う。

 ほかの局面では指せた …c7-c5 突きだが、ここでは 8.d5! exd5 9.cxd5 とやってこられるために疑問である。この場合白は対角斜筋での釘付け(9.Nh4)を用いるまでもなく、既に e2-e4-e5 の狙いがある。

8.Qc2 Nxc3 9.Qxc3

 白はあとでクイーンをこの地点からどかすので、9.bxc3 の方が良くはないだろうか。このクイーンはc2にいたままならば e2-e4 突きを支援するし、戦力得になる 10.Ng5! も狙える(10…Bxg5 11.Bxb7)。それにc列の二重ポーンはd4の地点を余計に守っているので光明になり得る。

 この局面は例えば 9…f5 10.d5 Qc8! 11.Nd4 c5! 12.Nb3 d6 から可能ならば …e6-e5 で非常に激しくなることがある。c3の白ポーンはこの局面では大きな弱点でないが、c4のポーンはそうなり得る。

 9.bxc3 の潜在的な弱点につけ込む別の手段は 9…Nc6 である。これは 10.e4 を防ぐためには何もしていないが、その目的は 10.e4 Na5! 11.Nd2 Ba6 のあと白を攻撃からそらすことである。c4の白ポーンは非常に弱くて、以降の …Rc8 から …c7-c5xd4 のあとほとんど守れない。白はc4を攻撃できる駒の一つを(10.e4 の代わりに)10.Nd2! Na5 11.Bxb7 から 12.e4 という手段で交換した方が良い。それなら優勢な中央ポーンにものを言わせる可能性はかなり高くなる。

9…f5

 これは浮きポーンを甘受しても中央で攻勢を図る黒の最後の機会かもしれない。代わりに 9…d5 は 10.Bf4 か直接の 10.cxd5 exd5 11.Rd1 Nd7 12.Bf4 のあとd列とc列のルークにより攻撃にさらされる可能性がある。あとの場合 12…c5 で黒はこの布局での通常よりももっと自由になるが、13.dxc5 bxc5 14.Qc2 から 15.Rac1(e2-e4! のあと Ne5 かすぐに Ne5 の意図)で白の優勢は確実である。

10.b3 Bf6 11.Bb2 Nc6

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(052)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲) 7.Qc2 の局面(参考図)

 ここで黒が機械的に 7…Ne4 と指せば白は 8.Nfd2! で罠を仕掛ける。黒ナイトは非常に不安定な斜筋の中央で急に立ち往生し、取られるのを避けるためには軽やかにステップを踏まなければならない。例えば 8…Nxd2? と取ると 9.Bxb7 Nxf1 10.Bxa8 で黒の戦力損になる。8…Nd6 でb7のビショップを守って罠を避けることはできるが、9.e4! でひどいことになる。

 7.Qc2 のあと黒は 7…d6 のようなおとなしい手では 8.Nc3! から 9.e4 を招くので積極的に指さなければならない。幸い黒には 7.Qc2 につけ込む手段がある。この手は 7.Nc3 のような展開の手ではないので、黒は局面を開放するのに必要な余裕があり白クイーンは巻き添えにされるかもしれない地点にいる。

 例えばここで 7…d5 と突くのは 8.Ne5 c5! で中央が清算されて黒の展開に役立つので良い目のつけどころである。9.dxc5 Bxc5 10.Nc3 のあと黒は紛らわしい 10…Qc8! でb7のビショップを守りc4のポーン取りを狙うことができる。11.cxd5 なら 11…Nxd5 12.Nxd5 Bxd5 13.Bxd5 Bxf2+! でc2の浮いている白クイーンを取ることができる。

 白クイーンを困らせる手段はこれだけではない。黒は 7…Nc6 で 8…Nb4! の狙いで 8.e4 を止めることができる。さらに 8.Nc3 には 8…d5! 9.cxd5 Nb4! から后翼ナイトでd5のポーンを取り返すことができる。黒はそのあと …Qc8 から …c7-c5 と指して良い展望が開けるし、展開で先行できるかもしれない。

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

布局の探究(136)

「Chess Life」1995年11月号(5/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

石垣か牢獄か(続き)

 B.1.d4 Nf6

 白が石垣を目指していることを黒が知っているなら(またはうすうす感ずいてさえいれば)、本譜の手は 1…d5 よりも気の利いた選択になる。そもそも白は石垣でe5の地点の制圧を目指すので、どうして黒はわざわざ初手からそこを弱める必要があるのか。たとえ黒がクイーン翼ギャンビット拒否またはスラブ防御の使い手だとしても、例えばクイーン翼ギャンビットなら 2.c4 e6 3.Nc3 d5、スラブ防御なら 2.c4 c6 3.Nc3 d5 でいつも移行することができる。

 残念ながらチェスでは絶対自分の自由にできるというようなことはほとんどなく、黒はトロンポウスキー=ルース攻撃の 2.Bg5 に備えておかなければならない。

2.e3

 もちろん黒はこれに対し 2…d5 で(A)に移行することができる。しかし私の考えでは石垣マニアは 2…e6 や 2…g6 に立ち向かう方が嫌である。

 (1)2…e6

 黒はこれによりe5を弱めることなく古典の領海に踏みとどまるつもりである。

3.f4 b6 4.Nf3 c5 5.c3 Be7 6.Bd3 Ba6!

 黒は非常にすぐれた手順を用いている。白の優良ビショップと交換したかったのだが、手得になるようにそれがまず動くまで待っていた。白の選択肢は交換するか交換させるかである。

 (a)7.Bxa6 Nxa6 8.O-O O-O 9.Qe2 Qc8 10.e4 Qb7 11.Nbd2 cxd4 12.e5(12.cxd4 Rac8 も気が進まない。白は展開でずっと遅れている。)12…Nd5 13.Nxd4 f5!(ムドロフ対ボトビニク、ソ連、1919年)展開の優位と白の「不良」ビショップのために白が既に少し優勢である。

 (b)7.O-O Bxd3 8.Qxd3 d5 9.Nbd2 O-O 10.Ne5 Qc8! 11.Rf3 Qa6! 12.Qc2 Rc8(ティパリ対ポルティッシュ、ハンガリー、1955年)黒はキング翼での白の希望をつぼみのうちに摘み取ってクイーン翼で主導権を得た。やはり展開の優位と白の劣ったクイーン翼ビショップのために黒が優勢である。

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カテゴリ: 布局の探求2

后印防御の指し方(051)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1
白 A.マイルズ
黒 V.コルチノイ
ベイクアーンゼー、1978年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.g3 b6 4.Bg2 Bb7 5.c4 Be7

 ここでの変わった顧みられない手は 5…g6 である。この手で王翼防御のようになるが、黒は …d7-d6 の代わりに …e7-e6 と指している。この違いにより黒は黒枡が弱点になりそうだが(例えばf6)、重大な弱点であるとはまだ証明されていない。もし黒が自駒のために中央を十分確保することになれば、白は黒の弱い地点に十分つけ込めないかもしれない。例えば 6.O-O Bg7 7.Nc3 O-O 8.Qc2 d5 となればつばぜり合いの試合になる。たぶんこの局面につけ込む白の最善の策は 8.d5! から Nd4 である。

6.O-O O-O 7.Nc3

 この手で黒が有益な …Ne4 を指すことができ、ほかの状況では …Ne4 が白にとって問題になったので、白はe4の地点を補強する別の手を考えるもっともな理由がある。思いつくのは 7.Qc2 である。

 7.Qc2 の局面(参考図)

(この章続く)

2015年05月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(050)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 黒が …c7-c5 を考えるのは既にちょっと手遅れになっている。その着想の機会は以前にあったし(5、6それに9手目)、中盤戦にもまたあるかもしれない。しかし今のところは黒がそのような激しい手を指す用意ができていないだけのことである。11…c5 12.Qd2! のあと黒は指す手に窮する。例えば 12…cxd4 なら 13.Nxd4 から Nb5-d6!、12…Na6 なら 13.dxc5 Nxc5 14.Bxf6 から 15.Rfd1 となる。

 黒のナイトの問題に対する二つの最も自然な解決策の一つは、…d7-d6 によりd7の地点を与えることである。そしてもう一つはすぐにc6の地点に展開することである。どちらにも欠点があるが、黒駒を中央に向け続けるという利点は確かにある。

 以前から指されている 11…d6 の着想は …Qe7、…e6-e5 そして …Nd7 と指すことにある。数多くの着想でこの布局に貢献したニムゾビッチは、同様の局面で …Qe7 から …g7-g5!? と指すことも好んだ。どちらにしても黒はd列の開通に絡む危険性とe6に対する白の攻撃とにことに警戒しなければならない。f5、e6そしてd6の黒ポーンは非常にもろく、なじみの d4-d5 突きの着想を始めとするあらゆる種類の攻撃にさらされる。

 自然な手順は 11…d6 12.Rad1 Qe7 である。そしてついにここが 13.Ne1 で 13…Bxg2 Nxg2 と交換するいい機会のようである。白はビショップが空けたばかりの斜筋にクイーンを据えることができる。例えば 14…Nd7 15.Qf3! から e2-e4 または厄介な襲撃の Qb7 がある。この場合黒は 14…Nc6 と指す方が良い。

 しかしそもそもどうして(11…d6 の代わりに)ナイトをそこへ動かさないのだろうか。確かにそこはビショップの利きをふさぐし d4-d5 を誘うかもしれないのでナイトにとって最も効果的な地点でない。しかしc6の地点はダビド・ブロンシュテインが呼んでいたようにほかの地点への跳躍台にすぎない。このナイトはd8に下がってあとでf7に行くことができる。あるいはe7に行ってキング翼攻撃に加わることができる。さらには 11…d6 の代わりに 11…Nc6 で黒は大きな困難になるかもしれないe6の弱体化を避けることができる。白は Ne1 と引き Nxg2 と取り返しいずれこのナイトをf4に跳ねてe6に狙いをつける。この地点はe6を攻撃し d4-d5 突きを支援する好所である。

(この章続く)

2015年05月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(049)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

10…Bf6 11.Bb2

 この局面はユーゴスラビアの初めての有名な選手のミラン・ビドマールによって奨励された。白は交換によって相手を楽にさせるようなことはしない。それに中央の形を決めて黒駒に適切な地点を見つけさせるようなこともしない。例えばここで黒は数手の間避けてきたナイトをどうすべきかという問題に対処しなければならない。そしてクイーンと后翼ルークはどうするのか。白のルークがe1とd1で(または白が c4-c5 と突けばd1とc1で)やることがいっぱいある間、黒の大駒は将来性が不透明である。

(この章続く)

2015年05月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(048)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 10.Ne1 の局面

 このビショップ同士の交換の誘いは、キャッスリングしたあとならば布局のいつの時点でもできる。黒の白枡の支配が強すぎるので、白はここで交換を申し出て中央での意図する動き(いずれ d4-d5 か e2-e4、またはその両方を突く)を容易にしようとする。しかし 10.Ne1 はナイトをちょっとの間中央から離れさせるので、白は 10…Bxg211.Nxg2 と取り返すことによりナイトを中央の近くに持ってくる。しかしこのナイトはf3にいたときにはdポーンを守っていたが今はもう守っていないので、黒はすぐに 11…Bf6 と襲いかかる。

 白の問題は d4-d5 または e2-e4 と突く意図の Qc2 が、単純にdポーンを取られてしまうために指せないことである。代わりに d4-d5 または e2-e4 と突くつもりで Qd3 と指すことができ、同時にdポーンも守っている。しかし黒がナイトでd4に加えられる圧力を考えればd3のクイーンはすわりが悪い。例えば 12.Qd3 Nc6 のあと 13.d5 と突くのは、13…Nb4 14.Qb3 Na6! から 15…Nc5 とやってこられるために時期尚早である。黒は二つの小駒が絶好の地点にいるので何も心配がない。これは d4-d5 突きがうまくいかない場合の一つである。

 白は 12.Qd3 の代わりに 12.Be3 と改良することができる。それに対して黒が 12…c5 と突くのは、白が 13.Qd2! のあと素早くd列を占拠するので危険すぎる。つまり黒は 13…cxd4 と交換するかcポーンを守るかしなければならないが、どちらも弱い手である。だから 12…c5 の代わりに …e6-e5 と捌いていくべきである。例えば 12…d6 または 12…Nc6 のあと 13…Qe8 が最も適切なようである。

 10.Nd5 や 10.Ne1 のあと白は少し優勢になる。クイーン翼ビショップをフィアンケットする本譜の手はもっと優勢になろうとする手である。

(この章続く)

2015年05月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(047)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

10.b3

 黒に …Bf6 と指す手順が回れば、白は自分の都合のよいように d4-d5 と突くことができなくなる。実戦例1に見られるように、白にとって d4-d5 と突くのが危険になるときがある。しかしここでは本手順中初めて白が戦力損の危険なく d4-d5 と突くことができる(例えば 7.d5 と比較せよ)。

 10.d5 exd5 のあと白は、同様の局面でできたようには 11.Nd4 と指せない。理由は 11…c5! から 12…d4 で白クイーンが当たりにされ …Bxg2 と取られるからである。白は戦力の均衡を保持したいなら 11.Ne1 と指さなければならない。11…Bf6 には 12.Qd2! でまったく申し分なく、黒に 12.Bxd5+ Bxd5 13.Qxd5+ で勝つ狙いに備えさせる。

 10…exd5 の代わりに黒はまず 10…Bf6 で敵クイーンを当たりにすることにより自分のポーンの結合を保つのがよい。もし白が e2-e4 突きで中央を支援するためにクイーンをc2に戻せば、黒は 11…c6! で白の中央を効果的に清算することができる。例えば 12.dxe6 dxe6 13.Bf4 Qe7 のあと …e6-e5 で黒が好調になる。だから 11.Qd2 の方が良く、11…c6 には 12.Nd4! と応じて中央に戦力が集中して絶好の態勢になる(12…c5? 13.Nb5)。もし白が中央の争点、すなわち中央のポーンを交換するか突き越すかの自分の選択を維持することができれば優勢になる。

 10.d5 Bf6 11.Qd2 Qe8 のあとも白が少し優勢なのもこの理由による。白はまたナイトをd4の好所の拠点に据える。そして黒は 12…Bxd4 13.Qxd4 e5 で中央を閉鎖し、自分の展開を完了する手を稼ぐことができる。eポーンに続いてdポーンを黒枡に置くことにより黒は黒枡ビショップのない不利を最小限にする。しかし自分に双ビショップがあり相手にない一つの有利な点は、中盤戦後半か收局でポーンを交換することにより斜筋を素通しにすることができることである。なぜなら素通しの斜筋こそビショップの本領を発揮する所だからである。具体的に何を意味しているのかというと、13…e5 14.Qc3! d6 のあと白は 15.f4! でビショップの将来を改善することができるということである。その要点の一つはもし黒が 15…e4 により交換を避けようとすると、白は 16.b3 から Bb2 で黒キングに通じる対角斜筋を強力に支配する。だから黒は 15…Nd7 と指すのが良い。

 優勢を目指す別の試みは局面を単純化する 10.Ne1 である。

 10.Ne1 の局面

(この章続く)

2015年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(369)

「Chess」2015年2月号(3/3)

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次の一手

準備運動程度

第2問 A.ギリ – H.ナカムラ
ロンドン(ブリッツ)、2014年
 白の手番

中級程度

第13問 M.アダムズ – H.ナカムラ
ロンドン(ブリッツ)、2014年
 黒の手番

解答

第2問 1.Qe6+! 1-0 次のように黒クイーンが素抜かれる。1…Kh7(1…Rxe6 なら 2.Qxf8+ から詰み)2.Nxf8+ Rxf8 3.Qg6+ Kg8 4.Rxf8+ Kxf8 5.Qxd3 ただし平凡な 1.Rxf8+ Rxf8 2.Qe6+! でもよく、2…Rf7 なら 3.Qe8+ Kh7 4.Qh8# までとなる。

第13問 1…Rxa4+! 2.bxa4(2.Kb1 の方が頑固な受けだが 2…Qb4 3.Qc1 e4! でやはり望みがない)2…Qb4 3.Qc1 Rb8 0-1 沈黙の殺し屋。白は成すすべがない。4.Qa3 なら 4…Qb1# までである。

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(この号終わり)

2015年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(046)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 12…Qe7 の局面

 白は 13.Qc2 で敵ビショップの斜筋からクイーンをはずして中央の構築を続けることができるけれども、13…Nc6 14.e4 g6! で黒陣が堅固になる。黒ビショップはいつか e4-e5 と突かれた際にg7に下がれるので安全である。そのポーン突きはe5でのポーン交換のあとそこに非常に弱い白ポーンが残されることになる。白は d4-d5 と突く方が良いが、それも黒陣を正当化することになり、…g7-g6 を正当化することにさえなる。つまり 15.d5 Nb4 16.Bxf6 Qxf6 17.Qd2 のあと黒は 17…e5! と突き、そのあといつか …f7-f5 と突いて白の中央の最弱点であるe4を攻撃する。さらにこの手順で、一時的に閉じ込められているb7の黒ビショップがc8を経由してh3に通じる斜筋で生き返ることになる。注意すべきはこの局面でg2の白ビショップが自身のポーンによって動きを制限されていることで、「不良」ビショップの典型的な例になっている。

 それでは 9…f5 に戻る。

(この章続く)

2015年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(045)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9…c5 の局面

 10年ほど前白の中央に対するこの攻撃は、もっと早い時点での …c7-c5 突きのために通常用意されている軽蔑という言葉と共に見られていた。白は単純な 10.Rd1 で圧倒的な局面にできるものとされていた。なぜなら黒はそのあとの 10…d5?! 11.dxc5! から 12.cxd5 という中央の流動化に無防備で、10…Nc6 11.d5 と追い立てられるわけにもいかなかったからである。そしてもし黒が穏やかに 10…d6 と指せば、白は 11.Qc2!(またも 12.Ng5 Bxg5 13.Bxb7! という策略を狙っている)から 12.e4 で中央のおいしい部分を占める。

 このバラ色の見方は近年覆されてきた。それは新手によるものではなく、黒が …d7-d6、…Bf6 から …Qe7 のあと …Nc6 または …Nd7 と指し、白が e2-e4 と突き后翼ビショップを b2-b3 から Bb2 または Bf4 によって展開した局面の再評価によるものであった。それらの局面はもうそれほどはっきり白が有利だとは考えられていない。(例えば 9…c5 10.Rd1 d6 11.Qc2 Nd7 12.Ng5 Bxg5 13.Bxb7 Rb8 は白が少し優勢だけれども特に危険というほどではない。)

 黒はビショップがf6、ポーンがc5、そしてナイトがc6にあればd4の地点に圧力をかけることができる。そのような局面でもし白がc5のポーンを取れば、黒はたぶんdポーンで取り返してポーン陣形を対称に保ち、d列で弱いポーンを守らなければならない事態を避ける。(黒は5手目または6手目でもっと早く …c7-c5 と突けば、dxc5 には喜んで …bxc5! と応じる。これはそのあとすぐに …d7-d5 と突いて中央を強化することができるからである。しかしここでは白がキャッスリングしていてルークがd1にいるので、黒は …d7-d5 と中央で仕掛ける立場にない。)

 白は 9…c5 のあとでは中央での大きな分け前を保持するが、9…f5 のあとではもうそういうことにはならない。ここでの違いは白が dxc5 かたぶん d4-d5 ですぐに列を素通しにして局面に動的な要素を追加することができるということである。しかし黒はf6のビショップでそのような手順に抵抗する。白は中央での優勢な戦力を用いることを望むなら、クイーンをc3にあまり長く維持することはできなくてd2かc2に下がらせることになる。黒はそのときまでには適切に展開して中央での危機に対処しているはずである。

 想定手順を見てみよう。9…c5 のあとは 10.Rd1 が最善のようである。代わりに 10.Be3 なら 10…Bf6 11.Rfd1 のあと黒は既に敵の不正確な手順を利用して、中央で 11…Bxf3! 12.Bxf3 Nc6! で互角の局面にできる。d4に対する黒の圧力が非常に強いので、白は 13.Bxc6 dxc6 14.Qd3 cxd4 というように圧力と中央を清算してまったくの互角にするのが良い。

 だから 10.Rd1 ですぐにd列に圧力をかける方が良い。例えば 10…Bf6 11.Qd3 で、d7を守ろうとする黒駒の連係を乱すことに期待する。しかしここでさえ黒には適切な応手がある。11…Nc6! 12.dxc5 bxc5 13.Qxd7 Qb6 14.Bf4(白クイーンがc7に逃げられるようにした)14…Rac8! のあと、黒陣は主に 15…Rfd8 とb2に対する狙いと共に非常に活動的で脅威なので、dポーンがないことは大したことではなくたぶんどのみち一時的なことである。

 9…c5 10.Rd1 のあと黒にとって最善の手順は 10…d6 11.b3 Bf6 12.Bb2 Qe7 かもしれない。

 12…Qe7 の局面

(この章続く)

2015年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(135)

「Chess Life」1995年11月号(4/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

石垣か牢獄か(続き)

 A.1.d4 d5 2.e3 Nf6 3.Bd3 [D00](続き)

 (3)3…Nc6!? タラシュ対チゴーリン戦(ヘースティングズ、1895年)

 3…c5 が本当に何の戦略上の危険もなく指すことのできる「一般的な手」なのに対し、cポーンをこんなに早くせき止めるからには納得のいく具体的な理由が必要である。その目的は 4…e5 を狙うことにより 4…Nb4 と跳ぶ手数を稼ぎ白の優良ビショップと交換することである。

4.f4 Nb4! 5.Nf3

 これが普通の手である。しかしハリー・N.ピルズベリーは大会記録誌でこの試合を解説して 5.Be2 Bf5 6.Na3 e6 7.c3 Nc6 8.Nc2 Ne4 9.Nf3 Bd6 「など」と指す方が良いと推奨した。しかし駒の展開がより完璧で積極的なのは黒の方で、白のクイーン翼ビショップは味方のポーンによって閉じ込められていることに注意がいる。

 ショウウォルター対Em.ラスカー戦(ロンドン、1899年)では 5.Bd2 Bg4 6.Nf3 e6 7.Bxb4 Bxb4+ 8.c3 Bd6 9.Nbd2 O-O 10.Qb1 c5 11.Ne5 Bh5 12.O-O Rc8 と進んで、白が不良クイーン翼ビショップの交換に成功しほぼ互角の形勢になった。もちろん黒は 5…Nxd3+ または 6…Nxd3+ で交換を防ぐこともできた。

5…Nxd3+ 6.cxd3

 このような局面での取り返し方は「永遠の問題」である。本譜の手で白はe4の地点を奪い、たぶん半素通しc列で展望が見込める。しかし不如意な二重ポーンという犠牲を払っている。しかし 6.Qxd3 と取るのはもっと手堅くても、屈辱的な互角以外に何の展望もない。例えばゴットシャル対シュレヒター戦(ミュンヘン、1900年)では 6…e6 7.O-O Be7 8.b3 O-O 9.c4 b6 10.Nc3 Bb7 11.Bb2 c5 12.Rac1 Rc8 13.Ne5 Ne4 と進んだ。

6…e6

 ファインは 6…g6 と突く方が好きで、イェーツ対シュレヒター戦(ピエシュチャニ、1912年)の 7.Nc3 Bg7 8.O-O O-O 9.Ne2 b6 10.Bd2 c5 11.Rc1 Ba6 12.Ne5 Nd7 を引用して互角としている。

7.O-O Be7 8.Nbd2

 ピルズベリーはこの手の代わりに 8.Nc3 と指すのが好きだった。実際マーシャル対タイヒマン戦(ウィーン、1908年)では 8…O-O 9.Bd2 b6 10.Ne5 Bb7 11.Rf3 c5 12.Rh3 Rc8 13.Qf3 a6 14.g4 で白の攻撃が強力だった。しかし黒は防御の必要性に無頓着だった。11…c5?! の代わりに 11…Ne8 の方が鋭敏で、12.Rh3 g6 13.Qg4 Bf6 から 14…Nd6 となる。それでもこのような局面では黒のクイーン翼ビショップだって白のクイーン翼ビショップと同様に美しくない。さらには有望でないクイーン翼ビショップのフィアンケットの代わりに、黒は本譜のように単純で直接的な 9…Bd7 の方が良いと思う。

8…O-O 9.Qc2 Bd7 10.Nb3 Ba4 11.Qc3 b6 12.Qe1 c5 13.Bd2 Bb5 14.Ne5 Nd7 15.Nc1

 白がクイーンで手損したので黒は出遅れdポーンに圧力を強めることができてわずかに優勢になった。とは言っても白の防御は長期に渡って持ちこたえる。

15…Nxe5 16.dxe5 Rc8 17.Rf2 f6! 18.Bc3 d4 19.exd4 cxd4 20.exf6 Rxf6 21.Bb4! Bc5 22.Bxc5 bxc5 23.Qd2 Qd6 24.Ne2 Rcf8 25.Raf1 Qd5 26.Ng3 e5 27.f5?

 ピルズベリーによればこれは決定的な悪手だった。27.Ne4! と指すべきで 27…Rxf4 28.Rxf4 exf4 29.Rxf4 Rxf4 30.Qxf4 で互角である。黒は本譜の手に対し交換損の犠牲でポーン横隊を作り出し勝利をもたらした。

27…c4! 28.Ne4 cxd3! 29.Nxf6+ Rxf6 30.Rc1 h6 31.Rc8+ Kh7 32.Qb4 Bc6 33.Qb8 Rxf5 34.Rh8+ Kg6 35.Rhf8 Rg5 36.R8f3 d2 白投了

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后印防御の指し方(044)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9…d6 10.Qc2 f5 11.d5

 ここで 11…exd5 と取ってくれば白は 12.Nd4 と指し Ne6 と Nxf5 を狙い、cポーンでd5のポーンを取り返してc列で黒陣を圧力にさらすことも狙う。やはり白は対角斜筋での釘付けの戦術的手段を用いて陣形上の目的を達成する。例えば 11…exd5 12.Nd4 Qd7 13.cxd5 となると黒陣はひどすぎる。

 黒はこれらのほとんどを(11…exd5 の代わりに)11…e5 で白ナイトにd4に来させないことにより避けることができる。しかし白はそれでも 12.e4! で好調である。例えば 12…fxe4 13.Qxe4 Nd7 14.Be3 Nf6(または 14…Nc5)15.Qc2 と進むと黒のビショップは連鎖ポーンの内側で非活動的で(b7のビショップは白ポーンによって、e7のビショップは黒ポーンによってそれぞれ動きを制限されている)、白は敵のf5とe6の「空所」(ポーンで自然に守ることのできなくなった比較的攻撃を受けやすい地点なのでそう呼ばれる)につけ込むためにルークを使ってすぐに f2-f4! で列を素通しにする準備ができている。

 これらはすべて黒が …f7-f5 の手段によって e2-e4 突きを止めようとしたために起きた。白のeポーンを 9…d6 10.Qc2 Qc8 または 10…Nc6 のような手で進ませる方がいくらか理にかなっている。しかし白は 10…Qc8 への応手に 11.e4! 突きが強手となり、そのあと b2-b3 から Bb2 そしていずれ Ne1! から f2-f4 と突く。ナイトを 10…Nc6 と跳ねる手は 11.e4 で容易に対処でき、白が少し優勢になる。しかし 11.d5! の方がずっと優る。11…exd5 12.cxd5 Nb4 13.Qb3 Nxd5 と進んだ中盤戦は、再びあの素晴らしき 14.Nd4! で白が圧倒的な態勢である。

 おとなしすぎる 9…Be4 と陣形的に欠陥のある 9…d6 のほかに主要な変化は 9…c5! である。8.Bd2 がちょうどフィアンケット戦法で戦いを激化させる白の最良の手段であるように、9…c5 が互角以上を目指す黒の最も危険な手であることが知られるようになった。

 9…c5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(043)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9…Be4 の局面

 このビショップを、守られていない地点から別の守られていない地点に動かすのは確かに奇妙に見える。実際b7よりもはるかに危なそうである。しかしこのビショップをe4に動かすことにより、黒はある意味ではその安全を図っている。ここで白には d4-d5 から(…exd5 のあと)Nh4 で釘付けにつけ込む機会がない。白はどうしても d4-d5 と突きたいのなら、釘付けのような戦術的手段でなく直接この突きを支援しなければならない。そしてたとえこのポーンがd5に進んだとしても、黒は無視することができるし、適切な準備のあと后翼ビショップが閉じ込められることを心配することなく自分の中央ポーンを突き越すことができる(…e6-e5!)。

 白は 9…Be4 にすぐかあとで白枡ビショップ同士の交換を持ちかけることができる。自分の王翼ナイトをいつまでも動かさずに中盤戦を効果的に戦うことはできそうもない。そして動かしたとたんに黒はビショップ同士を交換することができる。基本的には適切な時機の問題である。

 すぐ 10.Ne1 Bxg2 11.Nxg2 と指すのは確かに利点がある。白にはそのあと中央で強く 12.d5 と突く狙いがある。もし黒がそれを 11…d5 で未然に防げば、白は 12.cxd5 exd5 13.Bf4 で有利にポーンを交換することができる。13…c5 14.dxc5! から 15.Rad1 のあと黒は盤の中央に恒久的な標的を抱えるし、13…c6 なら黒の指し手は活気がなくなる。しかし黒は直接の挑戦の 10.Ne1 Bxg2 11.Nxg2 に 11…c6! と応じることができる。そのあと黒は 12.d5! にd5で2回取ることによりポーン得しようとすべきでない。なぜなら白が一時的に犠牲にした戦力を Rad1 から Nf4 で有利に取り返すからである。黒は自分の残りのdポーンを孤立させ白に中央で開放的な広さを与えることに成功しただけである。代わりに黒は 12…cxd5 13.cxd5 Bf6 または 13…Na6 から 14…Qc8 で駒の働きで追いつくようにすべきである。

 9…Be4 のあとの布局へのもっとゆっくりした対処法は 10.Bf4! で Ne1 を遅らせる着想である。ここで黒は気をつけなければならない。今のところ白が展開で先行しより多くの陣地を支配しているので、局面は黒に守勢を余儀なくさせている。だからといって黒は守勢的すぎるわけにはいかない。10…d6 11.Rfd1 Nd7 12.Qe3!(のちの …e6-e5 を抑止している)のあと黒はたちまち狭小な陣形に追い込まれることがある。白は h2-h3 から g3-g4 で王翼攻撃を始めることさえでき、もし黒の黒枡ビショップがf6に行けばその位置につけ込むことができるかもしれない(g4-g5!)。

 代わりに黒は 10…c6 から …d7-d5 で鉄壁の中央を構築することにより守ることができる。しかしこれは黒の融通性を特に中央でいくらか放棄することになり、白枡の一部、特にc6を弱点として残すことになる。

 9…Be4 に対する評決は、白があまりに速く活動的になるということである。

 もっと融通性のある作戦は 9…d6 で、黒がビショップをe7に置いたままナイトをd7を経由してf6に持ってくる可能性ができる。そしてナイトはd7にいる間 …e6-e5 と突く可能性に目を光らせることができる。しかし 9…d6 は白の e2-e4 と d4-d5 の双子の狙いによって引き起こされる陣形上の危険に何もしていない。黒は両方を防ぐことはできない。そして一方を防ぐ手段は他方をもっと危険にするかもしれない。

 例えば 10.Qc2!(9…Be4 が防いだ手)のあと白は待望の e2-e4 突きを狙う。黒はそれを予期して 10…f5 と突くことができ、たぶん 11…Be4 をもくろむ。しかし白が用心深くて 11.d5! と指せば、黒はビショップをそのように動かす機会が得られない。

 9…d6 10.Qc2 f5 11.d5

(この章続く)

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后印防御の指し方(042)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

9…f5

 この戦法の主手順においてここほど黒の理にかなった手の選択肢が多い時点はない。ここでは主要な変化を考え、もっとまれな手は本章の終わりの実戦例の解説で取り上げる。

 このfポーン突きには確かに危険も伴っている。しかし最も論理的な手でもある。これで黒の王翼ビショップはfポーンをふさぐことなく安全なf6の地点に出ることができ、ビショップが邪魔にならなくなるのでクイーンとナイトが …e6-e5 突きを支援するために最良の地点を選ぶことができる。黒は …f7-f5 突きのおかげで …Rf6-h6、…g7-g5 そして …Qe8-h5 で危険な王翼攻撃に転じることができるかもしれない。進攻したfポーンは黒のために動き回る余地を確保するだけでなく、白の e2-e4 突きも防ぐ。しかし黒のfポーン突きにもかかわらずもし白が周到な準備のあと e2-e4 と突くことができれば、中央が大きく捌け白にとって大変有利になる。結局のところ白は展開に優っているので、黒が中央列でルークを使うことができるようになるよりずっと前にd列とe列で自分のルークを所定の位置につけることができるようになる。

 もし黒が自分の后翼ビショップを閉じ込めることになる白の e2-e4 から d4-d5 が気になるならば、安全志向の 9…Be4 が注目に値する。

 9…Be4 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(041)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 8.Bd2 d5 9.cxd5 exd5 10.Rc1

 黒は中央が不安定に見え始め、正確に指さなければならない。すぐに 10…c5 と突くのは 11.dxc5 と取られてどのように取り返しても弱いポーンが残るので悪い。10…Nd7 は 11.Qb3 で黒のdポーンに対する白の圧力がいい感じである。白は 10…Nd7 に対してビショップがもうc3での取り返しに必要ないので 11.Bf4! と応じることもできる。11.Bf4 c5 のあと白は 12.Nxe4 dxe4 13.Nd2 Nf6 14.dxc5! から 15.Nb3 で陣形的にはっきり優勢になる。このあとe4と后翼の黒ポーンはもろくなっている。

 最後に、黒は 8.Bd2 のあとの動的なポーン突きに関連した問題を 8…Bf6 または 8…d6 と指すことにより避けることができる。しかし中央を広げる 9.d5! に何らかの手段で応じなければならない。例えば 8…Bf6 9.d5 Nxc3 10.Bxc3 Bxc3 11.bxc3 なら、白の強力なdポーンは二重cポーンの代償として余りある。黒は白の二重ポーンを …exd5 で解消させるか、白のd列とe列のルークにより支援された dxe6、d5-d6 から e2-e4-e5 を絶えず心配しなければならない。

 それでは 8.Qc2 のあとの主手順を続けよう。

8…Nxc3 9.Qxc3

(この章続く)

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后印防御の指し方(040)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 8.Bd2 の局面

 このフィアンケット戦法の新機軸はマスターの実戦の最近10年で最もよく指される手になった。もし黒がここでまたは次の手でc3のナイトを取れば、白はビショップで取り返すことができ d4-d5 と突く用意が完全に整う。主手順における白の通常の作戦はこのビショップを対角斜筋上に展開する(b2-b3 から Bb2 の手段で)ことなので、Bd2 からこのビショップでc3で取り返すのは白の作戦に完全に適合している。

 しかしそれでも 8.Bd2 は奇異に見える。白がビショップをナイトと交換させ(8…Nxd2)、黒に双ビショップの優位を与えるのは良い手と言えるのだろうか。実際は黒はビショップを取るべきでない。というのは白の展開をずっと促進させ、クイーンを好位置に来させ、ルークを結合させて中央列に移動する準備をさせ、中央での強力なポーン突きがやって来るからである。それに黒は最も活動的な駒となっている中央のナイトを放棄することになるからである。

 8.Bd2 のあと黒はナイトで取るのをすべて延期するのが良い。d列が一時的にふさがっているので妥当な手は 8…c5 である。黒が …c7-c5 と突いたとき白が 9.Rc1(9…Bf6! 10.Nxe4 Bxe4 から 11…Nc6)や 9.Ne1(9…Nxc3 のあと 10…Bxg2 から 11…cxd4)のような穏やかな手からほとんど何も得られないのはいつものことである。急所の手は 9.d5! で、ほとんど取ることを強要する。しかし 9…Nxc3 10.Bxc3 も 9…Nxd2 10.Qxd2 も、白が急速に Rad1 と Rfe1 で中央列に駒を集積するので黒にとって有望そうに見えない。

 8.Bd2 に対して中央に対処する別の手段は 8…d5 である。ここでもまた白はわずかではあっても優勢になれる。ビショップがd2に展開しているので 9.cxd5 exd5 10.Rc1 で后翼ルークを迅速に働かせることができる。

 8.Bd2 d5 9.cxd5 exd5 10.Rc1

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(368)

「Chess」2015年2月号(2/3)

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第6回ロンドン・チェスクラシック(続き)

誰もが賞賛する早指し王

ロンドン・チェスクラシックのスーパー快速戦で、第1シードで早指しの鬼のヒカル・ナカムラはあまりに強かった


スーパー快速戦で優勝して8千ポンドを獲得し閉会式で満面の笑みのヒカル・ナカムラ。隣は母でプロのバイオリニストのキャロリン・ナカムラ

主催者のタオ・ボカナドとシーン・ヒューイットにとって嬉しいことに、今年のロンドン・チェスクラシックから新たに開催された「スーパー快速戦」に400名以上の選手が参加した。これはオリンピアで最初の週末に行なわれた。参加者の多くは「スーパー6」(マイケル・アダムズ、ビシー・アーナンド、ファビアノ・カルアナ、アニシュ・ギリ、ウラジミール・クラムニク、そしてヒカル・ナカムラ)の一人またはほかのスター選手の一人と対戦できるかもしれないという淡い期待を抱いて参加した。実際イングランドの最上位6人のグランドマスターが皆参加していたし、ローク・ファン・ベリー、米国の躍進著しいスター選手のダニエル・ナローディツキー、それにマイク・バスマン、ジョン・ナン、ジョン・スピールマンなどの往年のスター選手たちも皆何らかの形で感銘を与えていた。

 シード1位はヒカル・ナカムラで、この米国の早指しの達人は8½/9と突っ走って期待にそむかなかった。こんな超大物たちの中でビシー・アーナンドを半点上回ればそれだけで十分だった。両者が相まみえたときナカムラが白番で交換を強制したのは賢明だったし、アーナンドが勝とうとして局面の均衡を崩したのは全然賢明でなく転んで負けてしまったのはナカムラの手柄だった。もちろんナカムラはことさら危ない橋を渡った時もあった。先月号で見たようにジェームズ・アデア戦ではほとんどの間駒損で指さなければならなかった。そしてマシュー・サドラー戦でははるかに不利な收局を持ちこたえるために受けの妙技を強いられた。しかし全体的には彼は8千ポンドの優勝賞金に完全に値した。さらにナカムラの成績はイングランドチェス連盟始まって以来の「3」から始まるレイティングにふさわしかった。

 ナカムラの早指しは驚異的だった。早い回戦でアーロン・サマースケールを粉砕した時にはほとんど時間を使わずに收局に到達したように感じられたし(持ち時間は25分で毎手追加は10秒だった)、まったく対照的にこのイギリスのGMはほとんど時間が切れそうだった。同様に首位を行く二人が最終戦の前の回で対戦した時にも時間が大きな役割を果たした。

□F.カルアナ
■H.ナカムラ

第9回戦

 カルアナは長い捌き合いのほとんどで優勢を保持していたが、ナカムラはうまく守りこの時点までには日本生まれの米国選手は米国生まれのイタリア選手より2、3分多く時間を残していた。それが大きな役割を果たすことになった。

45…Nb3!

 ルークを積極的に働かせるために解放し、局面を不均衡にした。

46.Nxb3?

 このあと白はbポーンを取るために苦労することになる。カルアナは明らかにd2への侵入を心配していたが、冷静な 46.Rg4! で何事もなかった。46…Rd2 なら 47.Qg3 g6 48.Ne4 だし、46…Nxc5 なら 47.bxc5 e4 48.Rxe4 Rxc5 でよい。黒の最善手は 46…Nd2 47.Ne4 Nc4 だが、ここでさえ白は 48.Qa7! Rd7 49.Qc5 Nxa3 50.Rh4

と積極的にいけば問題なしで、黒が進展を図るのは意外にも困難である。

46…axb3 47.Qe3?

 よくあることだが悪手は悪手を呼ぶ。47.Qb2 と指すしか仕方がなかったようで、47…Rd3 のあと 48.h4!? か 48.Qxe5 Qxe5+ 49.Rxe5 Rd2 50.Kg3 b2 51.Re1 が相場だが、どちらにしても白がしのげたとは想像しにくい。

47…b2 48.Qe1 Rd4 0-1

 急転直下の終わりとなった。49.Qb1 と受けても 49…Rxe4 50.fxe4 Qf4+ 51.Kg1 Qc1+ までである。

成績上位者
1位 ヒカル・ナカムラ(米国)9½/10
2位 アニシュ・ギリ(オランダ)8½
3-12位 ファビアノ・カルアナ(イタリア)、ビシー・アーナンド(インド)、ウラジミール・クラムニク(ロシア)、ナイジェル・ショート(イングランド)、アレクサンドル・レンダーマン(米国)、エリック・ハンセン(カナダ)、ダニエル・ナローディツキー(米国)、ニック・パート(イングランド)、アロン・グレーンフェルド(イスラエル)、サイモン・ウィリアムズ(イングランド)8
13-21位 マイケル・アダムズ、マシュー・サドラー、ルーク・マクシェーン、ジェームズ・アデア、ローレンス・トレント(以上イングランド)、シメン・アグデスタイン(ノルウェー)、アレクサンドル・チェルニアエフ(ロシア)、ヨアン=クリスティアン・キリラ(ルーマニア)、ジョナサン・ドゥレラスー(フランス)7½

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(039)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 8.Nxe4 Bxe4

 ここで白は 9.Ne1 でe4での黒の封鎖を突破することができる。しかし黒は 9…Bxg2 から 10…d5 で何も怖くない。黒が中央のポーン、特にdポーンを突くことにより中央で分け前を得れば、このような単純化した局面でもまったく問題ないはずである。争点があるとしばしば白の有利に働くが、二組の小駒がないので中盤戦から争点のほとんどが消えている。

 9.Bf4 から Rc1 のような展開の手の方が見込みがある。そして黒は …d7-d5 と突くと白側から強く cxd5 と応じられてc列を素通しにさせるので突きにくくなる。黒が早まってdポーンを突くと、c列での白の圧力のためにいつかcポーンが落ちることになる。そしてこの時点(黒が …d7-d5 と突く前)での …c7-c5 突きは、またしても d4-d5 突きを招く。

 黒は 8.Nxe4 Bxe4 9.Bf4 のあと中央で守勢の態勢をとらされるかもしれないが、守勢の中央は堅固である限り不安の原因とはならず、どんなにかすかではあっても強力になる見込みがある。9…d6 のあと防御線を張る …Nd7 から …Qc8-b7! には将来性がある。クイーンがb7にいてもっと多くの駒が展開されれば黒は …c7-c5 と突く用意ができるかもしれない。d6のポーンは白駒をe5に寄せつけず、白のf4のビショップの斜筋を縮める。白は広さの優位にものを言わせるためにはポーンの突っかけが必要となる。すなわち素通し列を作るためのポーン突きである。e2-e4 はまだ指せず c4-c5 は支援できないので、白の中盤戦の展望は d4-d5 にかかっている。しかしこの手は …e6-e5! によって簡単に受けられる。そのあと中央のポーン陣形は閉鎖的になるけれども、e4の黒ビショップはまだb7にいるのと違い働いていないわけではない。しかしe7にいる黒のもう一つのビショップは d4-d5 と …e6-e5 の応接により影響を受ける。というのは黒の中央ポーンは黒枡にあり、このビショップのいる枡の色と同じだからである。しかし黒はいつか …f7-f5 から …Bf6 と指せる限り、不安になることはない。

 白が d4-d5 と突き黒が …e6-e5 と突くこの最後の状況はそう珍しいことではない(もっとも通常は黒が先に …e6-e5 と突き、それに対して白が d4-d5 と応じる)。これらの局面を前もって注意深く判断しておくことが大切である。なぜならどちらも不利を避けるためにこれらのポーン陣形の一つに向かわされるかもしれないからである。

 8.Bd2 のあと生じる局面ははるかに複雑である。

 8.Bd2 の局面

(この章続く)

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