2015年01月の記事一覧

后印防御の指し方(026)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9.cxd5 の局面

 この局面はアリョーヒン対カパブランカ戦の局面に似ている。そのあと白は中央ポーンの処理を誤り e2-e4 と突かないで負けた。白の正しい手法は O-O のあと e2-e4 から f2-f4 と突いてゆっくり中央を強化し、そのあとクイーンをc2に后翼ビショップをc3かb2にルークをd1とe1かe1とf1に展開することだった。そして中央を駒で支援しながら e4-e5! 突きで局面を一気に開放することを狙っていく。黒は駒を白ほど活動的な地点に配置できない。だから e4-e5 突きを効果的に迎え撃つ態勢にない。この一般的な型のほかの局面、例えば現代ベノニ防御では、黒は …Rb8 から …b7-b5 で反撃することができる。しかしここではビショップがb7にいるのでそのように反撃するのははるかに困難である。

 5…c5 は 5…Be7 よりも面白い中盤戦の戦いになる機会が多い。しかしよりそのような機会に恵まれるのは白の方である。

 B 5…d5

 この手から生じる具体的な局面を分析する前にまたこのポーン突きの一般的な問題を考察するのが良い。次図が基本的なポーン陣形である。

 5…d5 のポーン陣形

(この章続く)

2015年01月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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お楽しみチェス(5)

「Chess Life」1989年10月号(1/4)

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お楽しみチェス

GMアンディー・ソルティス

不意を突かれた世界チャンピオン
中央試合とフラフープ、
どちらも長いこと流行していないがそれでもやってみる価値はある

 それほど遠くない昔のソ連対アルゼンチン戦で指された次の試合を考えてみる。黒は当時スーパースターの地位に駆け上がる間際だったが、この大会をすいすいと駆け抜け称号を持つ選手を次から次へと負かしていた。最終的には13-2という驚異的な成績をあげたが、本局に関しては少しラッキーだった。

中央試合 [C22]
白 NMフアン・ハセ
黒 GMアナトリー・カルポフ
オリンピアード、スコピエ、1972年

1.e4 e5 2.d4!? exd4 3.Qxd4 Nc6 4.Qe3

 次に起こることを考えれば、将来の世界チャンピオンの定跡の知識はこのあたりで突然終わったと言っても差支えない。たぶん 4…Nf6 と指すのが正しいことは知っていただろうが、5.e5 Ng4 6.Qe4 で乱戦になるのが心配になったのだろう。(この戦型は第一次世界大戦以前に黒が優勢になると研究されていた。6..d5! 7.exd6e.p. Be6 そして 8.dxc7 Qd1+! 9.Kxd1 Nxf2+ または 8.Ba6 Qxd6 9.Bxb7 Qb4+!)

 しかしどうして手の込んだことをするのか?中央試合は駄目な布局ということになっているのだから、黒がここですることは何でもかんでも良いはずだ。そうじゃないか?

4…d6? 5.Nc3 Nf6 6.Bd2 Be7 7.O-O-O O-O 8.Qg3! a6 9.f4 b5 10.e5! Nd7 11.Nf3 Rb8

 明白な悪手もないのにカルポフはかなりはっきり不利になった。白は 12.Be3 またはもっと積極的な 12.h4 から 13.Ng5 で優勢を拡大できる。このあと白の指し方におかしなところはあったが、それでも最後の局面まで白が優勢だった。

12.Nd5 Nc5 13.Be3 Ne4 14.Qe1 f5 15.h3 Be6 16.Rg1 Kh8 17.g4 dxe5 18.Nxe7 Qxe7 19.Nxe5 Nxe5 20.fxe5 Rbd8 21.Bd3 Bd5 引き分け

 布局の恐竜にしては悪くなかった。かつて世界の一流選手たちによって用いられた名誉から急激に転落したシステムはほかに考えにくい。中央試合はミハイル・チゴーリンにとっては打って付けの戦法で、これを用いてよく積極的な攻撃態勢を構築した。そして傑出した大局観指法の選手の一人のゲーザ・マローツィもこれを用いていた。しかし今日では中央試合は布局定跡の32ドルの本の中でほとんど脚注程度の評価しかされていない。

 これはもっと評価されてよいかもしれない。何といっても白は3手目で、現代の解説者によって +/= 記号を与えられるような広さの優位を得ているのだから。

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2015年01月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(025)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 5…c5 の局面

 次に 6…cxd4 と取られると王翼ナイトでd4のポーンを取り返したとき …Bxg2 があるので白が少し具合が悪いことが分かる。6.O-O cxd4 7.Nxd4 Bxg2 8.Kxg2 でも、白が展開で少し優っているにもかかわらず黒は何も問題がない。黒は単に 8…Qc8! と指してcポーンを当たりにし 9…Qb7+ の準備をする。黒はクイーンがビショップの代わりにb7に来れば互角にするのに何の困難もないはずである。黒の残りの小駒にはすべて役に立つ地点があり、黒は …d7-d5! と突いて弱点となっている最後のポーンを解消できる。

 もちろん白はクイーンでd4のポーンを取り返すことができる。しかし 6.O-O cxd4 7.Qxd4 には 7…Nc6! と調子のよい展開で応じられる。ここでの白の陣形はマローツィ縛りと呼ばれ一般に有利とされるポーン陣形に似ている。その陣形では白のc4とe4のポーンが黒のd7またはd6のポーンを抑えつけている。しかしここでは白はまだ e2-e4 と突いていない。そしてそう突くことができたとしても、陣地の広さの優位を生かすのに問題がある。黒の …Nc6 での手得とそうでなくても働きの良い駒が、陣形の問題を打ち消すことになる。

 5…c5 の真の問題は 6.d5! にある。これは対角斜筋に生じることのある多くの策略の一つに基づいている。6.d5 と突く前は白ナイトが釘付けにされていた。すなわち動けば(h4を除く)g2のビショップが取られてしまう。それにいずれにしても白はビショップ同士の交換を望んでいないかもしれない。しかし 6.d5 のあと白は 6…exd5 7.Nh4 または 7.Ng5 で立場を逆転させる。これで釘付けにされているのは黒の方である(7…dxc4?? 8.Bxb7)。

 これが 6.d5 の戦術的裏付けである。d5のポーンは三重に当たりにされ二重にしか守られていないが、取られることはない。陣形上の裏付けは前述のとおりである。すなわちd5のポーンは黒の小駒をごちゃごちゃにさせる効果がある。例えば 6.d5 exd5 7.Nh4 のあと 7…g6 なら黒は白がナイトをf5に跳ねる狙いを止めているが、白に例えば 8.Nc3 Bg7 9.cxd5 で中央を手順に支配される。

 9.cxd5 の局面

(この章続く)

2015年01月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(024)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 5…c5 のポーン陣形

 黒は白の守られていないdポーンを当たりにし、自分のcポーンをそれと交換することを望んでいる。もし白が e2-e3 と突いてdポーンを支えれば、前に述べたようにf3の地点を弱体化させることになる。また黒は e2-e3 に …cxd4 と応じ exd4 のあと …d7-d5 と突くなどすることができる。このポーン突きの結果として白の中央の強みである強力なポーンのほとんどが清算され、d4に白の孤立ポーンができることになる。黒がcポーンを白のeポーンと交換しdポーンを白のcポーンと交換したあと中央に残っている唯一のポーンは白のdポーンになる。このポーンはほかのポーンで支えることができなくなっていて、d列で黒ルークにより容易に攻撃の標的になる。だから恐らく白は …c7-c5 に e2-e3 と応じないだろう。

 しかし白は黒にd4で取らせて良いのだろうか。それによりf8の黒ビショップの斜筋が再び通り、白が駒で取り返すものとすれば黒が d4-d5 と突かれる恐れなく后翼ナイトをc6に展開することができる。中央に進出できるなら黒にとって有利な交換である。それでも黒がcポーンを白のdポーンと交換するのは、白が迅速に素通しd列を支配することができるので長年の間黒にとって非常に危険が大きいと考えられてきた。実際には黒はd列のように白のcポーンの前まで素通しになっているので、c列で相当の代償が得られる。d4でのポーン交換のあと黒のc4に対する圧力はd7に対する白の圧力と釣り合っているはずである。

 しかしほかの考え方もある。もし白がd4をポーンで支えたくないしd4でポーン交換もしたくなければ、d4-d5! と突くこともできる。これは 4.g3 フィアンケットのすべての基本戦型の中で、白の最も危険なポーン突きである。その最も重大な効果は黒のフィアンケット后翼ビショップの利きを縮めたことで、黒の后翼ナイトに自然な展開地点(c6)に来させなくしてもいる。d5の白ポーンはg2のビショップとc3のナイトで支えることができる(黒はc5にポーンがあるので …Bb4 と指せないことに注意)。

 それでは具体的に局面を見てみよう。

 5…c5 の局面

(この章続く)

2015年01月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(132)

「Chess Life」1995年11月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

石垣か牢獄か

 石垣システム(または石垣戦法)は 1.d4 での白の戦型である(黒にもオランダ防御で同じ中央ポーンの形になる石垣防御がある)。白の石垣は次のような特徴的な形になる。

長所

・ 白キングは c3-d4-e3-f4 の連鎖ポーンに守られているのでどんな強襲にも安全である。

・ 白は中央の重要なe5の地点を支配していてナイトをそこに据えることができれば攻撃の跳躍台として用いることができる。

・ 進んだfポーンは中央の地点をもっと確保するのに役立っている。

短所

・ e4の地点は恒久的に弱まっている。

・ クイーン翼ビショップは味方のポーンの背後に閉じ込められていて、自由に動くことは困難である。これは石垣の最も重大な欠陥である。

 現代の布局定跡は力まかせでなく中央の要所の支配と中盤戦のためにすべての駒の動員に関心があるので、石垣には根本的に重大な欠陥がある。世紀の変わり目頃には国際大会によく登場したけれども、マスターの試合からはまったく姿を消している。しかし非マスターの試合には地盤があって、本稿ではその棋力を対象とする。全般的な要約としてGMルーベン・ファインの『Practical Chess Openings』での評価が要を得ている。「石垣戦法は黒が不注意に指せば白の攻撃が見事に決まることがある。しかし黒は自分のクイーン翼ビショップ(永遠の問題児)を閉じ込めないようにすればよく、それで十分指せる。」

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2015年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(023)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 そしてこれは白の方の最も形を決めない手である。白は 4.g3 と突いたとき明らかにビショップの行き場所としてg2だけを考えていた。だからすぐにその考えを完了させるのが良いだろう。それにもし白が Bg2 を延期すれば、黒に …Bxf3 で敵の作戦を台なしにさせる好機が訪れるかもしれない。この手は白のfポーンを二重にさせ、g2-a8の斜筋をふさがせる。黒が優れたビショップをf3の白ナイトと交換することにより白に二重ポーンを作らせるのは良い考えかもしれないしそうでないかもしれないが、白は 5.Bg2 で相手にそれを考える可能性さえ与えない。

 白のほかの5手目はどれも不利な点がある。最も自然な手は 5.Nc3 である。しかし黒には 5…Bb4! という効果的な手があり、二印防御と后印防御の有利な混合形になる。そして白の后翼は …Ne4 の圧力が加わろうと加わるまいと …Bxc3+ で陣形を悪くする狙いに直面する。もちろん白はナイトをより攻撃的なc3でなくd2に出すことができる。しかしこのナイトはd2ではまだ攻撃されていないc4を守る以外何もしていない。白は3手目で Nc3 を延期することにしたのだからその作戦を続けるのが良い。

5…Be7

 白が Nc3 を延期しているのでここが黒の王翼ビショップの最良の地点である。しかし最善の5手目はこれだけではない。理にかなった手が少なくとも3手ある。それらのいずれも落ち着いた …Be7 より形を決める手で、局面の表面下に隠れた争点をより早く解消することになる。そして代わりの手はそれぞれ黒の中央ポーンをどうするかについて異なった考えを持っている。それらについて少し詳しく分析しよう。

 A 5…c5

 最も激しい5手目は 5…c5!? である。この手は主としてマスターの1局でうまくいったことにより二つの大戦の間に大きな注目を集めた。その試合とは1927年のニューヨークの大会でのアリョーヒン対カパブランカ戦である。この大会はアリョーヒンと世界チャンピオンのカパブランカがタイトルをかけて番勝負を戦うことになっていた数ヵ月前に開催された。そして后印防御の黒側を持ったカパブランカの圧勝で、世界選手権へのアリョーヒンの挑戦が失敗するという予想が支持を得たように思われた。

 しかし番勝負に勝ったのはアリョーヒンだった。5…c5 にうまく対処していたらニューヨークでの試合もアリョーヒンが勝っていたかもしれない。白のdポーンに対する鋭い攻撃が疑問なのは、現代の定跡によればこの局面に特有の特徴のためである。その特徴に行く前に基本的なポーン陣形を考えてみよう。

 5…c5 のポーン陣形

(この章続く)

2015年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(022)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 この手は見かけほど自明ではない。黒はこのビショップをa6に出して白のcポーンを当たりにすることができる(第3章を参照)。そして黒は …Bb7 と指したということは中盤戦での要求が控えめであることを自認するべきである。なぜか?それは白がこれからの十数手のいくつかの時点で Nh4 と指すことにより、またはキャッスリングのあとナイトをどこかへ動かしてフィアンケットビショップの斜筋を通すことにより、白枡ビショップ同士を交換することができるからである。g2の白ビショップが守られている限り、黒は …Bxg2 でビショップ同士を交換するか、ビショップをa6かc8に動かすことによりh1-a8の斜筋の支配を譲り渡すか、ビショップ同士の間の枡の一つに駒またはポーンを置いて交換を防ぐかを決めなければならない。しかし黒にとって白枡ビショップ同士の交換を避けるのが良い方針となることはまれである。この斜筋はどちらにとってもひとえに重要なので、相手にまったく明け渡すわけにはいかない。黒は白にこの斜筋を独占されるよりも両者のビショップが消える方が良い。この斜筋をふさいで(…d7-d5 のように)交換を避けることは、ふさいでいる駒やポーンが敵の重砲火を浴びることがあるので黒にとって不快になることがある。

 気をつけることは両者のビショップの重大な差異である。g2のビショップは守るのが容易である。b7のビショップは危ないときにはルークにより(…Rb8)、またはもっと都合よくクイーンにより(…Qc8)守ることができる。しかし大駒のどちらもこのような純粋な守りに用いることは黒にとって不経済である。黒クイーンはc8で子守を務めるよりも通常はもっとふさわしいやるべきことがある。だから当座はb7の黒ビショップはg2の白ビショップよりもはるかに長く利いているけれども、黒はその優位を長く保つことはできないしb7が守られていなことに基づいた多くのはめ手を避けるようにに注意しなければならない。このあとの数ページでそれらのはめ手のいくつかを見ることになる。

 最後に言っておくべきことは 4…Bb7 およびこの防御全般についてである。黒は必ず中央のどのポーンを突くかを決めなければならなくなる。しかし少なくとも数手の間はその決定を先延ばしすることができ、チェスでは遅らせることが美徳になることがよくある。…d7-d5、…c7-c5 およびほかの中央でのポーン突きの選択を遅らせることにより、黒はいつかは盤の中央で起こるに違いない危機に備えて駒の展開を続ける。そして黒の備えには白の駒とポーンがどのように配置されるかという知識が役に立つ。黒はどうせビショップをb7に上げることになるのが確かなので、ここでその手を指すことにより最も形を決めていない。

5.Bg2

(この章続く)

2015年01月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(021)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 フィアンケット戦型の主手順は事実上后印防御全体の主手順でもあるが、それに到達するためには両者が指し手を険しくする機会を回避しなければならない。白の最初の機会は3手目にやって来て、后翼ナイトでなく王翼ナイトを出す。白はこのようにして、二重ポーンや …Bxc3+ のあとの優良白ビショップ対黒ナイトの戦いのような複雑な陣形の着眼点を持つ抜き差しならない二印防御(3.Nc3 Bb4)を避ける。二印防御は「固い」防御で、巧妙な手がよく出てくる。典型的な后印防御の局面よりも典型的な二印防御の局面の方が良くも悪くも手広い。白は 3.Nf3 と指すことによりいくらか楽な試合を求めていると相手に合図している。

 しかし白はそれに対して代価を払う。3手目に后翼ナイトでなく王翼ナイトを展開することにより黒のe4の地点の支配を一時的に放任する。これはしばらくの間白が中央をポーンで支配する e2-e4 突きを指せなくなることを意味する。白は既に突いたcポーンとdポーンの2ポーンで中央を強力に支配し続けるが、eポーンが4段目に存在すればさらにものすごい影響を与えることになる。このポーンはb7の黒ビショップの斜筋をふさぎ、e4-e5 で黒の小駒を右往左往させることを狙う。そして黒駒、主として王翼ナイトにe4の地点を使わせないことにもなる。

3…b6

 これで白の e2-e4 突きは布局の段階ではほとんど実行不可能である。黒はe4の支配をb7のビショップで強化し、王翼ナイトと后翼ビショップのコンビは白がe4を支配しようとするどんな試みも思いとどまらせるのに十分である。f3の白ナイトは少なくとも一時的に白がポーンでe4を支配するのを妨げている。それは f2-f3 と突けないからである。

4.g3

 この手はフィアンケットシステムの布局を特徴づけている。1920年代後半までは人気が出なかったが、第二次世界大戦までには主流手順になった。最近白のもっと攻撃的な手が復活した(第4章と第6章を参照)。しかし黒のフィアンケットに対するに白の逆フィアンケットよりも良い手段があるのかは決して明らかでない。すぐれたビショップがすぐれたビショップと対峙している。

 4.g3 の着意を分析しよう。この手はこれまで争う余地のなかった黒のe4の支配を争う用意をしている。また、白がポーンで支配しながら駒で支配していなかったd5の地点に目を向けている。そしてg2に来るビショップはc6、b7そしてa8までも対角斜筋に影響を与えている。もし何らかの理由で黒が后翼ビショップをほかの斜筋(例えばa6-f1)に配置すれば、または白のナイトと交換すれば、白ビショップはh1からずっとa8までの白枡を貫く途方もない無敵の斜筋を支配することになるかもしれない。

 今度は欠点の番である。駒やポーンのどの動く手もほかの地点を犠牲にある地点をさらに保護する。4.g3 で白はビショップをg2に置くことを宣言している。黒側の王翼に対する攻撃で大きな働きをする絶好のb1-h7の斜筋でこのビショップを使うことはできなくなるし、c4のポーンは最も自然な守り駒がいなくなる。そしてポーンを g2-g3 と突くと自分の王翼を少し弱める。もし白があとで e2-e3 と突いて中央を支える必要が出てくれば、または e2-e4 と突いて中央を形成する必要が出てくれば、f3の地点に利くポーンが全然なくなる。この地点はb7のビショップのような敵駒にとって格好の標的になることがある。

4…Bb7

(この章続く)

2015年01月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(020)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス

 后印防御の控えめという評判は主としてこの最もよく指される戦型からきている。マスター、グランドマスターそして楽しみで指すクラブ選手などあらゆる棋力の選手たちの間で人気があるが、たぶんより強いほどそうである。この単純化システムには多くの若い選手たちを引きつける戦いがあるようには思われない。しかしこの単純化こそがマスターたちに受ける戦法となっている。これは白で少しの優勢を求めて指す危険性のない手段である。そして少しの優勢は格上の相手には正当に期待できる最大のものである。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3

(この章続く)

2015年01月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(019)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

28.Be4 Qxd4+ 29.Kh1 fxe5

 白の読みはビショップをe4に引き戻して黒のナイトと交換することにより損を切り詰めることだった。しかしそれに続く收局では黒の大駒が優勢なままで、もっとポーン得をする。技術的にはもう勝負はついている。

30.Bxf5 exf5!

 30…Rxf5 31.Qh4 で紛糾させることはない。本譜の手で十分である。

31.fxe5 Re7 32.Re3 Qxb2

 黒は望むときにいつでも …Rc2 で3ポーン得になれる。

33.e6 dxe6 34.Rxe6 Kf7! 白投了

 35.Rxe7+ Rxe7 で黒が2ポーン得を楽に勝ちに結び付けられる。

(この章終わり)

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「ヒカルのチェス」(366)

「Chess Life」2015年1月号(1/1)

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お楽しみチェス

GMアンディー・ソルティス

2014年ベイクアーンゼー

第5問
GMヒカル・ナカムラ
GMルック・ファン・ベリー

  黒の手番

解答

44…Be5! 次の …Qf3+ が強力である。45.Qxe5 なら 45…Qg2+ 46.Kxh4 Qg4# 45.f4 Qf3+ 46.Qg3 Qh1+ 47.Qh2 このあと 47…Qxc1 48.fxe5 Qxg5 で …Qg4# と …Qxd8 の狙いがあり白が勝つ。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(018)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 この手は最初の見かけよりも強力である。唯一の素通し列と急所の斜筋の支配が黒の大きな二つの有利になっているが、それらが協調し合っている。もし白が 22.Qh4 によりh7で詰ませる作戦を追求すれば、黒は二つの優勢な筋を利用して 22…Nf6 と指すことができる。この手はh7を守り、g2での詰みを狙い、c2のビショップ取りを狙っている。

 しかし白がもう1手クイーンをf2に置いたままにし、先に 22.Be4 と指すと、明らかに后印防御ビショップの対角斜筋が無力になり、Qh4 の狙いが復活する。しかしこの手は負けに直結する。咎める手は 23…Qxc1+! で、23.Rxc1 Rxc1+ で白が大きな戦力損をこうむる。

22.Bd1

 情けない手だが、上述の黒クイーン切りがあるのでほぼ必然である。この手に対して 22…Qxc1 はチェックにならない。

22…f6!

 白の王翼での圧力を終わらせ、黒自身の詰み含みの攻撃のために王翼に素通し列を作るのに、今ほど良い時機はなかった。これで黒は Qh4 に …Rf7 と応じてh7を守ることができる。また、f8またはf7のルークは …fxe5 と指せば攻撃に参加することができるようになる。

23.Qh4 Rf7 24.Bf3 Qc4

 白枡の大部分を押さえたあとは黒はそれらを有効活用する。白はdポーンをうまく守ることができない。25.Qf2 はやはりc1でクイーンを切られる(チェックで)。

25.Be3

 このような怪しげな手は白にまだ戦術の可能性が残っていることを示している。しかし陣形がしっかりしていることよりも想像力でひねり出すことに依存していることの表れでもある。黒は有利に単純化する手段を見つけなければならない。

25…Nxe3 26.Bxb7 Nf5!

 黒の素晴らしい后印防御ビショップは白の病的な后翼ビショップとの交換になった。しかしこの交換はdポーンが取れるので黒が有利である。

27.Qe1 Rc7

(この章続く)

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カテゴリ: 后印防御の指し方

后印防御の指し方(017)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 ここで白はどうすべきだろうか。18.Be3 と指すのはeポーンへのクイーンの利きがさえぎられるので駄目である(18…Nxe4)。18.Bd2 もc2のビショップへのクイーンの利きがさえぎられるので駄目である(18…Bxd4+ 19.cxd4 Qxc2)。eポーンをすぐに突くのも 18…Bxf3 があるので駄目である。最後に、ナイトを動かすのは不正な手である。残された手はあまりない。

18.Rh3

 良くも悪くも白は詰みに望みをつないでいる。これで交換損することなく e4-e5 と突けるし、クイーンがh6に行けるようなことにでもなればh3のルークが攻撃の務めを果たせる。

18…Qc6!

 うまく好機をとらえた。黒は白が中央でまた決断をするのを待たない。eポーンを攻撃することにより事実上それを進ませる。

19.e5 Nd5

 白の后翼ビショップはまだ閉じ込められたままである。黒は后翼と中央での優位を生かして …Bxd4 から …Rac8 のあとc列に侵入する用意をしている。白は黒駒をそこの地点すべて(c2、c4、c1)から排除することができない。

20.Qf2

 この手はナイトの釘付けをはずし動けるようにしている(21.Nxc6!)。もっと重要なことは Qh4 から Qxh7+ を狙っていることである。もし黒がここで …h7-h5 と突いて守らなければならないなら、黒陣はひどく損傷する。

20…Bxd4!

 黒のビショップはこの局面では白のナイトほど良い駒にはなっていなかった。それに黒は遅かれ早かれビショップを切ってc列を素通しにしていた。注意すべきはg2の唯一の守り駒がいなくなるのでクイーンでd4のビショップを取り返せないことである。黒は 21…Nxf4 または 21…Nxc3 でg2に通じる必殺の斜筋を通すことができ、白は 23…Qxg2# を止めるためにてんやわんやになる。

21.cxd4 Rac8

(この章続く)

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布局の探究(131)

「Chess Life」1995年9月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手を稼ぐためのポーン捨て(続き)

 早々と中央の大切なポーンを犠牲にしたいなら、申し分のない条件でポーンが取り戻せることを確認せよ。黒がeポーンを犠牲にするクイーン翼ギャンビットから二つのギャンビットを比較してみよう。

 (1)スラブ防御ビナベルギャンビット (D10) 1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 e5!?

 多くのGMは現在のところビナベルを避けて 3.Nf3 と指すのを好んでいる。

4.dxe5 d4 5.Ne4 Qa5+ 6.Bd2! Qxe5 7.Ng3!

 白の最後の2手はクイーン翼キャッスリングと共にカスパロフ対ニコリッチ戦(マニラ・オリンピアード、1992年)で初めて実戦で用いられた。その着想は黒クイーンの露出した状態につけ込むことにより中央で精力的に動き始めることである。

7…Qd6 8.Nf3 Nf6 9.Qc2 Be7 10.O-O-O O-O 11.e3! dxe3 12.fxe3! Qc7 13.Bc3

 白は展開した駒の働きに優っているので、布局での通常の有利さがある。世界チャンピオンが快勝した。『チェス新報』第55巻第372局を参照。

 (2)アルビン逆ギャンビット (D09) 1.d4 d5 2.c4 e5?! 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6

 黒は大切なeポーンをくれてやって何を得たのだろうか。dポーンが白陣に食い込んでいて白を少し窮屈にしている。しかし逆に言えば潜在的な弱点でもある。手の損得で見れば白がキング翼ビショップの展開に2手必要なので、黒はせいぜい1手得である。白陣にはこれといった弱点がない。結論として、黒のポーンの代償は不十分である。

5.g3 Bg4 6.Bg2 Qd7 7.O-O O-O-O

 「通常」の指し方ではだめなので、黒は「一か八か」の攻撃に出なければならない。しかしここから黒キングが危なくなる。

8.Qb3 Bh3?

 この手はスパスキー対フォリントス戦(ソチ、1964年)で逆ねじを食わされた。黒は代わりに 8…Nge7 と指すしかないところで、9.Rd1! のあと白がはっきり優勢である。『チェス新報』第25巻第545局のコルチノイ対ベインガー戦(ベエルシェバ、1978年)を参照。

9.e6!! Bxe6 10.Ne5! Qd6 11.Nxc6 bxc6 12.Qa4 Qc5 13.Na3 Qb6 14.Bxc6 Bxa3 15.bxa3 Ne7 16.Bb5 c6 17.Ba6+ Kd7 25手目で白勝ち

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后印防御の指し方(016)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 ここで 13…Bxf1 と取るのは 14.fxe5! とこちらを取られて、f1のビショップとf6のナイトが当たりになっているので良くない。この好手で白がルークを動かす手を稼ぐことができる。

13…Nc6!

 黒はもうけながら退却した。10…Ne5 から始まった捌きで白駒が少し混乱し、黒が盤上随一の斜筋(a6-f1)の支配を得た。

14.Rf3

 このルークはここが攻撃的な位置で、g3やh3に行って王翼攻撃に加われる。例えば 14…Nxd4 15.cxd4 Qc6 となれば白は 16.e5 と突いて、チェスの最も古い手筋の一つのh7でのビショップ切りを策すことができ、16…Nd5 17.Bxh7+ Kxh7 18.Rh3+ から 19.Qh5 を狙う。しかしこの場合は 18…Kg8 から 19…f6 で黒が受かっている。もっと良い手順は 16.Rc3 Qb7 17.Rh3! から e4-e5! 突きで、白の攻撃が厳しい。

14…g6

 前述の分析でこの手の説明がつく。確かにこの手は黒キングの周りの黒枡、特にf6とh6を弱めている。しかし白はこれからの数手の間はこれらの弱点につけ込むことができない。なぜなら自分の黒枡ビショップがまだ元の位置にあり、自身の2駒によってふさがれているからである。一方黒のこの手は敵の唯一の理にかなった作戦であるh7でのビショップ切りをやらせない。

15.N2b3 Nxd4 16.Nxd4 Bb7!

 黒は再びこのビショップの利き筋を変えた。e4のポーンが恒常的に弱いので、白の展開を妨害できることを見通している。

17.Qe2 Bc5

(この章続く)

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后印防御の指し方(015)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

8.e4 cxd4!

 この手は正確に時機を見計らって指さなければならない。8…O-O は 9.e5! Nd5 10.Ne4 または 10.dxc5 から 11.Qc2 となって、黒には少なくとも当面は白が詰みを念頭の攻撃を始めるのをそらす狙いを作り出す見通しがない。黒は詰みを避けるために相手の注意を引かなければならない。

9.Nxd4?!

 この手は駒を中央に据え、9.cxd4 Nb4! 10.Bb1(10.Be2? Nxe4)10…Ba6 11.Re1 Nd3! から起こるささいな煩わしさをすべて避けている。しかし e4-e5 突きをより難しくさせてもいて、ここからの短手数で黒駒の働きをすごく良くさせる。白は王翼攻撃の希望を持ち続けるために 9.cxd4 の手順で 12.Re3 と指す方が良いかもしれない。

9…O-O 10.Qe2

 この手も批判の対象になり得る。たぶん白は展開が気になっていたのだろう。そしてこの手はe5のポーン突きの支援を念頭にクイーンを展開している。この攻撃の戦略がなければ白には有望な作戦がない。例えばナイトをd2から動かせば 10…Nxd4 から 11…Nxe4 と取られる。たぶん 10.Re1 が最善だろう。

10…Ne5!

 この手は次の手と関連付けて考えなければならない。というのは白ビショップを当たりにすることにより黒が得する手は白が f2-f4 と突いたとき失われるからである。

11.Bc2

 白は 11.Ba6 でビショップ同士の交換を求めることができる。しかしそれは自分の攻撃が消滅し、黒が白の弱体化した白枡の占拠を準備できることを認めることになる。白枡を守るビショップがないと、白はたちまち …Nd3 や …Nc4 とやってくるのを心配しなければならなくなる。

11…Qc8!

 この手には后印防御ビショップの融通性と 10.Qe2 の欠点が表れている。このビショップはb7での務めを終えて、白の大駒の並びが具合悪いa6-f1の斜筋を窺う用意をしている。白はその斜筋を 12.c4 でふさぐわけにはいかない。というのは …Bxd2 でcポーン取りを狙う 12…Bb4 や 12…Bc5! で新たな弱点ができるからである。白枡を守るために白は黒枡で自ら状況をより悪くしなければならなくなる。

12.f4

 これがたぶん実戦的に最も望みがある。これから分かるように黒は戦力を得することができない。

12…Ba6 13.Qd1

(この章続く)

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后印防御の指し方(014)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

5…c5!

 黒は敵の計画の大きな欠陥を的確についた。すなわち白はほかの多くの后印防御でのように …c7-c5 に d4-d5 と応じることができない。

 これは中盤戦で白が e3-e4 と突きたければ(こう突けなければ有望な作戦がない)、中央または后翼でいくらか地点を譲らなければならないということを意味している。しかし白が最終的にeポーンを突くと、黒はd4のポーンを取って白に取り返し方を迫る。白が cxd4 と取れば(白はその時までには c2-c3 と突いている)黒駒のためにc列を素通しにしてやることになり、Nxd4 と取れば白のdポーンによって行けなくされていたe5とc5の2地点を黒が支配することになる。

 カパブランカの布局の対処法はきわめて論理的だった。「白の布局システムの何が本質的に間違っているのか」と彼は自問する。彼の解答は短い手数ででより明らかになる。

6.O-O Nc6

 黒が布局の段階で中央ポーンのどちらも使うことを控えていることに注意して欲しい。なかでも …d7-d5 突きを避けているのは、d5を自分の駒のために空けておきたいからである。e3-e4-e5 に対して黒は …Nd5! と応じたいのである。それに …d7-d6 と突いて良い理由もまだない。

7.c3

 后翼ビショップを早く展開するのはコーレの処方箋に反するだろうが、7.b3 にも言い分はある。このあと Bb2 から最終的に c2-c4 と突くことができ、第5章で論じるのと似たような展開になる。しかし黒の目ざといナイトは白が早く c2-c4 と突かなかったことにつけ込むことができる。例えば 7.b3 cxd4 8.exd4 Nb4 のあと黒は 9…Nxd3 を狙う。もし白が 9.Be2 でビショップを保持すれば、黒は 9…Nbd5 と指して 10…Nc3! か 10…Nf4! を意図しどちらの場合も優位に立つ。

7…Be7

 黒は展開を完了しキャッスリングすれば満足である。白はc3とe3のポーンで自分の后翼ビショップを閉じ込めてしまっている。だからそれを自由にするためにここで e3-e4 と突かなければならない。

 白のシステムは指す手が予測できることが欠点である。このため黒が反撃作戦を立てることが非常に容易になっている。

(この章続く)

2015年01月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(013)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 本局で起こることを完全に理解するためには今世紀の初期、すなわち后印防御と 1.d4 に対するほかのほとんどの応手の揺籃期に立ち返ってみるのが良い。

 第一次大戦後にチェスは布局の指し方の新構想に見舞われた。中には革命的なものがあった。その主眼点は中央のポーンを突くのは十分用意が整うまで控えるべきであるということだった。超現代派と呼ばれた革命家たちは古典派たちによって支持された理論に挑戦した。古典派は白は迅速に中央を占拠し黒は中央で直接対決することを主張していた。

 しかしこのイデオロギー論争において穏健派と呼んでもよい集団もあった。彼らは古典派のしたように中央のすべてを占有したいとは思わなかったが、早い段階においては自駒のために足がかりを作っておかなければならないと考えていた。穏健派は通常は中央ポーンの一つだけを2枡突いて直接かつ単純に展開することに基づいた独自の布局システムを作り上げた。

 コーレは仲間のメキシコ人カルロス・トーレのように自分の名前で記憶されている自前のシステムを持っていた。それは d2-d4、Nf3、e2-e3、c2-c3、Bd3、Nbd2、Qe2(または Qc2)、O-O そして最後に e3-e4-e5! という完全無欠の布局手順から成っていた。これらの手は黒の手と干渉せず、重要な地点をめぐってほとんど黒に挑むことがなかった。白はいわば相手なしで指したのである。

 コーレは1920年代に洗練された相手に多くの好局をものにした。しかし彼の対処法は単なるマスター相手と同じように元世界チャンピオンのホセ・カパブランカにも通じるのだろうか。

3…b6!

 本局は白の控えめなシステムに対する后印防御の威力の最も初期の実証例の一つである。白の e4-e5 からの王翼攻撃への反撃としてぴったり合っている。

4.Nbd2

 この陣形は第7章で詳しく論じる。しかし白の基本的な考え方はもう理解することができる。白はちょうど c2-c4 から Nc3 の場合のようにe4を支配している。しかし黒が …Bb4 でその地点を争う着想は拒んだ。黒が …d7-d5 と突かないなら白はeポーンを4段目、続いて5段目へ突いていくことができる。これにより黒の王翼ナイトがf6から追い払われ、王翼から最良の守り駒が奪われることになる。そして黒は王翼にキャッスリングしたあとは、敵駒の集結、特にd3のビショップそしてナイトがf3からg5へ、またはe4からg5へというようにすべてh7をにらむことを心配しなければならない。

 全般的に見てこれは理にかなった布局の指し方である。そして白は最初の7、8手がつねに同じなのでほとんど考える必要がない。

4…Bb7 5.Bd3

(この章続く)

2015年01月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(012)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2
白 E.コーレ
黒 J.R.カパブランカ
カールスバート、1929年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.e3

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(365)

「Chess」2015年1月号(3/3)

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国外のニュース


米国の第一人者のヒカル・ナカムラはレイティング上のライバルのレボン・アロニアンを、正規チェスの2-2の結果のあとのブリッツ16番勝負で下した。ナカムラは去年の4月以来エネルギー・ドリンク会社のレッド・ブルの支援を受けている。

米国 – レボン・アロニアンとヒカル・ナカムラはシンクフィールド杯で2局とも引き分けに終わっていた。そこで米国チェスの際立った後援者のレックス・シンクフィールドは二人をまたセントルイスに迎えて番勝負を指させた(11月21-25日)。初戦でのナカムラの布局の選択(ラゴージンに対する 5.Bg2)は無害なように思われたが、すぐに優勢になり大局観で圧倒して勝った。しかしアロニアンはすぐに反撃した。收局に入ったときにはあまり大きな優勢のようには思われなかったが、ナイトに対するビショップの優位を十分に見せつけて成績を互角にした。激闘の2引き分けのあとブリッツ戦に移り、米国の早指しの達人が9½-6½で勝った。

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(この号終わり)

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后印防御の指し方(011)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒がクイーンの連続チェックで浮いているビショップを取ることができるので(42…Qh6+ 43.Kg1 Qe3+)、この手はポカのように見える。しかし 43.Qd4 で黒の攻撃の着想をすべてつぶすことを狙っている白はそれを見抜いていたしほかにも見通していた。注意しておくと 42…Qxc4 は 43.Qh5! を招き、ルークが当たりになり Qg5+ も狙われる。

42…Qh6+ 43.Kg1 Qe3+ 44.Kh1 Qh6+ 45.Kg1 Qe3+ 46.Kh1 Qxc3

 黒は明らかに何が起こるか分かっていたが、勝つ手段を見つけることができなかった。ないものはない。

47.Rxc8! Rxc8 48.Qg4+

 これが眼目だった。白はルークを取り返し、チェックの千日手の可能性が豊富なのでクイーンとポーンの收局で引き分ける可能性が確実である。

48…Kf7 49.Qxc8 Qxc4 50.Qf5+ 引き分け

 c8、g8それにe6でチェックすることにより必ず黒キングの逃走を防げるので、チェックの千日手になる。

(この章続く)

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后印防御の指し方(010)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒は盤上にルークを残さなければならない。さもないと黒の主要な狙いが消滅し、白が7段目と8段目で自分の狙いを行使し主導権を強奪するからである。

33.Be4!!

 この目の覚めるような手は実際はまったく単純である。黒は攻撃にe列が必要なので、白はその列をふさいだということである。これで黒の …Re1+ という狙いの代わりに、d3のナイトに対する白の狙いができている。

 もちろんそれだけではないが、白が主導権以上のものを持っていることは 33…Rxe4 34.Rxc8+ Kf7 35.Qf6# から見やすい。2手前に(31…Qg3 の代わりに)31…Qg6 と指していたら負けるかもしれないことも分かる。34.Be4 がナイトとクイーンに当たり、クイーンがナイトを守ると同時にg7での詰みを受けることができないからである(31…Qg6 32.Ra8 Bc8 33.Be4!! Qg3 34.Bxd3[訳注 34…Re1+ があります])。

33…Qf2+ 34.Kh1 Qxh4+ 35.Kg1

 黒は最後の2手を繰り返すことにより引き分けにできる。それ以上を求めるのは自分の狙いの方が白の狙いより危険だからである。もっとも何かを達成するためにはまず Qg7# という狙いを取り除かなければならない。

35…Ne5! 36.Bxe5 Qxe4 37.Bh8!

 舞い戻った。詰みの狙いが復活して黒には建設的な作戦がない。g7の守りに縛りつけられているクイーンはチェック以外動けない。ビショップはチェックするかルーク同士を交換する以外動けない。ルークはビショップを取られるので最下段を離れられない。

37…Qe3+ 38.Kh2 Qf4+ 39.Kg1 Qg3 40.Bc3

 この手は一時的に黒の王翼に対する圧力をゆるめるが、黒のルークとビショップを動けなくしている。

40…Qe3+ 41.Kh1 Qf4 42.Qd1!

(この章続く)

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布局の探究(130)

「Chess Life」1995年9月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手を稼ぐためのポーン捨て(続き)

 ポーンの犠牲が棋理に合っている可能性は、それが布局の戦略主題に合致しているならば高まる。好例はグリューンフェルト防御 (D82) の次の戦型である。

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Bf4 Bg7 5.e3 c5

 グリューンフェルト防御の戦略構想は …c5 突きでd4の地点を攻撃することにより反撃を成し遂げることで、それによりフィアンケットされたキング翼ビショップの斜筋を開放する。

6.dxc5 Qa5 7.Qa4+

 5…c5 が戦術的に成立することは 7.cxd5 Nxd5! 8.Qxd5 Bxc3+ 9.bxc3 Qxc3+ 10.Ke2 Qxa! 11.Be5 Qc1 12.Bxh8 Be6! で互角になることですぐに確かめられる。白は本譜の手で收局を目指している。重要な変化は 7.Rc1 だが 7…Ne4 で中盤戦に入り、黒はいずれ犠牲にした戦力を取り戻して満足できる局面になる。

7…Qxa4 8.Nxa4 Be6 9.Bxb8

 黒は 9…dxc4 を狙っていた。代わりに 9.cxd5 と取るのは 9…Nxd5 で黒のキング翼ビショップの斜筋が通ってくる。白は本譜の手で白のクイーン翼に対して用いられるかもしれない黒のクイーン翼ナイトと交換することにより局面を単純化する。

9…Rxb8 10.cxd5

 ここで黒には選択肢が二つある。

 1)10…Nxd5? はドレエフ対レーコー戦(ドルトムント、1994年)で咎められた。11.Bb5+ Kf8 12.Rc1! で黒はキング翼ルークが戦いに参加できないのでポーンの代償を得ることができなかった。『チェス新報』第61巻第501局を参照。

 2)10…Bd7! 11.Nc3 Rc8! はGMドレエフにより「黒に代償あり」と推奨されている。白はcポーンを保持できないので(12.b4? Nxd5!)、黒は1ポーン損にすぎない。白が 12.Rd1 と指したと仮定すると黒は 12…Rxc5 と応じる。形勢判断の材料は次のとおりである。(a)黒は展開で2手先行している。(b)黒には双ビショップがある。(c)黒のキング翼ビショップの斜筋は強力である。(d)キャッスリングのあと黒のキング翼ルークはd8、c8またはb8に展開できる。(e)黒は …b5 でクイーン翼攻撃を始められる。GMラリー・エバンズがよく言うように「局面は実戦の検証を必要とする。」列挙した要素に基づけば黒は完全な互角になれるだろう。

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后印防御の指し方(009)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 これで白は黒枡の対角斜筋の8枡を事実上独占した。狙いは 30.Bf6 で王翼から黒クイーンを追い払い、そのあと 31.Bh8! で Qg7# で詰ますことである。これは一方が重要な斜筋を絶対的に支配しているときに、何が起こり得るかを顕著に表している。

29…Qg5!

 しかし黒はg7の守りとg2に対する自分の狙いとを組み合わせることができて元気いっぱいである。g7のビショップを取ることはもちろん狙いに入っているが、30…Re2! から 31…Rxg2+ や 30…Nh3+ から 31…Qe3 のような狙いもある。

30.Bh8!

 白は急に受ける必要がでてきて、そのためにこの手が不可欠である。そして黒クイーンがg7の地点から目を離せないようにさせている。奇妙なことに白のビショップはほかのどの地点にいるのと同じくh8で安全で、h8にいると白クイーンが王翼に行く経路をふさがない。この手は 30…Nh3+ 31.Kh1 Qe3?? を 32…Qg7# ゆえにやめさせていて、30…Re2 には落ち着いて 31.g3 と応じることができる。

30…Nd3

 このナイト跳ねには新たに二つの狙いができている。白の1段目でルークでチェックして白クイーンを取る手と、31…Qe3+ 32.Kh1 Qe1+ から詰める手である。

31.h4!

 これは受けの好手である。黒クイーンはg7から目を離せないので前に進む。どうしてg6でないのか。理由は2手後に分かる。選ばれた手にはこれまでの狙いのほかに 31…Qf2+ も加わっている。

31…Qg3 32.Ra8 Bc8

(この章続く)

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后印防御の指し方(008)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 白はa1-g7の斜筋での強さを最大にし、e5の地点を c4-c5 で切り崩すか Ra1 でa列に挑む用意をした。黒は白の手中にあるその重要な斜筋で長く耐えることはできない。それは特に白がa列またはc列で侵入する可能性もあるからである。

21…Qe7

 明らかに 18…Qe8 が誤りだったことを認めた手である。

22.fxe5 Nxe5 23.Bd4!

 この手も好手である。e3に対する攻撃を予期し、c4-c5 と突く用意にもなっている。

23…Bd7 24.Ra1 Re8

 ルークを交換すれば黒は Qa7 の狙いに恒久的に直面する。その狙いに対し黒のクイーンはc8にもa8にも自由に行けなければならないが、白がe5で2回交換することにより戦力得する可能性を維持している間はe列を離れることができない。同様にルーク同士の交換は c4-c5 突きから cxd6 または c5-c6! のあと Qa7 が白の勝ちへの作戦となる。良くても悪くても黒は反撃するためにいくらか戦力を保存しなければならない。だからa列を白に譲った。

25.Ra7 Qd8

 これは気の利かないcポーンの守り方だが、黒としては最善の手段である。ここで 26.c5! と突けば白は遅ればせながら中盤戦の攻撃を始めることができ、たぶん勝っていただろう。

26.Qa1?

 これは実際よりも良さそうに見える。この着意はおそらく Qa6-b7 と指すか、黒がクイーンを動かせば Ra8 と指すことである。しかしこれにより黒がしばらくぶりに初めての攻撃的な手を指すことができた。

26…f4!

 敵が最大の大駒2個を王翼から移動させた途端に黒は王翼の2列を素通しにする。白はこのあとの交換を避けたければ 27.e4? と突き違えなければならないが、自分の良好な白枡ビショップの邪魔になり、といって 27.Bxe5? と取れば優秀な小駒をなくすことになる。しかし実戦の黒の手には大きな危険が伴っている。

27.exf4 Ng6 28.Bf3 Nxf4 29.Bxg7

(この章続く)

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后印防御の指し方(007)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ルークが場違いな動きをしている。a列は白の防備の薄い所だが、黒ルークにはそのどこにも侵入口がない。白は重要なa1とa2をおさえていて、もし必要ならばクイーンかどちらかのビショップで黒ルークを当たりにすることによりa3とa4から追い出すことができる。黒ルークは中央か王翼の列にいる方が良い。

 しかしとりわけこの手が悪いのは 17…e5! と突く機会を逃しているからである。このポーン突きは …f5-f4 で王翼をこじ開けるかあとで …exd4 で中央に切り込む用意をしている積極的な良い作戦である。ポーン交換はどれも白ビショップのためになるので、これは諸刃の剣の作戦であることは確かである。しかし少なくとも現実に即した作戦である。

18.Bc3 Qe8

 この手は仕掛けられた罠に想到するまでは説明が難しい。黒がしたいことはa列を支配し続けることである(たとえそれで大したことはできなくても)。支配を維持するために、白がビショップをc3に上げて可能にした 19.Ra1 に 19…Rxa1+ 20.Bxa1 Bxg2! 21.Kxg2 Qa8+ でキングとビショップを両当たりにする用意をしたのである。22.d5! で局面は形勢不明だが、18…Qe8 にはずっと大きな欠陥があった。

19.d5!

 この后印防御の最初の重要な実戦例では、両者の基本的な戦い方の作戦が数多く見られる。e4をめぐる争い、準閉鎖型の中央、そして今度は d4-d5 突きによる中央の閉鎖である。白の着想は二様だった。つまり自分のb2のビショップの利きを良くすることと、黒のb7のビショップの利きを制限することである。もし黒の配置がもう少し良かったら、すなわちルークが元のf8にありクイーンがe7にあったら、これから起こる王翼の列の素通しにつけ込むことができた。

19…e5

 この手は黒枡の対角斜筋を閉鎖しておくためである。19…exd5 と取るのは 20.cxd5 Qf7 21.Bf3 となって、黒は決して安全に突くことのできないc7の弱いポーン以外何も得られない。

20.f4!

 白はしつこく后翼ビショップの斜筋を開けようとしている。20…exf4? と取ると 21.exf4 のあと Bd3 から Re1 でやはり待ち望む素通し列が得られる。

20…Bc8

 黒は中央で押しつぶされないようにビショップをd7にルークをe8にというように、駒を的確に再配置しなければならない。白の最初の狙いは fxe5 から Rxf5 なのでf5をビショップで守った。

21.Qb2!

(この章続く)

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后印防御の指し方(006)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

9…Nbd7 10.Bb2 a5!

 これがもっと控えめな 9.b3 の方が 9.b4 よりも良かったかもしれない理由である。黒は白ビショップを閉じ込めている中央のポーンが吹き飛べば、a列などの自分の素通し列で戦えるようにすることを確実にしたがっている。黒の望みはa列でルーク同士を交換し、白のbポーンを標的にできるようにすることである。白が 9.b3 よりも 9.b4 を選んだのは、いつか c4-c5 突きで中央を開放することを期待していたからだった。この理由のためにここでは b4-b5 と突くのを避ける。そう突くとc5へのポーンの利きが一部なくなるので c4-c5 と突くのが事実上不可能になる。

11.Be2 axb4

 黒は白がキャッスリングしてルークを連結できる前のここで取る。要点は白がビショップでa1で取り返さなければならず、あとでこのビショップを最下段から動かしてルークにa1とa列を譲るために手がかかるということである。

12.axb4 Rxa1+ 13.Bxa1 O-O 14.O-O Ne4!

 ここはニムゾビッチが后印防御の戦略を研究したときに夢見たに違いないたぐいの局面である。e4を完全に支配し、それにより王翼攻撃の可能性も高くなっている。適切な準備を行なえば后翼で活動することもできる。

 e4の支配を取り戻すために白はナイトをf3から動かして f2-f3 と突かなければならなくなるが、このポーン突きはe3の重要な保護者を取り去り敵が白キングを襲撃するのを助長することになる。白ナイトがf3にいなければ黒は …f7-f5 および …Rf6-h6 から …Qh4 で狙いを作り出すのが楽になるはずである。

15.Qc2 f5

 これらはすべて戦略の一部である。e4の支配が強化され、王翼攻撃の見込みがたってきた。

16.Nd2

 この手は黒の攻撃を助けるが、白は代わりに良い作戦がない。予定どおり d4-d5 と突けば、黒は単純に …e6-e5 と突き越しc8経由で后翼ビショップを戦いに引き戻す。白はまだ e4-e5 と突くのに十分な火力がないので、c5に利いている敵駒の一つである進攻した黒ナイトを消したかった。

16…Nxd2?

 16…Qg5 が強手で、17…Nxd2 でg2への攻撃を露出させる狙いがある。白が 17.Bf3 と指せば 17…Nxd2 18.Bxb7 Nxf1! で戦力損になる。

17.Qxd2 Ra8

(この章続く)

2015年01月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(005)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 白の4手目と5手目のおかげで中央を遠くから支配するという黒の戦略が全開になる。

6.Qb3 Qe7

 黒はお返しに何か得られるならばビショップをナイトと刺し違える用意ができている。黒の求める代償の最初の形は相手より優るポーン陣形で、それは白が …Bxc3+ に bxc3 と取らなければならない時に得られる。しかし白が最後の手で二重ポーンになるのを避けたので(…Bxc3+、Qxc3!)、黒は今度は代償の別の形である手得を目指す。つまりビショップを切る前に白が a2-a3 突きに1手かけるのを待っている。

7.a3 Bxc3+ 8.Qxc3

 世紀の変わり目のマスターたちはビショップをナイトと交換するのは一般につまらない考えであると信じていた。なぜならポーンがごちゃごちゃした局面を除きほとんどの局面では、長距離のビショップの方が前途が明るいからである。しかしニムゾビッチは中央に陣取ったナイトは容易にビショップと渡り合えると主張した。多くの局面ではナイトのためのそのような良い拠点はない。しかしここでは絶好のe4がある。

8…d6

 これでナイトがe4に跳べば …Nbd7-f6 により保護することができる。しかし黒はe4をもっと守りたいのにどうして …d7-d5 と突かないのだろうか。その答えは白の黒枡ビショップにある。黒は王翼ビショップを交換したことにより自分で黒枡を弱めた。だからその埋め合わせにポーンを黒枡に置いて敵の無二の黒枡ビショップを制限し黒枡で攻勢を発揮しようというわけである。また …d7-d5 は自分の残ったビショップの斜筋をふさぐことにもなりがちである。

9.b4

 白は黒が布局でいくらか劣っているとみなしているのでこの攻撃的な手を指しても当然と感じている。c4-c5 突きを用意し、后翼ビショップのためにb2の地点を空け、(黒がキャッスリングしたあと)d4-d5 から Qxg7# と指せる日が来ることを期待している。

(この章続く)

2015年01月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(364)

「Chess」2015年1月号(2/3)

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チェス論評(続き)

 米国の第一人者はジェームズ・アデア戦で魔に魅入られたように布局の落とし穴にはまった。しかし最後の独創力は驚嘆だった。

□J.アデア
■H.ナカムラ

スーパー快速、ロンドン、2014年
スカンジナビア防御

1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qa5 4.d4 c6 5.Nf3 Bf5 6.Ne5 e6 7.g4!

 この手があるのでスカンジナビア防御のこの戦型は疑問だと考えられている。

7…Bg6 8.h4 Nd7?

 8…Nf6 9.Nc4 Qd8 10.h5 Be4 11.Nxe4 Nxe4 12.Qd3 は白が良い。しかしたぶん黒はこれよりほかに良い手がない。

9.Nc4!

 黒は 9.h5 Nxe5(実戦では 9…Be4? も指されたが 10.Nc4 で悪い)10.dxe5 Be4 を予期していた。しかし実戦はクイーンがc3のナイトへの釘付けを維持できないのでビショップが取られる。

9…Qc7 10.h5

 黒はビショップを捨ててポーンを取った。平然と指し続けるしかない。

10…Bxc2 11.Qxc2 Ngf6 12.g5 Nd5 13.Bd2 Be7 14.Qe4 O-O-O 15.f4 Rhe8 16.O-O-O h6 17.gxh6 gxh6 18.Ne5 f5 19.Nxd5 cxd5+ 20.Qc2

 クイーンが盤上からなくなる。ここでは多くのGMが投了することだろう。

20…Nf6 21.Ba5! Qxc2+ 22.Kxc2 b6 23.Be1 Kb7 24.Ng6 Bd6 25.Kd3 Rc8 26.Be2 Ne4 27.Bf3 Rc7 28.Rh2 Rec8

 白はルーク同士を交換できれば楽なのだがそうはいかない。しかしもちろん白の勝勢である。

29.Bxe4 dxe4+ 30.Ke3 Rc1! 31.Rxc1 Rxc1 32.Bh4 Rf1

 ナカムラは …Kc6-d5 と指せれば望みが出てくる。アデアは決めに出る。

33.Be7 Rf3+ 34.Ke2 Kc7 35.Bg5!

 35.Ne5 Rxf4 36.Rh4! も交換を強要して勝ちになる。しかし途中 36.Bxd6+ Kxd6 37.Rg2 は 37…Kd5! で実戦的には黒の方が良い。

35…hxg5 36.h6 gxf4 37.h7 Rd3!!

 この手しか望みがない。意外でもないがアデアはポーンを昇格させてもすぐに勝ちにはならないことに動じなかった。

38.Nxf4?

 ここは 38.Ne5! f3+ 39.Nxf3 Bxh2 40.h8=Q Rxf3 41.Qxh2+ で白の勝ちだった。しかし 38.h8=Q は 38…f3+ 39.Kf2 Rd2+ 40.Ke1 Rxh2

で黒がまだ戦える。例えば 41.Qg7+ Kb8 42.Qg8+ Kb7 43.Qxe6 Bg3+ 44.Kd1 Rh1+ 45.Kd2 f2

となれば白は千日手にしなければならない。

38…Bxf4 39.Rh4

 39.h8=Q には 39…Rd2+ 40.Ke1 Rxh2 41.Qe8 Rh6! で黒の方が良い。すごい手があったものだ。

39…Rd2+

40.Ke1?

 まだ引き分けは手遅れでなかった。40.Kf1 Rd1+ 41.Kg2 Rd2+ 42.Kf1 がそれだが、42.Kh3?? は 42…Rh2# までとなる。

40…e3! 41.Rh3

 この手はうまい戦術を食らうが、41.h8=Q は 41…Bg3+ 42.Kf1 e2+ 43.Kg2 e1=Q+ 44.Kh3 Rh2# までとなる。

41…Bg3+!! 42.Rxg3 Rh2 43.d5 f4 0-1

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(この号続く)

2015年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

后印防御の指し方(004)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1
白 O.ベルンシュテイン
黒 A.ニムゾビッチ
サンクトペテルブルク、1914年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.c4 b6!

 黒は布局の最初の数手の間はポーンを中央から遠ざける意図を表明した。中央をナイトとフィアンケットしたビショップとで遠くから支配する構想は1914年でさえ新しいとはとても言えない。半世紀以上もの間真剣な試合で用いられ時おり好結果を得ていた。ニムゾビッチの功績はこの不定形の布局構想をシステム化したことである。

4.Nc3 Bb7 5.e3 Bb4!

 この手がなければ、またはこの手の狙いがなければ、后印防御にはほとんどとげがない。この布局では黒の王翼ビショップにはe7とb4の二つしか良い地点がない。…Bb4 には白が Nc3 と指したならば、またはこの手がチェックになるならば、意味がある。どちらの場合もこのビショップ出には強制的に何かをする点がある。つまり敵ポーンを二重にする狙いか敵キングを「取る」狙いである。しかしもし白が既にキャッスリングしていれば、または后翼ナイトをd2に跳ねていれば、…Bb4 には単純に a2-a3! と応じられてしまう。そうなればこの優れたビショップは価値の劣るナイトと代償もなく交換しなければならないか、退却して手損しなければならなくなる。

(この章続く)

2015年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(003)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 白はcポーンを突いていないので …Bb4 には c2-c3 と応じることができるので恐れる必要がない。また、例えば …c7-c5 には c2-c3 と突いて中央を支えることもできる。c4にポーンが行っていないので白はたぶん中盤戦で強く d4-d5 と突くことができない。しかしたとえ黒が …c7-c5 のあと …cxd4 と取ってきても、cポーンで取り返すことができるので強力なポーンをd4に保持することができる。ポーンがc4にあれば白は駒で取り返すことを強いられ、白の素晴らしい中央のポーンは必要な支援が受けられなくなる。

 c2-c4 と突いていないことは何らかの点でも黒のためになる。黒としてはb7に展開される后翼ビショップの斜筋を恒久的にせき止めるどんな手も避けたい。もし白が c2-c4 と突いていれば、黒はいつでもc4のポーンと交換してビショップの斜筋を通すことができることが分かっていて …d7-d5 と突くことができる。しかしc4に白ポーンがなければ黒はもっと柔軟に中央に対処することができる。すなわちすぐに …d7-d5 と突く必要はなく、駒を効果的に中央に向かわせることができる。例えば王翼ナイトをd5に置き、もし白がポーンをc4またはe4に進めればそのナイトをf4またはb4に跳ばせることができる。この手は先手になることが多く、…c7-c5 突きで白の中央に重大な損害を与えることができる。

 それでは実戦の后印防御を見てみよう。ニムゾビッチが黒のシステムを大会の実戦に投入する前に、彼と彼以前の人たちはしばらくの間それの経験を詰んでいた。国際大会での初登場はとても成功とはいえなかったが、布局の原理はよく踏まえられていた。

(この章続く)

2015年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(129)

「Chess Life」1995年9月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

手を稼ぐためのポーン捨て(続き)

ぺトロフ防御マーシャル戦法 (C42)

 ある戦法の意味するところをより深く正確に理解するのに長い時間がかかることがよくある。1910年代の初め頃米国の偉大な攻撃的選手のフランク・マーシャルは、ぺトロフ防御の主流手順のそれまで守勢だった戦法を先鋭化させることにした。

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5

 これは逆説的な対称局面の一つである。ナイトがより活動的なのは黒の方であるが、形勢は白が普通の布局の程度くらい優勢である!これは黒のナイトがe4で不安定で、白はこれにつけ込んで主導権を握ることができるからである。

6.Bd3 Bd6!?

 これがマーシャルの着想である。それ以前の10年くらい前まで黒は控えめに 6…Be7 と指すしかないと考えられていた。本譜の手の本質的な戦略上の危険は、黒が Ne4 を支えている要所のd5の地点を守るのにより困難を抱えているということである。

7.O-O O-O 8.c4

 白は主眼の圧力をかけ始め、その圧力はまさにうっとうしくなりつつある。実際黒はポーンを犠牲にする用意をしなければならない。しかしそれには正しいやり方と間違ったやり方とがある。

Ⅰ.8…Bg4?! は間違ったやり方である。

 GMマーシャルは守るつもりはなかった。代わりに自著の『My Fifty Years of Chess』に書いているように「多くの批評家に疑問を表されているにもかかわらず、ほぼ20年間持ちこたえることのできた犠牲による反撃を採用する。」

 この犠牲につきものの問題は、白がポーンを取るのに何の代価もいらないことである。

9.cxd5 f5 10.Nc3

 白は攻撃しながら展開する。黒はキング翼ナイトを楽に守ることができないので、ポーンをもう1個貢いでクイーン翼ナイトを働かせる。

10…Nd7 11.h3 Bh5 12.Nxe4 fxe4 13.Bxe4 Nf6 14.Bf5 Kh8

 黒は展開に優っていないし(白は好きなようにクイーン翼ビショップを展開することができる)白陣には何も弱点がないので、戦力損の具体的な代償がない。白はここで非常に積極的な作戦を採用した。

15.g4! Nxd5 16.Be6!

 この手はシュピールマン対マーシャル戦(ハンブルク、1910年)の 16.Qd3 Nb4 よりもはるかに強力である(マーシャルが31手で勝った)。本譜の手のあとC.H.O’D.アレグザンダー対マリソン戦(ブライトン、1938年)では 16…Bf7 17.Ng5! Bxe6 18.Nxe6 Qh4 19.Qb3!(20.Bg5 が主要な狙い)と進み白が勝った。

Ⅱ.8…c6 が正しいやり方である。

 黒はd5の地点を守りもっと有望な時機を待って動くことにする。

9.Qc2?!

 10年前まではこれが 6…Bd6 を咎める手と認められていたが、もう指されていない。9.cxd5! cxd5 10.Nc3 だけが現在わずかな優勢を保持すると信じられている。

 本譜の手のあとすべての「普通の」手(9…Re8; 9…f5; 9…Bf5; 9…Nf6)はまったくうまくいかない。それでも黒は白の直接的でいくらか「素朴な」狙いを無視することができる。

9…Na6!!

 (a)10.Bxe4 dxe4 11.Qxe4 Re8 12.Qd3 Bg4!

 ポーンの犠牲がもたらしたものを検討してみよう。

 1.黒の小駒の展開が完了し働きの良い地点に配置されている。2.黒のキング翼ルークは唯一の素通し列を支配している。3.黒には双ビショップがある。4.白は白枡が弱い。5.白のクイーン翼は展開されていない。6.黒は 13…Bxf3 14.Qxf3 Qh4 でポーンを取り返すことを狙っている。7.白は 13…Nb4 を心配しなければならないだけでなく、黒には …Nc5 によりクイーン翼ナイトを働かせる戦術的な可能性もある。

 この時点で黒は既に展開で3手得しポーンの完全な代償もある。13.Ng5 は 13…g6 で何も起こらないので、故IMボリス・コーガンは次のような主手順を推奨し黒に完全な代償があるとしている。

13.Bg5 Qd7 14.Nbd2 h6 15.Be3 f5

 (b)10.a3 Bg4! 11.Bxe4?!

 この手はリュボエビッチ対ティマン戦(リナレス、1988年)で指されたが、やはり展望がなかった。白は互角を維持するために 11.c5、11.Nbd2 または 11.Ne5 から選択すべきである。

11…dxe4 12.Ng5?!

 12.Qxe4 Bxf3 13.Qxf3 Qh4 14.h3 Qxd4 で少し不利な形勢に満足するのが正着だった。

12…Bf5 13.Nc3(13.Nxe4?? は 13…Qh4 で即負けになる。)

13…Re8 14.Re1 Bc7!

 明らかに黒が優勢である。

 黒は展開で先行し駒の働きで優り、35手目で勝った。完全な棋譜は『チェス新報』第45巻第356局を参照されたい。

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后印防御の指し方(002)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 もし白が后翼ナイトをc3に出してd5に利かせ e2-e4 突きを準備すれば、黒は 3…Bb4 とかかって二印防御にする(もちろん 3…d5 で后翼ギャンビットにすることもできる)。このビショップは釘付けにより一時的に白のナイトを無力にし、白が中央ポーンをすぐに突くのを防いでいる(4.e4? Nxe4)。しかしもし白が后翼ナイトを展開しないか、キャッスリングするまで展開を延期して、3.Nf3 と指したらどうなるだろうか。ニムゾビッチの答えは …Bb7 を準備する 3…b6! だった。黒が2小駒でe4の地点をにらむようになれば、白は e2-e4 突きを図るために創造力と技術、それに相手を上回る駒が必要になってくる。

 一般的な指針は次のように簡単である。もし白が譲歩することなくポーンをe4に進めれば、布局の戦いに勝つことになる。両ビショップのために絶好の筋が素通しになり、一方はたぶんg5に他方はd3に配置されて黒駒の動きがきびしく制限される。e4-e5 と突くことにさえなれば、黒は最良の守備駒のf6のナイトを王翼から移動しなければならなくなるので、白はおあつらえの攻撃ができる。

 しかし白は譲歩することなくポーンをe4に突くことができない。例えば二印防御では白は …Bb4xc3 と取らせる代価を払って e2-e4 と突くことができる。これにより后翼ポーンが乱れ、c3に動けないポーンができて后翼ビショップの利きが制限されるかもしれない。しかし白はほかの手段でe4の地点を争うことができる。后印防御では最も単純な手段は e2-e3、Bd3、Nbd2 から Qe2 または Qc2 のような手でゆっくりと駒組みすることである。長い目で見れば白は黒よりも多くの火器をe4に向けることができる。これはe4が白駒の方に近いからである。しかしこの間に黒は注意をそらす活動を始めることができる。すなわち黒は白にeポーンを突く機会ができる前に中央で …c7-c5! と仕掛けることができる。またはナイトでe4の地点を占拠して …f7-f5 突きでそれを強化することができる。

 白の別の手段は黒駒を無力にしようとすることである。白はb7にフィアンケットされた黒ビショップの威力に、自分もビショップをg2にフィアンケットして立ち向かうことができる。これにより通常はd3で攻撃の機会をつかむのをやめることになる。そしてビショップがd3にもe2にもいなければc4のポーンは自然な守りがなくなるので黒の攻撃を誘うことにもなる。白はe4に挑む黒の別の小駒であるf6のナイトを無力にしようとすることもできる。しかし黒の …Bb4 と違い白の Bg5 の釘付けは、釘づけにされたナイトを本気で取る狙いにならない。黒は …Bb4 と指すときは、a2-a3 に …Bxc3+ と取って(ほとんどの戦型で)、白のポーンを二重にするつもりである。しかし白は Bg5 と指した時は …h7-h6 に Bh4 と引くつもりである。これは黒が Bxf6 に …Qxf6 と応じて二重ポーンを避けることができるからである。これは黒がナイトに対する釘付けを …h7-h6 から(Bh4 のあと)…g7-g5 ではずすことができることを意味している。だから黒は王翼を弱めるがe4の地点の支配を邪魔されることなく達成することができる。

 e2-e4 に加えて黒の気にする白の別のポーン突きがある。それは d4-d5 突きで、黒の后翼ナイトからc6の地点を取り上げることにより黒の小駒の邪魔をし、黒の后翼ビショップを閉じ込める。また、白ナイトが中央の強力な地点のd4に行けるようにもなる。白ナイトはここからe6、f5およびc6のような中盤戦でのいくつかの要所を見張ることができる。白の d4-d5 突きは黒の中央攻撃の …c7-c5 突きに対し特に強い応手となる。というのは黒のcポーンは既にc5に進んでいるのでc6に行ってd5の地点を攻撃することができず、白が d4-d5 と突いた時に明け渡す要所の一つのc5が単なる黒ポーンによって占拠されているからである。d4-d5 と突いた時に白はc5とe5の地点の支配を放棄している。白は通常なら小駒を用いて黒がe5の地点を支配するのを防ぐことができるけれども、c5の地点は黒ナイトにとって安全で絶好の拠点になる。それもこれも黒がポーンでc5の地点を占拠していないならばの話である。

 もし白が2手目で c2-c4 と突かなければ、后印防御は性格がはっきりしなくなる。例えば 1.d4 Nf6 2.Nf3 b6 には白の選択肢がいっぱいある。

(この章続く)

2015年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(001)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス

 后印防御は 1.d4 Nf6 で始まる布局定跡の軽視されたまま子である。その発展と歴史は、もっと刺激的で人気のある二印防御と密接に結びついている。つまり二印防御を学ぶなら后印防御にも熟知しなければならないのがほとんど当然のこととされている。しかし軽視は相変わらず続いている。后印防御を無視することはできないが、あまりその勉強に時間を割きたくないのが実情である。

 この軽視は過去40年の実戦経験の産物である。后印防御の初期の頃は世界大戦の間に当たり、后翼ギャンビット拒否への積極的で攻撃的と言ってもいい代替戦法だった。二印防御と緊密に結びついていたので、著名な解説者のサビエリ・タルタコーワは両者を「新印防御」という同じ布局の両側だとみなしていた。しかし二印防御が1930年代および1950年代と1960年代に攻撃の新着想と共に先鋭化していったのに対し、后印防御は第二次世界大戦前に元気をいくらか失っていった。白が正確に指せばa8-h1の斜筋を占拠する黒の戦略を無効にできることが分かった。しかしこの無効化は一つには交換をとおして達成されることがしばしばだった。この交換は白のわずかな優勢を保持するけれども試合が結局引き分けになる可能性が高かった。

 アーロン・ニムゾビッチの独創的な構想では、二印防御と后印防御は共にポーンで占拠することなく中央の地点、特にe4をめぐる戦いに基盤を置いていた。1.d4 Nf6 2.c4 e6 のあと黒は中央に向けて何も形を決めず、事の進展を待っている。

(この章続く)

2015年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(170)

第2部

第14局(続き)

 (再掲)

31.e6 Rxe6

 この手に対しても白はナイトを動かすことができない。動かすと 32…h2+ 33.Kxh2 Rh6+ 34.Kg1 Rh1# までとなる。

32.g4 Rh6 33.f3

 33.g5 は 33…h2+ 34.Kh1 Rxc6 35.Rxc6 Rxf2 で黒の楽勝になる。

33…Rd6 34.Ne7 Rdd2 35.Nf5+ Kf6 36.Nh4 Kg5 37.Nf5 Rg2+ 38.Kf1 h2 39.f4+ Kxf4 白投了

 注意深く研究するに値する收局だった。

(完)

2015年01月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(169)

第2部

第14局(続き)

 (再掲)

 黒駒の配置の素晴らしさに注目して欲しい。白は何も動かせない。動かすと何らかの損になる。白の最善の可能性は 29.e6 と突く手だった。しかし単に試合を長引かせるだけでどうやっても負けは免れない。

29.Kg1 h3 30.g3 a6

 白のどの駒も縛りつけられているのでまた白に指させて何か損をさせるようにした。

(第14局続く)

2015年01月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(168)

第2部

第14局(続き)

 (再掲)

23.h4

 これは前手の継続手である。白は黒のポーンを乱し弱体化させることを期待している。

23…gxh4

 このポーンは二重ポーンになり孤立ポーンになったが、大きな圧力をかけている。黒は 23…Re6 のあと …Rg6 から …h3 で適当な時機に …Rg2 と指すことを狙っている。

24.Re1

 白はもはや緩慢な死に耐えられなかった。至る所危険だらけでクイーン翼のポーンを見捨てることにより危険を回避したかった。そしてキング翼で主導権を握ることによりあとで自分の財産を取り戻すことを期待した。

24…Re6!

 この手はb2のポーンを取るよりずっと良い。…Rg6 の狙いで白にe1のルークでナイトを守らせる。

25.Rec1 Kg7

 これは 26…Rg6 の準備である。試合はキング翼で決着がつく見込みで、最後の仕上げをするのはh列の孤立二重ポーンである。

26.b4 b5

 この手はナイトを守りルークを自由にする 27.b5 を妨げるためである。

27.a3 Rg6 28.Kf1 Ra2

(第14局続く)

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「ヒカルのチェス」(363)

「Chess」2015年1月号(1/3)

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チェス論評

編集長 IMマルコム・ペイン


スーパー快速に優勝したヒカル・ナカムラは正規チェスになったとき満面の笑みだった。自分のスポンサーの飲み物が大変リラックスさせてくれるのかは分からない。しかし米国ナンバーワンは盤上の初手の儀式で「キープしよう」と言いながらリラックスしていた。

 最初の週末には6人のジュニアと幾人かのクラブ選手にスーパー6の一つに挑む機会が与えられた。オリンピアはこの話でもちきりで、第1回戦で達人たちと対局する6名のジュニア選手たちは雄々しかった。イングランド・チェス連盟の今年の最高選手に選ばれたキース・アーケルに指導を受けているシーオ・スレードは、すいすい指してくるヒカル・ナカムラを長いこと苦しめた。

□H.ナカムラ
■T.スレード

スーパー快速、ロンドン、2014年
二ムゾ=ラルセン攻撃

1.b3 e5 2.Bb2 Nc6 3.e3 d6 4.Nf3 g6 5.d4 Bg7 6.dxe5 Nxe5 7.Nxe5 dxe5 8.Qxd8+ Kxd8 9.Bc4 Nh6 10.Nc3 c6 11.O-O-O+ Kc7 12.Ne4 Bf5 13.Ng5 f6 14.Ne6+ Bxe6 15.Bxe6 Rad8 16.Rxd8 Rxd8 17.Rd1 Rxd1+ 18.Kxd1 Kd6 19.Bc4 Ng4 20.Ke2 f5 21.Ba3+ Kd7 22.f3 Nf6 23.Bf7 e4 24.c4 Kc7 25.h3 exf3+ 26.gxf3 Nd7 27.Be6

27…Bf6

 27…b6! なら互角に近い。本譜は黒のポーン損になる。

28.Bg8 Bg7

 28…h6 は 29.Bh7 Ne5 30.f4 で駄目である。

29.Bxh7 Nf8 30.Bg8 b6 31.Be7 Kd7 32.Bh4 Ne6 33.Bf7 Nf8 34.f4 c5 35.Kd3 Bh8 36.Bg5 Bg7 37.h4 Kd6 38.e4 fxe4+ 39.Kxe4 a6 40.f5 gxf5+ 41.Kxf5 Nh7 42.Bf4+ Ke7 43.Bd5 Bf6 44.h5 Bd4 45.h6 b5 46.Bg8 Nf6 47.Bg5 Kf8 48.Bxf6 Kxg8 49.cxb5 axb5 50.Bxd4 cxd4 51.Ke4 1-0

 ナカムラは9½/10という驚異的な成績でスーパー快速大会に優勝した。アーナンドとクラムニクに引き分けたマシュー・サドラーだけがこの米国選手と引き分けた。それで思い出したが、ナカムラは昨年快速戦だった第5回ロンドンチェスクラシックに優勝し英国では快速戦でまだ負けなしである。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

チェスの基本(167)

第2部

第14局(続き)

 (再掲)

18…Qe5!

 もちろん 18…Qxa2 は 19.Ra1 でクイーンを取られる。本譜の手はたぶんこの局面で唯一満足できる手である。すぐ目につく手は 18…Qd7 でcポーンを守る手だが、そのあと 19.Nf5 f6 20.Qg3(21.Rcd1 の狙い)20…Kh8 21.Rcd1 Qf7 22.h4 となって白が圧倒的に優勢になる。これに対して本譜の手はこのあと見られるように黒に少なくとも互角の形勢を保証する。

19.Nxc6 Qxc3 20.Rxc3 Rd2 21.Rb1

 これは大局観の重大な誤りだった。白はポーン得なので優勢だと感じていたが、実際はそうでなかった。d2の黒ルークは強力でポーン損を十分に補っている。その上ルークと組んだビショップはルークと組んだナイトより効果的である(ナイトとビショップの相対的な価値を比較した「13.見合い」の例28から例35までを参照)。そして既述のように盤の両側にポーンがある場合その長射程のためにビショップの方が優る。ついでながらこの收局ではビショップの強大な威力が発揮される。白の最良の可能性はすぐに引き分けを目指すことだった。だから 21.Ne7+ Kf8 22,Rc7 Re8(22…Bxe4 は 23.f3 で白の優勢)23.Rxb7(最善手。23.Ng6+ は 23…fxg6 から 24…Rxe4)23…Rxe7 24.Rb8+ Re8 25.Rxe8+ Kxe8 で白が間違えなければ引き分けになる。

 白はポーン得だけれどもいつも危険であることは興味深い。これまでの解説のあとで初めて黒の18手目の 18…Qe5 の真価が完全に分かる。

21…Re8

 黒はこの強力な手で白の中央に対して強襲をかけ、すぐに白キングそのものにも行なう。白は 22.f3 と突くと 22…f5 が怖い。

22.e5 g5

 この手は 23.f4 を妨げるためである。白ナイトは動くと …Rxe5 と取られるために釘付けにされているようなものである。

(第14局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(166)

第2部

第14局(続き)

 (再掲)

16.dxe6 Nxe6 17.Bxe6 Qxe6

 この手は白がa2のポーンを守るのに1手費やさなければならないだろうという見通しの下に指した。そうなれば 18…c5 と突くことができて黒が非常に良い態勢になる。ところが実戦のように相手の指した手はまったく思いもよらぬ手だった。

18.Nd4!

(第14局続く)

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