2014年11月の記事一覧

チェスの基本(134)

第2部

第8局 中央試合
(ベルリン、1913年)
白 J.ミーゼス
黒 J.R.カパブランカ

1.e4 e5 2.d4 exd4 3.Qxd4 Nc6 4.Qe3 Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Bd2 O-O 7.O-O-O Re8

 この局面では本譜の手の代わりに 7…d6 がクイーン翼ビショップの展開のためによく指されている。私の手の意味はeポーンに圧力をかけて取ってしまおうということである。それによって戦力得になり白陣がわずかに優勢だったとしても少なくとも代償となる。私の作戦は当を得ていると思っていて、あとで形勢を損じたのは作戦の実行の仕方が悪かったからである。

8.Qg3 Nxe4 9.Nxe4 Rxe4 10.Bf4

(第8局続く)

2014年11月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(133)

第2部

第7局(続き)

 (再掲)

 黒がまだ展開で後れをとっているのに白はポーン得ですべての駒が働く用意ができているので、あとは黒がすべての駒を働かせることができる前に優勢を固めるだけでよい。黒は駒の用意が整えば素通しh列を用いて白キングに対する強力な攻撃を始めることができるかもしれない。白は次の手によりすべての危険を取り除くことができる。

22.Nh4 Qh6

 この手はほとんど必然である。24.Bxg6 と取られるために 23…g6 とは突けないし、白は 23.Qh8+ のあと 24.Nf5+ から 25.Qxg7 を狙っていた。

23.Qxh6 gxh6 24.Nf5 h5 25.Bd1 Nd7 26.Bxh5 Nf6 27.Be2 Nxd5 28.Rfd1 Nf4 29.Bc4 Red8 30.h4 a5

 黒はこのポーンを安全にするために手をかけなければならない。

31.g3 Ne6 32.Bxe6 fxe6 33.Ne3 Rdb8 34.Nc4 Ke7

 黒は当てのない戦いを続けている。実質的に2ポーン損で、残っているポーンも孤立していて駒で守らなければならない。

35.Rac1 Ra7

 白は 36.Nxd6 から 37.Rc7+ を狙っていた。

36.Re1 Kf6 37.Re4 Rb4 38.g4 Ra6

 もちろん 38…Rxa4 と取ると 39.Nxd6 で白の駒得になる。

39.Rc3 Bc5 40.Rf3+ Kg7 41.b3 Bd4 42.Kg2 Ra8 43.g5 Ra6 44.h5 Rxc4 45.bxc4 Rc6 46.g6 黒投了

(第7局終わり)

2014年11月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(132)

第2部

第7局(続き)

 (再掲)

15.Nd5 Bxd5 16.exd5 Nb8

 ここへ下がったのは次にd7へ行ってもう一方のナイトを支えe5のポーンも守るためである。しかし白はその余裕を与えず、優勢な陣形を利用してポーンを得することができる。

17.a4 b4

 黒はポーン損を避ける手段がないので、そのままでポーン損を甘受し 17…Nbd7 で陣容をもっと引き締めるべきだった。本譜の手はポーン損にとどまらず陣形も非常に弱体化させた。

18.cxb4 Bxb4 19.Bxf6 Qxf6 20.Qe4 Bd6 21.Qxh7+ Kf8

(第7局続く)

2014年11月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(361)

「Chess Life」2014年11月号(1/1)

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シンクフィールド杯

解説 GMイアン・ロジャーズ

(クリックすると拡大)

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ファビアノだけが微笑を浮かべていても驚くには当たらない。世界10傑のほかの5選手はカルアナに対して一時は成すすべがなかった。

□GMヒカル・ナカムラ(FIDE2787、米国)
■GMファビアノ・カルアナ(FIDE2801、イタリア)

シンクフィールド杯第5回戦、ミズーリ州セントルイス市、2014年8月31日

28…Nf5 29.Bxf5 gxf5 30.f4?!

 ここで初めてナカムラの成り行きまかせが取り返しのつかないものになった。ナカムラがこの手に6秒以上使っていたら、生じる閉鎖的な局面のひどさに気づいたかもしれない。代わりに 30.Ne2 Rh8(30…Qxb5 31.Qc2!)31.Qd3 のような作戦でf5のポーンを攻撃するようにすべきだった。

30…g4 31.Qd3 Rac8 32.Rc1 Rc4!

33.Ne2

 白の意図していた 33.Qxf5 は 33…Nxd4! で黒の非常に有望な收局になる。

33…Nc7!! 34.Nc3?!

 これで黒の圧力が容赦のないものになる。白は 34.Rxc4 dxc4 35.Qxc4 Nxb5 36.a4 Nxd4(36…Nd6!? なら黒が安全で優勢である)37.Nxd4 Bxd4 38.Qxd4+ Qxd4 39.Bxd4+ Rxd4 40.Re7

でルーク收局に慰めを求めるべきだった。

34…Rc8 35.h3!?

 破れかぶれ。しかし白は …Ne8 から …Bd8-a5 を待っていることはできなかった。

35…gxh3 36.Kh2 Nxb5 37.Nxb5 Qxb5 38.Kxh3 Qd7 39.Kg2 b5 40.Rb1 a6

 制限時間内に規定手数に達した。カルアナが危なげないポーン得で、勝利は技術の問題のはずである。しかしここからこの大会初めてカルアナが決めそこない始める。

41.Rbc1 Qe6

 41…R8c6! で …Qc8 を狙う方がずっと簡明だった。

42.Bf2 Rxc1!?

 一貫した手だが、クイーンをd7に戻しても遅すぎることはなかった。

43.Rxe6 fxe6 44.g4!

44…fxg4?!

 「勝ちが非常に難しくなっていると感じていた」とカルアナは認めた。「そしてここでは白の Qd3-e2-d3 という捌きを見逃した。44…Bh4! 45.Bxh4 R8c3 にはまったく気づいていなかった。それならきれいに試合が終わっていた。」

45.Qe2 Kf7 46.Qd3! R1c2 47.Qh7+ Ke8

48.f5?

 48.Kf1 と指していれば黒が勝つのは非常に困難になっていただろう。特にカルアナは時間に追われていたのだから。

48…Bxd4!

 「すべてのチェックを読むのはとても大変だった」とカルアナは言った。「時間が2分ほどしか残っていなくて、ビショップ切りがポカになって負けるのが心配だった。しかしここでは勝ちのようである。」

49.Qg6+ Kd8 50.Qxe6 Rxf2+ 51.Kg3 Rc3+ 52.Kxg4 Rg2+ 53.Kf4 Rf2+ 54.Kg4 Kc7

 以降の手ではカルアナは30秒の加算時間で指していて、詰みを探すのを避け単にキングを安全にすることを心掛けた。そのあとは勝ちは自明である。

55.Qe7+ Kb6 56.Qd8+ Rc7 57.Qxd5 Bc5 58.Qd8 Kb7 59.f6 Bxa3 60.Qd5+ Kb6 61.Qd8 Bc5 62.Qb8+ Rb7 63.Qd8+ Ka7 64.Qd5 Bb6

 任務完了。

65.Kg5 Rc7 66.Kg6 b4 67.Qe6 Bd4 白投了

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(この号終わり)

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チェスの基本(131)

第2部

第7局 ルイロペス
(サンセバスティアン、1911年)
白 J.R.カパブランカ
黒 A.バーン

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.d3

 これは非常に堅実な展開法である。当時私は布局のいろいろな戦法をよく知らなかったのでこの手に凝っていた。

5…d6 6.c3 Be7

 この戦法では …g6 と突いてこのビショップをg7に展開する戦型もある。

7.Nbd2 O-O 8.Nf1 b5 9.Bc2 d5 10.Qe2 dxe4 11.dxe4 Bc5

 これは明らかにクイーンのためにe7の地点を空けるためだが、私の考えではこの段階では勧められない。11…Be6 がもっと自然で効果的な手である。駒を展開し次に …Bc4 を狙っていて、白はそれを止める必要がある。

12.Bg5 Be6

 この手はもう効果的でない。なぜなら白のクイーン翼ビショップが出払っていて、ナイトがc4の地点を守りにe3に行っても味方のクイーン翼ビショップを閉じ込めないからである。

13.Ne3 Re8 14.O-O Qe7

 この手は良くない。黒はすでに形勢を損じている。たぶんこの手を指す前にビショップで白ナイトを取るしかなかった。

(第7局続く)

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チェスの基本(130)

第2部

第6局(続き)

 (再掲)

 面白そうな局面である。私は白キングがあまり長く持ちこたえられないような攻撃を計画することができるものと考えていた。しかし最初に 29…Bc6 として 30.g3 と受けさせてから 30…Kh5 と指すことができなければその考えは間違いだった。作戦は似ていたが 29…Rcg8 と指したことにより重要な1手が欠けて白に 31.Rd1 と指す余裕を与えてしまった。しかしすぐに 29…Bc6 と指すのが正着だと確信している。白は 30.g3 と突かざるを得ず、黒は上述の最善と思われる 30…Kh5 と応じるか(この作戦はもちろん …Rh8 のあと …Kg4 で詰みを狙うか状況によりほかの手を指す。場合によっては先に …Kg4 と指す方が良いことも当然ある)、30…Ke4 で少なくとも引き分けになる。この局面ではあまりにも多くの可能性があるので、それらをすべて取り上げることはできない。読者にとっては上述の手順を注意深く分析する価値があるだろう。

29…Rcg8

 上述のように 29…Bc6 が最善だった。

30.g3 Bc6 31.Rd1 Kh5

 この手は先に説明したようにキングがいずれg4に行ってルークのh1での詰みを狙う意図である。しかし証文の出し遅れになっていて、白ルークがそれを妨げるためにちょうど間に合う。だから黒は本譜の手の代わりに 29…Ne4 と指すべきだった。それなら少なくとも引き分けになっていた。本譜の手で形勢は逆転した。白の方が優勢になり、黒は引き分けを目指して奮闘しなければならない。

32.Rd6 Be4

 まだしも 32…Ne4 が正着で、たぶん白の最善の手順に対して引き分ける最後の機会だった。

33.Qxc3 Nd5 34.Rxg6 Kxg6

 34…Nxc3 35.Rxg8 Nxa2 と指しても良くならない。

35.Qe5 Kf7 36.c4 Re8 37.Qb2 Nf6 38.Bd4 Rh8 39.Qb5 Rh1+ 40.Kf2 a6 41.Qb6 Rh2+ 42.Ke1 Nd7 43.Qd6 Bc6 44.g4 fxg4 45.f5 Rh1+ 46.Kd2 Ke8 47.f6 Rh7 48.Qe6+ Kf8 49.Be3 Rf7 50.Bh6+ Kg8

 観戦者がそうだったようにたいていの選手はどうして私が投了しなかったのかいぶかるだろう。その理由は負けだとは分かっていたがハイェスがもう少しで引っかかりそうだった次の変化に期待していたからである。51.Qxg4+ Kh7 52.Qh5 Rxf6 53.Bg5+ Kg7 54.Bxf6+ Kxf6 白の勝勢ではあるが勝つのは決して易しくはない。信じられない読者はマスター相手に白を持って指してみるとよい。私の相手は危ない橋を渡らないことにして 51.Bg7 と指し次のように勝ちきった。

51.Bg7 g3 52.Ke2 g2 53.Kf2 Nf8 54.Qg4 Nd7 55.Kg1 a5 56.a4 Bxa4 57.Qh3 Rxf6 58.Bxf6 Nxf6 59.Qxg2+ Kf8 60.Qxb7 66手目で黒投了

 25手目からはハイェスの快勝だった。それまで優勢だった黒はいくつかの好機を逃し、白は一つも悪手を出さなかった。

(第6局終わり)

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布局の探究(123)

「Chess Life」1995年5月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

無から有を生じさせる(続き)

グリューンフェルト防御 [D79]
白 GMアナトリー・カルポフ
黒 GMガータ・カームスキー
モスクワ、1992年

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3 Bg7 4.g3 c6 5.Bg2 d5 6.cxd5 cxd5 7.Nc3 O-O 8.Ne5 e6 9.O-O Nfd7 10.f4! Nc6

 これが黒の通常の手になっている。クイーン翼ナイトを最適の地点に展開し局面の進展を待っている。

11.Be3

 GMカルポフの布局の指し方で重要な特徴は、具体的な行動を起こす前に駒の展開を完了することである。今のところクイーン翼ビショップは「何もしない」地点にいるように見えるけれども、展開はされていてクイーン翼ルークは戦いに投入することができる。

11…Nb6

 次にクイーン翼ビショップを展開してルークがc列で対抗できるようにしている。これは黒のもっとも堅実なやり方と考えられているが、守勢のハンディキャップを負っている。重要な変化は次局の 11…f6 である。ここでも 11…Ndxe5?! は魅力的でなく、12.fxe5 f6 13.exf6 Rxf6 14.Qd2 Bd7 15.Kh1 Rxf1+ 16.Rxf1 Qe7 のあとカルポフ対ティマン戦(アムステルダム、1987年)では 17.Rd1 Rc8 18.a3 Bf6 19.Bg1 Bg5?! 20.Qe1! Nd8 21.e4! で白がはっきり優勢になった。

12.Bf2 Bd7 13.e4! Ne7

 白は13手目でキング翼ビショップのために中央を有利に開放しようとしていた。黒は要所のd5の地点を過剰に守らなければならない。

14.Nxd7!

 この逆説的に見える手は(「優良」ナイトを「不良」ビショップと交換しているのではないのだろうか)、カルポフ対カスパロフ戦(1987年世界選手権戦第1局)で初めて登場した。その目的は複数ある。黒の …dxe4 から …Bc6 で解放を図る着想を防ぎ、15.e5 で白がキング翼で陣地を拡張し、f5の地点を守る黒駒が一つ少なくなるので f4-f5 と突ける可能性が増すことである。局面が開放された場合は白の双ビショップが強力になる。局面が進行するにつれてこれらの「お楽しみ」が実際に起こるようになる。

14…Qxd7 15.e5 Rac8

 GMカスパロフは 15…Rfc8 と指して最終的に互角にした。しかしそのときはGMカルポフはc列での黒の可能性を無力にする洗練された捌きにまだ想到していなかった。

16.Rc1 a6 17.b3 Rc7 18.Qd2 Rfc8 19.g4

 白が広さで優位に立つキング翼での作戦を開始した。

19…Bf8 20.Qe3!

 『New In Chess』誌1993年第1号でのこの局面についてのGMカルポフの解説と手順は特に洞察力に富んでいる。「相手の黒枡ビショップは弱体化したa3-f8の斜筋に向けられている。当面はe7のナイトがまだ邪魔になっている。しかしそれが動けばc3のナイトが釘づけにされる危険がある。白は 20.Bh4 で、黒キングに向けて弱体化した黒枡で自分のビショップを働かせたい。しかし 20…Nc6 のあと嫌な 21…Nxd4 の狙いが生じる。これは 20.Qe3 以外に白に良い手がないということである。この手は釘付けを未然に避け、c3のナイトから守り駒をなくさないし、白駒の連係を何も損ねない。」

20…Nc6 21.f5! Ba3

 21…exf5 なら 22.gxf5 Qxf5 23.Ne2! で「白ナイトがすごい勢いでキング翼に行く」(カルポフ)。

22.Rcd1 Nb4 23.Qh6! Qe8 24.Nb1 Bb2 25.Qd2!

 白の23手目から25手目は黒にc2へルークでなくナイトで侵入「させて」いる(25…a5 26.a3)。これにより白はキング翼で自由に振る舞える。さらには黒のキング翼ビショップがキングの守りから誘い出されていることに注意がいる。

25…Nc2 26.Kh1 Qe7 27.Bg1 Nd7 28.Rf3 Qb4 29.Qh6 Qf8 30.Qg5! Qg7 31.Qd2! b6 32.Rdf1 a5 33.h4 Nb4 34.a3 Rc2 35.Qf4 Nc6 36.Bh3 Nd8 37.Be3! b5 38.R3f2!!

 黒駒が中央とキング翼の守りのためにごちゃごちゃしているので、白はギアチェンジして黒のクイーン翼での動きを止め素通しc列を乗っ取る。

38…b4 39.axb4 axb4 40.Rxc2 Rxc2 41.Rf2! Rxf2 42.Qxf2 Ba3 43.Qc2

 満足な応手がないので(43…Nb8 は 44.f6 Qf8 45.Nd2! のあと 46.Nf3 から 47.Bf1 – カルポフ)、黒は反撃を目指す。それでもカルポフは危険なのは黒キングの方であることを見せつける。

43…Nxe5!? 44.dxe5 Qxe5 45.Qc8! Qe4+ 46.Bg2 Qxb1+ 47.Kh2 Bb2 48.Qxd8+ Kg7 49.f6+! Bxf6 50.Bh6+ Kxh6 51.Qxf6 Qc2 52.g5+ Kh5 53.Kg3! Qc7+ 54.Kh3 黒投了

 投了時にGMカームスキーは「快勝」をたたえて相手を祝福した。この試合は名局賞を獲得した。黒はどこで間違えたのだろうか。GMカルポフは黒の指し手の改善策について特に何も言っていないし私にも良い考えはない。GMたちが黒の陣形にあまり信頼をおいていないことは、最高峰の試合から消えたことによって如実に示されている。

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2014年11月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(129)

第2部

第6局(続き)

 (再掲)

24…f5

 白がすぐ証明するようにこの手は最善でなかった。24…Qf8 なら何事もなかったが、黒はすぐに主導権を握りたくて乱戦に突き進んだ。しかしすぐ見られるようにこの手は決して敗着というものではなかった。

25.exf6e.p. Nxf6 26.hxg6+ Rxg6 27.Rxh6+

 これで黒クイーンを素抜くことができる。

27…Kxh6 28.Nf5+ exf5 29.Qxb4

(第6局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(128)

第2部

第6局(続き)

 (再掲)

 黒は布局からポーン得になったが展開はいくらか立ち遅れていて、異色ビショップがあるので黒の勝ち試合とはまだ言えない。しかし局面が優位に立っていることは確かで、その理由としてポーン得に加えて、白のeポーンが当たりになっているので白はもちろん守らなければならず黒はナイトをe7を経由してd5に据える機会があるからである。黒ナイトがd5に来ると、機会があれば早速ビショップがd7からc6に展開する。そうなれば主導権を握るのは黒の方で、試合の流れを決めることができる。

15.Rd1

 この手は 15…Ne7 を防ぐためで、16.Nxc3 と取れるし 16.Ba3 の方がずっと良い。しかし戦略的には正しくない。というのは駒をクイーン翼に片寄らせることにより、黒の防御が完全に整う前に白が黒のキング翼に決然と攻撃を仕掛けることのできるかもしれない機会を失うからである。

15…g6 16.f4 Kg7 17.Be3

 Ba3 と指すために 17.a4 と突く方が良かっただろう。本譜の手は純然たる防御で、それよりも白ビショップは素通し斜筋に配置する方がはるかに良い。

17…Ne7 18.Bf2 Nd5

 このナイトは局面全体を支配して白の攻撃を完全に麻痺させていて、どかせる手段もない。黒はこのナイトの背後で落ち着いて駒を展開することができる。ここでは黒は戦略的に勝っていると言うことができる。

10.Rd3 Bd7 11.Nd4 Rac8 12.Rg3 Kh7 22.h4 Rhg8 23.h5 Qb4

 この手は白ナイトを釘付けにするためとe7かf8の地点に戻るためである。Rb1 も防いでいる。実際は白の攻撃は無いに等しいのでこれらの用心はほとんど必要ない。たぶん黒はこれらの配慮は脇に置いておいて、あとで少し劣った状況で指したようにここでは 23…Qa4 から f5 と指すべきだった。

24.Rh3

(第6局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(127)

第2部

第6局 フランス防御
(ライス記念大会、1916年)
白 O.ハイェス
黒 J.R.カパブランカ

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Bb4

 黒が主導権を得る可能性がより高まるのでフランス防御のすべての戦型の中でこれが一番好きである。

5.e5

 私は 5.exd5 が最善だと思うが、本譜の手に賛成する考えは多い。しかし白が採用した戦型そのものには賛成が多いわけではない。

5…h6 6.Bd2 Bxc3 7.bxc3 Ne4 8.Qg4 Kf8

 代わりに 8…g6 と受ける手もあるが黒のキング翼が非常に弱体化する。白は 9.h4 によって黒の 9…h5 を促し、あとで Bd3 で黒の弱くなったg6のポーンを狙う。黒は本譜の手によってキャッスリングの権利を放棄するが、白の中央とクイーン翼を攻撃する手数を稼いでいる。

9.Bc1 c5

 …Qa5 を見せて白の Ba3 を防いだ。白の直前の手がまったくの手損で、単に自陣を弱めただけであることが明らかになった。

10.Bd3 Qa5 11.Ne2 cxd4 12.O-O dxc3 13.Bxe4 dxe4 14.Qxe4 Nc6

(第6局続く)

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チェスの基本(126)

第2部

第5局(続き)

 (再掲)

 ここではもともと 17…c5 から 18…d5 と指すつもりだった。それなら引き分けになると考えていた。それが急に野心的になり、本譜の 17…Nc8 のあとe6のナイトと交換損してポーンを取って白のeポーンをさらに弱体化できると考えた。この作戦は状況により …g5 突きの前か後で実行するつもりだった。代わりに 17…c5 と突いていたらどうなったかを分析してみよう。18.Nd5 なら 18…Bxd5 19.exd5 b5 となって、綿密に分析すれば黒には何も恐れるものがないことが分かる。この場合黒の作戦はナイトをc8、b6そしてc4またはd7を経由してe5に据えることになる。また 18.Rf2 なら 18…d5 19.exd5 Bxd5 20.Nxd5(20.Rfd2 なら 20…Bxe6 で黒が優勢になるのでこう取るのが最善)20…Rxd5 21.Rxd5 Nxd5 となって黒が負けるべき理由は何もない。

17…Nc8 18.Rf2 b5 19.Rfd2 Rde7 20.b4 Kf7 21.a3 Ba8

 また作戦を変更したが今度は正当な理由がなかった。17手目でナイトを引いたときに予定していたようにここで 21…Rxe6 21.fxe6+ Rxe6 と指していたら、白が勝てたかどうかは非常に疑わしい。少なくとも極度に難しかっただろう。

22.Kf2 Ra7 23.g4 h6 24.Rd3 a5 25.h4 axb4 26.axb4 Rae7

 ここではこの手には目的がない。非勢の黒は1手無駄手を指してしまった。26…Ra3 で素通し列を支配しておく方が良く、同時にナイトをb6からc4に進めることを狙う。

27.Kf3 Rg8 28.Kf4 g6

 この手も良くなかった。白キングはこの位置では何もすることがないので、白の直前の2手は緩手だった。白は27手目でルークをg3に回すべきだった。黒は本譜の手の代わりに 28…g5+ と突くべきだった。この機会を見逃したあとは白の思い通りで、正確に勝負をものにし黒は1手ごとにどうしようもなくなった。試合はこれ以上解説の必要がない。私の指し手はずっと優柔不断だった。作戦を立てたときは実行可能ならやり遂げなければならない。白の指し手について言えば10手目と12手目がとくに緩着だと思う。そのあとは27手目と28手目が悪かった以外はうまく指していた。ほかの手は良い手ばかりで、完璧だろう。

29.Rg3 g5+ 30.Kf3 Nb6 31.hxg5 hxg5 32.Rh3 Rd7 33.Kg3! Ke8 34.Rdh1 Bb7 35.e5 dxe5 36.Ne4 Nd5 37.N6c5 Bc8 38.Nxd7 Bxd7 39.Rh7 Rf8 40.Ra1 Kd8 41.Ra8+ Bc8 42.Nc5 黒投了

(第5局終わり)

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チェスの基本(125)

第2部

第5局(続き)

 (再掲)

13…Bb7

 この手は私の形勢判断とは相いれなかった。正着はもちろん 13…Bxf4 である。ラスカー博士の読んでいた手順は 13…Bxf4 14.Rxf4 c5 15.Rd1 Bb7 16.Rf2 Rad8 17.Rxd8 Rxd8 18.Rd2 Rxd2 19.Nxd2 で、白が優勢としていた。しかし局後すぐにニムゾビッチが指摘したようにこの手順中の 16…Rad8 は最善ではない。代わりに 16…Rac8! なら 17…Nc6 から 18…Ne5 で …Nc4 を狙うのを止める良い手段がないので、白は引き分けにするのが困難だっただろう。また、白がこの捌きをb3のナイトを引くことにより対処しようとすれば、黒はナイトをd4に進めることができ白のe4のポーンを攻撃目標にする。しかしラスカー博士の手順を受け入れれば、黒が …Nc6 と指して防ぎようのない …Nb4 または …Nd4 を狙えば、たちどころにどんな優勢も消え失せるかもしれない。もし白が 20.Nd5 と応じれば 20…Nd4 で黒は少なくとも引き分けになる。実際 19…Nc6 のあと黒には狙いがあまりにも多くあるので、白がどのようにしたら1個またはそれ以上のポーンの損を防ぐことができるのか見通しが立たない。

14.Bxd6 cxd6 15.Nd4

 私が 13…Bb7 と指したときこの手が見えていなかったのは奇妙に聞こえるだろうが本当である。見えていたら正着の 13…Bxf4 を指していただろう。

15…Rad8

 ナイトの侵入に対して黒はあとで …c5 から …d5 と指せるので、形勢はまだまだこれからである。

16.Ne6 Rd7 17.Rad1

(第5局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

[復刻版]理詰めのチェス(32)

第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する(続き)

第32局

 カナル対カパブランカ戦は鑑賞家垂涎の一局である。カナルはルークを捨てて2個の駒を取る手筋でカパブランカを驚かせた。しかし本当に驚いたのだろうか。明らかにカパブランカはこの手筋を予期していて、カナルよりもさらに先を見通し相手には見抜けなかった手段を読んでいた。その後に続いた収局はすばらしいスタディで、実戦ではめったに見られない主題の「支配」を見せつけている。1個のポーンがクイーンに昇格するが、戴冠するポーンを見つけるのには鋭い眼力が必要である。

クイーンポーン試合(クイーン翼インディアン防御)
白 カナル
黒 カパブランカ
ブダペスト、1929年

1.d4

 この手は現代の選手のお気に入りで、中原の制覇をめぐる戦いを始める最良の手段である。即ち中原をポーンで占め2個の駒がすばやく戦闘に加われるようにしている。

1…Nf6

 この手は 1…d5 と異なり敵と正面からぶつかっていないが、次に 2.e4 と指すのを防いでいる。それに布局における適正な地点にすぐに駒を展開する利点もある。

2.c4

 この手には多くの利点がある。

 a)黒がすぐに 2…d5 と指すのを抑止している。それに対しては 3.cxd5 と取って駒で取り返させ黒のつかの間のポーン中原を破壊する。

 b)c列を開けて白の大駒が利用できるようにする。

 c)クイーンが斜筋を利用できるようにする。

 d)並んだ2個のポーンが5段目の4地点を支配できるようにする。

2…e6

 この手により黒のキング翼ビショップは中原での事態への影響力を見据えて攻撃的に展開することになる。例えばもし白が次に 4.e4 と突く意図で 3.Nc3 と応じれば黒はビショップでナイトを釘付けにして 4.e4 を不可能にする。

3.Nf3

 白はeポーン突きを実現することができないので普通の展開の手を指し事態の進展を待った。

3…b6

 黒は事業にさらに抑制を加えた。黒の意図はビショップをb7の位置につかせ遠くから攻撃することである。このビショップは急所のe4の地点の支配に向けてナイトに力を与える。

4.g3

 白の最良の進行は素通し列でルークが向き合うように対角斜筋でビショップを対抗させることである。同じ兵力を向き合わせることで白は敵のビショップの攻撃から牙を抜くことができる。

4…Bb7

 まさにこの手こそ現代の構想である。昔は中原をポーンで占拠しその後でビショップをフィアンケットしていた。その結果ビショップは役に立つ機会を奪われていた。今日ではビショップは利き筋に固定されたポーンが散乱していて邪魔されるということがないので対角斜筋に沿って自由に威力を発揮している。

5.Bg2

 フィアンケットが完了してキング翼が空き白はキャッスリングの準備が整った。

5…Bb4+

 黒は …c5 で突き崩そうとする前に駒を展開した。このビショップ出はキャッスリングを早めるだけでなく有利なビショップ交換をもたらすことになる。

6.Bd2

 この手は 6.Nbd2 よりも優っている。6.Nbd2 は消極的な手で、黒にキャッスリングしてから 7…d5 で中原を攻撃する余裕を与える。

6…Bxd2+

 黒は自陣のやや凝り形を緩和する最良の策として交換することにした。代わりにビショップをe7に引くのは守勢に陥り白に主導権を維持させてしまう。

6.Nbxd2

 マスター級のチェスの理論家と批評家は白はクイーンで取ることを推奨している。d5の地点の攻撃に役立つようにナイトはc3にいるべきだとの彼らの叫びにもかかわらず、選手たちはナイトで取ることに固執している。彼らの意見はナイトで取ることにより小駒が展開されるというものである。しかし本当の理由は全くの頑固さだけかもしれない。つまり権威に対する反抗である。いずれにせよ 7.Qxd2 より効果が劣るとしても厳しく非難するほどのことではない。

7…O-O

 黒は中原で決定的な行動を起こす前にキングの安全を考慮し安全な方面に退避させた。

 他の有力な手は 7…c5 で白のポーン中原に挑む手である。これに対して白は 8.d5 とはポーン損になるので指せない。

8.O-O

 白はキングの位置をより安全にしキング翼ルークを働きにつかせた。

8…c5!

 この強手の目的は白の中原を突き崩すことである。

9.dxc5

 白はほとんど選択の余地がない。ポーンをd5に進めるのは取られてポーン損になるし、9.e3 と突いて支えるのは(ポーンで取り返して中原にポーンを維持するため)eポーンを守りに縛り付けることになる。そうなればeポーンがe4の地点に進む可能性はかなりおぼつかなくなる。

9…bxc5

 黒は単純なポーン交換で三つの優位を勝ち取った。

 a)側面のポーンと引き換えに中原のポーンを消去した。

 b)黒のcポーンがd4の地点を支配し白の駒がそこに来るのを不可能にしている。

 c)新たに素通し列となったb列で黒のクイーンとクイーン翼ルークが大いに働けるようになる。

10.Qc2

 序盤におけるクイーンの役割はほとんどの場合それほど大したものではない。最下段から離れて邪魔にならないようにし、ルークが連結して中央の列で働けるようにするくらいのものである。

 クイーンが出動したためキング翼ルークがd1の地点を占めd列に圧力をかけることができ、その列にいる黒の兵力を不安に陥れることができる。

10…Nc6

 ナイトが中原に向かって展開し、cポーンのd4の地点の支配を確かなものにした。

11.Rfd1

 白は 11.e4 と指したいところだが 11…e5 と反駁される(d4に対する圧力を強める)。その後は 12…Qe7 から 13…Nd4 と指してくる。そうなると白は問題に直面する。d4にいるナイトの圧力はほとんど耐え難いがそれを取ると黒は 14…cxd4 と取り返しd列にパスポーンができてしまう。

11…Qb6!

 これでd4の地点に黒の3駒が利き、クイーンも素通しのb列に足場を得た。

12.a3

 この手で白は 13.b4 で反撃を始めようというとっぴなことを夢見ているわけではない。いつか …Nb4 で不意打ちを食いたくないというのが主な理由である。

12…Rab8!

 この大局観は素晴らしい。ともすれば自分のキングに対するルークの一番の務めは素通しの列を占拠するということを忘れがちである。そうするのはルークの利きが列全体に延びるからだけでなく他の地点に行くにも格好の通り道となるからである。

13.Rab1

 白ルークもb1に行ったが両者のルークには天と地ほどの違いがある。このルークには素通し列がない。だから働きを増す見通しがほとんどなく役割も純粋な防御である。もっともbポーンを守ったのでクイーンがその責任から解放された。

13…Rfc8

 このルークはf8で何もしていなかったので活躍できそうな列に回った。

  13…a5 と突くのは急がなくてよい。白から 14.b4 と突いて仕掛ける状況にはないからである。

14.e4

 このポーン突きは強そうだが見掛け倒しである。空けておくべき地点をポーンが占めたというのが実際である。白駒は色々な目的地に行くための中継点としてe4を利用できないので活動性を大きく損ねた。

14…e5

 白のeポーンが 15.e5 で伸びようという欲求を封じ込めた。

 注目すべきは黒がd4の地点の支配を補強したことである。これでこの地点にはクイーン、ナイト及び2個のポーンが利いている。

15.Qd3

 この手で白は次に 16.Qd6 と指すか、ナイトをf1-e3-d5という経路で捌くことでd列での反撃を期待した。それと同時に黒が 15…Nd4 と指すのを、16.Nxe5 という応手を用意して防いだ。

15…d6

 これはしゃれた、ずうずうしいと言ってもよい応手である。黒は守られていないポーンでeポーンを守った(16…Nd4 と指せるように)。

 白はもちろんこのdポーンには触れてはいけない。16.Qxd6 の報いは 16…Rd8 で、クイーンを取られてしまう。

16.Nf1

 これはナイトをe3からd5へ据えたいという意思表示である。実現できるならば素晴らしい戦略である。

16…Nd4!

 しかし黒の方が早かった。黒はd4に橋頭堡を確保しただけでなく白が同じことをするのを妨げている。白が 17.Ne3 と指してくれば 17…Bxe4 18.Nd5 Bxd3 19.Nxb6 Nxf3+ 20.Bxf3 Rxb6 21.Rxd3 e4 で鮮やかに駒得する。

17.Nxd4

 踏み込んできたナイトで動きを邪魔されているので取り除いた。

17…exd4

 黒は喜んで交換した。d列にできたパスポーンはいつかクイーンになるかもしれない。それに加えてこのポーンは出口を見張っている。白ナイトがe3に出て来るのを妨げd5に到達するという野望に終止符を打った。

 d4にできたパスポーンは明らかにクイーン昇格の論理的な候補である。しかし意外なことが起こる。それも数多く。

18.b4

 突然白が牙をむいた。主な狙いは 19.bxc5 Qxc5(クイーンが二重に当たっているのでこう取らなければならない)20.Rxb7 Rxb7 21.e5 で、白がルークの代わりに2駒を手に入れる。

 黒はこの狙いにどう対処したらよいだろうか。18…cxb4 は 19.Rxb4 で白に最良の結果をもたらすので明らかに駄目である。18…Qc7 と下がれば 19.bxc5 dxc5(パスポーンを守るため)20.f4 で 21.e5 を狙いとして白の駒が生き生きとしてくる、

 実戦でカパブランカはあっというような手筋を放った。彼は白に戦力で得をさせた。その代わりにカパブランカを除いては有望とはほど遠いと思えるような局面に持ち込んだ。

18…Qc6!

 白のeポーンを三重に当たりにした。これにより白はおとなしくこのポーンを守るか思い切って予定の手筋を繰り出すかの選択を迫られた。

19.bxc5

 白は勝ちにいった。ポーンを取り払いルークの筋を開けd4のパスポーンを取り除く用意をした。

19…dxc5

 黒は貴重なパスポーンを維持するためにポーンで取り返さなければならない。

20.Rxb7

 ルークの代わりに2駒を取るこの手筋は魅力的である。

 果たしてカパブランカは隙を突かれたのか、それとも相手よりもずっと先の手段を見通していたのだろうか。

20…Qxb7

 黒は重要なb列を支配し続けるためにクイーンで取った。

21.e5

 ビショップの利きが通ってクイーンとナイトの両当たりである。

21…Qb3!

 クイーン交換を誘うすごい手である。普通は戦力に優る方が駒を減らして単純な収局に持ち込もうとするものである。

22.exf6

 白は 22.Qxb3 を避けた。それは 22…Rxb3 23.exf6 Rxa3 となって黒にパスポーンが2個できてしまう。

22…Qxd3

 この手の狙いはルークに取り返させて白の最下段を空けさせることである。そうなれば黒ルークがその最下段を侵入口として利用でき、白ポーンの背後に回ることができる。

23.Rxd3

 白は取るしかない。

23…Rb1!

 手始めにナイトを釘付けにした。白は何とかして一刻も早く釘付けをはずさなければならない。

 ぐずぐずしていると黒は 24…Re8 から 25…Ree1 そして 26…Rec1 と指してくる。白のcポーンは取らせるしかない。 27.Bd5 でcポーンを守るとナイトが取られてしまう。黒はcポーンを取った後恐ろしい連結パスポーンが急いでクイーン昇格を目指すことになる。

24.Bd5

 白の意図は明らかである。大切なcポーンを守りキングのために枡を空けた。25.Kg2 の後ナイトはもう釘付けになっていないので自由に動ける。

24…Rcb8

 黒はルークを重ねて非常に重要なb列の支配を揺るぎないものにした。

 ここで白は二つの脅威に直面している。

 a)25…Rc1 から 26…Rbb1。ナイトが当たりになっているので白はビショップをg2に引かなければならず、cポーンを取られてしまう。

 b)25…R8b3。ルーク交換が必至でその後白のクイーン翼のポーンの一つが落ちてしまう。

25.Kg2

 ここまでの10手の間見物人だったナイトを釘付けからはずした。

25…R8b3!

 これは大胆な構想である。黒はルークを交換させて駒割りは白2個に対し黒1個のままである。

26.Rxb3

 白は喜んで応じた。

26…Rxb3

 次にaポーンを狙っている。

27.Nd2

 白はaポーンを助けることができない(27.a4 なら 27…Rb4 28.a5 Ra4)。そこで逆にナイトで敵ポーンを狙った。

27…Rxa3

 ポーンを取った結果a列にパスポーンができた。これがクイーンになるポーンだろうか。

28.Ne4

 白の駒が躍動し始めた。狙いは 29.Nxc5 で、黒のdポーンの支えをなくしcポーンが白のパスポーンとなる。

28…a5!

 この手は 28…Ra5 よりはるかに良い。28…Ra5 はルークをポーンの守りに縛りつけ収局におけるこのルークの役割を低下させてしまう。

29.Nxc5

 このポーン取りの後白のパスポーンは脅威となり始めたように見える。

29…gxf6

 これはポーンを取り返すというよりキングにもっと動く余地を与えるための手である。すぐに 29…Kf8 と動くのは 30.Nd7+ でg8に戻らなければならない。30…Ke8 は 31.fxg7 で白の勝ちとなってしまう。

 本譜の手の代わりに 29…d3 と突くのは 30.Kf3 から 31.Ke3 とされてこのポーンが落ちてしまう。

30.Kf1

 キングがパスポーンの前に立ちはだかるために引き返した。

30…a4

 黒はこのポーンを 31.Bc6 で二重当たりにされても怖くない。31…Ra1+ から 32…a3 でかわすことができ、かえってポーンが1歩進むことができる。

31.Ke2

 キングがdポーンにさらに近寄って、その脅威に完全にとどめを刺した。

 黒はここからどうするのだろうか。

31…Ra1!

 aポーンのクイーン昇格の狙いで脅すのである。黒の意図は 32…a3、33…a2、34…Re1+(先手でポーンの前を空けるため)、そして 35…a1=Q である。

32.Nd3

 白はdポーンをせき止め自分のパスポーンを突き進める用意をした。

32…a3

 17手目のところではdポーンが最終段に到達してクイーンに昇格するものと思われた。ここではdポーンがせき止められていてaポーンが昇格するポーンのように見える。

 果たしてクイーンに昇格するのはaポーンなのだろうか。

33.c5

 白のポーンも面倒を起こすことができる。

33…a2

 黒は 34…Re1+ 35.Kxe1 a1=Q+ ですぐに勝ちになる手を狙っている。

34.Kf3

 キングにチェックがかからないようによけた。

34…Rd1

 この手はナイトに当たっているだけでなくポーンのクイーン昇格も狙っていて白がさらに困難に追い込まれた。

35.Bxa2

 白はどんなに犠牲を払ってもこの危険なやつを消滅させなければならない。

35…Rxd3+

 黒はaポーンの代わりに駒を得した。

36.Ke4

 白は 36.Ke2 Rc3 でパスポーンを取られるようなへまはしない。

36…Rd2

 この手はビショップとキング翼のポーン全部を攻撃していてdポーンの将来性も復活させた。

 やはりこのポーンがクイーン昇格の候補なのだろうか。

37.Bc4!

 ここはビショップの絶好の地点である。これに対して黒の間違え易い手は 37…Rxf2 である。それは 38.c6 Rb2(38…Rc2 なら 39.Kd5 で白の勝ち)39.c7 で白ポーンが駆け抜けてしまう。

37…Kf8!

 キングが危険なポーンを抑える役目を引き受けた。

38.f3

 cポーンを突き進めても無駄である。38.c6 Ke7 でこれ以上先へ進めない。

 本譜の手で白は自分のhポーンと引き換えに黒のdポーンを取るつもりである。

38…Rxh2

 黒はその提案に乗った。パスポーンに頑強にしがみつく代わりに、どんなにわずかな優勢でも勝ち切ることに自信のある黒は進んで単純化に応じた。これは盤上の正義に対する信頼と、正義を適切に配分する自分の能力に対する自信がなければできないことである。

39.Kxd4

 このポーンを取った白の前途は有望のように見える。キングとビショップがパスポーンのすぐ側に付き添っているし、それを盤の最上段まで全力で護衛しようとしている。

39…Ke7

 この手はパスポーンをせき止める準備である。

40.Bd3

 白は明らかにビショップをe4に持って来るつもりである。ビショップはそこからfポーンを守り、黒の二重ポーンの前進を防ぎ、自分のcポーンがc6まで進んだ時それを守る用意をすることになる。

40…h5

 これは 41…Rg2 42.g4 h4 で勝つ狙いである。

 hポーンがクイーンになるパスポーンなのだろうか。

41.Ke3

 gポーンを救うためにキングが近寄った。

41…Rg2

 黒は白キングにgポーンを守らせて白のパスポーンから引き離そうとしている。

42.Kf4

 この手は絶対である。42.g4 では 42…h4 43.Bf1 Rc2 44.Kd4 Rf2 45.Bh3 Rxf3 46.Bg2 Rg3 47.Bf1 h3 となって黒が簡単に勝つ。

42…Rg1

 この手は白のパスポーンの背後に回るためである。収局ではルークは敵ポーンの背後で最も力を発揮し、その貫き通す威力は列全体に及ぶ。だからポーンがどんなに前進してもルークの利きから決して逃れることはできない。

43.Be4

 白はポーンがc6に進んだ時ビショップで守る用意をした。すぐに 43.c6 と突くのは 43…Rc1 44.Be4(44.Bb5 と守るのは 44…Rc5 45.Ba4 Rc4+ でビショップが取られる)となって、手順の違いで本譜の少し先の局面と同じになる。

43…Rc1

 初心者にはこの手は奇妙に映るだろう。どうしてポーンがさらに進むのを手伝うのか。

 黒の着想はポーンを白枡に進ませることにある。そうなればビショップがポーンの守りに縛りつけられビショップの動きがかなり制約を受ける。

44.c6

 ポーンが進んでビショップによって守られるようになった。

44…Rc3!

 これは非常に効果的な手である。これにより白は手詰まり、即ち不利着手強制の状態に置かれた。つまり白は何も指さなければ大丈夫な局面にいるのだが、どんな手を指しても形勢を損ねるので致命傷になるということである。

45.c7

 白は救えないポーンを自分から捨てた。変化も非常に面白い。

a)45.Kf5 は 45…Rc5+(黒キングを追い払うため)46.Kf4 Ke6 47.Ke3(ビショップが動くとポーンがすぐに取られるし、47.g4 は 47…h4 で黒にパスポーンができる)47…f5 48.Bd3 Rxc6 で黒の勝ちである。

b)45.Bd5 は 45…Rc5 46.Ke4(46.Be4 は 46…Ke6 で前の変化と同じになる)46…f5+ 47.Kd4 Rxd5+! 48.Kxd5 f4! 49.Kc5(49.gxf4 なら 49…h4 50.Kc5 Kd8 51.Kb6 Kc8 で黒の勝ち)49…fxg3 50.Kb6 g2 51.c7 g1=Q+ 52.Kb7 Qb1+ 53.Kc8 Qb6 54.f4 Qa7 55.f5 Qa8# で詰みになる。

45…Rxc7

 危険の元を取り除いた。この収局はまだ黒の勝ちである。そしてその勝ち方は円滑で完璧な技法の実例である。実際の手順はまるで作った収局スタディの解答のように明快で正確である。

46.Bd5

 黒キングが好所のe6に来るのを防いだ。

46…Rc5

 このルークはビショップがe6の地点に利く斜筋を離れるまで追うつもりである。

47.Ba2

 もちろんビショップはこの斜筋にできるだけ長く留まろうとしている。代わりに 47.Bb3 は 47…Rb5 48.Ba2(48.Bc4 は 48…Rb4 で釘付けにされ、48.Ba4 は 48…Rb4+ で取られる)48…Rb2 49.Bd5 Rb4+! 50.Kf5(50.Be4 は 50…Ke6 51.Ke3 f5 で黒の勝ちになり 50.Ke3 は 50…f5 から 51…Kf6 で黒の勝ちになる)50…Rb5 51.Ke4 f5+ 52.Kd4 Rxd5+! 53.Kxd5 f4 54.gxf4 h4 でこのポーンが止められない。

47…Rb5!

 盤上を完全に席巻した。ビショップはどこへも動くことができない。

48.Ke3

 48.Ke4 なら 48…f5+ 49.Kf4 Kf6 50.Ke3(ビショップは動けず 50.g4 は 50…hxg4 51.fxg4 Rb4+ 52.Kf3 fxg4+ で負ける)50…Rb4 51.Bd5 f4+ 52.gxf4 h4 53.Kf2 Rb2+ 54.Kg1 Kf5 55.Bxf7 Kxf4 56.Bd5 Kg3 54.Be4 Ra2 58.Kf1 h3 で黒の勝ちとなる。

48…Ra5

 ビショップに長斜筋の1地点にだけ行くことを許した。

49.Bc4

 b3へは釘付けにされるので行けない。また 49.Bb1 なら 49…Ke6 50.Kf4 Ra4+ 51.Ke3(51.Be4 は 51…f5 でビショップが取られる)51…f5 52.Bc2 f4+ 53.gxf4(53.Kd2 なら 53…fxg3)53…Ra3+ 54.Kd2 Ra2 55.Kc1 Rxc2+ で黒が勝つ。

49…Rc5

 ビショップをe6に通じる斜筋からどかせる。

50.Ba6

 50.Kd4 なら 50…Rg5 ですぐにポーンが落ちるし、50.Ba2 なら 50…f5 で黒キングにf6の地点が用意される。

50…Ke6

 黒キングがまた一歩中央と白の残りのポーンに近づいた。

51.Kf4

 白は必死で頑張っている。51…f5 には 52.Kg5 で食いつく構えである。

51…Rc3!

 また白をビショップを動かす手に限定させた。52.Ke4 は 52…f5+ 53.Kf4 Kf6 で負ける。

52.Bf1

 白はc4の地点を見張っていなければならない。さもないと(例えば 52.Bb7 と指したとすると)52…Rc4+ でキングが下がらなければならず黒キングが進出することができる。

52…f5

 ようやくこの手が実現した。この手は1路進むことによりキングのためにf6の地点を空けた。

53.Ba6

 白に残された手の数が減ってきた。53.g4 は 53…fxg4 54.fxg4 h4 55.g5 h3 56.Kg4 h2 57.Bg2 Rc1 で黒の勝ちとなる。また 53.Kg5 は 53…Rxf3 54.Bc4+ Ke5 55.Kh4 f4 で黒が簡単に勝つ。

53…Kf6

 白キングを動けなくした。残るは白キングを3段目に下がらせ自分のキングを5段目に進めることである。

54.Bb7

 ビショップが長いほうの斜筋に留まると、例えば 54.Be2 と指すと、黒は 54…Rb3 としてから 55…Rb4+ で白キングを追い払う。

54…Rc4+

 これで黒キングを下がらせることができる。

55.Ke3

 白はこの手しかない。

55…Kg5

 この手には次のような軽妙な狙いがある。56…f4+ 57.Kd3(57.gxf4+ なら 58…Rxf4 で黒にパスポーンができ、57.Kf2 なら 57…Rc2+ 58.Kg1 fxg3 で黒にパスポーンが2個できる)57…fxg3 58.Kxc4 Kf4! で黒の楽勝である。

56.Kf2

 ルークを 56.Bd5 でつつくのは 56…f4+ 57.Ke2 Rc2+ 58.Kd3 Rc7(素朴だが簡明)で決められてしまう。

 本譜の手で白キングは黒のどのポーンがパスポーンになろうとそれに立ちはだかるために退却した。

56…f4!

 これがいつもの特効薬である。黒の狙いは 57…Rc2+ 58.Kg1 fxg3 ですぐに勝ちの形にすることである。

57.Kg2

 チェックに対して 58.Kh3 でポーンを救えるようにした。

57…f5!

 パスポーンは突き進めなければならない。56手の間辛抱強くf7に留まっていたこのポーンは信じられないがパスポーンとなって勝ちを決めるように運命づけられていたのである。

58.投了

 白は必然を待つことなく投了した。予想手順は次のとおりである。58.Kh3 fxg3 59.Kxg3 h4+(クイーン昇格の候補みたいだがそうはならない)60.Kh3 Rc3 61.Bd5 Kf4 62.Kxh4 Rxf3 63.Bxf3 Kxf3 64.Kh3 f4 65.Kh2 Ke2 これでポーンがクイーンになるべく突進する。

 本局は全手順が見事で、収局はとても華麗だったので多くの要点を詳しく解説しなければ気がすまなかった。派手に駒が飛び交う数多くの「名局」を並べるよりも、本局を研究する方が面白さと学習においてこの上なくためになるだろう。

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(124)

第2部

第5局(続き)

 (再掲)

 この手がこの試合の勝因だと誤って喧伝されてきた。しかし再びこのような局面を持てるなら持ってみたい。最終的に敗勢の局面になるには私の方にいくつかの悪手が必要だった。

12…b6 13.Bf4

(第5局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(123)

第2部

第5局 ルイロペス
(サンクトペテルブルク、1914年)
白 E.ラスカー博士
黒 J.R.カパブランカ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6

 この手の目的はクイーン同士を交換して早々とクイーンなしの中盤戦の局面にすることである。そうなれば白がキング翼で4対3のポーンを持つのに対し反対翼の黒ポーンの優位は黒ポーンが二重ポーンになっているということでいくらかバランスがとれている。その一方で白の1ビショップに対し黒は2ビショップを保持したままで有利である。

4…dxc6 5.d4 exd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 Bd6

 黒はキング翼にキャッスリングするつもりである。その理由はのちに白ポーンの進攻に対抗するために弱い方面にキングがいるべきであるということである。理論的にはこの考え方に賛成すべきことが多いが、実戦的には最良のやり方かどうかは賛成するのが難しい。気をつけるべきことは、ここですべての駒が交換になれば白がほぼ1ポーン得になり勝ちの收局になるということである。

8.Nc3 Ne7

 これはまったく理にかなった展開である。これ以外ではどれも同じくらい迅速にも好形にも展開できない。この戦型では黒ポーンの邪魔をしないようにe7がこのナイトの自然な位置で、いずれはg6の地点に行く。…c5 と突いたあとはc6からd4の地点に行く可能性もある。

9.O-O O-O 10.f4

 当時はこのポーン突きは緩手だと思ったし、今でもそうである。白のeポーンはe5に進まなければ弱いままだし、黒がd4のナイトを …Bc5 で釘付けにするのも可能になっている。

10…Re8

 この手は最善手である。11…Bc5 12.Be3 Nd5 を狙っているし、白の 11.Be3 を 11…Nd5 または 11…Nf5 で防いでいる。

11.Nb3 f6

 この手は 12…b6 のあと 13…c5 から 14…Bb7 と指す準備で、…Ng6 と連携して白が中央の2ポーンに対する共同攻撃に対処するのが非常に困難になる。

12.f5

(第5局続く)

2014年11月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(122)

「Chess Life」1995年5月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

無から有を生じさせる(続き)

グリューンフェルト防御 [D79]
白 GMアナトリー・カルポフ
黒 GMガリー・カスパロフ
1986年世界選手権戦24番勝負第13局

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3

 3.g3 と指して何も悪いことはないけれども、カルポフは本譜の手順を好んでいる。序盤ではどちらも望みの局面に到達するのにいくつかの手順を選ぶことができる。

3…Bg7 4.g3 c6

 この手はキング翼インディアン防御(4…O-O に続いて 5…d6)にするつもりはないという黒からの合図だった。しかし代わりに 5…d5 で白の中央に挑んでいく。約30年の間これが互角に至る黒の最も正確な手段であると定跡で考えられている。イギリスのGMジョン・ナンのような「過激な」キング翼インディアンの専門家でさえこのやり方を選択している。

 参考になるのはGMカスパロフが自著の『London-Leningrad Championship Games』でこの作戦について言っていることである。「3.g3 戦法の最大の欠点は黒が対称陣形を選択することができることである。そこでは白の可能性も制限される。黒のこのような堅実な方針は番勝負では典型的なものである。」

5.Bg2 d5 6.cxd5

 ここでもカスパロフの解説(著書の13ページ)は貴重である。「奇妙なことに実戦では(6.Qb3、6.Nbd2 などほかの手があるが)この交換が白に最良の結果をもたらすことが分かっている。」

6…cxd5 7.Nc3 O-O 8.Ne5

 これが最も厳しい手である。白はe5を占拠しd5に圧力をかけている。

8…e6

 本譜の手が黒の当たり前の手になっている。e5のナイトをどかせる準備をし、8…Nc6 でポーンの弱点を生じさせる可能性を与えない。

9.O-O Nfd7 10.f4!

 この戦法に活力を吹き込んだのはこの攻撃的な手である。10.Nf3 Nc6 11.Bf4 Qb6! なら黒の互角への道ははるかに容易である。本譜の手は黒に面白くない選択を強要する。すなわち白の前進したナイトを許容すべきか、…f7-f6 でキング翼の形の弱体化を招いてもこのナイトを追い払うかである。10…Nxe5?! は魅力的でないことが明らかになっている。1986年ブリュッセルでのカスパロフ対ナン戦では次のように続いた。11.fxe5! Nc6 12.e4 dxe4 13.Be3 f5 14.exf6e.p. Rxf6 15.Nxe4 Rxf1+ 16.Qxf1 Nxd4?(16…Bxd4 17.Bxd4 Nxd4 と指さなければならず、18.Re1! e5 19.Qf6 で白が大優勢な「だけ」である)17.Rd1 e5 18.Ng5 これで黒が投了した。壊滅をもたらす Qc4+ または Bd5+ に黒は成すすべがない。

10…f6?!

 この手は大胆で時期尚早である。黒はまず 10…Nc6 でクイーン翼の展開を完了することに努めるべきだった。このあとの2局ではそう指している。

11.Nf3

 のちになって 11.Nd3! が自然な退却であることが分かってきた。このナイトはc5に跳べばクイーン翼で働くし、機会があればe5に戻ることができる。盤の両側で働く好例はR.ジンジハシビリ対J.メステル戦(レイキャビク、1990年)である。11…Nc6 12.e3 f5 13.Ne5! Ne7(13…Ndxe5 14.dxe5 も白が良い)14.b3 Nf6 15.Ba3 Bd7 16,Rc1 Re8 17.Rf2 Ne4 18.Rfc2 Nc6 19.Bf1! a6 20.Nxe4 dxe4 21.Bd6 Rc8 22.h4! Nxe5 23.dxe5 Qa5 24.h5 明らかに白が優勢だった。

11…Nc6 12.Be3 Nb6 13.Bf2 f5

 13…Bd7?! なら白は 14.e4! で中央を有利な形で開放する(カスパロフ)。

14.Ne5 Bd7

 ここでGMカスパロフは的確な分析をつけ加えている。「ここから始まる捌き合いは長引くことが確実である。白には少し主導権があるが(主としてe5とb6のナイトの強さの違いによる)、相手が辛抱強く正確ならこの局面の性格のためあまり多くを期待できない。」感心させられるのはGMカスパロフがキング翼で反撃策を見つけなければならないことに気づいているだけでなく、その実行の仕方である。他方カルポフは 16.Qe3 や 17.Rfd1 のような手で手損するのでクイーン翼で十分迅速に動けない。

15.Qd2 Nc8 16.Qe3 Kh8 17.Rfd1 Nd6 18.b3 Rc8 19.Rac1 Be8 20.Be1 Bf6 21.Na4 b6 22.Nb2 Ne4 23.Nbd3 g5!

 白はようやくクイーン翼に活発な戦力を結集し、黒は攻撃を開始した。うまく指した方が優勢になることが期待できる。

24.Nxc6 Bxc6 25.Ne5 gxf4 26.gxf4 Be8! 27.Qh3 Rg8 28.Kf1?!

 GMカスパロフが指摘しているように白は黒の攻撃の可能性を過小評価し続けている。代わりに 28.Qh6! が「少し黒を麻痺させる」と推奨し、28…Bxe5 29.fxe5 Rg6 30.Qf8+ Rg8 31.Qh6 Rg6 で引き分けになるのが両者にとって最善の手順だと分析している。

 以降の手順で黒は勝つ可能性があったがそれをものにすることができなかった。残りの手順は我々の主題から外れるので、いつものようにGMカスパロフの非常に厳密で客観的な記号を付するにとどめる。

28…Rxc1 29.Rxc1 h5! 30.Bb4?! a5 31.Ba3? Bxe5 32.dxe5 Rg4 33.Bxe4 dxe4? 34.Bd6! Rxf4+ 35.Ke1 Rg4 36.Qe3 Qg5 37.Qxg5 Rxg5 38.Rc8 Rg8 39.e3 h4?! 40.h3 a4 引き分け

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カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(122)

第2部

第4局(続き)

 (再掲)

35.Rxd3

 この局面は興味深い。ここが勝つ最後の機会だったと信じている。もしそれが本当なら、28手目で 28.c4 と指した私の判断が正しかったことになる。白がすぐに 35.Qd4! と指せばどうなるか見ればわかる。私の考える手順は次のとおりである。35.Qd4 Rxh2(もちろん 35…Rxc5 は 36.d8=Q で白が勝つ)36.Qxd3! Rd8 37.Qa6 Kb8(最善手。37…Qe4+ は 38.Ka1 Kb8 39.Rb1 で白の勝ち)38.Qxc6 白は少なくとも引き分けになる。

35…Re2 36.Qd4 Rd8 37.Qa4 Qe4 38.Qa6 Kb8

 39.Nd4 は 39…Qh1+ のために指すわけにいかないので、白はこの簡単な手に対して何もできない。

39.Kc1 Rxd7 40.Nd4 Re1+ 41.Kd2 Rxd4 白投了

 とても面白い戦いだった。

(第4局終わり)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(121)

第2部

第4局(続き)

 (再掲)

28.c4

 ここでは 28.Nc4 が正着だった。しかし私はまだ「派手な手筋」を探していて、あとでポーンがd6に行ければ勝ちになると考えていた。黒がこのことのほか受けの非常に難しい局面で指した手段は賞賛に値する。何度も簡単に間違えてもおかしくなかったが、22手目からは常に最善手を指し続けた。

28…e5! 29.Qg1 e4 30.cxd5 exd3 31.d6 Re2 32.d7 Rc2+ 33.Kb1 Rb8+ 34.Nb3 Qe7

(第4局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(120)

第2部

第4局(続き)

 (再掲)

23.Nd2?

 正着の 23.Rb3 も考えたが、遅すぎるように感じこのような局面ではもっと速い勝ち方があるはずだと考えてやめた。

23…bxc5 24.Nc4

 24.Ne4 または 24.Nb3 なら白に有利な收局になっていただろう。

24…Nb6 25.Na5+ Ka8 26.dxc5 Nd5 27.Qd4 Rc8

 27…Rb8 は 28.Nxc6 Rbc8 Nxa7 で白の勝ちになる。

(第4局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(119)

第2部

第4局(続き)

 (再掲)

17.Nh4

 この手は少しの間だがナイトをそっぽに行かせることになると批判されてきた。しかし 17…Qg5 と指させることにより白は 18.f4 で貴重な先手を稼ぐことができ、自陣を固めるだけでなく黒クイーンを追い払ってしばしの間遊ばせることになる。確かにクイーンはナイトよりはるかに大切な駒で、手得は言うまでもなく白のもっと重要な駒がよく働くようになる。

17…Qg5 18.f4 Qg7 18.Bf3

 このような局面では白駒にとって「空所」となるa6やc6の地点を支配している黒ビショップをなくすことは一般に非常に有利である。このような局面でビショップは防御にとって非常に重要なので、それを消すことは白にとって有利である。

19…Rge8 20.Bxb7 Kxb7 21.c5! c6

 白は 13.c6+ を狙っていた。

22.Nf3 Qf8

 この手は白ナイトがd2からe4またはc4を通ってd6に来るのを妨げるためである。白がこの局面で優勢であることは明白である。

(第4局続く)

2014年11月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(118)

第2部

第4局 フランス防御 
(サンクトペテルブルク、1913年)
白 J.R.カパブランカ
黒 E.A.ズノスコ=ボロフスキー

1.d4 e6 2.e4 d5 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Bb4

 これはマカッチョン戦法で、その目的は白から主導権を奪い取ることである。黒は守る代わりにクイーン翼での反撃の構えを見せている。これは非常に面白い戦いになる。

5.exd5

 この試合の当時は 5.e5 が主流だった。しかし私は本譜の手の方が強力だと考えていたし今でもそうである。

5…Qxd5

 この手は 5…exd5 より優るとみなされている。前述のように本譜の手は白のクイーン翼を乱すことにより白から主導権をもぎ取ることが目的としてある。しかし白には黒のキング翼を破壊することにより十分以上の代償がある。布局の原則としてキング翼の破壊はクイーン翼の同様の破壊よりもっと重大であると言うことができるだろう。

6.Bxf6 Bxc3+ 7.bxc3 gxf6 8.Nf3 b6

 この戦法における黒の作戦は対角斜筋にビショップを置いて、あとで素通しg列でのルークの働きと共に白キングに対し猛攻をかけることができるようにすることである。もちろんクイーン翼のポーンが乱れているので白はキング翼にキャッスリングすることが期待される。

9.Qd2 Bb7 10.Be2 Nd7 11.c4 Qf5 12.O-O-O

 これは新構想で、フィラデルフィアでウォルター・ペン・シプリー氏相手に同じ局面を初めて指したと思う。その意味は、黒に黒枡ビショップがなく黒駒がキング翼への攻撃を見据えて展開されているので、白キングの見るからに防備のない状態につけ込むことができないだろうというものである。二つの可能性を考えておかなければならない。第一に、本局のように黒がクイーン翼にキャッスリングすれば、攻撃される恐れがないことは明らかである。第二に、黒がキング翼にキャッスリングすれば、黒クイーンの不安定な位置につけ込んで白が先に攻撃を始めることになる。本譜の手の攻撃の見込みに加えて、白は1手でキングを安全な所に移し一方のルークを戦いに投入する。だから白は何手か手得することになり、どんな作戦をたてるにしてもそれに役立つことになる。

12…O-O-O 13.Qe3 Rhg8 14.g3 Qa5

 これが悪手であることは疑いない。白の好手を見落としたものだが、よく分析すれば白が既に優勢であることが分かる。

15.Rd3! Kb8 16.Rhd1 Qf5

(第4局続く)

2014年11月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]理詰めのチェス(31)

第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する(続き)

第31局

 ハバシ対カパブランカ戦はほんのわずかな有利を搾り出す大局観指法の素晴らしい見本である。カパブランカはクイーン翼で多数派ポーンを確保しそれからパスポーンを作る作業に着手する。そのために彼は素通しのc列を支配し敵の白枡の弱点を利用した。後はパスポーンを無事に昇格枡に連れて行くだけだった。

クイーンポーン試合(ニムゾインディアン防御)
白 ハバシ
黒 カパブランカ
ブダペスト、1929年

1.d4

 中原を十分に獲得する一つの方法はそこを占拠することである。

 白はそのために盤の中央にポーンを据えた。このポーンはd4の1枡を占めe5とc5の2枡を配下に収めた。

1…Nf6

 この手は 1…d5 よりも融通性がある。黒は中原をポーンで占拠する代わりに駒を展開して中原ににらみを利かせた。このナイトはd5とe4に利いていて、白が 2.e4 でさらに勢力を拡張するのを防いでいる。

2.c4

 これはクイーンポーン布局における重要な解放の手である。この手は中原の枡のd5を攻撃し、c列をルークの格好の居場所とし(この列は後で素通しになる可能性が高いため)、クイーンをクイーン翼に出られるようにしている。

2…e6

 すぐに 2…d5 と突くのはだめである。白は 3.cxd5 Qxd5(3…Nxd5 は 4.e4 Nf6 5.Nc3 で白が中原を本来以上に獲得してしまう)4.Nc3 でクイーン当たりのために白が手得する。

 2…e6 により黒は後で …d5 で中原を占拠する際にポーンで支援する用意をした。そしてとりあえずはキング翼ビショップを自由にした。

3.Nc3

 この手はキング翼ナイトを展開するよりも厳しい。狙いとして 4.e4 突きを助けていて、そうなれば中原に威容を誇るポーンの並びができる。

3…Bb4

 このビショップはナイトを締め上げていて、釘付けにより攻撃と防御の能力を奪っている。だからもし白が不注意に 4.e4 と突けば黒はすぐにそのポーンを召し上げることができる。

4.Qc2

 この手にはいくつかの目的がある。

 a)一般的にc2はこの布局におけるクイーンの最適の地点である。

 b)このクイーンはナイトを守っている。黒が 4…Bxc3+ と取ってくればクイーンで取り返してポーンの形を乱さないで済む。

 c)このクイーンはc列に圧力をかけている。その効果はc列が素通しになればいっそう明らかとなってくる。

 d)このクイーンはe4の地点に利いているので e4 と突く狙いが復活した。

4…d5

 黒はe4の地点の支配を白からもぎ取りeポーンが2枡進む野心を抑止している。

5.Nf3

 この手は落ち着いた手だが落ち着きすぎだろう。キング翼ナイトが地面から離れたがその間隙を縫って黒が主導権を握る機会を得た。

5…c5!

 ルーベン・ファインは次のように言っている。「どのクイーンポーン布局でも黒が無事に …d5 及び …c5 と突ければ形勢が互角になる。」

 黒が 5…c5 と突いた狙いは白のポーン中原を破壊すること、あるいは重要な区域で最低限争点を維持することである。余得としてクイーン翼の駒の動く場所がわずかながら広がった。

6.cxd5

 これは中原の形をはっきりさせようという考えである。cポーンが無くなったことによりその列でのクイーンの圧力を増すことにも役立っている。

6…Qxd5

 この手は 6…exd5 よりも優る。6…exd5 には 7.Bg5 とかかられナイトに対する釘付けがうるさい。中央のd5の地点のクイーンは強力で、白の小駒で脅かされる心配が全然ない。

7.a3

 このいまいましいビショップはもうたくさんである。

7…Bxc3+

 黒はビショップを切らなければならない。代わりに 7…Ba5 と引くのは 8.b4(9.Nxd5 の狙い)8…cxb4 9.Nxd5 b3+ 10.Bd2 bxc2 11.Nxf6+ gxf6 12.Bxa5 で白の駒得になる。

8.bxc3

 代わりにクイーンで取るのは 8…Ne4 がクイーン当たりの先手となる。そうなれば白が e4 と突く狙いはさらに遠のいてしまう。

 ナイトとビショップに対する白の双ビショップは理論的には有利だが、その代償として黒のクイーン翼のポーンの形ははっきり優っている。

8…Nc6

 このナイトは狙いを持って展開した。白のdポーンは3駒で当たりにされているので白の応手は制限を受けている。

9.e3

 クイーン翼ビショップを閉じ込めるがこれが一番ましな手である。

 代わりに 9.dxc5 は 9…Qxc5 で白に2個の弱い孤立ポーンが残される。また 9.c4 は 9…Nxd4 10.Qa4+(10.cxd5 は 10…Nxc2+ で黒がルークも取れる)10…Qd7 で黒のポーン得になる。

9…O-O

 キングが安全な避難所に行きルークが登場してきた。

10.Be2

 ビショップが慎重に展開した。もっと積極的な指し方は 10.c4 で、中原からクイーンをどかして 11.Bb2 とすればどちらも指せる分かれである。

10…cxd4

 これは機敏なポーン交換である。局面を流動的に保ち、白がどのように取り返しても黒が少し優勢になる。

11.cxd4

 もちろん白は 11.Nxd4 とは取らない。それは 11…Qxg2 12.Bf3 Nxd4 でひどいことになる。本譜の手で白は中央に向かって取るという原則を忠実に守り、c列を空けることによってクイーンの活動の範囲を広げた。それでもこの場合は 11.exd4 と取ってクイーン翼ビショップを働かせるようにする方が良い方針だっただろう。

11…b6

 ビショップをb7に展開する用意をした。ビショップはそこから盤上で最長の斜筋をにらむことになる。

 黒の有利な点は主としてクイーン翼でポーンが2対1になっていることにある。これはポーンが交換になれば1対0になる。c列はルークが支配することができる。このルークは白クイーンを追い払いc列を支配し続ける。

12.Nd2

 この長斜筋は白自身も欲しがっている。そこで白はビショップのためにf3の地点を空けた。カパブランカを 12…Qxg2 という子供だましの罠で引っ掛けることはほとんど期待していない。そうきてくれれば 13.Bf3 で白が駒得する。このようなことは現実には起こらないものである。

12…Bb7

 ここは利き筋を2駒がさえぎっていてもビショップにとって絶好の地点である。一方c8の地点は別の居住者のルークが占める用意ができた。

13.Bf3

 ここはビショップにとって好所である。しかし何と手数がかかったことだろう。ナイトが退却しなければならなかったし白のクイーン翼の駒の展開も無視されている。

13…Qd7

 このクイーンは白の2駒によって当たりにされているナイトに紐を付けている。

14.O-O

 eポーンを突くのは時期尚早である。14.e4 は 14…Nxd4 でポーンを取られるし、14.Bxc6 は 14…Bxc6 15.e4 Qxd4 16.Qxc6 Qxa1 で交換損となる。

14…Rac8

 この手は 15…Nxd4 を狙っていて白クイーンにc列から去るよう促している。

15.Qb1

 攻撃的な 15.Qa4 は次のように強く応じられて危険である。15…Ne5 16.Qxd7(16.Qxa7 は 16…Nxf3+ 17.Nxf3 Qc6 から 18…Ra8 でクイーンが捕まる)16…Nxf3+ 17.Nxf3 Nxd7

15…Na5!

 ビショップの交換を誘った。白が拒否すれば黒が対角斜筋を完全に支配することになる。

16.Bxb7

 16.Be2 で斜筋を譲り盤上にもっと多くの駒を残すようにした方が無事だったかもしれない。駒を交換すると局面が単純化し黒の優勢が際立ってくる。

16…Qxb7

 これで黒は敵の白枡が侵入に弱いことにつけ込む用意ができた。これらの枡は白枡上で動いていたビショップが消えたことによって弱体化した。この優位はクイーン翼における黒の多数派ポーンの優位(パスポーンができるのが普通)と相まって黒の勝ちが十分期待できる。

 ここからは勝ち試合を勝ちきる技法を目の当たりにすることになる。

17.Bb2

 ようやく白のクイーン翼が動き出した。この目的はほめられることだけれども黒の次の手を予期して 17.Qd3 と指すことが肝要だった。これで白の弱い枡が強化され当分の間敵の狙う侵入を食い止めることができる。

17…Qa6!

 これは絶妙の捌きである。このクイーンは中央の斜筋を離れ、もっと重要な斜筋に大きな圧力をかけた。

 このクイーンの狙いは堂々とe2の地点に突入し白駒の連係を困難にすることである。

18.Re1

 その黒の狙いを防いだ。代わりに 18.Rc1(c列を争うため)は18…Qe2 19.Nf3(19.Rc2 は 19…Ng4 20.Rxc8 Qxf2+ で黒の勝ち)19…Nb3 20.Rxc8 Rxc8 21.Ra2 Rc1+ で、白は詰みを逃れるためにクイーンを捨てなければならない。

18…Nd5

 さっそうとした中央志向である。しかしこれは一時的なことに過ぎない。このナイトは主戦場であるクイーン翼へ向かう途中である。

19.Ra2

 この手は次に 20.Ba1 から 21.Rc2 でルークをぶつけるか 20.Qa1 で 20…Nc3 を防ぐ意図である。

19…Rc6

 これは明らかにc列でルークを重ねる目的である。黒はナイトをc3に跳ねるのを急いでいない。まず白にナイトを中原からどかせるようにしむけたがっている。

20.e4

 これは疑問手である。一見強い手に見えるが、実際は中原のポーンがむき出しになり攻撃目標にされ易い。

20…Nc3!

 黒が健全なナイトを病的なビショップと交換させるのは不可解に思えるかもしれない。しかしこの用心はルークが敵陣に突入する前に必要である。盤上に駒が少なければ少ないほどルークが小駒の毒牙のえじきにかかることが少なくなる。

21.Bxc3

 クイーンとルークの両当たりなのでこのナイトは取らなければならない。

21…Rxc3

 この取り返しでルークがさらに深く敵陣に侵攻することができる。

22.Nf3

 白は駒の組み換えを図ろうとした。白が 22.Rc1 でc列を争おうとしても 22…Rxc1+ 23.Qxc1 Qd3 24.Qb2 Rd8 で中央のポーンを取られる。

22…Rfc8

 二重ルークが素通し列を完全に制圧した。

 理論的には黒勝ちの局面である。黒の陣形上の優勢は否定し難く、勝ちはマスターたちの好きな常套句によれば「単に技術の問題」である。楽しい状況であるが心理的な危険性もある。気持ちが緩みがちになり攻撃を緩めがちである。誤った安心感に陥り易く、その状況をマーシャルは次のように形容した。「最も難しいのは勝ち試合を勝ち切ることである。」

23.h3

 白は何よりもまずキングの逃げ場所を作った。

 黒ルークを追い払うことはできない(23.Re3 なら 23…Rc1+ でクイーンが取られる)。そこで白は態度を保留して事態の進展を待った。

23…Nc4

 これは局面を加速させる良く練られた一連の手の最初である。まず白のaポーンを三重当たりにした。

24.a4

 他の手ではこのポーンを救えない。

24…Na3

 これは軽妙な手である。このナイトはクイーンを当たりにし、それと同時にaポーンを守っているルークの利きを遮断した。

25.Qb2

 白は守りきれないポーンをあっさり諦めた。25.Qd1 でこのポーンを守ろうとしても 25…Qc4(ルーク当たり)26.Rb2 Nc2(もう一つのルークへの当たり)27.Re2 Qxa4 28.Ne1(黒の釘付けのナイトへの当たり)Qxd4! で黒の勝ちとなる。

25…Qxa4

 これは最初の具体的な利得である。ここからはチェス界の生んだ最高の天才がパスポーンをクイーンに変える技法を堪能するとよい。注意すべきはどんなに魅力的な手筋でも目的にかなわなければ用心深く忌避されるということである。そのような目的意識の強さは怖いほどである(特にそれと対面する者にとっては)。

26.Re2

 白は有効な手がなくなってきている。26.Qe2 は 26…Rc2 で駒交換がさらに進むので駄目である。釘付けのナイトを 26.Rea1 で攻撃するのは軽く 26…Qb5 と応じられナイトに巧妙に危険から逃げ出される。

26…b5

 パスポーンは突き進めなければならない。駒得するための手筋、浮きポーン集め、さらにはキングに対する攻撃など他のすべては、突き進めたポーンをクイーンに昇格させるという主題の前には背景に追いやらなければならない。

27.d5

 白は黒の気をそらそうとして何らかの反撃の可能性を得るために筋を開けた。

27…exd5

 これは最も簡明な応手である。白が取り返せば盤の中央に孤立ポーンができる。

28.exd5

 この手の見返りに白のe列のルークが完全に素通しとなった列に臨むことになった。それによる白の狙いは 29.Qxc3 Rxc3 30.Re8# である。

28…b4!

 これは明らかな手だが、それでもいくつかの素晴らしいことを果たしている。

a)クイーンの利きがe8まで通ったので白の狙いは無効になった。

b)黒には 29…Qd1+ 30.Re1 Qxd5 でポーン得の狙いがある。この時ルークがポーンで守られているので白は 31.Qxc3 とできない。

c)このポーンがナイトを守っているので黒クイーンがその役目から解放された。

d)ポーンがゴールの8段目の地点に一歩近づいた。

29.Qd2

 この手は自分のパスポーンに紐を付けるためでなくクイーンを活用させるためである。

29…b3

 この手はマンハッタン・チェスクラブの「黒のパスポーンは白のパスポーンより走るのが速い」という警句どおりである。

30.Rb2

 この手は 30.Ra1 Rc2 31.Qe3 b2 で黒が勝つ手順よりも長持ちする。

30…Rc2

 黒の指し手は非常に分かり易い。(a)パスポーンを突き進めなければならず(b)その進路がルークでせき止められているので(c)せき止めているものを取り除かなければならない。

31.Qe3

 31.Rxc2 は気が進まないのでこの手で局面を紛れさせることを期待した。

31…Rxb2

 こちらのルークを取るのが正しい。ここから勝負を決める素晴らしい手が連続する。

32.Rxb2

 白は取り返さなければならない。

32…Nc4!

 クイーンとルークの両当たりで交換得の狙いである。

33.Qc1

 ナイトを釘付けにしてルークを救った。33.Qxb3 は役に立たない。黒が単にナイトでルークを取る手がクイーンを守っている。

33…Qa3!

 ナイトへの釘付けをルークへの釘付けで切り返した。次にクイーンでルークを取る手がある。

34.Rb1

 しかしルークが釘付けをなんとか切り抜けた。黒が勝ちを逃がしたのだろうか。

34…Qxc1+!

 そんなことは全然ない。この手で白の降伏が余儀ない。 35.Rxc1 b2(ポーンは突き進めなければならない)36.Rb1 Rb8 37.Kf1 Na3(せき止めている最後の駒を追い払う)38.Rd1 b1=Q 黒はパスポーンで勝負を決めた。

35.投了

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(117)

第2部

第3局(続き)

 (再掲)

24.h4

 これで白はポーン得になる。この手に対して黒は 24…Ne6 と指せない。そう指すと 25.hxg5+ Nxg5 26.Qh4 でナイトが落ちる。

24…gxh4 25.Qxh4+ Ke6 26.Qg4+ Kf6 27.Qg5+ Ke6 28.Qxg7 Qd6 29.c5 Qd5 30.e4! Qd1+ 31.Kh2 f6 32.Qg4+! Ke7 33.Nxe5 Qxg4 34.Nxg4 Ne6 35.e5 fxe5 36.Nxe5 Nd4

 試合はもっと続いたが、最後は白の2個のパスポーンの前進に対処する手段がなくなって黒が投了した。

(第3局終わり)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(116)

第2部

第3局(続き)

 (再掲)

19.Rd3

 19.h4 から g4 と突く方がもっと厳しい攻撃だったかもしれない。黒の弱点がe5のポーンであることは疑いなく、キングで守ることを強いられている。本譜の手はルークを重ねることが目的で、最終的には一方をd6に置きc5のポーンで支えるのが目標である。黒がこれを止めるには …c5 と突くしかなく、d5に「空所」ができる。あるいは …b6 と突くかで、既にe5のポーンを守っているクイーンをcポーンの守りにも縛りつけることになる。しかし黒はルーク同士の交換により以上のすべてに対処することができ、白の作戦をくじく。この理由から 19.h4 突きが攻撃の適正な手段のように思われる。

19…Rad8 20.Rad1 g5

 この手は …g6 と突く準備で、黒陣が堅固になる。しかし黒は残念ながらこの当初の作戦を実行しなかった。

21.c4 Rxd3

 21…g6 と突いていれば黒にとって完全に安心できる局面になっていた。

22.Rxd3 Rd8

 この手はひどい間違いで、ポーン損になった。22…g6 が正着で、黒が好調だろう。実際のところ単純な收局になれば黒キングの位置は有利になる。

23.Rxd8 Nxd8

(第3局続く)

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カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(121)

「Chess Life」1995年5月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

無から有を生じさせる

 以前に2回対称で開放的な布局の局面における手番の有利さについて論じた。1994年7月号では 1.e4 e5 を取り上げ、1994年9月号ではフランス防御交換戦法を取り上げた。公平を期すため今回は閉鎖的な布局を取り上げる。

 直感的には対称で閉鎖的な局面で黒が心配すべきことは多いわけがないと思われるかもしれない。なにしろ黒陣は白陣と同じくらい良いのだし局面は閉鎖的なのだから。黒が突然の詰み狙いの攻撃を気にする必要がないのは確かである。しかし現代の布局の指し方をほとんど気にする必要がないということではない。白は中盤戦にさしかかると何らかの優位に立つことを目指す。このことは開放布局と同じくらい閉鎖布局でも実感できる。グランドマスターの試合で現在特に人気のあるのはグリューンフェルト防御の次の戦法である(ECO D79)。1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3 c6 4.Bg2 d5 5.cxd5 cxd5 6.Nf3 Bg7 これをはやらせたのはGMアナトリー・カルポフで、彼の洞察力と好成績は以前の「引き分け手順」を強力な武器に一変させた。彼が超一流GMと指した実戦3局を紹介しよう。

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2014年11月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(115)

第2部

第3局(続き)

 (再掲)

12…Nxe4

 これはとんでもない悪手だった。キャッスリングも考えていて、それが正着だった。しかし 13.Bxf6 gxf6 14.Ng3 Bg6 15.Nf5 で白が勝勢の收局になることを恐れたためにとりやめた。これが正しかろうと間違っていようと盤のすべての箇所がいかに密接に絡み合っているか、そしてその結果ある個所がほかの箇所にどのように影響しているかが分かる。

13.Bxe7 Kxe7 14.Bxe4 Bg6

 この手は良くなかった。自然で適切な手は黒のすべての駒を戦いに参加させるための 14…Ne6 だった。代わりにすぐに 14…Bxf3 と取る手も良い手で、黒のeポーンに対する圧力が緩和されそれと同時に局面が単純化される。

 本譜で見られるのは、どんな局面をも支配する基本的な棋理に従わないと、どのようにしばしば困難に見舞われるかということである。脅威となる Bf5 を恐れたことが本譜の手の選択に影響したことは疑いなかった。

15.Qc4 Ne6 16.b4 Qc7 17.Bxg6 hxg6 18.Qe4 Kf6

(第3局続く)

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チェスの基本(114)

第2部

第3局 不規則防御 
(ハバナ、1913年)
白 D.ヤノフスキー
黒 J.R.カパブランカ

1.d4 Nf6 2.Nf3 d6 3.Bg5 Nbd7 4.e3 e5 5.Nc3 c6 6.Bd3 Be7 7.Qe2 Qa5 8.O-O Nf8 9.Rfd1 Bg4

 やっと黒は完全な展開への途上についた。この不規則布局の目的は主として白を自身で考えさせることにある。この試合の当時はこの防御法はdポーン布局の通常形ほどよく知られていなかった。棋理に合っているかどうかはまだ究められていない。利点は何も弱点を作らずに中央をそのままに保っていることと、意図を明かさずに長手数捌く機会が多いことである。欠点は黒が展開するのに多くの手数がかかることである。当然のことながら白はその手数を利用して良く練られた攻撃を準備したり、展開の優位を用いて黒の展開の完了を防いだり、それが無理なら何らかの戦力の優位を得ることになる。

10.h3 Bh5 11.dxe5 dxe5 12.Ne4

(第3局続く)

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チェスの基本(113)

第2部

第2局(続き)

 (再掲)

38…b3

 38…Rxa2 と取っていれば白は勝ちがあるとしても実戦的には無理だったろう。白の最善の想定手順は次のようになる。39.Bc4 Rc2 40.Rb5+ Kc7 41.Bg8 a3 42.h5 a2 43.Bxa2 Rxa2 そして 44.h6 には 44…Ra6! で引き分けの可能性が非常に高いので、白は勝ちがあるとしても見つけるのは非常に困難である。

39.axb3 a3 40.Bxc6 Rxb3

 代わりに 40…a2 なら 41.Rb5+ Ka6 42.Rb8 でよい。

41.Bd5 a2 42.Rh6+ 黒投了

 二人のマスターの收局としてはかなり出来が悪かった。取り柄は 14.Bxf6 から始まるルビーンシュタインの中盤戦の好手筋である。

(第2局終わり)

2014年11月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(112)

第2部

第2局(続き)

 (再掲)

30..a6

 悪手。黒は引き分けるための正当な機会を逃がしてしまった。この手は重大な手損である。実際このあとの進行が示すようにいくつかの手損につながっている。正着は 30…Kd6 だった。31.Rb5 とくるなら 31…Rxb5 32.Bxb5 Nd4 から …b5 で、白はd5の黒ナイトの圧倒的な位置に加えクイーン翼の黒ポーンの数的優位と白キングの不如意な位置のために引き分けるのに大きな困難を抱えることになる。(どうしてそうなのか確かめてみよ)

31.Rf7+ Kd6 32.Rxg7 b5 33.Bg8 a5 34.Rxh7 a4 35.h4 b4 36.Rh6+ Kc5 37.Rh5+ Kb6 38.Bd5

 白は最後の3手でまた黒にチャンスを与えた。最後の手でさえ 38.Bc4 と指していれば比較的容易に勝っていただろう。しかし本譜の手は紛れもないポカで、黒がつけ込まなかったのは白にとって幸運だった。

(第2局続く)

2014年11月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(111)

第2部

第2局(続き)

 (再掲)

16.Kg2!

 私が見落としていたのはこの手だった。白は 16.Bg2 と指さなければならないものと思っていた。私の読んでいた手筋は 16.Bg2 Ne5! 17.Nf4(17.Rc1 なら 17…Qxc1!! Qxc1 18.Bxf2+ で黒の勝ち)17…Ng4 18.h3(18.Nh3 なら 18…Bxf2+ で黒が交換得になる)18…Nxf2 19.Rxf2 Bxf2+ 20.Kxf2 g5 で、黒の勝ちになるはずである。奇妙にも本譜でこの手筋を見落としていた。私に 17.Qc1 が見えていなかったのは当然のことだった。

16…Rcd8

 白の最終手のあとは私は必然に従うほかなかった。

17.Qc1! exd5 18.Qxc5 Qd2 19.Qb5 Nd4 20.Qd3 Qxd3 21.exd3 Rfe8 22.Bg4

 この手は黒に手段の余地を与えた。白は 22.Rfe1 と指すべきだった。22…Nc2 なら 23.Rxe8+ Rxe8 24.Rc1 Re2 25.Kf1 Nd4(25…Rd2 なら 26.Be6+ Kf8 27.Bxd5 で白の勝ち)26.Rc8+ Kf7 27.Rc7+ Re7 28.Rc5 で白が勝つ。

22…Rd6 23.Rfe1 Rxe1 24.Rxe1 Rb6 25.Re5 Rxb2 26.Rxd5 Nc6 27.Be6+ Kf8 28.Rf5+ Ke8 29.Bf7+ Kd7 30.Bc4

(第2局続く)

2014年11月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(181)

「New in Chess」2014年第7号(1/1)

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長蛇を逸す

IMヨハナーン・アフェク

第6問 白の手番
難易度 5段階中4

 この10手の間完全に勝勢の局面だった白はパニックになり 37.Qc1+ Kb6 38.Rc8 Qd7 39.Qc4 Qh3+ 40.Ke2 Qg2+ と指して負けにしてしまった。実際は第1回戦でセンセーションを巻き起こす最後のチャンスを逃していた。あなたならどう指す?

解答

小島慎也対セルゲイ・モブセシアン
 正確に読めれば白の勝ちになる。37.Qe7+ Rd7 38.Qb4! a5 39.Qc4+ Kb7 ここで白にはいくつも勝ち方があるが最も単刀直入な勝ちはたぶん次である。40.Qc8+ Kb6 41.Rxe5! Qc7 42.Rb5+ Ka7 43.Rxa5+! Qxa5 44.Qxd7+

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2014年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

チェスの基本(110)

第2部

第2局(続き)

 (再掲)

9.dxc5 Bxc5 10.Ng5 Nf6 11.Nxe6 fxe6 12.Bh3 Qe7 13.Bg5 O-O

 これは悪手である。正着はルークをh3のビショップの利き筋から外し同時にdポーンを守る 12…Rd8 だった。はからずもそう指せば白が黒の布局での緩手に正しくつけ込むことができなかったことが露呈するところだった。本譜の手に対して白は豪快な手筋を繰り出してきたが、私もそれは読んでいて成立しないと思っていた。

14.Bxf6 Qxf6

 14…gxf6 でも指せそうだと思った。しかし白の手筋は成立しないと考えて白にやらせることにしたが、ずっと悔やむことになった。

15.Nxd5! Qh6

(第2局続く)

2014年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(109)

第2部

第2局 クイーン翼ギャンビット拒否
(サン・セバスティアン、1911年)
白 A.K.ルビーンシュタイン
黒 J.R.カパブランカ

1.d4 d5 2.Nf3 c5 3.c4 e6 4.cxd5 exd5 5.Nc3 Nc6 6.g3 Be6

 この戦型では 6…Nf6 が普通の手である。白の陣形はまずシュレヒターによって始められ、のちにルビーンシュタインによって磨きをかけられた。その目的は黒のdポーンを孤立させることで、白駒はそのポーンに対してしだいに集結していく。本譜の手で私は常型を避けようとした。ナイトがビショップより先に展開すべきということを除けば、展開の手であるので一般原則の点で何の難点もない。

7.Bg2 Be7 8.O-O Rc8

 この手はこの戦型の通常の進行を変えるという考えにしたがっているが、全然良くなかった。黒のキング翼ナイトがまだ展開されていないので、理論的にはウソ手のはずである。私は Ng5 からナイトをビショップと交換するという攻撃にまだ想到していなかった。8…Nf6 か Bg5 や Ng5 を防ぐために 8…h6 が正着だった。

(第2局続く)

2014年11月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(120)

「Chess Life」1995年3月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

双ビショップがすべてではない(続き)

 4.黒は何らかの理由により双ビショップを白に譲り渡す際にはことのほか実戦的でなければならない。

 例えば中央での白の影響力が急に増すことにでもなれば、黒は白の双ビショップに対する見返りが雲散霧消しかねない。もちろん上記の指針は経験のない状況でしなければならない決断にも適用される。最新の定跡の動向に通じているなら普通のGMと同じくらい安心していられる。

クイーン翼ギャンビット受諾 D23
白 GMワシリー・スミスロフ
黒 GMローベルト・ヒューブナー
ベルデン、1983年、番勝負第13局

1.d4 d5 2.c4 dxc4 3.Nf3 Nf6 4.Qa4+ c6 5.Qxc4 Bf5! 6.Nc3 e6

 この重要な局面は通常はスラブ防御の 1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Qb3 dxc4 5.Qxc4 Bf5 6.Nc3 e6 から生じる。白の目標は有利な条件のときに e4 と突くことである。だから白の普通の作戦は 7.g3 のあと 8.Bg2 から 9.O-O と指していく。しかしGMスミスロフは面白い構想を用意していた。それはクイーン同士を交換して、中央の優位と双ビショップの生きる收局に持ち込むことである。

7.Qb3?! Qb6 8.Qxb6 axb6 9.Nh4

 白はもちろんクイーン交換により黒がa列を活用する機会を得ていることに気づいているが、自分の得ているものの方がもっと価値があると思っている。白は「機械的な」9…Bg6 を期待していて、それなら 10.Nxg6 と指す。

9…b5!! 10.Nxf5 exf5

 白はf5で取るしかほとんど選択の余地がなかった。それでも出来上がった局面は 7.Qb3?! と指したときに期待したのとは大きく変化している。f5の黒ポーンは白が良い条件で e4 と突くのを防いでいる。つまり …fxe4 のあと白はdポーンが孤立するのが気に入らない。しかし白は e4 と突くことができなければ、両ビショップがほとんど働かず、黒の敏捷なナイトと半素通しa列が重要な要因になってくる。明らかに白の形勢が悪い。

11.e3 Nbd7 12.Bd3 g6 13.O-O Nb6 14.Bd2 Be7 15.Rfc1 O-O 16.b3?!

 この手は黒枡を弱め、黒がa列でルークを重ねればaポーンが弱くなる。16.a3 のあと必要なら Rab1 と指すことが必要だった。

16…Ra3 17.Bxb5!?

 偉大な選手のGMスミスロフは通常のやり方ではもう間に合わないと分かっている。例えばGMカバレクは 17.Nb1 のあと 17…Ra7 18.a3 Rfa8 19.Rc2 Nbd5 20.Rca2 Bb4! という変化を示し白が収拾不可能としている。だからGMスミスロフは駒を捨てて3ポーンを取った。自分のポーンはばらばらで弱いので十分な代償とはならないことは分かっているが、しのぎに実戦的な可能性を見ていた。

17…cxb5 18.Nxb5 Raa8 19.Rc7 Nbd5 20.Rxb7 Rfc8 21.a4 Rc2 22.Be1 Rac8 23.Na7 Rc1 24.Nxc8 Rxa1 25.Nxe7+ Nxe7 26.Kf1 Ned5 27.Ke2 f4 28.a5 Kg7 29.exf4 Nxf4+ 30.Kf3 Nxg2?!

 これで白にチャンスがめぐって来た。白のパスポーンが突き進んで黒駒と交換になり、白が負けを免れるのに十分である。GMカバレクは次のような勝つ手順をあげている。30…Ne6! 31.Bc3 Rc1 32.Bb2 Rc2 33.Ba1 Ra2 34.Bc3 Nd5 35.Be1 Nec7 36.b4 Rb2 白の戦力は麻痺し黒キングの参戦が決め手になる。試合は次のように続いた。

31.Kxg2 Rxe1 32.b4 Ra1 33.Ra7 Nd5 34.b5 Ra3 35.h4 Nf4+ 36.Kh2 Rh3+ 37.Kg1 Rb3 38.b6 Ne2+ 39.Kg2 Nxd4 40.Rc7! Ne6 41.Rc8! Nf4+ 42.Kh2 Nd5 43.Rd8! Nxb6 44.axb6 Rxb6 45.Rd7 Rb3 46.Kg2 h6 47.f3 g5 48.hxg5 hxg5 49.Kg3 Kg6 50.Rd6+ f6 51.Rc6 Rd3 52.Ra6 Kf5 53.Ra5+ Ke6 54.Ra6+ Kf7 55.Ra5 Kg6 56.Ra6 Rd7 57.Kg4 Rd4+ 58.Kg3 Kf7 59.Ra7+ Kg6 60.Ra6 Rb4 引き分け

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チェスの基本(108)

第2部

第1局(続き)

 (再掲)

 黒は陣形で劣りたぶんどのみち負けである。しかし本譜の手は形勢をよけい悪くした。実は白の 17.Bf5 をまったく見落としていた。この手を狙われているとはつゆほども考えていなかった。黒の最善手は 16…Rfb8 だっただろう。それでも負ければほかのどんな手でも負けになる。

17.Bf5 Rfc8

 形勢がもっと悪いからもっとも悪いになった。17…Nf6 ならまだ望みがあっただろう。

18.Bxd7 Qxd7 19.a6 Bc6 20.dxc5 bxc5 21.Qxc5 Rab8

 試合は終わった。白はどんな手でも良い。

22.Rxb8 Rxb8 23.Ne5 Qf5 24.f4 Rb6 25.Qxb6! 黒投了

 もちろん 25.Nxc6 なら 25…Rb1+ で引き分けになるところである。本譜の手はきれいで、たちまち終わった。マーシャルの指し回しが光った。

(第1局終わり)

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チェスの基本(107)

第2部

第1局(続き)

 (再掲)

 この手は黒を何の代償もなく白からのさらなる a5 突きの攻撃にさらすことになる。今私がこの局面を持たなければならないとしたら単に 13…Re8 と指すだろう。14.Qxc5 Qxc5 のあとは黒がポーンを取り返すことになるだろう。代わりに白が 14.dxc5 と指せば 14…Bg4 で黒の指しやすい局面になるだろう。

14.a5 Bb7 15.O-O Qc7 16.Rfb1 Nd7

(第1局続く)

2014年11月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(106)

第2部

第1局 クイーン翼ギャンビット拒否
(番勝負、1909年)
白 F.J.マーシャル
黒 J.R.カパブランカ

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.e3 Ne4

 この防御はこの番勝負で以前に2回指していて好結果だった。本局では負けたけれども戦術を変えて番勝負の最終局まで指した。理由はこの布局の別の戦型の知識がまったく不足していたからだった。それと共にE.ラスカー博士が1907年のほかならぬマーシャルとの番勝負でこの戦型で好成績をあげていたことを知っていたからでもあった。ラスカー博士がそんなにしばしば指したのだから良い戦型のはずだと考えていた。この手の目的はビショップ同士を交換し、同時に可能性に満ちた局面を現出させて收局の段階に至れば有望な局面にしようというものである。一般原則から考えれば同じナイトが三度動くので二組の駒の交換になるけれども悪いはずである。実際はこの戦型およびクイーン翼ギャンビットのほぼすべての戦型における困難は、黒のクイーン翼ビショップの展開が遅れることにある。しかしこの戦型が安全に指せるかどうかはまだ未解決の問題であり、本書の範囲外である。ついでに言っておいた方が良いかもしれないが、今の私が好きなのは別の展開法である。しかしいつかこの戦型に戻ってくる可能性がないこともない。

6.Bxe7 Qxe7 7.Bd3

 7.cxd5 と取る方が良い。その理由はすぐに判明する。

7…Nxc3 8.bxc3 Nd7

 ここでは 8…dxc4 と取って展開を図る方が良い。つまり 8…dxc4 9.Bxc4 b6 から …Bb7 で黒のクイーン翼ビショップの利きが強力になる。この戦型についてはこの番勝負の第11局を参照されたい。

9.Nf3 O-O

 もう 9…dxc4 10.Bxc4 b6 と指すのは良くない。11.Bb5 で 12.Ne5 があるために 11…Bb7 と指せないからである。

10.cxd5 exd5 11.Qb3 Nf6 12.a4 c5

 この手はクイーン翼で多数派ポーンを得る意図である。しかし黒のクイーン翼のポーンがいくらか乱れるので良い手かどうかは疑問である。12…c6 と突く方が安全な進行だった。

13.Qa3 b6

(第1局続く)

2014年11月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(105)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

33.「空所」の影響力(続き)

例67(続き)

 (再掲)

24.Rxe3

 白はルークを犠牲にナイトとポーンを取って圧倒的な態勢を築く。

24…fxe3 25.Qxe3 Nc8

 この手では白の2個のナイトの一つを取り除くために 25…Nd7 と引く方が良かった。しかしその手に対しては良い応手がいくつもありその中でも次の手順がそうである。26.Ncxd7 Bxd7 27.Qxg5 Qxg5 28.Nf7+ Kg7 29.Nxg5 これで白は交換損の代わりに2ポーンを得て形勢もすこぶる良く勝つのにたいして支障がないはずである。

26.Ng4 Rg6 27.e5 Rg7 28.Bc4 Bf7

 以上の手順はほとんど必然である。そして見れば簡単に分かるように黒陣をますます締め付けている。24手目からの白の捌きはとても参考になる。

29.Nf6 Nb6

 このさまよえるナイトはずっと何もしてこなかった。

30.Nce4 h6 31.h4 Nd5 32.Qd2 Rg6 33.hxg5 Qf8

 33…hxg5 なら 34.Kf2 で黒はどうしようもない。

34.f4 Ne7 35.g4 hxg5 36.fxg5 黒投了

 黒は成すすべがない。36…Bg8 なら 37.Qh2+ Kg7 38.Bxe6 である。

 初学者に認識して欲しいことは、試合中ずっと白が黒の地点、主としてe5とc5の地点を支配していたということである。

 ここから本書の終わりまでは私の勝局と敗局とを取り上げる。それらを選んだのはこれまでに述べた一般原則の説明に役立つからである。

(この章終わり)

2014年11月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(104)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

33.「空所」の影響力(続き)

例67(続き)

 (再掲)

15…Rb8

 この手は次に …Nd7 と指すのでなければ何の目的もない。そうではないので黒はあとで実際に指すようにこのルークをc8に回した方が良かったかもしれない。

16.Re1 Rf6 17.Qf3 Rh6 18.Qg3 Rc8

 白から 19.Nf7 または 19.Ng4 で交換得を狙われていた。

19.f3 Rc7 20.a3 Kh8 21.h3

 たぶんこれらの用心はどれも不要だろう。しかし白は攻撃の準備に十分すぎる余裕があり、その前にどの点においても安全にしておきたいと思っていた。

21…g5 22.e4 f4 23.Qf2 Ne3

 黒は 23…Nf6 と引き、あとで白ナイトを …Nd7 でなくすようにする方が良かった。

(この章続く)

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