2014年10月の記事一覧

[復刻版]理詰めのチェス(30)

第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する(続き)

第30局

 ここからの3局の主題は「パスポーンを作りそれを突き進めて勝て」である。まずカパブランカ対ビリェガス戦ではクイーンを犠牲にする場面が見られる。ほとんどの試合ではそのような犠牲は手筋の極致だが本局では陣形上の優位を確立する大戦略の前には影が薄い。その大戦略はd列の支配に行き着き、続いてクイーン翼で3対2の多数派ポーンの形成に結びついた。巧妙な指し回しでこれから単独のパスポーンができ、厳重にせき止められたにもかかわらず再びクイーンの犠牲で扉が大きく開かれた。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 カパブランカ
黒 ビリェガス
ブエノスアイレス、1914年

1.d4

 本局ではチェスの技法は次のような単純な手法に帰せられる。

 「パスポーンを作りそれを突き進めて勝て」

 白は初手で中原に地歩を占め2個の駒を自由にした。

1…d5

 この手は恐らく黒の最強の応手である。圧力を対等にし白が 2.e4 で中原を独占するのを防いでいる。

2.Nf3

 ナイトが中原に向かって跳ねポーンがe5の地点にかけている圧力を強めた。このナイトはf3の地点で最も良く働いていて周囲の8地点に利いている。

2…Nf6

 黒は同じやり方でキング翼ナイトを最も効果的な地点に展開した。優れた攻撃能力を別にしてもナイトはその場にいながら役に立っている。キングの護衛では特にキャッスリングの後では他の駒にできない守りを務めている。

3.e3

 これは最も積極的な布陣ではないが、白は最初から攻撃的である必要はない。この布局自体が非常に強力なので白は無駄なく最適な地点を占めるように駒を展開するだけで素晴らしい態勢を築くことができる。その手法は次のように単純そのものである。

 どの駒も働く地点につけ、展開が完了するまで同じ駒を2度動かすな。

 3.e3 によって一方のビショップが自由になるが他方のビショップが閉じ込められるということはたいして重要でない。なぜならクイーン翼ビショップはb2の地点から参戦できるからである。白は具体的な意図を明らかにしていない。コーレ攻撃を指すかもしれないし単にビショップをd3に展開して早いキング翼キャッスリングをするつもりかもしれない。

3…c6

 黒は 4.c4 でdポーンが攻撃されることを見越してdポーンを支えた。黒は 3…e6 で自分のクイーン翼ビショップを閉じ込めて支えるよりも本譜の手の方を好んだ。

 しかしビショップを自由にしたいならどうして黒はすぐにf5の地点に出さないのだろうか。そこなら白のビショップがd3に来た時に対峙する用意ができている。そうなれば白の攻撃的なビショップとの交換がほぼ不可避でコーレシステムから攻撃の牙を抜くことになる。

 他に考えられる手はすぐにポーンをc5に突くことで、白の中原に襲いかかりc列を開けて自分の大駒が利用できるようにすることだった。それなのになぜ序盤で 3…c6 というように不必要なポーンを突くのだろうか。どうして何も狙われていないのに守りに手を無駄に費やすのだろうか。

4.Bd3

 これは落ち着いた力強い展開である。このビショップは二つの格好の斜筋をにらみどちらにでも動く用意をしている。その一方でキング翼がキャッスリングのために空いた。

4…Bg4

 このビショップの行き場所はここくらいである。このビショップの最良の位置はf5だが白の直前の手によってそれが不可能になっている。

5.c4!

 これは機敏な手である。白は黒の中原に挑みかかり、自分の大駒のためにc列を開けた。クイーンのために空けられた斜筋にはビショップの出撃によって弱体化した黒のクイーン翼を 6.Qb3 によって襲撃する展望がある。

5…e6

 黒のキング翼ビショップに出口が与えられ中原のポーンもさらに支援された。

6.Nbd2

 白はキング翼ナイトをこの小駒で守りクイーンの務めを軽減した。このナイトの展開方法はc3に展開するよりも好ましい。c3ではc列でのクイーンやルークの将来の活動の邪魔になるかもしれない。

 6.Qb3 の出撃はすぐには何の有利ももたらさない。黒は 6…Qb6 と応じクイーン交換になるか白クイーンが引き下がることになる。

6…Nbd7

 黒のナイトにとってもこれは手本となる展開である。このナイトはd7の地点でキング翼ナイトと協力して働き、…c5 または …e5 によって白の中原をいつかは攻撃するのを手助けする。この捌きはどちらにせよ黒がこの布局で達成しようとしなければならない目標である。

7.O-O

 キングが安全地帯に急いで去りルークが隠れ家から出てきた。

7…Be7

 この手は駒を展開しキャッスリングを可能にしているがかなり積極性に欠けている。もっと元気のよい手段は 7…e5 で中原で何らかの発言権を得ようとするものだった。

8.Qc2!

 そこで白はそのようなもくろみを完全にやめさせた。それでも黒が 8…e5 と突けば白のナイトが釘付けになっていないのでそのポーンを取ることができ黒のポーン損になる。

 クイーンのc2への展開は地味だが序盤の段階ではクイーンはめったに3段目または4段目を越えて出て行かない方が良い。大切なことはクイーンが最下段を離れて活動することである。

8…Bh5

 黒はビショップをg6に引き白の攻撃的なキング翼ビショップと交換する用意をした。この手の代わりにキャッスリングするのは 9.Ne5 Bh5(9…Nxe5 は 10.dxe5 Nd7 11.Bxh7+ で白のポーン得になる)10.f4 でナイトが中央の強力な位置を占め白に素晴らしい攻撃の展望が開ける。

9.b3

 駒の出口を開けるポーン突きは常に正しい手である。この手はクイーン翼ビショップの展開する地点を用意した。

9…Bg6

 黒はビショップの交換を行なうための手を続けた。

10.Bb2

 ビショップが遠くから中原の重要な地点のe5に対する白の圧力を強めた。この地点を支配していれば黒が …e5 で捌くのが難しくなる。

10…Bxd3

 この交換を急ぐことはない。どうして白のように冷静に駒を展開する作業を続けないのだろうか。

11.Qxd3

 この取り返しの後白は盤上を席巻する。白はいろいろな指し方が可能である。

 a)e4 突きでつっかけて攻撃のために筋を開ける。

 b)ナイトをe5の拠点に据える。

 c)c5 突きから封じ込めを行なう。

11…O-O

 黒は白の狙いのすべてに対処することはできない。それでキングを安全な隠れ家に送った。

12.Rae1

 白は具体的な行動をとる前に別の駒を戦いに加えた。ルークがe列にいればeポーン突きに迫力が加わる。

 白は展開が完了しないうちは行動を開始しない。

12…Qc7

 黒は別の駒を動員し 13…c5 による反撃に期待した。クイーンの展開によってルークもお互いに連絡できるようになった。

13.e4!

 白は攻撃の筋を開けた。理論によればこれは展開に優る側に有利に作用する。

 白は 13.c5 を見送った。それに対する応手は 13…e5 14.dxe5 Nxc5 である。13.Ne5 はもう有望でない。即ち 13…Nxe5 14.dxe5 Nd7 15.f4 f6 で黒に楽をさせてしまう。

13…dxe4

 さもないと黒はずっと e5 や exd5 を恐れながら暮らさなければならない。白はどちらの手も都合の良い時に指すことができる。

14.Nxe4

 この取り返しの後白の中原は威容を誇っている。

14…Nxe4

 黒はごちゃごちゃした陣形を解放するために駒を交換した。

15.Rxe4!

 この手は自然な受けの 15…Nf6 を予期したものである。この手に対して白は 16.Rh4 と応じる。その後の作戦は詰みを防いでいる黒のナイトを除去することである。それは 17.d5 から 18.Bxf6 か 17.Ne5 から 18.Ng4 で実現できる。ナイトの交換または立ち退きの後の Qxh7# を防ぐために黒は …g6 又は …h6 と突かなければならなくなる。どちらにしてもポーンの形に隙ができキングの防御が弱体化する。

15…Bf6

 この手は 16.Rh4 を防ぎビショップの利きを良くし白の中原に圧力をかけている。それに 16…Nc5 17.dxc5 Bxb2 で黒の有利な単純化になる小さな狙いも持っている。

16.Qe3

 その小さな陰謀を阻止した。

16…c5

 これは確かに魅力的な手である。黒の意図は 17…cxd4 で、dポーンが釘付けになっているので白はこのポーン取りを避けることができない。白の目障りな中原ポーンがなくなれば黒のナイトがc5やe5に行けるようになり、クイーンとルークが素通しのc列から反撃することもできる。

17.Ne5

 ナイトが橋頭堡に陣取った。この手は無害に見える。何も狙っていないし黒のもくろみに何の邪魔にもならない。

17…cxd4

 この手は 18.Bxd4 Bxe5 19.Bxe5 Nxe5 20.Rxe5 Rfd8 で素通しのd列の支配により黒の見通しが断然良くなることを期待した。

18.Nxd7!

 これは破天荒な構想である。それは白がクイーン捨ての手筋を指したということではなく、クイーンの返上が瑣末なことに過ぎないという状況のことである。クイーン捨ては試合全体の戦略に比べれば付随的なことに過ぎない。この試合は大局観に基づいて指されていて、そのとおりに勝ちになる。そこではどんな手筋も全体作戦に沿って現れてくる。その全体作戦とはパスポーンを作り機会あるごとに突き進めクイーンに昇格させることである。

18…Qxd7

 黒がクイーン捨てを受け入れて 18…dxe3 と取れば白は次のような手筋を繰り出す。19.Nxf6+ Kh8(19…gxf6 は 20.Rg4+ Kh8 21.Bxf6#)20.Rh4(21.Rxh7# の狙い)20…h6 21.Rxh6+! gxh6 22.Nd5+ Kg8 23.Nxc7 これでルークと2駒の交換となり白が簡単に勝つ。

19.Bxd4

 ビショップがポーンを取り返し2方向に利きを及ぼしている。一方はaポーンまで利いていて、他方は 20.Bxf6 gxf6 21.Rg4+ Kh6 22.Qh6 Rg8 23.Qxf6+ からの詰みを狙っている。

19…Bxd4

 白のビショップは消さなければならない。

20.Rxd4

 ビショップを取り返した手がクイーン当たりの先手になっている。

20…Qc7

 ここが最善の逃げ場所で、クイーンの動きが一番良い。

21.Rfd1

 ここで白のクイーン捨ての意味を良く理解することができる。クイーン捨ては奇襲戦術で勝とうということではなく、陣形的に優位を得る手段として用いられた手筋だった。

 d列の白の二重ルークはその列を完全に支配している。そしてクイーン翼での3対2の多数派ポーンからはc列でパスポーンが生まれる可能性がある。

21…Rfd8

 黒は白が7段目にルークを据えるかd列に駒を三重に重ねる前にルークを対抗させなければならない。

22.b4!

 これからクイーン翼でのポーンの進撃が始まる。カパブランカは 22.Rxd8+ Rxd8 23.Rxd8+ Qxd8 24.Qxa7 Qd1# のような見え透いた罠には一瞥もくれない。

22…Rxd4

 この交換はほとんど必然である。さもないとこのルークを守るためにクイーンともう一つのルークが縛り付けられる。

23.Qxd4

 当然ながら白は素通し列に2個の大駒を維持するためにクイーンで取った。

23…b6

 黒はルークを使うためにこの手か 23…a6 と突く手を指さなければならない。もちろん素通し列を争うために 23…Rd8 と指すことは白に即座にルークを取られて詰みになるのでできない。

24.g3

 これはキングが最下段での不意のチェックから逃げるための安全策である。用心しないと致命的になることがよくある。

24…Rc8

 cポーンを2駒で当たりにした。

25.Rc1

 cポーンを救うために白はルークをd列からそらさなければならない。しかしこれでルークがポーン(戴冠の候補)の背後に回り、このポーンがc列でどんなに先まで進んでもそれを守れる位置についている。

25…Rd8

 黒の目的は白クイーンを追い払いこのルークでd列を自分が支配することである。

26.Qe3

 これは抜け目のない手である。ルークに紐を付け、黒ルークがd2に来るのを防ぎ、cポーンが次に立ち寄る戦略的要衝のc5を見張っている。

26…Kf8

 キングが戦場に近寄った。駒が総交換になった場合はキングがcポーンを抑える用意をしている。

27.c5

 ポーンは機会あるごとに前進する。

27…bxc5

 白が 28.bxc5 と取り返すことを期待している。その場合黒は 28…Qc6 でしっかりこのポーンをせき止める。

28.Qe4!

 これは非常に気の利いた手である。黒ポーンは釘付けになっていて取られるのを避けることができないので白はすぐに取り返す必要はない。そしてこのクイーンの動きで黒の意図した 28…Qc6 によるせき止めを防ぎ 29.bxc5 から 30.c6 を準備している。

28…Rd5

 ルークが急いでcポーンの助けに向かった。

 ここで白はポーン狩りをしたくなるところである。29.Qxh7 の後 30.Qh8+ から 31.Qxg7 で2個のポーンを取りh列にパスポーンを作ることができる。しかしこのような気まぐれな指し方は白の綿密で能率的な指し回しとは調和しない。そしてカパブランカのような性格とは全く相いれない。

29.bxc5

 ついにパスポーンができた。

29…g6

 29…Rxc5 と取り返すことはできない。白は無作法なルークを 30.Qb4 で罰し、釘付けにより取ってしまう。

30.c6

 パスポーンは突き進めなければならない。このポーンが1枡進むたびに白ルークの動ける範囲が広がり黒駒の自由が制限されていく。

30…Kg7

 黒はキングを中央に近づけるのは自殺行為になるかもしれないと気付いた。即ち 30…Ke7 31.Qh4+ Kd6 32.Qb4+ Ke5 なら 33.Qf4# で詰みになる。

31.a4!

 これは素晴らしい準備の手である。もし白がすぐに 31.Qb4 から 32.Qb7 と指すと(せき止めている駒をどかすため)黒はクイーンを交換し 33…Rb5 とポーンの背後に回って止めることができる。しかし白のaポーンがa4にあると黒はルークをb5に回らせることができない。

31…Rd6

 黒はポーンをがんじがらめにした。このポーンは進めないし、クイーンをb7に回すという白の意図していた策略も実現不可能である。黒は 32.Qb4 に対して単に 32…Rxc6 と取るまでである。しかし1個のポーンが黒のクイーンとルークを縛り付けておくことができるということはパスポーンの威力のおかげである。

32.Qe5+!

 ポーンの周りの厳重な警戒にもかかわらず白は一撃でせき止めをはずしてしまう。

32…f6

 黒がどのようにチェックから逃れても白の次の手筋を止めることはできない。

33.Qxd6!

 守りの一つを撃破した。

33…Qxd6

 そして取り返しのためにもう一つが誘い出された。

34.c7!

 これで白の勝ちである。次の手でポーンがクイーンに昇格し白がルークの丸得になる。

2014年10月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(103)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

33.「空所」の影響力(続き)

例67(続き)

 (再掲)

 白は完全に展開していて、13.Nxd5 Nxd5 14.e4 から 15.Rxc7 でのポーン得を狙っている。

12…c6

 黒がポーン損を避けるためにこのポーンを突かされるということは、黒の展開そのものが非難に値するということである。実際黒は 11…Bd7 と指していて自身のビショップの動きを封じ込めなければならない。これによりビショップは当分の間ほとんどポーンと同じになる。このビショップがいつかどうしたら何かを攻撃できるようになるのかは見通すのが難しい。その上容易に分かることは白がすぐに2個のナイトをe5とc5に据えること、そして黒はそれらをどかすことはたとえ可能であっても自陣をひどく弱めずにはできないことである。以上の理由からたぶん黒はこのような防御態勢を布く前に …Nxc3 と指して白の2個のナイトの一方をなくしておいた方が良かったことが分かる。このような場合盤上の駒が少なくなればなるほど、受かる可能性が高くなる。

13.Ne4 f5

 この手は白のナイトのためにe5に空所を作るので自殺手にも等しい。そこからどかすことは実際上不可能である。黒は本譜のような手を指すつもりだったなら、もっと前に指すべきだった。それなら少なくとも白ナイトがc5に来るのを防ぐ目的になっていた。

14.Nc5 Be8 15.Ne5

 白ナイトの配置、特にe5のナイトは理想形と言えるだろう。そして一目で局面を支配していることが見て取れる。ここからの問題は白がどのようにして優勢な状況から完全な有利さを引き出すかということである。これはすぐに目撃することになる。

(この章続く)

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チェスの基本(102)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

33.「空所」の影響力

 実戦でのいわゆる「空所」の影響力は既に私の対ブランコ戦の試合によく表れている(例52)。そこではe5の地点に生じた空所に置かれた白のいろいろな駒によってもたらされた影響が見られた。

例67

 この点についてさらに説明するために1913年のハバナ国際マスターズ大会でのD.ヤノフスキー対A.クプチク戦(クイーン翼ギャンビット拒否)を取り上げる。

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Be7 5.e3 Nbd7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4 Nb6

 この手の意味はもちろんナイトをd5に置くことである。しかしそこに置くべきナイトはもう一つのナイトの方なので、この捌きは理にかなっているとは思われない。b6のナイトは自分のクイーン翼ビショップの展開を妨げる以外何もしていない。通常の手順の …O-O から …c5 の方が合理的である。その戦型で白がどのように指すべきかの見事な例は、1914年サンクトペテルブルク大会でのヤノフスキー対ルビーンシュタイン戦を見るとよい。

8.Bd3

 この局面では 8.Bb3 にも利点がある。その最も大きな点は 8…Nfd5 9.Bxe7 Qxe7 のあとすぐにeポーンを突けることである。

8…Nfd5 9.Bxe7 Qxe7 10.Nf3

 白がビショップをb3に引いていたら上の解説で指摘したようにここで 10.e4 と突けるところである。だがこの局面では 10…Nf4 と応じられてgポーンに当たるだけでなく …Nxd3+ も狙われるのでそう指せない。白のキング翼ビショップはこの布局では確かな理由もなく交換してはいけないので、10.e4 と突くことはできない。

10…O-O 11.O-O Bd7 12.Rc1

(この章続く)

2014年10月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(119)

「Chess Life」1995年3月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

双ビショップがすべてではない(続き)

 3.双ビショップを白に譲る際には黒は、白に不快な二重ポーンを負わせることができるならばたぶんそうするのが一番良い。

 ほぼ過去50年の間次の戦型がこの条件に合っている。

フランス防御ビナベル戦法 C19
白 GMマリー・チャンドラー
黒 GMゲラルト・ヘルトネック
ドイツチーム戦、1993年

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 Ne7 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 c5

 これはビナベル戦法の主手順の発端となる局面である。白は悪形の二重ポーンを受け入れ、代償にeポーンの締めつけ効果と局面が開けた場合の双ビショップの価値とに目を向けなければならない。ボビー・フィッシャーは白側の偉大な信奉者で、1969年に次のように書いている(『My 60 Memorable Games』151ページ)。「いつかはビナベルが本筋だと認めなければならなくなるかもしれない。しかしビナベルは胡散臭い!この防御は棋理に反しているしキング翼を弱めている。」それでも白が歴史上重要な主手順、すなわち黒が …Qa5 と …Nbc6 ですぐに白の中央ポーンに圧力をかける手順に対して棋理に反していることを実証するのに約20年を要した。1991年レイキャビクでのM.チャンドラー対J.ティマン戦がその古典的な例になっている。7.Nf3 Bd7 8.a4 Qa5 9.Bd2 Nbc6 10.Bb5 O-O-O 11.O-O c4 12.Bc1! f6 13.Ba3 Rhe8 14.Re1 Nf5 15.Qd2 h5 16.h3 h4 17.Bc5 Qc7 18.Bxc6! Bxc6 19.a5 Kb8 20.Reb1! Rh8

 ここでGMチャンドラーは 21.Ra2? の代わりに 21.Qf4! Rdg8 22.Bb6! axb6 23.axb6 Qe7 24.Ra7 g5 25.Qh2 で 26.Rba1 Kc8 27.exf6 Qd6 28.Ne5 の狙いで白の勝勢としている(『チェス新報』第52巻第295局を参照)。

 このような試合のために以前の主手順がすたれただけでなく、長い間常用していたナイジェル・ショートとビクトル・コルチノイの二人も 3…Bb4 から 3…Nf6 に転向することになった。

7.a4 Qc7 8.Nf3 b6

 残る重要なビナベル愛好者のドイツのGMヘルトネックと我らがボリス・グリコは今では本譜から始まるはるかに控えめな作戦にしがみついている。黒は 9…Ba6 を狙っていて、もし白がそれを防げば単刀直入の展開とキング翼キャッスリングで満足する。

9.Bb5+ Bd7 10.Bd3 Nbc6 11.O-O h6! 12.Re1 O-O 13.Ba3?!

 これはGMナンの創案による野心的なポーンの犠牲で、以前はうまくいっていた。しかしこの試合で信頼性がかなりはっきり揺らいでいるようなので、白はもっと控えめな 13.Be3 か 13.Qd2 に戻った方が良い。

13…Na5 14.Nd2 Bxa4 15.dxc5 bxc5 16.Qg4?!

 白の最善の策は 16.Bxc5 Qxc5 17.Rxa4 である。

16…Bd7 17.Nf3 Rab8! 18.Bc1 Kh8! 19.Qh4 Ng8 20.Ng5 Bb5! 21.Bh7 Nc4 22.Bf4 Rb6! 23.Bd3 Qe7 24.Qh3 Nb2! 25.Bxb5 Rxb5 26.Reb1 Rfb8 27.Qh5 R8b7 28.Bc1 g6 29.Qh3 Kg7 30.Nf3 Nc4

 黒の勝勢の局面である。

 ビナベルは持ちこたえ黒のクイーン翼のポーンは傷がない。しかしお互い時間に追われて悪手を指し、この面白い試合は48手で引き分けになった。全手順に興味のある人はチェス新報第60巻第291局のGMヘルトネックの解説を読むとよい。

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2014年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(101)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

32.ルイロペスからの進展の可能性(続き)

例65(続き)

 (再掲)

 黒はここで …Rc8 と指さざるをえないだろう。それなら白は Qc2 から Kf3 で黒に …fxg4 と取らせることができ、さらに優勢になる。

 以上の局面を注意深く分析すると分かることは、白が捌きの自由度で優位に立っていることに加えてe5のポーンの威力が絶大で、このポーンの支配的な位置と自由に動けることとがすべての駒が交換されれば白の捌きの中核を構成することになる。

 故意にそこに至る指し手を示さずに局面をあげたのは、(どの局面からでも)生じるかもしれない局面を初学者が想像することに慣れてもらうためだった。それによって戦略的な作戦を立てることを学びマスターの実力にたどり着けるだろう。さらにこの種の訓練を積み重ねることにより大きな利益を得ることができる。

(この章続く)

2014年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(100)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

32.ルイロペスからの進展の可能性(続き)

例66

 (再掲)

 この状況から試合は次のように続くかもしれない。

1.gxf5 gxf5 2.Qf3 Qd7

 白は 3.Qxd5 でポーン得を狙っていた。黒が 2…Rf8 と指せなかったのは 3.Rxc6 で少なくともポーン損になるからである。

3.R5c2 Rg6 4.Rg2 Kh8 5.Rcg1 Rcg8 6.Qh5 Rxg2 7.Rxg2 Rxg2 8.Kxg2 Qg7+ 9.Kh2 Qg6 10.Qxg6 hxg6 11.b4 以下白勝ち

 さて、上図の局面で黒の手番とし、1…Rf8 と指したとしよう。それなら白は単純に 2.Qf3 のような手でfポーンを守り、そのあとキングをg3まで持ってくる。そして適当な時機に上の例のように敵陣突破を図る。白は次のような局面にさえ到達できるかもしれない。

(この章続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(099)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

32.ルイロペスからの進展の可能性(続き)

例65(続き)

 (再掲)

 ここで気づくのは黒の出遅れcポーンである。黒はこのポーンをc5に突くわけにはいかない。このような局面は理論的に負けであると言ってよいかもしれない。実戦では一流のマスターは必ずと言ってよいほど黒に勝つ。(私自身のことを言わせてもらえば前述の私の試合は私が勝った。)

 もう少し手を進めれば局面は簡単に次図のようになるだろう。

 黒駒は固定されていると言える。白が Qc3 と指せば黒は …Qd7 と応じなければならない。さもないと Rxd5 でポーンをただ取りされる。そして白が Qa3 とクイーンを戻せば黒もまたa6のポーンを取られないように …Qb7 とクイーンを戻さなければならない。だから黒は白の手に従って指すしかない。このような状況で白はポーンをf4とg4へ容易に突いていくことができ、黒は …f5 と突いて白の f5 突きを止めることを強いられる。そしてついには次のような局面になるかもしれない。

(この章続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(098)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

32.ルイロペスからの進展の可能性

 布局の戦型と中盤の捌きは解説したばかりの初歩的な原則のいくつかに基づいていることがよくある。それは次の試合にもよく見てとれる。

例65

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 b5 7.Bb3 d5 8.dxe5 Be6 9.c3 Be7 10.Re1 Nc5 11.Bc2 Bg4 12.Nbd2 O-O 13.Nb3 Ne6

 ここまではルイロペスの非常によく知られた戦型で、実際1912年パリでのヤノフスキー対ラスカー戦の手順でもある。

14.Qd3 g6

 ここから仮想の手順で白が適当なときにナイトの一つをd4に動かすことにより両方のナイトを交換させ、そのあと両方のビショップも交換させ、次図のような局面に到達したものとする。(ポーランドのウッチでの対局で非常に似た局面になったことがある。私の白番で、サルべに率いられた相談チームとの対戦だった。)

(この章続く)

2014年10月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(097)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤(続き)

31.ポーンについての特筆点(続き)

例64

 図の局面では白の中央のポーンが攻撃的な態勢で黒の中央のポーンは守勢的な態勢と言えるかもしれない。このようなポーンの陣形はフランス防御に現れる。このような局面ではたいていキング翼にキャッスリングする黒キングに対して白は f4 から f5 と突いて壊滅させようとすることがよくある。黒はこれを防ぐために、そして主導権または戦力得を得るためにも、…c5 と突いて反撃の構えを見せ、(白が c3 と突いてd4のポーンを守ったとき)…cxd4 と取りd4の白ポーンに対して駒で集中攻撃する。これは白の黒キングに対する直接攻撃を麻痺させるための、白の中央に対する断固たる攻撃と言って良いかもしれない。本書の初めの方で述べたように「中央の支配はキングに対する攻撃の成功に必須の条件である」ことは記憶しておかなければならない。

 理論的には2個または3個のポーンは同じ段に並んでいるとき最も強いと言えるかもしれない。それゆえに中央のポーンはd4とe4に並んでいるときいわば最強である。だからどちらかを5段目に進める問題は、最も注意深く考えなければならない問題である。どちらかのポーンを突き進めるのはその後の針路を決定することになることがよくある。

 別の考えるべきことは1個以上のポーンが単独または対で孤立しているときである。パスポーンは非常に弱いか強いかのどちらかで、弱さまたは強さは突き進むにつれて増し、それと同時に盤上の駒の数と直接関係していると言えるかもしれない。この最後の点については一般に「パスポーンは盤上の駒の数が減るにつれて強さが増す」と言えるだろう。

 これらのことすべてをしっかり覚えておいてここからは布局と中盤戦に戻る。実戦を初めから終わりまで一般原則に従って注意深く分析する。可能ならば常に自分の試合を用いる。これは要点がよりよく表れているからではなく、何を考えていたのか完全に知っているので他者の試合よりも自信をもって説明できるからである。

(この章続く)

2014年10月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

「ヒカルのチェス」(360)

「British Chess Magazine」2014年8月号(1/1)

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世界ブリッツ選手権戦

IMトム・レンドル

 FIDE世界ブリッツ選手権戦は6月19日から20日にかけてドバイで開催された。世界快速選手権戦に勝利したばかりのマグヌス・カールセンは通常、快速そしてブリッツの三通りの時間制のすべてで世界チャンピオンになるつもりだった。しかし数多くの一流選手がいてはそれは生易しいことではない。事実カールセンはブリッツでは第1シードではなかった。その地位を占めていたのは早指しで名高いヒカル・ナカムラだった。ナカムラは優勝を目指して戦うと言明していた。しかし初日にベトナムの最強選手のGMレ・クワン・リェムに苦杯を喫した。

□レ・クワン・リェム
■H・ナカムラ

FIDE世界ブリッツ、2014年
シュミット・ベノニ A43

1.d4 Nf6 2.Bg5 c5 3.d5 d6 4.Nc3 g6 5.e4 Bg7 6.Bb5+ Nfd7 7.a4 O-O 8.Nf3 Na6 9.O-O Nc7 10.Re1 Nxb5 11.axb5 a6 12.Qd2 Re8 13.h3 Nb6 14.bxa6 bxa6 15.Bh6 Bh8 16.Qe2 a5 17.e5 Ba6 18.Qe4

18…e6?!

 ナカムラのこの手は大悪手というほどではないけれどもキング翼、特にf6の地点を弱めて非常に危険な手だった。これが最終的には敗因になった。

 18…Nc4 は 19.e6 f5 20.Qh4 が怖そうだが黒はいい勝負ができる。例えば 20…Ne5(20…Nxb2?! は 21.Bc1 Bf6 22.Ng5 Bxg5 23.Qxg5 Nc4 24.h4!

で白の攻撃が非常に強力)21.Ng5 Bf6

で白にはこれといった突破策がない。

19.Bg5

 ここでは 19.Qf4! がはるかに強力だった。例えば 19…Nxd5 20.Nxd5 exd5 21.Bg5 Qd7 22.Bf6

となれば、黒のキング翼に問題があることはすぐ分かる。

19…Qd7 20.Qf4 Nxd5 21.Nxd5 exd5 22.exd6 Bxb2 23.Rxa5 Rxe1+ 24.Nxe1 Bc3 25.Bf6! Bxf6 26.Qxf6

26…Bb7??

 ヒカルに考えられないようなポカが出た。しかしブリッツではこういうことはよく起こる!

 26…Re8! 27.Rxa6 Rxe1+ 28.Kh2 Re8 なら黒が引き分けにできそうだが、29.Qc3 c4 30.Qf6! h6 31.f4

で劣勢の局面のままである。

27.Rxa8+ Bxa8 28.Nd3!

 黒は白からの Ne5 の狙いになすすべがない。たぶんナカムラは時間に追われて 28.Qe7? Qxe7 29.dxe7 Bc6 30.Nd3 Kg7 31.Nxc5 Kf6

で引き分けとしか読めなかったのだろう。

28…Bc6 29.Ne5 Qe8 30.Nxc6 Qxc6 31.Qe7 1-0

 dポーンが昇格するので黒はここで投了するしかない。

 カールセンは最終戦でアントン・コロボフにも勝って 17/21 の好成績で優勝した。ヒカル・ナカムラは大会終盤でアーナンド、アロニアンそれにモロゼビッチに勝って5勝の猛突進を見せたが同点2位に終わった。

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(この号終わり)

2014年10月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

チェスの基本(096)

第1部

第6章 進んだ布局と中盤

31.ポーンについての特筆点

 布局と中盤の局面の議論に戻る前に、ポーンの形に関する事項を少し心に刻むのが良いかもしれない。ポーンの形は手順を理解するのに役立つことは間違いなく、布局の戦型の目的や中盤の捌きの目的を理解するのにも役立つことがある。

例63

 図の局面で黒ポーンの形は極めて悪い。c7のポーンは完全に出遅れになっていて、白はこの弱点に対して素通し列に戦力を集中できるかもしれない。白にはc5の地点も支配していて、白駒がここに陣取ればどかされることがない。黒はそれを取り除くには交換するしかないが、必ずしも容易なことではなく、可能ではあっても適切ではないことがよくある。同じことは黒のe、fおよびgポーンについても言えて、これらは黒のf6の地点にいわゆる「空所」を作っている。このようなポーンの形はいつも災難につながるので避けなければならない。

(この章続く)

2014年10月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(095)

第1部

第5章 收局の戦略(続き)

30.ルークとビショップとポーン対ルークとナイトとポーン

 ここではルークとビショップとポーン対ルークとナイトとポーンの收局を分析する。ルークがときには既出の收局と同様に用いられることがあることが見られる。

例62

 本局は1907年のラスカー対マーシャルの世界選手権戦第1局(ラスカーの黒番)である。

 この局面は黒の手番である。初心者には引き分けの局面に見えるかもしれないが、上級者は黒が勝つ可能性が非常に高いことにすぐ気がつく。それは黒が主導権を持っているからだけでなく、白のクイーン翼が展開されていなくてこのような局面ではビショップの方がナイトより有利だからである(第14章を参照)。白がルークとナイトを戦いに投入するにはしばらく手数がかかる。黒はそれにつけ込んで優位に立つことができる。黒には二つの針路がある。最も明らかでほとんどの選手が選ぶのは、ビショップによるa6でのチェックと必要ならば黒ルークとを連動させて、ポーンをc5からc4へとすぐに突き進めることである。黒の選んだのは別のもっと巧妙な針路だった。それは前出の收局と同じ手段でルークを活用することで、白にいつも何かを守らせ白のナイトとルークの動きを制限しそれと同時に自分のルークとビショップの動きを自由にしておいた。

1…Rb8

 この手は 2.b3 と突かせてその地点を白ナイトが使えないようにするためである。

2.b3 Rb5

 この手はルークでキング翼のポーンを攻撃して白キングを防御のためにそちらに行かせ、それにより間接的に黒のクイーン翼のポーンをもっと安全にするためである。

3.c4 Rh5 4.Kg1 c5

 注目すべきは白ナイトの動く範囲が非常に制限されていて、5.Nd2 のあと白自身のポーンが邪魔になることである。

5.Nd2 Kf7 6.Rf1+

 このチェックは何の役にも立っていない。黒キングに行きたい所に行かせているだけであり、結果として大悪手である。すぐに 6.a3 と突くのが最善手だった。

6…Ke7 7.a3 Rh6

 戦力と陣形で有利になっているクイーン翼に攻撃を移す用意をした。

8.h4 Ra6

 このルークの捌きは前出の收局で見たのと似通っていることに注意して欲しい。

9.Ra1 Bg4

 黒ナイトの動きを麻痺させてキング翼全体を固定している。

10.Kf2 Ke6

 白はこの手に対して 11.Nf3 と応じられない。なぜなら 11…Bxf3 から 12…Ke5 で黒ルークのf6でのチェックを止められないのでeポーンが落ちるからである。

11.a4 Ke5 12.Kg2 Rf6 13.Re1 d3 14.Rf1 Kd4

 これで黒キングが白のポーンを攻撃してすぐにすべてが終わる。

15.Rxf6 gxf6 16.Kf2 c6

 これはただ白の手を枯渇させるためである。白はついにはキングかナイトを動かさなければならなくなる。

17.a5 a6 18.Nf1 Kxe4 19.Ke1 Be2 20.Nd2+ Ke3 21.Nb1 f5 22.Nd2 h5 23.Nb1 Kf3 24.Nc3 Kxg3 25.Na4 f4 26.Nxc5 f3 27.Ne4+ Kf4

 これが最短の勝ち方である。白は投了すべきである。

28.Nd6 c5 29.b4 cxb4 30.c5 b3 31.Nc4 Kg3 32.Ne3 b2 黒投了

 本局はこのような收局の指し方の絶好の例だった。

(この章終わり)

2014年10月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(118)

「Chess Life」1995年3月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

双ビショップがすべてではない(続き)

 2.白は早い段階で双ビショップを譲り渡しても不利な結果を招かないで済ませられる可能性が黒よりはるかに高い。

 双ビショップを黒に譲る最もよくある二つの状況は、相手のポーンの形を悪くする(例えば二重ポーン)ときと、白の展開の優位を増すときである。前者の明らかな例はルイロペスの交換戦法(1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6)で、後者の好例はシチリア防御ロッソリーモ戦法の1変化(1.e5 c5 2.Nf3 d6 3.Bb5+ Nd7 4.d4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bxd7+ Nxd7 7.O-O)である。

 ほかの状況ではことのほか注意を払うべきである。もちろんあなたが戦略の天才の元世界チャンピオンならば、例外を見つけることで好成績をあげるだろう。

GMアナトリー・カルポフ対GMべセリン・トパロフ、リナレス、1994年
 黒の手番

 白は黒に双ビショップを譲り渡しているのに自身は二重ポーンを抱えている。この局面の本質は白が Qd2、Rad1 そして Ne4 という態勢をとると黒のdポーンが危なくなるということを見て取ることにある。この見通しのために黒の防御の選択肢は制約を受ける。白は現在のところ重要なe5の地点を支配していて、問題となる可能性のある地点には Rfe1 と f4-f5 でe列で圧力をかけていく。

12…Bd7?!

 黒はdポーンを安全に守りながら、どのように展開を完了するかという問題を解決しなければならない。GMカルポフの並はずれた指し回しのおかげで我々は後知恵で黒の作戦が誤っていることが分かる。12…Na5!? の方が有望に思える。

13.Qd2 Qb8 14.Rfe1 g6 15.h4! a6 16.h5! b5?!

 この手は鮮やかな戦術で咎められた。だから 16…Ra7 と受けておかなければならない。

17.hxg6 hxg6 18.Nc5! dxc5 19.Qxd7 Rc8 20.Rxe6!

 黒の読みは 20.Bxc6?! Ra7 21.Qd3 Rxc6 22.cxb5 c4 23.Qf3 Rc8 でポーンの代償がそこそこあるというものだった(カルポフ)。しかし一連のルーク切りで白は決定的な戦力と陣形の優勢を築く。

20…Ra7 21.Rxg6+! fxg6

 21…Kf8 は 22.Qh3 fxg6 23.Qh8+ Kf7 24.Bd5# で、21…Kh7 は 22.Qh3+ Kxg6 23.Be4+ f5 24.Qxf5+ Kg7 25.Qg6+ Kf8 26.Bd5 Bd8 27.Qg8+ Ke7 28.Qf7+ Kd6 29.Ne4# で詰みになる。

22.Qe6+ Kg7 23.Bxc6

 白は交換損の代わりに2ポーンを得て攻撃をしている。このあとGMカルポフは優勢を積極さと正確さで勝ちにつなげた。

23…Rd8 24.cxb5 Bf6 25.Ne4 Bd4 26.bxa6 Qb6 27.Rd1 Qxa6 28.Rxd4! Rxd4 29.Qf6+ Kg8 30.Qxg6+ Kf8 31.Qe8+ Kg7 32.Qe5+ Kg8 33.Nf6+ Kf7 34.Be8+ Kf8 35.Qxc5+ Qd6 36.Qxa7 Qxf6 37.Bh5 Rd2 38.b3 Rb2 39.Kg2 黒投了

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2014年10月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(094)

第1部

第5章 收局の戦略(続き)

29.2ルークとポーンの難解な收局(続き)

例61(続き)

 (再掲)

 白の戦略的な作戦の後半はこれで達成された。得られた優勢が勝つのに十分な程度かどうかを見極めることが残っている。白にはパスポーンがあるし、キングは盤央で威張っていて白ポーンの前進を助ける用意ができているし、必要とあればc5の地点に行ったり危急のときにはキング翼に駆けつける用意もできている。さらにはルークの片方で素通し列を確保している。全体的に白が優勢で、勝つ可能性がかなり高い。

10…Rh6 11.Rg3 Rhe6

 この手は白からの d4 突きを防ぐためである。それとキング翼の2ポーンをあとで使いたくなるかもしれないのでルークをそれらの前に置いておかないようにした。

12.h4 g6 13.Rg5 h6

 白は 14.h5 突きを狙っていた。黒はついにはそれを取らされ、そのあと白は黒の孤立ポーンに対してルークを重ねて取ってしまうか黒のルークを完全に縛りつけてしまう。それでも本譜の手は白を利するだけである。だから黒はじっと待つしかなかった。13…Re5 はあまり助けにならない。白は 14.Rf8 Re8 15.Rxe5 と応じるまでで、黒がどちらのルークを取っても白の楽な試合になる(変化は各自で注意深く調べて欲しい)。

14.Rg4 Rg7 15.d4 Kc8 16.Rf8+ Kb7

 16…Kd7 はあまり助けにならないが、前手の顔を立ててそう指すべきだった。

17.e5 g5 18.Ke4 Ree7 19.hxg5 hxg5 20.Rf5 Kc8 21.Rgxg5 Rh7 22.Rh5 Kd7 23.Rxh7 Rxh7 24.Rf8 Rh4+ 25.Kd3 Rh3+ 26.Kd2 c5 27.bxc5 Ra3 28.d5 黒投了

 以上のような收局すべてで勝つための戦術は相手のルークを1個または複数のポーンの守りに縛りつけておくことだけで、こちらのルークは動きが自由だった。これは試合のどの段階にも等しく適用できる一般原則である。その意味するところを一般的な用語で表すと

 相手の捌きを邪魔しながらこちらの捌きを自由に保て

 もう一つ非常に重要なことがあって、それは勝つ側には好きなように手段を実行できる一般的な戦略の作戦が常にあるが、負ける側には作戦が全然なくてただその時の必要によって駒を動かしているだけということがよくあるということである。

(この章続く)

2014年10月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(093)

第1部

第5章 收局の戦略(続き)

29.2ルークとポーンの難解な收局(続き)

例61

 本局は1913年ニューヨークでのカパブランカ対ヤノフスキー戦である。

 黒は二重cポーンのために不利で、さらに悪いことには …b6 と突くととたんに白に b4 と突かれるので突くわけにいかない。白はこのことに基づいて作戦を立てる。まず黒のクイーン翼ポーンの進攻を止め、それから自分のキングをe3に持ってくる。そして時が来れば d4 と突き、最後は e5 または g5 と突いてポーン交換させてe列でパスポーンを作る。手順を追えばわかるがこの作戦は実際に実行されそれにより白が勝勢になった。白の指し手は勝ちを期待したe列でのパスポーン生成の可能性に基づいている。

1.g4

 時機が来れば g5 と突く用意を整えた。

1…b6

 黒は次に 2…c5 と突きたいのだが、白はもちろんそれを防ぐ。

2.b4! Kb7

 このキングは危険にさらされているキング翼に来るべきである。

3.Kf2 b5

 この手は 4…Kb6 から 5…a5 と突いて …axb4 と取る目的で、自分のルークのために素通し列を作り白のキング翼での進攻を止めるためにクイーン翼で反撃をちらつかせることができる。

4.a4! Rd4

 もちろん 4…bxa4 と取ると黒のクイーン翼のポーンはすべて乱れて孤立し、白はどちらのルークでもa列に回して容易にポーンを取り返すことができる。

5.Rb1 Re5

 黒はまだ …c5 と突きたいのだが白が再びそれを防ぐのは容易にわかるので、本譜の手は実際重大な手損である。黒はキングをすぐに反対側に持ってくるべきだった。

6.Ke3 Rd7 7.a5

 白の戦略的な作戦の前半はこれで達成された。黒のクイーン翼のポーンは実際上は固定されている。

7…Re6

 7…Rxf5 なら 8.gxf5 で白の中央が強大化する。それでも黒にとって一番可能性があったかもしれない。

8.Rbf1 Rde7 9.g5 fxg5 10.Rxg5

(この章続く)

2014年10月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(092)

第1部

第5章 收局の戦略(続き)

29.2ルークとポーンの難解な收局(続き)

例60(続き)

 (再掲)

14…h6

 黒は最後の機会を逃した。14…f4 なら引き分けになっただろう。15.exf4 なら 15…Rbe7+! 16.Kf1 Rxf4 17.Rxa7 Re3! でよい。

15.f4 Rg7 16.Kd3 Rge7 17.Ra1 Rg7 18.Kd4 Rg2 19.R6a2 Rbg7

 19…Rgg7 の方がもっと頑張れただろうが、しょせん負けである(分析は各自にまかせる)。

20.Kd3! Rxa2 21.Rxa2 Re7

 何をしても無駄である。21…Rg1 なら 22.Ra6! Rd1+ 23.Kc2 Rh1 24.b5 Rxh5 25.Rxc6+ Kd7 26.Ra6 で白の楽勝になる。

22.Rg2 Re6 23.Rg7 Re7 24.Rg8 c5

 黒は破れかぶれである。ポーンを守り切れないことは分かっている。

25.Rg6+ Re6 26.cxd5+ Kd7 27.Rg7+ Kc6 28.Rxa7 Kxc5 29.Rf7 黒投了

(この章続く)

2014年10月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(091)

第1部

第5章 收局の戦略(続き)

29.2ルークとポーンの難解な收局(続き)

例60(続き)

 (再掲)

10…gxf3+

 ここでも 10…h5 と突くことはできない。11.f4 で麻痺してしまう。黒がhポーンを突けば白のhポーンが安全になり、f6のルークがaポーンを守るためにf7に下がらなければならなくなる。そうなればaポーンが取られるといけないので黒キングがd7に行けなくなるだけでなく、どのポーンも進めなくなる。これに対し白は b4 と突いて b5 でポーンを取ることを狙う。または先に Kd4 と指しておいて、ほかに何ももっと良い手がなければ適当なときに b5 と突く。この間に黒は実際何もすることができず、ルークを動かしているしかない。この封じ込め手法を例57の收局と比べてみれば非常に似ていることが見てとれるだろう。

11.Kxf3 Rff7 12.Ke2

 この手はたぶん悪手である。すぐに b4 と突くのが正着だった。本譜の手は黒に高い引き分けの可能性を与えた。

12…Kd6 13.b4 Rb7

 白が 12.b4 と指していればこの手は決してあり得なかった。なぜなら黒の …Kd6 に対して白が b5 と突けるからである。

14.h5

 この手は良くなかった。14.f4 が最も勝つ可能性が高かった。14…Rg7 とくれば 15.h5 Rg2+ 16.Kd3 Rh2 17.Rxa7 Rxa7 18.Rxa7 Rxh5 19.Ra6 で白が勝つ可能性がある。

(この章続く)

2014年10月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(090)

第1部

第5章 收局の戦略(続き)

29.2ルークとポーンの難解な收局(続き)

例60(続き)

 (再掲)

 手番の黒はこのような局面を引き分けにするのはたやすいと考えていたのは間違いなく(黒はそのためだけに指していた)、待機戦術に満足していた。そのようなやり方は常に批判されなければならない。破滅に通じることがよくある。このような局面を指す最良の方法は、主導権を握って相手を守勢に立たせることである。

1…Rae8

 この局面の初手からして間違いである。この手から得られるものは何もない。黒は 1…a5 と突くべきで、白が b3 と指さなければさらに …a4 と突く。これによりクイーン翼が固定されることになる。そのあとは敵ルークを寄せつけないために自分のルークをどう使うかを決めることができるだろう。

2.Rd4

 この手は黒の意図していた 2…f4 を防ぐだけでなく 3.b3 を狙っていて、…cxb3+ と取ってくれば片方か両方のルークを用いて黒のaポーンを攻撃する。

2…Rf6

 たぶん …Rg6 から …Rg2 によってキング翼で事を起こす考えであろう。

3.b3 cxb3+ 4.axb3 Kf7 5.Kd3

 この手では 5.Ra1 で黒に 5…Re7 と守らせるべきだった。しかし白はすぐに作戦を明らかにして黒に自陣の危険性に気づかせたくなかった。この手はそのためで、黒のクイーン翼のポーンを乱そうと見せかけている。

5…Re7 6.Ra1 Ke6

 これは悪手である。黒は自陣の危険性に気づいていない。代わりに 6…g5 と指すべきで、…Rh6 で白のhポーンを狙うと見せかけて白がこれから行なう黒のクイーン翼ポーンに対する攻撃をやめさせる。

7.Ra6 Rc7

 黒は 7…Kd6 とは指せなかった。8.c4 で白が少なくとも1ポーン得する。これだけでも前手の 6…Ke6 の非が分かる。何にも寄与せずほとんど見込みのない局面にしただけだった。

8.Rda4 g5

 こう指すしかないが少し遅すぎた。代わりに 8…Rff7 と守るのは 9.f4 で完全にしびれてしまう。黒はようやく危険に気づいてキング翼で反撃することにより窮地を脱しようとするがもっと早く始めるべきだった。本譜で白はもちろん 9.Rxa7 とは取れない。9…Rxa7 から 10…Rh6 でポーンを取り返して黒が優勢になる。

9.h4! g4

 黒にとってはにっちもさっちも行かない局面になっている。9…gxh4 と取ると 10.Rxh4 と取り返されて始末に負えない状況になる。キングが下がるわけにはいかないし、どちらのルークも動かせない。10…h6 と突くしかないが、白は 11.b4 と突き b5 でポーン得を狙う。それで十分でないなら Kd4 のあとキングをc5かe5に侵入させるかもしれない。

10.Ke2

(この章続く)

2014年10月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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