2014年08月の記事一覧

チェスの基本(070)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

24.戦場からの駒の遮断(続き)

例54(続き)

 (再掲)

 この手のあと白はもう負けになっている。11.Nxg5 は 11…Nxd5 で駒損になるので駄目である。だから Nxf6+ の前でも後でも Bg3 と指さなければならず、どちらにしても実戦の進行に見られるような散々な結果になる。

11.Nxf6+ Qxf6 12.Bg3 Bg4 13.h3 Bxf3 14.Qxf3 Qxf3 15.gxf3 f6

(この章続く)

2014年08月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(069)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

24.戦場からの駒の遮断(続き)

例54(続き)

 (再掲)

 この手は d4 突きを防ぎ白から致命的となる Nd5 という手を引き出すためである。黒の作戦は状況が許せばできるだけ早く …g5 と突いて、クイーンとナイトを敵ビショップによる釘付けから解放することである。

10.Nd5

 白は罠に落ちた。この手は経験不足としか言いようがない。白はこのような手が良い手なら私のような経験と棋力の選手が決して許すはずがないと考えるべきだった。

10…g5

(この章続く)

2014年08月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

[復刻版]理詰めのチェス(26)

第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する(続き)

第26局

 ベルンシュテイン対ミーゼス戦には「黒鍵のエチュード」という表題が付けられるかもしれない。ベルンシュテインは相手の黒枡の弱点を締め上げそれらの空所に自分の駒を埋め込んだ。白キングの大遠征の後黒ポーンが落ち始めベルンシュテインのパスポーンの進路が切り開かれた。

シチリア防御
白 ベルンシュテイン
黒 ミーゼス
コーブルク、1904年

1.e4

 今日ではこの手に踏み込むには勇気がいる。古典的な応手の 1…e5 で応じられることはめったにない。白が対面するのはフランス防御、シチリア防御、カロカン防御、アリョーヒン防御、あるいは黒番の選手が論文を執筆した他の防御法である。

 それでも客観的に見れば 1.e4 は最強の布局の手の一つである。この手は中原にポーンを据え二つの駒が戦闘に加われるようにしている。一手に対してこれ以上のことを要求することはほとんどできない。

1…c5

 黒は古き良き時代の人間がしたように角つき合わせて戦うようなことはしない。相手に得意のギャンビットや速攻を指させる代わりに自分が武器を指定することを主張している。

 理論的にはこの黒の応手は 1…e5 よりも劣っている。つまり一つの駒しか解放されずcポーン自身も白のeポーンより中原に対する影響力が弱い。しかし実戦的にはシチリア防御は完全に理にかなっている。戦いの試合になり、黒の勝つ可能性も大きい。特に勝ちを望むあまりキング翼攻撃にはやる相手に対してそうである。

 黒はクイーン翼での反撃を狙う。そのためにはc列の支配が必須である。黒は白の中原とキング翼での優位を相殺するように努めなければならない。

2.Nc3

 これは通常の展開の手である。駒が1個戦いに加わり中原に影響を及ぼしている。しかし何とおとなしい手であることか。

 もっと的を射た手は積極性のある 2.Nf3 である。これはキング翼の駒を展開し(早期のキャッスリングを容易にする)3.d4 突きを予定し中原での行動とクイーン翼の駒の解放を準備する。

2…e6

 この黒の手は穏やかだが効果的である。キング翼ビショップとクイーンの斜筋が通り中原を 3…d5 で占める用意をしている。

3.Nf3

 これはすぐれた手である。ナイトをすぐに最適の地点に置き、中原に対する圧力を増し、キング翼キャッスリングを可能にしている。

 代わりに 3.d4 と突くのは 3…cxd4 4.Qxd4 Nc6 となりクイーンが当たりになっているので黒が手得する。

3…Nc6

 ここで黒はチャンスを逃がした。ここは 3…d5 と突く好機で、自由で指し良い局面になるところだった。ほとんど全てのキング翼布局で黒はこの …d5 突きを指すことができれば互角の局面にすることができる。

4.d4!

 これはシチリア防御に特有の突っかけである。この手段によって白駒の活動性が高まる。クイーン翼ビショップのために斜筋が開きクイーンの動く空間も広がる。

4…cxd4

 黒は側面ポーンと引き換えに二つの中原ポーンの一つを交換で消し去った。それと共にクイーンとクイーン翼ルークが使えるように非常に重要なc列を空き列にした。

5.Nxd4

 この取り返しによりナイトが中央に陣取り白駒の攻撃の利きが増す。

5…Nf6

 回り道をして「シチリア4ナイト試合」という局面になった。これは表向きは穏やかだが実際は複雑である。

 ここから白はどう指したらよいだろうか。その選択は何よりも棋風、気分および気性の問題である。そしてこれこそがチェスを非常に魅力的にしているものである。

 白は 6.Be3 または 6.Be2 で組織的にそして単刀直入な展開に徹することができる。白は 6.Ndb5 で大胆かつ手筋志向になることもできるし、6.a3 で強力な釘付けを防いで堅実にいくこともできる。白は 6.g3 または 6.Nxc6 で大局的な優位の確保に努めてじっくりいくこともできる。

 白が何をしようと指し手は何かしら個性を反映する。要所での岐路では個人の考え方、気分および直感が映し出される。それは小さな軍隊の活動を指揮するやり方に見られるとおりである。

6.Nxc6

 白はナイト交換から生じる局面での少しの優勢に満足である。他の手のいくつかをちょっと見てみよう。

 a)6.Be3 は 6…Bb4(ナイトを釘付けにし 7…Nxe4 を狙っている)7.Bd3 d5! となって黒が障害のほとんどを克服してしまう。

 b)落ち着いた 6.Be2(6.Bd3 はナイトがただ取りになるのであり得ない)は同じく 6…Bb4 と応じられて黒の反撃が有望である。

 c)釘付けを 6.a3 で防ぐのは気が進まない。6…d5 と応じられると白は主導権を維持するために頑張らなければならない。手の損得は布局では非常に大切なのでポーン突きに費やすわけにはいかない。

 d)諸刃の剣(もろはのつるぎ)の 6.Ndb5 は全ての人の好みというわけにはいかない。6…Bb4 7.Bf4 Nxe4 8.Nc7+ Kf8 9.Qf3 d5 10.O-O-O Bxc3 11.bxc3 Rb8 で大乱戦に突入する。

 本譜の手の一つの利点は黒がポーンで取り返す際にシチリア防御で主要な攻撃路となるc列を閉じてしまうことである。

6…bxc6

 この手は恐らく 6…dxc6 より優っている。一つには中央に向かって取る方が通常は戦略的に良いということがある。この場合は一団のポーンを中央に保持しクイーン翼ルークの便宜のためにb列が空けられる。

 6…dxc6 と取ると 7.Qxd8+ Kxd8 8.Bg5 Be7 9.O-O-O+ で黒が対応に追われる。

7.e5

 この手はナイトを好所から立ち退かせるだけでなく白のd6の地点の支配を強化している。

7…Nd5

 この中央に向かわせる手に考慮はほとんど必要としない。他にナイトの行ける唯一の地点は本拠地のg8である。

8.Ne4

 ナイトを交換するのは白の享受してきた優位を失ってしまう。本譜の手はd6に対する圧力を強めている。

8…f5

 敷地内でぶらぶらさせない。ナイトは立ち去るか意図を明らかにしなければならない。

 黒は 8…Qc7 という受けもあった。9.Nd6+ Bxd6 10.exd6 Qxd6 11.c4 と来ても 11…Qe5+ で釘付けをかわすことができる。

9.exf6e.p.

 白が急所のd6の地点を所有するという目標を達成するためにはナイトを今の地点に踏みとどまらせなければならない。

9…Nxf6

 黒はポーンで取り返さない。それは 10.Qh5+ とされてキングが動かなければならずキャッスリングの権利を奪われる。

10.Nd6+

 黒に交換を余儀なくさせて「不良」ビショップを残させた。不良ビショップは自分と同じ色の枡にポーンがいるために働きが悪い。自分の通り道にポーンが一杯いるとビショップはほとんど何もできない。

10…Bxd6

 他には 10…Ke7 しかないがこれはとても指す気がしない。

11.Qxd6

 この取り返しで白は敵陣を締め付けた。黒のdポーンをせき止めて …d5 で捌くのを封じただけでなく、黒キングがキャッスリングで安全地帯に退避できなくさせている。さらに白は黒枡に大きな圧力をかけている。この圧力は黒枡を動く黒のキング翼ビショップが盤上からいなくなったことによって際立っている。

11…Ne4

 黒は白クイーンを追い払わなければならない。さもないと空気不足で窒息する。

 11…Qe7 では助けにならない。それは 12.Bf4 Qxd6 13.Bxd6 Ne4 14.Ba3! となって白がなおも厳しく圧迫している。

12.Qd4

 このクイーンは退却しながらもナイトとgポーンを当たりにして2方向に攻撃を加えている。

12…Nf6

 両方の狙いを防ぐにはこの手しかない。

13.Qd6

 白はこの圧倒的な態勢を手放したくないので同じ手を繰り返した。それでも望むならばいつでも手を繰り返して引き分けにできることをほのめかしている。

13…Ne4

 黒は白クイーンをd6に置いたままにしておけない。それを追い払うのが遅れれば致命的な事態を招くかもしれない。

 アリョーヒンは黒の苦境が克服できないものでないことを明らかにした。彼は次のような手順を示した。13…Qb6(14…Qxf2+ 15.Kxf2 Ne4+ の狙い)14.Bd3 c5 15.Bf4 Bb7 16.O-O Rc8

14.Qb4!

 この手は非常に強硬な手である。d6の地点にいつまでも居続けることができないならばここはクイーンの次善の地点である。b4の地点(変な場所だが)でクイーンはナイトを攻撃し、斜筋を支配して黒のキャッスリングをできなくし、三つ目の方向では黒のクイーン翼ルークが素通し列を占めるのを防いでいる。

14…d5

 ナイトを守り 15…Qd6 で白のクイーンに挑戦する手はずを整えた。黒のポーン中原は苦労の代償となっている。

15.Bd3

 これは理想的な手である。なぜなら駒が狙い-16.Bxe4 dxe4 17.Qxe4 でポーン得-を持って展開したからである。

15…Qd6

 交換を申し込んだ。これで盤上から白の攻撃的なクイーンが消えるか、圧倒的な位置からクイーンが退却することになる。

16.Qxd6

 白は喜んで単純化を図った。白は強力な双ビショップと黒枡の永続的な支配でまだ優勢を保っている。

16…Nxd6

 黒もこの取引には満足できるところがある。両方のルークが活動できる素通し列があり、中央部の一群のポーンはビショップの利きを制限することが期待できる。

17.f4!

 「顕微鏡のような目は支配者の印である」と著名なマルコが言っている。

 これでe5の地点が白の支配化に入った。一方黒のeポーンは前進を制止させられている。ポーンが動けないことの一つの影響は黒のビショップの動きをひどく制限していることである。

17…a5

 黒は何とかしてビショップを戦いに参加させなければならない。黒はこの手でビショップをa6に展開させて白のよく働いているビショップと交換する予定である。

18.Be3!

 素晴らしい。このビショップは黒のcポーンを抑え、さらにd4とc5の二つの黒枡を白の支配化に置いた。

18…Ba6

 黒は脅威となっている白のビショップの一つを盤上から消し去ることを期待した。

19.Kd2!

 キングは強い駒なので終盤では攻撃のために使うべきである。盤上から駒が少なくなるにつれてキングが詰みの攻撃にさらされる危険性も減っていき戦うための駒としての能力が増大する。終盤ではキングは敵のポーンに分け入って損害を与える手段として劣っていない。

 これがこの局面でキングが中央に近寄った理由である。キングはキャッスリングしてそこで働くよりも中央の方がずっと役にたつ。

19…Nc4+

 黒の作戦がはっきりしてきた。黒はナイトをビショップと交換したがっている。これにより異なった色の枡を支配するビショップが黒に残ることになる。このような状況は一般には引き分けに終わる。

 他に考えられる手は 19…Nb7 だった。目的は 20…c5 と指して中央のポーン横隊を突き進めていくためである。

20.Bxc4

 黒は 21…Nxe3 だけでなく 21…Nxb2 も狙っていたのでこの取りはほぼ必然である。

20…Bxc4

 ここで局面を観察してみよう。

 白のビショップは黒のビショップよりもはるかに自由に動ける。黒のビショップは自分の動く枡の色と同じ白枡のポーンが多数あるために動きが邪魔されている。

 白のキングは中原と急所のd4とe5の枡に近いので収局では黒のキングよりもはるかに好位置にいる。

 黒の命の綱である中原は固まったままである。そこの3個のポーンは固定されて動くことができない。

21.a4!

 せき止め!黒のaポーンはその地点に完全に止められた。今や固定した目標となりいつでも Bb6 で攻撃される危険にさらされている。取られないようにするためには(このポーンがなくなると白のaポーンがパスポーンになるので)黒はルークで絶えず見張っていなければならない。この1個のポーンを守る必要から黒はクイーン翼ルークの働きを奪われる。

21…Kd7

 黒は収局に備えてキングを中央に近づけた。

 これでルークが結合しキング自身もd6の地点を目指している。そこからキングはeポーン又はcポーン突きの助けとなることを希望している。

22.b3

 ビショップを攻撃して盤の端に下がらせる。これでこのビショップの利きが減ることに注意して欲しい。というのはビショップの動く斜筋の色である白枡に白と黒のポーンが配置されているからである。

22…Ba6

 不幸なビショップの唯一の逃げ場所である。

23.Bb6!

 そして今度はポーンに対する攻撃である。

23…Bc8

 さらに退却することによってのみ受けることができる。

24.Ke3

 d4、e5への徒歩を続け、いずれ分かるように北を目指す。

 もう少し無慈悲なのは 24.Bc5 で、24…Rf8 さえも防ぐ手だった。

24…Ra6

 24…Kd6 でポーンを突けるようにするのは良くなく、白は 25.Kd4 でそのささやかな考えを芽のうちに摘み取ってしまう。

 黒の最善の手は 24…Rf8 で素通し列にルークを回して反撃を図ることだった。本譜の黒の手はビショップに当てて好所からどかす目的を果たすことができるがもっと良い地点に行かせただけに終わった。

25.Bc5!

 これで盤上のすべての重要な地点を支配した。このビショップはキング翼ルークがf8に来るのを止め、クイーン翼ルークがb6に回るのを止め、黒キングがd6に来るのを止め、dポーンが進むのを止め、cポーンを全く動けなくしている。8枡を支配しているこのビショップを1枡に限られている黒ビショップと比較してみるとよい。白の攻撃の機会が広がり以降の黒の防御が困難をきたすのはこの潜在能力の大きな違いによるものである。白が陣地を獲得または支配するにつれて黒陣はますます窮屈になっていく。

25…Kc7

 キングがそばへよけてビショップがd7に行けるようにした。

26.Kd4!

 輪縄を絞った。このキングはe列を利用するルークのためにも道を空けている。

26…Bd7

 黒はビショップをキング翼、例えばg6へ捌こうとしている。

 黒のキング翼ルークは活動範囲が広いように見える。しかしどの地点が役に立つだろうか。もしb8に行けば(良い列に見える)どこへ侵入できるだろうか。その列で役に立つ地点はどこにもない。

27.Rhe1

 すぐにe5をキングで占めるよりもこの手の方がはるかに強い。白はこの重要な枡を利用してルークをg列に転回させるつもりである。ルークがそこへ行った後はキングがe5の地点を占め黒枡の締め付けを強化する。

27…h5

 黒は予想されるルークの攻撃に対してポーンによるバリケードを築こうとしている。

28.Re5

 g5への旅行への2番目の立ち寄り地である。

28…g6

 黒はハッチを閉めて厳しい冬に備えた。

29.Rg5

 gポーンを当たりにすると同時にキングに場所を空けた。

29…Rg8

 gポーンを守らなければならないが 29…Rh6 は全然動けなくなるのでもちろん本譜の手の方が柔軟性がある。

30.Ke5

 キングが幸便に黒枡を伝ってさらに侵入した。狙いは 31.Kf6 Be8 32.Re1(この手は 32.Kxe6 よりもはるかに強い)から 33.Rxe6 である。

30…Be8

 黒はすべてのポーンを助けることは望めないのでeポーンを見捨てた。もし白がこのポーンをすぐに取ってくれば 31…Bd7+ 32.Kf6 Bf5 で抵抗するわずかな希望がある。

 黒の不運なビショップは同じ色の枡にしっかりと固定されている5個のポーンによって悲しくも閉じ込められている。

31.Re1

 決定的な行動に出る前に白はさらに圧力をかけた。一撃を見舞う前にマスターの選手が全ての駒を働かせるやり方に注意して欲しい。

31…Ra8

 戦いに復帰する前にこのルークは元の位置に戻らなければならない。

 31…Kd7 では十分な受けにならなかった。32.Kf6 と応じられてルークの利きがeポーンに達する。

32.Kf6!

 白は包囲網を完成した。e6、d5及びc6にいる黒ポーンの配置の影響に注目して欲しい。黒自身の駒が束縛を受けているのに対し白駒は弱体化したc5、d4、e5及びf6の黒枡を利用して敵陣の急所へ進入を果たすことができる。それからこれらの黒枡は「空所」となっていて、駒が敵のポーンによってどかされないことにも注意して欲しい。

 白は荒っぽい攻撃や込み入った手筋に訴えて自分の目的を達成するようなことはしない。代わりに圧倒的な陣形上の優位に潜んでいる動的な力に信頼を置いている。

32…Bd7

 黒は前の手の別の理由を明らかにした。白が 33.Rxg6 と取ってくれば 33…Rxg6+ 34.Kxg6 Rg8+ 35.Kxh5 Rxg2 で急に敵に襲いかかる。

33.g3

 白はこの可能性に備えてキング翼に連鎖ポーンをこしらえ黒ルークの一つのいかなる突入の機会も減らした。

33…Rae8

 黒は陣容を強化するために何もすることができない。だからこの手は手待ちみたいなものである。

34.Ree5

 白は 34.Rxg6 と取ることができ勝つのにほとんど何の支障もなかったが、慎重には慎重を期した。まず先にeポーンをせき止め抵抗の気配さえも鎮圧した。

34…Rh8

 「生きているうちに・・・」

35.Rxg6

 これが最初の具体的な利得である。以降は勝ち試合を勝つ技法が興味深く展開される。

35…Rh7

 黒は孤立したhポーンに対する狙いを恐れてルークを重ねる用意をしてそれを救おうとした。

36.Rg7

 白は地盤を拡大し続けている。ここで7段目に侵入した。

36…Reh8

 黒は必死に持ちこたえている。

37.Rxh7

 この手が最も簡明で勝ちを決める科学的な手法である。一方が戦力的に優勢の収局では所定の戦略はポーンでなく駒を交換しポーンの局面に持ち込むことである。盤上にポーンしかない収局は勝つのが最も容易である。

37…Rxh7

 この取り返しで当面は黒が1ポーン損のままである。

38.Kg6!

 盤上から駒が減っていくたびにキングの力は増してくる。ここでキングはルークを脅かしhポーンの攻撃にも助けになっている。

38…Rh8

 おかしなことにこのルークは盤上で一箇所しか動くところがない。

 ここで白はhポーンを取って決着をつけるのだろうか。

39.Kg7!

 違う、違う、断じて違う。39.Rxh5 なら 39…Be8+ で黒がルークを丸得して勝負に勝ってしまう。単純な終盤で間違うのはなんとたやすいことだろうか。

 白の実際の手はまずルークを敷地から追い立てることである。

39…Rd8

 このルークはh列を離れてhポーンを見捨てなければならない。

40.Rxh5

 これで安心してポーンが取れる。

40…Be8

 この手はビショップをキング翼に持ってきて白のクイーン翼ポーンの背後に回ることを期待した。

41.Rh7

 ルークが収局における本来の位置である7段目に急いで陣取った。

41…Rd7+

 さもないと白が 42.Kf6+ Bd7 43.g4 としてきてこのポーンが止められなくなる。

42.Kh6

 キングはルークのそばにいなければならない。

42…Rxh7+

 ルークの交換を避けることはできないので黒は先にルークを取って白キングをh5の地点から引き離した。もしビショップがそこへ行ければまだ面倒を引き起こせるかもしれない。

43.Kxh7

 白もこの交換には賛成である。白のキング翼ポーンは動けるが黒のポーンは動けないか動くわけにいかない。

43…Bh5

 これでビショップが白のクイーン翼ポーンの背後に回る。

44.h4

 クイーン翼ポーンを助けることはできない。そこで白は自分のキング翼ポーンを動かし始めた。

44…Bd1

 長い間活動しなかった後でこのビショップは白枡のすべてのポーンの命を脅かすだけでなくキング翼のすべてのポーンを(当分の間)制止している。

45.c3!

 自分自身を助けるためにこのポーンは黒枡に逃げた。

45…Bxb3

 黒はポーンを取った。それは真の狙いがないので何はともあれ白の気をそらすためである。

46.g4

 46…Bxa4 には対策が用意してあって 47.f5 Kd7(47…Bc2 なら 48.Kg6 でhポーンが突き進むし 47…e5 なら 48.f6 Kd7 49.f7 で白が勝つ)48.f6 Ke8 49.Kg7 でキングがポーンに付き添う。

46…Kd7

 ポーンを抑えるためにキングが急行した。

47.g5

 ニムゾビッチが言うところの「パスポーンの突き進む欲望」である。

47…e5

 どうにでもしてくれという手である。しかし有望な受けはない。47…Ke8 なら 48.g6 Bc2 49.h5 Bf5 50.Kg7 で白が勝つ。

48.f5

 最も簡明な手である。白の連結3パスポーンで勝ちが確実である。

48…Bxa4

 48…Bc2 にはfポーンを守りhポーンの進路を空ける 49.Kg6 が決め手である。

49.f6

 投了の頃合であることを示唆した。49…Ke8 でも 50.Kg7 がポーンの面倒を見るので止められない。

49…投了

 黒枡の弱点につけ込む技法の見事な実例だった。

2014年08月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(068)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

24.戦場からの駒の遮断

 マスターが相手の駒の一つを戦闘の舞台からいわば遮断することがよくある。完全に働くなるのはビショップまたはナイトであることが多い。このような場合その瞬間から勝負がついたと言えるかもしれない。なぜなら実際問題として一方が他方より駒が1個多いことになるからである。これにぴったりの例が次の試合である。

例54

 本局は1919年のヘースティングズ勝利大会でのW.ウィンター対J.R.カパブランカ戦である(戦型は4ナイト試合)。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 Bb4 5.O-O O-O 6.Bxc6

 このニムゾビッチ戦法は多くの試合で指して好成績を得てきた。白は堅実な試合ができる。ニムゾビッチの構想は白がいずれ適当なときに f4 と突くことができて、ルークのためにf列が素通しになりf5に陣取るナイトと相まって勝ちが十分望めるということである。彼は黒が白ナイトのf5への進出を止めようとすれば何らかの形で自陣を弱めなければならないと考えていた。これが本当かどうかは不明なままだが、私の考えではこの手は完全に好手である。その一方で黒が楽に駒を展開できることには疑いがない。しかしこの戦法で考えなければならないことは、白が黒の展開を邪魔しようとしないこと、ただ難攻不落と考える陣形を構築しようとすること、そしてそこからいずれは攻撃を始めることができるということである。

6…dxc6

 代わりに 6…bxc6 と取るのは間違いなく白にとって願ったりかなったりの結果になる。(注1)

7.d3 Bd6 8.Bg5

 この手はこの戦法の特徴と全然合っていない。白の一般的な戦略作戦は h3 突きのあとgポーンを効果のあるうちにg4に突き、クイーン翼ナイトをe2からg3またはd1からe3を経由してf5に行かせることである。そのあともし可能なら状況が必要とするときにキング翼ナイトを、h4、g3またはe3に置くもう一つのナイトと連結させる。白キングはe1にいるままのこともあり、g2にいることもあるが、たいていはh1にいる。最終的には f4 と突くことになりここから攻撃が実質的に始まる。ときにはキングに対する直接襲撃になり(注2)、ときには単に駒のほとんどが交換されたあとの收局における陣形の優位を求めることもある(注3)。

8…h6 9.Bh4 c5

注1 1913年ハバナ国際マスターズ大会記録本のカパブランカ対クプチック戦、または1911年カールスバートでのアリョーヒン対ビドマール戦を参照。

注2 1914年サンクトペテルブルクでの全ロシアマスターズ大会でのニムゾビッチ対レビツキー戦を参照。

注3 1913年ニューヨーク・マスターズ大会でのカパブランカ対ヤノフスキー戦を参照。

(この章続く)

2014年08月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(067)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

23.主導権の放棄(続き)

例53(続き)

 (再掲)

41.b4 Re4 42.Rxd3 Rxc4 43.Rh3 Rxb4 44.Rxh7+ Kf6 45.Rxa7 Kf5 46.Kf3 Rb2 47.Ra5+ Kf6 48.Ra4 Kg5 49.Rxf4 Rxa2 50.h4+ Kh5 51.Rf5+ Kh6 52.g4 黒投了

 この試合は突き詰めると難解で、それに今のところ收局よりも布局と中盤戦の方に関心があるので、解説は軽めにした。收局は別の章で扱う。

(この章続く)

2014年08月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(114)

「Chess Life」1995年1月号(3/5)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

双ビショップの価値(続き)

 最初の実戦例の布局はたちまち「純粋な」例に単純化された。すなわち一方の駒が2ビショップだけで、ポーンの形はほぼ対称だった。しかし大部分の場合盤上にはもっと多くの駒が残っている。そのような状況では開放的な局面でのビショップの威力は破壊的になることがある。それが次の例に表れている。

白 GMアンドレイ・イストラテスク
黒 FMゴラン・アルソビッチ
ベオグラード、1994年
B86 シチリア防御スヘフェニンゲン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4 e6 7.Bb3 Be7?!

 この手は白の活動的な駒の展開に対してゆっくりしすぎている。正着は 7…Nbd7、7…Nc6 および 7…b5 である。これらはすべて1993年のGMショートとの世界選手権戦でGMカスパロフにより用いられた。

8.g4! d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxd5 exd5 11.Nf5! Bxf5 12.gxf5 d4 13.Rg1!

 11.Nf5! のあとd5とg7に対する二重攻撃で黒はこのナイトを取るしかなかった。だがg列が素通しになったことにより白の新たに得た双ビショップの威力が増した。

13…Bf6 14.Qh5!

14…O-O?

 これが本当の「飛んで火にいる夏の虫」である。白のクイーンとルークがキング翼を脅かしビショップが重要なf7とh6ににらみを利かしているので、黒キングは命の危険を冒している。GMイストラテスクによれば黒キングは 14…Qe7+ 15.Kf1 Nc6 16.Bf4 O-O-O というようにクイーン翼に逃げなければならなかった。もっとも白はもちろん 17.Qxf7 で優勢を維持している。

15.Rg3! Qe7+ 16.Kf1 Re8 17.Rh3! h6

 黒はキングが危うくてクイーン翼が展開されていないので、反撃が間に合わない。その証明としてイストラテスクは次の手順をあげている。17…Qe1+ 18.Kg2 Qe4+ 19.Kg3! Be5+ 20.f4 Qe1+ 21.Kg2 Qe4+ 22.Kf2 黒のチェックが尽きて白の攻撃が再開される。

18.Bxh6! gxh6 19.Rg3+ Bg7 20.Qg6! 黒投了

 一つのビショップが自らを犠牲に黒キングの囲いを破壊し、もう一つのビショップが重要なg6の地点にクイーンが行けるようにした。20…Qf8 でも 21.f6 で絶望なので黒はあきらめた。

******************************

2014年08月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(066)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

23.主導権の放棄(続き)

例53(続き)

 (再掲)

 これで黒ルークが戦闘に加わるが、白は準備ができている。ここが交換得を返上する時機である。

29.Rxe5 Bxe5 30.Rxe5 Rh6 31.Qe8 Qxe8 32.Rxe8+ Kf7 33.Re5 Rc6 34.Nd2

 34.Rf5+ の方が良かったかもしれない。本譜の手は期待していたほど強力でなかった。

34…Kf6 35.Rd5 Re6 36.Ne4+ Ke7

 36…Rxe4 では簡単に黒の負けになる。

37.Rxc5 d3!

 この手は好手だった。白は 38.Rc7+ と指せない。そう指すと 38…Kd8 39.Rxb7 Rxe4 で黒の勝ちになる。

38.Kf2 Bxe4 39.fxe4 Rxe4 40.Rd5 Re3

 白がこの收局に勝つのは困難である。ここで白は指し掛け前の最後の手を指さなければならなかった。

(この章続く)

2014年08月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(065)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

23.主導権の放棄(続き)

例53(続き)

 (再掲)

21.Nf3 f5 22.exf5 gxf5

 局面は本当に白にとって危険そうになってきた。実際は黒の攻撃は最高潮に達しつつあってもうまもなく頂点に達し、そのあとは用意周到の白が反撃を始めて戦力の優位により優勢になることは疑いない。

23.Nf1 f4 24.Nxd4 cxd4 25.Qh5 Bb7 26.Re1 c5

 黒は 27.Rxd4 があるので 26…Re8 と指せなかった。それに …e4 と突きたいこともあった。今のところ白は Rxe5 と指すわけにはいかないが、すぐにそのための手はずを整える。そうすればルークを切ってビショップとポーンを取ることにより完全に黒の攻撃を頓挫させポーン得になることができる。白の防御の捌きはここに基礎をおいている。

27.f3 Re8 28.Rde2 Re6

(この章続く)

2014年08月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(143)

「Chess Life」2006年6月号(5/6)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

コーレ=ツーカートルト戦法[D05](続き)

C)…Nc6 から …Bd6 の戦型
1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.e3 c5 4.Bd3 d5 5.b3 Nc6 6.O-O

 これはたぶん 6.Bb2 よりも少し正確である。6.Bb2 は黒に 6…cxd4 7.exd4 Bb4+ 8.Nbd2 Ne4 という変化が生じる。途中白は 8.c3 と応じることもできるが、そうなるとb2のビショップはもっと動きが制限され、白は通常 c2-c4 の戦型に移行する必要が出てきて、コーレ=ツーカートルト戦法を選択したときに念頭においていたものとは異なる試合になる。

6…Bd6

 ここでもまた黒が早く 6…cxd4 7.exd4 と交換するのは勧めない。

 そう指したために白の夢が実現したことを鮮明に示す歴史的に有名な2局を見てみよう。7…Bd6 8.Bb2 O-O 9.a3 b6 10.Nbd2 Bb7 11.Qe2

 11…Qc7 12.Ne5 Ne7 13.f4 Rac8 14.Rac1(白の作戦は Rf3-h3 でルークを3段目に移し、そのあと Bxh7+ Nxh7 から Qh5 の手筋を狙うことである)14…g6?! 15.g4 h5?! 16.h3 Kg7? 17.c4 Qd8(17…dxc4 18.Bxc4 Qd8 19.d5! exd5[19…Bxd5 20.g5]20.g5 dxc4 21.gxf6+ Kxf6 22.Ng4+[22.Nc6+]22…Kf5 23.Nh6#)18.c5! Bxe5(18…bxc5 19.g5 Ne4 20.dxc5 Bxc5+ 21.Rxc5! Nxc5 22.Nc6+)19.fxe5 Nd7 20.b4 hxg4 21.hxg4 Rh8 22.Nf3 明らかに白が優勢で、36手目で勝った(アリョーヒン対ロッセッリ、チューリヒ、1934年)。

 もう1局は 11…Rc8 12.Ne5 Qe7 13.f4 Rfe8 14.Rf3 Qf8 15.Rh3 g6 16.g4! キングの頭上を開けるのは驚いた着想だが慣れる必要がある!この布局の重要な攻撃策の一つで、うまくいくことが多い!注意点は中央がかなり閉鎖的であることで、局面をさらに開放するためにいつ c2-c4 と突くかどうかは白の専権事項である。16…Qg7 17.Rf1 Ne7 18.Rf2 Kh8 19.Rg2 Rc7 20.Ndf3 Neg8 21.Ng5 h6 22.Ngxf7+ Rxf7 23.Nxg6+ Kh7 24.Nf8+ Kh8 25.Ng6+ Kh7 26.Ne5+ Kh8 27.g5 Bxe5(27…Ne4 28.gxh6 Qf6 29.Qg4 Bxe5[29…Nxh6 30.Nxf7+ Qxf7 31.Rxh6+]30.Qg7+ Rxg7 31.hxg7#)28.gxf6 Bxf6 29.Rxg7 Rxg7+ 30.Rg3 Bc8 31.c4 Ne7 32.Qh5 Bd7 33.Qxh6+ 1-0(マローツィ対ブレーク、ヘースティングズ、1923年)

7.Bb2 O-O(7…Qc7 には 8.Na3 a6 9.dxc5 Bxc5 10.c4 を勧める)

 ここは勝負所である。白が心配する必要があるのは黒の …Qc7 から …e6-e5 と、…Qc7 のあと …Nb4 でd4でポーン交換してc2に圧力がかけられているために白の白枡ビショップが交換されるのを避けるのが困難なことである。8.a3 と 8.Nbd2 の両方を分析する。

8.Nbd2

 8.a3 なら黒の最善の応手は 8…Qc7 である。自然な 8…b6 では白が主導権を握り 9.Ne5 Bb7 10.Nd2 Qe7 11.f4 Rfd8 12.Rf3 Ne4(12…c4? 13.bxc4 dxc4 14.Ndxc4 Nxe5 15.fxe5 Bxf3 16.exd6)13.Rh3 f5(13…f6 14.Qh5)14.Bxe4 dxe4 15.Qh5 Bxe5(15…h6 16.Ndc4、15…g6 16.Nxg6 hxg6 17.Qh8+)16.Qxh7+ Kf7 17.fxe5 Rh8 18.Qxh8 Rxh8 19.Rxh8 で白がやや優勢だった(エーベ対ルビーンシュタイン、メーリッシュ=オストラウ、1923年)。

 IMレーンによると 11…Nd7 は 12.Nxd7 Qxd7 13.dxc5 Bxc5 となるので悪手である。

 そしてここから 14.Bxh7+(14.Rf3)14…Kxh7 15,Qh5+ Kg8 16.Bxg7 でレーンは白の勝ちと判断している。しかし私は 16…Bxe3+ 17.Kh1 f6!(もちろん 17…Kxg7? は 18.Qg5+ Kh8 19.Rf3 で良くない)18.Bh6!(18.Bxf8 Kxf8)で黒が問題ないと思う。このあと 18…Nd4! 19.Qg4+ Kh8! 20.Bxf8 Bxd2 となれば不均衡で難解な局面である。

 もちろん白は代わりにもっと穏やかに 12.Qf3 と指すことができる。

 8…Qc7 のあと私は 9.c4 cxd4 10.exd4 e5 11.dxe5(11.c5 e4 12.cxd6 Qxd6)11…Nxe5 12.Nxe5 Bxe5 13.Bxe5 Qxe5 14.Nd2 Bg4 と指し互角の形勢だった(スーザン・ポルガー対ユダシン、ミュンヘン、1991年)。

 8…Qc7 のあと 9.Nbd2 e5 または 9.dxc5 Bxc5 10.Bxf6 gxf6 11.Nbd2 f5 12.b4 Bd6 13.c4 Ne5 なら黒には何も恐れるものがない。

******************************

2014年08月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

チェスの基本(064)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

23.主導権の放棄

 三つ目の場合戦力得が得られればすることは何もなくしばらくの間相手に攻撃にさせ、それを撃退したら全力で戦力得にものを言わせて勝ちになる。この種の好例が次の試合である。

例53

 本局は1913年のハバナ国際マスターズ大会でのJ.R.カパブランカ対D.ヤノフスキー戦である(戦型はルイロペス)。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O d6 5.Bxc6+ bxc6 6.d4 Be7 7.Nc3

 この手では 7.dxe5 と取る方が良いのかもしれない。しかし当時はその戦型には詳しくなかったので良いと分かっている手を指した。

7…Nd7 8.dxe5 dxe5 9,Qe2 O-O 10.Rd1 Bd6 11.Bg5 Qe8 12.Nh4 g6

 黒は手を稼いで攻撃に回るために交換損を持ちかけた。黒のそのような方針が正しいかどうか何も考えるまでもなく、白の方はやるべきことはただ一つ、すなわち交換得をしてそのあとは嵐をしのぐということである。そして嵐が過ぎればすばやく全力で数的優位にものを言わせるようにする。

13.Bh6 Nc5 14.Rd2 Rb8 15.Nd1 Rb4

 この手は白に c4 と突かせて、黒のナイトのためにd5に空所(注)を作らせる狙いである。このような遠大な作戦はマスターの技量を示すものである。

16.c4 Ne6 17.Bxf8 Qxf8 18.Ne3

 18.Nf3 の方が良かった。

18…Nd4 19.Qd1 c5

 この手は白が 20.Rxd4 で交換損を返しポーンを得て局面を緩和させるのを防ぐためである。

20.b3 Rb8

 ルークを宙づりにさせずに …Bb7 と指すためにこう引いた。

 大局的な優位を求める黒の捌きは本局を通して見事だった。そして黒は負けたとしても、それは1ポーンも得ない交換損の犠牲が本筋の防御に対して成功しなかったことによるものである。

注 チェス用語の「空所」とはポーン陣形の欠陥を意味している。相手は駒をくさびのように埋め込むことができたり、敵のポーンによってどかされたりする可能性がない。上図で黒にはf6とh6の二つの「空所」があり、白はナイトやビショップをそこに進駐させて駒やポーンで支えることができる。

(この章続く)

チェスの基本(063)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

22.狙いを持つ攻撃の威力(続き)

例52(続き)

 (再掲)

25.Be2!

 この満を持した捌きが決め手だった。このビショップがd5に到達すれば黒駒はすべて無用になる。

25…Bxe6 26.Bf3 Kf7 27.Bd5 Qd6

 これで黒駒がすべて縛りつけられていることが明らかで、残っているのは白が勝負をつける最速の手段を見つけることだけである。白はクイーンをh6に進めてからhポーンをh5に突き進めて黒キングを守っているポーンを破壊する。

28.Qe3 Re7

 28…f4 なら 29.Qh3 h5 30.Qh4 Re7 31,Qg5 Kg7 32.h4 Qd7 33.g3 fxg3 34.f4 で黒はすぐにどうしようもなくなる。白がポーンをf5に突き進める準備をしている間黒は駒を遊ばせておかなければならず、最後は Rxe6 で白の勝ちになる。

29.Qh6 Kg8 30.h4 a6 31.h5 f4 32.hxg6 hxg6 33.Rxe6 黒投了

 E.ラスカー博士は当時この試合の白の指し方を評して、白の手をどんなに分析してももっと良い手段が見つからないかもしれないと言っていた。

 このような一見単純な試合は最も難しい類であることがよくある。このような場合における完璧な指し方は、キングに対して捨て駒を伴う派手な直接攻撃が要求される局面よりもはるかに難しい。

(この章続く)

2014年08月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(062)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

22.狙いを持つ攻撃の威力(続き)

例52(続き)

 (再掲)

19.d5! Nxe5

 明らかに白の多様な狙いに対処するにはこれが最善の手段である。19…cxd5 では白ビショップがいつかc4の地点から弱点のeポーンに狙いをつけるようになるので事態をもっと悪くする。

20.Rxe5 g6 21.Qh4 Kg7 22.Qd4 c5

 白から 23.dxe6 と 23.Qxa7 を狙われていたのでこの手は仕方がない。

23.Qc3 b6

 この手よりも 23…Qd6 と指す方が良かった。しかし黒は白に 24.dxe6 と取らせたくて、すぐにポーンを取り返すことになり自陣が安全になると考えていた。しかし白がすぐに見せつけるようにそうはならなかった。つけ加えておくと、黒駒はポーンの守りに縛りつけられているのに対し白駒は自由に動けるので、私の考えではいずれにしても黒陣は持たない。

24.dxe6 Bc8

(この章続く)

2014年08月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

[復刻版]理詰めのチェス(25)

第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する(続き)

第25局

 ヤノフスキー対アラピン戦は紛れもなくヤノフスキーの生涯の最高傑作である。素通しのd列での捌きでパスポーンができた。このポーンをせき止めなければならない黒はその役目を巧妙に強い駒から弱い駒に交替させていった。それからヤノフスキーのポーンが7段目の黒枡に届くところに来るという面白い局面が現出した。それは敵の首を何本もの指で絞めているようなものだった。そして結末は攻撃があちこちの列に対して面白く行なわれ黒の受けもそれに追随させられた。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 ヤノフスキー
黒 アラピン
バルメン、1905年

1.d4

 白はポーンを中原に進出させて指し始めた。このポーンは次のように色々な務めを果たしている。

 このポーンは二つの駒を自由にしている。

 このポーンは重要な地点を占めている。

 このポーンはe5とc5の地点を支配して相手がそこに駒を置くのを妨害している。

 このポーンは味方の駒がe5またはc5を橋頭堡として利用するのをしっかりと支援する用意をしている。

1…d5

 黒も白にならってポーンを中原に据え白が次に 2.e4 と指すのを防いだ。

2.c4

 白はポーンを差し出して黒が中原を放棄するよう誘った。

 白の手は黒のdポーンに対する攻撃にもなっている。それによって白は黒ポーンとそれの中原の所有を根こぎにすることを望んでいる。

2…e6

 これは中原にポーンを維持するためのいつもの仕掛けである。白が 3.cxd5 と指してきた場合には黒は別のポーンでdポーンを置き換える用意をしておかなければならない。駒で取り返すのは良くない。その駒は白のeポーンで追い払われ白が中原の地点を全部所有することになる。

 例えば 2…Nf6 なら 3.cxd5 Nxd5 4.e4 Nf6 5.Nc3 で白が圧倒的に有利になる。

3.Nc3

 これは受身の 3.Nf3 よりも積極的である。このナイトはd5にさらに当たりを加えe4の支配の争いにも手助けしている。

 クイーンポーン布局の目標の一つは後でeポーン突きを達成することである。それはキングポーン布局で後から d4 と突いてさらに地歩を固めようとするのと同じことである。

3…Be7

 ここでの通常の手は 3…Nf6 である。しかし黒は手順を変えてナイトが釘付けにされるのを防いだ。(それほどまで恐怖におののいている!)

4.Nf3

 白は単純な展開で満足で、キング翼ナイトを最適な地点に置いた。

 アリョーヒンならば黒の手順前後を咎め 3…Nf6 が防ぐ 4.e4 をすぐに指して力戦に引きずり込んだだろう。

4…Nf6

 黒はいったんはこの素晴らしい手を指すのを延期したがここでは仕方なく指した。しかし他にどのようにしてキング翼を展開しキャッスリングの準備をすることができようか。

5.Bg5

 これは本当の釘付けではないがその効果はいくらか似ている。圧力がナイトとその後ろのビショップと最後尾に位置するクイーンにかけられている。

5…h6

 アラピンは釘付け、ないしは擬似釘付けに耐えられなかった。すぐにビショップを攻撃して方針を決めさせた。

6.Bh4

 客観的にみてこの手が最強の手かどうかは重要でない。ビショップの圧力が黒を悩ませるという事実がヤノフスキーが釘付けを維持する十分な理由である。

6…dxc4

 黒は自分の駒にもっと動く余地を与えるために局面を開放した。しかしこのポーン取りで中原での自分の地歩を放棄した。

7.e3

 これはポーンを取り戻すための最も簡明な方法である。キング翼ビショップはポーンを取り返し、それが同時に展開の手となる。

7…a6

 この手は 8.Bxc4 に対して 8…b5 と応じて白のビショップを当たりにし先手をとって自分のビショップを展開する準備である。

8.Bxc4

 これで戦力は互角になったが将来の見通しは白の方が良い。白は黒よりも駒が2個余計に活動していて中原におけるポーンの形も優っている。

8…b5

 このポーンによる攻撃の主目的はクイーン翼ビショップのためにb7の地点を空けることである。

9.Bb3

 誰もまだこの手とd3のどちらがビショップの引き場所として適当かを決めかねている。b3ならばビショップは黒の中原を直撃しているが、d3の方が良いと考えている人たちはそこの方が急所のe4の地点を支配するのに役立ち黒キングがキャッスリングした際そこを狙っていることを理由にあげている。

9…Nbd7

 もちろんこのナイトはcポーンの邪魔になるc6へは行かない。このポーンは白の中原を攻撃し黒のルークのためにc列を開けるという使命があるのでその遂行を妨げるようなことをしてはならない。

 ナイトがd7へ展開するのは気が利かないように見える。しかしf6のナイトを補強し中原に向かって …c5 又は …e5 とポーンを突くのを支援する用意をしている。

10.Qe2

 熟達した選手は決定的な行動を始める前に自分のすべての駒が働いているようにすることに注目して欲しい。この手はクイーンのように非常に強力な駒にしては大した手ではないように見える。しかし最下段から駒を離すという単純な行為でも展開の目標を推し進め進展を成している。

 もう二つ要点がある。試合の初めの方の段階ではクイーンはc2やe2のように自陣に近い所にいるのが非常に適切である。もっと攻撃的な展開(一般的には離れポーンを拾い集めるために)は危険をみずから招く。最下段から離れることによりクイーンは(キングがキャッスリングした後)ルークが連結できるようにしている。

10…c6

 黒がこの手で何をしようとしていたのかを正確に知ることは難しい。白の d5 突きを恐れていたのかもしれないし、ことによるとクイーン翼へのクイーンの出口を作りたかったのかもしれない。いずれにせよこの手はこれ以上猶予することなく中原を争う 10…c5 よりはっきり劣っている。

11.O-O

 白のこのキャッスリングは攻勢の手段で、ルークを活動的な任務に急がせている。

11…O-O

 黒のキャッスリングは防御が目的で、キングを安全な所に移した。

12.Rac1

 ルークがc列の先端に来た。この列の支配はこの布局における白の主要な目標の一つである。

12…Bb7

 クイーン翼ビショップが展開して黒はクイーンポーン布局の防御側を悩ます課題の一つを解決したかのように見える。しかし黒はまだ困難を脱していなかった。

13.Rfd1

 これは素晴らしい手である。これで両ルークが絶好の地点に配置された。d列における圧力で黒が 13…c5 で捌きにでるのが危険になっている。14.dxc5 と応じられるとキング側ルークの筋が通る。

13…Rc8

 黒はcポーンをさらに支援して、14…c5 と突きポーンを交換しようともくろんだ。そうなれば黒陣が捌けc列をめぐって戦うことができる。

14.Ne5!

 これで白は理想的に展開し、どの駒もよく働いている。反対に黒は駒の動きが制限されて展開が妨げられている。

 白のこのナイト跳ねは黒が 14…c5 で捌こうとするのを防いでいる。15.dxc5 Rxc5(15…Bxc5 は 16.Nxd7 で黒は取り返せない)16.Bxf6 Bxf6 17.Nxd7 で白がナイトを得し黒の二つのルークにも当たっている。

14…Nxe5

 黒は駒交換ができるなら何でも交換して圧迫を和らげようとした。

15.dxe5

 この交換は白に都合がよい。白は素通しになったd列で攻撃の機会がある。ポーンで取り返したことによる別の効果はd6に橋頭堡ができたことである。これにより白はこの地点に駒を据えて利用することを期待している。

15…Nd5

 ナイトはクイーンに対するルークの当たりをさえぎらなければならない。代わりに 15…Nd7 は 16.Bxe7(d6の地点の守り駒を取り除くため)16…Qxe7 17.f4 となって、白はd6にルークを埋め込みルークを重ねるかナイトをe4を経由してそこまで捌くことになる。

16.Bxe7

 d6の地点の弱点につけ込むためには黒枡に利いているこのビショップを取り除くことが必要である。

16…Nxc3

 黒はc3のナイトが害を及ぼす前にそれをやっつけた。代わりに 16…Qxe7 と取るのは白にナイトをe4に運ばれてそこからd6またはc5に据えられる。

17.Rxc3

 明らかに 17.Rxd8(または 17.Bxd8)はだめで、17…Nxe2+ 18.Kf1 Nxc1 で黒が勝つ。本譜の手はd列にルークを重ねる白の作戦で手得をする。

17…Qxe7

 この取り返しの後戦力は互角であるが、陣形は白の方が少し良い。しかしマスターは勝ち切るのにどの程度の有利さが必要なのだろうか。

 白の具体的な優位は唯一の完全素通し列を制圧していることと、戦略上重要なd6の地点にかけている圧力にある。

18.Rcd3!

 この手は当然そうな 18.Rd6 よりもずっと強力である。18.Rd6 には 18…c5 と応じられ 19.Rcd3 とルークを重ねると 19…c4 と両取りにこられて黒の駒得になる。

 本譜の白の手は手損することなくルークを重ね 19.Rd7 で駒得する手を狙っている。

18…Rfd8

 このような状況で劣勢側がいつも直面するジレンマは次のようなものである。もし劣勢側が節目ごとに敵に抵抗せず全ての重要な列、斜筋、枡の支配をめぐって戦わなければゆっくりと追い詰められ壁に押しつぶされる。もし至る所で敵に対抗すればその結果起こる駒交換で局面が単純化するが形勢は好転しない。

 本譜の局面で黒はルークをぶつけるのを遅らせることはほとんどできなかった。なぜなら黒は 19.Rd7 による7段目への侵入だけでなく 19.Qd2 でd列に大駒を三つ重ねる手を狙われていたからである。このような素通し列での兵力の集結にはもちろん抵抗が不可能である。

19.Rd6!

 白はd6にしっかりと駒を据えて領有権を主張した。

19…Rxd6

 こうしないと白は次に 20.Qd2 と指して黒陣に耐え難い圧力をかけてくる。

20.exd6

 これで白にパスポーンができたが、このポーンは相手の生活の仕方に多大の影響を及ぼすことになる。ニムゾビッチは「パスポーンの突き進む欲望」に特別の注意を喚起し、それを「閉じ込めておくべき犯罪者」とみなさなければならないと言った。

 パスポーンがこれ以上進むのを防ぐために黒はその通り道に駒を置いてせき止めなければならない。実際このポーンを監視するために黒は残っている4個の駒のうち1個の働きを失わなければならない。もしこのポーンをおとなしくさせておくために絶えず監視が必要ならば、黒は守りに忙殺されて反撃のことなど考えられないことは明らかである。しかし白は攻撃をある個所から別のところに自由に移すことができる。

20…Qd7

 この手はほとんど必然である。このポーンはせき止めなければならずそれもすぐにである。このポーンがもう1枡進めば黒にとって致命的である。その可能性を目撃すると次のとおりである。20…Qd8 21.d7 Rc7 22.Qd2(23.Qd6 の後 24.Qxc7 からポーンを昇格させて勝つ狙い)22…c5 23.Qa5 Rxd7 24.Qxd8+ で白が勝つ。

 本譜の黒の手でこのポーンは止まった。しかしせき止めるために黒は最強の駒のクイーンをそれに縛り付けることになった。

21.e4

 この手は 22.e5 と指してdポーンを支えさらに黒陣を押さえつけるつもりであることを示した。そうなれば白の駒はdポーンを見守る必要性から解放され盤上を自由に動き回ることができる。

21…c5

 黒はビショップの筋を開けルークにもっと自由を与えた。

 22.e5 を防ごうとすると次のいずれかになったかもしれない。21…f6 22.Qg4 Kf7 23.e5 fxe5 24.Qf5+ Ke8 25.Bxe6 Qd8 26.Qf7#。あるいは 21…f6 22.Qg4 Re8 23.Bxe6+ Rxe6 24.Qxe6+! Qxe6 25.d7 で白の勝ち。

22.e5

 この手はdポーンがその生涯の次の段階に行くのを支援する。

 dポーンは最初は同僚とあまり変わらず、次はパスポーンになり、現在は保護パスポーンになった。そして最後は(その輝ける前途をまっとうすれば)クイーンになる。

22…c4

 冷静に現実に立ち返ろう。黒はクイーン翼で相手を忙殺させる反撃策を開始するために一歩一歩着実に戦っている。

23.Bc2

 ビショップは押し戻されたが面白い展望を抱いて新しい斜筋を見張っている。

23…Qc6

 黒は最強の駒をパスポーンの監視の仕事に縛り付けておきたくなかった。そこで詰みの狙いで白の注意をそらした。白が詰みを防ぐ間黒はせき止め役を交代させる余裕ができる。

24.f3

 黒のクイーンとビショップに無駄骨を折らせて長斜筋での攻撃を終わらせた。

24…Qc5+

 このチェックの主要な目的は白が 25.Qe3 で黒枡の斜筋を支配するのを防ぐことである。

25.Kh1

 白はクイーンを盤上に残した。明らかに白は 25.Qf2 でクイーン交換をさせるよりも直接攻撃で勝負に勝つことを望んでいる。

 このような判断は何よりもまず棋風の問題である。勝ち方に複数の選択のある場合は自分の気性と適性に合った手段を選ぶべきである。現在の局面ではルビーンシュタインやカパブランカならためらわずにクイーン交換をさせて単純化を図ると想像される。彼らは複雑でない状況でのわずかな有利を勝ちに変える能力に自信を持っていて、鮮やかな攻撃での勝利は他のマスターたちにまかせている。多種多様で豊富な傑作の創造に感謝しなければならないのはこのような様々な技法によるものである。

 25.Qf2 の後黒がクイーン交換を避けて 25…Qxe5 と指せば 26.d7 Rd8 27.Qb6(ルークとビショップの両当たり)27…Rxd7(27…Qb8 なら 28.Be4 で白の駒得)28.Qd8+! Rxd8 29.Rxd8# で白がきれいに勝つ。

25…Rd8

 ルークがポーンを押さえ続ける役目を担った。

26.Qe1!

 これは妙手である。このクイーンは 27.Qh4 を経由して黒のキング翼に侵入するか 27.Qa5 を経由して黒のクイーン翼に侵入する手を狙っている。

26…Rd7

 当分の間パスポーンを動けなくした。

27.h3

 いざという時のキングの脱出口を開けた。これはクイーンとルークが攻撃のために出払った際に1段目でキングが頓死を食わないようにしたものである。

27…Bc6

 ルークが今の地点を離れビショップ(価値の劣る駒)が見張りに立てるようにまた駒の組み換えを行なう。

28.f4

 29.f5 による敵陣突破を準備した。ポーンは攻撃の素晴らしい道具となる。ほとんどどんな要塞でも突入し駒が侵入できるような裂け目を作り出すことができる。

28…Ra7

 ルークがd7の地点を空けてそこをビショップが占めるようにした。

29.f5!

 この厳しいポーン突きに対して黒は 29…exf5 と応じられない。なぜなら 30.e6 fxe6(さもないと白の6段目の2個のポーンが連結パスポーンになる)31.Qxe6+ Kh8(31…Rf7 なら 32.d7 で白の勝ち)32.d7 で白の勝ちとなるからである。

29…Bd7

 黒は守りの交替を終えた。駒の一つがせき止めを務めなければならないのでその役目を最も重要でないビショップに任せた。

30.f6

 ポーンによる打ち壊しで防御陣に突破口が生じる。白の狙いは 31.Qg3(32.Qxg7# の狙い)31…g6 32.Bxg6 fxg6 33.Qxg6+ から2手詰めに討ち取ることである。

30…g6

 30…gxf6 と取るのは 31.Qg3+ Kf8 32.Qf4 f5(32…Qxe5 は 33.Qxh6+ Kg8 34.Qh7+ Kf8 35.Qh8#)33.Qxh6+ Kg8 34.Qg5+ Kf8 35.Qf6 Kg8 36.h4 Qc8 37.h5 Qf8 38.h6 Kh7 39.Rd4(40.Rg4 から 41.Rg7+ の狙い)39…Qxh6+ 40.Rh4 でクイーンを釘付けにして白が勝つ。

 本譜の手の後ポーンの形の変化は白に格好の攻撃目標を提供する。しかし白が用心しなければならないことは重要なeポーンを守ることである。このポーンは二つの深く進攻したポーンをしっかりと支えている。注意すべきはこの二つのポーンの位置が黒枡のc7、e7及びg7を強力に制圧していることである。これらの枡は黒陣にあり黒キングに近い。しかし黒はこれらの地点に駒を置くことができない。自由に使える地点が少ないので黒が侵入者を撃退するのは難しい。

 ここからの勝ち方は学習と娯楽の見出しの下に入る。

31.Qg3

 狙いは 32.Bxg6 fxg6 33.Qxg6+ から即詰みに討ち取ってすぐに勝つことである。

31…Kh7

 ポーンを守るにはこの手しかない。代わりに 31…g5 と突くのは 32.h4 で白に勝つようにお手伝いするようなものである。

32.h4

 黒のgポーンが釘付けになっているので白は 33.h5 でさらに当たりを付け足す用意をした。

32…Qc8

 この手はクイーンに危険地帯へ急いで駆けつけさせるためである。黒が 32…h5 で白ポーンの前進を止めようとすると白クイーンが 33.Qg5(34.Qxh5+ の狙い)33…Kg8 34.Qh6 と押し入り 35.Qg7# で仕留める。

33.h5

 砲火をもろい個所に集中させた。

33…Qg8

 33…Be8 はだめでポーンは守るがクイーンの通り道のじゃまになる。クイーンはある地点から別の地点にとび回るので白の攻撃に対して素早く防御することのできる唯一の駒である。

34.Rd4

 白はあらゆる手段を利用する。このルークはh列またはg列に転回して戦いに参加する。

34…Be8

 このビショップはgポーンの守りを助けて、クイーンが白の次の攻撃目標のhポーンを守れるようにした。

35.Rh4

 作戦が明らかになった。36.hxg6+ fxg6 37.Rxh6+ Kxh6 38.Qh4# の3手詰みを狙っている。

35…Qf8

 この一手の受けである。

36.Rg4

 うまい駒捌きである。白の前の手は敵クイーンをgポーンからおびき出した。このポーンを守る駒が1個減ったので白は4個目の駒のルークで攻撃する。

36…Qg8

 クイーンが守りに駆け戻った。

37.Qe3!

 ルーク当たりになっていて白の真の目的である盤の他端のhポーンに対する攻撃のために手を稼いでいる。

37…Rd7

 ルークは当たりを逃げたがキングの守りの助けに駆けつけることはできない。

38.Rh4

 前の狙いの 39.hxg6+ fxg6 40.Qxh6# を復活(そして短縮)させた。

38…Qf8

 またクイーンがhポーンの守りにとって返した。

39.g4!

 歩兵を繰り出した。白はすべてを攻撃に投入している。今度の狙いは 40.g5 でその後 41.hxg6+ fxg6 42.Rxh6+ Kg8 43.Qh3 で簡単な勝ちになる。もし 40.g5 の後黒が 40…hxg5 と取ってくれば 41.hxg6+ Kg8 42.Rh8+ Kxh8 43.Qh3+ で詰みになる。

39…Kh8

 gポーンを釘付けからはずし 40…g5 41.Qe4 Qg8 で白の突破を困難にさせる用意をした。

40.hxg6

 キングを守るポーンの非常線を引き裂いた。

40…fxg6

 これは止むを得ない。さもないと白の次の手の 41.g7+ がひど過ぎる。

41.Rxh6+

 さらに護衛をせん滅した。

41…Rh7

 41…Kg8 なら素通し列に 42.Qh3 と駒を重ねてそれまでとなる。

42.Rxh7+

 42.g5 は 42…Rxh6+ 43.gxh6 でh列がふさがり白にとって使い物にならなくなるのでもちろんだめである。

42…Kxh7

 白は1ポーン得にすぎないがその攻撃からは何の勢いも失われていない。

43.Qg5

 白の狙いは 44.Qh5+(釘付けポーンの窮状につけ込んだ)44…Kg8 45.Bxg6 と侵入することで最後の障壁が取り除かれる。

43…Qf7

 黒はクイーン交換を避けた。なぜなら 43…Qh6+ は 44.Qxh6+ Kxh6 45.f7 Bxf7 46.d7 となって白に新たなクイーンができるからである。

44.Qh5+

 最後の作戦行動の始まりである。

44…Kg8

 キングが追い払われgポーンが守り駒を一つ失った。

45.Bxg6

 パスポーンが勝負を決める局面を作るためにビショップを切った。

45…Qxg6

 45…Qb7+ で反撃を試みても無駄である。白は単に 46.Kh2 と応じる。このキングは露出しているように見えるが実際は全然危険でない。

46.Qxg6+

 46…Bxg6 47.d7 でクイーンができるので白の勝ちである。

 本局は全般に渡って明快な大局観指法と巧妙な攻撃とが見事に融合されていた。序盤は理にかなって簡明で、中盤は攻撃の技法がためになり、終盤は芸術的だった。

2014年08月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(061)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

22.狙いを持つ攻撃の威力(続き)

例52(続き)

 (再掲)

 8.Bg5 の方が良いかもしれない。本譜の手はやらずもがなの機会を黒に与えた。

8…c6

 正着は 8…c5 だった。そうすれば必ずしも黒が悪くない混戦になっていただろう。少なくとも白はどう応じるか難しい。本譜の手によって成し遂げられることは何もなく、黒は完全に守勢に追いやられる。黒の秘めた狙いの 9…Bxe5 10.dxe5 Qa5+ は簡単に受けられる。

9.c3 O-O 10.Bg5 Be7

 黒がここでビショップを引かなければならないということは、展開の構想が誤っていたということを如実に物語っている。黒が多くの手損をしたので、白は駒を何の邪魔もされずに最も攻撃的な位置につけることができる。

11.Bd3 Ne8

 ここは 11…Nd5 もあった。黒はナイトを動かさないと白に 12.Qh3 と指されたとき 12…g6 と突かざるを得ず(12…h6 は 13.Bxh6 と切られる)キングの囲いをひどく弱める。

12.Qh3 f5

 白はもう攻めが効かないが、黒に際立った弱点を作らせた。ここからの白の作戦はこの弱点(弱いeポーン)につけ込むことで、初学者は以前に述べた原則が本局でどのように適用されるかを見ることができる。どの手も弱いeポーンを支えきれなくさせるか、ほかの箇所で白の態勢を良くするためにこのポーンを守る黒駒の不活発さにつけ込むことに向けられる。

13.Bxe7 Qxe7 14.O-O Rf6 15.Rfe1 Nd6 16.Re2 Bd7

 ようやくビショップが出てきたが、活動的な攻撃駒としてではなく単にルークに道を空けただけである。

17.Rae1 Re8 18.c4 Nf7

 これは巧妙な手で、c5 突きを防ぐのに役立ち、白に 19.Nxd7 から 20.Bxf5 と取るよう誘っている。この手は 19.Nxd7 Qxd7 20.Bxf5 Ng5 21.Qg4 Rxf5 22.h4 h5 23.Qxf5 exf5 24.Rxe8+ Kh7 25.hxg5 Qxd4 となって白が悪い。しかしこのような場合にいつも起こることは、ある攻撃手順が見えれば別の攻撃手順も見えるということである。そしてこれから見られるようにこれは原則に対する例外ではない。

(この章続く)

2014年08月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(060)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

22.狙いを持つ攻撃の威力(続き)

例52(続き)

 (再掲)

 この手は才能のあるベネズエラのアマ選手のM.アヤラに初めて教えられた。目的はこの戦型で黒の通常の展開となる …b6 のあとクイーン翼ビショップをb7に展開するのを防ぐことである。一般に布局でほかの駒を出す前に同じ駒を2回動かすのは良くなく、この手に適用できる唯一の意義はこの原則に違反するということであるが、それを除けば何もかも推奨に値する。

7…Bd6 8.Qf3

(この章続く)

2014年08月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(113)

「Chess Life」1995年1月号(2/5)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

双ビショップの価値(続き)

 もし一方が布局でのうまい指し回しの結果として開放的な局面で双ビショップを得ることができたならば、優勢になることが一般的に期待できる。その実戦例を見てみよう。

白 GMライナー・クナーク
黒 GMジョエル・ローチェ
ノビサド・オリンピアード、1990年
E42 二ムゾインディアン防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 c5 5.Ne2 d5 6.a3 Bxc3+ 7.Nxc3 cxd4 8.exd4 dxc4 9.Bxc4 Nc6 10.Be3 O-O 11.O-O b6 12.Re1 Bb7 13.Ba2 Qd7?!

 布局の戦型の結果として白は双ビショップを得て中央も少し広い。黒は小駒が良く展開されていて孤立dポーンに対する展望もある。本譜の手はクイーンをまずい地点に置いたために白に局面を有利に開放させてしまった。正着は 13…Ne7 だった。

14.d5! exd5 15.Nxd5 Nxd5 16.Qxd5 Rad8 17.Qxd7! Rxd7 18.Rad1 Rxd1

 18…Rfd8? なら白は 19.Rxd7 Rxd7 20.Bxb6 で最下段での詰みを狙う。

19.Rxd1 Rd8 20.Rxd8+ Nxd8

 ポーンの形はかなり対称的だが、白には開放的な局面での双ビショップがある。GMクナークはこの局面を如才なく白が少し優勢と判断している。それでも実際のマスターの世界ではこのような局面はいつも決まって黒の負けになる。白は締めつけに締めつけ、黒はほんのわずかの失着が命取りになる。試合はこのあと50手も続いたが、白はずっと押し気味だった。

21.f3 Kf8 22.Kf2 Ke7 23.Bf4 Bc8 24.Bc7! Nc6 25.Bd5 Kd7 26.Bf4 f6 27.Be4! g6 28.Bd2! Kd6 29.Bc3 Ne5 30.Bc2 Bb7 31.Kg3 Ke6 32.h4! Ba6 33.a4! Bd3 34.Bd1 Bc4 35.Kf2 Bd5 36.Bc2 Bc4 37.Ke3 Bf1 38.g3 Bc4 39.f4 Nc6 40.g4! Ne7 41.Kd4 Ba6 42.Bb3+ Kd7 43.g5!

 ここでGMクナークはここまでの黒の手を何も批判することなく形勢は明らかに白が優勢と判断している。黒陣の切り崩しと白駒の新たな入口作りが迅速に続けられた。

43…Nf5+ 44.Ke4 Bb7+ 45.Kd3 fxg5 46.hxg5 Ne7 47.Bd1 Ke6 48.Bg4+ Nf5 49.Be5 Bc6 50.Bd1 Bd5?

 ここから黒のクイーン翼が防御不可能になる。50…Kd7 と指さなければならなかった。

51.Bb8 Kd7 52.Bxa7 Kc7 53.a5 bxa5 54.Ba4 Kb7 55.Bf2! Kc7 56.Be1 Kb6 57.Bc3 Ka6 58.Bf6! Kb6 59.Bd8+ Ka6 60.Bc7!

 手詰まりのため黒駒の一つが動かなければならず白キングに侵入される。

60…Bf3 61.Kc4 Be2+ 62.Kc5 Bd3 63.Bd7! h5 64.gxh6e.p. Nxh6 65.Bc8+ Ka7 66.Bxa5 Bf5 67.Bxf5 Nxf5 68.Bc3 Ng3 69.Kd5 Ka6 70.Ke6 Ne4 71.Ke5! 黒投了

 71…Nf2 72.Kf6 Nd3 73.Be5 でgポーンも落ちる。

 私の全般的なアドバイスは非常に明らかである。1.ポーンの形で優ったり敵ビショップの利きが悪いというような具体的な見返りを得ていなかったり、2.双ビショップを与えることが年月に耐えた信頼できる布局手順の一部となっているのでなければ、自発的に BxN と取って相手に双ビショップを与えることのないようにせよ。

******************************

2014年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(059)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

22.狙いを持つ攻撃の威力

 2番目の例の場合直接攻撃の機会がないなら、敵陣の中にあるかもしれないどんな弱点も増大させるようにしなければならない。もし弱点が何もないなら、一つでもいくつでも生じさせるようにしなければならない。何か狙いがあることは常に有利である。しかしそのような狙いはすぐに何か得られる場合に限り実行に移さなければならない。なぜなら狙いを持っていれば相手にその実行に備えさせ、対処のために戦力を用意させるからである。だから相手は別の時点で狙いを簡単に見落とすかもしれないし対処ができなくなるかもしれない。しかし狙いが実行されれば狙いはもう存在しないし、相手は注意をすべて自分の作戦に振り向けることができる。この種の試合で最善で最も成功率の高い捌きの一つは、片方の翼で動き回って相手の戦力をその方面に引きつけるようにすることである。そのあとで自分の駒の相手より優る機動力により戦力を反対の翼に迅速に移動しすれば、相手が防御のために必要な戦力を呼び寄せる余裕ができる前に敵陣突破ができる。

 大局観に基づいた指し方の好例は次局に見ることができる。

例52

 本局は1913年のハバナ国際マスターズ大会でのJ.R.カパブランカ対R.ブランコ戦である(戦型はフランス防御)。

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nd7 5.Nf3 Ngf6 6.Nxf6+ Nxf6 7.Ne5

(この章続く)

2014年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(058)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

21.一斉直接攻撃(続き)

例51

 似たような別の例をあげる。

 この局面では単純に 21.Nxe5 でも白が勝つ。しかし白は難解さの中の美しさを求めた。そのようなやり方はマスターとの数多くの実戦で経験を積み局面のあらゆる可能性に対し見通す力が十分養われるまでは非常に危険である。本局は1914年のサンクトペテルブルクでの大会で名局賞を受賞した。

21.Bh4 Qd7 22.Nxc8 Qxc6 23.Qd8+ Qe8

 23…Kf7 なら 24.Nd6+ で、黒がクイーンを切らずにキングが逃げれば1手で詰む。

24.Be7+ Kf7 25.Nd6+ Kg6 26.Nh4+ Kh5

 26…Kh6 なら 27.Ndf5+ Kh5 28.Nxg7+ Kh6 29.Nhf5+ Kg6 30.Qd6+ で白の次の手で詰みになる。

27.Nxe8 Rxd8 28.Nxg7+ Kh6 29.Ngf5+ Kh5 30.h3!

 これが 21.Bh4 から始まった一連の手筋の仕上げだった。白はまだ詰みを狙っていて、黒がそれを逃れる最善の手段はこれまでに得た戦力得をすべて返し3ポーン損になることである。

 これまであげた例で初学者が注意すべきことは、攻撃が動員可能なすべての駒を用いて行われていること、そして解説した変化のいくつかにあるように最終的に相手を仕留めるのは最後に使用可能な駒の登場であることが多いことである。既に述べた原則は次のように言い表せる。

 キングに対する直接の猛攻は成功が保証されるように全戦力で一丸となって実行しなければならない。抵抗は何があろうと克服しなければならない。攻撃は中断できない。なぜならそのような場合は敗北を意味するからである。

(この章続く)

2014年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(142)

「Chess Life」2006年6月号(4/6)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

コーレ=ツーカートルト戦法[D05](続き)

B)…Nc6 から …Be7 の戦型
1.d4 d5 2.Nf3 e6 3.e3 Nf6 4.Bd3 c5 5.b3 Nc6 6.Bb2 Be7 7.O-O O-O 8.Nbd2

8…b6

 黒はここで 8…cxd4 9.exd4 とポーンを交換する別の着想を用いることもできる。この利点は白が d4xc5 でa1-h8の斜筋を開放する選択肢を持たないようにすることを確実にすることにある。しかし黒も融通性が減るので、私は 8…b6 で中央での争点を維持した方が良いと思う。

 ポーン交換のあとは次のように進むかもしれない。9…b6(9…Nh5 なら 10.Re1 Nf4 11.Bf1 Bd7 12.g3 Ng6 13.Bg2 から c2-c4)10.a3 Bb7 11.Qe2(…Nf6-e4 を防ぐため。すぐに 11.Ne5 なら 11…Nxe5 12.dxe5 Ne4 で黒は問題ない)11…Rc8 12.Ne5 Nxe5 13.dxe5 Nd7 14.b4(…Nd7-c5 を防いでいる)14…a5 15.Qg4 g6 16.Nf3 Re8 17.Rfe1 Bf8 18.h4 白の攻撃が有望である(オル対キイク、1988年)。

 別の面白くて意表の着想は1982年ヘースティングズでのコバチェビッチ対ファラーゴ戦で披露された。10.Re1 Bb7 11.a3 Rc8 12.Re3 Ng4 13.Re2 Qc7 白はクイーンを珍しい経路でh3に持っていく。14.Qf1! Nb8(…Ba6 の意図)15.g3 Nf6(15…Ba6 なら 16.c4 dxc4 17.bxc4)16.Rc1 Nbd7 17.Qh3

9.Ne5 Bb7

 9…Nxe5 は 10.dxe5 Nd7 11.f4 で、次の試合がよく示すように白がはっきり優勢である。11…Bb7 12.Qh5 g6(12…h6 なら白の作戦は意欲的な g2-g4-g5 もあるし、もっと大局的に Rad1 から c2-c4 でd6の地点の弱点につけ込むのもある)13.Qh3 b5?(黒は罠を仕掛け、白は喜んでそれにはまる・・・)14.Bxb5 Qa5 15.Bxd7 Qxd2 ここからは白は黒クイーンを追い返す。16.Rf2 Qb4 17.a3 Qb6 そしてチャンバラの時間である。18.f5! gxf5 19.Rxf5! exf5(19…Rad8 20.Rh5 Rxd7 21.Rxh7)20.Bxf5 h6 21.e6 Bg5(21…fxe6 22.Qxh6)22.Bf6! fxe6(22…Bxf6 Qxh6)23.Bxe6+ Rf7 24.Bxg5 hxg5 25.Rf1 Raf8 26.Rf6 1-0(サマースケール対ヒメネス、アンドラ、1991年)珠玉の一局!

 9…Nb4 は 10.Be2 で白がすぐにこのナイトを a2-a3 で追い返すので何もできない。ユスーポフ対スピリドノフ戦(プロヴディフ、1983年)では次のように進んだ。10…Bb7 11.f4 Ne4 12.Nxe4 dxe4 13.a3 Nd5 14.Qd2 Rc8 15.c4 Nf6 16.Rad1 Bd6 17.dxc5 Bxc5 18.Qc3 Qe7 19.f5(19.Nd7)19…exf5 20.Rxf5 Bxa3 21.Bxa3 Qxa3 22.Rxf6 gxf6 23.Ng4 Rc6 24.Nxf6+ Rxf6 25.Qxf6 Qxb3 26.Kf2 Qa4 27.Qg5+ Kh8 28.Qe7 1-0

10.f4

 ここでほかによく指され手は 10.a3 で、これに対し黒は 10…Nxe5! 11.dxe5 Ne4 と指すのが良くいい勝負である。

10…Nxe5

 強制力の劣る 10…Rc8 なら白は 11.a3 Rc7 12.Qe2 g6 13.g4 と指すことができて主導権を得る。

11.fxe5 Ne4

 ここで白は積極的に指さなければならない。さもないと主導権が失われてしまう。

12.Bxe4! dxe4 13.Qg4 Rc8(13…Bg5 なら 14.Rae1、13…f5 なら 14.exf6e.p.)14.c4(すぐに 14.Nxe4 なら 14…cxd4 でc2のポーンが浮く)14…cxd4 15.Bxd4(15.exd4 は黒に 15…Bc5 16.dxc5 Qxd2 または 15…e3 16.Ne4 b5 という戦術の手段ができるので良くない)15…Bc5 16.Bxc5 Rxc5 17.Nxe4 Rxe5?(17…Bxe4 18.Qxe4 Qg5 19.Qf4 Qxe5 20.Rad1)18.Nf6+ Kh8 19.Rad1 Qe7 20.Rd7 Qc5 21.Qd4! Bxg2(21…gxf6 22.Rxb7)22.Ng4 Qxd4 23.exd4 Rg5(23…Bxf1 24.Nxe5)24.Rfxf7 Kg8 25.Rxf8+ Kxf8 26.Kxg2 Rxg4+ 27.Kf3 Rh4 28.c5 Rh3+ 29.Ke4 Rc3 30.b4 bxc5 31.bxc5 Rc2 32.Rxa7 Rxh2 33.Ke5 1-0(スミスロフ対マリオッティ、ベネチア、1974年)

******************************

2014年08月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

チェスの基本(057)

第1部

第4章 一般的な理論(続き)

21.一斉直接攻撃

 まず第一に攻撃は成功が保証されるように十分な戦力で行わなければならない。キングに対する直接攻撃はあくまで成功の確信がなければ行なってはならない。なぜなら失敗すれば自分の破滅を招くからである。

例50

 キングに対する直接攻撃の成功の好例は次の図のような場合である。

 この局面で白は単に 12.Bc2 と引いておくこともでき、それでも形勢は優勢である。しかし白は代わりに攻撃が勝ちにつながると確信してすぐにキング翼攻撃に出る方を選択した。指し手は次のように進んだ。(注 これからは実際の棋譜に基づいて解説し、チェスのマスターがたえず頭の中で考える多くの様々な読みに初学者が慣れるようにしていく。初学者が一定の棋力に達しているものとし、すべての手を完全に理解できるわけではないにしても解説の中から何かが得られるものと考える。)

12.Bxh7+ Kxh7 13.Ng5+ Kg6 14.Qg4 f5

 これが最善の受けである。14…e5 はすぐに破滅する。つまり 14…e5 15.Ne6+ Kf6 16.f4! e4 17.Qg5+ Kxe6 18.Qe5+ Kd7 19.Rfd1+ Nd3 20.Nxe4 Kc6(20…Ke8 なら 21.Nd6+ で黒はクイーンを切らなければならない)21.Rxd3 Qxd3 22.Rc1+ Kb6(22…Kd7 は2手詰みになる)23.Qc7+ のあと5手で詰む。

15.Qg3 Kh6 16.Qh4+ Kg6 17.Qh7+ Kf6

 17…Kxg5 なら 18.Qxg7+ ですぐに詰む。

18.e4 Ng6 19.exf5 exf5 20.Rad1 Nd3 21.Qh3 Ndf4 22.Qg3 Qc7 23.Rfe1 Ne2+

 黒はこのポカですぐに負けになる。しかしいずれにせよ負けは避けられなかった。例えば 23…Be6 なら 24.Rxe6+ Nxe6 25.Nd5# までとなる。

24.Rxe2 Qxg3 25.Nh7+ Kf7 26.hxg3 Rh8 27.Ng5+ Kf6 28.f4 黒投了

(この章続く)

2014年08月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(056)

第1部

第4章 一般的な理論

 布局の技法に戻る前に一般的な理論をもう少し考える方が役に立つ。そうすれば布局が試合の以降の部分との関連でもっと良く理解できるだろう。

20.主導権

 駒が最初に盤上に並べられたとき両者は同じ配置で同じ戦力である。しかし手番は白にあり、この場合の手番は主導権を意味し、ほかが互角なら主導権は有利さとなる。そしてこの有利さはできるだけ長く保持しなければならず、戦力や陣形のようなほかの有利さが取って代わるときだけ放棄すべきである。白は既に述べた原則に従って駒をできるだけ迅速に展開するが、その際可能ならどこでも圧力をかけることにより相手の展開を妨害するように努める。まずは中央の支配に努め、これがうまくいかなければ陣形上の有利さを得て相手を困らせることができるようにする。主導権を手放すのは相手の攻勢にも耐えられることが確信できるような有利な状況で戦力を得することができるときだけである。そしてついには戦力の優位を生かして再び主導権を取り戻しそれだけで勝つことができるようになる。この最後に述べたことは自明なことである。なぜなら勝つためには相手キングを攻撃から逃げ場のない状況に追い込まなければならないからである。駒が適切に展開されても出来上がる局面は特徴が異なるかもしれない。つまりキングに対する直接攻撃が可能かもしれないし、すでに有利な局面をさらに良くする場合かもしれないし、もっと長くかかっても主導権を手放す代わりに戦力を得することができるかもしれない。

(この章続く)

2014年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(055)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方(続き)

19.間接攻撃による勝ち(続き)

例49

 この局面をよく調べると黒の大きな弱点はキングが露出していることと、クイーン翼ルークがまだ戦いに参加していないことであることが分かる。実際ここで黒の手番ならクイーン翼でポーンが3対2でビショップが対角斜筋を支配しているので黒の優勢と判断できるかもしれない。

 しかし手番は白で、二通りの針路がある。すぐ見える 1.Bc4 でも 1…Rad8 2.b4 で黒の応手が難しいので白が十分かもしれない。しかし完全に黒陣を翻弄してポーンを得し優勢を勝ち取る手もある。その手とは 1.Nd4! である。実際の進行を見てみよう。

1,Nd4! cxd4 2.Rxc6 Nb4

 3.Bc4 を狙われているのでほかに指しようがない。

3.Bc4+ Kh8 4.Re6 d3 5.Rxd3

 白がポーン得で優勢である。

 これらの局面は初学者にいろいろな手筋に慣れてもらうためのものであった。強い選手になるために必須の資質である想像力を養うのにも役立つと期待している。これらの中盤戦の局面すべてで次のことに気をつけると良い。

 絶好の機会が訪れたならすべての駒が必要があれば「一丸となって」行動を起こす。そしてすべての駒が機械のような正確さで協調して行動する。

 これらの局面でこれがすべてではないとしても、少なくとも理想的な中盤戦の戦い方である。

(この章終わり)

2014年08月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

[復刻版]理詰めのチェス(24)

第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する

 自分がマスター選手の隣に座り彼が指し手につれて自分の読みを明かすところを想像してみよう。そうすれば手筋に興奮し構想が生まれてくるのを目撃する喜びに浸ることができる。釘付け、ナイトによる両当たり、二重攻撃、詰み手筋などの戦術の主題(これらはそのような機会が目の前に現れれば必ず我々でも気づくことができる)が舞台を作り上げる戦略によってどのように準備されるのかが分かる。

 本章の試合は何といっても見事な戦闘を見せびらかすものでもなければ、激烈な(時には予測不可能な)攻撃を特集したものでもない。本章の試合は一般的な名局の部類には入らないかもしれないが、戦力による鉄の支配を用いてどのように局面を作り上げることができるのかを示している。そしてカパブランカが提唱し自分でも実践して成功を収めた次の三つの偉大な原則を適用することによって何が成し遂げられるのかを示している。

 1.序盤では迅速で効率的な展開

 2.中盤では駒の連係

 3.終盤では正確で能率的な指し方

 本章の試合は実戦におけるカパブランカの原則が有効であることの素晴らしい実例である。私の本ではこのような試合こそが名局である。

第24局

 カパブランカ対マティソン戦では白は駒の展開以外何もしなかった。しかし小気味よい手筋を捻り出すにはそれで十分だった。その妙技を印象的にしているのはすべての手筋が白の有利に作用したことで、一つの狙い(窒息詰め)でさえ黒に投了を促すことになった。カパブランカの珠玉の一局である。

クイーンポーン試合(ニムゾインディアン防御)
白 カパブランカ
黒 マティソン
カールスバート、1929年

1.d4

 人気のあるキングポーン布局の基本的な発想はあらゆる機会をとらえて素早く攻撃を仕掛けることである。さまざまなギャンビットが指せるし、攻撃の筋を開けるために駒を犠牲にしてもよいし、大胆に手筋を放ってもよいし、不確かな手に身を任せてもよい。要するに詰みを目指すためなら何でもありなのである。時にはこれらの戦術がうまくいくこともある。しかしギャンビット選手は攻撃の終わりで逆の立場に立たされることが非常によくある。大きく開けた局面は一方だけでなく他方にも危険なのである。

 クイーンポーン布局で目指す理想は展開そのものである。攻撃は「第一義」ではない。展開はわざとそのために指すものではないが、不思議なことに全ての駒が能率的に展開され最も働きの良い地点にできるだけ早く置かれれば驚くべき攻撃力が備わるらしい。手筋はひとりでに生まれてくる。盤上で最大に動け支配できる地点に駒を配置するだけで大きな活動エネルギーが吹き込まれるので何とかしてそれを解放しなければならないからなのだろうか。そしてこのことを知ることによって攻撃の機が熟すまで大局観指法の達人たちは攻撃の本能を抑えるのだろうか。

 白がクイーンポーンを突いたのはできるだけ早くすべての駒を戦いに参加させる過程の始まりである。二つの駒が今や自由に参戦し、それらを解放したポーンも中央の舞台を占めた。

1…Nf6

 この展開の手の目的(駒を最適の地点につかせるという推奨される目的に加えて)は白が 2.e4 で強大になるのを防ぐことである。

2.c4

 この手は多くのことを行なっている。

 a)d5の地点に対する攻撃を開始した。

 b)c列を開けてその列を大駒が使えるようにした。

 c)クイーンの斜筋を通した。

 d)黒が 2…d5 で中原にポーンを据えるのを邪魔した。白は 3.cxd5 と応じて黒に駒で取り返させて中原にポーンを残させない。

2…e6

 キング翼ビショップの筋を開け積極的な防御を行なう意志を示した。

3.Nc3

 白の真意は明らかである。最初にクイーン翼ナイトを展開してeポーン突きを助ける意図である。

3…Bb4

 それに対して黒はナイトを釘付けにして迎え撃った。もし白が 4.e4 と来れば 4…Nxe4 と応じて取り返しを不可能にしている。

4.Qc2

 この手には二通りの目的がある。一つは 4…Bxc3+ に対して 5.Qxc3 と応じてポーンの形を乱さないようにすることと、もう一つは再び 5.e4 突きを狙うことである。

 序盤にはそれぞれの局面において「最善手」があるという考え方が広く行き渡っている。この通念はチェスのマスターはそのような最善手とそれに対する正しい応手を一つ一つ記憶しているというものである。そのような論法が見せかけであることは明らかである。何百万局もの試合が重複することなく指されてきている事実がその何よりの証拠である。

 盤上の局面を考えてみよう。本譜の手(4.Qc2)のほかに少なくとも七つの素晴らしい候補手がある。それぞれの手に熱心な推奨者がいる。それらの手とは-

 4.Qb3
 4.Bd2
 4.a3
 4.Bg5
 4.e3
 4.g3
 4.Nf3

 これらのうちどの手が最善手だろうか。誰も確かなことは言えない。しかし自分の棋風に合った局面に至る手が最善手であり、それが自分の指す手である。

4…c5

 黒も自分の棋風と性格に合った方法で防御(または反撃)を行なうことができる。黒の指した手はすぐに白の中原の支配を争っている。この手は他のことも行なっている。即ちクイーンにもっと動く余地を与え、c列を開け、ビショップに紐をつけている。

 しかし黒には同じくらい効果的な他の手もある。それらには何かしら推薦するところがあり、黒はそれらの応手から選ぶことができる。

 4…Nc6
 4…Bxc3+
 4…d6
 4…d5
 4…O-O
 4…b6

 人の好みはさまざまである。

5.dxc5

 この手は色々な理由で最強の手である。白がこのポーンを取るのにかけた手は黒が取り返すのに手をかけるので手損とはならない。5.dxc5 により生まれる素通しのd列は白に有利に働く。d1を占めることになるルークはその列にくまなく圧力をかける。そして特に出遅れdポーンを危険にさらす。

 他の手は積極性で及ばない。例えば 5.e3 なら黒は 5…d5 で捌くし、5.Nf3 なら 5…cxd4 6.Nxd4 Nc6 で白に防御の主導権がある。

5…Nc6

 黒はポーンを取り返す前に別の駒を展開させた。

6.Nf3

 このあたりになるとアマチュアは何か事を起こしたがる。そしてびっくりするような手を探し始める。この局面にはすごい手があるに違いない。すぐれたマスターは同じ状況で簡明な手を指すことで満足する。彼は戦場に駒を投入し続ければ勝つ手筋を探す必要はないことを知っている。そのような手筋は自然に局面から発生し至る所に生じる。

6…Bxc5

 この取り返しをこれ以上遅らせるのは危険かもしれない。

7.Bf4

 ナイトを釘付けにし黒に圧力をかける攻撃的な 7.Bg5 の方が普通である。しかし本譜の展開の手法も悪いことはありえない。このビショップはぬるく見えるが中央の重要な斜筋を監視し黒陣の弱点であるd6に圧力をかけている。

7…d5

 厳しく中原の所有に挑戦した。

8.e3

 白はまた落ち着いた手を指した。この手は一つのビショップを自由にしもう一つのビショップの立場を強化した。

8…Qa5

 黒は白にちょっとした弱点となる二重cポーンを生じさせる攻撃を始める機会をうかがった。そこで黒はナイトに対する行動を開始した。しかしタルタコーワは「そのような見えすいた駒捌きはカパブランカに対してはほとんど成功しない」と言っている。

 黒は代わりにクイーン翼ビショップを活動させるために何かをすべきである。例えば 8…a6 9.Be2 dxc4 10.Bxc4 b5 11.Be2 Qb6(すぐに 11…Bb7 は 12.Nxb5 がある)12.O-O Bb7 が考えられる。

9.Be2

 またもや穏やかな手である。この手は見かけよりも多くのエネルギーを秘めていて、次のような目的を果たしている。

 a)一つの駒を1段目から離して活動させている。

 b)ビショップをe2に展開して、f3に出て中原を攻撃できるようにしている。

 c)キング翼を空けて早くキャッスリングできるようにしている。

 d)キャッスリングの後1段目でルークが協力する用意をしている。

 もっと攻撃的に見える 9.Bd3 は何がいけないのだろうか。一つには 9…Nb4 で黒がナイトをビショップと交換できるからである。白は中原に影響力を持つ可能性のある大切な駒の働きを失うことになる。それではなぜ最初に 9.a3 と突いてd3へのビショップの展開を準備しないのだろうか。その答えは不必要なポーン突きに手をかけるのは序盤ではあまりにもったいないからである。駒の展開に必須のポーン突きだけを行なうべきである。9.a3 がクイーン翼の白枡を弱めるという事情もこのような戦略が不自然で無駄手であるというさらなる証明になっている。

9…Bb4

 白の古典的で簡明な展開方法と対照的に黒は相手に孤立ポーンを見舞うために序盤でビショップを3度も動かした。そのようなやり方は黒の展開が済んでいないことを考慮すれば時期尚早である。

 この手の代わりに妥当な手順は 9…O-O 10.O-O dxc4 11.Bxc4 Bd7 で、互角の局面である。

10.O-O

 これでキングが安全になりキング翼ルークが戦いの舞台である中央に近くなった。このルークはもちろん素通し列、それが全然ない場合はそうなりそうな列を占めようとする。

10…Bxc3

 このビショップは1回しか動いていないナイトと交換するために4回も動いた。1個の駒をそんなにあちこち動かすのはそもそもの戦略に誤りがあるに違いないことを示唆している。

11.bxc3

 c列の二重ポーンにもかかわらず白は次のような点で有利である。

 a)黒のナイトとビショップに対し白は働いている双ビショップを持っている。

 b)白の小駒は全て活動しているのに対し黒のビショップはまだ1段目にいる。

 c)白のルークは連結していて半素通しのb列とd列に陣取る用意ができている。

 d)白のキングは隅に安全にかくまわれているが黒のキングは野ざらしである。

 e)白のクイーンは理想的な地点に位置していて、盤端にいる黒のクイーンよりも中原に対してより影響力を持っている。

 f)中原におけるポーン交換(避けられそうにない)は攻撃の筋を開けることになる。それは展開に優る側、この場合は白に有利に働く。

 g)白は主導権を維持している。

11…O-O

 キングが安全地帯に逃れて黒の不利の一つが取り除かれた。

 代わりにビショップを展開するのは少々危ない。つまり 11…Bd7 12.Rab1(bポーンに当たっている)12…b6 13.Bd6(キング翼へのキャッスリングをできなくし 14.Rb5 Qa6 15.cxd5 exd5 16.Rxd5 でクイーンへの当たりを露出させることによってポーンを得する)という白の狙いがある。

12.Rab1

 これも普通の選手には意図が計りかねるさりげない手である。「何の役に立つのか」と彼は言うだろう。「きちんと守られているポーンを攻撃するためにわざわざルークを動かすとは。」

 確かにこのポーンは守られている。しかしそれはこのポーンを見捨てないためには動くことができないビショップによってである。いずれ黒は …b6 と突くことを強いられる。さもなくば1段目で3個の駒がお互いに邪魔をし合っているままである。しかし …b6 には問題がある。黒クイーンが孤立させられキング翼に戻ってキングを守るのを防がれる。それに加えてクイーン翼ナイトの立場がその支え(bポーン)をはずされて不安定になる。

 本譜の白の手は簡明で穏やかであるが、黒のクイーン翼に不快な圧力をかけ、普通の展開を困難にし、つけ込む余地のある恒久的な弱点を生じさせることができる。

12…Qa3

 黒はビショップを展開したいがそのためには …b6 と突かなければならない。しかし今すぐにそうするのはクイーンの退路を遮断して危険にさらすかもしれない。例えば 12…b6 13.Bd6 Rd8 14.Rb5 Qa6 15.cxd5 で白が少なくとも1ポーン得する。なぜなら 15…exd5 なら 16.Rxd5 でクイーンへの当たりが直射する。また 15…Rxd6 なら 16.dxc6 Rxc6 17.Rd5 でクイーンへの当たりと詰みの狙いでもっと悪い。

13.Rfd1!

 ルークが半素通しのd列を占めて白の展開は理想的な形で完了した。白の駒はどれも2手以上かけることなく最適な位置についている。白はすべての駒が働くまで攻撃は露ほどのそぶりも見せていない。

13…b6

 これはビショップを動かせるようにするためだが、このポーン突きでナイトの支えがなくなりその立場が弱まった。

 代わりに 13…Qe7 でbポーンを守ってもあまり役立たない。なぜなら次にビショプがクイーンのbポーンの守りを遮断せずにd7へ展開することができないからである。黒は 13…dxc4 で単純化を図ることもできない。それは 14.Bd6 で交換損になる。

14.cxd5

 いよいよ攻撃が始まった。最初の一撃は黒のポーン中原を打ち砕く。

14…Nxd5

 ポーンで取り返すのは破滅する。14…exd5 には 15.c4! が勝つ手段である。この手に対して 15…dxc4 なら 16.Bd6 でクイーンとルークの両当たりになるので黒は負けを避けられない。15…Be6 でポーンを守るのは 16.cxd5 Bxd5 17.Rxd5 Nxd5 18.Qxc6 で白がルークの代わりに2個の駒を獲得する。

15.Ng5!

 これこそマスターの一着である。露骨な 16.Qxh7# の詰み狙いは二つの真の目的を隠している。一つは黒にキング翼ポーンの一つを突かせる戦略的構想で、それにより黒の防御態勢が崩れる。もう一つは自分の白枡ビショップのためにf3の地点を空けることで、このビショップが対角斜筋を席巻することになる。

15…f5

 他には二つの手がある。

 ポーン突きを避ける 15…Nf6 は 16.Bd6 で白が交換得する。

 15…g6 は黒陣の黒枡が弱点だらけになる。

 そこで黒はfポーンを突いて詰みを避けた。しかしこの手はeポーンを弱めビショップをその守りに縛り付けることになった。

16.Bf3!

 ビショップのこの配置は平行な二つの斜筋に沿って機銃掃射のようなものすごい威力を発揮させる。

 白の主たる狙いは 17.Rxd5 exd5 18.Bxd5+ Kh8 19.Bxc6 から 20.Bxa8 で黒の戦力の大部分を削ぐことである。

16…Qc5

 クイーンが攻撃にさらされているナイトの助けに駆けつけた。他の受けでは次のようになる。

 a)16…Nde7 は 17.Bd6 Qa5 18.Bxe7 Nxe7 19.Bxa8 で白がルークを丸得する。

 b)16…Nce7 は 17.c4 Nb4 18.Rxb4 Qxb4 19.Bxa8 で白が駒得する。

 c)16…Nxf4 は 17.Bxc6 Rb8 18.exf4 で白が駒得する。

 d)16…Qxc3 は 17.Qxc3 Nxc3 18.Bxc6 Nxd1 19.Rxd1 Ba6 20.Bxa8 Rxa8 で白が駒得する。

 本譜の手の後黒が最悪の時期を乗り切ったように見える。しかし白にはナイトに襲いかかる巧妙な手段がある。

17.c4!

 このナイト当たりはポーンが釘付けになっていてナイトを取ることができないので無害のように見える。しかし 17.c4 の主眼は 18.Rb5 による攻撃を支えることにある。これで黒クイーンを追い払って 19.cxd5 とナイトを取ることが可能になる。

 ここから手筋が次から次へと現れる。

17…Ndb4

 クイーンに逆襲した。他の受けはすべて失敗する。

 a)17…Nf6 は 18.Bd6 Qa5 19.Bxc6 で黒の両方のルークが当たりになっている。

 b)17…Nxf4 は 18.Rb5!(軽妙な中間手)18…Qe7(18…Nb4 なら 19.Qd2 Qxc4 20.Rxb4 で白の勝ち)19.Bxc6 Qxg5 20.exf4 で黒はクイーンが当たりになっているのでルークを助ける暇がない。

 c)17…Nde7 は 18.Bd6 Qa5 で白はどちらのナイトを取っても良く黒が取り返した後交換得する。

18.Qb3

 白クイーンは当たりをかわさなければならないが、19.Bd6 の狙いはまだダモクレスの剣のように黒の頭上に垂れ下がっている。

18…e5

 この手は 19.Bd6 に対して他の具体策がないからだけでなく、利き筋に障害物を置いて恐ろしいビショップを抑える期待から指された。

19.a3!

 盤の片側で素晴らしい手筋が始まり、それに続いてずっと離れた他方ではクイーン捨てで頂点に達し窒息詰みに至る。

19…Na6

 他に唯一考えられるのは 19…exf4 だが白は 20.axb4 Qe7 21.Bxc6 Rb8 22.exf4 で駒得して勝負を決めることができる。

20.Bxc6

 黒が 20…Qxc6 と取り返した後は 21.c5+ Kh8 22.Nf7+ Kg8(22…Rxf7 なら 23.Rd8+ で詰みになる)23.Nh6+ Kh8 24.Qg8+! Rxg8 25.Nf7# で詰みになる。

20…投了

 黒は盤上で実際に手順を確認するのを待つまでもなくキングを倒して降参した。

 本局は洗練さと正確さで指された完璧な試合だった。カパブランカ自身のコメントは「この試合ではちょっとした手筋を少し指した」だった。

2014年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(054)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方(続き)

19.間接攻撃による勝ち

 これまでは攻撃そのものが激しくてしかも相手キングに向けられている局面を考えてきた。しかし中盤戦で攻撃が相手陣、駒さらにはポーンに向けられる場合もよくある。

 同じ強さの上手な選手同士では1ポーン得が勝ちにつながることがよくある。

 だからそのような局面の分析は非常に大切である。以下では最終的に勝つ手段としてたった1ポーンを得することを目指す攻撃の局面を二つあげる。

例48

 黒はポーンを損していて、白キングに対する激しい直接攻撃はない。しかし黒駒は非常に良い地点に位置していて動きも自由である。すべての駒をよく働かせればすぐにポーンを取り返すことができるだけでなく優勢になれる。初学者はこの局面と手順とを注意深く研究してみるのがよい。戦力を使いこなす上で適切な連係の好例になっている。

1…Ra8 2.a4

 白の最善手は 2.b3 だった。2…Nxd2 3.Qxd2 3.Ra3 と進んで黒がいずれaポーンを取り戻し常にわずかな優勢を保つ。本譜の手は黒をやりやすくさせた。

2…Nxd2 3.Qxd2 Qc4 4.Rfd1 Rfb8

 黒は 4…Bxc3 と取ればポーンを取り返すことができた。しかしそれ以上のものが得られることを見通していて、そのために白のクイーン翼に対する圧力を強めた。本譜の手には 5…Rxb2 という狙いがある。

5.Qe3 Rb4

 この手は 6…Bd4 で交換得することを狙っている。

6.Qg5 Bd4+ 7.Kh1 Rab8

 この手はナイトを取る手を狙っているので、白に交換損を余儀なくさせる。

8.Rxd4 Qxd4 9.Rd1 Qc4

 このあと黒はポーン損も回復する。

(この章続く)

2014年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(053)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方(続き)

18.ナイトが主役の攻撃(続き)

例47

 初学者はこの局面を注意深く分析するとよい。同様の局面でのビショップ切りはありふれていて、実戦ではそのような機会によくめぐり合う。指し手は次のように進んだ。

1.Bxh7+ Kxh7 2.Ng5+ Kg6

 こう逃げるのが最強である。2…Kh6 は 3.Nxf7+ でクイーンが取られ、2…Kg8 は 3.Qh5 で白の攻撃が止まらない。

3.Qg4 f5 4.Qg3 Kh6

 最終的に白が勝ち切った。この局面は例50で詳細に解説している。

(この章続く)

2014年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(112)

「Chess Life」1995年1月号(1/5)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

双ビショップの価値

 チェスを作り上げてきた無数の人たちを私に天才であると感じさせる多くの特徴の一つは、まったく異なる二つの駒のナイトとビショップが戦力として同じ価値であるということである。ビショップは本質的に長距離駒であるのに対し、ナイトは動きのややこしい短距離の乱闘家である。優劣があるとしてある局面でどちらが有利かは、その局面のまさに具体的な詳細にほとんどかかっている。ビショップの偉大な力は一方が2個を持っているときに発揮される。チェスの用語ではこれは「双ビショップ」または「ビショップ対」と呼んでいる。一般に双ビショップは開放的な局面で有利さが大きく発揮され、ほとんどの局面で何らかの有利さがある。

 ビショップ+ナイトや2ナイトに対する双ビショップの持ち前の力は、上図の双ビショップを見ることにより良く理解できる。黒がキング翼にキャッスリングしたと仮定すると、白のビショップは黒キングの周りの要所であるf6、g6、g7、h7に利いている。さらに、並んだ双ビショップは盤上の広範な地点に利いていて、それにより敵軍を麻痺させる。自陣側ではa1、b1、e1、f1;b2、c2、d2、e2;b4、c4、d4、e4に利き、黒陣側ではa5、b5、e5、f5;a6、f6、g6;g7、h7;h8に利いている。これにより白は黒側に脅威を与えるだけでなく、自陣側を安全にしている。さらに、もし白の即刻の関心がクイーン翼にあるならば、クイーン翼ビショップをc3からe3に動かすことにより、白のビショップは黒のクイーン翼にくまなく利きを及ぼす。

******************************

2014年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(052)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方(続き)

18.ナイトが主役の攻撃

例46

 白は2ポーン損になっている。だから攻撃にかけなければならない。試合は次のように進んだ。

1.Nfxg7 Nc5

 これは明らかに悪手で、単にナイトでルークを取られて攻撃が続くので白の勝ちを容易にさせた。黒は 1…Nxg7 と取るべきだった。そして次のように進んだだろう。2.Nf6+ Kg6 3.Nxd7 f6(最善手)4.e5 Kf7 5.Nxf6 Re7 6.Ne4 これで白が勝つはずである。(全指し手と解説は拙著『My Chess Career』の第11局に出ている。)

(この章続く)

2014年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(051)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方(続き)

17.ナイトのかかわらない攻撃(続き)

例45

 白はいい態勢を築いているが、可能なら黒が防御態勢を固める前に戦力得を図るのが良い。そこで白が指した手は

1.Rxh6! gxh6 2.Bxh6+ Ke7

 2…Nxh6 なら 3.Rxh6 で黒に望みはない。

3.Qh7+ Ke8 4.Qxg8+ Kd7 5.Qh7+ Qe7 6.Be8 Qxh7 7.Rxh7+ Ke8 8.Rxa7 黒投了

 少しの実戦例だったが攻撃はルークとビショップがクイーンと協力して行っていた。どのナイトも攻撃に参加していなかった。次はナイトが攻撃力の重要な役割を果たす例をあげよう。

(この章続く)

2014年08月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(141)

「Chess Life」2006年6月号(3/6)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

コーレ=ツーカートルト戦法[D05](続き)

A)…Nbd7 の戦型(続き)
1.d4 d5 2.Nf3 e6 3.e3 Nf6 4.Bd3 c5 5.b3 Nbd7 6.Bb2

A3)6…Be7 7.Nbd2 b6 8.O-O Bb7

 私の実戦(スーザン・ポルガー対ホウン、ノビサド・オリンピアード)では次のようになった。9.Ne5 O-O 10.Qf3(10.f4 もある)10…Rc8 11.Rad1 Qc7 12.Qh3(d7でナイト同士、c5でポーン同士を交換して白の黒枡ビショップの対角斜筋を通し、Bxf6 から Qxh7 で詰ます狙い)12…h6 13.f4 Ne4?(これは少なくとも1ポーン損になる)14.Nxd7 Qxd7(14…Nxd2 なら 15.Nxf8 Nxf1 16.Nxe6 で白の優勢)15.Bxe4 dxe4 16.dxc5 Qb5(16…Bxc5 なら 17.Nxe4)17.Nc4 Bxc5 18.Qg4! f6 19.Qxe6+ Kh8 20.Rd7 Rc6? 21.Qg4 1-0

 白が勝った好局もある(ハートストン対アップトン、ロンドン、1984年)。9.Ne5 O-O 10.Qf3 Rc8 11.Qh3 Nxe5(11…Ne4 12.f3)12.dxe5 Ne4 13.Rad1! Ng5 14.Qh5 g6 15.Qe2 Qc7 16.c4 f5 17.f4 Ne4(17…Nf7 18.cxd5 exd5 19.g4)18.cxd5 exd5 19.Nxe4 fxe4 20.Bxe4! Rfd8(20…dxe4 21.Qc4+ Rf7 22.e6)21.f5 dxe4 22.Qc4+ Kg7 23.f6+ Bxf6 24.exf6+ Kf8 25.Rxd8+ Qxd8 26.f7 Qd2 27.Qe6 Qxe3+ 28.Kh1 Qd3 29.Qxc8+! Bxc8 30.Bg7+ 1-0

 白の短手数の勝局もある(フィラトフ対メイヤー、フィラデルフィア、2000年)。9.Qe2 O-O 10.Ne5 Qc7 11.a3 a6 12.f4 b5 ここで白は典型的なビショップの二丁捨てを敢行した。黒にとって常に怖い手だが受かることも多い。13.Nxd7 Nxd7(13…Qxd7? の方が悪くて、14.dxc5 Bxc5 15.Bxf6 gxf6 16.Bxh7+! Kxh7 17.Qh5+ Kg7 18.Qg4+ Kh7 19.Rf3 で白の勝ちになる)14.dxc5 Nxc5? 15.Bxh7+! Kxh7 16.Qh5+ Kg8 17.Bxg7! Kxg7(17…f6 なら 18.Qg6 Rf7 19.Bh6+ Kh8 20.Qxf7)18.Qg4+ 1-0

 14…Bxc5? でも 15.Bxh7+! Kxh7 16.Qh5+ Kg8 17.Bxg7! Bxe3+ 18.Kh1 f6 19.Bh6(19.Qg6? は 19…Ne5 20.fxe5 Qxg7 で良くない)19…Nb6 20.Rf3 で白が勝勢になる。

 しかし 14…Qxc5! と指されると同じ手筋が通用しなくなる。15.Bd4 Qc7 16.Bxh7+? Kxh7 17.Qh5+ Kg8 18.Bxg7 Kxg7 19.Rf3 それは次のように黒がクイーンを捨てることにより詰みを止めることができるからである。19…Qxc2 20.Rg3+ Qg6 21.Rxg6+ fxg6 ここで黒はクイーンとポーンの代わりにルークと2ビショップを得ていて、優勢な局面になっている。白は 15.b4 Qc7 から「もっとゆっくりと」16.Rf3 と指す方が良いだろう。ここで黒は 16…Bf6? でビショップ同士を交換することができない。というのは 17.Bxh7+! Kxh7 18.Rh3+ Kg8 19.Qh5 で、ビショップが邪魔になって黒キングが(…f7-f6 のあと)f7を通って逃げることができないからである。19…Bh4 のあと白は 20.Bxg7! Kxg7 21.Qg4+ で勝つ。もちろん黒は 16…Bf6 と指す必要はない。

******************************

2014年08月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

チェスの基本(050)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方(続き)

17.ナイトのかかわらない攻撃(続き)

例44

 黒の直前の手は …e3 で、白の狙いの Ra5 を止める目的だった。その手に対しては …Qf4+ から千日手で引き分けにする。しかし白には有無を言わさぬ手があり、次のように3手詰めに仕留めた。

1.Rxa7+ Qxa7 2.Ra5 黒が何か指す 3.白が詰ます

(この章続く)

2014年08月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(049)

第1部

第3章 中盤戦での勝ち方

 ここからは私の実戦からとった勝勢の局面を少しお見せしよう。採用したのはと考えてよいものである。すなわちいくらか似た形がよく現れるかもしれない局面である。そのような局面を知っていると大変役に立つ。実際は何から何まで知り尽くすことはできない。事前の知識なしでは全然見つけることができないかもしれない正しい手をほんの少しの努力で見つけることに役立つかもしれないことがよくある。

17.ナイトのかかわらない攻撃

例43

 手番は黒でナイトとポーンを損しているので、勝ちがあるならすぐやらねばならない。そこで

1…Rdg8! 2.Rf2

 2.Qxe7 は 2…Rxg2+ 3.Kh1 Bd5 ですぐに詰まされる。

2…Rxg2+ 3.Kf1 Bc4+ Nxc4 Rg1#

(この章続く)

2014年08月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(048)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

16.クイーン対ルーク(続き)

例42

 今度はもっと難しい局面を考えよう。

 多くの選手はこの局面にだまされる。もっともそうな手は最善手ではない。その手から始めてみよう。

1.Qe5+ Kf8 2.Kg6 Rd7

 こう受けるしかない。しかし白にとっては不運なことにぴったりすぎる手で非常に難しい局面にしてしまう。3.Qe6 は 3…Rg7+ 4.Kf6 Rg6+ で引き分けになってしまう。3.Qc5+ でも 3…Ke8 4.Kf6 Rd6+! で白キングが押し戻されるので簡単には勝てない。

 局面の困難さが分かったので元に戻ろう。最善手は次のとおりである。

1.Qg5+! Kh8

 1…Kh7 は 2.Qg6+ Kh8 3.Kh6!

2.Qe5+! Kh7 最善手 3.Kg5 Ra7! 最善手

 3…Rg7+ なら 4.Kf6 で例40および例41の局面と似た局面になる。

4.Qe4+ Kg8 5.Qc4+ Kh7 6.Kf6 Rg7 7.Qh4+ Kg8 8.Qh5

 これで図40で黒の手番の局面になった。

 それではまた最初に戻ろう。

1.Qg5+ Kf8 2.Qd8+ Kg7 3.Kg5 Rf3

 ルークが黒キングから離れるならここが最善の地点である。3…Kh7 は 4.Qd4 Rg7+ 5.Kf6 で既に見た局面に似てくる。

4.Qd4+ Kf8 5.Kg6

 5.Qd6+ Kg7 6.Qe5+ Kf8 6.Kg6 でもルークを取ることができる。しかし本譜の手はこのような收局に現れる巧妙な手を示すために選んだ。白はクイーンがd8に行っての詰みを狙っている。

5…Rg3+ 6.Kf6 Rf3+ 7.Ke6 Rh3

 白はクイーンがh8に行っての詰みを狙っていた。

8.Qf4+

 これでルークが落ちる。

 以上の例で斜筋での長射程のチェックがしばしば勝ちにつながる駒捌きの要点だったことに注意して欲しい。また、クイーンとキングは異なった筋上に置かれたままのことがよくある。初学者は局面を注意深く分析して本譜に出てこなかった変化を考えてみるのがよい。

 先に進む前にこれまでの内容をもう一度復習してみるとよい。

(この章終わり)

2014年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

「ヒカルのチェス」(359)

「Chess」2014年8月号(1/1)

******************************

海外ニュース

チェコ共和国

 先月号で少し報じたように、ヒカル・ナカムラはプラハで(6月7日-10日)ダビド・ナバラを 3½ – ½ で破って2014年チェズ・チェス杯の勝者となった。両者のよく知られた戦闘精神から期待できるように、4局はどれも激闘だった。ナカムラは2回の黒番でいずれもキング翼インディアン防御を用いて、2回目では幸運に恵まれて負けを免れた。一方ナバラは黒番で準スラブ防御を用いた。たぶん番勝負の分かれ目は第2局目だった。

□H.ナカムラ
■D.ナバラ

4番勝負第2局、プラハ、2014年
準スラブ防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 c6 5.e3 Nbd7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4 b5 8.Bd3 Bd6 9.O-O O-O 10.Qc2 Bb7 11.a3 Rc8

12.Rd1

 これは現在流行しているこのメラン陣形の最新型である。本誌に以前掲載されたように2012年ロンドンでのトパロフ対カシムジャーノフ戦での 12.b4 c5! 13.bxc5 Bxf3 14.gxf3 Nxc5! 15.dxc5 Rxc5 が研究手順の成果で、捨て駒の代償が十分にあった。2013年ベイクアーンゼーでのアロニアン対アーナンド戦も負けず劣らずで、12.Ng5 c5! 13.Nxh7 Ng4! 14.f4 cxd4 15.exd4 Bc5!! で白が完敗した。

12…c5 13.Bxb5 Bxf3 14.gxf3 cxd4 15.Rxd4

 ここで形勢を眺めると白はキング翼を少し乱された代わりに戦力を得している(もちろんたった1ポーン得であるが)。しかしルークがよく働いていて、キング翼への攻撃を撃退するのに役立つかもしれない。

15…Be5

 ルークを押し戻すのは大いに納得できる。もっとも2011年バリェボでのゲオルギエフ対プレドイェビッチ戦は 15…Nd5 16.f4 N7f6 17.Qd1(17.Rc4!? の方が良いかもしれない)17…Bc5 18.Rd3 と進んだところで合意の引き分けになった。

16.Rd1 Rc5 17.Qe2 Qb8

 この手は非常に魅力的だが、17…Qc7!? の方が正確だったかもしれない。同じく 18.f4 と突いてくれば 18…Bxc3 19.bxc3 Nd5 20.Bb2 N7b6 となって、好所のナイトのおかげでポーンの代償がある程度ある。

18.f4! Bxc3 19.Bxd7 Nxd7 20.Rxd7 Bf6 21.b4!

 これがナカムラからの2回目の強力なポーン突きだった。黒は対処に大わらわである。

21…Bxa1 22.bxc5 Qc8 23.Qb5?!

 しかしこの手はナバラにポーンを取り返させ、ほとんど互角になる。代わりに 23.Rd1! が巧妙なルーク引きだった。この手に対して 23…Qxc5?! なら 24.Bd2 Qxa3 25.Qe1! Bf6 26.Bb4 で交換得になる。

23…a6 24.Qd3 Qxc5 25.Bd2 a5

26.h3

 ナカムラは急ぐことなく、d列を支配して満足である。おまけにこの手には具体的な効果があり、g4の地点を黒クイーンから奪っている。この手がなければ 26.Rb7 Bf6(または単に 26…Qh5)27.Rb5 Qc6 28.Bxa5 Qf3 で問題になるところである。

26…g6

 ナバラの希望はキングの囲いをくつろげることである。しかし 26…Bf6!? の方が良かったかもしれない。この手はd8の地点に利かし、例えば 27.Rb7 Qc6 28.Qb5 Qf3 29.Bxa5 Bh4 30.Be1 Qxh3 によって反撃が十分可能なのでほぼ均衡を保っている。

27.Rb7!

 急にaポーンが標的と化した。

27…Bf6!

 27…Qh5 は 28.Kg2 のあと適当な後続手段がないので残念ながらこれが最善の受けである。

28.Rb5 Qc6 29.Bxa5 Qf3 30.Qf1

 白はポーン得になったが、黒が暴れまわりそうなだけに明らかに勝つまではまだまだ大変である。

30…Rc8 31.Rb1 Kg7 32.Bb4 Rc2 33.Qg2 Qe2 34.Qf1

34…Qh5?

 対戦成績を五分にしたいというナバラの希望はよく分かるが、自分の陣形に照らして分不相応だった。さらには 34…Qf3 のあと白がどう指したら良いのか私には分からなかった。例えば 35.Qg2 Qe2 36.a4 なら 36…Bh4 37.Rf1 Rc4 でポーンを取り返すことができる。

35.Qd3! Rc8

 黒にとっては無念なことに 35…Ra2 には 36.Qc4 があるので、ルークを引くかさもなければe2でクイーン同士を交換しなければならなかった。

36.Kg2 Rd8 37.Qe4 Qe2 38.Rc1

 ルークは好機に7段目に飛び込む構えである。明らかに黒は自分のキングを守りながらaポーンを止めるのに苦しい戦いを強いられる。

38…h6

 この手は自分のルークを働かせた場合に Rc8 から Bf8+ が問題にならないようにした。しかしたぶん 38…Qa6 とクイーンを引いておいた方が良かっただろう。そして 39.a4 なら 39…Rb8 40.a5 h6 でなんとかaポーンをせき止めることが期待できる。

39.a4

39…Qd3?

 このあとaポーンは手がつけられなくなる。39…Qa6 も 40.Qc6 で黒がまずい。しかし規定手数にまだ達していないので 39…Rd3!? はやってみても良かったかもしれない。それなら白はクイーンとルークのどちらを突っ込ませるかを慎重に判断しなければならない。または 40.Rc7 Rd1 41.Qc4 Qxc4 42.Rxc4 Ra1 で黒ルークに絶好の位置を占めさせることになる。

40.Qxd3 Rxd3 41.a5 Rb3 42.Rc4 Rb2

 ルークが何としてもポーンの背後に回ろうとしているが、1手遅い。

43.Ba3

43…Ra2

 これはちょっとした戦術で負けになる。しかし 43…Rb8 でも 44.Ra4 Ra8 45.a6 のあと a7 から Bc5 で同じく見込みがない。

44.Ra4 Be7 45.a6! Bxa3 46.a7 1-0

*****************************

(この号終わり)

2014年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス5

チェスの基本(047)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

16.クイーン対ルーク(続き)

 初学者は 3…Rb1 4.Qe5+ Ka7 のあとどうやったら白が勝てるかを自分で考えてみるとよい。

例41

 ここでも手順はほとんど同じである。心すべきことはルークがb8に行くとたちまち詰みになること、そして黒キングはa6にもc8にも行くわけにいかないことである。

(この章続く)

2014年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(046)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

16.クイーン対ルーク

 これは最も難しいポーンなし收局の一つである。防御手段は豊富にあり、達人しか既定の50手以内で目的を達することができないだろう。(規定によれば50手以内で相手キングを詰めなければならない。ただし駒の交換があったりポーンの前進があった場合はまた1手目から始まる。)

例40

 これは黒がよく陥る局面の一つである。ここで手番は白である。黒の手番ならルークをキングから離さなければならず(理由を考えてみること)比較的簡単に召し取られてしまう。このことから分かることは主要な目標はルークを黒キングから引き離すことで、黒にそうさせるためには図の局面での手番にさせなければならない。何をしなければならないかが分かってしまえば、手段を見つけるのは容易になる。そこで

1.Qe5+

 1.Qa6 は 1…Rc7+ 2.Kb6 Rc6+ 3.Kxc6 で空詰みになってしまう(初心者は必ずこの落とし穴にはまる)。

1…Ka8 または a7 2.Qa1+ Kb8 3.Qa5

 短手数で目的を達した。第1段階はこれで終了である。次は第2段階である。ルークは白枡にしか行く所がない。さもないとクイーンのチェック一発で取られる。だから

3…Rb3 4.Qe5+ Ka8(最善)5.Qh8+ Ka7 6.Qg7+ Ka8 7.Qg8+ Rb8 8.Qa2#

(この章続く)

2014年08月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(111)

「Chess Life」1994年11月号(6/6)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

「機械的な」手の 1…g6(続き)

E 1.g3 g6 2.Bg2 Bg7 3.e4

 もちろん白には例えば 3.c4、3.d4、3.Nf3 など高級な手がいくつもある。

3…e5

 黒は 3…d6 から 4…Nf6 でピルツ防御を目指すことができるし、3…c5 でシチリア防御の態勢を目指すこともできる。

4.Ne2

 4.Nf3 の方が意欲的だが、それは既にDに出てきた。

4…Ne7!? 5.O-O O-O 6.d4

 黒はこのきわめて早いポーン突きにきちんと対応できる。6.c3 のようなもっとゆっくりした手の方がたぶん少し優勢になる可能性が高い。

6…exd4 7.Nxd4 d5! 8.Nc3 dxe4 9.Ndb5 Na6 10.Nxe4 Bd7

 中央のポーンが消え、Na6 を除く黒のすべての駒が好所に位置している。完全に互角になるのも間近である。

11.Nd4 h6!

 11…Nc6?! は 12.Bg5! が厄介なのでそれを気にすることなく …Nc6 と指せるようにした。

12.c3 Nc6! 13.Nxc6 Bxc6 14.Be3 Qe7

 ここまでの手順はG.フォリントス対L.レンジェル戦(ケチケメート、1972年)である。黒は互角にできていて、中盤戦に期待することができる。

******************************

2014年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(045)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

15.ナイトとビショップでの詰ませ方(続き)

例39(続き)

 (再掲)

 終わりの第2段階は黒キングをa8からa1またはh8に追い込んで詰ませる。この局面ではa1が最短手順になる。

10.Nb6+ Ka7 11.Bc7 Ka6 12.Bb8 Ka5 13.Nd5 Ka4

 黒キングはh1を目指そうとしている。黒にはこれを防ぐ手段が二つある。一つは 14.Be5 Kb3 15.Ne3 で、もう一つは私が本譜とした手順である。本譜の方が組織的で、すべての收局の精神に合致したキングをできるだけ活用することを用いているので、初学者が学ぶのに適していると思う。

14.Kc5! Kb3 15.Nb4 Kc3 16.Bf4 Kb3 17.Be5 Ka4 18.Kc4 Ka5 19.Bc7+ Ka4 20.Nd3 Ka3 21.Bb6 Ka4 22.Nb2+ Ka3 23.Kc3 Ka2 24.Kc2 Ka3 25.Bc5+ Ka2 26.Nd3 Ka1 27.Bb4 Ka2 28.Nc1+ Ka1 29.Bc3#

 見られるとおりこの收局はかなり手が込んでいる。大きな特徴は二つある。それはキングの密接な関与と、ビショップのいる枡と反対の色をナイトとキングの強力で支配することである。初学者はこの收局を自分で組織的に練習するのがよい。そうすれば駒の本当の力がよく分かるだろう。規定では50手以内で詰ませることが必要である。

(この章続く)

2014年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(044)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

15.ナイトとビショップでの詰ませ方(続き)

 中盤戦と收局に戻る前にナイトとビショップでの詰ませ方をやり、そのあとクイーン対ルークでの勝ち方をやっておく。

 ナイトとビショップではビショップのいる枡と同じ色の隅でだけ詰ませることができる。

例39

 この例ではa1かh8で詰ませなければならない。收局は2段階に分かれる。第1段階では黒キングを盤端に追い込む。いつもの場合のように最初は自分のキングを盤の中央に進める。

1.Ke2 Kd7

 黒はもっと手がかかるようにするために白枡の隅を目指す。

2.Kd3 Kc6 3.Bf4 Kd5 4.Ne2 Kc5 5.Nc3 Kb4 6.Kd4 Ka5 7.Kc5 Ka6 8.Kc6 Ka7 9.Nd5 Ka8

 これで第1段階は終わりである。黒キングは白枡の隅にいる。

(この章続く)

2014年08月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(140)

「Chess Life」2006年6月号(2/6)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

コーレ=ツーカートルト戦法[D05](続き)

A)…Nbd7 の戦型
1.d4 d5 2.Nf3 e6 3.e3 Nf6 4.Bd3 c5 5.b3 Nbd7 6.Bb2

 最初は遠く1983年に私を感動させて常用布局にコーレを加えさせた試合を見てみよう。その試合とは欧州チーム選手権戦のユスーポフ対スヘーレン戦で、黒がしばらくの間キング翼の展開を遅らせた。

A1)6…b6 7.O-O Bb7 8.Ne5 a6 9.Nd2 b5

 10.Nxd7 Qxd7(10…Nxd7 なら白は焦点を典型的なキング翼攻撃から転換して、黒キングがキャッスリングできる前に 11.c4 で中央を開放する)11.dxc5(これで白の両ビショップが堂々と黒のキング翼をにらむ)11…Bxc5 12.Qf3 Be7(12…d4? なら 13.Ne4! Nxe4 14.Bxe4 Bxe4 15.Qxe4 Rd8 16.Rad1 で白が優勢になる)13.Qg3(13.Qh3 なら黒は 13…h6 と応じる)13…O-O 14.Nf3 Rac8(14…h6 の方が良かった)15.Ng5! g6(代わりに 15…h6? なら白には奇異に見えるが非常に強力な 16.Nh7! がある)16.Qh4 h5 17.Rad1(17.Qd4 で …Nf6-e4 を止め、黒のナイトとビショップを縛りつけるのも面白かった)17…Nh7?(これが敗着になった。黒はクイーンを白ルークの利きからはずすべきだった)そしてここで鮮やかなクイーン切りの 18.Qxh5!! が出て短手数で勝負がついた。18…Bxg5 19.Bxg6 f6 20.f4 Qg7 21.fxg5 Nxg5 22.h4 Ne4 23.Bxe4 dxe4 24.Rf4 黒投了

A2)6…Bd6

 ここからの短い手順はコーレ=ツーカートルト戦法に非常に典型的なものである。7.O-O O-O 8.Nbd2 b6 9.Ne5 Bb7 10.f4 Ne4

 ここで白は少し有利な收局に持っていく。11.Bxe4! dxe4 12.Ndc4(ビショップを当たりにして手得する)12…Be7(1975年ブダペストでのマリオッティ対ファラーゴ戦は 12…Nxe5?! 13.fxe5 Be7 14.Qg4 b5 15.Nd6! Bxd6 16.exd6 と進んで白がはっきり優勢だった)13.Nxd7 Qxd7 14.dxc5 Qxd1 15.Rfxd1 Bxc5 16.Ba3 Bxa3 17.Nxa3 Rfd8 18.Kf2 Kf8 19.Ke1 Ke7 20.Rxd8 Rxd8 21.Rd1 Rxd1+ 22.Kxd1 白の構想は黒のビショップが立ち往生しクイーン翼で白が多数派ポーンになるた收局に持っていくことだった。白が46手目で勝った(フエンテス対フアン・アレンシビア、オルギン、1991年)。

******************************

2014年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

チェスの基本(043)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例38

 次の局面でも黒が引き分けるのに非常に苦労する。

 初学者はこのような局面を注意深く分析するとよい。多くの例がナイトとビショップの相対的な利点を真に理解するのに役立つと期待している。一般的な手法については指導者につくか実戦経験を積み重ねるのが最良である。しかし一般にこれらの收局での正しいやり方はすべての同様の收局と同じように次のように言うことができるだろう。「キングを盤の中央に、またはパスポーンの方へ、または攻撃されそうなポーンの方へ進める。そして安全が確保される限りパスポーンやポーンを迅速に突き進める。」

 具体的な手順を示すのはつまらない。收局はそれぞれ異なり、相手のやり方により違った対処が必要となる。先の局面を思い描く読みが大切である。

(この章続く)

2014年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(042)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例37

 今度の局面ではビショップを持っている方がが決定的に有利である。なぜなら盤の両側にポーンがあるだけでなく、パスポーンがあるからである(白のhポーンと黒のaポーン)。黒は引き分けにできるとしても極度の困難が伴うはずである。

(この章続く)

2014年08月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(041)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例36

 上図の局面では両者とも同じポーン数だけれども盤のそれぞれの側で数が異なっているので、ビショップを持っている方が有利であることは疑いない。キング翼では白が3対2、クイーン翼では黒が3対2になっている。白がやや有望ではあるけれども、正しく指せば試合は引き分けに終わるはずである。

(この章続く)

2014年08月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

[復刻版]理詰めのチェス(23)

第2章 クイーンポーン布局(続き)

第23局

 ブリエット対ズノスコ=ボロフスキー戦では2手目の 2…c5 突きの反撃によってc列の支配をもぎ取ったのは黒だった。その優勢が拡大しクイーン翼ルークの7段目への侵入とナイトのe4の拠点の確保に至った。結局黒はc列にルークを重ねキングを敵のポーンの間で捌いた。これによりポーン得に至り後は単純化の技法のちょっとした楽しい授業だった。

クイーンポーン試合(石垣攻撃)
白 ブリエット
黒 ズノスコ=ボロフスキー
オーステンデ、1907年

1.d4

 クイーンポーン布局はジョージ・バーナード・ショーの言葉を言い換えると「最大の安全を最大の可能性で与えてくれる。」

 白は初手で中原をポーンで占めクイーン翼の2駒を自由にした。

 白の展開の作戦概要は大体次のとおりである。

 白は少なくとも1ポーンを中原に据え維持する。

 このポーンはe5又はc5の橋頭堡のナイトを支える役割を果たす。

 ビショップは長斜筋を占めるか敵駒を釘付けにする。

 ルークは素通し又は一部素通しの列を支配する。

 クイーンは自陣に近く最下段を空けてc2又はe2に位置するのがよい。

 キングはできればキング翼にキャッスリングして安全を求める。

 基本的に白の目標は陣地の所有を図り黒を壁際に追いやることである。動き回る余地が狭まりその結果駒を効果的に捌くことが難しくなって敵は自陣を弱めることを強いられる。狭小な陣形では良い手を得ることが簡単でなくなるので敵は劣った手を指さなければいけなくなる。弱点が明るみに出るようになりそれにつけこむ好機が手筋という形となってやって来て一撃で決着がつく。

1…d5

 この手は 1…Nf6 よりも率直な手である。どちらの手も白が 2.e4 と指して中原に2ポーンを確保するのを防いでいる。本譜の手は中原での白の圧力を相殺し均衡状態を作り出している。

2.e3

 一瞬一瞬が大切な布局で奇妙な消極的な手がとび出した。白は 2.c4 と突いて黒の中原での支配を弱めるのが普通である。あるいはあまり早く手の内を見せたくなければ単に 2.Nf3 と駒を展開する。

2..c5

 そのため黒は主導権を握った。黒はこの最重要な解放の手を指した。この手はc列を開けてルークが使えるようにしクイーン翼ナイトがc6に位置してもっと働けるようにした。cポーン自身も白のdポーンを攻撃することによって中原の所有を争っている。

3.c3

 この手は 3…cxd4 に対して 4.cxd4 と応じるつもりであることを示している。そうすれば中原でのポーンの形が不変に保たれ大駒のためにc列が開けられる。

3…e6

 黒はcポーンを守らなければならない。さもないと白が 4.dxc5 と取った後 5.b4 で支えてポーン得にしがみついてくるかもしれない。

4.Bd3

 ビショップが役に立つ斜筋に展開した。そこからは中原に圧力をかけキング翼攻撃に加わる用意をしている。

4…Nc6

 このナイトにしては珍しい機会である。クイーンポーン布局ではめったにこのような好機は得られない。このナイトはc6の地点からe5とd4にかなりの影響力を与え、後に分かるように別の重要な方面にもそれは及ぶ。

5.f4

 白は5手のうち4手を使って石垣攻撃として知られる特定の態勢を築いた。布局でこんなに多くのポーンを突くのは原則の重大な侵害であることは別にしても、あらかじめ定まった駒配置による攻撃のしかけを必要とするシステムを採用したことは、攻撃の仕方の勧めをはずれ目の前の局面で要求されていることとは無関係で、適切な戦略の概念とチェスそのものの精神に反している。このような冒険が行き着くところは、対等の戦力で布陣も不明で何の弱点も抱えていない敵に対して攻撃を仕掛ける危険を背負うことである。このような状況では攻撃は時期尚早であり、撃退されて列を乱して敗走することは確実である。もしこのようなシステムがうまくいくのならば、必ず勝つ白にとっては良いだろうが一体誰が黒をもって指すだろうか。

5…Nf6

 この手は素晴らしい展開の手で、事態の進行を見守っている。黒のナイトは好所に配置されている。一方はe5とd4を見張り他方は中原の残りの2地点に目を光らせている。

6.Nd2

 あいにくなことにこのナイトの登場はこの地点かa3かである。d2ではビショップの利きをさえぎり、自身も将来の明るい見通しがない。a3では8地点でなくせいぜい4地点にしか利かないので半ナイトにしかならない。

6…Qc7

 これは大変良い手である。なぜなら大駒(クイーンとルーク)というものは素通し列かそうなりそうな列に置かれた時最もよく働くからである。

 このクイーンは大局的な狙いを伴っているので先手の展開である。白はそれを見逃したかあるいは無視した。

7.Ngf3

 これは型にはまった手で、この場合は思慮を欠いた展開である。白は石垣攻撃の根幹(ナイトをe5に据えポーンでそれを強固に支える)の遂行に夢中になっていたので、指し手ごとに次のように自問するのを怠った。「相手は直前の手で何を狙っているのであろうか。彼にはこちらの応手を無効にするようなチェックや取る手があるだろうか。」

7…cxd4!

 黒は一撃でc列をこじ開けた。

8.cxd4

 黒の手の主眼点はこの取り返し方を強要するところに現れている。白は 8.exd4 と取るわけにはいかなかった(e5に居座る有望なナイトを強力に支え続けることを期待して)。それは 8…Qxf4 と無慈悲にポーンを取られてしまう。代わりに 8.Nxd4 と取り返すのは戦線が定まる前に白が従うことにしていたシステムと相容れない。そのたくらみではナイトはd4でなくe5にいなければならず、一方d4はポーンが占めていなければならない。

8…Nb4!

 これはビショップに対するいやがらせ攻撃である。この駒の務めがなくなれば白は効果的なキング翼攻撃の作戦をたてることが決して望めなくなる。

9.Bb1

 ここは珍しい退却地点だがビショップが黒キング翼に通じる斜筋に留まりたければここに引っ込むしかない。

 白はこの後退をあまり気にしていない。10.a3 で敵ナイトを追い払いそれから自軍を再編成するつもりである。

9…Bd7

 これは落ち着いた手だが巧妙である。このビショップはこの控えめな始動からでも影響力を発揮することになる。

 黒はこれでルークをc8に回してc列の支配を強化する用意ができた。

10.a3

 白は自分のやるべきことに取り掛かる前に自分のクイーン翼全体を分断している迷惑なナイトをどかさなければならない。

10…Rc8!

 この逆襲は白の意表をついたに違いない。

 11…Qxc1 の狙いに白はどう対処するのだろうか。もし白が 11.axb4 とナイトを取れば 11…Qxc1 12.Rxa7(12.Qxc1 は明らかにだめで 12…Rxc1+ でルークを取られる)12…Qxb2(13…Rc1 で敵クイーンを釘付けにする狙い)13.O-O Qxb4 となって黒がポーン得となりそれがパスポーンになる。

11.O-O

 これでビショップがクイーンとルークに守られて取られることがなくなった。キングもこの間に隠れ家に引っ込んだ。

11…Bb5!

 ビショップが先手で絶好の斜筋を占めた。白はルークを逃がさなければならない。

12.Re1

 これは明らかに止むを得ない。12.Rf2 は 12…Qxc1 で即負けだし、12.axb4 Bxf1(続いて 13…Qxc1 の狙いがある)は交換損になる。

12…Nc2!

 両ルークに当たっているので白は選択の余地がない。白はこの恐ろしいナイトを取らなければならない。

13.Bxc2

 13.Qxc2 と取るのは 13…Qxc2 14.Bxc2 Rxc2 となって実戦と同じように黒ルークが7段目に来る。

13…Qxc2

 そして黒は敵陣の中枢部である7段目に侵入した。

 白の部隊はほとんど麻痺状態である。

 白のキング翼ルークとクイーンは黒のビショップによって動きを封じられている。

 白のビショップは全然動けない。

 クイーン翼ナイトは 14…Ne4 を防ぐためにd2にいなければならない。

 クイーン翼ルークは動けるが何の役にも立たない

14.Qxc2

 そこで黒は自分の役に立たないクイーンを黒の働いているクイーンと交換した。

14…Rxc2

 大局的な指し回しの結果黒は素通し列を完全に支配し7段目をルークで制圧することになった。ルークがc2にいることにより白陣を厳しく押さえ込む効果を発揮している。このルークは容易に追い払えないし白の駒はまだお互い邪魔をし合っているのでこれは特に厄介である。

15.h3

 15…Ng4 で別の駒がまた侵入してくるのを防いだ。

15…Bd6

 ビショップが役に立つ斜筋に展開した。

16.Nb1

 白の考えは駒を再配置して動く余地を得ることである。白の思惑は 17.Nc3 Ba6 18.Rd1 から 19.Rd2 で黒のうるさいルークを盤上からなくすことである。この手段によりビショップがいずれ動けるようになるかもしれない。

16…Ne4!

 ナイトがこの絶好の拠点に踊り込んだ。このナイトはgポーンのいかなる動きもけん制するだけでなく白の再編成のもくろみも粉砕した。白が 17.Nc3 と指せば 17…Nxc3 18.bxc3 Rxc3 で黒のポーン得になる。

17.Nfd2

 だから白は黒の強力なナイトを交換するか追い払おうとした。その後はまあまあの展開ができるかもしれない。

17…Bd3

 黒はナイトが交換されるならば別の駒が拠点のe4を占拠するという条件で白の申し出に応じた。

18.Nxe4

 白は盤上からできるだけ多くの駒をなくすしか選択肢がなかった。さもないと白は決して駒をこんがらかった状態からほぐすことができないかもしれない。前はポーン損になった 18.Nc3 はここでは 18…Nxd2 20.Bxd2 Rxd2 で駒損となってもっと悪い。

18…Bxe4

 この取り返しには 19…Rxg2+ の狙いがあるので白は 19.Nc3 とするひまがない。

19.Nd2

 ルークの利きを止めてgポーンを救ったが自分自身のビショップの利きも止めることになった。そして前のこんがらかった状態に戻った。

 残念ながら見込みのある手は何もなかった。19.Bd2 は 19…Rxb2 20.Rc1(取られたポーンの代わりに素通し列を占拠し 21.Rc8+ をねらった)20…Kd7 となって、21…Bxb1 で白がもっと戦力を得するか 21…Rc8 でルークを合わせる狙いによって白はc列を明け渡すことになる。

19…Kd7

 この手はキャッスリングするよりもずっと積極的である。盤上にこんなに駒が少なくなっては詰みの狙いはありそうにない。だからキングが戦場に出てきた。キングの力は戦力が減るに従って大きくなる。そして戦う駒になってキングは攻撃を助けるために中原に向かった。これに加えてキング翼ルークのために通路が開通した。

20.Nxe4

 白の唯一の希望は局面をどんどん整理することである。

20…dxe4

 この取り返しの後全局を見渡すと白陣の劣っていることが明らかとなる。

 ビショップはまだ展開していなくて、ルークの連絡も阻害されている。

 中原のポーン集団は完全に動けない。

 駒は全てまだ1段目にいる。

 この特定の局面の特徴を別にしても、(ここでの黒のように)7段目を支配しているルークの特別な威力を認識することは大切である。

 一つには白のまだ2段目にいるポーンを攻撃し2段目に沿って全てに利きを及ぼしそれらのポーンを守ることを難しくしている。

 もう一つには2段目から進んだポーンの背後にルークが回り絶えず圧力をかけ続けることができる。ポーンはどれほど列を進んでもルークによっていつも攻撃を受ける。

 最後にルークはキングの出口を見張ることによってそれが収局の支援に出てくるのを抑えている。

 教訓は次のとおりである。

 布局では中原、それも素通しになりそうな列にルークを移動させよ。

 中盤では素通し列を占拠しルークで支配せよ。

 収局ではルークを7段目に配置せよ。7段目に並んだ二重ルークは詰みの攻撃においてほとんど無敵である。盤上に駒がほとんど残っていない場合はルークを7段目で敵ポーンの背後に回すのが便利な活用策である。

21.Rb1

 白は 22.b4 から 23.Bb2 でついにビショップを世に出す準備をした。

 黒のルークをどかせようとするのは無駄である。例えば 21.Kf1 Rhc8 22.Re2 は 22…Rxc1+ で駒損になる。

21…Rhc8

 素通し列での二重ルークはその列で威力が2倍を超える。

 この局面での二重ルークの威力は明らに現れていて、ビショップを展開して抵抗する白の望みをはかないものにしている。白のルークはまずビショップが最下段を離れるまで同じ段を離れられない。

22.b4

 ビショップのためにb2の地点を空けた。

22…R8c3

 その計画に水を差した。23.Bb2 に対して黒は 23…Rb3 でビショップを二重に当たりにする。そして 24.Ba1 を余儀なくさせて 24…Rxa3 でポーン得する。その後は7段目にルークを重ねれば簡単に勝つ。

23.Kf1

 ビショップが段を離れた時にそれを保護するルークを守るためにキングが近寄った。チェスの言葉で言えば白は 24.Bb2 Rb3 25.Re2(1手前では不可能だった手)を意図していてすべて安全である。

23…Kc6

 弱体化した白枡に沿ってキングが収局に参加する。

 似たような状況におけるタラシュの処方箋は次のとおりである。「キングは(収局で)安全である限りできるだけ敵陣深く進出しなければならない。そうすればポーンを取ったり敵ポーンを止めたり自分のポーンを導いてクイーンに昇格させたりできる。」

 ルーベン・ファインは明瞭かつ簡潔に「キングは強い駒だから使え」と言っている。

24.Bb2

 ビショップはようやく出てくることができた。しかし手遅れではないのか。

24…Rb3

 すぐにビショップを釘付けにして白の次の手を強制した。

25.Re2

 aポーンを失わずにビショップを助けるには明らかにこの手段しかない。25.Rec1 では 25…Rbxb2 で駒損になる。

25…Rxe2

 黒は喜んでルークを交換して収局を簡明にした。黒は駒のみならずキングの働きに優っていて大局的な優勢を保っている。このキングは敵ポーンの間に分け入って大損害を与えるつもりである。

26.Kxe2

 白は駒を取り返し 27.Rc1+ Kb5 28.Rc2 で自陣の解放を狙っている。そうなればビショップの釘付けが解消され、ルークも(29.Bc1 の後で)素通し列を活用できるかもしれない。

26…Kb5

 キングが軽やかに脇へよけてチェックがかからないようにした。このキングはa4の地点に向かっていて、クイーン翼を押さえつけてからそこの白ポーンを根こぎにし始めるつもりである。

27.Kd2

 ルークとビショップが動けないので白はキングを動かすしかなかった。それもeポーンを守らなければならないのであまり遠くへは行けない。

27…Ka4

 黒は決定的な手筋に着手する前に敵ポーンも無力にする。

28.Ke2

 キング翼ポーンの無意味な動きを除いて白には他に手がない。

28…a5!

 ポーンは見れば分かるように攻撃の先鋒として何よりも優っている。ほとんどどんな障害物でも打ち破ることができる。

 黒の狙いは 29…axb4 30.axb4 Kxb4 でポーン得することである。

29.Kf2

 29.bxa5 は 29…Bxa3 でポーンを取り返された後ビショップも取られる。また 29.Kd2 は 29…axb4 30.axb4 Bxb4+ 31.Kc2 Ba3 となり、黒は駒をすべて交換して1ポーン得の形にすれば後は初歩的な勝ちになる。

29…axb4

 これが最初の戦利品である。

30.axb4

 取らないと黒のポーンがまず別のポーン、その後ビショップというように片っ端から殺害する。

30…Kxb4

 黒はルークとビショップのどちらでも取らない。そんなことをすれば白に 31.Ra1+ からビショップを動かす余裕を与えてしまう。

31.Ke2

 白は手待ちするしかない。

31…Kb5!

 ここでもキングがa列またはc列に行くと白にルークでのチェックを許してしまう。

 本譜の手で黒は白の釘付けにされたビショップに 32…Ba3 でさらに当たりをかけて駒得することを狙っている。

32.Kd2

 ビショップを救うためにキングが近寄った。

32…Ba3

 無理やり決着をつけるためにさらにビショップを当たりにした。

33.Kc2

 こう指すしかない。

33…Rxb2+!

 盤上から駒を整理してポーン収局の局面にした。ポーン得の収局を勝つにはこれが最も簡明な手段である。

34.Rxb2+

 白は取り返さなければならない。

34…Bxb2

 単純化を続けた。

35.Kxb2

 これもこの一手である。

35…Kc4

 d3を通ってキング翼のポーンを攻撃する狙いである。

36.Kc2

 その侵入を防いだ。

36…b5

 パスポーンは突き進めなければならない。白がこのポーンを止めるには見捨てられたポーンの間に黒キングを侵入させるしかないのでこれで黒の勝ちが決まった。予想手順は 37.g4 b4 38.h4 b3+ 39.Kd2 b2 40.Kc2 b1=Q+ 41.Kxb1 Kd3 42.Kc1 Kxe3 43.Kd1 Kf2 で、新しくできたパスポーンが前進してクイーンに昇格する。

37.投了

2014年08月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(040)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例35

 前図に3ポーンずつつけ加えて盤の両側にポーンがあるようにしてみよう。

 今度はビショップを持っている方が有利である。もっとも正しく指せば試合は引き分けに終わるだろう。ビショップの優位は盤の一方から他方へすばやく動くことができることに加えて盤の中央から両翼に長い利きを及ぼすことができることにある。

(この章続く)

2014年08月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本