2014年07月の記事一覧

チェスの基本(039)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例34

 次の局面で両者のポーンは盤の片側だけにあり、ナイトを持っている方にもビショップを持っている方にも有利性はない。試合は引き分けに終わるのが確実である。

(この章続く)

2014年07月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(110)

「Chess Life」1994年11月号(5/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

「機械的な」手の 1…g6(続き)

D 1.Nf3 g6 2.g3

 ここでは 2.e4 もよく指される変化である。閉鎖的な布局の方が好きな多くのGMは通常は 2…Bg7 3.d4 d6 4.Nc3 Nf6 5.Be2 O-0 6.O-O から生じる安全で棋理に合ったピルツ防御の正規戦法を好む。

2…Bg7 3.Bg2 c5

 もちろん白の融通性のある展開をまねる 3…Nf6 も誤りのない手である。黒は重要な中央のポーンを 3…d6、3…d5 または 3…e5 と突くこともできる。

4.e4 Nc6 5.d3 d6 6.O-O e5 7.c3 Nge7

 これでレーティ布局の局面になった。黒は融通性のあるキング翼ビショップのフィアンケットとキング翼ナイトの展開を遅らせたことにより中央をしっかり押さえつけている。

8.a3(A.チェルニン対Av.ビホフスキー、ソ連、1983年)

 d4 と突くのは難しいので白はクイーン翼での進攻を準備する。

8…O-O 9.b4 cxb4

 黒はクイーン翼での反撃を準備するために中央は白に増強させた。代わりに 9…b6 なら堅実だった。

10.axb4 b5! 11.Na3 Rb8 12.Be3

 ここは勝負所である。黒は 12…f5 でキング翼で行動を起こすか、12…a5! でクイーン翼でほぼ互角の態勢を確立すべきだった。どちらの場合もいい勝負である。

12…a6?!

 黒はそのどちらもしないことにより事態を白に指図され始めた。GMチェルニンはこの好機にまんまとつけ込んだ。以下の手順に対する評価記号などはチェス新報第36巻第1局でのGMチェルニンの解説を用いた。

13.d4! exd4 14.Nxd4 Bb7 15.Rc1 Re8 16.Nb3!? Ba8 17.Qd2 Nc8 18.Rfd1 Qe7 19.Nc2 Ne5 20.Na5 Qc7 21.Bf4 Bf8 22.Ne3 Nb6 23.Qa2 Rbc8 24.Nd5 Qd8 25.h4 Na4!? 26.c4 Bxd5 27.exd5 Qf6 28.Rc2! Nd7(28…Qf5!)29.Qb3 Ndb6 30.cxb5 Nc3 31.Bg5! Qh8 32.Rf1 Ne2+? 33.Rxe2 Rxe2 34.bxa6 Rc3 35.Qd1 Ra2 36.a7 Rc8 37.Nc6 Qc3 38.Qf3 Qxf3 39.Bxf3 Re8 40.Rc1 Bg7 41.Be3 Na8 42.Ne7+ Kf8 43.Nc8 Rxe3 44.fxe3 Bh6 45.Rc3 Bg7 46.Rb3 黒投了

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2014年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(038)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例33

 ナイトがビショップより価値があるのは次のような場合だけである。

 これがいわゆる「閉鎖局面」である。そしてポーンがすべて片方の翼にある(もしポーンが両翼にあればナイトの有利性はなくなる)。このような局面では黒の勝つ可能性はすごく高い。もちろん白には自分のポーンがビショップのいる枡と同じ色の枡にいるという不利も加わっている。これはよくやりやすい誤りである。一般に收局での正しいやり方はポーンをビショップのいる枡と反対の色の枡に置くことである。ビショップのいる枡と同じ色の枡に置くと、駒の価値は利き筋の枡の数によって判断できることがよくあるので、ビショップの動きがそれらによって制限されそのため価値も減少する。このことに注意を向けると一般に自分のポーンは相手のビショップのいる枡の色と同じ色の枡に置くのが有利となることが多い。特にパスポーンがキングによって支援されているならばそうである。原則は次のように述べることができるだろう。

 相手がビショップを持っているときは自分のポーンを相手のビショップのいる枡と同じ色の枡に置いておくこと。

 自分がビショップを持っているときはいつでも、相手がビショップを持っていようといまいと、自分のポーンを自分のビショップのいる枡と反対の色の枡に置くこと。

 もちろんこれらの原則は局面の状況に合わせて修正しなければならないときがある。

(この章続く)

2014年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(037)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

 アマチュア選手は一般にナイトの方がビショップより大切だと考えているようである。その大きな理由はビショップと違ってナイトは白枡にも黒枡にも行けるからである。しかしある時点に限ればナイトが行けるのはどちらかの色の枡だけであるという事実が一般に見過ごされている。一方の翼から反対の翼に行くのにナイトはずっと手数がかかる、また、次の例に見られるようにビショップはナイトを足止めすることができるが、ナイトはその返礼をすることができない。

例32

 弱い選手ほどナイトを怖がるが、強くなるにしたがってビショップの価値が分かるようになり、もちろんそれに伴ってナイトの価値の評価が下がっていくしそうなるべきである。この点でほかの多くの点のように今日のマスターは前の世代のマスターよりはるかに進歩している。それほど昔でない時代にはピルズベリーやチゴーリンのように強豪の中にもビショップよりナイトを好む者がそれなりにいたが、今日のマスターには上述のことにまったく同意しない者はほとんどいない。

(この章続く)

2014年07月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(139)

「Chess Life」2006年6月号(1/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

コーレ=ツーカートルト戦法[D05]

 今月は 1.d4 d5 2.Nf3 e6 3.e3 Nf6 4.Bd3 のあと b2-b3 突きという手順で始まるコーレ=ツーカートルト戦法について学ぼう。この戦法はベルギーのマスターのエドガール・コーレとポーランドの巨匠のヨハン・ツーカートルトの二人の有名な選手にちなんで名づけられた。ツーカートルトは19世紀の世界の一流選手の一人だった。彼は1886年の最初の公式世界選手権大会に参加していて、シュタイニッツに負けている。

 この布局は主として白の観点から見ていくことにするが、黒の立場で着想をあげたり推奨をしたりもする。

 コーレ=ツーカートルト戦法は正確な手順や変化を覚えようとするよりも、中盤戦の構想を一般的に理解することの方に基づいている。私はアリョーヒン、カパブランカ、ルビーンシュタインらの過去の偉大な選手たちに触発されて、今では20年以上これを指し続けている。

 元世界通信チェスチャンピオンの故セシル・パーディーはかつて「コーレ・システムを専門にする選手は、そうでない場合に(白番のために)かける勉強時間の約10分の1しか必要としない」と書いている。これは確かに正しくて、このシステムの大きな利点の一つである。同時にこれは活気があり複雑な試合になる。

白の基本的な作戦は何か

 白の基本的な作戦は黒キングに対してキング翼攻撃を行なうことである。普通は Ne5 のあと f2-f4、Rf1-f3-h3 と指していく。白は g2-g4 でポーン暴風を始めることさえできるが、中央が閉鎖され黒のb7のビショップが戦いに飛び込めない場合に限られる。白のやりたいことは d4xc5 と交換することによりb2のビショップの威力を解き放つことである。白は多くの場合自然に c2-c4 と突いて通常のクイーン翼ギャンビットやクイーン翼インディアン防御の局面に移行することができる。

黒の基本的な作戦は何か

 白のキング翼攻撃を迎え撃つために、黒は白のクイーン翼、通常はc列とc2のポーンに対して圧力をかけなければならない。黒は白枡ビショップ同士を交換できれば理想的である。黒の別の典型的な構想は …b7-b6 と突いてから …Nf6-e4 と指すことである。しかしこれには慎重さが必要である。局面ごとに …Nf6-e4 跳びの結果を読まなければならない。というのは局面のわずかな違いで異なる評価になることがあるからである。…cxd4-exd4 の交換は、黒の観点からすぐに正当化されるのでなければ通常は白にとって有利である。

それで評決はどうなっているか

 コーレ=ツーカートルト戦法はよく指される布局を避ける良い手段である。白はゆっくり指し始めキング翼攻撃を仕掛けようとする。黒は守勢の防御陣にならないように警戒しなければならない。

 1.d4 d5 2.Nf3 e6 3.e3 Nf6 4.Bd3 のあと黒にはいくつもの手があり、手順はあまり重要でないことが多い。それらの手順とは、いつかは …c7-c5 と突き、黒枡ビショップをf8からd6またはe7に展開し、クイーン翼ナイトをd7かc6に展開し、…b7-b6 と突いて白枡ビショップをb7に展開することである。異なる陣形のすべてを見ていこう。

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2014年07月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(036)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例31

 上の局面で白は手番であってもなくても勝つことができる。最も難しい手順を示すことにする。

1…Kh2 2.Ng4+ Kh1 3.Kf1 g5 4.Kf2 h2 5.Ne3 g4 6.Nf1 g3+ 7.Nxg3#

 いくつかの例外的な場合を見てきたので、これからはナイトとビショップのいろいろな得失と相対的な価値を分析していくことができる。

(この章続く)

2014年07月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(035)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値(続き)

例30

 次の局面で白はビショップとポーンを得していても勝つことができない。

 ルーク列ポーンの昇格枡がビショップのいる枡と反対の色で、相手のキングがポーンの前方にいるときは、ビショップはまったくの無力である。これがビショップの最大の弱点である。黒はキングを隅のあたりで動かしているだけでよい。

(この章続く)

2014年07月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(034)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

14.ナイトとビショップの相対的価値

 この問題に移る前にここで2ナイトだけでは詰めることができないということを言っておいた方が良いだろう。もちろん相手にポーンがあるようなある条件下では詰めることができることがある。

例29

 上の局面で黒キングは隅に追い詰められているけれども白は詰めることができない。しかし黒にポーンがある次の局面では

白は手番であってもなくても次のように指して勝つ。

1.Ng6 h4

 白はこのポーンを取っているわけにはいかない。上述のように引き分けになってしまう。

2.Ne5 h3 3.Nc6 h2 4.Nb5 h1=Q 5.Nc7#

 チェスのこの奇妙さの理由は明らかである。

 黒に動かせるポーンがないならば、2ナイトでは黒キングを空詰みにしかできない。

(この章続く)

2014年07月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]理詰めのチェス(22)

第2章 クイーンポーン布局(続き)

第22局

 ピルズベリー対マルコ戦はクイーン翼ギャンビットの模範局である。この試合では後にピルズベリー攻撃として知られるようになった古典的な実例が見られる。ピルズベリー攻撃はe5の拠点に据えられたナイトの威力と、そのナイトがめくるめくキング翼攻撃に果たす推進力の見事な例である。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 ピルズベリー
黒 マルコ
パリ、1900年

1.d4

 楽しみ、恐怖、流血のいずれのためにせよこの手は戦いを始める最良の手である。クイーンとビショップのための出口が開けられ、dポーン自身も中原の支配をめぐる戦いに積極的な役割を果たす。このポーンはd4の地点を占めてe5とc5の地点も見張って敵駒がこれらの地点に来れないようにしている。

1…d5

 これは白が中原で勢力を拡張するのを防ぐための最も単純な手法である。もし白が自由に 2.e4 と突くのを許されれば、中原での並んだ2ポーンで白が重要な場所で勢力的に優勢になる。

2.c4

 白は中原での黒の橋頭堡を消し去るためにポーンを差し出した。c列がふさがれないようにクイーン翼ナイトをc3に展開する前にこの手を指すことが必要である。

2…e6

 黒は 3.cxd5 に対して 3…exd5 と応じてd5にポーンを維持する用意をした。もし黒が駒で取り返すと白はその駒を当たりにし追い払い強力なポーン中原で優勢を得ることができる。

 白の申し出に 2…dxc4 と応じるのはお薦めできない方針である。黒はポーン得を維持できないのでついには中原ポーンを側面ポーンと交換したことになる。確かに本譜の手はクイーン翼ビショップの利きを制限しているがたぶん黒の本筋の防御の必要悪である。ここにクイーン翼ギャンビットの大きな威力(白の側から見て)があり、第1手から圧力をかける布局に喜びを感じる選手の大多数に人気のある理由である。

3.Nc3

 ナイトが攻撃的に展開し、中原に向かって動いて黒のdポーンに対する攻撃を強めた。

3…Nf6

 これは素晴らしい手である。キング翼ナイトを布局で最も適切な地点に展開し、d5とe4に圧力をかけ(それらの地点に対する白ナイトの影響力を無力にするため)、中原ポーンの守りを助け素早いキング翼キャッスリングを容易にした。

4.Bg5!

 この駒の展開は強力な手で、黒駒の一つを釘付けにし、5.Bxf6 gxf6(5…Qxf6 なら 6.cxd5 exd5 7.Nxd5 で白のポーン得)で黒陣のポーンの形を乱す狙いを持っている。

 奇妙なことにピルズベリーがこの手を用いて1895年のヘースティングズ大会でタラシュからみごとな勝利を得るという大きな成果を挙げたにもかかわらず、大会記録誌のためにこの試合を解説したガンズバーグの批評は次のようなものであった。「このビショップの早い出動からは良い結果が得られていない。この攻撃は、というよりもえせ攻撃はと言った方が良いだろうが、白から e5 という手がないのでフランス防御における同様の指し方とは異なっている。一般的にはこの布局における先手と後手は両者ともクイーン翼ビショップをクイーン側に置く必要がある。」

 この見解は「曇った水晶玉の占いコーナー」にた易く当てはまることになった。ピルズベリーは 4.Bg5 から始まる攻撃を用いて彼の最も輝かしい勝利のいくつかをあげた。彼の負かしたマスターにはシュタイニッツ、マローツィ、ヤノフスキー、バーン、マルコそれにタラシュがいる。この戦型を避けた他の者、(少し名前を挙げれば)ラスカー、マーシャル、チゴーリンはクイーン翼ギャンビットの他の戦型のえじきになった。この攻撃策を手厳しく批判したガンズバーグはラスカーが「奇妙な、全然棋理に合っていない展開方法」と呼んだ指し方を選んだ。その結果はチェス史上最も見事な収局の一つでピルズベリーがガンズバーグを打ち負かした。手短に言えばクイーン翼ギャンビットを用いたピルズベリーの大成功がこの戦法の大いなる威力を他のマスターに知らしめ、今日までその人気が続くことになった。

4…Be7

 これは最も簡明な手である。黒はビショップを防御に最適な地点、すなわち自陣の近くに展開した。ついでにナイトに対する釘付けも無効にしている。

5.e3

 ポーンを動かすのは序盤では控えるべきである。しかし駒が戦いに参加するのを助ける手は展開の手である。白の指した 5.e3 はキング翼ビショップの出口を開けたので展開の手である。

5…O-O

 キングが安全な場所を見つけルークが役に立つことをする用意をした。

6.Nf3

 この駒の展開で白のナイトは中原の4地点すべてに圧力をかけるようになった。キング翼ナイトはe5の地点を橋頭堡として使うことをもくろんでいる。そこにしっかりと据えられればナイトは黒陣を完全に締め付けることになる。

6…b6

 この試合が指された当時は、特に反対翼への展開が閉ざされている時にはビショップをb7に展開するのが自然に思われていた。しかしビショップの窮状は他の問題と関連していて、そちらの問題を先に解決しなければならない。

 6…Nbd7 の方が良い手で、…c5 又は …e5 で白の中原に対するポーン突きを助けるのである。このナイト跳ねは白がキング翼ナイトをe5に据え付ける野心も抑止する。

7.Bd3

 ここはビショップの理想的な地点である。長斜筋を支配し黒のhポーンに狙いをつけている。このポーンはすぐに危険というわけではないが砲火の射線に位置しているのは確かである。

7…Bb7

 フィアンケットしたビショップで黒は対角斜筋を支配するつもりである。しかしピルズベリーは次の手で黒の態勢の弱点(この時点において)をあばいた。

8.cxd5!

 白はポーンを取り除き黒に4通りのいずれかで取り返させる。しかしそのどれもが十分でない。

8…exd5

 黒は中原にポーンを維持するのを望んだ。しかしこのポーンは自分のクイーン翼ビショップの利きをふさぎ、対角斜筋で何か有効なことを遂行するのを防いでいる。

 黒は代わりに駒で取ることができた。しかしそれは最終的に中原を明け渡すことになる。白はその駒を e4 で立ち退かせ中原の戦略地点全部を支配し続ける。

9.Ne5!

 これが有名な「ピルズベリー攻撃」の主眼となる手である。このナイトは絶大な威力を発揮する地点に居座る。その攻撃は四方八方に及び、クイーン翼だけでなくキング翼にも影響する。

9…Nbd7

 このナイトは可能なことをしている。展開を行ない、白のナイトと戦うことを意図し、10…c5 突きで中原の支配を争うことを支援する用意をしている。

10.f4

 このポーンはナイトをしっかり支えてその地位を強化しただけでなく、黒からの駒交換を思いとどまらせている。10…Nxe5 なら 11.fxe5 と取り返して大駒による攻撃のためにf列がずっと先まで素通しになる。駒を取り返したポーン自身も黒のキング翼ナイトに当たっていて、強力な守備位置から追い払う。

10…c5

 このクイーン翼での行動は早過ぎるか遅過ぎるかのどちらかである。黒はクイーン翼で攻撃をかけたがっている。…c4 と突くことになればクイーン翼で3対2の多数派ポーンになる。黒が軽視したのはキング翼で白の始めることのできる攻撃の速さと厳しさだった。この攻撃はより速く、そしてクイーン翼での黒のいかなる戦闘も上回る戦力で襲いかかる。黒は駒の交換を図り中原で反撃することによって白の攻撃からその戦力の一部を奪わなければならなかった。一つの可能性は 10…Ne8 11.Bxe7 Qxe7 12.O-O Nxe5 13.fxe5 f6 である。これは防御における二つの重要な原則にかなっている。

 駒交換は凝り形を楽にする。

 側面への攻撃に対しては中原での戦いで応戦するのが最良である。

11.O-O

 この手は防御策(キングは避難させるべきである)だが、ルークをすぐに部分素通しのf列で働かせるのが本質である。

11…c4

 この手はクイーン翼の多数派ポーンを確定させる意図である。これは収局のためには推奨される戦略だが黒はまだ中盤戦を乗り切っていない。

 11…c4 と突く手は戦略的に誤りである。これは白のdポーンに対する圧力を取り去り争点を解消している。黒がdポーンを取り白の中原を乱す選択肢を持っている限り白が中原を安定させることは長い間難しい。そして中原が安定するまで白のキング翼攻撃の成功はおぼつかない。

 教訓は明らかである。中原でのポーンの形を柔軟に保て。中原ポーンを取る選択肢を残しておけ。

12.Bc2

 ビショップは退いたが黒キングの側に通じる斜筋のにらみはゆるめない。

12…a6

 13…b5 と 14…b4 とから始まるクイーン翼ポーンの突進を準備した。

13.Qf3

 白は重砲を繰り出した。白は 14.Nxc4 dxc4 15.Qxb7 でポーンを得するけちな狙いには関心がない。なぜなら見事に中央に配置されたナイトを惨めなビショップと交換することはほとんど引き合わないからである。白がクイーンを動かした目的はキングに対して直接攻撃を始めるためである。白の狙いを防ぐために黒はキングの近くのポーンのいくつかを動かすことを迫られる。このポーンの形の変化はポーン構造をゆるめキングの防御態勢に修復不可能な弱点を作り出す。

13…b5

 マルコはピルズベリーが取るつもりのないcポーンを守って、クイーン翼での反撃を続行した。黒のここまでの3手が白枡をポーンで埋めクイーン翼ビショップの動きの不自由さをさらにひどくしたことに注意されたい。

14.Qh3!

 この手は 15.Nxd7 Qxd7(15…Nxd7 は 16.Qxh7# でもちろんだめである)を狙っていてこの後は勝ち方が三通りある。

 a)16.Qxd7 Nxd7 17.Bxe7 で白が駒得する。

 b)16.Bxh7+ Kh8(16…Nxh7 は 17.Qxd7 で白の勝ち)17.Bf5+ で白が黒クイーンを取る。

 c)16.Bf5 Qd8 17.Bxf6 Bxf6 18.Qxh7#

 「これらはどれも非常に面白い」と読者は言うかもしれない。「しかし白はどのようにしてこの一連の手を考え出すのか。そもそもどのように手筋の最初の手を見つけ出すのか。」

 よろしい。それでは白の思考の道筋を追ってみよう。

 白はクイーンとビショップで黒の急所のhポーンを攻撃している。

 もしこのポーンがキングでしか守られていなければ白はそのポーンを取って詰みを宣言することができる。

 しかしこのポーンには別の守り駒、ナイトがいる。

 このナイトを取り去ってはどうだろうか。

 それはうまくいかない。別のナイトで置き換わるだけである。

 他のナイトの方を取り除いてはどうだろうか。そのナイトがなくなれば陣形全体が崩壊するのではないだろうか。

 白がいったんこの方向で考えて手筋の最初の手を見つければ後はおのずとひらめいてくる。実際手がかり、即ち詰みを防いでいるナイトを守っているナイトを取り除くことに気づけば白は好きなように勝つことができる。

14…g6

 黒は単にポーンを突くだけで詰まされるのを避けた。手筋による詰みをこんなに簡単にかわされるならば、白は一体何を成し遂げたのだろうか。

 確かに白は詰みを見舞わなかったがその狙いで真の目的を達成することができた。それは敵キングの回りのポーンの配列を乱すことである。このポーンの形の変更は防御態勢全体を弱体化させる。本譜の黒の手の後ポーンによる守りを奪われた黒のキング翼ナイトは3個の駒で守られているにもかかわらず格好の攻撃目標となっている。

 黒には他にどんな受けがあっただろうか。14…h6 は 15.Bxh6 gxh6 16.Qxh6 Ne4 17.Rf3(18.Rg3+ Nxg3 19.Qh7# の狙い)17…Ndf6 18.Rh3 で白が勝つ。また 14…Nxe5(キングの回りのポーンを動かすのを避けるため)は 15.Bxf6(16.Qxh7# の狙い)15…Ng6 16.Bxe7 Qxe7 17.f5 Nh8(17…Nh4 なら 18.f6 gxf6 19.Qxh4)18.f6 で黒は詰みを防ぐためにクイーンを捨てなければならない。

15.f5!

 ポーンは攻撃の素晴らしい武器である。このポーンは 16.fxg6 によって黒ポーンの非常線を破ることを狙っている。この取りで白ルークの利きが黒ナイトに当たるようになる。ルークを重ねれば当たりもきつくなる。

15…b4

 明らかに 15…gxf5 は問題外である。白はクイーンでもルークでも取り返すことができどちらにしても望外の成果となる。

 黒の期待はナイトに対する当たりで白の注意をキング翼の事態からそらすことである。ほんの少しの間でも白に攻撃を遅らせることができれば黒はまだ戦えるかもしれない。例えば白が慎重になってナイトをe2に引けば黒は 15…Ne4 で白の予定を混乱させることができる。

16.fxg6!

 黒陣に切り込んだ。ルークの攻撃範囲が延び利きがf列全体に及んでいる。一方ビショップの攻撃もまっすぐにキングまで及んだ。

16…hxg6

 変化から片付けよう。

 16…bxc3 なら 17.Bxf6 Nxf6 18.Rxf6 fxg6(18…Bxf6 は 19.Qxh7#)19.Bxg6 hxg6 20.Rxg6# で詰みになる。

 16…fxg6 なら 17.Qe6+ Kh8 18.Nxd7 Nxd7(18…Qxd7 は 19.Bxf6+ から 20.Qxd7)19.Rxf8+ Nxf8 20.Qe5+ Kg8 21.Bxe7 で白が勝つ。

17.Qh4!

 砲火をキング翼ナイトに集中させた。このナイトの立場は守ってくれるポーンを失って弱体化している。

17…bxc3

 黒はナイトを取った方が良いだろう。代わりに 17…Nxe5 は 18.dxe5 bxc3 19.exf6 Bd6 20.Qh6 で決まる。

 白が次の手を指す前に白の攻撃目標であるf6のナイトを見てみよう。このナイトはポーンがg6に進まなければならなかったためにその保護を失ったがまだ取られずに済んでいる。そのわけはこのポーンを攻撃している全ての駒に対して守り駒があるからである。実際白が 18.Bxf6 Bxf6 19.Rxf6 Qxf6 20.Qxf6 Nxf6 としてみてもルーク損になるだけである。だから直接的な攻撃はうまくいかない。ということは正解は間接的な手段にあるに違いない。白はナイトの守り手の一つであるポーンをおびき出してある。他の守り手も失くせないだろうか。それができるのである。

18.Nxd7

 これでナイトを支えている土台の一つが取り払われる。

18…Qxd7

 そしてこの取り返しでもう一つの守り手が引き離された。厳重に防御された目標を守備駒を取り除くことによって包囲する手法に注意されたい。この場合ナイトの守り手の二つが消え去った。一つは物理的に取り除かれもう一つは取り返さなければならないのでおびき出された。

 黒は 18…Nxd7 でも受からなかった。19.Bxe7 Qa5 20.b4(この手は 20.Bxf8 より速い)20…cxb3e.p. 21.axb3 Qb6 22.Rf3 から 23.Rh3 ですぐに詰みになる。

19.Rxf6!

 これは黒がこのルークを取ることができないので 19.Bxf6 より強い手である。

19…a5

 19…Bxf6 なら 20.Bxf6 で 21.Qh8# の狙いが防げない。

 黒の本譜の手は 20…Ra6 の準備で、gポーンの守りを助け、ことによったら白ルークを追い払う意図である。

20.Raf1

 ルークを重ねて次のように新たに勝ちへの二つの狙いを定めた。

 21.Bxg6 fxg6 22.Rxg6#

 21.R1f3 の後 22.Rh3 から 23.Qh8#

20…Ra6

 黒はルーク交換を誘って白駒の一つを攻撃からそらすことを期待した。それでも白は勝てるだろうが手順は注意を要する。次のようになるだろう。21.Rxa6 Bxg5 22.Qxg5 Bxa6 23.Rf6(すぐに 23.Bxg6 は危険でかえって負けるかもしれない)23…cxb2 24.Bxg6 fxg6 25.Rxg6+ Kf7 26.Rg7+ Ke8 27.Qe5+ Kd8 28.Qb8+ Bc8 29.Rxd7+ Kxd7 30.Qxb2

 しかしピルズベリーは動じなかった。彼はみごとなまでの一貫性で攻撃の主旨を実行に移し、防御戦を踏み越え防御態勢を弱めたgポーンをせん滅した。

21.Bxg6!

 論理と詩的な正当性によればこのポーンは破壊しなければならない。

21…fxg6

 白からの1手詰みを防いだ。

 ピルズベリーはここで次のような6手の即詰みを披露した。22.Rxf8+ Bxf8 23.Rxf8+ Kxf8 24.Qh8+ Kf7 25.Qh7+ Kf8(25…Ke8 なら 26.Qg8#、25…Ke6 なら 26.Qxg6#)26.Qxd7 何でも 27.Bh6+ Kg8 28.Qg7#

 何よりもまずこの試合はチェス界に攻撃の手段としての大局観に基づいた布局であるクイーン翼ギャンビットの素晴らしい潜在力を知らしめた。キング翼での襲撃は速度と力で実行された。それは危険をはらんだキング翼ギャンビットから引き起こされる攻撃と異なりあくまで棋理に合った陣立てに基づいている。

2014年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(033)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

13.見合い(続き)

例28

 次の局面は防御の手段としての見合いの真価の素晴らしい証明である。

 白はポーンを損していて負けそうである。しかし以下のように指せば引き分けることができる。

1.Kh1!

 このポーンの配置では白は実見合いや近接見合いの手段で引き分けにすることができない。だから遠方見合いをとる。事実 1.Kf1(実または近接見合い)1…Kd2 2.Kf2 Kd3 で、f3に自分のポーンがあるために生存に必須の側面見合いをとり続けることができない。本譜の手のあとは

1…Kd2 2.Kh2 Kd3 3.Kh3! Ke2 4.Kg2 Ke3 5.Kg3 Kd4 6.Kg4

でポーンを当たりにして黒に 6…Ke3 と指させて 7.Kg3 と戻ることができ、つねに見合いを保つことができる。

 最初の局面に戻って

1.Kh1 g4

 2.fxg4 と取ると 2…e4 で負けるので白は次のように指す。

2.Kg2 Kd2

 2…gxf3+ なら 3.Kxf3 から 4.Ke4 で引き分けになる。

3.fxg4 e4

あとは両者が単純にクイーンを作って引き分けになる。

 キングとポーンの例に戻れば、そのすべてで見合いが最高に重要なものであることに気づくだろう。実際ポーンの位置自体で勝ちが決まってしまう場合を除いてキングとポーンのほとんどの收局でそうである。

(この章続く)

2014年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(032)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

13.見合い(続き)

例27(続き)

 上記の手順は比較的単純だった。しかし黒にはもっと対処の難しい別の手順がある。最初からやってみよう。

(再掲)

1.Ke2 Kd8

 ここで 2.Kd3 なら 2…Kd7、または 2.Ke3 なら 2…Ke7 で、どちらも黒が見合いを取る(両方のキングが正面に向かい合い、隔てる枡の数が奇数のとき、最後に指した方が見合いを取っている)。

 白は勝つためにはキングを動かさなければならない。ほかに行ける地点はf3だけだが、そこが正解である。だから相手がいわゆる手待ちをした場合、キング同士を1列または1段空けてキングを動かさなければならないことが分かる。そこで

2.Kf3 Ke7

 ここで白がキングを前進させるのは悪手となる。なぜなら黒はキングを白キングの正面に持ってくることにより見合いを取るからである。黒のこの手に対し同様の手を指すのは白の番である。すなわち

3.Ke3

 これで最初の手順の局面になった。初学者は見合いのいろいろな例でキングの動きに慣れるのが良い。それが勝ちと負けとを分けることになることがよくある。

(この章続く)

2014年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(109)

「Chess Life」1994年11月号(4/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

「機械的な」手の 1…g6(続き)

C 1.c4 g6 2.Nc3 Bg7 3.g3 d6

 ここでの「機械的な」手は 4.Bg2 で、黒には 4…c5、4…e5、4…Nf6 など広範な作戦がある。

4.d4!?(L.リュボエビッチ対G.カスパロフ、テッサロニキ・オリンピアード、1988年)

 白は 4…Nf6 のあとキング翼インディアン防御に転じる用意ができている。しかし世界チャンピオンは布局を断固としてキング翼ビショップフィアンケット防御として扱うことにした。

4…c5!? 5.Be3?!

 このぎこちない守り方では優勢につながらない。GMカスパロフは次のような変化を考えていた。1)5.Nf3 Nc6 6.d5 Na5 2)5.d5 Bxc3+ 6.bxc3 Qa5 3)5.dxc5 Bxc3+ 6.bxc3 dxc5 7.Qxd8+ Kxd8 8.Be3 Nd7 そしてどの場合も「形勢不明」としていた。

5…cxd4! 6.Bxd4 Nf6 7.Nd5?!

 黒はすぐに中央での影響力を増すことになる。GMカスパロフは 7.Bg2 Nc6 8.Nf3 O-O 9.O-O が白の最善手で互角と考えていた。

7…Nbd7 8.Nf3 O-O 9.Bg2 e5! 10.Bc3

 代わりに 10.Nxf6+ Nxf6 11.Bc3 Ne4! 12.Qb3 Be6 でも黒がはっきり優勢である(カスパロフ)。

10…Nxd5! 11.cxd5 Nc5 12.O-O

 黒は …f5 からキング翼での指し方が明白なので疑いなく優勢である。これに対して黒の唯一の弱点(d6)に対する攻撃の見通しは始まったばかりである。さらに、白のクイーン翼ビショップの位置がひどいので、黒にはクイーン翼での主導権を得る可能性さえある。GMカスパロフはここでの最強手として 12…b5! 13.b3 a5 14.Nd2 f5! をあげて両翼で黒が優勢としている。このあとの手順の完全な解説は『チェス新報』第46巻第8局に出ている。

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2014年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(031)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

13.見合い(続き)

 単純な見合いのすべてで両者のキングが同じ筋にありその間の枡が偶数ならば手番の方が見合いを取ることになる。

例27

 この局面には見合いの計り知れない有利さが表れている。局面は非常に簡素で、初心者にはたぶんまったくの互角と見えるだろう。しかしそうではなく、手番の方が勝つ。注意点は両方のキングが正面に向かい合い、その間の枡が偶数であるということである。

 このような局面での正しい勝ち方はまずキングをまっすぐ前進させることである。

1.Ke2 Ke7 2.Ke3 Ke6 3.Ke4 Kf6

 ここで白は 4.Kd5 で自由にキングを進めることもできるし、4.Kf4 で黒キングの針路をふさぎ見合いを保つこともできる。前者は手数を数えるだけで引き分けになることが分かるので、白は後者のように指す。

4.Kf4 Kg6

 4…Ke6 なら 5.Kg5 で白が勝つ。

5.Ke5 Kg7 6.Kf5 Kh6 7.Kf6 Kh7 8.Kg5

 あとは黒のhポーンを取って白の勝ちになる。

(この章続く)

2014年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(030)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

13.見合い

 両者がキングを動かさなければならず、一方が下図のような局面で相手のキングを強制的に動かさせてこちらの進路を空けさせることができるとき、見合いで有利であるという。

例26

 この局面で白が次のように指したとする。

1.Kd4

 ここで黒は 1…Kd6 と指して白キングの行き先をふさぐこともできるし、望むなら 1…Kf5 と指すことによりやり過ごすこともできる。注意点はお互いのキングが直接向かい合っていて、キング同士の間の枡が奇数、この場合は1、であることである。

 見合いは上図のように実正面見合い、または近接正面見合いと呼ばれる形の場合もあるし、次図のように

実斜め見合い、または近接斜め見合いと呼ばれる形のこともあるし、さらに

実側面見合い、または近接側面見合いと呼ばれる形のこともある。

 実戦ではどれも同じことである。キングは必ず同じ色の枡の上にいて、キング同士を隔てている枡は一つだけで、最後に指した方が「見合いを取っている。」

 それぞれの図でキング同士を縦、斜め、横に引き離せば遠方正面、斜め、側面見合いになる。

 見合いの問題は非常に重要で時にはいくらか複雑な形になることがあるが、どれも数学的に解決することができる。しかし当面は最も単純な形を考えればよい(既出のキングとポーンの收局の分析ではいくつかが近接見合いの例になっていた)。

(この章続く)

2014年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(138)

「Chess Life」2006年4月号(5/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御スベシュニコフ戦法[B33](続き)

 それではちょうど6手目から始まる「傍流手順」のいくつかを分析しよう。

戦型A)
6手目での傍流手順

A1)6.Nde2

 ここで 6…Bc5 のあと …Qd8-b6 を狙って黒がすぐ良くなる。7.Ng3 d6 8.Be2 Be6 で …d6-d5 を用意する。

A2)6.Nxc6 bxc6

 この交換は黒が中央を強化するのに役立つだけである。7.Bg5 のあと白は 7…Rb8! 8.Qc1 Qb6 9.Rb1 Bb4 ですぐに苦戦に陥り、釘付けのために戦力損が避けられない。

 8.Bxf6 Qxf6 9.Bc4 Rxb2 10.Bb3 Bb4 でも良くならず黒が明らかに優勢だった(アルネ・メルグレン対アレクサンドル・アリョーヒン、エーレブルー、1935年)。

 7.Bc4 Bb4 8.Bg5 と指す方が良いが、8…h6 9.Bh4 Qa5 で黒が好調である。

A3)6.Nf3

 もし黒がこの種の局面で消極的に指せば、白はd列に圧力をかけることにより陣形的にはっきり優勢になる。これが黒がすぐに精力的に指さなければならない理由である。6…Bb4 7.Bd3(7.Bc4 Nxe4 8.Qd5[または 8.Bxf7+ Kxf7 9.Qd5+ Kf8 10.Qxe4 d5]8…Nd6 は白がもっと悪い)7…d5 8.exd5 Nxd5 9.Bd2 そしてここで 9…Nxc3 10.bxc3 Be7

A4)6.Nb3

 ここでの黒の作戦は戦型A3)と同様である。すなわちc3の白ナイトを釘付けにし …d7-d5 と突いていく。6…Bb4 7.Bd3 d5 8.exd5 Nxd5 9.Bd2 スベシュニコフ自身はここで 9…Bxc3 10.bxc3 O-O 11.O-O f5 を推奨し黒が少し優勢としている。

 シュレヒター対ラスカーの世界選手権戦(1910年)第9局では黒が 9…Nxc3 10.bxc3 Bd6 と指した。白は 11.Qh5 と応じて黒がキング翼にキャッスリングするのを止めた。11…Qc7 12.O-O Be6 13.Bg5 黒のクイーン翼キャッスリングを止めた。13…h6 14.f4 exf4 15.Rae1 ここで黒は意表の手を指した。15…Kd7(15…O-O なら白は 16.Bxh6 gxh6 17.Qxh6 Rfe8 18.Bh7+ Kh8 19.Be4+ で少なくとも強制的に引き分けにできる)16.Bf5!? Raf8?(黒はここで 16…Qb6+ 17.Kh1 g6 を逃した。そのあと 18.Bxe6+ fxe6 19.Qxg6 hxg5 20.Qxe6+ Kc7 21.Qf7+ Kb8 22.Nd4 で、犠牲にした戦力の代償が白に十分あるとは思えない)17.Bxf4 Bxf4 18.Nc5+ Kc8 19.Bxe6+ fxe6 20.Nxe6 面白い試合である。

A5)6.Nf5

 この手には陣形上の狙いがある。つまり Nf5-e3 で、…d7-d5 で出遅れポーンを解消する黒の夢を止める。しかし黒にとってはそれをすぐやる好機である! 6…d5 7.exd5(7.Nxd5 Nxd5 8.exd5 Bxf5 でナイト同士の交換もするのは白のためにならない)7…Bxf5 8.dxc6 Qxd1+ 9.Nxd1 bxc6 10.Ne3 Bg6 11.Ba6 Rb8 もっと複雑で危険なのは 8…bxc6 9.Qf3 Qd7(9…Qc8 10.Ba6! Qxa6 11.Qxf5 はもっと悪い)10.Bg5 Bb4(10…e4 が面白かった)11.Bxf6 gxf6 12.Bd3 Bxc3+ 13.bxc3 Bxd3 14.cxd3 Qe6 15.O-O O-O 16.Rae1(ジュラ・サクス対ジョン・フェドロウィッツ、ドバイ・オリンピアード、1986年)ほとんどの布局のマニュアルはこの局面を互角と評価しているけれども私は白が少し良いと思う。

結論

 本稿は白の初手の 1.e4 に対して黒の激しい武器を探している選手を対象にした。今回は 6.Ndb5(これは 5…e5 に対する白の最善手である)以外の白のすべての手を取り上げた。

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2014年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

チェスの基本(029)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

12.どちらのポーンが先にクイーン昇格するかの見分け方

 両者のポーンが自由に進めるとき、またはそうなるとき、手数を数えることによりどちらが先にクイーン昇格できるかを見分けることができる。

例25

 この局面では手番の方がつねに勝つ。

 最初にすべきことは手数を数えることにより相手のキングがこちらのパスポーンのクイーン昇格を止めるのに間に合うかどうかを見極めることである。この場合のようにそれができないときは、どちらのポーンが先にクイーン昇格するかを見極めることが大切である。この場合手数は同じだが、先に最終段に到達したポーンがクイーンに昇格すると相手のできたばかりのクイーンを取ることができる。ということで

1.a4 h5 2.a5 h4 3.b6 axb6

 ここでちょっと読みが必要になる。白は黒ポーンを取ることができるが、そう取るとポーンがクイーンに昇格したときに黒ポーンがクイーンに昇格する枡に利いていない。だから取らずに次のように指す。

4.a6 h3 5.a7 h2 6.a8=Q で白の勝ち。

 初学者はこのような単純な收局に数多く慣れて、手数を数える習慣を身に着け先に目的を遂げることができるかどうかを容易に知ることができるようにするのが良い。本だけでは指し方を学ぶことができないということに再び注意を喚起しなければならない。本は指針として役立つだけで、残りは経験によって学び取らなければならない。もし同時に先生についてもらえるならば、ずっと速く学ぶことができるだろう。

(この章続く)

2014年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(028)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

11.パスポーンの作り方

 次の例24の局面のように3ポーンまたはそれ以上のポーンが対峙しているときは、いつもどちらかにパスポーンを作る可能性がある。

例24

 上の局面でパスポーンを作る手段は真ん中のポーンを突くことである。

1.b6 axb6

 1…cxb6 なら 2.a6 と突く。

2.c6 bxc6 3.a6

 そして黒ポーンより白ポーンの方がクイーンへの昇格枡に近いので白が勝つ。そもそも黒の手番だったとしたら黒は次のように指す。

1…b6 2.cxb6 cxb6

 白ポーンの方が黒ポーンよりクイーンへの昇格枡に近いので、黒がパスポーンを作ろうとするのは賢明でない。

3.axb6 axb6

 そして試合は適切に指せば引き分けに終わるだろう。初学者は自分で確かめてみるといい。

(この章続く)

2014年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(027)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則(続き)

10.古典收局

例23

 この局面で白の最善の防御策はポーンをh2のままにしておくことである。このポーンが前進するとたちまち黒の勝ちが容易になる。一方黒が勝つための作戦は(白がポーンを前進させないと仮定する)、3段階に分かれる。第1段階はポーンをそのままの位置に保つと同時にキングをh3に持ってくることである(これが非常に重要なわけは最後に白キングの位置によって最後尾のポーンを1枡突くか2枡突くかを決められるようにすることが勝つために必須だからである)。

1.Kg3 Ke3 2.Kg2

 2.Kg4 なら 2…Kf2 3.h4 g6 で白の勝ちになる。

2…Kf4 3.Kf2 Kg4 4.Kg2 Kh5 5.Kg1 Kh3

 第1段階が完了した。

 第2段階は短くて、hポーンをキングの後ろまで突き進めるだけである。

6.Kh1 h5 7.Kg1 h4

 第2段階はこれで終わりである。

 第3段階は白キングがh1にいるときにgポーンを …g3 と突くタイミングを計ることである。この例の最初に述べたように白キングの位置によってgポーンを1枡突くか2枡突くか決められることがいかに必要かがここで明らかになっている。この場合白の手番なので、白キングが隅にいるようにgポーンは2枡突くことになる。しかしもし黒の手番なら白キングがg1にいるのでgポーンを1枡だけ突くべきである。

8.Kh1 g5 9.Kg1 g4 10.Kh1 g3 11.hxg3

 11.Kg1 なら 11…g2 と突く。

11…hxg3 12.Kg1 g2 13.Kf2 Kh2

 これで黒の勝ちである。

 初学者が学ぶようにすべきことはこの分析の仕方にある。そうすればどんな局面を読む際にも論理的な筋道に従うようになる。ここであげた例は3段階に分けてそれぞれの要点を説明するのが容易なので練習に最適である。

 次の主題は単純な見合いである。しかしその前に次の二つのことに注意を向けて欲しい。

(この章続く)

2014年07月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

世界のチェス雑誌から(180)

「The British Chess Magazine」2014年6月号(1/1)

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チェスの質疑応答

IMゲーリー・レーン

白 チャオ・ツォン
黒 池田惇多

O2Cドーバール・カップ、キャンベラ、2014年
シチリア防御カン戦法 [B42]

1.e4 c5 2.Nf3 e6

 この陣形に対する関心の高まりの理由について最近二、三のプロ選手に聞いてみた。すると 3.Bb5+ の人気のせいでドラゴンやナイドルフを目指す 2…d6 を指す気になれないからと打ち明けてくれた。

3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Bd3 Bc5

6.Be3!?

 ビショップがこのようにナイトを支えるのは少し特異で、攻撃的な態勢への前触れである。代わりに 6.Nb3 が長年普通の手だった。

 (a)2014年ハンティ・マンシースクでのT.コシンツェワ対M.ムジチュク戦では 6…Ba7 7.Qe2 Nc6 8.f4(すぐに 8.Be3 がよく指される変化で、c4 から Nc3 で中央の支配を強めるのが一つの指し方である)8…d6 9.Be3 Nf6 10.Nc3 b5 11.Bxa7 Rxa7 12.g4 と進んで白に主導権があった。

 (b)2008年メリダでのM.アダムズ対F.カルアナ戦では 6…Be7 7.O-O d6 8.Qg4(このクイーン出はキング翼のポーンの形に弱点を引き起こさせるためにこの戦型に周知の着想で、7手目でもよく指される)8…g6 9.Qg3 Qc7 10.a4 b6 11.Na3 Bb7 12.Nc4 で白が優勢だった。

6…d6 7.O-O

 早くキャッスリングするかどうかは好みの問題だが、2014年ハンティ・マンシースクでのA.コステニウク対P.クラムリング戦では白が 7.Nd2 と指した。そして 7…Nf6 8.c3 e5 9.Nc2 Bxe3 10.Nxe3 Be6 11.c4 と進んで白が出遅れdポーンをd6にいるようにさせたが、それにつけ込むのにはまだまだ大変である。11…O-O 12.O-O Nc6 13.Rc1 Nd4 14.Nb3 でほぼいい勝負である。

7…Nf6 8.c3

 クイーン翼ナイトをc3に展開しないのは奇異に思われるかもしれない。しかしこの戦型では中央での争点を維持するためにcポーンを突いてから Nb1-d2 と指すのが普通である。

8…Nbd7 9.Nd2 d5?!

 黒は性急に中央で打って出た。しかしチャオ・ツォンの方が展開に優っているので戦術を仕掛ける機会が得られる。

10.Qe2

 白はルークを連結させ、中央でポーンを交換して形を決める前に好機を待った。

10…Qc7 11.Bg5 dxe4

 10…O-O のあと私なら 12.Rae1 で e4-e5 突きを意図し、本譜のように黒にe4でポーン交換をさせるだろう。

12.Nxe4 Nxe4 13.Qxe4 Nf6 14.Qh4 Be7 15.Rfe1

 白はだんだんと自陣を良くしていけるうらやましい状況である。一方黒は Bxf6 でh7のポーンの守りをなくす単純な戦術のせいでキング翼に安全にキャッスリングできない悪夢に対処しなければならない。

15…Qb6 16.Re2 Bd7 17.Rae1 Nd5

 17…O-O-O なら 18.Nf5 が絶妙の応手となる。そして 18…exf5 に 19.Rxe7 で黒の戦力損が必至なので白の勝勢に近い。

18.Nf5!

 e列でルークを重ねた意味が明らかになり、黒は破れかぶれに出る。

18…Bxg5 19.Qxg5 g6 20.c4

 e7に利いているナイトをどかす当然の策で、黒の陣形をがたがたにさせる。

20…f6 21.Qh4 O-O-O 22.cxd5 exf5 23.Qg3 Bb5 24.Rc1+ Kd7 25.Bxf5+! 1-0

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(この号終わり)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

チェスの基本(026)

第1部

第2章 收局でのさらに進んだ原則

 ここで收局に立ち返って原則をもう少し取り上げ、それからまた中盤戦に行き、最後に布局にまた行って、進み方がゆるやかで一定になるようにする。このようにすれば本書の構成の基礎がしっかりした確実なものになる。

9.基本原則

 この局面で白はこのような場合に適用される対向ポーンのないポーンを突くことという一般原則に従って 1.b4 と指すことにより引き分けにすることができる。しかし白がこの原則を知らないか、ここでの場合に適用する価値を十分に理解していないために 1.a4 と指したとする。すると黒は基本原則の一つの

 1個が2個を抑える

というチェスの高等戦略を適用して 1…a5 と指すことにより勝つことができる。この場合1ポーンが相手の2ポーンを止めている。初学者はこの原則に重みを置きすぎてもいけない。これは多くの手段に応用でき、マスターの手にかかれば主要な武器の一つとなる。

例22

 上の例は十分な例証になる。想定される手順を少しあげよう。

1.a4 a5 2.Kg2 Kf4(最善手。このあと分かる)3.b4 axb4(最善手)4.a5 b3 5.a6 b2 6.a7 b1=Q 7.a8=Q Qe4+ 8.Qxe4 Kxe4

 これでキングとポーンの古典的な收局の一つとなって黒の勝ちの局面である。あまりよく分からない人のために指針となる考え方を説明していく。

(この章続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(025)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

8.罠(続き)

例21

 手番の黒は …e6 と指すのが良い。しかし …Nf6 と指したと仮定すると次の手が飛んでくる。

1.Bxf7+

 1.Ne5 でも白が優勢で、狙いはもちろん 1…Bxd1 2.Bxf7# である。1…Bh5 でも駄目なのは 2.Qxh5 と取られるからである。1…Be6 は黒陣に傷ができる。しかし本譜の手ならすぐに白の戦力得が確定する。そして初心者はこのような好機を決して逃さないようにすべきである。

1…Kxf7 2.Ne5+ Ke8 3.Nxg4

 白は1ポーンを得して優勢になった。

 罠はほかにもいっぱいある。実際チェスの罠について書かれた一冊の本もある。しかし上記の型は最もよく見られるものである。

(この章終わり)

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カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(108)

「Chess Life」1994年11月号(3/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

「機械的な」手の 1…g6(続き)

B 1.d4 g6 2.c4

 もちろん白は 2.e4 で前述のeポーン布局に戻すことができる。当然ながらほとんどのdポーン選手はより閉鎖的な布局にとどまる方を好む。

2…Bg7 3.Nc3 c5

 この手は早いキング翼ビショップフィアンケットを生かすための最も激しい手段である。重要な変化は 3…d6 4.e4 で、黒には次のような手がある。

 a.4…Nf6 はキング翼インディアン防御に転移し(1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6)、黒の最も堅実な手である。

 b.4…e5 は 5.dxe5! dxe5 6.Qxd8+ Kxd8 7.f4! で好ましくない收局になる。『From the Opening into the Endgame』E.メドニス著、Pergamon Press 発行、1991年改訂版を参照。

 c.4…Nd7 と 4…Nc6 は危なっかしいが、キング翼ビショップフィアンケットの精神を受け継いでいる。

4.d5 Bxc3+!? 5.bxc3 f5!

 GMロマン・ジンジハシビリが黒の作戦の思想的創始者である。双ビショップを放棄しキング翼をやや弱める犠牲を払って、白のクイーン翼に弱体化した扱いにくいポーン陣形を生じさせた。黒は白ポーンの弱体化につけ込めるように局面を閉鎖的に保ちたいと考えている。

6.h3!?(L.アルバート対D.ビゴリト、ニューヨーク・オープン、1993年)

 この手の意味は 7.g4 でキング翼を開放することである。すぐに 6.g4 と突くと 6…fxg4 7.h3 g3! と応じられる。ほかにも 6.Nf3、6.Qa4、6.h4 という手があり、どれも今のところはっきりした結論が出ていない。

6…d6 7.Nf3 Qa5 8.Qc2 Nf6 9.Bh6! Nbd7 10.e3 Nb6 11.Bd3 Bd7 12.O-O Qa4 13.Qb3!

 黒はc4に主眼の圧力をかけたが、白は完璧に守っている。黒はここで 13…O-O-O から 14…Kb8 でキングを安全にし、事態を見守るのが良かった。実戦は白にキング翼を有利に開放させてしまった。

13…Ne4?! 14.Bxe4! fxe4 15.Nd2 O-O-O 16.f3! exf3 17.Rxf3 Qa6 18.Rf7!?

 白はc4を 18.Rf4 で守ることができたが、それ以上を得る正当な理由があると考えた。

18…Ba4 19.Qb2 Nxc4?!

 19…Rd7 と守るのが適切だが、白が 20.Rf4 から 21.Raf1 でいくらか優勢である。

20.Nxc4 Qxc4 21.Rb1! Qxd5 22.Rxe7 Bc6?

 b7に侵入させるのは致命的である。しかしましな 22…Bd7 でも 23.c4 Qc6 24.Bf4 b6 25.Rd1 で黒が困っている。

23.c4 Qd3 24.Qxb7+!! Bxb7 25.Rbxb7 Rd7 26.Rexd7 Qf5 27.Rdc7+ Kd8 28.Rf7 黒投了

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カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(024)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

8.罠

 布局で避けるべき局面、すなわち罠を少しあげよう。これらは初心者がよく陥りやすいものである(実戦で起こっている)。

例20

 白は次のように指した。

1.dxe5 Nxe5

 黒はポーンで取り返すべきだった。

2.Nxe5 Bxd1 3.Bxf7+ Ke7 4.Nd5#

(この章続く)

2014年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(023)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

7.中央の支配(続き)

例19

1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.d4 Bg4

 これは悪手である。ビショップを出す前に少なくとも一つのナイトを出せという原則に背いている。また、ビショップをナイトと交換するからでもあり、序盤では何らかの代償がない限り一般には良くない。

4.dxe5 Bxf3

 4…dxe5 は黒のポーン損になる。

5.Qxf3 dxe5 6.Bc4 Qf6

 6…Nf6 なら 7.Qb3 で白がポーン得する。

7.Qb3 b6 8.Nc3 c6

 この手は白の Nd5 を防ぐためである。

 しかし黒はクイーン以外の駒が何も動いていない。これに対し白はビショップとナイトが既に展開されていて、いずれ Nd5 によりすぐに優勢になる可能性がある。初学者はこの局面から生じる多くの変化を考えてみるとよい。

 これらの例は以前に説明した原則を実際に応用したものである。初学者は序盤の段階では駒より優先してポーンを動かすことのないようにした方が良い。特に端のポーンを突くのは初心者がよくやりがちな手である。

(この章続く)

2014年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(137)

「Chess Life」2006年4月号(4/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御スベシュニコフ戦法[B33](続き)

 今度は黒のやってはいけない指し方と、d5の地点とd6のポーンの二重の弱点をどのように用いるのかの典型的な試合である。

白 GMナイジェル・ショート
黒 GMミゲル・イリェスカス
マドリード、1995年

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 6.Ndb5 d6 7.Bg5 a6 8.Na3 b5 9.Bxf6 gxf6 10.Nd5 Bg7 11.c3 f5 12.exf5 Bxf5 13.Nc2 Be6 14.g3 O-O 15.Bg2 Rb8 16.O-O Ne7 17.Nxe7+ Qxe7 18.Nb4 Rb6 19.f4 f5

 上記の布局手順のあと白がd5の地点をはっきり支配した。

20.Bd5!

 このビショップの交換で白が白枡の支配を強める。

20…a5 21.Bxe6+ Qxe6 22.Nd5 Rb7

 22…Rc6? は 23.Ne7+! Qxe7 24.Qd5+ で両当たりという見事な罠にはまる。

23.Qd2

 白はルークのためにd1を空けるとともに、黒の …b5-b4 突きを制止した。

23…Kh8 24.a3

 …b5-b4 と突かれないように念押しした。

24…Qc8 25.Rad1 Qc4 26.Rf2

 すぐに 26.Ne3 でd6のポーンを取ろうとしても 26…Qc5 で間接的に守られるので取れない。

26…Bh6?

 この手はたちまちd6のポーンを失う。黒がこの間違いをしなかったなら、白はゆっくりd列にルークを重ねて、d6のポーンに対する圧力を強めただろう。

27.Ne3 Qe4 28.Qxd6 Qxe3 29.Qxh6

 白はポーン得しほどなく勝ちを決めた。

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2014年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(022)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

7.中央の支配(続き)

例18

1.e4 e5 2.Nf3 d6

 これは臆病な手である。黒はすぐに守勢の態勢をとった。原則からすればこの手は悪手である。布局では可能ならばいつでも駒はポーンに先駆けて出すのが良い。

3.d4

 白はすぐに攻勢に出て、戦力を展開する余地を広く確保できるように中央を支配しようとしている。

3…Nd7

 黒は中央を明け渡したくはなかった。そしてナイトをもっと自然な地点に行かせる 3…Nc6 よりも本譜の手を選んだ。しかし原則からすればこの手は悪手である。なぜならクイーン翼ビショップの利きをふさぎ、黒駒の動きを容易にするどころか拘束しがちだからである。

4.Bc4 h6

 黒は前の手の罰金を払わされている。黒がこんな手を指すこと自体それを必要とするどんな布局も非難されるもととなる。白は 5.Ng5 を狙っていて黒はそれを 4…Be7 で止めるわけにはいかなかった。なぜなら 5.dxe5 Nxe5(5…dxe5 なら 6.Qd5)6.Nxe5 dxe5 7.Qh5 で白はポーン得になりしかも完全に安全な陣形だからである。

5.Nc3 Ngf6 6.Be3 Be7 7.Qe2

 白がまだキャッスリングしていないことに注意が必要である。その理由は最初に戦力を展開したいからである。この最後の手は Rd1 から dxe5 を狙っていて、黒に …c6 でクイーンの動く余地を作らせる。黒のほかの手はついには …exd4 と取ることになり中央を白に明け渡すことになる。

7…c6 8.Rd1 Qc7 9.O-O

 白はこの最後の手で展開を完了した。一方黒は明らかに少々もたついている。白陣が金城鉄壁であることを示すには簡単に調べるだけで十分である。白のよろいには何も弱点がなく、白駒は敵陣への攻撃を始めるためにやりたい捌きの準備ができている。初学者はこの例を注意深く分析するとよい。ときにはキャッスリングを遅らせるのが良いことが分かるだろう。ここにあげた手順は布局の標準的な本によらずに思いついたままを示したものである。私の手順が標準的な本と一致するのかどうかは知らない。しかし本書のこの段階では初学者がもっと上達したときに理解できる専門的なことの議論に入るのは適当でない。

(この章続く)

2014年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(021)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

7.中央の支配

 d4、e4、d5、e5の4枡は中央の地点で、これらの地点の支配は中央の支配と呼ばれる。中央の支配は何よりも重要である。これらの2地点、たぶん3地点を支配しなければ猛攻は成功しない。布局における多くの捌きの目的はただ一つ、それは中央の支配で、いつも主導権が確保される。このことはいつも心に留めておくのが良い。というのはそうでないと一連の手順が適切に理解できないことがよくあるからである。本書が先へ進むにつれてこれらの色々な点についてもっと詳しく説明する。当面は無作為に選んだ布局にページを割き、一般原則に従って手を説明する。初学者はそうすることによって正しい方向に思考が向き、新しく難しい状況に立たされたとき手段を見つけるのに苦労が少なくなる。

(この章続く)

2014年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「韓国軍ベトナム人虐殺事件」

産経新聞電子版2014年7月12日付
「韓国軍ベトナム人虐殺事件」

2014年07月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(020)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

6.布局の一般的な戦略(続き)

例17(続き)

 (再掲)

 これは非常に強力な手で、Nd5 という手筋でたちまち勝ちになるのでもう中盤戦に入っている。この狙いのために黒は同じ道をたどることができなくなっている(黒も 7…Bg4 と指せば負けに至ることを示す長い分析がある)。実戦で示されたように黒は 7…Bxc3 と取ることが余儀なく、注目することが3点ある。

 第一に、布局の展開の完了がたった7手で済んでいる(非常に例外的な場合には10手や12手かかることがあるが、原則的には8手で十分である)。第二に黒はビショップをナイトと交換することを強いられたが、代償として白のaポーンを孤立させcポーンを二重にさせた(こんなに早い段階なので中央に向かって二重になったポーンは白にとってむしろ有利である)。第三に、白はこの交換によってポーンがd4の地点を支配するようになり、経験によれば黒を守勢に立たせ主導権を維持して紛れもなく優勢になっている(主導権の価値については第20章で説明する)。

 上述の戦略の原則はすべての布局で同じで、状況により応用する戦術が変わってくるだけである。

 先に進む前に初学者は次のことを心にとめておくように強調したい。

 戦力得するか動きの自由さを確保することが必須でなければ、展開が完了する前にどの駒も二度以上動かすべきでない。

 初学者は前述のビショップより先にナイトを出せに加えてこのことも覚えておくと良い。

(この章続く)

2014年07月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(358)

「British Chess Magazine」2014年6月号(1/1)

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棋譜のデパート

解説 IMアンドルー・マーティン

 ガシモフ追悼記念大会は才能がありながら1月にたった27歳で亡くなったブガル・ガシモフを偲ぶのにふさわしいものだった。この試合は「A」グループの圧巻だった。

□H.ナカムラ
■S.マメジャロフ

ガシモフ追悼記念「A」、シャムキル、2014年
カロカン防御突き越し戦法 [B12]

1.e4

 前の回戦でナカムラはカールセンにいいところなく負けていた。だから本局にはまなじりを決して盤に向かったと思われる。

1…c6 2.d4 d5 3.e5

 白の攻勢の舞台が整った。

3…Bf5 4.Nf3 e6 5.Be2

 ショート戦法。白は争点を維持し中央が少し広いことが好機に結びつくことを期待している。

5…c5 6.Be3 Qb6 7.Nc3!?

 このような独創的な構想が突き越し戦法を新鮮なものにしている。過去20年に 3.e5 のあとどれだけ多くの進歩があったかを考えるとすごいものがある。

7…Nc6

 黒はbポーンを取りたい誘惑をこらえた。7…Qxb2 8.Qb1! Qxb1+(8…Qxc3+? 9.Bd2 +-)9.Rxb1 c4 10.Rxb7 +/- Bxc2(10…Nc6 11.Kd2 Bb4 12.Rb1 Ba5 13.Nh4 +/-)11.Nb5 Na6 12.Nd6+ +/-

8.dxc5

 この手はそれほど一般的でないが、面白いことは確かである。主流手順は 8.O-O である。

8…Bxc5 9.Bxc5 Qxc5 10.Nb5 Kf8 11.Nbd4

 ここではほとんどの人が白を持ちたいと思う。しかし黒陣が防御可能であることは確かである。白は圧力を早くかけたがそのあと控え駒を動員するのに問題があるので、f8の黒キングの不便は些細なことである。それでもd4のナイトは好形で、黒はこれと戦わなければならない。

11…Nge7 12.O-O Be4 13.Re1

13…Qb4!?

 ほかの2局では黒が別の手を指し、堅固な陣形になるようだった。2009年マルトゥーニでのS.ジガルコ対F.ベルケス戦は 13…h6 14.c3 Qb6 15.b3 Rd8(2010年タシケントでのS.ジガルコ対M.トゥロフ戦でも 15…Rc8 16.Nxc6 Nxc6 17.Bd3 Bxf3 18.Qxf3 Qc7 19.Qg3 で引き分けだった)16.Bd3 Bxd3 17.Qxd3 と進んで引き分けになった。

14.a3 Qxb2!?

 マメジャロフは引き下がらなかった。これは観戦者にとっては大歓迎だが、黒には簡明で堅実な手順があり、そのあと白にはあまり得るものがない。14…Qb6 15.Qd2 h6 16.c3 Nxd4 17.Nxd4 Nc6 =

15.Rb1 Qxa3 16.Rxb7 Bxf3 17.Nxf3

17…h6

 黒はもっと簡明な 17…Rb8! をまた拒絶した。この手は白の働いているルークを交換でなくす好手である。18.Rxb8+(18.Rc7 Qc5 は白に勧められない)18…Nxb8 19.Qd2 Qb2! 20.Qf4 Nbc6 21.c4 Qb4 22.Rc1 h6

ナカムラはこの局面で白が指せることを証明しなければならない。私には黒の方が良さそうに思える。

18.Qd2 g5?

 黒はわざわざ対決しようとしている。しかしこれはキング翼を弱めるだけで、白の注文にはまる。18…Rb8 19.Rxb8+ Nxb8 20.Rb1 Nbc6 で白にやれるものならやってみろと問う方が良かった。白がどうするのかは分からないが、h8のルークが日の目を見るまではずっと「形勢不明」のままに違いない。

19.h4! g4 20.Nd4 Qa5 21.c3 Nxd4 22.Qxd4 Nf5 23.Qd2 d4 24.Bxg4 Qxc3 25.Qe2!

 黒はルークが共に働いていないのでポーン得にものを言わせることができない。キング翼を開放したのが誤判断だった。

25…Nxh4?

 黒駒はあちこちに散らばっていてほとんど協調していない。25…Ne7 の方がねばり強いが 26.Reb1、26.Qe4 それに 26.Bh5 のどれでも白が圧倒的に良い。たぶんこの中で 26.Bh5 が一番良いだろう。26.Bh5 Rd8(26…Rc8 27.Qe4 Qc6 28.Qf4 Rh7 29.Reb1 a5 30.Bf3 Qc4 31.Rd7 Ng6 32.Qf6 +-; 26…Rg8 27.Reb1 Re8 28.Rxa7 +/-)27.Qe4 Rg8 28.Reb1 Rg7 29.Rb8 Rc8 30.Rxc8+ Qxc8 31.Qxd4 Kg8 32.Qxa7 黒陣はまったくまとまりがないので、これらのどの変化でも白は攻撃を急ぐ必要はない。

26.Bh5 Rh7 27.Qe4 +- Rc8 28.Qxh7 Qxe1+ 29.Kh2 Qxe5+ 30.g3!

 f7に対する集中攻撃に黒が耐えられない。

30…Rc7

 30…Nf3+ は 31.Kg2!(31.Bxf3 +-)31…Ne1+ 32.Kf1 Rc7 33.Rb8+ Ke7 34.Qxf7+ Kd6 35.Qf8+ Kc6 36.Be8+ Rd7 37.Bxd7+ Kxd7 38.Qc8+ Kd6 39.Qa6+ Kd7 40.Rb7+ できれいに決まる。

31.Rb8+ Ke7 32.Qxf7+ Kd6 33.Qf8+

 33.Qf8+ Kd5 34.Rb5+ で終わりである。マメジャロフはこれといって駒の連係の良くもない局面から攻撃に行って、代価を払わされた。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

チェスの基本(019)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

6.布局の一般的な戦略

 最も重要なことは駒を迅速に展開することである。できるだけ速く駒を戦闘に投入せよ。

 初手のうち 1.e4 と 1.d4 の2手がクイーンとビショップの道を開く。ほかの初手はこれほどのことは達成しないので、理論的にこの2手のうち一つが最善のはずである。

例17

 初手から次のように指し進めるものとする。

1.e4 e5 2.Nf3

 これは攻守を兼ねた手である。これに対して黒は同じ手で応じることもできるし次のように指すこともできる。

2…Nc6

 この手は展開しながら同時にeポーンを守っている。

3.Nc3 Nf6

 この2手は純粋に展開の手である。

4.Bb5

 一般にキング翼ナイトを外に出すまではこのビショップを出さない方が良い。このビショップはc4に出すこともできたが、可能ならいつも展開と攻撃を兼ねるのが良い。

4…Bb4

 黒も同じように応じ、次にビショップをナイトと交換してから …Nxe4 と取る手を狙っている。

5.O-O

 この手は間接的に 5…Bxc3 を防いでいる。十分な経験があれば、あるいはよく研究すれば、こう取る手が良くないことが分かる。同時にルークは要所の中央に持ってきて働かせるのが良い。

5…O-O

黒も同じ論理に従っている。

6.d3 d6

 この2手には二通りの目的がある。すなわちeポーンを守ることと、クイーン翼ビショップの展開のために斜筋を開けることである。

7.Bg5

(この章続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(018)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

5.駒の相対的な価値

 布局の一般原則に進む前に、駒の適正な相対的価値の考え方について初学者に教えておいた方が良いだろう。それらに関する完璧で正確な一覧はないので、やれることは駒を個別に比較することだけである。

 一般に理論上はビショップとナイトは同じ価値があるとみなさなければならない。もっとも私の考えではたいていの場合ビショップの方が価値のある駒となることが多い。そして2ビショップは2ナイトよりほとんどいつも優れていることは周知のとおりである、

 ポーンに対してはナイトよりビショップの方が強い。そしてルークに対してポーンと組むときもビショップの方がナイトよりも強い。

 ビショップとルークもナイトとルークより強い。しかしクイーンとナイトはクイーンとビショップより強いかもしれない。

 ビショップは3ポーンより価値があることが多いが、ナイトは滅多にそうでないどころか3ポーンより価値がないかもしれない。

 ルークはナイトと2ポーン、またはビショップと2ポーンの価値がある。しかし前述のようにルークに対してはビショップの方が優る。

 2ルークはクイーンよりわずかに強いが、2ナイトとビショップよりはわずかに弱く、2ビショップとナイトよりはもう少し弱い。ナイトの威力は駒が交換されていくにつれて減少する。ルークの威力は対照的に増加する。

 キングは中盤戦の間は純粋な守備駒だが、盤上から駒がすべて消えると攻撃駒になり、駒が1、2個残っているときでさえそうなることがある。キングの扱いは收局の段階に至れば何にもまして重要になる。

(この章続く)

2014年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(107)

「Chess Life」1994年11月号(2/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

「機械的な」手の 1…g6(続き)

A 1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3

 この手は激しい手順になるのでが普通である。3.Nf3 d6 ならもっと穏やかな戦いになる。黒はもっと不均衡な局面にしたいなら 3…c5 と指すことができる。しかし 4.Nc3 または 4.c4 でシチリア防御、それに 4.d5 でベノニ防御の局面になることに備えておかなければならない。

3…d6 4.f4 c6

 黒が「キング翼ビショップフィアンケット」にとどまりたいならば、本譜の手は最も本筋の手である。GMアンディー・ソルティスはこの手でかなりの好成績をあげた。黒はクイーンをクイーン翼に行けるようにし、いつか …b5 と突く用意をし、d5の地点を守った。しかし黒は白のかなり強力なキング翼の構えを無視している。だから 4…Nf6 でピルツ防御に転向するのを好む選手が多い(1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.f4 Bg7 がピルツ防御の手順である)。

5.Nf3 Bg4

 衆目の集まるd4の地点に圧力をかけた。すぐに 5…Qb6 と指すのは 6.h3! でこのクイーンが的外れになる

6.Be3 Qb6 7.Qd2

 白はここでも1手後でもbポーンを心配する必要はない。例えば 7…Qxb2?! 8.Rb1 Qa3 9.Rxb7 Nd7 10.Rb3 となれば局面の開放は展開に優り中央の広い方、つまり白に有利である

7…Bxf3 8.gxf3 Nd7 9.O-O-O Qa5

 d4が安泰なので黒は別の世界を目指さなければならない。それはa2であり、…b5 と突いてクイーン翼でのポーンの暴風である。だから白の次の手は必然である。

10.Kb1

 ここでの黒の「機械的な」手は 10…b5 だった。しかし 11.e5、11.f5 または 11.h4 から 12.h5 で白の攻撃が非常に強くなるのは否定できない。そこでJ.ポルガー対C.クラウチ戦(ヘースティングズ、1992/93年)の試合を追うことにする。

10…O-O-O!?

 黒は白キングと同じ翼にキャッスリングすることにより比較的安全な所にキングを移した。

11.Rg1 Kb8 12.Rg5 Qc7 13.d5!? Nb6?!

 ここはクイーン翼ナイトにとってつまらない場所である。IMクラウチによれば 13…Ngf6! で展開を完了することが必須だった。そして 14.e5(14.dxc6 bxc6 は黒が良いはずである)14…Nxd5 15.Nxd5 cxd5 16.exd6 exd6 17.Rxd5 Nb6! 18.Rxd6 Rxd6 19.Qxd6 Qxd6 20.Rxd6 Re8 で黒がわずかな戦力損の代償を十分得ている。

14.dxc6 bxc6 15.Qd3?!

 緩着。あとでポルガーが指摘したように 15.a4! Nf6 16.a5 Nc8 17.Na2 で白の主導権が強力である。

15…Nf6 16.Ra5 Nfd7 17.Na4?

 指しすぎ。17.Ra3! と指す好機で、形勢不明だった。ここから黒が白の駒配置の悪さにつけ込んで優勢になる。

17…Nc5! 18.Qa3

 絶対手。どう取ってももっと悪くなる。例えば 18.Nxc5? dxc5 19.Qe2 Rxd1+ 20.Qxd1 Nc4!。このあとはチェス新報第58巻第133局のIMクラウチの解説からの短評を付けておく。

18…Ncxa4 19.Rxa4 Nxa4 20.Qxa4 Ka8 21.Bc4 Rb8?

 正着は 21…e6(ク)。

22.b3! Bc3 23.Bxf7 Ba5 24.f5 gxf5 25.exf5 Rb4 26.Qa3 Rh4 27.Qb2 Rb8!? 28.c4! d5! 29.cxd5 Rxh2 30.Qc1 Qe5 31.Be6?

 正着は 31.Qxc6+ で引き分け(ク)。

31…Bc3??

 31…Bc7! で黒が優勢(ク)。

32.Bf4 Rxa2 33.Bxe5 Ra1+ 34.Kc2 Rxc1+ 35.Kxc1 Bxe5 36.dxc6 Re8 37.Rd7 h5 38.Bd5 黒投了

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カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(017)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

4.中盤戦での勝ちの局面(続き)

例16

 次の局面ではこれと同種の手筋がもっと複雑な形で見られる。

 白は次のように指し進める。

1.Nxe7+(これでビショップの斜筋が通る)1…Bxe7(白のビショップ切りのあとナイトがg5にやって来るのを防ぐため)2.Rxe7 Nxe7(最善)3.Bxh7+ Kxh7(3…Kh8 なら 4.Qh5 g6 5.Bxg6+ Kg7 6.Qh7+ Kf6 7.g5+ Ke6 8.Bxf7+ Rxf7 9.Qe4#)4.Qh5+ Kg8 5.Ng5 Rc8 6.Qh7+ Kf8 7.Qh8+ Ng8 8.Nh7+ Ke7 9.Re1+ Kd8 10.Qxg8#

 この手筋はかなり長く変化も多い。だから初心者はほとんど見抜けないだろう。しかしこのような手筋を知っていれば、同様の状況でさもなければ決して思いつかないような華麗な攻撃に打って出てやり遂げるかもしれない。これまで見てきた手筋はすべて根底に駒が適切に連係していて相手の弱点に効いていた。

(この章続く)

2014年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(016)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

4.中盤戦での勝ちの局面(続き)

例15

 次の局面にはよく見かける手筋が現れる。

 ここで白は交換損で1ポーン損だが、すみやかに勝つことができる。

1.Bxh7+ Kxh7(1…Kh8 なら 2.Qh5 g6 3.Qh6 で白が勝つ)2.Qh5+ Kg8 3.Ng5

 黒が Qh7# の詰みを避けるには …Qe4 とクイーンを犠牲にする以外になく、白ルークと黒クイーンの交換の駒割になる。

(この章続く)

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カテゴリ: チェスの基本

ポルガーの定跡指南(136)

「Chess Life」2006年4月号(3/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御スベシュニコフ戦法[B33](続き)

 次はこの布局で気に入っている自分の試合の1局である。黒でスベシュニコフ戦法を好む選手がなぜ多いのかの好例になっている。

白 テレサ・ニーダム
黒 スーザン・ポルガー
ウェスターゲート、1981年

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 6.Ndb5 d6 7.Bg5 a6 8.Bxf6 gxf6 9.Na3 b5 10.Nd5 f5 11.Bd3 Be6

 この手は間接的にf5のポーンを守っている(12.exf5? Bxd5)。

12.c3 Bg7 13.Qe2

 この手は消極的すぎる。13.Nc2 または 13.Qh5 の方が良かった。

13…O-O 14.O-O Rb8

 14…fxe4 15.Bxe4 f5 とは指せなかった。白に 16.Nf4! という奇手がある。

15.Rad1 Qd7

 白に Nb6 で両当たりにする手があるので黒は1手前に …Qd7 と指すことができなかった。

16.Rfe1

 16.Nc2 がもっと自然な手だった。

16…f4

 この手が入って黒がキング翼で威張って指せる。

17.Nc2

17…Kh8!

 この手は非常に重要で正確な手である。17…f3 18.Qxf3 Bg4 は 19.Qg3 で良くない。19…Bxd1? なら 20.Nf6+! で黒クイーンが取られる。

18.h3

 この手は上述の手を避けるためである。

18…Rg8 19.Kh2 Ne7 20.Nxe7?

 20.Ncb4 の方がずっと良かった。

20…Qxe7 21.Nb4 Qh4! 22.Nxa6 Bh6! 23.Rh1?

 これではたちまち勝負がついてしまう。しかし 23.Nxb8 でも 23…Rxg2+! 24.Kxg2 Qxh3+! 25.Kg1 f3 26.Qxf3(26.Qf1 なら 26…Qg4+ 27.Kh1 Bf4 で 28…Qh4+ から 29…Qh2# に受けがない)26…Qxf3 27.Bf1(27.Bxb5 なら 27…Bf4 28.Rd3 Bh2+! 29.Kxh2 Qxf2+)27…Qg4+ 28.Kh1(28.Bg2 には 28…Qg8! から 29…Bh3)28…Bf4 で白が良くない。

23…Bxh3! 白投了

 23.gxh3 と取っても 24…f3! で白の勝ちである。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

チェスの基本(015)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

4.中盤戦での勝ちの局面(続き)

例14

 次の局面では同種の手筋がもっと複雑な形で生じる。

1.Bxd7 Qxd7

 1…Bxe4 は 2.Qc3 が詰み狙いになるので、当たりの黒クイーンが取られてしまう。

2.Nf6+ gxf6 3.Rg3+ Kh8 4.Bxf6#

(この章続く)

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カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(014)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

4.中盤戦での勝ちの局面(続き)

例13

 これも非常に面白い種類の手筋である。黒は白のナイトに対しルークを持っているので、白がすぐに何らかの代償を得ることができなければ勝つはずである、実際は白が短手数で詰みに打ち取る。

1.Nf6+ gxf6

 取らなければ 2.Qxh7# で詰まされる。

2.Qg3+ Kh8 3.Bxf6#

(この章続く)

2014年07月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(013)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

4.中盤戦での勝ちの局面(続き)

 これと同種の手筋はもうちょっと複雑な局面でも生じることがある。

例12

 白は駒損していてすぐに取り戻すことができなければ負けてしまう。そこで白の指した手は

1.Nxc6 Bg5

 白から Qxh7+ に続く Rh3+ での詰みがあるので黒はナイトを取ることができなかった。

2.Ne7+ Qxe7

 2…Bxe7 は例の 3.Qxh7+ Kxh7 4.Rh3+ Kg8 5.Rh8# で詰まされてしまう。

3.Rxe7 Bxe7 4.Qd7

 白はどちらかのビショップが取れて、クイーンとビショップ対ルークとビショップになり簡単に勝つはずである。以上の2例はキャッスリングしたあとそこのナイト列ポーンを突く危険性を示している。

(この章続く)

2014年07月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

[復刻版]理詰めのチェス(21)

第2章 クイーンポーン布局(続き)

第21局

 チェルネフ対ハールボーム戦では黒が急所の …c5 突きで反撃した。しかし黒の中原はd5のナイトが浮いていて堅固さに欠けていた。チェルネフは黒の浮き駒を狙うことによって攻撃のための手を稼いだ。本局ではこのような手を稼ぐ手法が興味の的である。

クイーン・ポーン試合(コーレ・システム)
白 チェルネフ
黒 ハールボーム
ニューヨーク、1942年

1.d4

 この手は 1.e4 と共に盤上の最善手である。

 どちらの手も中原にポーンを据え2個の駒を戦いに参加できるようにしている。

 どちらの手を指すべきだろうか。その選択は好みの問題である。おおざっぱに言えば e4 はよく全面的な攻め合いの試合になりやすく、d4 は大局的な優位をめぐる戦いになる傾向がある。ブラックバーンは次のように言っていた。「チェスの上達を願う若い人たちへの私からの最初の助言は自分自身の適性と性格に合わせて棋風を作るようにして欲しいということである。ある選手は数学の計算のように正確に試合を組み立てることに喜びを感じ、別の選手は独創的な手筋や華麗な攻撃以外は何も気にしない。自分自身の資質を高めることが何よりも大切である。」

1…d5

 黒も素晴らしい手で応じた。白が続けて 2.e4 で中原にポーンを並べて独占支配するのを妨げている。黒のクイーンとビショップも自由になった。

2.Nf3

 ここではこの手の代わりに 2.c4 でポーンをさし出す方が多い。白は陣容を固めながら容易にポーンを取り返すことができるのでこのギャンビットは見かけだけである。

 このナイト跳ねは最も効果的な地点に駒を展開し、クイーン翼ギャンビットに移行する選択肢も持っている。

2…e6

 この手は全く安全であるがいくらか控えめである。私なら 2…Nf6 とするところである。この手は黒を守勢にしないしクイーン翼ビショップの展開も邪魔しない。

 本譜の手は白が c4 でdポーンを攻撃してきたらdポーンを守る最良の手段である。しかし白はまだそのそぶりを見せていない。

3.e3!

 この穏やかな手は激烈なキング翼襲撃のコーレ攻撃の前触れである。

 コーレの基本作戦は適切な準備をしてからeポーンをe4に突くことである。この準備は次のような駒捌きから成っている。

 a)キング翼ビショップをd3に展開して急所のe4の地点への圧力を強め、黒キングがキャッスリングした後のもろい個所のhポーンに狙いをつける。

 b)クイーン翼ナイトをd2に置いて(c列をふさいではいけないのでc3には置かない)e4に利かせ、eポーンがe4に進んだ際にはそれを支援する。

 c)キング翼にキャッスリングしてキング翼ルークを動員する。

 d)クイーンをe2に及び/又はルークをe1に展開して、もくろんでいるポーン突きをさらに念押しする。

 e)ポーンをe4に進める。このポーンは1枡進んだだけだが全ての仕掛けが一挙に働くようになる。中原の態勢は破裂し筋は白の攻撃駒のために開かれる。

3…c5

 ポーン中原に向けてのこのポーン突きはクイーンポーン布局では黒にとってほとんど必須である。

 黒は中原で対等に渡り合うために戦わなければならない。

 黒は重要な地点の支配を争わなければならない。

4.c3

 黒がポーンを交換してくればcポーンで取り返す用意をした。白のeポーンはe4に進むことになっているのでe3からそらされることがあってはならない。

4…Nf6

 これは自然で強い手である。ここがキング翼ナイトの可能な最良の地点である。このナイトは中原での事態に参加できるように中原に向かって展開された。戦いが起こるのはほとんどの場合中原である。そして中原で起こることは何でも盤上の他の所に影響を与える。中原での優位は大局的な優勢に必須であり、中原の支配はキング翼攻撃を成功させる上で必要不可欠である。

 だから展開はすべて中原への影響を視野に入れて行なうべきである。

 本譜の手に代わるもっともらしい手は 4…c4 と突いて白がビショップをd3に据えるのを防ぐ手である。これは多くの選手がやらずにはいられない類の手である。しかしこれは避けなければならない。これは白のdポーンと中原に対する圧力をゆるめるので戦略上の悪手である。

 中原でのポーンの態勢の柔軟性を保つことが大切である。

 中原の白のdポーンに圧力をかけ続けることが大切である。

 中原でのポーン交換の選択肢を残すことが大切である。

5.Bd3

 これはビショップの理想的な展開である。黒キング(キャッスリングした後)に通じる長斜筋を支配し、戦端が開かれる急所の地点のe4をにらんでいる。

5…Nc6

 ナイトが処方どおりに中原に向かって参戦した。黒は早く …e5 と突いて捌くことをもくろんでいる。

 白が 6.dxc5 と取ってくればビショップでなくナイトで取り返すために 5…Nbd7 と指すのも良い手である。

6.Nbd2

 この手はちょっと見たところではナイトが変な地点に位置しクイーン翼ビショップの筋もふさいでいるので不自然に思える。実際はこのナイトは二つの割り当てられた任務を果たしている。控えめなd2の地点ではあってもこのナイトは戦いに加わっている。そして急所のe4の地点での来たるべき行動も支援している。クイーン翼ビショップは動きが不自由だが一時的なことに過ぎない。

6…Be7

 この手は攻撃的なd6への展開よりも望ましい。このビショップはキングの守りのために自陣に近い所に必要である。

7.O-O

 この鮮やかなひとっ飛びでキングが安全な場所にかくまわれルークが魔法のように舞台に現れるが、恐らく車輪の発見以来の文明に対する最も意義ある貢献である。

7…O-O

 黒も急いでキングを防護しルークを働かせた。

8.Qe2

 ここはクイーンポーン布局のほとんど全ての陣形においてクイーンの完璧な居場所である。このクイーンはもくろんでいるeポーン突きを助け以降の攻撃に多大の影響を及ぼすことになる。

8…Re8

 ルークは素通し列を占めなければならない。素通し列がなければどうするか。その場合はルークを中央に持って来ることである。そうすればルークは素通しになる可能性の高い列の先頭に立つことになる。この理由でキング翼ルークは通常はe1/e8またはd1/d8に展開され、クイーン翼ルークはd1/d8またはc1/c8に展開されるのである。

9.dxc5!

 9.e4 はまだ早い。9…dxe4 10.Nxe4 cxd4 となって白はポーン損となるか孤立dポーンをかかえることになる。本譜の手はさらに次のような考察のもとに指された。

 a)黒のビショップは一度動いたがポーンを取り返すためにまた一手かけなければならない。

 b)このビショップはキング翼の守りに必要だが盤の不適切な側に行くことになる。

 c)c5のビショップは浮き駒になっていて不意打ちに会いやすい。

 d)d2の白ナイトは後で先手でb3に行ける。そこからは浮いているビショップに当たりになり同時に自分のクイーン翼ビショップの筋を開ける。

 e)もし収局に至れば白はクイーン翼で3対2の有利なポーン配置になる。

9…Bxc5

 黒はポーン損にならないように取り返さなければならない。

10.e4!

 これがコーレ攻撃の眼目の手である。閉じ込められた駒のうっぷんを全て発散させるのはこの力ずくのポーン突きである。

 黒はどう応じるだろうか。10…dxe4 と交換すれば 11.Nxe4 Nxe4 12.Qxe4 となって 13.Qxh7+ から始まる壊滅の危機にさらされる。もうf6のナイト(キャッスリングした陣形の最良の守備駒)がないので黒はキングの前のポーンの一つを突いて陣形を弱めなければならない。

 ポーン交換を避けて代わりに 10…d4 と突けば 11.Nb3 Bb6(ビショップはdポーンを守っていなければならない)12.e5 Nd5 となって白は勝ち方の楽しい選択がある。ブラックバーンが言うところの「数学の計算問題のように正確に」勝つならば 13.cxd4 である。または「ひらめきの手筋と華麗な攻撃」で勝つならば 13.Bxh7+ Kxh7 14.Ng5+ Kg6 15.Qe4+ f5 16.exf6e.p.+ Kxf6 17.Qf3+ Ke7(17…Ke5 は 18.Nf7#)18.Qf7+ Kd6 19.Qxg7 で、20.Nf7+ によるクイーン取りと 20.Ne4# による詰みの狙いがありこれまでである。

10…e5

 黒はどちらの落とし穴も避け、f6のナイトをどかせる 11.e5 を防いだ。この間にルークは動く余地が広がりクイーン翼ビショップは戦いに参加できるようになった。

11.exd5

 作戦継続中。白は攻撃のための筋を開ける工程を続けている。これでe4の枡が自駒の出撃地点として利用できるようになった。

11…Nxd5

 黒は次のような白からの攻撃を招くかもしれないのでクイーンで取りたくなかった。

 11…Qxd5 12.Bc4 Qd6 13.Ng5(14.Bxf7+ で交換得する狙い)13…Re7 14.Nde4 Nxe4 15.Nxe4 で白がビショップを取る。

 11…Qxd5 12.Bc4 Qd7 13.Ng5 Re7 14.Nde4 Nxe4 15.Qxe4(hポーンを取る狙い)15…g6 16.Qh4 h5 17.Ne4 で黒はナイトによる両当たりでクイーンを取られるのを避けるためにはビショップを見捨てなければならない。

 11…Qxd5 12.Bc4 Qd8 13.Nb3 Bb6 で白は 14.Bg5、14.Rd1 及び 14.Ng5 で始まる色々な攻撃の効果を推し量る楽しい時間が過ごせる。

12.Nb3

 浮いているビショップに当たっているので先手である。白のクイーン翼ビショップが遠くまで動けるようになったことにも注目されたい。

12…Qb6

 この手はウソ手である。確かにクイーンが展開しビショップが守られている。しかし他の要因も考えなければならない。黒のキング翼は守り駒が足りないしd5のナイトは浮いている(別の駒またはポーンによって守られていない)。

 手筋がないだろか。チェック又は取り、つまり打撃を与える手がないだろうか。そう、もちろんあるのである。

13.Bxh7+

 このような好機は相手が一息つく前にとらえなければならない。

13…Kxh7

 黒が取り返しを拒むのはもっと悪い。白ビショップが戦利品を食い逃げすることができるし、居座って白が 14.Qc4 で攻撃を続行することもでき、中原で立ち往生している黒駒に白クイーンが襲いかかることになる。

14.Qe4+

 この手が要点である。白は両当たりによって駒を取り返し、投資の利子としてポーンを得た。

14…Kg8

 14…f5 又は 14…g6 とポーンをさしはさむのは何の得にもならない。どちらの手もキング翼のポーンの形をさらに崩すだけである。

15.Qxd5

 駒を取り返し黒ビショップに二重の当たりをかけてさらに先手になっている。黒は守りに忙しく陣容をまとめる余裕を与えてもらえない。明らかに悪手と分かる手を何も指さずに西部のマスターは理論的に敗勢になった。

15…Bf8

 惨めな退却だが 15…Be7 ではeポーンを取られる。

16.Ng5

 17.Qxf7+ の狙いでその後は2手で詰む。黒に息つく暇を与えてはならない。

16…Be6

 やっとクイーン翼ビショップが戦いに加わった。詰みをかわし敵クイーンを追い払い駒が展開し別の駒(クイーン翼ルーク)が自由になったのでこの手は効果的に見える。

17.Qe4

 クイーンは退いたがh7での詰みがあるので手損にはなっていない。

17…g6

 黒はほとんど選択の余地がない。この手は 17…f5 よりも良い受け方である。17…f5 の後は 18.Qh4 Bd6(18…Bc5 なら 19.Nxe6 Rxe6 20.Qc4 で白の駒得になる)19.Qh7+ Kf8 20.Nxe6+ Rxe6 21.Qh8+ で黒ルークが落ちる。

18.Qh4

 また1手詰みの狙いである。黒は退却に次ぐ退却で、白の詰みの狙いが強制する所に駒を置かなければならない。

18…Bg7

 白のh7でのチェックを止めることはできない。しかしこの手はクイーンがさらにh8へ侵入するのを防いでいる。白クイーンの締め出しを怠ると、例えば代わりに 18…Bd6 などとすると負けてしまう。以下は 19.Qh7+ Kf8 20.Nxe6+ Rxe6(20…fxe6 は 21.Bh6#)21.Qh8+ でルークが取られる。

 本譜の手で黒はキングのために防空壕をこしらえたように見える。

19.Be3

 そこで白は予備役を招集した。クイーン翼ビショップは先手で好点に来た。クイーンへの当たりは付随的で、真の目的は自分またはナイトのためにc5の地点を制圧することである。そこに据えられたナイトは中原とクイーン翼を席巻する。ビショップなら黒キングがf8を通って逃げるのを防ぐのに役立つ。

19…Qa6

 黒は次の進行を読んで 19…Qc7 を拒否した。20.Qh7+ Kf8 21.Bc5+ Ne7 22.Qxg6! fxg6(22…Qxc5 なら 23.Nxe6+ fxe6 24.Qxe8+ Kxe8 25.Nxc5 で白の楽勝)23.Nxe6+ Kg8 24.Nxc7 で黒ルークが白ナイトによって両当たりになる。

20.Nc5!

 またしても白駒の一つが敵クイーンを当たりにする手得の手段で敵の片側に侵入した。

20…Qc4

 黒はクイーン交換で安らぎを得ることを期待した。

21.Qh7+

 この手の目的はキングをいぶし出しポーンの防護をずたずたにすることである。

21…Kf8

 この手しかない。

22.Ncxe6+

 大局的に優勢を確立した後は勝つ手段が複数あることがよくある。華麗な締めくくりは 22.Ngxe6+ fxe6 23.Bh6 Re7(23…Bxh6 なら 24.Nd7#)24.Qh8+(クイーンがh8に行くことができることを示すためだけでもよい)24…Kf7 25.Qxg7+ Ke8 26.Qg8# で詰みに討ち取る手順である。

22…fxe6

 22…Rxe6 で交換損をするのは長引くが苦難は減らない。

23.Qxg6

 24.Qf7# の狙いである。

23…Nd8

 23…Re7 を期待していて次のようにポーンが盤上を行軍する「至高」の手法で勝つことができるはずだった。24.f4(狙いは 25.fxe5+ Kg8 26.Qh7#)24…e4 25.f5(また開きチェックの狙い)25…e5 26.f6 で白の勝ちである。

24.Nh7+

 ここで私は 24.f4 e4 25.f5 e5 26.f6 Bh8 27.Nh7# で派手な勝ち方をしたくてしかたがなかった。しかし常識がまさった。我々は最短の勝ち方をしなければならない。戦いを早く終わらせることができるならば簡明で容赦ない指し方をしなければならない。

24…黒投了

 24…Kg8 なら 25.Nf6+ Kh8(25…Kf8 なら 26.Qxe8#)26.Qh7# である。24…Ke7 なら 25.Rad1 の後 26.Bg5+ 又は 27.Qxg7+ ですぐ詰む。

2014年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(012)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

4.中盤戦での勝ちの局面

 これまでの説明をすべて理解した初学者は全駒を用いた実際の試合を指してみたいに違いない。しかし布局を考える前に、実戦によく現れる手筋に少し時間を割くことにする。手筋に習熟するようになればチェスの美しさについて考えるようになるだろう。

例11

 手番の黒は白の狙いが Qh6 から Qg7# での詰みと考えていて、1…Re8 と指して …Re1# での詰みを狙う。それに対して白は真のそして強烈な狙いを見舞う。

1…e8 2.Qxh7+ Kxh7 3.Rh3+ Kg8 4.Rh8#

(この章続く)

2014年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(011)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

3.ポーン收局(続き)

 ポーンがすべて盤の片側にある場合を見てきたが、今度は盤の両側にある場合を考える。

例10

 この場合の一般原則は戦力の優勢な方面ですぐに行動を起こすことである。そこで

1.g4

 一般に向かいに相手ポーンのないポーンから突くのが望ましい。

1…a5

 黒は反対側のポーンを突いた。ここで白は黒がさらにポーンを突くのを止めるべきかどうか考える余地がある。この場合はどちらでも良いが、一般には相手キングがそのポーンから離れているときは止めた方が良い。

2.a4 Kf6 3.h4 Ke6

 3…Kg6 なら単純に手数を数えることによって、白キングが反対側に行ってa5のポーンを取り自分の唯一のポーンをクイーンにするのが黒の同じことをすることよりずっと早いことが分かる。

4.g5 Kf7 5.Kf5 Kg7 6.h5 Kf7

 6…h6 なら 7.g6 で白の2ポーンが守り合い、白キングが反対側に行って黒のもう一つのポーンを取ることができる。

7.Ke5

 白キングは反対側に行くことができ、黒のポーンを取って自分のポーンをクイーンに昇格させる。これはこのような收局すべてに典型的なもので、似たような場合も含めて自分で研究しておくのが良い。

(この章続く)

2014年07月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

布局の探究(106)

「Chess Life」1994年11月号(1/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

「機械的な」手の 1…g6

 白の初手に煩わされることなく自分の手が指せるようになりたいだろうか。実はあるのである。それは 1…g6 である。もちろん勝ちなどを保証するものではない。それでも完璧な手を指しているという自信は持てる。1…g6 が本質的に指せる手であることは1960年代に理解されるようになり、その評判は1972年に出版されたレイモンド・キーンとジョージ・ボテリルの名著の『現代防御』によって確かなものになった。

 常にそのようだったわけではない。代表的なのはアレクサンドル・アリョーヒンによる1924年ニューヨーク国際大会の記録本の評価である。布局に関する批評で彼はエドワード・ラスカー対J.R.カパブランカ戦に現れた 1.e4 g6(?) を「冗談布局」と特徴づけている。しかし実戦の解説ではもっと抑制的で的確だった。「今日の定跡の観点からはこの手は全面的に本筋であるとみなすことはできない。というのは黒は中央における相手の展開に何も影響を与えられずに陣形を決めてしまっているからである。」

 なぜ 1…g6 は完全な手なのだろうか。それは当然の 2…Bg7 のあと、特に欠陥がなくキング翼ビショップを中央に向かって展開しキャッスリングを準備することにより、良い布局の指し方の目的を促進するからである。それにもかかわらず黒はこの防御の機微をよく理解しなければならず、そうしないと白の中央によって窒息させられてしまうことは強調しておく必要がある。白の初手が 1.e4 から 2.d4(または 1.d4 から 2.e4)の場合は特にそうである。

 「キング翼ビショップフィアンケット防御」の主要な特徴は次のとおりである。

 1.融通性が最大である。すなわちキング翼ビショップフィアンケットは白のどんな布局に対しても用いることができる。

 2.反撃指向の防御である。キング翼ビショップがd4に利いているので、黒はその地点の切り崩しを図る。通常の手段は …e5 または …c5 突きによる。

 3.黒はキング翼ナイトの展開を遅らせてキング翼ビショップの威力を増進させるようにする。

 最後の点に関連して、もし白が非常に攻撃的な陣形、つまりポーンをf4に突けば、早く …Nf6 と指すことによりピルツ防御(1.e4 d6 2.d4 Nf6)またはキング翼インディアン防御(1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3 Bg7 4.e4 d6)へ移行することを好む選手が多いことはつけ加えておく。…c5 のシステムを用いるにはシチリア防御の加速ドラゴン戦法(1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 3.Nxd4 g6 または 1.e4 c5 2.Nf3 g6 3.d4 Bg7)の知識が役に立つ。

 白の申し分のない初手の 1.e4、1.d4、1.c4、1.Nf3 そして 1.g3 のそれぞれについて重要な主流手順を簡単に見ていくことにする。

 1…g6 は「完璧な手」に対して欠点がないので、ほかの手に対してもそうである。例えば 1.b3 g6 2.Bb2 Nf6 のあと黒は 3.Bxf6 exf6 を気にする必要はない。なぜなら 4…Bg7、5…O-O そして 6…f5 で形勢は既に互角だからである。

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カテゴリ: 布局の探求2

チェスの基本(010)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

3.ポーン收局(続き)

例9

 この收局で白は初手にどのポーンを突いても勝つことができる。しかしほかに特別な理由がないならば、向かいに相手のポーンがないポーンから突くという一般原則に従うのが手っ取り早くて良い。そこで次のように指し進める。

1.f5 Ke7

 1…g6 なら 2.f6 でこれまでに現れた收局のどれかと似た收局になる。また 1…h6 なら 2.g5 と突く。

2.Ke5 Kf7 3.g5 Ke7

 3…g6 なら 4.f6、3…h6 なら 4.g6+ でどちらの場合も既に出てきた收局のどれかと似た收局になる。

4.h5

 そしてこのあと白が g6 と突くことにより前出の收局と同じになる。黒が 4…g6 と突けば 5.hxg6 hxg6 6.f6+ で同じ結果になる。

(この章続く)

2014年07月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェスの基本

チェスの基本(009)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

3.ポーン收局(続き)

例8

 この局面で白は 1.f5 では勝てない。黒の最善の応手の 1…g6 で引き分けになる(自分で確かめてみること)。1.g5 も 1…g6 で引き分けになる。(これは「見合い」の原理のためである。これはこの收局だけでなくこれまでのポーン收局すべてにかかわっていて、あとでもっと詳細に解説する。)

 しかし白は次のように指すことにより勝つことができる。

1.Ke4 Ke6(1…g6 なら 2.Kd4 Ke6 3.Kc5 Kf6 4.Kd6 Kf7 5.g5 Kg7 6.Ke7 Kg8 7.Kf6 Kh7 8.Kf7 でポーンが取れる)

2.f5+ Kf6 3.Kf4 g6(このポーンが元の位置のままいるならば例7の收局になる)4.g5+ Kf7 5.f6 Ke6 6.Ke4 Kf7 7.Ke5 Kf8

 白はfポーンをクイーンに昇格させることはできない(理由を考えてみよ)。しかしこのポーンを捨てることによって黒ポーンを取って勝つことができる。

8.f7 Kxf7 9.Kd6 Kf8 10.Ke6 Kg7 11.Ke7 Kg8 12.Kf6 Kh7 13.Kf7 Kh8 14.Kxg6 Kg8

 黒の抵抗はまだ続く。実際白の勝ち方はいろいろやってみれば容易に分かるように次の手順しかない。

15.Kh6(15.Kf6 15…Kh7 に 16.g6+ は 16…Kh8 で引き分けになるので、白は勝つためには 16.Kf7 Kh8 17.Kg6 から本譜の手順に戻らなければならない)15…Kh8 16.g6 Kg8 17.g7 Kf7 18.Kh7

 これで白にクイーンができて勝つ。

 この收局は見た目は大変簡単そうだが、駒がほとんど残っていないときでさえ手のよく見える相手に対しては克服しなければならない大きな困難があることを初学者に示している。そしてチェスに本当に熟達する基礎を成すこれらの初歩的なことに対してもきちんと注意を払わなければならないことも示している。

(この章続く)

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