2014年06月の記事一覧

ポルガーの定跡指南(135)

「Chess Life」2006年4月号(2/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御スベシュニコフ戦法[B33](続き)

 次の試合は創始者によるごく初期の典型的な試合である。

白 ホセ・グティエレス
黒 エブゲニー・スベシュニコフ
シエンフエゴス、1979年

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 6.Ndb5 d6 7.Bg5 a6 8.Na3 b5 9.Bxf6 gxf6 10.Nd5 f5 11.Bd3 Be6 12.Qh5 Bg7 13.O-O f4 14.c4?!

 14.c3 の方が良かった。

14…bxc4! 15.Bxc4 O-O 16.Rac1 Rb8 17.b3 Qd7 18.Bd3?!

 白は 18.Rfd1 と指すことができた。18…Bg4? 19.Qg5 Bxd1? なら 20.Nf6+ がある。黒は 18…Kh8 と指すのが良い。

18…Kh8

 黒は 18…f5? 19.Rxc6! Qxc6 20.Ne7+ にはまらないようにしなければならなかった。

19.Rc4

19…f5!

 この手はこのような局面でd5をめぐる戦いを助け、および/またはキング翼の主導権を握るのを助けるために非常に重要な手である。

20.Rfc1 Bxd5! 21.exd5 Nb4

 これで白のd5のポーンが弱くなった。

22.Rc7 Qe8! 23.Qh3

 黒は 23.Qxe8 Rbxe8 と交換されても優勢で、盤上にクイーンが残っているよりも良くなる。

23…e4

 これで黒のポーン得になる。

24.Be2 Nxd5

 あとは簡単だった。

25.Bh5 Qe6 26.Ra7 f3 27.Rxg7

 27.gxf3 なら 27…Nf4。

27…Kxg7 28.gxf3 Qh6 29.f4 Kh8 30.Rd1 Nxf4 白投了

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チェスの基本(008)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

3.ポーン收局

 2ポーン対1ポーンと3ポーン対2ポーンの簡単な收局を、読者がどのようにしたら勝てるのか理解できるように2例ずつ取り上げる。読者が自分で考えるように説明は少なめにする。さらに言えば本の学習からだけでうまい指し方を学べる者はいない。本は手引きとしてしか役に立たない。残りは初学者に先生がいれば先生がしなければならない。先生がいなければ長く厳しい経験によって、本に書かれている多くのことの実戦への応用を実現しなければならない。

例7

 白はこの局面で 1.f6 と突くことによって勝つことはできない。なぜなら黒は 1…gxf6 は負けるので 1…Kg8 と寄り、前述のように 2.fxg7 Kxg7 で引き分けになるからである。2.f7+ なら 2…Kf8 で、白はポーンを取られずにクイーンにすることはできない。2.Ke7 も 2…gxf6 3.Kxf6 Kf8 で引き分けになる。しかし白は次のように指すことにより勝つことができる。

1.Kd7 Kg8 2.Ke7 Kh8 3.f6 gxf6

 3…Kg8 なら 4.f7+ Kh8 5.f8=Q#

4.Kf7 f5 5.g7+ Kh7 6.g8=Q+ Kh6 7.Qg6#

(この章続く)

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チェスの基本(007)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

2.ポーンの昇格(続き)

例6

 今度の局面は白キングが自分のポーンの前にいてその間に1枡あるので白が勝つ。

 やり方は次のとおりである。

 キングはポーンの安全を損ねない限り前進させ、ポーンはその安全を図ることが必須になるまで決して進ませない。

 そこで

1.Ke4 Ke6

 黒は白キングを進ませない。だからここで白は黒キングをどかせるように自分のポーンを進ませることになる。そのあとは自分のキングを前進させることができる。

2.e3 Kf6 3.Kd5 Ke7

 代わりに黒が 3…Kf5 と指したら、白は 4.e4 とポーンを前進させることになる。自分のキングを進めると黒に 4…Ke4 でポーンを取られることになるからである。黒がそう指さなかったので白はまだ安全を図る必要のないポーンを進めずに、キングをもっと前進させるようにするのが良い。だから

4.Ke5 Kd7 5.Kf6 Ke8

 ここでは白ポーンがはるか後方なのでキングで守れる範囲内に持ってくるのが良いだろう。

6.e4 Kd7

 ここで 7.Kf7 と指してはいけない。そう指すと黒に 7…Kd6 と指されて、白はポーンを守るためにキングを戻さなければならなくなる。だから白は次のように指さなければいけない。

7.e5 Ke8

 代わりに黒がキングをほかの地点に動かしたら、白は 8.Kf7 と指してからポーンをe6、e7、e8と進めることができる。これらの地点にはすべて白キングが利いている。黒がこれを防ごうとしているので、白はここで黒キングをどかせて同時に自分のキングを必ずポーンの前に置くようにしなければならない。そこで

8.Ke6

 8.e6 とポーンを突くと、黒は 8…Kf8 と指して例5で説明したのと同様の局面になるので引き分けになってしまう。

8…Kf8 9.Kd7

 黒キングが動き白はポーンをe8まで突き進めてクイーンを作りそれで終わりである。

 この收局は前例と似ている。だから同じ理由で先に進む前に完全に理解しておかなければならない。

(この章続く)

2014年06月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(006)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

2.ポーンの昇格

 ポーンを取ることは可能な最小限の戦力得である。そしてキングは別にしてそのポーンが残っている唯一の部隊のときでさえ勝つのに十分であることがよくある。一般的に言えば次のことが本質的に重要である。

 キングは自分のポーンの前に少なくとも1枡空けて置くのが良い。

 相手のキングがこちらのポーンのすぐ前にいれば勝つことができない。この説明には次の例が一番良い。

例5

 この局面は引き分けにしかならない。そうするためには黒は常にキングをポーンの直前に置くようにする。そして例えばこの局面のように白キングがいるためにそれができないときは、黒キングを白キングの正面に保つようにしなければならない。指し手は次のように進むだろう。1.e3 Ke5 2.Kd3 Kd5 これは非常に重要な手である。あとで分かるようにほかのどんな手でも負けになる。黒キングはポーンの直前に置いておくことができないので、できるだけ前方で同時に白キングの前に持ってこなければならない。

 3.e4+ Ke5 4.Ke3 Ke6 5.Kf4 Kf6 また同じ状況である。白キングが前進してきたが、黒キングはポーンの直前にいけないので白キングの前に置かなければならない。

 6.e5+ Ke6 7.Ke4 Ke7 8.Kd5 Kd7 9.e6+ Ke7 10.Ke5 Ke8 11.Kd6 Kd8

 ここでもし白がポーンを突けば黒キングはポーンの直前に行き、白はポーンを捨てるか Ke6 で空詰み(stalemate)にしなければならない。ポーン突きの代わりに白がキングを引けば、黒はキングをポーンの直前に持ってくる。そして下がらなければならないときはポーンのの方にキングを動かして、白キングが前進すれば前のようにその前に行けるようにする。

 この手順全体は非常に重要で、細かいところまで完全に習熟しておかなければならない。というのはあとで取り上げる原則を含んでいるし、多くの初心者が正しい知識の不足のために同様の局面で負けているからである。本書のこの段階ではその重要性をこれ以上強調することはできない。

(この章続く)

2014年06月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]理詰めのチェス(20)

第2章 クイーンポーン布局(続き)

第20局

 ルビーンシュタイン対サルベ戦ではスケールの大きな大局観指法が見られる。この試合でもまたこの布局の防御の要である …c5 突きを黒が省略した結末が示される。c列とc5の地点を支配した白が偉大な戦略の一端を見せつけることができた。白はc5の地点をビショップでせき止め(黒のcポーンをその場に完全に押しとどめた)その後はこの地点を制圧するためにビショップ、ナイト、ルークそしてクイーンという具合にせき止める駒を次々と交替させた。ルビーンシュタインはついには滅亡の運命にあった黒のcポーンを取り、最終行動となる自分のパスポーンの勝利への行進にとりかかった。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 ルビーンシュタイン
黒 サルベ
ルージ、1908年

1.d4

 100年前の選手はほとんど自動的に 1.e4 で指し始めた。そしてもしギャンビットが可能ならばそれも行なった。

 今日では最小限のリスクで勝ちたい時はほとんどいつも 1.d4 である。クイーンポーン布局は安全で理にかなった局面に到達する。この布局は安心が保障され、さらなる動機として白が最初から少し優勢である。

 白は初手で中原をポーンで占拠し圧力をかける。このポーンは守られていてそれと同時にクイーンとクイーン翼ビショップを解き放つ。

1…d5

 この古典的な応手は中原での圧力を互角にする。さらには白が 2.e4 で好所のほとんどを独占するのも防いでいる。

2.c4

 この手にはいくつかの目的がある。

 ポーンを1個黒にくれてやって中原の放棄を誘うためである。

 (もし黒がポーンを取らなければ)ポーンを交換して自分のルークのためにc列を空けるためである。

 黒のdポーンとd5の地点に対する攻撃を実行に移すためである。

2…e6

 黒はdポーンを別のポーンで守った。黒はもし白が 3.cxd5 と取ってくればポーンで取り返して中原にポーンを維持する用意をした。

3.Nc3

 この手はcポーンとc列の開通を妨げないのでナイトの良い展開である。この布局における要所のd5に対する圧力を増しているので 3.Nf3 よりは少し厳しい手である。

3…c5

 タラシュは手ばなしでこの手を支持していた。彼はたとえポーン交換によって中原に孤立ポーンが残されても駒を自由にかつ容易に展開するにはこれより良い手段はないと考えていた。

 3…c5 の一つの利点は白のdポーンを攻撃することによってすぐに中原の所有を争うことである。別の利点はクイーン翼ビショップの生涯に長期に渡って邪魔をするd7でなくc6にナイトを置くことができることである。

4.cxd5!

 これが主導権を維持する最良の手段である。この交換の目的は黒に孤立dポーンを負わせることである。

4…exd5

 この取り返しが一番安全である。黒は 4…cxd4 5.Qxd4 Nc6 6.Qd1 exd5 7.Qxd5 Be6 でポーンを犠牲にすることもできるがこのギャンビットは無理筋とされている。

5.Nf3

 これで白のナイトは中原の戦略的地点すべて(e4、e5、d4及びd5)を監視下においた。

5…Nf6

 先に 5…Nc6 でd4に対する圧力を強めておく方が適切だった。そうすれば 6.dxc5 には 6…d4 とできて中原にくさびを打ち込むことができた。

6.g3!

 これは数ある良い手の中でも恐らく最善手である。白は穏やかに 6.e3 又は 6.Bf4 と指すこともできる。どちらも白にとって安全で堅固な局面になる。あるいはすぐに 6.Bg5 で攻勢にでることもできる。アリョーヒンは1924年にこの手でクスマンをきれいに負かしている。

 本譜の落ち着いた手でルビーンシュタインはキング翼ビショップをフィアンケットしてd5の地点に対する圧力を増すつもりである。

6…Nc6

 黒をタラシュ防御に駆り立てた目的の一つが達成された。黒のクイーン翼ナイトは中原に影響力を発揮している。また(通常ならd7のナイトで動きを制限されている)クイーン翼ビショップも自由で束縛を受けていない。

7.Bg2

 ビショップが対角斜筋に臨み黒のdポーンに特別の注意を注いでいる。当面はナイトによって利きをふさがれているがナイトはかろやかに飛びのくことができる。

7…cxd4

 黒は自分の駒にもっと利きを与えるためにポーン交換を行なった(キング翼ビショップの筋が通ったことに注意されたい)。しかしこれには危険がないわけではない。素通しの筋は展開に優っている側に有利に働く。そしてこの場合それは白である。

 落ち着いて 7…Be7 と駒を展開しておく方が無難だった。または黒が好戦的ならば強く 7…Bg4 とかかって、白のdポーンに対してその守り駒の一つを攻撃することによってさらに圧力をかけるのもあった。

8.Nxd4

 この取り返しで黒には中原に孤立ポーンが残された。このようなポーンは両脇に守ってくれるポーンがないので自分の駒に敵の攻撃から守ってもらわなければならない。別の考慮点は敵の駒が孤立ポーンのすぐ目の前に、この場合ならd4の地点に、ポーンで追い立てられる恐れなくしっかりと居座ることができるということである。

 これらは全て悲観的な材料である。しかしこれらの欠点と引き換えに孤立ポーン側には駒の活動の場面となる素通しの列と斜筋が報酬として与えられる。ポーン自体もみすぼらしい見かけとは裏腹に堅固な敵陣を粉砕する先陣となることがよくある。

 理論家たちでさえ孤立ポーンの得失については意見が分かれている。ずっと昔にフィリドールは『チェス詳解-短期間でこの高尚な盤上競技に精通できる秘訣』という著書で「ポーンは同僚から分離している時ほとんど又は全然財産とならない」と述べている。擁護派としてはタラシュが「孤立dポーンを恐れる者はチェスを止めた方がよい」と言っている。

 どちらにしても議論の余地がある。

 黒の利点としては駒の働きが良いこと、駒がe4又はc4を(dポーンによって守られた)拠点とすることができるかもしれないこと、それから大駒が素通し列(e列とc列)を利用できることが挙げられる。

 白の有利な点としてはd4に駒を永久に据えることができることと黒に自分のdポーンに対する狙いをかわすのに汲々とさせることができることである。黒のdポーンは簡単には取られない。というのはこのポーンを攻撃している駒の数と同じ数の駒で必ず守ることができるからである。しかしこのポーンにはずっと保護が必要なので白は盤の別の方面に攻撃を移すことができる。黒はそちらの方でも戦いに備えなければならないだけでなくポーンの方にも気を配っていなければならない。

8…Qb6

 相手にナイトを交換するか 9.e3 でナイトを守ってクイーン翼ビショップの利き筋をふさぐようにしむけた。

9.Nxc6!

 この手は白が喜んで黒の手に乗ったことを示唆している。白は黒の孤立ポーンの負担を軽減してやった見返りに他の弱点を固定化した。白はここからはd5の地点のことを忘れてd4とc5の地点を完全に制圧することに注意を向ける。これらの地点に駒を据えることによって白は黒がdポーン又はcポーンを突くのを妨げることができる。これらのポーンをせき止める効果はポーンの背後の全ての黒駒を封じ込めることである。

9…bxc6

 9…Qxc6 と取るのはすぐにdポーンが落ちる。

10.O-O

 白は攻撃に取り掛かる前にキングを安全な場所に送り込んだ。この間にキング翼ルークが中央の列で活動できるようになった。

10…Be7

 あいにく黒は不運な運命のどちらのポーンも突くことができない。10…c5 なら 11.Nxd5 と取られてしまうし 10…d4 なら 11.Na4 でクイーンが当たりのポーンの一つを見捨てなければならなくなる。

 受けの可能性は 10…Be6 にあった。この手はdポーンをさらに守りできるだけ早く …c5 と突いて捌こうというものである。黒は守勢のままではいけない。さもないとつぶされてしまう。

11.Na4!

 白はクイーンを脅すことには興味がない。ナイトが跳ねたのは攻撃のためではなくc5の地点を支配して白の駒がそこにしっかり根を下ろすことができるようにするためである。

11…Qb5

 クイーンは侵入者の撃退に役立つように近くに留まった。

12.Be3!

 読者はこのビショップがf4に行くと予想したことだろう。そこならば遠くまで利いているしeポーンの動きも邪魔しない。あるいはg5だと考えたかもしれない。そこも黒を束縛しビショップの展開先としては効果的な地点になる。これらは自然な良い手であるが、この局面を貫いている戦略構想とは適合していない。いったん確固とした論理的な作戦が決まればそれに従った手を指さなければならない。それは自分の態勢の強化または相手の態勢の弱体化が行き当たりばったりの展開の結果としてでなく、組織的に行なわれるようにするためである。この時点においては展開のための展開であってはならない。

 1地点の支配だけで陣形がつぶれることがあるのは不思議に思われるかもしれないが本当である。それがクイーン翼ギャンビットの魅力の一つである。すなわち(黒が中原の争奪や …c5 によるクイーン翼の捌きを無視したことから生じる)このような支配によって、白は敵の駒を一歩一歩後退させて狭い陣地に押し込め、この間にポーンを昇格枡まで連れて行ったり盤の反対側に目を向けて敵キングを包囲したりすることができるのである。

12…O-O

 前述の解説を読んでいない黒は「良い」展開の手を指して満足している。

 黒はcポーンがc6に永久に固定される前にそれを1枡進めることに全力を挙げるべきであった。今すぐにこのポーンを突くのは 12…c5 13.Bxd5 Nxd5 14.Qxd5 Qxa4 15.Qxa8 で交換損になるので時期尚早である。しかし 12…Be6(dポーンを守りcポーンを突く準備をする)に続いて 13…Nd7 から 14…Rc8 ならもっと激しく抵抗できた。これらは全てcポーンを1枡進めるのを助ける意図である。

13.Rc1

 白は素通し列を確保しc5の地点にさらに圧力をかけそこに駒を据える用意を整えた。

13…Bg4

 白のeポーンに黒の二つの駒が当たっていて白は受け方に困るかもしれない。白はどうするのだろうか。

 14.Re1 ならこのルークの展開に支障をきたす。

 14.Nc3 なら 14…Qxb2 でポーンを取られる。

 14.Rc2 ならナイトを取られる。

 14.f3 ならキングの回りのポーンがゆるみ自分のビショップが閉じ込められる。

 黒の手を良しとするこれらの議論にもかかわらずタラシュは次のように言ってこのような論証を一蹴していた。「攻撃の始まりであり・・・」

14.f3

 「・・・そして攻撃の終わりである。」

 キング翼ビショップが閉じ込められているのは一時的なことに過ぎない。キング翼ポーンの弱体化も黒がそれにつけ込めないならば何の影響もない。

14…Be6

 ビショップが正しい地点を見つけたが遅かった。既に手遅れである。

15.Bc5!

 戦略地点のd4とc5を制圧した白は黒ポーンを動けなくし黒駒の動きを制限する地点に駒を据えた。

15…Rfe8

 黒はビショップを守るか交換に応じるしかない。交換するのは 15…Bxc5 16.Rxc5 で別の駒がクイーン当たりの先手でせき止め役の代わりをするので気が進まない。

16.Rf2!

 これは妙手である。ルークはc2に行ってc列の活用を支援する用意をした。それにf1の地点を空けたことによりビショップがもっと役に立つ斜筋に行けるようになった。

16…Nd7

 黒は三つ目の駒でビショップを当たりにし逃げてくれることを期待した。

17.Bxe7

 ビショップが引き下がると黒が 17…c5 と突いてきて押さえ込みが破られるので引き下がらない。代わりに多くの選手が手拍子で指すような 17.b4 でビショップを守る手も指さない。この手は 17…Bxc5 と取られて 18.Rxc5 は交換損になるし 18.Nxc5 は 18…Qxb4 とポーンを取られるので結局 18.bxc5 とポーンで取るしかない。しかしc5のポーンは動けず役に立たないだけでなく自分自身でc列を白駒に対して閉ざしてしまう。これは敵陣の弱点はポーンでなく駒で占拠するという戦略全体を否定してしまう。駒は列を空けて攻撃に活用できるように自由に動き回れる。駒はもし必要ならば別の駒でせき止めを行なえるように移動することができる。

17…Rxe7

 これは取る一手である。

18.Qd4!

 なんと素晴らしい。クイーンの中央化は非常に効果的である。クイーンは盤のあらゆる場所に影響を及ぼしているだけでなく黒が 18…c5 突きで捌くのを阻止しナイトをc5の地点に据える準備もしている。クイーンが新しい地点からもナイトを守りbポーンも見張っていることに注意されたい。ナイトは自由に動けクイーンに見捨てられたeポーンは今度はルークが守っている。

18…Ree8

 このルークは白の攻撃からc列を守るのを助けるために下がった。a列のルークが動くのはポーンを取られる。

19.Bf1

 これはビショップを働かせる巧妙な手段である。代わりに 19.f4 と突くのは良いどころではない。なぜなら黒の駒に捌く余地を与え、黒のビショップとナイトがe4の地点に来れるようになる。

19…Rec8

 20…c5 と突く可能性を復活させた。黒はこのときになってこのポーンが突けなければ座して死を待つことになるかもしれないと気づいたに違いない。

20.e3!

 このちょっとした手は多くのことを成し遂げている。敵クイーンに当たりをかけて(退却に1手かけさせ)1、2手を得し、自分の白枡ビショップの斜筋を通し、2段目を空けてキング翼ルークがc2に転進してc列での圧力を増すことができるようにした。

20…Qb7

 ボーモントとフレッチャーがシェークスピアになぞらえて言ったように勇気の大部分は分別である。

 捨て身の 20…c5 突きは 21.Rxc5 で咎められる。クイーンが当たりになったままなのでこのルークを取ることができない。

21.Nc5!

 せき止めの始まりである。ナイトがc5に腰をすえ黒陣に対してバリケードを築いた。

21…Nxc5

 黒はこのナイトを取り除いた。それは働いているせき止め駒を除去するためだけでなく駒の交換は狭小な陣形を楽にするという理論に基づいているからである。

22.Rxc5

 前任者ほど敏捷ではないが新しいせき止め駒はポーンによるいじめやビショップによる当たりを受けないという特権を享受している。黒のビショップはこのルークのいる枡の色と反対の色の枡でしか働けない。

22…Rc7

 黒には反撃の手段がない。黒にできることはじっと事の成り行きを見守ることだけである。

 しかし白はどのように相手の動けないことにつけ込むのだろうか。どのように相手の消極的な抵抗に打ち勝つのだろうか。

23.Rfc2

 白はまずc列にルークを重ねた。これはルークの威力を倍以上にさせる。

 今のところは無駄骨を折っている感じである。しかし手段はきっとある。信じることが大切である。

23…Qb6

 黒は相手が狙いを見せて態度を明らかにするまで当たり障りのない手を指すつもりである。

24.b4!

 これがその手である。ルークが敵を押さえつけている間にポーンが敵陣に殴りこみをかける。

 白の直接の狙いは 25.b5 で黒の動けないcポーンに三つ目の当たりをかけることである。

24…a6

 黒はポーンの前進を指をくわえて見ているわけにはいかない。

25.Ra5!

 攻撃の矛先を変えて黒がすべての弱点の守りに忙殺されるようにした。ルークが移動してもcポーンに対する圧力は失われずこのポーンは今の所に居続けなければならない。

25…Rb8

 当たりにされたクイーンを守った。他の手段は次のように見通しが暗い。

 25…Qxd4 は 26.exd4 Bc8(aポーンを守るため)27.Rxd5 で白のポーン得になる。

 25…Qb7 は 26.Qc5 の後 27.a4 から 28.b5 で決定的な敵陣突破が行なわれる。

26.a3

 攻撃を続行する前に大切なbポーン(このポーンは黒を屈服させる運命にある)を守った。

26…Ra7

 二つの駒で当たりにされているaポーンを守ったが別のポーンを取られる。しかし黒には全ての弱点を守る術はなかった。もし 26…Bc8 と守れば 27.Qxb6 Rxb6 28.Rxd5 とcポーンの釘付けを利用してポーンを取られる。

27.Rxc6!

 このささやかな略奪は白の大局観戦略の真価の最初の具体的な証拠である。黒の困難の原因であるcポーンが最初に落ちるのは当然の報いでしかない。

27…Qxc6

 b7に引く手や交換する手よりもこの手の方が良い。27…Qb7 は 28.Raxa6 で白がポーン得を重ね2個のポーンが連結パスポーンになり昇格枡へ駆け出す準備をする。27…Qxd4 は 28.exd4 で白が3個の駒で当たりにしているaポーンも手中に収めることになる。

28.Qxa7

 この取り返しの後も黒はまだ気が抜けない。ルークだけでなくaポーンも当たりのままである。

28…Ra8

 これでaポーンを助けた。それでも 29.Rxa6 と取ってくれば 29…Rxa7 30.Rxc6 Rxa3 で黒もポーンが取れる。

29.Qc5

 今度はクイーンで再びc列と急所の地点を押さえた。

29…Qb7

 黒はクイーン交換を避けた。もし交換すれば次のようになる。29…Qxc5 30.Rxc5 Kf8 31.Ra5 でaポーンを助けるにはdポーンを見捨てるしかない。

30.Kf2

 キング翼を固めただけでなくクイーンが交換された場合の収局に備えてキングを中央に近づけた。

30…h5

 これは一種の示威行動だが白は動じもしなければクイーン翼で決着をつけるという白の方針も揺らぎもしない。

31.Be2

 白は局面が捌けてきた時に受けるかもしれないうるさいチェックからキングをかくまった。

31…g6

 黒駒は2個の孤立ポーンの守りに縛り付けられている。それでポーンを突いて手待ちをした。

32.Qd6

 白は厳しく三つ目の駒で敵のaポーンを当たりにした。黒陣にクイーンがさらに侵入したことによりc5の地点が空いてルークが7段目の侵入のための経由地点として利用できるようになった。

32…Qc8

 黒は全部のポーンを守ることはできない(32…Bc8 なら 33.Qxd5)。そこでaポーンを見捨てて素通しのc列を通って白キングに肉薄しようとした。

33.Rc5!

 鉄の公爵をすり抜けることはできない。はぐれポーンをかき集めるよりもc列の支配を維持し黒の駒を寄せ付けないようにすることの方が重要である。

33…Qb7

 クイーンは敵ルークに当たりをかけられて飛び先に迷うほどの地点もなかった。

34.h4

 この手はキング翼の黒ポーンを動けなくしその方面の奇襲攻撃への備えにもなっている。

34…a5

 黒はクイーンのためにa列を力ずくでこじ開けようとした。

 他に何かあるだろうか。34…Kg7 なら 35.Rc7 Qb8 36.Bxa6 Kg8(36…Rxa6 なら 37.Rxf7+ でクイーンが取られる)37.Bb7! Ra7 38.Rc8+ Bxc8 39.Qxb8 で白の楽勝である。

35.Rc7

 この手は敵クイーンの逃げ場所を最小限の1枡に減少させる。

 これで白は戦略上の要所、すなわちc列、急所のc5の地点、d列、6段目それに7段目を全て制圧した。

35…Qb8

 ここが唯一の逃げ場所である。このクイーンは次第に追い詰められてきた。

36.b5

 これが新たな難儀の元である。白がパスポーンを突き進めてきた。

36…a4

 黒はルークをもっと動けるようにしなければならない。

37.b6

 この手は 38.b7 Ra7 39.Rc8+ Bxc8 30.Qxb8 で手当たりしだいに取ってしまう狙いである。

37…Ra5

 ルークはここに来ても何もすることがないが適当な受けもない。

38.b7!

 39.Rc8+ でクイーンを取る狙いをあらためて示した。

38…投了

 もうこれ以上指す手ができない。

 38…Kg7 なら 39.Rxf7+ でたちまちクイーンを素抜かれる。

 38…Qe8 なら 39.Qb6 であまり見かけない形でルークが取られる。

 38…Qa7 なら 39.Qd8+ Kg7 40.b8=Q で、黒が詰みを逃れるためにはクイーンを捨てるしかない。

 白の指し回しは大局的優位の組織的な活用のみごとな例である。c5の地点をビショップ、ナイト、ルークそれからクイーンというようにかわるがわる白駒が占拠して跳躍台として利用したありさまは至高の芸術作品の技巧を垣間見た思いである。

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

チェスの基本(005)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

1.単純な詰み(続き)

例4

 最後はクイーンとキング対キングである。クイーンはルークとビショップの働きをあわせ持っているので一番簡単な詰みで、いつも10手以下で詰めてしかるべきである。次の局面を例にとる。

 最初の手はクイーンから動かして黒キングの動きをできるだけ制限するのが良い。1.Qc6 Kd4 2.Kd2 既に黒キングは1枡しか動けなくなっている。2…Ke5 3.Ke3 Kf5 4.Qd6 Kg5(4…Kg4 なら 5.Qg6+)5.Qe6 Kh4(5…Kh5 なら 6.Kf4 のあと1手詰み)6.Qg6 Kh3 7.Kf3 Kh4(h2) 8.Qg4#(g2#)

 この收局ではルークの場合のように黒キングを盤端に行かせなければならない。クイーンはルークよりはるかに強力なので手順はずっと簡単で短い。以上が初歩の三つの收局で、すべてにおいて原則は同じである。それそれの場合キングとの協力が必要である。キングの助けなしに詰めるには少なくとも2個のルークが必要である。

(この章続く)

2014年06月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(004)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

1.単純な詰み(続き)

例3

 今度は2ビショップとキング対キングの番である。

 黒キングが隅にいるので白は 1.Bd3 Kg7 2.Bg5 Kf7 3.Bf5 と指し進めることができ、黒キングは早くも少ない枡に閉じ込められている。もし黒キングが最初の局面で盤の中央か自陣の最下段から離れた地点にいたならば、白は自分のキングを進めて2ビショップの助けを借りて黒キングの動きをできるだけ少ない枡に制限するのが良い。

 そして本譜は 3…Kg7 4.Kf2 と続きそうである。この收局で黒キングは盤端に追いやらなければならないだけでなく隅にも追いやらなければならない。そして詰みが可能になるためには、白キングが6段目に行かなければならないと同時に、端の2列のどちらかにいなければならない。この場合ならh6、g6、f7そしてf8が該当し、h6とg6が最も近いのでこのどちらかに白キングを行かせるべきである。4…Kf7 5.Kg3 Kg7 6.Kh4 Kf7 7.Kh5 Kg7 8.Bg6 Kg8 9.Kh6 Kf8 白はここで足踏みをしてビショップの一つを動かし黒キングを戻らせなければならない。10.Bh5 Kg8 11.Be7 Kh8 ここで白枡ビショップは黒キングがg8に戻ったときに白枡の斜筋でチェックできる地点を占めなければならない。12.Bg4 Kg8 13.Be6+ Kh8 14.Bf6#

 詰みあがるまで14手かかった。どんな局面でも30手かからないはずである。

 この種の收局ではいつも空詰み(stalemate)に陥らないように注意しなければならない。

 この收局ではキングを端だけでなく隅に追い込むことを覚えておかなければならない。しかしこのような收局ではすべてにおいてキングは列の端であろうと段の端であろうと、例えばh5でもa4でもe1でもd8でも違いがなくなる。

(この章続く)

2014年06月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(105)

「Chess Life」1994年9月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

勇者か弱虫か(続き)

Ⅱ.もし簡明でほとんど対称的な局面における積極的な指し方の構想が気に入っているならば、勝ちにいくための実行可能な手段として交換戦法を考えるとよい(続き)

  B.1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Nf3 Nf6

5.Bd3

 4.5…Bd6 D.グレビッチ対V.イワンチュク(ビール・インターゾーナル、1993年)

 これが黒の最も人気のある応手である。白の積極的な手をまねしても十分大丈夫と自陣を信頼している。

6.O-O O-O 7.Bg5

 重要な変化が二つある。

 1.7.h3 h6 8.Re1 Re8 9.Rxe8+ Qxe8 10.Nc3 a6 11.Be3 Nc6 12.a3 Ne7! 13.Nh4 Ng6 14.Nxg6 fxg6 15.Qf3 Qf7 16.Bf4 Bxf4 17.Qxf4 g5 18.Qe5 Be6 19.Bg6 Qxg6 20.Qxe6+ Qf7 形勢は互角で、Pe.H.ニールセン対L.B.ハンセン戦(トストルプ、1992年)では引き分けが合意された。

 2.7.Nc3 がポール・モーフィーの常用手だった。典型的な3例をあげる。

 a.7…c6 8.Bg5 h6?! 9.Bh4 Bg4 10.h3 Bxf3 11.Qxf3 Nbd7 12.Bf5 Qc7 13.Rae1 Rae8 14.Re3 Bf4 15.Re2 これはP.モーフィー対レーベンタール戦(番勝負第10局、1858年)で白が少し優勢だった。

 b.7…Bg4 8.h3 Be6?! 9.Be3(9.Bg5!)9…Nc6 10.Qd2 Qd7 11.Bf4 Rfe8 12.Rae1 Rad8 13.Ne5 Qc8 14.Bb5 Bxe5! 15.Bxe5 Nxe5! 16.dxe5 Ne4! これはP.モーフィー対ウォーカー戦(ロンドン、1859年)で互角だった。

 c.7…c5?! 8.dxc5 Bxc5 9.Bg5 Be6 10.Qd2 Nc6 11.Rad1 Be7 12.Rfe1 a6 13.Qf4 これはモーフィー対連合軍戦(パリ、1858年)で、白駒は働きが大変良く黒は孤立ポーンの代償が不十分である。

7…Bg4 8.c3 Nbd7 9.Nbd2 c5?!

 黒は勝ちを目指すために、ほとんど見返りのない孤立dポーンが残される危険をおかした。通常の手は対称形を続ける 9…c6 である。

10.Qc2 h6?!

 もっと役に立つ手は積極的な 10…Qb6 である。

11.dxc5! Nxc5 12.Bh4 Re8 13.Bb5?!

 動機のない本譜の手の代わりに普通に 13.Rfe1! で 14.Bf5 を狙えば白が少し優勢で指しやすかった。

13…Bd7 14.Bxd7 Ncxd7 15.Nd4 a6?! 16.Nf5 Bf8 17.Rad1 Qb6 18.Nb3

 典型的なタラシュ防御の局面ではb3はナイトにとってつまらない地点である。この陣形的に似た局面でも同じことが成り立つ。GMグレビッチは代わりに 18.Nf3! Bc5 19.b4 Bf8 20.Ne3 をあげて白が優勢になる可能性が高いとしている。あまりに守勢の手を指したことにより白は困難に陥るが、GMイワンチュクは好機を生かさず引き分けになった。GMグレビッチの記号だけを付けて本稿を終わることにする。完全な分析はチェス新報第58巻第300局を参照されたい。

18…Re4! 19.Bxf6? Nxf6 20.Ne3 Re5 21.Rd3 Rae8 22.Nd4 Bc5 23.g3 h5! 24.b4 Bxd4 25.Rxd4 Qe6?(25…Rxe3!)26.Qd3 g6 27.a4 Rc8 28.Rd1 Rc6 29.a5 Kh7 30.Kg2 Qc8 31.c4 dxc4 32.Nxc4 Ree6 33.Nb6 Qc7 34.Qf3 Rc3 35.Rd7 Qxd7 36.Nxd7 Rxf3 37.Kxf3 Rc6 38.Nc5 Rc7 39.Rd4 Kg7 40.h3?! Kf8 41.g4 hxg4+ 42.hxg4 Ke7 43.g5 Nd7! 44.Nxd7 Rxd7 45.Rxd7+ Kxd7 46.Ke4 Ke6 47.Kd4 Kd6! 48.f3 Kc6 49.Ke5 Kd7 引き分け

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2014年06月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(003)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則(続き)

1.単純な詰み(続き)

例2

 黒キングが盤の中央にいるので、白の最良の手段は次のように自分のキングを進めることである。

1.Ke2 Kd5 2.Ke3

 ルークがまだ戦いに参加していないので、キングをすぐに盤の中央に相手のキングの正面でなく1列横に進める方が良い。ここで黒キングがe5に来ればルークが Rh5+ によって押し返す。その一方で 2…Kc4 でも 3.Rh5 である。そして 3…Kb4 なら 4.Kd3 と追い、3…Kc3 なら 4.Rh4 で黒キングをできるだけ少ない枡に閉じ込める。

 この後は 4…Kc2 5.Rc4+ Kb3 6.Kd3 Kb2 7.Rb4+ Ka3 8.Kc3 Ka2 と進むかもしれない。注意すべきは白キングが何度もルークの隣に行って、ルークを守っただけでなく相手のキングの動く余地を狭めたことである。ここからは白は3手で詰ませる。9.Ra4+ Kb1 10.ルークがa列の任意の地点に行って黒キングを白キングの直下に来させる Kc1 11.Ra1# 詰むまで11手かかったが、どんな条件でも20手以下で詰むはずである。単調だったかもしれないが、自駒の適切な動かし方が学べるので初心者には練習する価値がある。

(この章続く)

2014年06月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(002)

第1部

第1章 收局、中盤戦そして布局での最初の原則

 初学者が最初に学ぶべきことは駒の働きについて慣れることである。このための最も良いやり方は単純な詰みのいくつかをどのようにすれば迅速に達成できるかを習うことである。

1.単純な詰み

例1 ルークとキング対キングの收局

 原則は盤のどの端でもよいから相手のキングを盤端に追い込むことである。

 この局面でルークの威力は初手の Ra7 によって発揮される。この手は黒キングを盤端に押し込め 1.Ra7 Kg8 2.Kg2 によって迅速に詰ませることができるようにしている。

 詰ませることのできる局面に持っていくためにはキングとルークの共同作戦が必要である。初学者は次の一般原則に従うとよい。

 自分のキングをできるだけ相手のキングと同じ段、またはここでの場合のように同じ列に置くこと。

 ここでの場合白キングが6段目に行ったときは、相手のキングと同じ列でなく中央寄りの隣の列に置く方が良い。

2…Kf8 3.Kf3 Ke8 4.Ke4 Kd8 5.Kd5 Kc8 6.Kd6

 6.Kc6 でない理由は、そう指すと黒キングがd8に戻り、詰ませるまでもっと手数がかかるからである。ここでは黒キングがd8に戻ると Ra8 で即詰みになる。

6…Kb8 7.Rc7 Ka8 8.Kc6 Kb8 9.Kb6 Ka8 10.Rc8#

 最初の局面から詰むまでちょうど10手かかった。5手目で黒は 5…Ke8 と指すことができ、原則に従えば白は 6.Kd6 と指す。 6…Kf8(黒キングはいつか白キングの前に行かされ Ra8 で詰まされる)7.Ke6 Kg8 8.Kf6 Kh8 9.Kg6 Kg8 10.Ra8#

(この章続く)

2014年06月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(134)

「Chess Life」2006年4月号(1/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御スベシュニコフ戦法[B33]

 米国ではラスカー=ペリカン戦法とも呼ばれるスベシュニコフ戦法はまず1970年代半ばに盛んになった。GMエブゲニー・スベシュニコフを筆頭にソ連の若い選手たちによって広められた。ロシアではチェリャビンスク戦法としても知られている。

 25-30年くらい前に「スベシュニコフ戦法に退治法はあるのか」をめぐってクラブ選手の間でもマスターたちの間でも数限りなく論争されたのを鮮明に覚えている。定跡がどんどん深化していくにつれて、驚くべきことに特に最上位の大会でますます流行した。世界の最強選手の多くによって指されている。黒で多用する選手を少しあげるとクラムニク、レーコー、トパロフそれにアーナンドがいる。

 スベシュニコフ戦法は 1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 で始まり、ここでグランドマスターはほとんどきまって 6.Ndb5 と応じる。しかし本稿ではチェスクラブでよく指されるほかの手(6手目)に焦点を合わせる。

白の基本的な作戦は何か

 黒が 5…e5 でd5の地点を弱めるので、白の目標は早く決まる。それはd5の地点につけ込みd6のポーンを攻撃することである。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は自らd5に「空所」を作り出すが、盤の至る所で動的な戦いを起こそうとする。戦型A)では黒は早く …d7-d5 と突くことを目指す。Ndb5 のほかの戦型では白のナイトはよくa3に落ち着き、そこで少なくとも一時的に遊び駒になる。黒は正確には局面に依存するがキング翼、中央、それにクイーン翼のどこで動くかを選択できる。

それで評決はどうなっているか

 スベシュニコフ戦法は黒にとって多くの危険を伴う意欲的な布局選択となる。積極的な指し方が好きで且つその代わりに出遅れポーンができることを気にしないならば、スベシュニコフ戦法は良い選択肢になるかもしれない。

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2014年06月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェスの基本(001)

はじめに

 『チェスの基本』は13年前に初めて出版された。それ以降いわゆる「超現代の考え方」について論じた記事がいろいろな機会に現れた。そのような記事を読んだ人たちは何か新しく決定的なことが発見されたと思ったかもしれない。事実は「超現代の考え方」は一般に布局の段階においていくらか新しい戦術の手段をとおして以前と同じ原則を適用しているにすぎない。基本には何も変わりがない。変わったのは形式にすぎず、必ずしも最良の方向へではない。

 チェスでは戦術は変わるかもしれないが、戦略の基本原則はいつも同じである。だから『チェスの基本』は今も13年前と同じく通用する。チェスの規則や規定が現在と同じである限り、今から100年後も通用するだろう。だから読者は自分の必要とすることがすべて書いてあり何も付け加えることや変えることがないと保障されていると思って本書を読んでかまわない。『チェスの基本』は13年前は同種の中で標準的な一冊だった。そして今でも同種の中で標準的な一冊であると確信している。

J.R.カパブランカ
ニューヨーク、1934年9月1日

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カロカン防御の指し方(180)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

 これが最後の罠だった。30.Rxa4 と取ると 30…Rd1+ 31.Bf1 Bh3 32.Nd2 のあと 32…c3! で急に黒の反撃が本物になる[訳注 途中 32.Ra8+ Kg7 33.Rxf7+ Kxf7 34.Ng5+ Ke7 35.Nxh3 c3 36.Ra2 で白の勝勢です]。

30.Re1!

 これで白の最下段に向けた詰みの策略に終止符を打った。そのような戦術の着想が尽きては黒はナイト損に見合うものが何もない。

30…Bxe4 31.R7xe4 Rd2 32.R4e2 Rxe2 33.Rxe2 Ra1+ 34.Bf1 c3 35.Rc2 Ra3 36.f4 Kf8 37.Kf2 Ke7 38.Ke3 Kd6 39.Kd3 Ra1 40.Bg2 黒投了

(完)

2014年06月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(179)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

 この手にはまた罠が仕組まれている。白は 25.Rxe7 で駒得できるが、黒は 25…Qxa3 26.Rxa3 Rd1+ 27.Bf1 Bh3 28.Nd2 Rd8 と反撃する[訳注 29.g4 で白の勝勢です]。

25.Qxd6 Rxd6 26.c5

 この手はやらずもがなだった。26.Rxe7 Bc2 27.Re3 なら簡単な勝ちだった。

26…bxc5

 黒は 26…Re6 で損失を減らすことができるが、27.cxb6 のあと b6-b7 から a4-a5 でクイーン翼ポーンのスチームローラー攻撃を仕掛けられて見込みがない。

27.Rxe7 c4

 27…Rxa4!? なら 28.Rxa4 Rd1+ 29.Bf1 Bh3 30.Ra1 で白が簡単に勝つ。

28.Nc5 Ra5 29.Ne4 Rxa4!

(この章続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(19)

第2章 クイーンポーン布局(続き)

第19局

 グリューンフェルト対シェンカイン戦では前局と同様の困難が黒を襲った。ここでは中原での挑戦が遅れたために白の守られていないポーンによって黒のcポーンが封じ込められ、それに伴ってクイーン翼も同じ目にあった。白の攻撃が突然キング翼に移った時黒は抵抗に窮した。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 グリューンフェルト
黒 シェンカイン
ウィーン、1915年

1.d4

 初手のポーン突きで1度に2個の駒が解き放たれた。駒を最下段から離し戦場へ出す際に白は1手でこれだけの有利さを得ることができる。ポーン自身も中原の支配と要所の制圧をめぐる戦いで重要な役目を果たす。

1…d5

 恐らく黒の最善の応手である。黒はこの手で白の中原での圧力を相殺した。

2.c4

 これは攻撃であると同時にポーンの提供である。攻撃というのは、白が 3.cxd5 Qxd5 4.Nc3 Qa5 5.e4 で中原にポーンを並べることを狙っているからである。提供というのは、黒が 2…dxc4 でポーンを得することができるからである(一時的にすぎないが)。

 どちらの見方をしようと、白の目的は黒のdポーンをd5から取り除くかよそへ誘い出すことによって黒の中原ポーンを壊滅させることである。

2…c6

 黒は 3.cxd5 に対し中原にポーンを維持するために 3…cxd5 とポーンで取り返す用意をした。

 黒の2手目はもう一つの手の 2…e6 と異なりクイーン翼ビショップを閉じ込めないという利点がある。欠点はクイーン翼ビショップを気軽に展開するとこのビショップの不在によってもたらされるdポーンとbポーンに対する厄介な攻撃を撃退する用意をしておかなければならないということである。別のもっと重要な考慮すべきことはc6にいるcポーンはdポーンをよく守っているが生涯における主要な目的を果たしていないということである。それは中原での白の支配に挑むことである。白のdポーンを攻撃し同時に黒の大駒が利用できるようにc列を開放するためにこのポーンをc5に突けるようにしなければならない。

3.Nf3

 どうして白は 3.c5 と突き進めて相手のクイーン翼を完全に窒息させないのだろうか。白がそう指さないのには次のようにいくつかの理由がある。

 a)中原の争点は維持するのが良い戦略である。即ちポーンの形を固定するのではなく流動的に保つのである。

 b)ポーンをc5に進めると白は黒の中原に対する攻撃を放棄し、ポーン交換するのが良いという選択肢も放棄してしまうことになる。ポーン交換は黒の中原全体を壊滅させる手段となるかもしれない。

 c)c5の地点はポーンでなく駒のために取っておくべき橋頭堡である。そこに置かれた駒は黒のクイーン翼全体に絶大な影響を及ぼすかもしれない。

 d)ポーンをc5に置くとc列が閉じられクイーンやルークの活動が役に立たなくなる。

 e)序盤ではポーンでなく駒を動かすべきである。

 以上のことは全てチェスのマスターがなぜ「本能的に」正しい手を見つけるのかを説明している。それはマスターが20手先まで読めるからでもなければ可能な各々の手の効果を念入りに調べるからでもない。時には1手先も見ないことがある。マスターは自分の本能(もっと正確には経験と大局観)が原則に反し良い結果に至らないと警告する手はどれも読みからはずすことによって時間を節約している。棋理の感覚に背く手を捨てたり大局観に合わない無理筋を避けたりすることによりマスターは、並のアマチュアが真剣勝負の大会で指すよりももっと強い本筋の手を1手10秒で指すのである。

3…e6

 穏やかな手だが手待ちではない。中原を強化しキング翼ビショップを解放している。

 黒の意図はまだ不明である。次の手でポーンを取って …b5 でポーン得を死守しようとするかもしれない。あるいは 4…f5 の後 5…Nf6 から 6…Ne4 で石垣の態勢を築くかもしれない。

4.e3

 そこで白はcポーンを守って堅実に指す。白は他方のビショップを犠牲にして一方のビショップを解放したが、全てを都合よく運ぶわけにはいかない。

4…Nf6

 ナイトが好位置を占めてd5とe4に強い影響を及ぼした。これらは中原の戦略的4地点のうちの二箇所に当たる。

5.Bd3

 ビショップが大きな影響を発揮できる斜筋に陣取った。一方キング翼は早くキャッスリングできるようにきれいに空けられた。

 おおざっぱに言うとキングがより安全な場所を見つけられるようにキング翼の駒を先に展開するのが良い方針である。ほとんどの選手はこのやり方や忠実に実行した場合の恩恵についてよく知っている。なかにはクイーン翼の駒を解放することを完全に忘れている選手までいる。

5…Nbd7

 このナイトの動きは素晴らしい。というのは白の中原に対していつかは突くことになる …c5 又は …e5 を助けるからである。もう一つのナイトと連携しているということは必要があればf6のナイトに取って代われるのでそれも役に立っている。

6.Nbd2

 この手の主要な目的はコーレ・システムのようにeポーン突きを助けることである。このナイトがc3でなくd2に行ったもう一つの目的は黒が 6…dxc4 と取ってくればこのナイトで取り返し、一つのナイトがe5に行った時他方のナイトでしっかりと支えるためである。

6…Be7

 これは防御には良い手である。たぶん良すぎるかもしれない。このビショップはe7の好所にいてキャッスリングも整っている。しかし白が陣地を獲得し広げようとするのを防ごうとしていない。黒は …c5 突きで反撃しなければならない。さもないと次第に押し込まれ狭い陣地に閉じ込められる。

7.O-O

 キングが盤上の安全な所に退避しキング翼ルークがより活動的な場所に出てきた。

7…Qc7

 これも穏やかな展開の手だが攻撃的な 7…c5 の方がもっと良かったかもしれない。黒はのんびりしていることは許されない。同等の権利を求めて争わなければならない。チェスは臆病者のための競技ではない。

8.e4!

 この手はコーレ・システムにおける仕掛けと似ている。つまり中原の形を崩し、背後に控えている駒のために戦線を開けている。

8…dxe4

 黒はこのポーンをe5に進ませるわけにはいかない。それを許せばキング翼ナイトが追い払われ完全に働きを失ってしまう。

9.Nxe4

 この手の方がビショップで取り返すよりも積極性がある。ナイトがクイーン翼ビショップの利き筋から立ち退き、敵のナイトに動向をきいている。

9…Nxe4

 黒は抑圧された陣形を楽にするために交換しなければならない。

10.Bxe4

 この駒交換は白にとっても都合が良い。盤上から駒が消えていくほど白駒の動き回れる範囲が広がる。特に射程距離の長いビショップはそうである。

10…Nf6

 この手はビショップに当たっているので黒は先手で指せる。そしてクイーン翼の駒にも少し動く余裕ができる。

11.Bc2

 ビショップは引き下がったがそこは好所である。キング翼攻撃の態勢にあるが必要とあれば迅速にクイーン翼へ移動することができる。

 白陣は明らかに好形である。その有利さは次のような点にある。

 白のビショップは攻撃範囲が広い。

 白はポーンで中原を制圧している。

 戦略的要衝のe5を押さえている。

 白の大駒は中央列で大きな効果を発揮することができる。

11…b6

 反対側はeポーンによって閉じ込められているのでビショップをb7へ展開する意図である。

12.Qe2

 白はさらに駒を展開してe5に対する圧力を強めた。この地点を支配すれば黒はeポーンを突いて捌くことが不可能ではないにしても困難になる。

12…Bb7

 このビショップの展開で黒は困難から抜け出る手段を見つけたように見える。黒は次の手で 13…c5 と突いて対角斜筋にこのビショップを働かせ中原に好ましい争点を作り出す用意ができた。黒はその手が間に合うだろうか、それとも …c5 と打って出る好機を既に逃がしたのだろうか。

13.Ne5!

 ここはナイトの絶好の拠点である。ナイトはこの中原の基地から8方向に利きを及ぼし、黒が駒の自由を得ようとする困難さを際立たせている。

13…Rd8

 ポーンに当たっているのでこのルークの展開はもっともらしい手に見える。

 13…c5 で捌くのはもう手遅れである。白に 14.Ba4+ とされるとキングが動くしかなく(代わりにナイト又はビショップでチェックを防ぐのは駒損になる)キャッスリングの権利を失う。

14.Rd1

 白は手損することなく受けた。キング翼ルークがポーンを守り、同時にいずれにせよ行くことにしていた列に行って展開も果たした。

 ルークは素通し列、または素通しになりそうな列にいるべきである。

14…O-O

 14…c5 と突くのはまだ時期尚早である。この手に対する白の応手は 15.Ba4+ で、黒はキングを動かしてキャッスリングの権利を失うか 15…Nd7 16.Bxd7+ Rxd7 17.Nxd7 で交換損に甘んじなければならない。

 白が次の手を指す前に白の優位を要約してみよう。

 白の中原におけるポーンの形は黒駒の自由な動きを制限していてはっきりと黒より優っている。

 白クイーンは9枡に利いているのに対し黒クイーンは5枡である。

 白のビショップは13枡に利いているのに対し黒のビショップは7枡である。

 白ナイトは素晴らしい動きを享受しているのに対し黒ナイトは下がることしかできない。

 明らかに白は陣形において確固たる優位を築いた。白の駒は単純な計算が示すように動きが良く、攻撃力は黒をはるかにしのいでいる。白は陣形上の優位を最高に活用する決定的な手筋を見つける権利を授けられた。

 強固な塹壕で固められた黒陣を突破するのにどのような攻撃策が成功するのかを見るのは興味深い。

15.Bf4!

 ビショップがクイーンを狙いながら展開した。白の狙いは次に 16.Ng6 と指すことで、ビショップの利きがクイーンに当たる。クイーンが逃げた後ルークを取って交換得になる。

15…Bd6

 代わりに 15…Qc8 でクイーンをビショップの利きからはずすのは気が進まなかった。黒は本譜の手でナイトが動いてビショップの利きが通るのを防いだ。

16.c5!

 この手は一連の積極果敢な強襲の始まりで黒が降伏するまで止むことはない。白の狙いは二通りである。それはビショップを追い払うこととクイーン翼の黒陣を永久に封じ込めることである。

16…bxc5

 この手は仕方がない。16…Bxe5 だと 17.Bxe5 Qc8 18.Bxf6 gxf6 19.Qg4+ Kh8 20.Bxh7 Kxh7 21.Rd3 から 22.Rh3# で白の勝ちになる。

17.dxc5

 入れ替わりに別のポーンが出てきてビショップを追い立てる。

17…Bxe5

 17…Bxc5 なら 18.Ng6 で白の交換得になる。

18.Bxe5

 この取り返しでまたクイーンに脅威を与え黒を追い立てる。

18…Qa5

 18…Qc8 なら 19.Bxf6 gxf6 20.Qg4+ Kh8 21.Qh4(一手詰みの狙い)21…f5 22.Qf6+ Kg8 23.h4(このポーンをh6まで突き進めてクイーンがg7に入って詰ます狙い)23…Rd7(24…Qd8 で白クイーンを追い払う狙い)24.Rxd7 Qxd7 25.Rd1 Qc7 26.h5 で 27.h6 の狙いと 27.Rd3 から 28.Rg3+ の狙いが決定的で白の勝ちとなる。

19.Bxf6

 白はキャッスリングした陣形の最良の守り駒のナイトを取り除いた。これは黒の本拠地に攻め入る序曲である。

19…gxf6

 この手の後バリケードで囲われているべきキング翼の黒陣はばらばらである。クイーン翼では駒の動ける余地が必要なのに守られていない白ポーンによって押さえつけられている。

20.Qg4+

 この手は黒の応手を1手に限定するので 20.Qe4 よりも正確である。

20…Kh8

 黒キングは隅に行かなければならない。

21.Qh4

 次は1手詰みである。

21…f5

 詰みを逃れるにはこの手しかない。

22.Qe7!

 クイーンが敵陣の中心部に侵入した。黒ビショップへの当たりは一時的ではあってもビショップを助ける問題に敵をかかりきりにさせるための策略である。これにより白は真の狙いである黒の両方のルークに対する攻撃を実行するのに必要な時間が得られる。

22…Bc8

 黒が 22…Rb8 でビショップを守れば白は次のようにして勝つ。23.Qf6+ Kg8 24.Rd3 f4 25.Rh3(26.Bxh7# の狙い)25…Rfd8 26.Rxh7 で次の手で詰みにできる。

23.b4!

 これが黒を壊滅させる決め手である。黒クイーンはd8のルークに通じる斜筋から離れなければならない。このルークはクイーンの守りが必要である。

 黒は何か受けがあるだろうか。23…Qxb4 なら 24.Rxd8 Rxd8 25.Qxd8+ で白の勝ちである。また 23…Rfe8 なら 24.Qf6+ から 25.bxa5 でクイーンが取れる。最後に 23…Rxd1+ なら 白は24.Rxd1 と応じておいて 25.Qxf8# と 25.bxa5 の二通りの決定的な狙いが残り黒は同時に両方を防ぐことができない。

23…投了

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

カロカン防御の指し方(178)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

19.c4 Nf6 20.Nfg5 Nxe4 21.Nxe4 Bf5?

 この手はbポーンの守りをなくし、もっと重要なことは黒のナイトから最適の地点を取り上げてしまう。白がうまく中央を開放したときにはよくある話である。黒の8手目からの展開は見事に見えたが、それは強力な中原ポーンのせいにすぎない。それらのポーンが一掃されてしまえば、黒のナイトとクイーンはほとんど無力のように見え、前途のある唯一の駒のキング翼ビショップはとっくに交換されてしまっている。

 受けるなら 21…Nf5 の方が良いが、22.Qf4 で黒駒が忘れ去られた状態になる。

22.Nc5!

 これは決め手に近い手である。黒ナイトはルークで当たりにされ、黒のクイーン翼をつなぎ合わせ白ビショップの対角斜筋のにらみをさえぎっているbポーンは落ちる運命である。

22…Qd4

 黒は働いている駒でしか戦えない。この手には罠があり、23.Nxb7 と取ると 23…Rd7 でこのナイトが捕獲される。

23.Qa3! b6

 黒クイーンは一時的に自陣をまとめている。しかしいずれはd4から追い払われる。

24.Nb3! Qd6

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(177)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

 代わりに 13.exd5 cxd5 と交換してから 14.d4 と突くのは、14…e4! で中央が封印され黒駒がc6とf5を利用できるようになるので良くない。本譜の 13.d4 の威力は中央のポーンをすべて迅速に清算することにある。そうなれば白にはクイーン翼に向けた素晴らしいキング翼ビショップが残り、黒には黒枡ビショップ同士の交換のあと弱体化したキング翼が残される。

13…dxe4 14.Nxe4 Rd8 15.Qc1! exd4 16.Bxd4 Bxd4 17.Nxd4 Qe5

 白は Qa3(Qxe7 や Nd6 の狙い)または Qg5 で黒の弱体化した黒枡に向けて進撃する用意ができた。黒はナイトのための良い地点がなくて(17…Nd5 には 18.c4!)、白のクイーンとナイトのf6、h6それにe7への段階的な侵入に備えなければならない。そのため黒はクイーンを守備駒として使う。

18.Nf3 Qg7

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

布局の探究(104)

「Chess Life」1994年9月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

勇者か弱虫か(続き)

Ⅱ.もし簡明でほとんど対称的な局面における積極的な指し方の構想が気に入っているならば、勝ちにいくための実行可能な手段として交換戦法を考えるとよい(続き)

  B.1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Nf3 Nf6

5.Bd3

 3.5…c5!? G.カスパロフ対V.コルチノイ(ティルブルフ、1991年)

 この諸刃の剣のような手はGMコルチノイの独創的な頭脳から生まれた。要点は二つある。もし 6.dxc5 と取ってくれば 6…Bxc5 で黒は …Be7 や …Bd6 と指さずにc5で取り返して、貴重な1手を節約したことになる。取ってこなければ …c5-c4 と突いて白ビショップを追い返す。もちろんこの手には不都合な点もある。つまり展開が遅れ、d5のポーンが弱くなる可能性があることである。

6.O-O c4 7.Re1+ Be7 8.Bf1 O-O 9.Bg5 Bg4

 この釘付けは実際にはうまく働かない。たぶん 9…Nc6!? を詳しく研究した方が良い。H.ハムドウチ対D.コマロフ戦(カンヌ・グランプリ、1992年)では 10.Ne5 Be6 11.Nxc6 bxc6 12.b3 c5! 13.bxc4 dxc4 14.Nd2 h6 15.Bf4 cxd4 16.Bxc4 と進んで白が優勢にならなかった。

10.h3 Bxf3

 これで白は双ビショップを持ち、白枡で優位に立ち、dポーンに対し攻撃の可能性ができる。しかし 10…Bh5 と引くとS.マカリチェフ対M.ウリビン戦(ソ連選手権戦、1991年)では 11.Nc3 Nc6 12.g4! Bg6 13.Ne5 で白が強い主導権を得た。

11.Qxf3 Nc6 12.c3 Qd7

 E.ケンギス対M.グレビッチ戦(ティルブルフ、1992年)では黒が白の Bxf6 のあと働きのないビショップが残されないように、改良手として 12…Ne8!? と指した。そして 13.Bxe7 Nxe7 14.Na3! Nc7 15.Nc2 Qd6 16.g3 Rad8 17.Re2 と進んで白が少し優勢になって(e列の支配、d5の標的、王翼攻撃の可能性)、45手で勝った。チェス新報第56巻第284局を参照。

13.Nd2

 GMカスパロフによれば 13.Na3! から 14.Nc2 と指す方が良かった。

13…Rae8 14.b3?!

 GMカスパロフはこの手からの両者の指し手を厳しく批評している。彼は白の優勢を保ち拡大させるために次の危なげない手順をあげている。14.Re3! Bd8 15.Rae1 Re6!? 16.h4! Rfe8 17.Bxf6 Bxf6 18.g3 Rxe3 19.Rxe3 Rxe3 20.fxe3! dポーンが根本的な弱点になっているだけでなく、白が e3-e4 突きで強力な保護パスdポーンを作り出せる。

14…b5 15.bxc4 bxc4 16.Rab1 Bd8 17.h4?!

 GMカスパロフによればここで黒は 17…Re6!? でe列を支配するようにすればわずかに優勢にさえなれたかもしれなかった。だから白は代わりに 17.Rxe8 と指すことが必要で、17…Rxe8?! は 18.h4! で白が少し優勢になるが 17…Nxe8! なら互角である。残りの手順はGMカスパロフの記号を付けるにとどめる。完全な分析はチェス新報第53巻第243局に載っている。

17…Rxe1? 18.Rxe1 Re8 19.Rb1! h6 20.Bxf6 Bxf6 21.g3 Ne7 22.Qd1! g5?! 23.hxg5 hxg5 24.Bg2 g4 25.Nf1? Bg5 26.Rb2 Kg7 27.Qb1?! Rc8 28.Re2 Rc6 29.Re5 f6 30.Re2 Rb6 31.Qd1 Nf5 32.Re1 Nh6 33.Qe2 Kf7 34.f4?! gxf3e.p. 35.Qxf3 Rd6 36.Re5 Kg7 37.Rxd5 Rxd5 38.Qxd5 Qa4?? 39.Qb7+ Kg6? 40.Bc6! Qa5 41.Be8+ Kf5 42.Qh7+ Kg4 43.Qe4+ Kh3 44.Bd7+ f5 45.Qg2+ 黒投了

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カロカン防御の指し方(176)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

 白はクイーン翼ビショップをb2にフィアンケットすると、敵のeポーンに対する圧力を増すことになる。しかし 9.b3 と突いてもちょうど同じことができる。どうしてbポーンを2枡突いたのだろうか。

 その答えはクイーン翼における白の見通しにある。もし黒が …d5-d4 と突いてくれば白は c2-c3 と突いてそのdポーンに噛みつく。だが黒が …c6-c5 突きで中央を強化できるなら、白はc列を素通しにする選択肢以外何も得なかったことになる。しかしc列は白よりも黒の方が役立てることができる。実際黒が小駒でc3の地点を占拠できれば、白は本当に困ったことになる。

 b2-b4 突きで白は中央を強化する黒のもくろみの裏をかくことができる。…c6-c5 には bxc5 と応じて、ルークをb列とc列に回すことができる。黒は少し展開で後れるので(ナイトの落ち着き場所を見つけるのに手数がかかるため)、クイーン翼でのこの素通しは致命傷になることがある。

9…a5

 これで白のクイーン翼が壊れaポーンが孤立することが確実になる(10.a3 は 10…axb4 11.axb4?? Rxa1 となるので、孤立ポーンを避けられない)。これに対して 9…Qc7 は 10.Bb2 で黒には適当な手がなくなる。というのは 10…d4 と突くと 11.c3! dxc3 12.Bxc3 から Nc4 または d3-d4 で白の術中にはまるからである。

10.bxa5 Qxa5 11.Bb2 Qc7

 黒は 12.exd5 の狙い(12…cxd5 13.Nxe5 または 12…Nxd5 13.Nc4)に対処しなければならなかった。しかし中央の現状を永久に維持することはできない。一方白はクイーン翼で陣地を広げる。

12.a4! Re8 13.d4!

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(175)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例(続き)

 しかし 8.Re1 は白が反撃のために f2-f4 と突く必要がないと判断するならば賢明かもしれない。本局で白は次の手で明らかになるように黒の中央を攻撃する別の作戦を用意していた。

8…Nd7 9.b4!?

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

ポルガーの定跡指南(133)

「Chess Life」2006年3月号(6/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反マーシャルの 8.h3[C88](続き)

戦型D)10…Na5(続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.h3 Bb7 9.d3 d6 10.a3 Na5 11.Ba2 c5

D2)12.Nbd2 Nc6

 黒はcポーンを突くという目的を達成した。ここはナイトを中央近くに引き戻す頃合いである。12…Bc8 から始まるほかの手順も十分指せる。13.c3 Nc6 14.d4(14.Nf1 の方が良く、主手順に戻る)14…exd4(14…Bd7 15.d5 Na5 16.b3 Qc7 17.c4 Rfb8 18.Nf1 bxc4 19.bxc4 Rb7 20.Bd2 Rab8 も黒が良かった[ルッツ対アーナンド、ドイツ、2004年])15.cxd4 cxd4 16.Nb3 d3 17.Bf4 Bb7 18.Qxd3 Ne5 19.Nxe5 dxe5 20.Qxd8 Raxd8 21.Bxe5 Nxe4 形勢は互角である[カスパロフ対バクロ、モスクワ、2004年]。

13.Nf1

 13.c3 Qd7 14.Nf1 は 14…d5 で黒が好調である。以下 15.Bg5(15.exd5 は 15…Nxd5 16.Nxe5 Nxe5 17.Rxe5 Bf6 18.Re1 Rae8 でマーシャル攻撃と同様に黒にポーンの代償が十分ある[アコピアン対オニシュク、マヨルカ、2004年])15…dxe4 16.dxe4 c4 17.Ne3 Rfd8 18.Nf5 Qe6 19.Qe2 Bf8 20.Bb1 h6 で引き分けになった(クラムニク対レーコー、ブリッサゴ)。

13…Bc8 14.c3

 これが現在最もよく指される手だが、これしかないというわけではない。ほかの手をいくつか紹介してみる。ストフスキー対ベリヤフスキー戦(ヨーテボリ、2005年)では 14.Ne3 Be6 15.Bd5 Rc8 16.c3 Bxd5 17.exd5 Nb8 18.a4 Qd7 19.axb5 axb5 20.c4 Rfe8 で均衡のとれている割には面白い試合になった。

 アーナンドの快勝した試合は 14.Bg5 Ne8 15.Bxe7 Nxe7 16.Ne3 Nf6 17.c3 Qc7 18.Nh2 Be6 19.Nhg4 Nd7 20.Qf3 c4 21.Nf5 Bxf5 22.exf5 f6 23.a4 d5 24.Ne3 Qc6 25.dxc4 dxc4 26.Qxc6 Nxc6 27.b4 Nb6 28.a5 Nd7 29.Rad1 Rad8? 30.Nxc4!(鮮やかなナイト切り)30…bxc4 31.Bxc4+ Kh8 32.Bxa6 Ne7 33.Bb7 Nxf5 34.g4 Ne7 35.c4 Nb8 36.a6 Nbc6 37.Rxd8 Rxd8 38.b5 Na5 39.Ra1 で黒が投了した(アーナンド対カシムジャーノフ、レオン、2005年)。もちろんすべて一本道というわけではない。黒はいろいろな所で改良することができる。

14…Be6 15.Bxe6 fxe6 16.b4

 これで白は黒の二重ポーンにより理論的にわずかに優勢である。カスパロフは 16.Ng3 Nd7 17.Be3 d5 で何も有利さを得られず、18.exd5 exd5 19.a4 Rb8 20.axb5 axb5 21.b3 Ra8 で引き分けに合意した(カスパロフ対トパロフ、リナレス、2005年)。

16…Qd7

 16…Nh5 は 17.N1h2 Nf4 18.Bxf4 Rxf4 19.Qb3 Qd7 20.a4 で白が少し優勢だった(アダムズ対カシムジャーノフ、リナレス、2005年)。

17.Qb3 Rfb8 18.N1h2 a5 19.Bd2 h6 20.Ng4

20…Nxg4?!

 黒はh列を開ける白の作戦にのる必要はなかった。安全な指し方は 20…Rb7 21.Nxf6+(21.bxc5 Nxg4 22.hxg4 a4 23.Qc2 dxc5)21…Bxf6 22.bxc5 a4 23.Qc2 dxc5 24.Be3 Be7 だった。

21.hxg4 axb4?! 22.axb4 cxb4 23.cxb4 Bf6 24.Rec1 Kf7 25.g3 Qb7 26.Kg2 Rxa1 27.Rxa1 Ra8 28.Rh1 Nd4?!

 28…Ke7

29.Nxd4 exd4 30.Bf4 d5?

 30…Ke7 31.Rh5 Qc6

31.e5 Be7 32.Qd1 Bg5

 32…Bxb4 33.g5;32…g5 33.Rxh6 gxf4 34.g5 Ke8 35.Qg4

33.Bxg5 hxg5 34.Rh5?

 白は勝つには勝ったが 34.Qd2! Qe7 35.Rc1 でもっと有利に指すことができ、明らかに優勢だった(トパロフ対カシムジャーノフ、サン・ルイス、2005年)。

 黒でマーシャル攻撃を指しているか指す予定ならば、本稿は反マーシャルの 8.h3 に対処する用意をするために必読である。白としてはマーシャル攻撃のポーンを受諾するおびただしい量の深く研究された手順を避ける良い手段のようである。マーシャルで攻撃的な試合を指すことを期待する選手に対しては、少なくとも一時的に守勢に立つことによりギアを変えなければならないので、心理的に効果があるのが普通である。白か黒かにかかわりなく難解で長い戦いに備えなさい。白は正確に指せばしばらく黒に圧力をかけることができる。もっとも黒には堅実な防御の手がある。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

カロカン防御の指し方(174)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例
白 V.チオクルテア
黒 J.コズマ
サトゥ・マーレ、1977年

1.e4 c6 2.d3 d5 3.Nd2 g6 4.Ngf3 Bg7 5.g3 e5 6.Bg2 Ne7 7.O-O O-O 8.Re1

 白の駒とポーンの陣形は一般に逆キング翼インディアンと呼ばれている。これは通常キング翼インディアン防御で黒の指す手順を白が指しているからである。白は黒が中央を安定させるために …d5-d4 と突くことを望んでいる。そのあと白は中央を側面から Nh4 または Ne1 から f2-f4 突きで攻撃することができる。もっともその場合白のルークはfポーン突きを助けるようにf1にいる方が良い。だからここでは 8.Qe2 と指す方が良いかもしれない。

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(173)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

D.閉鎖システム(続き)

 この局面は非常に流動的である。白は敵のeポーンに対しクイーン、キング翼ルーク、それにクイーン翼ビショップでさえ(8.b3 または 8.b4!? でフィアンケットすることにより)圧力をかけることができる。次の実戦例から分かるように、黒はeポーンが盤上からなくなるのを避けなければならないだけでなく、白の突然の d3-d4 突きで中央の4ポーンがすべてなくなるのも避けなければならない。

 同時に黒は中央の地歩を放棄しないで展開を完了することを考慮に入れなければならない。cポーンはクイーン翼ナイトを行かせたい所にいるが、このポーンを突くとdポーンの基盤が揺らぐことになる。ある時点で …d5-d4 から …c6-c5 と突くことを真剣に考えなければならない。そうすればクイーン翼ナイトのための地点が空き、…c5-c4 突きでc列を素通しにする戦略の作戦の準備ができる。

(この章続く)

カロカン防御の指し方(172)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

D.閉鎖システム(続き)

4.Ngf3 Bg7 5.g3 e5

 この手は白駒のために標的を作ってやるけれども、黒の戦力を動員するには最善の手段である。もし黒が先に …e7-e5 と突かずにキング翼ナイトをf6に出すと、白に e4-e5 から d3-d4 と突かれる危険性がある。これは黒駒の動きを厳しく制限し、白に c2-c4 と突いてクイーン翼ルークとキング翼ビショップのために筋を素通しにする可能性を与える。

 黒はある時点で …dxe4 と取ってそれからキング翼ナイトをf6に出して d3-d4 と突けないようにすることもできた。しかし黒はd列がそんなに早く素通しになると十中八九相手の武器になることを認識した方が良い。また、今はほとんどc4に行くことを期待できない白のクイーン翼ナイトが …dxe4 により絶好のc4の地点に行けるようになる。

6.Bg2 Ne7 7.O-O O-O

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

「ヒカルのチェス」(357)

「Chess」2014年6月号(2/2)

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ガシモフ追悼記念大会(続き)

解説 マルコム・ペイン

H.ナカムラ対M.カールセン
第7回戦

26.Nxd3?!

 白は 26.Nxh5! Nxh5 27.Nxd3 cxd3 28.a5 Rb8 29.Bxh5 と指せば優勢だった。

26…Nxd3 27.Qe3 Rb7 28.Nxh5 Qh6 29.Qxh6 gxh6 30.axb5 axb5 31.Bc2!?

31…Ne5

 31…Nxb2 は 32.Rf3 で白にキング翼で動かれる。

32.Ra6 Rd8 33.Ng3 Rb8 34.Ra7 b4 35.Ne2 Bd7

 黒はポーン損だが、動けて危険な多数派ポーンがクイーン翼にある。ここでナカムラは守られていないナイトに対する狙いを見落としていた。

36.Rfa1?

 36.Kg1 b3 37.Bb1 Ra8 38.Rxa8 Rxa8 39.h3 Kg7 40.Kf2 ならまだ戦える。しかし途中 36…Bb5! と指されるとカールセンのポーンが多くの狙いを生じさせるので局面は信じられないくらい複雑である。例えば 37.Nd4 b3 38.Bb1 c3(38…Rdc8!?)39.Nxb5 c2 40.Nc3 Nd3 なら実戦的に黒が良さそうである。もっとも白は1手前で 40.Na3 Rdc8 41.Rc1 Nd3 42.Bxc2 で難を逃れることができる。

36…Bb5! 37.h3 Rdc8

 …b4-b3 と …c4-c3 の狙いは非常に強力である。ナカムラは最下段での釘付けを避けたが、それでもしのげない。

38.Kh2 c3 39.Nd4 cxb2 40.Rb1 Rc4! 41.Nxb5 Rxc2

42.Nd4

 42.Nxd6 なら 42…Rf8!(42…Nd3 43.Nxf7 Rc1 44.Nxh6+ は白のポーンが危険なので煩わしい)43.Kg3 Nd3 44.Rb7 Rc1 で黒が勝つ。

42…Rd2

 42…b3 43.Ra3 Nc4 44.Rxb3 Rxb3 45.Nxb3 Na3 でも黒の勝ちになる。

43.Nc6 Re8

44.Ra4

 44.Nxe5 も 44…Rxe5 45.Ra2 Rxe4 46.Raxb2 Rxb2 47.Rxb2 Kg7 48.g4 Rd4! 49.Kg3 Rd3+ 50.Kh4 b3 で助からない。

44…Nd3 45.Nxb4 Nf2 46.Ra2 Nd1! 47.Rxd1 Rxd1 48.Rxb2 Rxe4 49.Nc6 Kg7 50.f6+ Kxf6 51.Rf2+ Kg6 52.Nd8 Re8 1-0


ヒカル・ナカムラのスポンサーは増え続けていて、一番最近はレッド・ブルである

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(この号終わり)

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カロカン防御の指し方(171)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

D.閉鎖システム(続き)

 少し歴史について触れておいた方がここでの白の戦略を理解するうえで役立つかもしれない。今世紀初めの20年のいわゆる超現代派マスターたちは黒番でとりわけカロカン防御が好きだった。というのは中央での弱体化を避け早まった攻撃を自制するという自分たちの主義に適合していたからだった。しかし超現代派の一人でハンガリーのジュラ・ブレイェルはもし黒が、ここで白が指したような黒の主義に直面したらどうなるのだろうと考えた!彼は白が d2-d3、Nb1-d2 そして Ng1-f3 のあとキング翼ビショップをフィアンケットするかe2に展開する陣形を提唱した。

 これは白が中央の形を決めるのを避け駒の融通性を保つという意味で「超現代派」である。dポーンがe4の地点を守っているので白の作戦にはポーンによるどの要所の支配も譲らないという長所がある。これは本章で取り上げた2ナイト防御に似ているが、ここでは黒にクイーン翼ビショップの「問題」を早く解決する機会を与えないという重要な違いがある(2ナイト防御では 1.e4 c6 2.Nf3 d5 3.Nc3 Bg4! で解決される)。代わりに白は戦力を小ぢんまりと保ち、黒が形を決めるまで自ら動くことを控える。ブレイェルの構想は「逆超現代派」である!

 意外にもこの戦略は本当に黒に問題を生じさせる。対処すべき具体的な狙いがなく、相手が盤の自分側の半分でだけ駒を捌くことに満足するので、黒は作戦の幅が広いけれども互角への容易な道筋がないと感じられるかもしれない。これはこの布局での問題駒のクイーン翼ビショップに役割があるとしてどんな役割を果たさせるかわかる前に、展開の完了の仕方を決めなければならないからである。このビショップは白の2手目がe4のポーンを強化したのでf5に行くことができない。そして白ナイトと交換して手損することを覚悟しなければg4にも行けないかもしれない。

 クイーン翼ビショップの問題が解決するまで黒は中央で足踏みしなければならない。多くのほかの戦型でのように …e7-e6 と突くのはここではクイーン翼ビショップを閉じ込めることにしかならないので、黒はそう突きたくない。

3…g6

 これは落ち着いた応手である。しかし 2.d3 から 3.Nd2 のような非常におとなしい作戦に対しては、黒は何かもっと積極的、もっと「手厳しい」手を探した方が良いかもしれない。白が布局を黒番のように、つまり受動的に指しているので、黒は白番のように、つまり攻撃的に指すことができる。

 白が中央で何も重要な要求をしていないので、黒はまず 3…e5 を考えるのが良いかもしれない。もし黒がナイトをf6とd7に置きキング翼ビショップをd6に置くことができれば、明らかな弱点のない堅固な中央が築ける。しかし白はこの作戦を 4.Ngf3 でeポーンを当たりにして混乱させることができる。白は迅速にキャッスリングし、Re1 で標的のポーンをにらみ、それから d3-d4 突きで局面を開放するつもりである。4.Ngf3 Nd7 5.d4! ですぐに中央でのポーン交換を目指すことさえできる。5…dxe4 6.Nxe4 exd4 7.Qxd4 となれば展開で差をつけはっきり中央を支配することになる。5…exd4 6.exd5! cxd5 7.Nxd4 でも黒のdポーンが標的になるので指しやすい局面になる。同様に 4.Ngf3 Bd6 には 5.d4 で中央を開放することができる。もっとも白は 5.g3 Ne7 6.Bg2 と指してもよい。この最後の手順で白はある時点で d3-d4 または exd5 から c2-c4 で中央を揺さぶり、自分のナイトとキング翼ビショップを活気づけなければならない。

 白に有利なこの種の清算から、黒は白が d3-d4 または exd5 の機会をつかむ前に 3…dxe4 で形を決めることにより危険を避けるのが良いかもしれないということが示唆される。しかしこの交換は白がキング翼ビショップをどのように展開するかを明らかにする前に、中央で行動を起こす不利を抱えている。4.dxe4 のあと白はビショップをフィアンケットする作戦を放棄して、自然なf1-c4の斜筋に据えることができる。例えば 4.dxe4 e5 5.Ngf3 Qc7 6.Bc4 Be7 7.h3! のあと、黒は …Bg4 と指すことができずc8にあの「問題ビショップ」が取り残される。黒は(5…Qc7 の代わりに)手筋がらみの 5…Bc5 で 6.Nxe5 に 6…Bxf2+ から 7…Qxd4+ でe5の駒を取り返すことを狙うことができる。しかし白は 5…Bc5 に対し Nxe5 を狙う(…Qxd4+ と指せないので)好手の 6.c3 や 6.Bc4 で応じることができる。

 最後に 3…Nf6 もあり、その着想は 4.Ngf34…Bg4 でクイーン翼ビショップの問題を解決することである。しかし白には理にかなった手段が二つある。5.h3 Bxf3 6.Qxf3 は2ナイト防御と同様の局面だが、ナイトがc3(…d5-d4 突きや …Bb4 に見舞われる)でなく少し好位置のd2にいる。白は続いて g2-g3、Bg2 そしてキング翼にキャッスリングしたあとたぶん f2-f4-f5 と突いていく。

 また、白は 4.Ngf3 Bg4 のあともっと意欲的に 5.e5!? Nfd7 6.e6 と指してe6に隘路を生じさせることにより黒の展開を乱すことができる。例えば 6…Bxe6 7.Nd4 のあと Nxe6、g2-g3、Bh3 そして Qe2 で、黒キングの周囲の弱体化した白枡に対して強い圧力をかける。もし 6…fxe6 7.h3 Bh5 なら 8.g4 のあと Ng5、d3-d4 そして Qe2 で白が同様の機会を得る。黒はポーン得を保持できるかもしれないが、キャッスリングし展開を完了するのに多くの手数を要することになる。そしてその間に白の優勢が決定的になるかもしれない。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(170)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

D.閉鎖システム

1.e4 c6 2.d3 d5 3.Nd2

(この章続く)

2014年06月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(103)

「Chess Life」1994年9月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

勇者か弱虫か(続き)

Ⅱ.もし簡明でほとんど対称的な局面における積極的な指し方の構想が気に入っているならば、勝ちにいくための実行可能な手段として交換戦法を考えるとよい(続き)

  B.1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Nf3 Nf6

 a.4…Bg4?! 5.h3 Bh5 6.Qe2+! Qe7(6…Be7? 7.Qb5+)7.Be3 Nc6 8.Nc3 O-O-O 9.g4! Bg6 10.O-O-O f6 11.a3 Qd7 12.Nd2! f5?! 13.Nb3 Nf6 14.f3 Bd6 15.Qd2 Rhe8 ここまではG.カスパロフ対N.ショート戦(ティルブルフ、1991年)である。GMカスパロフはここで優勢を拡大する白の最も正確な手段として 16.Kb1! から 17.Bg5 を推奨している。

 b.4…Nc6?! 5.Bb5 Bd6 6.c4 dxc4 7.d5 a6 8.Ba4 b5 9.dxc6 bxa4 10.O-O Ne7 11.Qxa4 O-O 12.Nbd2! Rb8 13.a3 c3 14.bxc3 Rb6 15.Re1! Nxc6 16.Nc4 Rb5 17.Nxd6 M.チャンドラー対E.バレエフ戦(ヘースティングズ、1991-92年)今のところ白駒の方がよく働いているので、優勢につながる。

 c.4…Bd6 5.c4!? c6 6.Nc3 Ne7 7.Bd3 O-O 8.O-O dxc4 9.Bxc4 Nd7 10.Bg5 Nb6 11.Bb3 h6 12.Bh4 Qc7 13.Bxe7 Qxe7 14.Re1 G.カイダノフ対P.ニコリッチ戦(フローニンゲン、1993年)「通常の理由」(陣地の広さ、駒の働き)のために白の優勢は通常どおりである。

 (4…Nf6 の局面がなぜ非常に重要かにはもう一つの重要な理由がある。それはぺトロフ防御における次の主手順から生じることがあるし実際よく生じるからである。1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d3 Nf6 6.d4 d5)

5.Bd3

 白がキング翼の戦力を活動的な好所に展開すること「だけ」に満足しているので、黒は布局の作戦をどうしたら良いか選択することができる。現在指せると考えられている手法は四つある。

 1.5…Be7

 黒はさっさと安全に展開すればやがてはほぼ互角になるはずだと認識している。ここからは次の手順が想定される。6.O-O O-O 7.Bg5 Bg4 8.Re1 Re8 9.Nbd2 Nbd7 10.c3 h6!(白のクイーン翼ビショップにすぐに意図を明らかにさせることが重要である。I.グレク対S.ドルマトフ戦[ドルトムント、1992年]では 10…c6 11.Qc2 h6 12.Bf4! Nh5 13.Be5 Nxe5 14.Bh7+! から 15.Nxe5 で白が明らかに優勢だった)11.Bxf6(11.Bf4 Nh5 12.Be5 Nxe5 のあと白はナイトで取り返すことができず、先手で駒の働きを良くすることもできないので何も得られない)11…Bxf6 12.Qb3 Nb6 13.h3 Be6 14.Re3 Qd6 15.Rae1 c5! 16.Qa3 Be7 17.dxc5 Qxc5 18.Qxc5 Bxc5 A.コステン対Y.ピスコフ戦(ヌーオロ、1993年)では両対局者が引き分けで合意した。GMコステンは 19.R3e2 Bd7 20.Ne5 Kf8 21.Nb3 Bd6 22.Nd4 で局面は互角のままだとつけ加えている。私の考えでは黒の孤立dポーンのために白がわずかに優勢なはずである。

 2.5…Bg4

 白が「あえて」しなかったこと(ナイトの釘付け)を黒はやることにした。こんな荒っぽいことはとても信頼できない。好例はS.ホヘリ対I.グレク戦(ポルツ、1991年)である。6.O-O Be7 7.h3 Bh5 8.c3 O-O 9.Bf4 c5!? 10.dxc5 Bxc5 11.Nbd2 Nc6 12.Qc2 Rc8 13.Bf5 Bg6 14.Nb3 Bb6 15.Rad1 陣形的にはこの局面はタラシュ戦法の古典防御(1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5 exd5)に似ている。そこでは黒は孤立dポーンの正当化に一生懸命に努めなければならないが、それはここでも当てはまる。15…Ne4! 16.Bxg6 fxg6!? 17.Bh2 Qe7 18.Qd3 Rcd8 19.Nfd4! Qh4 20.Qe2!(21.Qg4! の意図)白の優勢が続いている。

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カロカン防御の指し方(169)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

C.現代交換戦法(続き)

 …Nd7 から …a7-a6 突きはいずれにしても黒にとって役に立つ手である。しかし白の Bb5+ は戦術的に効果的といっても短期的にすぎない。これはつまり白は展開に立ち遅れて不利に陥らないよう気をつけなければならないということである。例えばもし白が 7.Qa4 と指して黒のナイトに対する釘付けを維持すれば(7…axb5? 8.Qxa8)、あとで役に立つかもしれないやはり単純な 7…Rb8! で釘付けをはずす。そのあと白は 8…b5 があるのでビショップをc4に引くことができず、謙虚に 8.Be2 b5 9.Qd4 で手損を受け入れなければならず、9…Nb6 のあと …Bb7 から …Nxd5 と進む。

 白は 7.Ba4(または 7.Bc4)でも釘付けを維持することができない。なぜなら 黒は 7.Ba4 b5! 8.Bb3 Nb6 のあと 9…Bb7 から 10…Nbxd5 でやはりクイーン翼の展開で手得しdポーンを有利に取り返すからである。d5の黒ナイトはb7のビショップとあとでの …e7-e6 突きとに支えられて中央での絶好の拠点となる。黒駒はお互いよく連係している。

 6…a6 にはもう一つ注目に値する応手がある。それはあらゆる手段を尽くしてポーン得にしがみつこうとする手である。7.Bxd7+ のあと黒は 7…Qxd7! と取って白のdポーンに対する当たりを保ち …b7-b5 突きから …Bb7 の準備をする。例えば 8.Qf3 b5 9.d6 には 9…Bb7 と応じることができ、そのあとdポーンを取る。また、d7の黒クイーンはg4に飛び出して白の遅い展開につけ込もうとすることもできる。8.Qb3 なら 8…Qg4! から …b7-b5 で、黒は何の苦労もなくポーンを取り返しおまけに厳しいキング翼攻撃ができるはずである。

 この戦法の判決は白に不利なようである。1.e4 c6 2.c4 d5 3.exd5 cxd5 のあと白の最善はたぶん 4.d4! で第4章のパノフ攻撃に戻ることである。

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(168)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

C.現代交換戦法(続き)

 黒が 4…Qxd5 と取れば白はちょっとだけ手得する。5.Nc3 で白は少なくとも1手か2手黒より早く展開を完了する。例えば 5…Qa5 6.Bc4 Nf6 7.Nf3 のあと白はキャッスリングを完了し d2-d4 と突きクイーンとルークをe列とc列に配置する。黒陣はクイーン翼ビショップを早く展開することが難しいことを除いて中央反撃試合に似ている。白は 6…Bf5 または 7…Bg4 に対して Qb3! でb7とf7の地点を両当たりにできる。

5.Bb5+

 白は黒がd5のポーンを取り返すのに手をかける間に、敵駒を混乱させることをもくろんでいる。もし白が落ち着いて 5.Nc3 と指せば黒陣に何も圧力がかからず、黒は簡単に 5…Nxd5 と取ることができる(あるいは第4章で出てきた 1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 g6 6.cxd5 という局面のように 5…g6 とさえ指せる)。だから黒はパノフ攻撃で白がd5のポーンを早まって取ってしまい c4-c5 と突く選択肢を放棄した理屈の局面にもっていける。

 このビショップによるチェックは黒駒の連絡を絶ち、パノフ攻撃へ移行するのを避けることを期待している。白はこれとは別に 5.Qa4+ というチェックでも同じことを達成できるが、このクイーンは 5…Bd7 により手損することになり、黒は展開で先行してポーンを取り返して指しやすい局面にすることができる。例えば 6.Qb3 Na6! は白がbポーンを取っても展開で大きく遅れるので黒が優勢である。7.Qxb7? Nc5! 8.Qb4 e6! のあと黒には 9…Nd3+ で白クイーンを取る狙いがある。白は 7.d4 と指した方が良いが、黒は 7…Qb6 のあとポーンを取り返して優勢である。8.Bc4 Rc8 9.Ne2 Qb4+! 10.Qxb4 Nxb4 で …Nc2+ や …Rxc4 の狙いがある。

5…Nbd7

 チェックの主な目的は黒クイーンのd5への利きを止めることである。もし黒がナイトでなくビショップをさしはさめば白の妨害がずっとひどいことになる。例えば 5…Bd7 に白は 6.Bc4! と指し黒駒をごちゃごちゃにさせる。黒のクイーン翼ビショップは黒がポーンを取り返したいならばクイーン翼ナイトがいるべき地点にいて、そのクイーン翼ナイトには戦いに入る便利な手段がない。

 それにもかかわらず 5…Bd7 6.Bc4 に 6…Qc7 で黒が互角にできると言っている布局の本もある。もし白ビショップがb3に下がれば黒は 7…Nxd5 と取って 8.Bxd5 Qe5+ から 9…Qxd5 で小駒の働きの良さで優勢になるようにする。しかし白は7手目でビショップを引く必要はない。代わりに 7.d3 と指すことができ、ビショップを守るだけでなく 7…Nxd5 8.Bxd5 Qe5+ に 9.Be4 と指すことができ白が大きく優勢になる(9…f5 10.Nf3)。

 教訓は、黒はナイトをこう指してから …a7-a6 で釘付けをはずして …Nb6 でd5のポーンを包囲すればポーンを安全に取り戻すことができるということである。

6.Nc3 a6

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(132)

「Chess Life」2006年3月号(5/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反マーシャルの 8.h3[C88](続き)

戦型D)10…Na5

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.h3 Bb7 9.d3 d6 10.a3 Na5 11.Ba2 c5

 ここで白はクイーン翼ナイトをどこへ展開するか決めなければならない。

D1)12.Nc3 Nc6

 ここではほかにもいくつか手がある。

 a)12…b4 13.Nd5 b3 似たような局面でうまくいくこの典型的なポーン捨てがここではあまりうまくいかない。14.Nxe7+ Qxe7 15.cxb3 Nc6 16.Be3 a5 17.Nh4 Bc8 18.b4 cxb4 19.Rc1

 b)12…h6 13.b4 Nc6 14.Nd5! Nxd5 15.Bxd5 Qc7 16.c3 Nd8 17.Qb3 Rc8 18.Be3 cxb4?! 19.cxb4 Qc3 20.Qxc3 Rxc3 21.Rec1! Rxc1+(21…Rxd3? は 22.Bxb7 Nxb7 23.Rc7 でビショップとナイトの両当たり)22.Rxc1 Bxd5 23.exd5 f5 24.Rc7 Bf6 25.g4!

 c)12…c4 13.Bd2 h6 14.b4 cxb3e.p. 15.cxb3 Nc6 16.b4 Bc8 17.Rc1 Be6 18.Nd5 Rc8 19.d4 Nxd4 20.Nxd4 Rxc1 21.Bxc1 exd4 22.Nxe7+ Qxe7 23.Bb1 Rc8 24.Bb2 Bc4 25.Qxd4 白が双ビショップのおかげで少し優勢だった(ポノマリョフ対スビドレル、モスクワ、2002年)。

13.Nd5

 白は 13.Bg5 と指したこともある。そして 13… Qd7 14.Nh2 Ne8!(面白いことにこのナイトの捌きはポーンを …d6-d5 と突く準備として最善の手段である)15.Bd2(15.Bxe7 Nxe7)15…Nc7 16.Nf1 Kh8!(…f7-f5 と突く用意)17.Ng3 Nd4 となって、すぐに …d6-d5 突きがあり既に黒の指しやすい局面だった。

 また 13.Nh2 は 13…Nd4 14.Nf1(14.Ng4 は 14…Nxg4 15.hxg4 Bg5 となって黒に何の問題もなかった[レーコー対グリシュク、カップ・ダグド、2003年])14…a5 15.a4 b4 16.Nb1 d5 となって、黒が陣形が広くて優勢である(ボローガン対アダムズ、フランス、2003年)。

13…Nxd5 14.Bxd5 Qc7

 ここから白は d3-d4 突きの準備を始める。

15.c3 Nb8

 黒はd5の強力なビショップを追い払うか交換する必要がある。16.Bxb7 Qxb7 17.d4 Nc6 18.Be3 exd4 19.cxd4 Bf6 20.Re2 Rad8 21.Rc1 cxd4 22.Nxd4 Ne5 23.Bf4 そして引き分けが合意された。このあと 23…Rfe8 から …d6-d5 で黒が好調である(ルッツ対カシムジャーノフ、ドイツ、2003年)。

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カロカン防御の指し方(167)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

C.現代交換戦法

1.e4 c6 2.c4

 白はこの変わった2手目でパノフ攻撃(第4章)のタイミングと着想を早めようとしている。最も早い機会に(黒が 2…d5 と突くものとする)中央でポーンを交換することにより白は手得することを期待している。もし黒がクイーンでd5のポーンを取り返せば、白はすぐに Nc3 と展開してさらには黒クイーンをいじめながら自分の展開を進められるかもしれない。あるいはもし黒がd5での最終的な取り返しを先延ばしにすれば(以下の主手順のように)、白は黒に別の種類の展開の問題を抱えさせることを期待している。白は自分のeポーンとcポーンが交換になった結果孤立dポーンができることは気にしない。しかし自分の作戦が成功するかは戦力をずっと速やかに展開することにかかっている。

2…d5 3.exd5 cxd5 3.cxd5 Nf6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(166)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

B.2ナイト戦法(続き)

 白はクイーン翼キャッスリングと g2-g4-g5 から h2-h4-h5 とを組み合わせる作戦を選択することもできる。そのあと Bh3 から g5-g6 で白ビショップがe6への攻撃で生き生きとしてくる。もっと穏健な別の作戦は Be2 から Qg3 でキング翼にキャッスリングすることである。それから白は駒のエネルギーを開放するためにポーンを使うことが必要で、そのためには f2-f4-f5 と突いていくことになるかもしれない。

 一方黒は白の着手を待つことができる。もし白が急いでクイーン翼にキャッスリングすれば、黒は …d5-d4 のあと …Qb6 から …Na6-c5-a4 または …c6-c5-c4! で白キングを攻撃する用意ができている。もし白がキングの所在を決めるのを延期すれば、黒は …Nd7 から …Bd6 のあとクイーンを動かすことができる。黒クイーンはc7、e7およびb6などのいくつかの地点で役に立つことができる。黒は黒枡ビショップ同士をおそらく 7…Bb4 8.Bd2 d4! の手段で交換し、ポーンをe5、d4およびc5に配置して中央をせき止めることができるようにしたい。そのあと白の白枡ビショップはd3、e4そしてたぶんf5またはg4のポーンによっても動きを制限される。しかしもし白が c2-c3xd4 または f2-f4xe5 で局面を開放しようとすれば、黒はナイトでd4またはe5で取り返すことができ好形になる。

 全般的にこの局面はうまく均衡がとれていて、形勢判断は難しい。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(165)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

B.2ナイト戦法(続き)

5…Nf6

 これは最も融通性があり正確な手である。正確である理由は黒がいずれにせよ次の手で …e7-e6 と突くけれども、すぐに 5…e6 と突くのは白に余分な選択肢を与えるからである。融通性がある理由はナイトが跳ねた手が黒のこれからの作戦について何も明らかにしていないからである。黒は …g7-g6 から …Bg7 でもう一つのビショップをフィアンケットさえするかもしれない。

 正確さについてはこのナイト跳ねと 5…e6 とを比較してみよう。白が 5…e6 に 6.d3 と応じれば、黒はナイトをf6に跳ねることにより主手順に戻ることができる。しかし白が 6.d4 と突いたと仮定してみよう。結局黒は最後の手でビショップを白のナイトと交換したことになるので、白はポーンで攻撃的に指したことに満足でき、それらのいくつかが交換されることを期待している(ポーンが少ないほどビショップにとって良い)。6.d4 のあと黒は 6…dxe4 と指すことができるが、この手は白クイーンに当たりになるだけでなくdポーンへの当たりにもなる(7…Qxd4!)。この場合白の最善の選択はポーンを犠牲にすることである。7.Nxe4! Qxd4 8.Bd3 Nf6 に 9.Be3 で白が展開で十分な差をつける。このあとは例えば 9…Qd8 10.Nxf6+ Qxf6 11.Qg3 または 9…Bb4+ 10.Ke2!(10.c3 は 10…Qxd3)10…Qd8 11.Rhd1 から Qg3 となる。どちらの場合も白にはクイーン翼とキング翼に対して黒を悩ませる狙いがある。黒は 9…Qxb2 で2ポーン得しようとすることもできるが、10.O-O から 11.Rab1 でクイーンとルークで黒陣に侵入する白の可能性の方がはるかに優る。

 しかし 5…Nf6 のあと 6.d4 dxe4 7.Nxe4 のギャンビット手順の方が白にとって危険が多い。黒は 7…Qxd4 でポーンを受諾し、8.Bd3 に 8…Nbd7! と指す。違いは(1)黒はクイーン翼では駒が展開され連係も良いので危なくない(2)f6のナイトはもう一つのナイトで守られているので黒はf6での交換を恐れない(3)黒は …Ne5xd3 により白の攻撃力をすぐにそぐことを狙っている。

6.d3

 この手は 6.d4 のギャンビットよりもはるかにまともで、6.e5 やポーンでe4のポーンを取り返す可能性をなくすほかの手よりも融通性がある。6.d3 のあと白の中央は堅固で、双ビショップのために見通しが明るい。黒がdポーンを突いてくるかe4で交換してくれば、白の白枡ビショップは動きが非常に自由なので急に強力になるかもしれない。しかしこのビショップはまず第一に自分のポーン陣形の囲みから解放されなければならない!

6…e6

 中央の状況は均衡がとれている。白は e4-e5 と突くことにより自分のビショップの利きを制限したくはない。そして黒は …d5-d4、…c6-c5 または …e6-e5 で自分の中央を弱めたくはない。いつかはそれらの手のいくつかを指す必要が出てくるかもしれないが、両者ともそれらの手を避けるに越したことはない。

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(356)

「Chess」2014年6月号(1/2)

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ガシモフ追悼記念大会

解説 マルコム・ペイン

M.カールセン対H.ナカムラ
第2回戦、スラブ防御

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 Bf5 5.Nc3 a6 6.Be2 h6 7.Bd3 Bxd3 8.Qxd3 e6 9.O-O Bb4 10.Bd2 O-O 11.Rfd1 Bxc3 12.Bxc3 Nbd7 13.b3 Qe7 14.Rac1 Rac8 15.Qe2 Ne4 16.Bb2 Rfd8 17.Ne1 Nd6 18.Ba3 f5 19.Nd3 Nf6 20.Bb4 Qc7 21.Qf3

21…dxc4

 たぶん 21…Nf7 22.cxd5 Nxd5 の方が良かった。途中 22.Qf4 なら 22…Qxf4 23.Nxf4 Re8 24.a4 g5 となる。

22.bxc4 Nf7 23.a4 a5 24.Be1! b6 25.Qg3 Qxg3 26.hxg3 Ra8 27.f3 Rdb8 28.Rc2

28…b5

 代わりに 28…Nd7 なら 29.Kf2 e5 30.c5 e4(30…b5 なら 31.axb5 Rxb5 32.Ra1 exd4 33.exd4 Nd8 34.Re2 Kf7 35.Nb2!)31.Nf4 bxc5 32.Ne6! で白が優勢である。

29.Nc5 bxc4

 これで黒はa5、c6そしてe6の弱いポーンを守らなければならない。

30.Rxc4 Nd5 31.Bd2 e5 32.e4 fxe4 33.Nxe4

33…Nb6

 黒は白ルークの行き先を過小評価していた。33…Rb6 と我慢した方が良かったかもしれない。

34.Rxc6 Nd8 35.Rg6!

35…Nc4

 カールセンは 35…exd4 には 36.Bf4! Rb7(36…Kh7! 37.Rd6 Nf7 なら戦いが続く)37.Nc5 を予定していた。

36.dxe5 Kh7 37.Rg4 Nxe5 38.Rh4 Ndf7 39.Bc3 Rb3 40.Rd5 Re8 41.Rf4 Re7 42.Bxa5 Ng6 43.Rff5 Nfe5 44.Rd1 Nc4 45.Rc1 Nxa5 46.Rxa5 Ra3 47.Rcc5 Ra2 48.Kh2 Rd7 49.Ra6 Ne7 50.g4 Rb7 51.Rb5 Rc7 52.Nc5 Rc6 53.Rxc6 Nxc6 54.Rb7 Nd4 55.Kh3 Kg8 56.Rb4 Ne2 57.g5 Ng1+ 58.Kg3 Ne2+ 59.Kg4 hxg5 60.Kxg5 Ng1 61.Rg4 1-0

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

カロカン防御の指し方(164)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

B.2ナイト戦法(続き)

 2ナイト戦法は黒の中央での戦略を 2.d4 突きを避けることにより迎え撃つ。2.d4 はe4の地点を守れる可能性のあるdポーンを無くしてしまう。確かに 2.d4 は白駒により多くの自由度をもたらすが、e4の地点を弱める不利益も少しある。しかし白は 2.Nf3 から 3.Nc3(または 2.Nc3 から 3.Nf3)で d2-d3 と突く選択肢を保持してe4にポーンを残せるようにしている。もちろん状況が許せばあとで考えを変えて d2-d4 と突くこともできる。

3…Bg4

 これは黒のクイーン翼ビショップの問題をすぐに解決するので、2ナイト戦型において最もよく指される手になっている。ここから黒は …e7-e6、…Bd6 そして …Qc7 で中央の黒枡の支配を目指して指し進めることになる。一方白はe4とd3のポーンで白枡を押さえることになる。黒は白に e4-e5 から d2-d4 と指させて …c6-c5 と …Qb6 で反撃できるようになることを望んでいる。しかし白は進んでこれらのポーンを突くべきでない。

 黒にはほとんどまともに注目されないけれどもほかの手段がある。例えば 3…dxe4 は黒が白ナイトを働かせなければ何も悪い所がない。注意しなければならないのは 4.Nxe4 のあと 4…Bf5?! は 5.Ng3 Bg6 6.h4 h6 7.Ne5! で白が第9章の同様の手順と比べるとdポーン突きに1手費やしていないので手得になっていることである。ここで黒は Nxg6 を許すわけにいかないが、7…Bh7 は 8.Qh5! g6 9.Bc4!(Bxf7# の狙い)で白が次の手でクイーンをe2に引くゆとりがある。そのあと白は滞りなく展開できるが、黒はまったく対照的にクイーン翼ビショップが埋葬されてしまっている。さらに付け加えると 9…e6 10.Qe2 にも 11.Nxf7! Kxf7 12.Qxe6+ Kg7 13.Qf7# の狙いがある。

 しかし黒は例えば 4…Nf6 でもっとうまくやることができる。この手は白がナイトをf3に跳ねてしまっていて必ずしも白の得にならない戦型に移行することを期待している(第5章と第6章を参照)。それらの戦型では白はキング翼ナイトをf3でなくe2に跳ねる方を選ぶかもしれない。黒は 4…Nd7 と指して第7章や第8章に移行しようとすることもできる。それらのもっと普通の戦型では白は d2-d4 でなく d2-d3 と突くことから何の利益も得られない。2ナイト防御で白が d2-d3 と突く理由は、ポーンでe4での取り返しを行なうためである。しかし 3…dxe4 4.Nxe4 のようにその取り返しが不可能ならば、dポーンを1枡だけ突くことにほとんど意味がない。本譜の 3…Bg4 は独自の戦略的観点から2ナイト防御に対処している。

4.h3 Bxf3

 黒は白の白枡ビショップによる攻撃におおむね平気なポーン陣形を築くつもりなので、通常は少し損な取引となるビショップとナイトとの交換を進んで行なう。黒が …e7-e6 と突いたあと白のキング翼ビショップには良い地点がない。実際白が d2-d3 から g2-g4 と突けばこのビショップは大不良ビショップとなるかもしれない。これらのポーン突きはほかの駒の助けにはなるかもしれないが、キング翼ビショップにとっては窒息させられるだけである。

 4…Bh5 はもっと用心深い手段のように思える。しかしこのビショップ引きはクイーン翼からそれたことに基づいた一連の攻撃手で主導権を握る機会を白に与える。5.exd5 cxd5 6.Bb5+ のあと黒は 6…Nc6 と指さなければならない(6…Nd7? 7.Nxd5)。しかしそのあと白は 7.g4 Bg6 8.Ne5! のあと d2-d4、Qe2 そしてクイーン翼キャッスリングで狙いを作り続ける。白は h3-h4 と突きいつか h4-h5 と突くことを狙うこともできる。だから黒はfポーンまたはhポーンを突いてクイーン翼ビショップのために逃げ道を作らされる。しかしそれなら Nxg6 で黒のキング翼のポーンがひどい形にさせられる。

 4…Bh5 のあと白は展開で大差をつける。早い段階で明らかに不利になるのを避けられるのはただ黒の持ち前の堅固さゆえである。…e7-e6 のあと …Bb4 および …Ne7 または …Nf6 で黒は嵐を乗り切れるかもしれない。黒は通常のカロカン防御よりも多くの反撃の機会さえ得られるかもしれない。なぜなら 5.exd5 で半素通しc列(すなわち黒の側だけ素通し)ができ、それに沿って大駒、特にルークを用いることができるからである。要するに 4…Bh5 は 4…Bxf3 より激しい手である。

5.Qxf3

(この章続く)

2014年06月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(163)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

B.2ナイト戦法

1.e4 c6 2.Nf3 d5 3.Nc3

(この章続く)

2014年06月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(102)

「Chess Life」1994年9月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

勇者か弱虫か(続き)

Ⅱ.もし簡明でほとんど対称的な局面における積極的な指し方の構想が気に入っているならば、勝ちにいくための実行可能な手段として交換戦法を考えるとよい

 白の指し方には二通りある。1.4.c4 でd5に圧力をかけることと2.迅速に展開することである。最近交換戦法が見直されてきているのでこれを強調しておくことは大切である。

  A.1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 c6

 1.当たりのd5の地点を過剰に守っておくことは理にかなっている。そして2.この局面はスラブ防御の 1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 e5 4.e3 exd4 5.exd4 Nf6 からも生じることがある(そしてよく起こる!)。ほかの手を指した実戦例は

 a.5…Be7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4 O-O 8.Nge2 Nbd7 9.O-O Nb6 10.Bb3 c6 11.Re1 Bf5?!(このビショップはすぐにg6でむき出しになる羽目に陥る。11…Nbd5 から 12…Be6 なら普通で、白陣の方が少し広い)12.Ng3 Bg6 13.f4! Bd6 14.Rf1! Qc7 15.Kh1 h6 16.f5 白に強い主導権がある。(P.ウォルフ対A.ドレエフ、ビール・インターゾーナル、1993年)

 b.5…Bb4 6.Bd3 c5 7.Nge2 Nc6 8.cxd5 Nxd5 9.dxc5 Bg4?(紛れさせようとするのは自分にはね返る。IMタンボーンによると黒は 9…Nxc3 10.bxc3 Bxc5 で互角にできる)10.O-O Bxc3 11.bxc3 Nxc3 12.Qc2! Bxe2 13.Re1! Qd4 14.Bb2 O-O-O 15.Bf5+ Kc7?! 16.Bxc3 Bd3 17.Qc1 Qc4 18.Re4!! Nd4 19.Qf4+ Kc6 20.Bxd4 Rd5 21.Bxg7 Qxc5 22.Rc1 黒投了(M.アシュリー対A.シャバロフ、マーシャル国際大会、1993年)

6.Nf3 M.グレビッチ対P.ニコリッチ(ベオグラード、1991年)

 この試合はひどい目にあったショート戦からほぼ5ヶ月後に指され、スラブ防御の手順から生じた。

 a.6.cxd5 Nxd5 7.Bd3 Be7 8.Nf3 Bg4 9.O-O O-O 10.Re1 Nd7?!(GMスピールマンによれば 10…Bf6 の方が良い)11.Nxd5! cxd5 12.Bf4 Rc8 13.h3 Bh5 14.Bf5 Bg6 15.Bxg6 hxg6 16.Bg3 Bf6 17.Qb3 J.スピールマン対V.サロフ(リナレス、1991年)白駒の方がよく働いているのでわずかだが優勢で指しやすい。

 b.6.Bd3 Be6 7.cxd5 Nxd5 8.Nge2 Nd7 9.O-O N7f6 10.Ng3 Be7 11.Re1 O-O 12.a3 Re8 13.Bg5 h6 14.Bd2 Qb6 15.Nge2 Rad8 16.Qc2 Bf8 17.Na4 Qc7 18.Nc5 J.ベンジャミン対H.ステンゼル(ニューヨーク州選手権戦、1993年)白陣が少し広くて優勢である。

6…Bd6 7.c5

 白は局面の性格をキング翼で駒の働きが有利になるように指す局面に変えていく。

7…Be7 8.Bd3 b6 9.cxb6 axb6 10.O-O Ba6 11.Bxa6 Rxa6 12.Qd3 O-O 13.Bg5 h6 14.Bh4 Nh5 15.Bxe7 Qxe7 16.Rfe1 Qd8 17.Ne5

 黒のクイーン翼の展開が完了していないのと白駒がよく働く地点に配置されているので、白が「通常どおり」わずかに優勢である。GMグレビッチは 17…Ra7 から 18…Re7 を指摘した。

17…b5?! 18.a3! Nd7 19.Nxd7 Qxd7 20.Na2! Nf4 21.Qf3 Ne6 22.Nb4 Raa8 23.Qc3! Rac8 24.Rac1 c5 25.dxc5 Rxc5 26.Qf3 Rxc1 27.Rxc1 Rc8 28.Rd1! d4 29.h4! Rc5 30.g3 Qc8?

 GMグレビッチが指摘したように黒は 30…g5! 31.Nd3 Rd5 で中盤戦での反撃を目指さなければならず、十分受けきれる可能性がある。

31.Nd3! Rc7 32.Qd5! Qb7 33.Qxb7 Rxb7 34.Re1! Kf8 35.Re5 Nd8 36.Nb4! f6 37.Rd5 Nf7

 dポーンを自ら捨てては形勢は絶望的である。しかし 37…Ne6 ならGMグレビッチは白の勝つ手段として 38.Nd3! のあとキングをb3に小旅行させることをあげている。

38.Rxd4 Ne5 39.Kg2 Kf7 40.Nd3 Nc4 41.a4! Ke7 42.axb5 Nd6 43.Rb4 Nxb5 44.Nc5 Rb8 45.Nb3 Rb7 46.Nd4 Nd6 47.Nf5+ Kf8 48.Rxb7 Nxb7 49.h5! Kf7 50.b4 g6 51.hxg6+ Kxg6 52.Nd4 Kg5 53.b5 f5 54.f4+ Kf6 55.b6 Nd6 56.Kh3 Kg6 57.Nc6 Nb7 58.Ne5+ 黒投了

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2014年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探求2

カロカン防御の指し方(162)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

A.ファンタジー戦法(続き)

 この手が急所である。黒は 5…Qh4+ を狙っている(6.g3 Qxe4+ から 7…Qxh1)。白がチェックを防ぎつつ当たりのdポーンを守る手段は一つしかない。

5.Nf3 Be6!

 ときにこの戦法がギャンビットと呼ばれる理由は 5…exd4 6.Bc4! にある。白はポーンを犠牲にして自分の方だけ素通しになっているf列はもちろんf7に通じる斜筋も利用しようとする。通常カロカン防御では黒は …c7-c6、…d7-d5 それにあとで …e7-e6 と突く手が最も過敏なf7の守りに役立つので、そこへの狙いを心配する必要は全然ない。しかし 5…exd4 6.Bc4 のあとではf7の地点は攻撃目標になることがある。例えば 6…Bb4+? 7.c3 dxc3 8.Bxf7+! Kxf7 9.Qxd8! cxb2+ 10.Ke2 bxa1=Q で黒に新しいクイーンができるけれども、11.Ng5+、12.Qe8+、13.Rf1+ で黒が負ける。5…exd4 6.Bc4 のあとは大乱戦になる可能性がある(6…Bb4+ よりは 6…Nf6 と指す方が良い)。

 しかし 5…Be6! はf7に通じる斜筋を守り、eポーンを戦術的手段で保持している(6.Nxe5 は黒クイーンによるh4でのチェックを止めるために設定した防御態勢を放棄するし、6.dxe5 は 6…Qxd1+ 7.Kxd1 Nd7 で黒が好調に展開で差をつけ …O-O-O で差を広げることができる)。同時に黒はd4で取る大局的な狙いを新たにしている。

6.c3

 黒がd4ポーンを取ってくるのは大局的な狙いで、尊重しなければならない。その理由は例えば 6.Be3 exd4 7.Qxd4(7.Nxd4 Qh4+)7…Qxd4 8.Bxd4 のあと白のe4の孤立ポーンがe列でたやすく攻撃を受けるからで、たぶんもっと重要なことは黒が敵ポーンからいじめられる恐れなしにe5に駒(例えばクイーン翼ナイト)を置くことができるからである。白は 6.c3 と突いてこのポーンで取り返しe5の地点の支配を維持する用意をしている。

6…Nf6

 白は直前の手でみずからc3の地点をクイーン翼ナイトが使えないようにした。そして黒はすぐになぜ Nc3 ができないことが白にとってまずいのかを白日の下にさらした。白はここであれほど望んでいたeポーンの防御を心配しなければならない。そしてその結果としてかなり窮屈な陣形を受け入れなければならないが、それは 3.f3 と指した時に望んでいたこととはとても言えない。

7.Bd3 Nbd7!

 黒陣にはゆゆしい弱点がなく、駒の連係はうまくいっている。黒は 8.dxe5 に 8…Ng4 から 9…Ngxe4 と応じてポーンを取り返すことができるだけでなく、ナイトのためにe5の絶好の地点が確保できるので、eポーンは浮いていない。

 白は当分の間中央のポーンに手をつけないでおいた方が良い。そして 8.Qe2 Bd6 9.Nbd2 のあとキング翼にキャッスリングするように展開を続けるべきである。しかしたとえそうなっても黒は、白の乱れた中央をいつか …exd4 から …c6-c5 で攻撃する可能性があって指しやすい。あるいはクイーン翼にキャッスリングすることもできる。9…Qe7 10.O-O O-O-O のあと白は絶えずeポーンに注意する必要があるのに対し、黒は例えば …Bg4 から …Rhe8 と展開を続けることができる。

(この章続く)

2014年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(161)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス(続き)

A.ファンタジー戦法(続き)

 ファンタジー戦法(所によっては古典ギャンビットともいう)は、最も込み入った手順で炸裂するファンタスティックな戦術的指し方ゆえにそう呼ばれている。しかしその戦術面の下で 3.f3 には戦略的な論理がある。1…c6 と 2…d5 の構想は白がポーンをe4に据えるのを妨げることであるが、白がポーンをそこに据えることにこだわるならば 3.f3 がそのための唯一の手段となる。ポーンがf3に居続ける間は、黒がほかの戦法で得る楽な展開を防ぐことになる。例えば …Bf5 はここでは事実上不可能である。そしてもし白がポーンをe4に置いておくことができれば、黒の …Nf6 は e4-e5! 突きを誘うだけかもしれない。

3…dxe4

 理論的にはこれは素晴らしい手である。最善手とさえ言えるかもしれない。しかし堅固さゆえにカロカン防御が好きな選手はこの手から生じる動的な局面に安心を感じないかもしれず、交換やチェックや狙いの少ないもっと落ち着いた手順を好むだろう。ミハイル・ボトビニクが世界選手権戦のある1局で 3.f3 に直面したときは、穏やかに 3…e6 と応じて相手の布局を咎めようとさえしなかった。3…e6 で黒はフランス防御(1.e4 e6 2.d4 d5)かそれに非常に似たものを指す気であることを示唆している。例えば 4.Nc3 Nf6 5.e5 Nfd7 6.f4 c5 ならフランス防御でよく生じる局面になる(異なった手順で)。

4.fxe4 e5

(この章続く)

2014年06月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(131)

「Chess Life」2006年3月号(4/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反マーシャルの 8.h3[C88](続き)

戦型C)10…Nb8

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.h3 Bb7 9.d3 d6 10.a3 Nb8

 このナイトの捌きはルイロペスのブレイェル戦法に特有のものである。

11.Nbd2 Nbd7

 11…c5 も面白い手で、12.Nf1 Nbd7 13.Ng3 Rc8 14.Ba2!? Re8 15.Nf5 Bf8 16.Bg5(16.Ng5!? は 16…c4! 17.dxc4 bxc4 18.Nxd6 Bxd6 19.Qxd6 h6! で黒がe4のポーンを取り返す)16…h6(16…Qc7!?)となる。ここで白はビショップ当たりを無視して 17.Qd2! と指すことができる。しかし黒は 17…c4 で好調である(ローチェ対I.ソコロフ、エレバン、1996年)。17…hxg5? と犠牲を受諾するのは 18.Qxg5! のあと Nh6+ の狙いで白の攻撃が非常に厳しくなるので悪手である。

12.Nf1 Nc5

 ここでもまた上記の変化と同じように 12…c5 13.Ng3 Rc8 と指すことができる。

 ここでよく指される別の手は 12…Re8 である。カスパロフはこの手を2回指している。13.Ba2 c6 14.Ng3 Bf8 15.Nf5 d5 16.d4 c5 17.dxc5 Nxc5 18.exd5 e4 クラムニク戦(リナレス、2003年)とシロフ戦(リナレス、2004年)の両局ともこの局面に達したが勝つことはできなかった。

 13.Ng3 c6(13…Nc5 は 14.Ba2 Bf8 15.Nh2[15.Ng5 d5]15…Ne6 16.Nf5 c5 17.Ng4 Rc8 18.h4 Rc7 19.Bd2 Rd7 20.a4 Nxg4 21.Qxg4 Kh8 22.axb5 axb5 23.Bg5 f6 24.Bd2 d5 25.Ne3 で黒が苦戦だった[モロゼビッチ対ラスティン、ソチ、2004年]。そして 13…Bf8? は 14.Ng5 d5 15.exd5 Nxd5 16.Qh5 のためまったくの悪手である)

 14.Nf5(14.Ng5 d5 15.d4 h6[スビドレル対シロフ、ベイクアーンゼー、2004年])14…Bf8 15.Nh2 d5 16.Qf3 Kh8 17.Bg5 h6 18.Bh4 白に主導権があった(シロフ対アダムズ、ベイクアーンゼー、1998年)。

13.Ba2 Ne6 14.Ng3

14…g6

 この手は Nf5 を防いでいる。Nf5 を無視する 14…Re8 という手もあり、15.Nf5 にビショップをe7からf8に引いて …g7-g6 突きでこのナイトを追い返す。

 14…Re8 に白は 15.Ng5 で猛攻を開始することができ、15…Bc8(15…Nxg5 は 16.Bxg5 h6 17.Be3 d5 18.Qf3 Bf8 19.Rad1 Qd6 20.exd5 Bxd5 21.Ne4 Bxe4 22.dxe4 で白が優勢だった[シロフ対スビドレル、ハルキディキ、2002年])16.Nf5 Bf8 17.f4(17.Qf3 も面白い)17…g6(17…exf4 は 18.Bxf4! d5[18…Nxf4? 19.Nxf7]19.Qf3 Nxf4 20.Qxf4 c6 21.e5 で白が優勢だった[ヤコベンコ対ショモエフ、トリヤッチ、2003年])18.Qf3 Rb8(18…gxf5 19.exf5 Nxg5 20.fxg5)19.fxe5 dxe5 20.Nh6+! Bxh6 21.Nxe6 Bxe6 22.Bxh6 で白がはっきり優勢だった(ボローガン対スミルノフ、モスクワ、2003年)。

15.Bh6 Re8 16.Qd2 c5 17.Nh2 Bf8 18.Bxf8 Rxf8 19.Qh6 Qe7

 ほぼいい勝負である。

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2014年06月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(160)

第10章 白のその他の手 アンディー・ソルティス

 カロカン防御では白に色々な作戦の選択の可能性があるけれども、それらのほとんどは中央での黒の単純な戦略と本質的に安全な黒陣とに対する重大な挑戦とはならない。黒の抵抗を克服するための白の最も重要で一般的なやり方は本書の以前の章で取り上げてきた。しかしこれから解説する4手法も注目に値する。それらはすべてこれまで見てきたものとはまったく違っている。だからカロカン防御の黒側が好きな選手はそれらに備えておくべきである。

A.ファンタジー戦法

1.e4 c6 2.d4 d5 3.f3

(この章続く)

2014年06月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(159)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

 もちろんこの勝負所でこんな貴重な防御駒を盤の向こう側まで逃がすのは危険行為である。しかし黒にはほかに適当な手がなかった。21…Qc7 なら白はナイトを動かすだけでよく、ビショップが敵のクイーン当たりになる。ナイトの動ける所はたくさんあるが、最善は 22.Nd7! で、22…Qc6 23.Nxf8 Rxf8 24.Be3 が想定される。c5を守るビショップがもういないので黒はナイトを動かさなければならない。それなら白はクイーン同士を交換し、ビショップでaポーンを取り、d列でルーク同士を交換して、クイーン翼ポーンが大差なので白勝ちの收局になる。

22.b4!

 白の働きの良い駒がクイーン翼に向けられているので、このbポーン突きで決着がつく。黒がナイトを救うためにできることは、わらをもつかむことだけである。

22…f6 23.Ng6

 ナイトがビショップを守っている。d3でも守っているが、23…Qe4 24.Qc3 Rxd3 から 25…Qxf4 で紛れる。しかし 23.Ng6 なら 23…Qe4 に 24.Qc3 でc列での釘付けが維持されc5のナイトが取れる。

23…Qf3 24.Rde1

 この手は 24…Rxd1+ を避けた。黒は21手目で得したポーンを返さないで攻撃することはできない。しかしたとえ次のようにポーンを犠牲にしても一時のがれにすぎない。

24…b5 25.Qxb5

 b8での詰みを狙っている。

25…Qb7

 c列での釘付けが解消されたので黒はナイトを動かせそうなものである。しかし 25…Nb7 は 26.Qc4+ と応じられ、25…Nd7 は 26.Rh3! から 27.Rc3+ を見舞われる(26…Qxh3 なら 27.Qc6#)。

26.Qc4!

 再び釘付けがかかり、今度ははずせない。

26…a5 27.c3 Qa6 28.Re4! Kb7 29.bxc5 Qxc4 30.Rxc4 e5 31.c6+ Kc7 32.Be3 f5 33.Nxf8 Rxf8 34.Rg1 Rf7 35.Rg6 Rb8+ 36.Kc2 黒投了

 最も簡単に勝つ手は Bc5-d6+ または Rc5xa5 である。

(この章終わり)

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