2014年05月の記事一覧

カロカン防御の指し方(158)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

17.dxc5! Nxc5 18.Qc4!

 白は c2-c4 突きを避けていたのでこの黒にとって悩ましい手を指すことができて、このあと Be3 からたぶん b2-b4 とさえ突いていく。黒はクイーンとキングが半素通し列にいるので、気楽にしていることができない。もっと早く1手かけて …Kb8 と指していたらこの列がもっと安全になっていただろう。しかしg3-b8の斜筋の危険にも対処しなければならなかった。

18…Rhe8

 黒の指し手は理にかなっていた。すべての駒が展開され連係も良い。それでもcポーンがまだc6にあった時には隠されていた弱点をさらけ出す代償を払っている

 弱点が二つ以上あるときには、敵が手筋や一本道の手順でそれらの標的を取っ替え引っ替え攻撃し決定的な主導権を築くことができる可能性がいつもある。例えばここでは黒が 18…e5 と突いて白駒をd4とe5から締め出したいかもしれないが、そうすると 19.Be3! が 20.Rxd6 から 21.Qxc5 で戦力得する狙いのために強手となってくる。もし黒が 19…b6 でその狙いに対処すれば、20.Bxc5 Bxc5 21.Qg4+ から 22.Qxg7 で黒の別の弱点であるg7のポーンが取られる。(aポーンもさらに弱点となるかもしれないことに注意。)

19.Be3!

 白はまた Rxd6 でc5の黒ナイトの最高の守り駒を除去することを狙っている。このナイトは不運なことにa6とd7以外に安全な所がない。どちらの地点も 20.Qd4! と応じられてa7とg7のポーンの両当たりになる。黒の選択は 19…b6 でキングの囲いを弱めナイトによる襲撃(Nd4-b5)を助長させるか、ビショップを引いてg3-b8の斜筋を明け渡すかになる。

19…Bf8 20.Bf4!

 斜筋を占拠することは本章の導入部で指摘したように、この戦型全体における重要な主題の一つである。ここで黒は明らかに 20…Bd6 と対抗することができない。なぜならd6で2回交換のあと b2-b4 突きで、釘付けのナイトが取られるからである(21.Bxd6 Rxd6 22.Rxd6 Qxd6 23.b4)。

20…Qc6

 また黒クイーンはc列を去ると b2-b4 突きでc5の釘付けのナイトが取られるので去れない。

21.Ne5 Qxg2

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

[復刻版]理詰めのチェス(18)

第2章 クイーンポーン布局(続き)

第18局

 ノテボーム対ドゥースビュルフ戦は黒が …c5 による捌きを無視したため白がこのcポーン突きを抑制し永久に防ぐことができた。結局このポーンは固定され黒のクイーン翼が鉄壁に押さえ込まれた。クイーン翼の弱点が黒のキング翼の崩壊に結びついた。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 ノテボーム
黒 ドゥースビュルフ
オランダ、1931年

1.d4

 序盤ではポーンで中原を占拠し中原の支配を視野に入れながら駒を展開するのが有利である。

 白はポーンを中原に進ませて試合を始めた。このポーンは一つの重要な地点を占め、他の二つの地点に利かせている。e5とc5の2地点の支配により黒はそこへ駒を進ませることができない。白はe5とc5を自分の駒の橋頭堡として利用することが期待できる。これらの駒はdポーンにより支えられる。

 dポーン突きはクイーンとクイーン翼ビショップの筋を通すという役割も果たしている。

1…d5

 この手は黒が中原で対等の地歩を築き白が 2.e4 でさらに陣地を得るのを防ぐための最も簡単な手段である。

2.c4

 白は黒のdポーンを中原からそらすためにポーンを差し出した。実際は白が何の苦労もなくポーンを取り返すことができるので側面ポーンと中原ポーンとの交換の申し出である。

 白の提案に隠されているのは黒の中原ポーンの撲滅の狙いである。3.cxd5 Qxd5 4.Nc3(白が駒を展開するのに黒は同じ駒をまた動かさなければならないので白の手得になる)4…Qa5 5.e4 で白の中原が威容を誇る。

2…e6

 黒は別のポーンでdポーンを支えて中原を守った。白が 3.cxd5 と取ってくれば黒はポーンで取り返して中原にポーンを維持することができる。

 黒は白のcポーンを取らない。それは中原とe4の地点に対する利きを放棄することになるからである。

 クイーン翼ビショップの閉じ込め(2…e6 の後)とそのビショップを効果的に展開するためのその後の苦労がクイーン翼ギャンビットの人気(白から見て)の理由の一つである。

3.Nc3

 これは良い手である。ナイトが中原のe4とd5の2地点に利きポーンのd5への圧力にも加勢している。

3…Nf6

 黒ナイトが中原に向かって展開した。ここなら最もよく動け白のナイトによって加えられている圧力にも等価に対抗できる。

4.Bg5

 この釘付けの手は次のようにポーンを得するか黒のキング翼ポーンの形を乱す狙いである。5.cxd5 exd5 6.Bxf6 で黒は 6…gxf6 で悪形の二重ポーンに甘んじるか 6…Qxf6 7.Nxd5 でポーンを損しなければならない。

 この狙いは実際はたいして重要ではない。白は簡単にかわされる狙いを見舞うためにナイトを釘付けにしたのではない。白の関心は駒を最も効果的に配置することでありビショップのg5への展開は非常に強力である。黒ナイトに対する拘束と黒陣全体に対する押さえ込み効果は容易に振りほどくことができない。

4…Nbd7

 クイーンポーン布局では黒のクイーン翼ナイトはc6でなくd7で最もよく働く。d7のナイトはキング翼ナイトを支援しcポーンをc5に突く準備を助ける。クイーン翼ナイトはc6に行ってはいけない。そこではcポーンの邪魔になってしまう。cポーンは自由に進めて白の中原を攻撃できるようにしなければならない。

 ついでに本譜の黒の手には罠が含まれている。それは強欲な選手を引っ掛けるために仕組まれている。

5.e3

 どうしてポーンを取らないのか。取ると次のようになる。5.cxd5 exd5 6.Nxd5 Nxd5!(強引に釘付けをはずした)7.Bxd8 Bb4+ 8.Qd2 Bxd2+ 9.Kxd2 Kxd8 で黒の駒得になる。

 このような場面に当てはまる次のような原則に従えばこの罠にはまることはない。

 展開を犠牲にしてポーンを追い求めるな。

 本譜の白の手は中原ポーンを支えキング翼ビショップの出口を作っている。

5…c6

 黒は自分のdポーンの土台を強化しクイーンの使える斜筋を開けた。黒は 6…Qa5 から 7…Bb4 で始まる反撃を計画している。

6.a3

 この手は黒のそのような捌きを止めさせた。これで黒ビショップはb4に来てナイトを釘付けにすることができなくなった。

6…Be7

 黒は駒を展開しナイトを釘付けからはずし最下段を空けてキャッスリングできるようにした。

7.Qc2

 これはこの布局におけるクイーンの理想的な展開である。c2のクイーンはc列に圧力をかけ(中原のポーンが交換されればそれは全く明らかなことになる)e4の地点に利いている。予想されるキング翼の駒の動員の代わりにこの時点でクイーンが戦いに参加したのはまさしくe4の地点に利かすためである。黒が 7…Ne4 でいくつかの駒を交換して簡単に捌くことができないようにe4の地点を守ることが肝要なのである。

7…O-O

 黒はキングを安全地帯に移した。

 黒は自陣の凝り形をラスカー捌きの 7…Ne4 でくつろげることはできない。なぜなら白は 8.Bxe7 Qxe7 9.Nxe4 dxe4 10.Qxe4 と応じてポーン得するからである。白のa3のポーンが 10…Qb4+ でポーンを取り返すのを防いでいることに注意されたい。だから白の6手目は無駄手ではないのである。

 守勢のキング翼キャッスリングの代わりに黒は 7…dxc4 8.Bxc4 e5! で反撃を試みるべきだった。この手は中原の支配を争いクイーン翼ビショップの筋を空けるのに役立つ。

8.Nf3

 キング翼ナイトを最適の地点に据え、さらにe5の地点に利かして …e5 によるいかなる捌きのもくろみも終わりにさせた。

8…a6

 この手は 9…dxc4 10.Bxc4 b5 11.Bd3 Bb7 から最終的に 12…c5 と捌くための準備である。そうなればクイーン翼ビショップを展開させクイーン翼を捌いて白のポーン中原に対する行動を開始するのに役立つ。

9.Rd1!

 もし黒が側面攻撃にでてくれば白は推奨されている具体策-中原からの戦い-で迎え撃つ用意である。

 d1のルークは黒が中原ポーンを交換する抑止力として働く。というのはこの列が素通しになるとルークの圧力が強まるからである。

9…Re8

 中原が戦闘の舞台となるのが普通なので黒はe列にルークを持ってきた。

10.Bd3

 このビショップの登用で白の展開はほぼ完了である。注意すべきは白駒のほとんどが最下段を離れ戦闘配置につくまで戦力を得するにせよキング翼攻撃を始めるにせよいかなる種類の手筋にも白が手を染めないことである。これらの駒が最も効果的な地点に-中原を支配し最大限に動け重要な陣地のかなりの部分を占める所へ-配置されて初めて白は手筋、即ち形勢をたちまち決める一撃を探すのである。

10…dxc4

 黒は白が取り返しに手を損するように、このビショップが動くまでポーンを取るのを遅らせていた。

11.Bxc4

 このポーンは取り返すしかない。

11…b5

 黒は白ビショップに1手かけて下がらせ自分のクイーン翼ビショップの展開のためにb7の地点を空けた。

12.Bd3!

 このビショップはこの地点から素晴らしい働きをする。

 即ち2方向を攻撃し、敵駒のe4への侵入から守り、黒のキング翼に狙いをつけ、黒が 12…c5 で捌きに来るのを防いでいる。

12…h6

 12…c5 なら 13.dxc5 Bxc5(明らかに 13…Nxc5 はない手で 14.Bxh7+ で開き攻撃によりクイーンが取られる)14.Bxh7+ で、釘付けで無力のナイトがこのビショップにさわれないので白のポーン得になる。

 本譜の手で黒はhポーンを(上の解説の)当たりの位置からはずした。これで黒はクイーン翼を捌き 13…c5 で中原に争点を作り出せることを期待している。ついでに白のクイーン翼ビショップに行き先を明らかにさせようとしている。

13.Bxf6!

 この構想は非常に素晴らしい。白は手損をしてまでも双ビショップにしがみつこうとはしない。代わりにいかなる …c5 も防ぐつもりである。黒のcポーン突きを防ぐことができれば黒陣はひどい凝り形になりクイーン翼ビショップを適正な地点につけるという課題を決して解決できないかもしれない。

 13.Bxf6 の当面の目的はナイト又はビショップのどちらかで取り返させて、その駒をc5の地点の監視とその地点へのポーン突きの支援からそらすことである。

13…Nxf6

 たぶんビショップで取るよりこの手の方が良い。その方が黒のクイーンとクイーン翼ビショップが自由に動ける。

14.O-O

 キング(どんなことがあっても危険から遠ざからなければならない)は隠れ家に行きルーク(戦闘に加わらなければならない)は活動の舞台に近寄った。

14…Bb7

 白ルークと黒クイーンが同じ列にいる時 14…c5 に打って出るのは無茶である。白はあっさりポーンを取り 15…Bxc5 と取り返した時 16.Bh7+ でクイーンを取って懲らしめる。

 黒の着想はクイーン翼ビショップの展開の他に、ルークをc8に回してからcポーンを突くことである。

15.Ne4!

 白は3個の駒(クイーン、ナイト及びdポーン)でc5の地点ににらみを利かせるためにc列を空けた。その目的は黒のcポーンがc5へ来るのを不可能にするためである。

 白が e4 で中原をポーンで埋める誘惑もがまんしていることにも注意して欲しい。代わりに白はe4の地点を空けたままにして自分の駒の跳躍点として利用する。

15…Nxe4

 さもないと白ナイトがc5の地点に跳ねて黒のクイーン翼を完全に窒息させるかもしれない。

16.Bxe4

 黒をまだ押さえ込んでいる。黒は 16…c5 とは指せない。そんなことをすればクイーン翼ビショップをひったくられてしまう。

16…f5

 黒はキング翼ポーンの形を弱める犠牲を払ってもこのビショップをすぐに追い払わなければならない。遅れれば白に 17.Ne5(黒のcポーンに対する圧力を強めf3にビショップが下がれるようにする)の後必要ならば 18.Rc1 と指す余裕を与えてしまう。

17.Bd3

 ビショップがこの地点を訪問するのは3回目である。

 白は早まって 17.Bxc6 と取ってはいけない。それは 17…Rc8 で釘付けにされてしまう。

17…Qb6

 またもやポーンを突いて捌く準備をした。

18.Rc1!

 この局面で白に要求されているのは黒のcポーンのせき止めの維持に全力を傾けることである。白はこのポーンが決して進めないようにc5の地点を完全に制圧しなくてはならない。急所のc5の地点を支配すれば大局的な勝利が保障されるので白は一瞬たりとも緩めてはならない。

18…Rac8

 黒はしつこくcポーンを突く計画である。もしこのポーンを突かないとクイーン翼ビショップが外の空気に触れられない。

19.b4!

 黒のcポーンに釘を刺した。白は戦略的に勝ちを収めた。残るは何らかの適切な戦術を行使して敵を屈服させることである。手筋の登場する時期は熟している。

19…Qd8

 20.Qb3(狙いは 21.Qxe6+ 又は 21.Bxf5)に対して 20…Qd5 という受けを用意した。

>20.Ne5

 強手が出た。不幸なcポーン(その位置に留まっていなければならない)に対して三つ目の駒で当たりをかけた。黒が受け身の抵抗を示すならば白は 21.f4(ナイトをさらに守り中原を安定させる)から 22.Be2 及び 23.Bf3 と指す。その後はcポーンが滅ぶしかない。

20…a5

 黒のクイーン翼を押さえ込んでいるポーンの一つを攻撃した。

 代わりに 20…Bf6 なら白は筋書きどおりに 21.f4 から 22.Be2 及び 23.Bf3 と指す。

21.Qb3!

 22.Qxe6+ 又は 22.Bxf5 の狙いを復活させた。

 白はたぶん 21.bxa5 には一瞥しただけだっただろう。この手に対して黒は 21…Qxa5、21…Bxa3 又は 21…c5 のどの手でも応えることができる。いずれにせよ白の立場からすると過分な自由を黒に与えてしまう。

21…Bd6

 黒が当てにしていた受けは一蹴された。即ち 21…Qd5 は 22.Qxd5 exd5 23.Bxf5 で白のポーン得になる。あるいは黒がcポーンでクイーンを取り返せば 23.Bxb5 で白が勝つ。

22.Bxf5

 現実の激しさの一端はポーン得をもたらした。

22…Qf6

 ビショップ当たりとナイトへの二重当たりで黒はポーンの取り返しを期待している。

23.Bb1

 最下段へビショップを引いたのは、クイーンをc2へ動かすかビショップをクイーンの背後のa2へ回してクイーンの斜筋に沿った攻撃を助けるためである。

23…Bxe5

 黒は働いている駒を切りたくはない。しかしポーン損を取り戻すためには仕方がない。

24.dxe5

 取る一手である。

24…Qxe5

 戦力は互角で黒は最悪を脱したように見える。

 白が 25.bxa5 でポーン得になれることは確かだが、その結果はa列上の孤立した二重ポーンで、このポーン得から有利になれるかは疑わしい。この怪しい収穫よりも、優れた大局観指法に対するよりよい報奨があるに違いない。

25.Rc5!

 白はポーン得をはねつけ、さらに圧迫を加える方を好んだ。ルークは黒のクイーン翼を押さえ込み麻痺させた。この白の手の強さはルークが決してどかせられないことから明らかである。

25…a4

 この手は様子を見た手である。その目的はポーンを助けるだけでなくクイーンがどこへ動くかで白の作戦を推し測ることである。

26.Qa2!

 素晴らしいクイーン引きである。ここでは 26.Qc2 が予想されるところである。ビショップにつながれているので黒のキング翼に侵入できる。しかし黒は 26…Qf6 で巧妙に抵抗する。h7でのチェックには 27…Kf7 と応じ、白には攻撃の続行手段がない。また 26.Qc2 Qf6 の後 27.e4(28.e5 で黒クイーンを追い払ってから黒陣を蹂躙する狙い)なら 27…e5 でいかなる侵入も寄せ付けない。

26…Qd6

 26…Qf6 で受けるのは 27.e4! で参る(ここで 26.Qa2 の意味が明らかとなる。黒のeポーンを釘付けにして 27…e5 を防ぐためだった)。以下は 27…Rcd8 28.e5 Qf4 29.Qc2(狙いは 30.Qh7+ Kf8 31.Bg6 Re7 32.Qh8#)29…Qg5 30.f4 Qg4 31.Rc3 で、ルークがg3に回り 33.Qh7+ で決まる。

 注意すべきは 31.Rc3 でクイーン翼の圧迫を緩めても原則に違反していることにはならないことである。詰みや投了につながる攻撃は陣形的な考察よりも優先される。

27.Qc2

 ここでのこの組み換えがより効果的である。白の狙いは 28.Qh7+ Kf8 29.Bg6 Red8 30.Qh8+ Ke7 31.Qxg7# である。

27…Rcd8

 27…e5(クイーンでg6の地点を守るため)なら 28.Qh7+ Kf7(28…Kf8 なら 29.Bg6 で白の楽勝)29.f4(30.fxe5+ の狙い)29…e4 30.Ba2+ Kf6 31.Qf5+ Ke7 32.Qf7+ で手始めにビショップを取る。

28.Qh7+

 黒キングに通じる白枡を制圧しているのでこの侵入が決め手となる。黒はクイーン翼が締め付けられビショップも閉じ込められているため持ちこたえられない。

28…Kf8

 28…Kf7 なら白はビショップでチェックして交換得することもできるし 29.f4 で攻撃を続行させることもできる。その後は 29…Rh8 30.Qg6+ Kf8 31.f5 e5(又は 31…Qe7)32.f6 で白の勝ちとなる。

29.Bg6

 黒キングをさらに閉じ込めルーク当たりにもなっている。狙いは 30.Qh8+ Ke7 31.Qxg7# である。

26…投了

 黒は大きな駒損によってのみ処刑を遅らせることができる。

 白の指し回しは予防戦略の真価の好例である。白は黒のクイーン翼を麻痺させて一方の翼の弱点が他方の翼の完全なつぶれに至るというまたとない事実を見せつけた。黒が一旦押さえ込まれると何とか抵抗しようとする黒の努力は弱々しいじたばたに過ぎないように見えた。

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カロカン防御の指し方(157)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

 これは一種の高級な手待ちである。白はまだ Ne4 または Ne5 のどちらでナイトを交換するのが良いのか分からないし、c2-c4 と突いてしまう用意もない。(たぶん黒が …Nd5 と指すのを待っているのだろう。そうなれば c2-c4 突きがナイト当たりとなって「ただで」指せる。)言い換えると白は不可逆の決定をしたくないので、このたいてい役に立つキング寄りを指した。中央で …c6-c5xd4 でポーン交換になるとc列を活用して c2-c4-c5-c6! と突いていけるかもしれないので、b1のキングは好所である。また、黒が …Bf4 と指してビショップ同士の交換になるのも避けている。そしてa2の白ポーンが守られているのも重要かもしれない。

13…O-O-O 13.Qe2

 これは普通は早い Ne5 跳ねとの関連で指されるけれども、ほかにも役立つことがある。ここでの目的は一部は …c6-c5 突きを誘うことである。この手は黒に反撃を与えるが、白にも黒キングに対する戦術の可能性が生じる。

14…Bd6

 黒はこの手が先手になるときに(g3のナイトを取ってポーン得になる狙い)、…c6-c5 突きを急ぐ理由はない。

15.Ne4 Nxe4 16.Qxe4

 これが白の目指していた局面である。白はより多くの地点を支配し活動的な駒が多いようだけれども、具体的な狙いは何もない。しかし別な種類の切り札を用意している。白は黒が良い手を見つけるのを難しくさせている。もし黒が先手で 16…Nf6 と指せば、白はクイーンをe2に引きそのあと Ne5! と指す。黒のナイトがd7からいなくなったので、白のナイトはもっと効果的になる。もし黒がそのあと 17…c6-c5 と突けば、白はまだ c2-c4 と突いていないので自分の駒のためにc4の地点が使える有利さがある。例えば 16…Nf6 17.Qe2 c5 18.dxc5! のあと Rh4-c4 と指せる。これは本章の導入部の11手目で解説したルークの捌きの遅延版である。

 本譜でも似たようなことが起こる。だから黒は当たり障りのない 16…Kb8 を指すよりなく、17.c4(c4の地点を占める)のあとより安全な状況で 17…c5 と指すことができる。

16…c5?

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(156)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2
白 B.クライツァ
黒 V.バギロフ
ティトヴォ・ウジツェ、1978年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.Nf3 Nd7 7.h4 h6 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 Ngf6 11.Bd2 Qc7 12.O-O-O e6 13.Kb1

(この章続く)

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布局の探究(101)

「Chess Life」1994年9月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

勇者か弱虫か

フランス防御交換戦法

 そのものずばりのフランス防御交換戦法は 1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 から生じる。

 この戦法の人気と敬意は過去1世紀半に渡って大きく変動してきた。これがフランス防御に対するポール・モーフィーの手法で、「迅速展開の伝道者」の棋風に絶妙に合っていた。ビルヘルム・シュタイニッツによって創始された防御法の向上の到来により、すぐにこの戦法は安全に引き分けるのに良いだけの張子の虎になった。この「評判」はゆうに100年以上続いた。最近になってこの交換戦法は世界チャンピオンのガリー・カスパロフが1991年ティルブルフでこれを用いて好成績をあげたことに助けられて真の復活を果たした。

 私の二つの全般的な結論/推奨は以下のとおりである。

Ⅰ.確実に引き分けるために交換戦法を指してはいけない

 展開の容易さとポーン陣形の健全さの両面で黒陣は欠陥がないので、白によるどんなひより見主義的指し方も簡単に黒の主導権に結びつくことがある。このことを以下の2例でお目にかけたい。一つは「遠い昔」からで、もう一つはごく最近からである。

 1.私は1950年代初めにニューヨーク市の高校の中で最強の選手だった。そして 1.e4 に対する唯一の防御はフランス防御だった。だから私の対戦相手の多くが交換戦法を採用したが、彼らは一度も得点をあげたことがなかった。典型的な例が次の試合である。

フランス防御交換戦法 [C01]
白 S.ダニエルズ
黒 E.メドニス
ニューヨーク市高校選手権戦、1954年

1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Nf3 Bd6 5.Bd3 Ne7 6.Be3 Nbc6 7.Nc3 Bg4 8.h3 Bh5 9.g4 Bg6 10.Bxg6 hxg6 11.Qd2 Qd7 12.Bf4 f6 13.Bxd6 Qxd6 14.Nb5 Qd7 15.Qf4 O-O-O 16.O-O-O g5 17.Qd2 Ng6 18.Qc3 a6 19.Na3 Nf4 20.Rhe1 Rxh3 21.Nb1 Qxg4 白投了

 2.1990年マニラ・インターゾーナル最終戦での大一番はM.グレビッチ対N.ショート戦だった。GMグレビッチは挑戦者決定大会に進出するためには引き分けるだけでよかった。一方GMショートは勝たなければならなかった。

1.d4 e6 2.e4(GMグレビッチは一貫してdポーン選手だったけれども、交換戦法の不誠実な神は彼に常用布局を替えさせた)2…d5 3.exd5 exd5 4.Nf3 Bg4 5.h3 Bh5 6.Be2 Bd6 7.Ne5?! Bxe2 8.Qxe2 Ne7 9.O-O O-O 10.Bf4 Re8 11.Qg4 Bxe5!(不均衡な局面にし、優良ナイト対不良ビショップの対峙を目指す戦略の基礎を築く)12.Bxe5 Ng6 13.Bg3 Nd7 14.Nd2 Nf6 15.Qf3 c6 16.Qb3 Qb6!(自分のナイトが白のビショップに優ることに信頼をおき続ける)17.Qxb6 axb6 18.a3 Ne4 19.Nxe4 Rxe4 20.Rfd1 b5 21.Kf1 f6 22.f3 Re6 23.Re1 Kf7 24.Rxe6 Kxe6 25.Re1+ Kf7

26.Ke2(GMショートは 26.Bf2! h5 27.g4 Nf4 28.Be3! が引き分けを手に入れるためのより効果的な陣形だと指摘した)26…h5! 27.Kd3 h4 28.Bh2 Ne7 29.Bf4 Nf5 30.Bd2 b6 31.Re2 c5 32.Be3 b4! 33.axb4 c4+ 34.Kc3 Nd6 35.Re1 Ra4 36.Kd2?(36.Rb1! と指す必要がある – ショート)36…Rxb4 37.Ra1? Rxb2 38.Ra7+ Ke6 39.Rxg7 b5 40.Bf2 b4 41.Kc1 c3 42.Bxh4 Nf5 白投了

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カテゴリ: 布局の探求2

カロカン防御の指し方(155)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

 絵に描いたような中央集結になった。普通はe5での交換によるd列の開通で恩恵を受けるのは白なのだが、ここでは黒である。d2とd3の地点は防御できなくなっていて、ほかの地点もそうである。いずれd1の地点も黒のものとなる。

28.Rxd4 Rxd4 29.Rc1 Qd5!

 この手は白クイーンがe4などの地点に来れなくなるのですぐに …Rd2 と入る手よりも正確である。30…Rd2 から 31…Qd4 または 31…Qg2 と指す狙いの方がはるかに強力である。

30.Rc2 Rd1+ 31.Kb2 Qd4+ 32.Ka3 Rd3

 中央に集結した黒駒の威力は圧倒的である。黒はキング翼のポーン(例えばg3)を追求することもできるし、クイーン翼の白キングを追求することもできる。白駒は下の2段にへばりつけられている。

33.g4 b4+ 34.Ka4 Rc3!

 これで最低でもcポーンが取れる。白はルーク同士を交換すると、黒がポーンで取り返しそのポーンをたいした抵抗も受けずに8段目まで突いてくるので、交換するわけにいかない。

35.Qf2 Qd3!

 これが素通し列の威力の最終的な示威となった。黒はc2のルークを狙っているが、もっと重要なことはb5での詰みを狙っていることである。詰みを止める手段は 36.Qe2 か 36.Kxb4 しかないが、そのどちらでもルークが取られる。そこで・・・

白投了

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(154)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

 これが白の最初の重大なつまづきだった。白のこれまでの指し手は必ずしも最も正確な手ではなかったけれども、この時点では 24.Qxe5! と取れば收局でまだいい勝負にできていた。しかし本譜の手により黒は大駒を用いてクイーン翼とd列とを支配できるようになった。

24…Ra4

 この強手で黒による素通し列の奪取が始まる。白は Rxd8+ を避けなければならない。なぜなら黒がクイーンで取り返して最も重要な素通し列のd列を支配することになるからである。25.Qh7 はgポーンへの攻撃に白が期待していた手だが、黒は自分の弱体化したキング翼への攻撃を無視し 25…Qa5! と指してd列でルーク同士を交換して …Rxa2 から …Ra1+ と指すことを狙ってくる。これで白キングが野外へ追い出され、遠く離れたクイーンの助けを受けることができない。a2へのこの狙いを止めるために白はポーンを弱体化させるか(26.a3 b4!)素通し列を明け渡すか(26.Rxd8+ Qxd8 のあと 27…Qd5 または 27…Qd3+)の面白くない選択をしなければならない。

25.Qe3 Rd5!

 これでd列がふさがれ黒はd列の支配を …Qd8 で強化することができる。また、d列のルークはもうクイーンの保護(d8でしていたように)を必要としないので、黒クイーンは自由に …Qa5 でa2への襲撃に加わることができる。そして 26.Rxd5! cxd5 のあと白のcポーンは急に標的になるけれども、それはまだましな方である。

26.b3? Qd7!

 白の直前の手は戦術の見落としだった。つまり 27.Rxd5 Qxd5 のあとh1のルークが当たりになっていることに気づいていなかった。大駒が交換されていくにつれて、白ポーンが進みすぎた結果としてその弱点がどんどん目立つようになっていくことに注意が必要である。

27.Qe2 Rad4!

(この章続く)

2014年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(130)

「Chess Life」2006年3月号(3/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反マーシャルの 8.h3[C88](続き)

戦型A)色々な手

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.h3 Bb7 9.d3 d6 10.a3 Kh8

 10,..Nd7 11.Nc3 Nd4 12.Nxd4(12.Ba2 Nxf3+ 13.Qxf3 Bg5[クラムニク対レーコー、ブリッサゴ、2004年]は互角の形勢だった)12…exd4 13.Ne2 c5 14.Ng3 私なら白がわずかに優勢だと判断する。

 10…h6(将来の Nf3-g5 や Bc1-g5 を防ぐ)11.Nc3 Re8 12.Be3(12.Ne2 d5)12…Bf8(e4ポーンに間接的に圧力をかけることにより白が d3-d4 と突くのをもっと難しくさせる)13.Nd5

 10…Re8 11.Nc3 Bf8(11…Nd4 12.Nxd4 exd4 13.Ne2 c5 14.Ng3 Bf8 15.Nf5 d5 16.e5 Nd7 17.Qg4 Kh8[17…Nxe5 18.Rxe5! Rxe5 19.Nh6+ Kh8 20.Nxf7+]18.Bf4 白に主導権がある[グリシュク対ベリヤフスキー、トリポリ、2004年])12.Ng5 Re7 13.f4 Nd4 14.Ba2 c5 黒は問題ない(ボローガン対ルネフ、2003年)。白が改良するなら 13.Nd5 である。

 10…Nd4 11.Nxd4 exd4 12.Nd2 c5 13.Nf3 Nd7 14.a4 Ne5 15.Bf4 Bf6 黒が好調だった、途中 12.c3 dxc3 13.Nxc3 c5 14.d4 c4 15.Bc2 も1局のチェスだった。

11.Nc3 Qd7 12.Bd2 Rab8

13.Ne2!

 これはキング翼に力をためるための典型的なナイトの捌きである。

13…Nd8 14.Ng3 Ne6 15.c3 c5 16.Bc2 Bd8 17.Be3 Bc7 18.d4

 形勢は白が優勢だった(カスパロフ対カームスキー、ドス・エルマーナス、1996年)。

戦型B)10…Qd7

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.h3 Bb7 9.d3 d6 10.a3 Qd7

11.Nc3 Rae8

 11…Nd8 は多くの試合で指されているが、白が楽に 12.d4 と突けるので私は好きでない。

 ここで白は有望な3本の道から選ぶことができる。

12.a4

 12…b4 13.Nd5 Nxd5 14.Bxd5 Na5 15.Bxb7 Nxb7 16.d4 白がわずかに優勢だった(ユディット・ポルガー対アダムズ、ベイクアーンゼー、1998年)。白は以下の場合でもうまくいっている。

12.Nd5

 12…Na5 13,Nxe7+ Qxe7 14.Ba2 c5 15.Nh4 Nc6 16.c3 Bc8 17.Bg5 Kh8 18.Bd5 Nd8 19.Nf5(アダムズ対コステン、ホーブ、1997年)黒の改良手はたぶん 12…Nxd5 13.exd5 Nd4 だろう。

12.Be3

 12…Bd8 13.Ne2(13.d4? は 13…exd4 14.Nxd4 Nxe4 で時機尚早)13…d5(13…Ne7 14.Ng3 c5 15.a4 Qc7 16.axb5 axb5 17.c4 は白がわずかに優勢[シロフ対ミロス、ラスベガス、1999年])14.Ng3 d4 15.Bd2 kh8 16.c4 Ng8(16…dxc3e.p.)17.Rc1 g6 18.cxb5 axb5 19.Rc5(シロフ対オニシュク、ニューデリー/テヘラン、2000年)

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カロカン防御の指し方(153)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

 黒が17手目でルークをd列で引いていたら、この最後の展開の2手は指せなかった。これですべての駒が戦闘に参加していて、白の中央に適当な時機に挑むことができる。それでも白はe5のナイトが強力なのでわずかに優勢である。

20.Ne4

 この手は棋理に合った着想に裏打ちされている。白はキング翼に唯一残った黒の守備駒を消し、g7に向けた襲撃部隊を準備している。g3の白ナイトはいずれにしても大したことをしていなかった。

 しかしこのあとに続く交換は、この戦型におけるほとんどすべての交換のように黒を楽にさせる。ここで黒はe5で駒を交換することができ、白のもう一つのナイトも消すことができる。黒は両方することが大切である。というのはそうしないと白のもう一つのナイトが黒のナイトよりもはるかに活躍の余地があるからである。例えば 20.Rd2 のような堅実な手のあと黒は 20…b5 で交換することは避けるべきである。なぜなら 21.c5! Bxe5 22.fxe5 Nd5 となって、黒が指しにくくなるだけだからである。d5の黒ナイトは強力だが、白は 23.Ne4 のあとはるかに危険なナイトをd6に据えることになる。

20…Nxe4 21.Qxe4 Kb8 22.g3 b5!

 a5のルークは黒が 23.cxb5 に 23…cxb5 と応じて黒キングの囲いを弱める必要のないように、b5の地点を見張る役割を務めている。本譜の手に対して白はポーンがd5を支配するのを放棄するか、自分のキングの囲いを弱めなければならない(23.b3 bxc4 で)。

23.c5 Bxe5 24.dxe5?

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(152)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

 ちょっと手順は入れ替わったが(12.O-O-O でなく 12.Qe2)主手順の典型的な局面になった。この局面は80年以上前から知られていて、当初からほぼ互角とみなされてきた(白ポーンがh4にあってもh5にあっても)。

14.Ne5 Nb6!?

 このナイトは好機にc4にもd5にも飛べるのでb6が悪い地点ということはない。黒は当たりのf7の地点をクイーンの横利きで守り、e5の白ナイトを …c6-c5 突きでその支持ポーンを攻撃することにより切り崩す用意をしている。例えば 15.c3 c5! 16.Kb1 Bd6 となれば黒は堅実に指し進めることができる。黒はd4のポーンと交換してから …Kb8 と指すことができるし、…c5-c4!? で c2-c4 突きを止めて自駒のためにd5の地点を確保することができる。

15.Ba5

 この変な手も非常に古くからあり、第1次世界大戦より前から指されている。白はb6のナイトを縛りつけることにより黒に …c6-c5 と突くのを思いとどまらせようとしている。例えば黒が 15…c5 と突くと、白は 16.c4! と突いて 16…Rxd4 17.Rxd4 cxd4 18.Kb1 のあと 19.c5! を狙うことができる(19…Bxc5 に 20.Rc1 から Ne5-d3 または Qe2-b5 で素通しc列で殺戮が起こる)。黒はc列でのこのような危機を避けなければならず、そのためには取りも直さず …c6-c5 突きに非常に慎重でなければならない。

15…Rd5!

 拠点、この場合はd5の地点、はどの駒でも使うことができる。普通はナイトが最良だが、ここではルークがうまく働き白に …Rxa5 の狙いに対処させる。もし白がa5のビショップをbポーンで支えれば、重大な弱点が生じる可能性がある。例えば 16.b4 Rxa5! 17.bxa5 Ba3+ 18.Kb1 Na4(…Nc3+ の狙い)のあと …Bb4、…Nc3+ または …Qxa5 で白キングの周りに黒駒が群がってくる。

16.Bxb6 axb6

 中央に向かって取らざるを得ないが(16…Qxb6 は 17.Nxf7)、特に黒ポーンに害があるというわけではなく、a列で黒に攻撃の可能性ができる。さらには白駒をc5の地点に寄せ付けず、黒はいつか …b6-b5 突きで c2-c4 突きと戦うことができる。

17.c4! Ra5

 ルークが変な地点に行ったが、悪いわけではない。

18.Kb1 Bd6 19.f4 Rd8

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(151)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1
白 K.メーダー
黒 M.ポドガイェツ
世界学生チーム選手権戦、ドレスデン、1969年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3

 5.Qf3 はまれな手だが特に強手というわけではなく 、Ng3 と引くのを拒みながら迅速にキャッスリングする意図である。黒はある時点で …e7-e6 と突くことになるので、実際には白がこのクイーン出で手得をするわけではない。5…e6 6.Be3 のあと黒は単純に 6…Nd7 から 7…Ngf6 と展開でき、白はe4のナイトを何とかすることを迫られる。もし白が作戦どおりキャッスリングすれば、…Qa5 で白キングが非常に不安定になるかもしれない。

5…Bg6 6.h4

 前に 6.Bc4 から Nh3-f4(または Ne2-f4)を考察した。しかし白はビショップよりもナイトの方を先に動かし始めることができる。6.Nh3 Nf6 7.Nf4 のあとすでに 8.h4 から 9.h5 と指す作戦ができていて、ほかの戦型より1手早い。

 これは黒が通常より1手早く問題に対処する用意をしなければならないことを示唆している。例えば 6.Nh3 には 6…e6 7.Nf4 Bd6 から …Qc7 と応じることができ、白に当たりのナイトの処置を決めさせることができる。(f4のナイトは守るのが簡単でない。例えば Qf3 には …Bxc2! と取られる。)

6…h6 7.Nf3

 前に白には局面を開放する手段を見つけるのに問題があると言及した。ここではfポーンを突き進める単純な作戦に言及することができる。黒はクイーン翼ビショップがf5の地点を見張っていれば、f2-f4-f5 突きを止めることができるのは確かである。しかしそれなら白はキング翼ナイトをe5に投下し、そのナイトが取られればfポーンで取り返すことにするかもしれない。

 例えばこうなるかもしれない。7.f4 e6 8.Nf3 Nd7 ここで 9.Ne5? は 9…Nxe5 10.fxe5 Be7 と応じられ、白のh4の地点が大きな問題になる(たとえ 11.h5 と突いたあとでも)。白は 9.Bc4 と指した方が良いが、黒は 9…Be7 のあといずれクイーン翼にキャッスリングすることによりh4の地点だけでなくdポーンに対しても圧力をかけてくる。白は 7.f4 のあとキング翼の弱体化の十分な代償が得られない。

7…Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 Qc7 11.Bd2 e6 12.Qe2 Ngf6 13.O-O-O O-O-O

(この章続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(17)

第2章 クイーンポーン布局

 人生のある時点でチェス選手は誰でもうれしい発見をする。それはクイーンポーン布局である。

 この布局はあなたを無敵にする武器ではなくても最もそれに近いものである。クイーンポーン布局は白にとって非常に多くの有利な点がある。それらの全てがたった1語-圧力-で要約できるのである。

 白は好機をとらえてc列、特にc5の地点を制圧し圧力をかけることができる。これは非常に強力なのでこのことだけで黒がつぶされることがある。

 このすごい威力に対しては対抗手段が一つしかない。それは …c5 突きで、黒はいつかは決行しなければならない。そうしなければ黒は窒息死させられるかもしれない。この突きが入れば黒はクイーン翼が捌け、中原に争点を作り出し、c列の支配権をめぐって戦うことができる。

第17局

 ピルズベリー対メーソン戦は白がc列を制圧し黒が …c5 で捌くのに失敗する古典的な例である。ピルズベリーは黒のcポーンが動けないように固定してから黒がそのポーンの守りに動員できる駒より多くの駒でそれを攻撃した。当然ながらそのポーンは落ち、白が急所のc列を制圧したまま収局に移行し勝利への過程も易しかった。

クイーン翼ギャンビット拒否
白 ピルズベリー
黒 メーソン
ヘースティングズ、1895年

1.d4

 白は最強と考えられる初手の一つで指し始めた。

 dポーンが中原の重要な地点を占め大切な2地点のe5とc5に利いている。これらの地点を支配しているので相手の駒はそれらの地点に来ることができない。

 クイーンとクイーン翼ビショップは1段目から離れることができるようになった。

 キングはキングポーン布局で起こるような奇襲攻撃とは無縁である。そのようなことは黒がキング翼ビショップをc5に進出させf2のポーンを取って犠牲にし白キングを野外に出させて黒の他の駒で襲撃する時に起こる。

1…d5

 黒は中原での圧力を互角にし、白が次に 2.e4 と指すのを防ぎ、自分の二つの駒を動けるようにした。

2.c4

 この手は狙いであり提供である。狙いとは大局観的なもので 3.cxd5 である。3…Qxd5 の後 4.Nc3 でクイーンを追い払い白が中原を独占する。

 ポーンの提供の目的は黒のdポーンを中原の好所からどかすことである。この提供はキング翼ギャンビットの場合とは異なり危険を伴わない。白は容易にポーンを取り返し有利な陣形のままである。実際のところは白の側面ポーンと黒の中原ポーンの交換である。こんなに早く 2.c4 と突く主眼点はキングの安全を損なわずにただちに中原の争奪を行なうことである。

 別の目的もある。それは戦略的なものである。ポーンの交換はいつかは起こりc列が開通する。この列の所有権はクイーン翼ギャンビットでは最重要である。白は一般にクイーンをc2にクイーン翼ルークをc1に配置してこの列を完全に支配しようとする。

 この列とこの列上のc5の地点の支配は全局を支配するのと同じことである。c5の地点はそれほど特異な重要性を持っているので、黒を麻痺させるほど締め付けるためには駒をそこへしっかりと置くだけでほとんど十分である。

2…e6

 黒は別のポーンで中原のポーンを支えて守った。黒は 2…dxc4 とは取りたくなかった。というのは持ちこたえられないポーン得のために中原を放棄することになるからである。白はこの手に対して 3.Nf3 と指し(3…e5 を防ぐため)それから 4.e3 と突いて 5.Bxc4 とポーンを取り返して素晴らしい陣形を得る。

 dポーンを 2…Nf6 と守るのは劣った手である。白は 3.cxd5 と応じ黒は駒で取り返さなければならない。3…Qxd5 なら 4.Nc3 でクイーンが中原から追い払われ黒の手損になる。一方 3…Nxd5 なら 4.e4 で白が中原を占有しナイトを立ち退かせる。

 本譜の手の後黒は 3.cxd5 に 3…exd5 と応じる用意で、中原にポーンを維持することによりそこに足場を持ち続ける。

3.Nc3

 この展開の手は無駄なく小駒を最も適切な地点に置くので推奨に値する。このナイトはe4の地点に圧力をかけ、cポーンがd5の地点にかけている圧力を増している。

3…Nf6

 このナイトは単に最下段を離れることにより初期の手続きで自分の任務を果たしている。もちろんこの展開は中原に向かっていて、白ナイトが中原の重要な二つの地点に及ぼしている影響を相殺している。

4.Bg5

 この手は駒の素早い展開と狙いとを兼ね備えた非常に効率の良い手である。狙いとは 5.cxd5 exd5 6.Bxf6 gxf6(6…Qxf6 は 7.Nxd5 で白のポーン得になる)で、黒のキング翼ポーンの形が乱れる。

 ここまでの布局はこの試合より前に色々な選手によって散発的に試されてきた。しかしピルズベリーはその勝つ可能性の大きな高さを評価した最初の選手だった。彼はビショップがナイトにかかる(ほとんどのマスターはビショップを穏やかにf4に出していた)この手を盤の反対側における一種のルイ・ロペスと思い描いていた。彼はこの具体的な手順を完成させ普及させた。そして数々の素晴らしい勝利を重ね、特に初登場した1895年ヘースティングズ大会での勝利は有名である。

 本局では彼がクイーン翼ギャンビットの偉大な威力を発揮させて対戦相手をつぶすところを見ることになる。相手はこの戦法の細かな要点になじみがなく、とても完璧とはいえない防御をおこなった。マーシャルの常套句を用いればビルズベリーはメーソンを「赤子の手をひねるように」負かした。

4…Be7

 他に何もなければビショップはどこに動いてもキング翼キャッスリングの邪魔物が取り除かれるので黒の進展を助長する。このビショップはe7にいれば防御に好都合だし、必要とあればもっと攻撃的な地点に速やかに移動することができる。ついでにナイトを釘付けからはずし白の狙いを無効にした。

5.Nf3

 クイーンポーン布局ではキング翼ナイトの役目はe5の拠点を支配すること、時には占拠することである。実際ナイトをこの地点に埋め込みdポーンとfポーンでしっかりと支えることは後にピルズベリー攻撃として知られるようになったキング翼での非常に効果的な強襲の主題である。

5…b6

 一見してこの手はクイーン翼ビショップがeポーンによって反対側から閉じ込められているのでそのビショップを展開する簡単で自然な手段に見える。長い年月と黒駒の数多(あまた)の喪失の末に、このビショップをフィアンケットしてもその展開の問題は容易に解決できないことが明らかになった。

 数多くの試行錯誤を経て一つの手段に想到した。それは早い段階で …dxc4 と取り、適切な準備の後で白のdポーンを …c5 又は …e5 で攻撃することだった。最初の手(…c5)は中原の支配を争い、黒駒が利用できるようにc列を開け、そして狭小な陣形を全体的に解放する意図である。…e5 による攻撃は白のdポーンからe5の支配を奪い、黒のクイーン翼ビショップの斜筋も通す意味である。要するに黒はビショップの展開を考える前にまず中原をめぐって争うのである。

 黒が遅かれ早かれ …c5 と突くのはほとんど死活的に重要と言ってよい。この手は白のdポーンに挑みかかり、中原に争点を作り出し、自分のクイーンとクイーン翼ルークのためにc列を開け、クイーン翼の凝り形を解放する。この手を指さずにいると白はc列とc5の地点を支配することができる。白がc5の地点に駒を据えることができれば、その駒は黒陣全体に絶大な圧力を及ぼし抵抗を非常に効果的に削減し勝ちを成し遂げる技法をことのほか簡単にしてしまう。

6.e3

 白は中原を強化しキング翼ビショップの筋を通した。

6…Bb7

 黒はクイーン翼ビショップのフィアンケット展開を完了した。

7.Rc1

 ルークが重要なc列に急行した。この列は今のところは部分的にしか開通していないが、ポーンが交換されれば素通しになりルークの威力がずっと延びる。

7…dxc4

 黒は通常は白がキング翼ビショップを動かすまで待ってからこのポーンを取る。そうすればビショップがポーンを取り返すのに1手損をする。明らかに黒は自分のクイーン翼ビショップに中原を通る対角斜筋の利きを与えたかったのだろう。

8.Bxc4

 白はポーンを取り返して別の駒が戦場に出た。

8…Nbd7!

 ナイトのこの配置はクイーンポーン布局の特徴である。このナイトはc6に跳んでcポーンの行く手を遮ってはならない。このポーンは自由に進み中原に挑むようにしなければならない。

 d7のナイトは理想形である。…c5 または …e5 と突いて中原を攻撃するのを助け、中原の地点の所有をめぐる戦いに加わり、キング翼ナイトと協力し合う。

9.O-O

 キングが舞台から身を隠しルークが任務につけるようになった。

9…O-O

 キャッスリングの利点はキングが盤の中央にいるよりも隅にいる方が安全であるということである。そこなら前面の3個のポーンと勇猛なナイトでかくまわれる。一方ルークは最も簡便な方法で中央の列に回ってくる。

10.Qe2

 この布局での白クイーンの最も効果的な二つの地点はe2とc2である。c2ではクイーンはc列を利用して活動するルークを補完し、別の方面では戦略上の要衝のe4を黒のキング翼ナイトの侵略から守る。e2ではキング翼ポーンの形を黒が 10…Bxf3 で乱すのを防ぎ、中原を独占するためのeポーンの前進を助け、d1の地点を空けてキング翼ルークをそこに来させる。

 クイーンのe2への展開には別の利点もある。それはクイーン翼攻撃である。白は 11.Ba6 によってビショップ交換を強制し、白枡に利いていたビショップがいなくなって弱体化した黒の白枡に圧力をかけることができる。

10…Nd5

 黒のこの手の意図は1個または2個駒を交換して狭小な陣形をくつろげることである。

11.Bxe7

 白は喜んで駒交換による単純化に応じた。それはc列で痛烈な圧力をかけるという自分のテーマに戻れるからである。

 代わりに 11.Bf4 とかわすのは黒に多くの良い選択肢を与えすぎる。黒は 11…Nxf4 と取り(自分だけ双ビショップになる) 12.exf4 の後 12…Nf6 から 13…Nd5 として敵ポーンがどかすことのできない地点に恒久的に駒を維持することができる。または 11…c5 ですぐに中原を攻撃するかもしれない。さらにはd7のナイトをf6に持って来ても立派に指せるだろう。

 本譜の白の手は黒の選択の幅を狭める利点がある。

11…Qxe7

 この手はクイーンを戦いに参加させルークを連結させるので 11…Nxe7 と取る手より望ましい。

 もちろん黒は 11…Nxc3 とは取れない。それは 12.Bxd8 Nxe2+ 13.Bxe2 Rfxd8 14.Rxc7(素通し列にいるルークの勝利)となって黒がポーン損になり試合に負ける。

12.Nxd5

 今度はこの交換は白に都合が良い。白はここから局面を引っ張っていくことができる。

12…exd5

 黒はこのように取らなければならない。12…Bxd5 と取るのは 13.Bxd5 exd5 14.Rxc7 でポーン損になる。

 ポーンで取らせた結果白は黒に長い対角斜筋を閉鎖させた。これで黒ビショップは利きがひどく狭められた。

13.Bb5!

 さあ、早く。c列が突然開通しルークがcポーンに当たってこの列から行動が始まった。

13…Qd6

 ポーンを守り …c6 で白ビショップを追い立てる用意をした。

 ポーンをc5に突くのはもう手遅れになっている。なぜなら 13…c5 の後(2駒で当たりにされているのに対し3駒で守っているので大丈夫そうに見える)14.Bxd7 Qxd7(白は1手で守り駒のうち2個を取り除いた)15.dxc5 bxc5 16.Rxc5 で白のポーン得になる。

14.Rc2

 白はキング翼ルークで圧力を増すためにc1の地点を空けた。

 素通しの列でルークを重ねるとその列で威力が倍以上になる。

14…c6

 黒はうるさいビショップを追い払おうとした。

15.Bd3

 この手は黒の反撃が厄介な 15.Ba4 よりずっと強力である。15.Ba4 に対して黒は 15…b5 16.Bb3 a5(17…a4 でビショップを取る狙い)17.a3 Nb6 としてこのナイトをc4の地点にしっかりと据える。

15…Nf6

 黒は切迫した危険も知らずに嬉々として自分のことにかまけている。それはこの場合ナイトを攻撃に向かわせるためにたぶんe4の地点を占めさせることである。通例はこれはほめられるやり方である。しかし戦略はすべて目下の局面という状況によって調整しなければならない。全ての手はある手を常に「良い」か「悪い」と断定する独断的な判定でなく、相手の狙いに応じて指さなければならない。全ての手は現在指されている特定の局面における価値によって判断しなければならない。

 白はc列とcポーンにできる限りの圧力を積み重ねるという意図を明らかにしている。黒は持ちうる限りの戦力をc列の防御に動員することによって、または白の兵力を襲撃からそらすことのできる厳しい反撃を行なうことによって、白の狙いを迎え撃たなければならない。

 黒は目前の困難を解決するために何かしなければならない。そして相手が素通し列を完全支配する前に黒はすぐにそれをしなければならない。

 本譜の手で黒は絶好の機会を逃がした。それは 15…c5 と突いて中原に争点を作り出し自分の駒にもっと動く余地を与える最後のチャンスだった。

16.Rfc1

 黒のcポーンを固定して動けないようにした。16…c5 なら 17.dxc5 bxc5 18.Rxc5 で白のポーン得になる。

16…Rac8

 cポーンの守りに急いで駆けつけ(黒が自分の危機を悟ったので)ポーン突きの可能性を復活させた。

17.Ba6!

 この戦略は大変素晴らしい。小駒は大駒によって攻撃されているポーンのすぐれた守り手なので、白は黒のビショップを取り除きたいのである。ビショップがcポーンを守っている限り白のルークは決してそのポーンを本気で狙うことができない。

17…Bxa6

 黒は他に何かできただろうか。17…Rc7 なら 18.Bxb7 Rxb7 19.Rxc6 である。また 17…Qc7 なら 18.b4 でさらにcポーンを締め付ける。白はその後 19.Ne5 で圧力を強めビショップを交換して単純化しそのポーンを取ってしまう。

18.Qxa6

 クイーンが間近に迫った。脅威はaポーンだけでなくcポーンに対してもあり狙いは 19.Qb7 Rc7 20.Rxc6 Rxb7 21.Rxd6 で白が勝つことである。

18…Rc7

 この手は良さそうに見える。aポーンを助け白クイーンがb7に入れないようにしルークを重ねて哀れなポーンにさらに守り手を加える準備をしている。

19.Ne5

 白の戦略は単純である。白はcポーンにさらに圧力をかけるだけである。これでcポーンは3個の駒で当たりにされ2個の駒で守られている。

19…c5

 予定の 19…Rfc8 は白が次のようにあっさりと勝つ。20.Nxc6 Rxc6 21.Qxc8+ Rxc8 22.Rxc8+ Qf8 23.Rxf8+ Kxf8 24.Rc7 a5 25.Rb7 で後は児戯に等しい。

20.Rxc5

 ここからは白が固定されていないものは何でも単純に取り除いていく。

20…Rxc5

 黒はポーン損の時に駒交換を望んではいない。しかし何ができるだろうか。もし 20…Rfc8 でc列を争えば以前の解説のように 21.Qxc8+ で白が勝つ。一方 20…Re7(ルークの唯一の逃げ場)なら 21.Rc6 Qd8(21…Qb4 は 22.Nd3 Qd2 23.R6c2 Qa5 24.Qxa5 bxa5 でクイーンを強制交換されて黒の陣形がめちゃくちゃになる)22.a3 の後 23.Rc8 Qd6 24.R1c6 でクイーンを取る白の狙いが受けづらい。

21.Rxc5

 釘付けのポーンが無力で取れないのをあざ笑うようにルークが駒を取り返し重要なc列の支配を続けている。

21…Nd7

 二つの駒を当たりにしているのでこの手は魅力的に見える。白が 22.Nxd7 と応じれば 22…Qxd7 となってクイーン+ルーク収局になるが勝つのは容易でない。白はいつかはキング翼の多数派ポーンを突いていかなければならないが、そうするとキングが露出して永久チェックによる引き分けになる可能性がある。

 ルークが引き下がれば 22…Nxe5 23.dxe5 Qxe5 でこれも引き分けになる可能性がある。

22.Rc6

 ナイト交換をあっさりとかわしてクイーン当たりの先手をとった。

22…Nb8

 黒はこの「手筋」を指させられた。なぜなら 22…Qe7 と引くと 23.Rc7(ナイトを釘付けにした)がひどく 23…Rd8 24.Qb5(三重攻撃)で白が駒得する。

23.Rxd6

 単純化を目指せ。それが戦力的に優勢な場合の収局で覚えておくべき魔法の言葉である。

 ポーン得の時は駒交換によって自陣が弱体化しないならばそれによって戦力(及び相手のチャンス)を減少させよ。

23…Nxa6

 もちろん当然である。

24.Nc6

 これがマスターの手である。読者や筆者なら2ポーン得にするためにdポーンを取るかもしれない。それでも勝てるだろうがどうして紛れさせる必要があろうか。どうして黒に 24…Rc8 でc列を占拠し反撃を開始させる必要があろうか。

 注意すべきは本譜の手でピルズベリーはまだdポーンを当たりにしたままであるということである。それに加えてaポーンも当たりにし、黒が 24…Rc8 とすればナイトでe7でチェックして黒を壊滅させるのでその手を防いでいる。

 マスター選手のあかしとなるのは見かけは単純な局面でクイーン捨てでなくこのような手が指せることである。

24…g6

 黒キングは遅かれ早かれ空気が必要になる。それに収局になればg7を通って中原に向かい手助けすることを願っている。

25.Nxa7

 またポーンが落ちさらに2個がルークで当たりになっている。

25…Ra8

 このルークはc8に行けないので何とか戦闘に加わろうと躍起である。

26.Nc6

 ナイトは引き下がったが 26…Rc8 にはまだ 27.Ne7+ でルーク取りの処罰をする態勢にある。

26…Kg7

 黒はキングをナイトのチェックの及ばない地点に移し中央に近づけた。

27.a3

 急いでdポーンを取ることはない。白は黒ナイトがいずれかへ立ち退いてa8に隠れているルークによってaポーンが当たりになるのを用心した。それに後で黒ナイトがb4に跳んでくるのも阻止した。

 白は次のようなことが起こるのを避けている。27.Rxd5 Rc8 28.Rd6(詰まされるので白ナイトは動けない)28…Nb4 これで不幸な白ナイトが黒に取られる。

27…Rc8

 ようやくルークが念願のc列に回った。しかし黒はこの機会を生かせるだろうか。

28.g4

 白キングにも逃げ場所が必要である。黒は 28…Nb8 で駒得する手を狙っていた。白ナイトが2駒で当たりにされているが逃げるわけにいかない。

 キャッスリングしたキングの回りのポーンの形の乱れは収局では大したことはない。そのようなポーンの動きがキングの健康を脅かすのは序盤と中盤である。なぜならその場合は盤上のあらゆる駒でキングが襲われるかもしれないからである。

28…Nc7

 dポーンを守ったがルークの縦の利きを止めるという代償を払っている。白は 29.Ne7(黒のルークと2個のポーンが当たりになっている)29…Rc1+ 30.Kg2 Rb1 31.Rxb6 で2個の連結パスポーンで簡単な勝ちが保障される手を狙っていたので黒にはほとんど選択の余地がなかった。

29.Ne7

 白はまた黒ルークをc列から追い払う。ルーク当たりに加えて白はbポーンへの当たりとdポーンへは二重の当たりをかけている。

29…Rb8

 黒はできるだけ長くbポーンをもたせなければならない。このポーンを取られれば白のクイーン翼ポーンが自由に進んでクイーンに昇格する。

30.Rd7!

 圧力は緩めてはならない。30.Nxd5 Nxd5 31.Rxd5 からのルーク収局でも勝ちであるがピルズベリーはそれよりも本譜の手を好んだ。

30…Ne6

 ナイトは当たりから逃げなければならない。30…Rb7 で守るのは 31.Nxd5 で駒損になる。

31.Nxd5

 ついにこのポーンが落ち、(取ったポーンに加えて)白にはd列にパスポーンができ7段目にルークが残った。

31…Rc8

 黒はじり貧負けに陥るよりもさらにポーンを捨てて素通し列での反撃に活路を求めた。このルークが白ポーンの背後に回れれば2個ほどポーンを取れるかもしれない。

32.Nxb6

 白は 32.Nc3 で黒ルークを締め出して安全勝ちできるかもしれない。しかしbポーンを取ればパスポーンが3個になる。この誘いにはなかなか勝てない。

32…Rc2

 ルークが素通し列を支配した当然の帰結として7段目を占めることになった。これは白にとって面倒になることを意味している。しかしここでの例外は白のポーンがクイーン昇格のために盤上を駆け上がる態勢にあるという強力な解毒剤があるということである。

33.b4

 ポーンがルークの当たりを軽くかわした。

33…Ng5

 白のポーンは容易に前進を妨げられそうにない。しかしもしかしたら見捨てられた白キングが黒のナイトとルークの攻撃にもろいかもしれない。

34.a4!

 白は冷静にパスポーンを突き進めてクイーンを作ることに専念する。

 34.f4 で黒ナイトを追い払いたい気もする。しかしそう指すと信じられないだろうが黒に引き分けを許してしまう。34.f4 の後 34…Nf3+ 35.Kf1(35.Kh1 は 35…Rxh2# で詰んでしまう)35…Rd2! 36.Nc4 Nxh2+ 37.Kg1 Nf3+ 38.Kf1 Nh2+ 39.Ke1 Nf3+ でチェックの千日手で引き分けになる。

34…Ne4

 黒は別の侵入を試みた。

35.a5

 ピルズベリーはナイトをこづく衝動を抑えている。35.f3 なら 35…Ng5 で 36…Nxf3+ でチェックの千日手による引き分けの狙いが復活する。

35…Nxf2

 黒は詰み狙いの攻撃を作り出せるだろうか。

36.a6

 相手のこけおどしの無益さを最もよく明らかにするには注意を向けないことである。

 パスポーンは昇格まであと2手に迫りその行進を止めることはできない。

32…投了

 黒は次のような幸運を期待することはできないと判断した。36…Nh3+ 37.Kh1 Ng5 38.a7 Nf3 39.a8=Q Rxh2#

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

カロカン防御の指し方(150)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 ここから中盤戦が始まるが黒の布局が本質的に安全なものであることが見て取れる。黒には守るべき明白な標的がない。黒キングはクイーン翼では潜在的に脆弱だが、白がクイーン翼のポーンを破城槌として用いても自身のキングを露出させることになるので、クイーン翼にいても安全である。白はクイーン翼のポーンを突かずに攻撃しようとすることも可能だが、成功するとは想像しにくい。白のほとんどの詰みの着想を止めるために黒はナイトをd5に置くだけでよい。

 実際黒よりも白の方が標的の重荷を背負っていると言うこともできる。白のhポーンは駒が交換されていくとそれを守る駒が少なくなるのでもっと目立つ標的になっていく。黒は …Bd6 で駒を交換する作戦とhポーンの守りを切り崩す着想を組み合わせて手を稼ぐことができる。…Bxg3 は fxg3 に …Qxg3 で単にポーン得する狙いだけでなく、白のhポーンの最良の守り駒をなくす狙いもある。そしてもし白がナイトをg3からどかせれば、黒は …Bf4 でビショップ同士を交換して自分の防御を楽にできるかもしれない。

 黒にはほんの簡単にやれるポーン突きもある。…c6-c5 と突けばポーン同士の交換になる可能性のある争点を作り出せるかもしれない。これに対して白は c2-c4 から d4-d5 が唯一のポーン突きだが、黒はd5の地点を2ポーンとナイトで押さえ …O-O-O ですぐにルークがd8に来るので、実行は非常に難しい。例えば 13.Kb1 は …Bf4 による駒交換を防ぎ c2-c4 から d4-d5 のあとc列を使えるように空けている役に立つ手待ちだが、黒は単にキャッスリングする。そのあと 14.c4 は白の中央を清算することを期待して 14…c5! と応じられる。15.Bc3 cxd4 16.Nxd4 のあと黒は白の戦術のもくろみ(例えば Nb5)を 16…a6 で止め、そのあと …Bd6 から …Nc5 で黒枡での行動を続ける。黒が …cxd4 と取ろうと白が dxc5 と取ろうと白のdポーンとの交換は、黒の小駒のためとクイーン翼ルークの将来のために十分動ける余地をもたらす。

 白は譲歩することによってしか …c6-c5 の狙いを止められない。例えば 13.c4 O-O-O 14.c5? は単純に 14…Nxc5! でポーン損になる。白がたとえ c4-c5 と突く前にクイーンをd列からよけても、そのポーン突きにはなお重大な問題がある。d5の地点が二度と白ポーンによって守られなくなるので、その地点の支配を永久に黒駒に譲り渡すことになるからである。そしてc5のポーンは …b7-b6 による攻撃にさらされ、そのあと白はキングの囲いを薄くしても b2-b4 でc5を支えるべきか非常に慎重に考えなければならなくなる。白に危険があることは確かである

 しかし白の最も楽観的な作戦は Ne5! であることを思い出そう。白は 13.Qe2 でその作戦の基礎を築き始めることができる。黒は 13…O-O-O と指すしかなくそのあと白は 14.Ne5 と指す。これは黒にとって最初の本当のジレンマになる。黒はe5の白ナイトを放っておいて …c6-c5 突きの準備に集中すべきだろうか、それともナイト同士を交換すべきだろうか。

 この交換は黒に素通しd列が保障されて駒の交換、特にルーク同士の交換を進めることができるので黒にとって魅力的である。dポーンが自駒のためのe5の拠点を支援しているという形での中央における白の優位は減殺される。しかしe5に新たに進出した強力なポーンは黒駒を好所に来させない。黒ビショップはd6に行くことができず、ナイトはf6の地点を立ち退かなければならない。白はeポーンを f2-f4 突きで補強したあと、Ne4 と指して中央で駒とポーンを見事に調和させることができる。これは中盤戦の終わりどころか收局まで白に残る類の優勢である。

 もう一つはナイトにe5に居させる手である。たぶん黒は拠点の駒を …c6-c5 でdポーンに圧力を積み重ねて切り崩すことができる。実戦例1はナイトを交換しない黒の戦略の例である。あとで相手の少し不正確な手のあと黒はe5での交換が有利な局面になった。そして巧みな指し回しでd列を支配することができた。

 実戦例2では白の力強さに欠ける指し方が見られる。白は攻撃を考え始める前にキングをb1に寄せクイーンをd列からどけるという用心の手をすべて行った。この落ち着いた態度が黒の時期尚早の反撃を誘い、ちょうど白の駒配置が最良のときに白に黒のクイーン翼という目標を与えた。

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(149)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

12.O-O-O

 今日ではこの戦型で白がキング翼にキャッスリングすることを考えることは実際のところまったくない。ここでの白の選択肢はクイーン翼にキャッスリングするか、12.Qe2 ですぐに中盤戦の作戦を始めるかである。もちろん 12.O-O-O は白が次に 13.Qe2 と指す機会を否定するものではなく、白の手の中で最も融通性があるとみなせるかもしれない。それでもすぐに 12.Qe2 と引く手は1960年代後半にボリス・スパスキーが披露して以来、12.O-O-O と同じくらい注目を集めてきた。

 このようにクイーンが動く手はいつ指しても白にとっていくつかの利益がある。クイーンがd列から離れることにより …O-O-O のあと黒のクイーン翼ルークと対峙することが避けられる。白クイーンが動かないと黒がクイーン翼にキャッスリングしたあと …c6-c5、…Nc5 または …Ne5 のような手によって具合の悪いことになるかもしれない。例えば 12.O-O-O Ngf6 13.Ne4 O-O-O 14.g3(Bf4 と出られるようにするため)14…Nc5! となれば黒がナイト同士を交換するのに役立つことになる(15.dxc5 は白クイーンが取られる)。

 さらに、白クイーンが動くと白の中盤戦の作戦できわめて重要なe5の地点への白の圧力が補強されることになる。白はたとえさらに交換が進んでも Ne5 と指すことを望んでいる。なぜなら dxe5! と取り返す手が黒の残りの戦力を制限するからである。例えば 12.Qe2 O-O-O 13.Ne5! のあと想定される手順は 13…Nxe5 14.dxe5 Ne7 15.f4 または 15.O-O-O c5 16.f4 である。e5の白ポーンは黒ナイトがf6の地点を使ってe4の地点を見張り白のhポーンを当たりにするのを妨げることになる。すると今度は白が残りのナイトをg3のシベリアからe4に復帰させ働かせることができる。それに駒やポーンで黒のキング翼を攻撃することもできるようになる。白クイーンがg4に行くか白ナイトがe4に行って Rh3-g3 と協力することもできる。白ポーンはf4とg4に行けて、片方のルークか両方のルークの支援の下に g4-g5 または f4-f5 とさらに突き進むかもしれない。そのあと白は自分の大駒のためにキング翼の列を強制的に素通しにすることができる。白の別の作戦は dxe5 から Ne4 のあと黒枡ビショップ同士を交換してナイトでd6の地点を占拠することである。白には多くの選択肢がある。

 それは黒も同じだが、互角への明快な道はない。もし黒が 13.Ne5 を 12.Qe2 Bd6 で未然に防ごうとすると、13.Ne4! Bf4(ここではこのビショップにもっと良い地点はない)14.Ne5! を助長することになる。14…Nxe5 なら 15.Bxf4!、14…Bxe5 なら 15.dxe5 Nxe5(15…Qxe5? 16.Bc3)16.Bb4! から Nd6+(または f2-f4!)、最後に 14…Bxd2+ なら 15.Nxd2 Nxe5 16.dxe5 で、白の求める有利なポーン陣形になりビショップ交換の有利さ(Nc4-d6 がいつでも指せる)も加わる。

 Qe2 の作戦にはすぐに戻ってくることにして、ここでは Ne5 の着想の強力さを評価することと、黒がキャッスリングする前でさえ白がその準備を始めることができることを評価することが重要である。(そして黒がクイーン翼にキャッスリングすることは、e5の白ナイトが守られていないf7の地点を攻撃することになるので白の作戦をもっと強力なものにする。)

12…Ngf6

 黒はまだ緊急にキャッスリングする必要はない。省いた手を用いてe4を支配し、白が Ng3-e4 と指せばそこでナイト同士を交換する用意をしておくことができる。

(この章続く)

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布局の探究(100)

「Chess Life」1994年7月号(3/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称局面の手番の利(続き)

ウィーン試合(C25)

1.e4 e5 2.Nc3 Nc6

 最も一般的な応手は 2…Nf6 である。もっともそれなら白は挑発的な 3.f4 を安全に指すことができる。対称形の本譜は戦略派によってそのポーン突きを避けるために好まれてきた。なぜなら 3.f4 exf4 4.Nf3 g5 という手順は定跡によって長い間黒が良いと考えられてきたからである。しかしGMアルナソンとGMモトワーニによる白側の最近の好成績は状況をまったく分からなくさせている。

3.Bc4 Bc5

 黒も同等の価値の高い展開をしているので、白には 4.d3 や 4.Nf3 で優勢になれる見通しはほとんどない。しかし黒の最後の2手につけ込もうとする大胆な手段がある。ここからその試合を追ってみる。

ベント・ラルセン対ラヨス・ポルティッシュ
サンタモニカ、1966年

4.Qg4! g6

 キング翼の弱体化は避けられない。4…Kf8?! でキャッスリングの権利を放棄する理由はない。おまけに一般に黒には布局初期に白と同じ類の「突飛な」振る舞いをしている余裕はない。例えば 4…Qf6? は 5.Nd5! Qxf2+ 6.Kd1 Kf8 7.Nh3 Qd4 8.d3 となって悪い。1931年のアリョーヒン対ルゴフスキー戦ではこのあと 8…Bb6 9.Rf1 Nd8 10.c3 Qc5 11.Ng5 Nh6 12.Qh5 と進んで黒が投了した(12…d6 13.Nf6!)。

5.Qf3 Nf6 6.Nge2 d6 7.d3 Bg4 8.Qg3 h6

 この手はg5での釘付けを防いだ。GMポルティッシュによると本譜の手が融通性があって良いと結論づける前に 8…Be6、8…Qd7 それに 8…Bxe2 も考えたそうだ。

9.f4 Qe7 10.Nd5 Nxd5 11.Qxg4

 今のところ白はクイーンの働きに優り、黒は小駒の展開で先行している。白が主導権を得る見通しはf列でf7をにらむ攻撃に基づいている。どちらが優っているだろうか。

11…Nf6?!

 この手は鋭い反撃の作戦を念頭に指された。しかし黒はそれを貫徹しないので、本譜の手は白に強力な攻撃態勢を整えさせるだけに終わった。ラルセンとポルティッシュの両GMは 11…Ne3 12.Bxe3 Bxe3 が最善の手順ということで一致した。そしてGMラルセンは 13.Qg3 Nd4! を想定し、「白の優勢は微細な点まで研究しなければならない」と付け加えている。GMポルティッシュは 13.f5 Qg5 14.Qf3 Nd4 15.Nxd4 exd4 16.fxg6 Qxg6 17.Rf1 Rf8 を分析し互角になるとしている。

12.Qh3! Na5?

 この手は弱点を作っているだけである。黒は作戦どおり 12…d5! 13.exd5 Nb4 と指すべきだった。そのあとの両者の最善の手順は 14.fxe5! Qxe5 15.Kd1 Nbxd5 16.Re1 O-O! で、GMポルティッシュは「大乱戦だがまだ黒も指せる」としている。

13.Bb5+ c6 14.Ba4 b5 15.Bb3 d5 16.fxe5 Qxe5 17.c3!

 この手は 18.d4 を狙い、黒クイーンを 18.Bf4 で追い払う用意もしている。加えて Rf1 で半素通しf列で攻撃する狙いもある。GMラルセンの考えではここではまだしも 17…Be7 で、18.O-O で白が大いに優勢とのことだった。

17…Nxb3 18.axb3 Bb6 19.Rf1 Bd8

 19…dxe4 なら 20.d4 Qe7 21.Bg5! で白の勝ちになる(ポルティッシュ)。

20.Bf4 Qe6

 收局は見通しが暗いが、20…Qe7 21.Nd4 の中盤戦よりはまだましである。

21.Qxe6+ fxe6 22.Nd4! dxe4

 22…Kd7 23.Be5 Rf8 なら白は 24.Ra6 で最後の駒を戦いに投入し勝ちになる。

23.Nxc6 Rh7 24.Nxd8 Rxd8 25.Ra6 exd3 26.Bxh6

 このような開放的な局面ではこのビショップの方が黒のナイトよりはるかに優るので、26.Rxe6+ か 26.Be5 でビショップを残すようにした方が勝ちが簡単だっただろう。

26…Rxh6 27.Rxe6+ Kd7 28.Rfxf6 Rxh2 29.Rd6+ Ke7 30.Rxd8 Kxf6 31.Kf2 Rh1 32.Rxd3 Rb1 33.Rd2

 黒はひどい局面から二重ポーン損「だけ」のルークとポーン收局に持って来た。たとえ黒が本当に実戦的に引き分けの可能性があっても、GMラルセンは本局の頃が指し盛りで技術的な問題を卓越した技量で克服してきた。以下の手順は本稿の範囲外なので解説は省略する。

33…Ke5 34.Kf3 a6 35.b4 Kf5 36.Ke3! Kg4 37.Kd4 Kg3 38.Kc5 g5 39.Kb6 Ra1 40.b3 Rc1 41.Kxa6 Rxc3 42.Rb2 g4 43.Kxb5 Kh2 44.Ka5 Rc8 45.b5 Ra8+ 46.Kb4 Rb8 47.Kc5 Rc8+ 48.Kd6 Rb8 49.Kc6 Rc8+ 50.Kb7 Rf8 51.b6 g3 52.Ka6 Rf2 53.Rb1 黒投了

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カロカン防御の指し方(148)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 黒クイーンはc7が理想的な地点である。そこならクイーン翼キャッスリングができ、…c6-c5 を助け、白の橋頭保のe5を見張ることができる。白が黒のキング翼に対する攻撃のためのロケット発射台となることに期待しているのはe5の地点である。

 c7の黒クイーンは白が Bf4 でg3-b8の斜筋を支配するのを防いでもいる。これが絶対的に本当かどうかについては少し議論がある。ほかの展開の手、例えば 10…e6 のあと 11.Bf4 は主手順への移行以外何もしていないのが普通である。11…Qa5+ 12.Bd2 Qc7 で黒クイーンは(回り道のあと)ともかくもc7に落ち着き、白のビショップもd2に落ち着く。だから黒はそれでもg3-b8の斜筋を支配している。白は主手順に移行したくなければ、チェックに 12.Bd2 意外の手で応じなければならないが、12.Bd2 は白の最も有益な応手である。(10…e6 11.Bf4 Qa5+ のあと)12.Qd2 でクイーンを交換するのもナイトをd2に引くのも、白の戦略目標と一貫性がとれず、12.c3 は黒クイーンがa5に居座り白がクイーン翼にキャッスリングするのも(…Qxa2 があるため)キング翼にキャッスリングするのも(…Nf6xh5 と取られるため)妨げる。

 10…e6 はほとんど主手順に移行するだろうが、10…Qc7 と指せるときに白に余分の選択肢を与えることはない。

11.Bd2

 時に白はキング翼ルークを Rh4 で活用するかもしれないと前述した。この着想を実行に移す最適の瞬間はちょうど今である。

 その理由はg3-b8の斜筋の支配をめぐる小競り合いと大いに関係している。もし白が正確な 10…Qc7 のあとでさえこの斜筋をめぐって黒への挑戦にこだわれば、最良の即座の方法は 11.Rh4 から 12.Bf4 である。11.Rh4 e6 12.Bf4 Qa5+ のあと、白は例えば 13.Kf1!? とさえ指すかもしれない。結局のところルークを Rh4 の手段により働かせることができキングを Kf1 により安全にできるときに、キャッスリングするどんな必要性があるというのだろうか。そして c2-c3 突きを避けることにより白はこのポーンをc4に突く余地を残している。好ましいビショップがc7とb8まで利いているとき、白は黒がクイーン翼にキャッスリングすれば展望が非常に良くなる。それにh4のルークは容易にg4に寄れるので、黒がキング翼にキャッスリングすれば同様に良い見通しが持てる。

 しかし 11.Rh4 e6 12.Bf4 には 12…Bd6! という応手もある。ビショップ同士の交換になれば黒は黒枡のいくつか(例えばd6)がもっと弱くなるかもしれないが、白がこれにつけ込むのは非常に難しい。例えば 13.Bxd6 Qxd6 14.Ne4 Qe7!(14…Qc7? は 15.Qa3! から 16.Nd6+)のあと黒は …Nf6 でもう一組の小駒同士を交換しそれによりわずかな弱点の影響を減少させる。

 実際 15.O-O-O Ngf6 のあと黒は 16.Nxf6+ にポーンで取り返す!この卓抜した着想により白のナイトはe5から締め出され、黒は …Qd6-d5 から …Nb6-c4 で中央のほかの要所を支配することができる。黒のfポーンは二重になっているので技術的には弱いが、実際には Ne5 が防がれ Rg4 が空を切っているので攻撃するのはより難しくなっている。

 要するに 11.Rh4 は面白い着想だが、優勢になるほど強力ではない。白は黒にしばらくキング翼ビショップを保持させておいた方が良い。覚えておくべきことは一般に白は盤上に戦力を残しておきたいということである。

11…e6

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(147)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

8.h5

 hポーンを4段目に突いた白は本当にもう1枡上まで突くべきか決めなければならない。このポーンはh5へ「ただで」突くことができる。黒ビショップがg6にいようとh7(9.h5 Bh7)にいようと黒はほとんど自動的に Bd3 に …Bxd3 と応じる。8.Bd3 のあとは 8…Bxd3 9.Qxd3 Qc7 10.Bd2 e6 11.O-O-O Ngf6 が想定できる。これは実際この戦型の主手順である。しかし 8.h5 が加わると重大な違いが出る。

 その一つは白がキング翼ルークをh4の地点を経由して戦いに投入する可能性である。これはほかのほとんどの布局では非常に異例の捌きであるが、ここではこのルークを働かせる最良の手段になるかもしれない。このルークは黒がクイーン翼にキャッスリングすればc4またはg4で役に立つかもしれないし、Bf4 を支援するのにも役立つことができる。(g3からb8への斜筋をめぐって面白い戦いが引き起こされるが、これについては少しあとで取り上げる。)

 ポーンがh4でなくh5にある局面の最も重要な特徴は、黒のキング翼のポーンの弱点である。8.h5 のあと黒のgポーンは両隣のポーンの一つを弱めずに動くことはできなくなる。もし白がg7のポーンを攻撃すれば(Rh4-g4 か Qg4 で、または少し駒交換した後は Qd3-h7 で)、黒はキング翼ビショップかキング翼ルークで後ろから守るか、ほかの駒でg6へポーンを突くのを助けるかしなければならなくなる。しかし …g7-g6 突きには白は hxg6 と取り、黒が駒で取り返せば弱い孤立hポーンが取り残されて白のクイーン翼ビショップとキング翼ルークによって攻撃されることになる。もしfポーンで取り返せば、eポーンが孤立ポーンになりe列で白駒からはるかに強力な襲撃の標的にされる。

 もちろん 8.h5 には欠点もある。布局の早い段階でのポーン突きには必ずと言ってよいほど欠点がある。この場合は白自身のhポーンの弱体化である。このh5のポーンは黒のf6のナイトによって絶えず目をつけられている(もしこのナイトが交換になれば兄弟ナイトがd7からそこにやって来る)。h5のポーンは当面はh1のルークとg3のナイトにより守られている。しかしルークは試合中ずっとこのポーンを支援しているわけにいかないし、ナイトは …Bd6xg3 によって交換されることがある。だから黒だけでなく白も自分のポーンの安全のために警戒していなければならない。

 ここでの結論は、経験によると 8.Bd3 より 8.h5 の方が好結果をもたらすということである。ポーン突きは各々のポーンを弱体化させるので試合を先鋭化させる。そして白は「精神的に」引き分けの局面を避ける傾向があるので、このことは白の利益になる。8.h5 と 8.Bd3 の両方を支持する定跡の論拠は多々あるが、これまでのところ 8.h5 の方が実戦で勝ちを収めている。

8…Bh7 9.Bd3

 今が時機である。ビショップをc4に出すのは h2-h4 と突かない局面よりも黒陣に対する衝撃が劣る。ここでは少なくとも …h7-h6 と h4-h5 のおかげで黒のキング翼はより脆弱になっている。

9…Bxd3

 黒が交換しないと、白は Bxh7 と交換して黒駒を乱すまでである。黒のルークもナイトもh7で取り返して変な所にいることになる。これがhポーンを突いていると Bd3 がずっと有効な手になる理由の説明に役立つ。

10.Qxd3 Qc7

(この章続く)

2014年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(129)

「Chess Life」2006年3月号(2/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反マーシャルの 8.h3[C88](続き)

 分析する局面へは次の手順で至る。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.h3

 白が 8.c3 と突けば黒には 8…d5 と突いて(マーシャル攻撃)ポーンを犠牲にし(9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 c6)駒の働きを良くする選択肢がある。マーシャル攻撃の定跡は非常に深く研究されている。白側の多くの選手がその定跡を恐れ、代わりにもっと穏やかな手を好んでいる。

 8.h3 のあと黒があくまでも 8…d5 によってポーンを犠牲にしてくれば、白は安全にポーンを取ることができる。h3 と突く手は c3 と突く手よりも役に立つ。h3 突きはd3の地点を弱め布局で白の頭痛の種になることがよくある。

8…Bb7 9.d3 d6

 黒のこの手はe5のポーンを守っている。これでc6のナイトは自由にa5に行ける。

 ほかには 9…Re8 と 9…h6 の2手がある。9…h6 に対する興味深い(白の観点から)試合は、次のユディット・ポルガーがアダムズに勝った試合(ドルトムント、1996年)である。10.Nc3!? Re8 11.a3 Bf8 12.Nd5 Na5 13.Ba2 Bxd5?(双ビショップを放棄するこの手は大局的に重大な間違いである。a5の黒ナイトも有効に戦いに戻るのが難しくなる。13…c5 と突く方が良かった)14.exd5 d6?!(この手はa5のナイトからいつかb7経由でd6に現れる最後の望みをすべて奪っている)15.b4 Nb7(ここでユディットは参考になる大局的な優位の生かし方を見せてくれる)16.c4 Qd7 17.Be3 Nd8?! 18.Rc1 c6(黒は白のd5のポーンと交換することによって締め付けから抜け出ることを期待している。もちろん白はその望みをかなえてやる必要はない)19.Nd2! cxd5 20.cxd5 Nh7(20…a5!? で反撃に出る方が良かった)21.Bb6(この手は白ルークがc7に入る用意をしている)21…Rc8 22.Rxc8 Qxc8 23.Qc1 Qb7(23…Nb7 24.Qc6)24.Qc7 Qxc7 25.Bxc7 Nb7 26.Rc1 Rc8 27.Rc6 Nd8(27…f5 28.Bxd6! Nxd6 29.Rxc8 Nxc8 30.d6+ Kh8 31.d7)28.Bxd8 Rxd8 29.Rxa6 ほどなく白の勝ちになった。

10.a3

 白は白枡ビショップの隠れ家を見つけておく必要があった。10.a4 は 10…Na5 11.Ba2 c5 12.Nbd2 Nc6 13.Nf1 Nd7 14.Ne3 Nb6 でいい勝負で白がでかしていない(アーナンド対カシムジャーノフ、リナレス、2005年)。

 ここで黒は手が広い。戦型B-Dで取り上げる手以外にも黒は 10…Kh8、10…Nd7、10…h6、10…Re8、10…Nd4 を指している。

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カロカン防御の指し方(146)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 7.Nh3

 7…Nf6 8.Nf4 Bh7 9.Bc4! のあと白が黒キングに対して狙いを作り出せるので、局面は戦略的というより戦術的になる。2個の小駒がe6の地点をにらんでいるので白は、そのうちの一つを切って代わりに2個のポーンを取り黒キングを露出させることまでするかもしれない。例えば 9…e6 10.O-O Bd6 と指すのは、お互いのhポーンがまだ元の位置にあるときは問題ないが、ここでは 11.Nxe6(白が捨て駒をしなければ黒は 11…O-O とキャッスリングして安全になる)11…fxe6 12.Bxe6 となって詰みを狙った攻撃を受ける危険性がある。

 捨て駒のあと白には攻撃がうまくいく相応の機会がある。白は次の手でルークをe1に回し、ビショップを動かすことによる空きチェックを狙うことができる。また、威嚇するようにナイトをh5に跳ねてf6とg7を狙い、さらにはf6の黒ナイトと交換することにより黒を Qh5+ にさらすことも狙うことができる。

 しかし黒は単なるチェックで死ぬようなことはない。例えば 12…Qc7 13.Re1 Nbd7! のあと実際には白にはe列で強烈な空きチェックがない。14.Bg8+ Kf8 15.Bxh7 Rxh7 なら黒はしのげるはずだし、戦力得にものを言わせることによりもっとうまくやれるかもしれない。13.Nh5 の方が白にとっては有望だが、問題点は相変わらず明らかになっていない。つまり攻撃は成功するかもしれないし失敗するかもしれない。

 7.Nh3 の戦型(Nf4 から Bc4)の利点は、7.Nf3 から通常生じる戦型よりも指す手が決まってくることである。そしてこのことが黒のキング翼に危険をもたらすことがある。しかしこの手は白の兵器庫から c2-c4 の着想とナイトによるe5の占拠もなくしている。ナイトをe5に跳ねる可能性は、捨て駒の手順の Nf4xe6 ほど劇的には思われないかもしれない。しかし黒が何をしようと白に少し有利をもたらすはずである。その一方で白は 7.Nh3 の戦型で Nf4xe6 または Ng3-h5 のあと勝つかもしれないけれども、負けるかもしれない!

7…Nd7!

 黒はいずれこの手を指さなければならない。そして 8.Ne5 から 9.Nxg6 を未然に防ぐために今が良いかもしれない。注意すべきは黒はクイーン翼にキャッスリングすることを考えているので、キング翼ナイトを早く出す必要がないことである。実際黒はもう一つの自然な展開の手の …e7-e6 さえもうしばらく延期することになる。

 これから出てくるように黒には手順を変える余地が豊富にある。黒は …Qc7、…e7-e6 それに …Nf6 をほとんどどの順序でも好きなように指すことができる。しかしこの時点では正確さが必須である。7…e6 なら白はg6の黒ビショップをまた動かさせることにより大きく手得する。例えば 8.Ne5 Bh7 9.Bd3 と指し、9…Qxd4? なら 10.Nxf7!(10…Kxf7 なら 11.Bg6+! でクイーンを取れるため)、9…Bxd3 なら 10.Qxd3 Nf6 11.Bd2 Nbd7 12.Ng6!(12…fxg6 なら 13.Qxg6+ Ke7 14.Bb4+ で勝ちになる)という仕組みである。黒はこれらの手順でもっと良い受け方があるが(例えば 10…Nf6 でなく 10…Nd7)、基本的に1手(8…Bh7)損している。

 白が既に h4-h5 と突いているなら、黒は Ne5 を止めるために …Nd7 と指す必要はなくなる。これは h4-h5 突きで黒ビショップがとっくにh7に引っ込んでいるので、白があとで Ne5 と指してもg6のビショップを取る狙いがなく、上記の手順と異なり手得にならないからである。確かにe5の白ナイトは黒にとって目の上のたんこぶである。しかしそれがすぐに狙いを持っていないときには、黒は手をかけて …Nd7xe5 と取ることができる。

(この章続く)

2014年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(145)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

7.Nf3

 h2-h4 と …h7-h6 の交換を入れておくと状況が著しく違ってくる。この局面と 5…Bg6 の局面の違いを評価することは重要である。

 まず第一に気づくことは白も黒もそれぞれのキング翼の形を悪くしていることである。このためどちらもキング翼にキャッスリングすることは好ましく感じられない。しかしg1の白キングよりもg8の黒キングの方が楽にやっていける。これはh6の黒ポーンよりもh4の白ポーンの方がはるかに攻撃にもろいからである。たぶんもっと重要なことは、白のhポーンがなくなるとh5からh1へh列に沿ってキング翼に侵入されることがあることである。黒キングへの唯一の直接的な高速道路はd3-h7で、はるかに危険が少ない。すべてを考慮に入れると、両者はクイーン翼にキャッスリングする方が安心できる。そしてキング翼が弱体化しているので、どちらも敵陣に攻撃目標が持てる。だから攻防の観点からクイーン翼にキャッスリングすることになる。

 二番目の重要な違いは次のとおりである。もし白がここでg6のビショップを取ることができると、黒のポーン構造が深刻な被害を受ける。以前に考えた局面で黒が Bd3xg6 も Ne2-f4xg6 も気にしなかった理由は、黒陣が実際には …hxg6 によっていくつかの点で強化されたからである(例えば白は容易にg列を素通しにできなかった)。…h7-h6 のあと状況は変わっている。というのはここでは …hxg6 と取れないからである。だから黒はたいがいg6での交換を避けることになる。白が Bd3 と指したとき黒は …Bxd3 と指すことにより交換を行なう。しかし今度の局面では黒は Ne2 または Nh3 を心配する理由がある。それはナイトがf4に来て Nxg6 を狙うからである。

 7.Bd3 はdポーンが単純に浮くので(7…Qxd4)、Bd3 の着想をもっと適当なときまで考えるのを延期しよう。それでナイトを捌くことになり、7.Nh3 の手段で出撃することができる。

 7.Nh3

(この章続く)

2014年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(144)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 6.Bc4 e6 7.N1e2 Nf6

 もし白が Nf4 から h2-h4 突きを妨げられることがなければ、これらの手によりhポーンを5段目まで突く狙いができるために白がキング翼を圧倒的に支配することになる。このような局面で黒が h2-h4 に …h7-h6 と応じるのは、Nxg6 でポーンの形が乱れるので良くない。すなわちeポーンが孤立しc4-e6の斜筋とe列で攻撃の対象になり、g6のポーンが Bd3 といつかは Qc2 とに標的にされる。

 しかし黒には白の Nf4 から h2-h4-h5 の大局的な狙いをかわす余裕がある。8.Nf4 のあと黒は 8…Nd5 か 8…Qc7 9.h4 Bd6! を選択できる。白ナイトがf4に来たとたんにそれを攻撃するのは、白の作戦を十分に鈍らせる。8.Nf4 Nd5 9.Nxg6 のあと例えば黒はhポーンで取り返し堅陣を誇ることができる(9…hxg6 10.Bb3 Qh4 のあと …Nd7-f6 から …Bd6-f4 で交換を狙うのが良い)。

 これらの手順や同様の手順でc4の白ビショップは実際には的外れである。なぜなら黒が白にすぐに c2-c4 と突かれる恐れなく絶好の拠点のd5を占拠することができるからである。このビショップはしっかり支えられたe6のポーンに頭をぶっつけ、e2(ここも特に良い地点というわけではない)で何もしないようにc4でも何もしていない。要するに白にはもっと積極的な作戦が必要である。それゆえにポーンの仕掛けが意味を持ってくる。

 上図で白は 8.O-O から 9.f4 と突いて、f1のルークの支援の下にポーンをf5まで突くことを狙うことができる。もし黒が …exf5 と取らなければならないのなら、上述のポーンの仕掛けが実現し、c4の白ビショップはもうe6のポーンによって邪魔されることがなく、脆弱なf7の地点に目をつけ始めることができる。また白はg3のナイトでf5のポーンを取り返すこともできる。このナイトはこれまでほとんど何もしてこなかったが、今度は積極的に戦いに加わることになる。しかし f2-f4 と突く作戦に対して黒は積極的に反撃することができる。8.O-O のあと黒は 8…Nbd7 と指し 9.f49…Nb6! 10.Bd3 c5! と応じることができる。白が自分のキングに通じる斜筋を f2-f4 突きで素通しにした途端に、黒はその斜筋を支配するようにするのが良い。10…c5 で黒はその斜筋を乗っ取ることを狙うだけでなく、11…c4 で白ビショップを捕獲することを狙っている。黒はこのポーン突きで白が f2-f4 突きで何らかの危害を加えることができる前に …Qc7 から …Rad8(または …cxd4 から …Bc5)と指す余裕が得られる。

 というわけでほかの手はほとんど望みがないので、白はg6の黒ビショップを交換して消すようにしなければならないように思われる。この交換から最も利益を引き出すためには、白はまず 6.h4 で黒のキング翼のポーンを弱体化させる。

6…h6

 7.h5 の狙いに対処するために黒はビショップの逃げ場が必要である。ビショップを逃がすのに最も不都合の少ない手段は、hポーンを1枡だけ突く手である。6…h5 と2枡突くのは、容易に攻撃にさらされる目標をh5につくることになる。白は 7.Nh3! から 8.Nf4 で黒のhポーンを取るか Nxg6 で黒のキング翼のポーンを乱すことができる。6…h5 の別の欠点は、白の小駒にg5の地点を利用されることである。この戦型では白のクイーン翼ビショップはd2よりほかに好所はないのが普通である。だからg5の地点が使えるのは大変うれしいことになる。

(この章続く)

2014年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: カロカン防御の指し方

間抜け

 「はてなアンテナ」にJCAホームページの更新箇所が表示されています。

 ホームページを見ると「チェスネット競技会」が更新されたことになっています。

 「▶NEW第155回チェスネット競技会」の方をクリックしてみるとエラーが表示されます。

 「▶NEW第154回チェスネット競技会解答」の方をクリックしてみると解答はありません。

 5月も半ばを過ぎたのに5月分の出題もなければ4月分の解答もないという間抜けぶりです。

2014年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

[復刻版]理詰めのチェス(16)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第16局

 タラシュ対クルシュナー戦はありきたりでうわべだけのチェスへの対処法を描いた短編である。タラシュは相手の原則無視を咎めるために相手の駒を退却させてお互いじゃまをさせ、キングのキャッスリングを妨害し、ありったけの駒で襲いかかった。

クイーン翼ギャンビット受諾
白 タラシュ
黒 クルシュナー
ニュルンベルク、1889年

1.d4

 1.d4 で指し始める利点の一つは中原に陣取ったポーンが守られているということである。このポーンは当たりにされても安心していられる。一方 1.e4 で始まる布局ではeポーンは 1…Nf6 ですぐに脅かされることがある。確かに白はそのポーンを守るか1枡進めて危険をかわすことができる。しかし白はやろうとしたことをもはやしていない。白は自分の選んだ布局を指していない。何もしないうちに黒の狙いに対処しなければならないということは自分の実力が発揮できないことになる。

 クイーンポーン布局ではクイーンが中原のポーンをしっかりと支えているので白が思いのままに行動する。主導権は白にあり、黒の選択できるどんな防御、どんな戦型に対しても長い間それが保持される。自分の陣形を築く機会が最初から白に与えられ、反撃によって邪魔される危険性はほとんどない。一方黒は互角を達成するのに苦労する。黒が気後れして指せば、即ちどこかの時点で …c5 で中原を争うということをしなければ、黒のクイーン翼の駒、特にビショップ、はひどい悪形になりまともな抵抗ができない。黒が注意を払わずに展開すれば、つまり序盤で同じ駒を何回も動かしたりナイトよりも先にビショップを外へ出したりすれば、報いはすぐにやってくる。

 チェスの目的は勝つことであって盤上のきれいな絵画でギャラリーを楽しませることではないので、ほとんどの選手がキング翼ギャンビットのロマンチックだが危険な冒険よりも「退屈で安全なクイーン翼ギャンビット」の方を好むのは少しも不思議でない。

 あえて言えば(それにこの見解には40年の研究の裏付けがある)クイーンポーン布局はキング翼布局と同じくらい多くの名局と真の妙手に貢献してきた。

 教訓は次のとおりである。勝ちたいならクイーンポーン布局を指しなさい。チェスに楽しみを求めているならキングポーン布局を、そうでなければクイーンポーン布局を指しなさい。

1…d5

 これが中原の圧力を安定させるための黒の最良の策である。

 両者とも盤の中央にポーンをしっかりと据えた。それらは一つの枡を占め他の二つの枡に利きを及ぼしている。両者とも二つの駒を動けるようにした。

2.c4

 この手の目的は黒のポーン中原を破壊することである。白はまず黒にポーンをくれてやって中原を放棄させようとする。もし黒がその誘いに乗ってこなければ 3.cxd5 Qxd5 4.Nc3 Qa5 5.e4 で黒の中原を消滅させ中原のほとんどを制圧することを狙う。

2…dxc4

 このポーン取りのもくろみはクイーン翼ギャンビット拒否布局につきものの抑圧された陣形を避けることである。しかしこうすることによって黒は中原の好所のポーンを側面のポーンと交換することになった。

 ギャンビットを受諾するのは問題なく棋理に合っている。しかしその後の黒の指し方には細心の注意が必要である。とりわけ黒は得したポーンにいつまでもしがみついてはいけない。

3.e3

 この手は良い手だが、もっと適切な手は反撃のポーン突きの 3…e5 を防ぐ 3.Nf3 である。

 白はキング翼ビショップを動けるようにしてすぐにポーンを取り返すつもりである。

3…Bf5

 この手で黒はこの防御が継承する不運の一つである閉じ込められたビショップの問題を解決することを期待している。しかしこの解決策はそれほど簡単ではない。ビショップがクイーン翼からいなくなると盤のその方面を弱体化させbポーンを危険にさらす。この黒の手の別の不都合は正当な展開の教えの一つに違反することである。

 ビショップより先にナイトを出せ。

 本譜の手の代わりに黒の最善の選択は反撃にある。即ち 3…e5 4.Bxc4(又は 4.dxe5 Qxd1+ 5.Kxd1 Be6)4…exd4 5.exd4 Bb4+ である。

 得したポーンに黒がしがみつこうとするのは欲張りに用意されたはめ手の一つに引っかかるかもしれない。3…b5 4.a4 c6 5.axb5 cxb5 6.Qf3 で白の駒得になる。

4.Bxc4

 このポーンの取り返しで戦力が同じになり白が少し優勢である。

4…e6

 ある駒、この場合はキング翼ビショップ、の展開に寄与するポーン突きはいつも適切である。

 ナイトの一つを先に展開するのはちょっと危険である。例えば 4…Nf6 は 5.Qb3 で 6.Qxb7 又は 6.Bxf7+ のポーン取りを狙われる。また 4…Nc6 は 5.Qb3 Na5 6.Bxf7+ Kd7 7.Qd5+ Kc8 8.Qxf5+ Kb8 9.Qxa5 で白が2個の駒得になる。

 こんなに早い段階でも白は事態を取り仕切っている。

5.Qb3

 どうして白はナイトを出す代わりにクイーンを動かしたのだろうか。

 その目的は不正な展開をした黒を咎めるためである。黒の指し方は正常な手続きに沿ったものでなかった。そして黒の過失につけこむ方法は型にはまった手にはない。

 白の指した手は狙い(6.Qxb7)のある駒の展開なので黒は手を抜けない。黒にはいつもどおりの無難なやり方で自陣を固める時間はない。

5…Be4

 この手はb7のポーンを守り同時に 6…Bxg2 でルークを取る狙いを持っているので魅力的に見える。

 しかしこの黒の手は異様で、次の布局の原則に大きく違反している。

 布局ではそれぞれの駒を1度だけ動かすこと。そして最も力を発揮し最大の動きが得られる地点に速やかに置くこと。

6.f3

 この手は一つ以上の点で肯定できる。経済的な手段で黒の狙いをかわし、ビショップを後退させて黒に手損をさせている。ついでにf3のポーンは後にeポーンを突く際にしっかりとした支援を務める。

6…Bc6

 時機を誤ったビショップの遠征の結果がここで判明する。ビショップがc6に位置していることによってクイーン翼ナイトから布局での自然な展開の地点を奪っている。さらに悪いことにはcポーンの動きを妨害している。このポーンがc5に行って中原の支配を争ったり黒の駒のためにc列を開放することができなければ、黒は窒息する危険性がある。

7.Ne2

 「いや、ナイトはf3にいるべきものだ」と読者は異議を唱えているに違いない。それはそうである。しかしf3に行けないならば、なんとしてでも戦いに参加させることである。最下段から離れさせるだけでも良いから動かすことである。

 白はキャッスリングしてキング翼ルークを働かせる用意をしている。

7…Nf6

 ようやく通常の理にかなった展開の手が出た。これには例外があり得ない。全ての布局のほとんど全ての戦法でキング翼ナイトはf6の地点で最も効果的に務めを果たす。

8.e4

 この手には三つの目的がある。

 中原をポーンで占めて中原を支配すること。

 クイーン翼ビショップのために筋を通すこと。

 黒のクイーン翼ビショップの働きをさらに制限すること。

8…Be7

 ここはこのビショップの行ける唯一の地点である。代わりに 8…Bd6 は 9.e5 で白の駒得になる。

 最下段が空き黒はキャッスリングの用意ができた。ただし白がそうさせてくれるならばの話である。

9.Nbc3

 先手で別の駒を戦いに出した。狙いは 10.d5 exd5 11.exd5 Bd7 12.Qxb7 で駒得することである。

9…Qc8

 黒はbポーンを守らなければならない。それにしばらくはキャッスリングする考えを捨てなければならない。

10.d5

 ビショップを2段目に追いやる意図である。

10…exd5

 このポーン交換は単にビショップを引く手よりも劣る。筋を開ければ展開に優る方に有利に働く。この場合も白が得をする。

11.exd5

 この取り返しで素通しになるe列を白の大駒が利用でき、黒のビショップが後退させられる。

11…Bd7

 他の手はどれも戦力的に損をする。

 次の手を指す前に白は続けて駒を戦場に出すか展開の現在のリードを活用するかを決めなければならない。そこで白は確かな針路を確定する前に一息ついて棚卸しをすることにする。

 白のd5のポーンは一見よく働いているように見える。このポーンは黒のクイーン翼ナイトがc6に展開するのを防ぎ、黒のビショップがe6に来ないようにし、キング翼ナイトの動きを制限している。このポーンは独力でこれらを行なっているが代償も払っている。このポーンはd5にいることによって、駒のために取っておくべき地点を占拠している。駒はポーンより活動性がありもっと容易に攻撃することができる。駒はd5を起点、つまり盤上の任意の地点への出発点として利用できる。実のところこのみすぼらしいポーンはビショップと支援のクイーンの斜筋を邪魔するというあだをなし、開放すべき列の枡を占めている。ポーンがそこの交通を妨害するよりもd5の地点が空いている方が良い。(そしてこの最後の文がいずれ分かるように白の問題への鍵となる。)

 黒の展望はどうだろうか。

 キング翼ナイトを除いて黒の駒は自陣の2段に押し込められている。黒陣は少し窮屈だがキャッスリングする機会を得て陣容を組み替えることができれば黒を服従させることは難しくなるだろう。

 白は黒にこのようなことをする余裕を許してはならない。白はぐずぐずしてはいけない。

12.d6!

 この精力的なポーン突きは黒の弱点であるf7のポーンに通じる斜筋を通し、d列を素通しにしてルークが後で利用できるようにし、d5の地点を空けて駒が戦略地点として利用できるようにした。同時に、黒のビショップに当たりになっているので黒は一息つけない。

12…Bxd6

 12…cxd6 でビショップを閉じ込めるよりこう取る方が良い。

13.Bxf7+

 これで黒キングが追い出される。黒キングが動いてキャッスリングの権利を失えば勝負がつくまで不安定な状態のままである。

13…Kd8

 黒は 13…Kf8 でキング翼ルークを閉じ込めるよりこの手の方が良いと考えた。

14.Bg5

 この釘付けで黒の最も役立っている駒が麻痺してしまった。一方黒の悲惨な状況を要約するものとして、黒の強力なクイーンが自分の駒によって窒息してしまった。

14…Nc6

 黒の意図は駒を展開してたとえ隣の地点へだけであってもルークとクイーンを動けるようにすることである。そもそも敗勢の局面ではどの手も不適切なのでもっと良い手を推奨するのは難しい。黒は思い切って 14…Be8 から 15…Rf8 か 15…Qd7 か 15…Qf5 のようなもっと積極的な防御に打って出た方が良かったかもしれない。黒は白の攻撃駒を追い払うか交換で取り除くようにしなければならない。

 このような状況での公式は次のとおりである。

 狭小な陣形では駒の交換をしむけることによって圧力をやわらげるようにせよ。

15.Ne4

 白は釘付けのナイトにもっと重圧をかけた。狙い(釘付けの駒が多重に攻撃されている時は必ず狙いが存在する)は 16.Nxf6 gxf6 17.Bxf6+ で、ルークが取れる。

15…Be7

 ナイトをさらに守ると同時に釘付けからはずした。これは 15…Be5 よりも良い守り方である。15…Be5 はナイトを守っているが釘付けを緩和するためには何もしていない。このような状況では余分な守り駒自身も不安定な基盤の上に立っているかもしれないし不意打ちをくらい易い。例えば 15…Be5 16.f4 Bd4 17.Nxd4(ナイトの守り駒の一つを取り除いた)17…Nxd4 18.Qc3 で黒が適当な応手に困る。

16.Bxf6

 白はこの堅固な守り駒を取り除いた方が良い。

16…gxf6

 黒は双ビショップを維持したいのでポーンで取った。

 黒キングは駒で十分に保護されているので黒のハリネズミ防御陣に侵入するのは難しそうに見える。

17.O-O-O!

 この手は逆の方面にキャッスリングするよりもはるかに積極的である。白キングは少し露出しているが代償としてクイーン翼ルークが素通しのd列を制圧している。特に黒の不幸なビショップを釘付けにして圧力をかけている。クイーン翼へのキャッスリングは攻撃が先手になっている。一方白キングは黒の展開が非常に遅れているためにほとんど危険がない。

 白の狙いは 18.Be6 又は 18.Qe6 で釘付けの圧力を増すことである。

17…Ne5

 この手はビショップの支援と 18…Nxf7 で迫害駒の一つを取り除くことである。

18.Nf4

 狙いは 19.Ne6# による頓死である。

18…Qb8

 クイーンにとっては面白くない状況だがキングの逃げ場所が必要である。

 他にどんな手があっただろうか。18…Bf8 でキングのためにe7の枡を空ければ 19.Qe6(20.Qe8# の狙い)19…Be7 20.Qxe5 fxe5 21.Ne6# できれいに詰まされる。

19.Qe6

 クイーンが敵陣に侵攻して攻撃にはずみがつく。白の勝ちへの読み筋は 20.Nxf6(不運なビショップにさらに襲いかかり 21.Rxd7+ で簡単に詰ませる)20…Bxf6 21.Qxf6+ Kc8 22.Qxh8+ で次に詰ませることである。

19…Rf8

 ビショップをおどして追い払いfポーンがこのルークで守られることを期待した。代わりに 19…Qc8 は 20.Qxe5 で前に出てきた詰み形になる。

20.Nxf6

 釘付けになっている駒にマジックのように狙いが飛び出てくるのは圧巻である。

20…Bd6

 素通し列のルークの利きをさえぎりクイーンを取る狙いである。

 他の受けは良い結果をもたらさない。

 20…Rxf7 は 21.Rxd7+ から2手で詰む。

 20…Bxf6 は 21.Qxf6+ Kc8 22.Qxe5 Rxf7 23.Qh8+ である。

 20…Qc8 は 21.Qxe5 Rxf7 22.Ne6# である。

 黒は本譜の手でビショップを釘付けからはずしナイトを守りクイーンを当たりにしビショップ取りを狙っている。

21.Nxd7

 これは少し痛い。ナイトが駒を1個取り3個を当たりにしている。

21…Nxd7

 黒は取り返して厄介な駒をなくした。

22.Rhe1

 素通しのe列に大駒を重ねて 23.Qe8+ Rxe8 24.Rxe8# を狙えば誰でも戦闘意欲をなくすのに十分である。

22…投了

 cポーンを突いてキングの逃げ道を空けようとしても 23.Rxd6 があるのでだめである。22…Nc5 は 23.Qe7+ Kc8 24.Qxf8+ Bxf8 25.Re8# できれいに決まる。

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カロカン防御の指し方(143)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 6.Nf3 Nd7 7.Bd3 Ngf6 8.O-O

 黒は Bxg6 を恐れる理由はないので、白枡ビショップ同士の交換を急ぐ必要はない。…hxg6 のあと黒のポーンは理論上は弱体化しているかもしれないが、実戦的には非常に強くなっている。g7、g6、f7およびe6の黒ポーンの集団は、白駒による攻撃を寄せ付けない。白が実行可能な唯一の詰み形は Ng5 と跳ねクイーンをh列に回し黒ナイトをf6からどかせて、Qh7 で仕留めることである。しかしこれは黒が駒を交換することにより防御を楽にすることができるので、達成するのは非常に難しい。たとえ白が 7.Nh4 から 8.Nxg6 と指しても、8…hxg6 のあと黒がキングのために築く要塞のために何の優勢も得られない。

 上図で黒は急がずに展開を完了することができる。8…e6 の後 …Be7(または …Bd6)から …Qc7 と指すことができ、クイーン翼にキャッスリングする考えまである。これに対して白は次の数手を懸命に考えなければならない。キング翼の枡は黒駒によってしっかり押さえられ、クイーン翼は白駒のほとんどが迅速に到達するには遠すぎるので、中央に期待しなければならない。

 8…e6 のあと最も理にかなった指し方は 9.Re1 か 9.c4 である。例えば 9.Re1 なら 9…Be7 10.c4 O-O と進む。そして 11.b3 Qc7 12.Bb2 Rad8! となって、黒が準備できたとき …c6-c5 と突く余裕があるので指しやすい局面になる。一方白は駒の利きを増すために自分の方からポーンで仕掛けることが何もできない。たとえ(11.b3 から Bb2 の代わりに)11.Bf4 と指すことにより …Qc7 を止めようとしても、黒は結局 …c6-c5 と突くことができる。黒は白が …c6-c5 に d4-d5 と応じられないように白クイーンがd列から移動するのをただ待っている。例えば 11.Bf4 Re8! 12.Bxg6 hxg6 13.Qc2 c5! で黒が好調になる(14.Rad1 cxd4 15.Nxd4 Bb4!)。

 注意すべきはこのような駒配置で黒には白と同じくらい多くの強力な選択肢があるということである。もし黒がもっと攻撃的に指したければ、(…Be7 でなく)…Bd6 から …O-O-O という手がある。そして …c6-c5 はd列の素通しにつながり、黒ルークは既にd8に来ている。

 白の「ポーンの仕掛け」(駒のために列を素通しにする手)がないことは、白が攻撃的であるよりも堅実的であることの理由である。一方黒の …c6-c5 突きは有利になる可能性を与えてくれる。

 もちろん 6.Nf3 Nd7 のあと白は遅ればせながら 7.h4 と突いて主手順に移行することができる。しかし白は Nf3 を含まない別な戦力配置を見つけることに努めることもできる。主要な代わりの手は 6.Bc4 からナイトをe2またはh3経由でf4に持ってくる手である。例えば 6.Bc4 e6 7.N1e2 Nf6 がそれである。

 6.Bc4 e6 7.N1e2 Nf6

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(142)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

6.h4!

 白は敵のキング翼に対するこの銃剣突きを延期することもできるが、代わりの適当な手がない。その理由は基本的に黒の鉄壁の防御態勢にある。自然に見える手を通して黒の防御を打ち破るのがいかに困難かを見てみよう。

 それらのうち最も自然そうな手は 6.Nf3 である。白ナイトがe5の好所にやって来るのを防ぐために黒は 6…Nd7 と応じる。ここで白はどうするのだろうか。ビショップをd3に出してビショップ同士の交換を持ちかけるのと、b3(Bc4-b3 で)またはe2に配置するのと、二つの基本的な方針から選択することができる。どちらの場合も白は中盤の指し方の源として c2-c4 突きに期待する。ほかの駒で何をするかは実のところあまり重要でない。しかし少なくとも c2-c4 から d4-d5 と突くことは考えておかなければならない。クイーン翼ビショップはf4に行けるしb2にフィアンケットすることもでき、クイーンはe2、d2またはc2(Bd3 のあとで)に行くことができ、ルークはほとんどどの列にも行ける。しかし …Nd5 を止め d4-d5 突きを策する c2-c4 突きができなければ、白は中盤戦の作戦が立てられないことになる。

 例えば 7.Bd3 Ngf6 8.O-O! を考えてみる。

 6.Nf3 Nd7 7.Bd3 Ngf6 8.O-O

(この章続く)

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布局の探究(99)

「Chess Life」1994年7月号(2/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称局面の手番の利(続き)

4ナイト布局(C49)

 局面は通常次の手順から生じる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5

 4ナイト試合がこの4年間に再びグランドマスターの試合で重要な客になった理由は主に二つある。一つ目はあまりに研究されたルイロペスからいくらか休止したいということに関連している。白にとって難物のマーシャルギャンビットが復活したという要因も加わっている。もう一つの理由はルビーンシュタインの「引き分け手順」の 4…Nd4 が、引き分けに関する限り効力を失ったことである。つまり 5.Nxd4 exd4 6.e5 dxc3 7.exf6 Qxf6! 8.dxc3 Qe5+ 9,Qe2 で引き分けになるが、白は控えめに 5.Ba4 と引いて黒の希望をくじくことができる。これは非常に不均衡な戦いに成り得るしそうなる。(4ナイト布局の優れた最近の本はGMジョン・ナンの『New Ideas in the Four Knights』である。)

 だからもっと戦略的な方向に試合を保つことに関心のある黒は対称形に戻っている。

4…Bb4 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5

 ここが黒にとって正念場である。白が先に攻撃を仕掛けているので黒は 7…Bg4? と対称形を続けられない。例えば

(1)8.Bxf6 gxf6(8…Qxf6? は 9.Nd5 から 10.Bxc6 で黒の駒損になる)9.Nd5 Bc5 10.Qd2(K.シュレヒター対レオンハルト、ハンブルク、1910年)白には恐ろしい 11.Qh6 の狙いがあり、黒のキング翼は既に恒久的に弱体化している。

(2)8.Nd5 Nd4 9.Nxb4 Nxb5 10.Nd5 Nd4 11.Qd2! c6 12.Nxf6+ gxf6 13,Bh4 Bxf3 14.Qh6 Ne2+ 15.Kh1 Bxg2+ 16.Kxg2 Nf4+ 17.Kh1 Ng6 18.Rg1 白の攻撃が非常に厳しい(『Encyclopedia of Chess Openings』改訂版、1981年)。実際白のすぐの狙いは 19.f4 である。

7…Bxc3 8.bxc3

 中央が開放されc3に移ったbポーンが白の中央を強化した場合、この交換で白の双ビショップが潜在的な力になる。しかし二重cポーンと外れのキング翼ビショップという代価もある。だから戦略的に不均衡な興味深い状況が生じていて、黒の完全な互角への可能性は明るく、うまく指した方が勝つ可能性が高い。

8…Qe7

 現代的な陣形組み換えが始まる。クイーン翼ナイトはe6まで旅して、釘付けをかけている白ビショップに将来の意図を表明させる。

9.Re1 Nd8 10.d4 Ne6 11.Bc1

 これは戦略的な退却で、a3に旅してdポーンの釘付けにつけ込むだけでなくあとでc1-h6の斜筋に再展開する選択肢も保持している。代わりに 11.Bh4 は 11…Nf4 で白のクイーン翼ビショップがもっと端へ寄るし、消極的な 11.Bd2 は白の選択肢を狭めるだけである。ここからは次の試合を追う。

ナイジェル・ショート対ビスワーナサン・アーナンド
リナレス、1992年

11…c5

 これが最もよく指されている主手順である。黒はd4に真剣に挑んでいるが、d5の支配を失う潜在的な欠陥もある。2番目に人気のある手は 11…Rd8 で、最近の重要な試合のJ.ナン対D.プラサド戦(マニラ・オリンピアード、1992年)では 12.Nh4 g6 13.a3 c6 14.Bf1 d5! 15.Nf5! gxf5 16.exf5 e4! 17.fxe6 Qxe6 と進んでほぼ互角のいい勝負だった。

12.a4 Rd8 13.dxe5

 これは思い切った決断である。白は自分に孤立二重cポーンを残す一方で、キング翼ビショップの見通しを良くし黒の中央での反撃を止めた。

13…dxe5 14.Qe2 Qc7 15.Bc4! h6

 黒はこれで守勢に追い込まれるはめになる。GMアーナンドはあとでもっと魅力的な針路として 15…Re8! 16.Nh4 Nf4 で「反撃」することを示唆した。

16.Nh4 Re8 17.Nf5 Nf4 18.Qf3 Bxf5?!

 黒は形勢を楽観しすぎている。戦略的にもっと理にかなっているのは 18…Be6 19.Bf1(19.Bb5 Red8)19…c4 で、互角に近い。

19.exf5 Rad8 20.a5!

 戦略的に不均衡で判断を誤りやすい局面だが、GMショートの判断の方がはるかに上回っていた。白はポーンの形がばらばら(孤立二重cポーン、二重fポーン)のように見えるが、代償はクイーン翼の主導権、開放局面での双ビショップの素晴らしい潜在力、黒ナイトの活躍する機会の不足というように十分以上である。最後まで繰り返し現れる主題は双ビショップの威力である。白はここで小さいが気持ちの良い優勢を保持していて、決して手放さない。

20…N4d5 21.Qg3 Kh7 22.h3 Re7 23.Bf1!

 この手はクイーン翼ルークをa4を通して活用する用意をしている。GMアーナンドは黒の最善の防御策は 23…c4 24.Ra4 b5 だと考えたが、25.axb6e.p. Nxb6 26.Ra1 で白がわずかな優勢を保持している。

23…Qc8?! 24.Rxe5 Rxe5 25.Qxe5 Re8 26.Qg3 c4

 黒はf5で取る用意をした。すぐに 26…Qxf5? と取ると 27.Bd3 が決定的な釘付けになる。以下は例えば 27…Re1+ 28.Kh2 Ne4 29.Bxh6! Nxg3 30.Rxe1 Kxh6 31.Bxf5 Nxf5 32.Re5 で白の勝ちの收局になる(アーナンド)。

27.Bb2 Qxf5 28.Bxc4 Ne4 29.Qf3 Qxf3 30.gxf3 Nexc3 31.Kf1!

 白のポーンは相変わらずひどそうだけれども、ビショップとルークはこの開放的な局面に理想的に適合している。白は本譜の手でe2でのチェックに基づいた反撃を防いでいる。

31…Rc8 32.Bd3+

 この手はまじないのようによく効く。それでもGMショートによれば 32.Bb3! の方がもっと恒久的な締め付けになっていた。

32…Kg8 33.Ra3 b5??

 これは劣勢の局面で人間に起こりやすい類の悪手である。ここは注意深い 33…Rc7 が良くて、34.Rb3 で白に主導権がある。

34.axb6e.p. 黒投了

 34…axb6 と取っても 35.Bf5! で、c列にルークを置いたままにすることによりc3のナイトを守ると 36.Ra8+ で詰みになる。

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カロカン防御の指し方(141)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 これは黒が当分の間指す手の中で最後の攻撃的な手となる。たぶん次の数手の間展開を完了し白の狙いに対処することにより自分の家の整頓に努める。12手目あたりまでは割に合わない仕事のように思われる。そのあと作戦を見つけなければならない負担は白の方に移る。黒は優勢になるためでなくいい勝負にするためだけに努める。もちろん白の犯すかもしれない誤りには喜んでつけ込む。しかしマスターたちが 4…Bf5 を採用するときには、何としても勝つためよりも負けを避けるためであることが普通である。

5.Ng3

 これが白の最初の攻撃的な手である。白は狙い(5…Bxe4)に狙い(6.Nxf5)で応戦する。実際に白が狙っているのは戦力得ではない。たとえ白が続けて指しても黒は 6.Nxf5 に 6…Qa5+ から 7…Qxf5 と指すことができるからである。白が本当に狙っているのはナイトをビショップと交換して大局的に少し優勢になることである。このうるさい黒ビショップは無害にされるまでg3の白ナイトを翻弄する。

 この理由から白は時折 5.Ng3 に代わる手を探し求めることがある。このナイトを簡単に守ることができるかずっと働きのある地点に動かすことができるときに、どうして中央から立ち去らせるのかと疑問に思うのかもしれない。白にとっては残念ながら事はそう簡単でない。

 このナイトの自然な守り方は 5.Bd3 である。これは別の駒の展開にもなっている。しかしこの欠点はすぐに分かる。白の唯一攻撃される可能性のあるのはd4のポーンで、5.Bd3 はクイーンの保護を奪っている。5…Qxd4! のあと布局が本当に賢いギャンビットであることを証明するのは白にかかっている。白は 5…Qxd4 に 6.Nf3 と応じ、そのあと Qe2、Bf4 そして O-O-O と指すことによりいくらか 5.Bd3 を正当化することができる。ポーンの犠牲でd列が素通しになり展開でも大差をつけている。しかし黒は正確に指せばその展開の有利に対抗できるはずである。例えば 6…Qd8! 7.Qe2 Nf6! と指し、8.Nxf6+ には 8…gxf6 9.Bxf5 Qa5+ 10.Bd2 Qxf5 11.O-O-O Nd7 と指せばポーン得を維持し …e7-e6 から …O-O-O で安全にキャッスリングする用意ができる。白の展開の優位は急に勢いを失う。同じ筋書きは 8.Nd6+ Qxd6 9.Bxf5 e6 のあと 10…Nbd7 にも当てはまる。この局面とほかのよくあるカロカンの局面との間に基本的な違いはない。違いは白がポーンを損しているということだけである。

 もっと面白くて犠牲の少ない着想は 5.Nc5 である。ボビー・フィッシャーはこのナイト跳ねに注目した最初の選手たちの一人だった。確かにこのナイトはg3よりも攻撃的にc5に置かれていて、6.Nxb7 が狙いになっている。もし黒がb7を 5…b6 と突いて守れば、白はナイトをb3に引き、黒の 5…b6 によって弱体化した対角斜筋を襲撃する用意をする(g2-g3 から Bg2 で)。しかしこのナイトはg3よりもc5の方が攻撃に弱い。黒はこのことを利用してクイーンでb7を守りそのあと …e7-e5 と突いていくことができる。例えば 5…Qc7 6.Nf3 e5 7.dxe5? Bxc5 である。しかし白は …e7-e5 を予期して 6.Nd3! と指すことができる。そしてこのナイトは …e7-e5 を止め、…c6-c5 を遅らせ、Bf4 を用意する。だからg3よりもd3の方が良いように思われる。

 たぶん 5.Nc5 の真の試練は 5…e5!? で、その意図は 6.Nxb7 に 6…Qe7 から 7…Qxb7 または 7…exd4+ と指すことである。確かに考慮に値する。

5…Bg6

 黒は 6.Nf5 には 6…Qa5+ から 7…Qxf5 と応じることができるので、代わりに展開の手を指す余裕がある。しかしビショップを引くよりもほかにどんな良い手があるだろうか。g6にいれば効果的な斜筋に利き、白は危険を冒してのみ妨害することができる。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(140)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス(続き)

 これがクイーン翼ビショップ戦型に特有の駒とポーンの配置である。黒はクイーン翼ビショップを展開して …e7-e6 突きで安全な中央を築いた。これで白が d4-d5 と突いて局面を開放するのが極度に難しくなっている。一方黒のポーンはすべてほかのポーンか駒によってしっかり守られている。黒は防御的で楽観的な中盤戦の作戦を追求することができる。そしてルークをd列に配置することにより d4-d5 突きを妨げ、それと同時に …c6-c5 と突いて反撃に回る用意をしている。要するに白には何もやらせない。

 もちろん白は心配する理由は特にない。c2-c3 と突けば黒とちょうど同じくらい中央を堅固にすることができる。そして敵にやすやすと攻撃目標を与えない。しかし白は先手ゆえに少し優勢という仮定があるので、何かすることが期待されている。黒はただそこに座って事の成り行きを待つことができるが、白は積極的な作戦が求められる。

 幸い作戦には事欠かない。白はキング翼にキャッスリングし、ルークをd1とe1にクイーンをd2にナイトをg3とe5に配置し、c2-c4 突きと d4-d5 突きの好機を待つことにより、少しの優勢を求めて指すことができる。または Bd3 で黒のクイーン翼ビショップと交換して Rd3-g3 でキング翼攻撃に努めることができる。

 あるいは白は挑発的に h2-h4-h5 と突いてもっと大きな優勢を求めて指すことができる。これによりどちらもキングをキング翼に安全に住まわせることができなくなる。これは黒のキング翼のポーンがg列に沿って、またはe5の白ナイトによって攻撃されるかもしれないということも意味している。もし黒がe5のナイトを取って白がポーンで取り返せば、d列が素通しになりe5に新たに来たポーンが黒駒の動きを制限することになる。

 これらがすべて進行している間、黒は …c6-c5 と突いて駒を動かす余地を作る必要性を感じるかもしれない。白はその手に攻撃的につけ込もうとすることができ、もし黒がクイーン翼にキャッスリングしているならば黒キングの周りがそのポーン突きによって弱体化したかもしれないので特にそうである。

 最後に、もし黒が …c6-c5 と突きそのあとcポーンを白のdポーンと交換したならば、白は收局で勝とうとさえするかもしれない。その交換では白にクイーン翼で多数派ポーンのわずかな有利ができる。この多数派はいずれ3対2から2対1に、そして1対0にすることができ、白にパスポーンができたことになる。パスポーンができれば收局に勝てる。

 そしてこの布局では交換がよく起こるので、收局は黒が考えに入れておくべきことである。白はいつかはf5、e4、d3そしてc2という重要な地点を貫通しているg6の素晴らしいビショップを何とかしなければならなくなる。白はそのビショップを自分のナイトと交換しようと自分の白枡ビショップと交換しようと、遅かれ早かれ盤上から消してしまうのが普通である。同様に黒は白がしばしばe5に据えるナイトを何とかしなければならなくなる。黒は自分のナイトのためにd5の好所があるが、白のe5ほど支配が圧倒的ではない。だから小駒同士の交換は普通で、両者は有利な收局のために目を光らせていなければならない。

 この戦法の基本的な局面は次の手順からできる。

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(128)

「Chess Life」2006年3月号(1/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反マーシャルの 8.h3[C88]

 第一次世界大戦の終わりに米国の偉大なチェスの英雄の一人であるフランク・ジェームズ・マーシャル(1877 – 1944)はルイロペスの魅惑的なギャンビットを創始した。それがマーシャルギャンビット(1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d5)である。この布局はマーシャルが1918年ニューヨークでの大会のカパブランカ戦で披露して以来広まった。この黒のギャンビットの構想は長期的にポーンを犠牲に白駒の活動性を制限し、自分は非常に活動的な局面を得ることにある。

 今日ではアダムズ、アーナンド、スビドレル、シロフらの多くの一流グランドマスターがしばしば指している。定跡はどんどん深くなって、多くの戦型で25手を超えている。しかしあらゆる(コンピュータを援用した)分析にもかかわらず白はまだ優勢を証明できていない。これが最近より多くの一流選手がマーシャルギャンビットとその定跡を完全に避けるようにしている理由である。現在ではマーシャルギャンビットを避ける最も人気のある手段は 8.h3 と突く反マーシャルである。

白の基本的な作戦は何か

 ルイロペスということで予想されるように、非常に難解な中盤戦になる。その指し方を以下から選択する必要がある。

1.a2-a4 と突いてクイーン翼で行動を起こし、d2-d4 と突く時機または突くかどうかを決める。

2.キング翼に駒のほとんどを集結させることによりキング翼で攻撃態勢を整える。キング翼での攻撃には通常はナイトを Nd2-f1-g3 と捌くことが必要である。もう一つのナイトもf3から(h2かg5に)動かしてポーンを f2-f4 と突けるようにするのが普通である。別の典型的な作戦は Nf3-h2-g4 とナイト交換を持ちかけることにより(黒がg4で交換に応じればh3のポーンで取り返す)h列を素通しにしようとすることである。

黒の基本的な作戦は何か

 白は布局から主導権があるので黒は注意深く指す必要がある。しかし慎重に指せば黒は均衡を保つことができる。最初に黒は盤のどちら側でも可能な白の攻撃に対して防御にまわる必要がある。ひとたびすべての攻撃をはねのければ、黒の主要な作戦はある時点で …d6-d5 突きを成功させることになる。

それで評決はどうなっているか

 反マーシャルの 8.h3 は非常に難解な試合になる。どちら側にとっても間違う可能性は豊富にある。当初は黒は防御側に立つ必要があるけれども、いずれは互角になり勝ちを目指して指す機会もよく出てくる。

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カロカン防御の指し方(139)

第9章 クイーン翼ビショップ戦型 アンディー・ソルティス

 歴史的にここはカロカンの育った所である。黒のクイーン翼ビショップがf5に展開するのは、第一次世界大戦後の10年にグランドマスターの間で研究され実戦で試された時には布局の自然な部分のように思われた。カロカンの先駆者たちはその多くが布局に新しい道を見つけようとするいわゆる超現代主義の信奉者たちだったが、フランス防御の改良版を探していた。つまり彼らはフランス防御の固さで 1…e6 のあと黒が閉じ込められたビショップで困らないものを欲していた。カロカンの 4…Bf5 戦法は完璧な解決策のように見えた。

 今日ではクイーン翼ビショップ戦型(古典戦法としても知られる)は円熟した中年に達した。かつては攻撃不可能な防御として恐れられたけれども、今では黒のきわめて安全な布局として認められている。しかしあまり積極的でない布局ともなっている。4…Nf6 や 4…Nd7 のようなほかの戦法は 4…Bf5 がかつて誇った人気を持っている。黒で戦闘的なカロカンを望む選手たちが目を向けるのはそのような戦法である。しかしクイーン翼ビショップ戦型は気楽な古靴のままで、指すのが容易で比較的安全な布局である。

 実際周りを見渡しても最も安全な布局である。4…Bf5 のあと白は普通でない処置をとって試合に活気を注ぎ込まなければならない。そうしないと自分の駒の標的が見つからない。カロカンの白側で初心者が大変苦労することが多い理由の一つは、要するに中盤戦でどうしたらよいか知らないからである。何も攻撃するものがなく、すぐに自分の弱点のdポーンを守ることだけに汲々とするようになる。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(138)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例2(続き)

 ロゴフの注意深い指し方が功を奏している。白はすぐに 28.d5 と突かなければ形勢が傾き始めるかもしれない。黒は …Red7 からクイーンをf6にナイトを(h6経由で)f5に置くようにし、dポーンにとてつもない圧力をかけてくる。確かに白はこれらの捌きに対抗策があるが、少なくとも守勢に立たされる。そこで・・・

28.d5 cxd5 29.Rxd5 Rxd5 30.cxd5

 ここで両者は引き分けに合意した。局面は形勢がどちらに転んでもおかしくなく、dポーンが強いか(パスポーンになるので)弱いか(孤立ポーンなので)の問題は不明のままである。

(この章終わり)

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カロカン防御の指し方(137)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例2(続き)

 見て分かるようにどちらも例のdポーンに注目している。

20.g3 a6 21.b3 Bf8 22.Bf4 Qa5! 23.h4 h5 24.Bg5 Qf5! 25.Rd3 Be7 26.Kg2 Ng4! 27.Bxe7 Rxe7

(この章続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(15)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第15局

 次の2局は厳密に言えばキング翼攻撃の部類に属しないが、キングの安全を顧慮しないとどうなるかを示すためにここに含めた。

 アリョーヒン対ポワンドル戦では相手の手損を咎めるためにアリョーヒンが通常ではない愉快な手を指した。黒キングはキャッスリングができなくなり中央で猛烈な攻撃にさらされた。

ルイ・ロペス
白 アリョーヒン
黒 ポワンドル
(同時対局)
ウィーン、1936年

1.e4

 白は初手で中原に地歩を築きキング翼の駒の展開を始めた。

1…e5

 黒も白が好きなように 2.d4 と指すのを防ぎながら中原にポーンを据えなければならない。

 それでも白が 2.d4 と指せばどうなるだろうか。2…exd4 3.Qxd4 Nc6 4.Qe3 Nf6 5.Nc3 Bb4 の後黒は3個の駒が戦場に出ていて展開も容易である。確かに白は中原にポーンがある。しかしそれは絶えず世話が必要で、この間にクイーンも貴重な手数を費やした。要するに 1…e5 の後白は 2.d4 と指してもよいが優勢にはならない。

2.Nf3

 ナイトがさっそく布局での最も効果的な地点に置かれた。ナイトが狙いを持って展開したのでこの手は理想的である。黒は自分のことをする前に狙いに対処するために何かしなければならないので応手の選択を制限される。

2…Nc6

 この手はポーンを守る最善の手段である。ナイトの展開は自然で、白の狙いに対処するために何の手損もしていない。

3.Bb5

 この手は盤上の最強手で、キング翼布局で最も強力なルイ・ロペスの特徴となっている。ルーベン・ファインは次のように言っている。「ルイ・ロペスが非常に強力な一つの理由は最も自然な手の連続が白の理想形になるからである。」

3…Nf6

 黒は白のeポーンに当てながらキング翼ナイトを中原に向かって出した。

 ラスカーはここでナイトを展開するのを好んだ。しかし現代の定跡はまず 3…a6 をさしはさみビショップに意図を明らかにさせようとしている。どう応じてもビショップが好所から立ち退かされる。

4.O-O

 これは非常に要を得た手である。キングが安全な所に隠れキング翼ルークが活動的になった。

4…Nxe4

 黒はこのポーンを取るべきだろうか。ラスカーの考え方は次のとおりだった。「定められた原則を破っていないと分かっている時はeポーン、dポーン、cポーン又はfポーンのような重要なポーンの犠牲を受け入れるべきである。そうしないと一般には拒否したポーンが非常に厄介な存在になってくる。」

5.d4

 これは 5.Re1 よりも強い手である。黒のeポーンは二重に当たりになっているし、白のクイーンとクイーン翼ビショップの筋も開通した。

5…Nd6

 ビショップに問題を突きつけた。このビショップは明らかにナイトを取るか退却しなければならない。

 もっと簡明な道筋は同じ駒を2度動かす代わりに別の駒を展開させる 5…Be7 だった。黒はポーン得にしがみついて手損をすべきでなく、戦場に駒をどんどん出すべきである。

6.dxe5!

 白は対応の厄介な攻撃を開始した。この手は 6.a4 よりも優っている。6.a4 は黒に 6…e4 という絶好の反撃の余裕を与えてしまう。

6…Nxb5

 黒はナイトの遠征で貴重な手を費やした。なぜなら一回しか動いていないビショップをナイトが4回動いて取ったからである。

7.a4

 白は駒損を取り戻すためにすぐにナイトを攻撃する。

7…Nd6

 同じナイトの5回目の動きである。白は犠牲にするつもりのポーンの見返りにきっと猛攻をかける立場になるだろう。

 黒は 7…d6 と指すべきだった。それならほぼ互角の形勢である。

8.exd6

 白の最初の配当は敵キングに直射する中原の素通し列という形で現れた。

8…Bxd6

 dポーンがふさがれるのでうれしい取り返しではない。しかしポーンで取り返すのはもっとひどい形になるのでこの取り方のほうが良いことは確かである。

9.Ng5!

 この手は自然な 9.Re1+ よりも優っている。後に見られるように精力的で巧妙である。

 ちょっとした策略が黒のキャッスリングに対して用意されている。白は 10.Qd3 と指して 11.Qxh7# を狙う。黒は 10…g6(10…f5 は 11.Qd5+ Kh8 12.Nf7+ で白の交換得になる)と防がなければならずポーンの防御態勢が弱まる。いったんポーンの戦線が乱れればキングが直接攻撃にもろくなる。

9…Be7

 これは面白い手である。ビショップは下がったことによってナイトに当たりをかけると共にdポーンを自由に動けるようにしている。

 黒はナイトを引き下がらせるか駒交換で敵の攻撃のナイトを消すことを希望している。

10.Qh5!

 進めーっ。見えすいた詰みの狙いはこの手の真の目的を隠している。

 白の直前の2手は初心者の手である。さもなくばたぶん偉大なマスターの手である。ナイトはクイーンの攻撃を助けるために2回動いた。白の展開が完了していないのでこのような手は時期尚早であると本には書いてある。それではなぜアリョーヒンは初歩的な布局の原則を破ったのだろうか。

 彼がそうした理由はお決まりの展開(「あなたは穏やかに駒を出し私も自分の駒を同じように出す」)では黒に陣容を再構成する余裕を与えるからである。黒はこれまで(布局でキング翼ナイトを5回動かすなど)いくつかの無分別を犯してきた。このような怠慢を罰する手段は相手を忙しくさせておくこと、つまりことあるごとに問題を突きつけ立ち直る時間を与えないことである。もし敵陣に弱点を作らせるのに通常でない手が必要ならばそのような常識にとらわれない手を指しなさい。手の良し悪しは一つの基準によってのみ決まる。それは眼前の局面における効果である。

10…g6

 他にどんな選択肢があっただろうか。

 黒が 11.Qxf7# を避けるためにキャッスリングすれば 11.Qxh7# にはまる。

 黒が 10…Bxg5 と交換すれば 11.Bxg5 に 11…Ne7 が余儀なく、その時 12.Re1 の釘付けで駒を取られるがそれは手始めである。

11.Qh6!

 白は黒枡を支配する第一段階としてもう黒のgポーンで守られていないこの地点にすぐにクイーンを潜り込ませた。

 白の次の狙いは敵陣の心臓部へ 12.Qg7 とさらに侵入しルークを当たりにすることである。ルークは 12…Rf8 と逃げるしかなく 13.Nxh7 でナイト対ルークの交換得になる。

11…Bf8

 黒はこれ以上の侵入を防がなければならないだけでなくクイーンを追い払わなければならない。

 黒はほとんど選択の余地がない。キャッスリングは規則違反だし、11…Bxg5 は 12.Bxg5 f6 13.Qg7 Rf8 14.Re1+ Ne7 15.Bh6 Rf7 16.Qg8+ Rf8 17.Qxf8# で負ける。

12.Re1+

 黒を混乱に陥れる手である。

12…Ne7

 12…Be7 は明らかにない手で、13.Qg7 Rf8 14.Nxh7(15.Qxf8# の狙い)14…d5 15.Nf6# で詰みになる。

 この局面で白は通常の展開の手法を無視したにもかかわらず3個の駒が働いている。これに対して黒は皆無である。黒は確かに一つの駒が最下段から離れているがしっかりと釘付けにされていて動くことができない。

13.Ne4!

 狙いは1手詰みである。

13…f5

 この手は絶対手である。黒が 13…Bxh6 とクイーンを取れば 14.Nf6+ Kf8 15.Bxh6# で詰まされる。また 13…Nf5 とクイーンに二重に当たりをかければ白は 14.Nf6# と二重チェックによる詰みで黒キングに報いる。

14.Nf6+

 キングを捕まえる一つの方法は野外に出て来させることである。

14…Kf7

 キングが動くとキャッスリングの権利を失うが残念ながら黒の唯一の手である。

15.Qh4

 白のクイーンとナイトが当たりになっているのでナイトを守る位置にクイーンが逃げた。

15…Bg7

 この手は 16…Bxf6 を狙っている。別手段の 15…Ng8 はナイトを釘付けにし二つの駒で当たりにしているが、16.Qc4+ で咎められる。以下は 16…Kxf6(16…Kg7 は 17.Ne8+ で黒はクイーンを捨てなければならない)17.Qh4+ で白が黒クイーンを素抜きにする。

16.Bg5

 逃げ場のないナイトを守った。

16…h6

 ナイトの守り駒をまた脅かした。

 代わりに 16…Ng8 なら白には次のようなきれいな手筋がある。17.Nxg8 Qxg8 18.Re7+ Kf8 19.Bh6 から 20.Qf6+ で詰みにできる。あるいは次のように勝つのもよい。17.Qc4+ d5 18.Nxd5 Qxg5 19.Nxc7+ Kf6 20.Ne8# で詰み。

17.Qc4+!

 楽しい転進である。「チェック」のかけ声は相手に何はさておきキングをチェックから逃れさせるからである。

17…Kf8

 ほとんどこの一手である。17…d5 は 18.Nxd5 Qxd5 19.Rxe7+ でクイーンを取られてしまう。

18.Rxe7!

 アリョーヒンの手筋の本領発揮である。一見何の変哲もない手の連続の最後でついに出た。

 白の狙いは自明な一手詰みである。

18…Qxe7

 他にf7での詰みを防ぐ手は 18…Kxe7 しかないが 19.Nd5+ の二重チェックでクイーンを取られてしまう。

19.Nh7+

 キングに直接チェックをかけクイーンへも立ち退き当たりになっている。

19…Rxh7

 黒はクイーンの代わりに得られる駒は全部取る。

20.Bxe7+

 これが一連の手筋の仕上げである。ルークとビショップを取らせる代わりに白はクイーンを取った。それと永続する主導権も。

20…Kxe7

 黒はビショップを取るしかない。

21.Qxc7

 この手は 21.Qg8 よりも簡明である。21.Qg8 は 21…Kf6 22.Qxh7 Kf7 となってアリョーヒンは「クイーンを眠らせてしまう」と言っている。もちろん白はその後 23.Nc3 d6 24.Re1 から 25.Re7+ で勝てる。しかし本譜の手の方が攻撃精神に則している。白クイーンが活動性を保つのに対し黒のクイーン翼は動けない。

21…Bxb2

 黒は紛れを求めた。ポーンを取ってルークに当たっている。

22.Ra2

 ルークは軽くかわし攻撃駒に当て返した。

22…Bf6

 ビショップが(比較的)安全なところに引き下がった。

23.c4!

 ルークの横筋を空けた。これで素通しのe列に行くことができ敵キングに当てることもできる。

23…Kf7

 キングが戦線から遠のいた。黒は 24…Rh8 から 25…Bd8 と指してクイーンを追い払いそれからdポーンを突いてクイーン翼の駒を動けるようにすることを期待している。

24.Re2

 白は素通しの列を掌握した。この列を制すればルークが敵陣に直通できる。

24…Rh8

 この手は 25…Bd8 でクイーンを追い出すか 25…Re8 でe列の所有権を争う意図である。

25.Qd6!

 dポーンを押さえつけクイーン翼の兵力を麻痺させた。

25…a5

 他に何か手があるだろうか。25…Re8 は 26.Rxe8 Kxe8 27.Qxf6 でビショップを取られるし 25…b6 は 26.Qd5+ でルークをただ取りされる。

 黒の意図は次の 26…Ra6 でクイーンをどかせ自分のクイーン翼の駒を始動させることである。

26.Nc3!

 素晴らしい。白はさらに駒を繰り出して攻撃に参加させた。マスターがどのように指したい手を選びそれが指せないことを見(ナイトがただ取りになっている)そしてその手を指すことに注目して欲しい。

26…Ra6

 黒はナイトを取らない。もし取れば 26…Bxc3 27.Re7+ Kf8(27…Kg8 は 28.Qd5+ から1手詰み)28.Rxd7+ Kg8 29.Qd5+ Kf8 30.Qf7# で即詰みになる。

27.Qd5+

 クイーンは当たりから逃げなければならないがチェックで先手をとった。

27…Kg7

 27…Kf8 は 28.Qc5+ Kg7 29.Nd5(30.Nxf6 Kxf6 31.Qe7# の狙い)29…Re6 30.Rxe6 dxe6 31.Qc7+ となり黒キングが動いたあと白が好きな方のビショップを取れる。

28.Nb5

 次にd6へ跳んでクイーンがf7で詰ませる助けの準備をした。

28…Re6

 他の手ではナイトがd6へ行ってルークが防御に参加するのを遮断する。

29.Nd6!

 それでもナイトはそこへ行く。ナイトはこの絶好の拠点に腰を据えて決着を着ける手筋に手を貸すか単にそこへ居座って黒を窒息死させる。

29…Rd8

 もちろん 29…Rxe2 は考慮に値せずたちどころに 30.Qf7# がくる。

30.Kf1

 ルークを守り 31.Nxc8 Rxc8 32.Qxd7+ の後片方か両方のルークを取る意図を明らかにした。

30…投了

 戦う余地がなくなった。

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

カロカン防御の指し方(136)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例2(続き)

 この局面は黒が …g7-g6 と突く戦型に典型的なものである。戦いはdポーンをめぐって行われる。白がそれを無事に突くことができれば優勢になる。さもなければ弱点になるのは黒のビショップ、クイーン、それに潜在的にルークの射線にあり、ほかのポーンによって守られないからである。

11…Qc8! 12.Bf3 Rd8 13.Qe2 Nd7 14.Ng4 Bxg4!

 こう取らないといつか d4-d5 突きによって困ったことになることがある。

15.Bxg4 Qc7 16.Rad1 Nf6 17.Bf3 e6 18.Rd2 Rd7 19.Rfd1 Rad8

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(135)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例2
白 W.ブラウン
黒 K.ロゴフ[訳注 GMの称号を持つ有名なハーバード大学経済学部教授で、2012年にカールセンとのブリッツで引き分けています]
米国選手権戦、ミシガン州アンアーバー、1975年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nd7 5.Nf3 Ngf6 6.Nxf6+ Nxf6 7.Ne5 Be6 8.Be2 g6 9.O-O Bg7 10.c4 O-O 11.Be3

(この章続く)

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布局の探究(98)

「Chess Life」1994年7月号(1/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

対称局面の手番の利

 手詰まりの局面の特殊で重要な例外を別にして、さもなければ手番の方が有利である。これは布局についても断然当てはまる。まったく対称で手番が白の局面のうち興味深くて重要な定跡を取り上げる。まず考察するのは開放試合、すなわち白が 1.e4 と指した試合である。閉鎖試合はそのあとで取り上げる。

 開放試合で1手ずつ対称な展開は白が大きく優勢になるに違いないと直感的に思われるかもしれない。しかし通常の状況では一般にそうならない。その理由は白が良い手を指しているならば黒もそうであり、そのため決定的なことが何も起こり得ないからである。さらには局面が本来開放的なので、黒は注意深く指しながらゆくゆくは対称をやめなければならないことを知っている。これからぺトロフ防御、4ナイト布局、そしてウィーン試合という三つの重要な布局を見ていく。次回は現在流行しているフランス防御の交換戦法を取り上げる。

ぺトロフ防御(C42)

 次の対称な手順は通常は黒の布局におけるポカとみなされている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 Nxe4?!

 もちろん正着は 3…d6 4.Nf3 Nxe4 である。本譜の手は全然評判ほど悪くないけれども、例えば『Encyclopedia of Chess Openings C』の初版(1974年)は白の勝勢と断定している。

4.Qe2 Qe7

 4…Nf6?? 5.Nc6+ も 4…d5? 5.d3 Nf6?? 6.Nc6+ も私の同時指導対局で遭遇した。

5.Qxe4 d6 6.d4 dxe5 7.dxe5

 7.Qxe5 は 7…Qxe5 8.dxe5 Bf5! 9.c3 Nd7 10.f4 Bc5 となって、黒が活発で有利な展開のためにポーンの十分な代償がある。

7…Nc6 8.Nc3!

 ポーンにしがみつかずに有利な展開を目指すのが、3…Nxe4? の非を明らかにする唯一の手段である。ほかの手では黒がほぼ互角の形勢になる。例えば 8.f4 Bd7 9.Nc3 O-O-O のあと …f7-f6、8.Bf4 g5!、それに 8.Bb5 Bd7 9.O-O O-O-O である。

8…Qxe5 9.Qxe5+ Nxe5 10.Bf4 Bd6 11.Bg3!

 クイーン翼ビショップが守られたので(11.Nb5? Nf3+!)、白は 12.Nb5 や 12.Ne4 が狙いになる。

11…Bd7 12.O-O-O O-O-O 13.Ne4 Bc6 14.Nxd6+ cxd6 15.f3 Rhe8 16.Rd4! Kc7 17.a4

 ここまでの手順はE.バシューコフ対V.チェーホフ戦(ソ連選手権戦第1次リーグ、1975年)である。白はポーンの形が良く双ビショップを持っているので二重に有利である。GMバシューコフが51手で勝ち切った。白の「勝ちの局面」という話はあり得ないけれども、白の優勢は明らかで指しやすい。だから欠点のない 3…d6 をさしおいて黒が 3…Nxe4?! を選ぶ正当な理由はない。

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2014年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

カロカン防御の指し方(134)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例1(続き)

28.Qxg6 hxg6??

 バシューコフはここで 28…Rxe1+! 29.Rxe1 hxg6 30.Kxh2 Bxc4 と指せばすぐに引き分けにできていた。もしタリが 27.Rfe1 でなく 27.Rde1 と指していたら、28…Rxe1 がチェックにならないので黒にこの手段がなく、白は単純に 29.Bxf6+ と応じていただろう。ルーク交換の重要性は次の手で明らかになる。

29.Bxf6+!

 これに対して 29…Rxf6? と取れば 30.Rxe8+ で白の勝ちになる。これがルーク交換が必須だった理由である。よってタリがポーン得になり勝ちの收局になった。

29…Kg8 30.Rxe8 Rxe8 31.Kxh2 Bxc4 32,Rd7 Re6 33.Bc3 Bxa2 34.Rxa7 Bc4 35.Kg3 Bd5 36.f3 Kf8 37.Bd4 b5 38.Kf4 Bc4 39.Kg5 Kg8 40.Ra8+ Kf7 41.Ra7+ Ke8 42.b4 Bd5 43.Ra3 Kf7 44.g4 Re2 45.Bc5 Re5+ 46.Kh6 Re6 47.Rd3 Bc6 48.Rd8 Re8 49.Rd4 Re6 50.f4 Ke8 51.Kg7 Be4 52.Bb6! Bf3 53.Rd8+ Ke7 54.Rd3 Be2(黒は詰み筋に入っている。54…Bxg4 なら 55.Bd8+ Ke8 56.Bg5 から 57.Rd8# がある)55.Bd8+ Ke8 56.Rd2 Re3 57.Bg5 Bd3 58.f5 黒投了

(この章続く)

2014年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(133)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例1(続き)

 タリは自分の手筋のおかげで優勢を取り戻した。ここでの黒の最善手は 25…Qxc4! 26.Qxc4 Bxc4 27.Rfe1 Be5 とポーンを取り返す手だった。黒の孤立fポーンとgポーンが弱いので白がいくらか優勢を保持している。しかし試合はたぶん引き分けに終わるはずである。バシューコフは強力そうな手に誘惑されたが、タリはその先まで読んでいた。

25…Qf4 26.Qh5! Qxe4

 黒はルークで取ってh2のビショップを守っていたいところである。しかし 26…Rxe4? だと 27.Rd7! でh7での詰みが防げない。

27.Rfe1?

 考え方は正しかったがルークが正しくなかった。タリはルークを黒のクイーンと交換することを望んでいる。27…Qxe1+? は 28.Rxe1 Rxe1+ 29.Kxh2 となって、ルークは守りがあまり上手でないので黒の弱体化したキングを守るのに苦労する。しかしあとの解説で分かるように正着は 27.Rde1 だった。

27…Qg6!

(この章続く)

2014年05月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(127)

「Chess Life」2006年2月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペスの有名なベルリン收局(C67)(続き)

C)カスパロフ対クラムニクの激突(続き)

 以下は最近の状況である。

ユディット・ポルガー対べセリン・トパロフ
FIDE世界選手権戦、サンルイス、2005年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.dxe5 Nf5 8.Qxd8+ Kxd8 9.Nc3 Ne7 10.h3 Ng6 11.Ne4 h6 12.b3 c5 13.Be3 b6 14.Rad1+ Bd7 15.Nc3 Kc8 16.Nd5 Be6 17.c4 Kb7

18.Bc1 a5 19.a4 Rd8 20.g4 h5 21.Ne3 Re8 22.Rfe1 Nf4 23.Ng5 Be7 24.Nxe6 fxe6 25.gxh5 Nxh3+ 26.Kf1 Rxh5

 黒がポーン得になり64手で勝った。

ルスタム・カシムジャーノフ対べセリン・トパロフ
FIDE世界選手権戦、サンルイス、2005年

9.Nc3 Ne7 10.h3 Ng6 11.Be3 Be7 12.Rad1+ Ke8 13.a3 h5 14.Rfe1 h4 15.Nd4 a6 16.f4 Rh5 17.Ne4

17…Bd7

 ここで黒は 17…c5 と突き 18.Ne2 に 18…b6 と指すことができた。

18.c4 a5 19.c5 a4 20.Rc1 f5 21.exf6e.p. Bxf6 22.f5 Ne7 23.Nxf6+ gxf6 24.Bf4

 白が少し優勢だが47手で引き分けに終わった。

アレクサンドル・モロゼビッチ対ギオルギ・ギオルガゼ
世界チーム選手権戦、ベエルシェバ、2005年

9.Nc3 Ne7 10.Ne4 h6 11.h3 Ng6 12.b3 a5 13.a3 Be6 14.Bb2 c5 15.a4 Kd7 16.c4 Kc6

 そして黒が楽に引き分けに持ち込んだ。

17.Ng3 h5 18.Ng5 h4 19.Nxe6 fxe6 20.Ne2 Be7 21.Rad1 Rhf8 22.f4 Rad8 23.Bc1 Rxd1 24.Rxd1 Bd8 25.Rd3 Ne7 26.g4 hxg3e.p. 27.Nxg3 Ng6 28.Nh5 Bh4 29.Kh2 Rf7 30.Kg2 b6 ½ – ½

結論

 (黒で)收局を指すのが好きならルイロペスのベルリン戦法が良い選択肢である。白でクイーンを盤上に残したいなら、それを避ける別策を探す必要がある。客観的に言えば「收局」の方がたぶん白にとって少し有利だろうが、中盤戦を省くのが万人の好みというわけではない。例のとおりベルリン收局にはもっといろいろなことがあり、さらに学ぶためにはデータベースでほかの試合も見てみるのが一番良い。

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カロカン防御の指し方(132)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例1(続き)

 この局面にはこの戦型の主眼の着想がはっきりと表れている。白の支配する陣地は広く、駒は4段目どころか5段目の多くの地点を占拠することができる。展開で少し優っていて、ルークの片方はすでに戦いに加わっている。黒は中央で圧倒的な勢力を築いていて(eポーンがいかにd5の地点の支配に役立っているかに注目)、7…c5 から 8…cxd4 によって得られた重要な地点を生かして 18…Nc5 と指す用意ができている。実際もし白がすぐに何か積極的なことをしなければ、18…Nc5 がe4のビショップの退却か交換を強制し、そのあと黒のeポーンとfポーンが前進して黒の攻撃が強力になる。

18.c4! Ba6!

 7…c5 から 8…cxd4 の利点は黒のクイーンがc列でよく働いていることにも表れている。

19.Nxg7!!

 この意表の手がなかったら白は困難に陥っていた。タリの手筋は奥が深い。局面の決まりがつくまで何手もかかる。

19…Kxg7 20.Nd4! Nc5 21.Qg4+ Kh8 22.Nxe6 Nxe6 23.Qxe6 Rae8! 24.Qxd5 Bxh2+ 25.Kh1

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

カロカン防御の指し方(131)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例1(続き)

 これは色々な目的を持った手である。まず、交換を仕向ける …Nf4 を防いでいる。また、f6にも利いている。もし黒が今ナイトをf6に戻したければ、白がそこで駒を交換したあと黒キングの前に二重ポーンができるのを受け入れなければならない。さらに、g7に利いていることにより駒を犠牲に黒キングを露出させて突然勝負を決める可能性が増した。黒はことのほか警戒しなければならない。直面している危険はタリがこの試合の解説で示した次の変化にまざまざと表れている。15…Rae8 16.c4 Nb4? 17.Bxh7+!! Kxf7 18.Rxd7! Qxd7 19.Ne5! Qd4 20.Nf6+!! gxf6 21.Qh5+ 黒のキング翼が暴風に襲われた。このあと 21…Kg8 22.Bxf6 または 21…Kg7 22.Qh6+ Kg8 23.Bxf6 で黒はh8での詰みが防げない。紛れもない捨て駒の連続である。

 本譜に戻ると、カロカンのこの戦型には黒に有利な点の一つが見られる。それは陣形の堅固さである。ちょっとした間違いや直面する危険にもかかわらず、黒はポーンの弱点やほかの明らかな標的のない基本的に健全な陣形を維持している。正確な手を少し指すことによりバシューコフは黒の問題が決して解決不可能なものではないことを見せつける。

15…Kh8!

 この手は 16…f6 と突く用意で、今度はeポーンがチェックで取られない。しかしこの手には深い戦略の目的もある。もし白が黒のナイトをd5から元のf6に追ってそこで二重ポーンを作らせれば、黒は …Rfg8 という手ができて自分のキングを守り白キングに対し攻撃を始めることにさえなる。例えば 16.c4 N5f6 17.Nxf6 gxf6 18.Bh6 Rg8! という進行である。これは概説での白の11手目の解説を思い起こさせる。そこでは黒のビショップもキング翼に向けられていることを指摘した。そこに攻撃を始めることを防ぐものは何もない(別の例は第7章のシマギン対スミスロフ戦である)。18…Rg8 の局面では非常に注意深く歩まなければならないのは白の方である。例えば 19.g3?? Rxg3+! 20.hxg3 Qxg3+ 21.Kh1(fポーンはc5のビショップによって釘付けにされている)21…Bxf3+ が一例である。

16.Be4!

 これは深い読みの入った手である。前の解説で分析したようにh1-a8の斜筋に沿った問題の可能性を予期して、タリは白枡ビショップ同士の交換の準備をした。

16…f6! 17.Bh4 Bd6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(130)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例1(続き)

 これでd8の黒クイーンが白ルークの射線に入り、c7の地点へは行けない。白の狙いは例えば 14.Ne5 で、14…Nxe5? なら 15.Bxh7+! でたちまち勝ちになる。そこでバシューコフはビショップをf4から追い払うことにした。

13…Nd5 14.Bg5! Qc7

 14…f6 は 15.Qxe6+ でチェックでポーンを取られる。

 最後の2、3手で何が起こったのであろうか。黒はナイトを中央に据えた。さらにfポーンも自由にした。このポーンが前進すればeポーンの前進と相まって中央を支配することができる。黒の指した手は理にかなっている。前に触れたように中央における黒の多数派ポーンは大局的に大きな優位点の一つである。

 これらすべてに黒が払わなければならなかった代価は、キング翼から駒を撤去したことである。クイーンはもうf6、g5それにh4に利いていず、さらに重要なことはナイトがf6から去ったことである。f6のナイトは非常に効果的な守り駒である。それがいなくなったということは、ほとんど常に攻撃側の大きな成功である、タリの次の手はその点を強調している。

15.Nh5!

(この章続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(14)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第14局

 タラシュ対ミーゼス戦でタラシュはキャッスリングした陣形の最良の守備駒のキング翼ナイトを取り除きそれによってgポーンを元の位置から浮き上がらせた。ポーンの形の乱れはタラシュにとってやり易くなり最後は地味なポーン突きで勝利を収めた。

フランス防御
白 タラシュ
黒 ミーゼス
ベルリン、1916年

1.e4

 この手は即座にクイーンとビショップの筋が開くので駒の展開への素晴らしい始まりである。eポーン自身も要所を占拠しさらにd5とf5の地点を攻撃することにより中原をめぐる戦いに役立っている。

1…e6

 この手は見かけは控えめだが単刀直入な 1…e5 よりも攻撃的である。黒の構想は次に 2…d5 と指して白の中原を攻撃することである。その後黒は 3.exd5 に対してeポーンで取り返して中原にポーンを維持する用意をしている。

2.d4

 当然の手である。白はもう一つのポーンを中原に置き、黒駒がe5とc5の地点に来れないようにした。それと共にクイーンとクイーン翼ビショップの動ける範囲が広がった。

2…d5

 この手はeポーンに問題を突きつけた。

 白は色々な応手がある。

 a)3.exd5 は単純化する目的である。

 b)3.e5 は連鎖ポーンで黒を締め付ける目的である。

 c)3.Nc3(又は 3.Nd2 あるいは 3.Bd3)はポーンを守りながら駒を展開する目的である。

 第1の手段はモーフィーが愛用した。彼は駒の攻撃の可能性が広がる捌けた局面が好きだった。しかし今日ではほとんど指されない。その理由はポーン交換後の局面が互角の対称形で、モーフィーのような選手でなければ攻撃の糸口をつかむのが難しいからである。

 締め付けの手の 3.e5 には非常に多くの支持者がいる。しかしこのシステムの問題点は白の連鎖ポーンが柔軟性がなく土台を切り崩す戦術にもろいということである。黒は連鎖ポーンの根元に 3…c5 で強力な反撃を開始しその後 …Nc6 から …Qb6 と指してくる。そして白は柔軟性を失っている中原を守る羽目になる。

 残るは第3の手段である。これは単純でチェスの常識にも沿っている。つまり戦場に駒を展開しながらeポーンを守っている。

3.Nc3

 タラシュらしい手である。彼は展開を促進し中原での争点を維持する手法を採用している。だからナイトを出しeポーンを守りd5の地点への圧力を強めた。

3…dxe4

 タラシュはこのポーン交換は黒が何の代償もなく中原を明け渡すので良くないと考えている。結果が見解の良否の尺度ならばタラシュはこの番勝負で支持された。ミーゼスは黒番で7回 3…dxe4 と指したが結果は2局が引き分けであとの5局はタラシュの勝ちだった。

4.Nxe4

 これで白は中原の好所にナイトを据え、e5とc5の地点に圧力をかけ、ポーンの態勢も優っていて(e6のポーン対d4のポーン)駒がより自由に動けるようになっている。

4…Nd7

 この手はキング翼ナイトがf6に跳んだ時にそれを支えるためである。黒がすぐに 4…Nf6 と指せば白は 5.Bg5 で厄介な釘付けにすることもできるし、すぐにナイトを交換することもできる。黒がクイーンで取り返せばクイーンが早く戦闘に巻き込まれるし 5…gxf6 とポーンで取り返せばキング翼の形が乱れる。

5.Nf3

 ここはキング翼ナイトが最も働く地点である。それならさっさとそこへ置いてはどうか。

 いかに最高のマスターでも違いを見せようとして、あるいは通常の局面で途方もない手を見つけ出す能力で他の人たちを感服させようとして、布局において度肝を抜くような手やとっぴな手や「華々しい」手を指したりはしないものである。彼らは駒を迅速に展開させて最大の効果を発揮する地点に配置することに満足し、じっと待ちながら自然の成り行きにまかせるのである。手筋は機が熟した時展開にまさる方にとって有利に作用するものである。

5…Ngf6

 これは理にかなった展開の手である。力を発揮する最適の地点にキング翼ナイトが位置するだけでなく、白ナイトの統治権に挑戦し中原の支配を争うものである。

6.Bd3

 白はナイトを引くよりも別の駒を展開させてナイトを支えた。交換になっても白には中原に駒が残る。

6…Be7

 ビショップが好所のe7に位置し、早期のキング翼キャッスリングのための邪魔が取り除かれた。

 面白い変化は 6…Nxe4 7.Bxe4 Nf6 8.Bd3 で、ビショップ引きにかかった一手は黒が 3…dxe4 にかけた手で補われている。

7.O-O

 キングがポーンのバリケードに隠れ、ルークが半素通しのe列に近寄った。

7…Nxe4

 黒は窮屈な陣形を楽にしクイーン翼の駒をくつろげるために駒を交換した。

8.Bxe4

 この取り返しで白は重要な地点を独占し、黒に互角を達成する問題を突きつけている。

8…Nf6

 ここはいつでもナイトの好所である。そしてこの場合ナイトは浮いているビショップに当たりをかけることにより先手で跳ねた。

9.Bd3

 この動き回るビショップは白にとって非常に大切なので交換できない。そのような交換は盤上の駒数が減って黒に対する圧力が減るので黒を利することになる。

9…b6

 もちろん黒はクイーン翼ビショップを働かせたいのでb7に展開させるつもりである。しかしキングがキャッスリングする前にこれをしようとするのには危険がある。例えば斜筋からチェックをかけられてキングが動かなければならずキャッスリングの権利を失う危険性がある。それからbポーンが動いたことにより弱くなったc6の地点に白がナイトを行かせる可能性もある。

10.Ne5!

 ここはナイトにとってこの上ない前進基地である。黒の進展しようという意欲を抑えつける力を持っている。

10…O-O

 黒は 10…Bb7 と指すと 11.Bb5+ と反駁されることに気づいた。この手に対しては 11…Kf8 としてキャッスリングの権利を放棄しなければならない。11…c6 はポーンを損する。

 もちろん 10…Qxd4 とポーンをかすめ取るのは愚かな行為で 11.Bb5+ と開きチェックでクイーンを取られてしまう。

11.Nc6

 黒のキング翼ビショップを取り去る目的で、弱体化した地点にすぐに飛びかかった。しかしどうして、この上ない前進基地を占めているとたった今言ったばかりのナイトを、ほとんど可能性のなさそうなビショップと交換してしまうのであろうか。

 これには少なくとも三つの正当な理由がある。

 黒はこの交換でビショップの一つを奪われる。そして双ビショップを持っているだけで局面がいかに穏やかでもそれは恐るべき攻撃の武器となる。

 戦力が減れば動ける余地が大きい白の双ビショップの機動力が増してくる。盤上が空になるほど白枡に利くビショップと黒枡に利くビショップとで盤上を席巻することができる。

 三つ目の理由はかなり巧妙である。キング翼の黒陣はナイトで強固に守られている。そしてそのナイトはビショップとクイーンで守られている。白がキング翼攻撃を成功させるためには結局はこのナイトをやっつけなければならない。ナイトに手をかけるために白はまずしっかりと支えている駒の一つのビショップを取り除く。ナイトの守り手がビショップからクイーンに代わればナイトに対する釘付けが強力なものとなり、容易に振りほどけなくなる。

11…Qd6

 クイーンが当たりを避けられるならばどの手でもかまわない。

12.Qf3!

 この手は非常に重要な中間手である。すぐに 12.Nxe7+ と取る手よりも強い手で、黒に作戦の変更を迫っている。両方の手を比較検討してみよう。

 白が 12.Nxe7+ と指せば 12…Qxe7 の後 13.Qf3 がルーク取りになる。ルークは当たりをb8へ逃げてかわし、黒の次の手の 14…Bb7 でクイーンを対角斜筋から追い払い黒のビショップが代わりにその筋を占めることになる。

 本譜の 12.Qf3 の後黒は 13.Nxe7+ Qxe7 14.Qxa8 でルークを取る手を狙われている。今度は白のナイトが逃げ場所のb8に利いているのでルークが白クイーンの筋から逃げられない。それに 12…Bb7(ビショップが対角斜筋に展開すると共にルークをかばう)も 13.Nxe7+ Qxe7 14.Qxb7 でこのビショップが取られてしまう。

12…Bd7

 結局のところこのビショップはルークを救うためにほとんど働きのないd7への移動に甘んじなければならなかった。

13.Nxe7+

 これは白の戦略上の勝利である。白は黒のナイトとビショップに対し双ビショップの優位を保持しているだけでなく、黒のクイーン翼ビショップに不本意な地点を占めさせ自分は中原の対角斜筋を制圧している。

13…Qxe7

 黒は展開を完了し、守勢ではあるが十分堅固な陣形のような印象を受ける。

14.Bg5!

 この強力な釘付けはナイトに麻痺を起こさせるような圧力をかけている。先へ進む前に入札を総ざらいしておこう。

 単純に駒を展開するより他に顕著なことはしなくても白には双ビショップによる戦術の有利、全般的な配置の優位、働いている駒の多さ、それに永続的な主導権がある。

 働いている駒が多いだって?そのとおりである。白のクイーンと双ビショップは活動的に配置されている。一方黒のナイトは動くことができず、クイーンはナイトから離れることができない(さもないと Bxf6 でポーン損になる)。それにビショップは黒自身のeポーンによってキング翼から遮断されているのでほとんど動く余地がない。中原のポーンの態勢も白の方が有利である。白の4段目にあるdポーンは相手のeポーンよりも発言力がある。

 白はここでびっくりさせられるが理にかなった 15.Qe4 を指すことにより、黒キングを覆っているポーン列に亀裂を生じさせる作戦である。黒はこの手に対して 15…Nxe4 と指すことはできない。それは 16.Bxe7(黒の二つの駒が当たりになっている)16…Rfe8 17.Bxe4 となって、黒はクイーン翼のルークが当たりになっているのでビショップを取っている暇がない。15.Qe4 の根底にある構想は黒にクイーンを取るように仕向けることではなくて、16.Bxf6 Qxf6 17.Qxh7# の狙いによって黒に 15…g6 突きを余儀なくさせることである。このポーン突きの結果は、キングを保護している防御態勢がゆるみ、釘付けのナイトの支えが一つなくなり、もうgポーンによって守られていない黒のh6とf6の弱体化した地点が白の侵入口となるということである。例えば一つの可能性は次のとおりである。15.Qe4 g6 16.Qh4(ナイトに利かした)16…Kg7 17.Bh6+ これで白の交換得になる。

14…Rac8

 黒は白の利き筋からルークをはずした。それでも 15.Qe4 Nxe4 16.Bxe7 とくるならば 16…Rfe8 で駒の損得はない。

 建設的な面ではこの後 15…c5 と突いて白の中原ポーンに挑み、ルークのためにc列を開ける意図である。

15.Rfe1

 この手は以下のように展開、抑止および準備に役立つ手である。

 この手はルークを半素通しの列に持ってきた。

 この手は黒がe列をこじ開けて自ら捌こうという試みを防いだ。

 この手はキング翼でルークを使うための準備であり、おおよそ次のとおりである。16.Qh3(また 17.Bxf6 で勝つ狙いである)16…h6 17.Bxh6 gxh6 18.Qxh6 これでルークが詰みを見舞うためにe5からg5へ回れば決まりである。

15…Rfe8

 キングのための枡を空けた。黒はもくろんでいた 15…c5 をあきらめた。この手に対してタラシュは次のように応じるつもりだった(彼自身の解説による)。16.Qh3(17.Bxf6 の狙い)16…h6 17.Bxh6 c4 18.Bxg7 Kxg7 19.Qg3+ Kh8 20.Qh4+ Kg7 21.Qg5+ Kh8 22.Qh6+(クイーンの見事なジグザグである)22…Kg8 23.Re5 これで直ぐに詰みになる。この手順中 17…gxh6 18.Qxh6 cxd4 ならば(19.Re5 には 19…Rc5 で応える)19.b4!(黒ルークを来させないため)の後 20.Re5 で白の簡単な勝ちである。

16.Qh3!

 これが勝着である。もっとも白はずっと勝着を続けているようであるが。

 これで黒のhポーンに対する圧力が倍加した。白は 17.Bxf6 から 18.Qxh7+ で、あるいは単にビショップですぐにhポーンを取る手を狙っている。黒ナイトは釘付けになっているので取り返せずキングでビショップを取るわけにもいかない。

 黒はどのようにして白の狙いを防いだらよいだろうか。

 16…h6 は 17.Bxh6 gxh6 18.Qxh6 Qf8(こうしないと 19.Re5 から詰まされる)19.Qxf6 で白が2ポーン得になり簡単に勝つ。

 16…g6(hポーンは助かるがナイトの大事な支えが奪われる)は 17.Qh4 Kg7 18.Re4! から 19.Rf4 でルークも無力なナイトに襲いかかり白が勝つ。

 16…e5(ビショップが白クイーンに当たっている)は 17.Bxf6 Bxh3(17…Qxf6 は 18.Qxd7 で白の駒得)18.Bxe7 で白の駒得になる。

 最後に 16…c5 は 17.Bxh7+ Kf8 18.Be4(痛烈なh8でのチェックが狙い)18…Kg8 で黒はポーン損の受け一方になる。

 これらの変化はどれも楽しい。特に自分が勝つ方ならば。

16…Qd6

 17.Bxf6 gxf6 18.Qxh7+ で白にポーン得させてなだめることを期待した。

17.Bxf6

 黒キングの回りの唯一の守備駒を取り除いた。そして・・・

17…gxf6

 ・・・gポーンを立ち退かせ黒キングを露出させた。

18.Qh6!!

 キングをしっかりと引き止めた。この手の意味はキングがf8を通って逃げるのを食い止め必殺の狙いを見舞うことである。本譜の手の後のやり方は 19.Bxh7+! Kh8 20.Bg6+ Kg8 21.Qh7+ Kf8 22.Qxf7# である。

 白の指したこのような手が指せれば普通の選手より一段上である。ほとんどの若い選手(チェスの意味で)はキングをチェックで仕留めようとしがちである。しかし 18.Qxh7+ Kf8 19.Qh8+ Ke7 のようなことをすればキングが逃げてしまい攻撃手段が尽きてしまう。さらに悪いことにはクイーンとdポーンが当たりになっていて 20.Qh4 で両方を助けようとすると 20…Rh8 とされて急に白が受け太刀になってしまう。

18…f5

 ビショップの利き筋を遮った。

19.Re3

 g3でチェックして詰めようとしているのは明らかである。これを防ぐためには黒はクイーンを捨てなければならないだろう。

 半素通しのe列をルークが占めているのでe3を中継点として簡単に利用できキング翼の素通し列にルークが転回できることに注目して欲しい。

19…Qxd4

 g7の地点を守った。20.Rg3+ なら 20…Kh8 で白はクイーンがg7の地点で詰ますことができない。

 代わりに 19…f6(キングが逃げるため)は 20.Rg3+ Kf7 21.Qg7# で詰まされる。さらにまた 19…Kh8 は 20.Rh3 に 20…Kg8 とするよりなく 21.Rg3+ で詰みになる。

20.c3!

 一呼吸おいた気持ちのよいポーン突きである。

 黒は万事休すである。クイーンはg7に通じる斜筋を離れるわけにいかない。20…Qg7 は 21.Rg3 で釘付けにされる。20…Qh8 は 21.Rg3+ で窮する。かわいそうなキングの唯一の逃げ場が自分のクイーンでふさがれている。

20…黒投了

 この試合は名局賞を与えられた。

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カロカン防御の指し方(129)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

実戦例1
白 M.タリ
黒 Y.バシューコフ
ソ連選手権戦、キエフ、1965年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nd7 5.Nf3 Ngf6 6.Ng3 e6 7.Bd3 c5 8.O-O cxd4 9.Nxd4 Bc5 10.Nf3 O-O 11.Qe2 b6 12.Bf4! Bb7 13.Rad1

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(128)

第8章 堅実戦型 白の展開 フリオ・カプラン(続き)

 白は支配している地点が多いが黒は陣形が堅固で、4…Nd7 戦型の典型的な状況になっている。白は Bf4 またはたぶん b2-b3 から Bb2 と展開し、そうなればビショップがキング翼に向いているのでそちらで攻撃することができるし、あるいはパスポーンを作ることに努めることもできる。

 黒は …b7-b6 から …Bb7 と展開する。状況が許せばeポーンを突いて中央に駒を進出させることによりそこを支配しようとするかもしれない。または黒のビショップもキング翼を向いているのでそちらで攻撃しようとするかもしれない。どちらにしても …Qc7 は役に立つ手である。黒としては白が 12.Bf4 でそれを防ぐことのできる前にここで指すべきである。そうしないと実戦例1でバシューコフが直面したような問題に見舞われることになる。

(この章続く)

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