2014年03月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(330)

第6章 ナイト・エンディング

6.4 実戦例

 読者はこの例からナイト・エンディングは純粋に技術の問題で有利を組織的に活用していけば良いと考えるかもしれない。しかし次の局面は想像力も関与する場合があることを示していて面白い戦術的手段が見られる。

 図330 白の手番
ピルズベリー対ガンズバーグ、1895年

 この局面は1895年ヘースティングズでのピルズベリー対ガンズバーグ戦に現れた。白のc5の保護パスポーンは強力であるがそれだけでは勝つのに不十分である。それよりもはるかに重要なのは積極的に指し進めることにより白は黒のe6とd5のポーンを攻撃することができるということである。この局面では動的な要因が静的な要因よりも重要である。静的な観点からは黒陣もまずまずのように思われる。黒はクイーン翼でパスポーンを作ることができ …Nc6 でせき止める手もある。実際黒の手番ならば 1…Nc6 ですべて問題ない。しかしチェスでは必ず大局的な考察に加えて具体的な戦術の手段を調べなければならない。この局面では白は次のようにe6とd5のポーンを攻撃することによってすぐに白陣を乱すことができる。

1.f5!

 黒の 1…Nc6 を許すことはできない。白の狙いは 2.fxe6 の後 3.Nf4+ かすぐに 2.Nf4 と指すことである。

1…g5

 こうしないとdポーンが落ちる。例えば 1…gxf5 なら 2.gxf5 exf5 3.Nf4 で白がポーンを取り返し陣形的に明らかに優勢になる。また 1…exf5 なら 2.gxf5 g5 3.Nb4 でdポーンが落ちる。

2.Nb4! a5

 この手からは白にきれいな手筋が出現する。しかし他に良い手もない。白の狙いは本譜のように 3.c6 Kd6 4.fxe6 で、本譜の代わりに 2…Kd7 なら 3.fxe6+ Kxe6 4.c6! Kd6 5.c7 Kxc7 6.Nxd5+ から 7.Nxf6 で白が簡単に勝つ。本譜の手で黒は白ナイトが逃げることを期待していてそうなれば 3…Nc6 で防御が有望になる。

3.c6! Kd6

 4.c7 があるので黒がナイトを取れないのは明らかである。3…Kd8 は 4.fxe6! で本譜と似たような進行になる。

4.fxe6! Nxc6

 ここまで全て必然である。4…axb4 は 5.e7 Kxe7 6.c7 で黒が負ける。黒ナイトの無力がよく現れている。

5.Nxc6 Kxc6

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(122)

「Chess Life」2006年1月号(5/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス「ベルリン」戦法[C67](続き)

戦型D) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.Re1 Nd6 6.Nxe5

6…Be7

 6…Nxe5 は 7.Rxe5+ Be7 8.Bd3 で 6…Be7 の戦型とほとんど同じになる。

7.Bd3 O-O 8.Nc3 Nxe5

 8…Bf6 と出る手もあり、シュテイン対スミスロフ戦(ソ連選手権戦、1961年)では 9.Ng4 Bd4 10.Ne2 Bb6 と進んだ。

9.Rxe5 Bf6

 代わりに 9…c6 は 10.Qf3 Ne8 11.b3 d5 12.Bb2 となり、ここで 12…Bd6 または 12…Bf6 でほぼ互角になる。しかしたぶん白は 10.Qh5 と指してみる価値があるだろう。

10.Re3 g6

 ここで黒が不用意ならどうなるかというのがマクシェーン対ニールセン戦(ヘイスティングズ、2003年)で、10…Re8 11.Nd5 Bg5 12.f4 Bh6 13.Rh3 c6 14.Ne3 Ne4 15.Bxe4 Rxe4 16.Nf5 Qb6+ 17.d4 Bxf4 18.Qh5 h6 19.Bxf4 Rxf4 20.Re1 1-0 となった。

11.b3

11…Bd4

 ほかの手なら白が主導権を握る。11…b6 12.Bb2(または 12.Ba3 c5 13.Qg4 Bd4 14.Re2 Bb7 15.Rae1 シャムコビッチ対マーツ[ローンパイン、1975年]途中 13.Qf3 Bb7 14.Qg3 Qc7 15.Rae1 の方がずっと良いかもしれない)12…Bb7 13.Qg4 Bg7 14.Rae1 スミスロフ対コブレンツ(ソ連選手権戦、1945年)

 11…Re8?! 12.Qf3 Bg5 13.Rxe8+(13.Bb2! Bxe3 14.fxe3 と交換損の犠牲に出るのも、黒キングの近くに大きな空所ができるので面白かった)
 13…Nxe8 14.Bb2 c6[黒は 14…Bxd2? と欲張ると容易ならぬ事態に巻き込まれる。15.Bc4! で白の攻撃がきつすぎる。15…Nd6(15…Qe7 なら 16.Nd5、15…Qf6 なら 16.Qxf6 Nxf6 17.Nb1 Bg5 18.f4)16.Ne4]15.Ne4 シュタイニッツ対ツーカートルト(1886年)

12.Re2

 e2の白ルークは白クイーンの邪魔になる。

12…b6 13.Ba3 c5

 次に …Bb7 で均衡のとれた局面である。

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カロカン防御の指し方(098)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 最後に黒がhポーンを犠牲にする「ギャンビット」の例をお目にかける。

実戦例3
白 M.ボスコビッチ
黒 M.ローデ
ニューヨーク、1979年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 6.Ne2

 白は黒のクイーン翼ビショップをいじめる作戦を選んだ。

6…Bf5 7.Ng3 Bg6 8.h4 h5!

 この手は 8…h6 よりずっと攻撃的である。どちらにしても白のもっとも理にかなった作戦は黒のhポーンを攻撃することである。前局と比較してみるとよい。

9.Be2 Nd7 10.c3

 白は …Qa5 によるチェックを避けて黒のhポーンを取ることを狙っている。

10…Qa5!

 黒はhポーンを失うことは気にしない。しかしまず b2-b4 突きを誘って白のクイーン翼を弱めさせたいと考えている。

11.b4 Qc7

 hポーンを取らせまいとする 11…Qd5!? も可能である。

12.Nxh5 Bxh5

 ローデは 12…a5 に 13.Nf4 を恐れていた。しかし黒はそれでも立派なポーンの代償がある。

13.Bxh5 a5 14.Bg4

 12…Bxh5 のもっと厳しい試金石は 14.Be2 axb4 15.cxb4 e5 16.b5 である。

14…axb4 15.cxb4 f5!? 16.Be2

 16.Bxf5 は 16…e6 17.Be4 Bxb4+ となって黒のすべての駒が働いてくる。黒キングは中央でまったく安全だが白キングはそうでないことに注意がいる。しかし白はキング翼にキャッスリングすればhポーンを取られるし、クイーン翼にキャッスリングするのは素通しの筋が多すぎて問題外である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(329)

第6章 ナイト・エンディング

6.4 実戦例

 図329 黒の手番
ラスカー対ニムゾビッチ、1934年

19…Nc6+

 黒はクイーン翼で論理的な攻撃計画を推し進めている。別案としては 19…Nc4 20.Kc3 Ke5 がある。黒は 20.Nf4 Nxb2 21.e5+ という反撃手段を与えたくなかったのかもしれないが 21…Kc6! から 22…Nc4 で黒が勝てる。

20.Ke3

 20.Kd3 なら 20…Ke5 21.Ke3 Na5 で黒が勝つ。

20…Kc5 21.Kd3 b4

 少ししかポーンが残っていない場合は攻撃側は通常ポーンの交換を避けた方が良い。しかしニムゾビッチは勝ちまでの手順を読み切っていた。22…Ne5+ を狙われているので白はポーンを交換するしかない。

22.axb4+ Kxb4 23.Kc2 Nd4+ 24.Kb1

 aポーンを攻撃するのが白の唯一の希望である。24.Kd3 は 24…Ne6 で 25…Kb3 の狙いのために白キングは戻らざるを得ない。25.Ke3 Kb3 26.Nf4 は 26…Kxb2! 27.Nxe6 a3 で負ける。

24…Ne6

 今度はeポーンが標的なので 24…Kb3 と指す必要はない。本譜の手に対して 25.Kc2 とくれば 25…Kc4 26.Kd2 Kd4 27.Nf2 Ng5 でよい。ラスカーの最後の試みはニムゾビッチによってきれいに咎められる。

25.Ka2 Kc4 26.Ka3 Kd4 27.Kxa4 Kxe4

 黒には1ポーンしか残っていないが白のナイトはそれを止められない。28.Ng1 なら 28…Ke3 から 29…Kf2、また 28.Nf2+ なら 28…Kf3 で黒が勝つ。

28.b4 Kf3 29.b5 Kg2 0-1

 この後 30.b6 Kxh3 31.b7 なら 31…Nc5+ でポーンが取られる。途中 31.Kb5 なら 31…Nd8 32.Kc5 Kg4 33.Kd6 h3 34.Kc7 h2 35.Kxd8 h1=Q で黒の勝ちとなる。黒のみごとな指し回しで、ナイトに対するルーク列のパスポーンの威力をよく表している。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(097)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

 白クイーンがナイトを見捨てなければならないように見えるが、ホロウィッツの読みはそれを上回った。

26.Bb6!!

 d8での詰みの狙いがある!黒はどの変化でも戦力損になる。26…Nd5 27.Qxg4。26…Be7 27.Qxg4! Nxg4 28.Ng7+。26…Qc8 27.Nd6+ Bxd6 28.Qxf6 Be7(28…Rxg2+ は永久チェックにならない。白キングはe3に逃げてe4のポーンを取る)29.Qh8+ Bf8 30.Rd8+。フロールは最も可能性のある手を見つけた。

26…Rxg2+ 27.Qxg2 Qxf5 28.Rd8+ Rxd8 29.Rxd8+ Ke7 30.Qg3!

 白が黒キングに対する攻撃を続けられなかったら、交換得の有利を勝ちに転化するのは難しい問題になっていたかもしれない。

30…Nd7 31.Bc7! Qd5

 31…Qe6 なら 32.Ra8 から 33.Bd8+ を狙う。

32.c4! Qg5

 クイーン同士の交換は白をやりやすくさせるが、32…Qd4 は 33.Qh4+ f6 34.Qg4 で 35.Qg6 から 36.Qe8# を狙われて改善策にならない。

33.Qxg5+ hxg5 34.Ra8 Ke6

 34…b6 でも 35.Bd8+ Ke6 36.Bxg5 で白の勝ちになる。

35.Bxa5 f5 36.Bc3 f4 37.a5 g4 38.b4 f3 39.Bd2!

 黒のポーンを止めつつhポーンを突いていくつもりである。

39…Kf7 40.Ra7! g3 41.Rxb7 黒投了

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

『笑えるほどたちが悪い韓国の話』

産経新聞電子版2014年3月29日付
『笑えるほどたちが悪い韓国の話』竹田恒泰著

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(328)

第6章 ナイト・エンディング

6.4 実戦例

 図328 白の手番
ラスカー対ニムゾビッチ、1934年(変化)

 白は再び手詰まりに近い状態に陥っている。もし白が消極的に 10.Kf3 と指せば黒は 10…a4 11.Ke3 b6 12.Kf3 Ne6 13.Ke3 Nc5 14.Kf3 Kd4 と陣容を強化する。だから白の最善手は多分 10.a4 だろう。しかしそれでも黒の前途は有望である。例えば 10…b6 11.b3 Ng2+ 12.Kf3 12.Kd3 なら 12…Kf4 12…Ne1+ 13.Ke3 Nc2+ 14.Kd3 Nd4 15.Kc4 h4 で白が困っている。8…Ne6 なら必然的に白の勝ちになると主張しているわけではないが以上の分析は防御側が直面する困難さを表している。

7.Kf3 Ne1+ 8.Ke2 Ng2 9.Kf3 Nh4+ 10.Ke3 Ng6

 黒は前の解説中の局面と似た局面に持っていった。ここで 11.Nf2 Nf4 ならその時の局面になる。11.Kd3 Nf4+ と 11.Kf3 Kd4 はあまり考える価値がない。ラスカーは状況をあまり変えない別の手順を選んだ。

11.Ng5 Kf6 12.Nh7+

 12.Nh3 なら 12…Ne5 13.Kd4 で本譜に戻る。

12…Ke7 13.Ng5 Ne5 14.Kd4 Kd6 15.Nh3

 白はクイーン翼ポーンがせき止められるのを防ぎたいのだが 14.a4 は 14…Nc6+ でいずれ黒キングにb4の侵入口を与えてしまう。最善手は恐らく 15.b3 だろうが黒には外側パスポーンがあるので勝ちは保障されている。

15…a4! 16.Nf4 h4 17.Nh3 b6

 間合いをとる巧妙な手である。黒は後で …Nc6+ から …Kc5 と指したいのだが白ナイトがh3にいる時にそうしたいのである。だから2手かけてポーンをb5へ突いていく。

18.Nf4 b5 19.Nh3

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(096)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

17.Be3 Bd5 18.Be4!

 白はビショップ同士を交換して、ナイトがe4かf5に居すわってもいじめられないようにしたがっている。

18…Qb3 19.dxe5 fxe5 20.Rad1!

 もちろん白は 20.Bxd5? cxd5 で中央での黒の地歩を強化するのを避けている[訳注 21.Rfd1 で白の勝勢になるので正着は 20…Qxd5 です]。本譜の手は黒にビショップ同士の交換を仕向けている。なぜなら 20…Bc4 と交換を避けるのは 21.Rfe1 Qxb2?(この手は望みがないがどのみち受けがない)21.Bxc6! bxc6 22.Qxc6 で、白駒を黒キングから隔てているポーンの防壁が崩壊するからである。

20…Bxe4 21.Qxe4 Qe6

 黒クイーンが防御のために戻った。21…Qxb2? とポーンをかすめ取るのは見込みがない。22.Rxd7! Kxd7 23.Rd1+ Kc8(23…Bd6 は 24.Qxe5 Qa3 25.Bc5!)24.Qf5+! で詰みになる。

22.Rd2!

 黒は(16…e5?! によって)寛大に白に素通しにさせたd列が破滅の元になる。

22…Nf6 23.Qf3 Rg8 24.Rfd1 Rg4

 Nf5-d6 を止めようとしても無駄である。

25.Nf5! e4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(327)

第6章 ナイト・エンディング

6.4 実戦例

 1934年チューリヒでのラスカー対ニムゾビッチ戦からのきわめて重要なナイト・エンディングから始めよう。

 図327 黒の手番
ラスカー対ニムゾビッチ、1934年

 戦力に差はないが黒は大局的にいくつかの点で有利である。第一に黒のhポーンは非常に強力である。つまり周知のようにナイトがルーク列ポーンを封じ込めることは困難であり、白キングがキング翼に向かえば中央とクイーン翼が無防備になる。第二に黒キングはすばやくe5の地点を占めることができる。この地点は中央の要衝で黒はそこから両翼をにらむことができる。第三に黒のナイトは白のナイトよりも活発である。

 これらの優位を合わせれば黒は十分に勝つことができる。ニムゾビッチはそれを確実に証明した。

1…Kf7 2.Kc1 Kf6 3.Kd2 Ke5

 3…Kg5 は 4.Ke3 Ne6 5.Kf3 の後黒はキングもhポーンも進めることができないので意味がない。白のe列のパスポーンをせき止めることも重要である。

4.Ke3 h5 5.a3

 一般的な指針としてこのようなポーンの形を弱める手はできるだけ避けるべきである。この場合はb3の地点に空所ができて黒キングにさらに侵入口を与えることになる。5.Nh3 に対してすぐに勝つ手はないので少なくとも本譜の手は延期すべきだったように思える。5…Nc2+ ときても 6.Kf3 と指す必要はない。そう指すと 6…Nb4 7.a3 Nd3 8.b4 Ne1+ から 9…Nc2 で負ける。これがラスカーが 5.a3 と指した理由だった。代わりに白は 6.Kd2! と指すことができる(6…Nb4 なら 7.a3)。5.Nh3 で引き分けになるとは断言できないが黒にとっては実戦よりはるかに難しい展開になっていただろう。

5…a5

 この手は白のbポーンを固定しいずれ …a4 と突く手を狙う好手である。

6.Nh3

 白はほとんど手詰まりに陥っている。ナイトは他に動く所がない。6.Nf3+ なら 6…Nxf3 7.Kxf3 h4 で簡単に黒の勝ちになる。6.Kd3 なら 6…Ne6 7.Ke3 Ng5 でeポーンが落ちる。ポーンを動かせばもちろんクイーン翼がもっと弱くなるだけである。

6…Nc2+

 試しに指した手だが功を奏した。もっとも実際には 7.Kd2! で何事も起こらないはずだった。7…Nxa3 なら 8.bxa3 Kxe4 9.Kc3 でナイトがキングの助けがなくてもhポーンに対処できる(図305参照)ので明らかに引き分けである。

 それでも本譜の手は 7.Kd2 Nd4 8.Ke3 で同じ局面に戻れるので試してみる価値があった。この後黒がどう指すのかは興味深い。主眼となる手は 8…Ne6! で白ナイトの動きを制限しeポーンへの攻撃を狙う。9.Kd3? は 9…Nf4+ で黒の勝ちになるし 9.Ng1 は 9…Ng5 でeポーンが落ちる。白の絶対手は 9.Nf2(9.Kf3 なら 9…Kd4)でその時黒は 9…Nf4! と指す。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(351)

「British Chess Magazine」2014年2月号(3/3)

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ロンドン・チェスクラシック 決勝戦(続き)

 決勝2番勝負の第1局を負けるのは確かに望ましい状況でない。しかしゲルファンドの立場からすると明るい面として少なくとも第2局では白番だった。彼はナカムラに難局に陥らせることができた。しかしナカムラは本領を発揮してしのぎ切り、ロンドン・クラシックのスーパー16で優勝した。

白 B.ゲルファンド
黒 H.ナカムラ

2013年ロンドン・チェスクラシック
キング翼インディアン防御アベルバッハ戦法 [E74]

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Be2 O-O 6.Bg5 c5 7.d5 a6 8.a4 Qa5 9.Bd2 e6 10.Nf3 exd5 11.exd5

11…Bg4

 11…Qd8 も指されているが、次の試合のように信頼度が劣る。12.O-O Bf5 13.Nh4 Bc8 14.Nf3 Bf5 15.Nh4 Bc8 16.Qc1 Ng4 17.Bg5 f6 18.Bd2 Re8 19.h3 Ne5 20.f4 Nf7 21.f5 これは2008年ノボクズネツクでのY.ヤコビッチ対F.アモナトフ戦で、白がはっきり優勢だった。

12.O-O Nbd7 13.h3 Bxf3 14.Bxf3 Qc7 15.Qc2

 ここまではすべて順当のようである。白には双ビショップがあるが黒陣は非常に堅固で、ここではもう白がどのように攻撃していくのかは難しくなっている。

15…Ne8 16.Rae1 Be5 17.Bd1 Ng7

18.f4

 18.g4!? がここでのエミル・ストフスキーの推薦手だった。番勝負の状況を考えれば確かに面白そうな手である。例えば 18…Rae8(18…f5 は 19.Ne2[もちろん 19.f4!? Bd4+ 20.Kg2 と指すこともできる]19…f4 20.Nc3! となってこのナイトが好所のe4に行く)19.Kg2! b6 20.f4 Bd4 21.Ne2 Be3 22.Ng3 Bxd2 23.Qxd2 となればキング翼での白の攻撃が有望だが、23…Qd8! で黒の守りがまだしっかりしている。

18…Bd4+ 19.Kh2 f5

 ナカムラは白のキング翼攻撃が手がつけられなくなる前に歯止めをかけることにした。しかしこの手でe6の地点がかなり弱体化し、ゲルファンドはすぐにf3にナイトを回すことによりこの地点を奪おうとする。

20.Ne2! Bf6 21.Ng1 b5!

 座して死を待ちたくない黒はクイーン翼から打って出て白のd5の支配を弱める。

22.cxb5

 キング翼にまた注意を向ける前に、手をかけてクイーン翼を固める 22.b3! の方がたぶん良かった。それならd5のポーンが強力なままで黒の反撃の迫力がいくらか劣る。

22…axb5 23.axb5 Qb7 24.Be2

24…Ra2

 たぶん 24…Ne8! が最も正確な受けだった。25.Nf3 Nc7 26.Bc4 Nb6 27.b3 Ncxd5 で白が優勢とは言えないだろう。

25.Bc3 Bxc3 26.Qxc3 Nb6 27.Nf3 Ra4

28.Ng5?!

 非常に攻めっ気の強い手だが、ナカムラは見事な読みで非常に正確に守る。

 28.Nd2! がたぶん一番可能性があった。実際黒はここでポーンの代償を示すのが難しい。例えば 28…Re8(28…Ne8 29.Nc4 Nxc4[29…Nxd5 は 30.Qc2 Rb4 31.Na5 Qb6 32.Nc6 で白が明らかに優勢である]30.b3! Ra3 31.Bxc4 Nf6 32.Re6 は白がポーン得で勝つ可能性が非常に高い)29.b3 Ra2 30.Bc4 Qf7 31.Ra1 Rxa1 32.Rxa1 となれば黒の反撃がまだ本物になっていない。

28…h6! 29.Ne6 Nxd5 30.Bf3

 30.Qg3 は 30…Nxe6 31.Qxg6+ Ng7 32.Qxd6 Rf6 となって白は 33.Qd8+ Rf8 34.Qd6 Rf6 で引き分けにするよりない。

30…Nxc3 31.Bxb7 Rb8 32.Bc6 Nxb5

33.Nc7?!

 この手のあとゲルファンドは実際にあったかもしれない勝つ可能性を失った。33.Bd5! が勝負手だが、このビショップはc6に動かした直後だけに心理的に非常に指しにくかった。それでも黒は引き分けにできるはずだが、33…Nxe6 34.Rxe6 Kg7 35.Re7+ Kh8 36.Rfe1 となれば白は少なくとも攻撃する立場で、ルークを7段目に重ねることができれば勝つはずである。もちろん黒はそれを 36…Ra7! で防ぐことができるが、37.Rxa7 Nxa7 38.Re6 でそれでもまだ白の指しやすい收局で黒は引き分けるために正確に指し続けなければならない。

33…Nxc7 34.Bxa4 Rxb2 35.Rf3 Rb4 36.Bd7 Kf7

 黒の連結パスポーンは今や交換損の代償を十分超えていて、この段階では黒の指し方は「勝ちにいく」のが普通である。もちろん番勝負の状況のためにナカムラの一番の焦点はそれでも負けを避けることにあり、いともやすやすとやってのけた。

37.g3 Kf6 38.Ra3 Rb6 39.h4 d5 40.Ra7 Nge6 41.Rea1 c4! 42.Bxe6 Nxe6 43.Rd7 Rb2+ 44.Kg1 c3

45.Re1

 45.Raa7 で詰みを狙えるが黒は 45…g5 で簡単に逃れる。

45…Rb6 46.Rxd5 c2 47.Rde5 Nd4 48.Rc5

 48.Kf2 は 48…Nb3 で白がc2ポーンのためにルークを1個まるごと失うので黒の勝ちになる。

48…Nf3+ 49.Kf2 Nxe1 50.Kxe1 Rb3

 明らかにここでは黒は負けようがない。

51.Rc6+ Kf7 52.Kf2 Rb2 53.Ke3 h5 54.Kd4 Rb3 55.Rxc2 Rxg3 56.Rc7+ Kf6 57.Rc6+ Ke7 58.Ra6 Rg1 59.Ra7+ Ke6 60.Ra6+ Ke7 61.Ra7+ Ke6 62.Ra6+ ½-½

 黒はここでは勝とうとする必要さえない。そしていずれにしても白はこの收局を引き分けにしている。ゲルファンドも頑張ったが最終的にはナカムラが強すぎた。

 大会をとおして目だったことは、ナカムラが明らかに変な疑問手を出しながら、大体において相手より早く指しているにもかかわらず決してポカを出さなかったことである。これは明らかに快速戦で非常に有利な技術で、彼がこの大会で手に負えない存在だった理由もここにある。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス5

カロカン防御の指し方(095)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

10…Qb6?

 この手はここではほとんど意味がない。10…Nd7! の方がはるかに強力で、11.Be3 Qa5(または 11…Qc7)12.Qd2 O-O-O! 13.Bxh6 Bxh6 14.Qxh6 e5! となればポーンの代償が豊富にある。

11.Bc4 Nd7 12.a4!

 この判断は機敏だった。白は黒がクイーン翼にキャッスリングしたいのを感知して、さっそくポーンの暴風を開始する。

12…a5

 この着想は理にかなっている。代わりに 12…e6 は 13.a5 Qc7 14.Qf3 となって、白陣が広がって優位に立ち、駒にも好所が得られる。しかしここで 12…O-O-O は白が自分の12手目のおかげで b2-b4! 突きで列を素通しにできるので魅力が減っている。

13.Qf3 e6 14.O-O Bc2

 黒が 14…O-O-O 15.b4! axb4 16.a5 Qc7 17.a6! を気に入らないのは当然だし、14…Bd6? も 15.Bxh6 で自陣を改善することなくポーンを損する。だから黒は白がe6で犠牲を払う用意ができる前に白のキング翼ビショップと交換できることを期待して奇妙な捌きをやろうとした。

15.Bf4!

 黒の10手目が白のクイーン翼ビショップをbポーンの守りに縛りつけていないことを証明した。15…Qxb2? は 16.Ra2! で黒の駒損になる。

15…Bb3 16.Bd3 e5?!

 フロールは Ne4-d6 を恐れていた。白は c3-c4 突きで黒のクイーン翼ビショップを捕獲することを狙ったかもしれない。黒はこれらの狙いに対処するために不本意ながら自分の白枡(特にe4とf5)を弱めた。しかしこれらの弱点は白のd列の支配とあいまって致命傷になった。代わりに 16…O-O-O 17.Ne4 Bd5! と指す方が少し良かった。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(326)

第6章 ナイト・エンディング

6.3 ナイト+ポーン(複数)対ナイト

 図326

11…Kh6

 11…Kf8 なら 12.Kf6 Kg8 13.Nf5 Kf8 14.Ng7 Kg8 15.Ne6 Kh7 16.Kg5 Kg8 17.Kg6 で早く詰む。他の手ならば黒キングを右下隅に追い込まなければならない。例えば 11…Kh7 なら 12.Kf6 Kh6 13.Nc4 Kh7(13…Kh5 なら 14.Nce5 Kh4 15.Kg6 Kg3 16.Kg5 Kg2 17.Kg4 Kf1 18.Kf3、途中 14…Kh6 なら 15.Ng4+ Kh5 16.Kf5)14.Nce5 Kg8 15.Ng6 Kh7 16.Ne7 Kh6 17.Ng8+ Kh5 18.Kf5 Kh4 19.Nf6 Kg3 20.Ke4 Kh4 21.Kf4 で黒キングは右下隅に制限される。

12.Ne8! Kh5

 12…Kh7 なら 13.Kg5 Kg8 14.Kf6 Kh7(14…Kf8 なら 15.Ng7 Kg8 16.Ne6)15.Nd6 Kh6 16.Nc4! で前の解説中の変化と同じになる。

13.Ng7+ Kh4

 13…Kh6 なら 14.Kf6 Kh7 15.Nf5 Kg8 16.Ke7 Kh7 17.Kf7 で右上隅で詰みになる。読者はもう黒キングの動きを制御するのに使われる手法について慣れたことと思う。

14.Kf4 Kh3 15.Nf5 Kg2 16.Kg4 Kh2

 16…Kf1 なら 17.Ng3+ Kg2 18.Nh5 から 19.Nhf4 で 19…Ke2 を防ぐ。

17.Nh4 Kg1 18.Ng6 Kf1 19.Ngf4 Kg1

 両方のナイトで黒キングの逃亡を止めている。後は最後の詰みの準備をするだけである。

20.Kg3 Kf1 21.Kf3 Kg1 22.Ke2 Kh2 23.Kf2 Kh1

 やっと黒キングを隅に押し込めた。しかし白はまだ注意が必要である。例えば 24.Ne5 d3 25.Nf3 d2 26.Nh5 は 26…d1=N+! で引き分けになってしまう[訳注 25.Ng4 d2 26.Ne2 d1=N+ 27.Kg3 で白が勝ちます]。

24.Ne6! Kh2 25.Ng5 Kh1 26.Ne5! d3 27.Nef3 d2 28.Ne4 d1=N+ 29.Kg3!

白の次の手で詰みになる。

 これでこの種のエンディングが実戦に現われても読者は対処できる十分な知識を得たはずである。

(この節終わり)

2014年03月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(094)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 次の試合には黒が反撃に失敗したときの白の攻撃のすさまじさが表れている。

実戦例2
白 I.A.ホロウィッツ
黒 S.フロール
米国対ソ連無線対局、1945年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 6.Ne2 Bf5 7.Ng3 Bg6 8.h4 h6

 こう指しても悪くはないが、8…h5! で白の陣地拡張策を止めこのポーンを取りにこさせるのもあり得る。

9.h5 Bh7 10.c3

 10.Bf4 Nd7 11.Qd2 から O-O-O を予定するのも有力な作戦である。しかし 10.Bf4 に対して黒は 10…Qb6! と指すことができ、白にはうまくbポーンを守る手段がない。11.Bd3!? でポーンを見捨てるのは 11…Qxd4 12.Ne2 Qxb2 13.O-O で乱戦になる。

(この章続く)

2014年03月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「体験談が描く実像」

産経新聞電子版2014年3月20日付け
「慰安婦問題、常識的判断を 体験談が描く実像」

2014年03月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(325)

第6章 ナイト・エンディング

6.3 ナイト+ポーン(複数)対ナイト

 ナイト・エンディングの実戦例に移る前に、実戦的価値はほとんどないがある程度は知っておかなければならないエンディングを採り上げておく。それは2ナイト対1ポーンのエンディングである。2ナイトだけではステイルメイトに陥って詰ませることができないことは良く知られている。ポーンがあればその可能性がないので局面によっては勝ちが可能になる。

 このエンディングについてはこれまで膨大な研究が成されてきた。特にスタディ作家のトロイツキーの貢献は大きい。しかしここでは深く立ち入るつもりはない。その代わり例を一つ用いて主要な原則を説明する。

 図325 黒の手番

 黒ポーンはできるだけ最後まで片方のナイトでせき止めておかなければならないことは明らかである。さもないとポーンが進んで来てわざと取らせる。そうなれば2ナイトでは詰められなくなる。重要な問題はどの枡でポーンを止めなければならないかということである。図325ではその境界線が示してある。白が勝つためにはポーンがこの線を越えていてはならない。ポーンがこの線を越えていなければ白が必ず勝つ。ポーンがこの線を越えている場合は白駒の配置が良い場合に限り白が勝てる。以上の話はもちろん黒キングがナイトを攻撃してポーンのせき止めを解消することができないことが前提である。それでは図の局面から指し手がどのように進行するのかを見てみよう。

1…Kb5!

 ここではチェホーバの分析を引用する。本譜の手は白にとって最も応手が難しい。他の手の変化は次のとおりである。
1)1…Kb7 2.Nc4 Ka6 3.Kc6 Ka7 4.Nd6 Ka6 5.Nb7 Ka7 6.Nbc5 Kb8 7.Kd7 Ka7 8.Kc7 Ka8 9.Nb4 d3 10.Nc6 d2 11.Nd7 d1=Q 12.Nb6#
2)1…Ka7 2.Nc4 Kb7(2…Ka6 なら 3.Kc6 で1)と同じ)3.Nc5+! Ka7(3…Kb8 なら 4.Ne5)4.Kc7 d3 5.Ne5 d2 6.Nc6+ であと2手で詰み
3)1…Ka6 2.Kc7! Kb5 3.Kb7 Ka5 4.Kc6 Ka6(4…Ka4 なら 5.Kb6 で次の変化と同じ)5.Nc4 で変化1)と同じ
4)1…Ka5 2.Kc6 Ka4 3.Kb6 Ka3 4.Kb5 Ka2 5.Kb4 Ka1 6.Nc4 Ka2 7.Ka4 Kb1 8.Kb3 Ka1 9.Kc2 Ka2 10.Nb4+ Ka1 11.Na3 d3+ 12.Kb3 d2 13.Nbc2#

2.Kc7 Ka6 3.Kc6 Ka5!

 3…Ka7 は白にとって簡単で 4.Nc4 Kb8(4…Ka6 なら 5.Nc5+ から 6.Kc7)5.Nd6 Ka7! 6.Nc5! Kb8(6…d3 なら 7.Kc7)7.Kb6 d3 8.Nd7+ であと2手で詰みになる。

4.Kc5

 4.Kb7 は 4…Kb5 でd2のナイトがそこにいないといけないので白が手詰まりに陥る。しかしすぐに 4.Nc4+ とするのは 4…Ka4 でb3への侵入をみられて良くない。一般的な指針としてせき止めているナイトに敵キングを近づけさせないようにしながらキングともう一つのナイトで敵キングを盤端に追い詰めるようにするのがよい。

4…Ka6

 4…Ka4 なら 5.Kb6 で前述の変化4)と同様に白が勝つ。

5.Nc4 Kb7 6.Kd6 Kc8 7.Na5 Kd8

 黒キングを左上隅に閉じ込めることはできないのでキング翼に追っていく。本譜の手は当然で 7…Kb8 は 8.Kc6! で負けになる。以下の手順は 8…Ka7(8…Kc8 なら 9.Nb7 Kb8 10.Nd6)9.Nb7 Ka6 10.Nb4+ Ka7 11.Kc7 d3 12.Na5 d2 13.Nac6+ であと2手で詰みになる。

8.Nb7+ Ke8

 8…Kc8 は 9.Kc6 で前の手の説明の変化になる。

9.Ke6 Kf8 10.Nd6 Kg7 11.Kf5

(この節続く)

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布局の探究(92)

「Chess Life」1994年4月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

小駒か3ポーンか?(続き)

Ⅳ.小駒を犠牲に3ポーンを得るつもりの時は、本当に3ポーンが得られることを確認せよ。チェスは無限なので周期的に思いがけない不快なことが起こる

 次の試合で白に起こったことは非常に参考になる。

シチリア防御リヒター・ラウゼル攻撃 [B67]
白 GMリュボミ-ル・リュボエビッチ
黒 GMフロリン・ゲオルギュ
ペトロポリス・インターゾーナル、1973年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bg5 e6 7.Qd2 a6 8.O-O-O Bd7 9.f4 b5!?

 この戦型はリヒター・ラウゼル攻撃に対する白の最も野心的で危険を伴う手法である。現在のところ布局の優位を保つ白の最も人気のある手段は 10.Bxf6 である。しかし1970年代には次のような黒を罰する乱暴な試みが繰り返し行なわれた。

10.Bxb5?! axb5 11.Ndxb5

 白にはd6を脅かす3個の攻撃駒があるが黒には守備駒が1個しかない。「常識」ではdポーンが落ちるはずである。それにもかかわらず黒には形勢を逆転させる驚くべき間接防御/反撃があった。

11…Nb4!!

 これまでの例との違いは、黒のクイーン翼ナイトがd7でなくより活動的なc6の地点にいたのですぐに反撃のために使えるということである。白には満足な応手がない。

 (1)12.e5 Nxa2+ 13.Nxa2 Rxa2 14.Kb1 Bxb5! 15.Kxa2 Qa8+ 16.Kb1 Ne4 黒が攻撃する側で、少し戦力得になっている。

 (2)12.Kb1 Nxa2! 13.Nxa2 Bxb5 白が駒損で「かつ」キングの安全度が劣る。

 (3)12.a3 Na2+! 13.Nxa2 Bxb5 14.Nc3 Bc6 15.Qe2 Qb6 白には戦力損の代償が何もない(ズコフ対ザビャロフ、ソ連、1977年)。

12.Bxf6

 出典の資料では 12.Nxd6+ Bxd6 13.Qxd6 Nxa2+ 14.Nxa2 Rxa2 15.Kb1 Ra7 16.Bxf6 gxf6 という手順になっている。しかし 15…Ra7 の代わりにすぐに 15…Qa8! で明らかに決まっているので(16.b3 Ra1+ 17.Kb2 Qa2+ 18.Kc3 Nxe4+)、GMゲオルギュが見落としたとは信じられない。だからもっと妥当と思われる手順を用いている。

12…gxf6 13.Nxd6+ Bxd6 14.Qxd6 Nxa2+ 15.Nxa2 Rxa2 16.Kb1 Ra7!

 ビショップを守りながら強力な 17…Qa8 を狙っている。白の問題は駒の代わりに2ポーンしか得ていないことで、収局は耐えられず、中盤戦では不安定なキングのために敵キングへの攻撃に専念する余裕もない。

17.Rd3 Qa8 18.b3

 18.Kc1 と逃げるのも良くない。18…Bb5 19.Ra3 Rxa3 20.bxa3 Rg8! 21.g3 Qc6!(22.Qb8+ Ke7 23.Qxg8 Bd3)デービス対ギズダブ戦(米国、1975年)では黒が自陣をまとめて楽に勝った。

18…Bb5! 19.R3d1 Bc6 20.Rhe1 Bxe4!

 このビショップは 21.Rxe4 Ra1+ 22.Kb2 Rxd1 のため安全である。このあと黒は攻撃と防御をうまく組み合わせて快勝した。

21.Qd4 Bg6 22.g4 O-O 23.h4 e5! 24.fxe5 Rc8 25.Rd2 Ra2 26.e6 fxe6! 27.Qxf6 Raxc2 28.Rxc2 Rxc2 29.Qxe6+ Bf7 30.Qxf7+ Kxf7 31.Kxc2 Qg2+! 32.Kd3 Qxg4 33.Re4 Qf3+ 34.Re3 Qd5+ 35.Kc3 Qc5+ 36.Kd3 Qb4 37.Re4 Qxb3+ 38.Kd4 Qf3 39.Ke5 Qf6+ 40.Kd5 h6 41.Kc4 Kg6 白投了

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カロカン防御の指し方(093)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

27.Qe2

 27.Rxe3 は 27…Rxe3 28.Qxe3 Qxe3 29.Nxe3 Bxf4 30.Rc3 Re8 で致命的だし、27.Nxe3 Bxf4 28.Rc3 Re5 から 29…Rge8 もそうである。

27…Bd3!! 28.Qxd3 Rg1+!!

 これは 28…e2 29.Ne3 よりもはるかに明快である。

29.Kxg1 e2+ 30.Ne3

 30.Kh1 は 30…Qf2! でg2かf1で詰まされる。

30…Rxe3 31.Qf5+ Re6+! 32.Kh1 Qf2! 白投了

 白はルーク得にもかかわらず成すすべがない。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(324)

第6章 ナイト・エンディング

6.3 ナイト+ポーン(複数)対ナイト

 ナイト+ポーン対ナイト+ポーンのエンディングは引き分けに終わるのが普通である。勝つことが可能なのは一方が止められないパスポーン、優勢な駒配置、敵駒の獲得や封じ込めの可能性などのような決定的な有利を得ている場合に限られる。そのような特殊な局面を扱うよりもナイト+2ポーンに対して白がナイト+1ポーンの局面を考えてみよう。このような局面は駒の配置によって結果が変わるので一般原則を述べるのは難しい。優勢側が味方の駒によって支援されたパスポーンを片翼で持っていて残りのポーンが反対翼にある場合勝つ可能性は高くなる。2ポーンが連結パスポーンとなっている場合も同じである。しかし全てのポーンと駒が同じ翼にある場合は劣勢側にも引き分けの可能性がある。ただしナイト・エンディングは他の駒の場合よりも優勢側が優位を生かす機会が多いことは確かである。

 図324 黒の手番
ゴルデノフ対カン、1946年

 局面を見れば分かるようにポーンは全てひとかたまりになっていて白キングはそれらの前という有利な地点にいる。白の唯一の問題はナイトの位置が悪いことである。しかしそれでも黒が勝つには十分でない。

1…e3

 白ナイトが戦闘に復帰してくる前に黒は最後の試みを実行する。白にとっては応手が紛らわしい。

2.fxe3+

 2.Ne6+ も可能で 2…Ke5(2…Kd5 なら 3.Nf4+ から 4.fxe3)3.Ng5 exf2+ 4.Kf1 Kf4 5.Nxf3! Kg3 6.Ke2 で黒はどうすることもできない。

2…Ke4!

 ポーンを取らないのがうまい手である。2…Kxe3 なら 3.Nd5+ だが本譜は白が手詰まりである。

3.Kf1! Nxe3+ 4.Kf2 Nd1+

 4…Ng4+ は 5.Kg3! で引き分けになる[訳注 5…f2 で黒が勝ちます]。

5.Ke1?

 この手が敗着となった。白は 5.Kg3! f2(5…Ke3 なら 6.Nd5+ Ke2 7.Nf4+)6.Kg2 Ke3 7.Nd5+ Ke2 8.Nf4+ で引き分けにできた。あるいは 5.Kf1 f2 6.Kg2、途中 5…Kf4 なら 6.Nd5+ Kg3 7.Ke1! でも受かっていた[訳注 7…f2+ で黒が勝ちます]。

5…f2+!

 白はこの手を完全に見落としていた。

6.Ke2 Kf4 0-1

 7.Nd5+(e6+)なら 7…Kg3 で白が手詰まりに陥る。以下は例えば 8.Kf1 Kf3 で次に詰みとなる。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(092)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

16.d5?

 ここは 16.b4! cxb4 17.c5 と混戦に持ち込む絶好の機会だった。黒は Qxb4、a2-a3 それに c5-c6 に気をつけなければならなくなる。

16…e5!

 中央を閉鎖して白の攻撃を終わらせた。

17.Rac1

 17.d6? は 17…Qc6 18.f3 Nb8! 19.Qa5 Na6 でdポーンが落ちる。

17…f5

 襲撃の第2波。

18.b4 Bd6!

 この手は 19…f4 を狙っている。もちろん 18…cxb4? は 19.c5! で白の攻撃がよみがえる。

19.f3

 白は 19.bxc5 と取っても 19…Nxc5 で何も成果がないので、キング翼の防御に専念する。

19…f4 20.Bf2

 20.gxf4? は 20…exf4 で黒ルークがg列から侵入する。

20…Rde8!

 黒は …e5-e4 で圧力を増すつもりである。

21.Kh1 Rhg8 22.Re1 e4! 23.Bxc5

 ほかに良い手もない。白の負けである。

23…Nxc5 24.bxc5 Qxc5!

 黒はどの駒も攻撃に参加している。白の当面の心配は 25…Qf2 である。

25.Bd1 Bc7!

 黒は 26…Ba5 だけでなく 26…Bb6 から 27…Qg1# を狙っている。

26.gxf4

 こう取るしかない。26…Ba5 には 27.Qe3! と応じる。

26…e3!

 これは白のもろい陣形を打ち砕く驚くべき一連の打撃の最初である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(323)

第6章 ナイト・エンディング

6.3 ナイト+ポーン(複数)対ナイト

 ビショップと同じくナイトも片側からしか攻撃できないルーク列ポーンに最も手こずる。だから白キングがポーンの前方にいて支援すれば勝つ可能性が非常に高くなる。レーティの次の面白いスタディはそれをよく表している。

 図323
レーティ、1929年

 黒キングがポーンからもっと離れているか黒の手番だったらもちろん白の容易な勝ちである。例えば後者の場合 1…Kb4 2.Kb6 Kc4 3.Nc3! Nd6 4.Kc7 Kc5 5.a7 で白の勝ちとなる。問題はどのようにして黒に手番を渡すかである。明らかに手待ちは不可能である。だから次の参考になる捌きが必然で一本道である。

1.Nc5!

 ポーンを 1…Nd6 から 2…Nc8+ の狙いから守らなければならないのでこの手は絶対手である。

1…Kb4

 1…Nd6+ なら白はキングの三角歩行を用いて 2.Kc7! Nb5+ 3.Kc6 Na7+ 4.Kb7 Nb5 5.Ne4! で最初の局面で黒の手番とすることができる。

2.Kb6 Nd6 3.Ne4!

 黒ナイトを要所から追い払う。もし黒がこのナイトを取れば 4.a7 で白が勝つ。

3…Nc8+ 4.Kc7!

 まだまだ気が抜けない。4.Kb7 は 4…Kb5! で白が手詰まりに陥り引き分けになる。例えば 5.Nc3+ なら 5…Ka5 だし 5.Nf6 なら 5…Nd6+ 6.Ka7 Nc8+ である。本譜の手の後 4…Na7 なら 5.Kb7 Nb5 6.Kb6 Kc4 7.Nc3 でよい。だから黒の次の手は必然である。

4…Kb5

 4…Ka5 は 5.Nc5 Na7(5…Nb6 は 6.a7 で白の勝ち[訳注 6…Kb5 で引き分けのようで正着は 6.Kb7 です。])6.Kb7 Nb5 7.Ne4! で黒がもっと早く負ける。

5.Kb7 Ka5 6.Nc5 Nd6+ 7.Kc7 Nb5+ 8.Kc6 Na7+

 8…Kb4 なら 9.Ne4 Na7+(9…Ka5 なら 10.Kb7)10.Kb7 Nb5 11.Kb6 で白が勝つ。

9.Kb7! Nb5 10.Ne4!

これで最初と同じ局面で黒の手番となっている。勝ち方は既に述べたとおりである。非常に優れたスタディであった。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(121)

「Chess Life」2006年1月号(4/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス「ベルリン」戦法[C67](続き)

戦型C) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6 6.Bg5 Be7

 勇敢な実利主義の 6…f6 という手も可能である。客観的にはたぶんこれが最善手である。しかし白の恐怖の攻撃がしばらく続くので、黒は強い精神力が必要である。白が 7.Nxe5 と取ると 7…fxg5 8.Bxc6[8.Qh5+ は 8…g6 9.Nxg6 hxg6 10.Qxh8 Nxb5 で黒の勝勢になる]8…dxc6 9.Qh5+ g6 10.Nxg6 Bg4! 11.Re1+ Be7 12.Qxg5 hxg6 13.Qxg6+ となって白がビショップの代わりに3ポーンを得る。黒キングの不安定な位置にもかかわらず黒の方が少し優勢である。7.dxe5 はソチコ対ローチェ戦(レオン、2001年)で指され 7…Nxb5 8.exf6 gxf6 9.Re1+ Kf7 10.Qd5+ Kg7 11.Bf4 Nd6 12.Nh4 Rg8 13.Nc3 Kh8 と進んで黒が安泰だったが戦いはまだ終わっていない。

7.Bxe7

 ピルズベリー対ラスカー戦(サンクトペテルブルク、1895年)では 7.Bxc6 Bxg5 8.dxe5 dxc6 9.Nxg5 Qxg5 10.exd6 cxd6 11.Re1+ Be6 12.Qxd6 Rd8 となって黒に何も問題がなかった。

7…Qxe7

 最近の何局かでは黒が 7…Nxe7 8.dxe5 Nxb5 9.a4 d5 10.axb5 Bg4 と指しほぼ互角の形勢になった。

8.Bxc6

 8.Nxe5 は 8…Nxe5 9.Re1 f6 10.dxe5 fxe5 11.Qd5(11.Qh5+ Nf7 12.Nc3 c6)11…Nf7 で黒が好調である。

8…dxc6 9.dxe5

 ここで黒ナイトは二通りの逃げ方ができるが、9…Nf5 の方が明らかに人気がある。

9…Nf5

 9…Ne4 10.Qe2 Nc5 11.h3 O-O 12.Nc3 b6(ド・ファーミアン対チャン・チョン、エリスタ、1998年)

10.Nc3 Be6

 クイーン翼にキャッスリングするのも面白い着想である。クプレイチク対ツェシュコフスキー戦(ツェティニェ、1992年)では 10…Bd7 11.Qe2 O-O-O 12.Rad1 Be6 13.Qe4 h6 と進んだ。

11.Qd2 O-O

 先に 11…Rd8 と指すこともある。

12.Qf4 Rad8

 この局面に達した試合は数多い。黒が少し気をつけなければならないように思えるが(二重cポーンの不利を抱えているので)、ほとんどの場合黒は持ちこたえることができる。そしてもし白が指しすぎれば黒は反撃の機会が得られる。少し例をあげる。

13.Ne4

 ウォルフ対アーナンド戦(ニューヨーク、1993年)は 13.Rad1 c5 14.h3 Rxd1 15.Rxd1 Rd8 16.Rd2 h6 17.g4 Nh4 18.Rxd8+ Qxd8 19.Nxh4 Qxh4 20.Kg2 Qd8 21.Qe3 b6 と進んだ。

13…Kh8 14.c3

 この手は …Nf5-d4 を防ぐためである。

14…h6

 ウォルフ対トーレ戦(ニューヨーク、1988年)は 14…b6 15.Rfe1 c5 16.h3 h6 17.Nh2 Rd3 18.Ng4 Rfd8 と進んだ。

15.h4 b6 16.Rad1 Rxd1 17.Rxd1 Rd8 18.Re1 Qd7 19.a3 c5 20.Kh2 Qb5

 これはグリエフ対アレクサンドロフ戦(ニコラエフ、1995年)で、黒が主導権を保持していた。

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カロカン防御の指し方(091)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

11.O-O?

 この手は重大な誤りだった。たぶん白はg6のビショップがg列で狙いを作り出そうという黒の試みの邪魔になると考えたのだろう。しかしブロンシュテインは白キングがキング翼で安全でないことをすぐに証明した。11.O-O? の代わりに白は 11.O-O-O h5 12.Bd3! と指すか、または 11.Nh5!? と指してでも …h7-h5 突きを止めるべきだった。

11…h5!

 手初めにブロンシュテインはhポーンをぶち壊し槌として使って白の防御を緩ませる。

12.Rfd1

 ルークがナイトのためにf1の地点を空けた。白は …h5-h4 突きを 12.h4? によって防げない。それは 12…Bd6 13.f4(13.Nh1?? Bh2#)13…f5! で、黒が …Qd8 のあと …Qxh4 から …Nf6-g4 または -e4 を狙ってくるからである。

12…h4 13.Nf1 h3! 14.g3

 これは嫌な手だが …hxg2 とさせるのはもっと悪くて黒はg列とh列の両方で攻撃できるようになる。

14…O-O-O 15.c4

 白はクイーン翼のルークのために d4-d5 または c4-c5 から b2-b4-b5 で素通し列を作りたがっている。

15…c5!

 黒はd列が素通しになるのは白クイーンが困ることになるので気にしない。

(この章続く)

2014年03月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(322)

第6章 ナイト・エンディング

6.3 ナイト+ポーン(複数)対ナイト

 黒キングが白ポーンの前にいれば黒の指し手ははるかに容易になる。この場合その他の駒が白に有利な位置にいても黒が助かる可能性が高い。図322はその例である。

 図322
アベルバッハ、1956年

 黒ナイトの位置が悪く白のキングとナイトがポーンを支援することができるにもかかわらず黒が引き分けにできると考えられていた。

1…Ke8 2.Kd5 Kd7

 もちろん 2…Nc3+ はだめで 3.Ke6 ですぐに白の勝ちになる。

 間違いだった当初の解は次のとおりである。3.Ne5+ Kc8 唯一の受けの手である。他の手では 4.Ke6 で負けになるがこの手に対して 4.Kc6 は 4…Nb4+ とされるのでだめである。4.Nd3 この手の方が有望である。4.Ke6 は 4…Nb4 5.d7+ Kc7 6.Ke7 Nd5+、途中 6.Nf7 なら 6…Nc6 でどちらも引き分けになる。4…Nc3+! 4…Kd7? は 5.Nc5+ Kc8! 6.d7+ Kc7 7.Ke6 Nb4(7…Nc3 なら 8.Nb7)8.Na6+! Nxa6 7.Ke7 で白の勝ちとなる。5.Kc6 Ne4 6.d7+ Kd8 7.Ne5 Ng5 これで明らかな引き分けである。

3.Nb8+!

 主眼点は 3…Kc8 4.Ke6 Nb4 5.d7+ Kc7(5…Kd8 なら 6.Kd6)6.Na6+! Nxa6 7.Ke7 で終わりである。

(この節続く)

2014年03月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(090)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1
白 N.バクーリン
黒 D.ブロンシュテイン
キエフ、1965年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 6.Be3

 これは無害な手である。黒は定法どおりビショップを絶好の斜筋につけて応じる。

6…Bf5 7.Qd2

 白は早いキャッスリングを策しているように見える。

7…e6 8.Ne2 Nd7 9.Ng3 Bg6 10.Be2?!

 ここは 10.O-O-O Qc7 11.Bd3 で互角になるところだった。

10…Qc7

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(321)

第6章 ナイト・エンディング

6.3 ナイト+ポーン(複数)対ナイト

 まずナイト+1ポーン対ナイトから始めよう。劣勢側のナイトはポーンと刺し違えるかポーンをせき止めることができるのでこのエンディングは引き分けになるのが普通である。しかしポーンが敵陣深く進んでいて自分のキングで支援されている場合は優勢側の勝つ可能性が高くなる。次の例を考えてみよう。

 図321
クリング、1867年

 このスタディは100年以上前に作られたものであるが永遠の教育的な価値を持っている。白は次のような手順で勝つ。

1.Ng6

 白はポーンの昇格枡の利きから黒ナイトを追い払わなければならない。白の次の狙いは 2.Ne5+ 又は 2.Nf8 でそうなればすぐに勝ちが決まる。1.Ne6 Kd5! 2.Nf8 という手順も可能で本譜の手順に戻る。

1…Kd5!

 黒は 2.Nf8 に対して 2…Ne5 という受けを用意した。黒キングはできたてのクイーンにチェックされないようにc7とb5の地点に行ってはいけない。1…Kc5 も良くなくて 2.Nf8 Ne5 3.Ka8 Nc6 4.Ne6+ から 5.Nd8 とされる。

2.Nf8 Ne5 3.Kb6

 3.Ka8 Nc6 4.Nd7 で Nb6-c8-a7 を狙う方が簡明で 4…Kd6(4…Ke6 なら 5.Nb6 Kd6 6.Nc8+ Kc7 7.Na7 Nb8 8.Nb5+)5.Nb6 Kc7 6.Nd5+ から 7.Nb4 で白が勝つ。

3…Nc6 4.Kc7

 作者の解は次のように少し手数がよけいにかかる。4.Nd7 Kd6 5.Ne5! Nb8 6.Ka7 Kc7 7.Nc4 Nc6+(7…Nd7 なら 8.Nb6 Nb8 9.Nd5+)8.Ka8 Nb8 9.Nb6 Na6(9…Nc6 なら 10.Nd5+ から 11.Nb4 で白が勝つ)10.Nd5+ の後 11.Ka7 又は 11.Nb4 で白が勝つ。

4…Nb4

 4…Kc5 なら 5.Ne6+ Kd5(5…Kb5 なら 6.Nd4+)6.Nd8 Nb4 7.Kb6 で白が勝つ。

5.Nd7 Nc6

 黒キングが動くか 5…Na6+ ならば 6.Kb6 で白が勝つ。

6.Ne5! Nb4 7.Kb6

これで白が勝つ。

(この節続く)

2014年03月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(089)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒はh8のルークが働いていないし、b6、b7、e7およびh7のポーンも弱い。しかし白にはすぐに進展を図る手段が何もない。異色ビショップについては黒が黒枡のほとんどを支配しているのに対し、白が白枡のほとんどを支配しているので黒の防御に役立っている。もし黒が …Rh8-g8-g5 または …Kg7 から …Rhd8 でルークを活用できれば困難を脱することになる。

 ブロンシュテイン=ラルセン戦法から生じる多くの戦型における黒の攻撃の可能性が好きな選手にとっては、このような守勢の局面には満足しないだろう。そのような人のためには9手目でラルセンの提示する激しい手順を推奨する。

 それではブロンシュテイン=ラルセン戦法の典型的な戦略が見られる試合を少し分析しよう。第1局では黒がキング翼攻撃を行なう。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(320)

第6章 ナイト・エンディング

6.2 ナイト+ポーン対ポーン(複数)

 防御側が複数のポーンを持っている場合は分類が不可能なほど非常に難解な局面もでてくる。通常はナイトを持っている方が勝つはずである。次の局面はその面白い例である。

 図320
クッベル

 ナイトとキングが黒のfポーンを止めるのに不具合な位置にいるので白が勝てるとはとても信じられない。しかし黒キングも不都合な地点にいるので白はそれを利用して次のように参考になる手段で勝つことができる。

1.Nd6!

 黒ポーンを止めるためにはナイトがc4の地点でチェックしなければならないことは明らかである。重要なのはナイトが正しい経路をとることである。例えば 1.Ne5 は 1…Kb5! 2.Nxf3(2.Ng4 なら 2…Kc4 3.Nf2 Kc3 4.Ka4 Kd2 5.e4 Ke3 で引き分けになる)2…Kc4 3.e4 h5 4.Kb2 h4 5.Kc2(5.e5 なら 5…Kd5)5…h3 6.Kd2 h2 7.Nxh2 Kd4 で最後のポーンが落ちるので引き分けになる。本譜の手は 1…Kb5 を防ぎ 2.Ne4 から 3.Kb3 ですぐ勝ちになる手をみている。

1…f2 2.Nc4+ Kb5 3.Nd2 f1=Q!

 この手は自分のキングの通り道を作って逆襲するためである。黒が自分のポーンに固執すれば両方のポーンが落ちてしまう。例えば 3…h5 なら 4.Kb3 h4 5.Kc3 h3 7.Nf1 である。

4.Nxf1 Kc4 5.Kb2 Kd3 6.Kc1 Ke2!

 この手が唯一のチャンスである。6…h5 は 7.Kd1 h4 8.Ke1 h3 9.Kf2 で白が簡単に勝つ。

7.e4 Kxf1

 黒の策略は成功したように見える。白がクイーンを作れば黒のhポーンがh2に到達し教科書どおりの引き分けになる。しかし白はまだ手段が尽きたわけではない。

8.Kd2! h5

 8…Kf2 なら 9.e5 h5 10.e6 h4 11.e7 h3 12.e8=Q h2 13.Qe2+ Kg1 14.Ke3 h1=Q 15.Qf2# で詰みになる。

9.Ke3 Kg2

 9…h4 は 10.Kf3 でポーンを取られる。また 9…Kg1 なら 10.Kf3!(10.Kf4? は 10…Kg2 11.Kg5 Kg3! で引き分けになる[訳注 11.e5 で白が勝ちます])10…Kh2 11.e5 で白が勝つ。

10.e5 h4 11.e6 h3 12.e7 h2 13.e8=Q h1=Q

 白の巧妙な指し回しで周知の勝ちのクイーン・エンディングになった。

14.Qg6+ Kh3

 14…Kf1 は 15.Qf5+ Kg2 16.Qg4+ で本譜に戻る。また 14…Kh2 は 15.Kf2 で詰まされる。

15.Qh5+ Kg2 16.Qg4+ Kh2

 16…Kf1 なら 17.Qe2+ Kg1 18.Qf2# で即詰みになる。

17.Kf2

これで白の勝ちである。

 素晴らしいエンディングであった。

 似たような局面をもっと挙げることもできる。しかし読者は既にナイト対ポーンのエンディングの要領を十分に理解したことと思う。そこですぐに両方にナイトのある局面に向かうことにする。

(この節終わり)

2014年03月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(350)

「British Chess Magazine」2014年2月号(2/3)

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ロンドン・チェスクラシック 決勝戦

IMトム・レンドル

 本誌先月号で既報のとおり、現在世界第3位にランクされている米国のGMヒカル・ナカムラが決勝2番勝負で元世界選手権挑戦者のボリス・ゲルファンドを破って2013年ロンドン・チェスクラシックに優勝した。

白 H.ナカムラ
黒 B.ゲルファンド

2013年ロンドン・チェスクラシック
グリューンフェルト防御ロシアシステム [D97]

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Nf3 Bg7 5.Qb3 dx4 6.Qxc4 O-O 7.e4 a6 8.e5 b5 9.Qb3 Nfd7

 この局面はこれまで数多く現れた。ナカムラがグリューンフェルト防御に対し難解な手順を選択することにしたのは驚くに当たらない。しかし次の2手で比較的未踏の海に舵を切った。

10.Ng5

 10.e6 が主手順で2013年8月にゲルファンドがこの手を指されている。10…fxe6 11.Be3(11.Qxe6+ は 11…Kh8 で、危険そうな 12.Ng5 が 12…Ne5! で受かるので黒が良い)11…Nf6 12.a4 b4 13.Qxb4 Nc6 14.Qa3 Qd6 15.Be2(15.Bc4!? がわずかに改良手になっていそうである)15…Nb4 16.Rc1 Bb7 17.h3 Bxf3 18.gxf3 Nbd5 19.a5 Rfb8 20.Bd2 Qxa3 21.bxa3 Nxc3 22.Rxc3 ½-½ A.モイセエンコ対B.ゲルファンド、トロムセ、2013年

10…Nc6 11.Nxf7

 重要な変化は 11.Ne6 だが黒がまったく大丈夫なはずである。例えば 11…Na5 はたぶん最も安全な応手で 12.Nxd8(12.Qa3 fxe6 13.Qxa5 c5!)12…Nxb3 13.axb3 Rxd8 14.Nxb5 c6 15.Nc3 c5! 16.Bg5 cxd4 17.Nd5 Bb7 で少なくとも互角になっている。11.Be3 は2回指されているが 11…Na5! 12.Qd1 Nb6 で黒が好調で、2013年ミドルトンでのC.ホルト対M.モルナー戦では白が 13.h4 f6(黒が捨て駒をさせたくなければ 13…h6 の方が安全である)14.Nxh7!? Kxh7 15.h5 で攻勢に出た。しかしここで 15…Rh8! 16.Bd3 Kg8 17.Bxg6 Nac4 と応じられていたら代償に苦労しただろう。

11…Rxf7 12.e6 Nxd4! 13.exf7+ Kf8 14.Qd1 Nc5

 白は交換得かもしれないが、私はナカムラの布局に納得がいかなかった。黒駒はとりわけ活発で、f7のポーンは近い将来落ちる。またゲルファンドはかなり速く自信をもって布局を指すことができて、そのためこの段階で少し時間でリードしていた。

15.Be3 Bf5 16.Rc1 Qd6 17.b4!?

 ナカムラは自分の棋風に忠実に黒に最大限の圧力をかけている。黒は好機を逃したように見えたけれども、この段階では(特に快速戦では)難解な手順を完璧に読むのは至難の業である。だから相手に間違える可能性を与えることは重要である。ゲルファンドにとっては不運なことにまさにそれがここで起こった。

 たぶん 17.f3 が白の最も安全な手だが、それなら黒には圧力がかからなくなり 17…Rd8 18.Kf2 Kxf7 で少し優勢なはずである。

17…Ne4?

 17…Qe6! 18.bxc5 Rd8 なら …Nc2+ の狙いに適当な受けがないので黒がかなり優勢だった。例えば 19.Be2 なら 19…Nc2+ 20.Qxc2 Bxc2 21.Rxc2 b4! 22.Nd1 Qe4 23.Rc4 Qxg2 24.Rf1 a5 である。ここでさえ黒のクイーンとポーンに対しルーク、ナイトそれに
ビショップというように白が技術的には戦力得だが、黒がはるかに連係が良いことは明らかである。明らかにこの局面で指す余地がまだまだあるが、私の見るところ黒の勝つ可能性が高い。17…Nce6 は 17…Qe6 ほど強い手ではないが、盤上にもっと駒が残っていて黒がd4の重要な地点の支配を固めるのでたぶん実戦よりもまだ良い。

18.Nxe4 Bxe4 19.f3 Bf5 20.Qd2 Rd8 21.Kf2 Kxf7 22.Be2

 急に前からの黒の多くの圧力が無効になった。もちろん黒は交換損に対し1ポーンを得ているが、この時点で白が少なくとも問題ないと言っても差支えない。ゲルファンドにとって不運なことにここで勝負にかかわるような重大な見落としをしていた。

22…Qf6?

 22…Rd7 23.h4 h5 ならまだ互角で先は長かった。

23.Rxc7! Ne6 24.Rd7

 黒が単純にこの手を見落としていたように思われる。2手前までこの地点ははっきりf5のビショップの支配下にあった。今や白は完全に交換得で、ナカムラは持ち前の技量で黒に何も反撃を与えずに勝つことができた。

24…Rc8 25.Bd3

 ビショップをb3に出す 25.Bd1! の方がはるかに強力である。

25…Rc3 26.Bxf5 gxf5 27.f4 Rc4 28.Rc1 Re4 29.g3!

 ナカムラは局面を忙しくさせたくなかった。代わりに単に弱点を守り、すきをつかれないようにした。

29…h5 30.h4 Qg6 31.Bc5 Bf6 32.Re1

32…Qg4

 32…Rc4? は 33.Rxe6! Kxe6 34.Qd5# なので黒はルークを交換させなければならない。

33.Rxe4 fxe4 34.Qd1 Qf5 35.Rd5 Qh3 36.Qf1 0-1

 クイーン同士が消えた局面は特に黒の弱いポーンが白枡にあり白ルークのためにすぐに落ちるので收局は白の楽勝である。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

カロカン防御の指し方(088)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 これが白の布局作戦の極致である。

 本譜は1964年アムステルダムでの元世界チャンピオン・ワシリー・スミスロフ(白)対GMルデク・パッハマン戦をたどる。

10…Rd8

 黒がキングを中央に置いておくのは危険そうに思われるが、パッハマンは 10…O-O-O と指したくなかった。理由は 11.Qd4! で 12.Qxa7 と 12.Bf4 とを狙われるからである。黒は 11…Qb6 あるいは 11…cxd5!? 12.Qxa7 Qb6! ででも切り抜けることができるけれども、キングはまだ標的のままである。

 10…Rd8 のあと実戦は 11.c4 Nb6! 12.Be3 Bxf3(12…cxd5? は悪手で、13.cxd5 Nxd5? 14.Bb5+!、途中 13…Rxd5? なら 14.Bxb6! Rxd1 15.Bxc7 で白の駒得になる)13.Bxb6!(13.Bxf3? は 13…Nxc4)13…axb6(13…Qxb6 でもよい)14.Bxf3 cxd5 15.cxd5 Bh6 16.Qa4+ Kf8 と進んで、白がわずかに優勢になった。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(319)

第6章 ナイト・エンディング

6.2 ナイト+ポーン対ポーン(複数)

 以上の2例を見たので次のきれいなスタディを分析する準備ができた。

 図319
プロケシュ、1946年

 白は黒ポーンを取れるが自分のポーンも 1…Kf2 で危うくなる。白キングはポーンの助けに間に合わないのでナイトがポーンを守らなければならず次のような面白い攻防が見られる。

1.e4!

 1.Nxe6 は 1…Kf2 2.e4 Ke3 で引き分けになる。以下は例えば 3.e5 なら 3…Ke4、3.Ng5 なら 3…Kf4、3.Nc5 なら 3…Kd4 である。本譜の手の後黒キングは白ポーンを追わなければならない。1…e5 だと 2.Nd5 Kf2 3.Kb2 Kf3 4.Nf6 でだめである。

1…Kf2 2.Nd5!

 この妙手の意味は図317の説明に戻って考えてみれば明らかである。代わりに 2.Nb5 Ke3 3.Nc3 は 3…Kd3! 4.Kb2 Kd2 5.Kb3 Kd3 6.Kb4 Kd4 で黒が見合いを維持し以前の例で見たように引き分けになる。本譜の手は重要なe3の地点を守り黒キングが速やかにクイーン翼に来るのを止めている。

2…Kf3

 2…Ke2 なら 3.Nf6 Kd3 4.e5 Kd4 5.Nd7 でよい。

3.Nc3 Ke3 4.Ka2!

 図317の分析で見たように白は勝つためには見合いをとらなければならない。a2の地点からは白キングは黒のd2(d4)とd3の枡に対応してb2とb3の枡をにらんでいる。明らかに 4.Kb2 は 4…Kd2!、4.Kb1 は 4…Kd3! で引き分けになる。

4…Kd4 5.Kb2! Kd3

 5…Ke3 なら 6.Kc2 で白が勝つ。また 5…Kc4 なら 6.Kc2 Kd4 7.Kd2 e5(7…Kc4 なら 8.Ne2)8.Kc2 Ke3 9.Kb3 Kd3 10.Kb4 Kd4 11.Kb5! Kxc3 12.Kc5 で白が勝つ。

6.Kb3 Kd4 7.Kb4 Kd3 8.Kc5 Kxc3 9.e5

次に 10.Kd6 で白が勝つ。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(087)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 9…e6 10.c4 Nd7 11.d5! O-O-O!

 ここで 12.Nd4 が良さそうに見える。12…Bxe2? 13.Qxe2 のあと黒のe6のポーンが困った状態になっていて、13…cxd5 14.cxd5 exd5 は白の注文どおりである。白は 15.Be3! と攻撃態勢を整え、16.Rac1 と 16.Nb5 を狙う。

 しかしラルセンは 12…Bg6! でクイーン翼ビショップを保存する手段を見つけた。白が 13.dxe6? でポーン得できないのは、黒が 13…Ne5! で白のナイトを釘付けにし …c6-c5、…Bc5、…Qb6 またはこれらの手の組み合わせで白ナイトを取ってしまうからである。白は 13.Be3 またはほかの「穏やかな」手で妥協しなければならず、黒が 13…c5 で白の攻撃をかわすことができる。

 11.d5! O-O-O! の局面は両者にとって重要である。もし白が 12.Nd4 をやめて 12.dxc6 と指せば 12…bxc6 で局面は非常に複雑になる。黒の露出したキングは意外にも安全である。もし白が 13.Qa4 と指せば 13…Bc5! という応手で黒ビショップが重要な斜筋を占め新たな駒が戦闘配置につく。そのあと黒はd列を利用して白の狙いを無力化することができ、g列を使って 14…Rhg8 から 15…Qg3! のような狙いを作り出すことができる。白は自分のビショップの働ける地点を見つけるのに苦労することになる。全体的にはいい勝負である。

10.d5!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(318)

第6章 ナイト・エンディング

6.2 ナイト+ポーン対ポーン(複数)

 この手段は実戦でしばしば使用可能で一見絶望的な局面を救うことができるので注意する必要がある。例えば次の例でも応用可能である。

 図318

 白の手番ならば勝ちがない。例えば 1.Ke6 なら 1…Kg6! 2.Ke5 Kg5 3.Ke4 Kg4 で引き分けである。また 1.Ne3 なら 1…h4! 2.g4 h3 である。もし図の局面で黒の手番だったらもちろん白の簡単な勝ちになる。

(この節続く)

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布局の探究(91)

「Chess Life」1994年4月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

小駒か3ポーンか?(続き)

Ⅲ.盤上にクイーンがあり両者に特に問題がないなら動的均衡が最も考えられる結果で、うまく指した方が勝つことになる

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B97]
白 GMガータ・カームスキー
黒 GMイリア・グレビッチ
米国選手権戦、1991年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Qb6 8.Nb3 Be7 9.Qf3 Nbd7 10.O-O-O Qc7 11.Qg3 b5! 12.Bxf6

 白のキング翼ナイトが働きのないb3の地点に「引っ込んだ」ので、b5での捨て駒は準備がいる。ここで 12…Bxf6 なら 13.Bxb5! で黒は 13…O-O と指してポーンの代償にクイーン翼での反撃に期待するのが良い。なぜなら 13…axb5? は 14.Nxb5 Qb8 15.Nxd6+ Kf8 16.e5 となって、白に駒の代わりに立派な3ポーンと強力な締め付けがあるので(グレビッチ)、黒が悪いからである。

12…Nxf6 13.e5!

 白は 13.Qxg7?! に誘惑されなかった。13…Rg8 14.Qh6 Ng4 15.Qxh7 Kf8 となれば黒の反撃が強力である(カームスキー)。代わりに白は自分の捨て駒を始めた。

13…dxe5 14.fxe5 Nd7 15.Bxb5!? axb5 16.Nxb5 Qb6 17.Qxg7 Rf8 18.Nd6+ Bxd6 19.exd6

 一段落のあと白が駒の代わりに「良質な3ポーン」を得ていて、4連結パスポーンにさえなっている。それでもこれらのポーンは白キングのいる側にあり、黒のクイーンとクイーン翼ルークが白キングを危険にさらす用意をしているので囲いとして必要である。さらに黒の小駒も「優良」である。ナイトは効果的にdポーンをせき止め、ビショップには素通しの対角斜筋がある。私の考えでは動的に均衡がとれている。

 黒は 19…Rxa2 と取ると 20.Rhe1 で 21.Rxe6+ を狙われるのでそうは指さない。白は都合のよいときにhポーンを取ることもできる。代わりに黒は自分のクイーンの位置を改善し白のクイーンを追い返す。

19…Qe3+! 20.Kb1 Qe5 21.Qg4!

 クイーン交換は黒が有利である。黒はビショップとキング翼ルークが素通しの筋が使え、eポーンがパスポーンになっていて、白はクイーン翼を動員するのが難しい。また 21.Qxh7?! も 21…Rh8 22.Qd3 Ba6 23.Qd2 Bb7! 24.Rhe1 Qxh2 で黒の戦力が活発化する(カームスキー)。

21…h5 22.Qh4 Qf6 23.Qxh5 Rh8 24.Qg4 Bb7 25.Rhe1 Qh4

 GMグレビッチによれば 25…Kf8!? 26.Rf1 Qh6 27.Qc4 Rc8 28.Qb5 Bc6 29.Qa6 Kg7 30.Rd4 Ne5! も黒の反撃が有効に決まる。

26.Qg7 Qf6 27.Qg3 Qh4?

 ここから白はみごとな駒の連係を達成し黒のクイーン翼での動きを止める。黒の正着は 27…Ra4! 28.Qd3 Rhh4 29.a3 Bc6! で、GMグレビッチは「形勢不明」と判断している。

28.Qe3 Qxh2 29.Nd4! Bd5 30.b3 Qh6 31.Qe2 Kf8 32.Nb5 Bc6 33.Nd4

 ここでは 33.Nc7! という強手があり 33…Rb8 34.Qc4 Bxg2 35.Rg1! となれば、黒キングが危ない所にいるので白の攻撃が決まる(グレビッチ)。

33…Bd5 34.Rf1 Qg6 35.g4! Re8?! 36.Nb5 Rd8 37.Nc7 Be4 38.Rf4! Nf6 39.Nxe6+! fxe6 40.Rdf1

 白は利子付きで戦力を取り戻す。その結果ルークと4パスポーン対2小駒という駒割になるが、本稿の範囲外になる。だから以降の手順は解説抜きであげておく。GMカームスキーが陣形と戦力の優位を危なげなく勝ちにつなげた。

40…Rh1 41.Rxh1 Kg7 42.Rhf1 Nd5 43.Rf7+ Kg8 44.Qd2 Qxg4 45.d7! Qh4 46.Qa5 Bxc2+ 47.Kb2! Bf5 48.R7xf5! Rxd7 49.Qa8+ Rd8 50.Rg1+ Kh7 51.Qb7+ 黒投了

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カテゴリ: 布局の探究1

カロカン防御の指し方(086)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

9…Nd7?!

 黒がこう指したということは白の危険な d4-d5 突きが避けられないことを認めたということで、自陣への被害を最小限にしようとしている。このいくらか守勢の手段はほんのわずか不利なだけの比較的堅固な陣形になるけれども、理にかなっていない。なぜなら黒は 6.Ne2 や 6.c3 の戦型のように、いい勝負になる激しい戦いに努めるべきだからである。

 この条件にかなう手はベント・ラルセンの着想による手である。彼の推奨した手は 9…e6 10.c4 Nd7 11.d5!(一見この手は白が d5xe6 と指すこともできるので主手順の 9…Nd7?! 10.d5! よりもずっと強力に見える)11…O-O-O! である。

 黒はキングを中央からよけると同時に、クイーン翼ルークを素通しになりそうな列に置いている。…c6-c5 と突いてa7-e3の斜筋を閉じることもできるが、絶対必要というわけではない。黒キングが安全になれば、黒は白キングに通じる素通しg列のあるキング翼に注意を集中することができる。だから白はすぐに動かなければならない。

 9…e6 10.c4 Nd7 11.d5! O-O-O!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(317)

第6章 ナイト・エンディング

6.2 ナイト+ポーン対ポーン(複数)

 時には敵キングがナイトとポーンを攻撃していて白が自分の駒を自由に動かすことができない局面がある。それが次の例である。

 図317 黒の手番
ブラックバーン対ツーカートルト、1881年

 この局面は1881年のブラックバーン対ツーカートルトの番勝負に現れた。活動的な黒キングは白ポーンを攻撃し続けることにより受け切ることができる。白はポーンを進めることもナイトを動かすこともできないので唯一の可能性は黒ポーンをキングで攻撃することである。しかしこれも次のように正確に受けられるとうまくいかない。

1…Kg3!

 黒は白キングをf2に行かせてはならないし自分のポーンを動かしてもいけない。例えば 1…g5 は 2.Kd3 Kf3 3.Kd4 Kf4 4.Kd5! Kxe3 5.Ke5 で白が勝つ。また 1…Ke4 なら 2.Ng2 から 3.Kf2 で白が簡単に勝つ。もし図317の局面で白の手番だったら 1.Kf2! で 1…g5(1…Ke4 なら 2.Ng2)を余儀なくさせ 2.Ke2 Kg3 3.Kd3 で先の変化と同様に勝つ。

2.Kd1 Kf3!

 黒はキングをf列に動かす時必ず見合いを取らなければならない。例えば 2…Kf2 でも 2…Kf4 でも白に 3.Kd2 で見合いをとることを許してしまい 3…Kf3 4.Kd3 Kf4 5.Kd4 Kf3 6.Ke5! Kxe3 7.Kf6 Kf4 8.g5 で白の勝ちになる。

3.Kd2 Kf2

 斜めの見合いでも大丈夫である。即ち 3…Kf4 4.Ke2 Kg3! で1手目の局面に戻る。本譜の手に対して 4.Nf5 Kf3 5.Nh6 とこられても 5…Kf4 から 6…Kg5 があるので怖くない。

4.Kd3 Kf3 5.Kd4 Kf4!

これで白はどうすることもできない。6.Kd5 なら 6…Kxe3 7.Ke5 Kf3 で白は 8.Kf6 で引き分けにするしかない。8.g5 は 8…Kg4 9.Kf6 Kh5 で白の方が負けになってしまう。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(085)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 この自然な展開の手は白ナイトに対する釘付けをはずしキャッスリングの用意をしている。既に白は素早い展開と d4-d5 と突く早い仕掛けを策している。

7…Qc7

 7…e6 という手も当然ある。本譜の手は …e7-e5 突きを選択肢として残すところに利点があるが、黒は滅多に行使しない。7…e6 8.h3 Bh5 9.O-O のあと黒は 9…Qc7 10.c4 Nd7 で通い慣れた道を行くこともできるし、9…Bd6 で独自の道に踏み出すこともできる。

8.h3!

 この手はキャッスリングの準備に役立つ。8.O-O は 8…Rg8! で …Bh3 の可能性を考慮しなければならない。本譜の手はキング翼をひどく弱めることなくこの心配をなくしている。h2-h3 突きに伴う通常の欠点は、黒にgポーンをg4まで突くことにより列を素通しにする機会を与えるかもしれないということである。しかしここではそれは不可能である。

8…Bh5

 8…Bxf3 は 9.Bxf3 で白が d4-d5 で仕掛けるのを助けることになる。未踏の可能性は 8…Bf5?! だが、9.Nh4 Bg6 10.O-O のあと 11.f4 f5 12.g4!? の狙いに加えて 11.c4 から 12.d5 の狙いがあるので危険そうである。

9.O-O

 この判断も当を得ている。白は半素通しg列での黒の反撃を恐れない。というのは黒が攻撃を始める前に d4-d5 突きで中央で攻撃を仕掛けるつもりだからである。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(316)

第6章 ナイト・エンディング

6.2 ナイト+ポーン対ポーン(複数)

 この程度の戦力の優位でも通常は優勢側の簡単な勝ちになる。しかし受けの可能な局面もいくつかある。面白そうな局面を少し検討してみよう。

 図316
グリゴリエフ、1933年

 このような局面はナイト・エンディングでは非常に良く現れる。白はナイト得にもかかわらず勝つのは容易でない。その大きな理由はルーク列ポーンがナイトの助けなしにはクイーンになることができずそのナイトはクイーン翼に縛り付けられているからである。白キングがクイーン翼に向かえば自分のポーンが取られてしまう。だから唯一の勝つ可能性は黒キングを手詰まりに追い込んでからナイトを呼び寄せて詰めることにある。次の正解手順から分かるように間合いが決定的な役割を果たす。

1.Na2!

 白が勝つためには黒キングがg8、白キングがg6、ナイトがb4の局面にしなければならない。そこからは 1.h7+ Kh8 2.Nc6 の後2手で詰めることができる。逆に黒は同じ局面で自分の手番にしなければならない。そうすれば 1…Kh8 と指して、白がチェックでhポーンを進めるのを避けることができる。図316で黒は 1…Kg8! で引き分けにすることを狙っていて 2.Kg6 Kh8 の時はナイトはa2にいなければならない。従って本譜の手の理由はこの手順の時 3.Nb4 と指して前述のように勝てるようにするためである。

1…Kf8 2.Kf6!

 もちろん 2.Kg6 は 2…Kg8 でだめで以下は 3.Nb4 Kh8 4.Nc6 a2 5.Ne5 a1=Q 6.Nf7+ Kg8 7.h7+ Kf8 でクイーンがhポーンの昇格枡に利いている。

2…Kg8 3.Kg6 Kh8 4.Nb4 Kg8 5.h7+ Kh8 6.Nc6

これであと2手で詰みになる。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(120)

「Chess Life」2006年1月号(3/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス「ベルリン」戦法[C67](続き)

戦型B) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6 6.dxe5

 この手は一時的にビショップを犠牲にする。

6…Nxb5

 そしてここで

7.a4

で黒のナイトを捕獲する。

 ここで黒には駒得を返す方法がいくつかある。

7…Nbd4

 これが黒にとって最も安全で最善手である。

 ほかの手も少し見てみよう。

 7…d6 8.e6! このポーン捨てが白の手の要点である。8…fxe6(8…Bxe6 なら 9.axb5 Ne5 10.Nd4 から 11.f4 でポーンの代償がある)

 9.axb5 Ne7 10.Nc3 Ng6(10…Nf5 11.Nd4 Qf6[11…Nxd4 12.Qxd4 c5 13.bxc6e.p. bxc6 14.Re1 これはグセイノフ対アレクサンドロフ戦(ドバイ、2005年)で、白が展開で大差をつけている]12.Nxf5 Qxf5 ナン対ロマニシン(メキシコ、1977年)白は 12.b6! cxb6 13.Ndb5 Qd8 14.Bg5 と指す方がずっと良かった)

 11.Qd4! Qf6 12.Qc4! Qd8 13.Ng5 Ne5 14.Qe4 Qe7 チャンドラー対ブルナー(ルツェルン、1989年)ここで最も簡明なのは 15.Nxh7 とポーンを取る手で、白が優勢である。

 7…Nd6 8.Bg5 f6(8…Be7 は 9.Bxe7 Nxe7 10.exd6 となって、黒のdポーンが弱い孤立ポーンになるので白がはっきり優勢である)

 9.Re1!(9.exd6 Bxd6 より優る)9…Be7[9…fxg5 10.exd6+ Kf7 11.Qd5+ Kg6 なら 12.h4! Bxd6(12…gxh4 13.Re5 h6 14.Qe4+ Kf7 15.Qc4+ Kg6 16.Nxh4+ Kh7 17.Qe4+ Kg8 18.Re8 Qf6 19.Ng6)13.g4! Bf4(13…gxh4 14.Qf5+ Kh6 15.Qh5#)14.hxg5 Bxg5 15.Qf5+ Kh6 16.Kg2! g6 17.Qf7 黒は 18.Rh1+ が防げない]

 10.exd6 cxd6(10…fxg5 11.dxe7 Nxe7 12.Qd5 黒のキャッスリングを防いでいる 12…h6 13.Nd4 d6 14.Ra3)11.Bf4 白が黒のd6のポーンを取って優勢になるのは時間の問題にすぎない。

8.Nxd4 Nxd4

 黒が 8…d6 9.Nxc6 bxc6 10.Qf3 dxe5 11.Qxc6+ Bd7 12.Qe4 Bd6 13.f4 O-O 14.fxe5 でポーンを捨てた試合もある。黒には 14…Qe7 15.Bf4 Rab8 でいくらか代償があるけれども、私は白の方を持ちたい。

9.Qxd4 d5

 黒はこうポーンを突かなければならない。さもないと黒陣が狭小なままである。

 ここで白は面白い戦いの試合にすることも退屈な収局の試合にすることもできるが、どちらも互角の局面である。

10.Nc3

 10.exd6e.p. なら 10…Qxd6 で黒はちょうどキングを安全にすることができる。例えば 11.Qe3+(11.Qe4+ なら 11…Qe6 12.Qd4 Qd6!、11.Re1+ なら 11…Be6 12.Qe4 O-O-O)11…Be6 12.Nc3 c6 13.Ne4 Qe5 14.Re1 Be7 15.Bd2 O-O シロフ対ゲオルギエフ(ボスニア、2002年)

10…c6 11.a5

 アピセラ対ダウトフ戦(フランス、2005年)では 11.Be3 Bf5 12.f4 Qb6 13.Qxb6 axb6 14.Bxb6 Bxc2 と進んで黒が少し優勢だった。

11…Bf5 12.f4 Qd7

 キンダーマン対ヒクル戦(ドイツ、1990年)では 12…Bxc2?! 13.f5 で白の攻撃が厳しかった。

13.Rf2 h5

 黒が白枡をしっかり支配している。

14.Be3 Rh6

 これはルークを端から働かせる珍しい手段である。しかしこの場合はうまくいく。

15.Na4 Rg6

 ナン対サロフ(ハイファ、1989年)黒キングは確かにキャッスリングしていないが、白キングも少なくとも同じくらい危険である。

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カロカン防御の指し方(084)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Bf5 7.Bd3 の局面

 ラルセンは 7…Bg6(8.Bxg6 hxg6 でポーンがくっつくことを期待した)8.O-O Qc7 9.c4 Nd7 10.d5! O-O-O 11.Be3(11.dxc6? は 11…Nc5! でd3のビショップが釘付けで取られる)11…e5 12.Be2!(黒からの 12…e4 の狙いを軽くかわした)12…Kb8(12…c5 でクイーン翼を閉鎖するのは 12.Be2 の別の主眼点が明らかになる。すなわち白は 13.Nh4 と指して 14.Bg4 から 15.Bf5 で黒のキング翼での動きを封殺するか 14.f4! と突くことを意図する)13.Rc1 f5 14.c5! と指して白の攻撃に蹴散らされた。ここで 14…cxd5 と取れば白は 15.c6! bxc6 16.Bb5! で攻撃の筋をもっと開放する。

 (7…Bd6 の代わりに)7…Bxd3 なら報いはそれほどひどくないが、それでも黒は劣勢である。例えば 8.Qxd3 Nd7 9.O-O e6(9…Qc7 はすぐに 10.d5! と突かれる)10.c4(10.Bf4 も黒が容易に白ビショップに対抗できないので魅力的である)10…Qc7 11.d5! となる。黒キングは 11…O-O-O で砲列線を脱するが、12.dxe6 fxe6 13.Qe2 でまた黒のeポーンが白から Nd4 や Rfe1 で攻撃目標にされる。黒はクイーン翼ビショップがないのを嘆くことになる。もし黒が …e6-e5 と突けば、白ナイトが以前黒のクイーン翼ビショップによって占拠されていたf5の地点に居座ることになる。

 白は 13.Qe2 の代わりに 13.Qe3!? でa7とe6を両当たりにすることができる。しかし黒は攻撃的に 13…Bc5! 14.Qxe6 Rde8 15.Qf5 Re2 と応じることができ、白がどのようにポーン得を活かすのかは見当がつかない。黒が戦力を与える代わりに展開で大差をつけるこのような変化はついには 6…Bf5 7.Bd3! Bxd3 を復活させるかもしれないが、現在の定跡では白が優勢になるはずとしている。

 黒のクイーン翼ビショップは通常はf5の地点を目指す。6.Nf3 の主手順は黒ビショップがg4に行く方が役に立つ数少ない例外の一つである。

6.Be2

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(315)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 最後に有益な注意をしておくとナイト+ポーン対キングで自分のキングが遠く離れている時ナイトでポーンを背後から守るのが最善である。敵キングはナイトを取ることができない。もし取ればポーンのクイーン昇格を許してしまう。例えば次の局面を考えてみる。

 図315

 黒が 1…Kb3 を狙っているのでナイトを動かさなければならない。1.Nb2! Kb3 2.a4 だけが白の勝ちとなる。1.Nb6? は 1…Kb3 2.a4 Kb4 3.Kd2 Ka5 、1.Nc5? も 1…Kc3 2.Ke2 Kc4 3.Nd3 Kb3 で引き分けになる。

(この節終わり)

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カロカン防御の指し方(083)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 10…Qa5 の局面

 この局面で黒の見通しが明るくなったことが、ブロンシュテイン=ラルセン戦法の人気が上昇した主な理由の一つである。白はh5のポーンを取りたければ、11.b4 Qc7 12.Nxh5 と指さなければならない。ここで 12…a5 または 12…O-O-O のあと 13…e5 で黒がポーンの代わりに攻撃に出る。白はキング翼にキャッスリングしようとクイーン翼にキャッスリングしようと、bポーンとhポーンを突いてしまっているのでキングの位置が不安定である。だからといってキングが中央にいると …O-O-O から …e7-e5 のあとd列の黒ルークの攻撃を受けやすくなる。黒の攻撃力が発揮される例については実戦例3が参考になる。

 6.c3 Bf5 7.Ne2 は 6.Ne2 に似ている。そして黒は再び 7…e6 8.Ng3 Bg6 9.h4 h5!? でポーンをくれてやる。実際 10.Be2 Qa5 となれば 6.Ne2 Bf5 の戦型で考えたのと同じ局面になる。だから 6.c3 は攻撃的に応じられると 6.Ne2 とちょうど同じ危険性を抱えることになる。

 6.c3 Bf5 に 7.Ne2 でなく 7.Nf3 と指せば独立した戦型になる。しかし 7…e6 8.Bf4(8.Nh4 は 8…Bg6 9.Nxg6 hxg6! となって黒のポーンを強化するだけである)8…Bd6! で黒が白の強力な地点にいるビショップに挑み展開を円滑に完了することができる。

 最後に 6.Bf4 は …Qc7 を防ぐことにより黒の常用の展開を妨げる。しかし 6…Bf5 のあと 7…e6 から 8…Bd6! で黒陣が楽になる。黒の「不良」クイーン翼ビショップがポーン陣形の外側に無事に展開される限り、黒は自分の「優良」キング翼ビショップの交換を恐れる必要がない。クイーン翼ビショップはまだ「不良」だけれども、白の残りの「優良」キング翼ビショップより働きが劣ることにはならない。

6…Bg4

 6…Bf5?!6.Bd3! があるので正確さで少し劣る。白枡ビショップ同士が交換されると黒が白枡で少し弱くなり、白が目標の d4-d5 突きを達成しやすくなる。これらの小さな考慮点は1973年のラドゥロフ対ラルセン戦のように劇的な効果をもたらすことがあり、布局におけるデンマークのグランドマスターの数少ない失敗の一つになった。

 6…Bf5 7.Bd3 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(314)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 図313の左図と関連するが、図275の局面を分析している時ナイト+ポーンがキングだけの相手に勝てないもう一つの局面に出会っている。これがその時の局面である。

 図314

 白の手番ならば黒キングを決してc8とc7の地点から追い払えない。しかし黒の手番ならば手詰まりで黒の負けになる。一般にこのような局面ではナイトと同じ色の枡に自分のキングを置いて白の手番となるようにしなければならない。ナイトは間合いを取ることができないので黒に手番を渡すことができない。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(082)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6

6.Nf3

 これが白の最も自然な手だが、ほかにもいくつかある。よく指される手は 6.Bc4、6.Ne2、6.c3 それに 6.Bf4 である。

 6.Bc4 は実際よりも強い手のように見える。黒は 6…Bf5 と応じれば、続いて 7…e6 と突いて白ビショップのa2-g8の斜筋を閉じることができる。元世界チャンピオンのミハイル・タリは以前に 6…Qc7? という悪手を指して、7.Qh5! のあと 7…e6 で自分のクイーン翼ビショップを閉じ込める羽目に陥った。しかし 6…Bf5 ははるかに優る手で、6.Bc4 からすべての毒牙を取り去っている。たとえば 7.Ne2 e6 8.Ng3 Bg6 9.h4 h5! 10.Bf4 Bd6 となれば互角の形勢である。途中 8.O-O なら 8…Bd6(白キングに狙いをつけ …Qc7 と指すつもり)9.Ng3 Bg6 10.f4 f5! で黒が有望になる。あとの変化で黒には …h7-h5-h4 から …Nd7-f6-e4 または -g4 という狙いがあり攻撃が厳しい。黒のクイーン翼ビショップは白のクイーン翼ビショップより悪くなく、ほかの駒も効率よく働いている。白にとって最悪なのは積極的な作戦がないことである。d4-d5 突きは6手目のときよりも実現に近づいていない。それに黒陣に攻め入る明白な手段もない。

 6.Ne2 で白は黒がクイーン翼ビショップの居場所を見つけるのをより難しくさせようとしている。6…Bg4 7.Qd3!(ナイトに対する釘付けをはずし、黒ビショップからf5の地点を奪っている)のあと白はビショップを 8.Ng3 から 9.h3 で追い回すことを狙っている。黒はたぶん 7…Bxe2 でビショップを白のナイトと交換するのが良いだろう。もっとも白は 8.Bxe2 で展開で優っている。7…Bh5 でも白の狙いに対処していて、8.Nf4 Bg6 9.Nxg6 hxg6 で黒陣は非常に堅固である。しかし 7…Bh5 は変わった戦術の一撃をくう。すなわち 8.Qb3! Qb6(bポーンの最も明らかな守り方)9.Qh3! でh5とc8の両方に当たっている。9…Bxe2 10.Bxe2 Nd7 11.Bh5! のあと黒はfポーンが落ちるのでクイーン翼にキャッスリングできず、11…e6? は 12.Qxe6+ で負けるし 11…Qxd4 は 12.O-O で 13.Rd1 か 13.Qb3 を狙われる。白の方がはるかに優勢である。

 6…Bg4 より積極的なのは 6…Bf5!? である。もし白が 7.Ng3 Bg6 8.h4 で黒ビショップをいじめる作戦を実行するならば、黒はポーンを犠牲にする覚悟をしなければならない。8…h6?! は 9.h5 Bh7 でビショップは安全だが、それなら白は 10.Be3(または Bf4)から 11.Qd2 でhポーンに狙いをつける。…Bg8 はビショップが働かなくなるので黒にはポーンを守る適当な手段がない。現代のマスターは 8…h5! 9.Be2 Nd7 10.c3(10.Nxh5?? は 10…Bxh5 11.Bxh5 Qa5+ で黒の駒得になる)10…Qa5 の方を選ぶ。

 10…Qa5 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(313)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 ナイト対ポーンのその他の例についてはエンディングの専門書を参照されたい。ここではナイトの丸得でも白が勝てない例外的な局面を少し考えてみよう。

 図313

 図313の左側は白がナイトとポーンを得しているが勝てない。ナイトが動けばポーンを取られるし、白キングがポーンを守ればステイルメイトになってしまう。

 図313の右側は非常に珍しい引き分けの局面である。黒キングを隅から追い出すことはできない。1.Nf7 Kg8 の後 2.Ke7 はステイルメイトになる。局面を横に動かせばもちろん白の簡単な勝ちである。例えば1列左に動かすと 1.Nc7+ Kf8 2.Kd7 Kg8 3.Ke7 Kh8 4.Nd5 Kg8 5.Ke8 Kh8 6.Nf6 gxf6 7.Kf7 で白が勝つ。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(349)

「British Chess Magazine」2014年2月号(1/3)

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上級者のための收局

GMニック・パート

 今月は米国のグランドマスターのヒカル・ナカムラが元世界チャンピオンのウラジーミル・クラムニクに勝った重要な試合を取り上げる。対局時に両者はマグヌス・カールセンとレボン・アロニアンに次ぐレイティング世界第3位の地位を争っていた。このあとナカムラはその地位をクラムニクから奪った。

ナカムラ – クラムニク
世界チーム選手権戦、トルコ、2013年

27.h4!

 一見したところではこの手は局面に関係なさそうなので少し意外である。しかしさらに分析すると黒は 27.Kf2 f6! でe5の強力な白ナイトを追い払おうとしていることが分かる。そして h4 の着意はg6のナイトを支えることである。

27…h5

 27…f6 28.Ng6 Kf7 29.h5 が白の読み筋である。

28.b5!

 ナイトのためにc6の地点を確保するナカムラのこの手は実に正確である。

28…Rc7 29.Nc6 Kh7 30.Rb2

 黒ナイトが身動きできなくなった。明らかにナカムラはこれが黒にとって大きな支障となることを期待している。

30…a5 31.Kf2

31…Rd7

 31…a4 は 32.Rb4 Rd7 33.Rxa4 Rd2 34.Nd4 でポーン得して白が良い。

32.Ne5 Rc7 33.Rd2!

 ナカムラは重要なb6のポーンを標的にしたので黒ナイトを解放してやった。

33…f6

 33…Nb3 は 34.Rd6 Rb7 35.Nc4 で白が勝つ。

34.Nd7 Nb3 35.Nf8+!?

 35.Rd6 が強力そうに見える。

35…Kg8 36.Rd7

36…Rxd7

 ここは 36…Rc3 37.Nxe6 Nc5 38.Rxg7+ Kh8 39.Re7 Ne4+ と積極的に防御するのがクラムニクにとって一番見込みがある。

37.Nxd7 Nd4 38.a4 Nxb5!?

 重要なb6のポーンが落ちるのでクラムニクは局面の紛糾を図る。

39.axb5 a4 40.Nc5!!

 しかしナカムラはaポーンを支配下に置く。

40…a3

 40…bxc5 は 41.b6 a3 42.b7 a2 43.b8=Q+ でチェックでクイーンに昇格して白の勝ちになる。

41.Nb3 a2 42.Ke3 Kf7 43.Kd4 Ke7 44.e4

 白の勝勢だが、ナカムラは黒に何の反撃も許さない卓越した技術を見せつける。

44…e5+

45.fxe5

 45.Kc3?? は 45…exf4 46.gxf4 g5 47.fxg5 fxg5 48.hxg5 h4 49.Kb2 h3 50.Nd4 h2 51.Nf5+ Kf7 52.Ng3 Kg6 53.Kxa2 Kxg5 54.e5 Kf4 55.e6 Kxg3 56.e7 h1=Q 57.e8=Q で引き分けになってしまう。

45…Ke6 46.Na1 fxe5+ 47.Kc3 g5 48.Kb2 gxh4 49.gxh4 Kd6 50.Nb3 1-0

 黒キングは侵入できず、ナカムラはいつでも好きな時にaポーンを取ってキングを戦いに引き戻すことができる。それでクラムニクは投了した。

******************************

(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

カロカン防御の指し方(081)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 d4-d5 と突いたポーン陣形

 もし黒が(既に …e7-e6 と突いていたとして)d5のポーンをcポーンとeポーンで取ると、中央が大きく割れる。c列とe列が攻撃路になり、白ビショップに新しい斜筋が開け(f3-b7、b3-f7、c3-f6、e3-a7)、黒のキング翼のポーンが弱点をさらけ出す。つまり黒のfポーンは二重孤立ポーンになり、hポーンはもっと攻撃を受けやすくなる。黒キングが中央またはクイーン翼にいれば、活発な白駒の十字砲火をくらうことがある。

 黒はd5の地点を守ることにより d4-d5 突きを直接防いで、白が d4-d5 と突けば必ずポーン損になるようにしたい。これが無理ならば堅固な陣形を築いて d4-d5 突きに …c6-c5 と応じられるようにしたい。そうなれば局面を開放する白の唯一の手段は d5xe6 ということになり、黒は …f7xe6 で二重fポーンを解消できる。これが黒の最も現実的な手法である。

 実際には黒は序盤でタルタコワ戦法の場合よりも解決しなければならない問題が少ない。白は難しい決断を迫られる。不注意に指すとキング翼で黒の猛攻を受ける。しかしどういうわけかこの戦法はあまり人気が出なかった。サロ・フロールが1930年代と1940年代に定常的に用いていたが、慎重な指し回しのために引き分けが多すぎて誰も彼の例にならおうという気にならなかった。ソ連のグランドマスターで危険を恐れない華やかな棋風のダビド・ブロンシュテインが1950年代後半にこの戦法を採用した。しかし 5…gxf6 が理論家によって詳細に研究されるようになったのは、世界で主導的な変則布局の擁護者であるデンマークのグランドマスターのベント・ラルセンがカロカンを 1.e4 に対する主防御に採用してからだった。最近では米国のグランドマスターのラリー・クリスチャンセンやほかの数人の若い選手たちがカロカンに転向した。攻撃的な選手が研究されすぎたシチリア防御の戦法に飽きると、まだ未踏の領域の 5…gxf6 に目を向けるのかもしれない。この戦法は中盤戦が新鮮で、両者にとって攻撃の可能性があり、ポーンの指し方が複雑である。

 それでは白が d4-d5 突きを作戦として選ぶ主手順を分析しよう。

 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5,Nxf6+ gxf6

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(312)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 ナイトは通常は複数の孤立ポーンに対する防御が苦手で味方のキングの助けが必要である。特にポーン同士の間隔が隔たっているほどそうである。そのような局面の例を示している余裕はないが代わりに連結3ポーン対ナイトの例を考えてみることにする。ポーンが5段目に到達していなければナイトは引き分けにすることができる。それが次の例である。

 図312

 白の手番ならばポーンを5段目に進めることができるので勝ちになる。黒の手番ならばナイトを巧みに使って引き分けにできる。ここでは両方の手順を分析してみる。

1.f5+

 白は黒にポーンをせき止めさせてはいけない。例えば 1.g5 は 1…Nd5! 2.Ke4 Ne7 3.Ke5 Kh5! 4.f5 Kxh4 5.Kf6(5.g6 なら 5…Kg5 6.g7 Ng8、5.f6 なら 5…Ng6+ 6.Kf5 Kh5)5…Nd5+ 6.Kg6 Ne7+ で引き分けになる。

1…Kg7 2.g5 Nd5 3.h5

 白ポーンが全部5段目に来たので白が簡単に勝つ。

3…Nc3

 3…Kf7 なら 4.h6 Nc3 5.h7 Kg7 6.g6 で白の勝ちになる。

4.Kf4 Ne2+ 5.Ke5 Ng3 6.f6+ Kg8 7.h6 Nh5 8.g6

これで白が勝つ。後は例えば 8…Ng3 ならば 9.h7+ Kh8 10.f7 でいずれかのポーンがクイーンに昇格できる。

 黒の手番ならば白は思うようにポーンを進められない。

1…Nd5 2.h5+

 2.f5+ なら 2…Kf6! 3.Ke4 Nc3+ 4.Ke3(4.Kd4 又は 4.Kd3 なら最も簡単な受けは 4…Nd1 で 5…Nf2 が狙いである)4…Ke5 5.h5 Ne4 6.h6 Ng5 で白は何も進展が図れない。

2…Kh6!

 黒キングは最も進んだポーンをせき止めなければならない。例えば 2…Kf6 だと 3.h6 Kg6 4.g5 Ne7 5.Kg4 Nf5 6.h7! で負けてしまう。

3.Ke4

 3.Kg3 なら 3…Ne3 4.Kh4 Ng2+、途中 4.Kh3 なら 4…Nd5 でどちらも引き分けになる。

3…Nc3+

 この手の方が参考になるので主手順にする。もっと簡明な手順は 3…Nf6+ 4.Kf5 Nd5 で白はどうすることもできない。例えば 5.Ke5 なら 5…Ne3 である。

4.Ke5

 他に指しようがない。4.Kf5 は 4…Nd5 で直前の説明と同じである。4.Kd4(d3)なら 4…Nd1 で 5…Nf2 を狙われる。

4…Nd1 5.Kf6

 5.g5+ なら 5…Kxh5 6.f5 Kxg5 7.f6 Kg6 8.Ke6 Ne3 9.f7 Kg7 10.Ke7 Nf5+ で引き分けになる。

5…Ne3 6.g5+ Kxh5 7.g6

 7.f5 は 7…Ng4+ でgポーンが取られてしまう。

7…Ng4+

 これで引き分けになる。例えば 8.Kg7 なら 8…Nh6 9.Kh7 Nf5 10.g7 Nxg7 11.Kxg7 Kg4 でよい。また 8.Kf7 でも 8…Nh6+ 9.Kg7 Ng4 10.f5 Kg5 でよい。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

カロカン防御の指し方(080)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒は …h7-h5 と突くのが良い

 この場合 …h7-h5 突きで黒ビショップはまったく安全になるが、白は Be2 で黒のhポーンをつけ狙うかもしれない。黒は素通し列がもう一つ(h列)利用でき、標的(白のh4のポーン)ができ、白が2、3手使って黒のhポーンを取ってその駒を戦いに引き戻さなければならないのでかなり黒の手得になるので、私の考えではhポーンを失うのと引き換えに黒がいつも調子よく戦いを進めることができる。

 もし白が黒のクイーン翼ビショップをいじめる以外の作戦を選べば、黒の堅陣をぶち壊す作戦を考え出さなければならない。通常の方法は c2-c4 突きから d4-d5 突きである。

 d4-d5 と突いたポーン陣形

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

JCA プロフェッショナル 仕事の流儀

JCAのホームページ下端で、去年(2013年)5月の全日本選手権全国大会で優勝した池田惇多くんの名前がようやく(9ヶ月後に)付け加えられました。

ただし更新年は「2013年」のままです。

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(311)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 チェホーバの作った局面はナイトが時に奇跡に近いことを成し遂げられることを示している。

 図311
チェホーバ

 状況は白にとって絶望的なように見える。しかしナイトの驚異的な捌きで死地を脱する。1.Ne6! g4 2.Ng7 f4 2…g3 なら 3.Nxf5 g2 4.Ne3+ である。3.Nh5! f3 4.Nf6 g3 4…f2 なら 5.Nxg4 f1=Q 6.Ne3+ でよい。5.Ne4 g2 6.Nd2+ 次に 7.Nxf3 で引き分けである。もちろん黒キングの不運な位置に助けられたわけであるがそれにしても素晴らしい防御だった。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(90)

「Chess Life」1994年4月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

小駒か3ポーンか?(続き)

Ⅱ.ポーンの形に隙があるとたとえクイーンが盤上になくても小駒を得している側に反撃の可能性が十分にある

 この原則は次の試合によく表れている。

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B96]
白 マルク・ツェイトリン
黒 GMレフ・ポルガエフスキー
ソ連選手権戦、1971年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Nbd7 8.Bc4

 この手は融通性のある 8.Qf3 によってほぼ取って代わられたが、それでも黒は十分敬意を表わして 8…Qb6 と応じるべきである。

8…b5?! 9.Bxe6! fxe6 10.Nxe6 Qa5

 10…Qb6? は 11.Nd5! Nxd5 12.Qxd5 で白の攻撃が強力すぎる。一例は 12…Bb7?! 13.Nc7+! Qxc7 14.Qe6+ Be7 15.Qxe7# である。

11.Nxf8 Rxf8 12.Qxd6

 ここでも白の攻撃は非常に強力で(12…b4? 13.Nd5!)、黒はクイーン交換をさせられる。

12…Qb6 13.O-O-O Qxd6 14.Rxd6

 白駒の展開はちょうど前の図と同じである。しかしポーンの配置はまったく異なり、この点は黒に有利である。一般原則として駒を得している側は盤の両翼にポーンを保持して、この場合のように相手に3連結パスポーンの潜在的な威力を与えたくない。

 定跡によればこの局面は形勢不明である。黒が完璧に指せばいい勝負と証明できても私は驚かない。しかし実戦では黒の前途はより困難である。それははるか格上の選手がこの試合に負けたという事実により証明される。

14…b4 15.Na4

 のちにマツロビッチ対トリンゴフ戦(ブルニャチカ・バニャ、1973年)では 15.Ne2 h6?!(IMクルニッチによればすぐに 15…Nc5 と指す必要がある)16.Bh4 Nc5 17.Ng3 Bb7 18.Re1 と進んで黒キングが中列で不安定なので白が成功を収めた。

15…h6 16.Bh4 a5 17.Rhd1 Ra6 18.R6d4! Rc6 19.h3 Nh5 20.f5 g5 21.Be1 Nf4?

 GMポルガエフスキーによると正着はすぐに 21…Rf7 と指す手で、ほとんどいい勝負である。f4のナイトは選手というより観客になっている。

22.R1d2 Rf7 23.Bg3 Ne5 24.Rd8+ Ke7 25.b3 Nd7?!

 黒は積極的に 25…Ba6! と指すべきだった(ポルガエフスキー)。

26.Rh8 Bb7 27.Kb2 Rcf6 28.h4!

 黒陣の切り崩しが始まった。黒が 28…Bxe4? と応じられないのは 29.Bxf4 gxf4 30.Re2 でビショップが取られるからである。

28…Rg7 29.hxg5 hxg5 30.Bf2! Rd6 31.Bd4 Bxe4 32.g3! Rf7

 32…Ng2 33.f6+! Nxf6 34.Bc5 のためにナイトは助けられない。

33.gxf4 gxf4 34.Nb6! Rxf5

 もっと詩的な負けは 34…Nxb6 35.Bc5 Nd5 36.Rh6 である。

35.Nc8+ Ke6 36.Re8+ 黒投了

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カテゴリ: 布局の探究1

カロカン防御の指し方(079)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒は …f6-f5! と突くのが良い

 確かに …f6-f5 突きは白の狙いをかわす。しかし自分のビショップを永久に閉じ込めているようにも見える。このビショップは収局で「背の高いポーン」になる危険はないのだろうか。たとえ黒が …f7-f6 から …Be8 と指しても、自分のc6とe6のポーンがまだビショップの動きを制限している。それにもかかわらず黒はこの見かけによらない局面でいい戦いができる。

 白は f2-f4 と突いたとき、ちょうど黒が …f6-f5 と突いたときのように自分のクイーン翼ビショップを閉じ込めている。dポーンを5段目に突くことができなければ、このビショップがe3に展開したときd4のポーンがそのもう一つの斜筋をさえぎることになる。両者のfポーン突きは黒がe4の地点を支配することにもなる。黒がhポーンを …h7-h5-h4 と突いていくと、白のナイトをg3から追い払い、クイーン翼ビショップに新たな斜筋(h5-d1)が開け、…Nd7-f6-e4 という捌きが可能になる。もし白が …h5-h4 突きを h2-h4 突きで止めれば、黒ナイトにg4の地点を明け渡し、自分のg列を弱め、h4のポーンを黒が …Be7 で容易に攻撃できる目標にできる。以上のことにより f2-f4 突きは 黒の …f6-f5 突きよりも白の害になることが多い。白が f2-f4 突きを効果のあるものにするためには、黒枡ビショップを交換するか、d4-d5 と突くことによりこのビショップに新たな斜筋を作らなければならない。そしてキング翼での黒の別の狙い(…Nd7-f6-e4 から …Bh5 など)にも対処しなければならない。中盤戦で黒は難題を突きつけて白の理想とする収局(白のクイーン翼多数派ポーンがパスポーンを作ることができ、黒の障害のあるキング翼はできない)を防げることがよくある。

 ここまで f2-f4 突きの問題点を見てきた。白が代わりに h2-h4 突きで黒のクイーン翼ビショップを追うのはどうだろうか。

 黒は …h7-h5 と突くのが良い

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(310)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 ポーンがそれほど前方に進んでいなければナイトにとってもっと状況が良くなる。例えば5段目の2ポーンに対しては通常はキングの助けがなくても守りきることができる。

 図310

 白は 1.Nb3! と指せばポーンを止めることができる。以下は 1…e3 ならば 2.Nd41…f3 ならば 2.Nd2 f2 3.Nf1 である。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(078)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 これがブロンシュテイン=ラルセン戦法(ニムゾビッチ戦法としても知られている)の特徴的な局面である。タルタコワ戦法(第5章)の 5…exf6 のように黒はキング翼ナイトを白のe4のナイトと交換して、fポーンが二重ポーンになるのを受け入れる。しかしeポーンでなくgポーンで取り返すことにより黒はまったく異なるポーンの形を作り、タルタコワ戦法から進行するのとはまったく異なる型の試合にする。

 カロカン防御の多くのほかの戦法のように黒の主要な目標は、白枡ビショップをポーン陣形の「外側」に展開することである。つまり …e7-e6 と突く前にこのビショップをf5かg4に出したがっている。もし黒がビショップを出す前に …e7-e6 と突くと、このビショップはb7、c6およびe6のポーンの内側に閉じ込められて決して活発に動けなくなるかもしれない。そうなれば黒陣は本当に劣った陣形になる。

 しかしブロンシュテイン=ラルセン戦法における黒のほかの目標はカロカンに特有のもではない。最も普通の作戦の一つはキング翼での攻撃である。ルークを半素通しg列に置くことにより黒はg2の地点に狙いをつける。もし白がキング翼にキャッスリングすれば、黒はルークをg列に重ねるかもしれない。あるいはhポーンとfポーンを突いていって(実戦例1のように)、h2またはf2への攻撃のためにもっと列を開けることができるかもしれない。

 …gxf6 と取り返しても反対翼で多数派ポーンができない。それは黒のeポーンがまだe列にあるからで、白にはタルタコワ戦法でよく起こるような単純化のあとdポーンがパスポーンにならない。中央側に …gxf6 と取り返すのは実際には中央における黒の地歩を強化している。c6とe6の黒ポーンはd5の地点に影響を及ぼし、f7のポーンはe6のポーンを守り、f6のポーンはe5の地点を守り白ナイトの侵入を防いでいる。時には黒はfポーンとeポーンを突いていくことがあるが、これらのポーンはe6、f7およびf6を守る大切な役目があるのでいつも良い着想になるわけではない。

 中央に近い黒の4ポーンは白のその方面の支配に挑む。白のd4のポーンは4段目にあるのでまだ最良の中央ポーンだが、黒の最も進んだポーンは自陣の3段目にすぎないので黒の支配する領域は少ない。それに白のcポーンはc4に進んで中央の戦いに加わることがよくある。

 白の半素通しe列は黒のe6のポーンがこの列をふさいでいるのでここではほとんど意味がない。しかし黒の半素通しd列は重要になることがある。黒のd8のルークは白のd4のポーンを当たりにする。もし白が c2-c4 と突いていけば、d4のポーンはもう守ってくれるポーンがなくなり、もっと大切な役割を果たすべき駒によって守る必要がでてくる。もし黒が c2-c3 突きでdポーンを守れば、c2-c4 突きがd4の支配をめぐる最強の武器なのにその戦いを放棄することになる。

 ほかのカロカン戦法と異なり黒はcまたはeポーンを白のdポーンと交換するのに熱心でない。まれにしかこの戦法で …c6-c5 突きが黒の成功とならないのは、中央で素通し列が増えると白だけを利するのが普通だからである。時には …e7-e5 突きが良い手になることがあるが、黒はそれに続けて …e5xd4 と取るべきでない。なぜなら黒に二重孤立fポーンが残され、白のルークのためにe列が素通しになるからである。代わりに黒はポーンをf6とe5に保持して d4xe5 を期待するのが良く、…f6xe5 でf列の二重ポーンが解消される。…e7-e5 突きの着想の欠点は黒のポーンがまったく動けなくなり、d5の支配を弱め(時には d4-d5 と突き越されることがある)、白にa2-g8の斜筋とf5の絶好のせき止め地点を与えることである。f5の白ナイトは黒のキング翼とクイーン翼の連絡通路を事実上切断してしまう。そして利用できる唯一の「補給ルート」はf8だけになる。

 黒はルークをg8に置きたいので、キング翼にキャッスリングするのは誤りである。通常のそして最善の戦略はクイーン翼にキャッスリングすることである。多くのマスターの試合で黒は一つの理にかなった手順で成功してきた。まずクイーン翼ビショップをf5またはg4に展開し、次に中央を …e7-e6 で補強し、最後にクイーン翼の駒を …Qc7、…Nd7 そして …O-O-O と展開するのである。これで黒に関する限り布局の段階は完了する。

 この間白は何をしているべきだろうか。白にはもっと広い可能性がある。キング翼ビショップは3地点(e2、d3、c4)のどこにでも展開でき、クイーン翼ビショップは2地点(e3またはf4)、ナイトはf3、e2またはg3(e2経由で)である。クイーンはほとんどどこにでも行ける。そしてクイーン翼でもキング翼でもキャッスリングできる。

 白の戦略は二つに分類することができる。一つは黒のクイーン翼ビショップをいじめて黒の普通の展開を邪魔しようとすることで、もう一つはほかの何かをすることである。

 黒のビショップがf5に、ポーンがe6にあると想像してみよう。もし白が Ng1-e2-g3 でこのビショップを当たりにすれば黒がビショップをg6に引くことは明らかである。そして f2-f4 または h2-h4 突きはこのビショップをまた脅かす。もし黒が f2-f4-f5 とさせて …e6xf5 と応じれば、黒ポーンの形が乱れf列は白ルークのために素通しになる。白の半素通しe列もたちまち完全な素通しになる。だから黒は f4-f5 の狙いに対処しなければならない。通常の手段は …f6-f5 突きである。

 黒は …f6-f5! と突くのが良い

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(309)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 ナイト対連結2パスポーンはすべて駒の配置による。2ポーンが6段目に達している時にはナイトがポーンの近くにいて自分のキングがポーンの前にいる場合にだけ引き分けにできる。次の例はその局面である。

 図309

 ポーンが非常に危険そうに見えるが黒の手番ならば注意深い受けで引き分けにできる。白の手番ならば 1.Kd7 ですぐに勝ちになるが黒の手番でも受け切るまでは大変である。

1…Ng6!

 この手は絶対手である。1…Nf5+ は 2.Kd7 から 3.e7+ で、1…Ke8 は 2.f7+! Kf8 3.e7+ Kxf7 4.Kd7 でどちらも白の勝ちになる。1…Nf3 も 2.f7! で黒が手詰まりに陥っていて負けになる。例えば 2…Kg7 なら 3.Ke7、2…Nd4 なら 3.e7+ Kxf7 4.Kd7 で白が勝つ。

2.Kd7

 2.f7 なら 2…Ne7 で引き分けである。又 2.e7+ なら 2…Ke8、2…Kf7、2…Nxe7 のいずれでも引き分けである。

2…Ne5+ 3.Kd8

 3.Kc7 なら 3…Ng4 である。

3…Nc6+ 4.Kc7 Nd4 5.Kd7

 5.e7+ なら 5…Ke8 6.Kd6 Nf5+ から 7.Nxe7 で引き分けになる。

5…Nxe6 6.Kxe6 Ke8

これで引き分けである。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(119)

「Chess Life」2006年1月号(2/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス「ベルリン」戦法[C67](続き)

戦型A) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.dxe5 Nf5 Qe2

 これが「あの」ベルリン収局を避けるのに適した白の選択肢のうち(あまり推奨されない手段だけれども)最も劣る手である。

8…Nd4 9.Nxd4 Qxd4 10.Rd1

 10.Nc3 は 10…Bg4 11.Qe3 Qxe3 12.Bxe3 Bb4 で黒の楽な収局になる。

 1世紀以上前の次の試合(タウベンハウス対タラシュ、モンテカルロ、1903年)には白が直面するかもしれない危険がよく現れている。13.Ne4 Bf5 14.c3 Be7 15.Ng3 Bd3 16.Rfd1 O-O-O 17.Rd2 c5 18.f4 h5 19.Rad1 c4 20.Kf2 h4 21.Ne2 c5 22.Ng1 Kc7 23.Nf3 Kc6 24.Ne1 Be4 25.Ke2 Rxd2+ 26.Rxd2 Rd8 27.Rxd8 Bxd8 28.Nf3 Bb1 29.a3 Bd3+ 30.Ke1 Be4 31.Ke2 Bd3+ 32.Ke1 Be4 33.Ke2 Bd3+ 34.Ke1 Kd5 35.Bf2 h3 36.g3 b6 37.Ng1 Bf5 38.Nf3 Ke4 39.Nd2+ Kd3 40.Nf1 Be4 41.Ne3 Be7 42.g4 b5 43.g5 a5 44.Kd1 b4 45.cxb4 cxb4 46.axb4 axb4 47.Nc2 c3 48.bxc3 b3 0-1

10…Bg4! 11.Rxd4 Bxe2 12.Nc3 Bh5

 双ビショップのおかげで黒には何の問題もない。

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カロカン防御の指し方(077)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(308)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 意外にもこのような局面でナイトがいつも防御側の立場であるとは限らない。敵キングが自分自身のポーンの前の不利な位置にいる時ナイト側が勝ちになる典型的な局面が少し存在する。図308を考えてみよう。

 図308

 どちらの局面でも白が詰みを狙っている。左側は 1.Kc2! Ka1 2.Nc1 a2 3.Nb3# で詰ますことができる。右側は同じ詰み形だが手順はもっと複雑である。1.Kf3! ただし 1.Kf2 は 1…Kh1 で白が手詰まりに陥る。1…Kh1 2.Kf2 Kh2 2…h2 は 3.Ng3# で詰む。3.Nc3 Kh1 4.Ne4 Kh2! 5.Nd2 Kh1 6.Nf1 h2 7.Ng3# もちろんこのような局面になることはまれであるが知っておかなければならない形である。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(076)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

 この手はキングを活用できるようになる 30.Rd1 の最後の機会を逃した。黒はナイトをf6に捌き …e5-e4 と …Nh5xg3 を狙えば勝つ可能性がまだ高いだろう。白はたぶんクイーン翼の多数派ポーンを活用することによりけん制できるかもしれない。

30…Kf6 31.Rh7 Nd8! 32.Kc2?!

 白は 32.Rc7! でルークを7段目に維持できた。

32…Nf7!

 黒は白ルークの動きを制限し …g6-g5 から …Kg6 で追い払うつもりである。33…Ng5! 34.Rxb7 Nxf3 も狙っていて、パスeポーンで勝ちになる。

33.f4 e4

 黒の努力の成果が保護パスポーンになった。

34.Rh1 Rd8 35.b3 g5!

 36…gxf4、37…Rg8 そして 38…Rg2 を意図している。

36.fxg5+ Nxg5 37.Rh6+ Kg7 38.Rh1 Nf3! 39.Nd1

 39.Rd1 はもう手遅れである。39…e3! と突かれて 40.Rxd8 exf2 41.Rd1 Ne1+ 42.K 逃げ f1=Q または 40.Nd3 e2 41.Rh1 Rxd3! 42.Kxd3 e1=Q となる。白負けたり。

39…Rd2+ 40.Kb1 Kf6 41.c4 Ke5

 もちろん 41…Rg2 でもよい。

42.Ne3 Rd3 43.Nd5 Ng5 44.g4!?

 44.Rg1 なら 44…e3 と容赦なく進んでくる。

44…fxg4 45.Rh5 Kf5 46.Ne7+ Kf6

 46…Kf4 は 47.Ng6+ Kf5 48.Ne7+ で繰り返しになるだけである。

47.Nd5+ Rxd5!

 これで白の引き分けの望みを終わらせた。

48.cxd5 g3 49.Rh4

 49.Rh1 なら 49…Nf3 から …g3-g2 と進んでくる。

49…e3! 50.Kc2 e2

 51.Kd2 には 51…Nf3+ でよい。

51.Rh6+ Ke5 白投了

2014年03月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(307)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 ナイト対ルーク列ポーンの戦いにはもう一つ指摘しておくことがある。図305で敵キングが近くにいて味方のキングが遠く離れ過ぎている場合にはナイトが7段目のポーンに対して無力であることを見た。しかしもし敵キングがある程度離れているとナイトが敵キングの接近を防ぎ驚くべき防御能力を発揮できることがある。図307でそれがどのように行なわれるのかを解説する。

 図307
グリゴリエフ、1932年

 ポーンを止めるためには白ナイトはe4かe2でチェックをかけて先手を取らなければならない。次の正解手順は白がどちらの地点をなぜ選択したのかを示している。

1.Nf7!

 ポーンが7段目に到達するのをナイトが止められないのは明らかである。そこで白はナイトがf2とg3のどちらへ行くのかを明示しないようにしなければならない。ナイトがそうできるのはe4の地点だけである。だから 1.Ng6 は間違いである。即ち 1…h3 2.Nf4 h2 3.Ne2+ Kd2! 4.Ng3 Ke1 から 5…Kf2 で黒の簡単な勝ちとなる。

1…h3 2.Ng5

 2.Nd6 はだめで 2…Kd3! 3.Nf5 Ke2! 4.Ng3+ Kf2 で黒の勝ちとなる。

2…h2 3.Ne4+ Kc2

 なんと黒キングはポーンに近づくことができない。もし 3…Kd3 なら 4.Ng3! で黒キングがe列を越えようとするとポーンを取られてしまう。黒キングの唯一の経路はc2-d1-e1又はd4-e5-f4だがこれなら白キングが寄ってくる時間がある。これで黒キングがc2に行った理由が分かった。つまりe1へ行くための間合いを取ったのである。

 黒は他の経路で近づくために 3…Kd4 を試みることもできる。それならば白ナイトはf2に行きやはり黒キングがすぐに近寄るのを防ぐ(白キングは黒キングのd5-e6-f5の経路を止めることができる)。4…Kc3 も同様に見込みがなく 5.Kd6 Kd2 6.Ke5 Ke2 7.Nh1 Kf3 8.Kd4 Kg2 9.Ke3 Kxh1 10.Kf2 でステイルメイトになる。

 上記の変化により自分のキングが近くに来るまで白ナイトが敵キングを寄せつけないでおくことに成功することが分かる。

4.Ng3!

 4.Nf2 なら黒キングが近づくことができる。即ち 4…Kd2 5.Kd6 Ke2 6.Nh1 Kf3 で黒が勝つ。

4…Kd1 5.Kd6 Ke1 6.Ke5 Kf2 7.Kf4

これで引き分けである。

 白キングがちょうどナイトを守っている。最初の図で白キングがもう1枡でも遠くにいたら負けていたところである。

(この節続く)

2014年03月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(075)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

 ここからの数手の間白はずっとルーク交換の機会を見送った。私がそうしたくなかったのは黒キングがd5やe6に来るとeポーンとfポーンを突くのを助けることになるからで、ルークによる狙いで黒キングの邪魔をすることができるかもしれないと考えていた。しかし黒はその狙いをやすやすとかわした。白の最善の受けは 22.Rd1 g6 23.Rxd7+ Kxd7 24.hxg6 hxg6 25.Nh4 g5 26.Nf5 から Kd2-e3 で、黒は優勢といってもわずかである。

22…g6

 これが黒の多数派ポーンからの最初の轟音だった。

23.hxg6 hxg6 24.Ne3 Nd4 25.Ng4 Rd6 26.c3 Nc6 27.f3 Kd7!

 黒キングがキング翼に渡るのに、白キングはc列に置き去りにされたままである。黒ルークが白キングを遮断していることに注意がいる。これがここで白が 28.Rd1 でルーク同士を交換すべき大きな理由である。

28.Rh1 Ke6 29.Nf2

 24…Rd3 を防いだ。

29…f5 30.Rh6?

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(306)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 実戦ではナイトがポーンからはるかに離れている場合もよくある。そのような場合ナイトがポーンを止められるかどうかを正確に読むことは難しい。ポーンが単独でいる場合は事は比較的単純である。しかしキングの助けがある場合は正確な読みを必要とする非常に難解な状況が発生する可能性がある。図306はその好例である。

 図306
グリゴリエフ、1932年

 白のやらなければならないことはポーンを止めることである。空の盤面ならばナイトは色々な道筋を取れる。しかしこの局面では好所にいる黒キングによって道筋が制約を受けている。ポーンが7段目に達する前にナイトがf1又はg4に行ければ負けを免れることが図305から分かっている。黒キングがいるためにf1は問題外なので白ナイトはg4に行く方策を見つけなければならない。

 どのようにしたらそれが可能だろうか。試しに 1.Nc3 は 1…h5 2.Nd5+ Kf3(ナイトから斜めのはざまの地点が一番良いことは周知のとおりである。ナイトがチェックをかけるまで3手かかる。)3.Nc7 h4 4.Ne6 Kg4! 5.Nc5 h3 6.Ne4 h2 7.Nf2+ Kf3 8.Nh1 Kg2 で黒の勝ちになる。白が引き分けるための唯一の手順は次のとおりである。

1.Nb4! h5 2.Nc6

 既に見たように 2.Nd5+ Kf3 は黒の勝ちになる。他に 2.Nc2+ は 2…Ke4 3.Ne1 h4 4.Ng2 h3 で黒が勝つ[訳注 2…Ke4 は 3.Na3 h4 4.Nc4 で本譜と同じになるので正着は 2…Kf2 です]。

2…Ke4

 2…h4 なら 3.Ne5 で続いて 3…Kf4 なら 4.Ng6+ があるのでナイトがg4に来れる。

3.Na5!!

 このとっぴなナイトの動きは急所のf1とg4の枡との絡みからしか理解できない。c4の地点は絶好の位置でそこからどちらの枡にも行ける。ナイトはすぐにはg4に行けない。即ち 3.Nd8 なら 3…h4 4.Ne6 Kf5! 5.Nd4+ Kg4 6.Nc2 Kf4 で黒の勝ちになる。

3…h4

 黒はナイトがc4に来るのを防ぐことができない。もし 3…Kd4(d3)なら 4.Nc6(+)だし、3…Kd5 なら 4.Nb3 でd2を通ってf1に来る。

4.Nc4

 理想的な位置に到達し 5.Nd2+ から 6.Nf1 ですぐに引き分けにする手を狙っている。代わりに 4.Nb3 は 4…Ke3! で黒の勝ちになる。

4…Kf3!

 この手が白にとって最も面倒である。4…h3 は 5.Nd2+ から 6.Nf1 で以前に見たように引き分けになる。

5.Ne5+

 まだ正確な手順が必要である。5.Nd2+ は 5…Ke2! 6.Ne4 h3 7.Ng3+ Kf2 で黒の勝ちになってしまう。

5…Kg3 6.Nc4 h3

 6…Kf2 なら再び 7.Ne5 と指すし 6…Kf4 なら 7.Nd2 から 8.Nf1 と指せる。

7.Ne3

 これで図305の解説で見た引き分けの局面になった。きれいなエンディングである。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(348)

「Chess」2014年2月号(4/4)

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次の一手

チェスクラブ上級者向け問題


(23)G.ジョーンズ対H.ナカムラ
ロンドン(快速)、2013年
黒の手番

解答

1…e5! 2.Qxe5(2.Bxe5 は 2…Qh3 3.f3 Bxf3 で 4.Rd2 に 4…Rc1+ があるので見込みがない)そしてここで 2…Qh3? 3.Rd5! で白が立ち直り、そのあとナカムラが懸命の頑張ったにもかかわらず引き分けになった。しかし黒は 2…Re8! 3.Qb2(3.Qc5 なら 3…Qh3 4.f3 Re2)に 3…Qh3? 4.f3 でなく 3…Qg4! から 4…Qf3 で勝っていた。

******************************

(この号終わり)

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カロカン防御の指し方(074)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

11.Qxe6+ fxe6 12.h4!?

 黒が …c6-c5、…c5xd4 から …e6-e5 で「劣った」ポーン陣形を好形に変えようとするつもりであることは読めていた。12.h4!? はうまく指し回されたことを認めた手である。そしてこの手で黒のキング翼の多数派ポーンが円滑に進んで来るのを乱すことを期待した。

12…c5 13.Be3 cxd4 14.Bxd4 Bc5 15.Ne2 e5!

 アンデルソンは落ち着いて陣形を良くしている。黒のキング翼の多数派ポーンは白のクイーン翼の決して動き出すことのない多数派ポーンよりも進攻が脅威となっている。

16.Bxc5 Nxc5 17.h5 Rd7 18.Ng3!

 f5の好所を目指している。

18…Rhd8 19.Nf5 Ne6 20.g3 Kc7!

 黒は歩み続けている!私は形勢が互角になったと思っていたが、アンデルソンは進展を図る手段を見つけ続ける。

21.Rxd7+ Rxd7 22.Re1?!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(305)

第6章 ナイト・エンディング

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 ルーク列ポーンが7段目に到達している時黒キングがあまり近くにいなければ白が勝つ。

 図305

 図305の左側で黒はナイトが取られるのを防ぐことができない。白は 1.Kc6 Na8 2.Kb7 で勝つ。引き分けるためには白キングがナイトを取ったらすぐに黒キングがc8又はc7の地点に来れなければならない。

 しかしポーンがそれほど進んでいなければナイトは自分のキングの助けがなくても引き分けにできる。例えば図305の右側がその例で白は次の手順で勝てない。1.Kf5 Nh7 2.Kg6 Nf8+ 3.Kg7 Ne6+ 4.Kf7 Ng5+ 5.Kg6 ここで黒には 5…Ne6! 6.h7 Nf8+ という受けの手段がある。

(この節続く)

2014年03月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(073)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2
白 J.ピーターズ
黒 U.アンデルソン
全米チェスリーグ、1978年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 6.Bc4 Qe7+

 この手には驚かされた。以前に 6…Be7 と 6…Nd7 に対しては指したことがあったが、黒の劣ったポーン陣形にもかかわらずクイーン交換で収局に突き進みたがる相手は初めてだった。

7.Qe2

 7.Be2 なら黒は 7…Qc7 8.Nf3 Bd6 で普通に展開できる。

7…Be6!

 7…Qxe2+? は 8.Nxe2 で白の望むところである。黒は自分に有利な条件下でだけクイーン交換に応じる!最初の「要求」は白のキング翼ビショップを活動的なa2-g8の斜筋からどけることである。

8.Bxe6

 最も強硬な手は 8.Bb3!? である。8.Bd3 は 8…c5 9.Nf3 Nc6 10.dxc5 Qxc5 で黒が楽に展開を完了する。

8…Qxe6 9.Bf4 Na6!

 これにも意表を突かれた!黒の露骨な …Nb4 の狙いはいずれ Qxe6 を引き出すことで、黒のキング翼のポーンの形が整う。

10.O-O-O O-O-O

 全米チェスリーグの試合は電話を介して行なわれた。本局の場合は首都ワシントンとロサンゼルス間である。10手後に両選手は相手の正確な消費時間を知らされた。ここまで白の32分に対し黒は1分未満である!

(この章続く)

2014年03月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(304)

第6章 ナイト・エンディング

 複数のポーンとの戦いでナイトは通常見劣りする。特にポーンの間隔が広い時がそうである。ナイトは盤を端から端へ渡るのに少なくとも3手かかり、たった1個のポーンにかなわないこともよくある。そのような面をまず取り上げよう。

6.1 ナイト対ポーン(複数)

 既に述べたようにナイトは複数のポーンを止めるのに適していない。時にははるかに進んだ1個のポーンに対して役に立たないこともある。キングの助けなしにナイトが1個のポーンを止めようとする例を少し取り上げる。

 図304

 ビショップ・エンディングの場合もそうだったがポーンが盤の端に近づくにつれてナイトの仕事は明らかに困難になる。理由は同じである。つまりルーク列ポーンに対してポーンの片側でしか働けないのでナイトの防御の可能性が半減するからである。

 図304の左側は自分のキングが近くにいるにもかかわらずナイトがルーク列ポーンに対して無力である古典的な例である。白は 1.a6! で勝つ。黒はこのポーンを止めることができない。 1…Kc7 なら 2.a7! である。これと対照的なのが右側である。ナイト列ポーンに対して黒は 1.Ke6 Ng8 2.Kf7 Nh6+ 3.Kg6 Ng8 で引き分けにできる。

(この節続く)

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布局の探究(89)

「Chess Life」1994年4月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

小駒か3ポーンか?(続き)

Ⅰ.収局に近い落ち着いた局面での良質な3ポーンは、通常はポーンを持っている方が有利である

 次の試合で成り行きを追ってみよう。

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B95]
白 エドマー・メドニス
黒 D.カー
U.S.オープン、1956年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.Qf3

 激しい 6.Bg5 戦型の初期(1950年代中頃)にはこの手が普通だった。のちに 7.f4 が主流手順になった。

7…Nbd7 8.O-O-O Qc7 9.Qg3 b5?!

 9…Be7 が本手だった。

10.Bxb5! axb5 11.Ndxb5 Qb8

 (1)11…Qa5? 12.Bxf6 Nxf6 13.Rxd6! Nxe4 14.Nc7+! Qxc7 15.Rxe6+ Kd7 16.Rd1+ Nd6 17.Nb5 Qc5 18.Nxd6 Kxe6 19.Qb3+ Ke5 20.f4+! Kxf4 21.Qg3# グランキン対グトキン(ソ連、1968年)

 (2)11…Qc5? 12.Be3! Qc6 13.Nxd6+ Bxd6 14.Rxd6 Qb7 15.e5 Nh5 16.Qg4 g6 17.Rxe6+! fxe6 18.Qxe6+ Kf8 19.Bh6+ Ng7 20.Nd5 白の攻撃が厳しい。ベルネル対ベリヤフスキー(ソ連、1970年)

12.Nxd6+ Bxd6 13.Qxd6 Qxd6 14.Rxd6

 白が無傷の3連結パスポーンを持ちどこにも弱点がなく、いくらか展開に優ってさえいるので優勢である。

14…Ra6?!

 この手は白ルークを交換でなくして局面を単純化する。それは一般にはポーンを持っている方にとって有利である。おまけにクイーン翼ルークがなくなるので白がクイーン翼のポーンを動員するのがより容易になる。14…Bb7?! も良くなく、H.ファン・リームスダイク対シルバ戦(ブラジル、1978年)では白が次のようにあっさり勝った。15.Rhd1 O-O-O 16.f3 h6 17.Bh4 Ne5 18.Nb5! Nc6 19.Bf2 Kb8?! 20.Bg3! Ka8 21.R1d3! Rxd6 22.Ra3+ Kb8 23.Nxd6 e5 24.Rb3 Na5 25.Rb5 黒投了

 黒はすぐに 14…h6! でクイーン翼ビショップに「態度を聞く」のが最善である。もっとも 15.Bd2 Bb7 16.f3(ブロンシュテイン対ナイドルフ、ソ連対アルゼンチン、1954年)でも 15.Bxf6 Nxf6 16.Rhd1 Bb7 17.f3(フィヒトル対ドレザル、チェコスロバキア選手権戦、1954年)でも白が優勢を保持している。

15.Rxa6 Bxa6 16.f3 Kd8 17.Rd1 Kc7 18.Bf4+ e5 19.Be3 Re8 20.a4! Re6 21.b4

 クイーン翼のポーンは白の切り札で、その積極的な動員が準備万端整った。

21…Bc4 22.Kb2 Rd6 23.Ra1!

 原則として白はルーク同士を交換したいのだが、時機がまだ良くない。なぜなら 23.Rxd6?! Kxd6 のあと黒が 24…Bf1 から 25…Bg2 でキング翼で反撃できるからである。

23…Kb7 24.b5 Ne8 25.Ka3! f6 26.Kb4 Bf7 27.a5 Nc7 28.a6+ Kb8 29.Rd1!

 白のキングとクイーン翼が動員され黒のビショップが働いていないので、ルーク同士の交換は白の「ポーンの威力」を増大させることになる。

29…Rxd1 30.Nxd1 Ne6 31.c3 Nf4 32.Bxf4 exf4 33.Nb2 Kc7 34.c4 Ne5 35.c5 Be8 36.c6 Kb8 37.Nc4! Nxc4 38.Kxc4 g5 39.Kc5 黒投了

 ポーンが勝つ。例えば 39…Ka7 40.Kd6 Kb6 41.c7 である。

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カロカン防御の指し方(072)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

 最後はきれいに決めた。31.Rxc7 は黒にクイーンの代わりに2ビショップが残るので白は満足しなかった。31.Rh7+! のあとは 31…Kd8 32.Qxe6! Rxh7 33.Qg8+! または 31…Kf8 32.Rxc7 Bxc7 33.Qxe6! Rxh7 34.Qc8+ で黒にはルークしか残らず、投了は止むを得ない。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(303)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図303 白の手番
ヘネベルガー対ニムゾビッチ、1931年

16.Bb2!

 a列にパスポーンを作るこの手が戦いを続けるための唯一の手段である。

16…axb2!

 このビショップは取らなければいけない。16…Kxg3 は 17.Bxa3 で白の勝ちになってしまう。

17.a4 Kxg3 18.a5 Kh2!

 黒は平易な勝ちのポーン・エンディングを望んでいる。18…Kxf4 19.a6 は望まないクイーン・エンディングになる。

19.a6 g3 20.a7 g2 21.a8=Q g1=Q+ 22.Kxb2 Qg2+!

 黒はナイトをb1の地点に閉じ込めた時に全てを正確に読んでおかなければならなかった。

23.Qxg2+ Kxg2 24.Ka3 Kf3 25.Kb4 Kxf4 26.Kxc4 Ke3 27.d5 exd5+ 28.Kxd5 f4 0-1

 白ポーンはc7の地点まで行くがキングの位置が悪いために引き分けにならない。閉鎖的な局面でのナイトの強さが良く現れた例である。

 これで実戦例を終える。取り上げた例はほんの少しだったが読者は基本的な知識を身につけたはずで自信を持ってこのようなエンディングに臨めると思う。

(この節・章終わり)

2014年03月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(071)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

18…Rd5

 アンデルソンは観念して交換損に打って出た。18…Bd5 も 19.Qb3!(おやまあ、あの斜筋!)19…Qd7 20.Nxd5 cxd5 21.Bb5 で別な交換損の仕方になるので良くない。

19.Rde1

 黒ルークがd5から退却できないことを分かっている白はe列を占拠した。

19…Red8 20.Bxd5 cxd5 21.Re3!

 白はまだまだ攻撃できる!カバレクは圧倒的な局面からどんなわずかな優勢でも引き出す。

21…Rd7 22.Rhe1 g5

 さもないと 23.Qe2 Bd8 24.Bxf8 Kxf8 25.Re8+! で白が侵入してくる。

23.Bxf8 Bxf8 24.Rh1!

 白はまたしてもb1-h7の斜筋を利用する。

24…h6 25.Ng6 Bxc5

 25…Bg7 なら白は 26.Rhe1 から 27.Qf5 と応じて 28.Re7 を狙う。

26.Rc3!

 もちろん 26.dxc5 Kg7 27.Nf8! Kxf8 28.Rxh6 でも十分勝てる。しかし白はもっとも危なげのない決め手を見つけた。

26…Bd6!

 この手は 27.Rxc7? Rxc7 でクイーンを取り返して引き分ける可能性に期待している。

27.Rxh6

 狙いは 28.Rh8+ Kg7 29.Nf8! から 30.Qh7# である。

27…Kg7 28.Nf8! Kxf8

 28…Bg8 なら単純に 29.Nxd7 で勝ちになる。

29.Rh8+ Ke7

 代わりに 29…Bg8 なら 30.Qg6! でc7、g8それにf6での取りが狙いになる。

30.Qe2+ Be6 31.Rh7+! 黒投了

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(302)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図302 黒の手番
ヘネベルガー対ニムゾビッチ、1931年

11…Kd6!

 黒は再び手損の捌きを行なう。白キングは同じことができない。もしすれば黒ナイトをd2に来させてしまう。つまり 12.Kf2 Nd2 13.Kg2 Nb3! となる。

12.Ke2 Kc6 13.Kd1

 この手が最も可能性がある。13.Ke3 は 13…Kd5 で白は手詰まりに陥っていてすぐに負ける。以下は 14.Kf2(14.Ke2 なら 14…Ke4)14…Nd2 の後 15…Nb3 又は 15…Ne4 である。本譜の手はナイトが取れるが黒キングに侵入を許してしまう。

13…Kd5 14.Kc2 Ke4 15.Kxb1 Kf3

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(118)

「Chess Life」2006年1月号(1/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス「ベルリン」戦法[C67]

 近年ルイロペスのベルリン戦法(1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.dxe5 Nf5 8.Qxd8+ Kxd8)は、1.e4 に対する黒のきわめて人気のある選択肢になった、2000年のカスパロフ対クラムニクの世界選手権戦が特に助長した。常に研究怠りないガリー・カスパロフでさえ格別有効な対策を見つけられなかった。この戦法で黒は早期に主導権を発揮して安全な収局に持っていくが指す余地は多い。多くの攻撃的な 1.e4 選手はそれがあまり面白くなく、ほかの選択肢を追い求めている。本稿では「ベルリン収局」を避ける白の選択肢のいくつかを取り上げる。

白の基本的な作戦は何か

 白が攻撃的な試合を求め早い収局を避けたいならば、戦型BとDを勧める。戦型Bでは白はしばしばポーンを犠牲に活気のある指し方をする。戦型Dでは対称的なポーンの形にもかかわらず白に主導権があり、特にa1-h8の斜筋においてそうである。

黒の基本的な作戦は何か

 これらの戦型のほとんどで黒の主要な目標は早くキャッスリングして展開を完了することである。黒はよくc列に二重ポーンができるが、代償に双ビショップを持つ。多くの戦型で黒は白枡をしっかり支配し席巻できる。

それで評決はどうなっているか

 戦型Aでは黒はあまり苦労しない。戦型BからEはすべて白にとって「収局」を避ける理にかなった選択肢である。戦型Bは最も攻撃的な手法であり、戦型CからEはもっと大局観に沿った指し方である。黒はこれらのどれにも対処する方法を知る必要があるが、すべてで互角にできる。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

カロカン防御の指し方(070)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

 黒はもろいキング翼を心配するあまり、白が中央での狙いで攻撃を強化できることを忘れていた。白の可能性を制限する正しい手段は 13…b5! で 14.c4 を思いとどまらせることだった。g6での捨て駒はまだ成立しない(14.hxg6 fxg6 15.Bxf8 Rxf8! 16.Bxg6? hxg6 17.Qxg6+ Qg7 で受かる)。だから白は 14.Rh4 で 15.Rdh1、16.hxg6、17.Bxf8 から 18.Rxh7 を狙うのが良い。白の強力な攻撃は持続するが、黒は持ちこたえる手段が十分あるかもしれない。

14.c4!

 これが勝着だった。白の着想は d4-d5 突きでなく、c4-c5 突きで黒のキング翼ビショップをe7に下がらせ黒クイーンのキング翼の防御に差し支えるようにすることである。

14…Rad8

 この手は見込みがないが、14…c5 15.d5 Bd7 16.hxg6 fxg6(16…hxg6 なら 17.Rh4! から 18.Rdh1)でも 17.Bxf8 Bxf8 18.Bxg6! hxg6 19.Qxg6+ Bg7 20.d6! Q逃げ 21.Rh7 でg7で詰まされる。14…f5 も 15.hxg6 fxg6 16.c5! Be7 17.Nf4! で、実戦のようにa2-g8の斜筋で壊滅する。

15.hxg6 fxg6

 15…hxg6 は強く 16.Rh4 から 17.Rdh1 と応じられるか、16.Qd2! で 17.Bg7! から 18.Qh6 を狙われる。

16.c5! Be7 17.Nf4! Bf7 18.Bc4!

 白は 19.Bxf7+ Kxf7 20.Qc4+ による破壊を狙っている。本譜の手に 18…Bxc4 と取ると 19.Qxc4+ Kh8 20.Qf7! Bd6 21.Bg7# で詰まされる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(301)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 しかしナイトの長所が最も発揮されるのは閉鎖的な局面である。そのような局面ではビショップの遠くに利く特質が減殺される。特に敵陣に標的がない場合に顕著になる。図301はその好例である。

 図301 黒の手番
ヘネベルガー対ニムゾビッチ、1931年

 この局面は1931年ビンタートゥーアでのヘネベルガー対ニムゾビッチ戦に現れたものである。白のビショップはいわゆる「不良ビショップ」となっていて味方のポーンに囲まれていて敵のポーンを攻撃することができない。…Ne4 の狙いに備えてcポーンとgポーンを守るために永久にe1の地点に張り付いていなければならない。これと対照的に黒のナイトは完全に自由で色々な地点から攻撃することができる。

 以上の点と白枡の重大な弱体化にもかかわらず黒が陣形上の優位を活用するのは簡単でない。その主たる理由は白が今のところ弱点をすべて守っていてキングで敵キングの侵入を防ぐことができるからである。だから黒は陣容を改善する方策を考えなければならない。このような状況でもっぱら用いられる武器は手詰まり戦術である。白のビショップは …Ne4 で簡単に縛り付けることができる。しかし今度はこのナイトが黒キングの侵入に必要な地点をふさいでしまう。

 局面を注意深く観察すると勝利への作戦が見えてくる。黒がナイトをa3からb1の地点に置きそれからキングをd5の地点に置けば白は手詰まりに陥る。Bd2 の後のポーン・エンディングは黒に …a3! というゆとり手があるので白の負けである。これが作戦の全貌である。しかしどのようにしたら実行できるのであろうか。初めの方の手は単純で理解し易い。

1…Ne4 2.Ke2 Kd5

 明らかにニムゾビッチは勝つための作戦がまだ見えていなかった。もし見えていたら 2…Kd6! 3.Ke3 Kd5 と指していただろうしその方が早く勝てた。

3.Ke3 Kd6!

 ここで彼はすぐに 1…Nd6 と指すのはうまくいかないことに気付いた。つまり 4.Bd2 Nb5 5.Be1 Na3 6.Bd2 Nb1(6…Nc2+ は 7.Ke2 Ke4 8.Bc1 でナイトの行き場がない)7.Be1 で黒が手詰まりに陥っている。ここから 7…a3 は 8.Bd2 Nxd2 9.Kxd2 Ke4 10.Ke2 で黒にゆとり手の …a3 が無くなっているために引き分けになる。だから黒は同じ局面で白の手番となるようにしなければならない。言い換えると黒は自分のキングに三角歩行をさせて一手手損をしなければならない(周知のようにナイトで一手手損することはできない)。

4.Ke2 Kc6 5.Ke3 Kd5! 6.Ke2 Nd6 7.Ke3 Nb5 8.Bd2 Na3 9.Bc1

 もし 9.Be1 なら黒は 9…Nb1 10.Bd2 Nxd2 から 11…Ke4 でも又は 9…Nc2+ から 10…Nxe1 でも既に見た黒勝ちの局面になる。だから白は選択の余地がない。

9…Nb1 10.Bb2 a3

 この手は自分のナイトを完全に閉じ込めるが白ビショップを隅で動けなくしたことはそれを上回る代償である。この局面は奇妙な局面で、ほとんどポーン・エンディングと言ってよく黒は大した苦労なく勝てる。

11.Ba1

 11.Bc1 なら 11…Nxc3 12.Bxa3 Nxa2 で黒が簡単に勝つ。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(069)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

12.Bh6

 カバレクは進展を求めて正しくキング翼に目を向けている。Bxf8 からおなじみのg6での捨て駒が脅威である。12.hxg6 fxg6!(h列を部分的に閉鎖のままにしておく)13.Qb3+ Be6 14.Qxb7 でポーンをかすめ取るのは 14…Bd5! のためにそれほど効果がない。白が 15.Kf1 か 15.O-O でgポーンを守っているると、黒は 15..a6!(白クイーンから逃げ道のa6を奪う)16.Bf4 Rb8 17.Qxa6 Ra8 18.Qb7 Rb8 19.Qa6 Ra8 で千日手で引き分けにすることができる。

12…Qc7

 アンデルソンは自陣の2段目で守ることを望んだ。12…Be6 13.O-O-O b5!(c3-c4 突きを防ぐ)も可能で、14.hxg6 fxg6 15.Bxf8 Bxf8 16.Bxg6? は無理筋である。このあとは 16…hxg6 17.Qxg6+ Bg7 18.Rh7(18.Qh7+ なら 18…Kf8 19.Nf4 Bf7 で受かる)18…Re7!(18…Qd7? 19.Rdh1 Kf8 20.Nf4 Bg8? は 21.Qxf6+!! Bxf6 22.Ng6# で詰まされる)19.Rdh1(20.Rh8# の狙い)19…Kf8 20.Rh8+ Bg8! で黒は安全である。このような変化は怖がり屋には向いていないが、黒陣の柔軟性をよく表わしていることは確かである。

 12…Qe7!? という手もあり、13.O-O-O に 13…Bf5! 14.Bxf5 Qxe2 と応じて単純化する準備である。たぶん白は 13.Kf1!? の方が良いが、それでもクイーン翼ルークを働かせるのに困難があるかもしれない。

13.O-O-O Be6?

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(300)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図300 黒の手番
カン対ケレス、1955年(変化図)

この後の変化は次のとおりである。
1)3…Kd6 3…Nc6 は 4.f6 Ne5+ 5.Kc2 で黒ナイトはビショップもcポーンも取るわけにいかない。4.f6! 白はこのポーンをせき止められてはいけない。例えば 4.Bh3? は 4…Ke5 5.Bg4 Kf6 6.Bh3 Kg5 で手詰まりに陥る。4…Nc6 5.Kc2 このプロブレムに出てくるような手だけが白を救う。5…Ne5+ からcポーンを取る手を狙われていた。5…Ne5 6.a5! Nxc4 もちろん 6…Nxg4 はだめで 7.f7 Ke7 8.a6 で白の勝ちになる。6…Kc7 も 7.Be6 Kb7 8.Kb3 である。7.a6 Nb6 8.Kb3 この局面でどちらかが優勢だとしたらそれは黒ではない。
2)3…Kd8 この手の目的はキングがe8からf7へ行って白のfポーンを攻撃することである。4.f6 Nc6 4…Ke8 なら 5.Be6 である。5.Be6! これで黒が進展を図る手を見つけるのが困難である。fポーンを攻撃したりhポーンを進めたりすれば白のaポーンが前進できるようになる。

 この受けの構想は簡単そうに見えるかもしれない。しかし時間制限の直後の手が 1.Bd5? であったことを考えると実戦では見つけるのがそれほど簡単でないことが分かる。指し掛けの間の長考にもかかわらずマスターのカンはこの局面の機微のすべてを理解することができなかった。本譜の手でどうして負けになるのかを見るのは興味深く勉強になる。

1…Kd6 2.f6 h4 3.gxh4 gxh4

 ビショップの位置が少し効果的でないことを除けばこの局面と先に分析した局面との間に大した違いはない。白がfポーンを取られたくなければ黒のhポーンをh2に行かせなければならない。黒のb列のパスポーンのために白キングはまだクイーン翼に縛り付けられている。

4.f7

 受身の防御でも良くならない。例えば 4.Kd2 なら 4…h3 5.Kc2 h2 6.Kd3 Kd7! でビショップが動くとfポーンが取られるので手詰まりのままである。又 4.Ke4 でも黒のbポーンが危険すぎるので白は助からない。例えば 4…h3 5.Kf3(5.Kf5 なら 5…h2 で 6.f7 Ke7 7.Kg6 Kf8 又は 6.Kg6 Nxc4 7.f7 Ne5+ で白が負ける)5…b3 6.Kg3 b2 7.Be4 Ke6! 8.Kxh3 Kxf6 9.Kg3 Ke5 で黒が楽に勝つ。

4…Ke7 5.Be6

 白はうまくhポーンを抑えることができた。しかしその代償はビショップの位置が不安定なことである。これから黒はfポーンを取りにいく。

5…Nc6!

 6…Ne5 と 6…Nd8 の二とおりの狙いがある。

6.Bd5

 6.Ke4 は 6…b3 7.Kd3 b2 8.Kc2 Nd4+ でビショップが取られる。

6…Ne5+ 7.Kc2 Nxf7

 終わりの始まりである。白が駒を交換しても黒のhポーンが先にクイーンになり同時にaポーンを止める。

8.a5 Nd6 9.a6

 有力そうな 9.Bb7 は 9…Nxb7? なら 10.a6 の狙いだが実際は 9…Kd7 10.a6 Kc7 で受かる。

9…Nc8 10.Bg2 Kd6 11.Kb3 Kc7

 これで白のaポーンが無害となったので黒は簡単に勝てる。

12.Bb7 h3 13.Ka4 h2 0-1

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(068)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

 これは主手順の 6.Bc4 より人気は劣るが危険な手である。白はクイーン翼の多数派ポーンをすぐに活用するつもりはないが、黒がほとんど確実にキャッスリングするキング翼への直接攻撃を見据えている。

6…Bd6

 黒は理にかなった展開の作戦に従っている。

7.Bd3 O-O 8.Ne2 Re8!

 この手には両様の目的がある。黒は防御に好適のf8をナイトのために空けながらe列を占拠した。

9.Qc2!

 これは白の作戦に適合する唯一の手である。代わりに 9.O-O? は 9…Nd7 10.Qc2 Nf8! となって、黒がポーンを突いて弱体化する必要なしにh7を守るので白には攻撃目標がなくなる。

9…g6

 この手はb1-h7の斜筋を閉鎖し、場合によっては …f6-f5 突き(e4の地点を争う)の用意にさえなっている。しかし白に h2-h4-h5 突きによってh列を素通しにする機会を与えている。

 マスターの実戦でまだ十分に試されていないもっと安全な選択肢は 9…h6!? である。白が Be3、Qd2 から O-O-O でh6で駒を切る用意ができなければキング翼攻撃は終わりで、クイーン翼の多数派ポーンを突き進める作戦に戻るのが良い。白はナイトをf5かh5に捌くかもしれない。黒は …h7-h6 と突いたあとは、危険をおかしてまで …g7-g6 と突きそうにない。なぜなら白にg6で駒を犠牲にして黒キングを露出させる重大な可能性が生じるからである。

10.h4! Nd7 11.h5 Nf8

 黒は急いでナイトをキング翼に向かわせて、12.hxg6 hxg6 13.Bxg6! fxg6 14.Qxg6+ Kf8 15.Rh7! による詰みの狙いを止めるのにちょうど間に合った。代わりに 11…f5? は 12.hxg6 hxg6 13.g4! でg6での捨て駒の狙いが復活することに注意しなければならない。

(この章続く)

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