2014年02月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(299)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 次は反対の面を分析してみよう。局面が閉鎖的な時あるいはビショップが味方のポーンによって動きを制限されている時はナイトの方がビショップより勝ることが多い。ナイトがどちらの色の枡にも利かせることができる能力を発揮できるのはこのような時である。次の例はそれを示している。

 図299 白の手番
カン対ケレス、1955年

 この局面は1955年モスクワでのカン対ケレス戦に現れた。ちょっと見ただけでは中央のビショップにより支援された2個のパスポーンがあるので白が有利のように思われるかもしれない。しかし詳しく分析すると幾つかの不利な点が浮かび上がる。第一にパスポーンは両方とも効果的にせき止められていて、白キングがcポーンの守りに縛り付けられているのでビショップでしか支援できない。第二に黒枡が弱いために黒キングにe5の地点を占拠される恐れがあり、そうなれば白のfポーンが落ちる。さらに付け加えれば黒にもパスポーンが2個できる可能性があり、そうなれば白の優位も消し飛んでしまう。

 結論として形勢は黒の方が勝ると言うことができる。しかし白は敗勢なのだろうか。局面はまだ難しいが白には長距離に利くビショップがあるので受け切ることが十分期待できる。しかしそれは白が正確を期して指した場合のことである。実戦は次のように進んだ。

1.Bd5?

 cポーンにひもを付け白キングを自由にするこの当然の手が敗着だった。黒のhポーンの前進に対して白がf列のパスポーンを用いて反撃することになるのは明らかである。黒のhポーンがh2に達してしまうとビショップが完全に縛り付けられてしまう。だから白は 1.Bf3! h4 2.gxh4 gxh4 3.Bg4! と指してhポーンを止め逆に f6 へのポーン突きを狙わなければならない。

(この節続く)

2014年02月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(347)

「Chess」2014年2月号(3/4)

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ロンドン大会の米国のスター(続き)

ヒカル・ナカムラがスーパー16選手の快速戦で優勝


26歳のヒカル・ナカムラはシード1位で、ロンドン・チェスクラシックでの優勝はそれにふさわしかった

決勝戦

 スーパー16でヒカル・ナカムラは時に幸運を抜け目なく利用したと言ってもいいだろう。しかし快速チェスは質と同じくらい面白さが大事である。それに、不利な局面でも勝勢の局面でも米国選手の布局の豊富さ、意志の強さ、決してあきらめない姿勢、そして優れた技術には感服せざるを得なかった。さらには、ボリス・ゲルファンドが決勝戦第1局で墓穴を掘ったように、ナカムラは手を決して見逃さない。

H.ナカムラ – B.ゲルファンド
決勝戦第1局

 黒は踏み込んだナイトのおかげで交換損の十分な代償を得ている。ここでは 22…Rd7 とでも指しておくべきだった。

22…Qf6?

 一見この手は白クイーンが砲列線からよけるのが確実なので強い手のように見えるが、ナカムラはものすごく戦術が見えるのでここでもすぐにそれを見つけた。

23.Rxc7! Ne6 24.Rd7

 ここが問題の局面である。白は二つの大駒を救い、ほとんど代償を与えずに交換得になり、勝ち切った。

 次戦で勝たなければならないゲルファンドはナカムラのキング翼インディアン防御にアベルバッハ戦法を採用し側面を食いちぎったが、積極的だけでなく超正確な受けに会い、ナカムラが楽に引き分けた。

 マグヌス・カールセンがオリンピアにシード1位でやって来て優勝をかっさらうのに慣らされていた。しかし彼が不在の今回は新しいシード1位が来たが、それでもまたシード1位がスーパー16で優勝した。この素晴らしい優勝でナカムラが新しい世界チャンピオンとの差を詰めるのに役立つかもしれない。2014年にならないと分からない・・・

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(この号続く)

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カロカン防御の指し方(067)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1
白 L.カバレク
黒 U.アンデルソン
ボルボ・グランドマスター大会番勝負、首都ワシントン、1978年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 6.c3!?

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(298)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 次の例は両翼で戦闘が行なわれる局面ではビショップの方が有利であることを最も明瞭に示している。

 図298 白の手番
チェホーバ対ラスカー、1935年

 今度も戦力は互角である。白はさしあたってキング翼にはほとんど不安がないがクイーン翼のポーンは弱体化し易い。それは敵に取られるという意味ではなく黒キングの侵入を防げないという意味である。だから白はクイーン翼の強化を図らなければならない。もし白のaポーンがa4にいたら 1.Nc1 から 2.Nd3 と指して侵入口をすべてふさぎとりたてて問題のない局面にすることができる。しかし 1.a4 と指す余裕はない。なぜなら 1…Kc6 2.Nc1 Kc5 と指されるとb4又はd4から黒キングに侵入されるからである。白の唯一の可能性はできるだけ早くキングをクイーン翼に移動させることである。

1.Kf1 b5!

 この手は白に弱いポーンを作らせる目的である。1…Bb2 は 2.a4 Kc6 3.Ke1 Kc5 4.Kd2 Kb4 5.Kc2 で白が弱いbポーンの保護に間に合うので手損である。

2.Ke1 Bb2 3.a4 bxa4 4.bxa4 Kc6!

 もちろん 4…Kb6 でも良いが 5.Kd2 に対して 5…Ka5? と指してはいけない。それは 6.Kc2 Be5 7.f4 Bd6 8.Kb3 で白にとって全然問題のない局面になってしまう。代わりに 5…Kc5! で本譜の手順に戻ることができる。局面を深く理解しているラスカーは一箇所の弱点を攻撃するだけでは十分でないと認識して自分のキングを中央に置き白のeポーンも標的にする作戦にでる。

5.Kd2 Kc5! 6.Nc3

 ラスカーの構想は次の変化を見ればはっきりと分かる。6.Kc2 Bd4 7.f3 Kc4! 黒駒は全局を支配していて白はポーン損が避けられない。例えば 8.Nc1 なら 8…Be5 9.h4 Kb4 でaポーンを取られるし 8.Nxd4 Kxd4 9.Kb3 なら 9…a5 で黒の楽勝のポーン・エンディングになる。

 本譜の手で白は反撃に望みを託すが、そうすることにより自分のナイトをクイーン翼からはるかに遠ざけて黒に強力なパスポーンをa列に作らせてしまう。

6…Kb4

 ラスカーは 6…Bxc3+ の後のポーン・エンディングで勝てるかどうかを正確に読む必要はない。エンディングではいつも最も簡明な作戦を選ぶべきで、それからすると最も安全に勝つ方策はaポーンを取ることである。

7.Nb5 a5 8.Nd6 Kxa4 9.Kc2

 9.Nxf7 は 9…Kb3 で少なくともナイトでaポーンと刺し違えなければならない。そうしないと 10.Nd8 a4 11.Nxe6 a3 12.Nc5+ Kc4 のようなことになる。本譜の手で白はhポーンを失う。

9…Be5 10.Nxf7 Bxh2

 黒は得しているaポーンがパスポーンなので必勝形である。ラスカーは技術的な問題も難なく解決する。

11.Nd8 e5 12.Nc6 Bg1 13.f3 Bc5

 この手はナイトの動きを制限している。

14.Nb8 Kb5 15.g4 Be7 16.g5

 ナイトは既に捕獲される恐れがあった。

16…fxg5 17.Nd7 Bd6 18.Nf6 Kc4

ここで白が投了した。19.Nxh7 でも 19…Be7 である。両翼で戦いが行なわれる開けた局面でのビショップの強みをみごとに示した例だった。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(066)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 白は大きな進展を遂げたが、ここで 27.c5+? というポカを出した。27…Kc7 28.Bc4 28…Bxa2! を見落としていた。29.Bxa2 なら 29…Rd4+ でf4のナイトを取られる。白は 29.Kc3 でなんとか引き分けにすることができた。

 正着は 27.Nd5! だった。黒は 27…Bxa2? が 28.Bd3! でビショップが捕獲され Ka3xa2 が受からないのでaポーンをかすめ取ることができない。代わりに 27…f5 は 28.Nc3! Bc2 29.Nb5+ Kc6(29…Kd7 なら 30.Nd4 Bb1 31.gxf5)30.Kc3! Bb1 31.gxf5 Bxf5 32.Nd4+ Kc7 33.Nxf5 で黒のキング翼のポーンが分断される。白はf5とh7のポーンを摘み取ることができ勝ちの収局になる。

 結論として 6…Bd6 は白が有利な収局に向かう 7.Qe2+! を見つけると黒の問題が解決されないことになる。だから 6…Qe7+! または 6…Nd7!? と指すべきである。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(297)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図297
マーシャル対ニムゾビッチ、1928年

14.g6! Be6

 14…Bxg6 は 15.Kg5 から 16.g4 で引き分けになってしまう。

15.Kg5 Ke5 16.Kh6 Kf6

 もっと積極的に 16…Kf4 と指すのは 17.Kh5 Kg3? 18.Kg5 f4 19.g7 Bg8 20.Kf5 Bh7+ 21.Kg5 で引き分けにしかならない。

17.g3

 遅かれ早かれ白はこの不都合な手を指さざるを得ない。例えば 17.Kh5 なら 17…Bd5 ですぐに負けになるし 17.Kh7 なら 17…Kg5 18.g7 f4 である。

17…Bd7 18.Kh5

 18.Kh7 なら 18…Kg5 19.g7 Be6、18.g7 なら 18…Be6 で前の説明のとおりである。

18…Kg7

 18…Be8 の方が 19.Kh6 Bxg6 20.g4 f4 21.g5+ Kf5 で少し早く決まる。

19.Kg5 Be6 20.Kh5 Bc8 21.Kg5 Bd7!

 黒はわざと一手損をした。白は黒に枡を空けなければならない。

22.Kh5 Kf6

 もちろん 22…Be8 はだめで 23.Kg5 Bxg6 24.g4 で引き分けになってしまう。

23.Kh6 Be8 24.g7 Bf7

ここで白が投了した。以下の想定手順は 25.Kh7 Kg5 26.g8=Q+ Bxg8 27.Kxg8 Kg4 で白が勝つ。最初の局面からは結末がほとんど想像できない素晴らしいエンディングだった。

(この節続く)

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布局の探究(88)

「Chess Life」1994年4月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

小駒か3ポーンか?

 ビショップもナイトも3ポーンとほぼ同じ価値があるというのはよく知られた知識である。駒割を考える一部としてこの関係は正当で活用すべきであると私も十分認めている。そこで実戦で判断を行なうために重要な疑問が出てくる。

 (1)小駒を犠牲にする代わりに3ポーンを取れることがかなり確実である。そうすべきだろうか?

 (2)予定している手は相手が小駒を犠牲に3ポーンを得ることになる。そうすべきだろうか?

 もちろん料理本のような答えはあり得ない。それでも指針として頼りにできる原則は存在する。以下がそれである。

 (1)局面が収局に近いほど(またはそうなりそうなとき)、ポーンの方が重要な戦力となる。

 (2)駒得している側が展開で遅れているならば、駒得の優位を生かすことができない可能性が高い。その場合通常はポーンを持っている側の方が有望である。

 (3)試合の早い段階ほど、駒の方が重要である公算が大きい。早い段階での指し手はポーンよりも展開の方が重視されるのが普通である。それに駒得は攻撃において容易に決定的な要素になりやすい。

 (4)開放的な局面では、普通は駒を持っている方が戦力を速く活用できるので有利である。ポーンを動員するのは本質的に手数がかかる。

 シチリア防御の開放戦型では白が小駒を犠牲に3ポーンを得る絶好の機会ができる。駒を犠牲にするのが最もよく起こる地点はb5とe6である。

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カロカン防御の指し方(065)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 同じく優勢になるのは 10.Bb3 Nd7 11.O-O Rhe8 12.Re1 Kf8 13.Bf4! Bxf4 14.Nxf4 で、14…Bxb3(14…Bf5 もあり、このビショップはe6にとどまれない)15.axb3 を強制する。白のクイーン翼の多数派ポーンはまだパスポーンを生み出せるが、黒はキング翼で生み出せない。本譜の 10.Bd3 で白はしだいに駒を交換し勝ちの収局に単純化していく狙いのために少しの優勢を保持している。

 棋譜は1970年のマツロビッチ対スミスロフ戦を追っている。元世界チャンピオンのスミスロフは収局の大家で、危険を覚悟でわざとこの劣勢の局面にしたのは、クイーンのない局面が不得手と知られている相手を圧倒できると信じているからである。しかし試合は次のように進んだ。10…Nd7 11.Bf4! Nb6 12.Bxd6+(手順1 白は黒の重要なキング翼ビショップを消す)12…Kxd6 13.b3!(手順2 白はクイーン翼の多数派ポーンを働かせるために c2-c4 と突く準備をする)13…Kc7 14.c4 Rad8 15.Kd2!(手順3 白はキングを中央に近いc3に配置する)15…Rhe8 16.Rae1 Nc8 17.Kc3 b6(白が Nf4、c4-c5、Bc4 から b3-b4、a2-a4 そして b4-b5 とやってくるかもしれないので、黒は受動の防御を放棄した)18.Nf4 g6(黒はいずれhポーンを守らなければならない。…g7-g6 と …f6-f5 はh7でビショップを捕獲するのにいつも信頼できるとは限らない)19.Re3!(手順4 ルークを中央に集めてビショップをe6から追い払う)19…Bd7 20.Rhe1 Rxe3 21.Rxe3 Kd6 22.b4 c5(白が 23.c5+ から 24.Bc4 を狙っていたのでほとんど必然である)23.dxc5+ bxc5 24.Be2 cxb4+ 25.Kxb4(手順5 クイーン翼の多数派ポーンをパスポーンにする)25…Bf5 26.g4! Bb1

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(296)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図296 白の手番
マーシャル対ニムゾビッチ、1928年(変化図)

 白はもちろん 6.Kg3 Kd6 7.Kf4 でeポーンを攻撃しなければならない。黒はそれを 7…Bg6 と守り次のように進む。8.f3 8.g5 h5 は黒の手助けにしかならない。8…exf3 8…Kd5 は 9.fxe4+ Bxe4 10.g5 h5 11.g6! Bxg6 12.Kg5 から 13.g4 で引き分けになる。また 8…Ke6 なら 9.g5! h5 10.fxe4 Kd6 11.Kg3! Ke5 12.Kh4 Kf4 13.g3+ Kf3 14.e5 Be8 15.e6 Bg6 16.Kh3! で引き分けになる。9.gxf3 ここで黒には克服しなければならない技術的な問題がまだいくつかある。勝つ手順は次のとおりである。9…Kd5 10.Ke3 10.Kg3 なら 10…Ke5 11.f4+ Ke4 で黒が勝つ。10…Bc2 11.Kf4 11.f4 なら 11…Bd1 12.g5 h5 で良い。11…Bb1 この手は手待ちである。12.Ke3 12.Kg3 でも同じである。12…Bg6! これで白は手詰まりに陥っている。以下は二つの変化がある。
1)13.Kf4 Kd4 14.Kg3 14.g5 h5 は黒がもっと楽である。14…Ke3 15.f4 Ke4! 16.f5 Be8! 17.g5 h5 18.f6 Kf5 これで黒が勝つ。
2)13.f4 Be8! この手は 14.f5 が先手にならないようにするためである。14.Kf3 14.g5 なら 14…h5 15.f5 Ke5 でポーンが取れる。14…Kd4 15.Kg3 15.g5 なら 15…h5 16.f5 Ke5 で黒が勝つ。15…Ke4 16.f5 Ke5 これで黒が勝つ。

 実戦の手順に戻って黒の最後の手はfポーンを取らせないためである。これで黒の指し手は少し簡単になった。しかし収束はまだまだ面白い。

4.Kg3 Kc6 5.Na5+

 ナイトはどのみち取られるのでキング翼からできるだけ離れさせておくのが最善である。

5…Kb6 6.Kf4 Kxa5 7.Kxe4

 白は黒に強力なeポーンを残させないようにした。代わりに 7.Kf5 なら 7…Kb4 8.Kxf6 Kc3 9.g5 hxg5 10.Kxg5 Kd2 11.Kf4 Bb1! 12.g4 Ke2 13.Kg3 Ba2 14.g5 Bf7 15.Kg2 Bg6 で黒キングが急所のf1又はf3に来て黒の勝ちとなる。

7…Be6 8.Kf4 Kb4 9.Kg3 Kc5 10.Kh4 Bf7

 黒は白キングをh5に来させてはいけない。ここからは白はポーンの一つを交換することができる。

11.f4 Kd6 12.g5 hxg5+

 もちろん 12…fxg5+ は 13.fxg5 h5 14.g4 でだめである。

13.fxg5 f5

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(064)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒を悩ませるにはこの手しかない。7.Ne2 では 7…Qc7!(f4の地点を支配し、hポーンへの狙いにより 8.O-O を防いでいる)8.Ng3 O-O 9.O-O c5 10.dxc5(10.d5 は 10…Nd7 11.Be2 c4! で c2-c4 突きを防ぐことにより白のdポーンを無理やり孤立させることができる。黒はこのポーンを …Nb6 から …Rd8、または …b7-b5!?、…Bb7、…Nb6 そして …Rad8 で攻撃する)10…Bxc5 11.Bb3 Nc6 で黒の展開が滞りなく進む。そして中盤戦での十分な反撃により収局の懸念を減らすことができる。

 9…c5 のほかに黒には 9…Nd7 と 9…Be6 という手もあり、どちらも十分互角にできるはずである。

7…Qe7

 あいにく黒にはこのチェックに満足な応手がない。本譜の手はクイーン交換になり、勝ちのキングとポーンの収局に持ち込む白の期待を高めさせる。代わりに 7…Be7 なら白は 8.Nf3 O-O 9.O-O Bg4(9…Bd6 には 10.Re1! で …Rf8-e8 を防ぐ)10.c3 から h2-h3 で釘付けをはずす。黒は自陣に明白な標的がないけれども、形勢は不利である。陣地の広さで劣り、直接的な狙いを持たず、収局には不利なポーン陣形で、クイーン翼ビショップに適当な地点がない。白はしばしば h2-h3、g2-g4、Nh4 から f2-f4-f5 の狙いで黒のクイーン翼ビショップを追い詰める。黒がクイーン翼ビショップを白のナイトと交換すれば、白の残りの白枡ビショップが気ままに動ける。

8.Qxe7+ Kxe7!

 これは実際には 8…Bxe7、9…O-O そして 10…Re8 に比べて手得になる。黒は2手でなく1手でキング翼ルークをe8に展開し、それからキングをf8に引っ込める。盤上からクイーンが消えたので白には黒キングを詰める見通しがほとんどない。だから黒キングはより中央に近いf8に安全に居続けることができる。

9.Ne2

 白は 9.Nf3 よりも 9.Ne2 の方が手広い。このナイトはg3かc3を経由してe4に跳ぶかもしれないし、g3経由でf5に跳ぶかもしれない。また、Bf4 の支援にもなる。黒のキング翼ビショップが最も働いている小駒なので、白は黒枡ビショップ同士を交換したい。

9…Be6

 白のキング翼ビショップに挑むのが最善のようである。代わりに 9…Re8 なら 10.O-O Bf5 11.c3 Kf8 12.Bf4! となって、白は …b7-b5 の狙いをかわしつつ黒枡ビショップ同士の交換という大局観に基づいた作戦を実行する。

10.Bd3

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(295)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 ここからは実戦例の締めくくりとしてビショップ対ナイトの戦いの非常にためになる例を少し分析しよう。中央部が開けていて両翼にポーンがある場合ビショップの方がナイトより有利であることは既に述べた。ナイトが敵陣に迷い込むと捕獲される恐れがある時もビショップの有利が明らかである。次の例は限られた戦力でポーンが全部片翼にある場合でも勝ちが可能な場合があることを示している。

 図295 黒の手番
マーシャル対ニムゾビッチ、1928年

 この局面は1928年ベルリンでのマーシャル対ニムゾビッチ戦に現れた。戦力は互角で通常なら黒の勝ちはあり得ないところだがナイトの位置が白にとって大きな負担になっている。ナイトを戦いに引き戻す方策はなく取られてしまう可能性もある。ニムゾビッチはこれをうまく利用して次のように勝ちを収めた。

1…Kd5!

 ナイトの逃走路のc5を押さえ 2…Ba2 から 3…Kc6 で捕まえる狙いである。

2.Kh2

 どうして白は黒の狙いを無視する手を選んだのだろうか。次の分析によれば白がナイトを助けようとしてもやはり負けることが分かる。2.Nd8 Kd6 3.Nb7+ Kc6! 4.Na5+ Kd5 4…Kb5 なら 5.Nb7 で 6.Nd6 の狙いがあるので黒キングは戻らなければならない。5.Nxc4 5.Kh2 は 5…Ba2! で白はナイトの代償が十分でない。この後 6.g4 なら 6…Kc5 7.Kg3 Kb6 8.Kf4 Kxa5 9.Kxe4 Kb4 10.Kf5 Kc3 だし 6.Kh3 なら 6…Kc5 7.Kg4 Kb5 8.Kh5 Kxa5 9.Kxh6 Kb4 である。5…Kxc4 6.Kf1 6.f3 なら 6…e3 7.Kf1 Kd3 8.Ke1 f5 の後 9…e2 から 10…Ke3 で黒が簡単に勝つ。6…Kd3 7.Ke1 h5 8.Kd1 e3! 9.fxe3 9.f3 なら 9…f5 で黒が勝つ。9…Kxe3 10.Ke1 Ke4 11.Ke2 Kf5 12.Kf3 Kg5 13.Ke3 Kg4 14.Kf2 f6 この後黒はgポーンを取りhポーンを進めていって勝ちになる。

 マーシャルの希望は黒がナイトを取っている間にポーンを全て交換することである。

2…Ba2 3.g4 f6

 この手は次の変化よりも楽に勝つ。3…Kc6 4.Nd8+ Kc7 5.Nxf7 Bxf7 しかしこの局面はマーシャルが 2.Nd8 Kd6 3.Nb7+ Kc6 4.Na5+ Kd5 5.Kh2 Ba2 6.g4 Kc5 7.Nb7+ Kc6 8.Nd8+ Kc7 9.Nxf7 Bxf7 と指していたら同じになっていた。この局面をもっと詳しく調べてみよう。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(117)

「Chess Life」2005年12月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

エバンズ・ギャンビット(続き)

戦型C) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Ba5

 これが主流戦型でたぶん最善の応手である。

6.d4

 これが主手順である。面白い変化はすぐに 6.Qb3 と出る手で、ショート対ニールセン戦(スカナボー、2003年)では 6…Qe7(6…Qf6 なら 7.d4 exd4 8.O-O で 6.d4 exd4 7.Qb3 の手順に戻る)7.d4 exd4(7…Nf6 は 8.Ba3 d6 9.d5 Nd4 10.Nxd4 exd4 11.Qa4+ Kd8 12.O-O となって、黒キングが不安定な位置にいるので白が有望である)8.O-O Bb6 9.cxd4 Nxd4 10.Nxd4 Bxd4 11.Nc3 Nf6 12.Nb5 d5 13.exd5 Bxa1 14.Ba3 Qe5 15.f4 Bd4+ 16.Kh1 Qe3 17.Nxd4 Qxb3 18.Re1+ Kd8 19.Be7+ Kd7 20.Nxb3 と進んで白駒の働きが黒の戦力得を上回っていた。

 それに白は 6.O-O と指すこともできる。

 本譜の手に対して黒には白の攻勢に対処する理にかなった手段が二つある。

6…d6

 もう一つの良い手は 6…exd4 である。そのあとは 7.Qb3 Qf6 8.O-O d6 9.e5 dxe5 10.Re1 Nge7 11.Bg5 Qd6 12.Bxf7+ Kf8 13.Nbd2 で非常に激しい難解な戦いになる。展開をさらに遅らせて 8…dxc3 とまたポーンを取るのは危険すぎる。なぜなら 9.e5 Qg6 10.Nxc3 Nge7 11.Ba3 O-O 12.Rad1 となって黒が本当に危険だからである。8…d3 は常緑の局に移行する(後述参照)。

 白は 6…exd4 に対して 7.O-O と指すこともできる。最も有名な試合の一つは次のように続いた。

 7…d3?! 8.Qb3 Qf6 9.e5(もっとあとの試合ではアンデルセンは 9.Re1 Nge7 10.Bg5 と指した)9…Qg6 10.Re1 Nge7 11.Ba3 b5?(悪手。11…d5! 12.exd6e.p. cxd6 と指すのが最善だった)12.Qxb5 Rb8 13.Qa4 Bb6 14.Nbd2 Bb7 15.Ne4 Qf5 16.Bxd3 Qh5 17.Nf6+(17.Ng3! Qh6 18.Bc1 Qe6 19.Bc4 Nd5 20.Ng5 の方が簡単だった)17…gxf6 18.exf6 Rg8 19.Rad1(19.Be4 の方が良かった)19…Qxf3?(これが敗着で、黒は 19…Rg4! と指すべきだった)

 アンデルセン対デュフレーヌ戦(ベルリン、1852年)の「常緑の局」はここから 20.Rxe7+! Nxe7 21.Qxd7+!! Kxd7 22.Bf5+ Ke8 23.Bd7+ Kf8 24.Bxe7# という妙手筋の連続で即詰みに終わった。

 6…exd4 7.O-O のあと黒は 7…Nge7! と指すべきだった。そして 8.cxd4 なら 8…d5 9.exd5 Nxd5 で黒が良いし、8.Ng5 なら 8…d5(黒は注意しなければならない。8…O-O? では 9.Qh5 で壊滅する)9.exd5 Ne5 10.Bb3 O-O(ここでもポーンあさりよりキングの安全! 10…dxc3 では 11.Qe2 で白の主導権が強力になる)11.cxd4 Ng4 でほぼいい勝負である。

7.Qb3

 白はポーンの犠牲を正当化するためには早くから意欲的に指す必要がある。

7…Qd7!

 この手はc8のビショップの前の枡にクイーンを置いて悪形に見える。しかし規則には例外があり、この場合は最善の応手である。ほかの手は以下の変化のように明らかに黒がもっと悪くなる。

 7…Qf6? は 8.d5 Nce7 9.Qa4+ でビショップを取られる。7…Qe7?! は 8.d5 Nd4 9.Nxd4 exd4 10.O-O(10.Qa4+ は 10…Kd8 11.Qxa5 Qxe4+ で黒の反撃に会うので劣る)10…Bb6 11.Bb2 となる。7…exd4?! は 8.Bxf7+ Ke7 9.e5! dxe5 10.O-O で白の攻撃が非常にきつい。

8.dxe5

 この手に対する最善手は意外にも

8….Bb6!

であって、8…dxe5 ではない。こう指すと 9.O-O で白にポーンの代償が十分にできる(9.Ba3 でははっきりせず、9…Bb6 10.Nbd2 Na5 11.Qb4 Qe7 12.Qb5+ Bd7 13.Bxe7 Bxb5 14.Bxb5+ Kxe7 15.Nxe5 c6 で互角の収局になる)。以下は 9…Bb6 10.Rd1 Qe7 11.Ba3 Qf6 12.Bb5 Nge7 13.Nbd2 Be6 14.Nc4 O-O 15.Bxc6 bxc6 16.Qa4 Bxc4 17.Qxc4 Rfe8 18.Bxe7 Rxe7 19.Rd3 が想定される。

9.Nbd2 Na5 10.Qb4 Nxc4 11.Nxc4 Bc5 12.Qb3 Ne7 13.O-O O-O 14.exd6 cxd6 15.Ba3

 これはショート対ヒューブナー戦(ドルトムント、1997年)で、局面は均衡がとれc3とd6にそれぞれ弱いポーンを抱えている。

結論

 白としては試合の大部分をポーン損で指すことになるのが気にならない場合のみエバンズ・ギャンビットを指すことを考慮するのがよい。一方黒がポーン得に断固しがみつこうとする状況では、白がより活動的な局面になり強い主導権を得るのが普通である。黒の最善の選択肢はたとえポーン得を返上することになっても展開を完了することである。私が黒に推奨するのは戦型Cで主手順か 6…exd4 のあと 7.O-O に Nge7 と指すことである。

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カロカン防御の指し方(063)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Be7 の局面

 黒の作戦は 6…Bd6 7.Qe2+! を避けながらよどみなく駒を展開することである。7.Qh5 にも楽に 7…O-O と応じることができる。しかし 6…Be7 はそれほど攻撃的な手でない。7.Ne2 O-O 8.O-O Nd7 9.Bf4 または 9.c3 のあと白の駒は望みの地点に到達している。黒が 8…Be6?(8…Nd7 の代わり)で反撃できないのは、9.Bxe6 fxe6 10.Nf4! で新たな弱点のe6を攻められるからである。たぶん最善手は 8…Bd6 から 9…Qc7 で、6…Be7 の不合理が露呈する。

7.Qe2+!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(294)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図294

 白は得していた2個のポーンを捨てて非常に有利なエンディングに持ち込んだ。白のパスポーンは遠く隔たっていて効果的なのに対し黒のパスポーンは白ビショップによって簡単にせき止められている。

7…Kf7

 白の狙いは 8.Ke6 の後fポーンを突いていくことだった。

8.Kg5 Bf3

 黒はキングがクイーン翼に行きビショップで白のfポーンと刺し違えることができれば引き分けにできる。しかし実際はその余裕がない。例えば 8…Ke7 なら 9.f5 Kd7 10.f6 Bd5 11.a7 で白が勝つ。

9.a7 Bd5 10.Bh4

 10.Kxh5 は 10…Ke6! 11.Kxg4 Kd7 12.f5 Kc7 13.f6 Kb7 で黒キングがちょうど間に合って引き分けになる。

10…Bf3 11.f5

 11.Kxh5 は 11…g3+ 12.Kg5 g2 13.Bf2 Be4 となり白キングがクイーン翼に向かえば白ビショップがfポーンを守りきれなくなるので引き分けになる。

11…Kg7 12.Bg3 Kf7 13.Be5 Be4

 13…Kf8 なら 14.Kf6 h4 15.Bd6+ Ke8(15…Kg8 なら 16.Ke7)16.Kg7 で白が勝つ。また 13…Ke7 なら 14.Kg6 で白が勝つ。本譜は既に黒が手詰まりに陥っている。

14.Kxh5

 黒がfポーンを取れるように見える。

14…g3 15.Bxg3 Kf6 16.Kg4! Bxf5+ 17.Kf4

これで白が勝つ。

 白のaポーンがクイーンに昇格する。鮮やかな結末である。手順全体が異色ビショップのエンディングに特有の妙手にあふれていた。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(062)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Nd7 の局面

 これは主手順の 6…Bd6 7.Qe2+! で難局に陥るのを避けようという手である。なぜなら 6…Nd7!? 7.Qe2+ なら Be7 で黒は不満がないからである。しかしこのナイトはクイーン翼ビショップを解放するためにまた動かなければならない。だから黒の展開はアンデルソンの 6…Qe7+! ほど楽ではない。

 本筋の手順は 6…Nd7!? 7.Ne2 Bd6 8.O-O O-O(Bf4 を防ぐ 8…Qc7 もある。白はビショップをf4に配置するのにこだわるならば 8.O-O でなく 8.Bf4 と指すべきである)9.Bf4 Nb6 で、コルチノイがカルポフ戦で指した。その試合では白が 10.Bd3 と引いたので、黒は 10…Be6 でc4とd5の地点を支配でき互角になった。コルチノイの好所の駒(中央の2列のルーク、d6のクイーン)が白のもくろむcポーンとdポーンの前進を止めたが、悪手を出してカルポフにキング翼ビショップをf3に来させた。このビショップはa8-h1の斜筋に強い圧力をかけ、黒とd5の支配を争った。試合は引き分けに終わったけれども、白が勝つはずだった。

 白のビショップが10手目で(d3でなく)b3に下がれば、黒は 10…c5! と突いて白の中央を破壊することができる。11.d5?? は 11…c4 で白のビショップが取られる。黒のcポーンと白のdポーンとの交換のあと、黒は Bxe6 を恐れずに …Be6 と指すことができる。なぜなら …fxe6 で二重ポーンが解消し、…e6-e5 と突くことができ黒のキング翼の多数派ポーンが強力になるからである。

 白が Bf4 と指すまでコルチノイが …Nb6 を遅らせたのは注目する価値がある。もし 6…Nd7!? 7.Ne2 Nb6?! と指すなら、黒は 8.Bb3 に 8…Bd6? を避けなければならないのは 9.c4! で白が先手で c4-c5 と突く狙いができるからである。そのあと 9…Bc7 10.Bf4 O-O 11.Bxc7 Qxc7 12.c5! となると、黒は …c6-c5 で中央に打って出る(「出遅れ」dポーンの犠牲を払うけれども)のを妨げられる。そして 12…Nd5 13.Bxd5! cxd5(これで白のdポーンが黒のdポーンによって隠される)14.O-O でも 12…Nd7 13.O-O b6 14.cxb6 axb6 15.Re1 でも黒が劣勢になる。黒は中盤戦でほとんど活発に動けず、例のキングとポーンの敗北収局の亡霊が黒陣に訪れる。黒はこの手順中 8…Bd6? の代わりに 8…c5! と突くべきである。

 コルチノイの新手の 6…Nd7!? は 7.Ne2 と 7.Qe2+ に対して特に効果的である。しかし白は問題を引き起こすほかの手段を絶対探すだろう。最も有望な手段の一つは 7.Qh5!? である。黒は詰みの狙いを 7…Qe7+ 8.Ne2 でかわすことができるが[訳注 8…Qb4+ でビショップが取られます]、キング翼ビショップが元の位置のままである。7…g6 8.Qh4 Nb6 9.Bb3 c5 10.dxc5 Bxc5 は理想形のようだが、11.Bh6! に見舞われる。黒はもうキング翼にキャッスリングできず、12.Bg7 を狙われている。たぶん黒は次のようにクイーン翼にキャッスリングすればこの問題を回避できる。6…Nd7!? 7.Qh5!? Qe7+ 8.Ne2 Nb6 9.Bb3 Be6 10.O-O g6 11.Qf3(ほかの手では 11…Bxb3 でe2のナイトが当たりになる)11…O-O-O お互いのキングが逆翼にいるので、両者とも全面的なポーンの暴風を考えることができる。未開の地を冒険してみたいならば 6…Nd7!? こそふさわしい!

 主手順に代わる黒の三つ目の手は 6…Be7 である。

 6…Be7 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(293)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 このようなエンディングではパスポーンが決定的な役割を果たす。そしてこのパスポーンを作るためには意表をつくポーンの犠牲がしばしば必要でそのため敵にパスポーンをいくつか作らせることもある。連結ポーン又は同一斜筋上のポーンはビショップで止めることができる。そのため離れ離れのパスポーンの方がはるかに有利である。次の見事な例は実戦でこれがどのように働くかを示している。

 図293
アベルバッハ、1950年

 この局面は1950年モスクワでのスミスロフ対アベルバッハ戦の変化である。実戦ではスミスロフが引き分けにしかできなかったが対局後アベルバッハは白が図の局面に持ち込んで勝つことができることを指摘した。白は2ポーン得だが二重ポーンになっている。白はキング翼では何もできずクイーン翼への道は黒キングによってふさがれている。スミスロフが何も進展が図れないと考え、勝利へのあてのない試みを少しやった後引き分けで我慢したのも無理もない。

 実際には驚くべき勝つ手段があり次のアベルバッハの分析でそれをまの当たりにすることができる。

1.Kg5 Kf7

 1…Bxf3 なら 2.Kxg6 Ke5 3.Be3 Ke6 4.Bf4 で白がまたポーンを取れる。本譜の手で黒は今度こそ 2…Bxf3 を狙っている。

2.f4!!

 奇妙な手である。わざわざ自分のキングを閉じ込めている。しかしこれが勝つ唯一の手である。2.g4 なら黒は 2…fxg4! で引き分けにできる。しかし 2…Bxf3 は 3.gxf5 gxf5 4.a8=Q Bxa8 5.Kxh5 f4 6.Kg5 f3 7.Kf5 から 8.Bf2 の後白キングがクイーン翼に移動して勝ちになる。3.fxg4 hxg4 4.Kxg4 Ke6 5.Kg5 Be4! 5…Kf7 は 6.Bd4 Bh1 7.Bf6 の後 8.h5 から 9.Kf5 を狙われて良くない。6.a8=Q Bxa8 7.Kxg6 Kd7 8.h5 Kc7 後はビショップでhポーンを切れば引き分けになる。

 本譜の白の手の狙いは g4 で敵陣を突破しキング翼でもパスポーンを作ることである。その結果黒に連結した2個のパスポーンを作らせることになる。これらのパスポーンは白ビショップによって止められるがそこで面白い戦いが見られる。

2…Be4

 fポーンに紐を付けた。それでも白が 3.g4 とくれば 3…hxg4 4.h5 gxh5 となってfポーンを取るために白は二重ポーンの一つを捨てなければならなくなる。だから白は準備してからでないと敵陣突破が行なえない。

3.Bf2

 黒のいずれできるパスポーンと戦うにはここが一番良い位置である。例えば 3.Bd4 では 3…Bf3 4.g4 hxg4 5.h5 gxh5 6.Kxf5 h4 で引き分けになる。

3…Kg7

 3…Bf3 なら 4.g4! hxg4(4…fxg4 なら 5.Bg3! Kg7 6.f5 gxf5 7.Kxh5 f4 8.Bxf4 g3+ 9.Kg5 g2 10.Be3 で白キングがクイーン翼に向かい白が勝つ)5.h5 gxh5 6.Kxf5 で本譜よりも簡単に白が勝つ。

4.g4!

 この手が構想全体の核心である。黒は白がまたパスポーンを作るのを妨げることができない。

4…hxg4

 この手の方が白にとって難しい。4…fxg4 なら 5.f5 gxf5 6.Kxh5 である。以下は例えば 6…Kf6 7.Bg3 Bf3 8.Kh6 Be4 9.h5 Bf3 10.Bh4+ Kf7(10…Ke5 なら 11.Kg5 f4 12.h6)11.Kg5 Be4 12.Bg3 Kg7 13.Be5+ Kh7 14.h6 Ba8 15.Kxf5 Kxh6 16.Ke6 で簡単に白が勝つ。

5.h5 gxh5 6.a8=Q!

 白は 6.Kxh5 と取っている余裕はない。それはアベルバッハによれば 6…Kf6 7.Bh4+ Ke6 8.Kg6 Ba8 9.Kg7 Bc6 10.Kf8 Kd5! 11.Ke7 Kc5 12.Bf2+ Kb5 13.Kd6 Be4 14.Kc7 Kxa6 15.Kb8 Kb5 で引き分けになる。

6…Bxa8 7.Kxf5

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(061)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Qe7+ の局面

 6…Qe7+! の着想は何と言っても 7.Qe2 がほとんど必然であるということである。白は 7.Be2 と引くこともできるが、すると 7…Qc7 8.Nf3 Bd6 で黒の展開がよどみなく進むのに対し白のキング翼ビショップはe2であまり働いていない。決定的に悪いのは 7.Be3?? と 7.Ne2?? で、7…Qb4+ で駒損になる。

 7.Qe2 に対して黒はクイーンを交換しないで 7…Be6! と指す。もし白が 8.Bxe6 と取ってくれば、8…Qxe6 でクイーン交換の可能性がまた出てくるが、この過程で白は黒の二重ポーンを解消してやることになる。白は 9.Bf4 と指しても 9…Na6! 10.O-O-O O-O-O のあと 11…Qxa2 または 11…Nb4 から 12…Qf5 の狙いがあるので、ほとんど選択の余地がない。11.Qxe6+ fxe6 のあとの進行は黒が互角(またはそれ以上!)になるが、実戦例2のピーターズ対アンデルソン戦を参照されたい。

 上記の手順は白の気のない指し方である。8.Bxe6 の代わりに白は 8.Bb3!? と指すべきである。そうすれば黒のクイーンが自分のキング翼ビショップの展開を邪魔していることになる。たぶん 8…Na6 9.Bf4 O-O-O 10.O-O-O Nb4 が黒の最善の指し方である。代わりに 8…Bxb3 は 9.axb3 Qxe2+ 10.Nxe2 Bd6 11.Bf4! となって、まだdポーンがパスポーンになる可能性のある多数派ポーンが健在なので白が少し優勢である。

 6…Qe7+ 7.Qe2 Be6 のあと 8.Bd3 は、黒が 8…c5! 9.Nf3 Nc6 で中央を開放することができるので厳しさの点で劣る。そのあと 10.dxc5 Qxc5 11.O-O Bd6 となれば黒はキング翼にキャッスリングして好形になる。

 これらの 6…Qe7+ のあとのどの変化でも白は、理想のキングとポーンの収局に至る望みがあまりない。中盤戦では黒の働きのよい駒が白から一つや二つの譲歩(二重fポーンの解消など)を引き出しそうである。もし黒が攻撃的に指せば、6…Bd6 からよく起こる不利な型の収局に次第に陥るのを避けることができるはずである。

 コルチノイは 6…Nd7!? の方を好んでいた。

 6…Nd7 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(292)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図292 黒の手番
ニムゾビッチ対タラシュ、1928年

11…f4

 どうでもしてくれという手である。既に黒に受けはない。11…Bd7 としても 12.Be5 の後黒は手詰まりに陥っている。例えば 12…Be6 なら 13.a4! bxa4 14.bxa4 Bd7 15.a5 Bc8 16.Bd4 Ba6 17.Kg5 Bc8 18.Kf6 で白が勝つ。また 12…Be8 ならば 13.Kg5 Bd7 14.Kf6 Kf8 15.Bd6+ Kg8 16.Ke7 Bc6(16…Bc8 なら 17.a4)17.Ke6 で黒のfポーンが落ちる。本譜のタラシュの手は白のポーンを二重ポーンにさせるがパスポーンとなったfポーンで勝負が決まる。

12.gxf4 Bd7 13.Kg5 Kf7 14.f5 Bc6 15.Kf4 Ke7 16.Ke5 Be8

 黒はeポーンを救うことができない。例えば 16…Kf7 なら 17.Kd6 Be8 18.Kd5 で白が勝つ。途中 17…Bb7 なら 18.Kc5 である。

17.Kxe4

 これで事実上抵抗は終わった。終局までの手順は次のとおりである。17…Bc6+ 18.Ke5 Be8 19.Kd5 Bf7+ 20.Kc5 Be8 21.Be5 Bd7 22.Kb6 Kf7 23.f6 Be8 24.f4 Ke6 25.Ka6 Kf7 26.b4 Ke6 27.a4 bxa4 28.b5 1-0

非常に面白く有益なエンディングである。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(346)

「Chess」2014年2月号(2/4)

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ロンドン大会の米国のスター

ヒカル・ナカムラがスーパー16選手の快速戦で優勝

Cグループ

 スーパー16は快速レイティングでシードが決められた。これは取りも直さず第1シードはあの快速スターのヒカル・ナカムラということになった。しかし(遅指しでの)新しい世界第3位は同グループにボリス・ゲルファンドがいたのでたぶんうれしくなかっただろう。米国選手はイスラエルのグランドマスターに衝撃的な不成績を喫していた。さらにはユディット・ポルガーを圧倒して好スタートを切ったのはゲルファンドだった。ポルガーは今年やっと2回目の大会出場で、次戦でガーウェイン・ジョーンズを倒した。対照的にナカムラはジョーンズとの試合で共にチャンスを逃して引き分け、そのあとポルガーに勝った。

 これで第3回戦は本命2選手同士の対決になった。ナカムラは本大会初めての白番で 1.b3 と指し、クイーン翼を犠牲にして攻撃にかけ勝てたかもしれないが、いろいろ冒険をしたあげく引き分けに終わった。

準々決勝

 地元のファンはショートがナカムラ戦で番狂わせを演じるかもしれないと期待していた。しかし米国選手はこの頃は大局的なへまを何もしないし、閉鎖シチリア防御の黒側で次第に全局を支配していって、好手で試合を締めくくった。伝説の英国グランドマスターは次戦で激闘を挑んだが、ナカムラはわずかに悪い局面を守りとおすことができた。

準決勝

 もう一つの準決勝局はウラジーミル・クラムニクが相手のお株を奪って1手目でなく3手目だが早い b3 突きを用いた。すぐにあっさり優勢になったが、ナカムラはいつものことながら決め手を与えず引き分けに持ち込んだ。色を代えての次局は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5!? 5.e4 Nxc3 6.bxc3 c5 7.a3 g6!? で始まったが、クラムニクは勝つ気満々のようだった。これがグリューンフェルト防御の黒の改良版であろうとなかろうと、クラムニクはまた早くも主導権を取り、ナカムラはたちまちいつものように手段をつくして受けることになった。しかし本当に交換損の收局を耐え切れるのだろうか。

H.ナカムラ – V.クラムニク
番勝負第2局

 42…Bf8! なら黒が何の紛れもなくdポーンを取っていただろう(42…Rxd7? 43.Nc5+、42…Kxd7 43.Bxh6!)。しかしクラムニクは紛れさせてしまった。

42…Kf7? 43.Nc5!

 これでdポーンが取られず、白が引き分けにできるはずである。

43…Bf8 44.Ba5 Be7 45.Bb6 Rd6 46.Ba5 Rd5 47.Bb6 h5 48.Kf3 f5 49.Kg2 Rd2 50,Ba5 Rd5 51.Bb6 f4 52.Kf3 fxg3 53.fxg3 Rd6 54.Ba5 Rd4 55.Bb6 Rd1 56.Ba5 Rd5 57.Bb6 Rd1 58.Ba5

 クラムニクはキング翼を不安定にさせようと最善をつくしたが無駄だった。今度は勝つために最後の努力をする。

58…g5!? 59.hxg5 Kg6 60.Bb6 Bxg5?

 この手のあとdポーンはクイーンにさえ成れる。60…Rd6 61.Ba5 Rd5 62.Bb6 Rd6 で千日手に同意する時機だった。

61.Ne6

61…Rd3+?

 山ほど時間がある時でさえ、そしてここでクラムニクがそうだったようにたった何十秒しか残っていない時は、ポカのあと気持ちを立て直すことは至難の業である。本譜の手は受けをより難しくしたが、冷静な 61…Be7 を指すのはそうたやすいことではなかった。この手の意味は 62.d8=Q Bxd8 63.Nxd8 Rd6 で黒が白駒を追い回し続けることができることで、例えば 64.Bc7 Rd7 65.Ba5 Rd5 66.Nc6 Rc5 である。

62.Ke4 Rd6 63.Nxg5 Rxd7 64.Nf3 Re7+ 65.Ne5+

 ナカムラは絶望的な局面から急に勝てそうな局面になって、頬をつねってみなければならなかったに違いない。黒はキングを引いて正確に指せばたぶんまだ引き分けにできただろう。しかしクラムニクは自己最悪の一つとなる放心の一手を指して、たちまち終わりになった。

65…Kf6?? 66.Bd8 1-0

 衝撃的な結末だが、西ロンドンでの日曜日のドラマは終わりどころではなかった。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

カロカン防御の指し方(060)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 このような自然な展開の手を疑うことはほとんどないだろうが、黒はこの手の成績が悪いときがあった。しかしアンデルソン(6…Qe7+!)とコルチノイ(6…Nd7!?)によって広められた新構想が、6…Bd6 は欠点があるのではという疑いを信用させている。しかし新手順にはその優秀性を合理的に確実に判断できる経験があまりに少ないので、ここでは 6…Bd6 を主手順としておく。

 アンデルソンの得意手の 6…Qe7+! は1930年代にチェコのマスターのオポチェンスキーによって初めて指された。1970年代にいく人かの選手がそれを復活させたが、普及させたのはアンデルセンの功績である。皮肉にも黒は白の望むキングとポーンの収局に近づくクイーン同士の交換を誘っているように見える!

 6…Qe7+ の局面

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(291)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 最初の例は1928年キッシンゲンでのニムゾビッチ対タラシュ戦からである。

 図291 白の手番
ニムゾビッチ対タラシュ、1928年

 白は1ポーン得だが勝ちはまだはるか先である。白にはまだパスポーンがなく黒陣もビショップでキング翼のポーンを守れるのでつけ込める隙はほとんどないように見える。黒がビショップでキング翼のポーンを守り黒キングがいずれできるクイーン翼の白のパスポーンを止めれば黒はほとんど恐れることがないように思うかもしれない。

 しかし実戦の参考になる進行が示すように事はそう簡単でない。その理由はポーンの形が弱いために黒ビショップがキングの助けなしに防御を務めることが難しいことにある。例えば黒のeポーンがg7にあったら黒は全然苦労がいらない。この局面にどんな危険が潜んでいるのかを見てみよう。

1.Kh2 c4?

 黒がクイーン翼ポーンを自分のビショップのいる枡と同色の枡に置いてキングがキング翼に駆けつけられるようにしたかったのは無理からぬことである(後で出てくるように黒ビショップはキングの助けなしに弱いfポーンとhポーンを守ることはできない)。しかし黒キングがキング翼に移動することの不利は白がクイーン翼でパスポーンを作ることができることにある。もちろん克服しなければならない技術的な困難はあるがいったん白にパスポーンができれば黒の防御は壊滅する。

 明らかにタラシュはこの時点で危険に気付いていなかった。もし気付いていたら具体的な対策を講じていただろう。もちろん黒は 1…f4 とは指せない。それは 2.Bg5 f3 3.g4! で白はいずれ両翼でパスポーンを作ることができる。GMアベルバッハは次のような正しい防御法を指摘した。1…Bb5! 2.Kg3 Bf1 これで白キングの前進を牽制する。3.h4 h5 4.Kf4 Bxg2 5.Kxf5 Bf3 これで黒ビショップがキング翼の両ポーンを守っている。2.g4 fxg4 3.hxg4 Be2 でも同じことである。この機会を逃がした黒は敗勢に陥った。

2.Kg3 Kc8 3.Kf4 Kd7 4.Bb4 Ke6 5.Bc3 Bd7

 黒が 5…Bg6 で守ろうとしても白がhポーンを進めてくればすぐに困難な事態になる。ファインは次のような面白い手順を挙げている。6.Kg5 Kd5 7.g3 b5 8.h4(8.Kh6 はアベルバッハによれば 8…f4! 9.gxf4 e3 10.fxe3 Bxc2)8…Kc6 9.b3! cxb3(9…Kc5 は 10.a4 でやはり白にパスポーンができる)10.cxb3 Kb6 11.a4 bxa4 12.bxa4 Ka6 13.a5 Kb5 14.h5 Be8 15.Kxf5 Bxh5 16.Kxe4 後はfポーンを進めていけば白が勝つ。

 この変化でなぜ黒ビショップが単独でキング翼ポーンを守れないかが良く分かる。黒はキングとビショップの役割を交替させることにした。しかしこの作戦も功を奏さない。

6.g3 b5 7.Kg5 Kf7

 8.Kh6 を見られているので必然である。

8.h4 Bc8 9.Kh6 Kg8

 現在のところ黒はキング翼を全て守りきっている。そこで白はクイーン翼に目を付けパスポーンを作る。

10.b3! cxb3

 10…Be6 なら 11.a4! でやはりパスポーンができる。

11.cxb3

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(059)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 9.Qc2 の局面(参考図)

 これまでのところ 9…h6 と指したマスターの試合は少ない。アーロン・ニムゾビッチが1931年に一度指して勝ったことがあるが、ほとんどの選手にはお気に召していない。9…g6 で白のキング翼ビショップの斜筋を止める方がはるかに自然で、f5の地点も固守することになる。しかし 9…g6 の局面が白にずっと有利であることがいつか明らかになれば、黒は 9…h6 をもっと詳細に調べることになるだろう。9…h6 には白が攻撃の筋を開通させるのをずっと難しくさせる長所がある。

 9…g6 のあと白は 10.h4! と突いてキング翼ルークを攻撃に投入するのが良い。黒は 10…h5? と突くと 11.Bxg6! fxg6 12.Qxg6+ で白の狙いが多すぎるのでそう突けない。また 10…f5?! は 11.h5 のあと白に g2-g4 でb1-h7の斜筋を再び開ける狙いがあるので、白の攻撃を遅くできない。だから黒は 10…Nd7 11.h5 Nf8 と指さなければならず、6.c3 の評価のために重要な局面になる。実戦例1のカバレク対アンデルソン戦では白の攻撃が勝ちを収めたが、黒は改良が可能である。

 もし黒が強力な攻撃を浴びるのを好まないならば、9…h6 か早期の …c6-c5 を真剣に考えるべきである。6手目か7手目で …c6-c5 と突いてそのあと …Nc6 と指す着想は、完全に新たな複雑さをもたらす。白は d4-d5 と応じればe5の地点を黒のナイトに明け渡すことになる。dxc5 と交換すれば中央があまりに早く開放されて、黒に有効な反撃を与えずにキング翼攻撃を行なう作戦が追求できなくなる。

 定跡はまだ 6.c3 についての相反するデータを消化しきれていない。6.c3 は攻撃の戦型として単刀直入すぎてすべての防御に対応していないので、私の予想では白は主手順の 6.Bc4 に戻ってくるだろう。

6…Bd6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(290)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 次は異色ビショップのエンディングの例を少し考えよう。以前に述べたようにこのエンディングは非常に引き分けになり易い。その理由は主にビショップが相手のビショップと戦えないことにある。もし劣勢側が敵のポーンをせき止めることができればポーンの数がかなり少なくても引き分けにできる。その例が次の局面である。

 図290

 黒ビショップがクイーン翼のポーンを守りキング翼の白ポーンは完全にせき止められているので白は何もできない。ポーン得は何の役にも立たない。

 しかしもし黒キングがg8にいたら 1…Bd3 2.f5! で簡単に白の勝ちになる。あるいはもしa列の黒ポーンがa6にあり白ポーンがa5にあったら黒ビショップは後ろのポーンを守ることができない。

(この節続く)

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布局の探究(87)

「Chess Life」1994年2月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

dポーン布局の激しい指し方(続き)

Ⅲ.クイーン翼ギャンビット拒否 オーソドックス防御交換戦法

1.d4 d5 2.c4 e6

 オーソドックスシステムでは黒はd5の地点をeポーンで保護し、キング翼を展開し、そのあとで初めてクイーン翼ビショップをどのようにして生き返らせるかを気にかける。

3.Nc3 Be7 4.Nf3 Nf6 5.cxd5

 交換戦法では白は中央の争点を解消し、それにより黒が中央への影響力を増す。代わりに白は黒のクイーン翼に少数派攻撃を仕掛けるか、 f2-f3 から e2-e4 で手順に優勢な中央を築くことを期待する。

5…exd5 6.Bg5 c6 7.Qc2 g6

 中央のポーンの形から黒の働きの悪い小駒はクイーン翼ビショップである。本譜の手はそれをf5に展開する準備である。例えば 8.e3 Bf5 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 Nbd7! となれば白の優勢はわずかである。このようなゆっくりした指し方を避けるために、白は中央で厳しく進攻することができる。

8.e4!?

 G.カームスキー対A.シロフ、ドルトムント、1992年

 白はいくらか優る展開と 7…g6 のせいで黒のキング翼が少し弱くなっていることとを利用して進んで局面を開放する。ここで黒の最も安全な応手は 8…dxe4 で、9.Bxf6 Bxf6 10.Qxe4+ となったあと最善手は矛盾しているような 10…Kf8! である。そして主手順は 11.Bc4 Kg7 12.O-O Re8 13.Qf4 Be6! 14.Bxe6 Rxe6 15.Rfe1 で、ここで黒はローチェ対オル戦(モスクワ、グランドマスター協会オープン、1989年)で初めて示されたように 15…Qd6! 16.Qxd6 Rxd6 でほぼ互角の収局を達成し、のちにL.B.ハンセン対スマギン戦(コペンハーゲン、1990年)で確かめられた。

 けれども二人の若虎は素手の喧嘩に興味があった。

8…O-O 9.e5 Ne4

 9…Nh5 なら 10.h4! で白が攻撃の可能性を保ち少し有利である(シロフ)。

10.Bh6 Re8 11.Bd3

 この積極的な展開はタリ対ルネ戦(カンヌ、1989年)のもっとゆっくりした 11.h3?! よりもはるかに強力である。その試合は黒が十分な反撃を得て互角にした。

11…Nxc3?

 GMシロフによれば早くも敗着が出た。11…Nd6!! 12.O-O Nf5 13.Bf4 Ng7 が正着で、白がわずかに優勢だとしている。

12.bxc3 c5 13.h4!

 目標は黒キングを詰ませることである!13…c4 は 14.Be2 Bf5 15.Qc1 のあと h4-h5 から Ng5 で白の攻撃がゆるまないので、黒は反撃に出ることにした。

13…cxd4 14.h5! g5!?

 白にはすでに 15.hxg6 hxg6 16.Bxg6! という狙いがあった。だから黒はできるだけキング翼を閉鎖的に保とうとしている。

15.Bxh7+ Kh8 16.Bg6! Be6

 h列が開通すると 16…fxg6 17.hxg6! Kg8 18.g7! Qc7 19.Bxg5! のように勝負が決まる。

17.Nxd4 Qc8 18.Qd2!!

 G.カームスキー対A.シロフ、ドルトムント、1992年

 GMカームスキーの指し回しは勢いと正確さで飛びぬけている。シロフは次のような黒の変化をあげている。18…Nc6 19.Bxg5 Bxg5 20.Qxg5 Nxd4 21.Qh6+ Kg8 22.Bh7+ Kh8 23.Rh3!! Bxh3 24.Bg6+ Kg8 25.Qh7+ Kf8 26.Qxf7#

18…fxg6 19.hxg6 Kg8 20.Rc1!

 攻撃に専念できるように反撃を防いだ。この試合を通して黒は最善の防御をした。代わりの防御策についてはチェス新報53(第400局)のシロフの解説を参照されたい。

20…Nc6 21.Bxg5 Qc7 22.Bxe7! Rxe7 23.Kf1!! Rae8 24.Re1 Rg7 25.Qh6 Kf8 26.Rh4! Nxd4 27.Qh8+ Rg8 28.Qf6+ Bf7 29.Qxf7+ Qxf7 30.gxf7 黒投了

 30…Kxf7 31.cxd4 で黒は2ポーン損で見込みがない。GMカームスキーの快勝だった。

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カロカン防御の指し方(058)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 図B 白から指し始めて勝ち

 この局面は白がクイーン翼の多数派ポーンを突き進めて、一連の交換によりクイーン翼の1ポーンだけが残ることにより生じる。このキングとポーンの収局は白のdポーンが「外側パスポーン」になっているので白が勝つ。図Bの局面を盤に並べて、以下の二つの手順の可能性を追ってみれば勉強になるだろう。

 黒がキング翼のポーンを活用しようとすれば次のようになる。1.Kc4 f5 2.Kd4(黒のポーン突きの手が尽きるのをただ待っていれば、黒はキングを動かさなければならなくなる)2…g5 3.Kc4 f4 4.f3 f5 5.Kd4 h5 6.Kc4 g4 7.Kd4 h4 8.h3!(8.Kc4?? は 8…h3 9.gxh3 g3! で黒が勝ってしまう)8…g3 9.Kc4 黒はポーンを突く手が尽きたのでキングを後退させなければならず、白キングが黒ポーンのご馳走にありつくことができて勝ちになる。9…Kd7 10.Kc5 Kc7 11.d6+ Kd7 12.Kd5 Kd8 13.Ke6 Ke8 14.Kxf5 Kd7 15.Kxf4 Kxd6 16.Kg4

 また、危険を減らせるかもしれないとして黒がポーンを元の位置に置いたままにしておけば、白は次のようにして勝つ。1.Kc4 Kd7 2.Kc5 Kc7 3.d6+ Kd7 4.Kd5 Kd8 5.Kc6 Kc8 6.d7+ Kd8 7.Kd6(黒キングを動けなくして黒ポーンを進ませる)7…h5 8.Kc6 h4 9.h3 g6 10.Kd6 g5 11.Kc6 f5 12.Kd6 f4 13.f3! g4(13…f5 でも 14.Ke6 g4 15.Kxf5 で駄目である)14.fxg4 f5 15.g5!(15.gxf5?? f3! 16.gxf3 で手止まりになる罠を避けた)15…f3 16.gxf3 f4 17.Ke6

 どちらの場合も外側パスポーンが黒キングをキング翼ポーンの守りから離れさせるおとりになっていて、手詰まり(不利な手の強制)が黒陣を崩壊させる。

 この戦法の5手目から黒は、交換によりキングとポーンの収局に近づけば近づくほど負けになるのが普通なので交換に慎重にならなければならない。交換するたびに破滅へいやいやながら近づくことを絶えず恐れることになるので、多くの選手が 5…exf6 の戦法を放棄した。

 しかしウルフ・アンデルソンは黒が 5…exf6 からキングとポーンの収局になることを恐れるに足らないことを証明した。1個か2個駒が残っている収局は持ちこたえられるので、黒が難局に陥るまでには多くの交換が必要である。それに黒は 5…exf6 で中盤戦のために確かな優位を得る。まず、5…exf6 は黒のキング翼ビショップの展開に役立つ。つまり展開を完了するためにまたポーンを突くのに1手かける必要がない。次に、5…exf6 で黒ルークのためにe列が素通しになる。また、f6にもポーンがあるので黒キングがキング翼にキャッスリングした際さらに保護されている。最後に、黒はf6とg7のポーンを適時に突いて自陣を広げ役に立つ地点を支配することができ、それでもf7とh7のポーンは守りに残しておける。自分のキングの前の2ポーンを突けば、自分のキングを攻撃にさらすことになるのが普通だが、タルタコワ戦法ではこの危険は大幅に減少する。

 タルタコワ戦法の現代の解釈はギャンビット戦法に似ている。黒はキングとポーンの収局の可能性を「犠牲」にして中盤戦を指しやすくしている。この観点から見ると 5…exf6 は大いに意味がある。黒の中盤戦の可能性は確かにちょっとした価値があり、そのための犠牲はほんの少しである。

 黒は 5…gxf6 の戦法よりもタルタコワ戦法の方が駒の展開の自由度が大きい。キング翼ビショップは通常はd6に行くが、e7にも行ける。クイーン翼ナイトはd7に行くのが普通だが、局面によってはa6とc6も重要な手段になる。クイーン翼ビショップは通常e6に行くが、f5とg4に行くことも可能である。どちらにキャッスリングすべきかはほとんど問題にならない。というのはキング翼ポーンの方がクイーン翼ポーンの方よりはるかに安全な避難先を与えてくれるからである。

 時には黒の作戦は …c6-c5 と突いて白のdポーンを交換で消して中央を開放し、黒駒の利きを増すことがある。ほかにも黒の戦略はd5とc4を支配して白が簡単にdポーンをパスポーンにできなくし、そのあとキング翼で活発に動く(…f6-f5-f4、…g7-g5)ことになるかもしれない。もし白がクイーン翼にキャッスリングすれば、黒はそちらでポーンの暴風さえ考えるかもしれない。

 白の戦略はキング翼での直接攻撃と中央での作戦(d4-d5 突きか有利な収局への移行の意図)とに限られる。c4の地点はキング翼ビショップのa2-g8の斜筋での好所となるが、クイーン翼ビショップには問題がある。その唯一働ける地点のf4はしばしば黒に支配される(..Bd6 と …Qc7 によって)。白のナイトはf3に行けるかもしれないが、そこではほとんど狙いがない。e2ではdポーンを支え、クイーン翼ビショップがf4に出るのに役立つ。ルークにはd列とe列がふさわしい。白キングはどちらにもキャッスリングするかもしれない。白の大きな障害は黒の活動的な駒と自分の活動性の劣る駒によりもたらされる中盤戦での一定の守勢を克服することである。さらに白は収局での優位の可能性をそこなうことを恐れてポーンを攻撃的に用いることをためらうかもしれない。

 具体的には・・・

6.Bc4

 これが主手順とみなされている。白は最良の展開の手を指した。しかし考慮に値するほかの手が一つある。それは 6.c3 で白は黒のキャッスリングしたキングを攻撃する意図を表明する。もし黒が普通に展開すれば、白の作戦が明らかになる。例えば 6…Bd6 7.Bd3 O-O 8.Ne2 Re8 9.Qc2! という具合である。これが白のシステムの要点である。白はhポーンを当たりにすることにより手得を図る。しかしもっと重要なことは黒に …g7-g6 または …h7-h6 と突かせることにより黒陣を弱めさせることである。

 9.Qc2 の局面(参考図)

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(289)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図289 白の手番
スミスロフ対ケレス、1951年

6.a4

 白は 6.h4! と突いてこのポーンを黒枡に置き黒の指し手を極度に難しくさせる機会を逃がした。難しい大きな理由は黒が 6…g5 と突きその後fポーンをf4まで進ませようとするとキング翼のポーンが全て交換になり白の引き分けの可能性が大きくなることにある。代わりに黒が 6…g5 7.hxg5 fxg5 と指せば 8.g4! でキング翼のポーンがせき止められてしまう。

 それでも黒が論理的に指し進めれば 6.h4 でも白が引き分けるには不十分である。黒は 6…Bd3 として 7…a4 を見せて 7.a4 をうながし 7…g6! と指す。この手の意味は …Bf5 から …h5 と指して白キングからe2とf3の枡を奪い黒キングがe4を通って侵入できるようにすることである。しかし白キングがf2にいる時の …Ke4 は Bc2+ とされる。だから黒は白キングがf2にいる局面で白の手番になるようにしなければならない。そうなれば白は手詰まりになる。つまり白ビショップは動けず白キングはeポーンの守りを放棄しなければならない(Ke2 はビショップ交換になり、生じるポーン・エンディングは白の負けである)。例えば Ke1 ならば黒は …Ke4 と指し Kd2 ならば …Bg4 で黒が勝つ。

 この作戦は明快である。しかしその実行には多くの技術的困難が伴う。要点は例えば 8.Kf2 h5 9.Kf3 Bf5 10.Kf2! の後手詰まりになっているのは黒であり 10…g5 と指しても明らかな勝ちとならないということである。だから黒はもっと巧妙な駒繰りでこの局面で白の手番となるようにしなければならない。その手順は次のとおりである。8.Kf2 8.g4 は黒を助ける手で 8…g5! 9.hxg5 hxg5 の後 10…f5 で黒に外側パスポーンができる。8…Ke4! 9.Bf3+ Kf5! 10.Bd1 Ke5 11.Kf3 11.Ke1 なら 11…Bf5! 12.Kf2 h5 である。途中 12.Kd2 なら 12.Ke4 で 13…h5 から 14…Bg4 を狙う。11…Bf5! 11…h5 は 12.Kg2! と受けられる。12.Kf2 h5 これが狙いの局面である。13.Ke1 Ke4 14.Kd2 Bg4! この後は 15.Bc2+ Kf3 又は 15.Bxg4 hxg4 16.Ke2 f5 で黒が勝つ。

 …Bd3 から …a4 の狙いに備えた本譜の手の後は黒の指し手ははるかに容易である。

6…g5! 7.Ke2

 7.h4 はもう手遅れで 7…gxh4 8.gxh4 f5 9.Kf2 Ke4 10.Ke2 f4 で黒が楽に勝つ。7.Kf2 なら …f5-f4 とポーンを突いていくのが黒の最も簡明な策である。

7…Bf5!

 8.h4 はビショップ交換されるので白はgポーンを突かざるを得ない。

8.g4 Bb1 9.Kf3 f5 10.gxf5

 10.Ke2 なら 10…f4 11.Kf3 fxe3 12.Kxe3 Be4 で黒キングはd4かf4に行ける。

10…Kxf5

 10…Bxf5 は 11.Kg3 で 11…Ke4 は 12.Bc2+ があるのでだめである。

11.Kf2 Be4

 11…Ke4 は 12.Bh5 があるので意味がない。本譜の手は白キングの動きを制限し決め手のhポーンの前進を準備している。

12.Kg3 Kg6 13.Kf2

 13.h4 は 13…h5! 14.Kh3 Bd3 15.Kg3 Bf5! でポーン交換が必至になりhポーンが残るので黒の勝ちが簡単に決まる。

13…h5 14.Kg3 h4+ 15.Kf2 Bf5

 新たなh3の弱点のために白キングが縛り付けられ黒キングは中央の通り道が得られる。

16.Kg2 Kf6 17.Kh2 Ke6!

 最後の要点である。すぐに 17…Ke5 は 18.Kg2 で黒が手詰まりに陥る(18…Ke4 19.Bc2+)。しかし本譜の手ならば立場は逆である。1 – 0

 以下は 18.Kg2 Ke5 19.Kh2 Bb1 20.Kg2 Ke4 21.Kf2 Kd3 22.Kf3 Kd2 23.Be2 Bf5 で黒が簡単に勝つ。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(057)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 図A 黒はパスポーンが作れない

 …f6-f5-f4 と突いてきても白は f2-f3 でせき止める。さらに …f7-f5、…g7-g5-g4 そして …h7-h5-h4 と突いてくれば白は h2-h3! で …h4-h3 による突破を防ぐ。白がg4で取るのを拒む限り、黒のf5のポーンは無用の静物である。

 白のdポーンと両者のキングを付け加えれば図Bになる。

 図B 白から指し始めて勝ち

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(288)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 しかし陣形的な優位が戦力的な優位に劣らないこともよくある。ポーンの配置の良さ、効果的なビショップ又はキングの位置、強力なパスポーン、敵の弱いポーンや枡の存在などの優位がしばしば勝利の要因となる。これらの陣形的な優位をすべて例で示す余裕はないが図288ではそれらのいくつかが見られる。

 図288 黒の手番
スミスロフ対ケレス、1951年

 この局面は1951年のスミスロフ対ケレス戦に現れた。駒の損得はないが黒は幾つかの重要な陣形上の優位に立っている。第一にクイーン翼の白ポーンは自分のビショップと同じ色の枡にある不利を抱えている。この点を詳しく説明しよう。確かにこのようなポーンはビショップで簡単に守れるが、大きな弱点は反対の色の枡が全部非常に弱体化しているということである。敵キングの侵入を止めるには味方のキングを使うしかない。通常自分のポーンを味方のビショップと反対の色の枡に置いた方が良いのはこのためである。

 第二に黒キングは白の不可侵の地点であるe5に行けるということである。そこから黒キングは中央付近を支配し …g5 から …f5-f4 でd4又はf4の地点に侵入できる。白はビショップでクイーン翼のポーンを守らなければならないのですぐに手詰まりに陥り黒キングに道を譲らなければならなくなる。

 黒の勝つ方策はもう見えていて実戦の手順も容易に理解できる。

1…Bb1

 先手でaポーンを攻撃する。

2.a3 a5!

 肝要な手である。b4 を完全に防ぎ 3…Bc2 でbポーンを取る手を狙っている。

3.Bd1

 この手は止むを得ない。これ以後白ビショップはbポーンの守りのためにここに張り付いたままである。これに対して黒ビショップは …Bc2 の狙いを常にちらつかせながらh7-b1の斜筋を自由に行き来する。即ち白は駒損で指しているようなものである。だからいずれ手詰まりになることはほとんど避けられない。

3…Kg6 4.Kg2 Kf5 5.Kf3 Ke5

 この手は黒の指し手を難しくした。すぐに 5…g5! と突けば 6.h4 による白の反撃の機会を防いでいた。この手に対しては黒はポーン交換をした後 …f5-f4 と突いていきhポーン又はクイーン翼への攻撃を行なうことになる。指し手が進むと分かってくるがhポーンを残しておくのが大切である。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(116)

「Chess Life」2005年12月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

エバンズ・ギャンビット(続き)

戦型B) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Be7

6.d4

 6.Qb3 も面白い手である。6…Nh6(6…Na5 は 7.Bxf7+ Kf8 8.Qa4 となって、黒がキャッスリングの権利を失っているので白が優勢である)7.d4 Na5 8.Qb5 Nxc4 9.Bxh6 Nd6(9…gxh6 と取るのは 10.Qxc4 exd4 11.cxd4 c6 のとき 12.d5! があるので本譜の手の方が良い。この手で黒の …d7-d5 突きを防ぐのが重要でポーン損でも指せる。12…Bf6 13.e5 Bg7 14.Nc3)10.Qxe5 Nxe4 11.Bxg7 Rg8 12.Qxe4 Rxg7 13.O-O d5 14.Qe5 Kf8 15.Re1 これはモロゼビッチ対バクロ戦(サラエボ、2000年)で、形勢不明だった。

6…Na5

 この手が最善である。6…d6 は 7.dxe5 Nxe5(7…dxe5 なら 8.Qb3)8.Nxe5 dxe5 9.Qh5 で白がポーンを取り返す。6…exd4 も 7.cxd4 Na5 8.Bd3 d5 9.exd5 Qxd5 10.O-O Nf6 11.Nc3 となって白に強力な主導権がある。

7.Be2

 7.Nxe5 は 7…Nxc4 8.Nxc4 d5 9.exd5 Qxd5 10.Ne3 Qa5 11.O-O Nf6 で黒が楽である。

7…exd4 8.Qxd4

 これが何年か前にカスパロフがこの古い戦法を「復活させた手」である。

8…d6

 有名なカスパロフ対アーナンド戦(リガ、1995年)の短手数局は次のとおりである。8…Nf6 9.e5 Nc6 10.Qh4 Nd5 11.Qg3 g6(11…O-O は 12.Bh6 で黒が交換損かもっと損をする)12.O-O Nb6(12…O-O なら 13.Rd1 Nb6 14.a4 Na5 15.Bh6 Re8 16.e6 fxe6 17.Qe5)13.c4 d6 14.Rd1 Nd7 15.Bh6!(またポーンを犠牲にして黒のキャッスリングを防ぐ)15…Ncxe5 16.Nxe5 Nxe5 17.Nc3 f6 18.c5 Nf7?(18…Be6 19.Rab1)19.cxd6 cxd6 20.Qe3 Nxh6 21.Qxh6 Bf8 22.Qe3+ Kf7 23.Nd5 Be6 24.Nf4 Qe7 25.Re1 黒投了

 途中 8…d5 なら 9.exd5 Nf6 10.c4 O-O 11.O-O のあと Bb2 から Nbd2 または Nc3 で白が少し優勢である。

9.Qxg7 Bf6 10.Qg3 Qe7

 黒はうまくクイーン翼キャッスリングの用意をした。代わりに 10…Ne7 には 11.Bg5 がある。

11.Ng5

 11.O-O も可能で、シロフ対ティマン戦(ビール、1995年)では 11…Bd7 12.Nd4 O-O-O 13.Nd2 Nc6 14.Qe3 h5 15.Rb1 と進んだ。

11…h6 12.Nh3

 白はポーンを犠牲にする。ちょっと変わった 12.Nh7 もある。

12…Qxe4 13.Nf4 Bd7 14.O-O O-O-O 15.Nd2

 これはショート対Kir.ゲオルギエフ戦(ワルシャワ、2004年)である。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

カロカン防御の指し方(056)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 この手でタルタコワ戦法になる。5…gxf6 は第6章を参照。

 5…exf6 がカロカン防御の当初の指し方だったけれども、その欠陥がすぐに明らかになって人気がなくなった。1970年代にスウェーデンの若いグランドマスターのウルフ・アンデルソンが復活させ古い手順に新風を吹き込んで好成績をあげた。これがほかの者の研究を刺激し(アンデルソンはついには放棄した)、新しい着想がもっと見つけられた。コルチノイが1978年カルポフとの世界選手権戦でタルタコワ戦法を採用したことにより、かつて毛嫌いされたこの戦法に最高の尊敬が与えられた。

 それではそもそもなぜこの防御が見捨てられたのかの議論から始めよう。5…exf6 のあとは教科書に載っているように異なった力関係のポーンの多数派ができる。クイーン翼では4対3の多数派のため白にパスポーンの可能性がある。慎重にcポーンとdポーンを突き進めることにより白はdポーンをパスポーンにできる。これがまさに多数派ポーンを効果的に使う方法である。収局では多数派ポーンをパスポーンにすることが、新たにクイーンを作る第一段階である。

 しかしタダで何かを得ることはできない!黒もキング翼に自分の多数派ポーンがあるではないか。文字どおりにはそのとおりである。しかし黒の4対3の多数派は白の多数派を危険なものにしているのと同じ働きをしていない。つまりパスポーンを作れないのである。図Aが問題の所在を示している。

 図A 黒はパスポーンが作れない

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(287)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図287 白の手番
ケレス対リリエンタール、1945年

22.Be8!

 白は勝ちを逃さないよう注意しなければならない。22.h6? は 22…Bf7! で明らかに引き分けである。しかし 22.Kh8 から Bh7-g8 で勝とうという試みにははるかに複雑な対策が必要である。

 黒の防御手段は次のとおりである。22…Bc6! 23.Bh7 既に知っているように 23.Kg8 に対する受け方は 23…Bd5+ 24.Kf8? Bf7! である。しかし白は 24.Kh7 で本譜の手順に戻ることができる。23…Be8! 24.h6 Bf7! 24…Bg6 は 25.Bg8 Be8 で以下の主手順に戻る。途中 25.Bxg6 なら 25…Kxg6 26.Kg8 Kxh6 27.Kf7 Kh7! 28.Kf6 Kg8 でよい。25.Bg8 Be8! 26.Bc4 26.h7 なら 26…Bf7、又 26.Kh7 なら 26…Bg6+ [訳注 26.Be6 で白が勝つようです。]26…Kg6 27.h7 Bf7 28.Bd3 Be6! これで白キングは永久に閉じ込められたままである。面白い変化だった。

22…Be6

 22…Bc4 と手待ちをすれば少しは手数が延びる。その場合の分かり易い勝ちの手順は 23.Bd7 Bb3 24.h6 Bf7(白の狙いは 25.Bxf5! Kxf5 26.Kg7 だった。代わりに 24…Bc2 なら 25.Be6! で白が勝つ。)25.Bc8 Bg6+(25…Be8 又は 25…Bh5 なら 26.Kg8 で白が勝つ。)26.Kg8 Bf7+ 27.Kf8 Bg6 28.Bd7 Bh7 29.Be8 Bg6 ここからは 30.Bxg6 Kxg6 31.Ke7 又は 30.Bf7 Bh7 31.Bg8 で白の勝ちとなる。

23.h6 Bf7

 23…Bd5 は 24.Bd7 Bf7 25.Bc8 で白が勝つ。

24.Bd7! Bc4 25.Bxf5!

 この手が要点である。黒は 25…Kxf5 と取れない。もし取れば 26.Kg7 から 27.h7 で白の勝ちとなる。しかし本譜も黒の2ポーン損となり負けが確実になった。

25…Kf7 26.Bd7 Bd3+ 27.f5 Kf8

 この手は 28.Kg6? Kg8 から 29…Bxf5 で白の「間違った」ビショップのために引き分けになることを期待している。

28.Be6 1-0

 以上の2例はほとんど駒が残っていない場合や盤の片側にだけ駒のある場合の難しさを示している。一般には同色ビショップの場合1ポーン得なら勝ちが確実である。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(055)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 長年最も普通の手は 4,,,Bf5 (第9章)で、4…Nd7(第7、8章)も非常に人気があった。ほとんどのマスターは 4…Nf6 は白に 5.Nxf6+ でfポーンを二重にされるのでうそ手と見なしていた。しかし最近新しい構想が見つけられた。それは黒陣を強固にするもので、今では受け入れられ流行の防御にさえなっている。

 4…Nf6 は黒の可能な4手目のうち最も直接的である。ナイトを好所に展開し、白のナイトを当たりにし、白に黒のポーンを二重にするようにけしかけている。ホレーショウ・カロは19世紀後半に初めて 1…c6 による防御を提唱したとき 4…Nf6 を推奨していた。

5.Nxf6+

 これが断然理にかなった応手である。白は黒がどう取り返そうと黒ポーンが弱体化するということが明らかになってくることに期待をかけている。

 4…Nf6 の評判が全般的に良くなったときに復活してきたのが控え目な 5.Ng3 である。中央に陣取っていたナイトが働きの劣る地点に行くが、黒がクイーン翼ビショップを展開するのをより難しくさせている(…Bf5 と指すわけにはいかないので)。黒の応手は 5…e5?!、5…c5 そして 5…g6!? の三つである。

 5…e5?! は 6.dxe5 Qa5+ 7.c3 Qxe5+ という戦術のひっかけがあるので一見魅力的である。 白のdポーンをなくしほぼ対称のポーン陣形になるので確かに道理がある。しかし白は 6.Nf3! exd4 7.Nxd4 で活動性に優る駒を保持できる。多くの戦型で白ナイトはf5を本拠地にし、それにより白が少しの優勢を保証される。

 もっと本筋の手は 5…c5 である。黒はやはり白のdポーンと交換するが、自分のeポーンを保持して …e7-e6 突きで白ナイトを寄せつけないようにできる。6.Nf3 Nc6 7.Be3(7.dxc5 Qxd1+ 8.Kxd1 は、8…e6 9.Be3 Ng4 で黒がポーンを取り返し白キングが中央で露出しすぎているので白にとって魅力がない)7…cxd4 となれば黒には何も問題がない。

 5.Ng3 c5 6.Nf3 のあと黒にとって楽な別の指し方は 6…e6 7.Bd3 Nc6 8.dxc5 Bxc5 で、両者とも迅速な展開になる。予想手順は 9.O-O O-O 10.a3 b6 11.b4 Be7 12.Bb2 Bb7 で、どの小駒も良い位置につけている。ほぼいい勝負である。

 5…g6!? はまだ試験段階である。5…c5 や 5…e5?! と異なり黒は白のdポーンと交換しようと努めない。代わりに …c6-c5 と …e7-e5 のどちらが適切か決める前に駒を展開する気である。このgポーンは白のクイーン翼ナイトをf5とh5に来させないことにより動きを制限するのに役立っている。時には白はこのナイトをまた働かせるためにe4に戻さなければならないと感じることがある。私は白が次のように単刀直入に指すことにより少し優勢になるかもしれないと考えている。5…g6!? 6.Nf3 Bg7 7.Bc4 O-O 8.O-O(h3 の方が黒のクイーン翼ビショップの利きを制限するので良いかもしれない)8…Bg4 9.c3 しかし黒陣は堅固なので指せることは確かである。

5…exf6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(286)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図286 黒の手番
ケレス対リリエンタール、1945年

 ようやく白は切札を出した。

15…Bg8?

 そして黒はすぐに敗着を出して試合を失った。黒は 15…Kd6! で引き分けにすることができた。後の変化は次のとおりである。
1)16.Be8 Ke7!(16…Kxd5? は 17.Kh5 Ke4 18.Kxh6 Kxf4 19.h4 から 20.h5 で白が勝つ。)17.Kh5(この手しか勝つ可能性がない。)17…Kxe8 18.Kxh6 Bg8 19.d6 Kd7 20.h4 Bf7 これで引き分けになる。
2)16.Bf7 Ke7 17.Kh5(17.Be6 なら 17…Bg6 18.Kg3 Kd6 19.Kf2 の後黒は 19…Be8 20.Bxf5 Kxd5 と指せば明らかに引き分けになる。)17…Kxf7 18.Kxh6 Bg8 19.d6 Kf6 これも引き分けになる。

16.Bg6 Bxd5

 16…Kf6 なら 17.Kh5 Kg7 18.d6 Be6 19.Be8 で白が勝つ。

17.Kh5! Kf6 18.Kxh6 Be6

 白は確実に進展を果たしたがまだ問題が残っている。それは自分のキングが強力なhポーンの進撃の邪魔になっているということである。そもそも白キングがh列から抜け出せるのかということが問題である。黒ビショップが脱出口のg8の地点を見張っているのでそれはできそうにない。しかしちょっとした手筋でそれが可能になる。

19.Kh7 Bd5 20.h4 Bc4 21.h5 Bd5

 黒は 22.Be8 を防いで 21…Bb5 と指すこともできる。それに対して白は本譜のように 22.h6(22.Kg8 はだめで 22…Bc4+ 23.Kf8? Bf7! で 24.Bxf7 がステイルメイトなので引き分けになる。)22…Bd7 23.Bh5 Be6 24.Be8 で本譜に戻る。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(054)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3

 時々白は 3.Nd2 と指すことがある。3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 となれば 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 の局面と同じになる。しかし 3.Nd2 とひねった手は現代防御の戦型になる 3.Nc3 g6(本書では取り上げない)を恐れる選手たちに気に入られている。3.Nd2 なら黒は 3…g6 と指す気にならない。というのは 4.Bd3 Bg7 5.c3! と進むとa1-h8の斜筋にポーンの障壁ができ、黒のフィアンケットされたキング翼ビショップが封じ込められることになるからである。

3…dxe4

 これはカロカン熱愛者にとって自動的に指す手である。もっとも代わりに 3…g6 も立派な手で、現代防御に転移する。

 3…dxe4 で黒は重要な中央のe4ポーンを消すことにより白枡で白に挑む目標を達成した。自分のクイーン翼ビショップの斜筋は開けたままなので、f5またはg4の活動的な地点に展開できる。その一方で展開した駒が白より1個少なく、c6のポーンは白の中央のd4ポーンとは比べものにならない。

4.Nxe4

 ナイトがポーンを取り返し、中央のe4の地点から盤全体ににらみを利かせている。

4…Nf6

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

「ヒカルのチェス」(345)

「Chess」2014年2月号(1/4)

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チェス論評

編集長 IMマルコム・ペイン

 ヒカル・ナカムラは文句のない優勝者だった。彼はめったに窮地に陥っているように見えず、ウラジーミル・クラムニク戦での大脱出は驚異的だった。クラムニクはナカムラが続々と繰り出した勝利への障壁を前に破綻をきたし、戦いの真っ最中に第14代世界チャンピオンはポカを出して負けてしまった。

 決勝戦は幸運は勇者に微笑むの事例となった。ナカムラはグリューンフェルト防御の急戦をひっさげてやってきた。そして形勢は黒の方が良かったはずだが、ゲルファンドは戦力の犠牲を余儀なくされた後、正確さが必要なのにそれを維持できなかった。色を代えての2戦目はゲルファンドにとって勝たなければおしまいの試合だったが、ナカムラは見事な指し回しを見せた。ロンドンチェスクラシックのウェブサイトに行き、オンデマンドのビデオライブラリから彼の局後の分析を見ることをお勧めする。

H.ナカムラ – B.ゲルファンド
決勝戦第1局、グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Nf3 Bg7 5.Qb3 dxc4 6.Qxc4 O-O 7.e4 a6 8.e5 b5 9.Qb3 Nfd7 10.Ng5 Nc6

11.Nxf7!?

 幸運は勇者に微笑む。この手は疑問手だが実戦的には黒に大きな問題を突き付けている。

11…Rxf7 12.e6 Nxd4 13.exf7+ Kf8 14.Qd1

14…Nc5

 14…Ne5 15.Qxd4? Nf3+ はクイーンが取れるし、15.Be3 c5 16.f3 Bf5 17.Kf2 Kxf7 は黒の代償が豊富で優勢だと思う。

15.Be3 Bf5 16.Rc1!

 ナカムラはこの手に9分費やした。持ち時間25分の試合では長考の部類に入る。

16…Qd6 17.b4

17…Ne4

 コンピュータは 17…Rd8!! 18.bxc5 Qe5 を見つけたが、人間にとっては非常に見つけにくい手順である。このあと …Nc2+ でルーク、ビショップそれにナイトの代わりにクイーンを取る。19.Be2 Nc2+ 20.Qxc2 Bxc2 21.Rxc2 b4 22.Nd1 Qe4!

でルークとgポーンが当たりになっている。

18.Nxe4 Bxe4 19.f3 Bf5 20.Qd2 Rd8 21.Kf2 Kxf7 22.Be2

 結末は本誌15ページを参照。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

[復刻版]実戦に役立つエンディング(285)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図285 黒の手番
ケレス対リリエンタール、1945年

6…Kf8!

 この手が唯一の正しい受けである。黒キングは二箇所ある急所の枡のe8とf7を守っている。なぜ重要かは次の変化を見れば分かる。6…Kf6(d6)7.Bh5 Bh7 8.Be8 Ke7 9.Kh5! Kxe8 10.Kxh6 Bg8 11.Kg6 これで白は黒の残りのポーンも取れる。11…Be6 とそれを防ぐのは 12.Kf6 Bc8 13.h4 でもっとひどいことになる。だから3ポーン対ビショップの戦いになって白は非常に有望になる。

 面白いことに黒がh7-g6の斜筋からビショップを外すとやはり負けてしまう。例えば 6…Bf7 は 7.Bh5 Be6 8.Bg6 Kf6 9.Kh5 Kg7 10.h3 Bc8 11.d5 で白が勝つ。

7.Bh5 Bh7 8.Kh3

 何か進展を図ろうとしても難しい。白ビショップはh5-e8の斜筋で行ける所がない。もし下がれば黒は …Bg6 と指してくる。唯一の可能性は d5 と指してこの斜筋の重要な地点から黒キングをおびき出すことである。しかしすぐに 8.d5 と指すのは時機尚早で黒に 8…Ke7 と応じられて白が手詰まりに陥る。白キングがまず三角周回をするのはそのためで、d5 と指した時黒キングがe7の地点にいるようにする。

8…Ke7 9.Kg3 Kf8

 5手目の説明で見たように 9…Kd6 は 10.Kh4 Kd5? 11.Bf7+ Kxd4 12.Kh5 でビショップを取られて負けになる。

10.Kh4 Ke7 11.Bd1

 次の幾つかの手は白が時間制限を越すために指したものである。状況には変化がない。

11…Bg6 12.Be2 Kf8 13.Bf3 Ke7 14.Bh5 Bh7 15.d5!

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

カロカン防御の指し方(053)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例(続き)

 白がうまく事を運んでいるように見えるかもしれない。しかし黒の応手で黒陣はすべて問題なく大丈夫であることが明らかになる。

18…Rf7! 19.Nc5 Nf5 20.h3

 白は無理できないことを認めた。ここで黒はキング翼ビショップをもっと働きのある斜筋につけ、白はそれと交換するよりほかにないことを理解し完全に互角の収局に向かう。

20…Bf8! 21.Ne6 Qd7 22.Nxf8 Rfxf8 23.Bb4 Rfe8 24.Rxe8+ Rxe8 25.Re1 Rxe1+ 26.Bxe1 引き分け

 すべてにおいて均衡が保たれ、どちら側にも有利な点がない。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(284)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 今度はやはり白が1ポーン得だが戦いが全てキング翼で行なわれる局面を考えよう。

 図284 白の手番
ケレス対リリエンタール、1945年

 この局面は1945年タリンでのケレス対リリエンタール戦に現れた。皆知っているように戦場が限定されている時ビショップの能力は減少する。だからポーン得にもかかわらず白の勝つ可能性は比較的小さい。白のdポーンはしっかり止められているので唯一の可能性は明らかにh列からキングが侵入することである。しかし白キングの使える枡は少ないので成功の見通しはほとんどない。

1.Kg3 Be8

 黒は白キングをh5に行かせるわけには行かない。もしそうなれば黒キングがg7に縛り付けられ白のdポーンが自由に動けるようになる。

2.Kh4 Kc6 3.Be6!

 白が進展を図るためにはビショップがh5に行かなければならない。しかし今すぐに 3.Be2 と指すと 3…Kd5 4.Bh5 Bb5 5.Bf7+ Kxd4 6.Kh5 Ke4 で引き分けになってしまう。だからまず黒ビショップをg6に行かせなければならない。

3…Bg6

 一見したところでは 3…Kd6 4.Bxf5 Kd5 が一番簡単な受けのように思われる。例えば 5.Bh7 なら 5…Kxd4 6.f5 Ke5 7.Bg6 Bd7、又は 5.Bg4 なら 5…Kxd4 6.Bh5 Bc6 7.Bg6 Bf3 8.Bf5 Ke3 で白はどうすることもできない。しかし実際は 5.Kg4 Kxd4 6.Bc2 から 7.Kf5 で黒は苦境に陥る。

 このようなエンディングでは黒の悩みは手が広いことにある。そのどれもがすぐに負けになることはないが、かといって簡単に引き分けにもならない。経験によればそのような局面で悪手が出易い。この例もそれを裏付けている。

4.Bb3 Kd6 5.Bd1 Ke7

 既に黒はもっと簡単な 5…Be8! という受けを見逃した。以下は 6.Bh5 Bb5 この手は巧妙な手段を用意している。7.Bg6 7.Bf7 なら 7…Be2 である。7…Kd5 8.Kh5 8.Bxf5 なら 8…Kxd4 9.Kh5 Ke3 である。8…Ke4! 9.Kxh6 Kxf4 10.h4 Be2! この後白がいかにしたら何かできるのかを見つけるのは困難である。しかし前述したように幾つかの妥当な手から最善手を選択するのは決して易しいことではない。

6.Be2!

 白の正当な手は 6.Bh5 で、本手順に戻ることになる。しかしカパブランカ対ヤノフスキー戦で見たように本当の手順に進む前に寄り道することが功を奏することがある。もちろんそうしても危険がなく相手が間違う可能性があることが前提である。手待ちの 6.Be2! に対して黒は細心の注意を払って受けなければならない。そしてリリエンタールはそのような状況に見事に応えた。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(052)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例(続き)

 この手は白に根本的な質問をぶつけている。「ビショップを交換すべきか、それとも引くべきか」

14.Bg5

 白は盤上に駒が多く残っているほど圧力が維持できることを期待した。代わりに 14.Bxg7 Kxg7 は黒キングの囲いがわずかに弱くなる。しかしビショップ同士の交換は白の攻撃力も弱める。続いて 15.Ne5 なら黒は 15…b6 から 16…Bb7 でビショップを展開するし、15.Qb3 なら 15…Nf6! でやはり互角になる。

14…f6!

 世界選手権防衛戦のこの番勝負でペトロシアンは見かけの弱体化と真の弱体化との違いに特に優れた感覚を持っていた。本譜の手は弱体化に見えるけれども、白には実際には黒のeポーンを攻撃する効果的な手段も何もなかった。

15.Bd2 Bd7 16.Qb3 Bc6!

 d5の地点の支配は黒にとってまたも正しい指し手の鍵である。白は黒の「弱い」eポーンに迫る手段が何もないので、黒キングに対する釘付けを利用して自分のクイーン翼ナイトを働かせることにした。

17.Bxd5!? exd5 18.Ne4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(283)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図283 白の手番
カパブランカ対ヤノフスキー、1916年

9.Bc3+?

 アベルバッハは以下の優れた分析でこの自然な手で白が勝ちを逃がすことを示した。図241と図242を振り返って見ればその理由が分かる。そこではビショップ単独ではポーンに対して守り切れずキングの助けが必要であることを見た。また図242では黒キングは横からでなく後ろからビショップを助けなければいけないことも見た。現在の局面に当てはめると白キングがc6にいる場合には黒キングはc4に間に合わなければならず、白キングがa6にいる場合には黒キングはa4に間に合わなければならない。カパブランカの指した手は黒キングがc4に行くのを止めるのに何の役にも立っていない。もしカパブランカが基本局面を思い出していたら正着の 9.Bd2! に気付いただろう。この後は二つの変化がある。
1)9…Kxg6 10.b4 Kf5 10…Kf7 なら 11.Kd5 Ke8 12.Kc6 11.Kd5 Kg4 ここが要点である。この変化では黒キングはf4に行けない。12.b5 Kf3 13.Kc6 Ke4 13…Ke2 なら 14.Bf4 から 15.Bc7 で白が勝つ。 14.Kb7! この手以外では黒キングがc4に間に合う。この手に対してはa4は黒キングにとって遠すぎる。14…Kd3 15.Be1 Kc4 16.Ka6
17.Ba5 から 18.b6 の狙いに対して黒は受けがない。
2)9…Be7 白のbポーンを止めた。10.Be3 Kxg6 11.Bc5 Bd8 12.b4 Kf5 13.Kd5 Kf4 14.b5 黒キングは間に合わない。

9…Kxg6 10.b4 Kf5 11.Kd5

 この局面でヤノフスキーは投了した。国際大会のチェスで起こる無数の偶発的出来事の一つである。しかしGMアベルバッハによって示されたように黒は次のような参考になる手段で引き分けにできる。

11…Kf4!

 最初は意味がないように見える。しかし基本局面の教えによれば黒キングはc4を目指さなければならない。信じられないようだが黒キングはちょうどそこに間に合うのである。

12.Bd4

 勝利への最後の挑戦である。図242から 12.b5 Ke3 13.Be5 Kd3 14.Kc6 Kc4 は引き分けになることが分かっている。

12…Kf3 13.b5

 13.Bc5 は 13…Ke2 14.Kc6 Kd3 15.Kd7 Bh4 16.b5 Kc4 17.Kc6 で引き分けになる。

13…Ke2!

 斜めの経路は水平の経路と同じ手数である。

14.Kc6 Kd3 15.Bb6 Bg5 16.Kb7

 まだ諦めていない。キングがa6に行けばビショップを Bf2-e1-a5 と活用できる。16.Bc7 は 16…Be3 17.Bd6 Kc4! で明らかに引き分けである。

16…Kc4 17.Ka6 Kb3!

 黒キングはa4に行かなければならない。読者は 18.Bf2 に対して他の手では受からないことを確かめられたい。

18.Bf2 Bd8 19.Be1 Ka4!

 これで黒キングの長い旅は成功で報われた。白は何も進展が図れないので引き分けである。この勉強になる例はエンディングは最高の正確さで指さなければいけないというさらなる証明である。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

世界のチェス雑誌から(179)

「The British Chess Magazine」2014年1月号(1/1)

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サムの眼光紙背

IMサム・フランクリン

 小島慎也はすでに3回IM基準を達成し、日本最初の国際マスターへの道をしっかり歩んでいる。日本のチェスは比較的歴史が浅く、国内でも近隣の東アジア地域でもレイティングの高いFIDE大会が少ないので、才能ある選手が強くなるのには困難がある。小島はブダペストを中心にヨーロッパに長く滞在しIM称号を持ち帰ろうとしていた。彼のレイティングは現在2351である。だから凱旋帰国はそんなに遠いことではないように思われる。

白 W.シーン
黒 小島慎也

第1土曜大会、ブダペスト、2013年
カロカン防御古典戦法 [B19]

1.e4 c6

 カロカン防御は 1.e4 に対する小島の主要な防御となっている。実は3年くらい前に東京で彼と対戦したことがあり、パノフ攻撃の白側を持って負かされている。

2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.h4 h6 7,Nf3 Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 e6 11.Bd2 Ngf6 12.O-O-O Be7

13.Kb1

 ここではまだ 13.Ne4 が主手順で、何百局という一流どころの試合が指されている。白は最も働いていない駒を交換し、gポーンの針路を空ける。本譜の手ももちろんとても理にかなっていて、2番目によく指されている。

13…Qb6

 13…O-O の方がずっとよく指されているが、小島は布局を非常に詳しく研究しているのが通例である。日本語に翻訳されているチェス本はほとんどなく、彼のチェスの上達は言語能力にかかっていた面もある。

14.Rhe1

 この手から非常に直接的な作戦が始まる。もちろん白にはほかの手もある。14.Ne4 はその一つだし、14.c4 はルスタム・カシムジャーノフによってバードゥル・ジョババ戦で指された。

14…O-O 15.Nf5

15…Bb4

 15…exf5 はもっと諸刃の剣である。17.Rxe7 Qd8 18.Re2 Ne4 となっていい勝負である。もっともf5の長期的な弱点のために白の方がたぶん少し良い。

 15…Rfe8 16.Nxe7+ Rxe7 17.Ne5 なら白が単刀直入に優勢になっていただろう。16.Nxe7+ の代わりに 16.Rxe6? はレイティング2400が2100に対して指した手である。16…fxe6 17.Nxg7 これはこのような形で定型の捨て駒で、ここでは黒の受けがまずかったためにうまくいった。黒が 17…Ba3! を発見していたら白はちょっと困っていたかもしれない。(17…Kxg7?? 18.Bxh6+! Kh8 19.Ng5 +- U.アンウェシュ対N.ナバルグンド、ムンバイ、2011年)18.Qxa3 Kxg7 19.Qe3 Kg8 20.Qxh6 Re7 これなら黒が少し優勢である。

16.Nxh6+?!

 布局の珍しさからするとこのナイト切りは盤上でひらめいたのは確実だろう。「?!」は客観的な評価だが、実戦では十分成立するだろう。

  16.Ne3 の方が普通だろう。白はg3のナイトを配置替えしgポーン突きをもくろむことができる。16…Bxd2 17.Rxd2 Rad8 18.g4 e5 中央での一貫した反撃。19.Qf5 exd4 20.Rxd4 Nc5 21.Nc4 Qb5 22.Nd6 Qb6 これは2011年カレタでのD.セングプタ対L.ニシペアヌ戦だが、白はここで強手を見舞う機会を逃した。23.Re7?(23.g5! hxg5 24.h6 +-)23…Na4 24.b3 Rxd6! 25.Rxd6 Qb4 26.Qe5 Nc3+ 27.Kb2 Na4+ 28.Kb1 Nc3+ 29.Kb2 Na4+ 30.Kb1 ½-½ このようなカロカン陣形で逆翼キャッスリングから生じることのある動的局面の好例だった。

16…gxh6 17.c3

 17.Bxh6? は 17…Bxe1 18.Qe3 Kh7 19.Bxf8 Rxf8 20.Rxe1 で黒がかなり優勢になる。

17…Ba3 18.Bc1

18…Kh8?

 この悪手を指した気持ちはよく分かる。黒はキングをg列からよけて …Rg8 から …Bf8 と指したかった。しかし局面は極度に具体的で、黒はh6のポーンを守る手段を施さなければならなかった。18…Rfd8 が一つの理にかなった受けで、…Bf8 を「狙っている」。だから白はもたもたしていられない。19.Rxe6!(19.Ka1? Bf8 が黒の注文で、白がナイト損を正当化するのに苦労する)19…Qb5!(19…fxe6 は大乱戦に突入する。以下はとことん追求したい人向けである。20.Qg6+ Kh8 21.Ne5! Nxe5(21…Rf8 22.Nxd7 Nxd7 23.Qxh6+ Kg8 24.Qg6+ =)22.Qxf6+ Kg8 23.Qxe5 Bf8(明らかにすべて一本道というわけではない)24.Bxh6! Rd7(24…Bxh6? 25.Qxe6+ Kh7 26.Qg6+ Kh8 27.Qxh6+ Kg8 28.Rd3 +-)25.Qxe6+ Rf7 26.Qg6+ Bg7 27.Bxg7 Rxg7 28.Qe6+ Rf7 29.Rd3 白はルークの代わりに4ポーンを得ているが、最も重要なことは黒キングが裸だということである。これで引き分けには十分である。29…Qb5 30.Rg3+ Kf8 31.Qh6+ Ke7 32.Re3+ Kd8 33.Qd6+ Rd7 34.Qf8+ Kc7 35.Qxa8 Qf1+ 36.Kc2 Qxf2+ 37.Kd3 Qf1+ 明らかに千日手)20.Qxb5 cxb5 21.Rxf6 Nxf6 22.bxa3 交換得で黒が優勢のはずである。

 あとから考えれば 18…Rfe8 がもっとも賢明のようである。19.g4 Bf8 20.Rg1 Nh7 21.g5 黒がいつかは嵐を乗り切れるかもしれないとしても、白には駒の代わりに意外なほど多くの代償がある。

19.Ka1 Be7 20.Bxh6

20…Nd5?

 本当は 20…Rg8 と指す必要があったが、それでも 21.Ng5 Rxg5 22.Bxg5 で2小駒が白駒の働きと攻撃の可能性を埋め合わせられないので白の方が良い。

21.g4

 21.Bxf8 Rxf8 22.Qd2 Kh7 23.g4 で白が良い。なぜ白が優勢へのこんな簡明な道を拒絶したのか理解しにくい。たぶん2駒の方が重要だと考えて局面の判断を誤ったのだろう。実際は黒はまだ反撃を始めてもいないし、互角の戦力の局面で g5-g6 突きはまだ非常に危険な狙いである。

21…Rg8 22.g5

 白が Bxf8 を拒否したのは疑問だったとしても、ナイトの代わりに非常に圧倒的な攻撃体勢にあることは認めなければならない。

22…Bf8?!

 黒の防御の多くは非常に理にかなっていたが、実際の形勢は白が優勢のままである。受けるときにはいかに具体的でなければならないかということをいみじくも示している。論理的に推測することは防御側の大きな指針にしかならない。

 ここはg6に利いているd3からクイーンをどかせる 22…Qa6 の方が少し良かった。23.Qd2(23.Qxa6? bxa6 24.g6 fxg6 25.Rxe6 Nf8 26.Rxc6 gxh5 は白にまだ十分な代償があるかもしれないが、もちろんクイーンが盤上にあった方が代償はもっと活気がある。)23…c5 黒陣はまだ防御が非常に困難だが、以下の手順は白がキング翼にいかに多くの力をため込んでいるかを如実に示している。24.g6! fxg6 25.hxg6 Rxg6 26.Rh1 Kg8 27.Rdg1 Rxg1+ 28.Rxg1+ Kf7 29.Qc2! Ke8 30.Qg6+ Kd8 31.Qg8+ Nf8 32.Bxf8 Kd7(32…Kc7 33.Qg3+)33.Ne5+ Kc7 34.Ng6 +-

23.Bxf8 Raxf8

24.Qd2?

 この手は軽率だった。白は g6 突きの狙いを作ったが、小島の受けの妙手段を見落としていた。評価が急に変わることがあるので、このような局面で正確さの重要性がまた明らかになる。

 24.c4 が攻撃を行なう非常に自然な手段で、黒をさらに後退させながらクイーンを強力なa1-h8の斜筋に配置する。24…Nf4 25.Qc3 ここで 25…f6 がたぶん必要で、26.g6 突きで黒陣がますますみすぼらしく見える。一つの狙いは単に Re4 から Qe3 である。

24…Qc7!

 Nd5 が …Qf4 を可能にしているので突然黒駒の連係がまた良くなった。

25.c4?

 これが本局の転換点だった。ナイト切り以来白の読みは不正確で、ここで事を決しようとしたのはイライラから来たようである。ここは 25.Re4! が強力な攻めの手で、…Qf4 を防いでいる。攻撃側も防御側の読み筋を迎え撃たなければならない!そのあと 25…Rg7 26.Rh4 Kg8 となってまだまだ大変な乱戦である。

25…Qf4 26.cxd5 Qxf3 27.g6

 27.dxe6 と取るのは 27…fxe6 28.Rxe6 Rg7 となって白にはまだ十分な代償があるが、それを超えることはない。

27…Rg7

 Qh6 の狙いに対して絶対手である。

28.dxe6 fxe6

29.Rg1?

 29.Rxe6 なら戦力が互角になり前に解説した手順になっただろう。実戦の手はおそらくh6のポーンを突くのを助けるつもりで指したのだろうが、黒に陣容をまとめポーン得にものを言わせる始める余裕を与えた。

29…Rf6!

 h6 突きを防いでいる。

30.Qa5 a6

 これが必ずしも唯一の手というわけではないが、ここからは小島の冷静さが見て取れる。

31.Rdf!?

 明らかに受けただけの手である。もっとも狙いを作り出すのはもう容易でなくなっている。

31…Kg8 32.Qd8+ Nf8 33.Rh1 Rf5

 黒ははずみがついてきて、白の弱点を攻撃し始める。

34.Qh4 Rf4 35.Qd8 Rd7 36.Qe8 Rfxd4 37.a3 Rd8 38.Qe7 R8d7 39.Qe8 Rd8 40.Qe7

 規定手数に達するために手を繰り返していた。

40…R4d7 41.Qh4 Rd3!

 これが絶対の手ではないが、ここで黒が盤上を支配していることを如実に示していて気に入った。黒は守りに縛りつけられていて、…Rxa3 の狙いに対して成すすべがない。

42.Qe7

 42.Rfg1 でも 42…Rxa3+ 43.bxa3 Qxa3+ 44.Kb1 Rd2 または 42.Kb1 Rb3! 43.Qxd8 Qc3 で黒の勝ちになる。

42…R8d7 43.Qe8 Qf6 0-1

 実は当初この試合を解説しようと決めたとき、小島の鮮やかな防御の腕前を披露することになると思っていた。彼がIMの水準に上達したのはどう見ても優れた読みとしっかりした研究に裏打ちされていたからだ。しかしこの試合では両者ともある時点で局面を完全に支配しておきながら、勝負が決まったのは「最後に間違えた方が負ける」という例にすぎなかった。

******************************

(この号終わり)

訳注 小島くんのブログに本局の自戦解説があります。

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カロカン防御の指し方(051)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例(続き)

11.Be4

 しかしここでの 11.a3 は 11…Nxc3! 12.bxc3 b6 で黒がよどみなく展開して互角にできる。本譜の手はビショップをb1-h7の斜筋に保ちながらd5への圧力を増している。

11…Nce7!

 黒の主眼はd5の支配であることを忘れてはいけない!だから 11…Nde7?! は正確さを欠いている。というのは 12.Qd3 Ng6 13.Be3 Qd6 14.Rac1 Rd8 15.Red1! Bd7 と進んだとき 16.d5! で白が局面を開放し優勢になるからである。

12.Qc2

 12.Qd3 や 12.Ne5 でも黒は同じく 12…g6! と指す。

12…g6! 13.Bh6 Bg7

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(282)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 図282 黒の手番
カパブランカ対ヤノフスキー、1916年(変化図)

 しかしカパブランカはすぐにはその手を指さない。彼はまず黒が正しく受けるかどうかを確認する。そしてその後で本手順を実行する。

 このように白がすぐに黒ポーンを取ったらどうなっていたかを見てみよう。アベルバッハの分析によれば次のようになる。4.Bxb4 の後黒ビショップには3通りの逃げ方がある。
1)4…Bh4? 意外にも次の手順で黒の負けとなる。5.Bc3+ Kxg6 6.b4 Kf7 黒キングも防御に加わらなければならない。6…Kf5 は 7.Kd5 Kf4 8.b5 Bd8 9.Be5+ Ke3 10.Kc6 から 11.Bc7 で白が勝つ。7.b5 Bd8 このボーンはb6に到達する前に止めなければならない。7…Ke6 は 8.b6 Kd7 9.Kb5 Bg3 10.Ka6 で白が勝つ。8.Kd5 Ke8 9.Kc6 これで 10.Be5 から 11.Bc7 の狙いに対して黒は受けがない。
2)4…Bg3! これが最善の受けである。5.Bc3+ Kxg6 6.b4 Kf7 7.b5 Bc7! 8.Kd5 Ke7 9.Kc6 Kd8 ここで違いが明らかになる。前の変化では黒ビショップが自分のキングの行く手をさえぎっていた。10.Kb7 他の手では 10…Kc8 ですぐに引き分けになる。10…Kd7 11.Bd4 Bd8 12.Bb6 Bg5 13.Ba5 Be3 14.Ka6 Kc8 15.Bb6 Bg5 16.Bd4 Bd8 17.Bc3 Bc7 白はこれ以上進展が図れない。18.Ba518…Bxa5 で引き分けのポーン・エンディングになる。
3)4…Bf2 4…Bg3 よりは劣るがこれでも良い。5.Bc3+ Kxg6 6.b4 Kf7 7.Bd4 Bg3 8.b5 Bc7! 9.Kd5 Ke7 10.Kc6 Kd8! この後 11.Bb611…Kc8! でステイルメイトの手段で黒が助かる。

1…b4 2.Be3 Bc3 3.Kd3 Be1 4.Bd2 Bf2

 明らかにポーン・エンディングは黒が負ける。本譜の手に対して 5.Bxb4 ならば 5…Kg7 6.Bc3+ Kxg6 7.b4 Kf5 8.Bd4 Bg3 で白は勝つ可能性がない。そこでカパブランカは別の手を試す。

5.Ke4 Bc5?

 白の回り道作戦が功を奏した。この手で白は決定的な手得を得る。白の狙いは 6.Bxb4 だが黒は 5…Kg7 6.Kf5 としてから 6…Bc5 と指すべきだった。そうすればカパブランカはgポーンから黒キングを追い払ってから当初の作戦に戻らなければならなかっただろう(第1手目の説明を参照)。

6.Kd5!

 これで貴重な手得を得た。即ち 6…Bf2 7.Bxb4 Kg7 8.Bc3+ Kxg6 9.b4 Kf7 となった時黒キングが防御に間に合わなくなっている。例えば 10.Bd4 Bg3(10…Be1 なら 11.b5 Ba5 12.Kc6 Ke8 13.Bf6! Kf7 14.Be5)11.b5 Bc7 12.Kc6 Ba5 13.Be5 から 14.Bc7 で白が簡単に勝つ。

6…Be7

 この手しか残されていない。6…Bf8 は 7.Kc4 Kg7 8.Bxb4 でビショップを交換されてしまう。

7.Kc4 Kg7 8.Bxb4 Bd8

 ヤノフスキーは最善をつくしているが黒ビショップが不本意な斜筋に追い払われた。8…Bh4 でも 9.Bc3+ Kxg6 10.b4 で第1手目の説明中の白勝ちの変化1)になる。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(050)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例
白 B.スパスキー
黒 T.ペトロシアン
世界選手権戦、モスクワ、1966年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Be7 7.cxd5

 7.Bd3 なら黒は前述の解説と同様に指し進めるのが良い。すなわち 7…dxc4! 8.Bxc4 O-O 9.O-O Nc6 でいい勝負になる。

7…Nxd5 8.Bd3 Nc6 9.O-O O-O 10.Re1

 ほかの手なら黒は楽である。10.a3 には 10…Bf6! と応じるのが最善で、10.Qe2 には 10…Ncb4 または 10…Ndb4 と応じるのが良い。

10…Bf6!

 この手にはdポーンを攻撃することと …g7-g6 から …Bg7 でキング翼を守る用意をすることの二重の目的があり、互角にする唯一の確かな手段である。ほかの手なら白は少し優勢で確実に攻撃の可能性を期待することができる。一例は 10…Bd7?! 11.a3! Rc8 12.Bc2 Nxc3 13.bxc3 Na5 14.Qd3 g6 15.Bh6 Re8 16.Ne5 Bc6 17.Qg3! である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(281)

第5章 ビショップ・エンディング

5.7 実戦例

 本書中の基本的な局面はそのまま実戦に現われることはほとんどないので実戦的な価値は限られていると感じている読者がいるかもしれない。しかしそれは間違った考え方である。確かに多くのエンディングは決して基本図のとおりにはならないが、それらの重要な局面は全ての分析の中核をなしていて、もっと複雑なエンディングを理解しようとする前に完全に知っておかなければならないものである。この点において次の例は一流のマスターたちといえども批判の埒外ではないことを示している。

 図281 白の手番
カパブランカ対ヤノフスキー、1916年

 このエンディングは1916年ニューヨークでのカパブランカ対ヤノフスキー戦に現れた。白はポーンを1個得しているがそれを勝ちに結び付けるには大きな困難がある。gポーンがクイーンになる可能性はないので白は全精力を傾けて最良の条件で黒ポーンを取らなければならない。黒はこのポーンを守りとおすことはできないが白ビショップにa1-h8の斜筋を去らせることはでき、その時 …Kg7 が可能になる。その後のビショップ・エンディングでは白はbポーンを突き進めることになる。

 基本局面が登場するのはここである。ナイト列ポーンのビショップ・エンディングでどの局面で勝ち又は引き分けになるのかを思い出さなければならない。図246の説明で黒枡ビショップの場合に黒が引き分ける場合のポーンの範囲を述べておいた。それによればポーンはb6に達しないうちに止めなければならない。これらの知識が以下の分析の理解に役立つ。

1.Ke4

 典型的な様子見の作戦である。もしかしたら黒が間違ってくれるかもしれないことを期待した実戦的な手である。カパブランカは唯一の勝つ可能性は 1.Kc5 b4 2.Kc4 Be1 3.Bc5 Kg7 4.Bxb4 であることを知っていたはずである。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(115)

「Chess Life」2005年12月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

エバンズ・ギャンビット(続き)

戦型A) 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 Bc5

6.d4

 d2-d4 と突いて先手をとるのがエバンズ・ギャンビットの基本的な構想である。

6…exd4 7.O-O

 白はデンマーク・ギャンビットのようにまたポーンを犠牲にする。7.cxd4 Bb4+ 8.Kf1 も面白い手である。しかし 7.Ng5?! Nh6 8.Nxf7 Nxf7 9.Bxf7+ Kxf7 10.Qh5+ g6 11.Qxc5 は 11…d5! 12.exd5 Re8+ 13.Kf1 Re5 14.c4 Qh4 となって、黒を何も困らせることができず白が困るだけである。

7…d6

 ほかの手では Nf3-g5 の白の作戦が決まってくる。7…Nge7 なら 8.cxd4 Bb6 9.Ng5!、7…d3 なら 8.Ng5 という具合である。

8.cxd4 Bb6

 ここで白には 9.Nc3 ともっと直接的な 9.d5 Na5 10.e5 との楽しい選択がある。後者は 10…Nxc4 11.Qa4+ Bd7 12.Qxc4 Ne7 13.Re1 O-O 14.Bg5 と続くことが予想される。

9…Na5

 黒が 9…Bg4 と釘付けにすれば白は 10.Bb5 と応じ、10…Bd7 に 11.e5 と指す。

10.Bg5

 これは黒陣に弱点を生じさせる重要な手である。

10…f6 11.Bf4 Nxc4

 11…Ne7 なら白は 12.h3 と突く余裕さえあり、12…Nxc4 にはやはり 13.Qa4+ で駒を取り返せる。

12.Qa4+ Qd7 13.Qxc4 Qf7

 13…Ne7 は黒のキャッスリングが難しくなる。

14.Nd5

 チゴーリン対シュタイニッツ戦(ロンドン、1883年)のように白には長期的な代償がある。

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カロカン防御の指し方(049)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 局面は動的な均衡を保ったままである。黒にはすぐに 16…Nbd5 でせき止めを行なうか 16…Qa5 でクイーンを展開するかの選択肢がある。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(280)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 図280

8.h7!

 この意表の手でたちまち勝負が決まった。どちらの駒で取ってもナイトによる両取りが掛かり駒交換の後易しい勝ちのポーン・エンディングになる。

 この例でビショップ・エンディングの理論的な考察を終えることにする。多くの場合一般原則を挙げるのは不可能であることを見てきた。読者にとって一番良い方法は重要な局面を認識して分析の基礎とすることである。これまでの原則がどのように適用されるかを示すために実戦のエンディングをいくつか選んで紹介する。

(この節終わり)

2014年02月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(048)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 黒はナイトを最もよく働く地点に展開することによりd4に圧力をかけ、白のキング翼ナイトが活動的なe5の地点に進出するのを防いだ。白は再びキング翼での可能性を探し求め、黒はdポーンを押さえd5の地点を支配し続けなければならない。このあとの考えられる手順は次のとおりである。10.O-O a6 11.a4 Bd7(積極策に乗り出す前にすべての小駒を展開することが大切である)12.Re1(キング翼ルークが最もよく働く所は半素通しe列である)12…h6!?(ビショップにどうするつもりか決めさせることにより黒は何も危険をおかさずにキング翼で陣地をわずかに広げる)13.Bf4(重要なe5の地点を見張り続ける)13…Nb4!(クイーン翼ビショップをc6を介して働かせる用意をし、d5の地点に利かせた)14.Qe2(クイーン翼ルークをd1に展開できるようにした)14…Bc6 15.Rad1 Rc8(16…Bxf3 で白ポーンの形を崩す狙いで、17.Qxf3?? なら 17…Rxc4)16.Ne5!(白は黒の絶対的なd5の支配の代償に好所のe5を得ている)

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(279)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 ポーンが分離している場合には効果的にせき止められたりポーンの一つが取られたりしなければ通常は白が勝つ。しかしこの場合でもポーンがルーク列にあれば大きな技術的困難を伴うことがある。そのような局面に関わるよりも最後にナイト+2ポーン対ビショップ+1ポーンの例を取り上げよう。

 図279

 ポーンは全て盤の同じ側にあり白のhポーンは保護パスポーンになっている。このようなエンディングはビショップでは勝てない。しかしナイトなら白が絶対的に有利である。その大きな理由はビショップが一つの色の枡にしか利かないのに対しナイトは全ての枡を攻撃できるからである。例えば図の場合ビショップは白キングをその強固な位置からどかすことができないがナイトは場所を変えて守備側に困難を突き付けることができる。

 ポーンが全て同じ側にある時ナイトが最も強みを発揮する理由は明らかである。例えば黒のポーンがf5でなくb5にあったら、このポーンに白駒の一つが縛り付けられ黒キングとビショップが白のポーンを止めて簡単に引き分けにできるところである。

 図の局面は1925年のロマノフスキー対ベルリンスキー戦の変化図である。そして以下の参考になる分析はGMアベルバッハの研究によるものである。

1.Nd7+

 白が勝つためには組織的に事を運ばなければならない。白キングがe5又はg5から侵入しなければならないことは明らかである。それはつまり黒キングがf6から追われた後すぐにそこに戻って来れるようではだめだということである。そのためには白は h5 と突かなければならない。しかしすぐに突くと 1…Be6! とされて、ナイトが動くと 2…Bf7 でこのポーンを取られてしまう。そこで白はまずナイトの位置を改善する。

1…Ke6

 1…Kg6 は 2.h5+! でたちまちf5のポーンを取られてしまう。

2.Nc5+ Kf6 3.h5! Bh7!

 これが最強の受けである。黒はナイトのd7でのチェックを防ぐことはできない。3…Bf7(a2)なら 4.Nd7+ Ke6 5.h6!
で白が勝つ。この手順中 4…Ke7 なら 5.h6 Bg8 6.Kxf5! Bh7+ 7.Kg5 Kxd7 8.Kf6
で白が勝つ。

 注意すべきはこの局面で黒の手番ならば黒が負けるということである。例えば 4…Bg8 は 5.Nd7+ Ke7(5…Ke6 なら 6.h6! Kxd7 7.Kxf5 Ke7 8.Kg6)6.Kxf5 Bh7+ 7.Kg5 Kxd7 8.Kf6!
でポーンが止まらないので白が勝つ。しかし皆知っているようにナイトは間合いをとることができない。4.h6 と突くと黒キングがg6に来れるようになる。従ってもっと準備が必要である。

4.Nd7+ Ke7 5.Ne5 Kf6

 5…Ke6 なら 6.Nf3 Kf6 7.Nd4 で黒ポーンが落ちる。

6.h6!

 ナイトが中央で強固な地点を占めているのでこのポーン突きが決め手になり黒は手詰まりに陥っている。アベルバッハは 6.Nf3 Bg8 7.Nh4 は 7…Be6! 8.h6 Bc8! で失敗することを指摘した。ただしこの手順中 7…Bf7? は誤りで 8.h6 Be6 9.h7 Kg7 10.Ng6! Kxh7 11.Nf8+ で白の勝ちになる[訳注 8…Bc4 で白が勝てないようです]。

6…Bg8

 6…Ke6 は 7.Nf3 Kf6 8.Nd4 でポーンを取られる[訳注 8…Bg6 で受かります]。

 本譜の手によりきれいな結末を迎える。

7.Nd7+ Kg6

 7…Ke6 なら 8.h7 で白が勝つ。また 7…Ke7 なら 8.Kxf5 で黒の3手目の説明のように白が勝つ。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(047)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 やはりまた最も効率的な作戦は必要性が出てくるまでクイーン翼ナイトを元位置に置いておくことである。7…Nc6?! は 8.Rc1! O-O で前の …Nc6 の変化のように白が 9.c5! で有利になれる。例えば 9…Ne4 なら 10.Bxe7 Qxe7 11.Be2 Nxc3 12.Rxc3 e5 13.Nxe5 Nxe5 14.Re3! となる。

 注意すべきは黒はすぐでも 7…Nc6?! 8.Rc1 と指してからでも …dxc4 と取りたくないということである。そう指すと白のビショップが手損せずにポーンを取り返しながらc4に展開することになる。白に「不要な」手を費やさせるためには、黒は白がキング翼ビショップを動かすまで …dxc4 を遅らせる。

8.Bd3

 白はキング翼の展開を完了するよりない。手待ちの 8.Rc1(8…dxc4 を期待し手得の 9.Bxc4 を指す)には、黒は 8…Ne4! で期待の交換を実現して互角の局面を手に入れる。

 白が 8.c5 と突き越してクイーン翼で何かをしようとすれば、黒はすぐに 8…b6! 9.b4 a5! 10.a3 Ne4! と反撃を開始していい勝負になる。例えば 11.Bxe7 Qxe7 12.Nxe4 dxe4 13.Ne5 Nd7! となれば、この複雑な局面で黒の見通しは白と同じである。つまり展開に優っていて、白のクイーン翼を清算できる見込みがかなりある。

8…dxc4!

 白のビショップはポーンを取り返すためにまた動かなければならないのでこの手はごく当然である。この交換により黒は白が c4-c5 突きでクイーン翼に圧力をかけようとするかもしれない可能性を除去し、さらには白のdポーンを孤立させた。

9.Bxc4

 ポーンの形は 7.cxd5 Nxd5 の変化と同じで、戦略の基準も似ている。白は中央での少しの優位を活用しながら黒のキング翼に圧力をかけようとし、半素通しe列を有効に利用することに努める。黒はdポーンに対し反撃を目指し、重要なd5の地点をしっかり支配すべきである。もし黒がいずれかの戦略領域への警戒をゆるめれば、たやすく困難に陥る。好例には1969年レザンでのウンツィカー対ポマール戦がある。9…b6 10.O-O Ba6?!(d5の地点を見張る 10…Bb7 が正着)11.Bxa6 Nxa6 12.Ne5! Nb4(本来の地点に行こうとし白の Nc6 を防いでいるが、白の活動的な駒がこれをくじく)13.a3! Nbd5 14.Nc6! Qd7 15.Nxe7+ Qxe7 16.Nxd5! exd5 17.Re1 Qd6 18.Bxf6! Qxf6 19.Re5! 白が完全に素通しになったe列を支配しそのため本当の弱点は白のdポーンでなく黒のdポーンなので明らかに優勢である。

9…Nc6!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(278)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 ポーンの前進が早過ぎて部分的にせき止められると状況ははるかに複雑になる。図278は興味深く勉強になる例である。

 図278
ホルビッツ、1880年

 この局面はほぼ1世紀の間異例の引き分けとして知られてきた。作者は当初の分析で少し間違いを犯していたが後世の分析でも白が最善に受ければやはり引き分けにできることが証明されている。これから示す分析手順は非常に参考になりこのような局面における受けの手段を良く表している。

1.Bb5!

 この手は絶対手である。キングが動けばgポーンに進まれるし 1.Bh5 は 1…Nf3! で手詰まりに追い込まれる。さらに 1.Ba4 は 1…g4+ 2.Kxh4 Nf3+ 3.Kh5 g3 から 4…g2 で白の勝ちとなる。

1…Ng4

 この手が最も難しい。1…g4+ 2.Kxh4 Nf3+ 3.Kh5 g3 は 4.Bf1 Ke3 5.Kg4 Kf2 6.Bh3!(6.Kh3? は 6…Ne1! 7.Kg4 Ng2 8.Kh3 Ne3 で黒が勝つ)6…Ng1 7.Bf1! で黒はどうすることもできない。

 黒が 1…Ng6 で 2…g4+ を狙い 2.Bd7? なら 2…Kf3! 3.Bc6+ Kf2 4.Kg4 Ne5+ で勝とうとするならば白は 2.Be2! Ke3 3.Ba6! で応じる。以下は 3…Kf2 3…Kf3 なら 4.Bb7+ Kf2 5.Kg4 4.Kg4 Ne5+ 5.Kxg5! 5.Kh3 は間違いで 5…g4+! 6.Kxh4 g3 7.Bf1 Nf3+ 8.Kh3 Ne1! で前述のように黒が勝つ 5…Kg3 5…h3 なら 6.Kf4 h2 7.Bb7 Nd3+ 8.Kg4 Ne1 9.Kh3 で引き分けになる 6.Bc8 で簡単な引き分けになる。

 最後に 1…Nf3 は 2.Bd7 Nd4(狙いは 3…Nf5)3.Bg4 Nf5 4.Be2 で黒には何も進展がなく、1…Kf3 2.Ba6 は白ビショップが正しい地点に行くことができる。

2.Ba6!

 この手も引き分けるための唯一の手である。ビショップはc8とb7でポーンの前進を防ぐ用意をしなければならない。またナイトによる両取りを避けるためにできるだけキング翼から遠ざかっていなければならない。

 ホルビッツはここでの正着は 2.Bd7 であると考えていた。しかし後にカールシュテートによって次の手順で黒が勝つことが指摘された。2…Nf2+ 3.Kg2 Nd3! 4.Kh3 4.Bb5 なら 4…Ke3 5.Kh3 Nf2+ から 6…g4 で黒が勝つ 4…Kf3! 5.Bc6+ 5.Bg4+ は 5…Kf2 6.Bc8 Nf4+ でこの後 7.Kg4 なら 7…h3 8.Kxg5 h2 9.Bb7 Ng2、7.Kh2 なら 7…Kf3 8.Bb7+ Kg4 でどちらも黒の勝ちとなる。5…Kf2 6.Kg4 Ne5+ 7.Kxg5 Kg3! 7…h3? は 8.Kh4 h2 9.Kh3 で引き分けになる。8.Bg2! Ng4 9.Kh5 Ne3 10.Bh1 h3 11.Kg5 h2 これで黒が勝つ。興味深い分析で後でも出てくる可能性がある。

2…Nf2+ 3.Kg2 Ke3 4.Bc8!

 この手に対して 4…g4 なら 5.Bxg4! Nxg4 6.Kh3 で引き分けになる。

4…Nd3 5.Kh3 Nf4+

 5…Kf3 なら 6.Bb7+ Kf2 7.Kg4 Ne5+ 8.Kxg5 Kg3 でビショップが当たりになっていないので 9.Bc8 で簡単に引き分けになる。

6.Kg4 h3 7.Kg3

 一番簡明な手である。もっとも 7.Kxg5 h2 8.Bb7! から 9.Kg4 でも構わない。本譜の後黒はこれ以上どうすることもできない。白はh3-c8の斜筋にビショップを維持し黒キングがf4又はf3への利きを放棄すればhポーンを取ってしまえば良い。だから引き分けである。

(この節続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(13)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第13局

 ドビアス対ポドゴルヌイ戦でポドゴルヌイは相手のgポーン、次いでhポーンを前進させた。その後で弱体化した相手陣の土台を巧妙に崩し壊滅させた。

フランス防御
白 ドビアス
黒 ポドゴルヌイ
プラハ、1952年

1.e4

 この手は競争と闘争を始める最良の方法の一つである。競争とは駒を迅速に外に出し最も効果的に働くことのできる地点に置くことである。闘争とは中原の支配を得ることである。

 一手でeポーンが中原の重要な地点を占め他の二つの地点を攻撃している。そしてクイーンとビショップの利いている枡が9に増えた。

1…e6

 この穏やかでも攻撃的な手は 2…d5 で白の中原の領有に挑む準備である。

 この防御には通例の応手の 1…e5 に対して白が指すことのできる多くの激しい布局を避ける利点がある。

2.d4

 フィリドールは『チェスの分析』(1791年)の中で同様の手について次のように述べている。「このポーン突きには二つの非常に重要な理由がある。一つ目は敵のキング翼ビショップがf2のポーンに利く地点に来るのを邪魔することである。二つ目はポーンの力を中原に注ぎ込むことである。それはクイーンの活躍に大きな成果をもたらす。」

3…d5

 白のeポーンに当たりをかけて直ぐに中原に挑戦した。

3.Nc3

 白の可能ないろいろな針路(eポーンの突き越し、ポーン交換、中原ポーンの犠牲または保護)のうち白は駒を展開し圧力を維持できるのを選んだ。

3…dxe4

 この手は一時的に白に大きな行動の自由を許す。しかし黒は後で …c5 と突いて邪魔なdポーンを粉砕することに期待をかけている。

4.Nxe4

 ポーンを取り返した後中原のナイトとポーンの態勢により白がわずかに優勢である。

4…Nd7

 キング翼ナイトをf6に展開させるための支援の準備をした。白がナイトを交換してくれば黒はクイーン翼ナイトで取り返すことができる。

 これをしないで 4…Nf6 すると 5.Nxf6+ と交換され、黒は 5…gxf6 でキング翼ポーンの形を乱すか、クイーンで取り返して白の小駒で小突き回される危険を背負うかしなければならない。起こりうる見本は(4…Nf6 5.Nxf6+ Qxf6 の後)このちょっとした罠である。6.Nf3 Bd7(中央の斜筋に利かすため)7.Bd3 Bc6 8.Bg5 Bxf3 9.Qd2! Qxd4 10.Bb5+ これで黒クイーンが取られる。

5.Nf3

 キング翼ナイトを働かせるには最良の手段である。f3に展開したナイトは中原に大きな影響力を持ちキャッスリングしたキングの守りでは比類ない力を発揮する。

5…Be7

 これは当たり障りのない展開の手である(最下段から駒を出しキングの早期キャッスリングを助ける)。しかし通常の 5…Ngf6 ほど良い手ではない。

 代わりに黒がクイーン翼ビショップをフィアンケットしようとすると(白の浮いているナイトを見ればそうしたくなる)見事な罠にはまる可能性がある。5…b6 6.Bb5 Bb7 7.Ne5! Bxe4(又は 7…Bc8 8.Bg5 Ngf6 9.Nc6 でクイーンが取られる)8.Bxd7+ Ke7 9.Bc6! これで黒は戦力損が必至である。

6.Bd3

 この手はたぶん 6.Bc4 より厳しいがどちらの手もビショップを好所につけキング翼キャッスリングのために1段目を空ける。

6…Ngf6

 黒も(やっと)キング翼ナイトを展開してキングを安全なところに移す準備をした。

7.Qe2

 白は駒を展開して、中原のナイトをクイーンとビショップで強固に支えた。

 7.Nxf6+ は 7…Bxf6 と取られて黒が …c5 で白の中原に攻撃を仕掛けることができるので本譜の手の方が黒の狭小な陣形に対してもっと抑圧的である。

7…O-O

 黒キングは隅に安全を求めた。7…Nxe4 8.Bxe4 Nf6 で容易で自由な捌きを行なおうとしても 9.Bxb7 Bxb7 10.Qb5+ から 11.Qxb7 で白のポーン得になる。

8.O-O

 このキングのキャッスリングは危険をさけるためというよりもキング翼ルークを戦いに参加させることの方に主眼がある。

 白陣は非常に良形なので次のような攻撃も有望である。8.Bg5 Nxe4 9.Qxe4 g6(もちろん 9…Nf6 で詰みを防ぐのは 10.Bxf6 で終わりである)10.h4 この後白はクイーン翼にキャッスリングしてキング翼のポーンで敵の砦に猛攻をかけることができる。

8…Nxe4

 黒は少し動ける余地を作るために駒を交換した。

9.Qxe4!

 白は詰みの狙いで盤上を支配した。ちょっと見はクイーンで取るのは自身を露出させて敵の小駒でいじめられて危ないように思われる。しかし黒は白を困らせる立場にない(言葉のどの意味でも)。白クイーンは好き勝手に飛びまわれる。

9…Nf6

 もちろん黒は強いられなければ 9…g6 のようにキング翼のポーンを突きたくない。しかし黒の指した 9…Nf6 の何が悪いのだろうか。この手はナイトを最良の地点に出し、詰みを防ぎ、クイーンを追い払い、自分のクイーン翼を自由にしているのではないか。

 確かにこの手はそれら全てを行ない、状況によっては恐らく黒の最善手であろう。それにもかかわらず強要された手の方が自由意志で指された手ほど相手を元気づける効果を持たないのは奇妙である。

10.Qh4

 この手のあと好所にいるはずの黒のナイトは詰みを防ぐためにその地点に居続けなければならない。

10…b6

 黒の初手でキング翼への進出を拒まれていたクイーン翼ビショップは戦いに加わるために別の手段を求めた。b7への展開は中央の長い斜筋を貫くので魅力的に見える。

11.Bg5!

 素晴らしい戦略である。白は詰みを防いでいる最も重要な守備駒のナイトを攻撃している。具体的な狙いは 12.Bxf6 Bxf6 13.Qxh7# である。

 この狙いは単純で対処も易しい。黒のしなければならないことは 11…g6 か 11…h6 だけである。それでは白は何を目指しているのだろうか。

 この手の隠れた目的は詰みを避けるために黒にキング翼のポーンの1個を突かせることである。これらのポーンのうち1個でも前に進めば防御態勢に決して修復できないゆるみが生じてしまう。そのゆるみは決してふさぐことのできない裂け目を作り出すので陣形を構造的に弱体化させてしまう。前に進んだポーンは防御のためのポーン陣の元の位置に決して戻ることができない。

11…g6

 代わりに 11…h6 なら白には有力な二つの継続手段がある。

 12.Bxf6 Bxf6 13.Qe4 で、詰みの狙いがあるので白は罪のない傍観しているクイーン翼ルークを取ることができる。

 12.Bxh6 gxh6 13.Qxh6 Bb7 14.Rae1(狙いは 15.Re5 から 16.Rg5#)14…Bd6 15.Re5! Bxe5 16.dxe5 で白が勝つ。このナイトは動けないし、動かなくても 17.exf6 から詰まされる。

12.c4

 この手は非常に良い手である。まず、黒が 12…Nd5 で交換によって白の攻撃の駒を消し去るのを防いでいる。攻撃面ではdポーンを突いて黒のe6のポーンの形を崩す用意をしている。これが実現すれば白ルークはe列に侵入口が得られる。

12…Bb7

 黒は何も効果的な反撃手段がない。黒にできる最善の策は最適の地点に駒を展開させ続けて徹底抗戦することである。

13.d5

 狙いは 14.Rad1 と準備してから黒のeポーンを取ることである。黒が 15…fxe6 と取り返せばg6のポーンが支えの一つを奪われる。

13…exd5

 この手でポーン得になるように見える。なぜなら白が 14.cxd5 と取り返せば 14…Nxd5 と応じてポーン得にしがみつくだけでなくビショップの交換を強いて白の攻撃をくじくからである。

14.Rfe1!

 思いがけない中間手である。狙いは 15.Rxe7 Qxe7 16.Bxf6 Qd6 17.Ng5 h5 18.Qxh5! gxh5 19.Bh7#! で、即勝ちである。

14…h6

 黒はわざとポーンを取らせてナイトとビショップに重圧をかけている駒の一つをそらそうとした。

 14…Kg7 でさらにナイトの守り駒を増やしても助けにならない。白は容赦なく 15.Bh6+ で交換得する。

15.Qxh6

 15.Bxh6 は誤りで 15…Ne4 でクイーンを追い払われる。

 本譜の後の白の狙いは 16.Bxg6 fxg6 17.Qxg6+ Kh8 18.Nd4(19.Ne6、19.Nf5 又は 19.Re3 から 20.Rh3+ で勝つ狙い)18…Qe8 19.Qh6+ Kg8 20.Nf5 Rf7 21.Bxf6 で、白の簡単な勝ちになる。

15…Ng4

 黒が 15…Ne4 と受けると白には次のようなきれいな勝ちがある。16.Bxe7 Qxe7 17.cxd5(次に釘付けのナイトを取る狙い)17…Bxd5 18.Bxe4 Bxe4 19.Rxe4! Qxe4 20.Ng5 これで黒は即詰みを逃れるためにはクイーンを捨てなければならない。

 本譜の手はもちろん白クイーンを追い払おうとするものである。

16.Qh4

 この手はビショップを守り、ナイトを攻撃し、17.Bxe7 を狙っている。たった一手で他にこれ以上のことができるだろうか?

16…Bxg5

 ナイトをf6に戻すのは破綻する。即ち 16…Nf6 17.Rxe7 Qxe7 18.Bxf6 で、クイーンが当たりになっていて 19.Qh8# の一手詰みがある。

17.Nxg5

 またも同じ主題歌である-h7での詰み-。

17…Nf6

 そして黒は曲に合わせて踊らなければならない。だからナイトをf6に戻した。

 ここでも黒はナイトを好所のf6に置いたが自分の自由意志によるものではない。

18.Qh6

 この手はルークをe3からh3に転回させるよりも黒にとって厳しい。つまり 18.Re3 Re8 19.Rh3 ならば 19…Kf8 で黒キングがすぐの破滅を逃れる。

 本譜の手の後黒が 18…Re8 と指せば 19.Bxg6 Rxe1+ 20.Rxe1 fxg6 21.Qxg6+ Kh8 22.Nf7# で詰みになる。

18…d4

 この手は 19.Re3 を防ぎ、ビショップの長斜筋の利きを延ばすためである。

 白はどのように攻撃を続けたら良いだろうか。あまり手数をかけずに控えの駒を動員できるだろうか。あるいは敵の防御態勢を弱めて即座の襲撃にもろくさせることができるだろうか。

 最後の問いにヒントがないだろうか。実はあるのである。

 黒の防御の要(かなめ)はh7での詰みを防いでいるナイトと、非常に重要なgポーンを支えているf7のポーンである。もし白がこれらの二つの守り駒をやっつけることができれば、即ち脅しをかける、取ってしまう、何らかの方法でどかせる、・・・

 ちょっと見たところではばかげているような手が存在するのである。

 ヒントその2。マスター級の選手ならあらゆる指したい手、特にあり得ない手を考える。

19.Re6!!

 この手の狙いはナイトを取ってクイーンで詰めることである。

19…Re8

 19…fxe6 なら 20.Qxg6+ Kh8 21.Qh6+ Kg8 22.Bh7+ Kh8 23.Bf5+ Kg8 24.Bxe6+ Rf7 25.Bxf7# で詰みになる。

 面白いのは意表をつく 19.Re6 がナイト取りになっているだけでなくf7のポーンがルークを取ってgポーンの守りを放棄するわけにいかないことである。

 本譜の黒の手は白がナイトを取りクイーンでh7でチェックをかけた場合のためにキングにf8の地点を空けてやった。

20.Bxg6

 ポーンの防壁を打ち破った。白の狙いは単純な 21.Bxf7# である。

20…黒投了

 20…fxe6 なら 21.Bf7# である。

 20…fxg6 なら 21.Qxg6+ Kh8 22.Nf7# である。

 20…Qd7 なら 21.Bh7+ Nxh7(21…Kh8 なら 22.Qxf6#)22.Qxh7+ Kf8 23.Qh8# である。

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カロカン防御の指し方(046)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 7.cxd5 Nxd5 の局面

 白の次の段取りはキング翼ビショップのために適切な場所を見つけることにするのが良い。理にかなった可能性は次の二つである。

 ⅰ)8.Bc4 が活動的に見えるが、キング翼に対する作戦には実際には良い位置ではなく黒は普通の手順でかなり容易に互角にできる。一つの良い指し方の例は 8…Nc6 9.O-O O-O 10.Re1 Bf6! でビショップを積極的にdポーンへの攻撃に加えることである。11.Ne4 のあと黒は 11…b6! 12.a3 Bb7 でもう一つのビショップを展開し、例えば 13.Qd3 Rc8 14.Nfg5 Bxg5!(15.Nxg5 なら 15…Nf6、15.Bxg5 なら 15…f6)で完全に満足のいく局面になる。

 ⅱ)8.Bd3 はビショップをすぐに黒のキング翼に向け、白の最も有望な作戦である。そのあと両者の最善の指し手は次のように進むだろう。8…Nc6 9.O-O O-O 10.Re1(半素通しe列のいろいろな地点を支配し、好機が来ればキング翼攻撃に加わる用意をしている)10…Bf6!(効果的な二重の目的の手で、dポーンを当たりにしこのビショップを用いて …g7-g6 から …Bg7 でキング翼を守る用意をしている)11.Be4!(ビショップをもっと働きの良い地点につけて適時にd5のナイトを取る狙い)11…Nce7! 黒陣の要はd5の強力な支配で、そのためこの地点を強化するのは重要である。一般原則として孤立ポーンに対する最も効果的な手法は、すぐにその直前の地点(この場合ならd5)を駒で支配することである。そのようにして孤立ポーンが動きを著しく制限され、固定した標的になる。

 ここで黒が完全に互角になる見通しは非常に明るい。この局面は章末の実戦例でもっと詳細に分析する。

 3)7.Bg5 で展開を続ける。これを主手順にする。

7…O-O!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(277)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 ナイト+ポーン対ビショップのエンディングは数多くの面白い例があるがここではこれくらいにしておく。代わりにすぐにビショップ対ナイト+2ポーンの局面を採り上げよう。ビショップ+2ポーンはほとんど常にナイトに対して勝つがビショップ対ナイト+2ポーンでは劣勢側の引き分けの可能性も大いにある。ポーンが連結している場合は優勢側が通常勝つがそれでも例外が存在する。特にポーンの一つがルーク列にありビショップとキングがうまくせき止めることができた場合はそうなり易い。まず図277で通常はどのようにして勝ちになるのかを見てみよう。

 図277

 白が勝つためにはいずれポーンを進めなければならないのは明らかである。しかし引き分けの局面にならないように注意しなければならない。まず黒がビショップを犠牲にしてポーンを両方とも取ってしまうのを警戒しなければならない。次に 1.b4+ Kc4 のようにポーンがせき止められないようにしなければならない。しかし組織立った手順を踏んでいけば勝ちは難しくない。

1.Kb2

 ポーンを進めるためにはキングがa3にいてナイトがc4の地点を守っているのが一番良い。

1…Bg8 2.Nc2 Bf7

 2…Kd5 なら 3.c4+ から 4.Kc3 で白が勝つ。

3.Ne3 Bg8 4.Ka3 Bf7

 黒は受身に徹するしかない。この間に白はポーンを進めるための準備を完了した。

5.b4+ Kb5 6.c4+!

 黒駒をさらに退却させる。6…Bxc4 は 7.Nxc4 Kxc4 8.Ka4 で黒負けのポーン・エンディングになる。

6…Kb6 7.Kb3

 7.Nd5+ でも良い。しかし本譜の手が最も理にかなっている。白キングがd5に来ればcポーンを進めることができる。

7…Be6 8.Kc3 Bf7 9.Kd4 Be8

 黒は待つこと以外何もできない。

10.Nd5+ Kc6 11.b5+

 最も組織的な作戦は 11.Nc3 の後 12.c5 から 13.b5+ である。しかし本譜の手の方が少しだけ早く勝ちになる。

11…Kb7 12.Kc5 Bf7 13.Kb4 Be6 14.Ne7 Bg4 15.c5 Bf3 16.Ka5

これで白が勝つ。

 黒は 17.b6 から 18.c6+ の狙いに対して受けがなく白の簡単な勝ちである。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(045)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 7.cxd5 の局面

 白はいつ …dxc4 と取られるかもしれないことを気にする必要がないように自分から交換した。これで駒の展開を完了してから黒のキング翼方面に目を向けることができる。黒にはポーンの取り返し方が二通りある。

 a)7…exd5 は孤立dポーンも含めて中央での互角を確立する。白は 8.Bb5+ Bd7 9.Bxd7+(9.Qb3 も良い手である)9…Nbxd7 10.O-O O-O 11.Qb3 Nb6 12.Bg5 Re8 13.Rfe1 で、少し主導権があり優勢である。

 b)7…Nxd5 の方が普通の取り返し方である。黒は中央で少し劣勢になることを受け入れるが(黒のe6のポーンと白のd4のポーンを比較すると白陣の方が少し広い)、ポーンの形に傷がなくて白の孤立dポーンに対して策をめぐらすことができる。

 7…Nxd5 の局面はチェスの定跡にとって非常に重要である。カロカン防御だけでなく、非常に人気のある布局システムのクイーン翼ギャンビット拒否準タラシュ防御でもよく生じることがある。その戦法の通常の手順は 1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 cxd4 7.exd4 Be7 で、ぴったり同じ局面である!

 布局定跡のほとんどの本はこの局面を準タラシュ防御として分析している。本書ではここで分析する。

 7.cxd5 Nxd5 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(276)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 図276

7.Nb7!

 白は 7.Kb8 でビショップを動けなくしても勝てそうに見える。しかし黒の受けの構想は 7…Kd6! 8.Kxa8 Kc7! で引き分けに持ち込むことである。この引き分けの局面の特徴は白キングがポーンの前でステイルメイト状態になっていること、それから黒キングがナイトと同じ色の枡にいて白の手番となっていることにある。良く知られているようにナイトは間合いを取ること(つまり手番を黒に渡すこと)ができない。だから黒キングはc8又はc7から決して追い払われない。驚嘆の引き分けである。

 局面の状況が分かったので以下の手順は理解し易いだろう。白は黒が上の引き分けの局面にできない時にのみビショップを取るつもりである。

7…Ke6

 8.Kb8 には 8…Kd7 と応じなければならないのでこの手以外はだめである。

8.Na5!

 既に見たように 8.Kb8 Kd7 9.Kxa8 Kc8! は引き分けにしかならない。そこで白は巧妙なナイトの捌きを計画する。

8…Ke7 9.Kc8!

 9.Kb8 の後黒は 9…Kd7? とは指せない。それは 10.Nb7! Kc6 11.Kxa8 Kc7 12.Nd6! で白の勝ちとなる。しかし 9…Kd8! 10.Nb7+ Kd7、又は 10.Kxa8 Kc7! で引き分けにできる。

9…Ke8

 Nb7 があるのでビショップは動けない。9…Kd6 は 10.Kb8 Kd7 11.Nb7! で黒が手詰まりになる。

10.Nc4! Ke7

 ビショップが動くと 11.Nd6+ から 12.Nb7 があるのでこの手も仕方がない。

11.Kb8 Kd8

 黒キングは「間違った」地点に行かなければならない。11…Kd7 は 12.Nb6+ でビショップを取られてしまうし 11…Bf3 なら 12.Na5 である。

12.Nd6 Kd7 13.Nb7!

 この後は 13…Kc6 14.Kxa8 Kc7(正しい地点はc8である)15.Nd6! で白の勝ちになる。見事なエンディングである。

(この節続く)

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布局の探究(86)

「Chess Life」1994年2月号(3/4)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

dポーン布局の激しい指し方(続き)

Ⅱ.クイーン翼ギャンビット拒否 スラブ防御

1.d4 d5 2.c4 c6

 スラブ防御のすぐれた着想はd5の拠点をcポーンで守り、それによりh3-c8の斜筋をクイーン翼ビショップの活動的な展開のために開けておくことにある。残念ながらこの賞賛すべき作戦はいくらかの代価を払ってしか実行できない。

3.Nc3 Nf6 4.Nf3

 ここで既に黒はキング翼ビショップをどのように展開するかという重要な実戦的問題に直面している。もちろん 4…e6 と突くことはできるが、それによってスラブ防御の目的全体が否定される。4…g6 も可能だが、黒がグリューンフェルト防御の守勢版の戦型になる。黒の「究極」の問題は望ましい 4…Bf5?! が 5.cxd5! cxd5 6.Qb3 という強手で応じられることである。だからクイーン翼ビショップを展開するためには黒は中央を放棄しなければならない。

4…dxc4

 白がこのポーンを取り返すのはとても容易でなく、スラブ防御が棋理に合っているのはこの要因による。主手順は 5.a4 から始まり、5…Bf5 のあと 6.Ne5 または 6.e3 が指されている。白がこのポーンを取り返す代価は展開の手損とクイーン翼の弱体化である。この要因により黒が最終的にほぼ互角になる。

5.e4

 スラブ・ギャンビットは白の最も攻撃的な選択肢である。重要なことは布局定跡とグランドマスターの実戦では 5.e4 のギャンビットはスラブ防御に対するよりもクイーン翼ギャンビット受諾に対する方が危険であると考えられていることである。クイーン翼ギャンビット受諾とスラブ防御の両方を指す多くのGMは、1.d4 d5 2.c4 dxc4 3.Nf3 Nf6 のあと白が 4.Nc3 と指せばこの理由により 4…a6 でなく 4…c6 でクイーン翼ギャンビット受諾からスラブ防御に転換する。

5…b5 6.e5 Nd5 7.a4 e6!

 黒はキング翼ビショップの斜筋を開けたうえに、クイーン翼ギャンビット受諾でのように白が e5-e6 と突く不快な可能性をすべて永久に防いだ。これらの二つの要因に、黒のaポーンでなくcポーンがb5を守っているという状況が合わさって、黒の防御はかなり楽になっている。

8.axb5 Nxc3 9.bxc3 cxb5 10.Ng5 Bb7

 白には 11.Qf3 という必殺の狙いがあったが、対角斜筋にクイーン翼ビショップを展開することにより簡単に防がれた。

11.Qh5

 f7の地点に対する狙いは本物である。11…Qe7?! はばかげているし 11…Qc7? には 12.Nxe6 があるので、黒には選択肢が二つしかない。

11…Qd7

 この手の方が国際試合でよく指されるようになってきた。しかし私の考えでは黒の最も効果的は指し方は 11…g6 12.Qg4 Be7 である。私の実戦からの重要だがほとんど知られていない例はN.ポウバー対E.メドニス戦(ラムズゲート、1984年)で、13.Be2 Nd7 14.Bf3 Qc8 15.O-O Nb6 16.Ne4 a5! 17.Bg5 Bxe4! 18.Bxe4 Bxg5 19.Bxa8 Qxa8 20.Qxg5 Nd5 と進んだ。黒にはクイーン翼ルークの代わりにパスポーンととてつもないナイトがあり、少し展望に優っている。

 本譜の手のあと 12.Nxh7?! でhポーンを取るのは 12…Qd5 13.Nf6+ gxf6 14.Qxh8 b4! でうまくいかず、攻撃しているのは白でなく黒の方である。だから白はまず展開を完了すべきで、そのあと黒陣に内在する隙につけ込むように努めるべきである。黒の主要な課題はどちらにキャッスリングするのも非常に危険なのでキングの安全を確保することである。

12.Be2 h6 13.Bf3 Nc6 14.O-O Nd8 15.Ne4 a5 16.Qg4 Rh7 17.Bd1!

 黒は最後の手でキング翼ビショップを展開できるようにするとともに、17.Nd6+ Bxd6 18.Qxg7 の戦術も防いだ。そこで白はこのルークをc2から攻撃しようとする。

17…h5 18.Qe2 Bd5 19.Bc2 Rh8 20.Bg5

 白にはよく利いている小駒、安全なキング、それにe5の占拠による中央の広さの優位がある。黒は盤の両翼で戦力の協調ができない悩みがある。GMイリェスカスはこの局面を白が少し優勢と判断している。彼はここで 20…Nc6 を黒の最善手として推奨している。

20…Nb7?! 21.f4! Ra6?!

 白はキング翼でポーンの突進を始めた。黒はクイーン翼で 21…a4 により同じことをすべきである。本譜の手は手損になる。

22.h4! a4 23.Ng3 Na5 24.f5! Nb3 25.Rad1

 イリェスカス対チェルニン、パンプローナ、1991/92年

 白駒はすべて攻撃に適した位置につけていて、黒が受けきれるかは怪しい。GMイリェスカスの想定主手順は 25…a3 26.fxe6 Bxe6 27.d5 Bg4 28.Qe4! Nc5 29.Qf4! Bxd1 30.e6! で白が勝つとしている[訳注 単に 28…Bxd1 29.e6 Qa7+ で黒が悪くないようです]。

25…b4 26.fxe6 Rxe6

 黒はe6でせき止めようとしているが、白は黒にその可能性を与えない。試合は次のように進んで終わった。

27.cxb4 a3 28.Bf5 f6 29.Be3 Qf7 30.Qc2 Kd8 31.Ne2! Rb6 32.Nf4 Bxb4 33.Be4 Bxe4 34.Qxe4 Qa7 35.d5 Bc5 36.Ne6+ Rxe6 37.dxe6+ Kc8 38.Qxc4 a2 39.Bxc5 Qxc5+ 40.Qxc5+ 黒投了

 この試合を通して勝負を決した要因は黒キングの安定の欠如だった。

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カロカン防御の指し方(044)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 7.c5 の局面

 黒は白の来たるべきクイーン翼の進攻を迎え撃つために迅速に動かなければならない。しかしまず自分のキングを安全にし邪魔にならないようにしなければならない。7…O-O ここでの本手は 8.Bd3 である(白は展開を続けなければならない。8.b4?! は 8…Ne4! 9.Qc2 Nc6! 10.a3 e5! で黒の中央での主導権が強いので時期尚早である)。8…b6!(最初の挑戦)9.b4 a5!(2番目の挑戦!10.a3? と指すわけにはいかないので、白は反撃に出るかさもなくば自分のクイーン翼を壊滅される)10.Na4! Nfd7!(b6の地点は守らなければならない。クイーン翼ナイトをb8に置いておけば白の c5-c6 突きを防げる)この殴り合いの局面は両者が最善を尽くせば(言うは易く行なうは難し!)いい勝負である。一つの想定手順は 11.Qc2 Nc6! 12.b5 Nb4 13.Bxh7+ Kh8 14.Qb1 bxc5 で、ねじり合いが続く。

 2)7.cxd5 で中央をすっきりさせる。

 7.cxd5 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(275)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 ポーンが盤側に近くなるほど防御は難しくなる。その理由は明らかである。つまりビショップは一つの斜筋しか受けに使えなくなるのでナイトは簡単にビショップの利きをさえぎることができるからである。防御がうまくいくのは黒キングがビショップを支援することができる場合だけである。

 ルーク列ポーンの場合はまた事情が異なる。第一に引き分けのポーン・エンディングの可能性を狙ってビショップでナイトを取ってしまうことができる場合がある。第二にビショップを捨てて白キングがポーンの行く手をふさぐようにさせる可能性があり得る。次の例ではこれらの可能性が現れる。

 図275
ホルビッツ、1885年

 明らかに白の唯一の狙いはキングをb8に置きナイトをb7に置いてビショップの対角斜筋の利きをさえぎることである。しかしこの作戦は黒キングがb6又はa6に来て Nb7 を妨害すればうまくいかない。従って白の目標は黒キングを遠ざけたままナイトの位置を改善することである。

1.Kb6!

 すぐに 1.Na6+ と指すのは 1…Kb5 2.Kb8 Bg2 3.Nc7+ Kb6 となってナイトがいつまでたってもb7へ行くことができず引き分けになってしまう。

1…Kc4

 消極的な受けでは望みがない。即ち白はナイトをd6に置いて Nb7 を見せてビショップをa8に来させ Nb7 の後 Kc7-b8 で勝ちになる。この狙いに対抗するためには黒はキングをd8-d6の枡に到達させる必要がある。

2.Na6 Kd4 3.Nc7 Bf3 4.Ne6+ Ke5 5.Nd8 Ba8

 白の狙いは 6.Nb7 だった。本譜の黒の手の後でもこの手に続いて Kc7-b8 で白が勝つように思える。しかし事はそう簡単ではない。

6.Kc7 Kd5

 ビショップがどこへ動いても 7.Nb7 である。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(043)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 これが最も融通性があり最善手である。洗練された戦略的な罠さえ仕掛けている。

 もちろんすぐに 6.Bg5 と指すこともできるが白の選択肢を減らし、実際には黒が最善手の 6…Be7 を見つけるのを手助けしている。

6…Be7!

 黒は早くキャッスリングする用意をしなければならないので、このビショップを展開する必要がある。そしてここが最良の地点である。

 この局面から生じる戦型のほとんどで黒のクイーン翼ナイトは明らかにc6が最善だけれども、ここでの最も正確な作戦はまずキング翼の展開を完了することである。すぐに 6…Nc6?! と指すのはちょっと時期尚早である。というのは白が c4-c5 突きの陣形を選択しクイーン翼でのポーンの進攻をもくろむと、白の b2-b4-b5 突きで黒のクイーン翼ナイトがまた動くことを余儀なくされて手損するかもしれないからである。6…Nc6?! のあとの主眼の指し方は 7.c5! Be7 8.Bb5 O-O 9.O-O Bd7 10.a3! である。これで白は b2-b4 と突く用意ができていて、そのあとはビショップをd3に戻して適時に b4-b5 と突く作戦をとるか、c6で取って黒がビショップで取り返せば b4-b5 と突くことになる。これらの戦型で白は少しだがしっかりした主導権を得る。

7.Bg5

 白には7手目で三通りの指し方があり、客観的にはどれも同等である。本譜の手は中央の争点を維持し、d5に対する白の圧力を間接的に増している。ほかの二つの良い変化は次のとおりである。

 1)7.c5 と突いてクイーン翼で進攻する。

 7.c5 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(274)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 しかしポーンが境界線を越えている場合は勝ちは黒キングがどのくらい遠くにいるかにかかってくる。分析家たちはポーンの色々な位置に対して引き分けるために黒キングがいなければならない範囲を突き止めることまでした。本書ではそのような分析を行なう余裕がないが興味のある読者はエンディングの専門書を参照されたい。ここではそのような例を一つ紹介する。

 図274
コシェク、1921年

 白ポーンは重要なf5の地点を越えているので結果は黒キングの位置にかかっている。次の分析が示すように黒キングは遠く離れ過ぎていてf4の地点を押さえるのに間に合わない。

1.Ng5 Bg8

 白の狙いはもちろん 2.Ne6 なので当然の手である。

2.Nf7 Kd2

 黒キングはf4の地点を目指すが間に合わない。代わりに 2…Bh7 は 3.Nh6 Bg6 4.Nf5 Kd2 5.Nh4 Bh5 6.Ng2! で黒キングが決め手の 7.Nf4 を防げないので白の勝ちになる。これでなぜこの地点が非常に重要なのかが分かる。白ナイトがg6とh5の地点を押さえ白キングがf7とe8の地点を押さえるので黒ビショップが斜筋から追い払われるのである。

3.Kf8 Bh7 4.Ng5 Bd3

 4…Bg6 なら 5.Kg7 Bh5 6.Kh6 Be8 7.Ne4+ から 8.Nd6 で白が勝つ。この手順中 5…Be8 なら 6.Ne4+ Ke3 7.Nd6 Bh5 8.Kh6 で白が勝つ。

5.Ne6 Bg6

 5…Bf5 なら 6.Ke7 Bg6 7.Nf4 で白が勝つ。

6.Nf4 Bc2 7.Ke7 Bb3 8.Ne6

これで白が勝つ。

 この分析によると黒キングがf4の地点を守るのが1手遅いために負けたことが分かる。例えば図274で黒キングがc1でなくd1だったら白は勝てない。例えば 1.Ng5 Bg8 2.Nf7 Bh7! 3.Nh6 Bg6 4.Nf5 Ke2 5.Nh4 Bh5 6.Ng2 Kf3! で引き分けになる。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(114)

「Chess Life」2005年12月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

エバンズ・ギャンビット

 エバンズ・ギャンビットは19世紀前半に(ウェールズ出身の)ウィリアムD.エバンズによって創始された。この10年で「復興」が起こり、ガリー・カスパロフをはじめとする世界の一流選手の多くが白で採用してうまくいった。

 このギャンビットはいつも「ロマンチック」布局とみなされてきた。白は長い間ポーン損だがちゃんと代償は得ているのが普通である。

白の基本的な作戦は何か

 白は4手目でポーンを犠牲にして、迅速な展開のための手得をし中央で強力な地歩を占める。よくある二つの作戦は、白クイーンを早くb3に展開することと、Nf3-g5 で急襲することである。

黒の基本的な作戦は何か

 ギャンビット布局でよくあるようにポーンの犠牲を受諾したあと、黒は最も良い状況で贈り物を返す手段を見つけなければならない。そのための典型的な手は …d7-d5 とポーンを突くことである。それが達成できたときは黒にとって良い印であることが普通である。

 黒のf7の地点は序盤では特に敏感な地点になりやすい。白からの Qb3 と Ng5 の狙いに警戒せよ。

それで評決はどうなっているか

 エバンズ・ギャンビットは約100年間あまり実戦も研究もされなかったあと、最近多くの新構想によって復活してきた。白は1ポーンか2ポーン損していながら有望な攻撃的陣形になれるし、ポーンを取り返して互角の局面にもできる。黒は適切な時機に余分のポーンを返すように努めるのが最善である。

 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4 Bxb4 5.c3 で始まったあと、黒には 5…Bc5、5…Be7 そして 5…Ba5 という三つの理にかなったビショップ引きがある。それぞれを分析していこう。

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カロカン防御の指し方(042)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 5…Nc6 の局面

 ここで白が型にはまった 6.Nf3 を指せば、黒の手法は正当化される。黒は白ナイトを 6…Bg4! で釘付けにしてから 7…e6 で完全に互角の戦いにする。最も重要な手は次の非常に激しい手順である。7.cxd5 Nxd5 8.Qb3!? Bxf3 9.gxf3 e6!(9…Nxd4?? は 10.Bb5+ で駒損になる)10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ Nxb5 12.Qc6+!(黒キングを動かせる)12…Ke7 13.Qxb5 Qd7! 14.Nxd5+ Qxd5 白キングも黒キングとちょうど同じくらい不安定なので、白は 15.Qxd5 exd5 とクイーンを交換するしかない。数限りない実戦経験からこの収局はいい勝負であることが示されている。

 優勢を目指すには白は 6.Bg5! と攻撃しなければならない。その要点は 6…e6 7.cxd5 のあと黒が 7…exd5 と取って自分も白に匹敵する孤立ポーンを作らなければならないということである。それでも 6…e6 は黒の最も本筋の作戦である。白は少し活動的な局勢によりほんのわずか優勢にすぎない。

 5…Nc6 6.Bg5 のあと反撃を目指すほかの手はどれも白にもっと優勢をもたらす。

 a)6…Bg4?! 7.Be2 Bxe2 8.Ngxe2 dxc4 9.d5! Ne5 10.O-O 白の展開の優位は非常に大きい。

 b)6…dxc4?! 7.Bxc4 Qxd4 8.Qxd4! Nxd4 9.O-O-O e5 10.f4! クイーン交換にもかかわらず白は展開で大差をつけていて強力な攻撃ができる。

 c)6…Qb6?! 7.cxd5 Nxd4 8.Be3! e5 9.dxe6e.p. Bc5 10.exf7+ Ke7 11.Bc4 黒にはポーン損の代償が何もない。

 d)6…Qa5 7.Bxf6 exf6 8.cxd5 Bb4 9.Qd2 Bxc3 10.bxc3 Qxd5 白は 11.Nf3 または 11.Ne2 O-O 12.Nf4 でポーンの形に優るため優勢である。

6.Nf3!

(この章続く)

2014年02月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(273)

第5章 ビショップ・エンディング

5.6 ビショップ対ナイト+ポーン(複数)

 ポーンと戦う場合ビショップは通常はナイトよりはるかに効果的である。だからビショップ対ナイト+ポーンは引き分けが普通である。ナイト側はポーンがずっと先まで前進していて敵キングが十分遠くに離れている場合にだけ勝つチャンスがある。このような場合でも中央列のポーンに対してビショップは二つの斜筋を有効に使うことができるので守りきることができる。次の例を考えてみよう。

 図273

 黒キングは戦いに全然加わっていないがそれでも白は勝てない。ビショップは急所のd7の地点をe8-a4とc8-h3の二つの斜筋を使って見張ることができる。その手順は次のとおりである。

1.Ke6 Bb5 2.Ke7 Bc6 3.Kd8

 ナイト単独ではa4-e8の斜筋をふさぐことができないのでこれが唯一の手段である。

3…Bb5 4.Kc7 Kg1 5.Nd3 Kh1 6.Ne5 Be8!

 白が 7.Nc6 を狙っているのでこの手は絶対である。

7.Nd7 Kg1 8.Kd8 Bg6

 ビショップはちょっとの間両方の重要な斜筋を離れなければならないがすぐにf5の地点を目指す。

9.Ke7 Bf5

 白の狙いは 10.Nf8 Bf5 11.Ne6 だった。

10.Nc5 Bc8!

 別の斜筋でもおなじ防御法を使っている。白は何も進展を図れない。例えば 11.Kd8 なら 11…Bf5、11.Nd7 なら 11…Kh1 12.Kd8 Ba6 13.Kc7 Bb5 14.Ne5 Be8! である。

 GMアベルバッハはキングの助け無しにビショップがポーンを止めるためにポーンがいなければならない区域を図273のように示した。これはポーンの直前の枡に利く白枡ビショップの場合に有効である。黒枡ビショップの場合はb3、c4、d5、e6、f5及びg4の枡で区切られる対称の区域が当てはまる。ルーク列ポーンの場合はビショップはキングの助けがなければポーンを止められない。

(この節続く)

2014年02月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(041)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 5…g6 の局面

 フィアンケットによる展開でキング翼ビショップが絶好の斜筋をにらみ、中央に影響力を発揮することができ、キング翼を攻撃にもっと抵抗力があるようにする。それでも明らかで大きな欠点もある。それはこの手が重要なd5の地点(そしてポーン!)を無視していることで、白は次のように理にかなった手段で優勢になることができる。6.cxd5 Bg7(黒は一般にキャッスリングするまではdポーンを取り返すのを控えるように努める。6…Nxd5 と取ると 7.Qb3! が強手で、7…Nxc3 8.Bc4! のあと黒は 8…e6 と突かされ自分のクイーン翼ビショップを閉じ込め黒枡を弱めることになる。黒が 7…Nxc3 の代わりに 7…Nb6 と引けば、8.d5! 突きで白が中央を広げ明らかに優勢になる。典型的な手順は 8…Bg7 9.Be3 O-O 10.Rd1 である)7.Bc4! O-O 8.Nge2!(d5の白ポーンが黒の円滑な展開を妨げているので、白はこのポーンにしがみつくようにするべきである)8…Nbd7 9.Bb3 Nb6 10.Nf4 Bf5 11.a4! a5 12.O-O 布局の理論家たちはここで白の優勢はわずかであると言うのが普通である。たぶん彼らの言うことは、理論上は正しい。実戦では状況が異なる。白はdポーンが二重になっているけれどもポーン得はポーン得である。さらには(d5の)得しているポーンが黒陣に非常に不快な圧力をかけている。白にはポーン得と広い陣地という二つの有利さがあるのに、黒には代償が全然ない。

 2)黒が 5…Nc6 で白の中央を攻撃する。

 5…Nc6 の局面

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(272)

第5章 ビショップ・エンディング

5.5 ビショップ+ポーン(複数)対ナイト

 ビショップ+連結2ポーンは通常はナイト+1ポーンに勝つ。白のポーンがどちらもパスポーンならばビショップは効果的にそれらを支援しながら敵ポーンを止めることができる。白のポーンがパスポーンでなく黒キングがそれらの前にいる場合にだけ勝つ可能性は非常に小さくなる。白のポーンの一つが「誤った」ルーク列ポーンの場合またはポーンをせき止めることができる場合は防御はもっと容易になる。黒がビショップを持っていて勝つためには細心の注意を払って指さなければならない例を一つだけ考えてみよう。

 図272 白の手番
モーンケ対ハインリヒス、1926年

 黒のhポーンはキングによって護衛されて非常に強力である。ただ一つの問題は自分のキングが行く手をじゃまし、しかもキングがよけにくいことである。勝つためには黒は巧妙にビショップを捌かなければならない。

1.Ne2 Be3!

 目の覚めるような手である。もちろん白は取ることができない。もし 2.Kxe3 と取れば 2…Kg2 でhポーンがクイーンになれる。それほど目覚しくはないが 1…Bc5 も可能である。

2.Ng3 Bd2

 ビショップは急所のe1の地点を目指している。代わりに 2…Bf4 なら 3.Ne2 Kh1? 4.Nxf4 gxf4 5.Kf2! で引き分けを目指さなければならないのは黒になってしまう。この変化の3手目でビショップがb8-h2の斜筋に居続けても白はキングをf2とf3で間合いをとらせることができる。

3.Ne2

 もちろん 3.Kf2 は 3…Be1+ で終わってしまう。3.Nf1+ は 3…Kg1 4.Nxd2 h2 でポーンがクイーンになる。

3…Be1

 ここが急所なのはナイトからg3の地点を奪い黒キングからf2の地点を奪っているからである。これでポーンは止められない。

4.Nd4 Kh1

 4…Kg1 は 5.Ne2+ Kf1 6.Ng3+ で黒キングは戻らなければならない。6…Bxg3 は 7.Kxg3 で引き分けになってしまう。

5.Ne2 h2

 白は手詰まりに陥っていて黒キングが隅から出るのを許さざるを得ない。

6.Nd4 Kg1 7.Ne2+ Kf1 8.Ng3+

 最後のお願いである。

8…Bxg3 9.Kxg3 h1=R!

 もちろん 9…h1=Q はステイルメイトになってしまう。しかし小駒への昇格あるいは 9…Kg1 でも勝ちになる。

(この節終わり)

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カロカン防御の指し方(040)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 パノフ攻撃(4.c4)の当面の戦略の着想は黒の中央を攻撃することである。4段目に白ポーンが2個あるのに対し黒は1個なので、中央での影響力は白の方が少し優っている。白はこれを利用して少しずつ黒のキング翼に対して攻撃を強化していくことができるし、早く c4-c5 と突くことによりクイーン翼で3対2のポーンの多数派をこしらえることもできる。後の場合白の最初の目標は、クイーン翼で大きな広さの優位を得ることである。それはいずれ健全なパスポーンの生成につながる。

 黒の正確な作戦はもちろん白の選ぶやり方によって決まってくる。早い c4-c5 突きのあと黒は …b7-b6 と …a7-a5 で白の橋頭堡に挑みたいところである。そして中央で反撃も試みることになる。もし白が中央のポーンをそのままにしておくかd5で交換すれば、黒は白の孤立ポーンに対して反撃しようとする。この場合d5の地点の支配は非常に重要になる。

4…Nf6

 ナイトを展開しながらd5のポーンを守るのは戦略的に申し分なく、これから少しの間黒のすべての選択肢を保ち続ける。4…e6 や 4…dxc4 のようなほかの理にかなった4手目は長い目で見ればうまくいくかもしれないが、この時点では本譜の手よりも少し正確さで劣っている。

5.Nc3

 新たに駒を展開しながらd5に圧力をかけるのは、明らかに白の最も理にかなった手法である。他の手は本筋とは言えない。5.cxd5 は 5…Nxd5! で黒が既に白の孤立dポーンの前に良いせき止め駒を据えることになる。5.Nf3 は本譜の手より特に良いところがなく、d5の地点に圧力がかかっていないので黒に都合の良い状況で 5…g6 と指す選択肢を与える。

5…e6!

 これが黒の断然本筋の指し方である。急所のd5の地点はこれで十分に守られているので、黒は …Be7 から …O-O で容易にキング翼の展開を完了することができる。

 これがおとなしすぎるならば、ほかの二つの重要な変化を考えてもよい。しかしほかの変化は主手順よりもはるかに多量の技術的そして戦術的習熟を必要とし、黒も突然不利な局面に陥る危険をおかすということを知っておいた方が良い。

 1)黒が 5…g6 でキング翼ビショップをフィアンケットする。

 5…g6 の局面

(この章続く)

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