2013年12月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(241)

第5章 ビショップ・エンディング

5.2 ビショップ+ポーン対ビショップ

 エンディングにおける一般原則は盤上の駒が少なくなればなるほどポーンの力が強くなるということである。言い換えると一個だけポーンが多い場合盤上に残っている役駒が弱い駒であればあるほどポーンの価値が増すということである。クイーン・エンディングでは1ポーン得はほとんど価値がないがポーン・エンディングでは普通は試合に勝つのに十分である。

 この議論からするとビショップ・エンディングでは1ポーン得は大きな価値がある。ビショップ同士が同じ色に利いている時は特にそうで勝つ可能性もかなり高くなる。最初は盤上にポーンが1個だけ残っている場合を考える。もちろん黒は引き分けの可能性がかなり高く、我々の課題はどのような条件ならポーン得が勝ちに至るのかを明らかにすることである。

 図241

 まず白ポーンが既に6段目にいる図241から始める。白が勝つためにはこのポーンをクイーンに昇格させなければならないのは当然だが、それは黒キングがポーンの直前にいず、黒ビショップも自らを犠牲にポーンを取ることができない場合のみ可能である。異色ビショップの場合はこのビショップ切りを防ぐ方策がないことは明らかである。

 白のe7ポーン突きは必ずうまくいく。次の駒繰りはこのような局面に典型的なものである。

1.Bf6+ Kc8

 1…Kc7 なら 2.Be7 Bf2 3.Bd6+! である。

2.Be7 Bf2 3.Bd6 Bh4

 f8-a3の斜筋から追われたビショップはd8-h4の斜筋に移ろうとするが無駄である。

4.Be5

これで白が勝つ。

 黒は 5.Bf6 から 6.e7 の狙いに受けがない。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(008)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 タルタコワ戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形はタルタコワ戦法(第5章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 から生じる。

 この戦法では黒が自ら二重ポーンの少しの不利益を背負う。この乱れたポーン陣形と引き換えに、カロカン防御のほとんどの戦法よりもずっと自由に駒を展開することができる。欠点は(二重ポーン自体に加えて)クイーン翼で4対3の多数派ポーンを白に与えることである。白はこれを利用して収局でパスポーンを作ることができるかもしれない。

 この戦法における両者の通常の展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼とクイーン翼のどちらにもキャッスリングする。この戦法ではしばしばクイーン同士が早く交換になり、その場合白キングは中央に居残った方が収局で有利かもしれない。

 白のクイーン e2。

 白のルーク e1とd1。

 白のキング翼ビショップ d3またはc4。

 白のクイーン翼ビショップ f4またはe3。

 白のキング翼ナイト e2またはf3。

 白のクイーン翼ナイト 5手目で交換になる。

 白のポーン e2-e4 と d2-d4 のほかに唯一理にかなったポーン突きは c2-c4 である。

 黒のキング キング翼にキャッスリングするが、非常に早くクイーン同士が交換になれば中央にとどまるかもしれない。

 黒のクイーン e7、c7、b6またはa5。

 黒のルーク e8とd8。

 黒のキング翼ビショップ d6とe7。

 黒のクイーン翼ビショップ e6またはg4。

 黒のキング翼ナイト 5手目で交換になる。

 黒のクイーン翼ナイト d7。

 黒のポーン cおよびdポーンを除き、ほかのどのポーンも早く突くべきでない。

 タルタコワ戦法における白の全般的な戦略は、駒を交換してクイーン翼の多数派ポーンを生かしてパスポーンを作るようにすることである。黒はfポーンが二重なので、キング翼の多数派ポーンは阻害されパスポーンを作るのがはるかに難しくなっている。しかしこの戦法全体の要点としては駒を迅速に効率よく展開することにより、白がクイーン翼の優位を生かすのを防ぐことに黒の意図がある。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(240)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 前に述べたようにビショップ+ポーン対ポーンのエンディングにあまり多くの紙数を費やすことはできない。しかし最後に実戦的に非常に重要な例がある。それは前世紀に完全に解明された。

図240挿入 図240
クリングとホルビッツ、1851年

 この興味深い局面は元々クリングとホルビッツ(1851年)によって分析され面白い問題を突きつけている。黒キングがa8に行ければたとえポーンを失っても引き分けであることは分かっている。白は黒キングにa8に行かせないでポーンを取ることはできるのであろうか。この問いに答えることができれば白に勝ちがあるのかどうかを決めることができる。

 作者たちは白の手番ならば白が勝てると考えていた。その説は他の専門家たちからも支持されていた。しかし1928年になってラウザーがどちらの手番でも白が勝つことを証明した。まず白の手番として手順を追ってみよう。

1.Bf4!

 既に述べたように白は黒キングにa8に行かせないでポーンを取ることを目指している。黒の立場からするとこれは白ビショップが例えばh2にいて斜筋に利いていると黒キングは以降の Kxa4 に対して …Kc6 で応える地点にいなければならないことになる。だから白が次の手でポーンを取れるならば黒は …Kd7 と指せなければならない。黒キングがe6までしか行けなければ 1.Kxa4 Kd7 2.Kb5 Kc8 3.Kc6 で負けてしまう。

 これはすべて白がキングとビショップを使って黒キングをできるだけ盤の下方に追いやらなければならないことを意味している。その後で白は黒キングがd7に戻れないうちにポーンを取ることができる。

1…Kg2!

 黒は手広く指さなければならない。他の手では早く負けてしまう。例えば 1…Kf2 は 2.Ke4 Kg2 3.Kd4 Kf3 4.Bh2 で黒は一手手遅れになる。

2.Kg4!

 白が 2.Ke4 ですぐにポーン取りに向かえば黒は 2…Kh3 3.Kd4 Kg4 4.Bh2? Kf5 5.Kc4 Ke6 6.Kb5 Kd7 で正しい防御態勢を取って引き分けにできる。本譜の手で白はまず黒キングをさらに追い払う。

2…Kf2 3.Bc1 Ke2

 以降の指し手から分かるように黒キングがクイーン翼にやって来ても何も恐れることはない。しかし 3…Kg2 は 4.Be3 で黒キングが盤端に追われて負けてしまう。この局面については後でもう一度触れる。

4.Kf4 Kf2

 黒キングはd7に行くためにc8-h3の斜筋に戻ろうとしている。もし黒キングがクイーン翼に向かい続ければ白の手順は次のようにもっと簡単になる。
1)4…Kd3 5.Be3 Kc4 6.Ke5! Kb3 6…Kb5 なら 7.Kd5 7.Bc5 Kc4 8.Kd6 Kb5 8…Kd3 なら 9.Kd5 Kc3 10.Bd6 Kd3 11.Kc5 Ke4 12.Kb5 Kd5 13.Bh2 で白が勝つ 9.Kd5 Ka5 10.Kc6 Ka6 11.Be3 Ka5 12.Kb7 Kb5 13.Bb6! 黒キングは戻らなければならない 13…Kc4 14.Kc6 Kb3 14…Kd3 なら 15.Kb5 から 16.Kxa4 15.Bc5 Kc4 16.Bd6 Kd4 17.Kb5 Kd5 18.Bh2 Ke6 19.Kxa4 Kd7 20.Kb5 Kc8 21.Kc6 で白が勝つ。
2)4…Kd1 5.Be3 Kc2 5…Ke2 なら 6.Ke4 で白が勝つ 6.Ke5! しかし 6.Ke4? はだめで 6…Kb3 7.Bc5 Kc4 で引き分けになる 6…Kb3 6…Kd3 なら 7.Bc5 7.Bc5 Kc4 8.Kd6 で1)と同じになる。

5.Be3+ Kg2

 5…Ke2 は 6.Ke4 で黒キングが最下段に追い落とされる。本譜の手で黒キングはまだd7にいく希望を持っている。

6.Kg4! Kh2

 6…Kh1 は 7.Kf4 で本譜と同じになる。6…Kf1 なら 7.Kf3 Ke1 8.Bf4 で白が簡単に勝つ。

7.Bf4+ Kg2 8.Bg3!

 この何回も現れる手で黒キングが最下段に追い落とされる。

8…Kg1 9.Kf3 Kh1 10.Bb8

 同じ斜筋ならば他の地点でも良い。以下で分かるように黒キングはd7に間に合わない。

10…Kg1 11.Ke4 Kg2 12.Kd5 Kf3 13.Kc4 Ke4 14.Kb5 Kd5 15.Bh2

これで白が勝つ。

 それでは図240で黒番で始めてみよう。今度は黒キングを盤端に追い込むのはそれほど容易でない。長い間白が勝てないと考えられていたのはそのためであった。

1…Kg3! 2.Bf6 Kf3

 2…Kh3 なら 3.Kf4 Kh2 4.Kg4 Kg2 5.Bd4 となり既に見たように白が勝つ。

3.Be5

 黒キングをd4又はh4を通って後退させてはならない。この手は後者の可能性をなくする。

3…Ke3 4.Bb2!

 この手が1928年にラウザーによって発見された勝つための唯一の手である。これによりビショップは要所のd4を抑えキング翼への逃走を防ぐために重要なc1-h6の斜筋に移動を予定している。以前の分析では 4.Bb8? しか考えなかったため 4…Kd4 5.Ke6 Kc5 6.Kd7 Kb6 7.Kc8 Kc5 で引き分けとなっていた。

 4…Kf3 なら 5.Bc1 Kg3 6.Bg5 Kf2(6…Kf3 なら 7.Bf4 で以前の手順と同じ)7.Kf4 Ke2 8.Ke4 Kf2 9.Bf4 で図240の白の手番の時の分析のように白が勝つ。

5.Ke5 Ke3

 5…Kc2 6.Bd4 Kb3 7.Bc5 Kc4 8.Kd6 は既に分析した(白先手番の黒の4手目の分析の1))。5…Kc4 6.Kd6 Kb3 は最も簡明な勝ち方は 7.Kc5! Kxb2 8.Kb4 である。

6.Bc1+ Kf3 7.Kf5! Kg3 8.Bg5 Kf3

 8…Kh3 なら 9.Kf4 から 10.Bh4 で黒キングを追い立てる。本譜の手により図240で白の手番の局面に到達した。

9.Bf4!

これで白が勝つ。

 これまで見てきたように白が勝つためには黒キングを盤の上方に行かせてはならない。いったん黒キングがそこに行けば二度と戻らせることはできない。図240ではその重要な圏内を示しておいた。もし黒キングが赤い線を越えれば白が勝つことはできなくなる。このことについてはこれ以上触れない。それよりもすぐにビショップ対ビショップの戦いに移ろう。

(この節終わり)

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ポルガーの定跡指南(109)

「Chess Life」2005年11月号(1/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ロッソリーモ戦法、5.c3

シチリア防御に対するロッソリーモ戦法(B31)

 ロッソリーモ戦法はたぶん開放シチリア防御を避ける最も一般的な手段である。世界の一流 1.e4 選手のほとんどは白で、ほかのもっと深く研究され激しい戦型を避けるためにときどきこれを指す。本稿ではその特定の戦型の 1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 g6 4.O-O Bg7 5.c3 だけを取り上げる。白は代わりに 5.Re1 と指すことができるし、黒も(3…g6 の代わりに)3…e6 と指すことができる。

白の基本的な作戦は何か

 白には二つの主要な作戦がある。一つはポーンを犠牲することになっても d2-d4 と突くことである。もう一つの作戦はもっと大局観に沿ったもので、細かくいうと Bb5xc6 と交換することで、黒はc列に二重ポーンができる。場合によっては黒が調和よく駒を配置することができなくて白がキング翼攻撃に成功することがある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は白の d2-d4 突きを止めることはできないが、それに対処する用意はする必要がある。戦型Bの作戦(ポーンの犠牲を受諾する)は危険を伴う。もっともしばらく受けに回ることが苦にならないならば十分指せる。最も安全な作戦は戦型Cのように 5…Nf6 で中央での戦いを受けて立つことである。その戦型では黒はdポーンをd6かd5に突いて(白の指し方による)、白のeポーンと交換することに努める必要がある。

それで評決はどうなっているか

 ロッソリーモ戦法は開放シチリア防御の大量で深く研究された戦型を避けるために白の魅力的な別法となっている。注意すべきは白で 2…Nc6 に対してしかこの戦法に入れないことである。多くの一流選手は今日では黒で戦型C2を採用している。これは複雑な中盤戦になり、いい勝負である。戦型AとBでは私は個人的に白を持ちたい。

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カロカン防御の指し方(007)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 パノフ攻撃の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形はパノフ攻撃(第4章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 のあとで 白のcポーンと黒のdポーンの交換によって生じる。これはカロカン防御の範囲だけれども、同じポーン陣形はほかの布局からも生じることがある(もちろん違う手順で)。これにはクイーン翼ギャンビット(1.d4 d5 2.c4)やシチリア防御(1.e4 c5)のようないろいろな布局が含まれる。もちろんどの手順によるかにかかわらず、同じ戦略の考え方がこのポーン陣形に当てはまる。

 このポーン陣形の最も重要な特徴は白の孤立dポーンである。孤立ポーンは別のポーンによって守ることができず駒によって守ることが必要なので、よく弱点と見なされる。しかし代償として白は最も前進したポーンが4段目にあるのに黒の最も前進したポーンが3段目にすぎないので広さで少し優勢になっている。このようなポーンの局面は白の活動的な駒と広さの優位が、孤立ポーンに対する黒の反撃に優るかどうかの理論的な論争を引き起こす。この戦法における両者の通常の展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼にキャッスリングする。

 白のクイーン e2またはd3。ビショップが先にd3に出てそのあと交換されるかc2またはb1に下がるのでなければ、クイーンはd3に行くべきでない。理由はさもないとビショップの邪魔になるからである。

 白のルーク e1と、c1またはd1。

 白のキング翼ビショップ d3。

 白のクイーン翼ビショップ g5と(黒が …g7-g6 と突けば)h6。

 白のキング翼ナイト f3、そのあとe5。

 白のクイーン翼ナイト c3。

 白のポーン c、dおよびeポーンを除き、ほかのどのポーンも早く突くべきでない。しかし a2-a3 突きは黒ナイトがb4に来るのを防いで役立つことがよくある。

 黒のキング キング翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン a5、b6またはd6。

 黒のルーク c8と、d8またはe8。

 黒のキング翼ビショップ e7。

 黒のクイーン翼ビショップ (…b7-b6 突きのあと)b7またはd7。

 黒のキング翼ナイト f6、通常はそのあとd5。黒がナイトをd5に据えるとポーンで追い払えないことが、白の孤立dポーンの不利の一つである。このせき止めが確立されれば、白のdポーンを攻撃する黒のc6のクイーン翼ナイトがいじめられずにとどまれる。

 黒のクイーン翼ナイト c6、そのあと時々b4。

 黒のポーン c、dおよびeポーンを除き、ほかのどのポーンも早く突くべきでない。あとでの …b7-b6 突きはクイーン翼ビショップをa8-h1の対角斜筋に展開する(いわゆるフィアンケット展開)のに役立つかもしれない。

 パノフ攻撃における白の通常の戦略は黒キングを攻撃することである。よくある捌きは Bd3、Bc2(または Bb1)、Qd3 そして Bg5 で、黒のナイトを取って Qxh7 による詰みを狙うことである(もちろん黒がキング翼にキャッスリングしているという仮定で)。黒はこれを防ぐために …g7-g6 と突いて自陣を弱めることを強いられ、白がクイーン翼ビショップをh6に行かせて脅威を与えることができる。白は続いて Re1-e3-g3(または h3)と指すかもしれない。時には白はf7またはg6に捨て駒をして黒キングを露出させ黒の抵抗を粉砕できることがある。

 黒の一般的な戦略はできるだけ多くの駒を交換して白の攻撃力を減少させ収局を目指すことで、そうなれば白の孤立dポーンの弱さがずっと目立つようになる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(239)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 同様の例が図239である。

 図239

 左側は黒のaポーンが取られることがなく黒キングも隅から追い出されることがないので黒は助かる。白が 1.Kc6 とやってきても 1…Ka8? は 2.Kc7# で詰まされてしまうが正しい 1…Kc8! 2.Be6+ Kb8 3.Bf5 Ka8 ならば白は 4.Kc7 ステイルメイトとするしかない。読者は自分で確認されたい。

 右側でも白ビショップは役に立たない。黒のポーンはやはり取られることがない。1.Be4 Kg8 2.Ke7 Kh8 3.Bd5 又は 3.Kf7 でステイルメイトになる。この局面はたとえ黒キングが隅に逃げ込めなくても引き分けである。例えば図239の右側で白のキングとビショプを取り替えてもやはり引き分けである。例えば 1.Ke5 Ke7 2.Bd5 Kf8 3.Kd6 Ke8 4.Be6 Kf8 5.Kd7 でステイルメイトになる。黒キングをポーンから引き離す方策はない。

 意外なことにこのポーン配置は白が黒枡ビショップを持っていてgポーンを攻撃することが可能でも黒が引き分けにできる。例えば白のビショップをf5からe5に替えると以下のようになる。1.Kd7 Kg8 2.Ke7 Kh8 ここで 3.Kf7 はまたもやステイルメイトになる。3.Bf6 でもだめである。黒は 3…gxf6? 4.Kf7 で負けるようなことはしない。代わりに 3…Kg8! 4.Ke6 gxf6 5.Kxf6 Kf8 で引き分ける。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(006)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 交換戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形は交換戦法(第3章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.exc5 cxd5 4.Bd3 Nc6 5.c3 のあとで …e7-e6 突きで生じる。

 注意点は半素通し列が二つあることである。e列は白が利用でき、c列は黒が利用できる。この戦法における両者の最も適切な展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼にキャッスリングする。

 白のクイーン b3またはe2。

 白のルーク e1とd1、またはe1とf1。

 白のキング翼ビショップ d3。

 白のクイーン翼ビショップ f4またはg5。

 白のキング翼ナイト f3からe5。

 白のクイーン翼ナイト d2からf3で、e5に跳んだキング翼ナイトに置き換わる。

 白のポーン 最初の2手でeポーンとdポーンを突いたあとは、早い段階でほかのポーンを突くべきでない。あとで f2-f4 突き、そしてたぶん g2-g4 突きがキング翼攻撃の一部として役立つかもしれない。

 黒のキング キング翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン c7、b6、a5またはc8。一番あとの地点はb7ポーンを守る必要があるときに黒クイーンの適所になるかもしれない。

 黒のルーク b8、c8、e8それにf8はどれも好所である。実際の選択は白の展開と局面の進行による。

 黒のキング翼ビショップ d6またはe7。

 黒のクイーン翼ビショップ f5またはg4。

 黒のキング翼ナイト f6。

 黒のクイーン翼ナイト c6。

 黒のポーン c、dおよびeポーン以外は早い段階で突くべきでない。あとで …b7-b5-b4 突きが効果的になることが多い。

 白の一般的な戦略は普通はキング翼攻撃である。これには Re1-e3-g3、h2-h3、f2-f4、そして黒のナイトを防御の好所のf6からどかすために g2-g4-g5 さえかかわるかもしれない。黒の一般的な戦略は白のキング翼攻撃に備えながらクイーン翼で攻撃することである。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(238)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 ビショップ側にポーンがある局面も数多くある。しかしそれらのほとんどは実戦例であり分類は難しい。ここでは誰もが知っておかなければならない例外的な局面を少し分析しよう。まずは図238からである。

 図238

 通常なら戦力に勝る白が勝つはずであるがこの二つの局面はどちらも引き分けである。左側は黒キングを隅から追い出すことができないので通常はステイルメイトに終わる。勝つためには白ビショップはポーンの昇格枡と同じ色の枡にいなければならない。右側は2世紀以上も前から知られている例外でナイト列のポーンでもビショップ側が勝てない。見れば簡単に分かるように黒キングをg7、h8の枡から追い出そうとするとステイルメイトになってしまう。ビショップをg8の地点に捨てるのは引き分けのポーン・エンディングにしかならない。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(005)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 突き越し戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形は突き越し戦法(第2章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 のあとで …e7-e6 突きで生じる。

 白は e4-e5 と突き越すことにより中原のポーンを固定した。これで白のeポーンと黒のdポーンとの交換は不可能になっている。これが白にとって有利か黒にとって有利かかは、棋風の問題である。どちら側にとっても利点と欠点がある。白はポーンが黒陣に食い込んでいるので、長期的に陣地の広さの点で有利である。これに対して黒にはすぐにポーンを白陣に食い込ませる見通しがない。しかしこのポーンの突き越しはかなり形を決めていて、白のdポーンは動けずそのため黒の標的になる可能性がある。

 一般にこの戦法における両者の最も適切な展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング 普通はキング翼にキャッスリングし、たまにだけクイーン翼にキャッスリングする。

 白のクイーン d3またはe2、たまにg4。

 白のルーク d1とe1、またはd1とf1。

 白のキング翼ビショップ d3、たまにe2。

 白のクイーン翼ビショップ d2、e3、f4またはg5。この駒はどの地点が最も適切かかなりはっきり分かるまで、展開を延期するのが最善であるのが普通である。

 白のキング翼ナイト f3またはe2。

 白のクイーン翼ナイト c3。

 白のポーン dポーンとeポーン以外のポーンは、あまりにも早い段階で突かない方が良い。fポーンはあとで突いていくことが多い。

 黒のキング キング翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン b6またはa5、時々そのあとa6。

 黒のルーク 一つのルークは通常c8に行く。時々 …Rc7 のあともう一つのルークがc8に行く。この捌きはルーク重ねと呼ばれる。

 黒のキング翼ビショップ e7。

 黒のクイーン翼ビショップ f5。

 黒のキング翼ナイト e7からf5またはg6。このナイトはe7が隘路(あいろ)となるのを避けるために、キング翼ビショップより先に展開するのが良い。

 黒のクイーン翼ナイト d7または(…c6-c5 のあと)c6。

 黒のポーン cポーンとdポーンを突いたあと、早い段階で考えるべき唯一のほかのポーンはeポーン(e6に!)とcポーン(c5に)である。…h7-h5 突きと …g7-g6 突きは、あとで白のキング翼ポーンの進攻を抑えるために良いかもしれない。

 突き越し戦法における白の一般的な戦略はキング翼を攻撃することで、通常は f2-f4-f5 突きがその先駆けとなる。黒の全般的な戦略は …c6-c5 突きによって白のポーン中原を突き崩し、そのあと自分のルークを置いた半素通しc列を利用することにより反撃を行なっていくことである。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(237)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 白の3ポーンが分離しているならば一般原則を挙げるのは難しい。ビショップはお互いが離れているポーンを止めなければならないので黒の受けはもっとトリッキーになる。例を一つだけ挙げるにとどめる。

 図237
レビット、1933年

 白の2ポーンが2重ポーンになっているのでビショプが1ポーンだけに対処すれば良く黒が楽なように見える。しかし図232でも見たようにビショップがそれを行なえず白が次のように勝つ。

1.Ke4 Bd8 2.b6!

 またしてもポーン捨てが勝利への鍵である。2…Kxb6 3.Kf5 は自分でビショップの筋をさえぎりポーンを止めることができない。2…Bxb6 なら 3.h7 で白が勝つ。しかし黒にも巧妙な受けの着想がある。

2…Ka6!

 3.h7 には 3…Bf6、3.Kf5 には 3…Bxb6 で受けようという意図である。しかし驚くべきことに白のbポーンが大きな意味を持ってくる。白はそれを以下のように利用する。

3.Ke5! Bg5

 黒は 3…Bc7+ と指せれば白にd4又はf6へのキングの利きを放棄させることができるのだが、あいにくポーンが利いているのできない。本譜の手は黒の唯一のチャンスである。

4.h7 Bc1 5.Kd6 Bxb2 6.Kc7!

 この手も妙手である。6.Kc6? は 6…Be5! で白が手詰まりに陥り引き分けになってしまう。本譜の手の狙いは 7.b7 である。

6…Be5+ 7.Kc6 Bd4

 ここでは黒が手詰まりに陥っている。7…Ka5 は 8.b7 で黒が負ける。

8.b7 Ka7 9.Kc7 Be5+ 10.Kc8

これで白が勝つ。

 どちらかのポーンがクイーンに昇格する。素晴らしいスタディである。遠く離れたパスポーンに対処しなければならないビショップの問題を良く表している。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(339)

「Chess」2013年11月号(6/6)

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パリ・グランプリ大会(続き)

 ウクライナ選手のこの気前よさでナカムラは単独首位を取り返し、第9回戦でも全6局の引き分けで状況は変わらなかった。しかし翌日彼は衰えを知らないゲルファンドに惨敗を喫した。二人の間に遺恨めいたものがあるのかは定かでないが、かつて若輩のナカムラがワシリー・スミスロフの試合を研究しても何も学ぶものがないとけなしているのを確かに覚えている。ゲルファンドはスミスロフチェス学校の卒業生で、昔の偉大なマスターたちにはいつもずっと敬意のある態度を表していた。たぶんこれはたまたまかもしれないが米国選手には何回か完勝していて、今回はシチリア防御の古典的なクイーン翼攻撃による名局の一つとなった。

H.ナカムラ – B.ゲルファンド
第10回戦、シチリア防御

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be3 Ng4 7,Bc1 Nf6 8.Be3 Ng4 9.Bg5 h6 10.Bh4 g5 11.Bg3 Bg7 12.h3 Ne5 13.f3 Nbc6 14.Bf2 Be6 15.Qd2 Rc8 16.O-O-O Nxd4 17.Bxd4 Qa5

18.a3

 両選手ともこの戦型にはかなりの経験がある。本譜の手は最新型で、2012年ベイクアーンゼーでのカリャーキン対ゲルファンド戦では 18.Qf2 Rc6 19.g3 O-O 20.f4 Nd7 で黒の方が良かったがその改良手とみられる。

18…O-O

 私の知る限りこれは新手で、明らかにゲルファンドは研究してきた。

19.h4 g4 20.Qf2 Rc6 21.f4 Rfc8!

22.Qg3?!

 22.fxe5? は 22…dxe5 23.Be3 Rxc3 で明らかに黒が良い。c3のルークを取るのは明らかに無理で、例えば 24.bxc3 Qxa3+ 25.Kd2 Qxc3+ 26.Ke2 Bc4+ 27.Rd3 Qxc2+ となる。

 コンピュータは最初 22.f5 の白の陣形に惚れ込んでいたが、22…Bc4 23.Bxc4 Nxc4 24,Bxg7 Kxg7 25.f6+ Kg8! 26.Nd5 Nxa3

の結果をしばらく読ませておくとだんだん評価が「互角/形勢不明」に落ちていった。たとえそうであってもたぶん白はこう指すべきだった。本譜の手のあと黒のクイーン翼での反撃はすぐに手がつけられなくなった。

22…Nd7 23.Bxg7 Kxg7 24.f5

24…Rxc3

 この古典的な交換損の犠牲でも良いが、コンピュータは 24…Ne5! 25.fxe6 Rxc3 26.bxc3 Rxc3 が客観的にはるかに強力だと指摘している。

25.bxc3 Qxa3+ 26.Kd2 Nf6 27.Qd3

27…Bc4

 この手にはもちろん抗しがたいが、コンピュータは再度はるかに強い手順を示している。27…Nxe4+! 28.Qxe4 Qxc3+ 29.Kc1 Qa1+ 30.Kd2 Qa5+ 31.Ke2 Rc4 32.f6+(32.Rd4 なら 32…Bxf5)32…exf6 33.Rd4 d5 34.Qd3 Bf5 で黒の勝ち。

28.Qd4 d5!

 e4の地点を争うだけでなく敵キングへの筋をこじ開け続けている。

29.exd5 Bxd5 30.Rg1 Be4 31.Bd3 Qa5 32.Qb4 Qc7

33.Bxe4?

 ナカムラは非常に頑強に守ってきたが、ついに間違えて簡単に負けてしまった。33.Kc1 ならまだ強硬に抵抗することができた。例えば 33…a5 34.Qd4 Rd8 35.Qc4 なら黒には 35…Qxc4 36.Bxc4 Rxd1+ 37.Kxd1 Bxf5 で明らかに有利な收局にするのと 35…Bc6 でクイーンを保持し攻撃を続けるのとの選択肢がある。

33…a5

 33…Qf4+ の方が 34.Kd3 Nxe4 35.Qxe4 Rxc3+ となるので少し正確である。

34.Qxb7 Qf4+ 35.Ke2 Rc7 36.Qb6 Nxe4 37.Qd4+ Kh7 38.c4 Rd7 39.Qe3 Ng3+ 40.Qxg3 Qxg3 41.Rxd7 Qe5+ 0-1

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(この号終わり)

2013年12月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

カロカン防御の指し方(004)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 両者の戦略を幅広く全体的な見地から概説したところで、今度はもう少し詳しく分析してみよう。以降の章ではカロカン防御の戦型を個別に取り上げるが、多くの戦型の特徴はほとんど同じで、一部が異なっていることが見てとれる。ここからは各戦型の特徴を説明していくことにする。違いを強調する際に駒の配置でなくポーンの配置によって戦型を分類する。これは駒は後戻りできるがポーンはできないので、ポーンの「骨格」の方が駒のそれよりも恒久的だからである。だからポーンはある局面に当てはまる長期的な考え方をよく物語ることになる。

(この章続く)

2013年12月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: カロカン防御の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(236)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 連結した3ポーンに対しては黒はそれらを同じ斜筋に並ばせてビショップでせき止められるようにしなければならない。あるいはポーンが三角形の形に並んでいるならばビショップで二つのポーンをせき止めキングで残りをせき止めることができる。次の局面を考えてみよう。

 図236

 黒は白キングの接近を防ぎ続ければ引き分けにできる。想定手順は次のとおりである。1.Kd4 Ke6 2.Ke4 Be8 3.Kf4 Bd7 4.Kg5 Be8 5.Kh6 Kf7!(5…Bd7? は 6.Kg7 Be8 7.f7 Bxf7 8.d7 で白が勝つ)で白は何も進展が図れない。

(この節続く)

2013年12月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

カロカン防御の指し方(003)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 カロカン防御における黒の基本戦略は白よりも積極性で及ばない。チェスにおける先手番の優位は、テニスにおけるサーブの優位にいくらか近い。だから最初は黒は白のわずかな優勢を打ち消すことに満足することにして、あとで初めて攻勢に出ることを期するのが良い。一般的に当てはまる指針は以下のとおりである。

 1)黒はポーンで中央に地歩を築くこと。白が(1.e4 c6 のあと)2手目でどんな手を指そうと、黒の正着はいつも 2…d5 である。結局のところ 1…c6 はこの手のためにある。中原の4地点の一つを占めた黒ポーンは、d5の地点に留まるか白のeポーンと交換されることになる。白と違いこの布局では黒は中原の4地点の一つに2個目のポーンを置くことを願うことはできない。カロカン防御では黒のeポーンはe5よりもe6にいるのがふさわしい。なぜならe5のポーンは白のd4のポーンによって、それにたぶんf3のナイトによっても当たりにされるからである。一般に黒はc8のビショップを展開するまでは …e7-e6 と突くべきでないのは、そのビショップが閉じ込められるからである。布局の早い段階では黒は中央のc、dおよびeポーンだけを突くようにするのが普通である。

 2)駒をできるだけ迅速に展開すること。白の戦略全般に当てはまるのと同じ考慮がここでも当てはまる。異なるのは白の優位を無効にする目的に沿って、進んで駒を交換すべきであるという点である。

 3)そのあと黒は長期的戦略を立てること。黒は防御側なので(白が先に指すから)、作戦はほとんど常に白の作戦に対応したものになる。だから黒は白の意図を推量するように努めることが大切である。白の作戦が黒キングを攻撃することがはっきりすれば、黒はキングの近くに十分な駒を配置して攻撃を撃退できるようにすべきである。また中央で反撃を開始する機会を得るために注意しているべきである。同様に白が中央突破を目指せば、黒は中央での動きを無効にするように集中して取り組み自分で中央での支配を奪うように努めなければならない。だから白が中央で動こうとキング翼攻撃に出てこようと、黒は中央に神経を集中しなければならない。時には(特に白が手損をするか守勢で指せば)、黒は中央での動きの代わりか中央での動きに加えて贅沢にもクイーン翼で自ら動くことができる。カロカン防御で黒がキング翼で積極的な作戦に出ることはまれである。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(235)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 3ポーンに対してはそれらがあまり進んでいないならば黒の引き分けの見通しはかなり明るい。原則として黒キングがポーンとの戦いに加わらなければならないのが普通である。次の例がそれを示している。

 図235
アベルバッハ、1954年

 このような局面ではポーンが5段目に到達していないならば黒が引き分けにできる。しかし以下の手順が示すように受け側は最高の正確さが要求される。

1…Be8

 教育的な目的のために黒の誤った消極的な受けを主手順として用いる。もちろん分析の途中では正しい受けの手段を指摘する。例えばここでの最も正確な手段はすぐに 1…Bb3 から 2…Bd1 と指してh5-d1の斜筋にビショップを持ってくることである。しかし本譜でそれを逃がしてもまだ致命的ではない。

2.f5 Bf7 3.h5

 白はポーンをh4、g5、f6の黒枡に置いても何も得られない。即ち 3.Kf4 Kf6 4.g5+ Kg7 5.Ke5 Bh5 6.Ke6 Bf7+ 7.Ke7 Bh5 8.f6+ Kg8 で完全にせき止められてしまう。

3…Be8?

 しかしこの手はためになる間違いで、黒の負けが確定する。ここがビショップをもっと働きのあるh5-d1の斜筋に移動させる最後の機会だった。3…Bb3! ならば黒はまだ次のように引き分けにできるところである。4.Kf4 Bd1! 又は 4.f6+ Kf7 5.Kh6 Kxf6 6.g5+ Kf7 7.Kh7 Bc2+ 8.g6+ Kf6 でどちらも簡単に引き分けになる。

4.Kf4!

 この手は1906年にカールシュテートによって指摘された唯一の勝つ手段である。1880年にこの局面を分析したホルビッツは 4.f6+ を勝つ手として挙げていた。その場合は次のようになる。
1)4…Kf7? 5.h6 Kg8 6.Kf5! Bd7+ 7.Kf4 Be8(7…Ba4 なら 8.Ke5 で白が勝つ。黒はキングをf7にビショップをh7-b1の斜筋に間に合わせることができない)8.Ke5 Bg6 9.Ke6 Kf8 10.g5 Bc2 11.f7 Bb3+ 12.Kf6 Bxf7 13.h7 で白が勝つ。
2)4…Kg8! 5.Kf4 5.Kh6 Kf7 6.g5 Bb5 は例えば 7.g6+ Kxf6 8.g7 Bc4 9.Kh7 Kg5 又は 7.Kh7 Bd3+ 8.Kh8 Be4 で白が何も得られない。5…Ba4 6.g5 6.Ke5 なら 6…Bd1! 6…Bd1 7.h6 7.g6 なら 7…Bxh5 8.Kg5 Bd1、途中 8.Kf5 なら 8…Kf8! 7…Bc2 8.Ke5 Kf7 で引き分けの局面である。

4…Bf7

 4…Ba4 5.g5 Bd1 はもう手遅れである。6.h6+ の後黒は 6…Kh7 で本譜に戻るしかない。6…Kf7 は 7.g6+ Kf6 8.h7 ですぐに負けになる。戻って 4…Kh6 なら白は 5.f6 Kh7 6.Ke5 Kg8 7.h6 又は 5.Ke5 Kg5 6.Ke6 Ba4 7.f6 で勝つ。

5.Ke5 Bc4

 5…Be8 なら 6.Ke6 Bf7+ 7.Ke7 Bc4 8.f6+ Kg8 9.h6 で白が勝つ。

6.g5 Be2 7.h6+ Kh7 8.Kd6!

 この手が最も簡明な手である。白キングはビショップに煩わされることなくe7の地点に到達する(8.Ke6 Bg4 9.Kf6!)。

8…Bd3

 8…Bg4 は 9.f6 Bh5 10.Ke7 Kg8 11.f7+ である。

9.f6 Kg6 10.Ke7 Bc4 11.f7 Bxf7 12.h7 Kxh7 13.Kxf7 Kh8 14.Kg6!

これで白が勝つ。

(この節続く)

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布局の探究(80)

「Chess Life」1993年11月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

現代の布局定跡へのカスパロフの影響(続き)

 ここでは現代布局定跡へのカスパロフの影響が非常に大きかった多くの布局のうち二つを取り上げる。

Ⅰ.ニムゾインディアン防御

 1985年GMアナトリー・カスパロフとの世界選手権戦でガリー・カスパロフは初戦で最初の5手のうち3回も相手の意表を突いた。

 (1)1.d4 Nf6 2.c4 e6 のあとカスパロフは 3.Nc3 と指した。

 自分の名著の「New World Chess Champion」の中でカスパロフはこのありきたりの手について次のように解説している。「最近はニムゾインディアン防御を避けて 3.Nf3 か 3.g3 を指していた。」

 (2)カルポフは予想どおりの 3…Bb4 で応じたが、予想外の 4.Nf3 が来た。これは本筋の手だが、それまではつまらない手という評判だった。この時のことについてカスパロフは次のように書いている。

 「不意打ち!以前は普通に 4.e3 と指していて、カルポフはその手なら局数無制限勝負[1984年の世界選手権戦-メドニス]以前に明らかに予期していた。」

 (3)黒は最も普通の応手の 4…c5 を採用し、白は 5.g3 と指した。ここでGMカルポフは29分考え、最初の5手だけで48分を費やした。

 ここからは終局までの指し手をざっと見ていこう。

5…Ne4 6.Qd3 Qa5 7.Qxe4 Bxc3+ 8.Bd2 Bxd2+ 9.Nxd2 Qb6?!

 このあとカスパロフは黒がこんな手損をしている余裕がないことを見せつける。黒は 9…Nc6 または 9…O-O と指す方が良いが、それでも互角とはほど遠い。

10.dxc5! Qxb2 11.Rb1 Qc3 12.Qd3! Qxd3 13.exd3

 白は展開に優り、駒がよく働く地点に配置され、陣地が広いので大きく優勢である。そしてこれらの要因を見事に活用した。カルポフは苦戦を最小限にするための少しの機会を無視したあげく完膚なきまでに叩きのめされた。残りの手順をカスパロフの分析に基づいた短い解説をつけて示す。

13…Na6 14.d4 Rb8 15.Bg2 Ke7 16.Ke2(16.O-O! が強手だった)16…Rd8 17.Ne4 b6 18.Nd6 Nc7?(18…bxc5! なら引き分けの可能性があった)19.Rb4! Ne8 20.Nxe8(20.Nxc8+! が正しい取り方だった)20…Kxe8?(20…Rxe8 が正着だった)21.Rhb1 Ba6 22.Ke3 d5 23.cxd6e.p. Rbc8 24.Kd3 Rxd6 25.Ra4 b5 26.cxb5 Rb8 27.Rab4 Bb7 28.Bxb7 Rxb7 29.a4 Ke7 30.h4 h6 31.f3 Rd5 32.Rc1 Rbd7 33.a5 g5 34.hxg5 Rxg5 35.g4 h5 36.b6 axb6 37.axb6 Rb7 38.Rc5 f5 39.gxh5 Rxh5 40.Kc4 Rh8 41.Kb5 Ra8 42.Rbc4 黒投了

 カスパロフが 4.Nf3 の戦型に吹き込んだのは主導権の動的な追求だった。この重要視はポーンの良形のような静的な考慮よりもはるかに重要だった。1985年の番勝負全体でニムゾインディアン防御が6局現れ、すべてで 4.Nf3 が指された。白の成績は3勝3引き分けで、序盤に限れば白がもっと優勢だった。

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カテゴリ: 布局の探究1

カロカン防御の指し方(002)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 カロカン防御における白の基本戦略は 1…c6 のいくらか控え目な性質につけ込んで、序盤でわずかな優勢を得てそれをあとの段階でうまく利用することに努めることである。これを達成するためには以下の一般的な指針に従うのがよい。

 1)ポーンで中央に地歩を築くこと。白は(1.e4 c6 のあと)ほとんど必ず 2.d4 と突く。だから中原の4地点のうちe4とd4を早くもポーンで占めることになる。時には e4-e5 と突き越すこともあり、自分のeポーンと黒のdポーンとの交換に応じることもある。白が序盤でほかのポーンを突くのは通常は適切でない(ただしcポーンは例外となることがある)。というのはそのようなポーン突きは手の浪費になることが多く、有効に駒の展開に使うべきであるからである。

 2)できるだけ迅速に駒を展開すること。つまりこれからの戦いに備えてすべての駒をよく働く地点に配置するように努めることである。通常は最もよく働く地点は盤の中央に最も近い枡である。すべての駒を迅速に展開するためには、一般にほかのすべてのまたはほとんどの駒が一度動くまでどの駒も二度動かさないのが良い。しかし時には例えば交換されたり取られるのを防ぐために二度動かすことが必要になるときもある。

 3)駒を展開し中央で地歩を築いたら、具体的な長期的作戦を立てるようにすること。適切な作戦はもちろん黒の指し手による。しかし二つの最も普通の作戦は次のとおりである。

 a)キング翼攻撃。黒がキング翼にキャッスリングすれば(そうするのが普通である)、白はしだいに駒をその方面に集中し黒キングを詰めようとすることができる。しかし白は黒が中央で強力に反撃する可能性にいつも警戒しなければならない。この反撃は側面攻撃に対する通常の強力な反応である。

 b)中央での活動。これには多くのやり方があり得る。二つのよくある着想は c2-c4 から d4-d5 と突くことにより、または f2-f4 から f4-f5 と突くことにより、黒の防御を打ち破るようにすることである。

(この章続く)

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カテゴリ: カロカン防御の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(234)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 連結した2個のポーンに対してもそれらがあまり進んでいなければビショップはうまく守ることができる。一般原則として両方のキングが関与していなければポーンは5段目を越えていてはならない。図234はそれを示している。

 図234

 黒のビショップは比較的好位置にいるので次のように楽に引き分けることができる。

1.b6 Bd4

 白はビショップの利く色と同じ枡にポーンを進めなければならない。さもないと 1.c6 Bd8 のように簡単にせき止められてしまう。

2.b7 Be5

 ポーンが止められたので引き分けが確定した。

 それではビショップがそれほど良くない位置にいる局面を少し調べてみよう。黒ビショップがg7にいる場合はビショップが1手目でd8に間に合わないので 1.c6 Be5 2.b6 で白が勝つ。ビショップがa7にいる場合は 1.b6 Bb8 2.c6 で白が勝つ。しかしビショップがa5にいる場合は 1.b6 の後黒はビショップを動かさずキングが 1…Ke4 と近寄ってきて引き分けにできる。

 図234でビショップが白枡にいた場合このビショップが長斜筋に間に合えば引き分けにできる。例えばビショップがb7にいたとすると 1.c6 Ba8!(1…Bc8? は 2.b6 で白が勝つ)で黒が引き分けにできる。ビショップがe2にいる場合は1.b6 Ba6? 2.c6 は黒が負けるが、実際は白キングの不都合な位置を利用して 1…Ke3 から 2…Bf3+ で引き分けにすることができる。

 一方のキングがポーンの近くにいる場合様相は一変することがある。白キングがポーンの近くにいて黒キングがもっと遠くにいる場合は通常は白の勝ちは動かない。黒キングがポーンの近くにいる場合白キングがどこにいても通常は引き分けである。もちろん例外は常にある。

(この節続く)

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カロカン防御の指し方(001)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン

 ホレーショウ・カロとマルクス・カンは似たり寄ったりの19世紀の二流マスターだった。個人としてはどちらも全然記憶に値しない。しかし二人ではカロカン防御の協同創始者として不滅の地位を獲得した。この戦法は次のように始まる。

1.e4 c6

 1…c6 は一見したところでは奇妙な手に思える。駒を展開していない。黒クイーンがd8-a5の斜筋に展開できるように筋を開けているけれども、一般的にクイーンを序盤早々に出すのは悪い考えでその点でも正当化できない。それなのになぜ黒は 1…c6 と突くのだろうか。

 その答えは 1…c6 は役に立つ準備の手だからである。この手に白がどう指そうと、黒は 2…d5 で中央に地歩を築く。これで地歩を固めることができれば、そのあと駒を展開する余裕が十分にできる。

 …d7-d5 突きが黒の良い着眼点なら、そもそもどうして1手目で指さないのかと聞きたい人がいるかもしれない。実のところ黒は 1.e4 に 1…d5 と指すことがある。しかし黒のこの手は 1…c6 から 2…d5 によって避けることのできる不利をこうむってしまう。1.e4 d5 2.exd5 のあと黒は完全に嬉しいわけではない選択をしなければならない。2…Qxd5 によってすぐにポーンを取り返すのは、クイーン出が時期尚早になる。白は 3.Nc3 でクイーンを当たりにし先手でナイトを展開することができる。代わりに 2…Nf6 と指すのは 3…Nxd5 と取る意図だが、白の 3.c4 で黒がポーンを取り返すのが難しくなる。

 もともとカロカンは最良でも少し風変わりで、最悪は話にならないほど悪いと見なされていた。しかし1921年から1927年まで世界チャンピオンだった有名なカパブランカによって採用されて評価を勝ち得た。それ以来世界の代表的な選手のほとんどによってときどき用いられるようになり、今では 1.e4 に対する黒の最も堅実な応手の一つとして位置づけられている。

(この章続く)

2013年12月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(233)

第5章 ビショップ・エンディング

5.1 ビショップ対ポーン

 通常2個の孤立ポーンに対してはビショップとキングがそれぞれ1個のポーンに対処する。両方のキングが主戦場から離れている場合はビショップは両方のポーンに対処する役目を負う。これは斜筋に沿って、あるいはそれぞれのポーンの前の枡を同時に守ることによってのみ可能である。例えば次の局面がそれである。

 図233

 どちらのポーンも進むことができないので引き分けである。ポーンとビショップを1枡上の位置に移すとポーン捨てが可能になってくる。白は次のように勝つ。1.e7 Bxe7 2.a7 又は 1.a7 Bxa7 2.e7 ポーンが遠くまで進み過ぎていた。

(この節続く)

2013年12月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

ポルガーの定跡指南(108)

「Chess Life」2005年10月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

対メラン攻撃法(8.Be2)(続き)

戦型C)1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 e6 4.e3 Nf6 5.Nf3 Nbd7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4 b5 8.Be2 Bb7 9.O-O b4

 9…b4 に加えて 9…Be7 と 9…a6 の2手も理にかなった手である。それらをまず見てみよう。

 a)9…Be7 10.e4 b4 11.e5 bxc3 12.exf6 Nxf6 13.bxc3 O-O 14.Rb1 Qc7

 黒は 15…c5 突きに期待している。ここで白には主導権をもう少し長く保つための面白い戦術の可能性がある。

15.Bf4 Qxf4 16.Rxb7 Bd6 17.g3 Qf5

 これでほぼいい勝負である。

 b)9…a6 10.e4 c5 11.e5 Nd5 12.a4 Nxc3(12…b4 は 13.Ne4 cxd4 14.Bg5 Qa5 15.Qxd4 で白の方が展開が良い)13.bxc3 c4

 ここで白は 14.Ng5! で強襲することができる。白が短手数で勝ったよく知られた試合(クリスチャンセン対フリアー、シラーク、1987年)では 14…Be7?! 15.Bf3 Bxf3 16.Qxf3 O-O 17.Qg4 Nb6 18.axb5 axb5 19.Rxa8 Nxa8 20.Ne4 Kh8 21.Re1 b4 22.Re3 bxc3 23.Rh3 g6 24.Qf4 g5? 25.Nf6! で黒が投了した。代わりに 14…h6?? も大悪手で 15.Nxe6! とされる。14…Bd5 の方が良く 15.Bh5 g6 16.Bf3 で白がまだ有望である。

10.Na4 Be7

 1989年ニューヨーク・オープンでのカルレソン戦で私は次のように快勝したことがある。10…Bd6 11.b3 O-O 12.Bb2 c5 13.Rc1 Qe7 14.dxc5 Nxc5 15.Nxc5 Bxc5 16.Qd3 Rfd8 17.Bxf6! gxf6 18,Qc4 Rac8 19.Qg4+ Kh8 20.Rfd1 Rd5 21.Rxd5 Bxd5 22.Qh4 Rg8 23.Kf1 a5 24.Bd3 Rg7 25.Be4 Bxe4 26.Qxe4 Qa7 27.Qc6 Bb6 28.Nd2 Rg8 29.Nc4 Rb8 30.Rd1 Rb7 31.Rd6 Bc5 32.Rd8+ Kg7 33.Qe4 黒投了

11.a3

 11.b3 は 11…O-O 12.Bb2 c5 13.Rc1 Rc8 で黒に何の問題もない。

11…a5

 11…bxa3 は白の注文で、12.b3! O-O 13.Bxa3 Bxa3 14.Rxa3 Qe7 15.Qc1 で黒が …c6-c5 と突くのが困難なので白が少し優勢になる。

12.Qc2 O-O 13.Rd1 c5 14.Nxc5 Nxc5 15.dxc5 Qc7 16.axb4 axb4 17.Bd2 Qxc5 18.Qxc5 Bxc5 19.Ne5

 白がほんのわずか優勢である(ティマン対ローチェ、番勝負第7局、ベイクアーンゼー、1994年)。

結論

 特にクラブ程度でまたはマスター以上に対してさえ意表を突く武器として、白のためにメランに対するこの戦型を薦める。見てのとおり黒が間違えやすい個所はたくさんある。また布局から「4クイーン」の局面に行くのもとても魅力的である。もちろん相手の協力が絶対必要だが。黒のためには戦型Bの 11…Nxf6 か戦型Cを選ぶことを勧める。

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2013年12月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(168)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

デンマークギャンビット(続き)

 黒はキング翼ナイトを白のキング翼ビショップと交換しポーン得になる。これに対して白には代償がほとんどない。

(完)

2013年12月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(232)

第5章 ビショップ・エンディング

 ルーク・エンディングと並んで両者にビショップのあるエンディングはエンディング理論の最も難解な部分を構成している。しかしどちらの種類のエンディングでも複雑さの中でも選手の指針の助けとなるような一定の一般原則が構築されてきた。ルーク・エンディングの方が分析がはるかに難しい。それは主に論理的な帰結に至らなければならない一般的な戦略計画を定式化するのが困難なことにある。読者は以下の例でそのことの正しさを納得させられるだろう。

 ビショップ・エンディングはお互いのビショップが同色か異色かによって大きく二つに分類される。いずれ分かるようにこれらは全く異なった扱いが必要となる。しかし本来のビショップ・エンディングに入る前にまずビショップがポーンに対してどのように対処するかを見てみよう。

5.1 ビショップ対ポーン

 ビショップはその遠くに利く特性のために普通はポーンに対する戦いに優れている。ビショップが1ポーンに対して引き分けることは明らかで通常は2ポーンに対しても当てはまる。しかし3ポーンに対してはポーンがあまり先まで進んでいない場合に限り受け切ることができる。これらは一般論であるが例外も数多い。これらの要点が当てはまる例を少し見てみよう。

 図232
オッテン、1892年

 駒割りから考えるとすぐに引き分けを予想するが黒の駒は非常に具合の悪い位置にいるので白は次のようにaポーンからクイーンを作ることができる。

1.a5 Bf8

 c5の地点を目指している。そこがポーンを止めることのできる唯一の地点である。白はこれを妨害する。

2.Kd5 Bh6 3.g5+!

 この意表のポーン捨てが決め手である。3.Kd4 は 3…Bf4 4.a6 Bb8 で引き分けにしかならない。破滅の原因は黒キングの位置であることに注意を要する。例えば黒キングがg8にいたらこの局面は引き分けである。

3…Bxg5

 3…Kxg5 なら 4.a6 で簡単に白の勝ちである。

4.Ke4 Bh4 5.Kf3!

これで白が勝つ。

 ポーンが止まらない。原則に対するきれいな例外である。

(この節続く)

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開放試合の指し方(167)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

デンマークギャンビット(続き)

 アマチュアなら皆このわくわくする布局を試してみるべきである!活動的な駒と迅速な展開の価値を学ぶのにこれに優る手段はない。これらの攻撃の要素を完全に理解したとき初めて「乱戦の」ギャンビットの局面を正確に判断することができる。「穏やかな」布局でさえ、意表を突くポーンの犠牲で局面がギャンビット型に変わることがある。だから選手は皆デンマークギャンビット、スコットランドとゲーリングギャンビット、キング翼ギャンビット、そしてそのほかの攻撃的な布局がもたらす経験の基礎が必要である。

 昔の最強の選手たちがデンマークギャンビットへの正しい防御法を見つけるまで何年もかかった。白の攻撃的な姿勢のビショップと Qb3 の狙いが黒にさっそく重大な問題を突きつけている。

5…d5!

 ポーンを返すことにより白の攻撃の鉾先を鈍らせ展開で少し追いつく。5…Bb4+? は 6.Kf1! Nf6 7.e5、5…Nf6? は 6.e5! d5!(この一手)7.exf6 dxc4 8.Qxd8+ Kxd8 9.fxg7 Bb4+ 10.Nc3 Rg8 11.O-O-O+ で進攻したパスポーンと Nd5 の狙いで白の勝ちになる。

6.Bxd5

 6.exd5 なら 6…Nf6 7.Nc3 Bd6! でキャッスリングの用意ができ黒が生存できる。そのうちポーン得で黒の勝ちになるはずである。

6…Bb4+!

 これがデンマークギャンビットを死滅させた手である!しばらくの間「退治」は 6…Nf6 7.Bxf7+! Kxf7 8.Qxd8 Bb4+! 9.Qd2(他の手では白の駒損になる)9…Bxd2+ 10.Nxd2 c5 だった。このときパスcポーンで黒が優勢になるとされていた。しかし 11.f4! で白のキング翼の多数派ポーンが活動的になり、勝負はまだ全然分からない。

7.Nc3

 7.Kf1 は 8.Bxg7 と 8.Bxf7+ が狙いだが、黒は 7…Nf6! 8.Qa4+ Nc6! 9.Bxc6+ bxc6 10.Qxb4 Rb8!! という受けの妙手を見つけなければならない。これに対して 11.Qxb8? なら 11…Qd1#、11.Qc3 なら 11…Rxb2! 12.Qxb2? Qd1# で負けになるので、白は駒を返してポーン損のままでいなければならない。

7…Bxc3+ 8.Bxc3 Nf6!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(231)

第4章 ルーク・エンディング

4.7 ルーク+小駒対ルーク

4.7.2 ルーク+ナイト対ルーク

 図231

 たとえ白が黒キングをg8にとどまらせることができても(図231)ナイトの釘付けは黒を救う。例えば次のようになる。1.Kf6 Rg2 1…Kf8? はだめで 2.Ne6+ から 3.Rd1 で白の勝ちになる。2.Ne6 Rg3 3.Rf2 Rg1
もし黒ルークがg4に行くと 4.Ra2 で 5.Ra8+ から 6.Ng5+ を狙われるので行けない。
4.Nf4 Ra1 5.Rb2 Ra6+ 6.Ne6 Kh7 ナイトがまた釘付けにされていて白の動きが制限されている。いうなればこの型での黒の最善の受けはナイトを釘付けにすることである。

(この節・章終わり)

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開放試合の指し方(166)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

デンマークギャンビット

1.e4 e5 2.d4 exd4 3.c3

 中央試合の 3.Qxd4 は本筋でない。当然の応手の 3…Nc6 のあと白はクイーンをまた動かさなければならず、適切な地点もない。a4ではいつか …Bd7 によってクイーンが脅かされるかもしれない。d1なら安全だが 4.Qd1 Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Bd2 d5! で黒の調子がいい。もっともよく指されるのは 4.Qe3 だが、クイーン翼ビショップの筋をふさぐ。クイーンはあとでg3の地点に寄ってこのビショップを自由にすることが多いが、序盤でクイーンがこんなに動くと問題が生じることがある。白は展開で後れをとり、中央が開放されれば黒駒にとって有利である。

 4.Qe3 に対する最善の応接は 4…Nf6 5.Nc3 Bb4! 6.Bd2 O-O 7.O-O-O Re8! である。黒にはすでに …d7-d5 突きの狙いがある。黒が知っておくべき唯一の変化は 5.e5 Ng4 6.Qe4 である。それには 6…d5!(6…Ngxe5? には 7.f4 がある)7.exd6e.p.+ Be6 で黒が展開で大きく差をつける。8.dxc7 には 8…Qxc7 または 8…Qd1+! 9.Kxd1 Nxf2+ 10.Ke1 Nxe4 と応じることができる。

 白は本譜の 3.c3 で素早い展開を目指している。直接攻撃をしたいのでそのような局面にするためには1個や2個のポーンを犠牲にする用意がある。

3…dxc3

 黒は挑戦を受けて立った。しかしゲーリングギャンビットのように 3…d5 でギャンビットを拒否することもできる。3…d5 4.exd5 Qxd5 5.cxd4 Nc6 6.Nf3 と進めばゲーリングの安全な戦型に移行する。そして 6…Bg4 7.Nc3 Bb4! で互角の形勢になる。

4.Bc4!

 これが純正デンマークギャンビットの始まりで、最も成功を収めた攻撃的布局の一つである。それでも白は 4.Nxc3 で変心することができ、4…Nc6 5.Nf3 でゲーリングギャンビット(第5章)になる。

4…cxb2 5.Bxb2

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(230)

第4章 ルーク・エンディング

4.7 ルーク+小駒対ルーク

4.7.2 ルーク+ナイト対ルーク

 この型では防御ははるかに楽である。なぜなら黒キングが盤端に追い詰められることがないからである。しかしもし黒キングが既に盤端にいる場合は白の勝つ局面がいくつか可能である。特に黒キングが隅に押し込まれている場合はそうである。しかしそのような局面は例外的なのであまり紙数を費やすつもりはない。次の局面は白がどのようにして勝てるかの面白い局面である。

 図230
セントゥリーニ、1888年

 白はすぐに 1.Re8+ とチェックしても 1…Rf8 2.Re7 Rf1 で何も効果がない。ルークがe列を離れると …Kf8 と逃げられるのでそれもできない。しかしここでもまた手詰まり戦術が鍵となる。それによって黒ルークをf列上の不利な枡へ行かせる。

1.Re3 Rf2

 もちろん 1…Kf8 はだめで 2.Nh7+ で白の勝ちになってしまう。1…Rf4 は 2.Ra3 Rf1 3.Ra8+ Rf8 4.Ra1! で本譜と同じになる。黒ルークがf4の地点にいる不都合は 2.Ra3 の後 2…Kf8 が 3.Ne6+ のためにできないことである。1…Rf8 も 2.Nh7 Ra8 3.Re7 から 4.Nf6 で簡単に白の勝ちになる。

2.Re1 Rf4

 これが白の目指していた局面である。

3.Ra1! Rf2

 黒は他に指しようがない。

4.Ne4 Rg2+ 5.Kf6 Kh8

 白が 6.Ra8+ から 7.Ng5+ を狙っていたので仕方がない。白は進展を図るためにはここでまた黒ルークを(黒陣から見た)5段目に行かせなければならない。

6.Rb1 Rg4

 6…Rg7 は 7.Ng5 で白勝ちになるのでだめである。

7.Ng5 Rf4+ 8.Kg6 Kg8

 白の3手目の局面と同じであるが手番は白である。

9.Ne6! Rg4+ 10.Kf6 Kh8 11.Rb8+

 作者の手順は 11.Kf7 Rh4 12.Kg6 Rg4+ 13.Ng5 で白勝ちというものだったが本譜の手の方が速い。

11…Rg8 12.Nf8

これですぐに詰みになる。

 白が勝てたのは黒の駒が非常に不利な位置にあったことによる。図230で黒ルークをg1に移し黒の手番にすると 1…Kf8 で引き分けになる。釘付けのナイトは攻撃に加われないので白は何も進展が図れない。

(この節続く)

2013年12月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(338)

「Chess」2013年11月号(5/6)

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パリ・グランプリ大会(続き)

 B.ゲルファンドも同じ第7回戦でV.イワンチュクに勝ってナカムラに半点差をつけた。ナカムラは翌日自分も惑星人イワンチュクから贈り物をもらったとき自分には神がついていると感じたに違いない。

V.イワンチュク – H.ナカムラ
第8回戦

 イワンチュクはずっと少し優勢だったが、この引き分けの収局にしかできなかったので少し落胆していたのかもしれない。しかしそれは旗が落ちて時間切れ負けになったことのもっともな言い訳にはならない(0-1)。

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(この号続く)

2013年12月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(165)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ビショップ布局(続き)

 代わりに 5…dxe4 は 6.Ng5!(6.Nxe5? は 6…Qa5+! でキングとナイトの両当たりになる)6…Be6 ですっきりとはいかないが、7.Bxe6 fxe6 8.Nxe4 で少なくとも互角である。

 本譜の手は黒のポーン中原を要塞化している。1930年のストールベリ対ウェーニンク戦では 6.Nc3 Be6 7.Bg5 Qa5 8.O-O Nbd7 9.Re1 O-O-O と進んでいい勝負だった。どちらも自分の戦略を実行している。黒は中央を占拠して広さを確保し、白は黒にd5とe5のポーンを守らせている。

(この章続く)

2013年12月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(229)

第4章 ルーク・エンディング

4.7 ルーク+小駒対ルーク

4.7.1 ルーク+ビショップ対ルーク

 はるかに簡単な引き分けの局面がある。それはコクレーンが初めて提示し白のビショップが黒ルークによって釘付けになっている。図229を分析しよう。

 図229

 黒がルークをd列に置いたままにすれば白は狙いを構築することが難しい。例として1937年のフロール対レシェフスキー戦の経過をたどろう。その試合は 1.Rh7 の後黒が次のように指した。1…Rd2 2.Ke5 Kc8 3.Bc5 Rd7 4.Be7 Kb7 5.Ke6 Kc6 6.Rh1 Rd2 7.Rc1+ Kb5 8.Bd6 Re2+

 この二つの引き分けの局面を知っていればこの型のエンディングはほとんど恐れることはない。この型のエンディングの全容を学ぶためには分厚いエンディングの本の膨大な分析を読まなければならないだろう。しかしそんな知識はほとんど実戦の役に立たないだろう。

 もしこの型のエンディングで防御側にポーンが1個あれば、しばしばステイルメイトの可能性をなくし、時には自分のルークの動きのじゃまになることも起こり得る。1個や2個のポーンが有効な反撃に役立つことはなかなかない。

(この節続く)

2013年12月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

[復刻版]実戦に役立つエンディング(228)

第4章 ルーク・エンディング

4.7 ルーク+小駒対ルーク

4.7.1 ルーク+ビショップ対ルーク

 黒キングが盤端に追い込まれて図228のようになったとしよう。

 図228
セン

 これはセンの分析した引き分けの局面である。この局面には次のような特徴がある。黒キングは白キングからナイトの利きの位置にいてビショップの動く枡と同じ色の枡にいる。そして黒ルークは即詰みを防いでいる。以下の分析が示すように白は陣容をこれ以上良くすることができない。

1.Rb8+ Rc8 2.Bf6+ Kc7 3.Be5+ Kd8 4.Rb1 Rc2 5.Rg1 Kc8 6.Rb1

 さもないと黒キングが逃走する。ここがセンの局面のもう一つの特徴である。自分のルークで守られた側では黒キングは動き回る十分な広さがある。もし全体を1列左へ移動すると(白ルークがf1にくる)6.Rf8+ の後2手で黒ルークが素抜きにあい白が勝つ。即ち黒キングは「広い」側にいなければならない。

6…Kd8

 これで最初の状態に戻った。この局面は引き分けである。

(この節続く)

2013年12月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(79)

「Chess Life」1993年11月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

現代の布局定跡へのカスパロフの影響

 世界チャンピオンがチェスの進歩と定跡に強い影響を与えるのはごく普通である。もちろん影響の度合いは本人の関心だけでなく在位の長さと支配力で決まってくる。布局定跡の知識と影響力で傑出している二人の世界チャンピオンがGMロバート・フィッシャーとGMガリー・カスパロフであることは疑いない。二人は早くからそれを実証した。ボビー・フィッシャーは29歳で世界チャンピオンになり、カスパロフは現在30歳である。両者にはほかにも多くの類似点がある。

 1.二人とも非常に研究熱心で、定跡の探究を楽しみ、布局からできるだけ大きな有利を得ることをことのほか大切だと考えている。

 2.二人とも布局で主導権を得る見込みが大きい戦型を目指す。

 3.二人とも黒より白の方が常用布局が豊富である。

 4.二人とも白より黒で危険をおかす用意がある。だから黒での布局の方がより激しく、より諸刃の剣で、複雑である。

 5.布局で洗練された創造力のある指し方が認められているにもかかわらず、二人とも自分の名前のついた戦法がないし、まして布局名もない。

 両者の大きな違いは、フィッシャーがはるかに単純で厳しくない時代に生きていたということである。1980年代と1990年代には非常に才能のあるチェスの虫が輩出した。カスパロフは布局の段階でもうフィッシャーよりはるかにきつい相手と対戦していた。布局定跡の進歩の量と質のために、起こったことについて行くだけでも非常に困難である。カスパロフはついていっているだけでなく、自分の関係した多くのことの最先端にいる。さらには戦法の「寿命」は「指しつくされた」として見捨てられ注目が新構想に移る前にどんどん短くなっている。

 そのような状況の下で頂点に立っているためには、研究熱心、才能、好奇心、創造力と想像力を持ち合わせていることが必要なだけではない。究極の真実の探究者であるだけでなく、永久にチェスの成熟の中で成長していかなければならない。私はカスパロフが1983年12月ロンドンでの挑戦者決定番勝負準決勝でGMビクトル・コルチノイに勝利したあと彼に発した質問をよく覚えている。その質問はこうだった。「あなたは初手に 1.e4 と指すことにより強豪グランドマスターになった。それにもかかわらず20歳の誕生日を迎えるずっと前に、1.d4 に転じた。なぜ変えたのか。」ちょっと間が空いたあとこの歯切れのよい答えが返ってきた。「1.d4 の方が内容の濃い指し方の機会が多いことが分かってきた。」実際コルチノイ戦でカスパロフは 1.d4 しか指さなかった。それでも時とともに 1.e4 に戻った一時期もあり、1.c4 も常用布局に加えた。だからGMナイジェル・ショートとの番勝負開始時点でカスパロフは 1.c4、1.d4 および 1.e4 の大家で、まさに全天候型人間である。

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開放試合の指し方(163)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ビショップ布局(続き)

 2.Bc4 が本当に黒を悩ませた一時期があった。白はすぐにビショップを絶好の斜筋につけ、弱いf7の地点をにらみ、f2-f4 と突く選択肢を残している。しかし 2.Bc4 には直接の狙いがなく、黒はこの間隙をついて 2…Nf6! で白のeポーンを当たりにすることができる。今日の精密な布局研究と優れた防御技術のおかげでビショップ布局は無害になった。マスターたちは主に意表を突くために使っている。

2…Nf6!

 これはほとんど自動的な応手である。19世紀には黒はよく 2…Bc5 と指したが、それでも十分互角になる。2…Bc5 のあと黒は 3.f4 に 3…Bxg1! 4.Qh5(4.Rxg1? Qh4+ 5.g3 Qxh2)4…Qe7 5.Rxg1 Nc6 から …Nf6 と指す。代わりに 3.Nf3 なら黒は 3…Nc6 と応じ(第2章)、3.Qe2!? なら 3…Nc6! 4.Bxf7+ Kxf7 5.Qc4+ d5!(これが黒が白の狙いを無視した理由である)6.Qxc5 dxe4 と応じる。このあと白が 7.Qc4+ Be6 8.Qxe4 とポーンをかすめ取れば、黒は 8…Nf6 で展開に優り優勢になる。ポーンの犠牲で黒が反撃できるということはビショップ布局が破滅する運命であるということである。

3.d3

 3.Nc3 は第9章、3.Nf3 は第6章を参照すること。

 控え目な 3.d3 で白は d2-d4 突きを目指す開放試合の通常の戦略を放棄し、代わりに f2-f4 突きに集中する。しかし狙いに欠けているために黒が中央で主導権を握ることができ、白は f2-f4 突きを達成することさえできないのが普通である。

 異筋だがもっと攻撃的なのは 3.d4?! である。黒はこのギャンビットを 3…exd4 4.Nf3(4.Qxd4 には 4…Nc6、4.e5 には 4…d5! が黒の強手 )4…Nxe4! 5.Qxd4 Nf6 で受諾するのがよい。白にはポーンの十分な代償がない。6.Bg5 Be7 7.Nc3 なら 7…c6! 8.O-O-O d5 で黒陣が堅固である。これが好みでないならば黒は 4…Nc6 と遠慮することができ、2ナイト防御(第3章)の 4.d4 の戦型に転移する。

3…c6

 黒は白の臆病につけ入って、大胆にも 4…d5 で中央を乗っ取る計画である。しかしすぐに 3…d5? は少し大胆すぎて、4.exd5 Nxd5 5.Nf3 Nc6 6.O-O Be7 7.Re1 となって、白の中央での圧力が非常に悩ましい。7…f6 には 8.d4!、7…Bg4 には 8.h3 で黒の問題は解決しない。

4.Nf3!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(227)

第4章 ルーク・エンディング

4.7 ルーク+小駒対ルーク

 ルーク+ビショップ又はルーク+ナイト対ルークのエンディングは通常は引き分けである。ルーク+ナイトの組み合わせでは勝つのはまれである。ルーク+ビショップでは白の勝つ可能性は多少良くなるがそれでもそれほど多いわけではない。しかしすぐに気付くように受けるのは決して容易ではない。

4.7.1 ルーク+ビショップ対ルーク

 意外なことにこのエンディングは実戦では比較的多く現れて不必要に多くの場合防御側が負けている。従って受けの基本原則のいくつかをここで解説するのは有用である。

 まずフィリドールが2世紀以上前に勝ち手順を示した有名な局面から分析しよう。

 図227
フィリドール、1749年

 白の勝ちに至る手順は次のとおりである。

1.Rf8+

 この手は …Rd7+ という受けの手段を防ぐためである。1.Bc6 に対しても 1…Rd7+ が可能である。

1…Re8 2.Rf7 Re2!

 白は 3.Ra7 を狙っていた。2…Kc8 は 3.Ra7 Rd8+ 4.Kc6 Kb8 5.Ra1 で黒が手詰まりに陥る。2…Re1 又は 2…Re3 は本譜より少し手順が短くなる。

3.Rh7

 黒ルークをe列の少し不利な枡に行かせるための手待ちである。

3…Re1

 この手は 3…Re3 よりも頑強な受けである。3…Re3 は 4.Rd7+ Ke8(4…Kc8 なら 5.Ra7 で黒は 5…Rb3 と指せない)5.Ra7 Kf8 6.Rf7+ Ke8 7.Rf4! Kd8(白の狙いは 8.Bc6+ で、代わりに 7…Rd3 なら 8.Rg4 とされて黒は 8…Rf3 と指せない)8.Be4! で白が勝つ(8…Ke8 なら 9.Bc6+)。

4.Rb7 Rc1

 4…Kc8 は 5.Ra7 Rb1 6.Rg7 Kb8 7.Rg8+ Ka7 8.Ra8+ から 9.Rb8+ で黒ルークが素抜かれる。

5.Bb3

 どうして黒ルークを1段目に下がらせておいたのかがここで明らかになる(d1からチェックすることができない)。グリゴリエフは代わりに次の手順を挙げている。5.Rf7 Re1(5…Ke8 なら 6.Rf6 Rd1 7.Rf2! Rd4 8.Re2+ から 9.Rg2)6.Bf3 で白が勝つ。例えば 6…Re3(6…Ke8 なら 7.Rf4 Kd8 8.Bh5 Kc8 9.Rb4!)7.Bc6 で本譜のようになる。

5…Rc3

 5…Kc8 なら 6.Rb4 Kd8 7.Rf4 Re1(7…Kc8 なら 8.Bd5 Kb8 9.Ra4)8.Ba4 Kc8 9.Bc6 Rd1+ 10.Bd5 Kb8 11.Ra4 で白が勝つ。本譜の手で黒ルークは具合の悪い(黒陣からの)6段目に行かされた。白は勝利への手順を実行することができる。

6.Be6 Rd3+ 7.Bd5

7…Rc3

 7…Kc8 なら 8.Ra7 で白が勝つ。

8.Rd7+! Kc8

 8…Ke8 なら 9.Rg7 で詰みになる(黒ルークがf3に行けない)。

9.Rf7 Kb8 10.Rb7+ Kc8 11.Rb4! Kd8

 11…Rd3 は 12.Ra4 で白が勝つ。

12.Bc4!

これで白が勝つ。

 黒はもう詰みを防げない。

 ご覧のようにこの勝ち手順は複雑で十分な計画性が必要である。同様の局面は数多くあり白の勝ちの場合もあれば引き分けの場合もある。それらを完全に採り上げることはできないが図227と似た局面はキング同士がルーク列またはビショップ列にあれば白の勝ちになりナイト列にあれば引き分けになることだけを指摘しておく。徹底的な分析はエンディングの専門書で確認されたい。ここで我々にとって興味あるのはそのような局面をどのように守るのかという実戦的な問題である。

(この節続く)

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開放試合の指し方(162)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ビショップ布局

1.e4 e5 2.Bc4

 ビショップ布局はほとんど独立性がない。これから生じる局面はウィーン試合(第9章)、4.d3 のジオッコピアノ(第2章)や他の布局に似てくるかもしれない。現代のグランドマスターのうちベント・ラルセンだけが時々ビショップ布局を用いている。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(226)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.2 ルーク対ナイト

 ルーク対ナイト+1ポーン又はナイト+2ポーンは通常引き分けである。もちろん例外もあるがここでは取り上げない。駒数が同じ場合黒がハリネズミの態勢を作れなければ通常はルーク側が勝つ。次の例を考えよう。

 図226

 白は常にポーンの守りに縛り付けられているので何も進展が図れない。白ができることは次のようにポーンを取ることである。1.Kd3 Kf7 2.Rxe6 Kxe6 3.Kc4 このポーン・エンディングは教科書どおりの引き分けである。しかしこの局面が1段上だったら白勝ちのポーン・エンディングになっていたところである。

(この節終わり)

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ポルガーの定跡指南(107)

「Chess Life」2005年10月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

対メラン攻撃法(8.Be2)(続き)

戦型B)1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 e6 4.e3 Nf6 5.Nf3 Nbd7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4 b5 8.Be2 Bb7 9.e4 b4 10.e5 bxc3 11.exf6

11…cxb2?!

 この手は危険すぎる。黒の最善手は 11…Nxf6 12.bxc3 Bd6 13.O-O O-O 14.Bg5 で、Bxf6 gxf6 と交換されるのはあまり心配する必要がないので 14…Qc7 と指していられる。f6での交換のあと黒は迅速に …Kh8、…Rg8 と指すだけでなく …c6-c5 と突いて白枡ビショップの威力を発揮させる。

12.fxg7 bxa1=Q

 スーザン・ポルガー対イクリキ(ベルギー、1985年)では黒が 12…Bxg7 13.Bxb2 Qa5+ 14.Nd2 c5 と指したが、15.O-O cxd4 16.Nc4 Qd5 17.Bf3 Qxc4 18.Bxb7 Rb8 19.Ba3! と進んで白が優勢になった。これが主眼の手で、19…Rxb7 に 20.Rc1 で最下段の弱点が黒の災いになる(20…Qd5 21.Rc8#)。

13.gxh8=Q

 盤上に4クイーンとは何という局面だろう。

13…Qa5+

 私が少し前にウラジーミル・ディミトロフと指した試合(ブルガリア、1984年)は次のように早く終わった。12…Qb1(h7のポーンを守った)14.O-O Qf6 15.Qxf6 Nxf6 16.Ne5!(この中央に進出した手は非常にいい手で、f7のポーンに圧力をかけて黒のキャッスリングを困難にし、Be2-f3 で黒のc6のポーンを攻撃する手も用意している)16…Qxa2 17.Bc4 Qa5 18.Qf3(黒は展開の遅れが長すぎたためにここでは敗勢である)18…Be7 19.Bg5 Qd8(ここからは活劇の時間である)20.Bxe6! fxe6 21.Bxf6 Qxd4(21…Bxf6 なら 22.Qh5+ Ke7 23.Qxh7+ Kd6 24.Nf7+)22.Qh5+ 黒投了

14.Nd2 Qf5 15.O-O O-O-O 16.Qb3 Be7

 サドラー対カイダノフ戦(アンドラ、1991年)では 16…Nc5 17.Qb4 Qc2 18.Qf6 で白がはるかに良い局面になった。

17.Qxd8+ Bxd8 18.Bb2 Qxf1+ 19.Bxf1

 Encyclopedia of Chess Openings はこの局面を互角と評価しているが、私なら白の方を持ちたい。

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2013年12月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

開放試合の指し方(161)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ラトビアギャンビット(続き)

参考棋譜(続き)

15…Na6

 Bb4+ を防いだ。

16.Qe2!

 この手は 17.Nf3 から 18.Qe8+! を狙っている。

16…Bh3 17.Nf3! 黒投了

 黒クイーンが逃げれば 18.Qe7+ Kg8 19.Qf7# までとなる。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(225)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.2 ルーク対ナイト

 図225

 ポーンがルークによって横から守られている形でも引き分けになる場合がある。図225がその例で白は正しく受けられれば勝つことができない。白キングがポーンの下側にいる時は黒キングはb3にいなければならない。また白キングが盤の上方に行けば黒キングはb5に行かなければならない。具体的には次のようになる。1.Kf3 Kb3 2.Kg4 Ka4 3.Kf5 Na3 4.Ke5 Kb5 黒の狙いは 5…Nc2 でポーンを取ることである。

 常識的には同様の局面でポーンがルーク列にあれば白が勝つ。それは次の二つの理由による。一つはポーンの左側を回るための列(a4!)が黒にないことで、もう一つはルークがポーンの背後にいないので黒キングがルークを攻撃できないことである。読者はどのようにして白が勝つかを自分で確かめられたい。

(この節続く)

2013年12月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(160)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ラトビアギャンビット(続き)

参考棋譜(続き)

7.Bd2

 小駒をまた展開するこの単純な手が釘付けをはずし 8.Nxe4 の狙いを新たにする。

7…Bxc3 8.Bxc3 d5

 代わりに 8…Nf6 は 9.Bxf6! gxf6 10.dxe4 Qxe4+ 11.Ne3 で白が 12.Bd3 でさらに手得するので良くない。黒のキング翼の割れたポーンもキングを正常に囲えない。

9.Ne5 Qf5 10.dxe4 Qxe4+

 10…dxe4 には 11.Bc4! がある。

11.Be2 Nf6 12.O-O c6 13.Bh5+!

 黒はなんとか白からの 13.Bf3 でdポーンを取る狙いに備えることができた。しかし白はここで別のより致命的な狙いを見舞う。

13…Kf8

 13…g6 14.Re1! も 13…Nxh5 14.Qxh5+ g6 15.Nxg6! も受けにならない。

14.Re1 Qh4 15.Bg6!

 これは 15.Bf3 よりもはるかに強い手である。このビショップは 15…hxg6 に 16.Nxg6+ で黒クイーンを取れるのでg6にいても安全である。そして狙いは 16.g3(b4の地点に利いている黒クイーンを追い払うため)16…Qh3 17.Bb4+ Kg8 18.Bf7# である。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(224)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.2 ルーク対ナイト

 図224

 しかしシェロンが指摘したように白はここで 8.Rb4! Nxb6+(他の手なら白キングがc5の地点に行き着ける)9.Kd6 Ka7 10.Kc6 で勝てる。図223の本譜の手順はフリンクの分析によるものである。

(この節続く)

2013年12月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(159)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ラトビアギャンビット(続き)

参考棋譜
白 V.スミスロフ
黒 M.カミショフ
モスクワ、1945年

1.e4 e5 2.Nf3 f5 3.Nxe5 Qf6 4.Nc4 fxe4 5.Nc3 Qg6 6.d3 Bb4

 黒は残念ながら 6…exd3 7.Bxd3(さらに展開!)7…Qxg2?? と指すことができない。なぜなら 8.Qh5+! g6 9.Qe5+ から 10.Be4、途中 8…Kd8 なら 9.Be4 Nf6 10.Bg5 でどちらも白の駒得になるからである。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(223)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.2 ルーク対ナイト

 ルーク+ポーン対ナイトになると黒が助かるのはまれなことになる。引き分けはポーンがせき止められ自分のキングから隔てられている時にだけ可能である。図223の二つの局面がこの型の例である。

 図223

 左側の局面は黒がポーンをせき止めていて白のできることを見出すことは難しい。白の唯一の可能性はキングが盤の上端から近づくことで黒は均衡を保つために非常に注意深く受けなければならない。(参考のためにいうと全部の駒を1段上に移動すると白のこの方針さえ不可能である。)

1.Rb4 Na5!

 ベルガーは次のような引き分けの手順を示した。1…Nd6 2.Ke5 Nb7 3.Ke6 Nc5+ 4.Ke7 Nb7(4…Kb7 は 5.Kd6 Na6 6.Rb1 Nb8 7.Kc5 Nd7+ 8.Kb5 で白が勝つ)5.Rb1 Na5 6.Kd8 Kb7 7.Kd7 Nc4 これでポーンが落ちる。(この局面については図224を参照。)

2.Ke4

 2.Ke5 ならば 2…Kc5! 3.b7 Nc6+ から 4…Kxb4 ですぐに引き分けになる。

2…Nb7 3.Ke5 Nc5

 この手は 4.Kf6 なら 4…Nd7+ とするためである。

4.Kf5 Nd7!

 4…Kb7 は 5.Kf6 Nd7+ 6.Ke7 Nxb6 7.Kd6 で図224のシェロンによる白勝ちの局面になる。

5.b7 Kc7

 これで以前に述べた、白キングの活動の余地がない局面になった。以下は例えば 6.Rb5 Nb8 7.Ke4 Kc6 8.Rb1 Kc7 9.Kd5 Nd7 10.Kc4 Nb8 11.Rb5 Nd7 12.Kb4 Kb8 13.Ka5 Ka7 で引き分けになる。

 図223の左側の局面を中央の方に移動してもやはり引き分けである。黒は既に示したように白キングの侵入しようとする方面に自分のキングを置いて守る。黒は図224のシェロンの勝ち手順を恐れる必要もない。それはもちろんビショップ列、キング列およびクイーン列のポーンには適用できないからである。

 ルーク列のポーンの場合には黒の立場はずっと悪くなる。その理由は簡単で白は場合により有利な状況を作るためにポーンを捨てることができるからである。図223の右側の局面はその面白い例である。黒は白キングにg6の地点に到達するのを許せば負けてしまう。黒の唯一の望みは白ルークがポーンの後ろにあってほとんど活動の余地がなくポーンを守るのが難しいことにある。白は次のような巧妙な手順で勝つことができる。

1.Rh2

 もちろん 1.Ke3 はだめで 1…Ng3 ですぐに引き分けになってしまう。

1…Nf4

 1…Nf6 ならベルガーは次のような勝ちの手順を挙げている。2.Ke3 Kg3 3.Rh1 Kg2(3…Ng4+ なら 4.Ke4 Nf2+ 5.Kf5 Nxh1 6.h5 でポーンが止まらない。又は 3…Nh5 なら 4.Ke4 で後で出てくる手順になる)4.Rd1 Kg3 5.Rd4 で 5…Ng4+ は 6.Ke4 と応じて白が勝つ。

2.Ke3 Nh5

 2…Kg3 はだめで 3.h5! Nd5+ 4.Ke4 Nc3+ 5.Ke5 でポーンが駆け抜ける。

3.Ke4 Ng3+

 3…Kg3 は弱い手で 4.Rh1 Kg2 5.Rd1 Kg3(h3)6.Kf5! で黒はポーンを取ることができない。

4.Ke5 Nh5

 4…Nf1 なら 5.Rf2 Ne3 6.Ke4 である。

5.Ke6 .Kg3

 黒は白キングがg6の地点に到達するのを止めることができない。例えば 5…Nf4+ なら 6.Kf6 Kh5 7.Kf5 Ng6 8.Rh1 でポーンを取ることができない。

6.Rh1 Kg4

 6…Kg2 なら 7.Rd1 Kg3 8.Kf5! である。

7.Kf7 Ng3

 黒が守りきったように見える。8.Rh2 なら 8…Nf1 9.Rf2 Ng3 で、又この手順中 9.h5 なら 9…Nxh2 10.h6(10.Kg6 なら 10…Nf3)10…Nf3! で引き分けになる。しかし意表の手がある。

8.Kg6!

 これが決め手である。黒はルーク捨てを受け入れるしかない。

8…Nxh1 9.h5 Ng3 10.h6

これで白が勝つ。

 黒はポーンを止めることができない。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(337)

「Chess」2013年11月号(4/6)

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パリ・グランプリ大会

スティーブ・ギディンズ


上位者同士の1局でファビアノ・カルアナはヒカル・ナカムラ相手に激しい定跡のグリューンフェルトで不運な錯誤をしでかし、高くついた。

H.ナカムラ – F.カルアナ
第7回戦、グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.f3

 この急戦システムは筋金入りのグリューンフェルト選手たちに対して効果的な選択肢である。彼らはゼーミッシュ・キング翼インディアンに移行するのを嫌うのが普通で、そのためほかの手で泥試合模様の戦いをしなければならない。

3…d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nb6 6.Nc3 Bg7 7.Be3 O-O 8.Qd2 Nc6 9.O-O-O Qd6 10.h4 Rd8 11.Nb5 Qd7 12.h5 a6 13.Nc3 Nxd4

14.hxg6

 ここまではすべて定跡手順で 14…fxg6 がやむなく、15.Bxd4 に 15…Bxd4 で黒が満足ということになっている。しかしカルアナは何か錯誤をおかしたに違いなかった。

14…hxg6?? 15.Bxd4 Qxd4

 違いは 15…Bxd4 だと 16.Qh6 でたちまち白の勝ちになることで、だから黒はクイーンを投げ捨てなければならない。

16.Qe1 Qxd1+ 17.Nxd1

 黒はクイーンの代わりにルークを取っただけで、たぶんカルアナはあまりのことに茫然自失となって指し続けたに違いない。

17…Na4 18.b3 Nc5 19.e5 Bf5 20.f4 a5 21.Nf3 a4 22.b4 Nb3+ 23.axb3 a3 24.Qc3 e6 25.Ne3 a2 26.Qa1 Bf8 27.Nxf5 gxf5 28.b5 c6 29.bxc6 Rdc8 30.Bc4 Rxc6 31.Nd4 Rcc8 32.Kc2 Bb4 33.g4 fxg4 34.f5 1-0

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(この号続く)

2013年12月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(158)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ラトビアギャンビット(続き)

 これが白の構想である。eポーンを除去することにより中央における黒の最後の足場を取り除く。展開の速さに優っているので白駒は黒陣を蹂躙する。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(222)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.2 ルーク対ナイト

 このエンディングも通常は引き分けである。勝ちは例外的な状況でのみ可能である。図222でどのような手段があるか少し分析してみよう。

 図222

 二つの例とも白が黒キングを盤端に追い込んでいる。しかしそれでも白に勝ちはない。下側の局面は次のように進むだろう。

1.Rb2+ Ka1 2.Rb8

 2.Rh2 なら 2…Kb1 3.Rd2 Ka1 4.Kb4 Kb1 5.Kc3 Na2+ となる。

2…Ne2!

 この手は絶対手である。2…Nd3 は 3.Kb3 Nc1+ 4.Kc2 Na2 5.Rb1# で詰まされるし 2…Na2 は 3.Kb3 Kb1 4.Rb7 Nc1+ 5.Kc3+ から 6.Kc2 で黒が負ける。

3.Kb3 Kb1!

 c1から広い方へ逃げようとしている。

4.Re8 Nc1+ 5.Kc3 Na2+

 白は永久チェックを許すか黒キングを逃がすしかない。この局面は引き分けである。

 図222の上の方も典型的な引き分けの局面である。

1.Rb7 Nh6 2.Rh7 Ng8!

 黒ナイトはキングの近くにいなければならない。1870年のシュタイニッツ対ノイマン戦(実際は色が逆)では黒が 2…Ng4 と誤った手を指し次のように負けた。3.Rh4 Ne3 4.Re4! Nd1(4…Ng2 なら 5.Kf5、又は 4…Nc2 なら 5.Kd5)5.Rf4+ Kg7 6.Rf3 Kg6(6…Nb2 なら 7.Kd5 Kg6 8.Kd4 Kg5 9.Rf1 Na4 10.Rb1)7.Ke5 Kg5 8.Kd4 Kg4 9.Rf1 Nb2 10.Rb1 Na4 11.Rb4 これでナイトの逃げ場がない。

3.Rf7+ Ke8 4.Rg7 Kf8!

 この手も絶対手である。4…Nh6 は 5.Rg6 でナイトが取られる。

5.Rh7 Ke8 6.Rf7 Nh6 7.Rf1

 7.Rg7 は 7…Kf8 8.Kf6 Ng8+ 9.Kg6 Ne7+ である。

7…Ng8

 白はこれ以上どうしようもない。

 この最後の局面が1列右にずれていて黒ナイトがh8にいたら黒は完全に負けになるところである。ナイトがキングから分断されているか2段目の隅の近くの不利な枡にいたら白にも勝つ可能性がある。しかしそのような例はもっと専門的なエンディングの本で研究されたい。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(157)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ラトビアギャンビット(続き)

 3.Nxe5 の局面

 この単純な応手で黒が 2…f5 で避けることを期待した白に有利な落ち着いた局面になる。しかし白が最初から激しい戦いを望めば、ほかに二つの有望な選択肢がある。

 最も荒っぽいのは 3.Bc4!? である。3…fxe4(3…d6 はフィリドール防御の 3…f5 の戦型に還元する)に対して白は 4.Nxe5 と応じて 5.Nf7 を狙う。4…d5 と突いてくれば 5.Qh5+ g6 6.Nxg6! と攻撃する。だから黒は 4…Qg5 と応じるのが普通である。そして白は 5.d4! Qxg2 6.Qh5+ g6 7.Bf7+ Kd8 8.Bxg6! でルークを取らせる。

 最近の分析では 8…Qxh1+ 9.Ke2 c6! でc7にキングの逃げ道を作るのが黒にとって最も有望ということになっている。しかし 10.Nc3(11.Bg5+ で黒クイーンを取る狙い)10…Nf6 11.Qh4 で白の攻撃が続く。黒はルーク得にもかかわらず防御がきわめて難しい。

 3.exf5 も難解で、3…e4(3…d6 は 4.d4 e4 5.Ng5 Bxf5 6.f3! で中央が開けて白が有利である)4.Ne5!(5.Qh5+ の狙い)4…Nf6 5.Be2 d6 6.Bh5+ Ke7(6…g6? は 7.fxg6 dxe5? 8.g7+! で新クイーンができる)7.Nf7 Qe8 8.Nxh8 となる。黒はh5の白ビショップを取れるしh8の白ナイトを捕獲しているけれども、白の残りの駒が素早く戦いに加わるので黒は実際には冒険好きなナイトを取れないかもしれない。

3…Qf6

 白が 4.Qh5+ と 4.exf5 を狙っているので黒にはほとんど選択の余地がない。

4.Nc4!

 4.d4 も良い手で、4…d6(4…fxe4? は 5.Bc4 から 6.Nf7 とされる)5.Nc4 fxe4 6.Nc3 で展開が迅速である。しかし白はdポーンのために別の作戦を考えている。

4…fxe4 5.Nc3 Qg6

 黒はeポーンを守りナイトのためにf6の地点を空けた。5…Qe6 で d2-d3 突きを思いとどまらせることができるが、6.Ne3 でまた狙われる。

6.d3!

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(221)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.1 ルーク対ビショップ

 この例でルーク+ポーン対ビショップの分析を終えることにする。一部の例外を除いてこの型のエンディングは白の勝ちであるが非常に精密な手順が必要な場合がある。ルーク対ビショップ+1ポーン又はビショップ+2ポーンのエンディングは通常は引き分けであるが駒の配置の状況によってはいずれかの勝ちになる場合もある。多くの可能性の中から両者が2ポーンを持ち実戦に役立つ局面を選んだ。

 図221

 ポーンは全て同じ翼にありパスポーンはない。そして黒は「正しい」ビショップを持っている。黒はポーンを黒枡に置いて正しい防御態勢を作りビショップは白キングの進入を防いでいる。問題はポーンを進めることにより白が何かできるのか、あるいは黒はハリネズミ陣を守り切ることができるのかということにある。

1.b4!

 すぐに 1…a5! を防ぐことによってのみ白は勝つことができる。もし黒が先にこの手を指せば白がこの後どう指したらよいかは難しくなる。ビショップは対角筋に留まり追い払うことはできない。白キングがb5から進入しようとすれば黒はビショップをc6に置いてキングを1段目と2段目で往復させる。

 白の唯一の可能性は 2.a4 Bf3 3.Rf7 により 3…Be4 に対して 4.b4 axb4 5.Rf4 とすることである。黒は危ないように見えても 5…Bd3! 6.Rxb4 Ka7 7.Kc6 Ka6 8.Rxb6+ Ka5 9.Rb3 Bg6! で引き分けにできる。しかし黒はこのように進める必要もない。代わりに 3…Bg2 4.Rf2 Bh1 として 5.b4 に対して 5…axb4 6.Rb2 Kb7 7.Rxb4 Ka6 8.Rb5 Bf3 9.Kc7 Bd1 10.Rxb6+ Ka5 と指すことができる。だから白は何も勝つ可能性がないことになる。

1…Bf3

 1…a5 なら 2.bxa5 bxa5 3.Kc5 a4 4.Kb6 Kc8 5.Rc7+ から 6.Rc4 で黒のポーンが取られる。

2.a4 Be4 3.a5!

 3.b5 Bf3 は面白い局面になる。ここで白が 4.Rg1 のような当たり障りのない手を指せば黒は抜け目なく 4…a5! と指すことができる。そして 5.bxa6e.p. と取ってくれば黒は 5…Ka7 から 6…Kxa6 と指す。白がポーンを取らなければ黒はビショップを対角筋に保ち白キングはbポーンを攻撃することができない。この着想は1971年モスクワでのシュテイン対バーン戦(ただし色が逆)で見られた。しかしたとえこうすることができなくても黒は 3.b5 の後防御が可能なはずである。白は何かするためには a5 と突かなければならず …bxa5 の後白キングがこのポーンを取り返す。そして黒はビショプをc8-h3の筋に置き白キングがa6に侵入したらすぐに …Bc8+ で追い返すようにする。白キングがc5に戻ったら黒のビショップも対角筋に戻る。白が何かできるかどうかは難しい。

3…bxa5 4.bxa5 a6

 黒は遅かれ早かれこの手を指さなければならない。4…Bd3 は 5.Rg3 の後 6.a6 又は 6.Kc6 とされる。本譜の手の後局面は新たな段階をむかえ白は難解な状況に直面する。白は Rxa6 とルークを犠牲にして勝てるように黒キングをポーンから十分遠くへ追いやらなければならない。エネボルドセンによる次の分析はこれが可能であることを示した。

5.Kc5 Bd3 6.Kb6 Kc8 7.Rc7+ Kd8

 これで白の第1段階が終わった。7…Kb8? は 8.Rd7 で黒の負けとなる。しかし白は黒キングをさらに遠くに追いやらなければならない。

8.Rc5 Be2

 8…Bb5 はもちろん 9.Rxb5 でだめである。8…Ke7 は 9.Rd5 から 10.Kc7 で本譜より進行が早くなる。

9.Kb7 Kd7 10.Rd5+ Ke6 11.Rd2 Bc4

 ビショップがどこへ逃げても大した違いはない。白は自分の構想を邪魔されずに進めることができる。

12.Kc7 Bb5 13.Rd4!

 黒を手詰まりに追い込んで黒キングをさらに遠くへ追いやる。ここで 13…Ke5 とくれば 14.Rd6 で本譜と同じになる。

13…Bf1 14.Rd6+ Ke5

 14…Ke7 は 15.Rd1 から 16.Re1+ で白が勝つ。

15.Kc6 Be2 16.Kc5 Bb5 17.Rb6 Be2

 17…Bd3 なら 18.Rb3、17…Bf1 なら 18.Rb1 でやはりルークがd列に行ける。(訳注 「e列に行ける」の間違いのようです。)

18.Rb8

 この手は 18.Rb2 Bd3 19.Rb3 より早い。本譜の手に対して 18…Bb5 は 19.Rxb5 で負ける。

18…Bd3 19.Re8+ Kf6

 19…Kf5 なら 20.Kd4 でもっと早く勝つ。

20.Kd6

原訳注 20.Kb6 の後 21.Ra8 から 22.Rxa6 で本譜の手を8手短縮できる。

20…Kf5

 20…Kf7 なら 21.Re7+ Kf8(21…Kf6 なら 22.Re3)22.Ke6 から 23.Kf6 で白が勝つ。

21.Re5+ Kf4 22.Kd5 Bb5 23.Kd4 Ba4

 23…Bf1 なら 24.Re8 である。

24.Re6 Bb5 25.Rf6+ Kg5 26.Rf8

 黒キングを十分遠くまで追いやった。もしまだ不十分ならば 26.Ke5 で同じ過程を繰り返していたところである。

26…Kg6 27.Kc5 Kg7 28.Ra8 Kf7 29.Kb6 Ke7 30.Rxa6

これで白の勝ちになる。

 非常に長い手順であった。しかし黒キングを追う基本的な着想が分かれば理解するのは容易であろう。

(この節続く)

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布局の探究(78)

「Chess Life」1993年9月号(3/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

白は中央に向かって取るべきか(続き)

C.fxg3 対 hxg3

 この重要な取り返しの問題は白のクイーン翼ビショップがg3に回り込み、黒のキング翼ビショップまたはキング翼ナイトによって交換されるときに起こる。

(1)スラブ防御の交換戦法(D13)で黒はクイーン翼ビショップの早い展開を目指すか、まずキング翼の展開に集中するかを選択できる。後者のやり方の場合重要な手順は次の戦型である。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.cxd5 cxd5 5.Nc3 Nc6 6.Bf4 e6 7.e3 Bd6 8.Bg3

 白がd6で交換しないのは、何も得がないのに黒クイーンを展開させるからである。代わりに理屈に合わないが、進んで二重ポーンを受け入れ、手損してまで黒からの交換を誘う。

8…Bxg3

 ここで白はどのように取り返すのが良いだろうか。

(a)9.fxg3?!

 この手は奇妙である。白は形の悪いeポーンを残し中央への影響力も減らしている。唯一の有利な材料の半素通しf列の生かし方も不明である。、

(b)9.hxg3

 これが正しい主眼の取り返し方である。白の中央の影響力がいくらか増し、右翼の連鎖ポーンは無傷のままで、黒がキング翼にキャッスリングすれば半素通しh列が効果的な攻撃経路になる。白が楽に布局の有利を保持していることは確かである。例えば1979年ソ連でのV.チェーホフ対カカゲルドイェフ戦は 9…Qd6 10.Bd3 Bd7 11.Rc1 Rc8 12.Bb1 h6 13.a3 O-O 14.Rh4! e5(さもないと 15.g4 から 16.g5 が強力である)15.dxe5 Nxe5 16.Nxe5 Qxe5 17.Qd4! と進んだ。

 h列での攻撃の危険性を最小限にするために、現代の定跡では白がキング翼にキャッスリングしたあとでだけ黒はg3で交換すべしとしている、だから 8…O-O のあと 9…b6 から 10…Bb7 と指す方が正確だと考えられている。

(2)しかしクイーン翼インディアン防御の諸刃の剣の戦型(E12)ではどちらの取り返し方も正しい。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.Nc3 Bb7 5.Bg5 h6 6.Bh4 g5 7.Bg3 Nh5 8.e3 Nxg3

 図6

 黒のキング翼での意欲的なポーン突きは根本的にそちらの方面の自陣を弱め、白にf列またはh列で有利な見通しをもたらすことになる。また、どちらのポーンで取り返しても白キングは十分安全なままである。

(a)9.fxg3!?

 これは棋理に反していることは明らかだが、f列で展望が開ける可能性がある。1979年リガ・インターゾーナルでのO.ロマニシン対Z.リブリ戦にそれがよく表れている。9…Bg7 10.Bd3 d6(10…Nc6 の方が安全)11.O-O Nd7 12.Bc2 Qe7 13.Qd3 a6?!(13…O-O-O の方が安全)14.Nd2 c5 15.Nde4 f5?! 16.dxc5!! Nxc5 17.Nxd6+ Kf8(17…Kd7 でも白は 18.Nxf5+! と指す)18.Nxf5! exf5?(18…Nxd3 19.Nxe7+ で収局にするしか引き分けの可能性はなかった)19.Qxf5+ Kg8 20.Nd5! Qe8 21.Rad1 Rc8 22.b4 Ne6 23.Nxb6 Rc7 24.c5 h5 25.Rd6 Rh6 26.Rxe6! 黒投了

(b)9.hxg3

 これは戦略的に欠点がなく、黒のhポーンに圧力をかけてキング翼キャッスリングを思いとどまらせる。1979年ソ連でのM.タイマノフ対L.ポルガエフスキー戦では激闘になった。9…Bg7 10.Bd3 Nc6 11.g4 Qe7 12.Qa4 a6 13.Rc1 Nb4 14.Bb1 c5 15.a3 cxd4 16.Nxd4 Nc6 17.Be4 Bxd4 18.exd4 f5 19.Bf3 fxg4 20.Bxg4 Nxd4 21.Bh5+ Kf8 22.O-O ここでGMタイマノフは黒キングが薄いので白にポーンの代償が完全にあると考えていた。試合は41手で引き分けになった。

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カテゴリ: 布局の探究1

開放試合の指し方(156)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

ラトビアギャンビット

1.e4 e5 2.Nf3 f5

 この手でラトビアギャンビットになる。17世紀の最強選手の一人のジョアッキーノ・グレコにちなんでグレコ逆ギャンビットと呼ばれることがある。しかし1900年代初頭にラトビアの一団の研究家たちが多くの時間をこの防御に注ぎ、今日知られていることの基礎の多くを発見した。だから当然定跡名に値する。

 2…Nc6 や 2…d6 と異なり 2…f5 は黒の当たりになっているeポーンを守らない。代わりに白のeポーンに反撃している。この点でラトビアギャンビットはペトロフ防御(第6章)に似ている。しかしペトロフ防御における黒の2手目(2…Nf6)は非常に望ましい展開の手である。それに反して 2…f5 は何も展開せず、黒キングをe8-h5の斜筋でさらしている。だからラトビアギャンビットはペトロフ防御より劣ることが予想され、分析もその評価を後押ししている。

 精神的にはラトビアギャンビットはキング翼ギャンビットの方に近い。しかし逆番で黒がキング翼ギャンビットを指そうとするのは、疑問視せざるを得ない。なぜならキング翼ギャンビットに対する多くの堅実な防御は、1手多いならはるかに強力だからである。それでもこの布局には不注意な者が引っかかりやすい落とし穴が多い。

3.Nxe5

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(220)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.1 ルーク対ビショップ

 図220

5.Kh5

 これはグレツキーとコルニッツの考えた手である。クリングの考えた次の手順はもっと簡明である。5.Rf3+ Kg8 6.Rc3! この後 6…Be4 ならば 7.Rg3+ Kf7 8.Kg5! で白が勝つ。6…Bb1 ならば 7.Rg3+ Kf7 8.Rg7+ Kf8 9.Rg5! から 10.Kh5 で白が勝つ。6…Ba4 は 7.Rc8+ Kf7 8.Kh7 Bb5(8…Bb3 なら 9.Rc1、又 8…Bd1 なら 9.Rc4)9.Rd8! Bc6(a4)10.Rd4(d2)で白が勝つ。

5…Kf6

 本譜の手順の要点は 5…Bd1+ 6.Kg5 Kg7 7.Rc3! の後ビショップがg8-b1の斜筋に戻るのが間に合わないことにある。例えば 7…Be2 は 8.h5 Bb5(f1)9.h6+ Kh7 10.Rc7+ Kh8 11.h7 から 12.Kh6 で白が勝つ。

 5…Bb1(h7)なら 6.Rg5、5…Be4 なら 6.Kg5 である。5…Ba4 なら 6.Kg5 Kg7 7.Rc3! でポーンの前進に対して黒は成すすべがない。

6.Rg5 Bd1+

 6…Bf5 なら 7.Kh6 Bd3 8.Rg3 Be4 9.Rg4 から 10.Rf4+ で白が勝つ。

7.Kh6 Kf7

 白は先手を得てルークをf列に回すことを狙っていた。例えば 7…Bf3 なら 8.Rg1 Be2 9.Rg2、7…Bb3 なら 8.Rb5 である。

8.Rg7+ Kf6

 8…Kf8 なら 9.Kg6 から 10.Kf6 で白が勝つ。

9.Rg1 Be2 10.Rg2 Bd3 11.Rf2+

これで白が勝つ。

(この節続く)

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開放試合の指し方(155)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

フィリドール防御(続き)

参考棋譜2(続き)

 この着想が勝因だった。白の狙いは 19.Rad1 から 20.Rd6 である。

18…Qb8

 18…Re8 なら 19.Rfe1 である。

19.Nf5+ Kg6 20.Nd6!

 21.Qg3+ を狙っている。

20…Kg7 21.Rfe1 Rd8 22.Rad1 Rd7 23.Rd4! Qc7

 23…h5 は 24.Qg5+ でナイトが取られる。

24.Rg4+ 黒投了

 24…Kf8 25.Qxf6 から 26.Qh8# で詰みがある。この試合は「狭小な陣形はゆっくり開放しなければならない」という金言の実証となっている。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(219)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.1 ルーク対ビショップ

 ルーク列のポーンが4段目またはそれ以下ならば次の例のように白は「正しい」ビショップに対しても勝つことができる。

 図219
グレツキーとコルニッツ、1863年

 白は主作戦を始める前にまず準備的な手を指す。

1.Kh6 Kg8

 前に見たように 1…Bd5 は 2.Rd7 Be6 3.Rd8+ Bg8 4.Kg5 Kg7 5.Rd7+ で、図218の左側の黒の2手目の解説のように黒が負ける。

2.Rg7+ Kf8

 2…Kh8 は 3.Re7 Bd5 4.Re8+ で1手目の解説のとおりになる。

3.Rg5!

 主作戦の始まりである。勝つためには白キングはf6に行かなければならないがビショップが経路のg6を阻止している。Rg1 から Kg5 は …Kg7 とされる。だから白はもっと巧妙に指さなければならない。本譜の手は次に 4.Kh5 から 5.Kg4 を狙っている(これでなぜ白ポーンが5段目にいてはいけないかが明らかとなる)。黒がこれを 4…Bf3+ で邪魔すれば 5.Kg6 で白が勝つ。なぜなら 5…Kg8 なら 6.Kh6+ で 6…Kf8 は 7.Rf5+ でビショップが取られるので黒キングが隅に行かなければならないからである。

3…Kf7

 3…Bd3(c2)なら4.Kh5 Be2(d1)+ 5.Kg6 Kg8 6.Rd5(c5)で白キングがg7に行けるので白が勝つ。本譜の手に対して 4.Kh5 は 4…Bf3+ でだめである。

4.Rg3!

 狙いは 5.Kg5 Kg7 6.Kf4+ である。

4…Bc2

 4…Bb1 は 5.Rg7+ Kf8(5…Kf6 は 6.Rg1 Bd3 7.Rd1 から 8.Rf1+ 又は 8.Kh7 で白が勝つ)6.Rg5! で黒は 7.Kh5 を防ぐことができない。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(106)

「Chess Life」2005年10月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

対メラン攻撃法(8.Be2)(続き)

戦型A)1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 e6 4.e3 Nf6 5.Nf3 Nbd7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4 b5 8.Be2 a6 9.e4

 この戦型の主要な計略の一つは、白のビショップがe2でなくd3にいるつもりで黒が 9…c5 と突くと、白が 10.e5 突きで非常にいい体勢になることである。10…cxd4 のあと白は 11.Qxd4! Bc5 12.Qf4 と指すことができ明らかに優勢になる。また 10…Nd5 も 11.Nxd5 exd5 12.dxc5 でd5に黒の孤立ポーンが残るので白が良い。

9…b4

 黒は白の中央での進攻を邪魔しようとする。

10.e5

 これがこの戦型全体の主眼の着想である。

10…bxc3 11.exf6 Nxf6

 11…cxb2 なら白は 12.fxg7 bxa1=Q? 13.gxh8=Q と豪快にいく。この変化では黒キングの方が安全な場所を見つけるのに苦労するので白が優勢である。黒は 12…Bxg7 13.Bxb2 の方が良いが、黒の方が弱点が多いのでこれも白が少し優勢である。

12.bxc3 Bd6

 すぐに 12…c5 と突くのは 13.Ne5 で黒が Qd1-a4+ や Be2-f3 のようないくつかの不快な狙いにすぐに直面しなければならないので時期尚早である。

 ここで白はいくつかの作戦を選択できる。

13.Nd2

 これはこの型の局面における典型的な再編成の作戦である。黒の最善の応手は 13…O-O 14.Nc4 Be7 15.Bf3 Qc7 16.Bg5 Nd5 で、黒枡ビショップ同士を交換してから …c6-c5 突きを目指す。

13.c4 O-O(13…c5 は 14.dxc5 Bxc5 15.Qxd8+ Kxd8 16.Ne5、途中 14…Qa5+ なら 15.Bd2 Qxc5 16.O-O O-O 17.Be3 Qc7 18.c5! Bxc5? 19.Rc1 Nd7 20.Bxc5 Nxc5 21.Qd4 で白の方が良い)14.c5 Bc7 15.O-O a5 16.Bg5 は白の陣地の方が広いが、2000年勝ち抜き世界選手権戦のアレクサンドロフ対バレエフ戦では白がいくつかの悪手を出して負けた。

13.O-O O-O 14.Bg5 h6 15.Bh4 c5 16.Rb1

 昨年リンズボーグでのアナトリー・カルポフとのお好みブリッツ戦で私は 16.dxc5 と指したが、本譜の手はそれより良い。

 白が少し優勢である。

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開放試合の指し方(154)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

フィリドール防御(続き)

参考棋譜2(続き)

10.Nxe4!

 白が 10.Qxe4 と取らなかったのは 10…d5 11.Bxd5(11.Nxd5? は 11…cxd5 12.Bxd5 Nf6 または 12.Qxd5 Nb6! 13.Qxd8 Rxd8 で駒損になる)11…Nf6 12.Bxf7+ Rxf7 となって黒の狙いの方がポーンより価値があるからである。

10…d5 11.Nf5! dxc4?

 黒はこの手で負けにした。11…dxe4 12.Rd1! Bf6 13.Qxe4 Qa5 と指さなければならないが、それでもd列の支配と好所のナイトで白が優勢を保っている。

12.Bh6! Nf6

 12…gxh6 には 13.Qg4+ Bg5(絶対手)14.Nxh6+ Kg7 15.Nf5+ Kg6(15…Kh8 16.Nxg5)16.f4! で駒を取り返す。

13.Neg3 Bxf5 14.Nxf5 gxh6 15.Nxe7+ Kg7 16.Nf5+ Kg6 17.Ne7+ Kg7 18.Qe5!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(218)

第4章 ルーク・エンディング

4.6 ルーク対小駒

4.6.1 ルーク対ビショップ

 図218

 左側の局面は黒が「正しい」ビショップを持っていることと白のポーンが5段目でも進み過ぎのために白が勝てない。

1.Ka6

 もしポーンが6段目にあったらこの手さえも不可能である。しかし本譜の手は受け側が間違う可能性がある。

1…Kb8 2.Rb7+ Kc8!

 黒は 2…Ka8? は避けなければならない。それは 3.Rd7! Be5(3…Bf6 は 4.Rf7)4.Rd8+ Bb8 5.Kb5 Kb7 6.Rd7+ Ka8 7.Kb6! Bg3(7…Bf4 又は 7…Bh2 なら 8.Ra7+ Kb8 9.Re7 又は 9.Rg7 で白が勝つ)8.Ra7+ Kb8 9.Rf7!(a7-g1からのビショップのチェックを止める)9…Ka8(9…Kc8 なら 10.a6)10.a6 Be5 11.a7 Bd4+ 12.Ka6 で白が勝つ。

3.Rb4 Be3

 ビショップはこの斜筋にとどまり黒キングはc8、c7及びb8の枡に居座る。

4.Rb6 Bf2

 もちろん 4…Bxb6 はだめで 5.axb6 で白の勝ちになる。

5.Ka7 Kc7!

これで引き分けになる。

 白の狙いは 6.Ka8 で勝つことだった。最後の局面で 6.Ka6 なら 6…Kc8 で元に戻るので白は何も進展を図ることができない。

 しかし黒が「間違った」ビショップを持っていれば(即ちポーンの昇格枡に利いていれば)白は苦労せずに勝つ。図218の右側の局面がその例である。

1.Kg4 Bc1 2.Kf5

 あるいは最初に 2.Rc3 として 3.Rc6 から 4.Kf5 としても良い。

2…Bd2 3.Rb3 Bc1 4.Rb6+ Kh7

 4…Kxh5 は 5.Rb1 でビショップが取られる。

5.h6! Bd2

 5…Bxh6 なら 6.Rb7+ Bg7 7.Kg5 で白が勝つ。

6.Rg6!

 6.Rf6 でも 6…Bc1 7.Kg4 Bxh6 8.Kh5 の後 9.Rf7+ から 10.Kg6 で白の勝ちになるが本譜の手の方が簡明である。

6…Bc1

 6…Bxh6 なら 7.Kf6 から 8.Kf7 で白が勝つ。また 6…Bc3 なら 7.Kg5 から 8.Kh5 で白が勝つ。ゆえに黒は待機する。

7.Rg7+ Kxh6

 7…Kh8 なら 8.Kg6 Bxh6 9.Rh7+ である。

8.Rg6+ Kh7

 8…Kh5 は 9.Rg1 でビショップを失う。

9.Kf6

次に 10.Kf7 で白が勝つ。

 図213の勝ちの形になる。

(この節続く)

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開放試合の指し方(153)

第10章 そのほかの布局 ジャック・ピーターズ(続き)

フィリドール防御(続き)

 そして今度はフィリドール防御がどのようにうまくいかないことがあるのかの例である。

参考棋譜2
白 V.ツェシュコフスキー
黒 A.ルティコフ
アルマアタ、ソ連、1969年

1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.d4 Nf6 4.Nc3 Nbd7 5.Bc4 Be7 6.O-O O-O 7.a4 c6 8.Qe2 exd4? 9.Nxd4 Nxe4?!

 黒は手筋(両当たりの策略)で白の中央を破壊し始めた。しかしこの手筋には欠陥があった。黒はもう1手前で 8…b6 または 8…Qc7 と指すべきだった。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方