2013年10月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(187)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

白キングがもっとポーンから離れていても勝てるがさらに苦労する。例えば白キングがa2にいる図187を考えてみよう。

 図187

 白の勝つ手順は次のとおりである。1.Rg5 又は 1.Kb2 Kh6 2.Rg5! である。1…Rh4 2.h6+ があるので黒ルークはh列を離れることができない。2.Kb3 Rh1 3.Kc4 3.Kc2 Rh4 4.Kd3 Rh1 5.Ke2 Rh4 6.Kf2 は 6…Rh2+! 7.Kg3 Rh1 8.Kg2 Rh4 となって白が先手を取ることができないので早い勝ち方とはならない。3…Rc1+ 4.Kd5 Rd1+ 4…Rc2 は 5.Re5 Kh6 6.Ke6 である。5.Ke6 Re1+ 6.Kd6 Rd1+ 7.Rd5 Ra1 7…Re1 なら 8.Kd7 Kh6 9.Kd8 から 10.Rd7 を狙う。8.Ke7 Ra6 8…Re1+ なら 9.Kd8! Kh6 10.Rd7! Kxh5 11.g7 Rg1 12.Ke8 である。9.Rd7 Rc6 9…Rb6 なら 10.Kd8+ Kg8 11.Kc7 Ra6 12.Rd6 から h6 である。10.Kd8+ Kg8 11.Re7 Kf8 11…Rd6+ なら 12.Kc7 Ra6 13.Kd7 から 14.Re6 を狙う。12.Kd7 Ra6 13.Re6 Ra7+ 14.Kd6 Ra6+ 15.Ke5 これで白が勝つ。

 図186からの本手順を続ける。

4…Rh4 5.Kg3 Rh1

 5…Ra4 なら 6.Rc7+ Kg8 7.h6 である。

6.Rc7+ Kg8 7.Kg4

 後はキングをh6に進めて白が簡単に勝つ。

(この節続く)

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開放試合の指し方(122)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜(続き)

 これが前述した収局である。今のところ白はポーン得で、もし黒が「何もしない」と-例えば 12…Nd7-白は単にキャッスリングして(13.O-O-O)いいポーンを持ちいい態勢になる。

 だから黒はすぐにポーンを取り戻さなければならない。それには手段が二つあるが、どちらも白が展開でかなり優勢になることができる。単純な方の 12…Bxc2 は実戦の手である。もっと手の込んだ方は 12…Be4 である。そして 13.c4?! Bxf3 14.gxf3 Nd7 と進むと、良いナイトとはるかに優るポーンの形が黒のポーン損を補うのでいい勝負になる。しかし白は 13.Ng5! Bxd5 14.O-O-O で強力な主導権を握る。ここで黒はどう指すべきか。14…Bxa2? は 15.c4 でビショップが危うくなるので、黒はすぐに 15…b5 で救出しなければならない。また 14…Rd8 ならば 15.Re1+ でも 15.c4 Be6 16.Rxd8 でも白が良い。さらに 14…c6 なら 15.Bd3 で 16.Rhe1+ が非常に嫌な狙いになる。最後に 14…Be6 は 15.Nxe6 fxe6 16.Bc4 から 17.Rhe1 でeポーンが落ちることになる。

12…Bxc2 13.Kd2! Ba4

 黒はビショップをどこに逃がすべきだろうか。13…Bg6 なら 14.Re1+ Kd8 15.Nd4 で白がまた非常に強く締め付け、黒はビショップが捕まらないように気をつけなければならない。

14.Re1+

 これで黒キングには完全に満足できる居場所がない。まだましなのは 14…Kd8 15.Re4 Be8 だが、16.Bc4 b5 17.Bb3 Na6 18.Rhe1 で白の圧力が非常に不快である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(186)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 意外なことに白キングが連結ポーンからある程度遠くに離れていると引き分けの局面が多くなる。次の例を考えてみよう。

 図186
カスパリアン

 一見したところでは白キングがh6に行けば黒は投了するしかないので何の問題もないように思われる。しかし黒の隠れた手段を良く検討してみると白には少なからぬ困難があることが分かってくる。白の方針はhポーンを攻撃している黒ルークを追い払い自分のルークが動けるようにすることである。このためには白キングがg2に行かなければならないがそうすると黒は …Ra3 と指す。そこで白が Rb7 とルークを動かすと黒は …Ra5! とhポーンを当たりにする。白キングの位置が悪くて h6 と指すと …Rg5+ から …Rxg6 とポーンを取られてしまうので白はルークをh7に戻さなければならない。

 図の局面から白がすぐにh6と指すと黒はルークを …Rh5-g5 と動かして白に Rg7+ とさせる。その時黒キングは …Kh8! と隅に逃げ込みステイルメイトの状況を作り出す。そのため白は1ポーンを失うか黒ルークによる永久チェックを許すしかなくなる。だから白としては自分のキングをg列に置かない状態で自分のルークをhポーンの守りから解放しなければならない。これは局面が黒の手番ならば可能であるが白の手番ならば自分が手詰まりのために相手に手を渡すこともできない。言い換えれば黒の手番ならば黒の負けで白の手番ならば引き分けにしかならない。

1…Ra3

 黒は白キングに3段目を越えさせるわけにはいかない。本譜の手の代わりに 1…Kf8 と指すと 2.Rf7+ Kg8 3.Rf5 とされる。図でもし白の手番ならば何も進展が図れない。例えば 1.Kf1 ならば 1…Rf3+(又は 1…Rh2)2.Kg2 Ra3 3.Kf2 Rh3 である。白キングがキング翼から離れると黒ルークはh3とg3を往復する。

2.Rc7 Rh3

 白キングがg列にいないので 2…Ra5 は 3.h6 で黒の負けになる。

3.Rc5 Kg7 4.Kg2

 黒ルークが退かなければならないので白が比較的楽に勝てる。

(この節続く)

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布局の探究(72)

「Chess Life」1993年7月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

開放試合で白は中央に向かって取るべきか

 前回は布局や中盤戦初期に中央に向かって取り返すべきか中央から遠ざかるように取り返すべきか決めなければならない難しい状況を論じた。これは黒にとってしばしば非常に繊細な決定となる。たとえ主眼の「中央に向かって」取り返したくても、例えば展開の遅れやキングの安全の問題につながるかもしれない。

 白にはそのような心配がない。白は先着の優位と共に指し始めるので、どのように取り返しても少なくともまだ互角である可能性が高い。そしてたとえ取り返しが布局定跡によって黒が完璧な手順で互角にできると判定されているかもしれなくても、生じる局面が好きで得意ならば実戦的には指すのをやめる理由はない。いずれにしても全般的な原則は不変である。他に特別な理由がない限りつねに中央に向かって取り返せ。分かっていることは白には取り返しのためにより多くの可能性があり、開放試合と閉鎖試合とではかなり違うということである。今回は開放布局のための重要な選択肢を考察し、次回は閉鎖試合の状況を論ずる。

(A)axb3 対 cxb3

 出現例が断然多いのはシチリア防御の主手順である。b3の地点で取られる駒はキング翼ビショップかd4から退却したナイトで、取る駒は黒のクイーン翼ビショップかクイーン翼ナイトである。中央への目的と長期的なポーンの形の良さのために、aポーンで取り返した方が良いことは容易に分かる。さらに白のクイーン翼ルークのためにa列が素通しになるので、黒のaポーンに対して早くから圧力がかかり、黒がクイーン翼ルークを主眼のc列へ展開するのが遅れることになる。白がcポーンで取り返せば次のようなポーン陣形ができあがる。黒のaポーンとbポーンが白のaポーンと二重bポーンを押さえ、キング翼で黒の良形の連鎖5ポーンが白の4ポーンと対峙する。正しい判断をするための考察の材料は、ドラゴン戦法のユーゴスラビア攻撃によく現れている。

(1)axb3 と取る方が良い

 白は他に理由がなければ主眼の取り返しをすべきである。ユーゴスラビア攻撃の最初の10年ほど(1954年から1964年)は、黒は白のキング翼ビショップがc4に来たあとかなり急いで交換で消そうと努めた。その手順は次のとおりである。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 O-O 8.Qd2 Nc6 9.Bc4 Na5 10.Bb3 Nxb3

 白には取り方が3通りある。

 11.cxb3?! は目的がなく、11…d5! 12.e5 Ne8 13.f4(13.Ndb5 a6!)13…f6! で黒が既に反撃が有望で少し優勢になる。

 11.Nxb3 は中央に陣取っていたナイトが退却し、c4の地点に何も利いていない。1961年ソ連選手権戦でのA.ギプスリス対B.グルゲニゼ戦では 11…Be6 12.O-O-O a5 13.Nd4 Bc4 14.Bh6 Bxh6 15.Qxh6 e5 と進んで黒が互角にした。

 11.axb3 この普通の取り返しのあと白ははっきり優勢を保持する。2例をあげる。

 (a)11…d5 12.e5 Nd7 13.f4 Nc5 14.Ndb5 ヘンキン対チェレプコフ、ソ連、1954年

 (b)11…a6 12.h4 Bd7 13.h5 Rc8 14.Bh6 e5 15.Nde2 Be6 16.g4 Qc7 17.Ng3 b5 18.b4 これは1965年挑戦者決定準決勝番勝負のB.スパスキー対E.ゲレル戦第8局で、白の攻撃が全開なのに黒は攻撃になっていなかった。白は25手目でキャッスリングし39手目で圧勝した。

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開放試合の指し方(121)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜
白 D.ブロンシュテイン
黒 バイスマン
サンドミエシュ、1976年

1.e4 e5 2.f4 d5 3.exd5 e4 4.d3 Nf6 5.dxe4! Nxe4 6.Nf3 Bc5

 6…Bf5?! は白が 7.Be3! と指して黒ビショップがc5の地点に腰を落ち着けるのを妨げるので何の見込みもない。そうなると黒には失ったポーンの代償が何もなく、1914年サンクトペテルブルクでのアリョーヒン対タラシュ戦では黒が 7…c6 8.Bc4! b5?! 9.Bb3 c5 で事態を打開しようとしたが、10.d6! c4 11.Qd5! ですぐに破滅した。

7.Qe2 Bf5 8.Nc3 Qe7 9.Be3! Bxe3 10.Qxe3 Nxc3 11.Qxe7+ Kxe7 12.bxc3

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(185)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 白ポーンが中央列に近ければ勝つ可能性は非常に大きくなるのでそのような局面を分析するのはあまり意味がない。しかしナイト列とルーク列の連結ポーンの例を終える前にクリングとホルビッツによる次の興味深いスタディを紹介しておかなければならない。

 図185
クリングとホルビッツ、1851年

 白は勝つまでに大きな困難を克服しなければならない。1.Ka5 Rh5+ 2.Rb5 Rh8 3.Rb6! 勝つためにはこの手しかない。3.Rc5? は 3…Rh6! で引き分けになるしキングが動けばルークから横からチェックされた後h8に戻られる。もし局面がもっと下だったら本譜の手は成立しないので引き分けになる。3…Rh5+ 4.Kb4 Rh4+ 5.Kc5 Rh5+ 6.Kd4 Rh4+ 7.Ke5 Rh5+ 8.Kf4 Rh4+ 9.Kg5 Rh8 10.Rc6! Kb8 白から 11.Rc8 を狙われているのでこの手は仕方ない。11.Kg6 Rf8 12.Kg7 Rd8 13.Rf6 この後 14.Rf8 で白の勝ちとなる。

(この節続く)

2013年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(120)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 ここで白の狙いは単純にキャッスリングすることで、そのあとは得しているd5のポーンで願ってもない局面になる。だから黒は 10…Nxc3 11.Qxe7+ Kxe7 12.bxc3 で収局に持っていくしかない。このあとの参考棋譜でもっと詳しく解説する。

 全体的な結論は-「詩的」な正当化はまったくない-理論的には非常に面白く創造的で大胆なファルクベア・ギャンビットは、完璧な手順で白が収局で優勢になれるので完全に満足というわけにはいかない。

(この章続く)

2013年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(184)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 次の例の図184は敵キングにポーンせき止めの絶好の地点を許した場合の白の困難さを良く示している。

 図184
シェロン、1926年

 白ポーンは遠くまで進んでいて白ルークも良い位置にいるが勝つ手段はない。その主たる理由は黒キングが絶好の地点にいることによる。

1.Kc8 Rg7 2.Rd7 Rg8+ 3.Rd8 Rg7 4.Kb8

 この手は間接的にポーンを守っている。4…Kxb5 ならば 5.a7 である。本譜の手の代わりに 4.Rd6+ ならば 4…Kxb5 5.Kb8 Rg8+ で引き分けになる。

4…Rh7 5.Rd6+

 5.Re8 は 5…Rg7 6.Re6+ Kxb5 7.a7 Rg8+ 8.Kb7 Rg7+ で引き分けになる。

5…Kc5

 5…Kxb5 はだめで 6.a7 Rh8+ 7.Kc7 Rh7+ 8.Rd7 で白が勝つ。

6.b6

 6.Re6 なら 6…Kxb5 で良い。6.a7 は 6…Kxd6 7.b6 Kc5、6.Rd8 は 6…Kb6! で引き分けになる。

6…Kxd6

 これで 7.b7 Rh8+ から 8…Kc7 でも 7.a7 Kc5 8.b7 Kb6 でも引き分けである。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(101)

「Chess Life」2005年9月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ベンコー[A43]

 ベンコー・ギャンビット(ヨーロッパではボルガ・ギャンビットとしても知られる)は 1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 で始まる。ハンガリー系米国人のGMパル・ベンコーが指し始めて好成績をあげて以来、「ベンコー」は米国で流行した。長年ののち何人かのソ連のグランドマスターもその世界的な流行に貢献した。ベンコーは早期にポーンを犠牲にしてa列とb列を素通しにしてクイーン翼で動きやすくする面白いギャンビット布局である。もちろんベンコー・ギャンビットに対して適切に備えれば、白は客観的には何も恐れることはない。しかしたとえポーン得でも誰もが防御側に回るのを好むわけではない。これが今日、代わりに 2.Nf3 と指すことによりベンコーのギャンビットのような局面を全面的に避けることを多くの選手が選択する理由である。

 本稿では黒がそれでも 2.Nf3 c5 3.d5 b5 でベンコー・ギャンビット流をつらぬくいくつかの戦型について解説する。もちろん黒には例えば 2…d5 や 2…g6 で他の布局に移行する選択肢もある。

白の基本的な作戦は何か

 4.Bg5 のあと白は 5.Bxf6 と交換することにより黒に二重ポーンを作らせるつもりである。この交換のあと白の主要な作戦は中央を支配することである。白はナイトのために重要なc4の地点を支配するために早く a2-a4 と突くこともよくある。

黒の基本的な作戦は何か

 f6での交換のあと黒は通常は双ビショップの優位を得ることになる。だから目標は斜筋を素通しにしてビショップを働かせることである。a4-b4、…b5-b4 とポーンを突いたあと黒はc4の地点の支配をめぐって争うべきである。

それで評決はどうなっているか

 この反ベンコー戦法では白はより落ち着いた試合に持っていき、ほとんどのベンコー・ギャンビットの戦型よりも活発に動く。白は中央をしっかり支配するのが普通で、黒は長く守勢に追い込まれないように注意しなければならない。

 出だしは次の手順で始まる。

1.d4 Nf6 2.Nf3 c5 3.d5 b5 4.Bg5

 すぐに 4.a4 なら黒は 4…Bb7 と応じる。

 4.Bg5 で今月の主題の局面になる。

 まず黒が白の作戦を無視する戦型から見ていこう。

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開放試合の指し方(119)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 展開しながら攻撃するのが正しいやり方である。黒は当たりのナイトを守らなければならない。8…Bb4? と逆に釘付けにするのは 9.Qb5+ でビショップを取られるし、8…O-O? でナイトを犠牲にするのは 9.Nxe4 Re8 10.Ne5 で不十分である。

8…Qe7 9.Be3!

 この手は本来理にかなっているが、それでも気づきにくい。白の望みは駒を展開し黒の黒枡ビショップの斜筋を無効にすることである。しかしこの手は戦力が互角の収局になり、正確な評価は一見しただけでは分からない。実際は数限りない実戦経験と定跡の研究とで明らかになったように、その収局は白が明らかに有利である。9.Be3! を最初に指した選手は恐る恐るだったに違いないが、我々は自信満々で指すことができる!

 局面が開放的なためここでも 9.Nxe4?! Bxe4 10.c4 と欲張っている暇はない。黒は 10…c6! で局面をさらに開放し、ポーンの代わりに多くの代償を得る。

9…Bxe3

 本譜と同様になる別の面白い手は 9…Nxc3 10.Bxc5 Nxe2 11.Bxe7 Nxf4 で、ここで白の最強の手は黒キングにキャッスリングをさせない 12.Ba3! である。黒がどう指そうと黒陣に対する白の圧力は非常に強力になる。12…Nd7 なら 13.O-O-O Be4(13…O-O-O? は 14.Rd4! Ng6 15.g4! で負ける)14.Ng5! Bxd5 となって、白には 15.Re1+、15.Bb5、15.Rd4 の楽しい選択があるし、ブロンシュテインが1968年リガでタリ相手に指した大胆な 15.g3!? さえある。12…Nxd5 とすぐにdポーンを取るのも 13.O-O-O c6 14.Ng5! Nd7 15.Bc4! Be6 16.Rhe1 で白の攻撃が好調になる。

10.Qxe3

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(183)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 図183 白の手番
(ツカートルト対シュタイニッツ、1883年)

11.Rh2!

 黒を手詰まりに追い込みポーンをg5と突く手順を得ようという手である。しかし白はそもそもこのような手段に頼るべきでない。

11…Ra1 12.g5+ Kg7 13.Rf2

 白はどちらのポーンも動かすわけにいかない。また横からのチェックに備えてルークを比較的近くに置いておかなければならない。

13…Rh1+

 13…Ra4+ は本譜のように 14.Kg3 Rb4 15.Rf4 Rb1 16.Kg4 となる。

14.Kg4 Rg1+ 15.Kf5 Rh1 16.h6+ Kh7

 実戦ではツカートルトはここで 17.Kf6 と指したため 17…Rg1! の後また方針を変えざるをえなかった。対局後(実際は白黒が逆だった)ツカートルトは我々の本譜を改良手順として挙げた。しかし勝つための最短手順は 17.g6+! Kxh6 18.Kf6 でポーンが止められなくなる。この手順を避けるために黒は 15…Rh1 でなく 15…Ra1 と指すべきだった。

17.Rf4 Rg1 18.Re4 Rf1+ 19.Kg4 Rg1+ 20.Kh5 Rh1+ 21.Rh4 Rg1 22.Rh2! Rg3

 こう指さないと白から 23.g6+ と突かれる。しかし黒ルークは白キングに近づき過ぎていて白は劇的に自分の駒の配置を良くすることができる。

23.Re2 Rh3+ 24.Kg4 Ra3 25.Re7+ Kg8 26.g6

 先が見えてきた。もっとも勝つ手段は幾つもある。

26…Ra4+ 27.Kf5 Ra8 28.Re5

 28.Rd7 も可能でこの後キングをe7に進めルークをd8で交換する。あるいは 29.Kf6 Kh8 の後 30.Rf7 Ra6+ 31.Kg5 Ra8 32.Rf8+ Rxf8 33.g7+ Kg8 34.Kg6! できれいに決めることもできる。

28…Kh8 29.Kg5

 黒は 30.h7 から 31.Kh6 を防ぐことができない。確かに紆余曲折の手順である。しかしこのエンディングには読者にとって参考になる色々な変化が含まれている。

(この節続く)

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開放試合の指し方(118)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 ここは重大な局面である。どちらが本当に優勢かをはっきりさせるには非常に慎重な分析が必要になる。白キングは黒の小駒によって脅かされているようだが、e列での釘付けがこの局面での最も重要な要素であることが分かってくる。ここで黒には妥当に見える手が5手あるが、そのうち4手は不満足である。

 1)7…Bf2+? はしてやったりに見えるが、次のように咎められる。8.Kd1 Qxd5+ 9.Nfd2! f5 10.Nc3 Qd4 11.Ncxe4 fxe4 12.c3 Qe3 13.Qh5+!(今度は白が攻撃する番である。もちろん 13.Nxe4 でも悪くなく、ポーン得の収局になる)13…Kf8 14.Bc4 Qxf4 15.Qd5! これで 16.Qd8# と 16.Nxe4 から 17.Rf1 の狙いがあるので白の攻撃が勝ちを収める。

 2)7…O-O? は 8.Qxe4 Re8 9.Ne5 f6 となっても黒の攻撃が不発で、10.Nc3! fxe5 11.fxe5 でが攻撃する側になる。

 3)7…Qxd5? も黒がe列で困った事態に巻き込まれる。8.Nfd2! f5 9.Nc3 Qd4 10.Ncxe4 fxe4 11.Nb3! で、黒が 11…Qd5 と最善を尽くしても 12.Nxc5 Qxc5 13.Qxe4+ でポーン損のひどい局面になる。

 3)7…f5?! も不十分である。8.Be3! Qxd5 9.Bxc5 Qxc5 10.Nc3 で白がまた何の危険もない釘付けを用いて優勢になる。

 だから黒が勝負に留まる唯一の手段は5番目の候補である。

7…Bf5

 この手はナイトを守るだけでなくしゃれた罠も仕掛けている。もし白が欲張って 8.g4? と突くと、8…O-O! 9.gxf5 Re8! で駒得になっても勝負に負ける。白のキャッスリングしていないキングに対する黒の攻撃が強烈である。一例は 10.Bg2 Nf2 11.Ne5 Nxh1 12.Bxh1 Nd7 13.Nc3 f6 で、黒が戦力得に加えて陣形でも有利になる。

8.Nc3!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(182)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 白の2ポーンが連結されていれば白がほとんど常に勝つ。例えばgポーンとhポーンとでどのように勝つかを見てみよう。

 図182 白の手番
(ツカートルト対シュタイニッツ、1883年)

 この型のエンディングの指針はポーンを進める前にキングをできるだけ有利な位置に置くことである。もし白キングがポーンから離れすぎている時は黒はポーンを攻撃し不利な位置へ進ませることにより引き分けに持ち込める場合が多い。この分析では最善の手順よりも実戦の手順をたどり有益な誤りを学ぶことにする。

1.Rb8

 最も筋道だった手順は Rh5-f5-f3 から Kg3 としてそれからポーンを進めることである。白はこの原則を無視して自分の目的達成をはるかに難しくしている。

1…Kg6 2.Rb5 Rc3 3.Re5

 白はここでもまだ 3.Rf5 から 4.Rf3 と指すべきだった。しかし 3.h4 はだめで白キングは 3…Rc2+ のあと横からのチェックから身を隠せなくなる。

3…Ra3 4.h4

 キングを前進させる前にポーンを進ませている。もちろん局面はまだ白の勝ちである。しかしもっと論理的な手順は 4.Rf5 Rb3 5.Rf3 Rb1 6.Kg3 Rg1+ 7.Kh4 Ra1 8.Rb3 Ra6 9.Rb4 の後 10.g5 から 11.Kg4 としhポーンをh5に進ませる手順である。

4…Rb3 5.h5+

 5.g5? と突いてはいけない。それは 5…Kh5! 6.Re4 Ra3 7.Rf4 Rb3 8.Rf3 Rb4 で引き分けになってしまう。黒キングが後ろのポーンを攻撃しもう一つのポーンの陰に隠れることができるようなポーンの進ませ方をしてはいけない。

5…Kh6 6.Rf5 Ra3 7.Rf3 Ra1

 黒は 7…Ra5 で罠を仕掛けることができた。8.Kg3? なら 8…Kg5! で引き分けにできる。しかし白は 8.Rf6+ Kg5(8…Kg7 なら 9.Rg6+ から 10.Kg3)9.Rg6+ Kf4 10.h6 で勝つことができる。注意すべき点としてこの局面ではキングの助け無しにポーンが前進できる。例えば 10…Ra8 11.g5 Kf5 12.Rg7 Rh8 13.h7 の後 14.g6 から 15.Rg8 という具合である。

8.Kg3

 白は自分で難解な局面にしてしまった。8.Rf6+ なら簡単な勝ちだった。以下は 8…Kg5 9.Rg6+ Kf4 10.h6 Ra2+ 11.Kf1(11.Kh1? は 11…Kg3 で黒の方が勝ってしまう)11…Kf3 12.Ke1 Ke3 13.Kd1 Kd3 14.Rd6+ から 15.g5 である。8…Kg7 なら 9.Rg6+ から 10.Kg3 で白が勝つ。

8…Rg1+ 9.Kh4 Rh1+ 10.Rh3 Rg1

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(117)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 この自然な展開の手が白の断然最強の継続手である。この手は黒の …Qh4+ の可能性を防ぎ、Qe2 で黒ナイトを釘付けにする可能性を残している。だが黒からの 6…Bc5 が非常に強力そうなので、この手はすぐに見える手ではない。しかし白がその手を恐れる必要がないことが分かってくる。

 ほかの手はどれも劣る。

 1)すぐに 6.Qe2?! と指すのはうまくいかない。単純な 6…Qxd5 7.Nd2 f5 で、白が互角にできれば幸運である。

 2)6.Be3 は黒に選択の余地を与える。黒は 6…Bd6!? 7.Nf3 O-O で攻撃に期待をかけることができるし、手の込んだ 6…Qh4+ 7.g3 Nxg3 8.Nf3 Qe7! でポーンを取り返すこともでき、9.hxg3 Qxe3+ 10.Qe2 Qxe2+ 11.Bxe2 Bg4 となれば互角の収局に持っていける。

6…Bc5

 考えられる手はこれだけである。さもないと黒はポーン損のままで何の見返りもない。

7.Qe2

(この章続く)

2013年10月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(181)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 図181 黒の手番
ケレス対ソコルスキー、1947年

 h5にポーンを残すのが非常に重要である。このポーンはそう簡単には取られない。このポーンがh6だったら引き分けに終わっただろう。読者は自分で確かめられたい。

16…Rf1

 16…Rh1 なら白は 17.f5 Rxh5 18.Re7+ Kh6 19.Re8 Kh7 20.Ke6 から 21.f6 で勝つ。

17.f5 Rf2

 17…Kh6 は 18.Kf7+ Kxh5 19.f6 Kh6 20.Kf8 で白が勝つ。

18.Re5 Rh2

 18…Kh6 は 19.Kf7 Kxh5 20.f6+ Kh6 21.Re1 で白が勝つ。

19.Re7+ Kh6 20.Re8 Kh7 21.Ke6 Re2+ 22.Kf7 Ra2 23.f6 Ra6 24.Ke7 Ra7+ 25.Kf8 Ra6

 白のhポーンが黒の救世手の 25…Kg6 を防いでいる。

26.f7 Ra7 27.Rc8 Ra1 28.Ke7 1-0

 この例でルーク+ビショップ列ポーン対ルークの分析を終える。このエンディングにはかなりの紙数を費やした。多過ぎるくらいかもしれない。このエンディングは実戦で非常に重要であるにもかかわらず多くのチェス選手があまり理解していない。盤上でよく間違えるのはこのような基本的なルーク・エンディングなのである。

(この節続く)

2013年10月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]理詰めのチェス(12)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第12局

 フロールが雪辱したピトシャク対フロール戦では白が自陣からビショップを追い払うためにポーンを h2-h3 と突いた。後にそのポーンが取られフロールのクイーンが白キングの近くに不気味に迫った。以降の集中的な攻撃で白キングを守るポーンがたった1個だけになった。

イギリス布局
白 ピトシャク
黒 フロール
ベルリン 1907年

1.c4

 1.e4 と 1.d4 では二つの駒が自由になるのにこの手では一つの駒しか自由にならない。それにもかかわらずイギリス布局は白の兵器庫にある最強の布局武器の一つである。この布局はあまり早期に敵と接触することなく駒を捌くことができるので、初めから独自性を求める人たちに人気がある。この布局の多くの戦型で白は中原を占拠しようとさえしない。白は黒に駒とポーンを中原に集結させて側面からそれらを攻撃する。例えば白はビショップをフィアンケットし遠くから中原を攻撃して土台を崩すかもしれない。

 もし白が慎重に独自性をゆるめることにすれば、イギリス布局から何らかのクイーン・ポーン布局に移行することも可能で、それでもなお先着の効を維持することができる。

1…e5

 黒は昔の良き時代のやり方で展開を行なった。即ち中原に1個のポーンを進め2個の駒を自由に動けるようにした。

2.Nc3

 白は中央のポーンを進めることよりも優先して1個の駒を外に出した。実際のところ 2.d4 exd4 3.Qxd4 は 3…Nc6 でクイーンが逃げなければならず手損になる。また 2.e4 ならdポーンが出遅れポーンのままで、キング翼ビショップもc4の地点が使えない。

2…Nf6

 黒は手順に気をつけている。このナイト出は単なる型にはまった展開の手ではない。その目的は白のナイトとポーンのd5に対する圧力を相殺することである。

3.g3

 明らかにこの手の目的はビショップのためにg2の地点を空けることである。ビショップはそこで対角斜筋ににらみを利かせd5の地点へ圧力をかけることにも寄与する。

3…d5!

 黒はクイーン翼の駒のために新たな道を開けて陣形をほぐした。これと共に黒は白のcポーンの処遇も尋ねている。

4.cxd5

 白は喜んで自分の側面ポーンと敵の中原ポーンの交換に応じる。同時にc列のポーンが切れてクイーン翼ルークがc1に回った時に都合が良い。

4…Nxd5

 このような取り返しはほとんど絶対である。後回しにすると白が得したポーンを守りそれにしがみつく時間を得るかもしれない。

5.Bg2

 先手、即ちナイト当たりで駒が展開した。

 昔なら黒は恐らく 5…Be6 と応じてナイトを守りながら駒を展開させただろう。現代の選手たちは真理(及び勝つための新たな手法)の探究において最も自然な手にも疑いをかける。

5…Nb6!

 ビショップは待つことができる。このビショップは単なる守りの役割以上のことに必要となるかもしれない。

 また、ナイトはへんぴな好所から中原のd5の地点に大きな影響を及ぼしている。このナイトの動きには別の巧妙さが少しある。それは現代のマスターがよく使うものである。このナイトは白ビショップがフィアンケット展開したことにつけ込みc4の地点にしっかりとにらみを利かせている。この枡はビショップがこの斜筋からいなくなったために弱体化している。

 このナイトには後から分かるようにみごとなノックアウト・パンチを見舞う筋書きが用意されている。

6.Nf3

 再び白駒の一つが狙いを持ちつつ展開する。今度はeポーンに対してである。

6…Nc6

 黒はクイーン翼ナイトを最も効果的な場所に置くことにより、最も単純で自然な手段で守った。

 戦いに参加している黒駒の数は白より少ないにもかかわらず形勢は悪くない。黒は中原に1ポーンを進めているし、ビショップはまだ展開していないが白のビショップより利きが広範囲に渡っているので大きな潜在的可能性がある。

7.O-O

 白はまだ態勢を明らかにしないでキングを引っ込めルークを動員した。

7…Be7

 前局のようにビショップの控えめなe7の位置はうわべだけである。このビショップは侵入者を締め出す用意をし、攻撃にいつでも移れるよう見張っている。

8.d3

 クイーン翼ビショップが戦いに加われるように利き筋を開けた。

8…O-O

 キングを危険地帯から遠ざけルークを戸外に出した。

9.Be3

 ビショップがこの地点に来れば白は 10.d4 と突いて、目障りな黒の中原ポーンを取り除くことができるかもしれない。

9…Bg4!

 素晴らしいビショップの配置である。このビショップは白のキング翼ともくろんでいるdポーン突きを強く牽制している。

 それでも白が 10.d4 と突けば 10…Nc4 が受けづらい。11.Nxe5 と応じれば 11…N6xe5 12.dxe5 Nxe3 13.fxe3 となってe列にがたがたのポーンの柱が残される。また 11.Qc1 と指せば(bポーンを守りクイーンでe3の敵駒を取るため)11…Nxe3 12.Qxe3 exd4 13.Qe4 Bxf3 から 14…dxc3 で白の駒損になる。

 白の最善の手順は多分 10.Na4 で次にc5の地点に跳ばすことだろう。ここはクイーン・ポーン及び同系の布局で白が支配に努めなければならない地点である。あるいは 10.Rc1 と展開を続けてその後でナイトの捌きを考えるのもあるかもしれない。

10.h3

 この手はうるさいビショップにナイトを取るか黒陣から立ち退くかの選択を明らかにさせたい欲求に駆り立てられて指された。あいにく理性よりも本能によって突き動かされたこのような手はキャッスリングした陣形がゆるむという有害な効果をもたらす。いったんキングの回りのポーンが動けば防御に駒がたむろしているにもかかわらずそのポーンが攻撃にもろくなる。

10…Bh5

 ビショップは1枡退いたが圧力はそのままである。ビショップの動きは制限されているにもかかわらずその持続しているにらみはe6への退却よりも白陣(および白の精神状態)にとってもっと厄介である。e6への退却は動きがより自由になるが相手にとって何の邪魔にもならない。

11.Rc1

 この手は明らかにc列を制圧するためであり、ことによるとクイーン翼での攻撃の準備かもしれない。

 有力な別手段は 11.Qb3 で、その後可能な時に Rad1 から d4 と突いてルークのためにd列を開放し中原で何らかの反撃策をとる。中原での行動はキング翼攻撃に対する最良の特効薬である。

11…Qd7

 全ての駒は応分の働きをしなければならない。クイーンは1枡前に動いただけだが長い方の斜筋を席巻している。

 クイーンの展開はルークのために1段目を空けるという目的も果たしている。それによりルークは中央に移動し最も重要な列に陣取ることができる。

12.Na4

 白の考えはこのナイトでc5の地点を支配しクイーン翼での狙いで黒を忙しくさせようということである。

 12.Kh2 のようなお座なりの受けでは 12…f5 から 13…f4 で黒が攻勢をかけこのポーンが白のキング翼のポーン態勢を破壊することになる。

12…Bxf3

 白は駒の取り返しの面白くない選択を迫られた。ポーンで取り返せばdポーンが孤立し弱くなるし、ビショップで取り返せばすぐにポーンを取られる。

13.Bxf3

 白はhポーンをあきらめて、次の駒交換ですぐにポーンを取り戻すことに期待した。

13…Qxh3

 このポーン取りで黒の攻撃の見通しは非常に明るくなった。つまらない詳細をわざわざ分析することなく黒は 14…f5 から始まる勝利への手順を思い描くことができる。この手の後は 15…f4 で白のgポーン(防御陣のかなめ)を破壊するか、15…Rf6 でルークをg6かh6へ回すことになる。

14.Bxc6

 ポーンを取り戻すためのこの手よりも 14.Bg2 でクイーンをキングの近くから追い払う方が良かった。

14…bxc6

 強制されたが不満のない必然手である。黒はこの長距離用のビショップの最後を見届けて大いに満足である。

15.Rxc6

 これで戦力の差はなくなった。しかし敵クイーンがすぐ近くにたむろしているので白キングが危険な状況である。

15…Nd5!

 会心の手である。この中央に堂々と陣取ったナイトの一つの狙いは 16…Nxe3 17.fxe3 Qxg3+ 18.Kh1 Qh3+ 19.Kg1 Bg5 で、白が破滅する。別の狙いは 16…Nf6 から 17…Ng4 及び 18…Qh2# である。

16.Qe1

 ぎこちない手だが 16…Nxe3 17.fxe3 Qxg3+ の変化からgポーンを救うためには絶対必要である。このポーンが落ちるようなことがあれば白キングは攻撃に耐え切れなくなる。

 白は 16.Bc5 と指すつもりだったのかもしれない。16…Nf6 ときてくれるならば 17.Rxf6 Bxf6 18.Bxf8 で戦える。しかし土壇場で次の対策に気づいた。16.Bc5 Bxc5 17.Nxc5 Nf6 がそれで、18…Ng4 から 18…Qh2# を防ぐために白はルークでナイトを取らないといけないがそれは最終的に負けになる。

16…f5!

 すぐに 16…Nf6 は 17.f3 でナイトが近寄れない(gポーンを守っておいたことがいかに重要だったか注意されたい)。

 本譜の手で黒は 17…f4 を準備した。それに対して 18.gxf4 なら Rxf4 19.Bxf4 Nxf4 でg2で詰まされる。白がポーンを取らずに 18.Bc5 と指せば巧妙な 18…f3(19…Qg2# の狙い)19.exf3 Nf4(再び詰みの狙い)20.gxf4 Rf5 で白は 21…Rh5 からの詰みを防げない。

17.Bc5

 17…Bxc5 18.Nxc5 Nf6 19.f3 又は 17…Nf6 18.Rxf6 で持ちこたえるかすかな可能性にかけた。

 白が 17.Nc3 で黒の厄介なナイトを取り除こうとすれば黒は 17…Nf6 18.f3 Nh5(急所のgポーンに集中砲火を浴びせる)19.Bf2 Bh4(なおもgポーンを叩く)20.gxh4 Nf4 と攻撃を続けてg2で詰ませる。

17…f4!

 この手はgポーンに襲いかかっただけでなくf5からh5へのルークの進路を開けてクイーンによる詰みを支援している。

18.Bxe7

 白はキングを包囲している駒の数を駒交換で減らそうとした。白の希望は 18…Nxe7 と素直に取り返してくれることで、そうなればナイトが中央から遠ざかるので脅威が薄らぐ。

 代わりに 18.g4 でルークが近寄れないようにすれば黒には3、4とおりの簡単な勝ちがある。

a)18…f3 19.exf3 Nf4 でg2で詰める。

b)18…Qxg4+ 19.Kh2 Rf5 で次にルークで詰める。

c)18…Qxg4+ 19.Kh2 f3 20.Rg1 Qh4#

18…fxg3

 次は単純で無慈悲な 19…Qh2# で詰みである。

19.fxg3

 他に手はない。

19…Ne3!

 狙いは 20…Qg2# である。

白投了

 もう受けがない。20.Rf2 なら 20…Qxg3+ 21.Kh1 Rxf2 で黒の簡単な勝ちである。20.Rxf8+ なら 20…Rxf8 21.Qf2 Rxf2 22.Kxf2 Qg2+ 23.Kxe3 Qxc6 で後は初歩的である。

 フロールは自身が負かされたのと同じ手法で前局でのピトシャク戦での負けに報復した。フロールは敵のキャッスリングしたキングの周囲のポーンを弱め、痛烈な攻撃でその防御を粉砕した。

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開放試合の指し方(116)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 これが最も簡明で最も強力な手である。黒の中原が消滅し、e列での白の釘付けが黒にとって対処しにくい。ほかの手は次のようになる。

 1)5.Nc3?! は不必要に 5…Bb4 で釘付けにされる。白はここで危険なようでも 6.dxe4 Nxe4 7.Qd4 Qe7 8.Be2 と複雑な手を指すべきで、互角になる可能性が高い。これに反して安全そうな 6.Bd2?! は 6…e3!! 7.Bxe3 O-O! とされるので危険である。白がどのくらい早くつぶれることがあるかは、1977年ニューヨークでのローデ対ブラスケット戦を見れば分かる。8.Qf3?!(8.Bd2! の方が良かった)8…Re8 9.Be2 Bg4 10.Qg3 Bxe2 11.Ngxe2 Qe7! 12.Kf2 Qxe3+! 13.Qxe3 Ng4+ 黒が駒得になり勝つ。

 2)5.Qe2 はすぐに釘付けにするが、このクイーンの位置は悪形である。黒は単純に 5…Qxd5 または 5…Bf5 と指すことができるし、有望なポーンの犠牲で 5…Bg4 6.Qe3 Nxd5!? 7.Qxe4+ Be7 8.f5 Nf6 9.Qxb7 Nbd7 と指すこともできる。黒はまもなくポーンを取り返して1ポーン損だけになり、代償として展開で大差をつける。

 3)5.Nd2 は 5…exd3 6.Bxd3 で黒のeポーンを清算させる。しかし 6…Nxd5! のあと白の2ナイトの位置のまずさが明るみに出る。ここで 7.Qe2+ なら黒は贅沢に 7…Be7 または 7…Qe7 と指していられて、非常に楽に互角になる。

5…Nxe4 6.Nf3!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(180)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 図180 白の手番
グリゴリッチ対スミスロフ、1947年

 実戦は図180から次のように進んだ。8.Rg5 8.f5 なら 8…Rb1 で引き分けになる。コパイェフは 8.Kh4 なら 8…Rb1! ではやり引き分けになることを示した。彼の考えた主要な手順は次のとおりである。9.Kg5 Rg1+ 10.Kf5 Rh1 11.Kg5 Rg1+ 12.Kh6 Rf1 13.Rg4 Rh1 又は 9.Ra6 Rg1 10.h6 Rh1+ 11.Kg5 Rg1+ 12.Kf5 Rh1 13.Ra7+ Kg8 14.Kg6 Rg1+ 15.Kf6 Rh1 16.Rg7+ Kh8 17.f5 Rxh6+ 18.Rg6 Rh7! 19.Rg1 Ra7 20.Re1 Ra6+ 21.Kf7 Ra7+ 22.Kg6 Rg7+ 23.Kf6 Rg2 ここからは 24.Kf7 なら 24…Rg7+ 25.Ke8 Ra7! 26.f6 Kg8!、24.Ke7 なら 24…Rg7+ 25.Kd6 Rf7! で黒が引き分けにできる。長く複雑な変化なので詳細はエンディングの専門書を参照されたい。8…Rb1 9.Rc5 9.h6 なら 9…Ra1! 10.Rh5 Kg8 11.h7+ Kh8、この手順中 11.f5 なら 11…Kh7 で共に引き分けになる。9…Kf6 10.Rc6+ Kg7! 11.Kg5 Rg1+ 12.Kf5 Ra1 13.Rc7+ Kh6 14.Re7 Rb1 これで図178と似た局面に到達した。実戦はさらに25手続いて引き分けに終わった。

3.h5 Ra6

 自分の間違いを認めた手である。3…Rh1 は 4.Rh4 Rg1+ 5.Kf2 Rg7 6.h6 Rh7 7.Kg3 で白が簡単に勝つ。

4.Rh4 Rh6 5.Rf4+

 白キングは黒キングがhポーンをせき止めるのを阻止しなければならない。だから 5.Ra4 Rb6 6.Ra5+? Kf6 はあまり有効ではない。

5…Kg5 6.Rg4+ Kf5

 6…Kxh5 は 7.Rh4+、6…Kf6 は 7.Rg6+ でこれらのポーン・エンディングは共に黒の負けである。

7.Kh4 Rh8

 黒ルークは受身に徹しなければならない。7…Ra6 は 8.Rg5+ Kf4 9.Rg6 から 10.Rf6+ で良くない。

8.Rg5+ Kf6

 8…Kf4 は 9.Rg7 で白が勝つ。

9.Kg4 Kf7 10.Rf5+

 10.Ra5 Rg8+ 11.Kf5 Kg7 は黒キングがh列に行けて白の優位が失われてしまう。

10…Kg7 11.Kg5 Rg8 12.Rf6 Kh7+

 黒キングはようやくhポーンをせき止めることができる。しかしこの間に白駒は非常に良い位置に配置されていて黒は負けを免れることができない。

13.Rg6 Ra8 14.f4 Ra1 15.Re6 Rg1+ 16.Kf6

(この節続く)

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開放試合の指し方(115)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 白は黒の迷惑な橋頭堡に挑んで排除しなければならない。ほかの手はどれも劣る。

 1)4.c4?! は 4…c6! 5.Nc3 Nf6 で白がどのようにキング翼を展開するのかという問題が残る。向こう見ずに 6.dxc6? とポーンを取るのは 6…Nxc6 で黒が展開で大きく差をつける。

 2)4.Bb5+?! は 4…c6! 5.dxc6 bxc6! 6.Bc4 Bc5 7.Ne2 Nf6 となって、白キングが盤の中央で非常に不快な目にあっているのでやはり黒にポーンの代償が十分ある。

 3)4.Nc3 は 4…Nf6 5.Qe2 Bf5 となって、やはり白がどう指し進めるのか途方にくれる。

4…Nf6

 展開! 4…exd3?! はの展開を助長するだけで、黒はポーン損になる。5.Qxd3 Nf6 6.Nc3 Bc5 7.Bd2 O-O 8.O-O-O Nbd7 9.g3! Nb6 10.Bg2 で白が大局的にも戦力的にも優勢である。4…Qxd5 も疑問で、5.Nd2!? exd3 6.Bxd3! で黒の中央が消滅し、6…Qxg2?? は罠で 7.Be4 Qg4(これしかない)8.Qxg4 Bxg4 9.Bxb7 で黒のクイーン翼ルークが失われる。

5.dxe4!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(179)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 黒駒が図178のように効果的に配置されていれば黒が守り通せることが分かった。

 そうでない場合には次の例で分かるように事はそれほど簡単でない。

 図179 黒の手番
ケレス対ソコルスキー、1947年

 白の作戦に対して黒は最大限の注意深さと正確さで受けなければならない。黒キングはg列から遮断され黒ルークはhポーンの前進から目を離せない。白のfポーンは自分のキングを横からのチェックから守り、g4の白ルークを支えているので後ろからのチェックは怖くない。黒は白が好機にhポーンを突けないように気を付けなければならない。

1…Ra8

 黒ルークは有効なチェックをかけることができないので動かない方が良い。1…Kf6 2.h4 Rh5! とすれば黒は自陣の4段目にルークを利かして十分な防御態勢を整えることができた。

2.h4 Ra1?

 この不正確な手で黒は負けになった。ボトビニクは 2…Rh8! 3.Rg5+ Kf6 を推奨した。そして白が 4.Kg4 と指したらそこで初めて黒は 4…Ra8 と指す。白はhポーンを h4-h5-h6 と突き進めることができず黒ルークは活動の範囲が広がっていたはずである。指し手を続けてみれば 5.h5 Ra1 6.Rg6+ Kf7 7.f4 Ra5 で白ルークの位置がb5にあるわずかな違いだけの1947年のグリゴリッチ対スミスロフの局面になる。

(この節続く)

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布局の探究(71)

「Chess Life」1993年5月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒は中央に向かって取るべきか(続き)

C …hxg6 対 …fxg6

 g6での取り返しが最もよく現れるのは、カロカン防御やスラブ防御などの局面である。そこではクイーン翼ビショップがg6に回り込んで、白のキング翼ナイトまたはキング翼ビショップによって取られる。圧倒的に多くの場合取り返しはhポーンで行なうべきである。fポーンで取り返すと非常に有望になる場合、またはhポーンでの取り返しがはっきり悪い場合(例えばh列での白の攻撃が決定打になったりh7の地点が守れなくなったりする場合)に限り、黒は主眼の「中央に向かって」取るのをやめるべきである。

 1 …hxg6 と取る方が良い

 好例は1974年挑戦者決定戦準決勝B.スパスキー対A.カルポフ戦第2局である。

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.Nf3 Nd7 7.Bd3 e6 8.O-O Ngf6 9.c4 Bd6 10.b3 O-O 11.Bb2 c5 12.Bxg6 hxg6!

 この主眼の取り返しは欠点がなく、黒の中央への影響を強化している。代わりに動機づけのない 12…fxg6? は何も利益になることを達成せず、eポーンを弱点にしてしまう。両対局者は 13.Re1 Qc7 14.dxc5 Bxc5 15.Qc2 Rfd8 16.Ne4 Nxe4 17.Qxe4 のあと引き分けで合意した。

 強豪選手でも衝動的に主眼でない取り返しをしない方が良い。1973年ペトロポリス・インターゾーナルでのV.ホルト対D.ブロンシュテイン戦は次の手順で始まった。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 dxc4 5.a4 Bg4 6.e3 e6 7.Bxc4 Nbd7 8.h3 Bh5 9.Qe2 Bb4 10.O-O Qe7 11.e4 e5 12.d5 a5?! 13.Rd1! O-O?! 14.g4! Bg6 15.Nh4! cxd5?! 16.Nxg6

 図5

 黒の指し手は正確さを欠いていた。そして普通の 16…hxg6 17.Nxd5 Nxd5 18.Bxd5 のあと、陣地の広さと駒の働きに優るために白が少しだが危なげなく永続的な優勢になる。有名なGMは気に入らなかったようで、f列を素通しにすることにより局面をかく乱しようとした。

16…fxg6? 17.Bxd5+! Kh8

 17…Nxd5 は 18.Nxd5 で白のナイトが絶好の地点につく。

18.Bxb7 Rab8 19.Bd5 Nc5 20.Bg5!

 黒のポーン損の代償はわずかで、白が43手で勝った。

 2 …fxg6 と取る方が良い

 この取り返し方は主眼でないので、黒は実戦的に考えなければならない。状況に合った非常に具体的な理由だけがうまくいくもとである。1986/87年アデレードでのP.ファン・デル・ステレン対E.トーレ戦で、スラブ防御主手順の18手目のあとこの決断が正着となるような局面が現れた。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4 5.a4 Bf5 6.e3 e6 7.Bxc4 Bb4 8.O-O O-O 9.Qe2 Nbd7 10.e4 Bg6 11.Bd3 Bh5 12.Bf4 Re8 13.e5 Nd5 14.Nxd5 cxd5 15.h3 a6 16.Rfc1 Bg6 17.Qe3 Nb8 18.Bxg6

 図6

 ここでは 18…hxg6 と取り返すのが普通だが、黒のキング翼が狭小で活気のない局面になる。さらに白は二重ポーンの本質的な弱点につけ込んで、Ng5 と跳ねてクイーンをh4に進めたり適時にhポーンをh5に進めてキング翼攻撃を目指すことができる。そこでGMトーレははるか先を見通したもっと良い手を選択した。

18…fxg6!

 黒はキング翼の防御がずっとやりやすくなっている。さらに素通しのf列での攻撃の可能性もある。

19.Qb3 a5 20.Bg5 Qb6 21.Be7?! Nc6 22.Bxb4 axb4 23.Qd3 Rf8! 24.Rd1 Rf4! 25.g3 Rf5 26.Nh4 Rf7 27.Rd2 Raf8 28.Re1 Na5 29.f4 Rc7!

 f列の圧力で白がキング翼のポーンの形を弱めさせられた。そしてここで黒はクイーン翼に取って返して白の背後に侵入しようとする。

30.Nf3 Rc4 31.Rc2?

 白は時間に追われて一組のルークの交換により問題を減らそうとしたが、逆効果だった。GMトーレは最善の防御として 31.Kg2 Rfc8 32.h4 で自陣を固めることを推奨している。

31…Rfc8 32.Rec1 Qc6! 33.Rxc4 dxc4 34.Qe3 Rd8 35.Ng5 Nb3 36.Rd1 c3 37.bxc3 bxc3 38.d5 c2 39.Rc1 Qxd5 白投了

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カテゴリ: 布局の探究1

開放試合の指し方(114)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 これはファルクベア逆ビャンビットとして知られている。その言い分は次のとおりである。2.f4 は白の展開に寄与していないし白キングの状態を弱めているのだから、黒は中央で大胆に打って出ても許される。普通は黒は駒を非常に早く展開することを目指し、ポーンを1、2個犠牲にする用意がある。定跡の最新の評価によれば、そして最も厳しい基準を適用すれば、ファルクビアは完全に棋理に合ったギャンビットというわけではない。しかしそれを示すためには白はことのほか複雑な手順をうまくたどっていかなければならない。一つの失策でも黒が優位に立つ。この布局では簡単に失策を犯しやすく、それが黒のつけ目である。実戦では黒の成績は定跡の予測をはるかに上回っている!

3.exd5!

 黒を懲らしめようとするなら手段はこれしかない。白が混戦を避けることを望み互角で満足するならば、3.Nf3 dxe4 4.Nxe5 と展開を始めることができる。

3…e4!?

 一貫性のある継続手はこれしかない。黒は白の展開を邪魔しようとし、2.f4 がキング翼を弱める無駄手だったことを示したがっている。もちろん 3,..exf4 と取ることもできるが、たいてい 4.Nf3 Nf6 でキング翼ギャンビット受諾の主手順に移行するので独立した価値はない。

 一方 3…c6?! は遅すぎる。たしかに白が欲張って 4.dxc6? と取ってくれば 4…Nxc6 5.d3 Bc5 6.Nc3 Nf6 7.Nf3 O-O となって黒が展開で大差をつける。しかし 4.Nc3! と展開して白の優勢は安泰である。4…cxd5 5.fxe5 d4 6.Ne4 Qd5 7.Bd3! のあと黒がeポーンを取れば、白の攻撃が非常に強力になる。

4.d3!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(178)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 これまでは黒キングが最下段に張り付けられた局面か白キングが7段目に進んだ局面だけを考えてきた。このような場合は技術的な困難はあっても通常は白が勝つ。今度は黒キングが正しい位置にいる平均的な局面を分析しよう。黒が正しく受ければ白は勝つことができない。

 図178 黒の手番
ボンダレフスキー対ケレス、1939年

 黒はこの局面で三つの状況に陥らないように気をつけなければならない。第一に黒は自分のキングが最下段に追い込まれないようにしなければならない。第二に黒は図175(白キングがf7にいる)を避けなければならない。第三に黒がhポーンを取った後白にルーク+ビショップ列ポーンの勝ちのエンディングを与えないようにしなければならない。

1…Rg2

 この手は白キングがg5からf6へ行くのを止めるためである。しかしこの手が絶対必要というわけではない。黒は 1…Rf2+ でも引き分けにできた。2.Kg5 Rg2+ 3.Kf6 Rf2! 唯一の受けである。3…Ra2 は 4.Kf7 で白勝ちの図175の局面になる。3…Kg8 は 4.Re7 で白勝ちの図177の局面になる。3…Kxh6 は 4.Kf7+? なら 4…Kh7 5.f6 Rg7+ 6.Kf8 Rg8+ 7.Ke7 Ra8 で引き分けになるが白は 4.Ke7+! Kh7 5.f6 Rf2 6.Kf8 で勝つことができる。4.Re8 4.Rd6 なら最も簡明な手順は 4…Ra2 5.Ke7 Ra7+ 6.Rd7 Ra8 である。この手順中 6.Ke8 なら 6…Ra8+ 7.Rd8 Ra6 で図175の分析のように引き分けになる。4.Re5 又は 4.Re7+ なら 4…Kxh6 で良い。4…Ra2! これで白は何も進展を図ることができない。白キングが動くと 5…Kxh6 とされるし、白ルークが5、6及び7段目に動いても同様である。白ルークが他の地点に動いたら黒は自分のルークをa列で動かして手待ちをすれば良い。

2.Ke5 Ra2

 簡明な手である。2…Re2+ は 3.Kf6(又は 3.Kd6)とされて黒は引き分けるためには 3…Rf2! を見つけなければならない。

3.Kd6

 6段目を越えるにはこの手しかない。3.Kf6 は 3…Kxh6 4.Kf7+ Kh7 5.f6 Ra8 で引き分けになる。

3…Ra5

 この手の方が白に手段の余地を与えない。ただし 3…Rf2 でも 4.f6(又は 4.Rf6 Ra2)4…Kxh6 5.Ke7 Kg6 6.Re1 Ra2! 7.Rg1+ Kh7 で引き分けになる。

4.f6 Kg6

 実戦のやや意外な手を主手順に選んだ。簡明な手は 4…Kxh6 で 5.Ke7 Ra8! で引き分けになる。

5.Re8

 5.h7 なら 5…Kxh7 6.Ke7 Ra8 である。

5…Ra6+ 6.Ke7 Rxf6

 6…Ra7+ 7.Kf8 Kxf6 8.Kg8 Kg6 9.Re6+ Kf5 10.Rd6 Ra8+ 11.Kg7 Ra7+ でも引き分けである。

7.Rg8+ Kh7 8.Rg7+ Kh8 9.Kxf6

 これでステイルメイトによる引き分けである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(113)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス(続き)

 2…Bc5 3.Nf3 d6 4.Nc3

 このあとは 4…Nf6 5.Bc4 Nc6 6.d3 と進むのが普通である。両者のキング翼ビショップは同価値だが、中央に対する圧力とf列での可能性のために白が少し優勢である。一つの予想手順は 6…Bg4 7.Na4 Nd4 8.Nxc5 dxc5 9.c3 Nxf3+ 10.gxf3 Bh5 11,Qe2 で、白が中央で優位に立ち少しの優勢を維持している。

 1)2…Nf6 は展開しながら反撃しようという手である。しかし 3.fxe5 Nxe4 4.Nf3 d5(4…Ng5!? は 5.d4 Nxf3+ 6.Qxf3 Qh4+ 7.Qf2 でいくらか劣勢の収局が黒の望める最大のところで、魅力的な見通しはない)5.d3! Nc5 6.d4 Ne4 7.Bd3 となって、白が明らかに中央で優位に立ち、よどみなく展開し、攻撃の可能性にあふれていて、従ってかなり有望である。

 キング翼ギャンビットを拒否する二つ目の手法は反撃を始めることである。

2…d5!?

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(177)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 今度も黒キングが最下段にいる例である。

 図177

 どちらの手番でも白が勝つ。そこで黒の手番として二つの主手順を分析してみよう。

1…Ra2

 この手は手待ちである。もっと積極的な 1…Rh1 はで分析する。1…Ra6+ は 2.Kg5 から 3.f6 で図176の形になって白が勝つ。

2.Ke5!

 2.h7+ Kh8 3.Kf7 は 3…Kxh7? ならば 4.Kf8+ Kh6 5.Re6+! Kh7(5…Kg5 なら 6.f6)6.f6 Ra8+ 7.Re8 で白が勝つ。しかし黒はプロブレムのような 3…Ra5! が好手で 4.f6 Kxh7 5.Kf8+ Kg6 6.f7 Kf6! で引き分けにできる。

2…Re2+ 3.Kd6 Rd2+

 3…Rf2 又は 3…Rh2 でも白は 4.Ke6! と指す(4…Rxh6+ には 5.f6)。

4.Ke6 Re2+ 5.Kd7 Rd2+

 5…Rf2 は 6.Re8+ Kh7 7.Ke6 Ra2(7…Re2+ は 8.Kf7 Ra2 9.Re6 で図175の局面になる)8.f6 Ra6+ 9.Kf5(9.Kf7 Ra7+ 10.Kf8? は 10…Kg6! 11.Kg8 Kxf6 12.h7 Rg7+ 13.Kh8 Ra7! で面白い形の引き分けになる)9…Ra5+ 10.Re5 で図175の黒の初手の分析のように白が勝つ。

6.Ke8 Rf2 7.Re5 Kh7

 黒ルークがf列を離れると 8.f6 で白が勝つ。7…Rf1 も 8.Ke7 で白が勝つ。

8.Kf7!

 8.Ke7? は 8…Kxh6 9.f6 Kg6 10.Re6 Rf1 で引き分けになる。

8…Kxh6

 8…Ra2 は 9.Re6 で図132と同形になる(訳注 図175の間違いのようです)。

9.Re6+!

 9.f6 は 9…Ra2 10.Kf8 Kg6! 11.f7 Kf6 で引き分けにしかならない。

9…Kh7 10.f6 Ra2

 黒が引き分けにできるためにはここで 10…Ra8 と指せる形でなければならない。

11.Kf8 Ra8+ 12.Re8

から 13.f7 で白が勝つ。

1…Rh1

 白ルークが7段目の他の枡にいる局面もあり得る。例えばb7にいるとすると 2.Rb8+ では 2…Kh7 3.Kf7 Ra1 4.f6 Ra7+ 5.Ke8 Kg6 6.f7 Rxf7! 7.Rb6+ Rf6 で引き分けにしかならない。しかし以下の主手順のように 2.Rg7+ と指せば白が勝つ。

2.Rg7+

 2.Re8+ Kh7 3.Kf7 Ra1 4.Re6 でも図175のように白が勝つ。

 2.Ke6 Re1+(2…Rxh6+ なら 3.f6)3.Kd7 も上ののように白が勝つ。

2…Kf8

 2…Kh8 は 3.Re7 Kg8(3…Rxh6+ は 4.Kf7 Ra6 5.f6 Kh7 6.Kf8+ Kg6 7.f7 Kf6 8.Kg8! で白が勝つ)4.Re8+(又は Ke6)で前の変化のように白が勝つ。

3.Kg6!

 以前は 3.Rg6 Rh2 4.Ke6 Rh1 5.Kd7 5.Rf6+ は 5…Ke8! 6.Kd6 Rd1+ 7.Kc7 Ra1 8.Rd6 Kf7 で引き分け 5…Ra1 5…Rh5 は 6.Re6! Kf7 7.h7 Kg7 8.f6+ で白の勝ち 6.Rd6 Kf7 7.h7 Rh1 7…Kg7 なら 8.f6+ Kxh7 9.Ke8 8.Kd8 Kg7 9.Rd7+ Kh8 10.f6 Rf1 11.Ke7! で白が勝てると考えられていた。

 しかしコパイェフは 5…Kf7! という黒の改良手を示した。以下は 6.Re6 6.Rd6 は 6…Rh4! で引き分け[訳注 6…Rh5! の間違いかもしれません]6…Ra1! 7.h7 7.Re7+ は 7…Kf6 8.h7 Ra8! で引き分け、7.Rd6 は 7…Ra7+ 8.Kd8 Ra8+ 9.Kc7 Ra7+ 10.Kc6 Ra1 11.h7 Kg7 12.Rd7+ Kh8 で引き分け 7…Kg7 8.f6+ 8.Rh6 なら 8…Ra7+ 9.Kc8 Ra8+ 10.Kb7 Kxh6 8…Kxh7 9.Ke7 Ra8 で理論的に引き分けの局面である。

3…Rg1+ 4.Kh7 Rf1

 こうしないと 5.f6 の後 Kg6 から h7 で白が勝つ。

5.Ra7! Rg1

 5…Rxf5 は 6.Kg6 の後 7.Ra8+ から 8.h7 で白が勝つ。

6.f6 Rg2 7.Rg7 Rf2 8.Kg6

これで白の容易な勝ちである。

 両者の直面する問題が色々現れていて非常に興味深く参考になる手順だった。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(100)

「Chess Life」2005年8月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット(続き)

戦型2c 1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nxe4 5.Qxd4 Nf6 6.Nc3 c6 7.Bg5 d5 8.O-O-O

 白は釘付けによりビショップを間接的に守った。

8…Be7 9.Qh4

 これが現代の手法である。以前は 9.Rhe1 が好まれていたが、手順によっては同じになることがある。黒は2001年リナレス・オープンでのアブルーフ対スクリプチェンコ戦でたちまち窮地に陥った。

9…Nbd7 10.Rhe1!

 白はビショップを犠牲にすることができる!

10…dxc4

 10…Kf8 は 11.Bxd5! cxd5 12.Rxe7! Qxe7 13.Nxd5 Qe4 14.Bf4 で白がはっきり優勢になった(クライマン対シラジ、ニューヨーク、1992年)。

11.Bxf6 gxf6 12.Ne4!

 白は駒を組み換えながらf5の地点をナイトで占拠することを狙っている。

12…O-O

 GMルカチュはこの手を批判し、代わりに 12…Kf8! で 12.Ng3! に 13…Qa5 でクイーン翼で反撃を策することを推奨した。

13.Ng3 Kh8 14.Nf5

 ここは勝負所である。

14…Bc5?

 この手で黒は勝負を失った。しのぎの手順は 14…Bb4! 15.c3(15.Re4 には 15…Qa5)15…Bxc3! 16.bxc3 Qa5 だった。

15.Qh5?!

 ここでは 15.Re4! Rg8 16.Nh6 Qf8(16…Rg7 なら 17.Ne5!)17.Nxg8 Qxg8 18.Rg4 の方が正確で、白の勝勢だった。

15…c3 16.Re4! Qb6 17.b3 Rg8

 17…Ne5 でも 18.Nxe5 fxe5 19.Rh4 Bxf5 20.Qxf5 Be3+ 21.Kb1 h6 22.Rd6! Rfd8 23.Rdxh6+ で黒の負けになる。

18.Qxf7 Qa5 19.Rxd7 Ba3+ 20.Kb1

 白はまだ 20.Kd1? で形勢を台なしにする可能性があり、20…Qxf5 21.Re8 Qxd7+ で黒の勝勢になる。

20…Qxf5 21.Re8 黒投了

 21…Qg6 22.Rxg8+ Qxg8 23.Qxf6+ で詰みになる。

 本局には省略した(紙面の制約のため)多数の面白くて激しい変化がある。しかし自分でもっと分析して既存の解説と比較してみることを強く推奨する。

 10…dxc4 の代わりに黒が 10…O-O と指せば、白は 11.Bd3 と応じる。そして 11…g6 12.Re2 Re8 13.Rde1 Ne4 14.Nxe4! dxe4 15.Rxe4 f6 16.Bc4+ Kg7 のあと白に妙手がある。

 17.Qxh7+!! Kxh7 18.Rh4+ Kg7 19.Bh6+ Kh7 20.Bf8#

 11…h6 なら白は 12.Bxh6 gxh6 13.Qxh6 と捨て駒に出なければならない。黒は正しく受ければ 13…Re8 14.Ng5 Nf8 15.Re3 Qd6 16.Rg3 Qf4+ 17.Kb1 Ng4 で生存できる。しかし 18.Bh7+ Kh8 19.Rxg4 Bxg4 20.Nxf7+ Qxf7 21.Bg6+ Qh7 22.Bxh7 Nxh7 23.f3 で私はまだ白を持ちたい。

 別の作戦では黒はキャッスリングを当面遅らせることができる。

9.Qh4 Be6 10.Bd3 Nbd7 11.Rhe1 Nc5

 1969年モスクワでのティモシェンコ対カルポフ戦では 11…c5 12.Ne5 Nxe5 13.Rxe5 d4 14.f4 Nd7 15.Bb5 Bxg5 16.fxg5 Qc7 17.Bxd7+ Kxd7 18.Qe4 で白の方が優勢だった。

12.Nd4

 黒は大きな圧力にさらされているが、その代わりにポーン得になっている。意外なことにここでの黒の最善手は 12…Ng8! である。それに対して白は 13.Bxe7 Qxe7 14.Qg3 で主導権を維持することができるし、13.f4 もある。

結論

 戦型1では白が明らかに優勢になる。だから黒は避けるべきである。戦型2a、2bおよび2cでは白がポーンを犠牲にしてその十分な代償を得る。そして両者にとって面白くて指せる局面になる。黒の最も安全な選択は 1.e4 e5 2.Bc4 Nc6 または 2…Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nc6 でそもそもギャンビットを避けることである。これは白に対する意表を突く良い武器になるかもしれない。

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開放試合の指し方(112)

第8章 キング翼ギャンビット拒否 エドマー・メドニス

1.e4 e5 2.f4

 第7章で述べたようにキング翼ギャンビットは受諾するのがチェスの棋理というものである。しかしほかの要素もかかわることがあるかもしれない。選手の中にはかなり明確な戦略の局面を好む者がいる。彼らにとってキング翼ギャンビット受諾はあまりに不明瞭で複雑であると思われるのかもしれない。そして圧力をかけられるのを好まず、実際すぐに反撃する機会の得られる局面を楽しむ選手もいる。これらの選手たちは-心理的な理由で-ギャンビットを受諾しない方が実戦でうまくいくかもしれない。

 ギャンビットを拒否するには基本的に二つの手法がある。一つの手段は自分のことに専念して、駒を展開し中央を見張ることである。以下の3手順は指せる戦型である。

 1)2…d6 はeポーンを守り中央にもある程度の影響力を確保している。ここで 3.Nf3 とくるなら黒は 3…exf4 で、キング翼ギャンビット受諾の 2…exf4 3.Nf3 d6 という戦型に移行することができる。だから 3.Nc3! の方が有無を言わせない手で、3…Nf6 のあと初めて 4.Nf3 と指す。黒はeポーンを守るために 4…Nc6 5.Bb5 Bd7 と指す。しかし白は 6.d3! で単純に 7.Bxc6 から 8.fxe5 を狙う。だから黒は 6…exf4 と取るよりなく必然的に 7.Bxf4 Be7 8.O-O O-O 9.d4 となって、中央支配とf列での活動というキング翼ギャンビットの所定の目標を白が達成している。全体的にも白が好ましい優勢を得ている。

 2)2…Bc5 から …d7-d6 と突くのは、ビショップがe7でなくもっと活動的なc5の地点にいるのでさらに有望な作戦である。ここからの両者の一貫性のある手順は 3.Nf3(3.fxe5?? Qh4+)3…d6 4.Nc3 である。ほかの作戦は 4.c3 から d2-d4 と突くか、まず 4.fxe5 dxe5 と交換しておいてから 5.c3 と突く手がある。(もちろん 5.Nxe5?? はポカで、黒クイーンがh4に行って非常に厄介なチェックをかけられるようになる。5…Qh4+ 6.g3 Qxe4+ 7.Qe2 Qxh1 そして白は 8.Ng6+ Ne7 9.Nxh8 でh8のルークを取れるけれども、例えば 9…Bh3 のあとナイトを救い出せる可能性はありそうにない。)4.c3 または 4.fxe5 dxe5 5.c3 のあと黒は …Nf6 と展開すべきである。どちらの場合も白の優勢はわずかである。4.Nc3 の場合白はまず展開を完了することを望んでいる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(176)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 この型のエンディングでは黒キングは最下段に遮断されることを避けなければならない。そのような局面では黒が負けるのが普通である。その例を挙げる。

 図176
カパブランカ対コスティッチ、1919年

 白は少なくとも三つの勝ち筋がある。ここでは色々な可能性を指摘するために最も手数のかかる手順を選んだ。

1.h6

 実戦ではカパブランカは 1.f6 Rc1 2.Rg7+ と指し 2…Kf8 3.h6 の後 4.h7 から 5.Rg8+ を防げないので黒が投了した。黒は 2…Kh8 ならもう少し長く粘れたが 3.Kg6(3.Re7 Kg8 4.h6 でも白の勝ち)3…Rg1+ 4.Kf7 Ra1 5.Rg8+ Kh7 6.Re8 Ra6 7.Ke7 Ra7+ 8.Kf8 で白の楽な勝ちになる。

 コパイェフは 1.Rb8+ でも勝ちになることを指摘した。以下 1…Kh7(1…Kf7 は 2.h6 から 3.h7、1…Kg7 は 2.f6+ Rxf6 3.h6+ で白の勝ち)2.f6 Rc5+ 3.Kg4 Rc4+ 4.Kf5 Rc5+ 5.Ke6 Rc6+ 6.Ke7 Rc7+ 7.Kf8 で白が勝つ。

1…Rc1 2.f6

 この手が勝つための唯一の手ということではないが多分最も参考になる手である。黒キングが最下段に遮断されている時6段目に白の2ポーンがあれば白が必ず勝つことを示すことができる。

2…Rg1+

 白の狙いは 3.Rb8+ 又は 3.Rg7+ でそうなればどちらかのポーンがクイーンに成れる。

3.Kf5 Rf1+ 4.Ke6 Re1+ 5.Kd6

 まだまだ注意が必要である。5.Kd7? は 5…Kf7! 6.h7 Rh1 で引き分けになってしまう。

5…Rd1+

 5…Rf1 は 6.Rb8+ Kh7 7.Ke7、5…Rh1 は 6.Rb8+ Kf7 7.h7! で白が勝つ。黒はチェックするのが最善である。

6.Ke7 Re1+ 7.Kd8 Rf1

 これが一番可能性が高い。7…Kf8 は 8.Rg7 から 9.h7、7…Rd1+ は 8.Ke8 Re1+ 9.Re7 で白が勝つ。

8.h7+ Kh8 9.Ke7

 9.f7 は 9…Rxf7! で引き分けになってしまう。本譜なら 9…Rxf6 には 10.Rb8+ をさしはさむことができる。

9…Re1+ 10.Kf7

 ここでも白が 10.Kf8? と間違えると 10…Re8+ 11.Kf7 Rf8+! で引き分けになってしまう。本譜の手ならば 10…Re8 には 11.Kg6 又は 11.Rb1 で良い。

10…Ra1 11.Rb8+ Kxh7 12.Kf8

 これで白が勝つ。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(111)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 ここは間違えやすい瞬間である。キングがどう動いても負けてしまう。27.Kf1? は 27…Nxd2+ 28.Rxd2 Rf8 でナイトが釘付けにされて取られるし、27.Kh1? は本譜のとおりである。白は 27.Be3 と受けて 27…Nc3! 28.bxc3 Rxe3! 29.Kf1 Rxc3 となるが劣勢の収局で満足しなければならなかった。

27.Kh1? Nf2+ 28.Kg1?! Rxe2! 29.Nxe2 Ne4+ 30.Kf1 Nxd2+ 31.Ke1 Nc4 白投了

(この章終わり)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(175)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク(続き)

 2ポーンでも必ずしも勝ちにつながらない例外的な局面は他にもまだたくさんある。その理由は白キングの位置が良くないこと、黒駒の働きが著しく活発なこと、あるいは一つのポーンがほとんど価値がないことなど場合による。このような局面のほとんどは実戦に現われることはめったにない。そこで読者にとって最も役に立つような少数の局面に注目することにする。

 二つのポーンが同じ翼のビショップ列とルーク列にある場合、意外かもしれないが理論的には通常は引き分けということになっている。しかしそのような局面の防御側は最高の正確さが要求される。ポーンがずっと先まで進んでいる時は特別で白の勝ちとなる局面が多く存在する。このようなエンディングの実際的な価値を十分に知るために最初の重要な局面である図175から少し詳しく分析してみる。

 図175
マイゼリス、1939年

 白のキングとルークは共に活動的な位置にいるので以下のように勝つことができる。

1…Ra8

 黒がチェックをかけると白は次のような面白い手段で勝つことができる。1…Ra7+ 2.Kf8 Ra8+ 3.Re8 Ra6(4.f6 を防ぐため)4.Re7+ Kh8 5.Re6 Ra8+(6.f6 を狙われているため)6.Re8 Ra6 7.f6! Rxf6+ 8.Ke7+

 黒は 1…Ra2 で手待ちをすることもできない。それは 2.f6 Ra8(2…Kxh6 なら 3.Kf8)3.Re8 Ra7+ 4.Ke6! Ra6+ 5.Kf5 Ra5+ 6.Re5 Ra1 7.f7 Rf1+ 8.Ke6 Kg6 9.Rg5+! Kxg5 10.h7 となって白キングはf8へ行ってチェックを逃れることができるので白の勝ちである。

 局面をほんの少し変えて白ルークをd6に置くと黒が引き分けにすることができる。1…Ra7+ 2.Ke8 Ra8+ 3.Ke7 3.Rd8 なら 3…Ra6 である。3…Ra7+ 4.Rd7 Ra8 5.Rd8 5.f6 なら 5…Kxh6 で引き分けである。5…Ra7+ 6.Kf6 Ra1 7.Re8 Ra2 この後 8.Kf7 は 8…Kxh6 と取られてしまう。

2.Re8

 2.f6 は 2…Kxh6 で引き分けになってしまう。

2…Ra7+

 2…Ra6 は 3.Re1! Kxh6 4.Re6+ 又は 4.f6 で白が勝つ[訳注 4.f6 は 4…Ra7+ で白が勝てないようです]。この手順中 3…Ra7+ なら 4.Kf8 で既に出てきた変化のように白が勝つし、3…Rb6 なら 4.f6 Rb8(4…Kxh6 は 5.Rh1+ から 6.Kg7)5.Re8 Rb6(5…Rb7+ なら 6.Ke6 で既に見たように白が勝つ)6.Ke7 Rb7+ 7.Ke6 これで1手目の説明のように白が勝つ。

3.Kf8 Kxh6

 3…Ra6 は 4.Re7+ である。

4.Re6+ Kg5 5.f6 Kf5 6.Rb6

 6.Rd6 Kg6 7.f7+ Kh7 8.Ke8 でも白の勝ちである。

6…Kg6 7.f7+ Kh7 8.Rb8

これで白が楽に勝つ。[何か錯覚しているみたいで 8…Kg6 で 9.Rb6+ と元に戻すしかありません。正着は 8.Re6 又は 8.Rf6 です。]

(この節続く)

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開放試合の指し方(110)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 白は 22.Rxe8 Rxe8 23.Nf7+ を狙っている。21…Kg8?! では 22.Ne6 で厄介である。黒はルーク交換により白のもくろみをすべて防いだ。

21…Rxe1! 22.Rxe1 h5

 22…h6! の方が本手だが、本譜の手は白にポーン得するよう誘っている。

23.Ne6?!

 23.Bc3 か 23.h3 ならほぼ互角だった。

23…Re8 24.Re2 Kg8 25.Nxf4

 ここは 25.Bxf4! と取る方が良く、25…Rxe6 26.Rxe6 Bxf4 27.Ra6 となればルークがよく働いているので白はあまり苦労なく引き分けにできたはずだった。

25…Ne4! 26.Kg1 Bc5+

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(174)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+2ポーン対ルーク

 ルーク+2ポーン対ルークのエンディングは通常は白の容易な勝ちである。白は1ポーンを失わなければならなくてもその間に残りのポーンで理論的に勝ちの局面を作ることができる。黒は特別な場合だけ引き分けを期待することができる。これから分析していくのは最も実戦的な価値のある局面のうちのいくつかである。

 図174 白の手番
スミスロフ対ボンダレフスキー、1940年

 最初の例は非常に興味深い。白ルークが両方のポーンを守り白キングが自由に横に動けるにもかかわらず白は勝つことができない。黒は重要なバンクーラの局面(図138)を念頭において引き分けにすることができる。この間にh6のポーンは全く何の役にも立たない。

1.Kd3

 白ルークが動くとすぐにどちらかのポーンが取られる。白キングがhポーンに向かうとg5かh5の地点で黒ルークのチェックで追われる。

1…Rb4 2.Kc3 Rf4

 黒の受けの方針は簡単である。黒ルークはaポーンに対する横からの攻撃を維持する。そして白キングがaポーンに近づけばチェックして追い払う。これを問題なく行なえるようにするためには適切な列を選ばなければならない。即ちその列のどの枡からもチェックできaポーンからはできるだけ離れている方が良い。このためにはf列が理想的であることは明らかだがe列も十分aポーンから離れているので 2…Re4 も可能である。しかし 2…Rg4 はg7からチェックできないので不適である。

3.Kb3 Rf3+

 白が 4.Rc6 を狙っているのですぐチェックをかけなければならない。

4.Kc4 Rf4+ 5.Kd5 Rb4

 黒は白キングがaポーンのすぐそばを離れるまでチェックするだけで良い。5…Rf5+? は 6.Ke6 Rf4 7.a5 で黒は 7…Rf5 と指すことができない。

6.Kc6 Rf4

 白の狙いは 7.a5 だった。

7.Kd7 Rd4+ 8.Kc7 Rf4 9.a5 Rf5!

 すべてバンクーラの教え(図138)どおりである。

10.Kd7 Rd5+ 11.Ke7 Re5+ 12.Kf6 Rc5 13.Ra8 Rb5 14.a6 Rb6+

白は何も進展を図ることができない。後は 15.Ke7 Rxh6(15…Rc6 でも良い)16.Kf7 Rb6 17.Ra7 Kh6 18.Kf8 Rb8+ 19.Ke7 Rb6 20.Kd8 Rf6 21.Kc8 と進んだ所で引き分けが合意された。これから分かるようにバンクーラの防御法は実戦的に非常に重要である。

(この節続く)

2013年10月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]理詰めのチェス(11)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第11局

 次の2局は短手数ではあるが内容が豊かで見ておもしろい試合である。フロール対ピトシャク戦の見どころはキングの守りのポーンをかじることをちらつかせてそれらを前進させる過程である。ピトシャクはまずgポーン、次いでhポーンを進ませて最後はクイーンを切って防御陣を壊滅させた。

クイーン翼ポーン試合(コーレ・システム)
白 フロール
黒 ピトシャク
ビリン、1930年

1.d4

 チェスではサービスエースで勝つことはできない。中級程度以上の棋力の選手さえも面食らわせるような序盤のはめ手は存在しない。

 可能なことはこの段階の指し手において優勢とはいかなくても指し易い局面を得るように秩序と方法を適用することである。行なう必要のあることは理にかなった展開のために少数の簡単な規則に従うことが全てである。

 1.e4 又は 1.d4 で指し始めること。どちらの手も2個の駒を自由にする。

 少なくとも1個のポーンを中原に据え、そのポーンをしっかりと支えること。中原のポーンは敵駒を絶好の地点に来させないようにする。

 可能ならいつでもビショップより先にナイトを出すこと。大まかに言うとナイトはc3/c6とf3/f6にいる時が最も働いている。そこでは攻撃にも防御にもナイトの力が最も発揮される。

 二通りの展開の手がある時はより攻撃的な方を選ぶこと。できるならば狙いを持って展開すること。

 序盤ではそれぞれの駒を1回しか動かさないこと。しかも中原に影響力を持ち攻撃に最も見通しの良い地点にただちに置くこと。

 序盤の早い段階では1個か2個のポーンだけを突くこと。駒を動かすこと。

 中原の支配を視野に入れて駒を展開すること。それは中原を占拠することでもフィアンケットされたビショップのように遠くからにらみを利かせることでも良い。

 クイーンを、ポーンや小駒で追い回されないように自陣の近くに展開すること。

 展開を犠牲にしてポーンを追い求めたりしないこと。

 キングをできればキング翼に早くキャッスリングさせて安全を確保すること。

 カパブランカは以上を要約して次のように言った。「大切なことは駒を素早く展開することである。できるだけ速くそれらを戦いに投入することである。」

 フロール対ピトシャク戦に戻る。

 白の初手はポーンを中原に据えて2個の駒を自由にした。

1…Nf6

 黒はキング翼ナイトを最適な地点に出し白が次の手で 2.e4 と指すのを妨害した。

2.Nf3

 ネーピアの回想によるとシュタイニッツから受けた講義の最初で世界選手権者は次のように尋ねた。「ビショップより先にナイトを両翼に出していることだろうね。どうしてか分かるかね?」ネーピアがうまい答えに詰まっているとシュタイニッツは続けて次のように説明した。「一つのもっともな理由はビショップの行き先について多くを知るより前にナイトがどこに行くべきか分かっているからだ。確実性は不確実性よりもはるかに良い友人なのだ。」

2…e6

 黒は単刀直入な応手の 2…d5 を保留した。そう指すと通常のクイーン翼ギャンビットの戦型になる。一方本譜の手で黒はキング翼ビショップの筋を通した。

3.Nbd2

 この手はコーレ攻撃の典型的なナイトの捌きである。このナイトはc列をふさがずに急所のe4の地点に圧力を加えている。

3…c5

 黒は白のdポーンに打撃を与えて中原の支配を確保しようとしている。クイーン翼ポーンの布局では黒は白の中原の陣形を乱さなければならないのでこの側面からのポーン突きはほぼ必然である。

 今すぐの狙いは 4…cxd4 で、白が 5.Nxd4 と取り返せば中原に白のポーンがなくなる。

4.e3

 dポーンを支えキング翼ビショップに出口を与えた。

4…b6

 黒も以前に突いたポーンを支えクイーン翼ビショップをフィアンケットする用意を整えた。

5.Bd3

 このビショップ出はこの攻撃システムにおける常用手である。このビショップはe4の地点に加えている圧力を強化しeポーン突きの準備をした。それが実現すれば後方に控えている駒のための攻撃路が開かれる。また敵キングがキング翼にキャッスリングした際には格好の攻撃目標となるhポーンにも狙いをつけている。

5…Bb7

 この手によって、クイーン翼ビショップの効果的な配置というクイーン翼布局における黒の主要な課題の一つが解決された。フィアンケットによりこのビショップは最長の斜筋をにらみ、コーレ攻撃システムにおける戦略要衝のe4の支配をめぐる戦いに加わる。

6.O-O

 展開の過程の一部として白はキングを危険から隔離しルークを中央の列に近づけた。

6…Be7

 控えめな登場にもかかわらずe7の地点のビショップには大きな潜在的エネルギーがある。それは自陣に十分近いのでキングの守りに役立ち、必要な時にはもっと攻撃的な地点に容易に移ることができる。

7.c4

 もっとコーレ陣形の精神に沿っているのはdポーンを支えるためのおとなしい 7.c3 である。そうなればeポーンは自由に進むことができ、黒がいつ …cxd4 と取ってきても白はcポーンで取り返して中原の強力なポーンを維持する。

 本譜の手の意味は明らかにd5の地点を黒駒の活動の旋回軸として利用するのを防ぐことである。

7…O-O

 黒は落ち着いて全軍出動に取り掛かった。一撃でルークが舞台に登場しキングが隠れた。

8.b3

 この手がビショップをb2に展開させるためであることは明らかである。ビショップをこのようにフィアンケットするのはコーレの通常の指し方ではない。しかしフロールは何か独自の構想を試したかったのかもしれない。

8…d5

 黒はこの機会に中原の支配を争うことにした。それと共に黒は白のもくろんでいたeポーン突きにも終止符を打った。黒がナイト、ポーン及びビショップで急所の地点(e4)を押さえているのに対し白の利いている駒は二つだけである。

 確かにクイーン翼ビショップの斜筋はふさがったがこの状態は一時的でしかない。

9.Qc2

 白は前手で用意したように単にクイーン翼ビショップをb2に展開させた方がずっと良かった。

 9.Qc2 の目的はe4の地点を掌握し黒がそこに 9…Ne4 で拠点を築くのを防ぐことである。しかしこの手の問題は黒に主導権を握らせ局面の成り行きを支配させてしまうことである。

9…Nc6!

 この手は展開、攻勢および先受けを兼ね備えた強手である。

 展開とはナイトが遅滞なく最適の地点に置かれたことをいう。

 攻勢とはb4の地点に跳ねてクイーンとビショップを両当たりにし危険なキング翼ビショップと交換する狙いのことをいう。

 先受けとは 10.e4 を防ぐことをいう。そうくれば 10…Nb4 11.Qc3 Nxd3 12.Qxd3 dxe4 で黒の駒得になる。

10.a3

 白は大切なキング翼ビショップを温存しなければならない。

 不運なことにこのポーン突きに費やさなければならない一手は後に分かるように高くつくことになる。

10…cxd4

 黒はポーン交換で中原の形を決め、クイーン翼ルークの利便のためc列を開けた。

11.cxd5

 11.exd4 とこちらのポーンを取るのは白が面白くない。11…dxc4 と取られると 12.Qxc4 と取り返さなければならず(さもないとdポーンを取られる)12…Rc8 と回られて中原に不快な圧力をかけられる。本譜に代わる別の手は 11.Nxd4 だが 11…Nxd4 12.exd4 dxc4 13.Qxc4(dポーンを守るため)13…Rc8 14.Qa4 Bc6 15.Qxa7(15.Qc4 なら 15…Bxg2 で黒の楽勝)15…Ra8 でクイーンを取られる。

11…Qxd5

 黒はポーンを取り返し(それだけでは十分でないというように)逆に攻勢に立った。

 このクイーンは全然危険でない。白の駒は十分な展開ができていないのでクイーンを脅かすことができない。

12.exd4

 白は反撃を念頭に局面を開放的にした。白の希望はe列をルークが使えるようにしe4の地点を自分の駒の跳躍点に用いることである。

 本当は 12.e4 と指したいところだがそれはあまり成果があがらない。12…Qh5 と応じられると急所のe4の地点が自分のポーンで占められ駒が捌けなくなる。一方黒は幸便にd列にパスポーンができる。

12…Nxd4

 この手は白クイーンに当たっているので先手である。白はクイーンが逃げなければならない。

13.Qb1

 明らかに 13.Nxd4 は頓死するので問題外である。13.Qb2 は 13…Nxf3+ 14.Nxf3 Qxd3 で駒損になる。13.Qc3 に対して黒は 13…Rfd8 から 14…Rac8 と指し白クイーンが再び逃げなければならない。

 本譜の手は多分一番ましな手である。

13…Rfd8

 d列、特にビショップへの圧力を強めた。狙いは 14…Nxf3+ 15.Nxf3 Qxd3 16.Qxd3 Rxd3 である。

14.Ne1

 白はビショップに紐を付けながら弱いgポーンも守った。

 14.Bc2 なら黒は以下の主題を選ぶことができる。

 単純化(ポーン得なので)-14…Nxc2

 圧力の増大-14…Rac8 でビショップを1段目に追い込む

 手筋-14…Ne2+ 15.Kh1 Ba6(16…Nc3 で交換得の狙い)16.Re1 Ng4 17.Ne4 Qxe4! 18.Bxe4 Nxf2# で詰み

14…Qh5!

 クイーンがここに来てもこれといった狙いはない。黒は狙いを狙っている。黒の狙いは小駒の助けを借りてクイーンで白ポーンの砦に押し入ることで、例えば 15…Bd6 あるいは 15…Ng4 である。これによりポーンの1個がその持ち場を離れざるを得ず、黒がつけ込むことができる弱点が生じる。前進したポーン自身も攻撃にもろくなるかもしれないし、キングへの通り道が開かれるかもしれない。

 根元に対するこのような切り崩しは、見かけは強固な要塞陣地を攻撃にもろくさせる興味深い過程である。

15.Bb2

 白はこれといった受けがない(特に漠然とした狙いに対しては)。そこで自分の駒の展開を続ける。駒を戦いに投入できればできるほど来るべき猛攻に耐えられる可能性が高まる。

15…Bd6

 単純だが間違いようのない狙いである。即詰みを狙っている。

 白はどのように受けたらよいであろうか。

 16.Nef3 は 16…Nxf3+ 17.Nxf3 Bxf3 18.gxf3 Qxh2# で詰みになる。

 16.f4 は 16…Bc5(17…Ne2+ 18.Kg1 Ng3# の狙い)17.Kh1 Ng4 18.h3 Qxh3+ で次の手で詰みになる。

 16.h3 は Qe5(これもh2で詰ます狙い)17.g3 Qd5(今度は 18…Qh1# の狙い)18.f3 Qg5 で白陣が瓦解(がかい)する。

16.g3

 消去法により受けがあるとすればこの手しかない。

16…Ng4

 白のgポーンは前に進まざるを得なかった。17…Qxh2# の狙いがあるので今度はhポーンが前に進まなければならない。

17.h4

 白は他に手がない。この手は敵クイーンを近寄せないが、本当にそうだろうか。

17…Qxh4!

 素晴らしい手である。それはクイーンを捨てたからでなく、巧妙に出現させたポーンの弱点の組織的な利用の頂点にふさわしいからである。

 h2での詰みに加えてh1での詰みの狙いも加わっている。

18.投了

 クイーンを取っても即座に 18…Bh2# で詰みになるので意味がない。

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開放試合の指し方(109)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 黒はキング翼と中央で強力な主導権を持っていて何の代価も払っていない。しかし白はうまく守り不利を最小限に抑える。

14.dxe5 Bxe5 15.Nf3! Bd6 16.Bd2! Rae8 17.Qc4+ Kh8 18.Rae1! Qb6+ 19.Kh1 Qb5

 意外にも黒は収局に転ずることを望んでいる。クイーン翼のポーンが整形されればより活動的な陣形のために少し優勢になる。19…Nd5!? ならねじり合いの中盤戦がまだ続くところである。

20.Qxb5 cxb5 21.Ng5

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(173)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 図173は実戦的に重要なもう一つの例である。白の駒は前の例よりも良い位置にある。しかし意外なことに黒は手番ならば引き分けにすることができる。

 図173

 白の手番ならば 1.e6 で勝てる。黒の手番ならば次の手順で引き分けになる。

1…Kf5

 黒は今のうちにキングを自陣の4段目に持ってこなくてはならない。

2.e6+ Kf6 3.Ra6 Re2!

 黒ルークはe列で手待ちをしなくてはならない。3…Rd1+? は 4.Ke8 から 5.e7+、3…Kg7 は 4.Ra2 で白が勝つ。

4.Rd6

 4.e7+ なら 4…Kf7 で明らかに引き分けである。

4…Re1 5.Rd2 Ra1!

 白が 6.Rf2+ から 7.e7 で勝つ手を狙っているのでこの手が唯一の手である。5…Rxe6 はもちろん 6.Rf2+ でだめである。

6.Rf2+ Kg7

 これで黒は図154と同型の引き分けの局面に到達した。

 図173の局面を1列左へ移動すると次のように白の勝ちになる。1…Ke5 2.d6+ Ke6 3.Ra6 Rd2 4.Rc6 Rd1 5.Rc2 Ra1 6.Re2+ Kf7 7.d7 これで図149の型の局面に到達した。

 図173の局面を1列右に移動しても結果は変わらない。しかし2列右に移動すると黒は別の防御手段を用いなければならない。1…Kh5 2.g6+ Kh6 3.Ra6 Rg2 4.Rf6 Rg1? 5.Rf2 Ra1 6.Rh2+ 黒キングがg5に追われるので白の勝ちになる。しかし黒には次のようなステイルメイトの手段がある。4…Rg5! 5.Rf1 Rf5+! 6.Rxf5 ステイルメイト しかし 3…Rg5? はだめで 4.Rf6! で黒は手詰まりに陥り白の勝ちになる。

 これでルーク+ポーン対ルークのエンディングを終えることにする。この型のエンディングの重要性と比べて費やした紙数の少なさは否めない。もっと複雑なルーク+ポーンのエンディングも通常はこの基本的なエンディングのどれかに移行するので完全に理解しておかなければならない。

(この節終わり)

2013年10月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(108)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

9…O-O! 10.Nxe6 fxe6 11.Bxc6 bxc6 12.O-O

 白の戦略が成功したように見える。13.Qxe6+ と 13.Bxf4 の二つの狙いがあるので、ポーン得は確実である。

12…Qc7!

 黒は「どうぞご自由に」と言っている。fポーンは白にとって最も目障りで、白のビショップを効果的に展開するのを妨げている。だから黒が保持しなければならないのはこのポーンである。

13.Nd2?!

 白は怖じ気づいた。13.Qxe6+ Kh8 14.Qh3(黒に 14…f3! 15.g3?! Bxg3! という狙いがあった)14…Rae8 のあと黒にポーンの代償が十分にあるけれども、白にも 15.Nd2 で受けの手段が十分ある。

13…e5!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(172)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 ポーンが原位置にいる局面や中央列の3段目にいる局面にはまだまだ多くの興味深いエンディングがあるがこれらについては割愛する。その代わり守る側のキングがポーンの後ろにいる二つの例を分析しよう。

 図172
クリングとホルビッツ、1851年

 一般にこのような局面は白の勝ちで特に守る側のキングがポーンから1段離れている場合は特にそうである。黒は白駒の配置が悪い時またはポーンがあまり進んでいない時に限り引き分けの可能性がある。図172は一見すると白がポーンの守りに縛り付けられているので黒が引き分けにできそうに思われる。しかし白は次のような典型的な捌きでこの状態を打開することができる。

1.Rh8!

 白は 1.d7? Re6+ 2.Kf7 2…Kd6? 3.Re8! で勝てそうに見えるが実際は 2…Rf6+ 3.Kg7 Ke6 4.Re8+ Kxd7 で引き分けになってしまう。

1…Rxd6 2.Rh5+

これで白の勝ちである。

 この局面を1列左に移動しても白の勝ちである。しかし1列右に移動すると明らかに 1.Rh8 Rxe6 2.Rh5+ Kg4 で引き分けである。

(この節続く)

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布局の探究(70)

「Chess Life」1993年5月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒は中央に向かって取るべきか(続き)

B …exf6 対 …gxf6

 Aの状況と異なり中央に向かって取り返す …gxf6 は、キングの位置に重大な弱体化を生じさせる。黒は序盤でこう弱体化しても大丈夫なように特に気をつけなければならない。1.e4 布局と 1.d4 布局とからそれぞれ一つの状況を手短に解説する。

  1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 で始まるカロカン防御の主手順には、黒に堅実な二つの手、4…Nd7 と 4…Bf5 がある。これらは実際黒の最もよく指されている手である。しかしはるかに不均衡になり野心的な 4…Nf6 もあり、5.Nxf6+ のあと二つのまったく異なる状況になる。

 図3

 (a)5…gxf6

 ブロンシュテイン・ラルセン戦法を選択するに当たり黒はカロカン防御が互角を追求する本筋の手段として通常用いられることを「忘れて」いるように思われる。ここでは黒は素通しg列を用いて白のキング翼に圧力をかけるつもりである。自分のキングはクイーン翼に安全を見つけることになる。現在この戦型は白の攻撃の方が危険になることが多いので人気がなくなっている。それでも定跡の状況は明らかとは言いがたい。1990年フランスでのJ.フェドロウィッツ対D.ルス戦では 6.c3 Bf5 7.Nf3 Nd7 8.g3 Nb6 9.Bg2 Qd7 10.O-O Bh3 11.Bxh3 Qxh3 12.a4 Qf5! 13.a5 Nd5 14.c4 Nc7 15.Bf4 O-O-O と進んで黒の反撃が有望になった。

 (b)5…exf6

 この主眼と言えない取り返しは、得しているポーン(二重ポーン)がキングを守りビショップが両方とも既に素通し斜筋上にあるという意味で「安全」である。もちろん良いことづくめではない。白はクイーン翼で4ポーン対3ポーンの健全な多数派になっている。GMアナトリー・カルポフのような相手に黒を持って指す危険をおかすよう勧めるつもりは毛頭ない。しかし「並み」のGMたち相手ならいい勝負である。黒の展望の好例は1992年マレーシアでのW.ワトソン対J.ホッジソン戦によく表れている。

6.c3 Bd6 7.Bd3 Be6 8.Ne2 Qc7 9.Qc2 Nd7 10.c4 c5

 黒は白のクイーン翼のポーンを動けなくし黒枡を支配するために、進んで保護パスポーンを作らせる。

11.d5 Bg4 12.h3 Bxe2 13.Qxe2+ Kf8 14.O-O Re8 15.Qc2 h5 16.f4?!

 白は見通しを過大視しすぎた。正着は自分の「優良」ビショップを黒のナイトと交換する 16.Bf5! である。

16…g6 17.Qf2 f5 18.b3 Be7! 19.Bb2 Bf6 20.Bxf6 Nxf6 21.Qb2 Kg7 22.Rf3

 黒はここで 22…h4? と間違えてキング翼をひどく弱め42手で負けた。代わりにホッジソンは 22…Qd6! のあと 23…Re7 から 24…Rhe8 と指すのが良かったとしている。それで白は積極的に動く手がなく、黒は素通しe列を支配しているので優勢になる。

  トロンポウスキー攻撃の 1.d4 Nf6 2.Bg5 に対して黒の信頼度の高い応手の一つは堅実な 2…d5 で、白は必ずといっていいほど 3.Bxf6 と取ってくる。

 図4

 白は黒に恒久的に二重ポーンを負わせ、局面が閉鎖的なままなら敏捷なナイトが黒の双ビショップよりも効果を発揮できることを見せつけることに期待している。大会の実戦ではGMの大多数がgポーンで取り返す方を選んでいる。

 (a)3…gxf6

 局面が閉鎖的であることは黒キングが十分安全であることを意味する。それでも二重ポーンはいくらか扱いにくく、孤立hポーンはあとで弱点になることがある。主眼の指し方をあげると、1985年バルセロナでのフェルナンデス対S.タタイ戦では 4.e3 c5 5.c3 Qb6 6.Qb3 e6 7.Nd2 Nc6 8.Ngf3 Bd7 9.Be2 Na5 10.Qc2 cxd4 11.exd4 Bb5 12.Bxb5+ Qxb5 13.a4 Qc6 14.O-O Bd6 と進んだ。Encyclopedia of Chess Openings D ではこの局面を互角と判断している。

 (b)3…exf6

 ちょうどカロカン防御の似た局面のように、黒は中央方向の動的な二重ポーンよりも理にかなった効率的な展開を選んだ。1980年ニューヨーク(へラルディカ)国際大会でのL.アルバート対E.メドニス戦では 4.e3 Bd6 5.c4 dxc4 6.Bxc4 O-O 7.Nc3 f5 8.Nf3 Nd7 9.O-O Nf6 10.Qc2 a6 11.Rfe1 Rb8 12.Rad1 と進んで、陣地の広さで白が少しの優勢を維持した。私の考えでは積極的な 7…c5! が良く、それで完全な互角のための十分な反撃が得られる。

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カテゴリ: 布局の探究1

開放試合の指し方(107)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2
白 グロス
黒 J.プラチェトカ
チェコスロバキア、1972年

1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5 4.exd5 Nf6 5.Bb5+ c6 6.dxc6 Nxc6 7.d4 Bd6 8.Qe2+ Be6 9.Ng5?!

 これは黒のビショップと交換する理にかなった作戦で、ポーン得にもなるかもしれない。しかしこのナイトがなくなるとキング翼がかなり弱体化する。だから推奨された 9.Bc4! の方が良い。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(171)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 図171

 白は優勢にもかかわらずここからの指し手はまだ簡単ではない。8.Kc7 は 8…Rb4 9.Kc6 Rb8 でポーンを進めることができない。ルークを動かすと黒キングがクイーン翼に寄ってくる。白が勝つためには方針を変更して白ルークをb8に持ってくる必要がある。そうなれば黒キングが十分遠くにいるので白が勝つことができる。[訳注 「b8」でなく「b1」の間違いのようです。]

8.Kc5! Rc8+

 8…Kg4 は 9.Rd3! Rc8+(この手は 10.b4 を指させないため)10.Kb6 Rb8+ 11.Kc7 Rb4 12.Kc6 Kf4(12…Rb8 は 13.Rd4+ Kf5 14.b4 Ke5 15.Rh4 で白が勝つ)13.Kc5 Rb8 14.b4 Rc8+ 15.Kd5 Rd8+ 16.Kc4 Rc8+ 17.Kb3 Ke4(17…Rb8 なら 18.Rd5、17…Ke5 なら 18.b5)18.Rd6 Ke5 19.Ra6 で図167の分析のように白が勝つ。

9.Kd4 Rb8 10.Kc3 Rc8+

 この手で又は前の手で 10…Kg4 とするのは 11.Rf1 で白の手助けとなるだけである。

11.Kb2 Rb8

 非常に多くの手間と巧妙な手を織り交ぜて白はほぼ初めの局面に戻った。決定的な違いは黒キングがポーンから3列でなく4列隔たっていることである。これが勝利への決め手となる。

12.Rf1!

 このルークはb1の地点に向かう。黒にはこれを妨げる方策はない。

12…Kg6 13.Kc3

 以前のダンスの足どりの最終版の始まりである。

13…Rc8+ 14.Kd4 Rb8 15.Kc4 Rc8+ 16.Kd5 Rb8 17.Rb1!

 とうとうここへやって来た。黒キングは間に合わない。

17…Kf7 18.b4 Ke7 19.Kc6

 これで白が簡単に勝つ。

 グリゴリエフの大変な量の分析である。しかも妙手と意表の手が一杯だった。これを採り上げたのは一見最も単純そうに見えるエンディングでも難解さが含まれているということを読者に納得して欲しかったからである。だから実戦で出会う前に研究しておくのはそれだけの理由があるのである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(106)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 これは負けを認めてしまったような手である。求められる手は 20.Rc1! で、白は苦難の代わりに少なくとも1ポーン得である。本譜の手のあとは何も見返りがなく、より大きな苦難のほかに何も期待することができない。

20…Bxc2 21.Rh4 Ne3 22.Rc1 g5

 黒はキング翼をこう弱める余裕があり、白はそれにつけ入る立場にない。

23.Rh6 Bg6 24.Na4 Ng4 25.Rh3 Qe6! 26.Qc3

 白は 26…Qe3+ を防がなければならない。26.Re1? では 26…Qxe1+ 27.Nxe1 Rxe1# で頓死する。

26…Qxa2 27.Nc5 Re3 28.Qd2 Rae8! 白投了

 既にポーン損で 29…Re2 が見えすいているので白には苦しみを長引かせる理由がなかった。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(170)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 ポーンがナイト列にある場合に白が必ず勝てるためには黒キングがポーンから少なくとも3列離れていなければならない。これをわざわざ示す必要はないであろう。ただポーンが3段目にある場合は要領は同じであるが興味深い点もある。いろいろな可能性は極めて複雑で次の例に見られるように非常に正確な手順が要求される。

 図170
グリゴリエフ、1937年

 この局面を詳しく分析する前に要点を少し述べよう。白がキングを先に進めれば次のような手順をたどる。1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 ここで黒がチェックを続けるのは勧められない。例えば 2…Rd8+ 3.Kc5 Rc8+ 4.Kd6 Rb8 の後 5.Rf1+ で黒キングがさらに追われてしまう。そこで次のように進む。2…Rb8 3.Kc4 Rc8+ 4.Kd5 Rb8 白はポーンを守らなければならないが 5.Rb1 は 5…Ke7 で黒キングをクイーン翼に近づけさせてしまう。そして 5.Re3 Kf5 6.Rf3+ Kg4 は白ルークが追われてしまう。だから白はまずキングを進める準備をしなければならない。

 上の分析から分かることは黒キングが比較的良い位置にいるということである。もし黒キングの位置がf8だったら 1.Re4 から 2.b4 で白が楽に勝つ。f4も良い位置でなく白が次のように勝つ。1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 Rb8 2…Rd8+ は 3.Kc5 Rc8+ 4.Kd6 Rb8 5.Rb1! Ke4 6.b4 Kd3 7.b5 Kc2 8.Kc7! で白が勝つ。3.Rb1! 3.Kc4 はだめで 3…Rc8+ 4.Kd5 Rb8 5.Rb1 Ke3! 6.b4 Kd3 7.b5 Kc2 8.Rb4 Kc3 で引き分けになってしまう。3.Rf1+ も 3…Kg5 4.Rb1 Kf6 でだめである。3…Kf5 4.Kd5! 貴重な手が稼げる。4…Kf6 5.b4 Ke7 6.Kc6 から 7.b5 で白が楽に勝つ。

 黒はキングがf5にいる時も次のように負ける。1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 Rb8 3.Kc4 Rc8+ 4.Kd5 Rb8 4…Rd8+ は 5.Kc5 Rc8+ 6.Kd6 Rb8 7.Rb1 Ke4 8.b4 Kd3 9.b5 Kc2 10.Kc7! で白が勝つ。5.Rb1 これで前の変化と同じになる。

 黒キングがf7の場合は本譜の中で分析する。黒キングがさらに上のほうに来て例えばf3にいる場合は次のように白が楽に勝つ。1.Re6 Kf4 2.Ka3 Kf5 2…Ra8+ は 3.Kb4 Kf5 4.Rc6 Ke5 5.Kc5 から 6.b4 で白が勝つ。3.Ra6 Ke5 4.b4 Kd5 5.Ka4 Kc4 6.Rc6+ Kd5 7.b5 Ra8+ 8.Kb4 時々ではあるが黒キングをもう1列右側に追いやってから分析を続けなかった所がある。これが白の勝ちであることは後で示す。

 これまで出てきた変化はf6の地点を除いてすべて黒キングの位置が悪いことを示している。このことは図170で黒キングが実質的に手詰まりの状態にいるという驚くべき結論に到達する。この事実に気付けば最も簡明な勝つ手順を見つけるのはもはや難しいことではない。

1.Re4

 この手と次の手の目的は図170で白ルークがe3にいる局面にすることである。何でこれが必要かは後で分かる。最初の時に次の変化を示した。1.Kc3 Rc8+ 2.Kd4 Rb8 3.Kc4 Rc8+ 4.Kd5 Rb8 5.Rb1 Ke7 グリゴリエフはここから次の手順で引き分けになると考えていた。6.Kc6 Rb4! 7.Re1+ Kd8 7…Kf6 は 8.Re3 Rb8 9.Kc7 Rb4 10.Kd6! で本譜と同じになる。8.Re3 Rh4! 9.Re5? Rh6+ 10.Kb7 Rh7+ 11.Kb8 Kd7! 12.Rc5 Rh4 13.Rb5 Kc6 しかし後にコパイェフは次のような白の正しい手順を見つけた。
9.Rg3! Rh6+ 10.Kb7 Rh7+ 11.Kb8 Rh4 11…Kd7 なら 12.Rg6! Rh4 13.Rb6 から 14.b4 で白が勝つ。12.Rd3+ Ke7 13.Kc7 Rb4 14.Re3+ Kf6 15.Kd6 これで本譜と同じように白の勝ちとなる。

 しかしこの手順は本譜よりもずっと手数がかかりしかも難解である。

1…Kf5

 1…Kf7 は 2.Kc3 でポーンを b4 と突けるので白が勝つ。

2.Re3 Kf6

 2…Kf4 は 3.Ke1 で既に分析した黒キングがf3、f4又はf5のいずれかの局面になる。本譜の手の局面は黒キングが元々f7にいた局面からも生じる。つまり 1.Re3 の後黒は 1…Kf6 と指すよりない。しかし白は 1.Re4 Kf6 2.Kc3 Rc8+ 3.Kd4 Rb8 4.Kc4 Rc8+ 5.Kd5 Rb8 6.b4 Kf5 7.Rh4 でも楽に勝てる。

 本譜の 2…Kf6 の代わりに黒は 2…Rh8 3.b4 Kf4! 4.Re1 Rh3! で白キングの進出を防ぐ巧妙な受けがある。それでも白は次のようなうまい手段で勝つことができる。5.Kc2! 5.b5? は 5…Rh5 でもちろんだめである。5.Re8 は 5…Kf5! 6.b5 Rd3! 7.b6 Rd6 8.Rb8 Ke6、5.Ka2 は 5…Rd3! 6.b5 Rd5 7.Rb1 Ke5 8.Ka3 Kd6 9.b6 Kc6 で引き分けになる。5…Kf5 手待ちの 5…Rg3 は 6.b5 Rg5 7.b6 Rc5+ 8.Kd3 Rb5 9.Re6 で黒が負ける。6.b5 Kf6 6…Rg3 は 7.b6 Rg7 8.Kc3 Rb7 9.Rb1 Ke6 10.Kc4 Kd7 11.Kb5 Kc8 12.Ka6 Rd7 13.Rh1 Rd8 14.Ka7 Rd7+ 15.Ka8 で白が勝つ。7.b6 Kf7 7…Rh8 は 8.Kc3 Rb8 9.Rb1 Ke6 10.Kc4 Kd7 11.Kb5 Kc8 12.Rc1+ で 12…Kb7 は2手詰みとなる。8.Rb1 Rh8 9.Kc3 Ke6 10.Kb4 Kd7 11.Rc1! Rc8 12.Rc5 これで白の勝ちとなる(12…Rc6 13.Kb5)。

 この変化は黒の新しい防御法だけでなく白の巧妙な勝ち手順も含んでいる。注意すべきは黒の 4…Rh3! の後黒キングがf4でなくf5だったら 5.Kc2 Kf6 6.b5 Rh5 7.b6 Rc5+ 8.Kd3 Rb5 で白が 9.Re6 と指せないので引き分けとなることである。5.b5 も 5…Rd3! 6.Kc2 Rd5 7.Rb1 Rc5+ 8.Kd3 Ke5 9.b6 Rc8 で引き分けになる。それではここで本譜に戻る。

3.Kc3

 白はここで 3.Re1 で図170の局面で黒の手番とすることができる。しかし既に知ったように黒は 3…Rh8! と別の防御法に変えることができる。これに対して白は 4.Re3 と応じるしかない。4.b4? は 4…Rh3! 5.Kc2 Kf7 6.b5 Rh5 7.Rb1 Ke6 で引き分けになってしまう。

3…Rc8+ 4.Kd4 Rb8

 4…Rd8+ は 5.Kc5 Rc8+ で本譜に戻る。

5.Kc5 Rc8+ 6.Kd6! Rb8

 6…Rd8+ は 7.Kc7 Rd4 8.Kc6 Rh4 9.Kb5 Rh5+ 10.Ka4 でポーンが前進できる。

7.Rf3+!

 これまでの手順はこの手を指すためであった。白ポーンがe3のルークで守られていたので白は 5.Kc5 から 6.Kd6 と指すことができ、この結果さらに黒キングを1列遠くへ追いやることができた。

7…Kg5

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(99)

「Chess Life」2005年8月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット(続き)

戦型2 1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nxe4 5.Qxd4

 この戦型では白は長期的なポーンの犠牲を払って、積極的な指し方と展開の優位を得る。

5…Nf6

 5…d5 は 6.Bxd5 Nd6 7.O-O で白が良い。6…Nf6 は 7.Bxf7+ Kxf7 8.Qxd8 Bb4+ にクイーンがちょうど 9.Qd2 でチェックを受けることができるので白がずっと良い。

6.Nc3

 この手は展開すると共に …d7-d5 突きを防いだ。ここは分岐点である。この局面で黒は …c7-c6 から …d7-d5 という陣形か …Nb8-c6 を選ぶことができる。

戦型2a 6…Nc6 から …d5

 これが主手順である。

6…Nc6 7.Qh4 Be7 8.Bg5 d5 9.O-O-O Be6 10.Rhe1

 ここで 10…h6 は 11.Bxf6 Bxf6 12.Qh5! で白が良い。

 黒の最善の手は 10…O-O 11.Bd3 h6 である。ここで白は 12.Kb1! でキングをもっと安全な所に移す余裕がある。

 12…hxg5 と取ってくれば 13.Nxg5 g6 14.Rxe6! fxe6 15.Qh6 で攻撃が決まる。

 黒は 12…Ne8! 13,Bxe7 Qxe7 14.Qxe7 Nxe7 で局面の単純化を図ることができる。そして白は 15.Nd4 Nc6 16.Nxe6 fxe6 17.Rxe6 Rxf2 18.Nxd5 Rxg2 と手を進める。これは黒がポーン得だが白が十分な代償を得ている面白い局面である。ここで 19.Bc4 と 19.Rf1 を調べたが、両者が正しく指せば引き分けに落ち着く。もっとも黒は少し注意を払わなければならない。

 黒が …d7-d5 でなく …d7-d6 と突く作戦もある。

戦型2b 6…Nc6 から …d6

6…Nc6 7.Qh4 Be7 8.Bg5 d6 9.O-O-O Be6

 9…O-O は 10.Bd3 で危険すぎる。

 ここからの古い主手順は 10.Bd3 Qd7 11.Bb5 である。しかし新しい発見によると白は別の指し方をすることができる(その方が良い)。10.Rhe1 も面白い。

10.Bxe6 fxe6 11.Rhe1 e5

 11…Qd7 なら 12.Qc4 で白に十分な代償がある。次は黒が不注意だとどんなことが起こりうるかの見本である。12…d5 13.Qe2 Nd8 14.Bxf6 gxf6 15.Nxd5! exd5 16.Rxd5!

12.Nxe5 Nxe5 13.Rxe5 dxe5 14.Rxd8+ Rxd8 15.Qa4+

 白がa7のポーンを取って優勢になる。

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開放試合の指し方(105)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 黒はポーンの代わりに十分以上の代償を得ていて、ビショップを動かす決定的な攻撃を狙っている。実際のところ厳密な戦力の観点からは白はポーンの丸得ではない。なぜなら孤立二重gポーンが白のポーン数の価値を大きく減らしているからである。

15.Kf2

 キャッスリングする方が理にかなっているように見えるかもしれないが、それなら白はg3のポーンを守るのにもっと苦労することになる。次の変化を考えてみるとよい。15.O-O Bf5 16.Qf2 Ne3 17.Rc1 Qd6! このあとの狙いは 18…Ng4 から 19…Qxg3

15…Bf5 16.Qc4 Kh8 17.Nc3 Ne3 18.Qc5 Ng4+! 19.Kg1 Qd7

 白を完全に動けなくし、e列でルークを重ねる用意をした。

20.Rf1?

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(169)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 図169

 また黒キングが進みすぎた場合も(例えば図169のようにe4にいる場合)黒が次のように負ける。1.Rd6! Ke5 2.Ra6 Kd5 3.Ka4 これで白ポーンが進むことができる。白は次のようにもっと複雑な手で勝つこともできる。1.Rd7 Ke5 2.Kc4 Rc8+ 2…Ke6 は 3.Rd4 で図168の変化手順と同じになる。3.Kb5 Rb8+ 4.Kc5 Rc8+ 5.Kb6 Rb8+ 6.Rb7 で白が勝つ。

(この節続く)

2013年10月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(104)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

9…O-O!

 ここではポーンの心配をするよりも、展開の速度の方がはるかに重要である。

10.Bxc6

 白は予定の作戦を実行する方が良い。さもないと展開の遅れの代償が得られない。10.Nxc6? bxc6 11.Bxc6 はもっと悪い。11…Rc8! で黒の攻撃の展望が実戦よりもずっと良くなる。

10…bxc6 11.Bxf4 Nd5! 12.Bg3

 12.Nxc6? と欲張ると 12…Qh4+ 13.g3 Nxf4! 14.gxh4 Nxe2 15.Kxe2 Bd5 と罰せられて、白が正当にナイトを失う。

12…f6!

 肝心なのは速度である。13.Nxc6 Bxg3+ 14.hxg3 Qd6 となれば黒にナイト取りと 15…Qxg3+ の二つの狙いができる。だから勇敢なナイトは惨めな退却をしなければならない。

13.Nf3 Bxg3+ 14.hxg3 Re8!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(168)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 図168

 既に述べたように同様の局面でも白ポーンがナイト列にある場合は引き分けにしかならない。しかし黒キングがもっと後ろにいる場合は白が勝つ。例えば図168では白が次の手順で勝つ。1.Rd4 Ke6 1…Rd8 は 2.Rxd8 Kxd8 3.Ka4 Kc8 4.Ka5! で白が勝つ。2.Kc4 Rc8+ 2…Ke5 は 3.Rd5+ Ke6 4.b5 Rc8+ 5.Rc5 Kd7 6.b6! で白が勝つ。3.Kb5 Rb8+ 3…Ke5 は 4.Rd7 Ke6 5.Ra7 で白が勝つ。4.Kc6 Ke5 5.Rh4 で白が勝つ。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(103)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1
白 W.ハートストン
黒 B.スパスキー
ヘースティングズ、1965/66年

1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5 4.exd5 Nf6 5.Bb5+ c6 6.dxc6 Nxc6 7.d4 Bd6 8.Qe2+ Be6 9.Ne5?!

 この手は 10.Nxc6 bxc6 11.Bxc6+ と 10.Bxf4 の両様の狙いがあるので確かに理にかなっているように見える。しかしこの手の根本的な欠点は白の展開も促進しないし黒の展開も妨害しないことである。白は開放的な局面で既に展開で遅れをとっているので 9.Ne5 が最善手となることはあり得ない。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(167)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 黒キングがポーンから2列遮断されていると状況は一層面白くなる。図167はその基本的な局面である。

 図167

 以下の勝つ手段はポーンが中央列にある場合にも当てはまる。図166とは少し異なるが同じくらい参考になる。

1.Kb4

 この局面では手順はそれほど重要でない。黒は自分のキングがf7にいても 1…Re8 とは指せない。それは 2.Rxe8 Kxe8 3.Kb4 Kd8 4.Kb5! で黒負けのポーン・エンディングになってしまうからである。黒キングの厳密な位置は重要でない。

1…Rb8+ 2.Ka5 Rc8 3.Kb5 Rb8+ 4.Ka6

 ここでも余分な列の大切さが見て取れる。ポーンがナイト列にあった場合は引き分けにしかならない。

4…Rc8 5.Rc1!

 この局面では白は 5.Re4 でも勝てる。以下 5…Kf5 6.Rh4(狙いは 7.Kb7)6…Rb8 7.c5 で 7…Ke6 8.Rd4 でも 7…Ke5 8.Rh6 でも白が勝つ。しかしこの手順は黒キングが元々f5にいた場合や局面全体が1列右に位置していた場合は不可能である。

5…Ke7 6.Kb7 Rc5

 もし局面がもう1列右に寄っていたら黒はここで 6…Ra8 を試みるかもしれない。しかしそれでも白は 7.d5 Ra7+ 8.Kb6 Rd7(8…Ra2 なら 9.Re1!)9.Kc6 Ke7 10.d6+ Kd8 11.Rh1 で勝つ。

7.Kb6 Rh5

 7…Rc8 なら 8.c5 Rb8+ 9.Kc7 で白が勝つ。

8.c5

 8.Rd1 Rh6+ 9.Kc7 Rh5 10.Rd5 でも白が勝つ。

8…Kd8 9.Ra1

 9.c6? は 9…Rh2 で引き分けになってしまう。白ルークは 9.Rd1+ や 9.Rg1 など他の地点に動いても白が勝つ。

9…Rh2 10.Ra8+ から 11.c6(+) で白が簡単に勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(10)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第10局

 タラシュ対エッカート戦は機械的に指すとどういう危険性があるかの興味深い例である。黒はポーンを …f7-f5、続いて …g7-g6 と突くことを余儀なくされた。そして相手のビショップ切りによってキングを守っていたポーンを全部剥ぎ取られた。

フランス防御
白 タラシュ
黒 エッカート
ニュルンベルク、1889年

1.e4

 この初手は二つの駒、即ちクイーンとキング翼ビショップのための出口を開けている。そしてそれだけに留まらない。キングのために1枡を空けキング翼ナイトにも1枡を空けている。確かにナイトはf3の地点に展開するのが最善だが、時にはe2の地点-たぶんg3を通ってf5に行くために-に跳ねるのが得策なことがある。手損が無関係ならばナイトの動きに自由度を増す方が良い。キングについては一息つける空間を作っても害はない。配慮が足りないために又は不注意で多くのキングが窒息死している。

 次の事例は1893年ダンディーでの小さな大会の一局である。

白 マクグルーサー
黒 マッキャン
1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 e5 5.Nf5 Nge7 6.Nd6#

 これが作為的だと思うならば次の標本はやはりミュンヘンでの小さな大会で指されたものである。

白 アーノルド
黒 ベーム
1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nd7 5.Qe2 Ngf6 6.Nd6#

1…e6

 この手は 1…e5 ほど攻撃的ではないが二つの駒の利きを通し白の攻撃の選択の幅を制限している有利さがある。白は時間と研究を傾注した得意の戦法を指すことができないし、fポーンを食わせて黒を危険なキング翼ギャンビットに引きずり込むこともできない。

 フランス防御は多くの動的エネルギーを内在し、攻撃にはやる選手への効果的な武器となる。黒陣は見かけは萎縮しているが容易に攻め込まれない。

2.d4

 この手は当然ともいうべき強い手である。白のこのポーン陣形についてスタントンは百年以上前に次のように言っていた。「ポーンが盤の中央部を占拠するのは有利であることが多い。その理由は相手の兵力の動きを大きく阻害するからである。4段目のeポーンとdポーンは好形であるが、その位置を保つのは容易でない。もしどちらかのポーンが前進しなければならなくなればこれらのポーンの威力は大きく減少する。」

2…d5

 黒は白のeポーンを攻撃しながら自分のクイーンがもっと動けるようにした。

 中原の支配を争うことは重要である。

3.Nd2

 白がナイトをd2に展開したのには二つの理由がある。

 白は 3.Nc3 の後起こるようなナイトの釘付けを避けたかった。

 白はdポーンが 3…c5 で攻撃された場合に 4.c3 で応接して中原を支える準備をした。ポーン交換の際にはcポーンで取り返して中原にポーンを維持する。

 確かにクイーン翼ビショップは利きを止められているがこの状態は一時的なものである。駒はお互いのじゃまにならないようにどくことができる。

3…Nf6

 ここはこの自然な手が場違いであるまれな例の一つである。キング翼ナイトはf6の地点にいるものと教わってきたし、そのようにしてきた。しかしそれはその地点に留まれる場合の話である。すぐに立ち退かされる場合は駒を好所に展開しても何の役にも立たない。

 黒のナイト跳ねは型にはまって自動的で機械的であり、従って思慮に欠けている。良い手というものは局面の要求するところに適合していなければならない。チェスは駒をあちこち動かす定められた手順を暗記するものではない。

 黒の本手は 3…c5 で中原の支配を争うことである。この手はクイーンが別の斜筋を使えるようにしクイーン翼への進出を可能にすることにもなる。

4.e5

 どうして白は4段目に2個のポーンを維持すべしというスタントンの助言を無視するのだろうか。白はポーンがe5に進めば弱くなるかもしれないということは知っている。しかしその得失を量りにかけたのである。e5のポーンはナイトを最良の地点から追い払い他の駒の自由な動きをじゃまする地点に行かせる。

 明らかにこの手や他の手の価値は生じるかもしれない不利益に対して、利益を見積もることによって決まってくる。

4…Nfd7

 ほぼこの一手である。4…Ne4 は 5.Bd3 と応じられて駒交換によるポーン得を狙われる。黒は次のような不本意な選択を迫られる。5…Nxd2 なら 6.Bxd2 で、展開した駒が白の2個に対し黒はゼロである。5…f5 なら 6.Qh5+ g6 で黒は多くのポーンが白枡に陣取り黒枡が構造的で恒久的な弱点でいっぱいになる。

5.Bd3

 白はキング翼の駒を出し、そちらへのキャッスリングを容易にした。

5…c5

 この手は大変良い手である。黒は萎縮した陣形を解放するのにぐずぐずしていてはいけない。このポーン突きは中原に打ってかかると共に、クイーンの別の出口も作った。

6.c3

 この手は 6…cxd4 に対して 7.cxd4 を用意して、敵を窮屈にさせている連鎖ポーンを維持する。

6…Nc6

 このナイトは先手で展開した。白のdポーンが二重に攻撃されている。

7.Ne2!

 ここはナイトがf3でなくe2にいるのがふさわしい珍しい機会の一つである。確かにf3がナイトで占められるべきであり、白はそのように取り計らう。白の構想はクイーン翼ナイトをf3に持ってくることで、それによりクイーン翼ビショップも自由になる。

7…Qb6

 黒は白のdポーンにさらに圧力をかけた。狙いは 8…cxd4 9.cxd4 Nxd4 10.Nxd4 Qxd4 でポーン得することである。

8.Nf3!

 白はうまいナイトの移動でポーンを守りクイーン翼ビショップの利きのじゃまものをどけた。

 鋭敏な読者なら著者が非難した 3…Nf6 を含めてここまでの黒の手順を1938年のAVRO(訳注 オランダの放送会社)大会であのカパブランカがアリョーヒン戦で採用していることに気づいていることだろう。カパブランカは布局での劣勢の結果としていいように翻弄(ほんろう)されろくに動くこともできず盤上にほとんどの駒が残っている状態で投了した。そのような経緯は別にしても普通の選手が偉大なマスターでもめったに克服できない悪影響をもつ手を試すのは賢明でない。

8…Be7

 これもありきたりの手だが消極的過ぎる。黒はともかくも 8…f6 又は 8…cxd4 9.cxd4 Bb4+ で、自分の駒を押し込めている連鎖ポーンの破壊に努めるべきであった。

 後の方の手段はニムゾビッチも支持するだろう。彼は「連鎖ポーンに対する捌きはあせってはならない」と言っている。そして戦略上必要ならば連鎖の根元を攻撃することを推奨している。

9.O-O

 キングはいかなる激しい行動をとるよりも前に安全地帯に移さなければならない。

9…O-O

 黒は危険に気付かずにまだ機械的な手を指している。黒はこの手で 9…f6 で連鎖ポーンに挑む最後の機会を逃がした。

10.Nf4!

 ポーンの配列を乱すいかなる可能性もきっぱりとなくした。10…f6 には 11.Nxe6 がある。一方 10…cxd4 11.cxd4 Nxd4 12.Nxd4 Qxd4 は 13.Bxh7+ でクイーンが素抜けるので問題にならない。

10…Nd8

 黒は白の目障りなeポーンを盤上からなくすまで自分の駒が無力のままであることをようやく認識した。そこで黒は自分のeポーンを守って 11…f6 で白ポーンの態勢を破壊できるようにした。

11.Qc2

 この手は明らかに黒のhポーンを狙っている。しかしその奥深い目的はキングの近くのポーンの一つを前進させることである。

 キングの回りのどのポーンでも前進すれば防御陣がゆるみ、つけ込まれる恒久的な弱点が生じる。それに前進したポーン自体も攻撃の直接的な標的にされ易い。

11…f5

 何か別策があるだろうか。黒が 11…h6 又は 11…g6 と指せば後で …f6 と指せなくなる。もしそう指せばg6の地点を白駒の侵略にもろくしてしまうか、捨て駒を集中されてキング翼を壊滅させられてしまう。

12.exf6e.p.

 こう指すと黒に対する締め付けが緩むが攻撃の筋が通る。開いた筋は展開にまさり駒の働きの良い側に有利に作用する。

12…Nxf6

 この手で黒はナイトをまた働きのある地点に戻し、再び狙われたhポーンを守った。

13.Ng5

 なおもhポーンを狙っている。今度は 14.Bxh7+ Kh8(14…Nxh7 は 15.Qxh7#)15.Ng6# の狙いも加わっている。

13…g6

 13…h6 はポーンは助かるが詰まされてしまうので本譜の手は仕方がない。

 gポーン突きで白の攻撃の矛先(ほこさき)となる目標が視界に入った。白は黒の防御陣全体をぶち壊すような決定的な強打を心に描くことができる。

14.Bxg6!

 この捨て駒は取らなければならない。さもないと黒はポーン損のまま見返りがなく粉砕された陣形だけが残る。もし 14…h6 ならば 15.Bh7+ Kg7(15…Kf7 なら 16.Qg6#)16.Qg6+ Kh8 17.Qxh6 でナイトによる詰みの狙いと開きチェックの狙いが受からない。

14…hxg6

 キングの回りにあった3個のポーンのうち1個だけが孤立して残った。その1個もこの世に長いことはない。

15.Qxg6+

 この劇的な登場で2個のナイトに伴われたクイーンは急速に降伏を促す。

15…Kh8

 他に手はない。

16.Qh6+

 ナイトのためにg6の地点を空けた。

16…Kg8

 ナイトを引いてチェックを受けるのは1手詰みになる。

17.Ng6

 18.Qh8 と 18.Nxe7 の両様の詰みの狙いが受からない。

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

開放試合の指し方(102)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 まさにこの一手。黒がしてはいけないことは何かを後ろ向きに動かすことである。黒はポーンの形で劣っているので、迅速な展開とそれによる攻撃の可能性に代償を見出さなければならない。

 黒は 9.c4? O-O! 10.d5 を心配する必要はない。なぜなら 10…Bg4! で 11…Re8 によるクイーンを取る手を狙えるからである。だから白はナイトを取っている暇はなく、9手目と10手目が自陣をひどく乱し展開を損したことになる。

 白はやがてはポーンの形に優ることを活用したいので、黒の攻撃の可能性を制限しようとすることは意味がある。このことから 9.Bc4! が理にかなっているように見える。白は何もしていないビショップが黒の潜在的に強力なビショップと交換になることは歓迎である。この手は定跡本では考慮されていないようであるが、白にとってまともな局面になり中盤戦で黒のポーンの弱点をつく可能性につながる。客観的な観点からは 9.Bc4! のあとの局面はほとんど互角と判定しなければならない。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(166)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

前図での受け方は非常に重要でしばしば黒を救ってくれることがある。

 図166

 既に述べたように白はポーンを進めるためには自分のルークの助けが必要である。白は黒キングの不利な位置につけこんで次のように勝つことができる。

1.Kb4!

 白は手順を違えて 1.Rd4 を先に指すことはできない。そう指すと 1…Rd8!(黒ルークがポーンの前の方にいる利点の一つ)2.Rxd8 Kxd8 3.Kb4 Kc8! で引き分けになってしまう。

1…Rb8+ 2.Ka5 Rc8!

 黒はむやみにチェックをかけてはいけない。2…Ra8+? は 3.Kb6 で白ポーンを進ませるか 3…Rb8+ 4.Kc7 で黒ルークが逆に当たりにされてしまう。

3.Kb5 Rb8+ 4.Ka6 Rc8 5.Rd4!

 白は自分のキングを可能な限り先に進ませたところで自分のルークでポーンを守る。黒はポーンの前進を防げない。

5…Ke6

 もし黒キングが既にこの地点にいたら 5…Ke5 ですぐに引き分けにできたところである。つまり図166で黒キングがe6またはe5にいたら引き分けである。しかし黒キングがe4かそれよりも下にいたら白は 1.Re1+ で黒キングをポーンから2列遠ざけることにより勝つことができる。この点については後にまた触れる。

6.Kb7 Rc5

 6…Ke5 は 7.Rd5+ で黒ルークがただで取られる。

7.Kb6 Rc8 8.c5

これで白が勝つ。

 もう明らかであるが図166で黒の手番ならば 1…Rd8(第1手目の解説を参照)または 1…Ke6(第5手目の解説を参照)で引き分けである。これはつまり黒キングがポーンから2列以上離れていなければ白の勝つ可能性は極めて小さいということである。

 図166で白が勝てたのは黒ルークが左側から横のチェックをする距離が足りないせいであったことを指摘しておく。図166の局面を少なくとも2列右に移せば白は勝つことができない。また黒ルークがポーンの前でなく後ろにいれば黒の引き分けにできる可能性もなくなることは明らかである。

 図166の局面を1列左へ移すと 2.Ka5! が不可能なので白に勝ちがなくなる。例えば 1.Ka4 Ra8+ 2.Kb5 Rb8+ 3.Ka5 Ra8+ 4.Kb6 Rb8+ で引き分けである。

 1.Rc4 ならば黒は 1…Rc8 又は 1…Kd6 2.Ka4 Kd5! 2…Ra8+ はだめで 3.Kb5 Rb8+ 4.Ka6 Kd5 5.Rg4! で白が勝つ。3.Rc5+ Kd6 4.Ka5 Ra8+ 5.Kb5 Rb8+ 6.Kc4 Rh8 で引き分けである。この後の方の変化は 1…Rc8 という手がいつも可能なわけではないので(例えば黒キングがd5にいる場合)重要である。

(この節続く)

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開放試合の指し方(101)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 白は中央を支配し 8.Bxf4 を狙っている。黒はまた最も一貫性のある手を指さなければならない。

7…Bd6!

 まさにこの一手。fポーンは守らなければならないし、キングはキャッスリングしなければならない。7…Qa5+? 8.Nc3 Bb4 は 9.O-O! Bxc3 10.Qe2+ で白の中央が強力になりただで攻撃の見通しが良くなるので許されない無駄手である。

8.Qe2+

 これは黒がキング翼の展開を完了するのをより難しくさせようとする手である。もっと穏やかな指し方なら 8.O-O O-O 9.Nbd2 Bg4 10.Nc4 Bc7 がある。そのあと白は 11.c3 で中央を堅固にするか、11.Bxc6 で黒のポーンの形をさらに乱すことができる。11.c3 に対し黒は 11…Ne7! と応じて 12…a6 13.Ba4 b5 を狙うのがよく、11.Bxc6 bxc6 12.Qd3 に対しては黒の理にかなった手は 12…Qd5 と中央に集結する手である。どちらの場合も戦力は等しく局面は本質的に均衡がとれているのでいい勝負である。

8…Be6!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(165)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 白ポーンがさらに後退して少なくとも4段目になると黒ルークはポーンの後ろより前にいる方が効果的なことが良くある。

 図165

例えば図165では白は自分のルークの助けがないと次のように自分のポーンを進めることができない。1.Kc4 Rc8+ 2.Kb5 Rd8! 3.Kc5 Rc8+ 4.Kd6 Rd8+ 5.Ke5 Re8+ 6.Kf5 Rd8! 白は前の状態に逆戻りしてしまった。

(この節続く)

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布局の探究(69)

「Chess Life」1993年5月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒は中央に向かって取るべきか(続き)

A …dxc6 対 …bxc6

  ここでの古典的な例はルイロペスの交換戦法である。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6

 図1

 (a)4…bxc6

 これは主眼の「中央に向かって」の取り返しだが、黒の展開を助長するわけではない。結果としてもたらされるものは黒が弱いeポーンを円滑に守ることが難しくなるということである。主手順は 5.Nc3 d6 6.d4 と進む。

 何が起こったかというと、白が遅延シュタイニッツ防御の 3…a6 4.Ba4 d6 5.Bxc6+ bxc6 6.d4 の手順よりも丸々1手得しているということである。開放布局早々の1手得は非常に重要な価値がある。

 黒の防御の仕事は 6…exd4 7.Qxd4 でも、1972年ブルガリア選手権戦のN.パデフスキー対ダスカロフ戦の 6…f6 7.Be3 Ne7 8.Qd3 Be6 9.O-O-O Ng6 10.h4 h5 11.Nd2 a5 12.g3 exd4 13.Bxd4 Ne5 14.Qf1 Qb8 15.f4 でも面白くなかった。白は展開で大きく優り中央が広いのではっきり優勢である。

 (b)4…dxc6

 4…bxc6 には問題があるので過去20年のマスターらの試合ではもっぱらこの手だけが用いられた。黒は自分のeポーンが白のdポーンと交換になれば、恒久的に劣ったポーン陣形になる危険性を抱えている。というのはキング翼で白が4ポーン対3ポーンで優勢なのでパスポーンが保証されるのに対し、黒のクイーン翼での優勢は静的な二重ポーンにより価値が劣っているからである。代償として黒は自分の双ビショップに目を向けなければならず、見れば分かるように2個のビショップは素通し斜筋上にある。さらに黒クイーンはd列で動けるのでeポーンを守るのが容易になっている(5.Nxe5?! は 5…Qd4 でポーンを取り返しすでに少し優勢になる)。結果として黒は白の布局での優位を通常の程度に抑えることができる。最近の重要な実戦例は1992年スベティ・ステファンでのR.フィッシャー対B.スパスキー番勝負第9局である。

5.O-O f6 6.d4 exd4 7.Nxd4 c5 8.Nb3 Qxd1 9.Rxd1 Bg4 10.f3 Be6 11.Nc3 Bd6 12.Be3 b6 13.a4 O-O-O(13…Kf7 の方が本筋と考えられる)14.a5 Kb7 15.e5! Be7 16.Rxd8 Bxd8 17.Ne4! Kc6??(17…Bd5 が必要で、18.Rd1 で白が少し優勢である)18.axb6 cxb6 19.Nbxc5! Bc8 20.Nxa6 fxe5 21.Nb4+ 黒投了

  黒はシチリア防御ロッソリーモ防御でも 1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 g6 4.Bxc6 のあと同様の決定をしなければならない。

 図2

 早い Bxc6 は1992年にガリー・カスパロフとR.フィッシャーによって用いられて共に成功を収めた。その着想はキング翼の迅速な展開と黒の二重ポーンにつけ込む機会とを組み合わせることである。それでもルイロペスの交換戦法と比較すると、黒は局面がそれほど開放的でなく、…a6 突きに1手かけてなく、中央のポーンを守るために手損する必要がないという3点で優っている。私の考えでは黒はどちらの取り返し方でも同じくらい満足である。

 (a)4…bxc6

 この取り返し方が主眼なのでGMの実戦でより多く指されている。唯一の不利益はクイーン翼ビショップの展開が1手遅れるということだが、局面が比較的閉鎖的であることにより軽減される。

 通常の 5.O-O Bg7 6.Re1 のあと重要な手順は二つある。

 6…Nf6 7.e5 Nd5 8.c4 Nc7 9.d4 cxd4 10.Qxd4 ここで1992年ドルトムントでのG.カスパロフ対V.サーロフ戦では 10…O-O? 11.Qh4 d6 12.Bh6 と進んで白がはっきり優勢になった。世界チャンピオンは代わりに 10…d5!? 11.Nc3 Ne6 で白の有利を最小限にすることを推奨している。

 6…f6!? 7.c3 Nh6 8.d4 cxd4 9.cxd4 O-O 10.Nc3 d6 11.Qa4 Qb6 12.Nd2 Nf7 13.Nc4 Qa6 これは1992年スベティ・ステファンでのR.フィッシャー対B.スパスキー番勝負第13局で、ほぼ互角だった。

 (b)4…dxc6

 この取り返しのあと黒ポーンの中央に対する影響力は 4…bxc6 よりも劣る。それでも白が d4 と突くようなことになれば、黒の二重ポーンが解消され白にキング翼の多数派ポーンができないので、dポーンでの取り返しも問題ない。このあとの考えられる手順は 5.h3 Bg7 6.d3 e5 7.Bg5 f6 8.Be3 b6 9.Qc1 Be6 10.a4 Ne7 11.Na3 Nc8 12.b3 Nd6 13.Nc4 で、GMのL.プサーヒスによれば白が少し優勢である。

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カテゴリ: 布局の探究1

開放試合の指し方(100)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5 4.exd5 Nf6 5.Bb5+

 白は先手でキング翼の展開を完了した。チェックしたのはこのためである。黒があまりにゆっくりしたことをしていると白の思いどおりになる。例えば 5…Nbd7?! は 6.c4! a6 7.Bxd7+ Bxd7 8.O-O! で白がただで中央を支配することになる。また 5…Bd7?! は 6.Bc4! で黒ビショップがdポーンに対する黒クイーンの利きをさえぎっているので、黒がポーンを取り返したければ 6…Qe7+ でクイーンを変な地点に行かせなければならない。そして白は 7.Be2! Nxd5 8.O-O! のあと 9.c4! から 10.d4 でそのことにつけ込む格好の機会を得る。

5…c6!

 この手は手損を避け円滑で迅速な展開を確実にしてくれる。もちろん白の次の手は必然である。

6.dxc6 Nxc6!

 この取り方は自明というわけではないが、この戦型における黒の布局戦略の全般的な目的の円滑で迅速な展開を念頭におくと最善手であることは明らかになる。だから 6…bxc6?! が効果で劣るのは、7.Bc4 Bd6 に厄介な 8.Qe2+! という応手があるからである。黒には気の進まない 8…Be7(手損になる)、8…Qe7(望ましくないクイーン交換になる)それに 8…Kf8(キャッスリングの権利がなくなる)という選択肢しかない。7…Nd5 でキング翼ナイトを中央に持って来て、白の d2-d4 突きにこのナイトがe3の地点に行けるようにするのはいくらかましである。しかし単刀直入で効果的な展開の 8.Nc3!(8…Bd6 を防ぐ)8…Be7 9.O-O O-O 10.d4 で白が優勢になる。10…Ne3?! は 11.Bxe3 fxe3 12.Qd3 で黒の新品のeポーンに死刑執行令状が発行される。

7.d4

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(164)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 図162の局面を1列または2列左に移動すると黒ルークの横からのチェックが近すぎるか不可能なので白の勝ちである。さらに付け加えるとフィリドールの局面で黒が受け方を間違った場合次のような局面になる可能性がある。

 図164

 この局面は次のように白が簡単に勝てる。1.Rh7 Kg8 2.Rg7+ Kf8 2…Kh8 なら 3.Rg1 から 4.Kf7 で良い。3.e7+ Ke8 4.Rg8+ 図164を左または右へ移動しても結果は変わらない。例外は局面を2列右へ移動した場合で次のように白ルークの活動の余地がなくなる。1.Rh7+ Kg8(2.g7? Rd6+) 又は 1.Re6 Ra8 2.g7+ Kg8 でどちらも引き分けである。

 これまでの局面はかなり単純で深く分析しなくても理解できる。しかし上手な選手なら記憶しておかなければならない。フィリドールの局面でいつも敵キングを6段目で遮断できるとは限らない。だから必要なら他の手段も使えるようにしておく必要がある。

(この節続く)

2013年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(099)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 16.Be3! の局面

 3)5.Nc3 は一応dポーンを守りながらクイーン翼の展開を始める。ここで黒が気どってポーンの取り返しを見送って 5…Bd6?! と指すと、白は 6.Bc4 O-O 7.O-O Nbd7 8.d4! でポーンを容易に守り通す。白はキングが安全で中央が優位なので楽に優勢になる。だから黒は単純に 5…Nxd5 6,.Nxd5 Qxd5 7.d4 Be7! と指すべきである。そのあと 8.Bxf4?? は 8…Qe4+ でビショップが落ちる。また 8.c4 Qe4+ 9.Be2 Nc6 10.O-O Bf5 11.Re1 O-O-O! は黒がd列で反撃が十分に見込める。

 白は理にかなった互角の局面で満足するならば、5.Bc4 と 5.Nc3 が最善の選択肢である。もちろん白がキング翼ギャンビットを指す時はしばしばもっと多くを望んでいる。そのような冒険主義の精神には本譜の 5.Bb5+ が向いている。。

(この章続く)

2013年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(163)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 いよいよフィリドールの局面(図130)から派生した局面を採り上げて彼の分析をたどることができる。彼はこの局面に対して白の勝ちという間違った結論を与えていた。

 図163
フィリドール、1777年

 フィリドールの分析した手順は次のとおりである。

1…Rf1+?

 最初の疑問手である。しかしまだ引き分けの機会を逃がしてはいない。もしここで白ルークがa7にいたら白は 2.Ke6 で勝ちになる。以下は 2…Kf8 なら 3.Ra8+ Kg7 4.Ke7 から 5.e6(図156)、2…Kd8 なら 3.Ra8+ Kc7 4.Ke7 から 5.e6(図161)である。

 図162の分析で示したように黒の正しい受け方は次のとおりである。1…Re1! 2.Ke6 Kf8 一般原則としてはキングは狭い側にいるのが最善である。しかしここでは 2…Kd8 3.Rh8+ Kc7 4.Re8 Rh1! でも黒は引き分けにできる。3.Rh8+ Kg7 4.Re8 4.Ra8 なら 4…Re2! である。4…Ra1! 5.Rd8 Re1 で引き分けになる。

2.Ke6 Kf8!

 この手以外はだめである。2…Kd8 は 3.Rh8+ Kc7 4.Ke7 で図161のように白が勝つ。

3.Rh8+ Kg7 4.Re8 Re1

 これも最も正確な手とは言えない。図162で見たように正しい受けは 4…Ra1! 5.Rd8 Re1! である。

5.Kd7 Kf7?

 これは本当の敗着である。5…Rd1+ 6.Ke7 Re1 7.e6 Ra1! で黒は図154の分析のように引き分けにすることができた。この手順中の 6…Re1 は黒の受けを簡単にしている。代わりの 6…Ra1 は 7.Rd8 Ra7+ 8.Ke8 で黒は引き分けるためには 8…Ra6! 9.Rd7+ Kg8 10.Rd6 Ra8+ 11.Rd8 Ra6! という巧妙な手順を見つけなければならない。もし 8…Kg6 と指すと 9.Rd6+ Kf5 10.e6 Ke5 11.Rb6 から 12.e7 で白の勝ちになる。

6.e6+ Kg7

 6…Kf6 なら 7.Rf8+ から 8.e7 で白が勝つ。

7.Ke7?

 勝ちを逃がす理解できない誤りである。正着は 7.Ra8! Rd1+ 8.Ke8 から 9.e7 で白が苦労せずに勝つ。

7…Re2?

 これで最後の引き分けの機会も逃がした。図154によれば 7…Ra1! が唯一の正しい受けで 8.Rd8 Ra7+ 9.Rd7 Ra8(又は 9…Ra1)で引き分けだった。

8.Rd8 Re1

 8…Ra2 はもう手遅れで 9.Ke8 から 10.e7 で白が勝つ。

9.Rd2

 もっと早く勝つ手は 9.Kd7 Rd1+(9…Kf6 なら 10.Rf8+ から 11.e7)10.Ke8 から 11.e7 である。

9…Re3

 もうどうやっても黒の助かる道はない。

10.Rg2+ Kh7 11.Kf7 Rf3+ 12.Ke8 Re3 13.e7

 これで白が勝つ。

 最も単純そうに見える局面に巧妙な手が隠されている素晴らしい例で、これまでに習得してきた知識を試す適切なエンディングだった。

(この節続く)

2013年10月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(98)

「Chess Life」2005年8月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット(続き)

戦型1 1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4 Nxe4 4.dxe5

 ここで白は 5.Qd5 または 5.Bxf7+ から 6.Qd5+ を狙っている。

4…Nc5

 4…Bc5? には 5.Bxf7+!(5.Qd5 Qh4 6.Qxf7+ Kd8 の混戦より良い手)5…Kf8(5…Kxf7 は 6.Qd5+ で両当たり)6.Qf3! がある。

 また 4…Qh4 なら 5.Qf3 Ng5 6.Qf4 Qxf4 7.Bxf4 Ne6 8.Bg3 となって、ラルセンによると白が少し優勢である。

5.Nf3 Be7

 5…d6 6.Bf4 dxe5?? は 7.Bxf7+! Kxf7 8.Qxd8 で黒の負けになる。

6.Bf4! Nc6

 ここでまたはもっとあとでの 6…d6 突きなら白は交換し(7.exd6)黒に弱い孤立dポーンが残される。別の試合で黒は 6…O-O 7.Nc3 Nc6 8.Qe2 a6 を試みたが、次のように本局と同様の結果になった。9.O-O-O b5 10.Bd5 Bb7 11.Ne4 Ne6 12.Bg3 Qc8 13.h4 Na5 14.Bxb7 Nxb7 15.Nfg5 白の攻撃が強力である。

7.Nc3 Ne6 8.Bg3 O-O 9.Qe2 f5

 黒が 9…d6 で狭小な陣形を解放しようとすれば白は 10.O-O-O と応じる。

10.O-O-O

 白は十分に展開し、中央をしっかり支配し陣形の広さで優位に立ち陣形に何も欠陥がない。従って白が優勢である。

10…Qe8

 さもないと白に釘付けを利用されてe6のナイトを取られる。

11.Nd5!

 12.Nxc7 を狙いつつ 11…f4 を防いでいる(12.Nxf4)。

11…Kh8

 釘付けをはずした。

12.Nf4 a6 13.h4! Na5 14.Bxe6! dxe6 15.Ng5 Bc5?

 この手は一本道で負けになるが、他の手でも白がはっきり優勢である。白の華麗な決め手が分かりますか?

16.Rd8! Qxd8 17.Qh5 h6 18.Qg6! hxg5 19.hxg5+ Kg8 20.Qh5

 20.Rh8+ Kxh8 21.Qh5+ Kg8 22.g6 Rf6 23.Qh7+ Kf8 24.Qh8+ Ke7 25.Qxg7+ Ke8 26.exf6 または 20.Rh7 Rf7 21.Qh5 でも白が勝つ。

20…Nc4 21.g6 Qd2+ 22.Kb1 Na3+ 23.bxa3 黒投了

ネイシュタット対ギプスリス、ソ連、1955年

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

開放試合の指し方(098)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5

 3…d5 は相手の手に乗ってクイーン翼ビショップの斜筋を開いている。明らかに白はeポーンへの当たりを無視できないが、4.e5?! と突き越すのは黒にただで強力な中央での圧力を作り上げられる。4…g5! 5.h3?! Nh6! 6.d4 Nf5 となって黒はポーン得で有望である(1903年ウィーンでのガンズバーグ対ピルズベリー戦以来知られている)。従って白の唯一のまともな手は取る手である。

4.exd5 Nf6!

 この戦型における黒の主要な目的は、たとえ戦力を少し損してもキング翼の迅速で棋理に合った展開を達成することであることを忘れてはいけない。4…Qxd5? は完全にこの精神に反していて、その証明として白は次のように展開と可能性で上回る。5.Nc3 Qe6+ 6.Be2 Bd6 7.O-O Ne7 8.d4 O-O 9.Ng5

 本譜の手を別にすれば 4…Bd6 だけがこの戦型の精神に沿っていて、実際 5.Bb5+ c6! で主手順に移行する公算が大きい。

5.Bb5+

 白の選択肢は基本的にこのチェックと新たに得たdポーンを守ることである。後の手を達成する手段は三とおりあり、そのどれも注目するに値する。

 1)5.c4 は最も断固とした手段である。黒が積極的に動かなければ、白は中央のおかげで優勢になる。従って 5…c6! が求められる手で、6.dxc6?! Nxc6 7.d4 Bg4 となれば黒は強力な攻撃態勢になる。dポーンにしがみつくためには白は 8.d5 Bxf3 9.Qxf3 Ne5 10.Qxf4 と指さなければならないが、黒は 10…Bd6! からキャッスリングで白のキャッスリングしていないキングに対して攻撃の見通しがきわめて明るくなる。6.dxc6?! の代わりにもっと安全な手は 6.d4 だが、それでも黒は単純な 6…cxd5 か 6…Bb4+ で優勢になる可能性が高い。概して言えば白には実利主義の 5.c4?! の余裕はないと結論を下さざるをえない。

 2)5.Bc4 は駒を展開しながらdポーンをいくらか守りキャッスリングできるようにしている。黒はdポーンを取り返すしかなく、5…Nxd5 6.O-O Be6 7.Bb3! のあと黒が本手の展開の 7…Be7! を指せばほぼいい勝負である。欲張りすぎの 7…Bd6?! は白が先手で 8.c4! Ne7 9.d4 Ng6 10.c5! と指すことができ、1969年ソ連でのブロンシュテイン対I.ザイツェフ戦では白が優勢になった。黒はすぐにわなにはまり短手数で負けた。10…Be7 11.Bxe6 fxe6 12.Re1 O-O 13.Rxe6 Bxc5? 14.Qb3!! Bxd4+ 15.Nxd4 Qxd4+ 16.Be3! で黒が投了した。黒がどう指しても次の手で白ルークが開きチェックで黒クイーンを取ってしまう。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(162)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(c)2段目から6段目までのポーン

 ポーンがもっと後ろにいればそれに従って黒の引き分けの可能性も増してくる。全ての可能な局面について系統的に分析するのはその材料があまりに多過ぎて本書では手に負えなくなるので行なわない。覚えておくべき要点は黒はこれまで紹介してきた受けの手段をそのまま使うということで成功する可能性も高まる。

 しかし5段目のポーンの場合は新たな状況が発生する。それは黒キングがポーンの昇格枡を占めている又はそれを狙うということである。この点において図162は実戦的に非常に重要である。

 図162
クリングとホルビッツ、1851年

 この局面は1世紀以上も前に研究され重要な受けの手段があることが発見された。まず白の手番でどのようにして勝ちになるのかから見ていこう。

1.Kc7!

 勝つにはこの手しかない。1.Ra8 は 1…Rd2 2.Kc6 Ke7! で引き分けになる。この手段は黒の手番から始まる分析のところで出てくる。すぐに 1.Kc6 とするのも 1…Ke7 2.Rd7+ Ke8 でだめである。

1…Ra1

 1…Rc1+ は 2.Kd7 Ra1 3.Rc8 から 4.d6 で図161のように白が勝つ。

2.Rb8!

 既に図161で説明したように 2.d6? は 2…Ra7+ 3.Kb6 Ra1 で引き分けになる。

2…Ra7+ 3.Rb7 Ra8 4.Kd7!

 4.d6? は 4…Ke6 5.d7 Ke7 で引き分けになってしまう。本譜の手に対して黒は手待ちするしかない。

4…Kf6 5.d6 Kf7 6.Rb1

 ここでは多くの道がローマに通じている。クリングとホルビッツの示した手順は 6.Rc7 Kf6 7.Rc1 Ra7+ 8.Kc6 Ra6+ 9.Kc7 Ra4 10.Rd1 である。レベンフィッシュとスミスロフは 6.Kc6+ Ke8(6…Kf6 なら 7.Re7)7.Kc7 Kf7 8.Rb8 Ra7+ 9.Kb6 を推奨した。しかし本譜の手が最も論理的と思われる。

6…Ra7+ 7.Kc8

 又は 7.Kc6 Ra6+ 8.Kc7 Ra7+ 9.Rb7 Ra8 10.Rb8 で白の勝ちとなる。

7…Ke6 8.d7 Ra8+ 9.Kb7 Rd8 10.Kc6

 これで白の容易な勝ちである。

 この勝つ手順には何も目新しいところはない。しかし黒の手番で引き分けにする手順は興味深く参考になる。

1…Ra1!

 この手は 2.Kc7 を防ぐためである。図161の分析で見たように白は黒ルークの横からのチェックを許すことができない。

2.Rc8

 これで黒の負けのように見える。2…Ra6+ なら 3.Kd7 Ra7+ 4.Rc7 で前に示したように白の勝ちになる。他の手なら Kd7 から d6 の狙いに受けがないように見える。

2…Rd1!

 これが解答である。白ルークがd8から去ったので黒ルークはすぐにd列に戻り白ポーンの前進を防ぐ。単純だが大変効果的な手で、もっと複雑な局面でもよく現れるので記憶しておく価値がある。

3.Rc2

 黒の手の意味は 3.Kc6 なら 3…Ke7! で白ポーンを止めることにある。続いて 4.Rc7+ なら 4…Kd8 5.Rh7 Rd2! 6.Kd6 Kc8 7.Rh8+ Kb7 で前とあまり変わりない局面になる。

 白は本譜の手の代わりに 3.Rc5 としても 3…Ke8 4.Kc7 Ke7 で局面の進展が図れない。

3…Ke8!

 白から 4.Re2 で遮断されて負け形になる前にちょうどこの手が間に合った。

4.Ra2 Rd3

 黒はキングを動かすと 5.Re2 とされるので動かせない。黒ルークがd列から離れると 5.Ra8+ から 6.Kd7 で白が勝つ。

5.Ra8+ Kf7 6.Ra7+

 6.Kc6 なら 6…Ke7!、6.Rd8 なら 6…Ra3! で良い。

6…Ke8

 白は何も進展を図ることができない。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(097)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3…d6 4.Bc4 h6 5.d4 g5 6.O-O Bg7

 これも難解で極度に不均衡な局面である。ここで白が安全に 7.c3 と突けば、黒はクイーン翼ナイトを 7…Nc6 と展開するのがよい。また、白が 7.g3!? ですぐに素通し列を作ろうとすれば、黒は中央で 7…Nc6 8.gxf4 g4! と反撃を目指すべきである。どちらの場合も客観的な評価は難しい。キング翼ギャンビット受諾は強い精神力を持ち布局理論家の意見をほとんど気にしない人たちにとって面白い布局である!

 それではここでの主手順の 3…d5 に戻る。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(161)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 今までの結果をまとめると次のようになる。図159で白ルークがa、c、d、e、g列にいる時、a4、a5、a6、c4、c5、d5、d7、e4、e5、e8を例外として白が勝つ。白ルークがこれらの例外の地点やf、h列にいる時は引き分けである。

 これまで6段目のポーンの場合についてかなりの量を割いて分析してきたがこれにはそれなりの理由がある。このような局面はルーク+ポーン対ルークのエンディングの基礎を形成しているので細部まで詳しく理解している必要があるのである。この知識の習得に要した時間は決して無駄になることはない。

 これまでの全ての局面を1列右側に移すと黒ルークの動ける余地が広がるので黒の引き分けの可能性が高まるのは明らかである。しかしその場合でも基本的な指し方は同じである。検討を完全にするために黒キングがポーンの間違った側(即ち広い方)にいる例を考えてみよう。

 図161

 何が違うかというと黒ルークが横から効果的なチェックをするための幅が足りないということである。黒は手番でも次のように負ける。

1…Ra1

 黒は続けてもう一手 1…Ra7+ と指せれば 2.Kc6 Ra6+ 3.Kb7 Ra1! で引き分けにできるところである。同様にもし黒キングがb7にいたならば 1…Rh1!(図154)で引き分けにできる。

2.Rc8 Ra7+

 白の狙いは 3.Kd8 から 4.d7 だった。

3.Kc6 Ra6+ 4.Kc7 Ra7+ 5.Kb6 Rd7 6.Kc6

 これで白の勝ちである。

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開放試合の指し方(096)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3…Be7 4.Bc4 Nf6 5.e5 Ng4 の局面

 前の戦型と対照的にナイトはここでは活動的な地点に行ける。6.h3? で追い払おうとしても 6…Bh4+ でうまくいかない。7.Kf1 Nf2 8.Qe1 Nxh1 9.Qxh4 Ng3+ となってナイトが戦利品を得て脱出する。

 図の局面での最善手は 6.O-O Nc6 で、eポーンを攻撃するとともに罠が仕掛けてある。白がルークでポーンを守ると、次のように驚きの手が待っている。7.Re1? Bc5+! 8.d4 Nxd4! 9.Nxd4 Qh4 白は 10…Bxd4+ 11.Qxd4 Qxe1+ と 10…Qxh2+ の両狙いに受けがない。

 7.d4 d5! のあと白がビショップを引こうと 8.exd6e.p. Bxd6 9.Re1+ Ne7 と指そうと黒は少なくとも完全に互角である。

 3)3…d6 は 1960年代にボビー・フィッシャーによって初めて推奨された融通性のある手である。黒は中央にいくらか影響力を確立し、あとで …g7-g5 と突いてfポーンにしがみつこうとしている。典型的な手順は 4.Bc4 h6(g5の地点を守り …g7-g5 と突く用意をした。黒は白からの妨害の 5.h4?! を心配する必要はない。その手は白のキング翼をひどく弱め、黒は単純に 5…Nf6 と指していられる)5.d4 g5 6.O-O Bg7 である。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(160)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 白ルークが他の地点にいる場合も勝ち方は黒キングがg7にいる場合と同じである。例外は白ルークがd列にいる場合で図160のように白はもっと苦労する。

 図160

1…Rb7+

 白ルークがd5にいる時は 1…Ra2! 2.Ke8 Kf6 3.e7 Ke6!、白ルークがd7にいる時は 1…Ra2! で黒は引き分けにできる。

 しかし白ルークがd4にいる時は 1…Ra2 2.Ke8! Kf6 3.e7 Ke6 4.Re4+ で白が勝つ。

2.Rd7 Rb8

 2…Rb6 は 3.Ra7 Kf5 4.Ra5+ Kg6 5.Ra1 で図159のように白が勝つ。2…Rb1 も 3.Ra7 で白が勝つ。

3.Ra7!

 図158(黒キングがg7にいる)では白は 3.Rd8 Rb7+ 4.Kd6 Rb6+ 5.Kd7 Rb7+ 6.Kc6 で楽に勝つことができた。しかしここではこの後 6…Ra7! で 7.Rd7 がチェックにならないから引き分けになってしまう。だから白は手数のかかる手順を取らなければならない。

3…Kg7

 これで図156で黒が最強の 1…Rb8 と指した局面になった。そこで見たように白は 4.Kd6+ Kf6 5.Kd7! Kg7 6.Ke7! Rb1 7.Ra8 Rb7+ 8.Kd6 Rb6+ 9.Kd7 Rb7+ 10.Kc6 Re7 11.Kd6 Rb7 12.e7 で勝つ。この重要な手順については図156の詳細な分析を参照されたい。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

[復刻版]理詰めのチェス(09)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第9局

 ズノスコ=ボロフスキー対マッケンジー戦では黒がポーンを …g6 と突いて相手のナイトを自陣に寄せつけまいとした。それはうまくいったが代償としてキングの周囲の黒枡が弱体化した。白はそこに幸便につけ込んで白の駒がかわるがわる急所の地点に攻め入った。

ルイ・ロペス
白 ズノスコ=ボロフスキー
黒 マッケンジー
ウィストンスーパーメア、1924年

1.e4

 この初手でポーンが中原を占拠し、クイーンの利きが4枡、キング翼ビショップの利きが5枡になった。多くの選手が他の序盤の手よりも 1.e4 を好む理由の一つはキング翼の駒が迅速に捌けその方面への早期のキャッスリングが可能になるからである。

1…e5

 昔はこの手がほとんど必然だった。その意図するところは対等に突っ張りとことんまで戦うのをいとわないことである。臆病者だけが 1…e5 を避けて白のギャンビットの可能性を封じていた。

 客観的に考えれば本譜の手は黒の最強の応手である。この手は中原の占有に挑戦し白が次の手で 2.d4 と指して中原を独占するのを防いでいる。

2.Nf3

 白が 2.d4 に固執したらどうなるだろうか。黒は 2…exd4 と応じ以下 3.Qxd4 Nc6 4.Qe3 Nf6 となって展開した駒が黒の2個に対し白は1個となる。これはとりもなおさず黒が序盤で白から主導権を奪うことになる。

 本譜の手はナイトの行き当たりばったりの展開よりはるかに効果的である。例えばh3は中原での出来事とは無関係だしe2も駒の通行を阻害する。

2…Nc6

 この手はポーン取りを受ける理にかなった手段である。即ち小駒が中原に向かって展開しながらポーンを守っている。

 展開の一般的な手順はポーンを中原におき、小駒を展開し(できればナイトをビショップより先に)、キャッスリングしてルークを中央の列に回し、最後にクイーンを自陣からあまり離れ過ぎないようにしながら出す。クイーンを早まって展開させると敵のポーンや小駒で追い回されるので危険である。

3.Bb5

 この手は盤上で最も自然な手である。つまり白は当たりにしているポーンの守り手を攻撃している。確かに白はすぐにポーンを取ることはできない。4.Bxc6 dxc6 5.Nxe5 と取ると 5…Qd4 でポーンを取り返される。しかし黒に対する重圧は変わることがなく狙いは常に存在している。

 ルイ・ロペスは恐らくキング翼布局のうちで最強である。白はあまり苦労しないでポーンを d4 と突けるので中原での発言力が大きい。これに反し黒は同じことをするのが難しい。白駒は動き回る場所が広いが黒は多くの戦型でかなり窮屈な陣形になる。

3…a6

 この手は「ジャックの建てた家」の物語のようになる。白ナイトが攻撃している黒ポーンを守る黒ナイトを攻撃している白ビショップを黒ポーンが攻撃する。

 黒のこの手の目的は白ビショップを好所からどかせることである。ポーンを突くためにかかる一手は当たりの白ビショップが退却するのにかけなければならない一手で相殺される。

4.Ba4

 この手はナイトに対する圧力を維持するので布局の精神にかなっている。c4に引く手は4手でなく3手でその局面に行けたので劣った手である。

4…Nf6

 この手は駒を展開しポーンを攻撃しキング翼への早期キャッスリングのお膳立てをしている。一手でこれ以上はほとんど望めない。

5.O-O

 白はキングを安全な所に移しルークを中央の列に持ってきた。

5…Be7

 5…Nxe4 を好む選手もたくさんいる。この手はポーン得する考えではない。なぜなら白は容易にポーンを取り返すことができる。目的は駒が自由に広く動ける局面にすることである。この戦型の危険性は黒の中央の陣容がいくらか不安定になることにある。

 本譜の手は簡単には攻め込まれない閉鎖的な局面になるが、黒は忍耐が必要である。ビショップのe7への展開は元の地点から1枡動いただけであるが十分である。重要なことはビショップが最下段を離れキャッスリングを容易にしたということである。

6.Re1

 白はルークを中央に持ってきた。素通しの列の代わりにいずれそうなりそうな列を支配するのに備えている。自分のeポーンを守って白は 7.Bxc6 dxc6 8. Nxe5 でポーンを取る狙いを復活させた。

 このルークが寄った手はクイーン翼ナイトをc3に展開させる手より望ましい。白は c3 と突いてビショップを交換から避けるための引き場所を用意しておいた方が良い。

6…b5

 ビショップを下がらせることにより白の狙いに対処した。

7.Bb3

 明らかにこの一手である。

7…d6

 この手はeポーンを守り、クイーン翼ビショップの筋を通し、8…Na5 で敵の目障りなビショップを取る手を準備している。

 一見すると一方のビショップを自由にしながら他方を閉じ込めるのは不合理なように思える。しかしキング翼ビショップはe7の地点で良い働きをしているのでクイーン翼ビショップが外界に出る番である。

8.c3

 この手には二つの目的がある。

 一つ目は相手が 8…Na5 でこのビショップを取りにくる手に対してビショップの避難場所を用意している。

 二つ目はdポーン突きを支援して強力なポーン中原を作り上げることである。

8…Na5

 この手はビショップをどうこうしようというのでなく、9…c5 と突けるように道を空け中原の地点の支配を争おうというのが目的である。ルイ・ロペスのこの戦型では黒の最良の反撃の可能性はクイーン翼での戦闘にある。

9.Bc2

 白が双ビショップを維持することを望むのは当然である。白は手損をしたがそれは黒もナイトを盤端に跳ねさせたことにより相殺されている。

9…c5

 この手はd4の地点に対する圧力を強め、クイーンの(昔の本でよく言っていたように)出口を作っている。

10.d4

 キング翼ポーン布局の主要な目標の一つは状況が許せばできるだけ早くdポーンを中原へ突くことである。一方クイーン翼ポーン布局の場合は機会があるならばeポーンをe4に突くのが望ましい。

 白はeポーンを二つの駒で当たりにしてこのポーンを取る手を再び狙っている。

10…Qc7

 黒はこのポーンをさらに守り同時にクイーンを展開させた。10…exd4 11.cxd4 cxd4 12.Nxd4 というようにポーンを交換するのは良くない。なぜなら黒は中原を放棄し中央の列に孤立ポーンが残されるからである。タルタコーワは「孤立ポーンは全局に暗い影を投げかける」と言っている。白は中原に地歩を占めたナイトが対立するポーンによって追い立てられないということでも得をする。

11.h3

 この手はナイトが釘付けにされるのを防ぐためである。釘付けにされるとナイトとそれが盾となっているクイーンが不如意になるかもしれない。この二つの駒はdポーンの守りと中原におけるポーンの陣形の維持に必要である。(釘付けの後)ナイトが交換されクイーンで取り返すと一挙にdポーンの二つの守りが消え去る。

 白がキングの近くのポーンの一つを動かすのは原則に反していないだろうか。それはそうかもしれない。しかし慣習は守るだけでなく無視する時があることも知っておかなければならない。問題のこの状況においてナイトへの攻撃とその交換、そして中原における白のポーンの解体を防ぐことは重要である。hポーン突きは弱体化させる手であるが、釘付けを許す結果生じる事態よりはましである。しかしちょっと待てよ。黒がそれにつけ込むことができなくても弱体化させる手になるのだろうか。黒がそれを利用してキング翼攻撃をすることができなくても陣形に害を与えることになるのだろうか。

 答えはノーである。相手が欠陥につけ込むことができる場合に限りその手は弱体化の手となる。局面が全体として強いか弱いかは相手の陣形との関係によってのみ決まってくる。この局面の場合hポーンを突いた手は正にこの局面の必要としているところに適合しているので当を得ている。

11…Nc6

 ナイトは退却しdポーンに対する圧力を増大させる。黒の狙いは 12…exd4 13.cxd4 cxd4 14.Nxd4 Nxd4 15.Qxd4 Qxc2 という総交換によってポーン得することである。黒は白がこの狙いに対処するために 12.d5 と突くことを期待している。このポーン突きはナイトを好所から追い払うので良さそうに見えるが、中原の争点を解消しd5に駒が来れなくするという(白にとって)不都合がある。

12.Be3

 白はあわてない。新たな駒を展開させてdポーンを守った。

12…O-O

 黒はキングを安全な場所に移動させルークを任務に就かせた。

13.Nbd2

 このナイトはほとんど働きのない地点に展開して、特に語るような将来もないように見える。しかしこれは重要な最初の一歩である。この一歩は小さいかもしれないがその結果は強調するに値する。

 ナイトが動いたことにより1段目が空き大駒(クイーンとルーク)がお互いに連結することができた。

 駒を1段目から離して活動させよ。

13…Bd7

 黒も同様のことをした。黒のビショップが最下段を空けルークが中央の列に回れるようになる。

 ルークは強力な駒なので閉じ込めてはいけない。

14.Rc1

 一局の序盤の段階ではルークの活躍する場面はあまりない。しかし時が来れば行動できる準備はしておかなければならない。このための最良の方法は素通しの列に陣取ることである。素通しの列がなければ自分の方だけポーンの切れている列を占めるべきである。それもなければ中央の列が素通しになり易いので中央に回るべきである。しかしいずれにせよルークを隅から出せ。

14…Ne8

 この手はfポーンを突く目的である。このポーンは白のeポーンと中原を争い、ルークのためにf列を空けている。

15.Nf1!

 このナイトはg3から好所のf5へ跳ぶはずみを得るためにここへ退いた。

15…g6

 この手はナイトを寄せ付けないためと中原に向かって …f5 と突くのを助けるためである。

 このgポーン突きによってf6とh6の地点がポーンによって守られなくなり弱体化した。このことは平均的な棋力の選手には恐らく興味深いが大したことではないと思われるかもしれない。しかし弱点を認識しそれにつけいる方法を知っていることはマスターの選手の証(あかし)である。優れた選手は相手がとんでもない悪手を指すのを待って勝つのではない。相手が駒をただ取りの地点に置くのを期待しているのでもない。

16.Bh6

 白はただちに駒を弱くなった枡の一つに据えた。

16…Ng7

 この手は 17.Bxf8 によって交換損になるのを防ぐ唯一の手である。

17.Ne3

 ナイトが以前の作戦よりも少しだけ違った経路で戦いに加わった。このナイトはf5の地点に圧力を加えているだけでなく強力なd5の地点に居座る狙いも持っている。

17…Rae8

 黒は 17…Be6 でナイトの到来を止めることができなかった。そう指すと 18.d5 で駒損になる。

 黒は意図していた 17…f5 による開戦を放棄した。というのはそう指すと局面が捌け、素通しの筋は展開に優りそれらの筋を攻撃に有利に用いることのできる方に有利に働くからである。

 実戦の手で黒は相手が仕掛けてくるのが難しい密集防御陣を維持しようとしている。

18.Nd5!

 この手は非常に冴えた手で、その目的は強力な中原の地点に駒を据えるという明らかな目的よりもはるかに深い。

18…Qb7

 クイーンはナイトの当たりをかわさなければならない。

19.Nxe7+!

 この手が要点である。このナイトは価値ある大義のために好所を放棄した。黒のf6の地点の弱点につけ込むためにはその地点の守護者である黒枡ビショップを排除することが大切である。このビショップがいなくなれば弱点がさらけ出され、白は何らかの手段により急所の地点に侵入し駒を据えることができる。

19…Rxe7

 この手は当然である。19…Nxe7 と取るのは 20.dxe5 dxe5 21.Nxe5 でポーン損になる。

20.dxc5

 この交換の目的はクイーンのために絶好の長い列を開放することである。

20…dxc5

 黒はポーン損にならないように取り返さなければならない。

21.Qd6

 開放されたd列の素晴らしい活用である。cポーンに対する当たりでクイーンが先手でf6に進入できる。

21…c4

 黒はこのポーンを救うために1手かけなければならない。

22.Qf6!

 たまたま次に即詰みのあるこの手で白はgポーン突きによってもたらされた黒陣の空所にまた一つの駒を据え付けた。勝つための指し方は本でいうところの「技術の問題」で、優勢を勝利に結びつける過程は興味深い。

22…Nh5

 この手は詰みを阻止しクイーンを追い払おうとしている。

23.Qh4

 23.Qg5 は間違いで、黒は当たりのルークを逃げる代わりにまず 23…f6 と突いてクイーンを自分の領地から完全に追い出す。

23…Ng7

 ナイトはルークに対するビショップの利きをさえぎり 24.Qf6 を再び 24…Nh5 で脅かす用意をした。

 白は勝つためにどのように指し継ぐのだろうか。

24.Be3!

 それは駒の配置を再編成し予備役を招集することによって行なうのである。新態勢へのこの初手は 25.Bc5 で交換得する狙いがあるので先手である。

24…Ne6

 この手は 25.Bc5 を防ぐ唯一の手段である。本譜の手の後白は黒枡を完全に支配する。

25.Qf6

 また隙間に侵入した。黒は同じ手を繰り返しても助からない。25…Ng7 なら 26.Bc5 Re6(26…Nh5 は 27.Qh4 で白の交換得になる)27.Qh4 Rfe8 28.Ng5 で詰みの狙いがあるのでe6のルークが逃げられない。

25…Qc7

 黒は大切なeポーンを守らなければならない。

26.Bh6

 またもや白はキングの近くの空所に駒をしっかりと埋め込んで理想的な態勢を得た。黒は先ほどの手段の …Nh5 がないのでこれらの駒を追い払うのが難しい。

26…Rc8

 ルークはビショップの当たりから逃れなければならない。代わりにナイトでビショップの利きを止めるのはもちろん大ポカで即詰みになってしまう。

27.Rad1

 最終攻撃に向かう前に白は素通しのd列を押さえて局面をさらにはっきりと掌握した。次の行程(黒は指をくわえて見ているしかないので)は 28.Rd5 でeポーンを三重に攻撃しd列にルークを重ねる手を狙っている。そうなれば白はもっと速い決定的な手段を講じなくても抵抗を抑えるのに十分である。

 注意すべきは白があやしげな長手順の手筋に手を染めなかったことである。白の作戦はほとんどの場合大局的な優位を増すことに向けられているがほんの数手先までしか立てられていない。チェスのマスターは何十もの変化からなる込み入った手筋を30手先まで読んでいるといった話を信じてはいけない。彼らはそんなことはしていない。なぜならする必要がないからである。数手先まで読んでそれぞれの局面で少なくとも互角の形勢を維持する方がはるかに容易で要を得ている。はたと迷わせる手筋や向こう見ずな駒損の攻めで相手を圧倒しようとするよりも、自陣を少しずつ強化し敵陣を弱めていくというようにわずかな有利を積み重ねて勝つ方が常識的な手法にもっと適合している。危険をはらんだ不毛の思いつきに没頭するよりも、整然とした手法を読みに適用していく方がもっと大切である。

27…Ree8

 黒の考えはクイーン交換で重圧を弱めようということである。白はクイーン交換に応じるかクイーンを引かなければならない。

28.Nh2!

 好手である。このナイトはf3の好所にいるように見えたが黒枡への圧力を強めるために転送される。

28…Qd8

 この手は白クイーンを黒陣から立ち退かせるための継続手である。

29.Ng4!

 この手はクイーンに紐(ひも)を付けクイーン交換の時には黒枡をしっかりと押さえる用意をしている。黒が 29…Qxf6 とクイーン交換をしてくれば 30.Nxf6+ Kh8 31.Rxd7 で駒損になる。

29…Qe7

 この手は受けにならない。しかしどうやっても受けがない。もし 29…Re7 なら 30.Be3(31.Nh6+ Kf8 32.Qh8# の狙い)30…Re8 31.Nh6+ Kf8 32.Qxf7# で詰みになる。

30.Qxe7

 この手が最も簡明である。詰みが見えなければ現代のマスターはチャンバラを排除する。時間の浪費はしろうとのためにある。だからマスターは単純化を図り敵の抵抗の機会を削ぐようにする。30…Rxe7 の後 31.Nf6+ Kh8 32.Rxd7 で白の駒得になり収局で紛れる余地はない。

30…黒投了

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開放試合の指し方(095)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 12.d4 の局面

 白はポーンを取り戻し中央でも優位に立っている。そしてキング翼ギャンビットでまさに白が望むf列での攻撃の可能性が有望である。

 3)3…Be7 は 3…Nf6 よりも控え目で好結果をもたらすキング翼の展開である。黒は適時にh4でのビショップによるチェックを狙うことにより、…Nf6 の戦型での不利をこうむらずにキング翼ナイトを展開することができる。

 白の主眼の次の手はビショップを最も働きのある地点に展開する 4.Bc4 である。おとなしい 4.Nc3 には黒は魅力的な 4…Bh4+?! を避けた方が良い。というのは 5.Ke2! で白キングは十分安全で、黒はキング翼ビショップを働きのある地点につけるのにもっと手をかけなければならないからである。4.Nc3 に対する黒の最善の作戦は 4…Nf6! と展開する手で、4.Bc4 の戦型と似てくる。

 4.Bc4 に対する最善の手順は 4…Nf6!(ここでも 4…Qh4+ は 5.Kf1! で黒が何か得するかは疑問である)5.e5(5.Nc3 には中央のきまりをつける 5…Nxe4! が効果的で、6.Nxe4 には 6…d5 で駒を取り返す)5…Ng4! である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(159)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 これで図155で白ルークの全ての配置を分析したことになる。結論をまとめると白ルークがc4、c5、c6、e5、e8を除くc、d、e、g列にいると白が勝つ。また白ルークがa7又はa8にいる時も白が勝つ。白ルークが他の枡にいる時は黒が正しく受ければ引き分けになる。

 今度は図155を少し変えて黒キングをg6に置いてみよう。このわずかな変更が時々決定的な違いを生み異なった対応をしなければならないことがある。図159をこれからの分析の出発点とする。

 図159
グリゴリエフ、1937年

 黒キングがg7の時は引き分けだったがこの局面では次のように白の勝ちとなる。

1…Rb7+

 白は 2.Rg1+ Kf5 3.Kf7 で勝ちを狙っているのでこの手は必然である。

2.Kd8 Rb8+

 2…Kf6 3.e7 Rb8+ の後白は 4.Kc7 Re8 5.Kd6 Rb8 6.Rf1+ Kg7 7.Kc7 Ra8 8.Ra1! でも 4.Kd7 Rb7+ 5.Kd6 Rb6+ 6.Kc7 Re6 7.Kd8 Rd6+ 8.Ke8 でも勝てる。

 もし元々の白ルークの位置がa5だったら黒は 2…Kf6 で引き分けにできる(白が2手目に 2.Kd6 と指しても同じ)。白ルークがa4又はa6の引き分けの局面についてはすぐ後で分析する。

3.Kc7 Rb2 4.Re1!

 図155との違いはここにある。黒キングがg7の場合は 4…Kf8 とできた。しかしこの局面ではポーンが止められない。注意すべきは 4.Rf1 でこれは 4…Ra2! で図150の分析で見たように引き分けになる。

4…Rc2+ 5.Kd7 Rd2+ 6.Ke8

 から 7.e7 で白が楽に勝つ。

 白ルークがa4(又はa6)の場合は引き分けである。1…Rb7+ 2.Kd8 2.Kd6 なら 2…Rb6+ 3.Kd7 Kf6! 4.Rf4+ Ke5 でよい。この手順中 4.Ra1 なら 4…Rb7+! である。白ルークが元々a6の場合は 2.Kd6 には 2…Kf6! で引き分けになる。2…Kf6! 2…Rb8+ は 3.Kc7 Rb1 4.Re4! で黒の負けとなる。しかし白ルークが元々a6の場合は 2…Rb8+ 3.Kc7 Rb1 で白ルークがe列に回れないので引き分けになる。3.Re4 3.e7 なら 3…Rxe7! である。3…Rb8+ 4.Kd7 4.Kc7 なら 4…Ra8! でよい。4…Rb7+ 5.Kd6 Rb6+ で明らかに引き分けである。

 白ルークがf列とh列の場合も同様に引き分けである。例えば白ルークがf1の場合黒は 1…Rb7+ 2.Kd8 Rb8+ 3.Kc7 Ra8! で図150のように引き分けにできる。

 白ルークがc、d、e列の場合白は図155の要領で勝つ。しかし二つの大きな違いがある。

 第一は白ルークがc6にいても白が勝つということである。1…Rb7+ 1…Rb8 は 2.Rc1 Rb7+ 3.Kd8 Rb8+ 4.Rc8 から 5.e7 で白が勝つ。この手順中 3…Kf6 ならば 4.e7 Rb8+ 5.Kd7 Rb7+ 6.Kd6 Rb6+ 7.Kc7 Re6 8.Kd8 で良い。2.Kd8 Rb8+ ここでは 2…Kf8! がない。3.Rc8 から 4.e7 で白が楽に勝つ。

 第二は今度は黒にとって有利な点だが白ルークがe4にいるとポーンに近過ぎるために白が勝てない。1…Ra2! 白ルークがe5の場合もこの手で黒は引き分けにできる。白ルークがe8の場合黒は 1…Rb7+ 2.Kd6 Rb6+ 3.Kd7 Rb7+ 4.Kc6 Ra7 で引き分けにできる。2.Rg4+ これ以外の手では黒は図154の引き分けの局面に到達することができる。2…Kf5 3.Rd4 白ルークが当たりになっていなければ 3.Kf7 で白が勝つところである。3…Ke5! 3…Kg6 は 4.Ke8! から 5.e7 で、3…Ra7+ は 4.Rd7 Ra6 5.Rd6 Ra7+ 6.Kf8 で白が勝つ。4.Rd1 Ra7+ 5.Rd7 Ra6 これで引き分けになる。

(この節続く)

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開放試合の指し方(094)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3…g5 4.Bc4 Bg7 5.O-O の局面

 ここからの通常の手順は 5…h6(gポーンとg5の地点はしっかり守る必要がある)6.d4(中央を支配しながら展開する)6…Ne7(キング翼の小駒の展開を完了しいつでもキャッスリングする用意ができた)7.g3! で、すぐにf列で行動をおこす。白の最後の手には罠があり、当然の 7…fxg3? は捨て駒の 8.Nxg5! で咎められる。8…hxg5 9.Bxf7+ Kf8 のあとは必殺の攻撃があり、例えば 10.e5、10.Bxg5 それに 10.Bh5+ Kg8 11.Qf3 のどれでも良い。

 黒がこの罠にはまらない手順は 7…d5!(展開と同時に反撃にもなっている)8.exd5 fxg3 9.Ne5!(白はぐずぐずしていられない。9.hxg3 は 9…Nf5! で弱体化したキング翼の代償が何もない)9…gxh2+ 10.Kh1!(黒のhポーンをキングの盾として利用する。実利主義の 10.Kxh2? は白キングがむきだしになりすぎるので悪い)10…O-O! である。

 黒は第一波の攻撃をしのいで2ポーン得になり、白キングの状態はとても安泰とは言えない。それでも白は 11.Nxf7!? でさらに乱戦に引きずり込むことができ、勝負の行方は予想しがたい。

 2)3…Nf6 は当を得たナイトの展開の仕方に見える。しかし 4.e5! のあとこのナイトは逃げなければならず、十分に満足できる行き場所がない。4…Ne4 なら 5.d3! Ng5 6.Bxf4 で白はギャンビットしたポーンを取り戻し、中央の態勢が有利である。4…Nh5 なら 5.Be2! でナイトが盤端で非常に不安定になる。例えば 5…d6 6.O-O dxe5 7.Nxe5 Qd4+ 8.Kh1 Nf6(8…Qxe5?! はもっと悪い。9.Bxh5 のあと黒のキャッスリングしていないキングが窮地に陥り、白には 10.Re1 ですぐに黒クイーンを取る狙いがある)9.Nd3 Bd6 10.c3 Qb6 11.Nxf4 O-O 12.d4 という具合である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(158)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 図158は白ルークがd1にいる局面である。

 図158

 この局面も一つの例外を除いて白ルークがd列のどこにいても白が勝つ。唯一の例外とはd7で黒は 1…Ra2! で引き分けにすることができる(図154を参照)。

1…Rb7+

 白ルークがd5ならば黒は 1…Kg6 を試してくるかもしれない。しかしそれでも白が勝つ。2.Rd8 2.Rd1 でも良い。2…Rb7+ 白の狙いは 3.Ke8 である。2…Kf5 は 3.Kf7 で白が勝つ。3.Rd7 Rb8 3…Rb6 なら 4.Ra7 Kf5 5.Ra5+ Kg6 6.Ra1! Rb7+ 7.Kd8 Rb8+ 8.Kc7 Rb2 9.Re1 で白が勝つ。この局面は後にまた触れる。4.Ra7! Kg7 後は図156と同様に 5.Kd6+ Kf6 6.Kd7! Kg7 7.Ke7! で白が勝つ。

2.Rd7 Rb1

 2…Rb8 は 3.Rd8 Rb7+ 4.Kd6 で本譜と同じになる。2…Rb6 は 3.Ke8+ Kf6 4.e7 Ke6 5.Kf8! で白が勝つ。

3.Rd8

 白の狙いは 4.Ke8 である。すぐに 3.Ke8+ と指すと 3…Kf6 4.e7 Ke6! で引き分けになってしまう。

3…Rb7+ 4.Kd6 Rb6+

 白の狙いは 5.e7 である。それを 4…Kf6 で防ぐのは 5.Rf8+ から 6.e7 で白が勝つ。

5.Kd7 Rb7+ 6.Kc6 Re7

 6…Ra7 なら 7.Rd7+ で白が勝つ。

7.Kd6

これで白の勝ちである。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(68)

「Chess Life」1993年5月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒は中央に向かって取るべきか

 自分か相手があるポーンで中央の方向に取るか別のポーンで中央から離れる方向に取るか決めなければならないことはしょっちゅうある。この決定は布局早々(早ければ3手目!)、中盤戦、または収局に至ってさえ、しなければならないかもしれない。中央の支配は布局の段階と中盤戦のほとんどでは非常に重要な目標なので、次の一般原則が当てはまる。他に特別な理由がない限りつねに中央に向かって取り返せ。何らかの中盤戦の後半の段階だけでなく戦力が非常に減少した収局でも、中央支配の重要性は減少し、決定は局面の具体的な必要性に基づいて行なわなければならない。しかし早い段階では取り返しは75%をゆうに超える場合において中央に向かって取る方が良い。さらに次の経験則を用いることができる。分からない時は中央に向かって取れ。

 それでも早い段階ではにとって選択が容易でないことがよくある。問題は単に、白は主導権を持って指し始め、黒は中央にだけ関心を持っていられず展開の速さ、キングの安全、そして他の重要な分野も心配しなければならないということである。本稿では黒が布局の段階でしなければならない三つの最も重要な取り返しを論じる。次稿は白の必要性と見通しについて考察する。

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開放試合の指し方(093)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3.Bc4 Nf6 4.Nc3 c6

 これがビショップギャンビット戦法で最も重要な局面である。白が何をしようと、黒は …d7-d5 と突くことができて見通しはきわめて明るい。3通りの可能性がある。

 1)5.Bb3 d5 6.exd5 cxd5 7.d4 Bd6 8.Nge2 O-O 9.O-O g5! 10.Nxd5 Nc6 黒のキング翼の多数派ポーンは締めつけ効果でクイーン翼における白の多数派ポーンと同じ価値がある。

 2)5.d4 Bb4 6.Bd3 d5 7.e5 Bg4 8.Nf3 Ne4 いい勝負である。

 3)5.Qf3?! d5! 6.exd5 Bd6! 7.d3 Bg4 8.Qf2 O-O 9.Bxf4 Re8+ 黒はポーンを取り返しまだ攻撃の可能性を保っている。例えば 10.Kf1 b5 11.Bb3 b4 12.Nce2 Nxd5 となる。

3…d5

 この時点で黒は根本的な決定をしなければならない。基本的な選択肢は(1)何としてもポーン得にしがみつこうとすること、(2)堅実にキング翼の展開を完了すること、(3)キング翼を迅速に展開して反撃の機会を得ることを優先しこのためには1、2個のポーンを損するかもしれないことは気にしないこと、である。本譜の手は後の方のやり方に従っていて、このことについてはもっと後述する。まずは他の理にかなった手法について分析する。

 1)3…g5 は黒がポーン得にしがみつくつもりであることをすぐに表明する。このやり方は白が Nf3 と指していれば理論上うなずける。なぜなら黒は …g5-g4 と突いて白のナイトをどかすことにより手得する可能性があるからである。しかし白はキング翼ナイトを犠牲にすることがよくあり、戦いが激烈になることがある。実は 3…g5 のあとの手順はキング翼ギャンビット受諾の中で最も複雑で、これまでの膨大な研究にもかかわらずまだほとんどが不明のままである。この戦型は特に黒側にきわめて多量の定跡の知識が要求されるので、現代の大会ではめったに指されることがない。

 3…g5 のあとの理にかなった展開は 4.Bc4 で、ビショップを出して黒の脆弱なf7の地点をにらみ、黒の応手は 4…Bg7 で中央を臨む地点にビショップを展開する。すぐに 4…g4!? と突くのは両者にとってきわめて危険である。膨大な量の定跡の示すところでは白は 5.O-O! でナイトを犠牲にしなければならない(ムッツィオギャビット)。そして 5…gxf3 6.Qxf3 で白は攻撃が有望だが黒は駒得である。勝敗の見通しはほぼ互角だが、「実戦的」には引き分けに終わることは少ない。

 4.Bc4 Bg7 のあと通常の手順はキングを比較的安全な所に移しf列での作戦行動を準備する 5.O-O である。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(157)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 図157は白ルークをc1に置いた局面である。

 図157

 白ルークがc4、c5、c6を除いたc列にいる場合はすべて白の勝ちである。この3枡がどうして引き分けになるのかは後述する。

1…Rb7+ 2.Kd8

 この手は白ルークがc8にいる場合は引き分けになる(2…Kf6)。しかしその場合には 2.Kd6 Rb6+ 3.Kd7 Rb7+ 4.Kc6 で白が楽に勝つ。白ルークがc4またはc5にいる場合は 2.Kd8 は 2…Kf6 3.e7 Rxe7! 4.Rf4+ Ke5 で引き分けになる。

 本譜の手に対して白は 2.Kd6 でも勝てる。2…Rb6+ 3.Kd7 3.Rc6 は 3…Rb8! 4.Rc1 Kf8! で引き分けになる。3…Rb7+ 白ルークがc4またはc5だったら 3…Kf6! で引き分けになる。4.Rc7 Rb8 5.Rc8! Rb7+ 6.Kc6 で白が楽に勝つ。

2…Kf6

 最初に白ルークがc6にいたら黒は 2…Kf8! で引き分けにできる。しかし 2…Rb8+ は 3.Rc8 ですぐに白の勝ちになる。この変化で白の1手前の手が 2.Kd6 だったら 2…Kf6! で引き分けになる。

3.e7!

 白の勝つ手はこの好手だけである。

3…Rb8+ 4.Kd7

 4.Kc7 も可能で 4…Ra8 5.Ra1! Re8 6.Kd6 で白が勝つ。この手順中 4…Re8 ならば 5.Kd6 Ra8 6.Rf1+ Kg7 7.Ra1! で良い。

4…Rb7+ 5.Kd6 Rb6+

 5…Rb8 なら 6.Rf1+ Kg7 7.Kc7 Ra8 8.Ra1! で白が勝つ。

6.Kc7! Re6 7.Kd8 Rd6+ 8.Ke8

で白が楽に勝つ。

 図157で白ルークがe1の場合は次のように白が勝つ。1…Rb7+ 2.Kd8 Rb8+ 3.Kd7! 3.Kc7? は 3…Ra8! で引き分けになってしまう。3…Rb7+ 4.Kc8 Re7 5.Kd8 で白が勝つ。しかし白ルークがe5の場合は例外で、この最後の局面で黒が 5…Kf6! と指すことができて引き分けになる。白ルークがe8の場合黒は 1…Ra2! で引き分けにできる。

(この節続く)

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開放試合の指し方(092)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス

1.e4 e5 2.f4

 白は2手目でキング翼ギャンビットを申し出た。ギャンビットとは布局で1個以上のポーンを犠牲にすることで、白がここでしていることはキング翼のポーン、具体的にはfポーンを犠牲にすることである。

 白は何を達成することを期待しているのだろうか。黒のeポーンをf4に誘うことにより白は中央における黒の影響力を減少させ d2-d4 と突くことにより自分が明らかに優位に立つことを期待している。また、白はfポーンがなくなるので、黒のfポーンを取ればキング翼ルークがf列で有望な働きをすることを期待している。だから白の二つの主要な展望は中央とf列とにある。もし白が両方の目標を達成することに成功すれば、白の陣形ははるかに優るものとなる。

 白の作戦に何か問題があるだろうか。最も明らかなことがある。白は貴重なポーンを犠牲にし、それと同時に自分のキングの周りを弱めている。

2…exf4!

 一般に、真のギャンビットに対処する最善の手段は受諾することである。「真のギャンビット」とは通常のやり方では与えた戦力を取り返すことが期待できないことを意味する。そのような状況では攻撃側は進んでいくらかの危険を背負い、防御側もひるむべきでない。ここでは黒はポーンを得し白のキング翼を弱めている。黒はたった2手でこれらのことを達成して満足でないのか?

 ポーンを取ることに付随する危険を受け入れたくない人のために、本書の第8章で他の可能性を論じている。

3.Nf3

 これがキング翼ギャンビット受諾の中で白の断然人気のある手法である。このナイトは中央の望みの地点に展開され、黒クイーンのh4からのチェックを防いでいる。

 とは言っても先にキング翼ビショップを 3.Bc4 と展開するのも同様に良い手である(ビショップギャンビット)。このビショップは最もよく働く斜筋にすぐに出て、f7の地点をにらみ黒が …d7-d5 突きで中央で反撃するのをもっと難しくしている。白はすぐに 3…Qh4+ とされるのを心配する必要はない。なぜならこのクイーンはあとで白から先手で追い立てられるからである。これは次の面白いボビー・フィッシャー対ラリー・エバンズ戦(米国選手権戦、1963/64年)によく表れている。3…Qh4+ 4.Kf1 d6 5.Nc3 Be6 6.Qe2 c6 7.Nf3 Qe7 8.d4 Bxc4 9.Qxc4 g5 そしてここで10.h4! で黒のキング翼を切り崩すことにより白は優勢になれる。例えば 10…g4 なら 11.Ne1 Bh6 12.Nd3 である。

 3…Qh4+ のような無駄手を指す代わりに黒は 3…Nf6! と展開の手を指すのが最善である。この手は白のeポーンを当たりにし、通常の 4.Nc3 c6 のあと …d7-d5 突きを準備している。

(この章続く)

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