2013年09月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(156)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 図155を出発点として白ルークまたは黒キングの位置をいろいろ変えた局面を考えていくことができる。白ルークを f 列、h列あるいはa1からa6までの枡に置いても黒は同じように受けることができるので何も変わらない。しかしその他の位置のほとんどは白の勝ちになる。図156は白ルークがa7の場合である。

 図156

 黒ルークがb7でチェックできないのでこの局面は白の勝ちである。しかしその手順は興味深く参考になる。白ルークがa8にいる場合は白がかなり楽に勝つので述べておく価値がある。白の狙いは 2.Ke8 から 3.e7 である。1…Rb7+ 1…Rb1 なら 2.Ke8 Rh1 3.Ra7+ Kf6 4.e7 Rh8+ 5.Kd7 Kf7 6.Ra1 で白が勝つ。2.Kd6 Rb6+ 3.Kd7 Rb7+ 4.Kc6 Re7 5.Kd6 Rb7 6.e7 でポーンがクイーンに昇格する。これを補助知識として図156の分析に移る。

1…Rb8!

 最善の防御である。1…Rb1 や 1…Kg6 のような手待ちでは白が 2.Ra8 と指すことができて補助知識の図と同じことになる。本譜の手は白にこの手を指させないようにして白の手を難しくさせている。

2.Kd6+!

 勝つための唯一の手である。2.Ra1 は 2…Rb7+(図155)、2.Rd7 は 2…Ra8(図154)で引き分けである。2.Kd7 は 2…Kf6 でも 2…Kf8 でも引き分けになる。

2…Kf6

 次の変化のように黒には選択の余地がない。

1) 2…Kf8 3.Kd7! Re8 3…Kg7 は 4.Ke7! で本譜と同じになる。3…Kg8 は 4.Ra1 Rb7+ 5.Kd8 Rb8+ 6.Ke7 Rb7+ 7.Kf6 で白が勝つ。4.Ra1 Re7+ 5.Kd6 Rb7 6.Ra8+ Kg7 7.e7 で白が勝つ。

2) 2…Kg6 3.Ra1! Rb6+ 3…Rb2 なら 4.Re1 である。4.Kd7 Rb7+ 5.Kc6 Rb8 6.Kc7 Rb2 7.Re1! Rc2+ 8.Kd7 Rd2+ 9.Ke8 から 10.e7 で白が勝つ。

3.Kd7!

 ただし 3.Rf7+ は 3…Kg6 4.Rf1 Ra8! でだめである。本譜の手は黒を手詰まりに追い込んだ。この局面で黒の手番なので白は勝つことができる。読者はこれを確かめられたい。

3…Kg7

 3…Kg6 は黒の2手目の変化 2) の要領で白が勝つ。黒ルークが動くのは 4.e7 で黒が早く負ける。しかし本譜の手の後白は困難に陥っているように見える。

4.Ke7!

 これも再び黒を手詰まりに陥れる妙手である。4.Ra1 はもちろん 4…Rb7+(図155)で引き分けになってしまう。

4…Rb1

 4…Kg6 は 5.Ra1 Rb7+ 6.Kd6 で黒の2手目の変化 2) と同じになる。4…Kg8 は 5.Kf6(5.Ra1 でも良い)5…Rf8+ 6.Kg6 Rb8 7.Rg7+ Kh8 8.Rf7 Kg8 9.e7 で白が勝つ。4…Rc8 は 5.Ra1 Rc7+ 6.Kd8 から 7.e7 で白が勝つ。

5.Ra8!

 これでようやく図156で白ルークがa8にいる局面にたどり着いた。白の勝つ手順は既に示したとおりである。スタディにしても良いくらいの妙手の連続であった。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(97)

「Chess Life」2005年8月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット

 ウルソフ・ギャンビットはビショップ布局の1変化である。19世紀にロシアのセルゲイ・ウルソフによって創始された。白がポーンを犠牲に非常に強い主導権を得ようとするとても面白いギャンビットである。もちろん奇跡の武器ではない。黒がよく研究し白のやっていることを本当に知れば、白の攻撃を食い止めることができる。

 黒には 1.e4 e5 2.Bc4 Nc6 または 2…Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nc6 で他の戦法/布局に移行する選択肢もあるが、ここでは取り上げない。

白の基本的な作戦は何か

 白は迅速な展開に集中し、そのためにポーンを犠牲にすることがよくある。他のほとんどの布局とは違い、クイーンを早期にh4に出し速攻を始めることがある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒はこのギャンビットを避けることができる。ポーンを受諾することにしたら黒は非常に慎重になる必要がある。黒はポーン得にしがみつくために長い間根気よく守らなければならないことがよくある。

それで評決はどうなっているか

 白でウルソフ・ギャンビットを指す確かな利点は、これに対してよく研究している者がほとんどいないということである。攻撃的な局面が好きならば、白でこれを指すのを勧める。

 ウルソフ・ギャンビットの出だしの手順は次のとおりである。

1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4

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開放試合の指し方(091)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜2(続き)

 白は h4-h5 と突いてめざわりなビショップを追い払いたいのだが、黒はその暇を与えるつもりはない。

19…Rxe6!

 このルーク切りは事前準備にすぎない。次に何が来るかを見よ。

20.dxe6 Nc3!

 ただ捨ての好手!ビショップのためにe4の地点を空けるのが唯一の目的である。

21.bxc3

 白は他に指しようがない。クイーンは当たっているし、21.g5 は幸便に 21…Qxe6 と取られて次にクイーンがg4に来ると白は壊滅する。これで黒がナイトを捨てる前にルークをe6で切る必要があった理由が分かる。

21…Be4!

 f3のナイトは少し前はd1-h5の斜筋で釘付けにされていた。今度はこの同じビショップは別の方角からずっと良い働きをしている。…Bxf3+(白クイーンがよそへ行けば …Qxf3+)の狙いには満足な受けがない。白は当面はルークと2ポーン得だが、完全に敗勢になっている。

22.Kh3 Qxf3+!

 これで6手詰めになる。

23.Qxf3 Rxf3+ 24.Kg2 Rg3+

 二重チェック!白キングは逃げなければならない。

25.Kh2 Rg2+ 26.Kh1

 26.Kh3 なら 26…Rh2# で即詰みである。

26…Rh2+ 27.Kg1 Rh1#

 きれいな詰み形だった。白キングははしごを1段ずつ降ろされて死滅した。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(155)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 これでもっと別の例に向かうことができる。まずは図155からである。

 図155 黒の手番
グリゴリエフ、1937年

 ここからの(b)の局面図はすべて黒の手番とする。そうでないと白ルークが黒キングにチェックしてg列から追い払い勝ち形になるからである。本図では黒ルークがポーンから十分離れていないにもかかわらず黒は次のような手段で引き分けにできる。

1…Rb7+ 2.Kd6 Rb6+

 2…Kf8 は 3.Ra8+、2…Kf6 は 3.Rf1+ で黒がだめである。

3.Kd7 Rb7+ 4.Kd8 Rb8+

 黒は白キングがd列を離れるまでチェックをかける。

5.Kc7 Rb2 6.Rf1

 6.Re1 だと黒は 6…Kf8 と指してくる。本譜の手は黒のその手を防ぐためである。

6…Ra2!

 これで黒は図150の分析で見たような引き分けの局面に到達した。

(この節続く)

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開放試合の指し方(090)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜2
白 ノルマン=ハンセン
黒 アンデルセン
コペンハーゲン、1934年

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Bd6 7.O-O O-O 8.c4 Bg4!?

 黒は大胆にも自分のdポーンに対する当たりを無視して迅速な展開の方を選んだ。この着想はまったく正しいというわけではないが、白は来るべき攻撃に対して首尾よく受けるには正確な指し方が要求される。

9.cxd5 f5!

 これが黒の着想の主眼である。このポーンはdポーンが取られた後ナイトの守りを引き受けることになっていた。しかしビショップを先に展開してf5のポーンによって閉じ込められないようにしておかなければならなかった。

10.Nc3

 10.Re1? はためになる間違いで、相手に次のような絶好の捨て駒の機会を与える。10…Bxh2+! 11.Kxh2(11.Nxh2 はクイーンを取られる)11…Nxf2 12.Qe2(白クイーンはd3のビショップを守らなければならない)12…Nxd3 13.Qxd3 Bxf3 そして白がf3で取り返せば黒は 14…Qh4+! でe1のルークを取って交換得になり、白が取り返さなければ黒は1または2ポーン得になる。

10…Nd7!

 1ポーンを捨てた黒は主導権を維持するためにはもっと投資する準備をしなければならない。

11.h3!

 あとで分かるようにこの手は受けに役立つ。

11…Bh5 12.Nxe4 fxe4 13.Bxe4 Nf6 14.Bf5!

 黒ビショップがまだg4の地点にいたらこの手は指せないところである。ここで黒は 14…Nxd5? は 15.Be6+ があるので指せない。

14…Kh8

 現在黒は2ポーン損だが、…Nxd5 で1ポーン取り戻すことを狙っている。黒はまだf列での攻撃の可能性に期待している。白はf3のナイトが釘付けにされているので、理にかなった選択肢が二つしかない。つまり断固として圧力に耐えようとするか、諸刃の剣の g2-g4 突きで自分のキングを非常に薄くしても釘付けをはずすかである。

15.Be6?

 白はd5ポーンにこだわった。しかしこのビショップは位置が悪く、防御に戻れない。15.g4! が正着で、そのあと黒は犠牲にしたポーンの代わりに十分な攻撃が得られないはずである。

15…Ne4!

 黒は 16…Bxf3 で白キングの囲いのポーンを乱す狙いである。本譜で白は受けようがないので g2-g4 と突かなければならない。

16.g4 Bg6 17.Kg2 Qf6 18.Be3 Rae8

 黒駒はすべて攻撃に積極的にかかわっている。e6で離れ駒となっているビショップはf3の可愛そうなナイトに十分な支援を与えることが困難である。

19.h4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(154)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(b)6段目のポーン

 ポーンが6段目にあると黒の引き分けの可能性が高まる。黒キングはポーンから2列以上離れてはならず且つ狭い側にいなければならないが、黒ルークの位置はそれほど重要ではなくなる。

 系統的にこの型のエンディングを調べる前に重要な基本形を見てみよう。

 図154
タラシュ、1906年

 この局面は引き分けで、三つの特徴がある。

1)ポーンが6段目にいる。
2)黒キングはポーンから1列離れている。
3)黒ルークはポーンから3列離れている。

1.Rd8

 1.Kd6+ は 1…Kf8 又は 1…Kf6 2.Rf7+ Kg6 で黒が楽に引き分けにできる。他の手は本譜の手順に戻って来る。

1…Ra7+

 1…Ra1? は 2.Ke8! Kf6 3.e7 Ke6 4.Rb8 Ra6 5.Kf8 で白が勝つ。しかし 1…Ra6 2.Rd6 Ra8! は可能である。

2.Rd7

 他に適当な手がない。2.Ke8 は 2…Kf6 でたちまち引き分けだし 2.Kd6 は 2…Ra6+ 3.Ke5 Ra5+ 4.Rd5 Ra1 5.Kd6 Kf8 でやはり引き分けである。

2…Ra8

 後で出てくるようにルークはa6以外のどこでも良い。

3.Rd6

 油断のならない手で黒は正確に受けなければならない。白ルークがd列の他の枡に動けば 3…Ra7+ 4.Ke8 Kf6 で良いが、この手に対しては 5.e7+ でチェックがかかるので白の勝ちになる。本譜の手の代わりに白はルークで手待ちをすることはできない。例えば 3.Rb7 Ra1 3…Kg6 でも良い。4.Ke8+ 4.Kd7 は 4…Ra8 5.e7 Kf7 で同じ局面になるし 4.Kd6+ は 4…Kf6 5.Rf7+ Kg6 で引き分け形である。4…Kf6 5.e7 Ra8+ 6.Kd7 Kf7 7.Rb1 Ra7+ で明らかに引き分けである。

3…Kg6!

 唯一の受けの手である。3…Ra7+(3…Ra1 も同様)は 4.Ke8 Kf6 5.e7+、この手順中 4…Ra8+ なら 5.Rd8、および 3…Rb8 は 4.Rd8 Rb7+ 5.Kd6 Rb6+ 6.Kd7! Rb7+(6…Kf6 は 7.Rf8+ から 8.e7)7.Kc6 でいずれも白の勝ちとなる。

4.Rd7

 4.Kd7 なら 4…Kf6、4.Rd8(d1)なら 4…Ra7+ 5.Ke8 Kf6 で白は何も進展が図れない。

4…Kg7 5.Rc7 Ra1 6.Rd7 [訳注 実戦ならば 4…Kg7 の時点で同形三復により引き分けです。]

6…Ra2

 この手は黒ルークがa8に戻る必要がないことを示すためのものである。ただし 6…Ra6? だけはだめで 7.Ke8+ Kf6 8.e7 Ke6 9.Kf8! で黒ルークがf列でチェックをかけることができないので黒の負けとなる。

7.Ke8+

 白が 7.Rd6 で次の 8.Ke8 を狙ってきた場合の黒の唯一の受けは 7…Ra8! である。

7…Kf6 8.e7 Ke6! 9.Kf8

 どうやっても白は勝てない。9.Rd1 は 9…Ra8+ 10.Rd8 Ra7 で何にもならない。

9…Rf2+ 10.Ke8 Ra2 1/2 – 1/2

(この節続く)

訳注 2006年11月にモスクワで開催されたタリ記念大会のアロニアン対カールセン戦で図154の局面になりました。棋譜は http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1437592 で見られます。アロニアンが 73.Rd6 と指した時カールセンは 73…Ra7+ と間違えアロニアンが 74.Ke8 と指した時カールセンが投了しました。あのカールセンが基本的なエンディングを間違えたということで大変話題になりました。

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開放試合の指し方(089)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1(続き)

27.Nxg5!

 これは抵抗を終わらせる力強い手段である。これから生じるような開放的な局面では、双ビショップが盤面全体に威力を及ぼす。

27…hxg5 28.Bxg5 Ree6 29.Re1 Qg8 30.h4 Rg6 31.Rxe6

 この局面で黒の時間が切れた。31…Rxe6 32.Bxf5 で白の強力な双ビショップと3ポーン得が容易に黒のルークとナイトを圧倒する。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(153)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(a)7段目のポーン

 締めくくりに読者が興味を持つような例外的な局面を採り上げる。

 図153
コパイェフ、1953年

 以降に出てくるように白は図152の手法が使えないので黒が引き分けにできるように思われる。しかし白は黒ルークがポーンから2列しか離れていないことを利用して次のような巧妙な手段で勝つことができる。

1…Rc8+ 2.Ke7 Rc7+ 3.Kf6

 3.Ke6 Rc8 なら白は 4.Kf6 で本譜に戻るしかない。4.Kd7 としても 4…Ra8 5.Ra1 Rb8!(1列広い)でうまくいかない。

3…Rc6+ 4.Ke5!

 以前の勝つ手順はここではうまくいかない。つまり 4.Kf5 Rc5+ 5.Kg6 Rc6+ 6.Kh5 Rc5+ 7.Kh6 Rc6+ 8.Rg6 Rxg6+ 9.Kxg6 で黒キングがステイルメイトになる。

4…Rc8

 4…Rc5+ は 5.Kd6 Rc8 6.Re1! Kg7 7.Re8 で白が勝つ。もし黒ルークがb列にいたら 4…Rb5+ 5.Kd6 Rb8 6.Re1 Kg7 7.Re8 Rb6+ 8.Kc5 Rf6[訳注 8…Kxf7 でも良い。]で引き分けになるところである。

5.Rg6!

 この決め手は白キングが6段目を離れて初めて可能になった。

5…Kh7

 5…Ra8 なら 6.Ra6 から 7.Kf6 で白が勝つ。

6.Rc6 Ra8 7.Kf6 Rb8 8.Re6

から 9.Re8 で白が勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(08)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第8局

 プジェピュルカ対プローケシュ戦は黒のgポーンが強制的に g7-g6 と進ませられた例で、その結果黒枡が弱体化した。プジェピュルカは最終攻撃を開始する前に準備として(弱点を際立たせるために)相手の黒枡に利くビショップを無力化した。

クイーン・ポーン試合(コーレ・システム)
白 プジェピュルカ
黒 プローケシュ
ブダペスト、1929年

1.d4

 クイーン・ポーン布局が人気のある一つの理由は最初の一手から防御側に問題を突き付けるからである。黒がたやすく主導権を握ったり形勢互角にしたりできる方法はない。

 本質的に大局的な性質にもかかわらずクイーン・ポーン布局は攻撃的な選手たちにことのほか好まれている。そして常にアリョーヒン、ケレス、ピルズベリー、ボゴリュボフ、シュピールマン、コーレらの攻撃的な選手たちのお気に入りの武器になっていた。

1…Nf6

 駒が戦いに加わり中原に影響を及ぼしている。このナイトは白が続いて 2.e4 と指すのを防いでいる。

 マスターは呼吸と同じくらい本能的にナイトをf6に動かす。

2.Nf3

 ナイトは中原に向かって展開し最大限の行動の自由と最大限の活動範囲を得る。

 ナイトには相手のどんな駒からも攻撃されずにその駒を攻撃できるという特異な性質がある(相手のナイトは除く)。この特性によりナイトは盤上の捌きで非常に魅力的な駒となっている。ナイトを用いた手筋はしばしばバレエを髣髴(ほうふつ)させる。

2…e6

 黒は 2…d5 で 3.e3 に対し 3…Bf5 を用意してコーレ戦法の総攻撃を避けることができる。そして 4.Bd3 に対し 4…Bxd3 とビショップ同士を交換し(この布局における)白の最も危険な攻撃駒を無くしてしまう。

 本譜の手で黒はキング側ビショップの筋を開け防御の形を明らかにしない。

3.e3

 この手は白の構想を示している。明らかに白はビショップをd3、クイーン側ナイトをd2に配置し攻撃で駒の出発地点となる重要なe4を支配する典型的なコーレの隊形を準備している。

3…d5

 黒はポーンをしっかりと中原に据えた。

4.Bd3

 白はコーレ戦法で必須のe4への圧力の集中を始める。一般にはキング翼の駒を最初に動員して早くその方面にキャッスリングできるようにするのが良い作戦である。

4…c5

 この手はクイーン・ポーン布局ではほとんど必須である。cポーンのじゃまをしてはいけないので先に …Nc6 と指さないことが大切である。本譜の黒の手は中原に挑んでそこでの争点を作り出している。

5.c3

 この手はdポーンを強化した。5…cxd4 と取ってくれば白はcポーンで取り返して中原にポーンを維持することができる。eポーンは動かさないことが大切である。このポーンはe3に留まって次の指示を待っていなければならない。

 白の本譜の手はクイーン翼ナイトから最良の地点を奪ったように思えるかもしれない。しかしこの攻撃隊形ではこのナイトはd2の地点が指定席である。

5…Nbd7

 これは多分ナイトをc6に置くよりもまさっている。d7にいればナイト同士が連結し、キング翼ナイトが交換されればもう一方のナイトが攻防に理想的なf6に行ける。d7ならナイトはc列を空けておける。この列が素通しになってくればそこを占めるクイーンやルークがもっと働くようになる。最後に、もし白が 6.dxc5 と取ってくればナイトで取り返して大威張りで戦闘に加わることになる。

 クイーン・ポーン布局では黒のクイーン翼ナイトはc6よりもd7の方がしばしば活躍する。

6.Nbd2

 この手はe4の地点に対する圧力を強めている。初心者には白の展開はぶかっこうに見える。駒がお互いにじゃまをし合っているように見えるがいずれ分かるようにスムーズに楽々と戦闘に飛び込んでくる。

6…Bd6

 この手は守備の任務に限られる 6…Be7 よりも積極的である。

7.O-O

 白はどんな行動に着手するよりも先にキングの安全を確保した。局面を開放してキングを中央に放置するのは反撃にさらされる可能性があるので危険である。

 キング翼ルークがこれからの攻撃で重要な役割を演じるので白のキャッスリングは攻撃的な意味がある。

7…O-O

 黒のキャッスリングは防御的行動である。しかしどうして白がキング翼での襲撃を準備していることを明らかにした時にキングの恒久的な住居を定めるのであろうか。もっと良い戦略は敵を疑心暗鬼にさせておくことである。すなわちしばらくキャッスリングを見合わせ駒の展開を続けることである(これは何も害になるようなことはない)。黒は早く …e5 と突く目的でクイーンをc7に動かしそれからクイーン翼ビショップをフィアンケット(…b6 から …Bb7)するのが良かった。

8.Re1

 e4にさらにまた圧力。ルークがe列に地歩を占めた。e列は現在は閉鎖されているが白が e4 と突いてポーン交換になれば開放される。

8…Qc7

 ここはクイーンにとって理想的な位置である。このクイーンはc7から中原、特にe5の地点ににらみを利かしc列にも大きな圧力をかけている。

9.e4!

 この手はコーレ戦法の核心の手である。この手で白は局面を大きく開放状態にし自分の駒の蓄積されたエネルギーを猛攻撃に向けて解放しようという意図である。

 当座の狙いは 10.e5 で、単純であからさまな両当たりである。

9…cxd4

 黒は受身の代償として一時的ではあるが素通しのc列を支配する。

10.cxd4

 ナイトで取って黒駒をc5やe5に来させるよりもこの手の方が良い。11.e5 で駒得する白の狙いがまだ残っている。

10…dxe4

 その狙いをかわし白のdポーンを孤立ポーンにした。このようなポーンは他のポーンによって守ることができないのでことのほか攻撃に弱い。最も近いポーンでも2列隣である。

11.Nxe4

 もちろん 11.Bxe4 はない手で、11…Nxe4 とされて重要なキング翼ビショップの役割を失う。タラシュは次のように言っていた。「そばに自分の猫がいないとルソーが著作できなかったように私はキング翼ビショップがないとチェスが指せない。キング翼ビショップのない試合は私にとっては死んだも同然で無味乾燥である。活力を与える要因がないと攻撃の作戦をたてることができない。」

11…b6

 この手はクイーン翼ビショップを使おうという目的である。11…Bf4 の方がいくらか要を得ていて、白の脅威を与えているビショップの一つを抑制する。

12.Bg5

 ビショップが敵駒を攻撃しc1の地点を空ける。クイーン翼ルークがそこへ駆けつけてきて敵クイーンを追い払い絶好の素通し列を完全に支配する。

12…Nxe4

 明らかに黒は 12…Bb7 と指すと 13.Nxf6+ Nxf6 14.Bxf6 gxf6 でキング翼のポーンの形がばらばらになるのを恐れた。

13.Rxe4!

 この手は自然な 13.Bxe4 よりまさる。13.Bxe4 なら黒は 13…Bb7 と指して 14.Bd3(ビショップ交換を避けるため)とさせるかもしれない。その後は 14…Bxf3 15.Qxf3 Bxh2+ で労苦はあっても1ポーン得に満足できた。

13…Bb7

 ビショップを対角斜筋につけるこの手より良い手はほとんどありそうもない。例えば 13…Nf6 なら 14.Rh4 が受けづらい。狙いは 15.Bxf6 gxf6 16.Bxh7+ でポーンを取ることだが 14…h6 は 15.Bxf6 gxf6 16.Rxh6 でやはりポーンを取られて受けにならない。

14.Rc1!

 うまい中間手である。ルークが効果的に素通し列に展開し敵クイーンが1段目に追われる。敵クイーンはそこでクイーン翼ルークのじゃまになり長い間-実際には永久に-展開を妨げることになる。

14…Qb8

 ほかにどうしようもない。14…Bxe4 は 15.Rxc7 Bxf3 16.Qxf3 Bxc7 17.Qc6 で白の駒得になる。

15.Rh4!

 この手が眼目の手である。白の狙いは 16.Bxh7+ なので黒キングの前のポーンの一つが前進しなければならない。どのポーンが進んでも白が優勢になる。その理由は次のとおりである。

 どのポーンが前進しても防御陣形がゆるむ。

 (前進することによって発生する)無防備のどの地点も陣形の弱点になる。

15…g6

 黒が 15…Nf6 でhポーンを守ろうとすれば 16.Bxf6 gxf6 17.Bxh7+ で同様にポーンを取られる。また黒がhポーンを突けば 16.Bxh6 gxh6 17.Rxh6 という見え見えの捨て駒の手筋を誘発し、ポーンの非常線が破られ黒キングを詰み狙いの攻撃にさらす。

 白は敵のgポーンを進ませて目論見(もくろみ)を達成した。しかし白は生じた弱点をどのように利用するのだろうか。gポーンに対する攻撃策があるのだろうか。明らかにそのようなものはない。自分のhポーンで叩くためには白はルークをどけてから h4-h5 とポーンを突いていかなければならないがこれは手数がかかる割りに得られるものはほとんどない。

 他に何か手段があるだろうか。駒を犠牲にしてこのポーンを取るのはどうか。そうやっても敵陣を打ち破れないので明らかに無駄である。

 しかしこのポーンは確かに前進してどこかに弱点が生じている。この事実は確かであってこの事実に勝ちを決める手筋への鍵(かぎ)があるに違いない。

 ポーンの前進によってh6とf6の地点がポーンによって守られなくなったのでそれらが弱体化した。これの意味するところは白がこれらの地点を支配するように努めなければならないということである。それは自分の駒で占有し占拠するか、または敵陣侵入の手段としてそれらを利用するかということである。

 しかし待てよ。黒のナイトはまだf6の地点を守っているのではないか。確かにそのとおりで、これを知ることは我々にとって必要な情報を与えてくれる。このナイトは黒枡の番兵であり、やっつけなければならない。

16.Bb5!

 この手はナイトを攻撃している。奇妙なことにこのナイトは逃げ場がない。

16…Qe8

 他にナイトを守るどんな手があるだろうか。

 16…Bc8 なら 17.Bc6 で交換損になる。

 16…Bxf3 なら 17.Qxf3 Qe8 18.Qc6 で駒損になる。

 実戦の手の後ナイトは釘付けになっていて後続の攻撃の良い標的になる。

17.Ne5

 チェスでは水に落ちた犬は叩いて良い。

17…Bc8

 17…Bxe5 は 18.dxe5(ナイトへのクイーンの利きが通る)18…Bc8(又は 18…Bd5)19.Rc7 で惨めな生物が死滅しなければならず良くない。

18.Rxc8!

 ナイトのつっかい棒を取り払った。この技法は単純である。ある駒に対する圧力を強められないならその守り手の一つを退治できないか考えよ。

18…Qxc8

 18…Rxc8 はもちろんだめで 19.Bxd7 でルーク1個の代わりに駒2個を取られた上にクイーンを詰まされる。

19.Bxd7

 白はルークの代わりに2個の駒を得た。それから攻撃も。

19…Qc7

 19…Qb7 と 19…Qb8 はだめで 20.Bc6 で交換損になる。19…Qa6 はあるが、黒はc列からの反撃に期待した。

20.Ng4!

 この手は弱い黒枡につけ込む第一歩で、21.Nf6+ Kh8(又は 21…Kg7)22.Rxh7# で詰める狙いがある。

20…h5

 黒キングは動ける空間が必要である。20…f5 で自由になろうとしても 21.Bxe6+ Kh8(21…Kg7 は 22.Bh6+ で白の交換得になる)22.Nf6 で抵抗もむなしく負けになる。

21.Nf6+

 ナイトが急所の黒枡の一つにとび込んで第一撃を見舞った。

21…Kg7

 21…Kh8 は 22.Rxh5+ で早く詰む。

22.Nxh5+

 ナイトを犠牲にして敵キングをおおうポーンを剥ぎ取る。

22…gxh5

 黒はナイトを取るしかない。22…Kg8(又は 22…Kh7)は 23.Nf6+ Kg7 24.Rh7# で詰む。

23.Qxh5

 初めてクイーンが動いた。次の手でh列で二通りの詰みがある。

23…Rh8

 詰みを止める唯一の手だが一時的である。

24.Bh6+

 ぴったりの手である。二つ目の急所の黒枡でとどめの一撃を見舞った。

24…投了

 あと2手で詰む。

2013年09月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

開放試合の指し方(088)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1(続き)

 12.Qxb7 は 12…Rf6 で黒がまた有望な攻撃態勢になる。狙いは 13…Rb8 で白クイーンを唯一の逃げ場所のa6に追いやることで、そのあとは 14…Nxd4! でf6のルークによる白クイーンへの開き当たりを炸裂させる。12.Qxb7 Rf6 13.Qb3! のあと黒は 13…Rg6 でルークを白キングと同じ列に回す。キング翼でこんなに多くの駒が攻撃に加わっているので、黒はポーンの投資の代わりに十分な見返りが得られる。

12…Bh5?

 黒はどのくらい長くbポーンの守りを放置しても安全かの判断を誤った。12…Bxf3 13.Nxf3 Rb8 なら安全だった。

12.Qxb7! Rf6 13.Qb3 Rg6

 h2-h3 突きがなく黒のビショップがまだg4にいる状況ならば、この手は …Bh3 のような攻撃態勢を狙うことになる。この変化した状況では黒の攻撃はかなり迫力がなくなっている。これをふまえれば正着は 14…g5! で、さらにgポーンを突き進めて列を素通しにすることに期待すべきだった。

15.Be2!

 これは受けの好手で、f3のナイトを支えると共にこのナイトを動かしてh5のビショップを当たりにする可能性も作っている。

15…Bh4 16.Rf1

 この手は 16…Bxf2+ の狙いに対して守った。黒は攻撃的な姿勢にもかかわらず攻撃の焦点が定まらず、白の防御は完璧である。例えば 16…Ng5 は冷静に 17.Nxh4 Nxh3+ 18.Kh2 Qxh4 19.g3 と応じられて、h3、h4そしてh5の黒駒が当たりになっているので白の駒得になる。

16…Bxf3 17.Nxf3 Bxf2+

 黒はビショップとナイトの代わりにルークとポーンを得るけれども、局面は白が圧倒的なままである。中盤戦では小駒2個はルークよりはるかに活躍できるのが普通で、ここでも例外でない。

18.Rxf2 Nxf2 19.Kxf2 Qd6

 黒は 20…Qg3+ からの猛攻に期待をかけているが、カルポフは白にまだぴったりした受けがあることを見せつけた。

20.Ng5!

 この手は黒の狙いのチェックを防ぎ、21.Nf7+ でキングとクイーンの両当たりを狙っている。

20…Rf8 21.Qa3! Qd8 22.Bf4

 これで勝負が決した。黒の攻撃は終わり、白は決定的な戦力得になっている。

22…h6 23.Nf3 Re8 24.Bd3 Re4!?

 黒は 25.Bxe4 fxe4 26.Ne5 Rf6 で紛れることを期待している。しかし白はルークを無視して混乱を避けることができる。

25.g3! Rf6 26.Qc5 g5

(この章続く)

2013年09月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(152)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(a)7段目のポーン

 図152

 黒キングがg8にいる場合も黒が負ける。1…Ra8+ 2.Kd7 Ra7+ 3.Kd6 3.Ke6 も 3…Ra6+ 4.Ke5 Ra5+ 5.Kf6! Ra6+ 6.Kg5 Ra5+ 7.Kg6 から 8.Rf6-d6 で白が勝つ。3…Ra6+ 4.Kc5 Ra8 4…Ra5+ ならやはり 5.Kc6! が良い手である。5.Kc6! Kg7 5…Ra6+ は 6.Kb7 Re6 7.Rf8+ ここに違いがある。6.Ra1! Rb8 7.Kc7 から 8.Kd7 で白が勝つ。

 このような局面は一般に黒が次のような条件を満たせば引き分けにできる。

1)黒キングがポーンの狭い側にいて2列以上離れていない。

2)黒ルークがポーンから少なくとも3列離れていて敵キングを横からチェックできる。

3)白ルークが比較的守勢の位置にいる(図150の説明参照)。

(この節続く)

2013年09月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(087)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1(続き)

 この面白い局面には両者の構想がはっきりと表れている。白はe4の大胆なナイトへの攻撃を見据えながら組織的に駒を展開して、直前の手は Bxe4 でポーン得を狙っていた。黒は白のdポーンへの反撃で応じてきた。ここで白が 9.Bxe4 dxe4 10.Rxe4 と指しても何も得られないのは 10…Bxf3 があるからである。この手に対して白は 11.Qxf3 Nxd4 でポーンを返すか 11.gxf3 でポーンの形とキングの安全が損なわれることに甘んじなければならない。あとの場合f3、f2それにh2のポーンがもろくなり、半素通しg列が白の防御の問題に加わってくる。ポーン損にもかかわらず黒が明らかに優勢である。

9.c3!

 白はdポーンを守った。これでe4で2回取る狙いは本気で考えなければならない。この控え目なポーン突きで白クイーンが自由にb3に出てくることができることにも注意が必要である。

9…f5!

 黒は一貫性のある指し方をしなければならない。ナイトを引くことにより手損している余裕はない。このポーン突きはキング翼で攻撃的な姿勢をとる黒の意図をさらに宣伝している。

10.Qb3!

 白はここで 10…Bxf3 11.gxf3 とさせることができる。そしてe4のナイトが下がった時クイーンでdポーンかbポーンを取ることができる。黒はキングがまだ中央に留まったままなので、f3、f2およびh2の弱点につけ込むのに必要な主導権を育む可能性はほとんどない。

10…O-O!

 局面は非常に険しくなってきた。黒は 11.Qxb7 と取らせても 11…Rf6 と応じて 12…Bxf3 または 12…Rb8 を狙ってよいと読んでいる。一つの想定手順は 12.Ne5? Nxe5 13.dxe5 Rb6 で白のクイーンが取られる。

 白は 11.Bxe4 fxe4 12.Rxe4 に 12…Bxf3 があるのでポーン得できない[訳注 13.gxf3 Na5]。

11.Nbd2!

 これも正確な手である。白はb7のポーン取りの狙いを維持したが、もっと重要なことはここでクイーンによる黒のdポーンの釘付けを利用しているということである。白は 12.Nxe4 fxe4 13.Bxe4 でポーン得を狙っていて、f3のナイトが他方のナイトで守られているので黒は …Bxf3 でポーンを取り返すことができない。

 代わりに 11.Nfd2? も f2-f3 突きで敵駒を引き下がらせる狙いがあるので魅力的だが、実はこの手は意表の捨て駒の 11…Nxf2! 12.Kxf2 Bh4+ 13.g3 f4! を招き、黒が全軍で白キングを攻撃してくる。これはこの戦型で白がちょっと不注意になると黒の攻撃にどんな可能性が潜んでいるかの典型的な例である。

11…Kh8

 黒はdポーンの釘付けのもたらす結果を避けるためにキングを動かさなければならない。

12.h3

(この章続く)

2013年09月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(151)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(a)7段目のポーン

 この二つの例は黒がどのように守らなければいけないかを示している。しかし駒の配置を少し変えたらどうなるだろうか。図149では白のルークがb7以外のどこにいても白が勝つ。

 図151

 図151では 1…Ra8+ 2.Kc7 Ke7! で白ルークがe列でチェックできないので引き分けである。白ルークがb6でも同じと思うかもしれない。しかし白は 1…Ra8+ 2.Kc7 Ke7 の後 3.Ra6! Rh8 3…Rd8 なら 4.Re6+! 4.Ra1! で勝つ。

 しかしこの場合でももしクイーン翼にもう1列あったら引き分けになるところである。

 図150では事はそれほど簡単ではない。もちろん白ルークがh列の場合は何も変わらない。しかし白ルークがd列またはc列の場合は白が簡単に勝つ。例えば白ルークがc3にいる場合1…Ra8+ 2.Kd7 Ra7+ 3.Rc7 で白が勝つ。白ルークがd列にいる場合はd8あるいは Kd7-e6 の後ではd6でルークが間に入ることができる。b列はルーク交換になるとポーンが敵キングによって取られてしまうのでルークにとって良い列ではない。しかしこれには例外がありルークがb8にいると 1…Ra8+ がない。1…Rd2 白の狙いは 2.Kd7 Rd2+ 3.Kc6 で、1…Ra7 には 2.Kd8 がある。 2.Rd8 から 3.Kd7 で白が勝つ。

 白ルークがe列にいる場合も白が勝つ。白キングはチェックを逃れることができポーンのクイーン昇格が不可避になる。

 白ルークがc6又はc7の場合も例外で 1…Ra8+ 2.Kd7 Kf7 で引き分けである。

 黒駒の位置の変更も結果に大きな影響を及ぼす。例えば黒ルークがb列にいるとすると(例えばb2)白は 1…Rb8+ 2.Kd7 Rb7+ 3.Kd8 Rb8+ 4.Kc7 Ra8 5.Ra1! から 6.Kd7 で白が勝つ。

(この節続く)

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布局の探究(67)

「Chess Life」1993年2月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

良いのか面白いだけなのか(続き)

良い手・良い着想

 面白い手・着想が根本的に良いものでもある確率は、次の条件の少なくとも一つが満たされれば大いに高まる。(1)局面の重要な問題が具体的に解決される、そして(2)局面の戦略的必要性が助長される。

 1992年テル・アーペルでのV.エピシン対G.ソソンコ戦では黒がクイーン翼ギャンビット拒否の重要な戦型であるラゴージン戦法(D38)を復活させるための重大な新手を繰り出した。

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 Bb4 5.cxd5 exd5 6.Nf3 h6 7.Bh4(通常の布局での優位のためには 7.Bxf6 で十分と一般に考えられている)7…g5(本局の前まではこの手は 7…c5 より劣ると考えられていた)8.Bg3 Ne4 9.Nd2! Nxc3 10.bxc3 Bxc3 11.Rc1

 黒はキング翼ビショップをどうするのだろうか。明らかに 11…Bxd4? は 12.Qa4+ で負けてしまう。11…Ba5 はキング翼で攻撃された際に遊び駒になってしまう(例えば 12.Qc2 Nc6 13.e3 O-O 14.h4)。1982年サラエボでのA.アドルヤン対B.クライカ戦での 11…Bxd2+?! 12.Qxd2 Nc6 13.h4! は黒のキング翼がすきだらけであることが露呈した。

11…Bb2!

 一件落着!これに対して 12.Rc2(そして 12.Rb1)は 12…Bxd4 と取られてしまう。12.Bxc7 Qe7 も白にとって何も得るものがない。

12.Rxc7 Na6! 13.Rc2 Bxd4 14.e3 Bg7 15.Bxa6 bxa6

 黒は完全に互角にした(試合は引き分けに終わった)。

 クイーン翼ギャンビット拒否(D37)の次の戦型から諸刃の刃の局面が生じる。

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 c5 7.dxc5 Bxc5 8.Qc2 Nc6 9.a3 Qa5 10.O-O-O(無理気味。キング翼にキャッスリングする方が安全)10…Bd7 11.g4 Rfc8 12.Kb1

 白はキング翼攻撃を続ける前にキングの安全のために一息入れた。ここで黒は 12…dxc4、12…Be8 および 12…Bf8 と応じてきたが、成功の度合いはまちまちだった。それでも攻撃の展望を促進するために黒は何をなすべきかという主要な問題は残っている。1991年リナレスでのB.ゲルファンド対A.ベリヤフスキー戦で黒が衝撃的な解答を出した。

12…b5!!

 手間暇をかけない!白には以下のような応手がある。

 (1)13.cxd5? b4! 14.dxc6 Bxc6 15.axb4 Bxb4 16.Be2 Bxc3 17.bxc3 Be4 18.Rd3 Rab8+! 黒の勝ち(GMフターチュニク)

 (2)13.Nxb5?! 黒は 13…a6(GMミハルチシン)でも 13…Ne7(GMフターチュニク)でも優勢になる。

 (3)13.g5 Nh5 14.cxb5 Nxf4 15.exf4 Ne7 16.Ne5 Be8 黒が優勢(GMミハルチシン)

 GMベリヤフスキーの着想は「チェス新報第51巻」の最も重要な新手賞に選ばれたことは注記しておく価値があるかもしれない。

13.cxb5 Ne7 14.Nd2 Qd8! 15.Nb3

 GMイワンチュクとGMフターチュニクの二人は 15.Be2 から 16.g5 と突く手を指摘した。

15…Ne4! 16.Nxc5 Rxc5 17.Be5 Nxc3+ 18.Bxc3 Bxb5

 ここでラトビアの雑誌「Šahs Baltijā」1994年第4号はGMイワンチュクの「可能性はほぼ互角」という言葉を引用している。実戦では黒が危なげなく勝った。本誌の1991年6月号25ページを参照。

 私の 12…b5!! の評価は、黒の主眼の反撃がこの手によって助長されるので「良い手」である。もちろん白はもっと早く11手目か12手目で変化することができる。いずれにせよGMベリヤフスキーの素晴らしい構想については時が来れば分かるだろう。今から1年でもっと多くのことが知られるはずである。

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開放試合の指し方(086)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1
白 A.カルポフ
黒 V.コルチノイ
挑戦者決定24番勝負第6局、モスクワ、1974年

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5,d4 d5 6.Bd3 Be7

 6…Bd6 の方がはるかに攻撃的な手だけれども、このもっと控え目な展開もあとで分かるように黒の攻撃の意図の一部となることがある。

7.O-O Nc6

 黒はこの手ですぐに活動を始める。その着想はこのナイトでd4のポーンを攻撃し、それを守るナイトを …Bg4 で釘付けにすることにより圧力を増すことである。キャッスリングを延期しているのは1手早い白が Re1 または c2-c4 突きで主導権を握れるからである。

8.Re1 Bg4

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(150)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

(a)7段目のポーン

 前の例は黒ルークがポーンから十分離れていなかったために白キングが黒ルークを当たりにして貴重な先手を取ることができたために黒が負けたことを示している。黒ルーク以外の全部の駒を1列右に移動すれば(図150)黒は引き分けにできる。

 図150
タラシュ、1906年

1…Ra8+ 2.Kd7 Ra7+ 3.Kd6 Ra6+ 4.Kd5

 4.Kc7 なら 4…Ra7+ である。4.Kc5 なら 4…Ra5+ 又は 4…Re6 で良い。

4…Ra5+

で引き分けである。白キングはポーンを見捨てて黒ルークに取られずにチェックから逃れることはできない。

(この節続く)

2013年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(085)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

 この局面の形勢はほぼ互角である。黒は守勢に追い込まれないように気をつけなければならない。さもないと白が動きの自由さが大きいので強力な攻撃態勢を作れるかもしれないからである。白もdポーンをいつも適切に守りながら主導権を維持して、黒が白のdポーンへの攻撃を整える余裕を得ないように努めなければならない。

(この章続く)

2013年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(149)

第4章 ルーク・エンディング

4.3 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列以外のポーン

 このエンディングはルーク列ポーンの場合よりも白の勝つ可能性が大きいことは明らかである。第1に黒はほとんどルークを交換することができない。第2に白キングはポーンを両側から助けることができる。第3にポーンの両側が空いているので白ルークは活動の余地が広がる。従って黒は引き分けることがはるかに難しくなり、時には自分のキングがポーンの昇格枡を占めていても引き分けにできないことさえある。

 ここではこの型のエンディングの最も重要な局面を系統的に調べていくことにする。最初は白ポーンが7段目に到達した場合を考える。

(a)7段目のポーン

 このような局面の一例はルセナの局面(図129)で既に分析した。そこでは白が優位を勝ちに持って行く手法が示された。ここでは基本的な局面をもっと調べてみよう。

 図149
タラシュ、1906年

 この局面はたとえ黒の手番でも白の勝ちである。白には 1.Rf1+ Ke6 2.Ke8 という狙いがあるので黒はすぐに白キングに対してチェックを始めなければならない。しかしそれでも引き分けには至らない。

1…Ra8+ 2.Kc7 Ra7+ 3.Kc8

 白は 3.Kc6 Ra6+(3…Ra8 でも同じ)4.Kb7 でも勝てる。

3…Ra8+ 4.Kb7 から 5.Kc7 で白が勝つ。

(この節続く)

2013年09月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(96)

「Chess Life」2005年7月号(6/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 GMルーク・ファン・ベリー
黒 GMアナトリー・バイセル
イエール、1992年

1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 e6 4.Nf3 d5 5.O-O Bd6 6.c4 c6 7.Nbd2 b6 8.Ne5 O-O 9.Nd3

 白は変わったナイトの捌きで一方をd3に他方をf3に据えようとしている。

9…Ba6! 10.Qc2 Ne4 11.b3 Nd7 12.Nf3 Rc8 13.Bf4 Qe7 14.a4

14…c5!

 これもこの布局における非常に重要でより現代的な作戦である。

15.a5 b5 16.Bxd6 Qxd6 17.b4 bxc4 18.Nxc5 Rb8 19.Rab1 Rb5 20.Rb2 Rfb8 21.Rfb1 Bc8 22.e3 Ndf6 23.Ne5 Nxc5 24.bxc5 Qa6 25.Qc3 Nd7 26.g4?

 白は指しすぎた。

26…Nxe5 27.dxe5 fxg4 28.e4 Rxb2 29.Rxb2 Rxb2 30.Qxb2 Qxa5 31.c6 Qb6 32.Qxb6 axb6 33.exd5 c3 34.Be4 exd5 35.Bxd5+ Kf8 36.Bb3 Ke7 37.Kf1 Bf5 38.Ke2 Be4 39.Ba4 Ke6 40.c7 Bb7 41.Kd3 c2 42.Bxc2 Kxe5 43.Kc4 Ba6+ 44.Kb4 Kd6 45.Bxh7 Kxc7 46.Kc3 Bc8 47.Kd4 Kd6 48.Bd3 Ke6 49.Ke4 Bd7 50.Kf4 Kf6 51.f3 gxf3 52.Kxf3 Ke5 53.h4 b5 0-1

結論

 布局早々の戦いを好まず閉鎖的な局面が好きならば、これは黒番での良い選択肢になるかもしれない。欠点はe5の地点の長期的な弱点である。作戦に融通性を持たせて、白の陣形によってキング翼攻撃を始めるかもっと慎重に …b7-b6 と突く展開を選ぶかを決めるのが良い考え方である。白としては黒の攻撃に怖気づく必要はないが、見くびってもいけない(第3局を参照)。この布局をもっと研究したい読者には Jacob Aagaard 著「Dutch Stonewall」を勧める。

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開放試合の指し方(084)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

9…dxc4

 黒は中原の争点をポーン交換によって解決した。黒は中央のポーンをなくすけれども、白のdポーンを孤立させる。このポーンは守ってくれるポーンが両隣の列になく、そのため駒で始終守っていなければならない。白は少なくとも素通しe列と黒キングに通じる筋で攻撃の機会を得ることによりこれを埋め合わせることを期待している。このような局面では白のd4のポーンがe5のナイトを支えるのに対し、中原にポーンのない黒は自分の駒のために中央に良い拠点を作るのが難しい。

10.Bxc4 Bg4

 黒はf3のナイトがe5に来れるようになる前に釘付けにした。この釘付けと、それによるビショップとナイトとの交換の狙いは、白のdポーンを攻撃する黒の作戦の一部でもある。このナイトは防御のための駒の一つなので、この駒に対する狙いはdポーンの不安定性を増すことになる。

(この章続く)

2013年09月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(148)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 もし白ルークの位置がd2だったら(図148)黒が 1…Rd8 と指せなくても白の勝つ可能性はなくなる。

 図148

1.Kb5 Rb8+ 2.Kc6 Rc8+ 3.Kb7 Rc1! 4.a6 4.Rb2 と 4.Ra2 は 4…Kd7 と応じられる。4…Rb1+ 5.Kc7 5.Ka7 は 5…Ke7 で引き分けである。5…Rc1+ 6.Kd8 Ra1 7.Rh2 Rd1+! 8.Ke8 Rg1 9.Rh6+ Kd5 10.a7 10.Kd7 なら 10…Kc5 11.Kc7 Rg7+ である。10…Rg8+ 11.Kf7 Ra8 で引き分けである。

 もちろんルークとルーク列ポーン対ルークには妙手や意表の手を含んだ面白い局面がまだまだたくさんある。しかし本書の目的にかなう局面はこれで十分である。次はルーク列以外のポーンのルーク・エンディングを検討しよう。そしてさらに面白く複雑な可能性に巡り合うことだろう。

(この節続く)

2013年09月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(083)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

8.c4!

 この手には重要な着眼点が三つある。一つ目はdポーンを攻撃して黒のナイトの支えに挑むことである(8…dxc4?? は 9.Bxe4 で駒損になる)。二つ目は白クイーンのためにc2の地点を空けて、e4の地点の攻撃に加われるようにしたことである。三つ目はd1-a4の斜筋を開けて Qb3 と出られるようにし、d5の地点に圧力をかけb7の地点を攻撃することである。

 代わりに 8.Nc3 も面白い手である。e4のナイトとd5のポーンを当たりにすることにより、白は相手に決断をさせる。しかし 8…Nxc3 9.bxc3 Bg4 のあと黒は何も難しいことがない。白は 10.c4 と突いて二重ポーンを解消することができるが、優勢になる見込みはほとんどない。

8…Nf6

 黒はついにこれ以上前線のナイトを支えきれないと判断した。それでもこの退却は白のcポーン突きを誘ったので正当化されると考えてよいかもしれない。ここで白のcポーンと黒のdポーンとの交換は白のdポーンが孤立化する。これはそのポーンがもう他のポーンによって守ることができないのであとで黒の標的になることがあることを意味する。

 いろいろ手段がある中で 8…c6 が当たりのポーンを守る黒の最も自然な応手のようである。しかし 9.Qc2! のあと白の 10.Bxe4 dxe4 11.Qxe4 でポーン得する狙いが受けづらいので黒に問題が残っている。例えば 9…Bf5 は 10.Nc3 でe4の地点に対する白の当たりが増し、10…Nxc3 は 11.Bxf5! とこちらを取られる。このような変化はこの戦型ではよくあることで、黒がナイトをe4に維持する際にこうむる問題をよく表わしている。黒は「勇気の大切な部分は分別である」に従ってナイトを引いた。

9.Nc3

 白は 9.c5 と突いてビショップを当たりにし先手でe7に引かせる誘惑にかられやすい。しかしこれは白にとって明らかに有利であるわけではない。ポーンをc5に進めることは、黒の中原に対する圧力を取り去りd5ポーンに黒陣をしっかり支えさせることになる。さらにc5のポーンそのものもあとで …b7-b6 突きで切り崩されるかもしれない。注意すべきは 9.c5 Be7 のあと白はまだ相手より多く駒を展開しているわけではないことである。だからこのポーン突きによってクイーン翼で陣地が広がったことをうまく利用できることを期待すべきではない。

(この章続く)

2013年09月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(147)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 図147

 同様に図147では 1.Kb5 Rd7 2.Ra4! で黒キングがポーンを止めることができないので白が勝つ。

(この節続く)

2013年09月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(082)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

6…Bd6

 これが黒の攻撃的な姿勢と最も一致する手である。黒は …O-O、…Bg4 そして …f7-f5 と展開してキャッスリングした白キングの攻撃を目指す作戦をもくろんでいる。この手のささいな欠点はクイーンのd5のポーンの守りを遮断し、このポーンを白の切り崩し作戦にもろくさせることである。黒には 6…Bd6 の他にも多くの手がある。

 a)6…Bf5 はナイトをさらに守る意図だが、7.O-O Be7 8.Re1 O-O 9.c4 c6 10.Qb3 となってクイーン翼からビショップがいなくなった影響が出始める。白クイーンをb3に出してdポーンとbポーンを同時に攻撃する着想は、黒がクイーン翼ビショップを早く展開させた時によくある狙い筋である。

 b)6…Bg4 も攻撃的なビショップ出である。白の最も単純な応手は 7.Qe2 で、ナイトをさらに当たりにして 7…Qe7 と指させる。このあと黒はキング翼の展開が面倒なことになる。

 c)6…Nc6 はクイーン翼を迅速に展開しようという手である。7.O-O のあと白は早くも 8.Re1 で素通し列に不気味な圧力をかけることになる。だから黒は 7…Be7 で素通し列をふさいでおかなければならない(次の段落を参照)。

 d)6…Be7 7.O-O Nc6 は上述の 6…Nc6 の戦型と同じ局面になる。e7の黒ビショップはd6よりも働きが劣るが、素通しe列をふさぎクイーンがdポーンを守り続けられるようにし、この二つの要因により白が優勢になるのを難しくしている。それでも白の最善の作戦は Re1 から c2-c4 と突いてe4のナイトの支えを侵食していくことである。

 e)6…Nd6 もここで時おり指される。d6のナイトはc4の地点をにらんで、白が c2-c4 と突くのをもっと難しくしている。とは言ってもナイトを引くのは布局の精神に合致しているとは言いがたい。白は 7.O-O Be7 8.Ne5 と自分のナイトを進めることができ、そのあとQf3 から Re1 で駒が黒キングに攻撃をかける活動的な態勢になる。

 一般に黒はキング翼をできるだけ迅速に展開するのが最善である。素通しe列があるのでキングの安全のために迅速にキャッスリングするのが重要になる。この理由で最も自然で最もよく指される手はいつも 6…Be7 と 6…Bd6 になっている。

7.O-O

 白はキングを安全にし、8.Re1 でルークを素通し列に回す用意をした。代わりに 7.c4 で黒のdポーンをすぐに攻撃するのは魅力的だが、白がまだキャッスリングしていないことにつけ込んだ意表の 7…Bb4+! で応じられる。これは既に展開した駒による2度目の動きだけれども、白陣に引き起こす混乱は手を損しただけの価値がある。例えば 8.Nbd2 O-O 9.O-O Bxd2 10.Bxd2 Bg4 のあと黒は展開が楽で自由である。白はd5に対する圧力を何か意味あるものにするなら c2-c4 突きのあと Nc3 と指せる必要がある。ナイトをc3でなくd2に展開させることにより黒ビショップのチェックは白の作戦を骨抜きにすることになり完全に正当化される。

7…O-O

 黒キングはちょうど安全な所に駆け込むことができた。釘付けのナイトに圧力をかける Re1 の狙いを考えれば、黒には他に適当な手がない。

(この章続く)

2013年09月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(146)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 黒の受けが成功するのはあくまでも駒が好都合な位置にいるせいであることを強調しておきたい。

 図146

 駒の配置がほんのわずか違っただけで白の勝ちになることがある。例えば図146では 1.Kb5 で白が勝つ。黒は 1…Rd8 という手段を用いることができない。

(この節続く)

2013年09月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(332)

「British Chess Magazine」2013年8月号(1/1)

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上級者のための収局

GMニック・パート

□M.カールセン
■H.ナカムラ

タリ記念大会、2013年

 両者に悪手が出た複雑な中盤戦からこの収局になった。カールセンは1ポーン損の代わりに交換得になっている。ナカムラはキングをd6に行かせることができれば、白のクイーン翼のポーンが潜在的に弱く黒が好機に …c4 と突いてbポーンをパスポーンにできる可能性が常にあるので、楽になる。

36.d6!

 収局ではキングは戦闘的な駒なので、カールセンはナカムラのキングをd6に来させたくない。彼がポーンを自分のビショップのいる色と反対の色に置いて盤上のより多くの地点を支配しようとしていることにも注意して欲しい。

36…Ne5 37.Bf1!

 黒の狙い筋の …c4 突きを止めた。

37…Bc2 38.Bb5!

 カールセンはどの手でも相手の駒の動きを制限しながら、自分の駒を働かせる最も良い手段を見つけているようである。

38…f5

 38…Bxb3 は 39.Rf5 で白ビショップがd3とd7の地点を押さえているので、c5のポーンが落ちる。

39.Kg2!

 ルークとビショップが最適の位置にいるので、白は最も働いていない駒のキングを働かせるために中央に近づける。

39…c4

 ナカムラは手段に窮して狙い筋を決行したが、カールセンは見透かしていた。代わりに 39…Kf7 は 40.Rf2 Be4+ 41.Kg3 Ke6 42,Rd2 で白駒が急所にき始める。

40.Bxc4

40…Be4+

 40…Nxc4 は 41.Rxc4 Bxb3 42.Rc8+ Kf7 43.d7 で白の勝ちになる。

41.Kg3 Nxc4 42.bxc4 Ke8

 42…b3 は 43.Rf2 Bc2 44.Re2 b2 45.d7 b1=Q 46.d8=Q+ で黒キングがすぐに詰みになる。

43.c5

43…Bc6

 43…b3 はここでも成立しない。黒が昇格をさせようとすると次のように白のクイーン昇格を防げなくなる。44.Rf2 Bc2 45.c6 b2 46.c7 Kd7 47.Rxc2

 ビショップがe4の好位置にいるので 43…Kd7 の方が理にかなっているようだが、それでも次のように白の勝ちになる。44.Rf2 b3 45.Kf4 Bc2 46.Rd2 b2 47.c6+ Kxc6 48.Rxc2+

44.Rxf5 Bxa4

 みたび 44…b3 は成立しない。しかしカールセンはそのたびに読まなければならなかっただろう。45.Rf2 Bxa4 46.Rb2 Kd7 47.Kf4 Kc6 48.Ke5 Kxc5 49.Rxb3 Bxb3 50.d7 でクイーンに昇格する。

45.Re5+

45…Kd8

 45…Kd7 でも 46.Re7+ Kc6 47.Ra7 b3 48.d7 で白が勝つ。

46.Re7 Bc6 47.Rc7 1-0

 白ポーンを止められないのでナカムラは投了した。47…Bb5 48.c6 b3 49.Rd7+ Kc8 50.Rxh7 Bxc6 51.Rd7+ Kd8 52.Rxc6 a4 53.Rb6 黒はクイーン翼のポーンをこれ以上進められない。カールセンの収局の妙技だった。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(081)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

 黒はようやくこのポーンを安全に取ることができた。

5.d4

 白はもう 5.Qe2 でナイトを釘付けにすることにより得られるものが何もない。黒は単純に 5…Qe7 と応じ、6.d3 は 6…Nf6 で素通しe列でクイーン同士の交換になるだけである。ペトロフ防御は反撃の願望が動機づけだが、このような戦型の素通し列は簡単に交換を生じさせる。これが多くのペトロフ防御の手順で引き分けになりやすい理由である。白が布局の優位を本当に求めるときにだけ、真の白兵戦を期待することができる。

 白は 5.d4 と突くことによりクイーン翼ビショップの斜筋を開け、中原の所有権を主張している。代わりに 5.Nc3 で別の駒を出すのは、黒に 5…Nxc3 6.dxc3 Be7 で交換を促進させるだけである。そのあと黒はキング翼にキャッスリングして、弱点のない完全に満足できる態勢になる。

 もっと意欲的な着想は 5.c4 である。この奇妙なポーン突きは、続いて 6.d4 と突く発想に基づいている。そのあと白のc4とd4の2個のポーンは中盤戦に向けてより広い陣地を保証する。最初に c2-c4 と突くのは黒に …d7-d5 と突くのを思いとどまらせるためである。それにもかかわらず黒は 5.c4 Be7 6.d4 O-O 7.Bd3 Nf6 で無事に展開を完了し、…Bg4 と …Nc6 で中盤戦に何も心配なく好調に入っていくことができる。

5…d5

 黒はdポーンをまた突くことによりe4のナイトを支え、ビショップも活動的な地点のd6に展開できるようにした。代わりに 5…Be7 6.Bd3 Nf6 はもっと消極的だが、指せる手である。この局面の主要な問題はe4のナイトをめぐって起こる。黒がおとなしくこのナイトを引くと、少し展開に遅れ引き分けのためだけに戦うことになる。攻撃的な地点に維持しようとすることにより、2手目の動機となっている果敢な精神を引き継ぐことになる。注意すべきは 5…d5 のあとf3の白ナイトと比べて黒のナイトがe4にいるので黒が手得しているように見えることである。だから白は黒のナイトが挑戦的な地点を占めたのが時期尚早であることの証明に努めなければならない。

6.Bd3

 これはe4の黒ナイトを取り除こうとする白の作戦の第1段階である。その作戦とは Nbd2(または Nc3)、(キャッスリングしてから)Re1、そして(cポーンを突いてから)Qc2 のような手で黒ナイトそのものを攻撃し、これらの直接行動と組み合わせてこのナイトを支えているd5のポーンを切り崩すことである。e4のナイトがどこかへ退却したり交換になったりすることは、展開の優位が強調されることになりやすいので白の有利になる。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(145)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 白のポーンがあまり前進していなければ明らかに黒の引き分けの可能性は大きくなる。しかし一般的に黒の防御の手法は同じである。異なるのは黒ルークがポーンの前にいる方が有利になる場合があるということでその例が図145である。

 図145
シェロン、1927年

 どう見ても白が有利な状況である。黒キングは遮断されているし黒ルーク単独では白キングに守られたポーンの前進を妨げることができない。このような不利な状況にもかかわらず黒は巧妙な手段で守り通すことができる。

1.Kb5 Rd8!

 ルークがポーンの前にいることの利点の一つをこの手に見てとることができる。黒はルークの交換を挑むことができる。白がそれを受けて 2.Rxd8 Kxd8 3.Kb6 Kc8 となれば引き分けである。従って白ルークはd列からどかなければならず黒キングがポーンに近づくことができる。

 しかし 1…Rb8+ は軽率で 2.Kc6 Rb1(2…Ra8 は 3.Ra4 Rc8+ 4.Kb7 Rc1 5.a6 Rb1+ 6.Kc7 Rc1+ 7.Kb6 Rb1+ 8.Ka5 で白の勝ち)3.a6 Ra1 4.Kb5 Rb1+ 5.Ka5 Ra1+ 6.Ra4 で白が勝つ。

2.Rc4

 2.Ra4 は 2…Kd7 3.a6 Kc7 で引き分けになる。

2…Rb8+!

 黒は正確に指さなければならない。2…Kd7 は 3.a6 Ra8(3…Rc8 なら 4.a7!)4.Kb6 Rb8+ 5.Ka5 Ra8 6.Rh4! Rg8 7.a7 Kc7 8.Rh7+ から 9.Ka6 で白が勝つ。

3.Ka4

 3.Ka6 Kd7 と 3.Kc6 Rc8+ 4.Kd5 Kd7 はどちらも引き分けである。

3…Kd7 4.a6 Rc8

 4…Rb1 5.Ka5 Ra1+ 6.Kb6 Rb1+ 7.Ka7 Rb2 の方がもっと簡単である。

5.Rb4 Kc6

 この手は最も難解な防御手段だがそれでも黒が引き分けにできることを示すために本手順に選んだ。もっと簡明な手順は次のとおりである。5…Rh8 6.Ka5 6.a7 なら 6…Ra8 7.Rb7+ Kc6 で良い。6…Kc7 7.Rb7+ 7.a7 なら 7…Rh5+ 8.Ka4 Rh8 である。7…Kc8! 7…Kc6? は 8.Rb6+ Kc7 9.a7 Rh1 10.Ra6! で白が勝つ。この手順中 9…Rh5+ なら 10.Ka6 Rh2 11.Rc6+! で良い。8.Rb5 8.Kb6 なら 8…Rh6+ 9.Ka7 Rc6 である。8…Rh7 で白は何も進展が図れない。

6.Ka5 Rc7! 7.Rb6+ Kc5

 黒キングはc列から追い払われることがないので引き分けである。以下の手順は例えば次のとおりである。8.Rb7 Kc6 9.Rb1 Kc5 10.Rb6 Kd5 又は 10…Rh7 11.Rb7 Rh1 12.Rc7+ Kd6 13.Rc4 Ra1+ 14.Kb6 Rb1+ でも引き分けである。11.Rh6 11.Kb5 なら 11…Rc5+ 12.Kb4 Rc4+ 13.Kb3 Rc7 で引き分けである。11…Kc5 12.Rg6 Rf7 13.Rg5+ Kc6 14.Rg6+ Kc5 15.Rg1 Rc7 16.Rc1+ Kd6 から 17…Kc6 で元の局面に逆戻りする。

(この節続く)

2013年09月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(080)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6

 これがペトロフ防御を特徴づける手である。白の2手目は黒のe5のポーンを当たりにしたが、黒は白のeポーンを当たりにしてやり返す。この防御の精神は最初から明らかで、それは反撃である!

3.Nxe5

 白は黒の守られていないポーンを取る招待に応じた。3.d4 で局面の開放を図り 3…exd4 に 4.e5 で黒のナイトを困らせることに期待することができる。しかし 4…Ne4 5.Qxd4 d5 6.exd6e.p. Nxd6 で黒は互角の形勢にすることができる。そして …Nc6 で白クイーンを攻撃することにより手損を取り戻す用意ができている。

 この戦型ではどのように中央の4ポーンが早々と交換になったかに注意が必要である。争点がたちまち減少することはペトロフ防御にきわめて特徴的である。白はこのような早い交換のあとは何らかの優位を示すのにとても苦労する。3.Bc4 は黒をジオッコピアノか 3…Nc6 での2ナイト防御に誘うが、白が優勢をつかむためのもっと危険の多い手である。その危険とは黒が招待を辞退して代わりに白の浮いているポーンを 3…Nxe4 と取る危険のことである。そのあと 4.Nxe5 d5 は白にとって手損でしかないので、攻撃の精神に完全に沿うことを余儀なくされる。4.Nc3 Nxc3 5.dxc3 でポーンを犠牲にして、素通し列で攻撃してポーンの代償が十分とれるかもしれない。

3…d6!

 黒はポーンを取り戻す前に注意しなければならない。すぐに 3…Nxe4? と取るのは 4.Qe2! があるのでひどい悪手になる。黒のナイトがe4からどこに動いても 5.Nc6+! で破滅的な開きチェックを食らい黒クイーンが取られる。4…d5 でナイトを守るのは災難を遅らせるにすぎない(5.d3)。これはペトロフ防御における黒の不注意な指し方の典型的な結果である。布局ではその性格からして両者のeポーンが早く消えることになりやすい。黒は生じる素通しe列での事故を避けるよう気をつけなければならない。

 実際は黒は 3…Nxe4? 4.Qe2 に 4…Qe7 5.Qxe4 d6 6.d4 dxe5 と応じることにより損害を抑えることができる。しかし「たった」1ポーン損はクイーン損ほどの災難ではないけれども、布局でポーンを放棄するのは避けなければならない。3…d6 と指すことにより黒は白ナイトを下がらせ、そのあとこれから見られるように安全にe4のポーンを取ることができる。

4.Nf3

 ここがナイトの最も自然な退却地点である。代わりに 4.Nc4 は 4…Nxe4 で白ナイトがいくらか危険な地点にあり、あとで黒のdポーン突きで攻撃にさらされる。

4…Nxe4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(144)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 白ポーンがa6にいる局面の分析の仕上げとして図144を考えてみよう。

 図144
グリゴリエフ、1936年

 白の手番ならば 1.a7 ですぐに勝ちになる。しかし黒は手番でも助からない。

1…Rc1+

 黒が 1…Kf7 として 2.a7 に対して 2…Kg7! を用意しても白は 2.Kb7 Rb1+ 3.Ka7 Ke7 4.Rb8 で図142の局面にして勝つ。だから黒はチェックに活路を求めなければならない。

2.Kb5

 2.Kb7 Rb1+ 3.Ka7? は 3…Kd7! で引き分けになる(図142)。

2…Rb1+

 白の狙いは 3.a7 だった。

3.Kc4

 3.Ka4 もあり以下 3…Ra1+(3…Kf7 なら 4.Ka5 Ra1+ 5.Kb6 Rb1+ 6.Ka7 Ke7 7.Rb8 で白の勝ち)4.Kb3 Kf7 5.Kb4 で白から a7 があるので黒キングはe列に来ることができない。

3…Rc1+ 4.Kb3

 白は 4.Kd3 でも勝てる。4…Rd1+ 5.Ke3! Rd7 6.Ke4! 6.a7? は 6…Kd5! で引き分けになってしまう。6…Kd6 6…Kf6 なら 7.Rb8 Ra7 8.Rb6+ である。7.a7! Re7+ 8.Kd4 Rd7 9.Kc4 で白が勝つ。実はもっと簡明な勝ち方は 4.Kb4! である。4…Rb1+ 4…Rc7 なら 5.Rh8 である。5.Ka3 Kf7 5…Ra1+ なら 6.Kb2 から 7.a7 である。6.Ka4 で白の勝ちである。

4…Rc7 5.a7 Re7 6.Kc4 Ke5 7.Kc5

で白が楽に勝つ。

(この節続く)

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布局の探究(66)

「Chess Life」1993年2月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

良いのか面白いだけなのか(続き)

面白い手・面白い着想

 1974年の秋にGMアーサー・ビズガイアーと私はソンボルでのユーゴスラビア国際大会に招待された。他の西側選手はオランダからの若いGMヤン・ティマンと経験豊富なIMロブ・ハルトッホだけだった。重要な第4回戦の組み合わせはJ.ティマン対A.ビズガイアーだった。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 に対してGMビズガイアーがいつも 3…Nf6 と2ナイト防御を選ぶのを知っていたGMティマンは主手順の一つ(C59)に新着想を用意していた。

4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Bd6 11.f4 exf3e.p. 12.Nxf3 O-O 13.d4 c5 14.dxc5 Bxc5 15.Qxd8 Rxd8 16.Bd2!?

 この手は1957/58年米国選手権戦でのE.メドニス対A.ビズガイアー戦の 16.c3 Re8 17.Kf1 Rxe2 18.Kxe2 Ba6+ 19.Kd1 Ng4 20.Kc2 Nf2 21.Rd1 Nxd1 22.Kxd1 Rd8+ 23.Bd2 Nc4 24.b4 を改良しようとしたものである。試合は白がしのぎきり40手で引き分けに終わった。

 GMティマンの作戦はできるだけ早くクイーン翼にキャッスリングすることである。局後の検討で最も印象に残ったのは、彼のこの着想の見方だった。「これは面白い着想だ。良い手だと言うつもりはないが、面白い手だ。」

16…Nc6 17.Nc3

17…Nb4?

 この露骨な手は簡単に押し返される。

18.O-O-O Bf5 19.Ne1 Ng4 20.a3! Nc6 21.Nd3 Bb6

 21…Bxd3 は 22.Bxg4 でうまくいかない。

22.h3! Ne3 23.Bxe3 Bxe3+ 24.Kb1 Nd4 25.Bg4 Bg6 26.Rhe1

 白は戦力得を確固にし難なく勝った。26…Bg5 27.Ne2 h5 28.Nxd4 Rxd4(28…hxg4 29.Ne5!)29.Bf3 Rc8 30.Re5 f6 31.Rd5 Rxd5 32.Bxd5+ Kh7 33.b4! Be3 34.c4 Kh6 35.Kb2 f5 36.Ne5 f4 37.c5 Bf5 38.Nf7+ Kg6 39.Nd6 Rc7 40.Nxf5 Kxf5 41.Bf3 g6 42.Rd5+ Kf6 43.Kc3 Re7 44.a4 黒投了

 GMティマンとIMハルトッホはホテルの同じ部屋に泊まっていた。だから第6回戦のR.ハルトッホ対A.ビズガイアー戦で上図の同じ局面がまた出現したときには大いに驚いた。GMビズガイアーは研究した改良手を出した。

17…Ng4! 18.Ne4

 もちろん 18.O-O-O?! は 18…Nf2 で交換損になる。

18…Bb6 19.h3

 19.O-O-O?! は 19…f5 から 20…Nf2 で前の解説と同じ筋にはまる。

19…Ne3 20.Bxe3 Bxe3

 白キングが中央で立ち往生し黒の双ビショップとルークがそれを掃射する用意のできている状況では、黒は犠牲にしたポーンの十分すぎる代償を得ている。C59の定跡系では黒に十分代償があるのは確かだが、ここで白が成し遂げたのは普通よりも劣る。なぜIMハルトッホは盲目的にGMティマンの着想をまねたのだろうか。いずれにせよGMビズガイアーのような天性の攻撃的選手はこの局面に対処するのに何の問題もなく、快勝を収めた。

21.Bd3 Rb8 22.b3 Nb4 23.Ke2 Bb6 24.Rhd1 Bb7 25.Nf2 Nd5 26.Re1 Ne3 27.Rg1 Re8! 28.Kd2 Nd5! 29.Nd1 Bxg1 30.Nxg1 Nf4 31.g3 Nxd3 32.cxd3 Re6 33.Nc3 Rd8 34.Nce2 Ba6 35.d4 Rde8 36.Nf4 Re3 37.g4 R3e4 白投了

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開放試合の指し方(079)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 4手前に交換になったナイトが同じくらい役に立つルークによって置き換わった。黒はd4の地点に対する圧力を保ち、盤上で唯一の素通し列を席巻する用意をしている。

21.g3 Qe7

 黒は優勢をどのように生かすのが最善かを決めなければならない。「鮮やかに」21…Rxd4! と切ることができ、22.gxh4 Rxd1+ 23.Rxd1 Bxf2+ または 22.cxd4 Qxd4 で優勢な収局になる。しかし中盤戦で勝つ可能性もあり、クイーンを温存することにした。

22.Qd2 f5 23.Rd1 Re3

 黒はe列の支配を利用して白駒からもっと枡を取り上げた。白はキングに通じる斜筋が危険なので(24.Nc2?? Re2! 25.Qxe2 Qxe2[訳注 25.Qxd5+ ならそれほど悪くありません])ナイトを動かせず、クイーンとルークを動かせる地点も非常に少ない。

24.Kg2 Qe4+ 25.Kg1

 これは白の無力さを明白に表わしている。白はキングを黒ビショップの斜筋からはずしておきたいのだが、25.Nf3 は 25…Rd8(26.Qxd5+ を止めるため)のあと …g6-g5-g4! で別の斜筋が危険になる。

25…Bb6 26.Rf4 Qe7 27.Kg2 Rc4!

 黒はdポーンのおかげでc4とe4の二箇所に拠点があり、両方を大いに利用しようとしている。ここでは 28…Rxd4 から 29…Re2+ を狙っている。白はナイトが …Re2+ のために動けずキングも良い場所がないので(28.Kf2 なら 28…Re4!)、手筋一閃で陣容の問題をすべて解決しようとした。

28.Nxf5?!

 これに対して 28…gxf5? なら 29.Qxd5+ Qe6 30.Qxe6+ から 31.Rxc4 で白の勝ちになる。

28…Re2+ 29.Kh3 Qe6!

 白はナイトを失う代わりに1、2個のポーンしか得られず、それでは十分でない。30.Qxd5 Qxd5 31.Rxd5 Rxf4 32.gxf4 gxf5 33.Rxf5 Rxb2 34.a4 Rb3 からの収局は望みがない。黒はこのあと短手数で勝った。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(143)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 同様に次の局面は引き分けと判定できる。

 図143

 白は Ka8 から a7 で図135の形にするしかない。しかしもし黒キングがf7で白ルークがe2だったら白は Ka8 から a7、そして Rc2-c8-b8 で楽に勝つ(図136参照)。

(この節続く)

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開放試合の指し方(078)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 黒にとってこの上ない局面になっている。クイーンとルークの一つは展開が済み、小駒は白の小駒に比べて優っている。

 白がもっと前に指すべきだった Qf3 は、ここでは 14…Nd2! にはまって交換損になる。

14.c3 Bc5 15.f3

 白は強力な中原に支えられた黒のナイトのためにクイーンとビショップが最善の地点につけないので指しにくい展開になっている。白がビショップでナイトを取れば(15.Bxe4 または 15.Bg3)、黒は双ビショップが働いている上に …Re7 と …Rae8 でe列を支配して優勢を長い間保持することになる。

15…Qh6!

 ナイトをどこに引くよりもこの手の方がはるかに優る。ここで白は直前の手(15.f3)がキングの周りの黒枡、特にe3とf2を弱めたので、黒枡ビショップを盤上に保持しなければならない。

16.fxe4? Qxh4 17.exd5 cxd5

 黒はここで 17…Bxd4+ 18.cxd4 Qxd4+ 19.Kh1 Qxd5 でポーン得することさえできる。しかしそれは黒の不快なビショップがなくなり、白が 20.Qc2! で初めての狙いを持つことになるので(Bxh7+ または Bc4)、白を楽にさせてしまう。黒は正しくビショップを保持して、…Bd6 でキング翼を攻撃できるようにした。

18.Bf5 g6! 19.Bxc8 Raxc8 20.Rf2 Re4!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(142)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 今度は白キングがポーンの前にいる局面を分析しよう。先ず図142からである。

 図142

 この典型的な構図は白の手番ならば勝てる。

1.Rb8! Rd1

 1…Ra1 なら 2.Kb7 で本譜と同様の手順になる。

2.Kb7 Rb1+

 2…Rd7+ は 3.Kb6 Rd6+ 4.Ka5 Rd5+ 5.Kb4 Rd1 6.a7 で白が勝つ。

3.Ka8 Ra1 4.a7

 これで図136の変化と同じ形になった。以下は簡単で 4…Kd7 5.Kb7 Rb1+ 6.Ka6 Ra1+ 7.Kb6 Rb1+ 8.Kc5、または 4…Kd6 5.Kb7 Rb1+ 6.Kc8 Rc1+ 7.Kd8 Rh1 8.Rb6+ Kc5 9.Rc6+! で白が勝つ。

 図142で黒の手番ならば 1…Kd7 2.Rb8 Rc1 3.Kb7 Rb1+ 4.Ka8 Rc1 から 5…Kc7 で引き分けである。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(95)

「Chess Life」2005年7月号(5/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 GMゴラン・ディズダル
黒 GMフィーリップ・シュロッサー
オーストリア、1996年

1.d4 f5 2.Nf3 Nf6 3.g3 e6 4.Bg2 d5 5.O-O Bd6 6.c4 c6 7.b3 Qe7 8.Ne5 O-O 9.Bb2 Ne4 10.f3

 白はあまりに野心的になるのが早すぎた。

10…Nf6 11.Nd2

 ここは 11.f4 と指す方が良かった。

11…c5 12.e3 cxd4 13.exd4 f4!

 ここは急所である。

14.Re1

 贈り物を受け取るのは黒を楽にさせるだけである。すなわち 14.gxf4 Nh5 のあと黒ナイトがf4の地点に来て威張りだす。

14…Nc6 15.Bh3 dxc4 16.bxc4 Nxe5 17.dxe5 Bc5+ 18.Kg2 Nd7 19.Ne4 b6 20.gxf4 Rxf4 21.Bc1

 ここで黒にうまい交換損の犠牲が出た。

21…Rxe4 22.Rxe4 Bb7 23.Qe2

 白は戦力得を返すのが最善の選択である。23.Re1 は 23…Rf8 とされる。

23…Bxe4 24.Qxe4 Rd8 25.Bf4 Nf8 26.Qe2 Ng6 27.Bg3 h5 28.Qe4 Qe8 29.Kh1 Rd4 30.Qc2 Qf7 31.Rf1 h4 32.Bf2 Rd8 33.Bxc5 bxc5 34.f4 Nxf4 35.Qf2 Rd4 36.Bg4 Qe7 37.Rb1 Qg5 38.h3 Qxe5 39.Re1 Nd3 40.Qe3 Re4 0-1

 しゃれた決め手だった。

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開放試合の指し方(077)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2

白 A.ニムゾビッチ
黒 A.ルビーンシュタイン
ビリニュス、1912年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Bb4

 黒は 5…g6で(またはもう1手早く 4…g6 で)ビショップをg7に展開する用意をすることもできる。行き着く先の局面は黒にとって主手順ほど攻撃的ではない。なぜなら白のeポーンに対して圧力がすぐにかかるわけではなく、白がすぐに Nxc6 と指す必要がないからである。例えば 5…g6 6.Be3 Bg7 と進んだとき 7.Nxc6 bxc6 8.e5! が白の好手となる。8…Nd5 は 9.Nxd5 のあとポーンを取られるし、8…Qe7 は駒損になるだけである。代わりに黒は手損を認めてナイトをg8に引かなければならない(8…Nh5? は 9,g4 で逃げ場がない)。例えば 8…Ng8 9.Bd4 のあと Qd2 から O-O-O となる。

6.Nxc6 bxc6 7.Bd3

 上の解説とは対照的にここでの 7.e5 は 7…Qe7 または 7…Nd5 とされる。

7…O-O 8.O-O d5 9.exd5 cxd5 10.Bg5 c6 11.Ne2

 このナイトのd4への捌きは立派な考えである。しかしあまりにも遅すぎる。つまりすぐの狙いが何もなく、黒に対する圧力をいくらか緩めている。その間隙を利用して黒はナイトに対する釘付けをはずし、自分の方から狙いを作り出すことにより主導権をもぎ取ることができる。

11…Re8!

 黒は 11…c5 を急いで自分のポーンを弱めるべきではない。その手は白のナイトをd4に来させないけれども、10…c6 と突いたdポーンの守りもなくなる。白は 11…c5 に 12.c3! Ba5(ビショップがd6にもe7にも戻れなくなっていることに注意)13.Nf4 と応じることができ、14.Nh5 からf6のナイトを取って黒のキング翼ポーンを乱す狙いと、14.Bxf6 Qxf6 15.Nxd5 でポーン得する狙いがある。

12.Nd4 Qd6

 黒は釘付けをはずして次に …Ne4 と指せるようにした。e4のナイトはいくつかの重要な地点を監視しg5のビショップに当たっている。例えば 13.Qf3 Ne4 14.Be3 のあと黒は 14…Qg6 と指す余裕があり 15…Bg4 16.Qf4 Bd6 で白クイーンを取る狙いがある。これらのちょっとしたいじめの狙いにより黒はビショップのために好所を見つけ、白が態勢を立て直す前にルークでe列とb列を支配することになる。

13.Bh4? Ne4!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(141)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 これで黒が自分の手番で引き分けにできるために白キングがいなければならない範囲を決めることができる。図141がその範囲を示している。

 図141
ロマノフスキー、1950年

 黒の正しい受け方の例を示すために白キングをf4に置いてある。

1…Rc1

 多分引き分けのための黒のもっと簡明な手は 1…Ra5! である。以下 2.Ke4 Rc5 3.Ra7+ 黒の狙いは 3…Rc6 だった。3.Rb8 でも 3…Ra5 4.Rb6 Kf7 5.Kd4 Ke7 6.Kc4 Kd7 で引き分けになる。3…Kg6! 3…Kf6? はだめで 4.Kd4 Rc6 5.Rh7 Kg6 6.a7 Ra6 7.Rb7 で白が勝つ。4.Rb7 Ra5 5.a7 5.Rb6+ なら 5…Kf7 6.Kd4 Ke7 でよい。5…Kf6 6.Kd4 Ke6 7.Kc4 Kd6 8.Kb4 Ra1 で黒は楽に引き分けにできる。

 しかし他の手では黒の負けになる。1…Rb1 は 2.Ra7+ Kg6(2…Kf6 なら 3.Ke4 Rb6 4.Rh7)3.Rb7 Ra1 4.Rb6+! Kf7 5.Ke5 で黒は 5…Ke7 6.Rb7+ から 7.a7 とされて負ける。

 1…Rh1 は 2.Ra7+ Kf6 3.Ke4! Ke6 4.Ra8! から 5.a7 で白が勝つ。

 1…Rf1+ は 2.Ke5 Rf6 3.Rg8+ で白が勝つ。

2.Ra7+

 黒の狙いは 2…Rc6 だった。前に述べたように 2.Rb8 は 2…Ra1 3.Rb6 Ra5! 4.Ke4 Kf7 5.Kd4 Ke7 で引き分けである。

2…Kg6

 これは絶対手である。2…Kf6?(2…Kf8? は 3.Rb7 から 4.a7 で白が勝つ)は 3.Ke4! Rc6(3…Ke6 なら 4.Ra8! から 5.a7)4.Rh7 Kg6 5.a7 Ra6 6.Rb7 Ra5 7.Kd4 Kf6 8.Kc4 Ke6 9.Kb4 から 10.Kb5 で白が勝つ。

 本譜の手の後は黒は再び 3…Rc6 を狙っている。

3.Rb7 Rc5

 3…Kf6! でも引き分けることができる。4.Ke4 なら 4…Ra1 5.Ra7 Ke6 6.Ra8 Kd6 7.a7 Kc7 でよい。4.Rb8 なら 4…Ra1 5.Ra8 Ra4+! 6.Ke3 Kg7 7.Kd3 Rf4 8.Ra7+ Kg6! 9.Rb7 Ra4 10.a7 Kf6 11.Kc3 Ke6 12.Kb3 Ra1 13.Kc4 Kd6 で引き分けになる。

 この変化は引き分けのための白キングの範囲に背いていないことに注意して欲しい。図141は黒キングがg7にいる場合の話で、最初の変化で白の6手目の後のe6にいる場合には当てはまらない。

4.a7

 4.Ke4 は 4…Ra5 5.Ra7 Rc5! で黒はまた 6…Rc6 を狙う。

 4.Rb8 は 4…Ra5 5.Ra8 Kg7 から 6…Rc5 で白は進展がない。

4…Ra5 5.Ke4 Kf6

でこの後は 6.Kd4 Ke6 7.Kc4 Kd6 8.Kb4 Ra1 で引き分けになる。

 今度は図141で白の手番だったらどのようにして勝つのかを見てみよう。

1.Ke5

 図141に示されているように 1.Ke4 でも本譜と同様の手順で白が勝つ。

1…Ra5+

 黒には他の選択はない。1…Re1+ は白キングがa7に行くのを助けるだけだし、1…Rb1 は 2.Ra7+ Kg6 3.Rb7 Ra1 4.a7 で白が勝つ。

2.Kd4

 1.Ke4 の場合と同じになるのでこの手を本手順とする。白は 2.Kd6 でも勝てる。以下 2…Rf5 3.Ra7+ Kf8(3…Kg8 又は 3…Kg6 なら 4.Re7 で白の勝ち)4.Ke6(ここで 4.Re7 は 4…Ra5 5.a7 Ra6+ でだめである)4…Ra5 5.Ra8+ Kg7 6.Kd7 Rf5 7.Re8 で白が勝つ。

2…Rb5 3.Ra7+ Kf6

 3…Kg6 は 4.Rb7 Ra5 5.a7 Kf6 6.Kc4 Ke6 7.Kb4 Ra1 8.Kc5 で白が勝つ。

4.Kc4

 4.Rh7 でも 4…Ra5(4…Kg6 なら 5.Rb7)5.a7 Ke6 6.Kc4 Kd6 7.Kb4 Ra1 8.Kb5 で白が勝つ。しかし 4.Rb7 は 4…Ra5 5.a7 Ke6 6.Kc4 Kd6 7.Kb4 Ra1 で引き分けになる。

4…Rb6

 4…Ra5 は 5.Ra8 で白キングがa7に到達する。

5.Kc5 Re6 6.Rh7

 以下は 6…Kg6 7.a7 Ra6 8.Rb7 で白の容易な勝ちである。

 次に図141の分析を尽くすために白キングがf5だったらどうなるかを調べてみよう。黒は 1…Ra5+ で引き分けにできる。しかし 1…Rf1+ は2.Ke5! Rf6? 3.Rg8+、1…Rb1 は 2.Ra7+ Kh6 3.Rb7 から 4.a7 で負ける。2.Ke6 2.Ke4 Rc5 は前に分析した。2…Rh5! 2…Rg5 は 3.Ra7+ Kg8 4.Kf6 Ra5 5.Kg6 Kf8 6.Ra8+ Ke7 7.a7 で白が勝つ。3.Ra7+ 3.Kd7 は 3…Rh6 4.Kc7 Rf6! でバンクーラの局面になる。3…Kg8 4.Rf7 Ra5! ここで 5.a7?5.Ra6+ がある。

 この分析から白キングがe6にいる時の正しい応手が分かる。黒は 1…Rh1!(1…Rg1? は 2.Kf5!、1…Rf1? は 2.Ke5!)で引き分けにできる。この後はこれまでに出た引き分けの手順に移行する。

(この節続く)

2013年09月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(076)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

 白にルークをg列に持ってくる狙いがあるので、黒は非常に難しい局面に立たされている。黒はナイトを動かすことができない。15…Ng4? は 16.Qh7+ から 17.Qh8# だし、15…Ne4 は 16.Nxe4 dxe4 17.Bxe4 から次にh7での決定的なチェックがある。15…Bf8 と指したいところだが 16.Rxe8 に取り返したあとf6かh7の地点が守られていなくなる。最後に、15…Qd6 も間に合わないし(16.Re3! から 17.Rg3+)15…d4 もそうである(16.Re5!)。

15…Qc7 16.Re3 Bg4

 白が Rg3+ と指したときにクイーンを切る手を除けば、これがg列をふさぎ早い詰みを回避する唯一の手段である。

17.h3! d4 18.Rg3!

 黒は助かっていると考えていたのかもしれない。しかしここで白の真の狙いが 19.hxg4 でなく 19.Rxg4+! Nxg4 20.Qh7+ Kf8 21.Qh8# であることに気がついた。たとえ黒キングがf8の逃げ道からこの詰みを避けられたとしても、白には別の詰み筋がある。例えば黒が 18…Bd8 でe7の地点を空けると、19.Rxg4+ Nxg4 20.Qh7+ Kf8 21.Qh8+ Ke7 22.Re1+ Kd6 23.Qxd4# となる。実戦は黒がh8の地点を守るために大英断を下した。

18…Qe5 19.f4! Qe6 20.Rxg4+

 20…Nxg4 は前述のように 21.Qh7+ から 22.Qh8# で負けるので、黒はクイーンを切らなければならない。試合は次のように終わった。20…Qxg4 21.hxg4 dxc3 22.g5! Bc5+ 23.Kh1 Ng4 24.Qh7+ Kf8 25.Bc4! Ke7(25…Re7 は Qh8# を避けるために必要な逃走個所をふさいでしまう)26.Qxf7+ Kd6 27.Rd1+ Bd4 28.Rxd4+ Kc5 29.Be2! Kxd4 30.Qc4+ Ke3 31.Bxg4 Kf2 32.Qxc3 Rh8+ 33.Bh3(このビショップがなかったら黒がキングとルークだけで白キングを詰みに討ち取っていた!)33…Rae8 34.Kh2 Rh7 35.Qg3+ 黒投了(白の想定手順は 36.Qd3+ から 37.Qxh7)

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(140)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 図140

 白キングは自分のポーンにちょうど近いところにいるので次のような見事な手順で勝つことができる。

1.Kd3

 勝つにはこの手しかない。1.Ke3 は 1…Re1+ から 2…Re6 と受けられる。1.Kd2 は 1…Rb1 2.Ra7+ Kg6 で黒が引き分けにできる。例えば 3.Rb7 Ra1 4.Rb6+(4.a7 なら 4…Kf6 5.Kc3 Ke6 6.Kc4 Kd6)4…Kf7 5.Kc3 Ke7 で引き分けになる。1.Ra7+ も 1…Kf6 2.Kd3? Ke6 3.Kc4 Kd6 でやはり引き分けである。

 これらの分析から黒の手番ならば 1…Rc1 または 1…Ra5 で黒は引き分けにできる。

1…Ra4

 1…Rd1+ 2.Kc4 Rd6 は 3.Kb5! Rd5+ 4.Kc6 Ra5 5.Kb6 で白が勝つ。

 1…Rf12.Ra7+! 2.Rc8 は 2…Ra1 3.Rc6? Kf7 4.Kc4 Ke7 5.Kb5 Kd7 6.Rc4 Rb1+ 7.Ka5 Ra1+ 8.Kb6 Rb1+ 9.Ka7 Rb2 で失敗する。2…Kg6 2…Kf6 は 3.Rh7! Kg6 4.Rb7 で本手順に戻る。この手順中 3…Ra1 は 4.a7 Ke6 5.Kc4 Kd6 6.Kb5 で白が勝つ。3.Rb7 Ra1 4.a7 Kf6 4…Ra4 は 5.Kc3 Kf6 6.Kb3 Ra1 7.Kc4 Ke6 8.Kc5 又は 8.Rh7 で白が勝つ。5.Kc4 Ke6 6.Kc5 又は 6.Rh7 で白の楽勝である。

 最後に黒は 1…Rh1 で 2.Ra7+ Kf6! の後の 3.Rh7 を防ぎ、この後 3.Rb7 Ra1 4.a7 Ke6 5.Kc4 Kd6 で引き分けにすることができる。しかしh列のルークは位置が悪く 2.Kc4! Rh6 3.Kb5 Rh5+ 4.Kb6 Rh6+ 5.Kb7 で黒キングがルークの動きをじゃましていて白が勝つことができる。

2.Kc3 Rh4

 白は 3.Kb3 から 4.Kb4 を狙っているので黒はぐずぐずできない。

 2…Rf4 は既に見たように 3.Ra7+ Kf6 4.Rh7 Kg6 5.Rb7 で白が勝つ。

3.Ra7+ Kf6

 前の手の意味の継承である。3…Kg6 は 4.Rb7 で白が勝つ。本譜の手に対して 4.Rb7 なら 4…Ra4 5.a7 Ke6 6.Kb3 Ra1 で黒が引き分けにできる。

4.Kb3! Rh1

 黒キングはe列に行くと 5.Ra8 から 6.a7 があるので行くことができない。4…Rh8 は 5.Rb7 Ke6 6.a7 Ra8 7.Kc4 Kd6 8.Kb5 で白が勝つ。

5.Ra8 Ra1

 白の狙いは 6.a7 である。5…Kg7 は1手目の説明にあるように 6.Kc4 で白が勝つ。

6.Kb4

 この後白キングがa7に行って白が勝つ。黒が 6…Ke7(e6)と指すと 7.a7 がある。この勝つ仕組みは既に示した。

(この節続く)

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開放試合の指し方(075)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

 黒が収局に行くのをいとわなければこの最後の手は不必要である。例えば 11…Re8 と寄っておき 12.Bxf6 に 12…Qxf6 13.Qxf6 gxf6 と応じることができる。黒のキング翼のポーンはきれいでないが、代償として収局で駒が非常に活発に動ける。例えばルークをb8に回して …Bd6-e5! でb2に圧力をかけることができる。白がルークをe列に回したときはルーク交換になれば黒のポーンがきれいに直るので …Re6 または …Re5 と応じることができる。

 ここでの着眼点は収局である。11…Re8 12.Bxf6 に対して黒は 12…gxf6? と取るものではない。というのはキング翼が盤上のクイーンに非常にもろいからである(例えばすぐに 13.Qh5 で 14.Qxh7+ の狙いができる)。11…Be7 と指すことにより黒は(ビショップでf6を取り返すことにより)中盤戦を続ける選択肢を残し、b列を空けることによりルークをb8に寄せて圧力をかけるようにした。

12.Rae1

 今こそ白が素通し列を使うときである。そして唯一の問題はどちらのルークをe1に回すかである。白はクイーン翼ルークを選び、黒が …Be6 と指した場合にはもう一つのルークが f4-f5 突きを助けられるようにした。Rae1 と Rfe1 の違いは、どちらのルークが先に動くかにかかわらず白が Re2 から R1e1 と指すことになりそうなのでわずかである。

12…h6!

 これはもっと後では非常に悪い手になるかもしれないが、ここでは良い手である。この手を遅らせると白が Nd1-e3-f5 の手段でg7とh6の地点にすごい攻撃をもくろむことができ、黒のキング翼ポーンのわずかな弱体化さえ致命的になることがある。しかし黒はまだ具体的な反撃策にも手を染めていない。そしてこの手は白に決断を迫るので役に立つ。13.Bh4 は 13…Rb8(bポーンに当たっている)から 14…Rb4! とされる。このルークの展開はいくらか変則的だが、h4のビショップが働きの劣るg3の地点に追われるので非常に効果的である。

13.Bxh6!?

 この手は華々しいが、黒が最善に指せば安全に引き分けになるので好手というには不十分である。実際この捨て駒のあと白には黒と同じくらい負ける可能性がある。白は捨て駒の代わりに2ポーンを得るが、黒は正確に受ければ永久チェックをさせることによって引き分けに終わらせることができる。この理由から白は 13.Bc1! から Nd1-e3-f5 と指す方が良い。

13…gxh6 14.Qe3

 これが白の読み筋である。e7のビショップを当たりにしh6のポーンも当たりにしている。このクイーンがh6に行けば、ルークをg列に持ってくるか、f6の黒ナイト(Qh7# を防いでいる)を消し去ることにより詰みを狙うことができる。ここからの指し手が非常に難しい。

14…Re8?

 この手は理にかなっている。ビショップを守りキング翼を別の駒でおおう用意をしている(…Bf8-g7)。しかしもっと強力な 14…d4! よりは劣っている。白は 15.Qxe7 Qxe7 16.Rxe7 dxc3 では駒損の収局になるので 15.Qxh6 と指さなければならないだろう。しかし 15.Qxh6 Qd6! となれば白はe5またはe3を経由してルークをg列に持ってくることができない。

 しかし白はh6とg5で繰り返しチェックして強制的に引き分けにできる。もし白が負けを免れる窮余の手段としてこの可能性をあとにとっておこうとして例えば 16.Qg5+ Kh8 17.Rxe7!? Qxe7 18.Ne4? と指すと、18…Ng8! で永久チェックがもうなくなるので黒の方が優勢になるかもしれない[訳注 19.Qh5+ Kg7 20.Nf6 Nxf6 21.Qg5+ Kh8 22.Qh6+ Kg8 22.Qg5+ による永久チェックの引き分けがあります]。

15.Qxh6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(139)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 この基本的な引き分けの局面の知識を身に付けたので、勝ちか引き分けかが白キングの位置によって決まるようなもっと一般的な局面を検討することができる。

 図139
タラシュ、1908年

 長年の間にこの局面の評価は変化した。1908年にタラシュは白の勝ちという分析を発表した(ラスカー対タラシュの番勝負の本)。バンクーラの引き分けの局面(図138)がこの評価を一変させた。現在では黒が最善の受けを尽くせば引き分けることが知られている。まず両者が考えるべきことを確認しよう。

 第1点は黒キングの接近を防ぐために白は自分のキングをポーンの所まですぐに移動させなければならないのかということである。黒は常に a7 の可能性を考慮に入れておかなければならないので黒キングはg7又はh7に戻る用意をしておかなければならない。これはf7又はf6には行って良いがe列には行けないということである。例えば 1…Kf7 2.Kf2 Ke7(e6)? 3.a7! Kd7 4.Rh8 が白の狙いである。4.Rh8 Rxa7 5.Rh7+ で白の勝ちとなる。だから黒キングがポーンに近づいてくる恐れはない。

 第2点は黒は手をこまぬいて白キングをa7に行かせて良いのかということである。黒はそれを許すことはできない。例えば次の手順で白が勝つ。1.Kf2 Kf7? 2.Ke2 Kg7? 3.Kd3 Ra4 4.Kc3 Kf7 5.Kb3 Ra1 6.Kb4 Rb1+ 7.Kc5 Rc1+ 8.Kb6 Rb1+ 9.Ka7 Ke7 10.Rb8 Rc1 11.Kb7 Rb1+ 12.Ka8 Ra1 13.a7 で図136の分析のように黒が負ける。

 以上から黒は引き分けるためには何か具体的な行動を取らなければならない。黒の目標は以下のように図138の引き分けの局面に到達することである。

1.Kf2 Ra5! 2.Ke3

 2.Ra7+ に対しては黒は素直に 2…Kg6 と指して良く結果は変わりない。もっとも 2…Kg6 の代わりに 2…Kg8 でも良い。

2…Re5+ 3.Kd4 Re6!

これで引き分けと分かっているバンクーラの局面になった。

 しかしこのことから図139に似かよった局面がすべて引き分けになると考えるのは誤りである。前に述べたようにすべては白キングの位置にかかっている。例えば白キングが既に4段目にいれば明らかに同じ手段でバンクーラの局面に到達することはできない。

 それでは黒ルークが3段目に到達するにはチェックで先手を取ることが必須なのだろうか。黒は自分のキングをg7に置いたまま自分のルークをa列から離して3段目に戻らせることができない理由があるのだろうか。図139から手順を検討してみよう。1.Kf2 Rc1 黒の意図は 2…Rc6 なので白はルークを動かさなければならない。2.Rb8 Ra1 3.Rb6 Kf7 4.Ke3 Ke7 5.Kd4 Kd7 6.Kc5 Kc7 7.Rb7+ Kc8 8.Kb6 Rb1+ 9.Ka7 Rc1 これで白は何もできない。そこで白は 2.Ra7+ を試みなければならない。

 黒キングはどこへ逃げたら良いであろうか。2…Kf8 は 3.Rb7 から 4.a7 で黒が負ける。しかし次の手順なら引き分けになる。2…Kg6 3.Rb7 Ra1 4.a7 Ra3 5.Ke2 Kf6 これで白キングが十分遠く離れている場合黒にはバンクーラの局面に到達するもう一つの手段があることになる。黒が引き分けるためには白キングはどのくらい離れていなければならないか。この境界を決める前に次の図140を調べてみよう。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(331)

「Chess」2013年8月号(5/5)

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決め手を見つけよ

中級向け問題

解答
1.Nxd5! 黒は 1…Bxd5? 2.Rxd5 Qxd5? 3.Bxe4 と指すわけにいかないので白のポーン得になる。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(074)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1
白 宮坂幸雄[訳注 将棋棋士(引退)・九段]
黒 タラジ
チェスオリンピアード、ジーゲン、1970年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6

 前に強調したようにスコットランド試合の早い段階で黒が安全に …d7-d5 と突ければ、中央の白ポーンの基盤を崩すことができる。通常はこれで白の中央におけるわずかな優位を無効にし可能性を均等にするのに十分である。そこで当然の疑問は「なぜ最も早い機会の4手目で …d7-d5 と突かないのか」ということである。

 その答えは黒が戦術による切り返しを避けられるほど十分に駒を展開していないから、である。これは珍しいことではない。試合の早い段階ではある手が作戦上は棋理に合っているが、戦術的理由で全然間違っているということがよくある。ここでは 4…d5 は 5.Nxc6 bxc6 6.exd5 cxd5 7.Bb5+! で咎められる。チェックに対する黒の自然な応手(7…Bd7)がdポーンの守りを妨げてしまう(8.Qxd5)。もちろん黒は 6…cxd5? の代わりに 6…Qxd5 と指すことができるが、7.Qe2+ から Nc3 で白に展開で先行され、弱体化したcポーンを攻撃される可能性を与える。

5.Nc3 Bb4! 6.Nxc6 bxc6 7.Bd3 d5 8.exd5 cxd5 9.O-O O-O 10.Bg5!

 もし白がこの釘付けの機会を逃せば、布局での努力に見返りがほとんどなく、不利を避けるために苦労しなければならないかもしれない。例えば 10.Ne2 は理にかなっているが、直接の厳しさに欠けているので、黒は 10…Re8 11.c3 Bd6 から …Rb8 と指すことができる。そうなれば黒は素通しのe列と半素通し(すなわち黒側だけ素通し)のb列とを支配することになる。そしてe4の地点をナイトで占拠し …Qh4 から …Bg4 でキング翼を攻撃することができる。要するに黒が順風満帆である。

10…c6 11.Qf3! Be7

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(138)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 今度は6段目にポーンがある局面を考える。まず白ルークがポーンの前方にいる場合からである。

 図138
バンクーラ、1924年

 本図はこの型のエンディングで最も重要な引き分けの局面の一つである(ポーンはもっと後ろでも構わない)。その特徴は白ルークがポーンの前方にいること、黒キングがg7又はh7にいること、そして黒ルークが横からポーンを攻撃していることである。白は何も進展を図ることができないのでこの局面は引き分けである。

1.Kb5 Rf5+

 白は 2.Rc8 を狙っているので白キングをポーンの守りから引き離さなければならない。

2.Kc6 Rf6+ 3.Kd5 Rb6

 これ以上チェックは必要ないが、ルークはポーンを攻撃し続けなければならない。

4.Ke5 Rc6

 4…Rb5+ から 5…Rb6 でも良い。しかし 4…Rf6? は 5.Rg8+! で負けてしまう。

5.Ra7+ Kg6

 又は 5…Kg8 でも良い。黒が引き分けの構図に従う限り白が状況を改善できないことは明らかである。白が Ra8 から a7 とポーンを進めれば黒はすぐに …Ra6 と指して図132の局面にして引き分けることができる。

(この節続く)

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開放試合の指し方(073)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 この難しい局面には活発に戦われた布局につきものの得失が現れている。白駒の方が自由に動け、次の数手ほどは特に敵キングに対して具体的な狙いがより多く持てそうである。

 しかし得失の別の面は黒の中央である。本章の初めで白のe4ポーンによって支配された典型的なポーン中原がどのように先手に優位をもたらすかを解説した。ここでは中央のポーンが多いのは黒の方である(中央から遠ざかるように 6…dxc6 と取るのでなく中央に向かって 6…bxc6 と取った結果であることに注目)。黒のdポーンは白にc4とe4の地点を使わせないことに役立っている。しかし白の駒は好所に位置しているので、黒もそれらの地点を利用できそうにない。

 このあとはどうなるのだろうか。白は 11.Bxf6 Qxf6 12.Nxd5(12…Qxb2? は 13.Rb1 で白の駒得)または 11…gxf6 12.Nxd5!(12…Qxd5?? 13.Bxh7+ から 14.Qxd5)という狙いが手始めになる。これはg5のビショップ、ナイトそれにクイーンを用いて黒の中央のポーンを攻撃することが中盤戦での主要な主題であることを示している。黒が目下の狙いに対して守った後は、白はクイーンをf3に移してそこからdポーンに対する圧力を維持しf6に対する圧力を増しキング翼攻撃に参加する用意をさせることができる。そして2個のビショップとクイーンが敵キングをにらみナイトがすぐにそれに加わることになる。ナイトの最良の経路は Ne2-g3-f5(または -h5)と Nd1-e3-f5 である。f5のナイト、g5のビショップ、それにf3のクイーンによる連係攻撃は黒にとってほぼ致命的である。

 しかしこの中盤戦については黒にも言い分がある。黒は堅実に …c7-c6 と突いて中央を安定させることができ、…Qd6 でナイトに対する釘付けをはずすことができる。黒のビショップはどちらも図の地点よりは良い地点を見つけなければならない。クイーン翼ビショップはe6が好所で、もし行けるなら(…Bg4-h5-g6 という経路で)g6の方がはるかに良い。もう一つのビショップはe7に下がって釘付けの問題を解消できるか、c5でf2の地点をにらむことができる。黒は …Qd6 から …Ba5-c7 で …Qxh2# を狙って自分の方もキング翼攻撃をひねり出すことができる。

 黒は控え目でなく中央のポーンで攻撃的に指すことができる。まず 10…Be6 から …Be7 でdポーンを安全にし、2手でなく1手でcポーンをc5に突くことができる。そして白の駒を …c7-c5-c4 と …d5-d4 で押し戻す態勢にできる。中盤戦のあとの段階では …d4-d3 でパスdポーンを作り出すことさえできるかもしれない。

 結果は白と黒による創造性あふれる均衡のとれた戦いになる。図の局面は今日ではグランドマスターの試合にあまり現れない。しかしこれはスコットランド試合への不信ではない。他の布局では白の勝つ可能性がもっと高いかもしれない(または負ける可能性がもっと低いかもしれない)。だからスコットランド試合は最高峰の大会では世紀の変わり目ほど今日では見られない。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(137)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 図137 白の手番

8.Rc6+!

 この手が最も簡明である。8.Rb1 でも勝てる。以下 8…Rh7(8…Rh8+ なら 9.Kc7 Rh7+ 10.Kb8 Rh8+ 11.Kb7 Rh7+ 12.Ka6 Rh6+ 13.Ka5 Rh8 14.Rb8 Rh1 15.Rc8+ で白の勝ち)9.Ra1 Rh8+ 10.Kd7 Ra8(10…Rh7+ なら 11.Ke6)11.Kc7 で白が勝つ。しかし 8.Ra6? はだめで 8…Rh8+ 9.Ke7 Rh7+ 10.Ke8 Rh8+ 11.Kf7 Ra8 12.Ke7 Kb5 13.Ra1 Kb6 14.Kd6 Rxa7 15.Rb1+ Ka5! で引き分けになる。

8…Kd5

 8…Kb5 は 9.Rc8 Rh8+ 10.Kc7 Rh7+ 11.Kb8 で白が勝つ。本譜の手に対して 9.Rc8 は 9…Kd6 と応じられる。

9.Ra6 Rh8+ 10.Kc7 で白が勝つ。

(この節続く)

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布局の探究(65)

「Chess Life」1993年2月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

良いのか面白いだけなのか(続き)

 真に才気あふれる例はもう一人の世界チャンピオン、ガリー・カスパロフの創造的頭脳から来る。それは世界選手権戦の実戦にこれまで現われた最も心躍らせる布局の構想だと思う。舞台は1985年のカルポフ対カスパロフの世界選手権戦番勝負第12、14、16、そして18局だった。

(1)A.カルポフ対G.カスパロフ
第12局、10月3日

 シチリア防御タイマノフ戦法で通常の手順の 1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nc6 5.Nb5 d6 6.c4 Nf6 7.N1c3 a6 8.Na3 のあとカスパロフはチェスの定跡と対戦相手とに対し大胆な 8…d5!!? で衝撃を与えた。

 黒は単純に大切な中央のポーンを放り捨てることにより締めつけから脱する。9.exd5 exd5 10.cxd5 Nb4 ここでカルポフは 11.Bc4 を選択したが 11…Bg4 12.Be2?! Bxe2 13.Qxe2+ Qe7 14.Be3 Nbxd5 で黒がポーンを取り返し楽に互角にした(15.Nc2 Nxe3 16.Nxe3 Qe6 17.O-O Bc5 18.Rfe1 O-O 引き分け)。

(2)A.カルポフ対G.カスパロフ
第14局、10月10日

 カルポフのチームはまだこの新手に対応する用意ができていないことが明らかで、カルポフは 5.Nc3 でこの戦型にしなかった(32手で引き分け)。

(3)A.カルポフ対G.カスパロフ
第16局、10月15日

 カルポフは用意ができたようで第12局の 11.Bc4 を 11.Be2 に変えた。それでも 11…Bc5 12.O-O O-O 13.Bf3 Bf5 14.Bg5 Re8 15.Qd2 b5 16.Rad1 Nd3! で黒がポーンの完全な代償を得て40手で快勝した(この試合はチェス新報第40巻の最高名局賞に選ばれた)。

(4)A.カルポフ対G.カスパロフ
第18局、10月22日

 今度は手を変えたのはカスパロフの方で、それも2手目でであった。彼は1985年番勝負の優れた自著の中できわめて明快に 2…d6 の選択について解説している。「ギャンビット戦法は配当をもたらしてくれた。そして運命をもてあそびたくなかった・・・」

 カスパロフは二度と 8…d5 を指さなかった。しかし盲目的に彼に追従していた人たちはすぐに自分の無邪気さを後悔することになった。例えばカルポフ対カスパロフの番勝負終了後2ヶ月もたたない1986年のベイク・アーン・ゼーでのA.カルポフ対J.ファン・デル・ビール戦で、白は第16局の 12.O-O を改良して 12.Be3! と指し、次のようにすぐにはっきり優勢になった。12…Bxe3 13.Qa4+! Nd7 14.Qxb4 Bc5 15.Qe4+ Kf8 16.O-O 黒はポーンの代償がない。[訳注 61手で引き分け]

 再び教訓を言えば創始者を注視せよということである。さらには基本に立ち返るようにせよということである。本当に黒は 8…d5 のような手を指す余裕があるのだろうか。その確率は低い。たぶん100回に1回以下だろう。

 この長ったらしい「序文」のあと、「良い」対「面白い」の議論についてさらに3例をあげる。

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開放試合の指し方(072)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

8.exd5

 ここで 8.e5 と突く手は 3.d4 以来白の初めての攻撃的な手になるという理由だけでも魅力的である。黒はもっと前に e4-e5 と突かれたときしばしば …Qe7 と応じることができたようには、8.e5 に 効果的に 8…Qe7 と応じることができないのは 9.O-O! のためである(9…Qxe5?? 10.Re1 でクイーンが串刺しになる)。

 だから 8.e5 に対してf6のナイトは逃げなければならない。しかしどこに?d7は白のeポーンを再び当たりにするが、少し黒駒の動きの邪魔になる。e4は白のc3の地点に圧力を加えるが、小駒が清算されて引き分け気味の収局になる。例えば 8…Ne4 9.Bxe4 Bxc3+ 9.bxc3 dxe4 で対称な局面になる。両者ともビショップが残っているが、色違いなので収局で勝つ可能性が制限される。

 従って黒の最善の選択は 8…Ng4! である。白はeポーンをビショップ、ポーンまたは罠で守ることができる。罠はつかの間の受けにすぎず(9.O-O Nxe5?? 10.Re1 で 10…Qe7 なら 11.f4)、結局はビショップ(Bf4)かポーン(f2-f4)を動かさなければならない。

 9.f4 による防御の主要な欠点はb6からg1の斜筋に弱点を生じさせることである。例えば 9.f4 O-O 10.O-O? は 10…Bc5+ 11.Kh1 Qh4! 12.h3 Qg3 13.hxg4 Qh4# で詰まされてしまう。

 ビショップで守る方が優るが、9.Bf4 f6!(または 9…O-O から 10…f6)でf列での黒の攻撃の可能性が有望になる状況で白がeポーンを黒のfポーンと交換しなければならないので黒が優勢である。

8…cxd5

 7…d5 によって得られる(そして 7…O-O から 8…d5 によっては得られない)別の選択肢は、巧妙な挿入手の 8…Qe7+ である。このチェックはスコットランド試合の積極的な中盤戦で黒を詰みにしとめることを切に希望する選手にとって悩ましい。それは白の数種類の応手のうち唯一の良い応手がクイーン交換させる(9.Qe2)手だからで、白が詰み狙いの中盤戦でほとんどしたくないことだからである。

 8…Qe7+ に対して白はキングを動かしてキャッスリングの選択肢を放棄すべきでないし、9.Be3 Nxd5! で戦力得を狙うひどい釘付けにもはまりたくない。9.Qe2 に代わる別の手はビショップをe2にさしはさむ手だが、非常に守勢で 9…cxd5 10.O-O Bb7 となると白駒が黒駒よりも活動性に劣る[訳注 11.Re1 があるので正着は 9…Nxd5 です]。

 それほど遠くない昔は 8…Qe7+ 9.Qe2 Qxe2+ 10.Kxe2 はまったくの互角で引き分けになると思われていた。確かにクイーンが盤上から消え、通常のスコットランド試合で白のために生じるキング翼での狙いの重要性が低くなりがちである。(白が黒駒を締めつけるためによく用いる強力な Bg5 の釘付けもほとんどなくなる。)

 しかし黒の問題は展開を完了する前にcポーンとdポーンが攻撃されるので 10.Kxe2 のあとも問題が残っていることである。例えば 10…cxd5 は 11.Nb5! で Nxc7+ を狙われるのが煩わしいし、Bf4 から Rd1 で標的のポーンに圧力が加わる。黒はd5で取り返す前に 10…Bxc3 11.bxc3 を決めておくことができるが、白は 12.Ba3! でビショップが素晴らしい態勢になり c3-c4 突きでルークのために素通し列ができる見込みもある。黒は中盤戦だけでなくこのような収局でも詰まされることがある。

 黒は 9…Qxe2+ の代わりに 9…cxd5 と取ることによりこの手順をわずかに改良し白を 10.Qxe7+ でクイーン交換する側にさせることができる。しかし黒は例えば 10…Kxe7 11.O-O Rd8 12.Nb5! c6 13.Nd4 から 14.Bf4 というようにまだポーンに問題を抱えている。

9.O-O O-O 10.Bg5!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(136)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 白は次の例のように黒キングが少なくともf列まで離れている場合に限り勝つことができる。

 図136
カールシュテート、1909年

 白ルークは黒キングがc7に到達する前にb8に行くことができる。勝ちに至る手順は非常に参考になる。

1.Rc2 Ke7 2.Rc8

 2.Rc7+? は誤りで 2…Kd8 3.Rb7 Rc1! でここで 4.Kb8 は 4…Rc8# で詰んでしまうので黒は引き分けにすることができる。

2…Kd6

 2…Kd7 は 3.Rb8 Ra1 4.Kb7 Rb1+ 5.Ka6 Ra1+ 6.Kb6 Rb1+ 7.Kc5 Rc1+ 8.Kd4 で白がもっと楽に勝てる。

3.Rb8 Ra1 4.Kb7 Rb1+ 5.Kc8!

 5.Ka6 は 5…Ra1+ 6.Kb6 Rb1+ 7.Ka5 Ra1+ で無駄手である。

5…Rc1+ 6.Kd8 Rh1 7.Rb6+ Kc5

(この節続く)

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開放試合の指し方(071)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

7.Bd3

 6.f3 について言ったことはこの局面での 7.Qd4 と 7.Bd2 についても当てはまる。白のeポーンにかかわる問題は 7.Qd4 Qe7! のあとも続き、8.Bd3 c5! 9.Qc4 d5! となれば白クイーンの方がもっと問題が大きくなる。白はビショップで守る代わりに 8.f3 と指すことができるが、それなら 8…d5! でeポーンにとてつもない圧力が加わる。e3の地点が弱点になるのに加えて、f2-f3 突きもb6の地点から白のキャッスリングしたキングのために予約されるg1の地点への斜筋が素通しになるので危険である。黒はいずれ …Bc5 でその斜筋を確保することができ、白のクイーンがまだd4にいる間にそうすることができるかもしれない。

 同様に 7.Bd2 も白が 7…O-O 8.Bd3 d5 9.f3? でポーン中原を支えるつもりならば強力さに欠けている。白キングの周りの弱体化は 9…Bxc3 10.Bxc3 dxe4 11.fxe4 Nxe4! 12.Bxe4 Qh4+ から 13…Qxe4 という手筋の種をまいている。

 しかし 7.Bd3 はまともである。キング翼の最後の駒が展開したのでキャッスリングの用意ができている。そして中央で何が起ころうとこのビショップには絶好の斜筋(d3-h7)がある。これと比べるとc4のビショップは黒が …d5! と突いて追い払うかもしれない狙いにたえずさらされることになる。

7…d5

 黒がこの手を今突くか1、2手後に突くかは主に定跡というより好みの問題である。まず 7…O-O と指す方を好めば、8手目でdポーンを突くことができる(8.e5? は 8…Re8 9.Qe2 d6 で怖くない)。しかしすぐに 7…d5 と突く方が選択肢が多くなる。例えば 8.exd5 にクイーンがe7でチェックできる。

 さっそく 7…d5 の分析に取り掛かる。ここで黒がそもそも …d5 と突かなかったらどうなるかを考えることは重要である。

 それは結局のところ代わりに …d7-d6 と突くことを意味する。というのはまだ展開していないビショップを働かせる唯一の便利な手段はdポーンを1枡か2枡突くことによるからである。黒は …d7-d6 突きも …d7-d5 突きもしばらく見合わせることができるが、いつまでもというわけにはいかない。例えば 7…O-O 8.O-O のあと自分のナイトをf6の好所から追い払う 9.e5 突きの可能性に直面する。自然な継続手は 8…d6 か 8…Re8 だが、8.Bg5! とかかられると黒の動きが拘束されることになる。

 f6のナイトを釘付けにする Bg5 は黒がdポーンをどうしようと来るべき中盤戦での白の重要な切り札になる。黒はキング翼にキャッスリングしてしまっていると、苦痛なしに釘付けをはずすことはできない。例えば 8…Re8 9.Bg5 h6 10.Bh4 g5?! 11.Bg3 d6 12.e5! dxe5 13.Bxe5 となると、白は駒が中央の絶好の地点に陣取り Qf3 で黒の多くのポーンの弱点につけ込む態勢になる(13…Rxe5?? 14.Bh7+ から 15.Qxd8)。

 黒はたとえ …g5 と突いてキング翼を弱体化させるのを避けても、キング周辺の問題に直面する。8…Re8 9.Bg5 h6 10.Bh4 d6 11.f4! Bd7(または 11…Bb7)のあと、白は Qf3 から Rae1 と指して e4-e5 突きの強力な狙いが間近になる。この種の中盤戦における黒の問題にはクイーンの良い地点の不足がある。そしてクイーンが動くまでルークはお互い連結できず協力できない。

 本章の初めで悪いポーンの意味するところについて論じた。ここでは黒がある時点で …Bxc3 と取ることにより白のポーンを乱せばどうなるかを考えることが重要である。

 黒はここですぐに実行してから(7…Bxc3+)、…d7-d5 か …d7-d6 を選択することができる。しかし黒は弱体化した白のポーンを必要とするよりもこのビショップをもっと必要とする。もし黒が 7…Bxc3+ 8.bxc3 d5? と指せば、白はd5でポーン同士を交換し、黒がちょうど自分の黒枡ビショップを交換したために対抗ビショップのいなくなった黒枡ビショップをa3の地点に据えて黒がキャッスリングするのを妨げる。黒がたとえ …d7-d5 と突く前にキャッスリングしても、白は黒が収局で白の弱いcポーンから期待できる成果よりも、中盤戦で Ba3 からもっと多くを得ることになる。

 もし黒が …Bxc3 のあと(…d7-d5 の代わりに)優っている方の …d7-d6 を指せば、a3-f8の斜筋の白ビショップの利きを制限することになる。しかしそれでも白の Bg5! について心配しなければならない。黒がキング翼のポーンを弱体化させずに釘付けをはずすことはできないので、ここでもまたこの釘付けは白に有利をもたらす。キング翼ポーンは中盤戦では白のcポーンよりもずっと重要である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(135)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 以上の例からa8のルークが勝ちの可能性を奪うほど、どのくらいひどい位置かが分かる。今度は白キングがポーンの前にいる例を考えてみよう。

 図135
カールシュテート、1909年

 これは代表的な引き分けの局面である。白キングは自分のルークがb7またはb8に行ける場合に限り隅から出て来れる。しかしその間に黒キングはc7に駆けつけて引き分けにできる。

1.Rh2 Kd7 2.Rh8 Kc7 3.Rb8 Rc1

 これが最も簡単な手である。もっとも 3…Rd1 でも 4.Rb7+ Kc6 5.Rb2 Rd8+ 6.Rb8 Rd1 7.Rc8+ Kd7 8.Rc2 Rb1 でも引き分けになる。

4.Rb2 Kc8

 黒が自分のルークをc列に置いたままキングをc7とc8で移動させれば白は何もできないので引き分けである。しかし黒ルークがc列を離れるのは危険である。例えば 5.Rb4 Rh1? 6.Rc4+ Kd7 7.Kb7 Rb1+ 8.Ka6 Ra1+ 9.Kb6 Rb1+ 10.Ka5 Ra1+ 11.Ra4 で白が勝つ。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(94)

「Chess Life」2005年7月号(4/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 ハーマン・スタイナー
黒 ミハイル・ボトビニク
フローニンゲン、1946年

1.d4 e6 2.c4 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 Bb4+ 5.Bd2 Be7 6.Nc3 O-O 7.Qc2 d5 8.Nf3 c6

 異なった手順で石垣ポーン陣形になった。

9.O-O

 白は通常はカタロニア布局と同様にこの布局でもc4のポーンを犠牲にしても問題ない。ポーンをすぐに取り返さなくても非常に十分な代償を得ていて、通常は Nf3-e5、a2-a4 そして時には e2-e4 という手にさえ関連している。この場合ナイトがe5の拠点を占拠する準備の前にd4のポーンを守る必要がある。

9…Qe8 10.Bf4

 たぶん 10.Bg5 と指す方が良かった。

10…Qh5 11.Rae1

 白は組織的に e2-e4 と突く用意をしていて、次は 12.Nd2 と指す予定である。しかし白はf4の変な位置にいるビショップのことを忘れている。

11…Nbd7 12.Nd2?

 これは良い着想(f3 から e4 と突く準備)だが、位置と時機が悪かった。12.b3 の方が安全だった。

12…g5!

 白の黒枡ビショップの不運な位置を利用するのはうまい考えである。

13.Bc7

 13.Be3 は 13…Ng4 で改良にならない。

13…Ne8 14.Be5 Nxe5 15.dxe5

 ここで急所の手が来る。

15…f4!

 この手の狙いはキング翼を拡張し、白のe5ポーンを孤立させることである。それに黒駒のために重要な地点も空けている。すなわちナイトのためにf5、c8のビショップのためにh7-b1の斜筋である。黒がこの手を躊躇していたら、白は自分の方から f2-f4 と突くだろう。

16.gxf4

 実戦でどうなったかを知っているからg列を開けるのは悪手だろう。16.Nf3? も 16…g4 と突かれるので悪い。16.f3? はもっと悪くて、16…Bc5+ 17.Kh1 fxg3 で黒の勝ちになる。16.Qd3 が良かったかもしれない。

16…gxf4 17.Nf3

 白はe5ポーンを手放さなかった。

17…Kh8

 これはこのような局面での非常に典型的で理にかなった作戦である。g列でキングの上部が素通しの時は、キングをhポーンの陰に隠しルークで素通し列を占拠したくなるのが普通である。

18.Kh1

 18.e3? Rg8(19…Qh3 の狙い)19.Kh1 は 19…Rxg2 20.Kxg2 Qg4+ で黒の勝ちになる。

18…Ng7

 最も悪い地点にいる駒の位置を改善した。

19.Qc1

 クイーンをf4ポーンに利かせて …Ng7-f5 を防ごうとした。

19…Bd7

 他の駒も活動させる時機である。

20.a3 Rf7

 この好手はf4ポーンを守りながらもう一つのルークのために8段目を空けている。

21.b4 Rg8 22.Rg1 Nf5

 ついにその時が来た。23.Qxf4 は 23…Ng3+ で白クイーンが取られる。

23.Nd1 Rfg7!

 白は黒が1手ごとに自陣を良くしていくのをどうすることもできずに見ているだけである。

24.Qxf4 Rg4 25.Qd2 Nh4

 優れた戦略的指し方の極致の常として、正当な戦術で勝負が決まる。

26.Ne3

 26.Nxh4 Rxh4 27.h3 は 27…Rxh3+ 28.Bxh3 Qxh3# の2手詰めである。

26…Nxf3 27.exf3

 27.Bxf3 なら 27…Qxh2+! 28.Kxh2 Rh4# できれいに決まる。

27…Rh4 28.Nf1 Bg5 1-0

 これは単純だが有無を言わせない。29.Qb2 Bf4 のあと白はh2の地点をどうしても守れない。30.cxd5 Rxh2+ 31.Nxh2 Qxh2#

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

開放試合の指し方(070)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 この手は 6…Bxc3+ 7.bxc3 Nxe4 または単に 6…Nxe4 を狙っているので手抜きを許さない。黒は 5…Bc5!? で形を決めることもできる。この手は黒の4手目で検討した 4…Bc5 とは少し異なるところがある。その手には 5.Nb3 と応じることができたが(5…Bb4+ 6.c3!)、ここでの 6.Nb3 には 6…Bb4 でc3の白ナイトが釘付けにされる。だから 6.Nb3 は何にもならない。

 しかし 5…Bc5 には 6.Be3 が良い応手となる。なぜなら前述の 6…Qf6 がここでは不可能だからである。黒は 7.Nxc6 から 8.Bxc5 の狙いに 6…Bb6 のような他の手段で対処しなければならない。しかしキング翼ナイトをf6の地点に置いてしまったからには、このビショップはb6の地点が好所というわけにはいかない。というのはキング翼から黒枡ビショップがいなくなると白が適時に Bg5 で露骨に釘付けをかけてくるからである。例えば 7.Be2 O-O 8.O-O d6 と進んだとき 9.Nxc6 から 10.Bg5 で釘付けにされると、黒はキング翼の陣形をひどく弱めずにこの釘付けを振り払うことができない。例えば 10…Qd7 11.Bxf6 または 10…h6 11.Bh4 g5 という具合である。

 5…Bb4 に変わる最も有力な手は 5…Nxe4!? である。このポーン取りは 6.Nxe4 なら 6…Qe7 で駒を取り返せるので成立する(7.Bd3 なら 7…Nxd4、7.Qd3 なら 7…d5)。しかしこれもまた展開に劣る側からの不当なポーンのかすめ取りの例である。黒はこのような危険なポーン取りを正当化できるだけの駒が十分に活動していない。白は 6.Nxe4 Qe7 7.f3 d5 8.Bb5! と指せばよく、8…Bd7 9.O-O dxe4 10.Bxc6 bxc6 11.Re1 または 11.fxe4 で優勢になる。黒のクイーン翼のポーンはがたがたになっているけれども、キング翼にキャッスリングするのは手数がかかりすぎるのでたぶんクイーン翼にキャッスリングしなければならない。

6.Nxc6

 白はeポーンに対する圧力に耐えられなくなった。6.Bg5 で自分も釘付けにすることはできるが、6…h6 で釘付けをはずされる(7.Bxf6 Qxf6 は黒がよく働く双ビショップを持ちまだキャッスリングしていないので自分のキング翼ポーンの進攻がそれほど危険でないので黒が有利である)。6.Qd3 と 6.f3 はあまりに形が悪かったり陣形を弱めたりで良くない。クイーンはd3よりも良い地点があり、キング翼ビショップの斜筋を邪魔すべきでない。そして 6.f3 は 6…d5! で、主手順の 7…d5(後出)よりも白の中央が強い攻撃にさらされる。というのはここで 7.exd5 と取るとe3の地点にもうポーンで守ることのできない厄介な空所が残されるからである。

6…bxc6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(134)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 もし黒ルークがa1でなく活動性に劣る2段目にいれば一般に白の勝つ可能性は大きくなる。図134はそのような局面でどのように指し進めるのかという例である。

 図134
シェロン、1923年

 白の手番ならばもちろん 1.Kd4 Rd7+ 2.Kc5 Re7 3.Kb6 で簡単に勝つ。しかし黒の手番では次のような面白い手段で引き分けになる。

1…Kf6+

 意外なことに黒キングはポーンから遠ざからなければならない。1…Kd6+ は次のような手順で負けてしまう。2.Kd4 Ke6 2…Rd7 は 3.Kc4 Rc7+ 4.Kb5 Rd7 5.Kb6 である。この手順中 4…Rc5+ なら 5.Kb4 で白が勝つ。3.Kc5 Ke5 4.Kc6! これで黒は手詰まりに陥っている。例えば 4…Ke6 なら 5.Kb6、4…Ke4 なら 5.Kd6、最後に 4…Re6+ なら 5.Kd7 Rd6+ 6.Kc7 である。

2.Kd4 Rf7!

 このようにf列で新しく防御態勢を整える。この列がe列よりも都合が良いことがまもなく分かってくる。2…Ke6 は 3.Kc5 で、2…Rd7+ は 3.Kc5 Rf7 4.Kb6 で負けることは既に分かっている。

3.Kd5

 3.Kc5 は 3…Kf5 4.Kb6 Rf6+ から 5…Rf7 で引き分けである。黒は手詰まりに陥ることはない。

3…Kf5 4.Kd6 Kf6!

 黒は気を付けなければならない。4…Rf6+ は 5.Ke7 で負けてしまう。

5.Kc6 Kf5 6.Kc5 Kf4!

 絶対手である。6…Kf6 又は 6…Rc7+ は 7.Kb6 でたちまち白の必勝形になる。

7.Kb6 Rf6+ 8.Kc7 Rf7+ 9.Kc6 Kf5

 白キングは黒を手詰まりに陥れることのできる急所のb6とe6の地点に同時に進出できないので何も進展を図れない。

(この節続く)

2013年09月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(069)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 5.Nxc6 bxc6 6.e5 Qe7 7.Qe2 Nd5 8.c4 Ba6

 白はこの戦型を改良することができる。しかし黒は …d7-d6 または …f7-f6 と突いて白の中原に挑み …Qb4+、…Nf4 それに …Nb4 のような手で白の展開を混乱させることができるので適切に対処できる。そして 1.e4 e5 の布局では異例だけれども、黒はこの戦型ではクイーン翼ビショップを防御の駒として持っている限り安全にクイーン翼にキャッスリングすることができる。

 5.Nxc6 から始まるこの変化が攻撃的という事実からすれば、諸刃の剣でもある。白のより安全で棋理に合った手段は黒の次の手にもかかわらず 5.Nc3 である。

5…Bb4!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(133)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 しかし図131で黒キングがもっと悪い位置にいれば次のトロイツキーのスタディのように白が勝てる。

 図133

 白の勝つ手順は次のとおりである。1.Kf4 Kf2 2.Ke4 Ke2 3.Kd4 Kd2 4.Kc5 Kc3 4…Rc1+ は 5.Kb4 Rb1+ 6.Ka3 で黒は 7.Rd8+ が受からなくなる。5.Rc8! Rxa7 6.Kb6+

(この節続く)

2013年09月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(068)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ここで黒は 5…Bb4 と指せるので、選択肢を保持することがいかに大切かがまもなく明らかになる。黒が既にビショップをc5に出していたら、もちろん貴重な1手をかけてまたビショップを動かす気にはならない。しかし 5.Nc3 Bb4 のあと黒は白のeポーンがまた当たりになっているので(白のc3のナイトがこのビショップによって釘付けになっているので)わずかな主導権を少しだけ長く楽しむことができる。

 この黒のわずかな主導権のために白が他の5手目を探すのは当然のことである。eポーンをおとなしく守る代わりに、攻撃的に守ることができるだろうか。

 明らかに 5.e5? は 5…Nxe5 のために駄目である。しかし白はまず 5.Nxc6 と取ってから 6.e5 と突くことができる。一方は駒取りでもう一方は当たりというようにどちらの手も強制なので、黒は従わなければならない。

 さらに、黒は 5…bxc6 と取れば(5…dxc6 のあとのクイーン交換を避けるため)、6.e5 のあとナイトをどこに逃がすかという面白くない選択にさらされる。e4に逃げれば守られていないので、白に展開の手で攻撃されて手得される。例えば 7.Qf3! Nc5 8.Bc4 または 7…Ng5 8.Qg3 という具合である。ナイトがd5に逃げてもさらに攻撃にさらされる。例えば 7.Bd3 d6 8.exd6 cxd6 9.O-O から 10.Be4! となる。

 6.e5 のあと黒が生き延びるためには 6…Qe7! と指さなければならない。これはなかなか指せない手で、黒がしぶしぶ指す類の手である。黒クイーンはe7でキング翼ビショップの展開を妨害し、それによりキング翼キャッスリングを何手かの間遅らせる。しかし 6…Qe7! のあと白のeポーンは大きな圧力を受けている(7.Bf4 d6 8.Qe2 Nd5 または 7.f4 d6)。白は思い切った6手目を 7.Qe2 によってのみ正当化できる。この手は 6…Qe7 が黒の展開にもたらすのと同じ不快な効果を白の展開にもたらす。また 7.Qe2 は黒に好調に 7…Nd5 と指させることになる。このナイトは白に重大な結果をもたらさずに簡単にどかせることはできない。例えば 8.c4 Ba6(cポーンを釘付けにした)9.f4? Qb4+ となれば 10.Nc3 には 10…Nxc3、10.Bd2 には 10…Qxb2、10.Nd2 には 10…Nxf4 で黒の戦力得になる。

(この章続く)

2013年09月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(132)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 この種のエンディングでは黒キングはg7またはh7にいるのが一番良い。そうすれば白には勝ちの可能性が全くなくなる。

 図132

 例えば図132では白は次のように何もできない。1.Kf5 Ra2 2.Ke5 Ra1 3.Kd5 Ra2 4.Kc5 Ra1 5.Kb6 Rb1+ 6.Kc6 Ra1

キングがポーンを守ると敵ルークのチェックによってたちまち追い払われてしまう。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(330)

「Chess」2013年8月号(4/5)

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タリ記念大会(続き)

 2回目の休養日に入った時点で向かうところ敵なしの感のあるナカムラは、6戦して4½ 点で首位を走り、4点のゲルファンドとそのあとに続く3½ 点のカールセンとマメジャロフが追っていた。「Silence Therapeutics」社の支援を受ける男は第7回戦で最も近い敵との対戦で、第8回戦の天敵カールセンとの対戦を前に差を広げておきたいのはやまやまだった。

H.ナカムラ – B.ゲルファンド
第7回戦

 スベシュニコフ戦法の典型的な不均衡な局面で、黒がb3のポーンを取り返したところである。双ビショップと動けるaポーンに直面して、単純化が白の脳裏に浮かんだはずである。そして 29.Rxb3 Rxb3 30.g4! a4(30…fxg4 31.Bxe4 a4? は 32.Nb6 で不可)31.Nxf5 Bxf5 32.gxf5 a3 33.Bxe4

となれば十分反撃が効く。しかしゲルファンドは既に時間が非常に少なくなっていて、ナカムラは性格もあるのだろうがあまりにも楽観的にそれにつけ込みたがった。

29.Nb6? Rxb1 30.Rxb1 Be6 31.Bf1 Bd4

 f2-f3 突きでの単純化を防ぎながら、誰が双ビショップを持っているのかを強調した。

32.Rb5 Kf7 33.Nec4

33…Kg7!

 この手は道理に合わないように見えるかもしれないが、黒は 33…Kf6? 34.Nxa5! Nxa5 35.Rxa5 Bxc5 36.Rxc5 Rxb6

で白が引き分けに逃げるのを防がなければならなかった。

34.Nd6

 黒の最後の手のために 34.Nxa5?? は 34…Na7 35.Rb1 Bxc5 でミイラ取りがミイラになる。

34…Kf6 35.Na4?

 これまでの指し手が指しすぎだったことを認めた形だが、この手による単純化は黒をやりやすくさせるだけである。35.Kg2 の方が良く、35…Bxc5 なら 36.Rxc5 Rxb6 37.g4! でやれる。

35…e3!

 単純化、それも黒の側からで、ゲルファンドが中盤戦後半で攻撃を始める。

36.fxe3 Bxe3+ 37.Kg2 Bd5+ 38.Kh3 Rxb5 39.Bxb5 Ne5!

 白キングはかなり望ましくない地点に追いやられ、ここで黒は残りの全軍をあげて捕まえる気である。

40.Nc3?

 これはさらに輪をかけた決定的な悪手だった。40.c6? は 40…Ng4 41.c7 Bg5 のあと 42…Nf2# で詰みになるが、40.Nb6! Bf3 41.Ndc4 ならゲルファンドが 41…Nxc4 42.Bxc4 Kg5 に想到してもまだ勝負に踏みとどまることができただろう。

40…Bf3 41.Be2 Bxe2 42.Nd5+

 42.Nxe2 Bxc5 43.Nb5 a4 なら詰まされることはないが、aポーンで勝負がつく。

42…Kg5! 43.Nxe3

43…Ng4

 黒は限られた戦力にもかかわらず攻撃を続けている。43…Bf3!? 44.Ndxf5 Ng4! でも同じく決まっていた。

44.Kg2

 これは見込みのない手だが、44.Nxg4 は 44…Bf1# で詰む。

44…Nxe3+ 0-1

 45.Kf2 なら駒を取り返すことができるが、45…Nc4 46.Kxe2 Nxd6 47.cxd6 Kf6

で自明なポーン収局になるだけである。

 ナカムラは最終戦の前の試合でカールセンにまたつぶされて差を縮めることができなかっただけでなく、最終戦でモロゼビッチにも負けて地すべり的に順位を落とした。

******************************

(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(067)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 4…Bc5 5.Nb3 Bb6 6.a4

 一見aポーンによる無造作な攻撃はどうしようもなく素朴に思える。初心者の選手は a2-a4 から Ra3 や h2-h4 から Rh3 の手段でルークを戦いに投入することにより試合の非常に早い段階でルークを使おうとしがちである。しかし可愛そうなルークは3段目で捕まり敵駒の一斉攻撃にさらされるのが普通である。初心者は試合の早い段階ではルークを1段目に置いておくことを学ぶ。

 しかしここでは a2-a4 突きが意味を持つまれな例である。黒が自分のポーンをa5に進めて a4-a5 突きを防げば、b5の地点にちょっとした空所を作ることになる。もう …a7-a6 と突くことができないのでこの地点はポーンにより守ることができなくなっている。

 もっと安全な手段は 6…a6 突きである。そのあとは白の戦略を完全に見ることになる。白は 7.Nc3 と指し、黒がキング翼ナイトを展開した後 Nd5 から Bg5 と指す。白はd5でのナイト同士の交換は歓迎である。なぜならeポーンで取り返しそのあと-ここが要点だが-Ra3 または a4-a5 から Ra4 で陣地の広さで有利になるからである。

 広さの優位とは一方が他方よりもポーンを突き進めて途中の相手の駒を押しのけることである。白は例えば 6…a6 7.Nc3 Qf6(f2での詰みの狙いがある)8.Qe2 Nge7 9.Nd5! Nxd5 10.exd5+ Ne7 11.a5 Ba7 12.Ra4 から Re4 または Rf4 でもっと陣地が広くなる。

 これもまた布局での変わった戦略だが、Nb3 からの手得やaポーンの進攻などいくつかの利点がある。白の陣形の感覚をつかむためには気楽な試合でこの局面を試してみる価値がある。

 黒は次のように白の展開に自分のクイーンで対抗するかもしれない。

 b)4…Qf6 4…Bc5 5.Be3 から始まる手順で 5…Qf6 は堅実な手であることを見た。ここでは良い手だろうか。普通はクイーンを試合のこんなに早い段階で展開するのは勧められないが、ここでは利点がある。黒のクイーンはいつかはg6の地点に行き、そこで白のクイーン翼に圧力をかけ白のキング翼ビショップの展開を妨げる。例えば 4…Qf6 5.Nb3 Qg6 となれば、白のeポーンを当たりにしているだけでなく白のビショップをgポーンの守りから離れられなくしている。

 しかし白には 4.Nb3 よりも良い手がある。4…Qf6 で黒陣に弱点ができていないだろうか。c7の地点に着目すれば、きっと 5.Nb5! という強手を見つけることができるだろう。黒は屈辱的にクイーンを引いたりキングを寄せたりしてc7の地点を守りたくはないはずである。…Bc5 から(白がf2の地点を守ったあとで)…Bb6 と指すことによりc7の地点を守ることができる。しかし白が Be3 と指したあと黒のc7の地点の問題は残ったままである。例えば 5…Bc5 6.Qe2 Bb6 7.N1c3 Nge7 8.Be3 という具合である。

 c)4…Qh4 これがスコットランド試合を咎めるための最も大胆なやり方である。白のeポーンは即刻標的になっていて、駒で守ろうとすると 5.Nc3 Bb4! 6.Qd3 Nf6 というようにごちゃごちゃになる。しかし白が進んでeポーンを犠牲にすれば、強力な攻撃を行なうことができる。例えば 5.Nb5(また黒のc7の問題に照準を合わせている)5…Qxe4+ 6.Be2 となれば、黒は 6…Qe5 では 7.f4 でクイーンがc7に利かなくなるので 6…Kd8 でc7の地点を守らなければならない。6…Kd8 7.O-O a6 8.N1c3 Qe8 9.Nd4 の局面は、白が展開でかなりの差をつけ素通しe列を活用する見込みもあるので非常に有望である。

 4…Bc5、4…Qf6 および 4…Qh4 の着想はみな 4…Nf6 の強力さの要素を持っている。しかしこのナイト跳ねは他の手と違い欠点が何もない。すなわち要所をどこも弱めず重要な選択肢を何も放棄していない。攻撃的でかつ融通性がある。

5.Nc3

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(131)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 ルーク+ルーク列ポーン

 ポーンがルーク列にありルークがそのポーンの前にいる場合白の勝つ可能性は限られている。その理由は明らかで、キングがポーンを片側からしか助けられないからである。しかし判定の難しい局面が色々あるのでこのエンディングを詳しく調べていくことにする。

 図131
ベルガー、1922年

 これは恐らく白にとって最も都合の悪い局面である。ポーンが7段目にいてルークがそのポーンの守りに縛り付けられたまま身動きできなくなっている。黒キングが悪い位置にいる場合にだけ白は勝ちを期待することができる。しかしそれもこの局面では望めない。ともかく指し手を進めてみよう。

1.Kf7 Kf5

 2.Rg8+ を狙われているので黒はほとんど選択の余地がない。

2.Ke7 Ke5 3.Kd7 Kd5 4.Kc7 Kc5 5.Rc8

 5.Kb7 は 5…Rb1+ から 6…Ra1(+) で何にもならないので本譜の手は最後の試みである。

5…Rxa7+ 6.Kb8+ Kb6 で引き分けである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(066)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ここで白には前述したポーン陣形の有利さがあり、その有利さを得るために戦力を犠牲にする必要がなかった。そしてキング翼ビショップをc4に展開し迅速にキャッスリングする用意ができている。eポーンが攻撃された時には Nc3 で守る予定である。そしてもう一つのビショップを g5、f4 または e3 に出したあとは Qd2 から Rad1 と指すことができ、中央に形良く駒を集めることができる。黒陣を揺さぶるためには f2-f4 突きから e4-e5 または Nd5 と指すことができる。

 黒にはこの作戦に対処する三とおりの手段がある。まず、自分の駒を迅速に展開することにより白駒に対抗することができる。次に、狙いをかませることにより白の展開に干渉しようとすることができる。最後に、白がeポーンを都合よく守ることができる前にその弱点につけ込もうとすることができる。

4…Nf6!

 この手には展開、いやがらせ、そしてeポーンの弱点へのつけ込みの各側面が一番良く組み合わされている。また、非常に激しい指し方になるので、選手によっては以下のような主要な代わりの手を考えたほうが良いかもしれない。

 (a)4…Bc5 この手は昔から最もよく指される手だった。駒をさらに展開しつつ、白ナイトを当たりにすることにより先手をとっている。このナイトがb3に下がれば、黒は1手かけて当たりにされたビショップを引かなければならないが、少なくとも中央の危険なナイトをd4の地点からどかせたことになる。白がナイトを引かずに 5.Nxc6 と取れば黒の意に沿ったことになり、5…bxc6 から …d7-d5 突きで黒に好形の中原を与える。

 5.Be3 の方が有望で、黒の展開の手に白も展開の手で対抗し、6.Nxc6! bxc6(6…Bxe3?? 7.Nxd8)7.Bxc5 という狙いもある。しかし 5.Be3 は黒に 5…Qf6! 6.c3 Nge7 と指す余裕を与える。そうなれば黒は白の2小駒の展開に対し3小駒が展開していて少し展開で優位に立ち、差を広げる態勢にある。白はd4に圧力を受けているので円滑に展開するのが難しい。例えばビショップをd3に展開するとクイーンの利きをふさぎ 7…Nxd4 でポーン損になるのでそう指せない。またd4のナイトも守勢のc2以外はポーンの形を乱されるので動かせない。例えば 7.Nb3 はまずい手で、7…Bxe3 8.fxe3 で黒がe5の地点に拠点を得て、黒のナイトにとって貴重な好所になり白キングの周りも弱体化する。最後に、白はビショップをe2または(例えば 7.g3 と突いてから)g2に展開すると、黒に 7…d5! と突かれて中盤戦で有利に事を運ぶことを期待していたポーン中原がなくなるので、これもできない。(それに白が 7…d5 と突かせないために 7.Bc4 と指せば、黒は 7…Ne5 で先手が取れる。)

 要するに 5.Be3 は理にかなっているが黒に余裕を与えすぎる。

 黒の 4…Bc5 を罰しようとする最善の手は比較的変わっていて、aポーンを突くことになる。それが 5.Nb3! Bb6 6.a4! である。白のaポーンはa5まで突き進む狙いで、黒のビショップを盤上から追い払う。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(130)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 先に進む前に古典の局面をもう一つ知っておかなければならない。それは図130のフィリドールの局面である。黒キングがポーンの前に立ちはだかっている。

 図130
フィリドール、1777年

 このような局面は通常は引き分けであるが一、二の例外もある。フィリドールはこの種のエンディングでどのように守るべきかを明らかにした。

1…Ra6!

 黒の作戦は単純である。黒は先ず敵キングの前進を止め、チェックには自分のキングをe7とe8の間で往復できるようにする。もし白が自分のルークをg6に置けば黒はルークを交換して引き分けのポーン・エンディングにする。白は進展を図るためにはポーンを進めなければならない。その時黒はすぐに自分のルークを上に上げて白キングを後ろからチェックする。

2.Rb7 Rc6 3.Ra7 Rb6 4.e6

 いずれこの手を指さなければならない。白の狙いは 5.Kf6 である。

4…Rb1!

 白キングがe6の地点に行けなくなったので黒ルークは静かに3段目から立ち去ることができる。白キングが後ろからのチェックを有効に防げないので引き分けは明らかである。

 図130で白の手番ならば 1.Kf6 で勝とうと試みるかもしれない。しかし 1…Re1! という正しい受けにより成功しない。フィリドールは 1…Rf1+ 2.Ke6 で負けと誤解していたが 2…Kf8! で黒に負けはない。他の基本的な局面を調べた後でこの変化をまた採り上げる。

 本節でのエンディングはポーンの前に黒キングがいないという条件でポーンの位置によって分類するのが一番良い。

(この節続く)

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布局の探究(64)

「Chess Life」1993年2月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

良いのか面白いだけなのか

 こんなシナリオを考えよう。あなたにとって興味のある戦法で強豪GMが新手を用い快勝した試合を本誌が掲載したとする。あなたは自分もその新手を用いて「自動得点」をあげられるように次の試合が始まるのが待ち遠しい。この新手を用いるべきなのだろうか。

 それは一般にその新手が本当に良い手なのか、それとも「面白い」手であるだけなのかによる。どうしたらこれを事前に見分けることができるだろうか。残念ながら先見はあと知恵よりもずっと難しい。それでも役に立つ指針はいくつかある。

 まず、自分である程度検証することである。その戦法にとって戦略的に理にかなっているだろうか。相手の応手に調査しなければならない戦術の狙い筋があるだろうか。その新手が信用できて着想を理解できるのでなければ、それを指そうとしてはいけない。それでもたった一人で真実を解き明かすのは難しいだろう。危険性を最小限にするためには(好機を犠牲にするけれども)、「創案者」が再び用いるのを待った方がよいかもしれない。1950年代と1960年代は「フィッシャー監視」が良いやり方だった。彼の全盛期だけでなくいつでもボビー・フィッシャーは布局の創造的な最高の探検家として認められていた。この調査の過程で彼は多くの面白い着想を発見し、それらを少なくとも一度は進んで試していた。それでもこれは自動的に「フィッシャーのお墨付き」を意味していたわけではなかった。例えば1962年ストックホルム・インターゾーナル第13回戦でのR.フィッシャー対E.ジェルマン戦ではペトロフ防御(C43)に対して疑問とされる古い手をあえて指した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.d4 exd4 4.e5 Ne4

 そしてここで普通の 5.Qxd4 の代わりにフィッシャーは 5.Qe2!? と指した。

 意表をつかれたブラジルのIMは相手に立ち向かわないで、覇気のない 5…Nc5 6.Nxd4 Nc6 7.Nxc6 bxc6 8.Nc3 Rb8 という手を指し、9.f4! Be7 10.Qf2 d5 11.Be3 Nd7 12.O-O-O のあとフィッシャーがすぐにキング翼の多数派ポーンの威力見せつけ30手で勝った。それでもフィッシャーは自分の5手目をほめず、次のペトロフ防御戦(8年後!)では 3.Nxe5 に回帰した。明らかに彼は定跡の重要な応手の 5…Bb4+ のあと白が 6.c3、6.Nbd2 またはシュタイニッツの 6.Kd1 のどれを指そうと黒が全然問題ないことを確信していた。

 従うべき原則は、強豪GMが新着想を2度用いるときは一般に自分の着想を信じているということで、あなたもかなり確かな根拠が持てるということである。たった1回ではあまり信頼すべきでない。

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開放試合の指し方(065)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ゲーリング・ギャンビット 5.Bc4

 この手で白からのより直接的な狙いが特にf7の地点に対して生じる。例えば 5…Be7? は 6.Qd5! Nh6 7.Bxh6 に見舞われる。しかし黒は安全に2個目のポーンを取ることができ、注意深ければ中盤戦を楽しむことができ、収局はもっと楽しくなる。

 5…cxb2 6.Bxb2 のあと白のビショップはキング翼を機銃掃射しているように見える。しかし 6…d6! のあと白ビショップは威力をそがれ、黒が優勢になる。黒はf7の地点に対する一斉攻撃に …Qd7 から …Nd8 で迎え撃つことができる。例えば 7.Qb3 には 7…Qd7! で、白の攻撃ビショップを 8…Na5! で交換することを狙う。白のもう一つのビショップについては黒は、キング翼ビショップをg7の守りからはずす前に …Nf6 と指してb2-g7の斜筋をふさぐように注意しなければならない。しかし …Nf6 から …Be7 と指してしまえば、落ち着いてキング翼にキャッスリングし白の黒枡ビショップに …Nd7 から …Bf6 で対抗する用意をすることができる。

 6…d6! に対する白の最善の応手は 7.O-O で、黒駒にじっと圧力をかけ好機の e4-e5! 突きで素通し列を作ることに期待をかける。しかし黒はf7の地点に対する危険な攻撃をまたも 7…Be6! で無効にする。白が 8.Bb5 と手をかけていられないのは、2ポーンを損していて黒がキャッスリングし戦力得に物をいわせる前に何らかの意味のある攻撃をしなければならないからである。さらに白は 5.Nxc3 の戦型のように 8.Bxe6 fxe6 9.Qb3 Qd7! 10.Qxb7 でポーンの1個を取り戻していることさえできない。なぜなら 10…Rb8! で白クイーンが逃げた後b2のビショップが取られるからである。

 代わりに白は一時的により活動的な自分の駒のために 10.Ng5 Nd8! 11.f4 から f4-f5 突きまたは e4-e5 突きで局面の開放に努めなければならない。しかし黒は 11…Nf6 12.f5 e5! または 12.e5 dxe5 13.fxe5 Nd5 で局面を比較的閉鎖的に保ち、2ポーン得がいつかは物をいうことになるはずである。

 もちろん黒にはゲーリング・ギャンビットに対する他の手段がある(4…d3、4…d5 または 4…Nf6 のようにギャンビットを拒否するなど)。しかしこのギャンビット受諾手順には「ギャンビットを咎める最善の手段は受諾することである」という古くからのチェスの金言がよく表れている。

 それでは 4.Nxd4 に戻る。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(129)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 それでは500年ほど前から知られルセナの局面と呼ばれる古典の例から検討を始めよう。

 図129
ルセナ(?)、1497年(?)

 これはポーンが7段目まで進み自分のキングがポーンの直前にいて敵キングが遮断されている時の典型的な勝ちの局面である。勝ちは次のような特徴的な駒捌きで得られる。

1…Ke7 2.Re1+

 明らかに黒ルークはh列から離れることができない。もし離れれば白ルークがそこを占め Kh8 が可能になる。2.Rf7+ Ke8 3.Rf8+ Ke7 は白キングが盤端に押し込められたままなので何にもならない。

2…Kd7

 2…Kf6 は 3.Kf8、2…Kd6 は 3.Kf8 Rf2+ 4.Ke8 Rg2 5.Re7 から 6.Kf8 で黒が早く負ける。

3.Re4!

 どうしてルークがここへ行くのかはすぐに明らかになる。3.Kf7 は 3…Rf2+ 4.Kg6 Rg2+ 5.Kf6 Rf2+ 6.Ke5 Rg2 でキングがf6に戻らなければならないので意味のない手である。

3.Re5 でも白は勝てる。しかし 3…Kd6 4.Kf7 Rf2+ 5.Ke8 Kxe5 6.g8=Q となり本譜の手順よりも難しい。

3…Rh1

 黒は手待ちをしなければならない。3…Rf2 は 4.Kh7 でも 4.Rh4 から 5.Kh8 でも負ける。

4.Kf7 Rf1+ 5.Kg6 Rg1+ 6.Kf6 Rf1+

 白の狙いは 7.Re5 から 8.Rg5 だった。6…Kd6 は 7.Rd4+ から 8.Rd8 又は 8.Rd5 で負ける。

7.Kg5 Rg1+ 8.Rg4!

 これがルークを4段目に浮かせた理由である。チェックは全て止みポーンがクイーンに昇格する。

(この節続く)

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開放試合の指し方(064)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ゲーリング・ギャンビット

 この手でスコットランド試合から派生したゲーリング・ギャンビットになる。白はポーンを犠牲にしてd列とc列を素通しにし、f3のナイトはそのままにしてe5かg5を経由してf7の地点の襲撃に用いることができるようにする。白は主要な注意をキング翼に向けるかもしれないが、中央とクイーン翼に注意をもっと注ぐことにより黒駒を守勢にさせたままにする戦略をとる用意もしている。例えばルークをc1とd1に、ナイトをd5に置けばc7の地点に対して定型の攻撃が整う。黒がcポーンを突けばdポーンが標的になる。黒駒にこれらの弱点を守らせることにより、白は黒の防御が持ちこたえられなくなることを期待している。

 4…dxc3 に対し白は 5.Nxc3 と取ったあと Bc4、Qb3 そして Bg5 で調子よく戦線を構築することができる。例えば 5…Bc5 6.Bc4 d6 7.Bg5! となれば黒にとって大きな問題になる。c5の黒ビショップはc7の地点が標的となるのを防いでいるが、…d7-d6 突きによってキング翼から締め出されているのでもうそちらでの防御には使えない。だから 7.Bg5 のあと黒は 7…f6 か 7…Nf6(この手は 8.Nd5 を招く)を選択してポーンを弱体化させることになる。黒は 7…Nge7 と指すことによりこれらの弱体化の手を避けることができるが、8.Nd5 で黒駒が守勢に立たされることになる。

 これらの局面や似たような局面で白のd5のナイトは絶好の手とされる。この理由で黒の最善の受けは(5…Bc5 の代わりに)5…Bb4 でc3のナイトがd5に跳べる前に釘付けにするかc3のナイトを取ってしまうことであると考えられている。通常なら黒は白のナイトをd5に来させないということだけで良いビショップを切りたくはない。しかし黒はポーン得しているので譲歩してもかまわない。それにビショップをナイトと交換することは、まったく理不尽というわけではない。

 黒の正確な受けの典型的な例は 5…Bb4 6.Bc4 d6 7.O-O Bxc3!(さもないと 8.Nd5!)8.bxc3 Be6 である。この手法は白の最も危険な小駒の白枡ビショップとクイーン翼ナイトとを無力にする。白のもう一つのビショップは確かに良い駒ではあるが、望むようなさえぎるものの無い斜筋に位置しているわけではない。また、白のルークはd列がd6の黒ポーン(隣のcポーンによって守られている)によってふさがれているので都合のよい標的がない。

 黒はキング翼にキャッスリングすることができれば、白がポーンを取り返したとしても好調な展開になる。例えば 8…Be6 のあと白が 9.Bxe6 fxe6 10.Qb3 と指せば、黒は 10…Qd7! 11.Qxb7 Rb8 12.Qa6 Nge7 13.Bg5 O-O で駒を最大限の効率で動員することができる。そのあとは …Rb6 から …Rfb8 で素通し列を支配するか …Ng6-f4 でキング翼を攻撃する。

 このような結果の見方は二とおりある。一つは白はもっと冒険的でなく、つまり 4.c3!? でポーンを犠牲にしないで指すべきであるということで、もう一つはもっと冒険的に指してポーンを犠牲にすべきであるということである。例えば 4…dxc3 のあと白は 5.Bc4?! と指すことができる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(128)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク(続き)

 図128

 最後に図128では白が手番で 1.Rh6+ から 2.Rh7+ で相手のルークを取って勝つ。もちろんこれらの例外的な局面は単独ではなくもっと複雑なエンディングの中で現れるのが普通である(サーベドラの局面を参照)。しかし学んでおく価値はある。

 読者は最も単純そうに見えるエンディングでもいかに複雑な場合があるかがすぐに分かってくるだろう。しかしこれらの基本的な局面はもっと複雑な局面に取り組む前に完全に理解しておかなければならないのである。

 本書のかなりの部分をこれらのエンディングに費やす理由がここにある。多くのチェス選手がこのような基本的な部分の勉強をいささか退屈であると思っているかもしれない。しかしこの知識は上達するためには必要不可欠なのである。

 通常は守る側のキングがポーンの前にいないで攻める側のキングがポーンの近くにいる時だけ勝ちについて検討する価値がある。これとは別に勝ちか引き分けかについて何らかの一般的な指針を挙げるのは難しい。それは駒の配置がほんのわずか違っても局面の結果が変わることがよくあるからである。だから色々な違いを理解するために基本的な局面を完全に学んでおくことがなおさら重要になってくるのである。

 最後にこれから個々の局面を見ていく前にほとんどのルーク・エンディングに当てはまる一般的な考慮事項を二つほど述べておこう。

 第一にパスポーンはキングで守り、敵のキングはできるだけ遠くに追いやり通常はルークを用いて列または段で遮断するのが良い。

 第二にルークはポーンの背後に回るのが一番良い。これはポーンの前進を最も効果的に助けるか、自分の動き易さを最大限に確保しながらポーンの前進を妨げるためである。ルーク・エンディングにおけるこれらの重要な原則は以降のページでもしばしば適用される。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(93)

「Chess Life」2005年7月号(3/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 GMアルシャク・ペトロシアン
黒 GMライナー・クナーク
エレバン、1988年

1.d4 e6 2.c4 f5 3.Nf3 Nf6 4.g3 d5 5.Bg2 c6 6.O-O Bd6 7.Ne5

 これは次の手の解説で示す戦術に基づいた面白い着想である。

7…O-O 8.Bf4

 黒はここでd7の地点に駒を展開することができない。なぜなら 8…Nbd7 なら 9.Nxc6 で白のポーン得になり、8…Bd7 なら 9.Ng6 hxg6 10.Bxd6 で白が黒枡の席巻のため明らかに有利な局面になるからである。

8…Nh5

 黒の最善の応手は 8…Ng4 だった。

9.e3! Nxf4 10.exf4

 白は当然g列を閉鎖しておく。

10…Nd7 11.Nd2 Nf6

 ここでもよくある作戦のクイーン翼でのポーンの侵略が見られる。

12.c5 Bc7 13.b4 Bd7 14.Qe2 Be8 15.Nd3 Bd7 16.Nf3 h6 17.Nfe5 Be8 18.Qe3 Kh7 19.Rab1 Rg8 20.a4 a6

 白はこの局面で同時に三つのことをする必要がある。それらはクイーン翼で攻撃を続け、e6のポーンに圧力をかけ、キング翼での黒の攻撃を食い止めることである。

21.f3 Nd7 22.Rfe1 Nf8 23.Bf1 Qf6 24.Nf2 g5 25.Nh3 Bd8 26.b5 axb5 27.axb5 Rg7 28.Ra1 Rc8 29.Ra7 cxb5 30.Rb1 b6 31.cxb6 Bxb6 32.fxg5 hxg5 33.Nxg5+ Kg8 34.Rxg7+ Qxg7 35.f4 Qa7 36.Nef3 Qa2 37.Re1 Bd7 38.Qe5 Bd8 39.Qd6 Qa7 40.Nxe6 Bxe6 41.Rxe6 Qb8 42.Qxd5 1-0

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開放試合の指し方(063)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4

 白の3手目でスコットランド試合に決まる。この手は黒に中央に進出したばかりのポーンをほぼ清算させる。黒のe5のポーンは別のポーン、例えば …d6 突きで支えることによってのみ維持することができる。しかしこの手は 4.dxe5 dxe5 5.Qxd8+ Kxd8(5…Nxd8 6.Nxe5!)から 6.Bc4 または 6.Nc3 で白が形を決めることができるので好まれていない。白はいずれクイーン翼にキャッスリングし展開で大きな差をつける。

3…exd4 4.Nxd4

 白はナイトで取ることにより駒の一つを、いくつかの要所(b5、c6、e6そしてf5)を見張る中央の最も働ける地点に進めた。このナイトは黒のクイーン翼ビショップに最良の地点に来させないので既に黒に問題を突きつけている。そして黒はこの強力なナイトを取り除くことができても、4…Nxd4? 5.Qxd4 で中央にはるかに強力な白駒のクイーンを来させることになるだけである。

 しかし黒には中央での白の戦略に対処する策がある。それを調べる前に、白の4手目で別の激しい手を見てみることにする。自然で当然の 4.Nxd4 の代わりに白は 4.c3!? で試合をもっと戦術的な方向に持って行くことができる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(127)

第4章 ルーク・エンディング

4.2 ルーク+ポーン対ルーク

 ルーク・エンディングは全てのエンディングの中で最も良く実戦に現われ、それゆえにエンディングの理論のうち特に重要な部門を成していることを既に述べた。このため読者は以降の節に格別の注意を払わなければならない。見かけ上の単純さとは裏腹にルーク・エンディングは実際は間違いなく指すことが非常に難しく、一見しただけではほとんど気付かないような妙手を含んでいることも良くある。

 図127

 基本的な局面を詳しく調べる前に、盤上にポーンがなくともルーク対ルークで勝ちがある例外的な局面を少し考えてみよう。もちろんこういう状況はキングが詰みの包囲網に捕らわれた時かルークを一本道で取ることができる時にしか起こらない。例えば図127では黒は手番であっても負ける。それは詰みを防ぐには自分のルークを捨てるしかないからである。黒は白キングがe6、ルークがa6、黒キングがe8、ルークがf5にいる場合もやはり負ける。

(この節続く)

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開放試合の指し方(062)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス

 1.e4 で始まる布局の中でスコットランド試合は中央を支配しようとする白の最も純粋な例である。白の戦略は黒のeポーンをすぐに直接攻撃して、黒に中央における重要な要のポーンを交換させることである。この布局の戦略は他の 1.e4 e5 の布局の戦略とは異なっている。例えばルイロペスと4ナイト試合では白は駒で黒のeポーンを取ろうとする。2ナイト防御とジオッコピアノでは白は 1…e5 突きによって弱体化した地点、特にd5、f5それにf7につけ込もうとする。しかしスコットランド試合では白は黒のeポーンを清算、すなわちそのポーンを白のdポーンと交換させて、白が自分の駒のために中央を開放し黒のもう中央に足場がないことから利益を得るかもしれないようにする。

 上図は最初の4手後のポーン陣形を表わしている。

 このポーン陣形は白が少し有利である。なぜかって?それでは両者が駒をどこに配置するかを考えてみよう。白には中原にポーンがあるが黒にはない。これにより白はeポーンによって守られたd5の地点を容易に占拠することができる。d5のナイトが理想的で、そこから黒のc7のポーンを攻撃し、キング翼のe7とf6の地点を監視し、一般に黒の悩みの種になる。d5の地点はビショップまたはルークにとっても非常に好所になる。f5の地点もまた白の駒にとって役に立つ拠点で、特にナイトにとってはeポーンによって支えられた強力な拠点からキング翼を監視することができる。

 そのうえこれらの拠点は黒が …c7-c6 または …g7-g6 と突いてくるまで安全に維持することができる。もしこれらの手のどちらかが指されれば、白は戦略を変更して黒の新たにできた弱点を利用し始める。例えば …c7-c6 突きはd6の地点を最後に守っていたポーンがその守りを放棄することになる。これは白が黒の中央をふさぎ黒のビショップの展開を邪魔しながら、その地点を占拠しようとすることができることを意味する。あるいはもし黒が …d7-d6 および …c7-c6 と突けば、dポーンが隣のポーンによって守ることができず白駒の自然な標的になる(Bf4、Rad1)。

 この白にとって有利な性質のポーン陣形は、黒が自陣を解放し、守勢で骨の折れる中盤戦になりやすいのを避ける課題を抱えていることを意味している。

(この章続く)

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