2013年08月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(126)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 最後はまたレティの興味深いスタディである。

 図126
レティ、1929年

 白キングが戦場から遠く離れているので白は引き分けしか望めない。そのためには危険な連結パスポーンの少なくとも一つを取らなければならない。しかし最も重要なのはどちらのポーンを取るべきかということである。レティの正解にその答えがある。

1.Rg8!

 別案の 1.Rf8 は次のような巧妙な手順で負けになる。1…f3 2.Rf4 b4 3.Rxg4 b3 4.Rg1(4.Rg5+ Kd4 5.Rg4+ は 5…Ke5! 6.Rg5+ Kf4 で負ける。この手順中 5…Kd3 は 6.Rb4 Kc2 7.Rc4+ Kd2 8.Rd4+ Ke2 9.Re4+ だめである)4…f2 5.Rf1 b2 6.Kg7 Kd4 7.Kf6 Kd3! で黒が勝つ。8…Ke2 が黒の狙いで 8.Rb1 には 8…Kc2 から 9…b1=Q がある。この変化と本譜の手との違いはまもなく明らかになる。

1…g3

 唯一の可能性である。1…f3 は 2.Rxg4 から 3.Rf4 でfポーンも取られる。1…Kd4 は 2.Rxg4 Ke3 3.Rg5 でbポーンが取られる。

2.Rg4 b4 3.Rxf4 b3 4.Rf1

 両方のポーンを止める唯一の手である。

4…g2 5.Rg1 b2 6.Kg7 Kd4 7.Kf6 Ke3

 8…Kf2 で勝つ手を狙っている。しかし白には用意の受けがある。

8.Rb1! Kd3 9.Rg1! で引き分けである。

 黒キングはこれ以上近寄れない。白がこのように引き分けるためにはポーンが少なくとも4列離れていなければならない。

 ルークが複数のポーンと戦わなければならない面白い局面をさらに挙げることもできるがそれは本書の目的を離れてしまう。それよりも割合簡単なルーク・エンディングのうち恐らく最も重要な部門であるルーク+ポーン対ルークに移ろう。

(この節終わり)

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開放試合の指し方(061)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜(続き)

 急に白の方がキング翼で自分の狙いによりはずみが出てきた(Bxf4 が最も重要な狙いである)。黒は退却すればキング翼が反撃にさらされるので攻撃にかけなければならない。例えば 20…Nh5 と引くと 21.Nxh5 Qxh5 22.fxg4! Bxg4 23.Rf6! となる。

20…Be6 21.Bxf4 exf4 22.Qxf4

 白はポーン得し、中央のe5にあった黒の拠点もなくした。白はポーン得がものをいう収局のことだけを考えているわけではない。中盤で e4-e5 突きから Bc2+ でさっさと詰ませることも考えている。このあとは殺戮戦になった。

22…Bd8 23.Bc2! Bg5 24.e5+ Kg7 25.Qe4 gxf3 26.Qxf3 Qg4? 27.Qxg4 Bxg4 28.Bf5! h5 29.Bxg4 hxg4 30.Nf5+ Kg6 31.Nxd6 Rh8? 32.Nxf7 黒投了

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(125)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 このみごとな分析から色々な結論を引き出すことができる。連結3ポーンに対して白キングがそれらの近くにいてポーンが4段目より先に進んでいなければ白が勝つ。1個のポーンが6段目にいる場合は黒が引き分けにできる可能性が高くなる。1個のポーンが7段目にいる場合は通常は白が引き分けを目指さなければならない。

 図125

 例えば図125で黒の手番ならば次のように黒が勝つ。1…f3+! 2.Rxf3 h1=Q+ 3.Kxh1 Kxf3 4.Kg1 g2 白の手番ならば 1.Kh1! で引き分けにできる。以下 1…f3 1…Kh3 なら 2.Rf3 2.Rxf3 Kxf3 でステイルメイトである。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(329)

「Chess」2013年8月号(3/5)

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タリ記念大会(続き)


ヒカル・ナカムラはほかの誰よりも多く勝ちほかの誰よりも多く負けるという偉業を達成した。「負けてさえいなければ・・・」

 最初の休息日を前にしてナカムラはカリャーキンのグリューンフェルト防御を大局観であっさり粉砕して2/3で首位に加わった。その勢いは第4回戦で不運なカルアナをナイドルフで2連敗させたときも続いていた。ナカムラの連勝は次の回でロシア選手権者のドミトリー・アンドレイキンの堅実なクイーン翼インディアン防御に屈して終わった。しかしそこからまた黒番でさっそうと盛り返した。

V.アーナンド – H.ナカムラ
第6回戦、ルイロペス

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 g6

 このスミスロフ戦法はアーナンドにとって意外だったに違いない。モスクワでの対局にあたりナカムラはスミスロフとスパスキーの指す戦型に触発されたと認めた。

4.O-O

 簡明第一である。問題は 4.d4 exd4 5.Bg5!? だったが、イワン・ソコロフらがここで黒の新たな手段を見つけた。詳細に関心のある人はソコロフ著「The Ruy Lopez Revisited」を参照するとよい。

4…Bg7 5.c3 a6

6.Bxc6

 これは面白い判断である。6.Ba4 d6 7.d4 の方が普通で、7…Bd7 のあと最終戦のカルアナ対アンドレイキン戦に移行する。その試合は遅延シュタイニッツ防御の手順からこの局面になり、8.h3 Nf6 9.Re1 O-O 10.Nbd2 Re8 11.Bc2 Qe7 12.Nf1 Qf8 13.Ng3 Rad8 14.d5 Ne7 15.Nh2 Bh6 と進んで黒がキング翼で反撃を開始できた。

6…dxc6 7.d4 exd4 8.cxd4 Ne7 9.h3 O-O 10.Nc3 h6

11.Qb3?!

 アーナンドは古典的な布局の指し方により少し優勢になった。しかしここから当てのない指し方をし始める。11.Bf4 のあと好機に Be5 と指せば、黒は白の中央に対する十分な反撃に欠いていた。一方実戦の手はナカムラにこの重要な陣形上の着想を防ぐ余裕を与えた。

11…g5! 12.Rd1 b6 13.a4 a5

 10手目では黒の作戦はそれほど明らかでなかった。しかしここでは白が良い作戦を立てるのが課題である。ナカムラは明らかに駒をキング翼に集中しようとするところで、アーナンドはキング翼インディアン型の局面に移行する以外何も見つけられなかった。

14.Be3

 おそらくアーナンドは 14.h4?! のような過激な手段さえ考えただろう。しかし 14…g4 15.Ne5 Be6 16.Qc2 f6 17.Nd3 Qxd4 18.Nf4 Qe5 となって白にはポーンの十分な代償がない。ナカムラはすぐに 14.Ne5!? とやって来る手段も読んでいた。これも紛糾させることを期待する白の別の手段である。

14…Ng6 15.d5 c5 16.Nb5

 白は d5-d6 突きで中央を粉みじんにすることを期待している。しかし先に襲いかかるのは黒の方である。

16…g4! 17.hxg4 Bxg4

18.Bd2

 かなり守勢的な手だが、対局中も対局後もいろいろな解説者が指摘したように、アーナンドは2011年ロンドン・クラシックでナカムラに派手にうっちゃりを食らったことを思い出していたのだろう。そのときは黒は劣勢の局面から典型的なキング翼インディアン防御のキング翼攻撃で勝った。しかしここでは直接攻撃を避けようとしても白がしのげない。たぶん大きく一息入れて 18.d6!? と指すべきだったのだろう。そして 18…Bxf3 19.gxf3(19.dxc7? は 19…Qh4 20.gxf3 Qh3 で …Nh4 が必殺の狙いになる)19…Qh4 がかなり怖そうだが、白はキングをe2に退避させるのが良いかもしれない。

18…Qd7 19.Rac1

 対局後ナカムラは 19.Re1 c4!?(それでも黒は 19…c6 と行くものかもしれない)20.Qe3 f5 21.e5 Bxf3 22.e6 Qxd5 23.Nxc7 Qb7(ここで 23…Qd6!? で 24.Nb5 に 24…f4 の方が良さそうである)24.Nxa8 Bxg2 25.e7

という手順を示し、「泥試合で難解だがタリの精神にかなっている。だからこちらのように指す方が良い」と的を射た解説をした。

19…c6

 ナカムラとしては二重ポーンを解消しe4のポーンを標的にしたい。これには何も悪いところはないが、19…Rae8 20.Re1 を交換しておいてから 20…c6 とやっていった方が良かったかもしれない。

20.dxc6

 白はルークがまだd1にいるので 20.Na3!? と指した方が良かったかもしれない。そして 20…Rae8(単純に 20…Rfe8 21.Nc4 Rab8 と指すのが黒の最善の針路だろう)21.Nc4 Rxe4 22.Nxb6 Qd6 と進めば局面はかなり混沌としたままだろう。もっとも 23.Nc4 Rxc4!? 24.Qxc4 Bxf3 25.gxf3 Bd4 26.Qf1

のようなことになれば白のキング翼が危なそうである。

20…Qxc6 21.Bc3

 白陣は主として黒ビショップの強力なにらみによりどう見ても不安な状態になっていたが、単純化を図るのは結局のところキング翼の防御が崩壊することになる。

21…Bxf3 22.gxf3

22…Rad8!?

 黒は陣容の強化を続けている。22…Nf4 ならアーナンドは 23.Rd6 Qc8 24.Bd2! Ne2+ 25.Kg2 Nxc1 26.Bxc1 という大局観に基づく交換損を予定していた。そうなれば白は詰まされないどころか駒の働きが良くなる。

23.Rxd8?!

 少し厳しい指摘のようだが白は 23.Bxg7! Kxg7 24.Kf1 とやらなければいけなかったかもしれない。もちろん世界チャンピオンは途中で 23…Nf4 が怖かったのだろうが、24.Nd6! Ne2+ 25.Kh2 Nxc1 26.Qc3!

となれば、冷徹な機械は 26…Rxd6 27.Bxf8 Kxf8 28.Qxc1 で十分反撃が効くと指摘している。

23…Rxd8 24.Rd1 Rd7!

 d列の支配を争っている。ナカムラは白が盤上からルーク同士だけでなくクイーン同士を消去しにきた場合の収局を正しく見通していた。

25.Rxd7

 この手はちょっとした落とし穴を避けている。25.Bxg7? と取ると 25…Qe6! で 26.Qc2 Qh3! 27.Rxd7 Nh4 のようなタリ式の黒が全駒を犠牲に勝つことになっていたかもしれない。

25…Qxd7

26.Qd5

 白の指したかった手ではないが、…Qh3 が白からの大きな狙いになっていて、26.Bxg7 も 26…Kxg7(26…Qh3? には 27.Nd6! がある)27.Qd5 Qxd5 28.exd5 Kf6 で非勢の局面を改善することにはならない。

26…Qxd5! 27.exd5 Bxc3 28.bxc3 Ne5

 白はいいように指し回されて、ここでは黒のパスポーンとナイトが白のそれらよりいくらか優っているので白の負けの収局になっている。

29.Nd6 Kf8

30.Kh2

 この手を批判することはたやすいが、30.f4 Nd3 31.Nc8 Nxf4 32,c4 Ke8 33.Nxb6 Kd8 もほとんど似たようなことになっていただろう。ここで白は 34.d6 でナイトを助けることができるが、例えば 34…Nh5 35.Nd5 Kd7 36.Ne3 Kxd6 37.Nf5+ Ke6 38.Nxh6 Nf4

で黒がはるかに働きの良い駒のおかげで楽に勝つはずである。

 代わりに黒ナイトが先手でd2に来るのを防ぐために 30.Kh1!? としても、30…Ke7! 31.Nf5+ Kf6 32.Nxh6 Nc4 でしょせん同じことで、黒のクイーン翼のポーンがすぐにパスポーンになって勝負が決まる。

30…Ke7! 31.Nc8+

 ナイトがわなにかかるのは承知である。31.Nf5+ Kd7 32.Nxh6 にも 32…b5! という大問題がある。

31…Kd7 32.Nxb6+ Kc7 33.f4 Nf3+ 34.Kg2

34…Nd2

 不運な白馬用のおりを維持した。しかし 34…Ne1+! 35.Kf1 Kxb6 36.Ke1 c4 ならはるかに簡単に勝っていただろう。

35.Na8+ Kb7 36.d6

 アーナンドはdポーンを犠牲にしてナイトを救うことができるが、試合は救えない。

36…Kc6 37.Nc7 Kxd6 38.Nb5+ Kd5 39.Kg3 Kc4 40.Nd6+ Kxc3 41.Nxf7 c4

42.f5

 この局面を最初に見た時、42.Nd6 でとても勝てそうにないのでナカムラがポカっていると確信した。しかしこの米国人が対局後の記者会見で指摘したように、黒には 42…Kd3! 43.f5 c3 44.f6 c2 45.f7 c1=Q 46.f8=Q Qg1+ 47.Kh3(47.Kh4 Qh2+ 48.Kg4 Qg2+ は白キングに適当な枡がない)47…Qh1+ 48.Kg3 Nf1+!

というしゃれた手順があり、49.Kg4 Qg2+ 50.Kh4 Qg5+ 51.Kh3 Qh5+ 52.Kg2 Qh2+! 53.Kf3 Nd2+ 54.Kg4 Qg2+

で受けなしになる(ナカムラ)。これは長い試合の終わりでもナカムラの読みのすごさを示している。

42…Kd4 43.Nd6 Ke5 44.Nb5 Kxf5 45.f3 h5 0-1

******************************

(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(060)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜(続き)

 白は穏やかに布局を指すことにより、キング翼で黒に問題を突きつけた。ナイトに対する攻撃から安全に抜け出せないのは黒の方である(12…Qc7 なら 13.Bxf6! のあと Ng3 から Qh5)。この黒の展開の障害は、白が f2-f4 と突いてf列を素通しにしてf6に対する圧力を強めることができればさらに重大になる。これが白が Kh1 と指して黒ビショップににらまれているb6-g1の斜筋を空けた理由である。

12…g5

 f2-f4 突きはこれでなくなった。しかしこの手は黒キングの囲いをさらに弱体化させた。白は f2-f3 から d2-d4 と突いてd列を素通しにできる。また、黒のこの手で生じた「空所」につけ込んで、ナイトをg3からh5またはf5に送り込むこともできる。(「空所」とはもうポーンによって守ることのできない地点のことである。)

13.Bg3 Nh5 14.d4! Nf4!

 14…Nxg3+ は黒のキング翼の受けに良く働いている駒をなくし白の攻撃力を減らすことにはならないので、実戦の手の方がはるかに良い。14…Nxg3+ に白はhポーンで取り返し(…Bg4 に f2-f3 と突けるようにするため)、キング翼を Bb3、c2-c3、 Qd2 そして f2-f4 で襲う用意をする。

15.c3 Qf6

 黒は 15…Nxe2+ 16.Qxe2 exd4 でポーン得することができる。しかしそれは白兵戦の用意ができていない方面の戦いを始めることになる。17.Rad1 dxc3 18.Bxd6 または 17…Qf6 18.e5! のあと白の展開に優る駒が中央で暴れまわる。

16.f3! Kh7 17.Bf2 Rg8

 黒は中央を開放された時の危険を最小限にする手はずを取りながら注意深く閉鎖的に保った。e5でのポーンの交換は白がまだd列をあまり活用できないので恐れていない。また、Nxf4 も …gxf4 のあとg列で戦いを進めることができるので恐れていない。

 しかし白も同様に注意深かった。dポーンを強化したし、数手前で指摘したh5とf5の空所につけ入る用意もしている。白は Ng3 と指した後 Qd2 から Rad1 でd列で何かすることを考えている。そしてe5でのポーン交換のあと Qd6! で自分の駒のために動く余地を作る。黒はキング翼で無理攻めを始める。

18.Ng3 g4? 19.Be3! Qh4 20.Qd2

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(124)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 ルーク対3個以上のポーンのエンディングは実戦の領域に属する。我々の興味を引くのは図124のようにルークが3個の連結ポーンと対峙している場合である。

 図124
レーナー、1887年

 この局面で黒の手番ならば既に手詰まりに陥っていて次のようにすぐに負けてしまう。1…Kh7 1…Kh5 なら 2.Kf4 Kh6 3.Kxf5 2.Rg5 Kh6 3.Rxf5 h2 4.Rf1 g3 5.Kf3

 しかし白の手番では何も決定的なことができないように見える。例えば 1.Kf4 Kh7 2.Rg5 Kh6 白がfポーンを取ると 3…h2 で負けるのでこのポーンは取れない。白が 3.Rg8 Kh7 4.Ra8 と続けても黒は次のように指す。4…Kg7! 4…Kg6 はだめで 5.Rf8! Kh6 6.Rf6+ から 7.Rxf5 で白が勝つ。5.Ra6 Kf7! 5…Kh7 は誤りで 6.Kg5! Kg7 7.Ra7+ から 8.Kf4 そして 9.Ra5 で白が勝つ。5…Kg8 と 5…Kf8 も 6.Ra5 で白が勝つ。6.Rh6 Kg7 7.Rh5 Kg6 8.Rg5+ 8.Rxf5 は 8…h2 9.Rg5+ Kh6 10.Rg8 Kh7 で黒が勝つ。8…Kh6 9.Rg8 Kh7 10.Ra8 Kg7 で以前の局面に戻ってしまった。[訳注 9.Rg8 の時既に同形三復で引き分けです。]黒は白ルークがf8に来ないように、あるいは後に出てくるように変化によってはg8に来ないように見張らなければならない。

 しかし以上のことにもかかわらず白先手ならば勝つことができる。コパエフは次のような卓越した分析を行なった。

1.Ke2

 白の意図はわざと一手損して同じ局面で黒の手番とすることである。いずれ分かるように黒はこれを妨げることができない。だから図124はどちらの手番でも白の勝ちなのである。

1…Kh5

 ポーンを動かすわけにはいかない。

2.Kf2 Kh4

 2…Kh6 は 3.Ke3 で図124の局面で黒の手番となる。2…f4 は 3.Rh8+ で本譜と同じになる。

3.Rg7 f4

 3…Kh5 は 4.Ke3 Kh6 5.Rg8 でまたしても白の目的が達成される。実は現在の局面でさえ長い間引き分けであると考えられていた。しかしコパエフの次の着想がそれを勝ちに変えた。

4.Rh7+ Kg5 5.Kg1!

 これが気付き難い妙手だった。白キングはポーンの前進を永久に防ぐためにh2の地点を目指している。そうなれば黒は …f3 と指さざるを得ず Kg3 が決め手となる。

5…Kf5

 5…f3 は白にとってもっと簡単で 6.Kf2 Kf4 7.Rf7+ から 8.Kg3 で良い。

6.Kh2 6…Ke4

 以前の指し手はもはや効果がない。6…Kg5 は 7.Rf7! である。6…Ke5 は 7.Rg7 Kf5 8.Rg8! で 8…f3 が余儀なく 9.Kg3 で白が簡単に勝つ。

7.Rg7 Kf3 8.Rg8!

 手詰まりに陥った黒はポーンを諦めなければならない。

8…Ke2

 8…g3+ は 9.Kxh3 Kf2 10.Ra8 である。

9.Rxg4 f3 10.Re4+ Kf1 Kg3

 11.Kxh3 は間違いで 11…f2 で引き分けになる。

11…f2

 11…h2 は 12.Kxh2 f2 13.Rf4 から 14.Kg2 で良い。

12.Rf4

これで白の勝ちである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(059)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜(続き)

 これは最後にはほとんど対称になりそうな局面でわずかな有利を得るための白の最善の選択である。白は 6.Nxe5 の狙いに黒が 5…Nxf3+ とナイトを交換してくれることを期待している。そうなれば白はクイーンで取り返して手得になり、あとでクイーンが強力なg3の地点に移動してg7の地点をにらむことになるかもしれない。5…Nxf3+ とナイト同士を交換することにより黒は白をさらに展開させるが自分の展開を促進させることにはならない。

5…Bc5 6.O-O

 これは(6.Nxe5 と比べて)比較的穏健な手だが、5.Nxd4 から生じそうな一連の駒交換よりは冒険的である。白は中央を乱すことなく O-O、d2-d3 そして Bg5 と展開することを望んでいる。あとで中央でナイト同士の交換になればたぶん白の展開の方に役立つだろう。

6…O-O 7.d3 c6!?

 黒は白にだけ狙いがあるような劣った局面を受け入れる気はない。この手で黒は …d7-d5 突きを準備すると共に敵の駒をd5に寄せつけない。これは普通の手の 7…d6 と比較すればその重要性が分かる。7…d6 8.Nxd4 Bxd4 9.Bg5 でf6の地点に強い圧力をかける 10.Nd5 が狙いになる。(黒は 8…exd4 と取ることはできるが、9.Ne2 でビショップの働きが大きく落ちる。)

8.Nxd4

 黒のeポーンはもう4手もの間目に見える支援もなく浮いたままである。しかし隠れた手段により Nxe5 を止めていて、ここでは 8…d6! があり 9.Nc4 なら 9…b5 でビショップとナイトを両当たりにして黒の駒得になる。9.Nf3 なら白は駒損にならないが 9…Bg4! で白の危険な局面になり、クイーンがf3の地点を守っていなければならないのでキング翼のもつれを解消するのが難しくなる。例えば 10.Qe1? なら 10…Bxf3! で黒の戦力得になるし、10.Be3 Bxf3 11.gxf3 Nh5 なら 12…Qf6 または 12…Qh4 でg2、f3およびf4の地点に黒の強い圧力がかかる。

8…Bxd4

 続けて …d7-d5 と突くつもりならば 8…exd4 と取る手もあり得る。例えば 8…exd4 9.Ne2 d5 10.exd5 Nxd5 となれば黒のc5のビショップはあとでd6の地点で働き出す。

9.Ne2! Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 d6 12.Kh1!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(123)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 ポーンが孤立している場合それらがあまり進んでいなければ通常はルークが勝つ。実戦からの参考になる局面が図123である。

 図123
レーナー対ロートシルト、1881年

 実戦は 1.Rxh7? Kd5! 2.Rf7 Ke4 3.Kc5 f3 4.Kc4 Ke3 5.Kc3 f2 6.Kc2 Ke2 7.Re7+ Kf3! と進んで引き分けに終わった。白の初手が致命的な失着だった。危険なのはhポーンでなくfポーンである。白は次のように指せば勝つことができた。

1.Rf8!

 または 1.Rd8+ Ke5 2.Kc5 でも良い。

1…Ke5 2.Kc5 Ke4

 2…h5 3.Re8+ Kf5 4.Kd4 h4 なら勝つための最も簡明な手は 5.Kd3 から 6.Ke2 である。

3.Kc4 Ke3 4.Kc3 h5

 4…f3 は 5.Re8+ Kf2 6.Kd2 h5 7.Rh8 Kg2 8.Ke3 から 9.Rg8+ で白の簡単な勝ちである。

5.Re8+ Kf2 6.Kd2

 6.Rh8 は 6…Ke2 の後また 7.Re8+ と指さなければならないので無駄である。7.Rxh5 と取ると 7…f3 で引き分けになってしまう。

6…h4 7.Rh8 Kg3 8.Ke2 h3 9.Rg8+

この後 10.Kf2 で白の簡単な勝ちである。

(この節続く)

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布局の探究(63)

「Chess Life」1992年12月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の長期的犠牲(続き)

Ⅱ 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.g3 d5 4.Bg2 dxc4 5.Nf3 c5 6.O-O Nc6 7.Qa4 cxd4 8.Nxd4 Qxd4 9.Bxc6+ Bd7 10.Rd1 Qxd1+ 11.Qxd1 Bxc6 12.Nd2

 これが最善手である。白はクイーン翼の展開に取りかかる一方cポーンも当たりにする。黒の「普通」の類の手はせいぜいひれ伏して引き分けにしてもらわなければならない局面になるので気が進まない。

 (1)12…b5 13.a4! Be7(13…a6 14.axb5 Bxb5{14…axb5? 15.Rxa8+ Bxa8 16.Nxc4! bxc4 17.Qa4+}15.Qc2 Rc8 16.b3! c3 17.Nc4! Bb4 18.Ba3!)14.axb5 Bxb5 15.Nxc4! O-O 16.b3 Rfc8 17.Ba3! Bxa3 18.Nxa3 Ba6 19.Nc2 ヤルタルソン対H.オウラフソン、レイキャビク、1986年。そしてGMヤルタルソンによるとここで不利を最小限にとどめる黒の最善の手段は 19…Rd8 20.Qe1 Bb5 である。

 (2)12…c3?! 13.bxc3 O-O-O 14.Qb3 Bc5 15.Nf3! Ne4 16.Nd4! Rxd4!? 17.cxd4 Bxd4 18.Rb1 Bxf2+ 19.Kf1 h5 20.Bf4 H.オウラフソン対ヤルタルソン、レイキャビク、1984年。黒は犠牲にした戦力に対して十分な代償を得ていない。

 (3)12…Be7?! 13.Nxc4 O-O 14.b3 Rfd8 15.Qe1 Rac8 16.Ba3 ゴレロフ対サーロフ、ソ連、1982年。黒は少し戦力損で、それに見合うものがない。

 ということでまたしても唯一の正しい手法はキング翼攻撃である。

12…h5! 13.Nxc4

 これ手はソ連の理論家Y.ネイシュタットの推奨した改良手の始まりである。次の変化は白がhポーンを突き進めてh列を素通しにするのを防ごうとすることに関係している。

 (1)13.h4 Rd8 14.Qc2 Bc5 15.Nxc4 Ng4 16.e3 O-O ネイシュタットはこの局面を互角とみなした。明らかなことは黒の小駒が白の弱体化したキング翼を向いていることで、f3の弱点は最も目立つ。

 (2)13.h3 Rd8(13…h4?! 14.g4)14.Qc2 Bc5 15.Nxc4 Ne4 16.Ne3 Bb6 17.b4 h4!? 18.b5 Bd5 19.g4 O-O 20.Nd1 Rc8 21.Qb2 1988/89年通信戦のヨーケル対J.ウォルフ戦では黒がここで 21…Nxf2!? 22.Nxf2 f5 と勝負に出た。J.ウォルフはこの局面を「形勢不明」と的確に判定している。

13…Rd8 14.Qc2 h4 15.Bf4!

 ネイシュタットの手順の意味がここにある。クイーン翼ビショップが迅速に展開しただけでなく、キングの守りにも役立っている。

15…hxg3 16.Bxg3

 図5

 ネイシュタットはこの局面を白が少し優勢と判断し、GM A.ソコロフも Encyclopedia of Chess Openings E 改訂版でこの評価と同意見である。私の考えでは黒の攻撃の可能性は本物で、ほぼポーン半個に当たるわずかな戦力損の代償に近い。

 それでは図3の正しい評価とは何なのか。私の感じでは黒はもっと普通の手順(すなわち 7…Bd7 からの手順)よりも理論的に悪くない。だから黒で早く主導権を得ることに努める選手なら満足できるはずである。

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開放試合の指し方(058)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜
白 N.ガプリンダシビリ
黒 A.クシュニール
女流世界選手権戦16番勝負、リガ、1965年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5

 4ナイト試合の均衡のとれた性格とは相容れない重要な手は 4.d4 である。4…exd4 と取ってくれば白は別手順によりスコットランド試合に移行させることができる(次章で取り上げる)。

 また、白と黒のどちらにも 4.d4 のあと普通のスコットランド試合を避ける手段がある。

 黒の方法は 4.d4 Bb4!? である。これは 5…Nxe4 の狙いで白の中原にすぐに圧力をかけている。5.d5 Ne7 6.Nxe5 d6 のあと黒は …Nxe4 でポーンを取り返して順調である。すぐに 5.Nxe5 と取ると局面はもっと複雑になるがそれでも黒は 5…Nxe4 あるいはもっと意欲的な 5…O-O でeポーンを取るのを遅らせて …Re8 または …Qe7 を意図して互角にできるかもしれない。

 白がチャンスをひねり出す方法は 4.d4 exd45.Nd5 と指すことである。ベオグラード・ギャンビットと呼ばれるこの手は、黒が 5…Nxe4 6.Qe2 f5 7.Ng5 で2個目のポーンを受諾すれば大変な乱戦になる。黒は 5…Be7 からキャッスリングする方がはるかに安全である。例えば 6.Bf4(c7を取る狙い)6…d6 7.Nxd4 Nxd4 8.Qxd4 Nxd5 から …Bf6 となればほぼ互角である。そしてもし白がビショップ対ナイトの優位を得るために Nxe7 とわざわざ取ってくれば、…Qxe7 のあといつか白はeポーンを守るのが難しくなる。

4…Nd4 5.Ba4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(122)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 キングが盤の片側に遮断されていてポーンがはるかに進んでいる時は非常に面白い局面が現われる。それが次の例である。

 図122
モラベック、1924年

 白の手番なので黒はポーンを止めることができないから絶望的なように見える。しかし黒は続けざまの詰みの狙いから逃れることができない白キングの不都合な位置につけこんでこの状況を救うことができる。

1.b7

 1.a7 も同様の変化で以下 1…Ra2! 2.Kd1(2.Kf1 は 2…Kf3)2…Kd3 3.Kc1 Kc3 4.Kb1 Ra6 5.b7 Rb6+ 6.Kc1 Rh6! 7.Kd1 Kd3 8.Ke1 Ke3 9.Kf1 Kf3 10.Kg1 Rg6+ 11.Kf1 Rh6 で白は詰みの狙いから逃れることができない。驚嘆の引き分けである。

1…Rh2!

 ルークの動ける唯一の地点である。1…Rb2 は 2.Kd1 Kd3 3.Kc1 Kc3 4.a7 Rh2(4…Ra2 は 5.b8=Q)5.Kd1 Kd3 6.Ke1 Ke3 7.Kf1 Kf3 8.Kg1 Rg2+ 9.Kh1 で失敗である。1…Ra2 は 2.Kd1 Kd3 3.Kc1 Kc3 4.b8=Q Ra1+ 5.Qb1 で白の勝ちである。

2.Kf1

 2.Kd1 Kd3 3.Kc1 Kc3 4.Kb1 なら 4…Rb2+ 5.Ka1 Rb6 6.a7 Ra6+ 7.Kb1 Rb6+ 8.Kc1 Rh6! 又は 4…Rh1+ 5.Ka2 Rh2+ 6.Ka3 Rh1 7.Ka4 Kc4 8.Ka5 Kc5 で白キングは引き返さなければならずどちらも引き分けである。

2…Kf3 3.Kg1 Rg2+

 3…Rb2? はだめで 4.a7 Rb1+ 5.Kh2 Rb2+ 6.Kh3 Rb1 7.b8=Q Rh1+ 8.Qh2で白の勝ちとなる。しかし 3…Rh8 は可能である。

4.Kh1 Rg8 5.a7 Rh8+ 6.Kg1 Rg8+ 7.Kf1 Rh8

で白は進展を図ることができない。以下は例えば 8.Ke1 Ke3 9.Kd1 Kd3 10.Kc1 Kc3 11.Kb1 Rh1+ 12.Ka2 Rh2+ 13.Ka3 Rh1 14.Ka4 Kc4 15.Ka5 Kc5 で 16.Ka6 なら 16…Ra1# で詰んでしまうから白キングは引き返さなければならない。

(この節続く)

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開放試合の指し方(057)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ここに慎重さが実を結んだ。まったくの互角の局面がまたもや対称形に近づき、引き分けに向かっているのはほぼ確実である。クイーンがないことは両者とも敵キングの詰みを目指した攻撃を行なうことが非常に難しく勝敗は収局での優劣で決まることを意味している。しかしここではビショップ、ルーク、それにキングについても大した優劣はない。白のc列に二重ポーンがあることは確かだが、容易に攻撃の対象にはならない。さらに白のクイーン翼の4ポーンは黒の4ポーンと拮抗していて、両者とも非常手段を用いなければパスポーン(収局で有利)をつくることができない。

 実際この局面はマスターのチェスでほとんど常に引き分けへの序曲となっている。戦いが続いた数少ないグランドマスターの試合の1局では 10…d5 11.Be3 Bd6 12.O-O O-O 13.Rfe1 Bf5 14.Bd3! Bxd3 15.cxd3 Rfe8 16.Bd2 と進んだが、すぐにルークが全部交換になって引き分けが合意された。

 教訓 4ナイト試合は非常に拮抗しているので、優れた選手でさえこれを用いて定常的に勝つことを期待することはできない。ポーランドの偉大なグランドマスターのアキバ・ルビーンシュタインは 4…Nd4 を創始したとよく言われている(正しくないらしい)。しかし彼はついには 5.Nxd4 でどうしても引き分けの局面になるということで 4…Nd4 を放棄して 4…Bb4 に戻った。これがたぶん引き分けを避ける黒の最善の手段である。一方白は 4…Nd4 に 5.Nxd4 と応じないことにより局面を激しくできる。

(この章続く)

2013年08月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(121)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 既に見てきたように味方のキングの助けのないはるかに進んだポーンはルークによって動けなくされたり取られたりする。ここにそのもう一つの例がある。

 図121

 黒の手番ならば 1…f3 又は 1…g2 で黒が簡単に勝つ。白の手番ではルークは自分の働きだけで黒ポーンを破壊できる。1.Rg6! Kd7 2.Rg4 g2 2…Ke6 なら 3.Rxf4 から 4.Rg4 である。3.Rxg2 Ke6 4.Rg5! Kf6 5.Ra5 でポーンがさらに進むことができないので白の簡単な勝ちである。

(この節続く)

2013年08月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(92)

「Chess Life」2005年7月号(2/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御石垣戦法 [A94]
白 ティグラン・ペトロシアン
黒 ビクトル・コルチノイ
レニングラード、1946年

1.d4 e6 2.Nf3 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 d5 5.O-O Bd6 6.c4 c6 7.b3 O-O

 今日では(黒側の)経験豊かな選手は 7…Qe7 と指すことにより黒枡ビショップ同士の交換がもっと難しくなることを知っている。

8.Ba3

 黒はビショップ同士の交換を強いられるので、白は黒のe5の地点をさらに弱めるという作戦の第一段を達成した。

8…Bxa3 9.Nxa3

 a3のナイトは遊んでいるように見えるけれども、実際にはc2-e1-d3経由でe5の地点に行く途中である。

9…Qe8

 黒は定型のキング翼攻撃作戦を続けている。

10.Nc2 Qh5 11.Qc1

 この手は …g7-g5 突きを防いでいる。

11…Ne4

 この意欲的な手は …g7-g5 突きを助ける目的である。欠点は白が f2-f3、e3-e4 と突く用意ができると、黒がこのナイトを引かなければならないので手損することである。

12.Nce1 g5 13.Nd3 Nd7 14.Nfe5

 白は続けざまに目標を達成している。黒枡ビショップを交換し要所のe5の地点を完全に制圧することに成功して、これから中央でポーンを突き進める用意ができた。

14…Kh8

 e2のポーンは次の変化が証明するように取るわけにはいかない。14…Qxe2 15.f3 Nxe5(e4のナイトが下がると黒のクイーンが捕まる)16.Nxe5 Qd2 17.Qxd2 Nxd2 18.Rfd1 ナイトの逃げ場所がない。

15.f3 Nd6 16.e4

 石垣における白の夢(そして黒の悪夢)が完璧に実現した。

16…Nf7

 黒はポーンを得しようとすると次のように深刻な状況に陥る。16…fxe4 17.fxe4 dxe4(または 17…Nxe4 18.Bxe4 dxe4 19.Nxd7 Bxd7 20.Ne5)18.Rxf8+ Nxf8 19.Qa3 exd3 20.Qxd6 Qe8 21.Rf1

17.cxd5 Ndxe5

 17…cxd5 でも 18.Nxf7+ Rxf7 19.exd5 exd5 20.f4 で白陣の方がはるかに良い。

18.dxe5 cxd5 19.exd5 exd5 20.f4 Rd8 21.Qc7 b6 22.fxg5 Ba6 23.Nf4 1-0

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開放試合の指し方(056)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 5.Nxd4 の局面

5…exd4 6.e5

 ここで白の指す手は限られている。他の手は 6.Ne2 や 6.Nb1 だが単に 6…Nxe4 と取られたあと黒が …c6、…d5 から …Bd6 または …Be7 と楽に展開できる。

6…dxc3

 黒の指す手も限られている。f6のナイトは良い逃げ場所がない。

7.exf6 Qxf6!

 駒の取り合いが続いている限り、どちらも取れる駒が不足するようにはなりたくない。それはいす取り遊びで音楽が止まったときのようなものである。白は 6…dxc3 で始まった取り合いで後から続いている。つまり白は黒がナイトを取ったあとでナイトを取ったし、黒がポーンを取ってからポーンを取ることになる。黒はチェックで 7…cxd2+ と取ることにより取り合いを乱すことができ、白がd2で取り返したあとf6で取って取り合いは黒のポーン得で終わる。

 しかし事はそう簡単でない。7…cxd2+ 8.Bxd2 Qxf6 のあと両ビショップの分だけ白が展開で先行していて、また手番を握っている。9.O-O で白は申し分ないビショップの斜筋とe列の使いやすさとでポーン損の十分以上の代償を得ている。例えば 9…Be7 10.Bc3 Qg5 11.Re1! と進んで 11…Qxb5 と取ってくれば 12.Qg4 のあと Qxg7 から Bf6 の狙いが強力すぎて黒はお手上げになる(12…Rg8 13.Bf6![訳注 13…d6 14.Rxe7+ Kf8 で黒の方が良くなるので正着は 13.Qh4 または 13.Rxe7+ です])。同様に 11…O-O も 12.Re5! のために危険すぎて、このあと黒クイーンは自分のビショップの守りから切り離されるかもしれない。

8.dxc3

 8.bxc3 は白ポーンが3群に分かれ、8.dxc3 よりも少し弱くなる。それでも 8…c6! 9.Ba4 Qe5+ のあと局面はまだ非常に拮抗している。しかし黒は 9…d5! と指せば勝てる可能性がある。

8…Qe5+

 黒がクイーン交換の誘惑に抵抗すれば、白は 8…Bc5 9.Qe2+ Qe6 10.Bc4! としつこく迫るかもしれない。または白は 9.O-O と指して、10.Re1+ Be7 11.Qe2 の狙いで黒のキャッスリングを止めることもできる。黒が 9…O-O と指せば、10.Bxd7! Rd8 11.Qh5 Bxd7 12.Qxc5 で白の方が悪いわけがない。

9.Qe2 Qxe2+ 10.Bxe2

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(120)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 前の例は時には一見絶望的に見える局面でもはるかに進んだポーンに対してルークにはすばらしい守備能力が秘められていることを示してくれた。次の局面はやはりこれを裏付けるものである。

 図120
ケイダンスキー、1914年

 前の例と比べると黒キングの位置は良くなっている。ルークは今のところは活発でなく白のf6突きを防ぐことができない。従って黒の最初の課題はルークの位置を改善することである。

1…Rc1!

 コパエフによるともっと簡明なのは 1…Rc4+! で以下 2.Ke5(2.Kd5 は 2…Rc5+ 3.Kd6 Rxf5!、2.Kd3 は 2…Rc3+ 3.Ke2? Rc8! から 4…Kc5)2…Kc5 3.e7 Rc1 で本譜と同じになる。

2.e7

 この手が防御側にとって最も難しい手である。2.Kd5 は無害な手で 2…Rf1 3.Ke5 Kc5 となる。この手順中 3.e7 ならば 3…Rxf5+ 4.Kd4 Rf1! で良い。

 2.f6 も受けが楽な手で黒は 2…Rd1+ 3.Ke5 Kc5 4.f7(4.e7 は 4…Re1+ から 5…Kd6)4…Re1+ 5.Kf6 Rf1+ 6.Ke7 Kd5 7.Kd7 Rf6 で引き分ける。

2…Rd1+ 3.Ke5 Kc5 4.Ke6

 ここでも 4.f6 は 4…Re1+ から 5…Kd6 で易しい引き分けになる。4.Kf6 は 4…Re1 5.Kf7 Kd6 6.e8=Q(6.f6 は 6…Kd7 7.Kf8 Re6)6…Rxe8 7.Kxe8 Ke5 で引き分けになる。

4…Re1+ 5.Kd7 Rd1+ 6.Kc7

 6.Ke8 は 6…Rf1 で黒キングはd列に戻らなければならない。6.Kc8 は 6…Re1 7.f6 Kd6 8.Kd8 Ra1! で引き分けになる。

6…Re1 7.f6 Re6!

 8.Kd7 Rd1+ 9.Ke8 から 10.f7 を防ぐにはこの手しかない。

8.Kd7 Rd6+ 9.Kc8

 9.Ke8 は 9…Rxf6 で良くない。白の期待は 9…Re6 10.f7 でそれなら白の勝ちになるが黒にはそれを上回る手がある。

9…Rc6+ 10.Kb7 Rb6+ 11.Ka7 Re6!

 白は 12…Kd6 から 13…Rxe7 を防げないので明らかな引き分けである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(055)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 5.Ba4 Bc5 6.Nxe5 O-O

 ここで黒は本当に …d5 突きを狙っている。この手は白の駒とキングがいじめに会いやすいちょうどその時に中央を開放する。例えば 7.d3 d5! で 8…Qe7 の狙いができ、そのあと 9.Bf4 は 9…Bd6 にはまり(ナイトが釘付けになっているので黒が戦力得になる)、9.f4 はd4の黒ナイトが動いての開きチェックの可能性のために白は数手の間キャッスリングが考えられなくなる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(119)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 ポーンが2個になると全ては駒の配置によって決まる。ポーンが遠くまで進んでいてキングによって守られていると勝てることが多くなる。しかしポーンがせき止められていればルークが勝つ。少し例を考えてみよう。

 図119
タラシュ対ヤノフスキー、1907年

 この有益な局面はある重要な大会の試合に現れた。白には強力なパスポーンがあるがキングの助けが必要である。さもないとルークによって 1…Rf5、2…Rxg5 そして 3…Rf5 と順に取られてしまう。この局面では白キングはポーンを助けることができるのだが手順には正確さが要求される。

1.Kd4!

 以前に述べた原則に従って白はキングを進めながら同時に黒キングの接近をじゃましている。もし黒の手番だったら 1…Kc3 2.Ke4 Kc4 3.Ke5 Rg1 4.f7(4.Kf5 は Kd5 で黒が勝つ)4…Rxg5+ 5.Ke4(5.Ke6 なら 5…Rg6+)5…Rg1 6.Ke5 で引き分けになるところである。

1…Kb3

 黒はできるだけ早く自分のキングをポーンに近づけなければならない。ルークを動かしても無駄である。例えば 1…Rf5 は 2.Ke4! Rxg5 3.f7 Rg4+ 4.Ke3 Rg3+ 5.Kf2 で白が勝つ。

2.Ke5

 マイゼリスは後に 2.Kd5! の方が白にとって分かり易かったことを明らかにした。黒キングはc4に行けないし 2…Rf5+ は 3.Ke6 Rxg5 4.f7 で黒の負けになる。2…Kc3 なら 3.Ke6 Kd4 4.f7 で白が勝つ。この手順中 3…Re1+ なら 4.Kf7 5.Kd4 5.g6 Ke5 6.Kg7! でよい。

2…Kc4 3.g6

 マイゼリスによれば 3.Ke6!(次の狙いは 4.f7)の方が強い手だった。以下 3…Re1+ 4.Kf7 Kd5 5.g6 で 6.g7 が狙いとなりこれに対して 5…Ke5 又は 5…Rg1 ならば 6.Kg7! から 7.f7 で白が勝つ。

3…Re1+ 4.Kd6

 4.Kf5 は誤りで 4…Kd5! 5.f7 Rf1+ から 6…Ke6 で引き分けに終わる。この手順中 5.g7 でも 5…Rf1+ 6.Kg6 Rg1+ 7.Kf7 Ke5 8.Ke7 Rg2 でやはり引き分けである。

4…Rg1!

 実戦ではヤノフスキーは劣った 4…Rd1+ を指し 5.Ke7 Re1+ 6.Kf7 で投了しなければならなかった。本譜の手は面白い課題を突き付けている。

5.g7

 この手は絶対手である。5.f7 は 5…Rxg6+ 6.Ke5 Rg5+ 7.Ke4 Rg1! で引き分けになる。

5…Kd4

 6.f7 を防いでいる。もしそう来れば 6…Rg6+ から 7…Rxg7 で引き分けである。本譜の手に対して白は 6.Ke6 Ke4 7.Kf7 Kf5 でも 6.Ke7 Ke5 でも勝つことができない。

6.Kc6!

 狙いは 7.f7 である。6…Rg6 なら 7.Kb5 で白が勝つ。

6…Kc4 7.Kd7!

 黒が 7…Ke5 とできない隙をついている。7.Kb6 は誤りで 7…Rg6 8.Ka5(8.Kc7 は 8…Kd5 9.Kd7 Ke5)8…Rg5+ 9.Ka4 Rg1 10.Ka3 Kc3 11.Ka2 Rg2+ で引き分けにしかならない。

7…Kd5 8.Ke8

 9.f7 が防げない。

8…Ke6 9.f7 Ra1

 頓死狙いである。

10.f8=N+! から 11.g8=Q で白の勝ちである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(054)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 4…Nd4 の局面

 黒の 4…Nd4 の威力は白駒を乱す効果からきている。このナイトは白のビショップ(b5)を当たりにしているだけでなく、黒のeポーンを当たりにしている張本人のナイト(f3)にも当たっている。白が黒のナイトを取ると(5.Nxd4 exd4)b5のビショップへの当たりはなくなるが白のもう一つのナイトが当たりになる。

5.Nxd4

 これが最も安全な手法だが、どちら側にとっても負けになる間違いがいくつもあるような深刻な中盤戦になる。黒は 4…Nd4 でいくらか危険を冒しているので、白がこの局面から優勢を引き出すために危険を冒すことができるかどうかを聞くのが公平である。詰まるところ黒はどちらかのビショップを動かす前に既に展開した駒を再び動かした(…Nb8-c6-d4)。白は黒の2駒に対し3駒を展開していて、手番を握っている。白はこの手番をどう生かすことができるだろうか。

 4…Nd4 をとっちめる一番目につくやり方は、無防備になったポーンを 5.Nxe5 と取ることである。黒が 5…Nxb5 から 6…Nxe4 で戦力の互角を取り戻しにくれば、白は強く 7.Qe2! と応じる(7…Nf6? には 8.Nc6+ の開きチェック、7…d5 には 8.d3)。しかしこの変化で白がe列を利用するなら、黒も当然(5…Nxb5 の代わりに) 5…Qe7! で迎え撃つことができる。そして 6.Nf3 Nxb5 7.Nxb5 Qxe4+ 8.Qe2 Qxe2+ となれば、ナイトよりビショップの方が動きに優るので黒が収局で少し優勢になる。

 白が 5.Nxe5 と取ろうとするなら、5…Qe7 に 6.f4!? と応じる用意をしなければならない。これにより白は 6…Nxb5 7.Nxb5 d6 8.Nf3 Qxe4+ 9.Kf2 でクイーン交換を避けることができ、10.Re1 で黒のクイーンを取るか 10.Nxc7+ で黒のキングとルークを両当たりにする狙いで黒の勢いをはね返すことを狙う。そして 9…Ng4+ 10.Kg1 Qc6! 11.Qe2+ Be7 と進めば局面が非常に戦術的になり、途中 10.Kg3 なら 10…Qg6!(開きチェックの狙い)11.Nh4 Qh5 12.h3 Nf6 13.Qxh5 Nxh5+ で互角の局面になる。白は二つの罠を避けている。12.Nxc7+ Kd8 のあと 13.Nxa8 は 13…g5! 14.fxg5 Qxg5 から決定的な開きチェックがあり、13.h3 は 13…Nf6 14.Nxa8 Qxh4+!! 15.Kxh4 Ne4 から 16…Be7# で詰みになる。

 白は5手目で 5…Nxb5 を避けるためにビショップを引くこともできる。c4に引くのが最も自然に見えるが、黒にdポーンを突く手を与える。黒は堅実に 5.Bc4 Nxf3+ 6.Qxf3 d6 からビショップをe6とe7に展開して互角にできるかもしれない。あるいはもっと大胆に 5…Bc5 6.Nxe5 Qe7 7.Nf3(または 7.Nd3)7…d5! と指すこともできる。この後の方の手順で黒は犠牲にしたポーンの代わりによく働く攻撃的なビショップという形で申し分ない代償を得る(7.Nd3 d5 8.Bxd5 Nxd5 9.Nxd5 Qxe4+ 10.Ne3 Bd6 11.O-O Be6 のあと 12…O-O-O!)。

 白が試合を活気づけそれでも負ける危険性を最も低くできるのは 5.Ba4!? である。これは 5…Nxb5 と取られるのを防ぎ、黒のeポーンを取る狙いを復活させる。そしてこのビショップがまだa4-e8の斜筋上にいるので、黒は …d7-d6 と突いてeポーンを守ることもできないし、eポーンの犠牲の後続手として …d7-d5 と突くこともできない。

 黒がdポーンを突けないことは 5…Nxf3+ 6.Qxf3 となると重大になる。というのは 6…Be7? と指すと白が 7.Qg3! でeポーンとgポーンを両当たりにできるからである。黒はキング翼ビショップを展開する前に 6…c6 から 7…d6 と手をかけなければならないことになる。また、黒がeポーンを犠牲にすれば …d7-d5 と突けないことは黒の勢いを大分奪うことになる。例えば 5…Bc5 6.Nxe5 Qe7 7.Nd3 は白のビショップがc4にいる時よりも白にとってより効果的である。なぜなら …d5 突きは不正な手だし、7…Nxe4 は 8.O-O! で黒が展開で大きく遅れをとるからである(8…Nxc3 9.dxc3 Ne6 10.Nxc5 Qxc5 11.Be3)。

 この犠牲の手順における黒の最善の選択は、すぐにポーンを取り返すことを忘れることである。そして代わりに 5…Bc5 6.Nxe5 O-O と指すのが良い。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(118)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 この型のエンディングを終える前に図118に挙げた二つの有益な局面を考えてみよう。

 図118

 上側の局面で白はこのような配置に良く現れる典型的な手順で勝つ。

1.Ra5!

 白は味方のキングの助けなしに黒ポーンが6段目に進めないということを利用する。本譜の手により黒キングはポーンの片側に遮断された。白は代わりに 1.Kb7? と指してはいけない。それは以下 1…Ke5! 2.Kc6 g4 3.Rg7 3.Kc5 なら 3…g3 4.Kc4 Ke4! 5.Rg7 Kf3 6.Kd3 g2 7.Kd2 Kf2 8.Rf7+ Kg3! 3…Kf4 4.Kd5 g3 5.Kd4 Kf3 6.Kd3 6.Rf7+ なら 6…Ke2! 6…g2 で引き分けになる。

1…Kg6

 1…g4 は 2.Kb7 g3 3.Ra3! でポーンを取られてしまうので黒はポーンの方を先に進めることができない。ポーンを6段目まで進めなくても黒キングは永久的に遮断されたままである。

 本譜の手で黒はキングを先に進めるつもりである。しかしこれは非常に手数を要しその間に白は自分のキングを近づける。

2.Kb7 Kh5 3.Kc6 Kg4

 黒は白キングの接近を防ぐためにさらに手数を費やさなければならない。3…Kh4 は 4.Kd5 g4 5.Ke4 g3 6.Kf3 であっさりと負けてしまう。

4.Kd5 Kf3

 4…Kf4 は 5.Kd4 g4 6.Kd3 Kf3 7.Rf5+ である。

5.Ke5!

 5.Kd4 g4 よりはるかに簡明である。この変化は落とし穴に注意しなければならない。6.Kd3? ははまりで 6…g3 7.Rf5+ Kg4! 8.Rf8 8.Rf1 なら 8…g2 9.Ra1 Kf3 8…g2 9.Ke2 g1=N+! となる。代わりに白は 6.Ra3+ と指さなければならない。以下 6…Kf4 6…Kf2 は 7.Ke4 7.Kd3 Kf3 8.Kd2+ Kf2 9.Ra8 g3 10.Rf8+ から 11.Ke2 で白の勝ちとなる。

5…g4 6.Ra3+ で白の簡単な勝ちである。

 ルークを5段目に据えて敵キングを遮断する手法は覚えておかなければならない。

 図118の下側の局面は白の手番にもかかわらず引き分けである。その理由は白ルークが具合の悪い位置にいることによる。例えば白ルークがg8にいたら 1.Kc3 b2 2.Ra8+ Kb1 3.Rb8 Ka1 4.Kc2! で白が簡単に勝つところである。

 図118からの手順は次のようになるだろう。

1.Kc3 b2 2.Rg2

 2.Rg8 なら 2…b1=N+! で引き分けである。

2…Ka1 3.Rxb2 でステイルメイトである。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(328)

「Chess」2013年8月号(2/5)

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タリ記念大会(続き)

 第2回戦でナカムラはあのクラムニク相手にポーン損になってしまった。しかし彼は不屈の闘志で有名で、第14代世界チャンピオンの粗雑な指し手にも助けられて形勢を逆転させることができた。

V.クラムニク – H.ナカムラ
第2回戦

 白はポーン得で、c5とe4のポーンは黒を締め付けている。進展を図るのは簡単でないが、27.Rb1 のような先受けの手から始めるのが良かっただろう。

27.h3?! Nc4!

 この足元を崩すぶちかましが、白の先受けの手を指摘した理由である。クラムニクは7段目に侵入できると思ったに違いないが、既に白は有利の全部ではないにしても大部分を失っていた。

28.bxc4 Rxa4

29.Rd7?

 bポーンは容易に守れるが、c5のちっぽけなやつはそうならない。29.Rb1 と指す方がずっと良く、29…Bf8 なら 30.Rxb7! と取り 30…Bxd6 31.cxd6 Rxc4 32.e5 で白が交換損の十分な代償を得る。

29…Rb4 30.f4 Bf8 31.Kh2 Bxc5

32.Bc1

 双ビショップを保持して主導権を取り戻したいという手だが、白は既に良くても引き分けのことを考えるべきで 32.f5!? Bxe3 33.fxe6 Rxe6 34.Rf1 で異色ビショップの単純化を目指すべきというナカムラの説がたぶん当たっている。

32…Ra8 33.f5

 33.Bd2 Rb3(意外にも 33…Rxc4? は 34.f5 Nf8 35.Rxb7 で白が実戦よりもずっと良い)34.Be1 Ra4 も圧力が増し続ける。

33…Nf8

 ルークを引き下がらせる。このナイトは自キングの見張りをし続け、ほかの黒駒が別翼に大挙して侵入できるようにする。

34.R7d3

 34.Rd8 Rxd8 35.Rxd8 Rb1 36.Bh6 Bg1+ という手順に見られるように戦術さえ白に味方しなかった。

34…Rxc4 35.Bh6 Be7 36.R1d2 b5

 この図を最初の図とちょっと比べてみるとよい。黒のクイーン翼のポーンは動ける状態で、白はもう負けと言っていいかもしれない。クラムニクは雄々しく暴れ回ったが、ナカムラは抑えることができた。

37.Rf3 b4 38.e5 gxf5 39.Rxf5 Ng6 40.Rdf2 Bf8!

 bポーンを突くのに先立ってg7の地点に利かし、交換になればルークで取り返してf7の地点に利くようにしたのは良い判断だった。

41.Bg5 b3 42.Rxf7 Rb8 43.Bf1 Rc3 44.e6

 形勢を紛れさせるにはこれしかない。

44…b2 45.Bf6 b1=Q 46.Bxc3 Qb3 47.R7f3

47…Bc5

 単純化のために戦力を少し返す。もっとも局後ナカムラが示したように 47…Qxe6 48.Re2 Qd5 49.Bg2 Bg7! もあまり苦労なく黒が勝つはずである。

48.Rb2 Qxb2+ 49.Bxb2 Rxb2+ 50.Bg2 Be7 51.h4 Re2 52.Rc3 c5 53.Kh3 Kg7 54.Bd5 Ne5 55.g4

 白はほかに指しようがないが、これでナカムラはナイトを引き戻して決定的な攻撃を始めることができる。

55…Ng6! 56.Rf3 Bd6 57.Rf7+ Kh8 58.g5 Rh2+ 59.Kg4 0-1

******************************

(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(053)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 4…Bb4 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5

 黒はいつかはまねの方針をやめなければならない。例えば 7…Bg4 8.Nd5! Nd4 9.Nxb4 Nxb5 10.Nd5 Nd4 11.Qd2! と進むと黒は白の 12.Bxf6 gxf6 13.Qh6 から 14.Nxf6+ の狙いを同じ手順を指すことにより対処することができないので罰せられる。ある時点で白はチェックをかけるが、黒はまねして自分もチェックして白のチェックを無視すること(例えば 11.Qd2 Qd7 12.Nxf6+ gxf6 13.Bxf6 から 14.Qg5+)は不正な手なのでできない。

 見てのとおり図の局面で白はキング翼攻撃を狙っている。Nd5 からf6のナイトを取れば黒キングの囲いを乱すことができる。Nd5 の狙いに対する最も簡単な応手は単に 7…Bxc3! と取ってこのナイトを消すことである。白が 8.bxc3 と取ったあとも黒はまだf6のナイトに対する釘付けの問題に直面している。黒は「メトガー釘抜き」でこの釘付けから脱することができる。これは世紀の変わり目に発見した分析家にちなんで名づけられた巧妙な着想である。

 黒は 8…Qe7 のあと …Nd8 から …Ne6 と指す。そのあと白がビショップをc1-g5の斜筋に沿って引けば、黒は …Nc5 と指し …Bg4 で自分が釘付けをかけることができる。…Ne6 に対し白がビショップをh4に引けば、黒は …Nf4 のあと …Ng6 と(必要ならば)…h6 によって最終的に釘付けをはずすことができる。そのあと白ビショップが釘付けを維持できる手段はない。具体的には 8…Qe7 9.Re1 Nd8 10.d4 Ne6 11.Bh4 Nf4 12.Qd2 Ng6 という手順である。

 このように指せば頑丈な陣形のために黒が優勢になる。ある時点で白が d3-d4 と突けば-これは双ビショップとルークのために局面を開放するための白の主要な手法である-黒は黒枡でポーンの陣形を築くことができる。つまりc5とd6にポーンを配置する。そうすれば白の黒枡ビショップは花崗岩のような黒ポーンのために石に頭をぶつけるようなもので、黒陣に大きな影響を与えることがない。

 そうこうしているうちに黒は …Bd7 から …Rac8 と指して、適時にポーンを交換してc列でルークを使えるようにすることができる。白は d4-d5 と突くことによってこれを防ぐことができるが、これは局面を閉鎖することになる。これは自分が射程の長いビショップを持っていて、黒に …Ne8 から …f5 で反撃の好機を与える時には、したくないことである。

 4…Bb4 のあとの閉鎖的な大局観の戦いとは対照的に、劣った 4…Bc5 のあとは開放的な(そして黒には気乗りのしない)中盤戦になる。白はまたポーンによる両当たりの策略(Nxe5 から d2-d4)を用いて中央で優位に立つことができる。このための最善の手順は 5.O-O で、5…O-O なら 6.Nxe5! Nxe5 7.d4 Bd6 8.f4! Nc6 9.e5 で白はいずれ小駒を取り返し中央でより多く支配しているので(例えば 9…Bb4 10.d5!)しっかり優勢になる。

 黒は 5.O-O のあと 5…d6 と突くことによりこの戦術の策略を避けることができるが、それなら白は 6.d4! と突いて中央に駒を進出させ黒の強力なeポーンを撲滅することができる。例えば 6…exd4 7.Nxd4 Bd7 8.Nf5 Bxf5 9.exf5 のあと Bg5 から Nd5 または Ne4 で強力なキング翼攻撃を行なえる。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(117)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 終わりにレティの非常に面白いスタディを見てみよう。

 図117
レティ、1928年

 ルークは当たりを避けて後退しなければならない。1.Ra4(又は h4)と横に逃げると 1…e4 2.Ra5+ Kf4 3.Ke6 e3 4.Re5 Kf3 5.Kd5 e2 6.Kd4 Kf2 で1手遅くて引き分けになってしまう。

1.Re2(e3)!!

 この位置への後退は意外であるばかりでなく十分に検討しないと理解できない。1.Re1 の方が理にかなっているように見える。以下 1…e4 2.Ke7 Kf4 3.Kd6 e3 4.Kd5 Kf3 5.Kd4 e2 6.Kd3 で白が勝つはずである。しかし黒にはもっと巧妙な 2…Ke5! という受けがある。その時 3.Kf7 Kf5! と 3.Kd7 Kd5! は白にとって何も進展がない。従って白はルークを動かさなければならないがe列を離れると 3…e3 があるので離れられない。それで 3.Re2 が必然となる(3.Re3 も同じになる)。しかしここで黒は 3…Kd4 又は 3…Kf4 と指すことができる。以下 4.Ke6 e3 5.Kf5 Kd3! で貴重な先手が取れて引き分けになる。

 言い換えれば 2…Ke5! で白は手詰まりに陥る。これで本譜の手の理由が分かる。

1…e4

 1…Kf4 は 2.Re1 e4 3.Ke6、この手順中 2…Kf5 なら 3.Ke7 で白が楽に勝つ。

2.Re1!

 ここで初めてルークは1段目に下がる。

2…Ke5 3.Ke7!

 手詰まりに陥ったのは黒の方である。そして白キングに道を譲らなければならない。3.Kg6? は全てを一瞬にして台無しにしてしまう悪手で 3…Kf4! 4.Kh5 e3 5.Kh4 Kf3 で引き分けになってしまう。

3…Kd4

 3…Kf4 なら 4.Kd6 e3 5.Kd5 でよい。

4.Kf6 e3 5.Kf5 Kd3 6.Kf4 e2 7.Kf3 で白が勝つ。

 この駒種のスタディでは傑作のひとつである。このような簡素な配置にこれだけの妙手が潜んでいるとは驚くばかりである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(052)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

4…Nd4!?

 これは昔好まれた 4…Bb4 に取って代わって現代の4ナイト試合に特徴的な手である。第一次世界大戦まではビショップを動かす手がよく指されたが、そのあと互角をもたらす強さの 4…Nd4 のためにマスターの試合からはすたれた。それでも黒は 4…Bb4 のあと対称戦法の 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5 を注意深く指せば相応の、そしてもっと元気のよい局面にすることができる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(116)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 実戦ではルークが1段目でなく自分のキングと一緒に相手のポーンの後ろにいる場合もある。そのような局面を考えてみよう。

 図116
エイベ、1934年

 白の勝つ手順は幾つかあるがその内の一つを本手順として採り上げる。

1.Kd6

 別手段は 1.Rf8+ Ke4 2.Kf6 又は 2.Rg8 Kf4 3.Kf6 g4 4.Kg6 g3 5.Kh5 2…g4 3.Kg5 g3 4.Kh4 g2 5.Rg8 Kf3 6.Kh3 で白が勝つ。あるいは 1.Rg8 先に 1.Kf7 でも良い。1…g4 2.Kf7! Kf4 3.Kg6 g3 4.Kh5 Kf3 5.Kh4 で白が簡単に勝つ。

1…g4

 もし黒が 1…Ke4 で白キングの進路を妨げようとすると白は 2.Rg8 Kf4 3.Kd5 で勝つ。

2.Kd5 Kf4 3.Kd4 Kf3

 3…g3 は 4.Rf8+ から 5.Ke3 で白が勝つ。

4.Kd3 g3

 4…Kf2 なら 5.Rf8+ Kg2 6.Ke2 である。

5.Rf8+ Kg2 6.Ke2 Kg1 7.Kf3 g2 8.Rg8 Kh1 9.Kf2! で白が勝つ。

 しかし白ルークの位置が変われば結果も変わることがある。例えば白ルークがa6だったら6段目のまずい地点にいるので白は勝てない。1.Rf6+ Ke4! 2.Rg6 ルークが自分のキングの行く手をふさぎ手損になる。2…Kf4 3.Kf6 又は 3.Ke6 g4 4.Kd5 g3 5.Kd4 Kf3 で引き分けになる。3…g4 ルークが再びg6を通ろうとする自分のキングのじゃまになる。この手順中 2.Kd6 なら 2…g4 3.Kc5 g3 4.Rg6 Kf3 5.Kd4 g2 で、いずれにしても引き分けである。

 1.Kf7 なら 1…g4 2.Kg7 g3 3.Kh6 Kf4 4.Kh5 g2 から 5…Kf3 で引き分けである。1.Kd61…g4 2.Kd5 g3 3.Kd4 g2!(黒はキングを動かすと負ける)白ルークはg6へ行けない。4.Ra1 Kf4 5.Kd3 Kf3 で引き分けである。最後に 1.Ra5+ Kf4 2.Kf62…g4 3.Ra4+ Kf3 4.Kf5 g3 5.Ra3+ Kf2 6.Kf4 g2 7.Ra2+ Kf1 8.Kf3 g1=N+! で黒が引き分けにできる。このエンディングは後で出てくるように白が勝てない。

 しかし図116で白キングがf7にいるとルークがどこにいても白の勝ちになる。読者はこれを自分で確かめられたい。

(この節続く)

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布局の探究(62)

「Chess Life」1992年12月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の長期的犠牲(続き)

Ⅰ 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.g3 d5 4.Bg2 dxc4 5.Nf3 c5 6.O-O Nc6 7.Qa4 cxd4 8.Nxd4 Qxd4 9.Bxc6+ Bd7 10.Rd1 Qxd1+ 11.Qxd1 Bxc6 12.Bg5?!

 白はクイーン翼ビショップを手得になると考えて展開し 12…Be7?! を期待した。1976年オデッサでのトゥクマコフ対アリブルト戦では 13.Nd2 b5 14.a4 O-O 15.axb5 Bxb5 16.Ne4! と進んで白がわずかな優勢を保持した。しかし黒はこの戦法の神髄であるキング翼攻撃に改良手を用意していた。

12…Ne4! 13.Be3 h5! 14.f3

 これも気の進まない弱体化だが、14.Nd2 は 14…Rd8 と応じられる。

14…Nf6 15.Nd2 Rd8 16.Qc1 h4! 17.Nxc4 hxg3 18.hxg3 Rd5!

 19…Rdh5 の狙いのために白がまたキング翼を弱めさせられる。これで黒の方がわずかに有望になった。

19.g4 Be7 20.Bxa7?!

 20.g5 が最善の受けのように見える。

20…Nxg4!! 21.fxg4

 図4

 ここは勝負所である。GMゲオルガゼによると黒には考えられる選択肢が三つある。

 (1)21…Rg5? は駄目で、22.Qf4! Rh1+ 23.Kf2 Rxa1 24.Qb8+ Bd8 25.Nd6+ Kd7 26.Qc8+ Ke7 27.Nxb7! で白の勝ちになる。

 (2)21…Rh1+ は1979年ソ連でのモチャロフ対ストゥルア戦の手で、22.Kxh1 Rh5+ 23.Kg1 Rh1+ 24.Kf2 Bh4+ 25.Ke3 Bg5+ 26.Kd3 Rxc1 27.Rxc1 Bxc1 で黒が少し優勢だったが34手目で引き分けに終わった。

 (3)21…Bg5! がGMゲオルガゼの「単純な」推奨手だった。(a)22.Be3? Rd1+! 23.Qxd1 Rh1+ 24.Kf2 Bh4#(b)22.Ne3? Rc5!! 黒の勝ち(c)22.Qf1 Rd8 23.Kf2 Bf4! このあと一本道の 24.Qg1 Rh2+ 25.Qxh2 Bxh2 で黒が駒の働きが良く明らかに優勢である。

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開放試合の指し方(051)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 黒は3手目で少なくとも当分は白の手についていく意図を表明した。白は3手目で何も狙わなかったので、黒には対称形を避ける最初の機会がある。

 黒はこの機会をとらえて 3…Bb4 または 3…Bc5 でキング翼ビショップを展開するか、3…g6 で対角斜筋にこのビショップを展開する用意をすることができる。3…Bc5 は白がちょっとした戦術の策略で優勢なポーン中原を築くことができるので、これらのうち最も魅力が少ない。それは 4.Nxe5! で、4…Nxe5 には 5.d4 と応じる。そして黒が 5…Bxd4 と取ろうと 5…Bd6 6.dxe5 Bxe5 と指そうと、黒のeポーンがなくなり白の中原ポーンの方が強くなる。(この種の中原に関するもっと詳しい解説は次章の初めに出てくるが、ここでは白はe4にポーンがあるのでd5の地点を拠点として使えるが黒にはこれに匹敵する拠点がないことを指摘しておく。)

 3…Bb4 の問題はナイトをビショップと交換する狙いの 4.Nd5 と跳ねる手があることである。この交換は白があとで(例えば d2-d4 突きで)局面を開放できる時にはほとんど常に白にとって有利である。というのは開けた局面ではビショップの方がナイトより遠くまで利くからである。4.Nd5 のあと黒はビショップをa5またはe7に引くことができるが、どちらの手も黒が手を損して白にナイトを中央の好所に据えさせたことを認めたことになる。白はこの手得を利用して 4…Be7 4.d4! d6 5.Bb5 のように中央で威張ってくるかもしれない。そして黒はeポーンへの圧力のために 6…exd4 7.Nxd4 Bd7 といくらか守勢に立たされるかもしれない。

 あるいは黒は手損を避けるためにビショップ対ナイトのわずかな有利を許容することがある。しかし 4.Nd5 Nf6 は例えば 5.Nxb4 Nxb4 6.Nxe5 d6 7.Nf3 Nxe4 8.c3 から d2-d4 突きで比較的単純な局面になり、双ビショップのために白が少しだが明らかに優勢になる。

 黒の3手目の変化で最善の選択は 3…g6 で、そのあと可能ならば …Bg7、…Nge7 そして …O-O と指す。この駒組みは白が d2-d4 と突くのを止めさせ黒のeポーンを守っている。黒は中盤戦で …d7-d6、…Be6(または …Bg4)、そして …f7-f5 と指すことができ、キング翼の襲撃につながる可能性がある。

 白はすぐに 4.d4 exd4 5.Nd5! と指してちょっとした罠を含みに黒の作戦に揺さぶりをかけることができる。黒がありきたりに 5…Bg7 6.Bg5 Nge7 と指せば白は 7.Nxd4!(8.Nxc6 から 9.Bxe7 で駒得する狙い)7…Bxd4? 8.Qxd4!! Nxd4 9.Nf6+ から 10.Bh6# で詰みに討ち取れる。6…Nf6 でも 7.e5! で良くならない。

 しかし中央でのこの興奮も黒が 6…Nge7 や 6…Nf6 の代わりに 6…Nce7! と指せばすぐ冷めてしまう。e7でのナイト同士の交換はg7からd4やc3に通じる斜筋に沿ってにらみを利かせる作戦を続けることができるので黒は歓迎である。白が 7.Nxd4 c6! 8.Nc3(黒の狭い陣形を楽にさせる交換を避けるため)と指してくれば、黒は 8…h6 9.Bf4 d5! で中央における白のポーンの優位の主張をなくすことができる。この局面で黒が安全に …d7-d5 突きを達成すれば、白はe4の橋頭堡が消滅し中央の拠点に関して駒の優位がなくなることになる。1.e4 e5 の試合では …d7-d5 突きはしばしば『古くからの互角剤』と考えられている。

4.Bb5

 4.d4 は実戦例の解説で考えるが、次章で取り上げる布局に転移するかもしれない。これを除けば黒にとって危険な4手目は 4.Bb5 だけで、5.Bxc6 から 6.Nxe5 でポーン得する狙いがある。

 一見したところでは 4.Bc4 という手もありそうである。しかしこの手は 3…Bc5 4.Nxe5 で見たのと同じ戦術の策略を食らってしまう。今回は 4.Bc4 Nxe4! 5.Nxe4 d5 で中央をめちゃめちゃにすることができるのは黒の方で、黒には自分の駒を支援するのに都合のよいeポーンが残り白のは消滅する。

 4.Bc4 Nxe4 のあと初心者は 5.Bxf7+ に目がくらむことが多い。白はどうせ一時的なナイト得を1手で失うことになるのだから、それを捨てて黒キングを乱したら良いではないか。その答は白がビショップを切り 5.Bxf7+ Kxf7 6.Nxe4 d5 で中央でのポーンの支配を放棄すれば黒キングはまったく安全であるということである。黒キングがキャッスリングの権利を失ったことは、例えば 7.Neg5+ Kg8 から …8.h6! のあと …Kh7 と …Rf8 でまったく安全なので大したことではない。しかし黒の強力なポーン中原はなくなるようなものではない。4.Bc4 Nxe4! のあと黒は 5.Bxf7+? なら楽に優勢になり 5.Nxe4 なら簡単に互角になる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(115)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 しかし既に述べたようにこういう形はめったに現れない。我々にとってもっと役立つのはルークがポーンを止められる場合である。そこでの中心的な問題はルーク側が勝てるのかどうかということである。そのような局面はポーンがキングによって守られていて相手のキングによってすぐに止められない場合に現れる。典型的な構図から始めよう。

 図115

 ルーク単独では勝てないことは明らかであるが、白キングは黒ポーンのクイーン昇格を止めるのに間に合うだろうか。手を数えてみればこの質問に答えることはかなりやさしい。黒ポーンを止めるために白キングはg2の地点に到着しなければならない(黒キングがg列に回るならe2の地点)。このためには6手かかるが、黒はキングがe2、ポーンがg2の地点に到着するのに5手しかかからない。これから手番の場合にだけ白が次のように勝つと結論が得られる。

1.Ke7

 黒の手番だったら 1…f4 2.Ke7 f3 3.Kf6 f2 4.Kg5 Ke3 5.Kg4 Ke2 で引き分けになるところである。

1…f4 2.Kf6 f3

 黒がポーンとキングのどちらを先に動かしても関係ない。

3.Kg5 f2 4.Kg4 Ke3 5.Kg3 Ke2 6.Kg2 で白が勝つ。

 もちろん局面がいつもこのように明快であるとは限らない。ここで分かるのは進路が妨害されないように白キングが敵キングの反対側から近づかなければならないということである。黒は敵キングが近づくのをじゃますることによって貴重な手を稼ぐことができる時がある。これは効果的な防御法となり得る。

 例えば図115を少し変えて白キングをc7に置くと理論的にはg2に行くのに5手しかかからないはずなのに白が先手でも勝てない。その理由は次のように黒キングが白に手損を強いることができるからである。1.Kd6 f4 2.Ra4+ 2.Ke6 なら 2…f3、2.Kc5 なら 2…f3 3.Kc4 f2 4.Kc3 Ke3 である。2…Ke3 3.Ke5 f3 4.Ra3+ Ke2 5.Ke4 f2 6.Ra2+ Ke1 7.Ke3 f1=N+! で黒が引き分けにできる。または 1.Re1+ Kd4 2.Rf1 Ke4 3.Kd6 f4 4.Ke6 4.Kc5 は 4…f3 5.Kc4 Ke3 6.Kc3 f2 である。4…f3 5.Kf6 Ke3 6.Kg5 f2 7.Kg4 Ke2 でやはり引き分けである。

 白キングが間違った側にいるならば昇格枡にそれだけ近くないと勝てない。例えば図115で白キングがc6にいるならば次の手順で勝つ。1.Kc5 f4 2.Kc4 Ke3 2…f3 は 3.Re1+ から 4.Kd3 である。3.Kc3 Ke2 3…f3 なら 4.Re1+ Kf2 5.Kd2 Kg2 6.Ke3 f2 7.Re2 である。4.Kd4 f3 5.Ra2+ から 6.Ke3 である。

 図115についてはまだ全ての変化を尽くしていない。白キングの位置を変える代わりにルークをd1に置いて白の手番としてみよう。普通の手順では障害に出くわす。つまり 1.Ke7 f4 2.Kf6 f3 3.Kg5 f2 4.Kg4 Ke3 5.Kg3 Ke2 でルークが当たりになるので引き分けである。この局面から勝つには白は次のようにまずルークの位置を正さなければならない。1.Re1+! Kd4 1…Kf3 は 2.Rf1+ Kg4 3.Ke7 f4 4.Ke6 f3 5.Ke5 Kg3 6.Ke4 f2 7.Ke3 である。2.Rf1! Ke4 ここで初めて白キングが近づいて行く。3.Ke7! f4 4.Kf6 f3 5.Kg5 Ke3 6.Kg4 f2 7.Kg3 で白が勝つ。

(この節続く)

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開放試合の指し方(050)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス

 4ナイト試合には穏やかで均衡がとれていて引き分けになりやすいという評判がある。この評判はもっともだが、アマチュア選手は少し危険を冒すことによりわくわくさせる中盤の局面を作り出せることがよくある。4ナイト試合はグランドマスターの大会では地歩を失ったが、クラブや楽しみで指す選手たちの間では用心していない相手に対して危険な武器になることがまだある。

 この布局が引き分けになりやすいのはポーンと駒の配置の対称性にある。8手くらい進んだ典型的な局面では黒陣が白陣の鏡像のようになる。白は e2-e4 と突き d2-d3 突きで局面を比較的閉鎖的に保つようになりやすい。黒は 1…e7-e5 と突いたあと恐らく …d7-d6 突きでまねをする。両者ともナイトを白はc3とf3、黒はc6とf6という最も自然な地点に展開する。さらに白は Bb5 で黒のeポーンに対する攻撃態勢をしき、Bxc6 でこのポーンの支えを崩すことを狙う。そして黒がこの狙いに対処する最も確実な手段は自分のキング翼ビショップをb4に出し、…Bxc3 のあと白のeポーンを取れるようにすることである。残りのビショップも白のはg5に行き黒のはg4に行って鏡像の一部になるかもしれない。それに両者は必ずといってよいほどキング翼にキャッスリングする。

 もちろんこの対称性はいつかは破られることになる。黒がいつまでも白の手をまねれば、最後にはまねが不可能な局面(例えば白がチェックした時)になる。黒は途中で均衡を崩さなければならず危険を伴うが、実際にはポーンを犠牲にして対称から離れる「最も安全な」手段である。駒が当然お互い鏡像の地点にあるために基本的な布局の局面が非常に均等な配置になっているので、引き分け気味の退屈な局面を避けるのは白にとっても黒と同じくらい危険である。向こう見ずな攻撃を好む選手は他に目を向けた方が良い。

 布局には次のような特徴がある。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(114)

第4章 ルーク・エンディング

4.1 ルーク対ポーン(続き)

 次のセレスニエフのスタディでは同じ着想がもっと複雑な形で現れる。

 図114

 白は次のような手順で勝つ。1.f7 Rc6+ 2.Ke5! 2.Ke7 は 2…Rc1! 3.f8=Q Re1+ から 4…Rf1+ で引き分けになる。2…Rc5+ 3.Ke4 Rc4+ 4.Ke3 Rc3+ 5.Kf2! Rc2+ 6.Kg3 Rc3+ 7.Kg4 Rc4+ 8.Kg5 Rc5+ 9.Kg6 Rc6+ 10.Kg7 白は次の手でクイーンを作れる。

(この節続く)

2013年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(91)

「Chess Life」2005年7月号(1/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形

 オランダ石垣防御は19世紀から指されてきた。しかしボトビニクやスミスロフのような選手が定常的に指し始めるまでは特に流行することもなかった。もっと最近ではバレエフ、ユスーポフ、ショート、ニコリッチ、ローチェをはじめ多くの選手が好んで黒で用いている。これは非常に複雑でどちら側にとっても指しこなすのが難しい布局である。1.d4 選手は事実上これを避けることができないので黒が布局の針路を決めることになる。一本道の手順は非常に少ない。中盤戦(と収局)の構想の理解がほとんど基礎になっている。今月は具体的な戦法よりも代表的な構想で実戦をいくつか見ていくのはそのためである。

 下図が石垣と呼ばれているポーンの形である。

白の基本的な作戦は何か

 白の最も明白な目標はe5の「空所」を手中に収めることである。それは通常は二つのナイトをd3とf3の地点に配置することにより行なえる。そのあとは二通りの作戦を選ぶことができる。一つはクイーン翼でのポーンによる侵略で、もう一つは f2-f3 突きから e3-e4 突きによる中央突破である。

 黒枡ビショップ同士の交換は白が有利である。d5の地点でのポーン交換は黒がe6のポーンで取り返せないときは(f5のポーンが浮くので)、白が喜んでするのが普通である。

黒の基本的な作戦は何か

 昔は黒は作戦が一つしかなかった。それは …Qe8-h5 から …Ne4 または …Ng4、…g7-g5、…Rf8-f6-h6 などと絡めたキング翼攻撃である。c8のビショップはc8かd7でじっとしているか、c8-d7-e8 経由でg6の地点に姿を現していた。もっと現代の試合になると黒は白枡ビショップをクイーン翼フィアンケット(…b7-b6)で展開して …c6-c5 突きと関連させるのも指せる変化であることを発見した。

それで評決はどうなっているか

 長く一本道の布局定跡を避けたいならば、これは黒にとって良い選択肢である。白にとっては 1.e4 で指し始める以外この石垣を避ける方法は多くない。この布局では例えばシチリアドラゴンでのように深い手順を記憶することよりも、両者のよくある作戦を理解することの方が大切である。

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開放試合の指し方(049)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

28…Rxb2!

 これが決め手になった。白の展開していないビショップはクイーンとbポーンの両方を守ることができない(29.Bxb2 Qxd2)。そして 29.Qd8+ は 29…Kh7 でg2への狙いに対処する手段がない。

29.Qxc2 Rxc2 30.Bf3 Bxf3 31.Rxf3 Be5 白投了

 白が 32.Rb1 でルークを助けたあとは 32.Rgxg2+ 33.Kh1 Rh2+ 34.Kg1 Bd4+ 35.Kf1 Rh1# で詰まされるか 33.Kf1 Bd4 34.Ke1 Rg1+ 35.Rf1 Bf2+ または 35…Bc3+ で駒損になる。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(113)

第4章 ルーク・エンディング

 全てのエンディングの中でルーク・エンディングが最もよく現れることは疑いない。このためルーク・エンディングは恐らく最も良く研究され、ほとんどの例は実戦から取ったものである。それにもかかわらずエンディングの理論の中で最も難解な部分を成している。そして主要な専門家の中でもほんの僅かな者しか完全に理解していない。世界最高のグランドマスターでさえもルーク・エンディングの技法を習得するためには懸命に勉強しなければならなかった。カパブランカは精通の域に到達する以前のまだ若い頃に千局以上のルーク・エンディングを徹底的に研究したと言われている。

 以上の観点からするとルーク・エンディングに熟達する重要性はいくら強調しても強調し過ぎることはないであろう。クイーン・エンディングのように可能性は広大無辺である。しかしルーク・エンディングの場合は分類と評価はもっと容易である。以降の節では基本的な局面を選りすぐって採り上げることにする。

4.1 ルーク対ポーン

 ルークは通常は1ポーンに勝つ。しかし例外も多い。特にキングが素早く駆けつけられずルークが単独でポーンを止めなければならない時は特にそうである。時にはポーンがルークより強力なこともある。その古典的な例から始めよう。

 図113
サーベドラ、1895年

 この局面は1895年の実戦に現われ引き分けに終わった。対局後サーベドラは次のような卓越した着想で白が勝てることを指摘した。

1.c7 Rd6+

 ルークがd8又はc5の地点に行けないのでこの手は必然である。以下の何手かはこのことから理解できる。

2.Kb5 Rd5+ 3.Kb4 Rd4+ 4.Kb3 Rd3+ 5.Kc2!

 黒が 5…Rd1 とはできないのを見越してここで初めて白はキングをc列に移す。これで決まりのように見えるが黒はまだ終わりではない。

5…Rd4 6.c8=R!

 6.c8=Q は 6…Rc4+! 7.Qxc4 でステイルメイトになってしまう。白から 7.Ra8# を見られているので黒の応手は限られている。

6…Ra4 7.Kb3

 白は黒のルークを取れるか 8.Rc1# で詰ますことができる。古典的な美にいろどられた輝かしい局面であった。

(この節続く)

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開放試合の指し方(048)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 白は危険な変化をすべてふさぐことができたように見える。しかし展開を完了するにはまだ何手かかかり、必然的に黒は白の鎧(よろい)に弱点を見つけ出す。

26…Be4!

 皮肉にも最初に崩壊するのは白のポーンの方が多いクイーン翼だった。白が 27.Bf5 と指す暇がないのは、g列の栓を抜くと 27…Bh2+ 28.Kh1 Bxg2# となるからである。

27.Qxd4 Qxc2 28.Qd2

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(112)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例(続き)

 図112は珍しい状況の場合で、駒割で得をしている白がそれを相手の強力なパスポーンの阻止に向けなければならない。

 図112 黒の手番
フロール対オゾルス、1937年

 一見白の簡単な勝ちのように見えるが詳しく調べると幾つかの困難があることが分かる。手番は黒が握っていてすぐにポーンを7段目に進めることができる。実際hポーンがなかったら黒はルークでナイトを取ってfポーンを進めてすぐに引き分けにできるところだった。さらに、もし白が黒のルークを取ってもナイトが戦闘の舞台から遠く離れているので必ずしも勝てるとは限らない。

 まず実戦の経過をざっと追ってみよう。

1…Rb2+

 この手の意味は白キングを3段目に来させれば後で3段目の敵駒を釘付けにできるというものである。しかしその意図は実行に移すことができず黒はすぐに敗勢になってしまう。1…f2! で黒は白にもっと困難を強いることができた。この手については後で検討する。

2.Kc3 Rg2

 ここでの 2…f2 は 3.Qf3 Kg1 4.Qg4+ Kh2 5.Qd1 Kg2 6.Nc4! で白が勝つ。

3.Nc4

 もちろん 3.Qxf3? は 3…Rg3 で釘付けを食う。

3…f2 4.Nd2!

 黒は 4.Ne3? を期待していた。それならば 4…Rg3! で引き分けになる。しかし実戦は以下の手順で敗勢になり黒が投了した。4…h5 5.Kd3 h4 6.Nf1+ Kg1 7.Qa1 Kh1 8.Ke3 h3 9.Kf3 Rg1 10.Qb1 Rxf1 11.Qxf1+ Kh2 12.Qxf2+ Kh1 13.Kg3 で次の手で詰む。

 この結末については問題ない。しかし大会記録本では 1…f2! が良い手で黒が引き分けにできると書かれていた。それでも白が勝てたのか分析してみよう。

1…f2! 2.Qf3!

 大会記録本の想定手順は 2.Qb8+ Kh1 3.Qb7+ Kh2 4.Qxh7+? Kg2 5.Qe4+ Kh2 の後 6.Qf3 Kg1 7.Qg4+ Kh2 8.Qd1 Rxa3! 9.Kxa3 Kg2 で引き分けとなっていた。

 しかしこの変化には大きな誤りがある。白はhポーンを取るべきでない。以前に示したようにこのようなエンディングでは余分なポーンは防御側にとってステイルメイトの可能性の妨げとなるからである。

2…Kg1 3.Qg4+

 ここでも白は細心の注意がいる。例えば 3.Qe3? は 3…Rxa3! 4.Kxa3 h5! 5.Qg3+ Kf1 6.Kb2 h4 で黒に引き分けを許してしまう。

3…Kh2 4.Qd1!

 これが決め手である。5.Qf1 から 6.Nc4 を狙っている。4…Kg2 には 5.Nc4! があるので黒は白のナイトを消さなければならない。

4…Rxa3 5.Kxa3 Kg2

 もし黒のhポーンがh5又はh4まで進んでいたら引き分けに終わるところだった。しかしこの局面では白は大して苦労せずに勝つ。

6.Qg4+ Kh2 7.Qf3 Kg1 8.Qg3+ Kf1 9.Kb3 h5

 9…Ke2 なら 10.Qg2 Ke1 11.Kc2! で白が勝つ。

10.Kc2 h4 11.Qg4 h3 12.Kd2 h2 13.Qf3 Kg1 14.Ke2! で白が勝つ。

 これでクイーン・エンディングの議論を終えることにする。本章でも多くの可能性のうちほんのわずかしか採り上げることができなかった。しかし基本的で必須のエンディングを紹介できたことと思う。もしさらに詳しく研究したい時は専門書に当たるか、参考になるエンディングの試合を並べてみるのが良い。そのように徹底的に研究を重ねて初めてエンディングの難しい側面の色々な枝葉が完全に理解できてくるのである。

(この節・章終わり)

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開放試合の指し方(047)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 ここでナイトが下がれば黒は白クイーンの身代わりに釘付けにされているe2のビショップに当たりを増やして戦力得になる。例えば 19.Nd1 Qe7 20.Rf2 Ng4 という具合である。これは …Nc6-d4 の効果を如実に示している。

19.Ne4 Nxe4 20.dxe4 Rxe4 21.Qf2

 白はなんとか釘付けにされたe2のビショップの破滅を回避できた。しかし今度はキング翼の守りからナイトがいなくなったことに対処しなければならない。Bd3! が黒のルークを押し返しそのあと Bf4! と指せるので、白の防御はあまり難しくなさそうに見える。黒の両ビショップが無力になれば白はルークで黒のdポーンを攻撃できるので優勢になるかもしれない。22.Qxf7+ は白の最初で最後の狙いである。

21…Qc7

 この簡単な手が白の希望を打ち砕く。黒はキング翼攻撃または …d4-d3 から …Bc5 の狙いで勝つことができる。

22.h3 Bg3!

 22…d3 は 23.Bxd3 Bc5 24.Bxe4 Bxf2+ 25.Rxf2 となって白がクイーンを失うが、戦力差はごくわずかである(ルーク、ビショップ、それにポーンはクイーンにほぼ等しい)。黒は攻撃が終わり試合に勝つのは難しい。実戦の手はこれよりはるかに良い。

23,.Qf3 Bb7 24.Qd3

 白クイーンには休む暇がない。代わりに 24.Bd3 は黒が間髪をいれずに 24…Re3 でビショップで白クイーンに対する当たりを炸裂させる。そして 25.Qf5 g6 で黒が勝つ。例えば 26.Qg4 なら 26…Bh2+ 27.Kh1 Rg3!、また 26.Qf6 なら 26…Bh2+ 27.Kh1 Rxh3!(28…Be5+ または 28…Bxg2+ 29.Kxg2 Qg3+ から詰みの狙い)である。これらの変化では黒のビショップは殺人器となっている。

24…Re6!

 今度は 25…Ba6! が狙いである。

25.Bg4 Rg6 26.Qd1

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(111)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例(続き)

 図111 白の手番
ゼーミッシュ対プリンス、1938年(変化)

 この理論的に勝ちの局面で白はもっと活発に動いていくことができる。

13.Qb8! Rg6

 この手は絶対である。13…Kd7 は 14.Qf8 でだめだし 13…Rd6 は14.Qc7+ でポーンの交換を許してしまう。

14.Qb4+ Ke8

 黒は白クイーンをf8に侵入させるわけにはいかない。14…Rd6 は前の変化にあるように 15.Qb7+ から 16.Qb8+ でポーンを交換される。

15.Qe4+ Re6

 15…Kf8 は 16.Qxg6 fxg6+ 17.Kxg6 Kg8 18.Kh6 Kh8 19.g6 で白が勝つ。

16.Qxe6+ fxe6 17.Kh6 で白が勝つ。

 黒は白ポーンを止められない。非常に参考になる勝ち方の手順で、誰にも自明であるとは限らない。対局後両選手でさえ白ポーンをg4に突いたのが大失敗で勝ちを逃がしたと納得していたのである。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(327)

「Chess」2013年8月号(1/5)

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タリ記念大会

H.ナカムラ – S.マメジャロフ
第1回戦、ラゴージン防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3

 米国の第一人者は最終回のモロゼビッチ戦では 4.Bg5 Bb4+ 5.Nbd2!? と指したが、5…dxc4 6.e3 b5 7.a4 c6 8.Qc2 Bb7 9.Be2 Nbd7 10.O-O O-O 11.b3 c3!(11…cxb3 は 12.Qxb3 Bxd2 13.Nxd2 a6 14.Bd3 で、2ビショップと圧力のために白の代償が申し分ない)12.Ne4 h6

となって、何の有利さもなくその後押しまくられた。

4…Bb4 5.Qa4+ Nc6 6.e3 O-O 7.Bd2

 白は黒にcポーンをふさがせることに成功した。しかしマメジャロフはここから、…c5 突きが黒の唯一の効果的な仕掛けとは限らないことを見せつける。

7…dxc4 8.Bxc4 a6 9.O-O Bd6

10.Rad1

 この手は解放のポーン突きを防げないが、いずれにしても黒は互角にできるようである。例えば2003年ドルトムントでのラジャーボフ対クラムニク戦では 10.Qc2 e5 11.dxe5 Nxe5 12.Nxe5 Bxe5 13.f4 Bd6 14.Bd3 Kh8! 15.Kh1 b5 16.Ne4 Bf5

となってさらに単純化が進み早い引き分けになった。

10…e5 11.dxe5

 11.d5 Ne7 12.e4 Bg4 13.Be2 Ng6 は黒にとってチゴーリン防御の安楽版のようである。しかし実戦は黒がかなり楽だったので、白はたぶんこちらを選択すべきだった。

11…Nxe5 12.Be2 Qe7

13.Ng5?!

 これはナカムラが白のかなりちぢこまった陣形にあまり精通していないさらなる印である。13.Qc2 で実戦のもっと鋭い版を目指した方が良かったかもしれない。13…Nfg4 が怖そうだが 14.Nxe5! Qxe5 15.f4 で受けが効く。15…Qc5 と来れば 16.b4! Qa7(16…Qxb4 なら 17.h3 Nf6 18.Nd5 で代償が素晴らしい)17.Rf3 という具合である。

13…Bf5!

 挑発的で好手だった。白ポーンがe4に来れば、標的にされるだけでなく白クイーンがもう4段目を越えて影響力を発揮できなくなる。

14.e4 Bd7 15.Qc2 h6 16.Nf3 Rfe8 17.Rfe1 Rad8

 黒はキング翼への道を作るのに先立ち、最後の駒を投入した。実際黒はそちらで攻撃を行なうことになるが、白が何をしたら良いかは皆目見当がつかない。

18.g3?

 形を崩す手だが 18.h3 でも互角にする責任は白の方にあり、18…Nxf3+ 19.Bxf3 Qe5 20.g3 Qc5 21.Be3 Qc4 22.Bg2 Be5 が黒が少しの優勢を維持する一つの簡単な手段である。

18…Neg4!

 マメジャロフは白の手の欠陥に素早くつけ入った。

19.h3

 e4ポーンが取られそうで …Bc5 も狙われているのでこれが白の対策だったが、黒はその先を読んでいた。

19…Nxf2! 20.Kxf2 Bxh3

21.Kg1

 キングがc5での重大なチェックから逃げようとしている。代わりに 21.Nd4 は 21…Bc5 22.Be3 Qe5 23.Qd3 Rxd4! 24.Bxd4 Rd8

となって、白がルーク得にもかかわらず 25.Nd5 に 25…Nxe4+ があるので受けがない。

21…Bxg3

 黒は2ビショップがキング翼を席巻していて、既に駒の代わりに3ポーンを得ていて交換得も得ようとしている。もう勝負はナカムラの方がだめである。

22.Bf1 Bxe1 23.Rxe1 Bg4 24.Bg2 Bxf3!

 単純化を図っただけでなく、主導権を保持して白が小駒を少しでも働かせるのを妨げた。

25.Bxf3 Qd6 26.Re2 Qg3+ 27.Bg2 Ng4

 ナカムラはキングを囲うポーンが全然ないために攻められっぱなしである。黒のルーク浮揚が目前で、実際マメジャロフが白を片付けるのに長くはかからなかった。

28.Nd1 Re6 29.Ne3 Rc6 30.Qb1 Qh2+ 31.Kf1 Qf4+ 0-1

 32.Ke1(32.Kg1 Rxd2!)32…Qg3+ 33.Kf1 Nh2+ が必殺のチェックになる。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(046)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2
白 E.パオリ
黒 A.ビズガイアー
ペンシルベニア州ノリスタウン、1973年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Bd6 11.f4 exf3 12.Nxf3 O-O 13.O-O c5 14.Nc3

 白が d2-d4 と突くのを拒否するのも確かに一理ある。こう突くと黒のビショップの利きが大きく広がり、b6-g1の斜筋での危険がさらに増す。しかし白が局面を半閉鎖的に保とうとすることにはマイナス面もある。白は d2-d4 突きでは局面を開放することにより、少なくとも黒の駒に対抗し交換を誘うことに努める。代わりに d2-d3 突きの作戦では備えを固めて動き回る余地の少ないことを受け入れる。

14…Nc6

 ここで 15.d4 は 15…cxd4 16.Nxd4 Nxd4!(17.Qxd4?? Bxh2+)のため手遅れである。

15.a3?! Re8 16.d3 Rb8

 黒の手は理解しやすい。黒は白がどう応じようと駒を最も働く地点に配置している。白が b2-b3 突きから Bb2 でb2の地点を守れば、e3の地点の占拠を招いてしまう(例えば …Ng4-e3 によって)。

17.Qe1?

 これが 15.a3 と突いておいた理由で、この突きがないとここで黒が 17…Nb4! と指せる。白は Qh4 で最も価値ある駒のキングを守るために最も強力な駒のクイーンを使うことを考えているのかもしれない。

17…Nd4!

 しかしこの強手が白の部隊を混乱させてしまう。白は恥を忍んで 18.Qd1 と指すかポーンを返さない限り、c2のポーンとe2ビショップの両当たりに対処できない。チェスの選手はめったにこのような間違いの屈辱的な承認を進んで受け入れようとしない。

18.Nxd4 cxd4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(110)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例(続き)

 図110はクイーン対ルーク+ナイトの面白い実戦例である。

 図110 白の手番
ゼーミッシュ対プリンス、1938年

 白は明らかに駒割で得している。しかしそれを勝ちに結びつけるのは難しい。ポーンは全て同じ側にある。白にはまだパスポーンがない。黒陣には攻撃目標がなく、ルークはd4とf4の間を往復できるので黒の手詰まりも問題外である。しかしそれでも白には明確な勝利への作戦がある。それはg3と突いてパスポーンを作りそれをクイーンにすることである。白は 1.Qh8 と準備してからこの計画を実行に移すことができた。しかし急ぎ過ぎて勝ちを危うくしてしまう。

1.g4 hxg3e.p. 2.fxg3 Ng5

 機略のある防御の手で、黒は助かったも同然であった。黒は白のパスポーンを消してどちらにも1ポーンずつあるクイーン対ルークのエンディングに持ち込むつもりである。興味深い局面が出現する。

3.Qf5 Nxh3+ 4.Qxh3 Rc6

 白は黒のナイト切りに明らかに動揺し、無方針に指し続けて最後には引き分けに同意した。最後の局面は白キングがf5、クイーンがf3、ポーンがg4、黒キングがg8、ルークがe6、ポーンがf7だった。実際この局面になってしまっては白はどうすることもできない。黒キングをg8又はg7から追い出すことができないし黒ルークを3段目からどかせることもできない。

 しかし実戦の経過はさておいて、ナイト切りの後の局面に目を向けてみよう。白が勝つチャンスを逃がしたのは黒キングにg8の地点に行かせてしまったためであることが分かる。黒キングはe列に留め置かなければならない。それならば白が勝つことを証明しよう。

5.Qh4+ Ke8

 クイーン対ルークのエンディングで見たように 5…f6 は白を利するだけである。

6.Qh8+ Ke7 7.Kf2

 黒キングの動きを制限したので白はポーンをg5に、キングをf5又はh5に配置するつもりである。

7…Rg6 8.Kf3 Re6 9.Kg4 Rg6+ 10.Kh5 Re6

 もちろん 10…Rxg3? は11.Qe5+ でだめである。

11.g4 Rg6 12.g5 Re6

(この節続く)

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開放試合の指し方(045)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

 ここで 20…Nf2 は 21.axb4 Nxd1 22.Nxd1 または 22.bxc5 で白がルークの代わりに2個の小駒を得る。

20…Nc6 21.Nd3 Bb6

 代わりに 21…Bxd3 は白が 22.Bxd3 と取ってくれるなら 22…Nf2 でうまいが、22.Bxg4! と取られると良くない。

22.h3! Ne3 23.Bxe3 Bxe3+ 24.Kb1 Nd4 25.Bg4 Bg6!

 白は危機を切り抜けポーン得を維持した。黒のビショップが白キングの周りを不気味ににらんでいるので、形勢はまだ難しい。白の課題はルーク同士および/または小駒同士を交換して、キングの助けでクイーン翼のポーンを前進させることができるようにすることである。黒が攻撃を誤って(17手目)からでさえ長いこと主導権を維持してきたことには注意がいる。

26.Rhe1 Bg5 27.Ne2! h5 28.Nxd4 Rxd4

 28…hxg4 の問題は 29.Ne5! で Nxg6 を狙って白のナイトが急に強力になることである。

29.Bf3 Rc8 30.Re5! f6?!

 30…Bf6 は白に 31.Ra5 でaポーンとhポーンを両当たりにされるが、黒は 31…Rdc4(32.c3 Rb8 から 33…Rxc3 の狙い)でルークとビショップを最大限に働かせてわけの分からない戦いにできる。

31.Rd5! Rxd5

 代わりに 31…Rdc4 は 32.Rxg5! から 33.Bd5+ と応じられて、さらに交換が進んで白のポーン得の重みが増す。

32.Bxd5+ Kh7 33.b4!

 ようやく白はキングの助けでポーンを突き進めても安全になった。白は c2-c4 突きから Kb2-b3 と指して、クイーン翼のポーンで圧殺する。

 試合は既に白の勝ちになっていて、次のように進んだ。33…Be3 34.c4 Kh6 35.Kb2 f5 36.Ne5 f4 37.c5 Bf5 38.Nf7+ Kg6 39.Nd6! Rc7 40.Nxf5 Kxf5 41.Bf3 g6 42.Rd5+ Kf6 43.Kc3 Re7 44.a4 黒投了(Kc4、b5、a5 から b6-b7 に対して何もできないので)

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(109)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例(続き)

 図109 白の手番
アリョーヒン対シュトルツ、1942年

7.Qd4+

 アリョーヒンも相手と同じ類の間違いを犯した。不必要に黒キングをチェックしてもっと良い地点に行かせただけでなく自分のクイーンの位置は何も良くなっていない。白には次のように二つの簡明な勝ち方があった。7.e7 Qh7+ 7…Qf3+ 又は 7…Qf1+ なら 8.Qf6 から 9.Kf8 で白が勝つ。8.Ke6 Qh3+ 9.Kd6 Qd3+ 10.Kc7 Qc4+ 11.Kb8 Qb3+ 12.Ka7 Qf7 13.Qd6! で白が勝つ。又は 7.Qf5! Qb7+ 8.e7 で図94の分析中で示したように白が勝つ。

 もちろん本譜の手はシュトルツの悪手と異なり何もだいなしにしていない。しかし不必要に事を複雑にした。

7…Ka3 8.Qd3+ Kb4

 この手ではたちまち負け形になってしまう。しかしもっとましな 8…Kb2 でも所詮は負ける。白は 9.e7 Qh5+ 10.Ke6 Qg4+ 11.Kd6(又は 11.Qf5)あるいは 9.Qf5 の後 10.e7 で図94の解説のように指すことができる。

9.Qf5!

 ここでは 9.e7 よりも簡明である。

9…Qc6

 9…Qb7+ 10.e7 の方が黒は選択肢が多いが負けることには変わりない。10…Qc7 は本譜と同じになる。10…Qa7 は 11.Kf8 ですぐに負ける。10…Ka3 は 11.Qf4! Qa7 12.Ke6 で図94で見たように白が勝つ。

10.e7 Qc7 11.Qe4+ Ka3 12.Qd4!

 白の 13.Kf8 の狙いが受からない。12…Qb7 は 13.Qa1+ から 14.Qb1+ でだめである。投了してもおかしくないがシュトルツは最後の罠に望みをかけた。

12…Qh2 13.Qc5+ Ka2 14.e8=Q Qf4+ 15.Kg7 Qg3+ 16.Kf8!

 飽くまで正確である。16.Qg6? は 16…Qc3+! で予期しないステイルメイトになってしまう。黒はここでようやく投了した。

(この節続く)

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布局の探究(61)

「Chess Life」1992年12月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の長期的犠牲(続き)

カタロニア布局
1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.g3 d5 4.Bg2 dxc4 5.Nf3 c5 6.O-O Nc6

 これはカタロニア布局の通常の手順で、白の 5.Nf3 はポーンの犠牲を伴っている。この局面はイギリス/レーティ布局からも生じることがよくある。例えば 1.c4 e6 2.Nf3 Nf6 3.g3 d5 4.Bg2 c5 5.O-O Nc6 6.d4 dxc4 という具合である。

7.Qa4 cxd4

 これが最も有力な応手である。もちろん 7…Bd7 の方が安全で、白が 8.Qxc4 で通常の布局の優位を維持する。

8.Nxd4 Qxd4

 ここでの 8…Bd7?! は安全のためには手遅れである。というのは1972年スコピエ・オリンピアードでのコボ対バスケス戦のように 9.Nxc6 Qb6 10.Nd2 Bxc6 11.Bxc6+ bxc6 12.Nxc4 Qb5 13.Qc2 Be7 14.b3 となって、黒がクイーン翼の分離したポーンの代償がないので白が明らかに優勢になるからである。

9.Bxc6+ Bd7

 1982年ルツェルン・オリンピアードでのクリスチャンセン対ラーグバ戦では 9…bxc6?! 10.Qxc6+ Qd7 11.Qxa8 Bc5 12.Nc3 O-O 13.Rd1 Qc7 14.Qf3 Bb7 15.Bf4! と進んだが、黒は交換損の十分な代償を得られなかった。

10.Rd1 Qxd1+!?

 1974年モンティーリャでのカバレク対ラドゥロフ戦では 10…Bxc6?! 11.Qxc6+ bxc6 12.Rxd4 c5(1965年マラガでのポマル対パラシオス戦では 12…Rd8 13.Rxc4 Rd1+ 14.Kg2 Kd7 15.Nc3 と進んだが良くなかった)13.Rxc4 Bd6 14.Nd2! Kd7 15.b3 となって、分離ポーンで劣勢の収局に自ら入る意味がほとんどなかった。

11.Qxd1 Bxc6

 図3

 戦力の計算ではクイーンに対し黒がルーク+ビショップ+ポーンで問題ない。しかしクイーンが他の駒と効果的に協力できる状況ではクイーンの威力のためにクイーンを持っている側が優勢であるのが普通である。さらにcポーンが非常に弱いので黒は戦力で劣勢になってしまう公算が大きい。

 だから黒は戦略的見地で、つまり局面の概略の見地で、代償を探さなければならない。それには以下のものがある。

 -白はキング翼ビショップがないのでキング翼が根本的に弱くなっている。
 -特に黒のクイーン翼ビショップ、一般的には双ビショップが白キングに対する攻撃に効果的になり得る。
 -白はクイーン翼の展開が遅れている。
 -cポーンを別にすると黒陣には弱点が無い。

 以上の要因を考慮すれば黒の目的は「白キングを攻撃すること」でなければならない。この試みの成否で図3の正しい評価が定まる。ここでは白の主眼の 12.Bg5?! と 12.Nd2 の二つを考えていく。

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開放試合の指し方(044)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

13…c5?!

 黒は自分のビショップのために素通しの筋が欲しいし、クイーン翼ナイトはc6の地点を通して復活させたいと考えている。その意味ではこれは自然な手である。しかしそのために白はクイーン同士を交換することにより(14.dxc5 から 15.Qxd8)詰みの最大の危険性を避けることができることになる。確かにそのあと盤上に残る駒はまだ黒の方が働きに優っている。しかしポーン損を埋め合わせるのには十分でないかもしれない。

 この理由から 13…Qc7 がすぐに考えられる。そして白がキャッスリングしたあと黒は …c5 から …Rd8 と指すことができる。しかし白はそれでもなお Nc3 と指して(…c6-c5 と突いてきたら)Nb5! から Nxd6 で危険な黒のビショップを消すことを狙うことにより手を稼ぐことができる。

14.dxc5 Bxc5 15.Qxd8 Rxd8 16.Bd2!

 この好手は黒のナイトを当たりにして手を稼ぎ、クイーン翼キャッスリングの用意ができる。クイーンが盤上に残っていればクイーン翼キャッスリングは白にとって非常に危険である。しかし今は詰みの可能性が減ったので、d列にクイーン翼ルークを迅速に動員できることは白にとって非常に有益である。

 b2-b4 突きで駒得する狙いの 16.c3 は 16…Re8! から 17…Ba6 の逆襲を狙われて危険である。例えば 17.Kf1 Rxe2! 18.Kxe2 Ba6+ 19.Kd1 Ng4 となって、黒は …Nf2+ と …Rd8+ の攻撃が楽しみになる。白が収局で詰まされる可能性さえある

16…Nc6 17.Nc3 Nb4?

 この手は魅力的だが 17…Ng4! の方が良かった。黒は 18…Bf2+ か 18…Ne3 だけでなく 18…Nb4(19.O-O-O Nf2!)を狙っている。

18.O-O-O Bf5 19.Ne1 Ng4

 白は弱点がいくつもあるので(c2、f2、e3)、今にもつぶされそうに見える。しかし黒駒が押し戻されるちょうど今こそが白の反攻が始まる時である。

20.a3!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(108)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例(続き)

 読者は純粋に理論的なエンディングは実戦にはほとんど当てはまらないと考えているかもしれない。しかしクイーン・エンディングの場合はそのようなことはほとんどない。クイーン・エンディングの多くは両者がポーンをクイーンに昇格させてから発生する。図108はそのような例であり、実戦ではありがちな正確さに欠ける指し手が見られる。

 図108 白の手番
アリョーヒン対シュトルツ、1942年

 一般にこのような局面は白の勝つ可能性が高く、理論的に勝ちの場合もある。しかしここでは黒に有利な状況が一つある。それは黒のキングがポーンに近く、白クイーンが中央で八方に睨みを利かすのを防いでいるということである。白クイーンが中央にいれば自分のキングをチェックから守ることができる。実戦の手順を見てみよう。

1.Qf7+ Kd6 2.Qd7+ Kc5

 2…Ke5 は 3.Qg7+ でクイーンを素抜かれる。3…Qf6+ で永久チェックになるので白は 3.e7 と指す暇がない。

3.Kg6 Qg1+

 熟慮を欠いた無益なチェックはしばしば破滅を招くことを何度も指摘してきた。本譜の手は黒クイーンの位置の向上に何も寄与しない。逆に手順に白キングを行きたい地点に行かせてしまった。このようなチェックは絶対しないようにしなければならない。既に知っているようにこのようなエンディングではクイーンを中央で活発に働かせることが必要である。白が自分のクイーンを中央に置くことができなかったので黒がこの機会をとらえて 3…Qe5! と指すべきだった。

 対局後にアリョーヒンが自ら認めたように黒がこの手を指せば引き分けだった。4.Qc8+ 又は 4.Qa7+ は 4…Kd6 で何にもならない。4.Kf7 は 4…Qh5+ 5.Ke7 Qh4+ 6.Ke8 Qh8+ で永久チェックになる。4.e7 も 4…Qg3+ 5.Kf7 Qf4+ 6.Ke8 Qb8+ 7.Qd8 Qb5+ 8.Kf7 Qf1+ で同様である。

4.Kf7 Qh1

 黒はもう白ポーンの前進を防ぐことも永久チェックをかけることもできなくなった。例えば 4…Qf2+ は 5.Ke8 Qg3 6.Qe7+ Kc6 7.Qf6 Qg8+ 8.Ke7 Qh7+ 9.Kf8 で黒が投了してもおかしくない。また 4…Qf1+ は 5.Ke8 Qa1(白の Qe7+ から Qf6 を防ぐため)6.Qc7+ Kb5 7.e7 で白キングはまもなくチェックから逃れる。

 黒の最も頑強な受けは 4…Qf2+ 5.Ke8 Qh2 であるが 6.Qe7+ から 7.Qf6 で白はポーンを前進させることができる。黒はほとんど成すすべがない。

5.Qc7+ Kb5

 シュトルツの逃げ方のまずさのために白の手順がかなり楽になった。しかし 5…Kb4 でも結局は助からない。6.Qf4+ Ka3 7.e7 Qh7+(7…Qd5+ は 8.Kg7 Qd7 9.Kf8 で白の勝ち)8.Ke6 Qh3+ 9.Kd6 Qd3+ 10.Kc7 Qc3+ 11.Kb7 Qb2+ 12.Ka7 Qg7 13.Qd6+ の後 14.Ka6 で白が勝つ。

6.Qe5+ Ka4

 もし黒キングが自陣の3段目に行けば 7.e7 Qh7+ 8.Qg7 でたちまち白の必勝形になる。6…Kb4 も本譜の手に勝るとは言えない。

(この節続く)

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開放試合の指し方(043)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1
白 J.ティマン
黒 A.ビズガイアー
ソンボル、1974年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5

 4.d3 はジオッコ・ピアノの局面になっていく。白はこのようにeポーンを守ることにより黒の反撃から攻撃を取り去るが、布局の趣旨を弱めてもいる。d2-d4 と突かないと「ジオッコ」(試合)が「ピアノ」(静かな)になってしまう。

 他の4手目は疑問である。4.O-O なら黒はeポーンを取ってしまうことができる。例えば 4…Nxe4 5.d4 となりここで 5…exd4 6.Re1 d5 なら前述の局面になり(4.d4 exd4 5.O-O Nxe4)形勢は互角だった。また 5…d5! 6.Bb5 Bd7 7.Bxc6 bxc6 8.Nxe5 Bd6 はいつでも …c6-c5 突きでポーンの弱点を解消できるので黒が大満足の分かれである。このような変化では白は犠牲にしたポーンを取り戻すのにしばしば手数がかかるので、展開で後れをとってしまう。

 最後に、自然な手の 4.Nc3 は黒が 4…Bc5 に同意してくれるならばジオッコ・ピアノに転移するかもしれない。しかし黒は 4…Nxe4! と取ることにより局面からすべての危険を取り除くことができる。この手には 5.Nxe4 d5 という仕掛けがある。黒の 4…Nxe4 の意図は中央にポーンを集めて優位を得ることにある。この中央での優位は 5.Bxf7+? Kxf7 6.Nxe4 d5! 7.Neg5+ Ke8 から …e5-e4 または …h7-h6 で明らかである。そして 5.Nxe4 d5 6.Bd3 dxe4 7.Bxe4 でも少し劣るがやはり明らかである。白はこのように黒がe5のポーンにより中央に強力な地歩を占め自分はd3を越えてポーンを進められないような局面を避けなければならない。

4…d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Bd6

 このナイトに対する当たりは厄介だが、c4やg4のようなもっと安全な地点に引くのは危険が多すぎる。それらの手の主要な欠点は、黒が白の唯一展開している駒を交換で消して狙いと取りで手を得し、白に(d2-d4 突きから白が得る展開のような)駒の働きをさらに与えずに済むことができるからである。

 具体的に言うと 11.Ng4 は 11…Nxg4! 12.Bxg4 Qh4! 13.Bxc8 Rxc8 14.Qe2 O-O と応じられて、黒が十分に展開しているのに対し白は展開していないのも同然で弱点を生じさせずにキャッスリングすることができない(15.O-O?? Qxh2#)。このような局面での黒の大きな切り札は、白のキング翼を崩す …f7-f5-f4-f3! 突きの狙いである。

 このナイトはc4の地点にも跳ぶことができるが、黒が何手かの間動かなかった自分のナイトと交換することができる。11.Nc4 Nxc4 12.Bxc4 Ng4! から …Qh4! の局面は、自分のキングの囲いを守る駒がなくなると何が起こるかを如実に示してくれる。白はいつかは d2-d3 と突かなければならず、より危険な時、つまり黒が駒の戦いで優位に立っている時に局面を開放することになる。

11.f4 exf3 12.Nxf3 O-O 13.d4

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(107)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例(続き)

 クイーン・エンディングではパスポーンはきわめて重要である。クイーンによって支えられたパスポーンは無視できない兵力であることは明らかである。そのようなポーンは不利な駒割を埋め合わせることも非常に多い。だから時にはポーンを犠牲にして一つのパスポーンを作り通常なら負けの局面を救うこともできる。図107ではそのような機略に富んだ防御が見られる。

 図107 黒の手番
ルビーンシュタイン対カパブランカ、1914年

 白は1ポーン得でクイーンの働きも勝っている。これに対して黒のクイーンはクイーン翼のポーンの守りに縛られている。もし黒が消極的に守れば白は数に勝るポーンを突き進めて勝ちの体勢を得るだろう。

 黒ができることは何だろうか。黒のcポーンは当たりになっていて 1…c4 なら 2.a3 で黒クイーンは永久にaポーンの守りに縛り付けられるだろう。1…Qc8 も黒クイーンが守勢一方の態勢になってしまうので状況はあまり変わらない。それなら 1…Qe4 と反撃に行くのはどうかというと、2.Qxa6 とポーンを取られた後たいした手がなく、白は2ポーン得でキングも安全である。カパブランカは別な手段で卓抜な反撃の機会を作り出した。

1…b4!

 この手の目的は一刻も早くパスポーンを作ることである。

2.Qxc5?

 この手はお手伝いだった。2.cxb4 も 2…Qxb4 で良くない。しかし 2.c4! なら黒も一筋縄ではいかなかっただろう。即ち 2…Qc8 には 3.Qb6、2…Qa7 には 3.Qd8+ でどちらもその後 Qa5 とされると黒が良くない。黒のクイーン翼のポーンが固定されると白はすぐに自分のポーンを進めて行くことができる。

 しかし黒には一つだけ面白い手段がある。即ち 2…Qe4! による反撃が可能である。3.Qxc5 は 3…Qb1+ 4.Kh2 Qxa2 5.Qxb4 Qxf2 で白の勝つ見込みはなくなる。白の最善手は 3.Qxa6 だが黒は冷静に 3…Kh7! と指して白に難しい問題を突き付ける。白クイーンはaポーンとcポーンを守っていなければならない。もしどちらかのポーンが取られると黒に強力なパスポーンができてしまう。もし白がhポーンを 4.g3 と守れば黒は 4…Qb1+ 5.Kg2 Qe4+ 6.Kh2 Qc2 と指し手を繰り返す。2ポーン得の優勢にもかかわらず白には勝ちがないのかもしれない。しかし白は少なくともこの手順を追求してみるべきだった。

2…bxc3 3.Qxc3 Qb1+ 4.Kh2 Qxa2

 ここでクイーン翼における黒の最初の成果を見ることができる。黒はa列にパスポーンを得て、昇格枡まで一路邁進することを狙っている。加えて白はfポーンの守りに一手かけなければならない。白はその後でキング翼で行動を開始しなければならない。白の勝つ可能性は消えている。

5.Qc8+ Kh7 6.Qf5+ g6

 もちろん 6…Kg8 でも良かった。しかし本譜の手はキングの周りを少し弱める見返りに貴重な先手を取った。

7.Qf6 a5 8.g4 a4 9.h5 gxh5!

 黒は慎重に受けなければならない。9…a3? を急ぐと 10.h6! Kxh6 11.Qh8+ Kg5 12.Kg3! で詰みが受からなくなってしまう[訳注 正着は 10…Qb2 で引き分けです]。同様に 9…Qe6 も 10.hxg6+ で負けになってしまう。

10.Qf5+

 ルビーンシュタインは危険を冒さないことにした。実際 10.gxh5 は 10…Qe6! で黒の方に勝つ可能性が出てくる。

10…Kg7 11.Qg5+ Kh7

 11…Kf8 なら 12.Qd8+ である。

12.Qxh5+ Kg7 13.Qg5+ Kh7 1/2 – 1/2

 黒は永久チェックから逃れることができず白も引き分け以外の選択はない。クイーン・エンディングでは前に言ったようにパスポーンは兵力云々よりも重要なのである。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(90)

「Chess Life」2005年6月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37](続き)

戦型Ⅲ
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 Nbd7

 前述の長くて激しい戦型を避けようとしてこの手がよく指されるようになった。

 昨年お好み対局でアナトリー・カルポフと対戦したときは次のように進んだ。7.cxd5 exd5 8.Bd3 c5 9.dxc5 Nxc5 10.O-O a6 11.h3 Be6 12.Nd4 Qb6 13.Rb1 Rfd8 14.b4 Nxd3 15.Qxd3 Rac8 16.Na4 私は自陣が気に入っていたし、相手も黒が問題ないと感じていた。

 2004年パンプローナでのマメジャロフ対バガニアン戦でも白がもっと指しやすい局面になった。7.a3 c5 8.cxd5 Nxd5 9.Nxd5 exd5 10.dxc5 Nxc5 11.Be5 Bf6 12.Bxf6 Qxf6 13.Qd4

結論

 クイーン翼ギャンビットの 5.Bf4 の戦型は他の3戦法と同等である。白としては自分の棋風に応じて戦型Ⅰまたは戦型Ⅱを選ぶとよい。激しい方が好きならば戦型Ⅱがよいし、落ち着いた試合の方が好きならば戦型Ⅰがよい。黒としては戦型Ⅲを選ぶか、戦型Ⅰと戦型Ⅱの両方に対処する用意をすることができる。

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開放試合の指し方(042)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 11.f4 exf3 12.Nxf3 の局面

 マスターたちにとって2ナイト防御が本当に始まるのはここからである。白は5手目で得たポーンを保持しているが、ここまでの間に譲歩もしてきた。キング翼は少し攻撃を受けやすく、もっと重要なことは相手が素通し列を占有できることである。

 黒の反撃の基礎は …c6-c5 突きから …Nc6-d4 と、クイーン翼のルークとビショップの展開とにある。…c6-c5 突きの効果は白のdポーンに依存する。白が d2-d4 と突き黒がcポーンを1枡突けば、局面が開放的になるのは確実である。そしてd1の白クイーンに通じる列だけでなく、キャッスリングしたg1の白キングに通じる斜筋も素通しになる。白はこれらの筋で具合の悪い釘付けにならないように気をつけなければならない。

 白が代わりに(参考棋譜2のように)d2-d3 と突けば、…c6-c5 突きから …Nc6-d4 を誘うことになる。これは白の陣形に制約をもたらすことになる。なぜなら自分のナイトでd4のナイトを取れば、キング翼の最良の守り駒を失うことになり、c2-c3 と突いて黒のナイトがd4に来ないようにすれば …Ba6 または …Bf5 と …Rad8 とで弱体化したdポーンへの攻撃を誘うことになるからである。

 次の2局の参考棋譜では白の異なった防御が見られる(両局とも黒は同じ選手である)。第1局では13手目での疑問手でさえ黒はまだ大丈夫だった。形勢が急激に悪化したのは無理な手(17…Nb4?)を指したからにすぎない。第2局では白が受け身になりすぎてすぐに守りきれなくなった。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(106)

第3章 クイーン・エンディング

3.5 実戦例

 最初の例となる図106は1935年にモスクワでの大会で指されたリシツィン対カパブランカ戦からである。

 図106 黒の手番
リシツィン対カパブランカ、1935年

 駒の損得がなく黒から特に狙いや詰み筋もないのでこの局面は一見互角のように思われるかもしれない。しかし良く調べてみると黒にはいくつかの小さな有利があることが分かってくる。第1に黒のクイーンは中央のd5で強力に鎮座している。第2に黒のポーンは白よりまとまりがある。第3に白のポーンは弱いため白クイーンが守りに汲々としている。第4に黒キングは白キングよりもチェックから良く保護されている。

 個別に見ればこれらの優位はわずかなものである。しかし合わせてみれば黒は陣形的に明らかに優勢である。カパブランカがどのようにこれらの要因を用いて勝ちを収めるかは非常に参考になるところである。

1…Ke6

 白クイーンは受けの態勢にあるがb、d及びgポーンを守っている。だからキングを働かせなければ黒は何もできない。それで黒キングはd5の地点を目指す。

2.h4 f6 3.Ke3

 白が 3.Qe2+ Kd6 4.Qe4 でd列のパスポーンを活かそうとすると黒は 4…g5+ 5.hxg5 Qxg5+ 6.Kf3 Qxb5 7.Qf4+ Kd7! で応える。この後もし 8.Qh6 ならば 8…Qd3+ 9.Qe3 Qxe3+ 10.Kxe3 で黒の勝ちのポーン・エンディングとなる。

3…Qc4 4.g3

 黒は 4…Kd5 で圧力の強化を狙っていた。本譜の手の後では 5.Qg2+ と逆襲される。しかしこのポーン突きはキング翼を一層弱め、特にf3の地点にそれが現れている。以降の指し手でカパブランカは見事な手順でこの地点の弱みを利用した。

 ボンダレフスキーは 4.Qb1! で白がもっと積極的に受けることを推奨した。確かに実戦よりも白に希望が持てるようである。4…Qc3+ の後 5.Qd3 Qxd3+ 6.Kxd3 Kd5 は黒勝ちのエンディングになる(7.Ke3 g5! 8.hxg5 fxg5 9.Kd3 h4 10.Ke3 g4、又はこの手順中 8.g3 なら 8…g4! 9.Kd3 f5 10.Ke3 Kc4)。しかし白は 5.Ke2! で反撃することができる。黒は 5…Qxd4 6.Qxg6 Qe5+ 7.Kf3 Qxb5 でポーンを得するが白は 8.Qg8+ Ke5 9.Qb8+ で引き分けの可能性が出てくる。クイーン・エンディングでの役に立つ一般原則はクイーンを受け一方に使うのでなく、常に積極的な反撃の可能性を追い求めることである。

4…g5 5.hxg5 fxg5 6.Qh2

 驚くべきことに白は一種の手詰まりに陥っている。クイーン・エンディングでは非常に珍しいことである。6.Qe2 の後のポーン・エンディングは明らかに黒の負けである。6.Ke4 g4 7.Kf4 Kf6 8.Ke4 Qe6+ 9.Kd3 Qd5! も白にとって芳しくない。

 比較的一番良い手は 6.Qb1 Qc3+ 7.Ke2 で、7…Qxd4 でポーンは失うが 8.Qg6+ Qf6 9.Qxh5 で白にも引き分けの可能性がある。

 本譜の手から始まる反撃は成算のない手で負けを早めた。

6…Qb3+ 7.Ke4 g4!

 8…Qf3# で詰むので白クイーンは受けに回らなければならない。

8.Qe2

 8.Qf2 は 8…Qd5+ 9.Ke3 Qxb5 とこちらのポーンを取られる。

8…Qxg3 9.Qc4+ Ke7 10.Qc8

 ようやく白が反撃の態勢を得たように見えるが手遅れだった。

10…Qf3+ 11.Ke5 Qf6+ 12.Kd5 Qd6+ 0-1

 黒は次の手でクイーン交換を強制しポーン・エンディングを簡単に勝つ。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(041)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 10…Bd6 の局面

 黒のビショップがc5でなくd6にいると白の問題は増加する。白が f2-f4 と突こうと d2-d4 と突こうと黒がアンパッサンで取る可能性を仮定すると、そのあとの数手がどうなるかを考えなければならない。11.d4 exd3 12.Nxd3 のあと黒は 12…Qc7 でb8-h2の斜筋での攻撃を強め、続いて…c6-c5-c4 と突いていくか …Nd5 と跳ねるか単に …Ba6 から …Rd8 と指す。一方白が 11.f4 exf3 12.Nxf3 と指せば、キング翼が弱体化しクイーン翼の駒の展開に問題を抱える。(最後に触れておくと白はナイト当たりを単に逃げることにより対処することもできる。しかしg4に行こうとc4に行こうと-ナイトを動かすのはこれで5手目になるが-白はどちらのポーンを突くのかの問題を延期しただけである。)この点について詳しくは参考棋譜1を参照されたい。

 11.f4 か 11.d4 かの選択は何年かに渡って2ナイト防御の大論争になった。dポーンを突く方が白のもう一つのビショップの筋を開けキング翼のポーンを乱さないから自然である。しかし黒には強力な切り札があり、11.d4 exd3 でできる素通しd列の利用とcポーンの突き出しは特にそうである。白はどんな防御態勢を採用しようとも …c6-c5-c4 に対処する手段を含めておかなければならない。11.d4 exd3 12.Nxd3 のあとあわれな攻め立てられたd3のナイトはついには黒のcポーンによって当たりにされるかもしれず、行き場所も少ない。たとえ安息の地を見つけたとしても(例えばe1)、黒は …Bb7 から …Rad8 でd列と白のキング翼に通じる対角斜筋でとてつもない圧力をかけてくる。

 11.d4 exd3 12.Nxd3 Qc7! 13.h3 O-O 14.b3!? と進めばいい勝負になるようである。白は Bb2 から Nc3 または Na3 と指すことができる(どちらの手も黒が …c6-c5 と突けば Nb5xd6 の狙いができる)。白が相手の攻撃ビショップの一つを消し安全にキャッスリングできれば、勝つ可能性は大いに高まる。結局のところ白はポーン得なのだから。

 黒はもちろんノックアウトにはならない。ルークのためには中央の2列があるし、ビショップのためには2斜筋がある(b7-g2とd6-h2)。d5の地点もナイトの絶好の拠点になり、cポーンを突いていけば他方のナイトを …Nc6-d4! と配置することができる。

 これまで黒の展開について述べてきたことはすべて 11.f4 についても当てはまる。相手がポーンを犠牲にしてきたときはいつも、ポーンを返して別の形で価値の同じ有利を引き換えに得る機会に気をつけるべきである。11.f4 Qc7 のあと白は重大な弱点をこうむらずにポーン得を維持するのは難しい(ここで 12.d4 exd3 13.Nxd3 は f2-f4 突きが自陣の形を悪くしただけなので、11.d4 の手順よりも白が悪い)。しかし白は当たりのナイトを守る必要はない。11…Qc7 のあと白は 12.O-O! でポーン得を返すことができる。そして 12…Bxe5 13.fxe5 Qxe5 14.d4! で戦力得を返した代わりに展開でしっかり差をつける。白には働きのよい黒枡ビショップがあるが黒には黒枡ビショップがない。例えば 14…Qe7 15.Qe1!(a5のナイトに当たっている)15…Nb7 16.Qg3 となれば黒は受け身に立たされる(16…O-O 17.Bxh6)。黒陣は 14…exd3 と取っても 15.Bxd3 のあと Nc3 と Bf4 で白の駒が躍動しキング翼や黒の弱いcポーンを攻撃する機会があるので良くならない。

 だから黒は 11.f411…exf3 とアンパッサンで応じ、12.Nxf3 で次の局面になる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(105)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対ビショップ+ナイト(続き)

 それから図105の局面も紹介しておこう。白は自分のキングをステイルメイト状態から解放することができない。しかしこのような局面はあくまでも例外であり、クイーン側がビショップ+ナイトに勝つという一般的な評価は何も変わらない。

 図105

 これでクイーン・エンディングの基本的な局面の概論を終える。これらのエンディングはポーン・エンディングのようには簡単に分類できない。一般的な考察に基づいて局面を判断しなければならないこともよくあることである。しかし色々な局面に対処するための多くの主要な着想は述べてきた。

 最後にこのような知識が実戦のエンディングにどのように適用できるかを見ていくことにしよう。

(この節終わり)

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開放試合の指し方(040)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 9.Nf3 の局面

9…e4

 黒は迅速に打って出なければならない。さもないと白は d2-d3 と突き、駒を乱されずに中央で堅固な陣形を築いてくる。黒のナイトはまだa5に取り残されていて、活動に復帰させるにはいくらか手数がかかることを忘れてはならない。今のところはこのナイト抜きで攻撃の準備をしなければならない。

10.Ne5

 他に現実的な行き場所はない。白がg1に引かなければならないなら、黒は …Bc5 から …Qd4 か …Qb6 であまりに大きな展開の差をつけてしまう。

10…Bd6

 e5のナイトは非常に危なっかしく見え、黒はそれにつけ込もうとしている。このビショップ出は d2-d4 突きまたは f2-f4 突きを予期し、アンパッサンで取ることにより黒のビショップと他の駒にもっと動く余地ができるようにする。

 黒がこの局面からそれくらいしか得られないのは惜しいように思われる。しかし黒が 10…Qd4 でもっと攻撃的なことをやれば、白には意表の手段がある。黒の手は確かに d2-d4 突きを防ぎ、白のナイトにも当たりをかけている。たぶんもっと重要なことは …Bc5 の用意があることである。しかし白は 11.f4 で安泰である。黒が予定どおりアンパッサンでこのポーンを取ると(11…exf3)、白は幸便にナイトで取り返して、同時に黒クイーンを当たりにする。黒がこのポーンを放っておいて恐ろしそうな 11…Bc5 を指すと、白は 12.Rf1 で安全であるだけでなく 13.c3 から 14.b4 で駒得をも狙う。白はそのようなポーン突きで戦力得するか自陣を楽に守ることができる。

 10…Qc7 の方がもっと理にかなっている。これに対して 11.f4 なら黒は 11…Bc5 と指せるし 11…exf3 とアンパッサンで取ることもできる(重要な違いはここでは 12.Nxf3 が黒のクイーン当たりにならないことである)。アンパッサンで取ると 10…Bd6 11.f4 exf3 12.Nxf3 という手順と同じになるはずである(後述)。そして 11…Bc5 はやはり 12.c3 から b2-b4 突きを招く。例えば 11…Bc5 12.c3 Nb7 13.b4 Bb6(白のキャッスリングを防ぐため)14.a4 a6 15.Na3 から Nc4 のあと Nxb6 か(黒がビショップをa7に引けば)Ne3 と進む。そのあと白はキャッスリングでき、Kh1 と寄りついには d2-d4! 突きで自分の駒を解きほぐすことができる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(104)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対ビショップ+ナイト

 しかしビショップ+ナイトでもクイーン側の勝つ可能性がない例外的な局面がある。最も良く知られている局面の一つが次の局面である。

 図104
カールシュテート、1903年

 黒の駒は防御に理想的に配置されている。ビショップがナイトを守りキングがそのビショップを守っている。駒が動く余地があるので手詰まりに追い込まれることもない。白は何も進展を図ることができない。

1.Ke7 Bh8 2.Ke6 Bg7 3.Kf5 Bh8 4.Kg5 Bg7

 局面は実質的に何も変わりない。

5.Qe8+ Kh7 6.Kh5 Bh8 7.Qe7+ Bg7 8.Kg5 Kg8

 白は自分のキングを進めることもできなければ手詰まりに導くこともできない。明らかに引き分けの局面である。

(この節続く)

2013年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(326)

「Chess Life」2013年8月号(1/1)

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収局研究室

GMパル・ベンコー

 一方が1ポーン損の時のルーク収局は引き分けになる可能性が最も高いというのは公理みたいなものである。それでも自動的というわけではない。戦いにおいてルークまたはキングの働きが強くなければならない。劣勢の側は活発に動いていなければならない。再び誤ると恐らく致命的になる。

保護パスポーン
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2767、米国)
GMガータ・カームスキー(FIDE2741、米国)
FIDEグランプリ、スイス・ツーク大会

 白はポーン得で保護パスポーンになっているが、黒はそれを封じ込めている。

37…Rb2

 もちろん黒は守られていない根元のポーンを攻撃して、白のルークを受け一方にさせる。

38.Re3 f5

 38…Kf5 39.Kg3 f6 という態勢にする方が良い。

39.Kg3 Kf6 40.f3 gxf3 41.Kxf3 Rd2 42.Kg3 Rc2 43.a5 Ra2 44.Rd3 Rxa5 45.Rd6+ Ke7 46.Rb6 Ra2 47.Rxb4 Rd2 48.Kh4 Rg2 49.Rd4 Ke6 50.b4

 白は少し勝ちの可能性を作り出すことに成功したが、十分ではない。

50…Rg1 51.Kh3 Rg8 52.b5 Rh8+ 53.Kg3 Rg8+ 54.Kh4 Rh8+ 55.Kg5 Rg8+ 56.Kh6 Rb8

57.Ra4

 57.Rb4 は 57…Kf6 58.Kh7 Rb7+ 59.Kh6 Rb8 でまったくの互角である。

57…Rxb5 58.Kg6 Rc5 59.Ra7 Rb5 60.Rf7 Ra5 61.Rf8 Ke7 62.Rb8 Ra6+ 63.Kxf5

 白はまたポーン得になったけれども、今度はカームスキーのキングがポーンの前に来ているので局面は基本的な引き分けである。

63…Kf7 64.Rb7+ Kf8 65.Kg5 Rc6 66.f5 Ra6 67.Rb8+ Kf7 68.Rb7+ Kf8 69.Rb8+ Kf7 70.Rb7+ Kf8 合意の引き分け

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(039)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 ナイトで取り返すのは白にまた容易に展開させるだけでなく、より悪いことにあの以前の作戦、f7への攻撃を再開させる(7…Nxc6 8.Bc4!)。

8.Be2

 このビショップはa4に下がると働きがないだけでなく、黒が反撃を続ければ浮き駒にさえなってしまう(8.Ba4 h6! 9.Nf3 e4! 10.Ne5 Qd4!-両当たり-11.Bxc6+ Nxc6 12.Nxc6 Qc5 で黒の駒得)。

 白ははるかに奇妙なビショップ引きの 8.Bd3?! で黒の …h7-h6 から …e5-e4 の作戦に備えようとするかもしれない。この手は白のdポーン(ひいてはクイーン翼の駒)を閉じ込める明らかな欠点があるけれでも、ナイトを活動的なe4の地点に引ける。しかし 8.Bd3 に対して黒は …h7-h6 と突く必要はない。なぜなら 8…Nd5 で白のg5のナイトを当たりにでき、白はビショップがd3にいるので d2-d3 と突いてg5のナイトを守ることができないからである。黒はナイトがf4の地点に行けば駒が1ポーンの価値を上回る活動をすることができる。例えば 8.Bd3 Nd5 9.Ne4 f5 10.Ng3 Nf4! となれば、白は …Nxg2+ と取らせるか Bf1 でさらに手をかけなければならないので明らかに主手順(8.Be2)ほどでかしていない。

 しかし黒には白の …cxb5 と …h7-h6 の狙いにも対処する他の手段が一つある。それが 8.Qf3 で、黒のcポーンを釘付けにし(8…cxb5 9.Qxa8)、e4の地点も守ってナイト引きに備えている。黒はc6の地点を守るのに手をかければ、チェス選手が「主導権」と呼ぶところの攻撃のはずみを失うかもしれない。例えば 8…Qc7 9.Bd3 h6 10.Ne4 Nd5 11.O-O Nf4 12.Ng3 となれば、白がキャッスリングを済ませ Re1(Qxf4 の狙い)または Bf5 から d2-d3 突きで攻撃権を奪い取る用意があることが見てとれる。黒はさらに犠牲を増やして主導権の維持に努めることができる。例えば 8…cxb5 9.Qxa8 Qd7 のあと …Bc5、…O-O そして …Bb7 という要領である。しかしはるかに簡明な犠牲は 8…Rb8 で、9.Bxc6+ Nxc6 10.Qxc6+ Nd7 となれば黒には …Qxg5 と …Bb7 の狙いがある。黒は2ポーン損になっているけれども、例えば 11.d3 Be7 12.Nf3 O-O から …Bb7(13.Qe4 なら 13…Rb4! 14.Qe2 e4! 15.dxe4 Nc5 16.Nc3 Ba6)となれば黒の攻撃は強力すぎて無視できない。

 これらの変化では黒のクイーン翼ビショップとクイーン翼ルークが素早く攻撃に加わるので、白はc6のポーンを取るのを避けるべきだろう。しかし 8.Qf3 Rb8 のあとでも 9.Be2 Bc5 10.O-O O-O から …Bg4、または 9.Bd3 h6 10.Ne4 Nd5 11.Ng3 g6! から …Bg7 と …f7-f5 で、黒が十分指せる。黒のルークはb列で抑止的な役目を果たし、白は展開の完了に深刻な問題を抱えている。

8…h6 9.Nf3

 今世紀のボビー・フィッシャーと前世紀のビルヘルム・シュタイニッツの二人の世界チャンピオンは、この局面で 9.Nh3 が良い手であり、最善手かもしれないことを示そうとした。この奇妙な退却の意図は明らかで、それは黒が …e5-e4 と突いてもまた白のナイトを攻撃することにはならないということである。白はナイトがh3にいることから、キャッスリングのあと f2-f4 と突きキングをh1に寄せることができることにより利益を得るかもしれない。

 しかし 9.Nh3 は決して流行することがなかった。たぶん …Bxh3 を許すので完全にキングの安全を無視しているように思われるからだろう。そのあと黒はいつかはh3の虚弱者を取ることにより犠牲にしたポーンを取り返すかもしれない。しかしフィッシャーはこの取り返しには手数がかかり、黒の手数と展開の優位を大きく減らすことを示した。優良ビショップを交換することも、このビショップがないと白のh3とg2の弱点を攻撃するのがあまり容易でないので、黒の攻撃の可能性を減らすことになる。黒の最善の策は 9…Bc5 10.O-O O-O 11.d3 Nd5 でh3のビショップ取りからすぐに何らかの利益が得られるまで …Bxh3 を遅らせることのように思われる。白は Kh1 から Ng1 と指すことによってのみ …Bxh3 を避けることができるかもしれない。その間に黒は …Nb7、…Bb6 そして …Nc5 でクイーン翼の駒の陣容を整備する。

 9.Nh3 の局面は形勢判断が難しいが、白としては十分指せる。自分の常用布局の一部として 9.Nh3 を採用する前に、…Bxh3 と gxh3 のあとの防御の可能性に十分習熟すべきである。ほとんどの場合 Kh1 でキングの安全が十分確保されるが、時には Bf3-g2 が必要になることもある。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(103)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対ビショップ+ナイト

 図103 黒の手番

6…Bf4

 黒は白キングの接近を防ぐことができない。6…Ba1(6…Bb2 は7.Qf3+ Nf5 8.Qc6+ Kg7 9.Qb5)は 7.Qc6+ Kf7 8.Qc4+ Kg6 9.Qc2+ Kf6 10.Qf2+ Nf5 11.Qb6+ Kg7 12.Qa5 で黒が負ける。6…Bg3(6…Bh2 は 7.Qc6+ Kf7 8.Qf3+ Kg8 9.Ke7)は 7.Qc6+ Kg5 8.Qc3 Nh5 9.Qf3、6…Bb8 は 7.Qc6+ Kf7 8.Qb5 Bh2 9.Qf1+ Kg8 10.Ke7、6…Kf5 は 7.Ke7 Kf4 8.Kf7 で黒駒の乱れがひどい。

7.Qc6+ Kg5

 7…Kf5 なら 8.Ke7 である。8.Ke7 は本譜の手に対しても有効である。

8…Qe4 Nf5 9.Ke6 Ng3

 9…Ng7+ は 10.Kf7 Nf5? 11.Qd5 Kg4 12.Qe6 でナイトが取られる。

10.Qf3

 白は黒駒の連係を乱した。これでこの局面は白の勝ちと判断される。このエンディングの分析を検証したい読者はエンディングの専門書を参照されたい。

(この節続く)

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開放試合の指し方(038)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 5…Na5

6.Bb5+

 前世紀には白が 6.d3 でポーン得にしがみつき、同時に中央を閉鎖的にしておくのが一般的だった。黒はこの手に対して 6…Nxd5 で戦力の互角を回復できるが、7.Qf3! が厄介である。黒はf7の地点への新たな攻撃に対処しなければならないが、7…Be6 は悪く(8.Nxe6 のあと Qh5+ から Qxe5)7…Nf6 はもっと悪い(8.Nxf7)。

 6.d3 に対し黒はポーン損のままでいることに甘んじて 6…h6! 7.Nf3 e4! と指して白のナイトをいじめるべきである。黒が自分の狙いを実行に移し始めれば白のナイトは安住の地を見つけるのに苦労するので、このいじめは2ナイト防御における重要な主題になっている。d4の地点はあまり見込みがなく(8.Nd4 Bc5)、8.dxe4 はc4のビショップが浮き駒になるので、8.Qe2! で乱戦を策するのが最善である。

 この手は 8…exf3 を防ぎ、ビショップに紐をつけることにより 9.dxe4 を狙っている。黒は 8…Nxc4 9.dxc4 Bc5 で中央を割合閉鎖的にしておいて、できるだけ早くキャッスリングしなければならない。白はナイトを逃がす手に1手かけなければならないので、黒が展開で大きく優位に立つことになる。

 9…Bc5 の局面は黒がキャッスリングしてしまえば …b7-b5 または …c7-c6 さらには …e4-e3! で働きに優る小駒のために局面を開放できるので、白にとって危険と考えられている。白がすぐに h2-h3 と突かなければ黒には …Bg4! で白クイーンを攻撃する手もある。e4の黒ポーンは白のナイトをf3から追い払い、白が f2-f3 と突くのをことのほか危険にする大きな役目を果たしている。

 黒の陣形の強力さは二つの想定手順によって示される。一つ目は 10.Nfd2 O-O 11.Nb3 Bg4! で、白クイーンの適切な行き場所がない。12.Qf1 は 12…Bb4+! 13.c3 Be7 から …Nd7-e5-d3! で明らかに悪い。二つ目は 10.h3(…Bg4 を止め、ナイトにさらに引き場所を作っている)10…O-O 11.Nh2 c6! 12.dxc6 e3! 13.Bxe3 Bxe3 14.fxe3(13.Qxe3?? Re8)14…Ne4! で、15…Ng3 または 15…Qh4+ を狙い、素通しe列を支配することを狙い、…bxc6 のあとは半素通しb列を支配することを狙っている。

 しかし 6.d3 より 6.Bb5+ が優るとする最良の議論はこのチェックが受けにくいことである。

6…c6

 6…Bd7 の問題は 7.Qe2! である。これで黒はもう1個ポーンを取られる危険性がある。例えば 7…Bxb5 8.Qxb5+ c6(a5のナイトを守るため)9.dxc6 bxc6 10.Qxe5+ あるいは 9…Nxc6 10.Qxb7! である。黒は 7.Qe2 の局面で 7…Bd6 と指し 8.Nc3 に 8…O-O でいくらか代償を引き出すことに努めることができる。しかし駒で攻撃する明白な手順がなく、わずかな展開の優位だけでは-a5の黒ナイトはb8に反展開することになるかもしれない-互角を主張するのはおぼつかない。

 黒が 6…Bd7 と指したいのであれば 7.Qe2 Be7 8.Nc3 O-O で駒を相応に働かせることができ、白が 9.Qxe5 と取って黒が 9…Bd6 から 10…Re8+ で素通しe列を確保することを期待する。黒は 7…Be7 でd5のポーンを攻撃し続け(7…Bd6 ではd列をふさぐのでそうならない)、あとで …c7-c6 と突くことができる。これは主手順(6…c6)とは表面的には似ていてもかなり異なる局面になる。ここでは黒が 6…Bd7 に手を費やしたので白が少し展開に優るが、黒は …c7-c6 と突くことになれば dxc6 にナイトで取り返すことによりa5のナイトを戦いに引き戻すことができる。

 前述のように 6…Bd7 7.Qe2! には問題があるが、黒にとっては指せる変化である。6…c6 では黒は白に1手の息つく暇も与えない

7.dxc6 bxc6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(102)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対ビショップ+ナイト

 小駒の他の二つの組み合わせと異なりビショップ+ナイトはほんのわずかの引き分けの可能性しかない。それは主としてこの二つの小駒では敵キングの接近を食い止めることが難しいことによる。図102では比較的有利な体勢ながら受け切ることができない。

 図102
ビルガー、1843年

 ビルガー自身はこの局面を引き分けであると判定していた。彼の同時代の人々もそれを受け入れていた。黒が受け切れないことを最初に示したのはベルガーだった。ここで完全な分析を提示するのはとても無理なのでかなり明快な変化を一つだけ調べるだけにする。

1.Qg2

 ビルガーの 1.Qd5+ Kg6 2.Qg2+ は黒に 2…Kh7(h6)の余地を与えるので本譜の方が簡明である。

1…Be5

 1…Kg8(1…Kf8 2.Qg6 は白がもっと有利である)は 2.Qg6 Ba1(2…Bh4 は 3.Qh6)3.Qa6 Be5 4.Ke7 の後 5.Qc4+ から 6.Kf7 で白が楽に勝つ。1…Nf5(1…Nh5 は 2.Qd5+ Kg6 3.Qe4+ から 4.Ke6)も 2.Qd5+ Kg6 3.Qe4 から 4.Ke6 で同様である。1…Bh4 は 2.Qd5+ Kg6 3.Qe4+ で駒を取られる。

2.Qg5

 2.Qd5+ は 2…Kf6 で白に適当な手待ちの手段がない。

2…Bf6 3.Qg4

 白はカールシュテートの推奨した 3.Qg3 Bd4 4.Qb3+ Kf6 5.Kc6 でも勝つ。しかし本譜の手の方が簡明だろう。

3…Be5 4.Qc4+ Kg6 5.Qe4+ Kf6 6.Qd5!

 ビルガーの 6.Kc6 Nf5 7.Qf3 Ke6 8.Qb3+ Kf6 9.Qd5 は途中 6…Ke6! で白が支障をきたすので本譜の手の方がはるかに強い手である。黒は手詰まりに陥った。[訳注 9…Ne7+ で両取りがかかります。9.Kd5 の誤植かもしれません。]

(この節続く)

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布局の探究(60)

「Chess Life」1992年12月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

黒の長期的犠牲

 試合の初めで黒番の選手は不利な条件を背負って指し始める。黒でうまく指すための前提は、この不利な条件に気づくだけでなくそれに対応することである。誰もが認める史上最高の布局の権威はGMロバート.J.フィッシャーである。GMロバート・バーンが私の著書の「How to Beat Bobby Fischer」の序文で述べたように、彼の見識には注意を払わなければならない。

 何年か前に彼は私の試合を検討しているときに私が黒で早まった攻撃に出ていることに気づくといつも驚いて顔を上げた。そして批評として「黒では何かを求める前にまず互角にしなければならない」と忠告した。

 黒は序盤では白ができることをやる余裕がないので、戦力を犠牲にすることにもずっと気をつけなければならないということになる。もちろんそれで勝てるならどんどんやって構わない。しかし「一般原則」においてはことのほか慎重にやらなければならない。さもないと戦力損に見合うものをしばしば何も見つけられないということになる。

 驚くには当たらないが開放試合(すなわち 1.e4 で始まる試合)では、黒が「展開のために」ポーンを犠牲にするのが最も見込みがある。典型的な例として次の2ナイト防御(C59)の手順を考えてみよう。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Bd6 11.f4 exf3e.p. 12.Nxf3 O-O 13.d4 c5 14.O-O Re8

 図1

 ここで黒は以下の理由で犠牲にしたポーンの完全な代償を得ている。

 -黒は全般的に展開で優り、キング翼ルークは唯一の素通し列を支配している。
 -白はfポーンがないのでキング翼が弱体化していて、e3の地点もそうである。
 -黒駒は …Bb7 と …Qc7 で白キングに狙いをつけるのに適した配置になっている。

 それでも閉鎖型試合(1.d4、1.c4、1.Nf3、1.g3)の領域では黒にとって早期の実りある長期的犠牲の機会は限られている。私の見るところこの30年における布局定跡の大きな進歩の一つはベンコーギャンビットである。これは黒が3手目で一見「ただで」ポーンを犠牲にし、生きてそのことを語る。このギャンビットの主眼の正当性は次の主流手順[A58]によく見られる。

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6 5.bxa6 g6 6.Nc3 Bxa6 7.Nf3 Bg7 8.g3 d6 9.Bg2 Nbd7 10.O-O O-O 11.Bf4 Qb6 12.Rb1 Qb7 13.Re1 Rfb8

 図2

 黒の代償はルークとフィアンケットされたキング翼ビショップが白のクイーン翼に及ぼしている強い圧力からきている。さらにこれらの要因により、白が得しているaポーンで実利を得ることは非常に難しい。それでも黒にはベンコーギャンビットの局面を詳細に理解しなければならないことを忠告したい。さもないと何も得られずに終わってしまうことになる

 もちろん長期的戦略のポーンの犠牲は周知の着想である。もっと詳しく紹介するのははるかに頻度の少ない種類の戦略の犠牲である。それは重要な現代の戦法で起こり、非常に興味深く珍しい局面になる。

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開放試合の指し方(037)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 この最後の反撃手段は 5…Nd4 の改良を策している。

 白がビショップをb3に引けば黒はナイトをd4に跳ねて必要なときにこのビショップを取る(5…Nd4 の戦型では 6.c3 b5 7.Bf1! と進むので黒は決してこのビショップを取る機会がない)。

 白は 5…b5 のような手に驚かされてはいけない。6.dxc6 bxc4 と駒を取り合いたいところだが、黒が白のc6のポーンを取る可能性は白が黒のc4のポーンを取る可能性とちょうど同じである(7.Qe2 Qd5)。このような開けた局面では長射程の駒の方が有利なので、白はビショップを黒のナイトと交換するのをがまんすべきである。

 また、6.Bxb5 も 6…Qxd5! が白のビショップとgポーンの両当たりになるので正しくない。白はポーン得を維持するためにはビショップを切る(7.Bxc6+ Qxc6)かf1に引かなければならない。これらの手にも取り柄はあるだろうが、6.Bf1! がいかに賢明かを考えた方がよい。黒がクイーンでd5のポーンを取り返せば、白は 7.Nc3! でクイーンを当たりにし次に 8.Bxb5 か 8.Nxb5 と取る余裕が得られる。黒がd5のポーンを取らずに 6…Nd4 と指せば、7.c3 で前に分析した 5…Nd4 6.c3 b5 7.Bf1! という黒の不十分な局面に転移する。

 もちろん黒はクイーンでなくナイトでd5のポーンを取り返すことができる。しかし 6…Nxd5 に白は 7.Bxb5! と取り、6.Bf1 の真価が分かってくる。白は(直接 Bb5 でなく Bc4-f1-b5 と指すことにより)1手損することができた。しかしまた、黒クイーンがビショップ(b5)とポーン(g2)の両当たりで中央のd5の地点に強力に進出するのを避けることができた。だから黒は 5…b5 6.Bf1! Nxd5 7.Bxb5 のあと 7…Bb7 8.d4 exd4 9.O-O Be7 とでも指さなければならない。そうなれば 10.Qh5! で白の狙いがもっと危険なものになることは明らかである。

 黒がナイトをa5で遊ばせない指し方をいくつか見てきた。それでもやはり白の駒を一番よく制限するのはこの変なナイト跳ねである。このあと出てくるように黒はポーンを犠牲にしなければならないかもしれない。しかし白がキャッスリングできる前に中央が開けた状態になるので、黒はこれまで分析した手順よりもはるかに多くの反撃に恵まれる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(101)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対2ナイト

 かなり意外なことに2ナイトの方が2ビショップよりもさらに有利で、このエンディングは引き分けであると考えられている。黒はもちろん自分の駒を正しく配置しなければならない。一見ナイトはお互い守り合う体勢が最良のように思われる。しかし実際はそうではない。そのような構えは敵キングを隙間に侵入させ、敵のクイーンに味方のキングをナイトから離れさせてしまう。2ビショップの場合のように防御側の主たる方針は敵キングを寄せ付けないことである。だからナイトは図101のように置くのが最善である。ナイトは何としても味方のキングの側にいなければならない。そして盤端にへばりつかないようにしなければならない。

 図101
フォン・デル・ラーザ

1.Qe6 Kg7 2.Kf3 Nh7

 2…Nh8 3.Kf4 Nf7 は 4.Qc6! の後 5.Qg2+ を狙われて白キングの接近を防ぐのが難しくなるので黒にとってはもっと苦労する事態になる。

3.Kg4

 3.Qd7+ は 3…Kg8 4.Qd8+ Kf7 5.Qc7+ Ne7 から 6…Nf6 で黒の駒は良く働いている。黒は好きな時に駒を中央方面に移動してきても何も恐れるものはない。

3…Nhf8

 3…Nf6+ は危なっかしい。4.Kf5 Nh4+ 5.Kg5 Nf3+ 6.Kf4 Nh4 7.Qh3 Ng6+ 8.Kf5 で白が勝つ可能性もある。

4.Qd6 Kf7 5.Qd5+

 5.Kh5 なら 5…Ne6 で黒はナイトがe6とe5、キングがf6の陣形を目指す。白がこれを妨げるのは非常に困難である。

5…Kg7

 ここまで白はほとんど進展がなかった。6.Kg5? は 6…Nh7+ でクイーンを取られるので指せず、次のように指さなければならない。6.Qd4+ Kf7 7.Kf5 Ne7+ 8.Ke4 Nfg6 やはり白は進展がない。

 このようなエンディングでは明確な引き分けの局面を提示することは難しい。しかし正確な受けに対して白がどうすれば勝てるのかを証明することもやはり難しい。このためクイーン対2ナイトが引き分けとされているのも当然である。

(この節続く)

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開放試合の指し方(036)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 5…Nxd5

 これがこの局面における最古の手であることは驚くに当たらない。この手は約5世紀前に現代のチェスの規則が受け入れられた時にイタリアの商人たちによって好まれた。それらの草創期の選手たちはすぐに 5…Nxd5 を疑問手する理由を見つけた。その理由とは 6.Nxf7!? という手があるからで、彼らは 6…Kxf7 7.Qf3+ という手順に名前をつけた。その名前は「フェガテッロ」すなわち「揚げレバー」攻撃で、黒が 7…Ke8 8.Bxd5 と指そうと 7…Ke6 で戦力得にしがみつこうとしようと、当時流行した慣用句で「揚げレバーのように完全に死んでいる」からである。

 黒の受けは15世紀から進歩してきたが、それでも白は圧倒的な攻撃を誇っていて 7…Ke6 8.Nc3 Ncb4! 9.Qe4! c6 10.a3 Na6 11.d4 Nac7 12.Bf4! Kf7 13.Bxe5 となれば犠牲にした戦力は比較的わずかである(白はナイトと引き換えに2ポーンを得ている)。これに納得できなければ白は 6.Nxf7 の代わりに 6.d4 と突くことができる。例えば 6…exd4 7.O-O Be7? 8.Nxf7! となれば、6手目での Nxf7 切りと比べて白の d2-d4 と O-O の方が黒の …exd4 と …Be7 より役立っていて「フェガテッロ」の改良版になるからである。

 2)5…Nd4

 これは 5…Na5 と同趣旨だがもっと理にかなっているように見える。このナイトは確かにa5よりもd4の方が重要な地点(f3、e2、c2、f5)に利いている。しかし 5…Nd4 には一つ欠点がある。それは白が悠々と c2-c3 と突けるのでこの拠点が安泰でないということである。白はすぐに 6.c3! と突くことができ、黒にはナイトの新しい安住の地を見つける問題ができる。f5に行けば安全だが白は c2-c3 突きで十分手をもうけたので 6…Nf5 に対して 7.d4 exd4 8.O-O! と指すことができる。8…dxc3 9.Nxc3 となれば白の展開はほとんど完了で、一方黒の方はずっと遅れている。

 5…Nd4 6.c3 の重要な試金石は 6…b5 である。駒の交換は黒を助けることになるし(例えば 7.cxd4 bxc4 8.dxe5 Qxd5!)、白のビショップには良い引き場所がなさそうに見える。しかし 7.Bf1! がこの一手で、黒にナイトの処遇を決めさせる。ナイトを引けばbポーンをみすみす取られるので、8…Qxg5 を狙いに 7…Nxd5 から暴れなければならない。白には積極的にこの黒の切り返しに立ち向かう手段もあるが、最善の応手はまた「おとなしい」8.Ne4! である。黒が失わなければならないポーンの代償は怪しい。例えば 8…Ne6 なら 9.Bxb5+ Bd7 10.Bxd7+ Qxd7 11.O-O から 12.d4、8…Qh4 なら 9.Ng3 Bg4(これも反撃の手)10.f3 e4!? 11.cxd4 Bd6 12.Bxb5+ から 13.O-O である。

 このような手順の意味するところは明らかである。つまりいつかは黒は反撃の手段が尽きて無理筋の代価を支払うことになるかもしれないということである。

 3)5…Bg4

 これもまた反撃志向で、6.f3 Na5! 7.Bb5+ Bd7 が根底にある。白の余分な f2-f3 突きは 5…Na5 からの同様の手順と比較すると自陣を弱めているだけで、黒の可能性を高めている。特に黒がキング翼ビショップをc5の地点に出せれば白のキャッスリングを防ぐことができる。

 しかし今回は白は黒の反撃に反反撃で応じることができる。それは 6.Nxf7! で、意表をつくクイーン同士の交換の間接的な誘いである。6…Bxd1 は 7.Nxd8 で2ポーン損のうえに2駒が当たりになっているので、黒はこの誘いを断わらなければならない。また、6…Kxf7 も 7.dxc6+ が開きチェックになるのでやはり避けなければならない。代わりに 6…Qe7 でクイーンを助け、白のナイトとクイーンを当たりの状態にする方が良い。しかし白は 7.d6! で黒の応手を聞くことができる。この手はビショップの斜筋を通してナイトに紐をつけ、黒クイーンをまた当たりにすることにより先手を取っている。そして 7…cxd6 8.f3 で戦術の対決は、白の駒がすべて守られているのに対し黒のビショップとキング翼ルークが当たりになっているので、白の有利に終わった。

 4)5…b5

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(100)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対2ビショップ

 クイーン対複数の小駒のエンディングの勝敗は通常は駒の優劣による。小駒4個は通常勝つ。小駒3個はせいぜい引き分けである。小駒2個は不利である。まず2ビショップが持ちこたえることのできる図100から始めよう。

 図100
ロッリ、1763年

 図100は黒が目指さなければならない体勢を示している。2ビショップは並ぶのが最良で敵キングの前進を防ぐ。黒キングは隅の近くの2段目でビショップに接しているのが最善である。これにより駒の動く十分な余地があり両翼からの攻撃からも保護されている。受けの手段は次のようになる。

1.Qd7+ Kg8!

 1…Bf7? は誤りで 2.Kf5! で白キングが近づくのを許し負けてしまう。
a)2…Bc3 3.Qa7 Bb2 ビショップが他の枡に行くことはできないし 3…Kg8 は 4.Qb8+ で負ける。4.Qb6 Ba3 4…Bc3 は 5.Qg1+ Kh7 6.Qh2+ Kg8 7.Qb8+ Kh7 8.Qc7 でビショップを取られる。5.Qd4+ Kf8 5…Kg8 は 6.Kf6 Kf8 7.Qd8+ Be8 8.Ke6 で白が勝つ。6.Qa1 作局者の正解手順は 6.Qh8+ Ke7 7.Qe5+ Kf8 8.Kf6 である。6…Bb4 6…Be7 なら 7.Qh8+ Bg8 8.Kg6、6…Bd6 なら 7.Qh8+ Ke7 8.Qf6+ で白が勝つ。7.Qh8+ Ke7 7…Bg8 なら 8.Kg6 である。8.Qe5+ これで黒のb4のビショップが取られる。
b)2…Bb2 2…Ba1 は 3.Qa7 Bb2 4.Qb6 でa)と同じになる。3.Qa7 Bc3 4.Qg1+ Kh7 5.Qh2+ Kg8 6.Qb8+ Kh7 7.Qc7 でどちらかのビショップが取られる。

2.Qe6+ Kg7 3.Kf4 Bh7

 黒はもちろんビショップを自分のキングの近くに置いておかなければならない。しかし同時に Kf5 も防がなければならない。3…Bf7 は 4.Qd7 Kg6 5.Qg4+ から 6.Kf5 で白が勝つ。

4.Qd7+ Kg6

 4…Kg8 の方が安全だが本譜の手でも引き分けになる。

5.Kg4 Bg8 6.Qe8+ Kg7

 6…Bf7 7.Qd7 Bg8 でも良い。

7.Kf5 Bh7+ 8.Ke6 Bg8+ 9.Kd7 Bf7

 盤を90度回転させれば図100とほぼ同じような局面になった。白は何も進展がなかった。他に何かする余地もない。10.Qe4 Bg8 11.Qg4+ Kf7 12.Qh5+ Kg7 13.Ke8 の後最も簡明な手順は 13…Be6 14.Qf3 Bf7+ 15.Kd7 Bg8 である。この局面は引き分けである。

 盤の中央部でも2ビショップはクイーン相手にしばしば引き分けにすることができる。しかしその手順ははるかに複雑でほとんど我々の実戦的な興味を引かない。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(89)

「Chess Life」2005年6月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37](続き)

戦型Ⅱ
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 c5 7.dxc5 Bxc5

 ここで白ははるかに攻撃的な手順を選ぶこともできる。

8.a3 Nc6 9.Qc2 Qa5 10.O-O-O

 これは 8.cxd5 の戦型とははっきり異なった種類の試合になる。この戦型Ⅱでは逆翼キャッスリングが示唆するように非常に激しい戦いになる。

10…Be7

 黒はd5のポーンを守った。

11.g4 dxc4 12.Bxc4 e5

 12…Nxg4 とポーンを取るのは危険すぎる。13.Rhg1 Qh5(13…Nf6 は 14.Rg5 Qb6? 15.Na4 で急に黒クイーンが捕獲される)14.h3 Nf6 15.Be2 となって素通しのg列での攻撃が厳しい。

13.g5

 白はビショップ当たりを無視して攻撃を続行する。

13…exf4 14.gxf6 Bxf6 15.Nd5

 ここでは 15.Rd5 も面白い。

15…Ne7 16.Nxf6+ gxf6 17.Rhg1+ Kh8

 この局面はグランドマスターの実戦に何十回となく現れた。一見すると黒キングの方が白キングより危険で白の方が優勢のはずのように思われる。しかしこれまでのところ白はそれを実証するに至っていない。

 実戦例を二つあげる。一つは2002年レオンでのアーナンド対クラムニク戦で 18.e4 b5 19.Bd5 Nxd5(19…Rb8? なら 20.Qc5!、19…Be6 なら 20.Bxa8 Rc8 21.Qxc8+ Nxc8 22.Kb1 で白の方が良い)20.exd5 b4 と進み、もう一つは1992年レッジョ・エミーリアでのカスパロフ対ハリフマン戦で 18.Qe4 Ng6 19.Qd4 Qb6 20.Qxb6 axb6 と進んだ。

 どちらの試合も引き分けに終わった。

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開放試合の指し方(035)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 1世紀以上も前の昔の選手の中には、1…e5 はこのような局面になりf7の地点が速攻にさらされるので悪手(!)であると唱える者もいた。例えばフランス防御の 1…e6 なら黒は、キングのすぐそばの守りの弱い地点に対するビショップとナイトの協同攻撃を心配する必要が全然ない。

4…d5

 信じがたいが黒はf7に対する当たりを無視して生き抜くことができる。そうするためには自身が強力な狙いを持ち、白の注意をf7とその周辺からそらし、白に自分の方の心配をさせなければならない。そのような猛烈な逆襲を作り出す唯一の手段は 4…Bc5 である。これはヨーロッパではチェコの分析家にちなんでトラクスレル反撃として知られ、ほかでは研究し洗練させたペンシルベニア・チェスクラブにちなんでウィルクスバリー戦法として知られている。

 4…Bc5 のあとクイーンとルークの両当たりの 5.Nxf7 には黒は 5…Bxf2+! で応じる。白がこのビショップを取れば黒はチェックと狙いで自分の駒を働かせることができる。例えば 6.Kxf2 Nxe4+ 7.Ke3 Qh4! 8.Nxh8 Qf4+、または 7.Kg1 Qh4 8.Qf3 Nd4 となる。白は 7.Kg1 Qh4 8.g3 Nxg3! 9.Nxh8! Nd4 の方が良いが、黒の攻撃が強力なので白は 10.hxg3 Qxg3+ 11.Kf1 Qf4+ 12.Kg2 Qg5+ で永久チェックを受けざるを得ない。(6.Kxf2 の代わりに)ひねった 6.Kf1 は 6…Qe7 7.Nxh8 で同じことで、7…d5! 8.exd5 Nd4(9…Bg4 の狙い)のあと白が受けに少し時間をさいてさえ猛攻にさらされる。

 ウィルクスバリー戦法を咎める白の最善の策は欲張りな 5.Nxf7 よりも 5.Bxf7+ である。黒はキングをe7に上げて …Rf8 のあとf列で攻撃できるようにする。しかし白は得したポーンを適時に返して黒の危なっかしいキングにつけ込むことができる。例えば 5…Ke7 6.Bd5 Rf8 7,Nf3 d6 8.c3 Bg4 9.Bxc6 から 10.d4! と指す。そうなれば中盤戦の進路を決めるのは黒の攻撃や白の戦力得ではなく白の攻撃ということになる。

5.exd5

 他の手はどれも意味がない。白のしたいことはd5の地点とc4からf7に通じるすべての地点とを素通しにすることである。

5…Na5

 この手は最初の印象は良くない。ナイトを盤端に跳ねる手がどうして良いのだろうか。手順を追うとこのナイトはこのあと少なくとも数手の間動かないことが分かる。あなたは論理的な 5…Nxd5 のような何かもっと良い手があるに違いないと考えるかもしれない。

 そしてこの基本的な疑問には答えが二つある。一つは 5…Na5 はf7への当たりをどうするかという黒の布局の重大な戦略上の問題を解決しているということである。他のどんな5手目も解決することはできない。他のどんな手も白のビショップをb3-f7の斜筋からすぐにどかせることはできない。

 二つ目の答えはもっと複雑である。このナイト跳ねは他の手がもっと悪いので最善である。そしてこれはもっと詳しく見てみる必要がある。

 1)5…Nxd5

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(99)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 これまでクイーン対ルーク、対ポーン、対ルーク+ポーンを採り上げてきた。クイーン+小駒1個は一般に例外を除き単独のクイーンに勝てない。同様にクイーン対1ルーク+1小駒は通常は引き分けである。一方クイーンは小駒1個に対して容易に勝てる。しかし小駒1個と敵陣深く進攻した1ポーンは引き分けることがある。

 単独のクイーンに対して2ルーク、2ビショップ、2ナイト、1ビショップ+1ナイトは駒の配置による。これら四つの場合を順に考えてみよう。

 クイーン対2ルーク

 このエンディングは通常は引き分けである。そこで黒キングの不利な位置のせいで2ルーク側が勝つ例外的な局面を分析してみよう。

 図99
リンク、1916年

1.Rh7+ Kg8 2.Rhe7

 白の初手は黒クイーンからg8の地点を奪うためである。それから黒クイーンの脱出も防いだ(1.Rf7 Qd6!)。白は黒のこの手を常に警戒しなければならない。もし許せば黒に永久チェックの機会を与えてしまう。以下のルークの動きはこの関係から理解することができる。

2…Kh8

 黒クイーンは横に動くと 3.Rg7+ Kh8 4.Rh7+ Kg8 5.Rbg7+ Kf8 6.Rh8+ で取られてしまうので横に動けない。

3.Rbc7!

 なぜこの枡なのか。その意味は 3…Qg8 に対して 4.Kf1! で応えることにある。この時黒クイーンはc4の地点に来ることができない。そして 4…Qf8+ 5.Rf7 Qg8 の後 6.Kf2! で黒は手詰まりに追い込まれクイーンを取られるか詰まされる。従って黒は待機を続けなければならない。

3…Kg8 4.Ra7

 4.Rcd7 でも本譜と同様に勝てる。しかし 4.Ke1 Kh8 5.Rf7 は 5…Qb4+ があってだめである。4.Rb7 Kh8 は黒の2手目の局面に戻ってしまう。

4…Kh8 5.Rf7 Qe8+

 5…Qg8 なら白キングがf列のどの地点に行っても白の勝ちになる。

6.Kf2!

 6.Kf3? は 6…Qc6+、6.Kf1? は 6…Qb5+ があって良くない。先に触れた 4.Rcd7 なら白キングはこの二つの地点でも良かった。

6…Kg8 7.Rg7+ Kf8

 h8に行ったら前に述べた手順でクイーンが取られる。

8.Rh7! Kg8

 黒には有効なチェックがない。しかも黒クイーンはa8とh8での詰みを同時に防ぐことができない。

9.Rag7+ Kf8 10.Rh8+ で黒クイーンが取られる。

 クイーンが2ルークに勝つことも可能だが2ルークが離れ駒になっている場合に限られる。つまりルークがもう一つのルークと連結していないかキングによって守られていない場合である。どちらかに小駒1個が加われば通常は加わった方に十分な勝ち目がある。クイーン対1ルーク+2小駒もクイーン側が分が悪いが通常は引き分けに終わる。

(この節続く)

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開放試合の指し方(034)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 4.d4 exd4 5.O-O Nxe4

 これで白には e4-e5 突きで黒駒をけちらす手がない。代わりに白は 6.Re1 で素通し列の活用に努めなければならないが 6…d5! が来る。白は2ポーン損なので攻撃する一手である。そして奇跡のチェス戦術により 7.Bxd5! Qxd5 8.Nc3 により先手でポーンの1個を取り戻す。このナイトは二通りの取り方があるように見えるが、一方(8…Nxc3)は不正な手で、もう一方はひどいことになる(8…dxc3?? 9.Qxd5)。だから黒はクイーンが逃げなければならない。しかしキャッスリングできれば優位に立ち、通常はクイーン翼にキャッスリングすることになる。例えば 8…Qa5 9.Rxe4+ Be6 10.Nxd4 O-O-O! となれば、展開に優りd列での釘付けが強力な黒が優勢である。白はすべてを含みに 9.Nxe4 と取り、d4での取り返しを後回しにし必殺の開きチェック(Nf6+)を狙うのが良い。しかしそれでも黒は 9…Be6 10.Neg5 O-O-O! 11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6 でいい勝負になる。黒駒はすべて好所にありdポーンを保持することができる(13.Nxd4?? Nxd4 14.Qxd4 Bxh2+ から 15…Rxd4)。

 これらの手順は 1.e4 e5 の布局でお目にかかる多くの手順とはいくらか違っている。それはここでは両者の強みと弱みが明らかに明示されているという点にある。4.d4 から生じる局面は、スコットランド試合や4ナイト試合の10手目のあとに見られるような中盤戦よりも引き分けに終わりにくい。経験の少ない選手が典型的な局面に慣れ親しむことができるように、これらの激しい布局の白側と黒側を試してみるのは非常に有益である。

 それでは 4.Ng5 に戻る。

(この章続く)

2013年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(98)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン+ポーン対クイーン+ポーン

 この場合も可能な局面があまりに多くてほとんど体系化できない。さらに実戦では両方にポーンが残っているのが普通なのでこのような局面はほとんど実戦の分野に属している。そこでここでは2ポーン対1ポーンの興味深い局面だけを分析してみよう。

 図98 白の手番
フリードマン対ギルク、1936年

 白は強力なパスポーンを持っているが黒クイーンが利いているので前に進めない。キング翼のそれぞれのポーンはチェックからの防ぎとなっている。しかし白は以下ような巧妙な手順で勝つことができる。

1.Qe3

 この手は 2.Qe7+ Kg6 3.Qe8+ から 4.a8=Q を狙っている。また白キングが安全にg3の地点に下がれるようにもしている。

1…Qa2

 機知に富んだ受けである。白の狙いの手順の最後で黒クイーンがh2に行って詰みになるのでその防ぎになっている。1…Kf8 では 2.Qh6+ でf6のポーンがチェックで取られる。1…Kf7 は 2.Qb3+ でaポーンがすぐにクイーンに昇格できる。しかし 1…Qa4(e8に利いている)なら白の勝ちはそれほど簡単でない。2.Qe7+ Kg6 3.Qb7 Qa2 でも 2.Qb6 Qe4! でも黒の反撃が功を奏する。白の勝つ手順は次のとおりである。2.Kh5! Kf7 2…Qa5+ なら 3.g5 3.Qd3! Ke7 3…Qa5+ なら 4.Qf5 Qd2 5.Qh7+ Ke6 6.Qg8+ から 7.a8=Q 4.Qh7+ Kd6 5.Qb7 Qa5+ 6.Kg6 Qg5+ 7.Kf7 で白が勝つ。

2.Kg3 Kf7

 3.Qe7+ から 4.Qe8+ を防いだ。

3.Qd3!

 次の手順でも勝てる。3.Qe4! Qa3+ 4.Kh4 Qb2 4…Qa2 なら 5.Qh7+ Kf8 6.a8=Q+!、4…Qd6 なら 5.Qh7+ Ke6 6.Qc2 である。5.Qc4+ Kg6 5…Kg7 なら 6.Qc7+ から 7.a8=Q 6.Qd3+ から 7.a8=Q で白が勝つ。

3…Kg7 4.Qd7+ Kh6

 一見受かっているように見える。

5.g5+! Kxg5

 5…fxg5 なら 6.Qc6+、5.Kg6 なら 6.Qe8+ でどちらもその後 7.a8=Q である。

6.Qg7+ Kf5

 6…Kh5 は 7.Qh8+ である。

7.Qg4+ で白が勝つ。

 7…Ke5 8.Qf4+ の後白クイーンがf3又はe4でチェックをかけaポーンがクイーンに昇格する。

 前に述べたように両方にポーンがあるその他のエンディングは実戦例の節で採り上げる。

(この節終わり)

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開放試合の指し方(033)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 4.d4 exd4 5.O-O Bc5 6.e5

 ここで 6…d5 と突くと白は 7.exf6 dxc4 と指し、このあと黒が既にビショップを動かしてしまったためにすぐにg7で取り返すことのできないので fxg7 と取ることができる。(黒が 5…Bc5 でなく 5…Be7 と指すのは 5.e5! d5? 6.exf6 dxc4 7.fxe7! で白の駒得になるのでなおさら悪い。)

 しかしこの 5.O-O と 5.e5 との違いは形勢をはっきり白の有利にするには十分でない。確かに 8.fxg7 に対し黒は 8…Rg8 と指さなければならない。しかし黒はそのあと …Be6 と指しクイーンを動かしクイーン翼にキャッスリングする。そしていずれg7の白ポーンを取ることができ、g1の黒キングに対しておあつらえの素通し列を利用することができる。

 19世紀のドイツのマスターのマックス・ランゲにちなんで名づけられたこの戦法は評価の最も難しい戦法の一つである。代表的な手順は 9.Bg5 Be7 10.Bxe7 Kxe7!(クイーンをd4に利かせておくため)11.Re1+ Be6 で、黒はキングが比較的安全で(f8に行くことになればもっと安全になる)…Rxg7 のあとは戦力で優位に立つ。

 白は(8.fxg7 の代わりに)8.Re1+ Be6 9.Ng5! で攻撃と反撃の複雑な戦いに持ち込むことができ、9…Qd7? 10.Nxe6 fxe6 11.Qh5+ から 12.Qxc5 で駒得するという罠も仕掛けている。黒は 9…Qd5! と指すのが良く、そのあと 10.Nc3! Qf5 11.Nce4 O-O-O! で難局を切り抜けることに努める。

 この重要な局面にはそれぞれの側に利害得失がある。黒はキング翼が fxg7 から Nxe6 でがたがたになるが、中央の強力なポーン群は …d4-d3-d2! と進攻して白駒をけちらすかもしれない。白は g2-g4 突きで黒クイーンをいじめることができるが、g列が素通しになれば大きな危険に直面することになる。黒は展開でも優位に立っていて、白が単純化を図れば大きく物を言うことになり、例えば 12.fxg7 Rhg8 13.Nxc5? Qxc5 14.Rxe6!? fxe6 15.Nxe6 Qd5 16.Nxd8 Rxg7! で詰みの狙いができる。6.e5 のあとはいい勝負のようである。

 さらに黒には途中で変化する余地がある。最も好戦的なのは 5.O-O に 5…Nxe4 と取る手である。

(この章続く)

2013年08月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

日韓の間の「真実の話」

産経新聞電子版2013年7月26日付け
日韓の間の「真実の話」をしよう

2013年08月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

[復刻版]実戦に役立つエンディング(97)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 ルーク列ポーンは勝つ見込みが非常に薄いので調べない。理由はキングがチェックから逃れることが難しいからである。本項で採り上げた例は比較的少ない。それでも幾つかの重要な結論を引き出すことができる。第一にどちらのクイーンも盤上の任意の地点に速やかに移動できるように中央部の要所を占めるように努めなければならない。第二に白は自分のキングも公然と活用しなければほとんど局面の進展を図ることができない。第三に黒は最も効果的にチェックをかけるために自分のキングをポーンからできるだけ遠い所に置かなければならない。このためには自分のキングを盤端または隅に置くのが通常は最善である。読者は攻めと受けの手段に慣れるために似たような局面で色々試してみるのが良い。

 本項を終わる前にナイト列ポーンで起こる可能性のある局面について指摘しておかなければならない。

 図97

 遠い昔にロッリが示したように黒はすぐに強制的に引き分けにすることができる。1…Qh4+ 2.Qh7 2.Kg8 なら 2…Qd8+ 3.Kf7 Qd7+ 4.Kf6 Qd4+! 5.Kg6 Qg4+ である。2…Qd8+ 3.g8=Q 3.Qg8 なら 3…Qh4+ である。3…Qf6+ 4.Qgg7 Qd8+ 5.Qhg8 Qh4+ 6.Q7h7 Qf6+ 白は二つのクイーンがあるにもかかわらず永久チェックから逃れることができない。

 白に2個以上のポーンがある場合は通常は白が簡単に勝てる。そこで次は両方にポーンがある局面を考えることにする。

(この節続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(07)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第7局

 シュピールマン対バーレ戦では黒の選手は相手のナイトが自分のキングのすぐ近くに根を下ろすのを防ぐためにgポーンを突いた。これにより自分のキング側ナイトがポーンの強固な支えを失い、同時にポーンの利きがない枡が弱点として生じた。シュピールマンの駒はこれらの弱点枡に侵入して締め付け相手のキングを詰ませた。

フランス防御
白 シュピールマン
黒 バーレ
ウィーン、1926年

1.e4

 この手は以下のような多くのことを成し遂げている。

 ポーンが中原に据えられた。

 このポーンはd5とf5に利いていて黒駒がそれらの地点に来るのを防いでいる。

 白のクイーンとビショップがすぐに動ける余地を得た。

1…e6

 この手には次のような幾つかの目的がある。

 一つ目は白が布局を指図するのを防ぐことである。普通の 1…e5 の後白は強力なルイ・ロペス戦型、ジュオコ・ピアノ、ウィーン試合、マックス・ランゲ攻撃、あるいは何らかの危険なギャンビットさえ指すことができる。

 二つ目は黒の狭小な陣形は白の早まった攻撃をよく誘発し白に惨劇をもたらすことがある。

 三つ目はe6のポーンは 2…d5 突きを支え、白のeポーンに対する攻撃が主導権をもぎ取ることもある。

 フランス防御を見くびってはいけない。うわべは控えめだがその下に多くの動的なエネルギーが隠されている。

2.d4

 中原に1ポーンを置くのが価値あることなら2ポーンを置けばその価値が倍増する。

2…d5

 黒はクイーンの利きをもっと増やし白の中原に挑戦する。

3.Nc3

 ナイトが適切な地点に展開しeポーンを守りd5の地点ににらみを利かせているので明らかに優れた応手である。

3…Nf6

 黒もやはりキング翼ナイトを最強の地点に持ってきた。しかもさらに白のeポーンに当たっているので先手である。

4.exd5

 争点を和らげるこの手よりも 4.Bg5(駒を展開し敵駒の一つを無力にする)で圧力を増加させる方を好む選手も多い。

 大きく捌けた局面を好むシュピールマンは1組のポーンを交換して自分の駒の動ける余地を増やした。

 どちらの手が良いのだろうか。どちらの手を指すべきなのだろうか。その答えは自分の好きな手、即ち自分の棋風と性格に最も合った手を指すことである。注意深く慎重な性格でポーン1個の大切さを良く知っているならば、つまりポーンはそれぞれクイーンになる可能性があり1ポーンでも損すると試合に負けるかもしれないと考えているならば、4.Bg5 と指すべきだし布局定跡はルイ・ロペス、クイーンポーン布局、レーティ、イギリス布局などの大局観に基づいて指すものを選ぶべきである。一方恐れを知らぬ冒険的なチェスが好みでポーンは駒で猛攻をかける際のじゃまにしかならないと考えるならばエバンズ、デンマーク、キング翼その他のギャンビットなど想像力をかき立てる余地のある布局を選ぶべきである。

 指すべき最良の布局は自分が最も安心できる布局である。

4…exd5

 ナイトで取るよりもこの手の方が良い。黒は中原にポーンを維持しクイーン翼ビショップを自由にした。

5.Bg5

 この手はナイトを釘付けにし 6.Bxf6 gxf6(6…Qxf6 はdポーンをただ取りされる)で弱い二重ポーンを作らせ黒陣を乱す狙いをもっている。

5…Be7

 この手は釘付けを外す最も簡単な手段である。ビショップを1枡しか動かさないのは大した手でないと思うかもしれないが次の迅速な展開の第1原則に合致している。

 駒を最下段から出せ。

6.Bd3

 このビショップの位置は攻撃的で、黒のキング翼キャッスリングの場合は特にそうなる。

6…Nc6

 このナイトの初登場は白のdポーンを狙っているのでなおさら脅威的である。

7.Nge2!

 ありきたりの展開の 7.Nf3 ならば黒は 7…Bg4 でこのナイトを釘付けにし再び白のdポーンを狙う。白は例えば 8.Be2 でこのポーンを助けることができるが主導権を失うことになる。

 本譜の手の後でも黒がナイトの釘付けに来れば 8.f3 でビショップを追い払い手損させることができる。

7…Nb4

 この手は敵の危険な駒を消し去り自分は双ビショップを維持して少しの有利を確保する意図である。

8.Ng3

 ナイトをe2に展開する別の理由がここで分かる。ナイトやビショップにとってf5は圧倒的な地位なので白はそこへ駒を据えたいと考えている。駒はそこにいるだけでよく敵にとっては威圧的な存在になる。

8…Nxd3+

 任務達成。白のナイトとビショップに対して黒は足の長い双ビショップを保持して技術的には少し優位に立った。しかし・・・

9.Qxd3

 ・・・黒は手損をしている。黒は白の1回しか動いていないビショップと交換するためにナイトを3回動かした。それに加えて黒ナイトは盤上から完全になくなったがビショップはそのあとに駒を残した。その結果戦場には黒の駒2個に対し白は4個の駒が活動している。白はどちらでも好きな方にキャッスリングして二つのルークを素早く動員する準備もできている。従って優勢なのは白の方である。

9…g6

 このポーン突きは白ナイトがf5の地点に来るのを防いでいるが、黒陣に構造的な弱点、つまり取り返しのつかない弱点を作っている。f6とh6の地点はもうポーンで守られていないので弱く永久に弱い状態のままである。

 注意すべきはこのポーンは前進するように強いられたのでなく、そうするようにしむけられたのである。単なるナイトの侵入の脅しが黒に自然な予防手を指させるのに十分だった。この手は十人中九人の選手が同じような局面で機械的に指すたぐいの手である。それゆえにこのような手の欠陥を突く手法を知っておくことが大切である。なぜなら劣った手でもうまくそれにつけ込まれなければ劣った手にならないからである。

 これがその局面で白の手番である。

10.O-O

 控えの駒を動員するまで乱暴は禁物である。ブラックバーンは「クイーン翼ルークを展開するまで決して攻撃を始めるな」とよく言っていた。

 白はキングの安全を確保し一つのルークを隠れ家から出した。

10…c6

 ポーン中原を強化しクイーンのために新たな道を開けた。

11.Rae1

 白は唯一の素通し列を占有し(ルークは素通し列またはそうなる可能性のある列にいるものだから)、ビショップを釘付けにした。

 釘付けにされた駒は動けないだけでなく取られることを避けられないことは注意しておくに値する。釘付けにされた駒は完全に麻痺しているので他の駒を守ることができない。だからこのビショップは動けずに生命の危機にさらされている(何度も攻撃されるかもしれないので)だけでなく、このビショップに守りを頼っているナイトはもはや安泰ではないことになる。要するに黒は 12.Bxf6 で駒損になる危機に直面している。

11…O-O

 黒キングは逃亡し避難した。ついでにビショップを釘付けからはずしナイトも助けた。

 ここまでのシュピールマンの戦略とここから後の決定的な手筋はラスカーを喜ばせたことだろう。ラスカーはかつて次のように言っていた。「試合の始めは手筋を探すのを無視し乱暴な手を差し控えよ。わずかの有利を目指しそれらを積み重ねこれらの目標を達成した後初めて手筋を意志と知力の限り探し求めよ。なぜならその時こそ手筋がたとえどんなに奥深く隠れていても存在するはずだからである。」

 ちょっと見れば白は必要な陣形上の優位を達成していることが分かる。もし手筋が導き出されるとしたら黒が防御のために駒を再編成する前の今に違いない。現在のところ白は5個の駒が活発に働いているが黒は2個である。現在白には素通しの列がある。十分、十分。手筋があるに違いない。

 以下が白の読みである。

 黒がgポーンを突いたのでナイトがしっかりした支えを失った。まだ二つの駒で守られているがもしビショップがいなければ1個の駒でしか守られていない。実際もしビショップがいなければナイトは釘付けになり長いこと攻撃にさらされる。このビショップは両方の式に現れている。明らかにこのビショップが被告人でありやっつけなければならない。それも黒が 12…Be6! と指さないうちにすぐにである。

12.Rxe7!!

 ズノスコ=ボロフスキーは「心躍る着想がひらめいた時駒を犠牲にすることは何と簡単に思えることだろう」と言っている。

12…Qxe7

 黒は駒を取り返さなければならないがナイトが釘付けになり以降の攻撃の格好の標的になった。

13.Qf3

 釘付けを強化しナイトを取る手を狙っている。

13…Kg7

 キングが助けに来た。代わりに 13…Bf5 の受けならシュピールマンは次のような鮮やかな手段を用意していた。14.Nxf5 gxf5 15.Qg3(狙いは 16.Bxf6 の1手詰み)15…Kg7(15…Kh8 は 16.Qh4 Kg7 17.Qh6+ Kg8 18.Bxf6 で白の勝ち)16.Bxf6+ Kxf6 17.Qh4+ Ke6 18.Re1+ Kd7 19.Qxe7+ で黒は駒を全部取られてしまう。

14.Nce4!

 白はどれだけ多くの華々しい手を見つけなければならないとしても釘付けのナイトを叩き続けなければならない。

 ここでもやはり白の直接の狙いは単純である。それは 15.Bxf6+ で、即白勝ちである。

14…dxe4

 黒はこのナイトを取らなければならない。さもないと自分のナイトが取られる。

15.Nxe4

 3個の駒で無力なナイトを攻撃している。「チェスは心優しい者にはむかない」とはフランスの格言である。

 白の狙いは 16.Bxf6+ から 17.Bxe7 である。

15…Qe6

 15…Qxe4 なら白には 16.Bxf6+(クイーンを守っている駒を除去する)から 17.Qxe4 でクイーンを取るか、あるいは 16.Qxf6+ Kg8 17.Bh6 から 18.Qg7# で詰みに討ち取るかという楽しい選択がある。

 この最後の変化で白がどのように黒陣の二つの空所のf6とh6に自分の駒をしっかりとねじ込んだかに注目して欲しい。これらの地点は黒がgポーンを突いた後ポーンで守られていなかった。

 本譜の手で黒はクイーンを助けた。黒はまだ戦力的には得しているが、白の駒が黒枡に入り込んで黒キングを捕まえるので黒の敗勢である。

16.Bxf6+

 駒を取り返し黒の応手を二つに制限した。

16…Kg8

 16…Kh6 なら 17.Qf4+ で次の手で詰む。

17.Qf4

 h6への決定的な侵入からg7で詰ませる狙いである。黒枡での勝利である。

 黒は詰みが防げないので投了した。

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

開放試合の指し方(032)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 4.d4 exd4 5.e5 の局面

 黒はここで中央をどうするかという重要な決定をしなければならない。もし 5…Ne4 と指せば白は 6.Bd5 または 6.Qe2(このあとは O-O から Rd1)と指して黒にナイトをc5に引かせそこからe6に引かせることができる。黒は早晩dポーンを1枡か2枡突かなければならず、白はそれを予期してd5とd6の地点をにらむように、例えばd5の地点を占拠するかルークを用いてd列を支配することにより、自分の駒を繰り出すことになる。黒は理論上は互角を達成するかもしれないが、その陣形はいくらか窮屈で指し進めるのが難しくなることがあり、一方白駒はd列をにらむことになる。

 5…Ng4 ならナイトが退却することにはならない。白はまた 6.Qe2! でeポーンを守り中央の変化を待ち受けることができる。この手には h2-h3 と突いて黒ナイトを押し返す狙いがあり、それをビショップで取れば黒のキング翼のポーンがひどく乱れてしまう。黒は 6.Qe2 には 6…Qe7 と応じるべきだが、7.Bf4 d6 8.exd6 Qxe2+ 9.Bxe2 Bxd6 10.Bxd6 cxd6 11.Na3 から Nb5xd4 または Nc4 で中央が開放されて白駒がいくらか利益を得る。

 従ってf6のナイトは動くべきでない。黒の反撃の布局の主題に最も沿っていて、あとでdポーンを突くことから生じる問題も避けるのは、すぐに 5…d5 と突く手である。6.exf6 dxc4 は白にポーンの代償と黒のビショップ対ナイトの優位の代償がほとんどないので白はこれを避けるべきである。そのあと 7.fxg7 Bxg7 8.O-O O-O となっても白には展開の優位さえなく黒キングはまったく安全である。

 だから白は 5.e5 の顔を立てて 6.Bb5! とかかって黒のクイーン翼ナイトを釘付けにし、Nxd4 で釘付けを強めることにする。この方針の利点は 6…Ne4 7.Nxd4 Bd7 8.Bxc6! bxc6 9.O-O で白が黒のクイーン翼のポーンを乱し強力なナイトを中央の要所のd4に維持することができることである。黒はまた短射程のナイトを交換して長射程のビショップを保有した理論上の有利さはあるが、白ナイトは絶好の地点にいて黒ビショップは動きが大きく制約されているのでこの場合は白が非常に有利である。白は f2-f3 と突いて黒ナイトを追い払い、そのあと f3-f4-f5 からたぶん -f6! と突いて黒のキング翼を弱めることができる。黒は …c6-c5 で自分もポーンを動員することができるし、白のポーン進攻を予期して …f7-f6 と突いて、白のeポーンが黒のfポーンと交換されればキング翼の素通し列をめぐって争うことができる。

 この手順を改良しようとする白の試みの重要な策略は(5.e5 の代わりに)5.O-O と指し 5…Bc56.e5 と突く手である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(96)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 詳しい分析によりビショップ列のポーンの場合は白の勝ちの可能性が非常に大きいことが示されている。しかし中央列のポーンの場合よりは克服すべき困難が多い。今度はナイト列のポーンを調べてみよう。黒の受けの可能性は広がるがそれでもほとんどの場合白が勝つ。一例として図96を挙げれば十分であろう。

 図96

 ここでも適度に白に有利な局面を選んだ。白キングがd2に到達するために必要な長たらしい手順は省略してある。白の手番ならば 1.Qf2 ですぐに勝ちとなる。そこで黒の手番として考えよう。

1…Qf7

 1…Qe6 は 2.Qa7+ Kb2 3.Qb8+ Ka1 4.Qa7+(4.g8=Q? は 4…Qe3+! でステイルメイトになるのでだめである)から 5.g8=Q で黒が負ける。1…Qg8 も 2.Qg4 の後黒は2…Qd5+ で本譜の手順に戻らなければならない。1…Qg8 に対して白は 2.Qd7 でも勝てる。

2.Qg4!

 最も明快な勝ちへの手順である。白の狙いは自分のキングをg1に置くことである。黒はチェックに活路を見出さなければならない。

2…Qd5+

 2…Qf2+ は 3.Kd3 で黒はこれ以上チェックをかけられない。2…Qg8 は 3.Ke1 で白が勝つ。

3.Ke1!

 白は数多くのチェックから逃れるために正確に指さなければならない。例えば 3.Ke2 だと 3…Qb5+ 4.Kf2 Qb6+ 5.Kg2 Qc6+ 6.Kh2 Qh6+ で永久チェックから逃れられない。

 白キングは黒からの有効な斜めチェックが無くなるようにg列に行かなければならない。

3…Qh1+

 3…Qe5+ なら 4.Qe2+、3…Qa5+ なら 4.Kf1 さらに 3…Qg8 なら 4.Kf2(5.Kg1 の狙い)Qf7+ 5.Kg1 Qa7+ 6.Kh1 である。

4.Kf2 Qh2+ 5.Qg2 で白が勝つ。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(031)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 黒は敵からのf7の地点への攻撃に先んじて自分の方から当たりをかけた。黒は白が駒をもっと利かせて(Ng5 または c2-c3 から Qb3 によって)f7への襲撃を強めることができる前に、キャッスリングして安全を図ることを望んでいる。中央が危険な状況になってキャッスリングができなくなれば、…d7-d5 突きか …Nxe4 から …d7-d5 突きでf7への攻撃の鉾先を鈍らせるつもりである。白はすぐにf7の地点を攻撃しなければeポーンを守らされることになり、黒がナイトをc6とf6、ビショップをc5(またはe7)とg4(またはe6)に配置して堅固な防御態勢を築ける。

4.Ng5

 世界選手権に挑戦したことがありチェス史上最も偉大な選手の一人のジークベルト・タラシュはこの手を初心者のへぼ手と呼んだ。それでもこれはf7を攻撃する白の戦略における理にかなった継続手であり、タラシュの全盛期からほぼ1世紀たった今日では優勢を狙う白の最善の方策と考えられている。黒はf7への狙いに対処するために局面を開放するか自分の方から白キングに攻撃を仕掛けるかを迫られる。

 このあと見られるように 4.Ng5 からの主手順で黒はポーンと引き換えに展開の優位と自分の駒に役立つ素通し列が得られる。しかし多くの選手は白番ではたとえ局面が理論的に白に有利でも防御側に回ることを好まず、狙いを受けるよりも実行したがるものである。そのような選手には代わりに 4.d4 がある。

 それなら中央を開放しているのは黒ではなく白ということになる。そして例えば 4…Nxd4? 5.Bxf7+! Kxf7 6.Nxe5+ Kg8 7.Qxd4、または 4…d6 5.Ng5(これは白が既に攻撃の助けに d2-d4! と突いているので 4.Ng5 の戦型の改良版になる)で利益を得るのは白である。黒は 4…Nxe4 5.dxe5 Bc5 6.O-O でも中央が劣った形になる。なぜなら黒駒が中央にしっかり固定されていなくて、7.Qd5 で戦力得する白の狙いに何かしなければならないからである。

 4.d4 に対し黒は 4…exd4 と取って、局面を開放した責任を白に押しつけるのがよい。白は穏やかにd4で取り返すわけにはいかない。というのは黒が3手目で予定したようにeポーンを取るからである。この布局の本質は 4…exd4 5.Nxd4? Nxe4! 6.Bxf7+ Kxf7! 7.Qh5+ g6 8.Qd5+ Kg7(安全な手)9.Nxc6 bxc6 10.Qxe4 で明らかで、ここで 10…Qe8! 11.Qxe8 Bb4+ から 12…Rxe8 で黒がキングの安全を確保し好所に展開した駒で状況を切り開く。途中 6.Qe2 Nxd4 7.Qxe4+ Qe7 または 6.Qh5 Nd6 でも同じことである。

 4…exd4 のあと白の一貫した着手は2手ある。つまり白はキャッスリングして素通しe列のために黒の …Nxe4 を危険にさせることができるし、または 5.e5 で中央で押しまくることができる。二つのうちキャッスリングの方が危険で、白にとってさえそうである。理由は黒がd4の得しているポーンを守り維持するか、または少しあとに出てくるように二つ目のポーンを取ることができるからである。2番目の着想の 5.e5 は次の局面になる。

(この章続く)

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