2013年07月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(95)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 前の例から分かるように中央列のポーンは勝てる可能性がかなり高くなる。それでは他の列のポーンはどうであろうか。図95はビショップ列のポーンの例である。

 図95

 黒クイーンのチェックによって発生する無数の複雑な変化を避けるために白に比較的有利な局面を選んだ。練習の目的はどのようにしたら勝ちが得られるかを示すことにあるからである。

1.Qg3!

 白の作戦は単純だが非常に効果的である。その基盤は既に見たとおりである。白は自分のクイーンをf2に置き後は黒キングの位置によって指し進める。黒キングが6段目を占めれば白キングはg2の地点を目指す。黒キングが8段目に行けば白クイーンはf1からチェックして白キングはg1の地点に行く。どちらの場合も黒はチェックをかけることができなくなりポーンのクイーン昇格を止めることができなくなる。黒にはこの作戦に対する対策はない。

1…Ka1

 黒クイーンが動いても白は本譜と同様に勝てる。

2.Kg7

 白は自分の作戦を開始する前に少し準備をしなければならない。すぐに 2.Qg1+ Kb2 3.Qf2+ Ka3 4.Kg7 と指すのは 4…Qg5+ 5.Kh7 Qh5+ で黒が白キングの帰還を阻止することができるのでだめである。

2…Qd4+ 3.Kh7 Qe4+ 4.Kh6 Qc6+

 4…Qe6+ は 5.Kg7 Qe7(d7)6.Qg1+ から 7.Qf2+ で本譜のように白が勝つ。

5.Kg7 Qb7(d7)6.Qg1+ Kb2 7.Qf2+ Ka1

 7…Ka3(b3、c3)なら 8.Kh6 で白キングがg2へ戻る。

8.Qf1+ Kb2 9.Kh6 で白が勝つ。

 以下の想定手順は 9…Qc6+ 10.Kg5 Qd5+ 11.Kg4 Qe4+ 12.Kg3 Qg6+ 13.Kh2 Qh6+ 14.Kg1 Qf8 もう有効なチェックがない。15.Qf6+ Ka2 16.Kf1! この後は Qe6-e8 である。図95では勝ちに至る他の手順もある。しかしここで挙げた手順が最も参考になる。

(この節続く)

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布局の探究(59)

「Chess Life」1992年10月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

姉妹布局(続き)

 (2)1.e4 に対するピルツ防御と 1.d4 に対するキング翼インディアン防御(続き)

 (A)ピルツ防御(B08)

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.Nf3 Bg7 5.Be2 O-O 6.O-O

 図3(再掲)

6…c6

 黒はキング翼インディアンより1手遅れているので、…e5 と突くのはそう容易でない。すぐに 6…e5?! と突くと 7.dxe5 dxe5 8.Qxd8 Rxd8 9.Bg5 であまり面白くない収局になる。6…Nbd7 と準備するのは 7.e5 Ne8 8.Bg5 で黒が押しまくられて白が主導権を握る。6…c5 と突くのも 7.dxc5! dxc5 8.Be3! で黒にとってつまらない局面になる。

 本譜の手はd5の地点を守り、それにより早い 7.e5 突きに 7…Nd5! が可能になって毒気を抜いている。6…c6 に代わる手は 6…Bg4 で、7.Be3 Nc6 のあと …e5 突きを目指す。

7.h3 Qc7

 白が …Bg4 と …Ng4 を防いだので、黒はクイーンを使って …e5 と突く用意をした。

8.Bf4 Nh5

 やはり 8…Nbd7 9.e5 は白が良い。本譜の手は白のクイーン翼ビショップをh2-b8の斜筋から追い払う。もっともその代償にナイトがそっぽに行った。

9.Be3 e5 10.Qd2 Nd7 11.a4 Re8 12.Rad1 exd4

 黒は展開が遅れているので、その完了を急がなければならない。すぐに 12…Nhf6 と戻すと白は 13.d5 でd6のポーンに強い圧力をかけてくる。

13.Nxd4 Nhf6 14.f3 Nc5 15.Bc4 a6 16.b4 Ne6 17.a5!

 これは1977年ジェチーンでのV.トゥクマコフ対W.ウールマン戦で、白は典型的な広さの優位で通常の布局の優勢を得ている。

 (B)キング翼インディアン防御(E95)

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2

 図4(再掲)

6…e5

 7.dxe5 dxe5 8.Qxd8 Qxd8 9.Bg5 Re8 の収局は白がわずかしか優勢でないので、ここでは問題ない。

7.O-O Nbd7

 世界チャンピオンのガリー・カスパロフが好んだように 7…Nc6 8.d5 Ne7 の方が厳しい。本譜の手はピルツ防御の 6…c6 の「姉妹」作戦である。

8.Re1 c6 9.Bf1

 白は …exd4 から …Re8 でeポーンに圧力をかけられるのを想定しなければならない。ビショップをどけることによりルークが難なくこのポーンを守ることができる。

9…exd4

 これが前記のピルツの姉妹作戦である。黒は白の中央の優位をいくらか増加させて反撃を作り出す。

 他の手はこれより良くない。

 (1)9…Re8 10.d5! は白が広さで有利になり、黒のキング翼ルークは主眼の …f5 の突っかけに不適切な位置にいる。

 (2)9…a5 は黒の最も普通の作戦だが、10.dxe5! dxe5 11.Na4 で白が黒のクイーン翼の黒枡の弱点(b6、c5、d6)につけ込むことができる。

10.Nxd4 Ng4 11.h3 Qb6 12.Qxg4 Bxd4 13.Qe2 Re8 14.Bh6 Nc5 15.Qd2 Be5 16.Kh1 f5 17.Rad1 Nxe4 18.Nxe4 fxe4 19.Rxe4 Bf5 20.Re2

 これは1989年ベルリンでのK.レルナー対L.フォークト戦である。(1)c4ポーンが中央に影響力を持っているのと(2)黒のキング翼が恒久的に弱いので、白がわずかに優勢である。(黒が受けを誤って白が30手で勝った。)

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開放試合の指し方(030)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス

 1.e4 e5 で始まる布局の中で2ナイト防御は比較的単純な戦略構想を持っている。しかしその戦術の様相は白にとっても黒にとっても指すのが最も複雑なものの一つになっている。この戦法は攻撃的でかつ激しくて、たった1手の間に勢いが一方から他方へ劇的に移ることがよくある。8手あるいは10手後の局面の評価は、一方が戦力得だが他方が全面的に駒の働きに優るということがよくあるので難しい。主手順ではポーンを犠牲にするのは黒だが、白が攻撃の可能性を作り出すために戦力を犠牲にする手順もいくつかある。

 2ナイト防御は実際は反撃の布局なので誤称かもしれない。(事実ソ連では19世紀の偉大なロシア人名人にちなんで「チゴーリン反撃」と呼ぶことがある。)黒の構想はジオッコピアノのそれとは大変違っている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6!?

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(94)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 このエンディングは実戦的に難しいばかりでなく分析するのにも複雑過ぎる。通常は相手のクイーンによって両方のキングがチェックされる局面に至るので全ての変化を完全に分析するのは実際上不可能になる。従ってここでは一、二の具体的な例で説明できるような指針となる原則を示すに留める。

 考えられる局面の可能性はあまりに多いので7段目にポーンがある局面だけを採り上げることにする。このように局面を絞っても本書程度の内容では完全に解明することが期待できないような複雑な局面も数多く存在する。

 ポーンを持っている側はまれにしかその昇格に成功しなかったので長い間この種のエンディングは引き分けに終わるのが普通であると考えられてきた。それでもポーンがビショップ列にある場合だけ勝つ可能性があると考えられていた。しかし最近になって非常に多くの正確な分析により7段目にポーンのある局面のすべてで非常に勝つ可能性が高いことが示されてきた。ルーク列のポーンは例外に当たるがそれでも勝てる例のあることが発見されている。

 このような局面で防御側と攻撃側の両者が直面する困難を示すために一、二の局面を特に掘り下げて説明することにする。これにより似たような局面で一般に適用できる勝つための幾つかの方策を特定できるであろう。

 図94

 この局面は1942年のアリョーヒン対シュトルツ戦で現れる可能性があった。攻撃側の中央列にポーンがある場合このような局面に到達する可能性は高いだろう。白キングはチェックを受けた時ポーンのどちら側へも逃げることができるので白の勝つ可能性は大きい。

 白の手番ならば 1.Qc2+ Ka3(a5)2.Qc3+ の後 3.Kf8 ですぐに勝てるので、黒の手番で黒がどのように守るのかを調べてみよう。黒にはあまり多くの選択の余地がないので明らかな白の勝ちの局面になるまで分析することができる。

(A)
1…Qb3+

 1…Qa7 は 2.Kf8 ですぐに黒の負けが確定する。1…Ka3 と 1…Qc7 はそれぞれ(B)と(C)で調べる。

2.Kf8

 この手が最も簡明である。他に 2.Qe6 Qf3+ 3.Qf6 Qh5+(3…Qd5+ は 4.Kg7 Qg2+ 5.Kf8 で白の勝ち)4.Kg7 Qg4+ 5.Kf8 Qb4 6.Qa6+ Kb3 7.Qe6+ から 8.Kg8 でも白が勝つ。

2…Qb4

 2…Qa3 は 3.Qd7+ から白にクイーンを交換される。

3.Qe5!

 このような局面ではやたらにチェックを繰り返すよりも全てを含みに残した落ち着いた手の方がはるかに有効であることが多いことを覚えておくと良い。黒は手詰まりに陥っている。

3…Kb3

 3…Qa3 は 4.Kg7 で白が勝つ。3…Ka3 は 4.Qa1+ から白にクイーンを交換される。

4.Qe6+ で白が勝つ。

 5.Kg8 の後ポーンがクイーンに昇格する。

(B)

1…Ka3

 この手の意味は白クイーンが中央の重要なd4又はe4の地点を先手で占めることのないようにしようというものである。

2.Qf4!

 もちろん勝つ手段は他にもある。本譜の手は 3.Kf8 を狙っているので黒はクイーンを動かさなければならない。

2…Qa7

 2…Qb3+ と 2…Qd7 はどちらも 3.Kf8 で黒が負ける。2…Qd5+ は 3.Kg7 Qg2+(3…Qb7 と 3…Qd7 も同じ)4.Kf8 で白が勝つ。

3.Ke6 Qa8

 この手は絶対手である。3…Qb6(a6)+ には 4.Qd6+ がある。

4.Qd6+ Kb2

 4…Ka4 には 5.Qd7+、4…Ka2(b3)には 5.Qd5+ がある。

5.Qe5+ Kc2(c1)

 5…Ka2(b3)には 6.Qd5+ があり 5…Kb1 には 6.Qb5+ から 7.e8=Q がある。

6.Qc5+ で白が勝つ。

 白はd5の地点でクイーンを交換できるか 7.Qb5+ からポーンをクイーンに昇格させることができる。

(C)

1…Qc7 2.Qe4+

 白の狙いはクイーンをd4に置くことである。そうなれば Kf8 ですぐに勝てる。黒の手はこの白の狙いを防ぐものでなければならない。

2…Kb3

 この手は絶対手である。2…Ka3 は 3.Qd4 でたちまち白の必勝形になる。4.Kf8 の狙いに対して 3…Qb7 と指しても 4.Qa1+ がある。2…Ka5(b5)は 3.Kf6 Qb6(d6)+ 4.Qe6! で黒はこれ以上チェックをかけるわけにいかない。

3.Qe3+

 もちろん勝つ手段は他にもある。しかし本譜の手はこのようなエンディングで良く現れる重要な構想を含んでいるので学んでおく価値がある。

3…Kc2

 3…Ka2 は 4.Kf6 で白が勝つ。3…Kc4 は 4.Qc1+ で黒クイーンが素抜かれる。黒キングのほかの動きは白クイーンがチェックでd4の地点に行ける。

4.Kg6

 白キングは1段目へのはるかな帰還を開始する。黒はいくらチェックをかけてもこれを阻止できない。

4…Qc6+

 4…Qd6+ は 5.Kg5 Qd5+ 6.Kh4! Qc4+(6…Qh1+ は 7.Kg3)7.Kg3 Qg8+ 8.Kf2 Qf7+ 9.Ke1 で本譜と同じになる。

5.Kg5 Qg2+ 6.Kf4 Qh2+

 6…Qf1+ は 7.Kg3 でチェックが途切れる。

7.Kf3 Qh5+

 7…Qh3(h1)+ は 8.Kf2 Qh2+ 9.Kf1 Qh1+ 10.Qg1! で本譜と同じになる。

8.Kg2 Qg6+

 8…Qg4+ は 9.Kf1 Qd1+ 10.Qe1!、8…Qd5+ は 9.Kf1 Qh1+ 10.Qg1! で黒はこれ以上チェックをかけるとクイーンの交換を招いてしまう。10…Qh5 としても 11.Qf2+ Kd3 12.Qg3+ で白クイーンは結局はe8の地点への利きを得る。これこそが眼目の構想である。黒キングが2段目にいる時白キングは1段目まで後退する。黒からのチェックにはクイーンでさえぎって逆にチェックするのが白の狙いで黒のチェックは非常に制約を受けることになる。黒キングがb列にいる場合同じ手法は例えばa列でも明らかに成立する(白キングがa8、クイーンがa7、黒キングがb2)。

9.Kf1 Qe8

 チェックはクイーンの交換につながる。

10.Ke1! で白が勝つ。

 この後黒がどう指そうと 11.Qe6 から 12.Qd6 と 13.Qd8 を妨げることができない。

(この節続く)

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開放試合の指し方(029)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 この手は最下段での頓死の可能性を防ぎ、白からの Ng5 に煩わされずに 17…Be6 と出る手も予定している。そこで白はd5の地点で2回駒を交換して黒に孤立dポーンを受け入れさせることにした。

17.Nxd5 Nxd5 18.Bxd5 cxd5 19.Re7!

 7段目に活動的なルークを侵入させた白が収局で優勢になったように見える。しかし・・・

19…Ra6!! 引き分け

 黒ルークは絶好のb6の地点に行き、白のbポーンを当たりにしながら自分のbポーンを守る。それにより黒のビショップが展開でき、完全に可能性が互角になる。

 この合意の引き分けは少し早すぎるように思われるかもしれない。しかし理論的には正当である。両選手は可能性が互角であることを分かっていて、お互いの技量を信用している。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(93)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン

 しかし図91で白キングの位置をもっと有利なd2の地点に代えれば白は自分のクイーンの位置にかかわらずほとんどすべて勝つようになる。

 他にも白が勝つことのできる局面が一、二ある。例えば連続チェックの後で相手のクイーンを取れることがたまにあるし、珍しい詰みの形が存在することもある。次のカントロビッチのスタディは非常に意外な例である。

 図93

 黒は手番であるが負けを免れることができない。白は Kf2(g3)+ から詰みを狙っている。1…Qh42.Qa1+ から詰まされる。1…Kg12.Qa7+ Kh1 3.Qh7+ Kg1 4.Qg7+1…Qf1+2.Kg3+ Kg1 3.Qa7+ Kh1 4.Qh7+ で同様である。何というクイーンの威力であろう。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(88)

「Chess Life」2005年6月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37](続き)

戦型Ⅰ
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 c5 7.dxc5 Bxc5

 ここで白にはいくつかの異なった道から次の手を選択できる。8.a3、8.Qc2 および 8.Be2 が主要な手である。

8.cxd5

 この手のあと黒は孤立ポーンができるのを避けることができない。

8…Nxd5

 ポーンで取るよりもこう取る方が良いと考えられている。8…exd5 は 9.Be2 Nc6 10.O-O Be6 11.Rc1 Rc8 で白が好調で、孤立d5ポーンに対して自由に指せる。通常白はd4の地点を十分に支配して黒の …d5-d4 突きを止めることができる。ここで白の最もよく指される手は 12.a3 だが、12.Nb5、12.Qa4、12.Bg5 それに 12.Ne5 も面白い手である。

 12.a3 のあとは 12…Be7 13.Nb5(13.Ne5 でもよい)13…Ne4 14.Nfd4 Qb6 15.b4 で白の好ましい局面になる。

 8…exd5 と取った最も有名な試合は1972年レイキャビクでのフィッシャー対スパスキー戦である。その試合は 12…h6 13.Bg3 Bb6 14.Ne5 Ne7 15.Na4 Ne4 と進み40手で引き分けに終わった。

 しかしスパスキーは1年後 12…Bb6 13.Qa4 Qe7 で違う道を選んだ。もっとも大した改良とは思えない。

9.Nxd5 exd5 10.a3 Nc6 11.Bd3

 白は 12.Bxh7+ Kxh7 13.Qc2+ またはすぐに 12.Qc2 でポーン得を狙っている。

11…Bb6

 黒はその狙いに対処しなければならなかった。

12.O-O d4

 これが新しい流行である。一時は黒は 12…Bg4 を好んでいた。しかし 13.h3 Bh5 14.b4 で白が少し優勢になるようである。白の作戦はd5のポーンめがけて指していくことで、奇妙な Ra2-d2 という捌きさえ伴うことがある。黒の最善の選択は …d5-d4 と突いてd5のポーンを交換しにいくことだが、それに対する白の通常の応手は e3-e4 とかわして黒の孤立ポーンを盤上に残すことである。

13.e4

 13.Qc2 は 13…h6 14.e4 Bg4 で黒に何の問題もない。

13…Bg4 14.h3

14…Bh5

 現在の勝ち抜き方式世界チャンピオンのカシムジャーノフはカルビアでの一番最近のチェスオリンピアードで黒で2度この局面になった。どちらも比較的早く引き分けに終わった。14…Qf6 と指すのも良い手である。

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開放試合の指し方(028)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 これは諸刃の剣の 12…Nb6 に代わる堅実な手である。黒はd5のナイトがしっかり守られクイーンがc7とb6に行けるようにした。

13.a4!

 今回のaポーン突きはクイーン翼を広げるためのまったく正しい手法である。なぜなら黒が …c7-c6 と突いてd7-a4の斜筋を閉じたのでこのポーンが危なくないからである。

13…a5!

 白のaポーンによってさらに侵食されるのは防ぐべきである。他の手は劣っている。(a)13…Qb6?! 14.a5! クイーン交換後の収局は白陣の方が広いので白が有利である。(b)13…Ng6?! 14.Bxd5! 黒は孤立dポーンの防御が煩わしい。

14.Ne4 Qb6!

 黒はクイーン交換に出るのが最も安全である。14…Bf5 とビショップを展開するのは 15.Ng3 Bg6 16.Ne5 で白が圧力をかけ続けることができる。

15.Nc3 Qxb3 16.Bxb3 h6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(92)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン

 白クイーンが十分近くにいれば例え黒キングがa2の地点を占めても白が勝てることがある。その例が図92である。

 図92

 白の勝つ手順は次のとおりである。1.Qc5+ Ka2 2.Qc4+! 2.Qa5+? は 2…Kb1! で引き分けに終わる。2…Ka3 2…Kb1 は 3…Qc2# で詰みである。3.Qa6+ 後は前と同じ要領である。

(この節続く)

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開放試合の指し方(027)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2
白 J.メステル
黒 V.ホルト
ヘースティングズ、1977/78年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Bd2 Bxd2+ 8.Nbxd2 d5 9.exd5 Nxd5 10.Qb3 Nce7 11.O-O O-O 12.Rfe1 c6

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(91)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)

 両者にクイーンとポーンがあるエンディングはチェスの最も難しい分野に属している。単独のクイーンに対してクイーンと7段目のポーンという最も分かり易い局面の例でも一般原則を見出すのは決して容易なことではない。本節ではクイーン・エンディングの概要を今日の理論で得られている結論を踏まえて読者に提供したい。

 クイーン対クイーン

 相手のクイーンをすぐ取れるのでなければ勝ちがないのは明らかなのでこのようなエンディングを採り上げるのは少しおかしいと思われるかもしれない。しかし局面によっては勝つ手段があり完全に理解しておかなければならない。

 図91

 白は次のように典型的な手法で黒キングを見事に詰みに追い込んだ。

1.Qg2+

 1.Qh8+? は 1…Kb1 2.Qh1+ Ka2 3.Qd5+ Kb1! で白クイーンがこれ以上黒キングに近づくことができないので白に勝ちはない。同様に 1.Qh2+? も 1…Ka3! 2.Qd6+ Ka2 3.Qe6+ Kb1! 4.Qe1+ Ka2 で白の失敗である。このような局面の場合白は常にa列及びb列でチェックすることによって黒キングにa2とb1にしがみつく余地を与えないようにしなければならない。

1…Ka3 2.Qa8+ Kb2 3.Qb7+ Kc1

 白がb列でチェックする理由がここで分かる。黒キングはa2の地点へ行くことができない。もし行けば 4.Kc2! でたちまち白の勝ちとなる。しかし本譜の手でも黒は助からない。

4.Qc6+ Kb2 5.Qb5+ Ka3 6.Qa5+ Kb2 7.Qb4+ Ka2

 7…Kc1 は 8.Qd2+ Kb1 9.Qc2# で即詰みとなる。

8.Kc2! で黒キングは詰みを避けられない。

(この節続く)

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開放試合の指し方(026)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 試合はここで指しかけになり白の41目が封じ手だった。白が黒のbポーンを取ることになるので収局は白が断然有利である。しかしソ連チームの徹夜の完璧な分析により黒がまさに間一髪のところで引き分けにすることができた。

41…Kf8! 42.Nd6 Nc5! 43.Nxb7! Na6!

 aポーンをせき止めることは絶対の要件である。もちろん 43…Nxb7?? と 43…Nxb3?? はaポーンに 44.a6 と突っ走られてしまう。

44.Kf3 Ke7 45.Ke4 c5!! 46.Kd5 f5!!

 黒はgポーンを突き進ませることで反撃して引き分けにできる。

47.Nxc5! fxg4 48.Ne4 Kd8! 49.Kc6 g3 50.Nxg3 Kc8 51.Ne4 g4 52.Kb6 Nb4 53.Kb5 Nc2 54.Kc5?!

 これは黒にせき止めを作らせて簡単に引き分けになってしまう。54.b4! なら黒の手はかなり難しかったが、それでも 54…Kb7 55.Ka4 Nd4 でちょうどしのげる。

54…Kb7 55.b4 Ka6! 56.Ng3 Na3 57.Ne2 Nc2 引き分け

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(90)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 最後にルークがポーンを後ろから守っている局面を調べてみよう。全てはポーンがどのくらい進んでいるかにかかっている。一般にはポーンが4段目にいるならば白が勝つ。ポーンが5段目の場合は役駒の配置によって結果が決まる。しかしポーンが6段目まで進んでいると通常は黒が引き分けにできる。図90のような例外的な場合だけ白が勝つことができる。

 図90
クリングとホロウィッツ、1851年

 黒ポーンは白キングによってせき止められているが白が陣容をこれ以上良くするのは難しそうに見える。しかし白は次のような巧妙な手段よって勝ちを成し遂げる。

1.Qf5+

 作局者たちは 1.Qd5+ Kf6 2.Qc6+ から始まる難解な正解手順を示した。彼らは黒キングをg8に逃がしたくなかったようだった。しかしそれは恐れる必要はなく本譜の手が勝ちへの最短手順である。

1…Ke7

 1…Kg8 は 2.Qf6 Kh7 3.Qf8 で黒が手詰まりに陥る。そして 3…Rg6 4.Qf7+ Rg7 5.Qe8! Rg6 6.Kh4 g3 7.Kh5 で詰みの狙いで少なくとも黒ポーンが取られる。

 同じく 1…Ke8 は 2.Qf6 Rg8 3.Kh2! g3+ 4.Kg2 で黒ポーンが取られるので黒の負けである。

2.Qf2

 この巧妙な手待ちで白は黒の駒を退却させることができる。ここは 2.Qf1 でも良い。しかし 2.Qf4 は 2…Rg6! で白自身が手詰まりに陥るのでだめである。

2…Rg6

 2…Rg5 3.Qe3+ Kf6 4.Qf4+ Kg6 5.Kh4 も 2…Ke6 3.Qf8 Rg6 4.Kh4! g3 5.Kh5 も白が楽に勝つ。

 2…Rg8 は 3.Qc5+ Kf6 4.Qd6+ Kf7 5.Qd5+ Kf8 6.Qe6 で本譜に戻る。

3.Qf4! Rg7

 3…Ke6 4.Qf8 は既に現れた。3…Rg8 4.Qe5+ は正解手順より一手短くなる。

4.Qf5! Rg8 5.Qe5+ Kf7 6.Qd5+ Kf8 7.Qe6!

 黒は再び手詰まりに追い込まれてルークをg8とg7の間で往復させるしかなくなった。ここから白は同様の手待ちを2回用いて勝ちを収める。

7…Rg7 8.Kh2

 白は初手の解説中の手順と同様に 8.Qf6+ Kg8 9.Qf5 Kh8 10.Qf8+ Kh7 11.Qe8! で勝つこともできる。

8…g3+ 9.Kg2 Rg8

 9…Rf7 なら 10.Qc8+ から 11.Kxg3 で良い。しかし 10.Kxg3? ははまりで 10…Rg7+ 11.Kh4 Rh7+ 12.Kg5 Rg7+ 13.Kh6 Rh7+! で 14.Kxh7 はステイルメイトになる。[訳注 図74参照]

10.Qf6+ Ke8 11.Kh1! g2+ 12.Kg1 で白が勝つ。

 黒は 12…Rf8 で自分のポーンを見捨てるしかない。これでクイーン対ルーク+ポーンの分析を終える。

 分析できたのは可能な全ての局面のほんの一部でポーンが2個以上の場合は全然採り上げなかった。しかし読者はそのようなエンディングでも対処できるような基本的な知識を十分身に付けたことと思う。

(この節終わり)

2013年07月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]理詰めのチェス(06)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第6局

 ツァイスル対バルトホッフェン戦は中原の重要性を顧慮しない不適切なキャッスリングのもう一つの例である。白はポーンを g2-g3 と突くことを余儀なくされその結果白枡がポーンで守られず弱体化した。バルトホッフェンの駒はこれらの枡に侵入し敵キングを仕留めた。

ルイ・ロペス
白 ツァイスル
黒 バルトホッフェン
ウィーン、1899年

1.e4

 フランクリン・ヤングは次のように言った。「もし目的の平面が開放されたままならば、あるいは中原またはキング翼で永久に突き止められるならば、正しい斜筋がいつも容易に確保されるように展開せよ。あるいはもし目的の平面が戦略的前線の果てでなく他の所で永久に突き止められるならば整列したかぎ針編みがいつも容易に確保されるように展開せよ。」

 もしこの文章がいくらか分かり難いならば(私にもそうでないと信じる理由はない)同じ作者によって明晰な散文で述べられた結論は次のとおりである。

 「白の最善の初手は 1.e4 である。」

1…e5

 黒が互角を目指す最良の機会は中原にある最も重要な地点の公平な分け前を得ることである。

 1…e5 で黒は所有権を主張しながら二つの駒を解き放った。

2.Nf3

 この手は今のどんなマスターでももっと良い手を指すことはできないことを確信して自信を持って指して良い。

 このナイトは一手で布局における最適な地点に展開した。

 このナイトはきわめて重要な中原の4地点のうち2地点に圧力をかけている。

 このナイトは最大限に活動できるように中原に向かって進出した。

 このナイトはキング翼を空けキングがその方面に早くキャッスリングできるように助けている。

 このナイトはキングがキャッスリングした後その防御に理想的な位置にいる。

 このナイトはポーンに当たりをかけて先手を取りながら戦いに加わっている。

 要するにこの手は非常に良い手なのである。

2…Nc6

 この手は推奨すべき応手である。黒は駒を展開すると同時にポーンを守った。

3.Bb5

 たぶんこの手が最強の手である。このビショップはポーンを守っている駒に制約を加えている。今すぐにポーンを取る狙いはない。4.Bxc6 dxc6 5.Nxe5 とポーンを取っても 5…Qd4 という応手があってポーンを取り返される。しかしナイトには圧力がかかっていて、黒がいずれdポーンを突いてナイトが釘付けになった時にこの圧力はいっそう強まる。

3…f5

 主導権を握ろうとする大胆な企てである。その意図は白にfポーンを取らせて中原を放棄させようというところにある。

4.d4

 攻撃的な選手ならこのようなeポーンに対する白の反撃を好むだろう。堅実で大局観に基づいて指す選手なら 4.Nc3 と落ち着いて駒を展開させて自分のeポーンを守るだろう。また本当に用心深い選手なら 4.d3 でeポーンを守りポーン交換になっても中原にポーンが維持されることに満足するかもしれない。

4…fxe4

 黒はこのポーン交換で白ナイトを拠点から立ち退かせるのが主たる意図である。

5.Nxe5

 一見強そうな手である。白はポーンを取り返し黒からの 5…d6 や 5…d5 を防いでいる。これらの手の後 6.Nxc6 bxc6 7.Bxc6+ で白が交換得になる。

 白には 6.Bxc6 dxc6 7.Qh5+ Ke7 8.Qxf7+ Kd6 9.Nc4# で詰みというすごい狙いもある。

 これらはどれも非常に魅力的である。こんなに早い段階で詰みになる可能性があるのは若い選手には魅惑的である。しかしこのような野心は抑制した方が良い。早過ぎる詰みの攻撃は撃退されて攻撃側の手損や駒損になるのが普通である。

 もっと安全な指し方は 5.Bxc6 dxc6 6.Nxe5 である。

5…Nxe5

 これにより黒は白のキング翼の最良の守り駒を盤上から消し去り、白が抱いたかもしれない手筋の構想に終止符を打った。

6.dxe5

 白は過激な 4.d4 の見返りがない。代わりにクイーン翼ナイトを展開していた方が良かった。

6…c6!

 駒を戦いに投入すべき時にポーン突き?そのとおり。指し手は具体的な局面によって判断されるべきものである。黒にはこのポーン突きに四つのもっともな論拠がある。

 a) 黒はdポーンが突けるようにビショップを追い払わなければならない(さもないと黒キングがチェックの状態になる)。

 b) ポーン突きにかかる1手は白ビショップも1手かけて引き下がらなければならないことによって相殺される。

 c) クイーンのために好都合な斜筋が開く。

 d) ビショップに対する当たりでポーンが取れる。シュタイニッツは「ポーン1個でも少しの手間をかける価値がある」と言っている。

7.Bc4

 通常ならここがビショップの好所である。しかしここではe2の方が局面に適合していた。白はもうキング翼ナイトの務めが得られない。だからe2のビショップがキング翼の守りに役立つかもしれない。

7…Qa5+

 キングとポーンの両方に当たっている。

8.Nc3

 チェックを受ける最良の手段である。白はクイーン翼ナイトを布局でおさまるべき場所に置いた。

8…Qxe5

 黒はポーンを得して試合に勝つ良いスタートをきった。ここからの黒の目標は白の薄くなったキング翼の攻撃に取り掛かることである。

9.O-O

 もっともな手だが誤りである。自分の意図を隠してクイーン翼の駒を展開しその後で恐らくクイーン翼にキャッスリングする方が賢明であった。

9…d5!

 当然の手である。黒は中原を占拠し敵ビショップを追い払い自分のビショップを世に出す。これらすべてが1手でできる。

10.Bb3

 ここでも防御のために 10.Be2 と引いて二つの斜筋へ利かせる方が望ましかった。

10…Nf6

 単にナイトを展開してキング翼攻撃を組織する。

11.Be3

 この手は黒の 11…Bc5 を防ぎ 12.Bd4 又は 12.Qd4 で敵の中原のクイーンをどかせるためである。

11…Bd6!

 この好手は詰みの狙いを伴った単なる展開の手だけにとどまらない。その隠れた目的は守備のポーンの一つを進ませて白のキング翼の陣形に永久に修復できない弱点を作らせることである。

12.g3

 受かるとすればこの手しかない。代わりに 12.f4 は 12…exf3e.p. 13.Qxf3 Qxh2+ 14.Kf2 Bg4 で黒の勝ちとなる。

 本譜の手の後黒は攻撃にとりかかる。黒は駒を無意味に犠牲にしてgポーンを取ったりポーンを …h5-h4-h3 と突いて白陣の破壊を試みたりするわけではない。

12…Bg4!

 黒は攻撃の基礎を侵入においている。白のf3とh3の地点は 12.g3 の結果もうポーンで守られていないので弱くなっている。これらの地点はシュタイニッツが初めて名付けたように「空所」になっている。これらの地点に腰を落ち着けた敵駒はポーンで追い払うことができないのでしっかりと居座る。

 このビショップ出はクイーンを攻撃して手をかけずにf3の地点に入り込む意図である。

13.Qd2

 この手は良さそうに見える。代わりにナイトをe2に引いて当たりを止めれば黒は 13…Qh5 でさらにナイトを当たりにし 14.Re1 を余儀なくさせて 14…Qh3 で駒を空所に据える。黒の次の手は 15…Bf3 でもう一つの空所を占めてg2での詰みのお膳立てが整う。

13…Bf3

 侵入の過程の第2段階である。

14.Bf4

 この手は 14…Qe7 15.Bxd6 Qxd6 16.Qf4 のようなことを期待した。そうなれば1ないし2組の駒交換で黒の苦境が緩和される。

 白の14手目の後白キングには5手の即詰みがある。黒はそれを高らかに宣言するかもしれない。

14…Qf5!

 ビショップを見捨てた。しかし黒はクイーンをh3に送って白枡を断固支配することしか関心がないのである。

15.Nd1!

 この手しか受かる可能性がない。このナイトは次にe3に行って詰みが迫っているg2の地点を守る。

15…Qh3

 次に1手詰みがある。

16.Ne3

 重要な枡を守った。

16…Ng4

 今度の狙いはh2での詰みである。弱い白枡をうまく利用して敵陣に侵入する黒駒に注目されたい。

17.Rfc1

 キングの逃げ道を空けた。

17…Qxh2+

 次の手で詰みになる。

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開放試合の指し方(025)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 クイーン+ナイトの収局は互角の勝負になる。そして互角を保つ最も簡明な手段は堅実な 30…Nd5 である。代わりにスパスキーは複雑化しようとした。

30…g6!? 31.Qxa5!

 取らないわけはないだろう。

31…Nd3 32.Nf1 Nf4 33.Qe5! Nxh3+ 34.Kg2 Qxe5 35.dxe5 Nf4+ 36.Kg3 Nd3 37.f4 g5?!

 黒はキング翼でどう見ても不要なポーンを取ることによりクイーン翼で試合に負ける危険をおかした。この局面では 37…Nc5 38.Nd2 Kf8! から 39…Ke7 と指す必要があり、黒は引き分けるのにさして苦労がいらないはずである。

38.fxg5 hxg5 39.Nd2! Nxe5?! 40.Ne4! Nd7 41.a5!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(89)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 しかし黒ポーンが6段目に到達ししかも黒キングがそのポーンの前にいると黒が引き分けにできる。例えば図89では白は次のように何も進展が図れない。

 図89

1.Qf3 Rb4 2.Qd5+ Ka1 3.Qa5 Rb1+ 4.Kc2 Rb2+ 5.Kc3 Ka2 6.Qa4 Rb1 で黒が引き分けにできる。

(この節続く)

2013年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(024)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 白は当然素通しe列を活用しようとし、黒はe列での圧力を無効にしようとしながら白のb3とd4のポーンの弱さにつけ込めることを期待する。全体的にはいい勝負である。

20…Re8 21.Rce1 Nd5! 22.Qe4 Qd7 23.h3 c6 24.g4

 白はキング翼での広さの優位を拡大した。黒に白の弱いポーンへの攻撃を始める余裕を与えるわけにはいかない。

24…Re7 25.Nh4 Rae8 26.Qf3 Nb4! 27.Nf5

 互角にするために一連の駒交換をさせるのが白のできる最善の策である。

27…Bxf5 28.Rxe7 Rxe7 29.Rxe7 Qxe7 30.Qxf5

(この章続く)

2013年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(88)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒ポーンがa5又はa4にいる場合もやはり白が勝つ。例えば図88では次のような手順で勝つ。

 図88

1.Qd5 Ka6 2.Qc6+ Ka7 2…Rb6 なら 3.Qa8+ Kb5 4.Kb3 である。3.Kd3! Rb6 黒は手詰まりに陥っていて白キングが4段目を越えるのを許さなければならない。3…a4 なら 4.Kc3 が一番簡単な勝ち方である。4.Qc7+ Ka6 5.Qc8+ Ka7 6.Kc4 Rb7 7.Qd8 Ka6 8.Kc5 Rb5+ 9.Kc6 で白が勝つ。

(この節続く)

2013年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(58)

「Chess Life」1992年10月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

姉妹布局(続き)

 (2)1.e4 に対するピルツ防御と 1.d4 に対するキング翼インディアン防御

 ピルツ防御とキング翼インディアン防御の主眼の戦略はきわめてよく似ている。すなわちキング翼ビショップをフィアンケットし、最初は …d6 で中央への手がかりを作り、そのあと白の中央の優位にd4のポーンを攻撃することにより挑む作戦である。この後の方の手順は …c5 突きまたは …e5 突きにより行なわれるのが普通である。これらの布局の本質的な類似点と相違点はそれぞれの「通常戦法」から生じる局面を比較することにより一番よく説明できる。

 (A)ピルツ防御(B08)

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.Nf3 Bg7 5.Be2 O-O 6.O-O

 図3

 (B)キング翼インディアン防御(E95)

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2

 図4

 図3と図4を比較すると以下のような特徴が明らかに分かる。

 (1)黒の陣形はどちらもまったく同じである。

 (2)図4では

 - 白のcポーンは中央の支配に役立っているが、図3ではまだc2に位置している。

 - 図3と比べると白はキング翼の展開で1手遅れている。

 以上の差異から以下の結論が得られる。

 (1)キング翼インディアン防御と比べるとピルツ防御では白の中央の優位により窒息させられる危険性が少ない。

 (2)ピルツ防御では白がキング翼インディアン防御の局面よりも展開が1手速く、さらに白の中央の広大さが劣るために攻撃目標が少ないので、黒が早く効果的な反撃を行なう可能性に劣っている。

 これらの着眼点はそれぞれの布局の特徴的な主流戦法を考えることによりよく説明できる。

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2013年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(023)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 白が陣地の広さのわずかな優位を活用しようとするには、唯一の素通し列を支配するのが最善の手段である。

12…Nb6

 白にビショップを引かせようとするのは、ナイトが中央の拠点を離れるのでよしあしである。もっと堅実な 12…c6 については参考棋譜2を参照されたい。

13.Bd3 h6

 この手は白の Ng5 からのいかなる手筋もなくした。13…Be6? は交換損の犠牲の 14.Rxe6! が強烈なのでやぶ蛇である。14…fxe6 のあと白は 15.Qxe6+ または 15.Ng5 のどちらででも非常に危険な攻撃に出られる。

14.a4

 黒のナイトはa4に留まることになるこのポーンを攻撃する「配置に」既についているし、ビショップもd7から攻撃するので、白のこのポーン突きは余計だった。14.Rac1! から 15.Bb1 を予定しb1-h7の斜筋で詰みの狙いに期待する方が有望だった。

14…a5! 15.Rac1 Bd7 16.Qc2 Ned5! 17.b3 Nb4 18.Qb1 Nxd3 19.Qxd3 Be6 20.Re5!

(この章続く)

2013年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(87)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 前例の分析から白キングがa列にいるとどうして白が勝ちになるのかがすぐ分かる。

 図87

 例えば白は次のような手順で勝てる。1.Qe7+ Kb8 2.Qd7 Ka8 3.Qc7 Rb1 3…Rb7 は 4.Qd8+ Ka7 5.Qd4+ の後 6.Ka5 である。4.Qd8+ Ka7 5.Qd4+ Ka8 6.Ka5 で白が勝つ。

(この節続く)

2013年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(022)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1
白 E.メドニス
黒 B.スパスキー
世界学生チーム選手権戦、バルナ、1958年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Bd2 Bxd2+ 8.Nbxd2 d5 9.exd5 Nxd5 10.Qb3 Nce7

 気が狂ったように思われるがソ連のグランドマスターのダビド・ブロンシュテインの示唆するように、当たりのナイトを放置してキャッスリングしてしまうことは可能かもしれない。10…O-O!? 11.Bxd5 Na5 のあと黒は駒を取り返せる。白は 12.Bxf7+ Rxf7 13.Qc3 Re7+ 14.Kd1 でポーン得を維持できるけれども、白キングの位置が不安定なので黒は反撃に希望が持てる。

11.O-O O-O 12.Rfe1

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(86)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 図86 白の手番

 この型の基本的な局面である。白が勝つことはできない。

10.Qd8+

 10.Qf4 は白の巧妙な罠である。もし黒が不注意に 10…Rb5? と指すと次の手順で負けてしまう。11.Kc7! Ka7 11…Rb7+ は 12.Kc8 Rb5 13.Qc7 で白が勝つ。12.Qd6 Rb8 13.Qc5+ Ka8 14.Qc6+ Ka7 15.Qd6! Rb7+! 16.Kc8 Rb5 17.Qd7+ Ka8 18.Qc7 黒はすぐにルークを取られる。しかし黒は単に 10…Ka7! と指せば良く白は何もできない。

10…Rb8

 ここは 10…Ka7 11.Qc8 Rb6+ 12.Kc7 Rb5 でも良い。

11.Qd5

 11.Qa5 なら 11…Ka7 12.Qc7+ Ka8 13.Qf4 Rb7! で大丈夫である。

11…Rb7!

 もちろん 11…Ka7? は 12.Kc7 でだめである。本譜の手の後は黒はいつでもチェックで白キングをc8の地点から追い払える。白はこれ以上態勢を良くする手段がない。従って引き分けである。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(87)

「Chess Life」2005年6月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37]

 クイーン翼ギャンビットは最も堅実な布局の一つである。この布局は何世紀も時の試練に耐えてきた。一流選手だけでなくチェスクラブでも人気がある。

 唯一の欠点は「平和ボケ」の試合になって黒の勝つ可能性がほとんどないときがあることである。

 白にはクイーン翼ギャンビット拒否に対して主要な4通りの指し方がある。

 A)g3 と突くカタロニア布局
 B)早く c4xd5 と取る交換戦法
 C)Bc1-g5 とかかる通常の陣形
 D)5.Bf4 と出る通常のクイーン翼ギャンビット拒否

 今回はD)だけを取り上げる。

白の基本的な作戦は何か

 5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否では白に根本的に異なる二つの陣形がある。一つは孤立ポーンを相手に指す大局的な構想で、もう一つはクイーン翼にキャッスリングしてすぐにキング翼攻撃を行なう攻撃的な指し方である。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は主流定跡の 6…c5 を避けてより堅実な 6…Nbd7 を選択することができる。6…c5 と指すなら白のいくつかの異なった応手に備えておかなければならない。逆翼キャッスリングの戦型では黒はすぐに反撃に取りかかる必要がある。孤立ポーンの局面では黒の作戦は好条件のもとで …d5-d4 と突くことに努めるのが普通である。

それで評決はどうなっているか

 白には歩調を定め、大局的に指すか攻撃的に指すかを選ぶ有利さがある。黒は両方に備えておく必要がある。

 5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否は次の手順で始まる。

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3

 10年前は黒が 6…c5 と突くべきであることが「明らか」だった。近年は 6…Nbd7 もよく指されるようになった。

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開放試合の指し方(021)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 黒ももちろんキングの安全を確保しなければならない。

 両者とも初期の展開を完了し終えて、局面とそれぞれの展望を評価する時機である。

 白はキング翼ルークでe列を占拠し、ルークを重ねることによりいつかはこの列への圧力を増すかもしれない。キング翼ナイトのためにe5の地点を使いクイーン翼ナイトのためにe4またはc5の地点を使って黒陣にさらに圧力をかけるように努める。

 黒は白の実効性のある攻撃を防ぐようにし、機会をとらえて白陣の根本的な弱点である孤立dポーンに対して反撃を開始する。

 当面は白の方が活動的な局面で展開が進んでいるので、理論的に少し優勢である。しかし黒は自陣に根本的な弱点がないので、白の圧力を完全に無効にするのはしごく当然かもしれない。白が不注意をおかせば、黒は白の孤立dポーンを叩く絶好の機会にめぐまれるだろう。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(85)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 次はルーク列ポーンの場合を考えよう。図85は特にポーンが3段目にある場合である。

 図85
グレツキー=コルニッツ、1864年

 白キングがb列を越えられずc8の地点にも行けない場合は引き分けである。黒キングは隅の方にいなければならない。

1.Qe7+ Kb8 2.Qe8+ Kb7 3.Qd8 Ka7 4.Qc8

 白はいくらか成功を収め黒は白キングに5段目を越させなければならない。しかしこれは実際には大して重要でない。

4…Rb7!

 4…Kb6 は誤りで 5.Qb8+ Kc6(5…Ka5 は 6.Qd8+ Ka4 7.Qd2)6.Qa7 Rb6 7.Kd4 Kb5 8.Qd7+ Kb4 9.Qc7 Rh6 10.Qe7+ Ka4 11.Qe8+ Ka5 12.Kc5 で白が勝つ。

5.Qc5+

 5.Kc5 は 5…Rb5+ 6.Kc6 Rb6+ 7.Kc7 Rb5 で後ろから …Rc5+ でチェックを狙われるので有効でない。

5…Kb8 6.Qd6+ Ka7 7.Qd4+ Ka8 8.Kc5 Rb5+

 8…Ka7 9.Kc6+ Ka8 でも同じ局面になる。

9.Kc6 Rb7

(この節続く)

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開放試合の指し方(020)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 これは白の飛び抜けて積極的な手で、黒の二通りの悪手を誘うので実戦の観点からもすぐれている。

 1)10…Qe7+? はなるほど白のキャッスリングを妨げるが、11.Kf1 のあと黒は駒損をしなければならない。当たりのd5のナイトが逃げなければならず、例えば 11…Nf4 なら 12.Re1! Be6 13.d5 で釘付けのビショップが死ぬ。

 2)10…Na5?! は白にビショップを手放させるが、ナイトが盤端で遊ぶという損失はあまりに大きい。11.Qa4+ c6 12.Bxd5! Qxd5 13.O-O O-O 14.Rfc1! この手には 15.Rc5 でナイトを取る狙いがある。14…b6 15.b4 Nb7 16.Qxc6 白が重要なc6のポーンをもうけた。

10…Nce7!

 黒のキング翼ナイトはd5で攻防によく利いている。もう一つのナイトがe7に行きたぶんこのあと …c7-c6 と突くことにより、d5のナイトが地歩を保てることが保証される。

11.O-O

 白はキングを安全にし、キング翼ルークがこれからの作戦に参加できるようにした。

11…O-O

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(84)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒のbポーンがもっと前進していても通常は引き分けになる。図84がその基本的な局面である。

 図84

1…Rc5+ 2.Kd6 Rc8! 3.Kd7 Rc4 4.Kd8 Rc5 5.Qb2+ Ka4! 6.Kd7 Rc4

 白は黒ルークをc列からどかせることができないので白キングがc列を越えることができない。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(019)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 これが 7.Nc3 の戦型の重要な局面である。黒はポーンを得していて、余裕があればキング翼にキャッスリングしてあまり苦労なく自陣を固める。だから白は攻撃を続けるべきで、それには二通り考えられる。

 a)12.g4 O-O! 13.g5 Be5 14.Nxe5 dxe5 15.Rxe5 Ng6 16.Re1 Qd7[訳注 16…Qd6 の誤植かもしれません]白はポーンを取り返したがキングの守りを著しく弱めた。黒が有望といえる。

 b)12.Bg5 Bxg5 13.Nxg5 h6! 14.Bb5+(14.Qh5 なら黒は単にキャッスリングする)14…Bd7 15.Qe2 Bxb5 16.Qxb5+ Qd7 ここで 17.Qe2 なら 17…Kf8! で黒は白がナイトを引いたあと 18…Nxd5 でまたポーンを取る。代わりに 17.Qxb7 なら黒は 17…O-O とキャッスリングし 18.Rae1 Ng6 19.Nf3 Rfb8 のあとbポーンを取り 7…Nxe4 と取ったときからのポーン得を維持する。

 これらの難解な変化はどれもジオッコピアノの中で断然最も難しい手順である。非常に難解なので実際に 7.Nc3 を指す選手はあまり多くない。だからここではこういう変化もあるということにとどめる。

 3)安全で本筋の 7.Bd2 が白の最善手で、ここでの主手順である。白はチェックに展開で応じ、戦力を放棄しない。

7.Bd2 Bxd2+

 白のビショップが黒のビショップに当たりになっているので、ここでの 7…Nxe4 は 8.Bxb4 Nxb4 9.Bxf7+! Kxf7 10.Qb3+ d5 11.Ne5+! という連続手筋を誘発する。黒キングがどこに行こうと不安定なので、白が駒を取り返した後は優勢である。

8.Nbxd2

 eポーンを守りながら展開するのが唯一の正しい手段である。

8…d5!

 黒は中央における白の現在の優位に挑戦しなければならない。そして今がちょうどその時機である。

 8…Nxe4 9.Nxe4 d5 と擬似的に駒を捨てるのは面白い着想である。しかし 10.Bxd5 Qxd5 11.O-O! でも 10.Qe2 O-O 11.O-O-O! でも白が中央への大きな影響力を保持し、それにより少し優勢である。

9.exd5 Nxd5 10.Qb3!

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(83)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒の引き分けの可能性が一番大きいのはポーンがナイト列にあり(段はどこでも良い)ルークが良い位置にある時である。その例として図83を考えてみよう。

 図83
グレツキー=コルニッツ、1864年

1.Qf7+ Kb8

 黒は 1…Kc8 で白クイーンにa7の地点を占めさせてはならない。1…Kc6 も同様で 2.Qa7 Ra5 3.Qb8 で最新の研究では黒が支えきれない。

2.Qe6 Kb7 3.Qd7+ Kb8 4.Ke4 Ka8 5.Qa4+ Kb7 6.Kd4 Rc7!

 白キングが5段目を越えてしまうがこの局面では問題とはならない。最新の研究によると 6…Kb8 は 7.Qa6 Kc7 8.Qa7+ Kc6 9.Qb8、6…Ra5 は 7.Qd7+ Kb8 8.Qc6 Ka7 9.Qc7+ Ka6 10.Qb8 で白が勝つ。

7.Kd5 Rc5+ 8.Kd6 Rc7 9.Qb5 Rc5 10.Qd7+ Kb8 11.Qg4 Rc7

 黒は Kd7-d8 を許してはならない。

12.Qe2 Kb7

 白はこれ以上態勢を良くすることができないので引き分けである。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(325)

「Chess」2013年6月号(1/1)

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ツーク・グランプリ

スティーブ・ギディンズ


大会最終盤での追い込みでヒカル・ナカムラは単独2位の座をつかんだ

 ナカムラは大会のほとんどの間比較的鳴りをひそめていて残り3試合の時点で指し分けという不振だったので、2位という結果は少々意外であった。しかし第9、10回戦の連勝で最後にようやく調子が出た。この2連勝目では才能あるマメジャロフのむら気な気質が最悪の形で出た。

白 S.マメジャロフ
黒 H.ナカムラ

第10回戦、スラブ防御

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 dxc4

 3…Nf6 は 4.e3 で黒ビショップがf5に来る主手順(それでも 4…Bf5 は 5.cxd5 cxd5 6.Qb3 で黒が 6…Bc8 と引かされるか危険をはらむギャンビットの 6…Nc6 を指させられる)を白が避けることができるので、本譜の手は白の 3.Nc3 の手順につけ込もうとする有力な手である。広く知られ定跡でも探求されているが、マメジャロフはどういうわけか研究していなかったようである。

4.e3

 ここではもうとるに足りない手になっている。4.e4 の方が重要だった。

4…b5 5.a4 b4 6.Nce2 Nf6 7.Nf3 Ba6 8.Ng3 c5 9.Bd2 e6 10.Rc1 Qd5 11.Ne5 cxd4 12.Nxc4 Nbd7

 序盤は白の大失敗だった。ポーン損でありとあらゆる問題を抱えている。

13.Be2 Rc8 14.Bf3 Qc5 15.b3 Be7 16.Ne2 d3 17.Nf4 O-O 18.Nxd3 Qf5

19.e4

 19.Nxb4 は 19…Bxc4 20.Rxc4 Rxc4 21.bxc4 Ne5 でやはりかなりひどい(22.Be2? は 22…Rd8 でたちまち黒の勝ちになる)。しかし本譜の手は明らかに読み損じによるものだった。

19…Nxe4 20.g4 Qd5 21.Qe2 f5 22.O-O Rxc4 0-1

 マメジャロフは嫌気がさして投了してしまった!23.bxc4 は 23…Bxc4 24.Nxb4 Bxe2 25.Nxd5 exd5 26.Bxe2 Nxd2 で、黒が戦力得でグランドマスターなら勝つことが期待できる局面である。しかし一流選手の中で投了するのは他にはイワンチュクくらいのものだろう。

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(018)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 白はここで黒からのチェックをどのくらい真剣に受け止めるかを決めなければならない。選択肢は次の3手である。

 1)危険な 7.Kf1 には罠が仕掛けてあって、欲張りな 7…Nxe4? は黒が痛い目にあう。8.d5! Ne7 9.Qd4 Nf6 10.Bg5 となれば白に非常に強力な攻撃態勢ができあがる。一つの典型的な例は 10…Ng6 11.Nbd2 Be7 12.Re1 O-O 13.h4! で、白のすべての駒が攻撃の用意ができていて黒が生き延びる可能性は非常に小さい。白が自発的にキャッスリングの権利を放棄した決断につけ込む正しい手段は、中央で積極的に主眼の 7…d5! 突きを行なうことである。8.exd5 Nxd5 9.Bg5 Qd6 10.Nc3 Bxc3 11.bxc3 O-O! のあと白はキングの不都合な位置の代償がない。

 2)攻撃的な 7.Nc3 は布局定跡によって最も探究されている手である。白は貴重なeポーンを犠牲にして、ポーン損の代償に十分な攻撃力を得ることを期待している。黒はこの守られていないポーンを取ることができるし、取るべきである。白の成算は以前は少なくとも十分互角になると考えられていたが、現在の知識では黒が白の襲撃をすべてうまくしのぐことができるということが示されている。この戦型を指す最善の手段は次のとおりである。7…Nxe4 8.O-O(唯一のまともな方法は攻撃を目指すことである)8…Bxc3!(ナイトで取るのは 8…Nxc3?! 9.bxc3 でビショップが当たりになって先手を取られるので劣る。布局での不面目を一つにとどめるためには黒は 9…d5! と突いて展開/攻撃しなければならない。というのは欲張って 9…Bxc3? と取るのは 10.Ba3! で罰せられるからである。例えば 10…d5 11.Bb5! Bxa1 12.Re1+ Be6 13.Qa4! Rb8 14.Ne5! となれば、黒はキャッスリングできずキングは元位置で受けなしである。一つの典型的な例は 14…Qc8 15.Bxc6+ bxc6 16.Qxc6+ Kd8 17.Nxf7+ Bxf7 18.Be7!# である)9.d5!?(またもや白の最も積極的でまごつかせる作戦。9.bxc3?! は 9…d5! からキャッスリングで黒は何も怖いものがない)9…Bf6!(他の手では白が有利な態勢で駒を取り返す。黒が 9…Ne5 10.bxc3 Nxc4 11.Qd4 Ncd6? で駒得にしがみつこうとするのは 12.Qxg7 Qf6 13.Qxf6 Nxf6 14.Re1+! Kf8 15.Bh6+ Kg8 16.Re5! Nfe4 17.Rae1! f5 18.Re7! b6 19.Ne5! で破滅する。黒は「名目上」駒得にすぎない。実際は両方のルークとクイーン翼ビショップ抜きで戦っているようなものである。それにひきかえ白はすべての駒が攻撃に参加している)10.Re1 Ne7 11.Rxe4 d6

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(82)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 ポーンがビショップ列にあると黒が引き分けにできる可能性が高まる。実際ポーンがビショップ列にあればどの段にあっても黒が必ず引き分けにできると長い間考えられてきた。しかしハルバーシュタットとシェロンの現代の研究により少なくとも2段目または3段目のポーンについてはこの一般化は誤りであることが示された。色々な可能性を詳しく調べてみよう。

 図82
ハルバーシュタット、1931年

1.Qb6!

 ハルバーシュタットは1931年にこの局面で黒の手番ならば黒が手詰まりであることを示した。白は容易にその状態に持ち込むことができる。

1…Kd7

 1…Re5+ は 2.Kd4 Rd5+ 3.Kc4 で白の容易な勝ちとなる。

2.Qb7+ Kd6 3.Qa7!

 白は最初の目的を達成した。黒は白キングがd列を越えるのを許すしかない。

3…Re5+

 黒はルークをd列に留めることができない。例えば 3…Rd2 なら 4.Kf5 Rd5+ 5.Kf6、あるいは 3…Rd1 なら 4.Qa3+ Kd7 5.Qh3+! Kc7 6.Qg3+ Rd6 7.Qe5 Kd7 8.Qg7+ から 9.Ke5 でどちらも白キングが侵入できる。

4.Kd4 Rd5+ 5.Kc4 Rb5 6.Qf7 Rc5+

 6…Rd5 なら 7.Kb4 で、6…Rb6 なら 7.Qe8! で白が勝つ。

7.Kb4 Rd5 8.Ka4 Rb5 9.Qg7

 この局面こそ白が目指していた局面である。黒は白の Qb7-c8 を妨げることができない。

9…Rd5 10.Qb7 Rb5

 10…Rd1 は 11.Qb4+ Kc7 12.Qf4+ Kb6(12…Kb7 は 13.Qf7+ Kc8 14.Ka5)13.Qe3+ Kc7 14.Qg3+ Kd8 15.Ka5 で白が容易に勝つ。

11.Qc8 Kd5

 11…Rd5 は 12.Qd8+ Kc5 13.Qc7 Rd1(13…Rd3 は 14.Qa5+ Kc4 15.Qa6+)14.Qa5+ Kc4 15.Qb4+ で白が勝つ。

12.Qd7+ Kc5 13.Qd8!

 黒は再び手詰まりに陥った。

13…Kc4

 13…Rb4+ は 14.Ka5 Rb5+ 15.Ka6 Rb4 16.Qd3! で図78の説明に出てくるように白が勝つ。

14.Qd6 Rc5

 もしここで黒の手番ならばポーンを見捨てるしかない。しかし白がその局面にするのは難しい。

15.Qe6+ Kd3

 15…Kc3 は 16.Qe3+ Kc4 17.Qe4+ Kc3 18.Qb4+ で白が勝つ。15…Kd4 は 16.Qg4+ で本譜と同じになる。

16.Qh3+ Kd4

 16…Kc4 でも同じである。もし黒キングが7段目に進めば 17.Kb4 で白が勝つ。

17.Qg4+ Kd3

 17…Kd5 は 18.Qd7+ で黒キングがe列に行かされて 19.Kb4 で白が勝つか 18…Kc4 19.Qd6 で黒が手詰まりに陥る。17…Ke5 は 18.Qd7 で白が勝つ。

18.Qd1+ Kc3

 18…Kc4 は 19.Qd6、18…Ke4 は 19.Qd7 で白が勝つ。

19.Qc1+ Kd4 20.Qd2+ で白が勝つ。

 20…Kc4 なら 21.Qd6、20…Ke4(e5)なら 21.Qd7 でどちらも白の容易な勝ちになる。

 ビショップ列のポーンについてはもっと面白い局面がたくさんある。しかしそれらは本書の扱う範囲にはない。興味のある読者はエンディングの専門書を参照されたい。

(この節続く)

訳注 ハルバーシュタット (Vitaly Halberstadt, 1903-67) はウクライナのオデッサ生まれですが人生のほとんどをパリで過ごしました。実戦、解説、スタディ創作などで活躍しました。

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(017)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 黒は 5.d4 を防ぐ満足な手段がないので、キング翼ナイトを展開するとともにeポーンを当たりにするのが、先手をとり断然最善で最も理にかなった手である。

 4…Qe7?! と 4…d6?! はどちらも劣った手である。4…Qe7 の問題点は白がいずれにしても 5.d4! と突くということである。5…exd4!? とポーン得するのは 6.O-O! dxc3 7.Nxc3 となって黒が危険すぎる。というのは黒は既に展開が遅れていて、白の 8.Nd5 がくると黒クイーンがまた動かなければならないのでさらに遅れるからである。4…d6 の問題点は消極的すぎて白が 5.d4 exd4 6.cxd4 で非常に強力な中原を築くということである。このあと 6…Bb4+ なら白は 7.Nc3 と指すことができ、本譜でのeポーンの犠牲に関連した危険を伴わない。また 6…Bb6 なら7.Nc3 Nf6 8.Be3! Bg4 9.Bb3! O-O 10.Qd3! でよく、10…Bxf3 11.gxf3 は白の中央をさらに強化するのに役立つだけなので恐れる必要がない。

5.d4

 これが 4.c3 の継続手のうち唯一理にかなった手である。もちろん堅実な 5.d3 でも指せるが、それなら白の4手目はどういう趣旨だったのだろうということになる。ある布局の局面で良い作戦が複数存在するということはよくある。それでも具体的な作戦を選択したならば一貫してそれを実行しなければならない。色々な針路をあちこち跳ね回るのは消化不良に陥るだけである。

5…exd4 6.cxd4

 これが当然の応手である。6.e5!? で黒のキング翼ナイトをどかせようとするのは油断ならない手である。実際黒がナイトを動かすと困ったことになる。6…Ng4? なら 7.Bxf7+! Kxf7 8.Ng5+ から 9.Qxg4 だし、6…Ne4? なら 7.Bd5! である。しかし黒は白のキング翼ビショップの位置につけ込んで、6…d5! と突くことにより反撃することができる。白が 7.exf6 dxc4 8.fxg7 Rg8 と指そうと 7.Bb5 Ne4 8.cxd4 Bb6 と指そうと、ねじり合いの中盤戦は黒も指せる。

 白の本譜の手(6.cxd4)のあと黒のビショップは当たりになっている。例えば黒が 6…Bb6? と引くと白のポーンが 7.d5 Ne7 8.e5 Ng4 9.d6! と突進してきて脅威をもたらし、ここで 9…Nxf2 10.Qb3 Nxh1 ならば白には 11.Bxf7+ Kf8 12.Bg5! という必殺の手がある。しかし黒は白キングにチェックをかけることによりビショップを安全にすることができる。

6…Bb4+

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(81)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 図81
グレツキー=コルニッツ、1864年

 長い間この局面はグレツキー=コルニッツの分析に基づいて引き分けであると考えられてきた。それは 7.Qc5 Kd1 8.Qc3 d2 9.Qf3 Kc1 10.Qc3+ Kb1 11.Qb3+ Kc1 12.Qc4+ Kd1 13.Kf3 Re7 14.Kf2 Re8 で白が勝てないというものである。しかし実際は幾つかの勝つ方法がありここではシェロンの手順を紹介する。

7.Qb3

アベルバッハとリシツィンは後に別な 7.Qd4 と 7.Qb4+ Kc2 8.Kf3 を提示した。これらは本譜の手順と同様の変化になる。

7…Re1

 もちろん 7…Rf2+ はだめで 8.Ke4 Re2+ 9.Kd4 で白の勝ちになる。しかし 7…Re8 も 8.Qb2+ で以下 8…Ke1 9.Qb5! Rd8 10.Ke3 Kf1 11.Qf5+ 又は 8…Kd1 9.Qb5 Rd8 10.Ke3 Kc1(c2)11.Qc5+ Kd1 12.Qb6 で白の勝ちとなる。

8.Qb2+ Kd1 9.Kf3 Re2

 9…Re7(e8)は 10.Qb1+ Kd2 11.Qb4+ で白が勝つ。

10…Qc3 Rd2 11.Qc4

 11.Ke3 Re2+ 12.Kxd3? は 12…Re3+! 13.Kxe3 でステイルメイトになってしまう。本譜の手の後黒はポーンを失う。

 この例から黒は中央列の6段目にポーンがあっても引き分けにできないことが分かる。だから黒は中央のポーンが原位置にある時だけ引き分けにできると言うことができる。

(この節続く)

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布局の探究(57)

「Chess Life」1992年10月号(3/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

姉妹布局(続き)

 (1)1.e4 に対するカロカン防御と 1.d4 に対するスラブ防御(続き)

 (B)スラブ防御(D18)

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 dxc4

 積極的な 5.e4 は 5…b5 でわけの分からないギャンビットになり、「普通」の 5.e3 b5 6.a4 b4 はクイーン翼ビショップが変な地点にいかされ黒がかなり早く互角になる。だからここで取るのが適切な時機である。

5.a4

 この手によってのみ白は布局での優勢を期待できる。ポーンは簡単に取り返すことができるが、クイーン翼の弱体化と展開を後回しの1手(5.a4)の犠牲を払っている。

5…Bf5 6.e3 e6 7.Bxc4 Bb4 8.O-O O-O 9.Nh4

 図1

 これは歴史ある主手順中の多くの新構想の一つである。以前に最も一般的だったのは 9.Qe2 Nbd7 10.e4 Bg6 11.Bd3 Bh5 12.Bf4(黒は 12…e5 を狙っていた)12…Re8(また 13…e5 を狙っている)である。白が中央で優勢であるが、黒は陣形がしっかりしていて展開が完了し …e5 または …c5 突きによる中央での反撃の見通しも明るい。現在の見解は白が 13.e5 Nd5 14.Nxd5 でそのような反撃を防ぐべきであるということである。

 本譜の手の骨子は黒のクイーン翼ビショップと交換し、それにより双ビショップとe4の支配の展望を得ることである。黒はビショップを一時的にそこに置いたままにすることも、すぐにg6に引くことも、g6に引くに先立って白にキング翼を弱めさせることもできる。私は後者のやり方が反撃の可能性が大きいと思う。

9…Bg4 10.f3 Bh5 11.g4 Bg6 12.Ng2

 白の e4 突きのあと黒のクイーン翼ビショップが閉じ込められるのが明らかなので、キング翼ナイトを保持するのは魅力がある。それでもこのナイト引きには手数を要し、g2の地点はいい位置とは言いにくい。指し手が一貫していて白にとって少し有利なのは1989年ビールでのL.ポルガエフスキー対E.トーレ戦のように 12.e4 Nbd7 13.g5 Ne8 14.Nxg6 hxg6 15.Be3 Nd6 16.Be2! である。

 もちろん本譜の手のあとで白が不利ということではない。しかし黒の反撃の見通しはより明るい。この例証として1982年レイキャビクでのH.オウラフソン対E.メドニス戦をあげる。この試合ではアイスランドのGMの過剰に楽観的な指し方がスラブの堅固さにぶち当たった。

12…Nd5! 13.Qb3 a5! 14.e4 Nb6 15.Be3 Nxc4 16.Qxc4 Qe7! 17.h4?! f6! 18.h5 Bf7 19.h6 e5 20.Qe2?! exd4! 21.Bxd4 Rd8 22.Be3 g6 23.Bf4 Nd7 24.Ne3 Ne5 25.Bg3 Qc5 26.Bf2? Rd2! 27.Ned5 Qd6! 28.Bh4 Bxc3 29.Nxf6+ Kh8 白投了

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カテゴリ: 布局の探究1

開放試合の指し方(016)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4

 3.Bc4 には二つの具体的な着想と一つの一般的な着想がある。このビショップはc4の地点から、キャッスリングしていないキングの近くの最ももろい地点のf7に直接狙いをつけている。中央の要所のd5にも利いているので、黒が中央で …d7-d5 と突いて自陣を解放するどんな作戦も実行がより難しくなる。最後に、小駒を最下段から取り除くことにより、白はキング翼キャッスリングの用意ができる。早いキャッスリングは開放試合では望ましいのが普通である。それは一般にキングは中央よりも隅の方が安全で、キング翼ルークは迅速にe列またはf列で戦いに参加できるからである。

3…Bc5

 この対称形の応手でジオッコピアノになる。黒の手の着想は白の手とまったく同じである。もちろん黒は白より1手遅れているので当面は攻撃よりも防御に精を出さなければならないと予期すべきである。

 c5が黒ビショップにとって最も働きのある地点であることを見てとるのはかなり容易である。時には黒はもっと守勢の 3…Be7 を選ぶことがある。これはハンガリー防御と呼ばれている。しかし直接比較すると白のキング翼ビショップの方が活動的なので、中央ですぐに 4.d4! と突くのが白にとってより活動的な局面になるので良い。

 まずキング翼ナイトを中央の好所に 3…Nf6 と展開するのも良い手である。これは2ナイト防御になり、第3章の主題である。

4.c3!

 黒の3手目のあと白は三つの基本的なやり方を選べる。

 1)極度に激しいエバンズギャンビットの 4.b4。白は1ポーンを犠牲にしてちょうど1手を得する。第1章で述べたように手得は手数が単位であり、望みの目標を達成するために用いられる余分の手を意味する。4…Bxb4 のあと白は 5.c3 と突く。白はビショップを当たりにすることにより、望みの 6.d4 突きのための手得を得る。しかし黒はビショップをc5に戻す必要はなく、5…Ba5! と引くことにより活動的な位置に据えることができる。このビショップは白の 6.d4 で当たりにされるc5よりも安全で、e7よりも活動的である。6.d4 のあと黒が欲張って 6…exd4?! と取るのは、7.O-O! で白の展開の優位が非常に危険なものになることがあるので非常に危険を伴う。代わりに黒は堅実に 6…d6! と指し、7.Qb3 にfポーンを 7…Qd7 で守るべきである。ここで白が 8.dxe5 で局面を開放しようとすれば、黒が取り返すのは危険が多いが 8…Bb6! で有望な反撃を策することができる。ここで黒は白が 9.O-O と指すか 9.exd6 と指すかにかかわりなく、9…Na5 によりナイトを白の強力なキング翼ビショップと交換するつもりである。白のキング翼ビショップが盤上から消えれば、黒にはもう心配がなく、完全に互角の中盤戦を期待することができる。

 2)落ち着いた本筋の展開の 4.d3 Nf6 5.Nc3 d6 6.Bg5。この戦型は布局名を一番よく表現している。ジオッコピアノとはイタリア語で「落ち着いた試合」である。黒の展開は本筋で迅速なので、何もおそれずに 6…h6! で釘付けをはずすことができる。7.Bh4 には対称的に 7…Bg4 とかかるのが良く、7.Bxf6 Qxf6 8.Nd5 Qd8 9.c3 a6 10.b4 Ba7 で黒陣は堅固で無理がない。

 3)両者をあわせ持つ最善手は 4.c3! である。白は他の戦型に見られた不利が何もなく中央で d2-d4 と積極的に突く用意をする。

4…Nf6!

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(80)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒ポーンが4段目にいる場合も勝つ手法は同じである。しかし図80のように黒ポーンが5段目に達すると問題が出てくる。

 図80 黒の手番
グレツキー=コルニッツ、1864年

 ここに至る手順は省略して直接この局面から考える。ほぼ百年の間この局面は黒の手番の場合に限り以下のように白が勝つと考えられてきた。

1…Re8

 1…Re2 に対して白は 2.Qa3+ により図80から白の手番で生じる局面にすることができる。あるいは次のように指し進めることもできる。2.Qd1+ Rd2 2…Ke3 は 3.Ke5 d3 4.Qg1+ Kf3+ 5.Kd4 d2 6.Qd1 で白が勝つ。この手順中 4…Kd2+ ならば 5.Kd4 Kc2 6.Qg6 Rd2 7.Qc6+ でやはり白が勝つ。3.Qb3+ Ke2 4.Ke4 Ke1 4…d3 は 5.Qg8! で白が早く勝つ。5.Qf3! Rd1 6.Kd5 Rd2 7.Kc5! 手待ちをする。7…Rd1 8.Kc4 Rd2 9.Kb3 これで白が勝つ。例えば 9…Rd1 10.Qe4+ から 11.Kc2、あるいは 9…Re2 10.Qg3+ である。

 1…Ke2 も 2.Qc2+ Ke1 3.Kf4 で白が早く負ける。

2.Qa3+ Ke2

 2…Kd2 は 3.Qb4+ でポーンが落ちる。

3.Qa4 Rd8

 3…Rf8+ は 4.Ke4 d3 5.Qb5 Rd8 6.Qh5+ Kf1 7.Ke3 で白が勝つ。

4.Qa5

 4…Rf8+ 5.Ke4 d3 6.Qh5+ の後黒はポーンかルークを取られる(6…Kd2 7.Qh6+)。

 しかし図80で白の手番の場合は同じ局面で黒の手番とする手順が見つからなかったために長い間引き分けであると考えられていた。ようやく1949年にシェロンが次のような勝ちの手順を示すことに成功した。

1.Qc5 Re2

 1…Re1 は 2.Qb5+ でポーンかルークが落ちる。

2.Qa3+ Kd2

 2…Kc2 は 3.Qa2+ Kd3 4.Qb3+ Kd2 5.Kf4 である。

3.Kf4 Kc2

 3…d3 なら 4.Qb3 で本譜の手順と同じになる。また 3…Re1(e8)なら 4.Qb4+ で白が勝つ。さらに 3…Re3 なら 4.Qb2+ Kd3 5.Qb3+ Kd2(5…Ke2 は 6.Qc2+ Ke1 7.Qc4)6.Qc4 Rd3 7.Ke4 で白が勝つ。

4.Qa2+ Kd3 5.Qb3+ Kd2 6.Qc4 d3

(この節続く)

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開放試合の指し方(015)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 全般的な結論として黒は 1.e4 e5 で始まる布局で速攻をかけるのは棋理に合っていない。しかしこれはそのような手法が実戦で成功しないということや、白が気楽にやっていけることを意味していない。この指針の要点は布局の指し方の原則を理解すればチェスをもっと楽しく指すことができ、もっと得点をあげるのにも役立つようになるということである。

(この章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(79)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

14.Kf8!

 図79 黒の手番

 手詰まり戦術により第三の目標である白キングのe列越えが可能になる。

14…Re4

 14…Re6 は 15.Qb3+ Ke5 16.Kf7、また 14…Ke4 は 15.Qc4+ Kf5 16.Qd3+ Ke6 17.Ke8 で白キングが越境できる。

15.Qd3+ Rd4

 15…Ke5 は 16.Ke7 d5 17.Qg3+ から 18.Kd6 で容易な勝ちになる。

16.Qf5+ Kc4 17.Qc2+ Kd5 18.Ke7 Re4+

 18…Ke5 は 19.Qc3! d5 20.Qe3+ Re4 21.Qg5+ Kd4+ 22.Kd6 で白が勝つ。

19.Kd7

 以下は白の容易な勝ちである。例えば 19…Rd4 なら 20.Qc6+ Ke5 21.Qf3 で少なくともポーンが落ちる。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(86)

「Chess Life」2005年5月号(5/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 D)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.g3 白はビショップをg2に展開させることもできる。この陣形は見かけほど無害ではない。

 通例の作戦の 6…b5 7.Bg2 Bb7 8.O-O e6 のあと白はいくらか優勢である。

 9.Bf4 Qb6 10.a4(10.Ne5 も 10…Bxg2 11.Kxg2 Qb7+ 12.Qf3 Qxf3+ 13.Kxf3 で白が収局で少し優勢だった)10…b4?! 11.a5 Qa7 12.Bxc7! Bxf3(12…bxc3 13.Bb6)13.Qxf3 Qxc7 14.Nb5! axb5 15.Qxa8 Bd6 16.a6 O-O 17.a7 Nbd7 18.Qxf8+ Nxf8 19.a8=Q 白が勝勢である。

 6…g6 も白が優勢だった。7.Bf4 Qd8 8.Ne5 Bg7 9.Bg2 O-O 10.O-O c6 11.Qd2 Be6 12.Rfe1 Nd5 13.Bh6 Bxh6 14.Qxh6 Nxc3 15.bxc3 Bd5 16.Bxd5 cxd5 17.Re3 e6 18.g4 Qf6 19.g5 Qg7 20.Qh4 サカエフ対クライカ、シリウリ、1988年

 6…Bg4 7.h3 Bxf3 8.Qxf3 c6 9.Be3 Nbd7 10.O-O-O は白が有利である。7…Bh5 で釘付けを維持する方が良かった。

 E)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Be3 Encyclopedia of Chess Openings 第4版によるとこれが主手順となっているが、私には最も意欲的な手順だとは思われない。

 6…b5 7.Bd3 Bb7 白はここでどちらにキャッスリングするかを決めなければならない。どちらを選択しても理にかなっている。

 8.O-O 8.Qe2 g6 9.O-O-O なら 9…Bg7 10.Kb1 Nbd7 11.Rhe1 O-O 12.Ng5 Nd5 と進む(ドルマトフ対ハサンガティン、ロシア、2003年)。

 8…Nbd7 9.Qe2 e6

 この局面は2004年米国選手権戦(サンディエゴ)最終戦の重要なGMゴルディン対GMストリプンスキー戦に現れた。そして 10.Bg5 Be7 11.a4 b4 12.Ne4 Qd5 13.c4! bxc3e.p. 14.Nxc3 と進んで白が優勢になった。しかしゴルティンによると黒は次のように互角にすることができた。12…Nxe4 13.Bxe4 Bxe4 14.Qxe4 O-O 15.Bf4 Qd5(または 15…Qb6 16.a5 Qb5 17.Bxc7 Nf6 18.Qe5 Nd5 19.Bd6 Bxd6 20.Qxd6 Rac8 で黒に豊富な代償がある)16.Qxd5 exd5 17.Rfe1 Bf6 18.Bxc7(18.Ne5 Nxe5 19.Bxe5 Rfe8)18…Rfc8

結論

 3…Qd6 は中央反撃/スカンジナビア防御の新型である。クイーンをd6に置く利点は白ビショップがg5に来ても釘付けにならないことと、黒が迅速にクイーン翼にキャッスリングする用意ができることがあることである。本稿ではこの布局の最も重要な着想と落とし穴を紹介した。これはまだ発展途上で、GMの将来の試合を注視するとよい。

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開放試合の指し方(014)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する(続き)

 2)攻撃的布局(続き)

 1.e4 e5 2.f4 のあとキング翼ギャンビットを受諾するのが守勢的過ぎるか複雑さが不十分だと思えれば黒は 2…d5 でファルクビア逆ギャンビットにすることができる。

 白が注意深く指さなければいけないことはもちろんだが、第8章に示す手段で有利な収局に持ち込むことができ、それにより黒の作戦と期待から毒気を抜くことができる。 3.exd5 e4 4.d3 Nf6 5.dxe4 Nxe4 6.Nf3 Bc5 7.Qe2 Bf5 8.Nc3 Qe7 9.Be3 Bxe3 10.Qxe3

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(78)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

9.Qc8!

 図78 黒の手番
フィリドール、1777年

 ここがフィリドールの示した最初の重要な手詰まりの局面である。黒は白キングの前進を妨げることができないのである。

9…Re4+

 もし 9…Kd4 ならば 10.Qc6 Rd5 11.Kf3 Rf5+ 12.Kg4 Rd5 13.Kf4! で白が勝つ。この手順中 11…Ke5 ならば 12.Qc3+ Kf5 13.Qc4 である。他の地点にルークを動かす手は 9…Rh5 なら 10.Qa8+! Kd4 11.Qa4+、また 9…Re7 なら 10.Kf5 Rf7+ 11.Kg5!(11.Kg6 では 11…Rf4 とされる)でルークを取られないように黒はすぐに 11…Re7 と指さなければならず黒の負けとなる。

10.Kf5 Re5+

 10…Kd4 は 11.Qc6 d5 12.Qc2! Re5+ 13.Kf6 Re4 14.Kf7! で黒は白キングがe列を横切ることを許すしかない。

11.Kf6 Re4

 この手は絶対手である。他の手では 12.Qb7+ でポーンかルークが取られる。

12.Qc3

 フィリドールの 12.Qf5+ でも白の勝ちであるがグレツキー=コルニッツの推奨するこの手の方が簡明である。

12…Re6+

 12…Re5 なら 13.Kf7 である。

13.Kf7 Re5 14.Kf8!

(この節続く)

2013年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(013)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する(続き)

 2)攻撃的布局

 黒がどうしても攻撃側に立ちたければ、ラトビアギャンビット(第10章)、あるいはキング翼ギャンビットに対してファルクビア逆ギャンビット(第8章)を採用することができる。

 1.e4 e5 に対する白の断然最もよく指される2手目は 2.Nf3 である。黒がこんなに早い段階でも凶暴な攻撃をしたければ、2…f5 でラトビアギャンビットを指すことができる。

 実戦では黒がこのギャンビットに精通しているのに(そもそも自分から選択したので)、白はそうでないので(たぶん予期していないので)、黒が健闘することが多い。しかし黒の2手目はキング翼を弱め、展開に何も寄与せず、eポーンの守りをほったらかしにしている。白にはこれらにつけ込む手段がいくつかある。第10章で取り上げる手順では 3.Nxe5 Qf6 4.Nc4! fxe4 5.Nc3 Qg6 6.d3! で白の方が攻撃側に回る。

(この章続く)

2013年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(77)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 しかし黒ポーンが原位置を離れていると白の勝ち手順は通常は容易になる。黒ポーンが3段目にいる図77から始めよう。

 図77
フィリドール、1777年

 フィリドールはこの局面は多少の困難はあるが白の勝ちであることを示した。図75と比較すると白クイーンは黒キングを不利な地点に追い込むために使える段が一つ余分にある。白が勝つためには第一に黒キングをd5に追い込み第二に自分のキングに5段目を越させ第三に自分のキングをキング列に侵入させなければならない。そうなれば黒はポーンを失う。以上は全て手詰まり戦術を用いて成し遂げられる。

1.Qh7+ Kd8

 もちろん 1…Kf8 は 2.Qd7 でだめだし 1…Ke8 は 2.Qc7 で白の勝ちを容易にしてしまう。1…Ke6 は 2.Qc7 Rc5 3.Qd8 Re5 4.Qe8+ Kd5 5.Qc8 で本譜と同じになる。

2.Qf7! Kc8

 2…Rc5 3.Qe6 Kc7 4.Qe7+ Kc6 5.Qd8 も本譜の手順と同じになる。

3.Qa7 Kd8

 3…Rc5 には 4.Qe7 である。

4.Qb8+ Kd7 5.Qb7+ Kd8 6.Qc6 Ke7 7.Qc7+ Ke6 8.Qd8 Kd5

 8…Rf5+ 9.Kg4 Re5 10.Qe8+ Kd5 11.Qc8 は大同小異である。白は第一の目標を達成した。次は自分のキングに5段目を越させることである。

(この節続く)

2013年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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開放試合の指し方(012)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する(続き)

 1)防御的布局(続き)

 ペトロフ防御は黒が 1.e4 e5 2.Nf32.Nf6 と応じて白のeポーンを当たりにすることにより生じる。

 黒が攻撃しているようだが、いつも白より1手遅れていていずれ自分の展開よりも白の狙いをかわすことに甘んじなければならなくなるので、実際には非常に防御的な布局である。典型的な局面は 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 で生じる。局面はほとんど対称形だが、白が1手先行しているので少しだが楽に優勢である。ペトロフは本質的に互角にするまたは引き分けにする防御で、黒で勝ちを目指すには適さない。

(この章続く)

2013年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(76)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 図75の配置を右または左に移動しても同じく引き分けである。例外はポーンがルーク列にある場合で図76のように黒が負けになる。

 図76
ベルガー、1922年

 前図との主要な違いはルークがポーンに守られた地点が一つしかないということである。そのような地点が一つ(b6)しかないということは黒キングがステイルメイトに追い込まれるとルークが動かなければならず白キングの進入を許してしまうということである。

1…Kb7

 白先手ならば 1.Qc7! ですぐに勝ちになる。例えば 1…Rb1 2.Qc8+ Rb8 3.Qc6+ Rb7 4.Kd6 で黒のポーンが取られる。

2.Qe7+ Ka6

 2…Kb8 は 3.Qd7 で黒が手詰まりになる。例えば 3…Rh6(3…Rb1 は 4.Qe8+ Kc7 5.Qf7+ の後 6.Qg8+ から 7.Qh7+ で白の勝ち。3…Rb2 は 4.Qe8+ Kb7 5.Qe4+ Ka6 6.Qd3+ Kb7 7.Qf3+ Kb8 8.Qf8+ から 9.Qg7+ で同じく黒のルークが取られる)4.Qe8+ Kb7 5.Qe7+ Ka6 6.Qf7! Rb6 7.Qd7! で本譜と同じになる。3…Ra6 は 4.Kb5 Rb6+ 5.Ka5 で黒はポーンかルークを取られる。

3.Qd7!

 黒は手詰まりに陥っていてルークを取られてしまう。例えば 3…Rb2 3…Rb1 は 4.Qa4+ から 5.Qe4+ で白の勝ち。4.Qd3+ Kb7 5.Qf3+ Kc7 6.Qf7+ の後 7.Qf8+ から 8.Qg7+ で白が勝つ。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(324)

「British Chess Magazine」2013年3月号(1/1)

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棋力診断

ショーン・トールバット

 我々は海峡を渡ってオランダにいるところである。あなたはタタ製鉄グランドマスターAグループで、米国の最も才能が輝いている日本生まれのGMヒカル・ナカムラに対している。

 あなたの相談相手は後継と目されるマグヌス・カールセンである。

 白の5手目からを予想しなさい。特に5、16、20、26、27、28、および29手目には注意すること。

 それでは幸運を祈る。

白 M.カールセン
黒 H.ナカムラ
ベイクアーンゼー、2013年
シチリア防御カラシュニコフ戦法 B32

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 e5

 出だしはレーベンタールである。5.Nb5 a6 6.Nd6+ Bxd6 7.Qxd6 はラ・ブルドネ戦法と呼んでいいかもしれない。彼は1834年マクドネルとの終わりのない番勝負で 5.Nxc6? と取ったが、のちにシュタイニッツに批判された。19世紀には 4…e5 は全然はやらなかった。

5.Nb5

 黒はd列の弱点を補うために積極策を目指している。d6の地点を目指すこの積極的な手は3点。
 5.Nf5 は 5…d5 6.exd5 Bxf5 7.dxc6 Qxd1+ 8.Kxd1 bxc6 で互角になり2点。
 5.Nb3 は 5…Nf6 6.Bg5 h6 で互角になり1点。
 5.Nf3 は 5…Nf6 6.Bd3 d5 で黒が好調で1点。

5…d6

 これがカラシュニコフ!

6.g3

 2点。1990年ベイクアーンゼーでジョン・ナンがナイジェル・ショート相手に指した(1-0 33手)。
 6.c4 と 6.N1c3 は共に2点。

6…h5

 米国選手は …h4 で攻撃する狙いにより白の作戦を邪魔するつもりである。

7.N1c3

 3点。白は Nd5 の直接的な狙いで冷静に展開している。

7…a6

 黒は白のナイトを追い払わなければならない。7…h4 は 8.Nd5 で白が交換得する。

8.Na3

 1点。これしかない。

8…b5

9.Nd5

 2点。白はポーンによる両当たりを避け、ナカムラのクイーン翼の弱い地点、特にb6に目をつけている。

9…Nge7

 9…h4 10.Bxb5 axb5 11.Nxb5 Ra7 12.Nxa7 Nxa7 13.Be3 hxg3 14.fxg3 Be6 はたぶん白の方が良い。そこで黒は敵の-米国人が「うるさい」と呼ぶかもしれない-ナイトを無力にしようとする。

10.Bg2

 2点。冷静にまた黒のhポーンを無視した。
 10.Bg5 Qa5+(10…f6 11.Be3 は黒に多くの弱点が残る)11.Bd2 Qd8 12.Bg2 は本譜より少し良いかもしれず3点。

10…Bg4

11.f3

 2点。11.Qd3 はそれほど良くなく無得点。そのあと 11…Nxd5 12.Qxd5 Rc8 で黒が有望になる。

11…Be6

12.c3

 2点。b4の地点に利かせた。代わりに 12.Be3 は-1点-12…Bxd5 13.exd5 Nb4 で黒に反撃される。

12…h4

13.Nc2

 2点。白はナイトを配置換えする。

13…Bxd5

 黒はカールセンが Nce3 でd5を過剰防御できるようになる前に取ることにした。

14.exd5

 1点。これで白が双ビショップを持ち少し優勢である。

14…Na5

15.f4

 2点。白はキング翼ビショップでd5のポーンを守ってクイーンが出歩けるようにした。これでカールセンはe5のポーンを取る狙いができた。

15…Nf5

 15…hxg3 16.hxg3 Rxh1+ 17.Bxh1 Qd7 で …Qh3 を狙うのが最善のようで、18.Bg2 g6 で黒の満足できる局面になる。

16.g4!

 3点。16.Qg4 は 16…g6 で黒が堅固な好形になるので、ノルウェー選手は黒のナイトを追い払うことにした。

16…h3

 これは白にとって危険そうに見える。しかしカールセンは黒が白キングに迫れないことを正確に読んでいた。

17.Be4

 2点。ここがビショップの最良の地点である。

17…Nh4

 17…Qh4+ は 18.Kf1 Nh6 19.Rg1 Nb7 20.Qe2 Nc5 21.g5 Nxe4(21…Ng8 は 22.Bh1 Nd7 23.a4 で黒のクイーン翼に対する攻撃がきつい)22.gxh6 で白が少し良い。

18.O-O

 この理にかなった展開の手は2点。

18…g6

 18…Ng2 は 19.fxe5 dxe5 20.Qf3 で白がf列で好調子になる。

19.Kh1

 2点。キングを引っ込めて安全にした。(19.g5 も良い手で2点。)

19…Bg7

 19…f5?! が最も戦闘的な手だが 20.Bd3 e4 21.Be2 Bg7 22.Nd4 Bxd4 23.Qxd4 O-O 24.Qe3! で白が良い。

20.f5!

 3点。白は黒のキング翼を押さえ込もうとしている。

20…gxf5

21.gxf5

 締め付けを維持するこの取り返しは1点。

21…Ng2

 この手は決定的な間違いではないが、白の主導権を強めさせた。21…Bh6 が交換を誘って理にかなっていると思う。

22.f6!

 3点。このポーンは黒の目の上のたんこぶになる。

22…Bf8

 22…Bxf6 は 23.Qf3 Nf4 24.Bxf4 exf4 25.Qxf4 Rh4 26.Qxf6 Qxf6 27.Rxf6 Rxe4 28.Raf1 で白が良い。

23.Qf3

 2点。

23…Qc7

24.Nb4!!

 陣形の急所を占拠したこの手は4点。24.Bf5 には 24…Qc4 が最善。

24…Nb7

25.Nc6

 2点。ナイトが圧倒的な地点に来て、黒キングを中央に留まらせる。

25…Nc5

 25…Na5 は 26.Nxa5 Qxa5 27.Bf5 で白の戦力得になる。

26.Bf5!

 3点。hポーンを取る狙いである。

26…Nd7

 26…Nh4 には 27.Qxh3 が簡明で良い。

27.Bg5!!

 5点。黒ののどに刺さった骨のf6ポーンを守りきる。

27…Rg8

28.Qh5!!

 5点。これで必殺の狙いができあがる。

28…Nb6

29.Be6!!

 お見事に値する4点。d5のポーンを守りf7の地点に当たっている。これでナカムラのキングは万力(まんりき)に捕まり、白には露骨な Ne7 という狙いがある。

29…Rxg5

30.Qxg5

 この取り返しは1点。

30…fxe6

31.dxe6!

 3点。必殺の f7+ の狙いがあるので黒はここで投了した。

1-0

 ここで得点を合計する。

62+   GMの水準に近づいている
57-62 国際マスター
47-56 FIDEマスター
36-46 国内マスター/強豪
26-35 地方/県選手
16-25 クラブ選手
10-15 初心者?または家で指すか時々指す選手
0-9   自分の犬のナポレオン

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開放試合の指し方(011)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する

 数は少ないが黒が布局を選択でき、攻撃的か防御的かの傾向を選ぶことさえできる。

 1)防御的布局

 黒の選択できる二つの防御的布局はフィリドール防御(第10章)とペトロフ防御(第6章)である。

 1.e4 e5 2.Nf3 のあと黒がeポーンを 2…Nc6 でなく 2…d6 で守ればフィリドール防御になる。

 黒の手法はもちろん棋理に合っているが、それでも実戦での問題は 3.d4 Nf6 4.Nc3 Nbd7 5.Bc4! Be7 6.O-O O-O のあと黒陣が狭苦しいということである。結果として実戦では白が中盤戦ではるかに楽にのぞめる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(75)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒にポーンが1個加わると状況ははるかに複雑になる。局面が非常に紆余曲折に富むために最終判断が長い年月の間にくつがえったこともある。この多種多様なエンディングの中からポーンがルークを守りそのポーンがキングに守られている局面だけを考えることにする。その他の局面はエンディングの専門書を参照されたい。

 まず図75のようにポーンが原位置にある配置から考えてみよう。

 図75
フィリドール、1803年

 フィリドールがはるか昔に示したようにこの局面で白に勝ちはない。黒はルークをc6とe6の間で往復させることができるので手詰まりに陥ることはない。これはつまり白キングが6段目を越えることができず、黒キングも自分のポーンの守りから追われることがないということである。

1.Qb8+ Ke7 2.Qg8 Rc6 3.Qg7+ Kd8 4.Qf8+ Kc7 5.Qa8 Re6

 白はこれ以上進展を図ることができないので引き分けである。

(この節続く)

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開放試合の指し方(010)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 C)白が攻撃する

 白の最速攻撃布局はキング翼ギャンビットである。1.e4 e5 2.f4 黒が 2…exf4 とポーンを取ればキング翼ギャンビット受諾になる。

 この局面はこの上なく激しくて不均衡である。白は大切なfポーンを捨てた上にキング翼も非常に弱めている。それは何のためか?白は二つのことを期待している。それはf列での攻撃の可能性と、早い d2-d4 突きによる強力な中原である。白はこれらの目標を二つとも達成できれば、非常に有利になる。黒にはいくつかの明確な作戦がある。基本的な戦略は二通りである。一つは 3.Nf3 に 3…g5 で前方のfポーンを守ることである。もう一つは中央での動きで防御と攻撃とを兼ねることである。第7章で取り上げる主手順は 3…d5 から始まる後者の手法を用いている。キング翼ギャンビットの局面はすべて非常に激しい戦いになるので、具体的な手順の豊富な知識と理解なしにはうまく指していくことができない。第7章での重要な局面は 4.exd5 Nf6 5.Bb5+ c6 6.dxc6 Nxc6 7.d4 Bd6 8.Qe2+ Be6 で生じる。黒は展開の迅速な完了に努め、9.Ng5 には 9…O-O! でポーンを犠牲にする構えである。中盤戦は非常に難解になり、知識の量と勇敢な心に優る方が勝つだろう。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(74)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク

 この例からクイーン対ルークの戦いがどのようなものか正確につかめたことと思う。ここで重要な例外の一つを挙げておく。

 図74

 黒先手で白キングは永久チェックから逃れられないので引き分けになる。1…Rh7+ 2.Kg2 Rg7+ 3.Kf3 Rf7+ 4.Kg4 Rg7+ 5.Kf5 Rf7+ 6.Kg6 Rg7+ 7.Kh6 Rh7+ ここで 8.Kxh7 はステイルメイトになる。もちろん白先手ならば白の勝ちになる。

(この節続く)

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布局の探究(56)

「Chess Life」1992年10月号(2/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

姉妹布局(続き)

 (1)1.e4 に対するカロカン防御と 1.d4 に対するスラブ防御(続き)

 (A)カロカン防御(B19)

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.h4

 例えばフランス防御では黒の問題ビショップとなるクイーン翼ビショップが手際よく展開されただけでなく、白の白枡ビショップよりもよく利いている。白が通常の布局の優位を保持する可能性は4段目の重要な中原ポーンと展開における1手先行とにかかっている。

 黒のクイーン翼ビショップが強力なので白は交換によりなくすのがよいと認識されている。白はクイーン翼にキャッスリングする予定なので、本譜の手はビショップ同士の交換に先立ちキング翼の陣地の広さの優位を得る安全な手段である。

6…h6 7.Nf3 Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 e6 11.Bd2 Qc7 12.O-O-O Ngf6 13.Ne4 O-O-O 14.g3

 図1

 図1はカロカン防御の特徴的な主手順の局面である。白は引き続き少し優勢だが、黒には弱点がない。白は直前の手で Bf4 を用意している。黒はこの機会にナイト同士を交換することにより負担を軽くする。

14…Nc5 15.Nxc5 Bxc5 16.c4 Bd6 17.Bc3 Kb8 18.Qe2

 1990年ハーニンゲでのG.サクス対A.カルポフ戦では前世界チャンピオンが 18…Ka8 と指した。もっと本筋の手はすぐに 18…c5 と突いてd4のポーンに挑む手のように思える。GMカルポフはそのあと 19.dxc5 Bxc5 20.Be5 Bd6 21.Rxd6 Rxd6 22.Bxd6 Qxd6 23.Ne5 という手順を示している。ナイトの働きが優っているのとc4ポーンによる中央への影響力により白が少し優勢である。それでも黒は形が良く堅固さを保っている。しかしこの変化から分かるように白も手堅く指せば、黒の勝つ可能性は乏しい。

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開放試合の指し方(009)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開(続き)

 中央ですぐに行動を起こすのがポンツィアーニ布局の構想で、1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.c3 から生じる。

 白は 4.d4 で強力な中原を作るつもりである。黒はそれを防ぐことはできないので、やはりキング翼を迅速に展開するのが最善である。3…Nf6! 4.d4 Nxe4 5.d5 Ne7 6.Nxe5 Ng6 7.Bd3 Nxe5 8.Bxe4 Bc5 両者とも文句のない形でいい勝負である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(73)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク

 図73

10.Qf4

 白の勝つ手順はいくつかあるがこれが多分最も簡明である。10.Qh8 でも良く以下 10…Ke7 11.Qg8! Rd7+(11…Kd7 なら 12.Qf8)12.Ke5 Rc7 13.Qg7+ Kd8 14.Qf8+ Kd7 15.Kd5! Rb7 16.Qf7+ Kc8 17.Qe8+ Kc7 18.Kc5! で白が簡単に勝つ。例えば 18…Ra7 19.Qe7+ Kb8 20.Qd8+ Kb7 21.Kb5 で黒はまもなくルークを取られる。白は 10.Qb8 でも勝てるが黒も 10…Rc2! で頑強に抵抗することができる。

10…Kc8

 10…Rb7 なら白は 11.Qf7+ Kc8 12.Qe8+ Kc7 13.Kc5 で前手の解説と同じになる。

11.Kd6 Kb8

 11…Ra7 は 12.Qf8+ Kb7 13.Qf7+ Kb8 14.Qe8+ Kb7 15.Qd7+ Kb8 16.Qd8+ Kb7 17.Qc7+ で黒の負けが早まる。11…Kb7 12.Qb4+ Kc8 13.Qa5 も同様である。

12.Qe5! Rb7

 他の手は本譜の手順から分かるように黒がずっと早く負ける。

13.Kc6+ Ka8 14.Qa1+ Kb8 15.Qa5!

 この局面はフィリドールが既に1777年に白の必勝形であることを明らかにしている。

15…Rb1

 15…Rh7 は16.Qe5+ Ka8 17.Qa1+ Kb8 18.Qb1+ で白の勝ちになる。15…Rb3 は 16.Qd8+ Ka7 17.Qd4+ Kb8 18.Qf4+ からルークが取られる。15…Rf7 も 16.Qe5+ Ka7 17.Qe3+ からルークが取られる。

16.Qd8+ Ka7 17.Qd4+ Ka8 18.Qh8+ Ka7 19.Qh7+

 これでルークが取られる。 

(この節続く)

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開放試合の指し方(008)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開(続き)

 中央試合に属するデンマークギャンビットでは白は5手のうちに2ポーンを犠牲にして展開を速める。1.e4 e5 2.d4 exd4 3.c3 dxc3 4.Bc4 cxb2 5.Bxb2

 局面が非常に開けているので白の展開の優位は容易に決定的になることがある。だから黒は欲張らずに 5…d5! でポーンを1個返すのがよい。第10章で見られるように黒はもう1個のポーンを保持し、それにより優勢を確実にする。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(72)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)

 クイーン対ルーク

 クイーン対ルーク+ポーンのエンディングの分析は複雑さを伴う。そこに行く前にクイーンがルーク単独に対してどのように勝つかをざっと見てみよう。

 図72

 一般に少数の特別な場合を除いてクイーンはルーク単独に勝つ。しかし以下の分析が示すように勝つのは容易ではない。

1.Qf3+ Ke5 2.Qe4+ Kd6 3.Kd4

 白が勝つためにはキングとルークで黒キングを盤端に追い詰めなければならない。

3…Rc6

 この手が黒の最善の受けということではない。しかしルークがどこへ動いても白は自分のキングを進めて最終的には黒キングを盤端に追い込むことができる。例えば黒が 3…Ra5 で白キングの前進を拒んだとしよう。それに対して白は次のように指す。4.Qg6+ Kd7 4…Ke7 5.Qb6 Rh5 6.Ke4 は本譜の局面と対称形になる。5.Qf6 Rb5 5…Kc7 は 6.Qe6 Kb7 7.Kc4 Kc7 8.Kb4 でルークが下がらなければならない。6.Qf7+ Kd6 6…Kc6 は 7.Qe6+ Kc7 8.Kc4 で早い。7.Qf8+ Kd7 8.Qf6! Ra5 9.Kc4 Kc7 10.Ke7+ Kc6 11.Qe6+ Kc7 12.Kb4 でルークが下がらなければならない。

4.Qe5+ Kd7 5.Kd5 Rc7

 5…Ra6 は 6.Qg7+ Kd8(6…Ke8 は 7.Qc7)7.Qf8+ Kd7 8.Qf7+ Kd8 9.Kc5 で白が勝つ。また 5…Rc1 は 6.Qf5+ Ke8 7.Qh5+ Kd7 8.Qg4+ Ke8 9.Kd6 で白が勝つ。

6.Qe6+ Kd8 7.Qg8+

 7.Kd6 は 7…Rc6+! 8.Kxc6 でステイルメイトになるので注意しなければならない。

7…Ke7 8.Qg7+ Kd8 9.Qf8+ Kd7

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(85)

「Chess Life」2005年5月号(4/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 B)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Be2 ここで黒はまだ白枡ビショップをキング翼に展開するかb7の地点に展開するかを選べる。

 6…Nc6 のあと注意を払うべき戦術の着想が次のように少しある。

 7.Be3 Bg4 8.Qd2 e6 9.O-O-O O-O-O 10.a3 Be7 11.Ng5! Rdf8 12.Nge4 Qd8 13.Nxf6 Bxe2 14.Qxe2 Bxf6 15.d5 exd5 16.Nxd5 Kb8 ここで 17.Qc4 で白が優勢になる。

 7.O-O Bg4(7…Bf5 8.Be3 g6 9.Qc1 Bg7 10.Bf4 Qd8 11.Rd1 O-O 12.d5 Nb4 13.Ne1 Qd7 14.a3 Nbxd5 15.Nxd5 Nxd5 16.Bf3 c6 17.c4 白が釘付けを利用する)8.h3 Bh5 9.Be3

 ここで 9…O-O-O は 悪手で、10.Ng5! Bg6 11.Bd3! がある。

 9…Rd8 10.Qd2 e6 11.Rad1 Be7 の方が良く 12.Bf4 なら 12…Qb4 13.Bxc7 Rd7 14.Bf4 Bxf3 15.Bxf3 Nxd4 となる。

 白は次の試合(ティビアコフ対カンパニレ、ブラット、1999年)では布局からあまり有利を引き出せなかった。6…e6 7.O-O Be7 8.Ne5 Nc6 9.Nxc6 Qxc6 10.Bf3 Qd6 11.Be3 O-O 12.Qe2 Rb8 13.Rad1 Bd7 14.Bc1 Rfe8 15.Qe5 Qb6 16.Rfe1 Rbd8 17.Qe2 Bc6 18.Bxc6 Qxc6 19.Rd3 b5 ここでの形勢はほぼ互角である。しかし黒はたった1手のとんでもないポカで突然負けた。20.a3 Qb7(20…a5)21.Bg5 Nd5 22.Bxe7 Rxe7 23.Qf3 c6?! 24.Ne4 Nb6? 25.Nf6+! Kh8 26.Qe4 gxf6 27.Rh3 f5 28.Qe5+ 1-0 黒の敗因はキングの周りの防御を怠ったことにあった。

 注意すべき別の着想は 6…Nbd7 7.O-O e6 8.Bg5 Be7 9.Qd2 b5 10.Bf4 Qb6 での(または同様の局面での)11.d5 である。ここでは 11…Nc5 12.Be3 b4 13.Na4 Qa5 14.Nxc5 Bxc5 15.dxe6 Bxe6 16.a3 で白が優勢である。

 黒はすぐに 8…b5 と突いた方が良いかもしれないし、8…c5 さえ考えられる。

  C)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Bd3 のあと黒はビショップをg7に展開する手も試みてきた(そしてこれまでのところ成功している)。6…g6 7.O-O Bg7 8.Bg5 Nc6 9.h3 O-O 10.Be3 Nb4 11.Ne4 Nxe4 12.Bxe4 f5! 13.Bd3 Nxd3 14.Qxd3 そしてここで黒は 14…f4 15.Bd2 b5 16.a4 Bb7 で好調である。

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開放試合の指し方(007)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開(続き)

 2ナイト防御は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 のあと黒が 3…Nf6 と応じて生じる。

 黒はキング翼ビショップより先にキング翼ナイトを展開することにより白のeポーンに圧力をかけるが、自分のf7の地点を攻撃にさらされやすくしている。ここで白には理にかなった作戦が二つある。それは 4.d4 で中央から仕掛けていくのと、 4.Ng5 により黒のキング翼に対してすぐに攻撃を仕掛けることである。ほとんど必然の 4…d5 5.exd5 のあと黒はポーンを犠牲にすることにより 5…Na5! 6.Bb5+ c6! 7.dxc6 bxc6! で白の攻撃にブレーキをかけるのがよい。8.Be2 h6 のあと黒は展開で優位に立ち、犠牲にしたポーンのほぼ代償となる。黒が活発に指せる可能性は2ナイト防御の方がジオッコピアノよりもはるかに大きいことは強調しておく。しかしその代価は1ポーンの丸損である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(71)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 黒に7段目のポーンの他にもポーンがあれば結果は一概に言えない。一般にはクイーン側が勝つことが多いが余分のポーンが負けを救うこともある。

 例えば黒に7段目のポーンが2個ある場合白はキングがポーンにかなり近い場合に限り勝てる。黒の二つ目のポーンが6段目にある場合も同様である。ここでは無数の可能性を調べることはしない。興味のある読者はエンディングの専門書を参照されたい。黒の受けの手段を示すために一つだけ例を採り上げる。

 図71

 黒のaポーンがなければこの局面は明らかに引き分けである。しかしこの局面ではステイルメイトの可能性がないにもかかわらず白が勝つことができない。もし白キングがa4にいたとしたら次の手順で白が勝つ。1.Qg7+ Kf2 2.Qh6 Kg2 3.Qg5+ Kf2 4.Qh4+ Kg2 5.Qg4+ Kf2 6.Qh3 Kg1 7.Qg3+ Kh1 8.Kb5! a4 9.Qf2 の後 10.Qf1# で詰み。しかし図71では黒のaポーンがせき止められていないので正しく受けられればこの手法が通用しない。

1.Qg8+ Kf2!

 黒は決してクイーンをg4の地点に来させてはならない。その理由は 1…Kf1 2.Qc4+ Kg2 3.Qg4+ Kf2 4.Qh3 Kg1 5.Qg3+ Kh1 6.Qf2 あるいは 1…Kf3 2.Qg5! a4 3.Qh4 Kg2 4.Qg4+ で負けてしまうからである。しかし黒は本譜の手以外に 1…Kh3 2.Qd5 Kg3! でも引き分けにできる。

2.Qh7 Kg3 3.Qd3+ Kg2 4.Qe4+ Kg3!

 引き分けにできる唯一の手である。白クイーンにg4の地点に来させては黒キングがh1の地点に追い込まれるのでそうさせてはならない。実際 4…Kg1 は 5.Qg4+ の後 6.Qh3 とされる。また 4…Kf2 は 5.Qh1 Kg3 6.Kb7 で本譜と比較して白が重要な手を稼げるので黒が負ける。

5.Kb7 a4 6.Kc6 a3 7.Kd5 a2 8.Qh1 a1=Q!

 黒の余分のポーンは自ら犠牲となって使命を全うし黒キングにg2の枡を与えた。

9.Qxa1 Kg2

 図64に示されてあるとおりこの局面は引き分けである。面白いことに図71で白キングがa8以外のどの地点にいても勝ちだった。

 最後にナイト列ポーンがルーク列ポーンに支えられている場合の意外な受けの手段を考えてみよう。白キングがa8、クイーンがb7、黒キングがh1、ポーンがg2とh4にいる時白は勝てない。考えられる手順は次のとおりである。1.Qf3 黒の狙いは 1…h3 から 2…Kh2 であった。1…Kh2 2.Qf4+ Kh3 3.Qf2 g1=Q! 4.Qxg1 ステイルメイト 白キングがf6まで近ければ白が勝つ。例えば 1.Qf3 Kh2 2.Qf2 h3 3.Kg5 Kh1 4.Qf3 Kh2 5.Kh4! g1=Q 6.Qxh3# で詰む。

(この節終わり)

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開放試合の指し方(006)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開

 以下の布局では白はいくらか展開したあとすぐに直接行動を起こす用意ができている。ジオッコピアノ(第2章)、2ナイト防御(第3章)、中央試合/デンマークギャンビット(第10章)、ポンツィアーニ布局(第10章)

 ジオッコピアノは理にかなった展開手順の 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 で生じる。

 白はキング翼のビショップとナイトを展開し、ビショップは黒の潜在的な弱点のf7をにらみ、ナイトもそこでの活動に参加できる。黒もキング翼の展開を迅速に完了し、白の攻撃の可能性を最小限にすることを望んでいる。例えば 4.O-O Nf6 のあと 5.Ng5? と攻撃するのは黒が単に 5…O-O とキャッスリングするので明らかに時期尚早である。6.Bxf7+?! Rxf7 7.Nxf7 Kxf7 と交換しても黒が戦力得になり陣形にも不安な所がない。

 図の局面で白はポーンを犠牲にして手を稼ぎ展開を速めるために 4.b4 でエバンズギャンビットにすることができる。または 4.d3 から 5.Nc3 で単純で直接的な展開を目指すこともできる。しかし展開を攻撃の可能性と組み合わせる最善の手段は 4.c3 で 5.d4 を狙うことである。黒はこれを防ぐ適当な手段がないので、最善の策は 4…Nf6! でキング翼の展開を完了することである。予定の 5.d4 exd4 6.cxd4 のあと、黒は 6…Bb4+ と白キングをチェックすることにより手損することなくビショップを動かすことができる。7.Nc3 は単純に 7…Nxe4 と取られるので(この変化手順については第2章を参照)、白は 7.Bd2 と指す方がよい。そして 7…Bxd2+ 8.Nbxd2 d5! 9.exd5 Nxd5 10.Qb3! Nce7! 11.O-O O-O となったあと両者ともキング翼の展開が完了している。中盤戦に向けてより活動的な陣形になっているので白が少し優勢である。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(70)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 6段目のポーンに対しては図70のように7段目に到達するのを防げない場合を除きクイーンが常に勝つ。

 図70
「Chess World」、1865年

 白キングが不運な黒枡の斜筋にいなかったら白が簡単に勝てる。例えば白キングがb8にいたら 1.Qh1+ Kb2 2.Qh8! Kb3 3.Qd4 c2 4.Qa1 で白が勝つ。しかし実際は白が黒ポーンの前進を妨げることができないので次のような手順で引き分けになる。

1.Qh1+ Kb2 2.Qb7+ Kc1 3.Kf6

 面白いことにここでも白キングがh6にいたら 3.Kg5! c2 4.Kf4 で勝ちの区域に入るので白の勝ちになるところである(図67を参照)。

3…c2 4.Ke5 Kd2

 図67にあるとおりこの局面は引き分けであるが再度黒の正しい受け方を示しておく。

5.Qb2 Kd1 6.Qb3 Kd2 7.Qa2 Kc3

 7…Kd1? は間違いで 8.Kd4! c1=Q 9.Kd3 で白が勝つ。本譜は 8.Qa3+ Kd2 で白はこれ以上手段がない。

 白の勝てない例外的な局面がもう一、二ある。例えば白キングがc6、クイーンがd8、黒キングがe2、ポーンがf3の局面である。1.Qe8(e7)+ Kf1 で白が黒ポーンの前進を止められないので引き分けである(2.Kd5 f2 3.Ke4 Kg2 で図69と同様)。

(この節続く)

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開放試合の指し方(005)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開(続き)

 単純で直接的な展開はやはりビショップ布局の主題である。 1.e4 e5 2.Bc4

 白は見通しのよい活動できそうな斜筋にビショップを出した。しかし黒はまだ …Nc6 と指す必要がないので、素早く …c7-c6 から …d7-d5 と突いて白のビショップに挑んでいける。2…Nf6 3.d3(3.Nc3 はウィーン試合に移行する)3…c6 4.Nf3 d5 5.Bb3 Bd6 のあと、黒はキャッスリングの用意ができていて少なくとも一時的に白のキング翼ビショップの斜筋を閉鎖している。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(69)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 この分析から局面によっては黒キングが運悪くd1の枡にいたためにc1に行かされて1手無駄にするために白が勝てる場合があることが分かる。黒キングが最初からポーンの反対側のナイト列にいる場合は白キングはもっと近くにいなければ勝つことができない。その例が図69である。

 図69

 この局面はもちろん引き分けである。白が勝つためにはキングが線(a4-c4-d3-e3-e1)の内側にいなければならない。e3又はe1にいる場合はいずれ Kd2 と指すことにより容易に黒ポーンを止めることができる。a4にいる場合は 1.Qg2 Kb1 2.Kb3! c1=Q 3.Qa2# で詰みになるので同様に問題ない。

 白キングが勝ちの領域の外側にいるが黒が苦労する場合がある。例えば白キングがb5にいる場合である。

1.Qg2 Kb1 2.Qe4 Kb2 3.Qe2

 ここで 3…Kb1? は以前に出てきたように 4.Kb4! c1=Q 5.Kb3 で白の勝ちになる。黒は正確に 3…Ka1! と受けなければならない。そうすれば 4.Qxc2 はステイルメイトになる。また 4.Qd2 は 4…Kb1! 5.Kb4 c1=Q で白クイーンが当たりになっているので引き分けになる。

 これでクイーン対7段目に進んだポーンのエンディングを全て尽くした。これまで挙げた判断基準は白の駒が具合の悪い位置にあって黒ポーンの昇格を止められない場合を除き全てに当てはまる。

(この節続く)

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「ヒカルのチェス」(323)

「Chess Life」2013年4月号(11/11)

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「Fighting Chess with Hikaru Nakamura」
Karsten Muller、Raymund Stolze 著
232ページ、Edition Olms 発行(2013年)、29.95ドル

ただの人

我らが3期米国チャンピオンだけを取り上げた初の本

ジャマール・アブダル=アリム

 米国チェス界の問題の一つは、最強の選手たちでも弱い選手たちの指導にあまりに多くの時間を費すことである。

 この逆説的な主張は、初めてこの若い選手の棋歴に焦点を当てたといううたい文句の新刊書で米国チャンピオンのヒカル・ナカムラが語るいくつかの変わった持論の一つを表わしている。

 誰かが名指しをするときが好きな人たちのために、ナカムラは失望させることなく、コーチを副業とし彼の言うところでは結果として大会での成績不振につながっている二人の「強豪選手」をあげている。

 「彼らが大会に出て自分が言うところの悪い成績をあげたとき納得できるだろう」と、ナカムラは本書でドイツのチェス・ジャーナリストのIMゲオルギオス・ソウレイディスとの独占インタビューで言っている。「彼らはいつも教えてばかりいるから自分たちのチェスに表われるんだ。」

 教えることは弱い選手たちを上達させることには役立つかもしれない一方で、ナカムラは「弱い選手たちを教えているとき自分の能力に影響を与えることがある」というところに有毒な不都合があると言う。

 このインタビューには著者たちが「偉大な第11代世界チャンピオンのロバート・ジェームズ・フィッシャーの正統な後継者」として描く選手の精神構造を形作る思考がかいま見られる。

 これはせいぜいこうなって欲しいという文章だが-ボビー・フィッシャーは何と言っても世界チャンピオンだったがナカムラは世界チャンピオン志願者である-それでも本書は現在米国選手の中では世界で一番上にいる選手の気質を形成する諸要素を描写している。

 これらの要素には決断力と気概、決してあきらめず一見負けの局面においてさえ最善の防御を尽くす気質がある。

 それと同時にこのチェス王者が悲嘆にくれているようなところもある。例えばマグヌス・カールセンとレボン・アロニアンがそれぞれ自国のノルウェーとアルメニアで「スーパースター」と「ヒーロー」として扱われ、自分は何のファンファーレも得ていない。

 「自分が米国に戻ってもただの人にすぎない。何も特別なことはない」とナカムラはインタビューで嘆いた。

 「これらの本当に強い選手たちが自国であんなに注目を集めることにやりきれなくなることが時々ある。」

 この本自体はドイツに本拠を置く出版社の同意の限りで現実を反映している。

 言語的に変なところを大目に見ることができれば、この本はナカムラの初期のチェス生活について実際の貴重な話が満載である。

 例えばナカムラはインタビューで、負けず「嫌い」がどうして彼をまだ小さな頃に容易ならぬ選手に変えたのか、そして非常に年少のナカムラが生まれて初めての大会で4局を全敗した時のようにどのような方法で義父は彼を邁進させたのか説明している。

 本書はナカムラのキング翼インディアン好きと、どうしてかつて2600超相手でも「とんでもない」2.Qh5 を指すことに魅惑されたのかを取り上げている。

 ナカムラはどうしてコーチをつけないのか、どうしてコンピュータをあまり信用しないのかについても語っている。そして「実際には自分が完全に勝っている時に完全に負けている」といろいろなコンピュータチェスプログラムが結論づけることがよくあった事実をあげている。

 また、デジタル時代に育ったナカムラは、現代の選手が自由に使えるコンピュータと広大な知識がチェス本が役に立たなくなった理由だとも言う。本の中でそんなことを言うのはかなり奇妙ではある。

 もっともナカムラのトレーニング戦術の兵器庫から本が完全になくなっているわけではない。例えば第3章「収局技術で意気揚々」で著者らはナカムラの「技術的収局の習得と彼のマルク・ドボレツキーの名著『Endgame Manual』の知識」を論じている。

 本書中のいくつかの「テスト」は読者をナカムラがどのように実戦でいろいろな偉業を成し遂げたかを理解するのに誘っている。例えば彼がどのように要塞を突破したか、敵陣を粉砕したか、清算で優勢を実現したかなどである。

 第10章の「ナカムラの名局」は雑誌の記事を引用している。その中には2011年の第3回ロンドンクラシックで世界チャンピオンのビシー・アーナンドと対戦した試合が含まれている。その試合でナカムラは映画「The Matrix」で弾丸をかわす主役のネオに自分をなぞらえている。

 ナカムラは本書の出版に困惑しているようで、2012年5月にツイートしている。「許可なく人の試合で本を書いてもうけることができるのは本当にむかつく。」

 しかし書名には嫌悪させられる一方で、これから何年も米国選手権を席巻しそうな人間についての情報をもっと渇望しているチェス読者には大いにアピールするところがある。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

開放試合の指し方(004)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開(続き)

 ウィーン試合では白はクイーン翼ナイトの展開をまず優先する。 1.e4 e5 2.Nc3

 eポーンを守り黒が中原で …d7-d5 と反攻する可能性をより難しくすることにより、白は黒による干渉を最小限にして展開を続ける可能性を得る。黒の最も開放的な応手は 2…Nf6 と展開する手である。白は 2.Nc3 の結果として少なくともいくらかの中原への影響力を保証されているので、ここで激しく 3.f4 と突っかけることができる。しかしウィーン試合の精神にもっと沿っているのは第9章で取り上げるように 3.Bc4 Nc6 4.d3 Bb4 5.Nf3 d6 6.O-O Bxc3 7.bxc3 Na5 8.Bb3 Nxb3 9.axb3 O-O である。両者ともキングは安全で展開はほぼ完了し、捌き合いの中盤戦が予想される。

(この章続く)

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カテゴリ: 開放試合の指し方

[復刻版]実戦に役立つエンディング(68)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 白キングがg4にいる場合の勝ちに至る手順は次のとおりである。

 図68

1.Qa2 Kc3 1…Kd1 には 2.Kf3 2.Qa3+ Kd2 3.Qb2 Kd1 4.Kf3! c1=Q 5.Qe2# で詰み

 最後に白キングが詰みの範囲の外側のe5にいる場合を考えるが、次の手順で勝てそうに思える。

1.Qa2 Kd1 2.Ke4 c1=Q 3.Kd3! で詰む形になる。しかし黒には次のような受けの好手がある。1…Kc3! 2.Qa3+ Kd2 3.Qb2 Kd1 白はこれ以上手段の余地がない。

(この節続く)

2013年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(003)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開(続き)

 スコットランド試合は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 で生じる。

 白のdポーンと黒のeポーンの交換で中央が少し清算された。これの直接的な結果として白は小駒を楽に展開でき、4段目のeポーンにより中央で少し優位に立っている。黒の方は中原ポーンの交換によりもうeポーンを守る心配がいらなくなり、中央の清算によりやはりキング翼の展開をすみやかに完了できる。完全に互角になるためには黒は適時の …d7-d5 突きにより白のeポーンの影響力を無効にする必要がある。第5章の主手順にはこれらの原則がよく表れている。4…Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Nxc6 bxc6 7.Bd3 d5 8.exd5 cxd5 9.O-O O-O 両者とも布局の目標をすぐに達成し、面白い中盤戦の準備ができていい勝負になる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(67)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 黒のポーンがビショップ列にある場合も白キングの位置によって結果が変わってくる。さらに黒キングの位置にも左右される。図67は黒キングが中央の列にいる例である。

 図67

 この局面は白キングが離れ過ぎているので引き分けである。

1.Qa2 Kd1 2.Qa4 Kd2 3.Qd4+ Ke2 4.Qc3 Kd1 5.Qd3+ Kc1

 白は一度だけなら黒キングに自分のポーンの行く手をさえぎらせることができる。この間にすぐに自分のキングを近づけなければならない。

6.Kb7 Kb2 7.Qd2 Kb1 8.Qb4+ Ka2 9.Qc3 Kb1 10.Qb3+ Ka1!

 この手が要点である。黒はc1に戻る必要はない。白が 11.Qxc2 と取ってくればステイルメイトになってしまう。白はこれ以上追及することができないので引き分けである。

 図67でも白が勝つためにキングがいなければいけない範囲を線で示した。これを理解するために少し例を挙げよう。白キングがd5にいる場合の勝ち方は次のとおりである。1.Qg5+ Kd1 2.Qg1+ Kd2 3.Qd4+ Ke2 4.Qc3 Kd1 5.Qd3+ Kc1 6.Kc4 Kb2 7.Qd2 7.Qe2 Kb1 8.Kb3? c1=N+ は引き分けになる。ただしこの手順中 8.Kc3 c1=Q+ 9.Kb3 なら白の勝ちである。7…Kb1 8.Kb3 c1=Q 9.Qa2# で詰み。

(この節続く)

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布局の探究(55)

「Chess Life」1992年10月号(1/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

姉妹布局

 以前の本稿(1990年8月号)で得意定跡を選ぶ際に用いる原則と方法を論じた。その時に示した考え方の一つが「姉妹布局」で、ここではこの重要な方法について詳しく述べる。

 姉妹布局とは戦略にかなり類似点があり、一方の布局が好きで理解すれば他方も好きで好成績をあげるような布局のことである。

 本稿では二組の姉妹布局について考察する。

 (1)1.e4 に対するカロカン防御と 1.d4 に対するスラブ防御

 1.e4 に対してカロカン防御(1.e4 c6 2.d4 d6)を用いてうまくいっているならば、1.d4 に対してスラブ防御(1.d4 d5 2.c4 c6)を用いるのも好きになりうまくいく可能性が大いにある(もちろん逆も同じくよく当てはまる)。戦略の類似性を簡潔にあげてみる。

 - 白が中央でポーン同士を交換すれば、…cxd5 のあと黒のポーンの形はどちらの防御も同じになる。

 - 白が中央で交換しなければ、主手順で黒は自分から …dxe4/…dxc4 により交換しなければならなくなる。これでまた中央の黒のポーンの形がどちらの防御も同じになる。

 - 黒のeポーンは最初のうちは動かないので、黒は白枡ビショップを元々の斜筋に沿って展開させることができる。

 - 主手順で黒は中央の陣地がいくらか狭い。

 しかし黒陣は常に棋理に合っていて堅固である。白によるどんな急戦にも黒は適切な反撃が期待できる。

 もちろんカロカンとスラブの具体的な手順はまったく異なっている。しかし黒の中央のポーンの形は同じであることが多い。それぞれの防御で黒が早く …Bf5 と指す主手順をとおして「姉妹関係」を明らかにしていく。

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開放試合の指し方(002)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開

 以下の布局は白の迅速で直接的で理にかなった展開に特徴がある。4ナイト試合(第4章)、スコットランド試合(第5章)、ウィーン試合(第9章)、ビショップ布局(第10章)

 一般に黒の正しい対処法はまねをして、自分も迅速に展開しキング翼にキャッスリングしてキングを安全にすることである。そうすれば自信を持って中盤戦のこれから起こることに備えることができる。

 4ナイト試合の基本的な局面は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 で生じる。

 両者とも両方のナイトを中央をにらむ最適の地点に迅速に展開している。白はここで 4.Bb5 と指して、キング翼キャッスリングのために1段目を空けながら黒のeポーンに対しても圧力をかける。黒が対称形に 4…Bb4 と応じてやがてほぼ互角の達成を期待できるのは確かである。しかしもっと激しい 4…Nd4! の方が効果的である。その意図は白が迷惑なナイトを 5.Nxd4 と取ると、黒が 5…exd4 と取り返し白のクイーン翼ナイトが当たりになるので先手が取れるということである。白は 6.e5 と突くしかなく 6…dxc3 7.exf6 となって二組のナイトが盤上から消える。一般に布局で早く駒が交換されると、白の攻撃力が減少するので黒の防御がより容易になる。第4章では迅速な展開が続いてさらに避けられない交換が進み完全に互角の局面になるのを見ることになる。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(66)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 今度は白キングがe4にいる場合を考えよう(図66)。

 図66

今度は次のように異なった手順で勝ちとなる。1.Qg2+ Kb1 2.Kd3! a1=Q 3.Qc2# で詰み。

(この節続く)

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カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

開放試合の指し方(001)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス

 1.e4 e5 で始まる布局はすべて開放試合と呼ばれる。

 開放試合では駒の展開が迅速で、中央でのポーンの交換のために占拠されていない盤上の枡が多くなることがよくあり、クイーンとビショップは「本拠」の斜筋に沿ってすぐに動ける。上図から両者のクイーンとキング翼ビショップが最初からよく働くことが分かる。さらに迅速に展開を図るために白が早く d2-d4 と突くと、黒の …exd4 により中央がさっぱりしもっと開けた局面になってくる。

 開けた局面では黒は自分のキングの守りを弱めないように慎重を期さなければならない。例えば黒がfポーンを突くと、白クイーンにh5でチェックをかけられて破滅するかもしれない。一般に黒はキング翼の駒の展開を迅速に完了してキングをキング翼にキャッスリングすることにより安全を確保することを望む。白の方も戦力を迅速に動員することを望み、黒のどんな失策にもつけ込んで黒キングに猛攻を仕掛ける用意をする。しかしこれらの布局から生じる局面の開放的な性質のために、どんな早まった攻撃もたいていやぶ蛇になり、キングの囲いのどんな弱体化も危険になることがある。黒クイーンはd8-h4の斜筋で動けるので、容易にg5またはh4の地点に来て白キングを攻撃することができる。

 マスターのチェスで最もよく指される開放試合は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 から出現するルイロペス(スペイン試合とも呼ばれる)である。一見これは非常に激しい攻撃作戦のように見えるかもしれないが、実際には黒のe5のポーンを叩きそれにより黒の中央の地歩を弱めようとするゆっくりした秩序だった戦略である。この独特で重要な布局は別の叢書で扱う。

 1.e4 e5 の他の布局はすべて直接的で迅速な行動により特徴づけられる。この直接的な行動をとるのはたいてい白だが、場合によっては黒が希望し誘導することがある。

 本書で取り上げる開放試合は主要な特徴により以下の4種類に分類される。

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(65)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 それでも白キングがある程度近くにいれば勝てる局面がある。もっと正確に言うと白キングは図64の赤線で示したa1-a5-d5-e4-e1の範囲内にいなければならない。例えば白キングがd5にいる場合を見てみよう(図65)。

 図65

 白の勝つ手順は次のとおりである。1.Qg2+ Kb1 1…Kb3 は 2.Qg7! Kc2 3.Qa1 ですぐに白の勝ちとなる。2.Kc4! a1=Q 3.Kb3! で戦力は同じだが黒は詰みからのがれられない。

(この節続く)

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ポルガーの定跡指南(84)

「Chess Life」2005年5月号(3/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 A)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Bc4 b5 7.Bb3 のあと黒は次の手にはまらないように注意しなければならない。7…Nbd7 8.O-O Bb7 9.Ng5 e6 10.Re1 Be7

 (10…Nd5? も 11.Nge4 Qb6 12.Nxd5 Bxd5 13.Bxd5 exd5 14.Nd6+ のあと1手詰みなので悪い。)

 11.Nxe6!! 威力抜群のナイト切りである。ただし 11.Nxf7? は 11…Kxf7 12.Rxe6 Qxe6 13.Bxe6+ Kxe6 で決め手にならない。

 次の試合(ポノマリョフ対フレシネ、バトゥーミ、1999年)で白はこの捨て駒の正しさを証明した。11…fxe6 12.Rxe6 Qb4 13.a3 Qa5 14.Bd2 b4 15.axb4 Qf5 16.Qe2 Ng8 17.Ra5! Qf8 18.Nd5 Kd8 19.b5 Bd6 20.bxa6 Bc6 21.Nb4 Nb8 そして黒は 22.Nxc6+ Nxc6 23.Qe4 Nge7 24.Bg5 Kd7 25.Bxe7 Nxe7 26.Rxd6+ を見越して投了した。

 黒は 7…c5 と突く方が良い。これに対し 8.dxc5 と取るのは 8…Qxd1+ 9.Nxd1 e6 で黒がすぐにc5のポーンを取り返すので白は収局で優勢になれない。

 もっと意欲的な 8.a4 のあと私が最も好きなのは 8…c4 9.Ba2 Nd5 で、形勢は不明である。もっとも 8…b4 9.Ne2 e6 10.Bf4 Qd8 11.a5 Be7 でもより地味だが満足できる局面になる。

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フランス防御の完全理解(238)

第10章 その他の陣形(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

29.Rh1

 黒がクイーン翼で優勢なのは明らかなので、白は攻撃に全力を尽くさなければならない。

29…Ng6 30.Rh5 Qa8 31.a3 Rb6 32.Kh2

 白はbポーンをあきらめなければならない。32.Qd1 Reb8 33.Qh1 ならウールマンは 33…Rxb3 34.Rxh7 Bf8! 35.f3 Rxd3 で黒の勝ちになるとしている。

32…Rxb3 33.Bh6!? Qa6?

 時間切迫では無理もない手だが、黒は破れかぶれの捨て駒を受けるべきだった。例えば 33…gxh6 34.Nxh6+(34.Qd2 Bg5!)34…Kg7 35.Ng4 Rh8! 36.Qd2 Kf8 でキングが逃げ切れる。

34.Bxg7! Qxd3

 ここで 34…Kxg7 と取るのは 35.Qd2 Rh8 36.Qh6+ Kg8 37.Nf6+ Bxf6 38.exf6 で詰まされる。

35.Qxd3 Rxd3 36.Bf6?

 白は次の非常に巧みな引き分けの可能性を見逃した。36.Nf6+! Bxf6 37.exf6! c4 38.Reh4! Nxh4 39.Rxh4 c3 40.Bh6 c2 41.Rg4+ Kh8 42.Bg7+ これで白が永久チェックをかけられる(ウールマン)[訳注 39…Rf3 で黒の勝ちのようです]。

36…Bf8 37.Re1 Rf3 38.Kg2 Rf5 39.Rh3 h5 40.Reh1 c4

 もちろん 40…hxg4 は 41.Rh8+ Nxh8 42.Rxh8# で問題にならない。黒はここで無事に規定手数に達し手堅く勝ちきった。

41.Rxh5 Rxh5 42.Rxh5 c3 43.Kf3 d3 44.Bg5 Bg7 45.Ke3 d2 46.Ke2 Rc8 47.Rh1 Nxe5 48.Nf6+ Kf8! 49.Nh7+ Ke8 50.Nf6+ Bxf6 51.Bxf6 Rc5 52.f4 Nf3! 0-1

(完)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解