2013年05月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(34)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 ここで例外的な局面について触れておかなければならない。それは図34のように黒ポーンがビショップ列にある場合である。

 図34

 これは図33の局面を1段下げ白キングをg3からh3に移した局面である。この普通なら問題にならないわずかな違いでどちらの手番であっても引き分けになる。それはビショップ列にあるポーンの特殊な性質による。それではこの局面を詳しく調べてみよう。まず白番から始める。

(1)

1.Kg2

 もちろん 1.Kg3 は 1…f4+! でたちまち引き分けの形になってしまう。1.Kh2 も 1…Kf6 で進展がない。

1…Kf6!

 他の手では白キングがクイーン翼に回って白が勝つ。例えば 1…Kg6 は 2.Kf2 Kf6 3.Ke2 Ke5(3…Ke6 は 4.Kd3 Ke5 5.Kc4 Kd6 6.Kd4 Ke6 7.e4! で白勝ち)4.Kd3 Kd5 5.f4! で図33の手順に出てくる形になる。1…f4 も 2.e4 Kf6 3.Kf2 Ke5 4.Kf1! で図26に出てきた形と同様になり白が勝つ。

2.Kg3

 2.Kf2 Ke5(e6) は本譜に戻る。

2…Kf7!

 ここでも絶対手である。g列は 3.Kf2 とされるので行けないし、e列も 3.Kh4 とされるので行けない。本譜の手の後 3.Kf4 Kf6 も 3.Kh4 Kg6 も白にとって望みがないのでクイーン翼に可能性を賭けるしかない。

3.Kf2 Ke6 4.Ke2 Kd5 5.Kd2 Kd6

 5…Ke5(又は c5)は 6.Kd3 Kd5 7.f4 で白が勝つ。黒は Kd3 に対して …Kc5 と応じられるようにしなければならない。

6.Kd3 Kc5! Kc3

 勝とうとするならこの手しかない。7.e4 なら 7…Kd6! 8.Kd4 fxe4 9.Kxe4 Ke6、また 7.f4 なら 7…Kd5 で引き分けになる。

7…Kd5 8.Kb4

 8.f4 なら 8…Kc5 で引き分けになる。ただし 8…Ke4? は誤りで 9.Kd2 Kd5 10.Kd3 で白が勝つ。

8…f4!

 この手が核心の手である。黒は図19の本譜と図26の白の3手目の解説に出てきたビショップ列ポーンの特殊な性質を利用する。

9.e4+ Kd4 10.Kb3 Ke3! 11.e5 Kxf3 12.e6 Kg2 13.e7 f3 14.e8=Q f2

 白キングが離れすぎていて勝てない。この形は後のクイーン・エンディングの章で出てくる。

 次は黒番の場合である。

(2)

1…Kf6!

 引き分けるために唯一の手である。もし黒キングがh列に行けば白は Kg3-f2-e2-d3 で勝てる。1…Kg6 ならば 2.Kh4 でこの手順に行き着く。本譜の手に対して 2.Kh4 なら 2…Kg6!、2.Kg3 なら 2…Kf7! で引き分けになる。

2.Kg2 Ke6

 2…Kf7 は 3.Kg3! で黒が手詰まりになる。例えば 3…Kf6 なら 4.Kf4、3…Kg6 なら 4.Kf2、そして 3…Ke6 なら 4.Kh4 である。しかし 2…Ke7 は可能である。

3.Kg3 Kf7!

 これで(1)の黒の2手目の局面と同じになった。

(この節続く)

2013年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(318)

「Chess Life」2013年4月号(6/11)

******************************

不退転のグランドマスター(続き)

チーム作り

 一ヶ月の休息の間にナカムラは別の重要なプロとしてしなければならないことについて考えることができた。それは彼の研究を助けることができ、いつかは将来の重要な大会で協力者を務めることになるかもしれない人からなるチームを編成することである。今日までナカムラはほとんどリトルジョンか自分の親だけを大会に連れて来ていた。

 ほとんどの一流選手は布局研究、実戦練習それに精神面の助言を支援してくれる他のグランドマスターを頼りにしている。ナカムラは特別で、コンピュータ援用の布局調査に熟達した無称号の選手(リトルジョン)と研究している。しかしいつかはもっと仲間が必要になると認めている。

 「今はまだその過程だ。状況がどうなるのか評価しなければならない。ロンドン[グランプリ]が終わったあと既にある程度の結論は出していて、完全に違ういろんなことをしなければならないと考えていた。しかし結局のところ後ろへ下がって全体を見回し、何が良くなかったのかを見極めようとしなければならない。」

 もちろん物事がうまくいっていない時は、最初の衝動はいつものやり方の何かを変えることがよくある。しかし4年間やってきた後では彼はすぐにはリトルジョンを代える予定はない。

 「正直言って例えばカスパロフと違ってクリスと研究することの一番難しい点は、彼が親友でもあるということだ。つまり一緒にチェスを研究しているが、彼は私の親友の一人でもあり、そのため仕事と喜びを兼ねようとする時には非常に難しい。そこには誠実さがあるために非常に難しい。しかしそうはいうもののすべてうまくいっていて、それでやっていけると思うし、クリスも回りにいることになるだろう。彼は自分の成功にとってなくてはならない。自分が2700になって以来彼はずっといる。」

 プロの選手は協力者を連れて大会にやってくるが、他にもいるし大勢のこともよくある。彼らは表舞台には登場せず極秘にされる。こちらのチームに誰がいるかを相手が知れば、こちらが指そうとするかもしれない布局について彼らがときには有効な推測ができることはスポーツの特質である。ほとんどどんな布局でも指すことで知られるナカムラのような者にとってこれは大した問題にならないと思うだろうが、それでも彼らが誰であるかもしれない(または誰でないかもしれない)ことについて彼は非常に口が重い。

 「誰にでも役割がある。クリスと研究しているが彼とだけというわけではない。一緒に研究している人たちがいて彼らはお互い知っている。皆顔を会わせたことはないが、すぐにロンドン・チェスクラシックの準備に入る」と彼は10月に私に話した。

******************************

(この号続く)

2013年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(207)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

31.Rc3 Qg3+ 32.Qg2 Qe1 33.Kh2 Qe5+?!

 33…g6 で単純に 34.Rc8+ Kh7 35.Bd3 という狙いを止める方が良かった。

34.Kh1 Rg5?!

 この手は白に陣容を固めさせる。34…Qe1 で手を繰り返してみる方が良かった。

35.Qf2 Qf4 36.Rd3 Rg3 37.Rd4 Qg5 38.Rg4?

 この手は必要なかった。黒には何も狙いがない。しかし時間に追われていた後でそう言うのはたやすい。

38…Rxg4 39.fxg4 Qxg4 40.Bd3 g6 41.Qe3 Qa4 42.Qb6 Kg7 43.b4 Qa1+ 44.Kg2 Qe5 45.Qf2 g5 46.Qf3 Qd4 47.Qf5 Qe3 48.Qh7+?

 ユスーポフによるとここで果敢に 48.Qxd5! と指せば次のようにまだイワンチュクの勝ちだった。48…h3+ 49.Kh2 g4 50.Qe4! Qf2+ 51.Kh1 f5 52.Qxb7+ Kf8 53.Qc8+ Kg7 54.Qc7+ Kg8 55.Qd8+ Kf7 56.Bc4+ Kg7 57.Qg5+ Kh7 58.Qxf5+!! Qxf5 59.Bd3 Kg6 60.b5!

48…Kf8 49.Qh6+ Ke7 50.Qh5 ½-½

(この章続く)

2013年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(33)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時

 今度は白にパスポーンがないけれどもどちらのポーンも黒ポーンによってせき止められていない場合を考えよう。この場合には出遅れポーンが存在しない。このような局面は通常は白にとって有利である。

 図33

 この局面は白の手番ならば白の勝ちであるが、黒の手番ならば 1…f5+! という巧い手があって 2.exf5+ Kf6 で引き分けになる。白キングが他の位置、例えばh4ならば黒の手番でも白の勝ちとなるところであった。

 白はポーンを動かす前に自分のキングを最も良い位置に動かすというのが一般原則である。ここでも例えばポーンを先に動かす 1.e5 fxe5 や 1.f5+ Kg7 は引き分けになってしまう。そこで白は以下のようにまずキングを動かさなければならない。

1.Kf3 Kf7

 1…Kh5 は 2.Ke3 Kg4 3.f5 で白が勝つ。ただしこの手順中 2.e5 は誤りで 2…Kg6! 3.Ke4 Kf7 で引き分けになる。

3.Ke3 Ke6 4.Kd4 Kd6 4.f5!

 白キングは良い位置にいるので今度はポーンを動かす番である。この局面は既に知っている勝ちの局面で 4…Kc6 5.e5 も 4…Ke7 5.Kc5 Kd7 6.Kd5 も簡単である。覚えておくと役に立つ原則は白キングは対向ポーンのない側に回るのが良いということである。

 図33の局面を1段上または下にしても、あるいは1列または2列左に移動しても結果は変わらない。しかし3列左に移動して白ポーンがb4とc4に来ると白の手番でも引き分けになる。1.Ke4 1.Kc3 は 1…Kc7 2.Kb3 Kb6 3.Ka4 Ka6 4.c5 Kb7 となり白キングが左側から侵入できない。1…Ke6 2.Kf4 Kf6 3.c5 Ke6 4.Ke4 Kf6! 5.Kd4 Ke6 6.Kc4 Kd7 白はどうすることもできない。この移動した局面を下に下げても同じである。しかし逆に1段上に上げて白ポーンがb5とc5の枡に来るようにすると白は次のように勝てる。1.c6+ Ke7 2.Ke5 Ke8 3.Ke6 Kd8 4.Kf7

 図33の局面を4列左に移動するとやはり引き分けである。それは白のポーンがルーク列にある場合で調べる。

(この節続く)

2013年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(206)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

18.f4

 白は単純に 18.Bd3 と引き(…Nf5 を防ぐ)そのあとe列でルークを重ねることにより楽に優勢を維持できていた。

18…a6 19.Bf1 Rd6! 20.a5?!

 この手は不必要に陣形を弱めている。e列でルークを重ねるのがまだ最善の作戦だった。

20…Qc7 21.Nc5 h5! 22.Ra3 h4 23.g4!?

 23.Bg2 の方が安全だったが、実戦の手はそれ以上を求めている。

23…Rf6 24.Nd3 Nd4?

 黒はここで自分がe列を占拠すべきだった。24…Re6 25.Rxe6 fxe6 となればd5ポーンの「非孤立化」に成功し互角にできていた。

25.Ne5 Nec6

 25…Nxc2?? は 26.Rc3 で負ける。イワンチュクは 25…Ne6 26.f5 Nc5 27.Rc3 Qxa5 28.Nd7! Rc6(28…Nxd7 29.Rxe7! Rxe7?? 30.Rc8+)29.Nxc5 Rxc5 30.Qg5! f6 31.Qh5 で勝ちになるという見事な手順を披露している。

26.Nxc6! Rxe1 27.Nxd4 Re4

 27…Rxf4 28.Qxe1 Rxg4+ 29.Kh1 Rxd4 は一本道で実戦に似た局面になるが、重要な差(白にとって有利)はfポーンがまだf2にいるということである。

28.Nf5?

 28.Ne2 ならポーンを返す必要がなく、交換損の犠牲でさらにポーンを取る選択肢を黒に与えなかっただろう。

28…Rxf4 29.f3 R4xf5!?

 イワンチュクはこの犠牲を批判し、29…d4!? で Rc3 を防ぐ方が黒にとって可能性があると考えていた。このあと 30.Nxd4? なら 30…Qc5 から …Rxf3 で黒が良いが、30.Nxh4 ならしょせん白が良いはずである。

30.gxf5 Rxf5

 白の手番 

(この章続く)

2013年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(32)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

a)片方のポーンがせき止められている時(続き)

 白のせき止められていない方のポーンがもっと後ろにあって手待ちできる場合がある。もちろんこれは白にとって大変有利で勝つ可能性が大いに高まる。これまで見合いに依存していた局面はすべて白が見合いを取ることができるということで白の勝ちになっていた。これ以上の説明は必要ないくらいである。

 しかし我々にとって興味があるのは、これまで見込みがなかった局面がそのようなポーンのために勝ちになることである。その例が図32である。

 図32
クリング、1848年

 白のhポーンがh3にあったならどちらの手番であろうと引き分けになることは疑いない。しかし本図でのポーンの手待ちはこの局面の評価が変わるほど重要なのだろうか。見合いが意味を持たないこの図でhポーンの遊び手がなぜ大切なのだろうか。

 上のことは普通のことなのかもしれないが、ポーンの遊び手を使う前にまず白がキングの位置を改善できるかどうかを考えてみなければならない。最初に思いつくのは白キングが4段目を占めることである。そうすれば遊び手を使って見合いを取り、黒はf5からの侵入を防げなくなる。即ち白がポーンをh3に進める前にキングがe4に行ければ白が勝つ。

 さらに黒キングが遠くへ行き過ぎると白にはh4と突く狙いも出てくる。黒はh5を許すことはできないのでこのポーンを取らなければならない。その場合白キングがh4のポーンを取り返せば黒キングはすぐにg6へ来られるようにしておかなければならない。つまりf6にいなければならず、さもないと負けてしまう。

 これまでのことをまとめると幾つかの対応枡を挙げることができる。白キングがg3にいてh4突きを狙っている時黒キングはf6にいなければならない。次にf3の白キングはe4とg3に行けるのでf6とe4に利いている黒キングの枡はe5だけである。最後にe3の白キングはe4とf3に行けるので対応する黒キングの枡はd5だけである。これで黒のf6、e5及びd5に対応する三つの枡が分かった。

 この作業を続けると、白が Kf2 と指したらどうなるのだろう。白キングはここからe3、f3及びg3へ行ける。従って黒キングはd5、e5及びf6へ行けなければならない。だからe6が黒の対応枡となる。g2の白キングはf3とg3に行けるから、e5とf6に利いている対応枡は同じくe6となる。これで我々の問題への解答が分かる。つまり黒キングがe6の地点に行ったら白は Kg2(又は Kf2)と指せば良い。そうすれば黒キングは対応枡のe6を去らなければならず負けてしまう。実際の手順を見てみよう。

1.Kf2!

 クリングの手順は 1.Kf3 Ke5 2.Kg3 Kf6 3.Kg2 Ke6 4.Kf2 だったがそれでも良い。本譜の手は一手だけ短い。
 
1…Ke6

 白には 2.Kg3 から 3.h4 の狙いがあるので黒キングはすぐにf6を目指さなければならない。1…Ke5 は 2.Kf3 で白が勝つ。

2.Kg2! Kf6

 2…Ke5 は 3.Kf3 Kd5(4.Ke4 を防ぐ)4.Kg3 Ke6 5.h4 gxh4+ 6.Kxh4 Kf6(手遅れ)7.Kh5 Kg7 8.Kg5! で白が勝つ。黒キングの他の手は Kf3-e4 又は Kg3 から h4 で黒が負ける。

3.Kg3!

 黒は手詰まりに陥った。

3…Kg6

 3…Ke6 なら 4.h4、他の手なら本譜の手に戻る。

4.Kf3 Kf6 5.Ke4 Ke6 6.h3!

 ようやく決め手となる遊び手が使えた。白はこれで見合いが取れて 6…Kf6 7.Kd5 で勝てる。非常に参考になる例であった。

(この節続く)

2013年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(50)

「Chess Life」1992年6月号(3/3)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

今回は両方の側から(続き)

 B)1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.e3

 3)5…Bxc3!?(メドニス対ラルセン、ニューヨーク(WFW)国際大会、1990年)

 非常に強い選手かど素人しかこんな手を指さないだろう。黒は展開したばかりのキング翼ビショップを自発的に切り、その結果自分のキング翼を弱め、白の中央を強め、白に双ビショップの可能性を残した。これにより黒は何を達成することを期待しているのだろうか。非常に不均衡な局面をもたらす実戦的な側面を別にして、黒は白の中央のポーン集団が動きづらくなりクイーン翼ビショップの利きが狭まることを期待している。

 この局面では実戦の手は新手に近いようである。局後の検討でラルセンは「類似」の局面で白と黒の両方で同じ着想の手を指したいくつかの例を見せてくれた。さらに付け加えてこの着想が成立するのは相手が e3/…e6 と突いている場合だけで、理由はクイーン翼ビショップの展開にさしつかえるからということだった。本局とほとんど同時期に指された1990年ティルブルフでのセイラワン対アンデルソン戦では 5.a3 d6 6.e3 のあとGMアンデルソンも 6…Bxc3 と指したことは付記するに値する。黒の …d7-d6 は白の a2-a3 よりも役に立つのでその試合の黒は本局よりも少し良かった。

6.bxc3

 中央に向かって取るのは常識的だが、それでもクイーン翼ビショップを自由にするのがもっと難しくなりaポーンが孤立するので私としては嬉々としてそうしたわけではなかった(セイラワンも上記のアンデルソン戦で同じ取り返し方をした)。いずれにしても今度黒の取りに対処しなければならない時は 6.dxc3 と応じるつもりである。そのあと 6…f5 と来れば、局面の開放は双ビショップの利益になるはずなので白は 7.e4! と指す。

6…f5! 7.f4?!

 これによりクイーン翼ビショップがもっと閉じ込められることは分かっていたが、私としては …e7-e5 突きを防ぎたかった。ラルセンの考えでは 7.e4!? も正着だということである。

7…Nf6 8.Nf3 b6 9.O-O Bb7 10.d3 Na5 11.Qe2 Qc7 12.Bb2?!

 局面が閉鎖的なので黒のナイトの方が白の黒枡ビショップよりも可能性に富むし、黒のポーンの形は完璧である。これらすべてから黒が優勢である。実戦の手は無駄手で、12.Bd2 の方が良かった。

12…O-O 13.Rae1 Rae8 14.Bc1?!

 白はさらに手損した。14.Nd2 から e4 かすぐに 14.h3 の方が理にかなっている。

14…e6 15.h3 d6 16.Nh2 Bxg2 17.Qxg2 Qc6!

 白が 18.g4 からキング翼で何かを始めようとしているので、ラルセンはクイーン交換によりその機先を制した。収局になれば黒はポーンの形の良さと小駒の優位との戦略的有利さにゆっくり物を言わせることができる。

18.g4 Qxg2+ 19.Kxg2 Rf7 20.e4?!

 この楽観的なポーン突きであとに空所が残り、ナイトがg4に行けても不十分な代償である。正着は 20.Kg3 から 21.Nf3 だった。それでも黒が優勢だが、白は心配すべき弱点が減っている。実戦の手のあとラルセンは 5…Bxc3!? の着想をみごとに見せつけ、決してこちらにつけいる隙を与えなかった。

20…fxe4 21.g5 Nh5 22.Rxe4 Kf8 23.Rfe1 Rfe7 24.Kf3 d5 25.cxd5 exd5 26.Rxe7 Rxe7 27.Bd2 Rxe1 28.Bxe1 Nc6 29.Ng4 Ke7 30.Ne3 Ke6 31.Kg4 Ng7 32.Nc2 Ne7 33.Bd2 Ngf5 34.Kf3 Nc6 35.Kg4 a6 36.Kf3 Kd6 37.Be1 b5 38.Bd2 a5 39.a3 Nce7 40.Be1 Nc8 41.Bd2 Nb6 42.Be1 Na4 43.Bd2 Ke6 44.Ke2 Nb6 45.Kf3 c4 46.dxc4 Nxc4 47.Be1 Ncd6 48.Bf2 Kd7 49.Bb6 Nc4 50.Bf2 Nd2+ 51.Ke2 Ne4 52.Be1 Kc6 53.Na1 Nc5 54.Nc2 Ne6 55.Bd2 Nd6 56.Kd3 Nc4 57.Bc1 Nc5+ 58.Ke2 Nb3 59.Be3 Nd6 60.Kd3 Kd7 61.Ba7 Nc4 62.f5 gxf5 63.Bb8 Ke6 64.h4 Nc1+ 65.Kd4 f4 66.Kc5 Ne2 67.Kxb5 Kf5 68.Kc6 Nxc3 69.Nd4+ Kg4 70.h5 Kxg5 71.Ne6+ Kxh5 72.Nxf4+ Kg4 73.a4 h5 74.Nxd5 Nxd5 75.Kxd5 Nb6+ 76.Kc6 Nxa4 77.Kb5 Nc3+ 78.Kxa5 Ne2 79.Bh2 h4 80.Kb5 Kh3 81.Be5 Kg2 82.Kc4 h3 83.Kd3 Ng3 白投了

******************************

訳注 「WFW」は「Watson, Farley & Williams」のことで、イギリスに本拠をおく投資会社の名前です。

2013年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(205)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

11.Bg5

 白は通例の Bg5-h4-g3 という捌きを始めた。主要な変化は 11.Bd3 で、白はこれにより 11.h3 ですぐにキング翼を弱めることなく黒がビショップをg4に展開するのを止める(Bxh7+ があるので)。代わりに黒がビショップをf5に展開すれば、白は c3 突き(…Nb4 の狙いをなくしd4の地点を固める)から Nbd4 で交換により黒に手損をさせる。そこで黒の主要な応手は次のとおりだった。

 a)11…Nf5 12.c3 Bc7 13.g3!?(1995年ミンスクでのヤンデミロフ対コバリョフ戦では 13.Qc2 Nh4! 14.Nbd4 Bg4 となって黒の攻撃が強力だった)13…h6 14.Bc2 Bb6 15.Qd3 g6 16.Bf4 Kg7 17.Ne5 Re8 18.Qd2 +/= エムズ対モルテンセン、ヘースティングズ挑戦者部、1995/6年

 b)11…h6 12.h3 Nf5 13.c3 Bc7 14.Bc2 Qd6 15.Qd3 g6 16.Qd2(16.g4 Bb6! 17.Kg2 Bxf2! ∞ ユダシン対モスカレンコ、ノリリスク、1987年)16…h5 17.Bxf5 Bxf5 18.Qh6 Be4! 19.Nbd2 f5 20.g3 Rf6 ∞ トルナイ対シュミットディール、ドルトムント、1989年

11…Bg4

 ユスーポフは番勝負の以降の試合では 11…Qc7 と変化し、12.c3(12.Bh4 Nf5)12…a6 13.Be2 Bd7 13.Be3(Bc5 とぶつける意図)14…Nd8(交換を避けた)15.Qd4 Nf5 16.Qxd5 Nxe3 17.fxe3 Bc6 で黒がポーンの代償を得ている局面になった。

 ビショップ同士の交換をさせない別の手段は …f6 突きから …Ne5 である。例えば1976年アムステルダムでのギプスリス対コルチノイ戦では 11…f6 12.Bh4 Qb6 13.Be2 Be6 14.Bg3 Ne5 15.Nfd4 Bd7 16.a4 a6 17.a5 +/= と進んだ。

12.Bh4

 12.Bxe7 は時期尚早だが、面白い変化は 12.h3 Bh5 13.Bxc6 bxc6 14.Nbd4 Rc8 15.c4!? で、黒の弱体化したクイーン翼とf5の地点にすぐにつけ込もうとしている。黒は正確に応じなければならず、1989年オーステンデでのアダムズ対ファンデンドリエシュ戦では 15…h6 16.Bxe7(16.Bh4 Qc7)16…Bxe7 17.g4 Bg6 18.Ne5 Bh4! =/+ と進んだ。

12…Re8

 黒は Bg3 を止めることができないので有効な展開の手を指してe7の守りを増やした。

13.Bg3 Bxg3

 実戦の進行から考えて黒はたぶん 13…a6 14.Bd3 h6(Bxh7+ の狙いに備える)と指して1986年イルクーツクでのクルッパ対ルプーティアン戦に持って行くべきだった。その試合は 15.c3 Qd7 16.Re3 Rad8 17.Qc2 d4!? 18.cxd4 Nd5 と続いて黒に代償があった。本譜は黒がg3でビショップ同士の交換をしなければ …Bxf3 でfポーンを二重にする狙いがもっと強かった。同様に白は14手目で白枡ビショップをd3でなくe2に引くことにより改良することができる。

14.hxg3 Qb6

 1986年ブゴイノでのA.ソコロフ対ポルティッシュ戦では 14…d4!? で合意の引き分けになった。しかしこれは試合前の約束か精神的ショックによるものだろう。15.Nbxd4 Qb6 16.c3 のあと白はあまり苦労なくポーン得を守りとおすことができるはずである。

15.a4!

 これは 15.Bd3 a5! 16.Bxh7+ Kf8 17.Bd3 a4 18.Nbd2 Nf5(A.ソコロフ対バガニアン、ミンスク、挑戦者決定準々決勝第6局、1986年)の重要な改良だった。その試合では黒の指し回しはかなり不要のh7ポーンを補って余りあった。

15…h6

 1995年ノブゴロドでのイワンチュク対バガニアン戦では黒がポーンをもう1枡先に突いたが、次のようにほとんどうまくいかなかった。15…h5 16.Qd3 Bf5 17.Qd2 Be4 18.Nfd4 Nxd4 19.Qxd4 Nc6 20.Qxb6 axb6 白は収局ではっきり優勢になった。

16.Qd2 Bxf3

 黒は白の乱れたキング翼のポーンに対する反撃をもくろんでいる。

17.gxf3 Rad8

 白の手番 

(この章続く)

2013年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(31)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

a)片方のポーンがせき止められている時(続き)

 図30に類似した局面は全部調べたが最後に遠方見合いによる正しい受け方の例を見てみよう。

 図31

 前に言ったように黒の手番ならば 1…Kg6 2.e5 あるいは 1…Ke7 2.Kg5 Kf7 3.Kf5 Ke7 4.Kg6 ですぐに負ける。白の手番ならば引き分けであるが黒には正確さが要求される。

 黒にはどのような危険性があるかを考えてみよう。まず黒は白キングに6段目に来させてはいけない。これはつまり見合いを保ちながら白キングと同じ列にいなければいけないということである。例えば白キングがf1にいるとすると黒キングはg列に行くことはできない。そのため1.Ke2 Kf7 2.Kd3 Ke7(2…Kf6 3.Kd4)3.Kc4 Kd7 4.Kb5 Kc7 5.Ka6! で白が勝つ。次に黒は常にe5というポーン突きの可能性に注意していなければならないので黒キングはh列に行くことができない。

 さらに見合いに関して言えば黒はa、b、fおよびg列についてだけ注意していれば良い。これは白キングがc、dおよびe列から侵入することができないからであり、これらの列を離れたらすぐに見合いを取り戻す用意ができている限りc-e列では見合いを気にする必要はない。以上のことを踏まえておけば以下の手順は容易に理解できるであろう。

1.Kg4 Kg6

 1…Ke5? は 2.Kf3 Kf6 3.Kf4 で白に見合いを取られ負ける。

2.Kh4 Kf6

 前に述べたように 3.e5! があるので 2…Kh6 とはできない。しかし 2…Kf7 は可能で後でg列でまた見合いを取ることができる。

3.Kg3 Kg7!

 ここでも 3…Ke5? は負けてしまう。3…Kg5? も 4.Kf3! で黒キングはf5に行けず 4…Kf6 5.Kf4 で白が勝つ。

4.Kg2 Kg8

 遠方見合いを保つのが一番安全である。ただし 4…Kg6 も可能で 5.Kf2 Kf6 6.Ke2 となった時e列での見合いは心配する必要がない。だから 6…Ke7 7.Ke3 Ke8! 8.Kf4 Kf8! 9.Kf5 Kf7 で引き分けにできる。

5.Kg1 Kg7

 この手は絶対手である。5…Kf7 は 6.Kf1! Kf8 7.Kf2 Kf7 8.Kf3 Kf8 9.Kf4 Ke8 10.Kg5 Kf7 11.Kf5 で白が勝つ。途中 6…Ke7(6…Kg7 ならば白キングはa6に行く。黒キングはb7に間に合わない)ならば 7.Kg2 Kf8 8.Kf2! Ke7 9.Kg3 Kf7 10.Kf3 Ke7 11.Kg4 でやはり白が勝つ。

6.Kf1 Kf7

 この手も明らかに絶対手である。

7.Ke2 Ke7 8.Kd2 Kd7 9.Kc2 Kc7

 白が侵入できないので黒の7-9の3手は白キングと同じ列のどの枡でも良かった。しかし次からはまた正確を期さなければならない。

10.Kb2 Kb8

 10…Kb6 は可能だが 10…Kb7? はだめで 11.Kb3! ですぐ分かるように白が勝つ。

11.Kb3 Kb7 12.Ka3 Ka7

 黒が見合いを取っている限り白はどうしようもないので分析もここまでにしておく。白は他の枡も試すことができるが、これまでの指針に基づけば黒は容易に正しい受け方を見つけることができるであろう。

(この節続く)

2013年05月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(204)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

実戦例

第32局
イワンチュク対ユスーポフ
ブリュッセル、挑戦者決定大会準々決勝第1局、1991年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5 exd5 5.Ngf3 Nc6

 5…Nf6 については次局を参照。重要な変化は 5…a6 で、1985年ビール・インターゾーナルでのファン・デル・ビール対セイラワン戦では 6.dxc5(6.Be2 c4 については前章を参照)6…Bxc5 7.Nb3 Ba7 8.Bg5 Ne7 9.Qd2 Nbc6 10.Be3 Bxe3 11.Qxe3 O-O 12.O-O-O Bf5! と進んで白が少し優勢だった。

6.Bb5 Bd6 7.dxc5

 7.O-O もあり、1974年モスクワ・挑戦者決定戦第8局のカルポフ対コルチノイ戦では 7…cxd4 8.Nb3 Nge7 9.Nbxd4 O-O 10.c3(10.Bg5 f6!? 11.Be3! Ne5 12.Re1 a6 13.Bf1 Kh8 = ゲレル対ウールマン、アムステルダム、1970年)10…Bg4 11.Qa4 Bh5 12.Re1 Qc7 13.h3 Bg6(13…a6 14.Bd3!)14.Bg5 a6 15.Bf1 h6 16.Bxe7 Nxe7! 17.Rad1 Nc6 18.Bd3 Bh5!(白が何か譲歩するまでビショップ同士の交換を拒否する)19.g4 Bg6 = と進んだ。付記すると白は 20.Bxg6 fxg6 21.Ne6 で交換得になるが、21…Qf7 22.Nxf8 Rxf8 で黒が主導権を握る。

7…Bxc5 8.O-O Nge7 9.Nb3 Bd6

 9…Bb6 10.Re1 O-O は単純に 11.Be3 で黒枡ビショップ同士の交換を目指される。そして黒が …Bc7 と引けば Bc5 と出てくる可能性がある。

10.Re1

 これは意外に重要な手である。白がこの手を指さずに 10.Bg5 O-O 11.Bh4 と指せば、黒は 11…Qb6! と指すことができる。12.Bxc6 には 12…bxc6 でe7が「取られ」にならず、12.Bd3 には 12…a5! 13.a4 Nf5 で完全に互角である。

10…O-O

 白の手番 

(この章続く)

2013年05月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(30)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合

a)片方のポーンがせき止められている時

 図30がその例である。

 図30

 パスポーンがなければ白はキングを進めるしか勝つ方法がないので勝つ可能性が減るのは明らかである。白キングが前進するためには見合いを取らなければならない。だからほとんどの場合勝ちかどうかは見合いできまる。

 白ポーンが図30のように進んでいれば白は見合いとは関係なく勝てることが多い。黒キングはd5-a5-a8-d8の正方形の中に制限されているので白は以下の手順で勝てる。

1.Ke5!

 1.c6+ でも良さそうに見える。1…bxc6+ と取ってくれれば 2.Kc5 Kd8 3.Kd6! Kc8 3.Kxc6 で白が勝てる。しかし実際は見落とし易い間違いである。黒は 1…Kc8 2.Kd6 Kb8(次に 3…bxc6 と取る)3.c7+ Kc8 で引き分けにできる。

1…Kc6

 1…Ke7 には 2.c6 があるので黒は見合いを保てない。

2.Kd4 Kd7 3.Kd5

 図30と同じ局面だが黒の手番になっている。

3…Kc8 4.Ke6

 うっかり 4.c6? と指すと 4…Kb8! で引き分けになるので注意が必要である。ただし 4.Kd6 は可能で 4…Kd8 5.Ke6(5.c6? Kc8!)Kc8 7.Ke7 で勝つ。

4…Kd8 5.Kd6 Kc8 6.Ke7 Kb8 7.Kd7 Ka8

 ここでようやく白はポーンを進める。

8.c6! bxc6 9.Kc7

 これであと3手で詰みとなる。

 図30の局面を1段下げた局面は黒が見合いを取っていれば白が勝てない。例えば白ポーンがb5とc4、キングがd4、黒ポーンがb6、キングがd6とする。

1.Ke4

に対して黒は

1…Ke6

と応じることができる。2.c5 は恐れることはない。

2.Kf4 Kd6!

ただし 2…Kf6? は 3.c5 でだめである。3…Kc5 があるので白キングは戻らなければならない。

3.Ke3

ここで黒は 3…Ke5? 4.Kd3 Ke6 5.Ke4 も 3…Kc5? 4.Kd3 Kd6 5.Kd4 も良くない。しかし

3…Ke7!

で遠方見合いを取って引き分けにできる。もし黒の手番だったら

1…Ke6 2.c5

又は

1…Kc7 2.Ke5 Kd7 3.Kd5 Kc7 4.Ke6

で黒の負けとなる。

 図30の局面を右の方に移してもどちらの手番かにかかわらず常に白が勝つ。しかし白ポーンがf6とg5、キングがh5、黒ポーンがf7、キングがh7の局面は白キングが右側から侵入できないので別の手順が必要となる。

1…Kh8 2.g6 fxg6+ 3.Kh6! Kg8 4.Kxg6

で白が勝つ。白の手番では

1.g6+ fxg6+ 2.Kg5 Kh8 3.Kh6

で同じように白が勝つ。しかし白ポーンがg6とh5の時は黒キングがg8に入り込めば白はどうすることもできないので引き分けになる。

 ルーク列でポーンが接触している場合は白の勝つ可能性はない。例えば白ポーンがa5とb4、キングがc4、黒ポーンがa6、キングがc6の場合白が見合いを取っていても役に立たない。

1…Kd6 2.b5 axb5+ 3.Kxb5 Kc7

これでaポーンはクイーンに昇格できない。白キングがc5の地点に行けて且つ見合いも取れれば勝てるが、これは明らかに望めない。

(この節続く)

2013年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

ポルガーの定跡指南(79)

「Chess Life」2005年4月号(2/4)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ブダペスト・ファヤロビッツ(A51)(続き)

 A)1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ne4

 A1)ナイトを 4.f3?? で追い払うのは 4…Qh4+ 5.g3 Nxg3 と応じられるのでポカである。

 しかし以下の手はすべて面白い戦いになる。

 A2)4.g3 Bc5 これは抜け目ない手である。白が白枡ビショップをg2の地点に展開することにしたあと、この手はeポーンも突くことを誘う。5.e3 Qe7 6.Nf3(6.Qd5 には 6…f5 がぴったりである)6…Nc6 7.Bg2

 7.Qd5 で頑固にポーンにしがみつくのは危険である。この場合も 7…f5 が黒の常形で(または 7…Bb4+ 8.Nbd2 Nxd2 9.Bxd2 Bxd2+ 10.Qxd2 Nxe5 でもよい)8.exf6e.p. Nxf6 9.Qd1 d6 10.Bg2 Ne4 11.a3 a5 12.O-O Bg4 13.Qc2 O-O となる。黒は見るからに展開で先行している。そして 14.Nd4(14.Nbd2 Nxf2 15.Rxf2 Bxe3)14…Ng5 15.Nxc6 bxc6 16.Bxc6 Nf3+ 17.Kg2 Qe5 で黒の攻撃が危険である。

 7…Nxe5 8.Nxe5 Qxe5 黒はポーンを取り返し安全な局面になった。そして 9.O-O O-O 10.Qc2 Re8 11.Nd2 Nf6 12.Nb3 Be7 13.Bd2 d6 でいい勝負である。

 A3)4.Nc34…Nxc3 5.bxc3 で白のポーンの形が恒久的に乱される。ここで黒は 5…Nc6 6.Nf3 d6 7.Bf4 Be6 で駒がよく働く。

 A4)4.Qd4 布局の原則の「クイーンをあまり早く出すな」はこの場合も当てはまる。4…Nc5 もっとよく指される 4…Bb4+ も良い手である。5.Nf3 Nc6 この手は白クイーンを追い返す。6.Qd1 6.Qd5 でも応手は 6…d6 である。6…d6 7.Bf4(7.Bg5 なら 7…Qd7、7.exd6 なら 7…Bxd6 8.Nc3 Bg4 9.e3 O-O 10.Be2 Qf6 で黒が展開に優り駒がよく働いている)7…Bg4 8.exd6

 黒は主導権を維持するために非常に正確に指さなければならない。8…Qf6! 9.Qd2 ビショップとb2のポーンを守った。9…Bxd6 10.Bxd6 O-O-O この手は黒の指し手の主眼点である。

 11.Qf4 Rxd6 12.Qxf6 gxf6 13.Na3(白は「普通」に 13.Nc3 と展開すると 13…Nb4 14.Rc1 Re8 で困ったことになる)13…Nb4 黒の主導権は捨てたポーンを補って余りある。

 A5)4.Qd5 Bb4+ 上述の 4.Qd4 Nc5 と同じくここでも 4…Nc5 で指せる。5.Nd2 Nxd2 6.Bxd2 Qe7 7.f4(7.Nf3 なら黒は 7…Bxd2+ 8.Qxd2 Nc6 9.Qc3 O-O 10.e3 Re8 で何の問題もなくポーンを取り返せる)7…Nc6 8.Nf3 O-O 9.O-O-O Rd8 そして次に 10…d6

 A6)4.Qc2 Bb4+ これは白に問題を突きつける正着である。5.Nd2(5.Bd2 なら 5…Nxd2 6.Nxd2 Nc6 7.Ngf3 Qe7 となって次のようにe5のポーンが落ちる。8.e3 Nxe5 9.Be2 O-O 10.O-O a5 11.Nxe5 Qxe5 12.Nf3 Qf6)5…d5 6.Ngf3(6.exd6e.p. は 6…Bf5 でギャンビットのような乱戦になる)6…Bf5

 7.Qb3 Nxd2 8.Bxd2 8.Qxb4 とビショップの方を取るのは薦められない。8…Nxf3+ 9.exf3 Nc6 10.Qxb7 Nd4 黒の攻撃が早すぎる。11.Bg5 Rb8 12.Bxd8(12.Qxa7 は 12…Nc2+ 13.Ke2 f6 14.exf6 Kf7! 15.Rd1 Rxb2 で黒が攻めて勝つ)12…Nc2+ 13.Kd2 Rxb7 14.Rc1 Kxd8

 8…Bxd2+ 9.Nxd2 dxc4 10.Nxc4 O-O 11.Qxb7 Nd7 黒は展開が完了しているのに、白はキャッスリングまでまだ3手必要である。

 A7)4.a3 d6 代わりに 4…b6 は面白い手である。5.Qd5 に 5…Bb7 6.Qxb7 Nc6 でクイーンを捕獲しようとする。7.Nc3(「のろい」7.Nf3? では 7…Rb8 8.Qa6 Nc5 9.Qb5 a6 で白クイーンがもう逃げられない)7…Nc5(7…Rb8 は 8.Qxb8 Qxb8 9.Nxe4 で良くない)もう終わりのように思われる。しかし白はまだ暴れられる。 8.Bg5 f6 9.exf6 gxf6(9…Nxb7? 10.fxg7)10.Bxf6! Qxf6 11.Qxa8+ Kf7

f8のビショップが動いて開き当たりのあと白はクイーンを救うことができない。

 5.Nf3(5.exd6 Bxd6 6.Nf3 Nxf2)5…Bf5 6.g3(6.Nd4 dxe5 7.Nxf5 Qxd1+ 8.Kxd1 Nxf2+)6…Nc6 7.exd6 Bxd6 8.Bg2 ここで黒は 8…h5、8…Qf6 それに 8…Bc5 の3手から選ぶことができる。

******************************

2013年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フランス防御の完全理解(203)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

黒が …f6 と突く

 

 黒は時には …f6 と突いて、e6に弱点を作ってもe5をナイトのための拠点とすることを考えることができる。そのあと白は通常は Nxe5 と取ることができない。なぜなら …fxe5 で黒の中央に強力なポーンが並ぶからである。

(この章続く)

2013年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(29)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 今度は図29のようにパスポーンがh筋にある場合を考える。

 図29

 図28の検討を元にするとこの局面は引き分けであると言える。しかし受け側に一、二の相違点があるので少し詳しく見てみることにする。

1.Ke3 Ke5 2.Kd3 Kd5

 前の例のように黒は白キングに急所のd4の地点を占拠されないように見合いを保たなければならない。

3.Kc3 Ke5!

 黒は図28の時よりも注意深く受けなければならない。白の後ろのポーンはfポーンでないのでこのポーンに逆襲するわけにはいかない。黒キングはd4-h4-h8-d8の正方形から出ることはできないし見合いを失うこともできない。例えば 3…Ke4? は 4.Kc4 Ke5 5.Kc5 で白キングにd4かd6に侵入されてしまう。

4.Kc4 Ke4 5.Kc5 Ke5 6.Kb6 Kd6 7.Ka7 Ke7!

 遠方見合いを取るところが要点である。

8.Kb8 Kd8

 これ以上白はどうしようもない。強いて指せば次のようになるだろう。

9.Kb7 Kd7 10.Ka6 Ke6 11.Kb6 Kd6!

ただし 11…Kf6 は間違いで 12.Kb5 Kf5 13.Kb4! Ke6 14.Kc4 Ke5 15.Kc5 で白キングがd4に到達する。

12.Ka5 Ke5 13.Ka4 Ke4 14.Ka3 Ke5! 15.Kb3 Kd5!

 これで白は以前の形に戻らなければならない。

 図29の局面を1段下げても白の可能性が減るだけである。しかし1段上に上げると白の勝ちになる。例えば白ポーンがg4とh5、キングがf3、黒ポーンがg5でキングがf6とする。黒キングが動きを制限されているので白キングの侵入を防ぐことができない。例えば 1…Ke5 2.Ke3 Kf6 3.Ke4 Ke6 4.Kd4 Kf6 5.Kd5
後は白の楽勝である。白ポーンがg5とh6にある場合も同じように白が勝つ。白ポーンがg6とh7にある場合も同じであるが例外は黒キングがh8にいる場合でステイルメイトで引き分けである。

(この節続く)

2013年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(202)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

白が g3 と突く

 

 これによりd6の黒ビショップの利きが減少し、黒による …Nf4 や …Nh4 を許さない。白が h3 と突いていないと仮定すると、白のキング翼はかなり堅固なままである。しかし …Bg4 による釘付けはもっと厄介なものになるかもしれない(もう h3 突きで追い立てられないので)。あるいはたぶん黒は …Bh3 でキング翼のわずかな弱体化につけ込もうとできるかもしれない。

(この章続く)

2013年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(28)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 さらに右に移した図28もまた少し複雑である。

 図28

 白の勝つ可能性が非常に少なくなっていることは言うまでもないだろう。白はh筋からは侵入が絶望的なのでクイーン翼からの侵入を試みるしかない。しかしクイーン翼で前進するためには見合いを取らなければならないが、遠方見合いがうまくいかない。図を見れば黒が遠方見合いを利用して正しく守れば白がうまくいかないことは簡単に分かる。

 白はもちろん黒キングがc4-c8-g8-g4の正方形から出られないことを利用してa筋から侵入を試みることはできる。しかしこれに対しても黒は見合いを利用してうまく守ることができる。それに白は自分のfポーンに対する逆襲も考慮に入れておかなければならない。具体的な手順を見てみよう。

1…Kd4

 これが最も簡単な手であるが 1…Ke6 又は 1…Kd6 でもよい。黒は Kd3 には …Kd5、Kc3 には …Kc5 と応じられるようにしなければならない。白キングがa筋に行くのを止めることはできないので今の時点では遠方見合いを取るのは意味がない。

2.Kd2

 2.Kf2 Ke5 3.Kg2 Kf6 4.Kh3 Kg5 は引き分けである。

2…Kc4 3.Kc2 Kd4 4.Kb3 Kd5!

 黒はすぐに斜め見合いを取らなければならない。4…Kd3 は 5.g5 でだめだし、4…Kc5? には 5.Kc3 で見合いを取られてしまう。しかし 4…Ke3 5.g5 Kxf3 6.g6 Ke2 7.g7 f3 8.g8=Q f2 と逆襲して図26の白の3手目の変化と同様のエンディングにするのはどうだろうか。実は駒の配置が違うために白は 9.Qg2 Ke1 10.Kc2! f1=Q 11.Qd2 ときれいに詰めてしまうことができる。

5.Kb4 Kd4

 白はこれ以上どうすることもできない。6.Kb5 なら黒は今度は 6…Ke3 が可能だし 6…Kd5 でもよい。6.Kb3 には 6…Kd5 7.Ka3 Kc5 でよい。最後に 6.g5 には 6…Ke5 7.Kc5 Kf5 8.Kd5 Kxg5 9.Ke5 Kg6 10.Kxf4 Kf6! で基本の引き分けの局面になる。

 今までのことから図28の局面を1段下に下げれば白の勝つ可能性はさらに少なくなることは明らかである。しかし逆に1段上に上げるとパスポーンにより黒キングの自由がさらに狭まるので白が勝てる。例えば白ポーンがf4とg5、キングがe3、黒ポーンがf5、キングがe6とすると黒キングはd5-h5-h8-d8の正方形の中にいなければならず白キングがc5の地点に来るのを妨げることができない。1…Kd5 2.Kd3 Ke6 2…Kc5 は 3.g6 で白の勝ち。3.Kd4 Kd6 4.Kc4 Ke6 5.Kc5 白はまもなく黒ポーンが取れる。

(この節続く)

2013年05月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(201)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

黒が …h6 と突く

 

 黒は白の h3 突きに相当する手を指すことができる。…h6 と突くことにより、f6(またはe7)のナイトの釘付けで黒のd5のポーンの守りを脅かす Bg5 を防ぐことができる。または Bg5 に …h6 と突く方が多いだろう。これはc1-h6(Bh4 のあと)またはh4-d8(Bf4 または Be3 のあと)の斜筋の一つの支配をビショップに放棄させることになる。また、白が Bh4 と引けば続いて …g5!? と突くことにより、f6のナイトに対する釘付けを根本的になくすことも可能なことがある。もちろんこのような手はキング翼を弱めるので、慎重な考慮が必要となる。

(この章続く)

2013年05月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(27)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 図26の駒配置を1列右に移し白の両ポーンが中央の列にいるようにすると白の勝つ可能性は高まる。最も複雑な局面は図27のように白のdポーンがd2にある場合である。

 図27

 白の手番ならば 1.Ke1 Kg3 2.Kd1 で楽に勝てる。しかし黒の手番でもa列を使ってクイーン翼から侵入できるので白が勝つ。

1…Kg3 2.Ke1 Kf3 3.Kd1 Ke4

 以前に検討した駒配置が1列左の局面では白に勝ちがなかった。しかしここでは状況が異なる。

4.Kc1 Kd5 5.Kb2 Kc4 6.Ka3! で白の勝ち

 この例の結果から(図27のように)両方のポーンが中央の列にあるとそれらのポーンがどのくらい前に進んでいるかにかかわらず常に白が勝つと言うことができる。白キングがa3又はf2から侵入して来るのを黒キングが止めることができないのでキングの位置は関係ない。中央から逆襲するのも同じくうまくいかない。例えば白のポーンがd2とe3、キングがc1、黒のポーンがd3、キングがc4の局面で黒が次のように指したとする。1…Kb3 2.Kd1 Kb4 3.Ke1 Kb3 4.Kf2 に対して 4…Kc2! を用意した。しかし白は次のような手順で勝つ。4.e4! Kc4 5.Kf2 Kd4 6.Kf3 Ke5 7.Ke3

(この節続く)

2013年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(317)

「Chess Life」2013年4月号(5/11)

******************************

不退転のグランドマスター(続き)

切れた

 9月後半にFIDEグランプリシリーズに初めて登場したナカムラはこの年の最悪の成績を記録した。レッジョ・エミーリアでは3連敗を経験していたが、ロンドンでは4連敗して過去最悪の連敗の一つとなった。勝勢の局面もいくつかあったが、勝ちきれなかった。

 「ちょっとオリンピアードからの疲労感があったのは確かだ。長時間対局しもう少しで勝つというところでそのチャンスを逃してしまうと疲労がたまりにたまってしまう。」

 対局でのヒカルの表情としぐさはあからさまである。彼を見るだけで試合がどうなっているかが読み取れることが多い。彼は第7回戦で首位を走るシャフリヤル・マメジャロフと黒で対戦した。このロンドン大会で私は対局場で座って各対局机の生中継を監視するめったにない好都合な位置にいた。ナカムラはずっと苦戦で、ついにどうしようもない敗勢の局面で最初の規定手数に到達した。詰まされる寸前で彼は差し迫った敗北の現実を直視したくないかのように盤からなかば顔を背けた。マメジャロフが対局場をうろついている間、ナカムラは悄然として前かがみになり、どこで間違えたかを見つけるために時々棋譜用紙を見やっていた。このようにして何分かたったあとようやく相手にうなづいて投了の意思表示をした。

 連敗の4局目ではこれまで見た超一流の対局で最大のメルトダウンの一つを目撃した。ポカ(マイケル・アダムズ戦での 26…Rb8[後出の「2012年ナカムラの最悪の試合」を参照])を出した後、ナカムラは突然絶望的な敗勢になったことに気づいて狼狽を隠すのが困難だった。家で生中継を見ていた観戦者は、彼が顔を左手で覆ったので彼の顔を見ることができなかった。しかし私の座っている所からは完全に打ちひしがれたように見えた。

 大会後ナカムラは2011年初頭以来初めて世界10傑からすべり落ちたにもかかわらず、自分の身に起こったことすべてについてあっぱれにも平然としていた。

 「つまり、確かに切れてしまった(ポーカー用語で、[ウィキペディアによれば]選手が最適でない戦略をとり結果として通常は過激な選手になる精神的または感情的な混乱または挫折の状態)・・・それでも良い局面もあったのでまったく悪いというわけではない。大会の間ずっとこちらの方が悪かったということではない。それから悪い流れがあった。それで話の終わりだ。」

 グランプリでは最終成績は最良の三つの成績の合計なので一つの悪い結果は破滅ではない。彼はまだ二つ目の大会に出ていない。

 ナカムラがこのシリーズに参加することにしたのはたやすい決断だった。米国選手権戦の後すぐに彼を含めるという通知が舞い込み、ほとんどすぐに選手契約書にサインした。

 「経験を積むには良い機会だ。しかも世界選手権への挑戦者を決めるためにどんな方式にせよ通過するチャンスがある。指すことにはほとんど否定的な側面はない。」

 しかしグランプリの構想には過去には資金集め、選手の辞退、開催地の突然の変更などの問題があった。ナカムラはこれらをよく知っているが、開催の反復がうまくいかなくなるかもしれないことは心配していない。「率直に言ってそんなに先のことまで考える必要はないんじゃないかな。単にうまく指しちょっとしたことをきちんとやる問題だ。」

 同じことはワールドカップについても言えて、彼は6月か7月までは参加するかどうかを決めるつもりはない。

 ロンドンのあとナカムラは他のいく人かの選手たちと一緒にイスラエルのエイラートで開催された欧州クラブカップに直接向かったので休息がなかった。そこではイタリアのクラブでパードバのオビエッティベ・リサルチメントに所属した。このチームのためには4月のイタリア・チーム選手権戦でファビアノ・カルアナと共に3局指していた。

 ナカムラはイタリアのすべてが好きになって、最近はそこでもう少しプライベートな時間を過ごすようになり、イタリア語さえ勉強している。

 エイラードではほとんど格下と当たり7戦して5点をあげたが、初戦ではロシアの有望なGMドミトリー・アンドレイキンに番狂わせを食らった。

 そのようなきついスケジュールで失望も多かったことを考えれば、オランダのウニフェ大会で強力に巻き返したのは息抜きになった。そこでは各対戦者に白で勝ち黒で引き分けた。

 最後に二ヶ月のチェスづけの後ナカムラは短い休息を楽しんだ。6月から11月に変更されたルーマニアでのキング大会への招待は、チェス・クラシックのためにまたロンドンに飛ぶまでには元気を取り戻せるように辞退した。

[囲み記事]ロンドンでのおしゃべり

ロンドン・チェスクラシックでのナカムラ語録

 「どちらかというと布局は1、2の決まり切ったのを用意するのでなく、相手をもっと驚かせるようにしている。武器が多ければ多いほど相手の意表をついて自分のよく知っている局面になって、都合がいい。カールセンがあんなにすごい成績をあげているのはそのためだ。彼はほとんどどんな陣形でも得意にしている。彼は他の選手よりも構想や戦い方をずっとよく知っている。」

 「今はコンピュータがあるので一つの布局では好成績をあげられない。カルポフやカスパロフは違った。カルポフは棋歴をとおしてほとんどカロカン防御を指し、ときたまフランス防御も指して、偉大だった。カスパロフの場合はスヘフェニンゲンとそのあとは20年ほとんどナイドルフを指していた。ところが今ではもっと知っていなくてはならない。なぜならコンピュータでどんな布局でも分析でき、たぶん1日あれば十分に理解できるからだ。だからそのためチェスの様相ががらっと変わってしまった。」

 「自分はチェス960[フィッシャー・ランダムチェスとも呼ばれる]が本当に好きだ。これがチェスの未来だと思う。今は正規のチェスがまだはやっている。しかしいつかはほとんどの人がチェス960を指しているだろうと考えている。駒の配置は不規則だがそれでも棋力は存在する。今のように同じ事前研究がなく本当に純粋なチェスを指すことになるので本当に指すのが楽しい。もっとこれを指す機会があればいいと思う。」

 マグヌス・カールセンについて「心理的な面があって、ある所で彼は最善の防御を見つけ続けて乱れない。だから多くの者が少し神経質か不安になって間違いやすくなっている。」

 「マグヌスのしていることはすごいと思う。彼とクラムニクは-彼らの対局を見れば分かるが-非常に堅実に指しほとんどは壮大な定跡を避けるようにしている。自分でそうしてみれば、なぜ互角かを考えようとするのとはまったく異なってただコンピュータを起動させてこの手は互角だと言うよりも、より深い着想とより深い作戦を考えることができるようになると思う。対局中はそんな贅沢はできないのだから。自分で考えなければならない。」

 ブリッツに対する正規チェスについて「内容の方をずっと楽しんでいる。IMの棋力、もしかしたらGMの棋力まではブリッツからの方が上達できる人もいるだろう。しかしそこを過ぎるとブリッツでは決して学べないやり方で、もっともっと着想や構想を考え出すことになる。ブリッツというのはうんと速く手を見つけて戦術の視力を良くするものだ。」

******************************

(この号続く)

2013年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(200)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

白が h3 と突く

 

 白はd4の地点の支配を争いたいので、d4の地点を守っているナイトを釘付けにする …Bg4 を防ぐ h3 突きは理にかなっている。

 しかし h3 突きの欠点はキング翼を弱めることであり、黒はいくつかの手段でこれにつけ込むことができる。第一に、黒は …Bc7 と …Qd6 によりb8-h2の斜筋にビショップとクイーンを重ねることができる(そのあとは …Nh4)。これは白が g3 と突いて …Qh2+ を阻止するとh3のポーンが取られてしまうからである。第二に、黒はナイトをf4の地点に捌こうとすることができ、そこからはh3の地点へのナイト捨ての着想が出てくる。g2-g3 と突くのは自陣に害があるのがほとんど確実なので、このナイトをf4の地点から追い払うのは容易でない。第三に、黒ビショップがa7-g1の斜筋でf2のポーンを釘付けにしていると、黒はたぶん …Bxh3 に続けてクイーンをいきなりg3の地点に飛び込ませることができる。最後に、前述の Bg5-h4-g3 という捌きはたぶんg3のポーンを失うだけのことになるので黒はもう恐れる必要がない。

(この章続く)

2013年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(26)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 さらに図24の駒配置を2列右へ移動した局面を考える。この局面と1段上に上げた局面(白ポーンがc5とd6など)が白の勝ちであることは簡単に分かる。同様に2段上に上げた局面(白ポーンがc6とd7など)も白キングがa6を通ってクイーン翼から侵入することもできるので白の勝ちである。1段下にしてキングの位置を少し変えた局面が図26である。

 図26

 これまでの似たような局面と比べるとこの局面には面白い新たな手段がある。黒に最も有利な受けの可能性を与えるために黒キングをe4に置きさらに手番を与えた。しかしこれでも局面の基本的な性格は変わらない。まず黒が白の通常の勝ち手順にどのように対処するかを見てみよう。

1…Kf4 2.Kf2? Ke4 3.Ke2!

 白は前の手の誤りを認めなければならない。当然の 3.Kg3 はこの局面ではうまくいかない。それに対して黒は 3…Kd3! と応じ以下 4.d5 Kxc3 5.d6 Kb2 6.d7 c3 7.d8=Q c2 で引き分けとなる。これは図19の分析で既に触れた。これは白の通常の勝つ手段では十分でないということである。しかし白はクイーン翼から侵入することができる。

3…Kf4 4.Kd2 Ke4 5.Kc2 Kd5

 黒は Kd2 には …Ke4、Ka3 には …Kb5 と指せるようにしなければならない。そしてそれはうまくいっているように見える。例えば 6.Kb2 には 6…Kc6 7.Ka3 Kb5、6.Kd2 には 6…Ke4 で白はどうにもならない。しかし一つだけ手段がある。

6.Kc1!

 この手待ちにより黒は手詰まりにおちいる。6…Ke4 なら 7.Kb2 Kd5 8.Ka3 で白が勝つ。6…Kc6 なら 7.Kd2 から 8.Ke3 で黒の負けとなる。この勝ち手順を知ればもう1段下げた局面(白ポーンがc2とd3など)も正しく判断することができる。白番ならば 1.Kd1 Kf3(2.Ke2 を防ぐため)2.Kc1 Ke3 3.Kb1 で白が勝つ。しかし黒番ならば 1…Kf3! 2.Kd1 Ke3 3.Kc1 Kd4 で引き分けにすることができる。黒キングは既に最下段にいるので図26での 6.Kc1! のような手待ちの余地がない。以下は 4.Kb1 Kc5 5.Ka2 Kb4 又は 4.Kd1 Ke3 で引き分けである。

(この節続く)

2013年05月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(199)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

c4とe4の要所

 

 孤立ポーンの大きな利点は斜め前の2地点を支援することができることである。d5に孤立ポーンがあると黒には基本的にc4とe4の地点にナイトのための拠点があることになる。これはもし白が b3 と突いて …Nc4 を防ぐか f3 と突いて …Ne4 を防ごうとすると、明らかにクイーン翼とキング翼にそれぞれ弱点が生じるからである。しかし黒が自陣を何も乱さずにc4とe4にナイトを捌くのは決して容易なことではない。例えば …Nf6-e4 はdポーンの安全を危うくするかもしれない。

(この章続く)

2013年05月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(25)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 今度は白ポーンがb列とc列にある場合を考えよう。図24の駒配置を1列右へ移動した局面(白ポーンがb4とc5など)は白がもっと楽に勝てる。1段下に下げた局面(白ポーンがb3とc4など)も同様である。これ以上説明を要しないだろう。

 2段下げた局面(白ポーンがb2とc3など)と2段上げた局面(白ポーンがb6とc7など)は白に勝ちがないことは明らかである(図24で同様の局面を既に調べた)。しかし図24から1列右に移動しさらに1段上に上げた局面は結果が異なってくる。それが図25である。

 図25

 この局面は以下のように白が勝つ。

1…Kd6 2.Ke4 Ke6 3.Kf4 Kd6

 白のパスポーンは黒キングの動きを厳しく制限しているので白はすぐにキングを進めることができる。

4.Kf5 Kc7 5.Ke6 Kc8

 ここで白には一つ問題がある。6.Kd6 は 6…Kd8 7.c7+ Kc8 8.Kc6? で黒キングがステイルメイトになってしまう。だからポーンを犠牲にする必要がある。

6.c7! Kxc7 7.Ke7! で白の勝ち

 黒ポーンはまもなく取られ白は図7の白勝ちの局面に到達する。

(この節続く)

2013年05月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(49)

「Chess Life」1992年6月号(2/3)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

今回は両方の側から(続き)

 B)1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.e3

 この手の洗練された着想は 5.Nf3 や 5.a3 の戦法における黒の 5…e6 の着想と同じである。つまりナイトがスムーズにe2に展開でき白は白枡ビショップの斜筋を開けたまま d2-d4 突きを目指す。唯一の欠点は実戦的なものである。すなわち白が閉鎖的で対称の布局で非常に穏やかに指しているので、黒は対称形を保つ余裕がある。4月号で既に示されたように、互角に達する黒の最も簡明で本筋の手段は 5…e6 である。そして 6.Nge2 Nge7 7.O-O O-O 8.d4 cxd4 9.Nxd4 Nxd4 10.exd4 d5 11.cxd5 Nxd5 となって、長い目で見れば互角であってそれを超えることはない。しかし本譜の手は自分が格上または大会の状況のため勝ちたいか勝つことが必要ならば黒にとって大きな問題となる。白の作戦は戦略的に欠陥がないので、対称形からそれることは黒にとって問題となる可能性がある。非対称形の重要な手段には以下の三つがある。

 1)5…Nf6

 ナイトが「申し分のない」中央の地点に展開されたが、それでも黒の中央での連係は白とは比べものにならない。だから白は楽で危険のない優勢を期待することができる。例えば 6.Nge2 O-O 7.O-O d6 8.d4 Bd7 9.b3 a6 10.Bb2 Rb8 11.Qd2 Qa5 12.Rfd1 cxd4 13.exd4 Rfd8 14.d5 Ne5 15.Nd4 となれば広さと中央の態勢のために優勢である(マウス対タリ、ドイツ、1990年)。

 私の考えでは次の二つの手のどちらでも黒の負ける危険性は増えないで勝つ可能性が増す。

 2)5…e5(ラドゥロフ対マルティン、トレモリノス、1974年)

 白が直前の手であえてしなかったこと、つまりeポーンを2枡突くこと、を黒はやり、それにより白の d2-d4 突きを防ぎ中央を広げた。もちろん不利益は同じくらい明らかである。すなわちd5の地点の恒久的な弱体化と自分の黒枡ビショップの閉じ込めである。たとえこれまでの定跡で白の優勢が明白に示されなくても、これらの否定材料は黒陣の信頼性を大きく損ねてきた。

 手短に言うと本譜の手は今日では国際大会でほとんど見られない。

6.Nge2 Nge7 7.O-O O-O 8.a3

 b2-b4 突きを目指すのはこのような局面での常套手段で、クイーン翼を広げ黒のcポーンの中央への影響力を削ごうとする。それでも 8.b3 d6 9.Bb2 と展開するのも魅力的である。例えば 9…Bg4 10.d3 Qd7 11.Qd2 Bh3 12.Bxh3 Qxh3 13.f4!(べジョン対ポルティッシュ、マドリード、1973年)となれば、優良ビショップと中央の支配の優位とで白が少し優勢である。

8…d6 9.Rb1 a5

 このような局面でのよくある問題は、白の b2-b4 突きを防ぐために黒が …a7-a5 と突くべきかということである。普遍的な「正解」はない。しかし私の個人的な見解では、ほとんどの状況において黒は …a5 と突いていない方が対処しやすいと思う。というのは …a5 と突くとb5とb6の地点が根本的な弱点になるからである。9…Be6 と指した好例は1956年モスクワでのパッハマン対ボトビニク戦である。10.Nd5 Bf5 11.Nxe7+(11.d3!?)11…Qxe7 12.d3 e4! 13.Nf4 exd3 14.e4 Be6 15.b3 Rab8 となってほぼ互角(タイマノフ)だった。

10.d3 Rb8 11.Bd2 Bf5?!

 この白枡ビショップ同士を交換する作戦は、黒の白枡の弱さを目立たせるだけでなく、黒に恒久的に不良黒枡ビショップを残すのに役立つだけである。正着は 11…Be6 で中央に展開することで、例えば 12.Nd5 b5 13.cxb5! Rxb5 14.Nec3 で白がわずかな優勢を維持する(ラドゥロフ)。

12.Qc2 Qd7 13.Nd5 b6 14.Nec3 Nxd5 15.cxd5! Ne7 16.e4! Bh3 17.b4! Bxg2 18.Kxg2

 白の作戦の方が黒よりもはるかに成功を収めた。白のビショップの方がよく利いていて、ナイトもそうである。白のdポーンが中央の重要な領域を得たのに対し、黒のdポーンは根本的な弱点になっている。黒は自分の問題に対し何の代償もない。

18…axb4 19.axb4 f5 20.bxc5! bxc5?

 この普通の取り返しのあと白は黒のdポーンに襲いかかる。20…dxc5 21.Nb5 f4 の方が気が進まないが実戦より優る。白は 22.f3 で明らかに優勢を維持するが、局面の閉鎖性のために突破は実現が難しい。

21.Rxb8! Rxb8 22.Rb1! Qc7 23.Rxb8+ Qxb8 24.Qa4 Qd8 25.Nb5

 白の3駒はきれいに協調していて、直接の狙いは 26.Qa7 から 27.Ba5 である。黒敗れたり。

25…Qd7 26.Qa8+ Kf7

 26…Bf8 なら 27.Bh6 Qc8 28.Qa7! Bxh6 29.Qxe7 Bf8 30.Nxd6 で白の勝勢である。

27.Qb8 黒投了

 dポーンが落ちて勝負が決まった。27…Nc8 と受けても 28.Qxc8! Qxb5 29.Qe6+ Kf8 30.Qxd6+ までである。

******************************

2013年05月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(198)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

白がビショップをナイトと交換する

 

 d4の地点を支配する作戦の一環として、白はときに白枡ビショップを「犠牲」に Bxc6 でナイトと交換することがある(黒が …bxc6 と取り返しても有利にならない状況で)。そのあと駒交換により自分のナイトが黒の白枡ビショップを凌駕する収局になることに期待をかける。

 

 黒は自陣の黒枡が空所になっていて、ビショップもd5のポーンにより動きを邪魔されている。白は十分勝つ可能性がある。

 逆に白が黒枡ビショップをナイトと交換し、ナイト対黒枡ビショップの収局に至れば、黒はほとんど常に大丈夫である。

 

 ここではビショップが黒陣の黒枡の空所を補強し、d5のポーンによって動きを妨げられていない。白の優勢は微細で、勝ちには至りそうもない。

(この章続く)

2013年05月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

西村裕之氏の棋譜

 昔GM Yasser Seirawan の発行する「Inside Chess」という雑誌がありました。その1998年3月号の「Tacics, Tactics, and More Tactics」by IM Nikolay Minev という連載講座の「The Spirit of the Bayonet」 に西村裕之氏の試合が模範局として掲載されたことがありました。

2013年05月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

[復刻版]実戦に役立つエンディング(24)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合

 白のポーンが連結していてその内の一つがパスポーンの場合は白の勝つ可能性は非常に大きい。黒の受けの可能性は限られ、引き分けが望めるのは白のポーンがあまり進んでいない場合か黒キングが異例の好位置にいる場合だけである。以降では局面を評価する要素について説明していく。

 まずポーンがa筋とb筋にある場合から考えてみる。それと同時にポーンがどのくらい進んでいるかも考慮する。これにより全ての型が尽くせる。

 図24

 図24はこの型のエンディングの基本である。どちらの手番でも結果は同じなのでここでは手順が少し難しくなるように黒の手番として考える。

1…Kc5 2.Kd3 Kd5 3.Ke3 Ke5 4.Kf3!

 ここで分かるように連結パスポーンの大きな利点は白キングが近くにいる必要がないことと敵キングの動きを厳しく制限することである。この例では黒キングは b5-b8-e8-e5 の正方形から出るわけにはいかない。もし出れば白のbポーンがクイーンに昇格してしまう。つまり黒は 4…Kf5 とは指せず見合いを放棄しなければならない。

4…Kd5 5.Kf4 Kd6 6.Ke4

 6.Kf5 は 6…Kd5 とされてまた4段目に戻らなければならないので何もならない。

6…Ke6 7.Kd4 Kd6 8.Kc4 Kc7

 このように黒は白に5段目を譲ることを余儀なくされた。しかし黒にはまだいろいろな抵抗手段がある。

9.Kc5

 9.Kd5 Kb6 10.Kd6 Kb7 11.Kc5 の方がもっと簡単な勝ち方である。しかし一、二の参考になる点を示すために長い手順の方を取る。

9…Kb7 10.Kd5!

 10.b6? は 10…Ka6! 11.Kc6 でステイルメイトになってしまう。10.Kd6 は 10…Kb6 11.Kd7 Kb7 で黒キングが見合いを保つ。

10…Kc7 11.Ke6 Kb6

 11…Kb7 は 12.Kd7 Kb6 12.Kc8 で白の勝ちである。

12.Kd6 Kb7 13.Kc5(d7) で白の簡単な勝ち

 もし図24の駒配置を1段上に上げれば(白のポーンがa5とb6など)もはや白の勝ちはない。白キングはc6に行けるが既に見たようにステイルメイトになるのでbポーンを突くことができない。同様にさらに1段上げても(白のポーンがa6とb7など)明らかに黒キングがb8とc7から追われないので引き分けである。

 図24の駒配置を1段下に下げても(白のポーンがa3とb4など)まだ白の勝ちであるが、2段下げると(白のポーンがa2とb3など)状況が変わってくる。白番ならば 1.Kc2 Kc5 2.Kd3! Kb4 3.Kd4 Kb5 4.Kc3! Kc5 5.b4+ で勝つ。しかし黒番ならば 1…Kc3 2.Kd1 Kb2! と白ポーンに逆襲して白がステイルメイトを選ばなければならないので引き分けになる。

(この節続く)

2013年05月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(197)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

白枡ビショップ同士の交換

 慣習的にはこの交換は黒が有利とされてきた。それは白枡の「不良」ビショップがなくなり、不良ビショップ対優良ナイトのシナリオになる可能性を避けられるからというものである。しかし物事はそう単純ではない。なぜならどの交換でも黒陣の機動性が減少し、好まない収局に近づくからである。また、このビショップは実際にはそれほど悪くない。つまり黒は白のd4の地点の支配を弱める釘付けの …Bg4 で反撃を図ることができるからである。だから一般に白は白枡ビショップ同士の交換は歓迎である。シュバが言ったように、中盤戦ではビショップに優良不良はなく、ただ良い位置にいるか悪い位置にいるかだけである。

(この章続く)

2013年05月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(23)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンでない場合(続き)

 白の2ポーンが二重ポーンになっている場合は、後ろのポーンに動く余裕がある時だけ白に勝つ可能性がある。面白い図23を考えてみる。

 図23

 黒キングの方が白キングよりはるかに活動的なのでちょっと見たところでは白が勝てそうにないように見える。しかしf3のポーンが急所の場面で決定的な役割を果たす。巧妙な勝ちの手順は次のとおりである。

1.Kf5!

 後ろのポーンがf3でなくf2だったら白は何の問題もなく 1.Kg5 Ke5 2.f3 ですぐに勝てる。しかしこの局面では 1.Kg5 は 1…Ke5 2.f4+ Ke6 3.f5+ Ke5 で引き分けにしかならない。1.Kg4 も 1…Ke6 2.Kg5 Ke5 で手詰まりである。白はまずポーンをf4に進めて黒キングがe5の地点に来れないようにしなければならない。

1…Kd6

 白の狙いは 2.f4 で、その後キングがh5からh6へ侵入することであった。例えば 1…Kd4 ならば 2.f4 Kd5 3.Kg4!(3.Kg5 は 3…Ke6! で白が手詰まりになる)Kd6 4.Kh5 Ke6 5.Kg5 から 6.Kh6 で白が勝つ。それで黒キングはこの侵入を防ぐために後ろに下がる。

2.f4 Kd7 3.Kg4!

 ここでも 3.Kg5? は 3…Ke6! で引き分けになる。

3…Ke8 4.Kh5

 後で分かるが 4.Kg5 は 4…Kf8 で白が手詰まりになる。

4…Kf8 5.Kg5

 手詰まりに置かれたのは黒で、白にいずれの側からの進入を許すしかない。興味深いことに全体の配置が一段下だったら黒は 5…Kf8! で白キングがどちらへ行くかを見定めることができて引き分けにできた。しかし本譜の局面では黒キングにはこの余裕がない。

5…Kg8

 5…Ke8 6.Kh6 Kf8 7.Kh7 は白が楽に勝つ。

6.Kf5 Kh7

 6…Kf8 はもう間に合わず 7.Ke5 Ke8 8.Kd6 Kd8 9.f5!(勝利の手待ち)Ke8 10.Kc7 で白が勝つ、。

7.Ke4!

 白はまだ慎重に指さなければならない。7.Ke5 は 7…Kg6! で黒に引き分けにされてしまう。白は黒の手番でこの局面を迎えたいのである。

7…Kh6 8.Kd5 Kg6 9.Ke5 Kh5 10.Kd6 Kh6 11.Ke7 Kg6 12.f5+ で白の勝ち

 妙手と美の兼ね備わったスタディであった。

(この節続く)

2013年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

ポルガーの定跡指南(78)

「Chess Life」2005年4月号(1/4)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ブダペスト・ファヤロビッツ(A51)

 ブダペスト・ファヤロビッツはグランドマスターの間ではまれにしか用いられない布局だが、チェスクラブでは非常に人気のある布局になっている。驚いたことに最近このギャンビット戦法についての本が複数出版された。

 1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4 で始まるブダペスト・ギャンビットはハンガリーが発祥だが、3…Ne4 戦法はドイツ生まれである。この布局の創始者はライプツィヒのドイツ人S.ファヤロビッツである。昔はタルタコワとリヒターがかなりよく指していた。米国ではアーサー・ビズガイアーがときどきこれで相手を驚かせていた。最近ではGMのアルフォンソ・ロメロ、イアン・ロジャーズ、アロンソ・サパタ、レフ・グトマンらが時おり用いている。

白の基本的な作戦は何か

 白は3手目でもうポーン得になる。黒はポーンの取り返しを急がないことがよくある。白はポーンにしがみつくか、ポーンを返してわずかだが長期にわたる優勢で満足するかの、二つの作戦を選ぶことができる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は長期にわたることは承知で2手目にポーンを犠牲にする。黒は多くの戦型でe5のポーンを取り返そうとせず、…d7-d6 と突いてそのポーンと交換しようとする。黒の望みは迅速な展開と、中央で白に圧力をかけ、場合によってはどちらかの翼でも圧力をかけることである。

それで評決はどうなっているか

 白は用心深く指せばこのギャンビットについてあまり心配する必要はない。黒の希望は白がこのギャンビットの危険性をみくびってポーン得に頑固にしがみつくことである。

 ブダペスト・ファヤロビッツは次の手順で始まる。

1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ne4

 もともとブダペスト・ギャンビットは 3…Ng4 だけが指されていた。しかしこの10年ほどでファヤロビッツはブダペスト・ギャンビットの単なる傍流手順ではなくなった。3…Ne4 のあと白には数多くの指し方がある。それらを次の3種類に分類した。

 A)あまり指されない手順
 B)4.Nf3
 C)4.Nd2

******************************

2013年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フランス防御の完全理解(196)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

黒枡ビショップ同士の交換

 

 この着想は第2章の議論ですでに見ている。白はビショップをg5の地点に出し、そのあとh4からg3の地点に引いて、d6にいる黒の黒枡ビショップと対抗する。白はd4の地点の支配を争いf2の地点を攻撃することもできる黒駒の一つを交換により盤上から消去する。また、h2の地点への攻撃の可能性からも安全にする。

(この章続く)

2013年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(22)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

B 孤立ポーンがパスポーンでない場合

 この型の局面は防御側が引き分けにできる可能性が非常に大きくなる。攻撃側のポーンに手待ちの余裕がない場合は特にそうである。勝敗を分けるのはキングの配置と見合いが取れるかどうかである。図22で考えてみよう。

 図22

 これは一つの典型的な局面である。ちょっと見ただけでは白に勝ちがあるのかどうか判断するのは難しくて、十分な分析が必要である。一般原則としては防御側は白ポーンの自由をできるだけ制限して手待ちの余裕をなくさせるようにしなければならない。一方攻撃側はこの自由を保ったままできるだけ前に自分のキングを進めるようにしなければならない。これらの要点を頭に入れておけば以下の手順は容易に理解できるであろう。まず最も簡単な場合として黒の手番から始める。

1…e5! 2.f4

 キングが動いても 2.Ke4 Ke6 又は 2.Kd2 Ke6 3.Kc3 Kd5 のようにうまくいかない。本譜の手は唯一の勝つ可能性のある手である。

2…Kf5

 黒が引き分けるにはこの手しかない。2…exf4+ 3.Kxf4 Ke6 4.Ke4 Kd6 5.Kd4! は白の勝ちである。本譜の手の後は 3.fxe5 Kxe5 で明らかな引き分けである。

 この簡単な手順のほかに黒には次のように別の引き分けの手がある。ただし正確な手順が要求される。

1…Ke5

 ただし 1…Kf5 はだめで 2.d4 Kg6 3.Kf4 Kf6 4.Ke4 の後 5.Ke5 で白が勝つ。この局面は後で出てくる。

2.Ke2

 2.d4+ Kd5 又は 2.f4+ Kf5 の後黒は 3…e5 を狙う。もし白が 3.f4(又は d4)と指せば黒が最初に 1…e5 と指した場合の対称的な形になる。

2…Kf4

 キングが他の地点に動いても引き分けであるがこの手が一番参考になる。

3.d4 Kg5!

 今度は絶対の手である。3…Kf5? はこれまで見たように 4.Ke3 で白の勝ちである。黒は白が Ke3 と指した時 …Kf5 と指せる状態でなければならない。白はこれ以上どうすることもできないので引き分けになる。

 図22に戻って白の手番ならば次のような手順で勝てる。

1.Ke4!

 キングをできるだけ前に進ませるという先ほどの原則に従った手である。この手しか勝ちはない。1.Kf4? は 1…e5+ 2.Kg4 Kg6、1.f4 は 1…Kf5 2.Kf3 e5、さらに 1.d4 は 1…Kf5 2.Kd3 Kf4 3.Ke2 Kg5! でいずれも引き分けになる。

1…Kf7

 最も可能性のある手。1…e5 には 2.f4!、1…Ke7 には 2.Ke5 Kd7 3.d4 Ke7 4.f4 Kd7 5.d5(又は 4…Kf7 5.f5)で白が楽に勝つ。

2.Ke5 Ke7 3.f4 Kd7

 3…Kf7 は 4.f5 ですぐ負ける。

4.Kf6!

 4.d4? は 4…Ke7! で引き分けになることは読者自身で確かめられたい。

4…Kd6 5.d4

 見合いを取り勝ちも確定する。5.Kf7 も可能で 5…e5 6.f5 で勝つ。

5…Kd7 6.Kf7 Kd6 7.Ke8! Kc6 8.Ke7 Kd5 9.Kd7 Kxd4 10.Kxe6 で白の勝ち

 注意を要するのは白が勝てたのは 5.d4 と指す余裕があったからである。その証拠に白の6手目の局面で白の手番だとすると最善を尽くしても引き分けにしかならない。このことをもっと詳しく調べてみる。

 白が勝つためには黒キングがd7にいる時に本譜のように白キングはf7に行って見合いを取らなければならない。他の対応枡は白のf6とf8に対して黒のd6とd8である。白キングがg筋にいる場合g8とg7に対応する黒の枡はe8とe7である。g6はどうであろうか。黒のe6の枡は自分のポーンがいるので遠方見合いのc6の枡だけが対応する。白キングがg6に行くとすぐに黒キングはこのc6に行かなければならない。

 以上のことから手順は次のようになる。

1.Kf6 Kd6 2.Kg7 Kc7!

 2…Ke7? は誤りで 3.Kg6! Kd6 4.Kf6 Kd7 5.Kf7 で白が勝つ。

3.Kg6 Kc6! 4.Kf7 Kd7 5.Kg8 Kc8!

 ここでも唯一の手である。5…Ke8 は 6.Kg7 Ke7 7.Kg6!、5…Kc6 は 6.Kf8 Kd6 7.Ke8 で黒が負ける。

6.d5

 他に適切な手がない。

6…Kd7!

 6…exd5? は誤りで 7.f5 で白がチェックでクイーンを作れる。

7.Kg7

 7.dxe6+ と取るのは 7…Kxe6 から 8…Kf5 で黒は問題ない。

7…exd5

 これで両者のポーンが共にクイーンに昇格する。

(この節続く)

2013年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(195)

第9章 孤立dポーン中原(続き)

d4の要所

 

 孤立dポーンの局面では戦いの焦点は孤立ポーンの直前の地点である。通常は白はナイトをd4の地点に据えてポーンをせき止めると共に、自陣の最弱点であるf2の地点に対する黒の攻撃の可能性を減少させようとする。典型的な白の捌きは Nb1-d2-b3-d4 で、たぶん c3 突きがこれに伴う。

(この章続く)

2013年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(21)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 本項の最後に同種のエンディングをもう一つ見てみる。

 図21

 パスポーンがルーク筋にあることとこのポーンの左側でキングが活動する余地がないために白の課題はことのほか難しくなっている。白の唯一の希望は右側から攻撃することだが黒キングの逆襲には絶えず気を配らなければならない。例えば単刀直入に 1.Kc3 Ka4 2.Kd3 と指すと黒は 2…Kb4(2…Ka3 は誤りで 3.Ke4 Kxa2 4.Kd5 で白が簡単に勝つ)で白の片方のポーンを取って明らかな引き分けになる。ここでも深い分析が必要である。

 白が勝つためには自分のキングがd5の地点に行く間に、黒にaポーンを取らせずに、そして …Kb4 でポーンを保護する態勢にさせないようにしなければならない。黒が …Kb4 と指した時白は Kd3 と指せる態勢になければならない。そうなった時黒はツークツワンクの状態で、白の Ke4-d5 を防ぐことができない。だから最初の対応枡の組は白のd3と黒のb4である。

 この作業を続けてみる。黒キングがa3にいてa2のポーンを取ろうとしている時白は Kd5 で応えなければならない。だから白のe4と黒のa3が対応枡となる。従って黒のa4(a3とb4に行ける)と白のe3(e4とd3に行ける)が対応枡、黒のa5(a4とb4に行ける)と白のd2(d3とe3に行ける)が対応枡となる。

 ここまでが最も難しい部分であった。残っている作業は白キングが注意深くd2に行くことで、そうなれば黒は白キングがd5に到達することを防げない。念のために言うと黒キングがa6又はb6にいる時白キングはc1、c2又はc3のどこにいても良い。その位置ならば …Ka5 に対して Kd2 と応じることができる。

 直前に述べたことから黒の手番ならば早く負けになることは明らかである。すなわち 1…Kb6(又は a6)に対して白はすぐに 2.Kc3(又は c2)Ka5 3.Kd2! と指せる。白の手番ならばことはもっと複雑であるが次のように強制的に勝つ手順がある。

1.Ka3!

 勝つにはこの手に限る。他の手だと黒は 1…Ka4 と指す。白キングは関連枡のe3から遠過ぎて間に合わない。白は本譜の手で1手かせぐことができる。

1…Kb6 2.Kb2 Ka5

 最善の手である。他の手では白は 3.Kc3 で簡単に勝つ。黒キングが中央方面に行っても何もならないことは言うまでもない。

3.Kb3!

 また手をかせぐことができる。

3…Kb6 4.Kc3(又は c2)Ka5

 4…Ka6 ならば白は Kc2(c3)-d3-e4-d5 で勝つ。

5.Kd2!

 勝ちを決定付ける手。クリングによって初めて発見された。しかし対応枡の理論を用いれば簡単に分かる。

5…Ka4 6.Ke3! Kb4 7.Kd3

 白は目的を達成した。以下は 7…Ka3 8.Ke4 Kxa2 9.Kd5 又は 8…Ka4 9.Kd5 Kb4 10.a3+ で簡単である。

 このように一見複雑そうな局面でも対応枡を用いると楽に理解できる例は数多くある。これから先の局面でも対応枡の重要性にまだまだ出会える。

(この節続く)

2013年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(194)

第9章 孤立dポーン中原

 

概説

 孤立dポーンは多くの布局システムにおいてごく普通に現れる。それらのすべてで孤立dポーンに対して指す側は駒交換により収局に持ち込もうとし、孤立dポーンの側は争点を維持して孤立dポーンにより中原をより多く支配しているために攻撃の機会を作り出せるか、できるだけ有利な状況でdポーンを交換することに期待をかける。

 孤立dポーンの局面はクイーン翼ギャンビット準タラシュ、クイーン翼ギャンビット受諾、ニムゾインディアン、カロカン・パノフ攻撃、それにc3シチリアのような布局から生じるのが最も一般的である。これらのシステムすべてで孤立dポーンを持つのは白である。収局は白にとって気が進まないことは疑いないが、中盤戦がその前にあり、キング翼と中央での白の動的な可能性で陣形の弱点が十分適切に補われていることが実戦で証明されている。この戦略が挑戦者決定番勝負と世界選手権戦でカームスキーによって実証された。彼は孤立dポーンの威力を用いて d4-d5 突きで中央を突破してショートとカルポフを粉砕した。

 フランス防御では孤立dポーンの局面はタラシュ戦法の 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5 exd5 という手順からもっともよく生じる。この戦法を指さない選手には(そして指す選手にも!)これらのシステムは黒にほとんど勝つ可能性をもたらさない難しい防御と見られがちである。白で同じ孤立dポーンが主導権を得るために戦えるのに、なぜ黒ではちょうど同じことにならないのだろうか。

 まず第一に心理的な差がある。黒に孤立dポーンがあると、防御側でそのため劣勢の収局に向かって当然と思われる。差があるといっても1手の違いでしかないことは覚えておかなければならない。第二にもっと重要なことだが、陣形の違いがある。上記の白に孤立dポーンがある最も普通の局面では、黒陣のe6にポーンがありc8の白枡ビショップが閉じ込められている。これは黒が …Bg4 でf3のナイトを釘付けにして白のdポーンをもっともろくすることができないことを意味している。また、一般的な意味でc8のビショップは「不良」で、…b6 と …Bb7 で展開しようとすることは危険をはらむことがある。特に黒がその作戦を実現する前に白が d5 突きで中央をばらばらにするときはそうである。

 対照的にフランス防御で黒に孤立dポーンがあるときは、白にc1のビショップの利きをさえぎるe3のポーンがない。これはこのビショップが斜筋を自由に動け、f6に黒ナイトがあるとしてこのビショップがg5に展開して、d5のポーンを守っているこのナイトを攻撃できることを意味している。だから黒の中原は白の孤立dポーンに対して同様の局面でできるよりも、もっと直接的で厳しい制約を受けていることを意味している。

 しかし黒は何もかも悲観的になることはない。フランス防御版の孤立dポーンで白にe3ポーンがないことは、黒駒がf4の地点に行け、白陣の「軟らかな下腹部」にあたるf2のポーンはもっと攻撃にさらされやすくなっている。

 白はフランス防御交換戦法の 1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.c4 で同じ孤立dポーンの陣形を指すことを選ぶことができる。しかしフランス防御タラシュ戦法の1手先行(白なので)であるけれども、黒には …Nd7 とは対照的にもっと活動的な …Nc6 を指す選択肢がある。そして黒は白がキング翼ビショップを展開させる前に …dxc4 を遅らせれば、ペトロフ防御(例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Be7 7.O-O Nc6 8.c4 Nf6)およびクイーン翼ギャンビット受諾(1.d4 d5 2.c4 dxc4 3.e3 e5 4.Bxc4 exd4 5.exd4)の手順よりも1手得になる。分かりやすくするために本章では黒が孤立dポーンを持って指すことに統一する。

(この章続く)

2013年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (20)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 ルーク・ポーンの場合は白の勝つ可能性は大幅に減ってしまう。しかし意外なことに今回の駒配置の場合はそれが当てはまらない。図20を見てみよう。

 図20
ファールニ対アラピン

 この局面は図17の駒配置を1列左へ移動し白がパスポーンを進めた局面と考えることができる。この局面で黒番なら白の勝ちは容易だが、白の手番ならばどう指したら良いだろうか。図17の時と同じ手順ではうまく行かない。つまり 1.Kd5 Kc8 2.c7? Kxc7 3.Kc5 Kb7 も 2.Kd6 Kd8 3.c7+ Kc8 も黒が引き分けにできる。だから単純な手段では勝てず、もっと深く考察しなければならない。黒の手番ならば白が勝つのだから、手を渡して同じ局面に持って行けないだろうか。

 ここでちょっと対応枡の理論を用いて考えてみよう。黒は白の Kc5 には …Kc7、Kd6 には …Kd8 と応じなければならないからこの二組が対応枡である。白のd5に対応する黒の枡はどこだろうか。この枡から白キングはc5とd6に行けるので黒キングは対応枡のc7とd8に行けなければならない。c8が唯一の枡でありこれがまた対応枡になる。

 これを続けて行くと白のc4(d5とc5に行ける)は黒のb8とd8(c8とc7に行ける)に対応していることが分かる。このように二つの枡がたった一つの枡に対応していることもあり得る。それでは白のd4の枡の場合はどうなるだろうか。この枡からはd5とc5に行けるので黒の対応枡はb8とd8である。

 このような事前の考察を行なって我々の課題はもう解決したも同然である。白が Kc4 と指し黒が対応枡のうちb8を選んだとしよう。そこで白キングはd4へ行き、黒に対応枡のb8かd8に行かなければならないようにする。しかし黒キングは既にb8にいる。b8からd8へ二枡行くことは当然できない。だから黒は対応していない枡へ行かなければならず負けてしまう。いよいよ具体的な手順を見てみよう。

1.Kd5 Kc8 2.Kc4

 ここはc4でもd4でも関係ない。どちらでも同じ結果になる。

2…Kd8

 2…Kb8 でも同じである。

3.Kd4! Kc8

 3…Kc7 なら 4.Kc5 でもっと早く白が勝つ。

4.Kd5! Kc7 5.Kc5

 これで図20の局面で黒の手番になった。5…Kd8 6.Kd6 Kc8 7.c7 Kb7 8.Kd7 Ka7 9.Kc6(9.c8=Q はステイルメイトになってしまうので要注意)で白はあと2手で詰みにできる。

(この節続く)

2013年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(316)

「Chess Life」2013年4月号(4/11)

******************************

不退転のグランドマスター(続き)

お気に入りのオリンピアード

 イスタンブールでの隔年開催のオリンピアードはナカムラの4回目の出場だった。これまでにトリノ、ドレスデンそれにハンティ・マンシースクで対局していて「お気に入りに近い」と言っている。「ちょっと古参になってきたかな」と冗談を飛ばした。

 初めての眼鏡をかけているさまは老練とはいかないまでも少なくともいくらかプロらしく見えた。弱い近視なので本当は必要でないが対局ではしばしばかけている。

 イスタンブールでは大体は筋書きどおりだった。負け犬の米国チームは早々とつまづいたが、「巨悪のロシア」(ナカムラが対局前日の夜にこうツイートした)に意地の勝利をあげて巻き返しメダル争いの有力候補になった。彼がクラムニクに珍しい下位昇格で勝った重要な試合はこの年一番の見せ場だった(後出の「2012年ナカムラの最高の試合」を参照)。

 米国の金メダルの期待は第10回戦で中国に負けて消えた。GMアレクサンドル・オニシュクが中国のGMリーレン・ディンにルークとポーンの収局で精彩を欠いて引き分けることができなかったあとまもなく、ナカムラはツイッターに次のようなことを書いた。

Hikaru Nakamura @GMHikaru 9月7日
チェスのチーム戦の対局でむごくて過酷な現実はチームメートと同じ程度にしかならないということだ。

 タイミングを考えればこのコメントはツイッターでのファンとオンラインチェスの掲示板でオニシュクを少し揶揄(やゆ)したものと広く受け止められた。オニシュクは既に敗戦にしょげ返っていて、「選手としてのチェス人生で最悪の日」と呼んでいた。ナカムラはこのツイートはチームメイトに対するものでなく一般的な観察だと主張した。

 「たぶん大会の1週間前や後とは違うのだから書くときにもうちょっとよく考えてみるべきだった。・・・確かに深読みすれば人がそう思ってしまうのはよく分かる。しかしそれが自分の意図ではなかった。」

 彼は急いでオニシュクに大きな敬意を抱いていることを付け加え、チェスのプロとしてオニシュクはいずれにしてもツイッターの書き込みに注意を払わないだろうと言った。

 オニシュクはテキサス工科大学[訳注 チェスのコーチをしている]のオフィスでコメントを求められて「個人攻撃とは全然考えなかった。あの夜はヒカルからも他の誰からも何のコメントもなかったので気持ち悪かったのが真相だ」と言った。彼は大まかに言ってイスタンブールでのナカムラが言うところの前向きなチームの宥和を共有していて、何も悪感情を持っていないと言った。

 ナカムラはGMワン・ハオに引き分けて8戦して6点になり第1席の個人金メダル争いの有力候補に躍り出た。しかし最終戦でラドスラフ・ボイタシェクに黒で勝たなければならなかった。ナカムラは激しいクイーン翼ギャンビット受諾を採用したがボイタシェクはしっかり局面を支配し続け快勝した(後出の「2012年ナカムラの最悪の試合」を参照)。

 皮肉な話だが10月にナカムラが説明してくれたように、引き分けでは駄目だったけれどもポーランド相手の最終戦で対局していなかったら彼が金メダルを取っていた。米国はチームとしてメダル獲得に非常に近かったので、もちろんそんなことは現実には話しにならない。引き合わない受賞になることは言うまでもない。第1席のほとんどの選手よりも対局数が少ないことになる(8局)。(ちなみに金メダルと銀メダルを獲得したアロニアンとボイタシェクはそれぞれ10局と11局を指した。)

 第2席のカームスキーは何とか勝ち(それで金メダルを得た)、第3席のオニシュクは悲劇的な敗戦から立ち直って引き分けた。そして勝敗はレイ・ロブソンの結果にかかった。チームメイトが心配そうに見守る中レイは苦労の末に勝ち米国が5位で終わることができた。

 米国選手権の最中の5月にナカムラはオリンピアードの最後の席にロブソンを入れるために米国チェス連盟により用いられた選考基準に公に疑問を呈し、結果に不満であることを示唆していた。しかしイスタンブール後レイが立派に指したことを認めた。

Hikaru Nakamura @GMHikaru 9月9日
自分がチームにオリンピアードを切り抜けさせた。そして今日チームが自分をそうした。今日ロブソンが勝ったのは我々の将来にとって良い兆候だ。

******************************

(この号続く)

2013年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(193)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

12…dxc4!

 この手が急所である。d5の地点の支配を譲り白のポーンの形を直させるのは少しおかしく思われる。しかしb3のポーンの消去は極めて重要である。なぜならもし黒が自動的に 12…O-O? と指すと 13.c5 Be7 14.b4! のあと bxa6 から b5 の狙いがあり、白のパスポーンの進攻により黒がクイーン翼でつぶされるからである。b3のポーンはd5のポーンよりも重要である!実戦で白は同じようにクイーン翼でポーンを進攻させたが、d5にポーンがないおかげで黒はその地点を自分の駒のために使うことができた。

13.bxc4 O-O 14.c5?!

 白はすでに苦戦に陥っていたが、d5の地点を放棄するこの手で負けになった。

14…Be7 15.Re1 Be6 16.Qb1 Bd5 17.Ba5 Qc8 18.bxa6 Bd8 19.Bxd8 Rxd8 20.a7 Nc6 21.Qb6 Nd7 0-1

(この章終わり)

2013年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング(19)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 図18のような局面はすべて白の勝ちと思われるかもしれない。しかし驚くべき例外がある。それは図19のように黒と白のポーンがビショップ列にある場合である。

 図19

 ちょっとみただけでは何も変わりないように思われる。例えば 1.e4 Ke6 2.Kf4 Kf6 3.e5+ Ke7 4.Kf5 Kf7 5.e6+ 又は 1…Kd4 2.Kf4 Kxc4 3.e5 Kd5 4.Kf5 c4 5.e6 c3 6.e7 c2 7.e8=Q 8.c1=Q 8.Qd8+ の後 9.Qc7+ でこれまで見てきたように白が勝つ。しかし実際には以下のようにわずかな違いがある。

1.e4 Kd4! 2.Kf4 Kxc4 3.e5 Kb3!!

 この手で黒は白キングが遠く離れている時そのクイーンはビショップ列の7段目のポーンに勝つことができないという特異な事実を利用している。ただし 3…Kd3 はだめで 4.e6 c4 5.e7 c3 6.e8=Q c2 7.Qe3+ で白が勝つ。

4.e6 c4 5.e7 c3 6.e8=Q c2

 これで白は黒キングがb2の地点に行くことを阻止できないので引き分けである。この局面については後のクイーン・エンディングの章でもっと詳しく述べる。それでも一応ここで言及しておく価値はあるだろう。

 図18の局面の駒配置が1段下だったら黒はいつでも白ポーンを攻撃できるので引き分けであることは明らかである。しかし驚くべきことに、2段上に上げて黒ポーンが原位置にいるようにすると白の勝つ可能性はやはり制限を受けてしまう。黒キングは白ポーンの前に立ちはだかり通常はステイルメイトで終わる。しかしここでは指摘するに留めておく。

 最後に図17から図19の局面で黒の手番ならば白が簡単に勝つことを述べておく。この場合白ポーンは攻撃を受けることがないので白は自分のパスポーンを進めるだけで良い。ただし唯一の例外はやはり黒ポーンが原位置にある場合である。

(この節続く)

2013年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(192)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 この手の主眼点はクイーン翼を広げるとともに、6…cxd4 または 6…Nf6 7.O-O Be7 8.dxc5 から生じる孤立dポーンの局面を避けることにある。しかし黒はまだ駒を動員していないので、ここからの数手は厳しい戦いになる。黒がクイーン翼を安定させ局面を閉鎖的に保とうとするのに対し、白は展開の優位を生かしてたぶん駒を犠牲にしても黒のクイーン翼のポーン陣形を破壊しようとする。

7.O-O Bd6 8.b3 b5!?

 これが最も意欲的な手である。代わりに1994年ビールでのバールス対ランデンベルゲ戦では 8…cxb3 で争点を解消した。そして 9.axb3 Ne7 10.Re1 Nbc6 11.c3!(1986年ソ連選手権戦でのツェシュコフスキー対M.グレビッチ戦では 11.Nf1 O-O 12.Ne3 Bb4! でクイーンのためにd6の地点が空けられ、13.Bd2 Bxd2 14.Qxd2 Qd6 15.c4 Bd7 で互角になった)11…O-O 12.Nf1 Be6 13.Ng3 Qd7 14.Ng5 で白が少し優勢になった。ポーン陣形はc3シチリア防御の1戦型の 1.e4 c5 2.c3 e6 3.d4 d5 4.exd5 exd5 5.Nf3 Nc6 6.Be3 c4 7.b3 cxb3 8.axb3 とほぼ同じだが、ここでは白が Be3 に1手費やす必要がなかったし、黒の …a6 は特に役に立つ手ではない。

9.a4?!

 この手のあと白はいくらか疑問に思える捨て駒をすることになる。代わりに白はもっと堅実に指すべきだった。例えば1994年モスクワ・オリンピアードでのイワンチュク対P.ニコリッチ戦では 9.c3 Ne7 10.a4 Bb7 11.Ba3 Bxa3(11…O-O 12.Qc2 Ng6 13.Rfe1 Re8 14.Qb2 Bxa3 15.Qxa3 Nd7 16.Bf1 Qc7 17.axb5 axb5 18.Qb4 +/= チャンドラー対ドルマトフ、ミンスク、1982年)12.Rxa3 Nd7 13.axb5 axb5 14.Rxa8 Bxa8 15.bxc4 bxc4 16.Qa1 O-O 17.Bd1 Bc6 18.Re1 Nc8 19.Qa3 +/= と進んだ。

9…c3!

 9…Bb7?! は不注意な手で、1990年ニューヨークでのゲレル対ドレエフ戦では白が次のように痛烈な捨て駒を放った。10.bxc4 bxc4 11.Bxc4! dxc4 12.Nxc4 Be7 13.Re1 Qc7 14.Rb1(ここで 9…Bb7 がなぜひどかったのかが分かる。白は 15.Rxb7 Qxb7 16.Nd6+ の狙いで最後の駒を攻撃に投入し、黒はそのためにキャッスリングでキングを安全にすることが絶対できなくなった)14…Qxc4 15.Rxb7 Nc6 16.Nd2! Qxd4 17.Bb2 白の攻撃がすさまじい。本譜の実戦例では白の捨て駒はずっと効果が劣った。白は駒の代わりに3ポーンを得たけれども、黒はキャッスリングを妨げられてもいなければ、駒の展開の完了も妨げられていない。

10.axb5

 10.Nb1? は 10…b4 で白のクイーン翼が埋もれてしまう。

10…cxd2 11.Bxd2 Nf6

 ゲレルはケッキ戦(CSKA対マティンキュラ、1986年)で 11…Bb7? 12.bxa6 Nxa6 13.Bxa6 Rxa6 14.Qe2+ Qe7 のあと 15.Qxa6!! Bxa6 16.Rxa6 という派手な手を炸裂させた。白はクイーンの代わりにルークと2ポーンしか得ていないが、展開で決定的な差をつけている。16…Qc7(16…Qd8!? 17.Rfa1 Ne7 18.Rxd6 Qxd6 19.Ra8+)17.Re1+ Kd7 18.c4 dxc4 19.bxc4 f6 20.c5 Bxc5 21.dxc5 Ne7 22.Nd4 1-0

12.c4

 黒の手番 

(この章続く)

2013年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (18)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 今度は全体の配置を1段下に下げたらどうなるかを見てみよう。

 図18

 この局面もやはり白の勝ちである。しかし今度は自分のポーンに対する黒の逆襲にもっと注意しなければならない。具体的には次のようになる。

1.d4 Kc4

 何の望みもないのは 1…Kd6 2.Ke4 Ke6 3.d5+ Kd7 4.Ke5 Ke7 5.d6+ Kd7 6.Kd5 から 7.Kc5 で白の勝ちである。

2.Ke4 Kxb4 3.d5 Kc5

 黒は白ポーンが先にクイーンに昇格するのを防ぐためにこの不利な地点にキングを置かなければならない。

4.Ke5 b4 5.d6 b3

 5…Kc6 でも 6.Ke6 で同じことである。

6.d7 b2 7.d8=Q b1=Q

 両者同時にクイーンができたが黒クイーンは次の手順で取られてしまう。

8.Qc8+ Kb4 9.Qb7+ で白の勝ち

(この節続く)

2013年05月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(48)

「Chess Life」1992年6月号(1/3)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

今回は両方の側から

 前回(1992年4月号)ではイギリス布局対称戦法の普通は穏やかで戦略的で閉鎖的な主流手順の 1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.Nf3 で白がどのように著しく局面を激しくできるかを示した。白の5手目で他の重要な手は 5.a3 と 5.e3 の2手である。今回は穏やかそうな 5.a3 のあと白がどのように局面を激しくできるかと、5.e3 のあと黒がどのように対称形を避けることができるかとを解説する。

 A)1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.a3

 白はクイーン翼で b2-b4 突きによる長期的で戦略的な進攻を準備している。これが実現したとしても黒には心配すべき具体的な狙いはない。それでも白はクイーン翼で陣地を広げたことになり、閉鎖的で戦略的な布局はそのような長期的な特徴を持つものである。GMのパル・ベンコーとヤセル・セイラワンはこの戦法の中心的な専門家として長い間認められてきた。白にはまだ何も「狙い」がないので黒にはいくつかの適切な応手がある。

5…e6

 ちょうど 5.Nf3 のあとの主手順のようにこの手は20年以上に渡って高い評価を得てきた。黒はキング翼ナイトをe7に展開して …d7-d5 突きを用意し、その間キング翼ビショップの斜筋は開けたままにしておく。他には 5…a6、5…b6、5…d6 それに 5…Rb8 も良い手である。

 白の穏やかで戦略的な作戦はここから 6.Rb1 で続いていく。そのあと定跡では 6…a5 によって白のポーン突きを防ぐのが望ましいと考えられている。しかし白にはもっと野心的な可能性もある。

スミスロフ対ハートストン、ヘースティングズ、1972-73年

6.b4!?

 ちょっと見はこれはほとんど「手拍子」のようである。白はまだ Rb1 を指していないことを忘れているかのようである。しかし黒にとって事は見かけほど簡単でない。

6…Nxb4!

 この「不自然な」取り方だけがうまくいく。6…cxb4!? は劣った手で、7.axb4 と取られてどん欲も辛抱も報われない。

 1)7…Nxb4 8.Ba3 Bxc3(GMロバート・バーンの指摘のように 8…Nc6? は 9.Nb5!、8…Bf8?! は 9.d4 で、もっと悪い)9.dxc3 Nc6 10.h4 Qf6 11.Nf3! Qxc3+ 12.Nd2 f5 13.O-O Nf6 14.Ra2 Qa5 15.Qa1 Qd8 16.e4(ルネ対ユダシン、オステンド、1988年)黒の展開の遅れと黒枡の弱点のために白の攻撃の見通しはきわめて明るい。

 2)7…Nge7 8.b5 Ne5 9.c5 d5 10.cxd6e.p. Qxd6 11.Ba3 Qd8 12.Nh3 O-O 13.O-O Re8 14.Bc5 a6 ここまでは1968年ルガノ・オリンピアードでのA.ガルシア対R.バーン戦である。ここで実戦の 15.d4? の代わりにバーンの推奨する 15.Qb3! なら、展開の優位、クイーン翼での圧力、それに中央列のポーンの多さのために白が明らかに優勢だった。

7.axb4 cxb4 8.d4

 「相対的な節度」はここで白に必要なものである。8.Nb5?! Bxa1 9.Qa4 Bf6! 10.d4 は指しすぎである。それは 10…a6! 11.Nd6+ Kf8 12.Nf3 Be7! 13.Qxb4 a5 14.Qc5 f6! のためで、白には交換損とポーン損の代償が何もない。次のように1981年ボーフムでのロブロン対カバレク戦でその先がさらに示された。15.h4 h5 16.O-O Nh6 17.e4 Nf7 18.e5 Bxd6 19.exd6 b6 20.Qa3 Ba6 21.Nd2 Kg7! 黒が陣容をまとめて39手で勝った。

8…bxc3 9.e3!

 9.Nf3?! は劣った手で、9…Ne7 10.O-O O-O 11.Qb3 d5 12.c5 Nc6 13.Qxc3 Re8 14.Bf4 b5! 15.cxb6e.p. Qxb6 16.e3(16.Rfb1? Nxd4!)16…Bf8(ボボツォフ対ハートストン、ブルニャチカ・バニャ、1972年)となった。黒はきれいなパスaポーン得で、白はその代償が何もない。スミスロフの作戦により白は適切な駒配置を保ったままc3で取り返すことができる。

9…Ne7 10.Ne2 d5 11.cxd5 Nxd5 12.Ba3 Bf8!

 こう指さないと黒はキャッスリングできない。ハートストンは生じる局面を黒がわずかに優勢と評価している。タイマノフは Encyclopedia of Chess Openings A で白に犠牲にしたポーンの代償があると判断している。

13.O-O Bxa3 14.Rxa3 Bd7 15.e4 Ne7 16.Nxc3 O-O 17.Qa1 a5 18.Rb1 Nc6 合意の引き分け

 お互い実力者であることが敵対行為の中止に影響を与えたことは確かである。黒のハートストンは引き分けに満足だった。一方スミスロフはポーンの代わりに何を得ているか確信がなかった。ハートストンはさらに次のような分析を付け加えている。19.Rxb7? は 19…Nb4! で道を踏み外したルークが捕獲されるので悪手であり、19.Rd1 Nb4 20.Qc1!? の形勢は黒が少し良いと形勢不明の中間あたりである。私には白の中央列のポーンが多いことと黒陣の黒枡の弱点とにより白が正当な代償を得ているように思える。しかし黒の18手目のあとの真実に迫る唯一の方法はいく人かの一流選手に実戦で試してもらうことである。

******************************

2013年05月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(191)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

第31局
Kr.ゲオルギエフ対P.ニコリッチ
エレニテ、1993年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 a6 4.Ngf3 c5 5.exd5

 5.dxc5 Bxc5 6.Bd3 については第10章を参照。

5…exd5 6.Be2

 6.dxc5 については次章の「孤立dポーン」を参照。

6…c4

 白の手番 

(この章続く)

2013年05月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (17)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 キング+2ポーン対キング+ポーンの局面はポーン・エンディングの中でも非常に複雑な部類に入る。局面の可能性は多種多様である。全体の理解を得ようとするならば体系的に学ばなければならない。一つの原則はポーンの数の優勢な側は自分のパスポーンが他のポーンから離れていて敵のキングをおびき寄せることができるならば勝つことができるということである。

 もちろん簡単には勝てない局面も多い。我々にとって関心があり以降で採り上げるのはそういう局面である。

 孤立ポーンがパスポーンの場合

 2ポーン対1ポーンのエンディングを白ポーンの配置によって分類する。まず白ポーンが孤立していてその内の一つがパスポーンとなっている場合を調べる。前に述べたように白ポーンがある程度離れていると白が比較的簡単に勝つ。そこでここではポーンが1列だけ離れている場合だけを考える。この場合パスポーンは黒キングを主戦場からあまり遠くへ誘い出すことができない。図17は典型的な局面である。

 図17

 この局面はどちらの手番であろうと白の勝ちである。ここでは白の手番として考える。

1.d5 Kd7

 1…Kc5 は 2.Ke5 Kxb5 3.d6 Kc6 4.Ke6 で白の簡単な勝ちである。

2.Ke5 Ke7 3.d6+ Kd8!

 最も巧妙な受けで、白にはちょっとした問題がある。3…Kd7 だったら 4.Kd5 で勝てるが、本譜の手に対しては 4.Kd5 Kd7 又は 4.Ke6 Ke8 5.d7+ Kd8 でうまくいかない。しかし白はここで初歩のエンディングの一つに誘導することができる。

4.d7!

 これが勝つための最も簡単な手で、ポーンを捨てて見合いを取りその後黒ポーンを取って標準の勝ち方に持ち込むことができる。4.Kd4 Ke8 5.Ke4 Kd8 6.Ke5! というもっと手の込んだ勝ち方もありこれについては後にまた触れる。

4…Kxd7

 4…Ke7 ならば 5.d8=Q+ Kxd8 6.Kd6 で勝てる。

5.Kd5 Kc7 6.Ke6 で白の勝ち

(この節続く)

2013年05月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(190)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白は黒のポーンの猛襲を注意深く押さえ込んで、ここからはe列にルークを重ねてe7の地点に抗しがたい圧力をかける作戦である。そこで黒は紛れを求めようとする。

21…Nf5 22.Rxe8 Qxe8 23.Qxd5 Qe2?

 クナークは 23…Nh4 でも 24.Qe4!(24.Ne5 Rf5 25.Qd7+ Qxd7 26.Nxd7 g4 ∞)24…Qc8 25.Ne5 で白の勝勢であると指摘している。

24.Nxh6! Nxh6

 24…Kxh6 には 25.Qxf7 がある。

25.Qxg5+ Kh8

 25…Kh7 は 26.Qg6+ Kh8 27.Qxh6+ で実戦と同じになる。

26.Qxh6+ Kg8 27.Qg5+ Kh8 28.Qg6 1-0

 例えば 28…Rg7 なら 29.Qh6+ Kg8 30.Qxf4 Qxh5 31.Re1 Rh7?(黒はどのみち3ポーン損である)32.Qf8# で詰みになる。

(この章続く)

2013年05月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (16)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 前回はほんの少数の駒数のポーン・エンディングの中にも単純にはいかないものがあることを示した素晴らしいスタディであった。比較的単純な局面から驚くほど深い着想を秘めた例はまだ数限りなくある。ここではもう一つだけスタディを採り上げる。それはキング+ポーン同士のチェスの局面の中で恐らく最も有名なものである。

 図16
レティ 1922年

 白の手番であるが、クイーンに昇格しようとしている黒ポーンを止めるには少なくとも2手足りないので負けは避けられないように見える。白のポーンは黒キングによって簡単に止められるのでほとんど助けにならないように見える。しかしここでもチェス盤における幾何の原則を用いることにより白キングは奇跡を呼び起こすことができる。

1.Kg7 h4 2.Kf6 Kb6

 黒キングに一手かけさせることにより白は一手稼いだ。2…h3 は 3.Ke7 h2 4.c7 で両方のポーンが同時にクイーンに昇格するので引き分けになる。黒の最初の2手は逆でも良い。1…Kb6 でも 2.Kf6 で次に 3.Kg5 があるので 2…h4 としなければならない。

3.Ke5!

 手順全体の核心の手である。白には次に 4.Kf4 で黒ポーンを捕まえる手があるので黒は以下のように進めるしかない。

3…h3 4.Kd6 h2 5.c7 h1=Q 6.c8=Q

 これで明らかな引き分けである。

 最初の局面で誰がこのような可能性を予想したであろうか。もちろんこれまでの例ですべてが尽くされたわけではない。しかし最も単純なポーン・エンディングにさえ色々な可能性が含まれているということはお分かりになったと思う。後にもっと複雑な局面が単純化されて行く過程に出会うことになる。

(この節終わり)

2013年05月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

ポルガーの定跡指南(77)

「Chess Life」2005年3月号(4/4)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)(続き)

戦型C)1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5 dxe5 5.Nxe5 Nbd7

 私の棋譜データベースによるとこれが最もよく指されている応手である。

6.Nc4

 代わりにナイト同士の交換に応じるのは主導権を得るために戦う希望を捨てることになる。6.Nxd7 Bxd7 のあと黒のビショップがc6に来て好形になる。

 この局面でも黒は黒枡ビショップをどちらに展開させるかを選ぶことができる。

6…e6

 6…g6 は 7.Qe2 で異常に早くて面白い攻撃を許すことになる。狙いは言わずと知れた Nd6# の窒息詰めである。7…Nb6(7…Qc7 は 8.Nb5 から 9.Ncd6+ で黒が苦境に陥ってしまう。7…Nb8 なら白は 8.Qe5 でさらに揺さぶりをかけることができる)8.Qe3 これで黒が守勢に立たされる。

 6…Nb6 は黒が白のナイトを追いかけることになる。白はここで三つの異なる作戦を選択することができる。

 a)白の交換の誘いを無視して、7.b3 か 7.Be2 で展開を続ける。

 b)ティマンは次の試合で独創的な作戦を用いた。7.Qf3 e6 8.b3 Be7 9.Bb2 Nxc4 10.Bxc4 a6 11.a4(将来の …b7-b5 突きを防いだ)11…O-O 12.g4!?(この面白い手は先のオリンピアードでの私のチブルダニゼ戦を強く思い出させる)12…Qc7 13.g5 Ne8 14.Ne4 Bd7 15.a5 Bc6 16.Rg1 Nd6 17.Qc3 Nf5 18.Nf6+ Bxf6 19.gxf6 g6 20.O-O-O Bb5 21.h4 Bxc4 22.Qxc4 Qxa5 23.h5 Rfe8 24.Rh1 Qb4 25.hxg6 fxg6(25…hxg6 26.Rh3)26.f7+ Kxf7 27.Rxh7+ Kg8 28.Rdh1 白が攻め勝った(ティマン対クリストフ、ヘンゲロ、1970年)。もちろんこの手順がすべて必然というわけではない。黒は色々なところで手を改良することができる。しかしそれでも実戦的には白の方が有望である。

 c)交換の誘いを拒否し 7.Ne3 Bd7 8.a4 Bc6 9.Bb5 Rc8 でナイトを逃がす。代わりに黒がb5で駒を交換すれば白はaポーンで取り返してa7のポーンに圧力をかけ隅のルークをすぐに働かせる。10.O-O e6 11.Qe2 Be7 12.a5 Nbd7 13.a6 b6 14.Bxc6 Rxc6 15.Nb5 Qb8 16.b3 O-O 17.Bb2 白が優勢である(プリビル対コバチュ、ジェチーン、1976年)。

 6…a6 は典型的な 7.a4 で応じられて …b7-b5 突きを防がれる。

7.Be2

 最近アーナンドがツェバロ戦(フランス、2003年)で 7.g3 と指したが 7…Be7 8.Bg2 O-O 9.O-O Nb6 10.Ne3 Rb8 11.a4 Nbd5 12.d3 Nxc3 13.bxc3 b6 14.c4 Bb7 で優勢にはならなかった。

 7.b3 次の有名選手同士の試合では白が有利になった。7…Be7 8.Bb2 O-O 9.Qf3 Rb8 10.a4 b6 11.Bd3 Bb7 12.Qh3 a6 13.O-O

 13…Bc6 14.Rfe1 Re8 15.Ne5 Nxe5 16.Rxe5 そして白が果敢に攻めたてた。16…g6(16…Bd6 なら 17.Bxh7+! Nxh7 18.Rh5 Bxg2 19.Kxg2 Qf6 20.Kh1 Qg6 21.d3)17.Bxa6 Qxd2 18.Re2 Qf4 19.Bb5 Bxb5 20.Nxb5 Ng4 21.Rae1 Red8? 22.f3 Bf6 23.Qxg4 Qxg4 24.fxg4 Bxb2 25.c3(ラルセン対ゲレル、コペンハーゲン、1966年)

 本譜の 7.Be2 の局面に戻る。

7…Be7 8.O-O Nb6 9.b3 O-O 10.Bb2 Nbd5 11.Bf3 Nxc3 12.Bxc3 Nd5 13.Bb2 Bf6 14.Ne5 Qc7 15.Re1 Rd8

 この局面は2試合に現れた。前の試合(ケレス対ボボツォフ、タリン、1970年)では白が 16.Qc1 Bd7 17.d4 cxd4 18.Bxd4 Be8 19.c4 Ne7 20.Bc3 と指したが、最近の試合(ズビャーギンツェフ対ボイトキーウィッツ、トリポリ、世界選手権戦、2004年)では白が改良手を出した。

16.Be4 Nf4 17.Qf3 Ng6 18.Bxg6 hxg6 19.d3 Bd7 20.Re3 Rac8 21.Rae1 Be8 22.a4 b6 23.Qh3 Rd5 24.c4 Rd6 25.Rf3 Qd8 26.Re4 Bg5 27.Rg3 Bc6 28.Reg4 Bf6 29.Rf4 Be8 30.Nxg6! fxg6 31.Bxf6 gxf6 32.Rh4 Kf8 33.Rh7 Bf7 34.Qh6+ Ke8 35.Rxf7 Kxf7 36.Qxg6+ Ke7 37.Qh7+ 1-0

結論

 反ナイドルフ/ドラゴンが意表を突く素晴らしい武器であることは確かである。黒がただ何となく展開すると、白は好形に陣容を組んで有望な攻撃の機会を得る。だから黒のためには戦型Aの 5…a6 6.a4 Qc7 を推奨する。

******************************

2013年05月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フランス防御の完全理解(189)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 12.Qxd3 は 12…Na5 で黒ナイトに絶好のc4の拠点ができる。

12…O-O?!

 黒はクイーン翼にキャッスリングしたいが、12…f6 と突くと 13.Nh5 Rg8 14.Bh6! が強手になる。

13.h4 Rae8 14.h5 h6 15.a4!

 両対局者の以前の試合(西ドイツ対東ドイツ、1988年)では Rb1 と …b6 が指されていた同じ局面になった。そして 16.a4 Nd8 17.Ba3 Ne6 18.Bxe7 Qxe7 19.Qxd5 Nf4 20.Qf3 Ne2+ 21.Nxe2 Qxe2 と進んで 22.Qxb7 と取る手がないので白が優勢にならなかった。

15…Kh7?!

 15…Nd8 の方がまだしもだったが、それでも白が優勢である。

16.Ba3 g5?! 17.Rfe1 f5 18.Nf1! f4 19.Nh2 Rf7 20.Ng4 Kg7 21.Re2

 黒の手番 

(この章続く)

2013年05月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (15)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 お互いに相手のポーンを止められない時には非常に面白い状況になる。その場合直前の例で見たようにチェスでは2地点間の最短の道筋は必ずしも直線とは限らないという事実を利用したキングの動きで勝てることが良くある。そこでGMドゥラスのエンディングを見てみよう。

 図15

 ちょっと見たところでは両方のポーンともまだ原位置にあり白キングの位置がわずかに勝っているだけなので互角の局面に思われる。しかし驚くべきことに、白の手番であることとこの最小限の有利が最終的には白に必ず勝ちをもたらす。しかし勝つためには白は極度の正確さが要求される。特にキングの位置には注意が必要である。

1.Kc5!

 明らかに白キングは自分のポーンの前進を助けなければならない。さもないと黒キングによって止められてしまう。しかしどうして白キングはわざわざ黒ポーンが将来クイーンに昇格した時チェックになるような地点に行くのであろうか。以下の手順でその理由が分かる。

a)1…Kg6

 黒はキングで白ポーンを止めようとする。1…g5 と競争するのは次のb)で述べる。

2.b4 Kf7 3.b5 Ke7 4.Kc6!

ここで 1.Kc5! でなければならなかった理由が分かる。4.b6 Kd7 と 4.Kb6 g5 5.Kc7 g4 は引き分けである。

4…Kd8

 要点は黒キングが最下段の不利な位置に置かれたということである。このため後に白クイーンによってチェックされる。

5.Kb7! g5 6.b6 g4 7.Ka7 g3 8.b7 g2 9.b8=Q+ で白の勝ち。

b)1…g5

 今度は敵ポーンの前進を止める代わりに黒が自分のポーンを突き進めてみる。チェックでクイーンに昇格できるかもしれない期待が持てる。しかし白キングの適応能力は次のような巧妙な手順で勝利する。

2.b4 g4 3.Kd4!

 黒ポーンは味方のキングの助けが必要である。これにより白はクイーンができた時にチェックになる地点に黒キングを追いやることができる。3.b5? は 3…g3 で逆に黒の勝ちとなる。

3…Kg5

 3…g3 は 4.Ke3 Kg5 5.b5! で本譜と同じになる。ただし 5.Kf3? は間違いで 5…Kf5 で引き分けになる。

4.b5 g3

 黒が 4…Kf4 で白キングを押さえようとすると白ポーンが先にチェックでクイーンに昇格する。

5.Ke3 Kg4 6.b6 Kh3 7.b7 g2 8.Kf2 Kh2 9.b8=Q+ で白の勝ち。

(この節続く)

2013年05月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(188)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

第30局
ヒクル対ウールマン
ドイツ選手権戦、1991年
交換ビナベル戦法

1.e4 e6 2.Nc3 d5 3.d4 Bb4

 白は交換中原が生じるのを遅らせることにより局面にちょっと多く毒を盛ることができる。本局の進行の他にも危険が待ち受けていることがある。

 a)3…Nf6 4.Bg5 Bb4 5.exd5 exd5(1987年ブダペストでのキンデルマン対M.グレビッチ戦では 5…Qxd5!? 6.Bxf6 gxf6 7.Qd2 Qa5 8.Bd3 c5! と進んで互角だった)6.Qf3! Nbd7 7.a3 Be7 8.Bd3 O-O 9.Nge2 c6(シュミットディール対ドレエフ、フローニンゲン、1991年)10.O-O +/=

 b)3…Nc6 4.Nf3 Nf6 5.exd5(1994年ティルブルフでのヤルタルソン対ローゼンタリス戦では 5.e5 Ne4 6.Bd3 Bb4 7.Bd2 Nxd2 8.Qxd2 f6 9.a3 Bxc3 10.Qxc3 fxe5 11.dxe5 O-O 12.h4 と進んで白が少し優勢だった)5…exd5 6.Bb5 Be7 7.Ne5 Bd7 8.O-O O-O(ロゴフスキー対ボロビコフ、パブログラード、1995年)9.Re1 +/=

4.exd5 exd5 5.Bd3 Ne7

 5…Nc6 は次のように本局と似た展開になる。6.a3! Bxc3+(6…Be7 7.Bf4 a6 8.Nce2 +/= ヤノフスキー対フースター、ドルトムント、1993年、または 6…Bd6!? 7.Nxd5 Bxh2)7.bxc3 Nge7(7…Qf6 8.Qh5!)8.Qf3 Be6 9.Rb1 b6 10.Ne2 Qd7 11.h3 Bf5 12.O-O O-O-O 13.a4 Bxd3 14.Qxd3?! Kb7(14…Na5? 15.Qa6+ Kb8 16.Qxa5)15.c4 dxc4 16.Qxc4 Qd5 =/+ チャンドラー対ハーリー、ウォーリック、1996年

 すぐに 5…Qf6 と出るのは 6.Ne2 c6 7.Bf4! がうまい応手になる。というのは 7…Bxc3+ 8.bxc3 Bf5? なら 9.Be5 Qg6 10.Bxf5 Qxf5 11.Bxg7 となるからである。だから最善手は 5…c6 6.Qf3 Qf6! = かもしれない。

6.Qf3

 6.Qh5 なら黒は次のようにそっぽへ行った白クイーンにつけ込むことができる。6…c5!? 7.dxc5 Nd7!(7…d4 8.a3 Qa5 は 9.axb4 でも 9.Rb1 でも白が優勢である)8.Nge2 Nxc5 9.Bb5+ Bd7 10.O-O O-O 11.Bxd7 Qxd7 12.Bg5 Bxc3 13.Bxe7 Qxe7 14.Nxc3 d4 = グダニスキ対ソチコ、ポーランド、1996年

6…Be6

 ここでも 6…c5!? は考慮に値する。

7.Nge2 Qd7 8.O-O Nbc6

 8…Bf5? は 9.Nxd5! Bxd3 10.Nxb4 Bxe2 11.Qxe2(ただし 11.Qxb7? は 11…Bxf1 12.Qxa8 O-O 13.Kxf1 Qb5+ 14.Kg1 Nbc6 -+ で成立しない)11…a5(11…Qxd4 12.Qb5+)12.Nd3 Qxd4 13.Bf4 +/- という戦術で失敗する。8…c6 はクイーン翼ナイトの展開の一時的な困難を気にしない面白い手である。

9.a3 Bxc3 10.bxc3 Bf5 11.Ng3 Bxd3 12.cxd3

 黒の手番 

(この章続く)

2013年05月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (14)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 この場合もしポーンが相手のキングによって止められてしまうと、白が敵ポーンを有利な条件の下で取れない限り結果は通常は引き分けである。この例として図14を考えてみよう。

 図14 白の手番
デドルレ 1921年

 白が黒ポーンを取るのは簡単である。例えば 1.Kc3 Ke5 2.Kb4 Kd5 3.Kxa4 で何も問題ないように見える。しかし黒にも策があり 1…a3 で引き分けにできる。以下 2.bxa3 なら 2…Ke6 3.Kc4 Kd6、2.b4 なら 2…Ke6 3.Kb3 Kd6 4.Kxa3 Kc6 5.Ka4 Kb6 である。白が勝つためにはこの黒の手を考慮に入れなければならない。そして自分のポーンをできるだけ後ろに置いたままの状態でキングで黒ポーンを取らなければならない。その手順は次のとおりである。

1.Kb1 a3

 最善の受けである。1…Ke5 は 2.Ka2 Kd4 3.Ka3 Kc5 4.Kxa4 Kb6 5.Kb4! で白が簡単に勝つ。

2.b3!

 後で分かるように 2.b4 は引き分けにしかならない。

2…Ke5 3.Ka2 Kd5 4.Kxa3 Kc5 5.Ka4 Kb6 6.Kb4!

 これで白の勝ちである。

 明らかに白ポーンがb4にあったらこの最後の手は指せないところであった。本譜ではおなじみの勝ちの局面になった。

(この項続く)

2013年05月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(187)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 この戦術には誤りがあった。26…Qg6 なら圧力が続いていた。

27.Rxe6! Bxg3 28.Rxe8 Bxf2+ 29.Nxf2 Qxf2+ 30.Kh1 ½-½

 コルチノイは 30…g3? と指すつもりだったのだろう。そしてここで初めて 31.Rxf8+ Kxf8 32.Re8+! Kxe8(32…Kf7 33.Qg1)33.Qe1+ で白の勝ちになることに気がついた。だから引き分けに甘んじなければならなかった。タリは幸運にも難を逃れた。

(この章続く)

2013年05月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (13)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

A ポーンが同じ列にある場合(続き)

 ポーンがルーク筋にある場合は当然勝つ可能性は少なくなる。しかし図13の局面は巧妙で思いがけない手順が存在する。

 図13 白の手番
シュラーゲ対アフーエス、ベルリン、1921年

 この局面は1921年ベルリンでの大会でのシュラーゲ対アフーエス戦に現れた。白の手番で黒は当然ポーンを取られる。しかし白が5手かけて黒ポーンを取る間に黒キングは引き分けにできるc7の地点に到達するので問題ないように見える。本当にこの局面は引き分けの局面なのだろうか。実戦の進行は 1.Ke6 Kc3 2.Kd6? Kd4 3.Kc6 Ke5 4.Kb7 Kd6 5.Kxa7 Kc7 で以下引き分けになった。

 しかし実際には白キングが正しい道筋を選んでいれば勝つことができた。ポーン・エンディングではキングが斜めの道筋を通っても同じ手数で同じ地点に到達し、しかも敵のキングの進路を制限できることがある。白は次のように指すべきであった。

1.Ke6 Kc3 2.Kd5!

 こう指しても白は5手で黒ポーンが取れる。しかも黒キングのd4-e5-d6の道筋を妨げている。従って黒はc7の地点に間に合わずに負けてしまう。

2…Kb4

 2…Kd3 なら 3.Kc6 Ke4 4.Kb7 Kd5 5.Kxa7 Kc6 6.Kb8 でやはり白が勝つ。

3.Kc6 Ka5 4.Kb7 Kb5 5.Kxa7 Kc6 6.Kb8

 これでポーンがクイーンに昇格できる。

 単純だが非常に参考になる例だった。面白いことに図13で黒キングがb2でなくもっと条件の悪そうなh2にいたならば、白は黒キングの進路をじゃまして無駄な手を指させることができないので引き分けになるところであった。

(この項続く)

2013年05月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(315)

「Chess Life」2013年4月号(3/11)

******************************

不退転のグランドマスター(続き)

モスクワからチューリヒへ

 ちょうど3週間後ナカムラはタリ記念大会に参加するためにモスクワ行きの飛行機に乗っていた。この大会はFIDE大会と重なる可能性を避けて11月から6月に変更されていた。強豪ぞろいの参加者の中でナカムラは最下位の一つ上の順位に終わった。これは名目上は実際より悪く見えるが、実際は負けが勝ちより一つ多いだけだった。初戦でアロニアンに負けたのが尾を引き、ナカムラは勢いを取り戻すことができなかった。

 モスクワはナカムラにとって全然お気に入りの都市ではなく、そこで偉業を達成したことがまだない(もっとも2010年にはもう少しでそうなるところだった)。2週間の苦闘のあとバンクーバーに戻るのはほっとさせるものだった。遠征に半年費やす者にとって故郷と考えられる場所があるならば、ここは第二の故郷のようになっている。

 ナカムラは2012年には無理なくスケジュールできる自由時間のほとんどをそこで過ごした。彼の親友には多くのバンクーバー人がいる。ブリティッシュ・コロンビアの美しい自然を楽しみ、ゆっくりめのペースの生活をおくっている。彼に言わせれば「サイコーという以外適切な言葉がない。」

 今回の執筆のために初めて会ったのは7月の終わりのチューリヒだった。ナカムラはちょうど前日にバンクーバーから飛んできたところで、あまり眠っていなかった。

 そんなに旅行するならモスクワとビールの大会の間にカナダでたった2、3週間ほどすごすのは手間暇かける価値があるのかと私はいぶかった。リラックスするよりストレスがたまらないのだろうか。

 「良くもあり悪くもある」と彼は説明した。「しかし確かに最近は以前よりももっと盤から離れて楽しもうとするようになった。大会の間の休みに必ずしも毎日チェスを勉強しているわけではない。外に出るようにし、違った人生を歩んでいる知らない人たちに会うようにしている。」

 「休暇」(チェスのプロにはちょっと定義しづらい)の間ナカムラはほとんどどんな時間もチェスに費やす。どんなに少しのチェスの研究でもほとんどはこれから対戦するであろう特定の相手の布局の準備に集中している。たぶんちょっとした収局の研究も混ざっている。大会前のたった1週間ほどで実際研究量は増える。1日最低5、6時間が必須の濃密な大会期間中を含めても、1年では平均して1日1時間にしかならないと彼は推測している。

 チューリヒはリラックスできる非大会のチェスの催しの一つだった。ホテル・サボイのバーでバカみたいに高いコーヒーでカフェインを摂取しているとき、17人のアマチュア選手が同時対局のために1階上に心待ちに集まった。

 これがナカムラのスイス最大の都市への初めての訪問だったが、短時間だった。翌日は列車にとび乗り、義父のスニル・ウィーラマントリー(彼はなんと1968年の第1回ビール祭りに参加していた)とリトルジョンと一緒に約1時間で第45回ビール・チェス祭りに向かった。

 ビール/ビエンヌはこの国のドイツ語とフランス語の地域にまたがっていて-だから両語の名前を持っている-スイスの唯一の公式2言語使用の都市である[たいていの人はどちらか一方である]。

 ナカムラは17歳の米国チャンピオンとして7年前に一度グランドマスター大会に参加した。2012年の参加者には彼にとって難敵のマグヌス・カールセンとワン・ハオが含まれていた。カールセンは世界ナンバーワンで誰にとっても手ごわいが、ナカムラは同格のほとんどと違い本格的な持ち時間で一度も彼に勝ったことがない。

 ワンとナカムラはほんの一握りの試合しか指していないが、ビールではワンが2試合とも勝ち、この年の後半でまた勝って通算の対戦成績を4勝1敗3分けにした。

 ナカムラはカールセンとアニシュ・ギリに2引き分けでエティエンヌ・バクロとビクトル・ボロガンには2-0の完封で同点3位になり、それでも実効レイティングはまたしても2800だった。

[囲み記事]空中で
 ナカムラの総飛行時間を聞けば飛行機嫌いはかっとなるだろう。しかしナカムラは飛行を楽しみ、主にヨーロッパとニューヨーク、セントルイスまたはバンクーバー間を行き来することを楽しみ、頻繁に飛行マイルをかき集めることを楽しんでいて、100万を超えている。
 ナカムラはかつてユナイテッド航空の比較的安いドバイ行き運賃を利用してセントルイスからデンバーを経由してサンフランシスコに飛んだことがあった。そう、アラブ首長国連邦のあのドバイである。地球の反対側のドバイである。旅程はSFO(旅慣れたジェット機族は3文字の空港記号だけを使う)からDENを経由してIAD(首都ワシントン)へ、そこからさらにクリスマスの日にDBXへだった。問題はここだけだった。往復チケットは1万6千マイルになり十分に常連客の地位を増し翌年の大西洋横断ビジネスクラスへの一群の格上げを獲得したということ以外、ドバイに行った理由はなかった。ドバイ空港にいたのは3時間足らずで、帰路の便に乗って(首都ワシントンとデンバーを経由して)サンフランシスコに戻った。旅行はしめて丸二日かかった。
 筋金入りの乗客にとってさえこれはちょっとやりすぎで、ナカムラはあとでこれを「人生で断トツの憂うつなクリスマス」と呼んだ。それでもヨーロッパへのビジネスクラスは結構な特典である。時にはそれが時差ぼけのまだ残る大会の初めでちょっとした余分の景気づけとなって、まあまあと魔法のようなのとの違いとなり得るかもしれない。

******************************

(この号続く)

2013年05月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(186)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 これでポーンの形はほぼ対称になった。しかし黒にはわずかだが明らかな優位が二つある。それは「優良」ビショップを保持していることと、白のh3のポーンが潜在的な標的であるということである。

16.Kf1 f6 17.Nh4 f5

 黒は勝ちを目指したいならば、この手を指してe5の空所の危険性に備えなければならない。この異筋に見える手は交換中原で急所の着想になることがよくある。

18.Re2 Ng6 19.Nxg6 hxg6 20.Rae1

 白は目標を達成した。すなわちe列にルークを重ね、あとは総交換とそのあとの引き分けを待つだけである。しかし黒は意に介さない。

20…Ne6 21.Nd1 Qf7 22.Qc1 b6

 黒はまず …c5、dxc5 bxc5 から …d4 で戦線を突破することを狙っている。そこで白は局面を閉鎖的に保った。

23.b4 g5!

 白クイーンがc1にいてもやはりこの突破は止められない。ここで 24.Bxg5? と取ると 24…f4! 25.Bh4 g5 と応じられて駒損になる。

24.Kg1 g4 25.hxg4 fxg4 26.g3 Qf3?

 白の手番 

(この章続く)

2013年05月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (12)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

A ポーンが同じ列にある場合(続き)

 次に両方のキングにもっと動く余地がある場合を少し考えてみよう。まず図12から。

 図12

 このような局面は実戦でよくできるので正しい結果を知っておくことは大切である。白が黒のポーンを取ることができればたとえその時手番でも黒が見合いを取ることができないので白が簡単に勝つことは既に学んだ。手順は次のようになる。

1.Kc4

 勝つための唯一の手である。1.Kd4 は 1…Kd8 で黒が見合いを取り引き分けになる。

1…Kd7 2.Kb5!

 再び斜めの見合いを取る。2.Kc5? は 2…Kc7! で引き分けになってしまう。

2…Kc7 3.Kc5 Kd7 4.Kb6 Kd8 5.Kc6 Ke7 6.Kc7 Ke8 7.Kd6 Kf7 8.Kd7

 後は白が簡単に勝つ。

 これは一つの想定手順である。黒は 1…Kf7 で次のように白ポーンに対する逆襲を企てることもできる。

1.Kc4! Kf7 2.Kc5 Kg6

 このように両方のキングがそれぞれ反対側からポーンに近づいて来る局面も良く現れる。ここでのよくある間違いは 3.Kd6? でそれは 3…Kf5! で黒の勝ちに変わる。このような局面で覚えておくと役に立つ原則は1枡下(ここなら d7)からポーンを攻撃することである。そうすれば次の手 (Kd6) で自分のポーンを守りながら相手のポーンを攻撃することができる。したがって白の正着はつぎのようになる。

3.Kc6!

白キングは d7 の地点を目指し黒キングは f5 の地点を目指す。ここでは白の方が先に到着する。

3…Kg5

 3…Kf5 ならば 4.Kd6 で白の勝ちであることはすぐ分かる。

4.Kd7! Kf5 5.Kd6

 これで白の勝ちである。

(この項続く)

2013年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(185)

第8章 交換中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

9…O-O

 多くの選手はここで自動的にクイーン翼にキャッスリングする。白は明らかに引き分けで満足であることを示した。だから彼にやれるものならやらせてみよう!しかし白のクイーン翼のポーンは攻撃に理想的に配置されていて、c3のポーンは b4 突きを助けている。しかし忘れてならないのは本局の白は攻めの達人のタリである。受けの名人のコルチノイはそれに恐れをなしたわけではない。コルチノイはキング翼にキャッスリングしても勝つ可能性はまだ十分あることを知っていた。それでも 9…O-O-O はまったく指せる手である。例えば 10.b4 Ng6 11.b5 Nce7 12.a4 Nh4 13.Be2 Neg6 = という具合である(バードウィック)。

10.h3 Bf5 11.Nf1 Rae8 12.Bxf5

 白はいつもの Bg5-h4-g3 という作戦でビショップ同士を交換しようとすることもできるが、12.Bg5 h6 13.Bh4(13.Bxf5 Qxf5 14.Bd2!?)のあと黒は 13…Ng6 14.Bg3 Nf4 =/+ と指すことができる(J.ワトソン)。

12…Qxf5 13.Ne3 Qd7 14.Bd2 Nd8 15.Qc2 c6

 白の手番 

(この章続く)

2013年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (11)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

 この型のエンディングでもやはり全てが駒の配置によるので勝ちか引き分けかの一般的な原則を述べることはできない。しかし普通は引き分けになるので、ここでは主に白が強制的に勝てる局面に話を限る。以下では局面を2種類に分けて考えることにする。

A ポーンが同じ列にある場合

 この場合は図11を基本的な局面として考えることができる。

 図11

 このような局面はどちらの手番であろうと駒の配置がいくら後ろにあろうと引き分けである。白の手番ならば黒は見合いを取っているので 1.Kg4 Kg6 2.Kf4 Kf6 で簡単に引き分けにできる。黒の手番ならば次のようにポーンを取られる。

1…Ke6 2.Kg5 Ke7 3.Kf5 Kd6 4.Kf6 Kd7 5.Ke5

 ここで 5…Kc6 でも 6.Ke6 でポーンは助からない。しかし黒は次のように初歩のエンディングで示した原則を応用して引き分けにできる。

5…Ke7! 6.Kxd5 Kd7!

 これで見合いが取れて引き分けになる。

 しかし駒の配置を一段ないしは二段上に上げれば状況はがらりと変わる。もちろん白の手番ならば勝ちのないことは変わりない。しかし黒の手番ならば今度は負けになる。上で見たように黒はポーンを取られる。そしてその時白キングは6段目に達する。ポーンがルーク筋以外ならばすべて白の勝ちである。例外は黒ポーンがg7又はb7にいる場合である。この場合黒キングは隅に逃げ込めば良い。白キングが近づいてくればステイルメイトになる。ポーンがルーク筋にある場合はこれまでと同じように引き分けである。

(この節続く)

2013年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(47)

「Chess Life」1992年4月号(4/4)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

ゆっくり急げ 閉鎖布局を激しく指す(続き)

Ⅱ)1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.Nf3 e6 6.d4 Nxd4 D.グレビッチ対ドラギー、ニューヨーク・オープン、1989年

7.Nxd4 cxd4

 ここでも 7…Bxd4?! は 8.Nb5! で黒の黒枡ビショップがg7よりも悪い位置にいるので的外れである。

 本譜の手のあと白のナイトがd6の地点を目指さなければならないことは明らかである。しかしb5とe4のどちらが経由地点として良いだろうか。

8.Ne4!

 ごく最近の実戦例によればe4のナイトの方がb5よりも安定しているので望ましい経由地点である。8.Nb5 のあとの主手順は 8…Qb6 9.Qa4 a6(10.Qb4 の狙いを阻止した)10.e3 d3! となっている。(10…Ne7 は効果が劣り、1990年ノビサド・オリンピアードでのサンタクルス対ファウラント戦は 11.Nxd4 O-O[11…Bxd4?! 12.exd4 Qxd4 13.O-O は黒の黒枡が慢性的に弱い]12.O-O と進んだ。白が有利な態勢でポーンを取り返したのに対し、黒は白枡ビショップの展開に困難を抱えている。)1989年ニューヨーク・オープンでのチェルニン対ウォルフ戦では(10…d3!)11.Qa3? Bf8! で白が明らかに苦戦に陥った。代わりに両選手は 11.O-O Ne7 を提唱している。そしてウォルフは 12.Nc3 に続けて「白は互角にすることに集中すべき」と言い、一方チェルニンは 12.Rd1 で白が全然問題ないと考えている。

8…Ne7

 この手は成立するが、それでもある意味いくらか敗北主義的である。つまり黒は何かもっと悪いことにならないようにポーンを返しキャッスリングもやめることになる。実戦で試された意味のある手は次のとおりである。

 (a)8…f5?! 9.Nd6+ Kf8 10.Qb3 Be5 11.Qa3 Kg7 12.Bf4! Bf6 13.c5 Ne7 14.O-O Nc6 15.b4! b5 16.cxb6e.p. e5? 17.Bh6+ 黒投了(D.ジョハンセン対ホークスワース、英国選手権戦、1984年)

 (b)8…Qc7 9.c5! Ne7 10.Bf4 Qa5+ 11.Bd2 Qc7 12.Nd6+ Kf8 13.Rc1 h5 14.Qa4(チェルニン対T.パラメスワラン、バンガロール、1981年)黒はクイーン翼の締めつけを全然払いのけることができず26手で負けた。

 (c)8…d6!? 9.Qa4+ Ke7 これが本手だろう。

 ⅰ)10.c5 d5 11.Nd6 Kf8 12.O-O Ne7 13.e4 dxe3e.p. 14.Bxe3 h6 15.Rad1 Kg8(マクナブ対チャンドラー、ブラックプール、1990年)白にはポーンの代償があるはずだが、黒は最終的に陣容をまとめて51手で勝った。

 ⅱ)10.Bd2 a5 11.Qa3 f5 12.Bg5+ Nf6 13.Bxf6+ Bxf6 14.Nxf6 Kxf6 15.O-O Qb6 16.Rad1 Rd8 17.e3! dxe3 18.fxe3 Qb4 19.Qd3(シュワルツマン対フェッデル、コペンハーゲン、1990年)形勢不明だが、白が36手で勝った。

9.Nd6+ Kf8 10.Nxb7 Bxb7 11.Bxb7 Rb8 12.Bg2 Kg8 13.O-O h6 14.b3 d5?!

 黒は 15.cxd5?! Nxd5 で有利になることを期待していたが、戦略的に咎められる。正着は「手動キャッスリング」を完了させる 14…Kh7 で、双ビショップの白が少し優勢である。

15.Ba3! dxc4 16.bxc4

 白のビショップは盤面のほとんどを支配し、cポーンはパスポーンになり、黒のナイトは有効な居場所がない。グレビッチは非常に参考になるやり方でこれらの要素をもとに指し手を進めていく。

16…Qd7 17.Rb1 Kh7 18.Qc2 Rb6 19.Rb3 Rc8 20.Rxb6!

 黒のナイトがc8に行けないので、白はb6のポーンが弱くなることを見越してこの交換に喜んで同意した。

20…axb6 21.Qb3 Qc7 22.Rc1 Rb8 23.Rb1! Bf8 24.Qb5 Nf5 25.Bxf8 Rxf8 26.Qc6! Qa7 27.a4!

 双ビショップの優位は弱いb6ポーンに対する圧力と共に、より働きの良い駒の優位に変わった。少なくとも白にはクイーン翼に強力なパスポーンができる。

27…Rb8 28.Be4 Ne7?!

 黒は時間に追われて白クイーンをもっと強力な地点に行かせた。グレビッチによれば 28…h5 と突くことが必要だった。

29.Qd6 Re8 30.c5! bxc5 31.Rb7 Qa8 32.Rxe7 Qxe4 33.Rxf7+! Kg8 34.Qd7 Qb1+ 35.Kg2 Qe4+ 36.Kh3 黒投了

 ここで適切な二つの質問がある。

 (1)6.d4!? のギャンビットは棋理に合っているか?

 確かなことを言うのにはまだ早すぎる。私の推測では白がポーンの代わりに十分な代償を得ていることが証明されるというところだろう。

 (2)これを指すべきだろうか?

 a)棋理に合った明快な戦略的な指し方だけが好きならば答えは「いいえ」である。

 b)十分に研究し、難解な局面になってもかまわないならば、たぶん時々という基準で、答えは「はい」である。

 たぶん相手が退屈な指し方をするならば意表を突く武器として用いるのが最も効果的だろう。

******************************

2013年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(184)

第8章 交換中原(続き)

実戦例

第29局
タリ対コルチノイ
ソ連、1955年
交換戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.exd5 exd5 4.Bd3

 タリは引き分けを目指して指していたことを認め、白でそのようにしたのは人生でこの時だけだと言明した。コルチノイ戦のこれまでの成績を考慮すればもっともだが(訳注 両者の通算成績は引き分けを除いてほぼコルチノイの11勝5敗です)、それでもあまり賢明なやり方ではない。白で布局から優勢になれば引き分けるのははるかに容易である。ミハイル・グレビッチは1990年のマニラ・オリンピアーで陥穽にはまった。挑戦者決定大会に進出するためには引き分けることが必要で、相手のナイジェル・ショートは勝つことが必要だった。グレビッチは交換戦法を指し駒をさっさと交換しようとした。しかし 4.Nf3 Bg4 5.h3 Bh5 6.Be2 Bd6 7.Ne5 Bxe2 8.Qxe2 Ne7 9.O-O O-O 10.Bf4 Re8 11.Qg4 Bxe5 12.Bxe5 Ng6 となって黒が少し優勢になりそのまま勝った、

 白は引き分けを目指して指す必要はない。カスパロフを初めとするいく人かの一流グランドマスターが最近 4.Nf3 を採用した。4…Nc6 には 5.Bb5 と応じ、4…Bd6 には 5.c4! で生じる孤立dポーンの陣形(次章を参照)ではd6のビショップがあまり良い位置にいないことを利用した。ショートの 4…Bg4 にはもっと攻撃的な 5.h3 Bh5 6.Qe2+! が指され、1991年サンタクララでのウリビン対ビレラ戦では 6…Qe7 7.Be3 Nc6 8.Nc3 O-O-O 9.g4 Bg6 10.O-O-O Nb4 11.a3 Nxc2 12.Bf4 Na1! 13.b4! +/= と進んだ。黒の最も無難な応手は 4…Nf6 である。そして白の手順の別の要点は 5.Bd3 c5 6.O-O! c4 7.Re1+ Be7 8.Bf1 で優勢になることである。たとえば1991年ティルブルフでのカスパロフ対コルチノイ戦では 8…O-O 9.Bg5 Bg4 10.h3 Bxf3 11.Qxf3 Nc6 12.c3 +/= となった。しかし黒は恐れる必要はない。5…Bd6 でも 5…Be7 でも1手得(黒は …Ne4-f6 と引く必要がないので)のペトロフ防御のような局面になる。そしてペトロフ防御自体が堅固さで定評がある!

4…Bd6

 4…c5!? については次章を参照。

5.c3

 代わりに1956年ソ連選手権戦でのバンニク対コルチノイ戦では 5.Nf3 Ne7 6.Nc3 c6 7.O-O Bg4 8.Re1 Qb6! 9.Bd2?! Nd7 10.Na4 Qc7 11.h3 Bh5 12.a3 b6 13.Rb1?! Nf8 14.Nc3 Ne6 15.Be3 h6 16.Na2 O-O 17.c3 Rae8 18.Nb4 a5 19.Nc2 Bg6 20.Bxg6 Nxg6 21.Qd3 Ngf4 22.Bxf4 Nxf4 23.Qd2 Re4! 24.Rxe4 dxe4 25.Ne1 f5 と進んだあと黒が …Qf7 から …Qh5 で攻撃を続け勝ちをものにした。

5…Nc6

 もちろん 5…c6 と指すこともできる。

6.Nf3

 6.Ne2 なら黒は 6…Qh4 または 6…Qf6 でクイーンを安全にキング翼に移動させることができる。どういうわけか交換戦法では白の方が黒よりも間違えやすい。ここでも白は手得しているため黒のキング翼ナイトよりも先にクイーンを展開する機会があるが、それほど良いものではない。例えば1983年モスクワでのマラニウク対プサーヒス戦では 6.Qf3 Nf6 7.h3 O-O 8.Ne2 Re8 9.Bg5 Be7 10.Be3 Ne4! 11.Bxe4 dxe4 12.Qxe4 Nb4 -/+ となった。

6…Nge7

 黒は手数が1手少ないので白クイーンのキング翼侵入を恐れることなくここでナイトをe7の地点に展開させることができる(重要なf5の地点を支配する)。

7.O-O Bg4 8.Nbd2 Qd7 9.Re1

 黒の手番 

(この章続く)

2013年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (10)

第2章 ポーン・エンディング

 ポーン・エンディングから始めるのは奇異に感じる人がいるかもしれないが、これにはそれなりの理由がある。まず、ポーン・エンディングは駒数が少なくて形が比較的単純であり(内容は必ずしもそうとは限らないが)、エンディングの概観と対処の仕方を学ぶのに最も適している。次にポーン・エンディングは通常は他のエンディングから移って来て、エンディングの理論全般の基礎となっているからである。

 これまで見てきた初歩のポーン・エンディングは全てのポーン・エンディングの基礎となるものであった。もし読者がポーン・エンディングは最も易しいという印象をもたれたら残念ながらそれは当たっていない。いずれ分かるが一部のポーン・エンディングは非常に複雑で、慣れていない人にはどう指したらよいか難しい。

2.1 キング+ポーン対キング

 初歩のエンディングで見て来たこのエンディングをまた採り上げる。図10は以前紹介した原則をそのまま適用できない例である。この機会に「遠方見合い」についてもっと詳しく説明する。

 図10

 もし黒の手番ならばキングが何の妨げもなくf4の地点に到達でき、これまで見てきたように引き分けになる。白の手番だと状況はもっと複雑である。この局面をもう少し詳しく調べなければ結果については答えられない。これまでの例で見てきたように、白キングがf6の地点に到達した時に黒の手番になっていれば白の勝ちである。白の初手は当然 1.Ke2 (1.Kg2 でも同様) で、黒は最善の受けが要求される。明らかに 1…Kf5? は 1.Kf3! で白の目的を達成させるし、1…Ke5 2.Ke3 Kf5 3.Kf3 も同様である。唯一の正しい受けは 1…Ke6 である。 2.Ke3 には 2…Ke52.Kf3 には 2…Kf5 で見合いを取って引き分けにできる。1…Ke6! により黒は遠方見合いを取り、両方のキングが近づくにつれて近接見合いになった。この例は遠方見合いの基本的な構図である。後に遠方見合いの応用のもっと複雑な例を紹介する。

 見合いの理論は重要だが適度に簡明である。しかし「対応枡」の理論を理解していれば見合いを用いなくても済む。この理論は時には見合いの応用よりも幅広く理解し易い。そこで図10をもう一度見てみよう。

 「対応枡」とは何だろうか。白キングがf3にいて黒キングがf5にいる局面を考える。これはすでに知っているように黒の手番ならば白が勝つ。この2枡のことを「対応枡」と呼ぶことができる。つまり黒キングがf5にいる時、白キングは勝つためにはf3にいる必要がある。逆に黒が引き分けるためには白キングがf3に来た時に自分のキングを対応枡のf5に置かなければならない。

 受け手の立場からもっと他の対応枡の組を見つけてみよう。白キングがf4に到達するとどう変化しても白の勝ちになるので黒はそれを許してはいけないことが分かっている。だから白キングがe3にいて次にf4に行こうとしている場合、黒キングはe5,f5又はg5に行ける状態でなければならない。しかしg5は白キングがe3からe4に行くとf4の地点を確保されてしまうので良くない。f5も白キングがe3からf3に行った場合このf5の地点を占めなければならないのでだめである。そうすると残るはe5だけである。これがe3に対する対応枡となる。それでは白のe2の枡に対応する黒の枡はどこだろうか。白はe2からe3とf3の両方に行けるので、黒の対応枡はe5とf5とに行ける枡、即ちe6又はf6ということになる。

 このように考えていくと黒の正しい受けを再び見つけることができる。1.Ke2 の後 1…Ke6 だけが引き分けにできる。これまでの考察から他の手ではすべて黒が負けることが分かる。

 以上はもちろん対応枡の簡単な例である。後にこの考え方の非常に役に立つ例を紹介する。

(この節終わり)

2013年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(183)

第8章 交換中原(続き)

cポーンを突く

 どちら側にとっても局面の均衡を崩すことのできる一つの手段はcポーンを2枡突き進めることである。そしてこのcポーンが敵のdポーンと交換になれば孤立dポーン中原が出現する。本章の関心事の局面はポーンが前進し続けることにより生じる。ここでは黒が …c5 から …c4 と突いたと仮定するが、明らかに白が c4 から c5 と突いた時にも同じ原理が当てはまる。

 

 黒は明らかにクイーン翼で陣地の広さの優位を得ている。そして白はすぐに b3 と突いてこれに挑むことが重要である。そのあともし黒が …b5 と突いて応じれば、白の最善のやり方は a4 a6、axb5 axb5 で一組のポーンを交換することによりクイーン翼での締め付けを緩和することである。

 

 そのあとは通常はまず c3 と突いて黒のポーンを固定しておいて、クイーンとクイーン翼ビショップとを用いてb4とc5の黒枡の空所につけ込みb5の弱点に対して圧力をかけることである。

 黒は …b5 と突く代わりにb3でポーンを交換することもできる。それなら白はaポーンで取り返して(中央に向かって取り、まだ展開していないルークのためにa列を開ける)、次のようなポーン陣形になる。

 

 白は Ba3 で不良ビショップの交換に努めることもできる。もっともあまり手数をかけすぎないように注意しなければならない。もし白がゆっくりしすぎると、黒は白の出遅れcポーンに対してc列で圧力を加えることができる。白が c2-c4 と突くのはb3とd4のポーンが弱体化しb4の地点が黒駒にとって絶好の空所になるので役立たない。白の最良の作戦は c2-c3 と突いてb4の地点を支配し自分の駒を捌く余地を作ることである。白の作戦に不可欠なのはクイーン翼ナイトをd2とf1を経由してキング翼に捌くことである。

(この章続く)

2013年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (9)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング(続き)

 最後にルーク・ポーンに関する二つの例外的な場合について触れておきたい。この種のエンディングではポーンが他の筋にいる場合は絶望的な局面でも防御側が引き分けにできる可能性が大きい。例えば図9の左半分では白の手番でも勝てない。

 図9

 1.Ka7 Kc7 2.a6 Kc8 3.Ka8 (3.Kb6 Kb8) Kc7 4.a7 Kc8

で白自身がステイルメイトになる。原則的には黒キングが急所のc8(盤の反対側の場合ならf8)の地点に到達できれば引き分けにできると言える。この原則の明らかな例外は白キングが既にc6又はb6の地点を占めていて 1.a7 とポーンを突ける場合である。

 図9の右半分はポーンがルーク筋以外の場合だったら負けなのに引き分けにできる例である。ここでも白は手番でも勝てない。

1.h5 Kf6 2.Kh7 Kf7 3.h6 Kf8

 これで直前に見た引き分けの局面と同じになる。だから一般的にはルーク・ポーンに対しては黒は引き分けにできる。

 これで初歩的なエンディングを終えることにする。次章からはポーン、クイーン、ルーク、ビショップ及びナイト・エンディングの順にもっと複雑なエンディングについて採り上げる。そして色々なエンディングに応用できるような一般原則を含むような局面だけを解説する。前に述べたように終盤の参考書を編集するつもりはなく、全てのチェス愛好家が知っておかなければならない重要で基本的な局面だけを採り上げるつもりである。

(この節・章終わり)

2013年05月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

ポルガーの定跡指南(76)

「Chess Life」2005年3月号(3/4)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)(続き)

戦型B)1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5 dxe5 5.Nxe5 e6

 ここで白には 5…Nbd7 と同様の作戦を踏襲するか、6.Bb5+ で独自の道を行くかの選択肢がある。

6.Be2

 白が局面を手早く開放しようとするなら 6.Bb5+ Nbd7 7.d4 と指す。

 しかし黒は 7…cxd4 と取っていて困らないようである。(黒は 7…a6 と指すと 8.Bxd7+ Nxd7 9.Qh5 Nxe5 10.dxe5 で困難を抱えることになるかもしれない。しかし黒は 7…Be7 でもかまわない。)8.Qxd4 a6 9.Bxd7+ Nxd7 10,Be3 Qf6 11.f4 Bc5 12.Qd2 Bxe3 13,Qxe3 Nxe5 14.fxe5 Qh4+ 15.g3 Qh5(リュボエビッチ対カスパロフ、ティルブルフ、1989年)

6…Be7 7.O-O O-O 8.Bf3 Nbd7 9.Nc4 Nb6 10.Ne3

 白陣はかなり堅固である。

 実戦例がある(ケレス対レー、ベイクアーンゼー、1969年)。

10…Nbd7 11.d4 cxd4 12.Qxd4 Nc5 13.Qf4 Bd7 14.b4 Na4 15.Nxa4 Bxa4 16.Bb2 Bc6 17.Rfd1 Qc8 18.Be2 b6 19.c4 Rd8 20.a3 a5 21.b5 Bb7 22.h4 Nd7 23.Ng4 f6 24.h5 Qc5 25.h6 g5 26.Qg3 Rac8 27.Rd3 Be4 28.Rd4 Bf5 29.Rad1 Qc7 30.Qxc7 Rxc7 31.Ne3 Bg6 32.Bf3 Be8 33.Bc6 Kf7 34.R4d3 f5 35.g3 Kg6 36.Re1 Kf7 37.Nxf5 exf5 38.Bd5+ 1-0

******************************

2013年05月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フランス防御の完全理解(182)

第8章 交換中原(続き)

白クイーンの早い展開

 

 白がキング翼ナイトを展開する前に黒が …Ng8-e7 と指すと、白は …Nf6(そのあと …Bg4)を気にすることなくクイーンを安全にキング翼に展開することができる。f3またはh5のクイーンは重要なf5の地点を支配するとともに、d5、f7およびh7のような地点にも相手を不快にさせる圧力を加える。そして黒がこのクイーンを追い払う容易な手段はない。もちろん逆に黒がキング翼ナイトを展開する前に白が Ng2-e2 と指すと、黒は同じ手法を用いることができる。

(この章続く)

2013年05月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (8)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング(続き)

 図8

 白キングが自分のポーンの前にいるけれどそのポーンがあまり進んでいない場合は図8の左半分のようになる。この典型的な局面で勝ちがあるかどうかはどちらの手番かによる。もし白が見合いを取っていれば次のような手順で白が勝つ。1…Kb7 2.Kd6 Kc8 (2…Kb8 3.Kd7) 3.c5 Kd8 4.c6 Kc8 5.c7 しかし白の手番ならば次のような手順で周知の引き分けの局面になる。1.Kd5 Kd7 2.c5 Kc7 3.c6 Kc8! 4.Kd6 Kd8

 この例から白のポーンがもっと後ろにあれば白が簡単に勝つことが分かる。それはポーンを動かすことにより常に見合いが取れるからである。そこでこの種のエンディングに対処する際に有用な原則は次のようになる。「まず白キングをできるだけポーンより先に進め(もちろんポーンを取られないように)、それからポーンを進める。」

 図8の右半分はこの原則の応用例である。もし黒の手番ならば 1…Kg4 又は 1…Kf4 で簡単に引き分けである。しかし白の手番ならば次のような巧妙な手順で白の勝ちになる。1.Kg3! これで見合いを取る。1.Kf3? は 1…Kf5! で黒が見合いを取り引き分ける。1…Kf5 2.Kf3! 見合いを保つ。2.f4? は 2…Kf6 で引き分けになってしまう。2…Ke5 3.Kg4 Kf6 4.Kf4! ポーンを動かさずに先にキングを動かすという原則を応用してここでも白が見合いを取る。4.f3? は間違いで 4…Kg6 5.Kf4 Kf6! で引き分けになる。4…Ke6 5.Kg5! Kf7 6.Kf5 ここは 6.f3 でも良いが 6.f4? はだめで 6…Kg7! で引き分けになる。6…Kd7 7.Kg6 Ke8 8.f4 キングが6段目に達したので今度はポーンを動かす番である。8.Kg7 は意味がなく 8…Ke7 9.f4 Ke6 に 10.Kg6 とするしかない。8…Ke7 9.f5 Kf8 10.Kf6! ここでも見合いを取らなければならない。10.f6? は 10…Kg8 で引き分けである。10…Ke8 11.Kg7 Ke7 12.f6+ これでポーンがクイーンに昇格できる。

(この節続く)

2013年05月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(181)

第8章 交換中原(続き)

f5/f4での交換

 

 d5でのポーン交換により黒の「不良ビショップ」が解放される。しかしそれでもd5ポーンが白枡にしっかり固定されているのでこのビショップが完全に復旧したとはいえない。だから黒は通常はe7のナイトで支えて …Bf5 と指すことにより、このビショップを白の優良ビショップと交換しようとするのがほとんど常である。白がf5の地点の支配に優っている時は、まず …Be6 から …Qd7 と指してから初めて …Bf5 と指す必要があるときもある。もちろん白が同じ手段を用いて(Ne2 としてから Bf4)、自分の不良ビショップを交換しようとすることもできる。しかしこれは白に何の優勢ももたらしそうにない。

(この章続く)

2013年05月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (7)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング(続き)

 ポーンが6段目でなくもっと後ろにある場合は黒の引き分けの可能性はもっと大きくなる。図7の下半分を考えてみよう。

 図7

 この局面や類似の局面はどちらの手番でも引き分けである。黒は前にあげた原則に従って指せば良い。手順は次のようになる。

1.c3+ Kc4 2.Kc2 Kc5 3.Kd3 Kd5 4.c4+ Kc5 5.Kc3 Kc6 6.Kd4 Kd6 7.c5+ Kc6 8.Kc4 Kc7 9.Kd5 Kd7 10.c6+ Kc7 11.Kc5 Kc8! 12.Kd6 Kd8!

これで黒が見合いを取っている既知の引き分けの局面に到達した。

 これでキング+ポーンのエンディングが済んだと思われるかもしれないが実際はそうではない。例えば白キングが自分のポーンの前の地点を占めていたらどうなるだろうか。この場合にも勝ちかどうかの一般的な原則はない。しかし白の勝ちの可能性ははるかに高くなる。特に図7の上半分のようにポーンが前進している場合は特にそうなる。

 白キングは自分のポーンの直前の要所に到達することができた。そしてどちらの手番であろうとポーンがどれほど後ろにいようと白の勝ちは動かない。黒の手番ならば 1…Ka8 2.Kc7 又は 1…Kc8 2.Ka7 の後ポーンが進んで白が簡単に勝つ。白の手番でも特に問題はない。1.Ka6 Ka8 2.b6 で白が見合いを取っているので前に説明したとおり白が勝つ。類似の局面はすべて勝ちであるが例外はやはりルーク・ポーンの場合である。

 しかしナイト・ポーンの場合はちょっとした注意点を指摘しておきたい。図7の上半分で白の手番の場合ちょっと見には 1.Kc6 1…Kc8 2.b6 で白の勝ちのように思われるかもしれない。しかし正着は 1.Ka6! である。もっとも白は 1.Kc6 の後でもやり直して 1.Ka6 の局面に戻すことができる。1.Kc6 に対して黒は 1…Ka7! と応じる。ここで白が不注意に 2.b6+? と指すと黒は 2…Ka8! と応じ以下 3.Kc7 でも 3.b7+ Kb8 4.Kb6 でもステイルメイトで引き分けになる。従って白は恥を忍んで 2.Kc7 Ka8 3.Kb6! Kb8 4.Ka6! と勝ちの局面に戻らなければならない。

(この節続く)

2013年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(180)

第8章 交換中原

 

概説

 交換中原は引き分けになりやすいとしていつも排斥されてきた。しかしこれは両者が融和的な場合だけである。ポーンの形は対称だが白にはまだ先手番の利があり、黒は後手番の「利」を用いていつでも局面を不均衡にすることができる。例えば白が Ng1-f3 と展開すれば黒は …Ng8-e7 と応じることができ、Ng1-e2 には …Ng8-f6 という具合である。

 一方がキング翼にキャッスリングし他方がクイーン翼にキャッスリングすれば、両者とも相手のキングめがけて激しいポーンの暴風を見舞うのが普通である(その時は白の1手先行していることが効いてくる)。たとえ両者が同じ翼にキャッスリングしても、中央が閉鎖されていることと、それゆえに反撃が制限されることにより、積極的に駒を配置した側の方が比較的安全な状態にいる相手キングに対して駒またはポーンで攻撃を加えることができる。

(この章続く)

2013年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (6)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング

 このエンディングは次章のポーン・エンディングで採り上げても良かったのだが、本章では最も簡単なエンディングを採り上げているのでこの章に入れるのが適当だと判断した。この種のエンディングでは一般的な原則を挙げるのが難しい。それはすべてが駒の配置によって変わってくるからである。勝ちはポーンが昇格できる場合にのみ可能であることは言うまでもない。そこで要件は昇格が可能かそうでないかをはっきりさせることにある。

 もちろん敵キングが遠く離れていてポーンのクイーン昇格を阻止できない場合は白の勝ちは明白である。同様に白キングが自分のポーンが取られてしまうのを防げない時も引き分けになることは明らかである。それでここでは黒キングがポーンの前方に待ち構えている場合に議論を絞ることにする。まず図6のようにポーンが6段目にいて黒キングがその前方の最下段にいる基本的な局面を調べよう。

 図6

 左半分はこのエンディングの典型的な局面である。もともとポーンがもっと後ろの位置にいたとしても、黒がこのポーンの6段目への前進を防ぐことはできないので必ずこの局面に到達できる。勝ちかどうかはどちらの手番かによって決まる。白の手番ならば

1.c7+ Kc8 2.Kc6

ステイルメイトになるので引き分けである。それに白は同じ局面で黒に手番を渡すこともできない。例えば

1.Kd5 Kc7 2.Kc5

の後黒は正着の

2…Kc8!

を指せば以下 3.Kd6 Kd8 でも 3.Kb6 Kb8 でも図6左側と同じ状況になる。黒の受け方は易しい。つまり自分のキングをできるだけ長くc7とc8に留め、白キングが6段目に来たらすぐにそれと相対するように指せば良い。

 このようなエンディングに関連して二つのキングの位置に関する非常に重要な関係を紹介しておきたい。すべてのポーン・エンディングにおいて図6のようにキング同士が向かい合っている時(即ち同じ列または段で1枡だけ離れた位置にいる時)「見合い」、もっと正確には「近接見合い」の位置にあると言う。3又は5枡離れている場合は「遠方見合い」と言う。1、3又は5枡離れた斜めの見合いの場合もある。

 このような状況で相手に手番が渡っている時「見合いを取る」と言う。そのような場合相手は見合いを失っている。以上により図6の左半分を次のように定義することができる。「この局面で勝ちがあるかどうかはどちらが見合いを取っているかによる。白が取っているならば白の勝ちである。黒ならば引き分けである。」

 この規則はルーク・ポーン以外の全ての類似の局面に当てはまる。例えば図6の右半分では白が見合いを取っていても勝てない。

1…Kh8 2.h7

ステイルメイトになってしまう。

(この節続く)

2013年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

「ヒカルのチェス」(314)

「Chess Life」2013年4月号(2/11)

******************************

不退転のグランドマスター(続き)

激動の1年

 ナカムラの2011年は大躍進で終わったが、2012年はイタリアのレッジョ・エミリアでの竜頭蛇尾で始まった。この大会はいつも折り返し点で新年のお祝いを迎えるが、ナカムラは5戦して4点という目のくらむような成績を祝うことができた。しかし優勝間際で3連敗を喫し3位に終わった。

 1週間後ナカムラは3年連続でタタ製鉄大会に参加するするためにオランダのベイクアーンゼーに舞い戻った。そして実力どおりにレボン・アロニアンと1½点差の6位になった。アロニアンは第2回戦でナカムラを破り13戦9点の立派な成績で優勝した。(2012年4月号「2012年ベイクアーンゼー大会」

 ベイクアーンゼーは2011年タタ製鉄優勝というナカムラの最大の勝利の舞台である。それは不振に終わったモスクワでのタリ記念大会のあと11月後半に関係を解消したカスパロフとの共同研究の後の最初の大会だった。

 去年の10月に話をしたとき、ナカムラはカスパロフとの研究を過去のものとしそのメリットを考察した。それは肯定一色ではなかった。

 「チェスについてもうちょっと真剣になることを学んだ。そして結局それが得られた最大のことだと思う。」

 それと同時に関係をもっと早く終わらせるべきだったとも言った。

 「ありていに言えば誰も支配者でなかったということだ。それが問題の一部だった。誰がこれとかあれとかに責任を持つのか。たぶん一緒に研究すべきことを取り上げようとする際自分がもう少し強引にすべきだった。しかし自分は主導権を取らなかったし彼の方もそうだった。コミュニケーションが、それもたくさんなければならなかった。それに一緒に研究している人たちを信頼しなければならない。」

 ベイクアーンゼーのあと主にバンクーバーで3ヶ月休息を取ったあとナカムラは立派な11戦8½点と実効レイティング2833で米国選手権をガータ・カームスキーから奪い返した。これが3度目の選手権獲得で、この年の最も重要な個人戦の結果だった。(2012年8月号「全米選手権戦」

 閉会式で後援者およびセントルイスのチェスクラブと教育センターのスタッフに感謝したあと、両親と協力者のクリス・リトルジョンと一緒に「来年連覇に戻ってくるのを楽しみにしている」と言った。

******************************

(この号続く)

2013年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(179)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 最後の駒を戦いに投入するこの手は、先例の大きな改良手である。黒陣は一見したよりもはるかに柔軟性がある。例えば 19.Re4 Kxh6 20.Rg4!(黒キングの逃走路を遮断し 21.Qh3# を狙っている。20.Bxd5? Kg7! はずっと弱い手である)20…Nf4!(キングを助けるにはこの手しかない)21.g3 Rd3!(21…Ng6 22.Qf6! と 21…Nh5 22.Rh4 は悪い[訳注 22…Qc6 = で受かるので正着は 22.Qe3+ +- です]。21…Qc6 でクイーン同士を交換するのも 22.Qxc6 bxc6 23.gxf4 で不利な収局になる。実戦の手は黒が自分の思うとおりに単純化に持ち込む)22.Qxf4+ Qxf4 23.gxf4!(23.Rxf4 Bxg3 24.fxg3 f5! も黒が良い)23…Rh3 24.Kg2 Rh5 25.Rh1 Bd7 26.Rxh2 Bc6+ 27.Kg1 Rxh2 28.Kxh2 Rd8 29.f5(黒が 29…Rd2 を狙っているので白はこの犠牲を余儀なくされた)29…exf5 30.Rd4 Re8 31.Bxf7 Re2 32.Kg3 Rxb2 33.Bd5 Bxd5 34.Rxd5 Rxa2 35.Rxf5 Kg6 36.Rc5 となれば黒はかなり勝つ可能性が高いが、1993年ルツェルンの世界チーム選手権戦でのハリフマン対グリコ戦で白は20手後に引き分けに逃れることができた。

19…f5

 19…Kxh6 には 20.Rxd5! で応じられるのが要点で、20…Kg7 21.Rg5+ または 20…Rxd5 21.Qf6+ Kh5 22.Re3 となる。

 インターネット上でこの局面が詳細に議論されて 19…Be5 20.Bc1 f6!?(I.マリン)が推奨され 21.Qd3+ Kg7 22.c4 Kh8! 23.cxd5 exd5 24.f4!? Bxf4 25.Qf3 Be5 26.Bxd5 Qg7 27.Re4 Rd6 28.Rh4 Be6 が想定された。しかし 21.Qg4+ Kf7 22.f4!(S.カー)22…Nxf4(22…Bd6 23.Rxd5!)23.Rxd8 Qxd8 24.Bxf4 Bxf4(24…Qg8 25.Qxg8+ Kxg8 26.Bxe5 fxe5 27.Rxe5 Kf7 28.Rc5 +/-)25.Qxf4 では単純化された局面で黒がポーン得だけれどもまだ難局である。

20.Bc1 Bd6?

 これで黒の負けが決まった。挽回の最後のチャンスは駒を返す 20…Be5! 21.c4(21.g4!? Rf8!)21…Nf6 22.Rxd8 Qxd8 23.Rxe5 Ng4 24.Qf4! Qf6! だった。

21.Bxd5 exd5 22.Rxd5 Bd7

 黒は白枡ビショップを対角斜筋に置いて g4 突きの狙いに反撃しようとしている。22…Rg8 は 23.g4 Kf6 24.gxf5! Qc6 25.Be3 Be7(25…Be5 26.Bc5!)26.Bd4+ Kf7 27.Qh5+ Kf8 28.f6! Bxf6 29.Re8!! Qxe8 30.Qh6+ から詰まされ、22…a5(…Ra6 の意図)は 23.g4 Kg7 24.gxf5! Ra6(24…Kh8 25.Be3 Ra6 26.Bd4+ Kg8 27.Qh5)25.f6+ Kh8 26.f7 Bf8 27.Rg1 Bg7 28.Qg3! で白の勝ちになる。アダムズは最善手として 22…b5 を示したが(22…Bd7 と同じ意図)、23.Rxd6+ Qxd6 24.Qxa8 でも 23.Qh3 でも白の勝勢と考えている。

23.Qh3!

 明らかな 23.Red1!? は 23…Bc6 24.Rxd6+ Rxd6 25.Qg3+ Kf7 26.Rxd6 Rd8 となって、アダムズによると黒にいくらか引き分けの可能性がある。実戦の手はこれよりはるかに強力である。

23…Bf8 24.Re3 Kg7 25.Rg3+ Kh8

 白の手番 

26.Qh4! Be6 27.Bf4 Be7 28.Bxc7 1-0

(この章終わり)

2013年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (5)

第1章 初歩のエンディング

1.5 キング+ビショップ+ナイト対キング

 この駒割だと白は確実に詰めることができ、その手法は習得するに値する。当然ながらここでも黒キングは隅に追い込まなければならない。そして詰み形はどの四隅でも可能である。しかし強制的に詰むのはビショップのいる枡と同じ色の2隅でのみ可能である。他の2隅では2ナイトの場合と同様にキングが逃げ方を間違えた場合のみ詰めることができる。

 ということは詰ませる方はかなりややこしくなる。まず敵キングを盤端に追い詰め、次に隅に、そしてもしその隅の色がビショップの枡の色と異なる場合はさらに別の隅に追い込まなければならない。クイーン、ルーク又は2ビショップの場合はキングを縦や横や斜めの筋に沿って遮断することは容易であったが、ビショップ+ナイトの場合は難しい作業になる。この2駒は絶えず味方のキングの助けを必要とする。つまりキングとナイトでビショップの利かない枡を押さえることができるようにしなければならない。それでは図5からどのような手順でやっていくのかを見てみることにしよう。

 図5

 白はもちろん敵キングの方に近づいていかなければならないし、一方黒キングはできるだけ中央に留まろうとしなければならない。黒キングは中央から追われたら「誤った」隅、即ちa8又はh1を目指す。そこなら正しく受ければ詰まされることはない。以下は具体的な手順の例である。

1.Kb2 Kd3 2.Nc7 Kc4

 黒キングは敵キングの進路を抑えるようにする。

3.Ne6 Kd5 4.Nd4 Kc4 5.Kc2 Kb4

 5…Kd5 は 6.Kd3 で良くない。

6.Kd3 Kc5 7.Bh2

 局面を見れば分かるように白の2駒はキングの協力の下に黒キングから多くの枡を奪っている。

7…Kd5 8.Nb3 Kc6

 黒キングは後退しなければならない。それでa8を目指す。8…Ke6 は 9.Ke4 でh8の方に追われてしまう。

9.Kc4 Kb6

 9…Kd7 10.Kd5 となるよりもこちらの方が良い。

10.Nc5 Kc6 11.Na4

 白の8手目の局面と似ている。ビショップとナイトで敵キングを後退させる典型的な手法が見られる。

11…Kb7 12.Kb5 Kc8

 12…Ka7 13.Kc6 は本譜の後の局面と同じになる。

13.Kc6 Kd8 14.Kd6 Kc8

 もし黒キングが 14…Ke8 と逃げると 15.Ke6 Kf8 16.Be5 又は 15…Kd8 16.Nb6 でa8に遁走する暇なくh8に追い詰められる。

15.Nb6+ Kb7 16.Kc5 Ka6 17.Kc6 Ka5 18.Bd6 Ka6 19.Bb8

 黒キングをa8に逃げ込めなくし、a1に追い込む作戦を開始する。

19…Ka5 20.Nd5! 21.Ka4

 20…Ka6 と戻るのは 21.Nb4+ Ka5 22.Kc5 Ka4 23.Kc4 Ka5 24.Bc7+ で白の作業がもっと簡単になる。

21.Kc5 Kb3 22.Nb4!

 ナイトのこの動きは非常に重要で、ある隅から隣接する別の隅に敵キングを追い込む典型的な手法である。

22…Kc3 23.Bf4

 ナイトがいかに絶好の位置で敵キングの逃走を防いでいるかが分かる。

23…Kb3 24.Be5 Ka4 25.Kc4 Ka5 26.Bc7+ Ka4 27.Nd3 Ka3 28.Bb6

 ビショップは手待ちをする。黒キングはa1に向かわざるを得ない。

28…Ka4 29.Nb2+ Ka3 30.Kc3 Ka2 31.Kc2 Ka3 32.Bc5+ Ka2 33.Nd3 Ka1

 ようやくa1に追い込んだ。黒キングはあと3手で詰まされる。

34.Bb4 Ka2 35.Nc1+ Ka1 36.Bc3#

 読者はこのエンディングが決して易しくないことを実感されるであろう。白の8手目、19手目及び22手目の典型的な局面は特に注意が必要である。初心者は白の3駒の協力の手法に習熟するために、盤上のいろいろな枡に駒を配置して黒キングを隅に追い込む練習をしてみるのが良い。忘れてならないのは敵キングを50手以内で詰めなければならないことである。さもないと規定により引き分けになってしまう。そのためには敵キングを追い込む際に貴重な手数を無駄にしないように勝ち方の手法に完全に精通することが肝要である。

2013年05月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

フランス防御の完全理解(178)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

14…O-O

 他の似たような手順(上述)では 14…Kf8 がしばしば必須の応手になる。しかしここでは 15.Qd4! という妙手がある。1991年ミュンヘンでのベリヤスフキー対ヘルトネック戦では以下 15…h6(15…exf5 16.Qxf6! gxf6 17.Bh6+ Kg8 18.Re8#)16.g3 exf5 17.Bf4 と進んだ。

15.Nxg7! Rd8!

 これは白ナイトを取る前の重要な中間手である。15…Kxg7 は 16.Qd4! で 17.Bh6+ Kg6 18.Qh4 からg5での詰みを狙う筋があり黒にとって大変危険である。

16.Qf3

 16.Qe2 も指されているが、16…Kxg7 17.g3 Bxg3 18.fxg3 Qc5 19.Bf4 Qh5+(ボロンツォフ対サフチェンコ、サンクトペテルブルク、1993年)で黒は問題ないようである。

16…Kxg7 17.Bh6+!

 これが白の狙い筋である。17…Kxh6 は 18.Qxf6+ Kh5 19.Re4 または 19.g4+ ですぐに詰みになるので黒の応手は決まっている。白には 17.g3 という手もあるが、1995年ミンスクでのヤンデミロフ対S.イワノフ戦では 17…b5! 18.Kxh2 Bb7 19.Qe2 Qc6 20.Rg1 Rac8 となって黒が有望な反撃の機会を得た。

17…Kg6 18.c3!

 この狡猾な手は必殺の Bc2+ でb3のビショップを攻撃に加えるつもりである。

 代わりに 18.c4 Nh5 19.Be3 なら、1994年カルカッタでのグフェルト対ラビ戦では 19…f5 20.g4 Nf6 21.gxf5+ exf5 22.Qg2+ Ng4 で黒がうまく受けきることができた。cポーンがc4でなくc3にいることは明らかに白にとって有利である(a2-g8の斜筋が素通しのままなので)。しかしこの違いが決定的なものかどうかは明らかでない。

18…Nd5

 18…e5 は 19.Bc2+ e4 20.Bxe4+ Nxe4 21.Rxe4 Bf5(または 21…f5)22.Rh4 Be5 23.Qh5+ で悪い。考えられる改良手は 18…Nh5 で、それに対してグリコは 19.Be3 を推奨している。

19.Rad1!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年05月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]実戦に役立つエンディング (4)

第1章 初歩のエンディング

1.4 キング+2ナイト対キング

 キングと1ナイトでは単独のキングを詰ませることができないことは明らかであるが、2ナイトの場合は強制的に詰ませることができないことはそれほど明白ではない。2ナイトの場合理論上は詰み形があるが、正しく受けられれば白はその形に持って行くことができない。次の図4でそれが分かる。黒キングが隅にいるにもかかわらず白はこれ以上進展させることができない。

 図4

 黒キングの動きを制限する 1.Ne7 や 1.Nh6 はステイルメイトになってしまう。以下のようにいろいろ試してみても

1.Nf8 Kg8 2.Nd7 Kh8 3.Nd6 Kg8 4.Nf6+

 もしここで 4…Kh8? と間違えてくれれば 5.Nf7# で詰みになるのだが黒は

4…Kf8

 と逃げて白はまた最初からやり直しとなる。つまり白がどんなに頑張っても2ナイトでは黒キングを強制的に詰ませることはできないのである。

2013年05月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

布局の探究(46)

「Chess Life」1992年4月号(3/4)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

ゆっくり急げ 閉鎖布局を激しく指す(続き)

Ⅰ)1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.Nf3 e6 6.d4 cxd4 マイルズ対コステン、パルマ・デ・マリョルカ、1989年

7.Nb5 d5!

 この手は一般にd6の地点の問題を防止する黒の最良の手段と考えられている。7…d6?! は劣った手で、8.Nfxd4 と取られるとd6の弱点がまた目立ってくる。

8.cxd5

 白は積極的に指すように努めなければならない。すぐに 8.Nbxd4?! とポーンを取り返すのは的外れである。なぜなら 8…dxc4! 9.Nxc6 Qxd1+ 10.Kxd1 bxc6 となって、白キングの位置が良くなくて黒が既に優勢になるからである(レビン対ラグノフ、ソ連、1989年)。

8…Qa5+ 9.Qd2

 この手と 9.Nd2 のどちらでチェックを防ぐのが有望かはまだ分からない。9.Nd2 のあとは 9…Qxb5(9…exd5?! 10.Nd6+ Ke7 11.Nxc8+ Rxc8 12.O-O Nf6 13.b4! Nxb4 14.Nb3 Qa6 15.Nxd4 は白が良い[マクナブ対コールマン、英国選手権戦、1990年])10.dxc6 Ne7 11.a4 で重要な局面になる。1989年パリでのチェルニン対ヤンサ戦ではここで「グランドマスター引き分け」が合意された。1990年ロイズ銀行大会のマクナブ対ボイトキーウィッツ戦では両者が戦いを続け 11…Qb4 12.b3 Nxc6 13,Ba3 Qa5 14.O-O Bf8 15.Nc4 Qd8 16.Bxf8 Kxf8 17.Qd2 Kg7 18.Rad1 Qf6 と進んだ。ここで白は 19.Bxc6 bxc6 20.Qxd4 Qxd4 21.Rxd4 でポーンを取り返し、互角の収局が28手で引き分けになった。

9…Qxb5 10.dxc6 Qxc6 11.O-O

 これで白は 12.Nxd4 でポーンを取り返す用意ができた。そうなれば開けた局面で展開に優っているために明らかに優勢になる。黒はクイーンを動かさなければならないが、理にかなった地点が二箇所ある。

11…Qb6

 この手がはるかに最も野心的でそして危険な面を持っている。黒は貴重な得しているdポーンにしがみつくことに期待している。11…Qd6 はかなり安全な手で、黒はポーンを返すことにより陣形を引き締める用意をしている。そのあとの想定される手順は 12.Rd1 e5(12…Ne7 13.Nxd4 O-O 14.Nc6 Qc7 15.Qa5 b6! はラグノフによると形勢不明である)13.e3 Ne7 14.exd4 exd4 15.Qe2!? O-O 16.Bf4 Qd8!(16…Qe6?! 17.Qxe6 Bxe6 18.Nxd4 は白の有利な収局だった[ラグノフ対スパチェク、ベルリン、1990年])である。1990年ベルリンでのシュテルン対スパチェク戦では白がここで 17.Bg5? と悪手を指し 17…Re8 で不利になった。ラグノフは 17.Be5! が正着だと指摘し 17…Bxe5(17…Nc6?! 18.Bxg7 Kxg7 19.Nxd4!)18.Qxe5 Nc6 19.Qc5 が必然の手順でこのあと 19…Bg4 20.h3 Bxf3 21.Bxf3 の局面を互角としている。私はポーンを取り返したあと白がポーンの形が良いので少し優勢なのではないかと思う。

12.b3! Ne7 13.Ba3 Nd5?

 マイルズはこれが成立しないことを見事に見せつける。13…Bf6 も気の進まない手で、14.Rac1 から 15.Bc5 で圧力がかかり続ける。黒の最善の手順は 13…Nc6 14.Rac1 e5 15.e3 Bg4 のようである。ここまでは1991年ケルテミンデでのL.ハンセン対ヤンサ戦だが、その試合の 16.Ng5 の代わりにハンセンは 16.Bc5! Qd8 17.exd4 を白の最も有望な手順と分析している。彼は 17…e4!? を黒の最善の受けと考え、そのあと 18.Rfe1 Bxf3 19.Bxf3 f5 20.d5 Ne5 21.Bxe4! fxe4 22.Rxe4 で、犠牲にした駒の代わりに白が2ポーンを得て攻撃が非常に強力な局面になるとしている。

14.Rac1 Nc3 15.e3!

 黒は筋を閉じたままにしようとし、白は開けることに努めている。ここで 15…Qa6 16.Nxd4 Bxd4 なら白は 17.Rxc3 と 17.exd4 のどちらでも大きく優勢になる。

15…dxe3 16.fxe3

 白のポーンの犠牲の威力を見せつけるのはこの局面である。黒はキングが元位置で身動きがとれずクイーン翼は展開できていない。ここで 16…Nd5 なら白は 17.Bc5 から 18.e4 で圧力をかけ続ける。

16…Qa6 17.Bb2 Ne4 18.Qc2 Nf6

 代わりに 18…Bxb2 19.Qxb2 O-O なら 20.Ne5! f5 21.Bxe4 で黒の負けになる(マイルズ)。

19.Ng5! e5

 19…Qa5 も 20.Nxf7! Kxf7 21.Qc7+! Qxc7 22.Rxc7+ Kg8 23.Rxg7+ Kxg7 24.Bxf6+ Kg8 25.Rd1 で黒の負けになる(マイルズ)。黒は本譜の手のあと 20.Nxf7 に 20…O-O! と応じて受けの可能性をいくらかでも残すつもりである。白の次の手はそれ以上のことを望んでいた。

20.Qc5! Be6 21.Rxf6! Bxf6 22.Bf1 Rc8

 22…Qxf1+ は 23.Kxf1 Bxg5 24.Qxe5 で黒の戦力損が大きく、22…Qb6 は 23.Bb5+! Bd7 24.Bxd7+ Kxd7 25.Qd5+ で同様に悲惨になる。

23.Bb5+!

 この手は黒にすべてを忘れさせる。マイルズは精力的かつ効率的に仕上げた。

23…Rc6 24.Ne4! Be7

 24…Bg7 なら単純に 25.Bxe5! で良い。

25.Qxe5 f6 26.Rxc6! fxe5

 26…bxc6 27.Qxe6! Qxb5 は 28.Nd6+ で終わる。

27.Rxa6+ Kf7 28.Rxa7 Bd5 29.Bc4 黒投了

******************************

2013年05月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(177)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 ルビーンシュタイン中原が出現したが、すべての駒がこれまで見てきた実戦例とは異なった地点にいて白ははるかに展開に優っている。それにもかかわらずこの戦型はシチリア防御のような性格があり近年黒の最も人気のあるフランス防御の一つになっている。黒の「代償」は主に白が既にキング翼にキャッスリングしてしまっていることと、白の展開した駒が理想的な地点にいるわけではないこととにある。つまりd4のナイトは実はe5にいる方がいいし、c4のビショップはd3にいる方がいい。

10…a6

 黒は展開が遅れているにもかかわらず、駒を展開しなかった!一見して最も明白な手は …Be7 から …O-O と展開する手のように思われる。しかし白は展開の優位により楽に優勢になる。例えば 10…Bd7 11.c3 Be7 12.Re1 O-O 13.Qf3 Qc7 14.Bd3 Rfe8(A.ソコロフ対ノゲイラス、ブリュッセル、1988年)15.Bf4 Qb6 16.Re2 +/= という具合である。

 だから黒はこの戦法全体を(少なくとも使える武器として)成り立たせるためにはキング翼ビショップをもっと積極的に展開しようとしなければならない。すぐに目につく作戦は …Qc7(c4のビショップに当てて先手を取る)から …Bd6(h2のポーンに当てて先手を取る)だが、黒はまず Nb5 の反撃に対処しなければならない。実戦の手のほかに黒は 10…Bd7 11.c3 Qc7 12.Qe2 Bd6 13.Nb5 Bxb5 14.Bxb5+ Ke7 15.g3 も数多く試したが、結論は単純化された局面にもかかわらず白が双ビショップで優勢になるだった。

 面白い着想は 10…Qc7 で 11.Bb3 に 11…Bd7 で応じるようにして本譜に転移することを避け、11.Qe2 には 11…a6 でこの実戦に転移することを避けることである。しかし黒クイーンはd6の地点でd4のナイトに当たっているという役に立つ働きをしていて、白は 11.Qe2 a6 のあとd4のナイトを守る必要がないので c3 突きを省くことにより黒の手順につけ込むことができる。例えば1994年モスクワ・オリンピアードでのコトロニアス対ハッサン戦では 12.Bg5 Bd7 13.Bh4!? O-O-O 14.Bg3 +/= と進んだ。

 最後に、黒は手早くクイーン翼にキャッスリングもしてみたが、非常に危うい戦略だった。例えば 10…Bd7 11.b3 O-O-O?! 12.a4!(12.Bb2 は 12…Qc7 13.Qe2 h5! 14.Nf3 Ng4 15.h3 Bc6 16.Rfd1 Bc5! で黒の戦略が正しかったことになる)12…h5 13.Nb5 Qb8(13…Qxd1)14.Qf3 a6 15.Be3! で白の攻撃が強力である(ディミトロフ対ミリャニッチ、マタルシカ・バニャ)。

11.Re1

 白にはここで他にもいくつか手があるが、そのすべてに対して黒は同じ作戦を用いることができる。

 a)11.a4 Qc7 12.Qe2 Bd6 13.Nf5 は展開の優位を生かして白が攻勢をかけようとする。13…Bxh2+ 14.Kh1 のあと 14…O-O は危険である。そのあと 15.Nxg7! Kxg7 16.f4 Bg3 17.Ra3 となって白が駒を取り返し、黒のキング翼の弱い黒枡につけ込む可能性が高い。17…Bh4 なら 18.Rh3 である。この型の Nxg7 切りは白のクイーン翼ルークが迅速に戦いに加わるので実戦例で見てきたものよりもはるかに効果的である。しかし黒はこれらすべてを 14…Kf8! で避けることができる。1994年ティルブルフでのファン・デル・ビール対グレク戦では 15.Ng3 h5(15…Bxg3 は悪手ではないとしても危険である)16.Kxh2 h4 17.Kg1 hxg3 18.fxg3 e5 となって黒の反撃が有望だった。

 b)11.b3 Qc7 12.Bb2 Bd6 13.Nf3 b5 14.Bd3 Bb7 15.Re1 O-O! 16.Ne5 Rad8 17.Qe2 Nd5! 18.Qg4 f5 19.Qh4 Nb4 20.Re2 Nxd3 21.Nxd3 Be4 22.Rae1 Rfe8 = ティビアコフ対プサーヒス、ロストフ・ナ・ドヌー、1993年

 c)11.c3 Qc7 12.Qe2 Bd6 13.h3 O-O 14.Bg5 Ne4! 15.Bh4?! Nd2! =/+ コサシビリ対ホルツケ、ビール、1989年

 d)11.Bb3 Qc7 12.Qf3 Bd6 13.h3 O-O 14.Bg5 Nd7! 15.c3 b5! 16.Qxa8? Bb7 17.Qxf8+ Nxf8 1989年スウェーデン選手権戦でのエルンスト対ビーデンシェレル戦では黒のクイーンと活動的な駒が白の2ルークよりもはるかに強力だった。

11…Qc7 12.Bb3

 12.Bd3 Bd6 13.Nf5!? Bxh2+ 14.Kh1 のあと黒は 14…Kf8! でルークをh列に置いておくのが良い。…h5 突きがいつでも見えている。

12…Bd6!?

 この手が敗着かもしれない!改良手が見つからなければ黒は代わりにまず 12…Bd7 と指さなければならず、ビショプを(少なくともすぐに)対角斜筋に展開する機会を失う。そのあと白は 13.Bg5 にひかれてはいけない。というのは 13…Bd6 14.h3 O-O-O 15.Qf3 となって、g5のビショップが離れ駒になっているので黒が 15…Qc5! で互角にできるからである。代わりに 13.c3 Bd6 14.h3 O-O-O(14…O-O の方が良いが、d7のビショップが悪形になる)15.Qe2 Kb8 16.a4 Bc8 17.a5 Rhg8 18.Nf3 h6 19.Be3 Nd7 20.Ba4 Bc5 21.b4 Bxe3 22.Qxe3 g5 の方が良く、1992年ハルキディキでのアダムズ対アコピアン戦では白の攻撃の方が速いはずだった。

13.Nf5!

 この好手記号は将来の定跡問答でアダムズの着想が通用することにかかっている。アダムズは次のようにもっと落ち着いて指してもうまくいった。13.h3 O-O 14.c3 b5 15.Bg5 Bb7! 16.Bc2(16.Bxf6 gxf6 17.Qg4+ Kh8 18.Qh4 Rg8 19.Qxf6+ Rg7 このようにg列での反撃は非常に重要な狙い筋である)16…Nd5 17.Qh5 g6 18.Qh4 Bh2+ 19.Kh1 Bf4 20.Be4 Rab8?! 21.Rad1 Bxg5 22.Qxg5(アダムズ対グリコ、フローニンゲン、1993年)22…Qf4 23.Qxf4 Nxf4 24.Nc6 Bxc6 25.Bxc6 +/=

13…Bxh2+ 14.Kh1

 黒の手番 

(この章続く)

2013年05月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解