2013年04月の記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング (3)

第1章 初歩のエンディング

1.3 キング+2ビショップ対キング

 キングと1ビショップでは単独のキングを詰められないことは明らかである。しかし2ビショプになると図3で示すように簡単に詰ますことができる。

 図3

 詰みに至る手順はこれまでの例と同様である。2ビショップが協力して逃げ道をふさいでいくことにより黒キングはしだいに盤端に追い詰められていく。以下の手順は容易に理解できるであろう。

1.Kb2 Ke4 2.Kc3 Kd5 3.Bf3+ Ke5 4.Bg3+ Ke6 5.Kd4

 黒キングは2ビショップにより完全に遮断された。この後黒キングを隅に追い詰めるのは簡単である。

5…Kf5 6.Kd5 Kf6 7.Bg4 Kg5 8.Bd7 Kf6 9.Bh4+ Kg6

 黒キングの行動範囲はさらに狭められた。これを詰ませるには隅に追い込まなければならない。

10.Ke5 Kf7 11.Kf5 Kg7 12.Be8 Kf8 13.Bg6 Kg7 14.Be7 Kg8 15.Kf6 Kh8 16.Bf5 Kg8 17.Kg6 Kh8 18.Bd6 Kg8 19.Be6+ Kh8 20.Be5#

 もちろんもっと早く詰ませることができるかもしれないが、要領はすべて同じである。

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フランス防御の完全理解(176)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

第28局
アダムズ対ドレエフ
ベイクアーンゼー、1996年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5

 4.Ngf3 のあとは次のようにルビーンシュタイン中原が生じることがある。

 a)4…cxd4 5.Nxd4(5.exd5 Qxd5 は本譜に戻る)5…Nf6 6.exd5 Qxd5!?(6…Nxd5 の方が堅実である)7.Nb5 Na6 8.Nc4 Qxd1+ 9.Kxd1 Bc5 =(アダムズ)

 b)4…Nf6 5,exd5 Nxd5 6.Nb3 cxd4 7.Nbxd4 Be7 8.Bd3 O-O 9.O-O Bf6 10.Re1 Nb4 = キング対ドルマトフ、レイキャビク、1990年

 c)4,,,Nc6 5.Bb5 dxe4(5…a6 と 5…cxd4 も本筋の手である)6.Nxe4 Bd7 7.Bg5! Qa5+ 8.Nc3 cxd4 9.Nxd4(タリ対ウールマン、モスクワ、1971年)9…Be7 10.Be3 Qc7 +/=

4…Qxd5

 黒は中原を明け渡すことにした。これに代わる主要な手は 4…exd5 で、次からの2章で分析する。

5.Ngf3 cxd4 6.Bc4 Qd6

 ペトロシアンは 6…Qd8 と指す方が好きだった。クイーンがいずれc7の地点に行くものとすればあまり大差ないかもしれない。

7.O-0

 この戦法で重要なことは白がキング翼にキャッスリングしなければならないということである。代わりに 7.Nb3? には 7…Qb4+ がある。

7…Nf6 8.Nb3 Nc6 9.Nbxd4

 白は 9.Re1 でd4での取りを遅らせることにより黒をまごつかせようとすることもできる。そのあとの最も正確な応手はたぶん 9…Bd7 10.Nbxd4(1987年ティルブルフでのリュボエビッチ対ニコリッチ戦では 10.g3 Be7 11.Bf4 Qb4 と進んで互角だった)10…Nxd4 11.Nxd4 Qc7 である。しかしこの最後の手で 11…Be7 で罠を仕掛けてみたくなる。12.Bg5? なら 12…Qc5! で駒得になるが 12.c3 で +/= である(以降で分析される)。

9…Nxd4 10.Nxd4

 黒の手番 

 白はここで 10.Qxd4 と取ることもある。クイーン同士の交換を許すことにより白は、展開の優位を生かして詰みを目指した攻撃を行なうことをやめるが、黒が展開を完了する前にクイーン翼に弱点を生じさせることができることに期待している。1993年ポドリスクでのティビアコフ対チェルニン戦は次のように続いた。10…Qxd4 11.Nxd4 Bd7 12.Be2!?(ビショップの位置を変えてb7の地点を攻撃する)12…Bc5(12…Rc8!? 13.Bf3 Bc5 14.Nb3 Bb6 15.c3 Bc6 = J.ワトソン)13.Nb3 Bb6 14.a4 a6 15.Bf3 O-O-O(黒キングがb7のポーンを助けに来た)16.Bd2! そして白が 16…Bc6 17.Bxc6 bxc6 18.Bc3 で少し有望だった。たぶん黒は 16…Nd5 と指すべきだった。例えば 17.Ba5 Bxa5 18.Nxa5 Bc6 19.Nxc6 bxc6 となれば黒が負ける理由は見当たらない。

(この章続く)

2013年04月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (2)

第1章 初歩のエンディング

1.2 キング+ルーク対キング

 これも常に勝ちがある。1.1と同様に詰みの前に盤端に敵キングを追い込まなければならない。ただしその手順は少し手間がかかるようになる。クイーンの場合は自分のキングの助けを借りずに敵キングを盤端に追い込むことができるが、ルークの場合は自分のキングと協力してこれを達成しなければならない。

 図2

 図2で白の手順は特に難しくはない。黒キングを盤端に追い込むにはまずルークを 1.Ra4 又は 1.Re1 で横または縦に利かして黒キングを遮断するのが一番簡単である。しかしその後白キングの助けなしには何も進展しないので最も簡明な策は

1.Kb7 Ke4 2.Kc6 Kd4 3.Re1

 で敵キングをa筋に移動させることである。

3…Kc4 4.Re4+ Kd3 5.Kd5

 これで黒キングはe筋にも4段目にも行けなくなった。

5…Kc3 6.Rd4 Kc2 7.Kc4 Kb2 8.Rd2+ Kc1

 既に黒キングは一番下の段に追い詰められた。

9.Kc3 Kb1 10.Kb3 Kc1 11.Rd3 Kb1 12.Rd1#

 特に注意を要する点はルークが待機するところである。

2013年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(75)

「Chess Life」2005年3月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)(続き)

戦型A)1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5 dxe5 5.Nxe5 a6

 5…Nc6 は白に交換されポーンの形を乱されるので明らかな悪手である。

6.a4

 この手は将来の …b7-b5 突きを防ぐ自然な応手で、時にはさらに a4-a5 と突いてb6の地点を標的にすることもある。

6…Qc7

 この面白い手はカスパロフでさえ同時指導対局でにすぎないけれども指したことがある。

 6…g6 は悪手である。7.Bc4 で黒陣の黒枡が弱体化する。7…e6 こんなに早い時期にeポーンとgポーンを突くのは全然良い形でない。黒の黒枡ビショップは一方の斜筋にしか展開できず、もう一方の斜筋は弱体化したままである。

 8.O-O Bg7 9.d3 O-O そして白は 10.Bg5 Qd6 11.Ng4 Nxg4 12.Qxg4 Nd7 13.Qh4 Qc7 14.Ne4 Re8 15.Be7 h6 16.Nd6(ブラガ対クララ・メレンデス、サンパウロ、1977年)でも 10.Re1 Qc7 11.Qf3 Nbd7 12.Bf4(アーナンド対トパロフ、フランス、2003年)でも優勢だった。

 6…e6 アーナンドとズビャーギンツェフが g2-g3 突きに関連した作戦を試みたがあまりうまくいかなかった。その一方で次の試合では白が有望な陣形にすることができた。7.b3 Be7 8.Bb2 O-O 9.Bd3 Nbd7 10.Nc4 Nd5 11.O-O N7f6 12.Re1 Bd7 13.a5 Bc6 14.Ne5 Nb4 15.Nxc6 Nxc6 16.Ne4 Rc8 17.Qf3(クルニッチ対K.ゲオルギエフ、ニシュ)

7.Nc4 Nc6 8.b3 b6 9.Bd3 Bb7 10.O-O Nb4 11.Be2 g6 12.Bb2 Bg7 13.Bf3 O-O 14.Bxb7 Qxb7

 黒が互角の形勢にした(レジェス対カスパロフ、リマ、1993年)。

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2013年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(175)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

14…b3! 15.cxb3

 15.Qxb3 は 15…Rb8 16.Qc3 Nb4 17.Kb1 Bf5 18.Rd2 Qd7 となって黒の攻撃が厳しい。

15…Nb4 16.Qb1

 白はクイーンを引っ込めたが、16.Qd2 は 16…Bf5 17.Nc3 Bc2 18.Re1 Bxb3 で良くない。

16…g6

 見た目には 15…c5 が魅力的だが、17.Nc3 で二重ポーンがc列を閉鎖したままにしておくのに役立つ。

17.Nf4

 17.Ng3 なら黒は 17…c5、17…f5 および 17…Bxh4 の中から応手を選ぶことができる。17.g4 は 17…Bxg4 18.Rg1 Bf5?? 19.Qxf5 となるなら面白いが、黒は 17…Bxh4 で十分である。

17…Bf5 18.Bd3 Nxd3+ 19.Nxd3 c5! 20.dxc5 d4 21.Bf4!?

 もっと頑張った手は 21.Bh6 Bxc5(21…Re8 22.b4 a5!)22.Bxf8 Bxf8 23.Qa2!? Qc7+ 24.Kb1 Rc8 25.Ka1 Qc2 である。

21…Bxc5 22.Kd2?

 22.Rde1 から Kd1 の方が良かった。本譜の手ですべて終わりである。

22…Re8 23.Rc1 Qe7 24.Rxc5 Qe2+! 25.Kc1 Bxd3 26.Qa2 Rac8 27.Qa3 Qxf2 28.g3? Re1+ 0-1

(この章続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(1)

 序文

 チェスのオープニング定跡、中盤戦、大会そして実戦集については無数ともいえる数の本が世界中で出版されてきた。しかしエンディングについては試合の最も重要な部分の一つにもかかわらず比較的少ない数の本しか書かれてこなかった。

 実際のところ終盤戦の良い指し方や勉強にかけた時間の報酬の重要性は強調してもし過ぎることはない。本書の目的は読者に終盤戦における実戦的な知識を伝えることにある。

 多くのチェス愛好家は終盤戦が退屈だと考えているために勉強することを毛嫌いしている。ある程度はそれも正しい。というのはエンディングの定石は内容が比較的無味乾燥で、正確な読みを必要とし個人の想像力を発揮する余地がほとんどないからである。それでもこの分野には面白さが多くあり、全てのチェス愛好家は必要な技術をマスターすることにより自らの技量を向上させるように努めるべきである。

 本書では基本原則に的を絞るために例題の数を減らし通常よりも説明を詳しくするようにした。これにより終盤の理論がいくらかでも楽しく感じられることを期待した。必然的に多くの理論的に片寄った分析を排し、実戦に最も役立つような教材に制限することになった。

 本書を上梓するにあたりエンディングに対する興味を喚起すると共に、一般的なチェス選手の終盤の平均的な技術レベルの向上につながれば幸いである。

パウル・ケレス(Pau Keres)
1972年7月 タリン(Tallinn)にて

 はじめに

 チェスの試合は普通はオープニング、中盤およびエンディングの三つの段階からなっている。オープニングでは対局者は最も効果的に自分の駒を展開し有利な中盤戦の可能性が得られるように努める。中盤は最も内容豊かで明らかに最も難しい部分である。そこでは対局者は決定的な有利あるいは少なくとも優勢な終盤を目指す。そして最後のエンディングはオープニング又は中盤で得た有利を勝ちにつなげなければならない段階である。

 結果的にエンディングは試合の最も重要な段階の一つであることは明らかである。オープニングや中盤では不正確な手あるいははっきりした悪手を指しても必ずしも敗勢の局面に陥らない冗長さがある。これはこの二つの段階では複雑さのために相手の誤りに気付き咎めることが実戦では困難なことがあるという事実により説明できる。これに反して終盤では悪手は決定的な局面になり易く、またチャンスが巡ってくることはまれである。

 終盤技術を完璧にする必要性は証明するまでもなく明らかである。世界の一流のチェス選手達はこの分野に格段の注意を払い、現代の見事な終盤の試合を数多く見ることができる。

 確かに純粋に技術的な観点からは終盤の勉強は例えばオープニングの定跡や中盤の戦略よりもはるかに面白さに欠けると認めざるを得ない。しかしこの勉強は必須であり、少なくともほとんどのエンディングは勝ちや引き分けの可能性の正確な分析に役立つという有利な面がある。

 以降の本文では実戦的な種々のエンディングの正確な手順のための最も重要な原則を読者に説明するように努めた。現在の終盤理論は全体では分厚い何冊もの本になるということは誰にも分かる。それは少し覗き見しただけでもしり込みしてしまうような分量である。それゆえに本書の目的は膨大な資料から最も実戦に役立つエンディングを厳選することにより幾分なりとも読者の負担を軽くすることにある。例えばチェス用語の必須のイロハを用いながらすべての基本的な終盤の局面を分析する。そのようなやり方を軽んじてはいけない。偉大な選手の中には終盤に弱点があった選手も知られている。

第1章 初歩のエンディング

 本章ではすべての選手にとって基本中の基本に属しことさら詳しい説明を必要としない局面について考察する。ここでわざわざ採り上げるのは完璧を期すためである。まず、単独のキングを詰めるのに必要な駒の組み合わせを調べる。

1.1 キング+クイーン対キング

 これは常に勝ちである。唯一の危険性はステールメイトの可能性である。

 図1

 この局面からの勝ち方の一例は次のとおりである。

1.Qc3 Ke4 2.Kb7 Kd5

 明らかに黒キングはできるだけ長く中央にとどまろうとする。

3.Kc7 Ke4 4.Kd6 Kf4 5.Qd3 Kg5 6.Ke5 Kg4 7.Qe3 Kh5 8.Kf5 Kh4 9.Qd3 Kh5 10.Qh3#

 この手順は多分最短の勝ち方ではなく 1.Kb7 の方がもっと早く詰むだろう。しかし上にあげた手順はこのような駒配置で黒キングがいかに簡単に詰まされるかを示したものである。

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フランス防御の完全理解(174)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これでちょうどルビーンシュタイン戦法のような局面になったが、白のキング翼ナイトはf3でなくe2に展開している。白駒は一時的にごちゃごちゃしていて、e5の地点はほとんど支配していない。その一方でe4のナイトは N2c3 か N2g3 で強化することができる。

6…Nc6

 この手は一時的に白の展開を邪魔するが、6…Nf6 の方が黒に選択肢が多く、例えば 7.Qd3 O-O 8.Bf4 Nbd7 と指せる。

7.Bf4

 …e5 のぶっつけを抑止するこの手が最もよく指される。他にも1974年ソ連選手権戦でのドボレツキー対バガニアン戦の 7.Be3 Nf6 8.N2c3 O-O 9.Ng3 Nd5 10.Nxd5 exd5 11.Bd3 f5! = や1979年トルナバでのツェイトリン対ビレラ戦の 7.c3 Nf6 8.N2g3 e5 9.Nxf6+ Bxf6 10.d5 Ne7 11.c4 +/= が指されている。

7…Nf6 8.Qd3 O-O 9.O-O-O Nd5

 ここは 9…b6 の方が良い。1984年テッサロニキ・オリンピアードでのモクリ対ショート戦では 10.N2c3 のとき初めて 10…Nd5 と跳ね 11.Nxd5 exd5 12.Ng3 Be6 13.Qc3 Bd6! で互角の形勢だった。

10.Be3 a6!? 11.N4c3?!

 11.N2c3 f5!? 12.Nxd5 exd5 13.Nc3 f4! から …Bf5 は形勢不明だが、最善手は 11.c4! Nxe3 12.fxe3 b5 13.c5 +/= である。

11…b5 12.Nxd5 exd5

 結局交換中原になったが黒のクイーン翼での攻撃は緒についた。

13.h4?

 白は攻撃に乗り出す前に例えば 13.Nf4 によって駒をほぐしておかなければならなかった。

13…b4! 14.a4

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(173)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

第27局
バーバー対ハーリー
ヘースティングズ挑戦者組、1998/9年
ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.Nge2

 4.Bd3 は e4の地点に不適切な駒を残すことになり 4…dxe4 5.Bxe4 Nf6 6.Bg5 Nbd7 から 7…h6 となる。しかし 4.Qd3 の場合は話が全然違う。4…dxe4 5.Qxe4 Nf6 6.Qh4 となれば白クイーンが好所にいるので、黒は 4…Ne7 の方が良い。

4…dxe4

 白のごちゃごちゃした駒のために局面を開放することになるので、これはもっとも正確な手ではない。最善手は 4…Nc6! で、1994年オーカムでのファン・ミル対B.マーティン戦は 5.a3 Ba5 6.Be3 Nf6 7.e5 Ng4 8.Bd2(8.Nf4 Ngxe5!)8…O-O 9.f3 Nh6 10.Bxh6 Qh4+ 11.g3 Qxh6 12.f4 g5!? =/+ と進んだ。

5.a3 Be7

 5…Bxc3+ と取ることもでき、1986年ドバイ・オリンピアードでのハッキ対ヨハンセン戦では 6.Nxc3 Nc6 7.Bb5 Nge7 8.Bg5(8.Nxe4 Qd5!)8…f6 9.Be3 O-O 10.Qd2 f5(10…e5!? 11.d5 Nd4 12.Bxd4 exd4 13.Qxd4 Nf5 14.Qxe4 Nd6 15.Qb4 Nxb5 16.Qxb5 Re8+ 17.Kd2! c6 18.Qc5 +/= ブヤディノビッチ対ガブリッチ、ユーゴスラビア選手権戦、1991年)11.O-O-O a6 12.Bxc6 Nxc6 13.f3 exf3 14.gxf3 e5! 15.d5 Ne7(15…Na5 16.Qe2! b5 17.f4 +/=)16.Rhg1 Ng6 ∞ と進んだ。

 5…Ba5?! は面白いが疑問の着想で、1994年英国選手権戦でのマクドナルド対A.マーティン戦は 6.b4 Bb6 7.Nxe4 e5 8.c4! Bxd4 9.Nxd4 Qxd4 10.Qxd4 exd4 11.Bf4 +/- と進んだ。

6.Nxe4

 黒の手番 

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(313)

「Chess Life」2013年4月号(1/11)


不退転のGM
ヒカル・ナカムラは今や世界の超一流選手の一人だが、ピークに達したのか?

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不退転のグランドマスター

ヒカル・ナカムラの頂点へのゆるやかな進歩

2012年は米国の現チャンピオンにとって激動の年だった。世界の11の大きな大会に参戦し、普通の人が一生に獲得するよりも多くの飛行マイルを記録した。

マコーリー・ピーターソンはチェスライフ誌の人物評のために6ヶ国の8大会で彼の後を追った。

 洞察力と戦略的思考が偉大さの指標とされるスポーツでは、プロ選手は捨て駒による詰み攻撃を読むように将来の進路を決めながら、作戦を立てて人生を歩んでいくと思われるかもしれない。

 しかしそれが誤っていることの方が驚くほど多い。

 「一般に近頃は生活のほとんどすべてで2、3週間あるいは1ヶ月より先を見ないようになっている。なぜかというと実際意味がないからだ。」

 ヒカル・ナカムラは2012年の最高の結果をあげたところで、上々の気分だった。オランダの小さな町のホーへフェーンで開催された小さな2回戦総当たりのウニフェ(旧エセント)大会で6戦4½点で1½点差をつけて優勝し、なんと2856の実効レイティングをたたき出した。

 大会参加者のたまり場となっているラータイスという店名のブラッスリー(食事もできるビヤホール)で我々の会話はすべての超一流グランドマスターのプロ生活の最もありふれた関心事の一つに向いた。それは世界選手権の追求である。

 現在のFIDEの規定ではレイティングそのもので参加資格を得られなければ、ナカムラには暫定的に2014年3月に予定されている次回の挑戦者決定大会に出るための二つの選択肢がある。一つは今年の8月にノルウェーのトロムセで開催される128選手の勝ち抜き戦のワールドカップ決勝戦に進出することで、もう一つは6回開催されるグランプリに4回出場し最も良い3回の成績で1位か2位になることである。

 いずれにしても難関である。しかし半分空席のレストランで赤ワインをちびちび飲みながらナカムラは間違いなく困難な偉業にことのほか楽天的だった。

 「人生は実際短い。これから先の何年かを心配し始めれば人生の質、つまりやろうとしていることすべての質が落ちてしまう。」

 もっともである。何でも心配しすぎるのはとっくに困難な挑戦にさらにストレスを加えることになり逆効果である。おそらくこれからの世界選手権の巡回でタイトル挑戦に進出する有望な機会が2回や3回はあるだろう。ナカムラもそうだがたいていのプロはチェスには「全盛期」というものがあると考えている。それは20代後半から30代前半あたりで、豊富な経験と知識を持つ成熟した年齢だが、元気にあふれきつい旅行日程と長時間対局に耐えスタミナが残っているほど若い頃である。

 「例えばアーナンドを見れば、タイトルは防衛したが5年か10年ほど前と同じ水準で指していないのは確かだ」とナカムラは考えを述べた。もちろん全盛期を過ぎるまではいつ全盛期であるかはまったく分からない。彼が米国選手権をひっさげ18歳でプロの道を歩み始めてからはまだほんの一瞬のようである。

 ナカムラは若干25歳でしっかりと超一流グランドマスターに名をつらね、すべての最高の大会から招待状をもらえる最も引っ張りだこの選手の一人となっている。

 「たぶん客観的に言って今が一番強いと思う[10月のFIDEレイティングで自己最高の2786を記録した – ピーターソン]。しかし自分には2年前に指していたのと何も違わない感じがする。だからうまく指しているのかそうでないのか知ったり分かったりするのは実際非常に難しいと内心思っている。非常に難しい。」

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(172)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

28.Bh7+!

 黒は恐らくこのチェックの威力に気づかなかったのだろう。

28…Kh8 29.Qh4 Be7 30.Qh2 Rxh7 31.Qxe5+ Rg7

 ここで一番単純な勝ち方は 32.d6! だったが[訳注 32…Bxd1 で黒の勝勢です]、白はずっと手こずってしまった。

32.Rg1 Bd6 33.Qf6 Be7 34.Qh6+ Kg8 35.Rxg4 Rxg4 36.Qe6+ Kh7 37.Qxg4 Bd6 38.Qd7+ Kg6 39.Qb5 b6 40.Qa6 Kf6 41.Qb7 Rf8 42.Qxa7 Ke5 43.Qb7 Rf1+ 44.Kc2 Rf2+ 45.Kb3 Rd2 46.c4 Kd4 47.Qc6 Rg2 48.a3 Kd3 49.Qe8 Kd4 50.Qa4 Be5 51.c5+ Ke3 52.cxb6 cxb6 53.Qd7 Rxb2+ 54.Kc4 Rc2+ 55.Kb5 Kd4 56.Qg4+ Kc3 57.Kxb6 Bd6 58.a4 Rd2 59.Qe6 Bh2 60.a5 Rb2+ 61.Kc6 Kb4 62,Qe1+ 1-0

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(171)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

17.Nxh7 fxe4 18.hxg6 Rf6 19.Ng5

 この手には 20.Rh8+! からの詰みの狙いがある。

19…Nxg6 20.Nxe4

 1993年サンクトペテルブルクでのミナシアン対ドレエフ戦では白が 20.Qxe4? というポカを出した。そして黒は 20…Nf8!(21…Rf4 の狙い)21.Rh5 Rh6! で白の攻撃を撃退した。本譜の 20.Nxe4 はドレエフの示した改良手である。

20…Rf7 21.Rh6 Rg7 22.Qh2

 22.Bd3 が強手のようである。例えば 22…Qf8? 23.Nxd6 Qf4+ 24.Qd2 は白の勝ちになるし、22…Bd7 23.Rdh1(23.Nxd6? Qg5+ 24.Qd2 Nf4!? 25.Rdh1 cxd6 は逆転である[訳注  26.Rh8+ Kf7 27.Rxa8 で白の優勢のようです])23…Be8 24.Qh2 は黒にとって非常に危険そうである。

22…Qf8 23.Qh5 Qxf3

 グレビッチは 23…Qf4+! 24.Nd2 e4! 25.Rxg6 e3 26.Bd3 exd2+ 27.Rxd2 Qe5! 28.Rxg7+ Kxg7 で形勢不明としている[訳注 29.Qh7+ Kf8 30.Re2 で白の勝勢のようです]。

24.Rxg6 Qxe4 25.Bd3 Qf4+ 26.Kb1 Qxg4 27.Rxg4 Bxg4

 白の手番 

(この章続く)

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布局の探究(45)

「Chess Life」1992年4月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ゆっくり急げ 閉鎖布局を激しく指す(続き)

実戦的な手の 5.Nf3

 これが最も重要な手である。まず第一に白は良い展開の手を指している。絶対悪手は指していない。第二にこの局面は白が早く Nf3 と指せば容易に数多くの手順から生じる。後で引用する棋譜からちょっと拾っただけでも次のようになる。1.Nf3 c5 2.c4 g6 3.g3 Nc6 4.Bg2 Bg7 5.Nc3。1.Nf3 g6 2.c4 Bg7 3.Nc3 c5 4.g3 Nc6 5.Bg2。1.c4 c5 2.Nf3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.Nc3。

 本譜の手のあと黒は 6.d4 に対する用意ができていないなら 5…Nf6 で対称形を続けるわけにはいかない。そのあと 6…cxd4 7.Nxd4 O-O 8.O-O Nxd4 9.Qxd4 d6 はイギリス布局の周知の戦法になるし、6…O-O 7.O-O d6 はキング翼インディアン防御のユーゴスラビア戦法に転移する。

 定跡の意見では黒の戦略的に最も本筋の手は次の手である。

5…e6

 黒はこのあと ,,,Nge7、…O-O そして …d5 と指してキング翼をきれいに展開し中原に影響を及ぼす。白によるいつもの戦略的な指し方の最近の例は次の試合である。グリコ対ドルーギー、米国選手権戦、1991年 6.O-O Nge7 7.d3 d5 8.Bg5 h6 9.Bd2 O-O 10.a3 b6 11.Rb1 Bb7 12.b4 dxc4 13.dxc4 cxb4 14.axb4 Rc8 15.c5 bxc5 16.bxc5 Na5 17.Nb5 Bxf3 18.Bxf3 Rxc5 19.Nxa7 Qd7 20.Bxa5 Qxd1 21.Rfxd1 Rxa5 22.Rd7 Bd4 合意の引き分け

 ここ5年に渡って白側の選手はすぐに局面を開放する創造的な手法も探究してきた。

6.d4!?

 このポーンの犠牲の戦略的な正当性は 5…e6 と突いた結果黒陣に生じたd6の地点の一時的な弱体化である。これにつけ込むためには白は局面を開放しなければならない。この論理の正しさにもかかわらずこの犠牲はつい最近評価を得た。例えば1979年に出版された「Encyclopedia of Chess Openings A」ではたった1例しか出ていない。

6…cxd4 7.Nb5 d5 8.Qa4 Nge7 9.cxd5 Nxd5 10.Nbxd4 Bd7 11.Qd1 Nxd4 12.Nxd4 Qb6 13.Nb3 Bc6 14.O-O O-O 黒がわずかに優勢(レンジェル対ビレク、ハンガリー選手権戦、1964年)

 黒には犠牲を拒否する満足な手段がない。例えば 6…Nge7?! と 6…d6?! は 7.d5 で何の代償もなく狭小な陣形になる。6…Bxd4? も悪く 7.Nb5 Bg7? 8.Qd6 で白の勝勢になる。これで黒に残るのは 6…cxd4 と 6…Nxd4 になる。この二つの手は現在同等に重要で、実戦例を用いてそれぞれ解説する。

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カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(170)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 ここでドレエフは 13…Bxf3?! と取ったが 14.gxf3! の厳しさを過小評価していた。この手はg列を素通しにすることにより白の攻撃を強めている。

 ドレエフの提案の 13…c5 突きが肝要だった。そのあと 14.dxc5 h6(14…Bxc5? 15.Qc2!)15.Qc2 Qc7 16.cxb6 axb6 17.Kb1 Bd5!? なら黒はポーンを損していても指せる。また 14.Qe2!?(ギリシャの贈り物の 15.Nxh7! Nxh7 16.Bxh7+ Kxh7 17.Ng5+ Kg8 18.Qh5 が狙い)なら 14…Bxf3!(14…h6 15.dxc5! Qc7 16.Nxe6!)15.Qxf3(15.gxf3!? cxd4)15…Qd5 となる。だから 13…c5 なら黒にとって満足できるようである。

8…Nd7 9.Qc2 e5

 この手は白がまだキャッスリングしていないことにつけ込んでいる。9…b6 は 10.Bd3 Bb7 11.O-O-O から h4 突きで、8.Qd2 であげた手順よりも良くなる。

10.d5

 代わりに白は 10.O-O-O exd4 で中原を解体させることもできる。そのあとは

 a)11.Nxf6+ は 11…Qxf6 12.Rxd4 Nc5 13.Bc4 Bf5 14.Qd2(リュボエビッチ対ドレエフ、リナレス、1995年)で大したことがなく、ここで黒はドレエフの指摘する手順の 14…Ne6 15.Rd7 Ng5! 16.Rxc7 Nxf3 17.gxf3 Bg6! から 18…Qf5 を狙って優勢になる。

 b)11.Nxd4 Qe7!(d列での釘付けの可能性を何もなくし、それによりd7のナイトを自由にしてe4のナイトに …Nc5 で挑む)12.Bd3(1993年アントワープでのグレク対ルプーティアン戦では 12.h4 Nc5 13.Nxc5 Qxc5 14.Bd3 h6 15.Bh7+ Kh8 16.Be4 a5 で黒に何も問題がないはずだった)12…h6! のあと 13.Rhe1 Nc5(ヒューブナー対チェルニン、フローニンゲン、1993年)でも、チェルニンがチェス新報第59巻で指摘した 13.Nf5 Qe6! 14.Nxf6+ Qxf6 15.Rhe1 Ne5 16.Be4 Nc4 でも黒に不満がない。途中大乱戦になる可能性があるのは 14.g4 Qxa2 15.h4 Be5 16.g5 Bf4+ 17.Ne3 Ne5 18.gxh6 Bf5 19.hxg7 Kxg7 である。

10…Be7!?

 これはぞっとするような乱戦になる。黒は1990年レイキャビクでのヘレルシュ対バガニアン戦のようにもっと堅実に 10…g6 11.O-O-O(11.h4 Bg7 12.h5 Nf6 で …Bf5 を意図するのは形勢不明)11…Bg7 12.Bc4?!(12.h4 h6 はたぶん 13…f5 となる)12…Nb6 13.Bb3 a5 =/+ と指すこともできる。

11.O-O-O Bd6 12.h4 Nf6 13.Nfg5 g6 14.f3

 14.h5 はドレエフが推奨しているが 14…Nxe4 15.Nxe4 g5! 16.Bd3 f5 17.Nxd6 Qxd6 18.g4 e4 19.Bc4 fxg4 20.Qxe4 Bf5 21.Qe3 h6 22.Rhe1 Rae8! で黒が良い。

14…Nh5 15.g4 Nf4 16.h5 f5

 白の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(169)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 黒は実質的に白に黒枡ビショップをナイトと交換させた。これは黒にとって陣形的に大きな成果である。しかし解放に向けての …c5 突きはこれでことのほか難しくなった。e4のナイトは拠点にいるのも同然で、ポーンで攻撃されないし交換するのも難しい。

7.Nf3

 1994年リナレスでのトパロフ対バレエフ戦では白が Nf3 を遅らせて先に f4 と突いて中央で勢力を広げようとした。そして 7.c3 Nd7 8.Qc2 e5!(バレエフは決まりきった 8…O-O を用心深く避けた。こう指すと 9.f4! で解放の …e5 突きを防がれて白の布局の試みが正しかったことになる)9.dxe5(バレエフは 9.O-O-O を指摘している)9…Nxe5 10.f4 Ng6 11.g3 O-O 12.Bd3 Qd5! で黒が楽に互角になった。ここで白は優勢になる希望をすべてあきらめて控え目に 13.Ne2 と指すべきである。代わりにトパロフはこのような開放的な局面では1手が重要であることを忘れて 13.a3?? とポカを指し、次のようにすぐに罰せられた。13…Nxf4! 14.Nxf6+(14.gxf4 なら 14…Bh4+ 15.Kf1 f5! で駒を取り返して黒がはっきり優勢になる)14…gxf6 15.Bxh7+ Kg7 16.Qe4 Re8!! 17.Qxe8 Bf5 18.Qxa8 Qe4+ 19.Kf2 Qg2+ 20.Ke3 Nd5+ 21.Kd4 Qd2+ 22.Kc5 Qe3+ 23.Kc4 Nb6+ すぐに詰みになるので白はここであきらめた。

7…O-O 8.c3

 白の作戦はクイーンをc2に置き、そこからh7の地点をにらみd1のルークの邪魔をしないようにすることである。これに代わる最も重要な手は 8.Qd2 である。そのあと 8…b6 9.Nxf6+ Qxf6 10.Bd3 という進行はこの戦法の熱愛者たちにいずれも問題を引き起こした。1994年リヨンでのユダシン対ドレエフ戦では 10…Nd7 11.Ng5 g6 12.O-O-O Bb7 13.h4 h6 14.Ne4 Qxd4 15.Qxh6 Qg7(必然)16.Qe3 となって黒の脆弱なキング翼に対し強力な攻撃態勢がしかれた。また 10…Bb7 11.Ng5 h6 12.Nh7 Qxd4 13.Nxf8 Kxf8 14.c3 Qh4 15.g3! Qf6 16.Rf1 は、黒が堅固な陣形をしているけれども交換損の代償が取れていない(チャンドラー対プラサド、ノビサド・オリンピアード、1990年)。それでもこの戦法の指導的な専門家のバレエフは1994年パルドゥビツェでのキンダーマン戦での黒でこの手順をそっくり繰り返すのをやめなかった。そして負けた!

 ということで黒はまず 8…Nd7 と指して 9.Nxf6+ に 9…Nxf6 と応じるか、すぐに 8…Be7 と引いておく方が良いようである。1995年リナレスでのトパロフ対ドレエフ戦では 8…Nd7 9.O-O-O Be7 10.Bd3(d5 と突く狙いはこの戦型では効果がなさそうなので、このビショップはc4よりもh7の地点をにらむd3に据える方が良さそうである)10…b6 11.h4(11.Qf4 Bb7 12.Neg5 Bxg5 13.Nxg5 Nf6 14.Nf3 Qd6 15.Ne5 c5! 16.dxc5 Qxc5 = J.ポルガー対ルプーティアン、ビール・インターゾーナル、1993年)11…Bb7 12.c3 Nf6 13.Neg5! と続いた。

 黒の手番 

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(74)

「Chess Life」2005年3月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)

 シチリア防御のナイドルフ戦法とドラゴン戦法は 1.e4 に対する最も激しい布局の中の二つである。どちらも定跡が深く研究されているので多くの選手が対処法に悩まされてきた。これらの難解な布局に直接ぶつかる代わりに、反ナイドルフ/ドラゴンを指すという別法がある。

 1960年代に伝説的なパウル・ケレスとベント・ラルセンは時々反ナイドルフ/ドラゴンを用いて相手を驚かせていた。今日ではアーナンドとズビャギンツェフが時おり指している。

白の基本的な作戦は何か

 白は4手目ですぐに主導権を発揮する。eポーンをdポーンと交換することにより白はポーンの形を決定する。白は黒枡ビショップを b2-b3 から Bb2 で対角斜筋に置くのが普通である。もう一つのビショップはd3の地点でキング翼攻撃を助けるか、f3の地点でa8-h1の斜筋をにらむことになる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒がすべて自然な手だけを指せば白は駒を理想的な地点に展開するかもしれない。だから黒は早くから白の理想の陣形を防ぐように見張らなければならない。白枡ビショップ同士の交換は黒が有利であることが多い。

それで評決はどうなっているか

 白は明快な作戦を用いて、極度に激しく難解な開放シチリア戦法を避けることを目指す。黒は白の作戦を真剣に考慮しなければすぐに苦戦に陥ることがある。その一方で正確に指せば互角にできる。

 反ナイドルフ/ドラゴンは次の手順で始まる。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5

 白は 4.d4 cxd4 5.Nxd4 で通常の開放シチリアに戻っても遅くはない。しかし 4.e5 の真意は黒を定跡からそらしてドラゴンとナイドルフを避けることにある。

4…dxe5 5.Nxe5

 この局面で黒はよく指される三通りの応手の 5…a6、5…e6 そして 5…Nbd7 から次の手を選ぶのが普通である。

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フランス防御の完全理解(168)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

第26局
へクトル対M.グレビッチ
アントワープ、1994年
バーン戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.Bg5 dxe4 5.Nxe4 Be7

 5…Nbd7 6.Nxf6+ Nxf6 7.Nf3 は巧妙な手順によってルビーンシュタイン戦法になった。白は意に染まないのにかなり早く Bg5 と指したことになる。黒はすぐに 7…h6! と突くことによりこれにつけ込むことができる。例えば1992年リナレスでのアーナンド対イワンチュク戦では 8.Bh4 c5 9.Bb5+ Bd7 10.Bxd7+ Qxd7 11.Qe2 Be7 12.O-O-O O-O 13.dxc5 Qc6 = と進んだ。

6.Bxf6 Bxf6

 現在は 6…gxf6!? が大流行している。非常に難解な戦いになるが、黒は気をつけないと次の1995年オドルへユでのグダンスキー対バブラ戦のように適時の d4-d5 突きによってつぶされる。7.Nf3 b6 8.Bd3(白が 8.Bb5+ で手損することは驚くほど多い。黒はしょせん d5 突きを妨げるためにいずれにしても …c6 と突くつもりである)8…Bb7 9.Qe2 f5?(作戦がちぐはぐである。1995年キューバ選手権戦でのベセッラ・リベロ対ボルヘス・マテオス戦のように 9…c6 10.O-O-O Qc7 11.Kb1 Nd7 12.c4 で白が少し優勢の局面にする方が良かった)10.Nc3 c6 11.O-O-O Qc7 12.Rhe1 Nd7 13.Kb1(13.Bxf5?? Qf4+)13…Nf6 14.Ne5(白がやすやすとe5の地点を奪取した)14…Rf8 15.d5!! これで黒陣が崩壊する。15…exd5 は 16.Bxf5 で、また 15…cxd5 は 16.Bb5+ Kd8 17.Nxf7+! Rxf7 18.Qxe6 で粉砕される。

 もっと手ごわいのは 7…f5 8.Nc3 Bf6 9.Qd2 c5 である。

 a)10.O-O-O cxd4 11.Bb5+ Bd7 12.Bxd7+ Nxd7! 13.Nxd4 Nb6 14.Qd3 Qc7 15.Ncb5 Qf4+ 16.Kb1 O-O 17.Qg3+ Qxg3 18.hxg3 =/+ リューキン対キリアコフ、モスクワ、1995年

 b)10.d5 e5!? 11.O-O-O e4!? ∞ ロスクトフ対ベロゼロフ、モスクワ、1995年

 c)10.Bb5+ Bd7 11.dxc5 a6 12.Bxd7+ Nxd7 13.O-O-O Qc7 14.Qd6 Rc8 15.Nd5 Qxc5 = ロメロ・ホルメス対シオン・カストロ、レオン、1996年

 d)10.dxc5 Qxd2+ 11.Nxd2 Ke7 12.O-O-O Bd7 13.Nb3 Bxc3!? 14.bxc3 a5 +/= ガポネンコ対キリアコフ、フローニンゲン、1995年

 実戦の 6…Bxf6 の局面に戻る。

 白の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(167)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白はビショップがナイトより優り g4 突きで攻撃できる可能性があるので、形勢は白がごくわずか優勢である。

18…e4

 4段目を空けてa5のクイーンが白の狙いの g5 突きを抑止するようにした。

19.g4 Rfd8

 黒は駒が良く働いていて、白のキング翼での願望を中央とクイーン翼での反撃で迎え撃つ用意ができている。

20.f4 Qc7! 21.Rxd8+ Rxd8 22.Rf1 Nd7! 23.g5

 ここは 23.Qxe4 Nc5 24.Qe3 Qb6(24…Nd3+ の狙い)25.Kb1 Nxb3 26.Qxb3 Qxb3 27.cxb3 +/= が良かった(ハンセン)。

23…Nc5 24.Ba2 Rd6 25.Kb1 Qd7

 黒がd列で始めた反撃でいい勝負になった。

26.Rc1 b6 27.f5!? hxg5 28.hxg5 Qxf5 29.Qh2?

 d6のルークを当たりにし必殺に見える 30.Rh1 を用意したこの手は魅力的だが、f7の地点に対してこそ白の真の攻撃の可能性はあった。29.Rf1 Qxg5 30.Rxf7(または 30.Bxf7+ Kf8)のあと、ハンセンの分析によれば形勢は動的に均衡がとれている。

29…Qd7!

 黒はルークを守り 30.Rh1? には 30…Rd1+ で応じることができる。だから白の攻撃は頓挫し、このような試合によくあるように反撃が決定的になってくる。

30.Qh5 g6 31.Qh6 Ne6 32.Qh4 Rd1!

 この手と次の手で黒が勝負を決めた。

33.Qxe4 Qd2 34.Bxe6 Rxc1+ 35.Ka2 Qxg5 36.Qa8+ Kg7 37.Qxa7 Qf6 38.Bb3 Qf1 39.Bd5 Ra1+ 40.Kb3 Qb5+ 0-1

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(166)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 これがルビーンシュタイン戦法の主手順の局面である。黒は多くのことを達成した。自分のポーン陣形に何の弱点もこうむらずに白のポーン中原を完全に消し去った。展開も危険なほど遅れていない。それではなぜ皆がルビーンシュタイン戦法を指すわけではないのだろうか。問題はもちろんc8のビショップである。もし何も不快なことが起こらずに …b6 から …Bb7 と指すことができれば、黒陣は好形になる。しかしこれは非常に大きな「もし」である。非常に大きいので白の戦略はすべて黒がこの単純な作戦を実行できないことに基づいている。

9.Qe2

 これが通常の攻撃的な作戦である。白はクイーン翼にキャッスリングして黒キングに直接攻撃を行なう用意をしている。

9…O-O 10.Bg5 h6

 この手はビショップにナイトに対する釘付けをやめさせるか、h4に下がって …Qa5+ をもっと効果的にさせるように見える。しかし白には黒の意表を突く手がある。注意しておくと 10…b6?? は 11.Bxf6 Qxf6 12.Qe4 でルークを取られて簡単に負けてしまう。

11.h4!

 本局より前の試合になるが1995年イスラエルでのスミリン対ユダシン戦では白が 11.Bh4 と引き 11…Qa5+ で攻撃態勢づくりを乱された。そのあとは 12.c3 Nd5! 13.Qd2(13.b4 には 13…Qa3! があり、13.Qe4 には 13…f5 と応じられ、13.O-O なら 13…Nf4 で白の強力なd3のビショップと交換される。これが10手目で黒がg5のビショップを …h6! で追い払った理由である)13…Be7 14.Bxe7 Nxe7 15.O-O Qc7 で黒が互角の形勢にした。

11…Qa5+

 明らかに 11…hxg5? は自殺行為で、12.hxg5 Nd5?(12…g6 で駒を返すのが最善である)13.Bh7+ Kh8 14.Ne5 Qxg5 15.Bg6+ Kg8 16.Bxf7+! Rxf7 17.Rh8+! Kxh8 18.Nxf7+ で黒のクイーンが取られる。

12.Bd2

 白が 11.h4 でなく 11.Bh4 と指していたらこの手はもちろん不可能である。

12…Bb4 13.O-O-O! Bxd2+ 14.Nxd2!

 白は精力的に立ち回っている。白の希望は黒がクイーン翼を展開できる前に黒キングに対して直接襲撃を開始することである。aポーンは犠牲にするつもりである。黒クイーンは 14…Qxa2 でクイーン翼での反撃に絶好の位置になるけれども、他の黒駒の支援に欠けそれゆえ効果がない。一方白は 15.g4 から 16.g5 でキング翼を迅速に打ち破ることができる。例えば 14…Qxa2 15.g4 a5!?(15…Nd5 は 16.g5 Bd7 17.gxh6 Rfc8 18.Qg4 で白が勝つ)16.g5 a4 17.gxf6(17.Bc4 Qa1+ 18.Nb1 a3 19.bxa3 Nd5 20.Bxd5 exd5 21.gxh6 Bf5 は泥仕合になる)17…a3 18.Ne4 Qxb2+ 19.Kd2 となって白が勝つ。

14…e5!

 黒はaポーンを取りたいのをこらえた。自分のクイーン翼を展開し白のキング翼での動きを遅らせる方が大切であると気づいている。

15.a3

 もちろん 15.g4? はここでは 15…Bxg4 と取られるだけである。

15…Be6 16.Nc4

 16.Rhe1 の方が良かったかもしれない。

16…Bxc4 17.Bxc4 Rac8 18.Bb3

 黒の手番 

(この章続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(05)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第5局

 ルーガー対ゲプハルト戦では中原無視とあいまって早過ぎたキャッスリングの危険性が見られる。黒が敵駒を攻撃するためにポーンを h7-h6 と突いてさらに罪を重ねた時、捨て駒によってキングの縦の筋をむき出しにされるという報いを受けた。

ジュオコ・ピアノ
白 ルーガー
黒 ゲプハルト
ドレスデン、1915年

1.e4

 序盤で行なう最も大事なことはできるだけ速く駒を展開して中原を占拠し支配することである。

 白の初手は中原にポーンを据えて、駒を最下段から出す最初の手はずとしてクイーンとビショップの道を開けている。

1…e5

 黒は中原での圧力を互角にし二つの駒を動けるようにした。黒はこんなに早い段階では主導権を無理やりもぎ取ることは望めないのでこれで満足しなければならない。

2.Nf3

 狙いを持った展開の手を指すのは相手の応手の幅を狭めるので良い戦略である。消極的な 2.Nc3 は駒を展開しているが何も攻撃していない。この手に対して黒は 2…Nf6、2…Nc6 及び 2…Bc5 という良い手の中から応手を選択できる。同様に白の2手目が穏やかな 2.Bc4 ならば黒は 2…Nf6、2…Bc5 及び 2…c6(早く …d5 と突く狙い)という三つの良い候補手がある。

2…Nc6

 黒はeポーンを助けながら駒を展開した。このナイトは効率的に戦いに参加している。つまりその利きは中原に及んでいてe5の地点を守りd4の地点を攻撃している。

3.Bc4

 ビショップは外に出て、黒キングに通じる斜筋をにらむ地点を占めた。このビショップはキングによってしか守られていないのでことのほか弱いポーンを攻撃している。

 これは次の数手のうちにこのポーンを取ることを意味しているのではなく狙いは常に存在していることを意味している。多くの短手数の傑作は敵キングを野外に引きずり出すためにだけビショップを切り他の駒でこのキングを捕まえるという手法により生まれてきている。

3…Bc5

 黒は白の手をまねてビショップを最適な地点に出してきた。

 序盤ではビショップは中原に通じる斜筋に利いている時、または敵のナイトを釘付けにして動けなくしている時に最も攻撃力を発揮している。受けに使うならばe7が良い地点である。そこからは幾つかの方向に利きを及ぼし敵駒が侵入するのを困難にしている。

4.c3

 中原の支配を念頭にdポーンを突くのを助けている。白はキングが危険な状態でないのでキャッスリングを後回しにしている。

4…Nf6

 黒は白ポーンを攻撃しながら駒を展開した。これは白のもくろみに対する強力な反撃である。

5.d4

 白はこれに対してポーンを攻撃して迎え撃った。

5…exd4

 ほぼこの一手である。5…Bd6 としてeポーンを守るのはdポーンをふさぐのでまずい。5…Bb6 は 6.dxe5 Nxe4 7.Bxf7+ Kxf7 8.Qd5+ で白が駒を取り返ししかもポーン得のままである。白は 7.Bxf7+ の代わりに 7.Qd5 で詰みを狙いながらナイト当たりにすることもできる。

6.cxd4

 白のポーン隊形には圧倒される。しかしこの中原は維持できるのだろうか。

6…Bb4+

 この手は弱気の 6…Bb6 よりはるかに勝る。6…Bb6 の後黒は次のようにつぶされる。7.d5 Nb8 8.e5 Ng8(ナイトが二つとも面目なく帰還した。)9.O-O Ne7 10.d6 Ng6 11.Ng5 O-O(黒キングは3ポーンとナイトで守られている。あと4手でナイトと1ポーンが消え残りの2ポーンは釘付けで無力になる。)12.Qh5(狙いは 13.Qxh7# である。)12…h6 13.Qxg6(再び詰みの狙いがある。このクイーンはもちろんタブーである。)13…hxg5 14.Bxg5 Qe8 15.Bf6 これで白は二重釘付けを利用して次の手で詰めることができる。

 これがその局面である。

 本譜の手に対して白はチェックに対処しなければならず、できれば当たりになっているポーンも救いたい。

7.Nc3

 白は 7.Bd2 Bxd2+ 8.Nbxd2 でeポーンを守るよりもポーンを捨てる本譜の方を好んだ。

7…O-O

 「チェスは臆病者のための競技ではない」とシュタイニッツはバッハマンへ宛てた手紙の中で書いている。早期にキャッスリングするのは一般的には適切な戦略である。本局の場合は強大な白の中原を破壊しなければならないので適切でない。黒はポーンの犠牲を受け入れて 7…Nxe4 と指さなければならない。そしてその後どのような攻撃が待っていようと受けきる可能性にかけなければならない。その方が本譜の消極的なキャッスリングより悪くなることはあり得ない。本譜は黒のナイトが二つとも好所から追い払われることになる。ピルズベリーは「絶対的で重要なことは、キャッスリングしようと考えるあるいはしなければならないならばキャッスリングしてよいが、キャッスリングが可能だからという理由でキャッスリングしてはいけない」という原則を唱えていた。

8.d5

 d5の地点は駒で占拠すべきなので通常はこのような手は疑問手とされる。しかしここではこのポーンはナイトを追い払い黒が …d5 で捌きにくるのを永久に防ぐという役目を果たしている。

8…Ne7

 この手は仕方がない。a5の地点に跳ぶのは 9.Bd3 と応じられナイトが盤端で立ち往生する。

9.e5

 今度は別のナイトを突っつく。

9…Ne4

 e8へ引くのは気が進まないので黒はナイトを交換しにいく。

10.Qc2

 自分のナイトが二つの駒で当たりにされているのでそれを守りながら敵のナイトに当てた。

10…Nxc3

 ほぼ必然である。当たりのナイトを 10…f5 で守るのは 11.d6+ でもう一つのナイトが取られてしまう。

11.bxc3

 この取り返しは先手になっている。黒ビショップは一手かけて逃げなければならず白の優勢は拡大する。白のクイーン翼ルークはb列が使えるようになり黒枡ビショップはもう一つの斜筋にも行けるようになった。

11…Bc5

 当然ながら唯一の別の逃げ場所よりもこの地点の方が可能性に富んでいる。

 陣形を比較すると白の方が断然まさっている。戦場に出ている駒は白の方が多い。それに駒の動きも白の方が良い。戦いにもっと駒を繰り出す見込みも白の方が良い。

 ここでのお薦めの処方箋は狙いをちらつかせて黒を忙しくさせること、即ち黒を受けに走り回らせ有効な抵抗を構築する余裕を与えないことである。

12.Ng5!

 表向きは詰み狙いで黒を怖がらせている。しかし実際の目的はキング一行(いっこう)のポーンの一つを前進させて弱体化を誘うことである。

 もしこれらのポーンの一つでも動けば黒はしてやられる。例えば 12…f5 なら 13.d6+ で駒損になる。また 12…g6 なら 13.Ne4 で 13…Bb6 とビショップを助けると 14.Bh6 でルークがe8に逃げても 15.Nf6+ で交換損になる。

12…Ng6

 受けるにはこの手しかない。キング翼ポーンは元のままだが黒は自分の駒を白の望む所に置かされた。このような状況では黒がうまく戦える見込みはあまり明るくない。

 白は型にはまった展開としてキャッスリングした黒の過ちを避けなければならない。そのようなおとなしい進行は黒に 13…d6 又は 13…h6 で白ナイトを撃退する時間を与えてしまう。白は相手に一息つかせる機会を与えてはならない。白は攻撃あるのみである。

13.h4

 次にh5に進んで黒ナイトをどかせクイーンで詰ませる狙いである。

13…h6

 他に指しようがない。黒は脅威を与えているナイトを追い払おうとしている。黒は 13…f6 でそれをすることはできない。そう指すと 14.d6+ Kh8 15.Nf7+ で黒の交換損になる。

14.d6!

 このポーン突きは迫力がある。黒ビショップは防御から隔絶され、一方白ビショップの利き筋が通った。白の狙いは 15.Qxg6 である。釘付けのfポーンはこのクイーンに触れられない。

14…hxg5

 取れる駒は何でも取った方が良い。

15.hxg5!

 ナイトが逃げることはない(その罰は 16.Qh7# である)。一方ルークには気持ちの良い素通し列がありクイーンにはまだナイトを取る狙いがある。

15…Re8

 黒キングはもっと動ける場所が必要である。

16.Qxg6

 重圧を緩めることなく駒を取り返した。1手詰めが一つと2手詰めが二つある。

16…Rxe5+

 黒は慰めに有形資産の在庫を同じにし、降伏する前に気休めのチェックをした。

17.Kf1

 最も簡明な手である。詰みの狙いがまだ残っている。白が 17.Kd2 Qxg5+ 18.Qxg5 Rxg5 でこれまでの努力を無にする可能性などほとんどあり得ない。

17… 黒投了

 黒は 17…Qe8 で1手詰みを避けることはできるが(ついでに自分でも詰みを狙っている)18.Qh7+ Kf8 19.Qh8# でしょせん即詰みである。

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カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

フランス防御の完全理解(165)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 バガニアンは続いて 10…Qd6 と指したが、11.Ne5 O-O 12.Kb1 Rad8 13.c4!(黒駒をd5の地点に来させない)13…h6 14.Bf4 となってクイーンが窮地に陥った。トパロフは 14…Qxd4 15.Bh7+ Kxh7 16.Rxd4 のあと戦力得にものを言わせることができた。

 10…Qd6 の代わりに 10…O-O の方が良さそうである。白が 11.h4 と突いてくれば 11…c5!? 12.dxc5 Qc7 でポーンを犠牲にするのが面白いようである。例えば 13.cxb6 axb6 14.Kb1 Nd5 となれば白キングに対する攻撃の可能性がある。しかし白は性急にキング翼攻撃を始める必要はなく、11.Kb1 で堅実に優勢を維持することができる。以上をふまえれば 7…b6 は疑問のようである。

8.dxc5

 8.O-O cxd4 9.Nxd4 もある。そして1993年アクモラでのツェシュコフスキー対ホルモフ戦では 9…Be7 10.c3 O-O 11.Re1 a6(11…b6 は 12.Nc6 で白が双ビショップになる)12.Bg5 Re8 と続いた。ここでホルモフは 13.Qf3! を最善手として 13…Qd5!? 14.Qe3 Ng4 15.Qh3 Bxg5 という想定手順をあげたが、16.Qxh7+ Kf8 17.Nf5! で白の勝勢になることを見落としていた。従って黒は改善が必要である。

 もっとはっきりした手はd4のナイトに挑む 9…Bc5 である。そして 10.c3 Bxd4! 11.cxd4 h6!?(Bg5 と釘付けにする手をなくしたが 11…Bd7 と指すこともできる)のあと黒は …Bd7-c6 で展開を完了する用意ができる。白は 9…Bc5 に 10.Be3 と応じることもできる。これに対して 10…Nd5? は 11.Bb5+! Bd7 12.Nxe6! Nxe3 13.Qxd7+ で悪いので黒は 10…Bb6!?(11…Nd5 の意図)か 10…Qe7 を選択すべきである。以下は 11.Re1 O-O 12.c3 b6 13.Bg5 Bxd4 14.cxd4 Bb7 15.Bc2 Rfd8 16.Qd3 h6 17.Bh4 Rac8 が想定されいい勝負である。

8…Bxc5

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(164)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

第25局
へクトル対L.ハンセン
コペンハーゲン・オープン、1995年
ルビーンシュタイン戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nd7 5.Nf3

 1993年ティルブルフでのベリヤフスキー対バガニアン戦で白は変わった 5.g3!? を試み、5…Ngf6 6.Nxf6+ Qxf6(6…Nxf6 と取る方が良いかもしれない)7.Bg2 Bd6 8.Ne2 e5 9.O-O と進んでいくらか優勢になった。g2のビショップはc8のビショップよりはるかに優っている。黒は型にはまった5手目よりも 5…b6 が面白い応手だった。そのあと 6.Bg2 Rb8!(6…Bb7 は 7.Nd6+! で悪い)7.Ne2 Bb7(8…f5! の狙いがある)8.O-O Ngf6 9.Nxf6+ Nxf6 10.Bxb7 Rxb7 11.c4 Be7 となれば黒はキャッスリングから …c5 と突くことができ互角の局面である。

5…Ngf6

 5…Be7 6.Bd3 Ngf6 7.Qe2 c5 8.Nxf6+ Bxf6?!(8…Nxf6 なら本譜に戻る)9.d5! は1995年アムステルダムでのティマン対グランダ戦だが白が良かった。

6.Nxf6+

 1995年リガでのアーナンド対バガニアン戦では 6.Bd3 が効果的で、6…Nxe4 7.Bxe4 Nf6 8.Bg5! Be7 9.Bxf6 と進んだ。ここで 9…Bxf6 と取りたいが 10.Qd3 で困るようだ。10…O-O なら 11.Bxh7+ だし、10…h6(アーナンドの推薦手!)なら 11.Bxb7!? Bxb7 12.Qb5+ で白が1ポーン得になるか少なくともかなり優勢になる。実戦では黒は 9…gxf6 と取ることにしたが、10.Qe2 c6(11.Bxb7 に備えたがアーナンドは 10…Qd6! の方がずっと強い手だったと指摘している。それならクイーンが重要な黒枡を守っている)11.O-O Qb6 12.c4 となってc8のビショップが惨めな状態になり白がたぶん d5 突きの仕掛け(適切な準備をしてから)で広さの優位を生かせるようになった。だから黒は 6.Bd3 には 6…c5 と応じるのが最善で、それならたぶん 7.Nxf6+ Nxf6 で本譜に戻っただろう。

6…Nxf6 7.Bd3 c5

 黒は 7…b6 も試している。これは格調高い試みで、白の中原に …c5 突きで挑む前にc8ビショップの問題を解決するためである。しかし1995年リガでのトパロフ対バガニアン戦では 8.Qe2 Bb7 9.Bg5 Be7 10.O-O-O となって、d1のルークが自分のクイーンに当たりになる可能性のために …c5 突きを敢行するのが困難になった。

 黒の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(44)

「Chess Life」1992年4月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

ゆっくり急げ 閉鎖布局を激しく指す

 一般に閉鎖布局(1.d4、1.c4、1.Nf3、1.g3)は戦略派に最も適していると確信している。しかし例外というものは必ずある。何回も米国チャンピオンになったフランクJ.マーシャルは史上最高の攻撃の達人の一人だったが、初手は 1.d4 の方を好んでいた。世界チャンピオンのアレクサンドル・アリョーヒンとガリー・カスパロフは閉鎖布局を破壊的な戦術の見せ場とすることにたけていた。今月は非常に閉鎖的な布局を激しく指す面白くて現在重要な手段について分析する。

 イギリス布局対称戦法の主手順は次の手から始まる。

1.c4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7

 局面は完全に対称である。白の唯一の優位は手番を握っていることにある。しかし局面はまったく閉鎖的なので、「手番」の優位を何か具体的なものに変えることは容易なことではない。白の最も重要な次の手は三通りある。

 (1)5.a3 白の作戦は b2-b4 突きでさっそくクイーン翼で動くことである。ヤセル・セイラワンがこの戦法の代表的な主導者である。

 (2)5.e3 白は白枡ビショップの斜筋を開けたままナイトをe2に展開する用意をしている。これは「グランドマスター引き分け」戦法のようなものになっている。多くの試合が 5…e6 6.Nge2 Nge7 7.O-O O-O 8.d4 cxd4 9.Nxd4 Nxd4 10.exd4 d5 11.cxd5 Nxd5 12.Nxd5(12.Re1 なら試合が続く)12…exd5 13.Be3 Be6 14.Qd2 Qd7 合意の引き分け になっている。

 次回ではの立場から 5.a3 戦法を激しく指す手法と、の立場から 5.e3 戦法を激しく指す二通りの手段について考察する。

 (3)5.Nf3 今回はこれを取り上げる。

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フランス防御の完全理解(163)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

34…Kg6?

 黒キングは方向を間違えた。シロフが指摘するように黒キングは中央へ向かって、白の d5 突きに対し自分のポーンを支援すべきだった。黒キングは侵入口のg5とh5を通れないのでg6の地点にいては何もすることがない。さらにはg列をふさいでいるので …Rg8 から …Rg1 と積極的に指すのも邪魔している。

35.Ke3 Rd8 36.Bc3 Kf7

 黒は誤りを訂正したが貴重な手を損した。

37.a4!

 白は d5 突きの仕掛けを急ぐよりも自陣をさらに強化した。白の意図は a5 から a6 と突いて黒のクイーン翼のポーンを攻撃することである。

37…Ke7 38.a5 Kd7

 38…a6 と受ければ白は 39.b4 と突いて次に 40.b5 で黒のクイーン翼を破壊するつもりである。シロフは 38…Kd6 はどうかと言っているが、39.Bb4+ Kd7(39…Kc7 なら 40.Be7)40.d5 でそれでも黒の気に入るほどのものではない。

39.d5! exd5 40.cxd5 cxd5 41.Bxf6 Rf8 42.Bh4!

 この手はd8の地点に利かして黒が …Rd8 でdポーンを守れないようにした。これにより中央がからっと開けビショップが猛威を振るうようになった。

42…Kc6 43.Kd4 Kb5 44.Bxd5 Kxa5 45.Bxb7 Rb8 46.Bd5 h5

 黒が収局のもっと早い段階でこのポーンをh3かh2に進めることができていれば、勝負は違ったものになっていたかもしれない。現実はこのパスポーンは役に立たなくなっている。

47.Be6 Ka6 48.Bc4+ Kb6 49.Ke5 a5

 f5ポーンは取られる運命である。一方白のfポーンには輝かしい未来が開けている。

50.Kxf5 Kc5 51.Ke5 1-0

(この章続く)

2013年04月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(162)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 黒の狙いは 18…Bf4 で交換得することである。ルークをc1から動かすと黒は 18…Bxg3 から 19…Nf5 で単純化することができる。シロフはルークよりも主導権を維持する方を望んだ。

18.Ne4!?

 18…Nxe4 は 19.Qxe4 Nf5 20.g4 で悪いので黒には選択の余地がない。

18…Bf4 19.Nxf6+ gxf6 20.Qe4!

 これが白の作戦の核心である。20…f5 を誘っているのには二つの重要な理由がある。一つ目はa1-h8の斜筋を弱めて d5! 突きでb2のビショップの斜筋が永久に通るようにすることである。このビショップは黒が …Bxc1 と取れば当然の対抗駒がなくなるので、黒は白のクイーンとビショップがg7の地点での頓死を狙う可能性につねにさらされることになる。二つ目は 20…f5 のあとh4のナイトが急に退路を断たれて g3 突きまたは白クイーンによる当たりにもろくなることである。

20…f5 21.Qe2 Bxc1 22.Rxc1

 黒の防御は面白くないこと極まりない。直接攻撃(g3 突きでナイトを取るなど)に対処しなければならないだけでなく、d5 突きに伴う白のもっと漠然とした着想についても心配しなければならない。シロフの犠牲は棋理に合っているかどうかにかかわりなく、非常に危険なものであることは確かである。

22…f6!

 これは受けの勝負手である。h4のナイトは助からないのでヒューブナーはa1-h8の斜筋を補強し、g列を白キングに対する反撃に利用する用意をした。

23.g3 Kf7 24.gxh4 Qf4!

 黒は主導権を得るために奮闘している。白のビショップの威力を鈍らせ、今度は …Qxh4 と …Rg8+ で白のキング翼をがたがたにする用意をした。しかしこれで駒割ははっきり白の有利に変わった。盤上からクイーン同士を取り除けば収局は白が完全に優勢である(d5 突きで中央を破壊すれば2ビショップは1ルークを圧倒する)。これは白が拒絶できないクイーン同士の交換を黒に「強要」することにより、キングをクイーン翼の安全な所に退避させる余裕があることを意味している。もっと直接的な 24…Rg8+ は 25.Kf1 Qh2 26.Ke1 Qf4 27.Kd1 となって白へのお手伝いになる[訳注 27…Rg2 と食い下がられるので 27.Qe3 の方が良いようです]。

25.Re1 Rg8+

 25…Qxh4 は 26.Qf3 で白クイーンが威張りだす。

26.Kf1 Rae8 27.Qe3! Qxh4 28.Ke2! Qxh5+ 29.Kd2 Rg2 30.Re2

 白はキングを安全にし、d5 突きで猛攻に出る用意ができた。だから黒はどんなに気に入らなくてもクイーン同士の交換を強いなければならない。

30…Qg5 31.f4

 もちろん 31.Qxg5? fxg5 は黒のキング翼のポーンの価値を増大させてしまう。

31…Rxe2+ 32.Bxe2 Qg2 33.Qf3! Qxf3

 33…Qh2?? は 34.Qh5+! でたちまち白の勝ちになる。

34.Bxf3

 黒の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

ポルガーの定跡指南(73)

「Chess Life」2005年2月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)(続き)

 戦型Ⅲ)1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6 5.g3 Nge7

6.Bg2

 白が 6.Bg5 でナイトを釘づけにすれば黒は 6…Be6 7.Nbd2 Qd7 と応じてナイトを自由にする。

 昔の試合(ヤノフスキー対マーシャル、シュレーヌ、1908年)では 6.Na3 Bg4 7.Nc2 Qd7 8.Bg2 O-O-O 9.h3 Bxf3 10.exf3 Nxe5 で黒が優勢になった。また 8.Ncxd4 O-O-O 9.e3 Ng6 も黒が良い。

6…Ng6

 黒はe5のポーンにさらに当たりを加えた。

7.Bg5

 白が単に 7.O-O と指してポーンを返した試合もいくつかある。しかし黒は 7…Ngxe5 8.Nxe5 Nxe5 9.Nd2 Be7 10.Nf3 Nxf3+ 11.Bxf3 O-O で互角にしている。

 もっと意欲的な手はポーンを守る 7.Bf4 である。この手の欠点は 7…Nxf4 8.gxf4 のあと白のポーンの形が乱れ、白キングもキング翼キャッスリングのあといくらか攻撃されやすいことである。前述の指定布局大会(フローニンゲン、2001年)でリフテリンクはティビアコフ相手に 8…f6?! と指した。しかし 9.Nbd2 fxe5 10.fxe5 Bf5 11.Qb3 で白が好形になった。改良できるとすれば …f6 突きを急がずに 8…Bf5 か 8…Be7 で展開を続けることかもしれない。

7…Qd7

 クイーンがビショップの前に立ちふさがるのは見られたものでない。しかしそれでも最善の選択である。

 7…Be7 は 8.Bxe7 のあとどの駒で取り返しても不都合があるので悪手である。クイーンで取り返せばd4のポーンを見捨てることになる。キングで取り返すとキャッスリングの権利がなくなる。最後にどちらのナイトで取ってもe5のポーンに対する圧力を弱めてしまう。

8.e6

 白はこの手でポーンを返して黒のfポーンをe列に来させる。

 現代の試合のゲルファント対モロゼビッチ戦(モンテカルロ、2004年)では白が 8.O-O h6 9.Bf4 Nxf4 10.gxf4 と指したが黒に 10…g5 11.Nbd2 gxf4 12.Ne4 Be7 13.Qd2 Qg4 14.Kh1 Bf5 15.Nxd4 Rd8 と応じられてうまくいかなかった。

8…fxe6 9.O-O e5

 黒は駒割を回復した。しかし白は陣形上の優位をいくらか保っている。白は展開に優り、お互いの白枡ビショップの働きの違いは特に明らかである。

 10年以上前にGMモロゼビッチはクラセンコフ相手に(ポドリスク、1993年)この局面の黒側を持ち 10.Nbd2 h6 11.Bh4 Be7 12.Bxe7 Qxe7 13.Qc2 Qf7 14.Ne1 O-O 15.Nd3 Kh8 16.b4 Bg4 で対等に戦えた。

 最近のファン・ベリー対モロゼビッチ戦(モンテカルロ、2004年)で白は改良手を出し 10.Qa4 Bd6 11.Nbd2 h6 12.c5 Bf8 13.Bh4 a5 14.a3 Ra6 15.Rfe1 Qf5 16.Rac1 Be7 17.Bxe7 Ngxe7 18.e3 で優勢になった。

結論

 アルビン逆ギャンビットは黒が定期的に指すには危険な布局であることは確かである。しかし意表を突く武器としてたまに用いるのは面白い。ロシアの若きスーパーGMのモロゼビッチは最近黒で 5…Nge7 を用いて好結果を残している。

 白は恐れることはあまりない。作戦は普通は明らかである。伸びすぎのd4ポーンを取れ!である。白はまたe5のポーンを返す好機を狙うことが多い。

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フランス防御の完全理解(161)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

8.Ng3

 別の手は 8.Ned2 で、このナイトをc4またはf3を経由してe5の地点に捌く作戦である。黒は積極的に動かなければならない。そして 8…Nd5! 9.Nc4 Nb4 10.Be2 Be4! 11.c3 Nc2 12.Rb1 Nxd4 13.Qxd4 Bxb1 14.Bg5 f6 15.Rxb1 fxg5 となれば気持ち良くはないが、交換得にポーンを得ていることは大変な戦力である。1993年ロンドン、ロイズ銀行大会でのI.ロジャーズ対マクドナルド戦では次のようにもっと穏やかに進んだ。9.Re1 Be7 10.c4 Nf4 11.Bf1 O-O 12.Qb3 Ng6 13.Qe3 Bxf3 14.Nxf3 c6 15.b3 Qa5! 16.Bd2 Bb4 =

 また 8.Neg5 もあり Nxf7 や Nxe6 という戦術を念頭に置いているが、黒は 8…Bd6! で何の問題もない。例えば1994年チェルテナムでのハーリー対マクドナルド戦では 9.Re1 h6 10.Nh3(10.Rxe6+ Kf8!)10…Bxf3 11.Qxf3 c6 12.Nf4 Qa5(ナイトをh5の地点に行かせない)13.c3 O-O = と進んだ。

8…Be7 9.b3 O-O 10.Bb2 Bxf3

 1992年マニラ・オリンピアードでのアダムズ対ドレエフ戦でドレエフは白のクイーン翼の弱点に 10…a5 11.a3 b5! 12.Re1 b4 ですぐにつけ込もうとし、自分のビショップを残すこととc3に空所を生じさせることに成功した。しかし1992年ハルキディキでのボロガン対クラムニク戦では白が 11.c4! a4 12.Ne5 +/= というようにもっとうまく指した。あとでボロガンは 10…b5!? を理にかなった改良手としてあげた。

11.Qxf3 c6 12.c4 Re8 13.Rfe1 Nf8 14.h4 Qc7 15.Rac1 Ng6!

 黒は脅威となるh4ポーンを相手にしている暇がないのでそれにはかまわず定型の捌きを続けた。c列で白のルークが黒のクイーンと向かい合っているので、d5 突きが強力な狙いになっている。例えば 15…Rad8?! なら 16.d5! cxd5 17.cxd5 Qd7 18.d6! Qxd6(18…Bxd6? 19.Bxf6 gxf6 20.Nh5 Be5 21.Rxe5!)19.Bb5 N8d7 20.Red1 Qb6 21.Bxf6 Qxb5 22.Bxe7 Rxe7 23.Rc7!(シロフ)となって黒のナイトが縦横に釘付けにされ白が完全に局面を支配している。

16.h5

 代わりに 16.Bxg6 hxg6 17.d5 なら黒は 17…exd5 18.cxd5 Rac8 と指せる(ヒューブナー)。

16…Nh4 17.Qe3 Bd6!

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(160)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

実戦例

第24局
シロフ対ヒューブナー
ミュンヘン、1993年
フォートノックス戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bd7

 黒は自分の問題駒をすぐに根本的な方法でなくそうとしている。昔からの迅速な展開の原則を一切無視してビショップをc8からc6に上げe4またはf3の白のナイトと交換するつもりである。代わりに 4…b6 と突く手は劣った手で、5.Qf3! Bb7 6.Nd6+ で白が優勢になる。4…Nd7 については次局を参照されたい。

5.Nf3 Bc6 6.Bd3 Nd7 7.O-O

 7.Bg5?! は交換になり狭小な陣形の黒を助ける。例えば1995年ブダペストでのエレケス記念大会でのエンダース対マクドナルド戦では 7…Be7 8.Bxe7 Qxe7 9.Qe2 Bxe4 10.Bxe4(10.Qxe4 Qb4+)10…Ngf6! 11.O-O(11.Bxb7?? Qb4+)11…Nxe4 12.Qxe4 c6 = と進んだ。

7…Ngf6

 白の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(159)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

黒が …e5 と突く

 

 黒はときには中央で …e5 とこちらのポーンをぶつけて白枡ビショップを自由にできるときがある。それは二つの結果を入念に検討した上で成される。一つは単純化を図る白の dxe5 で、そのとき白の展開の優位が怪しくなるかもしれず、もう一つは白の d5 突きで、そのとき両者がキング翼にキャッスリングしていると仮定すれば黒のキング翼の広さの優位よりも白のクイーン翼の広さの優位の方が通常はつけ込みやすいという非常に複雑な局面が生じる。

 要するにルビーンシュタイン中原では黒は白が e5 と突きこしたいろいろな中原よりも勝つ可能性が少ない。しかし弱点はもっと少なく安全な陣形である。白の方は駒をよどみなく展開でき広さで優位に立てる。しかしこれは容易に消滅して不毛な引き分けになることがある。

(この章続く)

2013年04月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

[復刻版]理詰めのチェス(04)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第4局

 ブラックバーン対ブランチャード戦で黒はありもしない攻撃を避けるために自分からポーンを h7-h6 と突いた。ブラックバーンはビショップを犠牲にしてこの無神経なポーンを除去し敵陣侵入への足がかりとした。

キング翼ギャンビット拒否
白 ブラックバーン
黒 ブランチャード
ロンドン、1891年

1.e4

 努力から成る多くの分野で価値は一定だった。この試合が行なわれた時は-

 物語の出だしは「昔々」、

 三目並べの選手は中央の枡にXを置き、

 チェッカーのマスターは11-15で始め、

 チェスのマスターは 1.e4 で試合を始めた。

 科学者の研究にもかかわらず以上のことは相変わらず良い始め方となっている。

1…e5

 黒は二つの駒の筋を通しながら中原で均衡を保つ。

2.f4

 この手は黒に中原を明け渡すようにしむけるためのポーンの提供である。

 黒が贈り物を受け取れば白は 3.d4 と突いて中原を自分のポーンで独占することができる。さらにf筋を開けたことにより白は弱いf7の地点に攻撃を仕掛ける可能性が得られる。ここは黒キングが原位置にいてもキャッスリングしてももろい地点である。

2…Bc5

 多分この手がギャンビットを拒否する一番安全な方法である。

a) ビショップは中原ににらみをきかし絶好の斜筋を押さえている。

b) ビショップはポーンのd4への利きに加勢し白がポーンをd4へ突くのを防いでいる。

c) ビショップはc5からg1の地点を見下ろし黒が急いでキャッスリングできないようにしている。

3.Nc3

 白は 3.fxe5 を避けた。この手に対する黒の応手(恐らく瞬時に指してくるだろう)は 3…Qh4+ 4.g3(4.Ke2 はもっと悪くて 4…Qxe4#)4…Qxe4+ で黒のルーク得になる。白の本譜の手は 3.Nf3 ほど積極的でないがブラックバーンは 3…Bxg1 4.Rxg1 Qh4+ 5.g3 Qxh2 を誘った。これに対しては 7.Rg2 から 8.fxe5 で白が優勢になる。

3…Nc6

 怪しげな誘いに対するにべもない応手である。

 黒は引き続き戦場に戦力を集めている。中原の支配権の戦いに黒のナイトはe5とd4の地点に圧力をかけて応分の働きをしている。

4.Nf3

 白は 4.fxe5 Nxe5 5.d4 で自陣を広げる機会を逃がしたのではないだろうか。いや、そうではない。4.fxe5 に対して黒は 4…d6 でポーンを取らせ自由で容易な展開を得ることができる。

 本譜の手は敵クイーンのチェックで煩わせられる可能性に終止符を打ち、eポーンを取る狙いを復活させる。

4…exf4

 この手は少なくとも四つの点でまずい手である。

a) 駒でなくポーンを動かして黒はすべての布局戦略における主目的を見失った。「駒を動かせ。それらを最下段から離れさせて働かせよ。」

b) 黒は中原における足場とその特権を放棄した。

c) 黒は維持できないポーン取りに無駄な手数をかけた。

d) 黒は白に次の手で中原を席巻させた。それにより黒ビショップは後退させられ手損させられた。

 タラシュは黒がここで指したような手を駒をただ取りにさせるようなあからさまなポカよりも罪深いと考えていた。

 この手の代わりに黒は 4…d6 と突いた方が良かった。そうすればすべて問題なく白枡ビショップも日の目を見た。

5.d4!

 当然である。このポーン突きの威力が分かるのに選手なら0.5秒以上を要すべきでない。このポーンは中原のかなりの部分を制圧し(d4の地点を占拠し重要なc5とe5の地点に利いている)、黒ビショップを絶好の位置からどかし自分のビショップの攻撃路を開いた。

5…Bb4

 e7に引き下がって防御に計り知れない役割を果たす方がもっと理にかなった戦略だった。

6.Bxf4

 ポーン損を取り戻すと共に駒を展開させるのでこのポーン取りは一石二鳥である。

6…d5

 白のeポーンに当てたこの手は中原の所有権を争おうというものである。それと共に黒はクイーン翼の駒にもっと空間を与えている。

7.e5

 ポーンの動きにはすべて良い面と悪い面がある。(タラシュは「ポーンを突くたびに陣形がゆるむ」とよく言っていた。)

 このeポーン突きの欠点はe5の地点をポーンが占めたことにより自分の駒から役に立つ地点を奪ったということである。ナイトは特にe5の地点にいれば大きな働きをする。

 代償にこのポーンは黒陣全体を締め付ける効果を発揮していて、特にキング翼ナイトを束縛して自然なf6の地点に展開させなくしている。

7…Bxc3+

 黒はブラックバーンに二重ポーンを負わせる期待にひかれた。しかしどうして釘付けにされた何の害にもならない駒を取るのだろうか。どうして圧力を和らげてしまうのだろうか。

 もっと推奨すべきやり方は 7…Bf5 を手始めに控えている駒を繰り出すことである。

8.bxc3

 二重ポーンの不利(c4 と突いてポーン交換させれば解消できるのでほとんど取るに足りない)と引き換えに白は双ビショップに加えてルークが有効に利用できる素通しのb列の有利さを得た。

8…Be6

 これはおざなりの手である。このビショップはf5に進出して大きな効果を発揮することができた。そうすれば白が交換を望まない限りビショップを自由にd3に置くのを妨げることができる。

 駒を最も働く地点に展開させることは確実に有利である。相手が同じことをするのを防げばさらに有利さが増す。

 大切なことは急所の地点の支配権を争うことである。

9.Bd3

 明らかにすばらしい地点に展開した。二方向に利いていて、どちらの翼でも手助けする用意ができている。

9…h6

 この手は明らかに 10.Ng5 や 10.Bg5 を防ぐためである。

 白は自分の展開を終えることしか関心がないのでこのような手を指すつもりは少しもなかった。

 9…h6 という手はhポーンがポーンによる攻撃の土台となる場合にだけ指すべきである。つまりhポーンがgポーン突きを支える場合である。そもそもこの手はポーンの形をゆるめて攻撃への抵抗力を弱めるので益よりも害の方が多い。もしキングがこの方面にキャッスリングすればとりわけ危険である。それはこのポーン自体が並びから突き出ているので格好の標的となるからである。おまけに(上述で十分でなければ)展開の目標を推し進めるのに何もしていない。まだ閉じ込められている駒の解放に費やすべき手数を無駄にしている。

10.O-O

 たった一手で白はキングの安全を確保しルークを素通しの列に引き出す。確かにこの列はナイトとビショップで散らかっていてルークの利きをじゃましている。しかしこれらは駒であってポーンではない。駒はじゃまにならないように素早くどけることができる。

10…Nge7

 ナイトにとって一番うれしい場所というわけではない。しかし他にどのようにしたら戦いに加われるだろうか。この展開は不本意ではあるけれども元の場所にほったらかしにしておくよりははるかに良い。

11.Rb1!

 マスターはこの手を瞬時に指す。凡庸な選手は一瞥もしない。ルークはこの列にどんな将来性があるのだろうか。ルークはポーン取りになっているがこのポーンは簡単に守られる。こんな無駄な示威の代わりにキング翼攻撃に努めてはどうか。

 その答えは次のとおりである。直感(知識や経験の場合もあるだろう)がマスターに素通しの列を占有しなければならないと言うのである。つまりルーク又はクイーンですぐにそれらを支配するということである。直感は次のように言う。「局面の要求に合った手を指しなさい。そうすれば適切に報われるだろう。優勢な局面を確立するのに必要な手を指しなさい。最大限の働きをし陣地の大部分を支配するように駒を展開しなさい。手筋に着手する前に敵陣を弱体化させ敵駒の動きを押さえ込み抵抗力を削ぐように努力を傾けなさい。好機が来れば攻撃はひとりでにうまくいく。決定的な手筋は目の前にやって来る。」

11…b6

 これもマスターとアマチュアを分ける手である。

 ポーンを進めて攻撃をかわしルークに無駄骨をおらせるのはなんとたやすいことだろう。この受けは自明なように見えるかもしれないが上級の選手なら誰もこんな手を急いで採用したりしない。彼ならポーンの形を乱すのを避けようとして代わりに 11…Rb8 や 11…Qc8 のような手を考えるだろう。

 本譜の手の後黒のクイーン翼の白枡は弱体化している。もっと重要なことはポーンの前進でクイーン翼のナイトが強固な支えを失ったことである。これは面白い状況で、白は以降のキング翼攻撃で盤の遠く離れた反対側からそれを利用することになる。

12.Qd2

 クイーンは1段目を離れてルーク同士が連結できるようにする。ルークは縦に重なることによって素通しの列で圧迫を強めたり協同して事に当たったりすることができる。

 このクイーンの動きの完全な意味は、もっともらしいが表面的な手を指す相手には見過ごされ易い。

 チェスでは最も単純で穏やかな局面でも機械的に指してはいけない。

12…O-O

 自ら嵐の真っ只中に飛び込んだ。

 安易に頭に浮かんだ手を指す前に黒は次のように自問した方が良かった。「白の一つの弱点、即ちc列の二重ポーンにどうしたらつけ入ることができるだろうか。」

 そうすれば黒は 12…Na5 でナイトをc4に差し向ける手を思いついたかもしれない。ナイトはそこで白の二重ポーンをせき止め白駒の自由な動きをじゃまし白にとってはのどに引っ掛かった骨のような感じになる。白はc4に来たナイトを取れるが自分の役に立つビショップの一つを手放さなければならないし(その交換の結果生じる)ポーンの形も黒のポーンの形より劣る。そして黒は自分の駒の一つをd5に据えて大きな効果を発揮させることができる。d5の地点は敵のポーンによって決して追い立てられることがない。

13.Bxh6

 ブラックバーンは光のような速度(毎秒186,324マイル)でこのポーンをもぎ取ったに違いない。

 ビショップの代償にブラックバーンは戦力の見返りとしてすぐにポーン2個を得、敵キングの周囲のポーンのバリケードを破壊した。もっとあるがそれはこれから見ていくことにする。

13…gxh6

 黒はこのビショップを取らなければならない。さもないと大局的になんの代償もなくポーンを損することになる。

14.Qxh6

 犠牲にした駒の代わりに白が得るものをみてみよう。
1) 現物としてポーン2個を得た。
2) 白クイーンは敵陣で威張っている。1手詰みも残っている。
3) 黒キングを保護していたポーンの幕を引き裂いた。
4) 15.Ng5 から始まる強力な攻め手が用意されている。
5) (15.Ng5 の後)もっと支援が必要ならば 16.Rf3 から 17.Rg3 で援軍を呼ぶことができる。

14…Ng6

 他に受けがあっただろうか。

 14…Nf5 なら(白ビショップの利きをじゃまするため)15.Bxf5 Bxf5 16.Qxc6 でクイーン翼の浮いているナイトを召し上げる。これは黒が11手目に本能的にbポーンを突いたせいである。

 14…Bf5 15.Bxf5 Nxf5 16.Qxc6 でやはり不運なナイトがさらわれる。

 14…f5 ならe6のビショップが当たりになっている。白はタルタコーワの「取ってから理屈を考えよ」という助言のとおりにビショップを取るだろう。

15.Ng5

 再びh7での詰みを狙っている。この手は荒っぽく 15.Bxg6 fxg6 16.Qxg6+ から 17.Qxe6 で駒得して勝つ手よりも速い。

 ブラックバーンは1世紀以上前に活躍したバロン・フォン・ハイデブラント・ウント・デル・ラーザが唱えた「最も単純で最短の勝ち方が最良の勝ち方である」という箴言に従った。

15…Re8

 キングの逃げ道を作った。

16.Rxf7

 ここでも楽しい勝ち方がいくつかある。

 16.Bxg6 とし 16…fxg6 なら 17.Qh7# で詰み。

 16.Nh7 から 17.Nf6+ も早く詰む。

 本譜の手は黒キングをひき止めまた1手詰みを狙っている。

16…Bxf7

 まだ指し続けたいならこう指すしかない。

17.Qh7+

 黒キングを運命の場所に追い立てる。

17…Kf8

 唯一の手。

18.Qxf7#

 詰み。

 もっともらしいけれどおざなりのチェスを指すことの危険性が本局にはよく現れている。本局と他の7局を同時に目隠しで指したブラックバーンは道理と筋道に頼って勝ちを収めた。それは盤面の見える相手の行き当たりばったりのチェスよりも疑いもなくまさっていた。

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フランス防御の完全理解(158)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

黒が …gxf6 と取る

 

 白のナイトはe5とe4の地点を「準拠点」として利用できることがよくある。というのは黒がそのナイトをどかせようとポーンを突くと(…f6 または …f5)e6のポーンが出遅れポーンになって不都合だからである。これが Bxf6 に …gxf6 と取り返す理由の一部となっている。その方が白のナイトの使える中央の枡が少なくなる。黒はg列も自分のルークのために利用でき、白がキング翼にキャッスリングした時には非常に役に立ってくる。g8のルークとb7またはc6のビショップは協同してg2の地点に事に当たれる。黒は明白な理由で …gxf6 を …O-O-O と組み合わせるが、…O-O のあとでもこの取り方は意外にも有効になることがある。h8のキングは弱いh7のポーンを守っていて、…f6-f5 と突いた後でもかなり安全である。もっとも黒は白がf5の地点で駒を切ってくる手に注意しなければならない。

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(157)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

黒が …b6 と突く

 

 …b6 と突いて …Bb7 と指す単純な作戦は黒のすべての課題に対する解決策のように思えるかもしれない。そんなに簡単ならどれほど良いだろう。…b6 突きはb5とc6の地点を弱めることになり、白は普通はこれに Bb5 や Nc6 のような手によってつけ込むことができる。また黒は白の広さの優位に立ち向かってもいない。しかしあまり展開で立ち遅れることなく …b6 から …c5 と突くことができれば、楽に互角になるかもしれない。

(この章続く)

2013年04月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(43)

「Chess Life」1992年2月号(6/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

遅かれ早かれ – 1.d4 か 1.g3 か?(続き)

 Ⅱ 1.g3(続き)

シチリア防御 [B20]
閉鎖戦法
白 ヤン・キービッター
黒 GMエドマー・メドニス
メス、1990年

1.g3 g6 2.Bg2 Bg7 3.d3 c5 4.e4

 白が早く e4 と突き黒も早く …c5 と突いたので、布局は閉鎖シチリア防御の1変化と考えられる。

4…Nc6 5.f4 d6 6.Nf3 e6 7.O-O Nge7 8.c3

 白のこの手と次の手は中央で望ましい d4 突きを指すつもりである。普通の閉鎖シチリアの Nc3 を省くことによって白はこの進攻の可能性を高めた。

8…O-O 9.Be3 b6 10.Nbd2?

 この手は消極的すぎる。正着は 10.d4! である。これで中央で動き始めるのは黒の方になった。

10…Ba6! 11.Qc2 d5 12.Rfd1 d4! 13.cxd4 Nxd4! 14.Nxd4 Bxd4 15.Nf1 Bxe3+ 16.Nxe3 Qd4 17.Kf2 Rad8

 黒はここから弱い出遅れdポーンに対して駒を集中させる。

18.Ke2 Rd7!

 白はここで 19.Rd2 Rfd8 20.Rad1 Nc6 21.a3 と指さなければならなかった。白陣はひどいが、黒がすぐに勝ちになる手順はない。しかし白の次の手のあとならある。

19.e5? Rfd8 20.Nc4

 予定の 20.Be4?? は 20…Qxe4 で守ったことにならない。しかし実戦の手のあと黒はe3の地点に侵入できる。

20…Nf5! 21.Bh3 Bxc4 22.Bxf5 Ba6! 白投了

 23.Be4 とは指せない。23.Bh3 には 23…Bxd3+ があるので投了は止むを得ない。

結論

 (1)1.d4 と 1.g3 はどちらが強力な手か?答え 同じ強さである。
 (2)どちらの手を指すべきか?答え 棋風によるだろう。それでも助言すべきことはある。活動的で直接的な 1.d4 の方が指しやすい。なぜなら「自然な良い」手は有利になるのが普通だからである。私の考えでは少なくともレイティング2200の「チェスの理解」がないと 1.g3 の威力を発揮できず柔軟性にあふれた手に潜む不利に陥る恐れが強い。それがこのキービッター氏の試合に起こったことである。

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2013年04月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(156)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

黒が …c5 と突く

 既に述べたように黒が双ビショップを放棄していなければ、黒の主要な解放手段は …c5 突きである。これは …cxd4 と交換すれば白の広さの優位が消え去ることを意味する。

 

 だから黒は例えば白が e5 と突いたときによく起こる狭小な中原のように、相手のポーン中原によって自分の駒が締めつけられるのを心配する必要はない。しかし黒の展開にはいくらか支障ができ、中原のポーンがなくなったので白駒は容易に攻撃的な地点につくことができる。一方で黒はc8のビショップを良い斜筋に展開させることが難しい。実際白の戦略の中心となる方針はこのビショップを働かせないようにすることである。

 

 白のポーン中原が消滅したので白は黒駒を締め上げることを期待しながら気長に指すことはできない。敵駒を締め上げるべきものが何もない!代わりに自駒の展開の優位を利用して攻撃作戦を立てるようにしなければならない。上図の素朴なシナリオではビショップをd3とg5に、クイーンをe2に、ナイトをe5というように黒のキング翼に対する攻撃のために駒を完璧に配置している。注意すべきは黒が …b6 と突けないということである。そう突くと Bxf6 Bxf6、Qe4 でh7とa8の地点の両当たりになって白が交換得になるからである。

 クイーン翼にキャッスリングし h4 と突くことにより白は …g6 には h4-h5、…h6 には g2-g4-g5 で迅速に反撃できる。白はもちろんキング翼にキャッスリングすることもでき、cポーンをもっと攻撃的に用いてd4のナイトを支えるか黒駒にd5の地点に来させないようにすることができる。

 白のクイーン翼キャッスリングに対しては黒は、自分もクイーン翼にキャッスリングすることにより(そうすることが遅すぎるのでなければだが)わずかな不利を甘受するか、白キングに対して猛攻を仕掛けなければならない。

 

 黒の攻撃は選択肢が少ないのである意味でやりやすい。だいたいはシチリア防御のように …Qa5、…Bd7 そして …Rc8 と指さなければならないが、白の通例の展開のリードを迎え撃とうとするならば防御に非常に創造力を発揮しなければならない。一つの重要な着想は …Rf8-d8、…Bc8-d7-e8 と捌いてf7のポーンを守ることである。

 白のキング翼キャッスリングに対しては黒はもっと選択肢がある。キング翼のポーンの進攻はありえないので、正確に守って白のわずかな優勢をゆっくり無効にすることに努めることができる。

 

 その一方で余裕があれば黒は …Qc7 から …Bd6 と指してh2の地点を攻撃することができる(普通は …a6 と突いて Nb5 の狙いをなくしてから)。黒がクイーン翼にキャッスリングしていれば、このあと …Ng4 から …h5 と指すことができる(しかし白もクイーン翼のポーンを非常に速く突き進めることができる)。どちらの翼にキャッスリングしていようと黒は白枡の「問題」ビショップを投入して、…Bc8-d7-c6 か …b5 から …Bb7 によりしばしば絶大な結果を得ることができる。

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(155)

第7章 ルビーンシュタイン中原(続き)

フォートノックス陣形

 この問題に対する一つの根本的なやり方はできるだけ早く不良ビショップをナイトと交換してから局面を閉鎖的に保って、白が局面を開放することができずそのため陣地の広さの優位、展開のリードおよび双ビショップを生かすことができないことを信じることである。これは …Bc8-d7-c6 という手数のかかる捌きのあとe4またはf3のナイトを取ることにより実現でき、次のような陣形になる。

 

 黒は …c6 と突いて白枡に堅固な要塞を築く。これにより特に d5 突きによる白のどんな仕掛けも妨げ、h1-a8の斜筋に沿った攻撃からb7のポーンを守っている。このポーン陣形はスカンジナビア防御とカロカン防御とから生じる局面と同じである。もっともカロカン防御では黒は特に双ビショップを放棄していないのが普通である。実際これは非常に堅固な陣形でフォートノックス[訳注 米国ケンタッキー州の軍用地で連邦金塊貯蔵所がある]戦法という名前にふさわしく、棋理に合っていることはアナトリー・カルポフが最も最近の転向者の一人であることからも裏づけられる。その一方で黒は双ビショップを放棄したので、指せるが永久に狭小な陣形に甘んじなければならない。

 白はよく c4 と突いて陣地を広げてくる。そして d5 と突くことに成功すれば、d5で2度ポーン交換のあと中央が開放されると考えるのは当然である。そのような開戦はa2-g8とh1-a8の斜筋が通ることにより白の白枡ビショップの威力が大きく増すことになる。このビショップに対抗する敵のビショップはない。このポーン突きが行なわれると、このビショップは(全般的な作戦がクイーン翼を攻撃することであれば)b7の黒ポーンを脅かすことに用いたり、f7の地点に圧力をかけてキング翼攻撃の一部として用いたりすることができる。もし白が d5 と突けるようなことになれば、おそらく黒にとってすべてがうまくいっていなかったということだろう。黒の戦略は中央が閉鎖的なままであることにかかっている。

 白のもっとも自然な作戦は敵キングを直接攻撃することである(たいていキング翼で)。そのような作戦は双ビショップの優位と白駒の動きが自由なことにより助長される。白は b2-b4-b5 または a2-a4-a5-a6 と突いていくことにより黒のクイーン翼のポーン陣形に弱点を生じさせようとすることもできる。白枡ビショップはf3の地点またはh1-a8の斜筋のどこかにいて黒のクイーン翼を粉砕するのが理想的である。

 

 もちろん黒は指をくわえて見ている必要はない。基本的には危険に警戒して相手の狙いを無効にするようにしなければならない。ほぼ同じ価値の駒同士の交換は黒の有利になることが多い。黒の優先事項は弱点を作るのを避けることである。すぐに積極的に動くことには見通しはほとんどない。黒は白陣をつぶすことに期待するよりも弱めようとしなければならない。

 重大な問題は黒が白のdポーンを …c5 突きから …cxd4 によって除去すべきかどうかということである。この基本的なポーン陣形に至れば、このような作戦は通常は良い構想である。例えばこれはカロカン防御の主手順の中心となっている構想である。しかしフォートノックスでは事情が違う。黒にはもう白枡ビショップがなく、…c5 と突くと自陣の弱点になっているb7のポーンをさらけ出すかもしれない。一般に相手に双ビショップがあるとき中央を開放することは賢明でない。だから黒のもっと良いやり方は敵のパスポーンについて「まず抑止し、次にせき止め、最後に粉砕せよ」というニムゾビッチの警句を思い起こすことである。白のdポーンは同じ対処に値する。以下は黒の理想的な戦略である。

 まず黒は白のdポーン突きを防ぐためにd5の地点を万力のように締めつける。それから可能ならば黒枡ビショップ同士を交換してd4の地点を守れる白駒を1個減らす。黒のキング翼ビショップについて一言附すると通常は(d6の地点よりも)e7の地点に行く。黒はときには …Rfe8 から …Bf8 と指し、…g6 から …Bg7 と指すときさえある。あとの場合そのビショップはキング翼の防御も強化しながらd4の地点に圧力をかけることになる。白の黒枡ビショップと交換できれば理想的である。

 

 白が b3 突きから Bb2 と指せば、…Qa5 から …Ba3 でビショップ同士を交換するのが黒の良い作戦になる。黒のルークはd8とe8で受けによく働いている。しかし可能ならばたぶん一組の小駒同士を交換したあとで白のdポーンに対しd列でルークを重ねることができる。

 可能ならばたぶんクイーンをb6に置くことにより黒は白にc5 と突かせようとする。そうなればd5の地点は黒のナイトにとって絶好の拠点になる。しかし黒はそうなるとd4の白ポーンを隠すことになるのでこの拠点の占拠を急がないだろう。また黒は …b5 と突いて白のポーンを解体しd5の地点を支配しようとすることもできる。白は応接を誤るとd4のポーンを守ることができなくなる。その一方で用心深ければ c5 と突かされるのを避けることができdポーンを支えることができる。その場合にはどちらも動けない状態になる。

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(72)

「Chess Life」2005年2月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)(続き)

 戦型Ⅱ)1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6 5.g3 Be6

 黒はc4のポーンを当たりにし 5…Bg4 の戦型と同様の作戦の準備をした。

6.Nbd2 Qd7 7.Bg2

 黒はここでもまだまったく異なる二つの作戦を選ぶことができる。1)…h7-h5 突きで攻撃する。2)…Ng8-e7-g6 でe5のポーンを取り返す。

7…Nge7

 7…O-O-O 8.O-O h5 9.Qa4(9.h4 もある。9.b4 Bxb4 10.Rb1 または 10.Qa4 には 10…h4 で黒もそれなりに反撃できるようである)9…Kb8(9…Bh3 なら白はいつもどおり 10.e6! Bxe6 11.Ng5 と指す)10.b4 Nxe5(黒が 10…Bxb4 とポーンを取ると 11.Rb1 で白の攻撃が非常に強力になる)黒はポーンを取り返したが 11.b5 Nxf3+ 12.Nxf3 となれば明らかに白の攻撃の可能性の方を持ちたい。

 7…Be7 この新手はティビアコフ対ブレンニンクメイヤ戦(フローニンゲン、2001年)で指された。8.Qa4 h5 9.Nb3 Rd8(d4ポーンを守った)これより良い手は他にない。例えば 9…O-O-O ならティビアコフの読み筋は 10.Ng5! Bb4+ 11.Bd2 Bxd2+ 12.Nxd2 Nge7 13.Nb3 で、白が満足できる。また 9…d3!? なら白の最善の応手は 10.Nfd4 Nxe5 11.Qxd7+ Bxd7 12.Bxb7 Rb8 13.Bd5 で、やはり白が優勢である。

 10.O-O! 白はキャッスリングを急ぐ必要がある。10.h4 または 10.Bf4 だと黒が 10…d3 でわけの分からない局面にしてくる。10…h4 11.Bf4(ここでは 11.Rd1 も可能だった)11…hxg3 12.fxg3! このあと Rd1 でd4ポーンが弱いので白が明らかに優勢になった。

8.O-O Ng6

9.Qa4

 スミスロフ対スメデレバク戦(ポラニツァ・ズドルイ、1966年)でも 9.Qb3 Rb8 10.Ng5 Ngxe5 11.Nxe6 でナイトをビショップと交換することにより白が少し優勢になった。

9…Be7 10.Nb3 O-O 11.Rd1 Rad8 12.Bg5 Ngxe5 13.Nxe5 Nxe5 14.Qxd7 Rxd7 15.Bxe7 Rxe7 16.Nxd4 Bxc4 17.Rac1

 白の方が動きやすい局面である(メドゥナ対M.ミハルチシン、プラハ、1980年)。

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フランス防御の完全理解(154)

第7章 ルビーンシュタイン中原

 

概説

 黒は白のeポーンを除去し、e5の連鎖ポーンというフランス防御の主手順に特有なポーン陣形で締めつけられるのを防いだ。しかし黒は決してすべての課題を解決したわけではない。少なくとも一時的には展開の困難な不良ビショップをまだ抱えているし、白の4段に対し3段という陣形の狭さの不利もある。

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(153)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 f4とh2の両方のポーンを器用に釘付けにした。

17.Kb1?!

 代わりに 17.Re1 と指すと1987年オランダでのファン・デ・アウデベーテリング対ティンメル戦では 17…e5 18.Qd2 e4 19.Nxd4 ∞ となり、1986年ソ連でのクロバン対リョフキー戦では 17…Bd7 18.Qd2 Rc8 19.Nxd4 Ncxd4 20.Bxd4 Ng3 = となった。

17…Bd7

 17…Ne3 は疑問で、18.Re1 Nxg2?(18…Nc4 の方が良い)19.Bxg2 Rxg2 20.Rhg1 で白に強力な代償がある。g列の方がgポーンよりも重要である。

18.Re1 Rc8 19.g3

 19.g4 は良いわけがなく、19…Ne3!(または 19…Rxg4 20.Bh3)20.g5 Qh4 21.Rc1 e5 22.fxe5 Bf5 23.Qd2 Rxg5!? =/+ となる。

19…Ne3!

 1986年ソ連選手権戦のユダシン対ルプーティアン戦は 19…Kf8 20.h4 Nce7 21.Nxd4 Nxg3 ∞ と進んだが、本譜の手はその大きな改良手である。

20.Nxd4

 白がここでユダシン対ルプーティアン戦のように 20.h4 と指せば、黒は 20…Nxc2! で意表を突くクイーン翼攻撃に打って出ることができ 21.Qxc2 Nxb4 22.Qd1 Qg6+ 23.Ka1 Nc2+ 24.Ka2 Nxe1 25.Qxe1 Qe4 で勝勢となる。ユダシンは 20.Rc1 を薦めたがこれには 20…e5! 21.fxe5 Bf5 22.Qd2 Be4 23.Rg1 Qxh2 といううまい応手がある。

20…Nxd4 21.Bxd4 Nxc2 22.Rc1 Nxd4 23,Rxc8+ Bxc8 24.Qxd4 Rxg3

 一連の取り合いのあとこの決め手のポーン取りでバガニアンが完全なポーン得になりうまく締めくくった。

25.Bd3 Rh3 26.Rg1 Qh8 27.Qc5 Bd7 28.Qd6 f5 29.Re1 Qf6 30.Qxd5 Rxh2 31.Re5 Qg6 32.Re1 Qf6 33.Re5 Rf2 34.Bxf5? Qxf5+ 0-1

(この章終わり)

2013年04月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(152)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 かなり変わった陣形になった。白のクイーン翼のポーンは健全な形で、クイーン翼キャッスリングも可能である。また、d4のポーンを取ったあとポーン得になる見込みも強い。しかし黒は重要なe5のポーンを取っていて、クイーンが退いたあと …e5 と突いて駒をよく働かせ有望になる狙いがある。

13…Qf6

 13…Qc7 と引くと 14.f4 Nbc6 15.Qd3 Nf5 16.O-O-O Bd7(16…Ne3 17.Re1 Nxc2! 18.Qxc2 d3 ∞)17.Re1 Rc8 18.Kb1 Nce7 19.Nxd4 Nxd4 20.Bxd4(ナン対キンズマン、ロンドン・ロイズ銀行、1993年)20…Ba4! 21.c3 Qxf4 となるが、白が双ビショップで優勢である。

14.f4

 白は …e5 と突かせないようにしなければならない。代わりに1990年マニラ・インターゾーナルでのチャブリロ対バガニアン戦では 14.Qd3 e5 15.f4 Bf5 16.Qd2 Qh4+ 17.g3 Qh7 18.Bg2 f6 =/+ となった。

14…Nbc6 15.Qd3 Nf5 16.O-O-O Qh6!

 白の手番 

(この章続く)

2013年04月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(312)

「Chess」2013年3月号(1/1)

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ベイクアーンゼー

 ナカムラは最後の3局で半点しかあげられず6位に終わった。もっとも前半戦を考えればそれほど悪い成績ではない。滅多にあきらめないおかげで奇跡的に絶望的な局面から間一髪で2局を引き分けていた。彼は他の選手なら投げるところを指し続けることにより多くの試合を救ってきた。次の試合は中くらいの例である。

L.ファン・ベリー
ヒカル・ナカムラ

第8回戦

60…Bc2! 61.Rxc4 Bd1 62.Rf4 Rxf3+! 63.Rxf3 Bxa4

 理論どおりの要塞になった。白キングは黒キングを隅から追い出すためにはh5の地点に行く必要があるが、h5のポーンがそれを邪魔している。

64.Rf6 Be8 65.h6 Bg6 66.Rxg6 Kxg6 67.h7 Kxh7 ½-½

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(この号終わり)

2013年04月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(151)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 この局面は前の2局に非常に似ている。違いは白のa5のポーンが余分なことと(a5-a6 と突くと黒にとって厄介な存在になることがある)、黒が既に …dxc3 と指しているので白は Ne2 でなく Nf3 と指せる(さらに Ng5 と指す可能性がある)ことである。代わりに黒はほぼ1手得になっている。

 白はe5のポーンを守らなければならない。一つ目の選択肢は第21局の陣形を踏襲して 11.f4 と突くことである。最近の試合は1995年ガウスダル・トロルでのエルンスト対キンズマン戦で次のように続いた。11…Bd7 12.Nf3(12.Rb1 Nxa5 13.Nf3 Qc7 14.Nd4 +/= シロフ対リュボエビッチ、モンテカルロ、1996年)12…Qxa5 13.Ng5!? O-O-O 14.Nxf7 Nf5! 15.Nxd8 Qxd8 16.Qh3 Ncd4 17.Qxc3+?(17.Bd3 Rh8 18.Qg4 Rg8 =)17…Kb8 18.a4[編集部注 この不運な新手は実はエルンストの研究の一部だった]18…Qh4+ 19.g3 Rxg3 20.hxg3 Qxh1 21.Kf2 Qh2+ 22.Bg2 Ne2 23.Qf3 Nfd4 0-1

 白の二つ目の選択肢は第22局のように駒を用いてe5のポーンを守ることである。最近の定跡は次のように続いている。11.Nf3 Qc7 12.Bf4 Bd7 13.Bd3 O-O-O 14.a6 f5! 15.exf6e.p. Qxf4 16.fxe7 Rde8 17.Bg6 Rh8(17…Ne5 18.Bxe8 Rxg2 19.Bxd7+ Kc7 20.e8=N+ Kb8 21.Kf1 Rxf2+ 22.Kxf2 Qxf3+ 23.Kg1 Qe3+ 24.Kf1 Qf4+ 25.Kg2 Qf3+ ½-½ ドルマトフ対S.イワノフ、ロシア、1995年)18.Qg7 Qg4! 19.axb7+ Kxb7 20.Rb1+ Ka8 21.Bxe8 Qxg7 22.Bxd7 Nxe7 そして1996年シェフィールドでのストレンジ対キンズマン戦では黒が優勢だった。

8…Bc7 9.Qxg7 Rg8 10.Qxh7 a6

 10…Bxe5 は楽観的すぎる手で、1991年レオンでのシオン・カストロ対アレンシビア戦では 11.Nf3 Rh8 12.Qd3 Bg7 13.Bf4 Ng6 14.Nc7+ Kf8 15.Bg3 e5 16.Nxa8 Nc6 と進んだ。もっとも黒はなんとかごまかして引き分けに持ち込んだ。

11.Nxc7+ Qxc7 12.Bb2

 白が先に 12.Ne2 と指すと黒は1993年ティルブルフでのイェルモリンスキー対バガニアン戦のように 12…Bd7 13.Bb2 a5! 14.Nxd4 Qxe5+ 15.Be2 Nbc6 ∞ と指すことができる。

12…Qxe5+ 13.Ne2

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(150)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

第23局
M.ミュラー対バガニアン
ブンデスリーガ、1993年
ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Ba5

 5…cxd4 6.axb4 dxc3 のあと 7.Qg4?! は 7…Qb6! があるので劣った手である。しかし白は 7.Nf3! と指せばポーンの代償が十分ある。例えば1990年レイキャビクでのチーム戦のナン対エインゴルン戦では 7…Ne7 8.Bd3 Nd7 9.O-O Nc6 10.Re1 Nxb4 11.bxc3 Nxd3 12.cxd3 O-O 13.Ra4 +/= と進んだ。

6.b4!?

 手順は重要である。6.Qg4 Ne7 7.b4?!(前章第19局では 7.dxc5 を分析した)では1995年ホルゲンでのティマン対バガニアン戦のように 7…cxb4! 8.Nb5 b3+ 9.c3 Nf5 =/+ と応じられる。

6…cxd4

 1994年ブルガリアでのトパロフ対エルメンコフ戦の 6….cxb4!? 7.Nb5 Nc6 8.axb4 Bxb4+ 9.c3 Be7 10.Ba3 Nh6 11.Bxe7 Qxe7 12.Nd6+ Kf8 13.Bb5! +/- はもっと研究する価値がある。

7.Qg4

 白の別の主要な作戦は 7.Nb5 Bc7 8.f4 で、第4章「古典中原」第15局で分析した。

7…Ne7 8.Nb5

 主要な変化は 8.bxa5 dxc3 9.Qxg7 Rg8 10.Qxh7 Nbc6 である。

 白の手番 

(この章続く)

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布局の探究(42)

「Chess Life」1992年2月号(5/6)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

遅かれ早かれ – 1.d4 か 1.g3 か?(続き)

 Ⅱ 1.g3(続き)

レーティ布局 [A14]
フィアンケット戦法
白 GMアントニー・マイルズ
黒 IMアンドルー・ミューア
オーステンデ、1990年

1.g3 d5 2.Nf3

 代わりに 2.Bg2 はもちろん指せる手で、2…e5 と来るなら 3.d3 と突く。しかしGMの大部分は黒にそんなに早くそんなポーン中原を作らせない方を好む。

2…Nf6 3.Bg2 e6 4.c4 Be7 5.b3 O-O 6.Bb2 c5 7.O-O Nc6 8.e3 d4

 これは非常に意欲的な作戦である。黒は自分のdポーンを白陣内に送り込み、白のクイーン翼ビショップを中央の斜筋から遮断する。その代償は白のキング翼ビショップの威力の大きな増大である。安全でお決まりの手は 8…b6 から 9…Bb7 である。

9.exd4 cxd4 10.Re1 Re8 11.a3 a5 12.d3 Bf8 13.Ne5!

 この手は 13…e5 突きを防ぎキング翼ビショップの中央の斜筋を開けている。

13…Nxe5 14.Rxe5 Nd7 15.Rb5!? e5 16.Nd2!

 白の関心は黒のクイーン翼に対し強い圧力を保持することに加えてe4とd5の地点を支配することである。実利主義の 16.Bxb7?! Bxb7 17.Rxb7 は1ポーンのためにすべてを投げうつ。それに対して黒は 17…Nc5 で十分な代償を手に入れる。

16…Rb8 17.b4 b6 18.bxa5 bxa5 19.a4!

 白は 19.Rxb8 Nxb8 20.Rb1 でクイーン翼でのいつものわずかな優位を得るよりももっと多くを得たいと考えている。交換損の犠牲の代わりに1ポーンを得るのを選択したのは、連結パスポーンができるのとキング翼ビショップが素晴らしく強力になるからである。

19…Ba6 20.Nb3 Bxb5 21.axb5 Bb4 22.Ba3 Bxa3 23.Rxa3 Qe7 24.Rxa5 Qb4 25.Ra7 Nc5 26.Nxc5 Qxc5 27.Qa4 f5 28.Bc6!

 黒はこれまでよく守ってきた。ここで注意深く 28…Rec8! 29.Rd7 と指せば白の優位はGMマイルズによればわずかだった。あきらかにまずい手は 28…Red8?! で、29.Rc7 が 30.Bd5+ を狙い 29…Kh8 なら 30.Qa5! が強力になる。だから黒は白の強力なルークを交換によりなくしたいのだが、白のキング翼ビショップが主役となる詰み狙いの攻撃に意表を突かれることになる。

28…Re7? 29.Ra8! Rxa8 30.Qxa8+ Kf7 31.Bd5+ Kg6 32.Qa6+ Kg5 33.h4+ Kg4 34.Kg2! e4 35.f3+ Kh5 36.Kh3! g6 37.Qf6 黒投了

 37…Kh6 38.Qf8+ Kh5(38…Rg7 39.Qxc5)39.g4+ fxg4+ 40.fxg4# で詰みになる。

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カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(149)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 面白い変化は 11.Qh6!? で、次に 12.Bxh7 と取る意図である。しかし黒は 11…Nd7 と応じて …Nf8 の意図でずっとh7のポーンにしがみつくことができる。

 前局と比較すると白ははるかに調和よく展開することができた。しかし実際にはポーン得の代わりに2ポーンを犠牲にしていて、e5とg2のポーンが浮いているのでポーン損になりそうである。

11…Qxe5!?

 主要な変化は 11…Nbc6(11…Nd7 12.Bf4 Nc5 13.Nd4! +/= J.ワトソン)12.Bf4(12.f4 Qb6! A.ロドリゲス)12…Bd7 13.O-O O-O-O 14.Bg3! Nxe5 15.Rfe1 N7c6(15…Rde8 16.Nd4! f6 17.Qh4 Rg5?! 18.Rxe5! Rxg3 19.Qxf6 Ng8 20.Qf4 Rg4 21.Qe3 +/- ナン)16.Nxc3 Nd4 17.Ne2!(A.ロドリゲス対パネケ、ハバナ、1990年)17…Ndc6 18.Bb5!? +/= である。

12.Bf4 Qf6 13.h4

 白はhポーンを突き進めて、もちろん双ビショップの助けでクイーンにすることを期待している。しかしそれより前にg5のような重要な地点を支配することを期待している。注意しておくと 13…Rh8 は 14.Bg5(h4 と突いていなくても可能)があるので恐れる必要はない。本譜の手の代わりに1988年オーカムでのマドル対マクドナルド戦では 13.Qh5 Nbc6 14.h4 Bd7 15.Rb1 O-O-O 16.Rb3 e5 と進んで黒の勝ちに終わった。

13…Nbc6?!

 重要な変化はおそらく 13…Rxg2 とポーンを取る手である。黒は見返りに中央を支配し手得を重ねることになれば、交換損の犠牲を払っても大満足である。例えば1995年アイスランドでのビダルソン対ブレース戦では 14.Kf1 e5 15.Kxg2(15.Bg3 Rxg3 16.Nxg3 Bg4 -/+ ポペスク)15…exf4 16.Kf1(16.Qh5 Nbc6 16.Qf3 Ng6 ∞ ミル対ポペスク、ブカレスト、1992年)16…Nbc6 17.Qh5 f3 18.Ng1 Nd4 ∞ と進んだ。

14.Bg5 Qe5 15.Qh6

 白はクイーンを自陣に引き戻しhポーンの進路を空ける用意をしている。

15…Bd7 16.Qf6 Rc8?

 この変な手は最も働いていない駒を働かせる目的だが、実際には大事をよそに安逸にふけっている。白はクイーン同士を交換しないでh5へポーンを突くことはできず、交換になれば白が Bf6 と指す前に黒のナイトがe5に来る。しかし白はそうする義務はさらさらない。だから黒はクイーン同士を交換すべきだった。もっとも白はそれでも 16…Qxf6 17.Bxf6 e5 18.Bh7(交換得しようということではなく、連鎖ポーンの外側に出るため)18…d4 19.h5 Bf5 20.Bxf5 Nxf5 21.h6 Kd7 22.h7 Rh8 23.g4 から f4(コルチノイ)でまだ有望だった。

17.f4! Qe3

 ここで 17…Qxf6 は 18.Bxf6 のあと黒は …e5 と突くことさえできない。

18.h5 e5 19.h6

 作戦を持てることはいいことだ。

19…e4 20.Bb5 Rxg5 21.h7 Bg4 22.Qxg5 Qd2+ 23.Kf1 Bxe2+ 24.Bxe2 Nd4 25.h8=Q+ 1-0

 以上の変化によれば黒は確かにhポーンを見張らなければならない。

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(148)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

第22局
ゲレル対ソコルスキー
ソ連選手権戦、1950年
ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 Ne7 7.Qg4 cxd4 8.Bd3

 この手は最近 7…Qc7 に対してまた流行してきたが、この古い手順に対しては特にぴったりである。その意図は白がポーンを得する代わりに犠牲にすることである。

 本譜の手の代わりに 8.Qxg7 Rg8 9.Qxh7 なら黒はクイーンをc7でなくa5の地点に出すことにより得られるものはほとんどない(c3とe5の地点に対する両当たりがないので)。例えば1988年アムステルダムでのショート対ティマン戦では 9…Qa5 10.Rb1! Nbc6 11.Nf3 Bd7 12.Rxb7 Qxc3+ 13.Kd1 Na5 14.Rb4! Rc8 15.Ng5 +/- と進んだ。最後に注意しておくと、白は素直に 8.cxd4 と取ることができるが、それなら黒は 8…Qc7 のあと 9…O-O または 9…Nf5 で喜んで前章の指し方に戻ることができる。

8…Qc7

 黒は白ナイトをf3でなくe2の地点に来させる。f3だと迅速にg5に跳ねて破滅的な結果をもたらす。黒は 8…Qa5 で 9.Ne2 のあと …dxc3 と取るのを遅らせることができるが、いずれにしてもある時点で …dxc3 と取ることになるので、一時的な手得は黒クイーンのわずかな場違いに値しそうにない。

9.Ne2 dxc3

 ゲレルの分析によると 9…Qxe5 10.Bf4!(10.cxd4 h5! 11.Qh4 Qc7)のあと変化が二つある。

 a)10…h5 11.Qh4 Nf5 12.Qg5 Qf6 13.Qxf6 gxf6 14.Bxf5 exf5 15.Bxb8 Rxb8 16.cxd4 これは1951年ルボフでのボンチ=オスモロフスキー対ロブネル戦で「白が収局で優勢になった。」

 b)10…Qf6 11.cxd4 h5 12.Qg3 Nbc6 13.Bg5 Nf5 14.Bxf6 Nxg3 15.Bxg7 Rg8 16.hxg3 Rxg7 17.Rxh5 これも白の有利な収局だった。

10.Qxg7 Rg8 11.Qxh7

 黒の手番 

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(71)

「Chess Life」2005年2月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)(続き)

 戦型Ⅰ)1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6 5.g3 Bg4

 これが旧主流手順である。

6.Bg2 Qd7

 黒はこの手でクイーン翼へのキャッスリングを準備すると共に、将来 …Bg4-h3 と指して白枡ビショップ同士を交換することを見込んでいる。

7.O-O

 白は単に布局の基本原則に従って指し進めている。

7…O-O-O

 黒がすぐに 7…Bh3 と指すと白はこの布局に典型的な着想の 8.e6! を用いてポーンを返す。この手の意図は黒がビショップで取るしかないということである。8…Qxe6 なら 9.Ng5 で両当たりになってビショップが取られる。ポーンで取ればh3のビショップがただになる。

 だから黒は 8…Bxe6 と取るしかない。このポーンの犠牲で白は黒の反撃を遅らせて主導権を握る手数を得る。

 9.Qa4 ようやくクイーンが動いてルークのためにd1の地点が空きa7のポーンが標的になった。

 9…O-O-O 10.Rd1 a6(10…Bh3 なら黒が周知の 11.Ne5! Nxe5 12.Qxa7 にはまり白の勝勢になる。例えば 12…Nc6 なら 13.Qa8+ Nb8 14.Qxb7# だし 12…c6 なら 13.Qa8+ Kc7 14.Qa5+ でe5のナイトが落ちる)

 11.Nc3 Nf6 12.Bg5 Be7 ここで白は気持ちのよい単純化の捌きを始める。13.Bxf6 Bxf6 14.Nd5! Ne5(14…Bxd5 15.cxd5 Qxd5 16.Nxd4 Qa5 17.Nxc6! Qxa4 18.Bh3+ から詰み)15.Qxd7+ Rxd7 16.Nxd4 Nxc4 17.Nxf6 gxf6 18.e3 ポーンの形が良いので明らかに白の有利な収局である。

8.Qb3

 この手はポーン得を維持する意図である。

 代わりに 8.Nbd2 なら黒は次のように続ける。8…h5(8…Nge7 は 9.Qa4 Kb8 10.b4 Ng6 11.b5 Ncxe5 12.Bb2 Nxf3+ 13.exf3 Bf5 14.Nb3(コルチノイ対モシオンジク、ソ連、1966年)で黒が悪かった)

 9.b4 逆翼キャッスリングの局面では典型的なポーン捨てである。その着想は単に黒キングに対してb列を素通しにすることである。9…Bxb4 10.Qa4 h4? 11.Rb1 hxg3 12.Rxb4 Nxb4 13.Qxb4 Bh3 14.fxg3 Bxg2 15.Kxg2 Qh3+ 16.Kg1 Nh6 17.Ne4 明らかに白が優勢である。

 しかし途中 10…Bxd2 11.Bxd2 d3 なら黒が面白いかもしれない。

8…Nge7 9.Rd1 Bxf3 10.Qxf3

 白は引き続きb7での詰みの狙いでe5のポーンを間接的に守る。

10…Ng6 11.Bf4 Be7 12.Nc3

 白が優勢である。

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フランス防御の完全理解(147)

第6章 毒入りポーン中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

27.Nf4?

 白はクイーン同士を交換することができたが、ここで敗着を出した。代わりに 27.cxd3 Nxd3+ 28.Kg1 Nf3+ 29.Rxf3 Bxf3 または 27.Ng1 Ng4+(27…f4 28.Bxf4 d2 29.Bh3!)28.Rxg4 Bxg4 29.Bxd3 と指す方が良かった。しかし最善手は 27.Nc1! のようである。27…f4(27…dxc2 28.Rc3+ Rc7 29.Rbb3 Bd1 30.Kg3 Rh8 31.Bf4 または 27…Nhf3 28.Bf4 dxc2 29.Rb2 Rc7 30.Be2 Ng4+ 31.Rxg4 fxg4 32.Bxc7 Kxc7 33.Rxc2+)28.Bxf4 d2 29.Nd3 Nxd3+ 30.Bxd3 d1=Q 31.Rxd1 Bxd1 32.g6 Rd4 33.Bg5 これで白が勝勢だろう。

27…Ng4+ 28.Kg1

 もう成すすべがない。28.Rxg4 と取っても 28…dxc2 29.Rc1 Rxd2+ で負ける。

28…dxc2 29.Rc1 Rxd2 30.Nxh5

 30.Rc3+ なら 30…Kb8 31.Nxh5 Ne3! である。

30…Re3 31.Rg2 Nf3+ 32.Kh1 Nf2+ 33.Rxf2 Rxf2 34.Bg2 Nxg5 0-1

(この章続く)

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