2013年02月の記事一覧

フランス防御の完全理解(115)

第5章 ビナベル中原(続き)

黒がd4で交換する

 白の中原開放を止める一つの方法はd4でポーン同士を交換することである。これによりc2のポーンが半素通しc列で攻撃にさらされる。しかしこの交換により白の黒枡ビショップにa3-f8の斜筋を開けてやることになる。そしてd3のビショップも楽にc2の地点を守ることができ黒のキング翼に脅威を与える。一方黒は …c4 と突く選択肢がなくなる。だから黒がd4で交換するのは一般にそれによりd4のポーンが取れる場合(白の一部のギャンビット戦法で)、またはクイーン同士を交換してもっと収局に近い局面に持ち込み黒の陣形の優位が白の双ビショップの優位を補えることのできる場合だけである。

 

 この局面は互角である。白は Bb4 から a5 と突いていくこともできるし、Bb5 または(黒が …b6 と突いたあとで)Ba6 で黒を窮屈にさせることもできる。しかし黒は …Na5-c4、…b6 そしてたぶん …Ne7-c6-a5 から …f6 のあと …Kf7、…Rc7 そして …Rhc8 と指すことができる。黒は両方のナイトをクイーン翼に配置した方が良いかもしれないので、自然に見える …Nf5 を指す際には気をつけた方が良い。

(この章続く)

2013年02月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(37)

「Chess Life」1991年12月号(3/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

布局のはめ手 現実か幻影か(続き)

Ⅱ 黒がキング翼にキャッスリングしている

 もちろん黒はキング翼にキャッスリングしているときは …Ng4 に対してビショップがb5でチェックをかけるのを心配する必要はない。しかし重要なことは …Ng4 と「指せる」からといってそう「指すべき」であるとは限らないことである。

 昔はドラゴン戦法の主流手順は次の古典戦法だった。

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 d6 6.Be2 g6 7.Be3 Bg7 8.O-O O-O 9.f4

 図5

 白はこの手で黒のキング翼に対する攻撃を始めた。状況が許せばポーンを e4-e5 または f4-f5 と突いていく構えである。黒が積極的に応じなければ白は非常に強力な攻撃態勢を作れる。しかし攻撃的な 9.f4 には欠点もある。それはg1-b6の斜筋がひどく弱体化したこと、それにg4の地点に対する白の影響力が減少したことである。したがって考えられる候補手は 9…Ng49…Qb6 である。どうなるか見てみよう。

 1)9…Ng4?!

 戦術的にはこの手には何も悪いところがない。しか戦略的には不十分な局面になる。

10.Bxg4 Bxd4

 10…Bxg4? は 11.Nxc6 で黒の戦力損になる。

11.Bxd4 Bxg4 12.Qd2! Be6 13.f5 Bc4 14.Rf3 Nxd4 15.Qxd4 Ba6 16.Nd5

 白は大きく優勢である。黒は黒枡ビショップがないのでキング翼がひどく弱くなっている。ここで白は 17.f6 を狙っていて、事実上 16…f6 と突かせてさらにキング翼を弱体化させることを強いている。そのあとは1893年ハバナでのエマーヌエル・ラスカー対ゴルマヨ戦を見られたい。

 2)9…Qb6!

 この手が現代の実戦で 9.f4 をすたれさせた。黒は 10…Nxe4! でポーン得を狙っている。一方白は大胆なクイーンの遠征を「罰する」手段を欠いている。例えば

 a)10.Nf5? Qxb2 11.Na4 Qa3 12.c3 Nxe4!

 b)10.Na4? Qb4 11.c3 Qa5 12.b4 Qc7 13.Bf3 Bd7 白のクイーン翼ががたがたである。

 c)10.e5?! dxe5 11.fxe5 Nxe5 12.Nf5 Qxb2! 13.Nxe7+ Kh8 14.Bd4 Qb4! 15.Bxe5(15.Nxc8 なら 15…Rd8!)15…Qxe7 16.Qd4 Nh5 白のクイーン翼が弱体化しているので黒がいくらか優勢である。

10.Qd3 Ng4! 11.Nd5

 図6

 この手は黒にとって危険そうに見えるが結局は互角の形勢にしかならない。同じゴールへのもっと簡明な道は 11.Bxg4 Bxd4 12.Bxd4 Qxd4+ 13.Qxd4 Nxd4 14.Bd1 である。

11…Bxd4! 12.Bxg4

 クイーンを取るのは次のように黒にしか好機がもたらされない。12.Nxb6?! Bxe3+ 13.Kh1 Bxb6 14.Bxg4 Bxg4 15.f5 gxf5 16.exf5 Ne5 17.Qg3 Kh8 18.Qh4 Bd8 よく働く3駒の方が白クイーンより強力である(ファン・デン・ボス対ランダウ、アムステルダム、1939年)。

12…Bxe3+ 13.Qxe3 Qxe3+

 13…Qxb2!? は疑問で 14.Bxc8 Raxc8 15.Rab1 Qxa2 16.Rxb7 となって白がしっかり主導権を握る。

14.Nxe3 Bxg4 15.Nxg4

 この収局は完全に互角である。

 というわけで、自分の布局の重要なはめ手は研究しておくべきである。しかし「似たような」局面で同じ主題を適用することには慎重でなければならない。はめ手の中にはめ手が潜んでいることがある。そしてそれに備えるに必要な努力は試合の他の局面に投資する方が良い。

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2013年02月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(114)

第5章 ビナベル中原(続き)

白が中原を開放する

 白には双ビショップがあるので中原を開放するのは自分の利益になる。これは c3-c4 突きと d4xc5 取りの組み合わせにより達成でき、黒が駒でc5を取り返したとすれば次のようなポーン陣形になる。

 

 白はまだ陣形上の問題が解決されていない。c2のポーンは弱いままだし、今度はe5のポーンも弱体化した。その一方で双ビショップのために多くの斜筋が開通したし、ルークのためにd列が素通しになった。黒はd5の地点がナイトの好所になったが、好機の c2-c4 突きによって排除されることがある。

 

 黒はc6またはd7にナイト、そしてc7にクイーンを配置してe5の地点に圧力をかけるように努める。黒がキング翼にキャッスリングしていた場合は(先に …b6 と突いておいて)bポーンでc5を取り返すのが最善になることがよくある。c列がふさがるが、白の黒枡ビショップのa3-f8の斜筋における利きをふさぐことの方がもっと重要である。白はb列で代償を得ることができるが、それなら …Nd5-b4 が黒の助けになることがある。

(この章続く)

2013年02月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(113)

第5章 ビナベル中原(続き)

a4の地点

 a3-a4 突きはいつもこの戦型における白の重要な着想の一つである。その意図は黒枡ビショップ、時にはクイーンをa3の地点に配置することによってa3-f8の斜筋を乗っ取ることである。黒にはこのビショップに対抗する黒枡ビショップがないのでa3のビショップは途方もない圧力をかけることができる。c5のポーンに対しては …b6 突きまたは …c4 突きを余儀なくさせることがよくある。黒がキング翼にキャッスリングすればe7とf8の地点に圧力がかかる。黒がクイーン翼にキャッスリングすればd6またはc5の地点に潜り込む。ついでながらa4のポーンはb5のビショップを支え、a4-a5 突きのあとは直接クイーン翼攻撃を支援することができる。

 

 黒はクイーンまたはビショップをちょうどa4の地点に置くことにより a3-a4 突きを止めることもできる。そこからはc2および(クイーンだけ)d4の地点に圧力をかけることができる。白は黒がそこに駒を置くのを止めるためだけであっても a3-a4 と突きたいかもしれない。しかし現代の実戦によると事はそう簡単でないことが分かっている。a4の黒駒はかなり遊び駒になりやすい。白は実際は黒枡ビショップをキング翼で使いたいかもしれない。収局ではa4のポーンはえじきになりやすい。布局ではあまり早く a3-a4 と突くと黒が中央またはキング翼で迅速に開戦できる場合無駄手になってしまうかもしれない。これらの理由から今では白が本当に急いで a3-a4 と突きたいかは議論の的となっている。

(この章続く)

2013年02月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(66)

「Chess Life」2005年1月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御反スベシュニコフ戦法[B30]

 シチリア防御のスベシュニコフ戦法(1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5)は最近では黒が選択する最も人気のある戦法の一つとなっている。この戦法はGMスベシュニコフが創始し1970年代中頃に普及した。今日では世界の一流選手の多くが 1.e4 に対する黒の常用布局の一部として用いている。対する多くの選手がこの戦法にどう立ち向かうかというジレンマに陥っている。

 本稿はスベシュニコフを相手にすることを避けるために、白番の選手に 3.Nc3 を用いる代替策を伝授することを意図している。そのあと黒は 3…e6 または 3…Nf6 と指すことができ、さらに白は 4.Bb5 と指せるし 4.d4 と突いて開放型の戦型に移行することもできる。今回は 3…e5 だけを考察する。この手は他のシチリア防御の戦型とは非常に異なっている。

白の基本的な作戦は何か

 黒のd5の地点が弱くなるので明らかな一つの作戦は大局観に基づいて指すことである。しかしもっと意欲的な作戦を選択することもでき、それはf列を早期に素通しにして攻勢に出ることである。主要な着眼点はナイトをh4を経由してf5に進ませることにある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は早い時期にポーン得または戦力得にさえなることがよくある。基本的に黒のやることは受けにまわりそして可能ならば戦力の優位を死守するか、都合のいい条件下で戦力を返すことである。

それで評決はどうなっているか

 今日の定跡の知識では白が順調に攻撃できるようである。レーコー対クラムニク戦(戦型A2を参照)では黒が引き分けに持ち込むことができたが、私の見るところではその収局は黒が好んで飛び込むようなものではない。

 もっと分析の必要な個所がいくつかある。

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2013年02月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(112)

第5章 ビナベル中原

 

概説

 クイーン翼のポーンの形は黒が断然優っている。白のc2とc3のポーンはことのほか弱い。その一方で他の戦型よりも中央の連鎖ポーン(d4とe5)をもっとしっかり支えている。白の代償は双ビショップ、特に黒が対抗するビショップのない黒枡ビショップ(このため黒はa3-f8の斜筋とg7の地点の防御が難しい)、強力なe5のポーンによりもたらされるキング翼の広さの優位、それに素通しのb列にある。結果としてこの戦法で黒は特に収局に持ち込むことを切望する。収局では黒の優位は最低限でも白の優位を打ち消すことになる。しかしその前に黒は中盤戦を生き延びなければならない。

 これらの要因により今日ではこの戦法で白が早く f2-f4 と突かないことが珍しくない理由が分かる。もっともこの戦型の最初の頃の実戦では指されていた。f2-f4 突きは白が既に支配している黒枡にポーンを置き、既に拠点となっているe5の地点を支える。白が f2-f4 と突くのはそのあと早く f4-f5 と突く意図の場合だけが普通で、黒のナイトがe7にありビショップがc8またはd7にあっては実行が容易でない。

 フィッシャーは『My 60 Memorable Games』の中で「ビナベルが棋理にあっていると認めざるを得ないのかもしれない。しかし私はビナベルを信用していない。この防御は大局的におかしくキング翼を弱めている」と書いている。それでもこの戦法に対する彼の成績はあまり芳しくなく、議論は続いている。

(この章続く)

2013年02月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(111)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

24.Nb5 Rcb8 25.b4

 これも指しにくい手だが黒から 25…a6 を狙われていた。

25…Nc4 26.Bf4 g5!

 白ビショップに 27.Bg3 h5 28.h3 h4 29.Bh2 でキング翼に埋もれてクイーン翼の助けにならなくなるか、おとなしくc1に引っ込んで役に立つ守り駒というより邪魔駒になるかのみじめな選択を迫った。

27.Bc1 cxb4 28.cxb4 a5! 29.h4 h6!

 相手に何もやらせない!29…gxh4 は 30.Bh6 から 31.Rb3 で白に反撃の機会を与えるかもしれない。

30.hxg5 hxg5 31.bxa5 Rxa5 32.Be3

 32.Ra1? は 32…Rbxb5 とされる。だから黒はようやく弱いクイーン翼のポーンを取ることになる。

 黒はしだいに優勢を拡大していった。

32…Rxa4 33.Nd6 Rxb1 34.Rxb1 Kg7 35.Rb8 Nxe3 36.fxe3 Be7 37.Rb7 Bxd6 38.exd6 Ra8 39.Rd7 Kf6 40.Kf2 Rf8! 41.Kf3 Ke5 42.Kg4 f5+! 43.Kh5(43.Kxg5 なら 43…Rg8+ から 44…Rxg2)43…f4 44.exf4+ gxf4 45.Kg6 d4 46.Kg7 Rb8 0-1

(この章終わり)

2013年02月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(110)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 この手も不利な交換を避けるためにきわめて重要である。19…Nxd4 は 20.cxd4 でe5の地点を強化させるほかに、白のためにc列を素通しにし、自分のd7のナイトからc5の地点を奪ってしまう(このあとの進行から分かるようにこの地点は要所である)。

20.b3?

 白のクイーン翼ポーンの使い方、または使い方のまずさが形勢をしだいに悪化させた。この手は黒のナイトをc4の地点に寄せつけなくしている。c4の地点は「いつもなら」このような局面の急所である。しかし実際にはc5の地点の方が重要である。だから 20.b4! の方が良い手だった。そして 20…Nc4 のあとベリヤフスキーは 21.Ra2 Rfc8 22.Nc6 を推奨し形勢不明としている。しかしベリヤフスキーの 21.Ra2 よりも 21.Bg3 の方が効果的であるようである。例えば 21…Rfc8 22.f4 g6!(白の f5 突きを防がなければならない)23.Bh4 Bd8 24.Bxd8 Rxd8 25.g4 Rac8 26.f5 となれば白はキング翼をポーンで攻撃するという宿願を達成している。

20…Rfc8 21.Rab1 Bd8 22.Bd2 Nc5!

 このナイトの運命は劇的に改善された。e4の地点に跳びこんでc3とd2の地点を当たりにすることを狙っているので白の応手はほとんど決まっている。

23.Nxc5

 この不本意な手で黒の中央のポーンが要塞化し、b3のポーンがひどく弱体化する。ここでは黒が戦略的に勝ちの局面になっている。

23…bxc5

 白の手番 

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(306)

「Chess」2013年2月号(1/3)

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ロンドン・クラシック

シチリア防御アラピン戦法
H.ナカムラ
M.カールセン
第7回戦

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.c3 Nf6 4.e5 Nd5 5.Bc4 e6 6.d4 cxd4 7.cxd4 d6 8.O-O Be7 9.Qe2 O-O 10.Rd1 Qc7

11.a3

 この先受けは必要な手である。もっともいずれにしても白陣はぱっとしない。一つの問題は 11.Bd3?! が 11…Ndb4 で大切な白枡ビショップを消されるか、12.Bb5 a6 13.Ba4 b5 14.Bb3 Bb7 で黒に主導権を与えることである。11.Bxd5 exd5 12.Nc3 という手もあるが、12…Be6 13.Bf4 a6 14.Rac1 Rac8 で黒陣はびくともしない。

11…Rd8 12.b4!?

 この手は 11.a3 を積極的に活用しようとしているが、控え目に言っても危なっかしい。

12…a6 13.Bd3 b5 14.h4

 ナカムラはトレードマークの攻撃を仕立て上げようとしているが、展開不足のために既に懸念される状況になっている。

14…dxe5 15.dxe5 Bb7 16.Ra2?!

 そしてこの手は決定的に創造的すぎる。16.Qe4 は 16…g6 で白を断固キング翼に寄せつけず、白枡の対角斜筋での狙いを考慮すると機械は白には情けない 17.Qe2 しかないと言っている。

16…Ndxb4!?

 ナカムラは対局後の記者会見でこの決断にあまり感心したようでもなかった。しかしこれは非常に興味深い手で、たぶん少し黒に有利な不均衡の局面になる。とは言うものの本筋の 16…Rac8 17.Rc2 a5 ではほとんど怖いところがなかった。ここでも押しまくっているのは黒の方である。なぜなら 18.Bxb5(18.bxa5 Qxa5 19.Bxb5? は軽妙な 19…Nxe5! でe2の過負荷のクイーンにつけ込まれる)18…axb4 19.axb4 Ndxb4 のあと黒の展開の優位がものを言ってくるはずだからである。

17.axb4 Nxb4 18.Rad2 Rxd3 19.Rxd3 Nxd3 20.Qxd3 Rd8 21.Qe2 Rxd1+ 22.Qxd1

 かなり一本道の手順が続いたあとは形勢判断の頃合である。黒のクイーン翼のポーンは明らかに有用な資産で、黒には双ビショップもある。実戦的には白の防御は楽でない。だからカールセンの次の手は奇妙な決断になっている。

22…Bxf3?!

 この手は大会の状況に刺激された面もあったのだろう。黒は3個目のポーンを得るが、双ビショップがなくなって勝つ可能性が減少した。クラムニクは解説で 22…b4 か、まず Bg5 を防ぐ 22…h6!? を支持していた。22…h6 のあとは 23.Be3 a5 と進みそうで、そのとき 24.Nbd2?! のような自然な手では白が急に駒の連係が悪くなって 24…a4 のあと受けに苦労する。

23.gxf3 Qxe5

 カールセンはこの時点ではまだ勝ちを目指して指していたが何かを見落としていた。 23…Bxh4 24.f4 Be7 なら安全だっただろう。

24.Qd7!

 これはしばらくぶりのナカムラの積極的な手で、黒が少し受けづらい手だった。

24…Bf8

 これはコンピュータが最初に選択した手だが、このあと注意深く守らなければならないのは黒の方である。それはともかくカールセンは当初の意図どおり 24…Qe1+!? 25.Kg2 Qxc1 26.Qxe7 h6 と指すべきだった。これは 27.Qd8+ Kh7 28.Qd3+

のあと白がナイトを展開できるようになるとして却下された。しかしそれでも 28…f5(ナイトの動きを制限するため)29.Nd2 b4 30.Nc4 Qc3 31.Qe2 Qf6 のようなことで引き分けになるはずである。

25.Be3 a5 26.Qe8!

 これで白が陣容を改善するのがたやすくないとしても黒はかなり動きが難しい。

26…h6

 これは悪手ではないとしても少し守勢の手である。黒は 26…a4 から始めて 27.Kg2 なら次のように白キングの薄みにつけ入ることを目指したほうが良かったかもしれない。27…Qf5 28.Nd2 a3 29.Nb3 a2!

30.Qa8(30.Bc5? Qxc5! 31.Nxc5 a1=Q 32.Nd7 Qa3)30…Qg6+ 31.Kh2 Qh5 32.Bc5 Qxh4+ 33.Kg2 Qg5+

そして 34.Kf1?? は 34…a1=Q+! で駒をそらされてc5のビショップを取られるので、この局面は引き分けである。

27.Kg2!

 白はキングの位置を改善して次の手を準備した。

27…a4

 27…b4?! なら白の次の手を防いだだろうが、28.Nd2 のあと黒は次にどう指すのだろうか。ポーンは止められているし、29.Nb3 からは必殺の 30.Bc5 がある。

28.Na3 b4 29.Nc4 Qc7 30.Nb6 Qe7!

 白のナイトはまたたく間に元位置からはるか遠くまで旅してきた。しかしここでもカールセンはキング翼で十分反撃できるのであまり無理をしない。

31.Qxa4 Qxh4 32.Qa8 Qe7 33.Qc8 b3 34.Nd7 b2

 カールセンは前からこの手を読んでいたに違いなかった。このbポーンは Bc5 によって黒が消し去られるのを防ぐのにちょうど十分の速さだった。

35.Nxf8 Qxf8 36.Qb7 e5 37.Qxb2

 というわけでクイーン翼のモンスターポーンは2個目と最後が落ちた。しかしこの間に黒はキング翼で要塞を築くことができた。

37…f6

38.Qc2

 38.Qb3+ は 38…Qf7 39.Qxf7+ Kxf7 40.Kg3 g5 で黒陣を崩すことができない。途中 40.f4 exf4 41.Bxf4 g5 42.Bd2 f5 でも同じである。だからナカムラはクイーンを残したが、カールセンの堅い守りを打ち破るようには全然見えなかった。

38…Qf7 39.Qf5 Kh8 40.Bd2 Kg8 41.Kg3 Kh8 42.Be3 Kg8 43.Kh2 Kh8 44.Kg2 Kg8 45.Qd3 Kh8 46.f4 exf4 47.Bxf4 Kg8 48.Qe4 Kh8 49.Be3 Kg8 50.Bd4 Kh8 51.f4 Kg8 52.Kg3 Kh8 53.Be3 Kg8 54.Bd4 Kh8 55.Be3 Kg8 56.Bd4 Kh8 ½-½

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(109)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 この手はe5のポーンを補強しているだけでなく、f4のビショップにも紐をつけて黒の …f6 突きを思いとどまらせている。決まり文句を言うようだが、e5のポーンが何重にも過剰防御されているのでニムゾビッチなら白の態勢を大喜びしただろう。しかし白駒は他に何ができるだろうか。

18…Nd7 19.Nd4 Na5!

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(108)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 実戦ではこの手は意味のないクイーン翼の弱体化につながったが、それはただ単に白が自然な指し手を避けたからである。ベリヤフスキーは代わりに 14.Be3 Bc7 15.Nc5 で互角になるとしている。

14…Nc6 15.Be3?!

 一貫性のある手は 15.a5 で、15…Bc7 に対し 16.Ra4!? が面白い手である。奇抜な 15.a5 Nc5 は 16.Nxc5 Bxc5 17.b4 Be7 18.b5 で形勢不明になる。

15…Bc7!

 ビショップ同士の交換に応じると白が Nfd4 からキング翼ポーンを進攻させることができるので黒はそれを避けた。本譜はe5のポーンが弱体化した。

16.Bf4

 遅かれ早かれこう指さなければならないが、白の2個の駒がf2のポーンをふさいでキング翼ポーンの前進ができなくなった。

16…Nab8!

 これは周知の捌きである。馬がもっと青々とした牧草地を求めている。

17.Nc5 b6 18.Nd3

 黒の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(36)

「Chess Life」1991年12月号(2/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

布局のはめ手 現実か幻影か(続き)

Ⅰ 黒キングが中央にいる(続き)

 これまでの例で黒が気をつけなければならなかったのは白のビショップがb5の地点に「チェックで」来ることである。しかしその手がチェックでないならどうなるのだろうか。この重要な疑問を調べるためにドラゴンの昔の手順を用いよう。1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 d6

 1930年代前半にドラゴン戦法が評価を得たときこれらが初期の手順で、古典戦型の 6.Be2 のあと初めて黒は 6…g6 でフィアンケットに構えていた。リヒター・ラウゼル攻撃の 6.Bg5 とソージン戦法の 6.Bc4 は共に恐怖のドラゴンを避けるためにわざわざ創案された。しかし白は次の手を指すこともできる。

6.Be3

 一つの見かたはこれが黒に 6…g6 で今からドラゴンに入らせる融通性のある手であるということである。しかしこの手は黒にとっても挑戦を突きつけられている。6…Ng4 はどうなるのだろうか。

 図3

 黒が 6.Be3 を「咎める」気ならこれがその手段である。他にはドラゴンを目指すなら 6…g6、スヘーファニンゲンなら 6…e6、ボレスラフスキー型の陣形なら 6…e5 がある。

 上図での白の選択肢は明らかである。すなわち当たりのビショップを動かすか、当たりを無視して展開の優位に基づいて反撃にでるかしなければならない。そこで以下の可能性がある。

 1)7.Bg5

 英国のGMマイケル・アダムズは初めてこの手の潜在力を示した。彼は一見危険そうな 7…Qb6 に簡単に 8.Bb5 Bd7 9.O-O! と応じられることを証明した。9…Qxd4 からの収局は 10.Bxc6 Qxd1 11.Bxd7+ Kxd7 12.Raxd1 で白が完全に良い(アダムズ対ミューア、ロンドン、1984年)。

 重要な変化は 7…h6 8.Bh4 g5! 9.Bg3 Bg7 だと思う。この手順には変化の余地が多くあり解明が必要である。

 2)7.Bb5

 これが従来からの手である。白の目的は黒のキャッスリングしていないキングに対して自分の戦力をすばやく動員することである。そのためにはポーンの形を崩し双ビショップをなくしてもかまわない。

7…Nxe3 8.fxe3

 白は首尾一貫している方が良い。弱気の 8.Nxc6?! は 8…Nxd1 9.Nxd8+ Kxd8 10.Rxd1 a6! となって、黒はキングが安全で双ビショップの潜在力のために少し有望になっている(フューリンゲン対メドニス、ガウスダル、1990年)。

8…Bd7 9.O-O e6

 白の展開の優位はばかにできないので黒は 9…Ne5? と指す余裕はない。そう指すと 10.Nf3! Nxf3+(10…Bxb5 は 11.Nxb5 で良くない)11.Qxf3 f6 12.e5! で白の攻撃が炸裂する。

10.Bxc6 bxc6 11.e5 Be7

 黒はやはり展開の完了を急ぐべきである。11…dxe5?! は 12.Qh5 Qe7 13.Qxe5 で白が優勢である。

12.Qh5 O-O 13.exd6 Bxd6

 図4

 白は黒の双ビショプと中央側のポーンの多さを補うために攻撃の可能性を追求しなければならない。現在のところ次が主手順と考えられている。14.Ne4 Be7 15.Rad1 Qb6! 16.Rf3 Be8 17.Rh3 h6 18.Rg3 Kh7 19.Rf1

 ここで白は 20.Rf6!! を狙っている。19…c5? なら 20.Rf6!! Bxf6 21.Nxf6+ Kh8 22.Qg5!! で決まる。見えすいた 19…f5 は 20.Rxg7+ Kxg7 21.Nxe6+ で負けるように思われる。しかし私には 21…Kh7 でそうはっきりしないように思われる。そして 22.Nxf8+ なら 22…Bxf8 で黒は 23.Qxf5+ Bg6 24.Nf6+ Kg7 25.Qd7+ Kh8 でも[訳注 25.Qe6 で白の勝勢のようです]23.Nf6+ Kh8! 24.Qxf5(24.Nxe8 なら 24…Qxe3+ から 25…Rxe8)24…Qxe3+ 25.Kh1 Qe7 でも受かっている。どちらにしても黒の方が良い。

19…Qd8

 定跡ではこれが絶対の正着である。

20.c4 a5 21.Qe5 Rg8 22.Nf3!

 22.Nxc6? Bxc6 23.Rxf7 は無理筋で、1977年パルヌでのギプスリス対トゥクマコフ戦では次のように咎められた。23…Qd1+ 24.Kf2 Qc2+ 25.Kg1 Qb1+ 26.Kf2 Bf8!! 27.Nf6+ Kh8 28.Nxg8 Rd8 29.Qc3 Qd1 30.e4 Rd2+ 31.Ke3 Qe1+ 白投了

 本譜は千日手による面白い引き分けになる。

22…f6! 23.Qxe6 Bd7 24.Qf7 Be8 引き分け

 それでは「無邪気な」6…Ng4 について何と言うことができるだろうか。指せる手だが、大量の定跡の知識が必要である。

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フランス防御の完全理解(107)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 このあとは

 a)13…d4 14.b5!? dxc3 15.bxa6 cxd2 16.axb7 Rb8 17.Bxd2 Rxb7 18.a5(18.Rb1)18…Bd8 19.Rfb1 Rxb1+ 20.Rxb1 黒が展開できないうちに白がa7のポーンを攻撃してくるので黒の難局である。

 b)13…Rc8 14.Bb2 O-O 15.Rfc1 白が素通し列に出遅れポーンをかかえているので通常ならこのような局面は黒が有利なはずである。しかしここでは黒の二つの小駒がクイーン翼で凝り固まっている。a6の黒ナイトは働きのある地点を見つけるのが困難である。理想の地点のc4に行くのには少なくとも5手かかる。15…Rc7 は 16.a5、15…Rc6 は 16.b5 で駒損するので容易にルークを重ねてc3のポーンを狙いをつけることもできない。15…d4 突きで打って出ようとするのは 16.a5 がぴったりだし、15…Nb8(再編成)は 16.c4 で明らかに白が優勢である。最後に 15…Rfd8 は 16.Nb3 で例えば 16…Rc4 17.a5 Bc7 18.b5 Nc5? 19.Nxc5 Rxc5 20.Ba3 となって白が優勢を維持する。

 実戦は白がこのクイーン翼のポーンを用いて黒を締めつける作戦を見逃した。代わりに中央で大局的に指す作戦を選んだ。その作戦はまずd4の地点を支配することである。そのあとはキング翼のポーンを少しずつ突き進めていく予定である。しかしその実行は全然うまくいかなかった。黒がそうさせなかった!

12.Nb3 Bb6 13.Re1 O-O 14.a4?!

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(106)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 この局面で白には作戦が必要である。キング翼でのポーンによる攻撃は不適切である。例えば 12.g4 は 12…h5! 13.h3(13.g5 は …Nf5 の余地を与えるがそれでも最善である)13…hxg4 14.hxg4 Ng6(14…f6!?)15.Nb3(f4の地点を侵入から守った)15…Nh4! 16.Nxh4 Rxh4 となって白は 17.Nxc5 Rxg4+ でポーン損になるかぞっとする 17.g5 を指さなければならない。

 fポーンを積極的に使おうとするのも良くない、例えば 12.Nd4? は 12…Bxd4 13.cxd4 Rc8 となって黒がc列から侵入する。また 12.Nb3 は 12…Bb6 13.Nfd4 Nc6 14.f4 Nxd4 15.Nxd4(15.cxd4 Nb4)15…Bxd4+ 16.cxd4 Nb4! でナイトが活発に働き始め 17…Nc2 といううるさい狙いがある。

 これらよりずっと有望な作戦はポーンを用いてクイーン翼に勢力を張ることである。例えば 12.b4! Bb6 13.a4!

 黒の手番 

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(65)

「Chess Life」2004年12月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット(続き)

戦型C)1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 Nf6 4.Nc3

 4.d3 は 4…d5 5.exd5 Nxd5 6.Nf3 Be7 7.O-O O-O 8.Bxd5 Qxd5 9.Bxf4 Bg4 10.Nc3(10.Bxc7 Qc5+)10…Qd8 11.Qd2 Nc6 12.Rae1 Qd7 13.Ne5 Nxe5 14.Bxe5(ユディット・ポルガー対バルレ、レイキャビク、1988年)で互角だった。

4…c6

 黒は …d7-d5 と突いて白のc4ビショップの威力を無力にする用意をしている。

5.Bb3 d5 6.exd5 cxd5

 黒は次のように一組のナイトを交換して同様のポーン陣形にすることもできる。6…Nxd5 7.Nxd5 cxd5 8.d4 Bd6 9.Qf3 Nc6 10.Ne2 Be6 11.Bxf4 Bxf4 12.Qxf4 O-O 13.O-O Qb6 14.Rad1 Rad8 15.Rd3(ヒラルプ・ペルソン対ティマン、マルメー、2000年)

7.d4 Bd6

 黒はf4のポーンを守った。アーナンド対モロゼビッチ戦(モスクワ、1995年)ではc3のナイトを釘付けにしあとで取る 7…Bb4 が指され、次のように非常に面白い手順が続いた。8.Nf3 O-O 9.O-O Bxc3 10.bxc3 Qc7 11.Qe1 Nc6 12.Qh4 Ne7 13.Bxf4 Qxc3 14.Bd2 Qc7 15.Ne5 これで白にポーンの代償がある。

8.Nge2

 白はf4ポーンに当たりを追加した。代わりに 8.Nf3(Ne5 と跳ぶ狙い)も指されてきた。これに対して黒の最善の選択肢はできるだけ早くキャッスリングすることである。8…O-O 9.O-O Be6 10.Ne5 のあと 10…Bxe5 11.dxe5 Ng4 ならいい勝負である。

 黒が 8…Nc6 9.O-O Be6 でキングを安全にするのを遅らせれば白が優勢になる。白が攻撃的に 10.Ng5 Bg4?! 11.Qe1+ Kf8 12.Nxd5 Nxd5 13.Nxf7! Kxf7 14.Bxd5+ Kg6 と指すことができここで華麗な 15.Qg3!! がある。

 白は 10…O-O 11.Bxf4 Bxf4 12.Rxf4 Qb6 13.Qd3 でも 10…h6 11.Nxe6 fxe6 12.Bxf4 Bxf4 13.Rxf4(N.ショート対P.ニコリッチ、ベイクアーンゼー、1997年)でも陣形的に少し有利である。

8…O-O

 ティマンはレインデルマン戦(アムステルダム、1999年)で 8…f3 と指したが、白は 9.gxf3 O-O 10.Bg5 のあとクイーン翼にキャッスリングして有利な陣形になった。

9.O-O g5

 白がf4ポーンを取ることができれば、d5の孤立ポーンのために黒が長期的に苦労することになる。黒はキング翼を弱めてもポーン得にしがみつくことができる。

10.h4

 すぐに 10.Nxd5 Nxd5 11.Bxd5 と取るのも 11…Nc6 12.c3 Ne7 13.Be4 Ng6 14.Qc2 Re8 15.Bd2 Qe7 16.Bd3 Bg4 17.Rae1 Qc7 18.Kh1 Bh5 19.Ng1 g4!(A.ダビド対V.トカチョフ、カンヌ、2000年)で非常に激しい戦いになる。

10…h6 11.hxg5 hxg5 12.Nxd5 Nc6

 乱戦だがいい勝負である(ライナ対ハザイ、ハンガリー、1979年)。

結論

 白としてはねじり合いが好きで戦力の犠牲を恐れないならばこの布局が考えられる。受けに回るのが好きでない相手に対して良い選択となるかもしれない。

 黒としては取り上げた三つの選択肢から最も気に入ったのを選ぶとよい。三つのどの戦型でも正しく指せば均衡のとれた局面になる。違いは局面が穏やかか激しいかである。

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フランス防御の完全理解(105)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 黒は白枡ビショップ同士を交換するという目標を達成し、今度はクイーン同士を交換することを望んでいる。そうなれば黒キングはもう詰みに怯えなくて済むのでキング翼での白の主導権が弱くなる。

10.Qxa6

 ここは重要な岐路である。白はクイーン同士の交換を避けるべきだったのだろうか。すぐ目につく交換を避ける手は 10.Qc2 で、次のように進む。10…Ne7 11.Bf4 Ng6 12.Bg3(このビショップは進んで墓に入った。というのはe5の地点の過剰防御になるし、黒があとで …f6 突きで白の広さの優位を否定しようとすれば exf6 でこのビショップが急に重要な斜筋を支配するからである。おまけにg6のナイトはそれほど好所にいるというわけではない)12…Nc6 13.Nbd2 O-O 14.h4 h6(h5 から h6! と突き捨てて黒のキング翼を破壊するのを防いだ)15.Rab1(b4 から b5 と突き進める意図)15…b5 16.Nb3 Bb6 面白い戦いになりそうである。だから白はa6のクイーンが場違いであることを証明しようとすることもできた。

 本譜のクイーン交換のあと黒はa6のナイトを適切な地点に行かせるために手数をかけなければならない。実戦で白はこれにつけ込むことができなかったが、それはただ単に劣った作戦を選んだためである。

10…Nxa6 11.Nbd2 Ne7

 白の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(104)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

6.Be2

 白が黒の構想を止めるのは難しい。6.Na3!? と指すことはできるが 6…cxd4 7.cxd4 Bxa3 8.bxa3 を許すし、6.a4?! は 6…Nc6 7.Bb5!? cxd4 8.cxd4 a6 9.Bxc6 bxc6 から素早い …c5 突きで黒が通常の戦型に移行させることができる。

6…Bb5 7.dxc5

 ずっと厳しい手は 7.c4!? で、7…Bxc4 8.Bxc4 Qb4+ 9.Nbd2 dxc4 10.O-O と進んで重要な局面になる。チェス新報第61巻でベリヤフスキーは黒のために 10…cxd4 11.Nxd4 Ne7? を推奨している。しかしこれは 12.a3! Qc5 13.Ne4 Qxe5 14.Nxe6! で黒に適当な手がないので負けになる。例えば 14…Qxe6 なら 15.Nd6+ Kd7 16.Nxf7+、14…fxe6 なら 15.Nd6+ Kd7 16.Nf7+ Qd5 17.Qe2! Nbc6 18.Be3!、14…Nbc6 なら 15.Bf4! という具合である。どの場合も黒が戦力損になるか白の勝ちになる攻撃に直面する(または両方)。11手目での黒の他の手もうまくいきそうにない。例えば捨て駒の 11…Nd7 12.Qe2 Qc5(12…Bc5 13.a3)13.Nxc4 Qxd4 14.Rd1 Qh4 15.Be3 は黒が非常に危険である。ここで 15…O-O-O なら 16.Bxa7 だし、他の手では 16.Rd4、16.Rxd7、16.Qd3 それに 16.Nb6 のどれも可能である。だから 10…cxd4 の代わりに1994年ラス・パルマスでのアダムズ対イリェスカス戦では黒が 10…Nc6 と指したが、それでも白が次のように明らかに優勢になった。11.dxc5 Bxc5 12.a3 Qb5 13.Ne4 Nge7 14.Be3! Rd8 15.Qe2 Bxe3(他に指しようがない)16.Nd6+ Rxd6 17.exd6 Bxf2+ 18.Rxf2 Nf5 19.Rd1

 上記の手順で黒に改良の余地がないならば関心のある読者には 6…cxd4 と指すことを勧める。そして 7.cxd4 のあと初めて 7…Bb5 と指せば白には c4 と突く手がない。この手法のわずかな欠点は白が Nc3 と指せるようになることだが、局面の閉鎖性を考えればあまり大した問題にはならないはずである。

7…Bxc5 8.O-O Bxe2 9.Qxe2 Qa6

 白の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(103)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

第16局
イワノビッチ対ベリヤフスキー
ユーゴスラビア、1994年
ウェード戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3

 別の古典中原の混合型は 4.Nf3 Nc6 5.Bd3 cxd4 6.O-O から生じる。白はd4のポーンを取り返せるのはほとんど確実で、そのあとd4の地点をナイトの拠点として用いることを期待している。1937年モスクワ対レニングラード対抗戦でのレベンフィッシュ対ボトビニク戦では 6…Bc5 7.Nbd2 Nge7 8.Nb3 Bb6 9.Bf4 Ng6 と進み、ここで白は 10.Bxg6 fxg6! でなく 10.Bg3 で争点を維持すべきだった。

4…Qb6

 黒はできるだけ早く白枡ビショップ同士を交換する作戦である。主手順の 4…Nc6 5.Nf3 Bd7 のあと白は 6.dxc5!? と指すことができる。その論拠はdポーンを守るのは大変すぎて、代わりに駒を有効な地点に展開させるということである。1995年ロンドンでのダンワース対B.マーティン戦では 6…Bxc5 7.b4 Bb6 8.b5 Na5 9.Bd3 Ne7 10.O-O Rc8 11.a4 Ng6 12.Re1 O-O と進んだ。対局後ダンワースが指摘したように白は広さの優位を維持しキング翼で攻撃の可能性がある。その一方白のクイーン翼はいくらか形が崩れていて、特にc3のポーンがそうである。b1のナイトを展開するとc3のポーンが取られてしまう。ここでダンワースは 13.Ra2!? を推奨している。この手の意図はニムゾビッチの有名な過剰防御の原則に従って Rae2 でeポーンを補強することである。上記の実戦は 13.Ba3 Bc5 14.Bxc5 Rxc5 となって黒が少し窮屈さが緩和されたが、それでもあとで白が黒の中原の黒枡の空所につけ込んで好局をものにした。6.dxc5 はもっと注目に値する手であることは明らかである。

5.Nf3 Bd7

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(305)

「Chess Life」2013年2月号(2/2)

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収局研究室

戦うビショップ(続き)

GMパル・ベンコー

敵陣突破!
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2783、米国)
GMアニシュ・ギリ(FIDE2730、オランダ)
第1回FIDEグランプリ、ロンドン、2012年

 白の優勢は疑いない。しかし局面はやや閉鎖的である。47.Bd5 でも良さそうだが、白ははるかに強力で意表を突くきれいな敵陣突破の手を見つけた。

47.g5!! hxg5 48.h6! gxh6 49.Rxe5!! fxe5 20.f6

 これでようやく白の犠牲の主眼点が分かる。コンピュータではなかなか読めない手である。

50…Bd7

 51.Bxc5 の狙いに対してこれより他に適当な手はない。

51.f7+ Ke7 52.Bxd7

52…Kxd7(?)

 52…Kxf7 の方が良いが、それでも双ビショップが弱いb7、c5それにe5のポーンに照準を合わせているので白の勝つ可能性が十分ある。白の一番いい作戦は Bf5 から Be4 と指すことで、黒が苦境に陥る。

53.Bxc5 h5 54.f8=Q Rxf8+ 55.Bxf8

 駒得で決まりのはずだが、白は黒のパスポーンをせき止めなければならない。

55…h4 56.Bh6 g4 57.Bg5 h3 58.Bh4 Kd6 59.Bg3

 攻防に利くのでここがビショップの一番良い居場所である。さらにはポーンをせき止めてキングが自由に掃討作戦を行なえるようにしている。

59…Ke6 60.Ke2 Kd6 61.Kd2

61…Kc5

 代わりに 61…Ke6 なら 62.Kc2 で Kb3-b4-c5 を狙う。そして 62…Kf5 と来れば 63.c5 Ke6 64.c6 で勝ちになる。

62.Bxe5 Kb4 63.Kc2 Kxa5 64.Kb3 Kb6 65.Bxd4+ 黒投了

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(102)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

31…Bb2+!

 この手筋の一撃で白がクイーンを失う。

32.Qxb2

 32.Rxb2 なら 32…Rd1+ 33.Rb1 Qxb5 である。

32…Rxb2 33.Kxb2 g5 0-1

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(101)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 自国の君主を安全にしてから黒はここから白キングに対する襲撃の用意をする。その作戦の第1段階はc列にルークを重ねることである。

17.Rc1 Rc8 18.Ka1 Rc7 19.f5 Rhc8 20.g4 a5!

 本当の攻撃はここから始まる。黒はaポーンを用いて白のクイーン翼を破壊する。

21.Qf4 a4 22.fxe6 fxe6 23.d4

 白は何とかd4の地点を奪い返したが駒でなくポーンを用いてにすぎず、しかも手遅れであった。

23…a3 24.Rb1?!

 この手は黒の襲撃に抵抗のすべがなかったので 24.b3 の方が良かった。

24…Be7 25.bxa3 Qa6 26.Qe3 Bb5 27.Nf4 Rc2 28.Rec1 Bxa3 29.Rxc2 Rxc2 30.Qb3

 白は …Bc4 の狙いに満足な応手がなかった。

30…Rxd2 31.Qxb5

 黒の手番 

(この章続く)

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布局の探究(35)

「Chess Life」1991年12月号(1/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

布局のはめ手 現実か幻影か

 最も人気のあるチェスの本は布局のはめ手についての本である。これは本を買う者がそのようなはめ手に陥るのを恐れているからではない。それよりも軽率な相手をはめて簡単に勝つことを期待していることの方がずっと多い。自分は落とし穴にはまらないようにし相手のへまにはつけ込むようにするために、自分の常用布局に潜むはめ手に精通しておくことが大切である。しかしこのようにして勝ちを重ねることに大きな期待をかけてはいけない。現実には布局のはめ手に実際にはまる者はそのような本の著者が読者に思い込ませるよりもはるかに少ないものである。

 それでも本当の布局のはめ手はやはりはめ手であり、知っておくことは自分の利益になる。しかし「生はんかな知識はかえって危険である」という警句は心にとめておかなければならない。おそらく同じはめ手でも局面はわずかに違っていることがあるだろう。たいした違いはないと思うかもしれないが、この違いは天と地ほど違うことがある。これは実戦の重要な主題で、ここで説明していく。棋譜はシチリア防御ドラゴン戦法を用いる。具体的な主題は「白が早く Be3 と指した。黒はそのビショップを …Ng4 でいじめることができる。黒はそうすべきだろうか」である。最初に黒キングが中央にいる例を少し見て、そのあとキャッスリングしている例を見てみる。

Ⅰ 黒キングが中央にいる

 ドラゴン戦法に行くための現代の手順は 1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 である。そして白がいくつかの主流手順に到達するための最も融通性のある手は 6.Be3 である。

 図1

 しかし黒はここで意地悪く 6…Ng4 でこのビショップを攻撃してこないのだろうか。その答は「こない」である。それに対して白は意表をつく 7.Bb5+! で強引に勝ってしまう。

 a)7…Nd7? でも 7…Bd7? でも 8.Qxg4 で黒の駒損になる。

 b)7…Nc6 は 8.Nxc6 bxc6 9.Bxc6+ Bd7 10.Bxa8 で白の交換得と1ポーン得になる。

 だから黒は 6…Ng4? 7.Bb5+! で真の布局のはめ手にはまったことになる。布局定跡の観点からはこれは重要なはめ手である。しかし実戦ではどのくらい重要なのだろうか。私は40年以上に渡って 6.Be3 を指してきたが 6…Ng4 とはまった相手は一人もいなかったと言えば十分だろう。

 しかし似たような局面でこの情報がどのように活用されるか-または誤用されるか-を理解することは重要である。図1から次のように続けよう。

6…Bg7

 白が Bf1-c4 と指すユーゴスラビア攻撃を目指すなら、通常の手順は 7.f3、8.Qd2 から 9.Bc4 である。しかしなぜすぐに次の手を指さないのだろうか。

7.Bc4

 それにはもっともな理由がある。

7…Ng4! 8.Bb5+ Kf8

 図2

 黒キングに安全な逃げ場があったので「はめ手」は失敗した。確かに黒はキャッスリングできなくなったが、白のビショップは共に変な地点に散らばっている。だからこの不均衡な局面で黒は十分に指せる。

 1)9.Bc1? Qb6 は黒が明らかに優勢である。

 2)9.Qd2 a6 10.Bc4 Nc6 は1962年ストックホルムでのショルド対ボトビニク戦で、完全に互角だった。黒は都合のよいときに …Nxe3 と取り、強力な双ビショップがキャッスリングしていないキングの代償になる。

 3)9.O-O Nxe3(ここでも白のf列での攻撃を遅らせる 9…a6!? 10.Bc4 Nc6 は可能である)10.fxe3 e6 11.Bc4 Qe7 12.Ncb5 Be5! はこの混戦の局面でも黒が問題なさそうである(13.Nf3 Kg7)。

 4)9.Bg5(これがおそらく白のもっとも理にかなった手段である)9…h6 10.Bh4 g5 11.Bg3 Qb6 12.Nde2 h5!(黒は白のビショップの悪形につけ込もうとしなければならない。さもないと自分の弱点がひびいてくる。例えば 12…Nc6? なら 13.h3)13.h4 gxh4 14.Rxh4 Nc6 15.Qd2 Nd4! 16.Nxd4 Qxd4 17.O-O-O Qxd2+ 18.Rxd2 Bf6 はほぼ互角である(リュボエビッチ対ソソンコ、オリンピアード、1978年)。

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フランス防御の完全理解(100)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 このビショップはもうc3の地点の攻撃には関心がない。黒は重要な中原のd4の地点に三つの駒が利いている。ニムゾビッチの金言に「中央の要所の過剰防御に関わる駒は、戦いの過程で生じる他の重要な責務にも『偶然』といっていいほど適所に位置している」というのがあるが、この局面でこれの証明が期待されるのは黒の方である。

9.Bd3 Nh4!

 この手は 10.Bxf5 と指させないためである。そしてf3でナイト同士を交換したあと黒はd4の地点をしっかり支配し続ける。

10.Qe2

 1994年英国選手権戦でのW.ワトソン対ハーリー戦では白が 10.Nxh4 Qxh4+ 11.g3 Qd8(11…Qh3!? W.ワトソン)12.a3! と改良し …Nb4 を妨げた。そのあと試合は 12…f5?! 13.exf6e.p. Qxf6 14.Qe2 O-O 15.O-O-O Bd7 16.Qh5!?(16.g4! の方が良い)16…g6 17.Qe2 Nd4 18.Qg2 Rac8 19.h4 Qe7 20.Kb1 Bxa3! 21.Nxd5! +/= と進んだ。相手の攻撃が待ち構えているキング翼にキャッスリングするよりも、黒は前局の解説で述べた原則に従って 12…a6!? から …b5 と指すことを考えるべきで、それならいい勝負だった。13.Qg4 には 13…Bf8! でよい。

10…Nxf3+ 11.Qxf3 Nb4!

 11…O-O? は 12.a3!(…Nb4 を防ぐ)で白に黒キングに対するおあつらえの攻撃法が用意される。そこで黒はキャッスリングを遅らせて、代わりに白の強力な白枡ビショップを除こうとした。しかしこのビショップは引っ込むと白に他の問題が生じるので、黒は …Nxd3+ の狙いの実行を急がない。

12.O-O-O Bd7 13.Kb1 Qb6 14.Rhe1 O-O-O

 14…O-O でも白はたぶんすぐに 15.f5!? でまだ攻撃できる。黒キングは周囲に守備駒のいるクイーン翼の方がはるかに安全である。

15.Ne2

 15.Bf1 は 15…Bc6 から 16…d4 の狙いで白がやりにくそうである。

15…Nxd3 16.cxd3 Kb8

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(99)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

第15局
へブデン対マクドナルド
英国選手権戦、1989年
ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.Bd2

 白は …Bxc3 にビショップで取り返すつもりである。そうすることによって通常なら 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 でクイーン翼のポーンの形が乱れるのを防ごうとしている。しかしこの手の欠点は白が一時的にせよd4の地点をめぐる戦いを無視することにある。このことにより黒がたやすく互角の形勢にすることができるはずである。古典中原の他の型は次のようにして生じる。

 a)5.a3 Ba5 6.b4!?(6.Bd2 Nc6 7.Nb5 Nxd4! =)6…cxd4 7.Nb5(7.Qg4 については第6章を参照)7…Bc7 8.f4! Nh6 9.Nf3 Bd7 10.Nxc7+ Qxc7 11.Bd3 a6 12.a4! +/= アトラス対キンダーマン、プトゥイ、1995年)

 b)5.dxc5 Nc6 6.Nf3 Nge7 7.Bd3 d4! 8.a3 Ba5 9.b4 Nxb4 10.axb4 Bxb4 11.O-O Bxc3 12.Rb1 h6! 13.Nd2 Bxd2 14.Bxd2 Bd7! 15.Rxb7 Bc6 16.Rb4 Qd5 ∞ ホッジソン対S.アーケル、ロンドン、1988年

 c)5.Qg4 Ne7 6.Nf3(6.dxc5 Nbc6 7.Bd2 はこのあとの6手目の解説に移行する)6…cxd4 7.Nxd4 Ng6! =/+

5…Ne7

 これは最も自然な手である。5…cxd4 は 6.Nb5 Bxd2+?(6…Be7 が正着)7.Qxd2 から 8.Nd6+ の狙いで黒が厄介なことになる。

6.f4!?

 これはきわめてまれな手である。他には次の三つの手がある。

 a)6.a3 は一貫性のある手である。というのは 6…Bxc3 7.Bxc3 となればクイーン翼のポーンの形を乱すことなく双ビショップになるからである。しかし中央を安定させてこの陣形の優位を固めるのが間に合わない。例えば1987年ベイクアーンゼーでのリュボエビッチ対ノゲイラス戦で黒は次のように鮮やかに勝った。7…Nbc6 8.Nf3 cxd4 9.Nxd4!? Nxe5 10.Nxe6 Bxe6 11.Bxe5 O-O 12.Bd3 Nc6 13.Bc3 d4 14.Bd2 Ne5! 15.Bxh7+? Kxh7 16.Qh5+ Kg8 17.Qxe5 Re8 18.Qg3 Bc4+

 b)6.Nb5 Bxd2+ 7.Qxd2 O-O 8.c3(8.dxc5 は 8…Nd7 で黒がポーンを取り返し互角になる)8…Nbc6 9.Nf3 a6 そして 10.Nd6 cxd4 11.cxd4 f6! 12.Nxc8(最善)12…Rxc8 は黒が有利なので白は 10.Na3 と指さなければならず 10…cxd4 11.cxd4 Nf5 または 11…f6 で互角の形勢になる。

 c)6.dxc5 Nbc6 7.Qg4 O-O 8.O-O-O(8.Bd3 Ng6 9.Nf3 Bxc5 10.O-O +/= の方が良い)8…Ng6!(8…f5 9.exf6e.p. Rxf6 10.Bd3 e5 11.Qh4 h6 12.Ne4!? ∞)9.Nf3 Bxc5(9…d4! の方がずっと良いかもしれない)10.Qh5! Bd7 11.Bd3 Nb4 12.Bxg6 fxg6 13.Qg4 Rf5 14.h4 Be7! =/+ ハーリー対B.マーティン、チェルテナム、1995年

6…Nbc6

 これで白はポーンによるd4の地点の占拠をあきらめなければならない。

7.dxc5

 7.Nb5 は 7…Bxd2+ 8.Qxd2 Nxd4 9.Nd6+? Kf8 で良くない。

7…Nf5 8.Nf3 Bxc5!

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

「証拠の示し方」

毎日新聞電子版2013年2月11日付け
「証拠の示し方」

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ポルガーの定跡指南(64)

「Chess Life」2004年12月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット(続き)

戦型B)1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 d5

4.Bxd5

 1980年代に私の二人の妹や他の人たちは 4.exd5 を好んでいた。白がビショップで取る手に改善策を探し始めたのは近年である。

 ポーンで取ったあとの黒の手は次のとおりである。

 a)4…Nf6 5.Nc3 Bd6 6.Nf3(6.Qe2+ も面白い)6…O-O 7.O-O Nbd7(ユディットは1990年ノビ=サド・オリンピアードでのM.ワーグナー戦で次のように短手数で勝った。7…c6 8.d4 b5 9.Bd3 b4 10.Ne4 Nxe4 11.Bxe4 f5 12.Bd3 cxd5 13.c4 bxc3e.p. 14.Qb3 Bc7 15.bxc3 Ba6 16.Bxa6 Nxa6 17.Ba3 Rf6 18.Be7! Qd7 19.Bxf6 1-0 黒の戦力損になる)8.d4 Nb6 9.Bb3 この手は Ne5 を狙っている。黒はf4ポーンにしがみつきたければほぼ …h7-h6 突きから …g7-g5 突きで守らされ、形を決めてしまって非常に危なっかしい戦略である。

 b)別の試合で黒は 4…Bd6 5.Nf3 Ne7 6.O-O O-O 7.Nc3 Bg4 を試みたが 8.d4 Nd7 9.Ne2 Nb6 10.Bb3 a5 11.c4 a4 12.Bc2 で白が優勢になった。12…Nxc4? と取ると 13.Qd3 で黒のナイトが取られる(ユディット・ポルガー対L.ユルタエフ、デブレツェン、1990年)。

 しかし黒は最近 4…Qh4+ 5.Kf1 Bd6 でうまくいっている。(開き攻撃の 5…f3 のあと白は挿入手の 6.Bb5+ c6 のあと 7.Nxf3 Qh5 と指しここで 8.Qe2+ がある。これは1987年サンバーナディーノでのソフィア・ポルガー対J.スタイナー戦である。)6.Nf3 Qh6!

 f4とd6の両方の地点を守っているので、より自然そうなh5の地点より良い。7.Nc3 Ne7 8.Ne4(8.d4 O-O 9.Kf2 Bg4 も黒が良い)8…Nd7 9.Nxd6+ Qxd6 10.d4 O-O 11.Kf2 Nb6 12.Bb3 Nbxd5 アダムズ対シロフ戦(ティルブルフ、1997年)では黒が優勢だった。

 それではビショップで取る 4.Bxd5 の戦型に戻ろう。黒は用心深い方の 4…Nf6 か乱暴な方の 4…Qh4+ を選ぶことができる。

4…Nf6

 現在の定跡の評価からすれば危険な 4…Qh4+ 5.Kf1 g5(5…Nf6 6.Nf3 Qh5 7.Nc3 c6 8.Bb3 Bg4 9.d4 g5 10.e5 Nfd7 11.Ne4 Be7 12.h4 は正確さで劣り白に主導権がある)6.Nf3 Qh5 7.h4 Bg7 8.Nc3 h6 9.d4 Ne7 10.Qd3 O-O 11.Ne2 Nbc6 の方が好ましい。

 この種の局面では両者とも想像力に富んだ指し方の可能性に富む中盤戦を期待するのが通例である。

5.Nc3

 5.Bc4 は 5…Nxe4 6.Nf3 Bd6 7.d3 Nc5 8.O-O O-O となって白には代償があるがそれだけのことである。

5…Bb4 6.Nf3

 白は 6.Nge2 でナイトをつなぐとポーンの形が崩れるのを避けられない。なぜなら 6…Bxc3 7.Nxc3 のあと 7…Bg4 で黒が優勢になるからである。

6…Bxc3

 6…O-O 7.O-O でも白の楽な収局になる。黒は 7…Bxc3 8.dxc3 c6 9.Bc4 Qxd1 10.Rxd1 Nxe4 11.Bxf4 でポーンを取り返すことができるが、c列の二重ポーンにもかかわらず白には双ビショップ、活動的な陣形、それに主導権がある。11…Nd7 12.Rd4 Ndf6 13.Re1 Bf5 14.Bd3 となれば黒の難局である。

7.dxc3 c6 8.Bc4 Qxd1+ 9.Kxd1 O-O

 黒はまずキングを安全にしてからポーンを取る方が良い。すぐに 9…Nxe4 と取ると 10.Re1 f5 11.Bxf4 となって黒キングはもうキング翼にキャッスリングできなくなる。

10.Bxf4

 10.e5 Nh5 も十分考えられる。

10…Nxe4 11.Re1

 ここで黒は問題をいくつか抱えている。11…Bf5(11…Nc5 なら 12.Re7 で白ルークが7段目に侵入する)のあと白キングは 12.Kc1 と寄って 13.b4 と突いてから 14.Kb2 で安全なb2の地点に入る。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フランス防御の完全理解(98)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

22.Rd3

 黒には 22…Rxd4! という狙いがあった。ここまで黒は攻撃的な手を指し、白は正確に守らなければならなかった。しかし大駒を使っての攻撃はここで息が切れた。c2の地点はしっかりと守られ、白陣に突破の可能性のある地点は他に見当たらない。だから黒はここからクイーン翼のポーンを突き進めてなんとか素通し列を作ろうとする。しかし白も黒キングに対してポーンの襲撃を始めることができ、キング翼に黒の守り駒がないので白の成功の可能性の方がはるかに高い。それに白のナイトの方が黒のビショップよりはるかに優っていることは明らかである。このナイトはd4の地点から攻守の捌きに力を発揮することができ、一方d7のビショップは自分のキングの助けにも白キングへの攻撃にもほとんど成すすべがない。

22…a5 23.Re1 a4 24.g4

 ついに白は準備万端整ったと判断して攻撃にとりかかった。

24…h6

 このポーン突きは白のポーン進攻の標的になる。しかし黒が何もしなければ白は(…Rxd4 で交換損の犠牲をさせたあと)f5 から f6 とポーンを突いたあと Qg5 で簡単に詰みにきってとる。

25.h4 Qa7 26.h5 Ra8 27.g5 hxg5 28.f5! exf5 29.Qxg5!

 白クイーンは結局g5の地点に行った。ルークはただ捨てになるが白の攻撃は止められない。

29…Rxd4 30.Rg3 g6 31.hxg6 Rg4 32.Rxg4 fxg4 33.gxf7+ Kf8 34.Qh6+ Kxf7 35.Qf6+ 1-0

  35…Ke8 のあと 36.Rh1 ですぐに詰みになる。

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(97)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 黒には …Qe3+ から …Qxf4 という白にとって厄介な狙いがある。例えば 17.Qh8+ Ke7 18.Qxg7 Qe3+ 19.Kb1 Qxf4 20.Rhf1 Rg8! という具合である。そこで1991年アムステルダムでのファン・デル・ビール対コルチノイ戦では白が 17.Rhe1 と指したが、17…Qb4 18.Qh8+ Ke7 19.Qh4 Kd8 20.Nxe6+ Kc8 となって黒キングが比較的安全なクイーン翼に逃亡した。白にはまだ攻撃の可能性があるが最終的には黒が陣形をまとめて勝ちきった。

 だから白がh7でビショップを切る前に Kb1 と指すのは理にかなっている。上図で Kb1 と …Rac8 とが加わった局面は1989年ロッテルダムでのサクス対ティマン戦に現れた。黒の11手目の解説中のチャンドラー対アナグノストポウロス戦でのようにサクスは 18.Qh5 と指した。ティマンは 18…Ke7! と応じたが、この受けはアナグノストポウロスの試合ではビショップがまだd7の地点にいたので Qxf7+ Kd8、Nxe6+ とされるので指すわけにいかなかった。そして 19.Nxf7 Na5! 20.Nd6 となったところで期待はずれの早い引き分けが合意された。このあとのティマンの想定手順は 20…Kd8 21.f5 exf5 22.Nxe8 Bxe8 23.Qxf5 で混戦になる。

 Qh8+ とチェックする手も考えられる。また上図に戻って今度は Kb1 と …a6 とを加えれば1989年キューバでのシエイロ・ゴンサレス対パネケ戦となり、18.Qh4!? Rec8 から 19.Qh8+ Ke7 20.Qxg7 と続いた。20…Qe3+ というチェックがないのでパネケは 20…Kd8 21.Qxf7 Qe7 と応じた。パネケによればここで白が 22.h4 と突いていれば形勢不明だった。代わりに実戦では白が 22.Qg6 と指したので黒は 22…Kc7 23.h4 Rg8 24.Qd3 Rac8 で陣容を固めて勝った。

 ということで黒がギリシャの贈り物のビショップ切りの前に …Bd7 と指していると仮定すれば黒にとって少なくともいい勝負のように思われる。だからわずかな優勢を維持するために白がもっと自制した手法に努めてきたのは驚くに当たらない。本譜の 12.Nd4 の他に白はd6の地点への跳び込みを期待して Nc3-b5 という捌きを試みてきた。1995年ブックフルドーでのZ.アルマーシ対セルメク戦では 12.Bd3 Bd7 13.Kb1 Rac8 14.Nb5!? f6!?(14…a6? は 15.Nd6 Rc7 16.c3! から 17.b4 となって黒クイーンが動きに窮することになるかもしれない)15.exf6 Rxf6 16.Nbd4 Nxd4 17.Nxd4 Na4(d4のナイトはもちろん御法度である)18.Nb3 Qb6 19.Rhe1 となってd4とe5の地点を支配することにより白が優勢になった。14…f6 の代わりに 14…Na4 が 14.Nb5 に対する面白い応手である。そのあとではギリシャの贈り物は次のように自滅する。15.Bxh7+ Kxh7 16.Ng5+ Kg8 17.Qd3 Rfd8 18.Qh7+ Kf8 19.Qh8+ Ke7 20.Qxg7 Nxe5!(…Qxc2+ から …Qb2# で詰ます狙い)21.Qxe5 Qxb5 これで黒の勝ちになる。だから白はおそらく 15.Nd6 と指すべきだろうが、15…Qb6 16.c3(16.c4!?)16…Rc7 で黒も反撃できる。

12…Bd7 13.Kb1 Rac8 14.Be2 Nxd4 15.Qxd4 Qa5?

 コルチノイは勝ちを目指しクイーン交換を避けた。しかしその結果中盤戦では黒キングに対する白の攻撃が黒のクイーン翼でのどんな反撃よりも強力になった。だから黒は 15…Qxd4 16.Rxd4 f6! で白の中原を切り崩し互角を達成することに満足すべきだった。

16.Rhf1 Nc4 17.Rf3!

 ルークがc3のナイトの補強にちょうど間に合い …Na3+ の変化をなくしている。

17…b5 18.Bxc4 Rxc4

 18…bxc4 なら 19.f5(20.f6 の狙い)19…exf5 20.Nxd5 が非常に強力である。

19.Qd2

 この手には 20.Nxd5! Qxd2 21.Ne7+ Kh8 22.Rxd2 という狙いがある。

19…b4 20.Ne2 Rfc8 21.Nd4 Qc7

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(96)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 17.Qh5! Nd8 18.Nh7+ Kg8 19.Rd3 Qe7 20.Rh3 f6 21.Nxf6+! Nxf6(21…gxf6 は 22.Qh8+ で早く詰む[訳注 22…Kf7 で詰まず互角なので、正着は 22.Rg3+ +- です])22.exf6 黒は 22…Qxf6 なら 23.Qxe8+、22…Qf7 なら 23.Qh8# なので投了した。

12.Nd4

 これは白の最も危険な手というわけではない。ギリシャの贈り物の筋はまだ重要である。白は先受けとして 12.Kb1 と指すことができるし、すぐに 12.Bd3 Bd7 13.Bxh7+ Kxh7 14.Ng5+ Kg8 15.Qd3 Rfe8 16.Qh7+ Kf8 に飛びつくこともできる。

 白の手番 

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(304)

「Chess Life」2013年2月号(1/2)

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収局研究室

戦うビショップ

GMパル・ベンコー

パスポーン
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2786、米国)
GMアニシュ・ギリ(FIDE2730、オランダ)
第16回ウニフェ・クラウン、ホーへフェーン、2012年

 ナカムラはほとんど有望といえない局面から絶好の局面になった。駒は全部好所にありパスポーン候補もある(f3-f4 gxf4 でパスポーンができる)。

53.Rg7 Bd8

 c3のポーンよりもg5のポーンの方が重要である。だからもっと積極的に見える 53…Bxc3 54.Rxg5 Rh1 は良くない。

54.Kg2

 この手は慎重すぎる。54.Rg8+ Kd7 55.f4 と指せばポーンがもう走り出していた。

54…Be7 55.Rg8+ Kd7 56.Ra8 c5 57.Rg8 cxd4 58.cxd4

58…Rh7

 58…Rh4 59.Kg3 Rh1 の方が抵抗力があった。

59.f4!

 ポーンの犠牲だけれども、遅くともしないよりはましである。

59…gxf4 60.g5 Bd6 61.Bf6 Be7

 ここは 61…f3+ 62.Kxf3 Rh4 と指してみるべきだった。

62.g6 f3+ 63.Kxf3 Rh5 64.Be5 黒投了

 黒は 64…Rf5+ 65.Ke2 Bf8 66.g7 で少なくともビショップを失うので投了した。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(95)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

11…Nb6

 1989年ロンドンで開催されたロイズ銀行オープン大会でのチャンドラー対アナグノストポウロス戦でギリシャの贈り物のビショップ切りは次のように黒にとって致命傷になった。11…a6 12.Bd3 b5?(黒は 12…Nb4 または 12…Re8 のようなことをやってみなければいけなかった)13.Bxh7+! Kxh7 14.Ng5+ Kg8 15.Qd3 Re8 16.Qh7+ Kf8

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(94)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 10.O-O-O も可能で、1992年ドゥエーでのマクドナルド対クラウチ戦では黒が 10…c4!? という思い切った手を指した。これで中央がしっかり固定化されたので、戦いが普通の進路から完全にはずれた。実戦では白の攻撃が次のように威力を増した。11.Nb5(d6の地点を目指し、…b5 突きを機械的に止めている)11…Rb8 12.h4 Nb6 13.Rh3 Bd7 14.Nc3!(矛盾したナイト引きだが、このナイトは黒のb5の地点での役目を果たし-黒のbポーン突きを押さえていた-14.Nd6 と跳び込んでも 14…Nc8! 15.Nxc8 Rfxc8 から …b5 で黒を助けてしまう)14…Na8?! 15.f5! 黒は 16.f6! 突きの狙いを防ぐために 15…f6 と突かなければならなかったが、16.Re1 fxe5 17.Nxe5 Nxe5 18.Rxe5 Rxf5 19.Rxf5 exf5 20.Nxd5 となって中央が壊滅した。それでも dxc5 を省略した白を「罰しよう」とする黒の構想は面白く、この試合の黒の手順は改良可能であることはほとんど確実である。

 1990/1年ヘースティングズでのラルセン対バレエフ戦では次のようにもっと普通の手順で進んだ。10.O-O-O cxd4 11.Nxd4 Nb6 12.Qe3 Bd7 13.Kb1 Qc5 14.h4 Rac8 15.Rh3 Na5?! 16.Nb3! Qxe3 17.Rxe3 Nac4 18.Rf3 f6 19.exf6 Rxf6 20.Nd4 そして白の有利な収局になった。互角にするには 15…Nxd4 16.Qxd4(16.Rxd4 Na4!?)16…Na4!? の方が良くて、c2の地点の弱点につけ込んで黒に有利な交換をさせる。

10…Qxc5

 10…Nxc5 と取り返す方の支持者もいるが、11.O-O-O a6 12.Kb1(またはすぐに 12.Bd3)12…Bd7 13.Qe3! で白が優勢を維持するようである。この最後の手が戦術の着眼点を多く含んだ急所の手である。まず、白は 14.Bd3 のあとギリシャの贈り物の捨て駒の 15.Bxh7+ をもくろんでいる。次に、白は 13…Rac8 に 14.f5! と応じる用意をしている。この手はc5のナイトを守らなければならない黒クイーンを過負荷にさせあとで f6 突きを狙っている。最後に、13…b5 には白に 14.Rxd5!? exd5 15.Nxd5 から 16.Qxc5 で主導権を得る面白い捨て駒がある。それでもこの最後の変化は黒がおそらく選択すべきものである。代わりに1988年ソチでのドルマトフ対ドラシュコ戦では黒が 13…Rfd8 と指して次のようにもっと不利な収局になった。14.Bd3 Nxd3 15.cxd3(15.Rxd3 も良い手である)15…f6 16.Ne2 fxe5 17.Nxe5 Nxe5 18.Qxe5 Qf6 19.Nd4 Qxe5 20.fxe5 Rf8 21.Rhf1 黒には不良ビショップがあり、白のナイトは中央の最適の地点にいて攻撃を受けない。黒がゆっくりとつぶされたのもむべなるかなである。

 読者はここまでの手順を黒の7手目の解説と比較してみるとよい。黒が …O-O を先延ばしにしていれば 10…Nxc5 がはるかに局面に適合していることは明らかである。なぜならギリシャの贈り物のビショップ切りがなく、黒が浮いた1手を白キングに対するクイーン翼ポーンによる攻撃に使えるからである。これは7手目でのチャンドラー対スピールマン戦の部分棋譜によく表れている。しかし同じく7手目で見たように白は O-O-O を遅らせ黒がキャッスリングするのを待つことができる。そのときには Qe3 と Bd3 の作戦がまた …Nxc5 への良い応手となる。

11.O-O-O

 黒の手番 

(この章続く)

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「レーダー照射、米軍なら反撃」

読売新聞電子版2013年2月6日付
「レーダー照射、米軍なら反撃」

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布局の探究(34)

「Chess Life」1991年10月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

不利な戦法の避け方(続き)

Ⅱ スラブ防御主手順(続き)

 この「自然な」結論は黒側を持つ多くの選手にパニックを起こさせ原因が図5の局面が悪いに違いないと思わせた。従って彼らはただこの局面を避けるためにいくつかの「不利な戦法」に没頭した。参考のために3例をあげる。

 (ⅰ)ティルブルフに戻ると第10回戦のカルポフ対ティマン戦では12手目で(12…Bxd2+ の代わりに)12…Qh4+? と変化した。そして 13.g3 Bxd2+ 14.Kxd2 Qe7 15.Qe3! Na6 16.Bxc4! Nb4(16…O-O-O+ 17.Ke2)17.Rad1 と進んで白の展開が図5のときよりもはるかに優る局面になった。「自分の戦法」で相手が通常の手順よりも展開で優ることができるならば、自分の戦法を疑ってみるべきである。

 (ⅱ)1988年テッサロニキ・オリンピアードでのグリーンフェルド対グランダ=スニーガ戦では図4から黒が 8…Nxe4? と指した。そして 9.fxe4 Qh4+ 10.Ke2 Bxe4 11.g3! Qh5+ 12.g4 Bd3+ 13.Kf3 Qh4 14.Bxd3 cxd3 15.Kg2! Nd7 16.Nxd3! Be7 17.Bf4 Nf6 18.Ne5 Rd8 19.h3 と進んで白の勝勢の局面になった。黒が駒の代わりに2ポーンしか得ていないのに対し、白は展開が良く 20.Nf3 の狙いがある。周知の手順で「自分の戦法」に明らかに駒の犠牲が必要になるならば、そして50年で誰もそれを指していないならば、自分の戦法を疑ってみるべきである。

 (ⅲ)1988年ガウスダルでのぺトゥルソン対メドゥナ戦では図4から黒が 8…Bg6? と指した。そして次のように粉砕された。9.Bxc4 Nbd7 10.h4! Qa5 11.Qb3 O-O-O 12.Bf4 Nxe5 13.Bxe5 h5 14.O-O! Nd7 15.Bg3 Be7 16.Rac1 Qb6 17.Nb5! e5 18.Bxf7 Kb8 19.Bxg6 cxb5 20.Bf5 Qxd4+ 21.Kh2 黒投了 GMメドゥナはスラブ防御の専門家として認められていて、5…Bf5 から 7…Bb4 と指す戦法の要点は白の e2-e4 突きをくじくことだと分かっていた。8.e4 のあと屈辱的な退却の 8…Bg6 はうまくいくわけがない。「自分の戦法」が布局の趣旨を無視することを要求するならば、疑ってみるべきである。

 図5の危機から黒を救うために不利な戦法を探すよりも黒は新しい視点で図5そのものを見てみるべきだった。ちょうどカルポフが白の可能性に必要な視点を持ち込んだように、黒も駒とポーンの正しい配置を発見する必要があった。このことがいったん認識されれば、黒の成績は向上し始めた。図5での棋理に合った対処法は1990年全ソ連選手権戦でのノビコフ対バレエフ戦で示された。

15…O-O-O 16.Qe5 f6 17.Qe3 Kb8!

 黒は 17…c5 で陣形を弱めるよりもキングの位置を改善した。

18.Kb3 e5 19.Be2 Nc5+ 20.Kb4 Ne6 21.Bf3 Qd7

 図6

 GMバレエフはこの局面を互角と評価している。すなわちいい勝負である。黒には中原への影響力、安全なキング、好所の駒がある。白は駒得だが黒陣に具体的な攻撃目標がない。現実にはうまく指す側に勝つ可能性がある。黒が62手で面白い収局に勝った。

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カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(93)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白は前局と同様のポーン陣形になったが、黒枡のビショップ同士が既に交換されている。これには有利な点がいくつかある。まず、f4 と突いたときに自分のポーン陣形の内側に黒枡ビショップが閉じ込められて少なくとも理論上は黒枡ビショップが「不良」ビショップになるが、それが避けられた。さらに、ビショップ同士の交換によりd4のような要所をめぐって戦うことができる黒の「優良」ビショップが盤上から消えた。そして黒のクイーンが少し場違いになっている。このクイーンは(…c5 突きのあと)b6の地点に行ってd4とb2を攻撃したいのだがe7の地点にそれてしまっている。

 しかし不利な点もある。まず既に指摘したように、この局面に到達するのに必要な手順が実戦では難しく、黒には変化する余地があり特に人気のある 4…dxe4 がそうである。第二に大帝国には多くの防御者が必要で、逆に小王国は人口過剰で苦労することがある。だから中央に大模様を構える白にとってビショップ同士の交換により黒陣の混雑を緩和したことは完全に理にかなっているわけではない。どうして重要なd4の地点を守るのに役立てるためにこのビショップを残しておかないのか。白がビショップ同士を交換しておくべきかどうかについて定跡ではまだ結論が出ていない。たぶん 4.Bg5 と 4.e5 の両方とも同じくらい良い(そして悪い)手なのだろう。

7…O-O

 ここは重要な岐路である。黒の戦略にとって理想的な手は 7…c5 と突いてすぐに白の中原に挑むことである。黒にとっては残念なことに 8.Nb5! と跳ねられ、9.Nc7+ と 9.Nd6+ の両様の狙いのために困難な状況に陥る。

 そこで黒はキャッスリングして Nb5 を気にせずに …c5 と突く方を選んだ。しかし黒はキングの位置を早くも決めたことにより白に作戦を立てるのを容易にさせている。もし黒キングがまだ中央にいれば、そして特にまだクイーン翼にキャッスリングする選択肢があれば、白がキング翼でポーンの暴風を仕掛けることはとても効果が期待できない。また、早い Bd3 から Bxh7+ と切るギリシャの贈り物の犠牲も存在しない。

 黒はこれらのことを勘案して 7…a6 と突いてキャッスリングを後回しにするようにしてきた。7…a6 は …c5 と突いたあとの Nb5 を防いでいるだけでなく、白が通常のようにクイーン翼にキャッスリングすると仮定してクイーン翼の示威行動の一貫として …b5 突きを準備しているということがその論拠である。中央にいる黒キングにとって事態が危険になってくれば …O-O-O も選択肢となる(もっとも …b5 と組み合わされることは考えられない)。黒は通常は 7…a6 のあといずれキング翼にキャッスリングすることになる。しかしキングがどこに住むかをあまり早く明らかにしないことによって相手の攻撃作戦の可能性を減らすことになることを期待している。

 1991年レイキャビクで米国のグランドマスターのヤセル・セイラワンは 7…a6 を3度試した。そして全試合とも 8.Nf3 c5 9.Qd2 Nc6 10.dxc5 Nxc5 と進んだ。

 ここでチャンドラーは 11.O-O-O と指したが、7…O-O でなく 7…a6 と指した価値が明らかになった。11…b5! 12.Bd3 b4 13.Ne2 a5 黒のクイーン翼のポーンの進攻が脅威になってきたので白は 14.f5 突きで反撃を策した。しかし 14…Nxd3+ 15.Qxd3 Ba6 16.Qe3 Bxe2!(不良ビショップを始末できることは黒にとって良い兆候である)17.Qxe2 O-O! で不利な局面になった。黒はついにキャッスリングし、e5のポーンが弱いので優勢である。白はなんとか引き分けに持ち込めたが愉快なものではなかった。

 他の2局は 11.Bd3 O-O と続いた。そのあとヤルタルソンは 12.O-O と指したが 12…f5! と好手で応じられた。ここで 13…Ne4 の狙いは許せないので白は 13.exf6e.p. で広さの優位を放棄させられた。13…Qxf6 14.g3 Bd7 15.Rae1 Rac8 16.a3 と進みセイラワンは 16…h6(Ng5 を指させない)のあと …Be8 から …Bh5 または …Nxd3 と …Bg6 を指すことにより完全に互角になると主張している。リュボエビッチはキャッスリングを遅らせて最善を尽くし 12.Qe3 f5 13.exf6e.p. Nxd3+ 14.Qxd3 Qxf6 15.g3 Bd7 16.Ng5! Qf5 17.Qxf5 Rxf5 のあと初めて 18.O-O-O +/= と指した。

8.Nf3 c5 9.Qd2

 9.dxc5 と取れば通常は白がキング翼にキャッスリングする予定であることを示唆している。一つの想定手順は 9…Nxc5 10.Bd3 f6 11.exf6 Qxf6 12.g3 Nc6 13.O-O Bd7 14.Qd2 である。白としては黒の中原の弱い黒枡をたぶん Rae1 から Ne5 で支配したい。しかし黒は駒が十分に動員されていて、積極的に指す限り何も恐れることはないはずである。1988年ソチでのアルナソン対バレエフ戦では黒が次のようにポーンを犠牲にして素晴らしい指し回しを見せた。14…Nxd3 15.cxd3 e5!? 16.Rae1 exf4 17.Nxd5 Qd6 18.Nxf4 Bg4 19.Qe3 Rad8 ねじり合いである。

 この手順では白キングはキング翼でまったく満足できない。必要な g3 突き(f4のポーンを支えるため)のあと白のキング翼のポーン陣形はかなりもろくなっている。

9…Nc6 10.dxc5

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(92)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

第14局
ベドべリ対コルチノイ
ハーニンゲ、1988年
古典戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.Bg5

 白は e5 と突く前に黒枡ビショップ同士を交換することを目指している。しかしこれは黒に余分の選択肢を与える。黒は 4…dxe4 と指すことができ(しばしば指し)、本章の内容から離れ第7章(「ルビーンシュタイン中原」)で考察される局面に至る。だから白が 4.Bg5 と指すときは二つの完全に異なるポーン陣形に対処する用意ができていなければならない。さらに黒にはもっと頻度の低い 4…Bb4 という選択肢もある。これは第5章(「ビナベル中原」)で考察される。対照的に 4.e5 のあとは本章の範囲内にとどまる。

4…Be7 5.e5 Nfd7

 ときにはここで 5…Ne4 も指されてきた。しかし 6.Nxe4 dxe4(6…Bxg5 7.Nxg5 Qxg5 8.Nf3 は黒がかなり守勢である)7.Bxe7 Qxe7 8.Qe2 b6 9.O-O-O(9.Qxe4 には 9…Qb4+ から …Qxb2)9…Bb7 10.g3! となって 11.Bg2 のあとe4ポーンが負担になり 10…e3 には 11.f3 なので黒が不十分のようである。

6.Bxe7

 白は 6.h4!? Bxg5(6…c5!? は難解だがたぶん互角)7.hxg5 Qxg5 でギャンビットすることもできる。1991年レイキャビクでのハリフマン対グリコ戦ではそのあと 8.Nh3 Qe7 9.Nf4 Nc6 10.Qg4 Nxd4 11.O-O-O Nf5 12.Nfxd5! exd5 13.Nxd5 Qxe5 と進み形勢不明だった。

6…Qxe7 7.f4

 黒の手番 

(この章続く)

2013年02月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(63)

「Chess Life」2004年12月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット(続き)

戦型A)1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 Qh4+

 これは最も自然な応手で、白にキャッスリングする権利を放棄させる。このチェックがクラブなどの選手が 3.Nf3 の方を好む理由である。しかし実際には見かけほど危なくない。

4.Kf1

 白はあとで Nf3 でクイーンを当たりにすることにより手得したいのでわざとチェックを許した。

4…c6

 4…Bc5 で …Qf2 の詰みを狙うのは 5.d4 があるので意味がない。

 白の観点から興味をそそるのは次のポール・モーフィーの(1856年ニューオーリンズで無名の相手との)魅力ある小品である。4…g5 5.Nc3 Bg7 6.d4 Nc6 7.Nf3 Qh5 8.Nd5 Kd8 9.c3 Nf6 10.Nxf6 Bxf6 11.e5 Bg7 12.h4 f6 13.Kg1 g4 14.Nh2 fxe5 15.Nxg4 exd4 16.Bxf4 Rf8 17.Bg5+ Ne7 18.Qe2 Re8 19.Ne5 Qxe2 20.Nf7#

 そして今度は「不滅の局」のアンデルセン対キーゼリツキー戦である(ロンドン、1851年)。4…b5 5.Bxb5 Nf6 6.Nf3 Qh6 7.d3(布局の観点からは 7.Nc3 の方が良い)7…Nh5(7…Bc5! 8.d4 Bb6)8.Nh4 Qg5 9.Nf5 c6 10,g4 Nf6 11.Rg1 cxb5 12.h4 Qg6 13.h5 Qg5 14.Qf3 Ng8 15.Bxf4 Qf6 16.Nc3 Bc5 17.Nd5 Qxb2 18.Bd6 Bxg1 19.e5 Qxa1+ 20.Ke2 Na6 21.Nxg7+ Kd8 22.Qf6+ Nxf6 23.Be7#

 もっと自然な展開の手の 4…Nf6 なら白は 5.Nf3 Qh5 6.Nc3 と指す。ベステリネン対イェンソン戦(1997年)では 6…d6 7.d4 Bg4 8.Bxf4 Nc6 9.Bb5 Nd7 10.Nd5 Rc8 11.Kf2 a6 12.Be2 f5 13.Re1 fxe4 14.Ng5 Bxe2 15.Rxe2 Be7 16.Rxe4 で白が優勢になった。

5.d4

 次の試合で私の妹が指した手も有力である。5.Nf3 Qh5 6.Nc3 d6 7.d4 g5 8.h4 f6 9.Be2 Bg4 10,Kf2 Qg6 11.b3 Nd7 これは1986年アデレードでのソフィア・ポルガー対S.ソロモン戦である。白の改良手は 11.hxg5 fxg5 12.Nh4 gxh4 13.Bxg4 である。

5…g5

 f4のポーンを安全にした。

6.Qf3 Nf6 7.g3 Qh5 8.Qxh5

 8.e5 は次のように黒を助けてしまう。8…d5 9.Qxh5 Nxh5 10.Be2 Ng7 11.gxf4 Ne6 12.fxg5 Nxd4 13.Bd3 Bf5

8…Nxh5 9.Be2 Nf6 10.e5 Nd5 11.c4 Ne3+ 12.Bxe3 fxe3

 いい勝負である。

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2013年02月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(91)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 このポーン突きは陣形的に異筋となる …g6 突きを止めるためではなく、22.g4? に対して強手となる …h5 突きを止めるためである。

22…Ne7

 このナイトはここから白のナイトに …Nc6 で挑むことができる。しかし主な役割は白の f5 突きの仕掛け(g4 と突いて準備してから)を思いとどまらせることである。

23.g4

 白が 21.b3 で1手無駄にしていなかったら、ここでは自分の手番のため Bh3 と指すことができ …Rdf8 に f5 と突けて良い態勢になっていただろう。

23…Rdf8 24.g5!?

 白は 24.Bh3 f6 25.exf6(または 25.Re3)25…Rxf6 26.Re1 でも優勢を保っている。

24…h6

 黒は 24…f6? 25.h6! にはまらなかった。25…fxe5 は 26.hxg7 で負けるので 25…gxh6 26.gxf6 で陣形的に負けの収局に入らなければならなくなる。

25.Rh3 g6

 25…f6 は 26.exf6 gxf6 27.g6 e5 28.Re3!(または 28.g7)で悪い。黒は狭小な陣形から脱したいなら、白のポーン横隊を粉砕することが絶対必要である。

26.hxg6 Nxg6 27.Rxh6

 27.gxh6 は 27…Nxf4 28.Rh2 f6! のあと 29.exf6 Rxf6 でh6のポーンが守れないので明らかに黒が良い。

27…Nxf4?

 ティマンは 27…Rxh6 28.gxh6 Rh8 ならh6のポーンが落ちるので互角の形勢であると指摘している。実戦の手はg5のポーンが弱いことを証明することにより黒が優勢を勝ち取ろうとしているようである。

28.Bd3 Rhg8 29.Rg1 Rg7 30.Kd2 Rfg8 31.Bh7!

 この意表の当てで黒の作戦が咎められた。31…Rxg5 なら 32.Rf1! で黒の戦力損になる[訳注 チェックで 32…Rg2+ とできるので 32.Bxg8 が正しいようです]。

31…Rh8 32.Ke3?

 32.Rg4 Rgxh7 33.Rxf4 なら白のわずかな優勢が続いていた(ティマン)。

32…Rhxh7 33.Rxh7 Rxh7 34.Kxf4 Rh4+ 35.Rg4 Rh1

 もちろん黒は 35…Rxg4+? 36.Kxg4 で不良ビショップ対優良ナイトの収局になるのを避けた。代わりにルークを活動的にしてできるだけ早く白のクイーン翼のポーンを攻撃できるようにした。

36.Nf3 Rc1 37.Rg2 Kc7 38.a4 Kd8

 黒キングは急いでキング翼に駆けつけて、白にg6の地点で突破されないようにした。

39.Rh2 Be8 40.Ke3 ½-½

 ルークが好位置にいたのは黒にとって幸運だった。さもなければ役立たずの白枡ビショップのせいで深刻な状況になるところだった。しかしすべてうまくいっていて、ここでカスパロフは進展が図れないので引き分けにした。

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(90)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 中央の元の地点に戻るのは道理に合わない手である。しかしカスパロフは 14.Be2 と普通に展開すると 14…Na4! と来られることに気づいていた。このあとは 15.Nxa4 Bxa4 となってナイト同士の交換により黒の陣形が楽になり、c2の地点を …Rc8 で攻撃する用意ができる。

14…a6

 ここは興味深い瞬間である。チェス新報第65巻での自戦解説によるとティマンはこの手は安直かもしれないと考えていた。試合中彼は明らかに 14…O-O-O 15.b4 Na4 16.Nxa4 を恐れていた。このあと 16…Qxd4? は 17.Rxd4 Bxa4 18.b5 で黒の駒損になる。しかし冷静に研究してみると彼は 16…Bxa4 17.Qxb6 axb6 18.Bd3 で実際には白がわずかに優勢にすぎないと結論づけた。しかし 18.Bd3 の代わりに 18.b5 d4(18…Kc7 は 19.Rd4 Ra8 20.h4 Ra5 21.Rb4 から Rh3-a3 で +/-。[編集部注 黒はこれでもしのげるかもしれない。18…Kd7 もあり考慮に値する])19.Bc4!(19…Rd5 を防いだ)19…Kc7 20.Rd3 から Ra3 なら +/- である。これはたぶん強豪選手の直感はなぜその手を指したかの局後の理由づけよりも信頼できることが多いことの説明になるだろう。

15.h4

 ここで 15.b4 と突いても的外れで 15…Na4 16.Nxa4 Qxd4 17.Rxd4 Bxa4 となってしまう。

15…O-O-O!

 15…O-O とキャッスリングすると白には 16.h5 という黒キングに対するお決まりの攻撃法がある。または 16.f5!? で 17.f6 を意図する方が良いかもしれない。そこで黒はキングの住居として比較的安全なクイーン翼を選んだ。もちろんそちら側のポーンの形はゆるんでいるが、その一方でキングの世話をする黒駒がたくさん近くにいて、白ポーンの暴風にさらされる恐れもない。

16.Rh3!

 これはキング翼ルークを働かせる常套の捌きである。ここで黒は 17.Nxd5 exd5 18.Rc3 を考えに入れておかなければならない。

16…Bc6

 黒は余裕があれば 17…Kc7 から 18…Ne4 と指して好形になる。白のここからの捌きはこれを防ぐため、または少なくともその効果をそぐためである。ナイトを要所のd4に進めることは白の作戦の重要な一部である。

17.Ne2! Kb8

 17…Kc7 は 18.Rc3 Ne4 19.Qxb6+ Kxb6 20.Rb3+ Kc7 21.Nd4 で白が少し優勢になる。

18.Rc3 Na4 19.Qxb6 Nxb6 20.Nd4 Bd7 21.b3?!

 カスパロフは駒を使ってやれることは全部達成したと了解し、ここからはポーンで自陣を強化しようとした。しかしここでティマンによれば白は 21.h5 でキング翼の広さの優位を拡大すべきだった。実戦の手は重要な手損で、そのため黒はナイトをもっと効果的な地点に再展開できた。

21…Nc8 22.h5

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(89)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

12.Qd2!?

 これは世界チャンピオンの面白い着想である。以前の試合で1995年ノブゴロドでのショート対ティマン戦では白が 12.Qxb6 と取った。しかし黒の積極的な受けの前に何も勝ち取れなかった。12…Nxb6 13.a4 Ke7!(キングは中央に必要である)14.a5 Nd7 15.g3 g5!(白の中原の切り崩しの始まり)16.Kd2 gxf4 17.gxf4 f6! 18.exf6+ Nxf6 19.Bd3 Bd7 20.Ne2 Rhg8 21.Rhg1 Kd6 22.c3 ここで引き分けが合意された。f4ポーンは白陣の中でどこよりも弱い。

 別の着想は 12.Nb5 で、1993年ブルノでのゴフシュテイン対チェルニン戦で指された。12…Qxd4 13.Nxd4 のあと黒は急速に締めつけられた。13…Ke7 14.h4 h5 15.Rh3!(周知の手だが新趣向がある)15…a6 16.Rc3! そして黒は 16…Nb8 と指すと 17.Rc7+ Bd7 のあとb7のポーンを取られるので自陣を解放することができなかった。そこで 16…Ra7 で次に 17…Nb8 と指せることを期待した。しかし白は 17.b4! と突いて圧力を維持した。この手は 17…Nb8 に 18.b5 axb5 19.Nxb5 から 20.Rc7+ という手を用意している。黒は 17…f6 18.Rc7 fxe5 19.fxe5 Ra8(さもないと 20.Nc6+ が続く)20.c4 Re8 21.cxd5 exd5 22.Rac1 で押し込められたが、何とか引き分けに逃れた。試合後のゴフシュテインの感想によると、黒は 13…a6(Nb5 の狙いをなくす)から …Nb8、…Bd7 そして …Nc6 によってできるだけ早くd4のナイトに挑戦すべきだった。

 カスパロフは盤上にクイーンを残す方を選んだ。

12…Nc5

 黒は 12…Qxb2 13.Rb1 Qa3 14.Nb5(さもないと黒が 14…Qc5 で自陣を固める)14…Qxa2で2ポーン得することができた。そのあと 15.Nd6+ Kf8 16.Rb3(16.Qb4 a5! 17.Qb5 Qxc2)16…Nc5 となって白は明らかに圧力をかけているにもかかわらずはっきりした手順がない。しかしカスパロフに対してポーンをかすめ取るのは危険な仕事なので、ティマンが光栄な機会を辞退したのは驚くに当たらない。

13.O-O-O Bd7 14.Qd4!!

 黒の手番 

(この章続く)

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[復刻版]理詰めのチェス(03)

第1章 キング翼攻撃(続き)

第3局

 コーレ対デルボ戦でコーレは相手ポーンの h7-h6 を誘いその後で巧妙に g7-g6 も突かせる。そしてナイトを犠牲にして弱体化した敵陣を粉砕した。

クイーン・ポーン試合(コーレ・システム)
白 コーレ
黒 デルボ
ガント・テルネーゼン、1929年

1.d4

 現代の選手たちはこの手を布局の最強手と考えている。2個の駒が働くようになりポーンが中原の枡を占めるのでその価値は 1.e4 に等しい。クイーン・ポーンは中原に進んでも守られているがキング・ポーンはすぐに攻撃にさらされ易い。

1…d5

 実戦的にはこの手か 1…Nf6 が必然である。白に 2.e4 を許して重要な中原を白ポーンで独占させるわけにはいかない。

2.Nf3

 27年間も世界選手権者だった偉大な権威者のラスカーはこの手について次のように言っている。「私の実戦によれば通常はナイトをc3とf3に置くのが最良だった。ナイトはその地点から絶大な影響力を発揮する。」

2…Nf6

 黒は白にならってナイトを最も働く地点に展開した。

3.e3

 一般的には一つのビショップを開放しながらもう一方を閉じ込めるのは戦略的に疑問である。本局の白は戦線の背後に動的なエネルギーを溜め込む必要のあるシステムを採用している。そのエネルギーは適当な時機に要所のe4の地点で爆発的に解放される。

 この目的のために白は自分の駒が最大限の圧力をe4の地点にかけるように展開を行なう。そのために白ビショップはd3の地点に行きクイーン翼のナイトはd2の地点に行く。さらに戦力を集中する必要があるならば白クイーンがe2に行って力を貸したりキング翼ルークがe1の地点に寄ったりする。それからこれらの潜在的なエネルギーを全部解き放つ用意ができたらeポーンをe4に進め局面を切り裂きキング翼で戦火を交える。

 コーレ・システムにおける展開は大局に沿って行なわれるがその目的はキング翼攻撃である。

3…e6

 この手は非難の余地がある。その理由は型にはまった展開の手で白の作戦をじゃましようという考えがないことである。明らかに良い戦略は 3…c5 で白のポーン中原を攻撃するか 3…Bf5 で迎え撃つかだった。後の方の手は簡明で適切な展開の手であるだけでなくd3の地点を目指している白のビショップと互角に対抗する用意である。そうなればビショップは遅かれ早かれ交換になり白からキング翼攻撃の非常に重要な攻撃手段を奪うことになる。

4.Bd3

 ビショップのあまりの違いに注意して欲しい。白のビショップは素晴らしい(そしてじゃまするもののない)斜筋を席巻している。これに対して同じ色の枡にいる黒のビショップは自身のeポーンによって閉じ込められている。

4…c5!

 これは非常に良い手である。黒は白の中原ポーンの態勢に一撃をくわえ自分のクイーンがクイーン翼に出られるようにした。

 このようにビショップを解き放つ手はクイーン・ポーン布局ではとてつもなく重要である。

5.c3

 大家たちはみな「布局では1個か2個のポーンしか突くな」と言う。しかし原則はいつも頑迷に従うべきものではない。

 ポーン交換になっても白はcポーンで取り返しd4の地点にポーンを維持できる。どうしてeポーンで取り返さないのだろうか。それはeポーンの将来は以前から決まっているからである。eポーンはe3の地点にいなければならず、適当な時機が来たらe4に進んでキング翼攻撃の先頭に立つ用意ができている。

5…Nc6

 これも良い手である。このナイトは中原方面の戦いに向かい白のdポーンに対する圧力を強めている。

6.Nbd2

 このナイトの出撃は妙な感じを受ける。味方のクイーンとビショップの利きを止めているだけでなく自分自身もほとんど良い働きをしていないように見える。しかし熟達者ならば一瞬のためらいもなくこの手を指すだろう。一つにはこのナイトは来るべき攻撃の跳躍点となるe4の戦略地点にさらに重圧を加えている。さらにはいったん最下段を離れれば戦闘に動員されている。最後に都合の良い時にクイーンとビショップの前から跳びのくことができる。

6…Be7

 黒はさらに駒を戦闘に投入し(ビショップは最下段を離れれば働いていることは覚えておくべきである)キングを安全なところにキャッスリングさせる用意をした。

7.O-O

 キングがあまり露出しない方面に逃れ、代わりにルークが隠れ場所から出てくる。

7…c4

 これは初心者が本能的に指す類の手である。その目的は目ざわりな駒を好所から追い払うことである。この手は白の中原に対する圧力を解消してしまうので根拠の弱い手である。黒がこのきわめて重要な地域の情勢に発言権を得ようとするならば争点は維持しなければならない。

 中原での反撃はキング翼攻撃に対抗する最良の手段である。そして反撃を図るためにはポーンの形を流動的にしておかなければならない。

8.Bc2

 もちろんビショップは引き下がる。しかし衝突の起こるe4の地点に通じる斜筋からは動かない。

8…b5

 この手の主たる目的はクイーン翼ビショップのためにb7の地点を空けることである。しかしクイーン翼ポーンを突き進めて白を困らせることも視野に入れている。

9.e4!

 この布局の眼目の手である。この手は白の閉じこもった駒が攻撃する際に使う筋を開放する。

9…dxe4

 黒にとっては気の進まない応手である。しかし 10.e5 と突かせて(ナイトがどかされ駒の動きにひどい制約を受ける)ずっと危険を抱え込んだままにすることはできない。

10.Nxe4

 この取り返しで背後でうずくまっていた白駒は勢いよく戦場に躍り出る。

 白は主導権を握っていて、それを発揮するように駒が要所に利いている。すぐには攻撃の機会がなくても白は Qe2、Rfe1、Bg5(または Bf4)、Rad1 というようにゆっくりと圧力を強め黒陣がつぶれるのを待つことができる。

10…O-O

 白がキング翼攻撃の準備をしているのでその方面へのキャッスリング(通常なら大いに勧められる)は延期した方が賢明だったかもしれない。これは状況によっては金言の価値も変わってくるというもう一つの例である。

 黒は 10…Qc7 の後 11…Bb7 から 12…Rd8 で反撃を目指す方が良かっただろう。

11.Qe2

 この展開の手は駒得の狙いを秘めている。それは 12.Nxf6+ Bxf6 13.Qe4 でキング翼の詰みがあるのでクイーン翼の浮いているナイトが取れる。

11…Bb7

 黒は新たな駒を展開させながらナイトを守った。

12.Nfg5!

 狙いは 13.Nxf6+ Bxf6 14.Nxh7 でポーン得することである。

 どうしてつまらないポーン取りの一手狙いに感嘆符を付けるのだろうか。黒がポーンを救うだけでなく白に手損をさせることができるのにどうしてこの手を賛美するのだろうか。黒はポーンを1枡進めるだけでこのポーンを救い白ナイトを退却させることができる。

 最初の質問に対する答えは他の条件が同じならば1ポーン得の優位だけで十分勝てるということである。もちろん自陣を乱す犠牲を払って1ポーン得するのは意味がない。

 次の質問に対する答えは白の素晴らしいナイト跳ねの目的はキングを守るポーンの一つを進ませることである。

 キング翼攻撃を成功させる秘訣はキングの回りのポーンによる非常線に亀裂を生じさせること、即ちポーンの一つを進むようにしむける又は強制することである。ポーンの配列が変化すると防御に恒久的な弱点がもたらされる。

12…h6

 サンタシエレは「自分のキングの前のポーンは細心の注意を払ってさわれ」と言っている。しかし何ということか、もう遅すぎるのである。黒はポーンの形を乱さなければならない。

 12…Nxe4 と取っても 13.Qxe4 と取り返され詰みを狙われる。13…g6 と詰みを防がなければならないのでやはりポーンの形が乱れてしまう。

13.Nxf6+

 キャッスリングした態勢の最良の守備駒であるナイトを撲滅した。

13…Bxf6

 代わりに 13…gxf6 はもっと早く負ける。白は二通りの勝ち方がある。ポーンを食い尽くすのは 14.Nxe6 fxe6 15.Qg4+ Kh8(15…Kf7 は 16.Qg6# で詰み)16.Qg6 f5 17.Qxh6+ Kg8 18.Qxe6+ で次にfポーンも取れる。もう一つは 14.Nh3(15.Bxh6 の狙い)14…Kg7 15.Qg4+ Kh8 16.Bxh6 Rg8 17.Qh5 で次の開きチェックで決まる。

14.Qe4

 次は一手詰みである。

14…g6

 14…Re8 でキングの逃げ道を空けるのは 15.Qh7+ Kf8 16.Ne4 で白の攻撃が危険そうなので気が進まない。もっとも本譜の黒の手よりは好ましい。本譜の手はクイーンを近づけないがポーンの形を変えてしまう。この配置の変化は黒に致命的な可能性のある構造的な弱点をもたらす。

 これらはすべて白の励みになるがそれでは白は次にどのように指し進めるのだろうか。白はどのように黒陣の弱点をつくのだろうか。そしてとりわけまだ当たりになったままのナイトをどうするのだろうか。恥じ入りながら引き下がるのだろうか。

 何も考えず機械的にナイトをf3に戻す前に白は局面を注意深く見渡す。決め手を見舞う機会はまさにこの時この場所にあるかもしれない。しかし性急な「自明な手」が相手にちょうど十分な一息つく時間を与えて防御をたて直させるかもしれない。

 この局面において白がどのように理路整然と攻撃を考えるかは次のとおりである。

 目のつけどころは黒キングを侵略から守っているgポーンに違いない。もしこのポーンに何か起これば、例えば取られれば、防御は崩壊しこちらは要塞に押し入ることができる。どのようにして盤上からこのポーンを取り除こうか。

 gポーンはfポーンによって守られている。ナイトを犠牲にfポーンを取ってgポーンの守りを破壊したと仮定してみよう。15.Nxf7 Kxf7(または 15…Rxf7)16.Qxg6+ となってこちらはナイト1個の代わりにポーン2個を得るがhポーンも落ちるはずだから3個となる。そうなれば戦力的にはほぼ互角だが敵陣は完全に破壊され勝つのは容易なはずである。

 これが作戦概要になるかもしれない。しかし実行に移す前に白は見落としがないか分析し次のような手順を発見する。15.Nxf7 Rxf7(もっと駒を受けに投入する)16.Qxg6+ Rg7 17.Qxh6 Nxd4! で急に黒が侵略者になる。黒は 18…Ne2+ 19.Kh1 Bxg2# の2手詰みを狙っているだけでなく 18…Rxg2+ に続いて強烈な開きチェックによる完膚なき破壊を狙っている。

 明らかにこの手順は危険すぎる。黒ルークを働かせずに敵陣を破壊する別の方法があるだろうか。ルークのじゃまをしないでfポーンを取り除くことができるだろうか。fポーンを取り除くことは重要である。なぜならそれはgポーンとeポーンを支えているからである。ちょっと待てよ。最後の文に手がかりがある。fポーンは二つのポーンを守っていて二人の主人に仕えている。明らかにこれは働き過ぎである。現在の大切な地位からおびき出して負担を増やしてやらなければならない。そのためには・・・

15.Nxe6!

 ポーンを取ったナイトがクイーンとルークに当たっている。

15…fxe6

 黒は犠牲のナイトを取らなければならない。さもないとナイトのためにルークとポーンを失う。

16.Qxg6+

 この手はeポーンを取るよりも強い手である。eポーンを取ると黒キングはチェックを逃げる4通りの手がある。それらのどの手も黒の負けになるかもしれないが、ほとんど選択の余地のない強打で敵を攻撃する方が実戦的である。

16…Bg7

 絶対手である。16…Kh8 は自ら詰まされにいく。

17.Qh7+

 他には 17.Bxh6 や 17.Qxe6+ も魅力がある。しかし本譜の手は黒キングを白の他の駒の手の届く野外に追い出す。

17…Kf7

 唯一の手である。

18.Bg6+

 この手は 18.Bxh6 よりも強い。18.Bxh6 なら黒は 18…Qf6 の後 19…Rh8 で逆襲する。本譜の手は黒キングをさらに追い立てる。

18…Kf6

 18…Ke7 と逃げるのは 19.Qxg7+ でビショップを二つとも取られてしまうので明らかにだめである。

19.Bh5

 白はまだ 20.Qg6+ Ke7 21.Qxg7+ で二つのビショップを取る手を狙っている。

19…Ne7

 白クイーンのチェックを防ぐにはこの手しかない。

20.Bxh6

 白はポーン漁りをしているわけではない。このポーン取りで新たな駒が攻撃に加わった。コレクションに加えられたポーンは全体計画に付随していただけである。

20…Rg8

 21.Qxg7+ Kf5 22.Qe5# を防いだ。

 代わりに 20…Bxh6 なら 21.Qxh6+ Kf5 22.Rae1 の後ルーク又はgポーンによる詰みが受からない。

21.h4

 新たな狙いは 22.Bg5# である。

21…Bxh6

 この手は即勝負が決まる。しかしもうどう受けてもだめである。21…e5 なら 22.Bxg7+ Rxg7 23.dxe5+ で黒キングはルークの守りから離れなければならない。

22.Qf7#

 詰みである。

2013年02月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]理詰めのチェス

フランス防御の完全理解(88)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 知ってのとおり白は古典中原ではd4の地点をしっかり支配することを目指している。だからこの手は自然で立派な手である。同じ考えで 7.Ne2 も指されてきた。この手は 7…cxd4?! に 8.Nexd4 でd4の地点にナイトを据えることを期待している。黒が 7…cxd4 を控えるならば白は 8.c3 と突いて「f4 による中原の締めつけ」の陣形を選ぶかもしれない。しかし1994年ティルブルフでのユダシン対グレク戦では黒が厳しく 7…b5! と応じた。8.c3 に黒が 8…b4 突きのあと …Ba6 と …Qa5 と応じる構えを見せているので白には効果的な作戦が何もない。そこでユダシンは 8.a3 突きを選んだが 8…Rb8 9.Be3 b4 10.axb4 Rxb4 となって黒がクイーン翼で十分活発に動き回れるようになった。

7…cxd4

 7…Qb6 8.Na4 Qa5+ 9.c3 は前章の第12局に出てきた。本譜に代わる黒の重要な手は 7…a6 である。この手の意図はクイーン翼のポーンを利用して白にクイーン翼にキャッスリングして攻撃的な態勢をとるのを思いとどまらせることである。白がこの作戦を貫けばキングがすぐに危険にさらされることになる。例えば1988年ハーニンゲでのチャンドラー対アンデルソン戦は次のように進んだ。8.Qd2 b5 9.dxc5(9.O-O-O なら 9…c4 で次の 10…b4 が強そうである)9…Bxc5 10.O-O-O?! Qb6 11.Bxc5 Nxc5 12.Bd3 b4 13.Ne2 a5 14.Ned4 Nxd4 15.Nxd4 O-O 16.Kb1 a4 黒ポーンが早くも白キングを脅かしている。

 だから白はキング翼にキャッスリングした方が良い。しかし本書の執筆時点で黒は白枡ビショップ同士を交換させることにより楽に互角の形勢を達成しているように見える。例えば1995年レクリングハウゼンでのマインカ対グレク戦は次のように進んだ。8.Qd2 b5 9.dxc5 Bxc5 10.Bxc5 Nxc5 11.Qf2 Qb6 12.Bd3 b4 13.Ne2 a5 14.O-O Ba6 15.Kh1 Ne7 16.Rfd1(1995年ドイツでのルッツ対グレク戦では 16.Ng3 で 17.Nh5 を意図したが 16…g6 17.Ne2 Rb8 18.Bxa6 Nxa6 19.Ned4 Nc5 となって形勢不明だった)16…h6 17.Ned4 O-O 18.Qh4(これは誤った作戦の始まりだった。グレクは 18.Nb3 を推奨し互角の形勢としている)18…Ra7 19.g4?(おなじみの g4 突きだが、ここでは白駒によって適切に支援されていないので白のキング翼の崩壊につながるだけである)19…Ng6! 20.Bxg6 fxg6 21.f5 Raf7! そして黒駒がキング翼の素通し列に乗ずる態勢になった。

8.Nxd4 Bc5

 8…Qb6 はずっと激しい手である。1995年サンフランシスコでのヒューブナー対コルチノイ戦では 9.Ncb5 で一気にふっ飛ばしてやろうという白の試みが次のようにしっぺ返しを食った。9…a6! 10.Nf5 Bc5 11.Bxc5[編集部注 ナンの研究では 11.Nbd6+ Kf8 12.Qh5 Nd8 13.Nxg7 Bxe3 14.Nxe6+ fxe6 15.Qh6+ Ke7 16.Qg5+ で引き分けになるとしている]11…Nxc5 12.Nbd6+(13.Nxg7+ Kf8)12…Kf8 13.Qh5?(13.Nxc8 と取るしかないが黒が優勢である)13…Nd8 14.Nxg7(引けば 14…Qxb2 と取られるので白は一か八かやるしかない)14…Qb4+!(14…Kxg7 は 15.Qg5+ Kf8 16.Qh6+ Ke7{16…Kg8? 17.Ne8}17.Qf6+ で負ける)15.c3 Qxb2 16.Rd1 Qxc3+ 17.Rd2 h6! 18.Nge8 Ne4! そして 19.Nxe4 dxe4 のあと白は 20…e3 と 20…Kxe8 の両方を防ぐことができないので投了した。

 だから白は 8…Qb6 に 9.Qd2 と応じるべきである。ここで白は 10.Nxe6 を狙っているので黒はほぼbポーンを取るしかない。問題はどのくらい毒が含まれているかである。1995年ポラニツァ=ズドルイでのド・ファーミアン対ヒューブナー戦では次のように致死量だった。9…Qxb2 10.Rb1 Qa3 11.Bb5 Nxd4 12.Bxd4 Bb4 13.Rb3 Qa5 14.a3 Be7 15.f5!? exf5 16.Nxd5 Bh4+ 17.Kd1 Qd8?(ド・ファーミアンによれば 17…Qxd2+ 18.Kxd2 Bd8! で受け切れる)18.Nf6+!!(この度肝を抜く手で黒が受けなしになる)18…gxf6 19.exf6 O-O(20.Qe3+ Kf8 21.Qh6+ Ke8 22.Re3+ から詰みの狙いを防ぐ手段がなかった。ド・ファーミアンは 19…h6 には 20.Qb4! から 21.Re3+ と応じる予定だった)20.Rg3+ Kh8(このビショップを取ると2手詰み)21.Qh6 Rg8 22.Rg7 Nf8 そして白が 23.Rxg8+ と指せる前に黒が投了した。

 8…Qb6 からの2試合の全手順を見てきた。一方は白の圧勝で、他方はもっとすごい黒の圧勝だった。読者の中には傍流手順になぜそんなに注目するのかと疑問に思う人がいるかもしれない。どちらも犠牲者になったヒューブナーに恨みがあるわけではない。それどころか最も重要な手順を試しそれによって定跡を進歩させたことに対して彼は賞賛されるべきだと思っている。代わりに読者には生半可な知識で激しい戦型を指す危険性について警告したい。ヒューブナーのようなスーパーグランドマスターがこんなにも早く負かされることがあるならば、当然用心が必要である。

9.Qd2 Bxd4

 これで局面が単純化されて白が少し優勢である。代わりに 9…O-O なら争点が維持される。1994年アムステルダムでのカスパロフ対ショート戦は 10.O-O-O a6 11.h4 Nxd4 12.Bxd4 b5 13.Rh3 b4 14.Na4 Bxd4 14.Qxd4 と進んだ。ここでショートは理にかなった 15…f6 突きを指した。この手は白の中原を破壊する作戦だが、彼にとっては不運なことに戦術上の欠陥があった。16.Qxb4 fxe5 17.Qd6! Qf6(一見黒にとってすべて順調そうである)18.f5!! のあとショートはカスパロフの典型的な攻撃にさらされることになった。18…exf5? は 19.Qxd5+ で、18…Qxf5 も 19.Rf3 Qg4 20.Rxf8+ Nxf8 21.Nb6 で白の勝ちになる。そこでショートは 18…Qh6+ と指したが 19.Kb1 Rxf5 20.Rf3 Rxf3 21.gxf3 Qf6 22.Bh3 Kf7 23.c4! が厳しすぎた。黒が …Nf8 と指せばa4のナイトが場違いどころかいつでもb6に急襲してくるので、黒は駒を展開することができなかった。

 作戦に着手する前に局面の具体的な戦術上の特徴をいつも調べておくべきである。以前に黒が …b4 と突いて白のナイトを「オフサイド」のa4の地点に追い払う利点を指摘した。また白の中原を攻撃するための …f6 突きもほめてきた。本局の場合ショートはこれらの着想をどちらも実行しまさしく粉砕された!しかしa4のナイトは 15…f6? のせいでモンスターになったことにすぎないことは言っておくべきである。黒は 15…Qa5 と指し 16.b3 に 16…Bb7 から 17…Bc6 と応じていたら、相応に指せていただろう。だから唯一の「犯人」は黒の15手目であり、そしてもちろんカスパロフのすばらしい指し回しである。

10.Bxd4 Nxd4 11.Qxd4 Qb6

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解