2013年01月の記事一覧

フランス防御の完全理解(87)

第4章 古典中原(続き)

実戦例

第13局
カスパロフ対ティマン
ホルゲン、1995年
シュタイニッツ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 これが普通の手で、「ポーンをe5に進めたときはそれを f4 突きで支えよ」という、初代世界チャンピオンのビルヘルム・シュタイニッツの助言にも従っている。白は代わりに次のようにビショップでこのポーンを支えることもできる。5.Nf3(5.Nce2 c5 6.c3 Nc6 7.f4 は前章で分析した)5…c5 6.dxc5 Nc6 7.Bf4 このあと1966年モスクワでの世界選手権戦第19局のスパスキー対ペトロシアン戦は次のように進んだ。7…Bxc5 8.Bd3 f6 9.exf6 Nxf6 10.O-O O-O 11.Ne5 Bd7 12.Nxc6 Bxc6 13.Qe2 Qe7(13…Ne4!?)14.Rae1 Rae8 15.Bg3 a6 16.a3 Qf7 17.b4 Bd4 18.Be5 Bxe5 19.Qxe5 Nd7 20.Qg3 e5 21.f3 そしてここで黒は 21…Qf6!? または 21…Re7 と指していたら有望だった。

5…c5 6.Nf3 Nc6

 この手はほとんど自動的に指されるが、1993年ティルブルフでコルチノイはベリヤフスキーを 6…Qb6!? で煙に巻こうとした。一時はクイーン翼ナイトの遅い展開がまんまと成功を収めた。7.Na4(7.Be3 は 7…Nc6 で通常の戦型に移行するので、黒を直接罰しようとするならこれしかない。もっとも黒は 7.Be3 に 7…a6 8.Na4 Qc6 または 7…Qxb2!? と応じることにより定跡の主流手順を避けようとすることもできた)7…Qc6! 8.Nxc5 Nxc5 9.dxc5 Bxc5 10.Bd3 Qb6 11.c3 a5 12.Qb3 ここでコルチノイはようやく 12…Nc6 とナイトを展開すべきでいい勝負だった。代わりに彼は勝手なことをやりすぎて 12…Qa7? と指し、クイーン同士の交換を避けた。おそらく白がキング翼にキャッスリングできそうもないことにつけ込めると期待したのだろう。白はクイーン翼にキャッスリングしなければならないなら激しい攻撃に見舞われる。しかしベリヤフスキーはd4の地点を支配しキングをキング翼に行かせるうまい手段を見つけた。13.Qc2!(h7に当たっている)13…h6 14.Nd4! Nc6(d4で2回取ると Qxc8+ と取られる)15.Be3(d4の地点を要塞化した。15…Nxd4 16.cxd4 Bxd4? と取ってくれば 17.Qa4+ で勝ちになる)15…Bxd4(15…O-O なら 16.Nb5 Qb6 17.Bxc5 Qxc5 18.Qf2 Qxf2+ 19.Kxf2 で白の有利な収局になる)16.cxd4 Nb4(16…Nxd4 は 17.Qa4+ で駄目である。しかし黒は何か速いことをしなければならない。さもないと白が 17.Qf2 から 18.O-O と陣容を固めて、陣地の広さの優位と双ビショップを得る)17.Bb5+ Bd7 18.Bxd7+ Kxd7 19.Qa4+ Ke7 20.O-O(黒の戦略が敗北を喫した)20…Rhc8 21.f5! そして 21…Nc2 が 22.Rac1 Nxe3 23.Qa3+ から 24.Qxe3 で何も成果をあげられないので、白が黒キングの危険な状態につけ込んで勝ち切った。

7.Be3

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(33)

「Chess Life」1991年10月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

不利な戦法の避け方(続き)

Ⅱ スラブ防御主手順

 50年以上もの間次がスラブ防御の主手順だった。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 dxc4 5.a4 Bf5

 黒の手の論理は明らかである。すなわち …e7-e6 と突く前に白枡ビショップを展開し、それをf5に配置することにより白が e2-e4 で強大な中原を築くのをより難しくさせるということである。1920年代から次の戦型が重要な定跡と考えられてきた。

6.Ne5 e6 7.f3 Bb4 8.e4

 図4

 白の7手目は展開を犠牲にするけれどもこの一直線のポーン突きの準備だった。黒の7手目はこれに戦術的に対処することを見越していた。

8…Bxe4! 9.fxe4 Nxe4 10.Bd2 Qxd4 11.Nxe4 Qxe4+ 12.Qe2 Bxd2+ 13.Kxd2 Qd5+ 14.Kc2 Na6 15.Nxc4

 図5

 開始早々の乱闘が終わり戦略的に最も不均衡な局面が出現した。黒はビショップの犠牲の代わりに良好な3ポーンを得ている。さらに白はキング翼の展開が遅れていて、キングも不安定に見える。従って白側の選手がこの戦型を追求し続ける気になれないことはほとんど驚くに当たらない。一流選手のチェスに関する限りこれは休止に至った。

 しかし眠っていた巨人がうなり声と共に目覚めた。前世界チャンピオンのアナトリー・カルポフが「覚醒者」の中心だった。以下は彼の功績の簡単な経過である。

 (a)1988年ヒホンでのカルポフ対トゥクマコフ戦では有力視されていた 15…Qf5+ が大胆な 16.Kc3! により受け切れることを示した。16…O-O 17.Qe5 Qf2 18.Bd3 Rad8 19.Rhf1 Qh4 20.Qe4 Qh6 21.Qe3 Qh4 22.Rf4 のあと白の駒得の方が黒のポーンよりはるかに有効だった。

 (b)1988年ティルブルフでの第4回戦のカルポフ対ヒューブナー戦では黒が 15…O-O-O 16.Qe5 f6 17.Qe3! c5 18.Be2 Nb4+ 19.Kb3 Nc6 20.Kc3 Nd4 21.Bf3 Nxf3 22.gxf3 Qd4+ でやっと互角にできた。

 (c)2、3日後の第6回戦でのカルポフ対ヤルタルソン戦では(18.Be2 の代わりに)改良された 18.Kb3! が指され白が快勝した。18…Nb4 19.Rc1 Nc6 20.Ka3 Nd4 21.Na5! e5 22.Qc3! b6 23.Nb3 Qxb3+ 24.Qxb3 Nxb3 25.Kxb3 Rd4 26.h4! Rhd8 27.Bc4 Kc7 28.h5 Rg4?(28…a6 の方が良かった)29.h6! Rxg2?!(29…g6 が絶対手だった)30.hxg7 Rxg7 31.Rcf1 Rd6 32.Rh6 e4 33.Rhxf6 h5 34.R6f4 Rd4 35.Rf7+ Rd7 36.Rxg7 Rxg7 37.Rf4 Rg3+ 38.Kc2 Rg2+ 39.Kc3 Rg3+ 40.Kd2 Rg4 41.Rf7+ Kd6 42.Ke3 a6 43.Bxa6 黒投了

 以上から分かったことはちょっと注意を払えば白キングは十分安全だということである。他方黒ポーンの形は傷はないがコンパクトでもない。だからビショップ得の白は中盤と収局で大いに有望である。

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フランス防御の完全理解(86)

第4章 古典中原(続き)

白が f4 突きを避ける

 これまでは白がe5のポーンを f4 突きで支える局面を分析してきた。しかし時にはこのポーン突きを避けて代わりにe5のポーンを Bf4 で強化することがある。この手法の利点は f4 突きのあと生じるa7-g1の斜筋の弱点を避けられることである。また、c1のビショップは f4 突きのあとのように味方のポーンによって閉じ込められるということがない。

 アーロン・ニムゾビッチは特にこの陣形を愛好し、既に第2章で触れた過剰防御の原則をそれを用いて説明した。「My System」の中で彼はまさしく次のように書いている。「せき止めを行なっている枡には一般にそれ自体があらゆる点で好所となる不思議な状況がある。そして退屈な封鎖の義務のために派遣された駒には、ほうびとして突然せき止めている部署から高度な活動への可能性が開けることがある。それはちょうどおとぎ話で良い行いが必ず報われるようなものである。過剰防御の着想は・・・拡張した方式ではあるけれども・・・他の何ものでもない。」すなわち選ばれた拠点(ここではe5)を守る各駒は以降の戦いのために好所にいる公算が非常に大きい。

 

 ここでの戦略上の欠点は中原における白の広さの優位が適時の …f6 突きにより容易に消されることである。戦術上の不利もある。つまり黒は …Ne7-g6 でf4のビショップを当たりにすることにより先手が取れるし、…Qb6 でb2の地点を当たりにして白陣を乱すこともできるかもしれない。また …f6 突きでf列が素通しになったあとf4のビショップがf8のルークの攻撃目標になるかもしれない。

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(85)

第4章 古典中原(続き)

白がキング翼にキャッスリングする

 これは O-O-O よりも控え目な手法である。白は直接的なポーン攻撃で相手を詰まそうという企てを放棄する。代わりに単純に展開して黒が …f6 と突くのを待つ。このポーン突きは黒が白の中原での押さえ込みを打ち破ろうとするならいずれ必要となるものである。それから白は e5xf6 のあとe5の地点をナイトの拠点として使えることを期待する。もっとも順風満帆というわけではない。f4ポーンは白キングの周りの黒枡を少し弱め、さらには g3 突きによって守られなければならないならば白枡もかなり弱めることになる。

(この章続く)

2013年01月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(62)

「Chess Life」2004年12月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット

 キング翼ギャンビットは19世紀に流行した布局の一つだった。ロマンチックなチェスとポール・モーフィーとの時代から多くの年月がたった20世紀後半からは、多くの強豪選手がもっと安定した大局観によるチェスともっと安全な布局を指すようになった。

 この布局は非常に活気のある楽しい試合になる。よくあるのは長期に渡る戦力の犠牲とそれによるいくらかの危険である。ビショップギャンビットは 3.Nf3 による「通常の」キング翼ギャンビットの穏やか版である。

 私の二人の妹のソフィアとユディットはもっぱらこの布局を指しながら育った。世界チャンピオンの中ではボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーが時おりこれを意表をつく武器として用いていた。今日では時々これを指す最も有名な名前はモロゼビッチ、アダムズそれにイワンチュクである。

白の基本的な作戦は何か

 白は早々とポーンを犠牲にして黒を中原からいくらかそらし展開で優位に立つ。通常は犠牲にしたポーンを取り返すのをあまり急がない。

 白のやりたいことは中原を最大限に支配することと駒を素早く展開することである。黒が注意深くないと時々黒キングに対して早期の「暴風」が襲うことがあり得る。

黒の基本的な作戦は何か

 ポーンを取ったあと黒は二つの戦略を選べる。一つは戦力得にしがみついてしばらくの間不快な防御に回ることで、もう一つは有利な状況で贈物(f4ポーン)を返す良い機会を見つけることである。

それで評決はどうなっているか

 白でこの布局を用いるなら多くの場合相手を驚かすだろう。ほとんどの人はキング翼(ビショップ)ギャンビットについて知らないかあまり覚えていない。なぜなら今の時代ではめったに指されないからである。黒は互角にする指し方を知っておかなければならない。黒としては解説する3型のうちから自分の好みに合う一つを選択することを勧める。

キング翼ギャンビット受諾 [C33]
ビショップギャンビット

1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4

 これがビショップギャンビットの開始局面である。

 ここで黒には 3…Qh4+、3…d5 そして 3…Nf6 という主要な3戦型がある。

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2013年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(84)

第4章 古典中原(続き)

黒のクイーン翼攻撃

 

 白がクイーン翼にキャッスリングすれば(キング翼攻撃の準備として)、黒は半素通しc列、クイーン翼のポーンおよび/または要所のc5とc4とに配置したナイト対とを利用して、白キングに対して攻め合いを仕掛けることができる。それには黒が …b4 突きと …a5 突きを達成すればc8の問題ビショップがa6の地点を経由して働けるようになるという長所も加わる。このような戦術の競争には非常に正確な読みが必要で、開放シチリア防御のある戦型の特徴がいくらか表れている。

 キングを中央に置いたままにすることにより(封鎖ポーンの陰でかなり安全である)、黒はギリシャの贈り物を排除し白の f5 のようなポーン突きの価値を減少させる。クイーン翼のポーンのすぐの活用は白のクイーン翼キャッスリングを思いとどまらせるか(その場合白からのポーン攻撃の恐れなくキング翼にキャッスリングできる)、または白がクイーン翼キャッスリングに固執すれば白キングを迅速に攻撃することになる。黒はときにはクイーン翼にキャッスリングすることさえある。これは …O-O を予期して黒のキング翼を攻撃する態勢を組んだ白の陣形に肩透かしを食わせることになる。本書の執筆時点で定跡ではこれを古典中原に対する黒の最も有望な手法の一つと考えている。

(この章続く)

2013年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(83)

第4章 古典中原(続き)

黒が …f6 と突く

 この万能にも似た手はe5のポーンを清算し白のギリシャの贈り物の狙いを無効にする。

 

 しかし黒は exf6 Qxf6(または他の駒での取り返し)のあと中央の黒枡のd4とe5の支配のために駒が十分活動できることを確かめなければならない。さもないと白が中央の黒枡で強く締めつけるかもしれず、そうなるとd5とe6のポーンが動けず攻撃にもろくなる。

(この章続く)

2013年01月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(82)

第4章 古典中原(続き)

白のキング翼攻撃

 白はクイーン翼にキャッスリングして中原の支配を強化することがよくあり、黒がキング翼にキャッスリングしているなら黒キングに対して直接攻撃を開始することになる。この攻撃には異なる三つのやり方がある。一つ目はキング翼のポーンをすべて用いてポーンによる総攻撃を行なうことができる。

 図088 

 二つ目は f5! と突き f6 から Qg5 で早詰みを策することができる。黒が …exf5 と取れば N(c3)xd5 で黒の中原が破壊される。また白はキング翼ルークを(h3を経由して)g3に回し …exf5 のあと Qh6 で攻撃するのも良い。

 ここで指摘しておくと白のキング翼ルークは3段目が好位置となることがよくある。そこならキング翼、クイーン翼それに中央での作戦の用意ができている。だから h4 突きから Rh3 という捌きにはよく注意しておく価値がある。

 図089 

 白の三つ目の攻撃法は有名な「ギリシャの贈り物」の捨て駒である。白は Bxh7+ とビショップを切り、…Kxh7、Ng5+ Kg8、Qd3(クイーンがd1にいるなら Qh5)から Qh7+ で黒キングを追い回す。これが成立するかどうかは具体的な戦術上の状況による。

(この章続く)

2013年01月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(303)

「Chess Life」2013年1月号(1/1)

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収局研究室

初歩的なポカ

GMパル・ベンコー

つまづき
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2783、米国)
GMペーテル・レーコー(FIDE2737、ハンガリー)
FIDEグランプリロンドン大会、2012年

 局面は白の勝勢だが間違えやすい。

61.Rb7?

 61.Rc7、61.a6 さらには キングのどんな前進でも勝ちだった。

61…Ke6! 62.Rg7

 ここでは 62.a6 はまったく良い手にならず 62…Rc1+ 63.Kb6 Kd6! で引き分けになる。ここまで来れば違いが分かる。61.Rc7 と指していれば黒キングは近寄る暇がなかった。

62…Rc1+! 63.Kb6 Kd6! 64.Kb7 Rb1+! 65.Kc8

65…Rh1

 黒は最善の受けをしてきた。代わりに 65…Ra1 は 66.a6! で負けになる。しかし実戦の 65…Rh1 なら 66.a6 Kc6 で引き分けになる。

66.Rg6+ Kc5 67.Kb7 Kb5 68.Rg5+ Kb4 69.a6 Rh7+ 70.Kb6 Rh6+ 71.Kb7 Rh7+ 72.Kb6 Rh6+ 73.Kb7 Rh7+ 合意の引き分け

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(81)

第4章 古典中原(続き)

d4の地点をめぐる戦い

 d4の地点が白ナイトにとって絶好の地点であることは明らかである。そこは好所の中原に位置していて相手ポーンにより攻撃される心配がない。白がナイトを黒駒によっていじめられることのないこの地点に進めることができれば有望になる。だから黒は当然このナイトを交換によってなくそうとするか、d4に来ても楽をできなくさせようとする。この目的のために黒は …Nc6、…Bc5 そして …Qb6 のような手を指す。そして時にはすぐに …c5xd4 と取るのを避けて白ナイトがd4の地点に来るのを遅らせることもある。一方白は Be3、Qd2 および O-O-O(クイーン翼ルークをd1に持って来て防御に使う)のように展開してd4のナイトを支えようとする。

 図086 

 この図から黒はd4の地点で3回駒を交換すれば楽になる。それでもd4の地点を保持し続けることは白にとってまだ切り札となる。どんな白駒でも妨害を受けなければこの中原の地点でのさばることができる。キングでさえ収局ではここが好所になる。しかし繰り返すがすべての駒の中でナイトをd4に置くのが最良である。

 黒はクイーン翼ビショップが自分の陣形の中で問題の駒となっている。特にd4の地点をめぐる戦いに加われない唯一の小駒である。とりわけ黒はあまりにも早く駒を交換によってなくすことにより不良ビショップが残ってしまうことを避けなければならない。最悪のシナリオは次の図のような状況である。

 図087 

 黒はビショップが何も攻撃できず黒枡が非常に弱いので、このような収局は見込みがない。図ではひたすら辛抱すること以外何をしても手遅れである。しかしこのあとの議論では状況がこれほど悪くなる前にこのビショップをどのように活用することができるか解説する。

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(80)

第4章 古典中原

 

概説

 第1章では白がすぐに 3.e5 と突いた局面を調べた。そして白の作戦に不可欠の要素は、中原を攻撃してくる …c5 突きに c3 突きでd4のポーンを維持して応じることであることを見た。第2章と第3章では白はまた連鎖ポーンで締めつけたが、今度は(通常は)事前に 3.Nd2 Nf6 と指してから初めて 4.e5 と突いた。そのあとの …c5 突きに c3 突きで応じてポーン中原をもとのままに保てることは、やはり白の戦略の重要な一部だった。

 本章では白が 3.Nc3 と指したときにもっとも典型的に生じる局面を見てみる。この手は自然で立派な展開の手であるが、3…Nf6(3…Bb4 は次からの2章の主題である)4.e5 Nfd7(または 4.Bg5 Be7 5.e5 Nfd7)という応接のあと生じる通常の締めつけポーン中原では、白が少なくとも一時的に c3 と突いて中原を支えることができなくなっている。だからd4を占めている白ポーンは黒の素早い …c5 突きで消滅させられる。

 白が f4 突きで重要なe5ポーンを支えると仮定すると、古典およびシュタイニッツ戦法の別個のポーン構造になる。

 

 この図から白がe5ポーンを維持していてそれにより中央で広い陣地を確保していることが分かる。しかしd4ポーンがなくなったことは、白がd4にポーンを保持している戦型よりも黒駒がもっと自由に動き回れることを意味している。特に黒はc5の地点に駒を進めることができ、a7-g1の斜筋に沿った白のわずかな弱点につけ込めることもあり得る。さらにd4ポーンという「自然な」守り手を奪われたe5ポーンは …f6 突きによる解体にもろく白の広さの優位は消え去る。しかしこの局面にはd4の地点という大きな利点が白にある。

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(32)

「Chess Life」1991年10月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

不利な戦法の避け方(続き)

 図1での黒の正しい対処法を「直感的に」理解したのは世界級のGMだったことはほとんど驚くに当たらない。ポルガエフスキーの 7…b3! は 7.a3 への完璧な解毒剤である。白は自分のaポーンを黒のcポーンと交換することを期待していた。ところが 7…b3! 8.cxb3 は両者のcポーン同士の交換をもたらすので、白は中央での優位が全然得られない。他の優位の可能性(素通しa列、d6の弱点につけ込む機会)も白にはなく、黒は完全な互角を期待することができる。

 1984年に出版された「Encyclopedia of Chess Openings B」の第2版にこのポルガエフスキーの試合がまだ取り入れられていないのを知って残念に思った。それでもどういうわけかB31項の脚注28に次の記載がある。『7…b3?! 8.cxb3 Nge7 9.Bb2 O-O 10.Bc4 d6 11.b4 Bg4 12.h3 Bxf3 13.Qxf3 Nd4 14.Bxd4 exd4 15.d3[白がはっきり優勢]、クワルタス対シラージ、ベルン、1976年』最終局面で白が明らかに優勢であることは確かだが、責任は正着の 7…b3! にあるのではない。原因は黒が自分から優良ビショップを白のキング翼ナイトと交換した(11…Bg4?! 12.h3 Bxf3?!)ことにより「不利な戦法」を作り出したことと、そのあと二重ポーンを受け入れることにより(13…Nd4?! 14.Bxd4 exd4)自分の問題を増したことにある。代わりに普通に 11…Be6 と指せばほぼ互角を維持していた。例えば 12.d3 h6! のあと …Kh7、…Qd7 そしてたぶん …f5 という具合である。

 以上の分析を行なったあとで私はまた 6.b4 に対する自信を持った。その機会は4ヶ月もたたない1977年後半のアンドラ国際大会で訪れた。オジバート対メドニス戦でハンガリーのマスターは 7…b3! に意表をつかれたようだった。そして10分ほど考えて積極的に指してきた。

8.Nc3?! bxc2 9.Qxc2 Nge7 10.Nd5 O-O 11.a4?!

 図3

 白のこの手は 12.Ba3 という着想を含んでいる。それでも 7…bxa3? のあとの局面と比較すると白は何手も遅れていてそのためこの手からは何も得られない。さらに黒は白の差し出した戦力を 11…Nxd5 12.exd5 e4 13.Qxe4 Bxa1 で取ることさえできる。オジバートは危険な攻撃的選手なので私は実戦的判断でそれに二の足を踏み、まずクイーン翼の展開を続けそれによって安全な局面を確保することにした。

11…d6 12.Rb1 Nxd5 13.exd5 Ne7 14.Ba3?! Nxd5 15.Qe4 Nf4

 白は失ったポーンの代償が何もなく、黒は特に問題なく勝った。

16.Qb4 Bg4! 17.Rb3 Be6 18.Rbb1 Bd5! 19.Re3 Ba2! 20.Rd1 Nd5 21.Qe4 a6! 22.Bf1 Rc8! 23.Rc3 Rxc3 24.dxc3 Nxc3 25.Qc2 このあと46手目で白投了となった。

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フランス防御の完全理解(79)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

38…h5

 黒はこんなひどい手を指さなければならない。しかし他の手では 39.h5 でつぶされる。例えば 38…Kc7 は 39.h5 Kb7 40.Nh4 Kc8 41.f5! で滅茶苦茶にされる。しかし実戦はg6の弱点と多くの黒枡の空所が致命傷になる。

39.Qd8

 白キングはクイーン同士が交換になって初めて黒の弱い黒枡に沿って侵入できる。だから白は 40.Ra1 でa列から攻撃する狙いによって黒をおどしてクイーン同士の交換をさせる必要がある。黒がもっと前に機会をとらえてクイーン翼を封鎖していたら、白はこのような作戦を用いることができなかっただろう。しかし後悔先に立たずである。

39…Qd7 40.Qa5 Qc7 41.Qxc7+ Kxc7 42.f5

 この前線突破が決め手になる。

42…exf5 43.Bxf5 Bf7 44.Bh3 Be6 45.Ng5 Bxh3 46.Nxh3 Ne6 47.Rf1 Ra8 48.Rf7+(「Chess Monthly」誌でホッジソンがこの手を 48.Rf2 としてなぜ黒が 48…Ra3 と指さなかったのだろうといぶかっている!)48…Kc6 49.Rf6 Kd7 50.Nf4 Nxf4 51.Kxf4 Kc7?(ショートによれば 51…Ra3 ならまだ戦えたそうだがそれでも 52.Rxg6 Rxc3 53.Rd6+ で白の勝ちである)52.Rxg6 Rf8+ 53.Ke3 Rf1 54.Rd6 Rh1 55.Rxd5 Rxh4 56.Rxb5 Rh3+ 57.Ke4 1-0

(この章終わり)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(78)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 ここでは 17…a5 が面白い手だった。白がこの手を無視して眼目の 18.Bh4 を指すと黒は 18…Bxh4+ 19.Nxh4 b5! と指してクイーン翼で主導権が握れる。黒の意図は 20…Qa7! と寄ってb4で2度取ることである。だからおそらく白は 18.b5 Na7 19.a4 で閉鎖を迫られるだろう。しかしキング翼での圧力だけで勝てるかどうかは疑わしい。白は両翼で黒に圧力をかける可能性を保持する必要がある。それが陣地の広さの優位により駒が動き回れることを活用する手段である。しかしプサーヒスは明らかにそのような局面で苦しめられたくなかった。

17…Bd7 18.a4 a6

 ここでもまだ 18…a5 と指すことができた。19.b5(19.bxa5? は明らかに 19…Nxa5 から …Nb3 で悪いのでこの手が必然である)のあと 19…Nd8 で十分受け切れるはずである。

19.Qb1 Qb7 20.Nd1 b5! 21.axb5

 ショートは閉鎖的な局面が気に入らないので 21.a5 と突くのを避けた。しかしここで黒には積極的に動くチャンスがある。

21…axb5?

 黒は型どおりに取り返した。代わりに 21…Qxb5! と取ってaポーンを残せば白に痛みを負わせる。ショートの指摘のように 22.Ne3 a5 23.bxa5 Rxa5 24.Bd1 となれば黒には何も問題がなさそうである。例えば 24…Qa6 25.Rxa5 Qxa5 となればc3への当たりがある。振り返って見れば黒は 18…a6 を指さないで1手早く …Qb7 から …b5! と指すことができたことが分かる。

 完全に守勢で生き延びられる局面はほとんどない。しかし少なくとも読者は大局観による指し方の貴重な教訓を得ることになる。というのは白はいわば「相手無しで指す」状況だからである。だから白の着想はすべて明白である。

22.Ne3 Rxa1

 素通し列を放棄するのは良くないように見えるが状況は既にそんなことを言っていられない。例えば 22…Rg8 なら 23.Rg1 Rg7 24.f5! が強烈そうである。

23.Qxa1 Bd8 24.Kd2

 白キングがg4のルークをクイーン翼に持ってくる捌きの邪魔にならないようにどけ、e3のナイトを守った。

24…Ne7 25.Bh4

 ようやく懸案のビショップ交換を果たすことになった。

25…Nf5 26.Bxd8 Kxd8 27.Rg1 Rg8 28.Bd1! Rg7 29.Bc2

 ビショップが盤上で最も開けた斜筋に再配置された。閉鎖的な局面ではビショップよりナイトの方が働きが良いので黒は 30.Bxf5 を考慮に入れておかなければならない。しかしこの手はe6の地点をf8の「死に体」のナイトに空けてやることになるので白としても躊躇する。プサーヒスはたぶん何も建設的な作戦を見つけることができなかったので次の手を指したのだろう。

29…Nxe3 30.Kxe3 Be8 31.Qe1

 白の作戦はhポーンを破城槌として用いてg6の地点を攻撃することである。そのためにまずクイーンをh6に行かせる。

31…Qe7 32.Qg3 Kc8 33.Ra1 Bc6 34.Qh3 Kb7 35.Qh6 Rg8 36.h4 Be8 37.Rg1 Qg7 38.Qg5

 黒の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

ポルガーの定跡指南(61)

「Chess Life」2004年11月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御キング翼インディアン攻撃(続き)

 B)これまた有名なフィッシャー対ゲレル戦[訳注 このゲレルはフィッシャーに大きく勝ちこしていた旧ソ連のGM Efim Geller ではなくイスラエルのマスター(のちにIM)の Uzi Geller です](ネタニア、1968年)では黒は前局の 8…b5 の代わりに 8…Qc7 と指した。

9.e5

 白は中央を閉鎖しf6のナイトをキング翼の守りから追い払いたいので当たりをかけた。黒の守備駒が減って白がキング翼攻撃をやり易くなる。

9…Nd7 10.Qe2 b5

 黒はクイーン翼で反撃の糸口をつかもうとしている。ここで白は 11.h4 で典型的な作戦を開始した。この手はナイトが Nd2-f1-h2-g4 と捌けるようにしている。

11…a5 12.Nf1

 白は構想どおりに予定の攻撃を続けている。

12…Nd4

 これは面白い着想である。黒は二重dポーンの代価を払ってもナイト同士の交換とc列の開通を強制している。

13.Nxd4

 白はこう取らないとポーン損になる。例えば 13.Qd1 なら 13…Nxf3+ でeポーンが落ちる。

13…cxd4 14.Bf4

 黒のクイーンがc7にいるのでここが白ビショップの最高の地点になる。この手で白は展開を完了した。

14…Ra6

 これは少し異例だがルークをc列に回すうまい手段である。

15.Nh2

 このような局面でよくある捨て駒は 15.Bxd5 で、15…exd5 には 16.e6 がある。しかし黒はまず 15…Bb4! で 16.Reb1 とさせておく方が良い。他の逃げ方は 16.Rec1 なら 16…exd5 17.e6 Rxe6 18.Qxe6 Qxf4 19.Qxd7 Qxc1 20.Rxc1 Bxd7 で黒の駒得になり 16.Red1 なら 16…exd5 17.e6 Rxe6 18.Qxe6 Qxf4 19.Qxd7 Qxf3 20.Qc7(20.Nh2 は 20…Qxd1+)20…Bh3 で詰みになる。

15…Rc6

 黒はcポーンに圧力をかけている。このルークにはc列がふさわしい。

16.Rac1

 白はポーンを守るためにキング翼攻撃を1手遅らせなければならない。

16…Ba6?

 白がcポーンを守ったので黒はもう一つのルークをc列に持ってきて三重にする必要がある。この自然な手はf8のルークのためにc8の地点を空けている。しかしここでは悪手だった。黒はクイーンをX線攻撃からよけて(16…Qb6)そのあと自分の作戦を実行すべきだった。

17.Bxd5! exd5 18.e6 Qd8

 18…Rxe6 と取るのはe2のクイーンにひもが付いているので 19.Bxc7 と取られて意味がない。

19.exd7 Re6 20.Qg4! f5

 20…Qxd7 は 21.Be5 で不快な釘付けをかけられ白が少なくとも1ポーン得する。

21.Qh5 Qxd7 22.Nf3 g6 23.Qh6 Bf6 24.Rxe6 Qxe6 25.Be5!

 自然な 25.Re1? は 25…Qxe1+!! 26.Nxe1 Bg7 27.Qg5 Bf6 となって千日手の引き分けで黒を苦境から抜け出させてしまう。

25…Bxe5 26.Re1 f4 27.Rxe5 Qd7

 27…Qg4 は 28.Re7 Rf7 29.Rxf7 Kxf7 30.Ne5+ で両当たりになる[訳注 途中 29.Re8+ で詰み]。

28.h5 fxg3 29.hxg6! gxf2+

 29…Rxf3 なら 30.Re8+! Qxe8 31.Qxh7+ Kf8 32.g7+ Ke7 33.g8=Q+ で決まる。

30.Kxf2 hxg6 31.Qxg6+ Qg7 32.Rg5 1-0

 a6のビショップが落ちるので黒は投了した。

最終結論

 フランス防御に対するキング翼インディアン攻撃は白にとって非常に融通性のある陣形である。白は少しではあっても主導権を維持できる一方、フランス防御の主要な戦型すべての研究に膨大な時間をささげる必要はない。白は中央を支配または閉鎖しキング翼攻撃を仕掛けることができる限り作戦がうまくいく。

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2013年01月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(77)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これは巧妙な手である。キャッスリングするのが普通だがショートは自陣の広さの優位を生かす最良の方策はキングを中央に置いたまま黒のキング翼に対する側面攻撃を図ることであると見通していた。そのような攻撃は f5 突きによる仕掛けに至ることになる。このポーンを突くためには g4 突きの準備とキング側のルークをg1の地点に寄せて支援することが必要かもしれない。白キングがキング翼にいるとそのような攻撃作戦の邪魔になるだけである。

12…f5

 ここは重大な局面である。黒には完全に納得のいく手がないように思われる。可能な作戦をざっと見ればそのことが明らかになる。まず 12…b5 は前述の11手目の解説のようにまだ 13.Nc5 と応じられる。別の手は 12…b6 で 13…Bb7 から 14…O-O-O を意図する手である。しかし黒はキングがクイーン翼で非常に安全であっても、根本的な問題は白の大局的な狙いの f5 突きにどう対処するかということである。

 12…f6 もあまり助けにならない。というのは(例えば)13.Qd2 のあと 13…fxe5?! 14.fxe5 で黒陣がまだ窮屈で、14…Ndxe5? と駒を切って自由になろうとするのは白を混乱させることにならないので成功しそうにない。15.dxe5 Nxe5 16.O-O で黒は投了してもおかしくない。実際 12…f6 と突くのは白のキング翼で素通し列を作る望みに手を貸すようなものである。

 上図の状況を 5.f4 突きのタラシュ戦法で通常生じる局面と比較すれば、なぜ黒がここではあまり有望でないのかが容易に理解できる。ここでは黒が白のクイーン翼とd4ポーンに対して何も反撃ができていない。白のクイーン翼はまったく堅固で弱点がない。黒は動くことができず、堅固な防御要塞を構築して白の攻撃を待つ作戦しかできない。黒はそれを 12…f5 突きで開始して、直接的なやり方で白のfポーン突きを止めた。しかし今度はf5のポーンが突き崩しにあう。

 それでも白の優勢の度合いは誇張すべきでない。白はどう積極的に指してもかまわないかもしれないが、その一方黒は断固として防御すれば負ける理由はさらさらない。フランス防御の定跡の創成期には偉大な世界チャンピオンのボトビニクがしばしば黒が …c4 突きで閉鎖した局面(もちろん通常はこれほど守勢ではない)を守る側に立った。彼は傑出した技量で指し回し、時には白が指しすぎたときには勝ってしまうことさえあった。

13.Rg1

 ここも重大な局面である。白は g4 突きで仕掛けるやり方が二通りあった。一つは本局でショートがやって見せたやり方である。彼は 13.Rg1 から 14.g4 と指してルークでg列に強い圧力をかけることができた。しかしこの作戦には欠点がある。というのは 14…fxg4 のあとf5の地点を白ポーンがもう守っていないからである。そして白が敵陣突破を図る可能性のある地点というよりもいつか敵ナイトの橋頭堡になる。

 代替案はルークをh1において 13.h3!? と突く作戦である。これはf5の地点にポーンを利かせるのを放棄しないで g4 と突く目的で、白は 13…Nf8 14.g4 fxg4(今度は非常に悪い手となる)15.hxg4 という手順で f5 突きを強化できる。黒はこの手順中 14.g4 には 14…g6 と応じた方が良い。しかしそれなら 15.Qd2 や他の当たり障りのない手のあとf8のナイトがほとんど動きがとれない。白の作戦は Bf2 から Bh4 のような手で黒の優良ビショップと交換し、Nb2-d1-e3 でナイトを最良の地点に展開し、それから初めて gxf5 と取ることである。そのときには …exf5 にはすぐに h4 から h5 と突いてg6のポーンを攻撃できる。代わりに …gxf5 と取り返すとg列でルークにより侵略される。

 白が自陣を強化するあらゆる方策を行なってから gxf5 で争点を解消することには注目すべきである。一つの理由は当たり前の取り返しの …exf5 のあと黒がナイトをe6の地点に置けるようになるので、白はどうしても gxf5 が必要になるまで黒にこの贅沢を与えたくないからである。

 最後に、黒は 14…Ng6 と指すこともできたが 15.gxf5 exf5 16.h4!(黒が 16…Nh4 で窮屈さをやわらげようとするのを止める)で白の攻撃にはずみがつく。どちらの作戦が良かったにせよ(それもまったく明らかでないが)、キャッスリングを遅らせるショートの決断は白のキング側ルークの最適の地点はg1かh1になるので完全に正しかった。

13…Nf8 14.g4

 白はまだ代替案のように 14.h3 から 15.g4 と指すことができた。一つの想定手順は 14…Ng6 15.g4 Nh4 16.Nxh4 Bxh4+ 17.Kd2 Bd8!?(18.g5 で捕獲されるのを避けた)である。

14…fxg4 15.Rxg4 g6

 この手はgポーンを h4-h5 突きによる攻撃にさらす可能性があり、f8のナイトからg6の地点を奪う。それでもこのポーン突きを避けるのは難しく、少なくともf5の地点を要塞化する利点はある。

16.Bf2!

 この大局的な好手はa4のナイトのためにe3の地点を空け、黒の「優良」黒枡ビショップとの交換のために狙い筋の Bh4 を準備している。

16…b6 17.Nb2

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(76)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

第12局
ショート対プサーヒス
モスクワ・オリンピアード、1994年
古典戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 5.Nce2 c5 6.c3 Nc6 7.f4 Qb6 8.Nf3 なら前に第9局で解説した戦型に戻る。

5…c5 6.Nf3 Nc6 7.Be3 Qb6

 これに代わる他の手は次章を参照されたい。

8.Na4 Qa5+ 9.c3

 ここで白は 10.dxc5 を狙っていて黒が駒で取り返すと b4 突きで両当たりになる。だから黒は防御一辺倒の手と攻撃一辺倒の手とから選択しなければならない。黒にとっては残念なことに攻撃的な手は次のように疑問のようである。9…cxd4 10.b4 Nxb4(クイーンを引くのは 11.Nxd4 で黒が締めつけられて面白くない。だからこのナイト切りはほぼ必然である)11.cxb4 Bxb4+ 12.Bd2 Bxd2+ 13.Nxd2 黒は駒の代わりに3ポーンと堅固な陣形を得ているが、本当に大丈夫なのだろうか。1994年アムステルダムでのショート対ティマン戦では黒が 13…g5 で白の中央を破壊しようとした。しかし 14.Rb1 gxf4 15.Bb5 Rb8 16.Nc5 Qc3 17.Nd3 ですぐに苦戦に陥った。

9…c4 10.b4!

 例えば 10.Be2 のようなありきたりの手に対しては黒は 10…b5 と指すつもりである。そして 11.Nc5 Nxc5 12.dxc5 b4 でc5を攻撃して明らかに黒が優勢になる。ショートはこうならないようにした。

10…Qc7 11.Be2 Be7

 11…b5 は 12.Nc5 と応じられて黒はナイトを拠点に居座らせるか 12…Nxc5 13.bxc5(または 13.dxc5 でd4が白駒の好所になる)で白のポーンの形を良くさせるかの面白くない選択をすることになる。

12.a3!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(75)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 突然白が局面を支配した。ここで黒は 35…Rxf4 と取るべきで、それなら白に明白な勝ちはなかった。例えば 36.Bxf4 なら 36…Rxf4 37.Rxh7(37.Qh5? は 37…Qc1+ で白が先に詰まされる)37…Bxg5 38.Rh8+ Kg7 39.R2h7+ Kg6 40.Qh5+ Kf5 41.Rf7+ Ke4、途中 40.Rg8+ なら 40…Kxh7 41.Rxg5 Rh4 42.Qd3+ Kh8 43.Qg6 Qc1+ でよい。

35…Bxg5?

 黒はg列で致命的な釘付けにされる。

36.Rg2 h6 37.Rxh6 Rg7 38.Ng6 Bxh6

 実戦のようにクイーンを捨てる方がまだましだが見込みのないことには変わりない。

39.Ne7+ Kf7 40.Nxc6 Rxg2+ 41.Kxg2 Rg8+ 42.Kf2 Bxc1 43.Qh5+ Kg7 44.Ne7 Rf8+ 45.Ke2 Rf7 46.Qg4+ Kf8 47.Ng6+ 1-0

(この章続く)

2013年01月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(302)

「Chess」2012年12月号(1/1)

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ナカムラがホーへフェーンを席巻


準優勝のセルゲイ・ティビアコフと対局中の大会優勝者のヒカル・ナカムラ

ヨーハーナーン・アフェク

 オランダの町のホーへフェーンは16回目になる世界的に有名なチェス大会を10月16日に祝った。この大会は保険会社のウニフェがスポンサーになっている。今回もすばらしい運営で、隅々まで気配りが行き届き特に参加者のもてなしと対局場の環境は格別だった。クラウングループには何年も多くの世界級の選手がそろい、その中には世界チャンピオンのスミスロフ、スパスキー、カルポフ、クラムニクだけでなくFIDE世界チャンピオンのハリフマン、ポノマリョフ、トパロフも含まれている。オランダの最強選手たちもここでアロニアンやカールセンのような超一流と対局してきた。また、世界最強の女子選手のユディット・ポルガーも10回も参加している。

 今年のクラウングループの優勝候補は当然シード1位のヒカル・ナカムラだった。しかしロンドングランプリ大会での大不振により米国の最強選手は不調で最近の強豪たちとの果てしない対決のあともしかしたら緊急の休養が必要なのではないかと見られていた。しかしナカムラは彼らしく別案を立てていた。エイラトでのヨーロッパクラブ杯の直後ホーへフェーンに降り立ち、第18水準の短い「4強戦」(4選手による2回戦総当たり)は失ったレイティングを取り戻しすぐさま世界の10傑に返り咲く絶好の機会のように思われた。

 ナカムラは真の勝利者というものはどういうものかをまざまざと見せつけた。ちょうど昨年のクラムニクと同じく白で3局勝ち黒で残りの3局を引き分けて、優勝賞金の4千ユーロを獲得し、ロンドンで失ったレイティング20点のうち5点を取り戻した。彼はオープングループも含めて対局場全体の中で唯一の無敗だった。最終戦でナカムラは引き分けるだけで優勝だったが、それでも当初の目標そのままにお手本となる戦略戦で勝ちを目指した。

キング翼インディアン攻撃
H.ナカムラ – S.ティビアコフ
第6回戦

1.e4 e6

 ティビアコフは最近 1.e4 に対する主力武器としてスカンジナビアからフランス防御に転向した。

2.d3

 米国の史上最強選手の良い常用布局となっていたものは現代の米国最強選手にとっても有効な布局になっている。

2…c5 3.Nf3 Nc6 4.g3 g6 5.d4!?

 この手損は正当性がある。局面が珍しいシチリア防御の陣形になってきたので、白は黒のいくらか弱体化した黒枡を考慮して局面を開放する。

5…cxd4 6.Nxd4 a6 7.Nxc6 bxc6 8.c4 Bg7 9.Bg2 Ne7 10.O-O

10…d6

 手ごわい応手は 10…f5!? 11.Nc3 fxe4 12.Nxe4 d5 13.cxd5 cxd5 14.Nc5 O-O だった。

11.Nc3 O-O 12.Bg5 Qc7 13.Qd2 Rb8 14.Rfd1 Rd8 15.Rac1 c5 16.b3 Bb7 17.h4 h5 18.Qd3 Bc6 19.Qe2 Be8 20.Rd3 Rdc8 21.Qd2 Rb6 22.Bf4 Be5 23.Rd1

 白は黒の主要な弱点に対してすべての重砲を集中させた。単純で効果的な作戦である。

23…Kh7

 d4の地点を目指す 23…Nc6!? は目的を達することができたかもしれないが、24.Rxd6! Qxd6 25.Qxd6 Bxd6 26.Rxd6 となってc5のポーンも弱体化する。他の受けは 23…Bd4 が考えられるが 24.Ne2 e5 25.Nxd4 cxd4 26.Bg5 でd列をふさいでも、キング翼と特に黒枡が白にとって魅力的な攻撃目標になる。

24.Kh1 Ng8 25.Be3 Bg7 26.Ne2 Rd8 27.Bf4 e5

 これが白の捌きの目的だった。黒はd列がいっそう弱くなった。それに劣らず重要なのがe5ポーンで、白はキング翼を開放し速射攻撃を仕掛けることができる。

28.Bg5 f6 29.Be3 Ne7 30.Nc3 Qc8 31.Kh2 Rc6 32.f4 Qb7 33.fxe5

 戦略の戦いは決着した。白の侵略が開始される。

33…fxe5 34.Bg5 Rd7 35.Bh3 Rdc7 36.Rf1 Bd7 37.Bg2 Bg4 38.Rxd6 Rxd6 39.Qxd6 1-0

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(74)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白の攻撃が停止し、黒はここからキング翼で主導権を握ることができる。

21…fxg4 22.Bxg6 Qxg6 23.hxg4 Qh6+

 白キングがh1にいたら(18手目の解説を参照)このチェックに 24.Rh2 Qg6 25.Rg2 Qh6+ と応じて千日手による引き分けにできた。

24.Kg1 g5!

 これで白のキング翼のポーンが破壊され黒がはっきり優勢になる。

25.Rh2 Qg6 26.Ne2 Rf7! 27.Ra3!

 このルークがキング翼の完全な崩壊を防ぐのにちょうど間に合う。

27…Rcf8 28.Rah3 gxf4 29.Nxf4 Qb1!

 29…Rxf4?! は 30.Bxf4 Rxf4 31.Rxh7+ Qxh7 32.Rxh7+ Kxh7 33.Ng2 Rf8 34.g5(g2のナイトを押さえ込む …Bg5! を止める)34…Bxg5 35.Qg4 から 36.Qxe6 となって、黒キングが薄いので白が反撃で十分引き分けに持ち込めるはずである。本譜は次の 30…Rxf4 で受けがないのでショートが簡単に勝つはずである。30.Ne2 なら 30…Rf1+ 31.Kg2 Qe4+ で黒の楽勝になる。

30.Nc2 Kg8?

 30…Rxf4 31.Rxh7+ Kg8 32.Rh8+ Kf7 33.g5 Ke8! で黒が勝つ。

31.Na3!

 白が意表の引き分けの手段を見つけ出した。

31…Qa1 32.Nc2 Qxa4?

 そして勝つ可能性が出てきた。黒は千日手による引き分けの手段が選べて、一つは平凡な 32…Qb1 33.Na3 で、もう一つは派手な 32…Nxc2 33.Qxc2 Rc8(33…Rxf4 34.Qxh7#)34.Qg6+! Kf8(34…hxg6?? は2手詰めになる)35.Nxe6+ Ke8 36.Ng7+ である(イェー・チャンチュワン)。

33.b3! Qc6 34.Nxb4 axb4 35.g5!

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(73)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 12…Bh4+ は 13.Kf1 のあと g5 突きでこのビショップが取られないように引かなければならないので悪手である。そのあと白キングは Kg2、Rg1、Kh1 と移動してe1にいるよりも安全である。重要なことを注意しておくと 12…g6 はあまりに消極的すぎる。白にg6の地点という攻撃目標を与え、黒があとでビショップをg6またはh5に出せなくなる。

13.a4

 1991年ダブリンでのクラーク対マクドナルド戦ではここから 13.Kf2? a4 14.gxf5 exf5 15.h4 Bd7 16.Be3 Nb4! 17.Ng3(17.Bb1 は 17…Nc4 18.Bc1 a3 19.b3 Nb2! で黒が優勢である)17…Nxd3+(この交換は黒が非常に有利である)18.Qxd3 Nc4 19.Rab1 a3 20.b3 Nb2 21.Qe2 Qb6 となって黒が(…Bb5 の狙いがあり)明らかに優勢だった。

 本譜の手は黒のaポーンがさらに前進するのを抑止している。しかしおそらく 13.O-O!? で自分のキングを安全にしそのあと Kh1 から Rg1 と指す方が良かった。それなら黒は …a4 か …Bd7 と指しただろう。

13…Nb4

 白の前手はこのナイトに絶好の拠点を与えた。a3 突きでこのナイトを追い払うことがもうできなくなっている。

14.Bb1 Bd7 15.Kf2?!

 15.O-O はルークがg1に行くのに2手かかるので、イェーは攻撃を遅らせたくなかった。それにもかかわらず白キングはf2で露出しているのでイェーは結局キングをh列に行かせることになり、望みの配置を達成するために3手でなく4手かかることになった。

15…Rc8 16.Rg1 Kh8 17.Kg2 Be8!

 本章の冒頭の概説で説明したように黒はg列での圧力を、ビショップをg6の地点に転回させることにより迎え撃つ。

18.Kh2?!

 18.Kh1 の方が良かった。

18…Bg6 19.Nc3 Qe8! 20.Ne1 Qf7

 黒クイーンの捌きでキング翼がさらに強化された。

21.Rg2

 黒の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(31)

「Chess Life」1991年10月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

不利な戦法の避け方

 我々のほとんどは不利とみなされている戦法をわざと指したくはないのがあたりまえである。それにもかかわらず信頼していたのを指してまもなくこちらの形勢が悪いことに急に気づくことがあまりにも多く起こるようである。なぜこのようなことが起このか、そしてどうすればそんな不快なことが起こるのを避けられるのだろうか。

 以下の原則を守れば不利な戦法を避ける可能性は大きく高まる。

 (a)その戦法が良い布局の指し方の原則(キングの安全、中央の支配、中央への駒の展開)のいくつかを無視しているようならば、疑ってみること。

 (b)その戦法が布局の精神に従っていないようならば、疑ってみること。

 (c)本に載っている定跡が(a)または(b)に照らして疑問の戦法にお墨付きを与えているならば、疑ってみること。

 上記の要点を二つの重要な定跡の例に沿って具体的に説明する。

Ⅰ シチリア防御 1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5

 白の3手目の 3.Bb5 はマスターの実戦で二つの理由でよく指されるようになった。(1)白は黒の多くの戦法をはずし(2)この戦法はシチリア防御でよくある乱闘よりも本質的に戦略的になることが多い。ここで黒には多くの選択肢があるが定跡はいつも次の手順を高く評価している。

3…g6 4.O-O Bg7 5.Re1 e5

 ここで白の最もよく指される戦略的な戦法は 6.Bxc6 dxc6 7.d3 だが、次の擬似ギャンビットも重要である。

6.b4!?

 狙いは単純にc5のポーンを取ることで、黒はb4のポーンを取らなければならない。定跡では 6…Nxb4 でも 6…cxb4 でも大丈夫となっている。私はあとの方を信頼していて、いつも私の常用戦法の一部になっていた。

6…cxb4 7.a3

 図1

 これが白の犠牲の背後にある戦術的/戦略的着想である。白はポーンの代わりに非常に強力な攻撃を得るかポーンを取り返して広大な中央を築くことを期待している。黒には重要な応手が三つある。

 (A)7…bxa3?

 展開の遅れとd6の弱点のために黒はこんな欲張りをしている余裕はない。1972年ケチケメートでのカペングート対パオリ戦のように 8.Bxa3(8.Nxa3 から 9.Nc4 でもよい)8…Nge7 9.Bd6 O-O 10.Nc3 Re8 11.Bc4 a6 12.Qb1! Bf6 13.Qa2 で黒陣がすぐに厳しくなった。

 (B)7…Nge7 8.axb4 O-O

 定跡ではこれが主手順になっていて黒が全然問題ないと評価されていた。実戦では 9.Ba3、9.Bb2、それに 9.c3 が指されどれも黒がしっかり互角にしていた。しかしあとから見ると白の手はかなり雑である。

 ここは 8…O-O のあとの局面を基本から観察してみるよい時機である。b4でのポーン交換は白のaポーンが黒のcポーンと交換されたことになるので白の方が中央に比較的強い影響力を持つようになった。さらにこの交換で白に健全な7連ポーンができたのに対し、黒のポーンは二手に分かれそのためポーン同士の守り合いで劣っている。白はa列でも圧力をかけているが黒はビショップが働いていないしd6に潜在的な弱点がある。結論として白は実質的な優位を達成し黒はその代わりとなる代償がない。しかしさらに必要なことは白の優勢を確立する方法を示す手段である。その答えは1987年ルガノでのフィリポビッチ対メドニス戦に示されている。

7…Nge7 8.axb4 O-O 9.d3!

 これが黒の「不利な戦法」を戦略的に咎める手である。9…Nxb4? は 10.Ba3 があるのでやはり良くない。そして他の手ならば白は優位を確固としたものにしていく。試合は次のように続いた。9…Qc7 10.Bxc6! bxc6?!(これはa7に新たな弱点ができる。だから 10…dxc6 か 10…Qxc6 の方が良かった)11.Be3 f5 12.Nc3! f4 13.Bc1! h6 14.b5! d6 15.Ba3 c5 16.Nd2! Be6 17.Nc4 f3 18.g3 g5 19.Bb2 Ng6 20.Re3 g4 21.Ra6 Rad8 22.Qa1 Rf7 23.Qa5

 図2

 そして白が46手で勝った。ユーゴスラビアのIMが私の弱点につけ入って侵入したやり方には感服した。

 あとで本局を詳細に見直したとき 7…Nge7 からの戦法が悪くて修正がきかないことが明らかになった(前に説明した理由による)。自分の棋譜ノートを参照したところ唯一の正着は次の手であることが明らかだった。

 (C)7…b3!

 私の棋譜ノートには最初の実戦例として次の試合が載っていた。7…b3!(メンビエリェ対ポルガエフスキー、ラスパルマス、1974年)8.cxb3 Nge7 9.Bb2 O-O 10.Nc3 d6 11.h3 h6 12.Bc4 Kh7 13.d4 Nxd4 14.Nxd4 exd4 15.Nb5 Nc6 16.Qd2 Ne5 17.Bxd4 a6 18.Nc3 Qg5 形勢は互角で、26手目で引き分けになった。(19.Qxg5 hxg5 20.Bxe5 Bxe5 21.Rac1 b5 22.Bd5 Ra7 23.a4 Bd7 24.axb5 axb5 25.Ne2 b4 26.Red1 合意の引き分け)

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フランス防御の完全理解(72)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 ここで16.f6? なら 16…gxf6 17.exf6 Bxf6 18.Bh6 Nxd4 19.Nexd4 Bxd4+ 20.Kh1 Bg7 21.Ng5 f5 22.Bxg7 Kxg7 23.g4 h6! 24.gxf5 hxg5 25.fxe6 Qe3! で黒の受けが成功し勝ちになるようである。だから白は安全に 16.Kg2 または 16.Kh1 と指すのが最善で、黒は必要になれば 16…exf5 17.Bxf5 Bxf5 18.Qxf5 Qb6 でクイーンを受けに使う用意をする。それならいい勝負のようである。

11.h3

 白はすぐに g4 と突く準備をした。1991年カペル・ラ・グランドでのタニョン対マクドナルド戦では白が代わりに 11.O-O と指し 11…O-O 12.Kh1 Bd7 13.Rg1 Be8 14.h3 Bg6 15.Ng5?! Bxg5(黒は 15…Qd7 で長い包囲攻撃の用意をすることもできた)16.fxg5 と続いた。ここで 16…Qe8! 17.Bb1(Nf4 の意図)17…Bh5 18.g4?! fxg4 19.Nf4(19.hxg4 Bxg4!)19…Rxf4! 20.Bxf4 gxh3 と指していれば黒が優勢だった。

11…O-O 12.g4

 すべて予定どおりである。イェーの考えでは控え目の 12.a3 の方が良く 12…a5 には 13.b3 a4 14.b4 と応じるそうである。しかしいずれにしても …Nc4 から …Rc8 の準備の 14…Bd7 で、白が g4 突きの作戦に戻らなければ黒にはほとんど恐れるものがない。

12…a5

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(71)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

第11局
イェー・チャンチュワン対ショート
ルツェルン世界チーム選手権戦、1989年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.c3 Nc6 7.Ndf3

 黒の手番 

7…f5!?

 黒がこのようにして自陣を固めたければ今行なうべきである。7…Qb6 8.g3 f5?! はちょっと時期が悪く、9.Ne2 a5 10.Bh3 Be7?!(ここは 10…cxd4 と取る最後の機会で 11.Nexd4 と取ってくれば …Nc5 から …Ne4 で反撃できる。だから白はたぶん 11.cxd4 +/= と取る)11.g4! Ndb8(11…g6? は 12.gxf5 gxf5 13.Ng5 から Qh5+ の狙いが強烈である)12.gxf5 exf5 13.dxc5! Qd8 14.Be3 Na6 15.Qd3 O-O となって、1983年プロブディフでの欧州チーム選手権戦のショート対レーフシュレーガー戦で白が 16.Rd1 と指していれば明らかに優勢になっていただろう。7…Qb6 は白に「無駄手」を指させる。例えば 8.g3 だが、黒もクイーンがd7のナイトから好所のb6を奪う場違いの駒になっている。だからあとで …Qd8 と指せば無駄手を指したのは実は黒の方ということになる。

 本章の前半で述べたように黒は 7…h5!? と突いて封鎖を試みることもできる。しかし白は 8.Bd3 cxd4 9.cxd4 Nb6 10.Ne2(10.Nh3 Bd7 11.O-O g6 12.Nhg5!? – バレエフ)10…Bd7 11.O-O a5 12.a3 a4 13.Qe1 g6 で優勢を維持している。1968年スコピエでのウェード対ウールマン戦では 13…Na5? 14.f5! exf5 15.e6! fxe6 16.Qg3 Kf7 17.Nf4 のあと白が勝った。

8.Bd3

 もちろん白は明らかな不都合がなければいつも白枡ビショップをこの地点に展開する。

8…cxd4

 黒は例えば 8…Be7 9.Ne2 cxd4 10.Nexd4 で白が ナイトをd4の地点に据える選択肢を持つ前に交換した。白がこの機会を生かすかどうかは分からないが、わざわざ選択権を与えることはないだろう。

9.cxd4 Be7 10.Ne2 Nb6

 ここからの黒の着想には …a5-a4-a3 があり、そのとき b3 と応じてくれれば …Nb4 が絶好の地点に陣取ることになる。共通点のある作戦が1986年ベークアーンゼーでのリュボエビッチ対ヒューブナー戦で見られ 7…Qb6 8.g3 Be7 9.Ne2 O-O 10.Bh3 cxd4 11.cxd4 a5 12.O-O a4 と進んだ。リュボエビッチは 13.a3 Qa7 14.Qc2 と応じヒューブナーは 14…f5? という悪手を指した。これに対してはリュボエビッチの 15.exf6e.p. でも 15.g4 でも良さそうである。チェス新報第41巻でヒューブナーは黒が f5 突きの狙いを無視すべきだったとして詳細な分析を解説している。彼の主要な手順は 14…Nb6! 15.f5 Nc4 である。

 白の手番 

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(60)

「Chess Life」2004年11月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御キング翼インディアン攻撃(続き)

 A)フィッシャー対ミャグマルスレン戦(スース・インターゾーナル、1967年)では 8…b5 が指された。これはクイーン翼で反撃しようという黒の作戦の手始めである。

9.e5

 この手の目的は中央を閉鎖することである。そのあと白はキング翼での攻撃に専念することができる。

9…Nd7 10.Nf1 b4 11.h4 a5 12.Bf4 a4

 黒は 13…a3 と突くつもりである。黒がポーン突きに手数をかけた意図はルークのために素通し列を作ってクイーン翼で攻撃することである。しかしこの手は時期尚早である。12…Ba6 の方が中央に圧力をかけて良い手だった。

13.a3

 黒の 13…a3 突きを阻止した。

13…bxa3

 ここで 13…Ba6 と指すのは白に 14.axb4 から 15.Rxa4 でポーン得されるので手遅れである。

14.bxa3

 白がルークで取り返すと半素通しb列でbポーンが黒の標的にされる。

14…Na5

 ナイトは盤端では動きが制限されるのでこの手はあまり良い手ではない。「盤端のナイトはすかたん」と覚えておくとよい。黒はナイトをそのままにして 14…Ba6 で展開を完了すべきだった。

15.Ne3 Ba6 16.Bh3

 この手は将来黒が …f7-f6 と突くのを止めるためである。

16…d4 17.Nf1!

 この判断は素晴らしかった。ここですぐ目につく手は 17.Ng4 である。しかしチェスの天才のボビー・フィッシャーはg4の地点を空けたままにしてd1-h5の斜筋をクイーンのために通しておく方が大事だと理解していた。これで中央のe4の要所は白が完全に支配している。

17…Nb6 18.Ng5

 d1-h5の斜筋を空けてクイーンが攻撃に加われるようにした。

18…Nd5

 白の重要なf4のビショップを当たりにした。

19.Bd2

 白はキング翼での攻撃の助けにこのビショップが必要である。だからビショップを当たりからはずすのが最善である。

19…Bxg5 20.Bxg5 Qd7 21.Qh5

 これでクイーンがキング翼での攻撃に加わる用意ができた。

21…Rfc8 22.Nd2

 白は17手目でナイトをf1に引いた。そのナイトが中央の重要なe4の地点に行ってキング翼攻撃を助けようとするのは完全に理にかなっている。

22…Nc3

 黒はe4の地点を守ろうとした。

23.Bf6!

 そしてチャンバラが始まる。白は次に 24.Qg5 g6 25.Qh6 から 26.Qg7# で詰ます作戦である。黒が 23…gxf6 と取るなら白は 24.exf6 と応じ 25.Qg5+ Kf8 26.Qg7+ Ke8 27.Qg8# の狙いがある。黒が 24…Kh8 と指せば白は 25.Nf3! と指し 26.Ne5 と 26.Ng5 の二通りの狙いがある。

23…Qe8

 これで黒はg7のポーンを …Qf8 で守ることができる。

24.Ne4

 これで白はついにキング翼の攻撃に役立つ重要なe4の地点にナイトを行かせることができた。白は将来いつか Nf6+ と指すことを見据えている。

24…g6

 黒は白クイーンを当たりにした。代わりに 24…Nxe4 と取れば白は 25.Rxe4 のあと Rg4 と指し攻撃がきつくなる。

25.Qg5

 すぐに 25.Qh6 と指すのは 25…Qf8 で守られる。

25…Nxe4 26.Rxe4 c4

 黒はクイーン翼で反撃を開始したが少し遅すぎた。

27.h5

 白はe4のルークのためにh列を素通しにしたがっている。

27…cxd3 28.Rh4!

 この段階に至れば白は反対側は忘れて黒キングに対する決定的な攻撃に突き進むと宣言することができる。

28…Ra7

 黒は白が 29.hxg6 fxg6 と指したときに備えてhポーンを守った。黒が 28.Rh4 を無視して 28…dxc2 と取れば 29.hxg6 fxg6 30.Rxh7! Kxh7 31.Qh4+ Kg8 32.Qh8+ Kf7 33.Qg7# で白の勝ちになる。

29.Bg2

 この手はビショップがe4に行ってキング翼攻撃を助けることができるようにしている。

29…dxc2 30.Qh6 Qf8

 黒はcポーンを昇格させて勝負を長引かせることができたが勝敗はしょせん変わらない。

 この局面で白には3手詰みがある。分かりますか?

31.Qxh7+! 1-0

 31…Kxh7 32.hxg6+ Kxg6 33.Be4# または 32…Kg8 33.Rh8#。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フランス防御の完全理解(70)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 白が 27.Qg1 でg列に危険な圧力をかける前にちょうど間に合った。ここで 27.Qg1 なら 27…Qxb2+! と応じることができる。例えば 28.Kf3 なら 28…Qc3 29.Rxg7+ Kh8 30.Rxf7 Qxd3+ 31.Be3 Bxf7 で黒の駒得になる。だから白がg列で圧力を強めるべきだったときに 23.Nh4 で貴重な手を無駄にしたために黒が布局の戦いに勝ったと結論づけることができる。このようなのっぴきならない局面ではたった一つの無駄手でも有望な局面を負け戦にしてしまうことがある。

27.b4!?

 黒を混乱させようとするこの一撃がまんまと成功する。

27…Nxa3?

 これで白にチャンスが生まれた。グレビッチによれば 27…axb3e.p. 28.Qg1 b2! 29.Rxg7+ Kh8 と指すべきだった。そうなればb2のパスポーンの脅威が白のg列での可能性をはるかにしのぐ。

28.Rxg7+!

 これで黒クイーンを取ることができる。もっとも黒のパスポーンがまだ勝つ可能性を保証している。

28…Rxg7 29.Rxg7+ Kxg7 30.Qg1+ Kf8 31.Bxb5 Nxb5 32.Nf3!

 ここから白駒のみごとな再編成が始まる。代わりに 32.Qg5? は 32…Ke8! 33.Qf6 Kd7 でaポーンが突進する。

32…a3 33.Bh4! a2 34.Bf6 Rc2+ 35.Kd3 Rc3+ 36.Kd2 Nc6

 もちろん 36…Rxf3?? とは取れず 37.Qg7+ で詰まされる。本譜の手のあとは黒の勝ちのように見える。というのは 37.Qg7+ Ke8 のあと黒キングは必要ならばb6の地点まで逃走することができ、そうなればaポーンがクイーンに昇格できるからである。しかし白はまだ助かることができる。

37.Ng5 Ncxd4 38.Nxh7+ Ke8 39.Qg7 Nc6 40.Qh8+?

 白は時間に追われて敵キングを逃走させaポーンを止められなくなった。40.Bg5! と指せば 40…a1=Q 41.Nf6+ Kd8 42.Nxd5+ Kc8 43.Qf8+ Kd7 44.Qg7+ となって永久チェックで引き分けにできた(「チェス新報」第58巻のグレビッチの解説)。

40…Kd7 41.Nf8+ Kc7 42.Nxe6+ Kb6 43.Bd8+ Ka7 44.Nc7 Nxc7 0-1

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(69)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

17.Nh3

 17.Bxf5 とポーンを取るのはグレビッチの指摘するように 17…Rxf5! 18.Qxf5 Ndxe5 19.Qc2 Nxf3 20.Nxf3 Bg4 で黒に交換損の代わりに良い反撃手段ができるので良くない。白の意図は(非常に有利になれるのでなければ)戦力を得することでなく、広さの優位で黒駒を押し込めておくことである。白の期待は活動性の不足の結果として黒の防御がキング翼での白の攻撃をはね返すことができず、クイーン翼では反撃を遂行することができなくなることである。

17…Nb6 18.Be3 Be6 19.Nhg5 Qd7 20.Rag1 Nc4

 これは黒からの反撃の最初の兆候である。

21.Bf2 Rac8 22.Qb1

 クイーンがc列での開き攻撃にあわない用心のために退却した。

22…a4

 黒はキング翼での白の圧力に対抗するために、白のクイーン翼のポーンを固定しておいて …b5-b4 突きでクイーン翼の列を素通しにする用意をした。

23.Nh4?

 白は即決の勝ちを狙ったが、白陣はそれが正当化できるほど強力でなかった。ここは代わりに Rg3、Rhg1、R1g2、そのあともし適当なら Qg1 と攻撃の強化を続け、クイーン翼のポーンを犠牲にしてもg列で必殺の敵陣突破を成し遂げることを期待すべきだった。白がこの方針をとっていれば激闘が予想された。

23…Bxg5

 この手はさし迫った 24.Nxe6 から 25.Nxf5 の狙いに対処した。

24.Rxg5 Ne7!

 この手はキング翼の守りを強化し、それと同じくらい重要だが …Qb5 でb2の地点に圧力をかける道を開いた。

25.Rhg1 Rf7 26.R1g2 Qb5!

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(68)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 しかし白はキングの安全のための配慮が足りず、黒は次のように駒を犠牲にして圧倒的な攻撃に出ることができた。12…Nxd4! 13.Nxd4 fxe5 14.fxe5 Nxe5 15.Bc2 Ng6! 16.Bxg6 hxg6 17.Nde2(…Bd6+ から …e5+ でこのナイトが攻撃にさらされないようにした)17…Qf2+ 18.Kh3 Bd6 19.Qb3 e5+ 20.Kh2 Qxh4+ 21.Nh3 Bxh3! 0-1 この惨敗はこの f4 による中原締めつけの戦型で白がいかに注意深く指さなければいけないかの警鐘である。たった1手の不注意が負けを意味することがある。しかしこれは一片の真実にすぎない。不注意な指し方の報いがより大きければ、良い指し方の報酬もそれに見合って大きい。この戦型には引き分けが非常に少ない!

10.Bd3 Bb4+ 11.Ke2

 グレビッチの手順のために白キングがf2でなくe2に行かされた。e2の方が安全に見えるけれども、キング翼の避難所からは一列遠く、たぶんもっと重要なことはg1のナイトから最良の展開の Ne2 という手を奪っていることである。

11…Be7

 この手は白の中原を支える 12.Be3 を妨害するために指された(そう指すと 12…Qxb2+ と取られる)。代わりに黒が消極的に指せば、猛攻に見舞われるかもしれない。例えば1988年ベルリンでのプサーヒス対フランケ戦では 11…O-O 12.Be3 a5 13.Qc2 f5 14.g4! Ndb8(14…fxg4 は 15.Bxh7+ Kh8 16.Qg6! gxf3+ 17.Nxf3 で 18.Qh5 による詰みの狙いに受けがないので白の短手数の勝ちになる[訳注 17…Rf5 で受かっているようです])15.a3 Be7 16.Kf2! Bd7 17.gxf5 exf5 18.Ne2 Na6 19.Rag1 と進んで黒が窮地に陥った。例えば 19…Kh8(19…Qd8 20.Ng3 Qc8 が悪いながらも最善のように見える)20.Ng3 g6(f5の地点を守る唯一の受け)21.h5 で決定的な猛攻を受ける。

12.h5 O-O 13.Qc2 f5 14.a3

 この手は 14.g4? Nb4 を避けたもので、14…Nxd4+ 15.Nxd4 Qxd4 16.Be3 でクイーンを召し取る罠がある。

14…a5 15.g4! Qd8!

 この手はb6の地点を空け、…Nb6 から …Bd7 と展開する準備をしている。そうなれば黒は …Rc8 からついには …Nc4 で反撃の準備が整う。

16.gxf5 exf5

 白の手番 

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(301)

「British Chess Magazine」2012年11月号(1/1)

 2012年9月20日から10月3日までロンドンで開催されたFIDEグランプリで、GMナカムラは途中4連敗を喫し自己最悪の最下位の成績に終わりました。

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FIDEロンドングランプリ

□ M.アダムズ
■ H.ナカムラ
ロンドン、2012年
カロカン防御カパブランカ戦法 [C19]

解説 トールバット

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.h4 h6 7.Nf3 Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 e6 11.Bd2 Ngf6 12.O-O-O Qc7 13.Ne4

 白はナイトをe5の地点に据えるために一組のナイトを交換するつもりである。

13…Be7 14.Kb1 Rd8

 黒はd4の地点に圧力をかけるためにキャッスリングを控えている。

15.Nxf6+ Nxf6 16.Qe2

 この落ち着いた手は黒ルークの射程からクイーンをはずしている。

16…c5

 16…O-O?! は 17.g4 Nxg4 18.Rhg1 でg列からの白の攻撃が強くなる。そこで黒はキングの位置を決めずに待つことにした。

17.dxc5 Qxc5 18.Ne5 Rd4

 ここでは 18…O-O 19.f4 を推奨したい。いい勝負だが黒からすれば実戦よりチャンスがある。

19.f4

 e5のナイトを安定させた。

19…O-O

20.c3

 20.Be3 Rxd1+ 21.Rxd1 Qc7 22.g4 Nd5 23.Bc1 Bd6 は黒が申し分ない。

20…Ra4

 20…Re4 21.Qf3 Rd8 22.g4 は白が良い。

21.c4

 白はd5の地点を支配した。

21…Bd6

 ここは 21…b5 22.cxb5 a6 23.bxa6 Rb8 と指してみたい。ポーンの代償として黒駒の働きが良い。

22.Bc3

 白がe5の地点の支配と相まって好形になっている。

22…Bxe5 23.fxe5 Nh7

 白がd列を支配しているのと黒駒がそっぽにいるので白が大いに優勢である。

24.b3

 c4の地点を守り黒ルークを追い返す。

24…Ra6 25.Rd7

25…Ng5

 黒は 25…b5 26.cxb5 Rb6 27.Bb2 Qxb5 28.Qxb5 Rxb5 とやっても 29.Rxa7! でアダムズの勝ちになる。

26.Rhd1 Rb8

 ここでも 26…b5 が考えられるが 27.R1d4 bxc4 28.Qxc4 で白が優勢である。

27.Rd8+ Rxd8 28.Rxd8+ Kh7 29.Qc2+ g6 30.Rd7

 Qxg6+ が必殺の狙いである。これで米国チャンピオンの負けが決まった。

30…Kg8 31.hxg6 Kg7 32.gxf7 Nxf7 33.Qe2

33…Kg8

 33…Qf8 なら 34.Qg4+ Kh8 35.Qg6 Ng5 36.g4 Qf1+ 37.Kb2 Qf2+ 38.Rd2 Qf8 39.Bb4 で白が勝つ。

34.Qf3 Qf8

 34…Ng5 は 35.Qf6 Qg1+ 36.Kb2 Qxg2+ 37.Bd2 で黒の投了となる。

35.Rxb7

 35.Qxb7 Rb6 36.Qxa7! という勝ち方もある。

35…Qg7 36.Kb2 1-0

 黒は完全に動けない状態なので投了した。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス4

フランス防御の完全理解(67)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

第10局
コンクエスト対M.グレビッチ
クリシー、1993年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.c3 Nc6 7.Ndf3 Qb6 8.h4

 黒の手番 

 これは 8.g3 に代わる白の有力な手で、非常に理にかなっている。白の理屈は …g5 突きが否定されたので黒は …f6 突きでしか白の中原を攻撃できないだろうということである。しかし …f6 と突けばd4のポーンがタブーなので白はビショップを最も強力な地点のd3に展開できるようになる。例えば 8…f6 9.Bd3 cxd4 10.cxd4 Nxd4?? 11.Nxd4 Qxd4 12.Bg6+ で黒のクイーンが落ちる。この策略は黒ポーンがf7の地点にあっては成立しないことに注意されたい。だから白の論理は単に黒の …g5 突きの変化を防ぎ …f6? 突きを待つことにより Bd3 を達成できるときに、どうして Bh3 の準備に g3 と突くべきなのかということである。これの小さな欠点は g3 の変化よりも白キングがずっと大きな危険に陥るかもしれないということである。というのは黒が中央突破に成功すれば白キングがg2に隠れることができないからである。

8…cxd4 9.cxd4 f6

 上の解説を考慮すれば黒が …f6 突きをやめて白ビショップに強力な攻撃地点のd3を与えないことを考えるのも一理ある。これを念頭に置けば 9…Be7 が浮かんでくる。白は 10.h5!? が良くなければ …f6 突きを待つ有用な手段がない。10.g3 なら 10…f6 11.Bd3 fxe5 12.fxe5 O-O で反撃が見込めそうである。

 a)13.Bxh7+? Kxh7 14.Ng5+ Kg8 15.Qh5 Bb4+! これは攻守逆転である。

 b)13.Nh3 Bb4+ 14.Ke2 Rxf3!

 c)13.Bf4 Qxb2 14.Rh2 Qc3+ 15.Kf1 Nb4 16.Bb1 b6

 d)13.a3 Ndxe5! 14.dxe5 Nxe5

 10…f6 の代わりに1996年アバーガベニーでのファーガソン対ハーリー戦では 10…a5!? が指され次のように進んだ。11.a3 a4 12.Bh3 Qa7(ここでの 12…f6 は 13.Ne2 fxe5 14.fxe5 O-O 15.Bxe6+ Kh8 16.Bxd5 Ndxe5 17.dxe5 Nxe5 18.Bf4! で駄目である)13.Ne2 Nb6 13.Nc3?!(この手はd4の地点を弱める。単に 14.O-O が良かった。一方 14.g4 は最も積極的で、Ng3 から f5 を策する)14…Bd7 15.O-O Na5 16.f5!? exf5 17.Bg5 Bxg5 18.Nxg5 ここで 18…g6 19.g4 なら黒が少し良かっただろう。

 Bd3 を一時的に止める別の手段は 9…Bb4+ 10.Kf2 f6 で、d4ポーンの釘付けを利用してe5のポーン取りを狙う。そのあと 11.Be3 Be7 12.Qd2 O-O 13.Rd1 なら形勢不明である。1991年リナレスでのリュボエビッチ対M.グレビッチ戦では白は 11.Kg3?! と指し 11…O-O に対して待望の 12.Bd3? を指した(図73)。

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(66)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これは白の単刀直入なやり方である。黒キングの覆いを取り払えば、重要な方面で火力の大きな優位がものをいうことに自信を持っている。

17…hxg3+ 18.Kxg3 Ndxe5

 これは側面攻撃には中央から反撃するという当然の反応である。しかしながら黒はクイーン翼のルークとビショップが戦いに参加していないので、ここでの見通しは圧倒的に黒に不利である。一方白の駒はどれも襲撃に加わる用意ができている。

19.Nhg5 Rxf3+

 黒はh7の地点が崩壊するのを防がなければならない。

20.Bxf3 Bxg5 21.Bxg5 Ng6 22.Bf6+ Kg8 23.Rxh7! Kxh7 24.Be4!

 クイーンのh5への道を空けた。

24…Qc7+ 25.Kg2 Kg8

 25…dxe4 なら 26.Qh5+ Kg8 27.Qxg6+ Kf8 28.Rh1 から詰みが待っている。

26.Qg4 Qf7

 26…dxe4 は上の解説のように 27.Qxg6+ から白の勝ちになる。実戦の進行もあまり大差ない。クイーン同士の交換にもかかわらず続く詰みの狙いをかわすために黒はすぐに駒を捨てなければならない。

27.Qxg6+ Qxg6+ 28.Bxg6 Kf8 29.Rh1 Ne7 30.Rh8+ Ng8 31.Be5 Bd7 32.Rh7 Be8 33.Bd6+ Ne7 34.Bxe7+ Kg8 35.Bb1 Rc8 36.Bg5 Rc4 37.Be3 e5 38.dxe5 d4 39.Bd2 d3 40.Re7 Bc6+ 41.Kf2 Rh4 42.Bxd3 1-0

(この章続く)

2013年01月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(30)

「Chess Life」1991年8月号(5/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

シチリア防御との戦い方(続き)

4)スヘフェニンゲン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Bc4

 ここか次の手あたりで黒は 6…Nc6 でソージンに、または 6…a6 でナイドルフに移行することができる。しかし私の考えでは黒は次の独自の道に踏み出すほうが楽に互角にできる。これの良い参考書は Pritchett著「The Sicilian Scheveningen」と「Encylopedia of Chess Openings B」である。

6…Be7 7.Bb3

 c4のビショップの位置は安全でない。7.O-O O-O 8.Be3 Nxe4! 9.Nxe4 d5 で白の中原が消失し白の優勢もなくなる。

7…O-O

 すぐに 7…Na6 から 8…Nc5 と指すのも良い手である。

8.O-O

 8.Be3 または 8.f4 でも黒は 8…Na6 と指す。

8…Na6!

 黒のナイトはc5の地点を目指しe4に当たりをかけ白のクイーン翼に圧力をかける。

9.f4 Nc5 10.Qf3

 ここで黒の手は大きく二つに分かれる。

 (a)10…a6 からクイーン翼で戦いを始める。1982年トルナバでのホンフィ対フォークト戦は 11.f5 Kh8(11…Qc7 12.g4 d5!? は形勢不明)12.g4 Nfd7 13.Be3 Ne5 14.Qg3 Bd7 15.Rad1 と進んだ。白は攻撃の可能性のために少し優勢である。

 (b)10…e5! で中央から反撃する。白の最善の手順はおそらく 11.Nde2 b5 12.fxe5 dxe5 13.Bg5 で、両者とも指せる形勢である。この手順は実戦で試験する価値がある。

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2013年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(65)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

11.Be3

 11.Nxg5 は 11…Qxd4+ で黒が困らない。

 他の主要な手は次のとおりである。

 a)11.fxg5 Ndxe5 12.Nxe5 Nxe5 13.Kg2(13.Be3 Nc4!)13…Nc6 14.Nf3 Bf8! 15.b3 Bg7 16.Bb2 Bd7 17.Rc1 1986年通信戦でのグルズマン対グレク戦では 17…h6! で白のキング翼での広さの優位が減少し黒の潜在的なhポーンの弱点がなくなった。

 b)11.h3 gxf4 12.Bxf4(12.gxf4 なら 12…f6 13.Be3 Be7! で …Nd7-f8-g6、…Bd7、…O-O-O を狙い白の中原に強い圧力をかける)12…f6! 13.Kg2 Bf8! 14.Rb1(14.Rh2!? に対し 14…Qxb2+ 15.Kh1 Qa3 16.Bb5 は混戦になり 14…Bg7 15.Kh1 O-O は黒がしっかりしている)14…Bg7 15.Bd3 O-O ここで 16.Qc2 は 16…fxe5 17.Bxh7+ Kh8 18.dxe5 Ndxe5 で良くない。白の中原の崩壊は黒キングのポーンの覆いがなくなったことより重大である。だから白は 16.exf6 と指さなければならず 16…Nxf6 で少なくとも黒にとって問題ないようである(ユダシン対モスカレンコ、ルボフ、1984年)。

11…f6

 1985年ソ連でのヤコビッチ対マチュルスキー戦では黒が 11…g4! と指し次のように明らかに優勢になった。12.Nd2(12.Nh4 は 12…Be7! 13.Rb1 Bxh4 14.gxh4 h5 15.h3 f5! で黒がキング翼での封鎖を維持し混戦になる – ヤコビッチ)12…f6! 13.Nb3(13.Qxg4? は 13…Bxd2 14.Bxd2 Qxd4+ で白が悪い)13…fxe5 14.dxe5 Bc5 15.Nxc5 Nxc5 16.Bg2(白は 16.Bxc5 Qxc5+ 17.Kg2 ∞ と指すべきである)16…d4! 17.Bc1(17.Bxd4 Nxd4 18.Qxd4 Nd3+ 19.Ke3 Qxd4+ 20.Kxd4 Nf2 -/+ ヤコビッチ)17…h5 -/+

12.Bh3 fxe5

 これは 12…O-O 13.Bxe6+ Kh8 14.Ne2 fxe5 15.Nxg5! という手順をなくしているので最も正確な手である。この変化は1988年チェコスロバキアでのドブロボルスキー対ティベンスキー戦で指され白が優勢だった。

13.fxe5 O-O 14.Rc1

 1985年全英選手権戦のエムズ対コステン戦では次の手順で黒が圧勝した。14.Bg4?! Bc5!! 15.Bxe6+ Kh8 16.dxc5 Qxb2+ 17.Bd2 g4! 18.Bxd5?(18.Bxg4 Qd4+ 19.Kg2 Qxg4 なら黒がわずかに優勢なだけである)18…Ndxe5 19.Bxc6 bxc6 20.Rb1 Qd4+ 21.Be3 Nd3+ 22.Ke2 gxf3+ 23.Nxf3 Qe4 このあと白が32手目で投了した。この不意の猛攻は黒駒が白の中原の締めつけから脱することができればその潜在力がすごいことを見せつけている。

14…Kh8?

 重要な改良手は 14…Be7!(14…h5 はウィリアム・ワトソンの推奨する 15.g4! h4 16.Bf1 で応じられる)15.Qb3 Qxb3 16.axb3 Nb6 のあと …a5 から …a4 である。

15.Bg4! Be7 16.h4! gxh4 17.Nh3!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(64)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 このような局面で白が黒のeポーンを取るのはほとんどいつも勧められない。例えばここで 13.Bxe6+ と取ると 13…Kh8(14…Nxd4 の狙いがある)14.Kg2 Ndxe5! 15.Bxc8 Nxf3 となって黒が良い。13.Bxe6+ Kh8 14.Bxd7 は 14…Bxd7 のあとd7の黒ビショップが白枡を支配することになるので大局的に白の破滅を招く。白は黒駒の動きを制限する作戦を取るべきで、1ポーンごときでは黒駒に自由を与える代償としては小さすぎる。結局のところ以降の主手順では黒は駒の働きを活発にするためにまるまる1駒を進んで捨てている。だから白は 13.Kg2! でキングを比較的安全な所に移す。

 ここでもし黒が何も積極的なことをしなければ、すぐに守勢に追い込まれてしまう。例えば 13…Kh8 は 14.Bg4 Nd8 15.h4 Nf7 16.Ne2 Nh6 17.Bh3 Nf5 18.Qc2 となって、以前のアダムズ対I.グレビッチ戦(世界16歳以下選手権戦、1987年)では黒のビショップがb4でなくe7にいたが黒が 18…Qc6 19.Qd3 Qc4 より他に何も良い手を見つけることができず 20.Qxc4 dxc4 21.Nf4 で不利な収局に入るしかなかった。黒がクイーン交換に来なかったらアダムズは Bxf5 のあと Ng5 または Bg5 で攻撃を強化する作戦を行なっただろう。

 黒はほとんど 13…Ndxe5 14.dxe5 Nxe5 で駒を犠牲に白のポーン中原を破壊し自分の駒を自由にすることを強いられている(もちろん 15.Nxe5?? はf2で1手詰みになる)。しかしそのあと 15.Qe2(15.Qb3 も面白い)15…Nxf3(15…Nc4 なら 16.b3 Bc3 17.Rb1 Bf6 18.Ng5!)16.Nxf3 e5 17.Bxc8 Raxc8 で白の有利な局面になるようである。黒駒の働きは最高度に発揮されているが、18.Nxe5 Qe6 19.Bf4 や(おそらくもっと強手の)18.Rd1 Qg6 19.Bd2 Rc2 20.Qxe5 のような手順が想定され白が優勢かもしかしたら勝勢である。黒でこの手順を指すことに興味のある読者はフランス防御のもっと詳細な定跡書の分析を参考にして自分で独自に研究してみるべきである。しかし著者としてはこの手順の評価は覆らないと思っている。

10.Kf2 g5!

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(59)

「Chess Life」2004年11月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御キング翼インディアン攻撃

 今回はフランス防御に対するキング翼インディアン攻撃の主要な着想を多くの重要な中盤の着眼点と共に紹介する。フランス防御は 1.e4 e6 で始まる。白の2手目で最もよく指されるのは 2.d4 である。しかしフランス防御に対する現代の定跡をすべて学ぶのにそれほど多くの時間を費やしたくなければ、最良の選択肢はキング翼インディアン攻撃の陣形を用いることである。これを選べば白はマイペースでやれる。

2.d3 d5 3.Nd2

 重要なのはこの手である。というのは白が 3.Nf3 と指すと黒は 3…dxe4 4.dxe4 から 4…Qxd1+ と指すことができて白はもうキャッスリングできなくなるからである。

3…c5 4.Ngf3 Nc6 5.g3

 この手が白の布局の骨子である。白はビショップをg2にフィアンケットすることを考えている。

5…Nf6 6,Bg2 Be7 7.O-O O-O

 これでこの布局の基本局面に到達した。駒の大部分は展開が済み、両者ともキャッスリングし終えている。作戦を立てる時機である。

白の作戦は何か

 白は中央を支配しキング翼で攻撃したい。攻撃を成功させるために白はしばしば中央を固定し黒に反撃させないようにしなければならない。

黒の作戦は何か

 黒は中央を支配しクイーン翼で反撃したい。もし可能なら中央を開放したい。

 付記するとこの局面はシチリア防御から 1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d3 Nc6 4.g3 d5 5.Nbd2 Nf6 6.Bg2 Be7 7.O-O O-O という手順でも生じるし、キング翼インディアン攻撃から 1.Nf3 d5 2.g3 c5 3.Bg2 Nc6 4.O-O e6 5.d3 Nf6 6.Nbd2 Be7 7.e4 O-O という手順でも生じ、上図とまったく同じ局面になる。

8.Re1

 この手はeポーンを守るために必要である。このあとはボビー・フィッシャーの指した参考になる2局を紹介することにする。

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2013年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(63)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例

第9局
プイダ対リカフスキー
チェコスロバキア、1991年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.c3 Nc6 7.Ndf3 cxd4

 この交換をしない作戦には簡明な定跡手順がある。

 a)7…Qa5 8.Be3! cxd4(8…b5 も指されているが 9.dxc5 b4 10.a3! b3 11.Qxb3 Nxc5 12.Qb5 となって黒の反撃が十分でないようである)9.Nxd4 Nxd4 10.Bxd4 ここで …Nd7-b8-c6 という再配置が覚えておく価値のある捌きである。しかし 10…Nb8 11.Nf3 Nc6 12.Be3 となればかなり退屈な局面でも白が明らかに優勢のようである。

 b)7…c4 8.g4 b5 9.Ne2 Nb6(9…h5 は 10.gxh5 Rxh5 11.Ng3 Rh8 12.f5!)10.Ng3!(10.Be3 は 10…h5! 11.gxh5 Rxh5 12.Ng3 Rh8 となって黒が次に …g6 と突いて f5 と突けなくさせる)これで …h5 突きを止めて白が優勢である。

8.cxd4 Qb6

 せき止めの他の戦法については第11局を参照。

9.g3

 この変に見える手は Bh3 と指すつもりではなく(もっとも白は時々こう指すが)、キングを安全なg2の地点に「人力でキャッスリング」させる意図である。「自然な」9.Ne2 は全然問題ない手だが、ここでは滅多に指されない。この局面はシュタイニッツ戦法の 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.Nce2 c5 6.c3 Nc6 7.f4 Qb6 8.Nf3 cxd4 9.cxd4 という手順から生じる方が普通である。そのあとは 9…f6 10.g3 Bb4+ 11.Nc3 O-O と続いて黒が好形である。

9…Bb4+

 他の激しい手段は 9…f6 である。現時点ではこの手は次の手順で定跡として陰りが出ている。10.Bh3(10.Bd3 は 10…Be7 11.Kf1 O-O 12.Kg2 Kh8 13.Bb1 Rf7 14.Qd3 Nf8 で黒は少し守勢でも十分堅固である)10…fxe5 11.fxe5 Bb4+ 12.Kf1 O-O

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(62)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

黒が …h5 でせき止める

 

 もっと以前のせき止めの手法は …h5 から …g6 と突くレニングラードシステムだった。これは最近ではあまりはやらなくなった。おそらくナイトが陣取れるg5の穴を含め、白が黒のキング翼に弱点を作らせたことに満足してクイーン翼の方に集中できるからであろう。それでも白は特に黒がキング翼にキャッスリングしているならば h3、g4 から f5 と入念に準備してやっていくこともできる。ポーンの形は最近流行しているグルゲニゼシステム(1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3 c6 4.f4 d5 5.e5 h5)とほぼ同じである。しかし違いはグルゲニゼシステムでは黒が …Bg4 のあと白枡ビショップを交換できるのが普通なのに対し、レニングラードシステムではこのビショップが展開されず「不良」のままであるということである。
 
(この章続く)

2013年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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新年の言葉

河北新報2013年元旦号

新春エッセー
未来を信じて

作家・高樹のぶ子

 日本には強くなってほしい。このところ切実にそう思う。もちろん軍事力のことではない。核兵器などという使えもしない装備で国を守ろうとするのは北朝鮮レベルの弱い国だ。核兵器以上に「侵しがたい」と思わせるもので防衛されなくてはならない。強い国とは、外に向かって打って出る力のことではなく、この「侵しがたい」何かによって守られている国のことだ。

日本人のDNAに誇り

 外側から「侵しがたい」と思わせるものは、自国民によってまず、日本の、日本人のアイデンテティーとして、意識されなくてはならない。

 戦後の日本には、とりあえず経済力があった。エコノミックアニマルなどと嫌悪されても、お金を持っていることは強かった。けれども中国の台頭により、このアドバンテージは失われた。

 私は失われたとは思っていないけれど、そう考える日本人は多い。経済力を一国の数値で比較すれば、国内総生産(GDP)で中国に追い抜かれ、今後も回復は難しいだろうが、経済力が何のために必要かと言えば、個人の生活を豊かに平安に保つためだ。GDPを一人アタマに換算して中国に追い抜かれたときは、負けを認めなくてはならないが、国家単位でしか経済力を見ることができない人にとっては、日本はすでに追い抜かれてしまったのだろう。

 人口が十倍の国には、優れた人間も劣った人間も十倍いる、という自明のことを忘れ、怯(おび)えたり驕(おご)ったりするのは愚かなことに思える。

 去年の芥川賞受賞作「冥土めぐり」(鹿島田真希)は、まさに経済力を失ってもまだ、お金にしがみつくことしかできない家族を描いて秀逸だった。いっときも早く日本人は、新たなアイデンテティーを持たなくてはならないと、読みながら思ったものだが、そのためには、もっと地に落ちる必要があるのかも知れない、とも感じた。持てるものをすべて失ったとき初めて、自分たち日本人の身に備わったGDPが自覚される、ということに期待したくなる。

 日本人は、歴史的な権力の委譲である明治維新において、江戸城を無血開城した国民である。二つの原爆を落とされ、無条件降伏をしたあとのアメリカによる占領に、憤怒を隠して服従したかといえば、「過ちは繰り返しませぬから」と主語の無い反省の言葉を原爆慰霊碑に刻み、アメリカへの報復を考えなかったどころか、魅了されていった。

 アメリカの占領政策がうまかったとはいえ、これが中国や韓国であったなら、恨みは世代を超えて末代まで継承されたに違いない。表面的に屈することで、内なる炎は身を焼いただろう。

 この日本人の淡白さを「忘れやすい平和ボケ」だとネガティブに考えることに私は反対だ。事が決着したあとはすべてを水に流す、実はこれこそ、日本の自然が育んだ誇るべきDNAではないのか。だから戦後の繁栄があったのだ。

「水に流す」淡白さ貴重

 中国五千年の権力闘争の歴史から来る自国民への不信感や、「恨(はん)」を抱えたまま南北がいまだ戦争状態にある朝鮮半島の現状を思うとき、日本人の本質が逆に浮かび上がってくる。戦争中に日本は大陸および半島の人々に酷(ひど)いことをした。それは原爆二つより過酷だったのかも知れないが、日本人は恨みを捨て、中国韓国は捨てずに燃やし続けている。そこには、敗戦国という理由だけでは説明できない何かがある。

 この違いがどこから来るのかを深く考えていくことで、経済力を失ったあとの日本人のアイデンテティーが生まれてくるのではないだろうか。

 たかぎ・のぶこ氏 1946年山口県生まれ。東京女子短期大学部を卒業後、出版社勤務を経て作家に。84年「光抱く友よ」で芥川賞。95年「水脈」で女流文学賞。2006年「HOKKAI」で芸術選奨文部科学大臣賞。恋愛や結婚をテーマに人間の生き方を考える作品で知られ、近年はアジア各国の作家との交流を深め、それに触発された作品も発表している。

2013年01月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(61)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

黒が …f5 でせき止める

 

 …f5 のあとでも白はまだ g4 突きでキング翼を襲撃できる。考えられる一つの作戦は h3 突きから g4 と突き …fxg4 に hxg4 と取り返しh1のルークが素通しのh列で好位置になるようにすることである。しかし黒は …fxg4 と取る義務はさらさらない。白は h4 突きから h5 突きで攻撃を続けたいかもしれないが、h3 突きが無駄手になるかもしれない。だから …fxg4、Rxg4 のあと黒が迅速にf5の地点を自分の駒のために確保できないと仮定すれば白は Rg1 から g4 が最善手になるかもしれない。

 白が g4 と突いたと仮定すると、g7の地点に圧力をかけて黒に …g6 と突かせようとするかもしれない。そうなればhポーンを用いて h5 と突きg6のポーンを攻撃することができる。このようにして黒のキング翼を弱め攻撃の可能性を高めることができる。

 黒に …Bc8-d7-e8-g6 の捌きを採用するよう推奨するのはこの理由による。g6のビショップは敏感なg7のポーンを隠し、白の h5 突きをより難しくさせる。そして白が gxf5 と取れば、黒は通常は白のe5のポーンを保護パスポーンにさせても …exf5 と取り返すべきである。勝負は黒のクイーン翼での圧力と白のキング翼での圧力との白兵戦により決まるのが確実である。白が収局になれば有利であるというのはほとんど意味がない。
 
(この章続く)

2013年01月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(300)

「Chess Life」2012年12月号(4/4)

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イスタンブール・オリンピアード(続き)

 ナカムラは「チームの主将を務めることがうれしい」と言った。「[主将の]プレッシャーが楽しい。プレッシャーのもとで自分の力を発揮できる気がする。チーム戦では主将戦が対戦の帰趨を決めることが多いので最も大事だと思う。どの国にも少なくとも一人や二人強い選手がいるものなので、上位2選手の試合がもっとも拮抗しているのが普通だ。・・・チームのために勝つ機会に恵まれること、そして非常に厳しい状況で試合に勝つことに努力すること、本当にこれらよりはるかにいい気持ちはない。」

 これで米国が首位に並んだ。そして第8回戦のあとロシアの楽勝と思われた優勝争いが今や自由競争になった。

 米国は1976年以来の金メダルを目指し最終回戦前の中国戦に運命をかけた。対戦序盤ではどちらのチームにも本当のチャンスは生まれなかった。アコビアンは白で優勢になれず最初に引き分けた。カームスキーも同じで、実際は均衡を保つために注意深い防御が必要だった。ナカムラは定跡形のスラブの黒で乱戦に持ち込もうとしたがやはり引き分けに終わった。主将戦の黒番での引き分けは満足できる結果で、相手のGMハオ・ワンは意外にも直接対決では手ごわい相手で2010年のオリンピアードでナカムラを負かし今年もさらに3回負かしていることを考えれば特にそうである。

 勝敗は今やオニシュクの肩にかかった。彼はルークと3ポーン対ルークと2ポーンの収局という面白くない防御をしなければならなかった。表面的には難しいところがなさそうで、特に彼のような堅実な選手にとってはそのように思われた。しかしポーンが清算されていくところで、GMリーレン・ディンは最後の落とし穴を見つけオニシュクはそれにはまった。オニシュクは両手で頭をかかえ顔を上げることができなかった。そして投了して、まだうつむいたまま対局場から出てきた。

 「彼は頑張った、プロだ」とアコビアンは言いオニシュクが最終戦のために立ち直ることが非常に大切だと付け加えた。オニシュクはチームの誰よりもはるかにオリンピアードの経験が豊富だった。ただ一人過去5回のオリンピアードに出場し、ウクライナ選手としてさらに3回出場していた。この敗戦でも彼は実際のレイティングよりも高い実力を発揮して2012年オリンピアードを終えた。それは米国のために出場したすべてのオリンピアードで成し遂げてきたことだった。

 米国チームは休養日で気持ちを切り替え、2008年に銅メダルを獲得したのと同じような状況で第11回戦を迎えた。勝つことが必要で、それもたぶん大差で、そして他チームの援助も必要だった。具体的にはハンガリーがアルメニアに、ドイツがロシアに番狂わせで勝つことが必要だった。

 ポーランド戦の黒番でナカムラは妥協なきチェスを指した。しかしGMラドスラフ・ボイタシェフ相手戦で陣地の広さの不足に苦しみついに投了しなければならなかった。この結果で主将席の個人順位が入れ替わった。ナカムラが引き分けていたら個人別の銀メダルを獲得していた。代わりにボイタシェフが銀メダルに輝いた。

 オニシュクはまた不利なルークとポーンの収局になった。しかし今回は容易にしのぎきった。カームスキーとロブソンは驚くほど似通った収局になったが、そこまでの経過は異なっていた。カームスキーは布局での手筋を見逃し中盤戦ではキングがd3の地点に行った。素通しの筋があちらこちらある中うまく危機を乗り切り、異色ビショップの収局で相手を圧倒して勝った。この時点でロシアとアルメニアが共に勝つのは明らかだったけれども、米国が対戦に勝って5位以内に入るためにはロブソンがほとんど同様の不均衡の局面を勝つことが必要だった。米国選手は皆この試合の回りに集まり結果を見守った。

 「貴重な経験をしたと思う」とロブソンは初めてのオリンピアードについて語った。彼は補欠だったにもかかわらず8局も指した。「そんなに多く対局するとは全然予期していなかった。ジョン(ドナルドソン)が多くの機会を与えてくれて本当に嬉しい。」

 結果が入ってきてアルメニアが順位判定でロシアをかわし、今回までの4回のオリンピアードで3回目の優勝を飾った。連覇のかかっていたウクライナは単独3位に落ち着いた。女子ではロシアが順位判定で中国をおさえて金メダルに輝き、やはりウクライナが銅メダルだった。

 最近の米国選手権戦で引退が近いことをほのめかしたカームスキーはエネルギーの不足のためではないことを実証した。全11局を指し8½ 点でチーム内で最高の実効レイティングをあげて、オリンピアードで初の個人メダルとなる銅メダルを獲得した。ドナルドソンは最高のチームは5選手全員を使わなければならないとどの大会でも力説していたが、チーム内最年長の選手のカームスキーを全然休みなしで使うとは示唆していなかった。獅子奮迅の活躍は1952年のヘルシンキオリンピアードでロバート・バーンとアーサー・ビズガイアーが全局指して以来初めてのことである。これでカームスキーは5回のオリンピアーで可能な58局のうち54局指したことになる。

 ナカムラはそれでも2800近い実効レイティングをあげ第1席の個人賞で4位になった。大会期間中彼はボビー・フィッシャーの持つ米国選手の最高レイティングを更新するかという質問をはぐらかし、大会が終わるまでは公式記録でないと言い続けた。FIDEが10月のレイティングの補足を発表したとき、記録本は書き換えが必要になった。ナカムラはフィッシャーの最高記録を1だけ上回り、2786に上り詰めた。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス3

フランス防御の完全理解(60)

第3章 f4 による中原の締め付け(続き)

黒のクイーン翼での作戦

 また、黒は展開の優位を利用して広さの不利のないところ、すなわちクイーン翼で手を作ろうとすることができる。黒には二つの異なったやり方があり、一つ目は …cxd4 から …a5 である。

 

 黒の意図は …a3 と突いて自分のナイトのために重要なb4の地点を確保し、収局でa3のポーンを強力な資産にすることである。…a3 の前に …Nb6-c4 と指しておくことにより黒は …Nb2 でもっと速く戦術の機会を得ようとすることができる。もし白が a3 と突けばb3とc4の地点を利用することができる。一方白が a4 と突けば黒はそれでもb4の地点を利用することができる。たぶん白の最善の策はかなりゆっくりとしてはいるが b3 そして a3 と突いて …a4 に b4 と突くことである。その場合でも黒は、あまり動ける余地はないがc4の地点を自分のナイトのために使える。

 二つ目のやり方はd4の地点でポーン交換をしないで …b5 から …b4 と突いていくことである。その意図は …bxc3、bxc3 と交換してからd4の地点でなく連鎖ポーンの土台の弱いc3の地点を攻撃することである。

 

 明らかに白はどちらの作戦にもおとなしく座視することなく、キング翼での f5 突きの仕掛けを狙っていく(例えば g2-g4 突きから Ng1-e2-g3)。従って黒はクイーン翼での作戦をキング翼でのなんらかのせき止めと組み合わせなければならない。
 
(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(59)

第3章 f4 による中原の締め付け(続き)

黒の中原での攻撃

 

 たとえナイトがd7であまり働いていなくても黒は白の中原を強力に攻撃することができる。実のところ黒は 3…Nf6 で相手を挑発して広大な領域を所有させ(4.e5 と 5.f4)、黒駒の襲撃に対して白が適切にすべての陣地を守ることができないことを証明できると期待している。

 黒はd4の地点を攻撃することにより白が自然に展開することを難しくさせることができる。タラシュ戦法からのこの典型的な状況はこの戦型における白の困難をよく表わしている。白がd4のポーンを Ngf3 によって守ればd2のナイトに自然な住居がなくなる。b3の地点では遊び駒になり、…a5-a4 による攻撃に弱くなる。白が Nd2-b1-c3 という捌きさえ考えるかもしれないということは、白の状況の不合理さをよく表わしている。白はナイトをe2とf3に配置するのが理想だが、それでもなお白枡ビショップをd3の地点に配置したい。

 だから白の最初の「不自然な」手は Ndf3 で、他の駒を動かす前に序盤で同じ駒を2度動かすことになる。黒が …Qb6 と応じたあと白は驚いたことに黒のd7のナイトのせいで(あとの Bb5+ をなくしている)まだ Bd3 と指すことができない。実際白はビショップをd3の地点にナイトをe2の地点に配置する陣形にこだわりたければ、建設的な手を見つけることが困難になる。白が Kf2 と指せば(例えば …Bb4+ に対して)、黒はいくつかの戦術が思い浮かぶ。

 

 …g5 突きは白ナイトをd4の守りからおびき出す(例えば …g4 突きで)目的である。またfポーンにもe5の地点の守りからおびき出す(fxg5)目的もある。e5のポーンはdポーンの釘付けのせいで落ちることになる(もっとも実際にはポーンの形の変化は白に有利かもしれない)。同様に …f6 突きはe5のポーンを取ることを狙っている。黒はこの直接的な狙いに対処することができれば、キング翼にキャッスリングして白キングに向けてf列を素通しにすることを図る。そうなれば白がキングをどこへ動かそうと(g列でもe列でも)、黒はd4またはe5の地点でナイトを犠牲にしてもっと筋を開けることができる。そして黒のクイーンとルークのコンビが恐ろしい効果をもたらすことができる(例えばf2の地点での詰み)。

 もちろんすべてがこれほど単純なわけではない。駒はしょせん駒であり、…Nxe5 や …Nxd4 のような犠牲はいつも成立するわけではなく慎重な読みが必要である。白は代わりにキング翼のナイトをh3の地点に展開したり(たぶん h2-h4 突きのあと)、またはどのみち Ne2 と指し白枡ビショップを g2-g3 のあとh3の地点に展開することもあり得る。
 
(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(29)

「Chess Life」1991年8月号(4/5)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

シチリア防御との戦い方(続き)

3)ドラゴン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Bc4

 7.h3 と連動するこの手はヤンサ戦法で、これを指して数年間好成績をあげたチェコのGMブラスティミル・ヤンサにちなんで名づけられた。この手は非常に流行したというわけでは決してなかったが、それでも布局での優位を得る可能性を十分与えてくれる。その主眼点はまたしても白がキングを安全なキング翼に置いて好所の白枡ビショップにより攻撃したいということである。この戦法についての最も信頼できる定跡の資料は「Encyclopedia of Chess Openings B」と最近の「Chess Informant」である。

6…Bg7 7.h3

 これは白のシステムにとって必要である。黒が …Nc6 と指した場合 Be3 でd4のナイトを守ることができる。白が 7.f3 と指さないわけはg4の地点を支配したまま手損することなくあとで f2-f4 と突きたいからである。

7…O-O 8.O-O Nc6

 これはごく普通の手である。1988年ガウスダルでのヤンサ対ペツルソン戦では 8…a6 9.Bb3 b5 10.Nd5 Bb7 11.Nxf6+ Bxf6 12.Bh6 Re8 13.Re1 と進んでやはり白がわずかに優勢を保持した。

9.Be3 Bd7

 黒は 9…Nxe4 10.Bxf7+ Rxf7 11.Nxe4 でも 9…Na5 10.Bb3 b6 11.Qd3 Nxb3 12.axb3 でも完全な互角にならない。というのは中央の要所の支配のためには白の白枡ビショップよりも黒のクイーン翼ナイトの方が大切だからである。

10.Bb3

 ここからは黒に三通りの手がある。

 (1)10…Nxd4 11.Bxd4 Bc6 12.Qd3 Nd7 13.Bxg7 Kxg7 14.Qd4+ f6 15.Kh2 Qb6 16.Qd2 中央の広さとすぐに f2-f4 と突いていく攻撃の可能性で白が少し優勢である。

 (2)10…Qa5 11.Re1! Rac8 12.Nd5 Qd8 13.Nb5! Nxd5(13…Nxe4? は 14.Nxa7! Nxa7 15.Bb6 Qe8 16.Bxa7 で黒の負けになる)14.exd5 Na5 15.Nd4 b5 16.c3 広さの優位とe列での圧力で白が少し優勢である(ヘニングズ対カペングート、ルブリン、1973年)。

 (3)10…Rc8 11.Re1! Re8?! 12.Qd2 Qa5?! 13.Nf3! a6 14.Rad1 白は積極的な展開を完了し攻撃を開始する用意ができた。1988年ガウスダルでのヤンサ対W.ワトソン戦は攻撃の仕方の模範例である。14…b5 15.Bh6 Bh8 16.Ng5 Ne5 17.f4 Nc4 18.e5! Nh5 19.Qf2 Ng7 20.g4! b4 21.Nd5 Ne6 22.f5! Nxg5 23.Bxg5 Nxe5 24.Nxe7+ Rxe7 25.Bxe7 Bc6 26.Re3 Qb6 27.Bxd6 Bf3 28.Bxe5! Bxd1 29.Bxh8 Kxh8 30.Re8+ 黒投了

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カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(58)

第3章 f4 による中原の締め付け

 

概説

 突き越し中原における白の基本的な長期作戦は f4-f5 とポーンを突くことにより戦線突破を達成することである。この進攻は黒キングに対する猛攻への前触れとなることがある(黒キングがキング翼にキャッスリングしている、または中央列に取り残されていると仮定する)。あるいは永続的に圧力をかける作戦の一部となることがある。この作戦は黒の駒が正当に活動できる十分な余地がなくなるまでそれらを締め付けることを目指す。

 黒は当然 f5 突きを防ぐために可能なあらゆることをする。それはf5の地点自体を要塞化することもあれば、白の目的をそらすための戦術を用いることもある。このそらしはd4に多大の圧力をかけたり、それほど頻繁ではないがクイーン翼で反撃を開始したりして行なう。

 f5 突きの前提はもちろん f4 突きである。この先行手は白が Nf3 と突いていると実現するのが難しいことがよくある。黒がうまく反撃すれば退却の Ne1 や中央離反の Nh4 は白に好ましくない結果をもたらす。最もありうるのはd4の地点(そしてそこにいるポーン)が黒の駒によって蹂躙されることである。

 しかし白が Nf3 より前に f4 と突こうとしたらどうなるだろうか。そうなれば白はあとでfポーンをどのようにしたら邪魔にならないようにできるか悩まずにすみ、苦もなく f5 突きの準備に取り掛かることができる。これは理論ではもっともそうに聞こえるが、問題は白が序盤でポーン突きに多くの手数をかけ、駒を展開する余裕を見つける前に圧倒されるかもしれないということである。例えば突き越し戦法で 1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 のあと白は戦略的に望ましい 5.f4 を指すこともできた。しかし 5…Qb6 6.Nf3 Nh6(5.f4 のために白は 7.Bxh6 と指せない)7.b3(7.Bd3 なら 7…Bd7!、また 7.Na3 なら 7…cxd4 8.cxd4 Bxa3 9.bxa3 Nf5 で黒のポーン得になる)7…cxd4 8.cxd4 Bb4+ 9.Kf2 f6 で黒が十分な態勢になる。

 実際には白が無傷で Nf3 の前に f4 と突ける例は数少ない。一例は 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2(または 3.Nc3)3…Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 である。本章では白がd4の地点にポーンを維持する手順を分析し、そのため 3.Nd2 の方に集中する。白駒がd4の地点に駒を置く(通常は 3.Nc3 のあとで)手順は次章の「古典中原」で分析する。この二つの手順で白が大胆に f4 突きで自陣を広げることのできる主要な要因はd7の黒ナイトがd4の地点の攻撃に用いられないためで、黒ナイトが容易にd4に到達できる似たような戦法よりも白の中原がはるかに安全であることを意味している。

 白の目的は有利な展開を達成することで、それと並行してすべての攻撃を撃退し自陣に弱点を作ることを避ける。これに成功すれば白は勝利が有望となる。広さの優位は自分の駒に自由と力をもたらし、それと同時に敵駒の動きを邪魔し制限する。さらには前述したように先に f4 突きを準備する必要なしに、重要な f5 突きを成し遂げる立場に立つことになる。

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(57)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 爆弾が破裂した。黒は締め付けから解放され、今や足元に注意しなければならないのは白の方である。

20.Rxc6!

 これは絶対手である。20.fxe5 は悪手で、20…Nxe5 21.dxe5 Qxe5 22.Rf3(22.Bf4 なら 22…Qd4+)22…Qh2+ 23.Kf1 Ne4! 24.Nxe4 dxe4 25.Bxe4 Bb5+ で黒の勝勢になる(ツェイトリン)。

20…exf4?!

 「チェス新報第55巻」の自戦解説でツェイトリンはこの手に好手記号を付けた。というのは 20…exd4? は 21.Bxd4 Bxc6 22.Nxh7! Bxa4 23.Nxf8! Bxd1 24.Ng6+ で破滅を招くからである。しかし彼は強手の 20…e4! を見落としていた。これに対して

 a)21.Rxd6 は 21…exd3(d6とe3の地点を当たりにする)22.Nb6 Qxe3+ 23.Kh1 Rad8 で白駒の位置が良くない。例えば24.Rf3 Qe7 25.Nxd7 Qxd6 26.Nxf8 Rxf8 27.Rxd3 h6 28.Nf3 Ne4 。

 b)21.Bxe4 は 21…Bxc6! で白がe列で致命的な釘付けになる。

 c)21.Rc3 exd3 22.Rxd3 なら 22…Bb5 で交換損になる。

21.Rxd6!

 これで白は助かる。

21…Qxe3+ 22.Kh1 Bxa4 23.b3 Bb5

 ここでは 23…f3!? 24.Nxf3 Ne4 が積極策だったが、25.Bxe4 dxe4 26.bxa4 Qxa3 27.Rd7 exf3 28.Rxf3 Rxf3 29.Qxf3 となって引き分けの証明をしなければならないのは黒の方である。

24.Bxb5 axb5 25.Rf3

 25.Re6? は 25…Qg3 で、25.Qb1? も 25…Ne4 26.Nxe4 dxe4 27.Re1 Qg3 から 28…f3 で悪い(ツェイトリン)。

25…Qe7 26.Re6 Qxa3 27.Rxf4 h6

 黒のポーン得だが白駒はよく働いている。たぶん黒は 27…Qa1 でクイーン同士の交換を強制すべきだった。もっとも 28.Qxa1 Rxa1+ 29.Kh2 から 30.Rb6 となって収局では勝てそうにない。

28.Nf3

 28.Rexf6 は 28…Rxf6! 29.Rxf6 gxf6 30.Qh5 Qc1+ となってしっぺ返しを受ける。

28…Ne4 29.Rxf8+ Rxf8 30.Kh2 Qb2

 これで白駒の働きが非常に良くなるので 30…Rf6 31.Re8+ Rf8 32.Re6 で引き分けに持ち込むのが最善だった。

31.Ne5 Rf6 32.Qg4

 この手は引き分けになる。白は 32.Re7 で 33.Qg4 を意図して優勢を目指し指すことさえ可能だった。

32…Rxe6 33.Qxe6 Qf2 34.Qe8+ Kh7 35.Qg6+ Kg8 36.Qe6+ Kh7 37.Qg6+ ½-½

 面白い乱闘だった。

(この章終わり)

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