2012年11月の記事一覧

[復刻版]理詰めのチェス(01)

理詰めのチェス 一手一手の探求

アービング・チェルネフ

 はしがき

 あなたはチェスのマスターが一度に20人を相手に試合をしているのを見たことがあるだろうか?彼がそれぞれの盤の前で数秒立ち止まり局面を一瞥してなんの造作もなく駒を動かすその自信と容易さに羨望に近い驚きを覚えたことがなかっただろうか?

 彼は何十もの定跡とその何百もの変化を暗記しているから素早く指せるのだろうか?そのような催しでの試合は大部分が定跡書にも載っていない局面になるのだからそのようなことはほとんどあり得ない。それならば彼は毎回考えられる変化を光のような速さで片っ端から読んでいるのだろうか?それとも完全無欠な直感に従って奇天烈な局面を渡り歩いているのだろうか?もしそうなら彼は電子計算機よりも速く読むかあるいは一晩で一千回も閃きを得ていることになる。

 彼の思考はどのようになっているいるのだろうか?もし彼の思考の過程を追うことができればあるいは彼に頼んで各々の手の意味を彼に語らせることができれば答えが得られるかもしれない。

 この本では彼を説得して試合中に彼の指すどの一手の目的も彼から明らかにしてもらう。そして彼の概説するところの着想や方法や考え方そのものを詳しくたどる。彼の頭脳の働きを学ぶことによって良い手を選び悪い手を捨てるための知識-直感-を習得する。

 このような直感を身につけるために無数の定跡手順を暗記する必要もなければ公式や原則の一覧を頭に詰め込む必要もない。実際は棋理に合った原則がありそれらを適用すれば強固で理にかなった有利な局面が得られるのである。しかし読者は苦労しないで、つまり暗記でなく試合の進行に伴ってその効果を見ることによりそれらに慣れ親しんで行くことができるのである。

 試合の進行と共にその指し手の隅々を理解する喜びを増すのは(それにチェスは世界で一番面白いゲームである)マスターが新しい局面に遭遇するたびに頭に想起する数多の構想を彼が明らかにするその思考の過程を見る魅力によるものである。我々は彼を通して「大局観指法」の知識から得られる大きな利点を学ぶことになる。マスターが乱暴な手を指したり早まって愚かな攻撃をしたりしないのは彼がこの大局観指法を身につけているからである。それはことあるごとに手筋による攻撃を求める自然な衝動を抑制し駒を最も攻撃の可能性の大きい地点に配置するために助言し、急所の中原の地点を占拠したり自陣を最大限に広げたり相手を押し込め弱体化させたりするにはどうしたらよいか彼に教える。そして決定的な勝機が現れ「決め手の手筋が盤上に現れる」のを彼に保障するのも大局観指法である。マスターは手筋を捜し求めるのではない。彼は手筋が盤上に現れるのを可能にする条件を作り出すのである。

 どの試合のどの一手も簡潔な日常の言葉で説明する。手の効果をもれなく詳述したり手の意図を明らかにする必要があるならば明快で要を得た解説を行なう。手の目的を何度も繰り返すことにより基本的な概念の重要性が印象付けられるであろう。ナイトはf3又はc3が最も働きが良いことやルークは空いた筋を占めるのが良いということを繰り返し言われればそのような戦略や駒の配置は「一般に」良い指し方であるということが分かってくるであろう。そしてナイトやルークの良い配置を選ぶ時マスターと同じように「どの手を最初に見たら良いか」が分かってくるだろう。

 これは慣れることによって考えずにうわべだけの手を指すことを意味するのではない。学ぶのはいつどのように有用な知識を活用し、またいつどのように常識に従わないのかということである。子供が文法規則を学ぶのでなく聞き話すことによって言語を習得していくのと同じように容易に良い手を指すコツを習得していくのである。

 読者の並べる棋譜はどれも勇気、機知、想像力、発想が成果をあげる面白いチェスの冒険となるだろう。マスターたちが喜んで教えてくれることを感謝し吸収することによって「一手一手理詰めのチェス」を指すことを最も良く学ぶことができるのである。

アービング・チェルネフ
1957年5月1日

第1章 キング翼攻撃

 本書の目的はマジックのような効果で読者を煙に巻くことではなく、どのようにしてそのような効果が生まれるのかをお見せすることである。

 例えばよくあるキング翼攻撃を例に取る。それが魅力的なのは目覚しい捨て駒や意表の手を伴った手筋を主としているからである。さらにまたそれが人々に受けるのは短手数での詰みを目指し驚くような手を生じさせるからである。

 しかしいつどのようにしてキング翼攻撃を開始するのだろうか?ひらめきを待たなければいけないのであろうか?

 その答えは簡単で意外に思われるかもしれない。そこでその背景を見てみよう。

 この図はキャッスリングをした後の局面である。キングは前面の3個のポーンとf3のナイトで守られている。これらの守備駒がそのままの位置にいる間はキングはほとんど攻撃にびくともしない。この態勢が変化したとたん陣形は緩み弱体化する。攻撃にもろくなるのはその時である。

 釘付けを避けるために自らhポーンをh3と突いた時あるいは敵駒を追い払うためにgポーンをg3と突いた時に陣形は変化する。しかしそうならない場合はマスターは(ここに秘密がある)色々な狙いによってhポーン又はgポーンを突かせるように誘ったり強制したりする。一旦どちらかのポーンが前進すると防御態勢に弱点が生まれる。そしてそれはつけこまれる元となる。その時こそマスターがキング翼攻撃に着手し見事な、そう、あのまるでマジックのような効果を収めるのである。

第1局

 シェーベ対タイヒマン戦では白が釘付けを防ぐために本能的にポーンを h2-h3 と突いた結果何が起こるかが見られる。タイヒマンは出過ぎたポーンを固定し攻撃目標にする。そして最後はビショップでそのポーンを取って他の駒を侵入させた。

ジュオコ・ピアノ
白 シェーベ
黒 タイヒマン
ベルリン、1907年

 どの布局においてもその戦略の主たる目的は迅速に最下段から駒を出し働かせることである。

 1個や2個の駒だけで(詰みは言うに及ばず)攻撃を行なうことはできない。

 それぞれの駒は独自の役割があるのでそれらをすべて展開させなくてはならない。

 良い始め方は一手で2個の駒を解き放つことである。これは中央のポーンのうちの一つを進めることにより可能である。

1.e4

 これは素晴らしい布局の手である。白は盤の中原にポーンを据えクイーンとビショップの筋を通す。白の次の手は自由に指して良いならば 2.d4 である。2個のポーンは5段目の4つの枡 c5,d5,e5,f5 を支配し、黒がそれらの重要な枡に駒を置くのを妨げる。

 白の初手に対して黒はどう応答したら良いだろうか?してはいけないことは 1…h6 や 1…a6 のような無意味な手を考えて時間を浪費することである。このような手や他の目的のない手は駒の展開に何も役立たないし、中原を独占しようとする白の狙いに何の妨げにもならない。

 黒は良い枡を等分に確保するために争わなければならない。黒は中原の所有を争わなければならない。

 なぜこのようにみな中原を強調するのだろうか?なぜそんなに重要なのだろうか?

 中原にある駒はその動きの自由度が最大限に得られ、その攻撃能力を最大限に発揮することができる。例えば中原に置かれたナイトは八方に利き8枡を攻撃できる。しかし盤端ではその攻撃の範囲は4枡に狭められる。これでは半分の働きしかしない。

 中原の占拠とは最も価値ある陣地を支配することに他ならない。相手の駒には狭い余地しか残さない。それに相手の駒はお互いに邪魔をし合って防御に支障をきたす。

 中原の占拠、あるいは離れた所からの中原の支配は相手の兵力を2分する障壁を成し、その兵力の協調を阻害する。このように分断された軍隊の抵抗はあまり効果がないのが普通である。

1…e5

 大変良い手である。黒は中原の公平な分割を主張している。中原にポーンをしっかりと据え自分の2個の駒を解き放った。

2.Nf3!

 盤上随一の良い手である。

 ナイトが相手ポーンに対して当たりをかけながら展開する。これは黒が好きなように展開できないので先手である。黒は他のことをするより先にこのポーン取りを防がなければならない。それにより黒は手の選択を制限される。

 ナイトは中原に向かって展開する。それにより白の攻撃の幅が広がる。

 ナイトは中原の戦略上の地点の2箇所のうち e5 と d4 に対して睨みを利かせている。

 ナイトは早い段階で戦いに加わる。これは「ビショップより先にナイトを展開せよ」という格言に合致している。

 この原則が妥当な一つの理由はナイトがビショップより短足であるということである。ナイトの方が戦場に着くまで手数がかかる。ビショップは一手でチェス盤を駆け巡る(例えばキング翼ビショップはa6にまで利いている)。キング翼ナイトがホップステップジャンプでb5に行くのに比べビショップは一手で行ける。

 ナイトを先に展開する別の理由は布局の段階ではナイトをどこに置くべきかが比較的分かり易いからである。我々はナイトが特定の地点で最も効果的であることを知っている。ビショップの場合はいつもすぐ分かるというわけではない。ビショップを長い斜筋に置きたいかも知れないし敵の駒を釘付けにしたいかも知れない。それゆえに「ビショップを展開するより前にナイトを出せ」。

 さてこの局面で黒は自分のことはさて置き、まずはeポーンを守らなければならない。守り方はいろいろあるが、以下の手から優劣を判断しなければならない。

2…f6
2…Qf6
2…Qe7
2…Bd6
2…d6
2…Nc6

 黒はどのように良い手を判断したら良いのだろうか。無数の手の組み合わせを読み10手から15手先までのあらゆる攻防を想定しなければならないのだろうか。

 最初に読者を安心させるとマスターは不毛な思考に貴重な時間を費やしてはいない。その代わり彼は強力な秘密兵器である大局観を活用している。それを用いて彼は普通の選手が多くの時間をかける劣った手に考慮を加えないで済んでいる。彼は明らかに棋理に反するような手にほとんど一瞥もくれない。

 以下は正しい手を選ぶ時にマスターの頭に浮かぶ思考である。

2…f6 「ひどい。ナイトにとっておくべき地点をfポーンが占拠している。それにクイーンの斜めの利きもさえぎっている。おまけに駒を展開すべき時にポーンを動かした。」

2…Qf6 「f6にはクイーンでなくナイトがいるべきなので悪手。それに最強の駒をポーンの守りに無駄使いしている。」

2…Qe7 「この手はキング翼ビショップを閉じ込め、弱い駒でもできるような務めをさせている。」

2…Bd6 「駒を展開したがdポーンの進路を妨害している。それにクイーン翼ビショップも生き埋めに近い。」

2…d6 「クイーン翼ビショップの出口を開けているので悪くはない。しかし待てよ、キング翼ビショップの利きが制限されている。それに駒を働かせるべき時にまたポーンを動かした。」

2…Nc6 「これだ。これが最善手に違いない。駒が最も適切な地点に展開されているし同時にeポーンの守りにもなっている。」

2…Nc6!

 面倒な分析をするまでもなく黒は最善手を選んだ。「駒を外に出せ」と言ったフランス人の助言に従っている。黒は一手の無駄もなく駒を進出させeポーンを守った。

 読者のために忠告するとこの金言や他の金言は盲目的に従うべきではない。チェスでは人生と同じように規則はしばしば破られるためにある。しかし一般的には正統的なチェスを支配する原則は良い道しるべとなる。特に序盤、中盤そして終盤においてもそうである。

3.Bc4

 タラシュは「最良の攻め駒はキング翼ビショップである」と言っている。だから白はこの駒を動かし、且つすぐにキャッスリングできるようにする。

 このビショップは中原の重要な斜筋ににらみを利かせ黒のf7のポーンを攻撃対象にしている。このポーンは一個の駒つまりキングでしか守られていないのでことのほか弱い。このポーンめがけて駒を切りそれをキングに取らせて野外に引きずり出し猛烈な攻撃を仕掛けるのは試合の初期の段階においてさえ珍しいことではない。

3…Bc5

 この地点はビショップの最適な地点だろうか?他の候補手を見てみよう。

 3…Bb4: 中原の支配の戦いに参加していないし利きも少ないので劣った手である。

 3…Bd6: d7 ポーンが動けずもう一つのビショップの展開にもさしつかえるので悪手である。

 3…Be7: 2方向の斜筋に利いているし守りにもよく効いているのでそれほど悪くはない。ビショップは1枡動いただけだが最下段を離れれば展開したことになる。覚えておくべき重要なことはすべての駒を動かさなければならないということである。

 最強の展開手は 3…Bc5 である。ビショップはこの好所から重要な斜筋に利きを及ぼし、中原に圧力をかけ、f2 の弱いポーンを攻撃している。このような展開は布局の進め方の二つの金言に合致している。

 最適の地点にそれぞれの駒を速やかに配置せよ。
 布局ではそれぞれの駒は1回しか動かすな。

4.c3

 白の主要な目的は中原に2個のポーンを確立することである。この手はdポーンを突くのを助けるのを意図している。5.d4 の後黒はビショップとポーンが当たりになっているので 5…exd4 と取らなければならない。白は 6.cxd4 と取り返すことにより2個のポーンで中央を制圧することができる。

 白の2番目の目的はクイーンをb3に出してf7のポーンに対する圧力を強めることである。

 以上は利点だが 4.c3 には以下のような欠点もある。

 まず布局においてはポーンでなく駒を動かすべきである。

 それに 4.c3 と突いてしまうとクイーン翼ナイトの本来の居場所を奪ってしまう。

4…Qe7

 大変良い手である。黒は相手の狙いを防ぎながら駒を展開している。もし白が 5.d4 に固執すれば 5…exd4 6.cxd4 Qxe4+ で黒がポーンを得する。このポーン取りはチェックになっているので白はポーンを取り返す暇がない。そして1ポーン得は他の条件が同じならば勝ちに十分つながる。

5.O-O

 白はdポーン突きを見合わせて、まずキングを安全地帯に移す。

 序盤ではキングを早く、できればキング翼に、キャッスリングせよ。

5…d6

 eポーンとビショップにひもを付け中原を強化している。これでクイーン翼ビショップが働き始める。

6.d4

 黒がポーン交換をしてくれることを期待している。そうなれば白には威容を誇る中原がもたらされナイトもc3の地点に行けるようになる。もし黒が 6…exd4 7.cxd4 Qxe4 とポーンに食いついてくれば白は 8.Re1 でこのクイーンを餌食にすることができる。

6…Bb6

 しかし黒は取る必要はない。eポーンは安全なのでビショップは一歩下がって、なお新しい地点から中原に睨みをきかせている。

 その威容にもかかわらず白のポーン中原は危なっかしい。dポーンは三重に攻撃されているので白は三重に守りながら展開を完了しなければならない。7.Qb3 は当初からの目論見だがクイーンが守りから外れる。7.Nbd2 はクイーンの守りをさえぎる。そして 7…Bg4 にも直面している。ナイトが釘付けになるのでポーンの守備駒の一つが無力になる。

 態度を明らかにする前に白はちょっとしたわなを仕掛ける。

7.a4

 怪しげな手であるが不合理な手である。白の狙いはビショップに対する 8.a5 である。8…Bxa5 ならビショップを守っているナイトを 9.d5 と攻撃する。ナイトが 9…Nd8 と下がれば 10.Rxa5 とビショップが取れる。8.a5 に対して 8…Nxa5 とナイトで取れば 9.Rxa5 Bxa5 10.Qa4+ で2枚替えとなる。

 しかし展開がこんなに遅れている白に手筋攻撃を仕掛けるどのような正当性があるのだろうか。白がここで始めたような攻撃は時期尚早であり成功する道理がない。

 手筋による攻撃を開始する前に全ての駒を展開せよ。

7…a6

 ビショップの退路を作る。これは序盤では不要なポーン突きをするなという教えには背かない。展開は決まりきったあるいは自動的な指し方を意味するのではない。相手の狙いは必ず何はともあれ防がなければならない。もっと正当性が必要というならば、黒の手損は白の無意味な 7.a4 で相殺されている。

8.a5

 ひょっとしたら黒がこのポーンを取ってくれるかもしれない。

8…Ba7

 しかし黒はそれには食いつかない。

9.h3

 何たるヘボ手。弱い選手は釘付けを恐れて本能的に(低俗な本能に屈して)この手を指す。

 キングを守るポーンの構えをゆるめその構造を恒久的に弱める手を指して釘付けを防ぐよりも、釘付けを甘受する(一時的な不如意)方が良い。キャッスリングした後で h3 又は g3 とポーンを突くのは2度と回復できない構造的な弱点を作り出す。なぜならポーンは一旦前進すると後戻りできないし、一旦変更された陣形は修復できないからである。前進したポーン自体も攻撃に直接さらされるし、そのポーンが以前に守っていた地点(この場合は g3 )も敵兵の上陸地点になる。

 タラシュは「必要がある場合あるいは有利を得る場合でなければ決してキャッスリングしたキングの前のポーンを動かしてはならない。なぜならポーンが動くたびに陣形がゆるんでくるからである」と言っている。

 アリョーヒンは「キャッスリングしたキングの前の3個のポーンはできる限り長く元のままの位置を保持するように努めよ」とさらに強いことを言っている。

 今や黒は駒1個を犠牲にしても白のhポーンを除去して白のキング翼を破壊する暴挙にでることも可能である。白が取り返せばg筋が空き白キングが攻撃にさらされる。もちろんこの作戦はもっと駒を戦闘配置につけるまで実行に移すべきでない。

9…Nf6

 ナイトがeポーンを攻撃しながら戦闘に加わってきた。

 この手は素晴らしい手で次の有用な戦術の要諦にもかなっている。

 『いつの場合もできる限り狙いを持って展開せよ』

 狙いに対処するために相手は自分が今していることを中断しなければならないことに注意せよ。

10.dxe5

 白はポーンを交換して自分の駒の利きを通す。具合の悪いことにこれは次の場合に該当するので黒にとって有利となる。

 『筋を開けると展開に勝る方に有利となる。』

10…Nxe5

 ポーンで取るよりもナイトで取る方が強い応手となる。c6のナイトは勇躍中原に進出し八方ににらみを利かせる(ポーンにはできない)。

 白のdポーンが消えたのでa7に逼塞していた黒のビショップが日の目を見た。ビショップの利きが延び白のf2のポーンにまで到達しさらにその先の白キングまで利いている。

 さて白はどう指し手を進めたら良いだろうか。白はこれまでeポーンの窮状を救う手立てを何もしてこなかった。このポーンは黒のナイトでまだ当たりになったままだし、c4のビショップも黒のもう一つのナイトで当たりにされている。

11.Nxe5

 白のこの手は強力なナイトを消すので当然の手のように見える。しかしこの交換によりキャッスリングした陣形の最良の守り駒である白のキング翼ナイトも盤上から消え去る。このような局面でキング翼ナイトを保持する重要性はシュタイニッツによって70年以上も前に指摘されている。彼は次のように言っている。「キング翼の動いていない3個のポーンに一つの駒が加わった形はその方面への攻撃に対して強力な防波堤となる。」タラシュはキング翼ナイトの重要性について次のように明快に強調している。「f3のナイトはキング翼のキャッスリングした陣形の最良の守り駒である。」

11…Qxe5

 白のナイトは盤上から完全に消えたが黒のナイトは別の駒によって置き換えられたことに注目されたい。

 この新たなる駒のクイーンはe5の地点で光彩を放っている。それは中原を占拠し白の不安定なeポーンを脅かし盤上のどの地点にもすぐに駆けつけられる態勢になっている。

 白はどのようにクイーンの脅威とeポーンに対する当たりの問題を解決するのか?白はf4とポーンを突いてクイーンをどかしたいところだがあいにくそれは禁じ手である。白はこのポーンを救えるのだろうか?

12.Nd2

 黒がポーンをくすねてくれるかもしれないという万が一の僥倖を期待しての手である。その時は 12…Nxe4 13.Nxe4 Qxe4 14.Re1 となってクイーンとキングを串刺しにできる。

 しかし黒はポーン取りには興味がない。黒の大局的な優位は非常に大きいので既に勝ちをもぎ取る手筋を捜すのは当然である。黒の二つのビショップは遠くから斜筋に睨みを利かしている(一つはまだ展開していないけれども)。それぞれ黒キングをおおっているポーンを攻撃している。黒クイーンはキング翼に駆けつける用意ができている。ナイトは援軍が必要とあらばいつでも跳びこめる。黒は中原を支配している。それはカパブランカが言ったようにキング翼攻撃を成功させる必須の条件である。つまり黒は組織立った大局観指法の報酬として勝利の手筋をさずかる資格がある。

 問題はこの充満した力のはけ口となる目標があるかということである。

12…Bxh3!

 そう、あるのである。hポーンは何食わぬ顔で釘付けを防ぐためにh3に進んだのであった。

 黒は出過ぎたポーンを取ってしまう。陣形を弱め自分のキングを裏切った罪への適切な処罰である。

13.gxh3

 ポーンをただ損するわけにはいかないので白はビショップを取る一手である。

13…Qg3+!

 破壊的な侵入である。黒がどのように 9.h3 のもたらした二つの大きな結果を利用したかに注目されたい。つまり黒は h3 ポーンそのものを取り、このポーン突きによって弱体化した g3 の地点を侵入口として利用した。

14.Kh1

 fポーンが釘付けなのでクイーンを取ることができない。

14…Qxh3+

 黒はさらに守りのポーンをはがし白キングをさらに露出させる。

15.Kg1

 唯一の手。捨てたビショップと引き換えに黒はポーン2個、それに攻撃権を得た。

15…Ng4

 次に詰みがある。白はh2での詰みを防ぐかキングの逃げ道を作らなければならない。もし 16.Re1 と逃げ場所を作れば 16…Bxf2# で詰まされる。だから黒は

16.Nf3

 でh2の地点に利かして黒クイーンによる詰みを防ぐ。

 黒はどのようにして攻撃を締めくくれば良いだろうか?彼は以下のように考えを進める。「敵キングの守りのポーン2個を取った。もし3個目のポーンが取れれば敵キングの最後の守りは失われ望みのない状態になるだろう。この最後の守り手であるf2のポーンはこちらのナイトとビショップによって攻撃され相手のルークとキングとによって守られている。だから守り駒の一つをなくさせるか第3の攻撃の駒を投入しなければならない。多分両方同時にできるだろう。」

16…Qg3+

 再びfポーンが釘付けで動けないことを利用して黒は第3の駒のクイーンでこのポーンを攻撃する。

17.Kh1

 キングは隅に逃げてポーンの守りを放棄するしかない。ここでポーンを守るのはルークだけになりクイーン、ナイトそれにビショップが攻撃を加えている。このポーンが落ちてそれと共に勝敗も定まる。

17…Bxf2

 キングの逃げ道のg1を押さえることによりチェックに対してキングがこの地点に逃げるのを防いでいる。

18.白投了

 黒の詰め手は 18…Qh3+ 19.Nh2 Qxh2# である。白が 18.Rxf2 としても 18…Nxf2# でやはり詰むのでこれまでである。

フランス防御の完全理解(25)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これで白は適切な準備のあと Nf3-g5-h3-f4-h5 を予定している。この捌きの意図は黒が …g6 と突かなければf8の黒ビショップをg7ポーンの守りに縛り付けることである。もし突けばナイトがf6の地点に侵入する。ナイトのこのような再配置はかなりの準備のあとキング翼で g4、f4 から f5 とポーンを全面的に突いていく前触れとなる。

10…h6

 黒はこのもくろみをできなくした。しかし白のもう一つのナイトがf1からg3の地点を経由してh5の地点に向かうことができる。次局では代わりに非常に巧妙な 10…Qc6! が登場する。

11.Rb1!

 この手は …Nb3 によってルークが当たりになるのを事前にかわした。Nf1-g3-h5 と捌く前にこの用心が必要である。すぐに 11.Nf1 と指すと 11…Nb3 12.Rb1 Ba4 となって黒がb3の地点を押さえつけ、b3のナイトが急に動くと直射攻撃がかかるのでd1の白クイーンが危険な立場に立たされる。12…Nxc1 も黒に有利な交換になる。局面は閉鎖的だが白が勝ちたいならばいつかは筋を空けなければならず、そうなれば残したいのはナイトよりもクイーン翼ビショップ方である。

11…O-O-O 12.Qc2! Kb8 13.Bd1!

 ビショップがa4とb3の地点の支配を争うためにここに持ってこられ、クイーンが安全な所に移れるようにe2の地点が空けられた。このことは17手目でその重要性が分かる。

13…Rc8 14.Nf1 Nb3 15.Bf4 Ka8 16.Ng3 Ba4 17.Qe2 Qb5 18.Nh5

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(24)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第4局
スベシュニコフ対カスパー
モスクワ、1987年
突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Qb6 6.a3

 この黒の手順に対して 6.Be2 は比較的無害であることが分かってきた。6…cxd4 7.cxd4 Nh6!(7…Nge7 8.Na3! は前局と同じシステムに移行する)のあと白は 8.Bxh6 Qxb2! も 8.Na3 Bxa3! も指すわけにいかず以下の手もあまり芳しくなかった。

 a)8.b3 Nf5 9.Bb2 Be7!?(9…Bb4+ 10.Kf1 O-O はキングの位置のおかげで白は 11.Nc3 と指せる)10.O-O Bd7 11.g4 Nh4 12.Nxh4 Bxh4 13.Na3 O-O 14.f4 f6 15.Kg2 fxe5 16.dxe5 Rf7 17.Qd2 Raf8 18.Nc2? g5! これは1992年デブレツェンでのヨーロッパチーム選手権戦のクプレイチク対ヘルトネック戦で、黒がはっきり優勢になった。

 b)8.Nc3 Nf5 9.Na4 Qa5+ 10.Bd2 Bb4 11.Bc3 b5! 12.a3 Bxc3+ 13.Nxc3 b4 14.axb4 Qxb4 15.Bb5 Bd7 =

6…c4

 黒はこのように局面を閉鎖的にする必要はない。これに代わる重要な手は 6…Nh6 で、通常は 7.b4(7.Bd3!? はもっと注目されてもよい)7…cxd4 と続き、ここで白にはクイーン翼ビショップの使い方に三通りの選択肢がある。

 a)8.Bxh6 gxh6 9.cxd4 1996年カンヌでのフレシネ対コルチノイ戦ではこのあと 9…Bd7(9…Rg8!?)10.Be2 Rc8 11.O-O Bg7 12.Qd2 O-O 13.Nc3? Nxd4! 14.Nxd4 Bxe5 と進んで白の中原が粉砕された。しかし 13.Nc3? よりも前に黒陣は破砕されたポーン陣形にもかかわらず既に指しやすい局面になっていた。即ちキング翼は非常に安全で …f6 と突いて白の中原を破壊する用意ができていて、そうなればg7のビショップがd4の地点にかなりの圧力を及ぼすことになる。

 b)8.cxd4 Nf5 のあと

 b1)9.Bb2 Be7 10.Qd2(10.Bd3 a5! 11.Bxf5 exf5 12.Nc3 Be6 13.b5 a4! は1987年ノリリスクでのスベシュニコフ対モスカレンコ戦で、形勢不明だった)10…O-O 11.Bd3(11.Be2 f6!? 12.g4 Nh6 13.exf6 Rxf6 14.g5 Rxf3 15.Bxf3 Nf5 ∞)11…Nh4 12.Nxh4 Bxh4 13.Qf4 Be7 14.b5 Na5 15.Nc3(15.Nd2 Bd7 16.a4 a6 17.h4 f6! =/+)15…Nc4! 16.Bxc4 dxc4 17.d5 f6 18.Qxc4 fxe5 19.O-O Rf4! =/+

 b2)9.Be3 Be7 10.Bd3 Nxe3 11,fxe3 O-O(11…f5 12.exf6e.p. Bxf6 13.Ng5!)12.O-O f5 13.Nc3 ここでジョン・ワトソンは 13…Qd8! を挙げている。その着意は 14.Na4 b6 または 14.Ne2 a5 15.b5 Na7 16.a4 Bd7 のあと …Na7-c8-b6 と指すことである。

 …Qb6 は 6.a3 に対してとりわけ不適切であることは特筆しておく価値がある。なぜなら黒はしばしばクイーンをd8またはc7に引かなければならなくなるからである。これに対応して 6.a3 は他のシステムに対してはそれほど危険でない。例えば 5…Bd7 6.a3 のあと1992年テル・ アペルでのアダムズ対エピシン戦は 6…f6!?(6…Nge7 と指してもよい。例えば 7.b4 cxd4 8.cxd4 Nf5 9.Nc3?! Rc8 10.Bb2 Nh4! =/+ イレスカス対スピールマン、リナレス、1992年)7.Bd3 Qc7 8.O-O O-O-O 9.Bf4 c4 10.Bc2 h6 11.h4 Be8! 12.b3 cxb3 13.Bxb3 Bh5! 14.Nbd2 fxe5 15.dxe5 Bc5 16.Qb1 Nge7 17.c4 Rhf8 18.Bh2 Bxf3 19.Nxf3 Rxf3! 20.gxf3 Nd4 21.Kg2 Nef5 22.Bg3 Qf7 23.f4 g5! 24.cxd5 gxf4 25.dxe6 Qh5 26.e7 Nxh4+ 0-1 という結果になった。

7.Nbd2

 b3の地点をめぐる主眼の戦いが始まる。

7…Na5

 ウールマンのよく指す 7…f6 は 8.Be2! fxe5 9.Nxe5 Nxe5 10.dxe5 Bc5 11.O-O Ne7 12.b4! cxb3e.p. 13.Nxb3 O-O 14.Nxc5 Qxc5 15.Qc2 Nf5 16.Bd3 Bd7 17.a4 +/= と応じられる。

8.Be2

 g3 と突く別の作戦もあり、その意図は h4 突きから Bh3 と覗いてすぐにキング翼で自陣を広げることである。1996年サリーでのホッジソン対アーケル戦では 8.h4 Bd7 9.h5 O-O-O 10.g3 f5! 11.exf6e.p. gxf6 12.Bh3 Bd6 13.O-O e5 で黒に分のある局面になった。

8…Bd7 9.O-O Ne7 10.Re1

 黒の手番 

(この章続く)

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布局の探究(24)

「Chess Life」1991年6月号(2/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

死者を蘇らせる 後編

白のシステム(続き)

B)ニムゾインディアン防御カパブランカ戦法

 ニムゾインディアン防御は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 から生じる。最初の頃は白の最も人気のある応手は 4.Qc2(カパブランカ戦法または古典戦法)だった。白は二重ポーンを防ぎ重要なe4の地点を守る。これは第2次世界大戦のあとまで白の主力兵器だった。

 しかし 4.Qc2 には負の要因もいくつかある。白は小駒の展開を1手遅らせd4のポーンの守りをなくしている。バスヤ・ピルツは 4…c5 5.dxc5 O-O という手順によってこの二つの要因につけ込むことができることを示した。

 図3

 30年以上もの間ピルツ戦法は 4.Qc2 が国際大会の舞台から姿を消す主要な理由になっていた。今日の観点は1982年に出版された「Modern Chess Openings」第12版によく表れている。「狙いのないこと(e2-e4 を狙いとみなせるとしてもそれ以外に)、それに白クイーンの早すぎる展開は、白が引き分けっぽい陣形を避けたいならば、このシステムに展望がほとんどない。」

 図3から白の探検した主要な手は 6.Nf3、6.Bf4、それに 6.Bg5 だった。しかしどの場合も黒は 6…Na6! のあとの早い …Nxc5 で展開の優位により楽に互角にできることを示すことができた。代表的なのは1949年リュブリャナでのエーべ対ピルツ戦である。6.Bg5 Na6! 7.a3 Bxc3+ 8.Qxc3 Nxc5 9.Bxf6 Qxf6 10.Qxf6 gxf6 11.b4?! Na4 12.O-O-O?! a5 13.Kc2 d5! 14.e3 axb4 15.axb4 Bd7 黒は攻撃が強力で形勢も有望である。

 白の他の6手目の中で時おり指されたのは 6.a3 で、6…Bxc5 と取らせることにより黒の …Na6/…Nxc5 の作戦を防いでいる。一貫した継続手の 7.Nf3 Nc6 8.Bg58…Nd4 9.Nxd4 Bxd4 10.e3 Qa5 となって白は 11.exd4 Qxg5 で図4に進めるしかないので無害とみなされていた。

 図4

 この局面は1950年アムステルダムでのファン・スヘルティンハ対オーケリー戦に基づいて黒が良いとみなされていた。黒のクイーンは強力な地点を占めていて、白はどのようにキングを安全な所に行かせるのだろうか。

 正解は1981年にアムステルダムでラヨス・ポルティッシュと対戦した世界チャンピオンのアナトリー・カルポフによって初めて示された。11.exd4 で中央がかなり優位になり黒のクイーン翼が展開されていないままであることに注目して、彼は白が黒の唯一の切り札である活動的なクイーンをなくさなければならないと判断した。そこで彼は 12.Qd2! と指して次のように黒に気の進まない選択をさせた。

 a)クイーンを 12…Qg6 と引く。13.f3! のあと 14.Bd3 によって白は中盤戦ではっきり優勢になる。

 b) 12…Qxd2+ 13.Kxd2 とクイーンを交換する(ポルティッシュの選択)。収局は白が有利である。白は中央が強力で、陣地の広さでかなり優位で、クイーン翼の多数派ポーンが役に立ちそうである。そして中央のキングも強みになっている。

 試合は次のように続いた。13…b6 14.f3 Ba6 15.Rc1 Rac8 16.b3 Rfd8 17.Be2 Kf8 18.Rhe1 d6 19.Rc2 白の優勢が続いている。ポルティッシュは48手で引き分けに持ち込むことができた。

 GMヤセル・セイラワンが1986年にカルポフの着想を復活させていくつかの収局に快勝したとき、全世界が注目した。特筆すべき例は1987年ザグレブ・インターゾーナルでのセイラワン対Y.グリューンフェルト戦である。13…d6 14.Bd3 Bd7 15.b4! b6 16.Rhb1 Bc6 17.f3 Rfc8 18.a4! a5 19.bxa5 bxa5 20.Rb2 Kf8?! 21.Rab1 h6 22.Rb6 Ke7 23.d5! exd5 24.Bf5 Rc7? 25.Nb5! Bxb5 26.cxb5 Ne8 27.Ra6 Rca7 28.Rxa7 Rxa7 29.b6 Rb7 30.Bc8 Rb8 31.b7 Kd8 32.Rb5 Nf6 33.Rxa5 Kc7 34.Rb5 Ng8 35.Rb1 Ne7 36.a5 g5 37.Rc1+ Kd8 38.a6 Nxc8 39.Rxc8+ Rxc8 40.a7 黒投了

 13.Kxd2 のあとの収局における黒の実戦の展望は非常に思わしくないので、ピルツ戦法(5…O-O)全体が最高レベルで指せなくなった。

 上記の意味するところは 4.Qc2 が完全に復活したということである。4…c5 をまだ信頼している黒側の選手たちは 5.dxc5 のあと代わりに 5…Qc7 やすぐの 5…Na6 を模索している。

 古い 4…d5 に戻る試みもあり、融通性のある 4…O-O も深く研究されている。その場合白の最も積極的な作戦は 5.a3 Bxc3+ 6.Qxc3 である。もっと控え目な 5.Nf3 は 5…c5 と突かれ、6.dxc5 Na6! となれば黒はピルツ戦法の完全に満足できる戦型に移行したことになる。

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2012年11月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(23)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 局面が一変してしまった。白のポーンは救いようのないほど弱く、駒はばらばらに散らばっている。一方黒の駒はビショップを含めすべて好所を占めている。このビショップはつい今しがたまで大して働いていなかった。けれども10手前は形勢は「不明」で、白は明らかに駒の連係が良く黒キングに有望な攻撃を始めるところだった。形勢逆転における正しい戦略-そして誤った戦略-の効果とはそのようなものである。

29.Ne1 Qb2 30.Ng2 Rxc3

 陣形がつぶれるのに続いてたちまち駒割も差がつく。黒は次のように勝ちを収めた。

31.Qe7 Rcc8 32.Rf4 Rce8 33.Qc7 Qd2 34.Qxb7 Be4 35.Rxf8+ Rxf8 36.Qe7 Qxf2 37.h3 Rg8 38.Qa3 Rc8 0-1

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(22)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 黒の手番 

 この手は事実上 …f6 突きを不可能にしている。なぜなら gxf6 でg列が素通しになるので白の攻撃の可能性が危険なほど高まるからである。この白の手は卓抜で、キング翼攻撃の作戦の重要な一端を成している。

17…Bb4!

 ついにこの手がきた。g8のナイトはいずれe7に行きそれからf5に行く。そこは白の弱点で、ポーンによって守ることのできない要所である。

18.Bd3

 このビショップ出はf5の地点の戦いに備えている。

18…Nge7 19.Rg4?

 激しい局面ではたった一手の失着が命取りになることがある。ここで白がなぜ 19.Rg3 と指すべきだったかはすぐに明らかになる。

19…Rac8 20.Rag1

 シフエンテスは駒の大量集結を続けている。狙いは h4 突きから h5 突き、または Rg1-g3-h3 である。

20…Nf5!

 黒ナイトは絶好点に到達した。白はこのナイトを取り除かなければならない。さもないと白の攻撃が頓挫してしまう。

21.Bxf5 exf5 22.Rh4

 ここでこのルークがg4でなくg3にいたら(即ち白が 19.Rg3 と指していたら)白は 22.Ne3! と指すことができた(22…f4? 23.Nxd5)。そして 22…Ne7 23.Ng2! Bxc3 24.bxc3 となって白は Nf4 のあと h4 から h5 と突き進めて総攻撃の態勢が整うはずだった。白の駒の配置はほぼ理想形で、例えば黒が 24…Rc6 25.Nf4 Rfc8? と指してくれば 26.e6! Bxe6 27.Ne5 が非常に強力になる(この分析はチェス新報第61号のソコロフの解説を基にしている)。だから黒はまず 25…Be6 と指してeポーンを止めておかなければならず、それから …Rfc8 と指さなければならない。白はいつでもc3の地点に対する圧力を Ne2 で迎え撃つことができる。

 結論として白のルークが19手目でg3の地点に行っていたら 22.Ne3 から非常に激しい試合になっていた。しかし実戦のようにルークがg4にいては 22.Ne3? はもちろん単純に 22…fxg4 でルークを取られてしまう。

22…Bxc3 23.bxc3 Ne7

 白のナイトがg2にいてf4の地点を目指す(上の解説のように)のでなくc2の地点にいるので試合の収支は天と地ほどの違いが生じる。白は重大な問題を抱えている。24…Qb2 が黒からの一つの狙いで、24…Ng6 から …f4 もそうでd7のビショップの斜筋が通りh列の白ルークが不安定な状態におかれる。

24.e6!?

 この捨てばちの手は黒の正確な受けの前に無益に終る。

24…Bxe6 25.Ne5 f4!

 黒は自陣を解放するために一時的にポーンを返した。

26.Qxf4 Ng6 27.Nxg6+ fxg6 28.Qe3 Bf5

 白の手番 

(この章続く)

2012年11月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(53)

「Chess Life」2004年9月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御 4…a6

 スラブ防御 4…a6 はチェバネンコ戦法と呼ばれている(またはカメレオン戦法としても知られている)。近年は 1.d4 に対するガリー・カスパロフの常用戦法の重要な一部になっている。最近多くの他の一流選手たちも彼にならい始めた。ちょっと名前をあげただけでもシロフ、ハリフマン、モロゼビッチ、アコピアン、バクローらがいる。

白の基本的な作戦は何か

 白は5手目で黒の作戦にどう応じるかを決める必要がある。…b7-b5 突きを許すことを選択することもできるし防ぐことを選択することもできる。本稿では白が黒の狙いを無視しポーン突きを許す方に焦点を絞る。一般に白は黒の反撃の可能性を制限しながら陣地の広さの優位を維持しようとする。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は …b7-b5 と突いてクイーン翼で反撃することをもくろむ。そして局面の開放に努めて守勢と陣地の狭さの不利を避けなければならない。

それで評決はどうなっているか

 4…a6 スラブは特に一流大会の選手たちの間でことのほか流行している。本稿では白の観点から(特に戦型Ⅱ)対処法についての着想を示すようにする。最新の定跡の現在の状況によると白が少なくとも少し優勢である。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6

 普通のスラブの手は 4…dxc4 である。黒は 4…e6 でボトビニク戦法またはメラン防御に誘うこともできる。

5.e3

 白には他に選択肢が三つある。

 a)5.a4 黒は通常はビショップをb4の地点に出す意図で 5…e6 と突く。4…e6 との違いはこの時点で白はビショップを追い払えるポーンがもうないということである。

 b)5.c5 も …b7-b5 を予期した(通過捕獲で取れる)理にかなった手である。黒の応手は 5…Nbd7 か 5…Bf5 である。先のオリンピアードでカスパロフは次のように好局を勝った。5.c5 Nbd7 6.Bf4 Nh5 7.Bg5 h6 8.Bd2 Qc7 9.e4 dxe4 10.Nxe4 Ndf6 11.Nc3 Be6 12.Ne5 g6 13.Qf3 Rd8 14.Be3 Ng7 15.Bc4 Bxc4 16.Nxc4 Ne6 17.O-O Bg7 18.Rfd1 O-O 19.Rac1 Nd5 20.Nxd5 Rxd5 21.Nb6 Nxd4 22,Qg4 h5 23.Nxd5 cxd5 24.Qg5 Ne2+ 25.Kf1 Nxc1 26.Rxc1 e5 27.b3 Re8 28.Bd2 Qc6 29.Qe3 d4 30.Qe2 e4 31.Bf4 Qf6 32.Bd6 Bh6 33.Rd1 Re6 34.Kg1 d3 35.Qf1 e3 36.fxe3 Bxe3+ 37.Kf1 Qxf1+ 38.Rxf1 d2 0-1(サシキラン対カスパロフ、ブレッド、2002年)

 c)そしておそらく最も平和的な手段は 5.cxd5 で、交換スラブの一種に移行する。

5…b5 6.b3

 白はc4のポーンを守った。

6…Bg4

 ここで白は 7.h3 または 7.Be2 を選択することができる。

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フランス防御の完全理解(21)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 この手の着意は適当な時機に …Bb4 と指すことである。それに対して Bxb4 と応じてくれば …axb4 と取って白のa2のポーンが弱くなる。このような交換はc3の障害物が移動するのでc列での黒の反撃の可能性も高まる。

13.O-O O-O

 ソコロフはすぐの 13…Bb4 も示唆している。f5のナイトが g4 突きで攻撃されてもe7の地点が空いている。

19.Kh1 Kh8 20.g4! Nh6 21.Rg1 Ng8

 これは …f6 と突く準備である。もちろんすぐに 16…f6? は 17.exf6 と取られて駄目である。黒がどう取っても白の戦力得になる。

17.g5!

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(20)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第3局
シフエンテス対I・ソコロフ
オランダ選手権戦、1994年
突き越し戦法

1.e4 c5 2.c3 e6 3.d4 d5 4.e5 Nc6 5.Nf3 Bd7 6.Be2 Nge7 7.Na3 cxd4 8.cxd4 Nf5 9.Nc2 Qa5+

 9…Qa5+ の目的は白のクイーン翼ビショップをc1-h6の斜筋から誘い出して少し具合の悪いc3の地点に来させることである。さらに、白が g4 と突いて黒のナイトをf5の地点から追い払ってくれば、このナイトは Bxh6 を恐れることなくh6の地点に下がることができる。

10.Bd2 Qb6 11.Bc3 Be7 12.Qd2

 1987年ユーゴスラビアでのマルコビッチ対I・ソコロフ戦では 12.O-O a5 13.g4 Nh6 14.Nfe1 と続いた。ここでソコロフは 14…f5 15.h3 O-O 16.f4 fxg4 17.hxg4 g5! でねじり合いにするのはどうかと言っている。これは黒がかなり良さそうである。

12…a5

 白の手番  

(この章続く)

2012年11月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(19)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 黒の手番 

18…g5??

 これは破滅的な作戦である。黒は主眼のポーン捨てを考えるべきである。18…f4! 19.Nc2 となればe6のビショップの利きが飛躍的に延びる。そして 19…Be7 20.Bxf4 O-O と筋良く指して 21…Na5 から 22…Nc4 を意図することができる。もし 21.Ne3 と来れば 21…Bxa3 と取る。あるいはまた 19…Bf5!? 20.Bxf4? Na5 21.Rb2 Nc4 と積極的に指すこともできる。どちらの場合も白枡のしっかりした支配がポーン損の完全な代償になっている(もっともそれを超えることはないだろうが)。

 実戦の手は …g4 と突いての反撃をもくろんでいる。しかし中原が開放的になり黒の展開不足が致命的になる。

19.Nxg5 Nxd4

 ともかくも黒は本章の初めの方で解説された主要な目標の一つを達成した。つまりd4の地点を支配した。しかし展開の効用、キングの安全、そしてポーン陣形のようなもっと当たり前のことを忘れないことが重要である。ここでは黒は明らかにそれらを忘れていた。

20.Nxe6 fxe6

 ギドはチェス新報第61巻で黒が 20…Nxb3 と取ると次のように見事につぶされる変化を挙げていた。21.Nxd5!(22.Nc7+ でクイーンを取る狙い)21…Qxe6 22.Bg5! これで 23.Nc7+! からd8で詰める狙いがある。

21.Qh5+ Kd7 22.Qf7+ Be7 23.Nxd5! Ne2+ 24.Kh1 exd5

 24…Nxg3+ なら 25.hxg3 Qxf1+ 26.Kh2 exd5 27.Rxb7+ で殲滅できる。

25.Bg5 Rce8 26.Rfb1 1-0

 b7のポーンが落ちて一巻の終わりである。

(この章続く)

2012年11月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(296)

「Chess」2012年10月号(1/1)

 2012年8月27日から9月10日までイスタンブールで開催された第40回チェスオリンピアードで米国チームは5位に終わりました。GMナカムラは席順順位で第1席の4位でした。

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イスタンブール・オリンピアード

GMダニエル・ゴーマリー


 第7回戦でトルコに勝っていかにも嬉しそうなチームUSAの(左から)ヒカル・ナカムラ、ジョン・ドナルドソン(監督)、レイ・ロブソン、アレクサンドル・オニシュク。ガータ・カームスキーとバルージャン・アコビアンは写っていない。

 米国は大会の終盤にかけて注目の的だった。ナカムラはいつものように決然とした表情だったし、第2席のカームスキーと共にどのチームにとっても大きな脅威となっていた。

 第9回戦で実際順位争いが激しくなり始めた。この回でそれまで不敗のロシアが意気上がる米国チームと当たった。例によって威勢のいいナカムラは試合の前にツイッターに次のように書き込んだ。「ついに決戦の日が来た。悪逆なロシア人たちに対してすべてを注ぎ込んで我々のこれ以上はない最高の力を発揮するときだ。行け、USA!!」

 クラムニクとの試合は早々と引き分けになるように見えたが、ナカムラは大きな危険をおかすことにした。

第9回戦 米国対ロシア
H.ナカムラ – V.クラムニク

21.Bb4 Nc6 22.Ba3 Na5 23.Nb1!?

 ナカムラはきっとクラムニク相手にこのような手を指す世界で唯一の選手だろう。実際彼の早い引き分け嫌いはよく知られていて、彼以前のフィッシャーとよく似ている。IMリチャード・パートが最近見せてくれた試合を思い出す。その試合で彼はナカムラ相手に勝勢になった。交換得で1ポーン得だったが、ナカムラにもたとえ客観的には敗勢でもまだ指す余地があった。神経質になったリチャードは引き分けを提案したが、即座に拒否された。完全に困惑した彼はそのあと数手で負けてしまった。

23…b5 24.h4 Nc6 25.Bc5 Qb8 26.Qe2 Na5 27.Nd2 Rxc5 28.dxc5 Qc8

29.Nf3?

 これは方向が違う。しかしナカムラの生存本能はいつもキング翼に向かう。白は 29.Nb3! Nc4 20.a4 の方がずっと良かった。

29…Qxc5

 これで黒に十分な代償がある。

30.Nh2 Bg7 31.h5

 白はキング翼でどう指そうとするのかいっこうに見当もつかない。どのように敵陣突破するつもりなのかまったくはっきりしない。しかし彼には援助の手が差し伸べられるところである・・・

31…g5??

 この回戦で食中毒を起こしているようだったクラムニクはヘボ手で完全に試合をふいにした。31…Rc8! か大胆な 31…Qxc3! でも黒は問題なかった。

32.h6!

 クラムニクがこれを見落としたとは信じがたい。しかしこれで白の指し手が大いに活気づいた。

32…Bxh6 33.Qh5 Bg7 34.Qxg5 Nc6 35.Ng4 Qe7 36.Qxe7 Nxe7 37.a4 d4 38.axb5 Bxb5 39.Rxa7 d3 40.Rxe7 d2 41.Rd1 Be2 42.Ne3 Bxe5 43.c4 h5 44.Ra7 h4 45.Ra2 Bxd1 46.Nxd1 hxg3 47.fxg3 Bxg3 48.c5 f5 49.Ra7 e5 50.c6 e4 51.Bh3 Rc8 52.Ra6 Rf8 53.Ra5 f4 54.Kf1 e3 55.Ke2 Rf6 56.Ra8+ Kg7 57.Ra7+ Rf7 58.Rb7 Kf6 59.Kf3 Re7

 何とかごまかそうと獅子奮迅の指し回しのあと、異色ビショップが盤上に残り白のナイトがいい態勢でないのでクラムニクがチャンスをつかみかけた。

60.Rxe7 Kxe7 61.c7 e2!

 渾身の一手だが白の次の手によって超越されてしまった。

62.c8=N+!!

 スタディのような手で、あろうことかクラムニクに1992年マニラオリンピアードで衝撃的なデビュー[訳注 9戦8勝1分]を飾って以来オリンピアードで初の負けを見舞った。62.Kxe2 f3+ 63.Kxf3 Bxc7 は引き分けである。ビショップとナイト対ビショップは容易に持ちこたえることができ、d2のポーンがナイトを交換しないで取れるかさえ定かでない。62.c8=Q?? は 62…exd1=Q+ で黒の勝ちになる。

62…Kf6 63.Kxe2

 2ナイトと1ビショップ対1ビショップは簡単に勝てる。異色ビショップも好都合である。ビショップ同士が交換になって2ナイト対単独キングの引き分けになる可能性がない。

63…Ke5 64.Nb6 Kd4 65.Bg2 Be1 66.Nd5 Ke5 67.Nb4 Bh4 68.Nd3+ Kf5 69.Kxd2 Kg4 70.Ke2 Bf6 71.N1f2+ Kg3 72.Bf3 Bd8 73.Ne4+ Kh4 74.Ne5 Bc7 75.Ng6+ Kh3 76.Ne7 Bd8 77.Nf5

 白はすべての駒が白枡にいる。

77…Bb6 78.Kf1 Kh2 79.Bg4 f3 80.Nh4 1-0

  Nxf3 から Ng3 または Nf2 の2手詰みになっている。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス3

フランス防御の完全理解(18)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 黒の手番 

10…Rc8

 この手の意味は …Be7 を遅らせて、もし白が g4 突きでf5のナイトを突っついてきてもh6の地点に追放されずに済むようにすることである。代わりにこのナイトはe7の地点に戻ることができそこからg6の地点に再配置されて中原に影響を維持することができる。黒は事実上白に「こちらは 10…Rc8 でルークを好所に展開させた。そちらはこちらが …Be7 と指す(その時は g4 突きがもっと効果的になることは分かっている)のを待っている間に同じくらい有効な手があるか?」と言っている。

 …Be7 を遅らせて得をしようとする別の手は1988年ソ連でのスベシュニコフ対ドルマトフ戦に現れた。その試合で黒は 10…Na5!? と指した。以下は 11.g4 Ne7 12.Nfe1 Bb5 13.Nd3 h5!(これは白のポーンをそらしf5の地点を支配する通例の着想である)14.gxh5 Nf5 15.Be3 Nc4 で激戦になった。この 10…Na5 には 11.Bd3 と指させない余得もある。というのはそれに対して 11…Bb5 で有利になるからである。

11.Bd3

 d4の地点に対する黒のあらゆる圧力にもかかわらずこの手は防げなかった。以前の試合では白が対策を見つけられなかったために黒が次のように楽勝していた。11.Qd3?! a6!(黒は …Nb4 から …Bb5 と指すつもりである)12.g4 Nfe7 13.a4 Na5! 14.b4 Nc4(黒駒は一手ずつ好所についている)15.Qb3 Nc6 16.Rb1 Be7 17.Rd1 O-O 18.Be3 Qd8!(駒の再編成でc4のナイトを補強する)19.h3 b5 20.axb5 axb5 21.Ra1 f6!(ここから白の中原の眼目の解体を始める)22.exf6 Rxf6 23.Nfe1 Nxe3 24.fxe3(24.Nxe3 または 24.Qxe3 ではb4のポーンが落ちる)24…Qc7 25.e4 Rf2!!(これが決め手の手筋になった)26.Kxf2 Qh2+ 27.Ke3 Bg5+ 28.Kd3 Nxb4+! これで 29.Qxb4 と取っても 29…dxe4+ 30.Kxe4 Qxe2+ から詰みになるので白が投了した(ヤノフスキー対キンダーマン戦、ビール、1991年)。

 もちろんここでの 11.g4 突きの可能性を無視することはできない。黒のナイトを閑所に追い払うことはできないけれども、それでも自陣を広げこの戦法での基本的な着想の一つであることには変わりない。このあとの想定手順は 11.g4 Nfe7 12.Nfe1(白はナイトをg2からe3に捌いて f4-f5 突きに加勢させるつもりである。fポーンの進路を空ける別の手段は 12.Nh4 で、それに対して黒は 12…Ng6 は避けた方がよい。なぜなら 13.Ng2!-眼目の手-13…f6 14.f4 Be7 15.Be3 となって白が陣地の広さを誇るからである。そのため1992年ロシアでのスベシュニコフ対ウリビン戦では黒は 12…Nb4 と指した。以下 13.Nxb4 Qxb4 14.f4 Nc6 15.Be3 Be7 16.Ng2 となった時スベシュニコフの考えでは黒は 16…f5 と突いてキング翼での白ポーンの伸張をせき止めるべきだった)12…h5(12…Na5!?)13.gxh5 Nf5 14.Be3 となって、ここで黒は(1983年アテネでのスベシュニコフ対スカルコタス戦での)14…Nb4 でなく 14…Na5 15.b3 Bb5 で乱戦に持ち込むか、いっそのこと 14…Qxb2!? と取るべきである。

11…a5!?

 11…Nfxd4? は 12.Nfxd4 Nxd4 13.Be3 Bc5 14.b4! で駒損になるので駄目である。ここでの 11…Be7 は黒の布局の趣旨と相容れない。なぜなら 12.g4! Nh6(もちろんdポーンは Be3 があるのでまだ手をつけられない。一方 12…Nh4 13.Nxh4 Bxh4 は 14.g5 でビショップの退路を断たれ 15.Qg4 または 15.Qh5 で駒得を狙われるので危険である)13.h3! でh6のナイトが困った事態になるからである。本譜の他には 11…Nb4 や 11…Na5 もある。

12.a3

 これで黒がdポーンを取ってくればやはり b4! 突きがある。

12…a4!

 これは相手の弱体化したクイーン翼の白枡、特にb3の地点につけ込む目的である。狙いは …Na5 のあと …Nb3 または …Bb5、…Bxd3 そして …Nc4 と指すことで、そうなればナイトが手のつけられない駒になる。

13.Bxf5

 このビショップ切りで白の白枡への影響力がかなり弱まる。従って黒が展開を完了できれば当然展望に優るようになるので、その前に果敢で激しい打撃を黒にくらわす必要がある。

13…exf5 14.Ne3 Qb5

 これは不自然な手だが、代わりに 14…Be6 では 15.Qxa4 と取られる。本譜で黒は余裕を与えられれば、…Be7、…Be6 そして …O-O で陣容を固められる。そうなれば …Na5 から …Nc4 と指す用意ができて有望になる。だから白は迅速に動かなければならない。

15.b3!

 この手は黒クイーンの不如意な位置を利用している。この手に対して黒が 15…Qxb3 と取るのは 16.Qxb3 axb3 17.Nxd5 となって黒の中原が粉砕されるので破滅を招く。

15…axb3 16.Rb1 Be6

 黒は次のようにポーン得にしがみつく(というよりはできるだけ長くポーン得にしがみついて展開を完了する手数を稼ぐ)ことができた。16…Na5 17.Nd2?! Be7 18.Nxb3 O-O しかし 17.Bd2! という強手がありそうである。例えば 17…Bxa3 18.Bxa5 Qxa5 19.Qxb3 でd5のポーンを狙う。

17.Rxb3 Qa6 18.Bd2

 黒の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(17)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第2局
ギド対フォイソル
モンテカティーニ、1994年
突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Bd7 6.Be2

 白はdポーンに煩わされないように 6.dxc5 と取ることもできるし(第16局で考察する)、ミルナー=バリーの 6.Bd3 で 6…cxd4 7.cxd4 Qb6 8.O-O!? のあとdポーンをギャンビットすることもできる。白は展開で差をつけ攻撃の機会を得るために気楽にポーンをくれてやり、黒が展開できる前にたたきつぶすことを期待している。しかし局面が閉鎖的なせいで白が動的な互角より多くを達成するのは難しい。このような直接的なやり方はチェスの超一流の階層では決してはやることがなかった。しかし多くのクラブ選手と一部の国際マスターにはミルナー=バリーを愛用する者がいる。だから用心するにこしたことはない。

 8…Nxd4 9.Nxd4 Qxd4 のあと最善の手順は 10.Nc3(10.Qe2 f6! =/+ ケレス、10.Re1 Ne7 11.Nc3 a6 =/+ エストリン)10…Qxe5 11.Re1 Qb8 12.Nxd5 Bd6 13.Qg4 Kf8 14.Bd2 h5 15.Qh3 のようである。そして1990年オスロでのピハラ対マクドナルド戦では次のように黒が優勢になった。15…Nh6!? 16.Ne3 Kg8 17.Nc4 Bc7 18.Qxh5 Nf5 19.Qg5 Bxh2+ 20.Kf1 Bb5! 21.b3 Qd8 22.Bxf5 exf5 23.Qxd8+ Rxd8 24.Bc3 Ba6! 25.a4 Bc7 26.Ke2 Rh4 -+

6…Nge7

 この手では 6…f6 と突くこともできる。例えば1984年ソチでのスベシュニコフ対バイセル戦では 7.O-O fxe5 8.Nxe5 Nxe5 9.dxe5 Qc7 10.c4! O-O-O! 11.cxd5 Qxe5 12.Bf3 exd5! 13.Re1 Qd6 ∞ と進んだ。

7.Na3

 他に有力な手は1990年グレステッドでのバシューコフ対レビット戦での 7.O-O Nf5(7…cxd4 8.cxd4 Nf5 には 9.Nc3 がある)8.Bd3 Nh4! 9.Nxh4 Qxh4 10.Be3 Qd8! = がある。

7…cxd4 8.cxd4 Nf5

 これで第1局と同じになった。別の作戦は 8…Ng6 で、1990年パンプローナでのデ=ラ=ビジャ対コルチノイ戦では 9.h4 Be7 10.g3 O-O 11.h5 Nh8 12.Nc2 f6 13.exf6 Bxf6 14.b3 Nf7 = と進んだ。

9.Nc2 Qb6 10.O-O

 黒の手番 

(この章続く)

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布局の探究(23)

「Chess Life」1991年6月号(1/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

死者を蘇らせる 後編

白のシステム

 布局における白と黒の目的がまったく違うことを認識することはとても大切である。黒は互角にしたことに満足できるが、白は先着の利を保つことに努めるべきである。これは黒のシステムの復活を語るとき、定説の「白良し」の変化の場合よりも悪くならないことを期待することを意味している。復活した白のシステムは何らかの有利に至るべきである。不利から互角に改善するのはほとんど白の価値にならない。

 以下では白のシステムの復活における最近の三つの重要な展開を分析する。

A)グリューンフェルト防御交換戦法

 グリューンフェルト防御 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 はオーストリアのマスターで理論家のエルンスト・グリューンフェルトが国際大会の実戦で指した1922年に始まった。そもそもの最初から現在まで「退治」の最も主眼となる試みは次の交換戦法だった。

4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7

 図1

 白は強大な中原を築いた。中央のポーンがそれぞれ4段目に陣取っている。さらに黒は中央で絶対白と張り合うことができない。なぜなら黒は自分のdポーンを白のbポーンと交換したのも同然だからである。黒の基本となる戦略は通常は …c5 突きで白の中原に挑み、それから突き崩して破壊することである。そのためグリューンフェルト防御は非常に不均衡な戦いのチェスになる。

1)旧交換戦法

 半世紀以上もの間白駒の唯一の正しい展開は 7.Bc4 c5 8.Ne2 であると考えられていた。この陣形は時の試練に耐えてきた。私はこれからもずっと完全に成立し続けると予想している。とはいえこの陣形には二つの欠点もある。白枡ビショップが浮いているので黒に …Qc7 および/またはあとで …Na5 と先手で跳ねる機会を与えている。もっと重要なことは Ne2 が釘付けを心配することなくd4のポーンを守っているが防御専門の駒になっていることである。

 ナイトをf3の地点に跳ねるのは「明らかに」悪いので白は他に選択肢がないというのが金科玉条とされていた。もちろん当時の文献はこの「常識」を反映していた。たとえば1976年に出版された「Encyclopedia of Chess Openings D」の第1版は(図1から)7.Nf3 c5 に2行だけしか割り当てず、そのうち用心深い 8.Be2 に1行、他は消極的な 8.h3 に1行だけだった。今日好まれている2手(8.Be3 と 8.Rb1)は脚注さえも与えられなかった。

2)現代交換戦法

 1970年代の終わり頃に世界の一流選手たちは 7.Nf3 を調査し始めた。彼らの論点はこんな健全で普通の手がなぜ評判のように悪手ということがあるのだろうかということだった。彼らは次のような以前の試合の妥当性を問題視した。7…c5 8.Bc4?! Nc6 9.Be3 O-O 10.h3 Qa5! 11.Qd2 cxd4 12.cxd4 Qxd2+ 13.Kxd2 Rd8 14.Bd5(ビドマール対アリョーヒン、ノッティンガム、1936年)ここで 14…e6 なら黒がはっきり優勢になっていた。この探究の先頭に立っていたのが世界チャンピオンのアナトリー・カルポフだった。

 今ではもう現代交換戦法はグリューンフェルト防御に対する主流手順の一つになっている。ECO D の第2版(1987年発行)では43行もの段落になっている。7.Nf3 c5 のあと

 図2

現在の最も人気のある手順は・・・

 a)8.Be3 白はd4の地点を過剰防御しクイーン翼ルークをc1に展開する用意をした。これは最初の「高級な」変化だった。第2図からこのように指し進めるのはかなり当然のように思われる。しかしそう考えるのでさえGMたちにとっては図2が見る価値があるとまず信じることが必要だった。

 50年以上もの間我々はそう考えなかった。いったん 8.Be3 の綿密な調査が始まると早々の …Bg4 に基づいた黒の反撃は 8…O-O 9.Rc1 Bg4 またはすぐの 8…Bg4 のあと何も特別なことはないと分かるのは難しくなかった。現在は 8…Qa5 が黒の最も普通の応手になっている。

 b)8.Rb1 ここ4、5年はこれが現代交換戦法の主流手順になっている。白はこのルークを黒の黒枡ビショップの利きからはずし黒のクイーン翼に圧力をかける地点に位置づけた。このような融通性のある方針は現代の布局の指し方の精神に非常に合致している。白には直接の狙いがないので、黒は 8…O-O でキング翼の展開を完了する余裕がある。それから白は同じ目標に沿って 9.Be2 と指し黒にいろいろな作戦の選択肢を与える。最も一般的な作戦は 9…Nc6、9…b6 そして 9…Bg4 である。

 総じて研究の余地は豊富に残っている。

 この発見(つまりナイトのf3への展開が白にとって満足のいくこと)の重要性は、この局面がいくつかの布局定跡から容易に生じやすいということにある。両者とも転移の可能性について承知していなければならない。特に黒は次のよくある手順から現代交換戦法と対峙することに備えておかなければならない。

 1.d4 布局から 1.d4 Nf6 2.Nf3 g6 3.c4 Bg7 4.Nc3 d5 5.cxd5 Nxd5 6.e4 Nxc3 7.bxc3 c5

 1.Nf3 布局から 1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7 7.d4 c5

 イギリス布局から 1.c4 Nf6 2.Nc3 d5 3.cxd5 Nxd5 4.Nf3 c5 5.d4 Nxc3 6.bxc3 g6 7.e4 Bg7

 旧交換戦法と現代交換戦法はグリューンフェルト防御に対する信頼できる手法であり続けるだろう。どちらも白が中原での優位を一貫して利用に努めることができる。

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カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(16)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

 突き越し中原は実際には多くの布局から生じる。次の例は実は 3.Bb5+ のシチリア防御から始まったが、前局のように白が収局でどのように …f6 突きを封じ込めることができるかをよく表わしている。

 白の手番 
ショート対マイルズ
マスター試合、1981年

 手番は白で、黒は 24…f6! 突きを狙っている。その時白が exf6 と取るしかなければ(しかし exf6 には …gxf6 でなく …Bxf6 と応じなければならないことに注意がいる。…gxf6 の方が陣形的には望ましいが残念ながら Ng4! でポーンが落ちる)黒は前局で見たように締めつけられた状態から脱することになる。そこで16歳のショートは普通はあり得ない退却の手を指した。

24.Ng1!

 これで黒が …f6 と突いてくれば f4 突きで中原を支えることができる。従って黒は締めつけられたままとなる。ここからの白の作戦概要はキング翼のポーンを突いていき、状況により f5 または g5 と突いて敵陣突破を図ることである。g1のナイトは中原の守りに役立てるためにe2に再配置されることになる。

24…Na8

 黒も珍しいナイト引きで可能性を良くしたがっている。しかしクイーン翼には白の目標がない。

25.Ne2 Nb6 26.f4 Ke8 27.g4 Kd7 28.Rg1 Na4 29.Nd1 Rh8

 30.g5 と突かれると 30…hxg5 31.fxg5 のあと白にパスhポーンの可能性ができるか、31.gxh6 gxh6 32.Rg7 によってルークに侵入されるので、それを牽制した。しかし白には別のポーン突きがあった。

30.f5!

 これはこの戦法における主眼のポーン突きである。白はf列を素通しにし、働きに優る小駒(この優位はもちろん陣地が広いことによりもたらされる動きやすさによるものである)でルークがf列を支配するのを保証する。

30…Nb6 31.Nf4 Rf8 32.Ne3 Rc8 33.fxe6+ fxe6 34.Ng6 Ke8 35.Rf1 Nd7 36.Ng2

 これは次に 37.N2f4 と行くつもりで、そうなれば黒は完全に手一杯になる。

36…Bg5 37.N2f4 Bxf4 38.Rxf4 a5 39.Nh8!

 これもショートの見事な捌きである。このナイトはd6の地点を目指している。

39…b6 40.Nf7 Ke7 41.g5 hxg5 42.Rf1

 この手は 42.Bxg5+ Ke8 43.Nd6# を狙っている。しかしあとで分かるように 42.Rf2! の方が良かった。

42…Nb4+ 43.Ke2 Rc2 44.Kd1 Rxb2

 白が 42.Rf2 と指していたらこの反撃は 45.Bxg5+ でルークを素抜かれるので不可能だった。だから黒は完全に敗勢だった。

45.Bxg5+ Kf8 46.Nd8+ Kg8 47.Rf7 Nf8?

 黒は 48…Rg2! と指さなければならなかった。もっとも 48.Rxd7 Rxg5 49.Nxe6 となって白が勝てそうである。

48.h6!

 これで白の駒得になる。今度は失敗せずに白が勝ちきった。

48…gxh6 49.Bxh6 Rg2 50.Rxf8+ Kh7 51.Bd2 Nd3 52.Nxe6 Nxb2+ 53.Kc1 Nc4 54.Bc3 Rg1+ 55.Kc2 Rg2+ 56.Kb3 b5 57.Nf4 Rf2 58.e6 b4 59.e7 Nd6 60.Nxd5 Re2 61.e8=Q a4+ 62.Qxa4 1-0

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(15)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

20.Ne1

 これでは黒に中原の締め付けを破らせてしまう。しかし 20.b4 突きは次のようにもう手遅れだった。20…Bh5 21.Ke3 Bxf3 22.Kxf3 fxe5 23.dxe5 Nc6 これで白ポーンが落ちる。この変化は白ルークがc5の地点で遊んでいる(e5の地点を守れない)ことを示している。これはまた白が適時に b4 と突くのがいかに大切だったかも明らかにしている。そう突いておけば黒ナイトがc6の地点から白の中原に圧力をかけるのを止めるためにb5の地点に突く選択肢があった。

20…Nc6 21.exf6 gxf6

 黒は望みのポーン中原を獲得した。まだそれほど優勢にはなっていないが、危険がすべて去ったことは確かである。

22.Ke3 Ke7 23.f4

 …e5 突きを防ぐのは良い方針である。

23…Kd6 24.Rc1 Rg8 25.Bxh7?

 この悪手で黒ルークを白陣に侵入させてしまう。25.g3! 突きのあとチェス新報第41巻の自戦解説によればグレビッチの意図は 25…Rg7 26.Nf3 Re7 27.Nh4 Bd7 だった。黒が …e5 と突く機会をうかがうのに対し白はただ待っているしかないので黒がわずかに有利だが、引き分けが順当な結果だろう。

25…Rh8 26.Bc2 Rxh2

 これで黒はポーン陣形の優位に加えて非常に強力なルークを持つに至った。まもなく黒ビショップがe4の圧倒的な地点を占め、白が持ちこたえられなくなる。

27.Ba4 Bg6 28.Bxc6 bxc6 29.Kf2 Rh4 30.Ke3 Be4 31.Rc3 Rg4 32.Ra3 Rg3+ 33.Nf3 Rxg2 34.Nd2 Rg3+ 35.Ke2 Rxa3 36.bxa3 c5 0-1

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(52)

「Chess Life」2004年8月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット(続き)

戦型Ⅲ 傍流手順
1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5

 4.Nf3 bxc4 5.Nc3 d6 6.e4 g6 7.Bxc4 Bg7 8.e5 dxe5 9.Nxe5 も白の悪くない手順である。白はこの手順ではポーン得にならないが非常に動きの激しい局面にすることができる。黒としては代わりに 4…b4 や 4…g6 も考えられる。

4…a6

 白はa6で取るほかに布局の優位を求めて戦ういろいろな手段がある。長年 5.e3 と 5.Nc3 の2手だけが 5.bxa6 に代わる有力な手だった。最近では 5.f3 と 5.b6 もそれに加わっている。

5.b6

5…d6

 5…Qxb6 なら次のように白が少し優勢になる。6.Nc3 d6 7.e4 g6 8.Nf3 Bg7 9.Be2 O-O 10.Nd2!(強硬な作戦)10…Nbd7 11.Nc4 Qd8 12.Bf4

6.Nc3 Nbd7 7.a4 a5 8.e4 g6 9.Nf3 Bg7 10.Bb5 O-O 11.O-O Bb7 12.h3 Nxb6 13.Bf4

 白は e4-e5 突きの準備をしているがd5ポーンが圧力を受けているので実際にやるのはそう簡単でない。黒には 13…Nh5 14.Bh2 Bh6! から …Nh5-f4 という面白い狙いがあって難解な局面になる。

最終結論

 活発な指し方が好きで長い間ポーン損でも気にならないならば、ベンコーギャンビットは黒でのよい選択肢になる。白としてはポーン得でしばらく受け身に立ってもかまわないか、それともポーンの犠牲を拒否して戦力の均衡を維持したいか(しかし戦型Ⅲのように主導権は握る)を決める必要がある。最近最も人気がある手段は 5.b6 である。1.d4 Nf6 2.Nf3 でベンコーギャンビットを避けることもできる。

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フランス防御の完全理解(14)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

15.Rhc1

 15.Rac1 の方がキング翼ルークを中央で役に立たせることができるので自然だった。

15…f6!

 黒は白の中原に対して眼目の攻撃を始めた。

16.Rc5

 これは当てずっぽうの手である。もちろん 16.Rc7? は 16…Bc6 でルークが捕まる。しかしクイーン翼のポーンを使って黒を締めつける方が良かった。16.b4! と突けばあとで …Nc6 と来たときに b5 と突くことができる。このあと分かるようにこれは非常に重要である。

16…Kd8!

 この手はc7の地点をおさえ、d7のビショップをe8からh5へ転送する準備になっている。

17.Bd3

 これは好手でh7のポーンを当たりにしてルークをh8に縛り付けている。そして 17…Nf5 には 18.Bxf5 exf5 19.Rxd5 と応じることができる。

17…Rc8 18.Rac1

 ここは 18.Rxc8+ と取る方が良かった。というのは実戦では当てのない白ルークがc5の地点に取り残されたからである。そのあと 18…Kxc8 には 19.b4! と突き 19…Be8 には 20.Re1! と応じることができる。黒は 21.exf6 の狙いに対処が難しい(もちろん黒が 20…Bd7 で19手目を取り消さなければの話である)。例えば 20…Kd7 なら 21.Bb5+ Nc6 22.Bxc6+ bxc6(この一手)23.Re3! Bh5 24.Ra3 で白の有利な収局になる。また 19…Nc6 なら 20.b5! Na5 21.Kc3 から 22.Kb4 となって、黒のナイトがa5の地点で遊び駒になる。

18…Rxc5 19.Rxc5

 19.dxc5 と取ると 19…Nc6 20.Re1(白は 20.exf6 と取りたくない。そう取ると 20…gxf6 と取り返され黒にあとで …e5 と突かれて強力な中原を作られる)20…Ke7 のあと …Be8-h5 からf3のナイトを当たりにされ白がe5の支配を放棄しなければならなくなる。

19…Be8!(図029)

 白の手番 

(この章続く)

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フランス防御の完全理解(13)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例

第1局
シエイロ=ゴンサレス対M・グレビッチ
ハバナ、1986年
突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3

 クプレイチクの指す 5.Be3!? には黒はあまり悩まされる必要がない。例えば1996年米国でのシャケド対J・ワトソン戦では 5…Nh6! 6.Bd3 Qb6 7.Qd2 Ng4 8.Nf3 Nxe3 9.fxe3 Be7 10.O-O c4 11.Be2 O-O 12.Kh1 f6 13.exf6 Bxf6 と進んだ。

5…Nge7

 これが最も流行している手順である。「主手順」の 5…Bd7 と古典の 5…Qb6 は後の試合で考察する。注意を要するのはすぐに 5…f6 と突く手で、6.Bb5! が良い応手になりe5の地点を支配される。最後に、白に 6.Na3 でなく 6.Bd3 と指させる目的の 5…Nh6!? は 6.dxc5 が良い応手となることがスベシュニコフによって示された。

6.Na3

 黒の手順に対して白は 6.Bd3 cxd4 7.cxd4 Nf5 8.Bxf5 exf5 と指すこともできる。この閉鎖的な局面はさして黒が指しやすいことはない。このあとの手順の例を二つ挙げると、1986年ソチでのスベシュニコフ対チェルニン戦では 9.Nc3 Bb4!? 10.Bd2 Bxc3 11.Bxc3 Be6 12.Qd2 a5! = と進み、1992年マニラ・オリンピアードでのティプセイ対グダンスキー戦では 9.O-O Be7 10.Nc3 Be6 11.Ne1(11.Ne2 g5!)11…Qb6 12.Ne2 O-O 13.Kh1 Kh8 14.Nd3 +/= と進んだ。

6…cxd4 7.cxd4 Nf5 8.Nc2 Bd7 9.Be2 Nb4

 9…Qb6 と 9…Qa5+ はそれぞれ第2局と第3局で分析する。

10.Nxb4

 1993年サンクトペテルブルグでのスベシュニコフ対ドレエフ戦では白は 10.O-O と指し、次のように黒の風変わりな指し方のあと白が圧倒的に優勢になった。10…Nxc2 11.Qxc2 h5?!(g4 と突かせないようにしてf5のナイトを堅固にする意図だが、フランス防御の突き越し戦法では滅多に良い手とならない。なぜならキング翼、特にg5の地点をひどく弱め、黒キングが安息の地を得られなくなるからである。1995年ビールでのカンポーラ戦ではドレエフは 11…Qb6 12.Qd3 Rc8 13.Rd1 h6!? 14.h4 a6 15.a4 Bb4 と改良し勝った)12.Bd2 Be7(12…Qb6 13.Bc3 Bb5 なら +/= にしかならない)13.Bd3! Qb6?!(13…Rc8 の方が良い。とっぴな 13…g5!? は 14.Bxf5 exf5 15.Rfc1 でスベシュニコフによると±だそうである。しかし奔放な 15…f4!? 16.h4 gxh4 17.Bxf4 h3 ではっきりしない)14.Bxf5 exf5 15.Bg5!(有利な黒枡ビショップ同士の交換を行なう)15…Bxg5 16.Nxg5 Qxd4 17.Rfd1 Qh4 18.Qd2! Qc4(18…Be6? は 19.f4! で黒クイーンが閉じ込められる)19.Rac1 Qb5 20.a4! Qb3 21.Rc3 Qb6 22.Qxd5 O-O 23.a5!(23.Qxd7?? Rad8)23…Qxb2 24.Qf3!(h5の弱点のせいでついに黒が滅ぶ。25.Qxh5 のためにビショップを救う暇がない)24…g6 25.Rxd7 白の楽勝に終った。

10…Bxb4+ 11.Bd2 Qa5 12.Bxb4 Qxb4+ 13.Qd2 Qxd2+ 14.Kxd2 Ne7

 白の手番 

(この章続く)

2012年11月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(12)

第1章 突き越し中原(続き)

黒のクイーン翼での指し方

 

 黒はクイーン翼の方に駒が多いのが普通で、白にb2と特にd4の地点を守らせる。そしてしばしばその圧力を利用して、…Na5 からもちろんb6のクイーンの助けで …Bb5 と指すことにより自分の「不良」白枡ビショップを白の「優良」白枡ビショップと交換することに努める。a5のナイトもc8のルークの支援でc4の地点に飛び込める。

 

 白はもちろんたやすく事を運ばせないが、たとえ a3 から b4 と突いて自陣を広げることに成功しても、それでも黒は手の込んだ …a5、b5 Na7、a4 Nc8 という捌きのあと …Nb6 から …Nc4 によってc4の地点を目指すことができる。この捌きを有効にするためには黒はc8とb6の地点を空けておかなければならないことに注意がいる。白が a4 と突いた場合も黒のビショップがb4の地点に行ける。

 …a5 突きは白がクイーン翼のポーンを全然突いていなくても役に立つことがある。というのは黒が駒をb4に進めてaポーンで取り返しa2ポーンに通じるa列を素通しにする策を講じることができるからである。もし白が a3 または b3 と応じれば …a4 突きが良い手になる。

(この章続く)

2012年11月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(295)

「British Chess Magazine」2012年7月号(1/1)

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棋力診断

IMショーン・トールバット

 あなたはヒカル・ナカムラと並んで白番を持ち、米国チェス界の新鋭のレイ・ロブソンと対局する。場所はセントルイスでの全米選手権戦である。テストは6手目から始まる。17、39、および42手目には特に注意すること。紙で指し手を隠しながら読んだ手を書き留める。すべて終わったら得点を推定棋力表と比較する。しかしドラゴンはまだ火を噴くことに注意せよ。

白 H.ナカムラ
黒 R.ロブソン

全米選手権戦、2012年
シチリア防御 B76

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6

 古典ドラゴンはシチリア防御の中で黒の最も攻撃的な戦法の一つである。

6.Be3

 2点。この手はドラゴンに対する最も直接的な戦型である。白はクイーンをd2に上げてクイーン翼にキャッスリングし、黒キングに対する攻撃を始める作戦である。

 6.f4 と 6.Be2 はそれぞれ1点。

6…Bg7

7.f3

 1点。この手は …Ng4 を防ぎ Qd2 と指せるようにしている。

7…Nc6

8.Qd2

 1点。この予定の手はクイーンとビショップをc1-h6の斜筋に並べ、たぶん将来 Bh6 と指してドラゴンビショップと称される黒の黒枡ビショップと交換する用意をしている。

8…O-O

9.g4

 2点。白は主手順をはずしてこの面白いわき道に入った。9.Bc4! が主手順で3点。

9…Be6

 グアム生まれのロブソンは白に交換させる犠牲を払ってビショップをこの地点に展開することができる。9…d5 10.g5(!) は白が良い。d5のポーンが落ちてそれに対する黒の代償は不十分である。

10.Nxe6

 2点。白はビショップを取り二重ポーンにさせた。その明らかな欠点は黒の中原の支配が強まったことである。10.O-O-O は1点。このあと 10…Nxd4 11.Bxd4 Qa5 12.g5 Nh5 13.Bxg7 Kxg7(黒が面白い)14.Kb1 Rac8 15.Qd4+ f6 16.Nd5 Bxd5 17.exd5 Qc5 18.Qxc5 Rxc5 で黒が黒枡を支配しているので収局で優勢である。

10…fxe6

11.O-O-O

 2点。白は挑戦を受けて立ちキング翼襲撃の準備をした。11.Be2 は1点。黒はすぐに強く 11…d5(!) 12.g5 Nxe4 13.fxe4 d4 と指すことができる。

11…Ne5

 11…d5 が必須で黒にもチャンスがある。12.g5 Nxe4 13.fxe4(13.Nxe4 は 13…dxe4 14.fxe4 Qc7 で黒が反撃できる)13…d4 14.Bh3 dxc3 15.Bxe6+ Kh8 16.bxc3 となれば黒は全然問題ない。

12.Be2

 1点。

12…Qc8

 黒はナイトをc4に置くことを目指している。12…Qa5 13.g5 Nfd7 14.f4 Nf7 もc3の地点に圧力がかかっているので黒が満足である。

13.h4

 2点。黒がc列で戦いを起こせるようになる前にナカムラはキング翼で攻撃しなければならない。白の狙いは h5 と突いて列を素通しにすることである。

13…Nfd7

 黒はf3の地点を攻撃して白の注意を h5 突きからそらすことを期待した。

14.f4

 2点。この手で主導権を維持している。14.Rh3 は 14…Nb6 15.h5 Nbc4 16.Bxc4 Nxc4 17.Qd3 g5 18.Bxg5 Qc5 19.Bd2 Qb4 となって私なら黒を持ちたい。

14…Nc4

15.Bxc4

 1点。この交換が最善である。15.Qd3 は 15…Nxe3 16.Qxe3 Qc5 となって圧力をかけられるので無得点である。

15…Qxc4

16.e5

 2点。このポーン突きは黒ポーンの釘付けを利用していて、黒のビショップの利きを止めている。16.h5 は 16…Bxc3 17.Qxc3 Qxc3 18.bxc3 gxh5 19.g5 Rac8 で黒にc列から反撃される。

16…Nb6

 もう勝負どころである。白は積極的に指さなければならない。

17.h5!

 3点。白はキング翼をこじ開けて詰みを目指す。黒がクイーン翼で既製の攻撃態勢が出来上がっているので他の手は遅すぎる。17.exd6 は 17…exd6 18.h5 Bxc3 19.Qxc3 Qxc3 20.bxc3 Nd5 で黒に不満がない。17.Bxb6 axb6 18.h5 Qxf4 19.hxg6 hxg6 20.exd6 Bxc3 21.Qxf4 Rxf4 22.bxc3 exd6 23.Rxd6 Rxa2 は黒の少し有利なルーク収局になる。

17…dxe5

18.hxg6

 2点。18.fxe5? は 18…Bxe5 19.hxg6 hxg6 となって白が実戦のようにクイーンをh2に転回させることができない。

18…hxg6

19.Qh2

 2点。Qh7+ による黒キングへの必殺の狙いがあり白の態勢は最良である。

19…Rxf4!

 交換損のルーク切りは黒の勝負手である。実際のところは絶対手で、19…exf4 は 20.Bd4 Bxd4(20…e5 なら 21.Bxe5 Bxe5{21…Rf7 22.Qh8+ Bxh8 23.Rxh8#。21…Rf6 22.g5 は白勝勢}22.Qh7#。20…Rf6 なら 21.g5)21.Qh7# で詰みになる。19…Kf7 20.fxe5 の方が白にとって厄介だが 20…Rh8 なら 21.Qf2+ で勝勢を維持するに十分である。

20.Bxf4

 2点。白はクイーン同士の交換になる犠牲を受け入れなければならない。20.Qh7+ は 20…Kf7 で …Rh8 の狙いが残る。

20…Qxf4+

 20…exf4 は 21.Qh7+ Kf7 22.Rh6 f3 23.Qxg6+ Kf8 24.Rh7 Qf4+ 25.Kb1 Qf6 26.Qxf6+ exf6 27.Rh3 Rc8 28.Rxf3 Rc4 29.Rg3 で白の有利な収局になる。

21.Kb1

 1点。f4で取ると黒の二重ポーンが解消されるので取らない方が良い。

21…Qxh2

 21…Nc4 は 22.Qh3 Rc8 23.Rd7 で白が良いと思う。

22.Rxh2

 1点。黒は交換損の代わりに2ポーン得になっているがそれらは弱い。g7のビショップを自由にできれば反撃も有望になる。

22…Rf8

23.Ne4

 ナイトをc5かg5に行かせるこの積極的な手は2点。23.Re2 は 23…Rf4 24.g5 Nc4 25.Ne4 で指せるので1点。

23…Rf4

24.Ng5

 1点。

24…Rxg4

25.Nxe6

 1点。ナイトが敵陣に跳びこんだ。

25…Bf6

26.b3

 2点。これは大切な手で、白ルークを最下段から解放し、黒ナイトがc4を通って侵入するのを防いでいる。

26…Nc8

27.c4

 2点。このポーン突きはb7のポーンを取ってパスポーンにする目的である。27.Rd8+ も指したくなる手だが 27…Kf7 のあと 28.Rxc8 Kxe6 で反撃できて黒が良い。

27…Nd6

28.c5

 1点。白は黒の手を恐れず自分の作戦を続けている。これはカスパロフとのトレーニングで教わったことなのだろうか。

28…Nb5

29.Rd7

 1点。

29…Kf7

30.Rxb7

 1点。ナイトに対する当たりはチェックで返されるが、白は戦術を読んでいた。

30…Rg1+

31.Kc2

 1点。31.Kb2 は 31…e4+ 32.Kc2 Na3+ 33.Kd2 Kxe6 34.Rxa7 Nb5! で黒が勝つ。

31…Na3+

32.Kb2

 1点。駒損しないためにはこの手しかない。

32…Nb1

 黒は …e4+ で救うことができることを知っていてナイトを変な地点に進めた。代わりに 32…Kxe6 は 33.Kxa3 Rc1 34.Kb4 でcポーンを守り Kb5 から Kc6 の用意ができる。

33.Nd8+

 1点。ナイトはここに行かなければならないが、黒キングの当たりからの逃げ道は用意してある。

33…Ke8

34.Nc6

 1点。ここしかないが良い手である。

34…e4+

 黒のeポーンは危険な存在だが白はチャンピオンになるだけあって自陣の潜在力を見通していた。

35.Kc2

 1点。

35…Na3+

36.Kd2

 こう指すよりないが1点。

36…Nb1+

37.Ke3

 1点。白キングはチェックを逃れながら前進する。

37…Re1+

38.Kf2

 1点。

38…Rc1

 重大な局面である。

39.Rh7!!

 d7に狙いをつけるこの好手は4点。

39…Rc2+

 39…Rxc5 なら 40.Nxe7 Rh5 41.Rxh5 gxh5 42.Nf5 a5 43.Nd6+ Kd8 44.Nxe4 Bh4+ 45.Kf3 で白が圧倒的に優勢になる。この変化を読んでいたらボーナスとして1点。

40.Kg3

 1点。白はチェックをかわさなければならない。

40…Rc3+

41.Kg4

 1点。キングが少しずつ前進する。

41…e3

42.Nxe7!

 3点。これが狙い筋で、このポーンを取ればルークによる詰み狙いの攻撃に黒キングが防御不可能になる。

42…e2

43.Nd5!

 レイ・ロブソンにポーンを昇格させるこの卓抜した着想は3点。

43…Rg3+

 43…e1=Q は 44.Nxf6+ Kf8 45.Rbf7# で詰みになる。

44.Kf4

 1点。必須。白はこの大胆な手を指さなければならない。

44…Bg5+

  44…e1=Q は 45.Nxf6+ Kd8 46.Rb8# で詰む。

45.Ke5!!

 この妙手は3点。キングが盤上を駆け上がって詰みの攻撃を助ける。

45…e1=Q+

46.Kd6!

 2点。この妙着で黒にチェックでクイーンを作らせても Rh8 による詰みの狙いがある。

46…Bf4+

 46…Be7+ なら 47.Rbxe7+ Qxe7+ 48.Rxe7+ Kf8 49.c6 Nc3 50.c7 Nb5+ 51.Ke6 Nxc7+ 52.Rxc7 で白の勝ちになる。

47.Nxf4

 1点。黒は駒を犠牲にして詰みを防ごうとしてくる。

47…Rd3+

 47…Qd2+ は 48.Nd5 で詰む。

48.Nxd3

 1点。

48…Qg3+

49.Ne5 1-0

 1点。黒は詰みを防ぐことができないので投了した。

 そして得点を合計して下表と比較する。

 70点(満点) あなたは来年3月ロンドンで開催される挑戦者決定大会に招待されるべきである。
 64-69点 グランドマスター
 54-63点 国際マスター
 51-62点 FIDEマスター
 40-50点 国内マスター
 30-39点 地域強豪選手
 20-29点 クラブ選手
 10-19点 初心者
 0-9点 もよりのチェスクラブに入りなさい

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(この号終わり)

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フランス防御の完全理解(11)

第1章 突き越し中原(続き)

白が a3 と突く

 白はあとで b4 と突く意図で a3 と突くことがある。これでb2の地点が空き Bb2 が可能になってd4への守りが増える。さらに黒からの …Bb4+ と …Na5 もなくなる。従って黒はクイーン翼での陣地を奪われる。

 

 最後に、白は exf6 と取る代わりに黒に …fxe5 と取らせることもできる。ポーンが既にd4の地点で交換されていれば、白は dxe5 と取って弱いdポーンを解消しd4の要所を確保する(例えば b4-b5 から Nf3-d4)。これに対して黒はそれほど弱くないe5のポーンに圧力を集中し、半素通しf列とパスd5ポーンの活用に期待することができる。

 白は a3 と b4 突きを Nb1-c3-a4-c5 の捌き(途中でd4の地点を攻撃しているb6の黒クイーンを追い払うことがよくある)と絡めるのが普通である。c5の白ナイトは黒にとって非常に脅威になりうる。特に黒が …a6 と突いていて(例えば b4-b5 突きを止めるため)…b6 と突けなくなる時、または …f6 と突いていてe6のポーンが弱体化している時はそうである。

 

 だからd4でポーン同士がまだ交換されていなければ、黒が a3 突きに …c4 と応じることがよくある。これでd4の地点に対する圧力がまったくなくなるが、反面白の b4 突きを止めることになる。黒の作戦は局面を閉鎖的に保つことである。特に白のクイーン翼でのどんな侵攻も防ぐか効果的でなくすることを望んでいる。例えばクイーン翼ナイトをa5に、キング翼ナイトをg8からc8を経由してb6に配置してから …Ba4 と指す。

 

 また、黒クイーンはc6の地点からa4の地点へ、またはa4のビショップと協力するためにg8の地点を経由してh7の地点へ行くことさえできる。この手順では黒がクイーン翼にキャッスリングすることがよくある。白の作戦は b3 突きを果たすこと、または黒駒がこの手を防ぐことに没頭している間にキング翼で敵陣突破を図ることである。

(この章続く)

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カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(10)

第1章 突き越し中原(続き)

黒が …f6 と突く

 読者に注意を喚起すると、黒はほとんどすべての戦法で …f6 と突く価値がある。

 

 …f6 と突いたあと黒はクイーン翼ビショップで(…Bd7-e8-h5)、または exf6 Rxf6 から …Rxf3 の交換損の犠牲で、f3のナイトを取り除くことができる。

 白が …f6 突きに exf6 で応じれば、黒は白の広さの優位を減らすことに成功したことになる。通常黒は駒で取り返し、f列(例えば exf6 Rxf6)や白のdポーン(例えば exf6 Bxf6)にさらに圧力を加える手段ができる。この型のポーン陣形は(d4でポーン同士を交換したあと)次の章で詳細に考察する。

 しかし収局では(または中原が閉鎖されているとき、特にc列が閉鎖されていて黒が安全にクイーン翼にキャッスリングできる中盤戦では)、黒は …gxf6 と取り返すことができるかもしれない。そして好機に …e5 と突いていって中原をポーンで征服できるかもしれない。

 

 最後に、白は exf6 と取る代わりに黒に …fxe5 と取らせることもできる。ポーンが既にd4の地点で交換されていれば、白は dxe5 と取って弱いdポーンを解消しd4の要所を確保する(例えば b4-b5 から Nf3-d4)。これに対して黒はそれほど弱くないe5のポーンに圧力を集中し、半素通しf列とパスd5ポーンの活用に期待することができる。

(この章続く)

2012年11月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(22)

「Chess Life」1991年5月号(2/2)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

死者を蘇らせる 中編

閉鎖ルイロペス主流手順(続き)

 それでも絶対的に「完全」でまだ言及されていない黒の手はないのだろうか。私は「火星から来た男」の類推を用いることができると思う。もしそのような人間が上記の原則を教えられ、チェス全般に上達し、それと共にルイロペス定跡については何も知らないとしたら、次の手を指す可能性はすごく高いのではないか。

 (4)9…Bb7!

 何という素晴しい手だろう。黒は白枡ビショップをh1-a8の絶好の対角斜筋に配置することにより円滑に小駒の展開を完了した。短期的には白陣の最も弱い個所はe4のポーンで、黒はそれに圧力をかける準備をしている。

 この戦型が完全に認められるようになったのはこの10年以内でしかない。以前は無視されるか批判されていた。だからレナード・バーデンは名著の1963年版「ルイロペス」で「9…Bb7 は 10.d4 と突かれて悪い」と書いていたし、その証明として 10…exd4 11.cxd4 Na5 12.Bc2 d5 13.e5 Ne4 14.Nc3 f5 15.exf6e.p. Bxf6 16.Nxe4 dxe4 17.Bxe4 Bxe4 18.Rxe4 c5 19.Rg4! cxd4 20.Bg5 d3 21.Bxf6 Qxf6 22.Qxd3 Qxb2 23.Qd5+ Kh8 24.Re1 Rad8 25.Rf4!(タリ対レーマン博士、ハンブルク、1974年)で「白の攻撃が非常にきつい」としていた。

 「チェス定跡百科事典C巻」の第1版(1974年)には正着の 10…Re8 すら記載されていないし、パウル・ケレスの1974年出版の「スペイン布局からフランス防御まで」(ドイツ語)でもそうである。

 執筆に関して重要な問題はこの戦型を何と呼ぶべきかということである。よくGMサロ・フロールまたはGMイゴール・ザイツェフの名前が付けられるが、私には適切だとは思われない。というのは両者とも今日では本筋と考えられる手順を用いていなかったからである。私ならGMグリゴリッチ、GMベリヤフスキー、それにGMバラショフを最もふさわしい守護聖人として推薦したい。

 本題に戻ろう。

10.d4 Re8!

 9…Bb7 の正当性を立証するのはこの手/作戦/構想である。黒は中原に向かって駒を迅速に展開することにより(e4の地点を忘れないこと)白のクイーン翼のよどみない展開を防いでいる。11.Ng5 は 11…Rf8 があるので狙いにならない。数多くの実戦の末そのほとんどが白にとって不満足で 12.Nf3 と戻るしかないことが分かった。そのあと黒は 12…Re8 と繰り返す。これは白からの引き分けの手順と考えることができ、数名のGMがアナトリー・カルポフと引き分けるために利用してきた。

 本譜に代わる手は標準的な布局の原則に背くためにうまくいかなかった。

 - 10…exd4 は 11.cxd4 で中原の支配を白にあげてしまう。
 - 10…Na5 はナイトがそっぽに行く。
 - 10…Qd7 は目的がはっきりしない。

11.Nbd2 Bf8!

 これで 9…Bb7 から始まった再編成が完了した。黒は 9…h6 に大切な1手を浪費しなかったので、白が期待のクイーン翼ナイトの捌きを続ければ 12.Nf1? exd4 13.cxd4 Nxe4 というようにe4のポーンを取ってしまうことができる[訳注 14.Rxe4 Rxe4 15.Ng5 で白が優勢になるので正着は 13…Na5 です]。白はd2のナイトを動かすことができなければクイーン翼の展開に問題が生じる。そしてクイーン翼の展開が完了できなければ布局の優位など得られない。これが上記の手順の論理的考え方であり、9…Bb7 を完全に蘇らせた。さらに 11…Bf8! の局面には黒にとって防御の「ボーナス」さえある。即ちキング翼ルークがeポーンを守っているので、クイーン翼ナイトがc6の地点から自由に動くことができる。

 このことは白枡ビショップの斜筋を通すのが重要な局面で効果を発揮する。この戦型は現在ルイロペスの主流手順になっているので定跡の進歩は膨大な量になりつつある。深く研究されている白の手は 12.a3、12.Bc2 それに 12.a4 である。

 次の積極的で、人気があり、不均衡で、私の見解では非常に議論の余地のある主流手順で探究を締めくくることにする。

12.a4 h6 13.Bc2 exd4

 ここ2、3年でこの中原を放棄するポーン取りが非常に一般的になってきた。黒は自発的に中原を明け渡すことにより反撃の可能性が得られることを期待している。純粋に戦略的な手には 13…Nb8 と 13…Qd7 がある。

14.cxd4 Nb4 15.Bb1

 「戦略の棋理」に照らせば 13…exd4 の妥当性を証明する唯一の手段は白の中原に 15…c5 突きで挑み手順の 16.d5 に 16…Nd7 と指すことである。この局面は諸刃の剣の極致でまだはっきりした結論を得ることができていない。アナトリー・カルポフは1990年カスパロフとの世界選手権戦で(第2局の惨敗のあと)第4、20、22局でこの手順に戻った。

15…bxa4?!

 カルポフらは過去2年間この手で非常にうまくいっていた。それでも私はそれについていつも疑念を抱いていた。中原を放棄し次に自分のクイーン翼のポーン形を乱していくのが、すぐには代償がないならばどうして正しい指し方であり得るのだろうか。しかしもちろんこの手には理屈がある。つまり黒は白のeポーンに圧力をかけ続けることにより白の態勢を崩すことに期待をかけている。

16.Rxa4 a5 17.Ra3 Ra6 18.Nh2!

 これは新手ではないが白の次の手と関連して正しい着想である。以前は f4 および/または Ng4 でキング翼での素早い活動の着想で指されていた。黒にはこれには十分な手段がある。

18…g6 19.f3!!

 これが 15…bxa4?! を「咎める」作戦である。e4の地点を固めることにより白は黒のどんな反撃も事前に予防し、それにより中央でのひどい劣勢とクイーン翼ポーンの分離の代償をないままにさせた。次からの手はこの着想の強力さを見せつけた。

19…Qd7 20.Nc4 Qb5 21.Rc3 Bc8 22.Be3

 白は十分に展開を果たし強みばかりあり不安な箇所はない。カスパロフは44手で快勝した。

 この戦型に関する私の最後の予言は、黒がルイロペスで防御できる限り 9…Bb7 は完全に指せる手となり続けるだろうし、15…bxa4?! と取る変化は復権する見通しがほとんどないだろう。

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フランス防御の完全理解(9)

第1章 突き越し中原(続き)

黒が …Nb4 と指す

 

 黒は …Nb4 のあと …Nxc2 と取って白のd4の重要な守り駒を2個減らすことを狙っている。白は Ne3 Nxe3、fxe3 と指すことはできるが Bxe3 と取り返すことはできない。なぜなら黒が …Nc6(…Qxb2 の狙い)から …Bb4(+) と応じることができるからである。最初に戻って白が Nxb4 と取ると …Bxb4+ と取り返されて、Bd2 ではdポーンを取られるので Kf1 と指さなければならない。しかし白は g3(または g4)から Kg2 で手動でキャッスリングできるのであまり気にする必要はない。白は相手のd4のナイトでチェックをかけられない地点にキングがいる戦術上の利点も得られる(「d4の地点をめぐる戦い」に現れた)。しかしf列での電撃攻撃には注意しなければならない。

(この章続く)

2012年11月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(8)

第1章 突き越し中原(続き)

黒が …Bxa3 と取る

 同様に黒は例えば …Bxa3 と取ってd4の守り駒またはその可能性のある駒を消去することによりd4の地点を間接的に攻撃することができる。

 

 黒は白のポーン陣形を弱めるが(白が既に Be3 と指していれば …Qa5+ ですぐにポーンが取れるが)、自分の良く働いている黒枡ビショップを犠牲にすることになる。

(この章続く)

2012年11月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

ポルガーの定跡指南(51)

「Chess Life」2004年8月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット(続き)

戦型Ⅱ
フェレンツ・ポルティッシュ対スーザン・ポルガー

ハンガリー、1986年

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6 5.bxa6 g6 6.Nc3 Bxa6 7.e4

 これは古い方の主流手順で、できるだけ早く e4-e5 と突こうという直接的な作戦である。ここで白はキャッスリングできなくなってもf1のビショップを交換させる。

7…Bxf1 8.Kxf1 d6 9.Nf3 Bg7 10.h3

 10.g3 から 11.Kg2 の方がもっと普通の作戦である。

10…O-O 11.Ke2

 これは非常に変わった手で、たぶん最善手ではない。白の考えはキング翼のどの枡も弱めることなく普通の手順(g3、Kg2 または Kg1-h2)のようにルークをh1から出してやることである。

11…Na6!

 このナイトはd3の地点を目指している。

12.Re1 Qb6 13.Kf1

 黒キングはなんとか安全な所に収まった。

13…Nb4 14.Re2

 14.e5 には 14…dxe5 15.Nxe5 Rfd8 を予定していて、d5のポーンがもたない。

14…Qa6 15.Ne1

 この手は …Nb4-d3 を防いだ。

15…Nd7

 これもよくある手で、…Nf6-d7-e5 という捌きでもう一つのナイトがd3の地点を得るのを助ける。

16.Bf4 c4! 17.Be3

 17.a3 なら黒は 17,,,Rfb8 と指すことができる(ただし 17…Nc5? は 18.axb4 と取られる)。釘付けのためにナイトは全然危なくない。

17…Nd3!

 17…Ne5 には 18.Bd4、17…Nc5 には 18.Bxc5 がある。

18.Qc2

 ここでは 18.Nxd3 を期待していた。18…cxd3 19.Rd2 Ne5! で 20…Nc4 の狙いがある。また 18.Nf3? には 18…Nxb2! がある。たぶん 18.Qd2!? と指すのが良かっただろう。

18…Rfb8 19.Rb1

 19.b3 は 19…cxb3! 20.Qxd3 Qxd3 21.Nxd3 Bxc3 で白の負けになる。

19…Rb7!

 黒はルークを重ねて白のbポーンにもっと圧力をかけることを意図している。黒には犠牲にしたポーンに対してクイーン翼で十分すぎる反撃がある。

20.Rd2

 20.b3 ならこちらには二つの選択肢があった。一つは 20…Nb4 21.Qd2 Bxc3 22.Qxc3 Nxa2 ですぐにポーンを取り返す手である。もう一つは 20…Nxe1 21.Rbxe1?(21.Kxe1 と取る方が良いが 21…cxb3 22.axb3 Rc8 23.Bd2 Bd4 でやはり黒の方が優勢である)21…cxb3 22.axb3 Rc7!(22…Rc8? なら 23.Qa2! で白のナイトが逃げられる)23.Bd2 Bxc3 24.Bxc3 Rac8 で、釘付けのために白がビショップを失う。

20…N7e5 21.Kg1 Rab8! 22.b3

 22.Nxd3 は 22…cxd3! 23.Qd1 Nc4 24.Rxd3 Nxb2 で白が困る。

22…cxb3 23.axb3 Nxe1 24.Rxe1 Rxb3

 黒はポーンを取り返し活発な局面を維持している。

25.Bd4 Nc4! 26.Rdd1

 26.Rd3 なら 26…Na3 27.Qd2 Rb2 28.Qe3 Bxd4 29.Qxd4 Nc2 で白の駒損になる。

26…Na3

 これで白の負けが確定した。

27…Qe2

 他の手でも良くならない。27.Qc1 なら 27…Rc8!、27.Qd2 なら 27…Bxd4 28.Qxd4 Nc2、27.Qd3 なら 27…Qxd3 28.Rxd3 Bxd4 29.Rxd4 Rxc3 である。

27…Qa5!!

 この最終手は非常に珍しい。落ち着いた手だが痛烈である。戦力損が避けられないので白は投了した。

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2012年11月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(7)

第1章 突き越し中原(続き)

白が g4 と突く

 

 どのような時に g4 のようなポーン突きが陣地を広げ攻撃することになり、どのような時に自陣を弱めることになるのだろうか。それは選手の判断による。白はすぐに(Ne1 または Nh4 のあとで)f4 と突いていくことができるとき最も満足できる。黒は g4 突きに対して …Nfe7(白陣に弱点が生じたことに満足し、たぶんあとで …h5!? と突いていく)、…Nh4(d4の守り駒と交換する)または …Nh6(すぐにごろつきポーンと対決する)で応じることができる。

(この章続く)

2012年11月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(6)

第1章 突き越し中原(続き)

白が Bxf5 と取る

 白はf5のナイトを普通はd3のビショップで取ることもできる。Bxf5 exf5、Nc3 Be6 となったあと局面は閉鎖的になる。黒のe6のビショップがほんの巨大ポーン程度としてしか働いていないので、恐らく白がやや優勢である。

 

 しかし白は黒からの …f4 と突いてポーンを犠牲に自陣を解放する手や、キング翼の多数派ポーンを生かして …Be7 から …g5 と突如攻撃してくる手に注意しなければならない。

(この章続く)

2012年11月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フランス防御の完全理解(5)

第1章 突き越し中原(続き)

白が Bxh6 と取る

 ビショップでh6の黒ナイトを取ることにより白は自分の「不良」ビショップを犠牲にするだけで黒のキング翼を弱める。これの何がいけないのだろうか?まず白は黒が中間手の …Qxb2 をやってのけられないことを確認しておかなければならない。変化によっては白はビショップを引き黒クイーンをa1の地点で捕獲することができる。しかしそれ以外では白は交換損と1ポーン損をこうむるだけである。

 

 次に、黒のキング翼はそれほど弱くない。…gxh6 と取ったあとg7の地点がビショップのために空き、あとで …f6 と突けばd4の地点にさらに圧力がかかる。黒が強気ならば …Rg8-g4 と捌くこともできる。

(この章続く)

2012年11月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(294)

「L’Italia scacchistica」2012年4・5月号(1/1)

 2012年4月27日から5月1日までイタリアのアルビエでイタリア・チーム選手権戦が14チームで行われ、GMナカムラが助っ人として参加したパードバ・チームが優勝しました。

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2012年イタリア・チーム選手権戦

オランダ防御 A85
A.ダビド(2604) – H.ナカムラ(2771)
2012年イタリア・チーム選手権戦第2回戦、アルビエ

1.d4 e6 2.c4 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 Bb4+ 5.Nc3 O-O 6.Nf3 b6

7.Qb3

 手順を考慮すればすぐに 7.Ne5(7.Ng5 は 7…c6 8.O-O Bxc3 9.bxc3 Ba6 でほとんど互角)7…Ne4 8.Bd2 Bb7 9.Nxe4 Bxd2+ 10.Qxd2 Bxe4 11.Bxe4 fxe4 12.Qe3 d5 13.O-O+/= と指してみても良かった。

7…Bxc3+ 8.Qxc3 Bb7 9.b3

 9.O-O なら 9…Qe7 10.Bg5 d6 11.d5!+/= でなく 9…Ne4= が良い。

9…d6 10.O-O Qe7 11.Bb2 Nbd7 12.Rad1 Rae8 13.d5!?

13…e5

 ナカムラは 13…exd5 で相手の挑発に乗るのを避けた。そう指すと 14.cxd5 Nxd5 15.Qc4 b5!?(15…c6 は 16.Nd4 Ne5 17.Nxc6 Nxc4 18.Nxe7+ Nxe7 19.Bxb7 Nxb2 20.Rd2 Nc4 21.bxc4 となって白の有望な収局になる)16.Qxb5 N7b6 で形勢判断の難しい局面になるが、途中 14…Nc5 15.Nh4 f4! なら穏やかな局勢になる。ここからは両者の退屈な手順が続いた。

14.Nh4 g6 15.Nf3 Nh5 16.e3 h6 17.Nh4 Kh7 18.f4 e4 19.b4 Ra8 20.Rc1 a5 21.a3 Ndf6 22.Rfd1 axb4 23.axb4 b5 24.Bf1 bxc4 25.Bxc4 Qf7 26.Qd4 Ng7 27.Bb3 Nge8 28.Rc2 Nd7

29.h3

 両者の長い捌き合いのあとここで初めて 29.g4! fxg4 30.Qxe4 Ndf6 31.Qd3 で局面の転換を図る機会があった。白の黒枡ビショップがいつかはものをいい始めるはずである。

29…Ndf6 30.Rg2 Bc8 31.Rc2 g5 32.Ng2 Rg8 33.Rdc1 Nh5 34.fxg5 hxg5 35.g4 fxg4

36.Qxe4+!?

 均衡を保つ 36.hxg4 の代わりに白はけんかを買ってでてもう少しで勝つところだった。

36…Bf5 37.Rf2 Ng3?

 この悪手が白に絶好のチャンスを与えた。なぜなら 37…Nf4! でf列を閉じることの方が重要だったからで、38.Rxf4 gxf4 39.Qxf4 Qh5 40.h4 g3 41.e4 Rg4! となれば黒は優勢を維持するはずである。

38.Qxf5+??

 ダビドは列車に乗りそこねた。38.Qxg4!! なら 38…Bxg4 39.Rxf7+ Kg6 40.Rf2 Bc8 41.Kh2 Nf5 42.Rcf1 Nfg7(42…Neg7 43.Bc2 Ra2 44.Bxg7+-)43.Bc2+ Kh5 44.Rf8! Rxf8 45.Rxf8

でみごとな結末になっていた。

38…Qxf5??

 しかしナカムラはあわてて好意のお返しをした。38…Nxf5 39.hxg4 Rf8 40.Rxf5 Qe7 41.Bc2 Kg8 なら文句のつけようがなかった。

39.Rxf5 Nxf5 40.Bc2 gxh3 41.Bxf5+ Kh6 42.Ne1 g4 43.Rc4 Ra2 44.Nd3 Rg5

45.Rf4?!

 局面は乱戦状態だがまだ白の勝ちである。しかし白は 46.Be6! で駒の動きを楽にする代わりに駒の遺産を残し始めた。この手はg4のポーンの脅威を見越していて、45…g3(45…Kh5? は 46.Bf7+ Kh4 47.Bxe8 Kg3 48.Bd7 で白の勝ち)46.Bxh3 Rxd5 47.Rh4+ Kg5 48.Rg4+ Kh6 49.Bd4+- を読んでいる。

45…Ng7 46.Be4 Rxb2!

 黒はすでに非常に不均衡な局面をさらに紛糾させた。白は急にまごつき始める。

47.Nxb2?

 この手は黒を助けた。見つけるのは難しいがまだ勝ちが唯一残されていた。47.Rf6+! Kh5 48.Nxb2 Kh4 49.Nd3 Kg3 50.b5 Nh5 51.Rh6 h2+ 52.Kh1 Rg8 53.Nc1 Rg5 54.Bg2 Re5 55.Re6

客観的な評価が続いているが黒は一番良くても引き分けより良くなるはずがない。

47…Nh5 48.Rf7?

 これが最初のつまづきだった。48.Rf5! Ng3 49.Rxg5 Kxg5 50.Bd3 Nh5 51.Nd1 Nf6 52.Nc3 なら白にだけ勝つ可能性があった。

48…Re5! 49.Bf5 Rxe3

50.Nd3??

 そしてこれが最後のつまづきだった。50.Bxg4 Rg3+ 51.Kh2 Rxg4 52.Rxc7 Rxb4 53.Nd3 のあと引き分けになる可能性が最も高かった。

50…Kg5 51.Rf8 Rg3+ 0-1

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(この号終わり)

2012年11月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フランス防御の完全理解(4)

第1章 突き越し中原(続き)

d4の地点をめぐる戦い

 

 黒はナイトをc6とf5に置きクイーンをb6に出すことによりd4の地点を直接攻撃することができる。白はいくつかの方法でd4の地点を直接守ることができる。d1のクイーンとf3のキング翼ナイトはいつも防御に登場する。そして白は Na3-c2 と指せるし、および/またはクイーン翼ビショップを Be3、 Bd2-c3 または(b3 または a3 から b4 のあと)Bb2 によって防御につけることができる。

 Be3 については少し説明が必要である。この手はもちろん黒が …Qb6xb2 と指せない場合にのみ可能で、先に a3 から b4 と突くか続けてすぐに Qd2 と守らなければならない。b3 と突いて Be3 と出るのはa5-e1とa3-c1の斜筋が弱くなるので一貫性がない。特に白は …Nxe3 を恐れない。なぜなら fxe3 のあとd4のポーンが安全になりf列が素通しになるからである。

 Nc3-e2 と引くのは(他の章の)似た局面では一理あるが、突き越し戦法では黒が非常に迅速にd4の地点を攻撃してくるので白にそのような捌きの余裕はめったにない。白はビショップを展開するためにまず Bd3 と指さなければならない。このためクイーンによってd4の地点が守られなくなる。

 白は戦術的手段によってd4の地点を守ることができる。例えば・・・

 

 ここで白は …Nfxd4 を恐れない。なぜなら Nfxd4 Nxd4、Nxd4 Qxd4、Bb5+ によってクイーンが落ちるからである。これは初心者用のよくあるはめ手である。しかしその戦術に備えた …Bd7 のあとでも白はもっと巧妙な O-O(または Kf1!?)を試みることができる。それでも …Nfxd4 なら Nfxd4 Nxd4、Be3 Bc5、b4! で白の駒得になる。

 

 白は攻撃駒を取ることにより、あるいはそうなりそうな駒、特にf5の(に来る)ナイトを取ることにより、間接的にd4の地点を守ることもできる。

(この章続く)

フランス防御の完全理解(3)

第1章 突き越し中原

 

概説

 1.e4 e6 2.d4 d5 のあと白は 3.e5 ですぐに連鎖ポーンで締め付けることができる。これが突き越し戦法である。d4とe5のポーンで白は陣地の広さでかなり優位に立つ。これは基本的には白の駒の方が黒の駒より動きが自由であることを意味する。従ってもし白が駒を好所に展開できれば、来るべき中盤戦で機動力を存分に発揮できることになる。例えばキング翼で周到に準備したポーンの進攻で黒に攻撃を始められる。

 そこで黒は白の中原に最大限の圧力をかけるように努め、まず側面から打撃を与えて解体しようとする(この章では黒が …c5 突きで「一撃」を加え白が c3 と突いて応じた局面を分析する)。黒がそれに成功し白の中原が解体されれば、黒の駒は活動的になり威力を発揮する。しかし上手な選手に対しては黒は自分の作戦がこのように完全に成功することを期待することは実際上できない。代わりに黒はもし白がポーン中原を維持するためにクイーン翼の駒を不自然に動かしキャッスリングの放棄さえ余儀なくさせれば満足する。白のクイーン翼の駒がかなり苦労して展開すれば広さの優位は吹き飛んでしまう。あるいは黒はそのように期待している。実戦では普通どのようなことが起こるのかを見ていこう。以下は典型的な攻防の要約である。

(この章続く)

2012年11月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

布局の探究(21)

「Chess Life」1991年5月号(1/2)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

死者を蘇らせる 中編

閉鎖ルイロペス主流手順

 閉鎖ルイロペスの主流手順の局面は次の手順から始まる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3

 白の最後の手は純粋に先受けの手である。それは …Bg4 によって邪魔されることなく d2-d4 と突きたいからである。d2-d4 を防げないことは黒には明らかなはずで、問題はその対処策である。「旧主流手順」と重要な三つの代替手順をどれも現代の解釈から簡単に振り返ってみることにする。

1.主流手順 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4

 ほぼ1世紀の間これが「いわゆる」主流手順の局面だとみなされてきた。11…Qc7 でチゴーリン戦法になる。他に重要な手としては 11…Nc6、11…Bb7 および 11…Nd7 がある。過去20年でこの主流手順は採用が激減した。黒の問題点は単純である。それは盤端のクイーン翼ナイトが悪形であるということである。再び指されるようになるための完全に満足できる指し方はまだ見つかっていない。

2.ブレイェル戦法 9…Nb8

 才能ある若いハンガリー人マスターで布局の理論家のジュラ・ブレイェル(1894年-1921年)が70年以上前にこの手を提案したとき、あざけり以外ほとんど何の反応もなかった。好所に展開したナイトを2手損して反展開する手がどうしてまともな手であり得ようか?

 しかし物事には別の側面もあり、c6のナイトもそうである。この位置では白の中原に対する自分のcポーンの活用を妨げ、クイーン翼ビショップをフィアンケットしてもa8-h1の斜筋をふさいでいる。ブレイェルの着想は普通の 10.d4 Nbd7 の手順のあと明らかになる。a5の盤端の位置と比べるとここでのクイーン翼ナイトは中央に位置し重要なe5の地点を守るのにも支障がない。さらにcポーンの動きが自由になりクイーン翼ビショップはb7の地点から絶好の斜筋をにらむことができる。ブレイェルは閉鎖ルイロペスでは白がゆっくりと駒組みを行なうのだから、黒が2手を投資してクイーン翼の戦力の連係と位置を改善しても完全に正当化されると考えた。

 この戦法の利点は1965年頃に再発見され1970年代には「ブレイェル」は国際大会で大流行した。通常は次のように進行する。11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 Bf8 14.Ng3 g6 15.a4 c5 16.d5

 ここではブレイェルの否定的な側面も見られる。白はクイーン翼ナイトを調和良く展開し、クイーン翼ビショップは好きなように展開できるようになっているし、陣地の広さでもかなり優位に立っている。黒は反撃の見通しが立たない。私の見るところブレイェルは常に戦略的に棋理にあっているが、防御に骨が折れる。

3.スミスロフ戦法 9…h6

 この戦法は1950年代に元世界チャンピオンのワシリー・スミスロフが大会の実戦に用い、ブレイェルに取って代わられるまで 9…Na5 の重要な代替手段だった。ずうずうしい黒ならこの手を次のように言ってのけるだろう。「白が 9.h3 と突いていいのならこっちだって 9…h6 と突いていいではないか。」だが前回言ったように黒は白ができることをやれないことがよくある。この場合 9.h3 は強硬に 10.d4 と突くための前提だが、黒は白の Ng5 を気にせずに 10…Re8 から 11…Bf8 でキング翼の駒を地味に再編成するための準備をしているにすぎない。

 代表的な主手順は次のとおりである。10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 Nc4 15.b3 Nb6

 結果はどうなったかというと、白はクイーン翼ナイトの重要な展開を円滑に完了し中原も良形で優位であるのに対し、黒は凝り形の守勢である。すぐに 9…h6 と突く手は旧式になっていて、復活しないという確信がある。

 この機会に戦法の具体的な話からちょっとの間離れて、布局とは何を達成すべきものなのかを振り返ってみようと思う。簡単に言うと布局での最も重要な三つの目標はキングの安全、駒の展開、それに中原の支配である。これらの原則は以下のような具体的な目的に定式化することができる。

 (1)キャッスリングによってキングを安全にすること
 (2)中盤での戦いに備えて駒を中央方面に展開すること
 (3)中原を(a)実際に占拠すること、または(b)駒またはポーンの短射程あるいは長射程の利きにより支配すること

 良い布局の手とはこれらの目的の少なくとも一つを増進するものである。指そうとする手がこれらのどれにも役立たないように感じるならば、良い手でない可能性が高いことを認識するのがよい。上記の指針に背いても大丈夫であるためには、はっきりした具体的な理由がなければならない。(現代の布局の指し方のもっと詳細な説明を知りたければ拙著の「How to Play Good Opening Moves」David McKay、1982年を参照されたい)

 それでは前記の三つのルイロペスの戦法が上記の原則にどのように合っているかを確認しよう。

 (1)9…Na5 には中央から遠ざかるという重大な欠点がある。ただし一部は白のキング翼ビショップをc2に追い払い自分のcポーンを中原に影響力を持つように助けることで償われている。

 (2)9…Nb8 は2手損ではあるが中央に向かっての再展開にすばらしさがある。

 (3)9…h6 は手損するだけである。

 端的に言って 9…Na5 と 9…Nb8 からの戦法はある程度指されるが、9…h6 はすたれたままになると予想される。

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2012年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フランス防御の完全理解(2)

序章

 本書の題材は従来のような細分化された戦法に従って分類されているのではなく、盤央のポーンの形に基づいて分類されている。フランス防御の出だしの 1.e4 e6 が決まったあとは、通常の指し手は 2.d4 d5 と続く(他の手については第10章で簡単に考察する)。

 

 中原の主要な3型がここから生じる。まず、白は e4-e5 と突き越すことができ、そのとき黒は …c7-c5 と突くのが普通である。この型の中原は最初の6章で考察する。一方黒が …c7-c5 突きを遅らせる戦型は第10章で考察する。次に、白は争点を維持して黒に …d5xe4 と取らせることができる。このポーン交換によって生じる中原の型は第7章で考察する。最後に、白はd5の地点でポーンを交換することができる。この型の中原は第8章と第9章で考察する。各章の内容をもう少し詳しく説明すると以下のようになる。

第1章

 白が e4-e5 と突き越す。黒が …c7-c5 突きで応じ、白が c2-c3 と突いてdポーンを支える。これを「突き越し中原」と名づける。

 

第2章

 これは第1章の進行版で、黒がd4の地点でポーンを交換してから …f6 突きで白の連鎖ポーンを攻撃し exf6 のあと駒でf6のポーンを取り返した局面を詳しく考察する。その局面は白がd4の地点に弱点を抱え、黒がe6の地点に弱点を抱えている。

 

第3章

 これも第1章の進行版で、白が早く f2-f4 と突いて中央の連鎖ポーンを安定させた局面を詳しく考察する。

 

第4章

 e4-e5 突きと …c7-c5 突きの交換のあと白がd4のポーンを c2-c3 突きで支えないかもしれず(または突けないかもしれず)、c5の地点でポーンを交換するかd4の地点でポーンを交換させる。生じるポーン形を「古典中原」と名づける。

 

第5章

 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 のあと独特の「ビナベル中原」ができあがる。白の二重cポーンに特徴がある。

 

第6章

 第5章に続いて黒の黒枡ビショップの交換でキング翼が弱体化し、白が Qg4、Qxg7 そして(…Rh8-g8 のあと)Qxh7 と指せる。黒の方は …c5xd4 から …d4xc3 と指すのが普通で、次のような典型的なポーン形になる。これを「毒入りポーン中原」と名づける。

 

第7章

 白が黒に …d5xe4 と交換させる(あるいは白が e4xd5 と取り黒が駒で取り返す)。これを「ルビーンシュタイン中原」と名づける。

 

第8章

 白が e4xd5 と取り黒が …e6xd5 で応じる。これを「交換中原」と名づける。

 

第9章

 これは第8章の進行版で、黒が …c5 と突いてc5のポーンとd4のポーンを交換しd5に孤立ポーンが残る局面を詳しく考察する。これを「孤立dポーン中原」と名づける。

 

第10章

 ほかに適合しない中原をまとめて扱う。特に黒が e4-e5 突きにすぐに …c7-c5 と突かない手順と、白が早く d2-d4 と突かない手順を扱う。

(この章終わり)

2012年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(1)

はしがき

 チェスの布局を習得するためには根底を成す戦略と戦術の着想を理解することが必要不可欠である。戦略の本質にかかわる問題は一般的な「どちら側にキャッスリングすべきか」や「どこを攻撃すべきか」から、「ここで黒枡ビショップ同士を交換すべきか」や「キング翼への狙いに g3 突きと h3 突きのどちらで対処すべきか」のようなもっと具体的な問題にまで及ぶ。

 我々の考えでは戦術の着想は戦略の全般的な作戦の状況の中で最もよく理解できる。だから上記の最後の戦略の問題で g3 突きと h3 突きのどちらが正しい判断かはそれによって生じる戦術の着想によって決まってくる。チェス選手の最高の資質は盤全体での「直感」である。局面を瞬間的に判断するマスターは戦術と戦略の主眼点を精密に調べることはしない。したがって我々もそのようにすることは追求しなかった。

 布局の具体的な手順の詳細な知識を持つこともきわめて重要である。少なからぬ天賦の才能を持った選手でも詳細な布局の研究で完全に武装した相手に負かされることがよくある。定跡の洪水が試合開始時にランダムに駒を配置するというフィッシャーの提案によってせき止められなければ、戦略と戦術の主題の知識を布局の手順を暗記することと組み合わせることは真剣な選手にとって必須である。

 本書の特色の許す限り最新の定跡の判定を与えるように努めた。しかし本書の出版でフランス防御の定跡が急に終わりを迎えるとは考えていない。フランス防御は実戦で使われ続ける。新手が生み出され、当座は有望そうな手が「本筋でない」として放棄され、古い捨てられた変化が復活するかもしれない。

 定跡がどのように発展するか予想できる者はいない。我々の希望はフランス防御の基本的な原則を明らかにし執筆時点での定跡の現状を述べることである。しかし我々に予知の能力があるわけではない。だから読者には『チェス新報』のような書籍で明らかにされる定跡について行くことを勧める。しかし予期しない手に出会ったときは、それが定跡の新手にせよ単なる自分の知らない手にせよ、本書の勉強が良い応手を考え出す助けになることを願ってやまない。

ニール・マクドナルド
アンドルー・ハーリー

2012年11月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

ポルガーの定跡指南(50)

「Chess Life」2004年8月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット(続き)

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5

戦型Ⅰ
アスプラー対ベンコー

バンクーバー、1971年

 この試合では白はギャンビットを受諾した。b5のポーンを取りa6で2個目のポーンを取ったあと白は最も自然なやり方で展開した。

4.cxb5 a6 5.bxa6 Bxa6

 最近は 5…g6 の方が正確な手順だと考えられている。a)場合によっては黒はナイトでa6を取り返して迅速にb4の地点に行かせたくなるかもしれずb)6.Nc3 d6 7.Nf3 Bg7 8.g3 O-O 9.Bg2 Nbd7 10.O-O のあとでは 10…Nb6 と指すことができd5のポーンに圧力をかけることにより 11.Qc2 から 12.Rd1 という駒組みを妨げることができる。

6.Nc3 d6

 ここで白には種々の選択肢がある。次局に見られるように 7.e4 と突くこともできる。別の作戦では白は g3 と突いてフィアンケットしたあとナイトをh3からf4の地点に展開させることができる。

7.Nf3 g6 8.g3 Bg7 9.Bg2 O-O 10.O-O Nbd7

 ここでの白の最善の選択はたぶん 11.Qc2 でルークのためにd1の地点を空けることである。実戦のように白の少し積極性に欠ける手のあと黒はどのように「ベンコーの夢が実現する」かをまざまざと見せてくれた。

11.Re1

 この手は e2-e4 突きの準備である。

11…Qb6

 今日では 11…Qa5 の方がクイーンにとってずっと良い居場所と考えられている。

12.e4

 この手は少し時期尚早である。白は先に h2-h3 と突いて黒の …Nf6-g4-e5 の捌きを防ぐ必要がある。

12…Ng4!

 これはこの布局における典型的な狙い筋である。目標は弱体化したd3の地点である。

13.Qc2 Rfb8 14.h3

 これは黒の作戦を助長するだけである。GMベンコーの別の好局は次のように進んだ。14.Rb1 Nge5 15.Nxe5 Nxe5 16.Rd1 Qb4!(17…Bd3! の狙い)17.Bf1 Bxf1 18.Kxf1 Nc4 19.Rd3 Bxc3 20.Qxc3 Rxa2 21.Qxb4 Rxb4 22.b3 Na3 23.Bxa3 Rxa3 24.Re3 c4 黒はポーン得になり勝った(ゴードン対ベンコー、ナショナルオープン、1976年)。

 14.Rb1 にはベンコーは 14…c4 15.Bg5 h6! を推奨している。この最後の手が記憶すべき大切な手で、16.Bxe7 なら 16…Re8 で白ビショップが困難に陥る。

14…Nge5 15.Nxe5 Nxe5 16.b3

 これは悪手だった。16.Rd1 でd3の地点を守る方が良かった。

16…Nd3 17.Rd1

17…c4!

 これもこの布局の重要な狙い筋である。

18.Be3

 18.bxc4 と取ると 18…Qxf2+ 19.Qxf2 Nxf2 20.Kxf2 Bxc3 でa1のルークが取られる。

18…Qb4! 19.Bd2 Qc5 20.Rf1

 20.Be3 は 20…cxb3 で黒の駒得になる。

20…cxb3 21.axb3 Nb4 22.Qb2 Rc8

 黒はf1のルーク取りを急がない。

23.Qa3 Bxc3 24.Bxc3 Qxc3 25.Rfc1 Qd4 26.Bf1 Rc2 1-0

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2012年11月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(379)

第7部 チェスの論理(続き)

第36章 不滅の試合(続き)

全米選手権戦
ニューヨーク、1963-64年
R.バーン – フィッシャー(続き)

 18.Qd2

18…Nxg2!

 フィッシャーの追いかけているのは白キングである。白陣は白枡ビショップがあって成り立っている・・・それに 18…Nxd1 は 19.Rxd1 で黒のdポーンがすぐに落ちることは見やすい。それでもほとんどの選手は純粋に数学的な計算でルークの方を取るだろう。そしてここがほとんどの選手とフィッシャーとの違うところである。

19.Kxg2 d4! 20.Nxd4 Bb7+ 21.Kf1 Qd7! 白投了!

 フィッシャーはバーンが手筋の全手順を指させてくれなかったことに非常に失望していた。その手順とは 22.Qf2 Qh3+ 23.Kg1 Re1+! 24.Rxe1 Bxd4 で「すぐに詰む」。バーンの述懐は率直だった。「手筋の頂点はそれほど深遠だったので私が投了したその時点でさえ別室で観客のために指し手を解説していた二人のグランドマスターは私が勝ったと信じていた!」

 フィッシャーは極限まで可能性を追求するのでこのような試合を創造することができる。そしてこれらが最後ではない。

(完)

フィッシャーのチェス(378)

第7部 チェスの論理(続き)

第36章 不滅の試合(続き)

全米選手権戦
ニューヨーク、1963-64年
R.バーン – フィッシャー(続き)

 12.Qd2

12…e5!

 この前線突破は機械化部隊のようである。黒のdポーンは無防備のように見えるが、白のe2のナイトに対する潜在的な狙いのために今のところ大丈夫である。

13.dxe5 Nxe5 14.Rfd1

 不自然に見えるが実戦よりは良さそうな 14.Rad1 の分析に多くの努力が払われた。名局賞の自負にかけてフィッシャーはついに 14…Qc8 を見つけ出した。その読みは 15.Nxd5 Nxd5 16.Bxd5 Rd8 でビショップを釘付けにし、それから交換損の犠牲で対角斜筋を白枡ビショップで支配することである[訳注 17.f4 Rxd5! 18.Qxd5 Bb7!]。フィッシャーのすごいのは最初の機会でポーンを放り出し交換損をしてまでとことんやることを厭わないことである。

14…Nd3! 15.Qc2 Nxf2!

 あっというまに対称形のような局面が路上乱闘に変わった。バーンは当然このナイト切りは予想していただろうが次の手はそうでなかった。

16.Kxf2 Ng4+ 17.Kg1 Nxe3 18.Qd2

(この章続く)

2012年11月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

JCAの間違い(17)

第137回チェスネット競技会(11月号)より

どうして「黒先黒勝ち」なのに「白は黒の駒の動きを妨害」がヒントなのだろうか。黒が白の駒の動きを妨害して勝ちになるのに。

2012年11月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(377)

第7部 チェスの論理(続き)

第36章 不滅の試合(続き)

 フィッシャーの2局目となる「不滅の」試合の劇的な決め手も敵キングに通じる白枡斜筋の支配にかかっていた。

全米選手権戦
ニューヨーク、1963-64年
R.バーン – フィッシャー

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3 c6 4.Bg2 d5 5.cxd5 cxd5 6.Nc3 Bg7 7.e3 O-O 8.Nge2 Nc6 9.O-O b6 10.b3 Ba6 11.Ba3 Re8 12.Qd2

 局面は対称形で引き分けの様相を呈している。黒の最後の手は特に要注意で、白ビショップの利きからルークをそらしただけのように見える。白の展開はより戦略的で、白枡の斜筋は通っていてd4のポーンは三重に守られている。フィッシャーの展開は戦術的で、次の手はその論理的な継続である。

(この章続く)

2012年11月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(293)

「Schach Magazin 64」2012年9月号(1/1)

 2012年7月23日から8月2日まで第45回ビール・チェス祭りが行なわれGMナカムラは6人中同点3位の成績に終わりました。

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第45回ビール・チェス祭り

シチリア防御 B96
ワン・ハオ – H.ナカムラ

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 b5

これがいわゆるポルガエフスキー戦法である。以前に何度も世界選手権挑戦候補になったレフ・ポルガエフスキーはこの戦法の発展にずばぬけた最大の貢献をしたので、他の誰が「著作権」を持っていようと彼の名を冠するのがふさわしい。ロシアのGMニコライ・クロギウスは後年チェス心理学者の異名を取ったが、白の e4-e5 突きの狙いが狙いになっていないことに最初に気づいた。というのは 8.e5 dxe5 9.fxe5 のあと黒は独創的なやり方で駒を助けるからである。9…Qc7 10.exf6 Qe5+

これで黒が戦力を取り返す。初局はレイケル対クロギウス戦(プロイエシュティ、1957年)で 11.Qe2 Qxg5 だけ指され、ここで両者が半点ずつ分け合った。褒められたことではない。

 初局から2年後ポルガエフスキーはこの戦法を自分の常用戦法に加え、数多くの試合で指し、雑誌にこの戦法について書き、1冊の本まで出した。そして20手あたりまで研究されたあと、この戦法はまた実戦から消えた。それはこの戦法の正当性に疑念が生じたからではなく、ほとんど誰もこんなに難解なものに関わりたくなかったからである。

 上述の 11.Qe2 に対して 11…Qxg5 12.Ne4 Qe5 13.O-O-O Ra7 から …Rd7 という防御が成立することが明らかになった。実戦の 11.Be2 はキング翼キャッスリングの用意である。11…Qxg5 12.O-O Ra7 13.Qd3 Rd7 14.Ne4 Qe5 15.Nf3

15…Qc7 15…Rxd3 は 16.Nxe5 のあと fxg7 から Nxf7 という狙いが残っているので駄目である。16.Qe3 Bb7 ポルガエフスキーは 16…g6 の方を好んだ。17.Nfg5 h6 18.Qh3 g6 19.Bd3 Nc6 20.Kh1 Ne5 21.Rae1 Bb4 22.Re3 Bd5

局面は難解でどちらが有利とも言えない。ここでは例えば 23.c3 または 23.b3 と指せた。23.b3 の方は実戦に出てくる黒のナイトがc4に跳ぶ手を防いでいる。しかし本大会にあとで優勝することになるワンは 23.Be2?! と指して観戦者を驚かせた。局後の解説でも 23…Qxc2 にどう指すつもりだったかという質問には答えずじまいだった。ナカムラは何が気に入らなかったのかc2のポーンを取らなかった。23…Qxc2 24.a3 Ba5 25.b4 Bb6 26.Nc5 Bxc5 27.bxc5 Nc6 28.Nxe6

はまったくの形勢不明だが、決して「熱」すぎるとは思われない。いずれにしても実戦の 23…Nc4 は問題ない手である。悪手はもっとあとに出てくる。24.Rd3 Qe5 25.a3 Ba5 26.Bg4 黒はここであっさりとb2のポーンを取るべきだったのに敗着が出た。26…Nd6?

ワン・ハオはすぐに猛然と突っ込んだ。27.Rxd5! Qxd5 27…exd5? は 28.Bxd7+ と取られる。28.Bxe6 fxe6 29.f7+

29…Kd8 29…Ke7 なら 30.Qxh6! Rdd8(30…Rxh6?? 31.f8=Q#)31.f8=Q+ Rdxf8 32.Qg7+ で白が勝つ。30.Nxe6+ Kc8 31.f8=Q+ Rxf8 32.Rxf8+ Bd8 33.Nxd6+

これまでの4手連続チェックは見つけるのが簡単だったがこの5番目のチェックはそうでない。黒はまたキングが逃げなければならない。33…Qxd6 は 34.Rxd8+ Rxd8 35.Nxd8+ Kxd8 36.Qd3 で白勝ちのポーン収局になる。33…Kb8 34.Rf1 白は最下段の守りを優先しなければならない。34…Rxd6 35.Nxd8 Qc4 35…Rxd8 は 36.Qxh6 で白の2ポーン得になる。36.Rg1 Rxd8 37.Qg3+ Kb7 38.Qxg6 Rd2 39.Qxh6 Rxc2 40.Qg7+ Kb6 41.b4 Qd3 42.Re1 Qe3 43.Qf6+ Kc7 44.Qf1 Rf2 45.Qg1 Qf4 46.h3

今や黒の主導権はか細い光のようになった。この収局で白は2ポーン得だが、それでも 46…Kb7 ならまだ少し苦労しただろう。しかし実戦は 46…Qg3 だったので 47.Qh2 でクイーン交換を強要されこれ以上指す意味がなくなってしまった。1:0

******************************

(この号終わり)

2012年11月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(376)

第7部 チェスの論理(続き)

第36章 不滅の試合(続き)

第3回ローゼンワルド大会
ニューヨーク、1956年
D.バーン – フィッシャー(続き)

 17.Kf1

17…Be6!

 なんとしてでも黒は白キングへの白枡斜筋を奪い取り(18.Bxe6 Qb5+)すぐに盤上を支配する。ここで重要なのは支配である。黒は永久チェックで引き分けにするか勝ちを目指すかの選択肢がある。

18.Bxb6 Bxc4+

 18…Bxc4+ または 18…Qb5+ のあとの開きチェックに含まれる戦術の可能性の詳細な説明については第16章「開き攻撃」を参照されたい。

19.Kg1 Ne2+ 20.Kf1 Nxd4+ 21.Kg1 Ne2+ 22.Kf1 Nc3+ 23.Kg1 axb6

 ここで盤面を見渡してみよう。黒はナイトが守られているので戦力得を図る余裕がある。次のさらに守りを固める手の後はたっぷりある。

24.Qb4 Ra4 25.Qxb6 Nxd1 26.h3 Rxa2 27.Kh2 Nxf2 28.Re1 Rxe1 29.Qd8+ Bf8 30.Nxe1 Bd5 31.Nf3 Ne4 32.Qb8 b5 33.h4 h5 34.Ne5 Kg7 35.Kg1 Bc5+ 36.Kf1

 ここでフィッシャーは楽しいキング包囲網をかけた。たぶんもっと早く投了してくれたらもっとうれしかっただろう。

36…Ng3+ 37.Ke1 Bb4+ 38.Kd1 Bb3+ 39.Kc1 Ne2+ 40.Kb1 Nc3+ 41.Kc1 Rc2#

(この章続く)

2012年11月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(375)

第7部 チェスの論理(続き)

第36章 不滅の試合(続き)

第3回ローゼンワルド大会
ニューヨーク、1956年
D.バーン – フィッシャー(続き)

 11.Bg5

11…Na4! 12.Qa3

 12.Nxa4 は 12…Nxe4 13.Qc1 Qa5+ 14.Nc3 Bxf3 でナイトとクイーンによる二重当たりによりg5のビショップが取られる。それにe7のポーンもクイーン交換のあと …Re8 で白の弱体化した中央にあらゆる種類の狙いが発生するので取るわけにはいかない。黒は Bxe7 と Qb4 も変化の中できちんと読んでおかなければならなかった。

12…Nxc3 13.bxc3 Nxe4 14.Bxe7

 この手がなければ白の単なるポーン損である。白は交換得の可能性のためにe列を素通しにした。

14…Qb6 15.Bc4

 白は交換得をする余裕がないことに突然気づいた。15.Bxf8 は 15…Bxf8 16.Qb3 Nxc3! でまたポーンを取られる。実戦は白がf7の地点に狙いをつけ黒がそれに気をとられているすきに駒を取ることを期待した。

15…Nxc3!

 フィッシャーはc5の地点への利きを放棄することに気づきながら切り込んでいった。彼の読みの一端は 16.Qxc3 Re8 で、白ビショップを釘付けにして取ってしまう。以下の手順は一本道なのでフィッシャーはここしかないクイーン捨てを読んでおかなければならなかった。

16.Bc5 Rfe8+ 17.Kf1

 ここで黒は二つの駒が当たりになっている。不意に黒は駒とポーンとに関わる馬上試合を白キングへの攻撃に鉾先を変えた。

(この章続く)

2012年11月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス