2012年09月の記事一覧

フィッシャーのチェス(343)

第7部 チェスの論理(続き)

第33章 その理由(続き)

 それでもこのスタディは手の選択の根底にある論理の顕著な例となっている。フィッシャー対ペトロシアンの番勝負の初戦は観戦者、解説者、そして対局者自身が皆チェスの局面を理解しようとする論理の見本の長い(そしてまだ未完の)一例である。

 まず初めは1971年のフィッシャー対タイマノフの番勝負第6局からペトロシアンが手を変えた有名な局面からである。タイマノフは新手となる 11…d5 の代わりに 11…Nd4 と指して不利な収局に陥った。

フィッシャー対ペトロシアン
 11…d5
番勝負第1局、ブエノスアイレス、1971年

 フィッシャーは以前の勝ち試合の布局に欠陥があるか、あるならどこか「見せて」欲しいという特徴的な頑固さのためにもう少しでこの試合に負けるところだった。スパスキーとの世界選手権戦番勝負ではたとえ前に勝っていても同じ戦法を繰り返さない注意深さを見せた。

 ペトロシアンの 11…d5 は黒がこの局面で1手遅れていても指されている。白は陣形上の優位を得るためにだいぶ手損したので黒は自分の課題を戦術的に解決しようとすることができる。

12.exd5 Bxa3 13.bxa3 Qa5 14.Qd2 O-O-O! 15.Bc4 Rhg8

(この項続く)

2012年09月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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紅衛兵向け中国地図でも尖閣は日本

2012年09月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(342)

第7部 チェスの論理

第33章 その理由

 普通の選手が説明なしに次のプロブレムの解答を与えられたら何が起こったか、なぜそうなったか、あるいはなぜいくつもの他の解では駄目なのかが分からないと思う。それでもこれはチェスの局面の中では最も単純な方である。

E.ゼプラー作(1937年)、チェスレビュー誌
 白先5手詰め

 解答の主手順は次のようになっている。

1.Bd3 Bg6 2.Nc3 Bxd3+ 3.Kf2 Be2 4.Ne4 任意 5.Ng3#

 どうしてビショップが1手目で他に動いたのではうまくいかないのだろうか。どうしてすぐに 1.Nc3 では駄目なのだろうか。解答者は基本的な疑問をいくつも自問し始め、次のような一連の事実を並べ立てることができる。

 1.白は黒のビショップを取ることができない。取れば手止まりになってしまう。

 2.白はビショップで詰めようとしてもいつも黒のビショップに対抗されるので不可能である。

 3.従って白はナイトで詰めなければならない。

 4.白キングは黒ビショップにチェックされたときf2の地点に行かなければならないので詰ませるにはナイトがg3の地点に行かなければならない。

 5.ナイトはg3の地点に行くのに3手かかる。もし最初にc1の地点に行くとg3に行くための唯一の経由地点のe2を黒ビショップが押さえて必ず阻止することができる。

 6.ナイトは3手でg3の地点に行かなければならない。なぜなら3手または5手でなら行けるが4手では行けないからである。白枡から黒枡へというのがナイトの幾何である。(そして白はチェックされたときキングをf2の地点に行かせるのに必ず1手かかることを忘れてはいけない。)

 7.だからナイトはc3からe2またはe4へ、そしてg3という経路をたどらなければならない。しかし黒ビショップは経由地点のe2とe4をd3またはf3の地点から守ることもできるのではないか?

 8.それはそうだが、どちらの地点にせよ他に指す手がないためにビショップを手詰まりに陥れることができる。黒の主要な防御手段の手止まりは主要な弱みである手詰まりになり得る。

 9.次のことは最も見えづらい要点である。白はナイトをc3の地点に置き黒ビショップをd3の地点に置き黒の手番としなければならない。このとき黒ビショップはe2とe4のどちらかを放棄しなければならない。

 10.従って白は2手目で黒ビショップをd3の地点に来させなければならない。これは初手で白ビショップをd3の地点に置き次にナイトをc3に置き、チェックに対する応手でキングを動かして黒に手を渡すことによってのみ可能である。ただし例えば手順を次のように変えると

1.Bd3 Bg6 2.Kf2? Bf5!(または h7

黒が手を捨てることに成功し 3.Nc3 Bxd3 で白が手詰まりになる。

 11.白は初手を変えることもできない。1.Ba6 なら 1…Bc6 2.Nc3 Bg2+ 3.Kf2 Bf3 でe2とe4の地点を守り白の手番になっている。

 12.以上の事実により「起手」に対する防御としてなぜ 1…Bc6 から 2…Bg2+ では不十分なのだろうと思うだろう。そこで 1.Bd3 Bc6 2.Nc3 Bg2+ 3.Kf2 Bf3 を調べてみる。そういうことか。4.Ne4 で無理やりナイトが行ける。白ビショップが取り返して Bxe4# で詰ませる位置にいる。

 もし正解手順だけを見たならば「ローマの駒運び」というおびき寄せだと受け取るだろう。そこでは白は黒駒を黒の方が「手得」になる地点に誘った。しかしそのあと黒の 1…Bc6 が白のf1-a6斜筋上のどの起手に対しても防御になることを見た。ただし例外は白ビショップがe4の地点で取り返せるときである。白ビショップがa4-e8斜筋上を動けば黒ビショップに取られるだけである。起手の 1.Bd3 の真意は色々である。解答の論理は白ビショップがe4の地点で取り返せなければならないという事実かd3の地点が黒ビショップにとって手詰まりの地点になっているという事実によって語られる。

 どちらにしても結果は同じで、白は5手で詰ませる。しかしチェスのプロブレムの目的は手順の論理のもつれを表わすために取り返しのつかないほど不鮮明になる。(これはチェスのプロブレムの目的は何かという大問題に対する本書での多くの示唆の一つにすぎない。)

(この章続く)

2012年09月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(288)

「Chess Life」2012年8月号(5/8)

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全米選手権戦(続き)

シチリア防御ドラゴン戦法ユーゴスラビア攻撃 [B76]
GMヒカル・ナカムラ (2775)
GMレイ・ロブソン (2614)
2012年全米選手権戦 第3回戦

解説 GMレイ・ロブソン

 ナカムラと初めて対戦するのは私にとって楽しみで刺激的なことだった。なぜなら彼は私の小さい時からずっと見上げてきた選手だからだ。大会の出だしが ½/2とひどかったのでこの試合で悪くない結果を得て立ち直りのきっかけをつかみたかった。

1.e4

 これは最初の少し意外な手だった。ナカムラは第1回戦で既に 1.e4 と指していたが、彼は近頃では初手にeポーン突きを選ばないのが普通である。実際のところ私は信頼できる堅実な手順がなさそうなので e4 の方を心配していた。

1…c5

 私はシチリア防御のほかに時々フランス防御を指している。しかしより多く指している布局の方でいくことにした。

2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6

 ドラゴン戦法。ナカムラのような危険な相手に対してこんな激しい布局を指すのはおかしく思われるかもしれない。しかし私としては(これまで指したことのある他の二つの戦法の)スヘフェニンゲンやクラシカルは準備が十分でないと感じていたのでこれの方がやれる気がしていた。

6.Be3 Bg7 7.f3 Nc6 8.Qd2 O-O 9.g4

 またちょっと意外な手だった。この手は最近強豪たちの間で復活しているようである。白のやりたいことはキャッスリングを遅らせて h2-h4 と突き黒に普通に展開させなくするということである。9.g4 には g4-g5 を見せて …d6-d5 を防ぐ効果もある。

9…Be6

 他の主要な手は 9…Nxd4 から 10…Be6 だが、争点を解消するのは白を利する。例えば本譜なら 10…d5! があるので白は 10.h4 と突けない。

10.Nxe6

 これは当然の手だが長い間あまり良い手ではないとみなされていた。e6のポーンはそれほど大きな弱点にはならず中央の支配に役立つと考えられていた。最近になって白の手段がいくつか発見され 9.g4 が 10.Nxe6 との関連で普通に指されている。10.h4 d5 は黒が良いようである。以前の主手順は 10.O-O-O Nxd4 11.Bxd4 Qa5 だが黒が良いと考えられている。

10…fxe6 11.O-O-O Ne5 12.Be2

12…Qc8

 実はこの局面はアエロフロート・オープンでバルトス・ソツコ相手に指していた。彼は 13.Bh6 と指し両者に悪手があったが結局彼の勝ちになった。ナカムラの手はもっと厳しかった。12…Rc8 も理にかなった手だが 13.Nb5! で Nxa7 と Nd4 の狙いがあり白が好調である。

13.h4 Nfd7

 黒はf3のポーンを取りたくもあり取りたくもない。焦点は Bh6 を止めることである。13…Nc4 14.Bxc4 Qxc4 15.Bh6 は少し白が良い。

14.f4

 14.h5 と突くこともまだできた。14…Nxf3!? なら(14…Nc4 も可能で 15.Bxc4 Qxc4 16.hxg6 hxg6 となって黒キングが必要ならば中央に逃げ出せるので形勢は完全に不明である。)15.Nd5!

が気持ちのよい一撃となる。この局面は白が優勢だと思っていたがいずれにしても相応の局面になるようである。15…Nxd2(15…exd5 16.Qxd5+ Rf7[16…Kh8? 17.hxg6 Nf6 18.Rxh7+ Nxh7 19.Qh5

黒が詰まされるか大きな駒損になる]17.Bxf3

白が少し優勢である)16.Nxe7+ Kf7 17.Nxc8 Raxc8 18.Rxd2 Kxe7

黒は黒枡を支配しているので取り立てて問題ないはずである。想定手順は 19.hxg6 hxg6 20.Bg5+ Bf6 21.Rh7+ Rf7 22.Bxf6+ Kxf6 23.g5+ Ke7 24.Rxf7+ Kxf7 25.Rxd6 Ne5

で、黒に十分な代償がある。

14…Nc4 15.Bxc4 Qxc4 16.e5(続く)

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(この号続く)

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フィッシャーのチェス(341)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

 最後にフィッシャーの棋歴からもっとありそうにない局面を一つ。クイーンの威力に満ち溢れている局面で勝負の結末がナイトの両当たりによって決まるとは誰が信じただろうか。

フィッシャー対ペトロシアン
 41…Kb3
ブレッド、1959年

42.Qa1 Qa3 43.Qxa3+ Kxa3 44.Qh6 Qf7 45.Kg2 Kb3 46.Qd2 Qh7 47.Kg3? Qxe4!

 これがそうである。ペトロシアンは6手前に命が助かった嬉しさで、次の手のあと引き分け提案を受諾した。

48.Qf2? Qh1!

 忘れ得ぬ局面になった。華々しい戦い、機略に富んだ局面、そして度肝を抜くような手は成績表には現れないが、チェスを指すに値するものにしている。

(この章・部終わり)

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チェスプロブレム:世界大会を終えて 若島正

2012年09月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(340)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

 ひび割れから崩壊に至るような局面もある。

ウンツィカー対フィッシャー
 26.Kf1
バルナ、1962年

26…Rxc3!

 白は黒のどちらのルークも取れない。取ればもう一方のルークが白キングの攻撃に加わることができる。

(この章続く)

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日本の管理は厳しい

2012年09月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(15)

「Chess Life」1990年12月号(4/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

新たな布局の習得法(続き)

 (6)自分の布局を大会で指す前に試験する

 本の知識はもちろん結構だが実戦を指す選手はこの知識を大会で勝つために役立てたいと思うものである。だからあなたは自分の新しい布局を練習に用いるべきである。遊びの試合は自分の知識をしっかり活用するほど集中できないのでたぶん効果的でないだろう。ブリッツ試合はたぶん例外的な自己規律と学習習慣を持つ者以外は「布局を学ぶ」には速すぎるだろう。大会の持ち時間で時計を用いての練習試合はいくつかの試合で「トレーナー」として無私で務めてくれるほぼ同じくらいの棋力の友人がいれば役に立つ。

 最近の米国チェス界を考えれば最良のやり方は30分の試合で新しい布局を試すことではないかと思う。「練習」の間レイティングを危険にさらしたくなければ非レイティング大会か15分指しきりの条件の大会を探すべきである。30分の持ち時間なら十分考えられる。そして終局後は必ず試合を-少なくとも布局の段階を-注意深く分析すべきである。

 (7)自分の新しい布局を自信を持って大会で指し、家で注意深く試合を分析する

 今や自分の新しい布局を試すのに十分準備ができているので、それを指し始める。「もっとよく」準備ができるまで実地試験を遅らせても得られるものは何もない。大会で指すことは布局の理解を深めるただ一つの最良の方法である。気楽に勉強していたときには見過ごしていた可能性や考え方が実戦では理解できることだろう。

 しかし試合を真剣に復習することなく指すのは十分でない。大きな問題は試合の結果に影響されるようになることである。例えば布局の段階を過ぎたあとの局面が気に入らなくて試合に負けたとする。するとあなたの結論は「ニムゾインディアン防御は良くない。キング翼インディアン防御を学ぼう」となることがある。あなたのすべきことは一週間以内に試合を注意深く分析し本当の問題個所を見つけ出し次の試合の前に修正作業ができるようにすることである。布局がうまくいきその結果試合に勝てばこれもまた分析すべきである。たぶん相手がひどい手を指しただけであり、正しく指されればこちらが困っていたのではないか?両者ともうまく指したことを知ることも将来の試合に自信が持てるかもしれないので価値がある。

 (8)自分の指す布局の最近の進歩に遅れずついて行く

 残念ながら「一度学べばずっと学んだことになる」は布局定跡には当てはまらない。非常に多くの選手と非常に多くの大会があるので非常に多くの発見が行なわれる。だから最新の進展について行かなければならない。しかしどのようにして?

 大会に出る真剣な選手は皆「Chess Informant」を購読すべきだと思う。布局定跡に多くの時間をかけられるならば「New In Chess Yearbook」も購読すべきである。これらの本は参照するための本なので、出版は比較的間隔があいている。その上世界中の購読者を対象にしているので解説は「汎用」、つまり言葉でなく記号である。このため新構想の理解が難しい。

 米国チェス連盟の会員は無料で会員に送付される月刊「Chess Life」を利用して必ず自分の関心のある布局を用いた最新の試合を探すべきである。英語による定期刊行チェス雑誌で推奨できるのは「Inside Chess」、「New In Chess Magazine」、「Pergamon Chess」、「Chess Horizons」それに「British Chess Magazine」である。これらの一つを購読して、半年ごとに出版される Chess Informant の間に起こる進展についていけるようにするのがよい。

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2012年09月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(339)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

フィッシャー対スパスキー
 37…Nf6
世界選手権戦第6局、レイキャビク、1972年

38.Rxf6!

 白のクイーン、ルーク、ビショップの集中砲火に黒キングの逃げ場所はない。実戦も 38…gxf6 39.Rxf6 Kg8 40.Bc4(e7のルークを留め置く)40…Kh8 41.Qf4 と進んで終わった。

(この章続く)

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21世紀の帝国主義国家

2012年09月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(338)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

フィッシャー対ケレス
 22…exd4
チューリヒ、1959年

40.Nh6+!

 40…gxh6 41.Qg4+ Kh8 Qxd7 のあと黒のポーンはばらばらである。

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(44)

「Chess Life」2004年6月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

トロンポウスキー戦法(続き)

(1.d4 Nf6 2.Bg5 Ne4) 3.Bf4

 この手のあと黒は 3…d5 と突くか 3…c5 と突くかを決めることができる。

3…c5

 もっと控え目な 3…d5 なら白は堅実に 4.e3 Bf5 5.f3(ナイトを押し返す)5…Nf6 6.c4 c6 7.Nc3 e6 8.Qb3 と指し、早い …Bc8-f5 出の欠点につけ込んでb7のポーンを狙う。8…Qb6

 (8…Qd7 のあとイギリスチェス界の伝説の故トニー・マイルズが次のように優勢を勝ち取る素晴らしい指し回しを見せてくれた。9.g4 Bg6 10.h4 h6 11.c5 Be7 12.Nb5! cxb5 13.Bxb8)9.c5 Qxb3 10.axb3 これは白の方が少し優勢だった。このあと白はポーンを b4-b5 と突いていく。これはa列の釘付けのために阻止するのが難しい。

4.f3 Qa5+

 4…Nf6 は 5.dxc5 Qa5+ 6.Qd2 Qxc5 7.e4 で白が良い。黒はポーンを取り返すためだけにクイーンに2手を浪費している。試合の早い段階ではクイーンはなるべくあとで動かす方が良い。

5.c3 Nf6 6.Nd2

 もっと攻撃的な 6.d5 なら黒は 6…Qb6 で十分反撃できる。白はしょせん 7.Bc1 と引くより仕方がない。7.Qd2 は 7…Nxd5! 8.Qxd5 Qxb2 という手筋でa1のルークが落ちる。

6…cxd4 7.Nb3

7…Qb6

 黒は 7…Qf5 でポーン得を維持することができなかった。そう指すと挿入手の 8.Bxb8 という手があって 8…Rxb8 9.Qxd4 b6 10.e4 Qf4 11.Nh3 Qc7 12.e5 Ng8 13.O-O-O で主導権が白に渡る。

 黒がクイーンを 7…Qd8 と引くなら白は 8.cxd4 d5 9.e3 e6 と指し進める。

 客観的には黒は互角の形勢にできる。しかし白は 10.g4 でキング翼で陣地を広げる異例の作戦で 10…Nc6 11.Rc1 Bb4+ 12.Kf2 O-O 13.Bb5 Bd7 14.Ne2 と進め黒を悩ませることができる。

8.Qxd4 Nc6

 これは意表の手で、b6の地点でのクイーン交換を誘い黒に二重bポーンができる。現在の定跡ではこれが最善手になっている。しかしこの局面の好みに基づいて自分で判断を下すべきである。

 もっと自然な 8…Qxd4 9.cxd4 はやはり白の方が少し有望である。9…d5 10.e3 e6 11.g4 となれば白が少し広さで有利でいくらか展開も良い。

9.Qxb6 axb6 10.Nd4 e5

 この手が最善と考えられている。10…Nxd4 は 11.cxd4 d5 12.e3 でポーンの形の差で白がやはりすこし優勢である。

11.Nxc6 exf4 12.Nd4

 この局面で解説者の中にはほとんど互角の形勢だと考える者もいる。しかし私の考えでは白のポーンの形の方が明らかに優っている。だから私なら白を持ちたい。

結論

 トロンポウスキーは主要な常用戦法の一部として用いることもできるし、たまに意表を突く武器としてだけ用いることもできる。黒としては 1.d4 に 1…Nf6 と応じれば選択の余地がない。白としては布局でこの戦法を押しつけることができる。絶対一見の価値はある。

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2012年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(337)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

フィッシャー対グリゴリッチ
 34…Kg7
ザグレブ、1970年

35.Rxf6!

 黒には両当たりにされるか(35…Qxf6 36.Nh5+)串刺しにされるか(35…Kxf6 36.Bxg5+)の選択権がある。

(この章続く)

2012年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(336)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

 フィッシャーはハバナオリンピアードの後半でも手綱を緩めなかった。

フィッシャー対グリゴリッチ
 17…Ka7
ハバナオリンピアード、1966年

18.Nxa6!

 18…bxa6 20.Rxc6 で終わりである。

(この章続く)

2012年09月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(335)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

 同様のそらし戦術はR.バーン対フィッシャー戦(第36章「不滅の試合」を参照)にも次の試合にも現れた。

フィッシャー対ベンコー
 36…Qc8
ニューヨーク、1965-66年

37.Qe8+!

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(287)

「Chess Life」2012年8月号(4/8)

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全米選手権戦(続き)

 ナカムラの出だしは総当たり戦の普通の形式で始まった。GMロバート・ヘスに白で勝ったあと最初の6回戦は黒で引き分け白で勝ちというように進んだ。大会後半はほぼその逆で、白では引き分けにしかできなかったが黒では勝った。その流れは最終戦で白で勝って止まった(相手はGMヤセル・セイラワンで、これでカームスキーが追いつけなくなった)。前半の結果からは想像もできないがナカムラは黒でも主導権を握り、引き分けに終わった試合でも自分の方が優勢だと思っていた。

 彼は自分の戦略を「黒では勝とうとするなら指し方を何かしら変えなければならない。相手を気楽にさせてはならない」と説明した。そして白でも黒でもそうすることができた。第1回戦のヘス戦は意表のエバンズギャンビットで始まった。ナカムラはこの選択について「何か新しいものを試したいと思った」と語った。「自分の生まれる二、三百年も前の古い試合を最近見ていた。『ナイジェル・ショートでも指せるなら自分でも指せるんじゃないかな』と考えた。」

 この試合は大会を通してのナカムラの優れた研究の前触れになった。彼はすぐに昔から助手を務めこの選手権戦もずっと付き添ったクリス・リトルジョンの手柄だと言った。布局定跡の研究を毛嫌いするのでよく知られているヘスは 9…Ba3 で単純化してポーンを返しクイーン翼を自由にしようとした。彼はもっと普通の 9…b6 のような手も考えたがナカムラの研究を外すためにちょっと変わった手を指したかったと言った。「大会の後半だったらもっと違った手を指していただろう。彼にまったく圧倒されたために負けてしまった。実戦不足が手の選択に現れた。」ヘスはイェール大学の1年生を終えたばかりでこの1年では二つの大会にしか出なかった。

 この選手権戦で唯一初顔のGMアレハンドロ・ラミレスは第2回戦でナカムラと当たった。攻撃をはね返されたあと彼の駒はナカムラがd列で突破を図るまで要塞化の防御態勢をとっていた。ラミレスは交換損で引き分けに逃れようとした。ナカムラのキングは黒枡の攻撃から避難場所を見つけることができなかった。あとで検討のときにナカムラは勝ち筋を見つけたが、いつものように半点しか取れなかったことにがっかりしたことを隠そうともしなかった。

 第3回戦ではチェスらしい火花の応酬があった。元米国選手権史上最年少のGMレイ・ロブソン(2012年度の大会でも最年少)はナカムラの定評のある攻撃から逃げなかった。シチリア防御ドラゴン戦法を採用したあとすぐに横隊4ポーンと対峙することになった。1個1個落としていったが圧力を払いのけクイーン同士を交換するために戦力を少し返さなければならなかった。しかし混沌とした状況は続いた。両者とも相手陣内にナイトを送り込んだ。ナカムラはルークを駆使しロブソンは三重eポーンの先頭を昇格させることに専心した。両選手とも自分の望みを達したが、ナカムラが両ルークで勝てるように巧妙に自分のキングを長いこと隠したのでロブソンの余分のクイーンは勝ちをもたらすことができなかった。ナカムラは火中の栗を拾ったことに対して第2位の名局賞と賞金千ドルを獲得した。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(334)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

フィッシャー対ベネット
 37…Bxc3
サンフランシスコ、1957年

38.Rd8+!

 フィッシャーは堂々たる成績で全米ジュニア選手権を獲得した。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(333)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

ミャグマスレン対フィッシャー
 28…Ra7
スース、1967年

29.Bg2! dxc2?

 黒は不審に思うべきだった。しかし黒が白の手筋に気づかないとしても平凡な 29…Qf8 を指さないのはよかった。それなら白は勝つために 30.Be4 でg6のポーンに集中砲火を浴びせて苦労しなければならないところだった。実戦ではフィッシャーは7手詰めを宣言することもできた(…c1=Q+ など無意味な3手のチェックを含めて)。

30.Qh6 Qf8 31.Qxh7+!! 黒投了

 31…Kxh7 32.hxg6+ Kxg6 33.Be4# で詰み上がる。

(この章続く)

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布局の探究(14)

「Chess Life」1990年12月号(3/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

新たな布局の習得法(続き)

 (5)自分の戦型を最新の定跡の状況と照らし合わせる

 布局定跡の科学的研究は急速に進歩しているので、布局の本は出版されたとたんに「陳腐化」すると考えることができる。しかしあわてることはない。その本が出版されてから出てきた参考文献をチェックすればよい。現在最も役に立つ2冊の参考書は年2回刊行の「Chess Informant」と季刊の「New In Chess Yearbook」である。これらの資料を最終的な「審判」として用いるようになったら、いつも次の三つの問題の可能性をチェックしなければならない。

 (a)誤植 ほとんどの誤植はつじつまが合わないかすぐに気づくほど不自然である。それでも中には問題を引き起こすものがある。具体的には記号の「c」と「e」の入れ替わりである。典型的な例は「The Chess Player」誌(1970年代の人気雑誌)の1976年の号である。1976年オレンセでのティマン対S.ガルシア戦の解説で 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Bg5 h6 5.Bh4 c5 6.d5 d6 7.e3 g5 8.Bg3 Ne4 9.Qc2 Qf6 のあとGMティマンは次のような変化を示して黒が少し優勢とした。10.Qxe4 Bxc3+ 11.Kd1 Bxb2 12.Rb1 Bd7! 13.Bd3 Na6(図4)

 図4

 彼はそれから 14.dxe6? Bxe6 と続けた。あなたは当然 15.Qxb7 と取られたら黒は3駒が当たりになっていて一体どうするのだろうと自問するだろう。答えはティマンは 14…Bxe6? など示さなかったである。これは単純な誤植で、正しくは 14…Bc6 で黒の勝勢だった。

 (b)解説中の戦術の誤り 明白な戦術の一撃は見逃していない可能性が高い。しかし解説中の変化にそのような誤りがある可能性ははるかに高い。複雑な手順では戦術をチェックする際に注意を怠らないようにしなければならない。

 主手順を学ぶだけでは十分でないことを強調しておく。中盤戦、そして当てはまるならば収局でも主眼の展開に関して熟知しなければならない。だから試合を初めから終わりまで研究しなければならない。あるいは少なくとも主題が布局から続いているところまでそうしなければならない。

 (c)戦略の誤った判断 あなたは形勢判断と推奨手が戦法の戦略的「本質」の理解に基づいて確かに道理にかなっていることを望んでいるとする。そこで次の状況を考える。クイーン翼インディアン防御の黒側で 4.g3 に対しあなたは自分の戦型として 4…Ba6 を選択した。時は1980年秋で最新の Chess Informant(第29巻)が出た。あなたは「自分の戦法」を探して1980年トッレモリノスでのタタイ対セイラワン戦に気づいた。IMタタイの解説は次のようだった。1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Ba6 5.b3 Bb4+ 6.Bd2 Be7 7.Bg2 c6 8.O-O d5 9.Qc2 Nbd7(9…Ne4!?)10.Rc1! N O-O 11.a4(図5)

 図5

11…Rc8 12.Na3 Ne4 13.Be1 f5 14.b4 Bb7 15.Qb2 a6 16.c5 b5 17.Ne5 Bf6 18.f3 Ng5 19.Bd2 Nf7 20.Bf4 Nfxe5 そしてここで白が 21.Bxe5! と指していたら白が明らかに優勢だっただろう。あなたは次のようなことに注意すべきである。

 黒は 5.b3 Bb4+ 6.Bd2 Be7 のあとの特徴的な陣形のカタロニア布局拒否よりもオランダ防御のように指していた。

 IMタタイの作戦はその手順を「咎めて」いるように思える。しかしなぜ 10.Rc1、11.a4 そして 12.Na3 のような手がそんなに強力なのだろうか。

 私は1980バルセロナでのスペインのゴンサレス=メストレス戦に向けた準備でこの疑問を
自問した。私の結論は黒は図5から「眼目の」手を指すだけでよいだった。この局面は私の試合に現れ私はカタロニア布局のように 11…c5! 12.Na3 Bb7! 13.Qb2 Ne4 と指した。黒は既に完全に互角の局面にし、白のクイーンは …Bf6 を見せられてかなり間が抜けているように見える。

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フィッシャーのチェス(332)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発(続き)

 しかし機会があれば既にちゃんと証明しているようにフィッシャーも絶妙手を見つけることは保証できる。

レテリエル対フィッシャー
 23.Kxe3
ライプツィヒ、1960年

23…Qxf4+!

 黒のキング翼ナイトが盤上になければクイーンを取ったあとはモデル詰みの形で、キングのどの逃げ道にも黒駒が一つだけ利いている。

(この章続く)

2012年09月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(331)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第32章 一発

 それでは単なるお楽しみのために目のくらむような妙手、強烈な局面、観戦者が喜ぶ驚異の手筋の数々をお目にかけよう。フィッシャーはそれらすべてのうち最もわくわくさせるものに匹敵するものをこれから生み出すことだろう。

レビツキー対マーシャル
 23.Rc5
ブレスラウ、1912年

23…Qg3!!

 ハロルド・ショーンバーグは観衆が「盤に金製の駒を浴びせかけた」という話はたぶん疑わしいと言っている。フランク・マーシャルは自伝でそう、それは「実際に起こったことだ」と言っている。「彼」はその場に居合わせていた。

(この章続く)

2012年09月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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恩を仇で返す中国

2012年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(43)

「Chess Life」2004年6月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

トロンポウスキー戦法(続き)

1.d4 Nf6 2.Bg5

 黒はここで Bxf6 と取らせてもよいか、それとも 2…Ne4 と指してそれを防ぐかを決めなければならない。後者の方が激しい試合になる。

2…Ne4

 他によく指される手は・・・

 a)2…c5(白は喜んでf6のナイトを取る)3.Bxf6(もっともギャンビット戦法の 3.d5 Qb6 4.Nc3 Qxb2 5.Bd2 Qb6 6.e4 d6 7.f4 も面白い。黒はb2のポーンを狩るのに3手も費やした。どちら側を持って指したいかはまったく好みの問題である。白としては活動的な局面で主導権があるがb2のポーンが欠けている。黒としてはポーン得を手放さずしばらくの間守勢でいる必要がある。)

 3…gxf6 4.d5 Qb6(普通に展開する 4…Bg7 は 5.c3 d6 6.e3 f5 7.Ne2 Nd7 8.Nf4 で白がキング翼に明快な目標を得て有利な局面になる)5.Qc1

 5…f5(黒が気持ちよい 5…Bh6 で黒クイーンをb2のポーンからそらそうとしても単純な 6.e3 で何も達成できない)6.g3 Bg7 7.c3 d6 8.Nd2 Nd7 9.Nh3 Nf6 10.Bg2 O-O 11.O-O e6(黒が争点を作り始めないなら白の作戦は Qc2、Nf4 そして Rfe1 で e2-e4 突きを策することになる)12.Nf4 (代わりに 12.dxe6 なら黒のf列の二重ポーンが解消される) この先には難解な戦いが待っている。1995年のアダムズ対ローチェ戦は次のように続いた。12…Bh6 13.e3 Bd7 14.Rd1 e5 15.Ne2 Rae8 16.Qc2 Qd8 17.Nc4 Qe7 18.a4 b6 19.Re1 Kh8 20.Rad1 Rg8 21.Nc1 Rg6 22.Nd3 Reg8 23.b4 Nh5 24.bxc5 bxc5 25.Rb1 Bc8 26.Qd1 Rg4 27.Na5 f4 28.exf4 Nxf4 29.Nxf4 Bxf4 30.Nc6 Qf6 31.Rb8 Bf5 32.Rxg8+ Rxg8 33.Nxa7 Qg6 34.Nc6 Qg5 35.a5 h5 36.h4 Qf6 37.Qxh5+ Bh6 38.Ne7 黒投了

 b)2…d5 これは次のような局面になる。3.Bxf6 exf6 4.e3 Bd6 5.g3 c6 6.Bg2 f5 7.Ne2 戦略的に面白い戦いである。

 黒には双ビショップがあるが二重fポーンに対処しなければならない。白の作戦は c2-c4 突きを準備してクイーン翼で戦いを起こすのが普通である。

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2012年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(330)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 たぶんチェス選手がプロブレムの眼目手の知識から得る最も実戦的な利益は詰みの狙いの重大性の感覚である。手数はプロブレムでは何にもまして重要である。指定の2手または3手になる前に詰みが避けられるならば戦力は物の数でない。従って戦力損と比べて詰みの狙いの手数の正確な読みが実戦で必要なとき、何でもこなしている選手は有利である。例えば次の局面で黒キングは危険な状態にあるとはとても思われなかった。

ラブグローブ対ラスカー
 50.Ke5
非公式試合、サンフランシスコ、1902年

 この試合を取り巻く状況は説明しておくに値する。このジェット旅行の時代に前世紀のヨーロッパのチェスマスターたちが蒸気船、鉄道、それに軽四輪馬車によってチェスの非公式試合のために米国極西部地方まで旅行することを想像するのはなかなか困難である。それでもツカートルトは1884年にネバダの金鉱地まで来たし、世界チャンピオンのエマーヌエル・ラスカーは世紀の変わった直後にサンフランシスコにやってきた。この頃までには地元の王者のウォルター.R.ラブグローブ博士の支援者たちが遠来のマスターたちと自分たちのヒーローとの直接対決のために多額の賭け金を集めるのが恒例になっていた。そして彼はしばしば本当にヒーローになった。

50…d4?!

 ラスカーは華麗な勝ちを目指したがプロブレムのような防御で形勢を逆転された。

51.Kxd6 d3 52.Ke5!

 6段目の連結ポーンはキングを詰める狙いが伴わない限り止められない。

52…d2 53.Rg8+ Kh4

 53…Kh6 は 54.Kf6 Kh7 55.Rg7+ Kh8(55…Kh6 なら 56.Rg2!)56.Rd7! c3 57.Kg6 のあと2手で詰む。

54.Kf4 Kh3 55.Rd8 c3 56.Ke3 黒投了

 ポーンが止められ Ke2 から Kd1 で取られてしまう。

(この章終わり)

フィッシャーのチェス(329)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 2手の眼目手で有名なのは準釘付けで、黒の2個の駒がキングと一直線に並び1個がその筋を離れるともう1個が致命的な釘付けになる。これはほとんどの場合高度な技術の手順になる。それを実戦で見るのは滅多にない喜びである。

フィッシャー対ロバーチュ
 12…Rd8
バルナ、1962年

13.g4!

 13…hxg4 ならh列が素通しになるし

13…Nxg4

なら

14.Rdg1

で準釘付けになりh6のビショップが安泰である。

(この章続く)

2012年09月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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知らなかった竹島現代史

2012年09月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(328)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 同じく年ごとに名局としての評価を高めそうな局面はフィッシャー対スパスキーの有名な1972年世界選手権戦第4局である。

 スパスキーの布局の新手は既に見た(第24章「ポーンあさり」を参照)。一連のほぼ必然の攻防のあとですぐにこの局面に到達する。

フィッシャー対スパスキー
 29…Rh8
世界選手権戦第4局、レイキャビク、1972年

 このあとの難解な変化を理解する最良の方法はここでフィッシャーが直接的な狙いに対してどのように受けるかを見ることである。

30.Nf3 Bxf3 31.Qxf3 Bd6 32.Qc3!

 このちょっとした手段で圧倒的な攻撃が互角の収局に変わる。白が 32.Kg1 でキングを逃がそうとすれば 32…Rh4 で …Rxc4 と …Qh2+ から …Rf4 によるクイーン取りを狙われるところだった。

 解説者たちは皆 29…Rd8 が勝着になると早合点した(スミスロフ、レシェフスキー、等々)。その狙いは白がここでc3の地点をポーンでふさがなければならず、白クイーンがもはやc3の地点に行けないので黒は本譜の手順を 30…Rh8 で踏襲することができるということである。

 のちにロバート・バーンは黒が白にナイトをポーンで守らせれば 30…Rh8 に対して白ルークが 31.Rf1! で守ることができることを指摘した。この詳細に立ちいる前に白の主要な受けの着想は適切なときに Nf5+ と指すことにより永久チェックをかけることであることを指摘しておく。適切なときとはつまり黒クイーンがd6の地点に縛り付けられているとき、またはそうでない状態で黒ルークがd8の地点で離れ駒になっているときである。また黒の 29…Rd8 の重要な要点は、最下段の弱点のために白のナイトが開き攻撃を行なえないということである。例えば 30.Nf5+ は 30…Kf6! 31.Rxd8 Qe1+ 32.Kh2 Bg1+ 33.Kh1 Bf2+ 34.Kh2 Qg1# となる。元の局面に戻って白のポーンがc3に突いてあると仮定すると次のような手順になるだろう。

31.Rf1 Rh4 32.Nf5+ Qxf5 33.Rxf5 Rxg4 34.Rxc5 Rxg2

 ここで白は 35.Rxa5 で引き分けにしなければならない。しかし 35.Bd5(にせの干渉)では駄目で 35…Bxd5 36.Rxd5 exd5 37.Kxg2 a4!(1個が2個を制止)で黒勝ちのポーン収局になる。

 しかし図の局面の直前で黒にはまだ勝ちの可能性が残されていた。29…Rh8 の代わりに次のように指し進める。

29…Rd8 30.c3 Bb6

 黒はこう指す余裕があれば攻撃が順調に進行する。d8の地点を守ることにより黒は Nf5+ から Qxg5+ による永久チェックの狙いを永久に避けることができる。問題は黒にこの余裕があるか、それとも白が陣容を組み換えることができるのかということである。

31.Qe2 Qg3 32.Rd3

 これは最初の干渉で、c4のビショップがf1の地点に利かなくなった。このことはあとで重要になる。

32…Qf4

 そしてここで白クイーンは 33.Qg4 Qf1+ のように黒クイーンを追い続けることができない。黒の狙いは …Bd6 で、白に Kg1 とさせて黒クイーンがh2、h1、それにg2の地点でチェックをかけて侵入する。33.Qe3 と受けても 33…Qf1+ 34.Qg1 Bxg2+ 35.Kh2 Bc7+ とされる。最後に、白がルークをf1の地点に回す先ほどの着想を踏襲してみる(30…Bb6 のあと)。

31.Rf1 Bc7 32.Kg1 Rh8 33.Nf3 Qe3+ 34.Kh1 Bf4!

 これで捕獲されたのは白の「クイーン」である。…f5 に対して受けがない。この単純そうに見える局面のように自身せき止め(c3)、釘付けと(d4のナイトによる)釘付けはずし、そして干渉(35.Bd5、32.Rd3)の主題がこれほど豊富な局面はほとんどない。

(この章続く)

2012年09月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(286)

「Chess Life」2012年8月号(3/8)

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全米選手権戦(続き)

 ナカムラはカームスキーと握手し、苦笑いしながら助手のクリス・リトルジョンに初めての満足の視線を送った。カームスキーはいつもは報道記者室に来て自分の試合の解説をするのだが(カイダノフ戦で負けたときもそうした)、今回は上階に留まっていた。人前で悄然としているカームスキーを見るのはまれなことである。彼は審判の机の方に行き観戦者たちに背を向け寂しげな様子で鼻の涙腺のあたりを押さえながら頭を垂れてじっと立っていた。

 「この試合でガータの指した多くの手に驚かされた」とナカムラは語った。「何がどうなっているのかよく分からなかった。難解な局面が続くように努めた。」ナカムラは変化をすべて読み切っていたわけではないと言った。しかしどの時点でも負けはないことは確信していた。「見た目にはナイトは非常に強かったが、それにもかかわらず動く枡がなかった。」彼はこれより前のいくつかの試合では運がなくて引き分けに持ち込まれたし、この大会はたぶん自分に少し運を借りていると言った。「どの試合でも頑張った。ユーリ・シュールマンの防御は天才級だ。今日は幸運をつかむため、引き分けになると思ったとき・・・」

 前日に今大会最長手数でGMアレックス・レンダーマンを負かしそこねたので、けちな防御を克服できないいらいらはナカムラの意識に新たになったに違いない。121手に達したあと奇妙にも駒のごちゃごちゃした中盤で50手規則にあと10手以内というところで、ナカムラは抜け道を見つけたがレンダーマンは巧みにポーンを少々放ってナカムラの孤立ビショップを窒息させた。この試合は全米選手権戦史上6番目の最長手数だった。

 「今日は本当にまた6時間の試合を指したくなかった」とナカムラは語った。彼は自分と妥協した。レンダーマンとの試合は7時間に達する瀬戸際だった。「先に進まなければならなかった。いつまでもこだわっているわけにはいかない。」

 ナカムラは1年の休止ののち選手権戦に復帰した。セントルイスに住んでいるので去年はほとんどすべての回戦を観戦した。そしてあとで出場を見送ったことを後悔していると言った。「世界中の大会で指していたが全米選手権戦は断然最高の大会だ」と閉会式で言った。今は2011年大会を休むよう助言したGMガリー・カスパロフの指導を離れて、11回戦をとおして自信に満ちた妥協なきチェスを指した。ほとんどの試合で黒番のときでさえ積極的に動いた。「自分が長考し始めるときは普通はずっと先の方まで読んでいるからだ。ただこちらの方が指しやすいと思っていた。時間を使う必要はなかった。」

 出場の決断は昨年と同じ危険をはらんでいた。FIDEレイティングを維持するだけでも7½/11の成績が必要だった。彼は最高のレイティングで大会に臨んだ。負けなしの8½の成績をあげて1点差で大会に優勝し、8点ほど上げて大会後のレイティングを2783にし、フィッシャーの米国最高レイティングに2点差まで迫った(4万ドルの優勝賞金も得た)。堂々たる数字にもかかわらずナカムラはこれが大会に参加した目的ではないと繰り返し述べた。「レイティングだけが目的ならたぶんもっと何か向こう見ずなことをしていただろう。」GMアーナンドがかろうじて世界チャンピオンの座を守ったことによりナカムラはアーナンドにも生のレイティング順位で肉薄した。これを書いている時点で彼は生まれて初めて世界の5傑に名をつらねた。

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(この号続く)

2012年09月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(327)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 チェス史上最も有名な局面の一つにはもう少しでうまくいくところだったおびき寄せが関わっていた。ここには他の多くの手筋も出てくるがこれが最も痛快である。

ピルズベリー対ラスカー
 18…Ra3!
サンクトペテルブルグ、1895-96年

19.exf7+

 ピルズベリーにもっと良い受けがあったかどうかについて80年間激しい議論が戦わされた。a3のルークは取らなければならない。しかし白は挿入手の 19.exf7+ または 19.e7 を指した方が良いのだろうか。最も最近の提案はポーンをそのままにしてe列をふさいだままにしキングがキング翼に逃げることに努めることである。例えば 19.bxa3 Qb6+ 20.Kc2 Rc8+ 21.Kd2 Qxd4+ 22.Ke1 Qc3+ 23.Ke2! という具合である。しかし黒は途中 22…Qe3+ 23.Be2 fxe6 と改良し、c8のルークの活用と中央のポーンの全面進攻を図ることができる。実戦ではピルズベリーの指した手はもう少しで負けをまぬがれるところだった。

19…Rxf7 20.bxa3 Qb6+ 21.Bb5!

 白はキングが隅に隠れたければ黒クイーンをd4のポーンへの当たりからそらすと共にh1のルークを展開させなければならない。例えばすぐに 21.Ka1 だと 21…Bxd4+ 22.Rxd4 Qxd4+ 23.Kb1 Rf2 とされる。

21…Qxb5+ 22.Ka1 Rc7?

 しかしここで 22…Qc4 と指していたら 23.Qg4 h5 で白クイーンがdポーンを守り続ける枡がないのでこのポーンが取れていた。このあと白に悪手が出てラスカーがこの激闘に勝ち大会の流れを逆転した。ピルズベリーはラスカーとの初めの3戦で2½の成績を出しながらこのあと(引き分けをはさみ)4連敗を喫して第3位に落ちた。

(この章続く)

フィッシャーのチェス(326)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 おびき寄せは同様に連続チェックに対する受けの武器ともなる。チェックをかけたクイーンの前に駒を投げ入れて、以降のチェックをしようとするクイーンをそらすか展開のための手数を稼ぐことができることがよくある。こられの理由のうち初めのはこのフィッシャーの試合によく現れている。

フィッシャー対イフコフ
 40…Qc7
パルマ、1970年

41.Bxg6!

 この手は見つけるのが容易である。はっとさせられるのは黒の逆襲に対する受けである。

41…Qc1+ 42.Ne1!

 黒は 42.Kh2 Qf4+ でクイーン同士を交換し目前の破滅を避けることに期待していた。しかしクイーンがe1の地点にそらされたあと黒にはもうチェックがなく白の攻撃が進む。

42…Qxe1+ 43.Kh2 Ng5 44.Bxf7+! 黒投了

 44…Nxf7 のあとは 45.Qg6+ で1手詰みになる。黒の2個のビショップの打ち捨てられた状態は攻撃の基礎は優勢な戦力を集めることであることをまたも表わしている。

(この章続く)

2012年09月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

布局の探究(13)

「Chess Life」1990年12月号(2/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

新たな布局の習得法(続き)

 (3)自分の指す具体的な戦法を選ぶ

 そのシステムの「本質」に精通したあとは自分の興味、棋風、それに勉強法に最もよく合う戦法を選ぶ。新たな布局を学んでいるときは相手の戦型のそれぞれに対処する一つの戦法を用意する。一つだけを詳しく学ぶ。一つの戦法をしっかり学ぶ方が二つの戦法を中途半端に学ぶよりもはるかに良い。

 ニムゾインディアン防御とクイーン翼インディアン防御の現在の布局定跡は共に広く深く発達している。これは信頼できる情報を手に入れれば大きな自信を持って特定の選択をすることができるということである。さらに自分が選択を「しなければならない」。例えばクイーン翼インディアン防御での白の非常に重要な戦法は 4.g3 でのキング翼ビショップのフィアンケットである。グランドマスターの実戦で現在人気のある二つの応手は 4…Ba6 と 4…Bb7 である。どちらを選んだらよいか。それぞれのその後の手順は非常に異なる。選択はまったくあなたしだいである。しかし私がさらに言えることは、現在のところ 4…Bb7 よりも 4…Ba6 の定跡の方がかなり速く進歩していて、そのためついていくのが大変だということである。

 もっと答えにくい質問は、ニムゾインディアンで白が(図1から)4.Qc2 と指したら黒は何を選択したら良いかということである。時の試練を経た 4…c5 5.dxc5 O-O はゆうに30年以上もの間互角になる戦型と考えられてきたが、図3に見られるように 6.a3 Bxc5 7.Nf3 で白がはっきりと優勢になる実績をあげつつある。

 図3

 従って黒側の選手たちは新たに 4…O-O を調べるだけでなく旧来の 4…d5 に戻ってみたりしている。現時点では個人的には 4…O-O の方に信頼をおいている。それでも来年状況がどうなっているかを言うのは早すぎる。

 (4)主手順を完璧に学ぶ

 学ぶための準備は完了し今度は勉強法自体を考える時機である。基本的な教本は信頼できる著者による最新の布局の専門書か、「Encyclopedia of Chess Openings」の改訂版のどれか1冊がよい。B、CそれにD巻は改訂されていて内容も素晴らしい。しかし一般的な読者を対象とするため Encyclopedia は言葉を避け記号だけを用いている。だから他の資料であらかじめ「理解」しておくことが前提である。

 この段階ではやみくもに暗記するのでなく主手順を学ぶようにすべきである。特に布局がニムゾインディアン防御やクイーン翼インディアン防御のように本質的に戦略的なときは、丸暗記の量は比較的少ないはずである。学習者は対局中に必要に応じて思い出せるように主手順の初手からの10-16手目あたりまでを十分詳しく学ぶべきである。私は5分のブリッツ試合ですべてを思い出すのに苦労していない。

 基本的な教本として私は(1)で紹介した2冊と共に Zoltan Ribli 著の「Winning with the Queen’s Indian」も薦めている。「Encyclopedia E」(ニムゾインディアンとクイーン翼ギャンビットを含んでいる)の初版は1978年に出版されたので一部は時代遅れになっているとみなさなければならない。現在は改訂中で今年中には出版されるはずである。第2版はすぐれた内容になると確信している。

 主手順を学ぶだけでは十分でないことを強調しておく。中盤戦、そして当てはまるならば収局でも主眼の展開に関して熟知しなければならない。だから試合を初めから終わりまで研究しなければならない。あるいは少なくとも主題が布局から続いているところまでそうしなければならない。

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2012年09月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フィッシャーのチェス(325)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 一般におびき寄せと呼ばれるこの眼目手は守備駒を強制的に不利な地点に誘い出すこともある。

フィッシャー対ショクロン
 38…Qd8
マルデルプラタ、1959年

39.Rxe6 Qc8!

 黒はルークを取るこの釘付けに期待していた。代わりに 39…fxe6 は 40.Qxe6+ から 41.Qxe5 で白のビショップの利きがすっきり通って明らかに黒が悪い。

40.Bd7!

 これはクイーンを離れ駒になる地点におびき寄せるしゃれた応手だった。この手に対して 40…Qxd7 と取ると 41.Rxg6+ でクイーンが取られてしまう。

(この章続く)

2012年09月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(324)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 直線的に利く駒は防御のため幹線に留まっている間でさえ別の類の狙いを許す地点を選択することによる失敗を犯しやすい。この複雑そうに聞こえる捌きは実例によって最もよく明らかにできる。次の局面で黒のクイーン翼ルークはa8の地点で最下段を守って安泰である。白の狙いは Qb4+ で、間に入らなければならないナイトを取ることである。それでも黒はまだ戦う余地がある。フィッシャーはクイーン翼ルークを安泰さに劣る地点におびき寄せることによりすべての紛れを終わらせた。

フィッシャー対ゲレル
 19…hxg4
ブレッド、1961年

20.Qb7! gxh3+ 21.Bg3 Rd8 22.Qb4+

 黒は 22…Ne7 23.Qxe7+ でナイトとルークを取られるので投了した。

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(42)

「Chess Life」2004年6月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

トロンポウスキー戦法

 トロンポウスキー戦法はブラジルのオクタビオ・トロンポウスキー選手によって1930年代に最初に広められた。1980年代中頃には英国のグランドマスターのアダムズ、ウェルズ、そして特にホッジソンのおかげで二度目の花が開いた。これを得意戦法の一部として用いるのが好きなグランドマスターにはイワン・ソコロフ、アコピアン、ミロフ、アレクサンドロフ、そしてラジャーボフがいる。

白の基本的な作戦は何か

 トロンポウスキー戦法では白は早くも2手目に急襲する。白の戦略的な狙いはビショップをf6のナイトと交換して黒に二重ポーンを作らせることである。黒がすぐに …Nf6-e4 と指す戦型ではビショップを当たりから逃したあと白はe4の黒ナイトを f2-f3 突きで追い返すのが普通である。

黒の基本的な作戦は何か

 黒はf6での交換を許すか、それともナイトをe4に跳ねるかを決める必要がある。黒が早い Bg5 の唯一の潜在的な欠点を正確について、b2ポーンを …c7-c5 から …Qb6 で攻撃するのは理にかなった戦法である。黒は …d7-d5 と突いてdポーン布局のようなポーン構造をしたもっと堅固な作戦を用いることもできる。

それで評決はどうなっているか

 布局定跡の勉強に多くの時間をかけるのを避けたいならばトロンポウスキー戦法は白にとって素晴らしい選択肢となる。それにより非常に限られた知識でまともな局面に達することができる。黒はこの戦法にあまりなじみがなければ困難な局面になることがある。この布局では今回のほとんどの解説のように大局観により指すことができるし、もっと危険をいとわず指すこともできる。

 黒の観点からは …d7-d5 突きで堅固な方の陣形を選ぶか、…c7-c5 から …Qb6 のもっと野心的な陣形を選ぶべきである。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(323)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 防御目的のグリムショーもよくある。敵のルークとビショップを焦点の枡で内輪もめさせることにより、キングに必要な「逃走」地点を見つけることができる。

フィッシャー対アナスタソポウロス
 19…Bc8
時計使用多面指し、アテネ、1968年

20.bxc7+ Bxc7 21.c4!

 そしてほどなくフィッシャーが勝った。彼は一見良さそうな 21.Rd3 bxc2 22.Rb3+ のあと 22…Bb6! という防御の干渉で黒キングにa7への道が開けることを見抜いていた。この着想は2手プロブレムで望まない解の「余詰め」を防ぐためによく用いられる。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(322)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 次の局面は同じ地点にホルツハウゼンとグリムショーが現れる実例になっていて、おまけに釘付けもちょっと付け加わっている。

フィッシャー対ケレス
 26…bxc4
キュラソー、1962年

27.Qxc4 Qd6

 黒の最下段への狙いにより白は圧倒的な地点に駒を捌くことができた。

28.Qa4 Qe7

 まず、ホルツハウゼンでd8のビショップの利きが止まった。

29.Nf6+ Kh8 30.Nd5 Qd7 31.Qe4! Qd6 32.Nf4 Re7

 今度はクイーンに対するグリムショー干渉で、33.Bf8 と指すことができる。フィッシャーはビショップに対する干渉を選んで 33.Bg5 と指し、小駒とクイーンを交換により盤上から消して勝ちのルーク収局に持ち込んだ。

(この章続く)

2012年09月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(321)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 問題の駒同士は特に干渉しあわないが焦点の枡が敵駒によってふさがれるとき、プロブレムの世界ではこの干渉を「プラチュッタ」と呼んでいる。信じられないほど明快な例が次の相談試合で起きた。

タラシュ対相談チーム
 30…Kb5
ナポリ、1914年

 白には Qb7+ と Rxc5 の二つの狙いがありどちらも詰みに直結する可能性がある。前者は黒クイーンによって防がれ、後者はc8のルークによって防がれている。しかしc7の地点が焦点の枡になっていて、黒の防御線はどちらもそこを通らなければならない。従って論理の導くところは・・・

31.Bc7! 黒投了

 ルークがこのビショップを取れば Qb7+ とされ、クイーンで取れば Rxc5+ とされる(全手順を示せば 31…Qxc7 32.Rxc5+ Qxc5 33.Qb7+ Kxa5 34.Ra1#)。

(この章続く)

2012年09月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(285)

「Chess Life」2012年8月号(2/8)

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全米選手権戦(続き)

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B90]
GMガータ・カームスキー (2741)
GMヒカル・ナカムラ (2775)
2012年全米選手権戦 第10回戦

解説 IMダニエル・ルートビヒ

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.a4

 この手はナイドルフ戦法にとって重大な試練とはみなされていない。しかしカームスキーはこの戦型に大きな信頼をよせていて、世界中のナイドルフ戦法を使う最強の選手のいく人かに対して用いてきた。

6…e5 7.Nf3 Be7 8.Bc4 O-O 9.O-O Be6 10.Bb3 Nc6

 早い 6.a4 戦法の欠点はこの手を指されることである。黒がこう指すのは白の a5 突きを防ぐのが重要であることとb4の地点が弱体化したからである。このポーン構造で白の理想は黒の …Nbd7 を待って a2-a4 と突くことで、そうなれば a4-a5 と突くのが容易になるし …Nb4 も不可能になる。

11.Bg5

 ここまで両者の展開は自然だった。そして白はd5の地点を弱体化させる通常の作戦を行なっている。しかし10手もしないうちに白陣は守勢になり明らかに不利になった。

11…Na5!

 この局面ではすべてが白が Nd5 と指せるかをめぐって動く。この手は白のその作戦をくじき、b列とc列での構想も準備している。

12.Bxf6 Bxf6

13.Bd5?

 ここは本局を通しての勝負所の一つである。この手は良さそうに見えるが気休めにすぎない。d5のビショップは黒の手を何も制限していない。代わりにd列での白の構想を制限し、ビショップがナイトのいるべき地点を占拠している。最も一貫性のある着想は 13.Nd5 Nxb3 14.cxb3 Rc8 15.Qd3

だった。この局面は客観的には明らかに実戦より優るけれでもなぜカームスキーがこれを避けたのかは容易に理解できる。この局面は形の上からは白にとって好ましくないかもしれないが、良い面としてはいつかの時点で黒は自分の優良ビショップを交換し進展を図らなければならない。13.Ba2 もクイーン翼のポーンの形を崩さずにd5の地点を空けるので考える価値がある。13…Rc8 14.Nd5 Nc4 15.b3 Bxd5(15…Nb6 なら 16.Nxf6+ Qxf6 17.Qxd6)16.Qxd5

となれば両者に不良ビショップができるが、出遅れd6ポーンのためにたぶん白の方が少し優勢である。

13…Rc8 14.Nd2 Qc7 15.Re1 Bg5!

 この手は不良ビショップを働かせるだけでなく白の重要な捌きの Nd2-f1-e3-d5 を制限している。形勢はもう白にとって楽観できなくなっている。

16.Nf1 Qb6 17.Rb1 Nc4 18.Qe2 Bh6

 ナカムラはのちにこの手を疑問視したが、まったく問題なく他の多くの手も同様である。カームスキーは長期的な作戦を立てることができずみるみるうちに時間がなくなっていった。このような状況では …Bh6 のようなじっくりした手が相手に時間不足の中で有効な手を見つけさせることになるので最善手となることがある。

19.h4 Qb4 20.g3 Rc7 21.Kg2 Nb6 22.Bb3!

 黒はポーンを取ろうとしているが白にはその与え方がたくさんある。客観的にはこの Bb3 が最善の選択である。この手は局面の様相を変え白がもっと動けるようにする。

22…Bxb3 23.cxb3 Qxb3 24.a5

24…Na4

 24…Nc4 の方が良くナイトが中央に来てd6のポーンを守りa5のポーンに当たっていた。

25.Nh2?

 25.Nd5! Rc2 26.Qd1 Nxb2 27.Ne7+ Kh8 28.Qxd6

なら形勢不明だが最善の手順をつくせば互角の形勢だろう。白のクイーン翼は崩壊しているが駒が動きにくいのは白の方でなく黒の方である。

25…g6!

 この手はたぶん白が守りきれる収局になる比較的一本道の長い変化を避けている。局面の争点を保ち、白に時間不足の中でもっと重要な決定を迫っている。25…Nxc3 は 26.bxc3 Qxc3 27.Ng4 Qxa5(27…Qd2 は 28.Qf3 Rc3 29.Qd1)28.Red1 Qc5 29.Nxh6+ gxh6 30.Rdc1 Qxc1 31.Rxc1 Rxc1 32.Qg4+ Kh8 33.Qd7 Rcc8 34.Qxb7 Ra8 35.Qe7 f6 36.Qxd6 a5 37.Qa3

となって、黒キングが薄いので進展を図るのが難しい。

26.Ng4 Bg7 27.Nd5 Rc2

28.Qe3

 白の最善の受けは 28.Qd1 Nxb2 29.Ne7+ Kh8 30.Qxd6 だった。

28…Nc5 29.h5 Qxe3 30.Ngxe3 Rd2 31.Nc4 Rd4 32.Nxd6 Rd8

33.b4

 33.Rec1 は 33…Nxe4 34.Nxe4 Rxe4 35.Rc5 Rd4 で良くない。

33…Nd3 34.Nxb7 Nxe1+ 35.Rxe1 Ra8

36.f3

 交換損にもかかわらずカームスキーにはまだ十分引き分けの可能性があった。しかし白は 36.Nc5 Bf8 37.Rc1 でポーン損しても駒の動きを良くしておかなければならない。

36…Bf8 37.Rc1 Bxb4 38.Rc7

 白は Rc7 と指す前に 38.hxg6 と取ることもできた。この取りを保留する利点は変化によっては h5-h6 が黒キングを閉じ込めることができることと、…gxh5 なら白のナイトにf5の地点が用意されるということである。

38…gxh5 39.Kh3 Kg7

40.Kh4?

 恐怖の40手目でまた間違えた。7段目の釘付けのおかげで黒が勝勢になる。40.Nxb4 Rxb4 41.Nd6 なら黒はf7とa6のどちらのポーンを取らせるかという難しい選択を迫られた。どちらの場合でも白は引き分けの可能性が十分あるはずである。

40…Ra7! 41.Kxh5 Rxd5!

 ナカムラは正しく白の最もよく働いている駒を除去し、明らかな勝ちに単純化した。

42.exd5 Bxa5

43.Re7

 43.d6!? でも 43…Bxc7 44.dxc7 Ra8 45.Nd6 a5 46.c8=Q Rxc8 47.Nxc8 a4 48.Nd6 a3 49.Nf5+ Kf6 50.Ne3 a2 51.Nc2 Ke6 52.Kh6 Kd6!

(驚くべきことに黒キングは白がパスポーンを作ることができる前にはるばるc3の地点まで行進する余裕がある)53.Kxh7 Kc5 54.Kg7 Kc4 55.Kxf7 Kc3 56.Na1 Kb2

で負ける。

 43.Rc5?? は 43…Bb6 で即負けになる。

43…Bb6 44.d6 a5

45.Kg5

 45.Nd8 この手順には落とし穴がいくつかあるがナカムラはすべてお見通しだった。45…Kf8!(45…a4 46.Nc6!)46.Rxa7 Bxa7 47.Nc6 Bb6 ナイトは端ポーンに対する受けが非常に苦手で、黒はいずれキングをクイーン翼に向かわせる。例えば 48.Nxe5 a4 49.Nc4 Bc5 50.d7 Ke7 51.Kh6 Kxd7 52.Kxh7 Ke6 53.Kg7 Kd5

これで黒の勝ちである。

45…a4 46.Kf5 a3 47.Nd8 a2 48.Ne6+ Kh6 49.Ng5 a1=Q 50.Nxf7+ Kg7 白投了

 白はもう有効なチェックがないので投了した。

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(この号続く)

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フィッシャーのチェス(320)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 もっとまれで衝撃的なのは似たような動きの駒同士のいわゆる「ホルツハウゼン」干渉である。スパスキーはまるでフィッシャーと協同創作しているかのようにこの態勢を整えた。

スパスキー対フィッシャー
 27.Qc2
世界選手権戦第5局、レイキャビク、1972年

27…Bxa4!

 白のクイーンは自分のビショップの利きをさえぎっているので、aポーンとeポーンを守る役割を負っている。28.Qxa4 は 28…Qxe4 で両当たりになるので白は投了した。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(319)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 干渉の最もよくある型はいわゆる「グリムショー」である。そこでは同じ地点でビショップがルークの利きに入って邪魔をしルークもビショップの利きに入って邪魔をする。2手プロブレムでは結果は詰みであり、実戦では単にポーン損になることがある。ペトロシアンとの番勝負第7局の次の局面でフィッシャーの奇妙に見える手は干渉あるいは有利な収局をもたらす効果があった。

フィッシャー対ペトロシアン
 11…Be7
番勝負、ブエノスアイレス、1971年

12.Qa4+

 黒は 12…Bd7 で先手でビショップを「展開」できるので無意味なチェックに見える。しかしこれがまさに要点である。ビショップがクイーンと干渉するので黒のdポーンは守り駒が一つ少なくなる。この結果として 13.Qc2 のあと黒はキャッスリングできなくなる。13…O-O なら 14.Bg5 でf6のナイトを取ることにより白はd5のポーンかh7のポーンが取れる(14…d4 は 15.Bxf6 dxc3 16.Bxc3 で「帰還」により失敗する)。だから黒はクイーンを交換しなければならない。

12…Qd7 13.Re1!

 フィッシャーはすぐに 13.Bb5 で交換得になってもクイーンが遊び駒になる代わりに、クイーン交換をさせてナイトでc5の地点を支配した。そして白が難しい収局に勝った。

(この章続く)

2012年09月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(12)

「Chess Life」1990年12月号(1/4)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

新たな布局の習得法

 1.d4 に対するあなたの防御はいつもクイーン翼ギャンビット拒否のオーソドックス戦法(1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7)だった。全般的には満足のいく布局だったが、「格下」の相手は負かしにくかった。そこであなたは何かもっと「激しい」ものを加える必要があると決断した。私の記事の「得意定跡の選び方」(「Chess Life」1990年8月号)で説明した原則を用いることによりあなたは「ニムゾインディアン/クイーン翼インディアン対」を学ぶことにした。図1はニムゾインディアン防御(1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4)の基本局面を示し、図2はクイーン翼インディアン防御(1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6)の基本局面を示している。

 図1

 図2

 もちろん私の以前の講座の「布局定跡の手順 現代のマスターの常套手段」(「Chess Life」1990年6月号)で既に学んだように、もっといくつかの手順が特定の局面に到達するためによく用いられる。例えばニムゾインディアン防御は 1.c4 Nf6 2.Nc3 e6 3.d4 Bb4 という手順で、クイーン翼インディアン防御も 1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.c4 b6 という手順でしばしば生じる。

 本稿では布局を習得しその「精通者」であり続けるための重要な過程について説明する。それは次の8段階の活動から成る。

 (1)その布局の主要な特徴を明快に言葉で過不足なく説明したものを手に入れる

 布局を学び始めるうえでの最も悪いやり方は、すぐに「重要な」手順を暗記し始めることである。そのような機械的な方法は決してうまくいかない。なぜなら記憶しておいた手順が終わるやいなや次にどうしてよいか分からず途方にくれるからである。まず布局がどういうものであるかについて「理解」することが必須である。ニムゾインディアン防御については「How to Play the Nimzo-indian Defence」(Raymond Keene、Shaun Taulbut 著)にすぐれた解説があり、クイーン翼インディアン防御なら「Understanding the Queen’s Indian Defense」(Andy Soltis、Edmar Mednis、Raymond Keene、John Grefe 著)が特にお薦めである。

 (2)それぞれの戦法について主要な特徴を明快に言葉で説明したものをできるだけ手に入れる

 もちろん白の戦法、例えばニムゾインディアン防御に対するルビーンシュタインの 4.e3 に対して何を指したいか分からないならば、黒の選択肢で高く評価されているもの全部について学ぶようにする。ニムゾインディアン防御での 4.e3 に対しては 4…b6、4…c5、そして 4…O-O のあと …c5 だけ、…d5 だけ、それに …c5 と …d5 の両方のシステムを持つものである。ニムゾビッチの 4…b6 を指したいと既に「分かっている」ならば、それの明快な言葉での説明を手に入れるだけでよい。

 言葉による説明を手に入れるには次のような情報源がある。

 (a)その分野の専門家による質の高い本。(上記の2冊の本はこの条件に合う)

 (b)チェス雑誌に掲載されるGMやIMの戦法解説記事

 (c)自分の個人トレーナーがその戦法に通じているならその人物

 戦法の本質をできるだけ深くそしてできるだけ洗練された方法で理解することが非常に重要である。可能ならばいつでも「情報源」に当たることである。それができないならばその戦法の真の専門家だけを信頼することである。

 GMレフ・ポルガエフスキーは自分の名著「Grandmaster Preparation」中のシチリア防御ナイドルフ戦法で「自分の」戦法(1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 b5)についての優れた章を書いている。彼は自分の戦法を「理解」することの大切さを次のように強調している(同書49ページ)。「何よりもまずどんな流行している戦法でもその本質や全体的な考え方を理解し、それから初めてそれを自分の常用布局に取り入れることがきわめて重要である。さもないと戦術の木で森の戦略図が隠され、方向を見失ってしまう可能性が大きい。」これですべて語りつくされている。そして「すべての」戦法について等しく当てはまる。

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2012年09月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(318)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手(続き)

 フィッシャーの思い切りのよい棋風は干渉の眼目手の好例をたくさん生み出してきた。この基本的な直線駒の戦術ではある駒が別の駒の利き筋上に動き、急所の地点に到達するのを妨害する。2番目の駒が敵駒ならばその効果はきわめて単純である。

ラスカー作(1890年)
 白先白勝ち

1.g5+ Kxg5

 ポーンを取らなくても結果は同じである。つまりビショップのh3-c1の斜筋が妨害される。

2.a5

 ビショップはポーンがa7の地点を通過するときに切って落とさなければならないが、2手でa7の地点を守る手段がない。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(317)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第31章 眼目手

 チェスのプロブレムとスタディは盤上で起こり得ることの理想化である。プロブレム作家の探し求める眼目手は実戦を指す選手にとって無縁でない。手段にすぎない眼目手が選手にとっては目的であるというだけである。

 だからプロブレムの研究、特に収局のスタディは、選手にとって技術を向上させるのにきわめて役に立つ。しかしそのような研究はどんな場合でも盤上での実戦経験に取って代わるものと考えるべきではない。

 チェスの達人の多くが彼以前にやったように、ボビー・フィッシャーが時々チェスの創作に手を染めれば面白い。ラスカーとカパブランカは協同の収局のスタディで協力するということまでした。ボトビニク、ケレス、そしてスミスロフは皆プロブレムとスタディを発表した。アリョーヒンは明らかにやらなかったが、自分の試合の徹底的な分析といくつかの大きな大会の本の解説で多くの収局の理論(例えばルーク対ナイト)を豊かにした。

 フィッシャーのこれまでの試合にはプロブレムの眼目手がたくさん見られる材料が豊富である。彼は何かを創造することのできた試合を最も楽しんだのではないかと思う。その何かとは時おり研究済みの変化から当然のように出てくる試合、または時おり相手のポカのせいで彼の思いどおりになる試合ではなく、チェスの歴史に残るものである。チェスの戦いの要素が有害であるというよくある不満がうそであるというのは、ほとんどの選手の側のこのような自然な好みのせいである。

(この章続く)

2012年09月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(41)

「Chess Life」2004年5月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法(続き)

c)5…f6

 長年この手がe5のポーンを守る最もよく指される手段だった。ボビー・フィッシャーはこの戦法に対して参考になる素晴しい勝利を何局かあげている。しかしその時以来黒の方にも改良手段が用意されている。

6.d4

 ここで黒にはd4で交換に応じるか …Bg4 で釘付けにしてe5のポーンを間接的に守るかの選択がある。

6…exd4

 6…Bg4 7.dxe5 ここで黒は 7…Qxd1 でクイーンを交換しなければならない。そうしないで 7…fxe5 と取ると白にd8でクイーン交換されe5のポーンを取られる。8.Rxd1 fxe5(フィッシャーの勝局の一つは 8…Bxf3 9.gxf3 fxe5 10.Be3 Bd6 11.Nd2 Ne7 12.Nc4 O-O-O 13.Rd3 b5 14.Na5 Bb4 15.Nb3 Rxd3 16.cxd3 Ng6 17.Kf1 Rf8 18.Ke2 Nf4+ 19.Bxf4 Rxf4 20.Rg1 Rh4 21.Rxg7 Rxh2 22.a3 Bd6 23.f4 exf4 24.d4 Kd8 25.Na5 c5 26.e5 Bf8 27.Nc6+ Ke8 28.Rxc7 で黒が投了した[フィッシャー対ルビネッティ、ブエノスアイレス、1970年])9.Rd3 釘付けをはずしナイトを守った。9…Bd6 10.Nbd2 b5(11.Nc4 を防いだ)11.b3 Ne7 12.Bb2 Ng6 いい勝負である(ティマン対カスパロフ、ヒルフェルスム、1985年)6…Bd6? は悪手で、7.dxe5 fxe5 8.Nxe5! Bxe5 9.Qh5+ で白がポーン得する。

7.Nxd4 c5 8.Nb3 Qxd1 9.Rxd1

 ルイロペス交換戦法に非常に典型的なクイーンなし中盤戦になった。

9…Bg4

 9…Bd6 なら 10.Na5! b5(黒が 10…Bg4 11.f3 O-O-O? ではめようとすると白には「はめ手破り」の 12.e5! があり[しかし 12.fxg4 には 12…Bxh2+! がある]、1967年ハバナでのホルト対ジェリアンディノフ戦では黒が投了した)11.c4! Ne7 12.Be3 f5!? 13.Nc3 f4 14.e5! Bxe5?!(14…fxe3 15.exd6 exf2+ 16.Kxf2 O-O+ 17.Kg1 cxd6 18.Rxd6 Bf5 19.Re1 なら白は少し優勢なだけである)15.Bxc5 Bxc3 16.bxc3 Ng6 17.Nc6 Be6?!(17…Bd7 の方が良かった)18.cxb5 axb5 19.Na7 Rb8 20.Rdb1 Kf7 21.Nxb5 で、1966年ハバナでのフィッシャー対ポルティッシュ戦では34手で白の勝ちになった。

10.f3 Be6 11.Nc3

 11.Bf4 なら黒は 11…c4! 12.Nd4(12.Na5? は 12…Bc5+ 13.Kf1 Bb6 14.Nxb7 Rb8 でナイトが捕まる)12…O-O-O と応じる。

11…Bd6 12.Be3 b6 13.a4 Kf7

 13…O-O-O なら 14.a5 Kb7 15.e5! Be7 となる。代わりに 15…fxe5 なら 16.axb6 cxb6 17.Ne4 Be7(17…Bxb3 なら 18.Nxd6+ Kc6 19.cxb3 Rxd6 20.Rxd6+ Kxd6 21.Rxa6、また 17…Bc7 なら 18.Nbxc5+)18.Rxd8 Bxd8 19.Nbxc5+、また 15…Bxb3 なら 16.exd6 Bxc2 17.Rdc1 Bg6 18.dxc7 で白が優勢な戦いになる。(15…Be7 のあと)16.Rxd8 Bxd8 17.Ne4(18.Nbxc5+ bxc5 19.Nxc5+ の狙い)17…Kc6?(改良手は 17…Bd5!? 18.Rd1 Ne7 19.exf6 gxf6)18.axb6 cxb6 19.Nbxc5! これが勝着の手筋 19…Bc8 20.Nxa6 fxe5 21.Nb4+ 1992年ユーゴスラビアでのフィッシャー対スパスキー戦ではここで黒の投了となった。このあと続けるとすれば 21…Kb5 22.Nd6+ Kxb4 23.Ra3 Nf6 24.c3# で詰みになる。本譜の代わりに 13…a5 と突くこともできた。

14.a5 c4 15.Nd4 b5 16.f4

 16.Nf5? は 16…Bxf5 17.exf5 Ne7 18.g4 h5 となって1976年レーワルデンでのティマン対コルチノイ戦では黒が優勢だった。

16…Ne7

 いい勝負である。

結論

 白としては交換戦法は大局観で指す選手、特に収局の得意な選手には特に向いている。黒としては自分の棋風に基づいて前述の3戦法から一つを選びもっと深く研究する必要がある。両者が正しい手順を踏めば黒は互角の局面にすることができる。しかしこのような局面を誰もが好むわけではないく、「辛抱」の試合になることがよくある。だから白の観点からは心理的な理由からも好都合の戦法になるかもしれない。

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フィッシャーのチェス(316)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 創作には巧妙な「しのぎ」が「呼び物」となっている分野がある。それはクイーン昇格寸前のポーンを止めることである(「拾い物」はかつて創作されたことがないようである。たぶん実戦できわめてたやすく成功するからかもしれない)。滝に落ちようとするヒロインを救うかのように、一見失敗した大義を救うことはメロドラマ的事件がいっぱいである。

リヒター対ドエルンテ
ベルリン、1939年
 白の手番

 6段目に進んだ2個の連結パスポーンは1個が既に当たりになっているのでなければルークによって止められない。この局面で黒は何を恐れる必要があろうか。

1.Kd6! d2 2.Kc7 d1=Q 3.Ra6+!

 今度は白がポーンをクイーンに昇格させる番で、それも即詰みである。

3…bxa6 4.b6+ Ka8 5.b7+ Ka7 6.b8=Q#

(この章終わり)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(315)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 この試合より少し前にフィッシャーは次の絶望的な局面で妙案を思いついた。

レドルフィ対フィッシャー
マルデルプラタ、1959年
 38…Bb4

 誰がこの局面の黒をフィッシャーだと思うだろうか。黒の手は 39.Qd4+ でクイーン交換を許し黒のすべての抵抗を終わらせるものだった。見込みがないのに希望を持ち続けフィッシャーは「マーシャル」を試み、だまされやすい相手は頓死した。時間切迫だったのかもしれない。

39.a7? Bc5 40.Qxc5?

 40.Qg2 Bg1+ 41.Qxg1 でまだ白の楽勝だった。

40…Rh1+

 あと1手で詰みになる。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(314)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 中盤戦の局面ではねばり強さよりも独創性が「しのぎ」の成功の鍵となる。ロバート・バーンはこの全米選手権戦の熱戦で「場違い」の教訓を味わった。

R.バーン対フィッシャー
ニューヨーク、1959-60年
 24…Rc3

25.Ng5

 f7のポーンが守れないのでこの手は見るからに必殺の一手だった。フィッシャーの応手は前手を指したときに明らかに予定していたもので、白はほとんど予期していなかった。そうでなければもっと難しく 25.Nf6! と指していただろう。この手は黒のd7のルークに当たっているのでf7のポーンを狙っていることには変わりない。違いはルーク損になるので黒には実戦と同じ防御手段(クイーン切り)がないということである。例えば 25…Rxd3 26.Nxd7 Rd2 27.Rxf7 Rxg2+ 28.Kf1 Qd8 29.Nf6! となれば Qxh6+! から始まるルークとナイトによる周知の詰みの狙いがある(第8章「昼下がりの詰み」を参照)[訳注 29…Qb5+ から即詰みがあるので正着は 29.Rf8+ です]。また、黒が1手かけて 25…Rdc7 とルークを逃がせば 26.Ng4! が間に合う。26…Rxd3 27.Nxh6 gxh6 28.Qxh6+ Kg8 29.Rf4[訳注 実際は 29…f5 30.exf6e.p. Qh7 で黒の勝勢です]または 26…Qf8 27.Bg6[訳注 27…Bc1 で黒優勢です]で危険な目に遭わずに勝ちになる。

 しかし実戦はフィッシャーがしのぎの条項を持ち出すことができた。

25…Rxd3! 26.Rxf7 Rd2! 27.e4

 しゃれているのは 27.Qg6 なら 27…Rxg2+ 28.Kf1 Rxg5 で黒が裏口から受け切ることができる点である。

27…Qxf7 28.Nxf7+ Rxf7 29.Qxf7 Bxe4

 29…Bxe4

30.Re1

 フィッシャーはクイーンの代わりにビショップ2個しか得ていない。しかし白はそれらに自由きままにさせる余裕はない。ほとんどの選手は 30.Qxe6 に飛びつくだろうがフィッシャーは次のような手際のよい引き分けの手順を用意していた。30…Bb2 31.Re1 Bxg2 32.Rd1(こうしないと …Bxd4+ で困る)32…Bxd4+ 33.Kh2 Bxe5+ 34.Qxe5 Rxd1 35.Kxg2 Rd2+ このあと …Rxa2 で白に有効なポーンがなくなる。このルークはチェックで取られることがなくこのあとa5の地点でじっとしている。盤上のポーンを減らして引き分けの可能性を高めることをフィッシャーほどあくまで追究した選手はほとんどいないだろう。全米選手権戦でのレシェフスキーに対する唯一の敗戦では、似たような収局で最後にあきらめるまで20手以上もの間ルークでクイーンに立ち向かった。

30…Rxg2+ 31.Kf1 Bd5 32.Re2 Rg4?

 ルークを交換すればa2のポーンが落ちるので引き分けが保証されていた。フィッシャーはもう少しで迷う前に同形三復で引き分けにした。

(この章続く)

2012年09月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス