2012年08月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(284)

「Chess Life」2012年8月号(1/8)

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全米選手権戦

FMマイク・クライン

 スポーツ映画では敗者のドラマにこだわる。しかし2012年全米選手権戦と同女流選手権戦では映画脚本家でも高く評価できるようなつばぜり合いが最上位4選手により演じられた。戦いの舞台は5月7日から20日までセントルイス市のチェスクラブ・教育会館で、2週間に渡って開催され、GMヒカルが大会終盤で先行するGMガータ・カームスキーを追い越し3度目の優勝を飾った。

 ナカムラは最終戦の前の回戦に入るとき半点差をつけられていて、2年連続チャンピオンのカームスキーに対して気乗りのしない黒番で指すことになっていた。

 カームスキーとナカムラはこれまで5回対戦していて、すべて引き分けだった。今回の対戦では主催者は他の10選手の試合とは別にして対局室の反対側の机に設定した(女子は休養日で、対局室の半分が空いていた)。ナカムラは「基本的に皆血の出るような試合を望んでいる。それが現実だ」と言った。一番最近の対戦は今年のタタ製鉄大会で、ナカムラは同じ黒番で、シチリア防御ドラゴン戦法を採用した。1ポーン得し勝ちを目指したがチャンスを逃し引き分けに落ち着いた。

 今回の対戦でナカムラはお気に入りのポロシャツ-全体の半分をカナダのまばゆい楓の葉の赤が占めている-を選んだ。ひげをきれいにそってやって来てやる気満々だった。ナカムラはシチリア防御を選んだが今度はナイドルフ戦法だった。カームスキーは 6.a4 を選択した。これは最近はほぼ4局に1局の割で指していた。しかしナカムラの 11…Na5 のあとからは目だって慎重になった(次の手を応じるのに30分費やした)。試合が進むにつれてカームスキーは何度か深くため息をつき両手で顔をおおった。手をどけても問題はしょせん同じだった。ナカムラは自信ありげにほとんどの時間盤から離れていた。手番になるとしばしば相手に適当な手がないことを示唆するかのように盤をしげしげと眺めた。ビショップをナイトと交換したあとナカムラは自分に必要な不均衡を作り上げc列で強い主導権を得た。ベイクアーンゼーでの対戦のように圧力によりポーン得になったが前局と異なり勝ちに結びつけることができた。カームスキーは惰性で指し続けたが、ナカムラがパスポーンをどんどん突き進めたとき適当な応手を見つけることができなかった。

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(この号続く)

2012年08月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(313)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 フィッシャーは「しのぎ」の受け取り側になることもあった。カパブランカが言ったように勝局よりも敗局から学ぶことの方がはるかに多いならば、フィッシャーは危機に際して大いに役に立つことを早くから学んでいたことになる。

フィッシャー対チオクルテア
ハバナ、1965年
 42.Rxa7

 黒はビショップを釘付けにされ b6 突きが目前に迫っているのでポーン競争に負けているように見える。しかし・・・

42…e3+! 43.Kc2

 キングが1段目に下がると黒ルークにチェックされて釘付けを解消されるだけでなく詰み筋に入る。しかし今度はビショップが守られていない・・・

43…Bxb5! 44.Rxh7 Bxe2 45.Rf7 f3!

 これが最後の要点である。gポーンを清算してしまえば黒のキングとビショップはブラウン対フィッシャー戦とラスカー対ラスカー戦とのように引き分けにできる。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(312)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 フィッシャーは見込みのなさそうな局面でもくじけず、頑強な防御者に対しては辛抱強いとずっと評されてきた。次の局面でフィッシャーが白だったらすぐにではなくても勝っていただろう。実際は黒だったので引き分けにできた!

バルター対フィッシャー
チューリヒ、1959年
 53…Kd7

54.a4?

 この当然そうな手に悪手記号をつけるのは不可解に思われるが、これでむざむざ半点減ってしまった。異色ビショップは引き分けの可能性が高いことで名高い。しかしそれはキングとビショップが協力して敵ポーンを「固定」することができるときだけである。ここでさらに分かりにくくさせているのは黒キングがh8の地点に到達できる限り黒はビショップと引き換えに白の2ポーンを取ることができるということである。白ビショップは黒キングを隅から追い出すことができない(この着想を1972年スパスキーとの世界選手権戦第1局でフィッシャーの見逃した引き分けと比較されたい。第34章「ゴルディオスの結び目」を参照)。

54…Kc7 55.b4 Kb8! 56.a5 Ka7

 黒ビショップがa7-g1の斜筋に沿って配置につき白が b6 と突くと自分を犠牲に両ポーンを取ってしまうので白は進展がはかれなかった。要点は白キングがこのポーン突きをc6の地点以外からは支援できず、…Bc7 とされるとポーンを進ませなければならないので白キングがc6の地点へも行けないということである。従って勝つための手順は黒がこの防御態勢をとれる前にポーンをb6の地点に進ませることである。そのためには 53.b4 でちょうど目的を達する。以下は 54…Kc7 55.Ka5 Kb8 56.b5 で黒は白の b6 突きを止めることができない。

(この章続く)

2012年08月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(11)

「Chess Life」1990年10月号(3/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

フィッシャーとカルポフから布局の指し方を学ぶ(続き)

うのみにするな

 1969年ストックホルムでの世界ジュニア選手権戦のカルポフ対アンデルソン戦はルイロペスで始まった。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d6 9.h3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2 Bb7

 ここでカルポフは次のように解説している(「My Best Games」82ページ)。「これはチゴーリン防御の一番古い手の一つで、現在では滅多にお目にかかれない。そのときでさえ 12…cxd4 13.cxd4 で素通しc列での反撃を用意したあとでだけ見られた。本譜で白はすぐに中原を閉鎖し、黒ビショップはd7の地点に行くのに2手損をしなければならない。手損は閉鎖的な局面では大したことがないと言われてきた。もちろん開放的な局面ではもっと高くつく。しかしこのような局面でさえ手損はすべきでない。」(強調は筆者)

 試合は次のように続いた。13.d5 Bc8 14.Nf1 Bd7 15.b3

 再びカルポフの解説に耳を傾けよう。「この手の意図は黒のナイトの動きを制限することである。一般に黒は多くの布局で特定の駒の展開に何らかの困難を抱える。例えばフランス防御やべノニ防御での黒の「問題」ビショップがそうである。本局では行き場を探している「不名誉なスペインナイト」である。本譜の手はこのナイトからc4の地点を奪っていて、黒がcポーンを突けば b3-b4 突きでこのナイトをやはり良い展望のないb7の地点に押し戻す。」(クイーン翼ナイトに関連した同様の着想がキング翼インディアン防御のユーゴスラビア戦法にも見られ、決して目新しい着想ではない)

 クイーン翼ナイトの抑止についての解説に関連した洞察の新鮮さに注目して欲しい。これは白が d5 と突いて中央を閉鎖する戦法における非常に重要な要因である。この基本を理解すればカルポフの一連の試合全体をずっとよく追うことができる。例えば1975年ミラノでのカルポフ対ウンツィカー戦である(前書第42局 12…Bd7 13.Nf1 Rfe8 14.d5)。このあとの指し手のほとんどを貫いている主題は黒のクイーン翼ナイトが決して居心地のいい場所を見つけることができず、実際黒がクイーン翼の防御にまわっているときにクイーン翼ナイトが邪魔になることがよくある。

 しかし、しかし、しかしである。以上のことすべてにもかかわらずグランドマスターのすることをうのみにすることだけはしてはいけない。チェスの棋理に本当に合っているかを確かめるようにしなければならない。間違いなくグランドマスターはチェスの原則を完璧に理解している。それにもかかわらず「GMのポカ」とも呼べる悪手の大半は、原則に対する例外が見つけられたと考えられることにより起こっている。普通の規則や規定に対する例外を探すのは人間の特質のようである。チェスでは原則に対する例外は我々がそうだと考えたがるよりもずっと少ない頻度で起こる。以下では二つの例をあげることにする。

 シチリア防御ドラゴン戦法に対するユーゴスラビア攻撃(1.e4 c5 Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 Nc6 8.Qd2 O-Oで白は1956年の初めから 9.Bc4 で圧倒的な勝率をあげ始めた。

 黒は 9…Nxd4 10.Bxd4 Be6、9…a6、9…Na5、9…Nd7 から …Nb6、9…a5 というように一連の防御全部を試したがどれも無駄だった。ようやく関心が 9…Bd7 に向いたのは約6年の壊滅的な敗北のあとだった。これこそ断然理にかなった9手目じゃないか?黒は通常の手段で小駒の展開を完了し、中央への影響力をちゃんと保持し、半素通しc列での反撃を準備している。

 しかし 9…Bd7 に関心が向いたのは他の手でうまくいったことがただ一つもなかったからにすぎなかった。明らかに黒はc4のビショップの威力に目をくらまされて、できるだけ早くそのビショップを無力にしたがっていた。展開の健全な原則が従属的な役割に引き下がっていた。

 二番目の例はシチリア防御ナイドルフ戦法からのポルガエフスキー戦法である。1961年全ソ連選手権戦でのブロンシュテイン対ポルガエフスキー戦で通常の 1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 b5 8.e5 dxe5 9.fxe5 Qc7 10.exf6 Qe5+ 11.Be2 Qxg5 のあとブロンシュテインは新手の 12.Qd3 で相手を驚かせた。

 実戦でポルガエフスキーは 12…Qh4+ 13.g3 Qxf6 と指し簡単に互角の形勢にした。しかしその後 14.Rf1 Qe5 15.O-O-O Ra7 16.Nf3! で白が優勢になることが分かった。これで約10年の間この戦法全体に暗雲が立ち込めた。ポルガエフスキー自身がすぐに 12…Qxf6 と取れば黒が全然問題ないことを発見したのはようやく1973年になってからだった。13.Rf1 Qe5 14.O-O-O Ra7 15.Nf3 のあと黒は 15…Qf4+ と指せるからである(16.Nd2 なら Qe5、16.Kb1 なら Rd7)。

 これについてのポルガエフスキーのコメントは非常に面白い。彼は自分の名著(「Grandmaster Preparation」68ページ)で次のように言っている。「チェスの不合理な論理とはこのようなものである。白の12手目の局面を初心者に見せたらきっと考えずに 12…Qxf6 と指すだろう。実際黒はポーン得になり、それによって自分のポーンの形を乱すこともない。しかし我々がこんなことに到達するにはなんと10年以上を必要としたのだった!」

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2012年08月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フィッシャーのチェス(311)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 チェスの偉大な伝説の一つは1924年のニューヨーク大会で、当時のほとんどすべての代表的なマスターが参加した。もっと重要な、またはもっと接戦となった大会なら他にもあったかもしれないが、この大会ほど劇的な結末を迎えた大会はなかった。この時の世界チャンピオンはカパブランカで彼の人気は大変なものだった。だから新しく創刊された Time Magazine 誌はこの大会が始まったとき彼の顔を表紙に用いた(一介のチェス選手がタイム誌の表紙を飾ったのはこれが最後だった)。

 大会の心情はエマーヌエル・ラスカーの優勝に集まっていた。3年前に彼がカパブランカに世界チャンピオンの座を奪われたのは本当に力の差だったのだろうか?米国のマスターのエドワード・ラスカーは優勝をめぐる戦いの面白く機知に富んだ読み物をいくつか書いている。この戦いでは彼自身も重要な役割を果たしている。エドワード・ラスカーは世界チャンピオンとの2局で勝ってもおかしくなかったが、1局目は引き分けになり2局目は負けてしまった。そのあと同姓のラスカーの肝を冷やさせることになった。ちょうど次の局面になる前にカパブランカと他の選手たちはこの米国選手がラスカーの次の手を大会会場の外で待っている時に心から祝福していた。

EM.ラスカー対ED.ラスカー
ニューヨーク、1924年

 席に戻った黒はすぐにナイトが頑強な防御駒であることに気づいた。この駒は単にb2とa4を往復する。黒キングがルークを回って2段目から近づこうとすると(95…Re3 のあと …Ke4、…Kf3 などで)白は Ka3、Kb2 から Nc3 でポーンをルークから隠して取ってしまう暇がある。そしてエマーヌエル・ラスカーは優勝に向けてまた半点をもぎ取った。

 念のため書くとキングとナイトはキングが隅を避けナイトを近くに引き連れている限りキングとルークに常に引き分けることができる。

(この章続く)

訳注 タイム誌の表紙

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(310)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ(続き)

 1970年ザグレブでフィッシャーは国際舞台への劇的な復帰をやってのけていた。ウォルター・ブラウンはフィッシャー戦で交換得になり、収局で方をつけてしまうかに思われた。しかしフィッシャーは60手、70手、80手と戦い続けた。次の局面でフィッシャーの進攻したポーンは何の役にも立たないように見えるし、ナイトは動きを封じられ、キングは今にも詰まされそうである。

ブラウン対フィッシャー
ザグレブ、1970年
 87…Kc8

88.c7?

 白は決めに出た。しかしフィッシャーは局面をしのぐ「拾い物」を見つけた。違いは黒ナイトが狙いを持てることで、ルークのほとんどどんな動きでも-88.Rh7 なら二重に安全である-それは不可能だった。

88…Nd7!

 奇妙にも1924年のラスカー対ラスカー戦の収局を思い起こさせる(次局)。ナイトが進攻ポーンを「隠す」ことができるとルークはそのポーンを横から適切に守ることができない。

89.Kc6 h1=Q!

 この手はビショップをルークの守りから引き離すためである。

90.Bxh1 Ne5+ 91.Kb6 Bc5+! 92.Kxc6 Nxf7

 そしてナイトはポーンと刺し違えることができる。プロブレム作家ならクイーン昇格の手がビショップを有効なチェックがかけられない地点に「おびき寄せた」ことにも満足を覚えるだろう。

(この章続く)

2012年08月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(40)

「Chess Life」2004年5月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法(続き)

b)5…Qd6

 これは変わったe5ポーンの守り方である。普通はこんなに早い段階でクイーンを出すのは勧められない。

6.Na3

 基本原則の「ナイトを盤端に置くな」または有名な金言の「へりにナイトを置くのはヘボ」にこの手は背いていると言われるかもしれない。しかし白は黒クイーンの普通でない展開につけ込もうとする直接的な狙いを持っているのでこの手は例外である。もっと普通の 6.d3 なら黒は 6…f6 7.Be3 c5 8.Nbd2 Be6 9.Qe2 Ne7 10.c3 Nc6 で中央のd4の地点をしっかり支配下に収めて楽な局面になる。

6…b5

 この手は相手の駒の動きを制限する好手である。目的は両当たりでポーン得を狙う 7.Nc4 を防ぐことである。同じ意図で 6…Be6 という手もある。そのあとの予想手順は次のとおりである。7.Qe2 f6 8.Rd1 白は展開に優り黒キングはまだ中央列にいる。だから白は d2-d4 突きで中央での開戦を準備する。8…c5(2002年カペルラグランドでのニシペアヌ対ソフロンレ戦では黒は 8…O-O-O で d2-d4 と突かせ白が優勢になった。9.d4 Bg4 10.Be3 Qe6 11.dxe5 Rxd1+ 12.Qxd1 Bxa3 13.bxa3 fxe5 14.Ng5! Bxd1 15.Nxe6 Bxc2 16.f3)9.c3 Bg4 10.h3 Bxf3 11.Qxf3 Ne7 12.d4 cxd4 13.cxd4 exd4 14.Bf4 Qd7 15.Rac1 ポーンの代償が十分ある。

7.c3 c5 8.Nc2

 やはり白の作戦は明らかである。白は d2-d4 突きで仕掛けたがっている。

8…Ne7

 8,,,Bb7 は 9.d4 で白が少し優勢になる。

9.a4

 白は中央での開戦の前にa列を素通しにする。もっとも 9.d4 でも面白い試合になる。

9…Rb8

 9…bxa4 10.Rxa4 は黒のクイーン翼のポーンの形がひどいことになる。

10.axb5 axb5 11.d4 cxd4

 11…Ng6 なら 12.Nxe5 cxd4 13.Nxg6 hxg6(…Qxh2# で頓死の狙いがある)14.e5(好手)14…Qb6 15.Qxd4 と進む。

12.cxd4 exd4 13.Ncxd4 c5

 いい勝負である。黒は急いでキング翼での展開を完了しキャッスリングする必要がある。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(309)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第30章 しのぎ

 「しのぎ」があれば「拾い物」もある。大ざっぱにはピルズベリーとカシュダンの間に活躍した米国の偉大なチャンピオンのフランク・マーシャルは「拾い物」という言葉に意味を与えた。偉大なアリョーヒンでさえ敗北から引き分けを、そして引き分けから勝利を引き出すマーシャルの能力にうらやみながらも敬意を表していた。しかし拾い物をしのぎと区別する要素は巧妙さや邪悪なうまさでなく「ねばり強さ」である。その違いが重要であるときは、ねばり強さこそフィッシャーの持っているものである。

 フィッシャーの前にはねばり強さが成し遂げられることを見せつけていたのはラスカーだけだった。ラスカーの信奉者たちがもっとも典型的だと思う試合は1914年サンクトペテルブルクでのカパブランカとの激突である。そこでラスカーは単なる引き分けでなく勝利が必要なとき収局で相手の2駒に対しルークで防御を行なった。これは引き分けだった。カパブランカとの2回目の対戦では勝ちを収めて彼を抜き大会に優勝した。フィッシャーの大会ではまだそのようなドラマにお目にかかったことがない。しかしねばり強さは見られる。しかしたぶんそれゆえにかえってふさわしい人間なのだろう。

(この章続く)

2012年08月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(308)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま(続き)

 理由は分からないがこの時代の最も堅実な選手の一人がフィッシャーを相手にすると繰り返しへまをした。スベトザール・グリゴリッチはマスターの中でフィッシャーの親しい友人の一人でもあった。

グリゴリッチ対フィッシャー
パルマ、1970年
 28…b6

29.Rf2? Nd3!

 「弾丸のような速さで指された」と対局会場の報告は伝えている。この両当たりは 30.Rxd3 のあと白の3駒が最下段に戻れるがどの2駒も同じ地点に利いていないので成立する。

 グランドマスターも初心者も同じ人間であることを知るのは楽しい。

(この章終わり)

2012年08月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(307)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま(続き)

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦第21局、レイキャビク、1972年
 29…Ke7

 スパスキーの世界チャンピオンとして最後となる一連の手はわずか5手の中に二つのヘボ手を含んでいた。

30.g4?

 一般に二重ポーンの持つ唯一の狙いは前に進んでいって相手のもっと良好なポーンと交換になることである。スパスキーはそのお膳立てをした。

30…f5! 31.gxf5 f6 32.Bg8 h6 33.Kg3 Kd6 34.Kf3?

 スパスキーの最後のチャンスは 34.f5 と突いてe5の地点のドアを閉めることだった。そうなれば黒は何も進展が図れなかった。しかし実戦は一巻の終わりである。

(この章続く)

2012年08月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(283)

「Chess」2012年6月号(4/4)

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大局観の練習問題

GMヤコブ・アーガード

 最善手を見つける目的で毎月二つの局面を分析している。複雑な局面もあれば単純な局面もあり、序盤、中盤、終盤もある。これらすべてに共通する主題は、一つの最善の作戦に基づいた一つの最善手があるということである。これらの練習問題に解答するには本質的なことに集中するために三つの質問を自問するのがよい。質問1と3はどちら側からも答える必要がある。質問は次のとおりである。

1)弱点はどこか。
2)相手の狙いは何か。
3)最も働いていない駒はどれか。

 局面の弱点を見つけることができれば相手の狙いを推測するのに役立つ。そして自分の有望な着想を相手の着想の阻止-先受け思考として知られている-と組み合わせる。最後に自分の最も働いていない駒を働かせることにより、または相手の駒を働かせないままにさせることにより、局面が最も改善されることがよくある。通常は上記三つの側面のうち二つが最善手を見分ける上で重要である。時には三つ全部、そしてたまには一つだけが重要である。そうは言ってももちろんこれらの局面に解答するための正しい方法は数多くある。つまり問題に解答できると自分が思う方法はすべてそうである。

 大局的な判断のこれら三つの基本的分野に細かく注意を払えばグランドマスター並みの直感力を養うのに役立つ。

2008年モントリオール
T.ルセル・ルーズモン – H.ナカムラ

黒の手番

解答

 h3のポーンとg2のナイトという黒の珍しい態勢が害をもたらすかそうでないかは一見しただけでははっきりしない。これが現代チェスによくある現象である。多くの試合ではどの要素が最も重要かを評価できることの意義は大きい。それはそれとして複雑な大局的質問はいくつかの単純な基本に落とすことができる。d1のナイトとf1のルークはひどい形である。g2のナイトは状況により良くもなり悪くもなる。f3の地点は弱い。e6のポーンはむき出しになっている。黒は単純な一撃でこれらの問題点全てを解決できる。25…e5!! 26.dxe5 白は他に適当な手がない。26.Qxe5 は 26…Re8 から 27…Qf3 ですぐに黒の勝ちになる。26.f3 も 26…exd4 で見込みがない。26…Qf3 27.Nc3 主要な着眼点の一つが役に立つのが 27.Qxf3 Rxf3 28.Kg1 d4! で、白駒が完全に圧倒される。27…Ne3+ 28.Qxf3 Rxf3 29.Re1 Rxf2 30.Nd1 Nxd1 31.Rxd1 Kf7 0-1

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(この号終わり)

2012年08月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(306)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま(続き)

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦第14局、レイキャビク、1972年
 27.Nd4

27…f6?

 黒はポーンを返すつもりだが、ここでは次のように小駒を交換し簡単な勝ちになる手順があった。27…Nxd4 28.Bxd4 Bxd4 29.exd4 Rb8 いったいフィッシャーは 27.Nd4 で何を意図していたのであろうか。

28.Bxf6

 黒のナイトが「浮き駒」状態なので白のビショップは「特攻」になった。試合はこれといった見せ場もなく引き分けに終わった。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(305)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま(続き)

 タイマノフは以降の試合でも10秒チェスのようなばかばかしい見落としをした。

タイマノフ対フィッシャー
番勝負、バンクーバー、1971年
 45…Kh6

46.Rxf6? Qd4+

 47.Rf2 Ra1+ でルークが落ちる。

(この章続く)

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布局の探究(10)

「Chess Life」1990年10月号(2/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

フィッシャーとカルポフから布局の指し方を学ぶ(続き)

戦略的に健全な作戦

 フランス防御で 1.e4 e6 2.d4 d5 のあと白はこのあとの基本的な方針を決めなければならない。戦略的に健全な手段はタラシュの 3.Nd2 である。カルポフの評価(「My Best Games」29ページ)に耳を傾けてみよう。「大切なのは白に少しだが永続的な優勢がもたらされるということである。そして私の強調するのは永続という点である。」

 黒の最も信頼できる定跡の応手は 3…c5 で、現在の主流手順は 4.exd5 exd5 5.Ngf3 Nc6 6.Bb5 Bd6 7.dxc5 Bxc5 8.O-O Nge7 9.Nb3 Bd6 となっている。1973年マドリードでのカルポフ対ウールマン戦(同書第36局)は次のように進んだ。10.Bg5 O-O 11.Bh4

 カルポフは次のように解説している。「この手の意図は単純である。この局面における白の優勢は黒が孤立dポーンを抱えていることに関連している。この弱点につけ込むためには交換により単純化すべきである。小駒を盤上から消していくが、その手始めがd5ポーンの周りの地点に利いている黒枡ビショップである。」

 時の経過とともにどうしても細かいところのいくつかは変わり、実際にゆっくりした 11.Bh4 のあと黒はバガニアン対グリコ戦で示されたとおり 11…Qb6! で互角にできる。従って白の最強の作戦は今は 10.Re1 O-O 11.Bg5 であると考えられている。しかし戦略の大方針は不変である。即ち白は黒枡ビショップ同士の交換を望み、一対の小駒の「どんな」交換でも白の利益になる。この洞察があれば白は定跡の知識がちょうどここで尽きてもいくつかの論理的な戦略手順を導き出すことができる。

 今度はこの情報を次の手順で始まる戦型にどのように適用できるかをみてみよう。3…Nf6 4.e5 Nfd7 5.c3 c5 6.Bd3 Nc6 7.Ne2 cxd4 8.cxd4 f6 9.exf6 Nxf6 10.O-O Bd6 11.Nf3 ここで白は黒の黒枡に弱点を残させる 12.Bf4 を「狙っている」。この要素は白の働きに優る白枡ビショップ、黒の弱体化したキング翼、それに弱いeポーンに加わったときには白に明らかな優勢をもたらしてくれる。従ってここでの黒の通常の応手は 11…Qc7 である。しかし代わりに1982年ニューヨーク国際(CCA3月)でのジャレッキ対レムリンガー戦では黒は別の手を指した。11…O-O?! 12.Bf4! Bxf4 13.Nxf4 Kh8 14.Re1! ここでの黒の「理性的な」手は 14…Qd6 だが、経験の劣る相手に対して黒は 14…Ng4?! を試みた。

 自分のいろいろな弱点に対して黒の得ている唯一の代償は半素通しf列である。しかし白がここで単純な 15.Qd2! で展開を完了してしまえば、黒の問題はすぐに黒自身に跳ね返ってくる。

 代わりに白は欲張って 15.Nxe6? Bxe6 16.Rxe6 と指し 16…Qc7! のあと満足な受けがなくなっていることに気づいた。ここで白の小悪は 17.Be2! Qd7! で「最善」の手段で交換損をすることである。18.Ng5? は 18…Nxf2 19.Qc2 Ne4 で駄目だが、18.Ne5 または 18.Rxc6 がある。もっと悪いのは17.g3? Qf7!、17.h3? Nxd4!、それに実戦の手である。17.Bb5? Rxf3! 18.g3 Qf7 19.Bxc6 bxc6 20.Rxc6 Nxf2 白投了

 白の基本的な問題点は最優先の目標が黒の弱いeポーンを取ることだと考えたことだった。しかし実際には彼の当初の目標は局面で黒枡を支配することだった。余得は「自然に」生じてくるものである。

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フィッシャーのチェス(304)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま(続き)

 タイマノフとスパスキーは共にフィッシャーと番勝負で対局したとき「念力」を感じたと言われている。理由はどうであろうと彼らはそれまでの世界選手権戦に並ぶ水準のチェスを示すと同時に、とんでもないへまをしでかした。

フィッシャー対タイマノフ
番勝負、バンクーバー、1971年
 81.Kxf6

81…Ke4?

 フィッシャーの執念にロシア選手がいくらか根負けしたのに違いない。ここではかなり易しい引き分けの筋が二つあった。そのうちの基本的な方では黒はキングがh8の地点に行くだけでよい。なぜなら白のビショップが昇格枡に利いていないからである。従って 81…Nd3 82.h4 Nf4 83.Kf5 Kd6! で目的を達する。実戦の経過を記すとフィッシャーは次のように締めくくった。

82.Bc8! Kf4

 代わりに 82…Nf3 は 83.Bb7+ でポーン収局になって白が勝つ。

83.h4 Nf3 84.h5 Ng5 85.Bf5!

 黒は手詰まりに陥っている。

85…Nf3 86.h6 Ng5 87.Kg6 Nf3 88.h7 Ne5+ 89.Kf6 黒投了

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(303)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま(続き)

 次のオリンピアードではまたクイーンが急死した。

チオクルテア対フィッシャー
バルナ、1962年
 14…Rfc8

15.Bg5!

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(39)

「Chess Life」2004年5月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法(続き)

a)5…Bg4

 黒はe5のポーンを守るために何かする必要がある。それでf3のナイトを釘付けにすることにより間接的にe5のポーンを守った。代わりに 5…Bc5 6.Nxe5 Qd4 と指すと白に 7.Nf3 と応じられて 8.Re1 で串刺しにされるためにクイーンでe4のポーンを取ることができない。

6.h3

 これで黒はビショップをf3のナイトと交換して「双ビショップ」を放棄するか、形を決めて攻撃的な 6…h5 を指さなければならない。

6…h5

 6…Bh5 は 7.g4 Bg6 8.Nxe5 で白がポーン得する。8…Bxe4 と取ると 9.Re1 で黒がさらに損をする。

7.d3

 7.hxg4 と犠牲を受け入れるのは白にとって危険すぎる。7…hxg4 8.Nxe5? Qh4 9.f4 g3 となれば詰みを避けることができない。白は 8.Re1 でナイトを返す方が良いがそれでも黒が好形になる。

7…Qf6

 黒は 7…Bd6 と自然に展開すると白に 8.hxg4 とビショップを取られ 8…hxg4 のあと 9.Ng5 で黒クイーンのh4への道を閉ざされてしまうので注意しなければならない。

8.Be3

 ここで 8.hxg4 とビショップを取ると 8…hxg4 9.Ng5 Qh6 というように黒クイーンに急所のh列に回られる。8.Bg5 はポカで、8…Bxf3 で黒の駒得になる。8.Nbd2 なら黒が …Bxf3 で白のポーンの形を乱すのを防いでいるが、自分のc1のビショップを閉じ込めることになる。そして黒が 8…Ne7 9.Re1 Ng6 10.d4 Bd6 11.hxg4 hxg4 12.Nh2 Rxh2! 13.Qxg4(13.Kxh2 なら 13…Qxf2 で少なくとも引き分けになる)13…Rh4 14.Qf5 Rf4 で順調に攻撃できほぼ互角の形勢になる。

8…Bxf3

 ここが黒にとって白のポーンの形を崩す好機である。8…Ne7 9.Nbd2 Ng6 10.Re1 Bd6 と指すのは次の最近の試合が示すように黒が苦境に陥る。11.hxg4 hxg4 12.Nh2 Rxh2 13.Kxh2 Qh4+ 14.Kg1 O-O-O 15.Nf3 Qh5 16.Nh2 f5 17.exf5 Rh8 18.fxg6 Qxh2+ 19.Kf1 Qh5 20.Ke2 そして黒が投了した(ニシペアヌ対R.エルナンデス、メリダ、2003年)。

9.Qxf3 Qxf3 10.gxf3 Bd6 11.Nd2 Ne7

 この局面で白には二つの作戦がある。a)12.Kh1 のあと Rg1 でg列に狙いをつけるかb)12.Rfb1 から a2-a4、b2-b4 でクイーン翼で侵攻を図るかである。どちらの作戦も時々 Nc4 と組み合わせてd6での交換のあと f3-f4 と突いていく(二重fポーンを解消する)ことがある。白の優勢は大きくはないが、私なら白を持ってこの収局を指したい。その理由は1)白には二重fポーンを解消する現実的な可能性がより高い、2)黒のビショップは自分のe5のポーンによって動きが制限されているので白のビショップの方が良い、3)白はナイトをビショップと交換する機会があるかもしれないからである。しかし黒が正しく受ければ引き分けに持ち込めるはずである。

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2012年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(302)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第29章 グランドマスターのへま

 本書には「巨人がいかにして倒れたか」の何十もの例がある。フィッシャーが相手に恐ろしい圧力をかけるのは確かであるけれども、相手側が他の誰よりもフィッシャーに対してポカを指すということを信じる理由はない。あるいはおそらく史上最も正確な選手に直面して彼らは自明のことを見落とすのだろうか。いずれにしても以下はチェスの盲目の顕著な例である。

ギテスク対フィッシャー
ライプツィヒ、1960年
 13…c5

14.dxc5?? Bxh2+

 白はオリンピアードで初手から14手目でクイーンを失う。たぶん彼はウォーミングアップしていなかったのだろう。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(301)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 布局には別の種類の冒険もある。それはアマチュアのちょっとした心理にいそしむ機会である。スパスキーが1972年の世界選手権戦第11局で、シチリア防御における毒入りポーンを食べた黒クイーンをとっちめようとして意表の手(14.Nb1)繰り出したとき、その手の背後にはソ連の大量の研究があるというのが衆評だった。それでもスパスキーはそのときに見つけたかのようにかなりの時間指すのをためらっていた。このささいな企みはよくあることだけれども、フィッシャーが同じことをした例は思いつかない。彼が手早く指すときは手を決めているからである。彼が熟考するときは手が決まっていない。盤上でのボビーの客観的なふるまいはチェス政治屋としての彼の大言壮語を容赦してやるのに役立つ。

(この章終わり)

2012年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(300)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 例えば次の局面では布局の段階はほぼ過ぎているがフィッシャーは明らかな 12…h6 や 12…O-O からの …Nb6-c5 に満足しなかった。そしてすぐに標的めがけて打って出た。

R.バーン対フィッシャー
スース、1967年
 13.O-O

13…h5!

 狙いはもちろん …h4 突きで白のeポーンの土台を弱めることである。これを止める唯一の方法はh4の地点にまた弱点を作ることである。

14.h4 b4 15.Bxf6

 黒の作戦の論理は、…b4 と突くとeポーンを維持するために Bxf6 が余儀ないということである。そして黒のhポーンが落ちるが・・・

15…Bxf6 16.Nd5 Bxh4 17.Nxh5 Qg5!

 これが核心である。白のナイトは命を守るために戦わなければならなかった。最初は巧みに、次は希望的に、最後はむなしく。

18.f6 g6 19.Ng7+ Kd8

 黒はこのあと9手で勝つことができた。

(この章続く)

2012年08月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(282)

「Chess」2012年6月号(3/4)

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全米選手権戦(続き)

 私が必ず読者に忘れないで欲しいと思っていることは、この大会のレポートですべての妙手と布局の新手の下には大会優勝の重要な要素である深い研究と収局の技術があるということである。ナカムラはこれらの資質をいくつかの試合で発揮し、その中にはカイダノフ戦での参考になる指し回しがある。

2012年米国選手権戦
H.ナカムラ – G.カイダノフ

 双ビショップと黒枡の支配で明らかに白が優勢である。そしてナカムラは容赦なく相手をすりつぶしていく。

38.Bc5 Ba6 39.Rc2 Rb7 40.Rxb7 Bxb7 41.Bd4 Kf8 42.f4 Ke8 43.Rc5 Kd7 44.Kg1 Kc7 45.Bf2 Bc8 46.Bf1 h5 47.h4 g6 48.b3 Bb7 49.Bd3 Bc8 50.Kg2

 「千里の道も一歩から」と毛主席は指摘した。白キングは長征に出立してはるばるe7の地点に侵入する。

50…Bd7 51.Kf3 Bc8 52.g4 hxg4+ 53.Kxg4 Bd7 54.Kg5 Kb7 55.Be4

 この手はd5のナイトと交換する可能性を作ったもので、そうなれば黒枡を守れる数少ない黒の駒の一つを盤上から消すことになる。

55…Rh8 56.Bf3

 56.Rxa5? と取るのは 56…Rh5+ 57.Kg4 f5+ で黒に絶好の反撃を与える。また 56.Bxd5 exd5 57.Rxa5 Be6 もちょっと早く白がやられる。

56…Ra8 57.Rc4 Kc7 58.Bc5 Rh8 59.Rc1 Bc8 60.Bf2 Bd7 61.f5!

 ついにこの戦線突破が来た。eポーンで取ると駒損になり、gポーンで取ると白がh列に決定的なパスポーンを得る。

61…Rg8 62.f6

 これでf7のポーンが標的になった。

62…Rh8 63.Rc5 Ra8 64.Kh6

 白による古典的「2弱点」作戦である。まず黒ルークがa5のポーンの守りに狩り出され、次に白キングがキング翼に侵入する。

64…Nf4 65.Be3 Nh5 66.Bxh5 gxh5 67.Kg7 Be8 68.Kf8 Kb7 69.Ke7 Kc7 70.Bd2 1-0

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(この号続く)

2012年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(299)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 フィッシャーの布局の取り組みで一貫しているのは-この章の基本的な教えでもあるが-最も早い段階から有利さを目指して戦うということである。チェス選手の大部分は周知の手順をまねるか、お決まりのやり方で展開するか、あるいは抽象的にポーンの陣形を創造するかである。チェスという競技は対局者の一方が狙いを持つまでは本当に始まったことにはならない。それから「対話」が起こり始め、そこでは狙いが反撃で応えられ防御が試され目標が作られる。フィッシャーの試合(そしてマスターたちの試合)のほとんどには中心をなす主題がない。試合は戦術の機会に先導される。偉大な協和音の蓄積はとてつもなく退屈なものになりがちである。

(この章続く)

2012年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(298)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 フィッシャーによる別の有名な「復活」はルイロペスの交換戦法で起こった。これはラスカーが1914年サンクトペテルブルクでのカパブランカとの最後の対局で用いて劇的な勝利を収めた布局だった。しかしフィッシャーは少し異なったものを見つけた。それは手順だった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6 5.O-O

 この最も理詰めの布局で白は組織的に黒のeポーンに圧力をかけようとするが、学習者なら誰でも自分のeポーンを取られないで黒のeポーンを取ることはできないということを早い時期に学ぶ(5.O-O の代わりに 5.Nxe5 なら 5…Qd4!)。そしてもし白がeポーンを 5.d3 で守れば黒は 5…Bc5 と自分のすべきことをやることができる。なぜなら今度は 6.Nxe5 に 6…Qd4 で詰みとナイト取りの狙いができるからである。それまでは 5.d4 と突いて、白はポーンの形が良いが黒は双ビショップを持つ収局に突き進むのが通例だった。フィッシャーの 5.O-O(以前はこれがあまり指されなかったということではない)は黒にeポーンの守り方にまごつかせることが目的だった。1966年ハバナオリンピアードでフィッシャーがこの新兵器で3戦3勝したとき、遅延シュタイニッツ防御「破り」の話が出た。それ以来防御法が強化され、レイキャビクではスパスキーが黒での得意の戦型の一つでもう少しでフィッシャーを負かすところだった。

(この章続く)

2012年08月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

布局の探究(9)

「Chess Life」1990年10月号(1/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

フィッシャーとカルポフから布局の指し方を学ぶ

 グランドマスターは事実[棋譜]と言葉[解説]の遺産を残す。この遺産を詳しく研究すれば誰でもチェスの技量が向上する。もちろんすべてのグランドマスターが同じ強さであるわけはなく、頂点には世界チャンピオンが君臨している。このまれな集団の中でロバート.J.フィッシャーとアナトリー・カルポフが最も抜きん出た地位を占めている。本稿ではどのように彼らの知恵を利用して布局の指し方の理解を高めることができるかを説明する。

情報の宝庫

 融通無碍な棋風と人を魅了する闘争心のためにロバート.J.フィッシャーの試合は貴重な情報の宝庫である。レフ・サーヒスは無名から1980/81年と1981/82年に連続して二人同点の全ソ連チャンピオンの座に輝いてチェスの天空に突如現れたが、フィッシャーの試合はどの一手も細心の注意を払って研究したと認めている。

 フィッシャーの指したルイロペスは我々もすべて研究したと仮定しよう。フィッシャーはこの布局の誰もが認める大家だった。(フィッシャーの試合の主要な出典はフィッシャー著「My 60 Memorable Games」とWadeとO’Connell著「Bobby Fischer’s Chess Games」である。」)フィッシャーの時代によく指されたルイロペスの局面は次の手順から生じた。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2 Bd7 13.Nf1 Rfe8 14.Ne3 g6 15.dxe5 dxe5 これは1959年マルデルプラタでのフィッシャー対ショクロン戦と1959年チューリヒでのフィッシャー対ウンツィカー戦で、フィッシャーの自著本のそれぞれ第6局と第10局である。

 機械的な形勢判断では黒が展開にまさり、中原での勢力が優勢で、白の白枡ビショップは利きが短いということになる。しかしこれらのどれも大して重大でない。重要なのは黒のd5は空所となる可能性があるのに対し、d4には黒駒が行けないということである。したがってフィッシャーが何度も証明したように可能性があるのは白だけである。(注意しておくとついには手間をかけて互角に至る方法が編み出された。)

 今度はカルポフ対コルチノイの1981年世界選手権戦第8局のジオッコピアノから生じた局面を考えてみよう。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d3 d6 6.Nbd2 a6 7.O-O O-O 8.Bb3 Ba7 9.h3 Be6 10.Bc2 d5 11.Re1 dxe4 12.dxe4 Nh5 13.Nf1 Qxd1 14.Rxd1 Rad8 15.Be3

 この試合は米国でテレビ中継された(公共放送協会、解説シェルビー・ライマン)。そしてここからの局面がいろいろな専門家が加わって詳細に分析された。若手と経験の少ない参加者の形勢判断は白に何も有利な点がないということで意見が一致していた(あるマスターは「白の白枡ビショップが黒の白枡ビショップより劣る」ので黒の方が優勢であるとさえ考えていた)。しかしずばり言うと(即座に把握すべきことであるが)まったく見当外れである。重要なことはただ一つで、それは白がd5の地点に行ける可能性が高いということ、それに対して黒はd4に行けないということである。従って白だけが優勢になる見通しがある。カルポフはこの収局について次のように解説している(「Chess At The Top」65ページ)。「クイーン交換で黒の形勢互角の追求はおぼつかなくなった。」

 実戦は次のように進んで白がはっきり優勢になった。15…f6 16.Bxa7 Nxa7 17.Ne3 Nf4 18.h4! Bf7 19.Ne1 Nc8 20.f3 Ne6 21.Nd3 Rd7?!(「21…Ne7 の方が良い」カルポフ)22.Bb3! Ne7 23.Nd5! Nc6 24.Ba4!(「たぶん 24.g3 から 25.f4 の方がはるかに強い手で、26.f5 で黒ナイトをe6から追い払う狙いがある」カルポフ)24…b5 25.Bc2 Rfd8 26.a4コルチノイはひどい時間切迫で(最後の10手に1分しかなかった)カルポフは非常に有望だった。しかし急ぎ過ぎて最善手を逃しコルチノイがついに80手目で引き分けに持ち込んだ。

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2012年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フィッシャーのチェス(297)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 黒がシチリア防御でf8のビショップを展開する際に …g6 でなく …e6 の戦型にするときにソージン側の着想は f4-f5 と突き進めて黒のポーンの横隊を破壊することである。黒の反撃は …b5-b4 と突き進めて自然な守り駒のc3のナイトを脅かして白のeポーンを攻撃することである。1970年ザグレブでコルチノイはa6のポーンの支えなしに …b5 と突きどうということもなかった。この試合がスパスキーにひらめきを与えたことは疑いない。1972年レイキャビクでの世界選手権戦での最初のシチリア防御でスパスキーは …a5 と突いて自分のbポーンへの支援を放棄し …b4 と突く手を狙った。この種の局面では白の駒は典型的な過負荷になっていた。即ち黒のbポーンを取れる白駒はとりもなおさず白のeポーンを支えている駒でもあった。だから黒のポーンを取るためには白は自分のeポーンを突かなければならず、それによって黒のb7のビショップの利きが延びた。この試合は第24章「ポーンあさり」で詳しく取り上げている。しかしここでは布局システムの選択の陰にある一般的な着想を知ることが大切である。

(この章続く)

2012年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

JCAの間違い捜し(16)補遺

[6]1795ページ


 「トロツキー」(Trotsky)はロシア革命時の活動家で、「Troitzky」(トロイツキー)とは別人である。トロツキー主義に傾倒しているのだろうか?

2012年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(296)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 のちにフィッシャーは似たような機会に出くわしたがビショップ切りを見送った。

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 g6 5.Nc3 Bg7 6.Be3 Nf6 7.Bc4 Na5

 ここでフィッシャーは 8.Bb3 と指した(フィッシャー対レオポルディ、西部オープン、1963年)。今回は黒はキャッスリングしていないので・・・

8.Bxf7+! Kxf7 9.e5

 黒はクイーンを取られることはないが陣形は滅茶苦茶にされる。

(この章続く)

2012年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(38)

「Chess Life」2004年5月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法

 ルイロペス(ヨーロッパではスペイン布局と呼ばれている)の交換戦法は19世紀の終わり頃には既に知られていて、ラスカーがこれを指して好成績をあげた。それ以来双ビショップと二重ポーンのどちらが重要かという議論が続いている。1960年代にはボビー・フィッシャーが流行させて復活した。

 本稿の一部として彼の完勝局のいくつかも見ていく。

 ボビー・フィッシャーに加えて他の世界チャンピオンのラスカー、スミスロフ、カパブランカ、それにカルポフもこの戦法をしばしば用いた。他にもラルセン、ティマン、イワンチュク、シロフ、それにベンジャミンらの一流グランドマスターがよく用いた。

白の基本的な作戦は何か

 黒がdポーンで取り返したあと白の理想は自分のdポーンを黒のeポーンと交換することである。そのあとの作戦は駒をすべて交換してキングとポーンの収局に持ち込むことである。白はキング翼でポーンが多いので理論的にはこの収局は白が勝つ。

黒の基本的な作戦は何か

 黒はできるだけ駒の交換を避けるように努めるべきである。そして双ビショップの優位を生かしながら迅速に展開するようにすべきである。

それで評決はどうなっているか

 この戦法はほとんどの場合穏やかな局面になり、長い収局になることがよくある。黒としてはあまり選択肢がないかもしれない。白としてはルイロペスの主手順の長い分析のほとんどを避けることに利点がある。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6

 これが交換戦法の発端の局面である。

4…dxc6

 黒はc列に二重ポーンを作るしかない。「可能ならば中央に向かって取れ」という基本原則に従う方が自然なように思われるけれども、この局面でbポーンで取り返すのはきわめてまれである。4…bxc6 のあと白は次のようにいくらか優勢になる。5.O-O(白が 5.Nxe5 とポーンを取れば黒は 5…Qe7 ですぐに取り返すことができる)5…d6 6.d4 exd4 7.Nxd4 Bd7 8.Re1 c5 9.Nf3 Be7 10.Nc3(黒は駒を展開するのに困難を抱えている)10…c6(自然な 10…Nf6 のあと白は 11.e5 で黒のポーンの形を乱す)11.Bf4 Be6 12.Qd3 Nf6 13.Rad1 d5 14.Ng5 d4 15.Nxe6 fxe6 16.Na4 Qa5 17.b3 Rd8 18.Nb2 Nh5 19.Be5 O-O 20.Nc4 Qb4 21.Qh3 白が勝勢である(カパブランカ対マーシャル、ニューヨーク、1909年)。

 dポーンで取り返すことの利点は黒の白枡ビショップの斜筋が開くことにある。

5.O-O

 白は 5.Nxe5 とポーンを取っても 5…Qd4 でナイトとポーンの両当たりになるのでやはり一時的である。白がすぐに 5.d4 と突いても黒陣は好形である。「双ビショップ」の優位はポーンの形の劣勢を補ってくれる。また 5.Nc3 なら黒は 5…f6 でe5のポーンを守る。

 この局面で黒には多くの可能性がある。ここでは次の三つの主要な手について検討する。

a)5…Bg4
b)5…Qd6
c)5…f6

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フィッシャーのチェス(295)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 シチリア防御へのこのような対処法よりもフィッシャーはいわゆる「ソージン戦法」の 6.Bc4 の戦型でもっと有名だった。かつてはビショップをこの地点に展開するのは黒に …e6 と突かれたとき無駄骨を折ることを要求していると考えられていた。実際は黒が …g6 突きに特徴のある「ドラゴン戦法」をやり続けていたとき目の覚めるような攻撃をやってのけていた。

フィッシャー対レシェフスキー
ニューヨーク、1958-59年
 11.Ne6

 白はビショップをf7の地点で切った。そして黒がそれをルークで取ろうとキングで取ろうと 11.Ne6! が続いた。11…Kxe6 はすぐに詰みになるので黒クイーンが取られる。このはめ手全体が数ヶ月前ソ連のチェス雑誌に掲載されていたことを我々は知ってこの局面の輝きがいくらか失われた。それにしても対局室でこの局面を見たことがなかったのはレシェフスキーだけだった!

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(294)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 フィッシャーのこの戦型の対処法に欠陥を見つけペトロシアンにそれを伝授したのはスエティンとされている。しかしラトビアのマスターのビトリンシュはフィッシャー対ペトロシアン戦の5ヶ月前に同様の着想をあからさまに発表してしまった。秘密を保つのは難しいものである。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(293)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 フィッシャーは次の試合をモーフィーまでたどったわけではないけれども、彼が対シチリア防御で何度も用いたシステムはニューオーリンズの天才とアドルフ・アンデルセンとの非公式世界選手権戦で初めて現れた。

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 e6

 これは今ではタイマノフ戦法と呼ばれているがもちろん古くからの血筋がありシチリア防御の当初の構想の一部だった。

5.Nb5

 これは何手も手損をして相手に弱点を作らせようとする手である。

5…d6 6.Bf4 e5

 奇妙なことに黒はシチリア防御で決然とこの手を指すことがよくある。しかしここでは白は積極的にこの手を引き出そうとした。他に良い手は 6…Ne5(ファイン)だがナイドルフ(1966年サンタモニカで)もタイマノフ(1971年バンクーバーでの世界選手権戦第2、6局)も、そしてペトロシアン(1971年ブエノスアイレスでの世界選手権戦第1局)もそうは考えられていなかった。

7.Be3 Nf6

 ここでアンデルセンは1858年(!)パリでモーフィー相手に 7…f5!? と指したが 8.N1c3 f4? の悪手に 9.Nd5 と指されてこのあと短手数で白の勝勢になった。

8.Bg5

 白のビショップの手の込んだ捌きは、ただ陣形の優位を得るために1個の駒に数手を費やすことができる数少ない例の一つである。ここでの明らかな優位とはd5の地点を確保する狙いのことである。

8…Qa5+ 9.Qd2!

 フィッシャーはモーフィーをしのいで、純粋な展開のためにポーンを犠牲にした。8…a6 は第33章「理由」のフィッシャー対ペトロシアン戦を参照されたい。ここではフィッシャー対タイマノフの世界選手権戦第2局を追っている。

9…Nxe4 10.Qxa5 Nxa5 11.Be3

 白の初手からの11手のうちこのビショップが動いたのは4回目で、黒は難しい局面に立たされた。

11…Kd7 12.N1c3!

 局面にふさわしい感覚で、黒の唯一展開している駒が交換される。このような局面ではギャンビット側は早くポーンを取り返すことを気にしてはいけない。

12…Nxc3 13.Nxc3 Kd8 14.Nb5

 またナイトが戻った。フィッシャーはポーン損の代わりにいろいろ手段の余地がある。(この試合の収局は第29章「グランドマスターのへま」を参照)

(この章続く)

2012年08月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(281)

「Chess」2012年6月号(2/4)

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全米選手権戦(続き)

 これでナカムラが一番有利な立場に立った。そして最終戦でベテランのセイラワン(大会をとおして大不調だった)に危なげなく勝って三度目の全米チャンピオンの座に着いた。カームスキーとの優勝争いは競っていたにもかかわらず、ナカムラの優勝は終わってみれば当然と認めなければならない。ここぞというときに主敵に黒番で勝っただけでなく勝ちに結びつかなかったけれどもいくつかの有望な局面があった。近ごろの最上位10人の主食となっているようなスラブとベルリンの常食に眠気を誘われる者には、ナカムラの多種多様な布局の採用は新鮮な気分転換に感じられる。例えばエバンズギャンビット、フランス防御ギマール戦法(3.Nd2 Nc6)、2局のイギリス防御、そしてフランス防御に対する 2.f4 といった具合である。最後の戦法は最終局のセイラワン戦で飛び出した。

2012年米国選手権戦
H.ナカムラ – Y.セイラワン
フランス防御

1.e4 e6 2.f4

 スタントンや彼と同時代の者の愛用の手だが、現代チェスではきわめてまれな来訪者である。しかしイゴール・グレクがオープン大会でちょっと指していて、New in Chess のSOSシリーズの過去の巻に彼が記事を執筆したことがある。黒番の選手に戸惑う問題を突きつけるのは確かで、格下の相手には効果的な武器になる。

2…d5 3.e5 c5 4.Nf3 Nc6 5.c3 Nge7 6.Na3

 この手が大事である。白は先に駒を少し展開しdポーン突きを控えているが、好機に d2-d4 と突く考えを決して放棄しているわけではない。

6…Nf5 7.Nc2 h5 8.Bd3 g6 9.O-O Be7 10.Bxf5

10…gxf5?

 h5に自分のポーンがあるのでこのように中央に向かって取り返すのがごく自然である。しかしhポーンが大きな負担になるのではっきり言って悪手だった。目に浮かぶような言い回しに事欠かないセイラワンはあとでこの局面を「完全に軍門に下ってひどかった」と言った。

11.d4 h4 12.dxc5 Bxc5+ 13.Be3 Be7 14.h3 b6 15.Qe2 Nb8 16.Rfd1 Ba6 17.Qe1 Nd7 18.b4

 黒はいつもの不良ビショップに絶好の斜筋を見つけた。しかし白は白枡を引き払いd4の基地を利用して両翼で活動することができる。

18…Nf8 19.a4 Bc4 20.Ncd4 Qd7 21.b5 Ng6 22.Nc6 Kf8 23.Nd2 Bd3 24.c4

 ひとたび局面が開放されれば黒は負ける運命である。

24…Kg7 25.cxd5 exd5

 25…Qxd5 でも 26.Nxe7 Nxe7 27.Nf3 で良くない。

26.Nb1 Bc4 27.Qc3

 28.Qxc4 の狙いがあるので黒は対角斜筋からキングを退避させる暇がない。

27…Qe6 28.Nd2 Rhc8 29.Nd4 Qd7 30.e6 1-0

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(この号続く)

2012年08月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(292)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 この試合への別の解説でフィッシャーはとりわけ大口をたたいた。自分の初手の 1.e4 について「時の試練を経て最善手」といいように書いていた。1…e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 のあと「5…Nd5!?(フリッツ)・・・面白いが無理筋」と書いていた。フリッツが誰か言えるのは千人中一人ではないだろうか。それにしてもこの手は無理筋かどうか確実に分かるほど十分には指されていない。記録に残っているフィッシャーの最短手数の負けは私の知っているところでは次の手順だった。6.c3 b5 7.Bf1 Nxd5 8.cxd4(フィッシャーは 8.Nxh7 も指している)8…Qxg5 9.Bxb5+ Kd8 10.Qf3 Bb7 11.O-O exd4 12.Qxf7? Nf6 そして詰みの狙い、…Qxb5、それに …Bd5 でのクイーン取りがあるので黒投了。念のため書くとこれは1963年のフィッシャーの全国巡回における同時対局の1局で時計使用の試合ではない。

(この章続く)

2012年08月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(291)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 フィッシャーは「昔の巨匠たち」の研究でいくつかの布局の新手に思い当たったと誇らしく述べたことがある。この点で彼は感傷主義者というより現実主義者であることを明らかにしている。チェスは女性の衣服に劣らず気紛れな流行の題材である。シチリア防御のソージン戦法(ソージンがどういう人物であるか知っている者はいないのではないか)の最新の戦型をすらすらと並べる人は「かっこよく」見える。19世紀の古い手順を復活させるに際し、フィッシャーはその評判や信奉者の評判のためでなくただ客観的な評価のために指していた。

 次の局面でフィッシャーはシュタイニッツの奇異な布局の手を引っ張り出してきた。

フィッシャー対ビズガイアー
ポキプシー、1963年
 8…h6

 この2ナイト防御の普通の戦型は 9.Nf3 e4 のあと黒が1ポーン損の代わりに一時的に主導権を得る。フィッシャーは奇妙な手を試した。

9.Nh3

 フィッシャーはニューヨーク州選手権戦で2回この手を指した。その意図はポーンを返すのと引き換えに展開を速めることである。

9…Bc5 10.O-O O-O 11.d3 Bxh3 12.gxh3 Qd7

 フィッシャーが「Deutsche Schachzeitung」1892年のある号からゴットシャルの言葉を引用して白と黒のいろいろな手筋の可能性を示しているのは興味をそそられる。彼は両方とも勝ったが必ずしも布局が良かったからというわけではなかった。この布局は確かに一つのことは成し遂げた。それは二人の相手とも以降の戦闘に向けて互角の立場に立ったということだった。

(この章続く)

2012年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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布局の探究(8)

「Chess Life」1990年8月号(3/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

何はともあれ 得意定跡の選び方(続き)

 それでは1970年代初頭に 1.d4 に対する布局の常用戦法を増すために私の用いた考え方とやり方を話そう。ボビー・フィッシャーのおかげで1972年の終わり頃には私はチェスのプロとしてだけでやっていくことが可能になっていた。その時まで 1.d4 にはキング翼インディアン防御とニムゾインディアン/クイーン翼インディアン対(1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 または 3.Nf3 b6)とを指していた。そしてチェスの成績を良くするためには別の防御も必要だと結論づけた。慎重に検討した結果基本的に堅固であることと反撃の可能性をあわせ持つスラブ防御(1.d4 d5 2.c4 c6)に決めた。しかしさらに大きな問題は白の主手順である 1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4 5.a4 に対してどう指したらよいかということだった。

 黒の「主主手順」は 5…Bf5 だったがこれから始めるのは気が進まなかった。というのはここで知っておかなければならないことが山ほどあり白は私よりよく知っていると考えたからだった。そこで私の選んだのはそれほど一般的でない 5…Bg4 で、好成績を収めた。しかし1976年頃にはこれも非常に人気が出て白に大きな改善手も発見された。そこで1977年からスミスロフの「旧式の」手の 5…Na6 に転向しまた好成績を収めた。これもすぐに非常に人気が出て白は多くの改善を行なった。そこでついに(1980年)主流手順の 5…Bf5 戦法も習得した。

 しかしその時までにはこれだけを習得すれば良かった。すべてのわき道とわきわき道はすでに分かっていた。それで今では相手と最新の定跡の状況により三つの手(5…Bg4、5…Na6、5…Bf5)のどれも指している。

 それでは開放型と閉鎖型の両方を含む広い常用布局を選んでみよう。白番で布局の勉強を嫌がらず、明快な戦略的局面を好み、盤上からクイーンの消えた局面の方がずっと気楽であると仮定する。推奨するのは次のとおりである。私はこれを「賢明な戦略的選手のための常用布局」と呼んでいる。これらの戦法とそれらから生じる収局の総合的議論は拙著「From The Opening Into The Endgame」(Pergamon Press 社発行)の中核となっている。

賢明な戦略的選手のための常用布局

 1.ルイロペス 交換戦法 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6 5.O-O! f6 6.d4 exd4 7.Nxd4 c5 8.Nb3 Qxd1 9.Rxd1

 2.シチリア防御 ドラゴン戦法 1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 Nc6 8.Qd2 O-O 9.g4 Nxd4 10.Bxd4 Be6 11.O-O-O Qa5 12.Kb1 Rfc8 13.a3 Rab8 14.g5! Nh5 15.Nd5! Qxd2 16.Rxd2

 3.シチリア防御 加速ドラゴン 1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 g6 5.c4 Nf6 6.Nc3 Nxd4 7.Qxd4 d6 8.Bg5! Bg7 9.f3! O-O 10.Qd2 Be6 11.Rc1 Qa5 12.b3 Rfc8 13.Be2 a6 14.Na4! Qxd2+ 15.Kxd2

 4.フランス防御 タラシュ戦法 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5 exd5 5.Bb5+ Bd7 6.Qe2+ Qe7 7.Bxd7+ Nxd7 8.dxc5

 5.ピルツ防御 正規戦法 1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.Nf3 Bg7 5.Be2 O-O 6.O-O Bg4 7.Be3 Nc6 8.Qd2 e5 9.dxe5! dxe5 10.Rad1

 6.現代防御 アベルバッハ戦法 1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.c4 d6 4.Nc3 e5 5.dxe5! dxe5 6.Qxd8+ Kxd8 7.f4!

 7.キング翼インディアン防御 正規戦法 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.dxe5! dxe5 8.Qxd8 Rxd8 9.Bg5!

 8.グリューンフェルト防御 現代交換戦法 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 c5 7.Nf3 Bg7 8.Be3 から 9.Rc1

 9.クイーン翼インディアン防御 正規戦法 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Bb7 5.Bg2 Be7 6.O-O O-O 7.Nc3 Ne4 8.Nxe4 Bxe4 9.Nh4 Bxg2 10.Nxg2

 10.イギリス/レーティ布局 相互二重フィアンケット 1.c4 c5 2.Nf3 Nf6 3.g3 b6 4.Bg2 Bb7 5.O-O g6 6.b3 Bg7 7.Bb2 O-O 8.Nc3 d5 9.Nxd5! Nxd5 10.Bxg7 Kxg7 11.cxd5 Qxd5 12.d4! cxd4 13.Qxd4+ Qxd4 14.Nxd4 Bxg2 15.Kxg2

 11.イギリス布局 アンデルソンの教科書戦型 1.c4 Nf6 2.Nc3 d5 3.cxd5 Nxd5 4.Nf3 g6 5.e4 Nxc3 6.dxc3 Qxd1+ 7.Kxd1

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2012年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(290)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 本題に入る前にポーンでの「極端な」中原支配と呼べるかもしれないものを参考に供したい。

パッハマン対フィッシャー
サンティアゴ、1959年
 24.Ke1

 これはフィッシャーの棋歴の中でおそらく最も滑稽ではなくても最も奇抜な局面である。白が中原で行使している絶対「支配」はもちろんポーンが自キングへの正面攻撃を防いでいることを除いて無意味である。たまたまではあるがフィッシャーがたとえ駒損でも攻撃を早まらないことによってどのように勝てたはずであるかを見るのは興味深い。

24…Qg1+?

 フィッシャー自身がよく言っているように「ヘボはチェックが見えるとチェックする」。クイーンは「A」と言ったら「B」も言わなければならないので、まず 24…Ne7 と指せばもっと選択肢が保存できる。25.Bc4 は 25…Rh1+ で 26.Bf1 と引かされるので黒は1手得する。それに黒の狙いは実戦のようにまた駒を失うことなく進行する。

25.Kd2

 25.Bf1 は 25…Qxf1+ で詰みがある。

25…Qxf2+ 26,.Kc3

 ここで 26…Qg3 27.Qd3 Ne7 と指しても 28.Bc4! と応じられるだけである。

(この章続く)

2012年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(289)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 アリョーヒンは棋歴の終わり頃にはポーンで中央を支配するための d4 に先立つ c3 をシチリア防御に対処する自分の最後の言葉だとはっきり言っていた。黒がギャンビットを受諾しなければまさしく中央支配が実現する。4…dxc3 5.Nxc3 と進めば本当のギャンビットになる。コルチノイは20手近くポーン得にしがみついたあとポーンを返して互角の局面にした。学習者はこれがギャンビットに対処する一般的なやり方であること知っておくとよい。

 以上の2例のほかにもフィッシャーのギャンビットは試合のあとの方に現れる傾向がある。彼はポーンのただ捨てを咎めようとする側であるのが特徴である。それはポーンにしがみつくことに基づく彼のキング翼ギャンビット「退治」発言にも表れている。ところで多くのいわゆるギャンビット(クイーン翼ギャンビット、キング翼ギャンビット)はその戦型のほとんどでは全然ただ捨てになっていないし、シュピールマンの定義によってもそうでないのは確かである。

 ギャンビットに対する懐疑的な見方に加えてフィッシャーの布局選択には二つの主要な主題が貫かれている。一つ目は彼は見捨てられた戦法を掘り起こして新しい発想を育てることに喜びを見出している。二つ目は布局での優位を争うためには強力なポーン中原よりも駒を使うことに頼っている。

(この章続く)

2012年08月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(37)

「Chess Life」2004年4月号(1/1)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

イギリス布局

 多くの有名な選手がイギリス布局および/または …e5 戦型を指したことがある。世界チャンピオンではカスパロフ、タリ、スミスロフ、ペトロシアン、カルポフ、スパスキー、アーナンドがあげられ、世界レベルの選手ではラルセン、ポルティッシュ、コルチノイ、セイラワン、グリコ、ゲルファンド、バレエフ、レーコー、シロフ、それにトパロフらがあげられる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は中央を支配しキング翼を攻撃することを図り、クイーン翼は無事に収めようとする。

白の基本的な作戦は何か

 白はa列とb列でポーンを突き進めg2の強力なビショップを活用することによりクイーン翼を攻撃することを図っている。aポーンを交換することができればa列の支配が目標となる。

それで評決はどうなっているか

 イギリス布局は白にとって堅実な布局である。これは融通性もあり 1.e4 や 1.d4 ほど深くは研究されていない。黒の応手の 1…e5 は攻撃的な戦型で、黒に激しい戦いの機会を与えてくれる。

イギリス布局 1…e5
1.c4 e5

 この布局は白が1手先行していることを除けばシチリア防御(1.e4 c5)に似ている。

2.Nc3

 これが最も自然でよく指される手である。白は2手目で 2.g3 と指すこともできる。しかし 2.Nf3 と指すと黒は 2…e4 と応じることができ有利になる。

2…Nc6

 これで黒が「閉鎖戦法」を選んだ逆シチリア防御の形になっている。2…Nf6 3.g3 d5 という戦型を選ぶこともできる。この場合局面が開放的になるほど白の1手先行が重みを増すかもしれないことに留意されたい。

3.g3

 もっと攻撃的な別の作戦は 3.Nf3 で、d2-d4 突きを策する。

3…g6 4.Bg2 Bg7

 これで局面は色は逆だが本当に典型的な閉鎖シチリア防御になった。ちょうどシチリア防御のように白はここで二つの重要な決定をしなければならない。それはa)g1のナイトをf3とe2のどちらへ展開するか、そしてb)e2-e3 と突くかそれとも e2-e4 突くか、ということである。

5.d3 d6 6.Nf3

 今度は黒が重要な決定をする番である。黒はすぐに …f7-f5 と突けるし代わりに 6…Nf6 とも指せる。

 しかしもし白が 6.e3 と突けば黒は 6…Nge7 7.Nge2 O-O 8.O-O と応じることができる。そのあと黒は 8…Bg4 9.h3 Be6 から …Qd8-d7 で展開を完了するのが普通である。

6…f5

 これで黒は広い陣形になる。欠点はa2-g8の斜筋が露出することである。

 このより野心的なやり方は黒が陣地の広さと主導権を得るが、時には黒のa2-g8の斜筋をさらけ出しaポーンが交換されたあとは7段目の潜在的な弱点さえ露呈することがある。

 より安全な 6…Nf6 のあとの可能な手順は 7.O-O O-O 8.Rb1 である。白はg2のビショップの威力を増すために b2-b4-b5 突きでクイーン翼を攻撃する用意をしている。

 9.b4 突きの狙いを封じるために黒は 8…a5 と突いてくる。白は 9.a3 から b4 突きでクイーン翼の攻撃を続けなければならない。そのあと黒は Nf3-g5 を心配することなくビショップをc8からe6に楽に展開する準備のために 9…h6 と突くことができる。

 9…h6 の代わりの手は …e5-e4 突きの準備の 9…Re8 である。白は 10.Bg5 h6 11.Bxf6 Bxf6 12.b4 と指し進めることになる。白は b2-b4 と突く目的は達成したけれども、黒は双ビショップの優位を得た。そして 12…axb4 13.axb4 Bg7 14.b5 Ne7 15.Qb3 から Ra1 となればいい勝負である。

 9…h6 に戻って 10.b4 axb4 11.axb4 Be6 12.b5 Ne7 13.Bb2 Qd7 のあとは …Be6-h3 の狙いがある。14.Re1(白は白枡ビショップを残したい)14…Bh3 15.Bh1 で難解な中盤戦である。

7.O-O Nf6 8.Rb1

 これはよくある手順である。もっとも白がもっと早く、たとえ5手目で指してもおかしくない。

8…a5 9.a3 O-O 10.b4 axb4 11.axb4 h6 12.b5 Ne7

 この局面は 8…O-O 9.b4 a6 10.a4 h6 11.b5 axb5 12.axb5 Ne7 という手順からも生じる。

 白はここでどのような作戦でいくかを考える必要がある。一つの作戦はa列に着目することで、別の作戦は c4-c5 と突くことで、ときには b5-b6 と突くことさえある。

13.Nd2

 g2のビショップの利きをb7のポーンに当ててc8のビショップの展開を防いだ。代わりに 13.Bb2 で Ra1 の準備をすると黒は 13…Be6 14.Ra1 Qd7 と指すことになる。

13…g5

 これは大局観指法(白はクイーン翼の弱点を攻撃しようとしている)と白キングに対する直接攻撃との究極の戦いである。

14.Bb2 f4

 局面は中盤戦にさしかかっていい勝負である。

最終結論

 白として 1.e4 や 1.d4 の数多い布局の習得に気が進まないならばイギリス布局はその代わりとしてよいかもしれない。黒として …e7-e5 という応手は攻撃的な指し方ができる。勝ちを目指すなら良い選択となるかもしれない。しかしこの戦型を指すならば非常に難解になることがあるので自分で十分に研究をしておかなければならない。

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フィッシャーのチェス(288)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 この布局の手順は、色が逆で少しうまくいっていなかった陣形を試してみるよく知られた策略の実例ともなっている。この場合イギリス布局に対する防御はここでは白側からその手順を踏めばシチリア防御に対する攻撃になっている。理論家はこのような局面で1手余分に指していても基本的な形勢は滅多に変わらないと知って興味を持つかもしれない。例えば上例の場合白は5手目に d3 と突いている。黒がシチリア防御で(つまり色が逆のとき)その手を避ければ上記の咎める手順の最後で(11.d4)局面は白が指したにせよ黒が指したにせよ同一になる。

 フィッシャーのまれなギャンビットの別の例は1960年ブエノスアイレスでコルチノイのシチリア防御に対したときだった。

1.e4 c5 2.Nf3 a6 3.d4 cxd4 4.c3

(この章続く)

2012年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(287)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 フィッシャーがアリョーヒンやタリがやっていたようには布局でギャンビットを指さないことは注目に値する。上述の例のべヨン対フィッシャー戦は例外である。

1.c4 e5 2.Nc3 Nc6 3.g3 f5 4.Bg2 Nf6 5.d3 Bc5 6.e3 f4?!

 ウェードがちょっと触れているようにこの手はシュピールマンの定義に適合する真の犠牲(またはギャンビット)である。つまり結果は読みきれず代償は具体的でない。その意図はf2の地点への筋を素通しにし、白の黒枡ビショップの利きをふさぎ、白のd3の地点を標的にすることである。相手が攻撃的に動かなかったとき(カルポフもそうだった)ポーン1個の犠牲でフィッシャーはこれらすべてを達成した。

7.exf4 O-O 8.Nge2

 ここでは 8.fxe5 Re8 9.f4 d6 10.Bxc6 bxc6 11.d4! のあと何も恐れることはなかった。格言に言うとおり「ギャンビットを咎めるのはもし可能なら全部受諾することである。」

(この章続く)

2012年08月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(286)

第6部 ちょっと楽しみで(続き)

第28章 布局の冒険(続き)

 集めた布局の最良の利用法は対局の前でなく後に参考にすることである。どこで相手/自分は間違えたのだろうか。過去の名局を凌駕したか。布局を事前に調べるのは退屈な訓練であるだけでなく、辞典を研究したりある問題を解決しようとする前に解答を見たりするようなものである。ルーベン・ファインは布局の準備のしすぎは対局中の思考をだめにしがちであるとの忠告した。有能な法廷弁護士は対審手続きよりも真実を引き出すものはないと断言することができる。

 おまけに記憶に頼ってどこが面白いのだろうか。1969年にチェス新報はその年の前半に世界中で指された試合の中でフィッシャーの試合に第2位の名局賞を授与した。4年後の1973年マドリードでのカルポフ対べヨン戦は白の23手までセイディー対フィッシャー戦をたどった。その中にはR.G.ウェードが自分のフィッシャーの本で好手記号を付けた7手も含まれていた。フリオ・カプランが1974年3月に「Chess Life & Review」誌でこのカルポフの試合を解説したとき、べヨンが見逃した23手目から始まるフィッシャーの勝ち手順に何も言及しなかった。ウェードはフィッシャーの布局での怪しいギャンビットの手を除けば1969年前半の「名局」だったはずだとまで言っていた。カルポフはこの布局が経過した時間を利用しなかっただけでなく、自分が王座を奪いたい世界チャンピオンによって構成された自分の知らない負け試合をぴったりなぞっていた。

(この章続く)

2012年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(280)

「Chess」2012年6月号(1/4)

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全米選手権戦

FMスティーブ・ギディンズ


ヒカル・ナカムラが2005年と2009年に続いて3度目の米国チャンピオンに

 近年セントルイスにあるレックス・シンクフィールドの慈善団体からの後援で米国選手権の格が昔の栄光まで高まった。試合方法も純粋なスイス式からスイス式と勝ち抜きの決定戦の組み合わせというように少しずつ変更されてきたが、今年は昔どおりの12人による総当たりになった。連覇を狙うガータ・カームスキーと世界第7位のヒカル・ナカムラを含め、今回も米国の代表選手全員が顔をそろえた。近年この大会の特色となったのは質の高い報道で、モーリス・アシュリーとジェニファー・シャへードとによる実況解説、マコーリー・ピーターソンによるプロ並の毎日のビデオ要約もその中にある。英国選手権もそのように誇れる大会であればよいのだが。

 星取表が示すように優勝したのは最上位シードだった。しかしよくあるように生の成績表からは激しく劇的な戦いが読み取れない。初めから首位に立ったあとナカムラは、決然と第7回戦から第9回戦に3連勝したカームスキーに追い抜かれた。

 これで第10回戦がカームスキーとナカムラの激突の舞台になった。白番にもかかわらずカームスキーは消極的かつ神経質すぎてすぐに守勢に立たされた。それでも時間切迫で40手目で敗着を指すまではずっと引き分けの可能性があった。

2012年米国選手権戦
G.カームスキー – H.ナカムラ
シチリア防御ナイドルフ戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.a4 e5 7.Nf3 Be7 8.Bc4 O-O 9.O-O Be6 10.Bb3 Nc6 11.Bg5 Na5 12.Bxf6 Bxf6 13.Bd5 Rc8 14.Nd2 Qc7 15.Re1 Bg5 16.Nf1 Qb6 17.Rb1 Nc4 18.Qe2 Bh6 19.h4 Qb4 20.g3 Rc7 21.Kg2 Nb6 22.Bb3 Bxb3 23.cxb3 Qxb3 24.a5 Na4 25.Nh2 g6 26.Ng4 Bg7 27.Nd5 Rc2 28.Qe3 Nc5 29.h5 Qxe3 30.Ngxe3 Rd2 31.Nc4 Rd4 32.Nxd6 Rd8 33.b4 Nd3 34.Nxb7 Nxe1+ 35.Rxe1 Ra8 36.f3 Bf8 37.Rc1 Bxb4 38.Rc7 gxh5 39.Kh3 Kg7

 40.Nxb4 Rxb4 41.Nd6 ならまだいくらかチャンスがあったかもしれないがカームスキーは 40.Kh4? と指した。そして 40…Ra7 で致命的な釘付けをかけられた。黒は交換損を返してaポーンを取り黒のパスaポーンが勝負を決めた。カームスキーは反撃を探してもがいたが無駄だった。41.Kxh5 Rxd5 42.exd5 Bxa5 43.Re7 Bb6 44.d6 a5

45.Kg5 45.Nd8 は 45…Kf8 で役に立たない。45…a4 46.Kf5 a3 47.Nd8 a2 48.Ne6+ Kh6 49.Ng5 a1=Q 50.Nxf7+ Kg7 0-1

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(この号続く)

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フィッシャーのチェス(285)

第6部 ちょっと楽しみで

第28章 布局の冒険

 チェスの熱狂的な愛好者でなければ誰でも布局の本を1冊見るだけで恐れおののく。次から次へと現れる変化の中を突き進むには特別な動機づけがなければならない。たぶんクラブの宿敵を負かすためとか、大会の次の回戦で罠を仕掛けるためとか。私の考えでは戦術の能力や収局の技術が未熟なときに布局定跡の勉強に時間を費やす選手が多すぎる。

 それでも布局は冒険になり得る。そしてボビー・フィッシャーは新しい星を発見する天文学者と同じくらい新型の発見を楽しんでいる。布局に関する何千もの解説文や何百万もの雑誌記事が出たあとでも、最初の10手に新しい着想がまだ見つかるのには驚嘆するしかない。発見するのがあなたならば真理の全体を増す感じがするだろう。これは小さな一歩だがそれでも初期配置の32駒の上にいつも留まっているあの夢、白先白勝ちへの一歩である。

 マスターでない者も含め何千もの選手が戦法名に自分の名前を残してきた。たぶんそれもまた動機づけになるだろう。布局戦型を識別する固有名の使用は実に儀式的だがチェスの敬意である。1933年フォークストンでミケナスがアリョーヒンのeポーン布局に対して 1…g6 と指したとき、世界チャンピオンは単に「キング翼フィアンケット」と呼び「この手は劣っていると考えるのが適当で・・・」と解説した。しかし最近30年間に追随者が出てきてピルツ防御またはロバーチュとさまざまに呼ばれ、現在では単に現代防御と呼ばれている。奇妙なことにチェスの達人の中でカパブランカだけが傍流戦法にさえ自分の名前を残さなかった。しかしこれは新手を生み出すことができなかったためではなく、キューバ人選手の偉大な多才さと得意戦法を持つことの毛嫌いへの賛辞ではないかと思う。そしてこの点においてフィッシャーは今似たように成熟を示している。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(284)

第5部 着想(続き)

第27章 単純化せよ(続き)

フィッシャー対ゲレル
モナコ、1967年
 19…Bb7

 シチリア防御の深く分析されている同じ戦法の反対側でフィッシャーは相手の単純化の着想を見落とした。20.Qc2 g6 21.Bh5! でクイーンを侵入させて勝ちに行く狙いの代わりに、相手にクイーン交換強要の余裕を与えた。

20.Bg4? dxc4 21.Bxe6 Qd3!

 最終戦でのこの負けでも優勝を逃すことはなかったが、得意の戦術の領域での不覚は腹の立つことだったに違いない。

(この章終わり)

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布局の探究(7)

「Chess Life」1990年8月号(2/3)

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布局の探究

GMエドマー・メドニス

何はともあれ 得意定跡の選び方(続き)

 ここで非常に重要な実戦的な問題を考えてみよう。それはどのくらい多くの防御(戦法、布局)を白番と黒番で用意すべきかということである。普通は「黒番で(または白番で)別の布局を学ぶ前にどのくらい詳しく一つの布局を知るべきか」というようなことに言い換えられる。私にとってはこの種の問いは「一つの戦法を深く知るべきか、それとも二つの戦法を浅く知るべきか」と言っているように聞こえる。私の答えはいつも質の方である。つまり一つの布局を深く知る方が二つ(あるいは十)浅く知るよりずっとずっと大切である。

 それでも上達を目指す選手は一つの戦法だけを指すのは十分でない。これには理由が二つある。

 (1)相手があなたとの対戦に備えるのがあまりにも容易になる。布局で成功する大きな目標の一つは相手の意表を突くことである。逆にいつも意表を突かれて不愉快な立場になることは望まない。

 (2)定期的に戦法は理論的な問題にぶつかり、自分の信頼できる布局でなくなることがある。

 だから今の布局を十分知ったなら得意定跡を広げる時機である。そうするためには三つのやり方がある。

 (1)新しい布局システムを学ぶこと。例えば 1.e4 に対する応手がフランス防御(1…e6)ならば、これからは 1…e5 と指すのも選択肢に加えるのがよいかもしれない。あるいは 1.d4 に対して 1…d5 と応じているなら、これからはグリューンフェルト防御(1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5)も指すことにするのがよいかもしれない。このようなやり方の利点は何か新しいことを学ぶことによりチェス全般の知識が大きく増えることである。これは「頭脳拡張」法と呼べるだろう。もちろん欠点はまったく明らかで、これまでの知識をなにも直接適用できないので膨大な時間と努力が必要となることである。しかしここでも勉強時間を節約する方法はある。例えば今のところ 1.e4 e5 全体よりもカロカン防御(1.e4 c6)について知られていることがはるかに少ないので、カロカンを選ぶ方が 1…e5 を選ぶよりもずっと勉強時間が少なくて済む。

 (2)姉妹布局を学ぶこと。このやり方の重要な例は、1.d4 に対してキング翼インディアン防御(1.d4 Nf6 2.c4 g6 のあと …Bg7 から …d6)を指す者が 1.e4 に対してピルツ防御(1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6)を選ぶことで、またはもちろんその逆もある。

 戦法の実際の習得法はだいぶ違うが二つの明らかに有利な点がある。(1)既に布局の一般的な考え方を理解しているので勉強がもっと楽である。(2)布局システムへの基本的な取り組み方を理解しているので実戦は初めからもっとうまくいく。

 もっと似かよった姉妹布局の組はピルツ防御と現代防御(1.e4 g6 2.d4 Bg7)である。現代防御からピルツ防御に移行する機会はいくらもある。

 (3)付随する戦法を学ぶこと。1.e4 に対する防御としてシチリア防御ナイドルフ戦法(1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6)を指していると仮定する。これは白の考えられるすべての2手目(閉鎖戦法など)に対処する方法、3.Bb5+ に対する指し方、(4.Nxd4 でなく)4.Qxd4 と取られたときの対処法などを知らなければならないことを意味している。

 ドラゴン戦法(5…g6)も指すことにするならば、ここまでは他に何も学ぶ必要はない。

 しなければならないことはドラゴン戦法の詳細を勉強することだけである。たぶん自分のシチリア防御の知識の3分の1まで利用しているのでこれは大変な時間の節約になる。

 このようなやり方はたぶんレイティング2600のスーパーGMになりたい若い才能には十分でないだろう。しかし時間がかなり限られている職業人にとっては非常に適切である。

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フィッシャーのチェス(283)

第5部 着想(続き)

第27章 単純化せよ(続き)

 単純化の他の重要な使い方は攻撃をくじくときである。ときには次の2例が示すように嵐をしのぐために戦力を返すのには強い精神力を要することがある。

カバレク対フィッシャー
スース、1967年
 21.Bd1

 フィッシャーは3ポーンと1駒を得しているが、何というポーンの形だろう。22.Qxe5 の狙いには 21…Bc5+ から 22…Bd4 と対処することができるが、23.Qg3 でクイーンに侵入される。フィッシャーは勇気を奮い起こして攻撃に立ち向かった。

21…Rf8! 22.Bxh5+ Kd8 23.Rd1+ Bd7 24.Qe3! Qa5 25.Rb7!

 白は 25…Bc5 に 26.Rdxd7+ でチェックの千日手による引き分けに収めた。

(この章続く)

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