2012年06月の記事一覧

フィッシャーのチェス(251)

第5部 着想(続き)

第24章 ポーンあさり(続き)

 フィッシャーは次の2局ではもっと幸運だった。それらの試合では相手の猛攻を許してまでポーン得をした。

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦第4局、レイキャビク、1972年
 13…a5

 この番勝負におけるフィッシャーの初めての白番となる第4局は-第2局は姿を現さなかった-スパスキーの新手 13…a5 の前にあやうく完敗するところだった。…b4 突きを狙われているが白のe4のポーンが当たりにされているのでこのb5のポーンは支援が必要ない。ここで白はe4のポーンを当たりからはずすことによりb5のポーンを取るしかない。

14.e5 dxe5 15.fxe5 Nd7 16.Nxb5 Nc5!

 このナイトによる両当たりは放置できないので黒の攻撃は流れるように進む。

17.Bxc5 Bxc5+ 18.Kh1 Qg5! 19.Qe2

 黒のポーン捨ての代償が十分すぎるほどであることをまだ認めたくないフィッシャーは 19.Qg3 を避けた。第31章「主題」で取り上げるように彼が引き分けに持ち込めたのは奇跡でしかなかった。

(この章続く)

碁ワールド2012年7月号

日本棋院発行「碁ワールド7月号」に渡井氏の書いた記事が載っています。

2012年06月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

「ヒカルのチェス」(275)

「Chess Life」2012年4月号(2/5)

******************************

2012年ベイクアーンゼー大会(続き)

 2011年のベイクアーンゼー大会で優勝したあとGMヒカル・ナカムラは調子が今一つの期間が続いたが、年末にかけて上向きになってきた。スーパーコーチのGMカスパロフと決別した月である。2012年のこの大会におけるナカムラの着実な成績は、24歳の彼の才能に安定性が増してきたことを示している。もっともナカムラ自身は合点がいかないようだった。「どう思ったらいいのかは難しい。プラス2(負けより勝ちが二つ多いこと)は悪くない結果だ。出だしは悪かったが中盤では健闘し8、9、10回戦ではまたひどくなり終わりは良かった。」

 ナカムラの最高の試合は第5回戦のチェコのGMダビッド・ナバラとの試合だった。

GMヒカル・ナカムラ(FIDE2759、米国)
GMダビッド・ナバラ(FIDE2712、チェコ)
2012年ベイクアーンゼー

 24…h5

 明らかに陣形で白が圧倒している。仕上げは鮮やかだった。

25.Nxh5+!! Qxh5 26.Rxf7+ Rxf7 27.Rxf7+ Kh6 28.Qf4+ g5 29.Qf6+ Qg6

30.Qf1!!

 これがナカムラの捨て駒の核心だった。もっとも 30.Qe7 でもほとんど同じことである。31.Rf6 と 31.Qh3+ の二つの狙いがあるので黒は大弱りである。

30…Qh5 31.Rxb7!

 今度は 32.Qxa6+ と 32.Qf6+ の狙いで、受けがない。

31…c4 32.Qf6+ Qg6 33.Qxd8 Qb1+ 34.Kf2 黒投了

******************************

(この号続く)

2012年06月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(250)

第5部 着想(続き)

第24章 ポーンあさり(続き)

 駒の動かし方さえ知らない人たちでもスパスキーとの世界選手権戦第1局におけるフィッシャーの今までで最も厚かましいポーンあさりはたぶん知っているだろう。

スパスキー対フィッシャー
世界選手権戦第1局レイキャビク、1972年
 29.b5

29…Bxh2

 第34章「ゴルディオスの結び目」で解説するようにこの手が本当に敗着かどうかについては意見が分かれている。レシェフスキーはこの手にポカの記号を付けている。私ならこの手は平々凡々な引き分けになる代わりに両者の技術を見せてくれる機会を与えてくれたことだけでも好手記号に値すると言いたい。フィッシャーの敗着は本当は12手後の指しかけ時の手にあった。

(この章続く)

2012年06月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(249)

第5部 着想(続き)

第24章 ポーンあさり(続き)

 次の局面でもフィッシャーはポーンをかすめ取るために手筋を繰り出さなければならなかった。

ウールマン対フィッシャー
パルマ、1970年
 12.h3

12…Nxe4! 13.Nxe4

 指し手に込められた理由づけは変化の羅列よりも多くのことを説明してくれる。最初の要点は黒が 13…Bxc3 から 14…Nxc3 で白のクイーンと白枡ビショップの両当たりを狙っていることである。だから黒はg4のビショップに対する当たりを無視することができる。チェスの局面は確かに「繰り返す」。この手順は1954年(!)ゴーリキーでのウラジミロフ対ユドビッチ戦の似た局面に現れた。

13…Rxe4

 f4の白ビショップが当たりになっていることにより間接的にg4のビショップを守っている。

14.Bg5 Qe8

 今度はe2のビショップを当たりにしている。この基本的な防御戦術の精巧さについては第19章「防御のために」を参照して欲しい。二つの駒(クイーンとg4のビショップ)が当たりになっているときの適切な受けは一つの駒の当たりをはずして自分の方の当たりをかけることである。

15.Bd3 Bxf3

 これは「帰還」という別の防御手段である。黒はようやく駒を当たりからはずすことができる。16.Bxe4 と取られても 16…Bxe4 で「当たり」の状態から帰還できる[訳注 16…Bxd1 とクイーンを取られるのでここの説明は無効です]。それもこれも全部1個のポーンを得るためである。

(この章続く)

2012年06月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

布局の探究(2)

「Chess Life」1990年6月号(2/5)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

布局定跡の手順 現代のマスターの常套手段(続き)

1.e4(続き)

 シチリア防御の主流手順は 1.e4 c5 2.Nf3 から 3.d4 で始まる。しかし特に 2…d6 のあとでは白はよく先に 3.Nc3 と指す。黒はドラゴン戦法を指す予定ならば 3…g6 で差し支えない。また …d6/…Nc6 のシステムを指すつもりならば 3…Nc6 で問題ない。しかしナイドルフ戦法にしたいならここでどう指したらよいのだろうか。3…Nf6 なら白は 4.e5 で局面の様相を変えることができる。3…a6 なら白は 4.g3 で閉鎖型シチリアに移行することができる。これはGMビイアサスの用いるシステムで白は 3…a6 を無駄手にさせようとする。客観的には黒はこれらのどの場合でも問題ないが、それでも局面の様相は予定のナイドルフ戦法とは大きく異なる。

 一般にシチリア防御で早々と 2.Nc3 と指すのは閉鎖型システム(3.g3)の手始めで、その目的は早期の …d5 で黒陣がすぐに解放されるのを防ぐことである。しかし 2.Nc3 は移行の目的でも用いることができる。上述のように白はそのあと 3.Nf3 を指すことができる。選手の中には特に黒が 3…d6 を指したときに一風変わった 3.Nge2 を指す者さえいる。白の目的は普通はただ黒に考えさせることである。そのあとは白は 4.d4 で単に主手順に移行する。しかし白は 4.g3 ですぐにフィアンケットすることもできる。そのあとは白が d4 と突けるかまたは突きたいかによって局面は開放型にも閉鎖型にもなり得る。

 たとえ 2.Nc3 は閉鎖戦法で正当な目的を果たすとしても、d4の地点が黒の手中に落ちるという明らかな欠点もある。だから白の中にはそれを省略してすぐに 2.g3 と指そうという者もいる。もし黒がいつものように指せば(例えば 2…g6 3.Bg2 Bg7 4.Ne2 Nc6)、白は 5.c3! ですぐに中心的な展開の目標を達成することができる。これは白の優勢が保証されるということではなく、黒がよく気をつけて指し続ける必要があるということである。さもないと黒は簡単に思わしくない状況に追い込まれてしまう。私の考えでは黒はすぐに正面から受けて立って(2.g3 のあと)主眼の 2…d5! を指すべきである。3.exd5 Qxd5 4.Nf3 Bg4! 5.Bg2 Qe6+ 6.Kf1 Nc6 と進んだアンバランスな局面は黒が完全に満足できる。

 GMの採用した手順にはどれもいつもそれなりの理由があると覚えておくべきである。ピルツ防御での正規戦法の次の2手順を考えてみよう(1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 g6 4.Nf3 Bg7)。(1)5.Be2 O-O 6.h3 と(2)5.h3 のどちらの手順も「未熟な選手」の試合では同じことのように思われる。ところがGMは2番目(5.h3)の手順だけを用いる。その理由は 5.h3 O-O 6.Be3! c6 7.a4 Nbd7 8.a5 e5?! 9.dxe5 dxe5 10.Bc4! の局面にある。

 最初に Be2 として Bc4 と指した局面と比べると白はまるまる1手得したことになっている。比較すると 5.Be2 のあとの 6.h3 には洞察力が全然ない。「h3 と指した」というだけである。

******************************

2012年06月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 布局の探究1

フィッシャーのチェス(248)

第5部 着想(続き)

第24章 ポーンあさり(続き)

 フィッシャーはシチリア防御「毒入りポーン」戦法のどちら側も喜んで指すので昔から有名だった。彼の最も有名な敗戦はスパスキーとの世界選手権戦第11局でb2のポーンを取ったときだった。この章ではポーンあさりの成功例も失敗例も見ていく。しかしどの場合もフィッシャーが自分の考えを証明するために通らなければならない紆余曲折に注目してほしい。

ビズガイアー対フィッシャー
ブレッド、1961年
 14.Bf4

14…Nxd4!

 この手筋が成立するのは黒のf8のルークが白の黒枡ビショップに当たって先手になることに基づいているとはなかなか信じにくい。

15.Nxd4 Qxd4 16.Qxg4 Qxd3 17.Rfd1 Qg6! 18.Qxg6 fxg6 19.Rd7 Bc5

 黒は白ルークに7段目に侵入させる犠牲を払ってもポーン得のままである。

(この章続く)

2012年06月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(247)

第5部 着想(続き)

第24章 ポーンあさり

 一般に上達には3段階がある。初心者は取れるもの(特にポーン)は何でも取り、その結果はあとで考える。クラブの常連になると自覚ができてきてポーンあさりに躊躇するようになる。最後にエキスパートやマスターのレベルになるとアリョーヒンやタリがかつてそのようなことをしたようなおぼろげな記憶よりも、捨て駒に寄与するための真剣な分析なしにポーンが捨てられるのがほとんどであると気づくようになる。

 そして懐疑的な選手は少なくとも格下の相手に対してはポーンあさりが勝ちへの最短距離になることがよくあることをすぐに学ぶようになる。

 フィッシャーは特に懐疑派だった。実際ポーンあさりのせいで試合に負けたことの方が多かったが、他の傾向よりも苦労に陥ることが多いことは確かだった。ほとんどのマスターはそんなに苦労したくない。フィッシャーは捨て駒が間違いならばそれを証明しないと沽券に関わると考えているようである。

(この章続く)

2012年06月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(31)

「Chess Life」2003年12月号(2/2)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3.Nxe5 型のペトロフ防御(続き)

 戦型2 1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Nc6

 この戦型では黒はすぐにd4のポーンに圧力をかけようとする。

7.O-O Bg4 8.c4 Nf6

 すぐに 8…Nxd4 と取るのは駒損になる。どうしてか分かりますか?

 答えは 9.Bxe4 dxe4 10.Qxd4 exf3 11.Qxg4 。

9.Nc3

9…Bxf3

 ここでも 9…Nxd4 はまだ欲張りすぎである。10.cxd5 Nxf3+ 11.gxf3 Bd7 12.Re1+ Be7 13.Qe2 となって黒はキャッスリングが難しく(今キャッスリングするとe7のビショップが取られる)苦戦に陥る。

10.Qxf3 Nxd4 11.Qe3+ Ne6 12.cxd5 Nxd5

 いったん 12…Bc5 と展開しても白は 13.Qf3 でd5のポーンを守ることができる。

13.Nxd5 Qxd5 14.Be4 Qb5 15.a4 Qa6

 b7のポーンを守るにはここしかない。15…Qb4 は 16.Bd2 Qxb2 17.Rab1 となって黒キングが安全な所に避難できないので危険すぎる。

16.Rd1

 黒がキャッスリングするためにはビショップを展開させなければならないことは明らかだが、問題はどこへである。

16…Be7

 ほとんどの試合で選ばれてきたのはこの手である。16…Bc5 は 17.Qf3 c6 18.Rd7!! O-O で白がいくらか優勢になる。このルークを取るのは自殺行為である(18…Kxd7 19.Qxf7+ Kd6 20.Bf4+ Nxf4 21.Qxf4+ Ke7 22.Qe5+ Kf7 23.Qf5+ Ke8[または 23…Kg8 24.Bd3 から Bd3-c4+]24.Re1 で黒の絶望)。19.Bd3 Qb6 20.a5 Qb4 21.Bd2! Qh4 22.Rxb7 で、カスパロフがカルポフ戦の解説で指摘したように白が少し優勢である。16…Bd6!? が改善の可能性として将来指されるかもしれない。

17.b4!

 これは意表を突く強手である。白は二つの重要な着想を組み合わせることができる。a)黒枡ビショップのためにb2の地点を空け、b)いつか b4-b5 と突いて黒クイーンをいじめる狙いがある。

17…O-O 18.Qh3

 これはたいしたことがないようだが重要な1手である。黒キングの前のポーンを突かせて弱体化させている。

18…g6

19.Qc3

 これは上述の試合の改良である。その試合では白は 19.Bb2 と指したので 19…Qc4 で黒が守りきることができた(カスパロフ対カルポフ、番勝負第6局、1986年)。本譜の手で白は対角斜筋(a1-h8)にクイーンとビショップを重ねる。アセーエフ対イワンチュク戦(ソ連、1986年)では 19…c5 20.Bb2 Nd4 21.Bd3 Qb6 22.a5 Qc7 23.bxc5 Bxc5 24.Bf1 と進んで白の優勢になった。

 戦型3 1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Be7 7.O-O Nc6

 これは「旧主流手順」である。ここでは白には主要な選択肢が二つある。

 戦型3a 8.Re1 Bf5

 これは安全な方の手である。(8…Bg4 も良い手だが、乱戦になるかもしれず十分研究しておく必要がある。)

9.c4 O-O

 これは 9…Nb4 よりは人気がないがたぶん手段としては優る。妹のユディットは元ヨーロッパチャンピオンに対して布局からあまり有利さを引き出せなかった。10.Nc3 Nxc3 11.bxc3 Bxd3 12.Qxd3 dxc4 13.Qxc4 Bd6 14.Qb5 Qf6 15.Bg5 Qg6 16.c4 a6 17.Qb2 b6 18.a3 Qd3(J.ポルガー対マシエヤ、ブダペスト、2002年)

 戦型3b 8.c4 Nb4

 黒は白の白枡ビショップを追いかけている。8…Nf6 も立派な手である。9.h3 Nb4 10.Be2 dxc4 11.Bxc4 O-O 12.Nc3 c6 13.Re1 Nbd5 14.Qb3 Nb6 15.Bd3 Be6 16.Qc2 h6 となれば均衡のとれた収局である。白は孤立ポーンを抱えているが駒が活発に働いている(トパロフ対アーナンド、ベイクアーンゼー、2003年)。

9.Be2

 白は双ビショップを大切にして 9…Nxd3 と交換させない。9.cxd5 は 9…Nxd3 10.Qxd3 Qxd5 11.Re1 Bf5 となって黒の方が大変である。つまり黒は受けに回らなければならない。しかしうまく守れば問題ない。

9…O-O 10.Nc3

 ここで黒は展開していない最後の駒、c8のビショップをどこに配置するかを決めなければならない。

10…Bf5

 ここが最も活動的な位置で、10…Be6 も面白いがそれよりは少し優っていると考えられる。本譜の手は 11…Nxc3 12.bxc3 Nc2 13.Rb1 Nxd4 でb1のルークに対する開き攻撃を狙っている。10…b6 は次のようにあまり芳しくないようである。11.a3 Nxc3 12.bxc3 Nc6 13.cxd5 Qxd5 14.Re1 Bb7 15.Bd3 Rae8 16.c4 Qd8 17.d5 Nb8 18.Ne5! Bf6 19.Bb2 これは2000年コウパボグルでのカスパロフ対H.オウラフソン戦(快速)で、白が明らかに優勢だった。

11.a3 Nxc3 12.bxc3 Nc6 13.cxd5 Qxd5

14.Bf4

 白は先に 14.Re1 と指してから 14…Rfe8 に 15.Bf4 と指すこともよくある。以下は 15…Bd6(カスパロフ対カルポフの公開試合第2局ではカルポフが 15…Rac8 と指したが 16.c4 Qe4 17.Be3 Bf6 18.Rc1 b6 19.h3 Bg6 20.c5 Ne7 21.Ba6 Rcd8 22.Bg5 Qc6 23.cxb6 Qxb6 24.Bxf6 gxf6 25.Qa4 でカスパロフが断然優勢だった)16.c4 Qe4 17.Be3 Rad8 18.Ra2 Bg6 19.Qc1 Na5 20.c5 Be7 21.Bb5 Qd5 22.Rae2 c6 となり、2002年にニューヨークのタイムズスクエアで行なわれたカスパロフ対カルポフの同じX3D公開試合第4局では黒に何の問題もなかった。

14…Rac8

 c7のポーンを守るこの受け身の手の代わりに 14…Na5 15.Bxc7 Rac8 16.Bxa5 Qxa5 17.c4 Bf6 という激しい手もある。黒がこのようにポーンを犠牲にした試合は数多い。統計によれば黒は十分代償を得ている。もっとも誰もがポーン損で指すことを好むわけではない。

15.Re1 Rfd8 16.Bf1 Bf6

 この局面は両者にとり色々な指し方のできる中盤戦である。ここでの重要な問題は白の弱体化したポーン構造が困難を引き起こすか、あるいはc3とd4のポーンが c3-c4 と d4-d5 というように前進して白にとって「宝石」となり得るかということである(アーナンド対イワンチュク、モンテカルロ、1999年)。

結論

 ペトロフ防御は黒にとってまったく堅実で健全な布局である。近年は白にとって布局での優位を求める戦いにおいて大きな「頭痛」になってきた。だから 1.e4 に対して非常に人気のある応手になっている。本稿では 3.Nxe5 だけを分析した。この手は黒に6手目で三つの選択肢を与える。それぞれはっきり異なった種類の中盤戦になる。

 いくつかの他の布局と異なりここでの(特に)戦型1は非常に激しく戦術的になり正確な読みが必要である。そのような乱戦の局面では指し方の一般的な考え方を示すことは難しい。正確で多量の読みが必要とされる。

 次号ではさらに 3.d4 と指す戦型のペトロフ防御を分析する。

******************************

2012年06月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(246)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 ペトロシアンおよびスパスキーとの最近の番勝負でフィッシャーは防御の目的のためにクイーンを一方の翼から反対の翼に異例の転回を行なった。どちらの場合も驚かせたのはクイーンが敵陣を経由したことだった。次の局面はもっと以前の例である。

ロバーチュ対フィッシャー
ハバナ、1965年
 16.Kh1

16…Qe3

 フィッシャーは異例の着想でポーンの前進の前に白のキング翼の攻撃の狙い(Nh5、Rf3 など)を、クイーンをそちらに配置する用意をすることにより鈍らせる。フィッシャーの典型的な特質は同じである。ナイトであろうとクイーンであろうと彼の駒は作戦行動に移る前に最適な地点を見つける。

(この章終わり)

2012年06月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(245)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 次の局面でフィッシャーはクイーンの展開に適切な地点が見つけられるようキングのキャッスリングをしないでいる。

マツロビッチ対フィッシャー
ビンコブツィ、1968年
 12…Rb8

13.Bxe7 Kxe7!

 フィッシャーはクイーンはクイーン翼、具体的にはa5の地点がふさわしいと判断した。必要ならば …Re8 から ….Kf8 というように「手動で」キャッスリングできる。

(この章続く)

2012年06月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(244)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 フィッシャーの試合ではクイーンの位置も目立つことが多い。局面が捌けているときは中央に位置するクイーンは特に強力である。次の局面でスパスキーは重火器の射程が十分ならばポーンなどは大したことがないことがよくあることを見せつけた。

スパスキー対フィッシャー
マルデルプラタ、1960年
 23.Kg1

23…Qg4?

 フィッシャーは白クイーンの圧倒的な位置を見誤った。ここは 23…Qg3 でクイーン交換を強要すべきだった。

24.Rf2 Be7 25.Re4 Qg5 26.Qd4 Rf8?

 この手は 27.Ne5 Rxf2 28.Qxf2 Bc5! を期待したものだがスパスキーはそれにはまらなかった。

27.Re5! Rd8

 当たりの駒が多すぎる。27…Qh4 ならクイーンが落ち(28.Rxf8+)、27…Qg6 ならビショップが落ちる(28.Rxe7)。27…Bf6 でも 28.Qd6 でビショップが落ちる。

28.Qe4 Qh4 29.Rf4 黒投了

(この章続く)

2012年06月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(274)

「Chess Life」2012年4月号(1/5)

******************************

2012年ベイクアーンゼー大会

GMイアン・ロジャーズ

 ナカムラはアロニアンの勝利への不屈の意志の犠牲となった。アロニアンが強制的にクイーンを犠牲にして収局に持ち込み、引き分けが必至のように思われた。しかしアロニアンは少しずつ進展を図り次の局面になった。

投げ縄を締める
GMレボン・アロニアン(FIDE2805、アルメニア)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2759、米国)
2012年ベイクアーンゼー

 48…Qe5

 白駒のうち一つだけが攻撃に寄与していない。そこでアロニアンの指した手は・・・

49.Kh4! Qd4

 アロニアンの手の意味は 49…Qb2 なら 50.Kg5! Ng8 51.Bf5! で黒を受けなしに追い込めるということである。

50.Bg4! Qe5

 50…Kg8 なら 51.Rf8+! がある。

51.Ne6 h6 52.Rf8+ Ng8 53.f4 Qb2 54.Kh3!

 キングはもう必要ない。黒キングは詰み筋に入っていて、投げ縄がきつく締められていく。

54…Qa1 55.Bh5 Kh7 56.Rf7+ Kh8 57.Bg6 Nf6 58.Rf8+ Ng8 59.Bf7 黒投了

******************************

(この号続く)

2012年06月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(243)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 たぶんフィッシャーの駒の戦いへの偏愛が最もよく表れるのは、閉鎖的な局面に陥るよりも進んでポーンを犠牲にするときである。優勝の機会を逃すことになった次の重要な試合で彼はほとんどこの一手と思われる手を嫌った。

フィッシャー対ケラー
チューリヒ、1959年
 25…Rg6

 予想された手は 26.g4 だが白のビショップとナイトの動きが不自由になる。黒は …Qd7 や …Nc4 で相手をさらに締め付けることができる。代わりにフィッシャーは一か八かの勝負に出た。

26.Nf3 fxg3 27.fxg3 Rxg3+ 28.Kh2 Qg4 29.Qxg4 Rxg4 30.Rg1 Rxg1 31.Kxg1 Na4!

 フィッシャーはこの試合に負けて最終戦でタリに追いつけなかった。

(この章続く)

2012年06月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(242)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 次の局面で黒キングはまた中央列に留まることを余儀なくされルークが遊び駒になっている。このような状況では白は中央での支配を強めるためにルークで黒の小駒の一つを取る犠牲を払う手段を見つけなければならない。

フィッシャー対アディソン
パルマ、1970年
 17…Nb6

18.Nce4 Nxd5

 この手は白にチャンスを与える。しかし黒はこの手を指せなければこの先全然見込みがない。

19.Rfd1 c6 20.Nc3 Qb6 21.Rxd5! cxd5 22.Nxd5 Qxb2

 白は他のどんな手でも 23.Nc7 で交換損を回復するので黒はこの手に賭けなければならない。

23.Rb1 Qxa2 24.Rxb7 黒投了

 黒キングは 25.Bxg6 から 26.Nxf6+ のあとすぐに詰みになる。

(この章続く)

2012年06月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

布局の探究(1)

「Chess Life」1990年6月号(1/5)

******************************

布局の探究

GMエドマー・メドニス

布局定跡の手順 現代のマスターの常套手段

 ずっと昔チェス選手はもっと楽で簡単だった。それは正しいやり方が一つしかなくそれがよく知られていたからだった。100年から150年前の聡明な選手たちは皆勝つためにはできるだけ早く攻撃しなければならないことを知っていた。だから 1.e4 は「明らかに」白の唯一の正着であり、同じように開放的に展開する 1…e5 は黒の唯一の正しい応手だった。そうしてお互いできるだけ迅速かつ直接的に攻撃をし合った。

 1920年代と1930年代には断然最強の手は 1.d4 で最善の応手は 1…d5 だった。しかし今では状況ははるかに難しくなっている。膨大な数の布局定跡、戦法、そして変化はすべて同じくらい信頼できることは周知のとおりである。それらのすべてを知り指すことはまったく不可能である。しかし自分が最もよく知っている好きな変化の布局定跡に到達でき、自分の好まないものがある試合に相手が誘導するのを防ぐことは、どのようにしたらできるだろうか。

 これに対する現代のマスターの常套手段は洗練された手順を用いることで、この新しい科学は現在の布局定跡で最も重要な発展を遂げている。自分の望む戦法を達成するための最も正確な手順を確立することは布局をうまく指すための絶対的な必要条件になっている。最初の5、6手はありとあらゆる手順に対処できなければならない。さもないと何度でも「だまされる」ことになる。

 最大の融通性と変幻性のある布局の手の代表は 1.c4 と 1.Nf3 で、現在のチェス界ではよく知られた事実である。しかし 1.e4 と 1.d4 からの抜け目のない移行もかなり起こり得る。まずそれらのいくつかを見ていこう。

 (『Encyclepedia of Chess Openings』シリーズは貴重な資料を提供してくれることにかけては断然際立っている。しかしその戦法を実戦に適用するには実際上問題がある。それはそれぞれの戦法に至る手順がただ一つしか与えられていないからである。もし相手が協力してくれなければどうなるのか)

1.e4

 まず 1.e4 布局で黒が用心深く初手を指さないとどれほど簡単にだまされてしまうかの醜悪な例を見せたい。黒が 1.f4 にフロムの逆ギャンビット(1…e5)で応じると白は 2.e4 と突いてキング翼ギャンビットに移行することができる。白の 1.Nf3 に黒がすぐに 1…c5 と突くと 2.e4 で標準のシチリア防御になる危険性がある。1.c4 に黒が 1…c6 と突いてスラブ防御(2.d4 d5)を目指すと 2.e4 で妨害されカロカン防御に持ち込まれパノフ攻撃(2…d5 3.exd5 cxd5 4.d4)になる公算が大きい。もちろん客観的にはこれらの布局はどれも黒にとって悪いところは何もない。しかしこれらに立ち向かう用意はしておいた方がよい。

 ほとんどいつも自分の望む戦法・変化を自分が確実に達成することを重要視すべきである。フィリドール防御のハンハム戦法(1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.d4 Nd7)を指したいと仮定する。あいにく現代の定跡では 4.Bc4! のあと黒の完全に満足できる局面にはならないとされている。まだしもの手は 4…c6 だが 5.O-O Be7 6.dxe5! dxe5(6…Nxe5? 7.Nxe5 dxe5 8.Qh5!)7.Ng5! Bxg5 8.Qh5 g6 9.Qxg5 Qxg5 10.Bxg5 で明らかに黒の不利な収局になる。だから黒はまず 3…Nf6 と指さなければならず(そして 4.dxe5 Nxe4 5.Qd5 の対処法も知らなければならない)、4.Nc3 のあとで初めて 4…Nbd7 と指すことになる。それでやっとハンハム戦法の満足できる主手順に到達する。

 GMベント・ラルセンは 1.e4 e5 2.Nc3 Nf6 3.Bc4 Nc6 4.d3 という手順のウィーン戦法を好んでいる。それでもこれに到達する途中には実際上大きな問題がある。即ち黒は 3…Nxe4! 4.Qh5 Nd6 5.Bb3 Nc6 と指すことができる。そして 6.Nb5 g6 7.Qf3 f5 8.Qd5 Qe7 9.Nxc7+ Kd8 10.Nxa8 b6 で白に非常に激しく優劣不明の混戦を強いることができる。

 これは明らかにラルセンがこの戦法に期待している洗練された戦略にまったく反している。だから彼は 2.Bc4 のビショップ布局から始め 2…Nf6 3.d3 Nc6 のあとで 4.Nc3 で望みの戦法に移行する。

******************************

フィッシャーのチェス(241)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 次の局面ではわずか3手の間に黒のナイトが2手詰みの狙いを作り出した。

グリゴリッチ対フィッシャー
ブレッド、1961年
 22.Kg2

22…Nxg3! 23.Nxc8 Nxf1 24.Nb6 Qc7! 25.Rxf1 Qxb6

 そして形勢は互角だった。

(この章続く)

2012年06月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(240)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 小駒でも見かけ上のポーンの壁を意外な速さで突破することが可能である。ここからは劇的な3例である。

フィッシャー対ナイドルフ
バルナ、1962年
 13…Nd7

 フィッシャーは彼にしては珍しく「創始者」の指すシチリア防御ナイドルフ戦法をつぶしてやると大きなことを言った。彼の予言は正しかった。

14.Rxe4! dxe4 15.Nf5

 交換損の犠牲で白はすべての枡を押さえ、黒キングは中央列にとり残されることになった。

15…Bc5 16.Ng7+ Ke7 17.Nf5+ Ke8 18.Be3!

 これが最後の仕上げである。黒の唯一展開している駒が交換され、黒枡がすかすかになる。

(この章続く)

2012年06月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(30)

「Chess Life」2003年12月号(1/2)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3.Nxe5 型のペトロフ防御

 今月はペトロフ防御を取り上げる。これは黒にとって非常に堅固な防御である。退屈かもしれない戦型もあるが、手が広くて少し研究を要する戦型もある。

 ペトロフ防御は19世紀の有名なロシアのマスター、アレクサンドル・ペトロフにちなんで名づけられた。私は長年ロシア防御という名前で親しんできたし、東欧でもその名前で知られている。

 ペトロフ防御は多くのGMによって用いられてきた。しかし流行したのはアナトリー・カルポフが1980年代半ばにガリー・カスパロフとの世界選手権戦で常用戦法の一部として採用してからである。そのカスパロフでさえ両者の1984/85年の第1次番勝負の終わり頃に黒で指し始めた。それ以来この布局の定跡は深く研究されてきた。しかしさらなる改良や新構想の余地はまだまだある。カルポフとカスパロフに加えてこの布局を得意戦法として指すGMにはスミスロフ、アーナンド、クラムニク、ハリフマン、ユスーポフ、イワンチュク、レーコー、シロフ、そしてアダムズがいる。

白の基本的な作戦は何か

 3.Nxe5 の戦型では白は4手目と5手目でいくつかの傍流の戦型を選択することができる。白が主流戦型を指すときは c2-c4 と突いて黒のe4のナイトの土台を崩していく。戦型によっては非常に長くて激しい詳細な定跡になることがある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は最初の2、3手は基本的に布局の一般原則に従いながら白と同じように展開していく。白は通常は7手目か8手目あたりで中央で対決的状況を作り出す。黒のやるべきことは中央で強い存在感を維持することである。これらの戦型の中には手順が決まりきっていて暗記を必要とするものがある。

それで評決はどうなっているか

 ペトロフ防御では黒は三つの戦型を選択することができる。最初の戦型は大乱戦になり定跡が膨大で非常に活気のある試合になる。2番目の戦型は1986年のカスパロフ対カルポフの番勝負の頃流行した。今日のグランドマスターの実戦では珍しくなったが指せない戦法になったわけではない。3番目の戦型は最も堅実と考えられ黒のために推奨できる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5

 これに代わる主要な手は 3.d4 で、次号で取り上げる。白が 3.Nc3 と指して4ナイト防御に移行するかもしれないことは注意しておく必要がある。3.d3 と突いてeポーンを守ることもできるが、少し消極的で白の白枡ビショップの積極的な展開(c4や時にはb5の地点)にさしつかえる。

3…d6

 黒が「猿まね」を続けて同じく 3…Nxe4 で中央のポーンを取ったらどうなるだろうか。白は 4.Qe2 Nf6?? で明らかに優勢になる(もちろん 4…Qe7 5.Qxe4 d6 6.d4 なら黒の1ポーン損で済む)。ここで白はナイトによる開きチェックで黒のクイーンを取ることができる。そのやり方は?

 正解は 5.Nc6+ である。

4.Nf3

 驚くなかれ著名なリナレス大会(トパロフ対クラムニク)でさえ 4.Nxf7 が危険をものともせず指された。実際は当初の見た目ほど暴挙ではない。白はナイトの代わりに2ポーンを取り、黒キングはもうキャッスリングすることができなくなる。しかし黒がこの見慣れない捨て駒を見くびらなければ 4…Kxf7 5.d4 Be7 のあと何も恐れることはない。

4…Nxe4 5.d4

 ここでは 5.Qe2 Qe7 6.d3 Nf6 でまったくの対称形になり引き分けになりやすい「悪名高い」変化がある。しかし当然ながら物事は見かけほど単純ではない。もう1、2手のうちにクイーン同士が交換になるけれども、残りの駒はまだすべて盤上に残っていてどちら側も間違いを犯す機会は豊富にある。

 それほど指されないが白のまともな手は 5.c4 と 5.Nc3 である。

5…d5

 黒はこの手で自陣を広げビショップのためにd6の地点を空けることが大切である。

6.Bd3

 ここからは黒にとってまったく異なる三つの戦型がある。

 戦型1 6…Bd6

7.O-O

 この手は 7…Bb4+ とされるかもしれない 7.c4 よりも正確な手である。

7…O-O 8.c4 c6 9.cxd5 cxd5 10.Nc3 Nxc3 11.bxc3 Bg4 12.Rb1

 細かいことだが 12.h3 Bh5 としないことが重要である。なぜなら 13.Rb1 b6 14.Rb5 のあと黒は悠々と 14…Nc6 と指すことができるからである。15.Rxd5? には 15…Bh2+! があって黒が良い。

12…Nd7

 この手は間接的にbポーンを守っている。

13.h3 Bh5 14.Rb5

 14.Rxb7 は 14…Nb6 でルークが捕まる。

14…Nb6

 ここからの黒の理想は …Bh5-g6 で白枡ビショップ同士を消し、c3の出遅れポーンに圧力をかけていくことである。さらに黒のナイトにはc4に大きな拠点が待っている。

15.c4 Bxf3

 c4のポーンをすぐに取ると白が優勢になるので黒はこの交換をしておかなければならない。15…Nxc4 のあとは 16.Rxd5 Bh2+ 17.Nxh2 Qxd5 18.Bxc4 Qxc4 19.Qxh5 で白のキング翼での攻撃が有望になる。代わりに 15…dxc4 はもっと悪く 16.Rxh5 cxd3 17.Ng5 g6(17…h6 なら 18.Qxd3)18.Rxh7 Be7 19.Qg4 から 20.Nxf7 を狙って白の勝勢になる。

16.Qxf3 dxc4

 黒がポーン得になったが白の攻撃は脅威である。黒は多くの落とし穴にはまらないように細心の注意を払わなければならない。

17.Bc2 Qd7

 この非常に激しい局面で黒に何が起こり得るのかの鮮やかな例は 17…Rb8 18.a4 a6 19.Bg5 Qc7?! 20.Bxh7+! Kxh7 21.Qh5+ Kg8 22.Bf6!! Bh2+ 23.Kh1 Qd6 24.Bxg7! Kxg7 25.Rg5+ Kf6 26.Re1 Qe6 27.Rxe6+ fxe6 28.Rg6+ Ke7 29.Rg7+ で、黒が投了した(クドリン対マチャード、テッサロニキ・オリンピアード、1988年)。

18.a4 g6

 ここでも黒は用心深く指さなければならない。通信戦のガブリロフ対フロッグ戦(1989/90年)では 18…Rab8 19.Bg5 Bc7(19…Rfe8 の方が良い)20.Bf6! Qd6 21.Be5 Qe7(21…Qd7? は 22.Bxg7)22.a5 で白がはっきり優勢になった。

19.Be3

 19.Bd2 c3 20.Bxc3 Rac8 21.Be4 Rc4 22.Rbb1 Rxa4 23.Bxb7 Ra3 は形勢不明だったので(カスパロフ対シロフ、リナレス、2000年)本譜の手の方が良い。

19…Rac8 20.Rfb1 c3 21.a5 Nc4 22.Rxb7 Qe6?!

 たぶん 22…Rc7 の方が良い。

23.Ra1 Bb8 24.Bb3

 形勢は明らかに白が優勢である(アーナンド対シロフ、リナレス、2000年)。

******************************

2012年06月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(239)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 次の局面でフィッシャーは戦術の手品を用いてクイーン翼のナイトの中央進出を図った。

フィッシャー対ヨハンセン
ハバナ、1966年
 17…Rb8

18.Nb6!

 d7での詰みがあるのでこのナイトは取られない。以下の手順は戦力増強の手本である。まずナイトがd5に行く。それから大駒がd列で重なる。最後にキング翼のナイトがd2、f1、g3を通ってh5に行く。フィッシャーは敵陣突破のあときれいに片付けた。

(この章続く)

2012年06月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(238)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 ビショップの好機の中央進出がフィッシャーの重要な2局に現れた。一つは1971年ラルセンとの番勝負第1局で、もう一つはこのソ連対全世界の第1回戦である。

フィッシャー対ペトロシアン
ベオグラード、1970年
 31…Rc8

 フィッシャーは 32.Qe5 から Bf5 で難なく勝った。もっともクイーン翼のポーンをすぐに突いていく方がもっと強力なようである。フィッシャーはすべての駒を働かせてポーンを突いていく方がはるかに強力になることを正しく理解していた。

(この章続く)

2012年06月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(237)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 勝負所での中央進出の手がフィッシャーの多くの試合で見られる。次の局面で彼は進んで2ポーンを捨てて黒のナイトの動きを制限し自分のルークを敵陣に侵入させた。

フィッシャー対タリ
ポルトロシュ、1958年
 27…Rdc8

28.Be3 Rc4 29.Rd2 Rxb4 30.Rad1 Nf8 31.Rd6+ Kf7 32.Rb6! Rxb2

 黒は壊走の代わりに自慢できるものはポーン戦力しかない。白には勝つに値する主導権がある。

33.Rdd6 a5 34.Rb7+ Kg8 35.Rxf6?

 この手はわき道にそれた。35.Re7 ならナイトが強力な防御地点のe6に行くのを防いでいた[訳注 35…a4 で黒の勝勢のようです]。黒の次の手で急に引き分けが濃厚になった。

35…Re8!

(この章続く)

2012年06月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(273)

「Chess」2012年3月号(1/1)

******************************

タタ製鉄ベイクアーンゼー大会

解説 マルコム・ペイン

第2回戦
L.アロニアン – H.ナカムラ

 駒割はほぼ釣り合っているが白の駒の方が連係が良く弱点もない。

41…Rd6

 安全策は 41…Rxf4 42.gxf4 Qxf4 43.Bb7 Nf6 44.h3 Ne4 45.Bxe4 Qxe4

だった。これなら黒が楽に引き分けにできただろう。白はキングを安全に守りながらルークで攻撃するということができない。

42.Be6 Rd1+ 43.Rxd1 Qxd1+ 44.Kg2

44…Nf6

 44…Kg7 の方が良さそうである。

45.Rxe7

 白陣は難攻不落だがナカムラもまだ助かる道があるはずである。

45…Qe1 46.Rf7 Qe4+ 47.f3 Qd4 48.Kh3!

 白は全然ミスをせず、戦いは盤の片側だけで、駒とポーンは全部連絡がついている。黒はクイーンを持っていても苦闘している。

48…Qe5?

 これで白はもっと厳しく締めつけることができる。48…Qb2 なら白の次の手を防いでいた。

49.Kh4!

49…Qd4

 白はキングを使うつもりである。 49…Qb2 なら 50.Kg5! Ng8 51.Bf5 で終わりになる。

50.Bg4!

 この再配置は非常に強力である。次にナイトがe6の地点に来る。

50…Qe5

 50…Nxg4 は 51.Rf8+! Kg7 52.Ne6+ でクイーンを取られる。50…Kg8 も 51.Rf8+! で同じである。

51.Ne6 h6 52.Rf8+

52…Ng8

 52…Kh7 なら 53.f4 でクイーンがナイトの守りから離れさせられる。さもないと 53…Qb2 54.Bf5# で詰んでしまう。

53.f4 Qb2 54.Kh3

54…Qa1

 54…Qb5 55.f5 Qf1+ 56.Kh4 Qf2 57.h3 Qa7

で受かっていそうだが 58.Bh5! Qe7+ 59.Kg4 Qb4+ 60.Nf4! Qxf8 61.Ng6+

できれいに決められる。

55.Bh5 Kh7 56.Rf7+ Kh8 57.Bg6 Nf6 58.Rf8+ Ng8 59.Bf7 1-0

******************************

(この号終わり)

2012年06月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(236)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い(続き)

 1972年スパスキーとの世界選手権戦でフィッシャーは何度も小駒のために素通し列を得る代わりに進んで相手に良いポーンを与えた。

スパスキー対フィッシャー
世界選手権戦第3局、レイキャビク、1972年
 11…Nh5

 フィッシャーのこの手は1950年代のボレスラフスキーの試合までさかのぼるとソ連側はすぐに我々に教えてくれた。しかしスパスキーを含め多くの者を驚かせたに違いない。スパスキーは次の手を指すのに30分かけた。

12.Bxh5 gxh5

 黒のキング翼はがたがたに見える。しかし黒は2、3手でクイーンをh4にナイトをg4に進ませて、白にそこのナイトを取らせることにより黒ポーンを「矯正」させた。この試合はフィッシャーのスパスキー戦初勝利だった。

(この章続く)

2012年06月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(235)

第5部 着想(続き)

第23章 駒の戦い

 フィッシャーの棋風はカパブランカの棋風になぞらえられることがよくあるけれでも、ある一つの点で彼はモーフィーとラスカーにもっと似ている。彼に特徴的なことはポーンの形を良くすることよりもまず駒の位置を良くすることに努めることである。フィッシャーはポーン突きよりも小駒で局面を破壊してきたと言ってもさしつかえないと思う。

 駒の戦いとポーンの戦いとの違いは次のフィッシャーの初期の試合によく表れている。

ペトロシアン対フィッシャー
ブレッド、1959年
 21…Qc6

 ここでペトロシアンは自分の棋風に忠実に自然な 22.e4 を指した。フィッシャーはビショップが強いので受けきることができた。もしフィッシャーが白だったらきっと次のように指しただろう。

22.Ne5! Qa4

 黒ビショップは過負荷なので(d8のルークを守っていなければならない)、ナイトを取ることはできない。そしてナイトがまた動いてキング翼を完全に壊滅させる。

23.Nd7

(この章続く)

2012年06月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(178)

「The British Chess Magazine」2011年10月号(1/1)

******************************

チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

タッチムーブ

 モイセエンコ対ナバラ戦の試合が私の興味を引いた。

 ここで黒はビショップを動かしたがキングを軽くかすったかもしれない。白は黒がキングに触っていると言ったがビショップを動かすことを許した。キングを動かしていたらビショップを取られ試合も負けになる。勝勢になったナバラは引き分けを提案した。スポーツマンらしい?必要ない?

 第4.3項 手番の選手が盤上の駒に意識的に触ると、
 (a)自分の複数の駒に触った場合、動かせる最初の駒を動かさなければならない。または
 (b)相手の複数の駒に障った場合、取れる最初の駒を取らなければならない。または
 (c)それぞれの色の駒を1個ずつ触った場合、相手の駒を取るか、これが不正な手ならば触った駒のうち動かすか取れる最初の駒を動かすか取らなければならない。最初に触ったのが自分の駒か相手の駒か不明なら、相手の駒より自分の駒を最初に触ったとみなすべきである。

 キングを意識的に触ったとは考えにくくビショップを動かしたのは正しかった。タッチムーブの規約に関するもめごとはめったに起こらない。両対局者が事実関係に異存なければ審判はすべきことを決めることができる。事実関係を確定することが困難なことがあり得る。証拠不十分の場合には嫌疑をかけられた者の有利に解釈しなければならない。審判が何もしないならば関係者を困らせることになる。私は指し手をやり直したことを疑いながらも何もできないことがよくある。

 上述に似た「タッチムーブ」は解決が容易である。触った駒のみならずキャッスリングも問題を引き起こすことがある。例えば

 第4.4項 (a)意識的にキングとルークに触った選手はその翼へのキャッスリングが合法ならばそうしなければならない。
 (b)意識してルークに次いでキングに触った選手はその翼にキャッスリングできず、第4.3(a)項が適用される。
 (c)キャッスリングするつもりの選手がキングまたは同時にキングとルークに触ったがその翼へのキャッスリングが不正ならば、キングで別の合法手を指さなければならず、それには別翼へのキャッスリングも含まれる。キングを動かす手に合法手がなければどんな合法手を指してもよい。

 キャッスリングの問題、例えばチェックされながらのキャッスリングや最初にルークを触ってのキャッスリング。最初の場合キングを動かすことが可能ならばそうしなければならない。二番目の場合キャッスリングは許されずルークを動かさなければならない。次の図の場合白がキャッスリングしようとしたが最初にルークに触れたなら唯一の可能な手は Rxh4 である。

 キングを最初に触ったなら Kf1 と指さなければならない。

 指そうとした手が悪手であることに気づいたとする。駒を桝目に置いただけではそう指さなければならないということにはならない。手を離して初めて着手が確定する。選手がひっきりなしに駒をあちこちの枡に置いてから別の枡に置けば、何らかの処置をとっても良いかもしれない。今度は駒を取る問題。ある選手が自分の駒を持ち上げてそれを用いて交換したとする。相手の駒に接触したときに相手の駒に触ったことになる。規約ではタッチムーブが適用される接触とは手によってなされなければならないとは言っていない。

 ここで Be2-g5 は不正な手だった。その選手は Bd2-g5 と指すつもりだった。e2のビショップに触ったのは意識的だったのだろうか。これは手拍子でその選手は Bd2-g5 と指すことができ相手は持ち時間が追加されるというのが万人の認めるところであると希望する。何が意図だったのかは明らかである。

 ここでの Bd2-g4 は不正な手である。この場合白は Bd2-g5 と指すつもりだったのだろうか、それとも Be2-g4 と指すつもりだったのだろうか。審判には分からないかもしれない。不明ならばd2のビショップを動かさなければならない。

 ここで 1…Nxd3 2.Qxd3 は開きチェックを見落としている。審判は局面を1手戻し白の応手を待つ。Kh1 が指される。審判は白に「タッチムーブ」を念押しする。よくある返事は「チェックをよけなければならない」である。経験豊富な選手が言ったなら私はうなづく。経験の少ない選手ならクイーンを動かさなければならないと言う。審判は合法手を示してはいけないが 2.Qf2 か 2.Qe3 が指されるようにしなければならない。「0-1」でもよい。

******************************

(この号終わり)

フィッシャーのチェス(234)

第5部 着想(続き)

第22章 手詰まり(続き)

 見どころの多い1972年のフィッシャー対スパスキーの世界選手権戦で中盤戦に手詰まりの奇妙な例が現れた。これもまた世紀の対戦にまつわる洪水のような報道の中で見過ごされた一つの可能性である。

スパスキー対フィッシャー
世界選手権戦第19局、レイキャビク、1972年
 17…Qa5

 スパスキーは次の手で中央の破壊に出た。

18.Nxd5!

 これに対してフィッシャーはほとんど間髪を入れずに応じた。

18…Bg5!

 黒はクイーン翼が展開できていないので白のナイトを取ることができない。取れば白はさらにポーンを取って、ポーンのローラーで押しまくる。実戦では黒のビショップが白ナイトの退却を防いだ。いく人かの解説者は 19.h4 でビショップをそらすことを推奨した。だが 19…Bxh4 20.Ne3 Qc3 から …Rd8 と応じられて白の中央が激しい砲火を浴びる。しかし白は決まりをつける必要はなかった。実戦の 19.Bh5 から 20.Bxf7+ の捨て駒の代わりに白は手待ちで重荷を相手に負わせることができた。

19.Kh1

 これで黒からのe3やd4でのチェックはまったくなくなった。そしで黒はまだナイトを取ることができない。f8のルークはそこにいてf7の地点を守っていなければならない。ナイトはd7の地点では邪魔になるだけである。例えば 19…Nd7 20.h4 Bxh4 21.Ne3 Qc3 22.Qe2! となって 22…Qxd4 は 23.Rad1 でナイトが落ちる。

 サロ・フロールはかつて相手の間違いを誘うために次から次へと手待ちをしていると非難された。これは精神的な手詰まりだろう。ちょうど主導権の正反対である。しかしここでの少しの例が示すように達人でさえも見逃すことがよくあるのが着想というものである。

(この章終わり)

2012年06月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(233)

第5部 着想(続き)

第22章 手詰まり(続き)

 1895年ヘースティングズでのハリー・ネルソン・ピルズベリーの優勝は大ニュースだったので、誰も2位争いに何が起こったのか気づかなかった。チゴーリンは彼を半点差で追う当時の世界チャンピオンで26歳のエマーヌエル・ラスカーが最終戦で早々と勝っていたために、単独2位になるためには勝たなければならなかった。長い戦いの末このこう着状態になった。

シュレヒター対チゴーリン
ヘースティングズ、1895年
 59…Re7

 有名な「引き分けの名人」で全盛時のペトロシアンのカルル・シュレヒターは次のように指した。

60.Rb6 Kc7 61.Rxb5?

 そしてここでチゴーリンは華麗に手詰まりにおとしいれた。

61…Kc6 62.Ra5 Re8!

 前局のように白のキングとルークは動けない。局面の絶妙さは次の手順に現れる。

63.Ra7 Re6! 64.Ra5 Re7!

 相似が完成した。黒ルークは1手損をし、また Ra7 と来ればb7のポーンを守っている。しかしシュレヒターは 61.Rxb5 の代わりに自分も手待ちをすることができた。

61.Rh6!

 これで白は黒が局面を変える唯一の手の …b4 突きを指すのを待つ。そしてそのときこそ Rb6 と指す。違いは4段目のポーンを取って自分のポーンを横からでなく背後から守ることができるということである。だから手詰まりを解消できる。ラスカーはこのわずかな失策のせいで2位に並べなかったことを死ぬまでまったく知らなかった。

(この章続く)

2012年06月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(29)

「Chess Life」2003年10月号(2/2)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御閉鎖戦法(続き)

 B)2…g7-g6 と突く戦型

1.e4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.d3

5…d6

 5…e6 6.Be3 Nd4?!(6…d6 なら戦型B3に移行する)は疑問手だが有名なスミスロフ対デンカー戦(ソ連対米国、ラジオ対局、1946年)で指された。そのあとは 7.Nce2!(白はc5の黒ポーンが浮いている間を利用してこの手を指した。黒が 5…d6 と突く戦型ではこの捌きはナイト同士の交換のあとb2のポーンが落ちるので使えない)7…d6 8.c3 Nc6 9.d4 cxd4 10.Nxd4 Nxd4 11.Bxd4 e5 12.Be3 Ne7 13.Ne2 O-O 14.O-O と進み、黒のd6の地点が弱いので白が優勢になった。

6.Be3

 ここでは白の有力な手が複数ある。最もよく指されるのは 6.f4 である。

 B1)6…Nf6

 これは閉鎖型シチリアに対してガリー・カスパロフの好む陣形である。ここで 7.Qd2 なら黒は 7…Ng4 と応じることができる。だから白は別の作戦を選ばなければならない。

7.Nge2 O-O 8.h3 e5

 ショート対マクシェーン戦(レイキャビク、2000年)では 8…Rb8 9.O-O b5 10.a3 Bd7 11.f4 a5 12.a4 b4 13.Nb5 Ne8 14.Rb1 Na7 15.c4!(ただし 15.Nxa7? は 15…Bxa4 でこのナイトが捕まる)と進んで白が戦略的に優勢な局面になった。

9.O-O

9…b5!

 このカスパロフらしい手で黒は序盤早々から主導権を得ようとしている。もっとゆっくりした 9…Nd4 に対して白は次のようにうまく主導権を得た。10.Kh2(10.Qd2? Bxh3! は知っておくべき重要な落とし穴である)10…Rb8 11.f4 b5 12.Qd2 b4 13.Nd1 Nh5 14.f5!(これも閉鎖型シチリアによく現れる手で、似たような局面でも非常に強力になることがある)14…gxf5 15.exf5 Nxf5 16.Rxf5 Bxf5 17.g4 Bxg4 18.hxg4 Qh4+ 19.Bh3 1954年のアムステルダム・オリンピアードでのGMダルガ戦で白番のケレスがうまく勝った。

10.Nxb5 Rb8 11.a4 a6 12.Na3 Rxb2 13.Nc4 Rb8 14.f4

 これはアダムズ対カスパロフ戦(リナレス、1999年)で、難解な中盤戦になった。

 B2)6…Rb8

 これもg8の黒ナイトの展開を遅らせて Be3-h6 でビショップ同士を交換されるのを防ぐ手段である。…b7-b5 と突いていく着想はボビー・フィッシャーの得意な手だった。

7.Qd2 b5 8.Nge2 Nd4

 d3-d4 と突かれる可能性を防いだ。

9.O-O b4 10.Nd1 Qc7

 これは疑問手かもしれない。しかしもっと自然な 10…e6 でも 11.Nc1 で本譜と似た進行になる。

11.Nc1

 これは閉鎖型シチリアで頻繁に用いられる作戦で、c2-c3 と突く前にナイト同士の交換を避けた。

11…Nf6 12.c3 bxc3 13.bxc3 Nc6 14.Bh6 O-O 15.Bxg7 Kxg7 16.Ne3

 次の実戦例は閉鎖型シチリアでの白の理想がよく表れている。16…e5?! 17.f4 Ne7 18.Ne2 Bb7 19.g4! h6 20.h4 exf4 21.Rxf4 Neg8 22.Raf1 Qe7 23.Ng3 Bc8 24.Qf2 Be6 25.g5 hxg5 26.hxg5 Nh7 27.Nef5+! gxf5 28.exf5 Qxg5 29.Ne4 Qd8 30.fxe6 fxe6 31.Qg3+ アダムズ対サクス戦(ドイツ団体選手権戦、1998年)ではここで黒が投了した。

 B3)6…e6 7.Qd2

7…Nge7 8.Bh6 Bxh6

 8…O-O?! は実際には困難を呼び込むことになる。この手は白の待ち望むところである。9.h4!(白の攻撃は非常に危険であり、その作戦は単純である。10.h4-h5 と突きg7のビショップを交換し、g6のポーンも交換してh列を素通しにして白クイーンがh6の地点に侵入できるようにすれば詰みを狙って攻撃することができる)9…Bxh6 10.Qxh6 f6!

(黒のこの手は油断がならない。白が 11.h5? で上記の作戦を遂行すると、11…g5 のあと …Kh8 から …Ng8 で白クイーンがとんでもない事態に陥る)11.Qd2(白の最も強力な攻撃駒が戦場から退却したけれども攻撃そのものは全然収まっていない。白はg7のビショップを消して既に大きな成功を達成している)11…e5 12.h5 g5 13.h6!(この手は黒が …h7-h6 によって連鎖ポーンを結合するのを防ぐ大切な手である)13…Be6 14.f4 gxf4 15.gxf4 Kh8 16.Nd5 アダムズ対ウォード(イングランド、2001年)では白の勝利に終わった。

9.Qxh6 Nd4 10.O-O-O

 10.Qd2 はもっとゆっくりした展開になる。

10…Qa5

 黒はすぐにクイーン翼で反撃策を見つけなければならない。

11.Kb1

 11.Qg7 Rf8 12.Qxh7 でポーンをかすめ取るのは 12…Nec6 で非常に危険そうである。

11…Bd7 12.Nge2 Nec6 13.h4 O-O-O 14.h5 b5 15.Nxd4 Nxd4 16.e5 d5

 16…dxe5 17.Qg7 b4 は 18.Ne4 で白の16手目の意図が明らかになり白が少し優勢である。

12.Qd2

 ショート対モブセシアン戦(サラエボ、2000年)ではいい勝負だった。

 B4)6…e5

7.Qd2

 もちろん白は 7.f4 と指して 6.f4 e5 から始まる戦型に移行することもできた。

7…Be6

 7…Nge7 と指すこともできる。

8.f4 exf4 9.Bxf4 Nd4 10.Nf3 Nxf3+ 11.Bxf3 Qd7 12.O-O-O Ne7 13.Bh6 Be5 14.Rde1 O-O-O

 互角の形勢である(ストゥルア対ロギノフ、ソ連、1984年)。

結論

 閉鎖型シチリアは白にとって意表を突く武器、または常用定跡の確かな一部になり得る。黒は十分に研究し準備を怠らなければ布局で互角の形勢にできるかもしれない。しかし予期せずに意表を突かれると、実戦で正しい手順や作戦を見つけることはそう簡単ではない。

 これは毎日のように論じられる主流定跡に関わりたくなくて、ただ布局から明快な中盤戦の作戦に行きたい選手にとっては特にお薦めの戦型である。黒については好きなシチリアを放棄する必要はなく、この比較的人気で劣る戦型の対処法を研究しておくだけでよい。

******************************

2012年06月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(232)

第5部 着想(続き)

第22章 手詰まり(続き)

 収局では駒数が減るので手詰まりがもっと明瞭になる。以下は以前に発表されたことのない2局面で、この着想を劇的に見せつけている。

アプシェニエクス対アリョーヒン
ブエノスアイレス、1939年
 70.Kf2

 第2次世界大戦が勃発(大覚醒の元)したとき多くのマスターが南アメリカに足止めを食ったこのオリンピアードで、対局時世界チャンピオンだったアリョーヒンは白に次のような問題を投げかけている。

 1.そちらのキングは動けない。もし動けばこちらのfポーンが進む。
 2.そちらのルークは動けない。もし動けばaポーンが取られる。
 3.そちらのポーンは動けない。もし動けばこちらのキングがb7に動いてルークかポーンを取る。

 白の答えは次のとおりである。

 1.そちらのルークは横に動けない。もし動けばfポーンが取られる。
 2.そちらのルークは縦に動けない。もし動けば 71.a7! Kb7 72.Rc8! Kxa7 73.Rxc6 でポーンの取り合いになり引き分けになる。
 3.そちらのcポーンは動けない。もし動けば2と同じことになる。
 4.そちらのキングは動けない。もし動けば「こちら」は 71.Ra7 で手待ちができる。

 それにもかかわらずこのこう着状態を解消する手段はある。それは収局特有の三角法である。黒キングはb6の地点を離れて戻ってくるのに3手をかけることができる。これに対して白ルークはa8の地点を離れて戻るのに2手(または偶数手)しかかけることができない。

70…Ka5! 71.Ra7 Kb5! 72.Ra8 Kb6!

 そして白は手をつぶすことができないので負けになる。

(この章続く)

2012年06月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(231)

第5部 着想(続き)

第22章 手詰まり(続き)

 最初は手の枯渇の混じった例である。

ポルティッシュ対フィッシャー
ブレッド、1961年
 38.h5

38…Ra4!

 黒は 38…Rh4 ですぐにhポーンを当たりにすることはできなかった。それには 39.Nf4 がぴったりした受けになる。しかし本譜では 39.Rh2 や 39.Nf4 では 39…f6# で頓死してしまう。このままでは 39…f6+ 40.Rxf6 Ra5+ でルークを取る狙いがある。だから白は 39.Nc5 と指さなければならず 39…Rh4 でポーンが取られた。

(この章続く)

2012年06月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(230)

第5部 着想(続き)

第22章 手詰まり

 ボビー・フィッシャーはかつてキング翼インディアン防御の標準的な手順は不利な定跡から白が一つを選ぶしかないので黒が1手損してもまだ有利であると豪語した。白は手待ちに困るということだ。そのころのフィッシャーは布局への取り組みで性急なところがあったが一理もあった。

 指したくないときに指さなければならない状況の手詰まりは文字どおりには「着手強制」ということで、一局のどの段階でも生じる。純粋派は手詰まりの偉大なマスターのアーロン・ニムゾビッチによって作られた多くの中盤戦の局面は他の種々の要素も混じっていると指摘している。しかし相手を手番にさせる「着想」は局面を改善できるかと相手に聞いているようなもので、枡をめぐる戦い、争点の維持、そして狙いと反撃の全体的な評価に密接に関連している。それは動かない窓をまずもっと押して閉めることにより開けることに似ていることがよくある。

(この章続く)

2012年06月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(272)

「Chess」2012年2月号(4/4)

******************************

レッジョエミーリア(続き)

 ナカムラは最終戦の前の第9回戦の白番ではモロゼビッチとの差が1点しかなかったが、それでもギリには3点差をつけていた。ギリは出だしはひどかったがこの対戦の前の4戦では3勝1引き分けだった。

レッジョエミーリア、2011年12月
H.ナカムラ – A.ギリ
ペトロフ防御

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6

 ファンからはやんやの不満の声があがった。ペトロフ防御は防御に優れているので一流GMたちに愛用されている。しかし白が図に乗ったり臆病になったりすれば黒にも勝機が巡ってくる。

3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.Nc3

5…Nxc3

 1987年サンフランシスコでの有名な試合、マイルズ対クリスチャンセン戦は 5…Bf5 6.Nxe4 Bxe4 7.d3 Bg6 と進み、20手で引き分けになった。これが何で有名なのかって?実は 5…Bf5 は大ポカで、白は 6.Qe2! と指せば駒得できていたからだ。この手に対して 6…Qe7 は 7.Nd5 で黒クイーンは駒損を避ける手がない。なぜマイルズは 6.Qe2 と指さなかったのか?うわさではあらかじめ引き分けにするという約束がかわされていたためだった。その話ではマイルズが 6.Nxe4 と指す前にちょっと時間を使ってe2の地点をわざと清めていたそうだ。5…Bf5?? は他に事例があるのかって?それが信じられないことにあるのである。翌年に後に世界チャンピオンになるビシー・アーナンドがアロンソ・サパタとの試合で指した。このときは両対局者はもっと普通に振る舞った(つまり試合の結果の前に手を指した)。サパタはこの局面で精神的に次善手を指す義務はなかった。アーナンドは 6.Qe2 Qe7 7.Nd5 Qd7 8.d3 のあと投了した。彼はチェス新報でマイルズ対クリスチャンセン戦の棋譜を見ていたのでこれ以上分析するには及ばなかった。

6.dxc3 Be7 7.Be3 Nd7 8.Qd2 O-O 9.O-O-O c6 10.h4 Re8 11.Bd3

11…d5

 11…Nf6 12.Rde1 d5 13.Bd4 c5 14.Bxf6 Bxf6 15.Qf4 Be6 16.Ng5 g6 17.Bb5 は2010年タリ記念大会のナカムラ対クラムニク戦で、白が有望だったが引き分けに終わった。

12.Ng5 Nf8 13.h5 Bf6 14.Nf3 Bg4

15.Rde1

 たぶん白はここで 15.h6!? を考えてみるべきだった。ナカムラはこの試合では妙に踏み込みが悪いようだった。

15…Bxf3 16.gxf3 Ne6 17.f4 h6 18.a3 Qa5 19.Qd1

 白は Qg4-f5 を考えているがその機会は来なかった。

19…Nc5 20.Bf5

 白は後日のために白枡ビショップを温存したがっているがf5の地点では役に立たない。

20…Na4

21.Qd3

 白は 21.Rhg1 でキング翼攻撃を追求したいところだがその余裕がない。黒は次のように反対翼で強襲をかけてくる。21…Nxb2! 22.Kxb2 Qxc3+ 23.Kc1 Qxa3+ 24.Kd2 Bc3+ 25.Ke2 Bxe1 26.Rxe1 Qc5!

白は …d4 と突いて …dxe3 と …Qxf5 を狙う手にうまく対処できない。

21…Nc5

 21…Nxc3!? 22.bxc3 Bxc3 23.Reg1 c5 の方がずっと良いかもしれない。

22.Qd1 Qb5

 勝とうとしているのは黒の方である。

23.Qe2 Qa4 24.Qd1 Ne4 25.Bxe4 Rxe4

 ポーンの形が良いのと駒が好所についているので黒が優勢である。

26.Rhg1 Rae8 27.Rg3 Kh8 28.Reg1 Qc4 29.Kb1 c5!

 白のビショップに対する圧力を一段と強めた。

30.Qd3

 30.Qf3 の方が少しだけ堅固である。黒が事を急いで 30…d4? と突いてくると 31.Qg2! で攻守が逆転し黒が急にg列の守りに問題を抱えるようになる。

30…b6 31.Qxc4 Rxc4 32.Rd1

 32.Bd2!? という受けもあったかもしれない。32…d4 には 33.b3 でルークが捕まえられるし、32…Re2 には 33.Rd3 と応じられる。

32…d4 33.cxd4 cxd4 34.b3

34…dxe3!

 白にとっては面白くない無視の手だった。

35.bxc4 exf2 36.Rf3

 白がどう指そうと黒はビショップでf2のポーンを支えることができる。例えば 36.Rh3 なら 36…Bd4! 37.Rhh1 Re4 38.f5 Bc5 39.Rhf1 Rxc4 ですべて抜かりがない。

36…Re1 37.Kc1 Bd4

 37…Bh4 の方が少しだけ強力である。

38.c3 Be3+ 39.Kc2 f5!

 局面をしっかり引き締めた。

40.a4 a5 41.c5

 41.Rd8+ なら 41…Kh7 42.Rd3 Bc5 43.Rd1 g5! 44.hxg6e.p.+(44.fxg5 は 44…hxg5 45.Rxf5 Kh6 で黒の楽勝)44…Kxg6 45.Kd2 Be3+ 46.Kc2 h5

で黒がいずれ白の抵抗を克服する。

41…Bxc5 0-1

 このあとは上の解説とほぼ同じように進む。42.Rb1 g6 43.hxg6 Kg7 44.Rd1 Kxg6 45.Rg3+ Kf6 46.Rf3 h5

 ナカムラの楽な優勝と思われていたのが急にわけが分からなくなった。ナカムラ、モロゼビッチそれにギリが15点で首位に並びカルアナが14点で続いた。この大会は3-1-0の得点方式なので最終戦では大変動がありえた。皮肉にも(マイク・バズマンがこれを読んでいないことを願う)単独優勝をさらった選手は最終戦の白で手堅く28手の引き分けを選択した選手だった。アニシュ・ギリの大出世物語はひどい出だしからすると快挙だった。競争相手の二人は共に負けた。モロゼビッチは面白いシーソー試合でビチュゴフに、ナカムラはようやくチェスの指し方を思い出したイワンチュクに3連敗目を喫した。

******************************

(この号終わり)

2012年06月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(229)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 ポーンの e6 突きはf7の地点を開けるためや布局で中央をせき止め相手の展開を邪魔するためによく用いられる。そして次の局面のようにビショップとルークの筋を開けるためにも。

フィッシャー対カルドーソ
番勝負、ニューヨーク、1957年
 22…exf5

23.e6! Bf6 24.Rad1! Ne5 25.Rfe1!

 単刀直入に戦力を増強するだけで駒得になる。ここで 25…Ng4+ 26.hxg4 Bxc3 と応じても 27.Rd7 でf7のポーンが落ちすぐに詰みになる。

 手筋や捨て駒は血沸き肉躍らせる。しかし多くの名局は策略の正確な適用にすぎない。フィッシャーが喝破したように「盤上では不必要な捨て駒はしないにこしたことはない。」

(この章終わり)

2012年06月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(228)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 典型的なルイロペスから生じたこの一見穏やかな局面で、取るに足りない1個のポーンが黒のf7の地点を崩し4手で黒のキング翼が崩壊した。

フィッシャー対バルツァイ
スース、1967年
 19…Nd7

20.e6! fxe6 21.Rxe6 c5 22.Ba5!

 フィッシャーのトレードマーク「守備駒を減らせ」

22…Qxa5 23.Rxe7 Qd8 24.Ng5 黒投了

 白は 25.Qxh7# を狙っていて、24…g6 と受ければ 25.Rg7+ Kh8(25…Kxg7 は 26.Ne6+ でクイーンを取られる)26.Rxh7+ から 27.Qxg6# で詰みになる。

(この章続く)

2012年06月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(177)

「The British Chess Magazine」2011年9月号(1/1)

******************************

チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

観戦者

 よくあるのは問題を起こすのが対局者でなく観戦者である場合である。対局の終わった選手は観戦者になる。規約違反は無知や無頓着によって引き起こされる。自分は規約とは関係ないと思っているような者もいる。今年の全英選手権戦にもいくつか該当例があるようである。

無頓着

 携帯電話の電源を切らない人間。「なぜ鳴る前にサイレントモードにしておかなかったんだ?」それでも明らかに規約違反だが、他の誰も気づかなければ知らぬが仏である。

無知

 文字通信はだめだと言わなければならなかった。ほとんどすべての場合「フライトモード」だから問題ないと言われた。たいていはフランスチームの団長式にチェスエンジンを作動させて子供のジミーやジェマイマと連絡をとる可能性を指摘すると単なる音が鳴るよりも大きな問題があることを理解してくれた。最近の小さな大会で検討室が対局場とつながっていた(まったく推奨できない)。ある選手を電話が脇に置いてあると指摘した。彼は電話として使うつもりはなく終わったばかりの試合の分析の助けにフリッツに相談するのだと言いはった。声を出していろいろ言ってやって彼の行為の誤りを教えてやることができた。

 通信機器はラップトップ、アイポッドなどを含めすべて試合会場から禁止すべきである。現代の技術をもってすれば審判が「通信機器」と単なる「機器」を区別することなど不可能である。だから審判が用心の側に間違いを犯すことを許容して欲しい。MP3プレーヤーでさえ布局定跡について共犯者と連絡をとることに用いることができるかもしれない。

反抗的態度

 残念ながら自分には規約が当てはまらないと信じ込んでいる観戦者が必ずいるものである。私は2011年にシェフィールドで信じられない光景を目撃した。以前に2回文字通信で警告を受けていたある母親がまたしたということで捕まった。彼女は子供の一人を対局させもう一人とイングランドチェス連盟の仕切り部屋で遊んでいた。私は親に外のコーヒー店あたりで座っているように頼んだ。彼女の最初の反応は彼女の過失によって彼女の子供を私が罰することはできないというものだった。私が意志を変えようとせず警備員たちが近づいて来るのを見ると彼女は軟化したが娘の面倒を私がみるように言い張った。私は子供の世話係でないと丁重に言ってやった。

その他の観戦者の状況

 ガチャガチャとガサガサ。硬貨をガチャガチャ鳴らしたりプラスチックのバッグを自分の脚にこすりつける人もいる。たいていの場合彼らはこのような騒音がどのくらい選手、特にちょっとしたことでも気になる非常に時間が切迫した選手たちに耳障りになるか信じない。

******************************

(この号終わり)

2012年06月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(227)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 戦術的によくつけ込まれる弱点は他にはf2/f7のポーンがある。次の局面は目の覚めるような例である。

フィッシャー対ミニッチ
ビンコヴツィ、1968年
 19…Bh3

20.Ne5!

 白は進んで交換損を受け入れた。代わりに黒のf7の地点に圧倒的な戦力で狙いをつける。

20…Bxf1 21.Rxf1 Bd2 22.Rf3!

 e3の地点での駒交換は許さない。

22…Rad8 23.Nxf7 Rxf7 24.Qe7! 黒投了

 24…Rdf8 25.Rxf7 で詰みになる。

(この章続く)

2012年06月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(226)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 常用の布局定跡にはキング翼の特定の弱点の攻防に関するいくつかの策略も含んでおくべきである。それらが第二の天性になったときには読みをかなり速めることができる。

フィッシャー対ビズガイアー
ニューヨーク、1957-58年
 25…Qf5

 黒は典型的な詰み形の …f3 から …Qg4 を狙っていて、そうなれば g3 と受けても …Qh3 で負けになる。これを防ぐには三通りの方法がある。(1)g3 と突く以外の方法でg2の地点を守る(2)…Qh3 に対して Qf1 と指せるようにする(3)…Qh3 に対してf3の黒ポーンを取れるようにする。フィッシャーはまずg2の地点の守りを「狙った」。

26.Qb4!

 またもやフィッシャーのよく用いる「クイーンの転回」の着想である。26…f3 なら 27.Qxe7 Qg4 28.Qxg5! でg2の地点が守れる。

26…Nc8 27.Na4 f3 28.Nc5+ Kb8 29.Nd7+ Kb7 30.Qb3!

 f3の黒ポーンに目を光らせて 30…Qg4 に 31.g3 と突けるようにした。

30…Qg4 31.Nc5+!

 すぐに g3 と突くと …Qxd4 で両当たりになるのでこの芸の細かい挿入手でナイトをそらした。

31…Kb8 32.g3

 これで 32…Qh3 なら白クイーンがb6ポーンへの釘付けをあきらめる前に 33.Nd7+ で安全な地点にとびのき 34.Qxf3 と取る。これはフィッシャーが十代のときに見せつけた戦術の絶妙の正確さだった。

(この章続く)

2012年06月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(28)

「Chess Life」2003年10月号(1/2)

******************************

ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御閉鎖戦法

 今月はシチリア防御の閉鎖戦法を取り上げる。先月は詳細に研究された戦法の迷路を避けるために開放型シチリアへの代わりとしてアラピン戦法を分析した。閉鎖型シチリアは同じ目的のためのもう一つの選択肢となり得る。この戦型では白は駒を最適な地点に配置することを目指しながらキング翼への将来の攻撃や中央での開戦をゆっくりと準備する。

 この戦法には有名な支持者がたくさんいる。元世界チャンピオンのワシリー・スミスロフとボリス・スパスキー、それにGMマイケル・アダムズとGMナイジェル・ショートらのイギリスの一流選手たちである。

 閉鎖型シチリアでは白は黒のフィアンケット(…g7-g6)に対して様々な作戦がある。今月は主に Qd2 から Bh6 と指す作戦について解説する。早期の f2-f4 や Ng1-h3 のような他の作戦は別の機会に譲る。

白の基本的な作戦は何か

 白はキング翼でフィアンケットしキング翼への攻撃を準備し、その間黒のキング翼での防御を弱めるために黒枡ビショップ同士の交換を目指すことがよくある。またキャッスリングを遅らせて h2-h4 と突きh列を素通しにすることもできる。あるいは展開を完了したあとf列を素通しにしてルークを重ねることもできる。

 白は f2-f4 と突いたあとさらに f4-f5 と突いてしばしばポーンを犠牲にして強力な主導権を得るかもしれない。

 時には白はクイーン翼での黒の動きを a2-a3、Rb1 そしてb2-b4 で鈍らせて(スパスキーが広めた)、そのあとでキング翼を攻撃することがある。局面が開放状態になり乱戦になることさえよくある開放型シチリアと違って、白はまず戦力を配置につけることにより攻撃態勢を整え、そのあとで初めて好機に攻撃しようとする。

黒の基本的な作戦は何か

 2手目または3手目のあと黒は …e7-e6 と突くか …g7-g6 と突くかという将来の展開の方針を決めなければならない。黒が1番目の選択肢で展開すると、その作戦は …d7-d5 と突いて中央をしっかりと支配することになる。黒がもっと一般的なフィアンケットによる展開を選ぶと白のキング翼での速攻に注意しなければならない。だから黒は(戦型B3のように)クイーン翼にキャッスリングすることもあれば、白が先にキング翼にキャッスリングして h2-h4 突きの威力がなくなるまでキャッスリングを遅らせることもある。黒は …b7-b5 と突いてクイーン翼で反撃することがよくある。

それで評決はどうなっているか

 閉鎖型シチリア戦法では白の攻撃作戦は明快である。もっとも時にはその作戦が大局的な優勢に転換するかもしれない。黒がこの戦型に対処する用意ができていないときはすぐに困った事態に陥るかもしれない。しかしこれは奇跡の戦法ではなく、黒は正確に指せば十分な反撃と均衡のとれた局面が得られる。白番で主流手順を避けたい選手にとってはこれはお薦めできる戦法である。黒のためにいうと本稿を読んだあと気に入った選択肢を選びその具体的な手順についてもっと研究するのがよい。

1.e4 c5 2.Nc3

 白の2手目のあと黒には非常に異なった二つの選択肢がある。それはビショップをフィアンケットするか普通にe7の地点に展開するかということである。ほとんどの試合では黒は 2…g6 から始まる陣形を選択する。

 A)2…e6

 この手の意味は …d7-d5 突きを用意して中央にもっと影響力を持つことである。注意しておくとドラゴンまたはナイドルフ戦法を指そうとする選手はこのあとの …g7-g6 突きの戦型を指した方がよい。というのは白にはまだ 3.Nf3 から 4.d4 で開放型シチリアに移行する選択肢があるからである。

3.g3

 白の最良の方針は普通のキング翼フィアンケットの展開を続けてd5の地点に圧力をかけることである。

3…d5 4.exd5 exd5

 ここで白には主要な選択肢が二つある。

5.d4

 この手はすぐに深刻な戦いになる。これとはまったく異なるが同じくらい面白い別の手は 5.Bg2 Nf6 6.d3 Be7 7.Nge2 d4 8.Ne4 O-O 9.O-O Nc6(恐らく 9…Nd5 の方が得策である)10.Nf4 Ne5 11.Nxf6+(この交換の目的はもう一つのナイトにd5の地点に行く道を空けることである)11…Bxf6 12.Nd5 で、チゴーリン対タラシュ戦(オステンド、1907年)では白に主導権があった。

5…cxd4

 黒が 5…c4 で中央を固定すれば白は 6.Bg2 Be6 7.Nge2 Nf6 8.Bg5 Be7 9.O-O から次に Nf4 の狙いで指しやすい局面になり、黒のd5のポーンを標的とするのが白の自然な作戦になる。

6.Qxd4 Nf6

 黒は 6…Be6 でf6のナイトの釘付けを避けることができる。7.Bg2 Nc6 8.Qa4 Bb4 9.Nge2 Nge7 10.a3 Ba5 11.O-O O-O 12.Bg5 で複雑な中盤戦になり、白には黒のd5の孤立ポーンに対する明確な作戦がある。

7.Bg5 Be7 8.Bb5+ Nc6 9.Bxf6 Bxf6 10.Qc5 Bxc3+ 11.bxc3

 11.Qxc3 なら黒は 11…O-O でキングを安全にすることができる。

11…Qe7+ 12.Qxe7+ Kxe7 13.O-O-O Be6 14.Ne2 Rhd8

 互角の収局になる。

******************************

2012年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(225)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 どのようにしてビショップがポーンによって捕獲されるか、そしてナイトがビショップによって捕獲されるか、これまでいくつか例を見てきた。今度はポーンによって捕獲されたナイトを、他の大事に先に対処するために、どのように都合のよいときに取ることができるかの特に痛快な例である。次の局面では布局でポーンを押さえ込むよくある手段にも注意して欲しい。フィッシャーはポーン得するためだけにd3の地点での醜悪なせき止めを許した。そしてここでクイーン翼を解きほぐさなければならない。

フィッシャー対マツロビッチ
パルマ、1970年
 11…Bxd3

12.Kd1 Ne6 13.Ne1 Nf4

 このナイトは次のような奇妙な詰みの狙いのために追い払えない。14.g3 Be2+ 15.Kc2 Nh3 16.f4?(e5のポーンを助けるため)16…Nf2 17.Rg1 Bd1#

14.Nxd3 Nxd3 15.f4!

 フィッシャーは角をつかんで牛を押さえ込んだ。象徴的なe5のポーンを助けるために交換損の犠牲を払うつもりである。

15…Bh6

 黒は 15…Nf2+ 16.Ke2 Nxh1 17.d4 で白ポーンが厚みとなるのを嫌って交換得にいかなかった。しかし実戦の経過を考えればこれが黒の一番の好機だったかもしれない。17…h5 18.Be3 h4 19.Kf3 Ng3 20.hxg3 hxg3 Nd2 となれば素通しのh列のために十分戦える。

16.Kc2 Nxc1 17.Re1!

 すぐに 17.Kxc1 と取るのは実戦と同じにならないのでこの手は単なる気取った手ではない。奇妙にもこのナイトは前の解説でh1で捕獲されたようにここではc1で捕獲された。このルークの意味は黒が必然的に …Bxf4 と取ってきたときの両当たりを許さないためである。

17…O-O-O 18.Kxc1 Bxf4 19.g3

 フィッシャーはうまく局面を収拾した。弱い選手がフィッシャーのようなポーンあさりをしたら負けてしまうところである。

(この章続く)

2012年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(224)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 この試合の前段にはビショップがどのように開きチェックによってルークを捕獲するのかのよくある例が現れた。この場合スパスキーはましな方として開きチェックにはまる方を選んだ、というよりも交換損の犠牲を払った。前回の分析に見られるように本当は勝着だったのかもしれない。

スパスキー対フィッシャー
世界選手権戦第21局、レイキャビク、1972年
 18…c4

 黒のdポーンは二重に当たりになっているけれども …Bxh2+ による「開きチェック」によって守られている。

19.Nxd5 Bxd5 20.Rxd5 Bxh2+ 21.Kxh2 Rxd5 22.Bxc4 Rd2

 これで前回の局面になった。この手順でこの局面になるのを示すのにもいくらか意味がある。交換損の犠牲のあと白が勝勢になるとしたら、ほとんどの解説者がしたようにフィッシャーの 18…c4 に好手記号を付けるのはほとんど理屈に合いそうもない。

(この章続く)

2012年06月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(223)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 7段目のルークをビショップで捕獲する着想は実行まではいかなくても狙いとしてマスターのチェスに繰り返し現れる。ときには捕獲する方が手に負えない状況に陥ることがある。1972年世界選手権戦の次の局面でスパスキーは黒のルークを Bd3 で閉じ込めることはとてもできないと考えたことは明らかだった。

スパスキー対フィッシャー
世界選手権戦第21局、レイキャビク、1972年
 22…Rd2

23.Bxa6 Rxc2 24.Re2

 これでスパスキーに世界チャンピオンを失わせることになった有名な収局になった。彼が黒のクイーン翼の最後のポーンを落とせば引き分けが確実だと考えたのも無理はなかった。しかしフィッシャーは「ルークをポーンの背後に回らせることにより」白ポーンを足止めし、それから相手のちょっとした手助けもあってキングをキング翼に侵入させた。スパスキーは次の手順で勝とうとした方が良かったかもしれない。

23.Bd3! Rxf2

 白はもちろんつねに黒が交換損をしてきたあとの成算を読んでおかなければならない。23…Rd8 24.Kg3 R8xd3 25.cxd3 Rxa2(25…Rxd3+ 26.Re3 は明らかに白が有利である)26.Kf3! Rb2 27.Re8+ Kg7 28.Rb8 a5 29.Rb5(…a4 の防ぎ)これで Ke3 と寄って外側ポーンを取り合ったあとキングの働きのよい白が勝つはずである。

24.Kg3 Rd2 25.Rh1! Rd8

 h7のポーンは取られる運命である。そして反対側のaポーンを活用しようとしても次のように無駄である。25…a5 26.Bxh7+ Kg7 27.Bd3 a4 28.Rh7+ Kg8(黒キングは痛ましくも2枡に縛りつけられている)29.Rh4 axb3 30.Bh7+(また戻れ)30…Kg7 31.axb3 これで白の勝勢である[訳注 31…Rh8 32.Bd3 Rxg2+ 33.Kxg2 Rxh4 で黒の方が少なくとも優勢のようです]。

26.Bxh7+ Kg7 27.Bf5!

 これで白は単にルークを展開することを狙っている。そのあとは交換損を心配する必要はなく Bd3 でルークを永遠に閉じ込めることができる。本譜のあと 27…R8d5 なら 28.Rf1 から Rf3 でよい[訳注 …Re5 から …Ree2 の狙いで黒が悪くないようです]。

(この章続く)

2012年06月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(271)

「Chess」2012年2月号(3/4)

******************************

レッジョエミーリア(続き)

 第8回戦はナカムラも負けた。彼と2位以下との得点差はまだ大きいように見えたが、負けっぷりはイワンチュクほどではないにしても彼のファンをやきもきさせるものだった。戦いらしい戦いもなかった。

レッジョエミーリア、2011年12月
H.ナカムラ – A.モロゼビッチ
フランス防御

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.Nf3 Qb6

 モロゼビッチは通常はこのような戦型の愛好者ではないが、ここでは明らかに相手の研究をはずしにきた。ナカムラはまったく研究していないようだった。

7.Be3 Nc6

8.Qd2

 1994年ミュンヘンでのカスパロフ対ドレエフのブリッツ試合では 8.Na4 Qa5+ 9.c3 c4 10.b4 Qc7 と進み黒が勝った。本譜の手と 8.Na4 が白の主流手順である。

8…Qxb2 9.Rb1 Qa3

10.f5

 2007年バルセロナでのフルビア・ポヤトス対バガニアン戦では 10.Be2 a6 11.f5 cxd4 12.fxe6 dxe3 13.exf7+ Kd8 14.Qxe3 Bc5 と進んで黒の勝ちに終わった。10.Nb5!? が良い手で 10…Qxa2 11.Rc1 で乱戦になる。

10…a6!

 白は単なるポーン損である。

11.fxe6 fxe6 12.Be2 Be7 13.O-O O-O
 

 黒は …b5 突きに1手費やすだけでc8のビショップが解放され白の中原が崩壊する。

14.Kh1 cxd4 15.Nxd4 Ndxe5 16.Rb3 Rxf1+ 17.Bxf1 Qd6 18.Nxc6 Nxc6 19.Na4 b5 20.Nb6 Rb8 21.Bf4 e5 22.Nxc8 Rxc8 23.Bg3 Qe6

 黒は2ポーン得になり白は代償が何もない。

24.Rb1 e4 25.a4 bxa4 26.Bxa6 Rf8 27.c3 a3 28.Be2 Bd6 29.Bh4 Rb8 30.Rxb8+ Bxb8 31.Qa2 Qd6 32.Bg3 Qc5 0-1

******************************

(この号続く)

2012年06月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(222)

第5部 着想(続き)

第21章 策略(続き)

 皮肉にもフィッシャーはこの大会の同じ対戦相手との前局で[訳注 2回戦総当たり]もっと巧妙で効果も劣らないルーク捕獲を見逃し致命的な半点を取り逃がした。(本局の前半については第26章「交換損の犠牲」を参照)

フィッシャー対ポルティッシュ
サンタモニカ、1966年
 49…Rgg4

 ここでフィッシャーは控えめに 50.f3 と突いた。しかし勝利は次の手順にあった。

50.Ne3! Bxe5 51.Nxg4 Rxg4 52.f4! Bb2 53.Ng5!

 53…hxg5 54.Kf3 でルークが召し取られる。

(この章続く)

2012年06月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス